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1975-11-13 第76回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十一月十三日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 大野  明君    理事 住  栄作君 理事 竹内 黎一君    理事 戸井田三郎君 理事 枝村 要作君    理事 村山 富市君 理事 石母田 達君       伊東 正義君    大橋 武夫君       粕谷  茂君    瓦   力君       田川 誠一君    田中  覚君       高橋 千寿君    橋本龍太郎君       山口 敏夫君    金子 みつ君       田口 一男君    田邊  誠君       森井 忠良君    吉田 法晴君       田中美智子君    寺前  巖君       大橋 敏雄君    岡本 富夫君       小宮 武喜君    和田 耕作君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 田中 正巳君  出席政府委員         厚生政務次官  山下 徳夫君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省環境衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省医務局長 石丸 隆治君         厚生省薬務局長 上村  一君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君  委員外出席者         議     員 多賀谷真稔君         議     員 石母田 達君         議     員 大橋 敏雄君         議     員 和田 耕作君         公正取引委員会         事務局取引部景         品表示指導課長 利部 脩二君         文部省初等中等         教育局幼稚園教         育課長     鈴木 博司君         厚生省環境衛生         局企画課長   此村 友一君         農林省食品流通         局消費経済課長 荒尾 芳幸君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      内田 禎夫君         通商産業省基礎         産業局化学肥料         課長      後藤  宏君         運輸省自動車局         業務部旅客課長 山下 文利君         労働省労働基準         局監督課長   倉橋 義定君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十二日  辞任         補欠選任   瓦   力君     中垣 國男君   田中  覚君     原 健三郎君 同日  辞任         補欠選任   中垣 國男君     瓦   力君   原 健三郎君     田中  覚君     ————————————— 十一月十三日  雇用及び失業対策緊急措置法案多賀谷真稔君  外七名提出衆法第五号) 同月十二日  医療による被害者救済に関する請願吉田法晴  君紹介)(第一九九六号)  年金福祉事業団の貸付運用方針改善等に関する  請願金子みつ紹介)(第一九九七号)  雇用失業対策確立に関する請願外二件(川俣  健二郎紹介)(第一九九八号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第二〇六五  号)  医療保障制度改善に関する請願石母田達君紹  介)(第一九九九号)  同(金子みつ紹介)(第二〇〇〇号)  同(田中美智子紹介)(第二〇〇一号)  同(中島武敏紹介)(第二〇〇二号)  同(石母田達紹介)(第二〇六六号)  同(中島武敏紹介)(第二〇六七号)  療術制度化反対に関する請願石田博英君紹  介)(第二〇〇三号)  同(内田常雄紹介)(第二〇〇四号)  同外一件(越智通雄紹介)(第二〇〇五号)  同(奥野誠亮紹介)(第二〇〇六号)  同(河村勝紹介)(第二〇〇七号)  同(菅野和太郎君外三名紹介)(第二〇〇八  号)  同(久保田円次紹介)(第二〇〇九号)  同(河野洋平紹介)(第二〇一〇号)  同(佐藤孝行紹介)(第二〇一一号)  同(高鳥修紹介)(第二〇一二号)  同(高橋千寿紹介)(第二〇一三号)  同外二件(坪川信三紹介)(第二〇一四号)  同(中尾栄一紹介)(第二〇一五号)  同(野呂恭一紹介)(第二〇一六号)  同外一件(前田正男紹介)(第二〇一七号)  同(武藤嘉文紹介)(第二〇一八号)  同(村山達雄紹介)(第二〇一九号)  同(保岡興治紹介)(第二〇二〇号)  同外一件(山田久就君紹介)(第二〇二一号)  同外一件(唐沢俊二郎紹介)(第二〇五六  号)  同(吉川久衛紹介)(第二〇五七号)  同(坂本三十次君紹介)(第二〇五八号)  同(島本虎三紹介)(第二〇五九号)  同外一件(松野頼三君紹介)(第二〇六〇号)  同外二件(古屋亨紹介)(第二〇六一号)  同(山本幸一紹介)(第二〇六二号)  老齢年金制度改善に関する請願河村勝君紹  介)(第二〇二二号)  療術制度化に関する請願宮澤喜一紹介)  (第二〇五五号)  高齢者年金制度改善等に関する請願川俣健  二郎紹介)(第二〇六三号)  同(島本虎三紹介)(第二〇六四号)  准看護婦養成即時廃止等に関する請願(原田  憲君紹介)(第二〇六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  雇用及び失業対策緊急措置法案多賀谷真稔君  外七名提出衆法第五号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 大野明

    大野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子みつ君。
  3. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、本日は主として地域医療中心に、厚生省の御方針を伺いたいと思って質問をいたします。  まず、昭和三十八年の三月、医療制度調査会医療の新しい概念というのを答申いたしましたが、御承知だと思います。そこで出てまいりました新しい概念としての医療包括性という問題でございますが、これは申し上げるまでもありません、健康時の健康擁護健康増進とか疾病とかを中心とする健康擁護と、健康破綻からの回復、すなわち従来の医療と呼ばれていた診療リハビリテーション等の問題でありますが、この二つ中心の柱として、その二つの柱をめぐる機能を一括して包括医療というふうに呼ばれたと私は理解しております。  そこで、私はそれはそのように理解いたしておりますが、その包括性と同時に、相手が人間でございますから、その人間というのはそのバックに必ず生活がそれぞれございます。そこで、人間人間が生活する社会との接触面をあわせた包括、こういうふうに理解ができるのじゃないかというふうに考えているのでございます。それで、たとえば一定の地域に密着した医療が行われなければならないと思いますし、同時に、直接医療を担当する診療側医師その他の医療提供者でありますが、その人たちと患者との人間的な結びつき、そういうものが基盤になって行われなければならないものじゃないかというふうに考えます。それで、地域医療あるいは地域保健というような問題も、これが中心になり基盤になって進められていくべきものだというふうに私は理解してこれから質問しようと思いますが、厚生省はこれについてどのような見解を持っていらっしゃいますか、お示しいただきたい。
  4. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 ただいまの御意見のとおりに厚生省考えております。
  5. 金子みつ

    金子(み)委員 そこで、それでは少し具体的にお尋ねさせていただきたいと思いますけれども地域保健医療中核として考えられるものの一つ保健所がございます。保健所はその一環として非常な重要な任務を持っていると思うのでございますけれども保健所の歴史などをお話ししている必要はないと思いますが、実は最近の保健所実態が、出発当初の趣旨とやや形が変わってきたのではないかというふうな感じがいたします。  たとえば、保健所法ができた当初、国民に対する保健サービスをするということが重点で行われてまいりましたのが、終戦の後、都道府県衛生事務の引き継ぎをする行政的な性格が非常に入ってきたという事実がございますし、さらに、三十五年あたり保健所の組織の変更がありまして、いわゆる型別保健所というものがつくられていったというようなことがございます。次第にそういうふうになってまいりますと、地域の実情に応じた保健所というよりは、むしろ法律で決められたことを行う厚生行政出先機関みたいな形に保健所がなってきてしまっているんじゃないだろうか。保健所といったらば、健康相談をしてくれるところというよりも、いろいろな衛生の問題なんかの役所だという考え方が非常に強く住民の中に浸透しているようでございまして、生き生きとした国民保健指導を行う、いわゆる国民健康管理を重点的に行う地域保健医療中核としての存在が薄れてきているというふうに考えられますし、またそのような意見が非常に多く出ているわけであります。この辺についてどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  6. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 現在保健所が担当しております問題は、終戦直後とはかなり変わってまいりまして、かつてしょうけつをきわめました急性伝染病あるいは結核、こういったものが非常に少なくなってまいりました。それにかわりましてがんとか脳卒中、心臓病のようないわゆる成人病、そのほか公害関係健康障害、さらに最近は難病、こういった新しい、伝染性でない退行性の疾患が大きな問題になってきたわけでございます。したがって、かつてのような華々しさはございませんけれども、現在におきましても保健所かなりのものは、公害保健環境保健、そういったことに力を入れておりますし、また一部のものはすでに成人保健成人病対策にもかなり活躍をしておる状況でございます。ただ、急性伝染病結核と違いまして、成人病公害病難病ということになりますと高度の医療技術が必要でございますので、その方の専門家確保マンパワーが問題になるわけでございますけれども、これについては御指摘のようにまだ必ずしも十分ではございません。しかし、要員常勤非常勤による確保、さらに既存の要員の再教育訓練にはかねてから力を入れておるところでございます。
  7. 金子みつ

    金子(み)委員 状況がだんだん変わってきて、保健所性格が変わってくることについては理解をしております。  いまおしまいごろに局長が言われたマンパワーの問題でございますけれども保健所マンパワーとして中核的な存在医師保健婦だと思います。その医師保健婦充足率が非常に低うございますね。わけても医師が大変に低くて、一つ一つ申し上げる必要もありませんけれども、一保健所所長が一名。一名も所長がいなくて県の衛生部長が兼務するところもあるようですし、一名以上医師常駐専任されているというところは非常に少ないということもございます。東京あたりでも私の地域などでは、東京の真ん真ん中でございますが、保健所専任所長だけだ。あとは全部開業のお医者さんたちの雇い上げであるということも実態としてございます。こういう問題はどういうふうにお考えになりますかしら。いまそれぞれの専門の人が必要なんだから、それを準備しているというお話もございましたけれども、もともと保健所医者が少ないというのはいま始まったわけじゃないわけです。大分前からこの問題は大きな問題になっておって、それを何とか確保するためにいろいろ方策も立てていらっしゃることも伺っております。たとえば研修医制度でありますとか、あるいは医学生に対するいろいろな助成を出しておられることも承知いたしておりますけれども、そういう幾つか行われております、保健所医師確保するという対策の結果がどうなっているかということと、それから、いまのお話のように専門性を非常に強調なさるという点からいきますと、保健所専任医師を置くのよりも、むしろ専門的な医師随意嘱託ですか、あるいは雇い上げですか、そういう形にした方が有効であるとお考えになっていらっしゃるのでしょうか、その辺はいかがなんでしょうか。
  8. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 確かにただいま御指摘のように保健所医師確保は容易ではございません。しかしながら、現在一人も医者がいないという保健所全国八百三十九のうち約五十程度でございまして、その他は一人あるいは複数の医師がいるわけでございます。  そこで、医師確保の問題でございますけれども先ほども申し上げましたように、地域疾病構造が変わってまいりましたので、それぞれの専門医師を何らかの形で確保しなければならなくなってきたわけでございます。そういった医師は、通常最寄り病院等にも余りいないような高度の専門性を持った医師が必要でございますので、ただいまも御示唆がございましたけれども、そういった循環器専門家とか、がん専門家とか、あるいは公害病専門家難病専門家ということになりますと、保健所常勤確保することは至難のことでございます。したがって、現在非常勤の形で、あるいは臨時の形で御協力を願っているわけでございまして、そういった非常勤または臨時の形の保健所医師というものはかなりの数になってまいっております。
  9. 金子みつ

    金子(み)委員 いまのはわかりましたけれども、前半の方の、保健所医師確保するための特別な措置をいろいろやっていらっしゃいますね。その分についての結果がどうなっているのか、そしてそのことは今後もお続けになるのかどうかということについてはいかがですか。
  10. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 もちろん今後も従来よりもさらに一層の努力をしてまいりたいと思うわけでございまして、公衆衛生修学資金貸与制度、これは国の制度でございますが、そのほか各都道府県も独自の制度を持っております。また大学、特に公衆衛生の教室と連絡を密にいたしまして、その面の充足も図っていく努力は今後も続けていく所存でございます。
  11. 金子みつ

    金子(み)委員 私が伺いたいのは、努力していらっしゃることは承知しているわけなんです。その結果はどうなっているでしょうかということを伺っているのです。
  12. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 年々かなり医師確保しておりますが、一方においては保健所医師老齢化等もございますし、また他の施設への転勤等もございまして、差し引きいたしますと、ここのところは横ばいという状態になっております。
  13. 金子みつ

    金子(み)委員 はっきりした数字が後でわかったら教えていただきたいんです。  横ばいとおっしゃいますけれども、たとえば国立公衆衛生院医学科のコースなんかは、あれだけ、四十人の定員を持っていますか、それで年々わずか二、三人しか受講生がいないという実態がございますでしょう。そういうようなものをそのままにしてお置きになるのか。それで効果がどこにあらわれているのであろうかということが非常に疑問だと思うわけなんです。そのままにしておいて、保健所医師を獲得する努力は続けておりますとおっしゃっても、実際には行ってないんじゃないだろうかというふうに私どもには思えるわけなんですね。その辺が非常に問題じゃないかというふうに思いますが、それはそのままにしておかれますか。大変な費用をかけていらっしゃるし、保健所医師定員かなり持っていらっしゃるようですけれども充足率保健所ではやっと三〇%になるかならないかくらいですね。ですから、定員をそのまま残しておく、その費用は大変むただろうと思いますし、嘱託医をもし雇い上げなさるのだったらその方の費用に振り向けるようにするのか、そう簡単には動かすことはできないと思いますけれども、とにかく計画は進んでいても中身が続いていっていないということがわかるのですが、それはこのまま進めていかれて公衆衛生行政としてうまく進められるとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  14. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 もちろん今後も保健所常勤医師確保には努力をいたします。また、御案内のように医科大学もどんどん増設されておりますので、数年後にはいまよりはそういった状況が好転してくるのではないかと考えておるわけでございます。また、いろいろ医師確保のためのあらゆる手を今後も次々と打ってまいりたいと思うのでございますけれども、当面は、先ほど来申しておりますように、総体として見ますと横ばい状況でございます。それで、御示唆もございましたように、私どもの方といたしましても、数年前から非常勤あるいは嘱託医師をふやすという形を漸次とりつつあるわけでございまして、国の補助金面ではその点はまだ十分ではございませんけれども、各都道府県においてかなり努力がされているわけでございます。
  15. 金子みつ

    金子(み)委員 この問題にいつまでもかかるつもりはございませんけれども先ほどお話ですと、専門性のある医師が必要なんだということを強調していらっしゃいました。そしてその人たち保健所常駐、すなわち常勤で採用することは非常に困難があるというお話がございました。それならばそういう方たちはいわゆるパートででしょうか、あるいは臨時に雇い上げの形でなさるんだろうと思います。それだったらば、保健所に入ってこない、もう十年以上三〇%を下回る保健所医師充足率というのを抱え込みながら、医師定員一つも落とさないで、それを抱え込んだままにしておられるというのがどうも私たちは不合理のような気がするわけです。どうしても医師が獲得できないのだったならば、その辺を切りかえるという御方針にお立ちにならないのかどうかということ。  それから、どうして保健所医師が集まってこないのか、三〇%程度充足率しか十年来続けてこなければならなかったのかというようなことについての厚生省の御見解はどうなんでしょう。
  16. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 まず、医師定員の振りかえの問題でございますが、私どもは絶えず常勤医師確保努力をしておるわけでございますので、現在この定員枠を他の職種に切りかえる考えはございません。今後とも従来に増して常勤医師確保には努力をしていくつもりでございます。しかし、一方において特殊な専門性を持った医師も必要でございますので、そういった医師を雇い上げるための賃金とか謝金といった予算も漸次年々ふやしているところでございます。
  17. 金子みつ

    金子(み)委員 最後質問の、なぜ保健所医師が十年来集まってこないのかという理由をどのようにお考えですか。
  18. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 現在の保健所機能が、まだ急性伝染病とか結核とか、そういったものを中心にしたように組織してございまして、新しい国学の領域、特に公衆衛生領域の腕をふるうような建物、設備、またパラメディカルの職員の配置、そういったものが多くの保健所では十分ではございません。そういったことが保健所医師確保を困難にしているのではないかと思っております。
  19. 金子みつ

    金子(み)委員 それが原因でございますかね。本当にそうなんでしょうか。佐分利局長局長におなりになるもっと前、二代も三代も前の局長の時代から同じ問題が続いていますね。それは厚生省ではどうなさいますか。
  20. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 したがって、保健所医師に魅力のある施設としなければならないと考えるわけでございまして、現花ございます八百三十九の保健所の一部についてそのような高度の機能を付与いたしまして、医師常勤の形で大いに腕がふるえるようにしていきたいという方針で、現在計画を作成しておる段階でございます。
  21. 金子みつ

    金子(み)委員 現在作成していらっしゃる計画ができ上がりました段階でぜひ御説明をいただきたいと思います。これがまた計画倒れになって、また前と同じような状態が続くということになりましたら、厚生省の方はもちろんでしょうけれども国民地域住民人たちは非常に頼りがいのない保健所というふうな考え方になってしまいますから、その点はぜひしっかりとした計画を進めていただきたいと思います。保健所病気診断ができる能力を持っていないということはみんなも知っているわけですから、病気診断能力を持っている病院と、それからいま考えていらっしゃるような第一段階診断機能を持とうとしている保健所との結びつきを、どんなふうに連携を有機的につくっていらっしゃるのか。それができ上がりませんと、国民はその中で転がされるわけでございますから、十分考えて進めていただきたいし、その計画がおできになった暁にはぜひ御説明いただきたいと思います。していただけますでしょうか。
  22. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 できるだけ早く計画をつくりまして御説明をいたしたいと思います。
  23. 金子みつ

    金子(み)委員 それではその次の問題に入ります。同じくマンパワーの中で、公衆衛生活動の中で最前線で仕事をしている人たち地域住民健康管理をし、保健指導を進め、あるいは家庭における病人の看護の世話をする、一番地域住民と密接な保健婦の問題でございますけれども、この保健婦が、医師よりはまだましではありますが、現状では七〇%の充足率しかございません。これは保健所保健婦の場合でございますけれども保健婦保健所だけではなくて、ほとんど同数、ちょっと上回りますが、市町村国保保健婦がおりますね。この国保保健婦人たち必要数というものは、現在の数では非常に足りない。保健婦のいない町村が現在でもまだ三分の一はございますね、全国市町村の。三分の一というこの数字は、私の記憶では十年来続いているわけですね。  それで、私はそこら辺が非常に不思議だと思うのですけれども、十年以来保健婦のいない市町村がずっとあって、他の町村では保健婦が何人もいるというところもあるわけですが、全体的に保健婦需要供給関係をどういうふうに算定していらっしゃるのでしょうか、それを私知りたいわけです。保健所側国保側、それから県から駐在する人たち、いろいろタイプがあると思いますけれども、直接住民健康管理を担当する保健婦だけに限っていただいて結構だと思いますが、保健婦需要供給対策というものは何を根拠につくっていらっしゃるのか、伺わせていただきたい。
  24. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 現在診療保健婦が一万六千人ばかりいらっしゃいまして、国民七千人に一人の割合になっておりますけれども医務局におきましては当面、五千人に一人の保健婦確保したいということで養成計画をつくって実施いたしております。その関係保健婦養成施設も年々二、三カ所ずつ、また定員も百人から百五十人ずつふえてまいりまして、現在では五十八カ所、千九百九十人の定員になっているのでございまして、そういった面ではかなり養成計画は充実してまいっております。  問題は、ほぼ三分の一の町村がなぜ国保保健婦あるいは町村保健婦を置かないかという問題でございますが、一言で言えば、そういった町村は行財政の弱い町村であるということであろうかと思いますが、要するにまず財政の問題がございます。また、地域の問題があって、保健婦さんがそこへの勤務を希望なさらないというような問題もございましょうし、最後に、そういったもろもろの事情が合わさりまして、地域保健婦確保の熱意が余り強くないということが原因しているのではないかと考えております。しかしながら、厚生省といたしましては、できるだけ早く全町村保健婦が配置できるように、また、先ほども申しましたように、保健婦一人当たりの住民の数ができるだけ早く少なくなるように、鋭意保健婦養成計画を作成して促進しておるところでございます。
  25. 金子みつ

    金子(み)委員 そのお話を伺いますと、私は大変に残念で悲しくなるのですけれども保健婦必要数を人口だけで割り切ってしまっているというところに非常に問題が起こっているのじゃないでしょうか。そして全国画一的に考えられるところにも問題はないでしょうか。保健所にしてみたところが、一つの県の中で幾つもございますが、幾つかある保健所一つ一つ保健所が担当している地域実態というのは違いますね。そこの地域の保健衛生に関する状態というものは違っているはずでございます。そうすると、そこで働く保健婦がどれだけの仕事量があるかということは、個々の保健所によって皆違うはずだと思うわけです。それを十把一からげに人口五千人に一人という出し方。これは昔、私が自分で仕事をしていたころにもそういう出し方をしたのは覚えております。しかしそれはいまは当てはまらない出し方だと思います。最初に保健婦を設置するときにそういう出し方をしていたことは覚えておりますけれども、そういう出し方で保健婦の数を簡単にお決めになることは間違いが出るのじゃないでしょうか。一人一人の保健婦の対象としている地域の中で必要性を検討を加えて、一つ一つ保健所保健婦が何人必要かということを考えた上で、それを県で集約し国へ持ってきて、そして国の段階でこれを事業計画の中に入れるというふうにでもしないことには、だから保健婦がいまのような形になってしまうわけですね。保健所だっていま定員が決まっていますけれども、これだけでは十分じゃないからパートを雇い上げて仕事していますよ。御存じじゃないでしょうか。ですから、十分じゃないということは十分わかっております。それから保健所の担当管轄の中に市町村もありますし、その市町村保健婦の仕事と保健所保健婦の仕事との競合を避けるための取り扱い措置もとっておられると思います。だから本当に保健婦が何人必要かということは、保健婦の業務の対象となる保健衛生状態の中から割り出して一つ一つつくり上げていかなければだめだと思いますけれども厚生省はそれをずっとやっていらしてないみたいなんですが、それをそのまま今後も続けていって大丈夫だ、差し支えないとお考えでしょうか。もっときめの細かい必要数を算定していただく必要があるのじゃないでしょうか。
  26. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 その点については御説のとおりでございますけれども先ほど申し上げました五千人に一人というのはいわゆる国のレベルのメルクマールでございまして、当然各都道府県あるいは市町村になりますとその地域の需要に応じて必要保健婦が出てくるわけでございます。ただ、国際的に望ましい保健婦の数といわれておりますのは住民三千五百人に一人というのが従来からの定説でございまして、なかなかその状況までまいりませんので、当面五千人に一人というメルクマールを出して養成計画をつくり実施に移しているわけでございます。ただ、各地域のニードに合った保健婦の数の測定、研究ということは非常に大切な事項でございますので、数年前から東京大学田中恒男教授にお願いいたしまして研究班を編成して、その問題の調査研究をやっていただいたところでございます。
  27. 金子みつ

    金子(み)委員 調査研究をしていらっしゃるそうですから、調査研究、大変結構だと思いますけれども、早く結論を出していただいて、早くそれを行政に乗せていただきませんと、国民は非常にアンバランスな保健指導を受けるという不公平な状態になってしまいます。これは三木総理の言われる不公平の是正をするためにも大変に不都合だと思いますから、できるだけ早く結論を出して、そしてそれを行政に乗せていただきたいと思います。  保健婦の数の問題は、医務局で五千人に一人とお決めになっているそうですが、保険局では三千五百人に一人と国保保健婦必要数を割り出すということをしておられますね。そこら辺の話の違い、同じ厚生省の中でそういうことが進められていくということはどういうものでございましょう。実際問題としては非常にそろわない感じですから、保健婦活動の上でも大変に問題が起こってくるということが出てくるのじゃないかというふうに考えます。そこら辺のことも勘案されて、ぜひその問題は至急に対策を立てていただきたい。保健婦は五千人に一人で、一人ずつの対象が人口割りにすれば七、八千人だからそう悪くはないとお考えかもしれませんけれども、これは総括的な数字のことであって、御承知のように一人の保健婦が二万人も、あるいは数万人を担当しなければならないという地域がたくさんございますから、それは決してそれだからいいというふうに考えていただいては困る。全体に少ないのです。保健婦の実働数は横ばい一つもふえておりません。必要性が認められてなくて、求める声が出てきていないということは、そういう政策を出していらっしゃらないということだと思います。だから保健婦は絶対数がふえていっていない。したがって、国民保健指導を十分受けていない。一回しか来てくれないから役に立たないというアンケート調査がございます。一年に一回しか保健婦が来ないようでは、何のために地域住民保健指導をするのかわかりません。それはやはり絶対数の不足からきていると思いますので、その辺はぜひ十分考えていただきたいと思います。
  28. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 保健婦の養成、確保につきましては、先ほど申し上げました五千人に一人の保健婦の養成というのは当面の目標でございまして、言ってみれば第一次計画のようなものでございます。先生もよく御案内のように、養成には教員その他非常にむずかしい問題がありまして、そう一気に養成施設を幾つもふやせるものでもございません。そういったことを勘案しながら、できるだけ早く増員を図りたいという計画になっているわけでございますけれども地域保健のキーパーソンは御指摘のとおり保健婦でございますので、今後とも保健婦の養成、確保、また潜在保健婦の活用について格段の努力をいたしたいと思います。
  29. 金子みつ

    金子(み)委員 その問題と関連すると思いますが、保健所のあり方というのをずいぶん前から何回も厚生省では検討していらっしゃるようですね。その保健所のあり方の中の一つとして、保健婦に関連のある問題ですが、対人保健サービスというものを市町村へ移管しようという計画もおありになるように伺っております。仮にもしこれが実現されるということになりますと、保健所保健婦町村におりていく、そして直接住民保健サービスをする。考え方としては、より密着した指導ができるであろう、身近な指導ができるであろうというたてまえから、これは悪い方法だとは考えませんけれども、いまの数の問題からいってもこれは十分ではないと思われますことが一つと、それから、もしこれが町村におりてきました場合に、保健婦というのは、後からも出てまいりますが、保健医療チームの一員として働くわけでありますから、ぽつんと置かれてしまっては、あるいは町村におろされてしまっても、町村の貧しい予算とかあるいは施設とか人材の中で、地域保健医療体系の確立のないままに保健婦のサービスだけを市町村におろすということは危険ではないか。その仕事が十分伸びていく見通しがむしろ立たないのじゃないかという不安が非常にあるわけでございますが、そこら辺はどのように勘案していらっしゃいますでしょうか。後に出てまいります僻地問題とも絡んでまいりますので、ひとつ御見解をいただきたいと思います。
  30. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 保健所の対人保健サービスを全部市町村に移管してしまおうとは現在のところ考えておりません。ただ、四十七年七月の保健所問題懇談会の基調報告ではそのような趣旨の御答申がなされているわけでございますけれども、その後の情勢の変化等を勘案いたしまして、対人保健サービスを全面的に市町村に移譲するということは困難ではないかと考えております。ただ、特別な市町村におきましては、みずからもそういった対人保健サービス住民のためにやりたいという強い熱意を持っておりますし、また行財政の強い市町村ではかなりの対人保健サービスをやれるところがあるわけでございますから、そういうふうなところにはできるだけお手伝いをしていただきまして、保健所の余った余力をほかの方面に振り向けるということは今後も必要ではなかろうかと考えております。  そこで、ある町村で対人保健サービスをやっておるけれども保健婦が足らないというような場合が起こり得るかもしれませんが、そういった場合はどんどん保健所保健婦がその面のお手伝いをする。また、ただいま御指摘ございましたように、一つ町村に一人の保健婦がいても十分な仕事ができるわけではございません。そういう関係で、保健所保健婦あるいは保健所の派遣保健婦、また地元の国保保健婦町村保健婦、こういった者が力を合わせて保健サービスを展開することになろうかと考えております。要するに、申し上げたいことは、保健婦のいない町村に対しては、保健所から派遣の形で大いにバックアップをしていくというような体制を今後考えてまいりたいと考えております。
  31. 金子みつ

    金子(み)委員 お考え、わかりましたので、この問題はもう少し見守ってみたいと思います。その次には僻地の問題なんでございますが、昭和四十六年に「過疎地域保健指導事業の実施について」ということで厚生省から対策が発表されております。それに基づきますと、こういうことになっております。過疎地域対策として、過疎地域の中の医師のいない地域、いわゆる無医地域ですが、無医地域医療対策の一環として保健婦を設置する、こういう方針が立てられております。しかも、その設置する場合には「保健医療条件の劣悪な無医地区に関し優先して配置すること。」そうしてさらに次の年の四十七年には、無医地区保健指導事業の実施というものが計画されておりますね。これもやはり同じで、この事業ば無医地区における医療確保するために無医地区に保健婦を配置する、こういうことになっております。しかも「保健医療条件の劣悪な無医地区に優先して配置する。」同じように書いてあります。さらに四十八年の四月に出た離島における保健指導事業、これも全く内容は同じでありまして、結局一口にして申しますれば、無医地域医療確保するために保健婦を置く、こういうことになるわけですね。これが厚生省の政策でございます。しかも、最も劣悪な無医地域に優先して保健婦を置くんだというふうになっておるわけですが、私はここでお尋ねをしたいと思います。  この問題は、多分過去に、昭和四十五年ですか、僻地に医師確保するという緊急性があるということから、現在の自治医科大学ができる前身の問題が提起されたことがあります。それがまだ卒業生が出ていないのでそのままになっているのかもしれませんが、僻地に医師を置きたいという方針はおありになったのでしょうが、その医者がいない。そこでかわりに保健婦を置こう。そのことは、四十四年に自民党がお出しになった国民医療大綱の中で、官公立病院の出張診療とかあるいは医師を交代に派遣するとかということのほかに、保健婦の必置をしょう、必置制を実行しようというような意見が述べられております。こういうようなことが素地となって、下地になって、いまの四十六年、四十七年、四十八年と、歴年方針が出たんではないかしらと考えるのであります。私は、大臣がお出ましになると伺っておりますので、これは無医地域対策としての重要な政策でありますので大臣の御意見をぜひ聞かせていただきたいのでございますが、過疎地あるいは無医地域あるいは僻地、そういうところの中のとにかく医者のいない地域、最も劣悪な医療条件の地域にどうして医師を設置する努力をしないで、安易に保健婦だけを設置するという政策をお立てになるのか。保健婦医師の肩がわりをその無医地域でするということを要求していらっしゃるのか、それを保健婦に求めていらっしゃるのでしょうか、その辺を私ははっきりと聞かせていただきたいと思うのでございます。大臣の御答弁は後でいただきます。
  32. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 その場合の医療という概念は非常に広い概念でございまして、最初に先生からもお話ございましたように、健康増進からリハビリテーションまでという包括医療概念でございます。したがって、僻地に駐在する保健婦は、先般の特別対策の通達にもはっきり明記してございますけれども住民健康相談、また医師診療いたしました後のアフターケア、衛生教育、そういった面を主として担当するわけでございまして、一たん傷病が起こってまいりました場合には最寄りの医療機関に直ちに保健婦さんが連絡をして、所要の患者輸送あるいは親元病院からお医者さんに来てもらうというような措置を講ずるわけでございます。ただ、何分僻地のことでございますので、緊急避難として、どうしても一部の診療臨時に担当するということは起こり得るわけでございますけれども、しかしそれは僻地における保健婦駐在の目的になっているわけではございません。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕 先ほども申し上げましたように、住民保健指導、保健教育またはアフターケア、こういったところに保健婦駐在の目的があるわけでございます。
  33. 金子みつ

    金子(み)委員 局長は簡単にそうおっしゃいますけれども、実際に無医地域にいる保健婦がどんな生活をしているか御存じですか。ごらんになったことありますか。お調べになったことおありですか。
  34. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 私は、北海道の僻地駐在保健婦の模様はつぶさに拝見いたしております。
  35. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは大臣の御答弁の前に申し上げますけれども局長はいま大変に聞こえのいい御答弁をくださいました。医療包括的な考え方から、決して直接の診療行為だけではない、保健指導も含めた、リハビリも含めたとおっしゃいました。確かにそのとおりです。保健婦は全部それをやっていますよ。リハビリや保健指導保健婦専門業務ですからやります。そして同時にほかのものも、いろいろ健康生活相談をやっているわけですけれども、いまおっしゃった緊急避難の問題はいま問題にいたしません。緊急避難というのは法律でも許されておりますから問題はないわけですけれども、たった一人で無医地域の中に保健婦がおりますと、いま局長がおっしゃったような緊急避難だけで済まないわけですよ。地域住民から日常の医療行為を要求されるわけです。その場合には、私はそれはできませんからお医者さんに行ってください、あるいは医師に電話をかけて、電話で医師が指示をしたことに対して保健婦医療行為をする、診療行為をするということは許されるのでしょうか。医師は自分で診ないで診断をすることはできないはずだし、それから指導を出すわけにいかないはずですね。電話で聞いただけで決めるというのは非常に危険だと思いますし、保健婦は非常に不安です。そして、そのまま指示を受けて指貫をするということになったら、果たしてそれでいいのかどうか。人の命がかかっていることですから、私は非常に大きな問題だと思うのです。そのことによって命を落とすような問題があるかないか、たくさんあるというふうには思わないかもしれませんけれども、しかし日常いつどんな問題が持ち込まれるかわからないわけですから、それを一々電話で話を聞く、あるいはまた最近ではコンピューターを導入する話も出ています。コンピューターが診断をして、それに基づいて保健婦が治療をするなどということは言語道断だと思うのですね。そんなふうにして人の命を安く扱うということはとんでもないことだと思うわけです。医師を設置することが非常に金がかかるという話も聞いていますが、金のかかる仕事を避けて通って、安い保健婦を置いて、そして地域住民の命も安く扱うというかっこうに結果的になりはしないかという不安がございます。それでもなおかつ厚生省方針をお変えにならないで、僻地無医地域にたった一人置くという方針を立て通していらっしゃるのかどうか。大臣にお出かけ前にちょっと御答弁いただきたいと思います。
  36. 田中正巳

    田中国務大臣 外出に立ちますので、総括的に御答弁申し上げます。  確かに先生おっしゃるとおり、前段の保健所のあり方というものは、組織、運営あるいは医師等の確保等について問題があるということを私は率直に認めたいと思います。今後これについては、いろいろな御意見があるようでして、改善に努力をいたしたいということでございますが、とは申すものの、やはりこれにはこれなりの長い間のいきさつ等もございまして、言うはやすく行うは難いということは先生も御存じだろうと思いますが、これについてはできるだけ努力をいたさなければならないというふうに思って、いろいろと検討をいたしておる次第であります。  第二の僻地駐在保健婦の件でございますが、私は、この僻地駐在の保健婦さんの社会的な意義というものは大きく認めていきたいというふうに思います。私も実は沖繩県あるいは高知県等々において駐在の保健婦さんの活動を見て、あれはたしかアメリカの当時の指導によってああいうものができたそうでございまして、非常に社会的な意義は高いのですが、しかし、厚生省がこうした方々に対して医療を根本的に求めたり期待する態度というものは私は間違っている、よくないというふうに思うわけでございまして、あくまでもこれは健康指導とアフターケアの分野で働いていただくということにならなければなるまいと思っているわけであります。しかし現実には、どうも僻地へ行きますと、この種の保健婦さんのお話を聞きますと、やはりいま先生のおっしゃったことを求められるケースが多々あるというふうに私も聞いておりますが、これは本来あるべき姿ではございません。そうしたことのないように今後努力をしなければならない。そのことのために、今年度の僻地医療対策といったようなことも実はかなり努力をいたし、また予算も相当ふやして僻地医療対策を編み出したわけでありますが、その中の、中心になっている僻地中核病院によってチームをつくって、僻地に医師を派遣するということなども一つのその努力の結果でございますが、これとて私は万全の策であるとは思えない。しかし、一部試行錯誤になってもとにかく進めてみよう。そして、あれやこれやの角度からそうしたことを進めていかなければなるまいというふうに思ってこれを進めておるわけでございます。今後とも研さんを重ねて、こうした先生の御注意にもこたえ、また真実に僻地における医療確保について努力をしなければならない、最大の問題だというふうに思っている次第であります。
  37. 金子みつ

    金子(み)委員 御見解はよくわかりました。しかし、大臣が言われるように、趣旨に沿わないけれども地域住民の要望があるということですね。これもわかっていただきたいのです。そのときの保健婦は非常に苦しみますよ。医師法と保助看婦法との間にはさまれちゃって、住民のことを考えれば医師法違反になるし、それかといってそれをやればまた問題になるということで、この苦しい保健婦の立場をわかっていただいて、そういう事態に保健婦を陥れないように別の政策を立てていただきたい。これは私ども考えもございますので、後で局長に申し上げておきますから、それを、ぜひ進めていただきたい。そして、少なくともだんだんに切りかえていただくということを、ぜひお願いしたい。  それから、もう二、三分あるようですから、直接のつながりになりませんけれども、一言大臣に伺いたいことがございます。それは保健婦の指導の中に関連しないこともないのですけれども、実は中医協の問題なんです。いま開店休業している中医協ですけれども、何とかして再開のめどは立たないものなんでしょうか。これはもうごてごて申し上げません。いろいろ中身の事情もあることはよく承知いたしておりますから、それは申し上げませんけれども、しかしこのままにしておきますと八方行き詰まりですね。厚生省も行き詰まりでしょう。それから中医協のメンバーも行き詰まり、住民も非常に行き詰まり、あるいは診療機関も行き詰まりということになって、どうにもならなくて年の瀬を迎えるかっこうになります。しかし、これの行き詰まりを打開させる行司役を務めるのは厚生大臣以外にはないと私は考えているわけですよ。ですから、厚生大臣が積極的になさる御意思があるかどうか。これはそのままそっとして放置しておおきになるおつもりなのか。そして年を越してしまおうとお考えなのか。あるいはそうでなくて、その前に積極的に調整役をとろうとお考えになっていらっしゃるのか。そのお考えだけで結構でございますから、お聞かせください。
  38. 田中正巳

    田中国務大臣 中医協の現況打開策につきましては、ただいま先生からお話がございましたが、この後にも多くの委員さんからお話がございます。なかなか複雑な問題でございまして、一、二分の間にこれを御説明申し上げることは舌足らずになるおそれがございますので、時間のある委員さんに十分お答えいたしたい。ただ一点、何とかこれを早く打開いたしたいというふうに思って、私も積極的に努力中であるわけでございます。
  39. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは続けます。もう時間も少しでございますので……。  もとの話に戻りますが、僻地、過疎地あるいは離勘など、無医地域保健婦を優先的に設置するという問題、保健婦を設置することによって無医地域における住民医療確保しようという考え方、その考え方の中身をいま大臣から伺いましたが、それはそうだろうと思います。それ以外におっしゃりようもないだろうと私も思います。保健婦医療を求めるために保健婦を置くんだなんて言えるはずがないですからそういうふうにはおっしゃらないとは思いますけれども、しかしあれは表面的な答弁にしかならないと思うのですね。実際問題として置かれている保健婦の牙になってもらいたいわけですよ。一人でもって無医地域に置かれている。まあいろいろな問題、個人的な問題、どうせそういうところに行くのには家庭持ちの人ですと行かれないから、別居しなければなりませんから、若い独身の保健婦だ、こういうことになるわけですね。そんな人が、何にも指導の支えがなくて、保健所には月に一回連絡会があって行くだけであって、そのほか彼女を支える技術的な援助もなければあるいはその他の社会的な問題の援助もなくて、ぽつんと置かれて、そして働け働けとむちを打たれても働けるわけがないと思うのです。しかも、個人的な生活としては、相談所と自分の住まいとが一緒ですから、二十四時間サービスをやっているわけですね。夜の夜中だって相談に来ますよ、ああいうところにおりますと。そういう問題も考えてあげたことがおありになるのでしょうか。私は本当にそういう意味で、保健婦に対する対策厚生省が一番理解してくだすっていると思っているのに、何か一番理解がないみたいに思って残念なんです。保健婦はどういうふうに活動させるべきものかということを佐分利局長なんかも十分御承知のはずだと思います。それですけれども、国の政策として出てくるのがそう出てこないというのは大変に残念だと思うわけです。そこで、その政策はもし転換をなさらないのならぜひ考えていただかなければならないことがあるのですけれども、国の政策転換というのをいまお話しのような形で進めていくのだということでありますならば転換にはなりませんね。その辺はどうなりますでしょうか。
  40. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 先ほども大臣がお答えいたしましたように、医療をやるということは問題がございますけれども保健指導を大いにやってもらうという意味では、僻地の保健婦さんというのは非常に大切な存在でございます。そういう関係で、たとえ僻地の医師確保されるようになった暁でも、私ども保健婦は置いておきたいと考えるわけでございまして、そういう意味では、僻地、辺地、離島の保健婦配置の政策を転換するという考え方はございません。
  41. 金子みつ

    金子(み)委員 それであるならば、その保健婦専門性を十分発揮できるような条件を与えてやらなければなりませんね。いまのままではとても専門性を十分発揮することはできないと思います。ですから、たとえば彼女が相談に応じられるような、高いレベルの技術的な能力を持った機関を備えてあげる。それは町村の中に置けるか置けないかは別問題でございますが、保健所でもいいじゃありませんか。保健所にそういう人があって、そして常に連絡ができる、常に指導が受けられるというような体制を固めてやるというふうにでもしなければ安心して仕事ができないと思います。ことに若い学校出たての人は、元気はいいですけれども、何でも一生懸命取り組んでくれると思いますけれども、しかし経験も浅い。そういう人たちがたった一人で任されるのですから、これはぜひ考えていただきたいと思います。  それから駐在の年限ですね。いままでの日本の保健婦の駐在制の欠点は、一度駐在させたならばそれっきりおしまいなんですね。島流しみたいな感じになって、だれも行きたがらなくなってしまう。そうではなくて、駐在させるときには一定の年限をつくって、三年なら三年行ってもらいたいというようなことにするとか、そういうようなことを考えて循環をさせるということは必要だと思います。お医者さんだって行きたがらないのはそこに理由があるのですからね。  それからさらにもう一つは、保健婦が保健衛生指導をするのに、あるいは住民の指導をするのに必要な予算が十分、自分で自由に使える予算が与えられてなければならないわけです。いまだったらそれはできません。市町村の貧しい財政の中で、保健婦は遠慮しいしい仕事をするかっこうになります。国から流されてくるものがあるとは思いますけれども、決して十分ではない。そうすると市町村に気がねをして、市町村の仕事を手伝わされたりしています。手伝ってあげなければ気が済まないみたいな気がするのだというようなことを言っている保健婦もおります。まあそれは人間ですから、同じところに勤めて仕事をしているのですからお手伝いも結構だと思いますけれども、それが主客転倒しないようにしていただきたいこと。  いま一つは、僻地の保健婦の手当なんですけれども、いまたしか二〇%ついているわけですね。これは医師の手当と大変違いますね。医師は研究費その他入れて百万円ついているのじゃないですか。ですからそこら辺の格差をどう是正なさるか。ここにも私はやはり不公平が出ていると思います。公平な取り扱いがなくて、安い保健婦にだけ安く無医地域医療保健指導をさせようという考え方はもうこの際やめていただきたい。そして、やはり無底地域に単身で赴任をしていく保健婦には十分なことをしてやっていただきたい。それでだれも文句を言う人はないと思うのですけれども、その辺はいかがお考えでございますか。
  42. 佐分利輝彦

    佐分利政府委員 まず、保健所保健婦が僻地駐在の若い保健婦をよくバックアップし、指導すべきであるという御意見でございますが、これは僻地医療特別対策の通達にはっきりそのようにするように指示してございますし、また、現在保健所にはもうすでに二十年、三十年というベテランの保健婦さんがたくさんいるわけでございますから、十分なバックアップができるはずでございます。  次に勤務年限の問題でございますが、これは各都道府県がいろいろ職員組合等とも相談をいたしまして決めておりまして、通常二年から三年ということになっておると思います。かつて開拓保健婦の場合には、先ほどお話しございましたように行きっ放しということがございましたが、現在はそういうところはないはずでございます。  次に三番目でございますが、予算はもちろん国の補助金にしても交付税にしてもふやしていかなければならないと思います。また市町村の仕事を手伝っておるとか、そういったお話がございましたけれども先ほど来申しております特別対策の通達には、保健婦さんにはできるだけ雑用とか事務をやらせないように、そういうことをやる要員は別に雇えというような指示がしてあるわけでございまして、一部の町村におきましては、いろいろ町村との行財政のつながりからお手伝いをするというようなところがあるのかもしれませんけれども、今後そのようなことがないように、保健指導に専念できるようになお指導を徹底してまいりたいと考えております。  最後に手当の問題でございますが、国の補助金とかあるいは交付税では確かに基本給の二〇%ということになっているわけでございますが、これも各都道府県でいろいろと苦心をいたしまして、いろんな手当をつけているはずでございます。たとえば、私が勤務しておりましたので北海道の例を挙げさしていただきますけれども、ほんのわずかでございますが、月に六千円は差し上げていたわけでございまして、その他いろんな工夫がこらされ、各都道府県で苦心をしているところでございます。なお、各都道府県において今後そういうふうな制度が定着化してくれば、国の方も正式に補助金とか交付税で考えなければならなくなってくるのではないかと思っております。
  43. 金子みつ

    金子(み)委員 いまお話を伺っていますと、このように通達を出してある、このように指導してありますというお話ですけれども厚生省は、指導してある、通達を出してあるからもうそれでいいというふうに考えていらっしゃるのだったら、大変な間違いになりはしないかということを御注意申し上げたいと思います。通達が流れていっても、指導が行っても、財政がついてこなければ都道府県じゃやれません。それは私が申し上げるまでもない、衛生部長をやっていらした局長はよく御存じだと思いますから申し上げませんけれども、それだけで済ましていていただいたのでは困るということを私ははっきり申し上げておきたいのです。  それからいま一つの問題は、私は手当が、金額が少ないとか多いとかということを言っているのではなくて、もし仮に僻地に医師を設置しようとする場合に、医師に与えられる手当と——基本給の問題は別です。その手当と、保健婦に出されている手当との開きを一掃してもらいたい、このことを私は申し上げているわけです。そこに差別をつける必要はないじゃないか。差別をつけるからおかしくなるので、むしろ逆になってもいいくらいでありまして、平等に扱うべきだということを私は申し入れをしているわけなんです。この点について、もう時間もありませんので、政務次官から御答弁をいただいて私は質問を終わりたいと思います。
  44. 山下徳夫

    山下(徳)政府委員 私も途中から参りましたので十分はお伺いしておりませんが、金子先生の保健婦に対する数々の御質問、ごもっともな点が多いと思います。地位の問題等につきましては、御承知のとおり保健所自体の制度に対して今後どうするかという、いまそういう保健所の改革の問題と取り組みつつある問題でございます。したがって、それと一挙に、やはり保健婦の地位の問題は将来にわたって、たとえばソ連の保健婦のように副医師的な地位にまで高めていって、それに見合った給与を与えるというふうなことも将来の課題として私は考えてまいらなければならぬ、かように考える次第であります。
  45. 金子みつ

    金子(み)委員 私は特に政務次官に考えていただきたかったのは、僻地に駐在する保健婦の手当を医師の場合と格差をつけるべきじゃないということを申し上げたわけなんで、これをぜひ実行していただきたいんです。ソ連の副医師というのは私どもは反対な制度ですからね、あれをまねなさらないでください。ああいう行き方は基本的に間違っている。これはいまここで議論する時間じゃありませんから申し上げませんけれども、僻地でたった一人で仕事をする保健婦に対する手当を、行かない行かないと粘っている医師に対する手当よりもはるかに少ない手当でやらせようという、その魂胆が国としては私はおかしいと思うのです。僻地にだれも行かないのに保健婦だけがたった一人で勇んで行くんじゃないのですから。それなのにその手当を、行かないと言っている医師へ出すよりも少なく出しているというのはおかしい、理屈が合わない。これをぜひ平等にしなければいけない、こういうふうに思うわけです。それをお返事ください。
  46. 山下徳夫

    山下(徳)政府委員 僻地における医師保健婦の給与の格差をなくせとおっしゃれば、私も一つの課題としてそういうことも考えなければならぬ、こういうふうに申し上げたのであって、ソ連の副医師の問題のように直ちにやるとかやらないとかというのと、ちょっと私が申し上げたのは違っております。そこで、いま申し上げたように、おっしゃる点はよくわかりますけれども、現実の問題としては医師の給与というのは非常に高いことは御承知のとおりでございまして、それの確保の問題ともやはり関連があるとも思いますけれども、確かにおっしゃる点はよくわかりますので、格差が不当に大きいということであれば、もちろんそれを是正することに努力しなければならぬと思います。
  47. 金子みつ

    金子(み)委員 ちょっと誤解していらっしゃる。私は給与の格差を言っているのじゃないのです。給与の格差ができるのは、これはもう私はわかっています。給与の格差でなくて、僻地手当です。無医地域に行くことについての手当です。これが大変大きな違いがあることは私は問題だということを申し上げているのです。
  48. 山下徳夫

    山下(徳)政府委員 私もここで正確な額は記憶いたしておりませんけれども、御指摘の点は私ども概括的には承知いたしておりますので、努力いたしたいと存じます。
  49. 金子みつ

    金子(み)委員 以上で終わります。
  50. 大野明

  51. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私も医療関係いたしまして若干質問申し上げますが、わが国の医療行政のあり方につきましては、保険あって医療なしという言葉に象徴されますように、大変欠陥と矛盾だらけだということであります。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕 国民の不満、批判というものが大変なものであることは御承知のはずであります。その基本になっているいわゆる医療制度医療保険制度、ここの欠陥やあるいは矛盾、これを根本的に改めない限りこれは解消されないわけでありますが、政府も五十一年度には医療保険の抜本的な改正をなさるものであろうと私たちは期待をいたしております。  きょうは応問がございませんので、当面の問題にしぼって若干質問するわけでございますが、まず、自治体病院あるいは公立病院、この赤字経営というものは大変なものでございます。特に本年度の給与改定、その後の物価上昇等の要因によりまして、病院経営というものは四月以降毎月一九%以上の赤字が発生しているようであります。私は、ことしの二月二十二日だったと思いますが、社会的不公正の是正ということで予算委員会で集中審議が行われました際にも質問に立たしていただいて、そのときも医療問題に触れました。特に夜間看護手当が千円であったのが千四百円に引き上げられる、その引き上げられる額そのものにも実は疑問があったわけでございますが、もっと多く引き上げるべきだという主張はあったわけですけれども、それはさておいて、仮にその引き上げの額が、四百円ですけれども、決定した場合に、国立関係看護婦さんはその財源は確保される。しかしながら、自治体病院あるいは公的病院等に勤めているそうした看護婦さんの夜間手当はどうなるのか。いまの赤字状態ではとてもこの財源は捻出されないはずだがどうなんだということを繰り返し質問したわけです。そのとき自治大臣は、その分については特別交付税等で十分努力してまいりますというような答弁をしておりました。厚生大臣はそのときに、とにかく病院経営の中で何とかやりくっていただきたい、いずれその問題を解決するのは医療費を改定する以外には方法はない、こういうふうに厚生大臣は答えたわけであります。私は、何とかやりくりしてくれと言ったって金がないんだ、何としても助成措置を講ずべきだということでかなり突っ込んで聞いていったわけですが、結論的には医療費の改定を待つ以外にないということになったと思います。それじゃいつごろその医療費の改定はなされるのだ、こう聞きましたら、できるだけ早い機会にというような答弁が返ってきたわけであります。  私も、診療報酬の改定、医療費の改定というのは中医協が実は中心になって行っていることを承知いたしておりますが、先ほども中医協の問題がちょっと出ておりましたけれども、九月九日でしたか、八カ月ぶりにようやく中医協は再開されたわけなんですけれども、再び審議不能のままになっているわけです。一体これはどうなるんだろうか。私の二月の質問に関連しましてこの問題をあわせて答えていただきたい。実は大臣にお尋ねしたかったわけでございますが、所用のために席をはずされまして、政務次官がここにお座りになったわけですけれども先ほど大臣のお話の中に、中医協の問題については短い一分や二分等で答えるわけにはまいらない。それであとで質問する委員には十分私の考えを述べたいということで、そのときの答弁は、積極的にそれに乗り出すということだけ言いおいてこの席を立たれました。当然副大臣という立場にいらっしゃる政務次官ですから、大臣のそのお気持ちは十分伝えられていると私は信ずるわけでございますが、そういう点を踏まえて責任ある答弁をお願いしたいと思います。
  52. 山下徳夫

    山下(徳)政府委員 中医協が開店休業になっておりまして、そのことに対する御心配は私どもも同じでございます。ただ、これは高度の政治判断等を要する問題でございますので、私どもとしては大臣に御一任しておる。正直申し上げて、一日も早く復帰することは、大臣が現在責任を持って進めておられますので私は直接これに関与いたしておりませんけれども、気持ちは同じでございまして、年内に一日も早く復帰して、審議が進められるように私もこいねがっている次第でございます。
  53. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 年内には何としても中医協が再開されるように努力するということですね。これは私は当然の措置だろうと思います。またそうあらねばならぬと思います。というのは、先ほども申し上げましたように、自治体病院やあるいは公立病院等の赤字、これはもう大変なものなんです。二月に質問いたしましたときの夜間看護手当、この引き上げ分についての財源はどうなったか。恐らく病院関係はその問題に頭を抱えておるわけですよ。実は五十一年度は千四百円の夜間看護手当を二千二百円に引き上げようという考えでいま進んでいると思うわけでございますが、これも実は問題になるわけですね。いまの中医協の再開と、果たしてこの問題がどのようなかっこうで解決されるのか、この関心はきわめて深い問題であります。これについてもお答え願いたいと思います。
  54. 山下徳夫

    山下(徳)政府委員 夜間看護料の問題につきましては、先国会におきまして大臣が答弁をされましたように、やはりこれは診療報酬の改定で補う以外にない。特に診療報酬の改定の中でも技術料をさらに高く評価していく、これが解決の唯一の方法であろうと考えております。そこで、診療報酬の改定は、基本的には国民の経済力というものをまず考え、そして賃金、物価の変動に対応していくということでございますが、それらの関連を十分考えながら、先ほど申し上げましたように、中医協が再開されまして、一日も早くこれが実現できるように努力をいたしたい、かように考えております。
  55. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま自治体病院の赤字の内容は、四十九年度累積で一千四百二十四億円だと言われております。あるいは公的病院の赤字は、日赤が五十億円ですか、厚生連が三十二億、済生会が二十億、約百億以上の赤字になっているわけでございまして、こうした夜間看護手当に対する赤字等の埋め合わせを、単に医療費の値上げだけで解決しようという考えも私は問題があると思うわけです。公的病院に対する財政援助の現状と今後の見通しについてお尋ねをしたいと思います。
  56. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘のように、公的医療機関の赤字の原因は、いろいろな原因が積み重なっているものだと考えておりますが、その赤字原因のうち、特に公的病院のみ特殊な運営をいたしまして、公的病院が公的使命を持っているということでございまして、一般の医療機関でございますと採算の点からそういった部門を担当しないような部門につきましても、そこの住民の要望によりまして、公的な医療機関といたしまして特殊診療部門を持たざるを得ないという場合があるわけでございます。そういう部門といたしましては、がん、救急医療あるいは小児医療、リハビリテーション、そういった特殊診療部門があるわけでございますが、そういった特殊診療部門の整備につきましては、従来からその病院建設に要します経費に対しまして助成を行ってまいっておるところでございます。さらに、四十八年度からでございますが、日赤、済生会等の開設いたしております公的病院でございますが、そういった公的病院のうち、僻地等の不採算地区医療、救急医療がん医療、そういったものに対しましては、その運営費の一部の助成を行うことといたしておるところでございまして、四十九年度からは、公的医療機関のほかに自治体病院につきましても、僻地等の不採算地区の医療を担当するものに対しまして運営費の助成を行っております。さらに、五十二年度からは、自治体病院のうち、いわゆる地域中心的な救急医療機関として救急医療を担当しておるものに対しましても、運営費の助成を開始しておるところでございます。  しかし、いずれにいたしましても、先生御指摘のように、公的病院が公的使命を果たすためにいろいろな不採算部門を担当せざるを得ない現状にあるわけでございまして、そういったことが公的医療機関の経営を圧迫しているという現状に対しまして、今後とも助成対象範囲の拡大あるいは補助単価の引き上げ等によりまして、公的病院の財政の健全化と、そういった公的医療機関が地域医療に対するその任務の確保、そういった観点から今後とも格段の努力をしてまいりたいと考えております。
  57. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 かなり努力の気持ちはいま表明されたわけでございますが、先ほど私が申し上げましたように、夜間看護手当の現在千四百円がさらに二千二百円に引き上げられるということを私は聞いているのですけれども、その点について、そのような要望をなさるかどうかということが一つ。  それから、いま、公的病院あるいは自治体病院にもかなり対策考えている、要するに高度の不採算医療に対してその対策考えているのだというような御答弁があったと思うのですが、私も五十一年度の予算要求についていろいろと内々当たってみたところ、次のようなことの情報を入れたわけです。たとえば自治体病院関係としまして、特殊診療部門運営費助成の強化という立場から、五十年度予算額では五億四百万円であったのを五十一年度の要求は十七億四百万円、すなわち十二億上積みしての要求をなさろうとしている。それには救急あるいはがん、不採算地区、こういうものが考えられているということを聞いてきたわけでございますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  58. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 夜間看護手当の点でございますが、われわれの方で予算化を図っている部門は、これは先生御承知のように国立病院、国立療養所の夜間看護手当でございまして、その額は目下事務的に検討いたしている段階でございます。従来は先生御指摘のように千四百円でございますが、今後その手当の大幅な引き上げを考えておるところでございます。  さらに、自治体病院の不採算部門の助成でございますが、先生御指摘のような金額で、われわれも今後その確保努力してまいりたいと思っております。特に、従来自治体病院百八十二カ所がこの助成の対象になっておったわけでございますが、これを四百二十五カ所に拡大するよう現在折衝中でございます。
  59. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの御答弁の中に、夜間看護手当の引き上げについて大幅にやりたいと思う、しかしこれはあくまでも国立関係看護婦さんだということですけれども、まあ、たてまえはそうであろうとも、結局、国立関係看護婦さんの夜間看護手当が決まれば当然自治体病院あるいは公立病院、一般病院等もそれに右へならえして努力していくわけですから、そういう意味から、先ほどから診療報酬の改定、いわゆる医療費の改定あるいは根本的な助成措置をお願いしてきたわけです。  時間も制限されておりますので次に移りますけれども、基準看護基準というのがございますね。看護婦四名、准看四名、補助看二人、計十人、このような基準が決められているわけでございますけれども、私は四、四、二というこの考え方、特に正看と准看の割り振りについては、これは基準を実態に合わせて改めるべきである、このように考えるわけです。なぜならば、現在の就業看護婦の実態を見てみますと、全国三十五万人のうち、正看大体十六万人、准看約十九万人だということでありまして、この四、四、二の四、四というのが、なかなかこの確保実態的にむずかしい、こう思うわけであります。しかしながら、いわゆる看護料の請求になりますと、この基準に満たされない限りは、三つに分かれている看護料のうち最高額の請求はできない。御承知のように、特二類は一人二千二百八十円、特一類は千九百円、一類は千四百三十円と、このような看護料になっているわけでございますが、先ほど言った基準看護基準が四、四、二ということは実態的に非常に困難。したがいまして、私は、必要看護婦の八割を看護婦または准看護婦というように基準を改められないものだろうか、この点について御見解を承りたい。
  60. 八木哲夫

    ○八木政府委員 診療報酬の中におきましても、できるだけ患者の方に十分な看護確保するという意味から現在の基準看護制度が設けられているわけでございまして、現在の基準看護におきます看護要員の比率につきましては、原則としましては看護婦が五、それから准看護婦が三、看護補助者が二ということで、五、三、二というのが原則になっている次第でございますけれども、先生御指摘のような現在の実情等も踏まえまして、基準看護要員実態も十分勘案いたしまして、看護要員の比率をただいまでは看護婦四、准看護婦四、看護補助者二ということで、四、四、二ということで運用しているというのが実情であるわけでございます。  ただいま先生御指摘のような問題点もあるわけでございますが、御指摘の問題につきましては看護体制の基本的なあり方をどうするかという非常に重要な問題でもあるわけでございますし、いろいろなむずかしい問題もあるわけでございます。さらに、近年におきます医療技術の高度化でございますとか、あるいは入院患者の疾病構造の変化等、いろいろな要素があるわけでございまして、先生の御意見等も踏まえまして、今後看護体制の基本的なあり方、基準看護のあり方というのは根本的に研究しなければいかぬ問題ではないかということで、今後の問題として十分研究させていただきたいというふうに考える次第でございます。
  61. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま、これは基準看護の根本的な問題だから今後の検討に譲るという話だったのですが、それは結構な話ですけれども看護婦さんの業務内容については、昭和四十五年の質疑の中でもはっきり医務局長さん答えていましたが、看護婦さんというのは医者の指導監督のもとにという法律上の制約はきちっとあるけれども看護内容というものは正看も准看もそう違ったものではないのだ、実態的に見てもそうなんだということですから、いま言った四、四、二の四、四ということを、たとえば三、五、二と改めてみても何ら差し支えないのじゃないか。要するに必要看護婦の八割を正看と准看が満たしてしまえばそれでよろしいと、このようにぜひ改めていただきたいということです。これはもう時間も参りましたので、最終的には政務次官の考えも聞きますのでよく胸にとめて聞いていただきたいのですが、先ほど申し上げましたように、看護婦と准看とのいわゆる業務内容、実態的には変わらぬわけですから、ですからいまのような基準を、これは法律は当たる必要はないのですから、基準を変えれば済む問題ですから、そのように是が非でも改めてもらいたい。もう一度この点についてお答え願いたいと思います。
  62. 山下徳夫

    山下(徳)政府委員 御指摘のとおり、そのおっしゃることはよくわかりますけれども、私ども看護婦の充足対策についてはもう大変な悩みを持っておるわけでございまして、来年度の予算要求の中にも、看護婦の給与、休暇等各種の処遇の改善、あるいはナースバンクとかあるいは院内保育、総括的な一つ対策としていろいろ要求をいたしておる段階でございます。そこで、おっしゃるとおり、充足されない現在においては、八割という看護婦の一つの比率さえ合っておればそこらあたりでもいいじゃないかという御意見でございますけれども、われわれの目的としてはやはり正看の充足度を高める方向に努力しておるし、また看護協会等の要望も非常に強いものがございますし、当然だと思っております。したがって、八割という一つ看護婦だけの充足率だけを見ないで、やはり私どもは、一応基準としては五、三、二になっておりますので、現在の四、四、二程度に一ランク落とした程度で、何とかひとつ今後ここらあたり充足できるように努力をいたしたい、こういうことでございます。
  63. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほど申し上げましたように、就業看護婦の実態というのは、正看、准看と大きな開きがあるわけです。将来の考えとしては、いまの政務次官の考えも私はわからぬではございませんが、現状としまして、実態としましてこのように准看と正看の開きといいますか、就業の実態、数の大きな差があるわけですから、そういう実態をとらえて、基準看護基準の正看、准看の振り当てを、いま言いましたような三、五、二という程度までには認めていく方向であってしかるべきではないか、こう思うわけです。局長さん、これは大体この程度までならば何とか基準を変えても差し支えないのじゃないかと私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  64. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先ほども申し上げましたように、看護体制のあり方にも触れますいろいろな問題があるわけでございまして、一方では逆の御意見もあろうと思います。いろいろな立場の御意見もあろうと思いますし、この問題、非常にむずかしい問題でございますので、医務局等とも相談いたしまして、今後のあり方というものにつきまして研究させていただきたいというふうに思う次第でございます。
  65. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 きょうは自治体病院や公的病院等の赤字の実態、これはもう重体なんというものじゃないのです。危篤状態ですよ。本当に瀕死の状態です。これは何としても早急に手を打たなければ、わが国の医療体制にものすごい問題が起こってくると思います。これは皆さんに十分認識していただきたく、つけ加えまして、私の質問を終わります。
  66. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 この際、午後零時二十分まで休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後零時三十一分開議
  67. 大野明

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  多賀谷真稔君外七名提出雇用及び失業対策緊急措置法案を議題とし、その提案理由の説明を聴取いたします。多賀谷真稔君。     —————————————  雇用及び失業対策緊急措置法案     —————————————
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷議員 私は、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました雇用及び失業対策緊急措置法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  今回、雇用・失業保障に関する緊急要求に関して、総評、同盟、中立労連及び新産別の労働四団体の統一要求がまとまり、それと緊密に結合した形で雇用及び失業対策緊急措置法案を共同提案することになりましたことは、最低賃金法案に劣らず、わが国の労働運動の歴史においてまことに意義深いものと考えるものであります。  近年、わが国経済は、高度成長を遂げ、工業生産力は資本主義国においてアメリカに次いで第二の地位を占めるに至りました。東南アジア等々の諸外国への年間資本輸出量においても、いまや日本の大企業はアメリカに次いで第二位となっております。  しかしながら、一方では、戦後三十年、最大の不況のもとで、中小零細企業の倒産や経営難による労働者の解雇、さらには不況を口実とした大企業における解雇、一時休業、出向、配転など、雇用不安の拡大により、雇用・失業情勢は急速に悪化し、深刻な社会問題となっております。  労働省の調査でも、今年一月から六月の上半期の解雇、希望退職その他何らかの理由で離職を余儀なくされた労働者数は二百九十万四千人に上っております。  いわゆる完全失業者は約百万人に及んでおります。しかもこの統計には、家業に復帰した出かせぎ農民やその他の短時間就労者などは含まれておらず、これらを含めた失業者数は三百万人に達すると推定されております。  昨年十月に一を割って〇・九六となった有効求人倍率は、今年になってさらに低下し続け、とうとう〇・五程度にまで落ち込むに至りました。求職者二人に一人しか就職の機会がない状況において、一たび職を追われた労働者の再就職はきわめて困難になっており、雇用保険法において定められている失業給付日数を過ぎてもなお再就職できない失業者が急増しているのであります。また、昨年までは職につくことのできた出かせぎ労働者の多くも、今年は職が得られないままになっているのであります。日雇い労働者は二カ月に二十八日の職につけずに、印紙の売買が多発しているばかりか、地域によっては月に数日しか職にありつけないほどになっております。  企業倒産が、負債一千万円以上だけのものでも月に一千二百件を超えるほどに深刻化し、賃金の不払いも急増しております。賃金も支払われないなどという状態が放置されてよいはずはありません。  命の綱である失業給付さえ切れてしまった失業は、労働者とその家族にとって緩慢なる死を意味します。事態の改善はきわめて急を要すると言わねばなりません。  四党は、このような状況にかんがみ、失業者の生活を守り、またこれ以上失業者が増加するのを防ぐために、緊急措置法を制定することを共同提案する次第であります。  次に、この法案の内容について御説明申し上げます。  第一は、この法律の目的であります。この法律は、深刻な不況の中で、失業給付の改善、不払い労働債権の保全、失業対策事業の拡大、雇用調整委員会の設置による大量解雇の規制等の緊急措置を、三年間の時限立法として実施し、雇用の安定と失業者の生活保障とを図ることを目的としております。  第二は、雇用保険法に基づく失業給付の改善についてであります。  この法律は、失業給付日数を一律に百八十日延長すること、出かせぎ労働者についても特例一時金のほかに百八十日までの給付を設けることにいたしております。基本手当の日額は、一律に賃金日額の八〇%に引き上げることといたしております。  日雇労働求職者給付金の受給要件である印紙保険料の納付日数は、現行の二分の一である二カ月十四日を限度として、就労日の特に少ない地域は政令に定めるところにより引き下げることといたしております。  第三に、大量解雇の規制についてであります。  この法律は、事業の規模ごとに定める一定数以上の労働者を三月の期間内に解雇しようとするときは、少なくとも三月前までに、その旨を中央雇用調整委員会または地方雇用調整委員会に届け出なければならないものといたしております。  この対象となる労働者には、臨時工、パートタイマー、日雇い労働者、二カ月以上季節的に雇用される者も含まれることといたしました。また、届け出の書面には解雇の事由、解雇すべき労働者の選定基準、事業の経理状況等が記載されなくてはならないことといたしております。  中央雇用調整委員会または地方雇用調整委員会は、届け出があったときは、三カ月以内に、当該労働組合または当該労働者の代表者の意見を聴取するとともに、当該事業について必要な調査を行い、事業主に対し、不当な解雇等については解雇の取りやめ等の必要な措置をとるべきことを勧告し、当該解雇がやむを得ないものと認めるときは、勧告をしない旨を通知するものといたしております。  この場合、母子家庭、身障者等を扶養する者等、解雇される労働者の生活の困窮の程度等について配慮しなければならないことといたしております。  なお、右の勧告に当たり、必要があるときは当該事業と密接な関係のある元請事業等に対しても必要な援助措置を勧告できることといたしております。  事業主は、勧告または通知がなされるまでは当該解雇をしてはならないものといたし、事業主が勧告に従わない場合には、中央または地方の雇用調整委員会は、勧告を公表することができるものといたし、職業安定機関は、職業紹介活動を停止する等、必要な措置を講ずることができるものといたしております。  中央雇用調整委員会は労働省に、地方雇用調整委員会都道府県に置くものといたし、それぞれ労使同数の代表委員と公益委員をもって組織するものといたしております。  第四に、企業倒産等に伴う不払い労働債権の保全措置についてであります。  この法律は、企業倒産等により不払いとなった賃金、退職金の労働債権を保全し、労働者の生活と権利を守るため、別に法律で定めるところにより、国が事業主から徴収する賦課金と国の支出金を財源として、当該不払いとなった賃金、退職金にかわる給付を行う制度を設けるものといたしております。なお、中小零細企業負担については、減免の措置を講ずることが適当であると考えております。  第五に、失業対策事業等の拡大についてであります。  この法律は、失業者の就労の機会を確保するため、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法附則第二条の規定による制限を撤廃し、緊急失業対策法に基づく失業対策事業等の拡大を図ることといたしております。  最後に、この法律は、昭和五十一年一月一日から施行し、三年以内に廃止するものとすることといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。  この法律案は、労働四団体のみならず、未組織の労働者を含む三千六百万全労働者とその家族の切なる要求であることを十分に勘案され、の上、何とぞ速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  69. 大野明

    大野委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。      ————◇—————
  70. 大野明

    大野委員長 厚生関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。村山富市君。
  71. 村山富市

    村山(富)委員 私は、まず冒頭に中医協の問題に関連してお尋ねをしたいと思うのです。最近、特に医療関係団体が全国的なそれぞれ大会を開いて、一日も早く中医協が再開されるように切望をされておりますし、いろんな運動があることは皆さんも御存じだと思うのです。この診療報酬の改定の問題については、医療関係者がそういう強い要望があるということはもとよりでありますが、同時に、国民皆保険制度の中においては、単に中医協だけの問題じゃなくて、やはり国民的な関心の的になっておるというふうに判断をすべきではないかと思うのです。そういう意味からしますと、私は、これは単に中医協の中に閉じ込めて、臭い物にはふたをするというような形で事の収拾を図るということが必ずしも得策ではない、やはり問題点は国民の前に明らかにして、そして国民的な合意が得られるような方向で問題を解決していくということも必要ではないかというふうに思いますから、そういう立場でお尋ねをしたいと思うのです。しかし、現状から判断をした場合には、やはり何といっても医療関係者の強い要望もありまするし、一日も早く正常な運営ができるようなことを期待しながら、これから御質問を申し上げたいと思うのです。  御存じのように、中医協は八カ月近くずっと空白が続いてまいりまして、やっと九月九日に再開をされましたが、それも次回の日程も決まらないままに散会して終わっておる。こういう客観的な情勢を背景にしながら開かれた中医協が、こういう形で散会をして中断をしたというような事態は、一体どこに原因があってこういうことになったのかということについて厚生省はどういうふうに問題をとらえているかということについて、まずお尋ねいたしたいと思うのです。
  72. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生御指摘のとおり、中医協につきましては、本年の九月九日に八カ月ぶりに再開したわけでございますけれども、再開に至りますまでの間に八カ月の空白があったというような事態もございまして、再開した第一日におきまして、今後の日取りも決められないままで散会になってしまったというような状況であるわけでございます。私どもといたしましては一日も早い中医協の再開を期待しているわけでございますが、何分にも中医協は三者構成でございますし、各側のそれぞれの御意見等もあるわけでございますので、そういうような御意見をも踏まえまして、いかに各側が納得して今後の運営が正常に行われるかということがまず基本になるわけでございまして、ただいまそういう面で一日も早い正常化という意味で努力が行われているという状況でございます。
  73. 村山富市

    村山(富)委員 私は、質問をする前に申し上げましたように、問題の中身というものをやはりある程度明らかにしながら、国民の批判も仰ぎながら、こういう性格のものは運営されてしかるべきではないか。何か余り問題点を明らかにせずに、まあまあというかっこうの中で話をつけながら持っていく、こういう行き方をすれば、必ずまた爆発してこういう事態が起こり得るというように思いますからお尋ねしておるわけですが、九月九日に再開をされるまでに中断をした経過があったわけでしょう。中断をしておったけれども、九月九日に三者が同じテーブルに着いた、再開された。ここまで来た経過の中でいろいろ問題があったけれども、その問題はお互いに了解がついて、そして再開されたのだ、こういう経緯になっておるのかどうなのか。そういう点がはっきりしないと、なぜ、九月九日にせっかく開かれたのにこれがまたこういう形で終わったのかということについてはちょっと理解ができぬものですから、その点をちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  74. 八木哲夫

    ○八木政府委員 御案内のように、中医協が九月九日の前に中断になりましたのは、昨年の十二月の末に国師会雄鷹の委員の方の辞任届が提出されたわけでございます。さらに本年の二月に入りまして歯科医師会推薦の委員、それから薬剤師会推薦の委員ということで、診療側委員につきましては辞任届が提出された次第でございまして、そういうような状況から、本年の二月以降におきましては診療側がどなたもおられないというような状況で中医協が中断されておった。そこで厚生大臣が正常化の努力ということで、関係団体等とも折衝が行われたわけでございますけれども、その間の折衝の結果、本年の六月に至りまして、中医協の復帰の問題につきまして関係団体との合意、日本医師会長との間の合意ができたというようなことで、本年の六月二十八日に三師会の委員の方が辞任届を撤回されて、中医協に復帰されたというような次第であるわけでございます。したがいまして、六月末には委員の復帰が行われまして、その後再開につきましての努力が行われました結果、九月九日に至りまして中医協が再開されたというような状況であるわけでございます。
  75. 村山富市

    村山(富)委員 これは事務的な話だけではちょっと解決がつかないので、大臣がいないものですからなんですけれども、やはりこれは三者構成でしょう。だから、支払い側が出席しなくてもこれは開かれないし、診療側が欠席しても開かれないわけですね。したがって、いまお話がありましたように、三師が辞任届を出してそして出席を拒否した、そうすると中医協は開かれない、そこで厚生省が大庭を中心診療側の説得に当たって、そして了解がついて帰ってきた。なら、それから運営がうまくいきそうなものだけれども、また壊れたでしょう。それは一体どういう理由で壊れたのですか。どういうふうに判断していますか。
  76. 八木哲夫

    ○八木政府委員 九月九日の再開の第一日で議論の中心になりましたのは、結局現在、九月九日の背開に至るまでの経過につきまして支払い側委員からの御議論が中心であったわけでございます。しかし、この御議論に対しまして支払い側が十分納得ざれたというような状況ではなかったというようなことから、九月九日の終わりました段階におきましては、次の日取りも決められないままに終わってしまったというような状況であったわけでございます。その後厚生大臣あるいは円城寺会長が中心になりまして、中断しております中医協の審議をいかに軌道に乗せるかというような意味で各側との折衝ということが行われたわけでございますが、支払い側との折衝の過程におきまして、従来の中断の経過を踏まえまして、今後の中医協が正常な審議が行われるための条件というようなものが支払い側から出されたというようなことで、そういうような条件をめぐりまして、現在、関係者の間におきます意見の調整が精力的に進められているというような状況でございます。
  77. 村山富市

    村山(富)委員 これから先はちょっと大臣がいないと——大臣が面接当たっているでしょうから、その問題は大臣が出席してからまた質問することにして、一時保留をしておきます。  そこで問題は、診療報酬の改定をめぐって、たとえばこういう新聞報道もあるわけですよ。医療費引き上げは二月にずれ込むのではないか、こういう見出しで、それは例の七二%の医師優遇税の問題と関連をして、来年度予算の編成の過程に診療報酬が決められる、適正な診療報酬の改定と相まってこの医師優遇税についても議論をする、改定をする必要があるんじゃないか、こういう意見もあるものですから、したがってそれまでは診療報酬の改定はなされない方がいい、こういう判断もあって時期がずれるんではないか、こういう見方をされておる節もありますね。そういう点はどういうふうに問題をとらえていますか。
  78. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私どもといたしましては、中医協が一日も早く正常化され——九月九日の中医協の再開の際にも大臣から、いずれ診療報酬の改定の問題につきましては御論議をいただくというようなごあいさつを申し上げているような状況でございまして、税の問題ということとは関係なしに、私どもは一日も早く中医協が再開され、本来の問題につきましての審議が行われるということを期待している次第でございます。いろいろな見方もあろうかとも思いますけれども、私どもは、どういうような見方をされるか、私どもの立場で申し上げられる問題ではないというふうに思います。
  79. 村山富市

    村山(富)委員 そこで、これも大臣がおった方がいいのですけれども、事務的な問題も若干ありますから聞いておきますが、この中医協の構成についても私は若干問題があるんじゃないかと思うのですよ。と申しますのは、同じ診療報酬の改定をめぐって、これはいつかも申し上げましたけれども診療側を代表するという立場の人もいろいろな意見の違いがあるわけですよ。たとえば開業医を代表する場合と、あるいは病院を代表する場合と意見の違いがありますね。したがって、いまは医師会を代表するというかっこうでこの委員が出ているわけですから、そういう意味からしますと、診療側をまんべんなく代表するという立場に立っておらぬのではないか、こういう見方をされる向きもあるわけですね。したがって、いつかも、病院代表をこの委員に入れるべきではないか、こういうお話を申し上げたことがあるんですけれども、これはいまの現行法からいって何か問題があるんですか。
  80. 八木哲夫

    ○八木政府委員 現在の中医協の委員の構成につきましては、医療を担当する側としまして医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員というふうになっているわけでございますけれども委員の選出に当たりましては、関係団体であります日本医師会、歯科医師会、薬剤師会からの推薦をいただいている次第でございます。  先生御指摘の問題でございますけれども、日本医師会からは診療側委員としまして委員の御推薦をいただいているわけでございますが、当然、日本医師会には病院医師等も多数加入しているわけでございまして、これらの方々の意思も十分反映されるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  81. 村山富市

    村山(富)委員 それは医師会に開業医の会員もあるし病院医師の会員もある。だけれども、現状の実態から申し上げますと、必ずしも医師会が推薦をする委員の方が病院を代表して、病院意見を代弁して主張する立場には立っておらない、こういう意見病院団体が言っているわけですから、したがって、そういう意味からするとやはり問題があるんではないか。しかも、たとえば公私病院連盟あるいは自治体病院開設者協議会等も、これは大会あたりで一致して要求を出しておりますし、同時にまた国民生活審議会の答申、社会保障制度審議会の答申等を見ましても、そういう答申がなされておるという事例もあるわけです。したがって、そういう意味からしますと、私は、中医協の運営を正常にする意味からも、もっと公平に診療側を代弁していけるような委員を出す構成にした方がいいんではないかと思いますし、同時に、これはいつも申し上げますが、具体的に要求の中身が違うわけですから、したがってそういう意味からしますと、これはたびたび申し上げますけれども、別にいまの法律に抵触するわけではないし、選考の方法、委員の選出の方法を検討しますればできることですから、したがってそういう配慮をした方がいいんじゃないかというふうに思うのですが、その点はどうですか。
  82. 八木哲夫

    ○八木政府委員 中医協の運営が三者構成でございますから、いかにスムーズにいくかということが非常に大きな問題であるわけでございますが、そういうような意味で、診療側を代表する委員といたしまして三師会の方から委員の推薦をお願いしているわけでございます。先生の御指摘のような御意見もあろうかとも思いますけれども、私どもといたしましては、日本医師会の推薦委員の方方につきましては、十分病院意見も反映されるというふうに考えておる次第でございます。
  83. 村山富市

    村山(富)委員 大臣がお見えになりましたから、もう一遍もとに返しますけれども、これは関連のある話ですから。  いま中医協の再開をめぐっての問題でいろいろ御質問をしているわけです。そこで、私は冒頭にも申し上げましたけれども、これは単に中医協だけの問題じゃなくて、やはりこれだけ国民皆保険の中で診療費が払われている時代ですからね、ですから、国民的なコンセンサスを得るような要因も必要ではないか。そういう意味からしますと、中医協がどうしてこんなことになっておるのか、こういう内容についてはある程度国民の前に明らかにする必要があるのではないか。そのことがある意味では正常な運営をもたらす要因になるのではないかというふうに思いますから、そういう立場から御質問をしているわけですが、大臣が御出席になる前に事務的なことについては若干お尋ねをしましたけれども、もう時間も参りますから端的に申し上げますが、九月の九日の日に中医協を再開して、支払い側の委員からいろいろ質疑がなされて、そうして散会して終わったままになっておる。その後大臣が支払い側の委員にお会いになっていますね。そうして支払い側の委員の方から四つの条件が提示されています。たとえば医療の経済実態調査をやる、同時に薬価調査をやる、さらに歯科診療差額徴収の審議を進める、さらにまた、都合が悪ければすぐボイコットするというようなことは今後はとらない、こういう四つの条件が確認されなければちょっと困る、こういう申し入れがあっておる。この申し入れを聞かれた大臣は、この申し入れをどういうふうに受けとめておられるのか、その点をまずお尋ねします。
  84. 田中正巳

    田中国務大臣確 かに、中医協を九月九日に再開した後の事情は、支払い側に関しては先生がおっしゃったとおりでございます。で、そうした再開についての御意見、あるいは人によってはこれを条件とかとっている人もございますが、いずれにいたしましてもそういう御意見がございました。われわれとしてはこれを受けとめまして、円城寺会長もいろいろ御奔走くださり、当事者である、相手方である医療側の意見等々も求め、いろいろとまた推進方を努力しているわけでありますが、今日までの時点において、この支払い側の考え方について同意を得る、そうしたことについて首肯をするといったような立場にまだ医療側はなっておらないわけでございまして、したがいまして、われわれとしては何とかこの間にお互いの同意を見るべくいろいろと努力をしている次第でございますが、残念ながら、まだ両者ともに自己の主張というものを強調をいたしまして、妥結、妥協という雰囲気に到達をしていないわけでございます。
  85. 村山富市

    村山(富)委員 私は前にも一遍、こういう事態になったときに申し上げたことがあるのですけれども、やはり厚生省、大胆の立場というのは、両方の言い分を聞いて歩み寄らせる、これももちろん必要でしょう。しかし、やはり厚生省の指導する立場というものを明確に持っておらないと、強い者の方の言うことだけを聞いてそうして物をやるというようなやり方をすると、かえって混乱を大きくするのではないか。ですから、その内容をよく調べてみますと、九月九日の中医協の中の会議の模様でも、支払い側の不満というのは、いままで八カ月間、これだけ中断をしておった、この間大臣は一体何をしたのか、診療側の意向を聞いて、全然公益委員やら支払い側を無視しているじゃないか、こんな運営の仕方ではやはり問題があるという不満もあったのじゃないかと思うのですよ。そういう意味からしますと、厚生大臣の指導性といいますか、もっと態度を、責任ある立場というものを明確にする必要がある、こういうことをいま一番要求されているんじゃないですか。それがない限りは、事態はうまくいかぬのじゃないですか。
  86. 田中正巳

    田中国務大臣 私の指導性と申しましても、やはり中医協はそれぞれの立場においてそれぞれの代表として出てきているわけでございまして、むしろ、中医協に関する限り私の権限を制約するというような存在でございますので、私のこれに対してのいろいろな指導性というものについても限度があるということであります。また、私が医療側のサイドに立ってのみと申されますが、中医協の九月九日の姿というものを現出させるまでの間において、決して医療側だけの話を聞いたわけではございません。いろいろと医療側に対しても、御主張についてこれの翻意を求めたこともございますし、また率直に申しまして、あの九月九日の審議のあり方については、多分に支払い側の要望を入れてあのような議事運営をやっているわけでございますので、私としてはできる限り両者の間に妥協点あるいは合意のできるような姿でやっていかなければなりませんし、またそういくべきものだというふうに思っているわけであります。
  87. 村山富市

    村山(富)委員 それではちょっと具体的に聞きますが、支払い側が出しているいまの、これは条件か意見か知りませんが、四つの問題が提示されておる。この四つの問題については大臣はどういうふうにお考えですか。
  88. 田中正巳

    田中国務大臣 支払い側の、四つといいますか、あれは三つだろうと私は思うのですけれども、この御意見についてはいろいろと承っておりまして、私としては、こうした御意見がある以上、こうした御意見をめぐりましていろいろと妥結、コンセンサスといったようなものを求めなければならないという意味ではこれを尊重いたしているわけでございます。この後、恐らく御質問があろうと思いますが、一体どうするんだという御質問があると思いますが、いませっかくいろいろと妥結を見るべく奔走している最中でございまして、いま先生も御案内のとおり、それぞれの側は自分の主張こそ正しいんだ、相手の主張は間違っているんだというふうな意見を出し合っているところでございますので、私が両方のサイドのそれぞれの御主張についてあれこれ論評めいたことを申すことは、かえって問題の解決のためにならないのではないかというふうに思いまして、そういう事実を踏まえ、尊重をいたして解決をする方向に努力をするというのが一番賢明なやり方だろうと思いますので、これについてその価値判断等々についてこの席で私から申し上げることは、いまの最大の目的に対し、いささか合目的的でないというふうなことに相なるかと思いますので御勘弁を願いたいと思います。
  89. 村山富市

    村山(富)委員 何回も申し上げますけれども、八カ月も中断をして、一日開かれてまた中断をした。これはやはり問題をあいまいにして、本当に三者がある程度納得し理解をし、完全とは言いませんけれども、そして同じテーブルに着いて協力し合う、こういう条件が整わないというところにやはり壊れる要因もあると思うのですよ。ですから、そんな問題はいまはちょっとさわらぬでそっとしておいてもらいたい、こういう形でやる方法もあるかもしれませんけれども、むしろ、やはり本質的に問題を解決して正常な運営を位置づける、そういうことから考えると、ある程度問題は問題できちっと整理をしてやった方がいいんではないか、こういう考え方で私は申し上げているわけです。  そこで、いまここで幾ら厚生大臣を責めてみても、口をつぐんであなたはなかなかそれ以上は答えないと思うのです。ただ、こういう意見もたくさんありますよ。たとえば、中医協がある、外野席におる者がわいわい言って、そして中医協が混乱をしておる、しかも厚生省はその外野席の意見を受けて立っていろいろやっておる、こういうところにやはり混乱の一番大きな要因があるのではないか、厚生大臣のやり方についてこういった批判もありますよ、率直に言って。ですから私は、もう少し責任ある態度をとって、きちっとやる必要があるんじゃないか、そういう点が欠けておるんではないかというように思うのですよ。だから、たとえばさっき私が聞きましたように、支払い側の言い分が言い分としてもっともだと思われるなら、積極的に相手を説得して、そしてテーブルに着かせる、こういう努力をもっとやるべきではないかと思うのですね。  そこで、これは私は意見を申しましたが、もうそれ以上聞いてもなかなかあなたは答弁をされぬでしょうから申し上げませんけれども、あなたがこれから会長と二人で努力をされる。私もその努力を期待いたしておりますけれども、しかし、大体いつごろまでにまた同じテーブルに着いて再開される見通しがあるのか、その点についてお尋ねいたします。
  90. 田中正巳

    田中国務大臣 いま円城寺会長と私と、それぞれの立場で努力をいたしているわけであります。しかし相手方のあることでございますので、いまここでいつ解決をするかということを私としては申し上げる立場にないということであります。そもそも中医協というものは、それぞれの立場でもっていろいろな言動をするわけでございまして、あの制度で私一番困るのは、いやだと言えばどうにもならないという制度でございまして、したがいまして、ここでもってすっきりしたことを申して、それでテーブルに着いてくれればいいんですが、しかし、テーブルに着かない方向にプッシュをするということではこれはまずいのでございまして、そういう意味で、できるだけ両者のコンセンサスを得てテーブルに着いていただくということについて努力する以外にこれはないものというふうに私は思っております。外野席というのはどういうことか、私よくわかりませんけれども、恐らく先生も過般の事情を御存じの上で申しているんだろうと思いますが、どうしたならば一体有効適切な説得なりあるいは交渉ができるかということをめぐって、いろいろと実質的な効果を上げるべく努力をしているということでおわかり願えるだろうと思います。
  91. 村山富市

    村山(富)委員 何度も言いますが、大胆がもっときちっとして、そして言うべきことは言うて、悪いものは悪い、こういう態度をとる。そしてしっかり指導するということがなければ、これはいつまでたっても中医協はこういう混乱を繰り返すのではないかと思いますから、これを機会に、そういう点はひとつぜひ正常な運営ができるような方向に全力を挙げて努力をしてもらいたいと思うのです。  これはまたこれ以上申し上げても進展しませんから申し上げませんが、いま申し上げましたように、いつ再開されるかわからぬわけでしょう。そうしますと、診療報酬の改定がいつごろなされるかというめどがつかないんですよ。そうすると、それは困られぬ方もあるかもしれませんけれども、やはり一番困るのは私は病院じゃないかと思うんです。これは開業医の方も困られるでしょうけれども、全体として、やはり診療機関は期待しておりますから困るんじゃないかと思うんです。  そこで特に病院側が困っている実態というのは、これは時間がありませんから具体的に申し上げますが、たとえば入院費なんかについても、国民宿舎に泊まった場合にいま二食つきで二千九百円ぐらいでしょう。ところが病院に入院しますと三食つきで千七百五十円ですよ。これを見たって、入院をさせることによって病院は赤字になるということが私はわかると思うんです。同時にまた、病院の場合には人もたくさん抱えてありますから、したがって人件費の上でも高いんです。この人件費にいたしましても、仮に国立病院の場合に、公務員の給与改定が四月に実施される。診療費改定が仮に十二月に行われても、八カ月ぐらい実施がおくれるわけですから、その間の人件費というのはどこからも出てこないわけですから、これはやはり赤字になって出てくる、こういうふうになるわけでしょう。しかも、看護料なんかについては最も安いですね。健康保険料でいま見ておるのは一人が大体十七万円でしょう。実際に一人の看護婦なら看護婦さんを雇用した場合に、その看護婦さんにかかる経費というのは、単に人件費だけではありませんから、賃金、手当あるいは福利厚生費あるいは被服費、管理費等々含めますと、私の計算した資料によると二十五万円ぐらいかかる。ですから、いまの診療報酬の体系から申し上げますと、病院の例をとった場合に大変大きな赤字の要因になっているわけでしょう。この点はどういうふうにとらえていますか。
  92. 八木哲夫

    ○八木政府委員 診療報酬のあり方につきましては、国民の経済力等を勘案しまして、常時、経済の変動に伴いまして、物件費あるいは人件費等の増加を考慮に入れまして当然考えていかなければならないという問題であろうというふうに思うわけでございまして、そういうような意味からも、昨年の十月の診療報酬の改定が行われたわけでございまして、中医協が正常化されました段階におきまして、いずれこの問題は御審議いただかなければいけない問題であろうと思いますし、そういう際に、物件費、人件費等の問題も含めまして、診療報酬の改定の問題は考えていかなければならぬ問題であろうというふうに私は考えます。
  93. 村山富市

    村山(富)委員 私がいま挙げたような、たとえば入院料の問題あるいは人件費の問題、看護料の問題等については、大体それは肯定されますか。
  94. 八木哲夫

    ○八木政府委員 診療報酬の改定の問題につきましては、まず正常化の問題が出てまいるわけでございますが、正常化されました暁におきましては、ただいま先生御指摘の問題等も含めまして、診療報酬の内容の改定の問題を研究すべきであろうというふうに考える次第でございます。
  95. 村山富市

    村山(富)委員 私が申し上げておるのは、中医協がいつ再開されるかわからぬわけでしょう。これがいつ再開されて、大体診療報酬の改定がいつごろからなされますということがめどが立てば、それはまたその間の対策を講すればいいわけですね。しかし、いつ再開されるかわからぬわけですから、したがって、診療報酬の改定がいつなされるかわからぬ。こういう情勢の中で病院の経営の実態というのはこういうふうになっていますよ、こういうふうに困っている実態というものをあなた方はそのとおりに理解されますか、こう聞いておるわけです。
  96. 八木哲夫

    ○八木政府委員 もちろん、先生から御指摘のように病院が非常に経営の面でむずかしい問題を抱えているということは、私どもも十分承知している次第でございまして、そういう意味からも、一日も早い中医協の正常化ということが期待されるという次第でございます。
  97. 村山富市

    村山(富)委員 そこで、これは実際申し上げまして、もうくどくど申し上げませんけれども病院の場合なんかには、年末を控えて年末手当も支払えない、こういう状況に追い込まれておる病院もたくさんあるわけですよ。これは全く診療報酬の改定に期待をつないでいるわけですよ。それがいつなされるかわからぬというものですから大変困っておる。こういう困った実態は、ある意味からしますとゆるがせにできない問題です。したがって、もし診療報酬の改定が年を越えてなされるとか、中医協の再開がもっとおくれるとか、こういう状態になるということであれば、年末を控えて相当資金繰りに困る病院も出てくるのではないか。これは年末になればやはり年末手当も出さなければならないわけですから、したがって、そういう病院に対して年末の特別融資を厚生省で考慮するというようなことは考えておりますか。
  98. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 医療機関に対します融資でございますが、特に病院等におきまして、年末の融資につきましてはいろいろ毎年御意見が出るわけでございまして、そういった実例に対しまして、例年、関係金融機関に対しまして金融措置につきましての要請をいたしておるところでございます。本年におきまして一体どういうような状況にあるかということでございますが、現在、関係病院団体、これは日赤、済生会等の公的病院を含めてでございますが、そういったところに依頼いたしまして、資金需要の調査を実施しているところでございまして、年末手当等に要します資金繰りにつきまして著しく困難な状況があるような場合には、国民医療確保の観点から、例年どおり、従来と同様に金融措置につきましての要請を金融機関にしてまいりたいと思っております。
  99. 村山富市

    村山(富)委員 そうしますと、それは従来よりももっと困っておる実態がある、特殊な事情がある。これはやはり中医協の再開の問題と関連をしてあるわけですから、したがって、そういう場合には従来と違って特別に配慮しながら金融対策を講ずる、こういう考えがありますか、こう聞いておるわけです。
  100. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 現在、実態調査中でございますので、その実態に応じまして、先生御指摘のような点が明らかになればそういった措置を講じたいと思っております。
  101. 村山富市

    村山(富)委員 そこで、いま私は病院の例を申し上げましたけれども、必ずしもいまの中医協の診療側を代表する人が病院を代表しているとは言えないのではないかという節がある。これはさっきも申し上げましたけれども、あらゆる機関から、そういう意味ではやはり病院側の代表を入れるべきだ、こういう答申もなされておりますし、そういう要求も強い。こういう答申や要求を受けて、厚生大臣は、まあいますぐとは申しませんけれども、これから先、やはりそういう検討を加えていく考慮を払う必要があるのではないかというように思いますけれども、その辺、大臣どうですか。
  102. 田中正巳

    田中国務大臣 同じ医療側といっても、やはり診療所と病院とは置かれた立場というのがかなり違うということも存じております。したがいまして、これについては、先生御存じだと思うのですけれども、実は長い間の経緯がございまして、私、若い議員のころに大分苦労いたしました。実は、病院そのものの代表というものを中医協の医療委員に入れ込んだらいいとか悪いとかいう、さんざんすったもんだの議論があった結果、今日のように、日医推薦ということで病院の立場をもって入ってくる人ができるというふうに定まったわけでございまして、これをまた蒸し返していろいろと議論をするということになると、またぞろ先生が心配するような状況に実はなる懸念がございます。したがいまして、この辺はやはり各側のいろいろな御意見を踏まえて、理解と納得の上に円満な方法を見出すというのが私は最も結構な方法じゃなかろうか、かように思っておる次第であります。
  103. 村山富市

    村山(富)委員 何もかも、いま中医協がこういう状況だからひとつ議論は伏せてやってくれと言われる、その意味もわかるけれども、私は、やはりただす点はただす、こういう姿勢も半面なくちゃならぬというふうに思いますから申し上げておるわけです。これは委員の改選の時期の問題ですからいまここで強くは申しませんけれども、やはりそういう背景というものがあるし、むしろそれの方が、今後の中医協の運営を考えた場合に正常化していくのではないかという要因も考えられるというように思いますから、これは十分ひとつ検討を加えておいてもらいたいということだけ要望しておきます。  それから、最近新聞紙上で問題になっておりまする、がんセンターの薬の購入をめぐって薬局が収賄罪に問われたとか、あるいは、その事件を追及している過程で、治験をめぐるメーカーと医師側との治験費の関係の問題等々が明らかに露見されております。これはある意味からしますと、やはり新しい薬を開発していくという問題も必要ですし、そういう意味からしますと病院の先生方の立場なりもわからないことはないのですけれども、私は、そういう問題に対して大変社会的に不信感を生み出しておりますから、ある意味では解明する点は解明しておく必要があるのではないか、こういう意味でお尋ねをしたいと思うのです。  まずお尋ねをしたいのは、現状は、この治験薬の扱いについてはメーカーと医師との全く個人的な自由に任されておるのか、何らの基準もルールもないのかどうなのかということをお尋ねします。
  104. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 私の方から国立関係の現状について御説明申し上げたいと思います。  国立病院と国立がんセンターにおきましては少し取り扱いが違うわけでございますが、大筋においては一致しておると考えております。それで、まず国立がんセンターにおきます治験依頼の受け入れの態様について申し上げますと、この国立がんセンターの中に医師、薬剤師等から成ります薬剤検討委員会がございますが、この薬剤検討委員会の中に、この治験薬をいかに取り扱うかということで治験薬小委員会というものを設けておるわけでございますが、この治験薬小委員会におきまして、申し入れがございました治験薬につきまして学問的に十分な検討を行った上、受諾するか否かを決定することにしておるわけでございます。ただ、他の国立病院におきましては、ここで受諾を決定いたしました場合に、委託研究費の経理面におきまして、おおむね院長の指定する者によって研究費の経理を行っていることになっておるわけでございますが、国立がんセンターにおきましては、残念なことでございましたけれども、受諾は委員会において決定をいたしておりますが、研究費の管理、特に経理面におきまして管理が適切に行われていなかったという点は認めざるを得ないわけでございます。そういうふうにいたしまして、多くの治験薬の取り扱いは、病院内に委員会を設けまして、その委員会において受諾を決定する。それと、がんセンター以外の病院におきましては、受諾いたしました場合に院長の指定する者によってその経理がガラス張りの中で行われている、かような取り扱いになっております。
  105. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、いまの実態は、たとえばメーカーが新薬の開発について、医師なら医師病院なら病院に依頼をする、その場合には院長に依頼するか、あるいは院長の指定する者を中心に何らかのグループがある、そこに依頼をする、そしてそこで話し合いがされて、どのくらいの経費を負担しますかということになって経費を受け入れる、こういうことになりますと、これは一応病院経営の公的なルールに乗ってやられておるのか、あるいはそうではなくて個人的な立場でやられるのか、そこらの点はどうなんですか。
  106. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま申し上げましたように、病院の内部につくっております委員会でございまして、これが国の機関として取り扱われていないという点がございます。すなわち、個人が取り扱うわけではないのでございますが、その病院内の医師、薬剤師等研究者が集まって構成をいたしております研究委員会、治験薬小委員会が、治験薬として研究を行うか否かの決定並びにその経理を担当いたしておるわけでございます。
  107. 村山富市

    村山(富)委員 どうもあなたの説明はよくわからないけれども、仮に病院の最高責任者である院長がそれに介在をして公的に了解をとっている、こういう仕組みになれば一応やはり公的なものになる。そうではなくて、個人的な研究グループがあって、それがメーカーと直接話をして決めていく。このがんセンターの場合なんかはまさしくそうだと思うのですね。これは一般の病院を聞くのではなくて、国立病院だけに限ってお尋ねしますが、そういうあり方についてあなたの方はどういうふうに実態を把握しておるのか、その点を聞いておるわけです。
  108. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先ほど申し上げましたように、一般の国立病院と国立がんセンターでは少し経理の取り扱いに相違があったわけであります。研究を受け入れるか否かにつきましては、国立病院も国立がんセンターにおきましても委員会でこれを決定いたしておる。ただ、研究委員会がその金を受け取る場合におきまして、これを国庫に入れていないという点におきましては、いわゆる国立医療機関としての公的な取り扱いにはなっていない。その点につきましては、先生御指摘のような、研究グループではございますが、私的な取り扱いと言わざるを得ないと思います。
  109. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、がんセンターの扱いの問題が新聞で発表されて大体明らかになっていますね。これと同じような状態に各国立病院もある、それは金額は別ですよ、だけれども仕組みは同じような状態にあるというふうに理解していいですか。
  110. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 受け入れる仕組みは全く同じでございますが、その経理面におきまして、一般の国立病院におきましては院長が指定する人間が経理を取り扱っていた。これはあくまでも、院長が指定はしておりますけれども国庫に入れていないわけでございますので、先生御指摘のような意味におきましては、私的な研究グループと言わざるを得ないと思いますが、その研究グループが研究費の取り扱いを行っておる。ただ、国立がんセンターの場合には、そういった研究グループがグループとして研究費を取り扱うという規定がなかったわけでございまして、その点、国立がんセンターと他の一般の国立病院との間に相違がございました。
  111. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、がんセンター以外の一般の国立病院はやはり何らかの公的なルールがあるわけですか。
  112. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 内部的なルールに従ってその取り扱いをしております。
  113. 村山富市

    村山(富)委員 しかし実際には大同小異、がんセンターと同じような扱いをやっているのじゃないですか。ですから、これはもちろん収賄罪は成立しないけれども厚生省から改善の勧告を受けているでしょうが。やはり実態実態として率直に認めて、そしてこういう疑惑を生まないような公的な一つのルールを検討してつくっていく必要があるのじゃないか。物を隠すのではなくて、ありのままにあるものは出して、そしていかぬものはいかぬということにしなければいつまでたっても是正されないわけですから、そういう意味で私はもっと正直に言ってもらいたいと思うのですよ。そういう意味からして、たとえばいまの国立病院なり——文部省の所管の大学病院は別ですけれども、そういう公的な病院医師の研究費はもっと国の予算で見るとかなんとかすることが一つは大事だし、同時に、会社から委託をされてやる仕事については委託料を取るのは当然ですから、したがってその委託料についても何らかの公的な基準とルールをつくる必要があるのじゃないかと思いますが、この点は大臣どうですか。
  114. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 事務的な面につきまして私の方からお答え申し上げます。  先生御指摘のように、この研究費の面は二つあるわけでございまして、そこに勤務いたします医師あるいは薬剤師等の技術者が、自分の好むと申し上げましょうか、一つの研究を行います場合には、公的な研究費で予算化いたして現在研究を、実施いたしておるわけでございます。新薬開発に伴う治験費の取り扱いでございますが、先生御指摘のように、従来製薬会社等からこれが納入されておるわけでございますが、この研究費の受け入れあるいは使い方あるいは出納責任、そういった点につきまして必ずしも適切な管理が行われていなかったわけでございますので、今後この研究費の受け入れ方法、使途、出納、保管等研究費の経理面におきまして、施設長の責任でこれが適切な取り扱いが行われるよう、厳重に指導してまいりたいと考えております。
  115. 村山富市

    村山(富)委員 そういうふうにきれいごとで答弁するのじゃなくて、このがんセンターの問題で明らかにされていますように、公的な研究とか新薬の依頼された研究とか、そんなものの区別で委託された費用が使われているわけじゃないでしょう。言われるように、これは公的な研究、だから公費でやります、これは会社から委託されたものです、したがって委託費でやります、こんな区別は私の調査でもついていませんよ。そこにやはり問題があるわけですから、もしあなたがそういうふうに説明されるなら、公的な研究費は年間どれくらい要るだろう、この予算はちゃんと保障しますということも必要でしょうし、同時に、会社から委託される治験薬の扱い等については一つの公的な基準とルールをつくる必要があるのじゃないか、こう私は言っているわけですよ。どうですか、大臣。
  116. 田中正巳

    田中国務大臣 がんセンターの問題についてはまことにどうも遺憾であります。それで、刑事事件になった分については、それぞれ現在司直において取り調べ中でございまして、これはそちらの方にお任せをする。と同時に、今後こうしたことについて大いに綱紀を粛正しなければならないということで、先般も次官通達等を出し、この種の事件の再発をしないようにいろいろと今日努力をしているわけであります。  いま一つの治験費につきましては、これはなかなか問題がいろいろあるということでありまして、刑事事件にはならなかったようであります。いわゆる個人的な所得というふうなところには帰属をしていないということだろうと思いますが、しかし、仮にグループとしてこれを受けておった場合におきましても、やはり先生のおっしゃるようにきちっとしたところがなければいけないんだろう、私はかように思います。したがいまして、受け入れとか管理とか使途とかいうことについて、やはり明々白々たる一つのルールというものをつくり上げなければなるまいというふうに思っておりまして、本事件にかんがみまして、治験費の扱いについてはガラス張りになるようにいろいろと確立をいたすよう、目下私も次官等に依頼をいたしまして、そうしたことについて作業をいたしているわけであります。ただ、これが公的なルールということになれますかどうですか、言うなれば医師団の一つの公的な立場以外の仕事ということにも相なりますものですから、この辺が実はむずかしいところでございますが、いずれにしても、世間の人に指をさされることのないようにひとつ改善をいたさなければならないというふうに考えて、私からも特段の指令を出しているところでございます。
  117. 村山富市

    村山(富)委員 いま言われたように、むずかしい扱い方の点もあると思いますがね。ただ、新薬の開発なんかについて、仮にメーカーがある病院医師に委託しますね。そしていまの基準からいいますと、五カ所、百五十例の臨床実験なんかのデータを添えて出すわけでしょう。そして薬事審議会でその新薬の承認をされた。今度は承認された薬は病院が買う方の側に回るわけですからね。だから、研究して、データをこしらえて、新薬が承認された、その新薬を今度は病院が買うわけですから、したがってそこにはいろいろな意味でやはり関連が生まれてくるわけですよ。そういう意味からする誤解もやはり生まれてくるわけですから、したがって、そういう点はある意味ではむずかしい問題ではあるにしても、やはりできるものはきちっと研究をしてやる必要があるというふうに思いますから、その点はひとつそういうことで強く要望をしておきます。  それからもう一つは、この治験薬をめぐって、薬事審議会に申請をして、新薬として承認されて製造販売が許可されたというんなら別ですよ、そうでなくて、まだ治験薬の段階で、メーカーの方がプロパー等を通じて一般の医師、一般の医療機関なんかに大量に宣伝用として出されておる、こういう、実態があることは御存じですか。
  118. 上村一

    ○上村政府委員 薬務局長でございますが、そういう実態があるということにつきましては承知いたしておりません。むしろ、薬品としての承認前のものにつきましては販売が禁止されておるわけでございます。
  119. 村山富市

    村山(富)委員 実態を知らないのですか。販売をされておるとぼくは言いませんよ。これはまだ製造販売の許可がされていないわけですから、金銭授受はなされておらぬでしょう。だけれども、治験薬の段階からもう一般の病院に大量に宣伝用として出されていることは、これはもうどこの病院でも認めていますよ。あなた、それは知らないのですか。
  120. 上村一

    ○上村政府委員 私ども、この新薬の承認に当たりまして、どうしても臨床試験というものが必要である。臨床試験で大事に考えておりますことが二つございます。一つは、この臨床試験によって、厳密で客観的な資料が得られるということでございます。それによって初めて、薬事、審議会にかけまして薬品として承認するかどうかの判断ができるわけでございます。もう一つ大事なことは、あくまでもその臨床試験、あるいは言葉をかえて申しますと治験ということになると思いますけれども、そういった過程において患者さんの立場をいかにして守るかということでございますから、治験の過程にある薬品というものが大量に、まだ承認前に医療機関に配られまして、そこで患者に服用されるという事実があれば、これはゆゆしきことではないかというふうに考えます。
  121. 村山富市

    村山(富)委員 これは私が病院を当たって、その実態はつかんでおりますよ。それはもう大方認めております。治験薬の段階で、これは販売はできませんから、販売して金は取っておりませんよ、しかし一般の病院に出されて、そうして使われておる。こういう実態は全然あなたは知りませんか。
  122. 上村一

    ○上村政府委員 未承認の医薬品につきましては、販売もだめでございますし、授与もだめでございます。
  123. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃ、いずれその事実を私は提示しますけれども、あなたの方も調べてみてくださいよ。これはもう現に大学病院といえ国立病院といえ、どこの病院だって、私の聞いた範囲ではみんな、それはそうですと認めておりますよ。それを知らないのは厚生省だけということになる。これは知っておって知らぬと言うのかどうか、ぼくはわからぬけれども。これはなぜかと言いますと、治験薬の段階でもうやはりメーカーはプロパーを通じて宣伝をするわけですよ。やがてこれは新薬として出てきます、これはこういう効能があるのです、試しで使ってみてください、こう言って宣伝を兼ねて徹底しておるわけですよ。そうして新薬が出たら、もう医療機関には徹底しておりますから、あああの薬が出たというので買ってもらえるという、こういう段取りで出されておることは十分あるということを私は私の調査ではつかんでおりますから、それは、あなたの方はないと言えば、いずれ私はある実態を別の機会に出しましょう。  そこで、これはあなた方がないと言えばそれまでの話だけれども、あるわけですよ。したがって、そういう治験薬の扱いについても、やはり何らかのルールをつくって扱い方を決める必要があるのではないかというふうに思うのです。いまは全く自由に放任されておりますよ。単に病院に委託をする治験薬の費用がメーカーと医師との間で個人的に自由にされておるというだけではなくて、その治験薬の段階における治験薬の扱いについても、これは何のルールもない、自由に放任されておる、こういうかっこうになっておりますよ。もしそういう実態があるとするならば、やはり何らかの検討を加える必要があるでしょう。どうですか。
  124. 上村一

    ○上村政府委員 先ほど申し上げましたように、私ども、治験用医薬品について一番大きな関心を払っておりますのは、人の安全性の問題でございます。したがって、私どもの指導としては、まずその人試験でございますが、人試験を実施する前に、動物実験による安全性を確認する各種の試験を実施するということをまず義務として課しておるわけでございます。そうして、それからその第一段階として健康な人を対象にしました安全性の試験を行い、第二段階として少人数の治験者による有効性の検討を行い、その後初めて多数の患者、数百名でございますが、それについて精密かつ客観的な試験をするというふうなことをやらせておるわけでございます。同時に、結核薬、らいの薬、がんの薬、それから抗生物質製剤等につきましては、治験計画提出をメーカーから求めまして、必要がある場合にはそれをチェックするというシステムをつくっておるわけでございますので、決して野放しにしておるわけではございません。
  125. 村山富市

    村山(富)委員 いや、そういう手続はあるにしても、実際に治験薬の段階に、これは販売できませんから金は取っておりませんよ、金は取ってないけれども、やがてこれは新薬で出てきます、だから使ってみてくださいと言って、病院に大量に出されておることは間違いありませんよ。そういうような事実があなたはないと言うのだから、ある事実を私は出しますけれども、いいですか。
  126. 上村一

    ○上村政府委員 私はあるはずがないと申し上げたわけでございまして、もしそういう事実があるとすれば、やめさせなければならないというふうに考えております。
  127. 村山富市

    村山(富)委員 そこで、薬の問題についてはやはりいろいろな意味でルーズなところが現状では若干あるのではないか。それはあなたの方の決まりやなんかはきちっとしておるかもしれませんよ。しかし、その決まり以外に現状の中ではやられておる向きがあるわけですよ。だから、そこらをもっと実態調査してきちっとしてもらいたい。もしそういうことが事実としてあるならば、何らかの規制を加えるなり、扱い方についてのルールをつくるなりしてもらいたいということを最後に強く要望しておきます。時間がございませんから、最後に結論として申し上げますが、私が申し上げましたのは、いまの医療関係では中医協が果たしている役割りは非常に大きいわけだし、中医協が正常な審議がされていかなければ基本的な問題は解決しないわけですから、したがって、一日も早く中医協が正常な形で運営される日が来るように、大胆のもっときちっとした積極的な努力を心から期待をいたしまして終わります。
  128. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長 代理石母田達君。
  129. 石母田達

    石母田委員 私はきょう、中医協の中断によりまして診療報酬の適正な引き上げが非常におくれている、このために重大な影響が出てきている、この問題について政府の見解をお尋ねしたいと思います。できるだけ大臣に質問いたしますので、大臣が簡潔に答えていただきたいと思います。  最初に、この診療報酬の適正化がおくれている、決定できていないということから、公私病院の連盟の大会あるいは各医師会あるいはまた保団連などからもいろいろな陳情が来ておりますが、その内容を見ましても、この診療報酬の引き上げというものが即こうした利害関係のある団体というだけではなくて、国民医療そのものに関係する問題でありますので、きわめて切実な内容を持っているわけであります。したがいまして、この問題について政府は一体どういう見解を持っておるのかを最初にお尋ねしたいと思います。
  130. 田中正巳

    田中国務大臣 診療報酬改定には法律によって中医協の答申を得なければならない。議を経てと書いてありますが、あれは答申を得なければならぬということだそうであります。したがいまして、私どもとしてはあくまでも円満に速やかに中医協の答申を得なければならないというふうに考え、中医協の審議の速やかならんことを、結論の速やかならんことをこいねがっております。いろいろと今日先生御案内のとおりの状況でございますが、それが早く解消されて答申にこぎつけるようにいたさなければならないということでせっかく努力をいたしておりますが、なお各当事者の合意を得られないで、今日このままの姿になっているということはまことに遺憾でございます。今後とも、先生おっしゃるような客観情勢もございますし、そうした早く改定をせよという要請もわかるわけでありますので、いろいろといま努力をしているわけであります。
  131. 石母田達

    石母田委員 その場合の早くという場合は、当然年一回の改定ということはあそこの中医協でも合意されている事項なので、当然普通に考えれば十月一日からの改定ということ、これまでの合意あるいはこの間の物価高や人件費のアップなどを考えますと、それが常識的な線であろうというふうに考えておりますけれども、政府の努力されたというのは、その方向で努力されてきたけれども、結果としてこうなっている、こういうことですか。
  132. 田中正巳

    田中国務大臣 何分にも診療報酬改定は中医協の答申をいただかなければならない。したがって、中医協が速やかに答申をしていただくように、一日も早くということでございまして、九月九日に開いたものですから、それ以前ということは望むべくもありませんが、それよりできるだけ早い機会に答申をいただきたかったというのが政府の真意であります。
  133. 石母田達

    石母田委員 ここにいま厚生省医務局指導助成課の調べがありますが、たとえば救急指定病院、これの指定を返上する病院がふえている、この一つ実態が、たとえば東京都と神奈川県で言いますと、昨年の四月一日からことしの四月一日までの間に、東京都では五百十二の告示施設が現在五百七に減っております。神奈川県でも百九十あったものが百八十八になっているわけです。この間に東京では十三カ所、神奈川県では六カ所の指定の返上があったわけです。いま救急医療がきわめて重要な問題になっているときにこうした施設が減るということは、いろいろ個別には理由がありますけれども、一般的に看護婦や医師の不足とか、そういう体制がとれない経営上の問題が含まれていることは言うまでもありません。診療報酬は御承知のように病院の経営の大部分の収入でありますので、看護婦さんにしても病院の建設にしても、すべてこれで賄うというのが現在の仕組みであります。したがって、診療報酬の引き上げがそれだけおくれるということは国民医療にきわめて重大な影響を及ぼすということでございますので、なお一層の努力を要望したいと思うのであります。  さらに私のお聞きしたいのは、先ほどから、努力しておる、努力しておるということで、見通しは申し上げられないということですけれども、これまでの常識的な線から言いますと、十一月の中旬までに中医協の結論というものがなければ、年内の、つまり十二月一日からの改定は事実上困難ではないか、不可能じゃないかというふうに考えますけれども、この点ではどうでしょう。
  134. 八木哲夫

    ○八木政府委員 確かに、事務的な面から申しますと、中医協の方の御答申をいただきました後、ある程度の期間が必要なわけでございまして、それが十日ないし二週間程度でございますので、その辺の期間の余裕を見ませんと、答申後の実施ということは考えられないということでございます。
  135. 石母田達

    石母田委員 そうすると、現実問題として大体十八日から二十日ごろまでに遅くとも出ないと年内の引き上げ、つまり十二月一日からの改定は不可能だ、こういうふうに理解していいですか。現実問題として、もうそういう事態になっているんじゃないですか。
  136. 八木哲夫

    ○八木政府委員 お話しのとおりでございます。
  137. 石母田達

    石母田委員 年内の引き上げの見通しがほとんど不可能だという状況の中で、すでに二月になるのじゃないかというような話も出ているわけであります。私は、こうした事態を迎えていることについて、政府、またその中でも特に田中厚生大臣の責任はきわめて重大であるというふうに考えているわけです。したがって、以下、田中厚生大臣に幾つかの問題について質問したいと思います。  いま三者構成による中医協の土俵づくりができていないので、診療報酬の引き上げの問題がおくれているという、形式的にはそうでありましょう。しかし、内容から見ればそうではない。これは政府の診療報酬に対する基本的な姿勢といいますか、そういう問題が最大の要因であるというふうに私は思っております。この中医協の委員の一人であります岡部定夫という海員組合の出身の委員が十一月五日にこういうことを言っております。「問題は、日医など医療担当側と支払い側との確執にあるのではなく、厚生省の責任ある対応がなされていないことである。厚生省が責任ある案を出し、これを検討することである。これが現在の早道だ。現にまた日医の幹部、幹部といっても委員の人にお伺いしても、われわれは招集があればいつでも出るんだ、こう言っているわけです。ですから招集してみろ、だれが出るか出ないかということがわかるだろう。恐らく今度の問題については、そういう点でのいわゆる障害というものは、むしろ厚生省がきちんとそういう案を出せるかどうかということに問題があるんだ」ということまで言っておられるそうであります。  そこで大臣にお伺いしたいのですけれども、諮問案が作成されているとかということで、すでにある新聞ではその内容など発表されておりますけれども、政府としての諮問案というのは作成されているんですか。
  138. 八木哲夫

    ○八木政府委員 現在、諮問案は作成されておりません。
  139. 石母田達

    石母田委員 そうすると、中医協が再開されてもすぐ出せる状況にはないということですか。
  140. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私どもいろいろな勉強はいたしておるわけでございまして、現在準備は十分いたしておるわけでございます。中医協が正常化され、諮問案が出せるというような環境になりました場合には、できるだけ早い時期に諮問案が出せるというふうになろうかと思います。
  141. 石母田達

    石母田委員 その法的な根拠は何ですか。中医協が再開して、ある程度審議しなければ諮問を出さないというのは、何の根拠に基づいて言っているのですか。
  142. 八木哲夫

    ○八木政府委員 中医協に対します諮問の提出につきましては、これは厚生大臣が諮問をするわけでございますから、厚生大臣が必要であるというふうに判断した時期に提出できるというふうに考えております。
  143. 石母田達

    石母田委員 いまのは、政府が諮問を出す判断を、厚生大臣の判断がそうしているということですね。田中厚生大臣はそうしているんですか。——つまり、中医協で一定の審議が始まってから諮問を出すという時期は厚生大臣の判断の問題だ。だからいま局長が答えたのは厚生大臣の判断かということです。
  144. 田中正巳

    田中国務大臣 法律上、制度上はいつ諮問を出しても悪いことはございません。ただ、いかなる時期に諮問案を出すことが一番目的に近づくゆえんであるかということを判断いたさなければならないということでありまして、これについてはいろいろないきさつがございます。いま先生が、岡部さんという人が何かおっしゃったというのですが、御存じでおっしゃっているんじゃなかろうかと思いますが、実はこれについていろいろ議論がございました。冒頭から諮問をせよという議論もございましたし、またこれについては支払い側の皆さんは、冒頭から諮問をすることはもってのほかである、しばらく中医協再開に至るまでのいろいろな経緯についていろいろと質問をして、そして了解したところでなければ諮問には応じかねるというような御意見も、実はあったわけであります。かようなわけで、私どもとしては、そうしたいろいろな疑問を解明した後でなければ審議には入れないというような強い御意向もあるものでございますから、あの節、のっけから諮問をいたさない、あるいはこの状態で諮問をいたさないでおるというのは実はそういう背景があるからでございまして、したがって、私がただ便々として諮問案を出さないということではない。むしろ、そういう姿で出すのがいいのか、やはりクリアされた姿で出すのが結論を早く得るゆえんであるか、その辺のところの判断のもとに慎重に対処しているわけであります。
  145. 石母田達

    石母田委員 あなたたちも知っているとおり、法律では、社会保険審議会及び社会保険医療協議会法というのがありまして、これの第十九条の二項に、「会長は、厚生大臣若しくは都道府県知事の諮問があつたとき、又は委員の半数以上が審議すべき事項を示して招集を請求したときは、その諮問又は請求の日から、二週間以内に、それぞれ、中央協議会又は地方協議会を招集しなければならない。」という定めがあります。これが基本なんですよ。だから、中央社会保険医療協議会の議事規則についても、第一条冒頭に、「厚生大臣の求めがあったとき又は会長が必要と認めたときは、その日から二週間以内に、中央社会保険医療協議会を招集するものとする。」というように、厚生大臣にも特別の権限を与えている。そういう性質のものなんです、大臣。それをあなたが、どういういきさつか知らぬけれども、勝手に判断しておくらせている。こういうことがむしろ今日の事態の紛糾を招いている一つの大きな原因だ。そういう点で、今後とも、そうした諮問についてまだつくってもいないんだ、研究しているんだ、そういう態度で、先ほどあなたが言われた早急に、できるならば十月一日、九月九日以降の速やかな事態に備えている態度と言えるかどうか。
  146. 田中正巳

    田中国務大臣 私は言えると思うのであります。幾ら諮問をいたしましても、結論を得て答申をいただかない限り診療報酬の改定はできないわけであります。両当事者の意見がコンセンサスを得なければ合理的な結論が出ないわけであります。先ごろ村山委員よりお話がありましたような条件というものがございます。これを全く無視して諮問を出すということが合目的的であるかどうかということになりますると、これはやはり考えなければならない。要は、諮問を出し、その諮問が正当に速やかに審議され、結論を得るということが最大の要諦だと私は思うのでございまして、諮問を出して、後は野となれ山となれというような姿で私が免責されるというような簡単なものではないというところに私の苦労があるわけでございます。
  147. 石母田達

    石母田委員 まさに中医協をあなたは隠れみのに使っている。そうではないのだ。政府の責任というのは、いわゆる中医協の問題について、答申を出すからとか出さないからとか、そういう見通しがあるとかないとかというだけではなくて、政府としてのこの問題についての基本姿勢はどうなのか、どういう方針で一体諮問するのか。中医協というのは諮問機関なんですよ。その諮問機関が、どういう諮問をするかわからないで、何をやるのかわからないで開いて、しかも私が言いたいのは、中医協が中断されているいろいろな問題がありますけれども、その中であなた自身の問題も出ているのですよ。この間の中医協で指摘されたように、田中厚相のこの問題に対する基本姿勢、さらに特に個人的な問題としては、あなたが自民党の社会保障調査会長の時代に発言したと言われる中医協解体論に対する賛成演説、こういうふうに武見会長が言われている問題、この問題が一つ俎上に上っているわけでしょう。あなた自身の問題なんですよ。この問題についてはあなたはどうなんですか。
  148. 田中正巳

    田中国務大臣 中医協のあり方につきましては、やはりこれについてある程度の改善を試みなければならないというのが当時の私の考え方でございました。したがいまして、私はそうした改善、改組というものを考えなければならぬということを申したことは事実であります。しかし、日医の言うように、私があのような制度をなくしてしまえということを申したことは、速記をごらんになってもわかりますが、そういうことはございません。私は、ああいうものが、今日の姿がそのまま十全であり改善の必要がないということについてはいろいろ議論があろうと思いますが、ああいったような存在が必要であろうということは当時から思っておったわけです。ただいまは厚生大臣でございますから、法律にのっとって行政をやらなければなりませんから、中医協という制度がある以上、中医協に御審議を願い、円満な結論を得るということが私に課せられた義務でございますので、そうしたことに向かっていろいろ努力をしているわけであります。
  149. 石母田達

    石母田委員 新聞報道によると、あなたが解体でなくて改組だ、それに対して成田委員がそんなことはないと言ってそれを訂正した。新聞を見ているときはどちらが正しいのか私はわからなかった。今度、あなたが発言したと言われる「自民党激励医療問題討議集会速記録」昭和四十八年十一月二十八日経団連会館で行われた速記録を見せてもらいました。ところがどうも私は、成田委員が事実と違うということを言った方が正しいのではないかと思う。これは速記録で見ますと、成田委員が、いわゆる中医協並びに円城寺会長に医師会がなぜ不信を持っているかということをるる述べた後で、その点についての答弁を求めているわけであります。これにあなたが社会保障調査会長として答えたことは、長いから省略しますけれども、「これを」——これは中医協制度ですが、「このままの形で存続をし、継続することについてはわれわれはこれを考え直さなければならないということをかたく決意をしているということであります。」当然拍手が起きています。「すなわち現行の中医協というものがこのままで継続する場合においては医療は荒廃をし、医療はあるべき姿から離れ、ひいては国民に非常な迷惑をかけるという事実は如実にこれが立証されたものというふうに思いまして、この傾向論については先ごろの斎藤厚生大臣の武見会長に対する御返答でも明らかでございますが、」そうしてさらにこういうことを言っているのです。「ひいては今日このように医療の世界を荒廃し、混乱をさせた中医協というものは絶対に今後ともこれを存続すべきものでないというかたい決意と信念を持っていることをここに御披露を申し上げたいと思うのであります。」これが速記録ですから、わざわざ自分のいいようにはつくっていないんだよ。それがあなたの言った言葉だとすると、あなたは存続の問題について言ったのじゃないんだ。ずいぶんはっきり言っている。第一あなたは冒頭に「ずばり申し上げましょう。」と言っているが、全くずばりと言っているよ。それがいささかの改善とかなんとかと言えるものかね。そんな中医協に対する態度で、厚生大臣になってまとめようなんだってまとまるわけがないじゃないか。
  150. 田中正巳

    田中国務大臣 あなたのお読みになったのは末端のところでございまして、私が冒頭申したのは、「現行の中医協制度というものはその制度の組成並びに現在までの経緯を考えるときに、これをこのままの形で存続をし、継続することについてはわれわれはこれを考え直さなければならないということをかたく決意をしているということであります。」こういうのが大前提でありまして、次にも「自由民主党といたしましては中医協というものが今日あのままの姿で今後とも続けていって」云々というふうに書いてありまして、あのままの姿、このままの姿ということを私が冒頭言っていることは、すなわち改善の必要があろうということを申しているわけでございまして、それが私の当時からの真意であるわけでございます。
  151. 石母田達

    石母田委員 そうすると、この速記録のその部分をいろいろと読んでおって、いま言った部分はずばり言っているのだけれども、この部分については関知しないというのか、それともこういう態度はもう変えているというのか、それともこの記録は違うというのか、はっきり言ってくださいよ。
  152. 田中正巳

    田中国務大臣 当時私がさようなお話をしたことは事実でございまして、これは否定はいたしません。ただいまは厚生大臣として法律制度にのっとって行政をやるのが至当でございますので、したがって、中医協というものはあくまでもこれを尊重いたすつもりでやっているわけでございます。
  153. 石母田達

    石母田委員 私はそういう意味で、あなた個人にとっても大臣にとってもきわめて責任重大だと思う。したがって、この診療報酬の問題について早急に責任をとって、まとめる。同時に、こうした在野時代の間違った発言という問題については適切にこの処置をして了解を得るということで、いまの中医協というものの再開については、やはり諮問をきちんと出すという意見かなり強いわけですから、こういう点での解決についてぜひ再検討してもらいたい、私はこういうふうに考えます。
  154. 田中正巳

    田中国務大臣 諮問をこの姿で出せという御意見もあります。しかし反面、出してはいけないという御意見も中医協の中に実は強くあるわけでございます。したがって、こういう中にあって、できるだけ諮問を早く出せるような客観情勢をあの中に生み出すということが私としては一番いい方法だというふうに思っているわけでございますから、私としてはその努力をしていく。私としても、便々日を過ごして、このような診療報酬の改定を長く延ばそうなどという気はございません。一日も早く、医療担当者側の立場を考えて改定をしていかなければならぬものというふうに思っておるから苦労をしているわけであります。また、個人的に申しましても、こういう状態というものを長くやっているということは私にとって煩わしくて仕方がないわけでありまして、早くこの問題を解決し、すっきりいたしたいというのが私の今日の忌憚のない心境でございます。
  155. 石母田達

    石母田委員 再度、そういう諮問案をきちんとつくって、そして法律に基づいた正常な形でのオーソドックスなやり方を私はぜひお願いしたいと思います。  さて、先ほど質問の中で言いましたように、年内の十二月一日からの引き上げが大体不可能に近いという見通しのもとで、先ほど緊急融資の問題が出ておりました。そうなった場合にもう一つの方法として、これまでにもあったということですが、たとえば十二月二十日なら二十日にまとまった場合に、これを十二月一日に遡及するというような方法がとられることは一般的に可能なのかどうか、この点について。これは実際には基金の部分だけれども
  156. 八木哲夫

    ○八木政府委員 遡及の問題は非常にむずかしい問題ではないかというふうに判断いたします。
  157. 石母田達

    石母田委員 これは一般的にむずかしい問題であると思いますけれども、こういう緊急事態の中で越年というような問題で、ボーナスも払えない病院が出てくるとか、いろいろ出てきた場合に、こうした緊急融資という問題と同時に、こうしたいままででは異例であったかもしれないその方法についてもぜひ検討していただきたい。これを大臣にお願いしたいと思います。
  158. 田中正巳

    田中国務大臣 現在までいろいろそうした場面に何遍も逢着をいたしまして、遡及適用の件について議論になりましたが、実際問題として、診療報酬明細書ですか、あれをさかのぼって書き直すということもなかなか大変だという、いろいろな事情もありまして、やっておらないわけであります。また、仮に遡及適用いたしましても、これも、たとえば十二月分の支払いというものは大体二月の初旬に相なるということを考えますときに、暮れのどうのということについては、間接的な好影響はあると思いますが、実質的なものはあり得ないというようなことをいろいろ踏まえまして、私どもとしてはできるだけ速やかに診療報酬が改定されるということにいたしたいものだというふうに考えておるわけですが、遡及適用についてはどうもめんどうなように私は思います。
  159. 石母田達

    石母田委員 めんどうなことはわかっている。しかし、これはそういうふうになれば、たとえばさっきの緊急融資の問題だって有利に解決することは事実なんですね。ですから、あなたたちがやっている、やっていると言っても、年内には解決の見通しが困難だというようなことまでここではっきり言われたから、それでは、そうした早急に解決しようということが年内にも解決できないということになった場合の緊急な場合ですから、その点についてはこうした問題についても十分検討していかなくちゃならぬじゃないかということを再度要望したいと思います。
  160. 田中正巳

    田中国務大臣 医療担当者の方々のお話をいろいろ聞きますと、診療報酬が改定になるという実態があれば融資等も非常に楽だということを私はお医者さんからよく聞いております。したがいまして、施行の時期はともかくとして、ここで診療報酬が改定になったという事実というものを現出するということが融資等に非常に好影響を与えるということでございますので、そうした必要のある時期までに診療報酬が改定になるという事実というものを、この際明らかにできるようにいたしたいというふうに思っておるわけでございます。
  161. 石母田達

    石母田委員 その見通しについて局長が、ないみたいな話だったからいま質問したのです。いま大臣に聞いたら少し見通しがあるみたいだけれども、単に努力するというだけじゃなくて、その見通しがあるのですね。十二月中にやれるような見通しはあるの。いまないからということを私は前提にしているんだけれども、いま大臣の話を聞くとちょっとありそうな話もしている。
  162. 田中正巳

    田中国務大臣 それは先生、お聞き違いなんでございまして、いつの時点であっても、診療報酬が改定になるというような事実というものが、仮に告示前であってもはっきりいたすという事実上の問題が解明されるということになると融資は楽になる、こういうことでございますから。期日をはっきりしての議論ではなかったわけでございます。
  163. 石母田達

    石母田委員 それじゃあたりまえの話ですよ。金を借りるのだから、そんなことをいまここで麗麗しく発表してもらったって、これはあたりまえです。いま真剣な期日の問題で討議しているんだから、余りあいまいな返事をしないでください。最後に、時間がなくなりましたので、今度の診療報酬の引き上げ、いずれにしても諮問したりしなければならぬわけですから、そのときに、これまでの不合理がいろいろ出されておりますので、ぜひ検討してもらいたいというふうに思います。たとえば、よく病院から出ている、外来患者についての看護婦の問題ですね。この問題は、いわゆる外来患者の数が三十またはその端数を増すごとに一というふうに医療法やその他で決まっているわけなんだけれども、これが点数を認められていないんじゃないか、こういう意見もあります。また、入院を必要としないで在宅で寝たきり患者に対しての訪問看護の問題、この問題をぜひ点数化してほしいという問題。あるいはまた、特に請求事務費や事務量が膨大になっているわけですが、これに対しても必要な点数化を考えるべきじゃないか。こうした幾つかの改善策が出されているわけです。  特に、私いま時間がないのであわせてやりますが、ここに「小児科の実態調査の結果とその適用例について」という詳しいデータがあります。私も読ましてもらいましたけれども、これは保団連の調査部でつくった資料ですが、非常にいいものです。これはあとでお上げしますが、特に小児科がいま診療報酬が非常に低い。御承知のように、患者が子供ですし、それから受診の頻度も非常に高いという特質もあります。そして、厚生省が発表した中医協提出資料によりましても、診療報酬改定による影響率は小児科が各科に比べて一番低いわけです。そういうせいもあって、いわゆる小児科医になるような方が減っているという問題があるわけです。こうした点で、特に小児科の診療報酬の問題については、今度の診療報酬のアップのときには特別に考慮してほしい。こういう幾つかの問題でぜひ検討してもらいたいことを要望したいと思います。ちょっと返事を……。
  164. 八木哲夫

    ○八木政府委員 診療報酬の改定が議論になりました場合には、点数表の内容を当然改定しなければならぬわけでございますので、従来からいろいろ御議論ございます点等につきまして、合理化しなければいけない問題あるいは引き上げなければいけない問題、いろいろな御意見を踏まえまして、ただいま先生から御指摘ございました点も十分研究させて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  165. 石母田達

    石母田委員 終わりますけれども、ちょっと確かめておきたいのは、先ほどの、自民党激励集会で発言したことは事実だけれども、いまは厚生大臣として、法律があるんだからと。それだけれども先ほどこの中で述べた意見については撤回をされないし、修正もされるつもりはない、いまでも同じ意見だということか。それだけイエスかノーかだけ答えてください。
  166. 田中正巳

    田中国務大臣 人間考え制度でございますから、したがって、検討を加えていくということについては、私はこれを絶対やるべきものでないというふうなことを断言することはいかがか、かように考えておりますが、いまのところ私は厚生大臣ですから、法律制度にのっとってこの問題に対処するということについては固い信念であるわけであります。
  167. 石母田達

    石母田委員 これは撤回してないということを確認した上で、私はこの問題についていずれまたやります。  最後に、大臣にこの資料を上げておきますから、ぜひ……。
  168. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、寺前巖君。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 最近、国立がんセンターの医薬品納入をめぐっての汚職という問題と同センター付属病院が製薬会社の依頼によって実施している新薬の臨床実験のために製薬会社が三億円を超える謝礼をやっておって、そのことをめぐって不明朗であるということが問題になっております。この二つの問題は関連を持っておりますので、私は、この問題についてひとつ聞いてみたいと思います。まず第一に、薬剤購入をめぐって科長あるいは副科長、主任さんの幹部三人の皆さん方が汚職をやっているということが明るみに出て警察につかまっているわけです。国立がんセンターに限らず、政府機関の中や地方公共機関の中でも一連の事件が起こっておりますけれども、この事件の教訓をどのようにくみ取って、今後どのようにしようとしておられるのか、私は、むしろそこにメスを入れてみなければならないと思うので、教訓と今後の措置について説明をしていただきたいと思います。
  170. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 今回の国立がんセンターにおきます一連の事件でございますが、先生御指摘のように、この二つの事件があったわけでございます。これがその根底においてはあるいは連続した事件とも考えられるわけでございますが、一応この二つの事件は、一つはいわゆる刑事事件として発展いたしております。片一方においてはいわゆる刑事事件としては発展しなかったわけでございまして、そういった点におきましては、二つの点を分けて御説明申し上げたいと思っております。  それでまず第一に、薬剤購入に関連いたしましての薬剤科の事件でございますが、この点につきましては、従来からこの薬剤購入に際しましては、国立の機関でございますので、国立がんセンターにおきましても医薬品の購入は関係法規に定めておるところに従いまして実施しておったわけでございまして、取り決めております手続そのものには余り欠陥がなかったのではないかと考えております。ただ、そういう手続そのものを厳格に定めてはおったわけでございますが、購入する医薬品のうち一部のものでございますが、医師が処方せんに銘柄を指定していないような医薬品がございます。すなわち、その大部分は局方品といわれる医薬品でございますが、そういった医薬品の購入につきまして、薬剤科長以下の被疑者の恣意が、その購入に際して反映した疑いがあるわけでございます。  なぜこのように、薬品購入に際しまして、その銘柄の決定に際しまして、薬剤委員会等の決定でなく一部の担当者による恣意が反映したかというところでございますが、この原因につきましてわれわれいろいろ検討したところでございますが、つまるところ、そういった職務上納入業者と直接接触するポストに同一人物が非常に長期に存在したことに起因するものと考えておるわけでございます。この点につきましては、十月十六日及び十一月一日の二回にわたりまして、国立がんセンターの薬剤科長を初め薬剤科の主要ポストについて人事異動を行なったところでございます。なお今後、医薬品の購入手続につきましても、他の国立病院の場合も含めまして、そういった一部担当者の恣意が働かないようなシステムにつきまして、さらに細部について検討をいたして指示をいたしたいと考えております。
  171. 寺前巖

    ○寺前委員 もっと簡単にやってよ。だらだらやられたって、要するに異動をやりましたということだけなんやから、一言で言えば済む話をもったいぶらぬかていいのや。  それで、ぼくは大田にお聞きしたいのです。明らかに、長期に同じ人間がやっておったらいろんな体制ができ上がって悪いことになってきます。そこは改善しなければいかぬ、だから人事の異動をやりました、こういうことですね。ところが、もう五年ほど前になるでしょうか、ちょいちょいこういう事件が役所の中で起こるというところから、行政監察委員会で、上司にも連帯責任を負わせよという問題提起が出されている。この問題については一体どういうことになっているのでしょう。この問題提起について検討されたことがあるのかどうか。私は、これは大臣に聞きたいと思います。
  172. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 一応、事務的な点でお答え申し上げたいと思いますが、今回のこの事件につきましては現在、検察当局において検討中でございまして、ただいま先生御指摘のような上司の管理責任というような点につきましては、さらに今後、慎重に検討してまいりたいと思っております。
  173. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣、どう思いますか。私も、この前がんセンターへ行ったときに、ちょうど石油ショックのときでしたが、大変でしょうね、薬の問題は、とこう言ったら、いや、私のところはもうちゃんと計画的にやっていますから大丈夫ですと、私はこの人たちにえらそうなことを言われたですよ。そのとき私は、おかしいな、よそはみんなおたおたしているのにこんなことを言い切れるというのは、何かあるのと違うかと感じましたよ。こういう病院機構なり、あるいは皆さん方厚生省の方々が、そこらへ回られると思うのだが、こういうことをおかしいと思われなかったのかどうか、私は不思議でかなわないんですよ。そしてうわさはもう出ておっただろうと思う、こんな警察が入るまでもなく。だから私は大臣に、この上級の責任問題を明らかにせよという問題が、すでに五年ほど前に提言がなされておった、この問題について大臣としてどうお考えになるのか、聞きたいと思います。
  174. 田中正巳

    田中国務大臣 こうした事件は、まことに遺憾であります。また、そうしたところに目が届かず、司直の手によってこれが摘発をされたということは、その上われわれとしてまた大変残念に思っているわけであります。  被疑者はすでに行政処分を受けておりますが、これがさらに監督責任、管理責任という問題については、ある程度事件の全貌を確保できるようになったならば、私は、それをやらなければなるまい、かように思っているわけでございまして、いま少しく時日をかしていただきたいというふうに思います。
  175. 寺前巖

    ○寺前委員 第二の問題は、新薬テストをめぐる問題です。これは新聞報道などによると、何と三億円にわたってもらっておったとかいうようなことが書かれております。そして一問一答とかその他の文章を読むと、この治験費の問題をめぐって、何に使っていたのかというのを読んでみると、ガラス器具、試薬などの消耗品や実験動物の購入費、病理実験助手、データ集計係などアルバイトの謝礼、学会への出張費、外国から有名な研究者が来たときの接待費、その他タクシー代とか文献購入費だとか学会発表論文の印刷代とかですね。しかし私は、これを読んでおって、そういうお金は、当然要るお金じゃないだろうか、要るお金が何で公明正大に予算の中から出されなかったのだろう、出す金がなかったというのだろうか、そう思ったのですが、一体どうだったのかということを端的に説明してもらいたいと思います。
  176. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 先生御指摘の、医薬品メーカーから治験費として受け取っております研究費そのものの額につきましては、現在調査中でございますが、現段階におきましてわれわれが把握いたしておる数字は、二千二百万ちょっとでございまして、これはまだ、そのほか先生御指摘のような点があろうかとも思いますけれども、現在調査中でございますので、三億という数字につきましては、目下調査をいたしておるところでございます。さらに、その使途につきましては、ただいま先生御指摘のような使途にほとんどが使われておるわけでございまして、その点につきましては御指摘のとおりでございます。  それで、そういった金そのものが、国立がんセンターの予算で賄われるべきではなかろうかという御意見でございますが、研究者あるいはそこに勤務いたしております医師その他の技術職員の研究につきましては、先生御指摘のように、これが国立がんセンターの予算で研究費として組まれておるわけでございますが、治験、いわゆる治療薬の研究として委託を受けた部分につきましては、製薬業界から実験費の名目でこれを受け取っている、かような状況になっております。
  177. 寺前巖

    ○寺前委員 ここのがんセンターには、薬剤検討委員会というのがちゃんと公式につくられているのでしょう。公式につくられているのだったら、公式に必要な金はとって公式にちゃんと、どういうふうにそのお金は使いますと何で明確に出して検討することができないのでしょうか、私はわからないのですが、そこはどうなっておるのですか。
  178. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 一般に申し上げまして、国立病院のこの治験薬の取り扱いにつきましては、ただいま先生御指摘のように、各病院委員会がございまして、その委員会が治験費として金を受け取りまして、それを支出している、かような形をとっておったわけでございます。こういった点につきましては、毎年、国立病院会議等におきましても、われわれから、経理を明確にするようにという指示を行っておったところでございますが、先ほど説明申し上げた点でございますが、国立がんセンターにおきましては、その治験を引き受けるか否かの部分につきましてこの委員会機能を発揮いたしておったわけでございますが、金銭の面につきましては、ほかの国立病院と異なりまして、その委員会機能を発揮していなかった、かような次第でございます。
  179. 寺前巖

    ○寺前委員 よくわからぬのですが、あなたのところの所管で治験をやっておるのはあっちこっちあるのでしょう。よそは全部明確にお金を何ぼもらってどういうふうに使っているかを明らかにしていた、がんセンターだけはそうしていなかった、そういうことですか。間違いありませんか。
  180. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 各病院ごとにその取り扱い基準をつくっておりますが、このがんセンター以外の国立病院につきましては、その治験等を引き受けている病院がわりに限定をされておりますが、今回の事件にかんがみまして、われわれが調査いたしましたところ——これはまだ全部調査を完了いたしておりませんが、大体他の国立病院におきましては、そういった点は薬剤委員会のようなところで、あるいはこの名前は病院によってみんな違っておりますが、そういったところでその研究費の経理を取り扱っております。
  181. 寺前巖

    ○寺前委員 ぼくははっきりしたいと思うのです。あなたはもっと明確に言いなさいよ。国の機関でしょう。国の機関がお金をもらうのだから、ちゃんと国庫に入るということでしょう。ちゃんとそういうふうに指導をやっておったのですか。そうしてどういうふうに使うのだって明確に独立採算で特別会計をつくったのですか。一体制度的にどうしたのだ、国の機関ですから、そこらの会社だとかいうのと話は違いますよ。制度的にちゃんと完備できているのかできていないのか、これをはっきりしなかったならば、不明朗というのはいつまでも続く。あなたたちは今度の教訓から何を改善しようとしておられるのか。さっきから話を聞いておっても、ちっとも明確にならない。そこはどういうふうにするつもりなんですか。どうなっておって、どうするつもりです。
  182. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 従来の取り扱いにつきましては、ただいま先生御指摘のように、国庫へ納入いたしまして、これを国の予算で出す、かような取り扱いにはいたしておりません。これはあくまでも内規的なものといたしまして、研究委員会がこれが受け入れをしていた、かような状況になっております。したがいまして、先生御指摘のような点におきましては、これが公のものとしての取り扱いがなされていなかったという点はございます。  それで、今後の取り扱いでございますが、やはり国の施設を使いまして国の研究者が研究を行うわけでございますので、その経理はやはり公的なものにしたいと考えておるところでございますが、なお、この研究をスムーズに行うというような他の一つの目的とのかね合い等もございますので、今後、病院長等ともいろいろ今後の取り扱いについて相談をして決めたいと考えておるところでございます。  なお、その統一的な今後の取り扱いが決定するまでの間、現段階におきまして、とりあえず、この国立がんセンターに対しましては、現在のこの研究費につきましては一応凍結をしておく、かような取り扱いをやっております。
  183. 寺前巖

    ○寺前委員 大晦に聞きますが、私、相変わらず不明朗だと思うのです。要するに、その国立病院の証明でもって試験結果の報告を出したりするわけでしょう。そのためにお金が要るのだからお金を取るのだ、取るのだったら、ちゃんと国立の機関が金を取るのだから、取るらしく取ったらよろしいと言うんです。取ったものをどう使うかということについては、国の機関なんだから国の機関として明確にやりなさい、これはあたりまえのことだと思うのです。そうなっていなかったのだということをまずはっきり明らかにして、それじゃ、それがよろしくないのだから直ちに改善をしますということで検討を始めなかったらだめだ。こんなことぐらいがいまだに言えないというのは、これは私、大変な問題だと思うのです。これについて大臣はどうお考えになるのか、第一点として聞きたい。  もう時間が余りないので、私、しぼった話を大臣に言います、ざっくばらんに。  それで考えてみたら、この新薬試験は、昭和四十二年の十月の薬務局長通達があって、非常に厳しいやり方をしておられます。中央薬事審議会の承認を求めるためには、新薬の薬理とか毒性試験とか物理的、化学的試験とか臨床実験の結果はどうだとかその症例は何ぼやとか百五十例とかなんとか言って、非常に厳しいことを片方でやっておられる。ところが片方で、厚生省の「医薬品副作用情報」を見ると、相変わらず副作用データが、二百八十五件も去年度で出ているし、中には八人の死亡者も出てくる。だから、この厳しさというのはますますはっきりしていかなければならないということをそのことは教えている。  ところが、この厳しい制度が片方にありながら、それを現実にどうしているかというと、結局、薬の生産というのはどんどん広がってきて、ことしあたりではお金にして二兆円からのものになるだろう、こういうふうに言われているわけでしょう。そうすると、早いこと審査を通してもらおうと思ったら、権威あるお医者さんのところへ、権威ある大学の先生とかそういうところへ持っていって、ぜひともよろしゅう頼みますということにならざるを得ないだろう。どんどん集中していくという必然性をやはり持っているとぼくは思う。  そこでこの際、人の命にかかわるこういうような重大な問題に対して、国の責任で新薬の試験を行い、安全かつ有効な薬の開発をやる、国が一手に受けて、そしてそれをどこどこの機関へ、どこどこの機関へというて仕事を振って、そうして総合的な試験をやるという体制を考えないといかぬのじゃないだろうか。必要なお金はちゃんと国でもってともかく取ってしまうというふうにやって、必要な支出は支出で出していく。もっと明朗にするために、またこの医薬品というものが持っている社会的な位置から考えても、国の責任をもっと明確にする必要があるのじゃないか。その点についてはどういうふうにお考えになるのか。この二点について大臣に聞いて、私はもう終わりたいと思います。
  184. 田中正巳

    田中国務大臣 新薬治験、私は、これについての、ことに国立医療機関におけるあり方というものについては、まことに不明確であり、厚生省としても突っ込みが足りない、うかつだったというふうに思わざるを得ないと思います。ある程度のことはいたしておったようであります。たとえば引き受けをどうするかということについては、個人の恣意が動かないようにコミッティーをつくってその中で選択をする、あるいはまたしっかりしたところでは、受け入れ、管理、使途、これはお金のことですが、こうしたことについても個人の恣意が働かないようにというふうにやっているところもありましたが、がんセンターでは、この前者だけはやっておりましたが、後者の金の受け入れ、管理、使途というものについてもだらしがなかったといったようなところに実は問題があるものと思います。  そこで、今回の事件にかんがみまして、この治験費あるいは治験というものをどう扱っていくか、根本的な検討をいたさなければなるまいというふうに思って、先ほども御答弁申し上げましたが、事務当局にこれについての新しい考え方なりルールというものを策定するようにということを命じてあるわけであります。問題は、先生のおっしゃるような考え方もわかるわけでありますが、今日までのところ、率直に言うて治験というものは、当該医療機関の機関としての仕事としてやっていたのじゃないという観念が底流にあったのじゃないかと思うのであります。言うなれば、団のサイドワークだったりアルバイトであったり、しかも、それが今度は逆に医療機関の機関を使い、あるいは患者を使いといったようなことであり、リコメンデーションはそういう医療機関の名においてやる、そこのところはどうもまことに継ぎはぎだらけのような感じがいたすわけでありまして、先生のおっしゃったようなことをいろいろ踏まえて、どういうことが一番明朗であり、また一番合理的であるかということについて検討をいたさなければならないということで、私、ただいま事務当局にそのことについて命令をいたし、私自身がその成案をひとつよく見てみたいというふうに思っているわけでございます。
  185. 寺前巖

    ○寺前委員 私、幾つかの新聞の社説を読ましていただきましたが、やはり社説にもいろいろ出てきております。「新薬テストの受入れ窓口を、厚生省一本にしぼり、国の責任において、国、公、私立を問わず、メーカーの名前は伏せたままで、広く全国から選んだ最適の医療機関に、テストを依頼するシステムを検討することである。」こういう社説もあります。大抵の社説は、そういうところに問題の焦点が来ているようです。私どもも、国の責任で新薬の試験を行うことが最も安全かつ有効な方法であって、そのためには国立の医薬物研究開発、薬効試験機関の設置、そしてここを中心にして大学病院、開業医などの御協力もいただいて総合的な体制をとっていくようにするということが重要だし、その結果についても公表することを義務づけさしていくという方向で抜本的に構えてもらう必要がある、大体世論は、問題の焦点はそこに来ていると思います。  私は、そういう意味で、この際に思い切ってもう一度そういう立場に立って検討される用意があるのかどうか、再度確かめたいと思います。
  186. 田中正巳

    田中国務大臣 治験の問題については、私は、相当掘り下げ、抜本的な改善策を考えなければならないというふうに思っている次第であります。
  187. 寺前巖

    ○寺前委員 私どもの立場あるいは世論の立場をよく御検討いただきたいと思います。  時間があれですが、私は、せっかくの機会ですから薬務局長さんにひとつお聞きをしてみたいことがあるのです。それは血の問題です。血液の問題です。これは一般薬品とは同じように扱うわけにいかない性格があります。そこで全体を見ると、保存血液は有効利用の成分製剤の方向が新しく、ずっと打ち出されてきたと思います。これは血液の成分を有効に使おうというのですから、非常に大事なことだと思う。ところが、この成分製剤の中で赤血球、血小板、白血球、血漿と分類をするわけだけれども、せっかくとった血を二十四時間保存だということで、赤血球をほかしてしまうというもったいないことをするという投書が、私のところに血液のセンターのところから来ました。調べてみました。そうしたら、制度的にそうなっている。せっかくの人の血を、役に立つのに何で守ることができないのだろうか、ほかさなくても。外国では二十一日間ちゃんと保存することができるようになっておって、制度的にもそうなっている、日本の分野ではできないものなのだろうか、なるほどと私も思いました。だから、こういう赤血球をせっかく成分製剤をしたのだから、それをちゃんと保存できるように、そのために血は国がやはりめんどうを見て援助をして保存する体制と、それから制度的にも二十四時間でほかさなくてもいいようにすべきではないか、これが一つの問題です。  もう一つの問題、今度は大都市を中心にして日赤の皆さん方が血液を集めて、そして国民的な献血で支えられている。ところが、農村部へ行くとめんどうを見てもらえないということで、自治体がやむを得ず責任を負ってセンターをつくっているところがあります。ところがそれは、私の地方にもあるのですが、経営が成り立たないという問題があります。たとえば私の方の丹後の与謝の海というところに血液センターがありますが、三千三百八十五万六千円という費用が年間かかっている。ところが、交付税で見込まれているのは千二百万円だ。これは人数が少ない地域ではやむを得ずそういうふうなことになっていくという問題があると思う。だから、こういうような過疎地におけるところのめんどうに対して、国がやはり一定のもう少し責任ある援助の方法を考えるべきではないか、この二点についてお聞きして質問を終わりたいと思うのです。
  188. 上村一

    ○上村政府委員 血液の問題は、昭和三十九年以来とにかく献血によって血液を確保するということに力を注いでまいったわけでございます。その間、欧米諸国では、いまお話しになったように成分製剤とか分画製剤の技術が非常に進歩してまいりまして、血液の有効利用ということについて日本が相当おくれをとっておるということは事実でございます。したがいまして、血液の対策というのはこれからやらなければならない事柄が相当あると思うわけでございます。その中で、いまお話しになりましたように、最近成分製剤の需要が徐徐に高まってまいったのでございますが、医療機関の側で必ずしも使わない、使いなれないという事情がございましたり、それから、さっきお話しになりましたように、たとえば赤血球の成分製剤ですと保存期間が二十四時間でございますから、せっかく血漿と赤血球とを分けまして、血漿の方は成分製剤として使いましても、残った赤血球の方は、仮に成分製剤としてつくりましても二十四時間しかもたない、需要がそれほどでもなかったということで捨てた事実はございます。これは非常に残念なことだと思います、ことに献血によるものでございますから。  そこで一つは、これからそういった使用されない成分については、冷凍等の手段を講じましてできる限り保存期間を長くするようにしてまいりたいと思っております。御指摘になりました赤血球の成分製剤、目下のところ保存期間は二十四時間でございますけれども、容器等の改善によりまして二十一日くらいまでは延ばせるのじゃないかというふうに私ども思っております。  それから、第二の過疎地域の公立の血液センター、いま日本の血液の大部分というのは、御案内のように日本赤十字社の血液センターで供給しておるわけでございますが、六カ所だけ公立のセンターがあるわけでございます。そして私ども、血液の代金を決めますときに、日赤全体の平均の製造原価をもとにして決めますので、小規模のところは勢い割り高になるという事実も承知しておるわけでございます。現在、そういったところにつきましては、まだごく少額ではございますけれども、財政調整費のようなものを補助してまいっておるわけでございますが、お話しになりましたように、そういった公立の血液センターを今後どう持っていくか検討しながら、必要な経費を確保するようなことについて国としても検討してまいりたいというふうに思っております。
  189. 寺前巖

    ○寺前委員 もうお約束の時間が来ましたのでこれで終わりますが、人間の大切な血のことですから、もっとよく研究をしてもらうことと、それから窓口をつくって——心臓の手術をする人なんか血を集めるのが本当に大変なんですよ。     〔竹内(黎)委員長代理退席、戸井田委員長代理着席〕 そういうことに対しても、国がもっとめんどうを見るということについてさらに研究してもらうことを要望して発言を終わりたいと思います。
  190. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 田中美智子君。
  191. 田中美智子

    田中(美)委員 盲導犬のことについて質問したいと思います。  中部盲導犬に次のような手記が寄せられておりますので、私が話すよりそれを読んだ方がよくわかると思いますので、部分的にちょっとだけ読み上げてみたいというふうに思います。  玉賢史郎さんという方の手記ですけれども、「嬉しいことは、四十二年に人生の中途で失明以来、一人で外出など思いもよらず、何時も家族あるいは友人に「ちょっとすみません」と一声かけて介添を頼んでいた私が自由に外出できたことです。晴眼者と同等のスピードで歩けたということです。今では生きた杖というより、むしろ人生の良き友という感じが致します。」こう言っています。また山田弘さんという方は「私とケルン」ケルンというのは犬の名前です。「ケルンとの共同生活が、あと何年続くものか私には予測出来ないが、この人と犬との信頼感を、私はケルンとの生活が続く限り大切に守っていきたいと思う。また私はこの動物との素朴で純粋な気持を持ってこれからも多くの人と接していきたいと思う。」こういうふうに言っていらっしゃいます。本田敏子さんという方も「ハッピーは」ハッピーは犬の名前ですが、「ハッピーは私に本当の自由を教えてくれたのです。目的があり、しかた無く歩くことは有っても、自由気ままに散歩をするなどといったことは、到底ありえませんでした。ハッピー、明日のお休みは、また地下鉄に乗って熱田の奇年の家に行きましょうね。」こういうふうに喜びを書いております。それからもう一つは、田中博澄さんという方ですけれども、「現在私は出張治療の患者を三軒持っている。私はこれらの家々を定期的に廻るのである、もちろんジョーと共に。出張治療と言えば、一人歩きのできない私には最も苦手な仕事であった。まず付き添ってくれる家族の都合を聞き留守番を頼み、留守中の雑事の打ち合わせ、そして迎えに来てもらう時間を決めなければ等、まったく煩わしさが先に立って、つい敬遠ということになってしまうのである。」それからもう一人だけ。これは中村進さんという方の手記です。「今池の交差点へ来た。私は郵便局はこのあたりだなと思う所で犬を止め「ドアー」と命じた。」犬に対してほとんど英語で言っているようです。「「ドアー」と命じた。左右をせわしげに見回すナチ」ナチがこの犬の名前です。「ナチの様子がハーネスをつたわる。と、ナチはツツッと歩き出し、Uターンしてドアーの前でピタリと止った。中に入るとそこはまさしく郵便局であった。私はなんなく用をたして外に出た。少し北へ歩いて「カイダン」」これは日本語ですね。「「カイダン」と命じた。トントンと降りて左へ曲ると地下商店街である。もうここは二、三度来ているのでナチは心得顔に歩を進めて長崎堂の前に止った。「いらっしゃいませ」何時もの声がにこやかに迎えてくれる。店員はウインドウの中の品を説明してくれた。失明後の私に自分で土産を買う楽しさもナチは与えてくれた。」  私は、この手記を読みまして、これはほんの一部ですけれども、何とそこには生き生きとした人間の生きる喜びがあふれているだろうかと胸を打ったわけです。またそれだけでなくて、田中さんのように実際に職業を持つということ、職場を広げていくということにもこの犬が大きな役割りを果たしているということを知りました。  大臣にぜひ読んでほしいと思いますことは、柏木保行さんという人が「ベルタおいで」という本を書いています。そこにありますので読んでいただきたいと思いますけれども、盲導犬はゴーとかカムとかドアとかいう言葉を約三十近く覚えて、本当に人間の目として驚くほどの役割りを果たしていることが生き生きとこの木に書かれています。しかし残念なことに、こういうものに対して——犬はまさに盲人にとって目であり、補装具であるというふうに私はこの本を読んで思ったわけですけれども、この補装具である犬に対して国の補助金はゼロである。やっと最近、自治体で補助金を出すところも出てきている。ほとんどが人々の善意に支えられて、全国の六つの協会が何とか細々とこの仕事を続けているというのが現状です。これは前置きになりましたが、そのためにもぜひこの本を大臣に後で読んでいただきたいと思います。  昨年度、厚生省は千四百万円の五十年度の概算予算をお組みになりましたけれども、これが大蔵省で切られてしまった。それに対してどのように大臣は努力をなさったのか、そしてまた来年度の概算予算になぜこれが再び組まれていないのか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  192. 翁久次郎

    ○翁政府委員 盲導犬の実態についてただいまお示しのありましたことについては全く同感でございます。  御指摘のように、盲導犬が有効に使われますと、人と犬とが本当に一体となって精神を通わせることになるわけでございます。ただ、御承知と思いますけれども、この場合、非常に限られたと申しますか、盲導犬と人とが本当に適合するということ、一年近い間の訓練を要するということ、それから盲人の方がやはり一月ぐらい起居をした上で生活をともにするというようないろいろな条件があるわけでございます。  ことしの概算要求を出すに当たりまして、身体障害の福祉の上でいろいろな試みをする一環として要求をしたわけでございます。ただ御承知のとおり、来年の財政状況はきわめて厳しい状況にあるわけでございまして、私どもといたしましては、こういった理想的な姿での盲人と盲導犬のあり方というものが広く全国に普及することは、もちろん望ましいことでございますけれども一つの前提となります現在の日本の都市の環境、特に身障の方々にとって必要な前提となるべきいろいろな福祉の措置がございますので、厳しい状況等も勘案いたしまして、来年度の概算要求には組まなかった、こういう次第でございます。
  193. 田中美智子

    田中(美)委員 全くいまのは答えになっていないと思うのです。予算が厳しいから福祉を切り捨てるという考え方ですか。そういうことであれば、これはもう主客転倒していると思うのです。厳しいから、また情勢が——自動車もたくさん走るし、看板などいろいろなものが立っている、ますます障害者が歩きにくい状態というのが出てきているからこそよけいに福祉は要るのではないですか。それをことしになってこれを切るということは——去年これを組んだということで非常に大きな光明として楽しみになさった方たちが、大蔵省で切られた、ことしは何とかして通るのではないかという期待を持っていたのに、厚生省は、翁さんは同感であると言っていながら切っているということは、これは同感だというふうには思えないのです。これをもう一度つけるという考え方はないでしょうか、簡単に述べてください。
  194. 翁久次郎

    ○翁政府委員 財政状況が厳しいから福祉を切り捨てるという考え方はございません。ただ、いろいろわれわれが考えております福祉予算の中で、やるべきことはまだほかにもたくさんあることは御承知のとおりでございます。そういった中で、基礎的な環境づくりと申しますか、あるいは日常用具であるとか、そういうものをやはりどうしてもわれわれとしては獲得していかなければならない、そういった彼此勘案した中で、いまの盲人と盲導犬のありようというものは、一つの理想の姿としてとらえてはおりますけれども、当面、来年の要求条項としては無理ではなかろうか、こういう判断に立ったということを申し上げているわけでございます。
  195. 田中美智子

    田中(美)委員 昨年はその必要を認めて、わずかでも千四百万組んでおきながら、ことしになってその必要はなくなったということは非常におかしいと思うのです。まして、いま非常に問題になっております障害者の雇用率の問題、いま一・三とか一・六とか言っているものを、来年度から二%に引き上げようとかいう話が出ているわけです。そういうときに、もしこの盲導犬を全盲の方たちが持つことができれば、障害者の雇用率は上がるということになっていくわけです。そういう観点からしてもこれは切るべきではなかった、ことしは必ずこれを来年度の概算予算にはもう一度組むべきであったというふうに私は思いますが、大臣のお答えを聞きたいと思います。
  196. 田中正巳

    田中国務大臣 正直に申し上げますけれども、もううそを言ってもしようがないのですが、この問題について予算要求があって、そして今回出なかったということについては、田中さんの質疑要項を見て初めてわかったわけでありまして、いかぬじゃないかとおしかりを受ければそのとおりでございますが、正直に申し上げますとそういうことでございます。  そこで、その後いろいろ聞いてみたわけであります。これについて去年概算要求したときに財政当局とどういうやりとりがあったのか、こういう話も聞いてみましたが、やはり盲人すべてにできるだけ普遍的にメリットを与えるような政策としてはほど遠いのじゃないかという御議論があったということであります。つまり、全部の盲人に何がしかのメリットが与えられるようなものを選択してこい、これではメリットを受ける人は一部の限られた人じゃないか。それでもいいという御議論もございます。しかし、そういう受益をする盲人が限られた人であるということから、もう少し考えたらどうだということを言われまして、去年の予算折衝では残念ながら見送らざるを得なかったということであります。したがいまして、これについてはいま少しく検討をさせていただきたいと思います。
  197. 田中美智子

    田中(美)委員 私は大臣にお願いしたいのですけれども、盲人の方たちはこの盲導犬を非常に望んでいるわけです。ですから、去年組まれたということがどんなにか大きく——厚生省がわずかだけれども理解してくれているのではないかということで光明を見出したわけです。それがことしはそのような無責任な姿で、私の質問が出るまでは気がつかなかったという状態では、私は障害者に対して余りにも痛ましいという感じがいたします。そういう観点からしましても、これはぜひ大きな検討を加えて、この予算を組んでいただきたい。  いま大臣は、すべての人に行き渡らないからという議論があったというふうに言われましたけれども、そういうことを言えばすべてのことに当てはまると思います。たとえば三木総理が目玉目玉と大騒ぎしました重度障害者に対する介護手当の四千円にしても、四十万以上の人たちに対して全部には渡っておりません。三十万くらいの人にしか渡っていないわけです。そうすれば、やはりすべての人に普遍的というふうにはいかないわけです。介護手当の場合には、お金が四千円出るということは実に簡単明瞭にわかることです。しかし、盲導犬がどのように盲人の人生を、先ほどの手記のように生き生きと明るくするか、そしてまた職場開拓になるかということはPRされていないわけです。ですから、よくわからなければ要求さえ出てこないわけです。介護手当は、要求がはっきりと出てきているわけです。そういう意味からしても、理想の姿ではなくても、一人でも多くの人たちに盲導犬のことを理解してもらうためにこの予算を組んでいくということが、すべての要求する人たちに盲導犬を与えていくという道につながっていくのだ、こういうふうに考えていただきたいと思います。  名古屋市、愛知県などでは、地方自治体が赤字赤字という中で、今年度から二百六十五万円も出しております。これは犬がわずか五頭です。中部盲導犬だけでも五十頭の申し込みが来ているわけです。これを育てるのは大変ですね、一匹六十万もかかるわけですから。わずか五頭のお金です。ほんのわずかですけれども、それでも赤字の地方自治体が出しているのに、国がこれを一銭も出さないというのは余りにもむごい姿ではないかと思うわけです。  大臣は、検討なさるとおっしゃいましたので、これは今後ともぜひ検討をして、一日も早くこの予算が組まれるように努力していただきたいと思うわけです。  それで次に、運輸省にちょっとお伺いしたいのですけれども、自動車運送事業等運輸規則三十六条十二号に物品持ち込み制限というのがありますが、この中に「愛玩用の小動物を除く。」というふうにあるわけですね。それで、いま国鉄や私鉄などでも盲導犬を自由に入れるということはしているようですけれども、私は、この規則を改正していただきたいというふうに思うわけです。この規則は大臣の腹一つでできるわけですので、この「愛玩用の小動物」のところに、盲導犬を除くという形でこれを入れさえすれば——あちこちでトラブルが起きているわけです。せっかく盲導犬をもらっても、十分にそこで理解されていないので汽車に乗れない、やれバスに乗れない、電車に乗れない、地下鉄に乗れないという形でトラブルが起きているわけです。それぞれのところで解決が済むところはあるわけですけれども、そうでないところがあるというので、私は、この規則をきちっと改正していただきたいと思いますけれども、運輸省としてはいかがでしょうか。
  198. 山下文利

    山下説明員 ただいま先生から御指摘いただきました点は、まことにごもっともではございます。ただ数年来、こういった問題につきまして非常に御要望が強いものでございますので、この省令にかかわらず、乗り合いバスにつきましては、一定の条件はございますが、盲導犬の乗車を認めておるのが大部分でございます。ただ、一定の条件と申しましたのは、たとえばラッシュアワーで非常に込んでおるときとか、においのするような場合とか、そういった場合には限定さしていただいておるのが大部分でございます。そこで、盲人の方の保護、福祉のためにこういった制度を拡張するのはまことにごもっともでございますが、ただ、他の乗客の御協力、御理解とのバランスにおいて実施されるべきであろう、そういう意味でただいま申しましたような一定の限界はあろうかと思います。  そういう意味で、ただいま省令を改正してというお話がございましたが、これは十分検討はさしていただきますが、ただ、省令を改正する場合には、ただいま申しましたような条件を明確にするということでかえって非常にぎこちなくなる、それよりはむしろただいまのようなやり方で、他の乗客の御協力をいただいてどんどん拡張していく、そちらの方がむしろ現実的であり、ベターではあるまいか、そのように考えてございますが、御指摘の点については十分検討さしていただきたいと思っております。
  199. 田中美智子

    田中(美)委員 ほかの乗客の理解を得るといっても、これはPRしなければならないので、やはりこの規則を変えることが一般の方たち理解していただけることだというふうに思いますので、ぜひこの検討をしていただきたいと思います。  そこで、運輸省で出されております、おたくでいただいた路線バスの盲導犬の添乗のことですね。この中に盲導犬に口輪をはめるようにというふうな指導をするということが書いてありますけれども、これは国鉄でも私鉄でもやっていないことです。それで、いままでにそういう事故はありませんし、これを読んでいただければよくわかるわけですけれども、かみついたりすることは一切ないわけですね。そして御存じだと思いますけれども、去勢された犬というのは弱いし、そして暑いバスの中にじっと座って、乗客にときどきしっぽや足を踏まれている、そういう中で口輪をはめているということは、犬にとって非常に苦痛なわけです。絶対にかまないように訓練されているから盲導犬なんですので、そういう事故も起きていませんので、むしろこうした口輪をはめさせることが周りの乗客に対しては危険感を与えているし、国鉄でも私鉄でもやっていないことですので、ぜひこの路線バスの盲導犬添乗についての口輪をはめる指導を削っていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  200. 山下文利

    山下説明員 ただいま御指摘の点、これまたまことにごもっともだと思います。電車の場合はそういうのをつけなくてもすでに乗せておる例、これはただし時間帯とかそういう意味で若干の制限はあろうかとは思います。ただ、電車とバスが違いますのは、電車の場合はかなりスペースが広いのでございますが、バスの場合には、地方に参りますと通路だけしか通れないような場合もございますし、それから停車区間が非常に短いので乗りおりが非常に激しいという面もございまして、そういう意味でたとえば御婦人の方あるいは子供さんなどが、そういう犬は大丈夫であるということはわかりながらも、感覚的に非常に恐怖感を感じるという面もなきにしもあらずでございますので、その辺は一律に全部外すということにするのか、あるいは時間瀞を限りまして、たとえばラッシュアワーは避けて、それ以外については口輪はもう外してもいいというふうに弾力的に扱っていくべきじゃなかろうかとは思いますが、ただいまの御趣旨については十分これを理解しまして対処していきたい、このように考えてございます。
  201. 田中美智子

    田中(美)委員 ぜひこの点は、いままでに経験済みのものですし試験済みのものですので、十分に検討していただいて、一日も早くこの口輪を外すということをしていただきたいというふうに思います。  盲導犬の問題は、単なる千四百万のお金というだけでなく、施設の問題にしても何にしてもまだ非常に不十分だということがあります。しかし、時間がありませんので、今後とも盲導犬に対する理解を大臣自身がもう少し深めて、そして十分の予算を組み、盲人のために全力を挙げて福祉を増進させていただきたい。まさにこれは補装具だというふうに私は思いますので、そのようにしていただきたいと思います。  最後に、大臣に直接お聞きしたいと思いますが、看護婦の車送りのことです。これは七十五国会のことしでしたが、予算委員会、二月二十六日に私が質問しましたときに、大臣はこのようにお答えになったわけです。去年大蔵省がこの予算を概算予算の段階で切りましたときのことについて、大臣は私に対してこのように答えていらっしゃいます。ちょっと大臣よく聞いていてください。「車送りとかタクシー代の予算要求をあきらめるときに、」これは概算予算を大蔵省が切ろうとしたときですね。「予算要求をあきらめるときに、私も実は非常にのどに突っかかった。どうも予算要求の詰めが、理論武装が少し甘かったんじゃないかということで、残念ながらおりたわけですが、いろいろ事情を聞きますと大変必要なことである、もっともなことだと思いますので、その方向に努力をいたしたい、」このように大胆が私に答えていらっしゃるわけです。それで、ことしも六億七千万円ですか組まれたというふうに聞いておりますが、今度は理論武装を甘くなくしているのか、あっさりとあきらめるようなことはないのか、どのような態度で大蔵省とも折衝を進めていかれるのか、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  202. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 現在事務的に折衝中でございますので、その経過について御説明申し上げたいと思います。  一応予算要求の形といたしましては、ただいま先生御指摘のように六億七千万を、一千円を限度といたしまして実費を支給する、かような形で要求をいたしておるわけでございますが、現在まで折衝の段階におきまして、一律のそういう現金支給の形がいいのか、いわゆる実態に応じて、車を提供する場合もあると思いますし、また現金を支給する場合もあると思いますが、そういった点につきまして、なお現在細かい点につきまして詰めを行っている段階でございます。
  203. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣は、理論武装が前は甘かったと言うが、今度は理論武装はかたくしておりますでしょうか、お答え願いたい。
  204. 田中正巳

    田中国務大臣 私も予算委員会で先生に答弁したことは鮮やかに覚えておったものですから、これは是が非でも予算要求を起こさなければ食言になるぞ、こういうことでいま先生のお挙げになったような金額で予算要求しているわけであります。これについては私もその後関心を持ちましてその後の大蔵省の説明等のときにどういう詰めをいたしているか聞いておるわけでございますが、こうした概算要求の中から合理的な線を見出しまして何とか物にいたしたいというふうに思っているわけであります。したがいまして、こうした形にそのままで実現をしないで、別な形というか、こうした金額だけじゃなしに、現実に実質的に夜勤の看護婦さんが車に乗っておうちに帰れるようになればよろしいのでありますから、そうしたことについて応用課題がいろいろあるならばそれも検討してみる、いずれにしても実現をいたしたいものだというふうに思っているわけであります。
  205. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣のその決意が必ず成功するように努力していただきたいと思います。そこで、この間質問しましたときにやはりちょっと出ましたことで私、不安に思っておりますのは、いま大臣も石丸さんもおっしゃいましたように、何しろ夜中に看護婦さんたちが自宅に帰るということが自分持ちにならないようにしてほしいわけですね。この間の質問のときにどなたか政府委員の方から、夜泊まるところをつくるというふうな話がちょっとありましたが、それは拘束をすることになりますので、拘束するならばこれは賃金の中に入りますので、これと車送りとは絶対違うということをはっきりと、理論武装の手助けとして私はいま言っているわけですけれども、そういう考え方の方に間違っても行かないように、タクシーになればタクシー代と済んだら車で必ずすぐに自宅へ帰れるような状態をつくるというふうにしていただきたい。そこのところを間違いなく、この車送りの問題を来年度は必ず成功させるように全力を挙げていただきたいというふうに思います。よろしいですね、大臣。
  206. 田中正巳

    田中国務大臣 車でおうちへ帰れるようにということでございますから、われわれはその目的に従って大いに努力をする決意でございますので、先生の御趣旨拳々服膺して予算折衝に臨みたいと思います。
  207. 田中美智子

    田中(美)委員 ではお願いいたします。質問を終わります。
  208. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 岡本富夫君。
  209. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に厚生大臣に。実はこれは昨日、環境保全並びに公害対策委員会で私が質問して、結局結論が出なかったのですけれども、その問題は何かと申しますと、一昨年問題になりました魚の水銀の問題なんです。これは厚生省で四ppmという暫定基準を決めておるのです。水俣病などを防ぐための一つの決め手だということで決めておるわけでありますけれども、ところがマグロ、スズキ、こういうのは野放しになっておる。三十ppmあるいは二十ppmという大きな数値が出ておりましても、これはもう野放しだ。なぜマグロとかスズキが野放しだと言いますと、それは天然汚染だからだ、こういうような見解らしいんですね。  そこで、鹿児島湾の中でいま漁業規制されておるのがタチウオ以下約七種類、イカなんかもそうなんですが、この鹿児島湾の水銀汚染の原因というものを調べますと、これは最後見解というのが環境庁から出ておるわけですけれども、桜島の火山の結果だ、そこに原因があるのだ、ということは、付近にそうした人工汚染をする工場もないというところから、鹿児島湾の、錦江湾というのですけれども、ここの魚は天然汚染、こういうことになるわけです。片一方のマグロあるいはスズキ、こういうように天然汚染のものは野放しで、錦江湾、要するに鹿児島湾は天然汚染ということになってここは規制が変わるということではちょっと不合理なので、昨日、この見解について、あなたの方から課長しか出なかったものですから、はっきりした答弁ができなかったのですが、これについて、やはり消費者側から、あるいはまた人の命を守る側から見れば、これは大事なことは間違いない。しかし、こういった同じ天然汚染でありながら差がある。これの解明がはっきりできてない。しかも鹿児島湾の桜島の火山というのは、もう何百年も前から出ておるわけです。したがって、鹿児島県ではそれをたくさん食べておるわけですから、水俣病にかかっている人がいればこれはあれですけれども、ほとんどない。県の調査によってもないということですから、人工汚染による場合と天然汚染による場合と、これははっきり立て分けをしなければ漁業者の方も困っておるわけです。この点について厚生省のはっきりした見解と申しますか、あるいはまた、いま現在どうしても見解が出せないというならば、早急に試験し、あるいはまた検討し、いろいろなことをして結論を出していただかなければならぬ。このままでは鹿児島の漁業者というのは、ちょうど真綿で首を締められているようなものですね。こういうことですが、この点についていかがですか。
  210. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生御指摘の鹿児島の海の魚の水銀の点について、私どもいろいろ伺っておるわけでありますが、いま一つ先生御指摘の天然の水銀と人工の水銀、こういう問題を御提起いただいたと思いますが、現在のところ、天然の水銀と人工の水銀によるそれぞれの毒性が違うのかどうかということにつきまして、まだ学門的にはっきりした答えが出ておらない状況でございます。そういうことが魚の中に含まれる水銀の毒性ということに非常に深く関与するという、天然と人工ということがわかればいろいろと考えられることもあると思いますので、この点についてはいろいろいま学門的にも検討が進められておる段階でございます。そういうことでございますので、先生もいますぐとは申さないとおっしゃっておられましたが、私どもそういう研究の結果を十分踏まえていきたいと思います。  ただもう一方、現在、国民の中でこういった金属等によります毒性についてのいろいろな考え方が大変厳しく考えられておられる段階でございますので、現在すぐこれをどうこうということは、いろいろ国民的な皆様方の御理解がなければならぬかと思いますが、いずれにいたしましても、この天然、人工の問題について今後、いろいろ学問の発展を見まして、十分検討させていただきたいと思います。
  211. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういうことですから、やはりこれははっきりさせるというのが厚生省見解になるわけです。ところが、厚生省見解が結局はっきりしない。まだ学問的にもこうだということなんでありますから、こういった鹿児島湾の方の魚なんかの漁業者に対する補償といいますか、そういうものを閣僚の一人として農林大臣とも相談してよく検討し、厚生省見解が出るまでは考えてやれるように、これはあなたの所管じゃないけれども、ひとつ閣僚会議で相談をしてもらいたい、こういうふうに要求しておきたいと思うのですが、その点についていかがですか。
  212. 田中正巳

    田中国務大臣 急な御質問でございまして、私いま初めて聞きましたが、いま言うとおり、人工の水銀と天然の水銀の区別が学問的につかない、また人間に対する毒性といったようなものについても、これが区別できるかできないかよくわからないということでございます。実態をよく私も把握し、それに対処していろいろと政府部内で考えなければならぬということであれば、これはまた主管省とも相談することについてやぶさかではございません。
  213. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは向こうの方の鹿児島の漁連からもたびたび陳情にも来ておるし、厚生省としてもわかっておるはずなんです。しかし、いま大臣が閣僚の一人として検討して相談すると言うのなら、これは了承しておきましょう。これはぜひひとつお願いしておきます。  そこで、本論に入りますけれども、最近、ノリとかあるいはお菓子の中に入っている乾燥剤によって幼児の失明事故が各所で起こっておる。最近は、消費者意識といいますか基本的人権といいますか、そういうところから、各所に消費者センターをつくったりしたために、こういったものが浮き彫りになってきたのではないかと思いますが、一つの例をとりますと、兵庫県伊丹市の阪上敏郎さんの長女淳子ちゃんですか、この方は菓子かんに入っていた乾燥剤を——一歳と二カ月らしいのですが、これを取り出して口でかんだ。ところが袋が破れて目に入った。そして現在は、眼球を痛めて視力が回復の見込みがないとも言われておる。あるいはまた、足利市の石坂正満さんの三男、正樹ちゃんというのですか、この方は二歳ですが、やはり駅前で買ったポップコーンの乾燥剤が正樹ちゃんの目に入った。すぐ医者に行ったが、左目が失明という診断を受けたとか、あるいは佐世保の堀本芳高さんの長女、美由紀ちゃんと書いてありますが、この二歳のお子さんも、やはり乾燥剤の紙袋をもてあそんでおって、袋が破れて顔にかかって右眼球を痛めた。その他京都でも、子供が乾燥剤を入れた袋を投げて遊んでいたところが、寝ている赤ちゃんの顔に乾燥剤がかかって、同じように目にけがをしたというような実例があるわけでございますが、このような乾燥剤、これはやはり非常に必要なものであると思うのですが、しかし、この乾燥剤について、厚生省の方も恐らく消費者センターあるいはその他からもいろいろ問い合わせあるいは要求がきておると思うのですけれども、これについてどういうように考えておるのか、またどういう対策をするのか、これをひとつ明らかにしておいていただきたいと思うのです。まず厚生省から聞きましょう。
  214. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生御指摘いただきました、過去に乾燥剤の袋が破れましてそれが赤ん坊の目に入って、赤ん坊の目に傷害を与えるという事件が幾つかございました。これは私どももよく承知しておりまして、まことに残念な出来事が起こったと思っております。  ただ、御承知のように、私どもの取り扱っております食品についての物の考え方といたしますと、口から入るものということで食品衛生というものは考えておるわけでございますので、この乾燥剤が目に入るということは、一応は食品の問題ではないというふうに考えられるわけでございます。ただ、これが食品のすぐそばに存在している物質からこの問題が起こるということでございますので、これにつきましては、やはり十分そういうことの起こらないような指導をしなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。  現実に私どもが行っておりますのは、この乾燥剤の袋入りをつくるメーカーの方々にお話をいたしまして、そういうメーカーで一つの協議会といったようなものをつくって、そこで破れないような袋をつくるということを研究していただき、そしてその破れない袋を今後使用するということによりまして、こういった事故ができるだけ起きないようにするということを強力に指導してまいりたいと思っているわけでございます。そのような協議会は近く発足するというような段階に現在立ち至っているというふうに聞いております。  以上でございます。
  215. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産省にお聞きしますが、通産省はこのような乾燥剤の使用基準または規制基準というのをつくっておるのですか、いかがですか。
  216. 後藤宏

    ○後藤説明員 お答えを申し上げます。  私どもの課で土壌改良剤といった関係で石灰を所掌しておりますが、先生のいま御指摘のような姿で石灰の製品がいろいろ不幸な事例を発生しておるということを私ども耳にいたしましたのが九月でございました。直接的な問題もございますので、石灰の生産者団体を通じまして、乾燥剤のメーカーと接触を持ったわけでございます。  そこで、私どもわかりましたことは、これらの乾燥剤のメーカーと申しますものは、一番の大手のメーカーが資本金一千万円、従業者数も百四、五十名というもので、それを筆頭にいたしまして下は零細家内工業に至るまで、ほぼ四十ぐらいの企業があるやに伺ったわけでございます。私どもといたしましては、このような事例が今後続発いたしますことは非常にまずいことだと考えておりまして、何とかこういう事故の再発を防ぎたいということで、とりあえずこういったメーカーによる組織化をすることが第一であるということで、実は日本石灰乾燥剤協議会という協議会の設立を指導いたしまして、この十一月二十二日に設立の運びに至る予定でございます。私どもといたしましては、まずこの設立総会にわが課の方から担当者を派遣いたしまして、大体二点を中心とした指導をいたしたいと考えております。  その第一の点は、こういった問題が起こりましたのは、いまの厚生省サイドからのお答えにもございますように、非常に包装の袋が弱いといったことにも起因いたしますので、まず乾燥剤の包装用紙が簡単に破れないような一定の基準を設けるよう指導したいと考えておりますし、また二番目に、仮に誤ってこういったものが万が一目に入った場合に、御指摘のような失明の危険もございますので、そういった失明を起こさせませんように表示を的確にさせたい。あの小さな袋でございますが、その中に、表示の内容といたしましては、使用している原材料、これはたとえば生石灰であるということをはっきりさせますし、二番目に、誤って目に入った場合にはすぐ水で洗うようにしていただくという趣旨の表示をさせたい、こう考えている次第でございます。
  217. 岡本富夫

    ○岡本委員 消費生活用製品安全法という法律がありますね。この第三条に「主務大臣は、特定製品について、主務省令で、一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生を防止するため必要な品質の基準を定めなければならない。」こういう条項があるわけですけれども、この消費生活用製品安全法の運営の上から、どういうようにあなたの方は基準をつくるのか、あるいはまた規制をするのか。ただ、業者の皆さんに袋だけ破れぬようにしてくれというようなことだけでは、またまたこういう事故が起こるのではないか。したがって、この点についてやはり一つの基準というものを示さなければならないと私は思うのですよ。そうでないと、みんな業者任せで責任は業者、われわれは指導だけしました、それじゃ官庁として余りにも足りないと思うのですが、この点いかがですか。
  218. 内田禎夫

    内田説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘になりましたように、消費生活用製品安全法におきましては、特定製品ということで政令で指定いたしました製品につきまして、主務大臣が安全基準を定めるということになっております。そしてその安全基準に基づきまして非常にきつい規制を課することになっておるわけでございます。  ただ、この消費生活用製品安全法によりましてどういう製品を指定できるかということでございますけれども、ここに法律の定義がございまして、この法律上消費生活用製品と申しておりますのは、法律の定義によりますと「主として一般消費者の生活の用に供される製品」ということになっております。そしてこの「一般消費者の生活の用に供される製品」というところで、この法律の解釈といたしましては、法律ができましたときにいろいろ御議論、国会でも御審議いただきまして統一されております解釈によりますと、工業製品でございまして、そして独自に価値を持っておりまして、一般消費者が生活の用に供するという目的で通常の市場で一般消費者に販売されているというようなものを指定していくのだということになっておりまして、いろいろな製品の部品でございますとかあるいは原料でございますとか、そういうものには直接適用しないというような形になっておりますので、この法律によりまして消費生活用製品ということでただいま御指摘の乾燥剤を指定して規制していくことができるかどうか、これは法律上若干疑義がございまして、私ども検討はしておるわけでございますけれども、法律論として少しむずかしいのではないかというふうに考えております。  先ほど化学肥料課長の方から申し上げましたように、法律でやるかどうかというのは、これはもちろん法律でやるのが一番きちっとしているわけでありますけれども、こういった乾燥剤のように直接法律の対象として行うことがむずかしいものにつきましては、業界の自主的な基準ということを定めて、それに基づいてやっていってもらうということで行政指導を強化してまいりたいというのが、ただいまの私ども通産省としてのポジションでございます。
  219. 岡本富夫

    ○岡本委員 この第二条に「この法律において「消費生活用製品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品」とあります。乾燥剤は一般消費者の生活の用に供されぬわけですか。全部でどのくらい出てますか。これは私、聞きますと年間三十億袋ほど出ているのでしょう。そうすると、もう各家庭には定着しているものじゃないでしょうか。しかも、これは法律で政令委任しておるんですからね。これは通産省で相談をして、こういうのはこう明示してこうだというのをきちっとしてあげれば、業者の方も安心してちゃんとできるじゃないですか。その点いかがですか。
  220. 内田禎夫

    内田説明員 ただいま先生御指摘のように、乾燥剤はたしか原料の生石灰を三万トンほど使用いたしましてつくっておりまして、それが非常に小さな袋でございますから、袋の数にいたしますと確かに大変大きな数量になるかと思います。ただ、これは御承知のように、いろいろせんべいであるとかノリであるとか、そういうかんの中に入れて消費者の手元に渡るまでに吸湿しないようにというような目的で食品メーカーの方が使っておるものでございますので、他の一般の消費生活用のいわゆる家庭用品的なものとは若干異なるのではないかという感じがいたします。  そして実は、私が先ほど申し上げました解釈につきましては、法律制定時にいろいろ国会でも議論がございましたし、私ども内閣法制局等ともいろいろその対象となるべき範囲を詰めまして、その結果といたしまして一応先ほど申し上げましたような解釈を持っておりますので、その辺をどう考えるかという問題でございますが、御指摘のように、それでは絶対消費生活用製品安全法で指定できないということではないと思っております。  それからもう一つは、消費生活用製品安全法におきまして、仮に特定製品として指定されるといたしますと、これはいろいろな意味での規制がございます。御承知のように、安全マークというマークを張って、張ったものでなければ売ることができないということが一番基本にございまして、そしてその安全マークを張ることができるためには、たとえば工場が登録を受けまして、その工場の一定の設備による、一定の方式による生産ということで型式承認を受ける、あるいは一品一品の検査を受けて検定を受けるというようにプロセスがいろいろございます。そしてそのために、そういう非常にきつい規制でございますので、この製品として指定いたします前には審議会での審議、それからさらに指定いたしましてから実際にその規制が行われますまでの猶予期間、これは一年三カ月ございますが、そういういろいろな非常に厳密なプロセスを経て初めて安全法が適用され、動いていくということになりますので、本件につきまして必ずしもその安全法を適用していくということが臨機応変な対策かどうかということにつきましては、私どももいささか疑問を持っておるわけでございます。  そういうことも含めましていろいろ検討いたしました結果、まずさしあたり、とにかく行政指導できちっとやっていただくということが一番よろしい方向ではないか。また相手の生産業者も、先ほど化学肥料課長から申し上げましたように、非常に零細な企業が多いのでございますから、これをいきなり法律の適用というのは、なかなか企業サイドでもむずかしい面もあろうというふうに考えておる次第でございます。
  221. 岡本富夫

    ○岡本委員 いろいろあろうと思いますけれども、やはり一つのそういった基準というものをきちんと示して、それに向かってこういうふうにすれば安全なんだという——要するにどっちかというと、私は通産省が逃げているのだと思うんですよ。そういう基準を決めたり、あるいは業者はそういう基準が決まっておれば、それに向かってやればいいんでしょう。後でぐあいが悪ければ、これは基準が悪いんですからね。その責任を負わなければならぬ、かなわぬからというので、あなたの方はどっちかというと逃げているのだ。それでぐあいが悪いと、その業者が悪い、業者が悪い、こういうように言う。やはりもう少し責任を持った行政をやらなければいかぬと私は思うのです。これは少し時間がかかりそうですからきょうは検討課題にしておきましょう。  次に厚生省に。有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律というのがありますね。この第四条、この上から乾燥剤についての使用基準、こういうものを考えることができないのかどうか、これは一遍検討なさいましたか。
  222. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 環境衛生局企画課長をして説明させます。
  223. 此村友一

    ○此村説明員 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律第四条でございますが、この問題につきましては、この家庭用品と申しますものは、一般の消費者に対しまして販売をされる、こういうようなものについてこれを指定する、こういうような考え方でございます。そういう意味におきまして、先般問題の生じております事故につきましては、現在の法体系の中で考えているものとは異質のものであろう、こういうような考え方を持っている次第でございます。
  224. 岡本富夫

    ○岡本委員大臣 お聞きのように相当数の被害が出ておる。しかしこれは法の盲点ということなんですね。今後この行政のあり方について大臣は、いま皆さんの答弁を聞いていてどういうようにお考えになるか、ひとつ大臣の見解をお聞きしておきたいのです。
  225. 田中正巳

    田中国務大臣 乾燥剤につきましては、これは先生のおっしゃるとおり、人間生活には最近欠くことのできないもので、やめるわけにもいくまい、かように思います。これがいかにして消費者に安全に使われるか、事故を起こさないようにするかということについて、いろいろ通産省からも私どもの役所からも説明がございました。先生の御満足のいくような御回答を得てないということでございますが、私どもとしては、できるだけ安全にこれが使われるように関係省庁といろいろ相談をいたしまして、できるだけのことをいたしたいというふうに思っておる次第であります。
  226. 岡本富夫

    ○岡本委員 やはり厚生省あるいは通産省で責任を持って業者の方にもこういうようにしてやればいいのだ、こうすればいいのだという方向づけをしてあげることが私は大事だと思うのです。  そこで、この乾燥剤の中に、安全無害な乾燥剤です、無害ですが食べられません、食べ物ではありません、こういうような表示があるわけです。ところが、やはり無害でないということも起こっているわけですが、これについて、この表示はどういうように考えられますか。
  227. 利部脩二

    ○利部説明員 私ども公正取引委員会が不当表示の規制をいたしますのは、景品表示法という法律を根拠にするわけでございます。乾燥剤の袋に書かれておりますそういった注意書きが不適正であるということが直ちに景品表示法の不当表示に当たるかどうかという点につきましては、法律論的に非常にむずかしいようでございますが、事は身体の安全にかかわることでございますので、現在の表示をもっと親切な、事故の起きないような表示に改めさせるように関係の業界を指導してみたいと考えております。  具体的には乾燥剤を使う食品の製造業界、たとえばノリとかビスケットとかそういう業界でございますが、そういうところで表示広告の自主規制の基準を、景品表示法に基づく公正競争規約という制度を利用してつくっております。公正取引委員会はその限りにおいてはその業界を監督することができますので、その関係から関係省庁の御協力を得まして適正な表示に変えるように強力に指導してみたいと考えております。
  228. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間があれですから次に農林省。ノリなんかのかんの中に相当乾燥剤が入っているわけですが、農林物資の規格と品質表示の制度というのがあるのですが、これはJASですか、この制度ではこれはいま全然入っていないわけですけれども、農林省としてはどういう見解を持っておるのか、今後どういうようにするのか、ひとつ聞いておきたい。
  229. 荒尾芳幸

    ○荒尾説明員 先生おっしゃいましたいわゆるJAS法でございますけれども、JAS法では一般的に表示を規制するということになっておりませんし、それからおっしゃいましたようにノリだとかあるいはお菓子類、そういうものは現在規格が定められておりません。対象物資であることは事実でございますけれども、現在のところは任意でもございますので規制を加えるわけにはまいりませんが、今後、乾燥剤等を使用するような食品のJAS規格なり品質表示基準が制定される時点におきましては、規格あるいは基準にそういう条件を加えていくということで検討してまいりたい、かように考えております。
  230. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで先ほど厚生省、通産省の両方から、袋を壊れないようなもっと厚いものにするのだとかいろいろと話が出ましたけれども、やはり消費者の皆さんにももっとこういうものは、特に幼児にまつわる悲惨な事故があるわけですから、よく注意するようにというPRといいますかそういうものが必要だと私は思うんですよ。それについて通産省それから厚生省の決意あるいはまたどういうようにしてPRをしてこういう事故を防ぐか、この二つをお聞きしておきたいと思うのです。
  231. 内田禎夫

    内田説明員 私どもといたしましては、通産省の消費者行政の一環といたしまして、消費者に対しまして情報提供あるいは消費者教育のためのパンフレットその他いろいろな手段は持っておるわけでございます。本件につきましても、先生御指摘のように消費者の方々自身が十分お気をつけいただくということが非常に大切なことかと思いますので、私どものそういった手段を使いましてぜひ徹底を図りたいと思っております。  一例を申し上げますと、私どもで「消費者ニュース」というものを毎月発行いたしておりまして、それ自体は一万部程度でございますが、これは全国の消費者団体それから各都道府県の消費生活センター等に相当部数配布しておりまして、そういう窓口を通じましてさらにそういう消費生活センターであるとかあるいは国民生活センターであるとか、そういう団体の御協力も得まして消費者の方々にできるだけ広くこの問題が普及されまして、注意を喚起するようにということを考えておりまして、これは今月中に早速その「消費者ニュース」に載せましてぜひ徹底を図りたいと考えております。
  232. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 厚生省といたしましても、同じようにあらゆる、たとえば都道府県衛生部等を通ずるラインあるいは食品衛生の業界を通ずるラインというようなものを通じまして消費者に十分その本質がわかるようなPRをいたしたいと考えております。
  233. 岡本富夫

    ○岡本委員 農林省はどうですか。ちょっと聞くと何かテレビなんかでも注意を促して、消費者の皆さんがこういう事故を起こさないようにというようなPRもするのだということだけれども、そういう点についていかがですか。
  234. 荒尾芳幸

    ○荒尾説明員 私ども活字としての媒体では「食と生活」というのを十万部出しておりますし、それから「みどり」というのは農協中央会を通じまして七十万部、これは県の消費生活センター、量販店あるいは消費者モニター等に配っておりますけれども、そういうものを通じまして消費者が正しい認識のもとに乾燥剤等を取り扱うように啓発を続けてまいりたいというふうに考えております。  なお、さらに末端まで徹底させるという意味では消費生活センター等からかなり下部に流れるということも必要でございますので、経済企画庁等とも連絡をとりながらテレビの媒体等も、使えればそういうものも取り入れながら啓発を進めてまいりたい、かように考えております。現在のところ、テレビ番組がございますけれども、その中に入る余地はございませんので今後検討をしてみたい、かように考えております。
  235. 岡本富夫

    ○岡本委員 時間が参りましたからこれで終わりますが、厚生大臣、特にこういう法の盲点といいますか、各所でこういう悲惨な事故が起こっておるわけですから、消費者に対するところの指導も必要だし、あるいは先ほど申しましたように破れない、またこういう事故の起こらないような製品をつくっていくように指導もしなければならぬ。いずれにしましても私の申し上げたいことは、いままでこういうことがあっても問題がないと野放しだということなんですね。何と申しましても人の命あるいはまた健康を守るのが厚生省ですから、厚生省の方で先取りをして未然に事故を防いでいくことも私は大切ではないかと思うのです。その点だけ注意を喚起し、大臣の今後の決意を承って終わりたいと思います。
  236. 田中正巳

    田中国務大臣 人の健康、生命を守る第一義的な役所は当省でございます。かようなわけで、先生の御趣旨を体しまして行政に万全を期していきたいというふうに考えます。
  237. 岡本富夫

    ○岡本委員 終わります。
  238. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 小宮武喜君。
  239. 小宮武喜

    ○小宮委員 私は、救急医療体制について質問したいと思います。  最近、救急患者のたらい回し事件が全国的に頻発しておりまして、そのたびごとに被害者の遺族たちからは、応急措置さえしてくれれば何とか助かったろうにとか、せめて包帯一本、脈の一つでも診てほしかったというようなことが口をそろえて訴えられております。したがいまして、恐らく厚生省としては、このたらい回し死亡事件あるいはたらい回し事件がどれくらいあったかは余り調査をしておらないようでございますが、大体この一年間にたらい回しによる死亡事件が全国的に何件ぐらい発生しているのか、また死亡事件はさておいても、たらい回し事件というのが何件ぐらい発生しているのか、厚生省で把握しておられればその数字をひとつ示していただきたい。
  240. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 救急医療につきましては、先生御指摘のように最近非常に世上をにぎわしておるところでございまして、非常に国民の不安、また特殊な時間帯におきます無医地帯というものができるというようなことで大きな社会問題になっておるわけでございまして、そういった救急医療体制の整備あるいは円滑な運営につきましては、毎年全国衛生主管部長会議等を通じまして、この救急医療体制づくりの推進方につきまして努力いたしておるところでございます。  しかし最近、新聞紙上をにぎわしておりますように、また、ただいま先生から御指摘を受けましたように、いわゆるたらい回し事件が起こっていることを非常に残念に思っているところでございます。  端的に申し上げまして、先生御質問のこのたらい回し事件が一体どのくらい発生しているのか、あるいはそれによる死亡事故がどの程度あるのか、そういった点につきましては、残念ながらわれわれは全国調査数字を持っていないわけでございます。この点につきましては、たらい回しという言葉自体、その定義等が非常にむずかしい点もあるのでございまして、その調査技術上の困難な問題がございまして、従来この全国調査を行っていないのでございますが、いわゆるサンプル調査と申し上げましょうか、一部地域におきましてこの調査を行っておるわけでございます。  いわゆるたらい回しといわれるような事態が起きます原因を見てみますと、まず第一に一番多いのが、やはり患者の病状等からいたしまして専門医の処置を必要とするにもかかわらず、たまたまその救急医療機関にそういった専門医師が不在であったという点、あるいはベッドがちょうどいっぱいになっていて収容できなかった、あるいは必ずしも専門の分野でない患者がかつぎ込まれた、そういった理由があるわけでございまして、四十八年中に東京都で発生いたしました数字を申し上げますと、いわゆるたらい回しとして起きました事件が三千百十四件、これは一年じゅう、東京都内でございます。その中で物理的に不可能であったという、ベッドが満床であったという事例が千三百十六件ございます。それからあとは専門医がいなかった、せっかくかつぎ込まれたけれども、たまたまその病院専門医がいなかった、こういう事例が千百七十三、この二つが大半を占めておるわけでございます。  そういった点で、このいわゆるたらい回しというものもいろいろな事例があろうかと思うわけでございまして、なお今後、そういった調査技術上の問題を整理いたしまして、この実態に応じながら必要な調査を実施いたしてまいりたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、救急医療体制の整備というものにつきまして、その基礎資料の整備につきましては、ただいま先生が御指摘のような点はさらに今後努力してまいりたいと考えております。
  241. 小宮武喜

    ○小宮委員 いまの答弁にもありましたように、東京都だけでも三千百十四件、もちろんその中には専門医がいなかったという問題、あるいはベッドがあいていなかったという問題もありましょうけれども、大きな問題は、やはり日曜日は休みでございます、いや、夜間は診療いたしませんというようなことでたらい回しをされた例もいっぱいあるわけです。たらい回しの最たるものは、大体三十五軒くらいもあったということもありますけれども、これはいま大臣も言われたように、国民の健康と命を守るのは厚生省の仕事でございますといまさっき言ったばかりですから、そういった意味で、厚生省はこれだけ大きな社会問題化しつつあるこの問題について取り組みがおくれておるのではないか。だからそういった意味では、いま言われたように、この問題についてはいまからでも厚生省が本当に腰を据えて取り組んでもらう。そのためにはいま言われたように、東京都だけの資料が出てまいりましたけれども、まだ全体的な統計を持っていないということは、この救急医療に対して厚生省の取り組む姿勢に問題があるのではないかというふうに考えます。だからそういった意味で、今後、いまからでもいいからこの問題は早急に取り組んでいただきたいということを特に要望しておきます。  総理府の世論調査の結果によっても、国民の過半数の大体五八%の人たちが、休日とか夜間急病にかかった場合、診察を受ける医師が見つからないというようなことで、救急医療に対して非常に不安な気持ちを持って生活をしておるというのが、同じ政府部内の総理府の世論調査の結果にも出ているわけです。そういうような意味から、われわれが見ましても、いままでの厚生省の言動から見ても、何かこういった問題について本当に厚生省は積極的に取り組む姿勢があるのかどうかということを疑うと同時に、こういうような国民の方々、あるいは医療関係に従事しておる方々、医療施設の方々からも、国の無責任、無策に対して批判が非常に高まっているわけです。だから、救急医療問題についての根本的なこれまでの取り組みの姿勢、今後対策をどうするのかということについてひとつ御説明を願いたい。
  242. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 救急医療体制そのものの今後のあり方でございますが、この点につきましては、非常に広範囲のいろいろな施策が重なっておるわけでございまして、来年度予算でわれわれいろいろな点を要求は出しておるところでございます。  まず非常に概括的に御説明申し上げますと、救急医療といわれるものは、大きく分けまして外科系の救急医療と内科系の救急医療、この二つに分けられるのではなかろうかと思っております。従来わが国におきまして普通救急医療といわれる場合は、いわゆる外科系の救急が主になっておったわけでございまして、特に自動車が発達してまいりまして自動車による交通災害、交通外傷というものが大きな社会問題になりまして、ここにいわゆる救急告示医療施設、告示病院、告示診療所、こういうものが出てまいったわけでございます。それでしばらく外傷について、外傷のうち特に交通外傷についての救急医療体制を整えてまいったわけでございますが、その後いわゆる社会一般のレジャーブームと申し上げましょうか、医者の方も日曜、休日には休むというような事態になりまして、内科系の疾病の救急ということが一つの大きな問題になってまいった。すなわち日曜、休日に発病いたしましても内科系の医者がいない、こういう事態に相なってまいったわけでございます。それと同時に、わが国におきまして、年齢別の人口構成というものがだんだん老齢化してまいったわけでございます。老人がだんだんふえてまいったわけでございまして、その結果、心臓疾患とか脳血管障害というような内科系の救急患者が非常にふえてきたという社会的な変化があるわけでございまして、こういった新しい事態に対応いたしまして、休日夜間診療所あるいは休日夜間病院を設置するということで、一昨年来この整備に努力をいたしている段階でございます。  さらに最近に至りまして、そういう老齢化現象に伴いまして、いわゆる心疾患のような、普通の診療所等では処置できないような内科系の救急患者がふえてきている。しかも医療というものが、医者がだんだん専門化してまいるという新しい事態で普通の医療機関では対応できない、責任が持てないということ、さらには国民の権利意識が強くなりまして、いわゆる医療事故という問題に責任追及がはね返ってまいったわけでございまして、そういう点から医師会等で、自分のところで処置できないような患者を受け取ってくれる後方病院、第二次の高度な医療をやる病院が欲しいのだ、そうしてくれなければ、自分たちがいわゆる休日夜間診療所を責任持って運営できない、こういうことが出てまいったわけでございまして、そういう新しい事態に対応いたしまして、第二次救急医療施設といたしまして、これは名前はまだ仮称でございますが、救命救急センターというものを昭和五十一年度から整備していこうということで来年度予算に要求を出している、かような段階でございます。  非常に概括的に申し上げましたが……。
  243. 小宮武喜

    ○小宮委員 いま言われることは私も理解をします。しかしながら、自治省の消防庁の調べでも、救急病院診療所、救急医療センターに運び込まれる救急患者が毎年ふえておることはもう御存じのとおりだと思うのです。したがって、運び込まれる救急患者の中に、当初この制度ができた場合には交通事故を大体対象にしておったけれども、やはり内科系統、小児科系統の患者が非常にふえてきたということも、これはいま言われるように明らかにされているわけですから、そういった意味では、従来はそういうような脳外科だとか形成外科だとか、こういうような先生のいるところを救急病院というふうにいろいろ指定しておったかもしれませんが、しかしながら、こういった疾病の構造変化というか、社会情勢が変化したということに対して、従来のような考え方での救急病院診療所ということでは対応できなくなってきたことはもう事実ですから、そういうふうな社会情勢の変化に応じて、厚生省としてはこれに対して早く取り組むべきであるというふうに考えます。  しかしながら、いま言うように一方では運び込まれる救急患者がふえていく。四十九年度だけでも百三十六万人ですね。これは十年前に比べて四・三倍にふえております。ところが、今度は逆に救急医療機関の返上が目立ってきておるわけです。運び込まれる救急患者はどんどんふえていく、一方では今度は医療施設の返上が目立ってきておる。これは昨年一年間だけでも百二十一、ことしも夏までに五十七を数えているわけですが、そういった点を見てまいりますと、わが国の救急医療体制は深刻な危機を迎えているのではないか。救急患者はふえていく、救急医療施設は返上されていく、こういうふうなことで、今後の救急医療体制は大丈夫なのかというところからいわゆる住民の不安もいろいろ起きておるわけですが、この医療施設の返上の理由を厚生省はどのように考えておられるのか、ひとつ説明願いたいと思います。
  244. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 救急告示医療機関の返上につきましては、ただいま先生御指摘のような実情があるわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、この救急告示医療機関はいわゆる交通外傷を主として取り扱う医療機関でございまして、救急患者はふえておりますけれども、いわゆる交通外傷の愚者は横ばいかあるいは少し減少しているような状況でございまして、むしろ内科系の救急患者が最近非常にふえている、こういう実情になっております。そういったことに対しまして、われわれは救急告示医療機関ではなく、先ほど説明申し上げました休日夜間診療所というものをつくっておるわけでございまして、そういう意味におきましては、救急告示医療機関の減少はある程度あるかとも思いますが、片一方において休日夜間診療所をまたつくっているというようなことで、総体としてはそう減ってはいないのではないかとわれわれ考えてはおりますが、救急告示医療機関等につきましても、それを引き受けてくれるよう都道府県等を通じましてなお今後説得を続けてまいりたいと思っております。  なお、先生御質問昭和四十九年度中におきます救急告示施設を辞退いたしましたその主な理由でございますが、これはやはり人的資源の不足ということが一番大きなことになるわけでございます。看護婦さんがやめていったとか、そういったことで医師看護婦の不足が一番大きな理由になっておりますが、そのほかには医療機関の開設者が死亡して廃業したといったものもございますが、いずれにいたしましても、今後この救急医療機関は、外科系と内科系を含めましてその確保には努力してまいりたいと考えております。
  245. 小宮武喜

    ○小宮委員 確かに医師不足の問題、看護婦不足の問題、労働過重になるという問題はございます。局長はその点だけ言われましたけれども、私が知っている範囲内でも、救急医療に従事していても、告示していても、とにかく救急患者を受け入れれば受け入れるほど赤字が出る、やればやるだけ損をするということが返上の大きな理由だと私は見ているのです。しかし、それは医師としても表に出しにくいものだから、医師の不足だとか看護婦不足だとか労働過重だとか言っておりますけれども、やはり真相は、そういった医療機関に告示されておっても、患者を扱えば扱うほど赤字が出るということに一番大きな原因があるようです。  特にこれは行政官庁が指定したんじゃなくて、いわゆる本人が自発的に申し出てきたところを県が告示しておるわけですけれども、本当に救急患者のために、医者の本分からいって自分たちは一生懸命やろうということで自発的に申し出て、それが告示された、そういうようなお医者さんがやればやるほど赤字が出るというようになれば、辞退するのがあたりまえじゃないですか。しかも私的病院に比べると公的病院の協力度というのは、全体の四四%くらいじゃないですか。全く私的病院の半分以下ですよ。われわれから見れば、公的病院こそ公共性が高くて、救急病院になっている度合いがむしろ高くなければならないと思っておったのに、公的病院はこれを逃げてしまって、私的病院がむしろ協力をしておる。だから、日本のいまの救急医療体制というのは、私的病院の方々が八〇%ぐらいは支えておるわけですよ。そういうような人たちが国からは、国立病院に対してはいろいろな助成措置もあるけれども、私的病院に対しては助成もない、直接的な補助は全然ないでしょう。ゼロに等しい。そういうようなことでは、幾ら医は仁術だと言っても、赤字を出して病院の経営を悪化させ、つぶれるようなことまでしてやらなければならないという理由はない。だから、返上が目立ってきておるわけです。  そこで、厚生省としては、この救急医療機関に対して、どの程度の補助をしておるのか、あるいは助成をしておるのか、その点ひとつお聞かせ願いたい。
  246. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ただいま先生御指摘の救急告示医療機関の告示返上でございますが、表立った数字といたしましては、先ほど私から御説明申し上げたような統計数字になっておりますが、やはり先生御指摘のように、その理由の一つには、救急医療そのものの不採算性ということが非常に大きな原因になっているのではなかろうかと考えております。そういったことで、従来から救急医療につきましていろいろな助成措置を講じておるところでございますが、いわゆる救急告示医療機関といたしまして、これはただいま先生かち御指摘がもうすでにあったわけでございますけれども、日赤、済生会等の公的医療機関並びに自治体立の医療機関につきましては、その不採算性の部分、すなわち救急の部分に対しましては、従来からその整備費、運営費の補助、助成を行っておるところでございまして、今後におきましても、この助成につきまして補助単価の引き上げ、あるいは補助対象範囲の拡大、こういったことに努めてまいりたいと考えております。  それで、告示医療機関の公的、私的の占める割合でございますが、これも先生もうすでに数字をお示しになったわけでございまして、現段階におきましては、救急告示医療機関のうち国及び公的医療機関が一七%で私的医療機関が八三%と、かような数字になっておるわけでございますので、私的医療機関に非常にわれわれ頼っているという現状はあるわけでございまして、そういう意味におきまして、今後この私的な医療機関の救急部門に対しましても、さらに助成措置を拡大してまいりたいと考えておるところでございます。
  247. 小宮武喜

    ○小宮委員 確かに、その返上した医療機関の人たちからも、国は援助らしいものは何もしてくれないではないかということで、行政の無策を指摘する声が非常に高いんですよ。いま、いろいろ言われておりますけれども、結局この救急医療に対する国の対策も、私から見ればまことにお粗末で、五十年度予算でも休日、夜間の医療対策を含めて総額十二億三千四百万円にすぎないのです。予算の中身を見ても、救急医療の私的病院に対して直接の援助もない、補助金も国立病院に集中しておるというようなことでは、皆さん方厚生省は今後どういうように考えられておるのか。ただ、ここでいろいろその場だけの答弁をされても、いまこれほどいろいろな社会問題になりつつある——これがもしあなたの子供さんが日曜日なり夜間に苦しみ出した場合に、局長自身が、おれは厚生省局長だ、おれの子供だから、おまえは病院に行くのはあすまで待っておけ、あるいは夜間だからあしたの昼まで待っておけというようなことを言えますか。親であればなおさら、わが子がそういった急病を訴える場合に、一刻でも早く病院に連れ込むというのが親の人情じゃないですか。いまのような答弁で、いまの救急医療体制のこの荒廃を正常に戻すことができると思いますか。ただここで、質問が出るからそれにその場限りの答弁だけをするということでは済まされない問題ですよ。そういうような姿勢だからこそ返上するところが多い。それで、その被害者からは国の方の政策の怠慢を指摘されているわけですよ。局長は、そういうような意味では、もっと大臣が言われたように——国民の健康と命を守るのは厚生省の責任だということをさっきも言われたじゃないですか。ただ一時逃れの答弁ではなくて、根本的にこの救急医療体制については積極的に取り組んでもらいたい、こういうふうに考えるわけです。  そこで、いまのような状態では、やはり私は救急医療機関の返上するところはこれからもどんどんふえてまいると思いますよ。これはいまの告示制度の中にも問題があると私は思います。大体いまの救急医療制度というものは法律的な根拠も何もないでしょう。昭和三十九年に厚生省令によって、ただ自発的に私は救急医療機関になりますという申請があればそれを告示しただけの話で、だから、逆に言えば、おまえたちが好んで申請をしたのだから、おまえたちは好きでやったのだから援助する必要はないというような考え方も成り立つかもしれませんが、むしろこういうような人こそもっと国が本当に、赤字にならぬように、採算がとれるように、手厚い優遇措置を講ずるのはあたりまえじゃないですか。  こういうように私がいま質問しておりながらも、どこかではまたたらい回しが始まっているかもわからぬ、まだ時間が早いからそこまではいかぬでしょうけれども。しかしながら、大体局長のこの問題に取り組む姿勢をわれわれもあちらこちら聞いておりますけれども、それは各自治体と各地域医師団との協力によってやってもらう、われわれは第二次的な立場からこれに援助していくのだ、こういうことを言っておるわけでしょう。だから、おれたちは知らぬぞ、おまえたちがやりなさい。それで、先ほど言われたように二次救急対策考える、一次で救済されない、どうにも手に負えないような人たちを国はやるのだということを日ごろからあなた言っていますね。こういうようなことを考えておる限り、問題は一次にあるわけだから、そうすれば、いまのような救急体制というものはいつまでたっても改善されないということになってまいりますよ。  だからここらあたりで、病院から自発的に申請をする、それを告示するというようなことにいまは省令でなっているわけですが、これをやはり大幅に助成をするという前提に立って、いまの交通事故を対象にしたそういうような形成外科あるいは脳外科あたり中心でやってきたのを、いまのような情勢の中ではやはり小児科系統、内科系統の患者がどんどんふえていくという中で、今度指定をする場合も、今度はむしろ厚生省がこれをやはり指定し、むしろ委託する、そのためには金も大幅に助成をしますよというような方向に変えるべきだ、私はこう考えているのですが、いかがですか。
  248. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 この救急医療体制の整備につきましては、いろんな方向があろうかと思うわけでございます。特に先生御指摘のように、国が相当な責任を持って地方自治体を指導してこれをつくっていく、あるいは法律によっての一つの体系づくり、こういった点も今後検討してまいりたいとは考えております。  それで、ただいままでのわれわれの基本的態度でございますが、従来からこの救急医療というものを考えました場合に、やはり医師会等の協力によりまして、地域に応じた形態でこういった体系を整えるということを考えたわけでございまして、これは従来から日本医師会等でも言っておりますが、一つ地域ごとの地域医療体系というものをつくって、その地域医療体系の中でこの救急にどういうふうに取り組むかということを考えていこう、こういうことでございまして、そういう点からの委員会等も現在設置をいたしまして、専門の先生たちにお集まりいただきまして、この体系づくりの方策等について検討を行っておるところでございます。  ただ、現段階におきまして、どういうふうにこれを進めてまいるか、それこそ急を要する問題もあるわけでございまして、そういう点につきましては、先生御指摘のように、現在あるこういった救急医療施設を助成していくという点につきまして、昭和五十一年度予算におきまして、従来とは変わった新しい分野の要求、あるいは従来から要求しております助成策につきましても、補助対象範囲の拡大あるいは補助率のアップ、そういった点につきまして、現在、大蔵省とも折衝中でございまして、なお今後、先生の御指摘のような点につきましても、できるだけの努力をいたしたいと考えております。
  249. 小宮武喜

    ○小宮委員 やはり問題は、いまの救急医療機関は告示制度になっておる、だから、それは省令によっているだけなんです。たとえばこれがたらい回しによって当然助かるべき命を失った、そういうふうな場合の責任はだれにあるのかということになると、結局これは法律によっておるわけじゃないし、何も根拠法はないのです。だから、先ほどから言っておるように、何軒もたらい回しをされた、そして先ほど言ったように、早く注射でも一本打っていただけば助かったろうにという声のあるのもそこにあるわけだけれども、しかし、それが亡くなったとしても、だれにもその責任を持っていくということができないわけですよ。  だからその意味では、政府も国もやはりそのしりを持ち込まれては困るというような気持ちがあって、まあこれは地域医師団とかあるいは各地方自治体がやるべきだということで逃げておるかもしれませんが、しかし先ほど言ったように、国民の健康と命を守るのは厚生省だと大臣がさっき言ったばかりだから、そういった意味では、国も逃げぬで、やはり国民の健康と命を守るのは国が守るのだという立場から見れば、そういうようなことで、いまのように責任が不明確な、不明確というより責任の所在がだれにあるのかということさえ全然わからぬようないまの救急医療制度では、やはり私は、国民はいつまでたっても不安な生活を送っていかなければならないと思います。  だからその意味では、その点をむしろはっきりするために、救急医療基本法みたいなものを厚生省はつくるべきじゃないのか。これは社会党、公明党、民社党で医療保障基本法というものを出してあるわけです。この中では、はっきり救急医療についての中身にも触れてあるわけです。だから、そういうふうな救急医療基本法でもこういった何かをつくって、そしてそこの中で、いまの不採算部門に対する財政援助の問題、医師確保看護婦の確保、こういうようなものを明確にすべきじゃないのかということを考えておるわけですが、これは立法措置の問題でございますから、ひとつ田中厚生大臣から御答弁を願いたい。
  250. 田中正巳

    田中国務大臣 救急医療体制の整備、私は非常に心配をいたしているわけであります。明年度の予算要求をつくるときにも、これについていろいろと重点的な施策として留意してやったわけですが、最近、先生がおっしゃるように、たらい回し、そしてそれによる死亡事件というようなものが新聞によく出るわけでございます。私どうも主管大臣としてまことに心配であり、申しわけないというような気がしてならなかったわけでございます。折しもちょうど衆参両院の予算委員会で朝から晩まで実はくぎづけになっておりましたものですから、これについては予算委員会が終わって時間的余裕ができたら、もう一度救急医療体制について掘り下げてみようかと、実はかように思っていたところであります。  救命救急センターというものを後方病院としてつくるということは、新しい機軸ではございましたが、しかし、これだけで今日の問題に対応できるものであるかどうか、いろいろ私も疑問に思いますので、先生の御質疑がたまたまいまありましたが、実は私も同じようなことを考えておったわけでございますので、これについてはさらに掘り下げて、もう少し肯繁に当たる施策ができないかどうか、いまの立法論の問題もございますが、これはなかなか実は時間がかかるだろうと思いますから、その方向も含めて考えますけれども、とりあえずのところ、一体どういうふうにしたならば——ああいう大変厚生省にとっても恥ずかしい事故でありますから、そういったことのないように、幾らかでもそれが少なくできるようにいたさなければならぬと思って、いまいろいろとそれについて考えておったところでございますので、近近、これについてそのような掘り下げた作業をやってみたいと、かように思っております。     〔戸井田委員長代理退席、住委員長代理着席〕
  251. 小宮武喜

    ○小宮委員 これはまだ後に質問を控えておりますので、いまの厚生大臣の前向きの積極的な姿勢を聞きまして、私も全く同感でありまして、非常に心強く感じておるわけで、だから、いろいろ私はまだ質問したいこともあるわけですが、時間も参りましたのでやめますけれども、いままでのような厚生省当局の考え方では、この救急医療問題というものの解消には、全然役立たないとは言わぬけれども、恐らく百年河清を待つに等しいと言っても私は過言でないと思う。  そういうような意味で、問題はいろいろ医師の不足、看護婦の不足もあるけれども、一番大きな問題は、やはり救急医療機関に指定されても、それになっても、やればやるほど赤字が出るというこの現実だけは、これははっきりとしてほしい。このためにでも、今度の五十一年度予算あたりでも、やはりもっと予算もつけて、助成も大幅にいたしますから、ひとつ皆さんやってくださいというぐらいな姿勢を持たぬと、皆さん方いままで厚生省当局というのは、言われれば何か逃げよう逃げようということで、あれもやっています、これもやっていますと言うけれども、そんなちっぽけなことを、救急センターを八カ所つくるとか十年間に十万以上の都市には小児科の救急病院をつくるとか言ってみたって、そんなことでいま当面の問題は解消できないわけだから、ひとつ私も厚生大臣のいまの答弁を期待して、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  252. 住栄作

    ○住委員長代理 吉田君。
  253. 吉田法晴

    吉田委員 最後になりましたが、厚生大臣を初め各関係者に三、四十分恐れ入りますが、おつき合いを願いたいと思います。  実はこの数年、保育所の、一番多いのは保母さんですが、保母さんの処遇改善についていろいろ考えてまいりました。各党でも考えていただいておるようです。ところが、まだ結論が出ておりません。そこで、きょうは質問をいたしまして、実態を明らかにし、その中から対策といいますか、改善の方策を見出してまいりたい。最後には委員長に、小委員会を設けてこの問題を検討することをお考えいただきたいということを提案をしたいと思います。  まず、実態を明らかにいたしたいと思います。時間がございませんから、きのう聞いたところ、あるいは統計に出ておるところは省略いたします。  一番問題は、保育所の保母さんの勤務の実態について労働省から指摘をされているのですが、ほとんど休憩がとれない。法定の一時間という休憩がとれないという実態について指摘を受け、そして対策も、曲がりなりでありますが、とられつつございますから、その時間の問題について大体お尋ねをいたしたいと思います。実情は簡単にお答えを願いたいと思います。  まず労働時間、これは八時間労働がたてまえでございますけれども、御承知のように、働きに行くお母さんたちが子供を預けて働きに行く。ですから、朝七時前から子供を預けに来る方があることは御承知のとおりです。それから仕事が済んで引き取ってまいりますから五時を過ぎる、六時近くまで待たなければならぬという実態も御承知のところだと思います。実際の労働時間が拘束で考えられておるのか、実働で考えられておるのか知りませんが、その労働時間の実態と八時間労働のたてまえとの関係を承りたいと思います。労働省とそれから児童局長さんからと両方からお伺いしたい。
  254. 石野清治

    ○石野政府委員 労働時間の問題につきましては、一応労働省の方で実態を把握されておりますので、そちらの方でお聞き願いたいと思いますけれども、私の方が聞いている範囲で申しますと、一応たてまえ上は九時間労働というのは法律上許されておるわけでございます。実際上それでは実働で九時間を超えるものがあるのかということについては、労働省の調査によりますとはっきりわかっておりませんのが実情でございます。そういう実情だけでございます。
  255. 倉橋義定

    ○倉橋説明員 保育所の休憩につきましては、ただいま御説明ございましたように、六時間を超えるような場合には四十五分、八時間を超えるときには六十分の休憩を与えるということに法律上なっておりますが、保育所の場合、公私立に若干の差異はございますが、それらの休憩の規定に抵触するというものが、私ども調査によりましては、公立においては四七・六%、私立におきましては三四・〇%ということになっております。ただ、これにつきましては、私ども重点的な監督ということで、問題点のある保育所を中心に監督指導を実施しておりますから、直ちにこれが全体の率ということにはならないかと思いますが、比較的高い違反、抵触率であるというふうに認識しております。  労働時間の実態につきましては、私の方も詳細な調査がございませんので、ただいまお答えができないわけでございます。
  256. 吉田法晴

    吉田委員 厚生省の児童家庭局では実態の把握をしておられないと言う。実態の把握がなくてその対策がどうして立つのだろうかと思うわけですけれども、私はその辺は児童局なり関係課の怠慢とは言いませんけれども、時間の問題は労働省に任せておけばいいという人任せの態度が、対策について不十分なところが出てくる原因だと思うのです。先ほど申し上げましたように、六時間以内の保育所の保育時間なんて実際ないと思います。そして指摘をされておりますように、昼休みを十分とることができない。昼休みを十分にとることができないから、それでは別に、六十分になるまで午後の何分間かを休憩をとるということも保育所の実態として実際にできぬ。残っておるのは、基準の定数のほかにふやすしかないことは、多少対策を講じられている面からいってもおわかりだと思うのでありますけれども、私も保育所の関係をしておりますから、実態はよくわかるわけでありますが、実態に対してどこまでしたらいいかという点がおわかりになっておるならばお示しを願いたいと思うし、またいまの措置で十分と考えられておるのか、それからなお今後こういう方策をとりたいという点がありましたらお示しを願いたい。
  257. 石野清治

    ○石野政府委員 いま労働省からお話がありましたように、特に保育所の場合は休憩時間の確保という問題が一番違反事項も多うございましたし、そういうことを踏まえまして、実は保育所の保母の休憩時間の確保ということにつきまして、五十年度の予算で措置をいたしたわけでございます。これはあくまでも二カ年計画をめどにやっていこうという形でやっておりますが、その根拠になりますものは、一応六十人なりあるいは九十人定員の保育所におきます保母の勤務体制というものを全部組み合わせいたしまして、そこでどこが足らないかということを計算いたしまして、実は予算で措置をいたしたわけであります。
  258. 吉田法晴

    吉田委員 わかっているところは省略いたしますけれども、基準によりますと、六十人定員の保育所についていえば三人ないし四人、九十人の定員のところについては四人ないし五人、あるいは百二十人以上になりますと七人、八人と基準が定められておりますが、それは実際には最低の基準であって、それ以上なければこれは保育ができません。第一、主任保母というものを別にとります。六十人の定員の場合には三人ないし四人としてありますけれども、この最低限度では、担当しない主任保母がとれないような実情です。そこで、いま言われるように、六十人以下の定員の場合には定数以外に一名の配置ができるように、六十一名以上の場合には五時間のパートを一名配置する、こうなっておりますけれども、私ども実態は、九十人のところでは四人、五人では足りません。主任保母をとり、それから病気をしましたときその他を考えますと四人、五人では足らないというのが実情です。問題は措置費に関連をしてまいりますけれども……。ですから、いま承りますと、六十人以下については定数以外に一名配置、六十一人以上については五時間分のパート一人を配置するならばそれで大体よかろう、それもまあ二年計画、六十一年以降については児童福祉審議会の諮問によってと、こういうことでございますが、実態考えますとそれだけではやはり解決しない。また別に聞きますと、時間がありませんから言いますけれども、休暇といっても産前産後の休暇はとることができるかもしれません、これは代替職員が福岡県でいいますと県で確保してあるから。ところが、病気の代替職員は確保してないのです。ですから病気もできぬ、かぜを引いても熱を出してもやっぱり働かなければならぬ、生理のごときは生理休暇は全くとれぬというのが実情であります。  そうすると、さっき話をしましたけれども、基準は最低であって、やはりそれ以上に基準を改定しなければならぬ、これは保育所だけではありません。きょうは保育所の問題に限りますけれども、保育所だけではなくて、重度身障者の施設等について考えますと、一対一ということになっておりますけれども、二十四時間勤務ですから、二十四時間勤務になりますと、一対一の現行制度によりますと介護員一人に対して、あるいは保母さん一人に対して三人、こういうことになります。そうすると、一人が食事をかみ終わって口をあけるのを待って入れるのでなしに、次から次に口に押し込んでいかなきゃならぬという実態、二週間も入っておりますと、やはり介護員が腰痛を起こす、職業病を起こすというような実態でございます。これは島田療育園の実態やらその他ここに引き合いに出すまでもございませんけれども……。  したがって私は、基準の改定ということが問題になると思いますが、結論を急ぎますけれども、この辺は局長としてどういうぐあいに考えられますか、承りたい。
  259. 石野清治

    ○石野政府委員 ただいま吉田委員がおっしゃったのですが、六十名、九十名の定員の場合に、実は年齢区分によりまして配置いたしているわけでございます。したがいまして、たとえば三歳未満児が非常に多いとか、あるいは四歳児が非常に多いとかによりまして人数も変わってまいりますので、一概にはまいりませんが、現在の四歳以上児の三十対一なり、あるいは三歳児の二十対一というのが果たして妥当かどうか、これについては今後、児童福祉審議会等にもいろいろ考え方を聞きまして検討してまいりたいとは思っておりますが、ただ、これは保育所だけの問題ではございませんで、先生おっしゃるように全施設の問題でございますので、実は予算も相当かかることでございますし、十分検討さしていただきたいというふうに思っております。
  260. 吉田法晴

    吉田委員 それじゃ極端な例を引きますけれども、四歳以上は四十人に一人ですね。あえて言いますけれども、ここに文部省も来ていただいておりますけれども、小学校でさえ四十人以下の教育を実際にしているところがございます。それで、日本の教育が外国に比べてみて——幼保一元化の問題もございますが、それはいまはおきます。おきますが、実際に保育と教育というものは不離一体。そうしますと、四十人に一人というのは最低だということは、これは常識的にわかるのじゃないでしょうか。そうしますと、この基準の改定について検討しなければならぬというのは、少なくともそういう点を考えるとやはり言えるのではなかろうかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  261. 石野清治

    ○石野政府委員 いまおっしゃいました四歳児の場合、四十対一でございませんで三十対一でございます。三十対一が果たして妥当かどうか、これはやはり議論が分かれるところでございますけれども先ほど申しましたように、ほかの施設の保母さんの勤務の状況というものもあわせて考えなければなりませんし、そういうものを考えてまいりますと、いまここで直ちにそれを改正するということをお答えするわけにはいかないというのが実情でございます。
  262. 吉田法晴

    吉田委員 ほかの施設の問題もございますから、ここで言明を願おうとは思いませんけれども、とにかく再検討さるべきだということは強く申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ、文部省も来ていただいておりますから、幼稚園の教諭の規模別の人数、たとえば保育所で言いますと、六十人に対しては幾ら、あるいは九十人に対しては幾ら、大体六十、九十あるいは百二十以上といったように規模が分かれておりますが、その規模別に考えられておるかどうか知りませんけれども、実際の規模別とそれに配置をされております教諭の人員、それから勤務の実態等についてお示しを願いたいと思います。
  263. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 幼稚園教育課長でございます。幼稚園につきましては、幼稚園の設置基準によりまして一学級について一人の教員を置くというたてまえになっておるわけでございます。園長がおりません場合には、そのほかに一名を置くことをたてまえといたしております。一学級当たりの定員でございますけれども、これは四十人以下を原則とする、こういうことになっているわけでございます。
  264. 吉田法晴

    吉田委員 その勤務の実態について私の承知するところでは、幼稚園というのは大半が午前中で終わって帰るようですが、その点は保育所と大きな違いがあると思いますが、大体の労働時間とそれから休憩その他についても、簡単でいいですからお示しを願いたいと思います。
  265. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 幼稚園の教育課程の基準、これは文部省の告示で定めてございますが、この幼稚園教育要領では「幼稚園の一日の教育時間は、四時間を標準とする。」こういうことになっておるわけでございます。  幼稚園の先生の勤務の実態につきましては、四十八年に約六%の幼稚園を、公立の幼稚園でございますが、これを対象にしまして一週間の勤務の実態調査したことがございます。それによりますと、教員の受け持ち教育時間は平均で二十四二九時間でございます。でございますから、大体一日四時間ちょっと、こういう形になっているわけです。ただ、実際には幼児の世話をいたしました後、翌日の教育の準備とかあるいは当日の事後処理また研究会とかあるいは園内整備、そういう仕事がございますので、勤務時間外につきましても、平均しまして週四時間十七分ほどの超過勤務をいたしている、こういう実態になっております。
  266. 吉田法晴

    吉田委員 私どもも身辺に幼稚園に行っている子供がございますから大体わかるのですが、四時間ということになりますと、午前九時に出ていけば午前中三時間それから午後一時間、こういうことになりますが、特定のものを除きますと、大体午前中で帰ってきているような実態のように思いますが、いかがでしょうか。
  267. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  幼児の幼稚園での在園時間は、先生の申されましたような状況と思いますけれども、教員の場合には幼児を帰しました後でもって翌日の教育の準備等あるいは当日の後片づけ、そういうものが非常にあるわけでございます。そういうことで、ただいま申しました勤務の実態と申しますのは、この二十四時間の勤務時間のほかに、なお超過勤務として週四時間ほどの勤務をいたしておる、こういうことでございます。
  268. 吉田法晴

    吉田委員 大体労働時間なり労働条件と、それから後で給与のことを伺いたいわけですが、文部省の鈴木課長にお尋ねをし出しました機会にあわせて給与の問題も承りたいと思います。  幼稚園教諭の給与は、平均的に見ますと幾らぐらいになりますのか、それから、あるいは保育所の保母さんと比べますと初任給あるいは三年、五年、十年、二十年と勤続いたしました場合の給与等、これは平均的で構いませんからお示しをいただければお願いをしたい。
  269. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 お答え申し上げます。  幼稚園につきましては国立、公立、私立とございますけれども、国立につきましては文部省が設置者でございますので、その実態を承知しております。私立と公立につきましては、その都度必要に応じまして調査をいたしておるわけでございまして、ただいま先生から御指摘のございました勤務年数別の給与の実態というものは調査してございません。
  270. 吉田法晴

    吉田委員 実際に知っておられたら、大体で構いませんから、初任給と十年ぐらい働いたらどのくらいになるのかというぐらいのことはわかりませんか。あるいは平均をいたしまして……。
  271. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 国立の場合で申し上げますと、大学卒でございますが、これは俸給月額と教職調整額、四%でございますが、これを含めまして初任給が九万百六十八円、それから短大卒の方でございますが、こちらが七万八千百四円でございます。五年後でございますが、大学卒の方が十一万三千百五十二円、短大卒の方が九万九千三百二十円、こういうことでございます。
  272. 吉田法晴

    吉田委員 ついでにお尋ねいたしますが、公立の教諭さんは、大体いまの国立の教育大学の付属幼稚園といったようなことになると思うのですが、それと余り変わりはないと思いますが、私立についてはそれよりやや下がるのか、あるいは近いものなのか、概括的には御存じじゃないでしょうか。
  273. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 私立の幼稚園の先生につきましては、勤務年数別とかあるいは年齢別というようなものの調査はいたしてございません。ただ平均で見ますと、ことしの五月でございますが、約五分の一の幼稚園を対象にいたしたもので見ますと、本俸でございますが、学校法人立の場合が八万二千九百七十二円、それからその他の個人立とか宗教法人立の幼稚園でございますが、これが七万七千四百二十六円、こういうことになっております。
  274. 吉田法晴

    吉田委員 それは本俸でしょう。
  275. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 本俸でございます。
  276. 吉田法晴

    吉田委員 その他は……。
  277. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 その他の諸手当としましては、学校法人立の場合が九千三百十七円、そのほかの幼稚園の場合が六千八十九円、こういうことになっております。
  278. 吉田法晴

    吉田委員 ついでに伺いますが、退職金と年金について、国立の場合と公立の場合が具体的にございませんならば、いまのような数字で構いませんから、おわかりになっておったら私立の平均を教えていただきたい。
  279. 鈴木博司

    ○鈴木説明員 国立の場合しかいまデータがございませんので、国立について申し上げますと、まず退職金でございますが、大学卒の場合が、これが自己都合退職の場合と勧奨退職の場合とございまして、自己都合の場合が五年後が三十三万九千四百五十六円でございます。それに対しまして勧奨退職の場合でございますが、これが五十九万五千七百六十円、こういうことでございます。十年後でございますが、自己都合の場合が百三万二千七百二十円、それから勧奨退職の場合が百三十七万六千九百六十円、こういうことになります。それから短大卒の場合でございますが、五年後が、自己都合の場合が二十九万七千九百六十円、勧奨退職の場合が四十九万六千六百円。十年後でございますが、自己都合の場合が八十八万四千二百五十円、勧奨退職の場合が百二十二万六千百六十円、こういうことになっております。
  280. 吉田法晴

    吉田委員 時間がございませんから一々について細かい対照をお願いする時間がないのですが、石野局長に伺いたいのです。  保母さんの給与の平均は七万幾らと伺いました、これは長い主任保母あるいは普通の保母さんを含めまして。そして私どもが経験をしておることで言いますと、これはもう二十年ぐらいですが、学校を卒業した資格を持った保母さんがなかなか得られぬから、高等学校を卒業した保母さんを保育所にお願いをする、そして講習をやらして資格をとらせる、今度が最後だ、今度が最後と言いながら四、五年たつとやめます。なぜやめるかというと、初任給を上げなければ、そのときそのときの実勢に応じて上げなければ来手がありませんから初任給を上げる。それで、もう十年以上前になりますか、十億ずつ昇給財源をもらいました。あのときでも初任給なり若い人に重点がいって、中堅なり主任保母のところまで回ってこなかった、実際問題として。その後の体制についても多少やはりそういう傾向があります。したがって五、六年たって経験豊かな中堅保母さんになりますと、給与の改定では上げられないものだから、これはやめて新しい施設に、主任保母にいかなければ給与が上がらぬ、こういう実態がございます。そこで要するに、四、五年たったら移らざるを得ない。公立の保母さんのあきができればそこに移る。九十名定員の私がつくりました保育所についても、ことし三人もやめるという実態であります。就職が大変困難なときですから、かつてのように保育所の保母さんになり手がないということはありません。ありませんけれども、給与の問題でさえ、あるいは基準の問題でさえ、保母さんだけでなくて設置者が問題にしなければならぬのはそういうところに原因があるわけです。  ですから、待遇について、労働時間についてやはり労働基準法並みの取り扱いはしなければ、あるいは労働時間にならなければ、やはり来手がないというのが実態であります。あるいは仕事が軽ければ保育所に移るし、あるいは公立にあきができれば公立に移るというのが実態です。それだけに局としては、あるいは厚生省としてはせいぜいやっているというお話かもしれませんけれども実態は改善をしなければ、さっきの基準の問題もそうでありますが、給与の問題についても、いまお聞きになりましても、平均給料について、あるいは退職金なりあるいは年金の問題につきましても——特に私は、年末になりますと、私立学校の国庫補助をとるために、私立学校何とか議員連盟とかなんとかいう名前で動員される。そして私立学校の補助をとりながら年々大変矛盾を感じている。ですから、それは厚生省としては労働省の指摘に従って休憩がとれるような実態にするというつもりでやっていただいているかもしれませんけれども、労働時間の実態も正確には御把握になっていない。あるいは給与も幼稚園の教諭との比較あるいは地方公務員、これは同じ町の中に私立の幼稚園と公立の保育所、そして私立の保育所があるわけですから、幼稚園との比較はすぐ隣とできます。あるいは同じ町内あるいは同じ郡内に公立の保育所があれば、公立の保育所の保母さんの勤務状態とあるいは給与と比較ができる。  いま触れました中で一番違うのは共済の問題ですね。保育所についても何年か前に、私の後の福岡県の保育連盟の会長の時代に運動をして法律をつくってもらいました。けれども、これは国家公務員なりあるいは一番近い地方公務員の共済規定に比べましてまことに貧弱だと言わざるを得ません。そして自分たちが掛けた金だけでなくて、地方公務員の共済規定におきましては、これは法律に基づく補助のほかにそれぞれ県やらあるいは市町村が補助を出しておる。私の手元にもございますけれども、私立幼稚園の共済制度では、たとえば近い例をとりますと、都会に出てまいりました場合に泊まるところは共済組合の寮に泊まります。その共済組合の寮が年々よくなってまいりました。それから共済組合から災害やあるいは冠婚葬祭の場合に金を借りることができますが、五十万円まで低利で借りられる、あるいは五十年年賦で返還をするといったような実態もございます。いまここで詳細にそれを申し上げる時間はございませんけれども。退職金と共済制度、その比較に至っては、これはあなたたちが把握しておられればいいですが、いま文部省の鈴木幼稚園教育課長にお尋ねしただけでもこれははっきり違いが出ている。そういう問題について今後改善をするについては法の改正も必要だと思いますが、これらの点についてどう考えておられますか、承りたい。
  281. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御質問が共済制度のことでございますので、所管ですから私からお答え申し上げます。  保育所を含めました社会福祉施設の共済制度につきましては、御指摘のとおり昭和三十六年からこの制度が発足しておりまして、国、都道府県、設置者、この三者が掛金を掛け合って退職時における退職金の共済制度として今日に至っているわけでございます。それ以外のもろもろの国家公務員あるいは地方公務員の共済制度にあるような短期の共済というものは現在のところございません。これは今後の課題であるというように考えております。
  282. 吉田法晴

    吉田委員 この問題は局長だけじゃないと思いますし、厚生大臣もおられますが、私は民間の会社におりました。それから保育所ももう二十七、八年になります。それから北九州市の市長もいたしました。ですから、年金は別にいたしまして、地方公務員の退職金問題については、判こを押すときに感慨無量のものがありました。これは著しく違います。これは先ほど申し上げましたけれども、幼稚園との比較は、同じ町内に、隣にあります、ですから、これはどういったって比較になる。あるいは隣の村の公立の保育所との間とどうしても比較になります。そうすると一番問題なのは、やはり何年か働いて、厚生年金があると言われますけれども、厚生年金は二十年働かなければなりません。若い娘さんが学校を卒業して働き出して二十年というのは、実際問題としてなかなかむずかしいでしょう。設立者の奥さんだとか娘さんだとか、そういう人たちは結婚をしても続けられます。しかし、普通の保母さんはやはり結婚するまでの例が多い。それも、看護婦さんじゃありませんけれども、できるだけ働いてもらうように考えるけれども、一番問題は退職金あるいは年金です。年金も厚生年金で二十年たったら、とにかく厚生年金がもらえるじゃないかというたてまえになっている。法律はできておりますけれども、実際に厚生年金をもらえるような保母さんが何人あるだろうか。これは数字を見るまでもなく、実際にあなたたちが感じておられることだと思うのです。  そこで、それらの点については大きな改善を講じなければ、保母さんを得るということもなかなかむずかしい。あるいは保母さんが定着して、子供の保育あるいは教育に心魂をつぎ込んでもらうことはなかなかむずかしい。改善を要するところでありますが、ひとつ大胆に決意を承りたいと思います。
  283. 翁久次郎

    ○翁政府委員 若干数字的な点で申し上げますと、共済制度は今日まで毎年平均給与の引き上げを行ってきておりまして、制度発足以来、最長年勤続しておられる方について見ますと、約百三十万ぐらいの今日段階での退職金の支給は可能でございます。ただ、お示しのとおり在職期間が短い場合には、やはりそれに応じた退職金になりますので、この点についてはいかがかということも考えられますけれども制度の本来の趣旨は、国家公務員なり地方公務員に準じた退職金を支給するということで、御承知のとおり中小企業退職共済法を改めまして、社会福祉の職員のために新たにこの制度を発足させた、こういう経緯があるわけでございます。改善すべき点は今後なおございますけれども制度の本来の趣旨はそういうことであるということで御了承いただきたいと思います。
  284. 吉田法晴

    吉田委員 お話ですけれども、地方公務員の退職金、これは金額を挙げて長々ここでやっている間がありませんから、年々改善していると言われますけれども、これは厚生大臣を含めて改善のために一段の努力を願いたい。  時間がありませんから次に移りますが、保母さんの給与、待遇の改善のために法令の改正が必要ではないかと私も思って、数年来参議院、衆議院の法制局に相談をしてまいりました。保母さんの中には、私どもの多少の貢献も関係があると思いますけれども、身分法を制定してもらいたいという話がございます。これは施設については児童福祉法という根拠法規がございます。しかし保母さんのことについては何も法律がないのです。政令には書いてありますけれども法律には書いてない。その給与は国家公務員に準ずるというけれども、実際の俸給表は、先ほど申し上げましたけれども、規定がないから初任給はだんだん上げてまいります。余りほかと違わないように上げてまいりますけれども、五、六年たった中堅あるいは主任保母には、十億の昇給財源をもらってもなかなか回ってこぬという実態、いわば中だるみのひどい給料表が続いている。もし国家公務員に準ずるという給料を本当に与えようとするならば、私は、身分法かあるいは法律に保母さんのことが規定され、給与表についても何らかの法律が必要ではないかと思います。これらの身分法なりあるいは給与表についてお考えがございましたら承りたいと思います。
  285. 石野清治

    ○石野政府委員 保育所のみならず社会福祉施設全般についての直接処遇職員の身分の問題になりますと、これは私がお答えするのはいかがかと思いますけれども、この点については社会福祉協議会とかいろいろな関係の団体等の意見を徴しておりまして、いろいろ検討しているところでございます。ただ、先生がおっしゃいますのは、保育所の保母さんの給与を抜本的に改善したり、あるいは定数を大幅にふやすために、特別の法律をつくるべきではないかという御意見であろうかと思いますけれども、現在の児童福祉法の体系というのは、たとえば運営費の負担の問題にしましても整備費の負担にいたしましても、法律なり政令で明記をいたしておるわけでございます。ただ、その額が非常に少ないという御批判はあるかもしれませんけれども、一応のたてまえ上は、その体系上は整えておるということが一つ。  それから、保育所だけではございませんで、ほかのたとえば精薄施設でありますとか重心施設に働く方々の意見等も、なぜ保育所だけにというような御意見もございまして、なかなかむずかしい問題であろうかと思います。
  286. 吉田法晴

    吉田委員 いまたてまえを説明されたけれども、まあお役人ですから、いまのたてまえを守ろうとされるのはわかります。しかしこれは私だけじゃない。自民党でも、教職員についての人材確保法のように保母さんの専門職としての格づけをしてもらいたいという要望にこたえて、人材確保法で起用されました、普通の公務員に比べて二〇%プラスをするという考え方を保母さんについても適用しよう、こういう考え方がございました。これは民社党もいま考えておられるということです。それから去年も保母さんの待遇改善のためにずいぶん請願書が出ました。社会党は社会党で考えている。それは後で御相談申し上げますけれども、保育所の実態あるいは保母さんの実態からして何とかしなければならぬということは少なくとも各党は考えている、厚生省考えておられるかどうか知りませんけれども。その辺もひとつ承りたいと思いますが、何らかの根拠法規があることは、保母さんだけでなくて社会事業に従事しておる者全部に関連をしても構いませんけれども、ほかの方は全部あるんですね。私立の教育施設についても法律がございます。それから共済制度の問題についても法律がございます。それから民間について言っても、民間の給与の規定はありませんけれども、退職金なり老後の問題については法律がございます。人間の問題について法律のないのは、私は保母さんを初め社会施設についての職員だと思うのです。ほかにありません。  そこで、そのために身分法を制定してもらいたいとかあるいは人材確保法案といったような構想が出てくるゆえんだと思いますから、何らかの法的な措置を——児童福祉の話はありました。しかし児童福祉法には保育所のことしか書いてありません。それから基準も児童福祉法に響いてありますが、これは施設としての児童福祉の対策が書いてあるのであって、それに従事する人間のことを取り出して法律には書いてありません。だから、児童福祉法の中に身分法的な根拠法規をつくることでも構わぬかなと考えたことがございますけれども、しかしそれだけでは済まない。いまの給与あるいは労働条件のことを考えますと、やはり法律が必要だと思います。あるいは社会制度全般に関連をするかもしれませんけれども必要があると思います。そこで、これらの点について御検討なさる用意があるのかどうか、それだけはひとつ厚生大臣に承りたい。
  287. 石野清治

    ○石野政府委員 給与の問題が一番大きな問題として一つあるわけでございますが、これについては吉田委員御案内のとおり、幼稚園の教諭との間に格差があってはならないということで財政当局と折衝いたしまして、実は五十年度から六%の上乗せをいたしました。一応それによりまして幼稚園の教諭との格差については大きな差はない——もっとも国立と私立の幼稚園とにおいては差がございますので必ずしも一概には言えませんけれども、一応そういうたてまえをとっておるわけでございます。  そこで、そういうものを含めまして法律の一つの体系をつくり上げるかどうか、これについては非常にむずかしい問題がございますし、私どもはその必要はないのじゃないか、予算の措置等でやっていけばいいのじゃないかというふうに実は考えているわけでございます。
  288. 吉田法晴

    吉田委員 それでは、先ほど申し上げましたが、共済制度の問題について、保育所の場合だけ、設置者としての負担は別問題として国とか公共団体としての補助はないのですが、これらの点については改善をする意向があるかどうか。これは局長じゃなくて大臣に聞かなければしょうがない。
  289. 石野清治

    ○石野政府委員 そういう事業主としての負担はすべて措置費の中に実は組み込んでおるわけでございます。
  290. 吉田法晴

    吉田委員 何遍も同じことを言わなければなりませんけれども、地方公務員の共済制度については県や市町村からございます。それから私立の幼稚園等につきましては、私学振興会への援助ということで国もございますし地方公共団体からもあるわけです。ないのは社会福祉施設だけ。設置についての補助はあります。しかし給与の問題について、特に退職金や共済制度についての国、公共団体の補助がこれだけはございませんが、それについて再検討、改善をする用意があるかどうかという点は局長じゃなくて大庭ひとつ答えてください。
  291. 石野清治

    ○石野政府委員 先ほどお答えしましたように、事業主としての負担分についてこれを措置費の中で組み込んでおるわけでございます。
  292. 吉田法晴

    吉田委員 時間がございませんからあとは後日に譲ることにいたしまして、措置費と管理費それから給与の問題についても——措置費は最低限度を保障する、そういう意味では措置費を通じて国の費用が八割出ているということは私は可といたします。しかし実際にはそれぞれの年功と努力に対して給与を保障するには足りないことは先ほど申し上げました。それから管理費について言いますと、昔はガラス一枚割ってもそれを入れかえをする措置費がなかった。ようやく少し弾力性が出てまいりましたけれども、いまでも火災保険は、新しくつくりますとこれは公費が入っておりますから火災保険に入らざるを得ませんが、火災保険の費用は十分ではない。少なくとも償却費は全然見られておりません。それだけに火災に遭ったりあるいは建てかえるときには全額について、自己負担分等について言いますと結局はやはり自分で出さなければならない。町村からの補助があればいい方です。財政豊かな大きな市町村について言えば、自己負担金の半分を補助してやるというような制度を私は設けたりしました。しかし償却費はございませんから私費を出す以外にない。保育所を一つつくるについては、社会施設社会福祉法人になるまでには自分の食う物も割いてしなければならないという実態ですから、二十年、三十年社会事業をやって表彰を受ける施設者はそれこそ気の毒な服装をしていますね、これが実態です。これらの点について、措置費の増額といいますか、その中身については改善する余地があると思いますが、考慮をしてもらいたいと思います。  こういう問題を含んで委員長最後にお願いをいたしたいと思いますが、それぞれの党派で研究はしておられます、しかし別々の案でございますだけに、厚生省に聞いても現況の説明にしかならぬわけです。そこで、この委員会の中に小委員会をつくって——社会事業の中でも一番多いのは保育所、そしてまたその従事者も一番多い。関連をして別の社会施設についても定数の基準の改定等については関係をいたしますが、そういう改善のための小委員会をつくっていただくことを提案し、後で理事会で御相談をいただきたいと思います。  それから、それについて私も率直に申し上げますけれども、私も法律をつくりたいということで厚生省にも相談をいたしました。大臣の答弁を求めても局長さんがかわりに言われるように、厚生省としてもいまの制度でいいのだ、こういうお話でございます。そしてまたもう一つ言いますと、労働の実態等もつかんでおられませんから厚生省から、関係者から説明を聞くわけにいかぬ。そうすると、大蔵省から突っ込まれるとそれに抵抗ができないで——私は保育事業のためにずいぶん陳情をしてまいりました、運動もしてまいりました。そのたびに、出してもらうことは出してもらうけれども、締められる方が大きくなってくる。初めはほとんどすべての子供について保育をすることが望ましいと言われました。昭和三十年だったか三十一、二年だったか正確には忘れましたけれども、そのときに三億円の赤字を埋めてやる、そのかわりに全員保育という理想は捨てられました。そして社会事業を育てるべき厚生省が締める側に回っておられます。国で全国的に監査もしておられます。そして援助すべき厚生省が援助するのでなしに、いま実際は締める側に回っておられるというのが実態です。それは実は厚生省として間違っているのだと思うのです。法律をつくろうというときに、各党にお願いしても構いませんけれども、それに乗ってこないというのは私は不届き千万だと思います。具体的には申し上げません。申し上げませんけれども、相談をしてまいりましたが、少なくともいままでの厚生省には、積極的に法の改善あるいは政令の改善について協力しようという動きは感じられませんでした。  そこで、小委員会にお願いして小委員会ができるならば、厚生省としても改善をするについて協力されるのかどうか。私は、去年でしたか予算の分科会で、齋藤厚生大臣のときにお話を申し上げましたら、委員会で、あるいは各党を超越してコンセンサスが得られるならば改善をすることにやぶさかではないという言質は、一年かそれ以上前にいただきました。厚生大臣は、なかなか厚生事業についてはベテランでもあるし、抱負もお持ちだと思いますが、どう考えられますか。それだけは最後に承りたい。
  293. 田中正巳

    田中国務大臣 私ただいま厚生大臣ですが、実はこの社会福祉施設のあり方、なかんずく保育所については、先生から見ると、いまだ隔靴掻痒の感があると思われるかもしれませんが、今日まで一議員としてずいぶんとこれについて努力をしてまいりまして、やっとここまで参りました。しかし、ここまで来る道というものは実はかなり苦しい道でありました。たんたんたるものではございませんでした。しかし保育所についてまだ問題のあることも実は知っておるわけであります。  先ほど先生、幼稚園との対比をいろいろお話しくださっておったわけですが、私も実はこの点についてかなり留意をいたしました。なぜかなれば、私は二年ほど前に、衆議院の文教委員長をやりまして、人材確保法案についていろいろと取り組んだことがございまして、その後、こうした制度のもとに、幼稚園と保育所の両方の職員の給与格差が出るということについて実は非常に心配をいたしました。ことしの予算で特別給与改善費六%、これは本当の話がずいぶん苦労いたしました。率直に言うと、八・三%要求して六%になったのですが、これについてもやっとの思いで獲得をいたしたわけであります。  また退職共済制度、これもございませんでした。これについてやはり何とか制度を起こさにゃならぬということで起こしました。その後、この給与区分というものも最初は非常にシンプルなものであったわけですが、この給与区分というものを実は逐年広げていったわけでございまして、広げないと、何しろ高い給与の者については高い退職金ももらえないということになるものでございますから、これについてもいろいろと努力をしてまいりました。  償却費についてのお話がございました。私もこれはずいぶん考えたのです。民間団体からも償却費についての御要請がありましたが、償却費を措置費の中に組み込んで、償却が終わってリビルドするときに、一体こういう金を持っていらっしゃるものだろうかどうかという実際の議論もあるわけでございますので、これについては施設整備補助金を出すことによって、古くなった場合の新しい施設をつくるというふうな方向でいかざるを得ないものかなあ、こういうふうに思って、実はこれについてはいまだに検討課題だと思っております。  そのほか、いろいろなこの種の施設についてリラックスに使える金が欲しいということでいろいろ工夫もいたしました。しかし、その後庁費というものが、従来は非常にみみっちいものでございましたが、非常に上がってまいりましたものですから、この辺で何とかできるのじゃないかというふうに思っております。  いずれにしても、保育所の一番困るのは、私もずいぶん苦労いたしましたが、民間社会福祉施設というものが、ことに民間の保育所というものが一体何であるかということについて深く掘り下げれば掘り下げるほど、実は困った問題が出てくるわけであります。これについては、人のばらつきも人員の配置というものも、実はそれぞれの施設によって違うわけであります。学校のようにピラミッド型にできていない、あるいは給与の実態についても、高い職員だけおる施設もあり、また安い職員だけおる施設もある、これを何らかの形でプールできないものであるか、いろいろと考えておりますが、こうしたふうに民間社会福祉施設というものが民間の特殊性を発揮するということで、施設等のある程度の自立性というものを認めている、それがまた一つの画一的な、措置費の中身においていろいろと手当てのしにくいという反面も実はあるようでございます。こうした悩みは、先生、何か奥様がこういうことをやってらっしゃるそうでございますから、私以上によく知っていると思いますが、私はそういう経営の経験がございませんが、社会福祉に心を寄せる議員として今日までずいぶんやってまいり、私は私なりにいろいろ考えてまいったわけであります。  そうしたことでありまして、今後ともこうした施設措置費の内容については改善をすることに努力をいたしたい、かように思っておりますけれども、これが法制化ということになりますと、現実問題として、実際問題としてこれをどういう形で法制化するか、そして法制化するときのメリットというものが、今日の財政状況下で——いままでさえが、予算措置でやるのでさえが、実はあれだけの財政当局との激しい闘いのもとに積み上げたあの歴史を知っている私にとっては、決して私はいやだとは申しませんけれども、言うべくしてなかなか容易なことではないというふうに思っておりますが、これは私、この種の問題について従来やってきたものですから、いささかあつものにこりてなますを吹くというかっこうになっているかもしれませんけれども、できるだけのことは、実態上この際ひとつ措置費の内容を向上せしめ、入っているお子さんの幸せ、また働く施設職員の処遇の改善に大いに努力をいたしたいと思いますので、委員各位の御協力を切にお願い申し上げる次第であります。
  294. 住栄作

    ○住委員長代理 委員長からお答えしておきますが、吉田委員申し出の小委員会の件につきましては、理事会において検討することといたしたいと思います。
  295. 吉田法晴

    吉田委員 どうもありがとうございました。
  296. 住栄作

    ○住委員長代理 次回は、来たる十八日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十七分散会