○多賀谷議員 私は、日本
社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました
雇用及び
失業対策緊急措置法案について、その提案理由及び内容の概要を御
説明申し上げます。
今回、
雇用・失業保障に関する緊急要求に関して、総評、同盟、中立労連及び新産別の労働四団体の統一要求がまとまり、それと緊密に結合した形で
雇用及び
失業対策緊急措置法案を共同提案することになりましたことは、最低賃金法案に劣らず、わが国の労働運動の歴史においてまことに意義深いものと
考えるものであります。
近年、わが国経済は、高度成長を遂げ、工業生産力は資本主義国においてアメリカに次いで第二の地位を占めるに至りました。東南アジア等々の諸外国への年間資本輸出量においても、いまや日本の大企業はアメリカに次いで第二位となっております。
しかしながら、一方では、戦後三十年、最大の不況のもとで、中小零細企業の倒産や経営難による労働者の解雇、さらには不況を口実とした大企業における解雇、一時休業、出向、配転など、
雇用不安の拡大により、
雇用・失業情勢は急速に悪化し、深刻な
社会問題となっております。
労働省の
調査でも、今年一月から六月の上半期の解雇、希望退職その他何らかの理由で離職を余儀なくされた労働者数は二百九十万四千人に上っております。
いわゆる完全失業者は約百万人に及んでおります。しかもこの統計には、家業に復帰した出かせぎ農民やその他の短時間就労者などは含まれておらず、これらを含めた失業者数は三百万人に達すると推定されております。
昨年十月に一を割って〇・九六となった有効求人倍率は、今年になってさらに低下し続け、とうとう〇・五
程度にまで落ち込むに至りました。求職者二人に一人しか就職の機会がない
状況において、一たび職を追われた労働者の再就職はきわめて困難になっており、
雇用保険法において定められている失業給付日数を過ぎてもなお再就職できない失業者が急増しているのであります。また、昨年までは職につくことのできた出かせぎ労働者の多くも、今年は職が得られないままになっているのであります。日雇い労働者は二カ月に二十八日の職につけずに、印紙の売買が多発しているばかりか、
地域によっては月に数日しか職にありつけないほどになっております。
企業倒産が、負債一千万円以上だけのものでも月に一千二百件を超えるほどに深刻化し、賃金の不払いも急増しております。賃金も支払われないなどという
状態が放置されてよいはずはありません。
命の綱である失業給付さえ切れてしまった失業は、労働者とその家族にとって緩慢なる死を意味します。事態の改善はきわめて急を要すると言わねばなりません。
四党は、このような
状況にかんがみ、失業者の生活を守り、またこれ以上失業者が増加するのを防ぐために、緊急
措置法を制定することを共同提案する次第であります。
次に、この法案の内容について御
説明申し上げます。
第一は、この法律の目的であります。この法律は、深刻な不況の中で、失業給付の改善、不払い労働債権の保全、失業
対策事業の拡大、
雇用調整
委員会の設置による大量解雇の規制等の緊急
措置を、三年間の時限立法として実施し、
雇用の安定と失業者の生活保障とを図ることを目的としております。
第二は、
雇用保険法に基づく失業給付の改善についてであります。
この法律は、失業給付日数を一律に百八十日延長すること、出かせぎ労働者についても特例一時金のほかに百八十日までの給付を設けることにいたしております。基本手当の日額は、一律に賃金日額の八〇%に引き上げることといたしております。
日雇労働求職者給付金の受給要件である印紙保険料の納付日数は、現行の二分の一である二カ月十四日を限度として、就労日の特に少ない
地域は政令に定めるところにより引き下げることといたしております。
第三に、大量解雇の規制についてであります。
この法律は、事業の規模ごとに定める一定数以上の労働者を三月の期間内に解雇しようとするときは、少なくとも三月前までに、その旨を中央
雇用調整
委員会または地方
雇用調整
委員会に届け出なければならないものといたしております。
この対象となる労働者には、
臨時工、パートタイマー、日雇い労働者、二カ月以上季節的に
雇用される者も含まれることといたしました。また、届け出の書面には解雇の事由、解雇すべき労働者の選定基準、事業の経理
状況等が記載されなくてはならないことといたしております。
中央
雇用調整
委員会または地方
雇用調整
委員会は、届け出があったときは、三カ月以内に、当該労働組合または当該労働者の代表者の
意見を聴取するとともに、当該事業について必要な
調査を行い、事業主に対し、不当な解雇等については解雇の取りやめ等の必要な
措置をとるべきことを勧告し、当該解雇がやむを得ないものと認めるときは、勧告をしない旨を通知するものといたしております。
この場合、母子
家庭、身障者等を扶養する者等、解雇される労働者の生活の困窮の
程度等について配慮しなければならないことといたしております。
なお、右の勧告に当たり、必要があるときは当該事業と密接な
関係のある元請事業等に対しても必要な援助
措置を勧告できることといたしております。
事業主は、勧告または通知がなされるまでは当該解雇をしてはならないものといたし、事業主が勧告に従わない場合には、中央または地方の
雇用調整
委員会は、勧告を公表することができるものといたし、職業安定機関は、職業
紹介活動を停止する等、必要な
措置を講ずることができるものといたしております。
中央
雇用調整
委員会は労働省に、地方
雇用調整
委員会は
都道府県に置くものといたし、それぞれ労使同数の代表
委員と公益
委員をもって組織するものといたしております。
第四に、企業倒産等に伴う不払い労働債権の保全
措置についてであります。
この法律は、企業倒産等により不払いとなった賃金、退職金の労働債権を保全し、労働者の生活と権利を守るため、別に法律で定めるところにより、国が事業主から徴収する賦課金と国の支出金を財源として、当該不払いとなった賃金、退職金にかわる給付を行う
制度を設けるものといたしております。なお、中小零細企業負担については、減免の
措置を講ずることが適当であると
考えております。
第五に、失業
対策事業等の拡大についてであります。
この法律は、失業者の就労の機会を
確保するため、中高年齢者等の
雇用の促進に関する特別
措置法附則第二条の規定による制限を撤廃し、緊急失業
対策法に基づく失業
対策事業等の拡大を図ることといたしております。
最後に、この法律は、
昭和五十一年一月一日から施行し、三年以内に廃止するものとすることといたしております。
以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御
説明申し上げました。
この法律案は、労働四団体のみならず、未組織の労働者を含む三千六百万全労働者とその家族の切なる要求であることを十分に勘案され、の上、何とぞ速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)