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1975-12-23 第76回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月二十三日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 渡辺 惣蔵君    理事 田中  覚君 理事 林  義郎君    理事 島本 虎三君 理事 土井たか子君    理事 木下 元二君       大石 千八君    橋本龍太郎君       八田 貞義君    綿貫 民輔君       渡辺 栄一君    岩垂寿喜男君       岡本 富夫君    坂口  力君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    黒田  晃君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         法務大臣官房司         法法制調査部長 賀集  唱君         通商産業大臣官         房審議官    伊藤 和夫君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 仲村 英一君         農林省農蚕園芸         局農産課長   山極 栄司君         通商産業省生活         産業局紙業課長 沢田  仁君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十二月二十三日  辞任         補欠選任   坂本三十次君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     坂本三十次君     ————————————— 十二月十六日  ディーゼル車小型トラック排出ガス規制に  関する請願加藤紘一紹介)(第四五三二  号)  自動車排出ガスの五十三年度規制に関する請願  (加藤紘一紹介)(第四五三三号)  にほんかもしか被害対策に関する請願金子  一平紹介)(第四五三四号)  江戸川区を公害健康被害補償法に基づく地域指  定等に関する請願島本虎三紹介)(第四五  三五号)  同(小林政子紹介)(第四五三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件(公害対策  並びに環境保全基本施策等)  請 願  一 ディーゼル車小型トラック排出ガス規    制に関する請願外四十二件(黒金泰美君紹    介)(第二九九号)  二 自動車排出ガスの五十三年度規制に関する    請願外三十九件(黒金泰美紹介)(第三    〇〇号)  三 環境公害問題の調査研究機関設立に関す    る請願渡辺武三紹介)(第四三八号)  四 ディーゼル車小型トラック排出ガス規    制に関する請願外五十二件(高橋千寿君紹    介)(第六〇七号)  五 自動車排出ガスの五十三年度規制に関する    請願外四十九件(高橋千寿紹介)(第六    〇八号)  六 環境公害問題の調査研究機関設立に関す    る請願内海清紹介)(第八〇五号)  七 同(折小野良一紹介)(第八〇六号)  八 ディーゼル車小型トラック排出ガス規    制に関する請願外七件(近藤鉄雄紹介)    (第九五二号)  九 自動車排出ガスの五十三年度規制に関する    請願外七件(近藤鉄雄紹介)(第九五三    号) 一〇 香春岳の自然保護に関する請願吉田法晴    君紹介)(第一〇一一号) 一一 ディーゼル車小型トラック排出ガス規    制に関する請願外十六件(大竹太郎君紹    介)(第一二〇六号) 一二 同外一件(唐沢俊二郎紹介)(第一二〇    七号) 一三 同(小坂善太郎紹介)(第一二〇八号) 一四 同(羽田孜紹介)(第一二〇九号) 一五 同外二十七件(村山達雄紹介)(第一二    一〇号) 一六 同外十四件(渡辺紘三君紹介)(第一二一    一号) 一七 同外十二件(中川一郎紹介)(第一二八    〇号) 一八 自動車排出ガスの五十三年度規制に関する    請願外十七件(大竹太郎紹介)(第一二    一二号) 一九 同外一件(唐沢俊二郎紹介)(第一二一    三号) 二〇 同(小坂善太郎紹介)(第一二一四号) 二一 同(羽田孜紹介)(第一二一五号) 二二 同外二十五件(村山達雄紹介)(第一二    一六号) 二三 同外十五件(渡辺紘三君紹介)(第一二一    七号) 二四 同外十二件(中川一郎紹介)(第一二八    一号) 二五 かもしか被害対策に関する請願小沢貞    孝君紹介)(第一四五四号) 二六 同(唐沢俊二郎紹介)(第一四五五号) 二七 同(吉川久衛紹介)(第一四五六号) 二八 同(小坂善太郎紹介)(第一四五七号) 二九 同(羽田孜紹介)(第一四五八号) 三〇 同(倉石忠雄紹介)(第一五三二号) 三一 同(中澤茂一紹介)(第一五三三号) 三二 同(原茂紹介)(第一五三四号) 三三 同(下平正一紹介)(第一九〇六号) 三四 PCB汚染防止対策に関する請願田中美    智子君紹介)(第一九〇七号) 三五 かもしか被害対策に関する請願(林百郎    君紹介)(第二五三九号) 三六 八戸市を公害健康被害補償法に基づく地域    指定等に関する請願岡本富夫紹介)(    第二八〇二号) 三七 かもしか被害対策に関する請願中村茂    君紹介)(第三〇九四号) 三八 倉敷福田町を公害健康被害地域指定反    対に関する請願加藤六月紹介)(第三    二七九号)三九 PCB水銀汚染防止対策に関する請願(田    中美智子紹介)(第三三二一号) 四〇 倉敷福田町を公害健康被害地域指定反    対に関する請願橋本龍太郎紹介)(第三    四一六号) 四一 同(藤井勝志紹介)(第三四六四号) 四二 自然保護のため経読林道建設中止に関す    る請願吉田法晴紹介)(第三六〇七号) 四三 にほんかもしか保護に関する請願外一件    (奥野誠亮紹介)(第三七六二号) 四四 にほんかもしか被害対策に関する請願    (古屋亨紹介)(第四一五一号) 四五 同(竹中修一紹介)(第四二八七号) 四六 同(津川武一紹介)(第四二八八号) 四七 同(渡辺栄一紹介)(第四二八九号) 四八 ディーゼル車小型トラック排出ガス規    制に関する請願加藤紘一紹介)(第四五    三二号) 四九 自動車排出ガスの五十三年度規制に関する    請願加藤紘一紹介)(第四五三三号) 五〇 にほんかもしか被害対策に関する請願    (金子一平紹介)(第四五三四号) 五一 江戸川区を公害健康被害補償法に基づく地    域指定等に関する請願島本虎三紹介)    (第四五三五号) 五二 同(小林政子紹介)(第四五三六号)      ————◇—————
  2. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  請願審査に入ります。  本委員会に付託されました請願は五十二件であります。  本日の請願日程全部を議題とし、審査を進めます。  まず、審査方法についてお諮りいたします。  本請願内容につきましては、先刻の理事会において御検討いただきましたので、紹介議員よりの説明等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  採決いたします。  本日の請願日程中第三四、第三六及び第三九、以上の各請願は、いずれも採択の上内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  6. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 なお、本委員会に参考のため送付されました陳情書は、自然破壊南アルプススーパー林道廃止に関する陳情書外四件であります。念のため御報告申し上げます。      ————◇—————
  7. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 次に、閉会審査申し出の件についてお諮りいたします。  中島武敏君外一名提出公害対策基本法案   大気汚染防止法の一部を改正する法律案   水質汚濁防止法の一部を改正する法律案   騒音規制法の一部を改正する法律案   公害委員会法案  島本虎三君外四名提出環境保全基本法案   公害に係る事業者の無過失損害賠償責任等に関する法律案  岡本富夫君外一名提出環境保全基本法案 並びに  公害対策並びに環境保全に関する件 以上の各件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 御異議なしと認め、よって、さよう決しました。      ————◇—————
  9. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 次に、公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  10. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、特定化学物質あるいは有毒物質と言われるところの問題で、まだ片づいていない問題が大分ありますので、この問題につきまして御質問いたしたいと思います。  まず最初に、PCBの問題でございますが、静岡県の富士地区に、ちり紙工場があります。ちり紙工場というのは、全国でも、わりと地域的にまとまって工場がありますが、御承知のとおり、ちり紙というのは故紙を使って製造をするわけであります。そうしますと故紙の中にPCBが入っておる、こういうこともありますし、その富士地区では、ちり紙をつくる際のスラッジその他から、やはりPCBが出るのではないか、こういうふうな問題がございまして、大分、問題になっている。通産省当局から、現在こういったちり紙製造業者等から、どういうふうなPCBが出ているのか、調べておられると思いますから、その排水実態を、まず簡単に御説明ください。
  11. 沢田仁

    沢田説明員 御指摘のように、トイレットペーパーの産地静岡富士地区が一番大きゅうございますが、ほかに愛媛県それから福岡県、岐阜県がございます。全体の総生産のうちで静岡生産シェアが大体、半分ぐらいでございます。  御指摘検査でございますけれども、やはり多少PCBが検出されるデータが出ております。しかし、御承知のように来年三月からの規制が三ppbということになっておりまして、その基準を上回るものが、どのくらいあるか、静岡の場合、この八月に自主的にちょっと検査をしていただいたわけでございますけれども、二、三の工場で少し高い値が出ております。しかし、全体の総体的な評価としましては、かなりいい線と申しますか、もう一歩の努力をすれば基準値の中に入るような、そのようなデータが出ております。  いま申し上げましたのは、主として富士地区についての概括的な評価でございますけれども、そのほか愛媛福岡岐阜、先ほど申しました産地におきましては、PCBの結果は非常にいい結果が出ておると言っていいと思います。いま一歩、富士について問題があると思います。
  12. 林義郎

    ○林(義)委員 私が聞いておるのでは、必ずしも、そうではなくて、福岡県では、住民から反対があって、スラッジをためておかなければならない。兵庫県では、掘って封じ込めをしておるけれども、輸送してはならない、こういうことで県と市の行政当局指導も違う。ちり紙業者からは、だんだん捨てるものがたまっちゃって、ふん詰まりになってしまっておる、こういうふうな話も聞いておるわけであります。  それで対策として、ちり紙製造業者というのは中小企業の方が非常に多いのですから、やはり何らか考えていかなければならない。ノーカーボン紙をつくっておるメーカーというのは、かつてPCBを使ってつくっておった四社ありましたけれども、それから府県の卸商に行き、それから印刷業者に行き、それからノーカーボン紙需要者事務所等に行く、こういうことであります。それから、その紙を故紙回収業で集めて、故紙回収業からちり紙製造業へ行く、こういうふうな経路になっておると私は思うのです。その経路川上の問題としましょう。それから、ちり紙製造業者が今度ちり紙製造するために、集めた故紙をいろいろ処理する。その処理をするときに、いま話のありましたように、分析したところでは、ほとんどの業者がいいと言うけれども、私が聞いておるところでは、全体五十九工場の中で、やはり悪いのが十社くらいはある。こういうふうな話でありますから、やはり、そこを何とか解決をしていかなければならない、こう思うのです。  それで、いま申しました川上対策について、どういうことをやるのか。最近は廃棄物処理法に基づくところの政令改正もされましたから、その辺について、どういうふうな対策をこれからやっていくのか。政令内容とかということでなくて、具体的にこういうふうな指導をしていく、こういうふうな方針で臨むというようなことにつきまして。また、それでは川下すなわち、ちり紙製造業から後の問題、これをどういうふうにしてやっていくのか。その点につきまして簡単に御答弁ください。
  13. 沢田仁

    沢田説明員 御指摘川上対策でございますが、ことしの春にPCB対策協会を設置いたしました。これはいま、まだ任意団体でございますが、構成は十條製紙以下四社、PCB入りノーカーボン紙をつくっておったメーカーがメンバーとなりまして協会をつくり、PCB故紙回収対策、こういったものに当たるように、現に人間を配置いたしております。  川上対策といたしましては、主として静岡に流れていきます。東京の足立地区に携わっております回収業者を組織化いたしまして、そこに、ほとんど感圧紙関係が集まってまいりますが、昭和四十七年末までに記帳されました感圧紙を、PCBがまじっているもの、疑わしきものと一応みなしまして、そのような古い会計帳簿が束になってと申しますか、一つのかたまりを持っている場合、これを要注意物として、通常の故紙の流れからたな上げする、このような措置を、問屋業者PCB協会とタイアップする形で実行するということで、川上対策を実施してまいりたいと思います。本来なれば、もう着手しておるべきところなのでございますが、若干おくれましたので、来月、一月早々にも実施に移したいと思います。  なお、川上対策に最も重点を置きたいと思いますけれども、川下におきましても、やはり個々のちり紙業者が多少なりとも気をつけて故紙を購入するという行為を通じて、いわゆる、いかがわしい紙を避けることが、ある程度できるというふうにも伺っております。それらの点について、ちり紙業者の自覚を促したいと思います。
  14. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、正直に申してPCBの紙というのは、まだ大分、残っているところがあると思うのです。たとえばPCBカーボン紙を使っておるのは大きな役所である。普通に使っていて、捨ててしまうような書類は、もう残ってないわけでありますから、残っている書類というのは、むしろ保存資料、たとえば税務署関係資料であるとか、あるいは商法上どうしても会社の資料として残しておかなければならないような資料で、三年以上保存あるいは五年以上保存、十年以上保存というものが、実は、この対象として出てくる可能性があると思うのであります。そういったものにつきましても私は少し指導をしていただいたらいいのじゃないかと思いますが、この辺につきましては、どういうふうに考えておられますか。
  15. 沢田仁

    沢田説明員 まず官公庁関係では、いま、たな上げしておりますのは千百トンございます。それから民間の大手企業で千五百六十トン、まあ千五、六百トンのPCB故紙がたな上げしてございます。合わせて二千五、六百トンでございます。これについては、それぞれ厳重に保管しておりますので、外に出てくるおそれはないと確信できます。  ただそのほかに、いわゆる浮遊状況にあるもの、これが残念ながら実態、トン数、ありかがよくわかっておりません。ごく乱暴な推定しかできませんけれども、千トンから二千トンぐらいではなかろうかと思います。  先生、御指摘のように税務署関係あるいは会計関係あるいは問屋さん、そういったものも含めて、御指摘のような方向で行政指導と申しますか、注意を促すようにはしたいと思います。しかし率直に申しまして、そういう浮遊状況にあるものの実態をつかむのは非常にむずかしい状況でございます。
  16. 林義郎

    ○林(義)委員 今度の廃棄物処理法政令改正では、その辺の手当てはしてないのですか。
  17. 堀川春彦

    堀川政府委員 廃棄物処理法の方の体系で申しますと、PCBを含む感圧紙は、いままで産業廃棄物としての取り扱いをしておりませんでした。今回、政令改正いたしまして三月一日から施行になるわけでございますが、この中では明確に産業廃棄物としての取り扱いをして、先ほど通産省からも、お話がございましたように、処理業者に明確に、これを処理させるという道を開いたわけでございます。したがいまして、いわゆる川上作戦ということで故紙再生メーカーが、PCB入り故紙が紛れ込んで、それを処理しなければならないという責務を遂行する上において、やりやすくなるような環境を整えた次第でございます。
  18. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、川上作戦はひとつ十分にやってもらいたいと思います。  それでPCBの問題でありますが、これは当委員会でも昭和四十七年に大変に大騒動をしてやった問題であります。当時は水銀問題も大変なことでありまして、何か、日本じゅうの魚は全部PCB水銀に汚染されているのではないか、魚は食ってはならないぞと言わんばかりの風潮が実はございました。厚生省でも、昭和四十七年八月十四日付で「食品中に残留するPCB規制について」の答申をやっておられます。この答申の中では、魚介類については三ppmであるならば一応、安全であるということになっておりまして、それを受けて四十九年十一月二十九日に環境庁の方で「PCBに係る水質環境基準排水基準及び底質暫定除去基準並びにその分析方法の設定について」というのをつくっておられるわけです。  そこで私は、これらをずっと通観しまして一つ、考えられる問題があると思うのです。先ほど三ppbppbといいますから十億分の三であります。十億分の三というのが排水中のPCBの限度である、こういうふうな基準になっておりますが、考え方といたしまして魚には三ppmである。なぜ、そんなきつい制限をしなければならないのか。十億分の三などというのは、われわれからすると、ちょっと気の遠くなるぐらいの話でありますけれども、それは魚については三ppmとする。その魚について三ppmとしたのについては、一つ問題があると私は思うのです。  厚生省食品衛生調査会報告を見ますと、当時、問題になりましたカネミオイルの問題、これは慢性毒性の問題ではなくて、急性毒性または亜急性毒性の問題だと私は思うのです。そのときには油症研究班というのがありまして、その研究によると「最少量PCBによる発症例としては、体重五十九キログラムの男性が百二十日間にわたって総量〇・五グラムを摂取した事例があり、」これが発症例としては一番少ない例である。「この場合PCB摂取量は七十マイクログラム・パーキログラム・パーデーということになる」のであります。ところが、この三ppmという基準を決めておられるのは、五マイクログラム・パーキログラム・パーデーの数字ということでございまして、人の健康に影響があった症例としての場合、すなわち七十マイクログラムに比較いたしますと約十四倍程度の安全率が見込まれておるわけであります。  なぜ、こんなきつい基準をつくったのかといえば、この中に書いてありますのは、「ラットにおける二年間の長期毒性研究で、〇・五ミリグラム・パーキログラム・パーデーの水準では肝に影響を及ぼさないことが判明しており、また、この量は各種動物における亜急性毒性および次世代に及ぼす影響研究の結果においても悪影響を与えていない量とされている。」人の健康の重要性から考えて、百倍の安全率を見込んで、五マイクログラム・パーキログラム・パーデーとしたのだ、こういうふうな報告になっておるわけであります。  これは、言うならばカネミ油症事件という形で、言葉は非常におかしいかもしれませんけれども、人体実験が行われた毒物だと私は思うのです。ほかでは、なかなかそんな人体実験なんてない。人体実験をしようと思って、やったわけではありませんけれども、後で考えたら、これは大変な人体実験になってしまった、こういうことだと思うのです。そういった事例というものは大変に貴重に考えてやらなければならない問題である。動物ラットその他につきまして研究したところでは、百倍の安全率を見込んで掛けておる。人体の方でやると、いままでの例からすれば十四倍の安全率を掛けておる、こういうことでございます。  そこで、安全率ということで、一つ問題があるのではないかと私は思います。なぜ百倍を掛けなければならないのか。聞くところによりますと、動物人間と違うから十倍を掛けるのだ。老人子供につきまして、弱いから十倍掛けるのだというような話であるけれども、果たして全部のものが、そうなっているとも言えないと私は思うのであります。必ずしも、そういうふうなルールになっているとも言えない。それから、先ほどの油症研究班の例では十四倍という安全率になるわけでありますが、老人子供でありましたならば、むしろ十四倍でなくて十倍掛けてもいいのではないか、私はこういうふうな感じがするわけでありまして、その辺の考え方安全性というものにつきまして一体なぜ百倍を掛ける必要があるのか、五十倍でどうして、いけないのだろうか、あるいは極端なことを言いますと、この場合で言うと十四倍でどうしていけないのだろうか。十四倍を掛けてあるのは、恐らくあの油症事件のときには、一万何千人という方々が問題がある、こう言われている。それで本当に病気だという人は、最少の七十マイクログラムからの人である。恐らく六十とか五十とか、あるいは三十ぐらいの方々もあって、いろいろ訴えられた、あるいは問題だと言われたのだろうと思うのです。そこでやはりこの引き切ってあるところ、そこから先はならないのだ、こういうことでありましょうから、どうして、そういうふうな計算をされたのか。ここは一つ問題だと私は思いますけれども、この辺について安全性という問題を、厚生省なり環境庁あるいは労働省の方で、一体どういうふうに考えておられるのか。何か統一された考え方があれば、お聞かせをいただきたい。
  19. 堀川春彦

    堀川政府委員 お尋ねは、かなり専門的なことでございますので、後ほど厚生省からもお答えいただいたら適当かと思いますが、私ども、PCBに関します環境基準でございますとか排水基準等規制基準を決める場合に、確かに先生のおっしゃるように魚介類の可食部の三ppmという規制値、これは食品規制値でございますけれども、これを基準にしておるわけでございますが、その基礎にありますものが、先ほど先生の御言及になりましたラット長期毒性研究による実験結果を採用しておると聞いておるわけでございます。これはラットを用いまして、いろいろの濃度のPCBを投与した結果、肝臓に影響が出てこないところの無作用水準ということで、それをもとにいたしまして決めておる。そのほか、いろいろ入っております食物の摂取量といいますか、魚の場合は可食部について計算をしまして、三ppmというのが計算をされておる。それと先生も御言及になりました人間の場合の発症例との関係は、確かに直接的な比較をいたしますと、三ppmというものは十四倍というかっこうになる、そういう基礎において、そういう関係になるということは言えようかと思いますけれども、これは、すべて人間の健康に影響のある有害物質の規制基準を決めるというような場合におきましては、その発症例をもとにしてやらずに、無作用水準というものをもとにしてやっておることは、一般の通例のようでございます。さらに、その場合におきまして、無作用水準から百倍というものを安全率として用いておるというのが、これまた各種の例を通じまして、日本の場合でも外国の場合でも大変、多いわけでございます。その辺の、それでは、なぜ七十倍でいかぬのかという問題につきましては、やや専門的にわたりますので、厚生省の方からお答えをいただきたいと思います。
  20. 仲村英一

    ○仲村説明員 お尋ねのPCB人体の許容量でございますが、確かにカネミ・ライスオイル事件の当時は、最少中毒量につきましては先生、御承知のように、〇・五グラムという総量を摂取した方が発症したという事例は判明しておりますが、一万数千名に及びますカネミ・ライスオイルを摂取したと称した方々が、事実どの程度ライスオイルに混入しておりますPCBを摂取したかの疫学調査が細かくなされておらないという観点で、結局、人体につきましての最大無作用量というのが、私どもとしては当時、確認できなかったというのが実態でございます。  そうした場合に、人体に対する許容量を設定いたします場合には、先生もおっしゃいました人体実験ということは、再びできるわけではございませんものですので、当然、動物データを使わざるを得ない、こういうことになろうかと思いますが、その際は、先ほど数字でおっしゃいましたようなことから計算いたしますと、人体の場合には二百五十マイクログラム・パーデーというふうな数字が出る。ただ、この百倍につきましては、先生も何度も、以前にも御指摘のことだとは思いますけれども、一般的に外国におきましても、私ども他の物質につきましても、同様に十分な安全率を見込むという意味で、百倍を掛けるというふうなことをやっておるのが実態でございます。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 外国の実態実態とおっしゃるのですが、公害の問題は、やはり日本が相当、先進国的にいろいろ対策を考えていかなければならない立場にあると私は思うのです。それで、いまの食品の中にあるところのPCBの量が三ppmという問題についても、一つ安全性の問題がある。これは食品安全ということからの問題でありますが、食品衛生法ではその安全規格をつくる。そうすると安全だということだけでやれば、もう少し厳しくしても差し支えはないということになるのだと私は思うのです。望ましくはゼロであるのがいい、こういうことであると思うのです。それをゼロとしないで三ppmとしたのは、やはり何か別の要請があって、社会的にPCBが汚染をしているから、この程度のものはある程度まではしようがない、ここまでは安全だろうということで考えられたのが、いわゆる食品の安全基準だろう、こう考えるのです。したがって、そこまでだったら絶対に大丈夫である、こういうふうに言っていいのだろうと私は思うのですね。つまり三ppmの魚を食べるならば安全である。  ところが今度は、その魚にどうして入るかというと、魚を機械でつくったりPCBを入れてつくるわけではないので、魚はプランクトンを食べたり、大きな魚が小魚を食べたりして摂取する。そういたしますと濃縮度が一万倍になるというのが環境庁の方の報告であります。魚は一万倍になる。これもアメリカの研究で七千八百倍から一万何千倍というふうな報告がありますが、一万倍と定めるのも、きわめて乱暴と言えば乱暴な話であるし、大ざっぱと言えば大ざっぱな話である。一万倍を定めれば、まあまあ絶対に安全基準だということがあると思うのです。  ところが、もう一つ言いますと、魚というのは一定の範囲を泳いでいるのじゃないわけであります。海洋に出て、先ほどの例で言いますと、富士市の周辺で言うならば、富士市の沖合だけを遊よくしている魚もあるでありましょうし、はるか太平洋の向こうからやってくる魚もあるだろうし、いろいろな魚があるだろうと私は思うのです。そういうふうに魚がいろいろありまして、たまたまPCBによって汚染されている地域を遊よくして、その地域のえさを食べる。その地域のえさは、汚染された土壌からプランクトンとかなんとかにPCBが入って、そのプランクトンを小魚が食べる、それをまた大きな魚が食べるというような形で食物連鎖がある、こういうようなことでありましょうけれども、どうも、いろいろ見てみますと、二百から三百メートルのメッシュの結果で、いろいろ試料を調べてやっておるわけです。そこでもまた非常な安全なことを考えてやっておられるわけだ。魚ですから、そんな二百メートル、三百メートルの中だけで一生すむわけではないと私は思うのです。もう少し広い範囲で魚というものは泳いでいるだろう、こう思うのです。ですから、そんなものであるから、魚は一体どのくらい泳ぐのだろう、あるいは魚が、どのくらいなものを、どこで、どうやるだろうかというようなことも、やはり、これは学問としては、ひとつ研究をしていかなければならない問題ではないか、私はこう思うのです。  そうでないと、二百メートル、三百メートルの範囲だけ魚が泳いで、そこのものを食べるから、それで一万倍掛けて、そうすると三ppmの魚にならないようにするには、どのくらいにしたらよろしいかという形で、実は、そこで今度はもう一つ、その地域環境濃度というか、そういったものも決めておられる。ちょっと、この基準の決め方は、魚のところでも安全性をとる、それから、もう一ついって、その魚がえさを食べるところの環境についても非常に安全性をとっておる。二重に安全性をとっておられる。しかも、その安全性のかけ方が、私、申し上げたいのは、これは掛け算だということであります。安全性は足し算でやる場合と掛け算でやる場合とは大変、違う、私はこう思うのです。足し算でやる場合では、これだけの安全性があります、こちらにこれだけの安全性があります、それを足してやる場合には、実は程度の差というものは、そんなに変わらないわけであります。掛け算でやるということになりますと、非常に厳しい基準が出てくるわけであります。いろいろなことを計算するときに、よく言われるのですが、一プラスxというものの自乗をする、こういうときに、概数的にいたしますと一プラス二xというものでやるといえばよろしい。xというものが〇・〇幾つということの場合には、大体概数計算をするときには一プラス二xということで、ほぼ同じだということであります。そのくらいのことで考えればいいわけでありますが、実はそういう考え方でなくて、これを掛け算で、xの自乗またはxの三乗というような形で、非常に微細なところに入っていくというのが、私は公害行政の一つの問題点と言わざるを得ないと思います。  食品の立場からすれば、食品は三ppmである。環境の方の立場から言えば、いや魚が三ppmと決めましたから、私の方も、できるだけ安全度をとりました、こういうことになれば、それは、それぞれの立場においては、私の守備範囲においては絶対に安全でございます。こう言えると思うのです。言えますよ、これは。ただし、その掛けたことによって非常に安全度の高い結果というものが出てきておるのじゃないか、私はこう思うのです。恐らく、現在やっているところの排水中のPCBの三ppbという、十億分の一というような基準というものは、そういったところから出てきているものだろうと私は思うのです。  しかも、そのことによって、先ほど私がお話し申し上げましたように、ちり紙屋さん、中小企業者の方では、実は大変に困った問題が、いま方々で出てきておる。通産省の課長さんは、いや、大体何とかいきそうだ、こうおっしゃるけれども、必ずしも何とかいっていないように私は思うのです。そこで考えなければならないのは、それぞれの立場において、非常にきつい基準をつくるということは、一つ考え方でありますが、現実に、ちり紙というものは生産をし、やっておりますから、ちり紙生産に、それでは大変な費用がかかる、あるいはちり紙生産が非常にむずかしくなるというような場合においては、ちり紙というものも、やはりお互いの人間生活にも必要でありますから、こちらの環境基準について、PCBが恐らくあるであろうということは、ちり紙以外には、いまのところ考えられないわけでありますから、その辺を少し、やはり両方を一緒にとって比較をして基準というものをつくっていくべきではないか、私はこう思うのです。  特にPCBのこういった排水基準というものは、たしか昨年から、もう実施をされているのですね。一年間ちり紙については延長しているというのは、やはり、ちり紙製造業者というものが実は大変、困る、故紙を使わなければならない、あるいは中小零細企業者ばかりである。大きな企業で、ちり紙をつくっているところは余りないと思うのです。そうしたところから、一年間の延長措置というものをやったのだと私は考えているのです。だから、そういった措置を考えるならば、余りちり紙屋をいじめるということは、お互いの立場、魚の立場もあるでしょうし、それから環境の立場も、それぞれの立場もあって、それぞれで完全無欠な安全性を主張するのはいいのですが、同時に、ちり紙がなくなったら、お互いの人間生活においても衛生上は困るわけでありますから、その点もやはり考えてやる必要があるだろう、こう思うのです。  そうした点について、これから、どういうふうにやっていかれるのか。指導しておられるのは環境庁もあるでしょうし、厚生省もあるでしょうし、また通産省もあるでしょう。各省で、いま私が申し上げたようなことについて、どういうふうに、これは基本的に考えていかれるのか。いや、私のところは、私のところの範囲だけは絶対に守ってやらなくちゃならない、こういうふうにお考えになるのか、どういうふうにされるのか、忌憚のない御意見を承っておきたいと思います。
  22. 堀川春彦

    堀川政府委員 まず終局的な御質問に対します御返事に入ります前に、魚の生物濃縮比の一万倍というものにお触れになりましたので、その点、若干申し上げておきますが、これは御指摘のとおり、私ども専門の検討委員会で検討していただきまして、たとえばスウェーデンのハンセンの、濃縮比としてはイシモチについて七六〇〇という数値があります。それからハマチにつきましては、これは東海区水研で調べたのですが、八五八二。それからウナギにつきましては七五九二、五六六七というふうな、これは兵庫県水産試験所で調べた濃縮比の値がございます。これらの内外のいろいろの実験データ、こういうものがありますので、これらをもとにいたしまして、そうして、これは特定の魚についての濃縮比を実験して調べたものでございますから、さっき先生の御指摘になりましたように、魚の回遊とか、いろいろの状況からすれば、その点は、いろいろ議論はあるかも存じませんが、まず、この対象になりましたハマチとかウナギとかいうような魚は大変、濃縮比が高いというような性質を持っておる。そういうことになりますと、魚一般について考えてみる場合には、やはり、その点を考慮をして、やや安全性を、そこに付加して見ていかなければならないという議論が当然、出てまいります。それからまた、その他、これは魚について三ppmの基準といいますのは可食部についてでございますから、可食部以外の部分についでの問題というものも、これは米国の実験データなどもありまして、そういうものとの突き合わせというようなことをやったのが一つ。  それからもう一つは、さらに生物の連鎖といいますか、さっきお話の出ましたプランクトンを何かが食べて、またそれを食べてというような連鎖、食物連鎖と言っておりますけれども、そういうことを考えると、そこに、もう一つ、たまりやすいという要素も入るというようなことを考慮いたしまして、一万といたしたわけでありまして、これは現在、考えられるデータを全部、駆使をして、その上で十分の安全性を見た形で決めておる。  その場合に、先ほど掛け算、足し算というようなお話がございました。ロジックとしては確かにそういう御議論もありましょうが、私どものこういう問題について対処する姿勢といたしましては、食品としての安全性を保たしめるような環境規制値、そういうものを、どうつくるかということであれば、やはり安全性についての物の考え方は、より安全なという方にどうしても傾くということに相なりますので、その辺は、新たな科学的知見が出てまいれば、もちろんそれに基づいて再検討するにやぶさかではございません。先ほど先生のおっしゃったように、中小の零細な故紙の再生メーカーが、この問題で大変、悩んでいらっしゃるということも、私ども重々承知はしております。そのために一年延期の措置もとられ、その間に、いろいろの対策も考えられて逐次、実行に入っておるわけでございます。特に中小企業の皆様方といたしましては、やはり個人個人の力では、どうにもならないところを、共同の力で何とか工夫をして対処していくへその一つが、私は川上作戦であろうと存じまするし、他の一つは、やはり共同的な力で何か工夫をこらして、これを処理する道がないか。排水の場合は個々の企業の問題になりますが、スラッジ等の問題につきましては、やはり共同組織で焼却場を設けてやるという方向が正しいのではないか。そういう形での努力が、場所の選定とか、いろいろのことで難渋しておる点は、私ども十分わかるわけでございますが、先ほどの基準の問題とは離れまして、もちろん、長い目で見れば、それとも関係があるということはわかりますけれども、できるだけ可能な限り、通産省その他、関係の各省と相談をいたしまして、現実に起こってくる事態を、よく冷静に見詰めながら対策を考えたいと思っております。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 厚生省の方から何か御答弁をいただけますか。
  24. 仲村英一

    ○仲村説明員 食品の安全につきましては、その確保には非常にむずかしい問題がございます。と申しますのは、私どもが一般に有害レベルと申しております中身につきましては、個体レベルの問題もございますし、肝臓という一つの臓器の障害としてあらわれる場合もございますし、肝臓の中の細胞のレベルで障害が起きるとか、いろいろのレベルの障害が起こり得るわけでございます。  PCBにつきましても、ただいまカネミ・ライスオイル関係で裁判が進行中でございますが、その過程におきましても、やはりPCBの急性中毒あるいは悪急性中毒で、例の皮膚の障害その他いろいろの障害があったわけでございますが、患者さんが五、六年、経過いたしますと、今度は肝臓の問題、高血圧、いわゆる脈管系の障害、そういうふうな観点で、まだ障害が残っておるというふうなことも、いろいろ裁判上も出ておるのが実態でございます。  したがいまして、単に個体が安全を保つということの意味をきわめるのは、医学的にも非常にむずかしい問題があろうかと思いますので、そういう観点から、十分な安全率をとるということは、私どもとしては今後とも十分、慎重にせざるを得ないという立場でございます。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 食品衛生法の七条に「公衆衛生の見地から」「規格を定めることができる」と書いてある。三条では、有毒の基準が書いてあるわけです。基本的に見まして食品衛生法でも、そういうふうに二つ考え方がしてあるわけでありますから、環境問題も、いま話がありましたが、安全性安全性と一方で非常に安全性をとると、いろいろな障害が出てくるように私は思うのです。少なくとも、ペリルポイントといいますか、危険な地点はここだということと、これから先は絶対に安全でございますというところは言えるのではないかと私は思うのです。  なぜ私が、そんなことを申し上げるかというと、富士市に私も参ってみたのです。どこに問題があるかというと、実は住民の方から、せっかく焼却工場をつくろうと思ったら、焼却工場をつくってくれるな、こういうことなんです。それはめちゃくちゃに危ないものではない、こういうお話でありますが、PCBが三ppmぐらい入ったようなスラッジでも、青酸カリと同じぐらいの危なさがあるぐらいの感じは、住民感情としてはあるわけであります。これはお互いに否定し得ない感情でございますから、これを合理的に解決するわけに、なかなかいかないという現実の問題が、そこにあるというような気がするのです。  それを解決するためには、先ほどもお話がありましたように、魚において三ppmあるいは排出基準において三ppb、そういったものは、これだったならば絶対安全だ、こういうことだと思うのですね、安全率を両方に掛けてあるわけですから。ところが、安全だということではなくて、三ppbなり三ppmを超えたら大変な毒性があるのだ、こう言わんばかりの話がみんな伝わっておるわけであります。そういったときに、政府の方として考えていかなければならないのは、確かに安全をとることも必要でありますが、同時にまた、ちり紙生産をすることも必要だと私は言わざるを得ないと思うのです。安全をとるために、ちり紙生産をやめていいということは絶対に言えないところだと思います。これは先ほど環境庁局長さんもそういうふうな御答弁でありまして、中小企業問題云々、こういう話があった。  そうしますと私は、一つには環境基準というようなものの考え方を、もう一つ別の考え方を入れて、何かペリルポイントみたいなものをつくってみたらどうだ。それを超えたら相当に危険がある。もしも、そこを超えたならば、いろいろな被害が出てきたならば、無過失賠償責任を当然とってよろしい。また企業もとらなければならない。そういうふうな基準というものを、何かもう一つ環境行政の中に入れて考えた方が現実的であるし、実際の指導をしていく場合においても、いいのではないかというように私は御提案をしておきたいのです。これは、いますぐに、どうだということでないのですけれども、提案しておきたいのです。  というのは、ことしの夏に私が休みで帰っていると、突然に東京で何か大変な事件が起きたということでありました。六価クロムの話であります。あの話も、鼻に穴があくとか、いろいろな大変なことがあった、こういうことでありますが、いまでは全然そんなことになっていない。六価クロムについては私、聞きたいのですけれども、東京都で江東地域の住民の健康診断をして、結果としては住民については何ら異常はなかったけれども、さらに研究をしてみる必要があるという報告がされたというのが九月か十月ごろにありました。工場の中の、あるいは工場でかつて働いておられた方々の問題は別にしまして、工場外の住民について健康被害というものがあったのかどうか、また、これからあり得るのか、この辺について環境庁はどう考えておられますか。
  26. 野津聖

    ○野津政府委員 六価クロムの問題につきましては、健康被害というものよりも、まず先行しまして環境調査、特に工場内でございますと、これは労働省の担当としましての基準が決められておるわけでございますけれども、工場外、特に投棄されました鉱滓等によりまして、一体どのような環境の汚染が行われておるかということの調査が、まず先行すべきであろうと考えておるわけでございますけれども、ただ非常に大きな社会問題となっておりました関係上、各地方自治体で現在、行われておりますのが、北海道の栗山地区、千葉県の市川市、東京都の江東区、江戸川区、広島県の竹原というところで健康調査を実施をいたしてきているところでございまして、この問題につきましては、一応、一部につきまして発表されたわけでございますけれども、具体的に最終的な結論と申しますのは、もう少し詰めて検討しなければいけないというふうにも考えておるわけでございます。したがいまして、この最終的な結論が出てくるのを待ちながら、私どもとしましてもそのデータを検討しまして、健康影響についての結論を出していきたいというふうに考えております。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 そうしますと、東京都で江東区について住民健診をやったけれども、いまのところは特別な異常がなかったということも、まだわかっていない、こういうことでございますか。
  28. 野津聖

    ○野津政府委員 東京都としまして、中間段階として発表されたと私ども理解しているわけでございますが、各地域におきましての、いろいろな問題をまとめて、しかも、先ほど申し上げましたような地域でも実施しているわけでございますので、それらの点をまとめまして、どのような影響があったかということを詰めなければいけないと思いますし、さらには一番、大事なことは、環境の汚染の状況がどうであったかということも詰めていかなければいけないと考えておるわけでございます。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 それは詰めてみて、大体いつごろ結論が出るのですか。
  30. 野津聖

    ○野津政府委員 各地域におきます現在の実施状況につきまして若干の差があるわけでございます。したがいまして、これらのデータがそろいましてというふうなことを考えているわけでございますが、現在の段階では、埼玉県におきましては十二月に、これは後で入ってきた問題でございますが、実施するということでございますし、また江戸川区におきましては精密検診を四名が終わっておりますが、江東区におきましては、まだ二次健診あるいは精密検診が全部、終了していない。また千葉県の市川市におきましても、一次健診が終わったところであるというふうな状態がございますものですから、これらの結果をまとめてというふうに考えておるわけでございます。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 そこで私は、六価クロムについてもやはり環境基準の問題があると思うのです。飲料水の基準が〇・〇五ppm、こういうふうな形で厚生省で定めておられる。これは、どうもお話を聞きますと、水道事業としてやっているから相当、厳しい基準である。どのくらいのことかというと、一九五八年にアメリカで実験されたところでは、一〇ppmのものをネズミに与えたところが、五ppm以上で臓器への蓄積が認められた。二・五ppmで水を飲む量が低下するということが、一年間の実験でわかった。さらには犬について一一・二ppm以上で臓器への蓄積が認められた。これは四年間の実験である、大体、半世代。こういうふうな話であります。そうしますと、いま申しました五ppmなり一一ppmに対しまして〇・〇五ppmでありますから、五ppmにすれば百倍、一一ppmにすれば二百倍、こういうふうなぐらいの安全率が実は見込んであるわけであります。  どうも、その辺の考え方が、これは飲料水である、水道である、水道であるから安全にしましょう、こういうことでありますが、その方の考え方は、皮膚を腐食させたり腎臓を冒したりするのは、〇・一ppm以下だと大体、無害であるから、安全率を見込んで〇・〇五ppm以下とした。ここは単純に二倍を掛けた、こういうことであります。WHOで、アメリカの飲料水基準というものが〇・〇五ppmであるから日本も〇・〇五ppmにしておけば、言われたときには、外国でもそうやっておりますから、日本でも同じことにやりましたと言えば、一つの言い逃れができると、このぐらいのことなのかなと、私、ひそかに考えておるのです。ところが、ここでも、先ほどPCBのときに、ちょっと、しつこく申しましたが、これだけの問題になってきますと日本でも、いろいろな問題が出てくれば、私は、その辺のデータというものを整理してもらわなければいけないと思うのです。  聞きますけれども、飲料水の基準と、いわゆる環境基準というのは本来、同じでなければならないのかどうか。私は、考え方として飲料水基準よりは環境基準というのは緩かやであっていいものだろう、こう思うのです。しかも臓器に蓄積が認められたのは五ppm以上であったならば、それにまた百倍掛けることと、基準を異にするということ、これは一体どういうふうに考えて、これから話を進められるのか。  私はちょっとお考えを聞いておきたいのですが、臓器の蓄積が認められれば、人体に対する何らかの異常がある。だから、そこについてはペリルポイントを置きました。そのかわり、もう一つ安全な基準というものをつくって、この飲料水の基準は〇・〇五でありますから、〇・一だったならば無害だからということでしたら、そこに置いておくということでもいい、こう思うのですけれども、その辺について、考え方をどういうふうな形で、これから整理されていかれるのか、お尋ねしておきます。
  32. 堀川春彦

    堀川政府委員 まず、六価クロムの環境基準として〇・〇五ppmがとられているわけですが、これは国内におきまして厚生省令で定めております飲料水基準を、そのまま持ってきておるわけでございます。  その理由といたしましては、これは水道用水を浄水します過程におきまして、いろいろの方法があると思うわけでございますが、この六価クロムは、いろいろの浄水方法を考えてみましても、大変、除去することが困難である物質であるということが一つあるわけでございます。これにかわるような方法というものも、いろいろ検討しておられるようでございますけれども、まだ現在のところ、どうにも実行できないのは、大変、物すごいお金をかけるということであれば別でございますが、どうもいい方法が見つからないということであるといたしますと、やはり一般の公共水域から水道用水の上水の水源として取っておるものは、かなり、あるわけでございますので、それらの浄水装置によって除去できないということになると、ぐあいが悪いということから、〇・〇五ppmを環境基準として採用しておるわけでございます。  なお、〇・〇五ppmのもとが、先ほど先生の御指摘になったように、米国におきますネズミを使った実験で、五ppm以上の六価クロムを含有する水を投与した群において、体内組織にクロムの蓄積が認められたというふうに聞いておるわけでして、これはクロムの蓄積が始まるということだとしますと、蓄積自体が直ちに病変というわけではございませんけれども、蓄積が多くなってきますと、いろいろ有害な症状が起こるということで、これらをもとにしまして、私ども、そういう一連の考え方をもとに、〇・〇五ppmを水の環境基準として採用したわけでございます。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 技術的にも、浄化して上水に入れるときに除去がなかなかむずかしい問題がある、だから同じ数値にした、こういうことですから、そこでも一つの安全というものを考えて、やっておられるわけでありますね。  それから、臓器への蓄積が認められるという、こういうふうな形の五ppmである。これは、臓器への蓄積が認められるということは、臓器の中で、いろいろな物質というものはある程度まで蓄積があって、どの程度までが障害か、あるいは病気になる可能性があるかということは、私は蓄積があったから直ちにという議論には、なかなかむずかしいと思うのです。人間の体というのは、悪いものがあったら、だんだん排せつしてしまうのです。よくしたもので、悪いものは、みんな大便や小便に出すというのが人間の体だと思うのです。ちょっと蓄積があったから、すぐに大変だということになりますと、私は、そこでも大変に安全を実は見込んでおる、こう思うのです。水を飲む量が低下するのが二・五ppmである、こういうことでありますと、そこは、ある程度まで体の中に異常がある。やはり人体というものは自然に対して一つの抵抗力を持っておるわけでありますから、その抵抗力というのは、ある程度まで考えていかなければならない。ちょっとたまったから、どうだというような形は、私はなかなかいかぬのだろう、こう思うのです。そうしたことをやはり、これからの新しい公害行政としては考えてもらわなければならないと思うのです。  というのは、なぜ、そんなことを申しますかというと、六価クロムを、それでは、そんな大変なことだから、極端なことを言ったら、もう一つ単位を上げて〇・〇〇五ぐらいにしちゃってもいいのじゃないか、安全率をもう十倍掛けたらいいのじゃないか、こういう議論だってできてくると思うのです。そうしたら、六価クロムを使っているクロムメッキであるとか、あるいは革なめし業なんというものが大変な被害を受ける、こういうことになると思うのです。問題になりました日本化工なり、そのほかの会社というのは、日本化工なんというのはわりと大きな会社です。相当古くからやっている会社であります。しかし、それを使うところの革なめし業であるとか、あるいはメッキ工場であるとかというのは、大体もう中小企業である。しかも日本のお互いの生活の中に、どうしても必要なものである。大臣や局長さんの履いておられるところのくつにしましても、やはり革なめし業でできておるものでありまして、くつを履かなくてもよろしいというなら別でありますけれども、やはり、くつを履かなければ、お互い現在の生活はできない。そうすると、そのときにはどうしても、六価クロムを使わなければ革のなめしもできない、こういうことでありますから、やはりこの六価クロムというのは、どうしても、この中に生活している上においては必要だ。そこを考えると、どうしてやっていくかということを考えていく必要があるだろうと私は思うのです。  先ほど部長さんにお尋ねしましたけれども、健康被害が出てくれば、私は大変な問題だろうと思うのです。労働災害の問題につきましても、やはり労働災害は労働災害として対処していかなければならない、こう思うのです。そこで、いろいろな因果関係その他を追及していくときに、特に大気に発散するところの問題がある。さっき環境基準はつくっておられるということでありましたけれども、それは水の方の基準だろうと思うのですね。大気の基準というのは、実はまだ、つくっておられないのですね。そうすると大気の基準をやるときには、今度は、ばい煙によって起こすところの影響と、六価クロムによって起こすところの影響というのは違ってくると思うのですね。違うのか、同じ病気が出るのか。あるいは、まざったときにどうなるのか。この辺の問題を詰めていかなければ、はっきりした大気の基準というのも私は出てこないだろうと思うのです。そうした意味で、やはり新しい問題というか、複合汚染というか重合汚染というか、そういったものをどう取り扱っていくのか。これは、いままではカドミである、六価である、PCBである、何である、それぞれ一つ一つでありました。ところが今度は病気の状況というのは、恐らく粉じんとそんなに変わらないようなものが出てくるのだろうと思う。これについて、どういうふうな形で考えていかれるのか、御答弁ください。
  34. 野津聖

    ○野津政府委員 御指摘ございますように、六価クロムの場合に、いわゆる水によります汚染、たとえば井戸水の中に溶け込んでいる問題、それから鉱滓等の投棄あるいは一部のメッキ、革なめし等によりましての大気の汚染という問題があると思います。この両方につきましては、やはり健康調査につきましては分けて考えなければいけないという原則は持っておるわけでございまして、健康調査の方式につきましても、それを分けて詰めるべきであろうということでございます。  ただいま御指摘ございましたような大気の問題でございますが、現在の状況としまして、いわゆる浮遊粉じんと言われるものの性質について、非常に大きな問題があるのではないかと私ども認識いたしておりますけれども、ただ現在の段階で、浮遊粉じんの中に、一体どういう物質が、どういう形で入っているか。しかも特に工場内の問題と違いまして、非常に薄い濃度であります場合に、これをどういうふうに把握し、また、それとどういうふうな健康影響があるかということの関連は非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、微量の大気汚染と健康というふうな問題につきましては十分、詰めていく必要があるだろうと思います。特に、先ほど厚生省の方から答弁がございましたように、いわゆる人体全体に対する影響と、あるいは一部の臓器に対します影響というふうなもの、あるいは、もっと小さく一つの細胞に対する影響というふうな問題も、詰めていかなければいけない問題だろうと思っておりまして、いまの浮遊粉じん等につきましての研究等につきましても十分、詰めていきませんと、軽々に直ちに、いまの濃度で健康に影響があるということの断定につきましては、むずかしい問題が出てくるのではないかと考えております。
  35. 林義郎

    ○林(義)委員 先般、新聞を見ておりましたら、六価クロムに関連いたしましてベリリウムというものが何かあって、これは希元素だと思うのですが、それがやはり肺がんに影響があるのじゃないかというようなことが出ておりました。そういったものが出てきますと、一体ベリリウムなどというものが、どこで、どういうふうに使われて、どういうふうな形で、あって、しかも、どういう毒性をもたらすか、こういうことで、この辺も考えていかなくちゃいかぬのですけれども、このベリリウムについては、何か調べておられますか。
  36. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま御指摘のございましたベリリウムは、ばい煙規制法をつくる当時から問題がございまして、私たちは人間の肺の中にどの程度、田舎と町の中で、ベリリウムが入っているかということを調べております。ですから、そのときのデータでは、長野県の山奥の田舎の方の胸の中にも、肺臓の中に若干、入っているということがありました。かなり、いろいろなところにあるなということでございます。  そういうことで、われわれベリリウムは非常に注目をいたしておりまして、判断条件をつくるための調査をするということには、これはリストアップをいたしておりまして、優先順位としては非常に高いものであるというぐあいに解してやっておりますが、また一方、国設大気汚染測定網あるいは各地のコンビナート等での調査の粉じんの解析の中にベリリウムを入れておりました。四十七年まで入れておりましたが、四十八年から、これの測定法にちょっと問題が出まして外しておりますが、四十七年までのデータは、一体、全国どういうぐあいの形でベリリウムがあるかということを、すべて、つかまえております。
  37. 林義郎

    ○林(義)委員 新聞記事を私、持ってきておりませんけれども、新聞によると、何か六価クロムの鉱滓の中に多分にあるという話が出ておりましたが、そういったことはあるのですか。
  38. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 鉱滓の中にあるかどうかは、私は事実としては存じません。
  39. 林義郎

    ○林(義)委員 確かにベリリウムが発がん性があるということは認められておるようであるが、それが、どこかから発見されたから直ちにそうだという結論は、私は非常に短絡した話だと思うのですね。  もう一つ、私、申し上げたいのですけれども、この前の当委員会で、私は塩化ビニールについて質問を申し上げたのです。その御答弁の中にもありましたが、新聞では百何人も塩ビ患者が出ておる、それから周りも大変だ、こういうふうな話であるが、労働省からの御答弁では、私は一件一件、当たってみましたけれども、余り労災申請もまだ出ていない。労働省の方の御指導では、疑わしきは申請して出して審査の対象にしてくれ、こういうふうな御指導になっているというふうに聞いているのですが、どうも新聞でばっと出てくるところと、実際に起こっている病気の状況というのは、大分かけ離れているように思うのです。私は、この辺もやはり大きな日本の問題ではないかというふうに思います。  もう一つ、塩ビで聞きますけれども、この前の御説明では、日本は諸外国に比較して、アメリカ、イギリス、ドイツ、ソ連等に比較して、非常に厳しい基準をつくっておられることに聞きました。そうすると今度、塩ビの環境基準というものをつくるかどうか。この前の御答弁では、塩ビは、いまのところ環境については余り影響は出ておりません、こういうふうな御答弁でありましたけれども、塩ビについての環境基準は一体どう考えるか。  塩ビも発がん性、六価クロムも発がん性、いまのベリリウムも発がん性、それからたくさんの発がん性というのがあると思うのです。ところが発がん性という問題は、がんというのが何によって起こるのかわかっておればノーベル賞物だと言われるぐらいのことである。一体どういうふうな形で、どの程度なったならば発がん性があるのか。やっぱりゼロというわけにいかないのでしょう。六価クロムだって恐らく〇・〇五ppmというような形で環境基準をつくっておられます。そうすると発がん性というものについて、いま政府の方では、どの程度まで研究しておられるのか、お調べしておられるところがあれば、お答えください。
  40. 野津聖

    ○野津政府委員 発がん性の問題につきましては、ただいま、がんの研究につきましては一括しまして厚生省の方でまとめていただいて研究を進めていただいておるわけでございますが、私の方からもお願いいたしまして、現在がんセンターが中心になりまして、いわゆる大気汚染物質等によります発がん性の問題を研究テーマにしまして、研究をお願いしておる段階でございます。その他の物質の細かい問題につきましては、直接の所管ではございませんけれども、やはり、いわゆるがんの研究という非常に大きなプロジェクトの中で処理がされておるというふうに認識いたしております。
  41. 林義郎

    ○林(義)委員 よく発がん性、発がん性と言われますけれども、がんの研究の中でやっていく。因果関係を証明するためには、やはりその機序というものがはっきりしなければだめだと思うのですね。これができない。そうしますと、がんの発生原因というのは、なかなかつかめないということであるならば一体どうしたらいいか、こういう問題がどうしても出てくるのではないか、こう私は思うのです。それで疫学的な手法を使って、相当な程度の確率があればやる。確かに六価クロムのような場合におきましても、九年間の実験をやったならば十何倍かの発がんがあるから、それでどうも関係があるのではないかというような話である。これは、あくまでも単に統計的にとっただけの話でありまして、厳密な意味での因果関係というのは、私は立証されてないと思うのです。私は、そういった未知の分野が、この公害問題にはたくさん、あったように思うのです。PCBの問題もそうでありますし、六価クロムの問題もそうであるし、塩化ビニールの問題もそうである。未知の分野と、はっきりわかっているところというのは、きわめて危険なところというものがわかっているのですね。どうもこの辺、絶対に安全だというところも、あるいは、わかっているのかもしれない。ただ絶対に安全で、しかも、いろいろなことを掛けていくと大変きついことに、私は、なると思いますし、その中間にやはり何か線を引いてやっていくことが、私は、どうしても必要だろうと思うのです。  時間も来ましたから、大臣に最後のお尋ねをしたいのですけれども、私は公害行政をずっとやってきておりまして非常に感じたことがあるのです。それはPCB水銀のときには大変な大騒動をしました。全国の魚が食べられないようになるという報道もされました。では、いま日本人が一体アジを一週間に十二匹などということを考えて食事をとっているかということです。イカが五・五枚しか食べられないなどということを言って、当時は大変なことでありまして、おすし屋さんまで実は補給金みたいなものを出した。特別の融資制度をやったこともあります。PCB汚染のところでは、とにかく、どこの魚でも全部、県の衛生試験所か、どこか試験所へ行って、この魚にはPCBが入ってない、あるいは非常に少ないという証明をしてもらわなかったら、魚も売れないというような大変な騒ぎがあったわけであります。その騒ぎが一段落しましたら、いま、もうみんな忘れてしまって、だれもそんなことを考えない。皆さん恐らく、おれはアジが好きだけれども十二匹以上食ったらなどと考えて食べる人、だれもいないと思うのです。大臣だって恐らく、こんなものはPCB汚染だ、水銀汚染だということで、魚を食べるときに一々考えられることはないと思うのです。  そういった風潮も一つありますから、この風潮をやはり直していかなければならない。この六価クロムの問題でもそうであります。あのときわっと騒いで、一ヵ月か二ヵ月、騒いだら、いまはもう全然、火も消えてなくなってしまって、どこにいったか、こういうことです。塩ビのあのときも、塩ビが何かあると、工場の周辺は全部、被害があるかのごとき話がばっとあって、どうも調べてみると、言っては悪いけれども、ネズミ一匹も出なかったと言った方が適切なくらいの状況だと私は思う。  余り公害問題で、これだ、これだと言ってつり上げていくのもいいのですけれども、しかし、そこは科学的に冷静に判断をしていくことがどうしても必要だ、騒ぐだけが能でないと私は思うのです。やはり国民に対して、本当に科学的にこうだということをはっきり政府が明示をして、対策を立てていくところが、私はどうしても必要ではないか、こう思うのであります。したがって、そういった意味におきましては、もしも、こんなことでまた何か今度、出てくる。いまのお話でありますけれども、ベリリウムもまた何かあります。大変だ、大変だと騒ぐということになりますと、これはオオカミと羊飼いの少年みたいな話になっても私は困ると思うのです。環境行政というのは結局やってみたけれども、あれはオオカミと羊飼いの少年の話ではなかったか、何もなかったではないかということだったならば、私は非常に困ることになると思う。したがって政府が、これから、いろいろな問題について率先して勇気をもって、いろいろなことをはっきりおっしゃり、先ほど私はペリルポイントということを申し上げたのですが、そういった一つ考え方を打ち出して環境行政を進めていくことが、どうしても必要じゃないか。それでないと、安全だ、安全だということの基準だけでありますと、裏返した議論になってしまって、全部、大変に危険だ、危険だという話ばかり伝わってくるということがあると思うのであります。そういった点を私はあえて御提案申し上げて、環境庁長官の御所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  42. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生のおっしゃるように、まず、いろいろな全体的なムードで事を処理するということは、私ども環境庁としては、やるべきじゃないと思います。これはあくまでも冷静に、合理的に、科学的に判断をしていかなければならないと思うのです。ただ、世の中が進めば進むほど、重金属なり、あるいは化学物質なりのいろいろな問題の中で、消費生活あるいは日常の生活あるいは生産活動をやっていかなければならないわけでございますから、したがって、それらのいろいろ危険性を包含した全体の環境の中に、国民生活が安心して遂行できるようなことは、どうしても私どもの健康を守る立場から言って基本に考えてやっていかなければならない。しからば、たとえば、どれが危険であり、どの程度が危険であり、どの程度が、そのおそれが全くないかというようなことについては、これは一にかかって、やはり科学者の本当に真摯な研究の結果によって基準を決めていかなければならぬと思うのです。  ただ、いろいろ私もいままでの長い経験で、厚生省時代から今日まで、学者というものは、これが絶対危険である、これが絶対安全であるということを、科学的に明確な答えを出すということは、なかなかめんどうなのであります。恐らくここまでならば、あらゆる点から見ても絶対安全であろう、これを越えたら非常に危険であろうという、その二つは言い得ても、しからば、その間のどこかで、ここで決めておけばよかろうという判断は、なかなか科学者はおつけにならぬのであります。したがって、そこがやはり行政なり政治の決断になってくるわけでございますから、その行政なり政治なりが断を下す場合に、できるだけ安全度の高いものに持っていこうとするのは、これはやはり国民の健康を守る側としては、やむを得ないと思うのです。ただ、それが極端に行き過ぎますと、非常な不安を与えることになりますし、また現実の経済活動なり生産活動なり消費活動と調和をしろという意味じゃないけれども、現実に行われている、そういう活動を全く無視するような結果になったら、これはまた、われわれがよって立つ生活の基礎がなくなってしまうということでありますので、この点も余り極端には考えられないわけであります。したがって、外国のいろいろな実験例なり、また、この種の問題については人体実験ができませんので、したがって、動物実験を中心にしたデータをもちまして、そしてできるだけ慎重な態度をとりつつも、それらの現実を無視しない範囲の最も高い安全度をねらっていく、こういうことで来たと私は思うのです。  ただ、それが百倍が妥当なのか、二百倍が妥当なのか、五十倍が妥当なのかという問題になりますと、おっしゃるようにいろいろ議論があると思う。私どもは、その選択の範囲、決断の範囲をもう少し狭めてもらう努力を、日本の日進月歩の科学者の知識を動員して詰めていかなければいけないと思うので、そういう意味で私は、あくまでも環境行政というものは、科学技術あるいは医学その他万般の、本当にわれわれが得うる最高の科学的な知見によって判断をしていかなければいかぬと思っておりますから、いままでの御議論を聞いて、確かにPCBについても濃縮比を一万倍にとるのが妥当なのか、外国の例では八千ちょっと超える例があるようでありますが、しからばその場合に、一万と言わず九千が妥当なのか、あるいは一万二千が妥当なのかというような、いろいろ議論もあろうかと思います。また、いまはPCBについては、とにかく検出検曲され得ない、出てないということが環境基準になっておる。これは〇・〇〇〇五ぐらいまでしか検出方法がないものですから、したがって、濃縮比一万倍ということで考えて〇・〇〇〇三ということを考えても、これは測定できないものですから、したがって検出されないものとするという環境基準になっておるわけでございます。問題は、科学者の知識を総動員されて、ゼロから、ある一定の数値までの間のこの幅を、科学的な知見を本当に精密に検討した結果、もっと縮めていくことができれば、私どもも政治なり行政なりの決断が容易になってくるのではないかと思いますので、今後とも、そういう面で一層ひとつ努力をし、経費もかけ、あるいは時間もかけて、やっていきたいと思っております。  ただ、当面の具体的な問題に対しては、参議院でも野党の先生方から、この富士中小企業、零細企業に対する配慮を十分やるべきだという、むしろ野党側の先生方からの御意見もありました。したがって、通産省と協力しまして私どもは何とか、この根っこで、これが混入しないような対策を一日も早くとるべきだ、こう思っておりますので、それらの対策については、最近も通産と一緒になって、官庁、事業所、あらゆるところの保存文書についての持ち出し禁止、あるいはその処理方法等も指導をし、あるいは故紙回収業のいろいろな組合等の協力も得て、そういう問題をひとつ現実に起こさないような処理をしていかなければならないと考えます。  六価クロムあるいは塩化ビニール等につきましては、環境関係の影響調査ということを取り組んでやっておりますが、いまのところは、そう問題にするべき環境状況ではないと私は思いますけれども、やはり、いろいろな見解があらわれまして、相当の不安を与えることになってはいけませんから、これは、ことしからやっておりますけれども、来年もひとつ徹底的な調査と、あるいは健康の診断等もやりまして、やはりこの結論が出るまでということでなくて、現在、得られた知見ではこうだということで、やはり安心を与えていくという措置を、政治なり行政の面では、とっていくのがいいのじゃないかと思っておりますので、そういうような考え方で進めてまいりたいと思います。  時間がありませんので、こんなことでお許しをいただきたい。
  43. 林義郎

    ○林(義)委員 終わります。
  44. 渡辺惣蔵

  45. 島本虎三

    島本委員 本臨時会における公害環境特別委員会の審議は、いよいよこれが一番、最後になったわけです。最後のしんがりでありますが、私は今回、特に環境庁自身の最近のいろいろな事象からして感ずること、こういうような問題を中心にして、総括的に質問を展開していきたい、こういうように思っております。  まず、それに入る前に、ただいまも、ちょっとありましたクロム公害、この問題に対する考え方、私としては若干、違う点がございますので、この点を解明して、同時に行政措置をここに伺っておきたい、こう思うわけであります。  クロムによるところの人体被害、この問題は当然、当委員会においても九月の九日、十日、二日間にわたって集中審議を行いました。しかしながら、その結果、はっきり大学の教授その他、学識経験者によって発表された点は、クロム公害は鉱滓だけの問題ではなく、粉じん、排煙、排水、鉱滓という四つの出口について考えなければならない問題である、これら四つの出口から大気、水質、土壌へ汚染が始まり、人体への汚染につながるものである、こういうようなことでありました。私どもは、やはりこういうような問題をとらえまして、日本の行政として、このクロム公害に対して取り組んでまいりました過去を振り返ってみて、余りにも行政の怠慢、また労働組合自身も考えなければならない点があった、並びに企業自身も、この問題を不問に付しておいたという、犯罪にもつながるような、こういうようなことさえも感じられたわけでございまして、こういうようなことから、今後のこの対処はきちっとしなければならない、こう思っておるわけであります。  いまさら言うまでもございませんが、はしょって申し上げますと、行政の手おくれであります、怠慢であります。これは、もう何回も言いましたけれども、これも参考意見から出ているのです。  一九三〇年、いまから四十五年前にドイツで、これはもう職業病として認定されている。二十三年前の一九五二年にアメリカでさえもこの問題が取り上げられておる。そして二十二年前に職業病として、もうすでに認定されているのだ。十六年前には日本の国立衛生院においても警告が発せられた。十年前に当の労働省があらわした「職業病の理論と実際」この本にまで、その危険性をはっきり指摘していた。それに対して、初めて認定したのは去年の六月の一日である。まさに半世紀の間、行政は怠慢を続けてきた、こういうようなことになるのであります。しかし、やはりこれもすぐ手を打っておる。遅いけれども手を打った、そして、いま一生懸命やっているという労働省の態度、まあ遅いけれども、これからしっかりやってもらわないとだめだと思うのです。  ところが今後これは排煙、排水、鉱滓、それから粉じん、こういうようなことで、大気、水質、土壌、この汚染につながって、人間の健康にも影響してくる、人体の汚染につながる、こう言いながらも、対公害対策としての問題が、また、これより一歩遅くなっている。被害が起きなければ対処しない。その被害でさえも、科学的な知見がはっきりしない以上、これに対して認めることにはちゅうちょしておる。公害の場合には、あくまでも疑わしきは救済する、先取り、これが行政の姿勢でなければならない。環境庁ができた当時から、これをモットーにしてやっておったはずであります。  この鉱滓の集中投棄のされた大島、二〇〇ppmも検出された。一メーターも二メーターも積んで埋め立ててある。浸透上昇してくる水、これも二〇〇ppmもあった。まして一〇〇ppmあるならば、犬の場合は、この水を飲ませると、けいれんする、瞳孔も開く、こういうようなことさえ、はっきりしているという。また粉じんも屋根の上に白くたまる。これでさえも一〇ppmもあるという。色がついた水、黄色い色がついた、こう思っても、もう一〇ppmなんだ、こういうようなのであります。もう、こういうような水が方々で流れている。こういうような状態の中で廃棄物の対策もおくれている。また労務者は口が酸っぱくなる、はだが痛い、夏でも長そでを着なければならない、こういうような状態であっても、いまだに公害対策として付近住民、これを救う対策、これに対して、まだ、はっきりした科学的知見が集まらない、こういうようなことで、まだ逡巡しているかのように受け取られます。これは、救済するためには急いでやっても間違いはないじゃありませんか。救済することを逡巡してはならないと思うのであります。  ことに今回の肺がんの場合には、これはもう公害健康被害補償法の第二条の指定疾病と決めてやってもらいたい、こういうような陳情さえ出る。しかし、これに対して、はっきりした因果関係がないから拒否する。すなわち水俣のような、イタイイタイ病のような、慢性砒素中毒患者のような、こういうようなものはないと言う。しかしながら一般の肺がんと六価クロムの肺がんの進行速度の違いということは、はっきり例証されているのであります。栗山の例としても、去年のお盆にいい声で歌を歌っておった。九月に健診してみたら、もう、どうにもならぬ、手術もできないくらいに進行しておった。十月に入院した。本人はそのまま症状精神病になり、脳に転移して、そのまま何も知らないうちに死んでしまっている。年に三回健診をやってもらわないとだめだと言っても、二回以上の金がないからだめだと言って、これも受け付けない。こういうようなことを考えた場合に、行政は健康被害ということに対して、もっと先取りをするような態度で臨まなければならないのじゃないか。ことに肺の裏側に生ずる所見であるから発見しにくいのだという。それに対して、果たして発見のために、どういうような手だてを講じておるか。こういうような点は、私どもとしては環境庁にもう少し馬力をかけてやってもらいたい。厚生省も同様である。この点を強く申し上げたいのであります。したがって、いままで何十年も鉱滓を積んでおいた。ことに鼻中隔せん孔というものに対しては、他に原因があると言いながらも、六価クロムによるもので多発しておるわけだ。こういうようなものでさえも、他の原因もあるということで放てきしておいていいのか、こういうようなことを考えざるを得ません。  それで国は、やはりクロム被害者を労災法の適用者及び公害被害補償法の対象として認定するような努力をすべきじゃないか、当然そう思うのでありますが、この点は大臣の御所見を伺っておきたいと思うのであります。
  46. 小沢辰男

    小沢国務大臣 六価クロムのいわゆる環境汚染の調査をやりまして、その結果、いまの従業員の問題は別ですよ。労働省の労働衛生の面からする問題は別ですが、私ども、一般の環境の汚染という状況をきちっと把握をしまして、それから健康診断の必要があると思えば健康診断を徹底しまして、その結果、地域指定をやって健康被害補償法の適用をしていく、これは国会でお決めになった法律でも、そういうことになっておるわけでございまして、したがって環境汚染の調査というものをやりまして、そのデータをもとにしなければいけませんものですから、先ほどもお答えをいたしましたように環境影響の問題を十分、調査いたしまして、それから健康診断に移る、こういうことになるわけでございます。従業員の問題と他の環境汚染の問題とは一応、切り離して考えていきませんと、私どもの所管としては、そういうことでございますので、この点は、ひとつそういうおそれのあるような地区については十分、徹底して調査を、いまやっておりますし、そのもとに、その結果が出ましてから私どもの判断をつけたい、かように思います。
  47. 島本虎三

    島本委員 いままでの行政が、約半世紀にわたって、これがわかっていながらも日本では手を打たれていなかったという反省、そして公害は先取りしても悔いを残すべき何物もないというような、環境庁ができて以来の一つのしきたり、こういうようなものを、はっきりと現長官も胸に秘めて対処してもらいたい、こういうような切望であります。  私は、この被害の調査これに当たって、もう本当に涙なくしては見れないような人にも会ってきておるのです。日赤病院に入院して脳に転移した人、行ったらば、どなって、何をやっているかわからない、もう、そういうようになってしまっているのです。これはもともと職業病として早くやっておかなければならないものです。しかしながら、その周辺に対して黄色い水が出ている、もうすでにそれだけでも一〇ppmあるのだ、一メートル、二メートル鉱滓をやっていて、そこから浸透して上昇してくる水は一〇〇ppmを超えているのだ、二〇〇ppmになる場合には、もうすでに被害を与えるのだ、こういうような点は、はっきりともう集中審議の際に、大方の意見としてわれわれは了解したのです。そういうような個所があるのです。個所があって、それらには呼吸器病が出ている。出ているにもかかわらず、これから調査する。もっと急いでやらないと、行政そのものは本当に死んだものになってしまうおそれはないか、こんなことを心配するから言うのであります。大いにこれは急いでやってもらいたい。これだけに時間をとれませんから、私から強くこれを要請しておきます。先取りしても差し支えないものである、救済をためらってはならない、このことだけは、ひとつ強力に申し入れます。長官の答弁は長くなりますから、答弁は要りません。  次に移りまして、長官に伺いたいのであります。  最近の顕著な例として、共同執筆と称する特別レポートによる「現代の魔女狩り」、こういう発表記事が雑誌にあったことを、長官お読みでございますか。公害環境問題に対する巻き返しが行われてきている、こういうようなことであります。この中には長官の言辞も流用されておるのであります。住民運動の中から公害防除、環境保全、こういう立場に立って環境行政がいま、しっかり行われている。しかしながら環境庁自身、そういうものを受けて、環境庁が本来、生まれたところの、また設置法第六条に決められているところの権限、こういうようなものを持って環境行政、公害対策に当たらなければならない環境庁は、こういうようなときこそ、はっきりとしなければならない、しっかりとした姿勢をとらなければならないのに、最近、何か経済官庁のような性格が出てきているのじゃないか、こういうようなことを聞くのであります。私は残念であります。他の省庁がどのようなことをやっても、環境庁の場合には、その省庁に対して環境保全公害対策に対しては強力な総理の権限をもってでもして、調整権をもってでもして、これに当たらなければならないし、当たってもいいわけであります。遠慮する必要はないのであります。まして経済官庁の性格が出てきたのじゃないか、こういうようなことを言われるということは、私としては聞きながら本当に残念に思いました。こういうようなことは絶対にない、このことを私は確信しております。  したがいまして、いま一つ一つ、この問題を解明するために大臣にお伺いしたいと思うのであります。と申しますのは、この中で環境庁に関すること、これが多いのであります。  例えば環境庁は、科学的根拠のなきに等しい、世界一きびしいNO2環境基準を定めたが、この結果、日本の諸企業は数兆円に達する公害防止投資を強いられることとなり、またわが国自動車産業は〇・二五グラム/キロメートルという極端にきびしいNOx排出ガス規制を受けようとしている。あるいはまた厚生省見解や裁判所の判決という形で、重大な疑義のあったイタイイタイ病=カドミウム中毒説が正しいと断定されたために、金属鉱山業界は莫大な損害賠償金を支払わされ、さらに合理性を欠く基準値により汚染米と定められた米に一五〇億円、汚染土壌の改良に四五〇億円という巨費の投入が要求されている。さらにインフレーション、物価問題などはすべて商社の責任とされ、日本経済の発展と国民生活防衛に戦略的に重要な役割を果たしている商社は魔女裁判によって国内で処刑されそうな雰囲気である。 こういうように書き出しているのであります。そしてこの中で、これは第一節に行く前の序論、初めでありますけれども、  どう考えても日本社会の自殺への行動であり、自分が自分の首をしめるという愚かしい行動にほかならないのである。  喜ぶのはほんの一握りの魔女狩りの狩り手たちだけであろう。  われわれは魔女狩りの流行病を拒否しなければならない、 これが大体、初めにうたってあるのであります。この中にいろいろ私どもとしては聞いておかなければならない問題もあるのですが、大体この「現代の魔女狩り特別 レポート」これをお読みになったかどうか。また、これに対する大臣の見解がございましたら、聞かせてもらいたいと思います。
  48. 小沢辰男

    小沢国務大臣 文芸春秋がそういうものを特集として出したことは承知をしておりますが、私は行政長官、国務大臣といたしまして、国会に対して内閣は一体的に責任を負っているわけでございますので、日本における非常に極端にと言っていいほど保障された言論の自由、各地でいろいろなことを言ったり言われたりいたしますが、それを一々、神経質に私が詳細に読んで、それについて所見を申し上げるというようなことをやっておりましたら、これはもう行政の能率が落ちまして、そんなことで朝から晩までやっていなければいかぬ。私は文芸春秋の記事を、もちろん、いろいろな人がいろいろなことを言うことは自由でございますから、その点は読まなければいかぬという国会の先生方の御意見であれば、十分ひとつ読ませていただきたいと思いますが、私は、それが出たから特に読まなければいかぬとも考えておりません。私は、むしろ先生方の御議論、これは国民を代表するそれぞれの立場からする御議論がございますし、また国会の定められた法律、また、あるとすれば国会のいろいろな御決議、こういうものだけを十分、尊重してまいるわけでございますので、文芸春秋に何が出ておりましょうと、私の関知することではございません。また、それについて私が批評すべき立場にはございません。ただ、もし文芸春秋だけではなくて、いろいろな方面に相当、間違った考え方が出ておりましたら、私どもはひとつ省内でよく検討しまして、間違いを正すだけのわれわれの声明を、場合により出したいと思いますが、それほどの問題ではないと考えております。
  49. 島本虎三

    島本委員 さほどの問題ではないと考える、だが、こういうようなものが流布されて、環境庁のやり方はでたらめだ、こういうようなことを国民の一人一人が、もし脳裏に刻みつけるようになったならば、それだけでも環境行政は後退し、信用をなくするということはあたりまえ、おわかりのとおりなんです。ここでは、まさにそれに類するような二とがはっきりあって、それに対しても黙っておいていいのか、このことであります。軌を一にして、これと同じように経済界も同じような状態で論文を出しているのであります。果たしてこれは知らないでいいということにならないと私は思います。したがって、環境庁として、大気保全局長もおりますけれども、この中には  環境庁が設定したNO2環境基準は、その科学的根拠に誤謬や歪曲があり、全く「非科学的」で、疑わしいものであることが、国内ばかりかアメリカ議会でも公式に指摘されるに至り、遂にわが国の国会で問題となるまでに発展したのである。  このように、環境庁の設定したNO2環境基準はなんの科学的根拠もない、でたらめなものであるにもかかわらず、それを前提に厳しい自動車排出ガス規制と固定発生源の総量規制が実施されようとしているのである。 こういうよう、に言っているのであります。しかし、やはり総量規制も、これも環境庁としては年次的にもうやらなければならない行政措置になっておるのであります。そういうようなことであると、軌を一にして同じような状態に、これは組まれていると言わざるを得ないのであります。それで事務当局に聞きますが、NO2の環境基準を決めることに対して、学者から、でたらめだとか、こういうようなことを言われる、こういう批判があるということに対して、環境庁としてはどうお考えですか。
  50. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまお読みになったパートでございますが、環境基準につきましては、四十五年から四十七年まで、審議会の専門委員会が慎重に検討されて出された結論に基づいて決められたものでございまして、決して誤謬とか、でたらめだとかいうようなものではございません。しかし、不確定要素が高いかと言われますと、S02の場合よりも不確定要素が高いということは事実でございます。そういう不確定要素をついて、そのような議論を、いろいろの人が、一方の方向に持っていこうという気持ちをお持ちになりながらやられるような立場も、当然あるのではないかというぐあいに考えられます。そういうことで、アメリカの国会の議事録も、その全文を細かくお読みいただければ正しくわかるのではないか。たとえば、でたらめというところですが、これはどういうパートで使われているかと申しますと、日本の環境基準という言葉、その環境基準という言葉が、非常にわけのわからぬ話である、正確に訳せばそういう訳になるのです。でたらめという訳も、そのジャーゴンという言葉の中にあります。ところが文章の前から正確に、全部ずっと読んでいきますと、環境基準というのは、わけのわからぬ言葉だというのは、日本の定義とアメリカの定義と違うわけであります。その一つの単語だけを抜いて、でたらめと称しておられるので、これは議論は当然あり得ることでしょうが、決して、そういうものではないということであります。  アメリカとの対比で言われますが、これはアメリカと日本の対比を簡単に申し上げますと、基礎になった判断条件の情報は、両方とも、ほとんど同じものを持っております。それから、その基礎になった測定方法は、アメリカは本当の数字よりもかなり高く出る測定方法を使い、日本は本当の数字よりも少し低く出る測定方法を使い、いずれの国も完全な環境大気濃度をはかる技術は、標準校正ガスが、あと一年後ぐらいに出ますと、できますが、まだ現在のところは、そういう誤差は避けられません。それから疫学の方のデータは、アメリカはNO2だけの純粋汚染に近いようなところをおとりになり、日本は複合汚染のところをとったわけであります。また影響として、アメリカはインフルエンザにかかる人が多いか少ないかということの尺度を使われまして、日本は慢性気管支炎の疫学調査という、その事実を使いました。と同時にまた非常に重視したのは、アメリカがとらなくて日本がとったのは、動物実験でネズミに慢性的に低濃度をかけますと、腫瘍に似たような細胞の変化が起こる、これはアメリカのレポートも指摘し、WHOも指摘しております。日本のデータは非常に評価をされております。日本はそのデータを非常に重視して安全サイドをとった。ただ批判がありますのは、疫学調査の相関が有意であるかいなかというところの検定方法に関して、相関があるともないとも言えないというのが、学問的には非常に正しい表現なのでしょうが、それを相関があるという形のことが資料の中の一部にあるというところの御批判については、私はいかなる人が批判をされようが、その点は、やはり批判をされる要素があるのではないかということを考えますが、相関がないとか、でたらめとかというものではございませんで、私は、この「誤謬や歪曲」というのは、ためにする議論であると思います。誤謬と歪曲というのは、水俣病がアルキル水銀で起こったものをアミンで生じたと言うこと、これが誤謬と歪曲の最たるものでありまして、NO2の環境基準に関しては、さようなことは一切ありません。そういうことで、動物実験のところにつきましては日本は非常に重視をし、アメリカはそれを考慮していない。  基本的には両方の国の政策が非常に違っております。アメリカはエネルギーと資源の政策にきわめて重点を置いておりますし、日本は健康を絶対、保護するというところに置いております。そういうことで、この両方の環境基準の性格の相違もございますので、最終の判断が違ってくるわけでございます。私はアメリカの基準の設定に対して、いろいろな批判は持っておりますが、これは別に言うべき話でもないと思っております。  そういうことで、日本の環境基準はきわめて厳しいという批判は正しいです。不確定要素が高いということも正しいです。統計の検定方法について批判があるということも、これは認めなければならないと思いますが、日本の公害対策基本法の精神と、それまでの調査から判断をして、医学者の方が〇・〇二ということを割り切られたことについては、それ相応の十分な合理性があるところでございまして、それを実際に行う場合に、余りにも従来の対策とは違う重大な影響を生ずるということから、不確定要素のパートをついて、そのような御批判があるものと解しておりますが、環境庁としては、それに対する反証があらわれて崩れない以上は、これを変える考えはない、こういうことでございます。
  51. 島本虎三

    島本委員 それならば、動物実験、このレポートもアメリカにあるけれども、政策を決める段階で、これを取り上げないのだ、同時に日本も動物実験を重視して具体的にこれを取り上げ、健康被害の問題と取り組むような基礎をつくったのだ、大体そういうようになってまいりますと、数字も長期的なものと、わりあいに短いものと違いが当然、出てくると思う。しかしながら、環境基準の基礎の科学データ、これは日本だけのものであってはならないし、そんなことではないと思う。したがって、来るべきWHOの専門委員会で明確に、これは日本としては言明できますか。
  52. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 予算が通れば来年の七月に、七月か八月になるかもしれませんが、WHOの専門委員会を開いて、世界じゅうの認められた専門家が来て議論をしていただいて、その時点におけるNOと人間に対する影響の知見のサマライズをしていただく、このような予定になっております。これは最も公正な第三者機関の場所であると思っております。  ただ、誤りのないようにしていただきたいのは、基準を設定するのも一つの国の政策でございます。そういうことで、基準の可否を論ずるのはWHOの専門委員会の役割りではございません。WHOの専門委員会の役割りは、基準の設定の根拠となった判断条件でございまして、汚染の測定データ、それに対する実験あるいは疫学の資料ということにつきまして、その時点までの世界じゅうのあらゆる知見が整理され、またその時点までに、御批判のありました六つの地域におきます主婦に対する影響調査も、五ヵ年間を全部、合わせまして最終的に総合解析をしておりますので、そのデータも出し得るというように考えております。そういうことで科学的な判断条件につきましての、その時点における最良の知見が、そのときに整理され、日本のデータ評価をされるというぐあいに考えております。
  53. 島本虎三

    島本委員 それで次にNOxの固定発生源対策、これについて伺いたいのでありますけれども、今回、環境庁としても、その対策の対象を拡大して、原則として一万立米の排煙の施設と取り組んだようであります。それとコークス炉、セメント焼成炉、この新設のみは十万立米の排煙、これに規制をかけるようなやり方をとったようであります。同時に、新設、既設を通じて燃焼改善を主体にして、金属加熱炉は一部、脱硝を部分的にやらなければならないような厳しいやり方を指導するようであります。  それで、ちょっとこの際、多年、懸案でありましたけれども、はっきりさしておいてもらいたいのは、鉄鋼は焼結の場合の脱硝以外にはやれるのか、やれないのか。同時に、千葉の川崎製鉄が脱硝できると言って、なぜ新日鉄を初めとして、ほかはできないと言うのか、この点について環境庁としても、はっきりしたデータもあろうかと思いますが、この点をひとつお知らせ願いたい。
  54. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま最後に御質問のございました焼結炉の問題でございますが、焼結炉につきましては、燃焼改善の方法で解決するということはございません。そういうことで脱硝以外には、やりようがないということでございます。  それではその時点で、焼結炉につきまして脱硝がやれるのではないかという御議論でございますが、確かにかなり大きな形の実験のものが現在、建設され動き出そうとしております。それでは千葉はどういうことであるかということでございますが、千葉の川鉄の拡大と申しますのは、公害健康被害補償法の真横の地域で、しかもNO2の汚染の動向も改善されないときに、きわめて巨大なものを、そこにつくろうという問題になったわけでございます。そこで当時、私は環境保健部長をいたしておりましたが、そういうような場所で、いかに、できないとはいえ、そういうものをやるのは余り慎みがないではないかということを申したわけであります。そのことがきっかけになりまして、千葉の拡大のときに、どうしてもスクラップ・アンド・ビルドで、新しい、しかも、断然ほかとは違う、改善のできるものでなければ、できないだろうという世の中の空気もあり、また地元の努力もありまして、また、それと同時に川鉄自体としても、あそこで広がらなければ、どうにも将来の伸びようがないという、それだけの条件が全部そろいまして、そして、まだ完全に実用化とはいっておりません脱硝技術でございますが、千葉の川鉄で、まず最初にやってみようということを、地元との協定で踏み切ったわけでございまして、現在まだ、できておるわけではございません。これは来年つくられまして動き出すということでございます。そういうことで来年、建設されて、そしてそれが完了して動いて、一年ぐらいしてみると、果たして実用のものになるか否かということが明らかになるものというぐあいに考えております。  そういうことでケースとしては、そのようなものがあり得ますが、これは法律や条例をもって、そういうものをやる者にはすべて強制をし得るというような状態にはないというぐあいに考えております。そういうことで、今回の法律の全国を通じての最低基準ということの中に、焼結炉の脱硝を必要とする形での基準を、新設に対しても設けることができなかったというのが実相でございます。ただケースとしては、川鉄の拡大に対応したようなケースがあるということは、ひとつ御認識をお願いいたしたいと思いますが、制度的に全国的に、そういうものをすべてやろうという考え方は、環境庁は一切、持っておりません。
  55. 島本虎三

    島本委員 もし持っていないとすると、これは技術的にできないといっても、汚染源が大きくなると汚染が広がる。そうするとこれは一体どうするのか。現在の法律、こういうようなもので取り締まる手段があるのかないのか。同時に、総量規制に持ち込んだとしても、それまでの間どうするのか、いろいろ、これに対しては疑問が出るわけであります。一般の移動発生源について、一部分は強力に取り締まる。しかしながら固定発生源の点で、全部のシェアの何分の一かを占める大きい、こういうようなものに対しては、ほとんど、そのままにしておかなければならない。そして移動発生源だけ取り締まる。ことにその移動発生源の中でも、乗用車の場合は二分の一を上回るわけでありますけれども、それはもうすでに五十三年には〇・〇二五グラム、しかしトラック、ディーゼル、これは二分の一を下回るわけでしょうけれども、これに対してはっきりした対策も、これから考えなければならないでしょう。そういうようなことをあわせて、ひどくなって四日市のようになってしまってからでは、もう遅いのでありますから、そうならないうちに、きちっと対策をしなければならない。本当にそれをやれないならば、環境庁ができた以後は、企業よりも人間の健康であり生命であります。それを阻害しても企業が成り立てばいいという考えは、いまの日本にはありませんから、そこをにちっと割り切って、そしてこの際、NO2の問題についても、固定発生源について、きちっとした態度で臨むべきだ。同時に、移動発生源の、残っておるトラック、ディーゼル部門に対してのお考え、総量規制をあわせて、この際はっきり言明しておいてもらいたいと思います。
  56. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先生の御指摘になりました最初の部分が、実は非常にむずかしい問題でございます。現在NO2につきましては、特定物質といたしまして全国一律に、新設と既設とに分けまして濃度規制を行っておるわけでございますが、これは地域差をつける形にはなっておりません。そこらに問題がございますが、しかしながら環境基準公害対策基本法の九条でございますし、大気汚染防止法の第三条の三項には汚染の限度というのがございまして、ある程度以上の汚染の限度を超えたところでは、特別に厳しい基準を課するという条件が入っておりますが、現在、特定物質として指定しているNO2これだけでは、この項にはまりませんので、これに対応するには別の、NO2を特定有害物質に指定してやれるかどうかという法律制度上の問題が一点ございまして、これはぜひとも検討しなければならないというぐあいに考えておるわけでございます。  それでは、技術がなければ、非常に問題のあるところで、大きいものが出てきたときにはどうするかということでございますが、まず全般条件としましては、きわめて低成長下でございますから、そんな大きいものが、ここ一、二年の間にたくさん出てくるということは、まず余りないということで、そのプロバビリティーは低いということでございます。ただ、非常に問題の地域に、そういう問題が生じてきた場合には、それに対しましては環境庁としては、これは新設でございますから、当然、地元でのアセスの問題も起こるわけでございます。そういうときに、これに対しては厳しい姿勢をもって臨む、全くケースでございます。全体として臨むわけではございません、ケースとして厳しい姿勢をもって臨むということが当然あるわけでございまして、実例といたしましては、公害健康被害補償法指定地域のすぐ横にある中電の知多火力の増設あるいは北九州の小倉の共同火力の増設につきましては、すべて脱硝を入れるという形が、新設の場合に、できております。これが稼働しますのは三年あるいはそれ以上先の話でございます。  そういうことで、いま御質問のございました今後の方向といたしまして、現在、乗用車ばかりを抑えておりますが、乗用車は約五〇%強のNOxの放出量を占めておりますので、その残りの四〇%強のトラックとディーゼルにつきまして、現在、中央公害対策審議会の自動車公害専門委員会で御検討をお願いしておりまして、来年の夏か秋ごろになると思いますが、五十三年のNOxの〇・二五グラム・パーキロメートルの規制を決めるのと同じころに、将来、そのものを、どのようなぐあいに、どういうスケジュールで抑えていくかということを打ち出していきたい、そういうぐあいに考えております。  また総量規制の問題でございますが、総量規制のやり方をいたしますと、地域差が出し得るわけでございます。もう一つの利点は、総量規制のやり方をいたしますと、工場単位で規制をされますので、工場としては非常に対応が最適化できるという利点が一方にございます。そういうことで、総量規制につきましては、当初これに対する反対の気持ちも産業界にあったようでございますが、余り歓迎しているわけではございませんけれども、地域差と、それから工場単位の規制ということからいくと、非常にやりやすいという気持ちも、一方に出てきたことも事実でございます。  そういうことで、総量規制を現在のところでは大体、五十三年度内には、ちゃんとレールにのせたいという気持ちを持っております。お約束ではございませんが、五十三年度にはレールにのせたいという考えでございます。そういうことで五十三年度内にレールにのせるとしますと、いまから大体これは三年以上あるわけでございまして、ダーティーのガスの検討は来年にほぼ見当がつく、一部の非常にむずかしいものでも、一年ずれれば、まず見当がつくということでございますから、五十二年には、もうすべて、そういう見当がつくだろうという考えでございますので、防止技術の方も、そのときにはかなりクリアになってしまっている。また一方、総量規制をやります場合に、削減計画をつくらなければならないわけでございますが、自動車の方の見当も大体、五十一年の末ころには、もう、ついてしまうということでございますので、固定発生源と移動発生源の両方の問題を扱いながら、どのような程度に固定発生源のNOxの総量規制をしなければいけないかという予測の技術の可能性は、大体、五十一年末になれば可能になる、そういうことで五十二年内には、そのようなことの組み合わせの検討が十分できて、五十三年度には何とかレールにのせることができようというような見込みでやっているわけでございます。
  57. 島本虎三

    島本委員 こればかり、かかっておられませんことを本当に残念に思いますが、最後に一つ。これは一雑誌は問題でないけれども、しかしながらという大臣のお話がございましたが、前回、少し取り上げて途中で終わりになりましたが、「NOX環境基準にメス」を入れるということで、鉄鋼連の立地公害委員長、元通産事務次官をやって現在、新日鉄の専務取締役をしております徳永鉄連立地公害委員長、こういうような人が、窒素酸化物の規制を強化しようとしていることに対して、これはいろいろでたらめということ、また、こんなことは世界の笑いものであるということ、こういうことを盛んに論じているのであります。私はやはり、こういうような態度は許すべきじゃないと思うのです。もっと環境庁としても言われたことに対しては、手元にもありますけれども、はっきり反論ぐらいするようにしたらどうですか。おやりになりましたか。やはりこれも、かつてはもう通産省の事務次官までやっていた人がこういうようなことをやると、いままでの経歴からして、信憑性あたりは上増すことになるじゃありませんか。やはりこれは、はっきりと私は反論すべきだと思うのであります。なぜ、これをやらないのですか。やりましたか。
  58. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私が、文芸春秋の魔女狩りの記事を引用されて御質問がありましたときに、まあ大した問題ではないと申し上げましたのは、私が一々そういうことを取り上げて問題にする、一雑誌の記事を取り上げて特に問題にするという考えはないということだけを申し上げたわけでございまして、筆者からすれば非常に大問題として書いているわけでございます。また、新日鉄の専務であり、あるいは鉄鋼連の何か公害対策委員長の徳永さんの発言、これは私は、それぞれの立場で、いろいろなことをおっしゃるのは、むしろ相手の立場としての発言として見れば、これはもっともじゃないかと思うのですよ。ただ、それには私どもはいろいろな説明をしております。また、鉄鋼連盟全体が話を聞きたいというなら、いつでも行くというので、この前もお会いして、いろいろ私どもの考え方を申し上げてあります。  日本は国会議員のみならず、あらゆる分野の人が自由に批判をし、発言をしということは、これはもう全く自由でございますから、そういう、それぞれの立場の方がいろいろな意見をお述べになるということは、これは一々、私どもが、それはいかぬとか、けしからぬとかと言うわけにいかないのでございまして、先生から見ると、けしからぬと思われましても、それは相手から見れば、また逆の立場で、むしろけしからぬと、こう言っているわけでありまして、そこで私、いつも言っているのです、鉄鋼連盟が困るから、どうしてくれということには耳をかしませんよ、ただ科学的根拠を示して科学的な論争をいどんでこられれば、それについては、ひとつ大いに科学的な論争なり検討をいたしましょう、むしろそれが大事なのであって、自分の経営が困るからとか、どうだとかということでは、私どもは、それに応ずるわけにいきません。  だから、科学的な根拠を示しての御意見ならば、文芸春秋の記事でも三点、アメリカの議会で、こういう点が日本の環境基準決定について欠陥があると指摘されたというようなことを言っておりますが、その記事全体の中で、日本の環境基準の決定の非科学性を、本当に科学的な見地から論じてあるものであれば、その点について私どもは、現在のわれわれの持っている、いろいろな知見と考え方で反論をいたします。しかし、そうではない。全体を一読した印象は結局、もう少し科学的に詰めるものは詰めていくという態度でなく、どうも全体の風潮が、何か公害問題について非常に神経質な、いろいろな非難なり攻撃なり、そういうものに少し科学性を没却して迎合しているのではないかということを言いたいような、記事全体の流れがそうだと思うのでございまして、それだけでは、むしろ同じような非難を、その文章は受けてもしかるべきじゃないだろうか。もっとはっきり問題点を挙げて科学的な論争をしてくれば、それについて私どもも科学的に、先ほど局長がその一端を申し上げたわけでありますが、十分それに受け答えをするつもりはあるということでございまして、ただ一方において、ムードがどうだという非難と同じような非難を受けるような空気、立場で言われましても、それについて私は一々取り上げてお答えをするということはない。徳永さんですか、その人にも、私は科学論争をいどんでおいでになるなら、いつでも受けて立ちます、そしてお互いひとつ、りっぱな環境基準が間違いなくできるようにいたしましょう、こういう態度で臨んでおりますから、これだけは、ひとつ明確に申し上げておきます。
  59. 島本虎三

    島本委員 そういうような態度であるということであります。ただ私は、やはりこれによって行政も司法も、国民にその結論を疑われる、こういうようなことを、そのままに放置しておいてはだめだ。そのうちの一つには、公害裁判の決定に対しても、はっきりこれは論及しているわけでありまして、この点をやはり国民にそのままにしておいていいか、私は本当に不安であります。  昭和四十六年六月三十日富山地方裁判所は「イ病」患者が三井金属鉱業に対して起こした「公害裁判」でカドミウム中毒説を全面的に認め、患者救済にかかわる費用その他五千七百万円を三井側が支払うことを命令し、さらに昭和四十七年八月九日名古屋高裁控訴審の判決もカドミウム中毒説を認めて三井金属に一億四百八十一万九千九百九十円の支払いを命令、これが判決確定となった。   ここで見過してはならない重要点は、科学上の論争に対して、行政や司法がとるべき基本的な態度である。とりわけその科学論争が重大な専門家の意見の対立を含んでおり、しかもなお調査研究と論争が不十分な段階において、行政と司法は最大限に慎重な態度をとるべきであろう。科学論争は科学者たちがなんの心理的、集団的、政治的圧力も受けないという自由な条件のもとでの、全くなにものにもとらわれない自由な討論、意見交換、試行錯誤、見解の修正、発展などのなかでなされるべきものである。 はっきりそれを前提にしておるのであります。そしてその後で  わが国の行政、司法はこの最も基本的な任務を放棄して、みずから魔女狩りに迎合、屈服し尊大にも科学上の論争に判定を下すという越権行為を行なうに至ったのである。前記の厚生省見解と裁判所の判決は、その悪しき典型であると言えよう。専門家でもない裁判官が法廷で、イタイイタイ病の原因はカドミウム中毒であると断定するというのは、まさに文字通り、近世の魔女裁判そのものというほかはない。 こういうふうに論断しているのであります。これはいままでの行政的な措置、こういうようなもの、裁判所の決定、これをも非難する。非難するならば控訴すればいいでしょう。しかしながら、そうじゃなくて、あえてこれは「魔女狩りに迎合」している、こんな言葉は、これはちょっと私としては残念であります。そういうようなことを法務省としても、どのように考えておるのか、この際これも、はっきりしておいた方がいいのじゃないか。私はこれを見て実際はもう悲憤慷慨なのであります。法務省から来ておられましょうか。これに対するはっきりした見解を、国民の前に間違いなく述べてもらいたい。
  60. 賀集唱

    ○賀集政府委員 ただいま先生、御指摘の問題は、裁判批判と司法権の独立、こういう問題であろうかと思われます。したがいまして法務省の立場から、まず、その立場においてのみ、お答え申し上げます。  司法権の独立は、憲法上、保障されているきわめて重要な原則であります。また裁判官は、憲法、法律に従って、そして裁判官の良心に従って裁判をするということも、憲法に明記されているところでございます。裁判所におかれても、また裁判官各位におかれても、いま申し上げました司法権の独立の原則、これの重要性を十分に認識され、その堅持に努められているものと信じているものでございます。今回の文芸春秋の記事にいたしましても、裁判官は毅然とした態度をもって裁判されるもの、このように確信いたしております。  ただ御指摘の論評部分でございますが、一つには、憲法上、保障されております言論の自由に属する範囲内でございますれば、裁判批判も差し支えないとされていることと、もう一つは、御指摘の論評の正当性について議論いたしますと、結局のところ、具体的な裁判の内容がどうであったか、いいか悪いか、こういう議論にまで及びますので、法務省の当局としては、これ以上は、この問題に深入りすることは避けさしていただきたいと思います。
  61. 島本虎三

    島本委員 そういうようなところだろうと思います。実際は別な立場から、はっきりした見解を聞きたかったのでありますが、法務省としては当然その程度だろうと思うのであります。しかし私は、これが与える影響を考える場合に、割り切って、これでおしまいだ、これでやったのだと言われても、確かに独立してやった、何物にもとらわれない。しかしながら、これを見た人は、いまの答弁そのまま受け取れるでしょうか、このことを心配するから、ちょっと聞いてみたわけであります。恐らくそれ以上、答弁出ないでしょう。もっと欲しいところなのであります。それ以上、言うことありますか。
  62. 賀集唱

    ○賀集政府委員 ただいま申し上げました司法権の独立、裁判官が良心に従って憲法と法律にのみ拘束されて裁判するということは、裁判官各位におかれましては、裁判官になったとき以来、重々訓練されていますから、自分の身のものにして体してやっておる原則でございますので、御心配のことは絶対ございません。
  63. 島本虎三

    島本委員 絶対心配ないということでありますが、他に与える影響を心配しているのです。裁判官のことを心配しているのじゃないのです。そういうようなことで、これはよろしゅうございます。  この問題の一番最後なのでありますけれども、土壌汚染対策の延期の問題も当然ここに述べているのであります。全国の農業用土壌汚染対策地域指定、こういうようなものまで述べて、結局これは「「一年以内にカドミウムとイタイイタイ病の因果関係について再検討する」というのであれば、この新しい結論が出るまで土壌汚染改良事業を延期すべきだ、という主張は十分説得的なものというべきであろう。」こういうふうに言っているのであります。しかし私としては、こういうような問題に左右されないという、いままでの態度、法務省や環境庁の態度、これはよくわかりました。ただ、何としても汚染土壌対策は土地改良によってでも、これをはっきりしなければなりませんけれども、いままでのところ、私の知っているところでは、陳情その他によって見ても、兵庫県並びに富山県、こういうようなところでは少しテンポが遅く、現在やろうとすることでも、ちゅうちょしておる、こういうようなことを承りましたが、そういうようなことはございませんか、農林省。
  64. 山極栄司

    山極説明員 そういうことはございません。いま仮に申し上げますが、現在、対策地域指定されている地域は二十七地域ございますが、そのうち対策計画が樹立されているところは十地域ございまして、最初に対策計画が樹立されたのは四十七年でございますが、それからの進捗状況を見ますと、そういうことはございません。
  65. 島本虎三

    島本委員 委員長のために時間を残しますが、あと一、二、簡単でいいのでありますが、私はやはり改良は進んでやってほしいと思うのです。一たん汚染された土壌、これは客土するなり、いろいろやって、むしろ、それが悪くなるのなら、やらない方がいいのでありますが、全部よくなっている。ことに私の知っている北海道の共和町の場合には、もうすでに上級米が改良の結果どんどん、できてきているという、うれしい情報さえ入っているのであります。やはり、これは逡巡しないで、どんどんやってほしい、こういうふうに思います。  それと同時に、もっと私としては、汚染対策のうちでも蓄積公害についての問題に触れたかったのでありますが、時間がございませんので、この問題は省略させていただいて、一つだけ端的に聞きます。  北海道の恵庭市の上水道の水源となっている漁川支流の上流で試験採掘している鉱山から、多量の有害物質を含む鉱滓が地下浸透、そして水銀が微量ながら検出された、こういうような報告が来ておりますけれども、札幌鉱山保安監督局、この調査の中には、水銀を対象としていなかったから差し支えないというのでありますが、これは水源地帯であるなしにかかわらず、調査する場合には、きちっと水銀やその他の重金属、こういうような汚染の問題は調査すべきじゃないのですか。これはどういう結果で、どういうことになっているのですか。この問題は、尾を引くのは残念でありますけれども、一応これは承っておかなければなりません。
  66. 堀川春彦

    堀川政府委員 お話しの点は、去る二十日の北海道新聞に掲載されました事柄と思いますが、これにつきましては、新聞紙の報道によりますと、恵庭市の上水道源にもなっております漁川の上流にあります光竜鉱山の鉱廃水の水質を室蘭の工大に頼んで分析してもらったところ、総水銀で〇・〇一ppb、つまりppmで申しますと小数点以下ゼロが四つ、〇・〇〇〇〇一ppmが検出されたということになっているようでございます。  私どもとしまして、これが事実であるとすれば、総水銀に係りますところの水質環境基準は現時点で、これは四十九年九月三十日に改定して大変、厳しくしたわけでございますが、これで〇・〇〇〇五ppm、つまりppbに直しますと〇・五ppbということになりまして、先ほどの新聞報道の数値は、この環境基準に比べまして、さらに五十分の一以下というような低い数値であるというふうに承知をしておるわけで、これが事実であるとすれば、濃度からして問題はないのではないかというふうに判断をしております。
  67. 島本虎三

    島本委員 問題がある、なしではないのです。水銀は検出してはならない、こういうようなことでありますけれども、これは調査によりますと、保安監督官は、これまでの調査水銀を対象としていなかった、こういう報告があるというから、調査をする以上、なぜ水銀を対象としないのだ、水源地帯であるなしにかかわらず、これは調査すべきでなかったのか、こういうようなことであります。これはもう人命に当然、差しさわりはない、こう思うのでありますから、これはもう答弁は要りませんけれども、どうなんですか通産省、一言でいいのですけれども、やる場合には物質を指定して、これとこれということで、そのほかの問題は一切、調査の対象にしないのですか、調査しないのですか。これはどうですか。
  68. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 お答えいたします。  鉱山保安監督局部で、いま言ったようなことの調査をいたします際には、事前に十分、どういうものを調査の対象にするかということを決めてからやります。  いまの水銀の話ですけれども、この鉱山につきましては、ここで水銀の汚染というものを考える必要があるかという点について十分、考えましたけれども、ここでは、そういった水銀の汚染の問題はないということでございますので、調査をしなかったということでございます。
  69. 島本虎三

    島本委員 あったでしょう。
  70. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 いまの点でございますけれども、環境庁の方からお答えがありましたように、これは〇・〇一ppb以下、〇・〇一ppbあったかどうかもわからないということでございまして、これは環境基準で決められております定量限界をはるかに下回るものでございまして、それぐらいの量なら、失礼ですけれども、地球上あるいは海水中にもあるということでございます。
  71. 島本虎三

    島本委員 これでやめますが、なお、その詳細、現地を調べて、データとして後ほど私の方へ持ってきてもらいたい。  委員長、これで残念ながら終わります。
  72. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 この際、一言ごあいさつ申し上げます。  今国会の会期も余すところ、わずかになり、当委員会も本日をもちまして終了することになりました。  昨年十二月、皆様の御推挙によりまして、委員長の重責を担うことになって以来、本委員会の運営につきまして、今日まで円満に審議を進めることができましたことは、ひとえに理事各位初め委員の皆様、また、環境庁及び政府並びに事務当局の御支援と御協力のたまものとして、深く感謝するものであり、厚くお礼を申し上げます。  特に、この一年間は、水島の重油流出による瀬戸内海汚染問題を初め、数多くの問題が発生し、委員の皆様方を煩わすとともに、皆様方の熱心な論議に接することができましたことは、私の政治生活で忘れることのできないことであったと思います。  ここに重ねて厚くお礼を申し上げます。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十八分散会