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1975-12-09 第76回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月九日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 渡辺 惣蔵君    理事 田中  覚君 理事 林  義郎君    理事 森  喜朗君 理事 島本 虎三君    理事 土井たか子君 理事 木下 元二君       戸井田三郎君    葉梨 信行君       馬場  昇君    米原  昶君       岡本 富夫君    坂口  力君       折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁企画調整         局環境保健部長 野津  聖君         環境庁自然保護         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      堀川 春彦君         厚生省環境衛生         局長      松浦十四郎君         林野庁長官   松形 祐堯君         通商産業大臣官         房審議官    伊藤 和夫君         運輸省航空局長 中村 大造君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君         建設省計画局長 大塩洋一郎君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     若田 末人君         外務省アジア局         外務参事官   枝村 純郎君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   山村 勝美君         運輸省航空局飛         行場部環境対策         第一課長    井下登喜男君         建設省河川局水         政課長     佐藤 毅三君         建設省住宅局住         宅生産課長   松谷蒼一郎君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十二月九日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     角屋堅次郎君     ————————————— 十二月九日  倉敷市福田町を公害健康被害地域指定反対に  関する請願(橋本龍太郎紹介)(第三四一六  号)  同(藤井勝志紹介)(第三四六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(塩化ビニ  ールモノマー汚染及び大阪国際空港公害問題  等)      ————◇—————
  2. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林義郎君。
  3. 林義郎

    ○林(義)委員 私は、先般来、問題になりました塩化ビニールモノマーの問題につきまして、質問をまず行いたいと思います。  私は、内容に入ります前に、少し新聞記事で出た内容について、現在どういうふうな取り扱いになっているのか、主として労働省だろうと思いますので、労働省の方から、お答えをいただきたいと思いますが、新聞資料によりますと、まず大きな問題としては三井東圧名古屋であります。新聞報道いろいろありますが、たとえばNHKの報道によりますと患者が三十七人である。死者六人、患者三十一人、こういうふうな報道があったわけであります。ところが、それだけのたくさんの労災指定がしてあったのかどうか。どうも労災指定がしてありましたのは、Sさん、佐藤さんですね、それからMさん、森さんということでありまして、あと田中さんというのがありますが、そのほかにつきましては、労災申請がしてあるのが四人であるということでありまして、大分、新聞最初報道されて、先ほど申しましたように三十七人も患者がある云々、こういうふうな話というものが違うのじゃないかと思うのです。労働省がいまの段階で、どういうふうにこれを考えておられるか、取り扱いをしておられるか、まず三井東圧名古屋の件につきまして簡単に御説明ください。
  4. 中西正雄

    中西政府委員 お答え申し上げます。  塩化ビニールモノマーによる障害者から労災申請がありました状況は、いま先生が御指摘のような状況でございまして、三井東圧化学名古屋工業所関係から現在、請求中の者が死者につきまして六名出ております。それから療養中の者につきまして二名の申請が出ているわけでございまして、それから他の工場につきましては、全国一斉に健康診断を、在籍者につきましては実施をすでに終えておりまして、その実施結果を見ますと、療養を要する等の者は出ておりません。  なお、下請も含めまして退職者につきましては、現在、追跡調査中でございまして、まだ、その結果は把握をいたしておりませんが、目標といたしましては、今年度中に退職者についても把握いたしたいと指導いたしているところでございます。
  5. 林義郎

    ○林(義)委員 そうしますと、いま三井東圧名古屋の問題で、死者六名、療養中二名が労災申請がしてあるという話で、三十何人というのは、これは関係ない、こういうことになるのですか。まず三井東圧の話から聞きましょう。
  6. 中西正雄

    中西政府委員 新聞等に報ぜられておりますのは、必ずしも塩ビモノマーとの関連があるかどうかということは確認されない数字でございまして、そのうちで塩ビとの因果関係が疑われる、十分疑わしいという者については申請がされているということだろうと思っております。
  7. 林義郎

    ○林(義)委員 そうすると確認されてないので、労働省の方で労災申請を受けているのは、いまも話があった死者六名、療養中二名、こういうことだと考えてよろしゅうございますか。
  8. 中西正雄

    中西政府委員 そのとおりでございます。
  9. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、新聞記事によりますとチッソ、これは有名な水俣のところでありますが、水俣で、これがやはり死者一名、患者八名、こういうのが各紙で報道をされております。たとえば、あるテレビでは九名というし、ある新聞では十三名というのがありますが、チッソ水俣につきましては、そういったのがあるのですか、ないのですか。
  10. 中西正雄

    中西政府委員 チッソ水俣工場からは、まだ労災申請は出ておりません。恐らく死亡者なり一応、疑わしい者がいるということであって、まだ十分、因果関係がはっきりしないといいますか、十分、疑うに足るほどの資料が得られていないのじゃないかと思います。  なお、労働省としましては、業務との因果関係相当に疑わしいという者につきましては、積極的に労災申請をするように指導いたしているわけでございます。
  11. 林義郎

    ○林(義)委員 次に、東亜合成徳島、これも患者三名というような報道があったのですが、この辺はどうですか。
  12. 中西正雄

    中西政府委員 それも、いま申し上げましたと同じような事情だと存じます。
  13. 林義郎

    ○林(義)委員 東洋曹達酒田、これも死者三名という報道があります。これはいかがですか。
  14. 中西正雄

    中西政府委員 それも同様だと存じますが、まだ申請は出ておりません。
  15. 林義郎

    ○林(義)委員 同じく東洋曹達四日市、これは労働基準局調べておったということであるけれども塩ビモノマー障害だという認定だ、こういうふうな話ですけれども、これはどうですか。
  16. 中西正雄

    中西政府委員 いずれも同じような事情だと存じます。まだ労災申請は出ておりません。
  17. 林義郎

    ○林(義)委員 日信化学の武生、これにも中毒死一名というのが出ていますが、これはどうですか。
  18. 中西正雄

    中西政府委員 同様でございまして、申請は出ておりません。
  19. 林義郎

    ○林(義)委員 日本ゼオン高岡、これも八年前に死んだけれどもという話ですけれども、これは亡くなられたので、急性中毒死ということで労災申請がしてあるというふうな話のようでありますけれども、これは塩ビモノマー中毒というふうな形で認定されたのかどうか。
  20. 中西正雄

    中西政府委員 これは塩ビモノマーガスによる急性中毒死といたしまして、業務上の死亡として認定、補償をいたしております。
  21. 林義郎

    ○林(義)委員 それから川崎日本ゼオンで、やはり一名という報道がありますが、これはどうですか。
  22. 中西正雄

    中西政府委員 川崎については、ございません。
  23. 林義郎

    ○林(義)委員 それから三井東圧の大阪、患者五名という報道がありますが、これはどうですか。
  24. 中西正雄

    中西政府委員 労災申請は出ておりません。
  25. 林義郎

    ○林(義)委員 三菱モンサント四日市、これがやはり労働基準局調べで、六年前に亡くなった方があった。直接の死因は胆石だが、約五年間、塩ビ製造工程課長をしておった、こういうふうなことですが、これはどうですか。
  26. 中西正雄

    中西政府委員 それも申請は出ておりません。
  27. 林義郎

    ○林(義)委員 いま私ずっと拾ってみたのですけれども、まだ、そのほかに拾わなければならない点があったかもしれません。しれませんが、どうも、いま聞きますと大変あちらでも、こちらでも塩ビモノマー事件が多発した、こういうふうな状況でありますが、結論から言うと、最初中西さんがお答えになったようなところであって、あとは、なかなかその因果関係の立証がむずかしい、労災申請もまだない、こういうことであるようであります。  それで、この病気ですが、塩化ビニールというのは、日本最初に使われ出したのは、たしか戦争中、昭和十四年ぐらいだと思うのです。昭和二十四年ぐらいから、日本でも工業的な生産を開始して、昭和四十九年には百四十七万トンというぐらいの大きな生産量になっておったのでありまして、実は生産の体制から言うと、日本よりはアメリカの方が早いのであります。一番この問題が早くわかったのはアメリカではないか、私こう思うのです。それからもう一つ、わかったのは、何かソ連で、やはりこの塩ビ障害というのが言われたということはあるようであります。病気として指端骨溶解症、要するに指の先が溶けてしまう、こういう病気一つある。それから肝血管肉腫、それから門脈圧高進症というのが一つ、こういうふうにあるのだろうと思うのです。  一体、日本で、この問題をいままで、どういうふうに労働省が取り上げてこられたか。相当、前から労働省の方もいろいろとやっておられたようでありますし、どういうふうな学問的な研究をし、そうして、それに対して対策を打ってきたかということを、余り遠慮されると困るのですけれども、少し簡単に御説明をいただけませんか。
  28. 中西正雄

    中西政府委員 従来は、塩化ビニールモノマーは比較的毒性の低いものとされておりまして、国際的にも五〇〇ppmまでの濃度が一応、許容濃度とされていたわけでございます。ところが、昭和四十四年に東京で開催されました国際労働衛生会議におきまして、イタリアアメリカの学者から、指端骨溶解症という障害が、この塩ビモノマーによって起こされるという報告がございまして、すぐに労働省といたしましては業界に指導いたしまして、健康診断実施あるいは環境測定、また特に問題の重合がまには、できるだけ入らないように、入らないで清掃をする方法考えるように指示をいたしまして、どうしても入らなければならないときには保護具を使用するように指示をいたしまして、指端骨溶解症障害防止に努めてまいったのでございます。  ところが、昨年の一月にアメリカ塩化ビニールモノマーに基づくものと思われる肝血管肉腫患者発生報告されましたので、直ちに労働省では、労働衛生研究所坂部部長アメリカに派遣をいたしまして実情調査を行うとともに、国内にも専門家会議を設置いたしまして対策検討し、その一応の報告に基づきまして、昨年の六月に緊急措置通達をいたしまして、従来の五〇〇ppmを十分の一の五〇ppmまでに環境濃度を下げるように、また毎週一回、環境測定すること、それから健康診断の徹底並びに退職者調査をするように通達指示をいたしたところでございます。また、同年秋に職業がん対策専門家会議を設けまして、関係労使の御協力を得ながら必要な検討対策を進めまして、その結果、本年六月に塩化ビニール障害予防対策として、具体的な通達を出して、その障害防止に当たっているわけでございます。  この通達では、環境濃度を二ppm、それから、かまの中の濃度を五PPm以下にするように、その他、測定なり健康診断等についても必要な対策指示しているわけでございます。  さらに、法制面につきましては、ことしの一月に労働安全衛生法施行令を改正いたしまして、塩化ビニール特定化学物質等指定することとしたわけです。すなわち、がん物質として指定をいたしまして、必要な対策を講ずることといたしまして、去る十月一日、改正いたしました特定化学物質等障害予防規則において、特殊健診とか、あるいは環境測定あるいは抑制濃度等、具体的に義務づけをいたしまして、今後、塩化ビニールによる障害が生じないように万全を期したところでございます。  なお、特に当面の問題としましては、先ほど申し上げましたように、在籍者の一斉健康診断、それから退職者追跡調査等を現在、行っているところでございます。
  29. 林義郎

    ○林(義)委員 いまお話がありました中で、どの程度毒性があるか、私は急性毒性というのは相当にあるのだろうと思いますが、むしろ問題は慢性毒性の問題であるだろう、こう思うのです。  塩ビモノマー毒性発がん性につきましては、一九七一年にイタリア研究者ビオラらは、塩化ビニールの高濃度、三%の吸入をラットに十二ヵ月継続せしめたところ、四十から五十四週に屠殺した全例の動物皮膚がん発生し、また、一部の動物に肺がん及び骨腫瘍発生していることを報告をしております。一九七四年二月に、イタリアマルトー教授塩化ビニール発がん性研究予備的報告を行っているが、それによると、ラットに五〇から一万ppmの数段階濃度塩化ビニールを一日四時間、週五回、十二ヵ月、吸入せしめたところ、約二十六ヵ月後における観察では、五〇ppm群では、がん発生はなかったけれども、二五〇ppm以上では、肝の血管肉腫が量と相関して認められ、また皮膚及び腎の悪性腫瘍が認められた、こういうふうな報告がある。すなわち、五〇ppm以下では問題ないけれども、二五〇ppm以上では、やはり相当に問題があるという認定、この動物実験の結果だろう、こう思うのであります。  恐らく、そういったことをベースにして、日本でも当初は五〇ppm、こういうことでお決めになったのだろう、こう思いますけれども、今度は環境濃度というものを二ppmということとして、非常に厳しくされたというのは、何かそういった実験なり、あるいは推論の結果に基づいて、されたのでありますかどうか、その辺につきましてお答えください。  同時に、もう一つありますのは、日本では、いま二ppmという形で濃度基準が一応なっていますが、諸外国では大体どういうふうになっているのか。文献によりますと、これはどうも一番最初に発見されたのは、一九四九年に肝障害があったというのは、ソ連報告があったわけであります。ソ連アメリカ、西独、イギリス等々でも相当に、この辺の問題について、あるだろうと思いますし、国際的には、どういうふうな基準にしているのか、その辺について。二点、お答えください。
  30. 中西正雄

    中西政府委員 塩化ビニールモノマーによる発がん性の問題につきましては、まだ、この問題が明らかになってから、そう日がたっておりませんので、必ずしも動物実験等が完全に終了して、そうして、この程度ならば大丈夫だという確実な許容濃度というものが判明したという段階では、まだないようでございまして、御指摘のイタリーのマルトー教授実験によりましても、いまのところは、さらに進みまして五〇ppmでも若干、出たという報告も聞いております。なお、五ppmについての長期実験を現在、継続中ということも聞いているわけであります。  いずれにいたしましても、現在まだ医学的に、いわゆる抑制濃度というものを定めることができないというのが、国際的な現在の、この問題についての現状ではなかろうかと思っております。  そこで現在、諸外国等で、どの程度濃度基準を設定しているかという点でございますが、先ほども触れましたように、従来は、それほど有害性の高いものでないということで五〇〇ppmとされていたのでございますが、アメリカでは、一九七一年に肝機能変化があるという調査結果が出まして、二〇Oppmに改定しております。次いで、昨年一月にアメリカで肝血管肉腫障害者が出ましたことで、世界的に問題視されたわけでございますが、各国におきまして検討が加えられまして、現在、作業環境許容濃度は次のように定めております。英国では二五ppm、天井値を五〇ppmとしております。それから西ドイツでは五ppm、これは年間平均を五ppmということでして、一時間平均を一五ppm以下ということに定めております。イタリアでは天井値を五〇ppm、アメリカでは時間加重平均で一ppm、天井値を五ppmとしております。それからソ連では一二ppmと伝えられております。  労働省では、先ほど申し上げましたように、いろいろ検討いたしまして、また、関係労使双方意見も十分に聞きました上で、環境濃度を二ppm以下、それから重合槽内に入かんする場合には五ppm以下とするように指導しており、また、二ppmにつきましては、特化則抑制濃度として規制をいたしているところでございます。  以上でございます。
  31. 林義郎

    ○林(義)委員 各国の例を聞きましたところでは、日本が一番、厳しいだろうと思うのです。数字的に言うと大変に進んだ規制をしているのだろうと思います。  そこで、この問題に関連しまして、工場の中で働く人に対するところの健康被害の問題と、工場外に出る被害の問題が私はあると思うのです。昨年の六月三日のニューヨークタイムズでは、六十一歳の老人が塩ビ工場の外におって、がんになったのだ、こういうふうなことでありますけれども、いわゆる一般環境基準の問題について、どういうふうに、いままで環境庁考えてこられ、また、これからどういうふうにやっていかれるおつもりですか。環境庁の方でも、すでにこの問題については、問題があるのではないかということで調査をしておられるというふうに私は承知しておりますけれども、その調査をどういうふうな形で発展させ、どういうふうな形で基準をつくるなり対策を立てられるのか、お答えください。
  32. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御質問のございました塩ビ一般環境中における問題でございますが、環境庁大気保全局といたしまして、アメリカで問題になりましてから、早速、四十九年度の予算で、塩ビ測定の問題に取り組んだわけでございます。といいますのは、有機の塩素系のもので、非常に薄い濃度のものがむずかしいということでございましたので、四十九年度には、この測定方法確立ということをいたしておりました。そのデータは、まだ測定方法確立段階データでございますので、私ども何とも確言いたしかねますが、テスト的にやったものの中では、一般環境でppmの出たものは一切ございません。しかしながら、これはまだ未確認の状況でございます。  そういうことで、五十年度におきましては、この四十九年度の調査研究成果を踏まえまして、さらに、この検証を兼ねて一般環境調査をいたしておりまして、五十一年度には、発生源から一般環境のすべてをきっちり調べまして、そして規制が必要なものならば、これに対して規制を加えるという考えでございます。  そういうことで、文献的には、これは直接、私どもの方ではございませんが、環境保健部の方で集めておられましたものを、私どもは参考として見ておりますが、労働省と全く同じ文献でございます。  それから、環境基準の方といたしましては、アメリカのものを調べてみましたところ、アメリカ規制基準を近い将来につくらなければならないであろう、ついこの間、参りました人の話も、やはり同じような方向でございます。そういうことで、私どもは、五十一年度までの調査研究の成績に基づいて、必要であれば、これに対して規制を加えるという考えで臨んでおります。現在のところは、もしも工場の中を行政指導として対応できることがあれば、それをやりたいという気持ちでございます。
  33. 林義郎

    ○林(義)委員 環境基準としてのつくりは、なかなかあれだろうけれども、とにかく規制基準から少し始めていかなければならないだろう、こういうようなお話のようであります。規制ということになりますと、塩ビモノマーが出るのは、工場の方から出るというのが発生源として一つあります。それから第二の発生源として考えられますのは、塩ビポリマーになっておりますものの、要するに食器類その他から、食器類を熱をかけたとかなんとかいたしますと出てくるという場合が一応、考えられる。第三に考えられますのは、塩化ビニール製品が捨てられて、ごみ処理場で熱をかけられる。ゴミ処理場の周辺から出てくるという問題、この三つ考えられるだろう、こう思うわけです。  先ほどの話で、労働省の方で、工場の方の基準につきましては、環境濃度というものは二ppm、こういう形で、世界で一番きつい基準をつくっておりますから、その対策延長であるかどうかということであろうと思いますが、食品容器につきましては、厚生省の方でやっておられると思います。厚生省の方から、この辺どういうふうに、いまやっているのか、また、これからどういうふうにやるのか。何か東京都の検査では、一〇〇ppm以上のものがあったとか、どうとかというような新聞も出ておりましたけれども、一体どの程度調べをしておられて、どういうふうなことを、いまやって、これから、どういうふうにやろうというお考えか、この辺お答えください。簡単にお願いします。
  34. 宮沢香

    宮沢説明員 御説明いたします。  実は、食器の中の塩ビモノマーが問題になりましたのは、一昨年アメリカで、ウイスキー類の酒類に妙なにおいがするということで検査をしましたら、塩ビモノマー相当量、出ておった、こういうことで、その規制アメリカ考え始めたわけでございます。  私どもとしましては昨年来、国立衛生試験所におきまして、そういった実態を調査するとともに、塩ビモノマー食品中に溶出してこないように関係業界を指導してきておったわけでございますが、衛生試験所で、どの程度のよい材質であれば食品中に溶出がされないというようなことを、材質の面と、それから試験方法も、あわせて検討しながら、やってきたわけでございまして、つい最近ほとんどその試験を完了しておるわけでございます。  そういったときに、たまたまアメリカで九月三日に、食品に使うものの塩ビモノマー溶出量等について厳重な規制をするという提案があったわけでございます。これにつきましても、さらに延長になって、十二月十二日に一応、関係業界意見をまとめた上で、今後どういう規制をするか考えるというふうに私どもは聞いておりますが、これとは別に私どもにおきましては、国立衛生試験所のいままでの実験を整理いたしまして、少なくとも食品中に塩ビモノマーが出てくるようなことのないように、消費者の不安を一掃するために、近く、そういった規制をすることにしております。
  35. 林義郎

    ○林(義)委員 どういう規制をされるのですか。聞いておるところでは、一ppm以上のものが出るとかというようなことで、やるという話ですけれども、これは日本では一般のお酒あり、しょうゆあり、いろいろなものが、やはり現在、食品容器としてすでに使われておるわけですから、国民大衆にとりましては大変に関心の深いところだろうと私は思います。そこで、先ほどの労働省なり環境庁なりが持っておられるデータと同じようなデータでやられるのかどうか、物の考え方でやられるのか。考え方は一緒にしておかないと、これは非常に困ることになると思うのですよ。何かめちゃくちゃに甘くしたり、めちゃくちゃに厳しくしたりしますと、これは困るのですけれども、その辺の基本的な考え方は、どういうふうにしてやっておられるのですか。
  36. 宮沢香

    宮沢説明員 御説明申し上げます。  国立衛生試験所で、これは五十度という、普通の流通では考えられないような非常に過酷な条件を設定いたしまして、塩ビ樹脂の中の残存モノマーの値と、その溶出する条件というものを、食用油であるとか、しょうゆであるとか酒であるとか酢であるとか、そういった幾つかの食品について、いろいろのクロスチェックをやったわけでございます。その結果、この実験では、そういう非常に過酷な条件でございますが、少なくとも二ppm以下でしたら、恐らく酒といえども出てこないのじゃなかろうかというような結果が得られておるわけでございます。しかし現在、塩ビ業界の技術も進みまして、ほとんど一ppm以下の材質を供給できる、こういうようになっております。私ども試験法としましては、一ppm、これが検出限界という、その試験法によって、そういう品質のよい容器を使う、こういうふうにしておきますと、食品中に溶出してくることが考えられないので、そのような線で規制を加えていきたい、こういうふうに考えております。
  37. 林義郎

    ○林(義)委員 廃棄物処理の方は、どういうふうな規制考えておられるのでしょうか。
  38. 山村勝美

    ○山村説明員 ただいまの先生の御指摘の、廃棄物をごみ焼却場等で焼却した際に排出されるのではないかということでございますが、基本的には排気の問題でございますので、ただいま環境庁の方で種々の調査が行われておりますので、その規制が行われるとすれば、それに従って指導をしていくということになろうかと思います。  私の観念的に考えておりますのは、現在の普通の加熱状態では、モノマー以下にもう分解されてしまうのではないかというふうに、私個人では想像いたしております。モノマー以下にさらに分解してしまうということ、塩素とか水素とか、単体にさらに分解してしまうのではないかというふうに想像いたしております。
  39. 林義郎

    ○林(義)委員 ちょっと伺いますけれども、そのポリマーがモノマーになるという熱の程度と、さらにそれが分解されて塩素その他に分かれる、こういうところは、化学的にはどういうふうな基準になるのでしょうか。
  40. 山村勝美

    ○山村説明員 普通の焼却温度、つまり七、八百度で塩酸になってしまうようでございます。
  41. 林義郎

    ○林(義)委員 どうも余りよく、おわかりにならないようですけれども、要するに私は、あれはたしか五百度か何かじゃなかったかと思いますけれども、それ以上になると、もとの塩素等に分解する。それ以下の熱であるならば、ポリマーがモノマーに変わる可能性があるというのじゃなかったかと思いますが、そうじやなかったですか。ちょっとその辺、もし、だれか知っておられたらお答えください。知っておられなければいいですが。
  42. 宮沢香

    宮沢説明員 お答えします。  塩化ビニールモノマーから塩化ビニールポリマーをつくりますときには、たしか五、六十度ぐらいで過酸化剤を使いますと重合するということでございまして、それがまた焼却することによってモノマーになる、こういうことは化学エネルギーの関係では考えられない。いま先ほど山村課長が答えましたように、恐らく炭酸ガスと水と塩酸、こういうものに分解していくはずでございます。
  43. 林義郎

    ○林(義)委員 そうしますと、食品容器などというのは、これはポリマーになっておるわけですね、モノマーで食器はないわけですから。そうすると、その食器が、五十度の熱をかけたところでモノマーになる可能性というのはないということでしょう。ただ製造したときの過程におきまして、不良な形であるということになれば、場合によってポリマーがモノマーに変わるということはまあ考えられる、そういうふうに考えていいんですか。先ほど五十度の熱をかけて幾らか出た、こういうふうな話がありましたのは、お話では相当きつい条件を課してやったのが五十度である。五十度というのは、いまのそういった化学反応からすれば、どういうふうな意味を持つのでしょうか。
  44. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  モノマーが両側から手を出しまして、つながっていくわけでございますが、高分子になりますと、ぐるぐると樹脂状にかたまってしまいます。そうしますと、その真ん中に反応にあずからなかったものが、自分で結合したくても相手がいなくなってしまったということで、樹脂の中にくるまれて残ってしまう、これが残存塩化ビニールモノマーということでございまして、これにつきまして一応、樹脂をつくった後で、この塩ビモノマーというのは沸点がマイナス十三度ぐらいでございますので、さらに真空にして加熱をして引くと、その反応にあずからなかったモノマーがガスとしてどんどん出ていってしまう。こういうふうにして残存モノマーの量を減らしておるわけでございまして、それでも、なおかつ樹脂として九〇%以上、重合した中にくるまっておるのは、加熱をして引いても、外に飛び出す穴もあいていないということで、材質の中にどうしても残ってしまう。それが先ほど言いました一ppmとか二ppmとか残るわけでございますが、私どもとしましては、十分、加熱をして引けば、一ppm以下のものができる、こういうような技術開発になっておりまして、五十度に上げたということは、熱を上げますと、時間をかけますと容器の中で拡散して、食品中に出てくるということも考えられまして、したがって出てくる時間も、一つの例で申し上げますと、食用油の場合でございますが、樹脂中に塩ビモノマーが五ppm残存しております。この容器を五十度でかけますと、一週間日では全く検出されませんが、二週間日で、かすかに検出される、こういうような状況でございます。
  45. 林義郎

    ○林(義)委員 しょうゆなどの容器の中で残っておるのが五ppmある。それを何日間かやると、かすかに出てくる、こういう程度である、こういう話ですね。  そこで、私は一つ申し上げたいのは、そういった基準をつくるのはいいんですが、廃棄物の場合は、これは問題ない。マルトー二の先ほどの調査もありましたけれども、やはりまだ実験が、世界的な学界の認識におきましても、まだ確立された考え方がないということです。それで各国それぞれ基準を決めておるけれども日本は非常にきつい基準を決めておる。世界で一番、高い基準日本は決めて、やろうとしている。公害対策を推進する上におきましては、それは非常に結構な方向だと思いますが、やはり、それだけやるのでしたら、外国試験研究ではなくて、日本が一番きつい基準をやっているということでありましたならば、私は、日本としても少し動物実験ぐらいは手がけてやる必要があるだろうと思うのです。  というのは、どうも問題が、危険だ、危険だと、こういうことからいたしまして、その方からアプローチをする。何か問題が出てきた、どうだ、こういうことでありますが、逆の立場におきまして、安全という方面から、ここまでは絶対に大丈夫だという方のアプローチというものが、私はやはり必要だろうと思うのです。というのは、公害問題というのは、学問的に言って最後の最後まで全部ぴしゃっとわかるというようなことのない問題だろうと思いますから、危険性があるという方から、ずっとアプローチをしてきて、先ほどの五〇ppmであるとか、どうだとかいう話がある、二五〇ppmだという話がある、そういうアプローチもありますが、これならば絶対に安全だというふうなアプローチをして、実験をやるということも考えていかなければならない、こう思うのです。というのは、いま食品容器の話がありましたけれども、非常に安全を見込んでやっておられるわけでありますが、そのもとになるところのデータが、どこまでが安全かわからないから、めちゃくちゃに安全にしておけ、こういうふうな感じもなきにしもあらずである。一ppmでやって、業界でも何とかやれる、こういうふうな話ですから、いいのでしょうけれども、これが〇・一ppmでなければならないとか、あるいは〇・〇一ppmでなければならないとかいうふうな基準になりますと、これはやはり食品容器業界は大変な零細企業でもありますし、その零細企業のところが、なかなか負担ということも出てくる。しかも安全性ということを相当、慎重に考えていかなければ、公害対策というのは現実に動く規制にならないのではないか、こう私は思うのです。そういった意味で、政府の方でひとつ学問的な発がん性という問題についての研究を進めるとともに、その中において安全性というものは何だということを、ひとつ議論を尽くしてもらいたいと思うのです。  特に安全性の問題で言いますけれども、安全性というのは、私は、いろんな考え方をしていかなければならない問題ではないかと思います。政府の方で、その辺はどういうふうに安全性の問題を考えておられるのか。環境庁ですか厚生省ですか、どこですか、どこでも安全性の問題というものを本当に考えておられるところで、いま、どういうふうに考えてやっておられるのか、政府の統一的な考え方があればお答えを下さい。  それに関連して、もう一つ私、聞いておきたいのですけれども発がん性というものですね。ベリリウムでも発がん性があるとかなんとか、いろいろ発がん性の問題があります。六価クロムも確かに発がん性である、こういうことでありますが、がんというものは、まだその原因がはっきりわかっていない。発がん性というものは一体どういうふうな考え方で、どういうことになったならば発がん性と言い、また、それがどういうふうな程度にならなかったならば、実はそれはがんとは相関関係が認められない、あるいは因果関係が認められない、こういうふうに言うのか。この辺は大変むずかしい問題だろうと思います。思いますが、がんには、こんなものがなくても、なるわけであります。普通でも、一般の方でもなる。胃がん、肺がんその他たくさんのがんになる。そのがんの場合と、どういう程度に違ったならば、これは発がん性あり、こういうふうに言うのか、この辺の考え方、安全性の問題と発がん性の問題この辺について政府の方で、どういうふうに考えておられるのか、御答弁いただければ幸いです。
  46. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  私ども食品化学課といたしましては、現在、食品に残留する農薬であるとか、あるいは食品に使用する食品添加物、それから洗剤であるとか、ただいま先生質問食器、容器等から溶出するいろいろな化学物質、こういったものの安全性をやっておるわけでございます。  その考え方でございますが、これは国際機関でございますWHOの中に安全性を審議する専門家の委員会がございますが、それは食品添加物、農薬等については、昭和三十年前半に一つ考え方をまとめて出しております。それによりますと、動物を用いまして、従来の実験とは違いまして、一生涯、そのライフスパンにわたりまして、ある化学物質を何度かに投与いたしまして、最大の量でもって全く作用があらわれないという、最大安全量と私ども呼んでおりますが、その量を見つけます一そして動物と人間の差とか、あるいは人間の中で子供とか老人とか病人がいるとかいう、人間同士の間の安全を見るということで、その動物で何ともなかった量の百分の一以下という量を人間に摂取するような、そういうふうな安全係数を設定して、食品添加物とか残留農薬とかいうものについて使用濃度、残存量を決めておるわけでございます。  もう一つ、発ガン性でございます。実は、これにつきましても、先生の御指摘のように、現在その原因もわからないし、また、いろいろな要素が考えられる、放射線であるとか化学物質であるとか、あるいはそのほか、もろもろの環境因子も考えられるということでございましたが、食品添加物、農薬等、口から入るものについては、少なくとも、まだ原因がわからないだけにゼロという考え方を持っておりまして、添加物で発ガン性の認められるものについては、使用は一切、認めないというのが、現在の国際的な考え方でございますが、最近、特に日米で中心になりまして、何か用量反応、ドーセジレスポンスと私ども言っておりますが、あるようであるので、考えなくちゃいかぬというような議論が最近、起こって、いろいろと会議を開いて、その点も検討しておるということを聞いております。
  47. 林義郎

    ○林(義)委員 これで質問を終わりますけれども、発ガン性はなかなかむずかしいようであります。  先ほど、もう一つの安全性の問題ですけれども、WHOの話がありました。ありましたが、私は聞いていて、安全係数を百倍にする、こういうことである。その百倍というものが果たしていいのかどうか、百倍にしておけば、それは非常に安全であろう、こういうことでありますが、逆に安全係数をかけるということは、一般のメーカーその他については非常に過酷な条件をかける。また、それ以上に、安全係数が五十ではなぜいけないのか、あるいは、どうして百でなければならないのかという議論というものは、私はどうもないのではないかと思うのです。そこが私は公害問題なり健康安全の問題についての大きなポイントになるだろうと思うのです。そこを百がいいのか五十がいいのか、あるいは五百にしなければならないのか、こういうような点というのは、これから詰めていく必要があるだろう、こう思うのです。そうした意味を政府の方でも統一的に、ひとつやってもらいたい。日本は大変な工業国になりましたから、いろいろな物質が出てきます。常に物質が出てきて、いろいろな問題が出てくる。そのときに、いつも同じ安全率をかけるので果たしていいのかどうか、私は違うのじゃないかと思うのです。そういった安全係数をどうとるかということが、これから公害問題なり労働災害の問題を進めていく上において、非常に大きなポイントになる。食品衛生の上におきましても、私は問題になるような気がしますから、これはやはり少し、この辺の研究が必要だということを私は政府に要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  48. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 島本虎三君。
  49. 島本虎三

    ○島本委員 私の場合は、きょうは特に前回、十分詰め切れなかった塩ビモノマーの人間の体に及ぼす影響を含めた汚染の問題、それともう一つは、先般、環境庁から出された窒素酸化物対策、この二つの問題に限定して、きょうは十分詰めてみたい、政府の意見も聞いてみたい、こう思う次第であります。まず、その順序としては、いま林委員の方からも塩化ビニールモノマーの問題で質問がありました。したがって、その方からいった方がいいと思いますから、便宜そうさしてもらいます。しかし主眼点は、窒素酸化物の対策問題でありますから、すぐ、そっちの方へ移らしてもらいます。  ちょっとお伺いいたしますが、前回、私がいろいろと塩化ビニールモノマーの問題で質問しました。その際に厚生省の方から、モノマーの溶出する容器の回収、この問題に対しては、業者が自主的に回収しているので大丈夫だと思う、こういうような見解の表明がおありだったと思います。その後、容器の回収はどのようになっておるか、これをどのように把握しておりますか。
  50. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  塩ビ食品衛生協議会というのがございまして、そこで、この十月十五日から新たに塩ビモノマーの残存についても自主的な検査をいたしまして、十月十五日以降は、そういう検査に合格したもの以外は一切、会員は売らないし、また食品を製造する業者も、それを確認した上で、それを買う、こういうようなことで、強力にその辺の自主的な規制が行われておるというふうに聞いております。
  51. 島本虎三

    ○島本委員 自主的な規制、それは業者任せで、業者がやっているから安全だ、厚生省そういうように考えている、業者任せ。その業者が自主的にモノマーの溶出する容器について、これを回収している、だから大丈夫だと思う。ですから、前にそのような答弁ですから、それをどういうふうにして大丈夫だと思うような状態まで把握しているのか、これを聞いているのですよ。業者に任しておるから大丈夫だ、これだけですか。回収状況です。
  52. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  塩ビ食品衛生協議会の方では、そういった、いままで私ども実験あるいは東京都等の実験で検出されたようなものについては、早速にそのものを回収をしたということを報告を受けておりますが、私どもといたしましても、さらに国立衛生試験所におきまして、その後、製造された年月日のはっきりしているような、いろいろの食品を買い集めてまいりまして、国立衛生試験所で、本当にその容器が十分であるかどうかという実験を、さらに繰り返し今日まで行ってきておるわけでございまして、その結果は、まだ完了はしておりませんが、私どもの聞いている範囲では、昨年の暮れ以前の相当、古い容器、その中でも全然、検出されないものもございますが、一部のものには塩ビモノマーが検出されるというような成績も得ておりますが、ことしに入って春以降のものについては、全くそういった検出されるような不良のものは出ていない、こういう事実は私ども掌握しております。
  53. 島本虎三

    ○島本委員 では、業者がどれほど回収しているか、これは知らないのですね。  実験を繰り返しているけれども、しかし最近、聞くところによると、以前の調査によっても、そういうのは検出されないような状態のものもある。このようです。業者にやらしているから大丈夫だ、この考え方が、公害に対しては後手後手になるのです。業者はもうけるためでしょう。それをいろいろ規制する、国民の立場に立つのは厚生省環境庁でしょう。何でも業者がやっているからいいのだ、こういうようなことで、ただ任せきりにしているところに行政の欠点があるのです。それをこの前はっきり皆さんに私が申し上げたではありませんか。もう厚生省自身が安全を保証している容器でも、収容した品物の経過であるとか、それから時間であるとか温度、こういうようなものによってモノマーの溶出が見られる。これはいろいろ聞いたとおりなんです。この基準設定というようなことに対してきちっとしていたのですか。いまでも、これだけは大丈夫だ、こういうような基準だということを、きちっと食品衛生法上の規制によって、これはやっていますか。
  54. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  前回の先生の御質問のときにも御説明したと思いますが、昨年来、国立衛生試験所において幾つかの条件を設定しまして、いろいろな食品を使って、どういう場合には大丈夫で、どういう場合には出てくるか、こういうことをやっておったわけでございまして、その試験方法も含めまして、いろいろな検討をしておったわけでございますが、ようやく、ほとんどその試験も終わりまして、私ども規制を加えて、食品中に塩ビモノマーが出てこないような、そういうものだけを流通させるようなことにして、消費者の不安を除くということを近々、行うよう、現在、整理をし、そういう規制をするということの作業を進めておる状況でございます。
  55. 島本虎三

    ○島本委員 わかりました。そうすると、これは全然、出てこないというのが一つ基準になるわけですね。検出されないということですね。
  56. 宮沢香

    宮沢説明員 私どもが現在、衛生試験所でつくりました試験法に基づいて検出をしない、そういうような規制になると思います。
  57. 島本虎三

    ○島本委員 検出しない、されないですか。
  58. 宮沢香

    宮沢説明員 衛生試験所で設定いたしました試験方法では検出されない、こういうことでございます。
  59. 島本虎三

    ○島本委員 安全だといっても、現在のはかる機械なり器具によって検出されないので、されるところまで、これはわかる。されないところの危険性はわからない。こういうようなことが前回あったから、そこで詰まってしまったのです。ですから、きょうはここからなんです。  健康診断、これは相当進んでいると思うのです。工場内、工場外、こういうふうな健康診断は、労働省環境庁、それぞれ行っていると思いますが、これらの健康診断というようなものは行われておりますか、進んでおりますか。これは簡単に答えてください。時間をとりたくないですから。
  60. 中西正雄

    中西政府委員 労働者の健康診断につきましては、在籍中で重合作業に従事している者並びに過去において従事した者につきましては、すでに全部、健康診断を終えております。約五千名について実施をいたしておりますけれども、その結果によりますと、所見のあった者が十八名でございます。しかし、療養を要する者はなしという結果が出ております。  なお、退職者につきましては、過去に重合作業に従事していた者で退職した者が約三千名おります。この者については現在、追跡調査並びに健康診断実施をいたしております。
  61. 野津聖

    ○野津政府委員 いわゆる一般住民の健康被害の問題でございますけれども、これにつきましては、大気なり、あるいは水なりの汚染状況というふうなものが非常に大事な問題になってまいるわけでございまして、汚染の実態の把握ということを先行してまいりたいというふうに考えております。
  62. 島本虎三

    ○島本委員 まだ健康診断というようなところまでは十分いっていませんね、工場内ではなく外の方、住民の方は。
  63. 野津聖

    ○野津政府委員 ただいま申し上げましたように、いわゆる環境中の濃度というのは非常に薄いという問題がございまして、これとの関連がございます。またさらに、環境中の濃度というものの測定が非常に困難な状況にもあるわけでございまして、先ほど大気保全局長からお話がございましたように、いまの測定方法というものも大事な問題になってくると考えておるわけでございます。
  64. 島本虎三

    ○島本委員 新しい検出のやり方で、何ppmまでこれは検出されるのですか。環境庁でも厚生省でも労働省でもよろしい。
  65. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 私ども研究費でやった限度におきましては、検出限界は二ppbでございます。
  66. 島本虎三

    ○島本委員 二ppbだとすると、厚生省の方でも、それに基づいて、やはり安全性というようなもの、これははっきり確立をしていますか。また検出も、そういうような二ppbまで下がって、これをやっておりますか。
  67. 宮沢香

    宮沢説明員 容器の材質から、その前処理をして抽出をして、それから検出するということでございますので、現在、衛生試験所で行いました方法では、一ppm以上であれば検出できる、そういう試験法でございます。
  68. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、大分これは違うのでありますけれども、これはいかがですか。〇・〇五以下の量、これはまず安全だというような前回のお話でございましたけれども、〇・〇五ppm以下の量、これはやはり安全なんですか。
  69. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  今度は食品の中になりますと、その材質が液体だとか非常に処理しやすいものになるわけでございまして、そうなりますと、検出限界はもう少し下がりまして、〇・〇五ppm以上あれば検出できるというように、感度が上がるわけでございます。  それから、安全であるかどうかということでございますが、現在イタリアマルトー教授の方で、経口によって、どの辺から、がんが出るかどうか、こういう実験をしておると聞いております。しかし、その結果、現在までのところでは、経口実験でまだ、がんは確認されていないというふうに私どもは聞いております。
  70. 島本虎三

    ○島本委員 これは、大気中のものと食品中のものとは、やはり違うわけであります。〇・〇五ppm以下の量で食品中に含まれていると、いない、こういうようなことで安全であるとか安全でないとか、こういうようなことは言えない。危険な状態もある。したがって、空気中に含まれている塩ビモノマーは五〇ppm、これはさほどでもない。しかし、そういうデータがある。前回、こういうようなお答えがあったようでありますが、空気から肺を通して体に吸収される場合と、食物中に含まれて胃腸から吸収される場合とでは、全く違うわけです。食品中に含まれるものは大部分が吸収され、肝臓などに全部、蓄積されてしまうわけでしょう。そうするとPCBと同じように、きわめて分解されにくい塩素化合物ですから、一回に食べる量がいかに少なくても、毎日三度の御飯を食べるときに入ってくる量、微量でも分解されないままに肝臓に蓄積されるということになってしまう。そうすると〇・〇五ppm以下またはその程度で安全だ、決して、こう言えないのではないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょう。
  71. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  非常に残念でありますけれども、私どもとしては、経口の塩ビモノマーについての動物実験日本ではやっておりません。マルトー教授のところでは、相当、高濃度から幾つかの段階で経口投与をして、いま慢性毒性実験中だというふうに聞いておりますが、現在までのところ、発がん性は証明されていないというふうに聞いております。  それからもう一つ、これはちょっと当たるかどうか知りませんが、非常にがん原力が強いといわれております三・四ベンツピレンというのがございます。これは皮膚に塗って、がんを出す量と、それから飲ませて皮膚がんを出させる量とを見た場合に、WHOの報告でございますが、飲ませた場合の方が非常に高濃度でないと、がんは出てこない、こういう報告例はございます。
  72. 島本虎三

    ○島本委員 どこの国の、どんなところの報告なんだか、日本の国民の健康のことを言っているのです。日本の国民の健康の安全性のことを言っているのです。せっかく日本も、りっぱな衛生試験所を持っておる。そちらの方ではさっぱりやっていない。それで安全だ、安全だと言っている。それが国民の健康を守る立場の厚生省だ、これではだめじゃありませんか。動物実験、これだって二年以上の期間にわたって食品中にPCBを含ませて、発がん性試験であるとか催奇形性の試験であるとか代謝試験であるとか繁殖試験であるとか、いろいろな試験があるわけです。こういうようなことを国の機関で実施して、それで安全だと言うのがあたりまえじゃありませんか。どこかの国の文献を持ってきて、これで安全なんだ、いまの原子力の発電の安全性みたいなことばかり言っているじゃありませんか。そんなことじゃだめです。日本にそういう機関がありながら、なぜ、そこできちっとした調査をしないのですか、試験をしないのですか。そして断定的なことを言っておる。PCBの二の舞いをここでやろうとしておる。こんなことでは、私はもう本当に心配なんです。こういうような問題は、やはり国の機関で、きちっと調査する必要がございませんか。だから安全だと、こう言ってこそ、日本国民のために皆さん存在することになるじゃありませんか。よその国の、それもあらゆる国のデータを持ってきて、それを日本に当てはめて、こうなるからこうなる、それは机上プランですよ。こういうようなものは率先して国の機関でやってみるべきです。原子力発電、あれほど物議を醸しても、まだ安全性を確立したと言いながらも、日本一つも、それをやっていない、同じことじゃありませんか。これは率先して国の中で、国民のために安全性を確立するように、試験機関はあるのですから、そこでやらせるようにすべきだと思うのです。今後のために一応、長官の意向を聞いておきます。
  73. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 安全性の確認、それから限界点を国の機関できちっと決めていかなければならない。先ほど林先生も同じように言われたわけでございますが、これは当然しなければならないと思います。ただ、衛生上、保健上の安全問題については、WHO等、その中に参加しましていろいろな研究をやっておるわけでございますから、必ずしも、わかっているものについて、さらに国がやらなければいけないわけではないと思います。先ほど来、申し上げておるように、労働省では一応いろいろな研究をやった結果から、ある一定の線を決め、それから食品関係の容器では、さらに一ppmという最も厳しい安全の基準を決めて、そして健康を守ろうということでやっておるわけでございます。  私の方では、環境の、大気なり排出なり、あるいはそういうものの、まさに測定方法確立いたしましたので、その後、測定方法の検証を兼ねて本年の調査、それから来年さらにそれを詳細に検討いたしまして、結論をつけてから、必要があれば、その結果に基づいて、その科学的知見のもとで健康診断をやっていく、こういうことになるわけでございます。  それから先ほど、どうも少し混乱をしておりますのは、測定できる限界点と、それから安全性から見た限界点と、ちょっとごっちゃになって、議論があるようでございますので、これを分けて、はっきりひとつ議論を進めていく必要があるのじゃないか、私は聞いておって、そういうふうに感じたわけでございます。
  74. 島本虎三

    ○島本委員 まことに無礼な環境庁長官です。だれもそんなことを言ってません。あなた自身がそうとっただけです。現在〇・〇五ppm、これだけならばまず安全だ、まず人間の体には差しさわりはない。ただ二ppbまでは検出できる。ただ、この塩化ビニールモノマー、こういうふうなものはpCBと同じに、きわめて分解されにくい塩素化合物だというのでしょう。少ないからいいのだ、こんな問題じゃないと言うんです。したがって、一回に食べる量が少なくとも、三度の御飯を食べる、この容器の中に入ったりする場合には、入ってくる量が微量であっても、分解されないままに肝臓に蓄積されていくのだ、したがって〇・〇五ppm以下で安全だと決して言えないのだということです。もっともっと細かく検出されるのはいい。しかし、現在の基準の中で、これくらいならまずいいのだ、こういうふうなことでは安全性がはっきりしないと言っているんですよ、蓄積されるからです。もし、本当に安全だというなら、動物実験を二年以上の期間にわたってやり、食品中にPCBなり、いろいろなものを含ませて、発がん性試験であるとか催奇形性試験であるとか代謝試験であるとか繁殖試験であるとか、国の機関で、はっきり実施して、これは安全だということを証明して、これができるということですよ。それもしないで、ただ安全だ安全だと言うから、本当に国民のためになっていないんだと言うのですよ。だれも混乱していない。しているのは長官だけである。余り無礼なことを言ってはだめです。
  75. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 まず第一点でございますが、先ほどからマルトー二の実験を盛んに私どもの方からお答え申し上げているわけでございますが、実は、この塩ビ関係実験というのは非常にむずかしい実験でございます。と申しますのは、従来から存在しております塩ビ関係物質を使って実験をいたしますと、その実験に紛れ込んでしまいますので、成り立たなくなっております。そこで、これは非常に膨大な研究施設がございまして、イギリス及びヨーロッパの各共同研究ということで、マルトー二博士が現在ボローニア研究所というところでやっておるわけでございます。アメリカでも、この研究は現在いたしておりませんで、そのボローニアを中心に動いておる、世界的な研究所として研究をいたしておりますので、私どもはそこの研究所のデータを非常に重視しておるわけでございます。  そこで現在、聞いておりますのは、いわゆる吸入実験によりまして、ラットを使いまして毎日四時間ずつこれを吸わせ、週に五日吸わせるということで、二百五十ppmの量で一年間で発がんを見たという実験データを聞いておるわけでございます。これが唯一の発がん性実験でございまして、それから見ますると、いわゆる〇・何ppmということでございますと何万分の一という感じでございます。  そういう意味で現在、安全性のラインがどこかということははっきりしないわけでございますが、いずれにしましても通常、塩ビ食品容器から出ます量でございますと、先生、先ほど御指摘いただきましたガスと食品とは違う、消化器官から入ったら違うではないか、こういうこともあるわけでございますが、いまの動物実験で現在の段階では、そのガスの実験と普通の容器に入っております場合とでは、何万分の一という違いでございますので、その意味で、先ほど申しましたようなラインであれば、これはさしあたって安全と考えてまず構わないであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  76. 島本虎三

    ○島本委員 それなら、厚生省で全国のいろいろな物質検査に携わっている人、これは前回、全部で六千名ほどいるという、これは労働省ですか、そういう御答弁があったわけであります。それをいま、はっきり聞いてみたいのは、実際に塩ビ容器に残存する塩ビモノマーであるとか食品中に溶け込んだ塩ビモノマーの分析に携わっている人は何人くらいいるのですか。
  77. 宮沢香

    宮沢説明員 お答え申し上げます。  私ども、実はそういう試験をします試験法は、国立衛生試験所の添加物部というのがございますが、この部で研究をいたしまして、何回はかっても同じ値が出るという再現性の高い方法を、そこでっくるわけでございます。そうしまして、その方法について、各都道府県の代表の方、主として県の衛生研究所の担当官でございますが、来ていただいて伝達講習をいたしまして、帰りましてから、衛生研究所が保健所その他の食品衛生監視員に伝達講習する、そういうようなことで、その分析できる陣容を整備していく、こういう体制をとっているわけでございます。したがいまして、都道府県の衛生研究所が中心となって、この実験は、こういった化学物質試験法で決まったものについての実験をする陣容が整うわけでございまして、それが現状であろうと思います。
  78. 島本虎三

    ○島本委員 いま、こういうようになったから言うのも、私にしてもちょっと遅過ぎるのです。というのは、どの機関で何人くらいでこれをやっているか、きちっとしておかないと、はっきりしたデータの集積にならないのです。その場限りで言ってきたものを取り集めてもだめなんです。せっかく国の機関もあるのですから、どの機関で何人で食品の中の分析をするとか、その資料を出しておくとか、きちっとしておいてほしいわけです。そうして今後も、塩ビ食品容器であるとか食品中の塩ビモノマー、こういうような検査をする方法、その場所、人員、その日程、こういうようなものをきちっとしておいたならば、体制としてうまくいくのじゃないか。私はいま言うのでも遅過ぎるのです。遅過ぎるだけ、まだいってないのです。この点は、私としては感じたままを率直に申し上げておきたいと思うのです。環境庁長官に言っても、また変な答弁が出るから、あえて、あなたは答弁しなくてもいい。  全国で塩ビ樹脂を重合する反応がまが約五百基ほどあるという前回のお答えでしたが、そうですね。そうして、それぞれのかまから毎日、何バッチも製造されておりますけれども、それぞれの反応がまのバッチごとに、ばらつきがあるわけでありますから、当然その銘柄によるばらつきもあるわけであります。この塩ビを使って食品容器をつくる場合には、それぞれのバッチごとに塩ビモノマー検査しなくてはならないはずなんです。しかし、いままで聞いたところによると、厚生省はそういうような指導も指示もしていない。できてきたもの、問題になったものを全部やって、あとは業者任せにしてやっておる、こういうような態度のようであります。これは重大性、危険性、こういうようなものからして、現在のような状態であれば、塩ビ食品容器をつくらせておくこと自体が問題だと思います。できるならば、安全な代替品がほしいということです。そして、第一番に国民の健康を考えてほしいということです。そのためには、どうせ現行のままにしておくならば、こういうような部門別にこれをきちんと検査しチェックする体制として、こういうような機関というものをきちっとしておいて、どこからっついても、国民の健康を守る立場からは瑕疵がない、こういうようなところまでやっておくべきだ、こう思うのであります。局長、せっかく来ておりますから御意見を伺います。
  79. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 先ほどからも申し上げておりますように、塩ビ衛生協議会の方で、容器は一ppm以下に抑える、今後つくるものにつきましては一ppmに保証する。それから現在、出回っているものにつきましては、これをすでに入手しているびんの成形会社の方から、これを検査してくれという依頼があれば、塩ビ衛生協議会の方でこれを受けて中身を調べまして、一ppm以下であれば、これを引き取るということを、私どもから依頼いたしまして、向こうも自主的にやっているという状況でございます。しかも、そこでは安全なものについては一つのマークをつくって、それをきちんとつけて出すということを現在いたしておりますので、その推移、状況を見まして、私どもとしてもいろいろ考えてみたい、こう思います。
  80. 島本虎三

    ○島本委員 それでは答弁にならないのでありますけれども、深追いはいたしません。  前に、最後に聞いたことの中で、塩化ビニール樹脂使用建材の問題に触れて質問いたしました。火災のときに燃えないが有害ガスを発生する建材。もし火災になった場合に、これは焼け死んだりする以上の被害があるのではないか。確かに発火はしにくいけれども、一たん火事に見舞われた場合に、毒性の高い塩化水素やホスゲン、多量の一酸化炭素を発生して、火が回る前に人がこれによってやられるおそれがある。したがって、火災時に有害ガスを発生するというような建材に対しては、使用をやめさせることを考えたらどうだ、こう質問したわけであります。それに対してはっきり、これを検討するということでございましたが、火災時に有害ガスを発生する建材の中止基準というようなものを告示されておりますか。
  81. 松谷蒼一郎

    ○松谷説明員 お答え申し上げます。  いま先生からお話しのように、建築基準法で、火災時に有害なガスの発生がありまして、そのために多数の人が死傷するというような建築物の材料は、用途と規模を限りまして制限を行っております。これにつきましては、たとえば旅館だとか映画館だとか、そういうようなもので非常に規模の大きいものにつきまして、準不燃材料、不燃材料、難燃材料等の使用を義務づけているわけでございます。その不燃材料や準不燃材料、難燃材料の性状につきましては、建築基準法でこれを規定しておりまして、なお建設省の告示に基づきまして、いろいろな試験方法を規定し、その告示で規定しております試験方法に合格いたしましたものを、これらの当該材料に認定をするというような方法を行っております。その中でいろいろな判定の基準がございますが、一つの判定基準といたしまして「避難上著しく有害なガスの発生等がない」ということを、一つの判定基準にしているわけでございます。
  82. 島本虎三

    ○島本委員 有害ガスの発生がないといっても、いま言ったような塩化ビニール樹脂使用の建材、確かにこの問題に対しては発火はしにくいけれども、これは一たん火事に見舞われれば、毒性の高い塩化水素や毒ガスの原料の一つになっているホスゲンだとか、また大量の一酸化炭素が発生するから、火が回る前に、このガスが建物に充満することによって、多くの人命を奪うおそれがある。これは危険ではありませんかということなんです。したがって、こういうようなものに対しては、はっきり火災時に有害ガスを発生する建材の中止基準というものが告示されているかいないか。また、いないとすると、それはおかしいです。いま言ったようなことが安全だということの証明にはなりませんから、この問題はどうなっているかということです。これはもう告示されているのですか。
  83. 松谷蒼一郎

    ○松谷説明員 いま御指摘の点につきましてお答え申し上げますが、有害なガスの発煙量につきましては告示の中で規定をしております。しかしガスの性状、いま御指摘の塩化水素でありますとかホスゲン、こういうようなものの性状に応じて建築材料の制限をするというようなことは、現在、検討をしております。  実は、有害なガスの性状を定めまして、それが大体どの程度以上、出たら、建築材料としては使用するのが危険であるというようなことの認定をすることが非常にむずかしい状況にありまして、このために三年がかりで、いろいろな試験実施しておりますが、現在のところでは、通常のラワン木材が燃焼いたしました発煙の状態におきましてマウスが死亡する時間よりも、ずっと短い時間において死亡するような建築材料の発煙につきましては、これを規制しようではないかということで、現在、検討中でございます。近々のうちに告示を改正いたしまして、御指摘のとおりの建築材料の制限を、建築物の用途に従っていたしたい、かように存じております。
  84. 島本虎三

    ○島本委員 では、年内にこの基準を告示できる、こういうようなことですね。
  85. 松谷蒼一郎

    ○松谷説明員 若干告示の作業がおくれまして、年内はちょっと無理でございますが、近いうちに、この告示を改正いたしたいと思っております。
  86. 島本虎三

    ○島本委員 では次に、私は窒素酸化物の問題について、ちょっとお伺いいたします。  先般「NOx対策の進め方について」これは十二月四日付で環境庁から、それぞれ手元にスケジュールが届きました。それを拝見させてもらいました。なかなか表面はいいようであります。  その前に長官、環境庁の今後の方針の一つ二つだけは聞いておきたい。瀬戸内海の環境保全臨時措置法、これは五十一年で期限になるわけですが、引き継ぎ法はどのような準備段階にあるか、これはできているか。これは単純延長のようなことは考えていないのじゃないかと思いますが、この点ひとつ今後の方針として聞かしてくださいませんか。
  87. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のとおり三年の時限立法で、別に法律をもって定める日から効力を失う、こういうふうになっておるわけでございます。当然、後継ぎ法を考えていかなければならない。また、さらに前進した内容考えていかなければいかぬわけでございますが、いろいろ意見を、関係の府県なり、あるいは関係のいろいろ御熱心な方々等の意見も聞いておる段階でございまして、できるなら、なるべくもう少し内容を充実をしたものにしたいと思っており、そういう方向で検討いたしております。  ただ御承知のように、あの中には基本計画を定めなければいかぬということになって、この基本計画については目下、審議会で鋭意、検討いただいておりますものですから、それがここ一、二ヵ月でというわけにいきません。やはり相当、期間を要しますので、それらの基本計画の御答申をいただいてから検討するのが筋ではないか、こういう議論も一方にありますし、また関係の十一府県の方では、せっかくCODを二分の一にするというので、いろいろな規制の割り当てをやった、それをいま実行しつつあるところであるから、その上また、いろいろ変わってくるというようなことになると、関係の府県等でやりにくい点も出てくるので、この辺は私どもの実際やっている状況等あるいは意見を十分ひとつ反映をしてもらいたいという要望等もありますので、いま慎重に検討しているというのが実情でございます。
  88. 島本虎三

    ○島本委員 なるほど、そのとおりでありますが、そのうちで瀬戸内海環境保全臨時措置法三条に基づく基本計画ですね。これは大体いつごろできるのですか、見込みは。
  89. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 この基本計画につきましては、瀬戸内海の審議会の計画部会に諮問いたしまして、そしていま、審議をしていただく諸材料を整備をしておるわけでございます。この材料をもちまして議論を、これから進めていきたい。年内にも具体的な審議を深めていただくようにお願いしたいと考えておるわけでございます。  いつまでに完了するかという問題でございますが、これは何分にも、いま長官からお話のございましたように、瀬戸内海臨時措置法の主要な柱になっておりますCODの二分の一カット規制は、各県で条例を制定いたしまして、やり方は決めておるわけでございます。具体的な汚濁負荷量のカットの現状から見ますと、これは来年の十一月が目標でございますけれども、それまでの過程におきまして、ちょうどいま中ごろまでカットが進んだというのが実情でございます。これの結果等も、できるだけ資料を整備して集めた上で御審議をいただくということになりますので、できるだけ早くとは存じますが、もちろん来年の十一月以前の時点で御審議を完了していただく、なるべく、それも早い方がよろしい、こういう考え方で、いま準備に入っておるわけでございます。
  90. 島本虎三

    ○島本委員 これはやはり基本になる事項ですから、これを急がないと、どうにもならないわけです。十分この点はがんばれと、私からも要請しておきたいと思うのです。  さて次に入りますが、健康被害補償法による移動発生源の費用負担についての自動車重量税の二年間の時限立法、これは昭和四十八年ですね、いまの健康被害補償法が成立した時点で、もう二年間と決まっているわけです。長官はこの問題は十分、御存じだと思っているのです。これは問題がたくさんあるのです。これは合理的な費用負担の方法論が確立するのに時間がかかるという当時の説明もありました。第二番目としては、利害の反する自動車業界と石油業界、この調和ができなかった、対立が激化したという事情もあった。第三番目には政府部内の調整がなかなか困難であった。したがって暫定的に二年というふうにして、この現行の健康被害補償法が成立しているわけです。  この四十九条には納付金の財源は別に定めることになっておりますけれども、四十九年、五十年、暫定措置として自動車重量税の引当方式を採用されて現在に至っているわけですが、これは延長されるような状態になるのかどうか。もし延長されるような状態になるにしても、考えなければならない点があるのかないのか。私なりに考えると、自動車以外の移動発生源の汚染寄与、これはどうなっているのか。たとえば航空機、船舶、こういうようなものも含めて、少ないか多いか。たとえばジェット機。この騒音の問題では大阪高裁のあの判決が出ました。しかし大気汚染の関係では、これはもうジェット燃料で一・三%まで航空機が使用している。こうだったら、これに寄与していないと考えるか、少ないと考えるか。第二番目としては、NOx、SOxの被害発生の寄与度の差がなくて費用配分するのかどうか。SOx、NOx一時間値は〇・〇四ppmと〇・〇二ppmの違いがある。そうすると自動車のNOxの排出は、これはいままで議論されたように多い。そうすると今後、同じこれを延長するにしても内容が変わるのじゃないか。すなわち、四十九年から二年たって、もうすでに、やる場合に新しい方式でこれを考えるのかどうか。また五十一年度からは、これは追加の方針を考えるのかどうか。この辺を少し聞いておきたい、こう思うわけであります。と申しますのは、私なりに心配な点があるからです。
  91. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私から基本的な考えを申し上げます。  やはり固定発生源と移動発生源の寄与率を正確に検討しまして、そうして本当は負担割合を決めていかなければならないわけでありますが、全国的に見ました場合に、なかなかこれを来年の四月、すなわち三月までに確定することは容易でありません。そこで私どもは、被害補償の費用というものを、来年は、ことしよりも相当、大幅にふえる予想がありますので、いろいろ予算折衝等も、検討を加えた結果というので延ばしてきたわけでありますが、いろいろな関係方面との了解も、ほぼ、とれそうな見込みがつきましたので、しばらくは重量税の全体の二割分は、その方向で支出をしてもらいたい、こういう考えで、いわば従来の継続ということで、しかも額は相当、大幅に増加をしてもらってお願いをするという腹を、とりあえずは決めました。しかし問題点がいろいろありますので、今後とも、どういうふうにすべきかということをいろいろ検討していかなければいけない。自動車重量税のみならず、全般的に補償法の財源の配分が果たして現行で合理的なのかどうかという点も含めまして、並行して検討を続けていきたい、かように考えております。  それから移動発生源中で、航空機その他いろいろなものの寄与率がどうなっているんだということでございますが、全般的に見まして、やはり固定発生源と自動車が大半であって、その他は、そう特別に計算をしていくような程度の寄与率ではなかろう、大ざっぱに言えば、私はそんな考えでございますが、なお私は一体どれがどの程度、寄与をしているか、何%であるかという点の詳しい知識もありませんので、その点は、もし必要でございましたら局長の方から答えさせます。
  92. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 発生源の寄与の問題だけについて申し上げますが、東京湾沿岸の四十七年に行いました四十五年時点での航空機のウエートといいますと、窒素酸化物全体の中で放出量はパーセンテージでいきますと〇・〇幾つというようなスケールでございます。全国的に放出量を計算いたしますと、これはまことに申しわけございませんが、飛行機だけではございませんが、農耕機から船から片っ端から入れて計算いたしますと、NOxとしましては、三・八%というのが四十八年の実態でございました。そういうことで、これだけのウエートの小さいものを取り上げなかったというのが、もとの考え方です。
  93. 島本虎三

    ○島本委員 それでわかりましたが、「NOxの対策の進め方」並びに「固定発生源に対する窒素酸化物の排出基準の改定」という、われわれの方に配ってくれた資料に基づいて考えを聞かせていただきたい。  まず環境基準達成の見通しなんですが、一九七三年五月決定のNO2基準の達成期間は、原則として五年以内、一部は八年以内ということにしてあったわけです。五年達成地域の期限は一九七八年五月、そうすると残された期間は、あと約二年半ということになりましょう。こういうようなことからして環境基準の達成の期間までの見通しはどうなのか。要綱によりましても環境庁としては苦心の跡も見えるようであります。しかし、第一に五十一年度までは個別発生源規制を強化して、大気汚染の予測手法の仕上げや、これに基づく削減計画を策定する。五十二年度中に最適なNOx防止対策のための政策的検討を行う。五十三年度以降は総量規制を行う。そして八年規制までに、これを完全にする、こういうようなことのようであります。  窒素酸化物はどの水準まで引き下げなければならないかというような点も大きい問題であります。環境庁の方では、いまここにある資料に基づいても、いろいろ範囲を拡大し、昭和五十六年四月までに八年地域環境基準達成というスケジュールがまずできているようであります。しかし五年達成を実行することは物理的にむずかしくなったのじゃないか、こう見られているようでありまして、自動車、鉄鋼業界並びに一部の学者の批判、こういうようなものが最近出てきているようであります。これは達成基準を直すことにしたいとか、または、これを改正したいという意向が見えるようであります。これは私は重大だと思うのです。こういうような根本的な問題を踏まえて産業界では、やれないだろうという見通しを立てて、今後の窒素酸化物の規制強化を牽制しょうとし始めているように承ります。これは大事だと思うのです。大臣、どうお考えですか。
  94. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 八年目標は何とか、ひとつ実現したいということで、いろいろ手順を決めて努力しているわけですが、五年目標の個所については、なかなか容易でないと思います。私どもは産業界外国の一部の学者の批判があっても、何もそれにこだわっているわけではございません。ただ環境基準については、公害基本法にもありますように常に科学的知見によって見直していかなければならない、当然、改定をすべきである。恐らく大部分は、知見が進むに従って厳しい方向で改定をするという趣旨の立法だとは思いますが、要するに基本法にもありますものですから、科学的な検討を絶えず進めていかなければならないと思っております。しかし現在のところ、改定すべき新たな科学的知見を私ども得たわけでもございませんし、外国の一部の学者あるいは業界等でそういう話があっても、私は現在、一日平均値〇・〇二というものを改定する意図を持って、作業をやっておるということは全くございません。そういうつもりもありません。ただ科学的ないろいろな知見が今後、出てきたら、それはそのときに対応する、こういうことだと思います。
  95. 島本虎三

    ○島本委員 それにもいろいろ問題があるのです。アメリカの学者の意向、これは基準が違うのですね、違う基準を合わせて、日本のは厳しい、六倍とか七倍とか厳しい、こんなことを言っている。基準は長期と短期とはっきり違っている。その違う物差しではかって、いろいろなことを言っている。日本の学者もそれをやっている。こういうようなことを私は聞いたりいたしまして残念に思っているのです。ことに「NOX環境基準にメス」を入れるということで、本年六月三日の日刊金属特報という新聞にあらわれておる、これは科学的知見かどうか。通産省来ていますね。こういうわからないような基準を出していると言っている。この「不合理性を究明〇・〇2PPM 通産省にも働きかけ改正キャンペーン」を張る。これはどういうように解釈していいのかわからぬから、通産省に聞きたいのでありますが、同じく四日の「NOX環境基準にメス 徳永・鉄連立地公害委員長に聞く」「測れぬ〇・〇2PPM 合格地点は4ヵ所」この中で「環境庁最初〇・〇二という数字をつくった。そこで日本全国調べてみたら、二二八地点のうち基準に達成しているのは四つだという。その四つはどこかというと札幌、伊達などですね。要するに人の住んでない何もないようなところだ。」となっているのです。百二十万都市の札幌、人が住んでいないですか、あれは。これがもう科学的知見の一つでしょうか。伊達、これは火力発電のあれの問題で日本全国をにぎわしたところですけれども、人の住んでいないようなところ、こういうふうにはっきり載っているのです。これは六月四日、水曜日の「金属特報」日刊ですよ。こういうふうになって、盛んにキャンペーンを張っている。通産省も一緒になってやっている。これは「NOXの基準にメス」を入れるとなっている。いま大臣も、少し科学的な知見があれば云々と言ったけれども、こういうのが科学的な知見ですか。札幌百二十万都市、これはもう人がいないような個所が合格しているのですか。通産省の科学的知見を伺います。
  96. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 お答えいたします。  その六月四日付の「金属特報」とかいうのは、実は私ども拝見しておりませんので、詳しい状況はわかりませんけれども……。
  97. 島本虎三

    ○島本委員 見なさい。委員長、やります。ここを読んでみなさい。通産省はなぜ、それと一緒になってやっているのですか。傍線を引いてあるでしょう。
  98. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 お答えいたします。  この「二二八地点のうち基準に達成しているのは四つだという。」ここにありますような札幌を例に挙げますと、先生のおっしゃるように札幌でしたら、これは確かに大都会でございまして……。
  99. 島本虎三

    ○島本委員 伊達もそうです。北海道ですよ。
  100. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 ですから、この表現自体は、ちょっと間違っているのじゃないかと私は思います。具体的な地名が出ていないという点で、はっきりいたしませんけれども、このまま札幌なり伊達なりをとったとしたら、これはちょっとおかしいのじゃないかと思います。
  101. 島本虎三

    ○島本委員 それは全然なっていないですよ。少なくともこの環境基準は、維持されることが望ましい基準でしょう。日本ではもう五年から八年達成の長期目標でやっているのでしょう。アメリカの方では三年達成の短期目標でやっているのでしょう。これはそれと比較してやっているのです。そして日本は厳しいなんて言っている。日本は健康保護が絶対の優先課題なんだ。これが行政上の長期の目標なんですよ。三年後を見込んで環境基準を決めるようなやり方、これとちょっと違う。あくまでも日本独自の、国土面積、人口集中度、大気汚染度、こういうような諸条件を踏まえて、疫学的調査データのもとに、これは外国の知見なんかを生かして日本独自の環境基準をつくればいいのであります。ところが、そういう間違った考え方でやられたら、これはとんでもないことになる。これは十分、通産省も注意してやってほしいと思います。  それで、いまのようなことで環境庁に御注意申し上げておきますが……。
  102. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 時間ですから。
  103. 島本虎三

    ○島本委員 もう時間がないんだそうであります。しかし、それにしても、これはこのままで引き下がるのはちょっとぐあいが悪いので、環境庁、これはどうですか。あなたの方から来た「NOx排出基準新旧対照表」これによると、確かに十二月四日に工場などの固定発生源に対する窒素酸化物の排出基準を改定強化することとしておりますね。今回の強化の「規制対象規模を原則として排出ガス量一万ノルマル立米パーアワーまで拡大した。」「規制対象の施設の種類にセメント焼成炉及びコークス炉を新たに追加するとともに、」「排出基準値を強化」している。こういうふうなことがあるのであります。しかしながら、これによると、セメント焼成炉、コークス炉、こういうようなものは確かに新設されてあります。しかし、ここで見ると、新設するものに対しては確かに、ボイラーのガス専焼、これはいままで一三〇ppmが一〇〇ppm、これは十万ノルマル立米パーアワー以上です。それから四万から十万ノルマル立米パーアワー、これは従来は一三〇が新でも一三〇。いままでなかった一万から四万ノルマル立米パーアワー、これが一三〇になった。確かにこれはいい、前進だ。セメントの焼成炉、十万ノルマル立米パーアワー以上、これがいままでなかったのを二五〇ppmにした。コークス炉、これも同様である。こういうふうなのはいいのです。しかしながら、これは新しいものにはやるが古いものに対しては全然やっておらない。古いものは野放しだ、新しいものだけやる、こういうふうな考えで、果たして規定されるような総量規制まで、これでもって完全にチェックできましょうか。なぜ、こういうような差がついたのでしょうか。私はこれもわからない。どうせ新しくつけるならば、古い既設の分に対しても、これはきちっとしておいてしかるべきじゃないか、こう思うのであります。したがって、こういうような既設のものと新設のものと、きちっと分けてしまって、既設のものに対しては緩くした。まして既設のものに対しては、これはどうなんですか、鉄鋼関係の焼結炉、これに対しては一体どういうふうなお考えでございましょうか。この機会に、これをきちっとしておいてもらいたいと思います。  それで、どうしても、もうやめなければなりませんから、この機会に加えて一つ。五十三年度以降、本格的実施に移るこの総量規制について、把握の体制であるとか脱硝装置の開発、こういうふうなものが不十分です。それで果たしてできるのかどうか、この見通しもあわせてひとつ。
  104. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 時間が切れましたから簡潔に答弁願います。
  105. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 第一段の御指摘のコークス炉とセメント焼成炉につきましては、これはガスがそうきれいなガスではございませんで、ほこりやSO2がずいぶんあるガスでございまして、そのような汚れたガスの脱硝は現在、実用化実験段階で、規制に持っていくところまでには、まだできなかったということで、既存のものがこれから外れております。  それから五十三年度以降の総量規制のときの脱硝の技術でございますが、現在きれいなガスの脱硝は、ほぼ見当がつきまして、ただ費用効果の点で、むずかしい点が若干あることは事実でございますが、これはっきました。いま申し上げました、その非常に汚いガスにつきましての研究が、恐らく、あと一年ぐらいで見当がつくのではないかということで、現在、私どもはその見当がつけば、どういう組み合わせで、その対策が進められるかと…うことのめどがつけられるものというぐあいに考えておるわけでございます。
  106. 島本虎三

    ○島本委員 あとは、この次にすることにして、時間ですから、これでやめさせてもらいます。
  107. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 馬場昇君。
  108. 馬場昇

    馬場委員 時間が非常に限られておりますので、質問に対して端的にお答え願いたいと思います。水俣対策の幾つかについて御質問を申し上げます。  水俣病の患者は、もう二十年前に奇病だとか伝染病だとか言われて、つまはじきされて以来二十年、私みたいな頑健な漁民が、一日数十回というけいれんを起こしながら狂い死にをしたり、一日じゅう昼夜を問わず泣き続ける胎児性患者がいまもおるわけですし、生まれながらにして目が見えないとか口がきけない、耳が聞こえない、自分の母親の顔もわからないし、お母さんという一言も言えないというような胎児性患者がおるわけです。生けるしかばねと言われておりますし、植物人間とも言われながら、吸引力がないものだから、茶わん一杯の重湯を数時間かかって流し込むというような状態の者もおるわけです。まさに生き地獄の絵図であることは長官御承知のとおりと思うのです。  一方、そういう悲惨な中で、社会的には非常に差別され、偏見の中で、結婚とか、あるいは就職とかも差別されておるわけですし、また患者のいろいろな組織も意図的に分断をさせられておるわけですし、運動は圧殺をされてきた、こういう社会的な条件もございます。現在、認定されていない患者も多くおるわけですが、毎日毎晩、病に苦しみながら、働くこともできないための生活苦というものもあるわけでございます。現在そういう申請者も四千人近くおるわけです。  以上のようなことは氷山の一角であって、水俣病全体の像というものは、まだはっきりしていないというのは、長官も御存じのとおりでございます。まさに世界の公害の原点、人類が初めて経験したような受難の事実があるわけです。こういうことは私は何回か、この場所でも議論をいたしました、申し上げました。しかし、きょうは、あえて、このことをまた言わなければならないということを、実は私は残念に思うわけですけれども、まず最初に、やはりこの公害の原点、水俣病に対する認識というものを、長官にまた承っておきたいと思います。  なぜ、こういうことを言うかということは、後の具体的な事実の中で明らかになると思うのですけれども、いま総理大臣の三木さんも、現地に行って、この悲惨な状況を見ながら、行政、政治に携わる者の責任だと言って、非常にこの水俣病の認識をされたのですけれども、この水俣病の認識について長官から、まずお聞きしておきたいと思います。
  109. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 水俣病並びに水俣患者に対する認識は、全く先生のおっしゃるとおりだと思います。
  110. 馬場昇

    馬場委員 このような悲惨な人の上に最近、幾つかの弾圧がかかっております。このことについて最初質問したいと思うのですが、八月七日に熊本県議会の公害対策特別委員会の杉村委員長以下数名が環境庁に陳情に来ました。このときに、その杉村委員長並びにほかの幾人かの者から、認定申請者の中には補償金目当てのにせ患者がおる、もはや金の亡者だ、こういうような露骨などぎつい発言が、陳情の中で行われておるわけでございます。そのときの新聞発表によりますと、環境庁側もこれを聞いて唖然とした、こういうような記事が出ておるわけでございます。その場所には次官だとか局長もおったそうでありますけれども、まず聞きたいのは、こういう発言を事実したのかどうか、これは事実かということでございます。  次に、県議会といえども、こういう公害の特別委員会というのは、患者の救済を手助けするというのが本来の任務の一つであろうと私は思うのですが、それがこんな言葉を言うということは、もう考えもっかない、想像もつかないと私は思います。そこで、こういう県議会といえども、特別委員会というものの任務は、患者救済の任務があるのだと私は思いますが、これについてはどうですか。  さらに、こういうものは推し進めて考えますと、まさに悪意に満ちた発言は、こういうことによって患者の口をふさぎながら、被害の事実というのを圧殺したいというような意図さえも含んでいるのじゃないか、私はこういうぐあいにも思います。これを聞いた申請患者は、熊本の言葉で言いますと、はらわたの煮えくり返るような思いがした、こういうことを言うのですが、私はその気持ちはわかります。この公害対策特別委員長の発言について、長官の感想をお聞きしたいと思うのです。
  111. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 県といえども公害対策特別委員会の皆さん方は、恐らく本当の患者さんの保護救済に当たるのは、先生のおっしゃるとおり、そういう気持ちじゃないかと思います。また、そういう使命を持っていると思います。委員長が、いま先生がおっしゃるようなことを言われたかどうか、私は実は国会の都合でお会いしておりませんので、局長がおりますから。
  112. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 先生のおっしゃった陳情の場に私、居合わせましたので、その状況お話ししたいと思います。  陳情においでになった県会議員さん方は、いま先生が言われたようなことを主体として陳情されたのじゃなくて、水俣患者の救済を早くやってもらいたいということとか、あるいはヘドロの処理を、国も積極的に援助して、ひとつ早急にやってもらいたいとか、あるいは不服審査に対する……。
  113. 馬場昇

    馬場委員 そのことは後で質問するのです。だから、いま言ったことがあったかどうか。
  114. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 直接的に、そういうにせ患者とか補償金目当てというような話はなかったわけでございますが、水俣病の患者さん方が、普通だと、がんの場合には、お医者さんにがんじゃないと言われると、ほっとして安心するという、あれですけれども、いろいろなそういうお金というような問題もあるので、やはり認定という問題については、普通のがんの場合とはちょっと違うようなことがあるというようなことは言われたように思いますけれども、いまのにせ患者とか、補償金目当てというようなお話はなかったと思います。
  115. 馬場昇

    馬場委員 事実、来た本人も、県では、そのものずばりじゃないけれども、こういうことを言ったということを言うておるわけです。まことに申しわけなかったということを言っているわけです。あなたは何かそれをかばうようなことを言っておるようですけれども、ほかにたくさん、次官も立ち会っておったと思うのです。こういうことを余り議論する時間はないわけですけれども、後で何かついでにお答えになるときに、もう一遍お答えいただきたい。申しわけなかったと言って本人たちは陳謝しておるわけですから、言わない人ならば言わなかったと言うはずです。陳謝しておるのですから、あなたはなかったというようなことを言いますけれども、その辺の違いを、もう一遍、答えていただきたいと思う。  それからもう一つ、これは長官に一般論としてお聞きしたいのですけれども、九月二十五日に、そういう発言があったということで熊本の公害対策特別委員会に、患者さんたちが事実をただしに陳情に行ったわけです。そのときに事前に公害対策特別委員会に警察官の私服の人たちが三、四十名入っていた、何もないのに。これは当然、議会で呼んだから入ったので、入った人には罪はなかろうと思うのですけれども、県議会という議場に、何もないときに私服の警察官を三、四十人、最初から入れておく、こういうことは議会運営上、好ましいと思うか思わないかということを、まず聞きたい。
  116. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 ちょっと私、その事実関係はわかりませんので、全くお答えできないわけでございますが、たとえば衆議院で、そういうことがあることは、はなはだ遺憾だと思います。県会がどういう事情にあったのか全然わかりませんので、県会についての御答弁を私が、また大臣の立場で、するわけにいきませんし、もし国会等で、そういうことがあるとすれば、私ははなはだ遺憾じゃないかと思います。
  117. 馬場昇

    馬場委員 次に、警察庁からおいでになっておられますね。ちょっとお聞きしたいのですけれども、十月の七日に患者二名を含めて四名を逮捕されておるわけです。私は事情はある程度知っておりますけれども、その中で患者さんは歩行もある程度、困難なのです、逮捕された人は。こういう人が結局どういう容疑かといいますと、委員長に一ヵ月のけがをさせたという容疑で逮捕をされておるわけです。これは私の感じですけれども、ああいう患者さんが、私服が四十名で守っておるああいう中で、けがをさせるということはあり得ないというぐあいに思いますが、これらは水かけ論と思いますし、今後の捜査のあれだと思います。  そこで警察庁に聞きたいのは、こういうもみ合いが起こりました後、警察本部に特別捜査本部というのを設けられているのです。もみ合いをしたことに特別捜査本部を設けるというのは、ちょっとオーバーじゃないかと私は思うのですが、これについての考え方。  次に、四名を逮捕に行かれたわけですけれども、これに百四、五十名の警察官を動員して行っておられる。これも私は非常にオーバーな状況じゃないか、こういうぐあいに思います。そして重症の患者を逮捕しているのですよ。坂本君というのは両親も認定患者です。そしてお姉さんが急性劇症型で死亡しておるのです。そして本人も四十八年に大けいれんを起こして水俣病になっている。こういう重症患者を逮捕し、数日間、勾留しておるわけです。これは逃げ隠れもしないし、私は行き過ぎじゃないかと思います。  その取り調べに当たって、調べられた人から聞きますと、全く事実関係でなしに組織のことばっかり聞いている、ほとんどそれが重点だった、こういうことから考えますと、何か患者の組織に対する偏見、たとえば暴力行為を行うような組織じゃなかろうかとか、非常に偏見に満ちた考え方が、いま言ったようなオーバーな状態になっておるのじゃないか、私はこういうぐあいに思うのです。これについて警察庁の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  118. 若田末人

    ○若田説明員 お答えいたします。  最初に、特別捜査本部など設置して、このような事件について多少オーバーではないかという御趣旨でございますが、お説のとおりに所轄の熊本東署に捜査本部をつくっております。これは特別捜査本部ということではございませんで、この種の事件がございますと、関係者も非常に多かったようでございまして、九十人ぐらいの目撃者とかなんとか、そういうことからいろいろ聞かしていただいております。県議会を舞台といたしまして、県議会の場で事件が行われたというようなことで、慎重を期す意味におきまして、捜査本部を一応つくったという報告が来ております。  それから患者の坂本さんについてでございますが、これも御説明のように確かにそういう患者だそうでございまして、私ども逮捕いたしましてから留置いたします場合も、それから勾留を要求いたしますが、その場合も、前後四回にわたりまして、それぞれ医師に診せておりまして、その都度、医師の了解を得まして留置に耐えられないものではない、要するに留置に耐え得るという御診断をいただきまして、それぞれ法に基づきまして留置をしたり勾留をいたしたりしておるわけでございます。  それから、先ほども私、現地の方にも問いただしてみましたところ、こういうことでございますので、署長は特に、留置場に留置をしております場合も坂本さんと毎日、顔を合わせておりまして、ぐあいはどうかというようなことも聞いておったようでございまして、直接、署長が言っておったそうでございますが、ぐあいが悪いところはないか、特にございませんということで、まあ逆な言い方でございますけれども、留置場に入って、やや規則正しい生活もしまして、かえって食事の進むようなこともあるというようなことを署長に言っておったという報告を私、聞いております。  そういうことでございまして、特にこの種の問題で、警察といたしましては十分、意を尽くしてやっておるような次第でございます。  それから最後にもう一つ、取り調べについて組織のことを、ということでございましたが、特に組織のことを重点に調査をしたということもございませんで、むしろ、いろいろな調査を進めます場合に、その組織での立場でありますとか、置かれておる位置でありますとか、あるいは生まれた場所とか、そういうことを一応、前提として、調査の場合には聞くようになっておりますので、そういうことで関連をいたしまして聞いたことでございまして、特に犯罪事実以外の組織のことについて重点的に聞いたというふうには報告を受けておりませんので、よろしくお願いいたします。
  119. 馬場昇

    馬場委員 いまの答弁を聞いておりますと、私が最初、言いました二十年以上にわたる生き地獄のような患者の苦しみ、そういうものに対して一かけらの同情心もないという警察の態度のようでございます。そしていま冗談みたいなことを言われましたけれども、どういう意味で、そういうことを言われたのか、私は理解に苦しみます。慎重にやったと言われますが、言葉は使いようだろうと思うのですよ、特別捜査本部をつくるなんかというのは。それから医師に診せたと言いますけれども水俣病というのは、これをきちんと診るような医師は、そうたくさんはいないのですよ。専門医に果たして見せておられるかどうかということも疑われるわけでございます。  しかし、ここで私は議論をしようとは思いませんが、長官にちょっと申し上げたいのですが、こういうことはあってはならないと思うから、長官のお考えを聞いておきたいと思うのです。  この一連のことを私なりに考えると、あるいはまた熊本で、心ある人はこういうことを言っております。まず公害特別委員会の杉村委員長が物すごく、にせ患者とか金の亡者だとかという挑発をかけた、それに抗議に、あるいは陳情に県議会に行かれた、何にもない前に私服の人を三、四十人もそこに動員しておる、挑発に挑発をかけて、そして患者がやむにやまれず、たとえばそこでもみ合いが起こった。そうすると、それを暴力団的に印象づける、そこに警察権力を導入して、それを弾圧する、これは一連の仕組まれた患者患者組織を圧殺しようとする、水俣病を圧殺しようとするわなではないか、レールではないか、こういうようなことが熊本では言われておるのです。こういうことはあってはならないと私は思うのですが、これに対しての長官の考え方が一つ。  もう一つは、ちょうどこのころチッソの企業責任を問う刑事事件の摘発が行われておる。これは二十年たったいま、まあ過失傷害ですか致死ですか、そういうことで調べたわけですけれども、これはもう証拠がないのは歴然でございますし、この長い間、裁判をする中で、証拠はもうほとんど隠されたり、あるいは焼却されたりしておるわけでございます。いま刑事事件をやったって、私はそういう証拠なんか、こんなに二十年もたったときは、ほとんどないのじゃないかと思うのです。しかし片一方、企業をそういうぐあいに刑事的に捜査をする、だから患者側にまた刑事弾圧を加える。何か加害者と被害者を同列に置いて、けんか両成敗的な物の考え方があるのじゃないか。患者を摘発するから企業もやるのだ、企業をやるから患者を、また、そういうふうに摘発するのだ、こういうようなことが熊本では言われておるわけです。まさに加害者と被害者を同列に扱う物の考え方があってはならないと私は思うのですけれども、こういう私の考えに対して、長官の御見解をちょっと聞いておきたいと思います。
  120. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 水俣患者の悲惨な状況認識については、最初先生がおっしゃったように私も非常に心を痛めておる問題でございますから、したがって、いま承って事実関係を、先生のおっしゃったことを私、全くきょう初めて聞いたわけでございますが、はなはだ悲しい事件だと思います。ただ、いま先生がおっしゃったことについて、私、事実関係について、きょう全く初めて承ったわけでございますので、その事実についての批判ということは、いま、また警察のそういう事件にもなっていることでございますから、環境庁の長官として、この事件についての問題に批判を加えるということは、私の立場でもございません。ただ聞いておりまして、どっちがいい悪いにしろ患者のことを思いますと、はなはだ悲しい事件だと思います。
  121. 馬場昇

    馬場委員 時間が非常にございませんので、議論は差し控えたいと思います。私が言ったようなことがあってはならないことだということは、長官もまさに同感だろうと思います。  そこで具体的な問題として、水俣湾のヘドロ処理の問題についてお伺いしたいと思いますが、ヘドロの処理の計画の進みぐあい、これについて、これはもう時間がありませんから要点だけ、ポイントだけ簡単に説明してください。
  122. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 ヘドロの除去の問題でございますが、これは先生、御承知のとおりと思いますが、熊本県が設置しましたところの委員会において検討が行われまして、素案が本年六月にまとまったわけでございます。県では、その素案を踏まえまして、処理計画を作成するために、地元関係者との調整、それから漁業補償交渉等を行っておるわけでございます。聞くところによりますと、漁業補償交渉も最近の時点におきまして大変、煮詰まってまいりましておる状況のようでございます。これらの調整なり交渉がまとまりますと、県の公害対策審議会、地方港湾審議会、国の港湾審議会、こういう各種審議会の議を経まして、計画が決定されることに相なるわけでございます。次いで、公害防止対策事業の指定、公有水面の埋立免許、こういった一連の手続に入って、その後に着工ということになるわけでございますが、いずれにいたしましても、定かな着工の時期というのはわからないわけでございますけれども、来年度に入るのじゃなかろうかというふうに思っております。
  123. 馬場昇

    馬場委員 三木さんが着工をすると約束してから、もう一年以上、約束が破られております。長官も年度内には着工するということを、私にもここでも言われておる。いまのお話によると、年度は越えるのじゃないかというようなお話でございますが、この次、答弁に立たれるときに、いつごろになるかということを言っていただきたいと思うのです。  そこで、この事業というのは、長官、まさに世界的な大事業と言えばオーバーですが、あそこの公害が、公害の世界的な原点と言われますが、その事業の規模の太さにおいても大きさにおいても、世界的な大事業であるということは長官も同じだろうと思うのです。それから、もう一つは、やはり失敗を絶対に許されない事業だということは、もうこれははっきりしておるわけでございます。たとえば、二次公害が起きて、ああ失敗してしまった、患者がまた、これでたくさん出たなんて、こんなことがあったら、こういう失敗は決して許されない事業でございます。  そこで、この事業というのは責任を持ってやらなければならぬということは、もう当然でございまして、そういう責任について、お伺いをしておきたいのですけれども、まず二次公害は絶対に起こらないか、そういう事業にするかということです。万一、人間であるから絶対とは言えませんという答えが、たとえば出るでしょう。そうした場合、二次公害が起きたときに、たとえば患者が出た、環境が破壊されたというときに、責任はどこがとるのか。このことについて、責任の所在を明らかにしておきたい。  それからもう一つは、工事の監督とか監視はいろいろやるとおっしゃっておりますが、問題は、工事中に間違いを起こしてはならぬという場合に、その周囲の不知火海沿岸の住民の健康管理というのを、工事の期間中やはりしていく必要があろう。それからまた、環境の管理というものも、その工事期間中きちんとやっていく必要があろう、私はこういうぐあいに思いますが、こういう点はどうなっておるのか、それが第二点です。  第三点は、まさに世界的な大事業にふさわしく、技術検討委員会をつくってやったと、いま言われますが、私はあのスタッフでは不十分だ、こういうぐあいに思いますし、たとえば工事に入ってからでも、もう少し専門的な学者なんかを動員して、工事が終わるまで、きちんと学者に研究、監視、いろいろお願いして、もう少し大きく、学者なんかをたくさん動員してやるべきじゃなかろうかと私は思います。こういう点についてどうかということ。  もう一つは、ある意味においては患者とか、あるいはそこの漁民とか地域住民というのが最高の学者であるという立場もあると思うのです。魚がどうなったとか、あるいは海の色がどうなったとか、いろいろ最高の学者的な位置づけになると思うのです。だから、この工事には積極的に患者とか漁民とか地域住民を参加させるべきだと私は思いますが、こういう点はどうなっておるのかということでございます。  次にもう一つは、pppの原則は当然あるわけでございます。しかし、興人さえも倒産するという状態がございましたし、いま、チッソ内容は余りよくないということを聞いておりますけれども、これは長官とも議論したことがあるのですが、三木さんとも議論いたしました。そのときに、三木さんも運輸大臣も熊本県知事も話し合って、最終的には費用の負担というのは、これは県には迷惑をかけない、事業主体は県にやってもらうけれども、最終的に、チッソがもし倒れてpppの原則で費用負担ができない場合にも、県には迷惑をかけないということを三木さんが約束されておるのです。この原則はやはり守っていかれるのかどうかということと、資金関係の技術的な面で、たとえば国の補助金はどうなるのか、あるいは県の方は起債にするのかどうなのか、あるいはチッソから、どういうぐあいに要った費用を取るのか、そういうようなことについてお答え願いたいと思います。
  124. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 まず私から、先生のお尋ねの前半の部分についてお答えいたしますが、この事業の実施について、二次公害の問題につきましては、先生指摘のとおり絶対に二次公害を起こさないという心組みで当たる必要があるというふうに私は思っております。これから具体的な工法の決定等をやっていくわけでございますが、現段階におきまして二次公害を極力出さないような工法をとるということの検討が進められているわけでございます。  具体的に言えば、北側の湾口部の仮締め切りを行いまして、カッターレスしゅんせつ船等の新形式によるしゅんせつ船を使用する。あるいは埋立地の余水吐けから排出する余水につきましては、汚染物質が拡散しないように排出前、十分な余水処理を行う等々の工法をとる。  なおまた、二次公害が発生するのを予防するために、環境庁の中央公害対策審議会の答申を受けて定めましたところの底質の処理・処分等に関します暫定指針に基づきまして、監視計画を策定し、これに基づいて監視をするという体制をとるということが考えられておるわけでございます。  したがって、これらの一連の処置が十分に実行されますということになりますと、二次公害の発生防止できるというふうに期待をしておるわけでございますが、万一、二次公害が発生した場合にどうなるかという問題につきましては、これは一言で言えばケース・バイ・ケースということになろうかと思います。たとえば工事を実際に請け負い、担当しておる者の責任といいますか、定められたような工法を用いずして、あるいは注意を払わずして行ったことに起因する二次公害ということになれば、当該事業者の責任ということにもなりましょうし、またプランそのものが適切でないという場合には、その他の責任というものも生じてこようかと思います。これらの点は具体的なケース・バイーケースの問題として、起きた場合に実情を十分、調査して、責任を負うべき者が処置するということになるのではないかと思います。  それからなお監視体制の問題でございますが、監視体制の中に住民の参加というようなことを御指摘になったと思うわけでございますけれども、これにつきましては、県の方といたしましては住民の代表というよりも、むしろ最も関係の深い地域住民としての漁民の代表者という意味で、漁協の代表を加えることを、現在の段階では考えているようでございます。  それからなお、技術委員会の中に、事柄に応じまして専門家をもっと加えるべきではないかというような御指摘だったと思いますが、この点は、化学でございますとか衛生方面その他ということで、一応、県といたしましては現在の技術委員会の構成メンバーは妥当であるというふうに考えておるようでございます。それぞれの専門家が入っておるようにも思いますし、それから地元大学等の関係以外にも、他の地域の大学の研究者でございますとか、適任者を広く全国から考えて技術委員会には参加をしていただいておるというふうにも見られますので、この点は、私どもの立場から、どういう人を加えるべきであるというようなことを直接、言うべき立場にはございませんが、問題の性質に応じまして今後、必要に応じては県等もいろいろお考えいただくということが、あるいはあり得るかと思います。その際には私どもも適切な対応について指導をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  その他のことは担当の局長からお答えいたします。
  125. 野津聖

    ○野津政府委員 工事中におきます二次公害の一つとしまして、住民の健康の問題ということが御指摘があったわけでございますが、工事の際には、当然その中におきます魚介類あるいは水質というものの基準測定しながら工事をしていくわけでございます。したがいまして、その基準内にあるということを考えるべきであろうということは前提になりますけれども、もう先生よく御存じのとおりに、水俣病の一つの大きな本体としまして、これらの魚介類を摂取するということが大きな問題になっているわけでございます。したがいまして、この辺の魚介類あるいは水質等の状況に応じまして、健康の管理をどのように持っていくかということも詰めていきたいと考えております。
  126. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬政府委員 チッソが倒産でもしたような場合には、どうするのかというお尋ねでございますが、仮定のお話でございますので、具体的にはその時点で検討する問題だと思いますけれども、仮にそういうような事態が生じた場合でも、これは地域の住民を公害から守るということのために、その事業は継続して実施していかなければならないということになるわけでございまして、その場合、県に非常に負担がかかるというような問題につきましては、これは当然、国としても財政上の手当てといいますか、援助といいますか、こういうことをする必要があるわけでございまして、起債等によって財政的な手当てをする、それから公害防止事業に係る国の財政特別措置法の適用を検討いたしまして、もし、それを適用するということになれば、その経費の二分の一は国で補助をするというようなことも考えられるわけでございまして、そういう場合には、やはり国としても積極的にそういう事業を継続して実施していけるように措置をするべきだというふうに考えております。
  127. 馬場昇

    馬場委員 最後の方から申し上げますと、いまの局長の答弁ははなはだなっていない。仮定の問題でございますがということじゃないのですよ。これは、あなた知っておるかどうか知らぬけれども、この事業を計画するときに、国でやってくれという県の要望と、いや県でやってくれという国と相当、対立して、相当、長期間もめた問題ですよ。そして最後のところが、結局、最後のいざというときには県に迷惑をかけないから、県が事業主体でやってくれということを、知事と環境庁長官と運輸大臣と話し合って決めた問題ですから、仮定の問題ではない、きちんとした約束のある問題ですよ。この約束を守るかと私は聞いているわけです。これについては長官の方からお答えいただきたいと思う。
  128. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いま局長が申し上げましたのは、少し先に進んだわけでございまして、御承知のように、この事業の大部分の負担は原因者が負担をしなければいけないわけでございます。ただ、工事の実施計画の中に公共事業として当然、私どもがやらなければいけない、国なり都道府県が、裨益するところがあって負担をしなければいかぬ分については、これは県と国が、それぞれ負担をしていくわけでございますが、局長が申し上げたのは、チッソがつぶれた場合のことを申し上げたので、現状においてはつぶれることはあり得ません。私どもは、そんなことをいま先生がおっしゃったら患者さんが大変、不安に思うと思うのです。私は、チッソはやはりつぶれないで、十分その責任を果たしていくという前提で議論していかなければいかぬと思うのでございまして、これはもう一ヘドロの対策だけじゃない、患者の補償の問題にも非常に大きな影響を来すわけでございますから、したがって、いろいろ御批判がありましたが、千葉県の工場については、これは全然ケースが違うからというので、あえて合意もしたわけでございます。これは何もチッソそのものの、もちろん原因者負担の原則を外したわけじゃありませんけれども、やはり、それが結果的に、そういうような患者の救済にも支障なくいく、安心をできるという要素も、私の頭の中にはあったわけでございますから、いま余り、ここでチッソがつぶれる、つぶれるというようなことを議論することは、私はよくないんじゃないかと思うのです。なるべくつぶさないように、そして、その患者の支払いが順調にいくように、そして事業者の責任がちゃんと払えるように、この事業だって何も一年で終わるわけじゃありません。やはり本当に慎重にやっていくためには相当、長期間を要するわけですから、だからそういう面で……(馬場委員「それはわかっているんです、約束を守るかということだけ聞いているのです」と呼ぶ)  約束とおっしゃいますのは、私、文書をちょっとまだ見てないのですが、そういう点をよくしまして、もちろん、おっしゃる意味は、県に迷惑をかけないというのは、とりあえず起債で全部やっておきまして、そして後で、それを事業者負担法のあれによる負担区分をちゃんとしてやるから、それができるまでは県が一文も出さぬで、全部、国の方から起債でもってやっていきますよという意味で、あの取り決めができておる、それは守っていきます。
  129. 馬場昇

    馬場委員 いまの長官のは少し違うのです。起債して迷惑かけないという、そのことはわかるのですが、そのときの迷惑でなしに、つぶれるという言葉が表現が悪いかもしれませんけれども、いま言われたとおりの考え方は私も同じなんですが、つぶれなくても負担できないという状態だってあり得るわけですよ。ところが、やはり事業をする場合は、そこまで県は心配して三木さんと約束をしているのです。まあつぶれるという言葉を使うといけないと私も思いますが、金が負担できないという状況の場合、そのときでも県に迷惑をかけない、こういうことが約束でございましたから、よく調べて、三木さんにも聞かれて、運輸大臣とどういう話ができているか、知事とどういう話ができているか、確かめていただきたい。知事は、最近、少し政府の態度が後退したんじゃないか、県に押しつけられるんじゃないかと心配もしておるようでございますので、もう少し調べお答え願いたいと思います。  次に、水俣病のセンターについて申し上げたいと思います。このセンターについての建設状況は現在どうなっているのか、こういうことでございます。それをまず答えてください。
  130. 野津聖

    ○野津政府委員 水俣病のセンター、ただいま御指摘ございました一応センターと仮称いたしておるわけでございますが、これにつきましては、ことしの十月に具体的な建設の準備をします検討会を発足させまして、その基本構想につきまして現在、検討をお願いしているところでございます。  また水俣病に関します研究者の御意見、また地元の医師会の御意見、さらには患者の代表からの御意見というものを聴取いたしまして、それをもとにいたしまして、それらの関係者の意見というものを踏まえた形で検討会を続けまして、その結果によりまして構想を詰めていきたいと考えております。
  131. 馬場昇

    馬場委員 これは、えらい抽象的にいまお答えになりましたけれども、実際、環境庁にはもう案ができ上がっているんじゃないですか。そうして検討委員会は、この二十三日ぐらいにはきちんと結論を出すというぐあいに私は聞いておるのです。それはともかくとして、私が聞いておるところでは、何かこれは来年度の予算とか、どのくらいの規模をつくるかとか、大体こういう予算でつくろう、その土地分はいま予算にあるわけですから、来年どれだけ予算を要求しようかと、そういうことはきちんとあるはずじゃないですか。私が聞いておるところによると、大体八億円ぐらいの予算でこのセンターをつくろうという計画を立てておられる。これは一つの病院ぐらいしかないわけです。いま大きい病院をつくったら、初めからつくり始めますと、そのくらいかかりますよ。ところが三木さんが言ったのは、世界的規模のものをつくるというのですよ。そうしてこれは研究もするし、治療もするし、リハビリもするし、職業訓練もする。まさにあそこに行って、きちんとたった一つ、これを三木さんは約束してきたんです。それで、これがたった八億円ぐらいという話だったら、一つの病院にすぎない。うそを言ったということにもなるわけです。だから私が聞いていると、いま、そのくらいの規模しか考えていないということのようでございますが、それは事実かどうか、三木さんが言った約束を守るかどうか、時間がもう来ましたので、そのことだけを言っておきたい。  それから、もう一つ三木さんが約束しましたのは、患者の心を知らずして何をあそこにやったってだめなんです。これはもう皆さん方、御承知のとおりと思うのですよ。だからどんな病院を八億かけてつくったって、患者の心を知らないようなつくり方をしたって何にもならない。そのために、これをつくる場合には患者検討委員会に入れるという約束を、三木さん現地でしてきている。ところが、いまだかつて患者委員会に入れていない。意見を聞くと言ったけれども、私の知る限り、まだ意見も聞いておらない。そうしてもう二十三日には検討委員会の結論を出そうとしておる、こういうぐあいに私は聞いているのですが、患者意見を聞かないようなつくり方をしたってだめだということを申し上げておきたいと思います。  規模の何億円ぐらいのを考えておるかということと、患者意見を聞くか聞かないかということに対する答弁をいただきたいと思います。  あと認定促進の問題について、これは要望だけ申し上げておきます。時間が来ましたので。  大体いまのままの状態で進んでいきますと、四千人ぐらい申請者があるのです。県の試算によりますと、毎月八十人、審査をして、結局、処分率を五〇%として、あと三十人ぐらい申請者がふえてくるとしますと、あと二十五年かかると言っているんです。毎月四十人しか審査ができない、処分率を七〇%として、あと毎月二十人ぐらい申請者がふえてくるとなりますと、何と昭和八十二年にならないと審査は終わらない。あと三十二年間かかる、こういうぐあいに言っている。だから県は、先ほどの問題を起こしたような陳情に来たときにも、審査はもう県の能力を超している、何とか国でしてくれという要望があるのですよ。だから、このことを何としても、審査があと三十二年もかかるとか、あるいは二十五年もかかるとか、こういう見通しがあるわけですから、これの対策を立てなければならないと思いますから、ぜひ審査促進の対策を立ててもらいたいと思うのです。  それから、審査会と患者の信頼関係がいまほとんどない。患者と審査会の信頼関係がないから、またおくれるということもあるのですよ。この信頼を回復する方策というのを、いろいろ患者の要望書なんかも出ているのですから、これをぜひ、環境庁も県と一緒になって信頼を回復するようなことをやっていただきたいというようなことを申し上げておきたいと思うのです。  それからもう一つは、水俣病のランクづけ委員会というのはパンクしているのですよ。これが再開もできないという状態もございます。  数え上げますと数限りなくあるのですが、私は最後に、長官に一つだけ質問をして終わりたいと思いますが、長官は、長官になられてすぐ、ことしの一月ぐらいに現地に行ってみたいと私に答弁されました。その次に私が質問しましたら、もうちょっと待ってくれと言われました。もう一年たとうとしているのです、現地を見ずして水俣病を語ることはできない、私はこういうぐあいに思いますが、いつ行かれますか。すぐに行ってください。  それから、これは委員長にお願いしたいのですけれども、やはり公害の原点の水俣病の対策を十分、立て切らずして公害を語ることはできないというぐらいに思いますし、そしていま、たくさんの問題を言いましたけれども水俣病の対策はまさにいまからだというような気もします。これをいまから力を入れてやることが、日本の公害をなくする原動力にもなると私は思うのです。そういう意味におきまして、たくさんの問題がございますし、私は、この国会の調査団をぜひ水俣に早い機会に入れていただきたい、そういうことを、これは委員長にお願いを申し上げたいと思います。  最後に一言ずつ答弁いただきまして、質問を終わりたいと思います。
  132. 野津聖

    ○野津政府委員 水俣病センターの問題でございますが、ただいま八億という御認識だということでございますけれども、実は先ほど来、申し上げておりますように、現在その建設準備検討会という形で、一体どういう機能を持たせるかということを詰めてまいりませんと計算が成り立たないわけでございます。したがいまして現在、私ども決して八億と考えているわけではございませんで、一体どういう機能を持たせていくか、先ほど、いろいろ御指摘ございましたような、やはり患者の側に立った形での機能を持たせるべきでないかという考え方で進んでおりまして、具体的に八億という数字が、どういう形で出たか知りませんけれども、私どもとしては詰めた数字という形にしておりません。(馬場委員「三木さんの約束を守りますか」と呼ぶ)  それから次の、患者代表を検討会に入れるかという問題がございますが、これはもう御案内のとおり、先ほども指摘ございましたように、患者の代表という形でまいりますと非常に数多くのグループがあるわけでございまして、その問題にどう対処するかということもございまして、実は去る十一月一日に私、現地に参りまして、患者の各グループの代表の方の御意見をいろいろ聞いたわけでございます。その御意見を踏まえて、いまその検討会で十分議論していただくという形を考えておるわけでございます。  さらに、いろいろなこれから解決しなければならない大きな問題があるということは、もう私ども十分、認識しているわけでございまして、三木総理がいろいろとお約束したことについては、それを実現すべく努力していくということが私どもの姿勢でございます。
  133. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私、実はもう何回か部下に、さあ何日ごろ予定してどうだというようなことで、いろいろ、あれしたのですが、いろいろな意見がありまして、もうちょっと待ったらどうだという意見が多いものですから、私は今日まで実はまだお邪魔をいたしておりません。そのかわり、もう局長、事務次官、入れかわり立ちかわりやっておりまして、十分よく私は承知をいたしております。私も行きたい気持ちは何遍もここで申し上げておるのですが、その時期をやはり、いろいろ事務的にも検討しまして、私の出番を、局長としてもいろいろ考えておるようでございますので、もうしばらくお待ち願いたいと思います。
  134. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 馬場君の要請がありましたが、次の理事会で検討いたすことにいたします。
  135. 馬場昇

    馬場委員 質問を終わります。
  136. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後二時七分開議
  137. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  138. 土井たか子

    ○土井委員 大阪国際空港の騒音訴訟について、国が去る十二月二日の日に上告に踏み切られたわけでありますが、その上告に当たっての運輸省見解というのが公にされております。その中に「国際線については、外交問題すら惹起しかねない惧れがある。」ということで、この国際線については、依然として九時以降の便について、これを禁止するわけにはいかないという趣旨のことをここに述べられ、そして、前回の当委員会において、私が運輸省航空局にこの点をただしたところ、御答弁には、やはり国際線については相手国並びに相手の民間航空会社に対して何ら折衝の用意がないという旨の御答弁があったわけであります。  きょうは、その問題についてはその当時と事情が違います。御承知のとおり昨日、大阪高裁から決定がございました。これはもう言うまでもないことでありますが、国際線についても来年五月というタイムリミットを設けながら、それ以後については九時以降の便を認めるわけにはいかないという趣旨であります。  したがって、そのことについてまずお尋ねをしたいと思うわけですが、この十二月二日の運輸省見解からいたしますと「外交問題すら惹起しかねない惧れがある。」という旨をお書きになっているのですが、言うまでもなく、運輸省当局は外交交渉権はないはずであります。相手の政府及び相手の民間航空会社に対しまして、いろいろ便数の取り決めとか時間帯の取り決め等々については、一体、日本の政府を代表する窓口になるのは外務省なんですか、運輸省なんですか。外務省、御出席をいただいておると思いますが、いかがでございますか。
  139. 枝村純郎

    ○枝村説明員 お答え申し上げます。  国際航空問題は、もちろん外交問題としての側面も持っておるわけでございますから、航空協定の締結でありますとか改定でありますとか、そういった問題は、運輸省と協議いたしながら、外務省が窓口になって進めるわけでございます。  ただ、ただいまお尋ねの国際便のタイムスケジュールでありますとか、そういったような協定の運用という具体的な問題になりますと、第一義的にはわが国の航空当局と関係外国企業、要すれば所属国の航空当局との間で協議をされる、第一義的には、そういうことになっておるわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘のような問題の窓口は外務省か航空局かというお尋ねでありますれば、航空局ということになろうかと存じます。
  140. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると当面は、この問題に対しては航空局が窓口になって交渉を重ねられる。どうにもこうにも収拾がつかないというふうな場合には、外務省がそれに乗り出される、こういう体裁になるわけですね、いかがなんですか。
  141. 枝村純郎

    ○枝村説明員 われわれとしては、航空当局間の協議というものは、いままで非常に有効に動いてきておりますし、そういう外交問題に上がらないで解決する、いかなる問題がありましても、そういう航空当局間の協議の対象になるべき事項については、そのレベルで決着してもらうということが、もとより外務省としても望ましいわけでございますけれども、非常にむずかしい問題になりますと外交問題に発展するということも、おっしゃるように、ないとは申せません。したがいまして、そういう航空当局間のレベルの協議でありましても、私どもとしては関心を持ってフォローするということもございます。
  142. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、最大限の努力は航空当局に問われるということに、いまの御答弁からすると当面はなるわけですが、手続、手順から言いますと、これは現に大阪国際空港に乗り入れております外国の民間航空会社それぞれとの間に、航空業務に関する協定が結ばれているわけであります。     〔委員長退席、田中(覚)委員長代理退席〕 この協定に伴って付表で、大阪国際空港についての乗り入れというものは具体的には決定されているわけですね。いま、この問題については、その付表の内容にわたるような問題を取り上げることになるのかならないのか。これにはいろいろ問題点があろうかと思いますが、付表の改正が必要と当面お考えになっていらっしゃるかどうか。もし、この付表の改正が必要でないというのならば、どういうふうな手続、どういう手順で、こういう問題については具体的に話し合いが進められるというかっこうになるのでありましょうか、いかがですか。
  143. 枝村純郎

    ○枝村説明員 先生、御指摘のとおり、航空業務に関する協定が各航空企業の母国であります政府との間に結ばれておるわけでございまして、現在、大阪空港に乗り入れており、問題の時間帯について入っておりますのはインド航空とキャセイ・パシフィックでございます。キャセイ・パシフィック航空の国籍は英国でございますので、これは日英協定の適用を受けるということでございます。  ただいま御指摘の付表につきましては、この付表の性格は路線を定めるものでございまして、したがいまして、時間帯でありますとかタイムスケジュールでありますとか便数でありますとかいう問題には触れておりません。したがいまして、お尋ねの点に対するお答えは、付表の改正は必要としないということになろうかと思います。
  144. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、付表の改正を必要としないという意味において「どういう手続、手順において話し合いが進められるというかつこうになるわけでありますか。
  145. 枝村純郎

    ○枝村説明員 お答え一つ落としまして、どうも失礼いたしました。  最初に申し上げましたとおり、私どもとしましては、一般的に申しまして、まず、わが国の航空当局から関係企業に対して、時間帯の調節だとか便数の問題というのは、話をされるというのが筋であろうかというふうに考えております。
  146. 土井たか子

    ○土井委員 昨日の高裁の決定によりますと、タイムリミットは来年の五月なんですが、それでは、これに間に合うように航空当局とされては交渉を開始なさるおつもりでいらっしゃるかどうか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
  147. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 昨日の高裁の決定は、国際線につきまして執行停止を認めておられるということについては、従来から、われわれが主張してきたことについて理解を示されたのであるというふうに私どもは理解をしております。ただ、期限を付され、その他いろいろな条件がついておるわけでございまして、この点については、われわれは非常な疑問を持っておるわけでございます。とにかく、この昨日の決定につきましては、国際線についての処理を含めまして、政府として、これにどのように対処するかということでございますけれども、いずれにいたしましても、重大な決定がなされておるというふうに理解いたしますので、慎重に検討した上で結論を出したいというふうに考えております。
  148. 土井たか子

    ○土井委員 慎重に検討というのは、いつでも答弁用語として適当に出てくる表現でございますけれども、問題はそういうことで悠々としておられない問題だと私は思うのです。これはなかなか深刻な問題ですよ。異常な決意を、航空当局としてはすでにお持ちであるはずだと私は思っておるのです。  環境庁長官、高裁の判決が十一月二十七日にございましてから後、十二月一日付で運輸大臣あてに長官は「大阪国際空港における当面講ずべき措置について」という文書をお出しになっていらっしゃるわけでありますが、その中には「大阪国際空港においては、現時点をもって夜9時以降、少なくとも国内線は飛行中止をすること。」と書いております。少なくとも国内線については飛行中止をするのがあたりまえじゃなかろうか。「少なくとも」とございますから、できたら国際線もと言いたいのだがという意味が、当然ここの中に含められていると私は思うのです。これをお出しになったのは十一月二十七日の判決を受けてでございました。本日は、条件がいささか違ってまいっております。昨日の大阪高裁の決定に基づいて、やはり、この問題に対しては行政措置を講じていかなければならないという状況に、今日はあるわけですね。この十二月一日にお出しになった文書からいたしますと、一項目に書いてあるこの部分から推論をして、国際線についても、できたらということを、この時点でもお考えになっていた長官でありますから、いまはこの問題に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということを、私はぜひぜひ、はっきりと聞かしていただきたい気特ちでございます。いかがですか。
  149. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は、せっかく国内線を九時からやめるというならば、住民の皆さんに対して静かな環境を保全するという立場に立って、できることならば国際線もやはりそれと軌を一にしてもらいたいと思います。ただ、国際線となりますと、あちこちにいろいろな協定があって、それに影響してくるようなことも考えられますし、国際線の航空機乗り入れ協定というものは、非常に利害がふくそうして、うるさい問題なんだそうでございまして、簡単にいくかどうかわかりませんが、ただ、やはり私ども素人から考えますと、大阪の毎日一・六便、週十一便ですか、キャセイそれからインド航空それからトランス・メディタレイニアン、これは大阪から台北へ行くのと、台北から大阪へ来るのと、香港から大阪へ来るのと、これだけですから、台北を来るとき少し早く出れば何とか解決しやせぬだろうか。あるいは大阪から少し早く出れば、香港へ着く時間は適当に何かうまく調整はできないものだろうかとすぐ考えるわけでございまして、五月までという条件がついておるのですけれども、やはりこれは、そういうことがあるとなしにかかわらず、できるだけ生活環境を守る意味で努力するべきだと思います。ただ、私がこの責任を持っているわけでもないし、また折衝するわけでもないので、無責任な発言になるかもしれませんから、私もできるだけ運輸大臣と相談をして、何か方法はないものか、可能な限り、もう少し縮められることはできないのか、そういう点について、できるだけひとつ努力をしてみたいと思いますが、いま、ここで私はぽんと胸をたたくわけにもなかなかいかない立場上、そういう点は御理解をいただきたいと思うのです。
  150. 土井たか子

    ○土井委員 そういうふうなお立場はお立場として、わかるわけですが、環境庁というのは、やはりそういう仕事のためにある省であり、大臣は、そういう所管の大臣でございますから、ひとつこの節、やはり昨日の高裁の決定というものを具体的に実行するための努力というものに力を注いでいただきたい、こう申し入れたいと思うのです。  それで、いまの環境庁長官の御発言からしても、航空当局というのは、どうも引っ込み思案というのか、少し消極的過ぎやせぬかと私は思うのですね。すでに巷間、伝えられるところによりますと、こうなる以前、つまり十一月二十七日の判決を受けて、むしろ当該各外国民間航空会社の方が、ダイヤについては繰り上げを検討していかなければならないのじゃないかというふうな努力をしつつあるということが伝えられております。こういうことについては、やはり一日も早く航空当局としては、いろいろな協議を開始なさるべきだと思うのですが、これは航空協定にのっとって定期の協議という機会もあるようでありますけれども、ときがときだけに、条件が条件であるときだけに、問題がこれは異例な問題でありますから、ひとつ早急に、このことに対しては話し合いを始めていただきたいと思いますが、いかがです。
  151. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 先生の御指摘はよく理解できるわけでございます。先ほど御答弁申し上げましたように、この昨日の決定を、政府としてどういうふうに受けとめていくかということの一環として、真剣に検討いたしたいというふうに考えております。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、そのタイムリミット、五月ですよ。五月に間に合うように交渉を開始して、話し合いを進めたいというお気持ちがあるのかどうか、その辺、少しはっきりおっしゃっていただけませんか。検討を慎重にやるばかりの一点張りでは、これはさっぱり私に対しての御答弁にはならないんじゃないか。
  153. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 期限が来年の五月末日ということになっておるわけでございますけれども、何分にも昨日、決定がなされまして、運輸省といたしましては検討は慎重にしなくちゃいけないというふうに思っております。ただ方針を固めました場合に、それ以後のいろいろな措置をどうするかというふうな点については、これはわれわれといたしましては、できる限り迅速に事をさせなければいけないと思いますけれども、ただ、どういうふうな決定をするかという点については、いましばらく検討を要する、こういう趣旨でございます。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 それは具体的にダイヤをどう動かすか、どのようにその取り扱いを進めるかということについては、慎重な検討が要るのかもしれませんが、ただ昨日の決定については、こういう決定があったということを、まず告知せしめるということは、必要最小限度なすべきことであろうかと私は思うのですが、これについては、すでになさいましたか、いかがですか。
  155. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 現在のところ、まだこの決定の内容について航空会社に通知をいたしておりません。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 それは少なくとも話し合い以前に——とういうふうな話し合いが進められるのか、それは慎重に検討とまた、おっしゃるだろうと思いますけれども、告知をするというのは、事実を事実として知らしむるという、これはどうしても必要な行政行為だと私は思いますが、いかがでございますか。
  157. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 先生おっしゃるとおりだと思います。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それについては早急になさいますね。
  159. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 前回の判決の内容につきましても、その内容を各航空会社に告知いたしておりますので、今回の決定についても、当然これを通知することはしなければならないと思っております。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 それはしなければならぬじゃなくて、やっていただかなければならないと思います。そうして、それは慎重に省内でいろいろと検討なさるのでありましょうけれども一つ、いままでの運輸行政というのが独善的であるがために、こういうふうな結果をもたらしたというふうに考えている、私も一人です。環境庁長官もここにおられます。先ほどの御発言もあったわけですが、ひとつ広く政府部内での意見というものを徴して、しかし早く、こういうことに対してはスピーディーをもってよしとするということがございますけれども、その一つに、これまた当たると私は思いますから、来年の五月と言っていても、日は刻々とたつわけでありまして、手をこまねいていたら、あっという間に日はたってしまう。ひとつ早く、これに対する取り組みを進めていただくように申し上げたいと思います。  さて、昨日の決定で、何といっても大きな問題になるのはエアバスの導入の問題なんですね。決定の中身では、はっきり「住民の承諾を得ずにエアバスを導入しないこと」こうなっております。これについては、もう再三再四、当委員会を通じても航空当局に対して、住民の方々に対しての話し合いとか、それから了解がない限りはエアバス導入は認められないというふうなことを確認をしてまいりました。現に四十七年の八月三十一日にございました大阪国際空港騒音対策協議会長あての航空局飛行場部騒音対策課長から出されているこの文書、この中には、はっきり「空港周辺住民の理解がない場合は」ワイドボデー機の乗り入れば行わないということが確認をされているわけですね。有効ですかと聞いたら、有効ですといつもきっぱりとこれについてはお答えになるわけです。それからまた伊丹を初めとする調停申請について、調停委員会が出された中身では、はっきりエアバスについては、申請人らの理解を得るよう努めなければならないということも書いてあるわけですね。これについても確認をされているわけなんです。にもかかわらず、昨日のあの高裁の決定が出るということは、客観的に考えて運輸省は、あの関係周辺住民の方々の了解も理解も、ましてや昨日この決定の中で、はっきり言われているとおりに、承諾は得ておられないという確認があるわけなんです。これはやはりエアバス乗り入れに対しては、まず何といっても必要な事項ではなかったんでしょうか。すでに二十日から乗り入れるなんということを抜き打ちに発表される以前に、こういう措置が全くとられていなかったということを、昨日の決定ば明らかに物語っています。だからこういうことからすると、エアバスの問題に対する対処の仕方というのが、運輸省側は間違っていたということになると私は思うわけでありますが、これに対しては、どういうふうに局長考えていらっしゃいますか。
  161. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 従来から、たびたび申し上げておりますように、エアバスの導入というのは、これは音源対策としてぜひとも必要であり、かつ有効であるということで、地元の理解を得るために最大限の努力をして、しかる後にこれを導入するという基本態度できておるわけでございまして、理解を得るためにあらゆる努力をするということは、これは従来から変わっていない、われわれの態度でございます。  今回の、昨日の決定で、承諾を得ない限り云々ということがございますが、われわれといたしましては、理解を得る努力を従来からいたしておるわけでございますので、今後もこの基本的な姿勢というものは崩すことなく、できる限り理解を得るように努力をして、われわれの誠意が理解されるように努力しなければならないと思っております。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、その理解を得るように努力をなさる場合には、やはりお互いが信頼をし合って話し合いを進めるということでなければ、理解なんというものはできっこないと思うわけですね。いま住民から運輸省は信頼を集めておるとお考えなんでしょうか。私はそうは断じて考えてない一人です。特にあの十一月二十七日の判決に対して上告されたということについては、これは住民の感情からしますと、とても運輸省に対しては信頼できないという気持ちを一層、強くしたということになっているのじゃないかと私は思いますね。特にこの節、私は具体的に申し上げたいのは、この二十日からの乗り入れということを抜き打ちに強行しょうとして、もうすでにそれが発表されてしまった。それから一月十日からはジェット機の発着回数というのを一日当たり二百十回として、エアバスの発着回数をおおむね四十回として、それ以後もずっとふやしていくというふうな構想も発表されてしまった。これをこの節、全面的に白紙撤回をして、これをもう全然、御破算にして、もう一度初めからスタートに立つというつもりでやり直しをしなければ、私は話し合いも何もあったものじゃない、説明も何もあったものじゃないと思うわけでありますが、すでに発表されてしまっているこの案に対しては、これを白紙撤回なさいますか、いかがでございますか。
  163. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 エアバスの導入につきましては、昨日の御決定の中に触れておられるわけでございまして、したがって私どもとしては、この決定に対してどのように対処するか、その中に当然エアバスの問題もございます。国際線の問題もございます。それから七時から九時までの時間帯についてどうするかという問題がございます。いろいろな問題がございますので、われわれとしては総合的にこれに対してどう対処するかということが、実はきわめて重大な問題であるというふうに認識いたしております。したがいまして、これについて慎重に検討を加えまして、できるだけ早く、これに対する対処方針を出したいというふうに考えておるわけでございまして、エアバスの必要性というものについては、これはわれわれ従来から強く主張してきたわけで、エアバスを導入したい、しなければならないという気持ちは、現在においても変わっていないわけでございます。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 エアバスの導入が必要か必要でないかという問題は別にします。私がお尋ねしているのは、すでにもう抜き打ちに発表されてしまった、住民の方々の理解も了解も、ましてやきのうの決定が言っている承諾などもないままに発表されてしまった、この二十日から乗り入れというあのスケジュールがそのままに据え置きになって、それを大前提として話し合いなんというのはありませんよということを私は申し上げているのです。また了解を求めようということだって、それが大前提になっている限りは了解の求めようも、それはないだろうというふうに私は申し上げている。したがって、この二十日から乗り入れるというあの計画、さらには来年に向けて、もうすでに基本構想というのが明らかにされているわけですが、あれを一たん白紙撤回するということで出直さなければ、これは承諾も何もできませんよということを私は申し上げているわけですね。この出された二十日からのエアバス乗り入れということのスケジュール、来年に向けてのあの構想、これを白紙撤回をなさいますかどうですかという点はいかがです。
  165. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 エアバスの導入問題につきましては、たとえば大気汚染の問題あるいは騒音の問題について、環境庁の方からもいろいろ御指摘があるわけでございまして、政府部内でも、いろいろこれを詰めなければならないという段階でございます。したがいまして運輸省といたしましては、まずそれについて真剣に詰めをいたしまして、そうしてその結果をできる限り公表する、そういうふうな手段を講じまして、やはり理解を深める努力をしなければいけないというふうに考えておるわけでございまして、具体的にどういうふうな手順といいますか、方法をとるかということについては、最初、申し上げましたように、昨日のあの決定に対してどういうふうに対処するかという、そういう問題と含めて現在、慎重に考えておるということでございます。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 これは運輸省当局としては、なかなか言いづらい問題だろうと思うのですがね。ただ、いまおっしゃったとおりで、環境庁の方から十三項目にわたる申し入れがあって、この中身を十分に満足し得るような条件をまず整備しなければならない、これが先立つ問題であるかもしれません。そして両省庁間で協議を重ねられて、意見として、よかろうというふうな統一的な立場というものが出ない限りは、これはなかなか住民の方々に向かっての説明というものは始まらないでしょう。手順から言うたら、そうだろうと思うのですが、ただ昨日の決定で一番、大事な点は、この住民の方々の承諾なしに乗り入れてはならないという点なんですよ。この承諾を住民の方々がなさらない限りは、乗り入れることが絶対できないということです、昨日の決定どおりに行政を動かしていこうとなさるのなら。そういう点からすると、いま、もう抜き打ちに二十日の日に乗り入れますよと、理解も了解も求めずしてなすったことが大変に問題になっているんです。この二十日に乗り入れますということを至上命題とし、大前提として事を進められたら、環境庁との話し合いも始まらないだろうし、ましてや住民の方々に対しての理解を求める説明も始まらないだろうと私は思う。  まず、この二十日に乗り入れますということをおろしてください。これを白紙撤回なさい、白紙撤回してから事は始まりますよということを私は申し上げているのですが、なかなか、これは当局とされては、はい、白紙撤回いたしますと言うのはむずかしい問題であるかもしれません。しかしこの節、英断をもってこれに臨まれないと、恐らくエアバスの乗り入れというのは未来永却にできないということを私は申し上げますよ。いかに運輸省がエアバス乗り入れに熱意を持っていらしても、客観的にそれが認められないんだもの。だからひとつ、この節は二十日からのあのスケジュールというものを白紙撤回するということを、まず決めていただいて、この問題に取り組んでいただかないと、私はならないことだと思います。いかがですか、これ白紙撤回は。
  167. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 先ほども申し上げましたように、この問題は環境庁との詰めもございますし、必要な手順もあろうと思います。したがって、まずその詰めをするということが前提であろうというふうに考えております。今後の取り扱いについては、これは先ほどもたびたび申し上げておりますように、昨日の決定をこれをどう受けとめるかという一環として、真剣にわれわれとしては、いま考えておるということでございます。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 同じ答弁なので、どうも時間が来てしまって恐縮なんですけれども、それでは、ひとつ質問の仕方を変えましょう。白紙撤回と言うと、お答えにくいらしいです。すでに出されたこの二十日に乗り入れるというふうな計画、来年に向けての構想、これにひとつ一切こだわらないで、誠心誠意、環境庁との話し合いとか詰めとか、あるいは住民の方々に対しての承諾がなければ乗り入れるわけにはいかないのだという基本姿勢というものをしっかり持っていただけますか、いかがです。
  169. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 環境庁との間で誠心誠意、詰めを行うという姿勢、これはもう前から変わっていないわけでございまして、現在においても、まずそれが大前提であるというふうに考えております。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 どうも、これは質問に対する答弁にはなかなかなっていない。歯切れが非常に悪いのですが、あと、もう一つだけお尋ねをして終えた  いと思います。  それは、昨日のあの決定に従って言うと、午前七時から午後九時に至るまでの便数を、いま以上に一便たりとも増便することは認められないわけですね。皮肉なことに昨日、九時以後の国内便というものをやめにして、それを九時以前の便にどういうふうに移していくかというふうなことを大変、努力をされて、その結果を明らかにされた瞬間、この決定が出たわけであります。したがって恐らく、きのう出されたあのダイヤの中身も御破算だろうと私は思う。それはそうですね。そこで一つはっきりさせておかなければならないことは、午前七時から午後九時に至るまでのダイヤについては  九時以後の発着陸を国内線については一切禁止をするという措置で、どれだけの努力をなさったかというのは、私も知らないわけではありません。     〔田中(覚)委員長代理退席、委員長着席〕 大変な努力をされていると思いますが、この節、ダイヤの編成についてはダイヤ編成会議が持たれるわけでありますけれども、いままで組まれているダイヤを一応、御破算にして、いま飛ばせている便を絶対に増便しないということを前提条件にしながら、朝七時以後、夜九時に至るまでの便についてつくり変えていく、そういう構想をお持ちになっていらっしゃるかどうか、それをお聞かせ願えませんか。
  171. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 昨日の決定が出たわけでございますので、運輸省といたしましては、いわゆる仮執行がなされ得る可能性がある状態というものは、できる限り、これを避ける必要があるという判断をいたしておるわけでございます。したがいまして当初、考えておりました便数の調整作業は、今日の段階では、これを再検討すべきであるという結論に達しまして、現在、鋭意、作業をさせておるところでございまして、恐らく今日中には、先生いま御指摘のように、七時から九時までの便数について現在の便数を増加させない、こういう前提で九時以降の国内線を切る、こういう方向で持っていきたいというふうに思っております。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 時間が来たので、この辺で終わります。
  173. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 木下元二君。
  174. 木下元二

    ○木下委員 大阪空港問題についてお尋ねをいたします。きょうは住民の人たちも傍聴に来ておりますし、ひとつ誠実に明確にお答えをいただきたいと思います。  午後九時以降の発着便につきまして、国側の執行停止の申し立てに対しまして、大阪高裁は、国内線については執行停止の必要がない。国際線について、エアバス導入は住民らの承諾なしにはしない、また現状より増便はしないという条件のもとに、五十一年五月末まで仮執行の停止を決定いたしました。大阪高裁の判断に運輸省は当然、従うべきだと思うのでありますが、いかがですか。
  175. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 昨日の高裁の決定は、きわめて重大な決定でございまして、われわれはそのように受けとめておるわけでございます。これに対して、どのように対処するかという点につきましては、これは先ほどから申し上げておりますように、慎重に検討をして、できるだけ早く態度を決定いたしたいというように考えております。
  176. 木下元二

    ○木下委員 慎重に検討すると言いまして、何を検討するのですか。そういう慎重にというような、使う言葉としては便利かもわかりませんが、もっと明確にお答えいただきたいと思うのです。どうするのか。検討すると言われますけれども、一体、何を検討するのですか。その検討の余地があるのですか。
  177. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 どう対処するかということを検討いたしておるわけでございまして、触れておる内容が、きわめて多岐かつ重大でございますので慎重な検討を要する、こういうことでございます。
  178. 木下元二

    ○木下委員 どう対処するか、まあ対処の仕方とか手順とか、いろいろ具体的にはあるかもわかりませんが、この高裁の決定には従うのですか。
  179. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 高裁の決定に対しましては、われわれといたしましては、法律に許された方法によりましてこれに対処をする、こういうことだと思います。
  180. 木下元二

    ○木下委員 先般の運輸大臣との交渉のとき、これは十二月四日でありますが、私も立ち会いました。このときに運輸大臣はどう言われたか。運輸省として、いますでに執行手続がとられた。これは具体的には審尋を指して言われたのでありますが、その手続の中で意見を述べ、裁判所の判断によって結着をつける、こうお答えになったのです。裁判所の判断が下された以上は、当然それに従うべきではないのですか。運輸大臣がこういうふうに言われたのは、これは間違いですか。裁判所の執行手続が進んでおる、そこで、その中で運輸省として意見を述べる、こう言われておったのですよ。執行停止の申し立てをされて、そこで運輸省としていろいろ意見を言われて、そうして裁判所の判断が下った以上は、当然これに従うのが運輸省としての態度ではありませんか。
  181. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 高裁のこの決定に対して、先ほども申し上げたように、これは法律的に認められた方法において、これに対処する、その中身は、どのように対処するかということは現在、具体的に検討いたしておると、こういうことでございます。
  182. 木下元二

    ○木下委員 それでは申し上げますが、一体、法律的にどういう対処の仕方があるのでしょう。これは民事訴訟法五百十一条第二項におきまして、第五百条の三項というのが準用されているのです。その三項にはどう書いてあるか。「其裁判二対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス」とあるのですね。これは不服の申し立てがないのですね。これは裁判で争う余地がないんじゃありませんか。そうすればこの決定に従う以外に、どういう方法があるのですか。この決定には従う。従う中で、あるいはやり方がいろいろあって、それをその手順とか方法考えるというのなら、これはまたわかりますが、この決定に従うか従わないか。そうすると、運輸省は、こういうふうに決定が出ても従わない余地がある、従わない抜け道を検討するというのですか。余りにもひどいじゃありませんか、それは。言い直しなさい。
  183. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 昨日の決定は、高裁としての最終的な結論であるということは、われわれは承知いたしております。したがってこれに対して、この内容に示されておる点について、われわれがどのように対処するか、こういうところに尽きると思うわけでございまして、これは要するに仮執行というものをかける可能性があるということを前提にいたしまして、われわれとしては、これに対してどう対処するかということを真剣に考えなければならぬというふうに思っておるわけでございます。
  184. 木下元二

    ○木下委員 どうも、よくわかりませんが、そうしますと、この裁判、この決定に対しては従う、そういうふうに明言されますか。
  185. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 この決定は、高裁としての最終的な判断であるというふうにわれわれは承知いたしております。したがって、これに対してどう対処するかということは、政府として慎重に検討いたしたい。
  186. 木下元二

    ○木下委員 同じことを繰り返しなさんなよ。この決定に対して従うか、どうかを聞いているんです。どう対処するかなど、対処なんという言葉を使うと、局長、従わない場合もあり得るように聞こえるじゃありませんか。法治国ですよ、日本は。少なくとも国が執行停止の申し立てをして、裁判所がその決定を下した。そして法律には、その決定に対しては不服を申し立てる方法がないと明記しているのですよ。それにもかかわらず、この決定に対して従わないこともあり得る、そのことを検討するというのでは、これはもう日本は法治国でなくなりますよ。とんでもないことだ。訂正しなさい。
  187. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 この決定に従わなければ仮執行の可能性がある、こういうことをわれわれは承知いたしておるわけでございます。したがって、そういうことを前提にして、この内容について、どう対処するかということを真剣に検討しておる、こういうことでございます。
  188. 木下元二

    ○木下委員 何を言っているのです、あなた。この決定に従わなければ仮執行の可能性がある、あなたはそうすると、この裁判とか、こういう裁判所というものをもてあそんで、こういう決定が下っても、これに従わずに、ほかに方法があるんだというようなことを考えておるのですか。事件師みたいじゃないですか、それは。少なくともあなた方が運輸省として裁判所に執行停止の申し立てをしたんでしょう。それに対して決定が下った。当然、従うべきじゃないか。それに対して上訴の方法があれば、それはその上訴によって争うということは、あるいはあり得るかもわからぬ。この場合、その道がないのですよ。そうしたら、これに従わざるを得ないじゃありませんか。それに従わぬでもよい方法なんというものは、これは事件師が考えることだ。そうじやないのか、もう一遍、答弁し直しなさい。
  189. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 先ほど申し上げましたように、この決定に従わない場合には強制執行という、そういう強制手段がついておるわけでございます。したがって政府といたしましては、この重大な決定に対しまして具体的にどのような措置をとるかということを真剣に、いまは検討いたしておる、こういうことでございます。
  190. 木下元二

    ○木下委員 そうすれば、この決定が出た、この決定に従ってどういう道があるか、決定に従うということが前提にあって、そしてそれに具体的にどう対処していくかということであって、決定に従うということだ、こう伺ってよろしいですね。それとも、いやそうでなくて、決定は出たけれども、これはおいでおいで、決定に従わずにほかの道も考えるのだ、こういうことですか。
  191. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 こういう決定がなされたことでございますから、政府といたしましてはこれに対してどう対処するかを真剣に考えておる、こういうことでございます。
  192. 木下元二

    ○木下委員 どうもあなたでは話にならぬですよ。あなたは、ここに出て答弁する資格ないですよ、そういうことを言っておっては。  環境庁長官、これは運輸省に聞いているわけなんですけれども、いまのやりとりでおわかりだと思うのですよ。これは、長官も法律は詳しいようですが、民事訴訟法によりまして「不服ヲ申立ツルコトヲ得ス」とはっきり明記しているのですよ。だから、決定が出ればそれに従う以外に、どうしようという道はないのですよ。だからそれに従う、そして従うけれども、その中でどういう方法があるのかということを運輸省として検討するというのなら、これはわかるのです。従うか従わぬかわからぬというようなことでは、私はこれは国の態度として、もってのほかだと思うのですよ。どう思われますか、長官は。
  193. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 木下先生に余り法律的に詰められて、それから相当、激しい御質問だから、やはり運輸省の航空局長は、法務省の当局者でもないので自信を持って答弁できないから、いろいろ御不満もあるのだろうと思うのです。  確かに高裁の今度の決定は、これは先生が法律をお読みになったように、これを不満だから、さらにどこかへ訴え出るとか上告するとかということはできないわけですから、御趣旨のようなことに違いないのですよ。しかし法務省の当局者でもないから、しかも、あの判決の中には、たとえば了解を得るとか、それを条件に、そうでなければやらぬとかというようなあれがありますね。それから増便をしてはいかぬ。今度ダイヤの編成がえをやらなければいかぬわけですね。そういうようないろいろなこともあるから、航空局長としては慎重な答弁をしているので、先ほど来、聞いておりましても、どういう処置をやるか慎重に検討する、こう言っているのですから、その前提としては、これはもうあの内容で確定しているのだという御趣旨は、もちろんそうだと思うのですよ。それを前提にしなければ、あんな答弁出てこないのですから、だから余りそこをお詰めにならぬで、もう少し具体的にひとつやっていって、あと法律論は法務省を呼んでもらわぬと、やはり航空局長では、その点は少し気の毒ですよ。どうぞひとつ御了解の上、進めていただきたい。
  194. 木下元二

    ○木下委員 まあ環境庁長官は、その決定が出た以上は、それに従うということを当然の前提でお話しになったので、よくわかりました。  この新ダイヤによりますと、新ダイヤと申しますのは、運輸省が決定が出る直前に発表しておるダイヤですが、九時ジャストの鹿児島発の全日空便は残す、これは運輸省のその前に出した見解に反すると思うのでありますが、残す、そして九時台の三便はカットをする、そして残り三便を繰り上げるという方向を出しておったようでありますが、これは当然、手直しが迫られておるわけであります。その手直しをいつまでに終えられますか。
  195. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 本日中に、この手直しを完了したいと思っております。
  196. 木下元二

    ○木下委員 この控訴審の判決でありますが、午後九時以降の発着禁止を認容したのであります。そして特に必要ありと認めて仮執行宣言を付したのであります。運輸省としましては、この判決に示された判断を尊重すべきことは当然なんです。大臣も、これは十一月二十八日に住民の人たちが、私も含めて大臣室で話し合いをしましたときに申されました。九時以降の発着は、判決の趣旨に沿って解決をするとお答えになったのです。ところが九時以降も国際線は除外をする、国内線はダイヤをカットするが、それはエアバス導入をあわせ実施するとの条件のもとにということであります。なぜ、このエアバス導入を条件にするのか。これは大臣が、いま申しましたように九時以降の発着は判決の方向で、判決の趣旨に沿って解決をすると明言された趣旨にも反するわけなんですよ。これはもう明らかに約束に反します。頭かしげておられますが、そう思われませんか。
  197. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 大臣が申し上げましたのは、九時以降の便について、皆様方の御要望もあり、従来から、できる限り便数を少なくし、また、できる限り九時台の前半に繰り上げられるように最大限度の努力をいたします、こういうことを申し上げておったわけでございまして、判決においても、この九時以降の差しとめという非常に徹底した判決が出たわけでございます。従来から九時以降の便については、できる限りの措置をするということは、もうすでに表明しておったわけでございますので、そういう線に沿って運輸省としては、この前、発表いたしましたようなぎりぎりの削減案を決定した、こういういきさつでございます。
  198. 木下元二

    ○木下委員 判決で無条件で九時以降の禁止を打ち出したのです、仮執行宣言もついておる。判決の趣旨に沿って解決をするというなら、無条件で九時以降を禁止をする措置をとるべきなんです。エアバス導入を条件にする、そういうことは判決の趣旨に沿う以上は間違っているわけです。
  199. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 エアバスの導入は、特に九時以降の便についてどうこうということだけではございません。ただ、今回の九時以降の便を処理いたします場合におきましても、数十便のダイヤについて手直しをしなければならないという作業があるわけでございます。いずれにいたしましても、この九時以降だけでなく一日の便数について、できる限り削減をする、こういう要請は判決の中にもございます。われわれといたしましても従来からそれを考えておった。ただ、そのために必要な輸送力がなくなるということは避けなければならない、そのためにはエアバスを導入することによって、輸送力を確保しながら便数を削減し、かつ音源対策にも資そうというのがわれわれの考え方でございまして、決してエアバスの導入というのは、その地元の方々に対してマイナスのことをするというふうには、実は考えていなかったわけでございます。
  200. 木下元二

    ○木下委員 その評価の点は後回しにしましょう。いま言っているのは、これは運輸省見解を見ましてもちゃんと書いてあるのです。この「九時過ぎの国内線ダイヤについては、次項に述べる事項を併せ実施するという条件の下にこれを削減させることとした。」次項に述べる事項というのは、つまりエアバス導入なんですよ。つまりエアバス導入を条件にカットすると、はっきり書いてあるのですよ。だから聞いているのです。判決はそういう条件をつけておりませんし、また運輸大臣も、その判決の趣旨を尊重すると言っている以上は、そういう条件をつけることはどこにも書いてないことだし、大臣のお約束にも反する。しかも判決には、このエアバス導入についてどう言っておるか。もう詳しく申しませんが、エアバス導入でどれだけ騒音低減の効果が上げられるか十分に見通しがあるとは言えない、また、従来の経過から、現在、直ちに住民らの理解を得られないこともやむを得ないというふうな判示をしておるのです。つまりエアバスの効用が否定され、導入が相当でないという控訴審の判断が下ったんです。それにもかかわらず、これを条件にしてくるというのは、これはもう判決無視というよりも、判決に対する挑戦ではありませんか。そうでしょう。
  201. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 決して挑戦などということを考えておるわけではございません。ただ九時以降の便を、現実にございます六便を九時以降なくする、この方法はいろいろあるわけでございます。単純に切りっ放しということもございましょうし、そのうちの一部分をいわゆる七時から八時の方に持ち上げる、こういう方法もございます。正直言いまして私ども当初考えておりましたのは、その約半分を切り捨てまして、あとの半分は八時以前の中にこれを繰り上げる、こういう方法考えておったわけでございます。そうなりますと当然、七時から八時の便数というものは従来よりもふえるわけでございます。そういう問題をやはり抜本的に解消いたしますためには、エアバスを入れまして全体に便数を削減する、こういう方法をとらない限り全体としての輸送力確保それから便数調整というものはできないという、われわれとしては基本的な観念のもとに、この前、発表したような方向をとったわけでございます。
  202. 木下元二

    ○木下委員 言いわけはよろしいです。要するに、あなた方のやり方は住民の不信感を強めるばかりであります。もうまさに権力のごり押し以外の何物でもないのです。  それで、とにかく判決に従い、しかも、この決定に従うということであります、きのうの決定ですよ。ですから、これは十二月二十日に導入をするなんということはできないことなんです。よろしいですか、導入なんということはとんでもないことですよ。きのうの決定で、エアバスの導入は住民と話し合いをして、その了解のもとにやる、そういう条件がついているのだから、そういう条件を無視をして十二月の二十日に導入なんということはとんでもないことですよ。そこは運輸省はよくわかっているでしょうね。私、決して無理言っていないのですよ、あたりまえのこと言っているのですから、ひとつ、その点はよく運輸省としてはかみしめて、間違いのないように進めてもらいたい、よろしいですか。
  203. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 昨日の決定は、われわれとしては重大な決定だというふうに受けとめておるわけでございます。エアバスの導入については、これはたびたび申し上げておりますように、政府部内としての思想統一、意見統一がもちろん必要でございます。また従来から申し上げておりますように、地元の理解を得るための最大限度の努力をする、こういう点については従来と変わっていない、そういう前提でエアバス導入というものは慎重に考えていきたいと思っております。
  204. 木下元二

    ○木下委員 だから、その決定が出る前のように十二月二十日にこれを当然、導入をするというふうな計画は振り出しに戻した、こういうことですね。
  205. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 具体的な方法論につきましては、たびたび申し上げておりますように、昨日の決定の中にいろいろ触れられておりますので、それに対してどう対処するかという、その一環として目下、慎重に検討いたしておるということでございます。
  206. 木下元二

    ○木下委員 どうも具体的なことになるとあいまいになってくるので、また改めて大臣にも尋ねますが、そこで環境庁長官にお尋ねしますが、この運輸大臣あての十二月一日付の「大阪国際空港における当面講ずべき措置について」と題する書面がございます。これは「夜9時以降、少なくとも国内線は飛行中止をすること。」とか、あるいは「上告問題について決定がなされた時点において」音源対策とか、あるいは空港周辺対策等について具体的に「実施すべき対策を公表すること。」とか、そうしたことについて述べた文書であります。これに対して回答はありましたでしょうか。
  207. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 事実、態度をもって運輸省はちゃんと答えております。九時以降、国内線はやめております。その他の三項目について——私いま考えますと、三項目というもののうち特に音源対策等、第一項にあると思いますが、これをつけたから運輸省見解の中でエアバス導入というものが、あるいは出てきたのかなと思って、少し反省をいたしておるのです。というのは、先ほど先生は、あの判決を無視している、あるいは判決に対する挑戦だと言われますが、エアバス導入というのは、この判決が出るずっと前から運輸省としては、一方において輸送力の公共の需要というものにこたえ、一方において大阪の騒音をできるだけ少なくしょうという趣旨から、エアバスなら騒音が他のものより少ないし、それでずっと計画をしてきたわけでございます。ただ住民の方の御了解を得るということで、私はもう少し努力をすべきであったろうと思いますが、とにかく、そういうことで進んできた。そこへあの判決が出て、そこで私の方から音源対策等についての三項目の、同時にそれだけはきちっとしなさいということが出たので、あるいは音源対策で、より有効だと考えられた運輸省が、それでは一緒にエアバスをやれば音源対策一つにもなるというふうにお考えになったのではないかと、率直のところ、むしろ九時以降の便をとめるだけのことにしておけばよかったかなという反省を、いまいたしておるところでございますが、いずれにいたしましても、エアバスについては私は大気の問題を両省で詰めて、そして大気の方でも心配はない、それから騒音もこういうふうに減る、あるいは便数もそのためにふえることはないんだ、輸送力は増強するけれども、ということで、それをもって住民の皆さんに御理解を願って、やっていかなければならぬことで、住民の皆さんが——住民という表現は、良識ある、いろいろ皆さん方と一緒になって私どもと話し合いをしておられる方々という意味で、一人一人全部、一人も反対がなければというような意味で申し上げているのではないのですが、そういう方々の、なるほど大気も、そういまより悪くならぬし、騒音も減るし、便数も減ってくるのなら了解しようかというような努力をやって、その御理解の上でやらないと、こういう問題は理解の不十分なままやるということになると、必ずいろいろトラブルが起こりますから、先ほど土井先生も白紙撤回、いま先生も白紙撤回、一応、全部戻してやらぬかと言われますけれども、白紙撤回をいま運輸省にやれと言ったって、それは無理なんで、やはり何もこだわらぬで、運輸省声明が出たから次の事項の一、二、三、全部あれにこだわって折衝するようでは、住民の方々も、何だ、手前が一方的に宣言して、それを守らすために説得するのかということになりますから、そういう点にこだわらぬで、先ほど最後には土井先生そうおっしゃって、少なくとも二十日にこだわらぬでやれというお話でございましたけれども、われわれとしても環境問題は一番大事ですから、住民の立場に立って運輸大臣ともよく話し合って、そのかわり最初から反対を決めておいて、説明を聞いたり話し合いをするということではなくて、お互いにひとつ、そういうことを本当に腹を打ち割って話し合って御了解を願うようにして、この問題をひとつ解決していく、そのかわり政府が一方的に決めた日にちにこだわらぬというようなことで、ぜひ先生方にも御了解を願って、できるだけ円満に物事を解決していくように私も努力いたします。どうぞひとつよろしくお願いしたい。
  208. 木下元二

    ○木下委員 環境庁考え方はわかりましたけれども、私がいま聞いたのは、この文書に対して回答があったかということです。態度で示したと言われたのですが、回答は文書ではなかったわけですね。
  209. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 この書面に対して、文書番号を挙げまして回答するということはございませんでしたが、運輸省見解の中に入っていることと同時に、いろいろの資料を私どもの方にお持ちになりまして、予算がどうなっているというようなこと、計画がどうなっている、スケジュールがどうなっているというようなこともお持ちになりましたので、そういうことで完全な公表と言えるかどうかという御議論はあるかと思いますが、私どもの方には表明はあったというぐあいに思っております。
  210. 木下元二

    ○木下委員 遠慮せずに言っていただきたいのですが、どうも、はっきり言いまして環境庁は運輸省から無視されているのじゃないかと思うのですよ。いまの九時以降ストップの問題にしましても、きのうの決定の直前に運輸省が発表したのでは、九時ジャストの鹿児島発の分が入っているわけですね。これは九時でストップせよということに違反しているわけなんですよ。そういうダイヤをやろうとしておった。これは当然きのうの決定によって変わると思いますけれども。だから、私は環境庁に対して文書で答えがあってしかるべきだと思うのですが、その答えもないし、しかも態度そのものも、環境庁が九時でやめろと言っても、それに全面的には従おうとしない、こういう態度があらわれておる。そしてエアバス導入というようなことを持ってくる。これはどうも私は環境庁が運輸省に、端的な言葉で言ってなめられているのではないかと思うのです。そんなことありませんか。もっと環境庁として、そういう疑いを払うためにも毅然とした態度で運輸省に当たってもらいたいと思うのです。どうですか。
  211. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 運輸省が環境庁をなめるようなことは絶対ありません。また私どもがあればこそ九時以降に——実は、あのときの折衝を申し上げますと、ぎりぎりどうやっても、なかなか九時にならぬ。九時十五分か二十分か、それぐらいだというお話だったのですが、とにかく国内線は九時以降はだめだということで、私どもの要求を入れて九時以降は国内線は飛ばさない、こういう決定をいたしたわけでございます。
  212. 木下元二

    ○木下委員 九時を認めたのはどうしてですか。九時ジャストを認めていますよ。
  213. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 九時以降飛ばないのですから。
  214. 木下元二

    ○木下委員 九時ジャストは九時以降になるじゃないですか。
  215. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 九時以降になりません、九時に出るのですから。
  216. 木下元二

    ○木下委員 鹿児島から九時に来るのです。
  217. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 判決でも緊急やむを得ない場合、もしおくれたらどうかこうかということはありますけれども、その辺は、ダイヤとしては九時以降絶対ないのですから、それは私の方、許しません。許しませんというか、私の方は絶対承諾しませんので、今度のエアバスについても、十三項目について全部詰めを終わらぬうちは私どもは、ここで申し上げてもいいですが、強行するようなことはいたしません、また、しないでいただきますから。  余り不信感でお互いに質問しておってもだめなんで、私の方もまじめに真剣に考えて対処しますから、先生の方も全部、疑ってかかって質問しないようにしていただきたいと思うのですが、私は本当に真剣にこれは守らせます。
  218. 木下元二

    ○木下委員 いまの決定の直前に出たダイヤでは、九時ジャストに鹿児島から大阪空港に入ってくるという便を認めておるのです。これは九時以降発着禁止ということに反しませんか。これは緊急にやってくるというのじゃないのですよ。その便そのものを認めるという案を発表したのです。
  219. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 これは厳密に申し上げますと九時に大阪空港に着の便でございますが、現実に大阪空港のいわゆる滑走路に着陸いたします時間というものは、このダイヤの九時よりももっと数分前でございます。これはいわゆるランプアウトという時間でございまして、いわゆるドアをあける時間、これが九時ということで、これは通常そういうふうにいたしております。したがって、通常の場合であれば、これは約八時五十二分か三分ぐらいには滑走路に着陸する、こういうことでございます。それもございますし、とにかく環境庁からのそういう御要請があったわけでございますが、私ども一番、苦心いたしましたのは、この便がいわゆる鹿児島から大阪という比較的長距離路線でございまして、これを切ってしまうということは、輸送を担当いたします者としては、非常に重大な影響があるということもございまして、ぎりぎりの線でございましたけれども、そのように措置した、こういうことでございまして、決して環境庁の要請を無視したとか、そういうことではなくて、むしろ環境庁の要請を受けて、われわれとしてはできる限り、具体的にどのような措置が講じられるかということを探求した結果が、あのような姿であったということでございます。
  220. 木下元二

    ○木下委員 その点はもう繰り返しませんが、ドアをあける時間と言われますけれども、それも、やはり九時以降発着禁止の対象にはなっていると思うのですよ。それを認めておるという点で、どうも私は了解に苦しみます。その点はそれで結構ですが、余り時間がありませんので、次の問題を運輸省に少し聞いておきたいと思うのです。  大阪空港にエアバスを導入した場合に、大気汚染はどういうふうになるのかという問題でありますが、この問題について運輸省は、ことしの二月に航空局が「航空機騒音対策」という資料をおつくりになっております。これはどういうところに配付しておりますか、一言で結構です。
  221. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 十一市協あるいは、いわゆる調停団その他いろいろなところに多数、配付いたしております。
  222. 木下元二

    ○木下委員 これを見ますと、二十四ページに大気汚染物資排出量の試算というのが年間で出ております。エアバス二百便を導入した場合としまして数値が出ておるわけであります。それによりますと、二百便導入しまして、減りますのは炭化水素だけ。CO、一酸化炭素は変わらない。それからNOxは現状の二五七%という数値になっております。そしてNOxが現状の二五七%というのは一体どういう状態かという説明で、これは千六百ccの乗用車約六千二百台分であるというふうに出ておるわけであります。このNOxが二五七%ということで、これは四十九年四月の便数に比べてでありますが、トン数で言うと年間千五百九十一トンのものが排出をされる、そしてこれが自動車六千二百台分だ、こういうのでありますが、その算出の方法はどういうことですか。簡単で結構です。
  223. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 きわめて事務的なことでございますので、課長に答弁をお許しいただきたいと思います。
  224. 木下元二

    ○木下委員 詳しいことは結構ですから。
  225. 井下登喜男

    ○井下説明員 航空機は、御承知のとおり着陸いたしまして、それから飛行場内をタクシングして、客をおろし、またタクシングして、離陸して上昇する、こういう経路をとっておるわけでございます。環境庁モードと申しますのは、高度千メートルからおりてまいりまして、また再び上昇して高度千メートルまで上がる、これを環境庁で一モードと称しているわけでございます。そこでそれぞれの排気ガス量というものは、着陸の場合、それからタクシングの場合、アイドル状態の場合、上昇の場合、それぞれ違うわけでございまして、それぞれの時点における排出量をそれぞれ計算いたしまして、それに時間を掛けて算出した、こういうことでございます。この基礎になりましたのは環境庁が、四十七年であったかと思いますけれども実施いたしました調査に基づいて、それを採用いたしております。
  226. 木下元二

    ○木下委員 あなたは質問に少しも答えていないのです。そんなことは言われないでもわかっているのです。千六百ccの乗用車六千二百台分に相当すると言われるが、その計算の根拠はどうかと聞いているのです。
  227. 井下登喜男

    ○井下説明員 その総排出量につきまして、千六百ccの乗用車の、これは乗用車のモードというものがあるのだそうでございますが、その時間当たりの排出量を計算いたしまして、それで割って計算しているわけでございます。
  228. 木下元二

    ○木下委員 自動車が一日何時間走っているという計算なんですか。
  229. 井下登喜男

    ○井下説明員 そのとおりでございます。
  230. 木下元二

    ○木下委員 いやいや、何時間走っているという計算かと聞いているのです。
  231. 井下登喜男

    ○井下説明員 ちょっと正確には記憶しておりませんが、その飛行機が飛んでいる時間と同じ時間というふうに記憶しております。
  232. 木下元二

    ○木下委員 つまり、これは一日を午前七時から午後十時までぶっ通しで十五時間走行しておるという前提で、その状態が三百六十五日一年間ぶっ通しで続くという計算なんですね。そうですね。
  233. 井下登喜男

    ○井下説明員 そのように記憶しております。
  234. 木下元二

    ○木下委員 実際に走っている車のうち、一日十五時間ぶつ通しで走る車なんというのは、そうざらにないと思うのです。普通、タクシーでもそんなに走っていない。普通の乗用車は、もうせいぜい三、四時間しか走っていないわけですね。これは一体どういうことですか。これは実態と異なる走行時間、実態をはるかに超えて走行しておる、そのことを前提にして算出の根拠にしておるのですね。NOx千五百九十一トン、これはエアバス二百便にしたときの一年間の排出量だ、それは千六百cc乗用車の六千二百台分相当だ。これは数字の上では誤りはないかもわかりません。しかし、これだけの説明だと、これは普通に考えますと六千二百台の乗用車が普通、平均的に走行する場合を想定するではありませんか。もし普通、平均的に走行する場合を前提にして比較をいたしますと、六千二百台ではなく、その数倍の自動車分の排出量と匹敵をする、こういうことになるのでしょう。私の言っていることが間違っているか合っているか言ってください。
  235. 井下登喜男

    ○井下説明員 通常の都市においては、それだけの自動車が常に走っているというわけでございますから、この想定というものは、私どもとしましては間違っているとは考えていないわけでございます。
  236. 木下元二

    ○木下委員 いや、ですから数字の上では間違いではないでしょうけれども、しかし、その六千二百台分という前提は、一日十五時間ぶっ通しで、しかも三百六十五日ぶっ通しで走っておるという前提で六千二百台分だ、こういうのですね。ところがそのことは、この説明には何も出ていないのですよ。だから、これだけ読みますと、これは普通、平均的に走行しておる自動車の台数六千二百台分と匹敵するのだな、これはそう読まざるを得ない。そう読む方が間違っておるのかしれませんけれども、これはそう読みやすいわけですよ。そうでしょう。
  237. 井下登喜男

    ○井下説明員 手元に、ちょっといま資料がございませんので、正確にはお答えできませんが、これは環境庁の標準モードによりまして、とまったり走ったりする、そういう状態のものについて数字をとっているわけでございます。
  238. 木下元二

    ○木下委員 それは十五時間ぶっ通しで走行しておるということは、実際はあり得ない。あり得ないような、そういうものを根拠にしておるのはどうしてかと、こう聞いておるのですよ。  さらにもう一つ言いましょう。NOxが地上におりてくる範囲、これはあなたの先ほどの説明にもありましたけれども、結局、千メートルから進入して着陸し、また離陸をして千メートルに上がっていく、その間ということで、長さは三十二キロ、幅は二キロということで六十四平方キロメートルとして、その範囲に汚染物質が降下してくる、こういうことで計算をしておりますね。そして、それは豊中、池田、吹田三市にほぼ相当する、こういうふうに書かれております。そして、結局この三市に六千二百台の車が走行しておることに等しい、三市の登録台数は九万四千七百九十五台だから、そのうちの六・五%が走行しておるにすぎない、こう書いております。この点も数字の計算そのものに誤りはないと思いますが、少なくとも、こういう比較の仕方は相当でないと思うのですよ。大体、登録台数のうち動いている車というのは普通、何台ぐらいあるのですか。
  239. 井下登喜男

    ○井下説明員 承知いたしておりません。
  240. 木下元二

    ○木下委員 ここに東京都が行いました自動車動態調査の結果が出ております。これは七四年の七月に調査されたもので、発表されておりますが、これによりますと、走っている車は十九万台、保有台数は百八十万台、したがって約一割の車が常時、走っていることになるということが出ております。大体そういうことだと思うのです。自動車動態調査というのは、飛行機から写真を撮りまして実態を把握するわけですね。だから、一割といたしまして、この豊中、池田、吹田三市で常時、動いている車というのは、登録台数が九万四千ですから約九千台ということになると思うのです。その動いている車と比較するのが、私は相当ではないかと思うのですよ。そうするとNOxは、六千二百台分といたしましても約七割となります。この六千二百台そのものが算出の根拠に相当性を欠いておると思います。そして、その数倍の自動車分を算出して、それと三市に常時、動いておる車九千台と比べるのが相当ではないかと思うのです。これは違法であるとか間違っておるとかいうことは申しません。相当性の問題として私は提起をしておるのです。あるいは、あなた方がこういう比較をするというのなら、そのことをきちんとこの書面のデータの中にお書きになって、こういうふうな前提で比較をいたしますということをお書きになってやるのなら、それはまた、それでわかるのです。そういうことをお書きにならずに、こうした比較をやるのは相当ではない。どうですか。
  241. 井下登喜男

    ○井下説明員 この資料の表現と申しますか、基礎データにはいろいろ問題点がございます。ございますと申しますのは、たとえば排出された排気ガスが幅二キロのバンドに全部おりてくる、こういうような仮定をいたしておるわけでございますが、通常の場合には、高度の百倍に当たります半径に拡散されるというふうに言われております。そういうふうな条件を全部、無視しているわけでございます。ですから、実際に拡散をいたします場合には、これよりはるかに広い範囲に拡散をされてしまうわけでございます。こういうことも実は前提にあるわけでございますが、表現が長々しくなりますので、簡潔にするために一応こういうような表現をとったということでございます。  自動車の実際に走行している台数がどのくらいであるかというのも、実は目安としてこれを挙げただけにすぎないのでございますので、御了解いただきたいと思います。
  242. 木下元二

    ○木下委員 私が言っているのは、どうも実態と異なるものを算出の根拠にしたり、あるいは実情に合わないものを比較したりしておる、これがよくないということを言っておるのですよ。そのことはお認めになりませんか。エアバス二百便とした一年間のNOx算出量は六千二百台分だと言われている。一見そんなものかと、少ないという感じを受けます。ところが、その少ないと感じますのは、六千二百台が普通に走行するもの、そういう前提を置いて考えるからなんですね。ところがそうではなくて、十五時間ぶつ通しで走っておるという前提がある。そのことは当然これに書くべきじゃないですか。そうでしょう。その豊中、池田、吹田三市の車との比較でも同じことなんです。実際に三市で動いておる車を抜きにして、登録台数の六・五%だ、どうも、これはいかにも人の錯覚を呼び起こすような数字を出して宣伝をしておる。これはまさに過小表示であります。過小広告であります。そうでしょう。
  243. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 課長から申し上げましたように、このデータの収集あるいは計算の方式は、ある一定の前提を置いて計算をするわけでございます。したがいまして、こういう資料につきまして、その前提について、もっと、きめ細かく説明を記入するということがいいのだという点については、私も全く同感でございます。ただ、この資料は、むしろこれを材料にして、われわれとしてはいろいろ御説明をし、また御疑問の点があれば、それにお答えするという一つの材料としてつくったわけでございまして、当然これをもとにして御説明ができるということを前提にしておるわけでございます。
  244. 木下元二

    ○木下委員 私は、航空会社がこういう宣伝をする場合、運輸省の立場というのは、むしろそういう不当な、人の錯覚を呼び起こすような文書についてはチェックをする立場にあると思うのです。その運輸省自身が、こういう過小表示と言えるような宣伝をするのは、穏当を欠くと私は思うのです。ですから私は、これを修正するか、あるいはそれとも回収するか、そういう措置をとっていただきたいと思うのです。こういう文書では明らかに誤解を生みますよ。それをやられますか。
  245. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 ここに表現いたしております登録自動車台数、これの六・五%が走行しているというのは間違いではないと思います。
  246. 木下元二

    ○木下委員 ですから、私がいまいろいろ質問をしたのは聞いておられたと思いますが、数字そのものは間違っておるとは言ってないのですよ。その比較の仕方に問題がある。誤解を招きやすい、あるいはまた実態と違ったものを計算の根拠にしておるとか、そういう問題があるのだから、この点についてはひとつ、しかるべき適切な措置をとっていただきたいと思うのです。
  247. 井下登喜男

    ○井下説明員 この資料に表現いたしましたことについては、先ほども申し上げましたようにいろいろな前提条件がございます。私どもとして大気汚染の問題は決して軽視すべきでないという観点から、これは別途この辺の、主として空港周辺になりますけれども、拡散計算を実施いたしております。そのデータについては、この資料には挙げてございませんけれども、そういうことは実は別にやっているわけでございまして、しかるべきところには、それは発表いたしております。
  248. 木下元二

    ○木下委員 私は、もう指摘だけしておきますけれども、どうも、こういうやり方一つ見ましても、運輸省というのはもう航空会社の代弁者ではないかという疑いを抱かしめるのですよ。航空会社がこういうことをやったら不当だということが言えると思うけれども、運輸省はやはりそれをチェックすべきですよ。そのチェックする立場にある運輸省みずからがこういうことをやる。私は非常に遺憾だと思います。そのことは指摘だけしておきます。  ほかに詳しく質問をしたいことがありましたけれども、もう時間が来ましたので、最後に一つだけお尋ねをしておきますが、環境庁が運輸省に対して申し入れをいたしました環境問題の諸点について、運輸省と環境庁とが合同で評価を行い、両者間の見解の一致を待って、エアバスについては導入されるようというふうに聞いておりますが、この作業というのはやはり進められるのですか。
  249. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 この作業につきましては、エアバスの導入で、どのような大気汚染の問題が起こるかということで、すでに国会でも環境庁長官からも、この点をチェックをするということでございますので、この作業については当然、私どもは進めるということにいたしております。
  250. 木下元二

    ○木下委員 前回のだれかの質問に長官は、何とか期日までに作業を進めたいという趣旨を述べられたように思います。期日というのは十二月二十日だと思うのであります、エアバスの最初の期日ですね。決定によりましてすっかり事情は変わりました。この期日になっても、これは現実に導入ができないわけでありますから、期日というのはすっ飛んだと思うのです。調査をすると言われるなら、これはひとつ、この大気汚染の実態や被害の実情につきまして本格的な調査を、時間をかけてやってもらいたいと思うのです。そしてその内容については、いろいろ私は言いたいことがあるのでありますが、きょうは、これは省きます。とにかくやる以上はじっくりとやっていただきたいということを申しておきます。いかがですか。
  251. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 必要な調査は必ずやりますし、やる以上、早くやった方がいいと思うのです。何もゆっくりやる必要はないので、やはり、できるだけ早く疑問に答えた方が私はいいと思うのです。そういう意味で、できるだけ早く、むしろ、じっくりゆっくりという説には同意しがたいのです。むしろ、これはやはりはっきりしませんと住民の不安もあるのですから、なるべく早くやるべきだと私は思います。
  252. 木下元二

    ○木下委員 いや、私の言うのは、やる以上は本格的にやってもらいたい。非常に不十分な測定点を、もうほんの申しわけみたいに一ヵ所、二ヵ所、設けてやるような、そういう調査ではなくて、もっと本格的な調査をやってもらいたいということです。たとえば瞬間濃度の問題にいたしましても、いろいろと問題があるわけです。これは判決を見てもらえれば、あそこにもいろいろと書かれておりますが、そういう問題もあるわけでありまして、これはとうてい十日や二週間で終わるような作業ではないと思うので、私は何もゆっくりというのは、だらだらやれという意味ではございません。十分にひとつ本格的にやってもらいたいということを要請いたします。よろしいですか。
  253. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私、二週間前でしたか何週間前でしたかに、ここで答弁したときに持っていた資料を、きょう持っていないのですが、四十九年に、それは二ヵ所や三ヵ所じゃないのですね、各物質ごとにずっと調査したのがございますよ。だから、それが、エアバスの導入によって、どういうふうになるかということは、これは十分、計算ができますので、いま先生が言われるように何か二、三ヵ所ちょっと測定して、それでいいというような、そういうことではない。私の方の局長は、そういう点については少なくとも先生方より専門家でございますから、うちの局長がうんと言わない限り、私は政治的にそれをひん曲げるようなことはしません。
  254. 木下元二

    ○木下委員 局長、いかがですか。
  255. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 やはりいまの時点でできる最善のものを尽くしてやるということで、これは納得いかなければならないというぐあいに思っております。
  256. 木下元二

    ○木下委員 まだいろいろありますが、保留いたしまして一応、終わります。
  257. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 米原昶君。
  258. 米原昶

    ○米原委員 時間も余りありませんが、大阪空港の問題に関連して、そのほかの大阪以外の空港の問題について若干、質問します。  今度の大阪高裁の判決と昨日の決定、非常に重大な意味を持っていると思うのです。この経過について、ただいまの一問一答を聞いておりましても、いままで運輸省のやってこられたことは全く後手後手ときたと思うのですよ。そして、こういう重大な決定の下るところまできたという感じを深くするわけです。この点では私は、環境庁としても、無視されてはいないかもしれませんが、むしろ環境庁がもっと先手を打っていく必要がある、このことを痛感するのです。  たとえば羽田空港の周辺対策にしましても、実は非常にテンポがのろいです。先日もこの委員会で聞きましたけれども、たとえば周辺の達成期間、中間目標五年間、達成期間十年、非常にのろのろやっている。ところが周辺の住民の要望と比べると余りにもかけ離れているのですね。そういう中で、もうすでに御存じのように、大阪空港のあの判決が下りますと十一月二十九日には、空港のある地域の大田区の区長が、羽田空港の場合も九時以降の夜間飛行を中止してもらいたいという申し出をやりました。そうして十二月一日には品川の区長もやりました。十二月三日になると美濃部知事もやっているわけです。その問題は別としましても、これはある意味で、周辺住民の意向の反映であることは間違いないのですよ。そういう点で、たとえば環境庁も、あの羽田周辺の対策が非常におくれていることについて、もう一度ひとつ実態を洗い直して、運輸省に勧告を出してもらいたい、こういうことを考えるのです。もっと積極的に、もっと先手先手と打っていくような勧告を運輸省に対して行っていただきたい。これは羽田空港だけじゃありません。大阪空港の問題に影響を受けて裁判になっているところが大分あるようです、全国の空港でも。そういう点では環境庁もやはり責任を持って提案をすべきじゃないか、こう思うわけでありますが、長官の意見を聞きたいと思います。
  259. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 大阪の空港並びに空港周辺と東京では、大分、差があると思うのですよ。大阪の方は、私どもは非常に問題の空港だと思っております。羽田の場合、また非常に対策がおくれていると言われますが、やはり無限にある金ではありませんので、大阪を重点にして運輸省がおやりになるというのも、これもまた、やむを得ぬじゃないかと思うのです。しかしさりとて、他の空港はどうでもいいというわけにいきませんので、羽田についてはC滑走路の使い方あるいは他の、モノレールからこっちの内部の方ですか、住家のあるところですね、そういうところの航行の方法についての事前の改善なり、そういう問題をまずやるべきだということで、運輸省にいろいろとお願いをして、善処を求めるようにいたしておるわけでございますので、大阪と他の空港を全く同一視することは、先生も御承知のように、大阪空港というものは、またその周辺というものは、他の空港と比較して非常に問題が多いものですから、まず重点的にそちらを考えておるというのが現状であったわけでございます。さりとて、ないがしろにできませんから、おっしゃるように他の空港についても、できるだけの目を光らせて、私ども対策をとらせる、かように考えます。
  260. 米原昶

    ○米原委員 もちろん大阪空港の問題が、差し迫った一番、早くやらなくてはならぬ問題だというのは、いままでの経過からしても明らかなんですが、しかし、それだけに目を奪われていると、また後手になります。この点を私は言っているのです。  その次に運輸省の方に聞きたいのです。羽田空港の拡張の問題です。第二次空港整備五ヵ年計画は五十年度で終わって、五十一年度から第三次の計画が始まるわけですが、羽田の拡張問題はどのように検討されているか、聞きたいと思います。
  261. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 羽田の拡張といいますか、現在の羽田の空港を移転するといいますか、そういう点については、むしろ、いろいろ技術的な問題がございます。それで現在、技術的な問題について検討いたしております。  それから現在、策定中の第三次の五ヵ年計画は、今後どのように決定されますか、予断を許しませんけれども、その中でも、この羽田の問題は取り上げてまいりたいというのが、運輸省の基本的な考え方でございます。とにかく、現在は技術的な問題について検討をいたしておる段階でございます。
  262. 米原昶

    ○米原委員 私の聞いているのは、もっと海の方に移転するという問題があることは聞いております。しかし、それ以前に、たとえば去年発表になっておりますが、民間の研究グループ、航空政策研究会によると、昭和六十年の国内線の旅客数は現在の約四倍弱の四千万人程度となり、たとえ国際線がすべて成田へ移ったとしても、現在の空港ではとても国内線だけでも間に合わない。現在の五倍の広さを持った巨大空港にしなければならない、そういう提言をしておりますが、この点については、どう思っておられますか、見解を。
  263. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 これは、民間のいろいろな研究団体が、いろいろ有益な研究発表をされるということで、われわれとしては非常に参考になるわけでございますけれども、政府として、どのような考え方をまとめていくかという点については、そのような民間の考え方もいろいろ参考にいたしまして決めるということで、まだ、そういうふうな考え方に固まるとかいう段階ではございません。
  264. 米原昶

    ○米原委員 民間のそういうのはそういうふうで、わかりますが、しかし運輸省の予測もあります。運輸省の予測でも、羽田における国内線の旅客数は、五十五年で二千万人、六十年で三千万人、こうなっております。この予測が果たして妥当であるかどうかは別にしましても、この予測でも、現在の羽田ではとてもさばき切れない。当然、拡張について一定の案を持っておられるのじゃないか。この点どうでしょうか。
  265. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 昭和六十年を予測いたしますと、先生おっしゃるように、成田に国際線が移ったと仮定いたしましても、現在の羽田の規模で賄うことはきわめて困難だと思います。ただ、空港の広さがどれだけ必要かということは、単に滑走路が何本要るかというようなことのほかに、最近は、いわゆる公害問題ということもクローズアップされておりますので、空港敷地の広さというものはできるだけ広くとる、こういうこともございまして、恐らく五倍とか、そういう考え方が出たのではないかと思いますけれども、現実に発着する飛行機に対する容量という点から広さを考えました場合には、おのずから、また違った結論が出てくるのじゃないかと思います。
  266. 米原昶

    ○米原委員 実際のところを言うと、今度の大阪空港の判決に関連して、すぐに反射的に大田区、品川区、東京都が、ああいう申し入れをしたというところにも、ある程度あらわれているのですが、拡張は容量を広くして、飛行機の飛ぶところはずっと先の方だというなら、まだ理解できますが、いわゆる実質的な拡張ということになると、これは猛烈な、恐らく大阪空港以上の反対運動が起こるのじゃないかということを考えておいていただきたいのです。もしも、これがいまの町に近い方が広がるというような形になるなら、もう論外だ。少なくともあの飛行機も、ああいうことが決まっておっても、新聞にも出ておりましたが、モノレールの内側にずいぶん入っているわけです。入った場合には、政府の方で決められている基準とは違って、実際には品川区のあのあたりまで相当の騒音被害が起こっておるわけです。ですから、もう拡張という問題は、そういう意味での拡張というのは論外だと思うのです。この点は絶対にやめてもらいたいということを一言、言っておきますが、環境庁としてはどう思われるか、この点について聞きたいと思います。
  267. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生おっしゃるように、必要な拡張という場合には、それはもう人家の密集地帯に寄せての拡張ということはあり得ないし、またやるべきではない、当然また技術者も、そんなことを考えないと私は思います。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 その点はむしろ常識じゃないかと私は思っておるのです。
  268. 米原昶

    ○米原委員 しかし、先ほども航空局長からも話がありましたが、確かにいまのところ、さらに沖の方に移転するという問題があるそうですか、具体的なことは、まだ何も決まってないようです。そういう場合でも、いまのところ住民の反感が非常に強まってきておりまして、実は大田の区議会でも、去年、空港撤去の決議まで満場一致でやっておるのです。そういう実態があるということを忘れないでおいていただきたいのです。大阪空港の問題も重要ですが、羽田空港の場合だって住民の不満というのは、政府はまだ全然、感じておられないようだけれども、実際、相当深刻なものですよ。ですから、どういう形になりますか、いまの羽田空港に若干、手を入れるようなことは当然、行われると思うのですが、その場合にも都や区や関係住民の納得ですね、環境アセスメントの問題が、中公審の航空機騒音に係る環境基準設定の際の答申にもありますが、そういうアセスメントが最低必要条件だと思うのです。そうして、このアセスメントに基づいて、そういう移転とか拡張についての是非について環境庁意見表明があって当然だ、そういう点を必ず行うようにしていただきたい、こう思うのですが、環境庁の見解を聞きます。
  269. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私、何遍も申し上げておりますように、社会党、公明党さんからアセスメントについての法案の提案がございます。また申し入れもあるわけでございますが、これらのアセスメントの法案についての御意見を十分、参照いたしまして、私の方で目下、成案を急いでおります。次の通常国会、来年の通常国会には、ぜひ法案として出したいと思っておるわけでございますから、羽田の空港は、拡張問題が出た場合には、その法律に基づいた事前の環境影響評価というものが行われる、これは当然のことだと思いますので、むしろ私どもは、先生がおっしゃるまでもなく、その法律さえ提案しようという立場でございますので、事前の環境影響評価については十分やっていきたい、かように考えております。
  270. 米原昶

    ○米原委員 終わります。
  271. 島本虎三

    ○島本委員長代理 岡本富夫君。
  272. 岡本富夫

    ○岡本委員 大阪空港問題について、さっきと重複を避けまして若干お聞きいたしますけれども最初環境庁長官に、政府の姿勢として伺いたいのは、この前も、ちょっとお話をしておきましたけれども、裁判所の判決を一番最高にするのか。それから、この大阪空港の問題は、公害等調整委員会の調停を申請している、この調停があるわけです。それから、われわれ、こうしてこの国会審議をやっている国権の最高機関、この三つのものがありますが、よく答弁で裁判所の判決が出たらとか言われる。それは、この前も申し上げましたように、全国みんな裁判して判決しなければ何もできないということになったのでは、大変なことになるということで私は考えておるのですが、長官、この三つを一、二、三と位をつけますと、どういうふうに常識的な問題としてお考えいただけますか、ひとつ御答弁願いたい。
  273. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 内閣は国会に対して一体として責任を負っているわけでございます。国権の最高機関は国会でございます。その意味においては、国会における立法府としての意思決定ないしは行政に対する勧告権あるいは政策の決定といいますか、そういうことに関します国会での政府の責任ある表明あるいは国会議員の意思の発露というものが、やはり中心になって、第一義的には動いていくのが至当ではないかと思います。  ただ、司法権の意思の確定というのは、やはりいろいろ国民の権利を侵害された場合の一定の排除要求なり補償というものを求めるわけでございまして、その判決が最終的に確定した場合は、法治国である日本としては、当然それに行政府が従っていかなければならない、こういうふうに考えますので、同じ次元で、どちらが優先かということはちょっとできないかと思いますが、一般的に行政は内閣一体になって国会に責任を負うというのが、やはり現在の憲法ではあるべき姿だ。むしろ裁判による救済というものは別の面で、行政上のやり方についての批判なり責任というものは、あるいは結論というものは、国会と政府の間の問題として処理されるのが普通の行き方ではないか、かように考えます。
  274. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう一つ答弁が抜けましたのは、公害等調整委員会、当委員会でもたびたび論議しまして、公害等調整委員会の調停、こういうのがあるのですね。これは御存じだと思うのですが、答弁漏れですから。
  275. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 国会で決められました法律に基づいて調整委員会の調停というものが行われますし、しかも、その人選に当たっては国会の承認人事になっている重要な委員会でございます。この調停の結果というものは、当然、私どもは行政上、裁判と同様に尊重していかなければならない、かように考えております。
  276. 岡本富夫

    ○岡本委員 明確な答弁を得ました。  そこで、実はこの公害等調整委員会に、伊丹市の第一次調停団、これは亀岡さんが団長であります。それから第二次調停団、これは阪上さんが団長です。第三次、これは永長さんですね。第四次は甲川さん、第五次はだめで、第六次は東山さん、この調停団の皆さんが調停申請をしまして、そして十一月十四日、この一、二、三、四、六の調停申請の方々は公害等調整委員会の調停を受諾しておるのですね。ただ、いわば反対、反対というのではなくして一応、では、いろいろな意見を聞いてみようじゃないかということで調停を受諾したのです。その調停条項案というものの中に、低騒音大型機、すなわちエアバス、これについての関係書類、そういうものを申請人に対して明示をして、しかる後に、そういった行為をするなら行為をする、導入するなら導入するというような調停の事項が出ているわけです。これが本年の十一月十四日です。  ところが、運輸省としては、判決が出た直後、十二月二日ですか、このときに当たりまして、エアバス問題について、十二月二十日から日本航空及び全日空についてエアバスを、それぞれ一ないし二便導入する、あるいは明年一月十日からジェット機の発着回数を二百十回とし、うちエアバスの発着を四十回とするとか、あるいは国際線のエアバスの導入は明年七月を目途とするとか、こういう公害等調整委員会に調停申請されておる方々の意思を無視した一方的な発表をされておるわけです。これは公害等調整委員会の調停というものは非常に大事だという、いま長官からも発言がありましたが、これに大きな矛盾をしておるのではないか、私はこういうふうに思うのですが、長官はどういうふうにお考えになりますか。
  277. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 調停の決定の中にも、よくお互いに信頼関係を回復して、その導入についても、そういう意味の前提に立ってやるというふうになっておったと思います。私いま持っておりませんが、正確な表現は、あるいは別の表現になっておるかどうかわかりませんが、要するに趣旨は、住民の方々とも十分話し合って、お互いの理解のもとにやりなさいよということだったのじゃないかと思うのです。判決の趣旨も、やはりよく理解を得てということが、少し強い表現になっておると思うのです。私どもとしては、運輸省がそういうような声明をいたしておりますけれども、先ほど来、申し上げましたように一番、大事なことですから、これは一方的にやるような、またやり得るようなことではないだろう。環境に対するいろいろなデータを持って、よく話し合って、円滑にこの問題が進んでいくように、最大の努力を私は閣僚としても、いたす所存でございます。
  278. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほどは高裁の判決が出てこうだというお話がありましたが、調停委員会の調停も、そういうようになっておるわけです。そこで、これを判決直後に上告したからというので、運輸省は急に強い態度になって、こういうことを決定されたのではないかと思うのです。調停委員会の調停の方は、ころっと忘れておったのではないか。あのときは局長も飛行場部長も三時間も寝ていないというので、非常に大変な状態だったと私は思うのです。  そこで、これはまことにけしからぬことだと思いますけれども、いまさら、けしからぬと言ってみても仕方がないわけですからね。白紙撤回とか言っておりましたけれども、運輸省としては将来エアバスを入れようと考えておるし、住民の方は、もっとよくわからないとだめだ、こう言っておるわけです。この判決もまた、エアバスについては住民の皆さんからよく了解を得、理解を得て、ちゃんとしなければならぬということが出ておるわけです。十二月二日のこの予定表で発表されました三項目につきましては当然、手直しするように検討しなければならぬ。あなたは先ほどから慎重に検討、慎重に検討ということですが、これは局長の立場もわかるのです。わかるのですけれども、これは前向きに手直しするという方向に検討すると受けとめてよろしいでしょうか。これはひとつ局長から。
  279. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 先ほど来たびたび申し上げておりますように、昨日ああいう決定が出たわけでございますけれども、われわれとしては従来からの姿勢として、やはり疑問点については、これをできる限り解明いたしまして、関係の皆様にできるだけ理解を得る、こういう姿勢は従来から変わっていないわけでございます。したがって、それをさらに徹底をさせて理解を得て、この問題は解決してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  280. 岡本富夫

    ○岡本委員 局長、私はおとなしく——本当にこういう発表をしたのはけしからぬことです。しかし私は、調停委員会の調停の結果の方をころっと忘れておったのではないかと思うのです。これを忘れておらなかったとするならば、あなたの方では公害等調整委員会の調停については無視しておる、私はこういうふうに言わざるを得ない。判決、判決といって判決ばかり頭に来てしまっておる。したがって、その前の公害等調整委員会のこの調停については、もう吹っ飛んでしまったような感じがする。先ほど長官からも言明されたように、公害等調整委員会の調停も、判決も、国会の審議も、その立場は違うけれども同じ重さの役目を持っておるのだ、こういうことです。私は先ほどの皆さんの質問や答弁を聞いておりますと、あなたは判決ばかり頭に入っておる。だから私は、これについては調停委員会の調停もあるから、これに対する三項目は手直しをしていくのだ、そういうふうに検討するというならば了解できますけれども、先ほどと同じ答弁では、質問の趣旨と違うじゃありませんか。これをひとつ、はっきりしてください。
  281. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 これは調停委員会の中間調停について、われわれ受諾いたしたわけでございますし、調停団の方々には、その後も、このエアバスの問題については資料を公開いたしまして、いろいろ御説明をしてきておるわけでございます。したがって、そういう方々に対する理解を深める努力は従来もいたしておりますし、また今後も、それを徹底させて、さらに理解を深めてエアバス導入を図っていきたい、こういう姿勢を持っておることは変わりございません。
  282. 岡本富夫

    ○岡本委員 局長、この五つの調停団の方々は、ほかにまだ絶対受けぬと言って反対している調停団もあるわけですが、あなたの方の意見を聞こうというような御意見まで示しておるわけでしょう。それを無視して十二月二日に出しておるわけですから、次元が違うわけですよ。従来もやった、これからもやっていきたい、これはわかりますし、先ほど環境庁長官が言った、話し合わなければだめなのだということはわかる。しからば、五つの調停団の方々に二十日までに理解をしていただく、あるいは受諾をしていただく、それだけの自信がおありですか。なければ、いまの十二月二十日というのは手直しをしなければならぬでしょう。手直しをする方向に検討しなければならぬのと違いますか。これは裁判の問題と違うのですよ。行政の問題で私は話しているわけですからね。それならば手直しを検討できるか、こういうことを言うておるわけですから、裁判のことばかり頭に入れぬでおきなさい。いかがですか。
  283. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 調停条項の実施のためには、調停事項促進協議会というものが現にございまして、最近も開いておりますし、これはもう活発に調停団の皆様とは、調停条項を現実に実施する上において協議をいたしてきておるわけでございます。したがって私どもは、そういう方々に対する理解というものは相当、進んでおると理解をしてきたわけでございまして、そういう前提で、実は十二月二日には、いろいろな運輸省の施策の一環として、エアバス導入を発表させていただいたわけでございます。われわれの考えは、調停団の方々との密接な協議というものが前提に立っておるわけでございます。
  284. 岡本富夫

    ○岡本委員 答弁をちゃんとしてくださいよ。それはわかるのです。わかるけれども、今月二十日まであと十一日しかない。この間に調停団の方々が受諾するかどうか。いままで積み重ねた努力もありましょう。これからもありましょうが、もしも、しなかった場合ということを考えますと、こういうように発表したものに対して若干の、若干と言うとおかしいけれども、手直しをしなければならぬのじゃないですか。何でそれに固執するのですか。これは裁判のことじゃないです。手直し、見直しをするという考えはございますね。それでなかったら、私はこの調停はめちゃくちゃになってしまうと思うのです。これをひとつもう一度、答えできませんか、きょうは。
  285. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 特に、それは期日を固執するということではございませんけれども、私どもは、従来からのわれわれなりの努力というものを踏まえまして、ああいうスケジュールを発表したわけでございます。その前提として先ほど来から、たびたび申し上げておりますように、環境庁との間でいろいろ詰めがございます。そういうものをいたしまして、それを発表する、こういう手順を踏んで、それによって理解を深めて進んでいく、こういうことを考えておるわけでございます。
  286. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、結局この十二月二十日の期日に、これに固執するんじゃないのだ。あと、まだこの調停申請団の方々も、やはり環境庁のいろいろのアセスメントといいますか、いろいろなものも、またお聞きすると思いますし、それからでないと了解はなかなかしないと私は思うのです。そうすると、いまの答弁では決して十二月二十日に固執するんじゃない。固執しないということは手直しをしなきゃならぬ、こういうふうに受けとめてよいと私は思うのですが、これは環境庁長官局長も帰ったら、また責任になるというので、相当、慎重にしておると思うのです、片方に裁判がありますからね。ですから、閣僚の一人として、エアバス導入の日にちについては、これは裁判の報道を見ましても、手直しを迫られることになったということでありますから、運輸大臣と話をして、そしてやはり、この調停申請団の方の皆さんの意見も聞いて、それから、やらなければならないという勧告といいますか、話をして、それでやっぱり日にちの問題については手直しをしていく、見直していくというように、ひとつ理解していいでしょうかね。
  287. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 岡本先生、御指摘のように、調停を受け入れた方々と、それから運輸省も調停は受け入れたわけですから、その受け入れた中身に、低騒音の大型機への移行が、環境基準達成のための発生源対策一つであることにかんがみて、これは申請人の方々に進んで関係資料をいろいろ出して、よく説明をして、それで所要の措置を講じなさいというような趣旨が調停の中にあるわけですね。それを運輸省、受諾しているのですから、それをやらないで、やるということは、これはもう私はできないと思うのですよ。これは、裁判については運輸省は、他のいろいろな面があるから、総合的に法務省と相談して政府一体になって、この前、申し上げたように、われわれの権限外のこともありますから、上告しましたけれども、調停の方は受諾しているわけですから、受諾している者がこれに違反することはできないですよ。だから、私はそれが間に合えばいいが、間に合わなければ当然、二日の声明が法律じゃないんですから、私はそう思います。それはおっしゃるとおりです。
  288. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、環境庁長官の御意見もそのとおりでありますから、ひとつ、それを了解しておきましょう。確かに運輸省の方にもそのことを伝えて、そして政府として、ひとつ責任を持ってやっていただきたい。  次に、大阪空港の騒音については、これはもう欠陥空港だということでありますし、どうにもならない。これは飛行場がなくならないと、どうしようもないわけですが、そのためにやはり新空港の建設、こういう構想が出ているわけですから、これについての計画あるいはまた現在お持ちになっている運輸省としての考え方、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  289. 中村大造

    ○中村(大)政府委員 新空港の構想は、昨年航空審議会からの答申を得まして、現在、泉州沖におきまして必要な環境調査をまず行う、こういうことでございます。ただ具体的な場所、方法等につきましては、地元大阪府といろいろ御相談をいたしておるところでございまして、その調査そのものに、やはり二年ないしは三年かかるのではないか。しかる後に着工ということでございまして、やはり完成は六十年前後、こういうことに考えております。
  290. 岡本富夫

    ○岡本委員 では空港問題ばかりやっていると、時間がないので、きょうは、ちょっとあれですが、運輸省、これでもう結構です。  環境庁、実はこの間、窒素酸化物の第二次の排出基準について発表をされておりましたが、これを見ますと、第一次は六〇%ぐらいの発生源施設に対して規制の網をかけた。——だれに聞いているのや。聞いてないと、あなた答弁できないよ。
  291. 島本虎三

    ○島本委員長代理 私語は慎んでください。
  292. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから次に第二次については、わずか五%しか、してない。その中に鉄鋼の焼結炉、こういうものが規制から見送られた。これについては、これは細かいことを言っておりますと時間がありませんから、あれしますけれども、技術的にどうだとか、いろいろなことを言っておりますけれども、技術は、これは私調べたところによると非常に進んで、たくさんやっております。かつてSO2、この規制についても環境庁がやりましたときに、非常に技術開発ができないとか、そういうことで猛反対があった。ところが四十二年当時が〇・〇六三ppmであったところが、四十八年には〇・〇三ppm、こういうように低減しておる。これは環境庁は二十四時間値〇・〇四ppmの基準を決めたから、それに向かって努力をしたから、こういうことになったわけですが、そのことを見ますと、この今度の第二次発表において、鉄鋼の焼結炉の規制を見送られたということ、どうも納得いかない。これについてひとつ御答弁をいただきたい。これは局長からで結構です。
  293. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず最初の六〇%という数字をお挙げになったのでございますが、これは第一次と第二次と合わせると全体の放出量の六〇%を持っておる規制対象施設になっておるということでございまして、第一次と第二次と両方で、それではカット率がどれくらいかと言いますと、粗く申しますと四〇%前後であります。つまり一〇〇出しているものを四〇%前後にするということでございます。そういうことで、両方合わせますと二五%弱になるということでございます。  そこで焼結炉の方でございますが、焼結炉の方のガスは、ばいじんとかSO2とかいう問題がございまして、現在、相当大型な実験施設ができてまいりました。やっておりますが、この実用化の見当がつくのは、来年いっぱいはまず、かかるということで、現在は実験的なもののケースとしては確かに動き出しておるものはございますが、これを全国一律に法律の規制というところまでには、とうてい、いかないというところでございます。  SO2の問題の御指摘がございましたが、SO2とNO2とは、もう対策のむずかしさが非常に異なっておりまして、SO2の方は、四十四年に環境基準を決めたときから、この脱硫の技術がもうすでにパテントとしてあったわけでございます。NO2の方は、四十八年に環境基準を決めたときには、そういうものがなかったというところで、必死の開発をしておるというところでございまして、SO2の問題は非常に長い間かけて、いまここに来ておりますが、NO2の問題は、昨年からことしにかけて、やっとクリーンのガスの処理がめどがつき、汚いガスの処理が来年でなければ、めどがつかないということで、今回、焼結炉は見送らざるを得なかった、こういうことでございます。
  294. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは私、時間がないから次の機会にやりますけれども、長官に言うておきたいことは、じつは川鉄の千葉工場が、焼却炉の煙硝装置をテストプラントで実験しますと九〇%の煙硝効果を上げておるということで、いままでの悪い高炉を全部いい高炉にかえていくというようなことをやろうとしたときに、鉄鋼連、特に新日鉄あたりから、そんなことをしては困るというような圧力がかかっているというのですね。これは私たち調査に行って、向こうの方々から話を直接、聞いたわけですが、こういうようなことで、よくしようとすると、そんなことをやってもらっては困るという鉄鋼連盟の圧力、こういうことでは、私は本当に環境保全というものは将来できなくなるのではないかということをつくづく感じたわけです。これは今度、次のときにしますから、頭に入れておいてください。  そこで具体的に、神戸市の市内が非常に汚染されておることがわかりまして、神戸市あるいはまた環境庁からも、すでに調査費を出して、灘区あるいは東灘区、こういうところの調査をやっておりますね。それでその結果、有症率あるいは、いろいろな病気その他を見ますと、川崎や尼崎と余り変わらないというような結果が出ておりますが、これはいつごろ神戸市を公害指定地域にして救済するようにするのか、これをちょっと承っておきたい。
  295. 野津聖

    ○野津政府委員 神戸市の地域指定の問題でございますが、ただいま御指摘ございましたように、神戸市につきまして現在、環境の汚染の程度というものが、いわゆる調査の発動要件に合っているということになりまして、今年度におきましての健康調査を含めました環境調査実施するということになっているわけでございまして、その結果を待ちましてから、指定という行為になってくることでございますので、いまは、その前段階としまして今年度、調査を行うということになっているわけでございます。
  296. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは調査するとしますと、環境庁からすでに調査費が出ておるわけでしょう。神戸市自体だけでやっておるわけですか、そうでないでしょう、環境庁からも調査費が出ているでしょう。そうすると調査結果というのはすぐ出てくるのじゃないですか、いかがですか。
  297. 野津聖

    ○野津政府委員 環境庁といたしましての調査を今年度、実施するということで、先般、神戸市の調査実施するということに決めたわけでございまして、それまでの調査につきましては、これは神戸市独自で実施されたというデータをもとにいたしまして、環境庁としての調査の発動要件に合致しているということで、今年度、調査実施するということになっているわけでございます。
  298. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると今年度、調査をして、その結果によって指定していく、こういうことですね。では、これはそういうように了解しておきましょう。  自然保護局長に伺いますが、芦屋市の城山というところ、すでに私、あなたの方に連絡してありますけれども、この地域に五千百三十平方メートルの住宅地造成をやろう、こういうことで、いろいろと芦屋市にも申請し、あるいは県にも申請しようとしておるわけですが、この点について、これはちょうど国有保安林のすぐ下でございまして、しかも、この地域の地質は花商岩の風化したところでありまして、昭和九年の室戸台風あるいは十三年の台風、二十五年のジェーン台風、近くは四十二年の豪雨があったときも、上の土が国有林の方からどんどん流れてきて、私の知っている人ですけれども、近藤さんというところが首まで埋まっているのですね。あなたの方に言うと、これは公園の中に入ってないから、こうおっしゃいますけれども、ここを宅地造成すると、いま、ふだんでも雨が降るとどんどん流れてくる。後ろが国有保安林です。それがどんどん、また崩れるに決まっておるわけですが、これについて、どういうように考えられるか。
  299. 信澤清

    信澤政府委員 お話ございましたように、昨日、先生からそのお話を承りまして、私どもなりに県あるいは市に実情をお伺いしてございます。お話ございますように、城山の近くで宅地造成を行う、これに対して近辺の住民の方を中心に、いまお話ございましたような主として防災上の見地から、この計画に対する反対がある、こういうふうに伺っているわけでございます。これも、いま先生お話がございましたように、実は公園の地域ではございませんで、この地域は都市計画法の市街化区域になっている。したがって当然、宅地造成等の行為につきましては、県の知事の許可が要るのであろうと思います。たまたま芦屋市の場合には開発指導要綱というのを決めておられるようでございまして、いわば地元の開発を事前にチェックをする、こういうたてまえをとっておられるようでございまして、本年七月一日、開発要綱に基づく事前協議が行われている、こういうような状況である。なお土地の状況等、いま先生、御指摘のようなことのように伺っております。実際その場所を見ておりませんのでわかりませんが、お話ございましたように、四十二年の集中豪雨の際に山崩れがあった、こういうようなことも伺っております。  そういうことで、県の許可申請は出ていない段階で、いわば事前の指導を市がやっていただいている、こういう状況でございますので、なおよく、それらの事情調べさせていただきたいと思います。
  300. 岡本富夫

    ○岡本委員 林野庁長官、この点について、すでにあなたの方に調査要請をしてありますが、いかがですか。
  301. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕  この城山の、ただいま御指摘のございました国有林の状況といたしましては、面積が大体十三・二八ヘクタールございまして、御指摘のように基岩といたしましては花崗岩でございます。山の状況はアカマツ、クロマツの天然林で、林相といたしましてはやや貧弱ではございますが、これは大正六年に土砂流出防備保安林として指定しておるわけでございます。したがいまして、私ども治山事業といたしましては、三十六年度あるいは四十二年度、四十八年度、こういうことで山腹工なり、あるいは堰堤を入れるというようなこと等をやっておりまして、今後も保安林としての機能を果たすように、渓間工としてのダムを入れるとか、そういうことで保全に十分、注意してまいりたい、かように考えているところでございます。
  302. 岡本富夫

    ○岡本委員 ここから大阪営林局の方に協議申請、協議事項が出ておるはずですよ。それをあなたの方では受けておるわけですけれども、この地図で見ますと、ここはあなたの方の国有保安林なんです。その際なんです。ここに堰堤がある。その堰堤が崩れておるのですね。この下をやりましたら、これは上から崩れるに決まっておるのです。この下にもたくさん家があるのですが、やられたんじゃ住んではおれぬというわけですよ。それについて建設省の計画局の方からひとつ御答弁いただきたい。
  303. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 この土地の状況並びに現在、開発しようとしている計画の進捗の状況等につきましては、ただいま自然保護局長の述べられたとおりでございます。建設省としましては、都市計画法の市街化区域の中にございますので、宅地造成につきましては事前に知事の開発許可が要ります。その際、その危険とか、あるいはその開発の質などを、当然この中に考慮して許可をすることになりますが、さらにこの区域は宅地造成等規制法による規制区域に該当しておりますので、すなわち、ここは災害のおそれがあるというので、あらかじめそういう地域を指定してあるわけでございますから、これによる許可を当然、知事がしなければならない。さらに風致地区に指定されております。これも知事が、その風致という面から、これを都市計画上の判断を加えまして、条件をつけて制限することができる、こういう仕組みになっているわけでございますが、現在のところ、まだ知事に対しての申請がなされていない、地元での調整段階にあるという段階でございます。われわれとしましては、この安全性を十分に注意すべき地域であるというふうに考えますので、知事がそういう許可を行う、処分を行う際に、建設省としましてもそういう安全性の確保につきまして、十分、遺憾のないように指導をしてまいる所存でございます。
  304. 岡本富夫

    ○岡本委員 特に局長に申し上げておきたいことは、それから林野庁も、ちょうど足元を削られるのですからね。そうしますと国有林はもう崩れるに決まっておる。それがひいては花商岩の風化地域で、ここをちょっとでもやりますと全部、崩れていくところですからね。だから私は、この横の剣谷という山も、市に全部買わして、さわらないようにした。四十二年にちょっと開発しただけで、水道の水源地をちょっとさわっただけで、もう下は大変だった。ということは、一つはそのことによって自然公園、上の公園はずれてしまう。それからあなたの方の、林野庁の方の国有林はだめになってしまう。こういうようなところですから、これはもう絶対さわってはいかぬところなんです。特に計画局長に、これは知事が許可するんだから、わしのところは関係ないというようなことでは、これは話にならぬと私は思うのです。ひとつ厳重に知事の方に、あなたの方から指導してもらいたい。知事の許可だから、わしのところは関係ないということだったら、あなたのところは何するのだということになる。ひとつその点を、はっきりした答弁をもらいたいと思います。
  305. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 知事の許可の際に、処分につきましては十分、指導をいたすつもりでございます。
  306. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、これで、あと坂口君と交代しますから。
  307. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 坂口力君。
  308. 坂口力

    ○坂口委員 地盤沈下の問題を少しやらせていただきたいと思いますが、長官も少し五時過ぎに御用があるようでございますので、簡潔に短時間でやりますので、ひとつお願いをしたいと思います。  この地盤沈下の問題につきましては、前回までのうち、具体的な例につきまして一遍、取り上げさしていただきました。全国調査のいろいろの結果も出ておりますが、どの調査を見ましても、かなりな都道府県に地盤沈下が及んでいることはもう明らかであります。この地盤沈下に対しまして環境庁は、前国会に地盤沈下防止法案を提出するやに聞いていたわけでございますが、しかし、これが結果的には提出されずに終わったわけであります。また次の通常国会には、この地盤沈下の防止法案を提出されるということが言われておりますが、この点ひとつ長官に、まずお聞きをしておきたいと思います。
  309. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私ども、地盤沈下の防止法案はぜひ実現をしたいという情熱に燃えているわけでございますが、先生、御承知のように建設、通産それから国土と、直接いろいろ関係があるので、建設の方では大体、地下水の全体の管理という面から、いろいろ御意見があります。それから通産の方では、一定の制限をするわけですから、代替用水がなければ全部ストップしてしまうというようなことで、どうしても代替用水の確保という面から、いろいろな意見があるのであります。そこで実は前通常国会のときは、何とか三省、それから水道関係、飲料水に地下水をどんどん使っているところ、たとえば青森みたいなところがございますので、厚生も関係があるわけでございまして、それらを含めて国土庁が主になって調整に当たっていただいたのです。大体いいところまでいったのですけれども、まだ全体の四省の意思統一が成らない。そんなことで、実はいろいろ党の方でも党にその調整のあれをお願いしたり、いろいろいたしましたのですが、結局いいところまでいって物にならなかったというのが実情でございます。来年は何とかこれを実現を見たいというつもりで、目下、精力的にいろいろ検討あるいは関係各省との折衝に当たっているというのが実情でございます。
  310. 坂口力

    ○坂口委員 新聞の報ずるところによると、建設省からは地下水の保全法案というのを出されるというような報道も流れておりますし、あるいはまた通産省からは工業用水法の改正案が出されるというような報道がなされているわけでございます。そしてまた環境庁から地盤沈下の防止法案というものが出るということになりますと、非常に形としてはややこしくなってくるわけです。これはもう一つにまとまれば一番いいと思うわけです。これは建設省、通産省の方、この点いかがでございますか。私も新聞報道だけでしか存じておりませんので、実際のところは、この次に出されるおつもりがあるのかどうか、両省からひとつお伺いします。
  311. 佐藤毅三

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  建設省といたしましては、御案内のとおり地下水問題は国土保全の問題であると同時に水資源の確保の問題であるという見地から、地下水の総合的な管理が必要ではないかということで、地下水法案を一応、御提案したわけでございます。この考え方は、先ほど環境庁長官からお話ございましたような、地盤沈下防止のための地下水規制ということも同じように考えておるわけでございますので、やはり調整ができない問題ではないというふうに考えておる次第でございます。ただ、前国会におきましては調整が完全にできなかったということでございますが、今後におきましても非常に重大な問題でございますので、関係省庁におきまして調整を急ぎまして、また議員立法の動きもあるのでございますので、そういう面との調整も考えながら、必要な法案の成立を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  312. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 お答え申し上げます。  水の問題は大変むずかしい問題でございますが、その水の問題を一律に、すべて同じようなことで規制するというのでは、なかなかうまくいかないのではないか。と申しますのは、水の供給なり需要の主体あるいは使用形態というものが、たとえば上水道、農業用水、工業用水、いろいろ違っておるわけであります。私ども考え方といたしましては、やはり、そういう地下水規制を需要者にしてもらうという意味で、やはり一応、一つの設備を持っている工業用水というものの方が規制はしやすいけれども、ほかのものでは同じようにいかないのではないか。そういうことから、やはりそれぞれの水の形態に応じた規制というものが必要であろうというふうに考えております。  そこで私ども、産業構造審議会の中に水の基本政策部会というのを設けまして、先般そこの中間答申という形で御答申をいただきました。したがいまして、今後この中間答申の線に沿いまして、関係の各方面といろいろ御協議申し上げ、御理解をいただきまして、私どもといたしましては、でき得れば、そういう成案を得て法案にいたしたいというふうに考える次第でございます。
  313. 坂口力

    ○坂口委員 いま三省からお聞きしたわけですが、三省とも何らかの改正を加えて新しい法案を出したいというお気持ちには、どうも変わりがないようでございますけれども、各論になってまいりますと、なかなか一致しにくいということのようでございます。建設省と環境庁との間では、さほどの意見の違いがないけれども、やはり通産省との間で意見の一致を見にくい点が多いのではないかと考えるわけです。確かに通産省がおっしゃるように現在、水を使用している工場、中小企業も含めてあるわけでございますから、即刻これを停止してしまうという乱暴なことは当然できないわけでございまして、その代替の水をどう確保するかということにも、これは結びついてくるわけでございますけれども、その問題はさておくとしまして、何とかして地盤沈下防止法案あるいは名前はまた変わるかもしれませんが、この地盤沈下を防止し、水資源を確保するということで、一つの法案がどうしてもこれはまとまらないことには大変なことになってくる。  この前、具体的なことを申しましたけれども、特に濃尾平野等は、なおかつ地盤沈下が続いておりますし、伊勢湾台風のときにやられましてから、その後、堤防等の建設をやりましたが、すでにもう伊勢湾台風当時の堤防の高さ、いわゆる建設以前の高さに戻ってしまっている。むしろ、そのときよりもまだ低くなってしまってきているというような現状でございますので、ことしなんか台風が余り大きなのが来なかったからいいようなものですが、来たら、これは大変なことだろうというふうに思っていたわけです。そういうふうな意味で、これはぜひ通常国会には提出をしていただきたい。議員立法など、いろいろあるということですけれども、これは政府提案の法案として、ぜひ出してもらわなければいかぬと思うわけです。長官、このまとまらなかったお話、先ほど聞いたわけなのですが、もうちょっと具体的に掘り下げて言っていただくと、一番まとまらなかったところというのは、どういうところが一番まとまらなかったのですか。そのいろいろ意見の違い、小さな問題を別にしまして、一番、核心に触れるところはどういうことだったのですか、ひとつ具体的に。
  314. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 やはり工業地帯の代替用水の問題で一番ネックになった、率直に言えばそういうことではなかったかと思います。それで農業関係先ほど私、通産、建設、厚生と言いましたが、農林省もやはりあります。それと環境庁、国土庁、この六省がやはり意思統一をしなければいけませんので、役所だと御承知のように役所のお互いのなわ張りもありまして、なかなか事務的にまとまっていかないのです。したがって党に中に入ってもらって、そして相当いいところまでいったのです。それが実らなかったのですが、私の方と国土庁と両方が中心になって——私は所管にこだわらないのです。もう環境庁は地盤沈下が防止されさえすればいいのですから、全く所管にこだわらない。私のところなり国土庁が中心になって何とかまとめていきたい。これから真剣にひとつ、やるつもりでございます。
  315. 坂口力

    ○坂口委員 そうしますと、もう一つ、通産省の方にお聞きいたしますが、通産省の方は、現在までの工業用水法の改正案というような形ではなしに、一本の法案にまとめるという方向の御意思はあるわけでございますか。
  316. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 先ほども御答弁いたしましたように、それぞれの水に応じて、それぞれの対策があるべきだというふうに考えておりますので、一本化の法律ならば、そういう点うまくいくのではないかというお話でございますけれども、むしろ、産業構造審議会の御答申の中でも——全般的なそれぞれの農業用水、上水あるいは工業用水、全部を含めた需給の問題というのは、これはどこかで見る必要があるでしょう。これはどこでおやりになるのか、国土庁でおやりになるとか、あるいは、それぞれあると思いますけれども、ただそういった総合的な水需給問題というものを扱う場所と、それから今度は、それぞれ農業用水なり上水なり、あるいは工業用水というものをどういうふうにやっていくかというのは、やはりそれぞれのつかさ、つかさでやっていくのが一番いいのではないか。そういうふうな形のものであれば、私どもは結構うまくいくのではないかというふうに考えています。
  317. 坂口力

    ○坂口委員 何となく奥歯に物のはさまったような表現ですけれども、確かに水は要るわけですから、もしも工業用水として地下水のくみ上げを禁止するということになれば、どこかから、これを持ってこなければならないことは確かであります。その辺のところは、きょう言って、あすというわけにばいかないわけでありますから、そういった問題は引き続いて順次、建設をしていかなければならないことは当然だろうと思うのです。しかし、このままで地下水をどんどんくみ上げていくということになれば、地盤沈下が起こってくることは事実でありますし、いつ地震があるかもわかりませんし、また台風が来るやもわからないわけでありますから、この辺を考えますと、これは総論的には当然、合意をしなければならない問題だと思うし、通産省も総論的には、これは合意をしておいでになるのではないかと思うわけであります。余り小さなことにこだわらずに基本的な問題でぜひ一致をして、そしてこの法案の方向に向かうべきだと思うのですが、これは長官、自信のほどはいかがでございますか。この前いいところまでいったけれども、党に中に入ってもらって、うまくいかなかったというお話でございますけれども、またこの次、いいところまでいったけれども、だめだったというようなことがあっては困るわけでありまして、内閣の方は困ったと言っておってもいいのですけれども、住民の方は大きな台風だとか地震でもって非常にえらいことになるというようなことになりますと、うまくいかなかったでは済まぬことになるわけであります。これは何が何でも、ひとつこの次の通常国会では、どうしてもこの法案を成立させるという、かたい不退転の決意をひとつ聞かしていただきましたら、しっかり言っていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。いかがでございますか。
  318. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私、先生おっしゃるとおりの気持ちでおりまして、とにかく、いろいろな意見があっても、やはりまず規制の網をかぶせていかなければいかぬじゃないか。それには、最初、私どもの原案にもありましたように、一定の年限を、あるいは地域によってランクを決めまして猶予期間を置くなり、あるいは、それについてのいろいろ代替の用水確保のめどをつけつつやるようにする。しかし、どうも代替用水、代替用水とばかり考えておりますと、いつまでたってもなかなか進まない。やはり、とめるという方向を出しておかないと、代替用水の確保というものになかなか真剣にいかないものですから、私どもは地盤沈下の防止をするためのそういう姿勢だけ、はっきりして、それから、もちろん代替用水の確保というものをそれと並行して十分やらなければ、人間が飲んだり、あるいは工場や何かに使う水を、代替用水のめどもつかぬのに全部とめてしまうというわけにいかぬ。そういうことを十分、理解願って、来年の通常国会は何としてもやりたいと思います。どういう方法になりますかは、それぞれ関係各省と相談をしていかなければいけませんが、先生のおっしゃるのと同じ決意で、何とか努力をいたしていきたい、かように考えます。  一番のネックはやはり都会地にあるのです。権限が知事ということになりますと、規制に急ぐ余り代替用水の確保のめどがつかぬのに規制ばかり先行すると、すべてのあれがとまってしまうのじゃないかという点についての、いろいろな危惧があったりしまして、私どもは案をつくりますと政調へ持っていく、政調の場合に、そういう議論が出たりして、実は相当、時間がかかってしまった点もございます。通産省では、工業用水の確保と、それから工業用水に地下水のくみ上げを使っているところが多いものですから、これがどうなるかによって、産業の問題にも非常に影響があるというので、通産省の心配なり、あるいはいろいろ考え方もわからぬわけではありませんので、これらは私なり国土庁の長官なりが中に立って、本当に自分の所管にこだわらないで、最もみんなが納得するいい案をつくり上げることが可能ではないかと私は思いますので努力は最大限いたしたい、かように思います。
  319. 坂口力

    ○坂口委員 最後に、もう一つだけお伺いして終わりにしたいと思いますが、現在、工業用水法で規制地域がございますけれども、これが新しい法律ができるということになれば、規制地域の拡大というようなことは全部、解決するのかもしれませんが、しかし工業用水法ができましたのは昭和三十一年でございますか、ですから、それからかなり日時もたっておりますし、あの当時、規制地域になった以外のところで、かなり急テンポに地盤沈下の進んでいるところがあるわけなんですが、これは新しいものができれば、私いまから申し上げるようなことは要らないかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、現在の工業用水法でいくということになれば、この規制地域というものを若干、拡大をするなり、しないことには、どうにもならない点もございますので、その点そういうお考えもあるかどうか。法改正あるいは新しい法律をつくるということとあわせて、過渡期的な措置と申しますか、そういう意味でお考えになっているかどうか、これだけ伺っておきます。
  320. 伊藤和夫

    ○伊藤(和)政府委員 お答えいたします。  工業用水法の施行以来、私どもといたしましては、まず初めは既成工業地帯を中心に指定してきたわけでありますけれども、その後、先生指摘のように、局地的ではありますけれども全国的に地盤沈下が広がってきておるということで、たとえて申しますと本年の七月に既成工業地域以外の仙台地域というものを指定しております。現在、十四地域というものが指定になっております。現在、地下水問題があると指摘されておりますのが大体、四十六地域と言われております。もちろんその四十六地域につきまして、その深刻性はそれぞれ非常に深刻なもの、さほどでないものというものがあると思いますけれども、今後とも私どもとしては現行法の範囲でも、やれるものはできるだけ早急に地域を拡大してまいりたい。ただ現在の法律では、先生御案内のように新規の規制というものは、工業用水道が布設されているか、あるいは布設される見込みが近いものに限られております。そこに一つの現行法の問題点があるわけでございます。私ども今後、新しく法律をつくります際には、その点は、新規指定につきまして、すぐ代替水の供給はなくとも、地盤沈下の現状を抑えるために指定していく、そういう地域では、水の使用合理化というものを推進させていって対処させたい、そういうふうに考えておるわけで、いずれにしろ今後とも地盤沈下地域の防止のための地域指定の拡大ということを図っていこうということは、現行法におきましても、あるいは今後、考えております新法につきましても同様でございます。
  321. 坂口力

    ○坂口委員 まだ、もう少しお聞きしたいこともございますが、次の機会に譲りまして、きょうはこれで終わらせていただきます。
  322. 渡辺惣蔵

    渡辺委員長 次回は、来る十二日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会