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1975-12-11 第76回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月十一日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 下平 正一君    理事 大竹 太郎君 理事 片岡 清一君    理事 野中 英二君 理事 勝澤 芳雄君    理事 野坂 浩賢君 理事 平田 藤吉君       唐沢俊二郎君    佐藤 守良君       井上  泉君    太田 一夫君       久保 三郎君    紺野与次郎君       沖本 泰幸君    渡辺 武三君  出席政府委員         内閣総理大臣         官房交通安全対         策室長     竹岡 勝美君  委員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   森  郷巳君         大蔵省銀行局保         険部長     山橋敬一郎君         大蔵省銀行局保         険部保険第二課         長       田中 哲男君         農林省農林経済         局農業協同組合         課長      永井 和夫君         運輸省自動車局         参事官     宇津木 巌君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 本日の会議に付した案件  交通安全対策に関する件      ————◇—————
  2. 下平正一

    下平委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野中英二君。
  3. 野中英二

    野中委員 私は最初に、自動車損害賠償保障制度のあるべき姿についてお聞きしたいと思っておるわけであります。  自動車損害賠償保障制度は、発足以来すでに二十年を経過したわけでありまして、その間、自動車の著しい普及と交通事故の増加に対処しつつ、事故被害者救済という目的を果たしてまいりましたけれども、社会経済の諸情勢に著しい変化が生じている現在、自賠責保険というものをどういう認識のもとにとらえていくべきか、こういう疑問を持つわけであります。  御存じのとおり、自動車損害賠償保障法の第一条にうたってあるわけでございますが、一体この第一条にうたってある損害賠償保障するという制度、あるいは後段に書いてあります被害者保護を図るということ、いずれに重点があるのであろうか。自賠責保険というものを分類いたしますと、まず社会保障的な役割りを果たしているという考え方一つあるわけであります。同時にまた、加害者となる可能性を有する自動車保有者集団的保障制度としての立場からの賠償保険として見ることができる。一体この自賠責の基本的な考え方はどちらにあるのか、この辺をまずもって山橋保険部長にお伺いをしたい、こう思うのです。
  4. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自動車賠償責任保険の本来の趣旨あるいは重点はどこにあるかという御質問でございますけれども、大蔵省保険部立場からこの自動車賠償責任をながめましたときには、これは一種賠償責任保険という観点からながめることができるかと思います。  賠償責任保険の本来の趣旨は、ある事故によりまして加害者被害者に担保すべきところの賠償責任保険するということでございまして、こういう意味におきましては被害者保護、特に自動車賠償責任保険の場合には、そういう賠償責任の中におきましても交通事故による被害者立場救済するという点に重点があろうかというふうに私たち考えておるわけでございます。  先ほど先生から、これは一種社会政策的あるいは社会保障的な性格を持ったものだというお言葉がございましたが、まことにそのとおりだと私たちも思っております。そういう意味におきまして、自賠責保険的な性格に着目いたしますれば、これは被害者保護という点にその第一のポイントがあるのではなかろうかというふうに私たち考えておるわけでございます。
  5. 野中英二

    野中委員 この基本的な考え方について運輸省にも聞いておきたいのです。宇津木参事官からお願いいたします。
  6. 宇津木巌

    宇津木説明員 お答えいたします。  基本的には、ただいま大蔵省保険部長からお答えになったとおりでございます。
  7. 野中英二

    野中委員 それでは、これを二つに分けて考えて一応質問を続けていきたいと思うのです。  まず第一に、これが先ほども申し上げましたように有害加害者となる可能性を有している自動車保有者集団的保障制度ということからいく考え方、いわゆる賠償保険としてのみ考えているということになりますと、加害者被害者の個別の事情によって損害額が変わっていくはずだ。この損害賠償の一時的、基礎的保障を行うということは、保障みずからに限度があるものであり、被害者保護目的というものが本当にこれで達せられているのかどうか、このことをまず第一にお聞きしたい。先ほど山橋さんは要するに賠償保険としての自賠責、こういう主張が第一点にあったわけでありますから、この第一の点について私はお聞きしたいのです。賠償保険であるとするならば一時的に基礎的な保障だけで済むものではない、私はかように考えております。
  8. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  現在の自賠責保険賠償責任として十分なものであるかどうかという御質問だと思いますけれども、現在の自賠責保険賠償責任という形をとっております。したがいまして。多数の自動車保有者契約者から保険料を集めて、それを原資といたしまして被害者に対する賠償責任を果たすという形をとっているわけでございます。  現在の賠償責任、ことに人身事故に対しましては、先生御高承のとおり現在千五百万を限度といたしまして保険金額を支払う形になっておりますが、この千五百万が十分であるかどうかという点を考えてみますと、なかなかいろいろな見方があろうかと思います。  現在の裁判実例等を参照いたしますと、いろいろな損害賠償についての当事者同士の話し合いによりまして、この千五百万という額によってカバーできる範囲が大体八五%から九〇%近くがカバーできるという実例も実はございまして、ただし、絶対額としてこの千五百万が本当にいいものかどうかという問題は別にあろうと思いますけれども、現実裁判実例等から見ますと、この千五百万という額が大体現在の被害というものをカバーしているという実情でございます。将来この千五百万を上げることが必要であるかどうかという問題につきましては、今後とも全体の情勢をにらみながら随時あるいは絶えず検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  また、この千五百万の限度額を上げるということは、同時に保険料という問題にも実は関係がございまして、多数の契約者関係のある賠償責任保険保険料引き上げという問題と絡みまして、こういう問題も慎重に検討していくべきものかというふうに考えておる次第でございます。
  9. 野中英二

    野中委員 いま千五百万の限度額、こういうことを示唆されているわけですけれども、賠償保険というものにそういう限度が一体あるのだろうか、あるいは一時的なものでいいのだろうか、いわゆる損害をこうむった人間の地位によって、職業によっておのおの変わるべきではないか。いわゆる賠償保険ということだけを追求していくならばそういうことが私はいいのじゃないかと思うのです。  現実に千五百万円という一つ限度を切ってこれ以上は賠償しません、こういうような考え方、あるいはまた小さな子供でも同じような損害補償がなされていく、こういうような一時的な、あるいはまたある意味においては基礎的な保障だけで本当に賠償責任というものが済まされるのだろうかということなんです。そういうことを考えてもう一度御答弁願いたい、これで満足なのか。そういうことであれば私は賠償保険として自賠責というものを考えていきたい、一つのグラウンドを考えていきたいと思いますけれども、もう一度これを確認しておきたいのです。
  10. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問で、本当に完全でしかも十分なものであるかどうかという点について重ねて御質問があったわけでございますけれども、私たちといたしましてはこの自賠責保険そのもの被害者救済という点から考えまして基礎的な一つ制度であるという見方をしておるわけでございまして、実はこれで全部十分であるかというふうなことになりますと、必ずしも十分でない部分もあろうかというふうに私たち考えているわけでございます。しかもこの基礎的な部分に実はこれを補完するという意味で現在任意保険制度がございます。  したがいまして、現行制度におきましては、この自賠責保険任意保険とをあわせまして、自賠責保険基礎にいたしまして、しかもこれを補完する意味任意保険が存在をする、こういう形で賠償責任保険というものの機能を全うしていくというふうな形になっておるわけでございまして、この制度を前提としてさらに賠償責任保険充実を図っていくべきではなかろうかというふうにいま考えているわけでございます。
  11. 野中英二

    野中委員 なかなか思うようなところに入ってこないのですよ。というのは、大蔵省一つのからがありまして、そのからから飛び出してはいかぬということでありましょう。盛んに基礎的保障というようなことで逃げよう逃げようとしているのでありまして、これは昭和四十四年の十月、自賠責審議会答申によりますと、最低保障であると位置づけられていたものが基本保障であるというふうに位置づけられてきた、その考え方をあくまでおたくの方は守ろう守ろうとしているわけですよ。しかし私は、一つ集団保障としての自賠責というものの考え方からいけば、これはおのずから限度があるということですよ。しかしそれ以上に、この経済的なあるいは社会の諸情勢というものはそんななまやさしいものじゃない、それにこたえるものがなければならぬと思っているのですよ。そこからこの自賠責保険というものがもう一つ考え方に飛躍しなければいかぬのじゃないか。いわゆるただ基礎的な保障ということだけではなくて、これが社会保障的な性格というものを位置づけていく必要もあるのじゃないか、こう思うのです。どうなんです、この辺は。
  12. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  確かに先生のおっしゃいますとおりに、自賠責保険性格の中に社会保障的な性格が非常に強いということは、私たちもそうだと思っております。しかしながら、この自賠責保険を全体を一つ賠償責任保険として見ました場合には、強制保険という制度、いろいろな仕組みという面を考えまして、将来の構想としてはいろいろな考え方というものがあろうかと思われますけれども、現状においてはこれを基本的な一つ保障制度という考え方に立ちまして、これをさらに周辺において、あるいはその上積みにおいて補完をする意味任意保険制度があるという現状を見ますときには、この自賠責保険というものを充実すると同時に、また同時に任意保険制度充実をいたしまして、双方相まちまして被害者救済というものの充実を図っていくのが一つ方法ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  13. 野中英二

    野中委員 今度は任意保険で逃げているのですよ。保険を二重に担保しなければならぬということは、本当は好ましいことじゃないでしょう。私はそう思っておるのだ。二重に担保さしてとにかくその足りない分は任意保険で埋めます、任意保険がございますからそちらへ御加入ください、こういう考え方ですね。  私はこの際、運輸省自動車局にお聞きしておきたいのですよ。あなたの方は一体自賠責をどうお考えになっているのか。また同じだと答えられては困るのだ。おたくの方は違うだろう。
  14. 宇津木巌

    宇津木説明員 いま大蔵省保険部長の方からるる御説明がございましたけれども、この自賠責保険の基本的な性格といたしましては、やはり法内容にいろいろと規定がございますように、被害者保護を直接の目的として創設された社会保障的な色彩の強い制度であるということは申し上げるまでもないことでございまして、そしてその保障限度といいますか保険金限度額をどう考えるかということは、賠償水準の動向なり、そういうものを勘案して規定されるべきものであろうと考えております。  また一方、任意保険というものが存在して、またそれなりの社会的な役割りを果たしておることも事実でございますので、その双方の役割り、つまり自賠責につきましては基本保障といいますかそういうものを目的とし、それからその上積み部分につきましては任意保険がカバーしていくというのが現実における姿であろうと考えております。
  15. 野中英二

    野中委員 それでは運輸省当局大蔵省当局も、社会保障の濃い保険だ、これだけはお認め願ったわけですが、社会保障が濃いと言うのだったら、どういうところが濃いのか、ひとつお教え願いたい。
  16. 宇津木巌

    宇津木説明員 社会保障的な色彩の強さといたしまして、被害者保護を第一といたしておりますので、たとえば任意保険と違いまして付保及び引き受けを強制していること、解約を制限していること、あるいはまた被害者の直接請求制度仮渡し金制度等がございますし、また無保険の場合には国の保障制度を通じまして同様な保障をやることを制度化いたしております。かような点が社会保障的な色彩がきわめて強いと申し上げた趣旨でございます。
  17. 野中英二

    野中委員 これは濃いとかそこまで認めてくれたわけですけれども、なかなかこれは社会保障的な保険であるということを認めてくれないのです。それはわけがある。要するにこれを社会保障的保険であるとあなた方がお認めになるとすれば、少なくも財源の一部を国が負担しなければならぬ、こういう必要性に迫られてくるわけです。そういうところでおたくたちはあくまで集団保障的な保険だということで逃げていく。こういうことがこれからの時代に一体即応していくのだろうかということなんですね。交通遺児の分析をしてみると、こんなことで、自賠責保険集団保障的な考えだけでもってカバーできないのですよ。ですから、われわれとしては、これを社会保障的保険であると認めてもらいたいということで私が筋を持っていっているのですが、なかなかおたくの方は自賠責を改正してそこまで持っていこうという気にならない。ですから私はきょうは大臣出席を要求したのだよ。そういう意味でまことにぼくは残念なんだ。  これは本当にこの基本的な問題を考えていかなければ、それは最初はこの自賠責審議会においても最低保障である位置づけていたものが、今度は基本保障だというふうに変わってきておる。これからもう一つアウフヘーベンされて、これは社会保障的保険だというふうな位置づけがどうしても私は欲しいのです。それによって本当に被害者保護というものができるのじゃないだろうか、こういうふうに私は考えているのです。どちらでも結構ですから明快な御答弁を願いたい。私の疑問をここで解かしていただきたいと思うのです。
  18. 宇津木巌

    字津木説明員 先生の御質問趣旨は、被害者保護に欠けるところのないよう、あるいはまたその中身を増せという御趣旨であろうかと思うわけでございますが、自賠責保険中身充実限度引き上げ等につきましては、今後とも賠償水準の動向その他をにらみ合わせつつ十分検討してまいりたいと思っております。
  19. 野中英二

    野中委員 性格についてはこれぐらいにしましょう。どこまでたたいてもこれは結論ば出ないでしょう。  そこで、被害者保護中身充実していきたい、こういうことを言われましたので、私は被害者救済充実給付方法改善について事務的なことをこれから御質問申し上げたい。  現行自賠責保険では被害者が幼児、老人、一家の支柱のいずれにあっても支払い金額というものが変わりがない、余り差がないわけであります。この残された遺族の生活をどのように維持していくかを考えたときに、こういう一律的な限度額というようなものでいいのだろうか、あるいはこの限度額引き上げるということだけで本当にこの被害者救済というものができるのであろうかということを考えましたときに、これは本来扶養しなければならなかった遺族の有無などを勘案してこの支払い金額というようなものに格差をつける必要があるのじゃないだろうか、これを第一点に質問しておきます。
  20. 宇津木巌

    宇津木説明員 お答えいたします。  自賠責保険限度額はただいま千五百万ということになっておりますが、これは一律に千五百万ということではございませんで、被害者損害額に応じまして千五百万円を限度としてその範囲内で計算することにしております。被害者損害額の中には、その人がなくなった場合であれば生前の所得を計算し、あるいはまた残された方の慰謝料その他も計算してやっておるわけでございまして、限度の問題ばございますが、一律にやるというものではございません。
  21. 野中英二

    野中委員 私が言ったのは、その差がそんなにないのだということなんですよ。限度額内において頭が決まっちゃっているものですから、結局幾ら上げてみたって千五百万円。その中でやり繰りをしているだけですから、そう格差がないということなんですよ。それで遺族あるいは被害者中身というものを検討すると、もう少しばらつきがあってもいいのじゃないか、考えてやる必要があるのじゃないか、こういうことが私のまず第一の疑問だったわけなんですよ。  そこで、私は、現在頭打ちされてしまった千五百万円という限度額、上限がある中で、いかにして被害者救済ができるかということを考えますと、この支払い方法をもう少し検討してみる必要があるのじゃないか。要するに、死んだら、はい千五百万円、こういうような一時払い的な考え方が本当に遺族救済になるのだろうか、この点についてまずお聞きしたい。
  22. 宇津木巌

    宇津木説明員 賠償金といいますか、したがって保険金支払い方式の問題でございますが、現在広くわが国で行われているのは一時金支払い方式でございますし、そしてまた裁判の判決におきましてもやはり一時金払い方式というのが一般的でございますので、保険におきましてもこれを踏襲しておるわけでございます。先生指摘年金払いの問題につきましては、やはり大きな問題でございますし、影響も非常に多方面にわたる問題でございますので、今後時間をかけた検討課題といたしたいと思っております。
  23. 野中英二

    野中委員 これば一時金で払うとその場は確かにつくろえるのです。それによって支払いを一切済ますことができる、区切りができる、こういうことで、そういう要求をなされる遺族もあるかもしれませんけれども、遺児を抱えたところではむしろ年金払いの方がいいんだ、こういう考え方もあるわけなんです。それで、要するに一時払いにするか、あるいは年金払いにしていくかという選択制度が採用できないだろうか、これが一つ。  それから、おたくらが盛んに社会保障的な中身の濃い保険なんですと言っても、そこまで踏ん切れない。大蔵省に私は言っておきたいのですが、この保険社会保障的な色彩を少しでもにおわせる、社会福祉的な考え方をにおわせるということであれば、支払うべき金額、給付する金額を、福祉預金あるいは高利回り利札付債券というようなものを工夫していただいたら、少しでも多く遺族に、あるいはまた被害者保護という方向に十分な手厚い処置がとれるのじゃないか。ですから、私は一歩譲っていま論議を進めているのですよ。高利回り利札付債券などを考えたらどうだ。いま二年もので七分か何かの金利でしょう、今度下がったから。それを一割だっていいじゃないですか。そういう工夫をしてやることも、被害者保護という目的が達せられてくる方法じゃないか。こんなことは事務的にもできることじゃないですか。  これは保険会社選択制度だということであれば容易じゃないと言うかもしれない。いままでは一括して事務的にぱっと一時金で払ってしまえば終わりだ、これでけりがついたということでありますが、年金選択払いということになると、また事務的な手続あるいは仕事の量というものがふえてくるわけでありますけれども、こういう工夫をして、いわゆる千五百万という頭が現在決まっている以上は、その中にあって工夫工夫を重ねて、被害者保護ということを中心に考えていく必要があるのじゃないですか。どうせおたくの方は石頭で、千五百万千五百万それだけなんだから、それだったらその中にあって色をつけ、色彩を豊かにしていくということが必要なのじゃないですか。そのために私はいま給付方式改善質問しているのですよ。
  24. 宇津木巌

    宇津木説明員 お答えいたします。  一時金払い、年金払い選択制につきましては、確かに一つの見識かと存じますが、この年金払いにつきましては、いろいろな問題がございます。これは先ほど申し上げたとおりでございますので、十分時間をかけて検討してまいりたいと思います。  また、給付金につきまして、福祉預金あるいは高利回り債券運用等特別措置の御提案があったわけでございますが、これらの問題につきましては、金利政策とも絡む問題でもございますし、関係の省庁ともいろいろ連絡をとりまして対処してまいりたいと考えております。
  25. 野中英二

    野中委員 飛び飛びになって済みません。時間の関係でもってとことんまで議論することができないことを残念に思うわけでありますが、次は自賠責保険運用益についてお伺いをしたいと思うのです。  自賠責保険運用益については、自賠責保険のノーロス・ノープロフィットの原則によって、その基本的性格にかんがみて、その使途自賠責保険目的に沿って厳正になされなければならないものであることは言うまでもありませんけれども、保険会社運用している分について、その使途決定は具体的にどのように行われているのか、またその使途はどうなっているのか、お聞きしておきたいと思います。
  26. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自賠責保険運用益につきましては、先生指摘のように、きわめて公共性の強い性格のものでございまして、自賠責保険目的に沿って厳正に使用さるべきものと考えております。  すでに自賠責保険審議会におきまして、この自賠責運用益の問題につきましては、保険収支改善のための財源に充てるほか救急医療施設に対する助成あるいは専門医育成のための援助等救急医療体制整備充実交通事故防止対策等に引き続き活用することが適当であるという趣旨の御答申を四十八年の十一月にいただいております。  この基本方針に沿いまして、具体的な支出先決定につきましては、損害保険協会長並び損害保険協会理事構成員といたします運営委員会におきまして行っておるわけでございます。ただし、この運営委員会には、大蔵省保険部長保険課長が顧問として参加をしておりまして、具体的な支出先の選定とか決定等につきましては、自賠責保険運用益性格にかんがみまして、相当厳しい指導をしておりまして、実質上は大蔵省保険部においてその厳しい監督のもとにこの運用を行っておると言ってもいいかと思います。  その具体的な実態でございますけれども、これまでに支出されましたもののうちで主な支出先、大体どのような方面に支出をされておるかということを申し上げますと、四十四年から四十九年の五年間の合計をとってみますと、救急医療施設関係では日赤に三十二億五千万円、済生会に十五億という支出がございます。それから交通事故対策関係におきましては、消防庁に、主として救急車寄付しているわけでございますけれども二億九千四百万円、警察庁等に対しましてパトカー等寄付ということで十四億九千二百万円、交通遺児育英会に対する寄付といたしまして五億、自動車事故対策センターに八千万、交通事故裁定委員会に五千六百万、こういうふうな状況になっておるわけでございます。
  27. 野中英二

    野中委員 いま保険部長からの御答弁があったとおり、昭和四十四年の十月七日の答申自賠責審議会答申でございますが、あるいはまた先ほど答弁がございましたように昭和四十八年の十一月十六日の答申、いずれも同じような答申をしているわけです。  保険料負担の軽減に充てるほか、救急医療体制整備充実交通事故対策にも活用すべきであるというふうに四十四年には答申しておりますし、四十八年も同じようなあれですから、ここで私は読み上げません。  いま具体的に御明示を賜りまして、日本赤十社へ三十二億五千万円、こういうふうな数字が出ておりましたが、いささか私がとりました資料と違うのでございます。警察庁へ十四億九千五百万円というあれですが、これ間違いではないでしょうか、十九億三千万円の。パトカー、白バイ等として十九億三千万円。消防庁へいま二億九千四百万円という答弁だったと思いますが、これは五億九千万円の誤りじゃないですか。それから自動車事故対策センター、これが八千万円、それから交通遺児育英会、これが五億円。どちらの数字が正しいのですか。私が調べた方が正しいのだろうと思いますが、どうですか。
  28. 山橋敬一郎

    山橋説明員 先ほど申し上げました数字は実は計画ベースの数字でございまして、実際の支出がずれ込んでおりまして、したがいまして、その差が先生の数字とわれわれの数字の違いになっておるのじゃなかろうかというふうに拝察しますが……。
  29. 野中英二

    野中委員 それはずれ込んできた、計画とあれのずれ込みだと言うが、少なくとも運用益、滞留資金の運用というようなことは大蔵省の目が光っているのでしょうがね。もう少ししっかりやったらどうです、これは。国民はこの滞留資金運用益について本当に目を光らせている。そして少しでも被害者保護の方へ回っていくことを期待しているのですよ。こんな小さな数字から私はあなたをいじめようと思っていはしないけれども、大体精神が腐っておるのじゃないですか。もう少しきちっとやらなければいかぬと私は思います。  自賠責保険運用益について今後とも救急医療体制充実などに使用されるべきだと思いますが、従来からその必要が叫ばれております脳外科医の育成あるいはリハビリテーションの施設、こういうふうなことにさらに拡大をして使ったらどうかというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  30. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  従来からわが国の交通事故による死者のうちで、一部につきましては、脳外科の専門医の治療を事故の後短時間の間に受けますれば一命を取りとめることができるということが指摘をされております。脳外科専門医の早期大量育成が強く要請されておるわけでございますが、自賠責運用益に関する自賠責審議会答申におきましても、専門医の育成のために運用益が使われるべきであるというふうな御答申をいただいております。したがいまして、脳外科医の育成のためにこれを積極的に使用してまいりたいと思いますが、現在のところ脳外科医の育成のためにば実は機械が余りないということでございまして、あっても実は非常に高価な機械であるというふうなことでございます。したがいまして、高価な脳外科用の機械の設備が現在はぜひとも欲しいという声が専門家の中に強いわけでございます。したがいまして、今年度におきましては、一台約一億五千万もいたしますところの脳外科用のスキャナーという機械、これは脳疾患をレントゲンで通してこれを検査をし、その診断をするという機械でございますが、これを約三十七大学に寄付することとしておるわけでございます。  また、交通事故被害者のうちから、かなりの重傷を負った人々につきましては、先生先ほどお話しございましたように、リハビリテーションの施設が必要でございます。したがいまして、こういう重傷を負った人々につきましてその社会復帰が早期にできますように、リハビリテーションの拡充につきまして今年度中にそのような方面に運用益を使うということを検討いたしたい、寄与することといたしたいというふうに考えておるわけでございます。  先生指摘の点はいずれも非常に重要な問題でございますので、今後種々の方面への支出を検討していきます中で、より前向きにこの問題を検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  31. 野中英二

    野中委員 せっかく大蔵省から来ていただきましたから、これは保険部長では答弁しにくいと思いますが、あえて質問をしておきます。  この自賠責保険保険料控除について質問したいと思います。御存じのとおり、自賠責保険自動車事故被害に対して基本保障を与えることを目的とした、かつ原則としてすべての自動車がこの保険付保しなければならないという強制保険でもあります。にもかかわりませず、これば保険料の所得控除というものがなされていない。現在生命保険及び損害保険、火災保険等、自己の生命にかかわるもの、あるいは家屋、物件、こういうものに対しては保険料の所得控除というものがなされている。にもかかわらずこの自賠責保険については任意保険も含めてなされていない。ぜひ私はこの保険料の所得控除というものを積極的に考えていただきたい。考えるだけじゃなくて実施してもらいたいと思っているのでありますが、このことについて御答弁願いたいと思います。
  32. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  この所得税控除の問題は、実は保険部長の所管でないので非常にお答えしにくいお話でございますけれども、従来から主税局筋とこの所得控除の問題について議論する過程におきまして、主税局におきますところの自賠責保険料の所得控除の問題についての考え方を御説明申し上げたいと思うわけでございます。  自賠責保険料のうち、事業の用に供されておりますところの自動車につきましての保険料は、これは営業用の自動車でございますので、事業所得の計算上、当然必要経費に算入されるわけでございまして問題ばないわけでございますけれども、事業の用に供されておらないいわゆる自家用の自動車についての保険料を所得控除の対象とするかどうかということが、一番問題になろうかと思います。この点につきましては、もっぱら家事のために使用される自動車一種の維持費というふうに考えられるところでございますけれども、この保険料もそういうふうな考え方考えてまいりますと、所得控除の対象とすることは一般の家事上のいろいろな経費とのバランス等を考えますと必ずしもどうも適当ではないのではないか。さらに自賠責保険強制保険であるからこれを税制上考慮をしろというふうな点から考えてみますれば、自賠責保険は強制加入ではございますけれども、自動車の購入という問題は各人の任意の問題でございまして、このような自動車の所有に伴うところの保険料という支出の増加も当然あらかじめ考慮の上に置いて購入をされておるのではないか。強制という点からいたしますれば自動車税等の負担も実は同じように問題になるわけでございます。そういうふうな問題点があろうかというふうに考えておるようでございます。  また、被害者救済というふうな観点から政策的に税制上の控除を認めるという問題ということでございますれば、自賠責保険が強制加入ということでその目的をある程度達成しておるというふうなことも言えるかということでございまして、さらに特別な措置としての所得税控除を認めるかどうかというふうな問題についてはなお問題点があるのではなかろうかというふうな考え方のようでございます。  具体的には、たとえば同じ年収の給与所得者、サラリーマンの場合を考えますと、自動車を保有している者の所得税負担が自動車を保有していない者の所得税の負担よりもこの所得控除によりまして軽くなるというふうな結果にもなるわけでございまして、税制上の公平というふうな面から言ってなかなかこの点が問題があろうかというふうなことのようでございます。  以上は、大体従来から私たちがいろいろ所得控除の問題について主税局と折衝している段階におきまして、主税局籍にある当局側の一応答えとして実は私たちが聞いておる答えでございまして、なおこの問題につきましては今後とも検討をひとつ続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  33. 野中英二

    野中委員 質問をすべき人でない人に対して質問しているのですから、私も容易じゃないのだけれども、税の公平ということを考えますと、要するに営業用の自動車、これは自賠責に入っておる。これは御存じのとおり事業所得のうちから必要経費として差し引かれているわけです。ところが自家用車、いわゆる個人が自分の足に使っている自動車というものが必要経費として落とされていない。そうでしょう。営業用はとにかく必要経費として落ちているわけですから、個人の方は見放されているということ。これは税の公平という立場から言っても私は不公平だと思っておる。ですから、この自家用車の自賠責保険というものは所得控除をしていただきたいというのがきょうの質問の骨子なんですよ。これは主税局とも相談して一日も早く実現をしていただきたい、こう思う。これは答弁要りません。  次に、自動車保険のうちいわゆる任意保険についての現状でありますが、その社会役割りを果たしているわけですけれども、この任意保険について、四十九年の三月に家庭用自動車保険、五十年三月に業務用自動車保険がおのおの発売されて大変評判もよかったと聞いておったのでありますけれども、最近両者を一本化するような方向で改正されるということを聞きましたけれども、これはどのようなことなのか。CAP、いわゆる業務用自動車保険に至っては、まだ発売後わずか十ヵ月にも足らないと思っておるのです。十ヵ月も経過していないものをどうして発売中止をしてしまうのか、この辺に一抹の疑問が残るわけでありますけれども、明快な御答弁をお願いいたします。
  34. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  交通事故被害者救済目的といたしまして自賠責保険が設けられまして、その後もだんだん充実が図られているわけでありますが、いわゆる任意の自動車保険につきましても、その内容を改善すべきであるとの声が強まってきているわけでございます。この中で問題とされております問題は、一事故無制限制あるいは被害者直接請求の問題あるいは示談交渉サービスというふうな点が問題になりまして、すでにこういうふうな点につきましては任意保険に現在織り込んで新しい保険を設けているわけでございますが、これが従来に比べて実は大幅な内容の改正でありましたことから、とりあえず家庭用の自動車に限って新しい保険を認めたわけでございます。その後家庭用自動車保険の実施状況を見たところで業務用の自動車につきましても同様の内容を織り込んだ保険が必要であるというふうな要望が非常に強く出まして、本年の三月に家庭用自動車保険に準じてこの業務用自動車保険が発売をされたというわけでございます。  これらの二つの保険につきましての主な差異は、搭乗者傷害の担保範囲等が実は若干の差がございますけれども、実際に両保険運用してきた結果、それほどの差異がないということから、保険審議会の答申を受けまして、自動車保険を根本的にひとつ見直して改正をしたらどうか。根本的に改正する以上、両保険を一緒にしても特に不都合はないのではないかというふうな考え方が出てまいりまして、搭乗者傷害につきましても担保範囲を一層拡大をするという方向で一本化すべく現在検討がなされておるわけでございます。  現在、家庭用自動車保険と業務用自動車保険を一本化して自家用自動車保険という形をつくろうということで検討が進んでおりますけれども、その新しい保険の従来に比べての大きな特徴は、自損事故を織り込む、あるいは無保険車条項を入れる、あるいは車両保険につきましてアクチュアル・キャッシュ・バリュー、実際に損害を受けた分を補てんするというふうな制度を織り込むというところが大きな特徴点であろうかというふうに考えているわけでございます。
  35. 野中英二

    野中委員 時間がなくなりましたので、簡単にお聞きしておきますが、昭和五十年六月二十七日の保険審議会の答申を受けて、五十一年一月一日以降の危険開始の契約から対人賠償保険に自動付帯させることになりました自損事故に対する補償、これを具体的に説明をしていただきたいと思います。
  36. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  保険審議会の本年六月の答申におきまして、任意の自動車保険改善に関しましては、「自賠責保険については、自動車損害賠償責任保険審議会の答申において、その担保範囲に自損事故を加える問題が長期的検討課題一つとされているが、任意保険においても損害賠償責任保険によっては救済されないような被害者保護救済措置について、将来におけるその導入の余地を検討することが望ましい。」という御答申をいただいたわけでございます。  この答申趣旨に沿いまして、今回自損事故担保をすべての自動車保険に新設をするという方向で検討しているわけでございますけれども、この自損事故保険におきましては、被保険者が自損事故によって死亡したり、体に傷害をこうむった場合に保険金を定額で払う、こういう仕組みでございます。  たとえば死亡の場合には一千万円を限度として払うという形になっておるわけでございますが、この自損事故と申しますのは、具体的には、たとえば自分が車を運転していて電柱に激突した、こういうふうな単純ないわゆる自爆事故のほか、たとえば被保険者の自動車がセンターラインをオーバーして相手に激突をした、この結果被害をこうむったというような場合に、相手が完全無過失の場合の事故等も言うわけでございます。このような自損事故被害者自賠責保険からも任意の対人賠償保険からも現在の制度におきましては支払いを受けられないわけでございまして、このような被害者救済することを目的として自損事故保険を新設しようということでございます。
  37. 野中英二

    野中委員 きょうは十五ほど質問しようと思いましたけれども、大体五つくらいで終わってしまいましたが、私に与えられた一時間の時間が参りましたので、これで質問を終わりにしますが、なお、次回におきましてさらに質問の機会をお与えくださいますようにお願い申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  38. 下平正一

    下平委員長 次に、野坂浩賢君。
  39. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一番最初に、総理府の竹岡室長にお尋ねをいたしますが、この間交通の安全に対する決議が行われまして、資料によりますと、総理府が昭和四十五年に行いました交通事故の長期予測によりますと、昭和四十九年における死者数は一万九千七百三十七人と予測をされておりました。しかし、実際の死者数は一万一千四百三十二人でありまして、総理府の予測と大きく変わったことは喜ばしい限りでありますが、四十五年をピークにして漸次死傷者は減少をたどってきました。この間の決議にもありましたように、安全施設の手を緩めますと、再び事故が増勢するという状況にある、こういう指摘もございまして、昭和五十六年には最低といえども八千四百人以下にする、またそれ以上になるではないか、こういうふうに思うのでありますが、そのことは運輸省も確認をしておりますが、八千四百人以下になると、そのとおり確認をしたいと思いますが、そのとおりかということが一つ。  それから、おとといでありますか、交通遺児を守る、また激励をする大会が開かれまして、テレビ等でも交通遺児家庭における階層分化といいますか、生活が異常に苦しさを増しておるということが報道されておりますが、現在の交通事故に対する補償体制はどのように進められており、今後どのような点を改善をしなければならぬ、このように対策室を中心に運輸省なりあるいは大蔵省と協議をされておると思いますが、その展望を明らかにしていただきたい、こう思います。
  40. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えいたします。  第一点の昭和五十六年の展望で、死者八千四百人ということが可能かどうか、あるいはそれ以下にもできるのではなかろうかという御質問であったと思いますが、第一次五ヵ年計画、本年で終わりますものは、先生指摘のとおり、大体私たち考えておりました予想どおり減少してきたということでございますけれども、この減少傾向をちょうどことしきのうまでで五・五%昨年同期より減っておりますが、今後五十六年まで年率五%ずつ減少させていくならば八千四百人に近づくということ。と同時に、ピークでありました昭和四十五年には約一万六千八百人ほどあるのですけれども、これの半減ということで八千四百という一つの数字をわれわれはスローガン的にも挙げてみたわけであります。と同時に、前にお答えしましたとおり、学者の方々に予測していただきましても、今後安全施設を伸ばしていくならば、少なくとも八千人台にまではいけるのではないだろうかということで、そういう予測数字も出していただいたわけでございます。  それを細かく八千四百人になるとか、あるいは八千三百人になるとかいうことまではわれわれ予測はできません。一応の希望数字も兼ねまして、最盛時の昭和四十五年の半減、その数字が八千四百である、年率五%ずつ減らしていくならばそれが可能だということから、八千四百人というのをわれわれの目標数字として掲げておるわけでございます。  それから第二点の、先般交通遺児を励ます会がありましたとおり、交通遺児の母子家庭が非常に気の毒じゃないかということで、被害者救済策でございますけれども、これには私は三本の柱があると思うのでございます。  一つは、被害者損害補償を適切に行うことであろうと思います。これはわが国の自賠責並びに任意保険の両方でございますけれども、保険制度充実、本年七月に自賠責を一千万から一千五百万円に上げましたのもこのねらいでございます。今後もこの自賠責を含めまして、保険制度の一層の充実を図っていくことが必要であろうと思います。  第二番目に、被害者被害に遭いましたときに、損害補償の手続なり損害賠償の手続なりいろいろな問題で非常に悩みがございます。この被害者交通事故相談制度をいまよりもさらに充実していきたいと思っております。これもおかげさまで各地方自治体におきます交通事故相談所も年々ふえてまいりまして、現在九十八ヵ所、国の補助も二億三千八百万と増額しておるところでございますけれども、並びに運輸省所管の日弁連の事故相談センターあるいは法律扶助協会、こういった被害者の相談制度を一層充実していくことに努めてまいりたい、このように考えております。なお、被害者が最も困っておりますのは、相談だけではなく、さらに一歩進んで、できるならば無償の公共の示談あっせんということまで踏み込んでもらったらという声も相当強いようでございます。こういう機関を今後どのようにつくっていけるかどうかということも検討課題として進めてまいりたいと思います。  第三番目には、一般の交通遺児の母子家庭あるいは遺児に対します福祉対策であろうかと思います。これは交通遺児の家庭のみに厚くするということは、他の災害遺児等の関連もございますので、一般の福祉対策の充実年金制度等の充実を図っていく必要がある。ただし、一方では自賠責運用益等の金の補助を充てまして、交通遺児に対します育英制度交通遺児育英会並びに自動車事故対策センターの育英制度、ことしも従来の一億円の補助を一億五千万に上げ、あるいは事故対策センターもそれぞれの一時金なり、あるいはそういった金額もことし増額しておるところでございます。また、対象人員もふやしておるところでございますが、これの充実を一層図ってまいりたいと考えておりす。  以上でございます。
  41. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一万九千人と予測をしたのが一万一千になった。あなたのこの間の御答弁は、精力的に関係省庁が努力をした結果、また石油ショックによるものも一部あるとすれども、そういう施設の充実の成果だという胸を張ったお話をいただいたわけでありますが、八千四百人は目標数字だということは、いままでの経緯からして、目標というのはそれに達成をしないかもしれないということが考えられるわけであります。この八千四百人を最低として、それ以下に抑えるというふうにこの資料には書いてあるやに私は思うのでありますが、八千四百人は自信があるのですか、ないのですか。
  42. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  諸外国の死亡者の数を自動車台数から割りますと、大体一万台当たり死者五人というのが従来の諸外国の一応一番よくいったところの実例でございます。将来、五十六年に八千四百人、当時の自動車台数を仮に三千七百万台と推定しますと一万台当たり二・五人ぐらいになりますので、相当厳しい数字であろうと思いますが、しかしいままでの努力、ことしの年率五%減というような経過から見まして達成したいと思っております。達成できるかどうかはまだもう少し自信はございませんが、希望として、われわれの目標としてこれに努力していきたい。安全施設等をさらに充実していくならば可能性はある、これに向かって努力したいということでございます。
  43. 野坂浩賢

    ○野坂委員 保険部長にお尋ねをしますが、いまの交通安全対策室長の御答弁によりますと、最低といえども五%の死傷者の減少を来すということであります。私はこの間の委員会で自動車の総量規制の問題に触れましたが、いま答弁があった竹岡さんから外国の自動車の台数、増加数等をお話しになりまして、まだその段階でないような示唆のある話がありまして、これからも日本の自動車はふえていく傾向を示すのであろう、こういうふうに言われておりました。  そうしますと、一方では自動車はふえる、交通事故はなくする、死傷者は減少する、こういうふうに判断ができるわけでありますが、自賠責保険料というものが一つの浮かび上がってきた問題点になろう、こう思うのであります。今日まで大蔵省あるいは運輸省が指導されて、保険料はそのまま据え置きで、保険金額というものは七月から千五百万、百万、こういうことにされてまいりました。しかし、これでもいまの傾向からすれば、保険料率を安くするか、また保険金額を、人命にかかわる問題でありますから、いまもお話がありましたように、自賠責なり任意保険をさらに充実をしていくということは、それぞれの家庭の生活が可能になってくる、生活維持ができるという意味でもっと上げるのか、これを限度考えておるのか、あるいはまたこれらの傾向から見て保険料は下げていくという考え方に立っておるのか、お伺いをしたい。
  44. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  ただいま先生の御指摘のとおり、交通事故が今後も減少していく可能性がある、その場合に現在の自賠責あるいは任意保険についてその改善策の方向としてはどういう方向を考えられるかという御質問だろうかと思います。  交通事故が減るということは、保険の面におきましては損害率が減るということでございます。損害率が減るということになりますれば、御指摘のとおり、保険料の問題あるいは保険金額限度の問題にこの問題が影響してくるわけでございますが、具体的な点から考えますと、この自賠責限度引き上げという問題が一つの問題点としては考えられるかと思います。今年七月に、死亡の場合の限度を一千万円から一千五百万円に、傷害の場合の限度は八十万円から百万円に引き上げましたけれども、今後もこの保険金の増額あるいは保険料の引き下げというふうな問題につきましては、損害率の推移というものを把握しながら保険金額引き上げるべきであるかあるいは保険料を引き下げるべきかというふうな点について綿密な検討を実は続けてまいりたい。現在のところ損害率の傾向の実績値あるいはその結果というものをまだ完全に掌握する段階に至ってないかと思いますが、そういうデータが完全に掌握された段階におきましては、当然限度引き上げの問題あるいは保険料の引き下げの問題は検討の課題に上ってくるであろうというふうにわれわれ考えているわけでございます。
  45. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま野中議員からお話があった業務保険なり家庭保険の一本化問題の中で、保険業界はこれの保険料率を一本化をして上げる、こういう動きがあって、その申請を出したとか承知をしております。出すとか、こういう状況のようでありますが、それを受けて大蔵省はこれに認可をする、こういうことが新聞で報道されておりますが、現在の傾向と違ったそういう保険料率の引き上げというものは、いまの御答弁からすると問題があるのではないですか。
  46. 山橋敬一郎

    山橋説明員 現在検討されておりますところの任意保険改善の方向といたしましては、先ほどお話し申し上げましたように従来の家庭用自動車保険、業務用自動車保険を一本化をいたしまして自家用自動車保険とする、それと同時に普通の自動車保険につきましてもまた自家用自動車保険につきましてもその担保範囲を拡大をするというふうな点でございます。  いま御指摘保険料の問題でありますけれども、対人賠償保険をとってみますと、平均的には実は若干のアップという形になりますけれども、高額の保険金契約者、高額の限度につきましては従来の保険料率よりも若干のダウンという形でございまして、必ずしも全体的に相当のアップをするという形にはなっておりません。ただし、車両保険、対物保険につきましては、御承知のとおり昨今の人件費の増加あるいは修繕費のアップというふうな問題がございまして、実は相当な赤字を抱えている状況でございます。したがいまして、車両保険それから対物保険につきましては若干のアップという形になろうかと思うわけでございます。しかしながら先生指摘のとおり、損害率がだんだんと低下してまいりますれば自然保険収支にもよい影響を与えるわけでございまして、現在のその傾向が続いていくその推移を見きわめながら、保険料の問題についてはなお業界を今後引き続き指導してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  47. 野坂浩賢

    ○野坂委員 政府がこれらの業界を指導しリードをされていくわけですが、いまもお話があったように、半年や九ヵ月で二本を一本化にしたりいろいろな動きをするというよりも、やはり将来を展望する、実績を踏まえるということも大切ですが、それぞれ政府の責任者が自動車はふえるし、事故は必ず減少する、皆さんと協議をしてお決めになっておる。それの推移を見て、たとえば対物あるいは人件費、そういうものが上がってくるからやむを得ないだろう、しかし十分検討するということでありますが、すでに申請済みで十二月には、年内には大蔵省はそれを許可するという方針であれば、あなたのいまのお答えとは若干の矛盾を私は感ずるわけです。  それでは十二月中にこの一本化、料金改定については保留をしてさらに検討するというふうに理解をしてよろしいのですか。
  48. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  現在検討中の任意の自動車保険改善の問題につきましては、先ほども申し上げました事故率の問題につきましても十分データを集めたところで検討しているわけでございますけれども、この検討の結果、対物につきましては事故率は必ずしも下がっておらないわけでございまして、また対人賠償の面におきましても現在の低下しておるところの事故率はすでに織り込み済みのことになっておりまして、なるべく最新のデータというものを織り込みながらその要素の中に入れ込んで実は検討しているわけでございまして、その点万遺漏のないように検討しているところでございます。
  49. 野坂浩賢

    ○野坂委員 遺漏のないように検討しておるし、高い保険契約の金額の人たちはむしろ安くなってくる。私たちは、月賦で自動車を買う、また買わなければ今日の政府の政策によって過疎地域等の諸君たちは足が奪われつつあるという状況で、モータリゼーションというものも進行しておる、いわゆる低額の方に重点を置かなければ、やはりすべての保険社会保障性格を帯びておるというような事態を迎えておるわけですから、最新のデータを求めてさらに検討を深めるというのは、年内には認可はしない、こういうことに聞こえるわけですが、そのとおりですか。
  50. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  できる限り最新のデータをそろえて検討し、年内に認可の予定で現在作業をしているわけでございます。
  51. 野坂浩賢

    ○野坂委員 やっぱり認可をするのでしょう。それならば「料金改定はすでに申請済み 損保業界では一月一日からの約款の実施を目指しているので、大蔵省では申請があり次第十二月中の早い時期に申請どおり認可をする。」こういうふうに新聞は書いておるのですね。新しいデータというのはいつ集められて、いつ認可をされるのですか。
  52. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  保険事故関係のデータは、御承知のとおり自動車算定会において絶えずこれを集積をしておるわけでございますけれども、今回の自動車保険改定に当たりましては、なるべく新しいデータを取りそろえるというふうなことで、五十年三月までのデータを取りそろえて検討をしておるわけでございます。
  53. 野坂浩賢

    ○野坂委員 最新のデータが三月ですか。そうするともう集まっておるのじゃないですか、最近集められるというのじゃなしに。もう決めるということじゃないですか。検討するということじゃなしに検討した、こういうことではないですか。
  54. 山橋敬一郎

    山橋説明員 検討ばほぼ終わりまして、ほぼといいますか大体九割程度終わっておりますが、なお若干の日数がかかろうかと思います。
  55. 野坂浩賢

    ○野坂委員 本当の話をしてもらわなければなりませんが、保険部長にお願いをしておきます。九割方検討された内容の資料を当委員会の委員の諸君に配っていただきたい。委員長、お願いしておきます。  次に、いままで当委員会あるいは審議会等でメリット・デメリット制の採用というのが議論をされております。任意保険ではメリット制が採用されておる。自賠責では運輸省考え方ではなじまないというような結論を出した。外国では一体どういう状況になっておるか、なぜ自賠の場合にメリット制が採用できぬのか、任意保険とどのような問題点があるのか、こういう点をまず運輸省から聞きましょう。
  56. 宇津木巌

    宇津木説明員 お答えいたします。  自賠責につきましては、先生御案内のとおり、任意保険と違いまして車単位の保険になっておるわけでございまして、この車単位の保険、しかもそれを現行制度のように車検制度にリンクさせております。このことは、強制賠償保険の一番の留意すべき点というのは無保険車対策、つまり被害者に対する保護に欠けるところのないためには無保険車対策というのが一番大事であろうかと思います。かような意味合いにおきまして、現在わが国でとっております。車検制度にリンクされました車両単位の保険というのは世界で一番いい方法である、かように考えております。  その結果、車両単位の保険になってまいりますと運転者単位と違いまして、これにつきましてはいわゆるメリデメ制はなじんでこないというわけでこれは採用されてないわけでございます。  しかしながら、果たしてしからばメリデメ制を強制保険自賠責保険に採用していないことによりまして使用者に迷惑をかけておるかという点になりますと、私は決してそうではないと思っております。メリデメ制といたしましてもいろいろ方法がございますが、現在とられておりますような通常のメリデメ制を考えてみますと、それを自賠責保険に仮に持ち込んだといたしますと、事故率がきわめて少ないために当初の保険料というのが現在の大体倍ぐらいになってしまいます。それで五年間たってやっと現行の水準になるかならないか。三千万台に上る車両を管理する事務費が相当ふえてまいりますので、恐らく現在の保険料の水準までに落ちつくかどうか疑問である、かような点も出ておりまして、実益からいたしましてもメリデメ制を導入する必要はない、かように考えておるわけでございます。  ただ、外国の諸制度につきまして先生から御質問がありましたが、これらの点につきましてはちょっと勉強いたしておりませんので、十分に把握いたしておりません。
  57. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確かに車単位という問題、その車はだれが運転するかわからない、こういう面もあろうと思いますが、私が聞いておる範囲では、ほとんど先進国はメリデメ制をとっておる。むしろその方が比較していいではないかというふうに採用されておる国々は、イギリスでもフランスでもドイツでもそういうふうに理解をしておりますが、さらにこれは検討してもらいたい、もっと検討する必要があるではないか、こういうふうに思いますから、一応時間もありませんからお願いをしておきます。  大蔵省にお尋ねをしますが、滞留資金というのがありますね。この滞留資金は保険契約者から保険会社保険契約をいたしますと再保険ということで政府の会計の中にいわゆる納金をしますね、繰り入れをしていきますね。これは大体何ヵ月かかりますか。
  58. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  一ヵ月分をまとめて繰り入れております。
  59. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一ヵ月分ということですが、たとえば十一月の一日から十一月三十日までのものは十二月の何日に入るのですか。
  60. 宇津木巌

    宇津木説明員 先生の御質問は、一番当初といいますか末端組織であります保険代理店の窓口に入ったときから計算いたしたことにいたしまして、最終再保険の分につきまして政府へ納入されるという期限は大体三月ないし四ヵ月でございます。
  61. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私どもも四ヵ月と承知しております。聞いてみれば大体四ヵ月ということになっておる。  それから自動車事故が起きて保険会社が払って、政府がその再保険の中から保険会社に支払うのは何ヵ月かかるのですか。——後でお答えをいただきたいと思います。そう重要な問題でありませんから……。  滞留資金には利子がつきますが、どの程度つくのですか。そしてそれを何と呼びますか。
  62. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  収入いたしました保険料運用することによりまして生じました利子あるいは配当分、これにつきましてはわれわれはこれを運用益と称しております。この運用益につきましては一定の計算方法がございまして、おおむね保険会社の資産運用利回りを基準にいたしましてこれを計算しておりますが、現在のところ七%台の大体利回りでございます。
  63. 野坂浩賢

    ○野坂委員 七・幾らですか。
  64. 山橋敬一郎

    山橋説明員 ちょっと正確な数字を後で申し上げます。——お答えいたします。おくれまして申しわけありません。四十六年度が七・〇九%、四十七年度が六・六六%、四十八年度が七・〇六%、四十九年は八・三五%でございます。
  65. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この運用益は六割部分のものはどの程度ありますか。それから四十八年から四十九年に繰り越しをされたものは幾らありますか。
  66. 宇津木巌

    宇津木説明員 先生いまおっしゃいました六割部分というのは国の部分でございますか。
  67. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうです。
  68. 宇津木巌

    宇津木説明員 国の部分につきましては、四十九年度の預託金の利子は二百三十四億でございます。
  69. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この間、小濱議員が質問をしたのでは、四十八年末の残高が百七十三億円で、四十九年度の積立額が百十一億円で、支出額が三十四億で、四十九年度末は二百六十六億九千百万円という資料をもらっておるのですが、これは違うのですか。
  70. 宇津木巌

    宇津木説明員 先生、その数字は四割部分任意保険の方だと思います。いま私お答え申し上げましたのは六割の国の関係の分でございます。
  71. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは四割部分ですか。わかりました。  この二百三十四億円というものは五十年に繰り越されておるわけですね。いろいろと交通遺児が五億円とか先ほどお話がありましたが、現実にいま国の残っておる金額はどの程度ですか。
  72. 宇津木巌

    宇津木説明員 国の場合の運用益の経理の仕方は、四割部分の民間の場合と違いまして、民間の場合には別経理をしておるわけでございますが、国の場合には別経理をいたしませんで、その分は全体の資金の中に溶け込ませてしまっているということでございます。
  73. 野坂浩賢

    ○野坂委員 よくわかりました。そうすると、いま私が言ったのは、保険会社の四割部分についての運用益ですね。——それでは自賠責保険滞留資金の運用益支出に関する基本要綱というものは、どれが法律的には母法になりますか。絶対にこのとおりにしなければならぬということになりますか。それともそれを拒否することが会社その他協会はできるわけですか。
  74. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  運営基本要綱は損保協会がこれは自主的に決めた一つの方針でございまして、法律的には自賠責審議会答申を一応基幹にいたしましてこれを運用すべきものと思われます。したがいまして、基本要綱につきましては、一つの内部におきますところの自主的な申し合わせの性格を持っておるものというふうに考えてよろしいかと思っております。
  75. 野坂浩賢

    ○野坂委員 しかし、これは保険審議会の答申を受けてやりますが、それは私すべきものではなくて、広く公的なり交通安全施設に使うものだというふうに理解をしておりますが、そのとおりかということと、法律的な根拠はないのかということを重ねて伺いたい。
  76. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  基本要綱の基本的な趣旨は、ただいま先生おっしゃったとおりでございまして、ただこれは自賠責審議会答申趣旨を受けまして運用委員会におきまして自主的に定めた基本の方針でございまして、法律的な根拠は別にございません。
  77. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、あなたと第二課長というものが顧問に推戴をされておりますね。御出席になっておりますか。
  78. 山橋敬一郎

    山橋説明員 出席しております。
  79. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、その二百六十六億の運用益が今日あるわけでありますが、先ほど交通安全対策室長の竹岡さんは、これらの充実を図っていかなければならぬ、交通遺児等に四十九年度は五億円ですけれども、もっと出していくべきだと、こういうことでありますが、それらに対してはもっと出していくべきだというのに、なぜこういうふうに残っておるのですか。三十四億しか支出をされていないというのはどういうわけです。
  80. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自賠責審議会答申にもございますように、この滞留資金の運用益につきましては保険収支改善のための財源に充てるという観点が一つございますし、さらに救急医療施設に対する助成、あるいは専門医育成のための援助等の救急医療体制整備充実、あるいは交通事故防止対策等、そういうふうな方面に使えというふうな答申が実はあるわけでございます。したがいまして、この全額を実は救急医療施設その他に使うということも一つ考えられますけれども、ただ保険収支改善というためにこの滞留資金を使用する場合のことを考えまして、現在このような留保を実は置いているわけでございます。
  81. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私たちがいただいておる書面では、この運用益自賠責保険審議会趣旨にのっとって、救急医療体制整備充実等、交通事故対策を推進する費用に充てると、こうなっておるわけです。保険収支の問題では書いてないですね。運用益保険収支が二百八十二億ですか、それだけの赤字があるというのは一体どういうわけですか。  たとえば保険会社の営業報告書を見てみますと、これを責任準備金の中に入れて、この明細表を限度額にしてやっておるわけですよ。みんな千八百億から二千八百億程度の責任準備金がありますね。この中に含まれておる。そうしますと、保険会社の決算書を全部見たのですが、これはまあ火災も海上もございますから、大蔵省に届けられた内容の深い明細表がつけてないからよく分析をすることはできませんけれども、どういうところに赤字があるわけですか。
  82. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、保険料部分には危険に充てるための純保険料部分と付加保険料部分がございまして、この付加保険料部分によりましてすべての経費を賄うという形でございます。ところが、自賠責保険におきましては、この付加保険料部分が、実際に要りますところのいろいろな社費がはるかにこの付加保険料部分をオーバーいたしまして、相当な赤字となって累積いたしておるわけでございます。
  83. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この運用益というのは、各保険会社から損保協会に入って損保協会が保管をしているわけですか。
  84. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  各社にそれぞれの勘定を設けて、各社において保管をしているわけでございます。
  85. 野坂浩賢

    ○野坂委員 勘定科目は何と言いますか。
  86. 山橋敬一郎

    山橋説明員 責任準備金でございます。
  87. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、たとえば一つ例を挙げて悪いですが、東京海上火災保険保険契約準備金はざっと三千七百三十億、責任準備金は二千八百七十八億、こういうことになっております。大体それに相似したものですよ。そうすると、八%かけますと相当なものになる。しかし、赤字が出ておることは理解ができない。検査部長がおいでになれば、分別管理、分別の検査、こういうものをやられておりますか、やられておったら具体的に明らかにしてほしい。     〔委員長退席、野中委員長代理着席〕
  88. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の責任準備金の額は、実はすべての責任準備金を大体ひっくるめた数字であろうかと拝察いたしますけれども、各社におきましては、自賠責保険の収支関係は別勘定にいたしまして、その別勘定の中におきます責任準備金という形でこれを管理をしているわけでございます。
  89. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではここでは議論をしてもらちが明きませんから、責任準備金の明細表、それから運用益と赤字部分の内容を各社にわたって出してほしい。出せますね。委員長、そういう措置をとってもらいたい。
  90. 野中英二

    野中委員長代理 いいですか。
  91. 山橋敬一郎

    山橋説明員 後ほど先生のところへお届けいたします。
  92. 野中英二

    野中委員長代理 委員長において処理します。
  93. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま私が申し上げましたように、自賠責保険審議会の答申の内容については、救急医療施設交通事故専門医の育成、道路安全施設、救急防災活動その他適切な対策、こういうものと公的性格を有する対象を選定してやる、こういうふうに書いてあって、保険収支のことは審議会の答申には書いてないですね。ありますか。  それで、この三十四億円以上にもっと出してもいいじゃないか、こういうふうに思っておるわけですよ。交通遺児その他救急体制はもっと充実をすべきであって、また六割部分運輸省の中に入っていくわけですから、そういう点も兼ね合わせながら思い切った措置をすべきだと思いますし、交通遺児育英会というのがありますね、あれは現在どの程度財源としてはお持ちなんでしょう。
  94. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 交通遺児育英会昭和四十四年に発足したわけでございますけれども、各方面からの寄付等を集めまして、あるいは自賠責運用益の方からの補助もいただきまして、現在大体十八億の基本財産、実質上は約二十億を超えておるんじゃないかと思いますが、基本財産を持っております。
  95. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは簡単にお尋ねをしますが、自賠責保険任意保険損害支払いの場合の査定の基準は一致しておりますか、それとも違っておりますか。違っておるという点はどの部分で、なぜですか。
  96. 宇津木巌

    字津木説明員 任意保険の方の査定方法につきましては必ずしも十分把握しておりませんが、自賠責関係任意保険では大筋については大体同じようなところでございますが、一部につきましては、自賠責保険がある意味で画一的に定額方式をやっておるところを、任意保険の方では比較的きめの細かいやり方といいますか、たとえば自賠責保険では全国一本でやっているところを、任意保険では各管轄地方裁判所のやり方等、地域の実情等を勘案して差を設けておるところがございますし、また一部自賠責関係ではリミットを設けている点につきまして、リミットを設けていない等、その差異につきましては、自賠責保険の方が比較的画一的なのに対しまして、任意保険の方はかなり地域その他の実情を取り込んでおると言えるのではなかろうか、抽象的に申し上げればそういうことになるのではないかと思います。
  97. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうですね。その辺、休業補償というのがありますけれども、これは自賠は一日について二千百円で、立証資料を出せば七千円を限度とする。任意の場合は現実の収入から減少した額を補てんする、こういうことになっておるわけですね。そうすると、むしろ任意の方が現実に即しておるのじゃないか、こういうふうに思うのです。また被保険者の皆さんもその方が当然ではないか、こういうふうにお話しになっていただいておるわけですが、その点はどうかということ。  それから、支払いの査定基準については、社会通念上妥当と思われる金額というのがいっぱい書いてありますね。これが非常に幅があってなかなか査定の意見が合わない、こういうところがあると承知をしておりますが、それは一つの物差しをもっと明確にする方がいいじゃないか、立証しようがない、常識ではこうだというような意見がたくさんございますが、それらについてはっきりさしていく必要があるではないか、こういうふうに思いますが、どうでしょう。
  98. 宇津木巌

    宇津木説明員 最初の点でございますが、休業補償につきましては、原則としてその人が得るべき収入で失われたものという点については、自賠責においても任意においても変わりないと思います。ただ、自賠の場合におきましては、そのリミットといたしまして現在七千円という線を設けておりますし、任意につきましてはこれがない、青天である、こういう点が違うかと思います。この点につきましては所得階層その他を調査いたしまして、大部分の勤労者がカバーできるような範囲にいわばこのリミットを置いたわけでございまして、実際問題といたしましては、かなり裕福な方を除いてはそう大きな支障は来してないのではないかと考えております。  それから二番目の実際の損害査定の各項目にわたりましては、確かに社会通念上必要かつ妥当なということでやってあるわけでございますが、これにつきましては実際事故の態様それから現実的なその人の生活状況あるいは給与状況、いろいろと千差万別でございますので、画一的に線を出してしまいますと、むしろそれに乗らない場合について不利を受ける場合があるということも勘案いたしまして、まあ確かに抽象的な線ではございますが、さような点でできるだけ幅広く救済していこう、こういう考え運用いたしておるところでございます。
  99. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これはこの委員会ではなしにお話を聞いてもできるわけでありますから……。  先ほど私は読み上げたのですが四割部分運用益三十四億円ですか、四十九年度末の残高は二百六十六億九千百万円、間違いありませんか。
  100. 宇津木巌

    宇津木説明員 間違いありません。
  101. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この四割部分については一応わかったのですが、六割部分は再保険の特別会計法の規定によることだと承知しておりますが、この運用益については込みでしょうけれども、たとえば日弁連に出すとか交通関係に出すとか、大体どの程度どういうぐあいに配分がされておるでしょうか。
  102. 宇津木巌

    宇津木説明員 自賠特会の中に勘定が三つほどございまして、一つ保険勘定でございます。これにつきましては先ほどの任意の保険でいう四割に相当する部分でございます。この勘定が一番大きな金額を持っておりまして、当然なことながら大部分保険料であり、またそれが支払う保険金の原資になるところでございます。これにつきまして先ほど申し上げましたような運用益が年間生ずるわけでございますが、これにつきましては、被害者保護の第一は何かということを考えますと、現在の情勢ではやはり保険金限度額引き上げということが一番ベストの方法であろうと考えておりますので、この運用益につきましても将来の限度額引き上げの原資にいたしたい、これが第一に考えているところでございます。ただ、法律で規定せられておりますようなものにつきましての補助金等の支出ということで、もう一昨年になりますか設立せられました自動車事故対策センターに対する補助金、貸付金等の原資に使っております。  それから、先生のお話しになりました諸補助金でございますが、これにつきましては特会の中に保障勘定というのを設けて、この保障勘定は御案内のように無保険車とかあるいはひき逃げ車にやられた場合に保障する事業をやっているところでございますが、そこにも同様に運用益が生ずるわけでございまして、この運用益につきましては被害者保護あるいは事故の防止というような観点からいろいろと補助金を出しております。
  103. 野坂浩賢

    ○野坂委員 六割はそういう関係法が明確にしてあるし、四割の方はいま大蔵省の御答弁では保険審議会の答申ということですが、それは拘束力はないということになりますね。まあ悪い言葉で言うと野放しということにもなりますか、実質的に損保会社の協会がそれについてはいろいろやってあなた方が顧問で入る、こういう程度のものであって、法的にこういうことを縛ることはないということになりますか、一方の六割はきちんとしているわけですが。どうでしょうそれは。
  104. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  先ほどお話し申し上げましたように、四割の民間保険会社運用益運用につきましては、損保協会を中心といたしますところの運営委員会においてその支途等を検討し、念査をしておるわけでございますけれども、この段階におきまして実は大蔵省保険部とも密接な連絡をとりながら個々の契約にわたってやはり厳しい指導を私たちしておるわけでございます。形式的には実は損保協会の運営委員会に任されておる形になっておりますけれども、実質的にはいわば大蔵省の厳しい指導のもとにこの運用の問題を審議し決定をしているというふうに御理解いただけたら幸いかというふうに考えているわけでございます。  また、大蔵省保険部といたしましては、保険審議会の答申趣旨にこの支出が沿っていくようにやはり厳密な査定をしあるいは指導をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  105. 野坂浩賢

    ○野坂委員 厳密に厳しく指導しておられるでしょうけれども、滞留金の利息が運用益になるわけですが、その運用益についても、部長は下はもう優秀な方ばかりですからそれは任せられるでしょうけれども、利息もなかなかわからぬようなことで厳しい指導ということにはならぬじゃないですかね。やはり厳しくということになれば、法的な根拠を明らかにしながらきちんとやるということになればそこは枠は出ませんが、言ったところで部長も第二課長も顧問ですからね、自主的に決めるのですからね、そうあなた方がこう決めたからこうだというわけにはなかなかならぬじゃないですか、まあ良識のある人ばかりの集まりでしょうけれども。三十七億だと言ってもいや三十三億だというふうになれば、やはりその方たちは当事者ですから、あなた方の厳しい指導なり厳密な調査ということになかなかなってこぬように討論の過程では感ずるのですよ。だから、それについては六割部分と同じような締め方というものを考える必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  106. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  ただいま申し上げましたように、運用益運用については実質上は大蔵省保険部が厳しい指導を行っているわけでございますけれども、先生指摘のように公的な規制というものはないではないかというふうなお話でございます。したがいまして、今後実は私たちといたしましては、運営委員会の構成をどうするかというふうな問題、あるいはその運営委員会で審議をいたします運用についての基準あるいは方針というものにつきまして、公的な一つ基礎を持たせるようにするというふうな点について検討をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  107. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それならいいわけです。公的機関を設置をしてもらって万遺漏のないようにしていただきたい、こう思います。  もう時間がございませんが、大体自賠責保険昭和三十年から出てきたというか導入されて、任意保険というものは自賠責保険のいわゆる上積み保険ということになりますね。こういう形でやられて二本立てになっておるわけですから、いわゆる自賠責がだんだん成長してこういうふうに千五百万なり二千万ということになれば、補完をする措置ということになってきます。いわゆる上積みにとりますもの、そういう点を二つあわせて、業務保険と家庭保険とあわせたように、やはり一本化をした方がむしろめんどうでない。自賠責をやって、また手続で任意保険でやるということになると、あなた方は専門家ですからすぐわかりますが、素人はなかなかめんどうですし、やりにくいし、この方がむしろ安くなってくるのじゃないか。自賠責保険でもいいような、それだけでもいいような姿にした方が、今日の状況としてはいいではなかろうかというふうに思うのですが、どうでしょうか。
  108. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自賠責保険任意保険の一本化の問題につきましては、本年の六月にいただきました保険審議会の答申におきましても、るるこの点について触れております。自賠責保険は、その保険期間を車検期間にリンクをさせて、契約当事者による解約を原則として禁止することによって付保強制の確保にきわめて有効な制度となっている。一方、任意保険は、保険料負担の公平のほか事故防止効果も期待されるメリデメ制度とかあるいは契約者の便宜に資する保険料分割払い制度等を備えておりまして、このように両保険がそれぞれの特色を有しているけれども、この特色を生かしながらこの両保険制度的に一本化するという問題につきましては、技術的にはなかなか容易でない面があると考えられる。たとえば車検リンク制とメリデメの料率制度との関係を見ますと、前者は先ほど答弁ございましたように車両に着目するものであるし、後者は契約者に着目するものであって、両者を同一の保険に併存させることは実はいろいろな技術的な困難な問題が含まれているというふうに述べられておるわけでございます。  このように自賠責保険任意保険の両保険それぞれに固有の特色を生かしながら両保険制度的に一本化することは技術的になかなかむずかしい面があると考えられますし、また、基本的にも最終的な目的である被害者保護に関しまして、二本立てであることの問題を解消するためには両者の一本化というふうな方法が不可欠な問題であるかどうか、あるいは一本化するとした場合の方式はどういう方式にすべきか、一本化に際しまして生ずる問題点は何か等いろいろ検討を要する点があろうかというふうに考えております。  したがいまして、当面被害者救済あるいは契約者の便宜という点に資するためには、運用面におきまして相当程度工夫をいたしましてこれに対処をしていくということが可能であろうかと思いますし、保険金支払いあるいは事故通知の分野ですでに手続が一本で済むというふうな点が実施をされておるわけでございまして、この点をさらに進めていくということが当面一つとるべき措置であろうかと思いますが、一本化問題につきましては、先ほど申し上げましたようにわが国の自動車賠償責任保障制度の根本に触れる大きな問題でございますので、被害者保護あるいは契約者の便宜、こういう見地に立ちましてなお検討を続けてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  109. 野坂浩賢

    ○野坂委員 委員長から時間が来たという通知がございまして早くやめたいと思っておりますが、いまの委員長代理が質問をしましたように、社会保障的な性格が濃いこの自賠責保険である。この自賠責保険のそういう意味を含めて充実改善というものは考えていっていただかなければなりませんが、先ほど冒頭に私が申し上げましたように、事故によって家庭が貧困になる、こういうことがございますから、これをさらに充実強化をして、支払い方式も一時払いあるいは年金方式福祉預金の導入、こういう点についても十分検討をいただく段階が来ておる、こういうふうに思っておるわけです。それについては対処していただけるかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  110. 宇津木巌

    字津木説明員 お答えいたします。  先生の御指摘は一々ごもっともであろうと思いますが、ただ、非常にむずかしい問題も含んでおりますので、十分時間をかけ長期的に慎重に検討してまいりたいと思っております。
  111. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの問題は時間がありませんからこの次もう一遍やらせていただきます。     〔野中委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、私はいろいろとこの業務報告書を見ますと、保険会社というのは海上火災保険株式会社というのと火災海上というのと二通りありますね。これはどういうわけでこういうことになっておるのでしょうか。
  112. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  保険業法によりまして、保険事業を営む者はその主たる事業の名称を保険会社の名前に付さなければならないというふうなことがございます。したがいまして、そういう観点から火災あるいは海上というふうに主たる事業につきましてそのウエートに応じて名前が付されているものというふうに私たち考えておるわけでございます。
  113. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いま保険業法の第四条の説明をいただいたわけですが、この自動車保険というのは、海上や火災以上に、大体全体的にその営む主たる保険事業じゃないですか。そうすると看板に偽りがあるということになりますか。それはどういうことになるでしょうか。
  114. 山橋敬一郎

    山橋説明員 現在自動車保険のウエートが損害保険会社において相当大きくなっておるということは先生指摘のとおりでございます。しかしながら、保険業法四条の趣旨と申しますのは、保険事業が一般公衆というものを相手として取引をするものでございますので、一般の公衆が保険会社の営む事業につきまして誤認をするおそれがないようにその商号の中に営む事業の種類を示すこととしたものでございます。したがいまして、当初の保険事業の申請に際しましてこの条件に反するものがあれば、この条件に適合するように訂正をした上でなければ免許を与えないということは当然のことだと私たち考えておるわけでございますが、しかし、一たん免許が与えられまして、長年にわたりまして同一商号で保険事業を営んでおるという場合には、商号自体にも実は相当な価値が生じてまいりますし、国際的な取引、信用の問題にもつながるわけでございまして、営業のウエートの移動に伴いまして商号に表示している事業の種類というものを変えるというふうな、直ちに商号を変えるという指導を現段階においてしなければならないものとは考えていないわけでございます。  それから、商号の変更につきましては、以上のような事情に加えまして、相当巨額の費用もかかりますし、それが結局保険料にはね返ってくるおそれというふうなものもございますので、これらの要素と、商号を現時点で変えないと一般公衆が保険会社の営む事業を誤認するおそれがある、それがどの程度あるかというふうな点を総合的に比較勘案をした上で指導していきたいというふうに考えているわけでございます。
  115. 野坂浩賢

    ○野坂委員 会社の社名をつくることでありますから、お説もわかるのです。保険契約者が誤認をしないように、こういういろいろなことは常識的にわかるわけですが、それではこの四条の「会社ハ其ノ商号又ハ名称中二其ノ営ム主タル保険事業ノ種類」というのは、免許を与える際、あるいは許認可をする際というのがこの法律の趣旨だ、現状ではなしに免許を与えるときだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  116. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  必ずしも免許を与えるときのみの一つの基準というふうに私たち考えているわけでもございませんけれども、たとえば現状におきまして、相当自動車保険のウエートが高くなった、したがいまして商号の中に自動車の名前を入れろということを直ちに指導する、あるいはこれを入れないと違法であるというふうには考えていないわけでございます。
  117. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この辺でやめますけれども、この法律もいろいろ伸縮はあるようですが、私たちは、明確に現状どうか、こう言えば、自動車保険のウエートは非常に高い、約半分だ。許認可のときだということになればよくわかるのですよ。だから、現状でもないし、許認可のときでもないし、それは保険部長の判断だということでは困るので、明確にそれらの点については御検討いただきますように、時間がもう過ぎておりますのでこれでやめますが、ぜひそれらの点については十分考えておいていただきたいと思います。  以上で終わります。
  118. 野中英二

    野中委員 関連質問をします。  保険業法の第四条、商号の問題でございますけれども、これは御存じのとおり、必ずしもこれが商法違反になるとは思わない。けれども、現存している商法があるにもかかわらず、この第四条をあえて決めたのは何であろうかということですね。いまの保険部長答弁によりますと、これは許認可のときだけ必要だ、こういうこと、あるいはまた利用者が明確に会社の性格を知るための利便を与えるためにした、こういうようなことであるとするならば、それに終始徹底するということであれば、当然自動車保険を取り扱うということであれば、商号の中へ入ってきたっていいじゃないか、こういうことですね。もしこれが盲腸のようなものであるとするならば、この第四条を削除していいじゃないか、商法の規定に基づいてやってよろしいじゃないか、こういう議論が成り立つわけです。ですから、その辺を明確にしていきませんと、とにかくどんどん拡大していってしまう、エスカレートしていく、どこの会社でも自動車保険がもうかればやっていく、そういうふうなことになってくる。どこにその歯どめをしていくのか、こういうことも当然必要になってくるはずですよ。その辺もう一度関連質問しておきます。
  119. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  だんだんと保険の種類が変化をいたしまして、たとえば海上保険を全然やらなくなってしまった、したがって、火災あるいは自動車が主であるというふうな事態になりますと、もはや海上という名前をつけることは、逆に契約者を誤認せしむる形になります。そういうふうなことで、そういう場合には、やはり名称の問題については、これを変更するように指導すべきものと思われますけれども、現状におきましては、自動車のウエートは高くはなっておりますけれども、一般の契約者におきましては、損害保険会社においては自動車保険も扱っておるということはおおむね一つの常識になっておろうかと考えておりますので、いま直ちに扱っておるからこれを入れるべきであるというふうに強い指導をすることは実は考えてないわけでございます。
  120. 下平正一

    下平委員長 次に、井上泉君。
  121. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いろいろ保険関係について質問をいたしたいと思うわけですが、まず最初に、私は、けさの朝日新聞で「ねらいは予算のお余り?歳末お願いします」ということで「慈善のおすがり急増」こういう見出しの中で、まことにいやらしいという感じがするわけですが、交通福祉慈善公演実行委員会というので役所回りをして一万円、二万円のチャリティショーの券を売りつけておる、こういうことでありますが、これは総理府の方では、これにはすっきりしない慈善団体が大分年末は出てくるからということで調査を始めたと、こう書いてあるわけですが、この調査の対象に交通福祉慈善公演実行委員会というのがなっておるのかどうか、総理府にお聞きしたいと思う。
  122. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 この新聞で御指摘の交通福祉慈善公演、この売り上げの一部をむち打ち症やあるいは交通遺児に出したいということで計画しておるようでございますが、これは任意団体でございますので、われわれの監督のもとにある機関じゃございませんけれども、これは毎年何かやっておるようでございますし、これがその趣旨のとおり運用されているのかどうか、特に交通被害者の名前をかりてやる活動でございますので、先ほど先生おっしゃった、若干いやらしいという感じもしますけれども、これがどのような方法でやるのか、そしてどのようにこれを配分するのか、どういう計画を持っておるのかということは私の方でもこの団体につきまして調査してみたい、このように思っております。
  123. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それで、これはむち打ち症の協議会へ寄付すると言っても、大体二、三十万円、こういうことで、それで何百万円も金を集める、こういうことになっておるわけですが、こういう場合における税金というのは、一万円の券とかいうことになると相当な税金がかかるわけですが、こういう場合の税というものはどうなっておるのか。これは保険部長、前に税を担当されておるのですから、その辺のことはよくおわかりだと思うのですが、こういう場合の税というのはどうなんですか。
  124. 山橋敬一郎

    山橋説明員 ちょっと正確な御答弁は私としてはしかねますので……。
  125. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いや、チャリティーショーで券を売る、一万円で売った場合に、税はかからないのかということ。
  126. 山橋敬一郎

    山橋説明員 通常慈善団体に対する寄付等、指定寄付金ということでございますれば、それは無税という形になると思いますけれども、果たしてそれが指定寄付金に当たるのかどうかという点について、もし当たらなければそれは無税という形にはならないと思います。
  127. 井上泉

    ○井上(泉)委員 部長は前に国税局の担当をされておったのですから、私は、やはりこういうものが課税の対象になるのかならないのか、ここに具体的事例としていま総理府にお尋ねをした交通福祉何とか公演実行委員会というものがやっておるこの券の売り方が課税対象になるのかどうか、これはぜひひとつ調べて報告をしてもらいたいと思います。要するにこれは交通事故者に対する救済という名目、つまり被害者を利用したやり方でありますので、その点からも調査をお願いをしたい。  そこで、保険金というものは、自動車損害保険にしても保険会社というものは金利のつかぬ金をたくさん受け取るわけで、そういう点からも莫大な利益を得るわけになるわけですが、これは私のそういうふうな考え方というものが当たっておるのか当たってないのか、この保険金の、つまり保険金はいわば保険加入者が何かのときに救済をしてもらうための掛金には違いないけれども、受け取る保険会社にしては、保険金の給付以外には、給付の事態が発生したときに初めてその金が支出をされて、それが発生するまではその金はいわば無利子で受け取っておる、こういうふうな、保険会社としてはきわめて便利な金の集め方になるわけですが、そういうようなものは、そういう行き方から考えれば、やはり保険金運用というものについて、私は最大限保険者にその恩典が与えられるような、そういう保険趣旨でなくては、保険金の使い方でなくてはならないと思うわけですが、その点について保険部長の見解をお伺いしたいと思います。
  128. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  先生のお話のとおり、損害保険会社あるいは生命保険会社は、その保険料を収入いたしまして、これをまあ保険契約者からの一種の預かり金という形で運用をしているわけでございます。その運用に当たりましては、その資金の性格にかんがみまして、社会、国民生活の向上あるいは経済の安定というふうなものに資するというふうな方向で運用すべきものと考えておるわけでございます。また、先ほど来申し上げましたとおり、その運用益の問題につきましても、その使途につきましては厳正にその趣旨に沿ってこれを運用するよう指導しておるところでございます。
  129. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういう場合に、保険会社が、たとえば自民党等に政治献金をするのは、保険会社として利益を正当に運用したものと、そう大蔵省の方では理解をしておるのですか。政治献金をした場合です。
  130. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答え申し上げます。  保険会社も民間の一種の金融機関ということでございます。民間の会社……(井上(泉)委員「保険会社は金融機関じゃないですよ」と呼ぶ)民間の一つの会社でございます。したがいまして、その支出のすべてにわたってこれをつまびらかに指導の対象にするというふうなことではなくして、おのずからそこに会社の自主的な判断によるところの支出というものが出てくるのはやむを得ない点であろうかと思いますが、ただ、その性格にかんがみまして、その支出につきましては良識のある一つの判断によってこれが行わるべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  131. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その良識ある判断ということも、保険会社の良識ある判断によって支出をするということは当然のことですが、あなたの良識をもってするならば、保険会社あるいは損保協会が自民党に政治献金をするとかということは、これは正当と思うかどうか、お伺いいたします。
  132. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  民間の会社でございますので、いろいろな事業上の必要性あるいはいろいろな理由から政治献金というものが行われるということは考えられるわけでございますけれども、問題は、その損害保険会社あるいは生命保険会社が持っている公共的な性格というものをどの程度考えながらその支出を行っているかという点が問題であろうかと思います。したがいまして、政治献金そのものを直ちにどうこうというふうな形ではなくして、それがどのような趣旨あるいはどのような動機から行われたか、またその程度がどの程度であるかというような問題点を総合勘案をいたしまして良識に基づいて行われたかどうかということが判断されるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  133. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは保険会社考え方であって、保険部長として、保険というものがどういう社会的な使命を持っているのかということから、私が先ほど申し上げたような、保険というものが政党の利益のために存在をするものでないし、いわゆる保険加入者の利益のために存在をするわけだから、そういう点から考えて、保険会社の監督官庁としての大蔵省のお役人とし、そしてまた保険部長として、きわめて優秀な日本政府の官僚として、あなたの良識をもってするならば、そういうふうな政治献金は好ましいことであるのかないのか、私はそのことを聞いておる。保険会社の都合を聞いてないのです。あなたのこれからの保険行政をやっていく上についての姿勢というものを知る上においても非常に重要な参考になるので、あなたの良識をひとつお聞かせ願えれば幸いだと思うわけです。
  134. 山橋敬一郎

    山橋説明員 先ほど来申し上げておりますように、保険会社の経営に当たりましては、それぞれの事業の活動というものに関連をいたしましていろいろな支出、交際支出あるいは寄付支出というふうな点があろうかと思いますけれども、政治献金につきましては、その事業との関連性あるいはその必要度というふうな点を十分勘案をいたしまして、またその支出の態様というふうなものを総合勘案をいたしまして判断をすべき問題でございまして、それがいい悪いというふうな実は判断を直ちにはいたしかねる問題ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  135. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これ以上質問をしても、あなたも、政治献金結構と言えば自民党から喜ばれるだろうし、結構でないと言うと、これまた自民党からしかられるであろうし、そういう点で慎重な答弁の仕方だと思うわけであります。  そこで私は、本来保険目的が達成をされておるかどうかということについて若干質問したいと思うのですが、ことしの七月に自賠保険限度額が千五百万に引き上げられたわけですが、それに対応して任意保険というものにはどのような措置をしてきたのか。そうして九月十日に、私のところにもあるわけですが、損害保険協会が新聞で「お知らせ」というようなことで、この保険限度額引き上げられたことについての保険会社としての見解というか、方針というものを発表しておるが、一体これはどういうものであるのか。以上二点について、保険部長なりしかるべき方の答弁をお願いしたいと思います。
  136. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、本業の七月に自賠責限度が一千五百万に引き上げられまして、これに対応いたしまして、任意保険におきましては九月十日付で、これも先生指摘のとおりでございますが、新聞で損保協会の「お知らせ」を掲載をしております。このポイントは、五十年の七月一日に自賠責保険限度額が一千万円から千五百万円に引き上げられたことに伴いまして、五十年の七月一日以降に生じました対人事故につきましては、事故発生時に契約をしていた保険金額を一・三五倍いたした額に増額をいたしまして、この額を保険金額とみなして保険金を支払うというお知らせでございます。  この意味は、これは実例を挙げてお話し申し上げた方があるいはわかりやすいかと思いますが、たと岳ば損害額が二千万、と同時に任意保険金額が一千万と想定いたしますと、自賠責保険限度引き上げ以前は、自賠責で一千万、任意保険では一千万支払うことになっておりましたのに対しまして、限度額引き上げ後は、自賠責で千五百万、任意保険で五百万を支払うことになりました。こういう点から、任意保険の負担部分は小さくなるということは確かでございます。そこで、その保険金額を一・三五倍した額に増額をいたしまして、この額を保険金額とみなして保険金を支払うというふうに調整をしたわけでございます。  そこで、これも設例で御説明を申し上げますと、任意の保険金額が二千万、損害額五千万と仮定いたしますと、この措置によりまして、従来は自賠責保険で一千万、任意保険で二千万支払っておりましたのに対しまして、自賠責限度額が一千五百万に引き上げられましたために、経過措置がもしないといたしますと、自賠責保険で千五百万、任意保険で二千万、合計三千五百万支払うことになるわけでございます。しかしながら、この経過措置によりまして、自賠責保険で一千五百万、任意保険で二千七百万、合計四千二百万支払うことになるわけでございまして、保険金額のかさ上げということによりまして担保範囲が拡大されるという形になるわけでございます。  こういうふうな措置によりまして、自賠責保険限度額引き上げによって、同一の損害額に対しまして任意保険で担保する範囲が相対的に縮まりましたために、その保険金額の調整という観点から経過措置をとったわけでございます。
  137. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そうすることは、保険会社のもうけということになってくるわけじゃないですか。  それと同時に、損害の査定基準というようなものはこの機会に改められたのでしょうか。改められないとすると、これは何ぼそのお知らせをして、一・三五倍に上げた、いままでのそれを増額をした、それを保険金額とみなすということになっても、この損害の査定基準が改正されてなければ意味をなさないし、そうしてまたこの限度額引き上げることによって、任意の方の一千万が五百万になる、それで、強制の方で五百万いくからということであっても、実質的にはこれは保険会社が利益を得るような方向になっておって、被保険者が、被害者が利益を得るようにはなってないのじゃないですか。これは私の質問が間違っておるのでしょうか。
  138. 田中哲男

    ○田中説明員 ただいまの御質問でございますが、査定基準とは実は直接の関係はないわけでございます。ただいま部長が御説明申し上げましたように、たとえば二千万の損害額の場合でございますと、自賠一千万、任意一千万ということになりますと、確かに任意の方の支払いは五百万減るということになるわけでございますが、後の方で御説明申し上げました例によりますと、逆に任意の方が七百万多く支払うことになるわけでございます。したがいまして、計算といたしましては、あらゆる場合がどのぐらいの頻度でそれぞれ起きるものかという計算をいたしまして、保険金額、これは御承知のように限度額でございますけれども、それを一・三五倍しておけば、支払い増になる分と支払い減になる分でちょうどとんとんであるというような計算にいたしまして、一・三五倍ということを決めたわけでございます。
  139. 井上泉

    ○井上(泉)委員 大蔵省、つまりこの保険を管理しておる立場としても、やはり加入者が救われ、被害者が救われるということが第一義の目的であって、保険会社が——保険会社もそれは経常経費というものは要るわけですけれども、少なくともこの交通保険関係で利益を得るというようなことは、これはあってはならないし、その利益はもっと交通事故対策についての社会還元をすべきである、こういうふうに思うわけですけれども、さきの野中委員質問の中でも非常に少ないわけでありますが、こういうことについては、大蔵省としてももっとこの運用益というものを、被害者救済のために、あるいは交通安全対策のためにもっとこれが使われてしかるべきではないかというお考えは持っていないかどうか、その辺の見解を承りたい。
  140. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答え申し上げます。  先ほど来、自賠責運用益運用につきまして種々御質疑がございました。この運用益をさらに交通事故防止対策あるいは被害者救済の具体的な措置に使うべきではないかという御質問でございますけれども、私たちも、先ほど申し上げました自賠責審議会答申趣旨に沿って、今後もこの点は十分配意をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  先ほど実は四十九年度末の自賠責運用益の累積積立額が二百六十六億というふうに申し上げました。本年度ただいまのところ計画をしております支出につきましては、約百六十二億の支出を実は計画ベースでは考えておるわけでございます。  この中で最も大きなウエートを占めますのは、先ほどお答え申し上げましたが、脳神経外科の実は外科医の養成の関係で、新しい脳外科用の機械を導入をするというふうなこと、これに大体八十七億程度の金を実は予定をしておるわけでございますが、さらに引き続き、赤十字、済生会、交通遺児育英会等の支出も十分考慮をしてまいりたい、私たちとしてもこの問題については前向きに今後も続けて考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  141. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それで自賠責保険の中には、仮渡し金の制度とか内払い制度あるいは被害者の直接請求制度というものを設けられてあるけれども、任意保険については、この点が非常に不十分であるが、やはり被害者救済制度から言えば、これは任意保険の場合も自賠責と同様の制度を導入すべきと思うのですが、このことはどういうようにお考えになるのか、承りたいと思います。
  142. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答え申し上げます。  被害者直接請求制度、それから保険金額事故無制限の制度につきましては、現在、家庭用自動車保険、業務用自動車保険に導入されているところでございます。また、先ほど来御質疑がございました、五十一年の一月一日から実施を予定されておりますところの任意の自動車保険制度改定によりまして、すべての任意自動車保険にこの被害者直接請求制度保険金額事故無制限制度を導入する、こういう予定になっております。また、内払い制度につきましては、自賠責保険任意保険のいずれにも導入されておりまして、これは別に法令の規定ではなくして、業界の自主的申し合わせによっているわけでございます。  自賠責保険の内払い制度は、自動車保有者賠償責任があると認められる場合で、損害額が十万以上あるというふうに確認された場合に、十万円またはその倍数に相当する金額を支払うわけでございますが、仮渡し金を支払っているときはその額を控除して支払う、こういうことになっております。そこで、任意自動車保険の内払い制度は、約款上責任ありと認められ、損害額自賠責保険限度でございますところの百万円を超えると見込まれるか、あるいは百万円までの自賠責保険支払い済みとなっている場合に、その超える額につきまして、十万円またはその倍数に相当する金額を支払う、実はこういう仕組みになっておるわけでございます。  また仮渡し金制度につきましては、自賠責保険におきましては、自賠法の十七条によって、保有者側の責任の有無あるいは賠償額が確定する前に自動車事故によりまして被害を受けたという事実だけで、被害者に一定の金額を支払う制度でございますけれども、これは被害者が当座の出費に対処できるように、責任の有無、損害額決定にかかわらず、法律の規定によって特に認められたものでございます。賠償責任保険といたしましての任意保険におきましては、実は損害賠償責任の有無にかかわらず仮渡しを行うというのは、実は任意の自動車保険のたてまえとしては適切でない、そういうふうな考え方から、この仮渡し金制度は今度の改正におきましても、任意自動車保険の中には取り入れなかったというふうな経緯でございます。
  143. 井上泉

    ○井上(泉)委員 大体自動車保険というものは、強制が一千万だと千五百万、そうして任意に一千万かけておる、そうすればもう二千五百万あるというように、加入者は、保険をかけておる者はそういうことが一つの常識としてそれをつかんでおるわけですけれども、いざ事故を起こした場合になると、なかなか強制のこの千五百万はおろか、任意なんかてんで手に入らないというのが、そういうように被害者被害状況等のいろんな査定の中でやられるというのが普通なんです。  私は、そういう点から見ても、自動車保険の約款というものが素人にはわからないのですよ。ちゃんと保険契約のそういう約款に基づいてやっておると保険会社に言われれば、抗弁のしようもないわけですけれども、やはり査定基準とか保険約款というものはだれにもわかりやすいような、少なくとも小学校、中学校、義務教育を受けた程度の者ならばそれを読んだら理解をされるような、そういう約款のあり方に私は保険会社を指導すべきだと思うのですが、いまの約款で上等だと思っていますか。
  144. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、保険約款につきましては、なかなか内容がわかりにくいというふうな声もございまして、審議会の答申におきましても、その約款の内容の簡素化についてこれを検討すべきであるという御答申をいただいておるわけでございます。現在、その約款の内容の簡素化について検討中でございますし、私たちといたしましても、これを強く指導してまいりたいというふうに考えているわけでございます。  また、契約者が、この保険の内容を手軽にそのポイントだけはわかるようなそういうことのために、契約のしおりというものを各契約者にお渡しすることになっておりますけれども、なおその契約のしおりの内容につきましても、一層の改善を図っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  145. 井上泉

    ○井上(泉)委員 この場合でも、たとえば農協共済の場合なんかは、窓口が農協でどこの地方にもあるわけで、そこで対人関係も、平素からもつき合いのある関係者が非常に多い関係で、そういう問題点についても相談をしやすい、また理解をしやすい面があるけれども、いわゆる保険会社関係になりますというと、これはとても一般大衆では近寄りがたいような、保険を入れるときにはすぐやるわけですけれども、いざ事故が発生をし、保険金の問題が持ち上がった場合には、もう保険会社一つの役所と同じような扱い方で、非常に加入者が不満を訴えておるわけでありますので、いま部長が言われたような、少なくとも保険契約をした場合には、これはこうでありますというわかりやすい解説書ぐらいは、この保険加入者にそれを示すようなぜひとも親切な指導というものを、私は早急にやっていただくようにお願いしておきたいと思います。  そこで、いま保険会社保険金というものは、これは利子のかからぬ金で、保険会社としては大変な運用の利益をこれによって得ておるわけですが、農協共済が自賠責の調整準備金として四十九年度でも五十二億円余りあるわけで、大体全体の二〇%と、こういうふうに言われておるわけですが、保険会社は調整準備金というものをどれだけ持っておるのか、この点ひとつ御答弁願いたいと思うわけです。四十九年度末でけっこうですが……。
  146. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自賠責の調整準備金は、自賠責の純保険料、いわゆる純率部分の収支残高を責任準備金に義務積立金という名称で積み立てておきまして、積んだ年から数えまして五年経過した年に最後の締めくくりをやりまして、その決算時に調整準備金勘定として振りかえるものでございます。  損害保険会社のこの調整準備金は、保険に係る損失のてん補に充てる場合のほかは取り崩さない、こういうことになっておるわけでございますが、四十九年度末におきますところのこの調整準備金の残高は、赤字の五百六十一億六千百万円でございまして、いまだ使用できる状況にはなっておらないわけでございます。
  147. 井上泉

    ○井上(泉)委員 赤字の五百六十一億というふうになっておる。そこで私は、この自動車保険関係につきまして、運輸省が車検制度を軽自動車にも決めたわけですが、それがいまどういうふうな自賠責保険の加入状況になっておるのか、これは運輸省の方から報告を願いたいと思います。
  148. 宇津木巌

    宇津木説明員 お答えいたします。  軽自動車につきましては、先生御案内のとおり車検制度が採用されまして、一時に切りかえができませんので、ことしの九月まで二ヵ年間の経過期間を設けまして車検制度を実施してきたわけでございますが、その受検率は九月末で約九六%という数字になっておりまして、これらのものにつきましては付保率も当然に九六%という形になっております。ただ、この九月末の期限までに受けなかった台数はおおよそ二十四万台と推定されるわけでございますが、十月十一月でさらに五万数千台検査を受けに参っておりますので、その分だけ上昇しておりますし、それからいわゆる古い車ではない新規の車につきましては全部の車が二輪車を除きまして付保されておりますので、検査対象の車について見ますればおそらく九七、八%までいっておるだろうと思います。
  149. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それは新車はもちろんあたりまえのことですが、この場合に、特に農村関係では軽自動車が多いわけで、農村関係の軽自動車に対する車検の普及率というものも非常に少ない。これは私はやはり農協にその責任があると思うわけですが、農林省の農協組合課ではそういう状態というものを把握をしておるのか、あるいは把握をしておってそれについての指導をなさっておるのかどうか、その辺を農協組合課長から御答弁願いたいと思います。
  150. 永井和夫

    ○永井説明員 御指摘のように、軽自動車及び原動機付自転車につきましては、かつて車検とリンクしておらなかったという観点から、未保険の車が走っておるのではないかという御指摘でございまして、同じ軽自動車等につきましても、農村部が都市部に比較して率におきまして加入が低いかどうかということにつきましては、私ども必ずしもそうではないのではないかと思うのでございますが、やはりこういう軽車両が農村部に多いという実情にかんがみまして、その地域におきますところの賠償責任を担保すべき農協系統としてこの未加入者の加入促進には十分力を注ぐべきであるということをかねてから指導してまいりました。  一つには、まず加入しておる者がその期間満了後契約しないで推移してしまうということのないように、契約期間満了前に、一ヵ月くらい前にチェックをいたしまして継続加入を促進するということ、あるいはまた全共連傘下の各農協の組合員で自動車等の保有の状態を把握いたしまして、これが必ず保険共済に入るように推進をするというようなことを系統自体の運動としてかねてから実施しておるわけでございますが、先生の御指摘のような点をさらに進めるために、運輸省と御連絡をとりまして、両局長名で全共連に対しまして新たに二年ものないし三年ものという、一度入れば契約期間が比較的長く、その間の継続の忘れ等のないような仕組みにいたしまして新しい共済を実施する、あるいはまたそれにつきましてさらに加入を促進するということを依頼し、また全共連においてそれを実施しておるという状況というふうに承知しております。
  151. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは保険とは直接関係ないですけれども、農協組合課長がおいでになっておるのですから、この際あなたの方としても積極的に各方面に働きかけていただきたいということは、最近農地の真ん中を高速自動車道あるいはバイパス、そういうものが通過したことによって、トラクターとかというようなものを農民が向こう側のたんぼへ持っていくのにも、路上を走らせてはならぬ、こういうことになるわけですから、全部運搬車を使用しなければいかぬという大変な不便を受けておるので、そういう点についての不便というもの、これは農地は前からあったもので、道路は後からできたものです。それがために耕作農民が不便を受けるようなことがあってはならないと思うので、法的にもその不便さを排除するような措置をとっていただくように各方面と協議を重ねて善処してもらいたいということを要望しておきたいと思います。  そこで私は、損害保険協会とそれから全共連もですが、大体前段、最初に申し上げましたとおり、保険本来の目的に反した、私としては保険目的に反しておると思うのですが、それに反した政治献金というものが毎年多額になされており、そうしてまた今度自民党に政治献金を再開するに当たっても損害保険協会には莫大な割り当てがきておる、こういうような話も聞くわけでありますが、大体損害保険協会としてはどれだけの政治献金をどういうようにしておるのか、四十九年度、五十年度、全共連を含めてひとつ資料として提出をしていただくように委員長に取り計らいをお願いをしておきたいと思います。  そこで、もう時間がありませんので、最後に交通安全対策につきましていろいろみんなが苦労しておるわけですが、その中の一環として、被害者救済の一環として保険制度というものができたわけでありますので、そういう点からも保険指導というものは、交通保険自動車保険そのものはやはり交通安全というものに主力を置いた形とそれから交通被害者に対する救済ということにこの益金が運用されるようなことにならなければならないと思うわけです。そこで、最近の交通事故の状態につきまして、やはり死亡事故が一万人を超えておるという悲惨な実情にかんがみて、交通安全というものにはより一層熱意を傾注していただかなくてはならないわけですが、けさ私は朝のテレビの「リポート」を見たときに、歩道橋は余り通らずに、青信号の合間を縫って乳母車を引いたお母さん方がその車の中を走り回って、その不便を嘆いておった。ところが、ある日突然横断歩道が歩道橋のすぐそばに設置をされて、そうしてみんな非常に喜んでそれを渡っておる。それからそれぞれの関係者の話を聞いてみますと、そうした横断歩道というものがいかに大切なものであり、歩道橋というものがいかに住民に不便を与えておるかという大きな証拠になっておるわけです。  五十年度においてもかなりな歩道橋が設置されたと思うわけですが、警察庁としては、やはり歩道橋に重点を置くのか、横断歩道に重点を置くのか、その点についての見解を承りたいと思います。
  152. 森郷巳

    ○森説明員 御承知のように、横断歩道橋につきましては昭和三十六年ごろからつき始めまして、現実には交通安全施設整備事業等によりまして四十一年から建設省所管の事業として設置をされてきたわけでございます。もちろん道路幅員の広い全幅四車線以上の道路につきまして、それを横断する歩行者の安全を図り、あわせて通過交通の円滑を図るという趣旨で設けられてきたわけでございます。そしてまたそういったことで設けられましたので、できるだけこれを利用するようにということで私どもも指導してまいったわけでございますが、先生まさに御指摘のとおり、場所によりましては、たとえば駅であるとか商店街であるとかあるいは病院付近であるとかいったところについておる横断歩道橋につきましては、現実にこれを利用しがたいような方がたくさんおられるというところもございます。お年寄りとか体の不自由な方とかあるいは乳母車とか自転車とか、そういったものがかなり多いところが出てきているというのも実情でございます。そういったことで、今後横断歩道橋をつけるという場合につきましては、やはり付近の状況を十分にらみ合わせながら、横断歩道橋が利用しやすいような規格構造のものにしていくというようなことで、道路管理者等と話し合いながらやっていきたいというふうに考えております。  ただ、現実に横断歩道橋のあるところで、かなりそれを利用しがたいというところもございますので、そういったところにつきましては、私どもといたしましては、その具体的な場所ごとに、その横断する人たちの状況あるいは沿道の条件、そういったものを十分にらみ合わせながら、必要に応じて横断歩道というものも設置していきたい、こんなふうに考えておるわけでございます。ただ、横断歩道橋は、学童なんかの場合にはそういった支障もないわけでございますので、学童等につきましてはやはり横断歩道橋を渡って横断するようにというようなことで指導してまいりたい、こんなふうに考えておるということでございます。
  153. 井上泉

    ○井上(泉)委員 横断中の事故というようなものもかなり多いわけでありますけれども、あの歩道橋を渡る苦労、乳母車を押した人とかお年寄りというようなものは、歩道橋に上がってこれを渡ることは困難なので、いまあなたがおっしゃるように、利用度の低いところで、しかも横断歩道がないためにああいう危険な、つまり青信号のときに青信号のわずかな時間を利用して走って横断をするとかいうような危険な状態をなくするように、そういう場所には横断歩道の標識を設けるというようなことに積極的に取り組んでいただきたいと思うわけです。そうしてまた、特にこういう横断歩道のあるところ等における事故は、要するにスピードの出し過ぎというものが多いわけで、東京あたりのところでは自動車が余りにも過密であるがために、その自動車の間を縫ってスピードを出して走るということはないのですけれども、中都市に行きますと、まだ東京都のようなものでないので、若い者がマイカーで時速猛スピードで自動車の間を縫って通っていく。そしてそういうことによって住民に非常な危険感と、また事故も起こっておるわけですが、これからの年末年始等を控えまして、そういう点における交通安全対策というものに積極的に取り組んでいただきたいと思うのです。  警察庁として、こうしたスピードの取り締まりだとか、そういうものを含めての年末年始の交通安全対策についての重点的な施行というものをどこに置いておるのか、この機会に承って私の質問を終わりたいと思います。
  154. 森郷巳

    ○森説明員 先生指摘のとおり、年末年始はかなりの交通量になることでございます。そういったような観点から、私ども交通の安全を図るという観点から、各都道府県警察に対しまして、交通の実態に対応した臨時交通規制なりあるいは指導、取り締まりの強化なり、そういったものをしたいということで、十一月の半ばに次長通達をもって「年末年始における事故の防止について」という通達をしておるわけでございますが、この通達の趣旨が十分徹底するように指導してまいりたい、このように考えております。
  155. 井上泉

    ○井上(泉)委員 終わります。
  156. 下平正一

    下平委員長 次に平田藤吉君。
  157. 平田藤吉

    ○平田委員 財団法人交通事故裁定センターの設立と自賠責保険運用益金の使途をめぐる問題などについて、幾つかの点で質問をしたいと思います。  わが党の青柳盛雄議員が、七十五国会の法務委員会で総理府に対して、財団法人交通事故裁定センターの設立許可の申請が出ているが、この取り扱いについて幾つかの問題があるということを指摘しております。  その第一点は、営利会社である損害保険業界の私的裁判代行機関となるおそれがあり、被害者に対する低額賠償などのあっせん処理が行われやしないかという問題であります。そこでお聞きしたいのですけれども、この交通事故裁定センターの基本財産三千万円はどこがどのように拠出しているか、お聞かせ願いたい。
  158. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えいたします。  基本財産三千万円のうち二千八百万円が損保協会、二百万円が全国農業共済連合会になっております。
  159. 平田藤吉

    ○平田委員 この交通事故裁定センター運営経費の五十年度分一億六千九百八十三万円は、どこがどれだけ分担拠出しているか、お聞かせ願いたい。
  160. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えいたします。  私の聞いている五十年度の運営資金の予定は一億六千百万円で、一億五千万円が損保協会、残りの千百万円が全国農業共済連合会、このように聞いております。
  161. 平田藤吉

    ○平田委員 若干数字の違いはあるようですが、これは後ではっきりさせておいていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、これでは財団法人交通事故裁定センターの財源というのはすべて損害保険会社の協会によってまるまる賄われているというふうに受け取れるけれども、間違いないですか。
  162. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えいたします。  先ほども各先生から大蔵省保険部等に御質問がございました。そのときに大蔵省保険部からも答えておったと思いますけれども、この自賠責運用益運用につきましては、なるほど損保協会が中心になりました運営委員会でやられておるようですけれども、その金の目的は、自賠責審議会で決めており、これを交通安全、事故防止、被害者救済あるいは救急施設、実質上こういうものに使うべく大きな枠がはめられておりまして、実際上の支出大蔵省が厳重に管理しておりますので、一つ一つの私的な営利会社であります損保会社の自由になるべきものでもないし、むしろ公に近い金だ、私はこのように考えております。
  163. 平田藤吉

    ○平田委員 つまり、この交通事故裁定センターなるものは、財団法人交通事故裁定というふうに言われて、一般的には大変聞こえがいいのですけれども、いまの説明があっても、結局出しているのは、損保協会、農業共済連などから出ているという点では、保険会社からまるまる出ているということで間違いはないのではないか。被害者救済するための公正中立な裁定が保障されなければならないというふうに言われているわけですけれども、こういう金の出し方で行われている限りにおいては、私はどうも被害者が十分に補償されないのではないのか、保険会社被害者に補償すべき賠償をいかに少なくするかという考えがまず先に立つ結果しか生まないのではないのかというふうに考えますが、その点についてどうお考えか、お聞かせいただきたい。
  164. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 この交通事故裁定——現在は裁定委員会という名前で任意団体で運用されておりますけれども、これは先生御案内だと思いますけれども、昭和四十八年に新たに任意保険の中に示談つき保険というものが売り出されるということで、いま現在交通事故に遭った者は、加害者であろうと被害者であろうとお互いに一番困っておるのは示談の問題なんです。それをこの示談つき保険が出まして、いわゆる保険に加入しておる運転者、これは場合によれば車対車で被害者になる場合もあるでしょうけれども、対歩行者関係加害者になる場合が多いわけですが、その保険加入者の非常にめんどうである示談というものが、これである程度カバーできる。しかしこれに対して、それじゃ一体被害者、特に歩行者の方の被害者救済、特に示談あっせんで悩まされるのじゃないだろうかというような観点がございまして、このFAP発足のときに当時大蔵省が指示いたしまして、被害者救済という問題から特に弁護士の力を借りることが多いから、日弁連とよく相談しろという示唆がありまして、当時日弁連の方も被害者救済のためにやはり何か考えなければいかぬ、FAP発足と同時にということで、日弁連も一緒になりまして当時考えたわけなんです。そして被害者救済のための中立公正な示談あっせんまでも無償でいける公立機関、それをつくる必要があるのではなかろうかという構想から、これはそもそも始まったわけなんですね。  だから現在の裁定委員会、私の方へ上がってきます裁定センターの申請書の規約等を見ましても、やはり被害者救済という、被害者のための示談あっせんに力を入れてやりますという意味での目的が掲げられてあるわけなんです。現にいままでの裁定委員会の事業をやっておりますけれども、その内容を見ましても、相談に来ている八割が被害者なんです。FAPがこれからますます伸びていくでしょうが、少なくともこれに見合うべく被害者側の示談あっせん機関が私はぜひほしいと思っておるわけなんです。  この裁定センターもそれに中心を置いて、当時日弁連も一緒になって考えましたこの機関を、その方面に、そのように被害者救済を中心にして運用したいというように私の方に申請が来ており、またそのように発展することが私は望ましいのではないだろうかと思いますが、問題は、いま日弁連側から金の問題で一応注文が出、あるいはこれに対する反論が出たことは承知いたしております。
  165. 平田藤吉

    ○平田委員 その問題ではあとで議論をしたいと思うのですけれども、センターに拠出された損保協会と農協自賠責共済のこの金は、どういう分野から支出されているのかお聞かせいただきたい。
  166. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、自賠責保険につきましては、法律によりましていわゆるノーロス・ノープロフィットの原則が定められておりまして、運用益を損保会社の利益として処理するということは妥当でないわけでございまして、これを区分経理さしているわけでございます。この金の性格といいますと、法律的な帰属という意味では税の取り扱い上も利益として課税を実はされておりまして、損保会社のものということを言わざるを得ないと思いますけれども、ノーロス・ノープロフィットというたてまえから、事実上の処分権は、損保会社の処分権というものは否定をされておるわけでございます。その意味では、むしろ預かり金的な性格を持つものではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  この運用益使途につきましては、先ほど来お答え申し上げておりますように、保険料負担の軽減に充てるということのほかに、救急医療体制整備充実交通事故対策にも活用すべきであるというふうな御答申をいただいております。したがいまして、この観点から運営委員会におきまして、交通事故対策という観点から裁定委員会の方にも四十九年度におきましては三千四百五十万円という金を出しておるというふうな状況でございます。
  167. 平田藤吉

    ○平田委員 自賠責運用益金から出されているということだと思うのですが、その自賠責運用益支出というのはどこでどのように決めるのか、お聞かせいただきたい。
  168. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自賠責運用益使途につきましては、先ほど申し上げましたように自賠責審議会答申の方針にのっとりまして、救急医療体制整備充実あるいは交通事故対策等に活用さるべきものとして、そういう方針のもとにやっておるわけでございますが、この支出につきましては損保協会の中に自賠責運用益運営委員会というものがございまして、そこで決定をいたしまして支出をするというふうな形になっております。しかしながら、この運営委員会の運営につきましては、大蔵省の強い行政指導によりまして、厳重にこれを指導監督をしておるというふうな状況でございます。
  169. 平田藤吉

    ○平田委員 損保協会の会長だとかあるいは理事などで構成している運営委員会で立案されるというふうに聞いております。それから損保協会の理事会で決定するというように聞いているのですが、いまのお話ですと、大蔵省が厳重に行政指導しているというお話ですけれども、決定権はここにあるのだということで間違いないですか。
  170. 山橋敬一郎

    山橋説明員 先ほど申し上げましたように、損保協会の中におきますところの運営委員会におきまして使途決定するわけでございます。したがいまして、形式的に申し上げますれば、この運営委員会決定権限を持つと言えるかと思いますけれども、その過程におきまして大蔵省の強い行政指導という形になっております。個々の支出の内容につきましても精査をいたしまして、われわれがこれを厳重督に指導監をしておるわけでございます。そういう意味では、実質的には大蔵省決定をしておるというふうな形だとも言えるというふうに思います。
  171. 平田藤吉

    ○平田委員 損保協会の理事会は……。
  172. 山橋敬一郎

    山橋説明員 損保協会の理事会は、この運営委員会については何ら関与しておりませんので、運営委員会決定につきまして理事会に報告することはございます。
  173. 平田藤吉

    ○平田委員 先ほど報告がありました裁定センターへの支出について、損保協会の運営委員会ではすでに決定しているのか、もし決定しているとすればその理由はどういう理由で決定しているかということをお聞かせいただきたい。
  174. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  五十年度につきましては、先ほど来お話にございましたように、交通事故裁定センターが発足するというふうなお話もございますので、もし裁定センターの認可がございますれば、一億八千三百万ほどのものをこの運用益から支出するというふうに一応予定はしております。
  175. 平田藤吉

    ○平田委員 理由は……。
  176. 山橋敬一郎

    山橋説明員 運用益使途方針につきましては、先ほど来申し上げましたとおり、保険収支改善に充てるほか救急医療施設の整備あるいは交通事故対策というものに使用せよというふうな審議会の答申をいただいております。この中の交通事故対策という観点から、交通事故裁定委員会の機能というものは非常に重要であるというふうな観点から、この支出決定をいたしたというふうに思います。
  177. 平田藤吉

    ○平田委員 大蔵省はその理由が正しいと考えているかどうか、お聞かせいただきたい。
  178. 山橋敬一郎

    山橋説明員 運用益使途については、いま再三申し上げているとおりでございます。この交通事故裁定センターの機能が、被害者救済という点に最も大きな目標を置いているという点から言いまして、交通事故対策の中でもやはり被害者救済ということが重要な要素の一つでございます。そういう意味合いにおきまして、この裁定委員会への拠出ということは保険審議会の答申趣旨に合致しているというふうに考えている次第でございます。
  179. 平田藤吉

    ○平田委員 自賠責保険損害保険会社運用益の四十九年度末残高ば幾らになっているか、また農業共済の残高は幾らになっているか、お聞かせいただきたい。
  180. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  自賠責保険運用益の四十九年度末におきますところの残高は、二百六十六億九千百万円でございます。
  181. 平田藤吉

    ○平田委員 農協は……。
  182. 下平正一

    下平委員長 農林省は帰ったので、後で……。
  183. 平田藤吉

    ○平田委員 いまの農業共済の方は、大蔵省の方ではわからないのですか。——わからない、それじゃ監督していることにならないのじゃないですか。そういうものは把握してなくていいことになっているのですか。
  184. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  農業共済の監督は実は農林省でやっておりまして、大蔵省ではちょっとその点をつまびらかにできません。
  185. 平田藤吉

    ○平田委員 これは自賠責保険運用益金の残高ですよ。
  186. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  民間の損害保険協会で積み立てておりますところの残高でございます。二百六十六億は農業共済を除いたところでございます。損害保険会社におきますところの運用益の積立額の残高が二百六十六億でございます。
  187. 平田藤吉

    ○平田委員 よくわからないので聞くのですけれども、農業共済の、つまり自賠責運用益については、大蔵省の方はわからないのですか。
  188. 山橋敬一郎

    山橋説明員 農林省の方で監督しておりますので、わかりません。
  189. 平田藤吉

    ○平田委員 運用益だけでもこれは大変なものだと思うのですね。掛金を国へ納めていく過程での滞留金の活用なども相当額に上っていると思うのですよ。とにかく大変な金額が積み立てられているわけですけれども、もう一度お聞きしておきたいのですけれども、この金は損保協会の私的なものではないというふうに考えられるのだが、改めてこれをお答え願いたい。
  190. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、自賠責保険は法律によりましてノーロス・ノープロフィットの原則が定めておられるわけでございます。法律的な帰属という意味では先ほども申しましたように税金がかかっております。したがいまして、形式的には損保会社の所得という見方もできるかと思いますけれども、ノーロス・ノープロフィットという原則があるために、事実上処分権を否定しております。したがいまして、その意味では、損保会社が預かっておる金である、つまり私的に自由に処分できる金ではないという性格のものであるというふうに考えておるわけでございます。
  191. 平田藤吉

    ○平田委員 昭和四十四年の自賠責保険審議会答申では次のように言っておるわけです。滞留資金の運用益については、今後は保険料負担の軽減にあてるほか、救急医療体制整備充実交通事故対策にも活用すべきであるというふうに述べております。これは明確ですね。また四十八年の答申では、保険収支改善のための財源にあてるほか、救急医療施設に対する助成、専門医育成のための援助等救急医療体制整備充実交通事故防止対策等に引き続き活用することが適当であるというふうに指摘しております。こういうふうに審議会の答申では、まあ若干の問題はありますけれども、運用益金の使い道については枠をはめていると同時に、その管理についても、四十四年の答申で、その運用益を明確に区分経理すべきであるというふうに言っているわけです。  私の方も若干これには異論があるわけですけれども、いずれにしましても、これらの答申立場というものは、自賠責保険そのものが国が法律によって強制しているものであって、保険会社が代行しているものだ、したがって、この滞留金も運用益金も保険会社の私的なものではないという立場に立っての答申だというふうに思うのです。だとすれば、自賠責は国による強制保険であるという点から見て、監督はもとより、運用益の使い道については、保険協会が決定するのではなくて、当然国が決定すべきものだというふうに思うのですが、その点についてはどう考えられるか、お聞かせいただきたい。
  192. 山橋敬一郎

    山橋説明員 先ほど来申し上げておりますとおり、自賠責運用益使途につきましては、運営委員会という形で損保協会の中に設けられました組織が審議決定をするたてまえになっておりますが、この個々の支出の内容につきましては、大蔵省が審査を厳重にいたしておりまして、実質的には大蔵省保険部がこれを決定をしているという実態になっておるわけでございます。  ただ、先ほど先生指摘のとおり、運営委員会自体が損保協会の協会長以下理事が並んでおる、まあ保険部長保険課長は顧問である、こういうふうな性格については私たちも若干の問題はあろうかと思います。したがいまして、実質的には現在におきましても大蔵省保険部の強い指導と監督のもとに公的な決め方をしておるわけでございますけれども、今後名実ともにこの点運用委員会の構成並びに運用益支出方法等につきまして、公的な性格を強めるという方向で改善措置を検討してまいりたいと考えておるわけでございます。
  193. 平田藤吉

    ○平田委員 当然のことだと思うのですね。で、公的な体制を強める方向でというふうに言われましたけれども、本来的にこれは保険会社に預けているものなんですよ。手数料はちゃんと出してあるのですよ。だから、保険会社が集めた金はすぐ国に納められなければならないはずなんですよ。同時にもちろん運用益についても国が決定すべき性格のものだと思うのです。そうでなければ、裁定センターみたいなものを設けたって損保会社から金が出ているという状況のもとにおいては被害者の利益を守れるはずはないのですよ。これはあなた方自身も言っていることなんだ。現在でもこういうもので、守られてはいないのですよ。事故が起こるとまず保険会社へ知らせなければならないというふうになっている。保険会社へ知らせると保険会社は早速飛んでいって被害者から事情を聴取して、そして金はあなたの場合はあなたに過失度があるからそんなに出ないんだよという話をやるわけですよ。そうして被害者の側がとにかくこれは弱ったという状態で大体泣き寝入る方向で抑えつけていくというやり方が実際に現在横行しているんですよ。  ところが、この裁定センターなるものがまるっきり同じように、あなた方国の機関で決定するのじゃなくて保険会社がどう使うか決定するという仕組みになっているわけですから、これは漸次公的な方向を強めなければならぬというようなものではなくて抜本的に改めるべき性質を持っていると思うのです。そういう意味で私はいまの答弁だけでは十分とは思わないわけです。本来的にはっきりした性格のものなんだから、やはり決定権を初めとして審議する体制などについてもそれにふさわしいものにすべきだと思うのです。もう一遍答えてください。
  194. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  ただいまの先生のお話しの線に沿いまして、運用益性格にふさわしい組織あるいは構成あるいはその仕組みを考えてまいりたいと思っております。
  195. 平田藤吉

    ○平田委員 いままで自賠責の損保運用益というのは、日赤、済生会、警察庁、消防庁、などの寄付として運用されてきているわけです。同じように交通事故裁定センターに対する寄付が行われているのですけれども、このセンターの設立の目的は何なのか聞かせていただきたい。
  196. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 交通事故裁定センターという名前で私の方に法人認可の申請書が来ておりますが、その中の寄付行為の第三条(目的)に「この法人は、交通事故関係者の利益の公正な保護を図るため、交通事故に関する紛争の適正な処理に資する活動を行い、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」このようにうたっております。また設立趣意書につきましても、交通事故損害賠償の紛争が非常に多い、特に法律知識の少ない被害者等に対します示談なりそういった相談活動等がまだ弱いということで、被害者救済のためからも一歩進んで示談のあっせんまで乗り出して解決してあげたいというようなものになっております。
  197. 平田藤吉

    ○平田委員 この裁定委員会の宣伝によりますとこう言っているのですね。「賠償保険の交渉など、法律の専門家が公正妥当な立場でご相談を伺い、和解のあっせんまでお手伝いする、どこからも制約を受けない機関です。費用はいっさい無料。」というふうになっております。  このセンターの設立のねらいは、家庭用自動車保険、つまり保険会社契約者である加害者にかわって示談を取りまとめるいわゆる示談代行保険の発売と深い関係にあると言われておるけれども、この点どうお考えになるか。
  198. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 先ほどお答えしたのと少し重複するかもしれませんが、確かにFAPの発足と同時に日弁連あるいは大蔵省等も被害者の側の救済活動を強めなければならないということで、当時日弁連側と損保協会とが相寄りまして、また当時日弁連の会長名でそういった意見も出しておりますけれども、中立な第三者の和解あっせん機関をつくるべきであるという意味でFAPの発足と関連があろうかと思います。
  199. 平田藤吉

    ○平田委員 強制保険の場合は、調査事務所が設けられて損害調査額を決定しているわけですが、いま言われたように、これとは別に任意保険の示談代行保険のために交通事故裁定委員会が設立されたわけでしょう。この経過については大蔵省保険部長が七十二国会、四月二十四日のこの委員会で説明しているわけですけれども、それによりますと、この保険の発売に対して「一番心配をいたしました点は、保険会社というのは何と申しましても専門家でございます。専門家が一方で出て被害者のほうと話をいたしますと、被害者に不利な裁定といいますか不利な示談になるおそれがありゃせぬか。」こう述べています。つまり専門家の保険会社保険について全く素人の被害者を相手にして、保険会社に有利になるように丸め込む、このような心配のある保険が売り出されているわけですよ。そこで保険部長はさらに「被害者の方々が不利にならないように幾つかの歯どめが必要であろう。」というふうに述べており、その一つ保険金支払いの基準を裁判所に持ち込んでも裁判で十分にたえられるように大幅に引き上げることが必要だ、これは四十八年十一月にまず実施されております。もう一つ交通事故裁定委員会を設けて、被害者の方が事故が起きて御不満があるときに、一々裁判所に行かなくても解決できるようにする、その裁定には保険会社の方は一切文句を言わずに従いますという一札を出している、こう述べております。  結局いろいろなことを言っておりますけれども、この交通事故裁定委員会任意保険の示談代行保険の発売を契機として交通事故の相談、示談のあっせん及び裁定を行う目的で民間機関として設立されたものなんだということがはっきりしてくると思うのです。  そこで、保険部長が心配しているなうな、被害者にとって不利な示談が行われるような示談代行保険を売り出すことが許されるのかという問題があるわけですけれども、またそのための歯どめとして設立された交通事故裁定委員会被害者救済立場に立った公正中立の立場で行い得るものなのかどうなのかという問題が出てくるわけですね。いま言ったように、示談代行保険が生まれて、そしてそれに関連して交通事故裁定委員会なるものがつくられた、センターがつくられた、こういうかっこうになっているわけでしょう。  ですから、被害者がえらい被害を受けやせぬかと当局が心配しているようなものを売り出すのを認めている。その上で今度は裁定委員会なるものを設けているという関係から見ると、もう完全に示談代行保険を売り出させるためにはこういうものをつくっておかないと、売り出して問題が起きたときにぐあいが悪いから、売り出させるためにこういう措置をとったとしか考えられないわけでしょう。しかも、つくられたものが、さっきから論じているように、損保協会の議を経て金が出されてくるというような状況のもとに置かれているのですから、どうしたってこれは中立だとか公正だとかいうようなことは言えないものなんじゃないかと考えるわけです。この点について、これが一体歯どめなのかどうなのか、ひとつお聞かせいただきたい。
  200. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  先ほどお答えしましたとおり、交通事故が起こりました場合、当事者が一番困るのは示談問題である。裁判等にかけましても、現在裁判等の調停なり訴訟提起が三%ということでございますので、双方の示談というものに非常に頭を悩ましておる。この双方の当事者同士のうち、保険加入者については示談つき保険ということでその煩を省けるという意味では、私はメリットがあると思うのです。ただし、そうしますと一方の被害者の方はどうあるべきかということで、当時関係機関が皆被害者の方も厚くしなければならぬということでお互いが持ち寄りまして、この交通事故裁定委員会のようなものをつくる必要があるのではないかということで現在まで進んできた、このように考えております。だから、示談つき保険そのものが悪いとばいえないのじゃないだろうか。  というのは、お互いに困っておる和解、示談、その当事者同士でやらなければならない非常にめんどうな問題を保険加入者については一応代行してやろう、その意味のメリットがあるわけですから、一方では被害者の方に対するメリットも考えなければならぬということで裁定委員会、裁定センターの問題は考えていかなければならぬと私は思っております。
  201. 平田藤吉

    ○平田委員 そこでもうちょっと実態をお聞きしたいのですが、ことしの四月から十月三十一日の間の相談件数がどれくらいになっているか、加害者被害者の割合はどうなっているか、示談成立は何件か、裁定の申し立てば何件か、お聞かせいただきたい。
  202. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 いま私の手元にありますのは、本年の四月一日から十月三十一日までの六ヵ月間の累計でございますが、相談件数が千五十二件でございます。このうち新規来訪者の内訳について申しますと、被害者側から参りましたのが四百七十四件、約八割五分であります。加害者側が九十三件、双方一緒になって申し立ててきたのが六件ということになっております。そして、そのうち示談成立が五十三件、裁定委員会に提出しましたのが十六件、あるいは訴訟、調停の方に持ち込むように勧めたのが四十件、相手方とさらに話し合いを勧めたのが四十五件等々の数字になっております。示談成立は五十三件でございます。
  203. 平田藤吉

    ○平田委員 裁定の申し立てというのは比較的少ないようですけれども、ことしの四月からの相談件数は十月三十一日までに七百十五件、そのうち三百八十三件が新規の相談で、一ヵ月平均約五十五件です。新規の来訪者のうち八二%が被害者です。相談の内容で多いのが賠償額についての相談が圧倒的だ、こういうふうに言われているわけですが、裁定委員長にあてた日本損保協会長からの文書ではこう言っているのですね。「当協会は、今後裁定委員会の運営のために必要とする経費を支弁することをお約束するとともに、その他の委員会運営に関する事項は挙げて御委任申し上げます」というふうに述べているのです。  それでは、いままでに損保協会から裁定委員会に支弁された金額は幾らなんだろうか。このうち自賠責運用益から幾ら支出されているのだろうかという点について、この損保協会の会長が裁定委員会の委員長にあてた文書との関連でここのところをひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  204. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  四十八年度、四十九年度の数字しか現在手元にございませんが、裁定委員会に運用益から支出をいたしました金額が四十八年度においては二千五十万円、四十九年度においては三千四百五十万円でございます。
  205. 平田藤吉

    ○平田委員 これは全部運用益から出ているわけですか。——この裁定委員会に自賠責保険、いわゆる強制保険運用益を活用する根拠、これをもう一遍はっきりさしておいてもらいたいと思うのですけれども、前に紹介した保険部長答弁では、示談代行保険という任意保険の販売に伴って被害者に不利益にならないように歯どめをするために裁定委員会を設けるのだというふうに説明されておりますけれども、保険会社の利益を得るために新しく販売された商品のトラブルを防止する目的自賠責保険運用益を活用するというのは正しいことなのかどうか。  つまり、さっきからずっと説明を聞いておりますと、示談代行保険を売り出す、これはこの委員会で私も質問しているのですけれども、外国の保険会社とのかかわり合いもあってこの示談代行保険というのが出てくるわけです。これは日本で考え出したものじゃないのですよ、よそから入ってきたものです。この示談代行保険というのは損保業界が今日の情勢のもとで外国の保険会社との対抗もあって、日本で損保会社の新しい商品として売り出した。これは国際的な競争との関係もあり、損保業界がさらに利益を上げていくために売り出したものなんですよ。この商品を売り出すことによって、つまり裁定委員会なるものがっくられているわけです。トラブルが起こらないように、起こった場合の歯どめの一つだと。  もう一遍繰り返しますが、損保会社がもうけるために商品を売り出すのですよ。このトラブルを調整するために強制保険運用益金を使っていいのかどうか、ここのところはどう考えられるのか、お聞かせいただきたい。
  206. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、自賠責運用益の使い方という問題につきましては、先生も御指摘のとおり、自賠責審議会答申によりまして、保険料負担の軽減に充てるほか、救急医療体制整備充実交通事故対策にも活用すべきである、あるいは救急医療施設に対する助成、専門医育成のための援助等そういうものに使うべきであるというふうな答申も得ておるわけでございまして、運用益使途の方針というものは、この自賠責審議会答申によってはっきり決まっておるというふうに私たち考えておるわけでございます。  そこで、裁定委員会へのこの自賠責運用益からの支出ということにつきましては、それがこの審議会の答申の中の交通事故対策という点から見て、交通事故対策の中の非常に大きな問題の一つとして被害者保護という問題があるわけでございまして、この被害者保護という点から考えましても、交通事故対策の一環としてこの裁定委員会に運用益を使うということは、審議会の答申に沿った運用益使途としても妥当であろうかというふうに考えておる次第でございます。
  207. 平田藤吉

    ○平田委員 答申は損保業界の商売のために運用益を使ってあげなさいというふうには言ってないのですよ。だから、損保協会の運営委員会が決めて、決めたことが答申に見合っているのだというのは基本を抜いてしまった、骨を抜いてしまった論議ですよ。それはあなた論議になりませんよ。  私が聞いているのは、つまり裁定委員会なるもの、センターなるものが必要になったのは、保険会社が新しい商品を売り出したからではないのか。いままでのお答えもこの前のお答えも大体そうですよ。売り出したので、それとのかかわり合いがあるというのがお答え。これはつまり示談代行保険なるものが売り出さなければ必要のないものなんですよ。これが売り出されていなければこういうところへ莫大な金をつぎ込んで使わなくたって、ほかにちゃんと交通事故によって起こる被害者を何とか助けるための手だてというのはいろいろ設けられているので、そこへもっと金を出してやればいいのですよ。それを麗々しく交通事故裁定委員会なんという名前をつけて、保険会社が売り出した新しい商品の売れ行きをよくするための手助けをするために何で一体国民が強制されて納めている保険の益金を回さなければならぬのか、私が聞いているのはそういうことなんですよ。そうでないとあなたが言い張るのだったら、これは代行保険とは全くかかわり合いがございませんと言ってごらんなさい。そうでなければ納得できませんよ。
  208. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 この裁定委員会あるいは裁定センターの構想がFAPの発足と同時に持たれたことは前にも答えたとおりでございますけれども、私自身はまたこのように解釈しておるのです。  というのは、従来から第一線におりまして、たびたび言うようですけれども、いま交通事故被害者があった場合の損害補償の問題で当事者が非常に悩んでおる、苦心しておる、そしていまの裁判制度では残念ながら三%ぐらいしかこの裁判に乗ってこない、多くの者がお互い同士が話し合いをつけて損害補償を決めておるわけなんです。従来から私たちはわが国におきましても手近でかつ無償で迅速に和解のあっせんまでやってくれる機関、これが被害者なり事故当事者に一番役に立つ機関ではないだろうか、こういうものをぜひ持ちたいという気持ちを持っておりました。  たまたまこのFAPの発足と同時に、示談つき保険保険加入者の方が有利な可能性もあるからなおさら一層被害者を中心にしての交通事故の無償による迅速な和解あっせん機関をつくるべき必要がこの際——何もこれは示談つき保険の加入者と当事者同士の話だけじゃないのですから、あらゆる保険につきまして各当事者それぞれに対します無償による和解のあっせん機関、いままでの事故相談所より一歩進んだそういった公の機関の存在が必要であるということで私はこの問題に取り組んでおるわけであります。
  209. 平田藤吉

    ○平田委員 納得いきませんね。さっきも引用しましたけれども、大蔵省保険部長が七十二国会の四月二十四日の委員会で説明してこう言っているのですよ。「一番心配をいたしました点は、保険会社というのは何と申しましても専門家でございます。専門家が一方で出て被害者の方と話をいたしますと、被害者に不利な裁定といいますか不利な示談になるおそれがありゃせぬか。」こう言っておるのです。それから「被害者の方々が不利にならないように幾つかの歯どめ、か必要であろう。」こう言っているわけですよ。そして被害者の方が事故が起きて御不満があるときに一々裁判所に行かなくても解決できるようにする、その裁定には保険会社の方は一切文句を言わずに従いますという一札を出している、こう述べているのですね。  これは全部最初に引用しました保険部長の示談代行保険の発売との関連でこの歯どめが必要であるというようなことが言われているのですよ、あなたもさっきそれとの関連があるというふうに答えているのだから。そのほかのもあるのでございますというのはそれはつけたりでございますよ。だから、新商品を売り始めて、これは危ない、何とかしなければいかぬというのでこれが必要になってくる。しかし危ないから何とかするのじゃないですよ。売り出させて国民が安心してその商品を買えるようにしていくために裁定センターなるものを設けた。だから、保険屋さんは今度はこういうのがあってこれだから心配要らないのですよという説明をして歩くのですよ。説明をして歩く道具に、つまり商品をどんどん売りさばいていく道具として裁定センターが生まれたということがこの経過の事実ではっきりしている。  これはあなた、新商品を売り出していくためのところへ金を出して、答申の線に合致しておりますなんと言われたって、答申はそういうところへ金を出しなさいとは言ってないのだから、商品を販売してもうける、そのもうけるてこに裁定センターを使っていく、そこへ金を出しなさいというふうには言ってないのですから、それをどう考えるか、大蔵省保険部長もう一遍ひとつ……。
  210. 山橋敬一郎

    山橋説明員 お答えいたします。  示談代行保険が売り出されたときとちょうど時期を同じくしてこの裁定委員会が発足をしたということは私たちも承知をしておりますが、ただ、これは先ほども総理府の方から御説明ございましたように、私たちの理解は、従来から実はこの損害保険自動車保険の一番大きな悩みの種は、損害額の確定というふうな観点から被害者加害者の間の話がなかなかまとまらない、何かそういうトラブルというものを避け、あるいは迅速に保険金支払いが行われるようなそういう組織が欲しいということは、前々からの議論であったというふうに私は聞いております。たまたまこの示談代行保険が売り出されるということで、これが確かに一つの契機になったのかもしれませんけれども、それにつけ加えて、このような機会に広く損害保険金支払いに伴うトラブルを一応避けるための組織をこの際被害者保護の観点からつくったらどうかというふうなたてまえでこの裁定委員会がつくられたものというふうに聞いておるわけでございます。  したがいまして、示談代行保険を売るために裁定委員会ができたというふうには考えておらないわけでございまして、被害者救済立場から損害保険金に伴うところのいろいろなトラブルというものをなくするという大きな一つ目的のためにこの裁定委員会ができたわけでございます。  そういう観点からいたしますれば、この交通事故対策の一環として、被害者救済の一環として自賠責運用益の中からその一部を割いて裁定委員会に支出することも自賠責審議会答申趣旨には十分沿うものというふうに考えておる次第でございます。
  211. 平田藤吉

    ○平田委員 裁判所へ持ち込まれたものはさっきの報告だと引き続いて四十件あるのですよ。そうでしょう。それから未解決のものが四十五件あるのですよ。そして裁定はあなたの報告だと十六件。私の方の調査だと二件になっていますけれども、あなたの方の報告だと十六件ですよ。四十件は裁判所へ依然として持ち込まれているのですよ。理屈にならないじゃないですか。時間も来ていますから、次へ進みましょう。  交通事故裁定委員会委員長の加藤一郎氏がみずから設立代表者として財団法人交通事故裁定センターを設立しようとしていますけれども、その設立趣意書には次のように書かれておりますね。「従来の相談機関の機能を一歩進めて」、さっきあなたも同じようなことを言った、一歩進めてと。「嘱託弁護士を常時配置し、加害者双方」——これは恐らく被害者加害者双方という意味だろうと思うのですけれども、一つ何か抜けています。「加害者双方の主張を聴取して、公正妥当な判断をしてこれに基いて和解斡旋を行うことにより、当事者の要望に応えるため、昨年二月どこの団体にも属さない中立な相談機関として交通事故裁定委員会を発足せしめたのであります。」こういうふうに述べております。  「従来の相談機関の機能を一歩進めて」というように言っておりますけれども、従来の相談機関というのは何か。たとえば地方公共団体や日弁連の交通事故相談センターなどを意味しているというふうに思えるのだけれども、これらの相談機関に被害者保護の面で不十分なものがあったのかどうなのか、この点は一体どういうふうに考える。従来より一歩進めてというが、余り進んでいないのでしょう、あなた。裁判所へやはり大半持ち込んでいるのだから、同じなんですよ。どこが違うのか。
  212. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  現在地方自治体に九十八の事故相談所ができるまで拡充してきましたけれども、やはり事故相談の域にとどまるわけなんです。その事故相談に来た人たちが、非常に簡単なものであってももう一歩進んで示談のあっせんまでやっていただいたならば非常に助かるという声は数多く聞いております。現在日弁連の交通事故相談センターも名のとおり相談の域にとどまっておりまして、もう一歩進んでおりません。本当の被害者なり当事者のためにはもう一歩進んだ示談のあっせんまで——非常に高額なもの、非常にむずかしいような問題は、これはやはり裁判に持ち込まれることもあろうと思います、あるいは調停に持ち込まれることもあろうと思いますけれども、非常に迅速に手近にこの程度なら両方で話し合いがつくという示談のあっせんをできる機関、もう一歩進んだ機関、これが非常に望まれておるだろうと私は思います。
  213. 平田藤吉

    ○平田委員 いままでより一歩進んだと言うが、話のつくものは日弁連で扱っていたって、地方自治体でめんどう見ていたって、みんな話をつけているのですよ。私が中へ立ったのだって話をつけているのですよ。示談に持ち込んでいるのはいつ。ばいありますよ。何もこんなものがなくたってちゃんとやっているのですから、それぞれで努力をしてやっているのですよ。しかも裁定センターなるものはさっき挙げたような性格のものでよう。胃袋はみんな損保協会に任してある。それで賄われている。そういうようなあなたの言い分というのは納得できる言い分じゃないでしょう。  ところで、交通事故裁定委員会を財団法人交通事故裁定センターに発足させるという加藤一郎氏の趣意書ではこう言っているのですね。「この交通事故裁定委員会の過去一年間の実績は別紙のとおりであり、現在の規模としては一応の成果が挙げられたものと考えられますが、その設立の趣旨を保持伸長する自覚を新たにし、法人格を取得して被害者救済活動を更に全国的に推進するために功献しようとするものであります。」というふうに述べているわけです。  このセンター設立に対して日弁連は反対の意見を表明していますね。この裁定委員会の設立の際には日弁連と損保協会が協力し合って設立された経過があるといまのような説明があるわけですね。けれども、今回のセンター設立に対しては、日弁連が反対しているのですね。その理由は一体何なのか、政府としてはその反対理由についてどう考えておられるのか、お聞かせいただきたい。
  214. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  この十一月に日弁連の方から交通事故裁定センターの設立に反対であるということで、その主たる理由に三つございます。その第一点は、「裁定センターは、その基本構想において被害者の人権救済のための制度上、運営上の保障がなく不当である。」第二番目には、「裁定センターは資金的にも組織的にも公正・独立に疑いがあるので、公益性がない。」三番目には、「裁定センターは弁護士法第七十二条に違反する疑いがある。」という理由で反対を挙げております。  ただ、私が若干解しかねておりますのは、先生から先ほどお話しされましたとおり、FAP発足を一つの機としまして、従来日弁連の方々も事故相談センターを各地に持っておられます。これをさらに強力な示談、あっせん、援助行為までいくべきじゃないだろうかということをかねてから日弁連も持っておられたと思うのです。それがたまたま今度のFAPの発足で示談つき保険になる。そうすると、やはり保険者の方が有利になるのじゃないかというような心配もあったろうと思うのです。それで損保協会もFAPの第三次約款を当時日弁連の方へ提出しているわけです。それで日弁連の方でこれに対しまして、たとえば直接請求をやれとかあるいは示談の基準を決めなさい、中立、公正な第三者機関を設けなさいというような注文を出されまして、当時日弁連の方の代表者、いわゆる交通事故相談センターの役員の方々、それと損保協会の幹部と寄りまして、いろいろとこの対策を進めていかれたわけです。そのときには交通事故裁定委員会、仮称となっておりますけれども、これをつくるべきである。そして場合によればその金は損保協会からもらってもいいのじゃないか、公に被害者のためになるんだからというような構想まで当時持たれておったわけなんですが、それがやはり日弁連の方でも後でいろいろ異論が出たのでしょう、代表者が出ておられましたけれども、現在この反対となってきておるのです。  たとえばこの一番目の「被害者の人権救済のための」云々という問題がありますが、これはもう少し考えてもらったら、私は被害者救済のためになるのだろうというように実は感じておるのです。先ほどの実績から見ていただきましても、強制保険しか入ってない、任意保険には関係のない人まで来てやっておるわけですし、被害者の方がたくさん相談に来ておるわけですから、そういった公的なあっせん機関がない以上は、私はこういう機関はプラスになるのだろうと思います。  問題は、資金的にも組織的にも不公正ではないかという話が出ておりますが、組織的にも、かつての日弁連の一緒に当たっておられた幹部の方が入っておられるわけなんですから、そういうのはどうか。資金的には、先ほどから先生お話しのように問題がありますので、これは大蔵省とまた十分詰めまして、公正さを担保する。私は公正だと思っておるのです。しかし、見た目から何か疑いがないように、そういう改変はあっていいんじゃないだろうか。  それから三番目の反対の「弁護士法第七十二条に違反する疑い」云々につきましても、当時日弁連は非弁委員会等にかけまして、この問題に取り組まれまして、弁護士法七十二条には現状ではそう問題ないではないだろうかという結論も当時出ておるわけなんです。  だから、私は、この反論に対しましては、今後本当に被害者救済のためのそういった示談、あっせんまでの機関をわが国につくる場合には、弁護士さんの協力がなければできませんので、日弁連の幹部の方々と十分にお話し合い願って、どういう形で、あるいはこれにとらわれなくてもいいかもしれません、どういう形でやったらいいだろうかということをさらに詰めていきたいと思っております。
  215. 平田藤吉

    ○平田委員 裁定センターの経費として自賠責保険の、損保会社や農協の管理している運用益をつぎ込むことになっているけれども、これをさらに国が管理している運用益からも将来つぎ込む考えがあるのかどうなのかをお聞かせいただきたい。
  216. 宇津木巌

    宇津木説明員 お答えいたします。  現在まで具体的な問題として持ち込まれておりませんので深く検討しておりませんし、また、将来の問題になりますとはっきりお答えするのはむずかしいかと思いますが、現在のところ、国の方から支出することは考えておりません。
  217. 平田藤吉

    ○平田委員 もう一つ宇津木参事官にお伺いしたいのですけれども、さっきから私が論じているように、この運用益を損保の方へ残しておいて、損保の意思で支出を決めていくというやり方を改めるべきじゃないのかという論議をやっているわけですよ。あなたはどうお考えか、聞かせていただきたい。
  218. 宇津木巌

    字津木説明員 なかなか微妙でむずかしい問題であろうと思いますが、大蔵省ともよく相談いたしまして協議いたしたいと思っております。
  219. 平田藤吉

    ○平田委員 なかなか微妙な返事をされるのですが、あなたの方は決められたものを預かっていればそれでいいみたいなかっこうだけれども、これは重大な問題だと思いますので、そこのところはひとつ踏まえて十分検討してもらいたい。  いまも言ってきましたように、結局、裁定センターなるものも損保業界の保険販売と切り離して考えることはできない、裁定委員会の設立経過に示されているように、その点は明確だと考えるわけです。損保協会が日弁連交通事故相談センターとの間に交わした覚書では次のように指摘したわけです。「社団法人日本損害保険協会(以下甲という)と日本弁護士連合会の要請を受けた財団法人日弁連交通事故相談センター(以下乙という)とは、甲の社員である各損害保険会社が、家庭用自動車保険を新たに発売するに際して、今後の任意自動車対人賠償責任保険運用について、交通事故損害賠償をめぐる紛争当事者の正当な権利を擁護し、社会正義を実現する目的で、下記条項を相互に確認する。」その確認事項の中で次のように述べられているわけです。  「(3)交通事故損害賠償をめぐる紛争について、和解のあっ旋を目的とする中立の機関を設置する。設置の場所その他の細目については甲は乙と協議する」。また覚書では「各社員会社は、新保険について「保険会社による示談代行」など弁護士法違反の疑いがある宣伝、広告活動を行なわない」というふうに書かれているわけです。  裁定委員会には嘱託弁護士を常時配置するなど、弁護士活動と矛盾しないような体制が検討されていたそうです。しかし、日弁連が裁定センターの設立に対して反対であるという見解を表明した現段階では、弁護士会の協力を得ないまま裁定センターの業務は行えないのではないだろうかというふうに考えるのですけれども、この点についてひとつお聞かせいただきたい。
  220. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  先ほども繰り返したのですが、当時の日弁連の交通事故相談センターの幹部の方々が入られまして、先ほど先生が言われたような覚書等を交わされたわけなんです。そういう人たちが現在裁定委員会の嘱託弁護士なんかになっておられる方もありますし、裁定委員にもなっておられる方もあるわけなんです。やはり一部の弁護士さんの中では、かつて当時交通事故相談センターの幹部なんかをやって、現に当たっておられた方々は、やはりこういう機関が必要だと思っておられる弁護士さんもまだあるわけなんです。しかし、形の上では日弁連という正式の機関での反論が出ておりますが、これはお互い同士仲が悪くなってもらってもいけませんし、それから本当に相談機関を伸ばすためには、繰り返すようですが、日本の弁護士さんの協力を得なければなりませんので、私はできる限り日弁連の幹部の方々とお話し申し上げ、またこの裁定センターの申請者の方々と日弁連の幹部の方々とがお話し願って、この覚書当時の、本当の被害者救済のためにどうあるべきか、どういう機関をつくるべきか、忌憚なく話し合っていただきたいと思います。その結果、私の方でまたその幹部の方々と話し合って判断を決めたいと思っております。
  221. 平田藤吉

    ○平田委員 裁定センターが損保会社の代行となる危険性について私は一貫して指摘しているわけです。この危険性は、いまの答弁を聞いている限りにおいては、私はどうも依然としてぬぐい去ることはできないわけです。その一つの基本になる点では、やはり自賠責運用益金の使途を正す必要がある。こういう裁定センターに使っていくということについては、さっきの設立の経緯やその他から、どうしても納得がいかない。保険会社の新商品発売に道を開いて、これを旺盛にしていくためのてこにしていくという組織のようにしか考えられない。そういう点では、私はやはりこの使途を正すということについてはあくまでも努力をしてもらわなければならないことだというふうに思うのです。  とにかく保険会社というのは悪いのですよ。事故が起こりますと、事故の双方に対する支出をどうして少なくするかという立場からしか事故を見ないのです。被害者救済なんというものは二の次、三の次ですよ。それは自分たちがもうけなければならぬから。これで支出が多くなっていくことはこれはもうけにはならないものですから、どうしたってそういう方向に行かざるを得ない。ですから、事故の過失率というものを厳しいことを言うてくるのですよ。私はもういつでも持ち込まれて、これで往生するのです。加害者も結局過失率が被害者の方にあるのだと言って、保険会社が金を出さなければ示談が結ばれない。結局加害者の側が自分のふところから金をつぎ込まなければならないというような事態をたびたび経験しているのですよ。  だから、そういう意味では、このいまのやり方自身に非常に大きな問題がある。問題がある上に運用益の使用の方法などがいままで指摘してきたような使用の方法をとられたのでは、決して被害者の利益を守る道には通じない。しかも委員会の構成自身も問題だ、所在地の数自身も問題だ、こういう幾多の問題をはらんでいるというふうに思うのです。  そういう意味で、当然われわれは交通事故について未然に防止するということと同時に、被害を受けた人々、それから事故というものの少なからざる部分がやはり加害者被害者との双方にいろいろな問題があるわけです。加害者も困り抜く場合もあるというような状況を見てみますと、とにかく被害者擁護に徹する、加害者と言われる立場でも微妙なものがありますから、この人々に対しても十分な配慮をしてあげなければならないというような点を考えますと、いまのような裁定センターでは片づくものではないのだというように思うのです。  そういう意味で、ひとつ論議してきた点を十分踏まえて検討されることを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  222. 下平正一

    下平委員長 次回は、公報でお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十四分散会