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1975-12-03 第76回国会 衆議院 建設委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月三日(水曜日)    午前十一時三分開議  出席委員    委員長 天野 光晴君    理事 内海 英男君 理事 唐沢俊二郎君    理事 服部 安司君 理事 村田敬次郎君    理事 井上 普方君 理事 福岡 義登君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       中尾  宏君    林  義郎君       松野 幸泰君    佐野 憲治君       中村  茂君    柴田 睦夫君       瀬崎 博義君    新井 彬之君       北側 義一君    渡辺 武三君  出席国務大臣         建 設 大 臣 仮谷 忠男君  出席政府委員         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省計画局長 大塩洋一郎君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         建設省住宅局参         事官      救仁郷 斉君  委員外出席者         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ――――――――――――― 十一月十九日  公共下水道事業に係る国庫補助対象範囲の拡大  等に関する請願山中貞則紹介)(第二八九  三号) 同月二十日  平作川の改修事業促進に関する請願中路雅弘  君紹介)(第三二七三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十日  滋賀県石部町内国道一号に歩道設置実現に関す  る陳情書  (第二六七号)  琵琶湖総合開発に基づく下水道事業促進に関す  る陳情書外七件  (第二六八号)  公共下水道事業に対する国庫補助増額等に関す  る陳情書(第二六九  号)  河川敷の維持管理等に関する陳情書  (第  二七〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出、  第七十二回国会閣法第七五号)      ――――◇―――――
  2. 天野光晴

    天野委員長 これより会議を開きます。  第七十二回国会内閣提出建築基準法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題といたしました本案につきましては、第七十二回国会においてすでに提案理由説明は聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————  建築基準法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  4. 天野光晴

    天野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  建築基準法の一部を改正する法律案審査のため、来る五日金曜日、参考人出席を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 天野光晴

    天野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  7. 天野光晴

    天野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村茂君。
  8. 中村茂

    中村(茂)委員 まず最初に、日照問題から御質問いたしたいと思いますが、すでに建築審議会中間報告が出ています。昭和四十七年十月十一日に「日照問題に関する対策についての中間報告」、この中間報告の四項に基づいて、その翌年の昭和四十八年八月三十一日に「日照確保のための建築規制基準についての中間報告」、私はこの二つの中間報告と今回の建築基準法の一部を改正する法律案の、特に日照日影部分について対比しながら若干質問申し上げたいというふうに思います。  そこで、日照確保する方式として自治体等綱領等をつくって行っている同意方式、それから日照確保方式日影規制方式三つぐらい方式としてあると私は思うのですけれども、今回の基準法の一部改正に伴って日影規制方式を採用した、こういうことになっていると思うのです。したがって、この三つ方式を対比して、どうしてこの方式を採用したのか、その点について御説明いただきたいと思います。
  9. 山岡一男

    山岡政府委員 日照基準といたしまして先生がおっしゃいましたような三つ方式が現在ございます。われわれ、今回の建築基準法提案に際しまして日影基準を採用いたしました点といたしましては、一つには、わが国の憲法財産権を保障するということとともに、その内容は公共の福祉に適するよう法律で定めるという旨を述べております。建築基準法はこのような憲法の思想を受けまして、財産権行使が基本的には個人の自由にゆだねられているのだということを前提としながら、国民の生命、健康及び財産の保護を図るための公法的な規制を行うということを使命とするものだと思っております。この点から見まして、財産権行使を一方的に関係住民同意にのみかかわらせるというようないわゆる同意制と申しますのは、長期的、客観的視点に立ちました場合、合理的かつ健全な都市づくりを困難にする場合もあるのじゃないかというふうに思っております。したがいまして、公法規制する場合には社会的合意の得られる客観的な基準によることが必要である、そういう意味で、日影規制では同意制を採用しなかったということでございます。  もう一点は、客観的な規制基準一つでございます日照確保方式、これは周辺にすでに存在しております建築物との相互の間におきまして従来の日照確保するということでございますけれども、新たに建築する建築物規制が大きく左右されます。で、早い者勝ちといいますか、先に建築する方が後から建築する者より有利となるというような不公平を生ずるおそれがございます。したがいまして、公法上の規制といたしましては、やはり日照確保方式は採用すべきでないというようなことを考えまして、最も合理的かつ客観的な規制と思いまして日影規制を採用することにしたものでございます。
  10. 中村茂

    中村(茂)委員 特に日照問題というのは、私権であるかどうかというような問題、それから、公法的に今回のようにそういうものをどういうふうに規制していくかというような問題非常にむずかしい問題でありますけれども公法的な立場に立って規制して日照確保するというふうに踏み切ったことは、一面では一歩前進ではなかったか、私はこういうふうに思っているわけであります。  しかし、その規制の持って行き方全体について、やはり同意方式という方式は、同意を得なければならないということに一応なっていくわけでありますから、私権確保していくという意味では一番いい方法ではないか、こういうふうに思うわけです。しかし、同意ばかり得ていてもなかなか片方では前進しないということになれば、やはり一応の規制をしながら同意方式を取り入れていくような方法を考えていく必要があるのではないか、こういうふうに、この方式を採用していくとすれば私は考えるわけであります。  それから、日照確保ということになれば、日照を受ける側の立場に立つわけでありますし、日影ということになれば、その日照をさえぎる方の規制の問題になる。立場が全然違うわけでありますが、建築基準法立場に立てば、その影を規制して相手の日照確保する、こういうやり方以外にはないんじゃないかというふうに思いますので、一応方式はいま申し上げたような立場同意していきたい。しかし、先ほど申し上げましたように、それを実施するに当たっても、同意方式部分については相当採用していかなければならない、こういう点を申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、若干具体的な問題についてお聞きしたいと思いますが、中間報告では五段階に分けておりますけれども、今度の改正では三段階に分けている。特に別表第三の「日影による中高層建築物制限」、この別表三つに分けてある。どうして中間報告は五段階で今度の法の改正については三段階にしたのか、その点について明らかにしてください。
  11. 山岡一男

    山岡政府委員 先生のお話のとおり、答申によりますと一種から五種までということでございました。その際の一種、二種が対応いたしますのが第一種住居専用地域三種、四種、五種が対応するのが第二種住居専用地域、それから四種、五種が対応するのが、住居地域近隣商業地域、準工業地域内の指定区域というふうに、おおむね答申の区別はなされておると思います。  しかしながら、現実の問題といたしましては、たとえば第一種住居専用地域では、一種、二種ございますけれども日照三時間を確保という意味の第二種の基準中心にいたしまして条例上下をつける、第二種の場合にも、三、四、五が対応いたしますけれども、一番普遍的と思われます真ん中の第四種を採用いたしまして、上の三種、下の五種につきましては条例で上げ下げできる、それから、住居地域等につきましても、四種、五種でございますが、五種を中心にいたしまして上下に一ランクずつ上げ下げできるというふうに考えた次第でございまして、これで見ますと、答申で対応を考えておりました第一種住専一種、二種が三種まで含まれるということになりますし、それから、住居地域等では、四種、五種と考えておりましたのがさらにもう一段階下まで入っておるということでございまして、相当幅広い規制ができるようなことも念頭に置きつつ、一番平均的に適用されると思います中位の数字を基準として採用したということでございます。
  12. 中村茂

    中村(茂)委員 いま言われました政令で定める上下はどのくらいに考えているのですか。
  13. 山岡一男

    山岡政府委員 日影規制には二種類ございますが、いまの一つの方の、単体といいますか、自分の方からだけの日影につきましては上下一時間というのを考えております。それから複合日影がございます。複合日影基準につきましては、上下三十分というのを上限下限として条例で付加もしくは強化ができるようにしたらいかがかというふうに政令案としては検討しております。
  14. 中村茂

    中村(茂)委員 そうなってまいりますと、一種住居専用地域は一階で三時間でありますから、中間報告の、一階で四時間まで含まれる、そうなれば一種の方も入るという説明でありましたけれども、その逆に今度緩和の方を一時間ということになると、日照は二時間になるわけでありますから、その面については悪くなるわけだ。それから住居地域は、これは二時間でありますけれども、それを上下して下へ下げると、二階で一時間、こういうことになるわけでありますから、これも悪くなる。  ですから私は、いい方はちょうど一時間上げていくとよくなるわけですけれども、一時間悪くなる面が出てくる、そうなっていくと、この中間報告よりも一ランク下がっているんじゃないか、こういうふうに思うわけなんです。その点はどういうふうにお考えなんですか。
  15. 山岡一男

    山岡政府委員 最初のときから、第一種住専につきましては、大体答申一種、二種が対応すると考えておりまして、実際問題の第一種住居専用地域の、たとえば東京におきます日照を享受している過去の例等を見ますと、その三分の二ぐらいが確保しているところがおおむね三時間日照ということだと思います。したがいまして、その基本の三時間をまず適用していただきたいと考えて第一種を三時間ということにしたわけでございますけれども、やはり地方自治体の実情、それからやはり全国的には経度、緯度等も違います。それらのことを勘案いたしまして上下一時間のアローアンスを設けたということでございまして、むしろ答申の種別を幅広く活用させていただいたという基準になっておるわけでございます。
  16. 中村茂

    中村(茂)委員 ですから、いま地方自治体綱領等をつくっていろいろやっておりますから、基準だけ決めて、できるだけ幅広く地方自治体日照問題を補完するような立場で行くなら、私はそれなりにわかるのです。そういうことになるとすれば、ここのところの基準を決める場合には、日影ならば最高基準を決めておく、日照立場から見れば最低基準を決めておく、そうしてあと一時間、いずれにしても緩和する方については、最高最低を決めておいて、緩和する方は下げない、それから強化する方はどのくらいへ持っていく、こういう決め方が一番いいんじゃないか。  物事を決める場合に、一つの例ですけれども労働基準法等があります。これは労働問題とかいろいろ決めていく。それも大体最低基準を決めておくわけなんですね。そうしてそれより上のものについてはそれぞれの労使間で決めるとか、またはいろいろな形で決まっていく。  ですからこの場合にも、上下を決める、緩和の方も規制の方も一時間ずつ、こういうふうに幅広くしないで、いずれにしても、日影ならば最高基準日照ならば最低基準、これを決めておいて、そうして日照確保する面についてはそれぞれの地方自治体なりそういうところで日照を十分確保できるようにしていく、こういう決め方をすれば、先ほど申し上げましたように、第一種住居専用地域日照目標価が二時間というようなところは出てこないし、それから住居地域についての一時間というようなところは出てこない。この二時間、一時間というのは中間報告にもないわけでありますから、そういう決め方が一番正しいではないか、こういうふうに私は思うのですけれども、ひとついかがですか。
  17. 山岡一男

    山岡政府委員 建築基準法は、建築物に関します構造、設備、敷地、用途に対する最低基準を決めるということになっております。そこで、それぞれ今回考えております。たとえば第一種住専上限が四時間、下限が二時間、二時間ないし四時間の範囲内に日照をとどめるということがたてまえ上の最低基準だと実は考えておるわけでございます。しかしながら、全体としてはそのように考えておりますが、建築基準法規定の仕方を見ますと、やはり一応の基準を決めまして、条例によって、制限強化もしくは緩和という措置をいろいろな条文でとっております。それらの点を勘案いたしますと、やはり二時間ないし四時間の最低基準の中で普遍的にまず採用されるのは真ん中のところが多かろうということで、規定基準といたしましては三時間を採用しておるということでございます。  なお、いまの二時間とか四時間という、三時間を中心にした一時間の上げ下げにつきましては、やはり全国の最低基準を決める法律がございますので、運用上の問題といたしましては容積率との関係が非常に多いと思います。したがいまして、もちろんあくまで標準というつもりでございますけれども、こういう容積率に対してはこういうふうな緩和が必要じゃなかろうか、こういう容積のところについては強化を検討すべきじぁあるまいかというような点につきましては、運用に当たりまして地方公共団体とよく協議してまいりたいと考えておる次第でございます。
  18. 中村茂

    中村(茂)委員 この点は、規制でありますから、全国的に南から北まで日照の時間なり気象条件が相当違うと思いますけれども最低基準というものを決めておいて、その上の方はその地域に任していく。それを、標準というのですから、緩和の方をとられればこれはどうにもならないですよ。いま申し上げましたように二時間、一時間というところが出てきてしまう。地方自治体もこの日照という問題については相当取り組んできておりますし、そういう下げるようなことはしないと思いますけれども、しかし標準ということで一時間下げるということが許されている以上、そっちの方へみんなそろえてしまったというようなことになれば、せっかくこの基準法改正して日照確保するようにしていこうという前進的な面がそれだけ損なわれてしまうわけでありますから、やはり最低というものを決めてやっていく、これが正しいやり方だ、こういうことを私は強く要求しておきますので、ひとつ御理解しておいていただきたいというふうに思います。  そこで、細かいことですけれども日影方式でありますから、日照の面についてはどの程度期待するということにこの改正はなっております。この法律で見ていっても、なお書きで、一種については一階で三時間、二種については二階で三時間、住居については二階で二時間以上の日照を期待するようと、日照の方は期待になっているわけですね。いまの一時間の問題ですけれども、一時間は政令で定めるというのは、この別表の(に)項の四時間、四時間、五時間をプラスマイナス一時間ずつ制限緩和できる、四時間、四時間、五時間。それから日照の方は一階で三時間、二階で三時間、二階で二時間、こうなっていきますと、この一時間というもののはかり方が、影の方と日照を期待する方で、一時間の上下の方は日影規制する方の四時間、四時間、五時間になっているわけでありますから、そっちの方、四時間、四時間、五時間の方を一時間上下して、日照の方がやはり一時間そっくり出てくるのですか。私は出てこないと思うのです。
  19. 山岡一男

    山岡政府委員 トータルの、たとえば八時間の中から四時間を引けば四時間残りますし、こちらの方を五時間にいたしますと残りは三時間になるということでございまして、日照時間に大体八時間くらいのことを考えておりますので、そういうふうに片一方一時間上げますと片一方は一時間減るという関係だろうと思います。
  20. 中村茂

    中村(茂)委員 これでやっているのは八時間じゃなく七時間じゃないですか。
  21. 山岡一男

    山岡政府委員 失礼しました。七時間です。
  22. 中村茂

    中村(茂)委員 それから次に、商業地域及び工業地域規制からはずしたということについては、どうしてはずしたのですか。
  23. 山岡一男

    山岡政府委員 今回公法的な日影規制を導入しようと考えたのは、主として住居系地域でございます。それから近隣商業等につきましては、やはり住居系地域に連なるところを想像いたしております。商業地域都市計画法で定めておりますとおり、主として商業利便を増進するということのために定める地域でございまして、建蔽率、容積率等も高く定めておるところでございます。したがいまして、公法上の日影規制を直ちにここに適用するのはいかがかと考えたわけでございます。  ただ、商業地域でもいろいろと日照紛争はございます。今後判例積み重ねによりまして相隣権的に日照が保護されていくだろうとわれわれは想像いたしておりますが、判例の動向によりまして、商業地域にも日影規制が必要だということになりました場合には、その段階で検討すべきであろうと考えております。現段階では住居安寧を守るということを主にしております住居系地域には、少なくとも公法的な規制を及ぼす方が妥当だと考えた次第でございます。
  24. 中村茂

    中村(茂)委員 商業地域工業地域。これは工業専用地域なら私は話がわかるような気がするのです。商業地域でも工業地域でも住宅があって人間が住んでいます。特に商業地域の場合には、家が密集していて、一番日照問題については必要な地域のわけです。商業地域だから人間は住んではいけないということはないわけでありますし、現実に見た場合に、この商業地域の場合にも相当人が住んでいる。しかも、日照を受ける率というものが一番環境上少ない。その地域をはずしている。ですから、いま言われたように、何の積み重ねでどういうふうに解決していくというふうに言うのですか。もう少し具体的にひとつ……。
  25. 山岡一男

    山岡政府委員 今回日影規制公法的に取り入れようということで取り入れておりますけれども、これはいわゆる日照権を全般的に確保しようという趣旨ではございませんで、日照確保しながらその他の通風、採光、プライバシー等も守りながら環境のいい住宅をつくっていくための公法的な規制を行おうというものでございまして、元来日照権そのものは相隣権的なものだと考えております。したがいまして、そういうものにつきましては、幾多の判例の積み上げによって相隣権として確立されるということが日照権そのものの本質であろうかと思っております。しかしながら、それを待っておりましたのでは、最近のような住居系地域におきます紛争はますます熾烈になってまいりますので、そういうものを念頭に置いた公法的規制が必要だと踏み切ったわけでございます。  したがいまして、商業地域におきましては、実は私どもの監督いたしております住宅公団でも、現在札幌で商業地域内で日影の問題で裁判中のものがございます。それらのものにつきまして、いろいろな判例等が積み重なっていくと思いますけれども、その暁に、そういうふうな相隣権的なものとしまして商業地域におきましても日影の問題が解決されていく、これには相当時間がかかると思います。しかし、それまでの間も、やはり商業利便を増進するということが主な地域でございますので、もちろん地域、地区の指定の仕方の問題もあろうかと思いますけれども、当面公法的に介入するのはやはり住居安寧確保するというところに限るべきであろうということで、現在は住居系地域に限っておるということでございます。
  26. 中村茂

    中村(茂)委員 それから、また細かいことで恐縮ですけれども、この別表三の(に)項、それから(は)項もそうですけれども地域外五メートルから十メートル、敷地外十メートル以上——この日影の時点をどうして土地境界線に置かないで、五メートルなり十メートル離れたところで、しかも、先ほど申し上げましたように第一種については一階だ、それから一種住居については二階ではかる。メートルでいけば、ここに出ておりますように一種については一・五メートル、二種、住居については四メートル。境界線なら境界線で、影が来たらその土地境界線のところで何メートルと決めればいいのじゃないですか。それを五メートル離れたところで、しかも片方のところは一階で一・五メートルだ、片方の方は二階で四メートル、四メートルだ、どうしてこういうふうにするのですか。
  27. 山岡一男

    山岡政府委員 敷地境界線からの日影のはみ出し許容距離を五メートルというふうに定めておりますのは、住居地宅地規模の現状から見まして、標準庭域と考えられます南庭の幅をとったものということでございます。  それから、第一種住専と第二種住専ではかる高さを変えておりますのは、第一種住専におきましては、やはり一番住居安寧確保するべき程度の高いところでございますので、一階部分の窓のところでそういう日照確保したい。第二種住専は、比較的中高層住宅街区を予想しておりますので、二階の窓程度のところでそういう日照確保したいということを念頭に置いて定めたものでございます。
  28. 中村茂

    中村(茂)委員 ですからこれでいくと、住居地域で一時間緩和して実際には一時間しか日照を期待する時間がないという場合には、一階部分については日は当たらない。これは中高を期待している、中高を期待していると言いますけれども、そういうふうになります。  科学的にいろいろなデータをもらって、これはむずかしくて私どもにはよくわからぬのですけれども、全体的に見て、ですから私は、この日影基準にした方式をとったこの別表等をいろいろ勘案してみた場合に、どうしても日照を期待するという面がわりあいに損なわれてきているのではないか、こういうふうに感じてなりません。  いま申し上げましたように、はかり方が違う。一階と二階で何で変えたのか全然わからぬ。一定の線を決めて——一階だの二階だのそんなことはいいですよ、境で何メートルなら何メートル、そこのところを基準にしてきちっと見るのだ、こういうことさえ明らかにしておけば、何も五メートルから十メートル下がったところだとか、やはりそれはその土地としての権利が、私権がそこに存在しているわけですから、五メートル下がったところに私権が存在するわけじゃないのですよ。だから、私はどうも、このつくり方について検討してみると、日照の権利について損なわれてきているような気がして仕方がありません。  しかし、そんなことを言っていても、一応ここに出てきておりますから、次へ進めていきたいというふうに思います。  次に、中間報告で言っております「日照紛争等のあっせん等に関する措置」、これは先ほど申し上げましたように商業地域とか工業地域について、そういう判例等基準にして進めていく、こういうことも残されておりますし、当然こういう問題については、この日照紛争等をどういうふうに処理し、あっせんしていくかということがこれからの重要な問題になると思うのです。しかも中間報告には出ておるわけであります。その点についてどういうふうに作業が進んでいるのか、どういう考え方に立っているのか、明らかにしていただきたいというふうに思います。
  29. 山岡一男

    山岡政府委員 答申におきましては「日照問題が種々の専門的技術的知識を要する分野にまたがっていること等にかんがみ、必要に応じて特定行政庁単位に日照紛争等のあっせん等に関する措置を講ずるよう指導するものとする。」ということになっております。  で、今回の法律改正がもし施行されました場合にも、日照紛争は全然ゼロになるということは考えておりません。しかしながら、その場合に起こる日照紛争は、この法律による日影規制に適合する建築物でなお起こる紛争であるということになります。したがいまして、この法律自体の中にそういうふうなことを取り入れるということは困難であると考えておりまして、そういう場合には、結論的には裁判所によります最終的な解決に頼らざるを得ないと考えております。  しかし、地方公共団体の場合には、日照紛争調整委員会等を現につくっているものもございますし、日照紛争の調停には一生懸命努めております。ただ、地方公共団体が自主的に住民サービスをするという観点から、ここにございますように、あっせん等に関する立場で行政指導の範囲内において日照紛争の調整のための措置を行うということが今後も必要であると考えております。この法の成立の暁にも、さらにそういう点につきましても、地方公共団体、特定行政庁を指導してまいりたいと考えております。
  30. 中村茂

    中村(茂)委員 この中間報告では、いま言われました次の行になお書きがあります。「なお、この日照紛争等のあっせん等に必要な経費は、地方交付税の基準財政需要額に算入するようにする。」、この点についてはどうなっておりますか。
  31. 山岡一男

    山岡政府委員 毎年自治省の方にわれわれの方から要望を出して詰めてまいっておりますが、一般の建築行政のための人員その他のもの等を含めまして、これも当然に要望してまいっております。今後はぜひとも算入していただくように、強く働きかけてまいりたいと考えております。
  32. 中村茂

    中村(茂)委員 これはなお書きではありますけれども、努力するとかそういうことではなくて「算入するようにする。」とはっきり言い切っているわけでありますから、まあ努力されているようでありますけれども、実現方をなお強力にひとつやっていただきたいというふうに思います。  それから次に、やはり中間報告の中で「建築協定制度の整備」、これをうたっておりますけれども、この点についてはどうなっているのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。   〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  33. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の法改正の中で、建築協定制度については、相当なものにつきまして改正点を提出いたしておる次第でございます。
  34. 中村茂

    中村(茂)委員 今回の場合の改正は、一口に言えば、全員合意制のものを一人の協定でもいい、こういう改正だというふうに思いますけれども、しかし、これは全く個人的に存在する人がいいということではなしに、一定の建築を相当な規模で行うというものについて、まだ入居する者がわからないわけでありますから、したがって、その建築主なりまたはその経営主なりが一人で代表してもいい、このところの改正だと思うのです。ですから、全く個人で存在している者、こういうものがまだはずされているわけでありますから、言えば全員合意制というものについて、その思想を全部はずした、こういうことにはなっていないと思うのです。こういう制度は、やはり全員が合意しなければそこのところへ成り立たないということになると、なかなか全員合意するということにはならないわけですよ。したがって、なかなかこの推進ができない。しかし、また後ほど申し上げたいというふうに思いますけれども、これが全く個人的に存在している人でも、個人的に入ればそこのところへ協定が成立するという制度にしていけば、相当この日照問題についても紛争を解決することができるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その辺のところはどういうふうにお考えなのですか。
  35. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の建築協定に関します法改正で、当初全員合意制を何とか打破してみたいと努力いたしましたけれども、やはり協定の性格そのものが最終的には私契約でございますので、立法上はむずかしいということで今回の改正になっております。先生おっしゃいましたように、一人協定制度を設けたこと、それから借地権の目的となっている土地の所有者について、それの合意を得なくても足りるものとしたこと、土地の共有者または共同借地権者につきまして、これらの者を一の所有者または借地権者とみなすことにより、民法の原則に基づきまして、持ち分の過半になる者の合意を得れば、全員の合意とみなすことにしたこと、それから、一時使用のために設定されたことが明らかな借地権を有する者につきましては、建築協定の締結等の際に合意がなくてもよいということを明示したこと等、やはり全員合意制を前提としながらも、そういうふうな協定が促進されるようなことを図ってまいったわけでございます。  一人協定につきましては、現在までに、やはり公団、公社などがいわゆる宅地分譲、建て売り等を行うというような場合にも、建築協定で将来その町をりっぱにしたいと考えました場合にも、全員合意制でございますとやはりぐあいか——一人でなかなかできませんでしたので、従来はだれかに少し売りまして、その人たちと共同で全員合意という擬制のかっこうをいたしまして運用しておったわけでございます。それらの点を、やはりそういうような公団、公社等のデベロッパーが建て売りもしくは宅地分譲等を行います際に、当初から健全な建築協定ができますように、そういう制度の道を開いたということが今回の眼目でございます。
  36. 中村茂

    中村(茂)委員 ところが、実際にはまだ全員合意制の思想というものがずっと貫かれておりますからね。この制度を整備して推進するんだ、こういうふうに言いますけれども、私はいままでとそう変わらないと思うのです。ですから、できるだけこの一人制を、枠をはめておかないで、この制度がスムーズに推進できるようなことをひとつこれからも考えていっていただきたいというふうに思うのです。  それから、中間報告の中に「協定に違反した者に対しては、建築基準法上の是正措置の対象とするよう措置することを検討する必要がある。」こういうふうにうたっておりますけれども、その点については、今度の改正の中に全然出てきていないと思うのですが、どういうふうにお考えになるのですか。
  37. 山岡一男

    山岡政府委員 実は答申の趣旨を受けまして、法制局ともいろいろ議論をいたしましたけれども、建築協定はあくまでも私的自治の原則に基づいてなされるということでございますので、その違反に対して行政庁が直ちに是正命令等の行政処分を行ったり罰則をもって臨むことは適当でないという結論に相なった次第でございます。ただ、なお、私人の定めた規範を担保するために罰則を科する制度は、いまのところも、現行法上はどこにもございません。
  38. 中村茂

    中村(茂)委員 いまずっといろいろお聞きしてきたわけですけれども、特に日照紛争については、判例も山ほど出ておりますし、現在紛争中のものも相当あるわけなんです。それと地方自治体条例または指導要綱に基づいてもうすでに相当地方自治体において行われてきている。今度のこの規制ができた場合には、要綱を含めて、それから判例等を含めて、大体おさまるのですか。それとも、はみ出す部分は相当出てくるのですか。
  39. 山岡一男

    山岡政府委員 現在基準を定めておられるところにつきましては、事務当局で実際に当たって検討いたしております。完全に一致するということではございませんけれども条例による緩和もしくは強化等を考慮いたしますと、全部おおむねが含まれるということになっております。  従来の判例につきましては、先ほど申し上げましたような今回の基準と比べることができるような判例は少のうございます。したがいまして、判例につきましての、たとえば賠償金を幾ら払えとか、どこどこを撤去しろというのはございますけれども、全体の基準はこうだから、だからというふうなことになっておりませんので、基準としての比較は現在のところいたしておりません。
  40. 中村茂

    中村(茂)委員 この法律ができた場合に、判例等に基づいて賠償金が出ている、またはそれに基づいて工事が中断されている、またはその判例に基づいて実施している。ところが、この改正によって、その判例と対比してみた場合に、こちらの方が規制が強くて実際の判例の場合等それが緩いという場合には、私はここのところまで引き上げることができると思うのです。ところが、それよりか今度は上に出ている判例、そういうものについてはどういうふうになるのか。  それから、賠償等別な角度でその紛争が処理されている面についてはどんなふうになっていくのか。その辺についてはどういうふうにお考えなんですか。
  41. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の法改正を行いますと、公法的規制として一応守るべき基準ができます。しかも、これは国会でも御承認いただく客観的な公法的規制ということになりますので、今後は裁判の判例等も、この法案成立の後は、これを基準になされていくだろうと思っております。  それ以外のことの紛争につきましては、やはりその賠償その他の面につきまして必要な判例積み重ねられていくことだろうと思いますけれども、この公法との関係による限りでは、直ちに判例と比較できるものではないと思っております。
  42. 中村茂

    中村(茂)委員 ですから、また前に戻るわけですけれども判例があるし、これからこういう問題が裁判にかかってくる。その際、法で決まっているのは、標準が決まっているわけですね。それで今度、政令に基づいて、地方の条例等で一時間上下緩和できるとかどうとかというふうな問題が起きてくる。今度裁判へかかってくる。やはり基準というものが標準になるのじゃないか。そうなっていくと、中間報告の五段階が三段階になった。上下になるからいいというふうに言っているけれども、実際には中間報告の一ランク下げた基準になっていってしまう。こういう点が非常に懸念されますし、それから前進的に日照確保するということで出ている判例、こういうことについても、低い方は引き上げられるからいいわけでありますけれども、相当問題が起きてくる。こういう点を指摘しておかなければならないと思うのです。   〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一点明らかにしていただきたいというふうに思いますのは、条例または指導要綱に基づいてそれぞれの地方自治体で行われている面について、これは、この改正よりも緩和されている面についてはここまで引き上げるわけですからいいわけですが、この改正よりももっと進んでいるというか、日照確保の面について前進的な面についてはここまで下げなければならない面も出てくると思うのですけれども、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  43. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の法改正によりまして公法的に介入しようということでございまして、客観的な基準が定められるわけでございますので、そういう場合も出てこようかと思います。それで、この基準条例強化または緩和することができる旨の明文規定を置かれましたので、その範囲内で新しく条例で定められる場合のほかは当然にその有効性を失うということになろうかと考えております。
  44. 中村茂

    中村(茂)委員 そこで、こういう問題については、冒頭も申し上げましたように、同意方式という方式も相当取り入れていかなければならないと思うのです。規制したからそのとおり、こういう以外の問題が一つ出てまいります。それと、先ほどもちょっと御回答があったわけですけれども、電波障害とか工事中の騒音、振動、風害、プライバシー、これも住宅環境の大きな問題でありますし、中間報告の中でも指摘されている問題でありますから、そういうものと日照の問題全体をあわせ考えてみると、日照の問題だけこれだけの規制をしたからといって、住宅環境をよくしていくという問題は解決できませんし、またこの種の問題をめぐる紛争はなかなか解決できないと思うのです。  そうなっていきますと、これを一応制定して、どのように実施していくかという場合に、地方でいま行っている同意方式を、これを基準にして実際には相当取り入れていかなければならないというふうに思うのですけれども、その際の事前公開、それから説明会、苦情処理の発生は、こういう問題を解決する場合の原則だと私は思うのです。この三点について、これから実際に行っていく場合の考え方をひとつ明らかにしていただきたい。
  45. 山岡一男

    山岡政府委員 法律が施行になりますと、やはり地方公共団体の方で条例緩和もしくは強化をされる以外は、その地域には公法規制が通用になります。したがいまして、その公法範囲内であれば、建築主事は申請が出れば確認をするということになります。  ただ、現在までのいろいろな地方で行われております要綱の中には、必ずしもそういうような確認制度等とリンクをしないで、指導的に、住民の方々と話し合いをよくしろ、事前に公開をしろ、よく相談をしろというような趣旨のものもございます。それから、要綱の中には、今回われわれの方で規制しようとしております住居地域以外のところにも適用しているものがございます。そういうものにつきましては、確認とリンクをいたしまして、それがなければ確認をしないというていのものでありますと、これはやはり公法規制が前面に出ますので、その辺は眠るかと思いますけれども、それ以外の点につきましては、従前の要綱の範囲内で地方行政庁も十分いろいろな指導を行うことができるように指導してまいりたいと考えておるわけでございます。
  46. 中村茂

    中村(茂)委員 日照問題についてはこれで終わりまして、あと一、二点聞いておきたいと思うのですけれども、地下街というものは道路上どういうふうに規定しているのですか。
  47. 井上孝

    井上(孝)政府委員 道路下の地下街につきましては、道路の占用として扱っております。
  48. 中村茂

    中村(茂)委員 そうすると、それは無料で貸しているわけですか。それとも金を取っているわけですか。
  49. 井上孝

    井上(孝)政府委員 占用料を徴収いたしております。しかし、地下街の道路占用を認めます場合には、むしろ地下街に接します地下道が公共的役割りを持つという場合に限定して占用を許可いたしております。したがいまして、地下道部分の占用料は免除をいたしております。
  50. 中村茂

    中村(茂)委員 地下道の占用部分については免除するということになれば、地下街についてどうするかというふうに言っているわけですけれども、もう少しはっきり言えば、地下で道路きりになっている、そこのところは金を取らないで、道路になっていて両側に商店があるという場合には取っているということですか。そこのところをもう少しはっきり言ってください。
  51. 井上孝

    井上(孝)政府委員 地下街に付属しております地下道、これが公共の用に供される場合にはその地下道部分の占用料は免除して、店舗部分からは占用料を取っております。  なお、その店舗部分の占用料の算定に当たりましては、地下道の管理を店舗の企業者がやっておるという場合には、その店舗の方の占用料から地下道の管理に要する、たとえば電灯料とか、そういうもののある部分を控除して、店舗部分の占用料を算定して徴収いたしております。
  52. 中村茂

    中村(茂)委員 それから次に、特に今回の場合には遡及適用に伴う経費が相当膨大にかかる措置でありますから、特に遡及適用に対しての助成措置が一番重要だ。法律ばかりつくってみても、とてもじゃないけれども、さかのぼってやるについて金が大変かかってどうにもならない、こういう面があると思うのですけれども、したがって、助成措置等についてはどのようにお考えですか。
  53. 山岡一男

    山岡政府委員 予算上の措置といたしまして、都道府県とか政令都市等が、防災改修工事を実施する者に対しまして防災改修設計費及び出店者等につきまして出店者対策費等について補助を行う場合におきましては、当該都道府県等に対して国が必要な経費の二分の一を補助するということで、今年度国庫補助金を三億六千百万円ばかりでございますが、計上いたしております。  それからさらに、特殊建築物等の台帳整備、防災診断、防災改修計画書の作成等を行います都道府県に対しましても、これにつきまして二分の一の国庫補助額といたしまして国費で二千九百九十六万円ばかりを計上いたしております。  さらに金融上の措置といたしましては、日本開発銀行、それから中小企業金融公庫、環境衛生金融公庫、国民金融公庫、医療金融公庫、沖繩金融公庫等につきまして、それぞれの各機関に五十年度も相当多額の融資金を枠として確保いたしておりますし、五十一年度につきましてもそれを上回る額について要望中でございます。  なお、税制上の措置といたしましても、一定の防火避難施設の設置に対しまして、法人税及び所得税におきます特別償却、それから不動産取得税における課税標準の特例の創設等につきまして、関係の方面と折衝中でございます。関係の方面と折衝の中では、法律が通ればそういうことを実現しようということに大体話がついておると思っております。
  54. 中村茂

    中村(茂)委員 それから、税制上の措置については現在どういうふうになっておりますか。
  55. 山岡一男

    山岡政府委員 固定資産税につきましては、どうも減免は無理のようでございますが、不動産取得税、それから先ほど申しました登録税等につきましては、防災関係といいますか、スプリンクラー等の遡及適用に関連をいたしまして、消防関係の遡及適用と同等の措置をしていただくということについて現在御相談中でございます。
  56. 中村茂

    中村(茂)委員 法人税及び所得税における特別償却並びに不動産取得税、この課税標準の特例を設けて税制的にもひとつ援助してやろう、こういうことですけれども、その点はすでに大蔵省あたりと話がついているのですか、全然つかないのですか。
  57. 山岡一男

    山岡政府委員 実は内部で検討いたします際に、マル、バツをつけて大蔵省あたりからも返事が参ります、自治省からも返事が参ります。その中にはマル法という記号がついておりまして、法律が通れば必ずそれに賛成しようというところまで話がついております。
  58. 中村茂

    中村(茂)委員 一口に言えばこういうことですか。この法律が通ればこれは大蔵省も通す、こういうふうに話がついているということなんですか。
  59. 山岡一男

    山岡政府委員 さようでございます。
  60. 中村茂

    中村(茂)委員 終わります。
  61. 天野光晴

    天野委員長 瀬崎博義君。
  62. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 主として日照問題について質問します。  日照確保のための日影規制については、従来からも私法上の相隣関係としてあったわけですが、これを今回公法上の規制を加えることにしようとしたその背景や原因は何か、説明をしていただきたいと思います。
  63. 山岡一男

    山岡政府委員 最近の市街地におきましていろいろと建築物が建ちます際に、日照の問題につきましていろいろな紛争が起こってまいりました。その件につきまして、数回前の国会から、その点についての検討をすべきじゃないかというのが衆参両院の建設委員会等で問題になりました。そのために、そういうふうなものにつきましては、建築審議会に諮って十分勉強の上成案を得て提案いたしたいと答弁を繰り返しておりましたけれども、第七十二国会までにやっとその答申をいただくことができまして、それを法案として提出したというものでございます。  その際の考え方といたしましては、やはり日照権は基本的には相隣権的なものだ、しかし、判例積み重ねを待っておったのでは、特に住居系の最近の紛争の多いところについてはなかなかうまくいかない、したがいまして、そういうものも考えた新しい環境整備のための基準をつくったらどうかという御提案でございまして、それに従いまして今回の提案になったという事情でございます。
  64. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そもそもの事の起こりが日照紛争にあったというようなお話なんだけれども、そういうことについては、地方自治体条例や指導要綱などがそれなりの役割りを果たしておったわけでありますが、これは先国会でも答弁はあったようですけれども、改めてそれら条例、指導要綱等の果たしている役割りに対する評価を聞いておきたいと思います。
  65. 山岡一男

    山岡政府委員 われわれ基本的には、今回のような規制財産権の制約でございますので、法律に基づいてやるべきであると考えております。したがいまして、それに基づく条例等々で規制をするのが本来正しかったと考えているわけでございますが、国におきますそういうふうな法案の整備ができるまでの間に、いまの要綱等におきまして事前の公開制、同意制もしくはいろいろな技術的な指導等をとられておりまして、その間の空白を補っていただいたというふうに考えております。いままでの国——法律規制について今回こういうような規制を設けるということになりますと、それらの点につきまして抵触するところについては使命を終わっていただくことになるというふうに考えておる次第でございます。
  66. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 本来法律でやるべきものではあるけれども、しかしそれにもかかわらずそれぞれ地方自治体が独自の条例や要綱で何らかの措置を講じざるを得なかったそもそもの理由はどこにあると考えているんですか。
  67. 山岡一男

    山岡政府委員 やはり判例の累積を待つには余りにも紛争が多かったということであろうかと思います。
  68. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それを、いまになって財産権の問題等もあるから条例や要綱を法律に置きかえる必要があるんだということは、裏を返して言えば、従来の建設行政がこの面では手抜かりがあった、いささか、怠けておったとは言わないけれども、暗にそういうこともお認めになっているわけですか。
  69. 山岡一男

    山岡政府委員 大変答弁しにくうございますけれども、まだ国の方で財産権の制約についてそういうふうな方向が出ないうちに、若干条例等でオーバーランがあったというのが実情かと思います。
  70. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 オーバーランかどうかは、それは勝手に即断されては困るけれども、私がとりわけ聞いておきたいのは、国が法的な措置を講ずる以前に地方自治体として何らかの条例や要綱等を設けざるを得なかった、その自治体の置かれている立場というものは十分考慮しているんですか。
  71. 山岡一男

    山岡政府委員 現在までのいろいろな諸基準等の中で、今回の基準と比べてみますと、ほとんどが今回の基準と余り抵触しないというようなことに相なっております。
  72. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そんなことを聞いているんじゃなくて、大体法律でやるべきものを、何か知らぬ条例や指導要綱でやったことが悪いようなことを言うから、なぜそのようなことを地方自治体として措置を講じざるを得なくなったのか、地方自治体の置かれている立場をあなた方は考えていますかと、こういうことを聞いているんですよ。
  73. 山岡一男

    山岡政府委員 紛争が非常にふえておるのに、公的介入といいますか、公法の根拠を置かなかったという点につきましては、われわれの検討に時間がかかり過ぎたということであろうかと思います。問題の発生等につきましては、同じ時期に検討を始めたわけでございますけれども、国の方は相当時間をかけたという点がございます。それから、やはり基本的には財産権の制約でございますので、われわれの立場といたしましては法律というものがやはり基本になるべきだと思っておる次第でございます。
  74. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局こういうことですか、政府というものは比較的雲の上の存在だからそういう悠長なことが言えたけれども地域住民に密着している地方自治体としてはそういうふうな、紛争という言葉で言われているけれども、いわゆる住民運動に何らかの形でこたえざるを得ない、政府はそれを高みの見物しておった、こういうふうな理解と私は話を聞くのですが、そういうことなんですか。
  75. 山岡一男

    山岡政府委員 先生おっしゃいますように、国がおくれている間に地方の方でそういうものが穴埋めされたということでございまして、要綱の中につきましては、具体的な基準例等を示されたものも四十八例ぐらいございます。条例の中におきましても、四例ぐらい具体的な基準を示されたものもございます。しかし、それ以外の大部分につきましては、やはり住民の同意制だとか、事前公開制だとかいうものが主になっております。
  76. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 どうもこちらの聞いていることに答えない。私が言っているのは、結局もとは日照権を守ろうという住民運動が基礎にあった。これに最も密着している地方自治体としては、国のように手をこまねいているわけにいかないから、何らかの処置を必要としてこのような条例や要綱をつくって住民運動にこたえた。つまり必要に迫られてこういうものをつくってきたのだから、これはそれなりの重要な役割りを果たしていると思うのです。そういう歴史的評価をあなた方は持っていますか、こういうことなんです。
  77. 山岡一男

    山岡政府委員 その点につきましては、前回のときにも申し上げましたけれども、十分評価をいたしておるわけでございます。
  78. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 同時に、いろいろ裁判に持ち込まれたケースの中で、判決等もそういう歴史的経過を反映して、初期段階のものと最近のものでは変わってきて、やはり住民運動に有利な判決が出てきている。このような各種の判例も重要な役割りを今日まで果たしてきたと政府は認めておりますか。
  79. 山岡一男

    山岡政府委員 当然認めております。
  80. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今度の法改正が行われた場合に、結局、いまの政府の方針だと、抵触するものは効力を停止するというような話だし、私たちが心配するのは、前進してきた判例の方にも逆に後退面が生まれるのではないかと思う。政府としては、せっかくの日照権問題について地方自治体やあるいは裁判面で前進があったものを、これで食いとめるというふうな意図はないのですか。
  81. 山岡一男

    山岡政府委員 そういうことのために一番必要な客観的な基準ということで、御審議願っているつもりでございます。
  82. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういうことのためにとは、これ以上住民運動などが前進しないようにという意味ですか。
  83. 山岡一男

    山岡政府委員 そういう意味ではなくて、住民の皆さんも、それから家を建てられる皆さんも、やはり従来のような同意制等に頼らなくても、公法的規制の中で、たとえば申請をすれば従前の同意を得られたと同様な建物が建ち、もしくは若干制限を受けますけれども、その制限も建てる方も甘受をし、公法的にすんなりと家が建つというふうなことをねらってきておるという趣旨でございます。
  84. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、いま政府が提案しているこの改正案に対する評価の問題なんですが、用途規制とか容積率、建蔽率の規制を厳しくしたことについては、これは日照権保護のためにも若干の改善だとわれわれも評価はしているのです。しかし、問題になるのは、全国一律に日影規制基準を出している点で、この基準についてそれぞれの立場、すなわち地方自治体、それからマンションその他高層建築物紛争の当事者、つまり建設業者と住民ですね。この三者。自治体、それから問題の工事をやった業者、それから関係の住民は、今度の改正案を、特に日影規制基準についてどのように評価していると建設省はつかんでいるのですか。
  85. 山岡一男

    山岡政府委員 まず地方公共団体でございますが、大部分地方公共団体はこの案につきまして、成案を得るまでに相談をいたしておりますので、大体いいじゃないかと言っております。それから業者の方々の方は、従前の基準に比べて少し厳しいじゃないかというお話がございます。住民の方々は、従来の日照についてたとえば既存のものが少しでも減ることがあるじゃないかという意味では、少しは悪くなると思っておられる方もいらっしゃいます。  ただ、今日の基準につきましては、大まかなところ、現在までの良好な地域に住んでいらっしゃる方々の日照時間の三分の二程度を大体念頭に置いて審議会の方でも答申をつくられたということでございまして、両方から少しずつ文句を言われますけれども、客観的に見ますと、そういう意味ではかえって正鵠を得たのじゃないだろうかとわれわれ思っている次第でございます。
  86. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 話はちょっと逆じゃないかと思うのですね。われわれがつかんでいる範囲では、自治体は可もなく不可もなく、それから住民の側はこのような基準を設けられることに反対、マンション等の建設業者が最も歓迎している、こういうことではないのですか。率直なところをひとつ述べてほしいのですが。
  87. 山岡一男

    山岡政府委員 従前、たとえば建築基準法に適合しておってもどうしてもなかなか確認がおりなかったというような立場から言いまして、建設業者の方々たちがこれの出るのを待っておるのは事実でございます。ただ、先生おっしゃいました基準の内容につきましては、ずいぶん厳しいじゃないかということを考えておるわけでございます。住民の皆さん方の方は、やはり従来そういうふうな建設業者の方がいままでのような客観的基準で来ますと、同意等につきましての規制が後退するという点で危惧の念を持っていらっしゃる方々はいらっしゃると聞いております。
  88. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、だからずっと一連の局長の答弁から言えることは、まず第一に、提案理由もそうなんですが、「都市における土地の高度利用の進展に伴い、日照紛争その他の都市環境を阻害する事態」に対処するため日影基準を設定するのだ。つまり紛争が起こらないようにしたいということじゃないかと思うのですね。  それから第二には、この日影基準ができると、自治体の条例、要綱のうちこの改正案に抵触するものは、これは繰り返し言われているように廃止されていく、裁判にも一定の影響が出るのではないか、むしろそういうことを政府側は意図しているというふうに見られる。  それから第三には、高層建築物を建てる業界の側は、それは見かけの上では基準は厳しいじゃないかとは言うけれども、しかし、これで一安心というふうな安堵感を持っていることは事実であり、どちらかといえば反対しているのは住民の側である。  第四に、狭い意味での日照紛争は何らかの形で解決が促進されていく、しかし、その解決のされ方ということになると、いままで日照を保護するために相当役立ってきた条例、要綱、判例が取り払われて、この法律基準範囲内では逆にどんな高層建築物も建ててもよろしいという、いえば許容基準のような形になってくる。客観的基準と先ほど言われたけれども、これが客観的なのかどうかは後で論ずるとして、客観的基準ができたから高層建築の業者は遠慮が要らない、住民の反対もこれで何らかいままでよりは抑えられますよ、こういう形になってくるのじゃないかと思うのですね。  そういうわけですから、この法律改正というのは、いままで日照権問題をここまで盛り上げてきた住民運動を踏みにじった形で、しかも一種の強権的な圧力で日照紛争が解決されることになって、決して民主的に本当に納得の上で解決されていくことにならないのではないか、こう思うのですが、大臣いかがです。
  89. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 いろいろこの法律についての評価はあると思うのですよ。先ほどからいろいろ御質問もあったようでして、この法律ができる間、各県や市町村の条例そのものもそれなりの効果があったと私は思っております。ただしかし、われわれも怠慢でそのままはうっておいたわけではないので、この法律は去年の通常国会に出したのがいろいろの事情で継続して今日に至っておるわけであって、出した時点においては、私どもはできるだけ早急に可決をしてもらって、早く実施をしたいという考え方でやったことは御理解がいただけると思います。  それはそれにしても、今度のこの法律に考えられることは、たびたび答弁もいたしておりますように、これだけ全国的に日照紛争が後を絶たないといったような問題は、これは一日も早く終止符を打つことが必要ではないか、そのためにはやはり全国一律の公法的な規制が一応必要ではないか、こういう考え方です。各県各都市がばらばらでそれぞれの条例をつくって、それぞれの地域によって規制が違っておる、そういう形は決して法治国家として好ましいことではないと私は思うのです。そういう意味で、全国に公法的な規制をつくって、まずその基準に基づいて今後の建築を進めていくということ、日照問題もあるいは日影問題もある程度基準に基づいて解決をつけていく方向が好ましいことではないかと思っております。だから、これは人、人によってあるいはそれぞれの地域や階層によっていろいろ見方は違うでしょう、評価は違うでしょうけれども建築審議会で公平な審議を経て答申を得て、そして最大公約数を出したと私どもは思っておるわけでありまして、すべての人に満点とは思っておりません。両方からいろいろ批判をされておると思うのですけれども、この際に、長い間の紛争を将来ぜひなくするようにしていきたいという考え方から、この法律をぜひ進めていきたい、こういう考え方でありますから、これは瀬崎さんには瀬崎さんとしてのいろいろの御意見もありましょうけれども、私どもはそういう意図でこの問題を考えておるわけでありますから、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、決して住民運動を抑制しようとかなんとかいうそういう意図でやっておるわけではありませんけれども一つ基準に基づいて今後の紛争問題も解決できるとするなれば、私は、これは全国的に見て好ましいことではないか、こういう感じもいたしておりますから、御理解を願いたいと思います。
  90. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、何も政府側がいままで怠慢であったから早くこういうものをやりなさいという意味で言っているのじゃないのです。それにかわるものとして、やむにやまれず地方自治体が指導要綱とか条例とかいうものをつくってきた、これには一定の歴史的な重みもあるし、地域の実情の反映という重みもあるわけですね。それを急に取っ払ってこういう法律に置きかえるというところに非常に大きな無理があるということを指摘しているし、政府側の答弁も大体その無理は認めておられるわけですね。  そこで、少なくとも法律化していく場合、最大公約数と言われたけれども、まずやはり社会的な根拠と科学的な根拠と何らかの形で両方備わっていないと客観的基準と言えないと思うのですよ。その点で、社会的に合意された基準なのかどうかということについて言うならば、現時点ではこの改正案に対する評価が大きく当事者間で分かれている。つまり、建築をやりたいという方は、表向きはどうあれ、これで一安心、逆に反対している住民の方は、これはわれわれの運動を今後抑える形になるし、また従来の条例等に比べるとなまぬるいじゃないかというふうな意見もある。こういう点では、これを社会的に合意されたもの、最大公約数というにしては余りにも軽率過ぎるんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  91. 山岡一男

    山岡政府委員 先生おっしゃいますとおり、日照は単に医学的、建築学的に計測される効果のほかにも、精神的効果も非常に多いと言われております。したがいまして、一定の日照確保できるように建築物規制することによりまして、そういうものに対してすべての答えができるということは大変むずかしいことであろうと考えております。しかし、このような多面的な効果を持つ日照も、明るさ、暖かさ、健康上の効果等の各効果ごとに算定をして、先生おっしゃるように技術的数量を出して、だから客観的に正しいのだということにつきましては、なかなかこれもまたむずかしいことでございます。したがいまして、審議会におきましては、東京、大阪等の住宅地における日照の実態調査を行われまして、それぞれの地域においておおむね三分の二ぐらいは確保しておるであろうという日照時間を一応の基準としてお考えいただいたというふうに聞いておるわけでございます。
  92. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 話をすっ飛ばしてはいけないので、私はまだ医学的とか建築学的な基準の根拠を聞いているのじゃないのです。そういうものが非常に決めにくい場合、少なくとも社会的合意ぐらいなければならぬと思うのだけれども、そこが、建築しようという方と反対してきている住民運動の側と、大きく評価が分かれている。これをこの法律でもって社会的な合意事項だ、最大公約数だということは少し軽率に過ぎるのではないか、こう言っているのです。局長は、これでそういう社会的合意だと言い切れるのですか。
  93. 山岡一男

    山岡政府委員 また先生から隠れみのだと怒られそうでございますけれども建築審議会の中に各界の代表の方々すべてを網羅いたしまして、二年間にわたって研究をしていただきました。その結果の最大公約数でございまして、われわれはいまとしてはこれを一番客観的なものとしまして、議会の御審議を願うに足る案だと思っておるわけでございます。
  94. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 あらかじめ隠れみのだと批判されるだろうということを前提にされているのですから、それ以上何をか言わんやでありますが、それじゃもう一つの、こういう基準の場合の根拠になる、先ほど言われた医学的とか建築学的とか、その他の要素を織りまぜた科学的根拠の方ですね。日影を生じさせてはならない時間、つまり日照時間について、この日照時間の目標数値はどのようにして決められたものですか。
  95. 山岡一男

    山岡政府委員 先ほど申し上げましたように、東京、大阪等の住宅地の日照の状況等を勘案されまして、日照基準の時間といたしましては、当時におきまして、第一種住居専用地域では一階の居室で三時間以上、第二種住居専用地域では二階の居室で三時間以上、住居地域その他の地域では二階の居室で二時間以上の日照確保するということを目標として定められたものでございます。
  96. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その場合、たとえば一日の有効可照時間というのですか、お日さんが照らし得る時間の根拠なとは一体どこにあるのですか。——では、そもそも日影時間を割り出す公式はどういう形になっているのですか。
  97. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 午前八時から午後四時までの八時間をとりまして、そこの中で確保されるべき日照の時間ということを算定してあるわけでございます。
  98. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その午前八時から午後四時まで、これをわれわれ有効可照時間と呼ぶのではないかと思うのですが、それをとった根拠は一体どこにあるのか、こういうことを聞いているのです。
  99. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 これは建築審議会でいろいろ御検討いただいたわけでございますが、午前九時から午後三時まで六時間、それをはかる、それから午前八時から午後四時までの八時間をとる、いろいろな方式があろうかと思いますが、建築審議会では、むしろ朝日というものを住民の心理的な問題として非常に重視する調査結果が出てまいりましたので、そういった意味で、午前八時から午後四時までの八時間をとったということでございます。
  100. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、言い得る根拠というのは心理的なものだ、そういうことですか。
  101. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 そういうことを加味してとったということでございます。
  102. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういうものをとりながら、その間どこでもいい、三時間とかあるいは四時間ですね、日照時間として認めているのは。   〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 では今度、このとり方の科学的根拠は一体どこにあるのですか。
  103. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 これにつきましても、建築審議会の中で、いろいろな日照に関する住民の意向調査というようなものをいたしました結果、必ずしも正午の日照と、それから午前の日照と午後の日照というものに対して心理的に差はないというような結果が出てまいっております。
  104. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 おかしいじゃないですか。先ほど有効可照時間をとるときは、心理的には朝日が大事だという調査結果が出ているから午前八時にしたんだ、こういう話をされながら、その間で三時間なり四時間なりの日照時間をとる場合には、これは朝だろうが昼だろうが午後だろうが、そう心理的に影響がないということで、どの時間帯でもいいんだ、とにかく三時間、四時間とりなさいということにしたんだと、全く矛盾するじゃないですか。これどう説明しますか。
  105. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 通常の場合でございますと、ちょうど正午ごろの日、お日様が熱量、そういった面から非常に強いわけでございまして、むしろそういった熱量的な考え方を取り入れるべきじゃないかというような議論もございます。ところが、先ほど申し上げましたのは、午前中でも正午の日でも、それから午後の日でも、とにかくその時間帯によって心理的な差はないということでございますので、そういったことにいたしたわけでございます。
  106. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、あなた先ほど朝日を非常に強調されたのは、それはどういう根拠なんですか。住民の心理としては一日のお日さんのうちではやはり朝日を一番大事にするようなお話でしたでしょう。それならそこへ重点を置けばいいじゃないですか。
  107. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 通常の考え方でございますと、先ほど申し上げましたように、正午の日というものが非常に有効だろうというようなことでございましたが、調査の結果、むしろ朝日についても、その朝の一時間と正午の一時間というものに対して差がなかったということでございます。
  108. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、ここに計算された日照時間というのはさしたる科学的根拠はない、一般的常識で言えば、お昼のお日さんを一番大事にするんじゃないかと思って、いろいろ住民の意向を調査したら、朝日の方がよいということになった。結果的には一日のどの時間でもいいんではないかというふうな形がこの表に出てきているんじゃないかと思うのですね。そういう点ではいまの御答弁そのものが非常にあいまいだ、唯一の根拠と言えば審議会があるからというだけのことじゃないかと思うのですね。  恐らく同じような答えになるんじゃないかと思うんだけれども、念のために聞いておきたいと思うのです。たとえば敷地外の測定点五メートルとか十メートルというふうな一つの根拠を出していますね。これは一体そもそも何が基準の尺度から出てきたのか、これが一つ。逆に今度は、計測面レベルでは一・五メートルあるいは四メートルというふうな線を出した、必ずしもこれは床面というふうなことにしてないんですね。これには何か特別な根拠があるのか。
  109. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 まず敷地外五メートルととりましたのは、通常の住宅地で南庭、南に庭がございます。そういったものを考えまして、平均的に建物のある位置ということで五メートルということをとったわけでございます。(瀬崎委員「平均的の根拠は」と呼ぶ)これも実態調査等でございます。  それから、十メートルについてはちょっと御説明がむずかしいわけでございますが、いわゆる二つの、隣のビルと今度建てるビルとの影が重なり合うというようなことで十メートルというものをとったわけでございます。  それから一・五メートルと四メートルでございますが、一・五メートルは一階の窓の平均的な真ん中、それから四メートルは二階の窓の真ん中というような形でとったわけでございます。
  110. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 われわれ実際住んでいる者の感じから言えば、やはり畳の上にお日さんが映る、縁側の床までお日さんが来ている、こういうふうなことを非常に日当たりがよいと言ったりするわけなんです。だから、そういうふうなわれわれの心理と、それから、いや、窓の中間でなんて言われるのと、このギャップ、あるいはどうしてもおたくの言われるレベルでやることの方が正しいのだと言われるんなら、何かそこに特別な科学的根拠というものを示してもらわないと、それでいいんだなあとわれわれは言えないと思うのですね。  それから、さっき五メートル、十メートルについても、実態調査がどうも中心のようですが、それならそれで、どのような地域のどれだけの実例がどのように調査されたのか、こういうこともちゃんと出してもらわないと、これが法律化されて、全部従いなさいと言うにしては、余りにもお粗末過ぎるように思うのですが……。
  111. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 昭和四十八年の住宅統計調査によりますと、全国の市部で一戸建て、長屋建ての住宅の平均の敷地面積というものが二百六平米ということになっております。したがいまして、そういった二百六平米の住宅敷地に平均的な規模の九十平米、百平米の住宅が建った場合にどういうことになるかということから割り出したものでございます。
  112. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま言われているような内容というものはちゃんと資料として建設省も手元にとっているんですか。とっておるのであれば、私どもにもそれを一遍全部見せてもらって、本当に実態調査と言えるものかどうかということを把握したいと思うのですが……。
  113. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 これは総理府が行っております住宅統計調査でございますので、これは当然正式な統計の資料でございます。
  114. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それを正式な統計でないとか、そんなことを言っているんじゃない。建設省がこういう法律改正を行うに当たって、専門的な見地で十分実態を反映したものと判断できるような建設省独自の調査もそこへ加えられたものですか、こういうことを言っているわけです。
  115. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 住宅統計調査では、そういった実際の個々の敷地がどういう形になっているかというようなことまではわかりません。ただ、平均的に敷地の面積がどうなっているかということでございますので、それを参考に、建設省で平均的な敷地に平均的な住宅が建った場合にどれぐらいどういうかっこうにおさまるかというようなことを推定してつくったものでございます。
  116. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 大臣、これはいまのようなお話が基準になっているんですよ。個々の住宅は、ごらんになったように、これはきわめて具体的で千差万別なんです。これは一軒一軒の調査は不可能でしょうけれども、少なくとも抽出調査ぐらいして実態を把握しないと、いまのように平均的な広さの比較のようなもの、つまりオープンスペースがどのぐらいあるなんというような全国平均だけでやられているんでしょうけれども、これが果たしてこのような法理的規制を加える場合の本当の基準たり得る実態調査なのかどうか、どうお考えになります。これは大臣に聞きたいですね。
  117. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 私どもは客観的なものだというように考えております。
  118. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私が言っているのはそうじゃなくて、その手法から推して、これは具体的な実態の反映にはならないのではないか。そこを大臣、いまお聞きになって、そういうふうな統計資料で具体的な実態の反映とお考えになり得ますか。
  119. 山岡一男

    山岡政府委員 先ほど参事官が申し上げましたのは、住宅統計調査の結果を公的なものとして説明するという意味で申し上げたわけでございまして、実際の審議会の途中におきましては、いろいろな資料を十分検討いたしております。相当厚い本になっておりまして、実は私も全部理解しておりませんので参事官に返答させたわけでございますが、十分な資料は私はあると思っております。したがいまして、相当客観的な資料があるというふうに思っております。
  120. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いや、客観的でないと私は一つも言っていないのですよ。ただし、先ほど言われた住宅統計調査ですか、これは個々の具体例の集積ではなくて、平均的な統計資料だと言われているから、多分どれだけの広さの屋敷にどれだけ実際の建築が建っているかというふうなことの総和としてしか、あるいは平均値としてしか出ていないんだろうと思うのです。一つのこういう形の宅地に家が南側にひっついている、北側にひっついている、いろいろなケースがあると思うのですね。これはそういうものを抽出していろいろ調査した結果の積み重ねでない、そういう性質のものだと思うのですよ。それをもって具体的な実態の反映だ、その唯一の根拠だと言われた日には、これは具体的な実態調査と言えないではないか、こういうふうに私は言っているわけです。一体どっちなんですか、これは。
  121. 山岡一男

    山岡政府委員 今回の規制におきましては、先ほど来御答弁いたしましたように、それぞれの両方の家の相対関係におきます日照時間だとか、それから同意制ということではなくて、日影の排出基準ということで決めております。したがいまして、先に建てようと後で建てようと、隣のところがいまのところ空き地であろうと、どういう場合でも新しく建てる家を、排出基準を決めまして、こちらの方を規制するという規制でございますので、平均的な数字を使ってそういう場合の規定をしたものでございます。  なお、全国的にいろんな差がございますので、実際の日照時間等につきましては、同じ一・五メートル、それから四メートルではかります場合でも、条例による一時間前後の上げ下げができるということを加味しておりまして、そのことを加味すれば個々具体のケースに十分こたえ得ると考えたのでございます。
  122. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ、四十九年四月に住宅局が出している日照実態等調査報告書で見ますと、一種住専では、建蔽率四〇%までのところで日照時間六ないし八時間、それから建蔽率五〇%までのところで日照五時間以上、二種や住居地域でも相当な日照がとれている資料が出ていますね。これから見ても、先ほどから言われているような実態の調査結果というものは、実態、実態と言いながら、建設省自身の実態調査を見ても低目に出ているのではないかというふうに私たちは考えざるを得ないのですが、どうなんですか。
  123. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 先ほど五メーターの根拠ということで住宅統計調査を用いましたが、そのほか日照時間につきましては、御指摘のように建設省自体で東京、大阪等で数地区、それから後で全国規模で大体一都道府県三ないし五地区の調査をいたしております。その結果私どもは、全国の平均といたしますと、もちろん日照の相当多い地域もございますが、特に市部について、特に大都市等においては、もちろんたくさん日照時間のとれておるところもございますが、とれないところ、ですから、先ほど申し上げましたが、大体三分の二ぐらいがカバーできるということで、日照時間をとったわけでございます。
  124. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 ますますもってこの基準については、社会的な合意はもちろんのこと、科学的に見ても、客観的基準とおっしゃるけれども、その客観性がないということが非常にはっきりしてくるのじゃないかと思うのです。  もう私もちょっと時間を制約されておりますので、先を急ぎますが、そこで、ある権威ある指摘として、住宅局長あてに日本建築学会の日照問題研究会が提言をしていますね。御存じだと思うのです。この中でこういう指摘があるのです。「日照紛争とは、ある建物の建設者と、この建物によって日照を阻害されようとする近隣居住者との争いであり、個々のケースごとの問題である。これに対して日照問題とは、都市において、限られた量の日照を配分するルールをどのように定めて、都市の開発、整備を行うかという、都市の問題である。日照紛争日照問題とは、もちろんたがいに深い関係にあるが、紛争が起こりにくくなったからといって必ずしも日照問題が正しく解決したとはいえない。」つまり、日照紛争日照問題というものを関係づけながらも、一応違った課題としてとらえているわけです。このような指摘、見解に対して建設省はどういうように考えておるのですか。
  125. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 建設省の立場は、公法上の規制でございます。したがいまして、いま御指摘ございました紛争そのものの直接のあれを考えているのではなくて、都市として環境のいい町づくりができるようにという観点からつくったものでございます。
  126. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうだったとしたら、このいわゆる基準のとり方がきわめて客観的根拠に乏しいし、しかも、しばしば言われるように、この日照問題というのはもっとほかのファクターもたくさんあるわけですね。ですから、そういうふうなあらゆるものが入っていなかったら本当の日照問題の解決にはならないということになるのじゃないですか。いまの答弁は、そういう点では法改正の内容とは非常に矛盾した答えだと私は思うのです。  さらに、こういう指摘があります。「個々の紛争の処理がすなわち日照問題の解決とは必ずしもならない」「本来、法律は、市民のコンセンサスがあるときこれに則って定められるべきもので、法律が先行すべきものではない。日照問題については、建てる側と近隣住民との間に観点のくい違いがあって、どのような解決が望ましいかについて、市民のコンセンサスがまだえられていないところに根本的な問題がある」こういう認識なんですね、建築学会の指摘は。こういうふうな建築学会のいわゆる専門家の認識に対して、建設省はどういう見解を持っていますか。
  127. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 それは、建築学会という名がついておりますが、建築学会としての正式なあれでなくて、建築学会の中でのあれでございますが、それにつきまして私どもは、紛争が非常に多発している、これに対して、先ほど御答弁申し上げましたように、やはり公法上の基準をつくる必要があるという立場に立って基準をつくっているわけでございます。
  128. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 おかしいじゃないか。さっきあなたは、この法律改正は直接紛争の解決を目的とするものじゃなくて、日照問題の解決を目指すんだと、こう言ったでしょう。しかしいまは、逆に今度は紛争が多発している、これはほっておけないからこの解決を目指すんだというふうな趣旨じゃないですか。もっと首尾一貫した答弁を、これは局長の方で責任を持ってやってください。
  129. 山岡一男

    山岡政府委員 先ほど御答弁いたしましたとおり、今回は日影の排出基準ということについて規制を決めております。これはやはり将来の望ましい都市をつくります場合に、日照のことも考慮しながら、都市としていい住宅形態のものが建つようにということを念頭に置いてつくったというものでございます。ただ、その結果といたしまして、いまのような平均的なものを念頭に置きながらそういう基準を決めておりますので、結果として紛争は相当減るということでございます。
  130. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、言葉のあやでどう言いかえようとも、結局建設省の目指すのは、まず第一義的に日照紛争を減らしたい。もし本当に日照問題の根本的解決を目指すのなら、これは都市問題の一環という大きなとらえ方にならざるを得ないし、もうちょっと基準の設定等は慎重な調査なりあるいは科学的な検討なりが加えられるべきものじゃないかと思うのです。それがないから、ここに指摘されたような「市民のコンセンサスがまだえられていない」、こういう指摘になってあらわれるんじゃないかと思うのです。言いかえれば、法律によってこういうものをどうこうするのがいいか悪いかという、そういう結論自身が出せないような状態にまだ日照問題はある、こういう指摘じゃないかと思うのですが、われわれもそういうふうな感じを持つのですね。どうでしょう、こういう考え方に対して。
  131. 山岡一男

    山岡政府委員 これも再三申し上げておりますとおり、日照権そのものは相隣権一種だとわれわれは考えております。したがいまして、個々の日照の問題につきまして、先に家を建てた人、それから後で家を建てた人、いまは空地であるけれども、将来そこに家を建てる人等々につきまして、そういうふうな日影の排出基準念頭としました住居の計画をしておいてもらえば、でき上がったものは、やはり平均的な都市におきます日照についてのことも考慮した住宅が建つだろうということが基本でございまして、その結果といたしましてそういうふうな紛争も大いに解決される。いままでの紛争の起こりは、先に住んだ人と後に建った者との間の紛争ということが主でございます。したがいまして、空地であるところの隣に家を建てる場合にも、あらかじめ排出基準を決めまして建てる家を規制しておくということは、将来またその空地に別な家が建ちますときにも平均的な日照確保されるということになるわけでございまして、そういうことを念頭に置きました基準であるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  132. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは先か後かの争いというふうにいま説明されたけれども、具体的に起こっているのは、とてつもない高いマンションを建てたりすることから近隣の住民との間に争いが起こっているのであって、お互い平等な立場にある住民同士の争いになっているのではないということもよく認識しておいてほしいと思うのです。  それからもう一点。この建築学会の指摘では「性急な法規制は、真の日照問題の解決とならないばかりか、かえって大きなマイナスとなる心配もある」、こういう指摘が出ています。その第一の理由として、「日照問題解決のための規制基準は、どれをとっても技術的にもそれぞれ問題」のあることだ。これは先ほどの答弁の中にそれが示されていますよね。「規制基準の作成の経緯をみると、どのような規制方法をとると目標とする日照量がえられるかという点に、検討の中心がむけられ、もっと基本的な問題——その目標値とする日照量の生活的意義と、規制によって失なわれる都市としてのデメリットの計量と比較評価——がほとんど議論されていない」。それから第二の理由としては、基準数値や基準値の測定方法も重要だけれども、どの地域にどの基準を設定するかの地域指定方法も重要だ。両方がそろって初めて都市計画的な対策となり得るんだ。後者の検討がこの改正案ではなおざりにされている傾向が強い。こういうような指摘になっているわけですね。こういうふうな指摘について建設省側はどういうふうな考え方を持っているのかということと、先ほどから言われているように、結局政府が高みの見物をしている間に、苦労して地方自治体は、住民運動の意向を受けながらすでに条例や指導要綱などをつくって、それなりの対処をしてきているわけなんです。だから、そういうふうな歴史的経過、歴史的な重みに照らしても、いまごろになって政府が紛争処理ということを中心に置いて法律で抑えていこうとする態度は、私はよろしくないと思うのです。そういうふうな点、結論も含めてひとつお答えをいただきたいと思います。
  133. 山岡一男

    山岡政府委員 最近におきまして起こりました紛争等をできるだけ減らしたいということは、立案の過程で検討したことは事実でございます。ただ、その場合にも、今回のような規制が、先ほど申し上げましたように、建築基準法の従来の規定には適法であってもやはりいろんな意味で家が建たないというふうな現状、それから都市の将来のための構成を考えますと、排出基準ということで、たびたび申し上げますが、決めておりますので、近隣相互の前後関係なく規制ができるという点、そういった点から見まして、われわれは非常なメリットがあると考えております。  ただ、確かにいままでのところ、歴史的な経過といたしまして、宅地開発要綱、条例等にいろんな規制をされておるところがございます。それらの点も、従来の基準と相矛盾するところがないか検討いたしまして、その結果といたしましては、おおむねほとんどがもう全部この基準の中に含まれておるという状況でございまして、現実にいままでの日照紛争が起こったものがこれで全部なくなるかと言われますと、なくなりません。まだまだ少し紛争は残ると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、将来の家をつくるための隣地を余り考えないで、自分の方を戒める排出基準を決めたということでございまして、結果といたしましては、良好な都市の形成のために非常にメリットのあるものだとわれわれは考えて提案している次第でございます。
  134. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから、同じく日照が奪われている例に公共施設がその原因になっている場合もあります。高速道路とかあるいは国鉄の高架であるなど。従来は、昭和三十七年六月の閣議了解で、事業施行中または事業施行後における日影、臭気、騒音、水質の汚濁等により生ずる損失等については、この要綱等において損失補償として取り扱うべきでない、このようにされているわけですが、しかし、最近では、わずかではありますけれども部分補償をするケースができてきていますね。道路公団では、たとえば東名高速、静岡県の小山町、ここではことしの三月に灯油代を補償している。中央高速の山梨県大月市でも同じような補償の事例が出ております。国鉄では、総武線の複々線高架で市川市で同様の補償が七三年より出ている。こういう点、日影に対して公法上の規制を加えるという段階に来ていると政府は認識しているなら、この際、それよりも優先して公共補償の基準要綱についても日照補償を加えるべきだと思うのですが、いかがですか。
  135. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 御指摘のとおりでございまして、建設省におきましても、損失補償制度改善研究会というものを昭和四十七年に設けまして、十五回ほど検討いたしまして、その結果、社会通念上、受忍の限度を超えるというものにつきましては、これは当然事前に補てんすることが望ましいという方向を出しております。そこで、中央用地対策連絡協議会、用対連と申しておりますが、そこにおきましてわれわれは二十数回、事業損失分科会というところで検討を重ねてまいっておりまして、できればことしじゅうにその結論を出すという方向で、現在鋭意最後の詰めに入っておる段階でございます。この結果につきましては、いまの段階では、この建築基準法の審議の過程等も関連いたしますので、これと並行して考え方をまとめたいというふうに考えておりまして、早急に結論を出す予定でございます。
  136. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 重ねてちょっと念を押しておきたいのですが、今年じゅうにとも言われます早急な結論は、基本的には補償をしなければならないという考え方に基づく結論ですか。
  137. 大塩洋一郎

    ○大塩政府委員 補償という形ではなくて、事前に損害賠償が当然軒並みに予想される、こういう地区につきまして、それをあらかじめ損害賠償として事前に支払うというためのその基準一種の補償に似ておりますけれども、閣議了解ではこれは補償という言葉を使っておりません。その基準をいまつくりつつあるということでございます。
  138. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に大臣に、ずっと論議を冷静に聞いていただいたらおわかりのように、現在の特に基準法改正の五十六条の二の日影部分、これはいま急ぐべき性質のものではないというのが正しい認識ではないかと思うのです。そういう点で私どもは、今回の改正に当たってこれを削除すべきだと考えるのですが、いかがですか。
  139. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 先ほど申し上げましたように、この法律は去年の通常国会から出しておるわけで、私どもはできることなれば一日も早くという考え方でお願いをいたしておるわけであります。日照の問題についてもいろいろ御意見がありましたし、理解できるところもあるわけでありますけれども、私ども、防災の問題にしても日照の問題にしても、もうこれ以上、そうでなくてさえ高みの見物とあなたみずからが言われているわけですから、だから私どもは一日も早く成立させてもらいたいと思っております。  そのためには、これは二年前に提案した法律ですから、現時点においてはいろいろまた社会情勢、客観情勢も変わっておることも私ども承知をいたしております。そういう意味において、ひとつ委員会等において十分各党が検討していただいて、そして場合によれば私は修正してもらっても結構だと思っております。委員会の意思を尊重したいと思っておりますから、そういう形にしてもらってでも一日も早くこの法案が、これは万全とは思っておりません。思っておりませんけれども、しかし、これ以上のものがいま直ちにということがなかなか考えられないとすれば、不十分なものであってもとにかく法律を通してもらって施行して、少しでもいろいろな問題の解決をつけていくということが当面必要な問題だと思っておりますから、そういう面でひとつ理解ある御協力をお願いをいたしたいというのが私の心境でございます。
  140. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 不十分なものだということは認めていらっしゃるわけなんですが、不十分にもいろいろありまして、より完全なものへの第一歩である場合の不十分な場合と、不十分なことをやったがために現状よりも悪くなる場合とあるわけなんで、私どもは現状よりも悪くなる心配も大いにあるから、ひとつこれは慎重な扱いをすべきだ、こういうふうに考えておりますので、その点も十分含んでいただきたいと思います。  終わります。
  141. 井上普方

    井上(普)委員 議事進行。ただいま当委員会出席状況を見てみますと、非常に悪うございます。建設委員会は、御承知のようにいままでの慣例あるいはよき習慣がございまして、半数以上が出席しなければ開かないということを決めておりますし、また、過去においてもそのように取り計らってきたと思います。いま拝見しますと、与党の方が非常に少のうございます。この際ひとつお集まりを願ってやるか、あるいはまたこのまま——規則におきましても過半数がなければ成立しないということになっておりますので、ここらあたり委員長の御配慮をお願いしたいと思います。
  142. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  143. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 速記を始めて。  次回は、来たる五日金曜日午前十時委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十六分散会      ————◇—————