○原(茂)
委員 私は、前段に、
自然保護というたてまえに立つと
開発は何か悪といった
感じですら大衆からいま受け取られている中で、短期的な見方、長期的な見方を前提にした、
開発というものが堂々とこういう場合には行われなければいけないというような、
開発に対する定義というものはあっていいのじゃないかという
意味で
大臣のお
考えをお聞きしたのですが、間接的にはわかりますが、たとえば具体的に言うなら私は、このままほうっておくと、かえって大きな自然が破壊されるおそれがある。
二つ目には、このままほうっておくと、地域大衆に人命を含めた非常に大きな
被害を及ぼすおそれがある。三つ目には、やはりこの地域全体の経済を
考えたときには、この経済を上向きにさせるためにはという場合がある、こういうような場合には
開発は行うべきであるし、行われなければいけない。ほうっておけば洪水になる、浸水が起きる、あるいはその他鳥獣による食害なりその他生活権の侵害が起きるというようなときには、私は、
開発というものは、いま言った三つなり四つなりの前提条件の場合には原則として
開発をすべきであるというような、
開発に対する原則が、まずあっていいのじゃないかという気がいたします。
そうでないと、何か
開発が非常に悪ででもあるように大衆の中に植えつけられたままで、
開発に非常に憶病になり、
開発に対して因循こそくになりというようなことが、かえって地域社会全体あるいは経済、地域に住む人々に対するいろんな形での
被害を与えるというような結果になるおそれが現にあると思うので、私は、そういう
意味では、
開発というものには大胆な定義はやはり設けて、論議をして、そして必要な
開発は行うのだというたてまえがまず先にぴちっと
確立される必要があるのではないか。
たとえば、その反面、先ほ
どもちょっと触れたのですが、
西表のように、非常に原生林のある、林業
中心に村民の所得を向上せしめなければいけない。しかし、そうでありながら、あの国有林のうちの約四〇%はすでに本土のパルプ資本に譲渡してしまった、そのために本土のパルプを必要とする度合いに応じて、じゃんじゃん、ある
意味では乱伐を行って、いま現に
西表の原生林、特に国有林の中の乱伐による大変心配な事態というものが現実に起きているし、将来も予想されるというようなことがありますから、これに対しては後でお伺いしますが、適切な手当てをしなければいけないのですが、しかし、だからといって
開発というものに対して何でもかんでも憶病に姑息なということではいけない。
開発に対しては、こういう場合には
開発も必要だというものの定義がある。そのかわり、いま言った乱
開発と言われるようなパルプ資本の乱伐等が、あの国有林の譲渡された四〇%の地域で大変大胆に行われている、これに対する造林なり何なりということを
考えなければいけない。先に十分の手配をした上で、やはり
開発をすべきではないか。原則としては、あの
西表の国有林の四〇%に近いものをパルプ資本に譲渡したことに対しては、時間がありませんし、きょうはこの問題だけでお伺いしようと思いませんが、そのときの経過等もいま調べ始めようという気になったのですが、大変先を見越していない、悪い譲渡をやったなと私は
考えていますけれ
ども、少なくともいま言った
開発に関する定義が行われる、同時に、そういう
自然保護という
立場からも厳しく先を見、先を
考えて、あの種の払い下げ、譲渡の行われたことに対しては強い反省を行って、今後はしないというようなことが現実の問題として
検討をされて、
結論を出しておくという配慮の上に、やはり
開発に対する定義というものはあっていいんじゃないかというふうに
考えるわけです。
生物がとにかく生きていこうとするためには、
環境を
利用しない限り生きていけないわけです、どんな場合でもですね。人間だって生物の
一つなんです。こいつが生きていこうとする限り、
環境を
利用するわけです。
環境の
利用とは、端的にストレートに言うなら、ある種の
環境破壊に通ずるわけです。そうしなければ生物は生きていけないわけです。
後でニホンカモシカの問題を特にきょうは重点を置いてお伺いしますが、これだって、生息エリアというものがどれくらいか知りませんが、
環境庁であるいは林野庁で調べているかどうか知りませんが、聞くところによると、あのカモシカが生まれてから本当に成獣となり命を捨てるまで、平均一年間には一トンの食糧が必要だというようなことを聞いているんです。カモシカが現在わが国全体では何千頭になるか知りませんが、少なくとも長野県の場合大変大きな数が、しかも個人の入会権を持った山などにたくさんいる。だけれ
ども、文部省の方では、これは指定をして絶対とっちゃいけない、食い物は勝手に食ってこいとカモシカに言う。カモシカは自由自在にどこかへ行って食ってくる。食われたやつは民間であったり国有林であったり、あるいは組合林であったりしている。その
被害が与えられたって、そんなことは知らないというような
状況でカモシカが野放しになっている。
大事だから確かに保護しなければいけないことはわかるのだけれ
ども、一体このカモシカを、何々記念物か何か知りませんが、保護獣という指定をする以上は、これの生息
状況と生息に必要な条件を与えるということを
考えた上で、これに対する指定を行うならともかく、全然それをやらずに、いま言ったように一頭年間一トンぐらいのものを食べるというこの一トンを、ヒノキだの杉だのの若芽をばりばり五年生ぐらいのものまでどんどん食っていかれるということが放置されているというような、こういう
状況を
考えると、やはりそういったことまでぴしっと
考えた上で
開発に対する定義を行い、その定義をつくった以上は、この場合の
開発にはこういう手当てが必要だ、こういうことを
調査して、これに対する十分な配慮をした上でなければいけないというようなことが、いまの鳥獣の問題をとらえても、あるいは現に行われでいる
西表のパルプ資本による乱伐を
考えても、先のことをぴしっと手当てをした上で、やはり
開発というものに対して、こういうときには
開発をするのだ、しなければいけないのだというものがあっていいのじゃないかというふうに思うのです。
いま後から申し上げたことは後でお伺いしますが、
開発に対する原則というもの、その
開発には自然を守るという、あるいは、人間も含めて、鳥獣の生息を保障するということも前提に十分な配慮をした上で
開発に対する定義を、三つでも四つでもぴしっとつくっておくというようなことが必要だと思いますが、
大臣いかがですか。