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1975-12-05 第76回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年十二月五日(金曜日)    午後二時三十分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 正森 成二君       加藤 紘一君    唐沢俊二郎君       小坂善太郎君    坂本三十次君       正示啓次郎君    竹内 黎一君       福田 篤泰君    福永 一臣君       山田 久就君    綿貫 民輔君       土井たか子君    三宅 正一君       吉田 法晴君    瀬野栄次郎君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         次長      大森 誠一君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部領事課         長       川崎 晴郎君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月二十日  辞任         補欠選任   竹内 黎一君     菅野和太郎君 同日  辞任         補欠選任   菅野和太郎君     竹内 黎一君 十二月五日  辞任         補欠選任   中村 梅吉君     正示啓次郎君   原 健三郎君     綿貫 民輔君   細田 吉藏君     唐沢俊二郎君   勝間田清一君     吉田 法晴君   大久保直彦君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   唐沢俊二郎君     細田 吉藏君   綿貫 民輔君     原 健三郎君   吉田 法晴君     勝間田清一君   瀬野栄次郎君     大久保直彦君     ――――――――――――― 十一月十九日  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(濱野清吾紹介)(第二七五三号)  同(坊秀男紹介)(第二七五四号)  同(大橋武夫紹介)(第二九一三号)  同(藤山愛一郎紹介)(第三〇〇九号) 同月二十日  北朝鮮帰還日本人妻安否調査等に関する請  願(小渕恵三紹介)(第三一三二号)  同(大橋敏雄紹介)(第三一三三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月二十日  日中平和友好条約締結促進に関する陳情書外  五件(第二  〇五号)  日本国中華人民共和国との間の漁業に関する  協定締結促進に関する陳情書  (第二〇六号)  南北朝鮮平和統一支持等に関する陳情書  (第二〇七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国中華人民共和国との間の漁業に関する  協定締結について承認を求めるの件(条約第  五号)      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣宮澤喜一君。     ―――――――――――――  日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件   〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和四十七年九月の日中国交正常化の際に発出された共同声明第九項において日中両政府間において貿易、海運、航空、漁業等事項に関する協定締結を目的として交渉を行うことに合意したしましたが、このうち わが国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結するため、昭和四十九年五月以来東京及び北京で交渉を行いました結果、本年八月十五日に東京において、わが方本大臣先方陳楚駐日大使との間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定は、本文八カ条並びに附属書I及びIIから成り、さらに、附属書Iの一部の規定に関する交換公文が付属しております。協定内容としては、協定が適用される水域両国がとるべき保存措置取り締まり及び違反事件処理操業秩序維持海難救助及び緊急避難共同委員会の設置及び任務等事項について定めております。  黄海東海における漁業操業につきましては、昭和三十年六月に日中双方関係者の間において民間漁業協定締結され、それ以来二十年間にわたり数次の民間漁業協定によって規制が行われてまいりましたところ、昭和四十七年九月の日中国交正常化の際の共同声明に基づき、この民間漁業協定を考慮しつつ、ただいま申し上げたような内容を盛り込んだ漁業協定交渉政府間で行ってまいりました結果、このたび両政府間で最終的な合意を見たものであります。この協定締結は、関係水域における両国漁業操業をより安定した基礎の上に置くことに寄与するものと期待されます。なお、本協定締結されることによって日中共同声明において締結のための交渉合意されたいわゆる実務協定締結は、すべて完了することになり、これによって今後の日中関係がさらに発展するための基礎が築かれるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 引き続き、本件に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  6. 河上民雄

    河上委員 ただいま外務大臣から御提案のありました日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定、いわゆる日中漁業協定について質問をいたしたいと思います。  かねて、昭和四十七年の日中国交正常化の際発表されました共同声明でうたわれておりました実務協定の最後のものとして、この日中漁業協定が調印されましたことを私どもは心から喜んでいるものでございまして、これまでのいろいろの御苦労を多とするとともに、これは単なる実務協定だけではなく、日中友好への大きな一つの一里塚、ステップになることを心から期待したいわけでございます。そのような前提に立って二、三御質問をいたしたいと思います。  まず実務的な技術的な点いろいろございますが、そのうちの一つとして伺いたいと思っておりますのは、軍事警戒ラインというものにつきましてこの協定の中でいろいろ述べられておるのであります。このような一つの決着というものも当然かと思いますけれども、この軍事警戒ラインのいわば法的根拠というものについて中国側がどのように考えておられ、また日本政府としてどのように考えておられるか、その点を初めにお伺いいたしたいと思います。
  7. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる軍事警戒ラインというものにつきましては、この協定交渉中における問題点一つであったわけでございますが、先生も御承知のように、この参考として御提出申し上げている協定第一条1に関する書簡、いわゆる往復書簡というものがございまして、そこにおいて中国側は、その協定の第一条1の(1)に定める線以西水域を国防上の安全のため軍事警戒区として定めているということを申し述べているわけでございます。  それに対しまして、わが方といたしましてはこれが公海を含む水域である。したがって、公海部分についてはそのような一方的に沿岸国管轄権を行使することは認められないという立場から、それをそのまま承認するということはできないということでございまして、その結果、日本側の返簡に書いてございますように、この協定第一条1(1)に定める線よりも西側以西水域に関する中華人民共和国政府立場を認めることはできないという日本国政府立場を留保するということを明瞭にいたしまして、このことについては合意が成立するに至らない。しかしながら、実際上の考慮として、中華人民共和国政府書簡にもございますように、資源保護という観点も考慮して、日本側としては実際的には入ることを差し控えるというような関係処理したものでございます。
  8. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、これは日本政府は、法的には認められないけれども、しかし実際上の取り決めとして漁業についてはその線を境に遠慮する、自粛する、そういう解釈でございますか。
  9. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのように解決したわけでございます。
  10. 河上民雄

    河上委員 紛争などが起きました場合には、当然この取り決めというものが基礎になって解決に当たられるわけでございますね。
  11. 伊達宗起

    伊達政府委員 この点について紛争が起こるか否か。現実に日本の自主的な差し控える措置といたしまして、日本船がその線よりも西において漁業を行わない限り別に紛争が起こるわけではないわけでございます。万が一、もし西側において日本船漁業を行うということになりましても、これは先ほども申し上げましたように、日本側はその水域におきまして中国管轄権を認めたわけではございませんので、日本側といたしましては、あくまで公海における漁業であるということで、中国側との間でやらないということを約束したわけではございませんから、中国との間で約束違反の問題は起こらないということになると思います。
  12. 河上民雄

    河上委員 もう一度重ねて伺いますけれども、この漁業協定が成立した以上は、この線というものは、日中間に関しては紛争がもし起きた場合、たとえばこの線を越えたという場合に、たまたまというか当然でしょうが、漁船拿捕せられたような場合の紛争解決のための基礎になる、こういうふうに日本政府考えておられるのか。そのときはそのときでまた公海上なんということになりますと、この協定というものは意味がなくなってきますのですが、その点は、いまの御答弁がちょっとあいまいでございましたので、もう一度お伺いしたいと思います。
  13. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる中国側軍事警戒区というものに関係する線並びにそれよりも南に延びている線も含めまして、協定第一条1に定めてございますのは、この協定対象となる区域、すなわち黄海東海に関しまして、両国が関心のある水域としてこの協定対象として決めた水域でございまして、この線はこの協定上はそれ以上の意味を持つものではないわけでございます。ただ実際問題として、先ほど先生もおっしゃいまして、私もちょっと言及いたしましたように、この線の西側日本漁船が漁労をするということは実際上は考えておらないわけでございますけれども、万一そのようなことが起こった場合には、現在、日中間友好関係にかんがみて、取り締まりということになりますれば、これは公海でございますから、日本側立場といたしましては日本側の取り締まるべきものであって、中国によって取り締まられるものではないというふうに考えておりますので、先生が先ほどお用いになりました言葉拿捕というようなことがあったわけでございますが、中国の官憲による拿捕というようなことは万々起こり得ないことであるというふうに考えているわけでございます。
  14. 河上民雄

    河上委員 そういうような問題が起きないように日本政府としては責任を持つということをここで誓約したというふうに解釈してよろしいわけですか。
  15. 伊達宗起

    伊達政府委員 ここで誓約をしたということになりますと、いわゆる中国との問での合意ということになるわけでございますが、ただ、これは日本側の一方的な意思の表明といたしまして、この西側では漁業をしないということを申し述べているわけでございます。
  16. 河上民雄

    河上委員 日ソ操業協定の場合は紛争処理委員会というものが明示的に出ておりましたが、この場合は、前置きには何かそんなことを示唆するような言葉もなきにしもあらずでございますけれども、実際に条約上明示的にそれに当たるものがないのでありますけれども、実際の紛争が起きた場合はどういう形で処理されるのですか。
  17. 伊達宗起

    伊達政府委員 これは双方事故を起こしました当事者間の話し合いということになるであろうと思います。それがまた、もし政府が出ていくような場合には政府間で話し合いが行われる、そして友好的な解決が図られるということになるであろうと思います。
  18. 河上民雄

    河上委員 当事者同士というと船主ですか。船主が直接やるということですか。
  19. 伊達宗起

    伊達政府委員 船主と申しますか、要するに紛争当事着でございますから船主の場合もございましょうし、漁船の船長の場合もあるだろうと思いますが、いずれにしても紛争当事者ということになるであろうと思います。  なお補足いたしますが、日ソのようないわゆる紛争処理委員会というものはございませんで、この協定の第四条に操業の安全、秩序維持ということに関して一項を設けまして、「自国関係漁民及び機船に対し、航行及び操業の安全、正常な操業秩序維持並びに海上における事故の円滑かつ迅速な処理のため、指導その他の必要な措置をとる。」というふうに協定で定めまして、さらにそれを合意議事録で受けまして、4項で「両締約国関係当局は、協定第四条の規定を実施するため、両国民間関係団体ができる限り速やかに次に掲げる事項についての合意に達するように、それぞれ自国民間関係団体を指導するものとする。」というふうに合意議事録合意をいたしているわけでございます。  この結果、民間におきまして、この協定発効のための準備といたしまして、日中漁業協議会中国漁業協会との間の漁業安全操業に関する議定書というものが九月の二十二日に署名されておりまして、その民間話し合いによりますと、現在のこの議定書といいますのは、この協定発効と同時に効力を生ずるというようになっております。
  20. 河上民雄

    河上委員 私は、今日の日中間外交関係から見まして、そういうような紛争が頻発するとは考えませんけれども、しかし、ささいな紛争が起こること自体が友好関係に非常に響く場合もありますので、もう少し明示的に何かあってほしいような気もしないわけではないのです。もちろん、紛争処理委員会というようなものがあるからそれで安全というわけでもないと思いますけれども、そういう意味で伺ったわけでございます。特に最近の松生丸事件考えましても、そういう場合にどう対処するかということの備えだけはやはりやっておかなければいけないのではないか、こんなふうに思いますが、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の場合は、軍事警戒ラインというか、それに当たるようなものがあるというふうにお考えになっておられますか。
  21. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 北朝鮮軍事警戒ラインもしくはそれに類するようなものを設けているということにつきましては、私どもはそれを示す何らの情報も持ち合わせていないところでございます。  なお、先般発生いたしました松生丸事件関連しまして、北朝鮮側日本赤十字に対しまして、単に領海を侵犯したからということのみを言及いたしておりまして、軍事警戒ラインその他のことについては全く言及されていなかった状況でございます。
  22. 河上民雄

    河上委員 それとやや似たようなことかもしれませんが、先般、韓国特定水域というものを設けて、日本漁船を締め出すというふうな動きがあります。これは本来の議題から離れますが、しかしそれとの関連があると思うのでありますけれどもマグロ輸入規制日本がやっておる。そして、これは今回限りというようなことでありますが、もしさらに続けてやる場合に、この特定水域から日本漁船を締め出すことになるおそれはないかどうか。また、日本政府としては、そういう韓国の設定する特定水域というものを認めるつもりがあるのか、それとも、そういうものは認めないという姿勢で行かれるおつもりなのか。また、マグロ輸入規制について今後どういうようなお考えでおられるのか、そしてもし今後もそれを続けるとした場合に、この問題と関連があるというようにお考えになるか、伺いたいと思います。
  23. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 私から韓国のいわゆる特定海域について申し上げます。  これは、韓国側国内法令に基づきまして、一定海域を限りまして、操業及び船舶航行の安全のために、自国船舶がその海域に立ち入ることを禁止している区域でございます。これは、日本側からいたしますと、公海上に韓国一定管轄権を行使しているということになりますので、わが方といたしましては、あくまでもこれを認め得ないという立場でございます。
  24. 内村良英

    内村政府委員 韓国からのマグロ輸入問題でございますが、韓国からのマグロ輸入は近年急増したわけでございます。ちょっと数字を申しますと、四十七年に二万一千トンが四十八年に二万四千トン、それが四十九年は三万六千トンになりまして、本年は一-九月ですでに四万トン近く入っているということで、特に今年春マグロ価格が暴落いたしまして、日本水産業界から、このマグロ価格の暴落の原因は韓国からの輸入にあるというようなことで、水産業界韓国マグロ輸入を制限してほしいということを政府に強く要望したわけでございます。  そこで、私どもといたしましても、この問題につきまして余り韓国側紛争を起こさないように問題を解決しなければならない。実は、国会で外国人漁業規制法が改正されまして、それによって韓国側からの漁船による水揚げを禁止できるような措置政府としては政令でとれるという準備がなされたわけでありますが、それを発動いたしますと、事実上輸入禁止に近くなるものでございますので、私どもといたしましては韓国政府話し合いまして、韓国側自主規制を求め、四十九年は一応四万五千トンにとどめるということで話がつきまして、今日に至っているわけでございます。幸いにその後魚価は回復いたしまして、ただいままでのところ、マグロ漁業の経営というものはやや改善の兆しが出てきているわけでございますが、来年以降どうなるかという問題がございます。この点につきましては、現在韓国政府といろいろ話し合っておりまして、いまだ結論を得ておりませんけれども、やはり何らかの形の両国マグロ貿易調整措置は必要であるという点につきましては韓国政府同意しておりますので、なお具体的措置については今後韓国政府と詰めたいというふうに考えているわけでございます。  なお、これとの関連で、日本韓国マグロ輸入規制についてかなり厳しい態度に出た場合に、いわゆる特定水域から日本漁船を追い出すと申しますか、締め出すというようなことが起こるのではないかという点でございますが、この点につきましては、私が韓国水産庁長と話した感じでは、面接的な関連向こうはつけていないというふうに考えられるわけでございます。
  25. 河上民雄

    河上委員 少し技術的なことにわたっておりましたが、いずれにせよ、せっかく長年の民間業者の御努力で今日まで続いてまいりました民間協定を、今度政府間の漁業協定に進めていかれるわけでございますから、軍事警戒ラインを初めとして法的な根拠の認識においては若干違っているようでありますけれども紛争の起きないように、今日誓約したことは誠実に守っていく、こういう態度で進んでいただきたいと思うのでございます。  そこで外務大臣にお伺いいたしますが、これで一応日本総理大臣外務大臣向こうへ当時行かれまして約束されました共同声明の中の四つの実務協定は全部完結する。外務大臣もそういうようにいま害われましたが、そのこと自体大変結構なことでありまするけれども、そうなってまいりますと、今度は日中友好平和条約をさてどうするかという、ことしに入りましてからこの委員会でもしばしば論議せられたところでございますが、この点についての大臣のお考えを少し伺いたいと思うのであります。  先般外務大臣は、たしか参議院委員会であったかと思うのでございますけれども、いわゆる覇権条項本文に入れるか前文に入れるかという問題について、本文に入れてもよいという見解を発表されたようでございますが、その点は間違いないわけでございますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 参議院予算委員会でお尋ねがございました際に、いわゆる覇権条項というものについてわが国考え方というものを明確にすることができるのであれば、それが条約前文であるか本文であるかということは技術的な問題にすぎないのではないかという意味のことをお答えを申し上げました。
  27. 河上民雄

    河上委員 その後、外務大臣はそれに対する中国側回答を求めておられるようなニュアンスの発言をされましたが、中国側は、すでにこれについてはもう回答済みであるというような反応が来ておることは御承知のとおりでありまして、事実中国側は、すでに覇権条項というものを本文に入れるべしということを主張していたわけですから、日本政府側覇権条項本文に入れてもよいということになりますると、この問題について、細部の点ではいろいろまだ十分調整がついてないかもしれませんが、大枠において双方見解一致したというように判断してよいのではないかと思うのであります。そうなりますると、こういう問題はいたずらにだらだらと時期を待っておってもいたし方ないのでありますけれども、どこかで一つのタイミングをつかんで実際の交渉に入るべきではないかと思うのでありますが、外務大臣としては、一応覇権条項本文に入れてもいいということでありますとすれば、細かい点は今後に任せるとしても、一応双方見解というものが歩み寄ったといいますか一致の方向に向かった、こういう時期をとらえて交渉に移るお考えはないか、いわゆる中国側の返事を待ってということではなしに、まず中国側交渉をするお考えはないか、また、その時間的な目安はいつごろにしたいというようにお考えになっておられるのか、そのことをこの機会に伺っておきたいと思う。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 参議院予算委員会で先ほどのようなことを申し上げました際に、わが国立場として、覇権条項というものをこのように考えておりますという数点を申し上げたのでございますけれども、その点は、実はニューヨークにおきまして喬冠華外相と話をいたしましたときに私が申し述べました幾つかの点を多少集約をして申し上げたところであったわけでございます。その際申し上げましたことですが、これについて喬冠華外相は、同意をされたわけではないが、長いこと私が時間をかけてお話をしておったので、事柄そのものは理解はされたであろう、同意をされたとは申し上げませんけれどもというふうに、予算委員会でも申し上げました。ただいまも私はそう思っておるわけでございます。  また同時に、ニューヨークで話をいたしております際に、お互いにできるだけひとつ早くこの条約をつくり上げようではないかということについては意見の一致があったわけでございますが、他方で喬冠華外務大臣からは、非常にしこりを残すような、無理のあるような結果になるぐらいであるならば、共同声明もあることであるから、何でもかんでもして大変に悪いしこりを残してまで条約を結ばなければならないとは思わない、こういうような話もございました。これは、私はその点を強調するという意味ではないのでありますけれども考えようによっては、共同声明というのが最高の規範であるから、仮に条約そのものがなくても、今日まで両国はうまくやってきたし今後もやれるではありませんか、つまり裏を返して申せば、中国側にも譲歩には限界がある、日本立場にも一つ限界があろう、その場合にはというような気持ちを述べられたものだと思うのであります。  そこで、私としては、この間参議院予算委員会でも申し上げましたようなことにつきまして、一つわが国内においてコンセンサスができ上がるかどうかということを私としても努力もし、確かめなければならないという問題がございますのと、中国側においてこのような私の意見というものに同意されるであろうか、あるいはそれは中国の譲り得る限界を超えたものであろうかどうであろうか、その辺の検討というものは中国としても当然にしておられるでありましょうし、なさるに相違ないと思うのであります。  他方で中国の外交日程を見ておりますと、ことし秋から今日まで、かなり多くの西欧の首脳あるいはアメリカの首脳等の訪問があり、相当多忙なようにも見受けられますから、ある程度の時間を必要とされるであろうというふうに考えております。  したがいまして、結論として申しますと、ある時期を見まして、このような私の考え方について、中国がどのような結論に達したかということを何かの形で接触をして知ることに努めたいと思っておりますが、その時期は国内及び中国との関連考えながら、しかるべき時期を選びたいというふうに思っておるわけでございます。
  29. 河上民雄

    河上委員 いままで覇権条項本文に入れるか入れないかということで、大枠でかなりの距離があった。それがこの前の大臣の答弁でかなり大幅に歩み寄ったということは事実だと思うのであります。  そこで、いま大臣は、覇権条項の解釈について今後どういうふうに煮詰めるかということと、国内のコンセンサスが得られるかどうか、こういうようなことでございましたが、大臣の所属しておられる与党におかれましても、大体一つの方向へ向かってきておると私は思いますし、客観的に見て、日中国交正常化のときあるいは日中航空協定締結のときに比べたら反対は非常に少ないのではないか、抵抗は非常に小さいのではないか、コンセンサスはもうすでに得られたと言ってもよいのではないか、あとは大臣の決断が待たれるのみであるというふうに私は考えるのでありますけれども大臣、きょうは本来日中漁業協定の問題でございますが、その点私から強く希望を申し上げておきたいと思うのです。また後で吉田法晴委員からもあるいはお話があろうと思いますので、私はコンセンサスを得る時期はもうすでに来ているということを強く申し上げて、あと残されました時間で一、二質問をさせていただきたいと思います。  今度の漁業協定関連して、私は領海の問題について政府がどのように考えておられるか伺っておきたいのであります。中国は領海を十二海里というふうに明確にされていると思うのでありますけれども、その点はいかがでございますか。
  30. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 中国は、領海十二海里であるということを明確にいたしております。
  31. 河上民雄

    河上委員 韓国は十二海里ですか。
  32. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 韓国は、領海は三海里という立場でございます。
  33. 河上民雄

    河上委員 では北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国の領海は何海里でございますか。
  34. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 領海の点に関しまして、北朝鮮は従来その立場を公表はいたしておりません。しかしながら、種々の資料に照らしますれば、北朝鮮の領海は十二海里であるというふうに私どもは判断いたしております。
  35. 河上民雄

    河上委員 判断しているだけであって、実際に明確な証拠、依拠すべき文書はないわけですね。
  36. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 たとえば、国際食糧農業機構が本年の初めに出版いたしました資料によれば、北朝鮮の領海は十二海里というふうに書かれております。なお、ことしの春にジュネーブで海洋法会議がございましたときに、北朝鮮の代表も出席いたしておりましたけれども、特にこのFAOの資料につきましてコメントがあったということは承知していないわけでございます。また、たとえば先年プエブロ号事件というものがございましたときに、この問題が国連の安全保障理事会で取り上げられました際に、国連のアメリカ代表はその演説の中で、北朝鮮が長年その領海を十二海里とすることを慣行としてきているという趣旨のことを述べております。その他若干このような資料がございますが、私どもはこれらの資料に徴しまして、北朝鮮の領海は十二海里であるというように判断している次第でございます。
  37. 河上民雄

    河上委員 日本の領海は何海里ということは聞くまでもないと思うのですけれども、大体日本のまわりの国は領海十二海里を志向しておる。そこで、日本も領海十二海里宣言を求める声が非常に強いわけですが、こういうように各国との各種の漁業協定締結をするに当たって、やはり領海十二海里という方向に踏み切るべき時期がだんだん迫っているように思うのであります。これについては、農林大臣は、さきの予算委員会の分科会などで、私の質問にもはっきり十二海里でいきたい、こう言われました。外務省は、海洋法会議の推移を見てというようなことでございましたが、最近外務大臣は、海洋法会議の結論がなかなか出ないの、結論を待たずに検討を始めているというような御発言もあったようでございますが、一体どういうところにまだ踏み切れない障害があるのか。あるいは軍事的な点から、日米安保体制に影響があるというような見解がまだ残っておるのかどうか。防衛庁いかがでございますか。今度もし十二海里にした場合は、七十数カ所が領海になって対馬海峡のみが公海として残るというようなことだそうでございますけれども日本から入る唯一の道が対馬海峡になる、こういうような状況の中で、日米安保体制に影響なしという見解もあるやに聞いておりますが、防衛庁の見解を伺いたいと思います。
  38. 丸山昂

    ○丸山政府委員 一般的に申し上げまして、三海里が十二海里になるということに伴いまして、地理的にはその分だけ領海、領空の範囲が広がるということになるわけでございまして、したがって防衛の責任区域が若干ふえるということでございますが、これに伴って特別に防衛上の手当てをしなければならないという問題はございません。  問題は、海峡で現在公海部門がある関係で自由に外国船舶の交通ができるというところでございますけれども、対馬海峡につきましては、仮に十二海里とりましても、ただいま私どもの理解では一番狭いところの幅員が約二十五マイルあるように承知しておりますので、十分真ん中に公海部門が残るように了解をいたしております。津軽海峡につきましては、一番狭いところで大体十マイル程度でございますので、十二海里ということになりました場合には、これが内水と申しますか、領海、領水の範囲に入るということになってまいるわけでございます。  そこで、前からジュネーブの会議におきましても、またカラカスの会議におきましてもお話の出ておりました、国際海峡という新しいレジームができ上がるかどうかという問題にかかわってくる問題でございますが、この点については新しい制度ができませんと私どもとしては何とも、ただいまの時点でいろいろの見解を述べるという立場にはないわけでございまして、新しい制度が決まりました段階で検討をさせていただきたいというふうに思っておるわけでございます。  そこでもう一つ、ただいま先生の方から御質問のございました、日本海にアメリカの船舶あるいはその他の船舶が、艦艇が入るということが対馬海峡一本で非常に不便になる。したがって、それが日本の防衛に大きな影響を及ぼすのではないか、こういう問題でございますが、この点については、私ども軍事的な分析をいたす立場から、あまり大きな影響はないというふうに考えておるわけでございます。
  39. 河上民雄

    河上委員 外務大臣にお伺いをいたしますが、このような状況、もし防衛庁のそういう見解でありますと、農林省はもちろん十二海里でもいい、こういうことになってまいりますし、防衛庁も日米安保体制に直接影響はないという見解を持っておられるようでございますが、そうなってまいりますと、海洋法会議の結論を待たずに検討を始めるという態度をとられるといたしますと、もう余り大きな障害はない。技術的な調整は残されるにしても、大きな障害はないというように解釈していいように思うのでありますが、一体どういうように大臣としてはお考えになっておられるか。また、いま言った日米安保体制に影響なしという防衛庁の見解は、これはアメリカとも十分了解済みであるのかどうか、この二点をお伺いいたした  い。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は先般来、内閣の官房におきまして、この問題について総合的に各省庁に意見調整をしてもらうようにいたしておるわけでございます。その結論がまだ出ておりませんので、最終的にこうということが申し上げられないわけでございますけれども、私どもがいままで申し上げておったこと、いまもなおそういう点はあるのでございますけれども一つは、せっかく海洋法会議というものが、多少時間はかかっても新しい海についての国際法典をつくり上げる過程にある、そのときに、各国が自分の都合のいいところだけを先取りをしてしまいますと、まとまるものがまとまらなくなるということ、これは海洋法会議の議長もそういう点は憂慮をして、各国に自粛を求めておられるわけでございます。  私どもが一番恐れますのは、そうなりましたときに世界の海というものが無秩序状態になってしまって、その結果、わが国が得るものが多いか失うものが多いかと考えますと、恐らくは失うものが多いであろうと考えますので、できるならば海洋法会議で総合的なすべての問題の解決がなされて、新しい法典ができることがわが国の国益に最も沿うであろう、そういうふうに実は考えてまいりました。いまもその点はそう考えておるわけでございます。それにはいろいろな要素がございますけれども、詳しくは申し上げませんが、基本的にそういう問題が一つある。  それからまた、あれこれ別の問題といたしましては、そもそも領海というものの主管官庁はどこであるかというようなこともわが国でははっきりしておらないようでございますし、仮に領海を十二海里にするというときに、単なる宣言をもって足りるのであるか、あるいは立法事項であるかというようなこともはっきりいたしておりません。十二海里というものが海洋法会議等ではっきりいたしまして、国際的なレジームになっておれば、当然国際法が優先するという立場からも国内立法は要らない、宣言で足りるということになるでございましょうが、現在では十二海里というものが国際法であるとは申しにくい状態でございますから、そうなりますと、あるいは立法が要るのであろうかというような問題もございます。そういたしますと、かなり複雑な立法になる可能性がある。  それからまた、これは大きな問題ではございませんけれども、古い条約の中に領海を一応三海里だというふうに日米間で考え基礎に立っておる条約が、古いものでありますがございますというような、そんなことも事実としてございます。  そして、それにさらに加えまして、先ほどから河上委員のおっしゃっていらっしゃいます国際海峡というようなものがいわば出現するわけでありますが、その国際海峡というものは、海洋法会議がまとまっておりません現在では、そういうものは定義づけられているものでございませんから、そういうこととの関連で、わが国に出現するであろういわゆる国際海峡というものにどのような法的な位置を与えるのがいいのであるかというような問題も出てまいります。  したがって、大変に問題が複雑で、関係するところも多いということから、内閣官房においてただいまその辺の問題の総合的な検討と調整をしつつある、まだ結論が出ておりませんというのがただいまの状況でございますが、この問題はかなり緊急な問題に、つまりわが国の沿岸におけるソ連の漁業操業というようなこととの関連で緊急な問題になってきていることは私どもも認識をいたしておりますので、できるだけ早く内閣において意見の総合調整を図りたいというふうに考えております。
  41. 河上民雄

    河上委員 最後にもう一つ。  アメリカが、日米安保条約体制に影響なしという日本の防衛庁の見解について、了解を与えておるのかどうかということを先ほどちょっと伺いましたが、それにお答えいただいて、私の質問を終わります。
  42. 丸山昂

    ○丸山政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、防衛庁としての見解を申し上げたわけでございますが、御案内のように、特に津軽海峡につきましては、アメリカの意向としては自由通航として確保したいという意向が、これは国際会議の席上でも示されていることは御存じのとおりでございます。したがいまして、先ほど申し上げました私ども考え方、これはアメリカとの意見の打ち合わせの上でき上がっておるという考え方ではございませんので、私ども考え方として申し上げたということで御了承をいただきたいと思います。
  43. 栗原祐幸

  44. 吉田法晴

    吉田委員 私に与えられた時間は十分しかございません。ですから答弁はひとつ簡単明瞭にお願いをいたします。  第一は、日中漁業協定批准の見通しと、政府のこれに対する責任と努力とをお尋ねをいたしたいと思います。外務大臣からお答えをいただきたい。  日中民間漁業協定は十数年の歴史を持っておりますが、このたび政府協定になりました。その批准を見越してでございましょう、十二月二十二日で期限が切れます。手元に日中漁業協議会に来ております電報も持っておりますが、二十二日で期限が切れると書いてございまして、それからの継続の可能性はないと見なければなりません。日中漁業協定がなくなったらどういうことが起こるかということを外相は知っておられるのかどうか知りませんけれども、長崎国旗事件で一切の日中間民間漁業協定がなくなったときも、たしか広田漁業のトロール船一隻だったと思いますが、避難協定が切れておりますから中国の港に避難することができないで、日本に帰ろうとして沈没して十数名の漁船員が遭難し、死亡した記憶が私には生々しく残っております。政府は、日中政府間の漁業協定の批准にどれだけの努力をしてこられたのか、あるいはしておられるのか。参議院を含んで、批准の見通し、責任を持って十二月二十二日までに批准を終わる自信があるかどうか、その一点を伺いたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御審議を願っておるわけでございますので、私どもとしては、今国会の会期内に御承認を得られるものというふうに考えて期待をいたしておるわけでございます。交渉の過程におきましては、万々一そうならなかった場合に、直ちに旧来の民間協定と全く反するような出来事が起こっては困りますので、そうはならぬようにということは、実際問題としてはそういう感触なり話なりはしていないわけではないようでございますけれども、しかし、ただいま御審議を願っておりますので、会期中に御承認をいただけるものと、またそうお願いをいたしたいと存じておるわけでございます。
  46. 吉田法晴

    吉田委員 先ほど実は質問を始める前に専門委員室にお尋ねをしましたら、きょう衆議院の外務委員会委員会承認を終わる、しかし本会議は九日と承りました。ところが先ほど議連に聞きましたら、本会議は十二日に設定をされるようであります。そうすると、外務大臣は十四日にはロンドンに向けて出発をされる、二十二日に間に合うだろうかということは、私自身もいまの段階で心配をしております。関係の西日本の漁民はしばしば陳情なり大会も開きました。私どものところにも要望を持って参っております。その実情を踏まえて、政府としては二十二日までには必ず批准が終わるように努力をされるかどうかということを聞いておるわけです。重ねて御答弁を願います。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国会の御審議について余り日数的なことを私どもがとやかく申し上げるべきではないことは存じておりますけれども政府といたしましては、私が外国出張をいたしましても、当然に外務大臣臨時代理を置くことになるわけでございますので、全力を尽くしまして御審議をお願いをいたしたい、そういうふうに考えております。
  48. 吉田法晴

    吉田委員 時間がございませんから次に移ります。要望いたしておきます。  日中平和友好条約締結について、三木内閣の決意と、それから条約締結の促進についての努力をいかようにされるか承りたいところでありますが、日中共同声明をもう一遍ここで読み上げる時間はございませんが、共同声明には、当面の重要な課題は日中平和友好条約を早期に締結することである、この条約締結するに当たっては必ず日中両国政府共同声明基礎にして前進すべきであり、後退することは許されないということを双方一致して主張をすると書いてございます。前進とは日中両国間の子々孫々――中国側では世々代々と言いますが、子々孫々にわたる永遠の平和と友好関係を確立をし、そのためのかたい友好促進の決意を表明することでございましょう。しかるに三木首相、宮津外相は、この共同声明を前進をさせ、日中両国国民の子々孫々にわたる友好を確立する、そして覇権反対を含んで日中平和友好条約締結をするかわりに、いろんなことを言っておられますが、私はその共同声明にうたってあるとおりに早期に締結をすべきであると考えますが、ここで改めて外相の決意を承りたい。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経緯につきましては先ほど河上委員に申し上げたようなことでございますが、私どもとしては共同声明の趣旨に沿いまして、できるだけ早期にりっぱなものをつくり上げたいと、今日現在考えております。
  50. 吉田法晴

    吉田委員 時間がございませんから、あとは全部一括して申し上げます。簡単に要領よくお答えを願いたい。  覇権反対条項についていろいろな留保条件をつけようとしたり、日本としての独自の認識の表明をしようとしたりしていることに対して、中国側は鄧小平副総理から基本的に共同声明からの後退を図るものとの解釈をされ、小坂さんに対してはその旨を強調されたということも、私は当然じゃないかと思います。これは小坂さんの報告を読みながらそう感じたところであります。それだけではございません。宮澤外相は日台航空協定を復活させるために、台湾政府承認している国にとっては、日本を含んで、青天白日旗は国旗と受け取られておるということを国会で述べておられます。これは、日中共同声明にはっきり書いてございます復交三原則、その中にあります二つの中国立場をとらぬと言いながら、実際には二つの中国立場に返ったものではないかと私は思います。それから藤山日中議連会長が中国を訪問されて、鄧小平あるいは病気の周総理にもお会いになりました。帰国後りっぱな報告を、これは私自身自分の耳で聞きました。小坂善太郎氏の報告も読みました。十月に訪日されました中日友好協会の孫平化団長その他最近訪日をされた中国の代表団の団長から伺いますと、自民党の議員を含んで日本でお会いするすべての人が、覇権条項をはっきり入れて、日中平和友好条約を早期に締結すべきだと言われたと報告をされております。私は北九州の市長をして中国展の成功を経験をしたから言うわけではございません。ことしの福岡の中国展でも、小型中国展でしたけれども、小さな中国展でさえ五十数万人の人間がこれを参観をしております。私は一九五五年バンドン会議を傍聴することができました。あのバンドン会議で採択されたバンドン十原則の中に、新植民地主業反対というのがございました。これは私はいまの覇権主我反対と同じ精神だと思います。このことはインドシナにおけるアメリカ帝国主義の失敗、撤退後、タイ、マレーシア、フィリピン等でアメリカ離れが行われ、覇権主義反対で中国との間に共同声明が結ばれておることは御承知のとおりであります。このことは何よりもあの一九五五年当時のバンドン十原則、その中には平和五原則と新植民地主義反対がうたわれておりますが、それがいまでは覇権主義反対だということの何よりの証明ではないかと私は思います。日清戦争以来といいますかあるいはまたその前からも含むかもしれませんが、中国を侵し、第二次大戦の中心は中国でございました。中国全土を侵略し、三光作戦を通じて焼き尽くしあるいは殺し尽くし等々のことをいたしましたが、共同声明にもうたわれておりますけれども中国にあれだけの迷惑をかけた日本は、中国に謝罪をすると同時に、遺憾の意が表明されておりますが、再び中国侵略の過ちは繰り返すことはないという覇権反対を日本こそ明確にして、中国との間の戦争状態を終わり、再びああいう不幸が起こらないように宣言すべきだと思います。そしてそのことによって初めて子々孫々に至る不変の友好関係日中関係に打ち立て、アジアの国々との間の真の友好関係と交流と繁栄、そして平和五原則に基づく関係が打ち立てられると考えます。日中共同声明の中にもうたわれておりますが、その共同声明の中にうたわれている平和五原則と覇権主義反対の原則を平和友好条約に盛り込むのは日本として当然だと私は思います。それだけではございません。この覇権条項にそういう意味を盛っていることは、私が申し上げなくても外務大臣よく御存じだと思いますが、それに覇権条項を無条件で入れることにいろいろ論議がなされるのは、これは三木総理あるいは官澤外相の個人的な立場等が影響しているかと考えられますが、もしそうでなければ日本が再び覇権主義をとろうとしておるからではないかと、ほかのいろいろなことを通じて疑うわけでありますが、そういう疑う必要がないかどうか、この段階で明確な決意を外務大臣から承りたいと存じます。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども日中平和友好条約締結するに当たって、日中共同声明の線に沿って、それを後退させない、前進させるというようなものをつくらなければならないと考えておりますことはもちろんであります。その場合、この条約覇権条項、覇権というようなものを含んでいくということになりますと、これは条約でございますから、いわゆる覇権主義とはわが国立場から見てどのようなものであるかということを法規的にはっきりさしておく、少なくとも解釈をはっきりさしておく必要があろうと思いますし、またわが国の憲法あるいはわが国の持っております基本政策等から見て、それがどのようなものであるべきかというようなこともはっきりさしておく必要があろうと思います。そこらのところは、条約として締結をし、国会に御審議を願うのでありますから、明確にいたしておくことは必要であろうと存じます。それはもとより後退ということではございませんで、共同声明の線に沿って、それを前進させるという努力の中で行われなければならないものであると存じております。  最後に仰せになりましたのは、わが国が覇権主義を再びとるのではないかという疑い云々ということでございますが、わが国の憲法に明確に定められておりますとおり、わが国はそのような意図を持ちませんし、そのようなことはできないというのがわが国の憲法の規定でございますことは申し上げるまでもないと思います。  なお台湾との関連で青天白日旗のお話がございましたが、これは私が何度も国会で答弁を申し上げておりますとおりでございまして、先ほど言われましたようなことは私は申し上げておらないつもりでございます。
  52. 吉田法晴

    吉田委員 時間がございませんので終わります。
  53. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森成二君。
  54. 正森成二

    ○正森委員 私は日中漁業協定について簡単に二、三伺わしていただきたいと思います。  御承知のように、この協定には双方書簡がついております。そのうちの協定第一条1に関する書簡を拝見しますと、一般的には軍事警戒ラインというように呼ばれておるのですが、そのことについて詳しく聞こうとは思いませんが、日本側書簡を見ますと表現に微妙な差があるように見受けられます。それは、協定第一条の一の(1)及び(2)に定める線の部分については、まず最初に「中華人民共和国政府立場を認めることはできないとの日本国政府立場を留保する。」こう宣言しまして、ただし、その水域には「入って操業することを差し控えることとする。」こういう書き方になっております。ところが「協定第一条1(3)に定める線以南の水域」つまり台湾海域でありますが、その点については「中華人民共和国政府が表明した勧告に留意するとともに、同水域に関する中華人民共和国政府立場を認めることはできないとの日本国政府立場を留保する。」こういうぐあいになっているのですね。  これは表現の上からも違いますし、なぜこういうぐあいに使い分けをなさったのか、使い分けをなさる以上は、たとえば一方は入らないけれども一方は入るんだというように読み取れるのか、一方は留意するけれども一方は留意しないと読むのか、留意するというのは独得の外交用語であるということは知っておりますが、それらの点についてなぜこういうぐあいに書き分けをなさったのか、納得のいく御説明を願いたい。
  55. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えを申し上げます。  中国側書簡の一項と二項とは、すなわち協定第一条の一項の(1)と(2)に定める線についての見解でございますが、その中国側書簡をごらんになりますと、この中国側書簡の書き方は、日本国漁船は「許可なしに入域してはならない。」とか、あるいは第二項で、つまり第一条1の(2)に定める水域におきましては「日本国漁船も同水域に入って操業してはならない。」というふうに禁止的に述べているわけでございます。したがいまして、この点については相手の言っていることもはっきりしているわけでございますから、それに対して日本側は認めることができないということを申したわけでございまして、ところが日本側書簡の2に書いてございます。先生が御指摘になりましたいわゆる北緯二十七度以南の水域につきましては、中国側書簡をごらんくださいますと、「なお軍事作戦状態にあることにかんがみ、日本国漁船が同水域に入って操業しないよう勧告する。」これは明瞭に中国側が入っちゃいけないとか操業しちゃいかぬということではなく、「勧告する」という表現になっておりますので、それについては勧告は勧告として留意いたしましょう。しかし実際問題として、中国側が言ういわゆる「軍事作戦状態にある」水域であるとか、ないしはその事故が起こった場合には「当該漁船自らが責任を負う」べきものであるというような立場は認めることができないというふうに、この点に関しては二重の言い方をしたということでございます。
  56. 正森成二

    ○正森委員 いまの御説明で大体わかりましたが、1の(1)と(2)については一応それは認められないと言いながら、「入って操業することを差し控える」こうなっているのですね。(3)につきましては、もちろん中国政府立場が勧告でありますから「留意する」とこうなっているのでしょうが、ここでも中国政府は、「それから生ずる結果については当該漁船自らが責任を負う。」というようにわりと物騒な書き方になっているわけですね。ところが、これについては、日本政府は前の(1)、(2)の場合のように入って操業することを差し控えるとは書いてないわけですね、「留意する」とだけで。そうすると、この部分については差し控えないというように逆に読むのですか。
  57. 伊達宗起

    伊達政府委員 この問題の北緯二十七度以南の水域については差し控えるつもりがないということでございます。
  58. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、差し控える意向がない、そこへ入って何らかの事故が起これば、それは日本漁船がみずから責任を負うべきことであると中国側は言っておる。しかしわが方は、それについては、正確にこの文章で言いますと「中華人民共和国政府立場を認めることはできない」、こうなっているということになりますと、これは明白に、何か事が起これば中国側日本の責任だと言い、日本側はそんな立場は認めることができないということになると、二国間の損害賠償請求といいますか、そういう紛争の余地を協定みずからが認めたものである、こういうぐあいに解釈してもいいのですか。それは必ずしも日中漁業協定の精神にそぐわないように思うのですけれども、第一条1の(1)、(2)と(3)においてはこういう重大な区別ですね、(1)と(2)については明白に差し控えるとこう言っておるわけでしょう。したがって、そこでは何か事が起こっても損害賠償の請求をしないように読めますね。ところが(3)については、中国側がわざわざ勧告しているのに対して、勧告には留意するけれども中国政府立場は認められない、よって入る、こういうことになっておれば、向こうが入れば場合によったら拿捕その他の措置をとるぞ、それは承知でお入りなさい、こうなっておるのに対して、いやいやおれのところはあくまで入るのだ、しかも日本漁船の責任だという立場を認めないということになれば、初めから真っ正面にぶつかっているんじゃないでしょうか。そうだとしますと、そういうものを協定として結ぶというのは非常に問題があるので、そこは何とか双方の間で煮詰める余地がなかったのか、こういうぐあいに率直に法律家的に読むと思うのですね。その点はどうですか。
  59. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生のおっしゃるように、法律的に詰めていきますと、そういう問題が生じるわけでございます。  しかしながら、これはやはり双方立場というものがございまして、公海上において一国が勝手に管轄権を及ぼすとか、ないしは自分の責任のある事項に関しまして、絶対に自分は責任がないんだというようなことを言うのを日本側として認めることはできないというのが、これまた日本側の法律的な譲ることのできない立場であるわけでございます。したがいまして、この点につきましては結局法律的に解決をすることができなかった、そのためにこそこの往復書簡という形でもって、合意という形をとっていない形において処理をしたということになるわけでございます。  ただ現実の問題として、それじゃ事故と申しますか、日本漁船が損害をこうむったような場合はどうなるかということでございますが、その点につきましては、これはやはり日中友好の精神にかんがみまして、双方で話し合った上解決していく、現実的な処理を行うということ以外にはないわけでございまして、協定締結の際にこのような法律問題も含めて解決するということは、現在の段階においては現実的ではなかったということが実情でございます。
  60. 正森成二

    ○正森委員 大体御説明はわかりましたが、双方やむを得なかったこととはいえ、協定自身にやはり問題点はその点では残ると思うのですね。特に協定の第三条、第四条を見ますと、こういうたてまえのことを旗国主義と言うのですか、それぞれの国がそれぞれの漁船の違反行為について責任を持って取り締まるといいますか、監督を行うというようになっておりますね。そうしますと、いよいよ双方往復書簡は妙なことになってくるのですね。一方は入ってもいいのだ、入れ入れ――入れ入れとは言わないにしても、入っていいのだということになるし、それで一方の方は入っちゃ困る、それはおまえのところの責任だ、こうなるし、しかも一方の取り締まるべき国が自国の船を取り締まるわけですから、取り締まる方は構わない構わない、こう思っている。横に海上保安庁の船がおったって構わない構わないと、こうなる。一方は入ったら困る、入ったら困ると、こうなるが、旗国主義だから、それについてよほどのことがない限り取り締まれないということになると、これは非常におもしろいことになると思うのですね。旗国主義をとる以上は、相手方に対して相当信頼があるから、そういう友好の精神で行うと思うのに、初めから大きな穴がぽかっとあいておって見解が違うというのじゃ、その部分についてはもともと旗国主義は守れないのじゃないでしょうか。どう思いますか。
  61. 伊達宗起

    伊達政府委員 先生御指摘のように、協定第三条においては違反船などに対する取り締まりというのはいわゆる旗国主義というものを採用しているわけでございますが、この協定は、そもそもがこの第一条1に定めます協定水域に関してのみ適用がある条文でございます。したがって、当然のことながらここで日中間で約束いたしております旗国主義というのも、この協定水域内に限って適用があるものであるというふうに読むわけでございまして、先生の例に挙げられました、つまり協定水域外のことに関しては、この協定では何も定めていない。したがって、日本側立場といたしましては、中国領海は別といたしまして、それが公海であるならば、これは当然のことながら、日本側公海上は旗国主義という立場をとっているということでございます。
  62. 正森成二

    ○正森委員 その点についてはわかりました。  その次の質問に移りますが、これは水産庁にちょっと伺いたいのですが、今度の日中漁業協定というのは、これは現地では非常に喜ばれておる。四十八年では大体この地域での魚の漁獲量は年間五十万トン、六百七十億円の水揚げが行われておる、これは正確かどうかわかりませんが、そういうことだそうでございます。  しかし、今度の協定でたとえば一定区域について六百馬力以上はだめであるとか、これは資源保護とか、いろいろな意味でそういうことが双方合意で定められたわけです。しかしそうなりますと、それ以上の船につきましては、たとえば改造費が要るとか、あるいは出漁漁船が減少するとか、いろいろの問題が起こってまいります。それに対してたとえば水産庁は、中小規模の会社についてはいろいろ金融面のてこ入れをするとか考えておられるようですが、どういうぐあいに具体的にされるのか。特にそれに関連して中小漁業特別措置法というのがたしかあると思いますが、現状に合わないというので、この法律を廃止して、たとえば中小漁業経営安定法というようなものを新法としてつくろうというような見解があるやに聞いております。それについてどういう構想を持っておられるのか、もしお答えできるならお答えしていただきたいと思います。
  63. 内村良英

    内村政府委員 今般の政府間の日中漁業協定によりまして、民間協定と同じような規制もございますけれども、若干規制が強化された面もあるわけでございます。  この規制の強化につきまして日本政府同意いたしました背景といたしましては、何といいましても黄海東海における資源状態というものが背景にあるわけでございます。特に規則の強化された中で、ただいま先生からも御指摘がございました底びき漁業の六百馬力の規制措置というものが新しく加わったわけでございます。これによってどれぐらいの漁船が影響を受けるかということでございますが、日中漁業協定の調印時におきまして、六百馬力を超える許可船は二そうびきで八十四隻、一そうびきで四隻、計八十八隻でございます。底びき漁業はたしか五百隻以上ございますので、その程度のものが影響を受ける。このうち大部分の船につきましては機関の換装によりまして六百馬力以下とすることができるわけでございまして、実体的には余り影響を受けないというふうに考えているわけでございます。  そこで、影響を受けると思われますのは十一月一日現在で十三そうとなっておりますが、これは大体大手の船が多いわけでございます。  それから、換装に要する経費は余り多額の金が要りませんので、これは各経営者が自分で処理できるという程度のものでございます。  それからさらに、御質問のございました構造改善の問題でございます。これにつきましては、中小漁業につきましてはずっと水産庁は構造改善を進めてきたわけでございますが、現在までの構造改善というものは、どちらかと申しますと、いわゆる経済の高度成長に合わせて漁業が一緒に走っていかなければならぬ、ついていかなければならぬということで、どちらかというと船を大きくするというようなことが主たるねらい、すなわち漁獲努力を強めるというところにねらいがあったわけでございます。ところが、いわゆる石油ショック以降、非常に漁業会社の経営が悪くなりまして、さらに資源状態等を考えますと、むしろ最近の資源状態に合わせて漁獲努力を少し下げていかなければいけないのじゃないかということで、従来の高度成長時代とは違った構造改善を進めなければならない。たとえば、先ほども質疑の際お話が出ましたけれどもマグロ漁業等につきましては、業界自身が三年間で二割ぐらいの漁獲努力の削減をやりたい、減船をやりたいというようなことを言っておるわけでございます。したがいまして、そういった現在わが国漁業が直面している事態に即応できるような構造改善をやりたいということで、実は五十一年度予算でも、そういった要求を水産庁といたしましては大蔵省にしておりますし、そういうものが認められればそれに合わせた法律措置もとりたいというようなことで、現在準備している段階でございます。
  64. 正森成二

    ○正森委員 私が承知しておりますところでは、業界全体の借入金総額が現在でも百七十億円ぐらいにのぼって、それが自主的に二割あるいは一割五分ともいうのですが、自主的な操短をやりますと、相当費用が要るというように聞いておるわけですが、それに対応するような予算請求をされておるわけですか。
  65. 内村良英

    内村政府委員 百七十億という借入金が、どこの漁業の借入金――以西底びきでございますか。
  66. 正森成二

    ○正森委員 そうですね。
  67. 内村良英

    内村政府委員 現在わが国の水産業はかなりの借金を持っております。それは以西だけじゃなくて、全般的に非常に大きな借金を持っております。と申しますのは、自己資本率が非常に低い。他の中小企業の場合でございますと、私ども承知しているととろでは、大体自己資本が二割五分ぐらいあるわけでございますが、水産は、過去において魚価の値上がりが一般物価よりも高かったとか、かなり高度成長の時代には借金をして漁獲努力をふやすと申しますか、新しい船をつくることが容易だったわけでございますので、かなりの借金を持っております。これが今日経営の圧迫要因になっているということは、先生承知のとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、五十一年に経営安定資金というような意味で、そういった負債をある程度肩がわりしていくような――これは金融の面から見ればやや後ろ向きな金融であって、予算要求としてはなかなかむずかしい問題を含んでおりますけれども、現在のわが国漁業が直面している現実というものを考えますと、そういった措置をとらないとなかなか経営の再建がむずかしいということでございますので、そういったものも要求しているところでございます。
  68. 正森成二

    ○正森委員 漁業関係でございますので、日中漁業協定には直接関係がございませんが、外務大臣初め関係当局に少し質問をさせていただきたいと思います。  十一月七日にミンダナオ島のサンボアンガの南の方にあるバシラン島の近くで日比合弁のシゲト漁業会社の漁船スール四号というのが現地のゲリラに襲われまして、邦人六名が連れ去られたということは、御承知のとおりであります。その後一人、船長が釈放されて帰ってまいりましたが、なお解決しておらない。この地域では、伝え聞くところでは、有名なのは関陽子さんと末広丸ですが、何か聞きますと、新聞では五件発生したとか、いろいろたくさん発生しているようであります。  そこで、いろいろ問題はございましょうけれどもわが国民が生命が無事で自分たちの親族のもとへ帰ってくるというのは、これは全国民が望んでいることだと思うのですね。そこで、簡単な経過と、それから一番知りたい現在の状況はどうなっているのか。新聞報道によりますと、大統領が、六日にはフォード大統領も来られるからそれまでには解決したいというようなことが出ておりますが、そうだとすると、きょうはもう五日なんですね。身のしろ金が五百万ペソ、約二億円余りから三千二百万円ぐらいに減りまして、八十万ペソですか、それで大分減ったな、こう思っておったら、きのうあたりからまた武器を要求しておるというようなことになって、非常に皆さんが心配されておるのですね。それについての外務省の立場なり、交渉経過の御存じの点をお示し願いたい、こう思います。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しいことを後ほど政府委員から申し上げますが、事件が発生いたしましてから、私どもとしては現地の沢木大使を初めダバオの領事館館員等々、最大限に動員をし、かつ、マルコス大統領初めフィリピンの政府、軍の要人ともきわめて密接に連絡をとりつつ、邦人の身の安全を図りたいと努力をいたしておるわけでございます。  この問題を一つむずかしくいたしておりますのは、御承知のようにこれはただの人質、誘拐というようなことでなく、あの地方がフィリピンのいわば内戦、シビルウォーというようなものの地域でございますために、先方に対して金を与える、あるいは武器を与える等々のことは、いわばフィリピン政府としては利敵行為になるという考え方、当然のことでございましょうが、そういう立場に立ちますために、何をしてでも人命を救いさえすればいいのだという立場とは必ずしもそれが一緒にならないというところに、私どもとしても苦労が存するわけでございます。  幸いにして、いろいろな意味での接触ができてまいりまして、先方側の要求もだんだん日とともに小さいものになってまいりまして、最終段階に近づいておるというふうに考えておりますが、政府委員から最近の情勢を御報告申し上げます。
  70. 川崎晴郎

    ○川崎説明員 いまお尋ねのございました最近の状況という点で、簡単に御説明さしていただきます。  四日の、きのうでございますが、真夜中近くになりまして入りました情報によりますと、きのうあたりからは軍が直接に犯人側と交渉している、それから身のしろ金の要求を放棄した、ただ武器をまだ少し要求しているという点でございます。この点に関しましては、結局一応拒絶した上できょうまた交渉する、そういうことを言って引き揚げてきた。きょう午後一時ごろマニラと国際電話してみたわけでございますけれども、そうしましたところ、けさの日本時間八時半ごろモーターボートと漁船に乗ってブエノ大佐以下が乗り込んでいった。そして、大体片道四時間ぐらいかかるそうでございますので、帰ってくるのは夜になるだろうというふうなことでございます。その結果は現在のところ明らかでございません。
  71. 正森成二

    ○正森委員 いま外務大臣からシビルウォーといいますか、そういうような関係にあるから、普通の誘拐事件、身のしろ金支払いとは性質が違うということを言われましたので、それは一つの観点だろう、私はこう思うのです。しかしながら、これがわが国の国民に対する外交保護権として外務省が行動すべき事態になっておるかどうかというのは、外交保護権はどういう場合に発動すべきかというのはいろいろ国際法上むずかしい問題があります。しかし、同時にわが国が他国に対していろいろ要求する場合に、私の承知しておるところでは国際標準主義をとっておりまして、大体普通の文明国の治安あるいは普通の文明国のとるべき措置というのを考慮に置いて、それより低い場合には、その国としては最善を尽くしておったといたしましても、必ずしもわが国としては完全にそれに対して了承するものではないという見解をわが外務省はとっておると思うのですね。これは金大中事件等のときにも私が条約局長その他に確かめたところであります。  そうしますと、通常よそへ参りまして、とっつかまって身のしろ金を要求されたり何やらを要求されるというようなことは、特に内戦状態でそういうことになるというのはめったにないわけですね。しかも、新聞報道によりますと、関係者に現地の軍司令官がこれから物騒だから行くときには軍の警備をつけてから行ってくれ、こういうことを言ったそうですね。そこで、それじゃ一体どの地域に行くときに軍の警備をつけるように要請したらいいのですか、こう言いましたら、九州地方に行くときだとか北海道地方に行くときだとか言ってくれたらいいのだけれども、その軍司令官は答えなかったというのですね。どの範囲に行くときには軍の護衛をつけたらいいかということを言えなかった。こういう状況のもとでは、とっつかまった方だけを責めるというのも酷なように思うのですね。ですから、一定のお金を与えることによって、それが武器に化けるというようなことが仮にあるにしましても、それについて額を低くするとかあるいはそれが武器にならないようにいろいろ配慮するとかいうことはありましても、現地の六人のとらわれた人がマルコス大統領に悲痛な要請の手紙を書いておるのですね。この手紙はほんとに自分が書いたものかあるいは書かされたものかというのがまた争いがあるそうですけれども、ともかく船長がやってまいりまして要望を伝えてからまた帰ってくることになっておったのですね。ところが、現地の軍司令官はそんなものは帰る必要はないということで帰さないから、五人は気が気じゃないということで、帰ってこれないということがわかったときは一日御飯を食べさせてもらえなかったというのが新聞の報道であります。そういうように強硬な措置をフィリピン政府側としてはとるでしょうけれども、わが政府としては、前の末広丸のときには関係会社がお金を持っておりましたから、四千万円というのをともかく提供したわけですね。ですから、政府としては、小さい南洋興発という親会社だそうですけれども、三千万やそこらなら何とかなるでしょうから、そういうことについてのオプションの範囲を広げて、人命をやはり尊重していくというように、外務省としては相手国に対する内政干渉にわたらない範囲で最大限に努力すべきだというように思うのですね。その点はいかがでしょう。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 正森委員の言われましたようなことも、実は私のところで考えなかったわけではございません。当該会社に支払い能力が仮にないような場合には、われわれとしてどういうことが考えられるかというようなことは、実は検討はいたしたのでございますが、先ほど申し上げましたような理由から、フィリピン政府としてはそれはいわゆる利敵行為になるということから一切そのような交渉はしないという態度を最後まで堅持をしたということでございました。実はこれはどの程度まで真実であるかは問題がございますけれども、犯人側がかなり優秀な通信機、ラジオ等を持っておりまして、情報を非常によくキャッチしておるというようなことの由でございまして、したがいまして、ある程度報道管制のようなこともフィリピン政府側、軍側としてはいたしておりまして、したがって、まあそういうこともなかろうと思いますけれども、私どももやや注視しなければならない点もございます。私どもとしては、もし何がしかの金によって速やかに人命が安全になるということであれば、当該会社に能力がなければそういうこともまた検討しなければならないという趣旨のこと並びにそのような物の考え方は、いろんな段階でいろんな形でフィリピン政府並びにフィリピン軍に何度か実は伝えてあるわけでございますが、結果としてはフィリピン政府、ことにマルコス大統領として、まず自分に任せておいてくれれば間違いのないような処理ができるという自信を持って今日まで事に当たっておられるというのが大体の経緯でございます。
  73. 正森成二

    ○正森委員 最後に、わが外務省としては、いま大臣が非常に慎重に御発言になったそういう考えも伝えたというように言われたと思いますが、しかしフィリピン政府にはフィリピン政府考え方がある。しかし、フィリピン政府にフィリピン政府考え方がありましても、わが国民としては自分の親兄弟が帰ってきてほしいというように思うのはやはりこれは人情でございまして、最大限に円満に解決するような努力をなお外務省としてもとっていただきたい。そして、それをしかるべき機会にしかるべき方法で国民に報告するということをぜひしていただきたいというように要望しておきたいと思います。  なお、公平を期するために、報道によりますと、日本漁船員誘拐事件の真っ最中に、軍人の護衛をつけて、それでも私は行くとばかりサンタクルス島へ遊びに行く日本人旅行者が何組かいたというようなことも報道されているのですね。これは旅行の自由と言えばそれまでですけれども、事が起こってしまってからその真っただ中へまた遊びに行くというようなことをされると、現地の領事関係の方も非常にお困りになるというようなことでございますから、わが国の渡航者に対して、一定の地域によっては非常に危ないのだということを周知徹底させる方法というのもやはり政府として考えていただいて、そういう事故を未然に防ぐという態度もやはりとるべきである、こういうように思います。  では、質問を終わります。
  74. 栗原祐幸

    栗原委員長 瀬野栄次郎君。   〔委員長退席、水野委員長代理着席〕
  75. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本国中華人民共和国との間の漁業に関する協定、いわゆる日中漁業協定について、宮澤外務大臣並びに水産庁長官質問をいたします。  本論に入る前に、誘拐事件と拿捕事件の二件について当局に通告いたしておりましたので、若干質問をいたします。  十一月七日夜十時三十分に、フィリピンのミンダナオ島サンボアンガ市沖のバシラン島の東にあるカウランガン島付近で起きました日比合弁のシゲト漁業会社の漁船スール四号事件でございますが、これについてもいろいろ質問申し上げる予定にしておりましたが、ただいまもいろいろ論議されましたので、私、一点お伺いしておきます。  この事件についてはただいま当局から答弁もございましたが、もうすでにこの事件発生以来二十八日が経過して、大変家族も不安に思っておりますし、この種事件が続発する傾向にもございますので、外務省としても、鋭意フィリピン政府とも交渉されておると思いますけれども、フィリピン政府とどういうふうに交渉してこられたか、また今後どういうふうにされるのか、また解決のめどをいつごろまでに考えてやっておられるのか、その点ひとつ外務省から御答弁をいただきたいと思います。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 フィリピン政府とは、先ほど正森委員に申し上げましたような経緯のもとに、常時今日まで接触をいたしてまいりました。上はマルコス大統領から政府当局者並びに南西軍と申しますか、その方面の軍の責任者等と絶えず連絡をし、その結果が絶えず東京に報告をされてまいっております。先ほど説明員から申し上げましたように、軍の責任者自身が犯人側と直接に接触をするために、今朝でございますか、出かけてまいったということでございまして、犯人側の要求は、実は当初から武器ということは申しておりまして、きょう初めて申したのではございませんで、金あるいは、スカラーシップというのはどういう意味でございましょうか、金でございましょうか、それからランチ、武器といったようなものをずっと申してまいったわけですが、今日になりますと、武器の何がしかというようなことになっておるのではなかろうかと思いますが、そういうことで、恐らく最終段階と思われますが、軍の当局者が直接に犯人と接触をするに至った。従来は犯人の親戚であるとかいうような者を何度か交渉に立ててやっておったわけでございますが、そういうことになってただいまに至っておるということでございます。
  77. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本件については、大変世間を騒がせ、心配しておる問題でもありますので、十分ひとつ政府も積極的に対処して早急なる解決ができるように最大の努力をさらにお願いしておきます。  さらに、最近事件が続発しておりますが、もう一つは、ことしの十一月三十日正午過ぎ、インドネシアのセレベス島東方海域で、高知県室戸市案津、黒田昭さんが船主でありますが、この黒田昭さんの遠洋マグロ漁船第十一晃久丸、百九十四トン、北岡明作船長ら十六人乗り組みでありますが、このマグロ漁船がインドネシア警備艇に連行されたわけであります。このことについて外務省は、どういう理由で連行されたか、また、この事実経過はどういうふうに掌握しておられるか、その点お答えをいただきたい。
  78. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 先生御指摘の第十一晃久丸につきましては、インド洋での操業を終えてハルマヘラ島西の沖合いの公海上を日本へ向けて航行中、十一月三十日早朝にインドネシア海軍警備艇に拿捕されたという事件でございます。  インドネシア側の情報によれば、拿捕の時期及び地点は、三十日午前四時三十分、北緯零度二十六分、東経百二十六度五十五分の位置の由であります。同船は、その後アンボンへ連行されまして、わが方の在アンボン名誉領事により、船長初め全員が無事であることが確認されております。  政府といたしましては、本件拿捕の報に接しまして、直ちに在インドネシアのわが方大使館及び在スラバヤの領事館に対しまして、実情の調査及び船体と乗組員の早期釈放方をインドネシア政府に申し入れるように訓令いたしました。わが方の在インドネシア大使館は、別途本事件の発生を知って、すでにインドネシア外務省及び国防治安省に対して、とりあえず口頭でわが方の訓令と同様の申し入れを行っておりましたけれども政府からの訓令を受けまして、再度文書をもってインドネシア政府に申し入れを行いました。  また、在インドネシアのわが方大使館から、在アンボンの名誉領事に対しまして、事実調査と現地官憲に対する早期釈放方を申し入れるよう指示いたしました。  さらに、現在、在スラバヤ領事をアンボンに派遣いたしまして、目下、船長及び現地官憲と接触せしめているところでございます。  インドネシア側が主張しております拿捕の理由は、領海の侵犯及び不法操業ということでございます。  インドネシアのこの海域に対する態度といたしましては、さきに、これは一九五七年のことでございますが、いわゆる群島理論と申します立場に基づきまして、インドネシアに属する島々については、島と島の間の距離がどのように離れていようとも、その距離にかかわらず、これらの島の最突端を結ぶ線の内部水域をインドネシアが管轄権を及ぼし得る内水であるとして、その線からまた外側十二マイルまでの水域を領海とするという決定をして、この旨の声明を発表しているわけでございます。  わが方といたしましては、インドネシアのこのような公海上に一方的に管轄権を及ぼすという措置についてはこれを認めないという立場を明らかにいたしております。  しかしながら、このいわゆる群島理論に基づく内水の問題につきましては、現に行われております海洋法会議の動向というものを待って最終的な解決が見られるということになろうかと考えております。その間、わが方といたしましては、このような拿捕などが再発することがないように、強くインドネシア側に対して注意を喚起していく所存でございます。
  79. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいま概況報告がございましたが、この第十一晃久丸は、ことしの五月八日、室戸市室津港を出て南インド洋などで操業を終えて帰国の途中警備艇に連行されたという事件でありますが、私、実は、高知県の友人がこの船に関係しておりまして、つまびらかに報告をいただいておりますけれども、詳細を申し上げることは、時間の制約がありますのであれですけれども、その中で、この連行された事件の知らせは、当時付近にいたところの静岡県清水市の晴和漁業会社所属の遠洋マグロ漁船第八大鵬丸二百五十四トンですが、これから静岡県の焼津漁船無線局に連絡が入った、そうして明らかになったわけであります。ところが、この大鵬丸も同日午後零時四十五分ごろ、セレベス島東方サナナ島東約七十四キロのセラム海で、インドネシア警備艇に空砲三発の威嚇を受けて停船を命ぜられ、約五十五分間臨検せられた後釈放されておりますが、このことは当局は御承知ですか。
  80. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 第八大鵬丸の事件については承知いたしております。この件が発生いたしました際にも、わが方は、かかるインドネシア側の措置につき強く申し入れを行うとともに、早期の釈放を求めまして、その結果、船は臨検はされましたけれども釈放されたという経緯でございます。
  81. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官、いまの件で、インドネシア海域では漁具などはしまい込んで、侵犯などの疑いを起こさせないよう水産庁では十分指導している、こういうふうに言われているのだけれども水産庁長官はこの事件は承知しておられるかどうか。それから、こういったことについての指導はどういうふうにしておられるか。その点をちょっと長官から伺っておきたいのです。
  82. 内村良英

    内村政府委員 私どもといたしましては、ただいま御指摘がございましたように、こういった海域については、無害航行をする場合に漁具をしまって通過するようにというような指導は十分しております。  それから、お話のございましたこの第八大鵬丸の事件につきましても私ども承知しております。大鵬丸の方は、同じような海域で威嚇射撃を受けて、臨検を受けた後に直ちに釈放されている。ところが、第十一晃久丸の方は拿捕された。その辺に事実上どういう違いがあったのか、いまだにわかっておりません。  そこで、私ども承知しているところでは、本日、外務省の担当官がアンボンに行っておられるようでございますので、きょうの夜ぐらいには真相がわかるのではないかと思いますけれども、片方は臨検を受けて釈放される、片方は拿捕されたということで、たとえば漁業をやっていたとか、あるいはそこに何か多少の違いがあるのではないかというふうにも推定されますけれども、その辺の事実関係についてはいまだわかりません。
  83. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま水産庁長官からもお話がありましたように、外務大臣、いまの大鵬丸、また先ほど申し上げました高知県室戸市室津の第十一晃久丸の事件、これに食い違いがあるわけですけれども、実はこういった問題が頻々として起こるし、今後も起こる可能性があるというので、大変われわれ農林水産委員会でも心配をし、論議しておるところであります。こういったことについて、今後このような事件が増加する傾向にあるので、インドネシア政府に対して外交の上からもひとつ厳重に交渉してもらいたいと思うのですが、外務大臣はどういうふうにお考えですか。その点をお伺いします。
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変に遺憾なことと考えておりますが、実は、先ほど政府委員から申し上げておりましたが、もともとインドネシアが群島理論というものを持っておりまして、これはもう御承知のように、外側の島の外側を全部結んで、その内側は領海であるという主張になりますと、インドネシアのように島が大変に散っております国は大変に大きな領海を持つという主張になるわけで、海洋法会議でやはりそこらを調節しようという努力が行われてきたわけであります。でございますので 別の話になるようで恐縮ですけれども もし海洋法会議がまとまりませんと、世界じゅうの海というものが大変に無秩序なことになって、わが国の国益は非常に損われるのではないかという心配を私どもはいたしておるわけでございます。そういうことがございますので、やはり、海洋法会議でそれがきちんと国際的に認められるというときまで、そのような一方的な理論を振りかざしてもらうことはひとつ御遠慮を願いたいということを根拠にして、インドネシア政府に注意を喚起するということをしなければならないのではないか。  実は、昨今、インドネシアとの関連でこのような出来事が間々ございまして、私どもも注意を始めておるところでございますので、しかるべき方法でインドネシア政府に対して注意を喚起いたしたいと存じております。
  85. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣もおっしゃるように、インドネシア側と日本との間に何か別の問題でいろいろあるんじゃないかという気もしますけれども、それらをここでいろいろ論議する時間がございませんが、どうも最近の模様を聞いていると事件が多発する傾向にある。こういったことでは漁民も安心して操業できない。さっき局長も、また大臣もいまおっしゃったが、いわゆる来年三月ニューヨークで行われる海洋法会議において国際的に解決を図る、それまではどうしようもないというような言い方であります。インドネシア側に局長は注意を喚起する、大臣はこういったことは御遠慮願いたいと、そんな弱腰ではこれは困るわけですが、いずれにしても、今度のような事件は今後も起こる可能性があるし、またいろいろなゲリラの問題も起きておりますので、漁民は大変心配をしております。北方の方も日ソ漁業の問題で心配だし、また南方海域でもこういった問題が起きてくる。私はきのう現地と連絡をとってみましたところが、きのう四日、現地領事館からもインドネシア政府交渉するということを伝えられておりますけれども、恐らく交渉が持たれたと思う。その結果はどういうふうになっているのか。そしてまた今度の第十一晃久丸、これは連行されましたけれども、この漁船員の一日も早い釈放をやってもらいたい。いつごろ釈放できるのか。幸い大鵬丸は五十五分間の注意で終わったですけれども、この第十一晃久丸はもう大変心配されます。その点について外務大臣はどういうふうに交渉したいと考えておられますか、明らかにしてください。
  86. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 先ほど申し述べましたように、外務省といたしましては、わが方の出先の大使館、領事館あるいは名誉領事等、あらゆる手だてを尽くしてただいまインドネシア側に強くその釈放方を申し入れ中でございますが、今後も一日も早い釈放が実現するようさらに努力を続けたいと存じます。
  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣、いまの件について大臣からも、この種事件が起きますので、インドネシア側に再度ひとつ強い要請をされると同時に、この第十一晃久丸の釈放についてさらにひとつ強力な要請をしていただくようにお願いをしたいのですが、大臣の御見解をお伺いします。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最善の努力を尽くしたいと存じております。
  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日中漁業協定について伺います。  この協定は、特に西日本漁業者が大変待ち望んでいる問題でございまして、私たちも一日も早い批准がなされるように望んでいるところでございますが、政府は、昭和四十七年九月の日中国交正常化の際に発出された共同声明第九項において、日中両政府間において、貿易、海運、航空、漁業等の四つの事項に関する協定締結を目的として交渉を行うことに合意いたしておられるわけでありますが、このうち、わが国中華人民共和国との間の漁業に関する協定締結するため、昭和四十九年五月以来、東京及び北京で交渉を行ってこられたわけでございます。その結果、ことしの八月十五日に東京において、日本側外務大臣先方陳楚駐日大使との間でこの協定の詰めを行ったのでありますが、本日中漁業協定が、漁業者が直接被害を受けて不安におののいているにもかかわらず、実務協定締結の中でこれが一番最後になったわけでありますけれども、この理由についてまず冒頭、当局の見解を承りたいのであります。
  90. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、日中共同声明第九項に掲げられております四つの実務協定のうちでは、この漁業協定交渉の妥結が一番おくれたわけでございますが、何と申しましても漁業交渉と申しますのは、関係国間の切実な漁業利益の調整を図るということから、いずれの国の間における交渉も長期化するという傾向がございます。特に最近の海洋法会議に見られますような世界の海洋秩序というものが大きな変動期を迎えつつある状況下におきまして、日中両国間で最初の政府間の漁業協定締結するということのためには、ある程度の時間が必要であったということはやむを得なかったものと考えている次第でございます。  特に日中間につきましては、二十年来実施されてまいりました民間協定がございます。政府間で漁業協定を結ぶに際しましても、この民間漁業協定の実績というものを十分考慮に入れて、政府間の協定締結によりまして、日本関係漁民に対して急激な変化がもたらされることがないように、十分政府としては配慮をする必要があったということ、さらには、民間協定を十分考慮に入れながらの政府協定とは申しましても、政府協定の性質上、民間協定規定をそのまま取り入れるには必ずしも適当でないという条項もありましたこと、これらのことから、日中双方とも慎重な態度交渉に臨んだということが、ある程度の時間がかかるのはやむを得なかった事情でございます。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 御承知のように、民間協定は五十年六月二十二日で六カ月間の延長がされたわけで、五十年十二月二十三日規制措置の期限が切れるわけであります。地元もぜひこの期限までにはということで強い熱望があるわけですが、以下将来のために数点ぜひお伺いしておきたいことがございます。ひとつはしょってお伺いしますが、答弁はひとつ簡潔に要点をお答えいただきたいと思います。  まず第一点は、協定のこの第一条の中で(1)の中の(i)北緯三十九度四十五分、東経百二十四度九分十二秒の点、(ii)北緯三十七度二十分、東経百二十三度三分の点のライン、すなわち渤海湾入口の軍事警戒区、これは普通には軍事警戒ライン、こういうふうにもわれわれ言っておりますが、このラインについては、本協定締結に当たり日本国はいかなる見解のもとにこれに合意したのか。このラインについての合意した、その点の見解をまずお聞かせいただきたい。
  92. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる軍事警戒区というものにつきましては、お手元に参考として出してございます往復書簡中国側書簡第一項をごらんくださいますと、「国防上の安全のため軍事警戒区として定めている。」ということを言っておりまして、ここでは日本漁船は中準人民共和国政府関係当局の許可なしに入ってはいかぬということを中国側協定の当初から主張をいたしたわけでございます。しかしながら日本側といたしましては、これは明瞭に公海を含む海域でございますので、このような水域海域につきまして中国側が一方的に管轄権を行使するということは認めることができないという立場をとりまして、この点が交渉上の一つの問題となったわけでございます。したがいまして、先ほども質問に対して御答弁申し上げているわけでございますが、この点については、結局協定の中に取り入れた日中問の合意という形においてはできなかった。したがって、両方がお互いがお互いの立場を一方的に言い合うという形において、往復書簡ということで処理をしたわけでございまして、その点については日本側書簡をごらんくださいますれば、日本側は明瞭にこのいわゆる軍警ラインというものについての中華人民共和国政府立場を認めることはできないということで、日本側立場を留保してあるわけでございます。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この軍警ラインは、日本側が留保してあるのはこの条文でわかりますけれども、これを認めるわけにいかないと言いながら、いわゆる留保とそれから留意、こういう言葉で食い違いがあるということなんですけれども、実際問題としてわれわれが思うのに、この軍事警戒ラインというのはもう中国に一本ひっかかった、そこで日本側は結局中国にいろいろ数字的な資料を出させて、その資料というものがこの軍事警戒ラインにたまたま合うように出てきた、そこで苦肉の策と言うか、いわば逆算方式みたいなかっこうで軍事ライン、軍警ラインというものに中国側の資料がたまさか合っておったので認めたというようなかっこうで、何かそういうふうな、留意する、または条文の中にそういうことで留保するというような言葉が往復文書として出たのだ、こういうふうにわれわれは思われてしようがない。また、そういうふうにいろいろ批判が国民の間で出ておるわけですけれども、その辺、中国側からこの軍警ラインに対するいわゆる理由としていろいろな資料が出たわけですか、どうですか。その点明らかにしてください。
  94. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 この漁業協定交渉の過程におきまして、日本側は再三にわたりまして中国側にこの軍事警戒ラインについての詳しい説明あるいは根拠資料等を求めたのでございますが、中国側は、これは中国の国防上の安全にかかわる問題であるということで、詳細な説明を避けておりました。  なお、この軍事警戒ラインと申しますのは、中国側説明によりますれば、国防上の安全のために一九五一年に設定されたということでございます。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの軍事警戒ライン、いわゆる軍事警戒区と言いますけれども、このラインについては問題がありますけれども、これも一応指摘をする程度にとどめておきまして、次に、中国黄海東海機船底びき網漁業禁漁区のライン、この間が六十マイル、こういうふうに中国側はなっております。これも私、問題だと思うのですが、すなわち距岸六十海里ということであります。この点、間違いないですね。
  96. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 このラインにつきましては、中国の陸地から平均いたしましてほぼ距岸六十海里ということは、そのとおりでございます。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 距岸六十海里、平均してそうである。そこで中国側の領海は十二海里であります。距岸六十海里ということを本協定、この条文で認めたということになりますと、結果として漁業専管水域六十海里を認めたことになるが、このように理解していいですか。時間もあれですから簡潔に答えてください。
  98. 伊達宗起

    伊達政府委員 この点に関しましても、先ほど言及いたしました往復書簡におきまして、中国側のいわゆる機船底びき網漁業禁止区というものを日本側は認めることができないということで、日本国漁船がこの水域に入って操業漁業をしてはならぬということについても、日本側はその立場を留保しているということでございます。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで私の記憶では、日本韓国の場合に一つの特例として十二海里を認めているということがあるわけですけれども、その他の国と日本との協定では、現在世界じゅうずっと見ましても、今回の例は初めてのケースでありまして、将来に問題を残すことになるのでこの点明快に聞いておくわけですが、今回のこの距岸六十海里というのは、いわゆる機船底びき網漁業禁止区との距離、これは相当距離があるわけですから、十二海里でありながら六十海里を専管水域みたいに認めることになりますので、これは結果として初めてこういったことは認めたということになる、こういうふうに理解しておいていいわけですか。大臣からも答えてください。
  100. 伊達宗起

    伊達政府委員 この距岸六十海里、中国領海の十二海里は除きましてその残りである四十八海里、平均いたしまして。その部分については先ほど来申し上げておりますように、わが国は何も中国側管轄権というものを認めたものではございません。その立場書簡におきまして明瞭に留保してある、これは認めないん、だよというふうに、一方的でございますが言い切っているわけでございます。ただ、これは日本側がこの地域に入らないというのはもっぱら漁業資源の保護という立場から入らない、差し控えることとするという自主的な規制と申しますかをやろうということを、これまた一方的ではございますが表明したわけでございまして、その理由は、中国側におきましても、中国漁船もまたこの海域におきましては漁業を禁止されているということで、もっぱらこれは日本漁船中国漁船との間で区別があるわけではございません。資源保護立場からひとつ協力をお互いにしようということになっているわけでございます。
  101. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 まあ一応お聞きしておきます。そうおっしゃるけれども、実際は距岸六十海里の間は中国のジャンク船くらいはやはり入るわけです。全然入らないということはないと私は思います、馬力の大きい船は別として。一応答弁はそういうふうに伺っておいて、将来のためにひとつ指摘しておきます。  そこで、第八条についてお伺いしますけれども、第八条の一に「この協定は、その効力発生のために国内法上必要とされる手続がそれぞれの国において完了したことを確認する旨の通告が交換された日に効力を生ずる。この協定は、三年間効力を有するものとし、その後は、2の規定に定めるところによって終了するまで効力を存続する。」こうなっています。三年間効力を有することになっていますけれども、普通の協定は十年というのが常識になっております。私もいろいろ調べてみましたが、全部が全部十年じゃありませんけれども、普通十年。ところが三年にしぼったのはなぜですか。これも簡潔にお答えください、時間の関係もありますから。
  102. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 各種の漁業協定ないしは条約について見ますと、有効期間がある場合には十年、ある場合には五年というように多岐になっている次第でございます。そのように多岐になっております事情につきましては、それぞれ相手国の事情であるとか、その協定交渉されているときの事情などによるものでございまして、日中間協定におきましては、民間協定が従来大体一年間の効力しか持っていなかったということを勘案して、それよりは長い期間ということで話し合いをしました結果、三年間ということに落ちついた次第でございます。  なお、この三年間と申しますのは当初の有効期間でございまして、この三年の期間が終わります際、またはその後に、いずれの側もこの協定を終結させるという通告をしない限り、その後も引き続き効力を継続するわけでございます。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 従来民間協定が一年だったのを三年だから長いと、そんなことだろうと思ったのですけれども、それはそれとして、実際に海洋法会議が来年三月ニューヨークで行われますけれども、世界の趨勢を見ますとだんだん経済水域というものは二百海里ということが言われておる。アメリカの上院軍事委員会でも、三日に米国が二百海里の漁業専管水域を宣言する法案を賛成九、反対七で可決しておりますし、この結果、同法案が近く上院本会議の表決にかけられる、本会議でも可決される公算が大きいとされております。すでに下院でもことしの十月九日でしたか、二百海里法案を可決しておりまして、わが国は、日本漁業、ひいては食糧などの事情に重大な影響を及ぼすとして、二百海里宣言には強い反対をしておるということでございますけれども、実際問題として、世界の趨勢というのはもう二百海里の経済水域というのがだんだん議題に上ってきております。そこで、将来、ここ二、三年以内に経済水域が二百海里に認められたときは、果たしてこの協定はこのまま発効しておるかどうか、これはどうですか。
  104. 伊達宗起

    伊達政府委員 御指摘のように二百海里という経済水域の設定につきまして、海洋法会議におきまして現在各国間の討議の対象となっているわけでございますが、そしてまた、それが恐らく趨勢としてだんだんその方向に決まりつつあるであろうということは申せるわけでございますけれども、ただその二百海里の経済水域が一体どのような厳密な、何と申しますか、法的性格を持ったものであるかということについてはちょっと現段階では予測がつけがたい、各国の議論の対象になっておるということでございまして、仮にそのような二百海里というものができ上がったということになりました場合に、現存の二国間協定というものがどうなるかということにつきましては、現段階ではっきりとしたお答えを申し上げるのは困難であると思うわけでございます。   〔水野委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、日中間でございますと、これは長い歴史と経緯とによりましてでき上がってきた日中間漁業関係というものがあるわけでございますから、二百海里の経済水域というものができました後におきましても、やはりそれが何らかの形において維持されていくべきものであろうと私どもは期待し、かつ、そうすべきであると考えているわけでございます。  ただ、最後にもう一つ申しつけ加えますことは、海洋法会議におきましての二百海里経済水域を含めました海洋法典というものができ上がりましても、そのでき上がった時点において、直ちにこの日中漁業協定が自動的に失効するというような関係にはございませんで、これはこれとしてそのまま残っていくか、あるいは両国間で新たな事態に応じた話し合いをするかということになるだろうと思います。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこでこの二百海里が優先するか二国間協定が優先するかということ、これもいまにわかにここでいろいろ困難なような答弁でありますが、これもやはり指摘しておかなければならぬ問題でありますし、それともう一つは、仮に三年の間に海洋法会議で経済水域二百海里が決まったならば、直ちに中国側がこの距岸六十マイルを撤回する可能性があるかどうか、この点は本協定合意するに当たってどういうふうに交渉してこられたか、それの見通し、また日本側としての将来の見通しとしての考えはどういうふうに持っておられるか、その辺を含めてひとつお答えをいただきたい。
  106. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 日中間漁業協定交渉におきましては、特に日中協定との関連でこの海洋法会議あるいはその成り行きというものが討議されたことはございませんでした。したがいまして、海洋法会議の結果がどのようになるかということによって、中国もただいまの線についての態度を決めるものと了解いたしております。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約があるので十分論議できませんが、もう一つ大事な問題を指摘しておきます。これは大臣もお聞きいただいておいて、後で最後に御答弁をいただきたいと思いますが、本協定によると、中国は北緯二十七度線をもって軍事作戦ラインといたしております。この軍事作戦ラインの東限はどこになりますか。時間の関係から簡潔にひとつ大臣からお答えください。
  108. 伊達宗起

    伊達政府委員 いわゆる軍事作戦ラインにつきましては中国側書簡の三項に書いてあるわけでございますが、これは協定第一条1の(3)に定める線以南すなわち北緯二十七度線以南で、中国沿岸以東の台湾周辺を含む水域ということでございまして、明瞭な東限のラインをここで引いているわけではございません。ただ無限に東へ延びていくかと申しますとこれはおのずから限界があるものだとは考えられますけれども、しかし東限がどこであるかということは明瞭に示しているわけではございません。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今度の皆さんが出した法案の参考に日中漁業協定関係図というのがありますね。これを見ますと軍事作戦ラインというのが北緯二十七度線で沖繩のちょっと上の方、スケールではかると三キロより大分上のようであるけれどもそこまで線が来ていますね、これは定規の関係ですっと引いたわけじゃないと思いますけれども、もちろん沖繩を通して太平洋へ抜けるというそんなばかなことはあるわけないけれども、東限があるのかないのか、それだけ簡単に。
  110. 伊達宗起

    伊達政府委員 東限というものを明瞭に示してはございません。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本協定締結に当たって、昭和四十九年五月以降、東京及び北京でずっと交渉してこられてそして署名が行われたわけです。明瞭でないということでありますけれども協定の第一条1に関する書簡によれば、「日本国政府は、」云々とずっと書いて、「留意するとともに、」云々、それからまた「留保する。」というようなことが書いてありますね。先ほどもちょっと論議がございましたけれども、これを見ますとどこまで線を引いたのを留意したのか、どっちも食い違いがあるけれども日本側としてはどういうふうに留意したのか、沖繩から三海里か、沖繩のどの辺か明瞭でないと言えばそれまでですけれども、その留意の範囲はこれもまたはっきりしていない、こういうふうに言われるのですか。その点もひとつ明らかにしておいていただきたい。どうもすっきりしないものですから。
  112. 伊達宗起

    伊達政府委員 東経何度、北緯何度ということを言っていない限りにおきましては非常に明瞭でないわけでございますが、東限のラインというものはおのずから常識的にあるのだろうというふうには考えられるわけでございまして、いずれにいたしましても、日本政府は、中華人民共和国政府のこれが軍事作戦区域であるということについてそのまま認めることはしていないわけでございます。入らないように勧告すると言っているのを、まあそういう勧告があったという事実だけは留意するかもしれないけれども、しかしその他のことは一切認めませんよということを言っているわけでございまして、その立場に立つ限り、東限がどこかということは実質的には余り問題にならないだろうというふうに考えます。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官、いまの件聞いておったと思うが、これは農林水産業の問題にもなるわけですけれども、今度の協定についてはわれわれも十二月二十三日までにはぜひ通してあげなければいかぬという気持ちでおるわけですが、やはり漁業者の立場また農林省の立場から言えば、北緯二十七度線以南はいわば軍事作戦ラインで入れない、要するに軍事作戦ラインの南と機船底引き網漁業禁漁区の西、これだけは入れないということで書簡の中にもうたってある。そうすると、事実、西日本漁業者は沖繩の南または軍事作戦ライン等に行っているやにも聞いています。公開の席で余りはっきり言うのはどうかと思うが、実際こっちは行くことがあると思う。そうした場合に拿捕されたりいろいろ操業上問題が起きてくると思うが、その辺は水産庁長官はどのように理解されておりますか。見解を伺いたい。
  114. 内村良英

    内村政府委員 そういった海域日本漁船操業することはもちろんあるわけでございます。そこで私どもといたしましても、そういった場合に紛争が起こることは極力避けなければなりませんし、現在の日中の友好関係からいって、そのようなことは起こらないのではないかというふうに期待しておるわけでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官、あなたとしては外務大臣に遠慮せぬで答弁していいわけです。実際問題としてはこちらの方には相当船が行く可能性があるし現に行っていると私は思う。またこの条約発効しまして急に厳しくなるといろいろな問題が起きてくると思う。じゃといって軍事作戦ラインが決まっているのにいいかげんに――さっきの次長の答弁でないけれども、東限はあるやらないやら何かぼけたような話ですけれども、そんなあいまいなことだからあいまいに行っていたということで済まされればいいけれども、さきのインドネシアの拿捕事件あるいは連行事件というように、最近はああいうシージャックまたは拉致、誘拐が頻繁に起きて物騒になってきた。そういったことを見ますと、協定がいよいよ発効する、われわれも発効することを望むわけですけれども、その後でいろいろな問題が起きたときに直ちに困ってくる。西日本漁業者は特に困る。こういう心配をするのだが、水産庁長官または農林省としては外務大臣、外務省とどういうように交渉してどう臨みますか。その点もう少し明確にお答えいただきたい。
  116. 内村良英

    内村政府委員 現在、あの海域ではわが国のまき網漁業は相当やっておりますが、民間協定のもとにおきましても幸いにして今日まで紛争も起こっておりませんし、私どもといたしましては、政府協定発効後もこの状況は継続されるのではないかというふうに期待しているわけでございます。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣、今回の日中漁業協定について、きょう一日の審議でありますので数点にわたって指摘してまいりましたが、将来に残す問題またはっきりせぬ問題がいろいろあるわけです。その点は往復書簡で逃げてあるようなところであります。また中国に対しては、従来からのいきさつもあるし民間でも今日までずいぶん協定を結んでやってきた経緯もあります。また過去のいろいろなこともよく承知しておりますが、やはり将来紛争を起こしてはいけない、後のけんかは先にせよ、こういうこともございます。そういった意味で本協定の審議に当たって将来のことも考え、いま十点近い問題を指摘しておきましたけれども、これらについて今後、大臣としても十分意にとどめていただいて、これらの問題が紛争を起こさないように、また拿捕事件が起きないようにひとつ最大の努力を払って進めていただきたい、かように思うのですが、大臣の決意を最後に承って質問を終わることにいたします。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ御注意、御指摘の点は私どもも十分注意をしてまいらなければならないと存じますし、何よりもこの協定は日中両国間の信頼関係に基づいてできておりますので、私どもとしても誠実にこの協定の精神を守っていく、また中国側にも同様のことを期待するという心構えで運営をいたしてまいりたいと思います。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で終わります。
  120. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末君。
  121. 永末英一

    ○永末委員 今回の日中漁業協定第一条1に関する書簡で、中国側は国防上の安全のため軍事警戒区として定めてある区域のラインを明示しております。わが方の書簡はそれに対して留保しております。この軍事警戒区を表示するラインをもし軍事警戒ラインと呼称いたしますと、軍事警戒ラインとはどういうものであると日本政府は了解しておられますか。
  122. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 中国側軍事警戒ラインについて、交渉中におけるわが方の質問に対して、これは国防上の問題に関連することであるという理由から詳細な説明は避けておりましたが、中国側が述べたところによりますれば、このラインは中国の国防上の必要から設定したものであって、その時期としては一九五一年であったということ、それからこのラインを越えて、外国の船は中国当局の許可なしに入ってはならない、そういう規制のラインであるということ、また、この規制は第三国に対してひとしく適用しているものである、おおむねこのような説明がございました。
  123. 永末英一

    ○永末委員 そのいわゆる軍事警戒ラインというのは、中国の領土の警戒線から一番遠いところで何海里、一番近いところで何海里ぐらいあるのですか。
  124. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 詳細にはかった数字はただいま手元に持ち合わせておりませんけれども、近いところでは十海里ちょっとぐらい、それから遠いところでは、とり方によるのでございますが、一つのとり方によれば四十海里ぐらい、大体こういうことになろうかと存じます。
  125. 永末英一

    ○永末委員 中国側書簡によりますと、日本国漁船は、この区域中国政府関係当局の許可なしに入域してはならない、こういうことになっておりまして、日本国漁船が同水域に入って操業しないよう勧告をする、入って操業すればみずから責任をとる、こうなっている。あっち側は入域そのものに対してチェックしており、わが方は操業してはならぬ、何か入域してもいいんだと読み取れますが、この双方書簡にニュアンスの差があると思いますが、いかがですか。
  126. 伊達宗起

    伊達政府委員 御指摘のように差があるわけでございまして、日本側はもともとこのいわゆる軍事警戒区域というものを認めているわけではございませんので、そこに入ることについて差し控えるなどということを、一方的にせよ言う立場にないわけでございます。ただ操業ということにつきましては、この区域におきます漁業資源の保護という観点から、漁業をするのは差し控えようということを一方的ではございますが言い得る立場にはあるわけでございまして、また、方針としてそれを言おうということで解決したわけでございます。
  127. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、日本国漁船、その他の船もあろうと思いますけれども、要するに相手方は、中国は、入域してはならないのでありますから、入域したものであって許可のないものは直ちにある措置を講じていく、その場合に、日本政府はどういう対抗手段があるのですか、操業してない漁船の場合には。
  128. 伊達宗起

    伊達政府委員 日本国立場によりますれば、これは公海上を航行している船でございますので、それに対して中華人民共和国政府がそれを拿捕するとかいうようなことは、国際法の違反であるというふうに考えます。
  129. 永末英一

    ○永末委員 これは操業ということで日本側書簡がなっておりますから、操業というのは入域をしてから起こるであろうある一つの行為でございまして、そうしない場合にはただその地域を走っているだけでございますが、そういうことについて国際司法裁判所へでも訴えたり、あるいは中国政府交渉したりするということの話し合いになっておるのですか。
  130. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 この軍事警戒ラインの問題につきましては、中国側の主張と日本側の主張が非常に強く対立した点でございまして、そのゆえにこういう往復書簡という形で処理されたわけでございます。  ただいま先生がおっしゃいました、たとえば国際司法裁判所に提訴するとかそういうようなことにつきましては、私ども特に考えておるわけではございません。
  131. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、この日本側書簡からしますと、入域するなとは言えない、したがってそのラインを越えて西側航行するということについては、日本政府の判断によれば当然事項である、こうなっておる。相手方はとにかく日本政府との交渉の結果こういう書簡を出しておるのだから、わが方の許可なしに入ってきたものは何らかの措置をすると宣言してある。この辺やはりはっきり日本漁船――この場合は漁船としてありますからね、漁船に言っておかないと、もし何らかの措置をされた場合に、日本政府としては当然だと思っておったで済むことでしょうか。これは政治的な問題ですが、宮澤さん、どう判断されますか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事実問題といたしましては、長い期間民間協定でやってまいりまして、そこは入らないということで、わが国漁船がその事実を知っておりますので、今回それをさらに厳しくしたというわけではございませんから、そのようなことは起こらないと考えてよろしいのではないかと思います。
  133. 永末英一

    ○永末委員 その話し合いの中で、領海の中に入る場合とこの軍事警戒ラインに入る場合との取り扱いの差異というものは、中国側が持っていると日本政府は判断しておりますか、どうですか。
  134. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  日本政府は当然のことながら、領海以内であれば、これは中国管轄権に服するわけでございまして、しかしながら公海部分におきましては、これは何らかの違反が起こった場合でございますけれども取り締まり対象になるものでございまして、中華人民共和国政府の官憲が、ただ単にそこに入域している、存在しているという事実のみで取り締まり得るものではないというふうに考えております。
  135. 永末英一

    ○永末委員 私が聞いておりますのは、相手の中華人民共和国政府は、そのラインの以内に入域する場合には自分の政府の何らかの許可をとらねばならぬ、こう言い切っているわけであって、そのことは中国の領海で日本船航行する場合、そこへ入る場合の措置と似たような感覚でものを言っておるのか、それとも、領海内と軍事警戒ラインとの間には、わが日本漁船でありますが、それが入る場合には取り扱いは違うと判断しておるのか、それについて日本政府はどう判断しておるかということを聞いておる。
  136. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  果たして中国側が領海への入域についてどのような取り扱いをしているか、実は私、詳しく存じておりませんのでわからないわけでございます。したがって、それがこの軍事警戒区域に入る際に許可を求めなければならないという規制と同一であるかどうか、ちょっと私もわからないのでお答えできないわけでございます。
  137. 永末英一

    ○永末委員 この北方の水域で過般松生丸事件が起こりました。わが方は公海だと思っても、北朝鮮側の警戒線でございますか、それは領海侵犯だとみなして銃撃を加えてきた事件があるのであって、したがって軍事警戒ラインというのは領海でも何でもない、領海の外側にある。先ほどの御説明ですと、領海十二海里説を中華人民共和国政府がとっているとすれば、十海里といえば、今度軍事警戒ラインが領海の内側にあるでしょう。そうすると、その辺の取り扱いの差異があるのかないのか十分承知しておりませんと、日本漁船は通らない、領海の中に入ってもいいが軍事警戒ラインを通らない慣例になっておるということであるのか、何か起こった場合に一体日本政府は何と了承しておったかということが問題でしょう。だからそこの点をお伺いしているのです。
  138. 伊達宗起

    伊達政府委員 日本国政府の了解といたしましては、中国の領海は十二海里でございます。したがいまして、それよりも外に出ておって、しかも軍事警戒区域内におきまして何らかの事故が起こった、ただいま先生が想定されましたような事故が起こったような場合には、これは明瞭に国際法の違反であるという立場をとっているわけでございまして、したがって日本国政府の認識といたしましては、中国の領海とそれ以外とで区別ははっきりとしているわけでございます。
  139. 永末英一

    ○永末委員 いまちょっと触れましたように、逆に軍事警戒ラインが領海内にある場合、十二海里でございますが、その差のところはどう了解しているのですか。
  140. 伊達宗起

    伊達政府委員 日本国立場からいたしますと、軍事警戒区というものは存在しないわけでございます。したがって、いわゆる軍事警戒区の中であり、かつ中国の領海の中であるというところは、日本国政府にとりましては単に中国の領海であるというふうな解釈になるわけでございます。
  141. 永末英一

    ○永末委員 ほかの国でこの軍事警戒ラインのごときものを設定している国がございますか。
  142. 伊達宗起

    伊達政府委員 私ども承知しておる限り、ないということでございます。
  143. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁からお見えですが、防衛庁も同じ見解ですか。
  144. 丸山昂

    ○丸山政府委員 私どもちょっと不勉強のせいかもしれませんが、私どもの知る範囲ではこのほかの事例というものを存じておりません。
  145. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、北緯二十七度以南のところは軍事警戒ラインもございませんから、領海すれすれまで日本漁船操業が当然事項としてできることになります。したがって、ここでもし緊急避難の必要が起こったりした場合に、日本漁船はこの協定で避難でき得る中国側の港を使い得るのか、どうなっておるのでしょう。
  146. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  この協定の指定港といたしましては、この協定に書いてございますように四港が指定されているわけでございます。しかしこの協定等におきましても、第五条を受けました附属書Iにおきまして、それ以外の港においてもあらかじめ中国政府と連絡をとって、その指定する港に避難することができるということになっております。
  147. 永末英一

    ○永末委員 だから二十七度以南の場合で緊急避難の要が発生した場合には、中国側に連絡すれば日本漁船は所要の港に避難することができる、こういうことでいいんですね。
  148. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのように考えます。
  149. 永末英一

    ○永末委員 これは中国との間の漁業協定でございますが、台湾の警察の船あるいはまたその他の警戒船みたいなものが、わが方の漁船に対して、台湾が主張するところのある海域、たとえば尖閣列島周辺であるとか台湾周辺であるとかいう場合にわが方に実力行使を加えてくる場合がある。そういう場合には、この前民間航空協定が結ばれましたけれども、台湾との間にはどういう関係が生ずるのでしょう。
  150. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 わが国中国と国交正常化する以前の時期から、わが国と台湾との間には漁業協定というものは締結されておりません。何か台湾と問題が起こるとすれば、領海侵犯ということが起こり得るかと思いますけれども、いままでそのような件が多く起こっているということは承知いたしておりません。
  151. 永末英一

    ○永末委員 いままでは承知していないのですが、今後そういうことが起こったときには、日本国と台湾におけるオーソリティーとはどんな関係になりますか。
  152. 大森誠一

    大森(誠)政府委員 わが方の交流協会を通じまして先方の亜東協会と話をする、こういうことになろうと考えております。
  153. 永末英一

    ○永末委員 今回の協定で設定せられています東側の限界は一番遠いところで何海里ぐらいですか。
  154. 伊達宗起

    伊達政府委員 この協定黄海東海というものを対象としつつ西側限界は決めたわけでございますが、東側の限界というものは特に決めてはございません。
  155. 永末英一

    ○永末委員 馬力制限の線がございますね。それはずっと線が引かれてあって、いわば東側の限界のごとき気がするわけであります。それ以内ではそれ以上の馬力を使ってはいけない、こういうことでございますから、そうするとやはり何かこの協定における東側の限界というものはすうっと書いてある線である、こう判断できますから東側の線と申し上げました。お答え願いたい。
  156. 伊達宗起

    伊達政府委員 この馬力規制制限のラインの東側におきましても、やはり黄海東海の一部として協定水域対象の中に、協定水域として入っておるわけでございます。しかし、東側といいますれば、この協定上は東ということを明瞭に定めているわけではございませんで、究極的には日本側の沿岸漁業が及んでいるところは除かれるものと考えて差し支えないというふうに了解しております。
  157. 永末英一

    ○永末委員 私がこの質問を申し上げておりますのは、中国側の基本的な主張は大陸だなは自然延長線である、しかしここで、馬力制限だけに関することでございますけれどもわが国中国との中間にあるラインが引かれたということは、いままでのような中国考え方にある意味で修飾が加えられたとなるかどうか。また二百海里経済資源ラインというものが海洋法会議でいろいろと議論になっておりますが、そういうものに対する中国考え方が魚族の保護ということについては日本側との間にこの程度の線でおさまると考えておるのかどうか、その辺が知りたいので質問申し上げておるのです。そこへ焦点を合わせてお答え願いたい。
  158. 伊達宗起

    伊達政府委員 この協定交渉におきましては、彼我の間におきまして二百海里経済水域の議論はいささかも行われたことなく、また中国側からもそのようなことをほのめかす言葉、表現というものは使われたことがございません。この協定は、過去二十年以上にわたりまして行われてきた日中民間漁業協定の実態というものを損なうことなく、さらに政府間で安定した協定をつくろうということで、民間協定を参考としつつ政府間で取り扱える事項を取り扱った。したがって、そこではある程度の馬力規制制限もございますし、それから保護区の設置もございますし、それから休漁区の設置もあるわけでございますが、これらはすべて日中両国漁業が関心を持つ東海黄海の資源についての資源保護という観点から決めたものでございまして、経済水域考え方は全く考慮されていないと申し上げることができると思います。
  159. 永末英一

    ○永末委員 そうしますと、この東側にかかれてある側のラインも、いままでのいわば大陸に近接したところに生息しております魚族の保護という意味合いで考えられたものであって、これからの新しい海洋関係における隣接した二国間におけるいわば何と申しますか分界線、境界線というようなものに関しては全く無関係である、このように了解してよろしいですね。
  160. 伊達宗起

    伊達政府委員 そのように了解していただいてよろしいと思います。
  161. 永末英一

    ○永末委員 質問を終わります。
  162. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  163. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。  これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  164. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  165. 栗原祐幸

    栗原委員長 起立総員。よって、本件承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  167. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来る十日水曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時二十三分散会      ――――◇―――――