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公述人(太田
一郎君) 太田でございます。
本日私に与えられましたテーマは景気動向ということでございますけれ
ども、私のいたしております仕事の性質上、中小企業に一応重点をしぼりまして、中小企業
関係の実情を御
説明したいというふうに思っております。
中小企業の実情と申しましても、統計あるいは資料上非常に制約がございますけれ
ども、私
どもの調査結果あるいはそういったようなものによりまして御
説明いたしたいと思うわけでございます。それから、私の話の中の主観的判断に
当たります
部分、あるいは見通しに当たる
部分というようなものは、すべて個人的な
意見というふうにおとり願いたいと思います。
初めに、最近の景気動向についてちょっと簡単に触れたいと思いますけれ
ども、まあ一番特徴点といたしまして四点ぐらいあろうかと思います。
戦後数回の不況期に比べまして、
生産活動の落ち込みというものが最近の不況の非常に大きな特徴でございます。鉱工業
生産におきましては、
昭和四十八年の十一月からことしの一月まで約十四ヵ月にわたって
低下をいたしておりますけ
ども、その
低下率は二〇・二%というような
数字を示しております。しかも、
昭和三十三年あるいは二十九年のような戦後の大きな不況期に比べましても七、八%台の
低下率でございましたけ
ども、今回のは、そういった意味におきまして二〇%というような、非常にそのピーク時からボトム時にかけましての落ち込みというものが激しいということが今回の特徴であろうと思います。現在では鉱工業
生産指数は四十七年水準に下落している。
それからもう
一つは、これとうらはらになりますけ
ども、在庫水準というものが異常な高水準にある。製品在庫指数は一六七・三というような
数字を一月に示しておりますけ
ども、いずれにいたしましても、在庫調整が非常におくれてきている。そのために、意図しない在庫の形で企業段階における在庫というものが積み増されて、これがまた不況感を根強くしているというようなことが言えるのではなかろうか。一月におきましては、在庫指数は前月に比べまして一・四%下落いたしましたけれ
ども、それにしても、基調自体は非常な高水準でございます。
それから第三番目の点といたしましては、個人消費支出が非常に減退してきている。最近におきまする企画庁の発表を見ましても、四十八年の対前年比の個人消費支出の実質ベースでは八・一%でございましたけれ
ども、四十九年暦年の実質ベースは一・六%、つまり約六・五%ばかり
低下してきているわけでございます。これには、実質
収入の
低下であるとか、消費の抑制ムードとか、こういったようなことが当然そこに反映していると思います。
それからもう
一つは、民間の
設備投資でございますけれ
ども、新規の投資を非常に控える
傾向になってきている。四十八年と四十九年の実質ベースを見た場合に、これも先ほどの企画庁の試算でございますけれ
ども、四十八年が一七・六%前年に対して伸びていたのに対して、四十九年は逆にマイナス一一・一というふうに
設備投資のビヘービアが落ち込んでいる。ことに中小企業
関係におきましてはこの冷え込みが非常に大きなものがございます。
こういうような面から総需要自体が全体的に減退してきておりまして、四十九年の暦年の実質GNPというのは、やはり企画庁の試算でございますと一・八%のマイナスというような、戦後初めてのマイナス
成長になるというような事態になっておるわけでございます。このほかにも、たとえば、暗い材料といたしましては、失業率が一・六であるとか、あるいは有効求人倍率が〇・七四と、これは一月の水準でございますけれ
ども、まあそういうような非常に大きな落ち込みがいろいろな指標からも見られるわけでございます。
それで、このような一般的景気動向のもとで、中小企業の景況が果たしてどうなっているかというようなことでございますけれ
ども、私
どもが窓口から見た
一つの実情を申し上げますと、やはり昨年の夏ごろから各業種に不況感が非常に浸透してきているということが、まず第一の特徴ではなかろうか。つまり、昨年の夏までは、繊維であるとか、建設であるとか、そういう
一つの不況業種というようなものに限られていたわけでございますけれ
ども、これがサービス、小売段階というようなところまで浸透してきたということが特徴ではなかろうか。それで、私
どもの四半期ごとにいたしております景況調査がございますけれ
ども、約三千八百社を対象としておりますが、これで見た場合でも、製造業と卸売業におきましては、昨年の七−九月に前年水準を下回りまして、さらに十月−十二月は前年水準に対して一〇%の
低下を売上動向で示しております。それから小売業におきましては、昨年の十−十二月ごろから前年比五%の
低下というようなことで、売上高がやはり
低下してきております。小売段階でこういうことはやはり初めての
傾向でございます。それで、こういうもとがやはり
経営上、マージン率の
低下、あるいは賃金、材料、諸経費の高騰によりまして採算が悪化しているというようなことが、ここで考えられるわけでございます。
それからもう
一つの点といたしましては、
経営上の
問題点として、それぞれの企業に聞いてみますと、まず一般的には、受取
条件、手形の回収比率であるとか、あるいは検収期間であるとか、こういうものがやはり最近におきましては次第に悪化してきております。それから一方、支払い
条件というようなことで見ましても、これもやはり悪化してきている。したがって、そういった面からの資金繰りの苦しさというものが、やはり、いま申しましたような景況を受けまして、先行きの見通しをさらに暗くしているということがあるのではなかろうか。
それで、アンケートをいたしましたところによりますと、売上不振、つまり、当該企業におきまして
経営上の
最大の
問題点は何かというような聞き方をいたしておりますけれ
ども、一番多いのはやはり売上不振でございまして、これが四二%、利益の減少が第二位で二七%というような
状況で、まあ不況期の特徴といたしますと、この二つが約七割を占める。ちょっと落としましたが、これは製造業の場合でございますけれ
ども、約七割がそういうものを訴えてきている。したがって、そういう意味におきまして、人手の不足であるとか、あるいは資金問題というような問題は、むしろこの以下になっているというようなことがあるわけです。したがって、実際上の景況の落ち込みから、仕事が非常にほしいというような声が強いわけでございます。
それから、これに関連しまして、倒産と廃業のことをちょっと申し添えますが、倒産は十−十二月が千百件ぐらいの水準でございましたが、一−二月にかけて八百件台に落ちついてきている。倒産水準自体は非常に高水準なんでございますけれ
ども、倒産自体はそれほどはふえておりません。各中小企業事業所数はふえておりますけれ
ども、倒産そのものはそれほどふえていない。倒産率で見ますと、むしろ
低下しているような
傾向にあるわけでございますけれ
ども、それにしても、こういうような理由はどうかということをちょっと考えてみました場合に、まあ三点ぐらいあろうかと思います。
それは、長い
成長があったために、一種の内部蓄積ができたということ、それから
経営合理化とか近代化とか、こういうような中小企業の努力というものが非常に長期間にわたって続けられております。ことに、変動相場制以後におきまして、不況対応力といいますか、そういうようなものがかなり強くなっているのではなかろうか。これが第一の点でございます。それから、現在、中小企業金融に対する民間金融機関の貸し出しの水準と申しますか、これもやはり三十年代あるいは四十年代の初めに比べますと、かなり高い水準になってきている。それから、それに関連いたしまして、政府の三機関に対する政策的な配慮がいろいろなされているというようなことにも、倒産水準というようなものの低さということがあらわれているんではなかろうか。それからもう
一つは、小規模な企業の
一つの特徴でございますけれ
ども、手形取引の割合が小さい。したがって、金融破綻というような意味で倒産統計はあらわれてくるのでございますけれ
ども、金融破綻あるいは銀行取引停止というような形での倒産という形をとることが少ない。これが
一つの小規模企業の特徴ではなかろうかと思います。そういうものはどういうふうになりますかというと、むしろ自発的に、倒産に至らない前に休業あるいは廃業していく、あるいは転業をする。転業というものは現在の
状況から見て非常にむずかしい情勢でありまして、むしろ被雇用者化していくというようなことで、いろいろな意味で対応しているわけでございますけれ
ども、現実に廃業統計というものはございませんで、倒産統計以外にはそういう統計がないわけで、そういった休廃業の
状況というものは非常につかみにくいわけでございますけれ
ども、私
どもの対象を見ておりますと、そういうものが若干ふえるような
傾向にある。それから、好況期に地方に工場が進出したところが、この不況期に遭いまして、その工場が休業、閉鎖せざるを得なくなってきたというようなものが、電気機械
関係であるとか、あるいは縫製加工
関係とかいうようなものに若干出ておるわけです。
ここで少し業種別動向について見てみたいと思うのですが、この業種別の中で主なものだけを取り出させていただきます。
まず、製造業の中で機械金属
関係、代表的な業種でございますけれ
ども、これを見た場合に、小規模な企業は、軒並み数量ベースで三〇%台の減産を続けております。ことに工作機械であるとか、繊維機械、電気機器、鋳物だとか、こういう業種につきまして不況がかなり深く行き渡っているというような感じでございます。中には四割、五割の減産を強いられている。それで、このほかに、自動車というものは、昨年の十月から十二月にかけまして一時増産機運になったわけでございますけれ
ども、年を越して一月からまた一〇%から二〇%台の減産になっていったというようなことで、多くの企業におきまして、こういう状態を背景にいたしまして、時間の短縮であるとか、残業カットであるとか、臨時工あるいはパートの整理というようなものが出てきている。それから電気機器なんかにおきましては、親企業の内製率が高まっている。したがって、親企業が内製化するので、中小企業になかなか仕事が回ってこないというような例もかなりございます。ただ、最近、弱電
関係の一部、たとえばカラーテレビとか冷蔵庫、こういったような
関係で一部在庫調整が進んで、若干一部に明るい兆しが出てきている。あるいは新製品の開発のための金型であるとか、試作だとか、こういう部門の受注が持ち直してきたというような若干の動意もあるということも報告されております。
それから繊維
関係でございますけれ
ども、繊維
関係は、御承知のように、一年以上にわたる長期の減産体制、これを非常にとっておりまして、不況の典型的な業種ということであったわけでございますけれ
ども、一部では減産効果が若干あらわれてきている。ただ、それがまだ本格的な回復基調には結びつかないというような
状況でございます。流通段階で問屋筋の在庫調整が進んでいるとか、それで荷動きがやや活発化しているというようなものが報告されております。それから綿・スフ織物におきましては、適正在庫の二倍をまだ抱えて、あるいは工賃の引き下げというようなことが昨年はあったわけでございますけれ
ども、工賃におきましては若干最近は明るい面も出てまいりまして、それが下げどまりというような形での現象となってあらわれてきている。そのほかに、毛織とか、合繊とか、こういうものはやはりかなり長期の不況で、現在でも停滞の
状況を示しておるわけでございます。若干一部には、婦人服であるとか、身の回り品とか、こういうものには持ち直しているのもあるようでございますけれ
ども、基調的なトーンとしては、繊維は非常に暗いということが言えるのではなかろうか。
それからそのほかの木製品、家具とか、紙製品、雑貨とか、こういうようなものの地場産業
関係、こういうものにつきまして、特に輸出関連の地場産業でございますけれ
ども、円高の基調であるというようなこととか、途上国との競合の問題で、非常にその
競争力が
低下し七おりますために輸出が不調になっておる。あるいはせっかく変動相場制から内需に切りかえた産地におきましても、その内需自体がへこんできているために、不振に不振を続けているというようなものもかなり多いわけでございます。
それから建設
関係におきましては、民間工事、この
関係が著しくやはり減少しておりまして、出血受注とか、回収悪化というようなものを訴えております。特に大都市周辺のこういう建設業におきましては倒産が高い水準であらわれている。それから明るい面としましては、公共事業費の支出促進というものが一方にはある。官公需を中心に若干回復の兆しも見られている。ただ、これも総体的なものではございませんで、なかなか基調的なものには続かない。むしろ、五十年度の民間住宅の伸びというものに期待しているというような
状況ではなかろうかと思います。その意味では建設
関係は非常に厳しい環境に置かれている。
それから小売
関係につきましては、私
どもの対象としては非常に多いわけでございますけれ
ども、やはり個人消費支出の減退というようなものを背景といたしまして、売り上げが低迷いたしております。それで、生活関連の必需品でも、金額ベースではそれほどではないんでございますけれ
ども、数量ベースでは一、二割も
低下しているというようなものもかなり多いのではなかろうか。それから、高額品、つまり貴金属であるとか家具、電気製品、高級衣服だとか、こういうようなものにつきましては、やはり消費全般の堅実なムードといいますか、そういうものを反映いたしまして、不振を続けているわけでございます。
こういう現在の実態を踏まえまして、今回の不況の要因というものをどういうふうに中小企業サイドから判断するかという問題を次に申し上げたいと思いますが、それには三点ぐらいの特徴があるのではなかろうか。
一つは、インフレ下の不況であるということで、個人消費支出が非常に伸び悩んでいる。本来、インフレでありますと、個人消費支出も景気の拡大に伴いまして伸びるわけでございますけれ
ども、それが今回は、不況自体が、非常に実態面の不況が反映されて実質
収入が
低下してきている。それで、先行き不安感といいますか、そういうものが非常に強いために、個人消費自体が減退してきているというようなことがあると思います。したがって、こういう個人消費自体の減退というものが、先ほど申しました中小企業の景況の減退につながるわけでございまして、中小企業
関係は、サービスとか小売とかというものも含めまして、ことに消費財
関係、個人消費支出
関係が多いわけでございますが、したがって、そういう面からの落ち込みが非常に激しい。
それから第二の点といたしましては、循環的な要因と
構造的な要因と二つが絡み合っているのではなかろうかと思うわけでございます。それで、たとえば金融引き締めとか、そういう短期的な要因が解除されたといたしましても、その底に
構造的要因というものが根強くあるために、なかなか不況感というようなものが消えないのではなかろうか。
——少し
構造要因について申し上げますと、二つの点ぐらいちょっと代表的な例として申し上げます。
一つは、貿易
構造自体が変わってきたこと。これは、石油の高価格体系に伴って、輸入価格に占める第一次産品の価格、特に石油の価格というものが非常にふえてきている。そういう
一つの輸入面。それからもう
一つ、輸出面でございますけれ
ども、たとえば繊維産業においては、
発展途上国の追い上げとか、こういうようなことが非常に激しいために、繊維産業自体の立ち直りがむずかしいということでございます。価格
競争ではなかなか立ち行かないというようなことになってくるわけです。こういったような意味での
構造的な問題というものが
一つあると思います。それからもう
一つは、自動車とか家電なんかの場合に、産業の成熟化というものがある。これは、カラーテレビでも自動車でも、普及率が非常に高い水準になってきた。そのために
成長自体の伸びがとまって鈍化してまいります。したがって、こういう面での産業の成熟化に伴うところの
一つの不況感というようなものがあるわけで、こういった
一つの
構造的要因というようなものがいろいろ産業の根っこにあるんではなかろうか。先ほどの個人消費支出のパターンの変化というようなことも
構造的要因というふうにも考えられますけれ
ども、いずれにしても、そういう要因というものが非常に根強く存在しているのではなかろうか。
それから第三番目といたしましては、輸出環境が非常に悪くなってきた。これは、不況の
世界的な同時化現象というものが指摘されておりますけれ
ども、OECDの予測では、暦年の先進七カ国の実質GNPの合計は、七三年の場合六・五%であったわけですが、七四年にはマイナス〇・二五%、さらに七五年の予測ではプラス〇・二五%というふうに、ゼロ%前後をはうような形で非常に低い
成長率になってきております。したがって、こういう不況感というようなものに対するいろいろなリフレ対策というようなものが、現在
アメリカの公定歩合の引き下げを初め、とられておるわけでございますけれ
ども、なかなか効果が上がっていかないんではなかろうか。したがって、そういったような面からも、中小企業の輸出環境というようなものも、なかなか楽観を許さないものがあるのではなかろうか。
〔
委員長退席、理事
岩動道行君
着席〕
こういった不況の現実的な
原因といいますか、そういったようなものを受けまして、今後の見通しを中小企業の場合にちょっと立ててみた場合に、大体四点ぐらいの特徴点があろうと思います。実は、私
どもは、もちろんこういった中小企業の見通しについて、予測
作業というようなものを計量的にしているわけではございません。ただ個人的な感触として申し上げるわけでございます。
在庫の動向というものが第一点に考えられます。長期の大幅減産によりまして在庫調整というようなものが徐々に進みつつあるわけでございますけれ
ども、最終需要自体が、先ほ
ども申し上げましたように、非常に減退して、在庫調整のテンポが先行ききわめて緩慢になるんではなかろうか、したがって、そういう意味でも、在庫の投資というようなものが前向きな形で回復するというようなことがかなりむずかしい状態にあるのではないか。それで、一月の在庫指数はマイナス一・四%というふうに、初めてマイナスになったわけでございますけれ
ども、この
傾向が果たして一時的なものか、あるいは今後さらに在庫調整の本格化というようなもので続くかというような問題が非常にむずかしい問題でございます。いずれにしても、中小企業段階におきまして、そういうテンポというものが緩慢ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
それから第二点としましては、個人消費支出の回復ということでございます。物価が、
消費者物価あるいは卸売物価にしましても、政府の
目標の
消費者物価一五%台がすでに二月に一三・七%というような意味で達成されましたわけでございますけれ
ども、実質消費支出に果たしてどの
程度結びつくかというような問題でございます。当面消費のビヘービア自体に大きな期待は持てないのではなかろうか。ただ、最近の百貨店の販売、一月にやや明るい見通しというようなものも報道されておりますけれ
ども、生活必需関連の小売を見ました場合には、これはある
程度底支えがもうすでにできているのではなかろうか、したがって、これ以上に落ち込むというようなことも、私としては考えられないのではなかろうか。ただ、これからさらにどういうテンポでふえていくかというようなことになりますと、非常にむずかしい問題がありまして、急テンポでふえていくというようなことはもちろん考えられないわけでございます。したがって、個人消費支出とか
設備投資とかいうようなものの主導型によりますところの景気のV字型回復というようなことは、なかなか今回の不況についてはむずかしいのではなかろうか。
それから
設備投資の面でございますけれ
ども、先ほ
ども申しましたように、投資マインド自体が非常に冷え込んでおりまして、開発銀行の調査でございますけれ
ども、工事ベースで来年はマイナス五・五というふうなことが予測されておりますけれ
ども、こういう意味からしても、特に中小企業の
設備投資の冷え込みは、やはりかなり長期にわたって続くのではなかろうか。これは、私
どもに対する申し込みの実情を見ましても、運転資金の方が当然多いわけでございますけれ
ども、
設備投資の意欲というものはやはりかなりまだ低い
状況にある。それで、問題は、住宅工事とか公共工事とかいった公共投資、あるいはそういった
関係からの波及効果というようなものによりまして、
設備投資の
一つの上向きの
傾向というものが、こういうものを中心にして行われるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
それから国際収支の面からも、円高の基調というようなものが現在あるわけでございますけれ
ども、海外不況というようなものを受けた輸出の先行き不安、こういうようなものが非常にこれからの輸出に暗い影を落としてきている。一月から貿易収支は
赤字に転じたわけでございますけれ
ども、こういう
赤字基調というものがどういうふうな
傾向になるか、これも非常にむずかしい問題でございます。悲観材料としてやはりこれも考えなければいけないんじゃなかろうか。
こういうふうに見てまいりますと、景気はこれ以上果たして悪くなるかというようなことでございますけれ
ども、現在の状態から見まして、
一つの二番底をはっているというような感触がいたすわけでございます。したがって、政策の手直しが仮にあった場合におきまして、先ほど申し上げましたように、
構造的要因が非常に強い、そのためにV字型回復ということは非常にむずかしいのではなかろうか。むしろ、ここ当分の間不況感というようなものは持続されるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。ことに、中小企業に対する景気回復の浸透というものは、いままでの経験で見ましても、かなりのタイムラグがあるわけでございますから、こういう面におきましても、中小企業の不況感というものはこれからもかなり長期に持続されるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
当面の中小企業の景気を中心にして景気動向をお話しいたしました。それでは私の話はこれで終わりたいと思います。(拍手)