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参考人(
森永貞一郎君) お答えの前に、お許しを得まして、去る三月二十六日の当
委員会集中
審議に欠席をいたしましたことにつきまして、一言遺憾の意を表したいと存じます。
出席の御要請をいただきましたのは、二十六日の前日、出張先の熊本においてでございましたので、その後の予定等のこともございまして、前川副
総裁を
出席せしめたのでございましたが、やむを得ざる事情とはいえ、重要な
審議に私自身が参加できませんでしたことを大変遺憾に存じております。当
委員会にも御迷惑をおかけいたしましたことを大変遺憾に存ずる次第でございます。今後のことにつきましては、
国会審議に一層協力すべく、日程等の調整につきましても万全を期したいと思っておりますので、そのことを一言申し上げた次第でございます。
お尋ねでございますが、まず公定歩合の問題でございます。
現在景気を判断するのに、いろいろな明暗さまざまな事情が交錯いたしておりまして、デリケートと申しますか、なかなか判断のつきにくい情勢になっておるのでございますが、業種により、あるいはところによりいろいろバラエティーはございますけれども、大勢としてはもうこれ以上スパイラルに景気が悪くなっていくという情勢ではないような感じでおります。他方、物価の方も先ほど来問答がございましたように、大分鎮静化してきておるのでございまして、諸外国における公定歩合引き下げの事例等もありますことでございますので、もうそろそろ公定歩合を引き下げるべき時期ではないかというような御議論が方々で行われておることは御
承知のとおりでございます。しかし、私はまだいまのところその決心をすべき時期ではないと存じます。と申しますのは、なるほど物価は一応安定いたしておりますが、内部にはコ
ストプッシュの要因がたくさん潜在いたしておりまして、需給が一たび締まればまたぞろ物価が急騰しかねまじき状態でございますので、もう少し諸般の経済情勢の推移を見きわめてからというふうに
考えておるのでございます。
公定歩合引き下げの効果につきましていろいろ御議論がございましたのですが、やはりこの金融政策の
一つのシグナルでございまして、その効果は相当大きなものがあると存じまするし、また最近
企業の金利負担についての問題などが起こっておる、あるいは内外金利差の問題等も、まだ現状におきましては日本経済に対しまして撹乱的影響は及ぼしておりませんが、やはり
一つの問題でございまするし、やはり公定歩合の引き下げは引き下げなりの意義があるのではないか。ただ、それをいつ下げるかということにつきましては、まだ決めておりませんので御容赦いただきたいと存じます。
それからもう
一つ申し上げなければなりませんことは、金融政策のシグナルとしての意義があると申し上げたわけでございますが、これまた先ほど御問答がございましたように、日本経済のいま置かれておりまする環境から
考えますと、昔のような高度成長は許されないのでございまして、資源の制約、公害、環境問題等々
考えますと、いわゆる安定成長ないしは低成長に甘んじなければならない状態にあるわけでございます。そういう状態下におきましては、経済全体の運営を引き締めぎみに、抑制ぎみに運営しなければならないわけでございまして、金融政策につきましても、いつの日か公定歩合を引き下げるようなことがございましても、直ちに量的な緩和を望むべき事態ではないのではないかというふうに
考えておることをつけ加えて申し上げたいのでございます。
次に、日銀の中立性についてのお話がございました。私ども、この金融政策は国の経済政策の重要な一環でございますので、経済政策全体の方向につきましては、
政府と日銀との間に常に緊密なる連絡
協調を保ち、大筋の
考え方につきましては一致を見る必要があろうかと存じます。その大筋の
考え方に立ちまして、具体的な施策の発動につきましては、日銀に任せられた範囲のものは、日銀の責任において、日銀の判断において自主的に実施してまいる所存でございまして、いままでもそうでございましたが、今後もそういう点につきましては遺憾なきを期したいと存じておる次第でございます。