-
-
-
-
-
-
-
○
秦豊君 じゃ、一々大変ですから、どうぞ済みませんが、そこへ立って、あるいは広げやすい場所にいていただいて……。その方がいいと思うのですよ、一々恐縮だから。
特定していただきたい
建物の
名前は、
ナンバーは、一四五〇D、これをまず挙げてもらいたい。
-
-
○
秦豊君 一六九〇はいかがですか。――ごゆっくりで結構ですから、正確にお願いしたい。
-
-
-
-
○
秦豊君 特定の願いは最後にするが、
MAG15のエリアを指定してもらいたい、
地図の上で。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
○
秦豊君 じゃ、
久保さんは、われわれの発表より以前に
御存じであったわけですか。
-
-
○
秦豊君 いえ、いつごろからあったか、
御存じだったんですか。
-
-
-
○
政府委員(
久保卓也君) 私は以前
岩国の
司令部を訪問しておりますので、その
周辺の
建物は目には入っておりますが、詳しくは見てはおりませんが、そういうものであるということは
記憶はいたしておりました。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
○
秦豊君 二枚の
写真を比べてみたい。何でもないと言われていた
NBCセンターがこれである。それから、われわれの
調査によれば、三日前の撮影は全然
名称は変わっている。この現状を把握されているか。
-
-
○
秦豊君 では、変えたほうの
名称は何と訳すればいいのか。
-
-
○
秦豊君 われわれが追及を開始したから
名称を変えたというふうに理解はできないのか。
-
-
○
秦豊君
推測の問題ではない。事実
関係を言っているんだ。いつもあなた方はそうして逃げるんだ。とにかく、いずれにせよ、何でもなければなぜ
名称を変えたと思うか。
防衛庁長官、どうですか。
-
○
国務大臣(
坂田道太君)
中身の
内容と一致させたということじゃないでしょうか。
中身の
内容と。いま申し上げましたように、その中には
防毒マスクとか
防御用服とか、机とか用紙とか置いておるわけでございますね。そういう
中身に合わせて、いまのようなフライトエクィプメントというふうに変えたんじゃないですか。と思います。これは、ですから私の
推測でございますから……。
-
-
-
○
秦豊君 いや、
推測だって、
中身に合わしてと言われた前段のところがよくわからない。
-
-
-
○
政府委員(
久保卓也君)
岩国の
施設を見たときに大変感じましたのは、
一般の
部隊と違って、恒久的な
建物が比較的に少ない、すぐに壊せるようなもの、あるいは
移動用のものというものが大変多い。これはやはり
海兵隊というものの
特殊性であろうと思いました。したがいまして、いまのような
建物が
タイから運ばれてきたごとく、そういうものが機動的に運用されるであろうということは
認識できます。
-
-
○
秦豊君 非常に重要だと思うのは、単にこれは
建物があるわけじゃない。作戦のシステムの一部がここにあった、
現実に
ベトナム戦では使われており、七三年九月に
岩国に帰ってきたという事実をあなたも認めているでしょう。つまり、
部隊なんですよ。
-
-
○
秦豊君 この
写真をちょっと見ていただきたい。あなたの言うのはこれですか。――われわれが追及した十七日には、この
NBCの
内部は
一般のいつでも
野戦用の
司令部であった。ところが、改装してこう急に変えたんです。
久保長官、どう思いますか。
-
-
○
秦豊君 疑惑は深まるばかりであって、何でもないものであれば、あわてて
内部を改装する必要はないでしょう。どうですか。
-
○
政府委員(
久保卓也君) 私がお答え申し上げたのは、改装したのではないという前提で
米側が見せたのであろうという、そういう
認識をしておるということを申し上げたわけであります。
-
○
秦豊君 その
認識が間違ってるんだよ。だれもこれが
ベトナム戦で連動した
NBCコマンドセンターなんて認めるばかはいないんですよ。みんな装うんです、隠すんです、特に
日本政府に対しては。われわれは野党だから、
一つ一つその有力な傍証を突きつけて
国民の不安にこたえようとする。あなた方は反対の
立場にある。そうでしょう。何でもないものを何でこんなに改装する必要がありますか。じゃ、何で何でもないものにああいう
ネームプレートをつけたんですか。
-
-
-
-
-
○
政府委員(
丸山昂君) ちょっと私
ども、ただいまの時点では思い当たりません。よく調べてみてから御回答申し上げたいと思います。
-
○
秦豊君 それはどうですか、いますぐ調べられませんか。あなた方は
部隊じゃないと言って逃げ回るから、ぼくらは
部隊があると追及するんだから。
一つ一つの、項目について、わからぬわからぬじゃ
審議できませんよ、そんなあいまいなことでは。そのためにあなた
防衛局長なんだから。一々逃げないで、まじめにやってくださいよ。
-
○
政府委員(
丸山昂君) いや、別に逃げておりません。
いま突然のお尋ねでございますので、
米軍のことでございますから、改めて調べましてから御回答申し上げたいと思います。
-
-
-
-
-
○
秦豊君 そうですか。じゃ、
委員長、次に進みます。
NBCはもうさっきお答え願ったから、
SIOPというのは何ですか。これぐらいは教えてくださいよ。何もかもわからぬわからぬと言われちゃ困るんですよ。そのためにいるんだから、
政府委員が。(
発言する者多し)
-
-
-
○
政府委員(
丸山昂君) あらかじめの御照会がございましたら、いまの御
質問に十分間に合うように調べてまいったわけでございますが、突然の御
質問でございますので、私
ども自身のことでございましたら、いますぐお答え申し上げられますが、
米軍のことでございますので、ちょっと
調査の時間をかけさしていただきたいと思います。いま御
質問のございました
ATCOでございますね。それからもう
一つ、
SIOP、EWOでございますね。
NBCはいままで論議に出ておりますので、御承知のとおりだと思います。これ、調べましてから後で……。
-
-
-
○
秦豊君 そんなに遠慮しなくてもいいです。
長官はいかがですか。
-
○
国務大臣(
坂田道太君) ただいま申しますように、いろいろやっぱり
米軍のことでございますから、正確に把握してからお答えをいたしたいと思います。
-
-
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) どういう
修了証書を持っておるかどうか存じませんけれ
ども、われわれが照会いたしました結果といたしましては、そういう
NBC攻撃があった場合には、それは
専門的知識を要するわけでございますから、それに対処する
訓練を受けた者が三十四名いるということでございます。
-
○
秦豊君 あなた方は
防御防御とおっしゃるけれ
ども、いまの戦術核兵器の運用の中で、
防御と
攻撃の間に厳格な境界線が引けるとお思いですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) その
防御と
攻撃の間に線が引けるかと、こういう
一般的な問題にはお答えいたしかねますけれ
ども、この問題は、この
部隊の場合、
NBCとして総括されておるわけでございまして、逆に言えば、核兵器も
生物兵器も
化学兵器も、すべて
攻撃用に操作し得るような人間がいるとは、逆に言えば私たちとしては思えないわけでございます。ただ、
攻撃があった場合にはそれぞれに対応する
訓練を施しておく必要があるわけでございまして、そういうふうな
将校なり
下士官は当然全世界に展開している、
米軍としてはいるであろうというふうにわれわれも考えるわけでございます。
-
-
-
○
秦豊君 大変結構です。これは実戦
部隊という
認識をお持ちですか。
-
○
政府委員(
久保卓也君) どうも私の仕事の範囲ではございませんが、せっかくの御
質問でありますから、これだけお答えいたしますけれ
ども、
岩国にあります海兵航空団そのものが実戦
部隊でありまするから、それを構成するものはすべて実戦
部隊の一部であるということは言えようかと思います。
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君)
NBCオフィサーとは別に
NBCチーフという
名称があることは、電話帳によってわれわれも承知しておりますが、この点に関しましては、アメリカ側に問い合わせましたところ、これは
将校に対比して
下士官の、上級の
下士官を意味するということでございます。それが
部隊長とか、そういうふうな意味ではございません。
-
○
秦豊君
防衛庁長官、退屈していらっしゃるようだからお答えください。
NBCチーフの任務はいいとして、
岩国に配備されている
MAG12と15は大体編成と任務がどう違うんでしょうね。
-
○
政府委員(
丸山昂君)
MAG12の方は、航空機の構成が、御案内のようにスカイホークあるいはイントルーダー、ハリアと、こういう
攻撃機でございます。したがいまして、地上の海兵師団に対しまして航空支援をし、地上
攻撃を行うというのが
MAG12の主要任務であると思われます。それから、
MAG15の方は、ファントムとそれからファントムの偵察機に改造いたしましたもの、これを主要な航空機としております。したがいまして、これはもちろん地上の海兵師団に対する支援任務を主としておりますけれ
ども、その航空支援の
中身が、相手方の航空機との要撃、空中戦闘、それから偵察がございますので、当然、戦術偵察任務と、こういうものが主になるというふうに考えられます。
-
-
○
政府委員(
丸山昂君) これは比較がちょっとむずかしいと思います。要するに、任務の性格が、いま申し上げましたように対地
攻撃ということを主にするものと、それから空中戦闘を主にするものということでございますので、全然任務が違いますので、これを一概にどちらが大きいか小さいかという比較はむずかしいと思います。
-
○
秦豊君 しかし、理解するところでは、
MAG15は、たとえばF4ファントム・スコードロンを持っていますね。そこにしかも、
NBC機能、つまり核
生物的な研修を受けたスタッフが入っているということは、両方であわせて、
MAG15はきわめて戦術核兵器の運用のできる実戦
部隊という理解はできませんか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) いまの御
質問の趣旨から言いますと、その戦術核使用が
MAG15のほうに限られるかどうかという点について、ちょっと私
どもの知識では判断がむずかしいと思います。まあ強いて申し上げますならば、対地上
攻撃でございますので、比較的、特にハリアなどは近接戦闘に使われるということでございまして、戦場の場面から考えた場合に、戦術核を使うに適当な場所でないというふうに考えられますので、この
MAG12の場合には戦術核を使用することを余り考えてないのではなかろうかというふうに考えられます。
-
○
秦豊君 確認をしたいことが
一つあります。この
MAG15の編成に入っておりますが、VMFAー115というのはファントム
部隊ですか。
-
-
○
秦豊君 この一一五スコードロン
部隊の中に、いわゆる沖繩で核研修を受けたスタッフが配属されているわけですか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) その点については細かいことは承知をいたしておりません。
-
○
秦豊君 とにかく、まあこういう問答は一種のこんにゃく問答に類します。それはわかっている。わかっているけれ
ども、われわれのだれにも核弾頭を特定することはできない。だから野党は
一つ一つ傍証を固めていく、これは帰納だと思う。
じゃ、
岩国基地について、われわれ野党が、つまり立ち入り
調査を要求する。いつも外務省の安全保障課でひっかかる。二週間前にアプリケーション・フォームを出せ、ノー・アンサーであると、こういうことが繰り返されている。われわれは野党として、とにかく
岩国基地、在日
米軍基地総体を含めて立ち入り
調査を……。やはり
岩国は数々の疑惑に包まれている。今回もまたその
一つである。立ち入り
調査を要求したい、われわれは。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 在日
米軍は、地位協定によりまして、その
基地内、その
施設・区域内においては管理権を持っておるわけでございますので、わが方の都合で勝手に立ち入り
調査をするというわけにはまいらないと思います。ただ、やはり在日
米軍でもございますから、先方としても、こちらが手続を踏みまして視察をしたいということでありましたならば、それは適当にアレンジしてくれるということになっております。そのルールとしまして、向こう側との話し合いで、二週間前に言ってほしいと、ことに国会議員その他重要な方々が来られるときは、いろいろアレンジの都合もあるので、最小限度二週間前に言っていただきたいということを言っております。もちろん、向こうも、ふだんそういう実際の
訓練をしており、いろいろな業務を持っておるわけでございますから、御指定の日に御希望どおりに御訪問なさることができないこともございますけれ
ども、われわれとしては最大限の便宜をはかるように努力しているつもりでございます。
-
○
秦豊君 これは後ほど、提案を含めて、この点はまた繰り返したいと思いますが、ちょっと話を進めます。
岩国の第一海兵航空師団は、言うまでもなく在日
米軍に編入されていますね。
-
-
○
秦豊君 それでは、ここで改めて在日
米軍の編成と配置を当
委員会で明らかにしてもらいたい、最新のデータで。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 細かい
部隊になりますと大変ございますので、大ざっぱなところを申し上げておきたいと思います。
在日
米軍で、いまお話がございましたように配置になっておる
部隊、これは、まず陸軍につきましては、在日
米軍司令部がございます。その中で、本州と沖繩に大きく二分をいたしまして、本州につきましては本州米陸軍駐留
部隊、それから沖繩には沖繩米陸軍駐留
部隊、これは実質はいずれも支援
部隊でございまして、実施
部隊は存在しておりません。
それから次に海軍でございますが、在日米海軍
司令部、これは横須賀にございます。そして、横須賀に、横須賀艦隊
基地隊以下それぞれの
基地隊ないし支援
部隊、これがございます。佐世保、沖繩、こういったところにもございます。それから第三海兵両用戦
部隊、これがいまお話が出ているものでございますが、これが第三海兵師団、それと第一海兵航空団。第三海兵師団は沖繩におります。それから第一海兵航空団は
岩国におるわけでございます。それから第七艦隊の哨戒偵察
部隊に所属いたします日本航空哨戒軍、この
中身はP3でございますが、これが沖繩におります。
それから空軍の方は、第五空軍、これは
司令部が横田にございまして、第三百十三航空師団、これの第十八戦術戦闘航空団、これが沖繩の嘉手納におるわけでございます。そのほか、第三百七十六戦略航空団、これは戦略偵察と、それから給油任務をいたします航空機をここで持っておるわけでございます。
その他細かい
部隊がたくさんございますが、大体重立った
部隊は以上申し上げたとおりでございます。
-
○
秦豊君
丸山さんがお挙げになったいまの配置編成の中で、どの
部隊が動いたときには、つまり、配置が変わった場合には事前協議の対象になりますか。それを
一つ一つ挙げてくれませんか。非常に重要な問題です。
-
○
政府委員(
丸山昂君) いままで事前協議の対象として挙げられておりますのは、陸については一個師団程度のもの、それから空につきましては大体それに相当するもの、それから海につきましては一機動
部隊ということになっておるわけでございます。
そこで、いま申し上げました中で、まず空の第三再十三航空師団、これはエアディビジヨン、文字どおり、いま申し上げました一個師団程度のものということに相当するかと思います。それから陸については、先ほど申し上げましたように、これば実施
部隊がございませんので対象になりません。それから海の方は、いま御説明しましたように、横須賀、佐世保その他にございますのは、これは補給支援というものを主体といたしましたものでございますので、これも対象にならぬと思います。
問題は、海兵の方、
海兵隊でございますが、
海兵隊の第三海兵両用戦
部隊でございますが、これは第三海兵師団というのがございまして、
名称その他から言いまして――先ほどの
一般基準の中には
海兵隊についてははっきりした枠がないわけでございますけれ
ども、大体陸、空の規模を準用いたしますと、この第三海兵両用戦
部隊というものは、この
部隊全部が動いたり移動する場合には対象になるというふうに考えてよろしいのじゃないかと思います。――失礼いたしました。配置になります場合には対象になると思います。訂正させていただきます。
-
-
-
-
-
○
秦豊君 それ、大事な点だから。
じゃ、第一海兵航空師団の規模、兵力はどうなっておりますか。――かっちりと答えてくださいよ、正確に。
岩国ですよ。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 先ほど申し上げましたように、両用戦
部隊の構成は、陸上の海兵師団と、それからそれを支援いたします航空団、このカップルから成っておりますので、第一海兵航空団でございますが、これは人員が約八千と推定されます。現在、
岩国基地にはそのうち約五千がおるようでございます。航空機は
攻撃機、戦闘機等を含めまして七十六機、そのほかヘリコプターその他の支援の航空機がございます。
-
○
秦豊君 おっしゃった意味は、じゃ、第一海兵航空師団そのものですか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 第一海兵航空団そのものでございます。師団ではございません。
-
○
秦豊君 それはあなたの用語ではウイングですか、ディビジョンですか。海兵にはディビジョンがないでしょう。
-
○
政府委員(
丸山昂君) ウイングでございます。陸上の方はディビジョンでございますが、航空団はウィングでございます。
-
○
秦豊君 海兵はですね。じゃ、そのウイングとディビジョンは用語は違う。しかし、戦力規模はほとんど同じ規模というふうに推定されているが、どうですか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 用語の点につきましては、御案内のように、
海兵隊の方にはディビジョンという用語がございません。米統合参謀本部の軍用語辞典によりますと、
海兵隊のウィングというのは、所要の航空管制管理サービス整備の
部隊を有する編成組織で、標準的な海兵師団に対する航空支援に必要な航空上の構成を有しているという言い方をしております。
それから一方空軍の方になりますと、空軍のディビジョンは通常二個以上のウイングから構成されるということになっておりまして、そこで空軍のディビジョンと比較をいたした場合に、この
海兵隊のウイングがそれに相当するかどうかという点になりますと、必ずしも全部一律に同じような編成になっておりませんので、軽々に比較をいたしまして、それに相当するかどうかという判断はちょっとむずかしいと思います。
-
○
秦豊君 しかし、あなたの御説明によれば、
岩国のマリーンに所属しているこのウイングと、それから空軍のディビジョンの戦力はほぼ等しいと思われるが、さらに
答弁を求めたいです。
-
○
政府委員(
丸山昂君) いま申し上げましたように、うちの方の――うちの方というか、日本の自衛隊でございますと、師団編成その他非常に斉一な形をとっておりますが、アメリカの場合には必ずしも各師団同じような編成ではございませんし、
中身は相当違っておるということでございまして、どれを基準に比較をするかということが問題であろうかと思うわけでございます。いま御指摘のように、空軍の師団に匹敵するかどうかという御
質問でございますが、いまの
岩国の
部隊がそれに匹敵するかどうかという点については明確にお答えができないんじゃないかと思います。
-
○
秦豊君 そこを詰めなきゃ話にならぬのですよ。一航空師団は三つのスコードロンから成っていますか、通常。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 空の航空師団になりますと、大体二ないし三のウイングから構成されております。で、そのウィングがさらに二ないし三のスコードロンから編成されるという形になっておりまして、この
岩国の場合には、先ほどお話が出ましたように、ウイングの中はグループで構成されておるということでございます。
-
○
秦豊君 つまり、一ディビジヨンであれば事前協議の対象になる、ウイングならばならぬと、こういうふうな御
答弁の趣旨ですね。これは外務省の方もお答えいただきたい。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先ほど
防衛局長からも
答弁がありましたように、安保条約の付属の交換公文で、
米軍が日本国への配置における重要な変更の場合に事前協議の問題が生ずるわけでございます。そしてその
一つの基準と申しますか、に関して、陸の場合に一個師団程度、空軍もそれに相当するものということになっております。
海兵隊の場合には、そのウイングが空軍の場合のエアディビジョンと同じような規模であり得るかどうかについては、先ほど
防衛局長も
答弁されましたように、必ずしも明らかではないわけでございます。いずれにいたしましても、われわれとしましては、配置における重要な変更に該当すると認められる場合には、当然アメリカから事前協議を受けることになるわけでございます。
-
○
秦豊君 それでは、おっしゃるように、配置の変更ならば対象になるというならば、
ベトナム戦のときに、この
岩国のまさに論議の対象になっている航空師団が、師団長以下戦線に展開しましたね、
御存じですか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) これは私の方の守備範囲でございませんので、あれでございますが、私
どもは承知をしておりません。
-
○
秦豊君 じゃ一体、防衛庁とか外務省は、
米軍の移動について何をどこまで知っているんですか。
ベトナム戦のこの
部隊の移動がわからないんですか、本当に。
岩国の、わからないですか、どういうことなんです。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先ほどからも
答弁申し上げておりますように、事前協議の対象となりますような、
米軍の日本国への配置における重要な変更があります場合には、当然アメリカから事前協議がございますので、それでわれわれとしては知り得ると思います。いま仰せられましたように、
米軍が日本から、ただ
部隊が移動するという場合には事前協議のそもそも対象ではないわけでございます。それから、小さな
部隊の移動に関してはわれわれは一々通報を受けている一わけではございません。それは
米軍の判断において行われておるわけでございます。もちろん、サイドからわれわれとしては若干の情報を得ることもございますけれ
ども、正式にそういうものをアメリカから通報を受ける
立場ではないわけでございます。
-
○
秦豊君 おかしいですよ、それは。第一海兵航空師団の第一
部隊のほとんど大半の戦力はベトナムに出撃をして、それが果たして小さな
部隊であり、単なる移動と言い切れますか、あなた。しかも、
御存じないじゃないですか、いつ出動したのか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) われわれは、現在、いま御指摘になりました
部隊の移動の詳細については承知しておらないわけでございますが、そういう
部隊が日本国から行われる戦闘作戦行動のための
基地としての日本国の
施設及び区域を使用するような場合には、事前協議の対象になります。そうでなくて、単なる移動である場合には事前協議の対象にもなりませんし、われわれとしては詳細は承知しておらないわけでございます。
-
○
秦豊君
ベトナム戦争というのは、
訓練じゃないでしょう。実戦でしょう。そこに
岩国から移動する場合は、これは移動じゃなくて作戦展開じゃないですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先生が前提としておられます、それが大きな
部隊の移動であり、こういうファクトがあるということを仰せられるわけでございますが、われわれとしては、そういうことについて詳細承知しておりませんので、ちょっと御
答弁いたしかねます。
-
○
秦豊君 何も知らないから罪を免れるんじゃなくて、あなた方の行政の怠慢になるんですよ。そう思いませんか。余りにも知らな過ぎる、
局長。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) そういう
部隊の移動に関しましては、われわれとしても、先ほどから申し上げておりますように、詳細は承知しておらないわけでございますが、直接日本の
基地から戦闘作戦命令を受けてベトナムに出撃したということばないと存じます。
-
○
秦豊君 これは古典的な命題なんですよ。いつもあなた方そう言うんですよ。だけれ
ども、六五年の五月にダナンに進出をして、そして六九年十一月に
岩国に帰っているんですよ。
御存じないんですか。その間戦争しているんですよ。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先ほどから御
答弁申し上げておりますように、そういう
部隊の具体的な移動の詳細につきましては、われわれとしては現在把握しておりませんので、御
答弁いたしかねる次第でございます。
-
○
秦豊君 おかしいですよ、あなた。何もかも把握していない行政官庁が、どうしてアメリカを相手にしてお互いを拘束する事前協議の執行に当たれますか、あなた。どうなんですか、当然必要な情報でしょう。おかしいじゃないですか、そんなの。大臣、ちょっと答えてくださいよ、
局長にばかり言わさないで。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどから
政府委員が申し上げておりますとおり、一定規模以上の配置の増加でございますね、変更というより、もう少し正式に申し上げれば。それがございましたときには事前協議になる、これが
一つであります。それから第二に、規模のいかんにかかわらず、わが国の
基地から直接戦闘行動が行われるときには事前協議の対象になる、この二つであるわけであります。したがって、仰せになりました場合は、わが国から相当大きな
部隊が何年か前に出て行って、何年か後にそれが帰ってきた、それ自身は事前協議の対象にならないわけでございます。それには増加がございませんから。次に、規模のいかんにかかわらず直接戦闘行動をするということになれば、これは事前協議の対象になりますが、
ベトナム戦争のときにはずいぶんこの国会でも御議論がありましたように、直接の戦闘行動がわが国から行われたというふうには見られませんので、これも事前協議の対象にならない、こういうことであったと思います。
-
○
秦豊君 大臣、さらに重ねて伺いたい。
現実に第一海兵航空師団は
岩国に配置されていたことは認めますね。
-
-
○
秦豊君 それじゃ、副師団長だけが残り、リヤーという
部隊名の看板だけを残して師団長以下すべての戦力がダナンに、ビエンホアに進出をしたのですよ。つまり、全部根こそぎ行ったのですよ、
ベトナム戦争に。これでも単なる移動ですか。配置の変更じゃないですか、あなた。おかしいですよ、詭弁ですよ、あなたの言うのは。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先ほどから御説明申し上げておるつもりでございますが、言葉は不足しておるかもしれませんが、安保条約の第六条の実施に関する交換公文では、合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更は事前協議の対象となる、こういうことでございまして、日本にそういう合衆国軍隊が大きな規模で入ってくる場合に事前協議の対象となるわけでございまして……
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 日本から出ていく場合は、この「配置における重要な変更」としては事前協議の対象にならないわけでございます。先生のあるいは御指摘の点は、その
部隊が戦闘作戦命令を受けて面接ベトナムに出撃したという観点から仰せられているのかと思いますが、われわれとしましては、そういうふうな形での
部隊は出て行ったことはない、あれば当然事前協議の対象となって、当時から事前協議があったはずでございます。われわれとしては、当時の事情については細かくつまびらかにいたしませんけれ
ども、それは途中いろいろなところへ寄っていると思いますが、そういう
部隊の単なる移動であったとわれわれは了解しております。もし、それが当時においてそういうことであるならば、当然、当時においてもいろいろ議論がされ、政府としてもいろいろ
調査もしたでありましょうが、当時においても、そういうふうな、これが事前協議の対象であるという、ふうな論議があったとは承知しておりません。
-
○
秦豊君 だから、何にもわかっていないのです。あとから触れますけれ
どもね、一番新しいニュースは。じゃ、防衛庁、外務省は、
米軍の移動、展開について、どこからどういうルートで、だれによって知らされているのか。どうなんですか、国会で明らかにしてもらいたい。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 防衛庁について申し上げますと、御案内のように制服レベルの連絡がございます。これはあくまでも、海軍につきましては在日米海軍
司令部、陸は陸軍
司令部、空は空軍
司令部、それぞれのトップレベルのところで、私
どもの方の統合幕僚監部、あるいは陸海空のそれぞれの幕僚監部に連絡がございます。しかしながら、これは細かい
部隊の移動について全部あるのではなくて、組織の改編その他の主要な変更がありました場合には連絡があるわけでございまして、
部隊の配置が変わるというような問題につきましては、私
どもの方には、
部隊の配置といいまして正式に日本に配置されているものがどこかへ変わる、移動するというような場合には連絡はございません。
-
○
秦豊君
防衛局長、
岩国の第一海兵航空師団は、
山崎さんもそう言ったが、配置されていたと言った。まさにそれが移動した、これは確かに協議の対象、連絡の対象でないのか、この点についてもう一遍確認をしておきたい。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 先ほどアメリカ
局長がお答え申し上げましたとおり、協議の対象にはならないと考えております。
-
○
秦豊君 アメリカの軍部では、師団長が直接指揮をして前線に展開をすれば、それは戦闘行動だと言ってる、戦闘展開だと言ってるのです。あなた方は移動だと言う。基本的に間違っておるんです。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) さっきから
政府委員がきちんと筋道を立てて申し上げておるようですが、もう一遍私がまとめて考え方を申し上げて御理解を得たいと思います。
わが国が、わが国の安全、極東の平和という見地から、日米安保条約によって
施設・区域を提供しておりますことば御承知のとおりでありまして、われわれとしては、これらの区域がわが国の安全及び極東の平和のためにできるだけ有効に利用されるということを基本的に望んでおりますことは、これはもう申し上げるまでもないことであります。しかし、だからといいまして、それにはわが国としての幾つかの条件をつけておりますわけでありまして、第一に、核兵器の持ち込みをしてもらっては困る、その場合には事前協議の対象にするということを言っておるわけです。第二に、そうかと申して、アメリカ軍の陸海空のわが国における配置についてはおのずから一定の数量の限定があるであろう、したがって、それを超えることがわが国の安全、極東の平和に必要だとお考えになるときには事前協議をしてほしい、これが第二であります。それから第三に、わが国としては、わが国の
基地が直接外部に対する戦闘行動に使われるということは、これはやはり事前協議をしてもらわなければ困る。こういう三つの事前協議という制約をつけました上で、わが国の
施設・区域が
米軍によって最も平和及び安全のために有効に利用されるということを期待をしておるわけでございます。
したがいまして、先ほどお尋ねのように、一定の
部隊がわが国から出ていったというときには、それ自身はわれわれは事前協議の対象とする必要がないと考えています。したがって、その
部隊がまた戻って、もとの兵員に復するときも、もとの水準であれば事前協議の対象とする必要はない。しかし、第三の場合、規模にかかわらず、もし直接戦闘行動をわが国の
基地からとるということになりますと、これは国際法上いろいろな問題を起こすわけでございますから、その場合には事前協議の対象にする、こういうのが全体の考え方、たてまえでございます。
-
○
秦豊君 外務省はどんな方法で
米軍の移動を知り得ているのか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) もちろん、事前協議の対象となるような
米軍の移動があります場合には、向こうから事前協議があるわけでございますから、知り得るわけでございますが、まだこの事例はございません。それ以外に正式に知り得るというのは原潜の入港の場合でございまして、この場合には、二十四時間前に先方がわが方に通報をよこすこととなっております。それ以外の問題に関しましては、地位協定の五条によりまして、
米軍は提供
施設・区域に自由に出入りできるわけでございますから、正式の問題といたしましては
米軍のそういう移動については知り得ないわけでございます。ただ、実際上の問題としましては、もちろん、われわれはアメリカ側と始終連絡し、接触をいたしておりますから、かなりの動きは知っております。それはただ事実として知っておるということであり、また、全部を知っておるわけでもございません。
-
○
秦豊君 重ねて念を押します。先ほどの
岩国の
部隊は、六五年五月にダナン、六九年十一月帰ってきて、師団長が帰ってきたのは七〇年四月、こういうことは全然
御存じなかったと言うわけですね。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 当時におきましては、そういうふうな動きについて事実上の連絡として知っておったかもしれませんが……
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) おったかもしれませんが、それは私、現在は私の手元にもそういう資料はございませんし、わかりません。ただ、当時においてあったかなかったかということは、これは事実上の問題でございまして、大きな問題ではないと存じます。
-
○
秦豊君 それほど運用について自信をお持ちならば、今度の四月に
米軍が大規模なマブルXという演習を展開する、
岩国基地、横須賀その他が全部連動する、これは、では当然
御存じでしょうね、それほど何でも
御存じならば。
-
-
-
-
○
秦豊君
岩国、沖繩、横須賀から、連動して全部フィリピン海域を目指しても全然関知しなくていい、何も知らなくていいと。いいわけですね、防衛庁、外務省、
関係ないんですね。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 私から申し上げますが、私
どもとしては、日本に
米軍が駐留してくれることがわが国の国益になるというふうに考えておるわけです。そして、提供しております
施設・区域は、なるべく有効に利用してもらうことがまたわが国の国益になる、こう考えておりますから、基本的に、あるいはそういう考え方が
秦委員のお
立場と異なっておるかもしれません。おらないかもしれませんが、私
どもとしてはそう思っておりますから、できるだけ、
米軍がいて、そうして有効にわが国の平和、安全、極東の平和を守ってほしい、こう考えておるわけでありますが、ただ、それについて別途の、わが国の国益から、先ほど何度も申しますように三つの、配置、装備、直接戦闘出動についての事前協議という条件をつけておるわけでありまして、そういう
一つの条件が満たされさえすれば、できるだけ有効にわが国の平和、安全を守るために駐留
米軍というものは動いてもらって結構である、活動してもらう、演習をしてもらうことが結構である、そういう
立場に立っておりますから、そこを制限的には考えておりませんで、どこでどういう司令官がどこへ行ったとか、どこでどういう演習が行われるとかいうようなことは、わが国の条件が守られております限り、われわれとしては特に知らなければならない事実ではない、そういうふうに考えています。
-
○
秦豊君 政府は何を知り得ているかを確認するために、もう一点。
岩国の戦闘
部隊が、去年六〇%から八三%に拡張、増強されたということを
基地司令が明らかにしておるが、この程度は
御存じでしょうね。さっきは減る話でしょう。今度はふえたんだから
御存じでしょう。
-
-
○
田英夫君 関連。
外務大臣に伺いたいんですが、先ほどからの御
答弁を伺っていると、たまたま問題が
ベトナム戦争でありましたから、はっきり言って、北ベトナムは、その持っている兵器、そして距離という
関係から、もちろん日本に対して
攻撃をする力はないと、こういうことが
一つの前提にあると思います。しかしながら、いまの政府のお考えでいくと、たとえば朝鮮半島という距離、そして北朝鮮が持っている飛行機その他の能力ということから考えますと、仮に
岩国にいるアメリカの海兵航空師団が、朝鮮でもし戦闘があったとして、そこにそっくりそのまま、たとえば韓国へ移動して戦闘行動に参加をするということになった場合には、当然相手側は、その出撃をして行った
基地が日本であるということのために、日本に対して
攻撃を加えるということは、戦争である以上は当然予想しなければなりません。そういうことを覚惜した上でいまのようなお考えを通しておられるんだと、こう言わざるを得ないと思います。たまたまベトナムであるから、これは日本が
攻撃を受ける可能性がないと安んじていらっしゃるとすれば、これはとんでもない間違いである。日本
国民にとって、報復的にアメリカ軍の
基地を
攻撃するという形で日本が
攻撃される可能性はあるわけですね。この点はどうですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) まず
一つ大事な前提を申し上げておかなければなりませんが、安保条約というのは、国連憲章との関連におきましても、いわゆる自衛のためだけに存在しておるのであって、こちらから先に戦争をしかけるというための体制ではないわけでございます。これは御承知のとおりだと思いますが、これをまず前提にお考えいただく必要がございます。そうして、そういう前提に立ってわが国の
基地が直接戦闘行動に使われることが事前協議にかかっておりますのは、相手の報復を恐れるからという意味ではございません。近いとか遠いとかいう意味ではございません。いかなる場合でも、それは自衛の場合でしかあり得ないわけですが、わが国から面接に
基地から戦闘行動が行われるということは、これは田議員が御指摘のようなおそれもございますから、事前協議にかけてやる。そういうことでありまして、どういう場合が直接の戦闘行動であるかないかということは、過去何年か、国会におきましてもずいぶん具体的なケースについて御議論のあったことでございますから御承知であろうと思いますが、ともかく、直接の戦闘行動に
基地が使われる、これは安保条約の第五条の場合は別でございますけれ
ども、それ以外の場合にはすべて事前協議の対象になる。相手が遠いとか近いとかいうことにこれは
関係はございません。
-
○
田英夫君 もう
一つ。
そういうことを私申し上げているんじゃないんですよ。つまり、先ほどから
秦委員が提起をした問題、
岩国からベトナムへ出撃をしたということは、つまり、アメリカ軍のかなり大きな
部隊が日本の
基地から直接戦場へ出かけて行ったというこの指摘ですね、そのことは事前協議の対象にならないとさっきから
政府委員はおっしゃっている。そうですね。それははっきりしていると思いますよ。その論理を通していくと、たまたまベトナムの場合は日本を
攻撃する能力を相手側が持っていなかったというだけであって、相手側がその能力を持っている場合には、日本がどう考えようと、政府の方がどうおっしゃろうと、向こう側からすれば、日本の
米軍基地から自分たちを
攻撃するために戦闘
部隊が直接自分たちの戦場に出かけてきて向こう側にいるということになれば、その出かけてきた日本の
米軍基地を
攻撃をするということは当然あり得ることじゃないですか。それを事前協議の対象にしないでいるというのはおかしいじゃないかと、こういうことを私は申し上げているわけです。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) そこを私が申し上げておるのであって、かつて
ベトナム戦争が盛んに行われておりましたころに、わが国から、いわゆる
基地から直接戦闘行動があったかなかったかということについては、政府としては直接の戦闘行動はなかったというふうに考えてきておるわけでございます。
-
○
秦豊君
国民は大変大きな不安を持っているんですよ、ラロック証言を引くまでもなく。いま聞いた外務省と防衛庁の情報吸い上げの回路、頻度、レベル、これからして、果たして事前協議が十全に運用できるかどうか、ますますぼくは不安になった。お聞きの皆さんもそうだと思う。一体何をもって、自信を持って安保条約の歯どめである第六条を円滑に、また厳正に執行できるという、そういう信念が出るんですか、あなた方。これは
外務大臣と
防衛庁長官にぜひとも伺っておきたい。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどから何度も申し上げておりますところでおわかりいただけるかと思います。
-
-
○
秦豊君 大平外相時代の話に観点を変えたいと思います。
事前協議の対象になる、いわゆるワン・タスクフォースというのはいまどんな編成ですか、教えてもらいたい。
-
○
政府委員(
丸山昂君) タスクフォースは、これは先生よく
御存じのとおりでございまして、いろいろタスクフォースのタスクの
中身によって編成が大変違っております。一番典型的に取り上げられますのは、空母の打撃群の打撃タスクフォースでございますが、この場合には、大体二ないし三のタスクグループ、タスクグループは
一つの空母に大体三ないし四ぐらいの駆逐艦もしくはフリゲート艦がつくものを言っておりますが、そういう
中身でございます。
-
○
秦豊君 それじゃ、第七艦隊のタスクフォースをすべてここで挙げてみてくれませんか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) ただいまこのとおりになっておりますかどうか、やや資料が古いので正確を期しがたいと思いますが、第七艦隊のタスクフォースは、まず直轄
部隊、これが
一つのタスクフォースでございます。その次が哨戒偵察
部隊でございます。それから機動後方支援
部隊、巡洋艦・駆逐艦
部隊、潜水艦
部隊、それから両用戦
部隊、それから空母打撃
部隊、これはいま申し上げましたようにミッドウェー、それからコンステレーション、エンタープライズ、それぞれのタスクグループがございます。それから艦隊海兵
部隊、これが両用戦
部隊でございまして、いま問題になっております第三海兵両用戦
部隊、こういったところでございます。重立ったものでございます。
-
○
秦豊君 そうすると、ミッドウェーを中心とした編成は
御存じですね。
-
○
政府委員(
丸山昂君) いま申し上げましたように、ミッドウェー
攻撃型空母一隻のほか、DDクラスが三ないし四隻というところでございます。
-
○
秦豊君 じゃ、
日本政府の概念規定では、機動
部隊の日本国への配置というのは何をもって認定するのですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先ほどから申し上げておりますように、海軍の場合には、一機動
部隊程度が日本に配置される場合には事前協議の対象となるわけでございまして、その一機動
部隊というものの
内容は、その任務によっていろいろ異なると思いますが、その
内容に関しては、先ほど
防衛局長から
答弁があったとおりでございます。
-
○
秦豊君 アメリカの海軍規則というのを
御存じですか。
-
-
-
○
政府委員(
丸山昂君) あると思います。あると思いますが、よく存じておりません。
-
-
-
○
秦豊君 これは行政の継続性という逃げ道があると思いますが、大平外相時代のことです。母港化の条件というのはアメリカ海軍規則にちゃんと出ているんです。
御存じですか、その点だけは
御存じですか。
-
-
○
秦豊君 存じておりますというふうに聞こえたけれ
ども、じゃ、全容をここで出してください、条件を。
-
-
○
秦豊君 大平外相当時の母港化の条件、論議、これは行政の継続性というのがあると思うが、あなたに
答弁を求めたいが、
委員長、私はこういう慣習を知りませんから、どう計らっていただきますか。
委員長、何とか計らっていただけますか、慣習を知らないから。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) どういうお尋ねか存じませんが、ただいまの
防衛庁長官あるいは
外務大臣において、
政府委員含めまして、御
質問にはお答えを、所管のことでございますればいたさなければならぬと思います。
-
○
秦豊君 ミッドウェーというのは、大体配置ですか、それとも寄港ですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 現在、ミッドウェーが横須賀におります状態は、われわれとしては、これは配置とは考えておりません。
-
○
秦豊君 海軍規則には母港と認定しているが、どうなんですか、その食い違いは。横須賀は母港であると認定しています。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 母港という言葉は法律用語でもございませんので、いろんな意味で用いられておるわけでございまして、
一般的には艦船の在籍港あるいは登録港あるいは家族の居住地あるいは活動上の根拠地というようないろいろな意味で用いられております。われわれとしましては、配置ということを考えます場合には、
米軍がわが国の
施設・区域を根拠または活動上の根拠地として駐留する場合を言うわけでございまして、ミッドウェーの場合にはそういう形態ではない、ミッドウェーの場合には、単にその乗組員がわが国に一部居住するということになりました、そういう問題であるというふうに考えております。
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) ちょっと突然の御
質問でございますので、その
内容はいま持ち合わしておりませんが、もしお差し支えなければ読み上げていただきたいと存じます。
-
○
秦豊君 私は持ち時間が非常に制限されているんで、だからちぎって投げるようなことを言っているんですよ。こんなことでどんどん時間とられる。じゃ、ちょっと用意してくれませんか、失礼ですけれ
ども、もう七分しかありませんし、持ち時間全体二十分なんですよ。だから、その程度はあなたが
御存じだと思うし、お手持ちだと思うから伺ったんだけれ
ども、今後の
質問に絡んできますから。ありませんか。これ読むと一分半くらいかかっちゃうんですよ。とてもそんなことできないです、ぼくは。四十四年四月二十四日、
衆議院本会議、恐縮だけれど引用していただけませんか。ぼくが読んだら残り時間五分になっちゃうです。そんな
質問できない。その程度はやってください。
-
-
-
-
○
秦豊君 横須賀は、じゃ、単なる軍港ですか、母港ですか。どう解釈されますか。
-
-
○
秦豊君 タスクフォースが
一つの港を根拠地にして恒久的に集結し使う場合は日本国への配置だと、愛知さん、はっきりこう言っているんですよ。この方がよほど素直な
答弁じゃないですか。どうなんですか。外務省、愛知さんははっきりそう言っているんですよ。行政の継続性でしょう、これこそ。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 愛知大臣が述べられたといまおっしゃいましたような考え方で、活動の根拠地として作戦行動をも含めて使うというのであれば、それは母港と言えるかもしれませんが、われわれの
認識は、ミッドウェーは、それはあくまで一時寄港でございまして配置とは考えておらない。ただ、乗員が一部横須賀の近辺に居住しておるということがございまして、その
関係で寄港回数が多くなっているだけであるというふうに考えております。
-
○
秦豊君 愛知さんの
答弁の方がはるかに
国民にわかりやすいと思う。あなた方のは詭弁だと思いませんか。どうなんですか、答えてください。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 行政の一貫性として、当時からわれわれはそういう
答弁をいたしておるわけでございます。
-
○
秦豊君 違う、違う。アメリカ海軍の規則では、オーバーホールができること、つまり艦船修理
機能、それから積んでいる弾薬をアンロードする、積みおろせることを母港化の条件にし、横須賀まさにぴったりだと、こう言っているんですよ。どうなんですか。だから母港にしたんですよ。寄港する港じゃないんですよ。
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) ミッドウェーその他の
米軍の艦船の大規模なオーバーホールは、横須賀で行われておるとは承知しておりませんで、これはやはり本国へ帰って行われておるものだと承知しております。
-
○
秦豊君
答弁の趣旨が違う。そんなこと聞いてない。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君)
米軍の
内部規則でどうなっておるかということは、私たちは必ずしもつまびらかにいたしませんけれ
ども、先ほどから申し上げておりますように、ミッドウェーの横須賀におけるおる状態は、われわれとしては配置であるとは考えておらないわけでございます。
-
○
秦豊君 あくまでもはぐらかす。ここには、すべてを
御存じだが、幸い黙っている人がいる、ここに。とにかく海軍規則では母港と認定しているんです、横須賀は。あなた方の言うことは詭弁なんです。そう思いませんか。どうなんですか。宮澤さん、いかがですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) この点は私も事務当局から経緯を聞いておるわけでございますが、まあ母港というようなものを法律的にわれわれは定義はしていない。たまたま横須賀に病院あるいは家族の一部がいるということは、それはもう御承知のようにわが国はそういう人たちを居住させるのには適当なところでございますから、よその場合、本国は別といたしまして、多少そういうことはございましても、あるいは小規模な修理等をいたすことがございましても、だからといって、ここに、ミッドウェーが配置されているというふうには考えていない、こういうふうに私は承知をしておるわけでございます。
-
○
秦豊君 今後の
審議の裏づけにしますから、じゃ資料請求をして、このアメリカ海軍規則、母港化の条件を政府側から提出願えますか。
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) いまのおっしゃいました海軍規則というのは、ちょっと漠然といたしておりますので……
-
-
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 海軍規則の中にそういう部分があるか、あるはずだと、こうおっしゃるわけです。われわれはそういうものがあるかどうかということを詳細承知しておりませんが、まず、あるかどうかということをアメリカに聞いてみたいと思っております。
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) これはアメリカの資料でございますから、向こう側として出せるかどうかはわかりません。もしそういうものが
現実に存在し、先方が提出が可能であるというならばそれをもらいますが、ただ、時間を切られましても先方の問題でございますから、その点は実際に調べた上でお知らせ申し上げたいと思います。
-
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) われわれとしては
現実にそういうものがあるかどうかということをまだ把握しておらないわけでございまして、そういう問題についてちょっと提出の約束はいたしかねますが、そういうものがあるかどうかということは照会いたします。その上で、
現実にあり、そして向こうとしても提出に応ずるということであるならば、われわれにそういうものをくれるということであるならば、それを取り寄せまして、適当な時期までに提出することといたしたいと思います。
-
○
秦豊君 慣例がわかりませんが、この部分については資料の裏づけがあるまで留保したいと思います。可能ですか。
-
-
○
秦豊君 留保したいと思うんです、
答弁がなっていないから。そういう手続が可能ですか。
-
-
-
-
○
委員長(
大谷藤之助君)
速記を起こして。
ただいまの資料については、先ほど来
山崎アメリカ
局長から
答弁がございました。その趣旨に沿ってできるだけ早くひとつ善処してもらいたい。御要望は
予算委員会中に間に合ったらという含みもございますが、間に合うか合わないかは先方との折衝の問題もございますから、御趣旨は受けとめてひとつ善処してもらいたい。
-
-
-
○
秦豊君 全部タスクフォースの解釈です、事前協議と。
-
-
○
秦豊君 つまり当時の
答弁、政府側の
答弁の方がはるかに素直なんです。わかりやすいんです。ワン・タスクフォースの概念もはっきりしているんです。
丸山さんたちに言わせれば、いまのミッドウェーはタスクグループとおっしゃりたいんですか。
-
-
-
-
○
秦豊君
外務大臣、きのう、日本にはけさ伝えられた藤山・マッカーサー了解問題については、報道を
御存じですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) アメリカ
局長からお答えを申し上げます。
-
-
○
秦豊君 日本とアメリカの事前協議についての了解は百八十度食い違っています。それは
認識されますか、あの報道で。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) われわれは、このいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解に関して日米両国の間で食い違いがあるとは思っておりません。また、けさの新聞に報道されました
内容に関しましても、果たしてアメリカ国務省のどういう責任のある人が言ったのかもわれわれとしては不明でございまして、この報道だけをもとにわれわれとしてはコメントすることは差し控えたいと思います。
-
○
秦豊君 日本は例の三項目をあげつらっているけれ
ども、アメリカは、核の持ち込み、日本からする戦闘爆撃機直接発進という以外は拘束されないと言っている。重大な食い違いと思いませんか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) われわれとしては、当時の責任者でありました藤山
外務大臣とマッカーサー大使との間の交渉において了解に達した点をまとめて、藤山・マッカーサー口頭了解として三項目を挙げておるわけでございますが、この
新聞報道は、そのうちの二点だけであるということを言って、そのジョンソン国務次官の一九七〇年一月の上院外交
委員会の
分科会における
発言を引用しているようでございます。しかしながら、これはわれわれとしましては、当時のジョンソン国務次官が事前協議の対象として、特に問題の多い核の持ち込みとそれから戦闘作戦行動に触れたものであって、これは
一つのいわば重要な事例であり、また重要な例示であったというふうに解釈いたしておるわけでございます。われわれはこの点からしましては、宮津大臣も御
答弁になっておりますように、この
内容については日米間では実質的に食い違いはないとわれわれは了解しております。
-
○
秦豊君 いや、あるのかないのかですね。藤山・マッカーサー口頭了解に対する政府見解の記録はあるんですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) これは口頭了解でございますので、そういうふうな
内部記録というものはございませんけれ
ども、ただ、従来国会の論議の際にこの点についていろいろお尋ねがございまして、
昭和四十三年四月二十五日に「日米安保条約上の事前協議について」と題して、
日本政府の了解を三項目にまとめて提出したものはございます。
-
○
秦豊君 それをここで朗読してください。膨大じゃないでしょう。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 政府が当時国会議員に提出いたしましたその資料は、題は「日米安保条約上の事前協議について」ということでございまして、
日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。
(一)「配置における重要な変更」の場合
陸上
部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動
部隊程度の配置
(二)「装備における重要な変更」の場合
核弾頭及び中・長距離、ミサイルの持込み並びにそれらの
基地の建設
(三)わが国から行なわれる戦闘作戦行動(条約第五条に基づいて行なわれるものを除く。)のための
基地としての日本国内の
施設・区域の使用
以上でございます。
-
○
秦豊君 いま読まれたのは政府見解の全文ですか、それは。
-
-
○
秦豊君 海軍に限定して伺いますが、かつてはエンタープライズの入港以前は、ワン・タスクフォースが事前協議の対象であった。確かにそうですね。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 政府は、従来から一機動
部隊程度の配置があります場合には、配置における重要な変更と考えて、これは事前協議の対象となるというふうに申し上げておるわけでございます。
-
○
秦豊君 じゃ、いま第七艦隊にはワン・タスクフォースは実在しますか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 先ほど申し上げましたように、いろいろなタスクフォースがございます。そこで、空母の打撃
部隊につきましては、いまのところ三隻の空母を中心にして、それぞれのタスクグループを編成しておるという状況でございます。
-
○
秦豊君 政府は、
現実つまり既成事実を守るために条約の解釈を変更してきている。エンタープライズ以来明らかに大幅に後退している。こういう
認識を持っているが、外務省はどうですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 政府としてはそういう
認識は持っておりませんで、安保条約締結当時から同一の
立場で御
答弁申し上げているつもりでございます。
-
○
秦豊君 それは違う。とにかくあなた方は、タスクフォースは事前協議の対象、だからタスクグループという言葉を編み出した。今度はタスクユニットにするでしょう、きっとあなた方は。何でも全部認める、そういう根底だと思うが、どうですか。どこに歯どめがありますか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 繰り返すようでございますが、われわれといたしましては、一機動
部隊、ワン・タスクフォース程度の配置があります場合には、配置における重要な変更であるということで従来から一貫して申し上げている次第でございます。
-
○
秦豊君 アメリカの空母はもう十五隻しかないんですよ。編成自体が身軽になっているんですよ。どこにあなた方の言うようなワン・タスクフォースが実在するんですか、挙げてくださいよ。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 御
質問の御趣旨がよくわからないのでございますが、空母を基準にとりました場合に、七艦隊につきましては、ワン・タスクフォース、そして三つのタスクグループというのがあるということで、そのほか、先ほど私御説明申し上げましたように、それぞれのタスクフォースの
機能、任務によりましていろいろなタスクフォースが七艦隊の中にはあるということを申し上げているわけでございます。
-
○
秦豊君 その機動
部隊、タスクフォース、グループについての見解は日米に共通していますか。同じ解釈ですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) タスクフォース、タスクグループというものは、その名が示しますとおり、任務によって構成されるわけでございますが、現在の一機動
部隊程度とわれわれが言いますことについての
内容については、日米間には食い違いがあるとは承知しておりません。
-
○
秦豊君 アメリカ側にもワン・タスクフォースの厳密な基準がないということは、じゃ
御存じですね。
-
○
政府委員(
丸山昂君) タスクフォースの基準は、厳密に申しまして、私
どもの承知する限りではないようでございます。先ほど私が七艦隊の編成について申し上げたわけでございますが、これはまあ一応公になっておらないので
名前を挙げておらなかったわけでございますが、たとえば直轄
部隊はタスクフォース70、それから哨戒偵察
部隊はタスクフォース72、それから機動後方支援
部隊がタスクフォース73、巡洋艦駆逐
部隊はタスクフォース75、潜水艦
部隊はタスクフォース78、両用戦
部隊はタスクフォース76、空母打撃
部隊はタスクフォース77、それから艦船海兵
部隊はタスクフォース79と、こういうことで、それぞれ、これで七艦隊の中にたくさんのタスクフォースがあることがおわかりいただけるかと思います。
-
○
秦豊君 ならば、ミッドウェーを中心にするグループはどこに入るんですか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) これも先ほど御説明申し上げましたように、空母打撃
部隊、タスクフォース77の中に空母打撃群といたしまして、ミッドウェーの場合にはタスクグループ77の一、それからコンステレーションがタスクグループ77の2、それからエンタープライズがタスクグループ77の3という
名称で呼ばれておるわけでございます。
-
○
秦豊君 そのタスクグループという呼称は、アメリカ海軍の正式な呼称ですか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 私のほうの存じておりますのは、アメリカもこのように呼んでおるように聞いております。いわゆる正式の
名称であるかどうかという御
質問に対しては、はっきりとお答えができないと思います。
-
○
秦豊君 ミッドウェーグループというのは分遣隊ですか。どの本隊の指揮下にありますか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) このいわゆる軍令と申しますか、命令系統の出てまいります場合には、それぞれその命令に応じまして編成ができまして、そしてタスクグループというかっこうになるわけでございまして、その場合に、どの
部隊と統合いたしまして
部隊運用をするかということは、そのときの命令の
中身によるわけでございまして、七艦隊はいま申し上げましたような一応のタスクフォースのグループに分かれておりますけれ
ども、具体的にそれぞれの作戦をやる場合には命令系統がはっきりと付与される、こういう形になっております。通常はもちろん七艦隊司令官の指揮下に入っておるというふうに理解をいたしております。
-
○
秦豊君 ならば、防衛庁としても、タスクフォースの概念規定がはなはだ流動的であるということぐらいはお認めになったわけですね。
-
○
政府委員(
丸山昂君) タスクフォースそのものについては考え方は同じでございますが、
中身がいろいろ変わるということを申し上げたわけでございます。
-
○
秦豊君 では、さっきの藤山・マッカーサー了解に返ります。あの日本国が挙げた三項目についてはアメリカ側は一〇〇%合意しているんですね、外務省。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) この点に関しましては、アメリカ側は従来からこの
内容については実質的に同様の了解をしているわけでございますけれ
ども、実は
衆議院の段階におきまして、鈴切
委員からその点について明らかにしてほしいというお話がございまして、宮澤大臣から、それじゃ念のためにアメリカ側に問い合わせてみるということになっておりまして、ただ、向こう側の
内部手続の
関係上まだ時間はかかっておりますけれ
ども、いずれ正式に回答が参るということになっております。
-
○
秦豊君 いまの
山崎さんのおっしゃり方、ちょっとよくわからないのですが、じゃ十何年間、そんなあいまいなことでもって押し通してきたわけですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 実は、われわれといたしましては、これはもうはっきりしておって、アメリカ側に問い合わせるまでもないということでございました。そういうことで御
答弁申し上げたこともございますが、
衆議院の
審議段階におきまして鈴切
委員からいろいろお尋ねがあり、大臣から、実質的にアメリカも同様に了解をしているのだけれ
ども、じゃ念のために聞いてみましょうということをおっしゃったわけでございます。
-
○
秦豊君 じゃ、ジョンソン国務次官の背景説明の方が間違っていると、こうおっしゃりたいわけですか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) ジョンソンの背景説明ないしサイミントン
委員会におきます説明は、いわば
質問に答えて例示的に重要な問題について言ったのであって、両国間の了解を全部カバーした説明ではなかったとわれわれは了解しております。
-
○
秦豊君 じゃ、そのアメリカ側の言う核兵器の導入というものについて、当時から
日本政府はどう理解していましたか。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 先ほど私が読み上げましたように、「装備における重要な変更」というものの
内容は、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの
基地の建設というふうに理解しておるわけでございます。
-
○
秦豊君 ならば一時通過は、トランジットは頭から入っていませんね。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) われわれといたしましては、そういう核に関する武器が日本の領域内に持ち込まれる場合には、事前協議の対象になるというふうに考えております。
-
○
秦豊君 ならば、テリトリーの中に入ってくるならば一時通過が含まれるという解釈ですね。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) 日本の領海を含めて日本の領域内に持ち込まれる場合には、事前協議の対象になると考えております。
-
○
秦豊君 ジョンソン国務次官はそうは言っていない。この辺は詰める必要があるとお思いですか。詰めなきゃならぬでしょう。
-
○
政府委員(
山崎敏夫君) ジョンソン次官のサイミントン
委員会における問答は、先方の議会における問答でございまして、それを一々われわれとしてはコメントいたしかねますけれ
ども、日米間の了解としては先ほどから私が申し上げたとおりでございます。
-
○
秦豊君
外務大臣、きのうの一番新しい報道に即して、改めてアメリカ国務省筋の見解をただすという気持ちはおありですか、ありませんか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは実はこのようなことになっております。先ほど
政府委員が申し上げましたように、
衆議院で鈴切
委員のお尋ねがございまして、もう一遍確かめておいた方がいいぞということで、私も、十五年もたっておりますし、日本では余りそういうことをお互い、深くは存じませんけれ
ども、十五年たちますと、やはり用語も異なるでありましょうし、概念も違ってまいるでございましょう、アメリカ側のいまの軍事体制から申しますと、技術の進化から申しますと。それで、それではこの際改めましてアメリカ側に照会をいたすことにいたしますと申し上げまして、ただいま照会をいたしておるところでございます。そこで、私
どもはいずれアメリカ側から正式な答えがあろうと思っておるわけでございますので、もし
秦委員の言われますことがその点でございましたら、それは実は
衆議院でもお約束をいたしまして、ただいま照会をしておるところでございます。
それから、昨日報道がありましたことにつきましては、たまたま私
ども照会中のことでもございましたので、何かそれに関連のあることでもあろうかと思いまして、昨晩じゅうにどういう事態であったかを実は別途に問い合わせたわけでございます。その結果、アメリカ側から参っております答えは、国務省の責任ある者が本件についてこの段階でコメントするとは考えられないということでございました。他方で、しかし報道そのものは責任のある報道機関がおやりになったことでございますので、もちろんそのニュースソース等は報道機関としては秘匿をされなければならない、そういう
立場も私
どもにはよくわかりますので、それがどのようにして生まれてきたかについてはこれは申し上げるべきでないと思うのでございますが、私
どもは正式に国務省に照会をいたしまして、国務省の責任ある者がそのようなコメントをしたことはないという回答を得ております。
-
○
秦豊君 官房
長官に伺いたい。とにかく先ほどから官房
長官、中座されている間にも、はなはだしくこの事前協議と
現実の乖離が目立つ。
日本政府の態度としては行政当局として非常に怠慢であるし、ルーズであると私は言いたい。すべて玉虫色の解釈が、アメリカはアメリカ、日本は日本、これでは
国民の不安は増すばかりである。この際に、ほかならぬ三木政権の誕生である。この際徹底的にやはり日本とアメリカとの間のいわゆる安全保障をめぐる問題の再検討のポイントとして、事前協議条項というものを徹底的に洗い直すおつもりはないかどうか。かつて
福田外相は運用の面は日米安保協議会で洗うと言ったが、三木政権としてはそういう用意があるのかないのか、決意と方針を伺っておきたい。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) 私、中座をいたしまして、秦さんの御
質問の全貌を伺っておられませんでしたが、恐らく外務省、防衛庁当局からそれぞれお答えがあったことと思うのであります。そこで、私はそれに尽きると思うんですが、あえて私にも見解を求められたわけでございまして、事前協議制の運用に際しまして
日本政府がとっております基本的な態度は、これは言うまでもなくわが国益を確保する、こういう見地から具体的な事案に即しまして自主的にその都度判断をし、事前協議におけるあるいは諾否を決定する、こういう態度で来ておることは言うまでもございません。何といいましても、国益ということはわが国の安全を確保する、こういうことでございますから、この基本
認識のもとに、極東の安全に関連をするというふうな事態を常に念頭に置きながら判断をいたしまして、わが国の安全に直接また密接な
関係を有するかどうかという見地から対処をするという方針でおるわけでございまして、きょうそれぞれの当局から
答弁があったことと思いますが、わが国の安全保障につきましては慎重な態度で安保条約の運営をいたしてまいりたい。したがいまして、事前協議につきましては、従来の態度を変更する必要はないと、こう考えておる次第でございます。
-
○
秦豊君 ことごとく不満であるけれ
ども、これは非常に古典的な論議であって、やはりこれは事あるごとに野党としては追及のポイントになろうと思う。
最後に、
一つ確認をしておきたいんだけれ
ども、防衛予算の組み方の前提として、いまの制度では、統合幕僚会議で作成をする統合年度防衛計画、それから陸海空各幕僚監部でつくっている年度防衛警備に関する計画、これが大きな基盤ですね。
-
○
政府委員(
丸山昂君) ただいまお挙げになりました統合幕僚監部でつくります年度防衛計画、それから各幕でつくります年度防衛計画、これはこの年度において有事の際に現兵力をもってどういうふうに対処するかという計画でございまして、これは長期の計画の中から予算その他で
現実のものが決まってくるわけでございまして、そういうベースを基礎にして計画を立てるわけでございまして、ただいまの先生の御説明の趣旨から言うと逆でございます。長期の計画がもとになり、それがもとになって年度年度の予算案で御
審議をいただいて、実際の整備を進めまして、
現実にでき上がりましたものを基盤にして、来るべき年度において、もし一朝有事の場合にどういうふうにこれに対処していくかということを計画をいたしますのが年度の防衛計画と、こういうものでございます。
-
○
秦豊君 そうすると、私が申し上げたのは、いわゆる軍令事項に含まれますか。
-
○
政府委員(
丸山昂君) ただいま私
どもの機構は、いわゆる軍令、軍政という形に分かれておりません。したがいまして……
-
-
○
政府委員(
丸山昂君) したがいまして、それを強いて分けるということになりますれば、いわゆる軍令の方になるかと思います。しかし、
現実には私
ども軍令、軍政は分かれておりませんので、念のために申し上げておきます。
-
○
秦豊君 そうすると、年度ごとの防衛予算というのは、そういう業務計画を踏まえてということになりますね。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 御案内のように、長期の防衛計画がございまして、その長期の防衛計画は年度年度の経済財政事情、その他国内の
一般施策、こういうものとの均衡を考えて決定してまいるということになっておるわけでございます。
-
○
秦豊君 あなた方は、じゃ、いまユニホームの方が考えていることその他を含めて、すべてを把握していらっしゃるという自信をお持ちですね。
-
○
政府委員(
丸山昂君) 自信ということになりますと主観的な問題になりますので、あれでございますが、私
ども、努めて文民統制の実を上げるために、制服レベルで考えていることを把握してまいりたいと考えておるわけでございます。
-
○
秦豊君
防衛庁長官も
外務大臣も、場合によっては総理も
御存じないことを統幕議長が
御存じのことがあり、しかも毎年、日米間にはサインのしない文書があって、たとえば国防当局間のユニホーム同士の作戦取り決めに類する年度ごとの総合打ち合わせが行われているというふうなことは
御存じでしょうね、当然。
-
○
政府委員(
丸山昂君) これも十分御承知のように、幕僚レベルにおきます日米間の研究と申しますか、これはやっておるわけでございまして、いまおっしゃるような取り決めというようなものは私
ども存じておりません。
-
○
秦豊君 取り決めでなくとも、研究があるということですね。われわれは単純に表に出てきた防衛予算を
審議している。しかし、それは氷山の頭である。海面上である。やっぱりもぐった分がかなり多いという認定を持たざるを得ない。さんざん
質問をしても、アメリカ軍の配置
一つ、移動
一つわからない。このような防衛外交当局に一体何が可能か。一体何が事前協議か。むしろぼくは
質問をすればするほど疑惑を深めた。
時間がないから、最後にこれは提案として、やはり防衛予算
審議のある段階で、たとえば陸上の三好さん、海の鮫島さん、その他幕僚長を呼んで、どうしてこの兵器が必要なのか、なぜか、どういう作戦想定か、どういう運用か、こういうものを知らないで、甘い議論、空回りする議論をしても、ぼくは意味がないと思う。国会の防衛論議が甘いのは多分にそういう面がある。幾ら聞いても、わかりません、所管じゃありません、いいえ、御心配なく、こんなことでぼくは防衛論議が深まるはずはないと思う。やっぱり、場合によっては、かつて源田氏がFXに関連して呼ばれた例はあるけれ
ども、防衛予算の
審議の要所要所には、各幕ないし統幕のユニホーム、しょっちゅうアメリカ側と打ち合わせをしてホットな情報を大臣よりも
局長よりも持っている人間の、生の感覚と情報というものをわれわれは対象にして突っ込んだ論議をすべきであると思うが、どうですか。――
防衛庁長官、たまに答えてくださいよ。
-
○
国務大臣(
坂田道太君) 私は、かねがね日本の国益、その最大のものはやはり安全保障だと考えます。そのために防衛論議というものが国会におきまして論議されるということは先生の御指摘のとおりだと思うので、私ここにおりまして申し上げることではないかと思いますが、できるならばこの国会におきまして常任
委員会あるいはまた場合によっては特別
委員会で、日本列島をめぐるところの軍事情勢、刻々に変化するいろいろの情勢を把握する、あるいは議論をしていただく、そのことがやはり国益に通ずるものではないだろうかというふうに思っております。
それからもう
一つは、国防会議につきましても、あれが発足いたしました当時におきましてはかなり活発な論議が展開されておった。安全保障の中における防衛とは何だということで、幕僚等も参りまして御説明を申し上げたりなんかしておったように記録にはございます。しかし、最近この十年ばかりは、どうもそういう論議がなされておらないというようなことを踏まえまして、私はせっかくできておりまするこの国防会議も、やはり、三木総理を中心とし、大蔵大臣あるいは
外務大臣、それから経済閣僚の、いまの大臣で申しますと
福田大臣、それに私が加わりまして、いろいろ論議を重ねることが国益に通ずる道であり、日本の独立と平和とを守るゆえんではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
-
○
秦豊君 時間ですからやめます。そして、最後に
委員長にお願いしたいのですけれ
ども、先ほどのアメリカ海軍規則等を含めた資料提出は善処をしていただきたいのと、それからわが党から正式に出しますけれ
ども、これほど疑惑を深めている
米軍基地を、国際法優先、国際取り決め優先といういわゆるパターンに閉じ込もらないで、やはり国会が
国民の不審にこたえる、不安にこたえるという大きな責務を負っている機関なんですから、
岩国であれ、横須賀であれ、あるいは沖繩、横田であれ、われわれが
基地に立ち入り
調査をする、そして少しでもいいから
国民の疑惑にこたえるというふうな
調査団を――アメリカに行く話はすでに起こっているようですけれ
ども、アメリカに行くことも大事ですけれ
ども、やはり国内
基地について絶えざる監視と点検を行うこともなお必要であると思う。そういう点については改めて党として正式に提案をしますから、
委員長におかれてはよろしくお取り計らいを願いたいと思います。
最後に要望をして、
質問を終わりたいと思います。(拍手)
-
-
-
○
政府委員(
丸山昂君) 先ほどの
岩国の掲示板に出ております略号でございますが、
ATCO、これはエア・トランスポート・コーディネーティング・オフィサーということで、空輸調整担当官というようなもののようでございます。
それからEWO、これはエレクトロニックス・ウォーフェア・オフィサーということで、電子戦担当官というような意味合いのもののようでございます。
それからもう
一つ、
SIOPというものがございますが、これは照会しておりますけれ
ども、担当官がおりませんので、まだはっきりしたことがわかりませんが、引き続いて
調査をいたしまして後ほど御連絡を申し上げたいと存じます。
――
―――――――――――
-
-
○工藤良平君 これは
外務大臣にちょっと一問だけお伺いいたしますが、近くパリでチリ債権国会議が開かれるようでありますが、イギリスを初めとして若干不参加の国もあるようですが、日本としてどういう態度で臨まれるか、その点をちょっとお伺いしておきたいと思います。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) ちょっと調べましてお答えをいたしたいと思います。
-
-
-
○工藤良平君 それじゃ大蔵、経金を中心にお伺いしてまいりたいと思いますが、近く公定歩合が引き下げられるような予定がなされておるようでありますけれ
ども、今後の景気の見通しについて若干お聞かせいただきたいと思います。
〔
委員長退席、理事
柳田桃太郎君着席〕
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 公定歩合のことは、これは日本銀行が判断して決めることで、私
どもが介入する問題ではないんです。
景気の方は、大体、不況現象ですね、これが底をついたと、こういうような指標が出てきておるわけです。もちろん、業種によりましてはでこぼこ、まちまちでございまして、かなりまだ楽観を許さないものもある。不況が底をつけば、これは経済循環から言いますると景気は上昇過程に転ずるはずでございまするが、今回はどうもそういうふうにいかないと思うんです。つまりV字型現象でなくて、なべ底現象、こういうような情勢になりそうだと。そこで、今日のこの不況状況というものが、これはかなり続くのではあるまいか。そういう中において雇用情勢は非常に悪化しておる、また減産、操業短縮、こういうようなことも非常に顕著な状況でございます。さような状況のもとにおきまして、政府といたしましては、どうしても一方においては物価を鎮静させなければならぬ、しかし、同時に、経済が非常な落ち込みになって、そして社会を不安にするというようなことがあっては相ならぬ、そういうふうに考えまして、物価の今後の情勢に深甚な配慮をしながら、同時に、景気がなるべく速やかになだらかに、急激じゃ困る、なだらかに回復過程に転ずる、そういうことを念願しながら施策を進めておる、こういうのが現況でございます。
-
○工藤良平君 現在、一月から三月にかけまして公共投資の年度内の消化、あるいは民間の在庫調整につきましても五月から六月にかなり活発になる、こういうようなことが言われておりますし、さらに公定歩合の引き下げというようなことがやはり物価に相当影響するのではないかと、このように思うのですが、その点心配ございませんか。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) ただいま申し上げましたような今日の経済状況に対しまして、業界といいますか、財界といいますか、景気刺激政策に転換せよと、こういうような声もあるんです。これにはもちろん耳を傾ける必要はあります。ありますけれ
ども、これはいま私
ども政府とし、また日本国として当面しておる問題は二つあるわけです。
一つは、この当面の問題、つまりインフレのない景気状況というものを実現しなければならぬ。インフレを何としても抑え込み、そしてその上に立って経済を安定させなければならぬという、こういうまああれだけの大混乱の後の戦後処理的な問題が
一つあるわけです。同時に、もう
一つある。それは、世界情勢が非常に大きく変わってきておるわけです。さま変わりと、こう言ってもいいくらいな状況です。その中におきましてわが国の今後の経済運営をどうするかというと、いままでの高度成長ス
タイルではもうやっていけない。やっぱりこれは静かな控え目な、そういう成長路線への転換を必要とする、こういうことになる。この目標も大きく踏まえなければならぬ。ですから、いまわれわれは、この混乱を収拾すると同時に、いわゆる安定成長路線、静かな控え目な成長路線への日本経済の軟着陸、これをねらわなければならぬと、こういうわけでありまして、さようなことでありますので、財界等で刺激政策刺激政策とは言いまするけれ
ども、これをまたここでその要請を受けて真っ正面から取り組むというようなことになれば、これは取り組むことはいとも簡単でございまするけれ
ども、しかし、また過去のような高成長というようなことにならぬとも限らぬ。そうなったらこれは大変なことになるわけでありまして、その両面を注意しながら、まあ綱渡りをするというような気持ちで経済運営に当たっておるというのが現況でございます。
-
○工藤良平君 そこで、公定歩合の引き下げがありましても窓口規制は緩められないと。したがって、大口の融資規制が今後さらに制限をされるというような予測から、企業の資金調達が、直接借り入れという形で、たとえば事業債あるいは転換社債、外債、インパクトローン、あるいは増資という形に非常に変化をしていっているということが言われているわけですが、この点について現状どうなっているか、さらにそれに対して基本的な考え方をお伺いをしたいと思います。これは大蔵大臣。
-
○
政府委員(藤井淑男君) 最近における事業債についての状況を報告せよという御
質問と思われますので、数字的なことを私から御説明申し上げます。
昭和四十九年度の事業債は、三月が大体もう決まりましたので、年度間を通じまして電力債が六千五百四十億円、
一般事業債が三千三百二十七億円で、合計で九千八百六十七億円ぐらいになると思われております。
それで、今後の事業債の
関係でございますけれ
ども、先般来大口融資規制の実施が行われておりますし、大企業が特に基幹産業等が今後必要な設備投資をやってまいります場合に、起債に頼る場合が多くなると思われます。その場合、五十年度の起債の需要というものは、まだ起債
関係者の間でいろいろと検討中でございますけれ
ども、先ほど申し上げました大体四十九年度が約一兆円でございます、九千八百六十七億円、これよりも相当上回る数字がいま業界の間では出ております。新聞等にございますように、これが一兆八千になるとか、あるいは一兆四千になるとか、いろいろな数字がございますが、これはだんだん時間がたってまいりませんとはっきりいたしませんが、いずれにしましても四十九年度よりは多くなるという感じでございます。私
どもといたしましては、起債額がふえてまいるのは当然だということでございますが、総需要の抑制政策の枠内において、直接金融によってそういう資金が調達される方が銀行借り入れよりも好ましい観点もございますし、市場の許す範囲において、また総需要の抑制の政策の程度に応じて総起債枠を除々に増加させていく、そういう感じで対処してまいりたいと思っております。
-
○工藤良平君 外債やインパクトローンによって外資が入ってくるということになると、当然これは円高、ドル安という形になると思いますが、その点についてはどのような考え方でしょうか。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、若干の有利な引き合いがいまアメリカ市場等を中心にできておりますこと、御指摘のとおりでございます。私
ども、これを特にいま抑制はする必要はないと考えております。何となれば、これが円転――円に転換いたしましても、全体として総需要抑制のフレームの中での窓口規制はちゃんと手綱を締めておりますので、そういうインパクトローンを通じて取り入れてまいりましたものはちゃんと勘定に入れて考えておりまするので、若干のインパクトローンの取り入れに成功いたしましても、それが金融の不当に緩慢を招来するというようなことのないように気をつけておりまするし、今後も気をつけてまいるつもりでおります。
〔理事
柳田桃太郎君退席、
委員長着席〕
-
○工藤良平君 通産省にこれはお伺いいたしますが、通産省としては、鉄鋼などを初めといたしまして所管の十三業種に対しまして設備投資の全開をしようというようなことがすでに決定をされたようでありますが、そういたしますと、そのための資金調達という面からさっき申し上げました社債あるいは大口融資の枠の規制を緩和するということが当然要求として出てくると思いますが、その点、通産省、それから大蔵省と、それからこれは経済企画庁も大変
関係があるわけですけれ
ども、それぞれひとつ考え方を聞かしていただきたいと思います。
-
○
政府委員(
和田敏信君)
昭和五十年度の民間設備投資につきましては、現在
調査を行っておるところでございます。四月中旬にはその結果がまとまる予定でございまして、その結果を産業構造
審議会産業資金部会に諮った上で、今後の民間設備投資に対する通産省の最終的な指導方針を決めると、こういう手順で進めております。ただいま副総理からお話がございましたように、通産省としても、もとより総需要抑制というフレームワークの中で事を考えてまいろうと考えておる次第でございますが、各種金融機関等の最近の
調査によりますと、投資意欲が相当減退をいたしておるようでございます。また、中長期的な需給バランスを図るという観点に立ちますと、これまで行ってまいりましたところの有効需要削減のための厳しい設備投資抑制につきましては今後は弾力的に考える必要が出てくるのではなかろうかと、このように考えておりますわけでございます。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 全体として通産省がいま言われたとおりでございますが、ただ、省エネルギー投資、あるいは公害防止投資、そういったものにつきましては特に気をつけて開銀その他を通じての配慮は考えてまいりたいと思っております。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 両当局から申し上げたことで尽きるわけですが、いま設備がかなり過剰の状態です、全体的に見まして。もう二割、三割操短というようなところが非常に多いわけです。一昨年ぐらいな段階では、日本経済のこれからは大変すばらしい発展をするだろうというので、先を見越してかなりの投資をしておる。設備がそういうような状態で過剰になってきているという一面もあるわけです。そこへもっていって総需要抑制政策だという両面から設備過剰状態でありますから、大局的に見ますと、設備投資意欲というものはそう起こってこないだろうと、こういうふうに思いますが、しかし、これから日本経済はまあ低成長でありまするけれ
ども成長経済政策をとるわけでありまするから、したがって、この二、三年後なんかを展望いたしてみまして、業種によりまして設備が不足しておるというような事態が起こるおそれもあるわけなんです。そういうことを考えますと、いまのうちに時間のかかる設備投資につきましてはもう手をつけておかなければならぬという業種も出てくるわけでありまして、そういう観点からの設備投資ということ、それからただいま大蔵大臣が申し上げましたように、公害防止でありますとか、あるいは近代化投資でありますとか、あるいは構造改善投資でありますとか、そういうものにつきましては、これはこの際政府としても便宜を与えると、こういう姿勢で臨むべきであるとこういうふうに考えております。
-
○工藤良平君 いまもお話がありましたけれ
ども、私は今回のこの通産省の方針である設備投資の全開ということは非常に危険な要素も伴うだろうと予想しなきゃならぬと思いますし、もちろん景気の底上げということも必要だということは私は了解いたします。ただ、問題は、先ほど指摘をいたしましたように、資金調達が社債とかそういう直接導入の方向に移行するという過程の中で、特に金融機関に対する指導監督というものは私は非常に重要になってくると思う。それは、過去四十六年以来の異常なインフレの中で非常に大きな弊害を残してきた
一つの中には、私は金融機関の問題があるような気がいたします。これは後ほど私は具体的にこれから議論をしてまいるわけで、その前段として特にこれはこの際指摘をしておかなきゃならぬという事項じゃないかと思いますので、この点について大蔵大臣からひとつ御見解を伺っておきたいと思います。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 金融機関は、仰せのように、社会的な責任を持った企業体でございまして、それだからこそ免許営業になっておるわけでございます。したがって、これが健全な運営を図ることは、金融機関自体の責任でもございますが、それを保障してまいる金融行政のわれわれの責任でもあると思います。ただ、いま御指摘のように、ここ二、三年前異常な流動性が見られました段階におきまして、金融機関自体もいまは反省いたしておりまするけれ
ども、レジャーあるいは土地投資等に狂奔いたしましたきらいがなかったとは言えないと思うのであります。そういった点は、今日ではそういう弊風は私は是正されておると思うわけでございますけれ
ども、一層戒めてかからなければならぬのは、仰せのとおりだと思っております。
-
○工藤良平君
委員長、
外務大臣の
答弁をいただいて、あとは具体的なやつは午後に譲りますから。
-
-
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどお尋ねの件でございますが、ただいま
調査いたしました。
チリ債権国会議が、パリにおきまして、二十五日、二十六日――これが現地の日付でございますか、日本の日付でございますか、ちょっとはっきりいたしませんが、いずれにしても、今明日というようなことでございます――開催の予定でございましたが、議長国でございますフランス政府の決定で無期延期となった由でございます。
これにつきましては、参加予定でありました十二カ国のうち六カ国が不参加を表明いたしまして、わが国といたしましては、本来本件はチリ国に対する債務の救済という意味合いのものであると考えておりましたので、西独等と一緒に、米国もさようでございましたが、参加の意向で考えておりました。しかし、六カ国が不参加というようなことを申し出てまいりましたので、無期延期となった由でございます。
なお、六カ国が不参加を申し出ました理由は、ただいまの時点で必ずしもはっきりいたしておりませんが、恐らくチリの国内における人権問題等の関連ではないかと想像をいたしておる由でございます。
-
○
委員長(
大谷藤之助君) 午後二時まで休憩いたします。
午後零時五十四分休憩
―――――・―――――
午後二時二十分開会
-
-
○工藤良平君 それでは、先ほどに続きまして金融
関係について具体的に進めていきたいと思います。
近ごろ、金融
関係に対する苦情が非常に起きておりまして、銀行被害一一〇番なんというようなものもできて、かなりこの運動は広がっておるようでありますが、大蔵省としてこの点についてはどのように把握をしていらっしゃるか、まずお聞きをしたいと思います。
-
○
政府委員(高橋英明君) ただいま御指摘のような一一〇番というような運動がございまして、消費者運動の
一つの動きとしてございます。それで、実は昨日そこでの中間報告というのをちょうだいいたしまして一々拝見いたしておるわけでございますが、たくさん寄せられました苦情、私全部は覚えておりませんが、預金の受け払いに間違いがあったとか、そういうようないろいろ銀行の末端の第一線におきまするサービスに誠意を欠いたといいますか、あるいはミスがあったというようなことが多く指摘されております。もちろん、このことは断じていいことではございませんので、そういう消費者あるいはお客さんの苦情を待つまでもなく、そういうことがないように、絶滅するようにというようなことで指導してまいりたいと、かように思っております。また、そういう
国民からの指摘に対しては謙虚にこれを受け入れて、そして銀行も率先して改めていくようにと、このように指導したいと思っております。
-
○工藤良平君 金融機関の業務
内容というのは、大体どういうことでございますか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 一番中心になっております銀行で申しますれば、銀行とは、預金の受け入れをなすもの、あるいは手形の割り引きをなすもの、あるいは金を貸すこと、あるいは為替取引をなすこと、こういったことが本来の業務ということになっております。それ以外に付随業務といったようなもので、保護預かりとか、あるいは株式の払い込み事務だとか、一連の本業に付随して行われるといったようなものを付随業務として認めております。
-
○工藤良平君 特に禁止されている事項というのはどういうことになりますか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 明らかにこういうことをやってはいけないというような禁止の規定はございません。
-
○工藤良平君 それでは、銀行のサービス業務というものと銀行業務というのは非常に微妙な問題があると思いますけれ
ども、近ごろたとえば土地取得とか、あるいはゴルフ場の問題とか、そういうものがたくさん出ておるようです。この前も金融公庫が、これは上田哲議員の指摘で建設会社と一緒に広告を出すということで、これがサービスかどうかという問題で私
どもはちょっと指摘したのですけれ
ども、そういう点の範囲はどのように理解したらよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(高橋英明君) サービスといいますけれ
ども、先ほ
ども申し上げました本業ないし付随業務といったようなものがそもそもサービスであって、それ以上のことはまあ余りやらない方が無難であるというふうには思いますけれ
ども、サービスという御
質問の御趣旨がちょっとよくわかりかねるのでございます。
-
○工藤良平君 それじゃ、これから具体的にサービスの
関係についていろいろ
質問をしていきたいと思います。
まず最初に、私は二つの問題について、相互銀行の問題とそれから海上火災の
関係から、これが一体法律上に許されているものかどうかということで
質問していきたいと思うのですが、具体的に申し上げます。
東京海上火災が子会社の再建策をめぐって債務保証しているというようなことが、実は私
どもいろいろな
関係から耳に入っているわけでありますが、そういうような場合に、これはどういう範疇になりますか。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。ただいま御指摘の点は、東京海上の東海不動産に対する債務保証の点かと思いますが、この点、東京海上は東海不動産に対して貸し出しはしておりますが、債務保証は現在のところ行っておりません。保険業法上、債務保証を
一般的に行いますことについては、これは解釈としては認められないということになっておりますが、ただ、一定の条件あるいは枠内であればこれを認める場合もあり得ると、このような保険業法上の解釈になっております。
-
○工藤良平君 いまお話がありました東京海上の子会社の東海不動産でございますが、これは資本金が幾らで、そして現在の業務の実績をちょっとお知らせいただきたい。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。
東海不動産の資本金でございますが、資本金は現在三億円でございます。それから、これは四十九年一月から十二月三十一日までの営業の実績でございますが、営業収入は百四十一億と、このようになっております。
-
○工藤良平君 この東海不動産が経営が不振に陥りまして、社長が交代をしておるようでありますけれ
ども、現在これは公表できませんかわかりませんけれ
ども、負債をどの程度抱えているか。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。
東海不動産は、先生御指摘のとおり、不動産業務を余りにも拡大いたしましたために放漫経営で経営不振に陥っているわけでございまして、四十九年の八月に社長が交代いたしまして再建に乗り出しておるわけでございますが、そのときにおける発表では負債は三百三十二億円と、このようになっております。
-
○工藤良平君 その借り受けた先の銀行はどういうところですか。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。
借入金の債務先は、金融機関にして三十何社ございますが、そのうち主として大きな借り入れ先でございますけれ
ども、東洋信託、それから不動産銀行、三菱銀行等となっております。
-
○工藤良平君 昨年の暮れに経営が不振に陥りまして、百数十名の社員のうち六十人の首切りがあった。そのうち社員の増資積立金というものがかなりあったようですが、この返済の問題をめぐって従業員と会社との間に問題があったようですが、その間に東京海上がどのような措置をとったか、お伺いいたしたい。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。
御指摘の点でございますが、東海不動産は、かつて社員の持ち株を奨励するために、社員に株式の額面相当額の積み立てを行わせていたわけでございますが、先生御指摘のとおり、昨年末、希望退職を募りまして退職者が出たわけでございます。その場合の退職者は五十三名ございまして、この株式の持ち分を持っている退職者が五十三名でございまして、一万五千七百株、七百八十五万円であったと聞いております。これにつきましては、株式の評価の問題がいろいろあったようでございますけれ
ども、結局ことしの一月になりまして全額が支払われたと、このように聞いております。
-
○工藤良平君 それではもう
一つお聞きいたしますが、この東海不動産が経営不振に陥ったということから、東海不動産の資産のこの土地について、東京海上がかなり取得をしているというように私
ども聞いているのですが、その事実はございますか。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。
東京海上は御指摘のとおり、四十九年の八月以降東海不動産に対する救済に乗り出したわけでございますが、東京海上以外の金融機関からは、救済融資といたしまして現在までに約十億五千万ほどの借り入れが行われたわけでございます。これに対しまして東京海上自体、実は当時四十八年、たとえば十二月で申しますと、東海不動産の総借り入れが百六十七億ございましたけれ
ども、うち東京海上の貸し出しは二億八千万しかなかったわけでございます。普通、メーンの金融機関といたしましては、自社からの貸し出しにつきましては、このような救済融資を行うような場合には金利の減免を行うのが通例でございますけれ
ども、いま申し上げましたように、東京海上自体の貸し出しが非常に少ないものでございますから、その効果が余りないというふうに判断されたわけでございます。そこで、東京海上といたしましては、融資にかえまして不動産の買い取りを行ったわけでございまして、これは不動産の一時肩がわり、あるいは実質的には譲渡担保のような意味で行われたと、このように聞いております。その金額といたしましては四件で四十億ほどであったと、このように聞いております。
-
○工藤良平君 その不動産の表示について、これはきょう資料は無理でしょうけれ
ども、私これは後日また大蔵
委員会でも出てやりたいと思いますので、提示いただけますか。
-
○
説明員(徳田博美君) 東京海上の買い取りました不動産の明細については、後刻提出いたしたいと思います。
-
○工藤良平君 いまお話しのように、不動産の売買に当たりまして東京海上が介入しているようなきらいがずいぶんあるようでありますが、このような不動産の取得が法的に問題ないのかどうか、その点はどうでしょう。
-
○
説明員(徳田博美君) お答えいたします。
損害保険会社の不動産取得につきましては、御指摘のとおりいろいろな規制がございまして、
一つは、保険業法施行規則に基づく規制でございます。これは不動産の取得額は総資産の二〇%以内でなければならないと、このようになっておりすす。東京海上におきましては、総資産が四十九年三月末で四千九百九億円ございまして、これに対しまして不動産が四百七十億円、したがいまして、この比率は九・五九%でございます。これに対しまして、四十億の比率は大体一%程度でございますので、保険業法施行規則に基づく基準の中におさまっているわけでございます。それからもう
一つ、さらにこれに加えまして、通達でやはり同じように不動産の規制をしておりまして、これは自己資本の八〇%という規制になっているわけでございますが、これも同じく四十九年の三月で東京海上の自己資本は九百六十五億円ございまして、この比率が四八・七七%になっております。同じく四十億円の比率が四%程度でございますので、これを加えましても指導基準をかなり下回っていると、このようなことになっているわけでございます。
ただ、いずれにしても、このような事情で取得した不動産でございますので、経済情勢が好転し次第早急に処分するように指示しておりまして、その場合には、地元の地方公共団体と十分協議の上公共性を優先して処分するように、このように指示をしております。
-
○工藤良平君 私の
調査では、もっと多額の不動産を取得しているように実は把握しているわけですけれ
ども、その点についてはずいぶん違いがありますが、これはまた後日改めて私は資料の提出を求めて検討していきたいと思います。
それでは、次にもう
一つお伺いいたします。これは相互銀行
関係ですが、東京相互銀行の問題でございますけれ
ども、この東京相互銀行がゴルフ会員権をかなり広範に、しかも多額のものを得意先に対して半強制的にと、こう言いますと極端でありますけれ
ども、販売しているようなうわさがありますけれ
ども、この点の事実について掌握をしているかどうかをお伺いいたしたいと思います。
-
○
政府委員(高橋英明君) そのようなうわさないし投書がございましたので調べました。実際は強制的でないというようなことを銀行が言っておりますけれ
ども、私としましては、いずれにしても銀行がゴルフ場の入会金等を扱うことは許されるわけでございます。ただ、こちら側から積極的にゴルフ場に入会することを勧誘する、あるいはお客さんの意思に反してといいますか、一方では融資などを行っておるわけですから、そういうものにつけ込んで強制的に勧誘するといったようなことがあれば、これは行き過ぎであるし、よくないことでございます。そういうことは絶対にやめるようにというふうに注意いたすつもりでございます。
-
○工藤良平君 特に東京相互銀行の場合には、支店が直接会員権の募集に当たっているということです。募集したものが銀行に振り込まれてくるという扱いではなくて、直接扱っているということ、しかも、銀行員がそのゴルフ場の経営の段階に出向しているということを私は把握しているわけですが、その点どうでしょう。
-
○
政府委員(高橋英明君) 出向をいたしているようでございます。それから支店で勧誘しているようでございます。したがって、これはやめさせようと思っております。
-
○工藤良平君 この件について、大蔵省としては何回か注意をしたことがございますか。
-
○
政府委員(高橋英明君) まだ注意はいたしておりません。これから注意いたすつもりでございます。
-
○工藤良平君 注意したことがございませんか。私は事実を確認しておりますよ。いままでに二回注意をしたけれ
ども、言うことを聞かないということで会社は秘密文書まで出しているわけですね。
-
○
政府委員(高橋英明君) 投書がございまして、課長が、こういう投書があるが、こういうことがあるならば注意してやめた方がいい、やめるようにというようなことを言ったことがあるそうでございます。
-
○工藤良平君 それでもやめなかったということですか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 自粛するという報告を受けたそうでございます。
-
○工藤良平君
現実には七百万円の縁故第一次募集をやっているわけでしょう。この点は確認しておりますか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 実は昨日、本当にやめておるかということで銀行を呼びまして、そうして夜遅くまでやり合ったところ、総務
部長などはやっておらぬはずだというようなことを言っておったわけでございます。しかし、どうもおかしいぞというので深夜まで追及いたしましたら、やっておりますというので頭をかいたわけでございます。ですから私、きょう以降即刻、呼びまして、本当に厳重に注意するつもりでございます。
-
○工藤良平君 そうしますと、こういう場合には、銀行のサービス業務になるわけですか。相互銀行法でいう業務の
内容になるわけですか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 非常にむずかしい問題でございまして、業務として継続反復してやっているものと判断するかどうかですが、そこまではいかないかと思います。まあ、単発的に行ったことであると、つまり
一つのゴルフ場に対してのことでございます。サービスとはもちろん言えないと思います。
それから、先ほど申し上げておりますように、本来の業務に関連してお客さんの意思に反して押し売りしておるというようなことであれば、まさに言語道断でございますので、絶対にやめさせようと、かように思っております。
-
○工藤良平君 それは、きちんとした中止命令を大蔵省として正規に出すわけですか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 正式に社長を呼びまして、私からやめろと申し渡すつもりでございます。
-
○工藤良平君 もう
一つお伺いいたします。
銀行が物品の販売をする場合にはどういうことになりましょうか。具体的に言いましょう。ここにロイヤルゼリーというのがあるんです。これ
一つ幾らと思いますか、三万五千円です。これを支店の冷蔵庫の中に入れておきまして、これはそれぞれ得意先に売っているようですね。これは銀行のやっぱりサービスですか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 銀行のサービスと言えますかどうかちょっとわかりません。銀行の計算でやっておることであるかどうか、ちょっと事実がわかりませんので申し上げられません。
-
○工藤良平君 もちろん、これは東京相互銀行の社長が面接南米のパラグアイにみずから銀行のお金を使いまして、この海外養蜂の会社と一緒に行って、そしてみずからこれを持って帰らして、銀行で売らしているわけですね。銀行の各支店に置いているそうです。これはぜひ確認をしていただきたい。三万五千円ですから、かなりの値段ですね。ロイヤルゼリーというのは大したもんだと思うんですけれ
ども、そういうことでやっている。これはひとつ調べていただきまして、
現実に、支店の冷蔵庫、早く行かないともう直すかわかりませんけれ
ども、おそらく手を打つんじゃないかと思います。これは
現実に、私は確認をしてきた事項ですけれ
ども、これは私はサービスとしてはちょっと行き過ぎているんじゃないかと思いますけれ
ども、もう一遍、その点を。
-
○
政府委員(高橋英明君) 銀行の業務としてやっておるのならばもちろん許されないことだと思います。どういう形で置いてあり、どういうことになっておるのかということはこれから調べてみます。
-
○工藤良平君 これは、融資の
関係でございますけれ
ども、東京相互銀行の長田社長が戸栗という人に対してかなり高額の融資をなさっておるようでありますが、その
関係について
御存じでございますか、かつて、この方は脱税事件で問題になった方のようでありますが。
-
○
政府委員(高橋英明君) 東京相互銀行から戸栗氏に対する貸し出しはあったと思います。これは個別の取引でございますので、金額等を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
-
○工藤良平君 さらに、取建設に対して同じく東京相互銀行が貸し付けをいたしているわけですけれ
ども、それが朝日
建物という
建物に資金が回って、そこから金利が東京相互に振り込まれていると、こういうような措置をとっておるようでありますけれ
ども、面接的に朝日
建物に貸し出されるべきものが、そういう形で取建設を通じて回っているということは、これは銀行の扱い上どういうことになるわけでしょう。
-
○
政府委員(高橋英明君) 東京相互の貸出先の主なところをさっと見た
記憶では、取建設というのは、私のあれには出てまいらないのでございます。それから朝日
建物というのは、東京相互の社長の肉親の方がやっておられる会社でございまして、そして東京相互の大株主の中に入っておりますので、実は朝日
建物のほうに東京相互が融資があるかとか、あるいは株式
関係があるかというようなことを調べてみたんでございますが、一切
関係がないということでございます。
-
○工藤良平君 それはどのような
調査をなさって、いわゆる正式な大蔵省が銀行の
調査をするということでなさって出てきた問題ですか。
-
○
政府委員(高橋英明君) 私
どもの
調査ないし検査といいますのは、銀行についてやるわけでございます。
一般的には、定例検査でまあ何年置きかに行ってやるわけでございますが、株主に対して直接検査するという権限は持ち合わせておらないわけでございます。したがいまして、朝日
建物について、私のほうが
調査するという権限は持ち合わせてないわけでございます。そこで、これはしかも銀行からの融資がございませんと、銀行を通じても調べることができないということで、一応その投書なり、うわさがあるものですから、銀行の人に朝日
建物と東京相互との
関係はどうかということを聞きまして、それによりますと、銀行からは株式
関係も、出資
関係も一切ございませんと、こういう返事をいただいておるわけでございます。
-
○工藤良平君 そうしますと、取建設には東京相互が貸し付けをしている。その
関係については、大蔵省としては検査ができるわけですか、もし貸し付けしているとすれば。
-
○
政府委員(高橋英明君) 取建設がもし東京相互の債務者であるならば、それもたとえばかなりの額であるといったようなことであるならば、当然、検査に行きましたときに、取建設についても調べることはできると思います。ただ、いままでの検査では取建設というのは出てきておりません。
-
○工藤良平君 この点については疑問がありますので、ぜひ早急に
調査をしていただきまして、取建設に貸し出されたものが、金利としては朝日
建物から入っているというような実は事実があるようでありますから、もしそれが事実とするならば、その間の
関係というのはちょっと疑問が出てくるわけで、ぜひその点を明らかにしていただきたいと、このように思います。
-
○
政府委員(高橋英明君) 取建設に対しまして、貸付金があるかどうかといったようなことを調べてみます。
-
○工藤良平君 大蔵大臣、いま、私は時間が余りありませんから、そうこまめに追及できないのは非常に残念ですけれ
ども、サービスと業務と区別のつかないようなものもあります。しかし、そういうような形で、やはり金融機関に対する厳しい監督指導というものが行われていかないと、さっき私が申し上げましたように、直接、金融のほうに走っていく。おまけに金融機関の方は、それぞれ関連企業なり、そういうものに融資が拡大されていく、こういうような好放しなものも若干出てくるわけですね、そういうものがまた、インフレを大きく引き起こしていくという結果にもなりかねない。ですから、私はさっき申し上げましたように東京海上の問題にいたしましても、東海不動産の問題にいたしましても非常に重要な問題でありますから、この点についてはぜひ徹底的に
調査をしていただきまして指導監督を強化していただく、これはまた、改めて私は大蔵
委員会なりで議論をしたいと思いますけれ
ども、その点についての決意のほどを伺っておきたいと思います。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 銀行が得意先に対しまして、たとえば、講演会を開いて最近の内外の経済状況の講演をお願いするとかというようなことは許されてしかるべきだと思いますけれ
ども、銀行という強い
立場にありまして、その
立場を利用して、関連した業務といえ
どもサイドビジネスをやるというようなことになりますと、これはゆゆしい問題だと思います。これは厳に慎んでいただかなければいけないと思います。したがいまして、御指摘の点につきましては精細に調べまして、もし問題がございますならば厳重に処置いたしたいと思います。
-
○工藤良平君 それじゃ、農林大臣にこれから農業問題を、時間が半分になりましたからお伺いしてまいりたいと思いますが、アメリカのCIAが昨年の十二月のローマ会議の前に、食糧危機はアメリカの外交の強力な武器であるというようなことを言ったということが近ごろ報道されておりますけれ
ども、この点についての考え方を、この前、私備蓄のときにちょっとお聞きしましたけれ
どもお聞かせいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) CIAがどういうことを言ったか私は承知しておりませんが、しかし、ローマ会議におきまして、食糧備蓄につきましてキッシンジャー提案が出されまして、なおことしになりましてローマで食糧会議が持たれました。その際にも、アメリカ側の提案も出されたわけでございますが、備蓄問題等につきましては、生産国、消費国それぞれの
立場がございまして、やっぱり利害が相対立しているということでこの意見の一致を見ない点もあったわけでございますが、私
どもといたしましては、食糧というものがそういう戦略的な武器に使うというふうなことはあってはならないことである、そういうふうにも思っておるわけでございまして、アメリカの主張しておる備蓄がどういう意図のもとに出されておるかは的確には把握はできませんが、私たちは最近の食糧事情の中にあって、国際的な協力の中にあって積極的に備蓄問題は取り組んでいかなければならないとは考えておるわけでございます。
-
○工藤良平君 そのような状況ですから、特に農林省が現在計画をしております
昭和六十年の目標にいたしました農業の自給体制というもの、その中で一番大事なことはやはり畜産振興をどうするかということが、この前から私主張しておりますけれ
ども、大事なことではないかと思いますが、この点についてひとつ、一体対策としての決め手は何なのかということを示していただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 畜産物につきましては、六十年見通しで、その消費の面から言いますと、今後ともやはり生活水準の向上、さらに、人口の増大という中で畜産物の消費というものも増大をしていくと、こういうふうに思うわけでございまして、それに対応した生産体制をつくっていかなければならないということであろうと思うわけでございますが、そのために生産性の高い経営の育成、飼料基盤の強化、畜産物価格の安定、流通の合理化等、生産から流通に至るまでの一貫した諸施策をさらに拡充強化していかなければならないわけでございまして、大家畜につきましては、中堅各層の飼養規模の拡大を図ることに努めるとともに、その育成の前提条件である飼料生産基盤の拡大に重点を置いて畜産
基地の建設や未利用、低位利用資源の有効活用等の諸施策を促進することといたしております。また、中小家畜につきましては、飼料の安定供給、価格の安定に努めるとともに、畜産による環境汚染を防止するための耕種経営との有機的連携による生産の組織化等の諸施策を強化いたしまして、六十年の生産目標を何とかひとつ達成をいたしたいと、こういうふうに念願をいたしておるわけでございます。
-
○工藤良平君 これからの飼料価格の問題、これはどういうように推移するか、予測しておりますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 最近の情報によりますと、飼料穀物につきましては低落を見ておるというふうな、国際的に低落をしておるというのが現状でございますが、私たちはこれは一時的なものではないだろうか。全体、長期的あるいは中期的に見ると、今日の世界における農作物の生産の状況、あるいはまた需要の問題等をとらえてみますと、やはりこれは長期的には逼迫の基調にある、こういうふうに考えるわけでありますが、最近では低落をしておるということは事実でございます。
-
○工藤良平君 低落はしておりますけれ
ども不安定であるというようなことであります。したがって、私
どもといたしましても、結局やはり緊急飼料対策というものを樹立する必要がある、このように思いますが、その点は特に粗飼料対策が主体とならざるを得ないと思いますけれ
ども、この点についてはどうでしょう。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 確かに御指摘がございましたように、飼料穀物につきましては、今後とも高位不安定な状態が続いていくわけでございますし、そういう中にあってわが国におけるところの生産の可能な粗飼料を増産をしていくということに対して全力を注いでいかなければならぬわけであります。このために草地事業の推進を図るほか、既耕地における飼料作の振興についても積極的に取り組んでまいりたいと思うわけでありまして、緊急粗飼料増産総合対策事業というのを
昭和五十年の予算の中でお願いをしているわけでありますが、これも粗飼料の増産という観点から飼料作物の作付拡大、効率的利用の促進といった面につきまして必要な機械
施設の導入、その他の事業をメニュー方式で総合的にやろうということで、五十年度予算も粗飼料の緊急対策として位置づけをして予算を獲得をいたした次第でございます。
-
○工藤良平君 牧野改良による粗飼料確保というのはもちろん大前提になりますけれ
ども、それと同時に、農林省がこの前出しております微
生物による農業廃棄物の利用というのが出てきておるようですが、これは、公明党の方がたしかこの
委員会で
質問をしたようでありまして、石油たん白は含まれないというようなことですが、その点は明確にそのように理解してよろしゅうございますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 農林省で計画しております微
生物によるところの農林水産物廃棄物の飼料化の研究は、第一には、ミカンジュースかす、もみがら、おがくず、水産加工、さらし水等の有効利用による新たん白飼料の生産利用技術を開発して新しい飼料資源の供給の道を開いて畜産農家の安定に資そうというものでございまして、いわゆる石油たん白の利用開発を研究の対象とするものではないことは、これはもう明らかにいたしておるわけでございます。
第二に、この研究で行う安全性に関する研究は、開発された飼料の安全性を評価するための手法の開発をねらいとするものでありまして、いわゆる石油たん白の安全性そのものの確認を研究の対象とももちろんいたしておらないわけでございます。
-
○工藤良平君 いま、わら、もみがら、おがくず、ミカンのしぼりかすというようなさまざまな話がありましたが、私は、これは昨年の二月にサトウキビのしぼりかす、いわゆるバガスですね、これは沖繩農業の甘庶糖の問題とあわせて、畜産振興ということで非常に重要だということで取り上げてまいったんですが、この点については、この中に含まれてしかるべきではないかと思いますが、それはどうですか。
-
○
政府委員(小山義夫君) いま農林大臣から
答弁がございましたように、農林水産廃棄物、いろいろなものを対象にするつもりでおりますけれ
ども、現在のところはまだバガスは考えておりません。
-
○工藤良平君 もみがらとか、おがくずよりも、バガスの方がはるかに飼料化の有効性というのはあるんじゃないですか。
-
○
政府委員(小山義夫君) どちらの場合にも共通の問題としてリグニンの問題がございます。リグニンを分解する酵素をどうやって見つけるか、それをまた採算ベースに合うようなところまで、どこまで技術化できるか、こういう問題を、もみがらあるいはおがくずの場合も、それからバガスの場合も、ともに抱えておるわけでございます。したがいまして、そのもみがらあるいは稲わら等について、リグニンを分解する酵素について技術化ができれば、バガスについても同時にそれは適用できると、こういうふうに考えておるわけでございます。
-
○工藤良平君 むしろバガスの方――後で私は議論しますけれ
ども、リグニンの除去はバガスの方が先に進んでいるんじゃないですか。私はもう結論が出ているような気がするんですが。
-
○
政府委員(小山義夫君) リグニンの分解は、
一つは微
生物によって行うやり方と、もう
一つは、酸だとかアルカリを使って化学的に処理する方法と両方ございますけれ
ども、国あるいは都道府県の研究機関におきましては、まだ十分実用化できるようなところまでの見通しは得ておりません。これからの研究課題になっておるわけでございます。
-
○工藤良平君 これはこだわるようですけれ
ども、わらや、もみがらとバガスというのは同じですね、リグニンが含まれているということについては。したがって、同じリグニンを除去する上すれば同じような系列でできると思いますね。したがって、わらやもみがらを扱うとすれば、同じように扱っても私は不思議じゃないと思うんですが、そういうふうに理解していいか。
-
○
政府委員(小山義夫君) リグニンの問題に関しては共通的な技術であると考えております。
-
○工藤良平君 これは農林大臣、ぜひ同じように扱っていただきたいということを申し上げておきたい。これはむずかしい問題じゃありませんから、ぜひひとつ大臣……。
-
-
○工藤良平君 これは話が飛びますけれ
ども、たとえばいまのリグニンの問題にいたしましても、微
生物、特にシイタケ菌――菌ですね、キノコ菌なんというのは非常に微妙な問題であります。しかも、民間の個人的な研究でも非常に進んでいる人があるわけですね。私は、やっぱりこれからの試験研究の過程の中で、そういう民間の研究家の研究したものを吸い上げて、大いに活用するということが非常に大事じゃないかと思うんですが、そういうことも含めて、やはりこの石油たん白を除く飼料化のための対策というものは必要じゃないかと思いますが、その点についてはどうでしょう。
-
○
政府委員(小山義夫君) 従来の研究では、比較的手おくれと申しますか、おくれておった部門でございますので、私
どもの国ないし県の研究機関だけが閉鎖的に独静的にやるのではなくて、民間の研究者の中でも、
内容的に非常にりっぱなものがございますれば、協力をしていただきたいというふうに考えております。
-
○工藤良平君 この点ですね、私もいまここに――これは農林大臣、後で読んでください、本を私持っておりますけれ
ども。これはシイタケの菌の研究なんです。本来クヌギとかナラとかいうようなものが主体となってシイタケが生産されておりました。ところが、原料不足で非常に困っておるわけですね。そのために、たとえばバガスあるいは稲わらを使うとか、あるいはカシとかシイとか、そういう濶葉樹まで使ってやろうということが成功しているわけです。これは私の習った先生ですけれ
ども、個人的な研究で、しかも非常に財政的に困って、日本でできずに、台湾とか、あるいはカナダに行ってやっているわけですね。そういう人が非常に貴重な研究をしているわけですから、ぜひ生かしていただきたいということを意見として申し上げておきたいと思うんです。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) やはり今日の飼料の状況から見まして、わが国において新しい新たん白資源の獲得をして飼料の増産を図っていくということは、緊要な要務であろうと思うわけでありまして、バガス等につきましても、そうした意味におきましては、やはり沖繩において現在までは燃料に使われておるというふうなことでございますので、それを飼料に生かされるということであれば、これはもちろん積極的に研究の対象にしなけりゃならぬとも思いますし、また、その他のいまお示しの、民間における積極的な農林水産廃棄物の活用に対する研究等につきましては、農林省としても積極的に援助をいたし、そして民間の研究の成果が上がるように協力は申し上げたいと思います。
-
○工藤良平君 それから、これは農林大臣、最後に一、二点お伺いしますが、いま畜安法の
審議が進められておりますけれ
ども、畜産の価格の安定ということは非常に大事なことなので、私はこのことについては賛成なんですが、要は、幾らに決めてやるかという価格の問題になるわけですが、月末あたりに
審議会が開かれるんですが、それに臨む態度についてちょっとお伺いしておきたいと思います。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 現在畜産振興
審議会が開かれておりまして、月末までに、豚価と、それから加工原料乳の乳価を決定をしなきゃならぬわけでございます。また、牛肉につきましては、畜安法の成立を待って、その後直ちに牛肉の新しい価格制度によるところの価格を決定していかなきゃならぬわけでございますが、この価株の決定に当たりましては、われわれとしては、何としても再生産が確保されるということが大前提でございまして、畜産の振興、畜産農家の経営の安定ということも十分考え、そして再生産の確保ということの大前提のもとに需給情勢あるいは物価、賃金の動向等も配慮いたしまして、適切に決まるように努力をしなければならない、努力をする決意でございます。
-
○工藤良平君 最後に農林大臣にお伺いしますが、農業教育の問題については、これは文部大臣も一緒に聞いていただきたいんですが、大臣、近ごろ農業高校の教科書、ごらんになったことございますか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 農林大臣になってからは見ておりませんが、二、三年前には見た経験がございます。
-
○工藤良平君 その教科書はどうでした。非常に現在の農業にマッチしたような教科書でありましたか。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) まあ私の郷里に農業高校がございまして、その高校に参りましたときに教科書も見たわけでございますが、私が参りましたのは、高校の卒業生の大半が都市に就職をする、そして農業に従事しないというふうなことから、私行きまして、いろいろとその説明も聞き、その中で教科書も拝見をいたしたわけでございますが、教科書の
内容につきましては詳しくはもちろん覚えておりませんけれ
ども、まあしかし、農業の教科書の
内容につきましてはそれほど間違ったことが書かれてはいなかった、現在、二、三年前の情勢から見ますと妥当な教育
内容を盛られた教科書であったようには思っておるわけでございます。
-
○工藤良平君 私、ちょうどおととしですが、農業高校を卒業して農村に残る方十名ばかりと座談会を開きました。学校に参りました。そのとき、一番先に出たことは、私の学校は機械は入っているけれ
ども、その機械を使う農場が狭い、全然使えないというのが
一つ。それから、教科書が十年、十五年前の統計をもとにして組み立てられているから、もう話になりませんというのが生徒の一致した意見ですね。これは、特にヨーロッパの農業教育を見ますと、非常に高校教育の段階でかなり営農技術と結びついた徹底した教育がなされている。そういうものを私はやっぱり、農業教育の場合には、技術、営農ということが非常に進んでおりますから、かなり科学的なものを持たなければ農業はできないということになっておりますので、そういう点から、いまの農業高校がいわゆる普通高校の変形みたいな形になってしまっている、それでいいのかと、ごくわずかでもいいから、やっぱり農業を志す者を集めて勉強させてやるということが必要ではないかと、これは私の私見ですけれ
ども考えているのですが、この点農林大臣あるいは文部大臣から、ぜひひとつ貴重な御意見をいただきたいと思っているのです。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 私も、率直に申しまして、農業高校で勉強する学生の半分以上が都市に就職をする、そこで、数年前まではむしろ教育の重点というのがそうした職業教育というようなところに置かれておったという弊はなきにしもあらずだというふうな感じも持ったわけでございますが、今日の段階におきまして、わが国の食糧の自給力を高めていく、それだけに農業のウエートというものも今後とも非常に大きくなってくるわけでございますし、そういうことを考えますと、やはり農業高校等の教育につきましても、営農あるいはまた実際の技術教育といったものが密接をしたような形で、相互に連係をとったような形で教育がなされていかなきゃならぬ、実際の基本的な教育とともに、実践的な面も十分踏まえた教育というのが今後行われなきゃならない、こういうふうなことを痛感をいたしておるわけでございます。
-
○
国務大臣(永井
道雄君) 御指摘のように、農業高校にいろいろ問題がございますが、
一つは、農業
関係のいろいろな産業に従事する人を育てる学科と、それからもう
一つは、自営農家になっていく人たち、その学科と、大別すると二つあるわけです。先生御承知のように、この後者の方ですね、後者の大体農業に従事いたします人が、
昭和四十八年の統計ですと三割強でございます。いつかは農業につきたいという意識
調査の方では、五割ぐらいになっております。しかし、それにしても少ないですから、ほかの職業学校と比べてそこに問題があるわけです。
で、それをどうするかということですが、これまでの日本の社会が非常に工業化に傾斜してきておりましたから、あとのこの五〇%ないしは七〇%の人というのは都市に出て行くわけですね。そこで、先ほど普通高校的な色彩が強くなっているところに問題があるんじゃないかとおっしゃったのですが、実はUターン現象を起こして、都市に行って相当年をとるとまた農業に戻ってくるというような人もいるわけで、そのいう意味では、ちょっと変則的ではありますが、かなり基礎的な学科をやって、そして、農業についても基礎的なことをやるという、若干普通科的な色彩があったために救われる面もあったというのが実情だと思います。しかし、これから日本の自給力も強化していくという、そういう時代に入ってどうするかというのは、これはもう一回考えなければいけない問題だと思います。
一つは、やはり先生がおっしゃいましたが、学校で比較的教科書中心に教えておりますのを、それとともに、実際に結びつける、そして現在変化していく農業の経営それ自体、あるいは技術、そういうものともう少し密着するようにしていくという方向が
一つあると思います。
それから、先ほど、統計数字な
どもなかなか時代についていかない教科書があるじゃないかという御指摘で、それも、そういう問題がありますのは、検定教科書というのは、編集をして、そしてつくりまして採択をするのに三年ぐらいかかったりしますから、そこで農業の教科書に限らず、統計数字は、本が出てくるころにはずいぶんずれるという問題があるわけです。教科書会社でも、ですからそういう統計数字については改訂するということをやるようにいたしておりますが、これも学校の先生方が、もっと年鑑などを使いましてやっていくということが
一つの方法、それからまた本年度文部省が考えておりますのは、検定教科書のほかに文部省が編集する教科書がございます。こういう糖類もふやしまして、そうするといまのように統計数字がそうずれない、そういうことも考えていかなければならないことだと思います。
第三は、やはり日本の産業構造が変化していく中で、日本人の産業についての考え方が、従来は工業に非常に傾斜していましたけれ
ども、必ずしもそういうふうな構造というものが今後同じような姿では続いていかないんではないか。そういう意味における一種の価値の転換でございますが、現在でも、すでに農業高校には、心理的には時代が変わったぞという気持ちも伝わってきつつあるというふうに私聞いておりますけれ
ども、やはり、こういう新しい気持ちというのは非常に重視しなければいけないと思います。ただ、かといって、それでは直ちに、農業人口がふえるかどうかということをやはり見守りながらやりませんというと、また性急なことになりますから、そういうことも十分に見守りながら、やはり農業に従事していくということについての生きがいと申しましょうか、そういう理想、そういう教育というものも非常に必要であって、まあ、そういう意味において、少し時間がかかると思いますけれ
ども、農業教育というのも重要な曲がり角に来ているというふうに
認識いたしております。
-
○工藤良平君 これは、私は大分のかつての工業高専の校長とずいぶん話したことがあるんですけれ
ども、農業高専というのを考えたらどうかと。これはやっぱり技術の一貫体系、五年間ですね、しかも人格の陶冶は、詰め込み主義じゃないし非常にいいんじゃないかという御意見を拝聴したことがあるのですが、私もその点非常に同感なんで、今後ぜひそういう点についても御検討していただきたいという気がするんですが。
-
○
国務大臣(永井
道雄君) ただいまの問題ですが、農業
関係の教育というのは、もちろん高校がございますが、そのほかにも実はかなり農業
関係の教育機関がございます。そこで、すぐに高専にできるかどうかということは、ほかの教育機関との関連も考えなければならないと思います。
一つは農林省所管の農業者大学校というものがございますし、それから研修機関というものが各県にあります。百九十あります。それから、公私立の農業短期大学、これも相当の数に上っておりまして、四十六校あるわけです。そのほかに大学に農学部がございます。そこで、農学部というのが、ずっと前に日本にもっと農業の比重が大きかったころにできていて、それがずっと続いていて、ある意味では高度成長の工業化の中でちょっとそこに学生人口も集まりにくいというふうな状況もあったわけです。そうしますと、農業高校をすぐに高専にするということを考えますより、現在もそういう高等教育機関が相当ありますから、それとの関連をどうしていくかということを考えませんと、そういういままでの高等教育機関というものを生かすことができませんから、やはり農業
関係の教育のそういう高校、それからいまあります高等教育の諸機関、これとの関連を考えていくことが先決の問題ではなかろうかというふうに考えております。
-
○工藤良平君 それでは科学技術庁にお伺いいたしますが、これは昨年の二月に私が物価等対策特別
委員会で取り上げましたバガスの問題でございます。その後
調査をなさってまいったようですけれ
ども、概略ひとつ御説明いただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
佐々木義武君) 昨年の二月の参議院物価等対策特別
委員会でございますか、で工藤議員から御
質問があったことでございまして、それに基づきまして、去年の七月に沖繩等三県にわたりまして資源
調査会
専門委員会でこの道のべテランを含めまして現地
調査をし、いろいろ検討をなすったというふうに承知しています。その詳細にわたりましては、技術的な面もあるようでございますから
政府委員からお答えをいたしたいと存じます。
-
○
政府委員(安尾俊君) ただいま
長官から御説明がございましたように、昨年の七月二十二日から一週間にわたりまして資源
調査会の
専門委員二名と資源
調査所の職員一名を沖繩、福岡、熊本の三県に派遣いたしましてバガス飼料の利用の実態及びリグニン分解に関します研究の現情について
調査を行ってまいりました。その
調査結果並びに収集しました資料に基づきまして、出張しました
専門委員のほかに、資源
調査会の農業生産特別部会というのがございます。その中の飼料小
委員の
専門委員も含めまして検討を重ねて、現在までまとまりましたのは、一点は、沖繩に参りましてバガス飼料の実態を調べましたところ、バガスを粗飼料として利用しておりましたのが、一昨年の石油危機以来後退いたしまして燃料にまた再び利用される傾向にあるということが一点であります。それから発酵バガスにつきましては、
調査しましたが使用例が少なく、熊本県の玉名市の一農家におきます使用結果を聴取いたしましたところ、牛の嗜好性が悪くて食い残しが多い、こういう
調査がございます。それからリグニンの分解に関します技術につきましては、微
生物を使用する発酵方法によりまして短期間の処理で分解し、あるいは著しくリグニンを低減させるような経済的しかも企業性のある技術は、
調査した範囲内ではまだ
現実のものとなっていないようでございます。しかしながら、このような現状を踏まえた上で、沖繩県当局は今後もバガス飼料を肉用牛の多頭飼育に利用することを考えておりまして、農林省の助成を受けまして糖みつバガスにつきましての飼育試験を実施しておりますし、また同県の試験場におきましては、リグニン分解に関する基礎的な研究を行っておると、こういうことでございます。
-
○工藤良平君 それではいまから具体的に聞いてまいります。
私が二月に特にこのリグニンの
関係を指摘をしたわけですけれ
ども、リグニンの除去がかなり成功しているという例を申し上げて、その
調査をということで私は申し上げたんですが、それが載っていないということ。それから岡山県の蒜山農協の実例を申し上げたんですが、それを
調査に入れてないということはどういうことですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) お答え申し上げます。
先生、昨年の二月に御指摘ございました発酵バガスにつきまして、
調査に参りました時点、当事者が海外出張で不在でございましたので、その者を直接には調べてございません。なお、鹿児島県庁にも照会いたしまして、奄美大島を含めまして県内での発酵バガスの生産が行われているかどうかお聞きしたんでございますが、ないという回答がございましたので、これについては
調査をいたしておりません。
それから岡山県につきましては、これは最近資料を新しくいただきましたが、
調査時点にはその資料を入手しておりませんので行っておりませんが、なお、中央畜産会を通じまして岡山県北部酪農におきましてこの発酵バガスの使用がどうかということを聞いておりますが、ここではあまり普及してない。それから岡山県の酪農試験場におきます試験でも採食性が悪いと、こういうふうな情報は入手いたしております。
-
○工藤良平君 いまのお話によりますと、悪いことばっかりが出てきているわけですけれ
ども、それじゃ、いまから
一つ一つ私が尋ねてまいりますが、岡山の蒜山農協の例は大変いい成績が出ているんですが、一応これは承知することはしているわけですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) その例につきましては、二月に私
どもいただきましたので、まだ検討はいたしておりません。
-
○工藤良平君 すでに私は昨年の二月に資料を提供しているわけですが、それでも検討されてないのですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 岡山県の蒜山農協につきましては、先生の御指摘もございましたが、照会しましたところ、行き違いかどうか、濃厚飼料の給与だけだと。したがいまして、それに粗飼料を入れれば当然下痢がとまると。これは先生御承知のように、粗飼料の種類の問題ではございませんで、濃厚飼料対粗飼料の配合比の問題かと思われます。そういうふうに理解いたしておりまして、当時は
調査をいたしておりません。
-
○工藤良平君 このバガスはアメリカをはじめといたしまして、すでに八カ国以上の国で特許をとっているバガスでありますけれ
ども、いまお話のように、濃厚飼料ばっかり使っておったと、それがこれに粗飼料を入れたためによくなったという理解、確かにそういう説明があったんですが、およそ畜産に常識のある者であれば、七産も八産も出産している牛が、濃厚飼料だけで一体そういうことが可能であるか。しかもこれは農林大臣賞か受けているチャンピオンの牛なんです。そんなことを言っても私は納得できませんよ。濃厚飼料ばっかりで牛を飼うなんてばかげた話ないんですが、そういう理解をしているんですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) ただいま私が申し上げました牛の方は先生御指摘の牛でございませんで、それは組合長が飼育されている牛と、その奥様が別途飼育しておるグループであると、こういうふうに聞いております。
-
○工藤良平君 それでは、この資料はあなた方のところはいただいておりますか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 二月にいただいております。
-
○工藤良平君 二月にいただいたなら、なぜこれ、
調査しないの。私が指摘したんですよ。
-
○
政府委員(安尾俊君) ことしの二月でございまして、まだそれについては残念ながら検討いたしておりません。
-
○工藤良平君 ふざけちゃいけませんよ。これは私は去年の二月に
委員会で提示しているんですよ。すべての文献まで、アメリカの文献から畜産会の文献から、ぼくは全部おたくの所長さんに、前の所長さんに提起したんですよ。そこの後におるその人、全部知っているんですよ。そんなばかなことを言ってもだめですよ。このために、私が提起したからそのために
調査に行ったのに、わざわざこれをはずして、熊本とか鹿児島のそんなところになぜ行くんですか、
専門的にやっていますか、それじゃそこでは。
-
○
政府委員(安尾俊君) その資料につきましては、ただいま申し上げましたように、最近私拝見いたしまして、まだ残念ながらその
調査へ行っておりません。しかしながら、岡山県の事情につきましては、昨年先生から御指摘がございましたので、先ほ
ども申しましたように、中央畜産会等を通じましていろいろ状況を聞いております。
-
○工藤良平君 それじゃお伺いしますが、バガスを利用した場合に、おたくの
調査によりますと、一体どの程度までバガスを使用することができるわけですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 先生の御
質問は、配合飼料に対する粗飼料の比率というあれかと思いますが、この報告によりますと、一応バガス飼料は、例といたしまして、肥育牛に対しまして給与飼料の一五%、泌乳牛に対しましては一三ないし一五%の粗飼料を与えると、こういうふうになっておりますので、バガス飼料についても同じようだと考えております。
-
○工藤良平君 それでは、おたくの方がこのバガス、特にこれは糖蜜バガスはどの程度の範囲内であれば使用しても大丈夫だという基準がありますね、
調査の結果。それはどうなっているのですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 肉用牛については一三%、こういう答えになっております。
-
○工藤良平君 そうじゃなくて、これは四十七年にあなたのところがバガスの
調査の報告をした、その資料に基づいて幾らならいいのかと、こう言っているのですよ。
-
○
政府委員(安尾俊君) ただいま申し上げました一三%が報告書に基づいた数字でございます。
-
○工藤良平君 それでは、この
調査の
調査書の中で福岡県種畜場の
調査と科学技術庁の
調査の中に違いがありますが、この点についてはどう考えておられるわけですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 私
どもの方は肉用牛でございまして、福岡の方は酪農牛でございます。
-
○工藤良平君 わからないですね、そういう
答弁では。
それじゃ、福岡の種畜場はどう言っているか、ちょっと言ってください、どう書いてあるか。
-
○
政府委員(安尾俊君) いますぐわかりませんので、後ほど検討いたしまして御報告申し上げます。
-
○工藤良平君 後ほどと言っても時間がないのですよ、五分しかぼくはない。
いいですか、バガスの置きかえは三〇ないし四〇%の範囲内が無難のようであると、こう種畜場が言ってるのですよ。ところが、あなたのほうはそうじゃなくて、無難であることがわかったと断定しているわけですよ。大きな違いなんですよ。あなたのところはここで断定してしまう。しかも三週間以降については乳量が著しく減退していると、これ、なっているのです。それをあなたのところは、無難であるとわかったと断定しているのですよ。だから科学技術庁としては大変な問題なんです。あなたのところは官分から
調査したわけじゃないでしょう。試験場の資料に基づいて結論を出したわけでしょう。違うのですよ。
-
-
-
○
説明員(
岡部富久志君) お答えいたします。
先生の御指摘の点でございますが、福岡県の種畜場で四十三年、四十四年、四十五年、年報をお出しになっていまして、その中で、バガスの飼料化に関する実験データがあるわけですが、それを資料としていただきまして、それを
委員会でもつ・て最終的な要約的なものを
内容的には詰めさせていただきまして、それで飼料小
委員会の中でそういう表現にしたわけでございます。
-
○工藤良平君 ですから、ぼくは福岡畜産試験場の維持飼料の一部をバガスで置きかえた場合、あなたの方は同じように文章を書いているのですよ。そして結論は、三週間以内にこっちは減少しているというのに、あなたのところは「無難である」と、こう書いてあるわけです、結論は。なぜそんな結論が出てくるの。リグニンが多いからリグニンを除去しなきゃならぬという前提があるわけですよ。ところが、あなたのところは、この種畜場がリグニンがあるから、三週間以降食べさせたところが、乳量が著しく減少したとあるのです。あなたのところは、そうじゃなくて「範囲が無難である」と、それがわかったと、こう書いてあるのですよ。こんな結論を出されたのじゃ困るじゃないですか。ごまかしちゃいかぬのですよ。
-
-
○工藤良平君 ごまかしているじゃないですか。
-
-
○工藤良平君 ですから、福岡の種畜場と科学技術庁がまとめた、こっちからとったものがこちらの結論になったときになぜそういう断定的なものが出てくるのかということ。私がわかるように
答弁をしてくださいよ、科学的に。あなたのところは科学技術庁でしょう。科学的にちゃんと説明しなさいよ。
-
○
説明員(
岡部富久志君) 福岡県のデータを引用させていただきまして、それを要約といいますか、その最終的な結論を本文の方へいただいたわけでございます。
-
-
-
○工藤良平君 それでは特許庁に伺いますが、糖蜜バガスについては特許が一応おりたようでございますけれ
ども、発酵バガスについてはおりてないようですが、これはどういう理由ですか。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) ただいま先生御
質問の点でございますけれ
ども、糖蜜バガスの件につきましては、これは先生が昨年二月に国会で御
質問になった件かと思います。この件につきましては、これは異議がかなりたくさん出ておりまして、まだ決定にはなっておりません。現在の段階では異議申立書の副本、はなはだこれは
専門的になりますけれ
ども、異議申立書の副本を出願人に
送付いたしまして、出願人から
答弁書が提出され、請求範囲を減縮するというような補正書が提出されている状態でございます。現在は異議申立書に対する
答弁書及び補正書についての異議申立人の意見を求めているという段階でございまして、これら異議申立人の意見を聞いた後に、近い時期に審査官の判断が出るものと考えております。したがって、まだこれは結論が出ておりません。
-
○工藤良平君 糖蜜吸着バガスについては特許の公告までは行ったわけですね。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、これは
昭和四十五年の九月三十日に出願公告されております。
-
○工藤良平君 この異議申し立てがあったということは、これはリグニンが除去されていないから、さっき私が申し上げましたように、三週間以上食べさせると乳量が減少していくということが
一つの大きな理由だと思いますが、そういうことでいいわけですか。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) ただいまの出願につきましてはリグニンには
関係ございません。これは出願公告されまして、その後異議申し立てが出たことはただいま申し上げたとおりでございますが、この異議申し立ての理由といたしましては、出願前公然知られた、要するに公知ということでございます。出願前国内において頒布された刊行物を引用いたしましてそれから容易にできると、そういう理由で異議申し立てが出ているわけでございます。
-
○工藤良平君 それではもう
一つほどお伺いいたしますが、出願代理人の中吉章
一郎さん名儀で出されておりますこの発酵バガスを距絶いたしました理由について説明していただきたい。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) ただいまの先生の御
質問でございますけれ
ども、この件につきましては、これは
一般論といたしまして、特許法におきましては、出願人の利益保護という見地におきまして、特許出願中の発明に関しましては秘密を守るということがたてまえになっております。特定の出願につきましての出願のあるあるいはない、あるなし、それから審査の経緯、処分の結果等につきましては、これはその出願が出願公告された場合、あるいは現行法がそうでございますが、出願公開制度というのがございますけれ
ども、先ほど申し上げました出願公告または出願公開された場合でなければこれは秘密に付されていることになりますので、この点についてのお答えは申しかねますので、あしからず。
-
○工藤良平君 ちょっとこれ読んでください。これが出願の拒否の理由、この理由のところを読み上げてください。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) 「この出願の特許請求の範囲に記載された第一番目ないし第五番目の発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、きわめて容易に発明をすることができたものと認められるから特許法第二十九条二項の規定により特許を受けることができないものと認める。」ということでございます。
-
○工藤良平君 この発酵バガスについての申請が出たときに、これはきわめていとも簡単にできると、したがって、これは拒否するという理由になっているわけですね。
それでは、科学技術庁にお伺いいたしますが、この糖蜜バガスと発酵バガスはどちらが技術的にむずかしいわけですか、いわゆるリグニンの除去について。
-
○
政府委員(安尾俊君) お答え申し上げます。
発酵バガスの方は、発酵過程におきましてリグニン分解菌等を摂取いたしておりますので、当然原理的にはリグニン除去の作用があると思います。ただ、
現実には二十四時間では、分析結果ではリグニンの著しい低減が見られておりませんので、その点まだ問題点が残っておるかと思います。
-
○工藤良平君 これは、科学技術庁の委託いたしました
専門家のバガス飼料検討会の報告書がありますが、これを読んでください。
-
○
政府委員(安尾俊君) 「粗飼料の価値を高めるためにリグニン含量を低減することは望ましいことである。しかし、微
生物を使用する発酵法によって、ことに短期間の処理でこれを分解しまたは著しく低減させることができるような経済性、企業性のある技術は、われわれが見た限りでは未だ
現実的に確立されていない。このための研究は、化学的手法とともに微
生物側からも試みられているが、未だ
現実に即応できるようなものは見出されていない。」、以上でございます。
-
○工藤良平君 いまこれで読んだように、特許庁はいとも簡単であるからこれは却下したのだと言う。こっちの
調査の方はリグニンの除去はきわめてむずかしいと言っている。これはどっちが本当ですか。全く正反対なんです。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) 特許審査におきましては、大体三つの要件がございます。主な要件が三つございまして、
一つは産業上利用できるということでございます。二つ目は、その発明がその出願前に新規性を有するということでございます。三つ目は、その発明が出願前公知のものから容易に発明することができなかったと、特許用語で申しますと進歩性と申しますけれ
ども、特許法上のたてまえといたしましては、特許される発明は以上の三つの要件を備えているということが必要でございます。したがいまして、特許庁といたしましては、これらの要件を備えているかどうかということを判断して特許をするかどうかきめるわけでございまして、仮に産業上利用できる、有用性があるという場合でございましても、新規性がない、あるいは従来あったものから容易に発明ができたというような場合には、これは拒絶をするというようなことでやっております。
-
○工藤良平君 それでは特許庁にお伺いいたしますが、この発酵バガスはアメリカを初めとしてイギリスその他八カ国ないし十カ国にいまなろうとしているわけですが、その特許があることば
御存じですか。同一人物です、これは。よその国で、十カ国で特許がおりているんです。リグニンの除去が認められて、化学的に。
-
○
政府委員(
大谷幸太郎君) アメリカに特許があるということは知っておりますが、それ以外の国については存じておりません。
-
○工藤良平君 ここに私は
写真と手紙を持っておりますが、
タイ国でこれがすでに工業化されて、バガスが日本に大量に入ってこようとしているのです。沖繩や奄美大島にあるバガスがなぜ飼料化されないのか、そこに私はこの特許の問題についての日本の、あなたたちのやり方に問題があると思うんですが、この点どうですか、知っていますか。手紙もありますよ、見せてもいいですよ。
-
○
政府委員(安尾俊君) アメリカの特許につきましては、具体的に先ほ
ども申し上げましたが、リグニン分解菌並びに硝酸バクテリア、それからアスペルギルス、それからペニシリウム等の混合菌を培養いたしまして、これをバガスに入れて発酵バガスとすると、こういう特許を見ております。そのほか数カ国に特許が提出されていると、こう承っております。
-
○工藤良平君 それはだれが出願をして特許がおりたわけですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) アメリカの特許については松岡清光さんと思います。
-
○工藤良平君 世界各国十カ国全部松岡さんなんです。日本だけおりないんです。なぜなのか。いまから理由を言いましょうか。あなたたちのこの四十七年の七月五日の報告書の十三ページ、これ、どう書いてありますか。報告書を持っているでしょう。一三ページを読んでみなさい、何て書いてありますか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 「そのためには、さきの給与試験で検討したように、現に相当程度すすんでいるが、各種飼養形態に応ずる日本的な標準的給与技術体系を確立(とくに、肉牛肥育におけるフィード・ロット方式によるメリットを生かす〕するとともに、「飼料の品質改善に関する法律」に基づく、登録飼料(例えば、混合飼料)として正式に認定される必要がある。このようにして、南西諸島および本土の需要者は安心して受け入れるようになり、市場の拡大がみられるであろう。」。
-
○工藤良平君 いいですか、あなたたちは、この
調査の結果、登録飼料としなさいということを言っているんですよ。そうしながら、一方ではこういうことをやっているということは何を意味するんですか。しかも、発酵バガスで成功している事例は見なくて、別のところばかり見て歩いている。沖繩に何のために
調査に行ったのですか。幾ら金を使いましたか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 先ほ
ども申し上げましたが、沖繩に
調査に参りました節、発酵バガスの当事者が海外に出張されておりまして、直接お会いして
調査ができなかったわけでございます。したがいまして、鹿児島県当局に照会をいたしまして、奄美を含めまして県内に発酵バガスの生産者がおればと御照会したのでございますが、いないということで、参っておりません。
-
○工藤良平君 インチキを言いなさんなよ。ここのあなたたちの今度の報告書の五ぺ-ジに、奄美大島の松岡氏を招聘して同氏の発酵方法によるバガス飼料化についての技術指導を受けたと、こう書いてある。この松岡さんと、私が言うこの成功している松岡さんとは人が違うんじゃないですか。あえて違う人間を、松岡さんという疑わしい人間を持ってきて、人をごまかすにもほどがありますよ。これは何でこんなものを使ったんですか。どういう方法で発酵バガスを研究しているか、言ってみなさい。インチキだ、あなたたちは。
-
○
政府委員(安尾俊君)
調査書におきます五ページの松岡武吉氏の件につきましては、これは沖繩県の経済連に参りまして
調査したときの報告でございます。
-
○工藤良平君 発酵バガスのこの松岡さんという方は成功しているわけですか、発酵バガスのリグニンの除去に。
-
○
政府委員(安尾俊君) ここに書いてございます松岡さんを二度招聘いたしまして、発酵方法によるバガス飼料の飼料化の技術指導を受けておりますが、結果的にはこのバガス化に当たってこの発酵方法を採用しないと決定いたしております。
-
○工藤良平君 だから、その発酵方法はどういう方法で発酵さしてリグニンを除去しているかとこう言っているんです。こんなもの成功している人があるわけないじゃないか。ごまかしですよ、あなたたちは。特定の企業に結びついて登録飼料にするという意図があるからこういうことになるんじゃないですか。
-
○
政府委員(安尾俊君) 先ほど申しました松岡さんの件につきましてただいまわかりませんので、調べましてまた御報告いたします。
-
○工藤良平君 さっきのあの人、何と言ったかね、あの人、
答弁しなさいよ。あなた、知っているじゃないか、全部。あなたが準備したんでしょうが。
-
○
説明員(
岡部富久志君) 先生のおっしゃっている松岡さんは、いま御
質問のあったのはどなたのことでございますか。
-
○工藤良平君 何を言っているんだ、あなたたち書いてあるじゃないか。
-
-
○工藤良平君 お粗末だなあ。
-
○
説明員(
岡部富久志君) そちらの方の松岡さんにつきましては、沖繩の経済連で招聘されまして、それでいろいろ御説明を受けまして、それでやられたわけでございますが、その発酵法につきましては、私の方はわかっておりません。
-
○工藤良平君 あなた、ゆうべ私のところに来て、発酵バガスの発酵の仕方は、一トンの原料に〇・七トンの他のものを入れてやりますということを言いましたね。
-
○
説明員(
岡部富久志君) その発酵方法につきましては、松岡先生がアメリカの特許をお取りになっておりますが、その中に書かれてあったことを昨晩申し上げたわけでございます。
-
○工藤良平君 あなた、それじゃこれを見たですか。特許のこれを見ましたか、アメリカの。
-
-
○工藤良平君 それにそう書いてありましたか。
-
-
○工藤良平君 これは、私は日を改めて
参考人に招致をしてあなたと対決させますよ、いいですか。
微
生物というものはそんなたくさんな原料を必要としないんです。シイタケだってそうでしょうが。シイタケの原木があるのに、そんなに七割にもなるような菌を打ちますか。微
生物というものは小さなものでもいいんです。少なくとも百分の一でよろしいと、こうなっているんです。それは常識ですよ、科学者の。とぼけたことを言いなさんなよ、あなた。訂正しなさい、お粗末だよ。
-
○
政府委員(安尾俊君) ただいま資源課長が説明しましたのには、若干説明が不十分で、先生に御理解をあれしたと思いますが、私から改めて申し上げます。
この発酵バガスに使いますナカダネと申しますか、これはふすま二・一キロ、プラス、〇・九キロの米ぬか、それに水を入れまして七〇%にいたしまして、先ほど申しましたリグニン分解菌にペニシリウム、アスペルギルス等の菌を混合して培養いたします。それをさらにバガス千キログラム、プラス、生酒かす七百キログラムに混合したものの中に入れて培養する、こういうことでございます。
-
○工藤良平君 先ほどから議論をしましたけれ
ども、全く議論にならないわけです。もう少し前向きで、バガスの飼料化をやって本当に日本の畜産を発展をさせ、農業を育成強化をしようとする意思があるならば、こんないいかげんなことじゃだめなんですよ。いいですか、あなたたちは私が
質問したから、それに何とか答えなければならぬということで、大変な国費を使って沖繩まで行っているのです。
調査の結果というのはでたらめじゃないですか。これがりっぱに飼料として使われ、あるいはバガスが今度はシイタケをつくろうというところまでいっているんですよ。民間の気違いと言われながら、そういう人たちは極貧の中で研究を進めて、その資源を役立てようとしているときに、あなたたちは何ですか、何カ月かかったんですか、もう一年じゃないですか。しかも、その
調査というのはでたらめ、非科学的な、そんな科学技術庁がありますか。僕ら素人だって一生懸命勉強すれば、ひまを見てこれくらいの勉強はできるんですよ。
大臣、あなたさっきから私の議論を聞いておりましてどう思いましたか。私は素人ですよ。しかし、農業というものを真剣に考えれば命をかけなければならないんですよ。わかるんですよ、勉強すれば。一日も早く問題を解決をして、有効に資源が使われるということがなぜ悪いのですか。そのために惜しまずに行政的にも財政的にも支援をすべきことが当然のことじゃないですか。そうしないで、何で食糧の確保ができますか。みんな集まって総力を結集して資源を使おうじゃないかということで一生懸命になっているわけでしょう。この問題についてはぜひもう一ぺん一番もとに戻して、もとから
調査を早急にやり直すように私は要求をしたいと思う。大臣の前向きの御回答をいただきたいと思います。
-
○
国務大臣(
佐々木義武君) まことに御
質問に、それこそ回答を科学的に明瞭に出せば大変結構だと思ったんですけれ
ども、確かに聞きましても、もう少しはっきり、両方の製法の相違がこうであって、特許の、なぜ向こうどおりにこちらがおりなかったといったような点を科学者らしく、明瞭に説明すべきだと思います。確かにこの点不十分だと思いますので、もう一遍よく研究させましてお答え申し上げたいと存じます。
-
○工藤良平君 大変声を荒げましたけれ
ども、これで終わります。どうも失礼しました。(拍手)
-
-
-
○沓脱
タケ子君 私は、予算に関連をいたしまして三点ほど政府の見解をただしたいと思います。
まず最初に、私は昨年の五月七日の社会労働
委員会におきまして、学童保育制度の確立について
質問をいたしております。齋藤前厚生大臣は、学童保育の重要性、必要性をお認めになって、五十年度から実現できるように最大の努力をしますと
答弁をなさっておられます。ところが、五十年度予算を拝見いたしますと全くゼロであります。なぜ予算をつけて大臣のお約束どおり制度化をしなかったのかという点について、最初に大蔵大臣の御見解をお伺いをしたいと思います。
-
○
政府委員(竹内
道雄君) 先生お話しのかぎっ子の問題でございますけれ
ども、厚生省から当初三億五千万円の要求があったわけでございまするけれ
ども、厚生省
関係のいろいろな予算の折衝の結果、もう少し本問題については研究をしてみようということで予算がついておらないということでございます。
-
○沓脱
タケ子君 大蔵大臣に伺いたいんですが、これは五月七日の社会労働
委員会での齋藤前厚生大臣の御
答弁読んでいただきましたか。私、きのう申し上げておいたのですよ。
〔
委員長退席、理事
柳田桃太郎君着席〕
-
-
○沓脱
タケ子君 そうして、なぜ厚生省から概算要求について三億五千万円の要求をしておられるのをゼロになさったのか、これは大蔵大臣の御見解を聞きたいわけですよ。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 各省の大臣が国会で
答弁したことについて、一々予算をつけておったら大変なんでございます。私
どもといたしましては、いま主計
局長からもお答え申し上げましたように、なお全体といたしまして検討しなければなりませんので、ことしは御遠慮していただいたということでございますので、御了承いただきたいと思います。
-
○沓脱
タケ子君 それは厚生大臣、どう思いますか。
私その前に、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思いますけれ
ども、御遠慮していただきましたなんて話、これは
現実に施策の面では
田中前内閣時代に約束をされたこと、これを三木内閣になってから後退をさせたという結果になるんですよ、そうでしょう。
もう
一つは、御遠慮していただきましたなどという、何というふらちなことを言うのですか。厚生大臣というのは主務大臣でしょう。主務大臣が施策の必要を認めて、五十年度から制度化をするためにということで約束をして、そうして概算要求をした。それを大蔵大臣がなぜ干渉するのですか。主務大臣の政策に対して干渉するというのはどういうことなんですか。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 厚生大臣がいろいろ工夫されまして、いい政策、かぎっ子政策具現のために御努力いただくことは結構なんでございますが、問題はそれに三億五千万円というお金がかかるわけなんでございます。お金の方の管理は私がやっておるわけでございまして、私といたしましてはことしは御遠慮いただくということにいたしたことは、先ほど申し上げたとおりでございます。
-
○沓脱
タケ子君 これ、重大な
発言ですよ。主務大臣が国会の常任
委員会で施策の必要性を認めて制度化を約束して、概算要求の予算要求をした。施策をいろいろ主務大臣がおやりになるのは結構ですと、しかし、財布は大蔵大臣の私が握っておりますので御遠慮してもらいましたてな話、これは国会の
審議権に関する重大問題ですよ。どうするのですか、一体。それでは私
ども主務大臣を相手にして常任
委員会で
審議はできないじゃないですか。厚生大臣が約束をしても、大蔵大臣が財布握っていますから遠慮してもらいましたというような話なら、これから常任
委員会では主務大臣と大蔵大臣が一緒に並んでおってもらわないと、主務大臣の御
答弁は信頼できないということになる。どうなんです。これは大蔵大臣と厚生大臣、
関係ありますから、両大臣の御見解を伺いたい。
-
○
国務大臣(大平正芳君) これは厚生大臣ばかりでなく、ほかの大臣の方々も大蔵省の方で予算をちょうだいすることを前提として申されておることと私は了解するわけでございます。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) いま御指摘の点は、
速記を読みますると、齋藤元厚生大臣は来年度から実現できるよう最大の努力をすると、こういうことを申しておったわけですが、そういうわけで齋藤さんは三億五千万の予算要求をしておいていただいたわけであります。まあ責任は私の方にあるのだろうと思いますが、私の時代になりまして予算折衝をいたしたのですが、どうもこのかぎっ子対策と申しまするか、学校保育につきましては、いろいろな問題点が多々あるということが予算折衝の過程で判明をいたしました。というのは、
一つはわが省に児童館という制度がございます。これはもともと実は私若いころに、若いころといっても議員として若いころに、いろいろ努力をいたしましたのですが、無認可保育所を解消するために実はいろいろと努力をした結果、児童館ができたのですが、これがどうも実際の運営ではいわゆる都会のかぎっ子対策というのに多く使われるというかっこうになりましたが、どうもこれが不徹底であります。と同時に、文部省系統でいわゆる校庭、グランドの開放事業というのを、これは前から予算がついてやっておるわけでありますが、この間にあって一体いわゆる学校保育と申しますか、学校へ行っている児童生徒の保育事業についてどう位置づけるかということについて、いろいろと討議をいたしましたが、どうも詰めが甘いということで途中でギブアップせざるを得なかったわけでありまして、いま先生からおしかりを受けますると、これはもう少しがんばるべきだったと思いますが、そういうわけで結末をつけたわけであります。
そこで、まあいろいろと私もその後調べてみました。その結果、やはりこの種の施策というのは福祉行政の中でなかなか私としては
一つの問題点であろうと思いますので、今後ひとつそういったような三者三様の問題の結節点にある問題でございますので、その辺を十分詰めて、再度ひとつ前向きで検討をいたしたい、またそうせなければならぬ、かように思っている次第でございます。
-
○沓脱
タケ子君
田中厚生大臣は、やっぱり三木内閣の厚生大臣なんですが、齋藤前厚生大臣よりも後退をしていますよ。なぜかというと、これは去年の五月七日には、いま厚生大臣おっしゃった
中身を全部明らかにして、その点について施策の必要性を認める、重要性も認めるということで制度化をするということを言われているですよ、これは。不勉強に過ぎますよ、その問題の詰め方については。そして
田中内閣時代に具体化したものを、三木内閣になって厚生大臣が御自分の不勉強のために大蔵大臣の財布がかたかったということで退却をしたと、これは厚生大臣の責任になりますよ、実際。何とか前向きにやりますと言うけれ
ども、どういうことをいつからやるというのですか。これは前厚生大臣は、昨年の五月には五十年度から予算化をしたい、制度化をしたいと、こういうふうに言っておられるのです。最大限の努力をすると言っておられるのですよ。前向きに努力するというのはどういうことなんですか。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 齋藤さんが最大の努力をするということを申したので、私も努力をしたんですが、齋藤さんが考えたほどの最大の努力をいたさなかったというのはまずかったと思いますが、今度はひとつよく問題点もよくわかりましたので、これは五十年度はそういうわけで予算化ができませんでしたが、今後について、ひとつ今度は私が最大の努力をいたさなければならないというふうに思っております。
-
○沓脱
タケ子君 厚生大臣の約束、これはあてになりませんから、大蔵大臣、いまの厚生大臣のお答えですけれ
ども、これはどうですか。大蔵大臣のお
立場、御見解を伺いたいんです。厚生大臣に聞いたのは、財布のひもがかたくて御遠慮願いますと言われて引き下がったというのでしょう。これははっきりしておきましょうよ。
-
○
国務大臣(大平正芳君) 本来、かぎっ子政策というのは地域の実情に沿って、いわばその地域の方々の自発的な発意で推進されることが一番ふさわしい事業じゃないかと思います。したがって、これの具体化に当たりましては、一番望ましい姿は、その地域地域の単独事業で、それぞれの特徴を生かして行われることが望ましいのではないかと大蔵省としては考えておるわけでございます。したがって、国において画一的な補助対象にするというようなことは必ずしも賢明でないのではないかというような理由で、五十年度の国による予算化は御遠慮いただいたというように私は伺っておるのであります。したがってこの検討は、ひとり国ばかりでなく、そういうことに御興味を持たれ、関心を持たれ、熱意を持たれておる方々がそれぞれの地域においていろいろ工夫されて、保護者の方々もいろいろ工夫されて、先生が言われるように実のある実現がどういう姿においてできるか、どうすればできるか、そういった点は十分御検討いただくことが望ましいと私は考えておりまして、ただいまのところ明年度はどういたしますというようなことをお約束申し上げる用意はございませんが、いろいろな角度から十分検討を厚生省を中心にお願いしたいものと思っております。
-
○沓脱
タケ子君 厚生大臣、大分話が違います。これはなぜ前齋藤厚生大臣がそういうふうにお約束になったかという点を、これは私大蔵大臣と政策論争をするつもりはないんです、この問題について。だけど、昨年前厚生大臣への御質疑の中で明らかにしてきたのは、児童福祉法という法律の範囲内の、十八歳までの児童福祉法に該当する子供たちの施策の中で、十分不十分は各年齢別にはあるけれ
ども、低学年のいわゆる保育に欠ける子供の部分については、政府としてはまさに行政上欠落しているということをお認めになったんです。だから政府としては施策を具体化しなければならないという
立場にお立ちになったというのが、質疑の経過の中で明らかになっておる。確かに法律的にはその部分は欠落していると、このことは大臣もお認めになられたし、
局長もお認めになっておられる。そういう
立場での対処ということが、現在の
田中厚生大臣のもとでがらっと大きく後退をした。その辺のところが最大の原因だと思いますけれ
ども、大蔵大臣があんなふうに言っておられるということになったら、厚生大臣どうですか、前大臣のお約束は、これは政府としては当然守らにゃならぬでしょう、どうなさるんですか。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 同じ自由民主党内閣でございますから、前の大臣の申したことについてはできるだけこれを引き継いで実行しなければならぬことは当然であります。
なお、大蔵大臣の弁護をするようで恐縮でございますが、大蔵大臣といたしましては、ただいま五十年度予算
審議中に、五十一年度予算についてあれこれ確約を申すということは、これはなかなか実際問題としてできない。ということになりますれば、主管大臣である私の決意を聞いて、そして今後を期待するという以外に方法がないと思いますので、ひとつその辺は御了承を賜りたいと思います。
-
○沓脱
タケ子君 大蔵大臣にもう一遍お伺いをしたいんですが、五十一年度どうこうということを私お聞きをしようと思ってないんですよ。五十年度の予算にゼロだから大変話がおかしいということでお聞きをしているわけで、これは厚生省が前向きに検討を進めてやっていきたいということであれば、大きな金ではないんですよ、予備費でも使ってこれは前厚生大臣のお約束どおり実現をするというお考えはないですか。
-
○
国務大臣(大平正芳君)
田中厚生大臣、せっかく御検討されるということでございますので、厚生大臣とよく相談します。
-
○沓脱
タケ子君 これは大変私は国会
審議の重要な問題に
関係があると思いますので、今後常任
委員会等での
審議にもずいぶん影響が大きいと思いますが、重ねて申し上げておきますが、これは厚生大臣、大蔵大臣のお言葉でございますから十分前向きにできるだけ早く、前厚生大臣の約束どおり、これは私の意思じゃないんですね、自民党内閣の前厚生大臣のお約束を守っていただきたい、そのことを重ねて申し上げて、時間の都合がありますから次へ行きたいと思います。
次に、石油貯槽などのタンクの安全性に関連してお伺いをしていきたいと思うわけでございますが、瀬戸内海を汚し、漁業や漁民に重大な被害を与えた三菱石油水島事故に関連をいたしまして、石油タンクの建設についてお伺いをしていきたいというふうに考えております。
まず第一にお伺いをいたしたいのは、安全基準についてでございますが、まず屋外に一万キロリットルのタンクの建設申請が出たら、監督責任を持っておる消防庁は、タンクの構造基準については何を基準にして許可をするのか、御説明を願いたいと思うわけです。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 石油タンクの建設につきましては、消防法に基づきまして危険物の規制に関する政令並びにその規則がございます。現在、この政令並びに規則に定められました技術上の基準に基づきまして市町村が許可をする、こういうことになっております。この技術上の基準につきましては、タンクの設置位置の問題、タンクの構造
関係、あるいはタンクに設備すべき消防用設備等の設備
関係というものを許可の際の審査基準として許可をしているわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 それでは十万キロリットルのタンクの建設申請が出た場合にはどうですか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) タンクの大きさによりまして、それぞれの保安的な基準がございます。それに基づきまして、それぞれの大きさに応じて審査をいたしております。
-
○沓脱
タケ子君 それぞれの大きさに応じて審査をいたしますとおっしゃるけれ
ども、それじゃもう少し具体的に聞きますと、石油タンク規制に関する政令の十一条の
関係ですね、危険物を貯蔵するタンクについては、厚さ三・二ミリメートル以上の鋼板で、そして気密につくること。この基準は、一万キロリットルと十万キロリットルとのタンクは違いますか、同じですか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) この基準は、一万キロリッターの場合も十万キロリッターの場合も同様でございます。ただ、
現実の問題といたしまして、現在の消防法令によりますこの技術基準というものは、最近の大きいタンクの場合に具体的に適用するという場合の基準としては非常に不適当な状態になっているといいますか、大きいものに対応し切れる状態になっておらないという点にやはり問題があると思いますので、私
どもただいま、こうした最近のタンクの大型化に伴う保安基準の改定につきまして検討準備中でございます。
-
○沓脱
タケ子君 私は不十分とか十分とかと聞いていない。一万キロリットルのタンクをつくるのも十万キロリットルのタンクをつくるのも同じ基準で、厚さ三・二ミリ以上の鋼板で気密につくっておって、漏れと変形がなかったらよろしいという基準になっているというのはこれは同じだと、同じなら同じだと言うてもらったらいいわけです。違うなら違うと、どこが違うと番うてもらったらいいわけです。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 現在の基準は最低基準でございまして、タンクの大きさにかかわらず同一の基準が定められております。
-
○沓脱
タケ子君 同じ基準だということですね。そうすると、単純に言いますと、三・二ミリの鋼板でつくればどんな大きなタンクも自由につくれるというのがいまの政令でございますね、いまのこの監督基準でございますね。こういう最近のような大きな十五万キロリッター、二十万キロリッターというような大型タンクが何ぼでもつくれるというふうなことになっておるということでは、これは事故が起こるのは当然ではないかというふうに思うのですけれ
ども、なぜこういうことになってきたかという点について御見解を伺いたいと思うんです。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 現在の基準が、ただいま使用する鋼板につきましては三・二ミリ以上ということでございまして、このような基準というものは、いわば小型タンク等の場合にそれは適用してしかるべきでありまして、三・二ミリでつくった場合に、十万キロリッターとか十五万キロリッターのタンクがそれに使用可能なタンクとしてつくられるかといいますと、そうではないと思います。そういう意味におきまして、現在の消防法令の技術基準というものが、非常にいまの時代にそぐわなくなってきているということは事実でございます。そういう意味におきまして、この大きさに応じた基準というものをつくっていかなければならないというふうに考えております。
-
○沓脱
タケ子君 基準が、大きいタンクには適確でないというふうなことの御説明のようだったですけれ
ども、なぜそういうことになってきたかという理由を聞いたんですよ。私のお聞きしたことにはお答えになっていない。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) タンクの基準が、以前の小型タンクの時代のままに放置されておったということでございまして、もっと私
どもとしまして、こうした大型化に対応する基準をつくるべきものであるというふうに考えております。
-
○沓脱
タケ子君 私はちょっと角度を変えますが、新潟地震の大災害がありました。その後で、消防庁では
昭和四十年の五月に大変りっぱな報告を「新潟地震火災に関する研究」ということで編さんしておられるんですね。しかもその中に、改善すべき点ということで、危険物
施設について提起された重大な問題点が書かれております。その危険物
施設について提起をされております主な点というのは何でしょう。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君)
昭和三十九年の新潟地震におきまして、石油タンクが火災を起こしまして相当な被害が出たわけでありまして、これにつきまして詳細な
調査をいたしまして、その問題点というものを報告をしているわけでございます。
それで、その主な
内容といたしまして、タンクの元バルブと言いますか、配管についての耐震性の問題、それからタンクの水抜き管の耐震のための装置、それから防油堤についての耐震性の問題、それから基礎工事
関係につきましての問題点といったようなものが主な指摘事項だと考えております。
-
○沓脱
タケ子君 いまのお話の中で、タンクの構造
関係の問題も書かれているんですが、これはあなたのところにはないんですか。
-
-
○沓脱
タケ子君 大事なところを言わない。こういう重大な提起をしておられるんですね。この提起を受けて、省令などを改定して具体的に取り入れた
内容はありますか。ありましたら御報告をいただきたい。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) その後の政省令の改正におきまして、タンクの元バルブの配管につきまして可撓性を持たせるということで、その改正が
一つでございます。それから、タンクの水抜き管の
関係で、取りつけ位置についての変更ということをやっております。それから、防油堤につきましては、その当時つくられておりましたコンクリートブロックの防油堤が地震に対しては全く無力であったということから、これを鉄筋の防油堤にするというような改正が行われておるわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 報告によりますと、先ほど御報告をいただいたところでも抜かされたんですが、タンクの構造
関係についても問題提起がされていて、しかも、そこはなかなか重要な問題提起をされていると思うんですが、これがそのまま生かされないで今日まで、いま
長官が不十分でございましてとか対応がおくれましてとかと言わなくてもいいように、なぜ生かされなかったのか。生かされずに放置されてきたのは一体何でだと、その理由は何だとお考えになりますか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) この新潟地震の際の問題点としてございました、ただいま御指摘の構造の問題と、いわば基礎の問題、この二点が問題点の指摘がありましたけれ
ども、政省令の改正に入ってきておらなかった。この点が、私
どもいまにして考えますと非常に残念に思っておるわけでございますけれ
ども、やはり私
どもの検討不足ということを言わざるを得ないと思います。
-
○沓脱
タケ子君 これは自治大臣にお伺いしたいと思うのですが、せっかくいい教訓から問題提起をされている、それが生かされなかった。さらに
昭和四十三年の七月には千葉の極東石油で、また四十五年の四月には山口県の小野田市の西部石油でタンクの亀裂事故があった。それから
昭和四十六年には、APIの三十六回のミッドイヤー会議では、エッソの研究所が三つのタンクが破れたということについての報告などがあっているわけです。こういう事故経験を生かして必要なタンクの構造や安全基準というふうなものを措置するということが、全然今日現在まではとられてなかった。それで今度水島の事故が起こった。一体政府は、これをどう考えます。自治大臣としてはどうお考えになりますか。
-
○
国務大臣(
福田一君) いままで実際には石油化学というものを非常に重んじるといいますか、石油化学をやっていかにゃならぬということで、石炭から石油ということへ変わっていったわけでございます。そして石油化学の問題が出てまいりまして、そして海外の技術を輸入してこれをやったわけです。ところが、石油化学の技術を海外から入れてやっていったわけなんでありますからして、当然その間においても、非常な装置産業でありますから、いろいろな災害が起きる可能性があるということは考えなければならなかったのだと私は思うのです。特に、新潟地震等がございましたから、なおそれは
認識すべきであったと思うのでありますが、一応やはり
施設をつくるという方面にむしろ目がいっておりまして、そうして防護をするというか、そういうような事故が起きることに対する配慮が足りなかった。これは私は政府の責任であるといいますか、政府としてまことに申しわけなかったということを、このことは
衆議院におきましてもそういう御指摘がございまして、おわびを私としてはした次第であります。
特に、今度のような事故によって油が海に流れ出るなどということについては、ちょっといままで想像がついておりませんでした。火災が起きるということを非常に重視して問題を考えておったのでありますが、今度の場合は、その油が海へ流れ出て、そしてそれが非常な災害を起こしたということで、これはもういけないというので、ただいま事故原因の
調査会も消防庁の中につくりまして、そして事故原因を究明すると同時に、今後はこういうことが起きては大変でありますから、やっぱりコンビナート法というようなものをつくらなければいかぬというので各省といま連絡をとりまして、その法案の立案にただいま入っておるという段階でございまして、そういう意味では、いろいろの意味で、ある意味で私はなかなかそこまではちょっとあのような事故が起きるとは想像しなかったということで、私は先見性がなかったということをおわびしなきゃならぬということを率直に
衆議院では申し上げておるんですが、ただいまもそういう気持ちでございまして、これはひとつ今後はそういうことのないように万全の措置をとる努力をしなきゃならぬ、かように考えておるわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 次に通産省にお聞きしたいんですけれ
ども、三月三日の
衆議院の
予算委員会でわが党の紺野議員の
質問に対しまして、会議録を拝見いたしますと、「現在のJISは不適当であるというようなことから」というふうなことで答えておられるんですけれ
どもね。私は、大型タンクがつくり出されてからもう何年にもなるのに、
昭和三十七年、一九六二年のJISを改善もせずに、そのままほうってきたというのは一体なぜなんだろうかと。その理由は何だろうか。
-
○
政府委員(松本
敬信君) JISは三年に一度ずつ見直すことになっておりまして、この石油タンクのJISにつきましても三年に一度ずつの見直しをしてまいったわけでございますが、そのたびに、まだ改正をする必要があるというところまでに機運が、意見が出てまいりませんので、そのままになってきたわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 それでは
昭和四十年の十月、工業技術院は石油学会へ石油タンクの新しいJISの原案作成を依頼したといいますけれ
ども、それは事実でございますか。
-
○
政府委員(松本
敬信君)
昭和四十年に規格協会が石油学会に、石油タンクのJISの改正の原案を作成するように委託してございます。それは事実でございます。
-
○沓脱
タケ子君 工業技術院が依頼したのじゃないんですね。
-
○
政府委員(松本
敬信君) 規格協会が委託したわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 それでは、その一九六六年のJIS原案が正式に採用されなかった理由は何でしょう。
-
○
政府委員(松本
敬信君) 石油学会がつくりました原案の中に、規格の対象といたしましての材質がございますが、それに高張力鋼、これは小さな、現在のJISには入っていない材質でございますけれ
ども、これを加えるといったような、かなり大きな改正をしようというような
内容であったわけでございます。ところが、その当時におきまして、この高張力鋼の採用ということではわが国はまだ技術的に経験が少なかったということが
一つございます。それから第二点といたしましては、JISの制定につきまして、この石油
関係は特に米国のAPI規格を参考にしてつくってまいっておるわけでございますけれ
ども、このAPIの規格におきましても高張力鋼に関する規定というものがまだできておりませんで、その当時、アメリカにおいては整備中であったというようなことがございまして、以上のような二点が大きな理由で、まだこれをJIS化するには時期は早いのではないかというような考え方から、JIS化しないで現在に至ったわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 確かに、いまおっしゃったように、石油学会でもいろいろな論議がやられているようでございます。事実、石油学会の雑誌を拝見しますと、
昭和四十一年の六月に一応成案を見たけれ
ども、「一部再
審議をする必要があると思われる点があるので、今一度原案作成
委員会にて
審議してもらうことにした」というふうに書かれております。それば今度の事故で非常にはっきりしたわけですけれ
ども、この六六年JISというのは、水島の今度の原因になっておると言われておる不等沈下の問題、溶接部分における傷みの問題、繰り返し応力などは当然取り入れられていないというふうなことはもう明らかになっていると思います。
ところで、いわゆるこの通称JIS六六年と言われているんですけれ
ども、これが石油学会やタンクメーカーの中で使われているし、現にこれが参考にされてタンクがつくられているということは御承知ですか。
-
○
政府委員(松本
敬信君) 現在の日本の、先ほど申し上げましたように石油
関係の技術は圧倒的にアメリカから持ってきているものが多うございますので、当然このタンクにつきましても、石油学会がつくりました原案というのはAPIを参考にした原案でございますので、それに基づいて建設をしておるというふうに考えております。
-
○沓脱
タケ子君 だから、使っているというのは御承知なんですね。これなんですよ。「JIS B 8501」ですね。ところが、先ほどあなたがおっしゃったように、工業技術院ではこれはJIS化をしていない。しかし、各企業では使われている。そのことを御承知だということなんですね。それはなかなかぐあいが悪いので、JIS化できなかったには問題点があったんだという点を二点お出しになっておられる。メーカーはこれを使ってやっておられる。理解しにくいんですよ。
それからもう
一つ、これは消防庁にお聞きしたいんですが、東京消防庁が
昭和四十八年に対策基準なるものを出しておられるのを御承知ですか。「危険物貯蔵タンク等の地震および風水害対策基準」というのを四十八年一月に出しておられますが、これは御承知でしょうか。
-
-
○沓脱
タケ子君 これを見ますと、これは東京の消防庁ですけれ
ども、やっぱり先ほど申し上げた六六年JISの原案ですね、案というのが公然と記載されているんですね。たとえば「タンクの耐震構造」というところにはどう書いてあるかというと、「JIS・B・8501「石油貯ソウの構造」(案)」というふうに書かれております。それから幾つかありますが、「ウィンドガーダー」のところでは、「JIS・B・8501「石油貯ソウの構造」(案)によること。」というふうに書かれているわけなんですが、これ大変理解しにくいわけですね。工業技術院では、
一つは問題点があるので正式にJISにはしなかったと。ところが片方では、業界ではこの幻のJISが公然と使われているし、タンクがつくられている。東京消防庁ではこの基準が、指導基準、対策基準に明確に取り入れられている。
で、私がJISを問題にしていますのは何で問題にしているかというと、工業標準化法の二条の一項に、安全性の問題というのが明記されている。その点で問題にしているんですけれ
ども、通産省は、正式のJISは
昭和三十七年につくったままでほうりっ放し。いま申し上げたように業界では、その六六年の原案ですね、たたき台が、いわゆる幻のJISが使われている。また自治体でも指導基準に使われている。それを消防庁も御承知だと、こういう事態というのは、政府の責任というのは一体どうなるんだろうかというふうに思うんですが、これはJISの
関係は通産省ですから、通産大臣の御見解を伺いたいと思うんですがね。
-
○
政府委員(松本
敬信君) 御指摘のように、そういう案が出て、それをJISに採用しなかったのはいま申し上げたところでございますけれ
ども、業界といいますか、企業としてはタンクをつくらなければならないということでございますので、その技術的な目安として、この石油学会がつくられた案を目安として採用してきたということだと思います。
-
○沓脱
タケ子君 いや、工業技術院の御見解はいいんですよ。こういう状況で十三年前からですからね、極端に言うたら十三年もこのままできたという状態というのは、これは大変だと思うんですけれ
ども、これは政府の責任というのは重大だと思うので、御見解をお聞きしているんですよ。
-
○
国務大臣(河本
敏夫君) これは、基本的に申し上げますと、わが国に石油化学工業ができましたのは
昭和三十年代の中ごろからでき始めたわけです。まだ十数年しかたっておらぬわけでございますが、先ほ
ども自治大臣がお述べになりましたように、主として外国の技術を導入した。そういうことで、この一九六六年にもJISに採用すべきかどうかというふうな議論があったわけでございますが、これはいろいろ問題があったので見送りになった。結局いまこの新しい基準をつくるということで
審議をしておるわけでございますが、翻って考えてみますと、非常な勢いで、もうわずか十数年の間に日本の石油化学工業というものが急速な発展をいたしまして、世界で一、二を争うという状態になった。で、いろいろな面で、公害
関係あるいは防災
関係あるいはいま御指摘のJISの
関係、こういう面で立ちおくれておった、そういう点で手抜かりがあった、こういうことはやっぱり率直に認めなければならぬと、こう思いましていろいろな点で反省をしておるわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 副総理にお伺いしたいんですがね。先ほどからのお話、聞いていただいたと思いますが、監督基準もずっと野放しできた。それで、これは自治大臣がおっしゃったように、政府の責任、なかなか重大だというふうにおっしゃっておられる。片方の、タンクの構造基準ですね、構造規格をつくっていく方のJISもそういうかっこうでほうってこられた。これは私、こういう中で、それも二年や三年ではなくて十年以上にわたって放置されたということになってまいりますと、政府の責任というものはきわめて重大だと思うんですけれ
ども、そういった点についてひとつ御見解を伺いたいと思います。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) この間水島でああいう重大な事件が起こったわけですが、ああいう事件が起こってみて、手抜かりは一体なかったのかということを考えてみますと、私
どもはここで思いを新たにして再びああいうことを起こさないようにしなければならぬと、こういうふうに思います。それがもう最大の政府の責任である、こういうふうに考えます。
いまお話がありましたが、防災基準、これに
一つは問題があるんじゃないか。また、その
施設の基準ばかりじゃなくて、その
周辺の防災対策、そういうものにつきましても、万一の場合に備えた十分の対策がとられなければならぬじゃないか、そんな感じがいたします。そういうものをひっくるめまして、そしてコンビナート防災総合対策立法、さようなものでもこの際踏ん切りをつけてつくるべき時期であると、そういうふうに考えますが、とにかく再びああいうようなことを起こしてはならない、起こさせないということが政府の責任であると、そういうふうに
認識しております。
〔理事
柳田桃太郎君退席、
委員長着席〕
-
○沓脱
タケ子君 もう
一つ通産省に聞いておきたいんですがね。通産省は高圧ガス取締法の一部改正案の提案をされておられて、新しい規則などを変更されるというふうにやってきておられますけれ
ども、現在は一体どうなっているか。これは現在どうなっているかということを簡潔に、いわゆる高圧ガスの球形タンク、これの基準というのはどうなっているか、簡単に言ってください。
-
○
政府委員(
佐藤淳一郎君) 高圧ガスタンクの現在の保安基準は通産省令で定められておりまして、肉厚、耐圧性、気密性等につきまして規制するとともに、緊急遮断装置、防液堤、安全弁、圧力計等の設置を義務づけております。
-
○沓脱
タケ子君 それでは、地盤についての問題と球形タンクのJIS規格があるのかどうかということとあわせてお伺いしたい。
-
○
政府委員(
佐藤淳一郎君) 地盤につきましては、地盤
関係といいますか、基礎の
関係についての省令はございません。それは実は石油タンクとは状況が違いまして、高圧タンクの場合はコンクリートの基礎固めをしまして、その上に足をつくって空中につくる
タイプと、それから足をつくらないでその上に、コンクリートの基礎の上に建てる二つの方式がございまして、石油タンクとは大分構造を異にしておりますが、今度のような問題が起きましたので、私
どもの方としては、この基礎の問題につきましても新しく基準をつくるつもりでございます。それから
調査の義務を設置者に義務づける等々の手をいま考慮中でございます。
それから高圧ガスの球形タンクにつきましてのJIS規格はございまして、火なし圧力容器ということで現在ございます。
-
○沓脱
タケ子君 高圧ガスは改善されるという段階へ来ているわけですね。
ところで、お伺いをしたいのは、通産大臣、石油業法七条によって設備の新設の許可というのをやってきておられますね。この十年くらいの間、どの程度に拡大をしてきたかちょっと御報告をいただきたいと思う。
-
○
政府委員(熊谷善二君) 昨年末の時点におきまして、石油精製能力は五百六十六万バーレル一日当たりございます。
-
○沓脱
タケ子君 五樹五十六万バーレルといったって、どのくらいふえたのかわかりませんが、これは大変なふえ方をしているんですね。消防庁の消防白書によりますと、これは去年一年で屋外タンクが一万個以上ふえている、正確に言うたら一万二百八個ふえているというふうに言われているんですが、こういうふうに見てまいりますと、十年以上にわたって監督基準が全く野放し、そして構造基準のJISもずっとそのままという状態で、そうして石油
基地だけはどんどん拡大許可していくというふうなことになりますと、これは許可をしてきた通産省の責任というのはきわめて重大だと思うんです。通産大臣、この点について御見解どうでしょうか。
-
○
国務大臣(河本
敏夫君) いまお話しのように、
昭和三十年から現在までの間に石油業法による石油精製の増設の許可、非常に大きな数字になっております。先ほど次長が言いましたように、約六百万バーレルというのが現在の能力でありますが、これは石油業法によりまして、主として油の需給
関係を見ながら許可をしておるわけなんです。
で、防災との
関係でございますが、タンクの問題等につきましては、これは消防法であるとかあるいは高圧ガスの取り締まり法であるとか、そういうもので規制をしておりまして、石油業法では直接規制をしておらぬわけです。これは需給
関係だけを見て許可をしておる、こういうことになっております。
-
○沓脱
タケ子君 そういう考え方だから困るんです。片方監督基準は底抜けで、片方はどんどん拡大するというふうなことがやられているから今度のような大事故が起こっているわけですよ。その点について責任を感じるのか感じないのかということを聞いている。
-
○
国務大臣(河本
敏夫君) 先ほ
ども申し上げましたように、わが国の石油事業というものは、石油化学だけに限らず、石油精製事業も全部含めましてごく短期間の間に非常な勢いで発展をしたわけでございます。そういうことの結果、思わざるところでいろんな問題が起こりまして、そして先般の水島の事故のような大事件を惹起したわけでございますが、ここで反省をいたしまして、やはりいろんな点で手抜かりがあったと、たとえばこの防災
関係の法律な
どもてんでんばらばらになっておりまして、とにかく一本の指揮ができない、機動的に行動できない、こういう大きな弱点があるということが判明をしたわけでございます。そこで総理の御指示によりまして、いま自治大臣がお答えになりましたように、自治省が中心になりまして強力な一本化の体制をとろう、防災体制をつくり上げようと、こういうことでやっているわけでございまして、これな
ども実際はもう少し早くやらなければならなかったことだと思います。でありますから、すべての点につきまして今回の事件を契機といたしまして反省をしておるわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 これは時間がありませんので、これらの、いま私通産大臣にお聞きしましたがね、安全措置というのがいまから見れば全くとられないで、高度成長を推進するためにタンクだけ大型化し、どんどん石油
基地を広げてきたということになるわけです。まさにこれが高度成長の姿だと思う。三木総理は、高度成長は大企業本位というのは独断だと言って、この前も本会議で言っておられましたけれ
ども、これこそまさに大企業本位の典型的な実例だと言わなきゃならぬと思うのです。
そこでお聞きをしたいんですけれ
ども、いままでの論議で明らかになりましたが、大型タンクの安全性というのは重大問題がある。また事故も起こっている。そこで大型タンクの新増設について今後どうするか。つまり、いま建造中のもの、新しく建造するもの、これにはどう対処していくのか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) いま水島の油流出事故の事故原因
調査委員会におきまして、今週中に大体中間報告がまとまるという段階になっております。これに基づきまして、さらにタンクの安全基準というものの見直しを行うという予定でございますけれ
ども、この見直しにはしばらく時間がかかるかと思いますが、それまでの間にこの水島の事故を教訓にいたしまして、さらに安全基準についての、いわば指導基準というものを作成いたしまして、相当保安基準についての強化を図りながら、その安全体制を考えていきたいというふうに思っております。
-
○沓脱
タケ子君 そうしますと、事故
調査委員会の結論が出て、安全対策ができるまで、新しい申請とか現在建設中のものについてどうするのか。これは自治大臣、どうでしょう、どうなさいますか。
-
○
国務大臣(
福田一君) ただいま
消防庁長官からもお答えをいたしたのでありますが、従来の基準より、より一層高度の検査あるいは規格等々を付して、事故が起きた理由なんかも大体いまわかってきていますから、もうこれからつくる法案の
内容では相当厳格なものをつくるわけです。そのものを基準にしながら指導をしてまいりたい。ということは、いまつくりつつあるものをやめてしまうということにもいきませんが、そのつくりつつあるものでも、基礎や何かうんと厳重にするとか、あるいは周囲の鉄板その他の鋼板の使い方、あるいはびょうの打ち方であるとか、基礎のつくり方であるとかということは、大体のあれはわかっていますから、非常に厳重にする。厳重にするということだけではちょっと御理解をいただけないと思うけれ
ども、大体いまもう
調査結果が、だんだん中間報告ができる段階まで来ていますから、それを基にして厳重に措置をいたしてまいりたい。ということは、これまた、法律ができるまでにこれを提案をいたしましても四月か五月になってしまいまして、いまつくっておる分について間に合わないということもありますから、その分については大体そこいらを見通して、法案に盛る
内容を見通して、そして厳重な監督をして、つくることを認めてやりたいと、こう考えておるわけでございます。
-
○沓脱
タケ子君 そうしますと、新設のものについてはどうなんですか。新設のものについてもいまの御意見と御一緒ですか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 新設のものにつきましても、現在の政省令に基づく保安基準だけではなしに、新しい指導基準に基づきまして許可をするように、市町村の指導を行いたいというふうに考えております。
-
○沓脱
タケ子君 そうすると、新設も続けてやるということなんですね。
それで、ちょっとお聞きしたいんですが、これは一月の二十三日の地方行政
委員会では、自治大臣は、
調査委員会の
調査を踏まえて十分な安全対策を考えて、それに基づいて今後は新増設を認めていくというふうにお答えになっておるんですが、これはわが党の神谷議員の
質問に対して。このときにはそういうふうにお答えになっているんだが、きょういまお伺いしたら、慎重にとにかく許可をしていくというふうにおっしゃったように思うんですけれ
ども、いつから変わったですか。
-
○
国務大臣(
福田一君) この前の一月のときの地方行政
委員会で申し上げましたときには、まだ事故の
調査も進んでおりませんし、原因も明らかでございません。でありますから、そのときには、今後はそういうものを明らかにした上でなければやらないようにしたいと思いますと、こう申し上げておったのでありますが、大体私の、いま新しく申請がどの程度まで来て、幾つどこであるか、これは地盤にもよりますから、場合によっては地盤の脆弱なところは許さないようにしなければいかぬと思っておるのです。地盤が脆弱でなくても、構造は堅固にしなければいけません、基礎その他は。ですから、ケース・バイ・ケースであって、何でも新設の申し出があれば全部これを許すと、そういう気持ちではないのでございますよ。しかし、とにかくそういうことを踏まえて、大体の原因もわかってきましたから、そういう今度できる基準を一応頭の中に入れるというか、その基準に照らしながら、どうしてもこの場合やらねばならないものがあるとすれば、これは認めざるを得ないだろうと、こういう考え方で、新設も場合によっては認める、こういうことで、何でも出たものはみんな、法律ができないうちにがたがた認めていくと、そういうことは私は絶対にさせないつもりでおります。
-
○沓脱
タケ子君 そうすると、物によってはということなんですが、時間がないから余り詳しく聞けないのですけれ
ども、基盤の問題も、タンクの構造の問題も、いままともな規格がないわけです、実際には。政府が責任を持ち得るものはないわけですよ。そのままで認めていくということになりますと、先ほど自治大臣がおっしゃった、政府の責任だ、おわびを申し上げたいというふうに言っておられたけれ
ども、それは実に危なっかしいと思うのですがね。その点どうなんですか。安全基準、安全対策が確立をするまで新増設をおとめになるつもりはないですか。これだけ問題になっておるのに。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 事故原因の
調査委員会の中間報告が出ますと、恐らく基礎工事の段階からのいろいろな安全基準のあり方等が示されてくるというふうに考えております。したがいまして、現行の政令あるいは省令による基準に加えまして、さらに基礎工事の段階から使用鋼材あるいは施工方法等につきまして詳細な指導基準をつくってまいりたいというふうに考えております。なお、具体的に政令、省令にこの新しい基準を具体化するには、やはりある程度の日時が必要であるというふうに考えておりますので、その間は指導基準によりまして、相当厳格な基準をつくって、それによって新設を認めていきたいというふうに考えております。
-
○沓脱
タケ子君 厳格な指導基準をつくる、それまでは厳格な指導基準で認めていきたい――話がわからぬです。どういうことですか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 一応中間報告が出ましてから、直ちに新しい安全基準の作成の作業に入るというつもりでございますけれ
ども、この作業には相当程度の日時が必要でございますので、法令の上に明確に基準を制定するまでの間は、行政指導の通達によりまして各消防機関についての許可の基準というものを明確にしてまいりまして、それによって
施設の許可をしていくという方針をとりたいということでございます。
-
○沓脱
タケ子君 時間がないですからね。先ほどから、私冒頭からの質疑で明らかにいたしましたように、大変タンクの問題は重要なので、これは新設あるいは今後の問題というのは通産省も消防庁もいろいろ御検討になっておられるのですが、その中で一番問題なのは、既設のタンクですね。これは一体どうするかという問題があるわけですよ。
そこで、
一つお聞きをしたいのは、先ほどからの話のように、大体基準なしにどんどんつくられたということなんですからね。それで不等沈下の一斉点検をやられても、ほとんど全部不等沈下しているということなのですが、外から見ただけでタンクというのはほんとうにどうなっているかわからぬだろうというふうに思うのですが、水島の事故の原因にかんがみますと、大型タンクには、水島で切れた側板と底板との接合部分のひずみ検査、これが非常に大事だということが明らかになってきているようですが、このひずみ検査を既設のタンクにおやりになるおつもりはないですか。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 本年一月から二月にかけまして、まず一万キロリットル以上の大型タンクについての不等沈下あるいは防油堤その他につきましての一斉点検を実施したわけであります。その中で、一応不等沈下の量が直径に対しまして二百分の一以上不等沈下をしているというものにつきましては、油を抜きまして
内部につきましての精密点検をやるということにいたしております。この点検はもうすでに実施中でございまして、それはいま御指摘ございましたような非破壊検査を含む詳細な検査をいま実施させております。
-
○沓脱
タケ子君 それじゃ二百分の一以上の沈下のタンクは全部ひずみ検査にかかっていると、そういうふうなことですね。
-
-
○沓脱
タケ子君 それで、私はさしあたって事故を防いでいくために必要なことということで、そのことを申し上げたいと思うのですが、第二防油堤の問題も水島の事故以後やっておられるようですけれ
ども、これは今後義務づけるべきだと考えるのですが、これはどうでしょう。一万以上だとか、大型タンクに義務づけをやるべきだと思いますが、その見解はどうでしょう。
-
○
政府委員(
佐々木喜久治君) 二次防油堤の設置は是非必要であるというふうに考えております。したがいまして、近くこれにつきましては義務づけの政令を出すつもりでございます。
-
○沓脱
タケ子君 時間がありませんので最後に聞きたいと思うのですけれ
ども、コンビナート防災法をつくるというお話が先ほどからも出ておりましたけれ
ども、特に私は大切だなと思いますのは、これはどういうものをつくるのかという点ですね。これをちょっと伺っておきたいのですけれ
ども、水島事故以後、これは
関係の
専門学者などの旺盛な非常に熱心な研究が進められております。こういった学者だとか、あるいはコンビナートを抱えておる地方自治体の代表、こういった人たちのいわゆる全
国民の英知とでもいうような、英知を結集してつくる必要があると考えるのですよ、防災のためには。そういうふうな方向をとってでも万全を期して進めていかれるおつもりがあるかどうか、その点が、これはもう防油堤の問題もあるいはひずみ検査の問題もさしあたって大事だと思うのですが、そういうことをやりながら、片方で基本的なコンビナート法をつくっていく場合の構えですね、その点についてきわめて大事だと思いますので、そういうふうな方向でやるお考えがあるかどうか、これをお伺いしておきたい。
-
○
国務大臣(
福田一君) お説のとおりでございまして、まず二つに分けて、既設の分に対する手当てをどうするかということが
一つ、これから、つくるものに対してどうするかということが
一つ、この二つを含めて考えていかなければならないことはお説のとおりであります。そこで、これから欠陥のあるものについてどう処置するかという問題、いますでにつくってあるもの、それから、これからつくるものについてどうするかという問題、これは
専門の一流の方たちを、一応科学者を集めておるわけでありますけれ
ども、場合によってはお説のようにもっとそれ以上の方の御意見を聞いた方がいいということであれば、私は決してそれも惜しむべきではない、どなたの御意見でもいいからこの際承って、そして今後二度とこういうような事故が起きないように、万全を期するためにできるだけ努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
-
-
○沓脱
タケ子君 最後に、私もう時間ですので申し上げておきたいと思うのですが、これは、既設の問題、新設の問題という点について、ほんとうに大臣がお述べになっておる政府の責任を感じておるなら、具体的にそれがあらわせるような
中身にしていくということで実現を期していただきたい。引き続き機会を見てまたただしていきたいということで、きょうは終わりたいと思います。(拍手)
-
-
-
○木島則夫君 国鉄のストライキ
関係の問題が大変流動的でございましたので、急拠、大臣要請をしました点を御了解をいただいておきます。
これから
質問に入ります。大変恐縮でございますが、
政府委員の方に、公共企業体等労働
関係法の十七条はどういう条文であるか、恐れ入りますが、ちょっと読んでいただきたい。
-
○
政府委員(
道正邦彦君) 条文をお読みいたします。
「(争議行為の禁止)第十七条1職員及び組合は、公共企業体等に対して同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。又職員並びに組合の組合員及び役員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。2公共企業体等は、作業所閉鎖をしてはならない。」
以上でございます。
-
○木島則夫君 ありがとうございました。
法務大臣に確認をさせていただきたい。明らかに昨年の春闘における公企体職員の争議行為というものは違法でございますね。これは確認をさせていただきます。
-
○
国務大臣(稻葉修君) おっしゃるとおり、違法でございます。
-
○木島則夫君 また法務大臣にお尋ねをいたします。
三月という月は、これは普通の月ではないと思います。決算期でもありますし、また入学シーズンでもございますし、転勤のシーズンでもあるし、現在の不況の中でそれこそ零細中小企業の方方はほんとうに深刻な状況にあるわけですね。こういう中で、自分たちの要求を通すことのみを強調してストをすれば、
国民生活に与える影響というものははかり知れないものがあろうと思うのであります。で、法務大臣に、
国民のお一人としまして、このようなストライキに対して、まあ困ることだけれど、いたし方のないことだと思うか、それとも血が逆流するくらいふんまんを覚えるか、いずれでございますか、ちょっとお答えをいただきたい。
-
○
国務大臣(稻葉修君) 非常にふんまんを覚える問題であります。許されるべき問題ではございません。
-
○木島則夫君 三木総理は、二十三日の福岡市の記者会見で、昨年の春闘の処分問題に触れまして、これは法規に照らして厳正な措置をとるという政府の方針に変わりはなく、不問に付することはないと述べていらっしゃる。しかし、処分の実施の時期については、最初「適当な時期」としてきわめて慎重な表現を用いられておりますし、また社会党との党首会談におきましては、二十七日以前は処分はしないと、こういうふうに言われている。三公社――五現業は別にいたしまして、三公社の場合、処分をする、しないの権限は政府の権限外だと私理解をしているのでありますけれど、こういう表現をされたことの根拠はどこにございますのでしょうか、官房
長官に伺います。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) 総理が九州で記者会見に答え、またこのほどの社会党との党首会談で言われましたこと、いま木島さんおっしゃるとおりでございます。そこで、大変におくれてまいっておるのは遺憾でございますが、これはなるべく早い機会において厳正公平に措置をいたしたいと、かように考えます。
-
○木島則夫君 国鉄当局に伺いたい。きょうは総裁お見えになっていらっしゃらないようですけれど、はっきりと明確にお答えをしていただきたい。
国鉄総裁としましてはきょう異例の談話を発表し、処分は当面――ですか、当分ですか、私確認をしておりませんけれど――は保留ということを発表されておりますけれど、この談話を出された真意というものを聞かしてください。
-
○
説明員(
井上邦之君) お答えいたします。
公企体職員の争議行為は、先ほど政府側の御
答弁にもありましたように明らかに違法行為でございますので、これに対しましては厳正な処分をいたすということは私
どもも十分考えております。ただ、処分をいたしますと、組合側といたしましてこれに対して反対闘争をやるというのが昨今の実態でございまして、今度の場合にも、処分が発表されれば三日間の順法闘争をやって、その後一週間のストをやるというようなことを公言いたしております。まあそのとおりやれるかどうか、これは問題であると私は思いますけれ
ども、昨今の実態から照らしまして、
現実にやはり何らかの処分反対闘争をまたやるということで、
国民に明らかに御迷惑をかけるということもまた事実でございます。したがいまして、私
どもといたしましてはできるだけ
国民の迷惑を避けたい、
国民生活に重大な影響を与えるストというものは極力やるなということで、組合にもいままで約一カ月にわたって説得してまいりました。説得してまいりまして、その結果、まあ組合側の良識ある行動をわれわれも期待するから、ともかく二十七日だけはやるなということで、いままでの例からいたしますと確かに異例でございますが、総裁の談話を発表したということでございまして、真意はあくまで二十七日の闘争をやめろというその気持ちだけでございます。
-
○木島則夫君 そうすると、当面の間というのは二十七日まではやるなということでございますか。非常に具体的にいまおっしゃったけれど、そういうことですか。
-
○
説明員(
井上邦之君) 二十七日の闘争を避けるために談話を出したのでございますから、二十七日の事態、もしやれば処分はいたします。二十七日の実態に応じて当方も考えると、そういう意味でございます。
-
○木島則夫君 談話を拝見をいたしますと、聞いておりますと、ストの処分と密接につながりがあるという印象を受けるんですけれど、これは私の誤解でしょうか。
-
○
説明員(
井上邦之君) 私
どもの真意は先ほど来申し上げておるとおりでございまして、それ以外に何もございません。
-
○木島則夫君 新聞によりますと、官房
長官は国鉄総裁の談話は不用意であったというふうに言われている。それはどういう意味ですか。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) たとえばあの談話の中に、いま御指摘の「当面」というふうな言葉も使ってございます。こういう言葉はあるいは誤解を招く恐れもありはしないか、そういう意味で指摘をいたしたわけであります。
-
○木島則夫君 非常にしつっこくて恐縮ですけれど、「当面」という言葉が、官房
長官は、どういう誤解を招くというふうにおつなげになりましたか。恐縮です、細かい点。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) 私
どもといたしましてはなるべくすみやかにと、こう考えておるのでございますが、「当面」という言葉の持つニュアンスが、何かこう少し長引いているというふうなことに受け取られては不穏当ではないかと、こう考えるわけであります。
-
○木島則夫君 国鉄当局の通告は、昨年の春闘処分について当面の間留保するというふうに言っておりますけれど、そうすると、組合がストを中止すれば年度内処分を見合わせて延期をするんだということに素直に受け取っていいのか。もしこの延期で年度内を越すということになりますと、何か四十九年度、この年度内は事実上スト権が認められたというふうにも解釈をする人がいるんですけれど、こういう解釈は間違っておりますかしら。
-
○
説明員(
井上邦之君) あくまでこの談話は二十七日の時点を目途として、それを目指して言っておることでございまして、二十七日の実態に応じては直ちにこちらも応分の態度をとるぞということを言外に含んでおるわけでございます。したがいまして、年度内にやらないというようなことは毛頭含んでおりません。
-
○向井長年君 関連して。
国鉄総裁なり政府側に
質問いたしますけれ
ども、政府が、こういう違法ストをやって
国民に迷惑かけることは何とか良識をもって行動を期待すると、この要望は私はわかります。しかしながら、ストの処分問題とはおのずから別だと思います。昨年度のいわゆる春闘に対する処分についてはこれは別に考えなけりゃならぬ問題でしょう。それを今回の二十七日のストに対してこの処分問題を取り上げて延期するとか留保するとかいうことは、少なくとも取引をしたというように考えられますが、そうではありませんか。私は、少なくとも今日までの違法をやったやつに対しては、これは厳然たる態度で臨むべきである。政府が、
国民に迷惑をかける二十七日からのストについては回避を期待して、あくまでもこれは組合と話し合うべきである。にもかかわらず、二十七日はやめてくれと、そうなればスト処分については若干留保すると、これは話が通らぬのじゃないですか。おのずから別個の問題と考えなけりゃならぬと思う。これは国鉄総裁あるいはまた官房
長官あるいは副総理――総理はおりませんから副総理、あわせてこの問題について私はまずお聞きしたい。その後において、私は
答弁いかんによっちゃ
委員長、また
質問いたします。
-
○
説明員(
井上邦之君) この問題は決して取引をしたというふうには私は考えておりません。もちろん問題を解決するためには組合側といろいろ話し合いをしなくちゃなりません。話し合いはいたします。話し合いいたしますが、取引の結果こういうことになったということではなくて、あくまで処分は処分としてやらなければならぬという態度は保留いたしております。いささかも処分をしないということは言ってないわけでございます。ただ、二十七日の闘争というものは余りにもわけのわからぬ闘争である。企業内の問題があるわけではない。企業内の問題で闘争をやるというんならば、まだ幾らか理屈も立つかもしれぬけれ
ども、最賃制を主体としたこの闘争、これは国鉄の企業内の問題ではないわけでございます。したがいまして、そういう
国民にとってもわけのわからぬ闘争はやめろと、まあこういうことを極力説得したということと、それからもう
一つは、先ほど来申し上げておるとおり、処分を発表すればこれは必ず
国民に少なからぬ迷惑をかけます。
国民生活に重大な影響を与えるストが行われます。そういうことの兼ね合いで私の方が判断をいたしたわけでございまして、決して組合側と取引をしたというような結果ではございません。
-
○向井長年君 幾ら副総裁がそう言おうと、考えてみなさい。最賃制度化の問題については、労働四団体が
一つの姿でこれを要求いたしております。あるいは野党四党がこぞって
衆議院で二十四日、きのうこれを提出したんでしょう。政府はこれに対してどう取り組むか、まだ結論が出ていないんですよ、法案として。やらないとはだれも言っていない。労働大臣、そうでしょう。そういう中で、この二十七日のストライキをやるということは、処分撤回、処分やらさないというストライキに間違いないじゃありませんか、そうでしょう。それに屈しておるのがいまの状態じゃありませんか。そういう誤った違法がまかり通るということについては
国民が信頼しませんよ。それならば、たとえばまじめに働く人たちの組合はどうですか、特に
昭和二十八年度にスト規制法がしかれた。電気の組合の諸君が、あるいは炭労の諸君が二十年余り隠忍自重しておるじゃありませんか。こういう組合はそのままばかみることになるでしょう。そういうことがまかり通ることになれば、正直者は、あるいはまた健全にやっているところは、これによって自分たちの要求が入れられないという結果が生まれてくるのですよ。圧力がかかって、あなたたちは圧力に屈したということでしょう。政府はこれに対して、官房
長官、どう考えられる。私は、スト権の今後与える問題については別の問題、現行においては、少なくともこういう違法ということは明確に法務大臣も言っておる。皆さん認めておられる。これがどんどんと年中行事のようにやられている。そしてそれが処分をされる。一年なり二年たてばまた復元をする。全く悪循環をやっているじゃありませんか。そして今回のごときは、昨年度のやつをずっと今日まで延ばしてきて、いま本年度内に処分をしなければならぬやつを、先ほど言った二十七日に圧力がかけられて、圧力に屈して、こういう状態をとっていると言っても何ら過言じゃありません。それに対してどう考えられますか。国鉄総裁、政府、あわせて
答弁願いたい。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) おっしゃるとおり、公労法の精神から申しましても、これに対しては毅然として臨まなければならぬと、かように考える次第でございまして、いま向井さんが民間労組との
関係をもお触れになりましたが、そういう片手落ちのないように措置をいたすつもりでございます。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) ただいまの向井さんの御意見も交えての御
質問、私はよく理解できます。私もそういうような感じがいたすんです。いま問題になっておる処分、これはもう去年の春の問題でありまして、過去の行為に対する処分がまだ行われておらぬと、そういう性質のものです。これがこれから行われるかもしれないという二十七日のストと関連をして、関連を持ちながら決められると、留保ということで決められるということは、どうもこれは事を紛淆しておるんじゃないか、そんなような感じがしてならないんです。まだ国鉄当局からも私
どもとしては意見は聞いておりませんけれ
ども、十分意見を聞きまして、これは是は是、非は非、これは事を分けて考えなければならぬ問題である、そういうふうに存じます。
-
○向井長年君 国鉄副総裁、あなたどう言おうと、いま組合の皆さんが二十七日にやろうということは、これは処分をさせないという目的のためのストライキと考えられるでしょう。最賃問題じゃないですよね。表には最賃出しておっても、最賃はまだ政府はこれは拒否してないんです。まだきのう出しただけです。そうすると、やはりストを、いわゆる処分をやらさないというストライキにしぼってきておると思うんですよ、精神は。これに対してあなたは、少なくとも二十七日まではやらぬ、あるいは今年度内はやらぬ、留保だと、いま全部どの新聞の夕刊を見てもみなこれが一面に出ておるでしょう。これは
国民側から見たら、私が言ったように取引したと言われても仕方がないじゃありませんか。いま副総理が言われましたように、去年のストと、これからやろうとするのと、おのずから別個の問題として考えなければならぬ。にもかかわらず、そういうことを言われるならば、私は取引をしたのじゃないか、こう言わざるを得ないと思うのですよ。この点どうか。
そこでもう
一つ、こういうことを申し上げたいのは、私は関連でございますから、たびたびできませんので申し上げておきますけれ
ども、今日、こういう問題がたびたび起きてきているゆえんのものは何であるか、言うならば私は二点あると思う。
一つは当事者能力の欠如ですよ。国鉄総裁、あるいはその他五現業にしても、あるいはまた三公社にしても、まず当局の当事者能力の欠如、二つ目は、その組合の体質、言うならば、法律で禁止されておっても、憲法に保障されておるがためにわれわれはやってもいいんだという物の考え方、体質。この二つが今日労使間の不信感となってこういう悪循環を繰り返している問題だと、こう私は思う。したがって、少なくとも現行法によってこれがとめられておるならば、毅然たる態度で臨まなければならぬということ、二十七日を回避するために、その問題は別だ、あるいは留保するのだ、延期するのだということにひっかけておることは間違いである、こう言わざるを得ませんが、それに対する
答弁を願いたい。
-
○
説明員(
井上邦之君) 二十七日のストが処分をやらせないためのストであるという先生の御見解でございますけれ
ども、私
どもはそうは考えておりません。と申しますことは、二十七日のストというものは、ずっと前から
国民春闘の一環として組合側としては計画し、企画しておったものでございます。その
国民春闘というのは、やはりその中の重要な項目として最賃制の問題を取り上げておる。最賃制の問題を主として二十七日に闘争をやるということは、これはずっと前から組合側としては計画をしておるわけでありまして、決して処分をやらせないためにストを構えておるということではないのでございます。
-
○木島則夫君 私からも国鉄総裁に確認をしたい。つまり、ストと処分とは全く別個のものだということですね、この確認です。もう一回おっしゃってください。
-
○
説明員(
井上邦之君) 処分とストとは別個のものでございます。
-
○木島則夫君 差し迫った二十七日に予定されているストライキに対する対策、これは運輸大臣でしょうか、あるいは労働大臣、いずれにしても差し迫った二十七日のストに対する見通しというか、その対策について伺いたい。
-
○
国務大臣(木村睦男君) 国鉄の場合は、いかなる場合でもストをやってはならないことになっておるわけでございます。これは従来とも変わりはない、御承知のとおりでございます。したがって、二十七日に計画をしておりますところのストもやってはならないストでございます。したがって、運輸省といたしましては、しばしば、やってはならないストであるから、やってもらっては困るということを強く訴えてまいっております。あとは国鉄当局が組合に対して、いかにそれを強く要請をして、ストを避けるようにするかという努力にまっておるのが実情でございます。
-
○
国務大臣(長谷川峻君) 公労協等が、労働組合が要求を出すたびに、いつもストライキに訴えるという従来の慣行は、こういう安定成長の転換期にふさわしい労使の
関係の新しいルールをつくるのに努めたい、こういうことからしますというと、やっぱりこの二十七日の最賃を要求しているストライキというものは、これは制度要求であり、さらにまた国会
審議と、こういう問題がありますので、私はそういう方々に会うたびに、何とかこの二十七日のストライキというものを、そういう意味でぜひひとつやめてもらうように、繰り返し訴えているところであります。
-
○木島則夫君 法務大臣。
-
○
国務大臣(稻葉修君) 二十七日のストライキに対処するのは私じゃないんですよ。
-
○木島則夫君 いや、むろんそうですけれど。
-
○
国務大臣(稻葉修君) 私は、去年のストライキをやった者の処分と、二十七日のストライキを回避する方法とは全く分離して、別個なものだということだけを申し上げます。
-
○木島則夫君 法治国家としてこういうことが行なわれるという、そのことの……。
-
○
国務大臣(稻葉修君) それは、先ほど先生がお読ませになった十七条、それに続いて十八条には、前条の規定に違反する行為に出た者は解雇しなければならないとあるんですから、解雇しないのはおかしい使用者なんですね。それに対しては、政府がどういう態度に出るかはまた別個の問題が残ります。
-
○木島則夫君 まあ、私も非常に時間が少ないものですから、この問題に対する締めくくり的な
質問をしたい。とにかく三木総理は対話の政治というものを強調されているんですけれど、明らかに違法なストを対話の何か対象にするという姿勢は、私、民主主義にとって最も根本的な遵法精神を政府みずからがないがしろにしているような気がしてならない。つまり、対話というムードの中に違法行為が埋没をして、薄められてしまう印象を
国民に与えているんじゃないかと思うんです。さっき国鉄総裁はおっしゃった。
国民のためを思うならば余り手荒な、荒げたことはしないという、いつもそれが譲歩、譲歩、譲歩という形になる。法治国家ですから、けじめはけじめとしてきちっとつけるべきです。
で、私はいま、社会変革を急ぐ余り、秩序まで破壊をしてしまう現代社会の風潮に対して、一方では社会的格差が広がることへの不満と同時に、この秩序破壊に対して大変な不安感を
国民の皆さんは抱いているわけです。ですから、こういう状況を踏まえた上でスト問題に対処をすることこそ私は三木内閣の政治姿勢だと思いますけれど、これはもう一度
福田副総理にお伺いをしたい。官房
長官からも後でもう一度お伺いをしたいのであります。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) わが国は法治国家でございますから、これはもう法を守る、また法を破った人はその責任を持つということにこれは徹しなければ、わが国の社会というものはこれはもっていきません。でありまするから、いまお話がありますが、わが三木内閣におきましては対話と協調ということを言っておりまするけれ
ども、それは、対話と協調だからといって、法の秩序はどうあってもいいと、こういうような、そういう乱れた考え方はいたしておりませんです。法は法としてどこまでも厳正にこれを執行しなければならぬ、こういうふうに考えております。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) ただいま副総理がお答えになったとおりでございますが、対話と申しましても、これは秩序の中で話し合いがなされるんであって、アウト・オブ・ロー、そちら側とはどうも対話が成立しないと、こう考えています。
-
○木島則夫君 まあ、非常に含みのあるお答えであろうと思います。とにかくこういう事態でございますから、本当にお互いの信頼感の上に立ってこのスト問題は解決をしていかないと大変なことになるということを最後に申し上げておきます。
スト
関係のことで要請をいたしました大臣の方、御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
次に、これまた気になることでありますけれど、
外務大臣にお尋ねをいたします。
キッシンジャー国務
長官による今回の中東和平工作が失敗したのでありますけれど、これはいわゆるキ
長官の
発言からしまして、工作の中断と考えるべきかどうか、政府の判断をまず伺いたいのであります。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) いろいろな要素を再検討するために中断をしたという声明になっております。あれだけの継続した、詰めた努力がなされた後でございますから、すぐにまた始められるという状態ではないと思いますけれ
ども、注目すべきことは、エジプト側もイスラエル側も、お互いに相手を批判する声明あるいは非難する声明は出しておりますけれ
ども、キッシンジャー氏を批判する、あるいは非難するようなことは両方とも言っておりません。そういうことから考えますと、非常に近い時期ではなくとも、将来またキッシンジャー氏がそういう
役割りを買うということはあり得ることではあろうと思います。しかし、あれだけの努力の後でありますから、すぐにまたそれが可能だというふうには考えられないということであろうと思います。
-
○木島則夫君 今後の中東問題は、ジュネーブ会議をどうやって開いていくかにかかってくると思うのでありますけれ
ども、そこでその問題は、PLO代表がそれに出席するかどうか、そしてどういう形で参加をするかということも問題でございます。
日本政府としましては、このPLO代表参加について、これは希望的なものであっても結構でございますが、どのような見解を持っておいでですか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) そこで、このたびの動きをめぐりまして、注目すべき第一点は、両国ともキッシンジャー氏を批判するようなことを言っていないということ、それからサイナイ半島における国連軍の撤退期限が四月二十四日であり、シリア側におけるそれが五月三十一日であるということで、しばらくそれまでに日があること、それからもう
一つ、いま言われましたキッシンジャー氏の声明の最後に、
関係両国並びに共同議長国云云という言葉がございまして、これはソ連を明らかに指しておるわけでございます。で、そういうことから、この最後の点からは、あるいは木島
委員の言われますように、ジュネーブ会議ということが浮かんでくる可能性もあろうかと思うのでございます。そういたしますと、おっしゃいますように、問題はPLOをどうするかということになるわけでございますが、何分にもPLOがイスラエルというものを認めていない、イスラエルはPLOと同席しないというふうな複雑な問題がありますことは確かですが、しかし何かの形でPLOがこの会議に顔を出さなければ、ジュネーブ会議らしい会議にはならぬということも明らかでございますから、そこでそれは独立のPLOという形であることが絶対に必要であるかどうか。たとえばシリアならシリアと、あるいはアラブ側が全部の
一つのデレゲイションをつくるというような、いろいろなそこには工夫があり得るわけであろうと。私
どもは会議当事国でございませんから当事国としての主張をしておるものではございませんけれ
ども、
日本政府としてどんなふうにそこらを見るかとおっしゃれば、いろいろな形が考えられるのではないかというふうに思います。
-
○木島則夫君 伝えられるところによりますと、アメリカの失敗でソビエトが乗り出す機運があるということでございますが、このPLO代表をめぐるアメリカとソビエトとの態度もまたニュアンスが幾分違っている。こうした中で、米ソ協調のもとでジュネーブ会議というものが前進をするのかどうか、これは先のことになると思いますけれ
ども、この辺の判断も聞いておきたい。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) もともとキッシンジャー氏がソ連の協力を排除していなかったことは、ウラジオストックの会議、それからその後のジュネーブの会議でも明らかでございまして、ソ連側もまたキッシンジャー氏の努力を妨害しようとしておった形跡はないわけでございますので、今回の事態から、やはり両議長国がもう少し緊密に協力をする必要があるという
認識は生まれつつあると思うのでございます。そうではありますが、それが直ちにジュネーブ会議に続くものであろうかどうか。もしそうであると仮にいたしますと、そのときの議題は何であろうかということになるわけですが、さしずめ国連軍の駐留期間というものが迫ってきておるのでありますが、それが議題に、そうするとなりそうなものでありますけれ
ども、実は単純にこれを延長するということになりますと、エジプトも、シリアはもっとそうでございますが、交渉の切り札をなくすということになりかねないのでありますから、そうしますと、それが素直にジュネーブ会議の議題になるともすぐには思いにくうございまして、したがって、そのジュネーブ会議にいきますまでの間に、もう
一つ何かありませんといけないのではないかという感じがいたします。
-
○木島則夫君 アメリカの調停の失敗、ジュネーブ会議まで時間がかかるとしますと、こういうことは想像したくないのでありますけれど、その間に中東戦争が再び発生するおそれはないのかどうか、政府の得ている情報をもとにいたしまして、この辺も
推測をしていただきたい。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) あれだけ詰めました努力、しかも、両側がかなりあるところまでは歩み寄ったその後でございますから、やはり非常に挫折感が大きゅうございまして、一転して空気が悪くなっておると申しますか、そういう心理的な雰囲気は避けられないと思いますけれ
ども、しかし、エジプトが戦争を望んでおるかと言えばさようには考えられませんし、もとより、イスラエルがそうであるかと言えばそのようにも考えられない。私
ども特別の情報を持ってはおりませんしいたしますから、こういうときはお互いの心理と国内体制の強さといいますか、やはりタカ派、ハト派というようなものが両方にあるわけでございますから、その間の葛藤がどうなるかというようなことで、申しわけないことでありますけれ
ども、私
どもはっきりした情報を持ち合わせていないというのが事実でございます。
-
○木島則夫君 中東問題の最後は、もしこれは不幸にしてそういった事態が発生した場合に、
日本政府としてどういうふうに対処をしていくか、ことに資源問題をめぐっていろいろまた揺れが来ると思います。その辺のところまではいま詰めてお考えではありませんか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 再び戦乱が起こるというふうに私
ども必ずしも考えてはおらないわけでございますが、それから後はいろいろな想定が、仮に万一起こりましたときにも可能でありまして、それは、たとえばまた原油の禁輸措置がすぐに足並みをそろえてとられるであろうかどうであろうかということについても、説が分かれておるように思います。それから、現在、世界的にやや供給がだぶついておるということも事実でございます。それから最後に、また、いわゆるIEAの取り決めによりまして、おのおのの節約あるいは融通というようなことも最後にはあるわけでございますので、したがいまして、前回といろいろ客観情勢が違ってきたというふうには考えてよかろうと思うのでございます。しかし、恐らくそうでない事態だとは思いますけれ
ども、そういうことも万一の場合に備えて考えておかなければならないことであろうとは思っております。
-
○木島則夫君 次に、きょうは福祉問題を中心に、ちょっと細かくなりますけれど、いろいろ用意をしてまいりました。しかし時間の
関係で、ある一点にしぼらせていただきます。心身障害児の問題にしぼって御
質問をいたします。
厚生省の統計によりますと、全国におります心身障害児は約百五十三万人、その内訳は、聴覚の障害、視覚障害、それから肢体不自由児といった身体障害児が十一万二千人、それに精神薄弱児が百四十一万七千人もいるということであります。ここで問題になりますのは、このうちの軽症児、つまり症状の軽い子供たちがこのうち六〇%から七〇%も存在をしているという事実です。こういった軽症の子供たちは、ほうっておきますと重症児の仲間入りをしてしまう。ところが、現行の行政を見ると、重症児対策にしか目が向けられておりませんで、軽症児約百万、正確に申し上げると九十六万人の対策はほとんど手がつけられていないというか、見捨てられている現状であります。厚生大臣、このことはお認めになりますか。つまり、中軽症児に対してはほとんど対策がとられていないというこの現状はお認めになりますか。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) ちょっと先生のお挙げになった数字が少し違うようでございますので、その点については
政府委員から一応
答弁し、その後について私から申し上げます。
-
○
政府委員(上村一君) 精神薄弱児の数字、四十六年の十月の実態
調査で私持っておりますが、十七万人でございます。その中で軽度の者が六割でございます。それから身体に障害のある子供が十一万一千百人でございます。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 心身障害児の対策でございますが、決してわれわれは重症児だけを扱っているわけではございません。心身障害児の治癒
訓練は実は軽い者についてもいろいろと施策をとっておるわけでございまして、そういったようなことについて後ほどまたいろいろお尋ねがあろうと思いますから、その向きに従って話を進めていきたいと思います。
-
○木島則夫君 もちろん、その重症児対策も現在のものでいいと言っているんではないわけです。これはこれで国が責任を持って推進をしていっていただかなければならないわけです。
さっきも申し上げたように、軽症児はほうっておきますと重症児になってしまう。軽いうちに、しかも乳幼児のうちに治療とか
訓練をしますとかなりのところまで回復して、
一般の人たちと同じように社会生活をすることもできるようになる。障害児の福祉対策を効果的に進める上で、早期の療育こそ私は非常に大事な点だと思う。軽症の子供を救うことができるのに、重症になるのを待っているようなそういう冷たい国の行政姿勢ではとてもがまんがならないのでありますけれど、厚生大臣に伺いたいんです。軽症の子供たちへの対策はどう考えているのか。もう一点、この症状の軽い子供たちに対して早期に対策を施せばかなりのところまで回復をして、
一般の人たちと同じような社会生活もできるんだということはおわかりになっているはずだけれど、とてもとてもそこまで予算措置もできなければ手が回らないというのが本心なのかどうか、その辺もお尋ねをしておきたい。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 木島先生御指摘のとおり、心身障害児の治癒
訓練は、早ければ早いほど実はよろしいということは私
どもも
認識をいたしているわけであります。のみならず、これは重いお子さんでも、やはり早いときに手当てをいたしますれば相当の
機能回復ができるということをわれわれも知っておるわけであります。そこで厚生省としては、早期の治療
訓練を心身障害児対策の重点といたそうというふうに考えておりますが、このお子さんたちは、実は小さいときに
訓練をしなければいけませんから、したがいまして、親御さんと協力し、親御さんを離さないで必要な
訓練、治療を行うことが必要でありまして、そのために通園
施設のものを最近いろいろと設けておるわけであります。これについて具体的に申しますると、大都市等につきましては、肢体不自由児の通園
施設、それから精神薄弱児の通園
施設というふうに、いろいろと設けておるわけでございますが、今年度から、いわゆる難聴児の通園
施設を制度化をいたそうと。また、都会等ではこれでよろしいのでございますが、地方等ではそういうふうに障害児のいろんな種別がございますから、これを別々に扱うわけにはいきませんので、したがって小規模の通園事業というのをやろうということになっておりまして、今日これに対する対策を進めているところでございます。
-
○木島則夫君 実は、いま厚生大臣のお口からも出ましたけれど、難聴児対策、これはサンケイ新聞のきのうの社会面に、「難聴の坊やに笑顔」「50語しか話せなかったのに晴れて一年生に」という、きっと厚生大臣のお目にとまっていると思います。お読みになりましたね。
これはどういうものかというと、秋田市の小玉政樹さんという六歳の坊やが、生まれつき難聴、つまり耳が遠かったために言葉を覚えることができない、五歳になっても片言でたったの五十語しか話せない、御両親も一時はあきらめて聾唖学校へ入学をさせようと考えたわけでありますけれど、この四月には
一般の子供たちと同じように地元の小学校に入学をすることができる。それは秋田市内にあるグリーンローズという
施設に一年間必死で通園をして
訓練を受けたからこういうふうになった。で、いまお話がありました小規模通園
施設のこれは大きな成果だと思うんですね。しかし、もしこの
施設が秋田市内になかったならば、この小玉政樹君は恐らく耳が聞こえなくて、音の世界からは隔絶をされた暗い生活をしたに違いないと思うんです。
きょうは私、厚生大臣と議論をしたり、とげとげしい話はしたくない。むしろ建設的に、実情を私が御提示申し上げることの中で問題点を把握していっていただきたいのであります。私も言葉を
専門にしております。で、言語の発達の障害を持っている幼児の場合には、言葉の
訓練は、いま厚生大臣が言われたように幼児期がいいんですね。たとえばこのグリーンローズなんというところでは、
一般の子供の中に言語発達のおくれている子供を入れますと、非常にそこで刺激をされてよくなる、知能も向上をしてくるということです。ですから、医療の対象にはならないけれ
ども、さして大きな障害もなく、幼時のうちはとかくそういうものだよといって片づけられがちな人たちが、家庭の責任ということで家庭の中で暮らしている、生活せざるを得ない。幼稚園は正常な子供しかとりませんね。また、保育所は養護の措置を要する子供しか受け付けない。その谷間に置かれているこういう幼児が実は問題で、ここに私は福祉の本質の問題があるんじゃないかということで、きょうはこういう御説明を申し上げているわけであります。三歳前後にこのグリーンローズに来ている子供で、来た時点でわずか四つか五つしか言葉を話せない、それがこの指導と環境を得ますと、三歳から一年たちますと半数以上はやや年齢に近い表現能力を持つことができることを実は実証をしているわけです。
どうでしょうか、厚生大臣、こういった実例を
御存じでございましたか。つまり、医療の対象にもならないし、そうかといって幼稚園にも行かれない。こういう子供が環境と指導によってその可能性を結実させることができるという事実を、実は
御存じであったかどうか、ここのところは大変大事なんです。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 厚生省では、いわゆる早期治療、
訓練ということについて、しばらく前からこれについて力点を入れているわけであります。先生おっしゃるとおり、この難聴児に対しては特にこれが効果があるわけでありまして、耳が遠いものですから、したがって、そのお子さんは聞こえませんから、ボキャブラリーが非常に不十分になってくるということでございますので、したがって、こういう
訓練をいたしますると、言葉が覚えられる。まさに小規模通園
施設などにおいては最も効果が発揮できるのはこういう
施設だろうというふうに
認識をいたしております。
-
○木島則夫君 実はきのうサンケイ新聞が取り上げました小玉政樹君のところへ、私電話をしてみたんです、きょうこの
質問、があるものですから。そうしたら、あの新聞が出たことで、千葉県からも埼玉県からも、実はうちの子供もそういう状況なんだけれど、どこへ一体行ったらいいんでしょうかということが、この新聞に載った御本人のおうちにずいぶんかかったということなんですね。学齢期に達しますと、ただ言語発達がおくれているという理由だけで普通の学校にも入れませんし、場合によっては
施設に送られてしまう。それが、やるべきことをやった当然の結果なら納得できるのでありますけれど、可能性があるのにその可能性を引き出す場所をつくらないで過ごしてきた結果、やむを得ず小学校にも入れない、あるいは
施設に送られるということであるならば、これは社会的不公正をなくし、弱者の
立場に立とうという三木内閣としては、実は手落ちじゃなかろうかと思うのであります。
現在、国が助成をしている小規模通園事業はたったの五十カ所ですね、私は少ないと思う。そして厚生省が五十年度に要求した百五十カ所というのも、これも少ないんだけれど、これが七十カ所に削られてしまいましたね。厚生大臣一どうして削っちゃったんですか。非常に効果があるということがわかっていながら、そして、いいですか、予防的措置としての予算措置を講じることが本当に福祉対策を生かすことになるということがわかっていながらどうして削られたんですか。大蔵大臣や経企庁
長官、そのことをおわかりでなかったのかしら。後で伺います、これは。
-
○
政府委員(上村一君) 先ほど来、お話ございましたように、早目に母親と一緒に通園できるような
施設が非常に必要であるというふうに考えまして、一番そのオーソドックスなやり方としまして、私
ども――精神薄弱児の通園
施設、これが全国でいま百五十二カ所ございます。約六千人の子供が入っております。それから肢体不自由児の通園
施設、これも精を入れて整備してまいっておりますが、まだこれは十二カ所でございます。こういった
施設というのは、先ほど大臣からも申し上げましたけれ
ども、人口の規模の小さなところではなかなか設けることが困難だということで、四十七年度からお話しの小規模通園事業を行うことにしたわけでございますが、これはあくまでも、さきに申し上げました精神薄弱児の通園
施設とか、あるいは肢体不自由児
施設の通園
施設を補完する、何と申しますか、悪い言葉ですが、やや便宜的なものであるわけでございまして、これを七十カ所にすると同時に、本来の精神薄弱児の通園
施設なり肢体不自由児
施設の通園
施設というもののネットワークを整備していくことが何よりも肝要であるというふうに考えているわけでございますので、七十になりましたからといって、その通園対策というものがなおざりになる筋合いのものではないというふうに考えております。
-
○木島則夫君 これ、大蔵大臣とそれから経企庁
長官にもお伺いをしたい。つまり、あの予算措置を予防的な意味で早くからこういうところに投入をすれば、本当に重症児にならないうちに
一般社会人と同じような社会生活、明るい生活ができるということを考えますと、予算の持つ効率、意味、意義というものも、私は非常に大きいと思うんですけれど、なぜこういうところに予算がもっともっと投入できないんだろうか、大蔵大臣に伺いたい。
-
○
国務大臣(大平正芳君) たびたび本
委員会でも申し上げておるんですけれ
ども、予算というのはなかなか飛躍しないんです。去年から、ことし、来年と大きくジャンプがきくものであればよろしいんですけれ
ども、毎年若干ずつ、手がたく増加計上して差し上げるのが精いっぱいのところと心得ていただきたいと思うんでございます。いま心身障害児の通園事業費を拝見してみますと、四十七年度二十カ所から、その次は三十五カ所、五十カ所、五十年度は七十カ所というようにだんだんとふやして差し上げておるわけでございまして、他の費目に比較いたしますと、よほど奮発して差し上げているということになっておるのではないかと思うんでございまして、今後もできるだけ御協力申し上げなければならぬと思っております。
-
○
国務大臣(
福田赳夫君) 心身障害児の
施設というのは、これは十数年来かなり飛躍をいたしておるわけなんです。いろいろ言われますと、まあ手抜かりのところもあるようでありますが、厚生大臣にもよく調べてもらいまして、その緩急の順序というものがあるものですから、そこで、ほかの方へ回って心身障害児の通園
施設に金が回らなかったというような事情もあるのかと思いますが、いろいろお話を承りましたから、せっかくひとつ努力をいたしてもらいたいと、かように考えます。
-
○木島則夫君 私がさんざん申し上げたことは、軽度のうちに対策を施すことで多くの子供さんたちが普通の学校に行ける、こういうことになりますと、予算上からも効果が非常に大きいと思う。こういう言葉使いたくないんですけれど、はしにも棒にもかからなくなってしまってから幾ら手厚い対策をしましても、これは本当の福祉対策にはならないということを、私は御指摘申し上げているんです。そこにこそ、いま大蔵大臣がおっしゃった発想の飛躍がなきゃだめなんです。もう一回お答えをいただきたい。厚生大臣、そうでしょう。発想の飛躍がないところに福祉対策はない、私はこういうふうに言い切りたい。したがって補完的なもので、七十カ所に減らしたからといってこれは決してダウンではないということは、本筋的なところで、そうすると、もっともっと予算をつけていただけるんだろうと、素直に私は解釈をしたんでありますけれど、その辺もう一回、大蔵大臣にお答えいただきたい。
-
○
国務大臣(大平正芳君) でございますから、そういう発想の飛躍的な着想がございまして、四十七年度から補完的な補助金がつけられて、それから着実に伸びておるわけでございまして、今後もできるだけ配慮してまいりたいと思います。
-
○木島則夫君 次に、
一般の幼児とともに心身障害児を集団保育する、いわゆる共同保育について伺いたい。
厚生省は先月十日までに、障害児保育事業実施要綱に基づいて、国が補助をしてテスト的に共同保育を実施する保育所を全国で十八カ所指定をされました。これは障害児保育問題に対して初めて国がその姿勢を示されたわけで、大変喜ばしいと思うんです。しかし、その指定を受けた十八カ所というもののうち十五カ所は、国が指定する前から共同保育に取り組んでいたわけで、以前から強い要求があったにもかかわらず、厚生省はいままで対策をおとりになってこなかったと言われても仕方がない。ところで、その障害児保育の対象となる幼児はどのような症状の幼児なのか。障害の程度が区別をされるのかどうか。もし障害の程度によって保育所の入所が区別をされるならば、その程度、段階というものはだれが一体決めるんですか。
-
○
政府委員(上村一君) 四十九年度から障害児の保育事業をスタートさせたのでございますが、相当テスト的な意味もございますので、軽い程度の障害児、これは精神薄弱の子供もございますし、身体障害の子供もございますし、あるいは情緒に障害のある子供等もあるわけでございますが、そういった障害を持った軽い子供を今回は対象にしたいと。その選び方でございますけれ
ども、保育所に子供を入れますのは市町村長さんでございますから、市町村長さんが児童相談所なんかと一緒に判定
委員会をつくりまして、そこで、この子供を入れても集団保育になじむというふうに考えた場合に保育所に入所させると、こういうふうな段取りを考えております。
-
○木島則夫君 いまのお話ですと、軽症の子供を対象にしたということですね。なぜその軽症の子
どもだけにしぼったんですか。重症児を省くということは、これは重症児切り捨てということになりませんでしょうかね。つまり、弱者救済どころか弱い者いじめと、言葉はきつくなりまずけれど、そういう印象をぬぐえない、私はこういうふうにとる。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 現在障害児保育につきましては、実は普通の保育所に試験的に若干入れるのを指定をして、現在試験中でございます。
率直に申しまして余り重いお子さんですと、お互いにどうにもうまくいかないんじゃないかというおそれが実はあるわけでございまして、この点については目下慎重に検討中であり残す。むしろ、余り重いお子さんの方は
施設収容の方が適当であるというふうな見解もございまして、軽度の者から、試験的にどこまで伸ばせるかということを今後逐次やっていく方が、私は安全な道であろうと。決して差別とか、あるいは重度の障害児について、これを切り捨てるなどというむごい考え方ではなしに、お子さんの
立場に立って徐々にこれを進めていく方が私は幸せにつながるのではないかというふうに思っている次第であります。
-
○木島則夫君 そうしますと、これはあくまでテストケースとしていまやっているということでありますけれど、その効果が大きい、そしてこれはいいなあということがわかれば、将来は重症児に焦点を合わせた保育ということも当然に考えられるわけですね、これは。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 現在のところさように断定するわけには私はなかなかいくまいと、むしろ、いわゆる重症心身障害児などというものについては、やはり療育
施設の方でめんどうを見る方が私は適当であろうということを、あのお子さんたちの実態を知っているものですから、さように実は思うわけでございますが、しかし軽い者から、どの程度まで、
一般の保育所でいわゆる先生のおっしゃる共同保育ができるか、これは今後とも研究をし、できる程度まではいわゆる共同保育の形でもっていくのが望ましいということだろうと思うのであります。
-
○木島則夫君 障害児の保育に当たる保母さんはこれはもう大変な仕事ですね。本当に想像を絶するものがあると思うんです。で、共同保育中は
一般のお子さんと混合であったり、また必要に応じて障害児だけで編成されるグループによって指導を行うそうでありますけれど、この障害児を指導される保母さんにはどんな資格、条件を要求しているのか。障害児の指導を行うことのできる
専門教育は必要なのかどうか。この辺も、細かくなりまずけれど、伺っておきます。
-
○
政府委員(上村一君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、保育所で障害のある子供の保育を行いますのは、集団保育が可能な子供を対象にしております。したがって、保育に当たる保母さんにつきましては、保母養成所で
一般的に修得をした障害児の処遇に関する基本的な理論、技術、そういうものの活用を期待しておるわけでございまして、特に特別の資格を要求しておるわけじゃございません。保母さんになりますのには、高等学校を出まして保母養成所に二年間通いまして資格を取るわけでございますが、数年前に保母養成所の教育課程を改めまして、保母さんになる人につきましても、その保育実習なり、あるいはその臨床心理学、精神衛生等の面で心身障害児の子供の処遇ということを勉強してもらうというふうなカリキュラムにしておりますから、一応できると。しかし、今後の問題といたしましては、さらに実践に即して適切な保育が実施できるような指導というのは当然必要であろうというふうに思います。
-
○木島則夫君 先ほどから触れておりましたが、四十七年度から厚生省が通園
施設に対して助成を始められたわけでありますが、これは微々たるものです。厚生白書にも書かれてありますように、心身障害児の対策のポイントというものは障害の早期発見、早期治療であり、早期療育を受ければ普通人と同じレベルになれる子供さんたちが大ぜいいるということが、秋田のさっきの実例でもはっきり証明をされているわけです。大ぜいの子供とその両親が政府の次の対策を待っているわけですね。ただ
施設をつくり、保母さんの頭数をそろえればそれでいいというものじゃないと思うんです。療育効果を上げるためには、やはり療育の
専門的な知識を教える学校も必要じゃないかと思う。従来の大学の児童学科に併設をするなり、必須科目として修得をさしたり、
専門学校をつくることで技術者を養成すべきではないかと思うんでありますけれど、この辺も伺っておきたいんです。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) ただいまはいわゆる試験的な共同保育でございますので、
一般の保母のいわゆる保母養成所におけるカリキュラムの程度でもってやっていただいておりますが、今後この制度が拡充強化をしたならば、特別な訓育を受けた保母が必要になるかもしれません。そういう意味で、この問題は、いまの共同保育の実態とあわせつつ検討をいたしていかなければならない問題であろうというふうに思っているわけであります。
-
○木島則夫君 障害児保育を目指してやっと一歩を踏み出したこの共同保育を、テストとして終わらせないようにしてもらいたいんですね。これをもう本当の意味で育てていってもらいたい。いずれはその全保育所が、判定なしに重度の心身障害児に焦点を当てた保育を行うことができるように着実に計画を進めていただきたいんであります。で、障害児保育の見通し、政府の今後の方針をはっきりお示しをいただきたい。
それから、先ほど私は確約をすればよかったんでありますけれど、通園
施設百五十カ所、これは何としてでも、何らかの方法で復活させることできませんかね、厚生大臣。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) いわゆる障害児の通園
施設ですが、これにつきましては、先生お説のとおり、概算要求に対して約半分程度ないしそれ以下しかついておりませんけれ
ども、今後、先生もおっしゃるとおり非常に意義の深い
施設形態でございますので、今後さらにこのネットワークを広げていくように努力をいたしていきたいと思っておりますが、しかし、五十年度については予算の編成も終わっていることでございますので、今後、次年度以降について努力をいたしたいということを申し上げたいと思います。
また、いまの障害児との共同保育でございますが、これにつきましては、あくまでも試験的なものでございまして、私
どもはこの試験が成功するだろうと思いますが、また成功させなければならないし、成功したいものだと思っておるわけであります。しかし一部には、率直に言って、相当危惧の念を実は持っている
専門家もおるようであります。障害児が健常児にいじめられるではないかとか、あるいは突き飛ばされやしないかというような、いろんな問題を心配している向きもございますが、これは保育の
内容によってそういう心配は私は解消できると思いますので、試験的なこの
施設が、努力によって今後成功をして、徐々にその輪の広がるように努力をしなければならないと思っておりますし、またそうしたいというふうに思っております。
-
○木島則夫君 最後に、福祉対策に関連をして、これは厚生大臣と文部大臣にお尋ねをしたい。
まあ福祉といいますと、すぐにお金と
施設が先に立ってまいります。これは当然だと思う。しかし
現実には身体障害者の方の世話をする介護人が足りませんし、看護婦さんも不足している。で、
一般のボランティア活動というようなものも非常に消極的であるといったぐあいに、福祉対策に欠かせない人の問題がわりあいに等閑に付されている。どんなに金を出しましても、またどんなにりっぱな
施設をつくっても、結局その福祉
関係、ことに現場で働く人たちの福祉に対する心構えがもう
一つ私は重要なファクターになってくると思う。
これは多少私の私見を言わしていただくと、戦後の日本の政治、経済、文化、教育を貫くものは、はっきり言ってエゴの哲学です。エゴを正当化しようという哲学であります。ヨーロッパではエゴを自覚することが人間解放の第一歩でございましたが、それが先行、独走しなかったのは伝統のキリスト教があったんだからと思います。日本でも明治以降、西洋の文明、技術が入ってきてエゴの自由を自覚、謳歌をしたことは確かでありますけれ
ども、いい意味でも悪い意味でも、民族精神の中にあった奉仕の精神とか克己の精神というものがこれにバランスを与えていたと思います。ところが、戦後は価値感が一変をして、そういった残しておいてほしかった奉仕とか克己とか、そういう精神まで一緒くたに掃きだめに捨てられてしまった。残ったものはエゴを正当化しようとする哲学のみで、それが民主主義とか平和主義という言葉の隠れみのの中でエゴの角突き合いをしているというのが戦後の現状です。
そこで最後に伺いたい。厚生
関係の現場の人は、幾ら仏様をつくっても魂がなきゃだめなんだと、そういう奉仕の精神とか克己とか、そういうものを何とかして醸成をしていかなきゃならないと言っているんですね。このごろは、革新政党の方も自治体問題に触れてサービスの面を大分強調されている御時世でありますから、お二方とも遠慮なくこの点をおっしゃっていただきたい。どうですか。いま一番欠如しているものは、奉仕とか克己とか、おのれをコントロールするそういうものだと思います。これが足りないならば福祉はなかなか進んでいかない。それをどうやって醸成をしていくか、これは厚生大臣と文部大臣に伺って私の
質問を終わります。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 先生まことに的確な御指摘であると思うのであります。およそ福祉
施設では人が問題だということを言われているわけであります。かような意味で、われわれもやはりこの福祉の精神、また惻隠の情といったようなものを持ち合わせなければ、実際問題として福祉
施設の運営というのはうまくいかないんだということでありますが、これは私も福祉
関係でヨーロッパ等をいろいろ視察しておりますけれ
ども、ヨーロッパでも、カソリックの精神に支えられたこの種の精神が若い人に欠如してまいって非常に困っているということを、われわれはよく方々のカソリック国あたりで聞かされているわけでありますが、日本においてはそういったような宗教的な問題以外にも、先生御指摘のような傾向があろうと思います。したがって、これはやはり学校教育あるいは社会教育、これも永井さんの方の御
専門だろうと思いますが、そちらの方からやっていかなきゃならぬと思いますが、しかし、厚生大臣として忘れてはいけないことは、こうした
施設に働く
人々のいわゆる奉仕の精神とか、あるいはチャリティーの精神の上にあぐらをかいてはいけないということだろうと私は思います。したがって、こういうとうとい使命に従事する方には、それなりの私は処遇をしてあげなければいけないというふうに思って、両々相まって社会福祉
施設というものが円満に運営されるように努力をしなければならない、それが厚生大臣の努めであるというふうに思っております。
-
○
国務大臣(永井
道雄君) 福祉を重視する社会においては、克己あるいは奉仕というようなことが非常に大事であるという問題でありますが、まことに私もそのように考えております。ただ、この克己とか奉仕ということを、ただ言葉の上で観念的に教えても仕方がない。それを身についたものにしていくということが大事なんだろうと思っております。
学校でどうするかという問題ですが、もちろん道徳の時間とか社会科の時間、こういうところにはすべて克己とか、それから奉仕の重要性というのが出てまいりますが、私はもちろんそれだけでは足りないと思います。大体学校教育全体がある意味では道徳の練習でございますから、先ほどから話に出ております心身障害者との
関係について申しますと、こういうことをいま盛んに進めているんです。どういうことですかというと、心身障害者の人たちに対する、子供に対するいわゆる特殊教育がございますが、特殊教育を受ける人だけをいわば特別に見て、ただ、その人たちは特殊教育を受ければいいというのじゃなくて、ほかの子供たちが一緒に連帯をしていくくせをつける。具体的に申しますとどういうことかというと、ハイキングとか、あるいは絵をかくとか、そういうことをもうずいぶん方々の学校で一緒に始めておりますが、こういうものを促進していくことは非常に大事だと思っております。あるいは学校のスポーツ活動などにおきましても友だちと一緒に助け合う、自分のエゴを抑えることを覚えるというようなことを、日常の体育活動などでも重んじていくというふうにしなければならないと思います。
あと二点申し上げたいのは、こういうことです。いま御指摘がございましたように、戦後の日本の社会ではエゴイズムが非常に強烈になったというお話ですが、言葉をかえれば、競争というものが過剰に重んじられたと言ってもいいように思います。特にこれを学校の場面で見ますと、受験態勢の激化ということで、まあ人をけ落としても自分が成功すればよろしいという機運がやはりいまございますから、これを何とかして受験態勢の激化を幾分かでも緩和をするように、これは文部省としてやらなければいけないことですので、私も力は乏しいですけれ
ども、これに全力を挙げております。
もう
一つの問題は、そういうしつけの根本的な問題は、これは学校だけで足りないことでして、社会ということも大事なんですが、私は御家庭というものも非常に大事なんではないだろうか。特に基本的な性格というものは幼少のころにつきますから、ですから御家庭でやはり克己とか、それから奉仕ということをだんだんに覚えさ起るような教育というものが行われる。つまりそういう克己なんというむずかしいことを言いませんでも、自分でがまんしなさいというようなことを小さいときから覚える。またそれを教える親が実はそうでないといけないというようなこともありまして、まあ学校教育だけでなく、家庭の御協力も得て、そういうふうな考え方というものが身についたものになっていくようにしなければならない。それに文部省としてお役に立ちたい、こう考えている次第でございます。
-
-
-
○
市川房枝君 ことしは国際婦人年でございますので、きょうは婦人についての問題、四点でございますが、それは国際婦人年、内閣の婦人に関する諸問題の総合
調査の結果について、三番目には売春対策
審議会とトルコ売春問題について、四番目に文部、労働、農林所管の婦人
関係の問題をそれぞれの
関係当局からお伺いしたいと思います。
三木総理は、一月二十四日の国会での施政方針の演説の中で、ことしは国際婦人年だから婦人の地位の向上に一層努力する所存でありますとおっしゃいましたし、その後、国際婦人年に当たってという声明を発表されたようでございますが、それからいままで二ヶ月ほどたっております。総理はこの問題についてどんなことをしてくださったか、閣議で各閣僚ともこういう問題についてお話しになったかどうか、総理にかわって官房
長官から伺いたいと思います。
-
-
○
国務大臣(植木
光教君) 総理が施政方針演説におきまして、国際婦人年でございますから、特にこれに対応する諸施策を行いたい、また
国民の御協力も得たいということを
発言をせられたことは御承知のとおりでございます。総理府内にございます婦人問題の懇談会におきまして、昨年もこの婦人年に当たりましてのいろいろな御協議をいただきましたが、最近二月十三日にもお集まりをいただいて、いろいろ御提言をいただき、さらに四月十四、五日ごろにもう一度開きまして、この年を有意義にいたしたい、こういうふうに考えているところでございます。
-
○
市川房枝君 いま総務
長官のおっしゃいました内閣の婦人問題懇談会というのは承知しておりますが、それは後でまた伺いたいと思っておりますが、そうすると、総理は何にもしていてくださらない、閣議でもこれは問題にしていてくださらないということになりますね。もっとも総理といいますか、国際婦人年に対して、二月の二十六日あるいは七日に、ここに持っているんですが、新聞にえらい大きい広告を出してくださった。半ページなんです。これ都内の有力な新聞全部ですが、朝日だけについて見ますと半ページ、これ六百万円らしいんですが、そのほかずっと聞いてみますというと、地方新聞も入っているし、週刊誌も入っているし、それで全部でこの金は三千二百四十九万二千二百五十九円という金額がこの広告に使われているんですけれ
ども、女のことを、婦人年のことをこんなふうに出してくださったことは初めてでしょうし、それは結構だと言えば言えるかもしれませんけれ
ども、実はもったいないといいますか、この広告をして一体どれだけのそれじゃ効果があるのかということを考えますというと、私
どもあんまりこれ感謝もできないんですが、国内においての国際婦人年についての行事は、御承知のとおりに労働省の婦人少年局でやっているわけです。
少年局はことしの行事のために、大蔵大臣おいでになりませんが、大蔵省に予算の要求をしたわけなんですけれ
ども、初めの査定はたったの六百万円、それからずいぶん苦労をしてやっと二千二百万円予算が五十年度通っているんですよ。それに比べて三千万円という金はまことにもったいない。まあそのことで、これは内閣の広報室ですか、広報室というのはずいぶん予算あるんですね。四十九年には六十億円、五十年には八十億円あるそうですが、まあ金がたくさんあるから使ってくださったのかもしれませんけれ
ども、官房
長官、これどうお考えになりますか。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) あるいは先生、労働省の予算プロパー二千二百万円に比べて、どうも片一方がアンバランスではないかと、こういう御指摘であろうかと思いますが、これは価値判断の問題にも当たるかと思いますが、ことしこういう記念すべき年でございまするし、まず年初に当たりまして大きく
国民の関心をかき立てる必要があると申しましょうか、これを強調して、いまお示しのような相当大幅の広告費を使ったというのが事実でございます。これは御批判もあろうかと思いますが、具体的な事業費よりも広告費の方が多い、こういう御指摘と思いますけれ
ども、まあ、とにもかくにもこの記念すべき年というものを
一般にPRをして浸透する、これは内閣広報室に与えられた
一つの使命でもあろうかと、こういうことでいたしたようなわけでございます。
なおまた、相当に巨額なものを持っておるという御指摘でございますが、これは御承知のように、その紙面な
ども十分に注意をいたしまして、これが政府の宣伝だとか、何かそういうゆがめられた形でないように、そういう配慮をいたしたつもりでございます。
-
○
市川房枝君 私
ども婦人から申しますと、総理及び三木内閣、三木自民党内閣に対しての国際婦人年に対しての注文は、口約束だの、あるいは宣伝だけでなくて、具体的に婦人の地位を向上させてほしい。たとえば婦人の大臣だとか、あるいは大公使を任命してくださるとか、あるいは婦人の
局長だとか課長をもっとふやしていただきたい。中央の各省の局
部長は、男子が四百四十七人に対して婦人はたったの一人です。課長は、男子が千六百五十七人あるのに対して婦人はたったの八人です。こういうのをもっとふやしてもらいたい。あるいは内閣にそのための、婦人年のためのもっと強力な
委員会でもつくるとか、あるいは男女不平等の法律がまだありますので、それを改正してくださるとか、そういうことで、目に見えるというか、はっきりした婦人の地位の向上を努力をしていただきたい。これ、ひとつ総理にちゃんとおっしゃっていただきたいんですが、官房
長官御自身どうお考えになりますか。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) その点につきましては、閣議においても総理がしばしば
発言をいたしております。あるいは役所
関係の御婦人の
局長さん、課長さんなどが見えまする折にも、非常に勇気づける。そして、あなた方のような方をもっともっとふやさなければならぬと、こういうふうなことも申しておるのであります。
そこで具体的には、いま御指摘になられましたようなもろもろの部門に配慮をいたしまして、まだ実は三木内閣も発足して日が浅いものですから、十分に準備をいたしまして、御期待にこたえるような、たとえば日本の義務教育の学校の先生方なんかはもう本当に御婦人が中核になっていらっしゃると、こういう姿でございますから、そのほかの面にも逐次そういうふうな配慮をしなければなるまいかと、こう思いますので、どうか先生におかれてもどしどし御指摘をいただいて、まあひとつこうやれ、ああやれというふうなことにしていただいて、われわれもそれに努めたいと、こう思っております。
-
○
市川房枝君 いろいろ注文を持ってきますから、ひとつちゃんと実現をしていただきたいと思うのです。
次に、国際婦人年は御承知のとおり国連で決定したわけですが、そのとき
日本政府はこれに賛成の投票をなさったと思うのですけれ
ども、そのときの理由といいますか、というものも伺いたいし、それから外務省としては、国内でこの婦人年に対して何か
委員会をおつくりになったみたいですけれ
ども、そんなことをちょっと伺いたいんですが。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) 国連におきまして、今年を国際婦人年といたしまして、平等、発展、平和という三つのテーマで各国の注意を喚起しようということにつきましては、わが国は積極的に賛成をいたしました。御指摘のように、各省の連絡協議会を実は昨年来開きまして、明日も第四回目の会合を開くわけでございますが、
一つは六月の二十日ごろから七月の初めにかけましてメキシコシティーで開かれます会議に、わが国ができるだけ体制を整えたいという、そういう各省間の打ち合わせ、あるいは国連のプログラムによります国内行事についての各省の打ち合わせ、調整などをいたしておるわけでございます。
それから国連で任意拠出金を求めましたので、わが国といたしまして、まあそう自慢のできる額ではございませんけれ
ども、相応の三万ドルを拠金をいたしました。
私
どもとしては、国際婦人年というのは非常に大事な行事でございますが、これが一年だけに終わりませんように、これを機会に、国内でもやはりこういう問題についての意識を高める、そういう
一つのモーティブにしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 まあ外務省がこの問題を取り上げていろいろやっていただいていることありがたいと思うのですが、連絡しておいでになるのが婦人
関係の行政の機関だけですね。どうも私は、国際婦人年というと、何だか女の、女だけの年みたいなふうに考えられて、女に対する宣伝といいますか、ということに偏っているみたいですけれ
ども、これはそうではなくて、人類の半数を占める、あるいは
国民で言えば半数を占める
国民の婦人の問題を、まあ男女ともにといいますか、国際連盟あるいは各国では男の方々も一緒になって考えていただく、そうして地位の平等あるいはこの開発に対する婦人の協力あるいは平和に対する婦人の協力――貢献できるように協力していただくことなんですね。だから、まあ男の方々といいますか、ほかの直接婦人に
関係ない官庁でも、私はやっぱりこの年のことを考えていただく必要があるんじゃないかと実は思うんですけれ
ども、
外務大臣いかがですか、私の解釈は。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) それは御指摘のとおりであると思います。これは婦人だけの問題では片づかないわけでありまして、両性の協力によって初めて片づく問題であると思いますので、したがいまして、連絡協議会にも、ただ御婦人だけということでなくて、いわゆる生活でありますとか、あるいは
国民生活であるとか、生活改善であるとか、そういう面からも積極的に各省から協力をしてもらうということでやっておるつもりでございます。
-
○
市川房枝君 まあ婦人の地位ということでちょっと外務省に申し上げたいんですけれ
ども、外務省には婦人の外交官というのは一人しかいないんですね。それで、その外交官の試験を婦人で受けたい人もあるようなんだけれ
ども、どうも外務省では女は試験を受けさせないというか、受けてもパスしないみたいなことが行われているといううわさを聞くんですけれ
ども、それはどうなんでしょうか。あるいは外務省として、大使、公使は、これは特別任用ができるわけであって、これは前に、小坂
外務大臣のときであったかと思いますけれ
ども、婦人を、まあ公使であったでしょうけ
ども、任命しようというんで、その人の
名前まで新聞に実は出たことがあるんですよ。ところが、外務省の男の方々の間から非常な強い反対が出てとうとうおじゃんになっちゃったというようなうわさがあるんですけれ
ども、これは、ことし国際婦人年でもあり、ひとつ外務省として婦人がもっと外交に参加できるようにお考えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
-
○
国務大臣(宮澤喜一君) その点もごもっともなことでございまして、過去三年間に十一名、これは上級職員ではございませんけれ
ども、採用いたしておりまして、もちろん任用にも差別なくやっておるわけでございます。
ただ、この上級職員になりますと、何分にも外国にキャリアの半分は住まなきゃならないということになりますと、結婚をされたときにかなり実は御不便があるというようなことが多少あるのではないかと思いますが、採用に当たりまして差別をしておるようなことはないようでございます。
それからもう少しお年寄りといいますか、かえって大使、公使というような年になられますと、お若い方と、結婚の問題というものが、もうある意味で違った形になっておりますから、あるいはお願いをしやすいかと思いますので、今度は大分定員をふやしていただくことになるようでございますので、人材をやはり求めてまいりたい。適当な方がありましたらお願いもいたしたいと思っております。
-
○
市川房枝君 ひとつぜひ実現してほしいと思うんです。
次は婦人の諸問題に関する
調査について伺いますが、官房
長官、昨年の三月末に、内閣の婦人に関する諸問題
調査会議というところから
田中総理に対して、ここに持っておりますが、こういう
調査の報告書が提出されたわけでございます。これ
御存じでしょうか。
-
-
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) これは閣議にも報告をされておりますし、その提言の具体的な施策、方策に関しましては、
関係省庁において検討を行い、さらに総理府において民間有識者の参集を求めまして、
調査の結果を中心に幅広く検討いたしております。そこで三木内閣としましても、もちろんこの方向に沿って提言の趣旨を十分検討し、できるものから施策に反映をさせていきたい、こういう所存でございます。まあ何分にも非常に広範囲にまたがる問題でございますので、今後一層
関係省庁と連絡を密にいたしまして、施策の円滑な推進を図りたいと、かように心得ております。
-
○
市川房枝君 いま官房
長官から、この
調査の結果、まあ
調査の中に政府への提言というのがあるわけですが、これは二十三項目あるけれ
ども、いまいろいろ何かやっているようにおっしゃったんですが、私がきょう
質問するためにいろいろ伺ってみたところが、何にもやっちゃいないんですよ。私は二十三項目どれだけ予算化されたのかということも伺ったんですけれど、まあ趣旨を織り込んだのはあるなんていうようなことはおっしゃるんですけれ
ども、ない。つまり、
調査はしたんだけれ
ども、それじゃその
調査の結果を生かすということは何らの機関もないんですよ。さっき婦人団体懇談会なんてことおっしゃいましたが、それは後で伺いますけどね。
だからこの
調査も、実はこれはアメリカのケネディ大統領のときに行われた婦人
調査にならったものでして、ちょうど婦人参政二十五周年を記念して前の佐藤総理が取り上げて、そして四十七、四十八年二カ年間に約七千万円の費用を使って
調査したものなんです。で、アメリカではジョンソン大統領、あるいはニクソン大統領がその結果を引き継いで、そして閣内でこの婦人の地位の問題に関する連絡会議のようなものをおつくりになって、あるいは民間に有力な
委員会をつくって、そして協力してこの結果を施策に実現するような努力をしてきております。
で、日本でも、さっき官房
長官に伺いましたら、この問題は閣議でも出ていない、ただ総務
長官がやっているんだとおっしゃるんですけれ
ども、私はやっぱり内閣に有力な
委員会をつくって、そしてそこでこれを検討して、そして施策に反映するようにやっていただきたいと思う。それもことしの婦人年の
一つの行事、目に見えた行事として考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
-
○
国務大臣(
井出一太郎君) おっしゃいますように、二十数項目の提言、私も手元に持っておるのでございます。あるいはこの一部は実施に移しつつあるものもございましょうが、まとまった姿としてこれをどういうふうにくみ上げていくかという問題は、いまお示しのような点を踏まえまして、これは総理府の方が主管ということになってはおりますけれ
ども、そういうふうな役所みたいなことを言わずに、私もとも
ども総務
長官と相ともにいまのような線で進めてまいりたいと、こう思っております。
-
○
市川房枝君 総務
長官、さっき
長官おっしゃいました、内閣にある婦人に関する諸問題懇談会といいますね、それのできたときから私
どもよく知ってるんですが、いま一体どういう人が
委員で、どんなことをしておいでになるか、予算はどのくらいなのか、ちょっとそれ伺いたい。
-
○
国務大臣(植木
光教君)
市川先生も、婦人に関しましては大変な権威者でございますから、
御存じのとおり、懇談会をいま開いているわけでございますが、これは先ほど来お話が出ております婦人に関する諸問題
調査会議の御提言がございまして、そして、それぞれ各省庁が、結婚、家庭、家族あるいは職業、市民活動、レジャーというような問題について、それぞれ施策の中に生かそうということで努力をしているわけでございますが、この
調査会が終えましてからこの諸問題懇談会をつくりまして、そして、この御提言の趣旨もこの懇談会の中で生かしていただく、円滑にそれが運んでまいりますようにということで御意見を聞いているというのが現況でございます。先ほど申し上げましたように、昨年の末これを行い、最近も行い、また近く行うと、こういうことになっているのでございます。
メンバーといたしましては、約二十名の方でございますけれ
ども、予算といたしましては百八十万円で運営をいたしております。
-
○
市川房枝君 そのメンバーの中に、お
名前は伺わなかったけれ
ども、お花の先生やお茶の先生も入っていらっしゃいますね。それで、前にメンバーだった私の友人たちの話によると、本当の文字どおりお茶飲み会で、余りあほらしいからもうやめちゃったとか出て行かないとかといううわさを聞いておりますが、その前のと今度のと大して違っていないというか、私はそれじゃさっきおっしゃったような提言を検討して、それをどういうふうに政府の政策に反映させるかということは、そこじゃちょっと無理だと思います。だから、これはもう一遍考え直していただきたいと、そしてもっと強力なものをひとつつくっていただきたいということをお願いを申し上げておきます。
次は、売春対策
審議会というものが総理府に、総務
長官、ございますね。
-
-
○
市川房枝君 この
委員会は売春防止法ができる前からありまして、一時は国会議員――婦人議員も男の議員の方もこれに参加しておったんですが、その後追い出されちゃって入っていないわけなんですが、一体この売春対策
審議会というのは現在はどんなふうな組織で、予算は幾らで、どんなことをそこで協議しておいでになりますか。
-
○
国務大臣(植木
光教君) お答えを申し上げます。
売春対策
審議会は、予算といたしましては八十五万でございますが、いま
委員は二十名でございまして、民間の有識者が十三名でございます。
専門委員四名、幹事二十名をもって構成をいたしております。
非常に熱心に御討議をいただいておりまして、四十八年度は十五回、四十九年度は九回というようなことでございまして、いま主要な問題といたしましては、トルコぶろの法的な規制あるいは婦人保護
施設のあり方と再検討、それから婦人補導院の再検討、性病対策、こういうような問題についていろいろ御協議をいただいておるのでございます。また、これに随時現地視察もしておられますし、あるいはまた現地で懇談会も開催をせられるというふうに、大変熱心にこの問題に当たっていただいているところでございます。
-
○
市川房枝君 売春対策
審議会の会長は相変らず菅原さんですね。もう二十年もやっておいでになる。大分お疲れにもなったろうし、若い方に新しい考え方で参加していただくといいと思うんです。
それから
委員の中に、民間でこういう問題に対して一生懸命やっている団体なんかがまるでそれに参加をさせられていないわけです。だから、そういうことも、本当に売春対策
審議会の効果を上げようと思えば考えていただきたいと思うわけです。
それで、さっきちょっとお話ありましたけれ
ども、いろいろそこで御相談になっておりますけれ
ども、そこの中でトルコの問題を協議をされて、そして四十八年の七月の二十四日と四十九年の七月五日の二度にわたって、現在全国で千二百軒、トルコ嬢約二万人にふくれ上がったトルコについての決議をされて、内閣総理大臣に、これは何といいますか、意見書をお出しになったはずだと思うんですが、それはどういうふうになってましょうか。それは政府の方でどうお扱いになっているのか。
-
○
国務大臣(植木
光教君) お説のとおり、売春対策
審議会では、
昭和四十八年の七月と
昭和四十九年の七月にトルコぶろ対策の強化につきまして、総会席上において要望書を内閣総理大臣あてに出すということをお決めになり御提出をなさったわけでございます。これを受けまして、行政機関の指導や売春対策
審議会の現地視察等を通じまして、いろいろこの規制に当たっておるのでございますが、一部の地域におきましては、自粛の状況が見られるようでございますけれ
ども、問題の本質、問題点と申しますものは、個室におきまして婦女の役務の提供を認める営業を許可しているというところにあると思うのでございまして、これは
関係法令の改正によらなければこの売春対策
審議会が要望をしておられますような措置は十分にできないというふうに考えているのでございまして、この点につきまして
関係諸官庁と連絡をとりつつ、また
審議会からは督励を受けておりますし、私
どももそれぞれ強く働きかけているという現状でございます。
-
○
市川房枝君 二度にわたって内閣総理大臣に意見書を出している、それに関連していまのお話を伺っても、何にも立法に進んでいないということですね。これ一体どういうんでしょうか。私はやっぱりこういう問題に対して内閣がというか、あるいは
関係省が不熱心だということではないかと思うんですが、いまのお話の四十九年の七月四日の決定で、いま総務
長官おっしゃったように、個室において婦女の役務の提供を認める営業を許可しているところに問題がある、こう言っているんですが、この許可しているところは厚生省ですね、厚生大臣おいでになりますか、厚生省はこういう決議が出ても全然何らあれしておいでにならない、一体どういうお考えで、これに対していままでどういう努力をなすったか、伺いたいと思います。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) トルコぶろと当省の
関係でございますが、実は公衆浴場の定義が公衆浴場法の第一条に、この法律で公衆浴場とは温水等をもって公衆を入浴させる
施設をいうと、こういうことでございまして、したがって、広い意味で公衆浴場はやはり温水をもって公衆を入浴させるということでございますが、どうも当省で扱っているこの公衆浴場法というのは、環境衛生の見地からこれをいろいろとやっているわけでございまして、かような意味で、風俗営業的な、問題の多いこの種の
施設というものを当省所管でこれをいろいろと取り締まることについては隔靴掻痒の感があって、困ったものだというふうに実は思っているわけでございます。
-
○
市川房枝君 厚生大臣、それじゃ厚生省では公衆浴場法を改正する意思はないと、できないというんですか。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 公衆浴場法というのは、あくまでも環境衛生の見地からいろいろと不潔にならないようにと、わかりやすく言うとそういう趣旨でございますが、そういうわけでございますので、現在のトルコぶろというものを、これを公衆浴場法でもしいじるとするならば、むしろこういうものは、われわれの考えている公衆浴場というのは、あの町にある銭湯、あれを大体われわれは考えているわけでございますので、こういうものが公衆浴場であるかどうか、これについては疑わしいというふうにさえ思わざるを得ないわけでございまして、
〔
委員長退席、理事
柳田桃太郎君着席〕
そのような法改正が適当であるかどうか、これについてはまたいろいろ考えなきゃならぬ問題もあろうかと思われるわけであります。
そこで、私もトルコぶろについて、どういうことをいままで厚生省はやってきたかということをいろいろ聞いてみましたところが、風俗営業的には問題があるということでありましょう。たとえば入浴場の個室に窓をつけて、表から見られるように指導をいたしたと、こういうことでございますが、おおよそ環境衛生を主眼とする公衆浴場で、表から人様にふろに入っているのが見えるというのは私はおかしいんじゃないかと、手いっぱいの厚生省の努力だったと思いますが、こういうところを見ましてもおわかりのとおり、環境衛生法的な色彩の強い公衆浴場法でトルコぶろの風俗営業的な問題を取り上げ、これを規制するということは、かなり実は距離があり、めんどうな問題であるというふうに
認識をいたしておりますが、このトルコぶろというものを何とかしなければならないという問題意識は十分私としても持っておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 じゃ、どうすればいいというんですか。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 率直に申しますれば、これはやはり私は風俗営業的な点が問題だろうと思いますので、あえて問い詰められれば、私は風営法の範疇でもって物を考えていただく以外に方法がないのではなかろうかというふうにさえ思っておるわけであります。
-
○
市川房枝君 いま厚生大臣は風営法でとおっしゃるんですが、風営法の担当は公安
委員長、警察でも結構です。
-
○
政府委員(荒木貞一君) トルコぶろにつきましては
市川先生も篤と御承知のとおり、売春につながるおそれのある
施設あるいは婦女の役務ということがございます。しかし、これを直ちに警察の風俗営業の取り締まりの範疇に入れるということについては、つとに
市川先生も御承知のとおり問題があると思うのでございますが、現在風俗営業法の中で警察が個室つきの浴場、すなわちトルコぶろに対して関連をいたしておりますのは、浴場法に基づいて、いわゆる厚生省
関係において許可をしておるその浴場に対して、どういうところで営業をしてはいけないかという禁止地域の指定をやっているものと、実際に売春法その他風俗
関係の事犯を犯した者に対する行政処分をすると、その他につきましては売春行為をすることに対して徹底的な取り締まりをすると、こういう
関係で警察は取り扱いをしておるわけでございまして、察が、もしそういう問題について、許可をするとか、そういうふうなことはあり得ないことでございまして、警察の態度としては、これを悪として取り締まりをすると、こういう点に関連があるというふうに存じておるわけでございます。
しかし、一体どうしたらいいのかということにつきましては、ただいま厚生大臣から厚生省の態度はおっしゃっておりますけれ
ども、こういうようなことを十分ひとつ話し合って、改善の措置について、売春対策
審議会等の御意見も十分に組み入れながら現状を改善していかなければならぬということで、十分ひとつ話し合いを進めてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 まあトルコの規制はいまお話しのように、風俗営業法では「個室付浴場業の規制」として、第四条の四に掲載されていますが、これは地域の規制だけであって、風営法で取り締まっているわけじゃないんですね。だからそういうのを何か風営法の中に入れているのはずいぶんおかしい法律のこれは仕組みですけれ
ども、警察はいまのように風営法を改正する意思はないというか、あるいは風営法にこのトルコをかけるといいましょうか、取り締まるという意思はないのだというようなお話ですけれ
ども、一体それのお話をなさるところが売春対策
審議会じゃないのですか。そんな話はやってないんですか。ちょっと私
どもから見ると厚生省と警察がお互いに押しつけ合いをやっていて、そうして放置しているのだと、ほうってあるのだということが、今日トルコというものが、まるで売春の、赤線の地帯が復活したような情勢だと言われているゆえんではないかと思うんですけれ
ども、売春対策
審議会には、何だかいまのように、政府側ではちょっと話がつかぬから議員提出で国会にまあ法律を何とか出してやってもらいたいというようなお話があるやに聞こえてくるんですけれ
ども、とんでもないそれは責任回避であって、当然行政で私は話し合い、これをやるべきだと、こう思うのでありますが、私は私の意見をもし申し上げるならば、これはさっきの売春対策
審議会の四十九年七月四日の決定のように、やっぱり厚生省が責任を持ってこれを解決すべきだ。大体公衆浴場法のもとにあるんだけれ
ども、一体トルコと
一般の銭湯と一緒にするという法はないのであって、そこが私はおかしいと思うんです。
それから、さっき厚生省は風紀のことは
関係ないと。環境衛生でお湯さえきれいならいいんだということをおっしゃいましたけれ
ども、公衆浴場法の第三条にはちゃんと「風紀」という文字が入っておる。もっともこれは厚生省の方に言わせれば、いや、これは男女混浴をさせないということだけであってとおっしゃるんですけれ
ども、そうじゃない。法律を読んでみれば、これは解釈をもう少し広げて私はいいはずではないかと思うんです。それで、もし三条の「風紀」というので足りなければ、私は旅館業ですね、これも厚生省所管でしょう。旅館業には第一条の目的の中にちゃんと風紀と書いてあるんですね。あれは売春防止法ができましたときに、旅館がそれに類似な行為をやると困るからというんでわざわざあれを入れたわけなんですね。そして旅館にはいろんな旅館の種類が幾つか中に入っておるんですけれ
ども、だから私はむしろ公衆浴場法の中で、普通の銭湯、それから特殊なものについては、いわゆるこれで言っているように私は個室というものを認めてはいけないと。それから個室でのサービスは、男のお客さんに対して女がすれば、そこに風紀問題が起こるのは当然だといいますか、そのおそれがある。だから、男のお客さんに対しては男のボーイをサービスにつける。それなら私
ども賛成するんですよ。だって世界じゅうに、男がおふろに入っているのに女がサービスするなんというのはどこの国にもないですよ。それだけ日本がおくれているとでもいいましょうか、ということであって、だから、私はどうしても厚生省の方でひとつ考えていただきたいということを強く申し上げたいと思うんです。
ついでに、一体トルコ嬢の健康というものを厚生省はお調べになったことがありますか。あるいはこれは労働基準法が適用にはなっていないみたいですけれ
ども、それでいいのですか、厚生大臣。
-
○
政府委員(石丸隆治君) トルコ従業員の健康状態につきましては、これは職業上の
一つの問題としてわれわれ理解いたしておりまして、したがいまして、いままでのところ、われわれの方ではトルコ従業員の健康状態の把握には努力いたしておりません。
-
○
市川房枝君 それじゃ、どこがやりますか。労働大臣、労働省が労働基準法の適用といいますか、あるいはああいう人たちの
調査を労働省がやっているかどうか。
〔理事
柳田桃太郎君退席、
委員長着席〕
-
○
政府委員(森山眞弓君) トルコぶろのトルコ嬢につきましても
一般的に労働基準法の適用はございますし、婦人少年局におきまして、少し前になりますけれ
ども、トルコ嬢の実態を
調査いたしたことはございます。
-
-
○
政府委員(森山眞弓君) 健康状態のことでございますか。ちょっとただいま手元にその資料がございませんので、詳しいことを御報告申し上げられませんけれ
ども、労働条件等について主として
調査いたしたものでございます。
-
○
市川房枝君 ちょっといまの
答弁では不満ですけれ
ども。
もう
一つ、厚生省に関連してお伺いしますけれ
ども、性病は厚生省の所管ですね。どんな状況になっていますか。まあ百万人から五百万人とも言われているんですけれ
ども、厚生省はどのくらいの人数をつかんでおいでになるか、ちょっと伺いたい。
-
○
政府委員(石丸隆治君) ただいま詳しい数字、私手元に持っておりませんし、また性病の所管は公衆衛生局でございますが、いままでわれわれの聞いております範囲でお答え申し上げますと、淋病につきましては大体減少あるいは横ばいの状態になっておるようでございますが、最近梅毒、特に若年層の梅毒の患者が増加の傾向にあるというふうに理解いたしております。
-
○
市川房枝君 先へ進みます、ちょっと不満だけど。
法務大臣おいでになりますが、売春防止法は法務省が所管をしておいでになるわけですけれ
ども、赤線の復活などと言われているこのトルコについて、法務大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
-
○
国務大臣(稻葉修君) いわゆるトルコぶろ営業も、規制法令を遵守して営まれておりますればそれは合法でございますわけです。それはそうでございますが、この種の営業は個室で異性の客に接触する、さわる、そういう役務を提供するという営業形態の特質上、とかく売春事犯の温床となりやすいところに問題が存在するものと考えられます。この種営業において行われる売春事犯につきましては、売春防止法の厳正なる適用をなし、厳正な検挙、取り締まりを励行継続するとともに、そのような事犯を誘発助長しないよう事前の行政的規制、先ほど先生がおっしゃいました公衆浴場法であるとか、あるいは風俗営業等取締法であるとか、そういうものの改正も合わせて検討していかなければならぬ問題である。誘発助長しないような設備にしなければいかぬ。そうでなければ、非常に巧妙な売春防止法の法律をくぐる行為がずいぶん行われているのじゃなかろうかと人は言いますしね、それにはまあ一度現地視察な
ども必要かと存じますが、おまえには視察能力はないじゃないかということを言う同僚もありますので、目下考慮中でございます。
-
○
市川房枝君 売春防止法は制定されてからもう二十年近くになるわけですが、社会はどんどん非常な変化をしてきているのに、この法律は一字も改正されたことがない、そういう法律ですね。しかし、法律として生きてはいるわけなんですが、その法律のもとで一体、現在のこの法はどういうふうに運営されているか、といいますか、あるいは売春婦の推定の数だとか、あるいはその検挙されている違反の数だとか、そういうものをこれは
政府委員から伺いたい。
-
○
政府委員(荒木貞一君) 三十九年中の売春防止法違反の検挙、送致した被疑者の総数について御説明をいたしますと、全体で三千七十三人でございます。無職の者が千九百七人、旅館業者が二百九十八人、料理店接客業者が二百四十一人、トルコぶろ業者が百五十九人、自動車の運転者、これはポン引きその他でございますが、百二十人、その他三百四十八人、こういうことになっておるわけでございます。
売春婦の数の総計についてのお尋ねでございますが、その点については総括した資料はございませんけれ
ども、トルコ嬢の
関係で言いますと、先ほど先生二万人とおっしゃいましたけれ
ども、四十九年末におきましては一万六千八百七人、そういうことになっておりまして、四十八年から比較しますと若干減少の傾向にあるわけでございますが、そのトルコぶろ営業に対する警察の取り締まりは三百十一件でございまして、人員にすると百六十八人、営業所にすると八十五カ所と、こういうことになっておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 売春で違反の数は、ずいぶん最近になって減ってきているんでしょう。まあ、いまのだけ伺ったんだけれ
ども。その違反の数の減ってきているのをちょっと教えてくださいませんか。
-
○
政府委員(荒木貞一君) 先生のおっしゃるように、減少の傾向にはなっておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 法務省には補導院というものがございますね。その捕縛院というのは前に三カ所あったけれ
ども、大阪、福町は中止して、東京だけ残っているみたいですけれ
ども、その東京も何か二十人ぐらいで、職員の方がそれぐらいというか、こういう補導院の状態をどうお考えになりますか。
-
○
国務大臣(稻葉修君) 御指摘のように、収容者がだんだん減って、いまでは十名くらい程度であるというようなことを聞いておりましてね。ちょっと私も考えてみて、不必要な
施設を持っておるのもどうかなあと、なわ張りをたくさん抱えているような悪評を受けないかなあと思う点もございますが、いつ何どきまた先ほどのトルコぶろの規制だとか、うんとやられると、ばっと出てきて、これをまた補導しなければならぬ、
施設がないというようなことも考えられまするので、いま直ちに廃止してしまうというような考えは持っておりません。
なお、詳しい点は
政府委員に
答弁させてよろしゅうございますか。
-
○
政府委員(長島敦君) 婦人補導院の収容の現状は、ただいま大臣から申し上げたとおりでございます。ただ、今日まで補導院がやってまいりました過去の実績をみますと、常習的な売春婦と申しますか、それから病気を持っている人とか、非常にむつかしいのが入っておりますが、実際に補導院でやりました効果を見ますと、大体そこの中で四〇%近くの人が、もう二度と再犯をしないということで、完全に更生しております。これは、こういうむつかしい収容者を対象にしたとしましては、非常にいい成績だと私自身は思っております。
で、こういう
施設はどうしても国の
施設として必要でございまして、最もむつかしいこういうような婦女に対しまして、中に入れて、いま集中的な非常に進んだ処遇を研究を始めておりますけれ
ども、こういう処遇をやっていくという
施設がどうしても必要だというふうに私は信じておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 いまのはちょっと納得できませんけれ
ども、別の機会に、またその問題は取り上げて伺うことにします。
売春防止法の中で、更生に関する問題は厚生省が所管になっているんですが、婦人相談所だとか、あるいは婦人相談員、あるいは婦人の保護
施設なんかの現状はどうなっておりますか。
-
○
政府委員(翁久次郎君) ただいま御指摘になりました更生保護につきましては厚生省で所管しているわけでございます。これにつきましては、婦人相談員、それから婦人相談所、それから転落防止ための長期収容
施設、この三つの拠点をもって法に当たっているわけでございまして、相談員は現在全国で約四百九十名、それから相談所は各都道府県にあるわけでございます。
なお、収容
施設につきましては全国で六十カ所、ただいま収容しております数が約千百名と、こういう状態になっております。
-
○
市川房枝君 いまお話がありましたけれ
ども、厚生省の
施設は、現在は、売春の経験者よりも、
一般の困っている婦人といいますか、母子なんかを収容しているみたいで、それでも定員の半分にしかならない。これはまあ売春防止法そのものからいくと、私は少しレールをはずれているんじゃないのかといいますか、まあこの点でも私はもう一遍考え直す必要があるんじゃないのかというふうに考えるんですが、そういう法務省の所管の点、あるいは厚生省の点というか、売春防止法そのものは、さっき言いましたように、もう二十年も前につくったので、いまの状態に合わないんですよ。いろいろ合わない点がたくさんあるんだけれ
ども、一体――法務大臣お帰りになったんですが、厚生大臣ですね、一体売春防止法はいまのままでいいのかということをちょっと伺いたいんです。
-
○
国務大臣(
田中正巳君) 売春防止法の第四章、婦人の更生保護につきましては当省所管でございますが、ただいま先生おっしゃるとおり、売春防止法に基づく婦人の保護更生について客観情勢が大分変わってきたもののように実は思われるわけでございまして、この点については、この客観情勢の変化に応じて検討をしなければならないものではないかというふうに、ひそかに考えているところであります。
-
○
市川房枝君 そういう方向で売春対策
審議会でひとつ着手をしていただきたいということをお願いをしておきます。
次は文部、労働、農林の婦人
関係の問題について伺いたいんですが、まず文部大臣に最初に伺いたいんですが、最初に申し上げました内閣の「婦人に関する諸問題の総合
調査報告書」の結論の
一つとして、現在の日本婦人は、妻として母としての
役割り意識過剰にして、一人の婦人としての意識はその中に埋没しているといった文句があったと思いますけれ
ども、そういう事実をお認めになりますか。あるいは、お認めになるとしたら、一体原因はどこにあるのか、伺いたいと思います。
-
○
国務大臣(永井
道雄君) いま先生が御指摘になりましたこの大きな報告書の中に、婦人が非常に家庭というか、それに結びつけられているという指摘がありますし、またそのほかでは、婦人が社会的な問題ですとか、あるいは政治的な、つまり家庭以外の問題に対して、かなり関心が薄いということも指摘されております。私は事実そういうことがあると思います。まあ、なぜそうなったかということは、これはなかなか複雑な事情があると思いますが、戦争直後、女性の社会的な活動というものも非常に盛んになりましたですが、ここ十年ぐらいは高度経済成長の中で、一種のマイホーム主義といいましょうか、マイホーム主義で消費生活というようなものが非常に重んじられる、そういう傾向が強くなってきた。これは私は、実は男性の方にもマイホーム主義が相当あると思うんです。別に婦人だけの問題でないと思いますが、そういう勢いの中で婦人の社会的関心が薄くなってきたというのが一番重要な理由ではなかろうか。もちろん教育の問題な
どもございますが、その点が重要であろうかと思っております。
-
○
市川房枝君 いまの文部大臣の御
答弁の理由は、私もそれも
一つだと思うんですが、私自身もう
一つ、ほかの原因の
一つとして中学、高等学校においてはっきりと女子のみに家庭科を必修科目として、男子はその時間、技術だとかあるいは体育ということに差別しているということが、女の子には、じゃあ女は家庭だけ、男は家庭なんか
関係ないというか、ほかのことというふうな考え方を与えてしまっている。それが
一つの大きな原因ではないのか、こう思うので、実は私
ども、家庭科の男女共修、一緒に家庭科を男の子にも学ばせるということをすすめる会というのをつくっているんですが、もっとも京都では四単位のうち二単位は男女共修、二単位は女子だけというやり方をやって、そのための課程といいますか、教科書のようなものもつくっておりますけれ
ども、私は、やはりこれは単にいまの問題だけでなくて、将来の日本の社会を築くために、やっぱり一緒に教育することが非常に必要だと思うんですけれ
ども、その点文部大臣、いかがお考えでしょうか。
-
○
国務大臣(永井
道雄君) 私は、この家庭をどうやってつくっていくかということについての教育も、もちろん非常に大事だと思います。これは先生は男女の共修をすすめる会を、盛んに御活動になっていることを存じておりますが、この問題は相当いろいろな面があると思います。
御承知のように、現在小学校では男女一緒に家庭科でございまして、中学に行きますと家庭・技術ということで選択で分かれている。そして高等学校に行きますと、家庭というのに女子が行き、そして男子の学生の方はその時間体育をやっているのが多いというようなふうに分かれてきております。現在、教育課程
審議会におきましてこの問題を検討しているわけです。いろいろな方法あるいは御主張というものもあります。たとえば家庭科というのを男女ともに共修必修にしてはどうかという御意見もありますし、あるいはもう少し選択的に相互に入り込むようにしてはどうか、こういうふうなのもございますし、私はこの問題は相当幅を広く考えなければいけないと思いますのは、家庭の学習というのは何をやるかという問題があるわけです。男女がなければ家庭が形成されないわけですから、当然、男性も家庭について関心を持っておりますし、責任を持っていると思います。それはいわゆる家庭科で教えるだけではなくて、社会科などでも教えております、今後あるいは今日の人間
関係はどうか。
そこで、私はいま教育課程
審議会に御
審議を願っておりますから、結論というものを急ぐべきでもなく、また先生方の御意見を尊重したいと思っておりますが、やはり
一つの問題としては、男女にある種の
役割り分化というものはあります。ある種の
役割り分化というものはある。そして他方、平等というものがあり協力というものがある。それを生かしていくのにどうしたらいいか、共修必修というのも
一つの考え方ですが、私はこの問題については選択というふうな角度も含めて、教育課程審会議で大いに討論をしていただき、また社会の御意見も承って、今後の日本の家庭をつくっていくのに最も望ましいような方向の結論が出ることを期待しているわけでございます。
-
○
市川房枝君 もう
一つ文部大臣にちょっと伺いたいのですが、先ほどから私がトルコや売春の問題を取り上げていたんですが、二、三年来の特徴として、女子の高校生、それから主婦などの売春事犯が目立ってきているんだという、これは警察の方の御報告ですけれ
ども、文部省が学校教育あるいは社会教育で、性教育と言いますか、純潔教育というものをどういうふうにやっていらっしゃるか、思っているか。
-
○
国務大臣(永井
道雄君) いま先生おっしゃいました純潔教育と性教育という言葉でございますが、純潔教育というのは、どちらかと言いますと道徳的な角度からとらえた表現だと思います。それから性教育というのは、科学的な角度からとらえた表現ではないかと思います。文部省はいま学校教育の方でこの二つのどちらにウエートを置くかと申しますと、性教育という角度でとらえるという方向が
昭和四十七年ごろから非常に強くなってきております。ということはどういうことであるかというと、たとえば小学校の一年生にも自然観察というようなものをやらせまして、これは人間でなくて、動物の雄、雌ですね、それがどう違っているかというふうなことを教えるというところから始めますから、社会科だけでなくて、理科ですとかあるいは生理であるとか、いろいろな学科を通しまして、学校教育全体の教科の中で性教育を行っていくべきだという
立場でございます。もちろん、ただ科学的に性の
関係というものを
認識しただけでは、これはだめでございまして、道徳というところに及んでいかなければならないもう
一つの面があるわけですが、これまで、ともすれば客観的な性の問題についての
認識が弱かったというところから起こる間違いもあったのではないかという、そういう考えに基づきまして、現在では非常に科学的に理解させるという方向を強めております。
ただ、男女の
関係というのは、これは申すまでもなく単に生理的な性の
関係ではなくて、社会
関係でございますし、そういう男女の
関係というのは、開花いたします思春期の教育というものが非常に大事であるというふうに考えまして、去年、この思春期における教育の指導のための資料というものを、中学校と高等学校のために出しまして、実は文部省が刊行いたしましたものの中で最も広く読まれているものの
一つとして、その二つがございます。これは思春期の問題というのを生理的、社会的な
関係から考える、そのたくさんケーススタディをつけておりまして、先生方に読んでいただいて、そのケーススタディというものに基づいて、やはり個別指導でなければいけません、それぞれの子供がどういうときにどういう問題を起こしてくるか、そのことを先生が御理解願って、そしてどういう事例が起こってきても対処することができるように相当たくさんのケーススタディを入れているわけです。
以上のような形でやっておりますが、しかし、他方、現代の社会におきまして学校以外の場で子供がいろいろ性的な刺激を受けるということがございますから、そういうものに対する対処ということも大事であると考えておりますので、社会教育の場におきましても、これは青年学級でありますとか、あるいは婦人家庭学級などにおきまして、社会における男女の
関係のあり方についての学習というものを強化するように努めているわけでございます。確かに、常に男女の
関係は歴史的にもむずかしいものでございますが、昨今はとりわけそういう社会的な刺激が強いので、そういうことから起こる間違いというものを防ぎますことが学校の重要な
役割りであると私
どもは考えておりますから、いま申し上げましたような性教育という角度からの教育というものを強化いたしまして、そうして、その上に基づく道徳的なしっかりした価値観というものをつくっていきますように、これは今後一層努力しなければならないことであると、そう思っております。
-
○
市川房枝君 労働大臣はまだお見えになりませんので、先に農林大臣にひとつ伺います。
農林大臣、私は農村の婦人たちの健康の問題を心配しているんです。これは前から心配しているんですが、御承知のように専業農家でも六〇%は婦人が生産に参加しているし、あるいは兼業農家はほとんど婦人がやっているわけですが、婦人はそのほかに育児だの家庭の問題があるわけですし、あるいは農閑期になればパートに出かけたりするようなことで非常な過労になっているとか、あるいはそのために育児の方で少し手が抜けるというようなこともあり、特に私は健康を非常に心配しているんですが、農林省の生活改善課で婦人たちの健康診断をやっていらっしゃるようですが、けれ
ども、あれは何か三ヵ月か五ヵ月ですか、ちょっとの間で方々かわっていくんですが、もっと本腰を入れて農村の婦人たちの健康の検査というか、あるいはそれに対する指導といいますか、そういうものをやっていただきたいと思うんですけれ
ども、いままでそういう農村の婦人に対して、生産にも参加しているんだと、家庭もやっているんだと、両方やっているということをどうも農林省はお認めにならないんで、別々に考えておいでになるというきらいがあって、いつも私その点不満だったんですが、農林大臣はそういう農村の婦人の実情を
認識して、そしてそれに対して何か新しい対策をひとつ立てていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 農林省で調べたところによりますと、農業従事者の中に占める婦人の割合は六二・六%、基幹労働力に占める婦人の割合は五六・四%ということで、いま御指摘がございましたように、農業の労働におきましても婦人のウエートというのは非常に大きくなっておるわけでございます。そういうことで、農業婦人で過労によるところの農夫症といったものが出ておるということから、農林省といたしましても
昭和四十年度から、農山漁家健康生活管理及び家族労働適正化特別事業を実施しておるわけでございますが、その
調査結果によりますと、これはモデル事業を選定して実施したものでございますから、御指摘がございますように、直ちに全国の農家主婦の健康状況を判断することは問題があるわけでございますが、しかし、
調査対象農家の約三分の一が何らかの症状を示しておるわけでありまして、また、半数の者に慢性化した蓄積疲労及び肩こり、腰痛、手足のしびれなど、いわゆる農夫症的な症候が見られるわけでございます。
これについて、男子との対比において女子の方が比率が高いという傾向も示されておるわけでございまして、そういう中にあって、農林省といたしましてもやはり婦人の健康というものがこれからの農村生活においてきわめて大事なことでございますから、従来から生活改善普及事業を実施して、衣食住等の農家生活の改善だと心あるいは農家家族の健康管理の指導等を通じて農村婦人の当面する諸問題の解決のために努力をいたしておりまして、健康問題については
昭和四十年度から、先ほど申し上げましたような農山漁家健康生活管理及び家族労働適正化特別事業を実施して、農業者の健康状況、生活状況の
調査を行うとともに、これに基づいて婦人の健康管理、適正労働に
ついての改善指導も行っておるわけでございますが、さらに農業者の健康管理を促進するために、
昭和五十年度から生活環境と健康との関連を明らかにしつつ濃密に健康管理の指導を行うというために、農業者健康モデル地区育成事業を実施することといたしておるわけでございまして、農村婦人を含めて農業者全体が健康と文化を享受できるように、この面につきましては特に生活改善普及事業というものについて、これを拡充強化するということについて今後とも大いに力を注いでまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
-
○
市川房枝君 農林大臣、もう
一つ伺いたいんですが、昨年来、東京朝日新聞に有志佐和子さんが「複合汚染」という題目で小説を書いておられるんですが、その中で、つまり農薬を使わない有機農業といいますか、その実例をいろいろ紹介されておりますが、これは
一般の読者から非常な関心を集めておるようです。農林大臣は読んでおられますか。あるいは一体何人ぐらいがこういう農業に参加しているのか、あるいはどのくらいの反別が一体農薬を使わない農業をやっているのか、それを伺いたいんですが。
-
○
国務大臣(
安倍晋太郎君) 有吉佐和子さんの「複合汚染」につきましてはときどき読んでおるわけでございまして、農薬、肥料あるいは食品添加物といったような問題につきまして
一つの問題提起をしておられると私は
認識しておるわけでございますが、その中で特に農薬を使わない無農薬農業といったような問題も書かれておるわけでございますけれ
ども、現在の日本の風土の高温多湿、モンスーン的な気象条件からいたしまして、農薬を全然使わないという農業は、これは私は成り立たないと思うわけでございまして、そういう意味においてこの無農薬農業というのは
一般の農法の中においてはこれはちょっと無理であろうと、私はそういうふうに思うわけでございます。しかし、最近の農業におきまして化学肥料等が非常に使われまして、そうして有機肥料、有機農業等が後退をした。これがまた土壌の力というものを非常に弱めておることは事実でございますので、こういった点につきましては、今後とも有機的農業を促進するための全国の土つくり運動等も始めておりますが、そういう面も促進していかなければなりませんし、また、農薬の使用につきましても、われわれとしてもこの使用をなるべく少なくしていって、そうしてわが国の
国民生活の健康に被害が起こらないように、農薬取締法等も厳しく適用しながら、その点については十分配慮したこれからの農政というものを推進していきたいと思うわけでございます。
-
○
市川房枝君 その数字は……。大臣、私の伺った、どのくらいの人数、どのくらいの反別ということは、ないですか。
-
○
政府委員(松元威雄君) ただいまの御
質問で、いわゆる有機農業と申しますか、それがどのくらいあるかという御
質問でございましたですか、その場合に、いわゆる有機農業と申しましても、これはいろいろな
内容がございます。つまり農薬も化学肥料も全然使わないという典型的なものから、農薬は使う、ただし有機質肥料を中心にして化学肥料は余り使わないというものとか、あるいは堆肥と化学肥料を使って農薬の散布回数を減らすとか、いろいろな形態があるわけでございます。したがって、そういうものを見聞してはおりますけれ
ども、いま申しましたとおり、見聞によりますと、かなりやっている例では、いわばそのグループに参加している農家の数も少ないとか、面積も少ないというようなものが多いようでございますし、また自分の経営について全然農薬を使わないというようなものは余りないようでございます。
そこで問題は、この有機農業と言われるのは、いま申しましたように非常に幅が広いものでございますから、これをどのようにして把握したらよろしいか、これは特に先ほど大臣が申しましたとおり、化学肥料に依存し過ぎてしまって有機物の施用が非常に少なくなるということは非常に問題でございますから、私
どももそういうことはいま土づくり運動をこれから展開するわけでございますが、その中で地力問題につきましてはそういう点も実態を
調査したいと思っておりますが、さらにいわゆる有機農業につきましては、これは概念規定もはっきりさせまして、
調査方法も含めまして、今後どうして実態把握していくか検討をいたしたいと思っております。
-
○
市川房枝君 労働大臣は抜けましたけれ
ども、時間が参りましたので省きます。ありがとうございました。
-
-
○
委員長(
大谷藤之助君)
分科会に関する件についてお諮りいたします。
分科会の日数は、三月二十九日及び三十一日の二日間とすること、
分科会の個数、所管事項、分科担当
委員数及び各会派への割り当ては、お手元に配付いたしましたとおりとすること、分科担当
委員の選任は前例どおり
委員長の指名並びに分科担当
委員の変更につきましてはその取り扱いを
委員長に一任すること、
分科会におきまして
参考人の出席を決定いたしましたときはその取り扱い々
委員長に一任すること、以上のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
-
○
委員長(
大谷藤之助君)
参考人の
出席要求に関する件についてお諮りいたします。
総予算三案に関する重点項目別総合審査のため
参考人の出席を求めることとし、その
参考人は、お手元に配付いたしました
参考人名簿のとおりとすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
-
○
委員長(
大谷藤之助君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
明日は午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後八時二分散会
―――――・―――――