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国務大臣(永井
道雄君) いまの問題なんですが、私は、明治時代以来の日本の大学の法学部というのは、やはり
一つの歴史的役割を果たしたと思います。それはもう後発国家であって、そういう後発国家における法的な制度というものを整備いたしまして、そして、そういう制度のもとで
国民の生活というものを充実していく。ところが、だんだん社会が高度に専門化してまいりますというと、そういうやり方だけでは問題が解決しないのは、いま経済計画を
一つの例として挙げられましたが、たとえば環境の問題を考えるにいたしましても、当然科学者の協力が必要になる。あるいは
地方自治体と中央官庁との問題を考える場合にも、いろいろいままでのような訓練では足りないものが出てくるのだと思います。
そこで、教育
行政についてどう考えるかというお
言葉でございますが、そういう趨勢で考えますと、私は文部省に参りましてまだ四カ月になりませんけれ
ども、確かにわが国の教育の法制的な整備というものは、他国と比較してもなかなかすぐれているものだと思います。ただ問題は、教育
行政というので、
行政の上に「教育」がついているわけなんですが、この教育というものは何かということになりますというと、これも現在のような社会になりますとなかなか複雑でありまして、それこそ社会心理学がわかっているとか、あるいは文学を知っているとか、いろいろそういうことが理解されていなければならないので、その点では私はこれからの教育
行政というものはだんだん変わっていかなければならないと思います。
ただ、そこでもう
一つ申し上げておきたいのは、それじゃ大学に教育
行政というので、いま教育
行政に出てくる人に役立つような形の授業というものはどのくらいあるかということなんでありますが、実はこれはアメリカが日本の教育制度を変えたときに、大学に教育
行政の講座を設けた方がよろしいということで、ずいぶん講座はあるんです。ありますけれ
ども、非常に現実的、具体的に教育の
行政を考えていくのにはどうしたらいいかという形の教育
行政の研究や教育というものがどのくらい進んでいるかというと、相当疑問があると思います。むしろ諸外国の制度を翻訳紹介するという式のものはあるのですが、わが国の教育
行政の
実態に即してどこをどういうふうに改革していったらいいかというような形の研究というのは、まだ教育
行政学が発足いたしましてから年月が浅いということもありまして、必ずしも強いとは言えない。でございますから、やはり
一つの
行政の中での人々の体質が変わっていくということは、そういう人たちの訓練といいますか、学習の体系が変わっていくということと相互
関係があると思うのです。
こういう点、私自身も教育を多少勉強してきた人間ですので非常に考えますけれ
ども、いまのことを何人かの学者の方と
お話をして、どういうふうにしていったらいいかという程度の
お話し合いはしておりましたけれ
ども、現段階においては具体的なところまで来ておりません。ただ、文部省におりまして、いまのような非常な転換期に、どうしても教育
行政という以上は、たとえば科学技術がどこにいくのか、あるいはエコロジーの問題がどうなるか、あるいはいま学校教育のことにみんな非常に夢中になっているのですけれ
ども、実を言うと、テレビの影響力が非常に強いじゃないか、こういうふうな問題を文部省で考えないというのはおかしいと思うのです。
でございますから、文明問題懇談会というのを先週発足いたしましたのですが、そういうところで基本的に教育というものを、何をどんなふうに変えていくことが起こるであろうかということの議論は始めていただいているわけで、これをいま一年間予定いたしておりますが、一年議論をしていく過程で、ある程度そういう問題についての考え方の方向というものは変わってくる。もちろんその場合に、文部省の中に引き続き法学部出身の人がいるわけですけれ
ども、しかし、いましても、やはりいまの社会はそれこそ生涯教育でありますから、いろんな形の刺激を受けながらお互いに学習していくという道が開け得るのではないかという希望を持っていまのことも考えている次第でございます。