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国務大臣(大平正芳君) 先ほど
国税庁長官も申し上げましたとおり、
田中さんは前
総理大臣であられます。しかし、国税庁といたしましてはあくまでも一納税者として取り扱わさしていただいておるわけです。すなわち、
田中さんであるから厳しくする、あるいは
田中さんであるから甘くするというようなことはいたさない。一納税者として淡々と処理すべきものと心得ておるという
態度をとっておるわけでございます。したがいまして、税法上の守秘義務にいたしましても、
田中さんの場合は例外だというわけにいかぬと思うのであります。したがいまして、この守秘義務は、どなたであろうと税務官署といたしましては厳格に貫くべきものであると思うのでございます。
ただ、寺田先生おっしゃるように、国会におきましてまた全然別な角度から、
一つの政治不信の解明という姿においてこの問題が取り上げられておるわけでございまして、これは全然別な法域に属する問題でございまして、したがって、この問題が本
委員会を初めといたしまして両院を通じて問題になったわけでございまして、これにつきましては、いまあなたからも御紹介がございましたように、
政府としての統一見解を申し上げておるわけでございまして、その申し上げておる趣旨は、この国政調査権と税法上の守秘義務、どちらが優先するかというふうな問題ではなくて、
政府の見解は、これは具体的に個々のケースにわたりまして守られるべき国益と失うべき国益とを比較衡量いたしまして判断すべきものと心得ておるというのが、かいつまんで言うと
政府の見解とするところでございまして、私
どもそういうラインに沿ってこの処理に当たっておるわけでございます。
したがいまして、国政調査権を背景にいたしました国会のいろいろな御要請に応じましては、
三木総理大臣も仰せになっておりますとおり、われわれとしては可能な限り御協力申し上げて事態を解明していただくことは私はけっこうなことだと思うのでございまして、できるだけ各
委員会の御質疑に応じましてお答えを申し上げておるわけでございます。ただ、具体的な金額等々につきましては、守秘義務の命ずるところによりまして申し上げていないことは、これはこの事件を隠そうとかいうことでなくて、税法上の守秘義務の命ずるところそうせざるを得ない、そうする義務がある。また、そうしないと国税の公正な執行、有効な執行というものを担保することができない、そういう判断によっておりますことを御了解いただきたいと思います。