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国務大臣(
三木武夫君)
原則的には私も
和田さんと同じように
考えているんです。ただ、少し問題なのは、各府県によって財政力に違いがありますから、ある一定の行政水準を国として維持したいとするならば、どうしたってやはり交付金のような制度で、そして調整というものを国がしないと、これは非常に財政力の弱い府県は非常に行政水準が落ちてきますから、そこに悩みがあるわけですね。外国の地方自治体というのはもう少し単位が大きいですからね、ヨーロッパでも
アメリカでも。
日本の府県は、こんなに狭いところにこういう府県単位というものが非常に細分化されていますからね、そこにやはり
日本の場合はよその国でない悩みを持っている。そこで自治体に自主財源を与えて本当の自治というものを確立するという財源の面からは、私はむずかしいと思うんですね、これは。しかし、いまのような何でも中央にお願いしますというような行き方は私はいいとは思わない。
もう
一つ、やっぱり自治というものですね、まずいろんな問題がいろんなイニシアチブが地方から出てこないと、国が何もかもするんだということでは、
日本の地方というものが地域地域によって特色を持っているんだが、その特色が殺されていって全国一律のようなものになれば、決して地域住民のために幸せな生活環境では私はないと思う。そういう意味で今後はできるだけ、今度も事業所税のようなものを新設しましたけれども、私は自主財源をできるだけふやしていくべきであるという説には
原則的に賛成ですよ。そしてなるべく責任を持った地方の自治体でないと、何もかも結局は最後は中央がしりぬぐいをするんだというようなことでは、やはり地方行政というものがどうしてもルーズなものにならざるを得ない。そういう点で確かに地方自治のあり方というものもこれから大きな私は問題だと思う。
和田さん、こう私が言いますと何もかも決まっていないかと、こう言われますけれども、私は
日本が非常な大きな歴史的転換期である、これを一遍にここでどうするんだ、こうするんだというふうに言えということには少々無理がある。こんな転換期というのは、恐らくちょっと
日本の歴史の上でも再々は来ない転換期であります。だから地方行政にしても、労使にしても、国民生活にしても、高度経済成長にはかえられない、夢よもう一度というわけにはいかないのだから、
日本の経済成長がどれぐらいのパーセンテージになりますか、数字は人によって違いはありますけれども、いままでの
日本の成長率からいったらずっと緩やかなものになるんですから、それに即応してすべての政治あるいは経済、生活、見直しをしなければならぬ。ものによったら数年かけなければ私はならぬと思うんですね。これを一遍に一年の間に、こんな大きな転換期に対応するような国内の体制はできないし、またそういうものをつくることはかえって弊害だと思う。そういうことで
和田さん、何か何もかも、言わないじゃないかということで何も中身がないんだとおっしゃることには多少無理がある。こんな大きな転換期に際して、やはり多少の時間をかけてじっくりと
日本の行く末を
考えて、そして方向を打ち出してもいいのじゃないか。
ただしかし、来年度の
予算編成に間に合わす、それまでに検討しなければならぬ問題もありますがね、その問題は当然に
予算編成期というタイムリミットがあるわけですから、それはやらなければならぬが、地方自治体の問題もこれは大きなやっぱり課題である。いまのような状態であったのでは何か全部中央依存で、地域社会のためにみずからのイニシアチブでやろうという気分が、だんだんと少なくなってくる傾向を私は憂えているものであります。そういう点で、いま御指摘になった地方自治体のあり方というものは大問題の
一つである。私は、だから今度の施政方針演説の中にも地方自治体の問題というのを大きく取り上げたのも、こういう問題意識が私にはあるからでございます。