○内藤功君 私は、日本共産党を代表しまして、この二
法案に対して、反対の討論を行わんとするものでございます。(
拍手)
私は、まず、昨日来のこの本
会議場における
政府・自民党、さらには
議長の
職権の行使をつぶさに見てまいりました。これこそが、この悪法の
内容をごり押しする、悪法の
内容を如実に示している議事の
運営である。心から怒りを禁じ得ないものであります。(
拍手)
私は、この二
法案は、
民主主義の基礎である
国民の表現の自由、さらに
国民の知る権利を奪う、いままでの
選挙法改正の中でもまれに見る改悪であると思うのであります。また、政治資金規正に名をかりまして、その実は、企業献金や金権政治の源を温存する企業献金奨励法であり、悪法であると
考えるのであります。(
拍手)このことは多くの
新聞論調がつとにこれを指摘しておりますし、また多くの憲法学者、法学者、知識人なども強くこれを指摘して、議員各位のところにも各方面からこの強い要請が送られてきているところは御
承知のとおりであると思うのであります。去る六月の二十八日に
特別委員会において行われました公聴会におきましても、八人の公述人のうち五人までもがこの
改正案に明白に反対の立場をとっておることもこのことを如実に裏づけるものであります。(
拍手)さらに、労働組合、婦人
団体その他の各種
団体は、みずからの表現の自由、活動の自由にかかわる大問題であるとして、連日のように反対運動に広範に立ち上がっておるのであります。本日もたくさんの傍聴の方が、
国民がこの議場を、どのような
審議が行われるか真剣に見守っておられるし、毎日のように
国会には陳情の方々が見えておる。そうして百四十万という大きな数の
請願が日本共産党あるいは公明党の議員の紹介ですでに本院にも
提出をされておるのであります。もし二百五十二名の中で四十名余りの共産、公明二党と二院クラブの何がしかの議員の反対であるとたかをくくっている政党があるとすれば、これはその背後にある何百万の
国民の世論を軽視する重大な誤りであり、必ず
国民の厳正なる審判を受けなければならぬと思うのであります。(
拍手)
この二
法案は、
国民の表現の自由を侵害する悪法であります。まず、
選挙期間中
選挙に関す
る報道、
評論を掲載した機関紙号外の頒布を禁止するものであります。禁止する合理的理由はありません。それを合理化するために、やれ公害でありますとか、やれ公正ですとか、公共の福祉ですとか申しております。しかし、「
ビラ公害」などという言葉は、一体公害とは何か知らない人の言うことではありませんか。機関紙号外や
ビラを好ましくないと言う人がいても、それは
国民の判断に任せるべき問題であって、法で禁止、処罰する性質のものでは断じてありません。(
拍手)幾つかのアンケートや本院公選
特別委員会の
調査報告の示しますように、
国民の相当多くの人
たちは、この機関紙号外や
ビラを参考にして、最も大切な権利である
選挙権の行使の重要な資料にしておることが明らかなのであります。そうである以上は、公害と言うのはとんでもない誤りであると言わなければなりません。また、
選挙期間中こそ
選挙に関す
る報道、
評論というものはかたく保障されなければならないのであります。号外の頒布だけではなく、すべての機関紙、
ビラの頒布の自由が保障されなければなりません。しかるに、最も言論戦を大事にすべき
選挙中に限ってこのような重罰を科そうとするのであります。この罰則のつくり方にも問題があります。つまり、頒布行為だけを処罰するんじゃないんです。掲載行為の時点で、編集者と発行者を処罰するんです。記事の中で、ここは
選挙に関す
る報道、
評論の自由、これは違うところ。分けてある
部分、Aの
部分を処罰をする。これは当然検閲につながっていく問題なのであります。これは、戦前の
新聞紙法におきまして、たとえば安寧秩序とか、国防、外交に関する
事項に関する記事は、という条項がありました。あの手法の再来であると言っても過言ではないのであります。しかも、何が
報道、
評論に当たるかという問題について、
総理、
自治大臣、
選挙部長、みんなばらばらの
答弁をしておるのであります。
統一見解を出してからもまたばらばらなのであります。こういうものは一致できるもんじゃない。これが
皆さん、第一線の警察官の判断にゆだねられたら一体どうなりますか。私は、このような、
政府が、無責任にも第一線の警察官に
解釈をゆだねて、詳しい論争を避けようとする無責任な態度を断固として糾弾するものであります。(
拍手)しかも、橋本議員が言われましたように、
政府の
統一見解なるものは、
昭和三十五年の高裁の判例が、処罰されない正当な
報道、
評論の範囲を判示したにかかわらず、「正当な」というところを切ってしまって、
報道、
評論というものにすりかえてこの
統一見解をつくったことは明白であって、このような判例のすりかえ、
国民、
国会を欺瞞したやり方は断固として糾弾されなければなりません。(
拍手)
また、三木
総理はこう言われます。機関紙の号外によく候補者の顔が出ておるからいかぬと言うのです。そういう
ビラを持ってきて、にこにこしながら見せたりなんかしております。とんでもない話であります。私をして言わしめれば、これが何が悪いのかという問題であります。いま
選挙の中で候補者が活動をし、保育所をつくるためにこういうふうに運動をしておるという記事を書くことがどうして処罰に値するのか。これを深く掘り下げて議員各位は
考えてみる必要がある。議会と議員の自殺行為につながらないように、よくこの
機会に
考えていただく必要があると思うのであります。(
拍手)大正十四年に普通
選挙法と同時にできた
衆議院議員の
選挙法、これは包括的に文書図画を禁止をして、一部解除をするという法形式でありまして、これが戦後も引き継がれて、二十二年、新憲法のもとでは、紙の事情が悪いからという理由で臨時に存続されたんです。それが現在まで十分この
国会で討議をされないで続いてきている。したがって、言論の自由の光を当てるならば、これは明治憲法下においてこそ存在は認められたが、いまでは認められないのが現在の文書図画の禁止の法体系なのであります。私どもはこういう観点から、この大正十四年の遺物を、これを根本的に洗い直す必要がある。しかし当面は、この大正十四年以来の法体系をさらに改悪するこの改悪に、言論の自由の立場から、また五次審の答申の立場からも強く反対するものであります。(
拍手)
次に、一般紙の規制の問題も重要であります。私は、例として労働組合の機関紙の問題を申し上げたい。福田
自治大臣が六月の上旬に
社会党の幹部、総評の幹部とお会いになりまして、街頭での不特定多数の者に対する頒布を除いて現行どおりとして処罰をしないという
約束をされた。そうして、そういう総評の通達が流された。労働者は、
大臣の言うことだからみんな間違いないと思っていた人が多かった。ところが、六月二十五日のこの
公選法特別委員会におきましても、きょうの秦豊君、橋本敦君の
質問に対する
答弁におきましても、そのようなことを
約束したことはないと否定をし、すべて
選挙期間中は、第一組合が第二組合にまくもの、国鉄労組が友誼組合員にまくもの、労働組合が近所の人
たちにまくもの、いずれも有償でなければ処罰されるということを言っておるではありませんか。私は、このような
答弁に対して秦豊君はもっと怒るべきであったと思うのであります。(
拍手)あるいは本当は怒っておられるのかもしれない。私は心から、このような労働組合の機関紙を、その自由を侵害するこの
法案に、全国の労働者、労働組合員の立場から、私はかわって断固として糾弾し、この悪法に反対して闘うものであります。(
拍手)
次に、「
政治活動を行う
団体」の問題であります。これは、「
政治活動を行う
団体」という概念を新しく決めました。これはいままでの
政治資金規正法三条二項の「協会その他の
団体」と同じ
意味である、何回聞いてもそう言うのであります。しかし、
皆さん、
国会の
答弁というものは
法律の定義規定ではございません。この定義規定をはっきりとなぜ決めないのであるか。これに対する
答弁はついにないままこの
審議の終局に至ろうとしております。しかも、これを現実に運用する警察庁の刑事局の責任者が、昨年四月号の「警察時報」の誌上において驚くべき資料を出しております。これは日常どのような
団体が
政治団体であるかを調べるために、日ごろから
団体の規約、綱領、運動方針、さらに事務所に出入りする人物、集会の模様、その
団体のまく
ビラ、こういうものを収集して捜査をしておくように、こういうことを言っておるのであります。
皆さん、この
選挙期間中において
政治活動をする
団体ということになりますならば、私また
皆さんの関係していらっしゃる
団体にもいっぱいあるわけなんです。こういうような
団体に対する警察の日常的な内偵を許すようなこの
法律は、これはかつての治安警察法と同じような
団体の自由に対する不当な侵害条項であり、断固として反対せざるを得ないのであります。(
拍手)
次に、
修正案について
一言申し上げます。
修正案は、この
個人運動用
ビラという制度をつくりました。しかし、十億円もの公費を使ってつくったこの
個人運動用
ビラは、東京
地方区の例をとって申しますと、有権者八百三十万、そこに三十五万枚、約二十七人に一人しかこれが配られないのであります。候補者の人物、実績を知らせるのに、ほかの二十六人には知らせなくてよいというのでありましょうか。このようなものは公費のむだ遣いであります。証紙を張ることの煩わしさは、自民党の議員の
質問の中でも指摘されているとおりであります。いま、このような
法律が強行的に可決されようとしておる。私どもは断固として、日本の
民主主義のため、言論の自由のため、これに強く強く反対せざるを得ないのであります。(
拍手)しかも、この
個人運動用
ビラを配る頒布の
方法は、「
新聞折込み」という言葉だけが
法律の条文に書かれておりまして、その他の
方法というものは、今日に至るまで、公明党
多田委員その他の
要求にもかかわらず、この
国会議員の目の前にあらわれてまいっておりません。このことは、刑罰だけ先に決めておいて、そこに何の構成要件、どういう犯罪があるかということは後で
政府にお任せなさい、取り締まり当局にお任せなさい、こう言うことに等しいのであります。このようなことは
国会の
審議権を全く無視したやり方であり、この面から言っても、私どもはこの改正に強く反対をするものでございます。(
拍手)
最後に、私は、この問題の多い
法案であるにかかわらず、実際の
審議はまだまだ序の口であるということが、きのうからきょうにかけてのあの
中西一郎委員長のこの壇上における
報告、さらに福田
自治大臣、三木
総理大臣が橋本敦議員などの
質問に答えられた
答弁、こういったものから非常に明白になってきたと思うのであります。あの
参議院の
特別委員会でわずかに二十時間十五分しか
質疑がなされておりません。このような中で、出し尽くせない問題が……