○田代富士男君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました
昭和四十八
年度の
概要説明について若干の
質問を行いたいと思います。
質問の第一は、
昭和四十八
年度予算の
執行の効果を
政府はどのようにとらえているかということについてであります。
昭和四十八
年度予算の編成に当たって、
政府は、「
経済の安定と
物価の抑制を図りつつ、
国民福祉の
向上、
国際収支の
均衡回復という課題に積極的に取り組まなければならない」という
経済見通しに立ちながらも、十四兆七千七百八十三億円という超
大型予算を組み、これを
執行したのであります。そして、その結果、卸売
物価は前
年度に比べて二二・六%、
消費者物価は一六・一%と大幅に上昇し、
消費者物価は世界一高いとまで言われるに至ったのであります。この
物価高騰は、当然のことながら
国民生活を悪化し、とりわけ老人、身体障害者など社会的弱者と言われる人々の生活を著しく圧迫していったのであります。
一方、この間における大
企業の実態は、それとはきわめて対照的でありました。資本金一億円以上の大
企業の申告所得総額は四兆八千九百億円にも上り、前年に比べ三二・三%も
増加し、銀行、大
企業、商社等は巨大な収益を上げたのであります。もちろん、この
狂乱物価の背景には、
石油ショックという
海外要因が大きく影響を与えているという否めない事実があるでありましょう。しかし、何よりも、主要産業におけるやみカルテルの横行など、独禁秩序を無視し、もうかることなら何でもするという、高度
経済成長に浸り切った大
企業の需要
姿勢こそがその
最大の根本原因であるということは、紛れもない事実であります。こうした
物価の異常
高騰と
企業姿勢に対する厳しい批判と、さらには、
国民が最も
期待した
政治不信の回復という大きな課題を担って登場したのがすなわち
三木内閣であったはずであります。
総理は、いま、
三木内閣成立当時におけるそうした立場を踏まえながら、列島改造と高度成長で吹き荒れた
田中内閣の時代に編成、
執行された
昭和四十八
年度予算とその
決算をいま顧みて、いかなる評価と批判と
反省をもって見ておられるのか、まずお伺いしたいと思うのであります。
また、四十八年当時におけるこうした
企業批判の
反省から、一つにはいま論議されている独禁法の改正問題が提起されたのでありますが、さらにもう一つ忘れてならないことは、銀行法の改正問題なのであります。
大蔵大臣は、すでに五月十四日、金融
制度調査会に諮問されたばかりのところと承っておりますが、現在検討を加うべき点はどのような点か、答申を得て改正案を
国会に提出する見込みはあるのか、あるとすればその時期はいつかを、この際明らかにしていただきたいのであります。
第二は、
昭和四十八
年度決算の中における特に中小
企業問題についてであります。初めに、小規模事業に対する
政府の
援助についてお伺いしたい。
四十八
年度決算において、
政府は、小規模事業指導費補助金の
歳出予算現額七十六億二千二百七十七万円のうち、使用しなかったものが一・九%に当たる一億四千五百七万円としているのであります。しかるに、中小
企業の窮状を最も端的にあらわす倒産件数を見れば、
昭和四十八年には、その前の二年間の減少傾向から一変して増勢に転じ、年間八千百五十九件も記録し、これは全倒産件数の九九・五%を占め、さらに資本金五百万円以下の小
企業の倒産件数六千七百七十九件は、全倒産件数の八三・一%に相当しているのが実情であります。こうしたことを考えれば、この貴重な補助金のたとえ一・九%といえども使用しなかったということは、まことに遺憾とするものであります。通産大臣にこの間の事情について説明を求めるものであります。
次に、中小
企業設備近代化
資金についてお尋ねしたい。
都道府県が行う中小
企業設備近代化融資に対する国の補助金については、会計検査院が毎
年度の
検査報告でその使途が不当である事例を
指摘しており、まことに問題の多い補助金
制度であります。しかるに、四十八
年度決算には、この補助金について、四十二億一千七百五十万円の
歳出予算現額に対して実に二二・四八%に当たる九億四千八百四十四万円という多額の不用額が計上されているのであります。その理由は、
決算参照書の説明によれば、都道府県の融資に対する申し込み件数が少なかったことなどによるとされているのであります。
政府は、申し込み件数の減少の原因をどう把握しておられるのか。また、減少したとしてそのまま放置できると考えておられるのか。スタグフレーション下の設備近代化融資
促進のため、従来の
制度よりもっと拡大、充実した特別
措置として、本日の
日程で成立する予定の
中小企業近代化促進法の一部改正法の運用についてどのように臨まれるのか。さらには、高度成長期における中小
企業対策から低成長期の中小
企業対策への転換の基本
方針をどのように考えておられるのか、
総理、
大蔵大臣並びに通産大臣の所信を伺いたいのであります。
第三は、いわゆる推計
決算の問題についてであります。
昭和四十七
年度と、続く四十八
年度の二カ年にわたり、
輸出保険特別会計決算に推計
金額が記載され、
国会に提出されていたのであります。このことは、
国民の代表として
政府の
決算を審査すべき立場にある
国会の権威を軽々に見ることに通じ、ひいては
政府の
予算執行と
決算について
国民に一層の
不信を抱かせることになるものと考えるのであります。かかる不祥事は、明治憲法、現行憲法下を通じ、いまだかつてなかったのであります。まことに遺憾とするものであります。もちろん、このことは、われわれ国政を預かる者としても深刻に受けとめるべきであります。しかし、特に
決算の作成者であり、
国会への提出者である
政府においては、より猛省されるべきであると思うのであります。
決算の閣議決定の最高
責任者たるべき
総理並びに
大蔵大臣の御
所見を承りたいと思います。
第四は、会計検査院の検査体制の拡充についてであります。
憲法第九十条には、「國の
収入支出の
決算は、すべて毎年會計檢査院がこれを檢査し、
内閣は、次の
年度に、その
検査報告とともに、これを國會に提出しなければならない。」と定められております。また、これを受けて、会計検査院法第一条においては、「会計検査院は、
内閣に対し独立の地位を有する。」と
規定されており、会計検査院の責務はまことに重要であると言わねばなりません。しかるに、この重責を負う検査院の職務の遂行が十分に保障されているとは言いがたく、早急に改善していかねばならないと考えるものであります。
すなわち、
財政規模は膨張の一途をたどり、
一般会計歳出決算額は、
昭和四十四
年度の六兆九千百七十八億円から、わずか四年後の四十八
年度には二倍強の十四兆七千七百八十三億円となり、その傾向は今後ますます顕著になっていくものと思われるのであります。また、検査院が検査した計算書とその証拠書類の量も増大しており、検査対象となるべき官公署の数も、毎年のようにふえ続けているのが実情であります。ところが、検査院の定員は、検査担当職員が多少
増加したものの、全体としては戦後一貫して一千百人台の横ばいを続けているのであります。
検査院は、こうした厳しい制約のもとにありながら、みずからの努力によって検査の質の
向上に努めてきており、高く評価できるものと思うのであります。それは、先に挙げた
輸出保険特別会計の推計
決算の発見など、
検査報告の
指摘内容の充実傾向によって明らかであります。しかしながら、いかに優秀な検査院といえども、当然そこには限界があることは明らかであります。検査院の業務量の拡大化とその果たしている
役割りを考え合わせるならば、さらに組織の拡充強化を図るべきが至当と考えるものであります。
三木総理の「量から質への転換」という
政治理念はもとより大切にしていただかねばなりませんが、検査院に関する限り、質の確保は当然のこと、量の拡充こそが最も急務であると思うのであります。その
実行の成否は、ひいては
国会における厳正な
決算審査の成否につながり、
国民の負託にこたえる道であると言っても決して過言でないと思うのであります。
総理の御
所見を賜り、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君
登壇、
拍手〕