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案納勝君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま
郵政大臣から
趣旨説明のありました
郵便法の一部を
改正する案について、
総理及び
関係大臣に
質問をいたしたいと思います。
その第一は、
物価と
公共料金に対する
政府の
政治姿勢についてであります。
わが国の
高度経済成長が終わり、
マイナス成長に追い込まれている今日では、
昭和三十年代以来、歴代の
自民党政府がとり続けてきた大
企業優先の
高度成長政策の所産である
インフレと
生活環境の
破壊は、人心を救いがたいまで荒廃に追い込んでいます。さらに、
政府が
インフレ対策としてとってきた総
需要抑制策は、大
企業優先、
中央集権財政金融政策を温存したまま行われた結果、その犠牲は
勤労者、
中小企業者に転嫁され、
不況が急速に進み、
不況下における
物価高という深刻な
事態を招いています。庶民の
家計簿は
赤字が続き、
中小企業者の倒産は相次ぎ、
勤労者は
労働条件の切り下げ、雇用の不安など、
生活の
破壊と苦しみはますます厳しくなっています。
インフレと
不況というこの異常な
情勢の中で、
国民の熱いまなざしが今日ほど国の
政治に、なかんずく
物価の動向に向けられているときはありません。
インフレは諸悪の根源であります。
物価の
抑制は
政治の
急務であります。しかるに
政府は、本年三月、
消費者物価の
上昇率を対前年同月比一四%に抑えたとして、
物価は
鎮静の
方向にあると誇示しています。しかし、四十九
年度平均消費者物価指数は、前
年度の
平均に比べて約二二%も
上昇し、三十年代以来
最高を記録しているではありませんか。しかも、本年四月、
消費物価は
前月比二・五%
上昇し、
卸売物価も
上昇の兆しを見せています。
インフレはとどまるところを知らず進行しています。
一方、
不況の
深刻化とともに、財界においては、
金融緩和など
景気刺激策を要求し、
政策の
転換を求める声が日増しに高まっています。加えて、
産業界の多くは、また再び
製品価格の
引き上げの空気が濃厚になり、経団連の
調査によっても、所属百四十八社の六〇%の
企業が
製品の
値上げを望んでおり、その
期待値上げ率は一〇%から二〇%にも達しています。さらに、
経済企画庁自身が
調査をした二月から三月にかけて行った「
転換期における
企業行動」という
調査においても、大半の
企業が
主力製品の
値上げを意図していることが明らかにされています。また、今後
値上げを予測されているものとして、麦の
価格、米価、運賃、
地方公共料金など、まさに
メジロ押しではありませんか。
このような
情勢を見るとき、
物価は
鎮静化しつつあるという
政府の
主張にもかかわらず、
狂乱物価の再来を招かないとだれが保証することができますか。
政府は、これらの
企業価格、
公共料金について一体どう対処しようとするのか明らかにしていただきたいのであります。
特に、酒、
たばこに引き続いて、
国民の
生活に密着している
郵便料金の、まさに暴挙と言うべき大幅
値上げを行うことは、
国民の
インフレ心理を刺激し、
インフレ促進への相乗り効果をもたらすもの以外何ものもないのであります。
総理、
政府が今次春闘で一五%のガイドラインに
勤労者の
生活を押え込んだいま、あなたの責任はきわめて重大であります。
物価をこれ以上上げない、来年三月には一けた台に、五十一年には定期預金の金利以下に
消費者物価の
上昇を抑えるという公約をいまはっきりと保証することができますか。それができないとき、あなたはどう責任を明らかにしますか、明確に
お答えをいただきたいのであります。
イギリスにおいては、
郵便料金の
値上げについて、
インフレから
国民生活を守るために、二回にわたり
一般会計より
赤字を補てんし、一九七三年には千二百億円を支出し、
国民への犠牲を
最小限にとどめています。
わが国においても、
政府が
インフレ抑制、
国民生活優先を第一義と
考えるならばできないはずはありません。
このたび提案されている
郵便料金の大幅
値上げは、当面国の責任で凍結し、イギリスと同様、
赤字は国庫の
負担として、
インフレの収束まで
物価安定に全力を挙げるべきだと
考えます。
政府はその意思がありますか、
総理、副
総理、大蔵大臣の御見解を承りたいのであります。
第二には、
郵便事業に対する
政府の
政策上の責任についてであります。
このたびの
郵便料金改定に関する
政府の
考え方を要約をすると、
郵便の八割は
業務用通信というその利用の実態から、所要の
経費を一般納税者に
負担させるのは
負担の公平を欠くというのであります。しかし、
郵便事業の実態をつぶさに
検討するとき、このような
政府の
主張は全く合理的な根拠を欠くと言わざるを得ません。
すなわち、
郵便という
サービスは、ナショナルミニマムとして
国民生活に欠くことのできない重要な
通信手段であるだけに、法第一条に明記されているように「安い
料金で、あまねく、公平に」
サービスを提供し、
国民の福祉を増進しなければならないのであります。したがって、鉄道はおろか、バスも通じていない山間僻地に至るまで
郵便局が設置され、どの家庭にも戸別
配達を通じて
国民に親しまれているのであります。このような地域に
収支採算が合わないのは自明の理であります。
また、新聞、雑誌など
定期刊行物を
内容とする第三種
郵便物及び通信教育用
郵便物、盲人用点字など第四種
郵便物の
料金は、原価を著しく下回る低
料金かまたは無料であり、いわゆる
政策料金であります。したがって、山間僻地などにおける
郵便業務運営費の
不足分や、あるいは
政策料金として生ずる収入の
不足分は、国の
政策として国の責任で
負担すべきが当然ではないでしょうか。これを働く
勤労者、
国民大衆の
負担にしわ寄せするやり方こそ、
国民収奪の
政治姿勢であり、まさに
負担の公平を欠き、社会的不公正の拡大ではありませんか。
アメリカでさえ、
郵便事業運営の不採算地域や
政策料金に起因する
経費は、所定額を国庫の
負担とする旨明かにし、すでに
実施をしているところであります。
わが国においても、国の
政策に伴う
経費は国の責任において明らかにし、
国民大衆への
負担を
最小限にとめる措置をとるべきであると
考えます。
総理、あなたは、有言不実行でなく、このような具体的な問題に
国民生活優先の
政策を貫いてこそ、
国民の負託にこたえる
政治の道ではないでしょうか。
総理及び大蔵大臣、
郵政大臣の御見解を承りたいのであります。
第三には、
郵便事業運営の基本
姿勢についてであります。
今日までの
郵便事業は、極端な
企業性、採算性にこだわり、
事業の公共性や
国民福祉の増進をうたい文句にしながらも、ダイレクトメールや
企業通信の
取り扱いに見られるように、
企業優先の
運営を行い、
赤字になると、全く無定見に、きわめて安易に、
国民大衆に
料金値上げを押しつけてその場を取りつくろってきているにすぎないと言わざるを得ません。
郵便事業は、
高度経済成長の中で飛躍的需要の増大をもたらしながら、他方では
企業優先政策のしわ寄せによって
国民福祉が犠牲にされるというひずみを生み、
郵便取り扱い環境も最悪の状態に追いやられているのであります。
その結果、
国民から
期待される
郵便サービスの
確保はますます困難になり、
郵便事業が困難になっているのが今日の現状であります。
郵便事業をつぶさに
検討するとき、
郵便輸送方式の再
検討、大
企業優先の
郵便種別及び
取り扱いの
検討、
送達速度の安定化、労働力の
確保、
会計制度の
改善、
料金決定のあり方、また労使の
信頼の回復など、今日ほど問題が浮き彫りにされているときはありません。
国民福祉
優先の
政治姿勢を確立し、真に
国民が求めるものは何か、これを真剣に
検討し、郵政
事業全体を徹底的に見直し、これを行うことが今日の時ではないでしょうか。ところが、今日の
政府及び省の態度には、
事業の展望はおろか、現状を分析し、
国民福祉の追求を期そうとする真摯な態度を見ることはできません。今回提案されたこの
改定は、まさにその
姿勢を象徴しています。
名実ともに、
国民福祉
優先、人間性尊重という発想に立ち返る大
転換を図り、郵政省みずからが
事業の直面をしている諸問題と将来の展望について全体を見直した上で、
赤字、
値上げ、
赤字、
値上げという安易な繰り返しに終止符を打つべく今回の
郵便料価上げ案の成立を断念して、改めて、きれいごとでなく、
郵便の原価などを
国民の前に公表し、
郵政審議会などの民主化を行うなどして、率直に
国民合意と
協力を求める
施策を講ずることこそ必要な
政治の責任ある態度ではないでしょうか。
総理、
郵政大臣の御見解を明確に承りたいと思います。
続いて伺いたいことは、小規模
郵便局制度の改革についてであります。現在の郵政
事業にとって
改善すべき最大の問題は、小規模な
郵便局の
運営を
近代化、
合理化することであります。すなわち、前時代的な特定
郵便局制度を根本的に改革することであります。この制度の最大のガンは、局舎の私有化と、そこから発生する局長の自由任用、世襲制という、全く前時代的な制度が存在していることであります。これが職場を暗くし、
職員の勤労意欲を阻害する最大の原因となっているのであります。一方、経理面から見ても、
職員二、三名の小規模な
郵便局に高給の局長をあまねく配置するこの制度こそ、
郵便事業の
財政を悪化させる最大の要因になっていることも明らかであります。
すでに行政管理庁においてもこのことを重視し、去る三十二年の勧告において、普通局の分局、出張所などの制度の活用などにより、この不合理を是正すべきことを強く
指摘しているところであります。近代国家と言われる
わが国において、全国一万七千に及ぶ国の機関に局舎の私有、局長世襲制という封建的な制度が存在すること自体、
政治の恥部と言うべきでありませんか。郵政
事業の最大の問題であるこの特定局制度の改革について
郵政大臣の御見解を明確に承りたいのであります。
続いてお伺いしたいことは、福祉
料金についてであります。今回の大幅
料金値上げ案は、
経済的
負担能力の低い身体障害者や、母子家庭、
生活保護世帯などに非常な大きな衝撃を与えています。社会的公正の
確保のためにも、
国民福祉
優先の
料金制度を設け、社会的弱者に対する手厚い
配慮が当然なされるべきだと
考えますが、
郵政大臣はどのような
施策を用意されていますか。
なお、これに関連してお伺いしますが、本年一月大臣は、
生活困窮世帯へ
はがき無料配布などの構想を示されたものの、その後、これを撤回されたようでありますが、このような
施策こそ大胆に進めるべきであり、
郵政大臣の
お答えをいただきたいと思います。
最後に、郵政
事業における労使の
信頼回復の
施策についてお尋ねいたします。
御
承知のように、郵政
事業は労働集約度のきわめて高い
事業であります。郵政
事業に働く
職員は、都市においては公害、交通戦争、過密化の中で、また、どんな山間僻地においても、風雪にめげず、
国民のために営々として
努力をいたしています。これらの働く人たちが心身ともに明るく健康的で希望を持って働くことができる職場環境があってこそ、初めて
事業として
国民の
期待にこたえ得るものであります。しかるに現実には、郵政省は十数年にわたり郵政労働者に対する人間性無視、
生活破壊を強要する労務管理、人事管理を行ってきたのであって、
職員の大多数をもって構成する全逓信労働組合に対する悪質な不当労働行為や、その組合員に対する人事差別、権利侵害など組織
破壊政策が全国的に強行され、ために、
郵便局の職場は他に類例を見ない陰惨なものになりました。まじめに働こうとする
職員は生きがいを喪失し、勤労意欲も、郵政省に対する
信頼も、また職場の人間
関係すらも失われて、職場は砂漠のような索漠たる状態に置かれてきたのであります。これらの問題は、この一、二年間においてやや
改善されつつあるとはいえ、今日なお後を絶たず、より悪質陰湿なものになっていることを
指摘せざるを得ません。このような現実を前にして、郵政
事業運営の根幹である労使の
正常化、
信頼関係の回復について、
郵政大臣はどのような基本
姿勢で臨まれようとしているのか、誠意ある
お答えをいただくことを要請して私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君
登壇、
拍手〕