○栗林卓司君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました
所得税法、
法人税法及び
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案に関し、
総理並びに
関係大臣にお尋ねをいたします。
総理は施政方針演説の中で、行
財政のあり方全般にわたる
見直しをすると言われました。昨今の
地方財政の惨たんたる状況に見るまでもなく、だれしも国と
地方を通じての全般的な行
財政の
見直しの必要性を痛感しているわけですから、
総理の言葉に反対する者はありません。特に私を含めて、行
財政の全般的な
見直しとは、もっと安上がりのする行政への期待感に結びつくわけですから、なおさらのことであります。しかし、ここで私はあえて次のことを
総理に申し上げたいと思います。
かつて社会の激変期を経験したヨーロッパのある学者が、その原因となった社会的不満感を反省して次のように言っております。それは「とても
改善は望みがないと思われた間はこらえにこらえていたものの、一たん不満を除くことができるとの感じが人々の心をかすめれば、不満はもはや耐えがたいものになる」。以上であります。三木
総理のお気持ちは
理解できますが、私はこの意味で、政治的責任者の言動は常に自分の実行力を見定めた慎重な
配慮が必要だと思います。この意味から私は、三木
総理が行
財政の全般的な
見直しを提唱された以上、一日も早く具体的な肉づけをされるよう切望してやみません。そして、そのための努力の過程として、今回の
税制改正をどのように評価し、位置づけられているのか、お伺いをいたします。
同様の意味で副
総理にもお尋ねをいたします。
副
総理は、
経済演説の中で、五十
年度において施策の根本的な洗い直しを主張され、五十年、五十一
年度を調整期間とすると言われました。将来の予測しがたい変化を
考えると、調整期間は短ければ短いほどよいに違いありません。しかし、そのことによって生ずる摩擦を
考えると、事は決して単純ではありません。そこで副
総理にも、今回の
税制改正の位置づけと、調整期間中に何を構想されているかについてお尋ねをしたいと思います。
次に、
大蔵大臣にお伺いします。
財政演説を伺いますと、
総理、副
総理の語調とは打って変わって、
見直しという言葉もなければ洗い直しという言葉もありません。あるものは、当面の状況に対する当座の小幅
手直しだけであります。なるほど慎重そのものですが、これもちょっとひど過ぎるのではないのでしょうか。不用意にあすを語ることは
財政を預かる者の態度ではないと言われるのかもしれません。しかし、
国民からすれば、船出した船がどこの港を目指しているかを知りたいと思うのは当然のことではありますまいか。行
財政の全般的な
見直しが重要課題とされている今日の状況に照らして、今後どのような方向に
税制を導いていこうとされるのか、基本的な
考え方と以下述べる諸点についてお尋ねをしたいと思います。
まず第一は、
所得税の
減税についてですが、
政府は、五十
年度の
減税について、前
年度税制改正による
所得税減税の平
年度化が相当な
規模に達する上、
経済を抑制的に運営する必要があり云々と言っております。しかし、いわゆる二兆円
減税の平
年度化については、それは田中前
総理の委員会答弁をかりれば、こんなに自然増収があったら
減税しなくては申しわけないという始末のものではなかったのでしょうか。
減税は
政府の恩恵ではありません。また、
経済を抑制する
手段としてのみ存在しているわけでもありません。もちろん、私は
減税が需要を刺激する効某を持つことを否定はいたしません。しかし、石油ショック以来の心理的動揺は
個人消費を非常に憶病なものにしてしまいました。一方、総需要抑制策は民間部門に集中的な打撃を与えつつあります。しかも、残業の減少や一時帰休の拡大に伴う収入の減少が家計に与える影響は
物価上昇の比ではありますまい。このときに当たり、可処分
所得の減少を補うための
減税が考慮されなかったことはきわめて遺憾と言わざるを得ません。また、もしその
減税幅拡大が需要刺激の心配があったとしても、たとえて言えば、預金金利の
引き上げによる貯蓄
増加の期待が有効な対策たり得たのではありますまいか。
以上、
総理及び
大蔵大臣にお尋ねをいたします。
次に、今後の
税制について、次の諸点に対する構想並びに具体的な改革の
日程を伺いたいと思います。
以下列挙して申し上げます。
一つ、直接税と
間接税の比率について、中期的に
考えた場合、どのような割合を目標としていかれますか。
昭和四十
年度の場合、直接税の比率は五九・二%でした。以降、この比率は年とともにふえ、五十
年度当初
予算では七三・五%にも及んでおります。その原因の一つは、直接税を中心にした自然増収を使い込んできたことにあると思いますが、いかがですか。もちろん、その間、
減税をしてこなかったとは言いません。しかし、その
減税は、一方で
所得税と住民税の
課税最低限の乖離を招いてまいりました。住民税の立場からすれば、国税につき合って
課税最低限を
引き上げ、結果として一部の住民しか税を納めない姿になることは決して望むところではないと思います。では、この問題をどう調整されますか。
所得税と住民税を一本化し、均衡のとれた形で
負担の軽減をはかることも検討すべき課題になってきたと思いますが、いかがですか。
また、
間接税を見ると、その中心とも言うべき
物品税は、圧力団体の介入により、需要が多様化した今日の状況に役に立つべき姿とも思われぬ状況にあります。海のものとも山のものともつかぬ付加価値税論議に日を送るよりも、
物品税の抜本
改正をする方が先だと思いますが、いかがですか。
第二に、
地方自主
財源の
強化について、具体的な構想を伺いたいと思います。
補助金行政は、
日本の政治風土を健全に育てる道ではありません。
また、関連して、一人百円という均等割り道府県民税についてお尋ねをしておきたいと思います。これは実質よりもたてまえの議論が幅をきかせてきた問題でありますが、一人百円の
税額と、そのためにかかる徴税費用を比べてみると、もはや漫画としか言いようがありません。だからといって、だれにでも当たる均等割り税の増額が、昨今の社会情勢のもとで簡単にできる問題だと
考える人はまずいないと思います。もちろん、住民はだれでも住民としての会費を払うべきだというたてまえ論を軽視するつもりはありません。しかし、仮に近似値的な対策を
考えるとすれば、塩、酒、
たばこぐらい住民の暮らしと密着しているものも少ないのですから、専売益金を
地方に移管するのも一つ方法ではないでしょうか。
第三に、
富裕税について伺います。
資産のあるなし、
所得階層の上下によって利益を得る度合いが開いている今日の実態に照らして、今後の構想と
日程を伺いたいと思います。
第四に、無記名預金に対する対策を伺います。
利子・
配当の分離
課税が解消できないのも、
相続財産が必ずしも正確に
把握できないのも、また、巧妙な脱税が横行するのも、その有力な原因は無記名預金にあると思います。放置してよい問題ではありません。いつまでに結論を出すのか、お尋ねをいたします。
以上、
総理と
大蔵大臣にお伺いをいたしました。かつて
税制調査会の会長が大蔵委員会において、
税制の思い切った
見直しをしたい、また、しなければならないと痛感しているが、
政府から細切れの
改正ばかり押しつけられて、じっくりと取り組むいとまがない、という
趣旨の述懐をされておられました。同感な点が多いわけですが、この気持ちにもこたえた答弁をお願いしておきたいと思います。
最後に、副
総理に、
経済企画庁長官というお立場とあわせて、税による
負担と公共料金による
負担の
関係についてお尋ねをしておきたいと思います。これも積年の課題であり、容易に決着のつく問題とも思われません。しかし、だからといって、今後の
見直し作業の中で避けて通れる問題ではありません。この点について
国民の協力を求めるためには、問題を
国民が
理解しやすい大きさのパッケージとして提出されるのも一つの方法ではあるまいかと思います。
以上、この問題に対する
考え方と解決の構想をお伺いして私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君
登壇、
拍手〕