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国務大臣(
永井道雄君) まず三点に分けて申し上げます。
第一に、私は職業高校を重視すると申しましたし、
大学レベルでは高専というものも重視していかなきゃいけないという
考えであります。そういたしますとそれを重視すると、そこは袋小路になっていいかという議論が当然あります。私はそういう
意味で申しているのではありません。でありますから職業高校を出た人が今度は
大学へ行きたいという場合に、
先生は一年おくらしてもいいんじゃないかとおっしゃいましたけれ
ども、むしろ
大学の入学
試験制度の方を変えて、そしてまた、変える努力をしておりますが、希望する人は乗りかえていくという姿で、つまり必ずそこが袋小路になって、行き場がなくなるということがあってはならないと、こう
考えております。
それからその次に、現在の職業高校におけるカリキュラムの内容がむずかし過ぎるんじゃないかというお言葉でございますが、これは実は私は普通科、職業科両方を含めて高校はむずかし過ぎるんだと思います。どうしてそうなるかといいますと、いままでの高校のカリキュラムをつくりますのは、いずれにいたしましても、高校の生徒の人口が相当少ない。つまり中学のところまでは大体の人が来るけれ
ども、高校は少数の人が来るという前提で進んできておりまして、そこで奥野文部
大臣の時分に、
教育課程についての諮問があったわけですが、その三つのうちの
一つは、やはりその問題に触れておられるわけです。つまり、高校はいまや学生人口が非常にふえてくる。ふえてくるという段階で高校とは何かということをもう一回問い直さなきゃいけない。私はその点では
先生おっしゃいますように、職業高校だけではなくって、高校のカリキュラムの見直しというものが高校人口がふえた。そこで高校とは何かという基本的な問題との
関連で見直すべきものと思っております。
次に、産業の中で、一次、二次、三次の雇用人口、これがアメリカ型になっていくんではないか。そこで多国籍企業というふうな形でいきます場合に、
わが国は結局第三次産業の人口が急速に増大して、さらに第一次のところが減っていくのではないかという、こういうお言葉と、それから科学技術の将来というものは無限ではなかろうかという、こういう問題でございます。これは私は、いまたとえば、来年度のことをどういうふうに
考えているかということを申し上げたいと思います。つまり、三木内閣が成立いたしましたのは昨年の十二月でございます。昨年オイルショックというものがございましたけれ
ども、いままで一応
わが国は、高度経済成長という姿で進んでまいりました。科学技術なりあるいは雇用人口の変化なりそういうものも、すべてそういう形で進行するという前提のもとに動いてきたと思います。
ことしから来年にかけてはどうかというと、大体、経済長期計画というものがまだでき上がっていない段階で、経済企画庁はそれいろいろ
考えているわけですが、まだない。そうすると、私は来年の
考え方というのは、一種の実験的中期計画というような
考え方で
教育についても
考えていくべきだと思っております。その
意味合いは何かということを申しますと、まず、安定成長というものに
わが国は移っていくならば非常に望ましいことでありますが、それを前提にすると、そうするとそこから起こってくる問題でありますが、まあ私、
アメリカ合衆国などの場合、いままで急速に第一次産業人口が減りまして、そして第三次に行った、これは事実でございます。今後も行くかどうかという問題、そこで多国籍企業というお言葉がございましたが、多国籍企業というのは私は必ずしもすんなりどうも今後発展しないんではないか。というのは、国連の中にも多国籍企業というものが持っている積極的な面とそれから問題が生じやすい面というものについての
検討がいま始まっております。ということは、多国籍企業が発展いたしますと、どうしても科学技術、資本、そういうものを持っている国が発展しやすいわけですけれ
ども、現在世界に大体百ぐらいの開発途上国があると、そうすると開発途上国の場合には自分の国の経済ナショナリズムというものが非常に強いですから、御承知のように
方々でそういう点では多国籍企業というものに対する抵抗があって、国有化運動というものが事実起こっておりますし、また、こういうものも進行する可能性もあるんではないかと、そうするといままでアメリカが進んできたような形で
わが国が多国籍企業という方向で動くかどうかという、これは
一つの違う問題がそこに含まれているように思われます。
それからもう
一つの問題は、そういうことに
関連いたしますが、これはもう現在すでに農林省が言っていることでございますけれ
ども、食糧自給力の増強ということを言っているわけでございます。これもまた、実は世界的現象であって、食糧というものの確保をどうするかという問題になってきております。いままではすべて有無相通じて完全に自由貿易でうまくいくという前提で経済成長発展期に進んできたんでございますけれ
ども、さて、
わが国ほどそれをある
意味では信じて進んで来た国はないと言ってよろしいんですけれ
ども、まあたとえば大豆の問題が起こるというようなときに、相当の危機感が生じてくるということでございます。農林省はそういう角度から自給力の増強をどうするかということで計画を立てておられる。そういたしますと、第一次産業の人口の減少ということはやっぱりあると思います。といいますのは、機械化がやはり引き続きあると思いますから。しかし、かつてアメリカに起こったように急速に起こるかどうかということについては、私はちょっと疑問を持っております。
それから、ということは、いまの三つの産業、三種類の産業の発展を
考えて、私はこういうものの発展を
考えて
教育を
考えるということは決して悪いこととはもちろん思っておりませんし、
教育計画上、それこそ資本主義、
社会主義の別を問わず、計画をやりますときに欠くことができない要件と思っておりますから非常に重要だと思いますが、なぜいまこの一種の実験的中期計画が必要と申し上げたかといいますと、いままでアメリカが伸びてきたような形で今後
わが国が伸びるのではなくて、やはり世界情勢が相当変わっている、それからそういう状況の中でどうしていく、しかも、そういうところで安定成長で進んでいくということになりますと、安定成長で進むということと世界情勢が変わっているということから、私はアメリカ型に一、二次、三次産業が急速に動くいうことはないかもしれないと思っております。そこで、そういうふうに
考えると、その
学校教育をどうするかという問題につながってくるわけですが、私は、
先生の
最後に言われた点、もちろん労働実験、実習、これを軽視してはいけない。軽視してはいけないということから非常に近視眼的な職業
教育に傾斜してはまずいと思います。そこで、やはり余り狭い分野に限定してしまわない、それからまた、完成
教育ということよりはむし将来を
考えながら発展していける能力を職業課程などでもつけるような方向、これを、すでに細かいいろいろ要綱が審議会からも出ておりますが、小分野に限定しない、これがやはり非常に必要になってくるんではないかと思っております。
といいますのは、
社会の変化は相当これからも激しいだろうと思います。科学技術は進んでいくんですけれ
ども、しかし、一例を申しますと、自動車よりは飛行機がいいと、そこまでは来たわけですね。飛行機よりはジェットがいいと、ジェットよりはスーパージェットがいい、超音速機がいいというところまで来たとき、超音速機は結局やめた方がいいというところに来たというのは、また否定できない事実だと思うのです。そうしますと、今後も科学技術は進みますけれ
ども、環境との
バランスをどうするかといういわゆる技術査察問題というものが非常に重要になってまいります。そうすると、
学校教育などで
考えていく場合、実は先般も技術士学会から御要請があったんでありますが、工業高校あるいは高専、
大学の工学部で技術史というようなものを絶対に教えるべきではないか、なぜかといいますと、単なるエンジニアになってどんどんどんどんつくればいいというようなことをやっていきますと、環境との
バランスの問題などに直面したときに非常に困るし、それから、技術査察ですね、テクノロジーアセスメントの能力を持つような人間が育たない。そういうものも育てていくべきだという要望が技術士学会からございましたが、私は、こういうものも実は
関係各局にいま渡して
検討してもらっているわけでございますが、そういうことが必要になってくるのではないだろうか。ですから、工業高校に限定して
考え、また高専に限定して
考えますという場合に、その中の教科の構成の仕方というのはいままでのように非常に狭いものであってはいけないし、そしてやはりこれからの技術と環境との
バランス、そういうふうなものに対処し得るような、まあ私はたとえば、
社会工学というのを東京工大にいたときに設計をしたんでございますが、まあ設計どおりいっているかどうか、いろいろ問題点ありますけれ
ども、必ずしもああいうものも
大学レベルだけでやるんではなく、高校のあたり、あるいは高専などにも必要なんではないか。なお、いろいろ具体的なことはございますが、基本的な
考え方として以上のように思っているわけでございます。