○
国務大臣(
福田赳夫君) 今日の
国民の
生活状態を見ておりますと、
消費が総体として非常に落ちついた状況になってきておるわけです。これはなぜかと、こういうことをいろいろせんさくしてみるんですが、非常に大きな
ウエートを占める要因は、これは高値安定といいますか、それに対する拒否反応、これが端的に出ているんじゃないかと、こういうふうに思います。さあ買ってみたいという商品、値段を当たってみると途方もなく高い。確かに
物価の情勢鈍化しておるわけでございますが、しかし、鈍化しておるものの
現実に高値になっている。こんな高いものは買えないと、こういうような心理というものが、今日の
消費水準が落ちついてきておる非常に大きな理由であると思うんです。なお、しかし、もうそればかりじゃない。一部にはさあ世の中が変わってきた、これからは節約というか、いままでの
生活様式少し考えてみようという
考え方、こういう要素も、これは否定はできないわけですが、一番大きなのはやっぱり高値に対する拒絶反応、こういうことかと思います。
私が
経済演説におきまして、
国民に理解を求めるという呼びかけをしておりますのは、ただいま申し上げました、世の中が変わってきたんだと、われわれの
生活態度というものにつきましても、これは考え直さなければいかぬ、こういう
認識を持ってもらいたいということですね、これが前面に出てくるという、高値に対する拒絶反応ということでなくて、われわれはこれから
生活がいままでと変わらなければならぬし、変わってこざるを得ないんだという
認識、その
認識というものがずうっと前面に出るような
状態を
期待をいたしておるわけなんです。まあ使い捨てといいますか、そういうようなものから抜け出て、物を大事にする、省資源、省エネルギーというような
考え方に徹した
生活態度というものを、これをぜひひとつ持ってもらいたい。そういう
考え方が主軸になって
物価が落ちついてきたということになれば、
消費が落ちついてきたということになれば、これは私は本物だろうと。これは日本の
経済は非常に堅実な基礎を築き上げるということになるんだろうと思うが、その点も
国民に訴えた、そういうつもりでございます。
それから
国民の
消費がこの際大いに節約されるということを一方において
期待しながら、一八・四%という
消費の増加、これを
経済見通しにおいて見ておるのは矛盾じゃないか、こういう
お話でございますが、これは一八・四%というふうに踏みましたが、これは
消費全体としての話なんです。これは人口一人当たりに直しますと、幾らになりますかね、これは一七・ちょっとというところのことじゃないかと、こういうふうに思います。
数字いま後でその点は申し上げますが、私
どもはこういう見方をしておるわけでございます。つまり、いま
消費が減っておると、それは先ほど申し上げましたように、高値に対する拒絶反応、しかし、いずれ高値に対する拒絶反応というものは、時間がたつにつれまして、これは薄れていく、そしてまた、まあなれっこというか、その高値になれて、そしてまた
消費が再開されるということになっていくだろうと、こういうふうに見るわけです。
一方、
春闘のことを私大変心配しているんですが、もし
春闘で思いも及ばざる結果になったというようなことになると、かなり
経済政策として、また厳粛な態度をとらなければならぬ。しかし、これがなだらかに
解決されたというようなことになりますと、
経済政策のかじの取り方、これは非常に楽になる、そういうような
関係になるわけでありますが、
春闘というもの
本当になだらかな
解決になってもらいたい。そうなりますと、それを踏まえての
経済の
対策、これが機動的な
体制ができるわけですから、
経済はこれは夏ごろから上向きに転じていくであろうと、こういうふうに見るわけでございます。その
経済の
上昇、これはそうむやみに
上昇することは好ましくないので、やっぱり総
需要抑制というので、その
上昇の天井というものは厳重にこれを管理する必要がありますが、それと並行いたしまして
国民の所得の方もまたふえていくだろう。また同時に、先ほど申し上げましたように、高値に対するアレルギー、拒絶反応というものもだんだんと整理されていくであろう、そういうことを総合的に判断いたしまして、そして総体として一八・四%、一人当たりといたしますと一七・二%というようなことになるだろう。これは一七・二というのは、
物価の
上昇を織り込んでの一七・二でありまして、実質ということじゃございません。