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公述人(梶原房子君) 梶原でございます。私は、こうした席に出て
意見を述べるなどということは考えてもみておりませんでしたし、また、勉強不足でございますので、本当に何か
参考になるようなことなどは言えないと思っていたのですけれ
ども、とにかくここ数年来何かもやもやしたものが私をどこへもぶち当たることのできないいらだたしさで包んでいたというようなことが、たまたま
物価の問題であるとか、あるいは申しわけないのですが汚い選挙であるとか、あるいは汚職であるとか、またはいろいろなことが
一つの形となって私にそれが考えられてき始めまして、まじめに生活している者のやり切れない
気持ちというのが、たまたま今回の酒、
たばこ値上げ法案というのが窓口になって何かというようなことでこれに公募させていただいたというわけでございますけれ
ども、実のところ今度こういうふうな場所へ出させていただくことに決まったということでは私
自身非常に困っていますし、また責任を感じているわけでございますけれ
ども、非常に内容的に貧しくて論旨もまとまりませんですけれ
ども、とにかく私は毎日生活をしている者としまして日常の生活を基盤として私のありのままの
意見を申し上げさしていただくことにしたいと思います。
私はこの法案に対して
反対をいたします。その
反対の
理由といたしましては、まず第一には、
生活物資の
値上げということの
影響はすべての者に一様ではなくて、特に、低
所得者という言葉はいかがかとも思いますけれ
ども、そういうところに非常に
影響が大きいということでございます。このくらいの
値上げだったらそれほど響かないだろうとお考えの方もおありかと思いますけれ
ども、私
どもは日常買い物をしますときに、いつも財布の中を見詰めながら、
一つの物を買う場合でも現在ではとまどって売り場を二、三度往復して、そうしてやっとのことで思い切って買う場合、あるいはあきらめる場合といったような買い物をしている状態を御存じだと思いますけれ
ども、また、もう
一つ、数カ月前の統一選挙の折に、たまたまある新聞の記者が候補者の奥様方にインタビューをした記事を見ましたときに、まあこれは大変申しわけない言い方なんですけれ
ども、私
どもはその統一選挙のときには一番
物価の安定を願いとしていたわけでございまして、また、候補者の
方々もみんな
物価安定ということに集中して公約をしてくだすっていたわけですけれ
ども、そのときにいろいろなお話をした中の
一つに、本当に身近なことですけれ
ども、奥さん方、大根一本いま幾らしているか御存じですかという問いに対して、ある奥様は、いまはずいぶんお高いですねとおっしゃって何か濁されたようですし、ある奥様の方は、いまのところ非常に忙しいので台所の方は任せてあるのでちょっとというふうな御返事があったということを見ましたときに、私はこんなことはどうかと思いますけれ
ども、本当にうらやましいと思うと同時に、ある意味ではがっかりいたしました。それで、
価格の答えのなかったということに、実際に毎日お金を見ながら出し入れしている者には非常にいろいろなことが大きく響いているということを申し上げたいわけなんです。
収入の多い層も少ない層も結局
値上げという額は同じわけでございます。それで、こんなことはあたりまえだと言われましても、そうあたりまえで簡単に片づけられないと思うのです。今度は
大衆向きのものはある
程度据え置いてあるから、そういう意味においてはというようなことも伺いましたけれ
ども、今日の世相は欲望というものも拡大化されておりまして、人並みにということにみんな背伸びをしています。そこで、分相応の生活を自然にできるというような生活感情は実のところあまり育っていないと思います。したがって、ここに
値上げ以前の問題も大きくひそんでいると、そんなふうに考えているわけでございます。
次に進みまして、二番目には、実際の家計でございますけれ
ども、家計のバランスを乱す原因の
一つになるからでございます。このことはでございますけれ
ども、酒とか
たばこは、私
ども家計簿の中では、食物費の中の
嗜好品目の
一つとして記入される場合と、主人の小遣い費といったような小遣い費の中へ位置づけられているということが多いと思います。したがって、この
値上げの分がこの項目の中でやりくりしていったならば何とか
部分修正で片づくように考えられそうでございますけれ
ども、実際にやってみますと事実はそうではございません。限られた
収入の中で精いっぱい努力をしてできるだけ家族の欲望を選択して満たしてやろうと、そしてバランスのある家計をと苦労していますときに、値上がりというものの投石はいやおうなしに家計を無理なところへ引き込んでしまうわけでございます。それで、家計の対応策として、こんな場合には消極的には
消費の合理化を図れとか、それから積極的には
収入の増加を図るのがよいというふうな教えも受けるわけでございますけれ
ども、実際これを推進していく上にはいろいろな問題とひずみがまたそこにあるからでございます。現実の社会というのは、
収入の差は非常に大きいわけでございますけれ
ども、生活内容の差というのはそれほど変わらないというか、変えられないというのが本当だと思います。酒や
たばこは
値上げしても、これを飲む人にだけ
関係があるとは言い切れません。食物費の
嗜好品のところが多くなれば、家族の健康を支えるほかの項目費がしわ寄せを受けます。そして、
経済的に不安定であれば、これは交際費などへも波及していって、家計のバランスはますます乱れてきます。そして、貯蓄をしなければならないと追い詰められていながらも、その貯蓄はまた減らさなければならないというふうな矛盾の中で非常に困ってしまうわけです。
収入をふやそうと、こう考えたときに、それに焦りを感じましたときには、ふやすための無理がいろいろなことにあらわれる場合も少なくありません。具体的に言いますと、たまに三面記事などにこういうことを原因とした悲惨なこともなきにしもあらずだと思います。それから次に、
消費の合理化を図れと申しましても、実際に現在産
業界で私
どもに提供してくれますものは使い捨ての傾向が非常に多くて、そしていろいろな方法で購買欲をかき立てています。とても賢い
消費者にすべての家計担当者がなり切るには容易ではありません。したがって、私
どもは、家計のバランスを崩すという意味において、何にかかわらず、
値上げということは困ることだと思っているわけです。それからこれははっきりいたしませんけれ
ども、
消費者を保護してくれるような法案は、何かわかりませんけれ
ども、なかなか通りの悪いような様子も察しますので、家計はあんまりこれから見通しは明るくないというようなこともいま感じているわけでございます。
それから三番目に、
値上げ−ストライキ−べース
アップ−
値上げといったような悪循環というものを断つためにも、ぜひ
値上げということはどこかで思い切ってほしいと、こういうわけでございます。
物価につきましては、家計ではできるだけ安い方がよくて、また、外国のものより
日本のものが安い方がいいし、あたりまえのことを言うようですけれ
ども、恐らく
国民経済の面からは家計に
影響のしない
程度の
上昇というのが望ましいのではないかと、こんなふうに思います。それで、このごろのことを見ますと、生活が苦しいからといっていわゆるストライキ的なことが行われる、それに
関係しない人に迷惑をかけても、結果としてはストライキをすれば次のいわゆるベース
アップというかそういうものが必ず実現され、そうして、その財源として、そればかりではないでしょうが、何かの値上がりということが出てくると、全くやりどころのないいらだたしさというものを感ずる者も少なくはないと思います。名目
所得でなくて実質
所得を要求することはもっともだと思いますけれ
ども、ストライキ騒ぎをしなくても、何とかみんなの本当に一致した研究というかあれで納得のできる最低の賃金
体系というようなものはつくれないものでしょうか。
一般の市民は、ストライキをしてベース
アップをしてというふうな順序で乗っていける
人たちはいいけれ
ども、ストライキもできないし、ベース
アップもないし、ただその
値上げの分だけツケの回ってくるということの悪循環をどこかで断ちたいという
気持ちを持っているわけでございます。酒、
たばこの値上がり分は
福祉を図るためにあるいは
国民生活に有効に使われると言われましても、何か人件費の
アップのために
値上げの波をかぶって犠牲にされるのじゃないかというような感じさえも出てくるわけでございます。
次に第四番目には、
値上げという声は、実際にそれが実施される以前から生活を狂わせてきます。以前起こった洗剤やペーパーのパニックはナンセンスだったと言っておりますけれ
ども、こう次々と値上がりが何となく予告されてきますと、やはりじっくりと落ちついて家計に取り組んでいるわけにはいかないのが人情です。現に
たばこもある種のものは幾箱ぐらいまでに一人してくれとか、あるものはちょっといまのところ入荷がありませんなどというような言葉も実際に買い物をしますと聞かれるこのごろでございます。それからお酒も、まとめてわりかた売れるという小売り店の話もありますし、何か在庫を気にしているというようなこともまあ見聞きしますと、何だかここでもってやはり不安になるし、落ちついていられませんし、まだこの先お米の値段の心配もしなくてはと、
消費者は非常に忙しくなってきている現状でございます。必要なものを必要なときに必要だけ買い入れるというのが合理的だと、そういうことは頭の中で一応わかっていましても、正直者がばかを見ることの多い世の中だけに、無理をしてむだな時間とお金を使っても何とかしなくてはというそういうようなものが生活を順々に狂わしていっていると思います。そうして、生活が苦しくなる、無理をしているだけにお金が足りなくなる、したがってストライキをする、騒いでまた獲得するといった先ほどの悪循環へと飛び込ませてしまいます。絶対に不足はないとか、
値上げはしませんなどと聞かされていたとしましても、そのまままともに信じられないという今日の状態であるわけです。
消費者を不安にかき立てて焦らせるような
値上げは何にかかわらず私はやめてほしいと、こう思うわけです。値上がりは一体このあと何があるのだろうか、どのくらい続いていくだろうかというようなこともやはりいま感じているわけでございます。私は、きょう、時間が一時間ほどありましたので、東京の方の、
物価ではありませんが、酒、
たばこというので、お中元売り場で酒や
たばこというか、酒の売り場のところを少し値段などを見ながら勉強させていただいてきたのですけれ
ども、すでにそこには、清酒は二十二日以後はあれですが、それ前の申し込みであれば現在の値段で取り扱いますというふうな張り紙もしてありまして、そう思って見るかげんか、清酒に勢い込んでお中元の買い物に行っているようなところもあるようでして、やはりこれが人の
気持ちじゃないかなと、こんなふうに思いました。それからお酒の値幅などにつきましても、もちろんこれは当然でしょうけど、種類によってずいぶん違って、勉強していないと、一体幾ら今度上がった、だから幾らだなんということはちょっと見当がつかないように、種々雑多というとおかしいですが、二、三種類のお酒の値段もついていたわけでして、何か私はそういうふうなものを見まして、酒、
たばこの法案がどうと言っても、何だかもう何となくどっちかへ滑っていっているという感じを持ちまして、ある意味ではがっかりもしたのですけれ
ども、酒、
たばこに窓口を借りて私はこれからのものについても同じような
考え方で値上がりということはしてほしくないんだということをもって
反対の
理由としたいと思いますけれ
ども、そういう意味を兼ねまして、私はまとめて次のような
お願いをしたいと思うのです。
少なくとも私は生活のめどを立てて家計をする者としては、二、三年の見通しの立った
経済計画というものをぜひ教えていただいて、そして本当にその意味では強力に実行していただきたいということの
お願い。
それからまた、現代にふさわしいところの
経済道徳というようなものをしっかり打ち立てていく方策も考えていただきたい。
それから
値上げということを、まあこういうのは極端な言い方でございますけれ
ども、何かこそくり材料のようなことで安易に持ち出さないでほしいという願い。
それから騒ぎ得だとかごね得でかき回されないで、とにかくまじめに生活している者に張り合いの持てる明るい社会建設ということを目指していただきたいということ。
それから最後には、やはり
日本に生まれていてよかったと。
日本人としての個性を豊かにして、そして世界と提携して大きく前進していかれるようなそういった意味の
経済構想というか、そういうものを掲げてほしいというふうなことを酒、
たばこということを窓口としまして日ごろ念願している者でございます。
日常生活のありふれたことでございますけれ
ども、内容のないままにつたないまとまらない
意見で申し上げましたけれ
ども、以上をもって
反対の
理由とさせていただきます。どうもありがとうございました。
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