○大塚喬君 ただいま議題となっております
所得税法の一部を
改正する
法律案等三法案について、私は日本社会党を代表して三原案に反対し、わが党及び公明党の共同
提出による三修正案に賛成の意を表明するものであります。もとより修正案に盛られた内容はまだまだ不十分ですが、さしあたって政府においても早急に手直しできるものでります。以下その
理由について申し述べます。
まず、
所得税法についてであります。政府は、今回の
改正内容について、物価調整を意図した減税を主張し、
所得税の持つ
所得再配分という本来の機能を確保しようとすることなく、依然として高額
所得者優遇の姿勢を維持していると断定せざるを得ません。すなわち、給与
所得者の場合、夫婦子供二人の課税最低限は、四十九年度分百五十万七千円から百八十三万円に引き上げると言いますが、そのうち百七十万七千円が四十九年度分税制
改正の平年度化の額で、いわばサラリーマンの既得権として保証されている
部分であり、実質十二万三千円
程度の引き上げにすぎません。これでは、政府見通しの五十年度中、物価上昇率九・九%にとどまったとしても、物価調整の効果もなく、実質増税となると言わざるを得ません。わが党では、夫婦子供二人の課税最低限を二百八十万円に引き上げるとともに、高額
所得者優遇につながる給与
所得控除の青天井を改め、控除
限度額を設けるほか、修正案で見られるように、通勤費、夜勤による割り増し賃金、寒冷地手当、労働組合費等については当然
非課税措置を講ずるべきものであると思っております。
次に、
法人税法でありますが、四十九年度税制
改正で法人税の基礎税率を四〇%引き上げたからといって、われわれが廃止すべきとする受取配当額の損金不算入
制度など、法人税の基礎的仕組みの検討を怠り、いかにも中小企業の大半を占める同族会社に対し、内部留保に税制面から助成するかのごとく外面的に取りつくろい、東京都の指摘する法人の税負担、逆累進という税の基本原則を著しく阻害した状態のもとで、中小企業の育成を忘れた政府・自民党の姿勢は、大企業との癒着ありと思わざるを得ないものであります。特に大銀行の貸し倒れ引当金について論及すると、現在、実際の貸し金の貸し倒れ発生率に比べ、はるかに高い水準の引き当てを認めております。われわれは修正案で示唆したように、この引き当て
限度額を現行の半分に引き下げるべきものと思うのであります。
次に、
租税特別措置法でありますが、今回の政府の
改正内容は、
土地の長期譲渡
所得について譲渡益二千万円超の
部分に対し、その四分の三総合課税ということでありますが、われわれとしては、全額総合課税とすべきと思っております。また、利子・配当の源泉分離選択課税が依然として存置され、選択税率がわずか五%引き上げられただけにすぎません。われわれは、修正案で見られるように、本来総合課税すべきだと思いますが、税の執行面を考えますと、選択税率を一〇%引き上げ、三五%にすべきものと考えるのであります。
さらに、医師の社会診療報酬の課税優遇
措置の是正が、税制調査会の答申に盛られながら具体化せず、社会的不公正是正、経済的弱者救済を最優先政策に掲げた三木政権のもとで、政府原案では、国民の
期待は何
一つとして満たされないと言わざるを得ません。
なお、これまで三案の
質疑の過程で明確となったことは、勤労
所得と資産
所得との担税力について、政府は法を盾にとり何ら反省することなく、また今後資産
所得優遇への姿勢を崩すことなく、これまでどおり財界との癒着を続けていくと思わざるを得ません。たとえば、配当のみの
所得者の夫婦子供二人の課税最低限は、配当控除があるため四百五万円となり、給与
所得者の百八十三万円と比べ、額に汗した動労
所得に一層重い税負担を求めているとだれもが認めているところであります。これに対し政府は、わが国は、法人段階で支払い配当に対し課税しているので、二重課税回避のため配当控除は当然認めるべきものと断言し、不均衡はないと強調してまいりました。
政府の三法案について率直に感ずることは、経済的弱者救済に
所得税超ミニ減税、社会的不公正是正については利子・配当の分離課税
制度及び医者の優遇税制の存続等に見られるように、三木政権の政治生命をかけた最優先
目的は何
一つ具体化することなく、国民を愚弄するものと思わざるを得ないところであります。
以上、政府の三法案について、まだまだ多くの反対の
理由がありますが、特に社会診療報酬の課税の適正化を強く要望し、政府案には反対し、修正案には賛成する
理由を申し述べた次第であります。
以上であります。