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政府委員(
中橋敬次郎君) 昨年の
改正で、給与所得控除につきまして最高限度額を撤廃しましたことについては、そのときもいろいろ御議論があったようでございまするが、
一つには、給与所得控除というのは一体どういう
趣旨でできておるかということと関連いたしておると思います。給与所得控除は実は、いわゆる厳密な
意味におきますと、この必要経費だけから成り立っておるものではないと私は思っております。そういう必要経費だけから申せば、実は一番低い給与所得控除の率でございます四〇%というのも、なかなか積算をしてみましてそこまでの金額は出てこないわけでございます。往々にしまして、給与所得者がうちで食べます食費までそういうものに入れるというようなことを、説をなす人がございまするけれ
ども、それは全く誤りでございまして、それは給与所得控除の対象になり得ないものでございまするから、厳密に給与を得るために必要な経費という面から申せば、なかなか給与所得控除、今日の
わが国におきますものを計算してみまして、そこまでの金額は積み上げないのが
実情であると私は思っております。と申しますことは、実は、給与所得控除といいまするのは、
一つには、給与所得ということにつきましての担税力という問題を加味しております。あるいはまた給与所得についての源泉徴収ということに伴います
配慮もありますけれ
ども、必要経費あるいは経与所得の担税力、それから源泉徴収というようないろんな
配慮を持ちながら概括的に控除をするというのが、今日の給与所得控除の
考えであります。そういう観点から申し上げますと、勤労所得について相当の
配慮をするという
意味におきましては、給与所得控除について限度を設けるということは実は余り理論的でないわけでございます。
たとえばアメリカにおきましても、一般の税率は最高税率が七〇%になっておりますけれ
ども、いわゆる勤労性所得についての最高税率は五〇%というふうにちゃんと決めてあるわけでございます。そういう
配慮をもちろん
わが国の税制としてとってもよろしゅうございますけれ
ども、そういう税率についての差というよりは、この概括的な給与所得控除という形で行おうとしたのが、実は私は昨年の
改正ではなかったかというふうに
考えております。そういう
意味におきまして、給与所得控除に制限額を設けるということについては、従来の
考え方とかなり、昨年の
改正とはその
趣旨において変わったということから、限度を設けないということも私は
理由があることだというふうに理解をいたしております。
それからもう
一つお尋ねの、給与所得控除を実額でやればよいではないかという
お話とも関連をいたして
お尋ねでありましたけれ
ども、実額控除にいたしますと、実は私が
先ほど申しましたように、今日の給与所得控除の率というのはなかなか出てきておりません。非常に一般的に必要経費と思われるものでも、われわれの目から見ますれば、必要経費として
考えられないのが多々ございます。そういうものを排除いたしまして計算をして、今日の給与所得控除というものを概括的なものと、それから積み上げていって実額的に計算したものとを
考えてみますれば、実額控除というものをとるメリットというのは私はほとんどないと思っております。特殊の職業の方で、いや、本を買わなければならないというような方がございますけれ
ども、それも一部には必要経費と認められる部分もございますけれ
ども、また消費生活の中で、いわゆる可処分所得から購入すべきものが多々あるわけでございまして、そういうものを
考えますれば、私は実額で必要経費を引くという利点というのはそんなに
考えられません。むしろ今日のように、高目に給与所得控除を概括的に引いておきますことの方が、いろんな観点からもそれに対する所得控除の
配慮をひっくるめてやれるわけでございまするから、むしろその方がよりいい
制度だというふうに
考えております。