○国務大臣(大平正芳君) ただいま議題となりました
所得税法の一部を
改正する
法律案外三
法律案につきまして提案の
理由及びその内容を御
説明申し上げます。
初めに、
所得税法の一部を
改正する
法律案につきまして御
説明申し上げます。
政府は、
昭和四十九年度
税制改正において
所得税の画期的な減税を行ったところでありますが、
昭和五十年度においても、今次の
税制改正の一環として、最近における国民
負担の状況にかんがみ、各種
所得控除の引き上げなどにより
所得税負担の軽減を図るため、ここにこの
法律案を
提出した次第であります。
以下、この
法律案につきまして、その大要を申し上げます。
第一は、人的控除の引き上げであります。
すなわち、基礎控除、
配偶者控除及び扶養控除を、それぞれ現行の二十四万円から二十六万円に引き上げることといたしております。この結果、
昭和五十年分の
課税最低限は、
昭和四十九年度の
所得税減税の平年度化が大きいことをも反映して、
夫婦と子供二人の給与
所得者の場合で、
昭和四十九年分の百五十万円から百八十三万円へと三十三万円程度引き上げられることになります。
第二に、福祉政策等の見地から障害者控除等の特別な人的控除についても、一般的な控除とあわせて引き上げを行うことといたしておりますが、その引き上げ幅は一般的な控除の倍額といたしております。
すなわち、障害者控除、老年者控除、寡婦控除及び勤労学生控除を、それぞれ現行の十六万円から二十万円に、特別障害者控除を二十四万円から二十八万円に引き上げますとともに、老人扶養控除を二十八万円から三十二万円に引き上げることといたしております。
第三に、退職
所得の特別控除額を、勤続年数二十年までは一年につき二十五万円、勤続年数二十年超については一年につき五十万円に引き上げることといたしております。この結果、勤続年数三十年の場合の退職
所得の特別控除額は、現行の八百万円から一千万円に引き上げられることになります。
第四に、中小企業対策の一環として、白色申告者の専従者控除を現行の三十万円から四十万円に引き上げることといたしております。
第五に、医療費控除について、医療費支出の実情に即しつつ、その拡充を図るため、最高
限度を現行の百万円から二百万円に引き上げますとともに、いわゆる足切り
限度のうちの定額基準を現行の十万円から五万円に引き下げることといたしております。
第六に、山林
所得等の特別控除額の引き上げを行うなど、実情に応じたきめ細かな
改正を行うことといたしております。
すなわち、山林
所得、譲渡
所得及び一時
所得の特別控除額をそれぞれ現行の四十万円から五十万円に引き上げますほか、給与
所得者が確定申告を要しない
限度額を、年間給与収入については現行の八百万円から一千万円に、給与以外のその他の
所得については現行の十万円から二十万円にそれぞれ引き上げ、また、予定納税を要しない予定納税基準額の
限度額を現行の三万円から五万円に引き上げるなどの措置を講ずることといたしております。
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次に、
法人税法の一部を
改正する
法律案につきまして御
説明申し上げます。
政府は、今次の
税制改正の一環として、同族会社の留保
所得に対する
課税を軽減し、また商
法改正に伴う
制度の整備を図るため、ここにこの
法律案を
提出した次第であります。
すなわち、第一に、同族会社につきましては、各事業年度の留保
所得のうち一定の控除額を超える
部分について、特別の
税率により法人税を
課税いたしておりますが、この場合の定額控除を現行の年一千万円から年一千五百万円に引き上げることといたしております。
第二に、法人税の確定申告書は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に
提出しなければならないこととなっておりますが、
改正商法の施行に伴い、会計監査人の監査を要する等の
理由により決算の確定がおくれることとなる法人につきましては、一定の条件のもとに、その
提出期限を一月延長することができるという
制度を設けることといたしております。
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最後に、
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案につきまして御
説明申し上げます。
政府は、今次の
税制改正の一環として、利子・配当
課税の特例の見直しを初めとして租税特別措置の整理合理化を推進するとともに、福祉対策、公害対策その他に資するための所要の措置を講ずることとし、ここにこの
法律案を
提出した次第であります。
以下、この
法律案につきまして、その大要を申し上げます。
第一は、利子・配当
課税の改善合理化であります。
すなわち、利子・配当
所得の源泉分離選択
課税制度について、選択
税率を二五%から三〇%に引き上げました上、その
適用期限を五年延長することといたしております。
第二は、土地譲渡
所得課税の適正化であります。すなわち、個人の長期譲渡
所得の分離比例
課税制度は
適用期限の到来とともに廃止し、新たに五年間の時限措置として、譲渡益二千万円以下の
部分については、二〇%の
税率により
課税し、譲渡益二千万円超の
部分については、本則の二分の一総合
課税にかえて四分の三総合
課税とすることとし、また、短期譲渡
所得の分離
重課制度の
適用期限を五年延長する等の措置を講ずることといたしております。
第三は、既存の特別措置の整理合理化であります。
すなわち、海外投資等損失準備金について、先進地域に対する投融資で資源開発以外のものに係る
制度を廃止しますとともに、価格変動準備金
制度について、後入れ先出し法により評価しているたな卸し
資産をその
対象から除外するなどの整理合理化を行うことといたしております。
第四は、農地に対する
相続税の納税猶予
制度の創設であります。
すなわち、農地の
相続人が農業を継続する場合に限り、農地価格のうち農業投資価格を超える
部分に対する
相続税の納税を猶予することとし、その
相続人が次の
相続までまたは
相続税の申告期限後二十年間農業を継続した場合には、猶予税額の納付を免除することといたしております。
第五は、福祉対策に資するための措置であります。
すなわち、老年者年金特別控除額を六十万円から七十八万円に引き上げますとともに、障害者を雇用する場合の割り増し償却
制度の
適用期限を二年延長することといたしております。
第六は、
勤労者財産形成、住宅対策に資するための措置であります。
すなわち、住宅貯蓄控除
制度の控除割合及び控除
限度額を引き上げますとともに、住宅取得控除
制度及び新築貸家住宅の割り増し償却
制度について、その
適用期限を二年延長することといたしております。
第七は、中小企業対策に資するための措置であります。
すなわち、中小企業構造改善計画等に基づき、中小企業者が
負担する試験研究費賦課金を任意償却の
対象に加えますほか、中小企業新分野進出計画に基づき廃棄される施設等について加速償却を認めることといたしております。
第八は、公害対策に資するための措置であります。
すなわち、
昭和五十一年度の自動車排出ガスに係る保安上の技術基準に適合する乗用自動車及び電気を動力源とする乗用自動車の開発普及を促進するため、一定の
期間、物品税の
課税標準を減額することといたしております。
第九は、資源対策に資するための措置であります。
すなわち、探鉱準備金及び新鉱床探鉱費の特別控除
制度の
対象に海外自主開発法人からの引き取り鉱石に係る採掘
所得を追加いたしますとともに、海外投資等損失準備金
制度について、
対象資源等の拡充を行うことといたしております。
以上のほか、交際費の損金不算入
制度等、期限の到来する措置について、実情に応じその
適用期限を延長する等所要の措置を講ずることといたしております。
以上、
所得税法の一部を
改正する
法律案外二
法律案につきまして、その提案の
理由と内容の大要を申し上げました。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。