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参考人(
森永貞一郎君) 私もかつて中小企業
金融公庫に在職したことがございますので、中小企業
金融の問題につきましては、私なりに関心を持っているつもりでございます。
日本銀行といたしましても、
金融引き締めに際しまして、従来とかく中小企業にしわが寄りますので、いろいろと問題が起こりました経験をも反省いたしまして、今度の引き締めに際しましては、特に中小企業向けの
金融の疎通につきましては配慮をするようにという指導をいたしてまいっている次第でございます。その結果、私
どもが統計的に観察いたします限りにおきましては、
日本の全
金融機関の貸し出し総額の中に占める中小企業向けの貸し出しの枠の比率は、五割を超えている現状でございまして、決してその割合は低下をいたしておりません。その辺に、各
金融機関のそれぞれの立場における中小企業
金融の疎通への
努力の跡が見出されるのではないかと
考えている次第でございます。特に問題のある業種につきましては、各
金融機関協力しまして、中小企業救済特別融資基金というようなものも設けまして、
政府の要請がございますれば、特別の業種にそれを優先的に低利に融資をするというふうな制度も設けている次第でございまして、まだ少し枠を余しておりますが、極力御要請に応じてそういう融資も実行を、督励をいたしてまいりたいというふうに
考えている次第でございます。
お話のございました中小企業専門
金融機関、たとえば相互銀行とか信用金庫等々におきまして、最近中小企業向けの貸し出しの枠が余っていると申しますか、あるいはその反面として債券投資が盛んに行われているという事実は御
指摘のとおりでございますが、いろいろ
事情を聞いてみますと、今度の引き締めに際しまして、中小企業は順応の体制づくりが大変早かったのではないか。これは
一つには、中小企業が身軽で小回りがきくということもございましょうか、今日の事態を早くから
考えまして、在庫の調整にも比較的早く手をつけておった。そしてまた新しい前向きの資金の需要はこういう情勢でございますので、なかなかそう起こりにくい情勢があるというようなことから、中小企業の
金融機関に対する需資、資金需要の要請そのものが一時に比べると少しスピードと申しますか、度合いを緩めてきているというような事実があるようでございます。それにいたしましても、私は、中小企業
金融はこれでいいとは思っておりません。極力中小企業の困苦を助けるために、あらゆる
金融機関が今後一層
努力をしていかなければならないと存じますが、一ころに比べると資金の需要の度合いが若干停滞をしているというのも事実のようでございまして、そういういろんな
事情からいまのような、
先ほど申し上げましたような事態が起こっているというふうに観察をいたしております。