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国務大臣(
福田赳夫君)
経済が活況に向かうということは、まず需要が何らかの形で起きてくる、こういうことを
意味するわけでありますが、需要とすると、その大宗は何といっても消費需要です。
国民全体の生活のための消費需要であります。それから次いで大きな要因は、これは
産業設備需要、それから、これと肩を並べて、中央、地方の財政需要といいますか、それからさらに引き続いて輸出、こんな要因に分けられると思うんです。そこで、
国民消費需要というのは従来は景気の動きにそう大きな影響はなかったので、大体が財政とそれから
産業需要、この二つが大きな政策上の効果を生ずるという状態でありましたが、今回は従来と違いまして、
国民全体の消費需要というものが沈滞をしているという現象があるわけです。
これはなぜかといいますと、これは非常に複雑な多様な要素からそうなっておるんじゃないかと思います。非常に物の価格が上がった、上がったその高い商品に対する拒否反応というか、そういうこともあるようであります。また、
物価が上昇した、その上昇が収入の増加を消した、手元が実質的に苦しい。そこで、この不安な家計をどうするかということになると、何が何でも節約だというようなムードが出てくるとか、あるいは狂乱のとき、さあ、先にいったら高くなるぞというので、テレビを買います、電気洗たく機を買いますとか、かなりそういう買い付けが行われたという要因もありましょうし、いろんな要素があると思うのです。とにかく、
国民の消費が非常に沈んでおるというのが今日の総体としての
経済形態、これの特徴的なものになってきておるわけです。
私は、しかし、そういう
国民が動向を示すということは、
物価が安定し、しかも先々の
物価なんかについての
見通し、それを
国民がつけ得るような状態になるという、そういう経過を経ながら、非常に沈滞した生活、そういうものがだんだんと是正されていくんだろう、こういうふうに思います。しかし、さらばといって、前のように混乱以前のような状態に家庭の態度が復元するかというと、私はそうじゃないと思うし、また、それは思わしくないと思うんです。やっぱり家庭においても省資源、省エネルギー、物を大切にしよう、こういう
考え方がだんだんと定着してくる傾向になりましょうし、また、私
どもはそのための努力をしなければならぬと、こういうふうには考えておりますが、インフレが落ちつき、
経済の
見通し、先々が立つようになりますと、とにかく安定した
国民生活、そういうものを背景として消費も安定してくるであろう、こういうふうに見ております。
また、設備投資につきましては、インフレが鎮静するというのに伴いまして復元をするというふうに考えますが、これもまた混乱以前のような高い設備投資、そういうものはなかなかこれは出てこないだろうと思う。
一つは、一昨年のあの狂乱のとき、そのとき直前のあの
経済の過熱、ああいう
段階におきまして、先々もまた
経済は活況を呈するだろうという展望のもとに、
企業においては大きな先々を見ての投資をしております。ですから、設備能力というものを
日本経済は非常に過剰に抱えておるということを考えますと、前のような勢いで設備投資がどんどんと復元するということは私は
期待できませんし、また、そういう状態は好ましくないと思いまするけれ
ども、しかし、設備投資が上向いてくる、先々の展望ができるということで、そういう状態になってくるだろうと思いますが、多くは
期待できないと思います。
そこで、現在のこの景気の沈滞、また雇用の悪化に対してどういう政策をとるかというと、やっぱりこれは
政府がそのための有効な手段を発揮しなきゃならぬと思うのです。
それは第一は財政、第二は金融であります。それで、この金融と財政、これはその間どちらが有効な手かというと、私は財政だと思うんです。金融は、先ほど申し上げましたように金融をなだらかにしても、そう設備投資がにわかに活況を呈するというわけにはいかぬだろう。しかし、金融によって、たとえば住宅投資でありますとかなんとか、そういうものはこれはこれは推進し得るわけでありますが、とにかく主力は財政だ、そういうようなことで、先般、十項目にわたる対策を打ち出しておりますが、その主軸を財政に置いておるわけです。とにかく、この一月−三月の間におきまして一兆四千五百億円の公共事業の投資をやろうというんですから、これはかなり大きな力を持つであろう、そういうふうに思いますが、それを補完する
意味におきまして、住宅金融でありますとか、あるいは金融政策の若干の緩和をしますとか、いろいろな手段を講ずるという
考え方をいたしておるんですが、静かに、それらによってどういう情勢が出てくるか、
日本経済の状態はどうなるかという姿を見きわめましてまた今後の対策を必要があれば考えたい、こういうふうに思っております。