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浜本万三君(浜本万三)
○
浜本万三
君 そうするとできる
範囲
での死没
調査
ということになりますですね。
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1975-06-24 第75回国会 参議院 社会労働委員会 第19号
公式Web版
原子爆弾被爆者等援護法案(第七十四回国会浜 (会議録情報)
0
昭和
五十年六月二十四日(火曜日) 午前十時十九分開会
—————————————
委員
の異動 六月十八日
辞任
補欠選任
石本
茂君 亘
四郎
君
沓脱
タケ子
君
星野
力君 六月二十日
辞任
補欠選任
亘
四郎
君
石本
茂君 六月二十一日
辞任
補欠選任
星野
力君
沓脱
タケ子
君
—————————————
出席者
は左のとおり。
委員長
村田
秀三
君 理 事
玉置
和郎
君 丸茂 重貞君
山崎
昇君
小平
芳平
君 委 員
石本
茂君 上原 正吉君 小川 半次君 神田 博君 斎藤
十朗
君 高田
浩運
君 森下 泰君
片山
甚市君
浜本
万三
君
目黒
今
朝次郎
君
柄谷
道一君 国務大臣 厚 生 大 臣 田中 正巳君
政府委員
厚生大臣官房長
石野 清治君
厚生大臣官房審
議官
山下
眞臣
君
厚生省公衆衛生
局長
佐分利輝彦
君
厚生省社会局長
翁 久次郎君
厚生省児童家庭
局長
上村 一君
事務局側
常任委員会専門
員 中原 武夫君
—————————————
本日の
会議
に付した
案件
○
原子爆弾被爆者等援護法案
(第七十四回
国会浜
本
万三
君外三名発議)(
継続案件
) ○
原子爆弾被爆者
に対する
特別措置
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
(
内閣提出
、衆議院送 付)(
派遣委員
の
報告
)
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
1
○
委員長
(
村田秀三
君) ただいまから
社会労働委員会
を開会いたします。
原子爆弾被爆者等援護法案
及び
原子爆弾被爆者
に対する
特別措置
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
を一括して議題といたします。 まず、
派遣委員
の
報告
を聴取いたします。第一班の御
報告
をお願いいたします。
浜本
君。
浜本万三君(浜本万三)
2
○
浜本万三
君 第一班の報告を申し上げます。
原子爆弾被爆者等援護法案
及び
原子爆弾被爆者
に対する
特別措置
に関する法律の一部を改正する
法律案
の審査に資するため、去る六月九日、十日の二日間にわたり、広島県下に
村田委員長
、石本、沓脱、柄谷各委員と私、浜本が
現地視察
に参りました。なお、
片山委員
と、藤田、塩出両議員が
現地参加
をされました。 日程は、九日に県庁を訪問し、県及び
市当局
より
原爆被爆者対策
の実情及び要望を聴取し、
原爆慰霊碑
に参拝し、
原爆養護ホーム
、
原爆病院
及び
放射線影響研究所
をそれぞれ視察いたしました。次いで十日には
商工会議所
において、
原爆被爆者関係団体
の
代表者
より意見を聴取し、
広島平和記念資料館
を観覧し当日帰京いたしました。 その
調査概要
を申し上げます。
原子爆弾被爆者関係法律
が制定されまして以来、
法案審査
の目的として
原爆被爆者
の
実情調査
に国会から広島県に参りましたのは今回が初めてということであります。県当局の説明によれば、広島県における
被爆者健康手帳交付状況
は昭和三十二年約十万七千件であったのが、その後の推移を見ると、途中
死亡者
が出ていても、年々増加して、
手帳保有者
は昭和五十年三月末までに、十七万七千二百八十五名で、広島県が全国の半分を占めている状況であります。また、
被爆者距離別分離
では
保健手当
の関係で二キロまでの範囲を取り上げてみると、五万五千九百二十三名で
広島市内
の
手帳交付者
は十一万四千四百十一名であるので、この半分を占めていることになります。なお、参考までに法律による直接
被爆者
は十一万二千六百十七名であります。
原爆医療法
第八条による
厚生大臣
の
認定状況
によりますと、
認定者
は
申請者
のうち県四四%、市は六四%と狭き門と言われ
認定基準
の緩和が望まれています。 事業の
実施状況
をみると、
法律等
の国の措置によるものとしては、昭和四十九年度末
決算見込み
では県約十一億円、市約十八億三千万円、県、
市単独事業
としては
健康診断受診奨励金
、
特別検査促進手当
、
被爆者
への
奉仕員
、
相談員
、
相談事業費
、
原爆病院補助事業
、諸
手当等
の支給、
市町村事務委託費
、
原爆養護ホーム運営助成
について、昭和四十九年度
決算見込み
では県九千万円、市七千万円、昭和五十年度予算では県一億一千万円、市約六千万円を計上しているのであります。 次に、
原爆特別措置法
に基づく諸手当の
支給状況
を見ると、昭和四十三年度諸手当を受けている実人員が県二千三百十七人、市では三千百十七人であったのが、昭和五十年度見込みでは県二万二千七百二十五人、市では四万六千六百六十三人と、いずれも十数倍になっております。このうち、
特別手当
については、昭和四十三年県二百六十三人、市では二百七十四人に対して昭和五十年度県六百十三人、市は八百六十四人とごくわずかの人員で、認定の厳しさを物語っているのであります。しかも、
受給者
の少ない
特別手当
のうち、さらに
生活保護
の
収入認定適用
を受けて、
特別手当全額支給
を受けていない者は三十一名もあるということであります。 今回
原爆被爆者特別措置法
の
改正案
に新設されている
保健手当
の支給については、爆心地から二キロ以内とすれば、荒神町、尾長町、牛田町の四千九十九人が適用除外されることになり、
町名指定
をしてもらいたいという要望がありました。 次に、黒い雨の
地域指定
についてであります。広島市戸坂町から山県郡加計町にわたる二十九キロの範囲、当時二十四町村については、被爆直後のいわゆる黒い雨の降雨した地域であります。この地域は
放射能
を含んだ黒い雨のため
急性症状
が起き、
死亡者
も出て今もなお健康異常を訴える住民が多いと言われているのであります。最近、昭和四十八年、黒い
雨降雨地域
の
健康状況調査
によると、
対象者
約二万人のうち健康である者は六一・五%残りは
病弱者
で
急性病状
は全体の二一・一%となっています。この地域の
関係住民
の
有病率
は、他の地域のそれと比較して著しく高い結果を示して、
放射能
の影響があったことは認められるので、
被爆地域
に
追加指定
するように要望がありました。 次に、視察した諸施設について申し上げます。
財団法人原爆養護ホーム
については、昭和四十五年に開設され、現在の
収容者
は
一般養護老人ホーム
百四十九名、
特別養護老人ホーム
は百名で、
被爆者
であることからほとんど全員が三ないし四の病気を持っている状況で、その障害は
循環器系
が圧倒的に多く、次いで
整形外科系
、
造血機能系等
の順となっております。高
年齢者
が多く九十歳以上十五名、八十歳以上が全体の八五%以上を占めて、一般の
老人福祉施設
に比べて特に手厚い介護を必要としております。したがって、
老人福祉法
における
老人福祉施設
とは異なっているので、いわゆる第二
病院的性格
と言われている
医療保護施設
として、
原爆被爆者
二法の中において
法制化
し、
社会福祉法人
と同様の
優遇措置
を講じてもらいたいという要望がありました。また、現行の
措置基準
については、
収容人員
と職員の割合が
特別養護
五対一、
一般養護
は十五対一であるのを、それぞれ四対一、十二対一に改善してもらいたいという要望がありました。 なお、
原爆被爆者
で病気を持っている高齢の老人が多いにもかかわらず、医師が欠員となっているのは問題であります。 次に、
日本赤十字社広島原爆病院
では、昭和三十一年開設以来現在まで
累積赤字
が一億三千八百万円にも上っている点が問題となっております。この原因は
原爆病院
が
被爆者
しか診療していない上に、入院の
被爆者
は
高齢化
のためベッドの
回転率
が悪く、
人件費
の高騰に比べて
医療収入
がふえていないためによるものであります。
原爆病院
の
国立移管
については検討を要するところでありますが、現状では国の
運営費
の補助を増額してもらいたいということでありました。また、
原爆症
の
認定制度
について申請の
簡素化
や、
原爆病院
が老朽化し、雨漏りのあるところもあり、
改築整備
についても要望しておりました。 最後に、
財団法人放射線影響研究所
は、昭和五十年四月一日から新しく
日米共同
で発足したばかりであります。
研究所
では
放射線
の人に及ぼす影響の
調査研究
については、
被爆者
の子孫に影響がないと楽観視しておりますが、疑問がないでもありません。今後の
研究調査
に特に待たなければなりませんが、その使命の
重大性
が認識されます。同
研究所
における
調査研究費
が十分でなく、今後の予算の増額について要望がありました。 次いで、当
研究所
の
労働組合
の代表より
研究所
内に
治療部門
の設置と
原爆関係医療施設
との一元化、
一体的運営
について、また、
原爆被災復元委員会労働組合
の代表から、
被災復元調査
の継続についてそれぞれ陳情を受けたのであります。 次に、
原爆被爆者関係団体
との
懇談会
における十一名の
団体代表者
の意見を要約して申し上げます。各
代表者
の意見で共通しているのは、言葉の表現の違いこそあれ、
原爆被爆者援護法
の制定について強い要望があります。
援護法制定
についての具体的な意見は、昭和三十八年十二月七日、
東京地方裁判所
のいわゆる
原爆裁判
の判決に基づき国費で少なくとも
軍人遺族並み
の
弔慰金
、
遺族年金
、
障害年金等
を補償してもらいたい、また、
原爆被爆者
の
医療法
及び
特別措置法
との二法の恩恵を受けている者はほんの一握りの数にすぎない、病苦や生活苦、将来の不安、
ひとり暮らし
の孤独感からみずから生命を断つ
被爆者
が後を絶たず、新聞に報道されたケースだけでも過去六年間三十一人に上り、このような
被爆者
の苦悩を救うのは国による補償があるだけである。さらに、
原爆被爆者
二法にも限界があり、
原爆被爆
して三十年であるが国は戦後処理を本当に考えているのかどうか疑わしいという不満の声がありました。 次に、
原爆被爆者関係法律
に関連するものとしては、一、
保健手当
は全
被爆者対象
でなければ新たな差 別を持ち込むことになる。一、
健康管理手当
をもらうことを知らない人が多 いので、知らせる方法を考えてもらいたい。一、
原爆被爆者
の子供である被爆二世は病気や健 康不安に悩んでいる者が多く、白血病で亡く なった二世は十五年間に十二人にも上ってい る。医学上解明されていないため、被爆二世は
現行法
では全く
救済措置
がない状態に置かれて いる。そのため
健康調査
も行われず、
遺伝研究
も進まず、二世対策を盛り込んだ
援護法
を切望 している。一、
原爆白内障
であることを認めながら、三度に わたり
原爆症
の認定を却下されている。手術を 要求するとき、再申請せよという理由で却下さ れているが、
現行法
の認定では
被爆者
は救済さ れない。国の責任において
研究治療
、
救済対策
を進めるべきである。一、黒い雨の
降雨地域
を
原爆被爆地域
に
追加指定
してもらいたい。一、
原爆病院
が老朽化しているが、国立化するか 適切な国の措置をしてもらいたい。一、
被爆者保養センター
の経営が年間五千万円の 赤字となっているので
全額国費
で運営された い。一、
原爆被害
の全体像を明らかにするため
死没者
調査を国が行うべきである。
戦傷病者戦没者遺族等援護法関係
では、
戦没者遺族
の中には原爆の影響で死んだのに死亡の直接原因が
原爆症
と認定されていないために
遺族給与金
が受けられない人が多いが、
病状経過
から見て明らかに
原爆症
による死亡と認められるので、
遺族給与金
を支給するように認定されたい。また、
戦傷病者
の妻に対する
特別給付金
については
支給期限
を撤廃するとともに「
戦傷病者
の
配偶者
又は同居の親族」に改正してもらいたい。——などの生々しい体験に基づく意見や切実な要望があり、深い感銘を受けました。 最後に、今回の
原爆被爆者
の
実情調査
の結論について申し上げます。 まず第一に、
原爆被爆
後三十年を経過して、
国家補償
の精神に基づく
援護法
の制定は
広島県民
の悲願であり、われわれ
派遣委員一行
もその
悲願達成
に努力しなければならないことを改めて痛感いたしたのであります。 第二に、
原爆被爆者特別措置法
の一部
改正案
における審査において検討すべき諸点を明らかにいたしたいのであります。一、
改正案
には
保健手当
が新設されることになっ ておりますが、
保健手当
の性格からして所得制 限の撤廃、
対象範囲
の拡大、二キロの
距離指定
から
地域指定
に改めるべきであります。二キロ の根拠となった
国際基準許容
の限界二十五レム は果たして妥当なものであるのか。関連して原
爆投下地域
の
残留放射能
についても審議を通じ て明らかにする必要があります。二、現在すでにある
被爆者
の
医療福祉施設
の充実 強化であります。
原爆病院
、
原爆養護ホーム
、
被爆者温泉療養保養施設
を
法制化
し、
原爆被爆
者医療法
に規定し、
施設整備費運営費
の助成を 行うことができる道を開くべきであります。三、
在宅被爆者対策
の充実を図るため、
老人福祉
法や
身体障害者福祉法
の中にあるように家庭奉 仕
員制度
を
法制化
すること。また、
被爆者
の相 談業務についても法律に規制すべきでありま す。四、黒い雨の
降雨地域
については三十年を経過し ておる今日に至るもいまだに明確にしていない が、早急に
被爆地域
に
追加指定
すべきでありま す。五、
特別手当
については
生活保護
の
収入認定
から 外すべきであります。六、
原爆被爆者
に対する
原爆症
の
認定制度
の現状 から見て、
認定基準
の緩和及び
認定申請
の手続 の
簡素化
を行う必要があります。七、昭和五十年の国勢調査に当たっては
原爆被爆
者による
死没者
の調査も行うようにすべきであ ります。 また、
原爆被爆
の
復元調査
は被爆による
死没者
の実態を把握するための調査として緊急かつ重要なことであるので被災全体
像調査
を一層促進しなければなりません。 第三に、今後における政府の
戦争犠牲者
に対する戦後処理の方針についてであります。
原爆被爆者
の死亡による場合でも当時鉄道省と逓信省の官吏では処遇に差異があります。昭和三十二年以前の
原爆被爆者
の
戦没者
のことは把握していない状態であり、ましてや
一般戦争犠牲者
の調査についてははなはだ不十分であります。
一般戦災者
についても国としての補償の責任があることは当然のことであり、国の
身分関係
のあるものを手厚くし、他は
社会保障
の範囲で処理しているのは戦後
処理方針
に誤謬があるのではないかと思います。今次大戦における同様の事情にある西ドイツの事例をも勘案して
一般戦災者
の
援護措置
を実現して戦後処理を終結する必要があることは言うまでもありません。 以上をもって報告を終わります。
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
3
○
委員長
(
村田秀三
君) 次に、第二班の御
報告
を願います。
山崎
君。
山崎昇君(山崎昇)
4
○
山崎昇
君 第二班は、去る六月九日、十日の両日にわたり、
小平芳平理事
、
斉藤十朗委員
と私、
山崎昇
の三名のほかに、
目黒
今
朝次郎委員
、小
巻敏雄議員
の
現地参加
を得て、
長崎
市へ参りました。第一日は、県及び
市当局
からの
意見聴取
、
記念像
への献花、
原爆養護ホーム
、
原爆病院
、
放射線影響研究所
の視察を行い、第二日は、
被爆者関係団体
との
懇談
を行うほか、
被爆地域拡大
の
要望
の強い現川町へ赴き、
住民
と
懇談
をしてまいりました。以下
調査
の概要について御
報告
申し上げます。
長崎
市への
原爆投下
は、
広島
より三日おくれて
昭和
二十年八月九日でありました。
死者
七万四千人、
重軽傷者
七万五千人を出し、その数は、当時の
在住人口
二十一万人の七一%に及んだのであります。そして現在十万七千人が
被爆者健康手帳
の
交付
を受けております。 まず、県及び
市当局
より示されました
援護措置
についての基本的な考え方について触れたいと思います。
被爆
三十年を経過し、
被爆者
の
年齢
も六十歳を超える者が三〇数%と
老齢化
が進んでおりますが、現在、
原爆
二法により
特別手当
、
健康管理手当
などの
恩恵
を受けている者は、
長崎
市の場合、わずか二一・四%にしか当たらず、
被爆者
の一部をその
救済対象
にするにとどまり、現在の
措置
は
抜本的対策
とは言えない点を強く訴えられました。
被爆者対策
を単に、直接の
放射能障害対策
にとどめることなく、
被爆
の
特殊性
を総合的にとらえるならば、
被爆
に伴う身体の
障害
や健康上の不安からくる就職の困難、また就職しても
健康人
と同等に働き続けることのむずかしさから生じる
生活
全体のマイナスもまた
被爆
の
特殊性
ととらえて
対策
を講ずべきであって、そういう立場から十分な
生活保障
があってしかるべきではないか。 さらに進んで、非
戦闘員
であった市民の
生命
が、
戦闘行為
の巻き添えとしてではなく、直接の
戦闘対象
として奪われた
特殊性
に留意して、
死者
に対する弔慰がなされてしかるべきてはないか。
——
など
国家補償
の
精神
に基づく
援護対策
の
確立
の強い
要望
がなされました。 次に、
日赤長崎原爆病院
の
経営
問題についてであります。本
病院
は、
被爆専門病院
として
被爆者
の
信頼度
は厚く、
被爆者
にとっては、かけがいのない
病院
となっております。 しかし、他の
公立病院
と同様の
人件費
や
診療報酬体系
の問題に加えて、
被爆者医療
という
特殊性
から
放射能障害研究
、
がん診療施設等
の不
採算医療
が大
部分
を占めるほか、身寄りのない
被爆患者
が多く、加えて
被爆患者
の
死亡率
の高いことに伴って
濃厚看護
が必要となること、
慢性疾患
の多いこと等による
病床回転率
の低下など
原爆病院
なるがゆえの特異な要因が
経営
の悪化をもたらしているのであります。 前年度は、
医療費
の改定、国、県、市の
助成
を受けたにかかわらず
累積赤字
は二億二千万円となっており、本年度も一億五千万円の
赤字
が見込まれております。
原爆被爆
の
特殊性
に対応した
医療対策
を国が行うことになっているという
現行法
の趣旨をもっと徹底すべきであります。そのためには、単に
医療費
のめんどうを見るというだけでは不十分であって、十分な
医療
を行うための
医療体制
の
整備
についても当然国が
責任
を持つべきではないか。
人道的立場
をとる
赤十字精神
のみによって
運営
さるべきものではないはずであります。
空ベッド
が生じたら
一般患者
を入れてでも
運営
上の
赤字
をカバーしていかなければならないような
運営体制
では
被爆患者
が唯一の頼りにしている
病院
にいざというときに、入ることができないという事態さえ生ずるのであります。 このような不幸を回避するためには、
国立
に移管するか、それができなければ、せめて
国立
の
特殊病院並み
の
医療要員定数
を確保して
運営
に当たられるよう
助成措置
をとることによって、
医療体制
についての国の
責任
を明らかにしてもらいたい。
長崎原爆病院
が真に
被爆者
のための
医療機関
として
運営
できるのに必要な
助成額
は年に一億五千万円で済むという強い
要望
がなされました。 次に、
放射線影響研究所
についてであります。言うまでもなく、
長崎
の
研究所
は
広島
と一体をなすものであり、その
性格
、組織、
研究調査内容
などの基本的なことは、
広島
と相違していないわけであります。ここでは、
研究所
での
調査研究
が
被爆者患者治療
に
臨床面
でどのように役立っているか、
患者
の検診、今後の
調査研究
の重点はどこにあるか等についてただしました。
調査研究
は、
地元
、県、
市医師会
及び
地元
の
大学医学部等
の協力を得るとともにその
成果
は広く内外に公にされております。 また、
一般地域社会
との関連においては、
医師
の紹介、緊急時等における
検査
、診察を行うほか、定期的な
成人健康診断
に基づく
調査票
により
医師
の
照会等
にもこたえる
体制
が整えられておりまして、
研究
と
治療
の連携がとられておりました。 今後の課題として、過去の
成果
を踏まえて
被爆
二世の
研究
を進めること。がん、高血圧、
心臓病
などの
成人病
と
被爆
との
関係
の究明に力を注ぐことの言明がありました。 次に、
被爆者
のための
福祉施設
についてであります。私たちの視察いたしました恵の
丘原爆ホーム
は、純
心聖母会
が設置し、国、県、市の援助によって
運営
されているもので、定員は
一般養護
百五十人、
特別養護
百人であり、現在の
入所者
の
平均年齢
は男子七十四歳、女子七十七歳、最
高齢者
は九十四歳であります。
修道女
を中心とする手厚い
介護
に加え、
長崎
大学から毎日派遣される各科の
医師
の十分な
治療
のためか、
全員
の明るい表情が印象に残りました。 さらに、現在入所を希望して待機している人々も多いので、五十人単位で
特別養護ホーム
を拡充する計画が進められています。
被爆者
の
老齢化
に伴って
成人病
も併発することを考えると、
原爆病院
の
強化
とともに
原爆養護ホーム
、とりわけ
特別養護ホーム
を拡充していく必要が痛感されます。それは
病院
の
老人ホーム化
を防いで
利用率
を高めることにも資するものとして、すでに諸外国でもナーシングホームの拡充が図られているところでもあります。 したがって
原爆医療体系
の中にこれを
法制化
するとともに、
収容者
は
全員被爆者
である
関係
上、
疾病保有率
が高いなど他の
老人福祉施設
に比べて特に手厚い
養護
を必要とするので、
措置基準
の
改定等
の
必要性
が痛感されるところであります。 次に、
被爆地域拡大
の
要望
についてであります。当時の
被災資料
または記録に見られるように、
長崎
市上空五百メートルで爆発した
原子爆弾
は、爆風、爆圧、
放射熱
を遮蔽するような山が周辺に存在しないため、この爆発による
放射能等
は山の存在に
関係
なく直接的に放射されたものと考えられ、現在
指定
を受けている
地域
の
周辺住民
の
精神
的、肉体的不安を考慮するとき、現在
要望
の出されている
地域
、三万人についても、昨年
地域指定
を受けた時津町及び長与町と同様、
健康診断
の
特例措置
の
対象
とするよう検討すべき問題であろうと思います。
最後
に、
被爆者関係
諸
団体
から聴取した
意見
についてであります。
意見
の表明は、
長崎原子爆弾被爆者対策協議会
、
長崎原爆被災者協議会
、
長崎
県
被爆者手帳友の会
、
長崎原爆遺族会
、
長崎
県
評単産被爆者協議会連絡会議
の五
団体
の
代表
からなされました。 各
団体
からの
意見
はすでに述べましたところと重複するものが大
部分
でありましたので、個々に詳しく申し上げることを省略させていただきまして、
調査
を通じ、今後検討すべき課題として要約したいと思います。 第一は、
被爆者対策
については、
国家補償
の理念を明確に
確立
すること。 第二は、
被爆者
、
爆死者
の肉体、
精神
、
生活
上の
補償
を
被爆
三十年に当たり明確に
措置
すること。 第三は、
放射能
による
影響
に関する
研究体制
を
整備
拡充し、
研究部門
と
医療部門
との連携を密にした
体制
の
確立
を図ること。 第四は、
被爆者医療機関
の
整備
について
国家責任
を明確にする
措置
を講ずること。 第五は、
原爆医療法附則
第三項で実施している
健康診断
の
特例措置
の
適用地域
の
拡大
を検討するとともに、現在
政府案
で示されている
保健手当等
諸
手当
に対する諸制限と
支給対象者
の
範囲
を再検討すること。 第六は、
被爆者
の
高齢化
に対処して、
原爆養護ホーム
、
家庭奉仕員制度等
の
法制化
を図ること。 以上の六項目を
長崎班
の
調査
の
結論
といたしまして
報告
を終わります。
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
5
○
委員長
(
村田秀三
君) ただいまの御
報告
に対し、質疑はございませんか。
玉置和郎君(玉置和郎)
6
○
玉置和郎
君
広島
、
長崎
両
調査
に行かれた各
委員
の
先生方
、
大変御苦労
さんでございました。そしてそれぞれお二人からの
調査報告
がありまして、私は
調査報告
の全体をいま聞かしていただいて、なかなか精査されたもんだという認識をとりますが、私もこれ
国会
に出てきて十年目でありまして、
社労委
だけでなしにほかの
委員会
にもおりました。
議員立法
による
調査
というものは、これはなかなかやったことがないのでありまして、私
たち
は、
山崎理事
、それから野党の
先生方
の非常に熱心な
原爆
に対する
意見
をいれて与党も応じたわけであります。しかし、私は
山崎
さんのこの
調査
というものは、これは非常に考えられて、特にまた、いま
石本
委員
に聞きましたら、中で修正をされたというように聞きましたが、前段の
報告
の中に、どっちかというと個人の
意見
のようなものが見える、これはわれわれは今後とも非常に慎重にしたいと、そうでないと、何のための
調査
かわからないということでありまして、
委員
個人の
意見
というのは
調査報告
の中に入れるべきものでなしに、やっぱり
国会
の審議を通じて開陳をすべきであるというふうに私
たち
は考えております。ことにその理由を簡単に申し上げますと、われわれそれぞれの政党に属しておるんでありますが、政党政治の一つの考え方として、個人
議員
の、というよりも
議員
・党員の個々の活動を色あせさしちゃならぬというのが私は政党政治の一つの考え方だと思いますので、そういう意味で、この
委員会
の場を通じて
委員
の発言をしていただきたい。
調査
団ということになりますと、与野党入った一つのやっぱり公的な機関でありますので、この辺のところをやっぱり将来を踏んまえて今後は、
——
きょうはもうこれでわれわれも了承しますし、結構ですが、ひとつ今後のこともありますから、どうかひとつそういう考え方もわれわれの中にあるんだということを了解していただきたいと思います。
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
7
○
委員長
(
村田秀三
君) ただいまの
報告
に対し、
玉置
理事から発言がございましたが、それぞれの間におきまして、ただいまの
意見
に対して何かございますか。 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
8
○
委員長
(
村田秀三
君) 他に御発言もなければ、
派遣委員
の
報告
はこれをもって終了いたしました。 引き続き、両案の質疑に入ります。 質疑のある方は順次御発言願います。
石本茂君(石本茂)
9
○
石本
茂君 さっき
浜本
委員
の
報告
にもありましたように、私も
広島
の
現地視察
に参加いたしました一人でございます。当地におきまして知り得ましたこと、それからまた、その後の今月の十七日でございましたが、参考人の陳述などを通しまして私なりに感じましたこと、それらを総合いたしまして さらに国のとるべき
措置
というようなことを念頭におきまして、大臣並びに担当
局長
さんに幾つかのことをお尋ねしたいと思います。 その一つは、現在行われております二つの
法律
の中身に関連してまいるわけでございますが、一つは
被爆者
の
医療
に関することでございます。この中の一つは、先刻も
報告
書の中にありましたが、
原爆病院
の
施設
の
整備
と、それからその
運営
にまつわります実態の中で非常に
赤字
財政で苦悩しているということでございます。これはすべて国家が
被爆者
に対する、あるいは
被爆
という時点をめぐりましての問題解決のための
対策
は、国家の
補償
であるべきであろうというたてまえ論をとりますと、なぜこれは国営移管にならないのだろうか。要するに、国家所管としてそういう
赤字
等含めた、あるいは御病人の安心した
医療体制
というものをどうしてでき得ないのだろうかというようなことを一点考えるわけでございます。これが一つ。 それから二つ目は、居宅療養者に対する
措置
でございますが、これもかなりいろいろと配慮されて
措置
されてきたわけでございますが、特に気にかかりますのは、いわゆる家庭
奉仕員
のことでございます。これは全然ほうってあるわけではございませんが、奉仕
員制度
というものは一
体制
度化できるものだろうか、するべきだろうかというようなことについて当局の御見解を聞きたいと思います。 それから三つ目は、
認定基準
の
緩和
でございますが、これにつきましても現在は非常に厳しいではないかとか、非常に不当である、不合理であるというような批判並びに
緩和
してほしいという
要望
、陳情が非常に強いのでございますが、この三点について、まずお尋ねしたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
10
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず、
原爆病院
の問題についてお答え申し上げます。
広島
、
長崎
に
国立
大学の附属
病院
のほかに、たとえば厚生省立の
国立
病院
といたしましては、
国立
呉
病院
とか、あるいは
国立
長崎
中央
病院
といった
病院
がございます。これらの
病院
でも、
原爆被爆者
の
医療
を担当しておるところでございます。そこで、現在の日赤が
経営
しております
広島
原爆病院
、
長崎原爆病院
でございますが、これはいずれも三十二、三年ごろ特別の目的と趣旨と経緯をもってつくられたものでございます。したがいまして、私どもは今後も日赤といった非営利の民間
団体
の
経営
のよさを温存しつつ、できるだけ国の
助成
を
充実
いたしまして、皆様方の御
要望
にこたえるようにしてまいりたいと考えております。端的に申しますと、現在の
原爆病院
を
国立
に移管する気持ちはございません。 第二の御質問は、在宅
被爆者
に対する家庭
奉仕員
の制度の
法制化
の問題でございます。おかげさまで
昭和
五十年度は
国会
の
先生方
の御援助によりまして、
広島
県と
長崎
県については家庭
奉仕員
の制度が認められました。しかし、私どもはこの制度は全県に広げるべきであると考えております。したがいまして、
法制化
する場合にも、そのような制度の
充実
を図った暁に考えるべきではなかろうかと思う次第でございます。 第三の御質問は、
原爆被爆者
の
認定制度
の問題でございます。
先生方
の御指摘によりますと、現在の
原爆医療法
に基づく
認定制度
は非常に厳しいのではないかという御
意見
でございますが、医学の専門家の
立場
から見ますと、先般の市丸参考人の御
意見
にもございましたように、
原爆
特有の疾病というものはございません。したがって必ずほかの疾病が
原爆
の直接の
影響
、あるいは間接的な
影響
によって起こってきたのではないか、悪くなってきたのではないかということになってくるわけでございます。したがいまして、この
認定
の問題は、現在の医学の水準をもってしては非常にむずかしい問題でございます。しかも
被爆
後三十年もたった今日におきましては、いろいろ当時の
状況
証拠等を集めることも困難になってきております。このような
関係
で最近
認定
の事務が渋滞しておるような面があるわけでございますけれども、今後も事務的にはできるだけの改善を図りまして
認定制度
がもっと適正に、またできれば皆様方の御
要望
にも沿えるように運用できるよう改善を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
石本茂君(石本茂)
11
○
石本
茂君 一応御所見を承ったわけでございますが、
病院
につきましてはこの
助成
の
強化
ということを当面図っていきたいというふうに確認をいたしました。 それから、家庭
奉仕員
につきましては、
広島
、
長崎
市については一応制度化しておるが、県あるいはまた県外にありましても
原爆症
等のために悩む人々のことの面についての
拡大
も図っていきたい、そうしてその後に制度化をしていきたいというふうにまあ承ったわけでございます。 それから三つは、この疾患そのものには特有性がないので大変困難であるけれども、今後
認定基準
等についてはさらに検討し、
要望
にこたえたいというふうに承ったのでございますが、それでよろしいでしょうか。 それから、あわせまして次にお伺いしたいのは
被爆者
の福祉に関することでございますが、これも私の見た限りにおきましては、
原爆養護ホーム
、それからここは行っておりませんが、温泉療養保養
施設
などがあるわけですが、この
運営
にもかなり採算上無理がありまして、県あるいは市が非常に大きな
助成
をしているわけでございますけれども、こういうところにつきましても今後どのように国は
助成
対策
を持っていこうとしておられますのか、あるいはまた国家所管というようなことも将来考えられるのかどうか、その辺をこの機会に承っておきたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
12
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず
原爆病院
の
助成
につきましては、四十八年度から日赤等三
団体
に対する
補助
金の一部をもちましてすでに
補助
金を
交付
したところでございまして、本年度はその額も国の負担が両
病院
それぞれ二百四十万円、県の負担が二百四十万円となる予定でございます。また、そのほか四十九年度から
原爆
後遺症の
研究
に対する
補助
金を国が
交付
いたしておりまして、これは四十九年度はそれぞれ千六十九万円でございましたけれども、本年度は二千二百五十万円にそれぞれ増額する予定でございます。そのほか今後の問題といたしまして、特に
高齢
の、あるいは重症の
原爆
患者
さんに特別な手厚い看護が必要であるというようなことにも注目いたしまして、そのような看護要員の
人件費
についても
補助
金が出せないであろうかといった努力もしておるところでございます。 次に、家庭
奉仕員
の問題でございますが、現在
広島
県、
広島
市、
長崎
県、
長崎
市については奉仕貝の制度が本年度からできたわけでございますが、他の都道府県についてまだ実現いたしておりません。で、そのほかの都道府県に対する奉仕
員制度
の実現等を待って、ほかの問題ともあわせ考えながらその
法制化
等も検討してみたらどうかと考えておるわけでございます。 また、三番目の
認定制度
につきましては、先ほども申し上げましたように非常にむずかしい問題がございます。
病気
そのものがなかなか
原爆
によるものかどうかが判然としないわけでございます。具体的に申しますと、白血病が起こりました場合に、ある人の白血病が
原爆
によって起こったかどうかということは現在の医学では言えないのでありまして、いわゆる統計的な観察によりまして、統計的な
障害
として
被爆者
と
一般
の集団と比較した場合にどれだけ白血病の発生率が違うかというようなことをもとにして、なるほど
原爆
の
放射線
は白血病を多くするのだなというような判断をするわけでございます。したがいまして、なかなかいろんな疾病について
原爆
放射線
との因果
関係
を判断することがむずかしいわけでございます。しかしながら、こういった点につきましてもまた従来の事務手続が非常に煩瑣、であるというような問題もあるようでございますので、そういった事務手続につきましても
簡素化
を図りまして、できるだけ
認定制度
の合理化、適正化を図ってまいりたいという趣旨のものでございます。 また、
原爆養護ホーム
につきましては、現在国が十分の八の
補助
率でその
運営費
を
補助
しておるところでございまして、その内容はすべて社会局が所管しております
一般
の
養護
ホーム、
特別養護ホーム
の基準と全く同じでございます。ある面についてはこちらの方が有利な面も少なくないと考えておるわけでございます。この場合も、私どもといたしましては、民間の非営利の法人の
経営
いたしますよさというようなものを生かしながら、できるだけ国や県などの
助成
を
充実
いたしまして皆様方の御
要望
に沿えるようにしたいと考えておるわけでございまして、こういった
施設
を
国立
に移管する考えは持っておりません。 なお、原対協などが設置
経営
しております
被爆者
の温泉療養
研究所
あるいは
被爆者
の療養
研究
センター、こういったものにつきましては、まだ国の
補助
金は出してないのでございますけれども、こういった点につきましても今後
地元
の県だとかあるいは市とか、そういったところとよく相談をいたしましてその
対策
のあり方について検討してみる必要があろうかと考えております。
石本茂君(石本茂)
13
○
石本
茂君 お話を承り、また今日までの経過を承知しているわけでございますが、何かもう一つこう、落ちたところがやはり
責任
を負わなければならないのだというような自治体サイドの重さがどうしても意識の中に大きくのしかかってくるわけでございますので、私は全部をいますぐ国家がどうせいこうせいと言うのじゃございませんけれども、いま
局長
申されましたように、やはり特段の配慮があってしかるべきではないかということを考えるわけでございます。まあ日本じゅう当時爆弾が落ちました。しかし、
広島
にあるいは
長崎
に落ちた爆弾というのは、これは人類史上今後あってはならないことですし、類例のない恐ろしいものであったということ、許されないものであったということ等を一層御勘案いただきまして、そしてこれが
対策
には特別なやはり配慮というものを私はお願いしたい気特ちでいっぱいでございます。 それから次に、お尋ねしたいと思いますのは、
被爆
影響
に関する
調査研究
に関することでございますが、本年から
財団法人放射線影響研究所
ということでもとのABCCが多少形を変えたわけでございます。ここに参りましていろいろお話も聞きましたし、今日までの
研究
業績等についても承知をしたところでございますが、やはり一つ私の心にかかりますのは、
被爆者
の二世、三世にまつわりますところの
調査
というものが現在ただいまそこでは行われておらない。まあ今後検討することになるんだと思うのでございますが、そうしたいままで
放射線
によって
被爆
された人々だけの
調査
の追求ではなく、それを通しまして、二世、三世に及ぼすであろうところまでこの
研究
はぜひ進めていってほしいということと。 それからもう一つ、
報告
書の中にもありましたが、行ってみて思うことでございますが、
広島
の場合、
長崎
もそうだと思いますけれども、
調査
し、そういう
研究
する部門と、それから
医療
を担当する、いわゆる
病院
の分野と、これがばらばらでございまして、一年に一回ぐらいの
懇談
的な何かお話し合いがあるそうでございますが、ほとんどほかは個々別々の
体制
でございますので、何となしにそういうこと自身が、この
研究所
に参りまして、そうして自分の人体を提供し、そこによって
研究体制
を進めてもらうということについて、同意をし、理解はしておりましても、もう一つ、自分は現に
原爆症
のために苦しんでいるのに、なぜここで
治療
なりが受けられないんだろうかという悲しみを、市民の大方の皆さん持っていらっしゃるわけでございます。これは私の聞いた、知っている限りの事態を申し述べているわけですが、それからまた、
原爆病院
じゃございませんが、この
調査研究
体制
であります
研究所
の職員等の御
意見
の中にも、やはりここに
治療
機関の併設があった方がいいんじゃないか、いやある方がよいんだという見解もあったわけでございますが、この辺についてどのようにお考えになっておられますか、どう思っておられますか、この機会に聞いておきたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
14
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず
原爆
放射能
の
影響
についての特に二世、三世に関しての
研究
の問題でございますが、これは従来もABCCの
国立
予防衛生
研究所
の
広島
、
長崎
の支所が協力をいたしまして、
調査研究
を行ってまいりました。しかし、その程度はまだ十分ではございません。先般もアメリカのABCCの
放射線
諮問
委員会
が特に二世、三世に対する
調査研究
を今後
充実
するようにというような勧告をいたしましたけれども、先週開かれました日本の新しい
財団法人放射線影響研究所
の日本側の専門科学評
議員
の皆様方の御発言も全く同じような内容でございました。したがいまして、先生がいま御
要望
なさいましたように、今後
被爆者
の二世、三世に対する
研究
には特に力が入れられるものと考えております。 次に、現在の
研究
と診療と
老人
ケアとの
連携
の不足の問題でございますけれども、これはやはり県のレベル、市のレベルにおきまして、相互の連絡協議会のようなものを設置いたしまして、できるだけ数多く会合を重ねて、りっぱなシステムをつくり、相互の
連携
、ネットワークがうまくいくようにしていくべきではないかと考えております。 また、今回発足いたしました
財団法人放射線影響研究所
におきましても、みずからの
研究
を促進するために、各種
関係
機関、
団体
等との連絡協議会を設置いたしておりますので、そのような場におきましても、ただ
研究
の推進だけでなく、
被爆者
の
治療
だとか、あるいは
老人
ケア等もうまくいくように話し合いを進めていったらどうであろうかと考えております。 なお、
最後
の
研究
と診療とを
一体
的に運用したらどうかという御提案でございますが、かつて二十一年に、アメリカがABCCをつくりましたときに、ABCCにおいて
研究
のほか診療もやろうという提案をしたのでございますが、当時はむしろ
地元
の反対がございまして、アメリカ側は
広島
大学と
長崎
大学に
原爆
分といたしまして百五十床の
補助
金を提供したわけでございます。そのようないきさつがございまして、ABCC並びに現在の放影研では
調査研究
のための診断までしかしていないわけでございます。 そこで
治療
までしたらどうかという問題が起こってくるわけでございますけれども、
被爆者
の本格的な診療をするということになりますと、かなり高度の建物、設備も必要といたしますし、また各種の専門医もまたパラメディカルの職員も数多く集めなければならないという非常に現在の情勢としてはむずかしい問題がございます。したがいまして、先ほど来申しておりますように、
広島
、
長崎
の
原爆病院
また大学の付属
病院
、こういったところとのネットワークをよくいたしまして、皆さん方の御
要望
に沿えるようにしていくべきではないかと考えておる次第でございます。
石本茂君(石本茂)
15
○
石本
茂君 まあ、お話の内容の趣旨はよく理解できるわけでございます。と申しますのは、これらの機関は財団であり、しかも、国営化されているものは一つもございませんので、まあ、できるなら、大学の中にあります
研究
対策
ぐらいが国家行政の中で直接にこうあったらよい、あああったらということは指摘されると思うのですが、いま
局長
も申されますように、これは国家の行政的サイドでの指導ということは、とても無理だなというふうに、私ちょっとお話の中から受け取ったわけでございますが、そうではなく、やはり国家行政のサイドから、さっき申されましたような総合的なあり方とか、あるいはまた今後の方向等についての指導が直接にされ得ないものでございましょうか、どうでしょうか。その辺を一点お伺いしておきます。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
16
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 厚生省といたしましても、文部省あるいは科学技術庁、そういった
関係
各省と連絡をとりながら
広島
県、
長崎
県の県や市に対していろいろと行政指導あるいは御助言をすることはできると考えております。 また放影研につきましては、従来ABCCの諮問
委員会
、日本側の諮問
委員会
というものがございましたが、その同じような組織が残ると存じます。その中にやはり厚生省の
代表
、文部省の
代表
、科学技術庁の
代表
等も入っておりますので、そのようなあらゆる機会を通じて強力な御指導をしてまいりたいと考えております。
石本茂君(石本茂)
17
○
石本
茂君 ぜひ、どう言いますか、行政の面につきましても、あるいはまた
運営
等のことにつきましてもひとつよい、すばらしい指導
体制
を
確立
していただきたいことをこの機会にお願いいたします。 それから次にお尋ねしたいと思いますのは、
被爆地域
指定
のことでございますが、黒い雨の降りました
地域
、これが現在ただいま
広島
におきましては全然考慮されておらないということが一つあります。それからもう一つは、何といいますか、二キロ以内ということがやかましく
指定
されておりますために、いわゆる同じ
地域
にありながら、たとえば同じ町内にありながら二キロの地点からちょっと外れますと、もはやそれは
指定
外になってしまいますというような、どう考えても人間感情等の面から割り出しまして不都合だなと思うものがないわけじゃございません。そういう意味で、いま申しました黒い雨の降りました
地域
のこと、それから二キロ以内のことにつきましての、いわゆるいまは
距離指定
になっておりますが、これを、
地域指定
というようなことについてどのようにお考えになっておられますか、今後どうしようとされておりますか、お伺いしたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
18
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず
広島
の黒い雨の降りました
地域
の問題でございますが、
国会
でもたびたびお約束いたしましたように、専門家を集めて先般いろいろ検討した次第でございます。しかしながら、現在の資料をもっていたしましては、特に
放射線
の強い
影響
を受けたとは考えられないのでございます。たとえば昔の学術
会議
の資料等によりますと、天然
放射能
の五十倍の
放射能
が測定されたというような記載がございますけれども、もともと天然自然の
放射能
というのはきわめて低いものでございますから、その五十倍という
放射能
もそれほど高いものではないわけでございます。したがいまして、現在のところこの黒い雨の降りました
地域
を
対象
地域
とすることは十分な根拠がないと考えておりますが、
地元
の方でもいろいろと強い御
要望
がございますので、明年度あたり大規模な基礎
調査
、つまり土壌の
放射能
を測定していくわけでございますけれども、こういったことも余り年数のたたないうちに一遍きちんとしておかなければなりませんので、そういった
放射能
の基礎
調査
をいたしまして、この問題についても
結論
を出してまいりたいと考えておる次第でございます。 次に、十月から新設されます
保健手当
の二キロの線引きの問題でございますけれども、ただいま御指摘ございましたように、一つの町内で二キロで線引きをするということは、その町内の
住民
としてはいろいろ割り切れないものがございましょう。しかしながら、
町名指定
をいたしますと、また境界領域がでこぼこいたしまして、隣の町の
住民
としてはなかなかしっくりしないものを感じるのではなかろうか、そういったむずかしい問題がございます。したがって、この線引きは原則としては二キロメートルできちんと線引きをすべきであると思いますけれども、三十五年にかつて設けました特別
被爆者
の制度のときの線引きの経緯、そういったものもございますし、いろいろ
地元
の
実情
もあろうかと存じますので、
地元
の県や市とよく相談をしてその
方針
を決めてまいりたいと考えております。
石本茂君(石本茂)
19
○
石本
茂君 一応おっしゃることはわかるのでございますが、その黒い雨の
部分
につきましては、いま申されましたように大至急に
調査
等を着手していただきまして、この
地域
に住む方々がやはり安心して自分が受けた
被爆
量というものは問題にならないんだとか、いやそうではなかったとか、とにかくいま非常に不安な
状況
の中におられるわけでございますから、これは大至急に着手していただきたい、そして
結論
を出してほしい。 それから二番目のこの
地域指定
のことですが、二キロという
範囲
につきまして、私は専門家でもありませんし、何が何だかわからないのでございますけれども、果たしてそういうところで線引きされてよいんだろうかという疑問を一つ持ちますのは、われわれ人間というのは、その
放射能
に対する反応というものはやはり個々、個人個人違うと思うのです。非常に遠隔にありまして微量に浴びたとしても、それがやはり大きくあらわれてくる人もおれば、全く二キロどころか、その
爆心地
におりましても今後、現在ただいま余り大きな
障害
が出ていない人もあると思うのです。 そういうふうに考えますと、何か一律
一体
に物を扱うような意識でこういう線引きができるのだろうかというようなことで私は多少自分なりに何となしに納得しかねているわけでございますが、その辺等も十分に勘案の上でこういう線引きがされたと思うのでございますけれども、今後ともひとつその辺のことにつきましても弾力性のある考えの中での条件設定というものをしてほしいというのが私の切なる希望でございます。 次にお願いしたい、お聞きしたいのは
被爆者対策
でございますが、先ほど来聞いておりました
医療
のこと、それからあわせまして
生活
にまつわりますこと等があるわけでございます。この
補償
のあり方でございますが、現在
特別措置法
あるいは
医療
に対する
法律
というふうな二つの法の
体制
の中で考えるだけのことは考えられていると思うのでございますけれども、
住民
の皆様あるいは
被爆者
の皆様からの御
意見
等を聞いておりますと、何かまだもう一つ煮詰まっていないということを感ずるわけでございますが、この
補償
のあり方についてどのようにお考えになっておりますか、これは大臣の御所見もあわせてお伺いしたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
20
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 先般の参考人の御
意見
を伺いましても、一部の方は、現在の
原爆
二法の中でもっと進んだ施策が行えるのじゃないかというような御
意見
がございました。 で、たとえば現在の
原爆
二法で
被爆者
や遺族に対して年金や
弔慰金
を
支給
するということは大変困難な問題でございます。しかし、今回提案しております新設の
保健手当
は、
手当
と申しておりますけれども、
支給
要件に該当する者に対しては終身
支給
するものでございますので、従来の
原爆特別措置法
の運用を大きく前進させました年金的色彩の強いものであると考えております。 また、たとえば財産喪失者に対して何らかの
補償
をしてもらいたいと、しかもそれがいまの
原爆
二法の範疇でできるのではないかというような御
意見
などもございましたけれども、これはたびたび申し上げておりますように、
一般戦災者
との
関係
がございまして、実現は非常に困難であろうと思います。 したがいまして、従来やってまいりましたように各種
手当
の額の引き上げ、
所得制
限等の制限の
緩和
、こういったところを中心にいたしまして今後も制度の改善を図ってまいりたいと考えております。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
21
○国務大臣(田中正巳君) 先生のただいまのお尋ねは、
被爆者対策
としてどういう政策的な基底からこれを出発さすべきものであろうか。言うなれば、
政府
が今日までとってきた
原爆
二法の範疇の中でやっていくか、あるいは
国家補償
の
精神
を基底に置くべきか、ここに先生のお尋ねがあり、また今
国会
における
原爆
二法の審議に当たっての争点はまさしくここにあるものというふうに私は思っているわけであります。心情的に見ますると私は
被爆者
というのは大変お気の毒だというふうに思っております。しかし、これに対してどのような
対策
を今日時点において行うかということについていろいろ考えてまいりますると、やはり従前この
委員会
でも申し上げましたとおり、当時の数多くの、あるいは場合によっては全国民がといってもいいぐらいの
戦争犠牲者
の中にあって、
原爆被爆者
というものについて今日時点でなお救いの手を差し伸べるということについての根拠というものをどこへ救めるかということになりますると、他の
戦争犠牲者
には絶対にないという一点は、まさしくこの人
たち
が健康と肉体にぬぐうべからざる私は傷疾を受け、あるいは不安を持つという一点が象徴的なものだろうというふうに思っているわけであります。かような見地から、私どもは健康そして
身体
といったようなところにその
救済
の根拠を求めておるわけでございまして、当事者から見ますると、こうしたことについてのわれわれの判断ということが、どうもあの
原爆被爆
という実態等についての理解が足りないのではないかというふうなことをいろいろと御批判もあるわけでございます。私自身も実は、いま
厚生大臣
でございますが、
議員
時代に
原爆被爆者対策
をいろいろと手がけた節に、何回かこれについてみずから反間をしてみました。しかし、厚きにこしたことはございませんが、やはり国の施策として、こうした全国民が戦争の犠牲になった、程度の差こそあれ犠牲になったという中にあって、
原爆被爆者
に救いの手を差し伸べるとするならば、この一点から進んでいく以外に切りようがない、他の戦争被害者との間のいわゆる截然と区別する方法がないと、やはりこの点から施策を進め、そしていかなければならぬと、かように思っているわけであります。また、私自身の気持ちとしては、こうした基底の上に立つ政策であるならば、
被爆者
の皆さんの非常にお気の毒な不幸な
状態
に対応して、できるだけこうした二法の系列の中にあって施策を高めていく、厚みをかけていく、向上をさしていくということについては、専心これに努めたいと、かように思っておりますが、それから先に出ることについては今日時点で私自身踏み切れないでおるというのが
現状
でございます。
石本茂君(石本茂)
22
○
石本
茂君 大臣の御心中、私全く同感でございますが、この二つの
法律
でできること、どうしても
要望
にこたえ得ない時点、これはあるわけでございますが、この辺を私ども憂慮し、今日まで苦悩してきているわけでございますけれども、もう戦後三十年
たち
ました。そして
広島
、
長崎
に参りますと、木々の緑は日ごとに濃く大きく茂っていっておりますし、美しい花も咲いておりますけれども、先刻の
報告
書にもありましたし、私も聞きたがっていることの心の中身というのは、それと反対に、日が
たち
年がたつに従いまして、
原爆
放射能
による
被爆
を受けた人々の心の中の苦しみあるいは悲しみというものがそれに反比例して増大していっているわけです。不安はますます大きな不安となってつのってきているわけでございますし、そうした意味で、今日まで実施されてまいりました行政分野の中の二つの
法律
をたてまえとして今後ともなお考えていくのか、それともこの三十年という一つのことを区切りにいたしまして、今日を出発点として、現在ただいま行われております
法律
、あるいは規則のたてまえだけをとるのじゃなくて、そうした過去をこの辺である程度こだわらないで、あるいは踏み切って、そうして
要望
されております同じわれわれ人間として、その苦しみの中にはたたき込まれなかったかもしれないけれども、いまその苦しみと悲しみを持つ人々以上に苦悩しているこの現時点の
立場
から、
法律
の
性格
はどうあろうとも、私はやはり中身をますます深く広く、そして厚みの増した、真に本当にこれでよいのだというところまで行けなくても、まあ、ここまで来ればそれでよいのじゃないかという納得のできる
対策
というものを今日ただいま講じてもらわなければ、また来年また再来年ということで、五十年たっても同じであったということでは相ならない、と申しますのは、戦争の傷跡というものは、終わったときに済んでしまったのじゃなくて、三十年たってなおまだこうした大きな問題が取り残されているということと、大臣いま申されましたように、
広島
、
長崎
は
原子爆弾
という特定なものであった、そのためにそこから派生してくる問題だけを中心にして今日の二つの
法律
はできている、そしてそれによって
措置
してきている。しかしもしこれを
拡大
するとすれば、戦争によって受けたすべての人々あるいは爆撃等を受けたすべての人々、すべての
地域
にも
拡大
していかなければならないんじゃないかという、口ではおっしゃいませんが、その辺の憂慮も大きく出ているように思うわけでございまして、私自身も四苦八苦してこういう質問をしているわけでございますが、現在の二法になじむ中で、どこまで
一体
皆様方が言われている、われわれが考えている
要望
事項を整えていくことができるんでしょうか。くどいようでございますが、この辺をもう一つ私の納得のできるところまで御説明をいただきたいと思います。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
23
○国務大臣(田中正巳君) さっき私が舌足らずで申し上げなかったことについても、先生御そんたくの上で御質問がございました。やはり率直に申しまして、数多くの
戦争犠牲者
、特に空襲による被害者等々というものの中で、
原爆被爆者
について特別に今日考えるという論拠というものは、やはり
放射線
を多量に浴びた、そのことによって今日なお
身体
、健康にいろいろと
障害
を生じ不安を持っているという一点に着目をし、この中から施策を演繹をしていくわけでございます。これを離れますると、いろいろな問題に波及をすることは、先生もいま暗々裏に私にお示しになったところでございます。全部やりゃいいじゃないかと、こういう御
意見
になろうかと思いますが、これについては、やはり政策の選択という問題もあろうと思われますし、そうした中にあっていろいろと
政府
側で苦慮をいたしましたその表徴的なものが今回御提案申し上げまして審議を願っている
保健手当
の創設であろうと思われるわけであります。これは、現在健康上別段どうということはないが、
放射能
を多量に浴びたということで、今後やはり健康を損なうおそれがある、そして心配があるといったような方々に対し給付をいたすわけでありますし、しかもいまこの
対象者
についての御議論もありましたが、一定の方については終身これを差し上げるという仕組みにいたしておるわけでございまして、これはやはりこうした
放射能
を多量に浴びたということを縁由といたしまして、この方々に終身
手当
を差し上げるといったような仕組みになっておるわけでございまして、ここにわれわれが実は苦労した一点があるわけでございまして、こうした施策を打ち出したということについて、かねがねの当事者の間の御希望をわれわれの言っている観点からどこまで伸ばせるだろうかということで、いろいろ考案したその結果であるわけであります。かようなわけで、私どもは今後ともやはり
原爆被爆者対策
というものについては、
放射能
を多量に浴び健康、
身体
について
障害
がある、ないしはそのおそれがある、心配があるといったような点に着目をし、この一点から施策を引き出していき、そしてこれについてできるだけの向上を図っていくという基本の
方針
で今後とも進みたいと、かように今日私どもは考えているわけであります。
石本茂君(石本茂)
24
○
石本
茂君 大変失礼なくどいことになるわけですが、現在ただいま問題になっております
援護法
の
制定
ということをめぐってでございますが、現在の二つの
法律
というのは、
社会保障
の見地から成り立っているものである、そこで
国家補償
の
精神
に基づくものであるべきであるというのが
援護法
の立法化を云々するわけでございますが、私がいま申しておりますように、
現行法
は
社会保障
の見地からなっているが、
国家補償
の
精神
に基づくものでないとこれ言い切れない面もございますが、そのようなことに対しまして大臣どのようにお考えになっておりますのか。 それからもう一つあわせまして、先年来私ども非常につらい思いをしたのでございますが、この二法だけによるのではなく、第三の道を検討していくということを盛んに
関係
の皆様に申し述べてきたわけでございますが、この第三の道に対する
対策
といいますか、どのような方向でどういうものをいま検討されておりますのか、もしこの機会にお聞かせいただければ聞かせていただきたい、これは
局長
さんでもどっちでも結構です。お願いいたします。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
25
○国務大臣(田中正巳君)
原爆被爆者対策
、今日の二法というものが
社会保障
の思想に立脚しておるということをしばしば当
委員会
でも説明をしているようでございます。しかし私はこの点につきましては
一般
の
社会保障
とはいささか類を異にするものであるというふうに考えておるわけであります。強いて言うならば特別な
社会保障
であろうというふうに思われるわけでございまして、かようなわけで
一般
の
社会保障
でございますれば、一定の特殊な事情による方だけにこれを限定するということはいささか問題があるわけでございまして、かようなわけで
原爆被爆
という特殊な
原因
に伴って一定の
補償
をいたす、そうした特別な
社会保障
であるというふうに思うわけでありまして、
一般
的な
社会保障
の範疇の中ですべてを考えるということはいかがかと、こういうふうに思うわけでありまして、斎藤元
厚生大臣
の質疑応答の速記を読んでみましても、斎藤君も実はそのことについて気がついておったような答弁をいたしていることを私は知りまして、なるほどこの問題についていろいろ掘り下げ、苦労するとそういう考えが出てくるかなと、かように思っておるわけでございますが、そうした考え方でこの問題の
性格
づけというものを考えたらどうであろうかというふうに思っているわけであります。 財産の損失に対する補てんの問題につきましては、率直に申して私どもは余り積極的にこれと取り組む所存は今日のところございません。なぜかなれば、財産のいわゆる喪失あるいは損害等々に対する
対策
というものは、これをすべてにこれについて手を染めるということになりますれば、およそ
戦争犠牲者
の中にこれが一番多いわけでございまして、したがいまして、そうした方々についての施策というものも考えていかにゃならぬと、また大変恐縮でございますが、財産の損失という問題については戦後三十年の間に、人によっては違いがございますが、ある程度のリカバリーのきいている方も数多くおられるわけでありまして、普通のいわゆる空襲によるところの焼夷弾等によって家あるいは財産をなくした人あるいは引き揚げてまいったような方々で、一切の一生の
成果
というものを現地に置いてまいった方々、こうした方々もお気の毒ではございますが、今日時点におきましてはその後御本人の努力等によりましてある程度のリカバリーがきいている人がかなりおるわけでございまして、今日時点においてこの財産の問題については私どもとしては御勘弁を願いたい。ぬぐうべからざるものはやはり健康と
身体
の問題であると、これはもう一生の間どうしてもリカバリーができないのでありますから、したがって、その観点から進まなければらちがなくなるといったような判断のもとに、私どもとしては前々から申しておったように
原爆被爆者
はその点から出発をいたし、大変お気の毒ではございますが財産補てんという面については割愛をさせていただくというふうな基本の政策的な判断をとらざるを得ないというのが私どもの今日この問題に対処する基底にある物の考え方でございます。
石本茂君(石本茂)
26
○
石本
茂君 大臣のお考えわかりました。と申しますのは、
一般
的な
社会保障
ではない、特定な条件を持つ
社会保障
であるということ。 それでもう一つ大変気違いじみたばかげたことを言うかわかりませんが、いま申されております財産の
補償
についてはこれは波がございますので、これは考えられないといたしましても、どうして
国家補償
に切りかえることがそんなにむずかしいのかということ。 それからもう一つは遺族に対します
補償
でございますが、この辺も含めまして、一言で結構でございますから、その辺を承りまして私の質問を終わりたいと思うわけでございますが、何遍も申しておりますように、さっきから言っておりますように、そういう特定な
社会保障
政策も結構でございますが、やはり三十年という長い月日の中の問題等を総合されまして、こだわることなく、この年この日を境にして、そして今後この法的な二法の扱い方を含めまして、将来を展望しながらどう踏み切っていくかということは、これは日本国内国民だけのいま見ておるところじゃございませんで、国際的に特殊な条件を持つ
原爆被爆
症者に対するあるいはそれをめぐっております問題解決のために日本はどういう方法をとるであろうかということが大変着目されておるわけでございます。私ども外国に参りまして全く
関係
のないところに行っておりましても、女性同士の集まりでありますからかもわかりませんが、日本は
原爆
を受けた国である。そこでおまえ
たち
女性は何を考えているのかというようなことをしばしば聞かれまして、こっちが反対にぎょっとするような場面を経験しているわけでございますが、その辺を承りまして私の質問は終わりたいと思うわけでございます。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
27
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 従来からたびたび申し上げておりますように、やはり
一般戦災者
との均衡の問題がございまして、どうしても
国家補償
の
精神
に基づく制度とはすることができないのでございます。しかしながら、元斎藤大臣も答弁されましたように
保健手当
のような年金的な制度が生まれてくることによりまして、すでに
原爆特別措置法
も
社会保障
と
国家補償
の中間の第三の道を歩み始めたものと考えております。ところで、
国家補償
の
精神
に基づく制度である場合には当然遺族に対する
補償
といたしまして
弔慰金
とか
遺族年金
の問題が出てくると思われますが、これが一番大きな問題でございまして、現在の制度は
国家補償
の
精神
に基づくものではなく、多量の
放射能
を浴びた生存
被爆者
に対する特別な
社会保障
制度でございますので、今後も遺族に対して
弔慰金
とか年金の
支給
等を行うということは考えられないのでございますが、先ほどもお答えいたしましたように生存者に対する
手当等
につきましては今後も大幅に改善をし、制限もできるだけ撤廃いたしまして、御
要望
に沿えるような制度に次第に持ってまいりたいと考えておる次第でございます。
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
28
○
委員長
(
村田秀三
君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。 午前十一時五十分休憩 —
——
——
・—
——
——
午後一時三十八分開会
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
29
○
委員長
(
村田秀三
君) ただいまから
社会労働委員会
を再開いたします。 午前に引き続き、
原子爆弾被爆者等援護法案
及び
原子爆弾被爆者
に対する
特別措置
に関する
法律
の一部を改正する
法律案
を議題とし、質疑を続行いたします。
浜本万三君(浜本万三)
30
○
浜本万三
君 ことしは
被爆
いたしましてからちょうど三十年になるわけであります。この三十年の間、
被爆者
の皆さんは、病苦と貧困、そして家族崩壊と申しましょうか、家庭崩壊と申しましょうか、あるいは世帯崩壊と申しましょうか、そういう中で孤独と、三重苦にさいなまれて今日まで生き続けてこられたと思います。これに対しまして
政府
は、
昭和
三十二年には
医療法
、四十三年には
特別措置法
を
制定
いたしまして、毎年若干の前進をさせながら
対策
を講じられてきたところでございます。しかし、
政府
の政策を見ますと、
被爆者
の皆さんの要求にとっては決して満足をすべきものではなかったというふうに思います。かつて、
被爆
三十年を今日迎えまして、
被爆者
とその遺族の方
たち
は、国家の
補償
による
援護法
の
制定
を強く要求しておるというところでございます。去る六月九日、十日の現地
調査
、さらには十七日の参考人の事情聴取などから考えましても、明確に
被爆者
の皆さんのお気持ちが判断できるわけであります。 私は本日、そういう事情の中で
政府
に対しまして、野党四党共同提案の
援護法
の
制定
を強く
要望
しながら、
政府
の
改正案
に対する質問と、野党提案の
援護法
に対する
政府
の態度を伺いたいというふうに思っておる次第でございます。 まず最初に、
政府
の
改正案
につきまして、具体的に次の点をお尋ねしてみたいと思うわけです。最初お尋ねしたいと思いますのは、いわゆる
認定制度
の問題でございます。
昭和
三十二年に
医療法
が
制定
をされまして、
昭和
五十年度の予想による
被爆
手帳の
交付
者が相当ふえておることは間違いございません。
政府
の資料を見ましても、
被爆
手帳の
交付
者の数が三十四万九千四人になっておりますが、その中で
特別手当
を受給する方々が非常に少ないというふうに思うわけであります。これは
認定
患者
の数が
政府
の本年度
予算
を見ましても、わずかに四千三百六十五名でございまして、全体の手帳
交付
数から言えば一・二%にしか当たらないというふうに思います。これは
認定制度
そのものに問題があるんじゃないかというふうに考えられるところでございます。そこでまず、最近における
認定状況
につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
31
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
認定制度
は、
原爆医療法
が始まりました三十二年から実施されておるわけでございますが、現在まで
申請者
の約八二%が
認定
患者
と認められております。しかしながら、
被爆
後三十周年
たち
ました今日においては、いろいろ事実
関係
を証明することも困難になっておりますので、最近においては漸次証拠書類をさらに追加していただくように差し戻しておるケースがふえてまいっております。
浜本万三君(浜本万三)
32
○
浜本万三
君 最近における
認定状況
が八二%というふうにいま伺ったんでございますが、いずれにいたしましても非常に悪いというふうに思います。ことに、九日、十日
広島
に
調査
に参りましたときに、
広島
県庁の説明によりますと、
広島
市で六四%、
広島
県下で四四%という非常な低率が
報告
をされておるわけでございます。したがって、
認定制度
そのものに何かやっぱり欠陥がないだろうかというのが、
被爆者
の方々の大きな不満とするところでございます。したがって、まず、四十九年度で結構ですが、
申請者
の数と、それから
認定
をした数と却下した数と、却下の理由についてさらに伺いたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
33
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 四十九年度は、
申請
が二百三十四件ございまして、そのうち
認定
したものは百二十二件、五二%でございます。で、却下は六十九件、三〇%でございます。また、先ほど申し上げたようなさらにいろいろな資料の追加等の照会をいたしましたものが、四十三件で、一八%でございます。 なお、却下いたしました六十九件の主な内容でございますが、いろいろな疾患が
申請
されておるわけでございますけれども、従来の経験に照らしまして、
原爆
の
放射線
障害
に直接起因するものとは認めがたいものが大
部分
でございまして、後で御質問が出ようかと思いますけれども、確かに
放射線
の
障害
は考えられるけれども、現在はまだ手術の時期ではないといった白内障のようなものも若干あろうかと考えております。
浜本万三君(浜本万三)
34
○
浜本万三
君
認定制度
の問題につきまして、私がちょっと疑問に思います二つの点から申し上げまして、御答弁をいただきたいと思うんですが、まず第一は
認定
をする機関であります
原爆
医療
審議会の運用の問題でございます。何かうわさによりますと、二カ月に一回ぐらい開催をされまして、相当の数のものをきわめて短時間に
処理
しておる。そうしてその
審査
の経過もつまびらかになっていないし、却下された
被爆者
の皆さんから言えば、
認定
しがたいというような簡単な
結論
しかわからない。そういうので、
医療
審議会の
運営
について相当のやっぱり不満があるように思うわけでございます。したがって、
医療
審議会の
運営
がどうなっておるかということと同時に、私はこの際厚生省の方にお願いをいたしたいと思いますのは、
被爆者
の
立場
に立って審議会の
運営
をしていただきたい。そうして秘密主義はやめて、できれば資料の公開をしてほしいのでございますが、これは個人のまあ秘密に属することもあるでしょうから、要するに
申請者
には、その
審査
の経過、結果というものがつまびらかになるように知らしてほしい、そういう
運営
をやっていただきたいという気持ちがあるんでございますが、これについてはいかがでございましょう。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
35
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 確かに
原爆
医療
審議会の
認定
を取り扱っております
医療
部会は、年に四、五回しか開かれておりません。したがいまして、一回の
審査
の件数はかなりの数になるわけでございますけれども、そういった
審査
にかける前に、事前の予備
審査
をしておるわけでございます。そういう
関係
で、問題となるようなケースについては、かなりの時間をかけて御審議をいただいておる次第でございます。 なお、この審議、
審査
の内容については、もちろん個人のプライバシーの問題でございますので、公表できないわけでございますけれども、却下したような場合には、却下の理由を一々付しておりますし、またさらにそれについて御質問でもあれば、お答えはするという形をとってきた次第でございます。
浜本万三君(浜本万三)
36
○
浜本万三
君 私が申しました三つの提案につきましては、どのような御見解なんですか、わかりませんか、わかりましたか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
37
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) ただいま申し落としましたが、この部会の中には
地元
の
代表
の専門家もかなり入っていらっしゃるわけでございますので、
地元
の御意向とか、あるいは
被爆者
の御意向もかなりよく反映されるように構成されておると考えております。 また、先生の御
要望
でございますが、これについてはただいまお答えしたつもりでございますけれども、個々のケースについて、御本人などから具体的な御照会があれば、その理由についてさらに詳しくお知らせすることについてはやぶさかではございません。
浜本万三君(浜本万三)
38
○
浜本万三
君 いずれにいたしましても、せっかく
被爆者
の方々が苦労をされておる中で
申請
をすることでございますから、十分その気持ちを体して、結果がよくわかるように
報告
をしていただくように、
要望
しておきたいと思います。 次は、
認定制度
そのものについてでございますが、最近、私ども、
広島
の例を申し上げては恐縮なんでございますが、三つほどの例を申し上げますと、どうもこの
認定制度
が制度としてふさわしくないんではないかという気持ちがしてなりません。たとえば、最近の例で申しますと、呉市の三島さんという六十三歳になる方なんでございますが、その方は、
昭和
三十六年に手帳の
交付
を受けましたが、
認定制度
があることを知らない、そして四十八年に
病気
になりまして、呉の
国立
病院
に入院をいたしました。そして、この
認定
の
申請
をいたしましたが、三カ月後に却下をされ、ことし、さらに五月に
申請
をいたしましたが、再び却下をされておるわけでございます。しかし、実際は
被爆者
であって、貧血、腎臓病、食道
がん
などを併発をしておりまして、非常に困っておるという例でございます。 また、石田さん、先ほどおっしゃいました白内症の場合にも、これもまあ同様でございまして、現に
原爆
の困果
関係
がはっきりあるということでございますが、
治療
のときに再
申請
しなさいというふうなことになっておりまして、実際は目が、回復するかどうかわからない、目がつぶれるかもわからないという危険な手術をするときでないと
医療法
の恩典を受けることができない、そういう例がございます。 さらにまた、
認定制度
を改めるべきではないかというもう一つの理由といたしましては、この間、
広島
に参りまして
原爆養護ホーム
というの
視察
をさしていただきましたが、二百四十九名のうち、わずかに
認定
患者
が十名程度である、しかも、半分以上の方は
医療
給付を受けなきゃならぬ、こういう事情等々から考えますと、
認定制度
そのものでは、
現行
認定制度
では、
被爆者
の方々を
救済
することができないんじゃないかというふうに思うわけです。もともと私の考え方を申し上げますならば、
原爆症
というのは、先ほど
局長
から午前中お話しがございましたように、まだ、現在の
医療
技術の中では、完全に解明されていないと、そういう事情でございますから、
治療
しながら
研究
をしていくと、また、
研究
をしながら
治療
していかざるを得ない
実情
にあるのではないかというふうに思うわけでございます。そういう点から考えますと、
現行
医療法
というものは
実情
に合わないという気持ちがしてならないわけであります。そこで、この
認定制度
を撤廃されるか、もしくは大幅に
緩和
する必要があるというふうに考えますが、この点について、特に、これは
局長
だけじゃなしに、大臣からも、基本的な問題に関することでございますから、御答弁をいただきたいというふうに思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
39
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
原爆
の
認定
につきましては、先ほども申し上げましたように、非常にむずかしい問題がございます。したがいまして、個々のケースについて、当時の
状況
をよく判断し、現在の
病気
の
状態
と比べ合わせまして
認定
していくわけでございますけれども、現在のところはっきりしておりますものは、先般も市丸参考人がおっしゃいましたように、白血病その他の悪性腫瘍、それから水晶体の白内症、それから
放射線
による皮膚の
障害
、そういったようなものでございまして、その他の疾患については、まだ一つ一つのケースといたしましても、また、集団の統計的観察といたしましても、果たして
原爆
の
放射線
によってそのような疾病が起こってくるのか、あるいはそういった疾病が特に悪くなってくるのかというようなことがわからない
状況
でございます。そういったむずかしい問題をはらんでおるので、いろいろと、
先生方
からござんになれば
審査
が厳し過ぎるのではないかというような御批判もあろうかと思うのでございますけれども、純粋に医学的に考えますと、やはり現在の
認定
というのは、かなり適切に行われておると信じております。また、現在の制度から見ましても、特に
原爆症
の
認定
患者
につきましては、その特殊な健康
状態
にかんがみまして、
手当
の額も高くなっておりますし、また、
医療
手当
というたようなものも、ほかの方々とは違って
支給
されることになっております。したがいまして、悪平等、不公平を防ぐというような意味からは、どうしても現在のような
認定制度
が必要でございます。ただ、この制度の運用につきましては、ただいま先生からも御指摘がございましたけれども、今後の医学の進歩あるいは
被爆者
が次第に年をとってまいっておりますので、それによる疾病構造の変化、そういったものも考えながら、医学的にも漸次制度の改善を図ってまいらなければならないと思いますし、また、提出書類の
簡素化
等、事務的な面についても、今後改善は図っていかなければならないと考えておりますけれども、
認定制度
をやめてしまったり、あるいは大幅にゆるめたりという考えはございません。
浜本万三君(浜本万三)
40
○
浜本万三
君 大臣の方からひとつ、いまの点、
——
もうちょっとやっぱり
被爆者
の
立場
に立って考えてもらいたいと思うんですが。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
41
○国務大臣(田中正巳君) この
原爆
二法の制度は、あくまでもやはり
原子爆弾被爆者
、そうして
放射能
を多量に浴び、そうしてそのことによる直接のいわゆる
認定
疾患というものをつかまえまして、これに第一に直接手厚い援護の手を差し伸べる、そうしてその
周辺
におる者についても、なおいろいろな施策を施すという仕組みになっているわけでございまして、こうした仕組みをとる限りにおいて、私は
認定制度
というものがなしでは済まされないというふうに思っております。 ただ、
認定
患者
の場合と、その他の方々との場合には、
法律
上の、制度上のいろいろな
措置
というものがかなり違っておりますから、やはり御本人
たち
では
認定
を受けたい、そうしてまた御自身も、私は
認定
の資格があるんだというふうにお思いになっている、それが医学的な判断との間に乖離を生ずる、そこに一つの問題があろうというふうに、私は素人でございますが、政治家としてはわかるような気がいたすわけでございますが、先ほど申したような、基本的なこの法制度の仕組み上、
認定制度
というものを、これをやめてしまう、あるいはまた、なしに等しいような運用をするということは私はできないだろうというふうに思います。 ただ、一点、
認定
を厳格にやるということが、これがこの種の制度のための
予算
措置
を縮めるなどという観点からやったのでは、私は問題だと思いますが、さようなことは絶対に私どもはしておらぬと思いますし、今後ともいたさないという所存でございます。
浜本万三君(浜本万三)
42
○
浜本万三
君
認定
の問題については、要するに温情のあると申しましょうか、幅のある運用をしていただくことを重ねて
要望
いたしまして、次の質問に入りたいと思います。
認定
と申しますと、
健康管理手当
は知事の
認定
ということになっておると思うんでございますが、
健康管理手当
の方も、
特別手当
と同様にその
対象者
が非常に少ないということでございます。厚生省の資料を見ましても、約八万人で二二%前後であろうというふうに考えられるわけでございます。私は、この
特別手当
と
健康管理手当
の
性格
と差異というものがまだよくのみ込めないわけなのでございます。したがって、その
性格
とどこが違うのかということをまずお尋ねをいたしたいと思います。 それからもう一つは、
特別手当
と
健康管理手当
を比較して見ますと、確かにこの疾病の程度によって
支給
の額が違うということは、これは制度上よくわかるのですが、ところが
所得制
限でありますとか、
生活保護
法の
収入認定
、あるいは今度新しく新設されますところの
保健手当
の併給になってまいりますと、またその差異が出ておるわけであります。これはまあ多少不均衡ではないかというふうに考えますが、その点についてはどのようなお考えでしょうか。 もう一つ、ついでにお尋ねしますが、私は同じような
性格
ならば、これは一本にしたらどうかという考え方を持っておるわけです。それについて厚生省のお考えを伺いたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
43
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
特別手当
と
健康管理手当
の相違でございますけれども、まず
特別手当
は
原爆
の
放射線
に直接起因すると思われる疾病に対しまして
交付
される
手当
でございますけれども、
健康管理手当
の方は
原爆
放射線
の
影響
によって起こったかもしれないという疾病につきまして現在では造血機能
障害
とか、肝臓機能
障害
とか十種類の疾病を
指定
いたしまして、
手当
を
支給
しておる次第でございます。ここにまず医学的な相違がございます。また、
特別手当
につきましては、当該
認定
患者
が
医療機関
の交通費を支払ったり、あるいは保健上のいろんな
手当
をしたり、場合によっては保健薬等も購入して飲んだり、そういった費用が特に必要であろうというような考えから差し上げておるものでございまして、本年は十月から二万四千円にしようとしておるものでございます。また、
健康管理手当
の額は
特別手当
の額の半分でございまして、やはり本年十月からは一万二千円を
支給
しようとしておるのでございますけれども、これはそういった十種類の健康
障害
を持っていらっしゃる
被爆者
が、療養
生活
にいろいろ役立てるために支払う
手当
でございまして、両方の疾病の相違から額も半分にしておるものでございます。なお、
保健手当
につきましては、現在
認定
患者
は
特別手当
をおもらいになっています。また十種類の疾病をお持ちの方は
健康管理手当
をおもらいになっていらっしゃるわけでございますが、そういった
手当
をもらっていらっしゃらない方々で、いま
病気
がないような場合でも二キロ以内というような場所で非常に大量の
放射線
を浴びたという方々はいつ健康
障害
が起こってくるかもしれないという不安があるわけでございます。したがって、そういう方々に本年十月から月六千円の
保健手当
を差し上げることにしたわけでございますけれども、この方方は現に疾病がないといったような種類の方々でございますので、
特別手当
、
健康管理手当
の額と比較勘案いたしまして、六千円という金額にしたものでございます。なお、
生活保護
法との調整の問題につきましては社会
局長
が参っておりますので、社会
局長
からお答えいたします。
政府委員(翁久次郎君)(翁久次郎)
44
○
政府委員
(翁久次郎君) お尋ねの各種の
手当
と
生活保護
法上の取り扱いにつきましてお答え申し上げます。
生活保護
は御承知のとおり、最低
生活
を維持、保障するためにあるわけでございまして、それと
原爆被爆者援護法
に基づきます各種
手当
との関連につきましては、ただいま公衆衛生
局長
から答弁いたしましたように、
医療
手当
あるいは
医療
管理
手当
、葬祭料、
介護
手当
、こういったそれぞれ特殊の目的のために必要な
手当
類につきましては、最低
生活
の保障とは意味が違うものでございますので、これは
収入認定
をいたさない。そのまま
認定
除外として取り扱いをいたすということにしておりまして、
特別手当
につきましてはこの
特別手当
の
性格
が
被爆
を受けて疾患を持っておられる方々の
生活
上の援護ということの意味があることに着目いたしまして、これを
収入認定
をいたしておるのでございます。ただ御指摘がございましたように、この
特別手当
をもらっておられる方々はやはり疾病に基づきまして、それぞれ相当な配慮が必要な方々でございます。たとえて申し上げるならば、保健的な医薬品の購入であるとか、あるいはその他通院にかかる費用が特別に必要であるというような点がございますので、これを加算という
措置
をとりまして、現在七千五百円の加算をいたしておると、こういうようにしておるわけでございまして、それぞれの
手当
の
性格
によりまして
生活保護
法上の取り扱いを異にしておると、こういうことでございます。
浜本万三君(浜本万三)
45
○
浜本万三
君 いまの
生活保護
の
収入認定
の問題にちょっと入りましてお尋ねするのですが、これは大臣、実は
広島
でこの間聞きましたら、わずかに三十一名この制度にひっかかるのだそうです、三十一名。ですから全国的な数を考えましてもきわめてその数は少ないと思われます。しかも先ほど午前中の
石本
先生への答弁で、
局長
はこれは普通の
社会保障
の制度ではないのだ、
社会保障
の制度の
精神
は取り入れておっても特別なのだということを言っておるんですから、したがって、特別な制度ならば、この程度の問題は、特別の制度の中で拾い上げていくということがあっていいのじゃないかというふうに思うのです。大臣、その点思い切ってひとつ答弁をしてください。
政府委員(翁久次郎君)(翁久次郎)
46
○
政府委員
(翁久次郎君) 確かにこれだけに着目いたしますと、先生の御指摘がありましたように、ある程度配慮をすべきではないかというお考えのあることは十分わかるわけでございます。ただ、
生活保護
法を所管しておりますものとして申し上げさしていただきますならば、この種の制度につきまして、他方との調整ということにかんがみますと、たとえて申し上げますと公害による被害を受けた方についての
手当
につきましても、やはり
医療
手当
、
介護
手当
、それからこの
被爆者
援護法
に基づく
特別手当
に相当する
手当
があるわけでございます。そういった各法との調整上、こういった考え方をとることが、法の運用上しかるべきであるという判断で行っておるわけでございます。ただいま御指摘がございました
特別手当
を受けておられる方々につきまして、全国的な数で申し上げますと、現在のところ百七十五名の方がこの
対象
になっているわけでございます。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
47
○国務大臣(田中正巳君) 先生おっしゃるこの
収入認定
の問題でございますが、私率直に申しまして、この制度でやや今後は私どもが努力をしなければならぬ当面の問題としては、こういうところにあるんじゃないかというふうに就任以来考えておりました。ただ、この
手当
の
性格
というものをどう考えるかというところに答えが出てくるところがあるわけでございまして、考えようだというふうに思っておるわけでございますが、今日までの時点のところ二分の一というルールをずっと通してきているわけでございまして、これについてはいろいろ
関係
者の間にも諸説のあるところでございますが、私としては、今後この
収入認定
の問題については、意欲的に努力をいたしたいという所存であることだけは申し述べておきますが、ただいますぐにこれができるかどうかということについては、いろいろの
関係
筋もございますので、直ちに私がここでやると申し上げませんが、今後私としては、これの
緩和
に努力をいたしたいというふうに思っております。
浜本万三君(浜本万三)
48
○
浜本万三
君 積極的に努力をするような大臣の御答弁をいただいたと思ったんですが、直ちにはできないということで、また後戻りをしたようなんでまことに残念なんですが、とにかく特殊な
社会保障
制度なんだという
性格
づけをきちっとされておるわけでございますから、特殊だというそのおっしゃり方で、他の横の並びにつきましては、私は話がつくのではないかという気持ちを持っております。ですから、いま直ちにではないというふうにおっしゃいましたけれども、できればひとつ直ちに前向きの答えを出していただくように
要望
をいたしたいと思います。 それから先ほど
保健手当
の問題がお答えになりましたので、
保健手当
の問題について、お尋ねをしてみたいと思います。先ほど
保健手当
の
性格
につきましては、お答えがございました。しかし、
性格
についてお答えをいただいたんですけれども、どうもその
性格
づけについて
実情
から私は納得できない点がございます。そこで、まずお尋ねをいたしたいのは、二キロに線引きをされておりますが、その線引きをされた理由をまず伺いたいと思うんです。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
49
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 日本や諸外国の
放射線
防護に関する
法律
が準拠いたしております一九五八年の国際
放射線
防護
委員会
の勧告によりますと、一生のうちでただ一度被曝する場合の最大許容線量が二十五レムとなっております。また、米国
放射線
防護測定
委員会
の一九七一年の勧告によりますと、原子炉の事故等の緊急時の場合に、その事故を直すために当該区域に立ち入る場合の最大線量をやはり二十五レム以下としておるわけでございます。で、こういった勧告の基準は、要するに従来医学的、臨床的にただ一回の照射では二十五レム以上の場合しか
障害
が認められていないというところによるものでございます。したがって、われわれは
爆心地
から近距離で二十五レム以上
被爆
した方々を
保健手当
の
対象
にするという基本
方針
をつくりまして、線引きをしたのでございますけれども、去る
昭和
三十五年に
原爆医療法
で特別
被爆者
の制度を創設いたしましたときも、
爆心地
から二キロ以内となっております
関係
から事務的な
処理
に資する上からも二キロという線引きが便利であるということで、そのような基準にしたわけでございます。
浜本万三君(浜本万三)
50
○
浜本万三
君 どうも
局長
のお話を伺っておりますと、非常に便宜的だというふうに私は思うんです。 まず第一に、国際基準の問題についてお話がございましたが、厚生省の資料は、その説明では、一九五八年の国際基準をその根拠にされておるわけでございますが、この点はすでに十七日の参考人の
意見聴取
の中でも、市川先生の方から明確にお話がございましたように、一九六五年には大幅にその基準も改善されておるわけでございます。ことに
局長
は、職業人の基準を二十五レムというふうにおっしゃいましたけれども、すでに
一般
の職業人ですら年五レム、それから
一般
の方
たち
はアメリカ等におきましては、すでに〇・七レムというふうにこの最大許容量と申しますか、非常に少なくなっておるわけでございます。そういう国際的な情勢にあるにもかかわらず、依然として五八年度の国際基準をもとにいたしまして、二キロの線引きをされたことは不合理ではないかというふうに私は思うわけでございます。ことにこの一九六五年のこの国際的な基準の勧告の中で、たとえばガンマ線とそれから中性子の
関係
でございますが、生物効果と申しましょうか、それも厚生省の方では一対五の割合にされておるようでございますが、すでにこの十倍であるというふうなお話も市川先生から伺っておるわけでございます。そういたしますと、国際基準そのものが大幅に下がっておるということが第一に言えるのではないかというふうに思います。 それからもう一つ、先ほど、従来の慣習で特別
被爆者
の距離が二キロであるから、したがって二キロにしたんだというふうなお話がございますが、三十七年には、つまり三十二年にこの
医療法
が
制定
されまして、三十七年に二キロから三キロにその
範囲
が
拡大
をされておるという経過もあるわけなんでございます。そういう点から考えますと、二キロに線引きをされるということは不合理ではないかということが考えられますが、いかがでしょうか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
51
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず私どもは、従来の医学的な経験から、
一体
何レム以上浴びた場合に
障害
が起こってくるのかというところを出発点にしたわけでございます。先般市川参考人がおっしゃいました、一九六五年の国際
放射線
防護
委員会
の、一回十レム、一生で二十五レムといった基準は、これは計画的に特別被曝をする場合の基準でございます。普通の平常時の計画被曝の基準は、先ほど先生がおっしゃいましたように、年五レム、十三週で三レム、週で〇・三レム、こうなるわけでございますが、
放射線
作業の種類によってはどうしても普通の作業として時には一回十レムぐらいまで被曝する場合がある。したがって、そういうふうな計画的な特別被曝の場合には一回の線量を十レム以下にしよう、しかしその場合、一生の線量は二十五レムにしようという基準でございまして、先ほど申し上げました一九五八年の国際
放射線
防護
委員会
の勧告、それから一九七一年の米国
放射線
防護測定
委員会
の勧告、こういったものはいわゆる緊急時の基準でございまして、やむを得ず原子炉の保安、防火等のために立ち入る場合も二十五レム以下にしなさい、しかしその場合も、もしもその中に職員がおりまして人命救助をしなければならぬ場合は百レムだということになっておるわけでございますけれども、基本線といたしましては、私どもは
一体
いま人間は何レム以上一回浴びれば
障害
が起こり始めるのかというところを出発点にしておるわけでございます。これは、先ほども申し上げましたように、現に
認定
患者
については
特別手当
が出ておる。また十種類の
障害
のある方については
健康管理手当
が出ておる。こういった二つの
手当
をもらっていない方々のうちで、今後
障害
が起こってくるかもしれない、従来の医学的な経験から。それを予防するために栄養とか休養とかレクリエーションをとっていただきたい、そのための
手当
を月六千円差し上げようという制度でございますので、私どもは二十五レムでよろしいと信じております。 なお、中性子の換算係数でございますけれども、これはもちろん中性子のエネルギーによって変わってくるわけでございまして、核爆発のようにだんだんと規模も大きくなればエネルギーも増してくるわけでございますから、換算係数も大きくなってまいります。まあたとえば、サイクロトロンのようなスイッチの切れる
放射線
発生装置の場合でも、だんだんとその規模が大きくなってきておるわけでございます。したがいまして、最近の六五年の勧告では、中性子の換算係数を八ないし一〇と国際
放射線
防護
委員会
は勧告しておるのでございますけれども、私どものとりました五倍という係数は、日本の
広島
や
長崎
の
原爆
医療
研究所
あるいは
原爆
医療
研究
施設
、こういったところを初めとして、ABCCや予研が従来の知見をもとにして、
広島
と
長崎
の人や物に対する
障害
の程度をうまく比較して説明するためには、中性子の換算係数を五倍にするのがいいという一つの定説がございますので、それをとったものでございます。なお、この係数をたとえ五倍から八倍あるいは十倍にいたしましても、もともと当時の
原子爆弾
はいまのものに比べれば非常に規模の小さなものでございました。したがって、全体的な
放射線
の総量には余り大きな
影響
は与えないわけでございます。
浜本万三君(浜本万三)
52
○
浜本万三
君
委員長
、これちょっとお願いしたいんですけれども、いずれにしましても国際防護基準は低下しておるというのが私の見解でございます。したがって、この点はもう一回理事会でも
調査
をしていただきまして、問題点を明らかにし、
政府
の考え方の間違っておる点があれば修正をしてもらうようにお願いをしたいというふうに思います。 それからもう一つお尋ねしたいのは、先ほどのお話では、少量
被爆者
には
影響
がないんだというように受け取れるお話があったんでございますが、これも十七日の市川先生のお話によりますと、
放射能
の場合には直線的に
影響
があって、少量
被爆者
でも
影響
があるんだ、まあ俗に言うしきい値と申しましょうか、そういうものがないんだという御説明を伺ったというふうに思います。確かにその説を伺いまして、私は
広島
における
健康管理手当
の
支給
状態
の中で、直爆と言われる二キロ以内の方が何人おるだろうかということを調べてみますと、わずかに七千八百六十名、
広島
市では
健康管理手当
をもらっているのが一万八千七百四十八名おるんですが、そのうちで七千八百六十名ということになっていますから、つまり、直爆者はわずかに四一・九%ということになるわけでございます。つまりこれは、少量
被爆者
でも要するに
影響
があったんだという左証ではないかと、証拠ではないかというふうに私は思うわけなんでございます。つまり、この
放射能
の
影響
というものは、微量な
放射能
を受けても人体には
影響
があるんだということを、
健康管理手当
の
支給状況
を見ても言えるんではないかというふうに思われますが、その点いかがでしょうか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
53
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 微量な
放射線
の
影響
につきまして、先般市川参考人が強調をなさいましたのは遺伝に対する
影響
でございます。ところが、
放射線
の遺伝的
影響
につきましては、ショウジョウバエだとかあるいはマウスだとか、あるいは先般市川参考人がお話しになりましたムラサキツユクサとか、まあ、そういった実験遺伝学的な動植物によるデータは出ておるわけでございますけれども、厳密に申しますと、まだ八レム以下の線量で本当に遺伝的な
影響
が出るかどうかは実証されておりません。それだけショウジョウバエ等を使った実験も、膨大なハエを使ってやらなければならないという、きわめてむずかしい実験だということが言えると思うのでございます。そこで、人間の場合は
一体
どうなるであろうかということでありますが、国際
放射線
防護
委員会
も、人間の場合についても、また特に高等動物の実験についても、まあ、いろいろ反論のあるところではあるけれども、一応現在の勧告とか基準としては、
放射線
が微量からふえればふえるほどそれに比例して遺伝的な
障害
が起こるという仮定の上に立って勧告を行おう、基準をつくろうとはっきりと申しておるわけでございます。また、人類が大量に
被爆
いたしました経験は、不幸にして
広島
と
長崎
しかないわけでありますけれども、その戦後三十年間のデータによって見ますと、遺伝の
影響
、いわゆる
原爆
放射線
の遺伝
障害
についてはまだまだ証明されていないのでございます。これは理論的にも一世だけを調べたのではわかりにくいのでありまして、二世、三世まで
調査
をしなければならない非常にむずかしい
調査研究
でございますけれども、現在のところ
被爆
一世の
調査研究
の結果では
被爆
していない人
たち
との間に有意の差が認められないのでございます。特に問題になるのは
——
指標になるのは白血病の発生でございますが、有意の差がございません。ただ、若干有意の差があると言われておりますのは、男女のお子さんの性比でございます。
被爆
した御両親から生まれてくるお子さんの男女の構成比が若干変わってくる、まあ、こういったことが言われておるわけでございます。そこで、私どもが先ほど来申し上げておりますように、そういった遺伝
障害
は一応たな上げいたしまして、具体的な
身体
障害
に着目をしたわけでございます。そうして、その場合に、従来の経験では
一体
、一回何レム以上浴びれば
障害
が起こり始めるかと、まあ、すべての方に起こるわけではございません、一部の方々から起こり始めるわけでございますが、そういう線量を基準として持ってきたわけでございまして、それが二十五レムとなるわけでございます。
浜本万三君(浜本万三)
54
○
浜本万三
君 二十五レム問題はまた後で理事会の方でもひとつお話をしていただくことにしておきまして、続きましてお尋ねをしたいのは、二キロのこの線引きをいたしますと、
被爆者
の方の心配としましては、まあ新たな差別をつくり出すことになるんではないかと、こういう疑問がございます。そこで、二キロの線に線引きをした場合に、
広島
の場合に問題が出ますのは、二キロの線の中にかかる町名としましては荒神町、尾長町、牛田町、以上三町がかかるわけでございます。したがって、当然この三町が入らなければならないわけでございますが、これまでの
医療法
の適用区域として
広島
で行っておる
実情
を見ますと、三十五年の公衆衛生
局長
の通達によって百三十二町が
町名指定
をされておるわけでございます。したがって、矛盾が出る今回の二キロの線引きに際しましても、もちろん区域を
拡大
するということを私どもは望むわけなんでございますが、
たち
まち
政府
の二キロの線引きをやった場合にも先ほど申し上げました荒神、尾長、牛田町は当然区域内に入れるべきだというふうに思いますが、その点の見解を伺いたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
55
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず二キロの線引きによって
被爆者
の中に新たな差別を設けるものではないかという御指摘でございますが、私どもはそのようには思っておりません。
認定
患者
は
特別手当
、十の
障害
のある方は
健康管理手当
、さらに今度は多量
被爆者
が
保健手当
ということでありまして、特に新たな差別を設けるというふうには考えておりません。 次に、具体的な町の
指定
の問題でございますけれども、二キロの線内にありますものは、その
部分
につきましては
指定
をいたしたい。厳密に二キロで線引きをすることをたてまえといたしたいと考えております。しかしながら、三十五年に特別
被爆者
の制度を設けましたときにも経験いたしましたけれども、現場においてはやはりいろいろ問題がございます。先ほども御指摘がございましたように、同じ町内で線引きをいたしますと外れたところは非常に違和感をお持ちになるという問題がございますが、ただ、
町名指定
で全部
指定
いたしますと、また隣の該当していない町の方は非常に不公平感をお持ちになるというむずかしい問題がございます。しかし、これにつきましてはやはり制度の趣旨から考えましてよく
地元
の市とも相談をいたしまして、適切な
方針
を定めるようにいたしますし、またそのように
地元
の方を指導してまいりたいと考えております。
浜本万三君(浜本万三)
56
○
浜本万三
君
法律
的なことでちょっと私よくわからぬのでお尋ねするのですが、
法律
で二キロというふうな線引きがございましても先ほど
局長
がおっしゃいましたように
地元
とよく相談をして、たとえば三十五年の
地域指定
のようなことが可能であるというふうに理解してよろしいですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
57
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 可能であると考えております。
浜本万三君(浜本万三)
58
○
浜本万三
君 はい、わかりました。 それでは次の質問に入りたいと思います。 黒い雨の問題なんでございます。これはもう
石本
先生からもお話がございましたように、黒い雨を
地域指定
をしてほしいというのは現地の強い考え方でございます。その根拠としましては、この
地域
は黒い雨が当日沛然と降り注ぎまして
死亡者
も出ましたし、また健康異常を訴える者が非常に多かったということでございます。 さらに四十八年だったと思いますが、
健康調査
を行いましたところ、健康異常が六一・五%で、
急性症状
が全体の二一%という資料が出ておるわけです。さらにまた、当時の学術
会議
の
報告
もございます。その上に最近明らかになりましたことは、
広島
大学の竹下先生という方がその
地域
、特に十六ないし十七キロ地点における
残留放射能
の
調査
測定をやられました結果、普通の
地域
の
放射能
の量に比べまして四倍ないし五倍多かったという
報告
をされております。たとえば竹下さんの
報告
によりますと、十六キロ地点でセシウムが三・三四、十七キロ地点で二・六二というふうに相当多量の検出がなされておるわけでございます。 以上、申し上げました三つの理由からどうしてもこの際
地域指定
をしていただきたいというのが現地の希望になっておると思うわけです。しかも、かつて昨年だったと思いますが、前
厚生大臣
の齋藤さんが
広島
においでになりまして、最近のうちに専門家による
調査
をいたしまして
結論
を出します、という答えをいただいておるわけでございます。先ほど
局長
のお話では、専門家の
調査
をしたというふうなお話を伺ったのでありますが、私どもはそういう詳しいことも伺っておりません。ともかくこの際、
地域指定
をしてほしいという現地の希望をどのように考えておられるか、ぜひ入れてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。また、これは大臣の方も特に前の大臣の引き継ぎ事項でもございますから、前向きの答えをしていただくようにお願いします。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
59
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 先般も先生からこの問題について強い御
要望
もございましたので、また、元齋藤大臣もいろいろとお約束をしておりましたので、先般専門家の方々にお集まりいただきまして、
広島
県、市から提出された資料その他のその当時手元に集まる資料をもとにしていろいろと御審議を願ったのでございますけれども、それらの資料においては実際に多量の
放射能
を黒い雨の
地域
の方々が浴びたという新たな証拠は得られなかったのでございます。しかしながら、先ほども申しましたように、これは
地元
の強い御
要望
でもございますし、また、こういった地表の地殻の
残留放射能
も年数が
たち
ますとどんどん減ってまいりますので、明年度大々的な実態
調査
をいたしまして、その結果に基づいて判断をさせていただきたいと考えております。 なお、先ほど先生が引用なさいました六月八日の
原爆
後
障害
研究
会における広大の竹下教授の御発表でございますが、まだそのオリジナルが私どもの手元に届いておりませんけれども、聞くところによりますと、竹下教授の御発表は
爆心地
からかなり離れた
地域
において
放射能
が自然
放射能
の四、五倍に及ぶ地点があり、その要因はセシウム137によるものと考えられるが、これが
広島
に投下された
原爆
によるものかどうか、その後世界の各地で行われた核爆発によるのか明らかでない。測定地点が比較的雨の多い
地域
であることや土質によるセシウムの吸着度が異なるなどの点を考慮するとにわかに判断できないという趣旨のものであったように聞いております。さらに、先ほど具体的に先生から十六キロの地点で自然
放射能
の三・三倍程度、十七キロで二・六倍程度というお話がございましたけれども、これは自然
放射能
そのものが年間〇・一レム、つまり百ミリレム前後というそれほど高いものではございませんので、その二倍とか三倍とか申しましてもそれほど高いものではございません。要するに、このような現在の特殊なセシウム137とかストロンチウム90といった半減期の長いアイソトープの
残留放射能
を測定いたしまして、それからさかのぼって当時の
残留放射能
を推計していく以外に方法はないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたような理由によりまして明年度あたりそのような地殻の
残留放射能
の精密
調査
をいたしまして、当時の
状況
等も推計いたしましてこの問題に決着をつけるように努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
60
○国務大臣(田中正巳君)
広島
におけるいわゆる黒い雨、これについてのいろいろな思惑あるいは御判断があるということは前から私も聞いております。これについての一応の専門家の知見は最近出ているようでございますが、しかしこれについては
関係
者の間にずいぶんと根強いいろいろな御
意見
もあるようでございますから、ただいま公衆衛生
局長
が申しましたとおり、明年ぜひひとつ本格的な
調査
に取りかかろうというふうに思っております。
浜本万三君(浜本万三)
61
○
浜本万三
君 時間があと少しになりましたんで、二つだけ問題をしぼってお尋ねしたいと思います。 その実態
調査
の問題でございます。実態
調査
の今年度の厚生省の
方針
を伺いますと、全体
調査
はもちろん、死没
調査
もやらないというふうに見受けられるわけなんでございますが、まあ私どもの気持ちといたしましては、どんな災害でも
死没者
あるいは負傷者、そういう全体の
調査
をいたしまして次の
対策
を立てるというのが常識だろうというふうに思うんですが、この
被爆
の場合にはそういう点がやられておりません。それではやっぱり非常に問題があるというふうに思いますので、どうしてもやっぱり全体
調査
をやってほしいという気持ちを持っておるわけなんです。全体
調査
、
死没者
調査
の問題について厚生省はどういう考え方を持っておられるか、お尋ねしたいと思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
62
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
死没者
調査
がきわめて重要であることは私どもも同様に考えております。しかし、先般
原爆被爆者
実態
調査
の準備
委員会
などで専門家の御
意見
をお聞きいたしましたところ、
被爆
後三十年もたった現在において厳密な統計的な意味で
死没者
の
調査
をするということはきわめて困難である。また、たとえば一部の方々から御
要望
がございましたように、国勢
調査
の時期にそれの付随
調査
として
死没者
の
調査
をしてはどうかという御
意見
がございまして、これはかつて二十五年の国勢
調査
のときにはやったわけでございますけれども、こういった方法も総理府の統計局に申させますと、いろんな困難な問題がございまして実施ができないわけでございます。そこで、私どもは、本年九月に行います基本
調査
、これは本年六月一日現在で
被爆者健康手帳
をお持ちになっておられる方
全員
について
調査
をする基礎
調査
でございますが、その付属
調査
として
補助
票を設けまして、家族の方々の当時の死没の
状況
等を御
報告
していただき、それを活用いたしまして、現在
広島
とか
長崎
の市でやっております
復元調査
を補完をしてまいりたい、
復元調査
の推進に役立ててまいりたいと考えておる次第でございます。
浜本万三君(浜本万三)
63
○
浜本万三
君 もう一回お尋ねしますが、そうすると実質的な死没
調査
に相当するものができるという御判断と受け取ってよろしいですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
64
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 厳密に申しますと実質的に
死没者
調査
ができるということにはならないと思われます。やはり一家全滅なさって身寄りのないような方あたりは出てまいりませんし、その他いろいろ問題がありますので、こういったことはいろんな
調査
を総合して相補っていくより方法はないのではないかと考えております。
浜本万三君(浜本万三)
65
○
浜本万三
君 そうするとできる
範囲
での死没
調査
ということになりますですね。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
66
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) そうでございます。
浜本万三君(浜本万三)
67
○
浜本万三
君 わかりました。 もう一つは、
復元調査
ですが、これは私がこの前
広島
に皆さんと
調査
に行きましたときにも、その
労働組合
からお話があったんですが、まだ世帯数にして一一・七%程度しか
調査
が完了していない。ところが
広島
市は今年度で打ち切るという
方針
を出しているわけなんです。理由は表面に出ておりませんけれども、
政府
の
補助
金が少ないというところに問題があるように思うんです。これを打ち切ると、先ほど
局長
がお答えになった
方針
が貫けないんですが、これは
広島
が打ち切らないように
政府
も
広島
市と話をして続けさせるというふうに理解してよろしいですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
68
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 私どもは両市が行っております
復元調査
が最も重要な
調査
であると考えておりますので、これは打ち切るという考えは全然持っておりません。また私どもは
広島
市などから来年はやめてしまうというようなお話は聞いておりませんけれども、さらにこの
調査
は国の保護の行政も
充実
をいたしまして、
充実
した
復元調査
ができるようにしてまいりたいと考えております。
浜本万三君(浜本万三)
69
○
浜本万三
君
最後
の質問は
援護法
に対する
政府
の態度についてお尋ねをいたしたいというふうに思います。 先ほど今回の
政府
の
改定
案に対する質問をしてまいりましたんですが、
政府
の案では二十八万人の
被爆者
の方々に対してすべての
救済措置
を含めまして約十四万人程度の
救済
にしかなっていないというふうに思います。そういたしますと、
政府
の政策では依然として
被爆者
の皆さんの気持ちを取り上げているとは言えないというふうに思うわけでございます。で、
被爆者
の皆さんの気持ちを三十年たった今日どのように把握をしておられるのかということが第一。 それから第二は、十七日の参考人の事情聴取でも
被爆者
の方からいろんなお気持ちを伺ったんでございますが、その要約するところは
現行
二法の改正によってはやはり満たされないところが多い、こういうお話でございました。
代表
的なものは、もちろんそれぞれの参考人の方がおっしゃったことはすべてそうなんでございますが、特に
長崎
の
代表
を初め皆さんの御
意見
ではこの
死没者
に対する弔意の具体的な
措置
でありますとか、遺族の年金でありますとか、
障害
年金でありますとかということを含めましてまだ十分でないということが言われておるわけでございます。また
広島
、
長崎
などの県、市の八
団体
の要求を見ましても、
現行
二法では
被爆者
の皆さんのお気持ちを十分満たすことができないというふうに思われるんでございますが、大臣にお伺いしたいんですが、いかがでしょうか、
被爆者
の皆さんのお気持ちをいまどのように把握をされておられるか、さらにまた十七日の参考人の御
意見
や
広島
、
長崎
などの自治体の八
団体
の要求は
現行
二法で十分満たすことができると思っておられるか、この二つの点について大臣から特にお答えをいただきたいと思います。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
70
○国務大臣(田中正巳君)
被爆者
の方々の声をどうおまえは受けとめているか、こういうことが第一点だろうと思います。まあ私としては
被爆者
の方々がああいう悲惨な
状況
下にあって、その後もいろいろと苦しんでおられるから、できるだけひとつ国の手厚い施策というものを
要望
しているということについては私は疑わないわけでございまして、ある意味ではごもっともだというふうに受けとめております。こうした中にあって、それでは具体的な政策をどういうふうに選択するかというところに、われわれとまた
被爆者
の方々の間にある程度の一致点が見られないというところに実は問題点があり、私どももまことにそれについては苦労もいたし、残念にも思っているというのはその点にあろうかというふうに思っているわけであります。私どもが今日までとってきている政策についての問題の基本の考え方については、けさほどから申し上げておりますからここで繰り返すことをいたしません。 また、第二点の問題につきまして、先ごろ、十七日の各参考人の御
意見
についておまえはどういうふうに受けとめたかと、こういうことでございますが、これもやはり、第一問についてのお答えとやや似たようなお答えに私はなるのではなかろうかというふうに思います。あの参考人の大
部分
の方々は、
被爆者
であったりあるいは
原爆
問題について専門的に取り上げている方でございまして、そうしたことで
被爆者
一般
の方々の御
意見
を
代表
した方々あるいはそれをもっと強調なさったような御
意見
を持っている方々でございまして、第一問についての話と大体同じようなお答えになるだろうというふうに思います。個々いろいろな御
意見
がございまして、私もこれについての所懐をいろいろとメモいたしておりますが、これについていまここで強いて申し述べろと言えば私も申し上げますが、要は、こうした
状況
に対応して
政府
が全般的な
立場
においてどういう政策を選択するか、そして、それが国の全体の施策の中でどういう位置づけになるのか、そして、それがまた他の施策との間のバランスがどうであろうかということについての認識の私は違いではなかろうかと。抽象的なお答えで恐縮ですが、さように申し上げておきます。
浜本万三君(浜本万三)
71
○
浜本万三
君 私の理解では三十年生き続けてこられました
被爆者
の皆さんの要求は三つの「ほしょう」を求めておるというふうに思います。その第一の「ほしょう」は、過去の問題について
補償
してほしい、償いをしてほしいということだと思うんです。この償いは何と言っても、やっぱり
死没者
調査
をいたしまして、亡くなった方に対する弔意を表する、さらにまた遺族の方にも年金等を
支給
し、
障害
者には
障害
年金を
支給
するなどであろうと思うわけです。それから二番目の「ほしょう」は、
生活
と完全な
医療
の保障、これを要求されておるというふうに思います。これは先ほど申した年金とか各種
手当
の増額、さらに
医療
制度の
充実
を図ってほしいと、無論
認定制度
の問題もこれに入るというふうに思うわけです。第三の「ほしょう」は、将来にわたって再び
原子爆弾
が使われることのないように平和な保障というものを求めておられるというふうに思います。この三つの「ほしょう」を
被爆者
の方々が要求されておるとするならば、私は少なくとも
現行
二法では十分ではないと、やはり
援護法
を
制定
をいたしまして、国の
援護措置
を十分に行う以外にないというふうに思うわけでございます。そういう
立場
に立って、恐らく、従来しばしばそれぞれの
国会
におきまして、社労
委員会
で十分審議をされてきたところだというふうに思います。また、そういう考え方を三十周年目を迎えた今
国会
で実現をすることが
被爆者
の皆さんに対してこたえる私どもの責務ではないかというふうに思うんですが、しかし、
政府
の考え方は先ほどお話を承りますと、依然として
社会保障
の領域を基本的に出ていないというふうに私は思うわけであります。まことに残念であるというふうに思うんです。したがって、皆さんのお気持ちを体して、この際問題を解決をしていくためには、野党が共同提案をしております
援護法
を
制定
する以外にないというふうに考えるんですが、大臣にお答えをいただきたいと思いますが、野党共同提案の
援護法
案についてどのように考えられるか、大臣の腹を据えたお答えをいただきたいと思います。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
72
○国務大臣(田中正巳君) どうも主管大臣として、野党各党がせっかく御丹精を込めておつくりになった法案について率直な
意見
と言いますると、どうも、いささか角が立つというふうに私も思いますが、しかし、あえて仰せられれば、申せと言われれば、私どもは、
原爆被爆者対策
については、けさほど申したような出発点から出発をし、そして、そうした面における、そういったような線上において施策を向上
充実
させていくという
方針
でございまして、それから出るということになりまするといろいろと問題がございますし、基本において、
国家補償
ということについて私どもはにわかに今日それを認めるわけにはいかないということになりますると、いろいろと御
意見
もあろうと思いますが、にわかに賛成ができないというふうに申し上げざるを得ないだろうと思います。 なお、あの
援護法
案の中に具体的に盛られている施策の選択についてもいろいろと
意見
があるだろうというふうに思っていますが、基本の政策を打ち立てる出発点において考え方の違いがございますので、私どもとしては、残念ですけれども、あれに賛成せよとおっしゃられても、ただいまのところ、にわかに賛成ができないということを率直に表明さしていただきます。
浜本万三君(浜本万三)
73
○
浜本万三
君 これまで、
政府
の態度といたしまして、
国家補償
による
援護法
の
制定
ができない、その理由につきましては、相当前の当
委員会
におきまして私の方から質問をいたしまして、大臣を初め
関係
当局のお答えをいただいたので、私は、あえて、
援護法
がなぜできないかというふうな質問を重ねてしょうとは思っておりませんが、少なくとも、次のような経過をしっかり踏まえた
政府
の態度を考えていただきたいと思うわけです。 それは、昨年のこの議案審議の際におきましても、当
委員会
の附帯決議といたしまして
援護法制定
の
必要性
ということが決議をされておるわけでございます。また、今回の
改正案
を諮問されました
社会保障
制度審議会の答申によりましても、本審議会が従来しばしば指摘した
被爆者
福祉の体系的な施策としてははなはだ不十分であるという異例の
意見
もついておるわけでございます。そうなってまいりますと、これまでのいろいろな経緯、さらにこれらの決議や
意見
を考え、しかも、三十年たった今日何らかの前向きの決着をつけなきゃならぬという時期でございますので、
援護法
の問題について深刻な
状態
になっておることは私が申し上げるまでもないと思うんです。重ねて大臣に伺いますが、そのような経緯の中でさらに再考される気はないか、その点もう一遍お伺いをしたいと思います。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
74
○国務大臣(田中正巳君) 基本的な考え方については先ほど来るる申し上げたとおりでございます。したがいまして、私どもは、
政府
が今日までとってきた、いわゆる
放射能
を多量に浴びたと、そして
身体
と健康に被害があり、その心配があるという観点からこれを進めていく、政策を進めていこうというふうに考えておるわけでございまして、制度審等の御答申においていろいろ言われている点も、そうした面からの施策の
充実
については、今後とも一段と努力をいたしたいというふうに思っておりますが、いわゆる
国家補償
的見地からの政策の樹立についてはなお私どもとしては踏み切れないということだろうと思っております。
浜本万三君(浜本万三)
75
○
浜本万三
君
最後
に、最近中国新聞に「トルーマン書簡」というのが連載をされておるのですが、たまたま六月十二日のその記事にこういうことが載っております。「八月六日の
原爆投下
後、数日して日本は降伏しましたが、その時点で軍が推計したところによると、少なくとも二十五万人のわが軍将兵と二十五万人の日本人が死なないですみ、どちら側もその二倍を上回る重傷者が出ないで終わったとのことです。 したがって私は
原爆投下
についての最終的命令者として、ヒロシマとナガサキが犠牲になったことはやむを得なかったし、その後の日米両国の繁栄のためにはかえって有用となったものと考えざるを得ません。」われわれから言えばきわめてけしからぬトールマン書簡が掲載をされておるわけでありますが、少なくともいま読み上げましたように、日本の今日の繁栄の大きな人柱に
広島
と
長崎
がなったことは間違いないというふうに思うわけです。しかも、その犠牲を一身に背負った
広島
と
長崎
の
被爆者
の皆さんに対して、三十年たった今日、終戦
処理
の一つとして、戦後
処理
の一つとしてぜひとも
援護法
を
制定
してほしいというお気持ちがあるわけであります。この点を十分ひとつ理解をしてもらいまして、今後の取り扱いについても前向きで真剣にひとつ取り扱っていただきますように重ねて
要望
いたしまして、時間が参りましたので私の質問を終わりたいと思います。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
76
○
目黒
今
朝次郎
君 きょうは、私ちょっと体の調子が悪いので、いまわが党の
代表
の
浜本
先生から十分に御質問をしてもらったわけですが、大臣に同じような質問になると思うのですが、私も本当は三年半ほど大陸戦線で実戦の経験がありますし、こちらの耳もいまぼうっと聞こえないくらい爆弾を受けて、爆風で少しやられた。そういう経験もあります。しかし、私は
広島
が
原爆
でやられた後、引き揚げ列車であそこを通った。あの焼け野原をこの目でも現実に見ています。そういう実戦の経験と、それからいま思い出せば、
広島
の駅を通った私は、三時間半
広島
におりました、引き揚げ列車で。そのときをよくずっと振り返ってみますと、いまトルーマン書簡にもあったとおり、私は日本の戦争の犠牲者、人柱に
広島
、
長崎
がなった。同時に、厚子爆弾という人体試験の世界的な人柱になっておるという点がどうしても私は歴史の証人としてぬぐい去ることのできない、私は自分の体験をこうして持っておるわけであります。医学的にどう、科学的にどうと、そういう才能は私はありません。ただ、ずっとけさから
石本
先生、
浜本
先生の質問に対する議論を聞いておりますと、いわゆる
国家補償
論について、何かむずかしい理屈を並べて
被爆者
の皆さんに適用をしないための理屈を探し出そうというふうに懸命である。いわゆる行政サイドの議論しか出てこない。本当に日本の終戦の人柱、世界の
原爆
の人柱という点であれば日本はおろか、世界の戦争遂行者がむしろ無条件で
被爆
の方々に対する
医療
と
生活
の保障をすべきがたてまえであろう。国内的にも国際的にも私は必要じゃなかろうか、こんなふうに考えるのですが、そういう視点からのいわゆる基本的な認識についてもう一度私は自分の体験からいって大臣の見解を聞きたい。いわゆる
被爆者
の
立場
になっていろんな
措置
を講ずる、そのことをもう一歩政治家として前に進むべきではなかろうか、こう思うのですが基本的にいかがでしょうか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
77
○国務大臣(田中正巳君) 私も先生のおっしゃることについて、わからぬわけではございません。また私のいままで申し述べているところが単に行
政府
の
立場
に終始をし、ないしは財政的配慮にのみから立論をしているわけではございません。まあ今日の
原爆
二法というものの
性格
を見ても、これが他の戦災者には妥当しないようなこのような制度というものを特別に打ち立てていることでございまして、したがいまして、こうした施策というものが
原爆被爆者
に対する配慮なしにできたものだとは私は考えないわけでございますが、この二法の、よるところの施策というものについての価値判断の違いというものがお互いの間の議論の焦点になるものというふうに思うわけでございます。ぜひこの際、施策をもう少し厚くしろ、
援護法
をぜひつくれと、こういったような方々から見ますると、二法系列における施策というものは不十分で問題にならない、こういう御判断だろうと思いますが、私どもは
一般
の戦災者あるいは戦災による
死没者
等々を考えてみるときに、こうした施策をとったことについて、私どもは
原爆被爆者
という者に対して何ら特別な配慮をしなかったことではないのだというふうに思っておりますが、しかし今後ともこうしたものの考え方の上に立って、私どもとしては
原爆被爆者対策
というものを、今後できるだけ施策の
充実
に邁進をいたさなければならぬ、かように考えておるところでございます。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
78
○
目黒
今
朝次郎
君 あのね、戦争で、まあ私は国鉄出身ですから、国鉄から大陸に派遣されて、軍属で派遣されて、亡くなった方については年金その他の
補償
があるわけですね。その方々と、私がいま言った国家的な人柱、国際的な人柱という価値の受けとめ方について、私は差異はないと思うのですよ、国鉄から大陸に派遣されて亡くなった方と。ですから、そういう位置づけというものについて、やはりどうも一歩後退をしているのではなかろうか。そこを踏み切ることなくして、ずっと
石本
先生からの議論を聞いていますと、私はここで幾ら議論をやったって堂々めぐりである。いわゆる軍属で派遣された方、それと同じような、それ以上の、戦略的に位置づけを
原爆
の被害者を考えてもいいではないか。私は自民党の代議士諸君が、選挙演説をやっておって、いやいや軍属とこれは違いますよと、そういう演説は私はやってはいないと思うのですよ。皆さん本当に大変でしたと、皆さんの気持ちは十分考えますと言って私は選挙演説をやって
国会
に当選をしてきたと、こう思うのですよ。ここは立法府ですから、厚生省の行
政府
と違いますから、立法の段階でそのような位置づけを、価値判断をすればもう一歩私は突っ込んだことができると、そう思うのですが、その点もう一回、時間がありませんから、この前私も
社会労働委員会
の派遣じゃありませんから
現地参加
で行きましたが、
長崎
県知事の久保勘一さん、この人は自民党の知事さんですね。この人がいみじくも言いました。いやこれでやっと自民党に対しても思い切ってやれる。選挙のときはうまいことを言うけれども、なかなかうまくいかない。やっと
社労委
の皆さんが院という構成で来たということはいいことである、一歩前進である。こう本人がはっきり言っているのですよ、公開の席上で。ですから私はいま大臣が言ったような気持ちを、もう一歩突っ込んで、しつこいようだけれどもできないでしょうか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
79
○国務大臣(田中正巳君) これは政策についての価値判断の問題だろうと思うのであります。いま
目黒
先生、大陸における軍属さんのいろいろなお話がございましたが、反面また各地におけるいわゆる空襲による
死没者
などというものも私見ておるわけでありまして、あの深川あるいは本所等の下町における死屍累々たるあの焼夷弾によるところの焼け焦げの
死者
等々をまともに見ている私でございますが、こうしたものを比較勘案をいたしまして、
広島
の
原爆被爆者
については
一体
どう扱っていいのかということについていろいろと考えてまいってきた私でございまして、そうしたことから二法の
制定
について、私は私なりに選挙区の遠い私でございますが、ずいぶんと骨を折ってきたつもりでございます。しかし、そのことが今日なお不十分であると、もっと踏み切れという御
意見
はわからぬわけではございませんが、政策のバランスの問題等々から考えてまいりまして、私どもはこうした二法の系列の上に立って
被爆者
に対する
措置
を
強化
していくということが妥当であろうというふうに思っている次第であります。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
80
○
目黒
今
朝次郎
君 これは私のところに動労の
長崎
の皆さんが送ってきた六月十二日の
長崎
新聞ですよ。やはりこの新聞を通じての問題提起に
政府
はこたえる必要があろうと思うんですが、ちょっと読みますと「総理大臣はなぜ来ない」こういう見出しです。これは
長崎
市
原爆
対策
協議会の宮城さんという
医療
部会会長さんの発言ですが、「三十年目の今日、やっと
国会
調査
団の派遣は遅すぎる。しかし
実情
を知ってもらうため歓迎はするが、残念なのは総理大臣が一度も祈念式典に出席しないことだ。昨夏、田中前総理は選挙遊説のついでに慰霊碑に参拝した。このように
被爆者
問題に対する国の上層部の認識、理解のなさが」今日の
被爆者
の実態の悲劇を招いている。これをどうしてくれるんだと、こういうのが開口一番です。こういうのが私は
被爆者
の実感だろうと、こう思うんです。これに対してやっぱり
政府
当事者は、私は
国会
を通じてこたえる必要があると、こう思うんですが、この問題提起について大臣はどういうお考えでしょうか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
81
○国務大臣(田中正巳君)
原爆被爆者
の実態についての真の認識というものを政治家は持たにゃならぬということは、私は間違いがないと、かように思います。田中前総理が
広島
に行って、若干のトラブル等も実はあったようでございますが、行って、それがまあ遊説のついでだったかどうか私は記憶がございませんが、まあ行ったわけで、
長崎
にはどなたもおいでにならぬということでございますが、機会があればそうしたような
地域
にも
政府
の
責任
者が出向いていろいろな声を聞くということについては、私は必要なことであろうというふうに思います。私自身は、実は先ごろでございますか、大臣就任前でございますが、党の
原爆被爆者対策
についての
責任
者をやっておった
関係
上、両市にはしばしばお伺いをいたしまして、いろいろと現地の人々の声も聞き、また当時の実態もいろいろと私は私なりに把握をしたつもりであります。なお私事にわたって恐縮ですが、先生も大陸から復員の節に、当時の
広島
をごらんになったと、私は当時実業界におりましたが、妙なことから
広島
の
被爆
後ずいぶん早い機会に、いま考えると、あるいはああいうときにあの程度の用事で入っていいかどうかと思われる時代に私は
広島
に参りまして、あの惨状を十分
——
十分というか、ある程度見てまいったことでございますので、認識については、私も十分ではございますまいとみずから反省をしつつも、全然認識を持ってないというわけではないと思っております。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
82
○
目黒
今
朝次郎
君 私は、ことしは
原爆
三十年ですからね。この
長崎
も
広島
も、
原爆
慰霊祭には総理大臣が行くというぐらいの積極的なやっぱり施策を
政府
部内で十分に検討してもらいたいということを問題として私は提起をしておきます。総理大臣または副総理大臣を含めて
広島
、
長崎
にやっぱり行くというぐらいの検討をしてほしいということを
要望
しておきます。 時間の
関係
がありますから……。現在どの
公立病院
も、大変な
人件費
や診療、
医療
体系の問題から
経営
が困難になっておりますが、特に
原爆病院
は
被爆者医療
という
特殊性
から、
放射能障害対策
研究所
あるいは
がん診療施設等
の不
採算医療
、
被爆者
患者
の孤老、
老齢化
に伴った
濃厚看護
の
必要性
、
慢性疾患
が多い、あるいは長期滞院が多いということで
原爆病院
などが非常に現在特殊な
経営
悪化に陥っておりますが、このような
被爆者医療
の
特殊性
について、
政府
はどのような認識なり
対策
を持っておるか、お考えを明らかにしてほしいと、こう思います。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
83
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
広島
、
長崎
の
原爆病院
の財政が悪いことについては、よく伺っておりますし、私も両
病院
の現地を
視察
いたしております。なぜこのような
赤字
が起こってくるかと申しますと、
高齢者
が多くて
医療費
の収入が余り上がらない、また
がん
といったような疾病が多くて不採算の
医療
が多い、また
高齢
長期入院の方には
介護
人等の人手がかかる、さらに数年前から
病院
についても
人件費
の高騰が著しい。さらに両
病院
では
原爆
後遺症の
研究
をいたしておりますので、そういった
研究
費を診療収入から捻出しなければならないといった問題がございました。で、この問題につきましては、両県の市と県と
病院
とでいろいろ相談をいたしまして、数年前から
対策
が講じられてきたわけでございますけれども、厚生省といたしましても、四十八年度から日赤等の公的
医療機関
の不採算部門に対する
補助
金、これは両
病院
とも
がん
の診療部門でございますが、これを二分の一の
補助
で、県が残りの二分の一を持つという形で差し上げてまいっております。また
研究
費につきましても、昨年から
原爆
後遺症の
研究
費を国としても一千万円強差し上げたわけでございますが、本年は二千二百五十万円程度にそれぞれふやしておるところでございます。 今後の問題といたしまして、先ほど申し上げましたように、一部の
原爆
の入院
患者
の方々は、非常に看護の人手を要するという
状況
にございますので、その点に着目いたしまして、
介護
人の
人件費
について
補助
をするというようなことを考えてみたらどうかと思っておりますが、これは五十年度の
予算
要求のときにもいたしましたけれども、結局こういった
人件費
に対する
運営費
の
補助
金は認められませんで、
研究
費の増額だけが認められたわけでございます。ところで昨年は二月と九月の二回にわたって
医療費
の大幅な
改定
がございましたので、
広島
の
原爆病院
の場合には、昨年度の
赤字
は二百万円前後と非常に少なくなってまいりました。ことしも
人件費
のアップがそれほどでもないようでございますし、またそのうち
医療費
の値上げ問題等も起こってまいりますので、社会保険等の、
医療
保険等の診療報酬がかなり引き上げられれば
赤字
はほとんどなくなっていくというような傾向がございます。しかしながら、これは
広島
の
原爆病院
の特殊事情でございまして、親元の大きな総合
病院
があって、それに
原爆
病棟が百七十床ついておるだけでございますから、
医師
の
人件費
等が共用されておるわけでございまして、その点
経営
が楽なわけでございますが、
長崎
の場合には、三百七十床全部がいわゆる
原爆
の専門
病院
でございまして、一部
一般
の
患者
も入っておりますが、そういった
運営
形態の相違等もございまして、
長崎
の場合の
赤字
の問題はかなり厳しいものがございます。したがいまして、先ほども申し上げましたようないろんな方法につきまして、今後もさらに
地元
の県、市、
病院
とも相談しながら、
経営
面の
助成
策について検討を続け、善処いたしたいと考えておる次第でございます。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
84
○
目黒
今
朝次郎
君 いままあ長々とこう話があったんですが、この
赤字
の
原因
などについては、大体現場の
病院
長さんの説明と話は合っておりますが、県と市の説明と、
病院
長さんの説明を総合しますと、どうしても年間一億五千万程度の
補助
をもらわなければ結局はやっていけないと、いま何か銀行
——
この前、四億の
赤字
の内訳を細々と説明されましたが、
結論
から言うと、一億八千万は県と市が出資をして何とか消したと、そして二千二百万の
赤字
がある、現に銀行から二億円借りておる。ですから、この二億円の金を返さなければもう当面どうすることもできない、せめて一億五千万程度は手を打ってもらわないと地方も財政的にもどうにもならぬと、そういうまあ、ぎりぎりのところに追い込められていると、で、その問題について、日赤
関係
の首脳部との話はどうなってるんだと、そのように突っ込んで聞きましたら、日赤の
長崎
の現地と東京の本社間の話については十分話は疎通がついていると、問題は日赤本社の方と厚生省
関係
とのいわゆるパイプが詰まっているだけだ、こういうような話が、ずいぶん深刻な話があったわけであります。したがって、この問題を十分解決されなければそのしわ寄せは
原爆
の被害者に行ってしまう、いわゆる弱いところに全部しわ寄せが行ってしまう、そういうぎりぎりの線があったわけであります。私は、先ほどずっと
局長
の答弁を聞いておりますと、あるいは大臣の御答弁を聞いておりますと、
地元
の意向については十分に尊重し、あらゆる手を打ってやりたいということを再三再四言われておるわけですが、その点と
長崎
病院
がぎりぎりの線に追い込まれているというこの
現状
との結びつきから見れば、一億五千万程度の融資は私は
政府
としてやってやるべきだと、こう思うんですが、この辺の考えについて大臣の政治判断の答弁を求めたいと、こう思うんです。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
85
○国務大臣(田中正巳君)
原爆
医療機関
、特に
長崎原爆病院
の経理実態というものについては、前々からいろいろと私ども承っておって、何とか対処しなければならない問題であるというふうに思っているわけでございます。実はこうしたことに対応して、五十年度
予算
にもある程度の
予算
要求をいたしましたが、成功いたさなかった事実がございます。いま思いますと、もう少しこれについては私ども意欲的に
予算
の復活折衝等をいたすべきものであったというふうに思われるわけでございまして、明年はひとつこの問題については、いろいろ財政事情も相当苦しい折からではございますが、今後の
原爆病院
の経理の実態等を勘案をいたしまして、意欲的にこの問題についてはひとつ努力をいたしたいと、かように思っております。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
86
○
目黒
今
朝次郎
君 では、その大臣の努力を心から期待すると同時に、いま非常に資金繰りに困っておるという、本当に際どいところまで話が行ってしまったんですから、焦げつきになってしまうという心配もあると、そういう
病院
の事務
局長
さんですか、そういう話もありましたから、ひとつ当面の資金繰りについても何とか
政府
の方でも配慮をしてほしいということをこれは
要望
しておきます。 それから、次の問題は、こういう問題、私はこれはいつでしたか
——
六月九日、西日本の新聞で、「
長崎
原爆
」で「国家は賠償を」と、いわゆる遺族会の方々が裁判を起こすと、そういう記事が載っておったわけであります。時間の
関係
もありますから、
結論
だけを言いますと、この中で、いわゆる「
昭和
二十年八月九日午前十一時二分の
原爆投下
直前、米軍機が
長崎
上空を旋回していたのに、空襲警報が発令されなかった。軍の警報ミスが八万人余の犠牲者を出した」と、こういう主張をしておるんですが、この主張については、事実
関係
についてどういう御認識をお持ちでしょうか、お考えを聞きたいと、こう思うんです。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
87
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) ただいま御指摘のような事実が
長崎
市政六十五年史に記載されていることは承知いたしております。しかしながら、現在、戦争災害者の援護に関して
国家補償
の問題が論議されておりますのは、主として国の戦争回避
責任
あるいは平和条約による求償権の放棄の
責任
という観点からでございまして、これは非
被爆者
も含めたすべての戦争被害者の援護の問題に関連してくるので、
被爆者対策
の基本理念の範疇に
国家補償
の考え方を独自に導入することは困難と考えております。なお、このようなことは、
一般
戦災の場合、日本の方々のところであったことでございまして、そのような訴えが起こされて、
一体
どのようになるか、私どもにはわからないところでございますけれども、ただいま申し上げたような基本的な考え方を私どもは持っております。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
88
○
目黒
今
朝次郎
君 それから、同じく十日の証言で、この遺族会の会長の杉本さんという会長さんが、自分の子供が防空ごうに入っておって、元気でいま働いておると、だから、逆から言うと、
長崎
上空にB52が来て、その直前に空襲警報が発令されて
長崎
の方々が防空ごうに退避をすれば相当程度の方々がいわゆる
被爆
を受けないで済んだということを客観的に裏づけしているんだろうと、こう思うんでありますが、この事実
関係
についてはどんな認識をお持ちでしょうか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
89
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) そのように考えます。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
90
○
目黒
今
朝次郎
君 そうしますと、いわゆる空襲警報を発する、発しないということは、おたくさんがいまむずかしい
法律
論で言っておりますけれども、現に
被爆
を受けた現地から見れば、現地の人にとってみれば、私はやっぱり
政府
なり国の行政に失態があったと、ミスがあったということに結果的になるのではなかろうか、そうしますと、そういうミスに対しては、当然今日の段階で、国が政治の力で、
補償
するのがたてまえではないか、
法律
論争であるから裁判所の判断に任せるなんていうのは、いわゆる政治としてはナンセンスじゃないかと、こう思うんですが、大臣いかがでしょうか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
91
○国務大臣(田中正巳君) そうした事情が
長崎
についてあったということを、私も
原爆
対策
の
委員長
をしておった、党におってしておった時代によく聞いております。しかし、このことが直ちに
国家補償
論に結びつくかどうかということについてはいろいろと議論があるところだろうと思います。またそうした、先に察知をしておって防空ごうに入っておったから助かったということが
一体
一般
的な
状況
であったのかどうかということについてもにわかに判断が私はできないんじゃなかろうか。またいま
局長
が申しましたとおり、こうした事例というものは、
長崎
における
原爆
のみならず他の
一般
の空襲等等においてもよく当時あったことでございまして、こうした事象から
国家補償
的な施策を要請するということについては、私は十分な理由になり得るかどうかにわかに予断を下し得ないものであるというふうに思います。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
92
○
目黒
今
朝次郎
君 そうすると、まあ何と言いますか、当時その情勢にあったやつが悪いんであって、後始末を現在の政治がやることについては御免だと、そういうお気持ちで
——
この杉本さんの話によりますと、再三にわたって厚生省なり自民党筋に要請に行ったけれども、もう玄関払いを食ってきたと、こういうことが本人の証言です。これはやはり戦争
処理
としては私は余りにも血も涙もないではなかろうか。そういうミスがあったならばあったらしく、どういう方法でそれらの問題に対する締めくくりをしてやるか、始末をしてやるかということは当然に政治として考えてやるべきだろうと思うんですが、そこでもだめでしょうか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
93
○国務大臣(田中正巳君) まあ、決して玄関払いを食わしたというわけではなかろうかと思います。いま私が申したような諸説によって、それだからしたがって直ちに
国家補償
、国家賠償
補償
といったようなものにつながるわけではございますまいというふうにお答えを申したものじゃなかろうかと推察をいたすわけでございます。いずれにいたしましても、そうした事象についてのいろいろな判断というものについては私どもは先ごろ来申したようなことでありまして、空襲警報がおくれたから直ちにこれについて
国家補償
的な施策に進まなきゃならぬというふうに考えるわけにはいかないというふうに思います。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
94
○
目黒
今
朝次郎
君 しかし、当時は軍の厳しい規制下にあって、その軍の厳しい規制下におった軍の失敗が多くの死揚者を出した、
原爆
にしろ焼夷弾にしろ。そういうことについては、やっぱりその軍の失敗を国民が受けた、受けた国民を国が
補償
するのは筋が立たないでしょうか。私は、作戦の失敗が多くの軍人を殺したといった場合にはその指揮官は軍法
会議
ですね、われわれの経験では。いわゆる敵機が上空に来ているのに空襲警報を出さないということは軍の失策じゃありませんか。そう思いませんか。私は完全に軍の失策だと、こう思っているんですが、いかがでしょうか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
95
○国務大臣(田中正巳君) 当時の
状況
というものについて私もつまびらかにいたしませんから、ここでもって軍の行動についてあれこれ批判をすることについては私は十分な用意を持ち合わせません。ただ、当時の空襲下におきまして、単機などのB29の場合にはしばしば空襲警報が発令をされなかったというのが内地における当時の間々あった例であるということは私も知っておるわけでございます。このことが一機であっても空襲警報を発しておったならばベターであったとは思いますが、しかしそのことがなかった、それが重大な失態であり、そしてそのことが
国家補償
につながるといったようなふうに論理をつなげていくということについては、私はにわかにさようであるというふうに申し上げるわけにはいかないんではなかろうかというふうに思います。決していいことだったとは私は申しません。まずかったとは思いますが、しかし論理がそこへ結びつくということについてはどうもにわかに
結論
づけるわけにはいかぬのではないかというふうに思います。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
96
○
目黒
今
朝次郎
君 私が冒頭申し上げたとおり、私は三年、四年近く戦闘で苦労したものですから、いまのような答弁が当時の軍で通ったかどうか。私がそんなこと言ったら即座に銃殺ですよ、一兵卒として。そんななまっちょろいものじゃなかったと思うんです。それから、B29が進入する際にエンジンをとめてそして無音
状態
で来るということも知っていました。軍がそれを全部掌握しておったから二分間の誤差があったということはわかっていると思うのですよ。二分間の誤差。ですから、その誤差については当然私は当時の軍の作戦の失敗ということで国家が
補償
すべきだという考えはいまだに捨てておりませんから、いずれまた裁判で争われる、こういう情勢ですが、裁判に待つまでもなく、いわゆる政治の力でこういう不信感をなくすのが私は政治の政治であるゆえんだろう、こう思っておりますから、十分今後とも御検討を要請してこの問題については一応終わります。 時間が参りましたから一つだけお伺いしますが、
原爆被爆者
医療法
は、附則第二項によって
健康診断
の特例を定め
被爆者
とみなすと規定を設けておりますが、この立法趣旨について簡単にお答え願いたいと、こう思うんです。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
97
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
原子爆弾
が投下されました際に風下にございました
長崎
県の旧長与村及び時津村にあったものにつきましては、
地元
と県の要請に基づいて
地元
提出の資料などにより
調査
いたしましたところ、昨年十月改正前の
原爆医療法
の
一般
被爆者
とほぼ同様の健康
状態
にあるものと認められましたが、これらの者は従来定期
健康診断
の
状況
も必ずしも把握されておりませんし、直ちに
被爆者
とするには若干の疑問が残りましたので、当面、前述の改正前の
一般
被爆者
と同様の
措置
を行うこととしたものでございます。しかしながら、
昭和
四十九年十月の
原爆医療法
の改正において、
一般
被爆者
と特別
被爆者
の区別がなくなりましたので、つまり手帳の一本化をいたしましたので、附則において
健康診断
については
被爆者
とみなすという形をとった次第でございます。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
98
○
目黒
今
朝次郎
君 時間が来ましたけれども、今回の
調査
でこれと同程度の
地域
にある方々の
拡大
というのが非常にわれわれに要請されたわけでありますが、たとえば
長崎
市の
調査
で、
爆心地
から六キロの茂木村、ここでは人家が四七・三%の被損率、負傷者は五三・七%、こういうまあ
報告
をされておるわけですが、この
長崎
から請願が来ている
拡大
についてどの程度の人間でどの程度の
予算
と厚生省では計算されておりますか、わかったら教えてもらいたい、こう思うんです。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
99
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
長崎
から要請されておりますものは、全部含めまして
人員
は三万名でございます。これに
健康診断
をいたしますと約三千万円程度の
健康診断
費が必要ではなかろうかと思うのでございますが、
健康診断
の結果、先ほど来論議されております十の健康
障害
が認められますと
健康管理手当
等が
支給
されるわけでございまして、それらの費用はかなりの額になってくるものと思います。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
100
○
目黒
今
朝次郎
君 そのかなりの額のところがおたくのいいあれなんだろうけれども、できればそれらを含めて、まあ私の試算では一億なるかならないかという程度ではなかろうか、こう思うのです。私も
一体
具体的にどういうことですかと言って資料をもらって、これもおたくの企画課長が行きしたからこのデータを全部もらってきたと思うんです。時間がありませんからデータ読みませんが、この人的被害率、家屋の被害
状況
などから見ますと、ほとんどこの特例とみなすということよりももっとひどいというところもありますし、あるいはこの同じ程度あるいは若干低い、いろいろさまざまありますが、総体的に見て私はやっぱり特例とみなすという
地域
に入れても決して無理ではないではないか、こういう気がしたのですが、これについて再考する気持ちはありませんか。ぜひ再考してほしいと、こう思うのですが、いかがですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
101
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) これらの地区についても
広島
の黒い雨の地区と同じように、現在の資料では多量の
放射線
を浴びたという新しい証拠はございません。しかし、
地元
の方で強い
要望
がございますので、今後慎重に検討をいたしまして善処いたしたいと考えております。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
102
○
目黒
今
朝次郎
君 私ちょっとわからないですが、あなたは学者か専門家だからすぐそう言うのですが、私は科学的にどうのこうのって言っているんじゃないんですよ。当時
被爆
を受けて現在生き残っているおじいちゃんおばあちゃん方がいろいろ調べた結果、こういうデータになりますということを地方自治体が
責任
を持って出しているんじゃないんですか。それをなぜ素直に認めようとしないんですか。たとえば人家は三八%あるいは八〇.六%倒れた、そういうことをいま生き残っている方々が全部調べているんですよ。この現実を、ばかんと爆弾を受けてこれだけの地区で、たとえば福田という部落では人家百七十一件、ガラスの破損が三十一件、合計二百二件、全体のその地区の家屋に対しては八〇・六%の家屋が被害を受けましたということを歴史の証人が言っているんですよ。その歴史の証人に対して何が科学が挑戦するのですか。けがをした方も同じ。ですから、私が冒頭言ったとおり、あなた
たち
は適用しないために科学を理屈に使っていると、まず現実を認めてその現実にどうわれわれがやっていくかというのがこの
対策
の基本じゃないか、どうもあなたのこの答弁は逆立ちだと、こう思うのですが、どうでしょうか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
103
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
原爆
の
障害
は、御存じのとおり爆風と光と熱と
最後
に
放射線
の
障害
があるわけでございます。最初の爆風と光と熱につきましては、
一般戦災者
の場合と同じことになってくるわけでございまして、現在の
原爆
二法は、
被爆者
が
放射線
を浴びたという特殊な事情に着目いたしまして、健康上、
生活
上の不安を取り除くための諸施策を講じようとしておるところでございます。したがいまして、ただ単に家が倒壊したとかガラスが壊れたとか、そういったことだけでは
原爆
二法の
対象
にすることは困難ではなかろうかと思うのでございます。
目黒今朝次郎君(目黒今朝次郎)
104
○
目黒
今
朝次郎
君 私はたとえばいまガラスが割れた、これはけがした方も書いてあるんですよ、けがした方あるいは罹災した方。私は基本を聞くのは、こういう歴史の証人が言っておることについて、しかもそれを地方自治体が認めたことに対してあなたは信用しないんですか、こう聞いているのですよ。それでいろいろ私も
最後
に、
——
もう時間が参りましたが、
最後
に聞きました。
一体
この
被爆者
がどういう
生活
状態
になっているんですか、一回調べたものあるんですかと、もらったらこれが一番新しいと言うのですよ、
長崎
で。
昭和
四十二年十二月の二十五日、
生活
の実態
調査
、こんな古いものでやっているのでは私はどうにもならぬ。いろいろ聞いたら四十年にだか基本
調査
やったとかという話がありましたが、その基本
調査
をやった際の一番肝心なところは学者にも公表しなかった、こう言われて非常に
調査
にも不信感を持っているのですが、聞くところによるとことしの六月一日にまた基本
調査
をやる、こう言われておるわけですが、この
調査
を余り行政サイドでなくて、本当に
被爆
で苦しんでおる皆さんの気持ちになって本当に本格的な
調査
を徹底してもらわないと、どうもその
対策
が後手後手だ、あるいは行政サイドの
対策
に終わってしまうというきらいがありますから、この実態
調査
について厚生省は最も新しい
被爆者
の実態
調査
はいつの
調査
を持っているのか。その
調査
についてあればこの
委員会
に一番新しいのを出してもらいたい、それを
要望
して今後の
調査
に対する心構えを聞きたい、こう思うのです。以上です。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
105
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 全国的な
調査
としては四十年の
調査
しかございません。また
広島
市、
長崎
市の
調査
については、
地元
の
市当局
で四十二、三年ぐらいに行われたものがございます。先ほどの先生のお話では、四十年の
調査
のときの
生活
調査
の特別
調査
、ことしの
調査
で申しますと事例
調査
でございますが、これが発表されていないというお話でございますが、これは一部は学者の御都合で、また本質的には非常に例数も少ない、本来の
生活
調査
を補完するような
調査
であったというような
調査
の
性格
から発表されなかったものでございます。また四十年の
調査
はその後四十三年の
原爆特別措置法
の
制定
、さらにその後のほとんど毎年行ってまいりました
所得制
限の
緩和
とか
対象範囲
の
拡大
に大いに活用されてきたわけでございます。このような経験をもとにいたしまして、本年九月には全手帳所持者の基本
調査
をいたしますし、また十一月には二〇%の抽出率で抽出いたしました方々について
生活
調査
をいたします。この場合、沖繩県だけはその
特殊性
にかんがみまして、三百人の
被爆者
全部を
調査
いたします。本州が二十分の一の抽出率でございます。 また
最後
に事例
調査
でございますが、これは特に
広島
市と
長崎
市についてやはりサンプルを抽出いたしまして、具体的な
被爆者
の方々の
生活
の変遷、具体的にどういう悩みや問題を持っていらっしゃるか、その
原因
は何かというような掘り下げた
調査
をすることにしておるわけでございますけれども、これらはいずれも四十年の経験さらにその後の両市の
調査
の経験、こういったものを生かしてデザインしたものでございまして、明年この
調査
がまとまり次第、できるだけ早く公表さしていただきたいと考えております。 〔
委員長
退席、理事
山崎昇
君着席〕
小平芳平君(小平芳平)
106
○
小平
芳平
君 けさ来の当
委員会
の審議をずっと伺っておりまして、
政府
の答弁は、
局長
は至れり尽くせりやっておりますと言わんばかりの答弁を繰り返しますし、大臣はまた野党提案の
援護法
についてはいま直ちにそれには賛成できないということを一生懸命繰り返しておられるのみです。非常に私は不満なんですが、若干具体的な問題を取り上げて、見解をただしたいと思います。 先ほどのたとえば
原爆病院
に対する
目黒
委員
の質問に対する答弁では、
結論
はどういうことですか、本年度は
赤字
にならないだろうということだったのですか。それとそれから
局長
は
原爆病院
へ行ってみて、現地
調査
をしてきましたと言いましたが、いつ行って来られたのですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
107
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず
広島
と
長崎
の
原爆病院
の
赤字
でございますが、
広島
の
原爆病院
につきましては、本年度の
医療費
の引き上げがどの程度になるか、またいつ行われるかわかりませんけれども、その程度によってはあるいは
赤字
がなくなるかもしれないと言われております。 ただ、
長崎
の方は、先ほども申し上げましたような本来の
原爆
専門
病院
でございますので、
広島
と模様が違うわけでございますけれども、これも本年度については、いまのままでいけば一億四、五千万の
赤字
が出ると言われておるのでありますけれども、四十九年度も初めはそのように言われておりましたが、二月と九月の
医療費
改定
の
影響
によりまして、ほぼ半分程度の
赤字
にどとまったわけでございます。したがいまして、
病院
の
経営
の問題は、どうしても
医療費
がどうなるかということが一番大きな問題になってこようと考えております。 また、私が
長崎
の
原爆病院
に参りましたのは、一番最初に参りましたのは十五年前でございますが、最近は昨年の八月九日、
原爆
慰霊祭のときに伺わせていただきました。また
広島
の
原爆病院
は、最近は、さる四月十六日、
財団法人放射線影響研究所
の日米理事会がございましたときに訪問いたしております。
小平芳平君(小平芳平)
108
○
小平
芳平
君 それでは四月に
広島
の
原爆病院
を訪れたときに、その
広島
の
原爆病院
は、壁に穴があき、あるいは切れ目が入り、あるいは窓はがたがたで、さわると窓が外へ落ちるからさわらないようにというようなことを見てこられたんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
109
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) そのようなことをつぶさに拝見してまいりました。窓の問題、壁の問題ございますし、またあの病棟は千田町の大きな道路に面しておりますので、相当騒音が厳しいわけでございます。また、すでに二十年近くたった病棟でございますので、配管とか配線に非常に問題がございます。下水のパイプ一つとりましても、パイプが細いというほかに、すでに老朽化いたしまして、腐ってきておるというような問題があることも承知いたしております。
小平芳平君(小平芳平)
110
○
小平
芳平
君 大臣はそういうことは御存じないですか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
111
○国務大臣(田中正巳君) 大分老朽しているということは、観念的に聞いておりますが、現実は私はまだ最近の
状況
について見ておりません。
小平芳平君(小平芳平)
112
○
小平
芳平
君 私が参りましたのは五月十九日ですけれども、これをひとつ大臣ごらんいただきたいですが、壁はもうこういうふうな、まあ、そちらへ回しますから……。(写真提示)壁といい、それから「この窓はさわると落ちるので御注意下さい 係」と、こういう病室で
被爆者
の方が入院
生活
を現に送っていらっしゃる。それに対して
局長
は、よく見てきましたと言うだけで、それが
調査
のうちに入りますか、そういうことで。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
113
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 私は現場を拝見いたしましてから、直ちに県や市の当局と相談をいたしまして、できれば改築をしたい、その場合はこういった大きな道路に面した騒々しいところでなくて、奥のもっと静かなところにしたらどうであろうか。また県や市の財政の
状況
からいま直ちに移改築をすることが困難であるならば、最小必要限度の改修とか補修とか塗装をすべきではないかということを指示して帰ったわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
114
○
小平
芳平
君 いや、それは厚生省は指示するだけで
調査
が終わるんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
115
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 従来から
原爆病院
につきましては、国と県と市とで費用を分担いたしまして
整備
するような
方針
をとっておりますので、県や市がいろんな事情で、たとえば、最近財政が苦しいというようなことになってまいりますと、計画も変わってまいりますので、早く
地元
でそのあたりの具体的な計画を煮詰めてもらう必要があるわけでございます。そういう意味で先ほど申し上げたような点を指示して帰ったわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
116
○
小平
芳平
君
厚生大臣
、そういう点がきわめて不満なんですがね、それは私
たち
の基本的な考えは
国家補償
と、あるいは
援護法
ということで、先ほど来の質疑や応答が続いておりますが、それに対して大臣が答弁されることは、そういう
国家補償
、国家賠償ということには直ちにつながらないということを繰り返しておられます。繰り返しておられますが、現にその写真でごらんになるような、そういう
病院
へ
原爆
被災
者の方が入院をしていらっしゃる。長い人はもううんと長く入院していらっしゃる。騒音も、
局長
が言っておられますが、騒音もひどい。窓にさわると窓が外へ落ちるから手を触れないようにというような、そういう
現状
にありながら、厚生省は、ただ県と市へ指示して帰ったと、国こそ一番の
責任
があるんでしょう。それは
援護法
、国家賠償と言えば、また繰り返しになりますので、そういうことは繰り返しませんけれども、国こそが最大の
責任
者でありながら、指示して帰ったとは何事ですか。そういう点が私はどうしても納得いきませんが、いかがですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
117
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 先ほども申し上げましたように、この種の
事業
につきましては、国と県と市とさらに日赤も入りまして、みんなでよく相談して
方針
を決定して、その
方針
に基づいて改築をするなり、あるいは改修をするなりというのが普通でございますので、そのようにお願いした次第でございます。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
118
○国務大臣(田中正巳君) この
原爆病院
の実態、いま写真を拝見いたしました。かねがね私も老朽しているということを聞いておりますが、仕組みは
国立
ではございませんものですから、国が全般的にこれについて独自の
立場
でやるという仕組みになっておらないと思いますが、しかし、さようなことを申してもいたし方ございませんので、積極的にひとつこれが何らかの形でもって使用に、十分安心して使用できるように、ひとつ
関係
者の
意見
を詰めるようにいたしたいというふうに思っておりますので、積極的にやりますので、若干時間をひとつかしていただきたい、かように思います。 〔理事
山崎昇
君退席、
委員長
着席〕
小平芳平君(小平芳平)
119
○
小平
芳平
君
局長
は初めは指示して帰った、その次にはみんなで相談してというふうに言われますが、大臣、もうこうしたこの
原爆病院
の窓なり建物が崩壊したり、そういう事故が起きたらどうしますか。それは県や市があるいは日赤が一生懸命やらなかったからいけないんだと、国はちゃんと指示をしたじゃないかと、そんなことが言えますか。いかがですか、大臣。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
120
○国務大臣(田中正巳君) まあ、
局長
が指示をいたしたということについては、若干言葉が足りなかったんじゃないかというふうに思います。要は、これについては費用分担の現在までのしきたりというものがございますから、まあ、これを進めるようにというふうなことを申したものというふうに私は理解をいたしますが、しかし現実が現実ですから、私はもっと国が積極的にこの問題について取り組むべきものであるというふうに思います。ただここでもって国が一切合財を挙げてやるということにお答えをいたすことについては、私は困難だと思うわけでございまして、やはり従来のシェアというものがあるようでございますから、そうしたものを踏まえつつ財政当局とのまた相談も必要でございますが、いずれにしてもこうした問題に取り組む、推進をする国の姿勢なり積極性というものが問題だと思いますから、これについては、先生の御指摘もございますので、積極的にわれわれはこの問題の前進を図るように今後努力をいたしたいと、かように思います。
小平芳平君(小平芳平)
121
○
小平
芳平
君 それは、大臣、私が指摘しているばかりではなくて、この
原爆病院
あるいは
研究体制
につきましては各
団体
の
代表
の方がほとんど発言されておられる点なんです。 そこで大臣としては、従来の厚生省の考え方、こんなまるっきりいつ壊われて、いつ崩れてくるかもわからないような病棟に
被爆者
の方がずっとこう二十四時間
生活
をしていらっしゃるのですから、それを見て
局長
が現地へ行って指示をしてきたなんという、そういう考え方がまことに間違っていたということをお認めになりますか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
122
○国務大臣(田中正巳君) だからさっき私が申すように、単に指示をいたしたという言葉は言葉足らずだろうと私は思います。したがいまして、私は厚生省の
責任
者でございますから、したがって、この問題については積極的に取り組むように各方面と折衝をいたしたい。各方面というものの中には
関係
の市、県あるいは日赤等もございますが、基本的には私は財政当局との話し合いなしにはこのことについて前進をいたさないわけでございますから、そうしたものを含めて積極的にひとつ事が具体的に前進するように努力をいたしたいと、かように申し上げているわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
123
○
小平
芳平
君 それ以上具体的には答弁できませんかもしれませんが、どうも従来の厚生省のそういう態度から見てきわめて私は不満に思い、不信にも思います。したがいまして、大臣から至急具体的なこのスケジュールを立てていただきたい。もう一日を争うのがこの建物の
現状
です。ですから積極的に一生懸命でなるべく早くっておっしゃるだけでなくて、もう少し具体的に早く方策を立てて取り組むのが当然だと、そうでなければこうやって朝来審議をここで重ねても何にもならないじゃないですか、いかがですか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
124
○国務大臣(田中正巳君) ただいま私が申しているとおり、これについて積極的にひとつ
関係
方面と協議に入り、具体的に施策が進むようにということを申しておりますが、スケジュールというのはどういうことをおっしゃっているのか、たとえばいつ幾日までにこの問題の具体的なセットアップをいたすというようなことを先生お求めになっているのではなかろうかと推察をいたすわけでございますが、しかし私どもといたしましてはいろんな方面との折衝もございます。また率直に申しましてこの種の
部分
のシェアについて、恐らく具体的に出てくるということになりますと、話が進んでくると、いろいろと実はシェア論が問題になるだろうと思うわけでございまして、そうした中にあって財政当局との折衝等もございますので、なかなか実はその衝にある者にとっては容易なことではあるまいというふうに私懸念しながらも、なおかつある程度の見切りと勇気をもって申し上げているわけでございますので、ひとつその点は私の誠意をおくみ取り願いたいというふうに思います。これは国が全額持ってやれるものならば、これは時と場合によってはそういう約束も近い将来、たとえば二、三日中に財政当局と話して何とかできるだろうというふうなことも考えられますが、そうしかく簡単ではございませんので、したがって、これについては若干の期日をかしていただき、とにかくこれは速やかにやらにゃならぬものだというふうに私は認識をいたしておりますので、私の誠意にひとつ任せていただきたい、かように思います。
小平芳平君(小平芳平)
125
○
小平
芳平
君 まあ、そのくらい、そういうことしかきょうは御発言できないかもしれませんが、どうもあの
局長
のさっきの指示してきたも、そうですけれども、取り組み方が私はきわめて問題であって、これはシェア論とおっしゃいますけれども、そのこと自体を私
たち
はおかしいと言って問題にしているわけですから、そういうことを余り理由になさらないで、早く
対策
を立てるべきだというふうに要請をいたします。 それから次に、今回の法改正によりまして、改正の要点につきまして御説明いただきたいと思いますことは、
保健手当
、
特別手当
、
健康管理手当
、それぞれ金額をこれこれに引き上げますということがこの資料に出ております。要綱に出ております。この該当者数も出ておりますが、この理由をわかりやすく説明していただきたいんです。
保健手当
は二キロメートルの区域内で
被爆
した者に対し月額六千円、その該当者数が四
万三
千百八十九人ですか、そういう点をひとつ、この
保健手当
と
特別手当
と
健康管理手当
について、どうしてそういう条件をつけるか、また金額はどういうところから月額六千円なら六千円というものが決定されるのかということをわかりやすく御説明いただきたい。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
126
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) まず
保健手当
でございますが、これは多量の
原爆
放射線
を浴びた方々は、いま
病気
がないような方々であっても、今後
病気
が出てくるおそれがございますので、健康の保持、増進を図っていただくために六千円のお
手当
を差し上げるものでございまして、その
手当
は休養とかあるいは娯楽とかレクリエーションとか、そういうふうなものにお使いいただいて健康の保持、増進を図っていただいたらどうかという趣旨のものでございます。 また
特別手当
は
原爆症
の
認定
患者
に支払われるものでございまして、
認定
患者
が
医療機関
まで往復する車馬賃とか、あるいは栄養補給する、または特に栄養剤等を購入して服用すると、そういった費用に充てるためにお払いするものでございまして、本年十月からは二万四千円に引き上げられるわけでございます。で、この額はこれから申し上げます
健康管理手当
の二倍となっておるわけでございます。で、
健康管理手当
は、造血機能の
障害
とか、肝臓機能の
障害
とか、政令で定めております十の健康
障害
があります場合に支払われる
手当
でございまして、そういった方々の療養
生活
の安定を図るために支払われる
手当
でございますが、本年十月からは一万二千円に引き上げられるわけでございます。この一万二千円という額は、従来から国民年金の老齢福祉年金と同額に定めることにいたしております。そういう基本
方針
に基づいて、まずこの
健康管理手当
の一万二千円が決まるわけでございます。で、そのあとで、
認定
患者
の
特別手当
についてはその倍額にする、つまり二万四千円にする。また新たに設けられました
保健手当
におきましては、これは現在おおむね健康な方でございまして、その健康の保持増進のために使われる費用でございますので、他の
手当
との金額のバランス、均衡を考慮いたしまして、
健康管理手当
の半額の六千円としたものでございます。
小平芳平君(小平芳平)
127
○
小平
芳平
君 どうして老齢福祉年金に合わせるのですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
128
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) これは原価計算をして、たまたま一万二千円になるというものでもなく、なぜ老齢福祉年金に合わせるかということについての的確な説明もございません。かつてこの制度が創設されました当時は、むしろ老齢福祉年金よりも額が多かったのでございますけれども、だんだんと接近してまいりまして、現在は老齢福祉年金と同額にしてあるということでございます。
小平芳平君(小平芳平)
129
○
小平
芳平
君 そうしますと、今度は老齢福祉年金が、大臣がしばしば答弁されましたように、月二万円ということになれば、
健康管理手当
も二万円に引き上げるのですか。あるいはかつて老齢福祉年金を上回っていたという時代に戻そうという努力をなさるのですか、いかがですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
130
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 明年度の
予算
要求に当たりましても、一応基本的な線としては、老齢福祉年金と合わせるという考え方で進みたいと思います。先ほど申し上げましたように、過去数年間の経緯を考えますと、老齢福祉年金にさらに幾らか上積みするということは、きわめて困難であろうと考えております。
小平芳平君(小平芳平)
131
○
小平
芳平
君 きわめて困難であろうというふうに考えるのはおかしいじゃないですか。まだ何もやらないうちにきわめて困難であろう、それじゃ前進しませんね。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
132
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
原爆
対策
も
原爆特別措置法
一つとりましても、いろいろな施策があるわけでございまして、はっきり申しましてかなりの財源を必要とするわけでございます。したがいまして、相互関連して考察をいたしますと、相対的に決めていかなければならないという問題ではなかろうかと思います。そういうふうな基本的な考え方をもとにいたしました場合に、過去数年間の経緯、経験からいたしまして、老齢福祉年金よりもさらに上積みをするということは、いまのところきわめて困難であると考えております。
小平芳平君(小平芳平)
133
○
小平
芳平
君 大臣はいかがですか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
134
○国務大臣(田中正巳君) 今後のこの種の
手当
、たとえば
特別手当
等の金額について、いかように持っていくかにつきましては、今日のところ、まだ明年度の
予算
要求の省議もいたしておりませんから、したがって、私としては諸般の
状況
を見て決定をいたしたいというふうに思っております。まあ、いま公衆衛生
局長
は従来の趨勢を見ながら一応の傾向論として現局の
立場
を申し述べたものと思いますが、これについては諸般の施策、また老齢福祉年金の今後の金額、財政事情その他いろいろな問題等々を勘案をいたしまして、今後慎重に決めたいというふうに思っておりまして、いま明年幾らにいたしたいとか、要求をいたすということについては、まだ
結論
を得ていないというのが今日の
実情
であるということを申し上げておいた方がよろしいというふうに思います。
小平芳平君(小平芳平)
135
○
小平
芳平
君 じゃあ次に、
長崎
の場合は恵の丘
長崎
原爆
ホーム、
社会福祉法人
でありますが。こちらへ私
たち
が訪ねたときに、このホームから
要望
は二項目でした。その一つは、
一般養護
ホームの定員百五十名を、五十名の
特別養護ホーム
ヘの切りかえを早く実現してほしいということが一点、これは厚生省にも
報告
がとうに入っていらっしゃるでしょう。それから第二項目は、大型バス運行可能の道路の建設を早くしてほしい、従業員を含め四百五十名の人が
生活
をしておりますので、防災上も問題があるということでしたが、この二点についてはどう処置されましたか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
136
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
養護
ホームの
一般養護
ホーム百五十床のうち、五十床を
特別養護ホーム
に切りかえたいというお話はよく聞いております。
広島
の
養護
ホームの場合にも同じ問題がございますが、特に
長崎
の場合には
特別養護ホーム
の建物の、特に廊下の幅等の規格基準がございまして、
一般養護
ホームから
特別養護ホーム
に切りかえる場合には、廊下を広くしたりしなければなりませんが、それが不可能でございますので、
一体
どのようにするか、別に増築をするかというようなことを含めて現在県の当局と相談をしておるところでございます。その点は
広島
の場合はあのような建物でございますので、規格基準としてはいまのままですぐ切りかえられるようになっております。 次に道路の問題は、これは数年前から出ている問題であろうと思います。県道の
整備
の問題ではないかと思うのでございますけれども、かなり都心部から離れた山の上の方にある
施設
でございますので、この拡幅をするということは
地元
の県としてはかなりの負担になろうかと思います。そういう
関係
で、まだ計画が実現していないと思うのでありますけれども、この点につきましても、厚生省としては
地元
の
県当局
、また必要があれば建設省等にもお願いをして、できるだけ早く実現するようにいたしたいと考えております。
小平芳平君(小平芳平)
137
○
小平
芳平
君 この
養護
ホームはほとんど満員で、申し込んでも待機中の人が相当いらっしゃるということですが、そうした
実情
をどう把握しておられますか。そして
対策
はとろうとなさっておりますか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
138
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) かなりの待機
被爆者
があることは
報告
を聞いております。その場合、特に
一般養護
ホームよりも
特別養護ホーム
の方にたくさんの希望があるということも聞いております。そういったことも含めまして五十床の転用の問題がまず起こってきたわけでございますけれども、今後さらに必要があれば、
一般養護
ホームについても、
特別養護ホーム
についても、増床、増設といったことを検討いたしてみたいと考えております。
小平芳平君(小平芳平)
139
○
小平
芳平
君 申し込んで待機中の方はどのくらいいらっしゃるんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
140
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君)
長崎
の場合、
一般
につきましては六名、特別につきましては十六名でございます。
広島
の場合には、
一般
が十七名、特別が三十名と
報告
されております。
小平芳平君(小平芳平)
141
○
小平
芳平
君 そうすると、特別に待機しなくてもいいような
対策
をいまここでとろうという考えはないということですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
142
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) この点につきましても、先ほどの
原爆病院
と同様に、両県またさらに両市とよく相談をしながらやっていることでございまして、現在のところは両方とも早急に実施したいと申し出ておりますのは、
一般
ホームの五十床を特別ホームに切りかえたいという希望だけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
143
○
小平
芳平
君 じゃ次に、
放射線影響研究所
につきまして、確かに旧ABCCを引き継いだということでありますが、本当に日本の
政府
が主体的に計画を立て、これから
運営
をしていかれるのか、あるいは従来のアメリカの
影響
下に、要するに
原爆
加害者の
影響
下にそういう
調査研究
が進められていくのか、そういう点はいかがですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
144
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 財政につきましても法人の役員につきましても、日米折半で
運営
されていく法人でございます。このような基礎に立ちまして、日本側といたしましては、日米対等、さらに日本がイニシアチブをとるというような形で今後の
運営
をやってまいりたいと考えておりまして、先般も四月に第一回の理事会をやったわけでございますけれども、今後は特に
事業
の
運営
面について専門科学評
議員
会が開かれるわけでございますが、そういった理事会とか評
議員
会の場を通じて、また実際の業務の遂行面について日本の主体性を強く出してまいる所存でございます。
小平芳平君(小平芳平)
145
○
小平
芳平
君 では次に、先ほど
浜本
委員
からもずいぶん問題提起されました
保健手当
の二キロメートル二十五レムということですが、これは
局長
も二キロは便利だというふうな先ほど答弁に表現をしておられたのですが、それに対する疑問は何ら持ってないんですか。もう二キロは便利だから限定するということなのか、あるいは科学的に何ら疑問がないということなんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
146
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 厳密に申しますと、二キロでとりました場合に、
広島
では四・四レム、
長崎
では一八・三レムとなってしまうわけでございます。しかし、これはその前後の五十メートルとか百メートルが非常に問題なわけでございます、距離の自乗に反比例して
放射線
は減衰をいたしますので。このような実態でございますけれども、三十五年の特別
被爆者
の制度を創設いたしましたときも二キロで出発いたしましたので、
対象者
の把握が一応過去においてされておるというような面を考慮いたしまして二キロとしようとするものでございます。
小平芳平君(小平芳平)
147
○
小平
芳平
君 そうすると、別に科学的根拠があって、学問的な根拠があって二キロというふうに今回決めようというのではなくて、便宜上二キロで決めようということですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
148
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 科学的判断並びに行政的判断に基づいて二キロにしようとするものでございます。厳密に申しますと、二十五レムの距離は、
広島
では一・七キロメートル、
長崎
では二千メートル弱といったところが科学的に正しい距離でございます。
小平芳平君(小平芳平)
149
○
小平
芳平
君 何ですか、科学的に正しい距離だから
——
科学的に正しい距離はもっと二キロより狭くてよろしいんだが、行政の便宜上二キロで決めようということだということですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
150
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) そういうことでござ います。
小平芳平君(小平芳平)
151
○
小平
芳平
君 そうすると、この
放射線
の保健学自体まだ歴史の浅い学問であって、今後科学の進歩によって
意見
が変わってくることも十分予想されるということを前提として取り組んでいるのではないのですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
152
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 今後科学の進歩によって、あるいは
放射線
医学の進歩によってこういった見解が変わってくる、あるいは
原爆
の
放射線
の強さそのものの推計値がときどき変わっております。
昭和
三十二年の推計と四十年の推計では変わってきておるわけでございますが、そういう ことがございますれば、今後はそういった新しい考え方に基づいて考え直すべきではないかと思い ます。
小平芳平君(小平芳平)
153
○
小平
芳平
君 大臣、いまおっしゃるような二キロメートルというのはそういうことだそうですが、ちょっと疑問に思いませんか。いかがですか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
154
○国務大臣(田中正巳君) いろいろと学問的には諸説があるようでございますが、厚生省としては二十五レム以上浴びた場合に
身体
に
障害
を生ずるというふうに判断をいたし、それを根拠にしてこの制度を起こしているわけであります。いま
局長
の言っていることは、結局二十五レムを非常に厳格に適用いたすと、
広島
の場合一・七キロというふうになるのであるが、しかしそこはそれより縮めてやるということになれば問題があるが、しかしとにかく二キロというところまで、若干言葉はちょっと平板であるいはおしかり食らうかもしれませんけれども、二キロというところまで多目に見てその
範囲
というものを決めた。したがってこれについては、必要な人
たち
は、われわれの
立場
で考える必要な人は網羅をしている。若干場合によってははみ出ることがあってもそれは許されるネグリジブルな
範囲
であろうということで二キロというふうに決めたものというふうに私どもは理解をするわけでございまして、したがって、決して科学的根拠よりさらにつぼめたということではないというふうに思いますので、したがって二キロという線の引き方が
被爆者
にとって酷であったりあるいは必要な人が漏れたりということではないということでお許しを願えるものではなかろうか。なお学問的にこの二十五レムというものをもっとさらに低い数値に変えなければならないということがあると証明され、これが定説となった場合にはこれについて
改定
を加えることはやぶさかではないというのが
局長
の答弁の趣旨であったというふうに思いますから、したがって一・七に切らないで二にしたということはけしからぬというふうにはおとりになっておらないと思いますが、私どもとしてはそうしたような気持ちで、少なくとも必要な人が漏れることのないようにといったような配慮でこのような線を引いたものというふうに私は理解をいたしております。(「もっとふくらましてもいいわけだ、行政が判断すれば」と呼ぶ者あり)ただいまの不規則発言に答えるわけではございませんが、学問的根拠が
確立
をいたしますれば、私どもとしてはこの線というものはしゃにむにこれをいつまでも墨守するものではないと。要は学問的根拠によってそれが
確立
した説として定着をし、オーソライズされた場合にはこれについて再考いたすことについてはやぶさかではないということだろうと思います。
小平芳平君(小平芳平)
155
○
小平
芳平
君 きわめて行政の判断が主体のことを述べておられますけれども、実際
被爆者
の方は線で切られるわけですから、ですから、ただ便利だというような表現ではなかなか納得しがたいものが残るということを御承知ください。 それからこれはもう先ほどお話が出ましたが、四十年の実態
調査
とそれから五十年、今回おやりになろうという
被爆者
実態
調査
につきまして、まず第一に四十年で
調査
したことと今回とりかかろうということの違いがありましたら相違点を御説明いただきたい。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
156
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 基本的には四十年の結果と本年の
調査
の結果を比較しようといたしておりますので、内容は同じでございます。ただ客体の数が本年の方が多うございますし、また
調査
の種類の名称等が若干変わっておりますけれども、基本的には両方の
調査
が比較できるようにデザインをされております。
小平芳平君(小平芳平)
157
○
小平
芳平
君 四十年の
調査
は先ほど
局長
がちょっと答弁しておられましたが、基本
調査
、それから
健康調査
及び
生活
調査
、この点については発表がありましたですが、この基本
調査
と、それから
健康調査
及び
生活
調査
は中間
報告
という形で発表になったのみで、最終
報告
というものが出るはずでありながら出ないで終わったという経過なんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
158
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 四十年の
調査
の基本
調査
とかあるいは
生活
調査
、
健康調査
、こういったものについて中間
報告
しかされていないわけでございますけれども、結果的には中間
報告
をもって最終
報告
にかわるような内容のものになっておると思います。また特に問題になりますのは、本年の
調査
で申しますと事例
調査
に当たる
部分
ではないかと思うのでございますが、これにつきましては厚生省としては
生活
調査
の特別
調査
としていわゆる事例
調査
を四十年に行い、
生活
調査
を集計したり、解析したりするときの参考にするというような
方針
で臨んだ
調査
であり、また
対象
世帯も二百四十世帯という小さな世帯でございますので、詳細細部にわたっての分析はなかなかむずかしいという面もございまして、厚生省としては発表いたしておりませんが、この当時の事例
調査
を担当なさった学者のうち、慶応大学の先生は学会においてその結果を公表なさっております。
小平芳平君(小平芳平)
159
○
小平
芳平
君
局長
、四十年
調査
に対するこういう点がまずかったという点はないんですか、あるんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
160
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) これについてはいろいろな御
意見
があるようでございますけれども、私どもはあの
調査
はあの
調査
として一応の
成果
をおさめまして、その後の
特別措置法
の
制定
にも役立てましたし、またすでにございました
医療法
の改善にも役立ってきたと、大いに役に立ったと考えております。
小平芳平君(小平芳平)
161
○
小平
芳平
君 それは役立ったことは役立ったのですが、反省はないんですか、反省は。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
162
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 本年度の
調査
は、四十九年度から準備
委員会
をつくりまして、みっちり一年かけて
調査
のやり方、デザイン等について検討をいたしました。しかし、四十年度の
調査
の場合には、それに比べますとかなり準備期間が短かったようでございまして、そのような欠点は幾らかあったように思われます。
小平芳平君(小平芳平)
163
○
小平
芳平
君
局長
は知って言っているのか、知らないで答弁しているのか。じゃ慶応大学の中鉢教授は学会で発表なさったと言われますが、ほかのお二人の方は発表してないんですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
164
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 私は発表していらっしゃらないというふうに聞いております。
小平芳平君(小平芳平)
165
○
小平
芳平
君 私は三人とも発表なさったというふうに 三者三様に発表なさったというふうに聞いておりますが、どうですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
166
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 四十年のいわゆる事例
調査
そのものを発表なさったのは中鉢先生だけでございまして、 〔
委員長
退席、理事
山崎昇
君着席〕 そのほかの
先生方
はいろんな書物とか、あるいは
団体
等の講演会などで四十年の
調査
に対する御
意見
、批判をお述べになっておるわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
167
○
小平
芳平
君 四十三年八月の「世界」に出ておりませんか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
168
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 四十三年八月「思想」という雑誌の八月号に、石田忠先生が「
原爆被害
者の
立場
」という論文をお出しになっております。これは内容を拝見いたしますと、いずれも論文でございまして、事例
調査
の内容を発表したものではございません。また、同八月号の「世界」にクマタニミキオ(隅谷三喜男)教授が「
被爆
問題の原点と現実」という論文をお載せになっておりますが……
小平芳平君(小平芳平)
169
○
小平
芳平
君 クマタニじゃないでしょう。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
170
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) スミヤミキオ(隅谷三喜男)先生、
——
失礼いたしました、訂正いたします。 ええ……
小平芳平君(小平芳平)
171
○
小平
芳平
君 まあ、そこで読んでたんじゃね、ちょっと……
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
172
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) はい。これにつきましても、論文並びにほかの資料からの引用の数字が多いように思われます。
小平芳平君(小平芳平)
173
○
小平
芳平
君 私が申し上げたいことは、十年たっておりますので、厚生省の担当者もかわったでしょうし、しますが、
被爆者
の方は依然として十年前も今日も
被爆者
の方がいらっしゃるわけですから、したがって、この四十年のいきさつをこれ以上、私は
先生方
から若干御
意見
は伺ってまいりましたが、まいりましたが、四十年のことはこれ以上申し上げませんから、今回はそのときの経験を十分生かすのが当然じゃありませんか。それをただ、まことにうまくいったと、効果があったと、あるいは中間発表をしただけで最終発表なしに終わったと担当された先生はおっしゃっているんですが、中間発表でも十分だったというふうなその取り組み方が問題がありゃしないかと、もっと当時のいきさつを十分検討し、今回の
調査
に十分それが生かされていかなくちゃならないということを申し上げたいのですが、いかがですか。 〔理事
山崎昇
君退席、
委員長
着席〕
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
174
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 御指摘のとおりでございます。したがいまして、本年の実態
調査
の
委員会
には、四十年の当時の
先生方
のほかに各種の分野の
先生方
、また
団体
の
代表
の方にも入っていただきました。また、四十年の
調査
で最も技術的に問題になりましたのは、コントロールがとってなかったということでございましょうが、その点につきましては、今回は一年間準備
委員会
等の検討期間もございましたので、遺漏のないように設計、計画されておるつもりでございます。
小平芳平君(小平芳平)
175
○
小平
芳平
君 遺漏のないようにいくかどうかが問題ですので、十分考えてやっていただきたい。 それから、この点についても先ほど問題が出ておりますので詳しくは申し上げませんが、
認定制度
についてですね、
認定制度
について。私
たち
はそういう
認定制度
で切り捨てていくのは根本的に考えが違うということを主張をいたしておるわけですが、これに対して厚生省は
現行
認定制度
は当然のことであって、これをやめるなんということは毛頭考えてないような意味の答弁だったように伺いましたが、この運用につきまして、やはりこの公害問題の
認定制度
でいつも問題になることがあります。それはこの健康被害がどこまで及んでいるか、医学的に不明だということですね。たとえば光化学スモッグによる健康被害がどこまで及んでいるかということが現代医学自体がよくつかんでおらないというようなところから、水俣病の
認定
についても環境庁が通知を出したり、あるいはまた現在もめているというようなことも御承知だと思います。したがって、
原爆
の場合もまさしく現代医学がよくわからない分野があるということを前提に判断していただかないと困るんですが、困ると言うよりもそれが当然だと思うんですがね。そうでしょう。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
176
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 基本的には御指摘のとおりであると思います。ただ、公害の場合と違いまして、
原爆
の場合には戦後三十年間いろんな
調査
、
研究
が行われまして、かなりの資料があるということでございます。先ほども申し上げましたように、はっきりした
原爆
に起因するといったものは白血病その他の悪性腫瘍、あるいは白内障、皮膚の
放射線
による後
障害
、それに生殖
障害
、そういったものでございまして、最も問題になってまいります高血圧だとか肝臓機能
障害
、腎臓
障害
、こういったものとの
関係
は残念ながら証明しにくいような
状況
にあるわけでございます。しかしながら、基本的にはただいま先生が御指摘になったような方向で考えるべきであると思いますので、
特別手当
の
認定制度
、
原爆医療法
に基づきます
原爆症
の
認定制度
の運用につきましても
被爆者
の
年齢
構造の変化その他を勘案しながら逐次改善をしていく必要があろうと考えます。ただ、これにつきましては、先ほども申し上げましたように、現在一応
認定
患者
にはあのようにほかに比べると高い
手当
も払われており、また
医療
手当
も
認定
患者
だけでございますので、そういった特別の恩典がついておりますので、余り一気に広くゆるめてしまうということもかえって不公平になるわけでございまして、その辺の
調査研究
なり検討が今後の重要な
課題
になってくるのではないかと考えております。
小平芳平君(小平芳平)
177
○
小平
芳平
君
厚生大臣
、この点につきましては、先日の参考人の御
意見
、六月十七日の参考人の御
意見
にも十分出ておりましたのでお聞きと思います。で、公害の場合より
原爆
の場合はもう三十年の
調査
でいろんな資料も整っているというふうに
局長
言われますけれども、必ずしもそうでないということが先日の参考人の御
意見
だったというふうに私は伺っていたわけです。したがって、この疑いのある者ですね、疑わしい
——
完全に
原爆
とは
関係
ないという疾患ならともかく、そうした医学上はっきりしない、疑いがあるけれどもそうでないとは言い切れないというような場合は
認定
していくように、そういうふうに取り組んでいく。疑わしきは
救済
するという中には、疑わしきは
医療
するという中には、それを何でもかでも取り払って
認定
してくれと言っているんじゃないわけですが、そういう点いかがですか。
政府委員(佐分利輝彦君)(佐分利輝彦)
178
○
政府委員
(
佐分利輝彦
君) 方向としてはそのような方向にあろうかと存じますが、ただいま御指摘がございましたように、
特別手当
の
対象
を
拡大
するという前に、やはり現在の制度あるいは従来の経緯から考えますと、疑わしい、疑わしさの濃い者についてはまず
健康管理手当
の
支給
対象
にするというようなところから始まるのではないかと思われます。そういう点も勘案いたしまして四十九年度は
——
従来は八つの
障害
でございましたものを、呼吸器の
障害
と運動器の
障害
を現場の担当のお医者さん方の集約された
意見
という形で
医療
審議会の中で
地元
の
先生方
からこの問題が持ち出され、慎重に検討した結果、ただいま申し上げた二つの
障害
を追加したわけでございますが、そのような経過が今後もとられていくのじゃないか。また、そういった
健康管理手当
の
対象者
の中から、先生が御
要望
なさいますように、また
特別手当
の
対象者
として認められていくような者も出てくるというような経過を踏むのではなかろうかと考えております。
小平芳平君(小平芳平)
179
○
小平
芳平
君 大臣。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
180
○国務大臣(田中正巳君) おおむねこれについてはいま公衆衛生
局長
が答弁したとおりに私は考えております。あの参考人の御
意見
の中には、
認定制度
というものを全廃してしまえという御議論がありましたが、ああいう御議論ではこの二法の仕組みと全く合わないわけになりますので、全く廃止してしまえという御
意見
は、いま言ったように、もう少し
認定
についてはゆるく配慮をしろというふうな御
意見
だろうと私は承っておきたいと思いますが、全くやめてしまえばこの仕組みとはもう合わなくなってしまうわけでございますので、
認定制度
というものはこういう仕組みである以上は私はやはり置かざるを得ない。要は、私どもとしては
認定
患者
であるべき者がこれから無理に外されるようなことがあっては絶対にいけないというふうに思っているわけでございまして、これについては十分科学的な根拠をもって当たるべきでありますし、いやしくも財政上の理由等で事をしぼるなどというようなことがあっては絶対にまかりならぬというふうに思っているというのが私のこの問題に対する現在の考え方でございます。
小平芳平君(小平芳平)
181
○
小平
芳平
君 それからこれでもう
最後
ですが、大臣、
国家補償
か
社会保障
かということで再三論議されておりますが、参考人の方の中で
長崎
県手帳友の会事務
局長
の鈴木参考人の御
意見
は、
現行
の
原爆
二法も
国家補償
の
精神
から出発したはずだということをしきりに、
——
しきりにというわけでもないですが述べておられますが、これは当然だと思いますが、いかがですか。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
182
○国務大臣(田中正巳君) あの御発言の趣旨というのを私は黙って聞いて考えておりました、実は。わからぬわけでもないんでございますが、恐らくおっしゃりたい趣旨というものは、こうした
原爆
二法というものも、やはり戦争に起因をして、そして他の方々には経験のない多量の
放射能
を浴びたと、そのために健康やあるいは
身体
に傷痍を負い、またその不安があるといったような者に対して着目をしてこのような制度を打ち立てたと、さすれば、戦争によってこういうふうに気の毒なあるいはまことに憂慮すべき
状況
になった方に
政府
が手を染めたということはそういうことについての自覚と反省があっての上でやったものであろうというふうなことをるる強調し、そこからそういう御趣旨で申し述べたものではなかろうかというふうに私聞いたわけでございまして、そういう趣旨ならばまさしくこの制度の読み取り方、解釈の上において当てはまるのではなかろうかと、かように思っておったわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
183
○
小平
芳平
君 現在の二法も、国家が
補償
しよう、国家が
補償
するという
立場
から考えられたもので、出発したものであるということに対してどうお考えですかって尋ねているわけです。
国務大臣(田中正巳君)(田中正巳)
184
○国務大臣(田中正巳君) 国家が
補償
するいわゆる損害賠償を補てんする、そうしたような思想のものでは私はないというふうに思います。ただ強いてあの方のお気持ちというものをそんたくいたすならば、やはりこれも戦争に起因をしてこのような傷痍を受けあるいは一生そういったようなオブリゲーションを背負ったという人に対して国がめんどうを見ているという趣旨であろうと思いまして、いわゆる国家賠償
責任
論に立脚いたした、その論理の上に、延長線上にある施策というふうには私は考えておりませんし、あの方はどういう趣旨で申したか私は知りませんが、そういう趣旨でならば私どもと
意見
が違うし、前者の場合でありますればある程度理解ができるということであろうというふうに思っております。
小平芳平君(小平芳平)
185
○
小平
芳平
君 そこで、平行線の議論になりますので繰り返しませんが、私は、先ほど来申し上げますように、現在の
原爆
二法のやり方ではとうてい困難であると、現在の
原爆
二法を手直しするだけでは、最初に申しましたような
原爆病院
のこれから、姿から見ましても、まさしく国の
責任
は
一体
どこにあるのかと、こんな無
責任
な国のやり方があるのかということが相変わらず続く結果になるということを申し上げておきたいと思います。 で、児童家庭
局長
が見えておりますので、前回の
委員会
のときにMCLS、川崎病について取り上げたときに児童家庭
局長
が間違った答弁をしておりますので、いまから申し上げる三点をひとつはっきり訂正をしておいていただきたい、今
国会
ちょっともう発言の機会がないかもしれませんので。 第一点は、
医療
研究
助成
補助
金と心身
障害
研究
補助
金を取り違えて答弁されたのじゃないかという点が一つ。 それから第二点は、MCLSが日本にのみ多発していると、韓国とハワイで少数の
報告
があったということ、日本に何らかの
原因
があるんじゃないかということは厚生省が任命した
研究
班がそう
報告
をしているということを私が指摘するのに対して、
局長
はよくわからない、よくわからないと答弁していたが、よくわからないでは困ります。 それから第三点は、四百万円で
病気
の
原因
が究明できるならそれでけっこうですが、難病
対策
は数千万円の
範囲
で
研究
をしてもなおかつ
原因
がわかったというのはごくわずか、ほとんど
原因
がわからない。数千万円の
研究
費で取り組んでもそうなのにこのMCLSの場合は四百万円で十分事足れりというような意味の発言をしておられますが、それはおかしい。以上三点について。
政府委員(上村一君)(上村一)
186
○
政府委員
(上村一君) 第一点の、これは六月三日の参議院の社労
委員会
ではなかったかと思いますが、
医療
研究
助成
補助
金百五十万円、心身
障害
研究
補助
金二百五十万はそのとおりでございますが、どうも私の記憶では
医療
研究
助成
金の
補助
金を
交付
する人が川崎さんで、それから心身
障害
研究
補助
金を
交付
するのが草川さんであるというのを逆に申し上げたんじゃないかというふうに思います。それは訂正さしていただきたいと思います。 それから、第二点の本邦に多発してないというふうに申したということでございますが、私その際申し上げましたのは、MCLSは御案内のように日本で川崎さんが発表されて、日本で診断基準をつくられた。同じような診断基準が外国にないわけでございますので、外国と比較して日本が多い少ないということはなかなか言い切れないんじゃないかということを申し上げたわけでございますが、全般的に疫学
調査
の結果等を見ますと、わが国では相当多く発生しておるというふうに見て差し支えないんじゃないかというふうに思うわけでございます。ただ、その場合に、四十七年に疫学的な
研究調査
をやっていただいたそのデータでは、岩手県とか、東京都とか、岐阜とか、三重、岡山、
長崎
、そういったところが高率であって、秋田とか、福島とか、栃木、そういった県では低いと。この高い県と低い県とがあって、それに対する疫学的な
結論
というのがなかなかわからないということでございます。一定
地域
に事実たくさん発生しておるのか、その
地域
の
医療
水準なりあるいは
医療
情報の収集のレベルというのが問題があるのか、その点は必ずしも明快じゃないというふうに思うわけでございます。現在、この疫学
研究
班の方から諸外国に照会をしておるわけでございますが、いままで照会されました結果では、韓国で五例、ハワイでは一件の剖検例があったという
報告
とともに、三十例の事例が
報告
されておりまして、その他の国々は日本から情報の収集を依頼したわけでございますけれども、日本の事情を聞きたいという程度の照会にとどまっておるわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
187
○
小平
芳平
君 簡単で結構です。
政府委員(上村一君)(上村一)
188
○
政府委員
(上村一君) はい。 それから
最後
に、
研究
費の、
研究体制
が十分だと申し上げたのは事実でございます。これは
研究
費、これまで約千五百万円昨年度まで
補助
してまいりまして、ことしは四百万円である。それで、この
病気
を
研究
する学者の層というのがまだ薄うございます。それから限られた
研究
者で行われておるということでございますので、今後の
研究
の進展、進みぐあいによりまして
研究
費のあり方をどうするかということは検討する腹づもりでございます。ただ、
研究
費の額について多い少ないの話でございますが、
研究
者から本年度の
研究
費の
申請
があります前に
研究
費をもっとふやしてもらいたいという話があったことは事実でございますが、現在では、少なくとも本年度の
研究
計画につきましてはそれに見合いのものであるというふうに私ども
研究
者から直接確認をしておるわけでございます。
小平芳平君(小平芳平)
189
○
小平
芳平
君 じゃ、また別の機会に、議題外のことですから、別の機会に詳しくいたしますが、速記録をごらんになればちゃんと間違って発言していることが出てるじゃないですか。それはちゃんと訂正しなくちゃいけませんよ、川崎先生と草川先生を。
政府委員(上村一君)(上村一)
190
○
政府委員
(上村一君) はい。これははなはだ申しわけなかったと思います。私もメモに従いましてお答え申し上げて、そのときに読み違えたというかっこうになりましたので、この点は慎しんで訂正させていただきます。
委員長(村田秀三君)(村田秀三)
191
○
委員長
(
村田秀三
君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時七分散会 —
——
——
・—
——
——