○多田省吾君 このように個人ビラにしましても、お互いに善悪でしかも信頼関係に立ってお願いしたはずの個人ビラでも、このように場合によっては
選挙の自由妨害罪ということで「四年以下の懲役若しくは禁錮」というような重刑も加えられる場合もあるというようなことで、これは非常に重大な問題だろうと思います。こういった問題に関しまして、もっと突っ込んでお聞きしたいのでございますけれども、新しく今度出てきた
法案の中には、機関紙の号外における
選挙に関する報道評論は、じゃあどの
程度までは許されるかということも、
衆議院でもこの本
委員会でもずいぶん論議が交わされたにもかかわらず、まだはっきりしたものが私は示されていないのじゃないかと、このように思いますし、それに対する最終的にその
選挙に関する報道評論になるのかどうかという判断は、選
挙部長のお答えによってもこれは司法当局が最終的に判断されるものだということになりますと、司法当局にもこれはよっぽど突っ込んでお聞きしないとこれは大変な問題になります。そのほか、新たに
選挙以外の
政治活動の際にも、今度は個人の匿名
献金をやりますと、やった者ももらった者も禁錮三年以下のあるいは二十万円以下の罰金に処せられるというような問題も新たに出てまいりました。このように司法関係の問題も時間をかけて私は突っ込まないと、この新しい
法案に対する論議にはならない。また重大な問題を含んでいる、このように思います。しかし、私はそのほかにもまだまだたくさんの重大な問題がございますので、残念ながらこの場でこういった問題をくるめて
質問する時間の余裕がございません。ですから、私はこれはまた別の機会に譲りたいと思います。じゃあ刑
事課長さんありがとうございました。
次に、私は前回触れましたが、ちょうど
自治大臣が退席されておりましたので、
大臣からお答えを開くことができなかったのですけれども、供託金の増額の問題をお聞きしたいと思います。これは選
挙部長の御
答弁がございました。これはもう一回繰り返して
大臣に
お尋ねしますけれども、御存じのように今度の
公職選挙法改正案には、供託金が三倍から三・三倍増額されております。
衆議院においては三十万円から百万に、
参議院全国区は六十万から二百万、
参議院地方区は三十万から百万、都道府県会
議員は六万から二十万、都道府県の知事は三十万から百万、全部三・三倍です。それから、地方議会における指定都市の
議員は五万から十五万、指定市の市長は二十万から六十万、おのおの三倍。市会
議員が三万から十万円で三・三倍。市長は八万から二十五万で三・一倍。町村長は四万から十二万の三倍と、このように地方議会を含めて三倍から三・三倍増額になっているわけです。で、
昭和四十四年の六十一
国会では、初め
政府案は
国会議員の場合は供託金を三倍に引き上げる、地方議会の場合は二倍に引き上げるとして
提出されたものでございましたけれども、これは余り
国会の場合三倍というのは多過ぎるということで、一律に二倍に修正した経緯もあるわけです。で、今度の引き上げは、はっきり申しまして
国民の被
選挙権というものに対する重大な妨害であり、経済力の弱い成年者は立候補できないという、こういう制度になってしまっているわけです。これは議会制民主主義の上に重大な問題ですから、私どもは三月末の党首会談でも、わが党の
委員長が
三木総理に対しまして、こういった供託金の増額は大き過ぎる、せめてやるにしても二倍以下に抑えなさいと、このように進言しましたけれども、取り
入れるところとはなりませんでした。
で、実は六月三日の朝日新聞にも、名古屋大学の田口富久治教授からこの問題で「論壇」に投稿が載っております。これは憲法十五条三項の成年者による普通
選挙の保障に対する重大な侵害であり、憲法四十四条の
選挙権、被
選挙権が収入なんかの差別によって差別されないという、こういう
規定から逸脱していると、こういう主張でございます。また、同じく朝日新聞の六月六日にも、一橋大学の憲法学の杉原泰雄教授からも、同趣旨の主張の論文が載っております。特に、こういった問題は外国では全然例をみないほど高額であると。ですから、これはこの供託金の大幅増額というものは、ちょうどこれは杉原教授の論文の中にありますけれども、次のように言っております。「機関紙誌の
規制問題を
国民主権、議会制民主主義、表現の自由(知る権利)という原理との関係において論じないのは誤りである。同様に、供託金問題を
国民主権、議会制民主主義、普通
選挙制度という原理との関係において論じかつ評価しないことも誤りというべきであろう。」という評価をしているわけです。ちなみに、外国の例を私
たち調べてみますと、イギリスの下院では百五十ポンド、約十万五千円ですか。ですから、
衆議院の百万と比べるとイギリスは十分の一ですね。それからフランスは千フラン、約六万円。ですから、約十七分の一という状況です。で、杉原教授の論文を見てみましても、外国では、先進諸国では供託金制度を設けていないのが普通だというんです。例外的に供託金制度を設けている国でも、いま申し上げましたように、ほとんど十万円を超えていない。また供託金返還の条件も日本ほど厳しくはない。日本は、
衆議院の場合は総得票を定員で割って、その五分の一以下であると供託金没収、法定得票数以下であると供託金没収ということになるわけです。ですから、こういう供託金を三・三倍も一律に大幅増額する。しかも、
参議院全国区なんかは二百万円ということです。ということになりますと、選
挙部長はいろいろその理由を申されましたけれども、私は、言葉は悪いのですが、いわゆる巷間言われる泡沫候補と言われるような、あまり得票を取らない方々もおられますけれども、じゃ、そういった方々の対策になるかと申しますと、私は決してならないと思うんです。そういった方々はやはり
国会議員の
選挙等においてあるいは知事
選挙等において、テレビに出られるということで、このぐらいの金はよろしいんだということで出る人も多いわけです。ですから、こんなものを、供託金を増額したって、そのような対策には私はならないし、またやるべきでもないと思うんです。また、そのほか、選
挙部長は、公営のお金がかかるようになったから上げたんだという理由もおっしゃいました。私は、後でも御
質問しますけれども、幾ら金のかからない
選挙と言っても、こんなに
国民の税金を多額に使う金のかかる公営
選挙は例がないと思う。しかも、それを理由に、
国民の経済力の弱い方でも成人はどなたでも立候補できるようにすべきであるのに、それを大幅に制限しているということは、私は議会制民主主義のやはり
後退である、このように思わざるを得ません。こういったことを
考えて、私は
——こういった論文を発表した教授の方々は、現行でも高過ぎるとおっしゃっておられるわけでございますけれども、私
たちは、上げるにしましてもせめて二倍
程度に抑えるべきじゃないかと、このように思うわけでございますが、ひとつ
自治大臣のお
考えをお聞きしておきたいと思います。