○神沢浄君 まあ
長官も苦しいと思うんです、私は。ただ、私は、なぜこんなような変則な事態を招いているか。
環境庁も
環境行政の
基本からはずれて、そして本来ならば名勝地に続いて一種に指定をすることの方がむしろより妥当性を持っておるようなところに三種指定などを行わなければならないか、これは
理由ははっきりしているわけですよ。これは要するに、この自衛隊へのあの演習場使用転換の約定の際に、まあきょうお見受けすれば、この団体、恩賜県有財産の
保護組合の方たちもおいでになっているようであります。この団体に国は払い下げを実は約定されているんですね。なぜそういう約定をされておるかというと、もっとさかのぼりますけれ
ども、この団体は、かつて北富士演習場が
アメリカの使用する演習場でありましたときに自衛隊の演習を行いました、その自衛隊の演習に対して自衛隊の使用排除の訴えをしたわけなんです。これはまあ厄介でもって、その裁判の見通しというのは、どうも法理論上からまいりましても国が敗訴するという、こういう見通しが濃厚になってまいりました。そこで、国としましては、この団体に執拗に接触をいたしまして、そうして自衛隊へのもうその当面する問題としては、その裁判の取り下げ、それからさらには自衛隊の演習場としての使用転換への賛成、こういうものを取りつけるために、もしそのことが実現がされる場合においては一部
地域を払い下げをいたしましょうという覚書の取り交わしをしているわけであります。覚書のここに控えがありますが、まあいろいろありますけれ
ども、特に関連のあるところだけを読み上げてみますと
——甲というのはその団体の方ですね。「甲が上記一の林業経営の再建整備事業を実施するための用地として払下げを希望している国有地」、これは括弧して(「字梨ヶ原
——檜丸尾
——土丸尾等運用道路北側)」と、こうなっておりまして、「については、乙は、本演習場の使用転換の際に約百五十ヘクタール以上の区域の返還の実現に努めるとともに、甲が
関係機関に払下げを申請した場合は、乙はこれに協力する。」ですね。それと同時に「甲は、東京
地方裁判所に提訴中の自衛隊違法使用排除の訴訟の進行を停止するよう努めるものとする。また、甲は、上記二の国有地の甲に対する払下げの方針が
決定した場合には、本訴訟を取下げ、自衛隊への使用転換賛成の意思表示を行なうものとする。」、
昭和四十五年に取り交わされておりますこれは覚書でございます。これがずうっと尾を引いてくるわけですね。尾を引いておるわけです。これが尾を引きまして、いよいよ自衛隊への使用転換というのが、昨年でございますか、これがもう決まります際にこの覚書が物を言いまして、そして閣議了解をもって払い下げを当時の
政府、時の
政府ですね、これは田中首相時代、閣議了解の中でもってこのことを認めているわけであります。
さあ、こうなってしまいましたから、これは私は、
環境庁の
長官の立場も確かにお苦しいと、こう言うのであります。
環境行政のたてまえからこれはもう三種などにするところではないと、こう考えられましても、まあ少なくとも閣議でもって了解を与えてしまっておるというようなことですから、これはどうにもならないということがこの行政の秩序の混乱をいま招いておるという、これが私は真相だと、こう思うわけであります。先ほ
ども申し上げたように、
関係の団体の代表の方もお見えになっております。私も山梨の出身でございますから、これはもうその
地域の
関係の方たちのまあたとえ局部的利益でありましょうとも、そういう方たちから反感を持たれようなどということは、私は望むところじゃありません。望むところではありませんけれ
ども、あえて私がこの問題をこうして国会の中でもって取り上げておりますのは、もっと大切なやっぱり国政の秩序が紊乱をするなどということは、私は国会議員の一人として、そんなものはとてもそれは認められるものではないと、こういう立場が一つございます。と同時に、軍事優先が支配をいたしまして、
国民のために大切な
環境行政がじゅうりんをされてしまうなどということは、これは
わが国の民主政治の大義に
もとることになるわけでありまして、そういう観点から私はこれは大変重大な問題だとして取り上げておるわけであります。まあついでですから申し上げたいと思うのですが、さっき私の触れました防衛施設周辺の環境整備に関する
法律を取り上げましたのは、あの
地域について
環境行政の側から言っても三種指定というものは、これは大体もう筋違いである。それから、それを離れて防衛にかかるところのその
法律のたてまえから言っても、むしろ国が、もし国有でない場合には買い上げて国有にしてこの緑地地帯等をつくっていかなければならないというのがその
法律の精神であるにもかかわらず、現在国有であるものをなぜわざわざ払い下げをしなければならないかという、これはやっぱり私は行政の秩序というか、民主政治のたてまえというか、そういう点から言って実に不自然といいますか、変則といいますか、まあもっと極端な言い方をすれば、
政府が自分の出して決めた
法律自体に
政府みずからが違背をしていくような、これは重大な内容というものを持っておると、こう考えざるを得ないからであります。私は、あの
地域などは、これは大体演習場自体が富士のふ
もとにあるなどということがもう大間違いだと、こう思っておりますが、しかし演習場の問題はまあ一応置いておきましても、少なくともあの地帯などは、私は、いま
国民のこの
生活環境というものを
環境庁の責任において考えていくという、これが
環境行政の
基本であるといたしますれば、あの地帯こそ、とにかくもう
日本の景勝地を代表するような
日本一の富士山を擁してのそれこそ他を探したって絶対にあり得ないような場所でありますから、これは
国民のために、私
どもずっとそういう主張をしてまいっておるわけなんですが、国の責任でもって休養センターくらいはこれは私はやってみるべきだと、こう考えているところであります。これはひとつ
長官、ここでもって思い切って、なるほど閣議了解もあるかどうか、そういう事情もあるかもしれませんけれ
ども、この際こそ、やっぱり本当に国の責任でもって
国民のための
保護、休養のセンターを、せっかくあそこに土地があるんだから、これをつくるぐらいのことをやってこそ、私は
国民が信頼する
環境行政になっていくんじゃないか、こういうふうに思います。いま大体東京都では一千万の人たちが、とにかくもう汚れた空気あるいは騒音、交通難にあえいでいるのですよ。現在だって、あの演習場が演習をしないときには、中へ入れば不発弾などの危険がある中をあえて
——大体休みの日などには数千人の人たちが入ってきているのです。まあ大体演習場に限らない、富士の五湖を初め、あの地帯へ年間入ってこられるところの人たちは、これは私が照会をしてそうして調べたところによりますと、何と一年間を通じては一千万に近いですね。
国民の一割くらいの人たちがあの景勝を求めて、きれいな空気を求めて、そして本当に人間としての潤いを求めて一千万もの人たちがあそこに集まってくる。演習場に対してさえも休みの日などには三千から五千くらいの人たちが来ている、こういう場所なんですよ。そのど真ん中の目抜きの場所なんですよ。私はやっぱりこの
環境行政というたてまえから、これは本当にここで慎重に取り組んでいただきたいというか、むしろひとつ
長官に勇気を出してもらって、そしてあの
地域を本当に
日本の
国民のための
環境行政として生かすというような、私はこういう一つの決断を求めてやまないわけなんです。内容的にこんな不自然な変則なことを私はしておくべきじゃないと、こう考えておるからこそ問題提起をいたしておるわけなんですから、
長官どうでしょうか。
〔理事山内一郎君退席、
委員長着席〕