○峯山
昭範君 私は、公明党を代表して、
昭和四十七年度
決算外二件を是認しないことを
表明し、警告案に対しては、賛成の意を
表明いたします。
四十七年度
決算を是認しない理由について、以下具体的に述べます。
第一は、四十七年度予算編成の基本方針として掲げられた内外経済の調和のもとでの
国民福祉の向上は、予算執行の結果実現されなかったのであります。たとえば、寝たきり老人等の施設は、
昭和四十六年度を初年度とする社会福祉五カ年計画の最初の三カ年の建設が三一・九%しか進んでおらず、事業の達成はおよそ不可能と見られております。
身体障害者の雇用も所期の目標が達せられていません。国は、身体障害者が働きがいを感じる職場とはどのようなものかをまだ十分に把握していないし、また職場を探してあげるような雇用についての行政
努力が足りない。四十七年度は、求職の申し込みをした三万九百三十四人の身体障害者のうち、就職した者は六〇・二%、一万八千六百十二人にすぎず、四十八年度もほぼ同様である。身体障害者の雇用の促進については、国の機関がその先頭に立たなければならない法のたてまえにもかかわらず、必ずしもそうなっていない。こういう
状況であります。
その反面、
田中前内閣のもとで行われた日本列島改造論に基づく地域開発が企業の土地投機をあおり、やがて年度後半の急速なインフレ現象と相まって、企業が巨額の利益をおさめるに至ったのであります。こういうゆがんだ経済環境の中で、マルチ商法というおかしな商法が横行し、被害者が多く出たことは見逃せません。
まさに、
田中前内閣の政治の第一歩は、
国民福祉の軽視、企業利益の重視にほかならなかったのであります。
第二に、
田中前
総理に対するいわゆる
田中金脈について
疑惑が深まったのであります。
わが党は、
田中金脈問題については、その多くの問題について、つとに
究明を行い、全貌の
解明を進めてまいりました。本来、現行憲法下においては、
国政調査権に基づく
国会の
調査の前に行
政府の
守秘義務の問題は起こり得ないのでありますが、
田中前
総理に対する
昭和四十六年から四十八年までの課税についての
国税庁の
見直し調査では、大きな誤りはなかった旨の抽象的な報告がなされたのみで、具体的な数字については、
守秘義務を盾に一切公表されませんでした。しかし、仄聞するところによると、そこで発見された
田中前
総理の申告漏れは約六千万円にすぎないと言われ、
追徴税額は約三千四百万円にとどまったようであります。しかも、
追徴に当たっては、重加算税を課すべきであるのに、善意の納税ミスに適用される低率の過少申告加算税で済ませているのであります。
田中前
総理の金脈問題は、
昭和四十七年、防衛庁の航空機調達の際に、調達先の三菱重工が巨額の政治献金を慣例上
総理が実権を握るとされている
国民協会に対して行った問題のほか、大手町公園の問題、虎の門公園の問題など、
疑惑の
解明を要する諸問題が山積しております。
このように
政治家として信頼しがたい
総理のもとで集計された四十七年度
決算は、これらの
疑惑の
解明なしに認めることはできません。さらに、
三木内閣が、
守秘義務を盾に税の問題を
国民の前に具体的に明らかにせず、
田中前内閣の傷口を覆う姿勢をとっている
状況では、なおさらこれを認められないのであります。
第三に、四十七年度
決算の議決を前に、
三木内閣の法務大臣が改憲集会に
出席し、その上、当
委員会で、現行憲法を欠陥の多い憲法などと
発言し、これらの不穏当
発言は取り消しましたが、依然として、改憲推進団体への法相の加盟は取りやめないことを
三木内閣は
表明したのでありまして、納得できないのであります。
第四に、
政府が
決算を
提出するに当たり、
国会を軽視する姿勢をとった問題があります。すなわち、
政府は、
昭和四十七年度と四十八年度の二カ年度にわたって、輸出保険特別会計
決算に添付した損益
計算書及び貸借対照表の本来確定値であるべき保険料の数値を推計によって計上し、所管大臣である通産大臣は、これらの書類を
大蔵大臣に送付するに当たり、自発的説明をしなかったことが、わが党の追及で明らかになりました。四十八年度には会計検査院が発見し、保険料推計額は十六億五千二百万円に上ると
指摘するところとなり、これについて
政府はコンピューター入れかえ時の操作上のミスなどと弁明しましたが、
政府の
決算提出姿勢は、要するに、四十七年度
決算添付書類の推計額をほおかむりして
国会に
提出し、問題が起らなかったので、四十八年度も同様に処理しようとしたものと判断せざるを得ないのでありまして、まさに
政府は、
決算の
提出に当たり、
国会軽視の姿勢をとったと言えるのであります。後に、この推計額は確定額に訂正されましたが、これは単に計数の訂正の問題ではありません。
また、
田中前内閣は、四十七年度
決算を推計額を含む書類を添付して
国会に
提出し、さらに、この推計額の書類を四十九年度予算に添付して
提出するという
国会軽視の予算、
決算の
提出を行いました。この
田中前内閣の手法をクリーン
三木をもって自任する現内閣がまねて、問題の四十八年度推計書類を五十年度予算に添付して
国会に
提出するという悪例を残しました。
これらの問題は、すでに決着を見たのでありますが、顧みますと、
政府は単に謝って訂正するなどの措置をしたのにとどまり、問題の処理について真に
責任ある態度をとったとは言えないのであります。このようにして
提出された四十七年度
決算を認めることはできないのであります。
第五に、四十七年度は、会計検査院の
指摘事項が、百七十六件、十四億四千五百七十万円に上り、その範囲はほとんどの省庁にわたっており、依然として不当経理がその後を絶たないのであります。会計検査院の検査は、悉皆検査ではなく、主要検査個所を中心とした部分検査でありますから、不当経理の
指摘は、九牛の一毛といわれるゆえんであり、未発見のものを含めて、不当経理を認めることはできないのであります。
以上で討論を終わります。