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国務大臣(木村睦男君) 国鉄がいまのような破産に頻するような状態になりましたのは、もうすでに十年という歳月を経たわけでございますが、
昭和三十九年ごろから毎年の
経理が赤字になってきたと、それがずっと今日まで続きまして、今日負債、借金全部入れまして六兆円にもなんなんとするような
状況になっておることは御承知のとおりでございます。なぜこういうふうになったかということを、まず今後の再建のめどを立てるためにも反省が必要でございますが、いろいろ原因があるわけでございますが、一つには、やはり再建計画も二回にわたって立てたわけでございますけれども、当時経済の高度成長の時代でもございました。したがって、
経費の面におきまして予想以上に物価高の影響を受けて非常に増大した、あるいはマイカーその他、他の交通機関が非常に発達しましたために利用旅客の数が減る、またトラック輸送が非常に道路交通の面で発達しましたために貨物輸送も減ったと。
収入の方の思わない
収入減、これらがずっと続いたわけでございますが、それらの中にありまして、さらに人件費が予想以上に上がってきた、こういった事情があるわけでございますが、それらの中で収支のバランスをとるために、やはり交通事業でございますので、運賃
収入というものが交通事業経営の一番の根幹になるわけでございます。
適時適切な運賃改定をやることによって交通事業の健全経営ができるわけでございますが、実は二回にわたります再建計画におきましても、いろいろと運賃改定の計画を立てたわけでございます。ことに四十八年からの十カ年再建計画におきましては、大体三年に一回、実収一五%程度の増収になるように運賃改定の計画を組みまして、これが実は四十八年以降の五十七年に至る最後の十カ年計画の根幹をなしておったわけでございますが、この最初の運賃改定も約一年半延びた、そういうようなことがあり、また今後三年ごとにやることを予想しております運賃改定も、現状ではそのとおりにできるかどうかということにつきまして非常に不安定な要素が予想される。そういうふうなことで、四十八年に立てました十カ年計画もとうていこれでは達成できないということになりまして、そこでさらに改めて今後の再建の計画をつくり直さなければならないという羽目になったわけでございます。
そこで、五十
年度におきましてその計画を立てるべきであったのでございますけれども、御承知のように、ちょうど高度成長経済からインフレ物価対策のために経済政策もここで大転換をしなければならない、そして経済の成長も緩やかな安定した成長に持っていかなければ物価対策上も困るというふうな、政府の財政政策も従来とは変わった財政政策に移っていきつつある五十年でございますので、五年なりあるいはそれ以上の長期計画を立てるために、その背景となります経済発展計画等もここで
見直しをしなければならない
状況に立ち至っておるわけでございます。したがって、それらの構想を練り直すためにも五十
年度という一年間が必要でございますので、これらの背景になる経済発展計画等の見通しが立ちましたのを背景にいたしまして国鉄の再建計画を組まなければ実情に合った再建計画はできないわけでございます。そういう意味におきまして、現在その計画の
見直しと今後の再建の構想を練りつつあるのが現状であるわけでございます。
で、将来の展望をいたしますときに、現在の国有鉄道というものが御承知のように公共企業体と称せられておるとおりに、企業性を発揮すべき面と、企業性とは理論的に一見矛盾いたします公共性の発揮、両方の使命を持って国鉄の再建を図らなければならない、これが国鉄の宿命でもあるわけでございます。そこで、公共性を強く強調しようとすれば、これはやはり企業採算の面ではマイナスの作用が働く、そういうふうなことでございますので、今後の再建につきましては、従来とも国が財政の面でいろいろと
措置をいたしてまいっておりますけれども、この面におきましても、一体今後の国鉄の経営に当たって、一つの原則といいますか、一つの原理といいますか、そういうものの上に立って、それでは国鉄自体の企業努力なり、あるいは運賃
収入によってどの程度
経費を賄うか、また国の財政的な援助はどの程度あるべきかということも、この際ある程度一つの原則というものを見出して、その上に立って今後の再建計画を立てていかなければならない、かようにも考えておるわけでございます。
同時に、一番必要な運賃問題につきましても、今日まで国鉄の運賃の改定の仕組みというものが、今日やっておりますこの行き方で果たして本当に適時適切な運賃改定ができるであろうかという問題も、この際は思い切って検討をしなければならないであろうということを私は痛感いたしておるわけでございます。これらは、いずれにいたしましても、国民の大なり小なり日常に非常に密接な
関係のある問題ばかりでございます。したがって、そういう要素を含めて今後の国鉄の再建を考えますときに、やはり国鉄
当局あるいはわれわれ
監督の衝に当たっております者だけの間でこういう問題を検討をいたし結論を出しても、国民の納得も得られないでありましょうし、あるいは国民を代表しての
国会の了承も得ることはかなりむずかしい問題であろうと考えております。
したがって、今回はそういう再建計画をつくり上げる過程におきまして、十分
国会の皆さんの御意見を聞き、またお力もかり、さらには利用者といいますか国民を代表する方々の御意見も十分に聞きまして、そうして皆さんが納得をされ、皆さん方が賛成をしていただくような空気の中で最終的な再建計画を立て、そうして今度はその再建計画がそごしないように、中途で挫折しないような再建計画を立てなければいけない、かように考えて、現在その根幹ともなるべき基礎作業を私の方並びに国鉄とタイアップをしながら検討をしておるという現状でございます。したがいまして、いずれこの再建計画のあらましができました際には、
国会の皆さんにも十分御意見をお聞きし、また御検討をいただいて完成をしていきたい、そうして今後の国鉄の再建に邁進をいたしたい、かように考えておるわけでございます。