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1975-04-24 第75回国会 参議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年四月二十四日(木曜日)    午前十時十九分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任       星野  力君    野坂 参三君  四月二十四日     辞任         補欠選任       野坂 参三君    星野  力君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 秦野  章君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 増原 恵吉君                 亘  四郎君                 田中寿美子君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省経済局次        長        野村  豊君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁刑事局国        際刑事課長兼調        査統計官     金子 仁洋君        農林省大臣官房        審議官      二瓶  博君        農林省農林経済        局国際部国際経        済課長      眞木 秀郎君        通商産業省貿易        局輸入課長    山本 康二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付) ○関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更  に関する第二確認書締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査  (在沖繩米兵暴行事件と日米地位協定に関す  る件)  (インドシナ問題に関する件)  (核兵器拡散条約の批准問題と非核三原則に  関する件)  (日中平和友好条約締結交渉に関する件)  (在沖繩米軍核兵器取扱いに関する文書等に  関する件)     ―――――――――――――
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、星野力君が委員辞任され、その補欠として野坂参三君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件  関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更に関する第二確認書締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上二件を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 田中寿美子

    田中寿美子君 小麦協定に関して先にお尋ねいたしますが、一九七一年の国際小麦協定延長議定書は、昨年国会終了後に二つ議定書暫定的適用宣言を寄託したということになっておりますね。このことについては、衆議院の方で大変厳しく追及を受けて、国会承認を経ないでやったことに関して、外務大臣は今後はちゃんと国会にかけるというふうにお答えになっておりますが、その辺はそうなのかどうかということが一つ、確認したいわけです。  それからもう一点は、しかし、今回の延長議定書の期限、七五年六月三十日までですね。あと二カ月だけのものですね。それから後の七六年六月三十日までの延長もすでに部内で決定しているというようなことなんですが、それではその次、つまりことしのあと二カ月分はもうすでに決定してしまってあると、あと一年先の分、これはいつ国会に提出されるんですかということをまず最初にお尋ねしたいと思います。
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 遅参をいたしまして御迷惑をかけまして申しわけないと思っております。  田中委員の前段の部分にお答え申しまして、あと政府委員から申し上げますが、いわゆる暫定適用になります場合、今後の考え方といたしまして、国会開会中の場合あるいは休会中の場合、いずれの場合もあり得ると存じますけれども、何かの方法をもちまして暫定適用をいたします旨を御報告をいたすということがしかるべきことであろうというふうに衆議院外務委員会における御審議の過程から考えまして、そのように申し上げた次第でございます。
  6. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 田中先生の後段の御質問お答え申し上げます。  この新しい再延長議定書というものは、本年の二月十四日に大体関係国内で合意ができまして、その新しい文書というものができております。そして、それが本年の三月二十五日から四月十四日までの間に署名のために開放をされておりまして、わが国といたしましては、たしか四月十四日に署名をいたしました。これを正式に国会の御承認を得るかどうかということでございますが、この点につきましては、現在御審議を願っております議定書についても同様な問題があったわけでございますが、食糧援助規約につきまして、ECが果たして参加するかどうかわからないという事情が去年もございましたし、今回もあるわけでございます。したがいまして、これが再来月、六月ぐらいになりますればECの態度が決まってくると期待されるわけでございますが、食糧援助規約にもしECのような大口の援助国が入らないならば、ECの入らないような援助には日本参加効果がない。これまた日本のみならず、アメリカもそういう留保をいたしておりますので、その辺のECの出方を見きわめました上で、参加するということであるならば日本参加いたしたい、かように考えております。したがいまして、国会に御提出申し上げるのも、その状況のいかんによるわけでございますが、もし日本参加して国会の御承認を仰ぐということになりますれば、できる限り早い機会に国会に御提出申し上げたい、かように存じております。
  7. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうすると、まだそれはペンディングなわけですね。じゃあそれは決まりましたら、国会承認を得るというふうにしていただけるわけでしょうか。これ、外務大臣もそういうふうに衆議院お答えになっていると思いますが、そうじゃありませんか。
  8. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) この再延長議定書日本締約国となるためには、当然国会の御承認が必要でございますので、ただいま申し上げましたように、EC参加することにより、食糧援助規約も有効に発効するということになりますれば、日本といたしましても、それに参加すべく国会の御承認を得るために提出するつもりでございます。
  9. 田中寿美子

    田中寿美子君 私、初めて今度国際小麦協定なるものを勉強したんですけれども、どうもずっと経過をたどってみますと、何だかアメリカ食糧戦略に使われてきたような気がします。アメリカだけじゃない、大きな輸出国も含めてですけれども。これ外務大臣、一九五〇年代後半から特にアメリカ小麦過剰生産になって、それのはけ口を求めたという感じがするのです。そして六七年の協定、このときは穀物協定にして、そして小麦貿易規約と、それから食糧援助規約と両方加えて、低開発国に対して食糧援助をするということが入ってきたわけですが、その後もずっと小麦の生産過剰が続いて、そして現行の七一年国際小麦協定というのは、六七年協定のほとんど内容そのままで、そして小麦価格などは決めないで協定を続けているわけですね。日本は、米または農業物資の形態で援助を供与するという留保をつけておりますね。まあ小麦のない小国ですから、それはある意味ではもっともだと思うのですけれども、日本援助量が二十二万五千トン。次に、七二年、七三年にかけてソ連の凶作で非常に大量に、千五百万トンもアメリカ小麦を買い付けちゃった。それで小麦値段がものすごく上がってしまった。一ブッシュル当たり最初六四年に一ドル七十四セントだったものが、七五年には四ドル八十八セント、カナダ小麦が五ドル七十セントにも上がっている。そうしますと外務大臣、ねらいが、食糧援助規約の方は、低開発国に対して食糧を安く供給するというねらいであったはずだと思うのですけれども、こういうふうな状況で、何だか大国の、特に小麦生産国であるアメリカが、全体に食糧戦略みたいなものに使っている感じがするのです。この点を外務大臣はどういうふうにとらえていらっしゃるかということ。  それから、いまや食糧については、非常に世界各国でも大問題なわけなんで、グローバルな立場での解決が必要だと思うのですけれども、小麦協定というものも、もはや転換点に来ているのではないかなという気がします。先ほどの政府委員説明からも、EC諸国援助しないかもしれない。そういうことであれば、日本もと渋ってきている感じもいたしますね。これは食糧不足日本ですからそういうふうにならざるを得ない。一体日本食糧自給率が非常に低い国なんで、しかも米に関して減反政策をとってきたわけですから、こういう状況の中で、世界開発途上国への援助というようなことについて各国が渋り始めた感じもするし、一体、しかしそれでいいのかという問題がありますね。国内食糧生産の問題も含めて、この小麦協定そのものも、あるいは食糧援助協定そのものも、あるいは考え直さなければならない時期に来ているんじゃないか。そういうふうにお考えになるかどうかですね。そうだとすれば、一体日本はどういうふうに今後考えていくべきなのかということ、あるいは世界各国が、あるいは輸出国、あるいは輸入国両方含めてどんなふうにいま考えつつあるのかということを外務大臣からお聞きしたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は、いま田中委員のおっしゃいましたように、非常に長い、かつ複雑な沿革がある問題であると思います。すなわち、世界留易自由化という物の考え方は、ガット中心に長くございまして、わが国もそれに参加をして努力をしてきたわけでございますが、いわゆる関税一括引き下げ交渉等々、貿易自由化に資するいろいろな施策を考えてまいります段階で、たとえばカナダあるいはオーストラリアなどがそのいい例でございますけれども、いわゆる工業製品の面では先進国と十分な競争力を持たなかった時代、ちょうどいまから十数年前になるわけでございますけれども、それらの国は工業製品関税引き下げ交渉には入り得る立場にないという主張をしたわけでございます。他方で、しかしそれらの国は、小麦中心とする農産物輸出には非常に関心を持っておりました。まさしく田中委員が御指摘のとおり、これは農産物がやや過剰であった時代でございます。  そこで、それらの国々を貿易自由化の中へ抱きかかえていくということはもともと必要なことでありましたし、しかも、それらの国は農産物輸出のアクセスを求めたいという気持ちを持っておるという状況の中で、農産物については商品協定小麦協定のような協定で、ある程度そのような農産物輸出国立場も助けてやろうではないか。そういうのが前回ケネディラウンド時代の六〇年の初めの大体の動きであったというふうに考えます。そういう中で、沿革的には食糧援助規約もややそういう環境の中で、関連の中で生まれたということは事実であったろうと思います。すなわち、もちろん食糧援助そのもの必要性というものがあったわけでございますけれども、こういう形でもって農産物輸出国に対しても多少のフェーバーを与えようといいますか、立場を考えてやろう、こういうことであったようにちょうどこの食糧援助規約が登場いたしました環境はそのようなものであったというふうに思います。  いまになりますと、確かに情勢は変わったではないかとおっしゃいますことは、現在判断いたしますとさようではありますけれども、しかし、アメリカなどで見ましても、作付制限を撤廃するというふうなことを初め、かなり増産の余地があるのではないかというふうにも考えられまして、もし天候等々が順調であればそういう要素もあるのではないか。現在、小麦値段がブッシェルで三ドル台ぐらいになっていると思います。先ほど御指摘になりましたピーク時からしますと、かなり下がってまいっておりまして、これは世界需要の減退ということもあろうと思いますけれども、いまのようなことをも反映しているのではないかと思われます。ですから、先の見通しというものは必ずしも明確でない。  しかし、私どもとしまして、いずれにしても、これが供給者を利するものであれ、あるいは需要者を利するものであれ、現在供給側需要側も、やや先行きについてお互いに不安を持っているというようなときには、商品協定が非常にできやすい条件があるわけでございます。どちらかが圧倒的に立場が強いとき、あるいは弱いときには、なかなか上手な商品協定はできないわけでございますので、そういう可能性もございますし、かたがた、こういう小麦協定によって小麦についての情報交換であるとか、あるいは相談をする場であるとかというものがせっかく長い間つくられてまいっておりますので、こういう食糧事情の不安定なときに、そういう場であるとか、情報交換であるとかというものが、やはり、むしろこれからが大事なのであって、残しておくべきであろうというふうに考えておるわけでございます。  他方で、その食糧援助のことはどうなのかというのは、確かにもう一つ検討すべき問題でございますけれども、今後どのような情勢を考えましても、いわゆる発展途上国でしかも外貨の乏しい国に対して、何かの形での食糧援助を継続することは必要ではなかろうか。このいきさつから言いますと、十数年前の沿革から申しますと、多少これは余剰農産物処理という色彩を持っておったことは確かでございますけれども、いまとなりまして、むしろ積極的な意味食糧援助というものはやはりやっていかなければならないではないか。それは、もっとこういう協定との連関でなく、大きな場で、大きな打ち出し方があり得るかもしれないと思いますけれども、しかし、これを切ってしまってそれを待つということは実情にそぐいませんので、やはりこういう形を続けていくべきではないかというふうに私としては思っているわけでございます。
  11. 田中寿美子

    田中寿美子君 いまのお言葉の中からも、この二つ規約を含んだ小麦協定のあり方には相当問題があって、今後何かの変化が起こる可能性があるというふうに私は理解いたしましたけれども、もっと大きな立場で考え直さなければならない時期が来ておるというふうに理解したわけですが、そのことをあまり、きょうは時間がないので追及していられないのです。  そこで、日本援助物資のことですが、日本は米と農業物資でやっておるわけですね。場合によっては、ごく少量アメリカ小麦粉を買って援助しているところもあるのですが、食糧援助というたてまえからしますと、農機具肥料農業物資というのは農機具肥料ですね。農機具肥料援助にしていることについても大変私は疑問を持つわけなんですが、そういう国がほかにもあるのか。そして、そういう物資援助をするということは、それを受け取る受益国の方からの要望なのか。それから、このことが国内農機具メーカーをもうけさせる手段に使われていはしないかという疑いを持つわけです。きょう、そのことを詳しく調べている暇がなかったんですけれども、こういうことをやっぱり今後もやっていくのか。受益国からの要望があってそうしているのかということ。  それから、時間の都合でもう一つお尋ねいたしますけれども、食糧援助規約第三条では、食糧援助委員会というのが設置されて、食糧援助のための拠出の数量とか内容とか方法とか条件に関して、定期的に報告をするということになっておりますね。私の疑問に思いますのは、じゃあ今度は援助を受けた国が、それを使った効果については何か把握しているのかどうか。報告を受けるのかどうか、合わせてその点をお伺いします。
  12. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) 田中先生二つの御質問に対してお答えいたします。  第一の御質問は、日本農業物資ということで農機具肥料援助対象物資にしているということの問題でございますけれども、まず、ほかの国がやっているかどうかということにつきましては、農機具をやっている国はほかにはございませんで、これはわが国援助一つの特徴でございます。しかし、日本はこの食糧問題につきまして、かねてから食糧援助というよりは、やはり発展途上国自助努力を助けて農業開発をするのが本筋であるという考え方を持っておりまして、そのことは、食糧援助規約参加する際にも日本代表が強く主張したところでございます。もちろん、農業開発だけでは現在の非常な食糧難、食糧不足を当面救うことはできないわけでございますから、日本といたしましても、農業開発以外に食糧援助も必要だということがわかっておりますから参加したわけでございますが、やはり基本的な立場としては、食糧援助だけではこれは本来の食糧問題の解決には資せないという考え方がございまして、その会議のときの主張のまま、われわれとしては、発展途上国要請に基づきまして、発展途上国の方で米が必要だという場合には米を供与いたしますし、発展途上国の方で米よりは実はいま農機具不足している、あるいは肥料不足しておるという場合には、その要請にこたえて農機具なり肥料を提供するということにしているわけでございます。  それから第二の御質問の点でございますが、これは日本を含めまして援助国の方は詳細な資料を報告しているわけでございますが、被援助国の方は、これは被援助国における食糧不足の状態を情報として提供するようになっておりまして、その情報援助国の方にも回ってくるわけでございます。われわれとしては、そういうものを参考として国別のいろいろな援助の量を決めていくということにしておるわけであります。
  13. 田中寿美子

    田中寿美子君 私は、日本経済援助とか経済協力というのが非常に問題をたくさん含んでおりますので、いまのようなことをお尋ねしたわけですが、別にまた改めてこの問題はお尋ねしたいと思います。  ただ、もう一つだけ、援助対象国の選定なんですが、インドネシアが特に多いというのはどういうことかというようなこと。  それから七一年、七二年の穀物協定以来、七一年、七二年穀物年度、その年からカンボジア援助が急増しているわけなんですが、これはどういう意味なのかということをちょっと説明してほしいと思います。なるべく簡単に、時間があれですから。
  14. 鹿取泰衛

    政府委員鹿取泰衛君) インドネシアにつきまして、七一年、七二年度、それから七二、七三年度も相当ございましたが、それから七三、七四年度につきましても若干減らしましたけれども、日本ケネディラウンドに基づく食糧援助対象国としては主要な国であったわけでございますけれども、それはその当時、インドネシアがやはり非常な食糧不足の問題を抱えておりまして、また、インドネシアは人口も多い国でございますので、必要量も多いという判断に基づいて決定したわけでございますが、七四年度以降、将来、これからはインドネシア右油産出国になりまして外貨事情もよくなりましたので、インドネシアは自分の外貨食糧を買えるという判断に基づきまして、ケネディラウンドに基づくグラントの援助は停止しておるわけでございます。  それから、カンボジアの問題でございますけれども、カンボジアは元来は米が相当とれた国でございますけれども、いろいろな干ばつその他の状況もございまして、七一、七二会計年度以降大変な米不足に当面したという事情を考えまして、その必要量について援助をしたわけでございます。
  15. 田中寿美子

    田中寿美子君 まあカンボジア情勢がああいう状況で、私などもどうも多少政治的な色彩があるように感じられますけれども、この点やってられませんので、一言だけ、ガットの方ですが、今回の改定は非常に技術的なことですからそれには触れませんが、外務大臣にお伺いしたいと思いますが、本来ガットというのは、貿易が自由にできるように関税をできるだけ引き下げていくというような目的を持ってケネディラウンドもあるわけなんですが、七三年の九月に東京ガット閣僚会議が開かれましたね。そのときに東京宣言というのをしておりますね。それで、発展途上国立場を尊重するということで、新国際ラウンドというようなことが宣言されているのですけれども、一体それの行方がどうなっているのかということなんです。これは、いまの食糧援助とか小麦協定なんかとも同じような私は傾向があると思うのですが、この新国際ラウンドというのはいま一体どういうふうになっていて、今後どうなっていくのか。ガット自体も、ちょうど通貨体制の方でIMF体制がドルの切り下げでああいうふうに崩壊していくのと同じように、ガットそのものも大変私は曲がり角にきていると思うのですが、これについても外務大臣はどう考えていらっしゃるかということを伺いたい。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ガットは、アメリカの新通商法がようやく成立をいたしましたので、先般ジュネーブにおきまして、今後のこのラウンド交渉方式と申しますか、これからどういうふうにとり進めていくかということの会議をいたしまして、幾つかの部会をつくったわけでございます。関税プロパー部会でありますとか、あるいは非関税障壁部会でありますとか、農産物でありますとか、熱帯産品でありますとか、いろいろあるようでありますが、それでこれから具体的な価格交渉に入っていくわけでございます。  で、一番そこで一つ問題になりましたのは、アメリカ通商法というものがどれほど前向きのものであるかという点であったわけでございますが、先般私が、二週間ほど前でございますが、ワシントンに参りましたときに、アメリカの新通商代表が参りまして、いろいろ経緯はあったけれども、アメリカとしては何とかして全体を前向きに持っていきたい考え方であるということを述べておられました。ECにもいろいろ問題はございますし、先ほどから御質問農産物処理というのは相変わらずきわめて厄介な問題でございますが、まあ大まかに申しまして、このたびの七三年の東京宣言で始まりましたこのラウンド、非常に大きな期待が持てるかどうかは、これは問題であるかもしれませんけれども、実質的な前進を、ことに関税であるいは非関税障壁の分野で結実をし得るのではないだろうか。どのくらいかかりますか、あるいは七七年ぐらいになるかと存ぜられますけれども、まあこの際、世界貿易がいろいろ問題を持っておるときであるだけに何とかしようではないかというのが、一応関係国の心構えであろうと存じます。
  17. 田中寿美子

    田中寿美子君 世界的に経済が転換しつつあるときですから、まあそう簡単に今後どうしようという方向が出ないかもしれないと思いますが、私はガットも、それからさっきの小麦協定も見直さなければならないときじゃないかなというふうに思っております。  私、その二つの条約関係を離れてちょっとお伺いしたいこと。一つは、日中平和友好条約関係で、昨日、衆議院外務委員会で議論されたようです。例の覇権条項なんですが、これ英語でヘゲモニーだそうですね。ですから大変、相当強い言葉ではあるけれども、昨日の衆議院外務委員会でようやくこの用語の意味を高島アジア局長説明されたようで、それに対して外務大臣のこれの受けとめ方も私は新聞紙上で拝見したわけです。そこで外務大臣日本はまあ資源のない国ですから、ですからどの国とも仲よくしなければならない、これはあたりまえです。それから経済交流の必要のあることもあたりまえです。ですけれども、第二次大戦中に東南アジアに軍事的あるいは政治的に進出していったあの苦い経験がありますね。だから再び日本はそういう軍事的、政治的支配をどこにもやるべきでないと、これは御賛成ですね。だからそういうところにヘゲモニーを持つべきでないということは御賛成だと思います。  それから、それじゃ経済的の方なんですが、これも支配の方式ではだめだろうと思うのです。田中前総理が東南アジア旅行されたときに、非常な反日行動が起こったというのも、日本の経済的進出に対する脅威を感じていた各国の民族の反発であったと思うのです。ですから平等互恵の立場をとって共存共栄するというのは経済的にも私は当然のことだと思うのですね。ですからそういう意味でならば覇権を求めない、覇権も許さないということについては、何も外務大臣、逡巡なさることはないんじゃないかと思うのですが、それはどうですか。  それから、時間の関係でもう一つ続いて申し上げてしまいますが、外務大臣は原則問題で対立していて、これはなかなか容易じゃないと、毎回外務大臣がこの日中平和友好条約の早期締結に対しては否定的というか、消極的な態度をとっていらっしゃいますね。高島局長との間の考え方に違いがあるかのように報道はされておりましたけれども、昨日の衆議院外務委員会での説明で、まあ違いはないみたいに思われると、外務省当局も同じような考え方でいられるのじゃないかと思うのです。ところが、三木総理は知恵を出して早期締結せよと言われた。一体その知恵というのはどういうことなのか。外務大臣並びに高島局長の御説明を伺いたいと思います。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず前段の問題でございますけれども、わが国の外交政策あるいは近隣諸国との今後のつき合い方、わが国がとるべき行動につきましては、政治的にも経済的にも私はいま田中委員の仰せられました、そういう心構えでなければならないということはそのとおりと存じます。したがいまして、わが国に関する限りそのような意図であると表明いたしますことは、私は別段差しさわりのあることではなかろうと存じますが、ただ、それをどのような言葉で表現するかと、仮に覇権という言葉をわが国が条約で使いましたときに、そのような言葉が明確にわが国法律用語として完熟したものであるか、定義をし得るものであるかという、これはある意味では技術的な問題かもしれませんが、そのような問題は実はございます。ございますが、基本的にわが国の心構えとして、わが国のことを言うことについては、先ほど仰せられたような心構えでいいのではないかとお尋ねであれば、私はそれはそういう心構えでいいのではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、後段の問題でございますけれども、昨日もちょっと衆議院外務委員会で申し上げたことですが、まあ先様が、自分の方は非常に急いでいる、熱意がある、しかしこの原則は譲れない。わが国も、非常に急いでいる、熱意がある、しかしわが国のこの原則は譲れないと、仮にそうあったようなことが起こりました場合に、急いでおる、熱意あるという面を強調するか、あるいはなかなか両方の原則の間の歩み寄りを見つけることは容易なことではないという点に重点を置くか、これは要するに、説明の重点の置き方の問題であろうと思うのであります。現実の事態として両国ともなるべく早くつくり上げたいと考えていることは事実でございますけれども、ただいまのところ、この覇権の問題が、中国にとっても、憲法あるいは周恩来首相の一九七五年の政治報告、あるいはつい先ごろの金日成氏の訪中の際の鄧小平副首相の演説等々にすべて盛られておりますように、かなり外交の基本的な原則であるらしく、その点は、第三国について物を申すとなれば、わが国の善隣外交、平和外交との関連では不必要な疑いを第三国から受けやすいという問題がございます。その間を、お互いの立場を尊重しながらどのようにして共通点を発見するかというのが、いわゆる知恵ということになるのであろうと思います。この点は、さしずめ従来接触を続けておりました東郷・陳楚会談をできるだけ早く開きまして、その間どのような歩み寄りが可能であるかをひとつぜひ発見するように努力をいたしてみたいと考えておるわけであります。
  19. 田中寿美子

    田中寿美子君 高島局長どうですか、その知恵というのはどういうことですか。そして、早期締結というのは今国会中での締結ということを目標にしていらっしゃるのか。
  20. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 昨日三木総理大臣に訪中の結果につきまして御報告をいたしまして、その上で、今後の進め方につきましての御指示をいただいたわけでございますが、その中で三木総理は、本条約の早期締結、早期締結と申される意味は、もちろん従来から政府が申しておりますとおり、この国会中に国会に提出して承認を求めるようなタイミングで妥結するという含みでもって、そういう観点からいろいろと中国との間に妥結できるような知恵をしぼって努力しろということでございまして、きわめて一般的な表現で、特定のことでは決してございません。一般的にいかなる条約交渉におきましても、私ども終始知恵をしぼらなければ妥結できませんので、そういう観点からの一般的表現かと私も考えておりまして、現に知恵はしぼりつつあるわけでございます。
  21. 田中寿美子

    田中寿美子君 一般的表現でなくて、やはり具体的に締結できるような知恵を働かしていただきたいと思うのです。  この問題は、後から多分また国際情勢質問で出ると思いますので、私最後に、沖繩の国頭郡の金武村の浜田海岸で起こりました二人の女学生に対するアメリカ人、白人兵士の暴行事件、これに関してお尋ねしたいのですが、これはビーチパーティーなんというのを開いていて、遊んでいるときですから公務ではもちろんないわけです。そして、十人くらいの米兵の目撃兵がいたわけですね。学校帰りの二人の女の子が、十五歳と十二歳でしたか、海水浴をしようと思って着物を脱いでいるところに、二キロぐらいの重さのある石で殴りつけて、そして失神している状態を衣服をはぎ取って暴行したと、こういう全く何とも言えないひどい、非道な暴行をやったわけなんですが、その加害者がハンセン基地内のアメリカ兵であった。そして、アメリカの方の警察がつかまえて、米軍基地の中へ連れて行ったわけです。沖繩県警が引き渡しを要求しているのですけれども、アメリカ軍側はこれを拒否している。そこで、現地では非常にこれ重大な問題として、県議会でも特別委員会をつくってこれに抗議をしているし、県民の抗議のための決起集会が起こっているわけですね。  問題は、これは復帰前後にも非常にたくさんあったので、まるで復帰前といまと違いがないんですが、一たんアメリカ警察の方の手に渡り、米軍基地の中に逃げ込むと捜査がちゃんとできないわけです。それで、これは地位協定に関係してくるわけなんですが、地位協定十七条三項に裁判権の規定がありますね。米軍が裁判権を持っているケースは二つあって、一つは米人同士の犯罪、アメリカ人の財産に関する犯罪、それから第二番目に公務執行中の犯罪ですね。第二項の方で日本に第一次裁判権があるわけです。ところが、第五項で逮捕、引き渡しの規定というのがあります。これは逮捕、引き渡しに関しては、「相互に援助しなければならない。」となっているわけです。十七条五項の(a)です。「逮捕及び前諸項の規定に従って裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。」というふうになっているのです。ところが(c)項の方に、「その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。」と、これが大変邪魔になっているわけなんです。一体、これまでいつもここが使われていたと思うんですよ。私、外務の調査室の方にちょっと調べていただきまして、ほかの国に駐留している米軍もやっぱり同じような地位協定を持っているのかというふうに調べてもらいましたら、NATO諸国でもこの条項は同じようなものを持っている。だけれど、どうしてほかの国では起こらないのに沖繩の場合は、米軍がまるで植民地における支配者と被支配者みたいな行動を平気で行って、そしてそれを幾ら要求しても引き渡さないのかということですね。このことについて、警察の方もいらっしゃると思いますが、一体いまどういう状況にあって、何がネックになっているかということを御説明いただきたいと思うんです。
  22. 金子仁洋

    説明員(金子仁洋君) 事実関係につきましては、大体ただいま田中委員の方から御説明のあったとおりでありますが、これに関して私どもの方では沖繩県警におきまして、まず現場の検索、付近の聞き込み、参考人の取り調べ、それから被疑者に関するいろいろな客観的な体液、体毛、血液等の検査、これらの調査は順調に進んでおりまして、事件が認知されましてから、沖繩県警では仰せのとおり数度にわたりまして身柄の引き渡しの請求を米軍側にしてまいっております。しかしながら、米軍側といたしましては、身柄は引き渡しはできないが、捜査に支障のないように十分協力をいたしたいということでありまして、事実二十二日からは本人を沖繩県警に出頭させまして、先ほど申し上げました客観捜査をいたすと同時に、また取り調べも進行しておりますし、一部自供も得ております。現在のところ沖繩県警といたしましては、順調に捜査を進行させ、できるだけ速やかにこれを検察庁に送致するという態勢のもとに活動をしておる次第でございます。
  23. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは確かですか、過去に幾つか事件があるわけですね。金武村で戦車にひき殺されたおばあさん、これは公務中だということで、全然米軍側に裁判権が渡ってしまっているし、伊江島で村民狙撃事件、これも基地に逃げ込めば調べようがないと。あるいはトルコぶろでトルコ嬢を殺した事件もありますし、こんなんだって、これは公務じゃないけれども、基地に逃げ込んでしまいますと、うやむやになっちゃうんですね、過去に。それは復帰前に非常にそういう事件がたくさんありまして、それで復帰後も全く同じであるということ、これは外務大臣、大変なことだと思うのです。なぜ日本アメリカは、沖繩はいま復帰して、対等の立場にあるはずなのに、もともとアメリカが占領していたときだって、それは全く不当なことなんですけれども、いまだにそういうことがあって、それで一たん基地に逃げ込めば、うやむやにして本国に帰してしまうと、こういうようなことがあるわけですよ。ずっとそれがもう慣習みたいになっていますね。ですから地位協定の十七条の五項の(c)については、これは法律家の間でも大変議論が、沖繩の法曹界は意見が対立しているということなんですけれども、この地位協定十七条の五項の(c)、これは地位協定そのものを改正する意思がおありにならないかどうか。それから、改正しても対等平等の立場になければこういうことになるわけで、これに対しては外務省から強い抗議をしていただきませんと、警察自身も仕事できないと思うんです。
  24. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 田中委員から十七条五項の(c)があることによって、この種の事件がうやむやになり、その犯罪を犯した米軍軍人が逃げてしまうというふうなお話もございましたが、われわれはこれがあることによってそういうふうなことになるとは考えておりません。現実におきましても、こういう事件が起こりましたときは、この五項の(a)に書いてある趣旨で、逮捕とか引き渡しについても相互に援助をしておりますし、また、六項の(a)に書いてありますように、捜査の実施とか証拠の収集及び提出についても緊密に相互に援助をいたしておるわけでございます。したがいまして、この(c)項があることによって事件がうやむやにされるということは従来においてもないわけでございます。  ただ、なぜじゃあ(c)項のようなものがあるかということでございますけれども、これはいま田中委員からも御指摘のありましたように、NATO諸国の同様の地位協定にもあるわけでございまして、また、われわれは具体的にどういう事件が起こっておるかは承知しておりませんが、駐留軍というものがおる以上、若干のそういう不祥な事件が起こることは当然であるわけでございます。ただ、ちょっとその点原則問題として申し上げたいわけでございますが、アメリカの軍人が日本国内においてこういう普通の犯罪を犯しました場合には、もちろん日本法律にも触れるというわけでございますが、同時にアメリカ法律、軍の法律にも触れておるわけでございまして、アメリカ側としても裁判権は持っておるわけでございます。したがいまして、日本アメリカの裁判権がいわば競合するという問題が本質的にあるわけでございます。そこでその問題の、どう裁判権を振り分けるかという問題がこの十七条に書いてあるわけでございますが、その基準は、結局公務中であるかどうかということでやっておるわけでございます。そうしますと、その点についていろいろ争いが起こることは避けられないわけでございまして、したがいまして、そういう場合においてどちらがその犯人の身柄をその間持っておるかということになりますので、そこで一つのルールとして一方の方、日本が逮捕した場合には日本が持っておる、こういうふうに、日本か裁判権を行使すべきものであっても、アメリカが一応拘束しておるときは起訴が行われるまではアメリカ側が持つことを認めておるということでございまして、これは裁判権の帰属が決定するまでどちらがその身柄を持っておるかという規定でございまして、この点は十分理由のあることでありまして、現にそういう意味でNATOの先例がある次第でございます。また、それを持っておることによって日本の捜査その他が十分でないと、また、向こうが協力しないということでございましたら、これは非常に問題でございまして、われわれとしても厳重にアメリカに申し入れるつもりでございますけれども、現在のところ、警察当局からの御説明がございましたように、先方は十分協力しておりまして、犯人を現に四月二十二日には日本の警察に出頭さして必要な取り調べは十分に行われておるわけでございまして、ただ、その泊まっておるところが米軍の基地内であるということでございます。ただ、こういう明白な事件については、もちろん日本としてはできるだけ早く処置すべきでありますから、警察当局及び検察の当局にお願いして処理を急いでいただいておりますが、われわれとしては早急にこの問題について手続を進めて起訴をすべきであると考えております。起訴さえすれば、これはその身柄は当然わが方に引き渡されることになる次第でございます。
  25. 田中寿美子

    田中寿美子君 これ最後ですけれども、駐留軍がいれば多少の不祥事件は避けられないというような考え方自体、私はアメリカ局長非常に冷たいと思いますよ。その法的な理論だけおっしゃって、これは沖繩協定のとき非常に問題になったんです。第一次裁判権がこっちにある場合には、その捜査権が伴いませんと裁判権も十分に発揮できないわけですね。ところが向こうに、基地の中に置いておいて、そして何時間か連れてきて調べてまた連れて帰る、こういう状況でなかなかこれは取り調べにくいんです。それから公務執行でなくても、公務執行だというようにしてしまった事件、過去に幾らでもありますよ。沖繩協定のときにもたくさん調べ上げていっぱいあった。それが、同じようなことが次々と復帰後も起こっているということに対して、私は日本の政府の代表としては怒りを持ってもらわなきゃ困るんですね。ところが法的にちゃんとこうなっておりますのでと、法的にNATO諸国が同じものを持っているということを聞いて、はあなるほど、これで対等平等でないことははっきりしたというふうにわかるわけなんです。こういう法律持っておっても、同じ白人同士であればこういうひどいことはしない。ところが、やっぱり長い間沖繩の人に対する差別観念、あるいは日本人に対する差別観念かもしれません、そういうものがアメリカの兵隊の中にあるということに対してもひとつ怒りを覚えなければいけないし、それから(c)項を盾にして(a)項が物を言えないようにしている事実が過去にたくさんあるということを私申し上げて、もうこれ以上伺っていたって同じことになりますから、大至急このことに関しては警察当局は懸命にやっているかもしれないけれども、現にまだ引き渡していないわけだし、それから県民が非常に怒って決起集会を開いているわけだし、外務当局としても一言あるべきだと思いますね。外務大臣いかがですか。こういう問題、このままでいいんですか。いままでとちっとも変わっていない。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まことにきわめて遺憾な出来事でありまして、外務省としては米国政府の代表を招致いたしまして、この事件に対してきわめて遺憾であること、このような事件の再発防止のためにあらゆる措置をとるように求めましたところ、米国側から本件の発生について深甚なる遺憾の意を表明いたします、今後のことはもとより、今回の事件についても早速措置をいたし、捜査に協力いたしますという表明があったわけでございます。ただいままでのところ警察、検察において捜査をされる上でまず支障のない協力と申しますか、本人が出頭する等々のことがなされておるようでございますので、わが国の法に照らして厳正に処置をいたすべきものと考えております。きわめて遺憾な事件でありまして、これは日米合同委員会の席上におきましてもさようなことを当方から申し出るつもりでおります。
  27. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 答弁は要領よく、核心に触れての答弁をやってもらいませんと。だらだら長くならないように、時間の制約がありますから。どうぞお含み願います。     ―――――――――――――
  28. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、野坂参三君が委員辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。     ―――――――――――――
  29. 立木洋

    ○立木洋君 関税及び貿易協定に関連してお尋ねしたいのですが、先ほど大臣もちょっとお触れになりましたけれども、今回外相が訪米されたときにデント・アメリカ通商交渉特別代表と新国際ラウンドの件についてお話し合いされたということですが、そのお話し合いをされた内容について御説明いただきたいと思います。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) デント氏からアメリカの今回の通商法成立についていろいろ込み入ったいきさつがあったので、何となく米国政府、米国議会と申し上げた方がよろしいかもしれません、この問題についてかなり保護主義的な考え方が台頭しているのではないかという印象を与えておるかもしれないが、それはそうではなくて、でき上がった法律を見てもらうと、米国政府としては相当積極的であるということがわかってもらえるのではないかと言って、そういう点についての説明がございました。そして、できるだけ熱意をもって交渉の進展に当たりたいということでございましたので、私は米国のその熱意は了といたします、わが国としても同様の考えであるが、しかし、農産物問題を初め非関税障壁ということになりますと、これはなかなか各国の固有の制度に、あるいは習慣に根ざすようなむずかしい問題がたくさんあるので、私自身の経験から言うと、これはなかなかそう簡単なことじゃない、相当むずかしい忍耐強い交渉をしなければならないことはあなたにおかれても十分御覚悟の上で、その上で熱意を持ち、前向きに取り組んでいかなければならないと思うということを私からお話をしておいたような次第であります。
  31. 立木洋

    ○立木洋君 とにかく新国際ラウンドになると、関税が引き下げられる、輸入の拡大が図られますと、中小企業にきわめて多い伝統的な産業あるいは農業などでいろいろと重大な影響を与えるという問題が考えられるわけですが、そうした場合、農林省や通産省の場合はどういうふうな問題が起こり得ると考えておられるのか、そうした場合にはどういう措置を、産業の保護を行うというふうにお考えになっておられるのか、そこらあたりの御見解を通産省と農林省の方にお伺いしたいんです。
  32. 山本康二

    説明員(山本康二君) 確かに先生のおっしゃられますように、今後次第に消費財系統の輸入がふえてまいる傾向がございますが、まず私どもといたしましては、現在日本が置かれております国際的立場から言いまして、輸入制限というのを実施することは著しく困難であると考えております。したがいまして、まず対処すべき第一の方針といたしましては、国内産業の体質改善でございまして、合理化なり組織化なりを進めまして、十分国際競争力を持てるように業界にそれ相応の指導をいたしてまいることが第一の処置と考えておる次第でございます。
  33. 眞木秀郎

    説明員(眞木秀郎君) 農林省の立場お答え申し上げます。  今回の新しいラウンドに臨みます際のわが国政府の基本態度につきましては、四十八年の八月末の閣議決定で明らかにされておるわけでございますが、この中で、農産物貿易につきましては、もとよりニューラウンドの一般的方針に沿ってやることはもちろんでございますが、やはり農業の持ちます特殊ないろいろな条件等にかんがみまして、その条件、特殊性を考慮しながら今度の交渉に臨んでいくということを閣議の決定として明らかにしていただいたわけでございます。その後の新国際ラウンド東京宣言にも同様の趣旨が盛り込まれております。したがいまして、わが国といたしましても、やはりわが国農林水産業が現在置かれておる状況を十分認識いたしまして、その基本方針なり政策の進展に不測の影響が及ばないように十分に配意してやるとともに、また、現在日本の農業なり食糧事情が置かれている立場を考えまして、今回の交渉の中におきましては、わが国食糧の安定的供給の確保というようなことにも十分配意をして進めてまいりたい、このように考えております。
  34. 立木洋

    ○立木洋君 農産品の場合には非自由化品目というのがあるわけですが、多いわけですが、そのうちの一つの問題ですけれども、コンニャクイモですね、コンニャクの原料、これは非自由化品目になっているわけですけれども、しかし、コンニャクそのものは非自由化品目にはなっていない、これはどういう理由でしょうか。
  35. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ただいま先生からのお話がございましたようにコンニャクの原料、これはいま非自由化品目になっております。他面、コンニャク製品につきましては自由化をいたしております。その理由はということでございますけれども、コンニャク製品そのものは、これは日本人だけが食べておる食品であり、しかも日本だけが裁培をいたしております。自給上若干不足をいたしておりますので外国からの輸入はいたしておりますが、これはいずれも外国では野生で生えておるものを採取をいたしましてそれを輸入しておるというようなことでございまして、外国におきまして製品をつくりまして大量にわが国に入ってくるというようなことはまず余りないのではないかということで、一般的な形でこれは自由化ということでAA品目という経緯でございます。
  36. 立木洋

    ○立木洋君 その御答弁は矛盾していると思うのですけれども、現に昨年の十月ごろから、韓国からコンニャクが大分入ってきておりますね、コンニャクイモ生産者、関係者の方々がいろいろと農林省にも陳情されたと思うのですけれども、それに対してどういうふうな対応をされて、今後の対策としてはどう考えておられるのか。
  37. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ただいま申し上げましたようなことで、わが国独特の食品でもあり、海外からの輸入はほとんどなかろうという想定でございましたが、昨年の十月ごろから韓国で外国の原料を輸入をいたしましてコンニャク製品を製造して日本輸出したということがございます。こういうことで業界、コンニャクイモの生産農家等が非常に心配をしたことは事実でございます。まあその後の推移等を見ますというと、さほどの輸入量ではございません。そういうことで、現段階ではコンニャク業界なりあるいはコンニャクイモ生産農家にそう影響を与えておるというふうには見ておりません。
  38. 立木洋

    ○立木洋君 それではお聞きしたいんですけれども、今年度、五十年度のコンニャクイモの輸入制限の量、輸入量の計画は一体幾らになっておりますか。
  39. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 四十九年度の下期で六百トンの割り当てをいたしております。
  40. 立木洋

    ○立木洋君 韓国の釜源食品では、製品としては大体九千トンですか、生産できるという能力を持っておるというふうに報道からは見ておるわけですけれども、これを精粉に換算すると約三百トンぐらいになるというふうに言われているわけですが、これもどんどん生産されて日本に入ってくるということになると、これはいわゆるコンニャクイモを生産している人々に大きな打撃を与えるという結果になるんではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  41. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 現在韓国でコンニャク製品を製造しておる、しかも日本輸出をしておる、そういう工場として、ただいま先生からお話がございました釜源食品というのが韓国にあるようでございます。これは製造能力は定かではございません。ただいま先生からお話ございましたように、年間九千トンというお話もあろうかと思いますし、あるいは年間七千五百トン程度じゃないかという説もございまして定かではございません。いずれにいたしましても、ただいま先生が九千トンというお話でございますが、板コンニャクの形態で現在入っておりますが、板コンニャクのわが国の年間の消費量が十九万トンということでございますので、その面から見ましてもそう大きな製造能力ではないということが一つと、もう一つは、後は原料の問題につきましても、韓国ではコンニャクのイモがございません、これも輸入でございますが、それも国際商品という形でございませんで、わが国の方で特に野生で生えているものを採取をするというような形で輸入を従来から続けてきておるというようなことでございますので、韓国の方でもどの程度輸入原料をつかまえられるかという面につきましては、輸入ソースの面から制約があるのではないかというふうに考えます。
  42. 立木洋

    ○立木洋君 コンニャクは日本人だけが食べるもので、日本だけで生産されておったと、そういうことで原料の輸入は非自由化したけれども、しかし加工品そのものは非自由化していなかった。しかし、現実に韓国でそういう生産が行われ、そうして日本に輸入される、また台湾や香港などでもそういう製造ということが考えられておるという報道もあるわけですし、状況は変わってきたわけですから、関税の観点からいうならば、やはり国内産業を保護するということを十分に配慮しなければならない。そうすればコンニャクの加工品についても非自由化品目としてやはり国内の産業を保護していく、そういう立場をとることが当然しかるべきだと考えるわけですが、そういう考えはないわけですか。
  43. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) ただいまのところは、韓国からの輸入が若干あるということでございますが、これが台湾あるいは香港に波及をするかどうかという問題、全然ないとは申し上げかねると思います。したがいまして、農林省といたしましては韓国からの輸入等、今後ともコンニャク製品の輸入の推移ということにつきましては注意深く見守っていきたい、事態の推移いかんによりまして所要の手は打っていきたいというふうに考えますけれども、いまの段階で直ちにこれをIQ物資に戻すとかいうようなところまでは考えておりません。
  44. 立木洋

    ○立木洋君 事態を考えて、国内産業に大きな打撃を与えるというふうな見通しが明らかになった段階では検討するというわけですか。
  45. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) その影響がないようにということで、今後の輸入の事態の推移を見ながら考えていくわけでございますが、その際におきましても、秩序ある輸入といいますか、あるいは輸入調整といいますか、こういうものに対する手だてにつきましてはいろいろな措置があろうかと思います。したがいまして、ただちにIQに戻すということをすぐ考えるというようなことまではまだ考えておりません。所要のいろいろな手だてがございますので、悪影響が出ないような手はいろいろ打っていきたい、こう思っております。
  46. 立木洋

    ○立木洋君 その点はよく検討していただきたいと思います。  最後に、大臣にお伺いしたいんですけれども、この間アメリカに行かれたときに、キッシンジャー国務長官とお話し合いされた際に、食糧備蓄問題でお話し合いが何かなされたという報道を新聞で見たわけですが、その際にはどういうふうなお話し合いがされたのか、また日本としてはどういう考え方を述べられたのか、そのことを最後に一言お尋ねしておきたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは余り深い話は実はなかったんでございますけれども、まあアメリカとしては、これはガットに確かに多少関係いたしますが、食糧問題はロンドンでいろいろ相談をしておるので、あの線で進めていきたいという話がございまして、私はそれに関連しまして、備蓄という考えそのものに反対ではないけれども、一体その備蓄というものはだれの負担においてするか、過去においてはこれは生産者の負担においてなされた場合が多かったわけでありますし、それから今後の食糧事情がどのようになるものであるか、備蓄の量をどう考えるかというような具体的な話にならないと、それが全面的に賛成できることかどうか必ずしも明確でない、考えそのものに反対ではないんだがというようなことを申しました程度で、それ以上深い話はございませんでした。
  48. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、両件について質疑は終局したものと認めます。  これより両件の討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  49. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 挙手多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更に関する第二確認書締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  50. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 挙手多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  52. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案衆議院送付)を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。宮澤外務大臣
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案におきましては、まず、グレナダ、バハマ及びギニア・ビサオの諸国にそれぞれ兼轄の大使館並びに欧州共同体日本政府代表部を兼轄公館として設置するほか、在上海、在アガナ及び在マルセイユの各日本国総領事館を設置することとしております。  次に、これら新設の在外公館につきまして、これらの公館に勤務する職員の在勤手当の額を定め、あわせて既設の公館につきましても世界的インフレ傾向、為替相場の変動等を勘案し、在勤基本手当の基準及び研修員手当の額を改定するとともに研修員手当の号別の区分の範囲を拡大することといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  なお、本法律案は、昭和五十年四月一日に施行されることを想定しておりましたが、これが実現されませんでしたので、所要の調整を行うため衆議院においてその附則の一部が修正されましたので申し添えます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  54. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 以上をもって、本案の説明を終わりました。  質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  55. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  56. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 まず最初に、沖繩県で今度起きました米兵による女子中学生暴行事件につきまして、政府の所見を承りたいと思います。  御承知のように、本件は去る四月十九日白昼、沖繩県の金武村の浜田海岸で海水浴に来た女子中学生二人が米兵に頭を殴られて気絶したところを乱暴されるという、普通の常識では考えられないような極悪非道なものでございます。この件につきましては、すでに約一週間経過いたしておりますが、これに対して警察当局並びに外務省がどういうふうな措置を講じ、またどういう外交交渉をやったか、これについて御報告を願いたいと思います。
  57. 金子仁洋

    説明員(金子仁洋君) 事件が発生いたしましたのは、今月の十九日午後五時十五分ごろでございます。四時ごろ発生いたしまして、五時十五分に至りまして、わが石川警察署の金武管区派出所がこれの届け出を受けたわけであります。その後、直ちに全島に対する緊急配備をいたしまして、被害者からの事情聴取、また現場付近の聞き込み、それから一連の初動捜査を実施いたしました結果、たまたま、現場近くの海岸でパーティーを開いておりました米海兵隊員の証言から、加害者は米国軍人である、しかも同海兵隊員らが取り押さえまして、金武村にある在沖繩米海兵隊キャンプ・ハンセンに、捜査機関に身柄を引き渡したということが判明したのであります。よって、キャンプ・ハンセンに捜査幹部を派遣いたしましたところが、被疑者はキャンプの上等兵サミー・フローレス、二十一歳でありまして、現場付近でパーティーを開いていた米海兵隊員からの身柄の引き渡しを受けた当局は、その身柄を拘束しておるということが確認されたわけであります。  沖繩県警においては、同日、所轄の石川警察署幹部から、米軍当局に被疑者の身柄の引き渡しを要求いたしました。目撃者である米海兵隊員、被害者等の証言、現場の検証の結果等、資料にいたしまして、翌四月二十日に被疑者についての逮捕状の発行を申請いたしました。  米軍当局でございますが、被疑者の引き渡し要請については、県警の刑事部長等から現在までに数回にわたって引き渡せという要請を行っておるのでございますが、当局は、先ほど申しましたように、身柄の引き渡しには応じられない。しかし、捜査に支障を来さないように全面的に協力するという態度をとっておるわけであります。そこで、県警といたしましては、二十二日から被疑者の出頭を求め、令状による身体検査、血液、体毛等の採取、さらに任意の取り調べを実行してております。  その後、本人は一部犯行を自供しておりまして、県警といたしましては、これらの客観的な資料、本人の自供等あわせまして、できるだけ早く検察庁に送致し、わが国の法令により、わが国の裁判所でしかるべき処断が行われるよう努力をしておる次等でございます。
  58. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 外務省といたしましては、本件を知りまして、二十二日に、在京米大使館のピトリー参事官を招致いたしまして、この事件が発生したことはまことに遺憾であるということを強く申し述べまして、今後さらに軍紀の粛正につき努力を払って、こういう事件が再び起こらないように、あらゆる措置をとるように、強く要請いたしました。さらに、現在行われております日本側の捜査に対しても、十分に協力するように要請した次第でございます。  これに対しましてアメリカ側は、このような不祥な事件が発生したことについて非常に深甚なる遺憾の意を表しまして、軍紀粛正にはさらに十分努力する、そうしてこういう事件が再発しないように早速措置をとる。また、日本側の捜査には十分協力をいたしますということを申した次第でございます。そして現実においても、警察当局からもお話しありましたように、被疑者は、日本の警察に出頭して取り調べを受けております。  さらに、外務省といたしましては、実は今朝、日米合同委員会が開かれる手はずになっておりますので、わが方の代表がアメリカ側に対して、重ねてこの問題について遺憾の意を表しておりまして、それで軍紀の粛正をさらに重ねて要請し、捜査に対する協力を重ねて要請している次第でございます。
  59. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 従来こういった事件が起きた場合に、いつも問題になり、また疑惑を招いたのは、アメリカのこれに対する態度がどうもはっきりしないという面であります。そうして一つのポイントは、身柄を日本側に引き渡すかどうかということにあるわけですが、さもない限り、まあ証拠隠滅があったり、その後における裁判の場合において、非常な日本側で不利な状況にあったので、処罰の件についても十分に意に満たないような方向において解決される、あるいはまた、いつの間にか沖繩の現地にはいなかったというふうな状態も間々あったのでございまして、この点について捜査当局が、また外務省が、さらに強い決意を持ってこれに当たる必要があるんじゃないかというふうに考えますが、いかがですか。
  60. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ただいま御指摘のありました点でございますが、日本側で起訴されるまでの間、身柄が米軍の拘束下にあるという点につきましては、そのような規定が地位協定の中にあることは事実でございます。ただ、それがあることによって事件がうやむやになるとか、あるいは十分な処罰ができなくなるということはない次第でございまして、従来もわが方としては、日本の必要な法を適用すべき場合には当然適用できるように十分な捜査をし、それについて先方の協力を要請し、また、厳に処罰している次第でございます。したがいまして、この種の事件に関しては、われわれはあくまで厳正に日本の関係法律が適用されるように、十分の努力を払いますし、また、従来も払ってきたつもりでございます。
  61. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 実は、きょうの沖繩タイムスの朝刊でございますが、これによりますと、二十三日の午後に、沖繩弁護士会の会長の宮良氏が浦添市で総領事と会って、この問題について話した結果が載っておるのでございますが、それによりますと、身柄引き渡し要求の件については、ファーネス米領事は、日本側の要求があれば身柄を引き渡すんだというふうに答えたというふうに載っております。私はこの件については、アメリカもはっきりした、しかも厳正な態度で臨むべきだと思っておりますし、わが政府の方で強くアメリカ側に要請ある場合においては、身柄引き渡しはできるものだというふうに考えているのでございますが、その点についての御所見を承りたいと思います。
  62. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ただいまの報道に関しましては、私たちも承知しておりますが、他の報道、琉球新報等の報道では、別の報道がありまして、われわれも早速米国大使館を通じて事実を確かめましたところ、アメリカの主席領事は、日本側で起訴が行われれば身柄は引き渡すということを言ったのであると、いま直ちに身柄を引き渡すということは申しておらないということを言っておるわけでございます。この問題について、警察当局から要請のあることは事実でございますけれども、先ほど田中委員にも御説明申し上げましたように、両国の裁判権が競合しているこの種の事件に関して、一つのルールとして、一方が拘束しておるときは、その拘束は一応継続を認めると。ただ、起訴段階において身柄を引き渡すべきものは引き渡すということになっておる次第でございまして、われわれとしては、起訴手続を速やかに進めて身柄を引き渡しを受けることが最も実際的な解決方法であると考える次第でございます。
  63. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 沖繩の県警の主張でございますが、県警は身柄引き渡しを早速やるべきだという主張をしているようでございます。ひとつ警察当局におきましては、県警の立場を尊重されて、速やかにこの問題が解決されるように、あらゆる努力を払ってもらいたいというふうに考える次第でございます。  それから大臣に御質問いたしますが、実は、復帰後こういう不祥事件が昨年末までに六百八十三件あった。それから被害者は七百八十人という膨大な数字に上っております。これはむしろ復帰前よりも悪い状態じゃないかと思っております。なぜそういうふうに多くなっているか。この点については、私は日本並びにアメリカ当局も十分に反省の要があると思うのでございます。実は、今日までそれほど激しいものは余りなかった。と申しますのは、金武村というのは非常に、まあ基地の町ではございますが、わりにうまくいっていたのでございます。ところが新聞によりますと、いま金武の村長の岡村君が先頭に立って第一回抗議運動を展開している。私は基地の問題、安保の問題、安保にまあ私は賛成でございますが、ところが基地を維持するにしても、それからまた安保というものを堅持していくという場合においても、こういうふうな不祥事が次から次に起きた場合においては、私はこれから破綻が来るんじゃないかというふうに非常に心配するのでございます。その意味におきまして、ぜひこういったようなことのないよう、あらゆる努力を払ってもらいたい。  それで、私はまあ明治のころを想起するわけですが、北清事変というのがある。あのときにおいて世界の中で日本の軍人が一番規律が厳正だと、これが日本の非常な信用に関係した。だから今後、アジアにおいていろんな問題が起きる場合においても、沖繩が一つの見本でございますので、ここでりっぱな成績をおさめない限り、私はアジアの問題というのはきわめて困難な情勢に入るというふうに考えております。外務省におかれましても、ぜひ強い態度でもってこの問題に対処してもらいたいというふうに思いますが、ひとつ外務大臣の御所見を承りたいと存じます。
  64. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたびの出来事は私どもの知っております限り、ほとんど弁護の余地のないまことに遺憾な出来事でありまして、したがいまして、そういう考えのもとに米国側に先ほど御報告をいたしましたような遺憾の意を表し、米側もそれに対して深甚な遺憾の意を表しておるわけでございます。沖繩におきまして、ことに基地が多いために、私自身も安保条約、それに伴う施設・区域の提供は必要だと考えておりますけれども、いかにも沖繩の県民各位には他の県に比べまして過重な負担をお負わせておることは事実でありまして、その点は国益のためとはいいながら、御同情をしなければならない状態であるとただでさえ考えておりますが、このような事件が起こりますと、まことに基本的な政策そのものまでも、県民あるいは現地の人々から疑いを受ける結果になりやすいのでありまして、十分に外務省といたしましても米国側の注意を喚起し、軍紀を厳正に保ってもらわなければならないということは、今後とも主張していくつもりでございます。  今回の場合、たまたま容疑者が、聞くところによりますと、隊に属しましてほんの直後であった、わが国に参りましてきわめて日が浅かったというような事実であったそうでございますが、そういたしますとそういう人々について、ことにわが国におります米軍の軍紀、規律というようなものを徹底させる時間が少なかったのではないかとも思われます。そういう人々についても、余分に米国としては注意をしてもらいたいと考えておりまして、外務省としてもその点は続きまして米国に十分な注意を喚起してもらうようにいたしたいと考えております。  重ねて、このたびの出来事はきわめて遺憾な事件でありまして、容疑者が一日も早くわが国の法によりまして適正に処置をされることを政府としても願っておるところでございます。
  65. 稲嶺一郎

    ○稲嶺一郎君 沖繩の問題につきましてはこのぐらいにいたしまして、時間がありませんからごく簡単に、ポスト・インドシナの問題について若干御質問をいたしたいと存じます。  実は、この前、東南アジアの指導者の方と話をしたんですが、このときに彼らは非常に心配をして、今後東南アジアがどういうふうになっていくであろうかという非常な懸念を持っておりました。そのときに話をされたのが、今後の東南アジアは、アジアはアジア人に任せろということ、それから民族自決ということでいかなきゃならないと思うんだが、ところが大国の影響力が加わることによってこういったような考え方一つ一つこわれていく、これじゃ幾らわれわれが真剣に自分の国は自分の国として考えようとしてもなかなかいかない。それで大将は日本の歴史を調べておりまして、日本は非常に運がよかった、明治時代に勝海舟という偉い人がおられて、このために外部の影響力は全然なしに日本というものをつくり上げてきたと、われわれの国もそういうふうにやっていきたいんだが、残念ながらどうも思わざるところから思わざる影響が出てきて、とんでもないような運命に国が翻弄されてきた、これをぜひ避けたいんだという話でございました。  それで、今後そういう事態があるいは起きるような何か懸念もありますので、外務省においては将来に対する十分なる見通しを持って、そういったような事態が起こらないように、この前外務大臣が言われたように、民族自決主義ということでいっても、しかしこれはなかなか実際においては起こらないような事態の発生もしかねない。だからこの点も十分配慮されて、今後日本がまあ戦争の時代から経済安定の時代、政治安定の時代に入りますので、日本の役割りというものはきわめて重大なものです。だからこれに対して、簡単でございますが時間ありませんので、今後のポスト・インドシナに焦点を当てて政府の態度を承りたいと存じます。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国といたしまして、東南アジアの各国がいわゆる民族のことは自分の民族で決めるという考えに基づきまして、それをそのとおり着実にコースを進めていってもらうことを望むものでございますが、もとよりその際いろいろな援助を求められることもあろうと存じます。これはわが国ばかりでなく、それらの国は各国にいろいろな意味での援助を求めることは当然あろうと思いますし、またそれは自由であると存じますが、援助を与える立場から申しますと、本当にその民族が望むところのもの、そのような援助要請に応じて与える、いわゆるそれにいろいろな条件をつける、あるいはひもをつけるというようなことは、やはり極力差し控えるべきものであろうというふうに考えます。これらの国は、今後とも恐らくは米中ソというような大国の勢力の入りまじりました環境の中で自決の道、独立への道を進んでいくものと存ぜられますが、それらのいわゆる大国も、また求められて援助をするにいたしましても、その援助の仕方に際して、極端に利己的な動機、あるいは特定の目的、民族が望む以外の目的にその援助を奉仕させるというようなことは避けてもらいたい、避けるべきであるというふうに考えます。  その際、先ほど明治時代わが国のことに御言及がありましたのは、私はきわめて適切な御指摘であると思います。と申しますのは、そのような援助を受ける民族あるいはその人々が、外国との関係を持つということは当然でありますけれども、それがつまり内政干渉にわたる、あるいはもっと極端な場合には民族自身のためよりは個人的な動機に支配されるといったようなことがありましては、これは恐らくはその民族の将来のために好ましからぬ結果になるであろうと思うのでありまして、その点わが国が明治維新以来きわめて賢明に行動をしたということは、やはり一つの私は歴史に残る事実であったというふうに考えます。これらの民族が民族自決の道を進んでいかれることを祈念し、また、わが国としてもそれを助けなければならぬ。わが国を初め各国ともいろいろな援助を与えることは、これは求められれば当然のことであると思いますけれども、それが内政干渉にわたる、あるいは民族の将来について特定な方向を志向させるような動機を含むということは適当なことではありませんし、また、援助を受ける民族そのものがそのような志向を持たれないことを切に祈るものでございます。
  67. 田英夫

    ○田英夫君 最初に、先ほど田中委員が、そしていま稲嶺委員が取り上げられました沖繩における米兵の暴行事件ですが、これは質問でなくて外務大臣にお願いをいたしますが、沖繩県からきょうは副知事が上京されて、外務大臣に陳情されるということも聞いております。いま、はしなくも与野党、党派を超えてこの問題について同じような御意見が出されたわけでありまして、この点については単に行政的な、手続き的な取り扱いではなくて、政治的に、稲嶺委員も言われたように、政治的な立場から外務大臣が御判断をされて対処をしていただきたい、私からもお願いをいたします。   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕  最初に、核拡散防止条約の問題に関連をして御質問をいたしますが、いろいろ報道されているところによると、与党・自民党の中にさまざまな御意見があって、核拡散防止条約国会提出が問題になっているようでありますが、改めて伺いますが、外務大臣としては、つまり政府としては核拡散防止条約の批准を今国会にも求められるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府としては、そのような方針でそれを希望いたしております。
  69. 田英夫

    ○田英夫君 希望しているということのお答えですけれども、実は与党の中に反対があって、提出ができないという事態が起こりつつあるのじゃないかと思います。  けさ、当委員会の開会がおくれましたのは、外務大臣と自民党三役との協議が行われたというように聞いておりますが、その結果に立っていま提出したいと、こうおっしゃったのか、提出すると断言できないところは、あるいはまだまだ問題がたくさんあるのか、そこのところはいかがでしょう。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今朝そのような協議が行われたことは事実でございますが、委員会の開会時刻に余り私がおくれてはならないと考えまして、協議の途中で私は立ってまいりました。  ただいま議論しておりますことは、与党としてこの条約を国会に提出をするに際して、幾つかの政府に対する要望事項あるいは要請事項というようなものがあるわけでございますが、それに対して政府がどのようにこたえるかという部分について問題が残っているわけでございます。私といたしましては、それらの事項は政府として満足にこたえ得るものであるという判断をただいまは持っております。したがいまして、政府として私どもの党内のそのような要望に、政府側の所信を示すことによりまして、この会期にこの条約を御審議願うことはできるであろうと、ただいま、なお考えておるわけでございます。
  71. 田英夫

    ○田英夫君 いまのお答えで、与党の方々の中の御意見にこたえ得ると思うということがありましたけれども、そうなりますと、六項目と言われている要望事項があるようでありますが、その中に安保体制の強化ということがうたわれているわけです。ということは、政府は、宮澤外務大臣としては、安保体制を強化するのだ、こういうことでなければ自民党の要望にこたえられないわけでありますから、そういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは強化といいますよりは、もう少し何と申しますか実態に即しまして、わが国の安全保障について一部にある疑念を払拭をする必要があるというような、そういう趣旨の要望でございまして、これは先般私が訪米をいたしました際の一つの問題点でもあったわけでございます。その間の事情説明することによりまして、まず満足にこたえ得ると私は考えておるわけであります。何か安保条約上の新しい義務を負う、あるいは新しいことを考えるといったようなことが具体的に含まれているものではないというふうに私としては考えておるわけでございます。
  73. 田英夫

    ○田英夫君 そうしますと、それに関連をして、昨日の衆議院外務委員会でも取り上げられ、外務大臣からお答えがあったようでありますが、日本に対する核の持ち込みの問題、つまりアメリカの核が日本に持ち込まれるという問題について、事前協議はイエスもノーもあり得る。そうでなければ条約がある意味はない、存在する意味はない、こういうお答えがあったと報道されておりますが、これは間違いありませんか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日そのような衆議院外務委員会でお尋ねがございました。一国の総理大臣として国会における御質問に対する答弁、言明というものは、当然国民各位にいろいろな影響を与える。これは当然なことでありますから、総理大臣がこの問題について従来あのような答弁をしておられることは私はよく理解のできることであり、そうあってしかるべきものであろうというふうに考えておるわけでございます。  他方で、安保条約に基づきます交換公文で事前協議の制度を定めておるわけでございますが、これは、アメリカ側に事前協議をするという義務を課すと同事に、一定の環境におきましては、事前協議を申し入れてくる権利があるという一面を持っていると申し上げても間違いでないと存じます。その場合に、その答えがあらかじめ仮にノーというふうなことに決まっておるといたしますと、この事前協議についての日米間の合意は意味を失うわけでございますから、そういう面では事前協議というものがあり、それに対して日本側の反応がノーであり、あるいはイエスである、そういう可能性がなければこのような取り決めというものは無意味になる。これはもう法律あるいは交換公文の解釈としては私は当然のことであろうと、さようにお答えをいたしたのであります。
  75. 羽生三七

    ○羽生三七君 委員長、ちょっと関連。ただいまの田委員質問に関連してですが、外相は、いまも御自身からお答えがあったように、事前協議で常に拒否ならこれは無意味というふうに、こう衆議院で答えられておるわけですが、これは日本の非核三原則を修正することを意味しておるんでありますか。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのようには考えておりません。
  77. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは実はおかしいんでしてね、四十七年の五月二十四日、   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕 衆議院外務委員会で佐藤総理は、事前協議でイエスもありノーもあるということではなく、はっきりノーばかりの状態だと、こう答えておるんです。だから佐藤総理は、イエスもあればノーもあると言っておるけれども、事前協議の場合ですが、三木総理はいかなる場合でもノーと言っておるので、三木総理だけがそういう考え方を持っておられるように言っておられますけれども、そうではないんで、佐藤総理もそのことについては、核に関する限りはノーと言っておるわけです。だから、いま外相の言われた事前協議という制度の一般論から論議するんではなしに、この核だけは佐藤総理の場合でも除外しておるんです、事前協議の場合に。もちろん三木さんの場合もそうだと思います。核を除外する一般的な事前協議の場合にイエスもあればノーもあるということは、賛成、反対別として、一般的な理解です。しかし、核に関する限りは、佐藤総理もこれはイエスもあればノーもあるではなしに、いかなる場合でもノーだと、これ明確に四十七年五月二十四日に答えておるんです。それを変更することは、だから宮澤外相の言われる常に拒否なら無意味という言葉は、一般的な条約論で、核に関してはこれは別だと、従来の佐藤総理、三木総理の言ったことを認めるという、つまり核に関してはこの三原則は依然として残っておるという立場でなければ、これは重大な変更でして、前総理、現総理の国会での確約を変更する重大なこれは発言だと思いますから、この際明確にしておいていただきたいと思います。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一国の総理大臣として、わが国の政治の基本方針をそのように表明せられるということは、私はそうあってしかるべきことであろうというふうに考えますので、それについて私は全く異存、異論を持っておるわけではございません。  次に、日米安保条約及びそれに伴います諸取り決めを所管する国務大臣といたしまして申し上げなければなりませんことは、いわゆる安保条約第六条の実施に関する交換公文、これは総理大臣と米国の国務務長官との間に交わされた交換公文でございますが、これが事前協議について定めております。その中で、合衆国軍隊の装備における重要な変更というものがどのような範囲のものを意味するかということも、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解といわれるもの、その後さらにそれは確認されたわけでございますが、そこにおきましてその範囲が定められております。したがいまして、そのような事前協議の制度があるということ、これは両国間の約束としては、事前協議をアメリカがしてくるという道がここで認められておるということでありまして、それに対して答えが常にノーであるならば、この事前協議というものは事実上意味をなさなくなります。したがいまして、そういう両国間の約束から考えますと、条約の実施を主管する私といたしましては、その答えが常にノーであるというようなことを申せるはずがない。そうでありますれば、その部分についての事前協議は意味を失うわけでございますから、そういうふうには申し上げることができない。ただ、一国の政治の最高の指導者としての総理大臣が国会に対し、国民に対し、自分はこのように考える、そういう方針を示されることは、これはまたもう一つ高い次元において当然のことでありますし、私は表明された方針に対して少しも異議がない、こういうことと御了承願います。
  79. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは言葉の魔術といいますか、詭弁といいますか、それは外務大臣が外交を所管するものとしてという発言で、総理大臣はこれは高度の政治的判断ということで区別されておりますけれども、この種の問題は区別すべき性質のものじゃないのです。  それから第一に、事前協議の場合に核を除外しておる場合、佐藤総理の場合は核を除外していますね、核に関してはこれを除外しておるわけです、三木総理もおそらく同じ考えにあったと思うのです。そうですから、いわゆる事美協議の一般論としてのこの問題と、日本の特殊事情、非核三原則を持つ日本としての立場というものを混同しないように、核に関する限りは事前協議の場合にも、いかなる場合にもノーという答えがなければ、これは三原則を修正したという以外に持ち込めるはずはないのですから、三番目の、原則の三つ目を取りはずさなければ日本に核を持ち込めるはずはない。ですから、外相の発言はこれは重大な発言でありますので、もっと明確に答えていただきたいですね。一般論ではいけないと思います。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現実に日米関係を考えます場合に、両国は相互信頼の上に立っており、また、この安保条約そのものが相互信頼の上に立っておるわけでございます。したがいまして、アメリカとしては、一方において事前協議をする権利、義務を持っておりますが、他方において、わが国がいわゆる非核三原則を持っておるということは、これはよくアメリカ側が承知をいたしております。そこで、そういう信頼関係に立つ限り、この事前協議についてアメリカ側がこれを発動してくるのかこないのかということは、日米の信頼関係に立つ限り、アメリカ側がわが国の基本方針をよく理解をしておる、そういう事実の上に立って考えればいい、そういうふうに私は思っておるわけであります。
  81. 羽生三七

    ○羽生三七君 それはどうしても了解できませんよ。核に関する限りはいかなる場合でもノーだというお答えがない以上、三原則の一つは修正されたと考えるのがこれは常識であります。つまり、一般的な事前協議の態様論ではありません。内容の具体的な問題です。しつこいようですが、これは明確にしておいていただく必要があると思う。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日米間にそのような信頼関係があり、また信頼関係がなければ安保条約のような条約というものは円滑に運営することはできないわけであります。核の問題についてわが国がどのような立場をとっており、総理大臣がどのような言明を国会でしておられるかということは、アメリカ側が当然のことながらよく知っております。そのような信頼関係、相互理解に基づいて今後の両国がこの条約を運営していくであろうということは、私は少しも疑っておりません。そのことと事前協議に関する交換公文が両国の間に存在しているということは、私は少しも矛盾をしないというふうに考えておるわけであります。
  83. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは外務大臣、たとえば核に関する場合に、アメリカが事前協議として問題提起してくること、そのことを妨げておるわけではない、それはいいんです、まあいいかどうか別として、そう解釈できますね。しかし、提起してきた場合にイエスと言うかノーと言うか、その場合にはノーと言わなければならないでしょう、イエスもあり得るじゃ、それはおかしいですよ。それは重大な問題だと思いますね。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) しかし、法律論、条約論としては先ほど申し上げたとおり申し上げるのが正しいであろう、この交換公文が変わりません限り、私はその解釈は正しいであろう。ただ、そのような日米関係の信頼の上に立って、日本の実情をよく知っておるアメリカが、そのような事前協議をしかけてくるであろうかこないであろうか、このところはまた別個の私は事柄であろうというふうに思っておるわけであります。
  85. 羽生三七

    ○羽生三七君 これは外務大臣、これ一日でも私やりとり――時間の制約があるし、田君の質問の関連質問ですから、際限なくやるわけにはいきませんが、これは納得いくまで伺わなければ、途中でやめることのできるような問題ではないと思うんです。だからアメリカが問題を提起してくるのはいいんですよ。くるかこないかわかりませんが、仮にきてもよろしい。しかし、それはいいとしても、その場合に核に関する限りはイエスもあればノーもあるのじゃなしに、オールノーだと。これは私の質問にも佐藤総理が答えたことがあります。これは明確にそれを答えておるわけです。ですからこの点は、そんなあいまいなことでこの場を過ごすのは適当ではないんじゃないでしょうか。それは後々に、たとえば、もう一言つけ加えて言わせていただきますが、この種の問題を言葉の表現上の技術的な問題として扱うことは私は適当ではないと思うんです。しかも、この核防条約を批准してもらいたいために、与党内の了解を得るためにあいまいな表現で、この委員会においてもなおさらですが、後に禍根を残すような形で単なるテクニックの、外交のテクニックのような形で片づけるべき問題ではないと思うんです。非常に重要な問題だと思うんです。この種の問題は、この前の委員会でも私申し上げましたように、これは核防条約の批准に関連して技術的に扱う問題じゃなしに、日本の安全保障の体制にかかわる、あるいは憲法にもかかわる基本的な問題なんですよ。非常な重要な問題をそう軽く技術的な言葉の表現、テクニックという形で取り扱われることに私は非常に不満を感ずるんです。関連ですからこれ以上多く申し上げませんが、重ねて核に関する限りはイエスもあればノーもあるということはないと、もう事前協議の一般論はよろしいんです、核に関してイエスもあるのかどうかということをはっきりしてください。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理大臣があのような方針を表明しておられる、そのことは恐らくは安保条約の運用、安保条約に基づく交換公文についての運用についても非常に高い政治的配慮からああいうことを言っておられるということは、私はしかあるべきでありますし、私も異論がありません。しかし、さりながら、交換公文そのもので米国側に日米合意しておりますところのこの事前協議という制度が、事実上法律解釈的にあるいは条約解釈的に無意味になるような解釈は、この条約を主管する私としてはとれない、法律論としてはとれないということであります。総理大臣が一国の政治の運営をどのような方針でやっていかれるかということは、そのことはいわゆるディメンションを、次元を異にする問題であろうとは思いますけれども、私はその二つのことは矛盾しているとは考えておりません。羽生委員が言われますように、確かにこれは核拡散防止条約をどうするかということとの関連においてのみ論じられるべき問題ではありませんで、もっと広い、われわれが常に考えておかなければならない種類の問題でありますことは、私もそのように承知をいたします。
  87. 羽生三七

    ○羽生三七君 じゃもう一問だけ。  たとえば、そういうアメリカの核抑止という場合に、核配備の具体的態様は一体どういうようなものなのか。たとえば、日本の国土の外から長距離ミサイルでとか、あるいはポラリス潜水艦でということもあるわけですね、核抑止という場合。それで宮澤外相の言う事前協議すべて拒否なら無意味という場合は、国内からということもこれは解釈できますね。それだからこれを突き詰めていきますと、アメリカの核抑止に日本が依存するという場合に、その具体的な態様はそもそもどのようなものかというその内容ですね、たとえば、日本が何か危機にさらされたという場合に、アメリカが先に核で先制攻撃をかけるのか、相手国から核攻撃してきたときに、日本アメリカに依頼してアメリカが報復の核攻撃をやるというのか、そういうことも何もわからなしに、ただ核依存というのですね。しかし、きょう私はこれやめますよ、これ以上何も申しません。非常にあいまいな形で核依存とか核抑止ということが論じられておるのです。ですから、具体的にその態様を考えるならば、実にそんな簡単に片づけられるような問題ではないという問題を提起して、それからさっきの事前協議のイエスとノーに関する外相の御答弁は私絶対に納得できないので、きょうは関連ですからこれ以上はやめますが、また他日、適当な機会に十分意見を戦わしたいと思います。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 私も羽生委員の言われるとおり、外務大臣の御答弁はそのまま非核三原則を否定されたというふうに受けとらざるを得ないのですね。外務大臣が余りそこで自説をがんばられることは、私は大臣のために適当でないという気がしてなりません。総理大臣が言われるのは高度の政治的判断でわかるけれども、自分は条約を守る立場だからと、これは大変失礼ですが、条約局長がここで条約論として言われるならわかりますよ。しかし、それを外務大臣が言われるというのは、政治的な判断をされる立場にあるはずですから、非常に私は理解に苦しむ。  角度を変えて伺いますが、大臣はイエスという場合もあり得ると言っておられるわけですから、それではイエスというのは一体どういう場合にアメリカの核の持ち込みが起こるのですか、イエスと言われるのですか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般論として申し上げますならば、その点は総理大臣が幾たびも国会で表明しておられますように、わが国がイエスと言い得る場合というのは、ちょっと私にはいま考えにくうございます。ただ、そういう場合が絶対にないということになれば、先ほど申しますような議論になってまいります。それは条約局長が言うことだと仰せられますけれども、この日米安保条約というのは両国が合意をしたものでございますし、交換公文はわが国の首相と米国の国務長官が交換をいたしたところのものでございます。したがって、直接的にこれはやはり外務大臣自身が責任を負うべきものである、私はそう考えております。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 いま言葉じりをとらえるわけじゃありませんけれども、交換公文は総理大臣が署名されているのですね。その総理大臣が高度の政治的な判断から非核三原則を守ると、つまりイエスはあり得ないと言っておられる。佐藤総理大臣が言っておられるのも羽生委員指摘されたとおりであります。三木総理は極東に核戦争が起こってもアメリカの核を日本に持ち込ませることはないと、ここまではっきり言っておられる。核積載艦を、海洋法の規定いかんにかかわらず、日本の領海の中を通らせることはあり得ないと、こうはっきり言っておられる。もう明快に非核三原則は事前協議の条項にかかわらず守るんだと、核だけは除外するんだということを歴代総理大臣が言っておられるのを、宮澤外務大臣がひとりこれを否定されるということ、これは条約論の問題でなくて、それでは宮澤外務大臣は閣僚として、国務大臣としてなおかつそれを言われるのですか。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国の政策の運営につきましては閣僚の一人として意見は申し上げますが、総理大臣の裁断に徒うべきは当然でございます。ただその際、この条約並びに交換公文を所管いたします私といたしまして、法律上の解釈としては、先ほどるる申し上げているような解釈をとることが、これが適当であろう。そのことは先ほど申しましたように次元の違う問題でありまして、そういう上に立って総理大臣がなおこういう場合にはノーと言うべきだという御決定をされるということは、私はそれもきわめてあるべきことでありますし、そうあってしかるべきで、私はそれに当然従うつもりでございます。
  92. 田英夫

    ○田英夫君 先ほど外務大臣はイエスという場面は自分ではちょっといま思い浮かばないと、こういうことも言われた。そうすると、全くの条約論だけなんですね。大変失礼ながら、官僚御出身ということがそこににじみ出ているのかもしれませんけれども、私どもは政治的な判断を伺っているんです。したがって、これはどうしてもつじつまが合わないわけですよ、御答弁を伺っていると。そうなりますと、援軍を出すわけじゃありませんが、外務大臣がおっしゃりたいのは、アメリカは核の持ち込みについては事前協議を求めてこないだろうとおっしゃりたいんですか。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、先ほど羽生委員に申し上げましたことから御推論をいただきたいと思いますけれども、日米両国がこのような関係にあり、このような条約体制というものは、相互理解に基づかなければ、ただ解釈論だけでやっていけるものではない、先ほどそういうふうに申し上げました。そうして、わが国が非核三原則を持っていることはアメリカがよく理解をしておると存じます、このように申し上げておるわけでございます。
  94. 田英夫

    ○田英夫君 この問題、本当に羽生先生言われたとおり、非常に重大な問題でありますから、何時間でも費やして改めてお聞きをしなければならない問題だと思いますが、先に話を進めまして、いま自民党、与党の中から核防条約の問題について、いわゆる安保体制強化ということを含めて、幾つかの要望が出てきたという中で、いまの非核三原則を破るような御答弁も出てきたという重大な事態になってきているわけですが、大体、核拡散防止条約というものと日本の安保体制、日米安保条約というものとの関係は一体どういうふうにあるのか、これは自民党の中のそういう意見を吐いておられる方に直接伺うべきかもしれませんが、私にはどうしても理解できないんですが、外務大臣にこれは教えていただきたいんですが、どう関係をするのですか。
  95. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは私も有権的に御説明する立場には実はないわけでございまして、どういう議論になっているかを紹介せよとおっしゃられるならば、御紹介を申し上げますが、結局、核拡散防止条約をわが国締結をするということによって、批准書を寄託するということによって、わが国としては今後一応二十年間、脱退の規定がございますけれども、これは別といたしまして、あの条約にございますところの義務を守るということになるわけでございます。わが国としては、いわゆる非核三原則を、これは憲法そのものの定めるところではないと仮にいたしましても、歴代内閣が基本的な方針として持っておるわけでございますが、それは内政上の問題であって、国際的にそういう約束をしておるわけではない。今回この条約に加盟することによってそういう約束を国際的にすることになる。ということは、二十年間はその約束を内部の決心の問題としてばかりでなく、国際的に守らなければならないという立場になる。その場合に、現在の世界情勢において、わが国にいろいろな攻撃が加えられることはもとより願わないことでありますし、その危険は高いとは思いませんが、あり得ることです。しかも、それが核攻撃を含むこともあり得ることであろう。その場合に、わが国が何かの形での核抑止力のもとになければ、わが国の存亡にかかわる事態ではないであろうか。核拡散防止条約を結ぶことによって、わが国が自分の力でそういうことをするという可能性は、国際的な約束としてなくなるわけでありますから、そうなれば、安保条約によるわが国の安全というものをさらに確固たるものにしておかなければならないのではないか、こういう大体議論の筋道と承知をいたしております。
  96. 田英夫

    ○田英夫君 で、それについて外務大臣はどうお考えですか。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私自身は、従来の日米関係から、それらのことは十分に確保されておるというふうに、どちらかといえば考えておるものでございますけれども、私どもの党内にそういう議論があるということは、とりもなおさず国民世論の一部にそういう疑念があるということでございますから、それであれば、それに対してはそのような不安にこたえておく、そういうことが必要であろう、そういうふうに私は考えたわけでございます。
  98. 田英夫

    ○田英夫君 いまはしなくも、これも言葉じりのようですが、世論の一部と言われましたが、私どもが理解をする限り、日本国民のほとんどすべてといっていい大部分の気持ちは、日本が絶対に核を持たない、また日本に核を持ち込ませない、いわゆる非核三原則ということにあらわれていることだと思います。そうなりますと、核拡散防止条約を批准するということによる一つの大きなプラスは、日本世界に向かって今後も核武装はいたしませんということを表明をする、世界に向かって表明をするという点にあるはずですね。むしろそここそが非常に重要なのであって、日本が核抑止力を何らかの形で持っていなければ危ないからこれに入っちゃいけないということは、これはまさに一部の方の非常な論理的にもおかしな杞憂でしかないと、こういうふうに言えると思うのです。むしろ問題は、核防条約を批准することによるマイナス面をずばり指摘をする人は、つまりフリーハンド論、自分自身が核を持つ、日本自身が核を持つということを主張されるならば、これは論理としてはわかります。もちろん私どもは反対です。そうして日本国民のほとんどすべては反対でしょう。この辺のところを、これも議論をすれば、むしろ自民党の中の一部の方と議論をしなければならないことかもしれませんけれども、この自民党の一部の方の御議論というのは私どもどうしても理解できない。  核防条約の問題、時間かあまりありませんから、最後に一つだけ伺いますが、外務大臣は、核防条約を批准するということのプラス、マイナスをどういうふうに整理して理解しておられますか。
  99. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私どもの党内の一部にそのような議論があるということにつきましてですが、お互い国会議員の立場といたしまして、お互いはやはり世論を代表して国政の審議に参画をしておるわけでございますから、与党の一部にそういう議論があるということは、その人々個人に限った意見だというふうに考えることは当然のことながら適当でなく、やはり世論の一部を代表しておると考えることが私は素直な考え方であろうと思います。  次に、私自身はわが国が核拡散防止条約に入ることによりまして、世界的な核軍縮運動の先頭に立って、終局的には核兵器の廃棄にまで至るような、そういう大きな運動をやはり内部から加盟国の一員として推進すべきである、それが一番大切なことであるというふうに考えておるわけでございますが、同時に、この条約を考えていく上で、そういうような理想をわれわれは求めながら、現実の世界の事態というものは、必ずしもその理想のところに至っていないことは明らかでありますから、理想を追うの余り、わが国の国民を万一の危険にさらして何らなすところがないということであっては、これは現実の政治に関係するものとしては曠職のそしりを免れない。したがって、この条約は安保条約とやはり密接に連関したものである、こういう議論については私は十分耳を傾けるべき理由がある、このように考えております。
  100. 田英夫

    ○田英夫君 核防条約の問題はこの程度にいたしますが、私も核防条約のプラス、マイナスをいろいろ考えます。私ども社会党の中でも真剣に議論をしております。確かにこの条約がつくられたそもそものねらいの一つは、アメリカ、ソ連という二つの超大国に代表される核保有国がその核保有独占体制を強化しようというねらいがあるということ、これに加入することによってそれに加担するという大きなマイナス面があることは、これは否定できないと思います。しかし同時に、先ほど申し上げたように、日本が今後核武装しないんだということを世界に向かって表明するということを初め、幾つかのプラスの面があることも事実であります。しかし、今後政府・自民党の出方いかんでは、自民党の中の一部ということですが、その御意見が大きく大勢を占めてくるというようなことになってくると、私どもとしても、せっかくまとめつつあるわれわれの意見を改めて考え直さなければいけないということにもなりかねません。これは真剣な問題であります。確かにこの条約にはプラスとマイナスがあるんですから、われわれの立場からも、そのマイナス面を強化するような方向に与党が、そして政府がそれに押されて態度を変えられるようなことがあるならば、これは重大な問題だと思いますので、当然これからの大きな問題ですから、これも機会を改めて伺うことにいたします。  次に、インドシナの問題ですが、これもいま世界の新しい情勢として日本外交が対応を迫られる重大な問題でありますから、この問題もまた時間が幾らあっても足りないほど大きな問題を含んでいると思いますが、簡単にカンボジアの問題をまず伺いますが、シアヌーク殿下が創価学会の池田会長に言われたということで、日本に対しては外交関係を結ばないということを言われたそうでありますが、にもかかわらず承認はなさるのかどうか。この点はいかがでしょう。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) カンプチア王国連合政権の承認はすでにいたしました。シアヌーク氏がそう言われたことは報道として承知をいたしておりますけれども、シアヌーク氏がどのような立場において、また、どのような事実の認識の上にああいうことを言われたのかということが定かでございません。したがいまして、ただいまそれについてコメントをいたす用意がないというふうに申し上げておきます。
  102. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、承認はしたけれども外交関係は持てないということになり、大使交換ということも実現をしないことになるわけですね。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、シアヌーク氏がどのような関連において、あるいはどのような事実認識のもとにあのようなことを言われたのか、また、シアヌーク氏自身が新政権の中でどのような地位とどのような役割りを担われるかというようなことは一切不明でございますので、そのことについて次を推論をするということは、私どもとしてはいまいたす必要もなかろうというふうに考えておるわけです。
  104. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、手続的にカンボジア王国連合政府に対して承認の手続をしたというだけで、その後の接触、つまり大使交換ということに発展をさせる、外交関係を樹立させる交渉はしておられないというふうに理解してよろしいですか。
  105. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 現在プノンペンにはわが方の大使館がありますし、いろいろな大使館としての活動をし得る設備があるわけでございますけれども、大使及び館員は現在あそこを全部離れまして、バンコクに待機しているわけでございます。したがいまして、現在におきまして直接新政府との間の接触はいたしておりませんけれども、外交関係を維持するためにどういうことが適当かという点については、いろいろ検討いたしておりまして、近い将来しかるべき方法で新政府との間の外交関係維持についての措置を講じてまいりたいと考えております。ただ、いま現在何か考えているかと言われますれば、それはまだ申し上げるような段階にはなっておりません。
  106. 田英夫

    ○田英夫君 この承認手続はどういうルートで、どういうふうに進められていますか。
  107. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど大臣からお話し申しましたとおり、今月十九日に閣議の了承を得た上で在中国わが方大使館の館員から十九日付で承認するという趣旨の口上書を先方の在中国大使館に手交いたしております。
  108. 田英夫

    ○田英夫君 ベトナムの問題ですけれども、ベトナムについても非常に大きな変革が急速に進んでいて、グエン・バン・チュー辞任後、第三勢力を加えた、いわば交渉可能の政権をつくる動きがいわゆる第三国も含めて急速に進んでいるようでありますけれども、きょうは伺いたいことたくさんありますが、あと時間がなくなりましたので、一つだけ伺いますが、私、毎度このことを伺っているわけですが、ベトナムに対する援助、これはすでに前の委員会で私か指摘したように、まさに三月二十八日、駆け込みのように閣議決定をされて、援助を南ベトナム、グエン・バン・チュー政権にされた。ところが、やはりこれは大変いま反省しておられるだろうと思います、ああいう形でやられたことを。しかし、まだ約束する分が七十億ですか、残っておりますね。それを、新聞の報道によると、これは七十億円の無償協力は取りやめるというふうに報道されておりますが、これは事実ですか。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 三月の末に年度末が参りましたので、そのような閣議決定をいたしておきましたが、別段後悔をいたしておるわけではございません。私どもの基本的な態度は、一貫して、戦局の進展によりまして、そのいずれかにいやしくも軍事活動の増強になるような種類の援助はしばらく見合わせておこう、こういう考え方が基本的にございます。もとより、そういう事態でなく、いわゆる経済再建、民生安定というような状況でございましたら、先方が望まれる援助の態様に従って援助をいたしたいと考えておりましたし、いまも考えておりますけれども、そういう状況にはどうもなさそうであるし、また、仮に先方からそのような要望があったといたしましても、そういうことが効果的に実施し得る客観的な情勢には現地はないであろうという判断は、これは私どももいたさなければならない。客観的にそういう状況にはないということはいま事実のように考えられます。したがいまして、私どもとして当分なし得ることは、やはり人道的な難民救済といったようなことに援助の重点を置いてまいるべきであろう、かように考えておるわけでございます。
  110. 田英夫

    ○田英夫君 いまの質問に答えておられないんですが、反省をしておられないとすれば、まことにベトナム情勢に対する判断がいまだに改まっていない、これからのアジアに対する外交政策の基本もおそらくそういう形で改まらないだろうと、私はこの機会に危惧の念を表明をしておきます。そして、これは変な言い方ですけれども、かねてから私どもが御注意を申し上げてきた方向にベトナムの情勢が行ったということをむしろ反省をしていただきたい。ベトナムの今日の事態というのは、私どもがかねてから指摘をし、皆さんに、政府側に警告をしてきたことですよ。  で、質問に答えておられないんですが、この七十億円という協力は、すでに予算化されているわけですけれども、そうすると、これは宙に浮くことになりますね。どうなりますか。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘の七十億円につきましては、昭和四十九年度の予算に計上されております。しかし、先ほど申し上げましたような理由によりまして、この有効な執行、有効にこれをとり行いますことが、援助の本旨にかんがみまして、現状ではできにくい状況にあるように考えられます。しかも、先ほど申し上げましたような理由から、できるだけ当面の援助は難民救済ということに重点を志向したい、こういうふうに考えております。
  112. 田英夫

    ○田英夫君 最後に一つだけ。  これも毎回伺って、すでに何年かになるんですけれども、二年前の予算委員会で伺ったのが最初かと思いますが、臨時革命政府の支配地域こそ最も悲惨な戦禍を受けているんで、ここに対する救援、経済協力をどうするんだということを毎回申し上げているわけです。これに対してIOGを通じてというような御答弁がありました。しかし、これは計画を伺うと、三億円とか六億円とかいうきわめて金額の少ないものを、しかもこれは国際赤十字のベトナム救援という形ですから、ベトナム全体に行くということで、グエン・バン・チュー政権側にも一部は行くことを予想しなければならない。そうなると、日本政府としては臨時革命政府を承認するしないという問題を一応抜きにしても、この地域に対しての援助ということはお考えになっていないように考えざるを得ないし、前回委員会では、ダナンに船を横づけにして物資を運び込むというようなことが技術的にむずかしいというようなお話がありましたが、技術的にむずかしいなら、いま崩壊寸前のグエン・バン・チュー政権側に援助することの方がよっぽど、どこへ行ってしまうかわからないわけですから、貴重な国民の税金を使った援助がどこに行くかわからないという意味では、むしろその方がむだ遣いになるおそれが多い。この点、北ベトナム側を通じてやるとか、あるいは中国なりハノイなりで臨時革命政府側と接触することは可能なんですから、そういうことをお考えになっていないかどうか、現時点で改めて伺います。
  113. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) いわゆるPRG占領地域に対する援助につきまして、わが方がいままでやってきました援助の態様は、田先生御指摘のとおり、IOGを通じての援助だけでございます。この理由は、要するに南越におきましてのわが方の承認している政府、つまりサイゴン政府との関係から言いましても、いわゆるPRGとは直接公式の関係がございませんので、わが方とそのPRG占拠地域との間において援助を実際に有効に実施するということはとうてい考えられませんので、まさにIOGを通じての国際的な救援以外に手段方法はないということで、従来からPRG占領地域に対しましては、もっぱらIOGを通じての援助のみにとどまっていたということがいままでの現状でございます。  これからの問題につきまして、南越の事態がどうなるかということについては、いま断定し得ない段階でございまして、わが方といたしましては、これからもその見通しがつくまでは、やはりIOGを通じての、あるいは国際連合を通じての救援活動、特に難民に対する緊急援助ということ以外にはできないというのが現状でございます。したがいまして、情勢いかんにもよりますけれども、いまの段階でもっていわゆるPRG占領地域に対しまして直接的に日本援助するということは考えておりません。
  114. 田英夫

    ○田英夫君 最後に一言だけ申し上げますが、これはきょう時間があったら伺いたかったことですが、インドシナの新しい情勢というものは、ただ戦争が勝った負けたという問題じゃなくて、アメリカのああしたアジア政策、侵略政策というものが失敗をして、アジアの民族自決ということの勝利という形で世界が大きく変わりつつあるということの端的なあらわれだと思います。そういう中で、アメリカもいま困惑をしていると思いますね。これはもうむしろ外務大臣が訪米されてよく御存じだと思います。そういう中で、アジアの中の日本一体どうするのかということ、ずいぶんこれもここで議論をしてきたところでありますけれども、先ほど私、激しい言葉で申し上げましたが、にもかかわらず、いまの皆さんの御答弁を伺っていると、全く反省と言いますか、私はあえて反省と申し上げたいんですが、新しい情勢に対する対応の姿勢もない、これは重大なことだと思うので、この点も改めてまた議論をすることにいたしまして、質問は終わります。
  115. 秦野章

    ○秦野章君 カンボジア情勢が変わってきたということに関連して、再確認をする意味と、それからその後の消息と言いますか、そういうことに関連して、カンボジア地域でもって、新聞記者が圧倒的に多いわけですけれども、行方不明になった人たちの状況、これは時間がありませんから簡単に。私もある程度調べたんだけれども、いままで外務省も、一九七三年に、当時の外務大臣も、積極的な努力をするという外務委員会の、衆議院ですけれども、答弁があるわけです。しかし、その後政治ベースではあまり問題になっていない、なかなかまた問題にする余地もなかったと思うんですけれども、まあいわゆるシアヌーク殿下との接触なり、あるいは外務省自体じゃなくて、ジャーナリスト側のそれぞれの責任の立場で接触があったり、あるいはまたハノイとの、これは直接じゃない問題ですけれども、ハノイとの接触の中でこの問題を取り上げたといったような外務省の努力もあるわけです。しかし、こういうふうに情勢が変わってきましたから、改めてこの問題を用意、準備をして、積極的な協力をするといったような、前の外務大臣の答弁の趣旨の延長線上に外務省がこれからやはりいろいろやってもらわなければならぬと思うのですけれども、行方不明になった人たちの概況をちょっと簡単に説明してもらえませんか。
  116. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これまでカンボジアで行方不明になりました邦人は全部で十名でございまして、そのうち九名が報道関係者、残りの一名は現在の日本人経営の農場の従業員でございます。大部分は一九七〇年に行方不明になりまして、二名だけが七三年に行方不明になっております。これらの邦人の行方不明につきましては、従来から国際赤十字委員会に協力を依頼するとともに、北越あるいは南越解放戦線及び第三者を介しまして、カンボジア民族連合政府側に対しても、またあらゆる直接間接のルートを通じまして、安否の確認、釈放につきまして鋭意努力を行ってきておりますけれども、現在までのところ、これら行方不明邦人の消息につきましては、依然として不明でございます。ただこのうち一名、中島照男という大森研究所の記者でございますが、この方は死亡の推定が確認されております。そういう状況でございまして、全体といたしまして、われわれとしてはいろいろなルートを通じて消息の確認の手だてを講じておりますけれども、結果としては、行方は依然としてはっきりしません。そういうのが現状でございます。
  117. 秦野章

    ○秦野章君 七二年の十二月に赤十字の国際委員会が名簿の発表していますね。まあいまカンボジアの、一応これから安定していくんだろうと思うんですけれども、外交関係なんかがいつできるかというようなこととも関連しますが、だんだん外務省のアクションがしやすくなってくるだろうと思うんです。直接でなくても、間接の手だてというものは、これは政治外交の問題というより人道的な問題ですから、やればやれるという問題だと思うんですね。それで、赤十字の国際委員会が名簿を発表したのが、七二年ですけれども、その後はまあほとんどタッチがないんですけれども、こういう問題だとか、それから、さすがにやっぱり、国際的な問題といってもジャーナリストの問題ですから、クメール・ルージュもこの消息については記者会見をしていることがありますね、七三年ですけれども。そういうことで、人道上の問題でもあるし、またその日本人は、ほとんど家族が日本におるわけです。そういうことで、いろんな方法があろうと思いますけれども、そこらをひとつ積極的に考えて、本当は現場へ調査団が行けば、これは部落民やなんかに聞いたりして、かなりわかってしまうという現場へ行った人たちの意見もあるんです。そこまですぐに出せるかどうか、また問題でしょうけれども、どうかひとつ直接でなくても、間接の方法でも、もう少し積極的な調査の手だてを講ずるような方向に配慮してもらいたいということが最後の私の要望なんですけれども、それに対して外務省どうですか。
  118. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど御答弁申しましたとおり、従来から直接間接の手段を講じまして、行方不明のこれら邦人についても消息を調査いたしておりますが、今後も新しい情勢に対応いたしまして、より積極的にそういう調査をしてまいりたいと思っております。
  119. 秦野章

    ○秦野章君 調査を具体的にどういうふうにやるかという問題、むずかしいけれども、何かこう具体的にやらないとなかなかわかってこないと思うんですよ。そういう具体化の問題を、抽象的な努力ということじゃなく、具体的なやっぱり努力を今後していただきたい、こう思うんです。  それから一つだけ最後に、さっきの沖繩の問題なんですけれども、沖繩の問題というのは、私はいろいろ聞いておって感じたことは、これは最初米兵がぐれん隊みたいなことをやったと、結局これは警察の姿勢の問題で、大体外交問題なんかじゃないんだ。これをやっぱり、もっとぐれん隊を取り締まるような同じベースでやりゃいいんだよ。そういう点について、結局身柄が向こうに行った場合には談判交渉の問題なんです。そういう談判交渉をもっと中央もバックアップするとか、沖繩県警だけにまかせないで、大体外務大臣なんか答弁する問題じゃないよ、こんなの。そういう点でぴしっとやる。これは技術的に、大体捜査の目的を達すればどうのこうのと言うけれども、技術の前に姿勢があるんだよ、政治でも行政でも。技術というものは姿勢を前にして成り立つものなんだよ。姿勢が私はまずいと思うんだよ。これは警察庁が、きょうは上の者が来てないけれども、よく中で相談して、こういうような問題が、沖繩にだんだん犯罪がふえているというのも、一罰百戒的なぴしっとした態度がないとそういうことになるんだから、これはやっぱり沖繩には何というか、県民に対して警察側も米兵側も多少の甘えがあると思うんですよ、特殊な情勢の中で。そんな甘えの中に浸ってちゃいけないんで、私は日米関係なんというものはこういうものをぴしっ、ぴしっとやっていくことで、むしろかえってよくなるんで、下手な姿勢で、ゆるふんな姿勢でいくとかえって日米関係を損なうんです。そういう意味において、これはもう外交問題じゃないんだということでよくやってくださいよ。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 まず、先ほどの非核三原則のなし崩し論、これについて質問しますけれども、外務大臣はもし、可能性としては条約的に、協定上はイエスもノーもあり得ると、相談はかけられる可能性はあると、しかし、総理が高度の政治判断からノーと言うことは間違いないと、私はそれに従うと、こういうことだったですね、先ほどの話をまとめますと。すると結局、そうなると外務大臣のお考えも……。それからもう一つありましたな、日本に対するアメリカの理解度、これからいうと、まずそういう事前協議を申し込む可能性もないんではなかろうか、こういう前提、こうですね。よろしいですね。もう一回確認します、その点。
  121. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題の理解の背景として、そのような趣旨のことをお話ししました。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 ないだろうと。そうなりますと、結論としてはイエスはなくてノーだけと、こういうことになるんじゃないですか。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、先ほど申し上げましたことを繰り返すことになろうかと存じますけれども、少なくとも安保条約第六条に基づきます交換公文というものは現に存在をしておるものでございますから、これを否定するというようなことは私としては考えておりません。
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構。否定はしない、現にある。だから論理上そういう事前協議の可能性はあると、これに対しての答えについてイエスがあるのか、ノーがあるのかということに話はいくわけです。あくまでもアメリカ日本を理解している、ですからそういうことはなかろうと、核の持ち込みなんという事前協議の申し入れはなかろう。だけれども、現実的には協定上はその事前協議制度あるんだから可能性としてはあるだろう。ただし、総理が高度の政治的判断から、その残されている可能性があったとしても、申し入れがあったとしても、ノーと言う、それについて外務大臣は従うんだ、こうおっしゃった、いいですね、これも。そうなれば結論としてはイエスはないんだと、ノーしかないんだと、こういうことが結論じゃないですか。
  125. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私の言葉で申しますと、もう少しいろいろ御説明申し上げたい点がございますけれども、先ほどの質疑応答をお聞きの上で、黒柳委員がそのような御判断であれば、私として別段それに対して申し上げることはございません。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 おかしいな、私が御判断したって、私外務大臣じゃないんだから、いま現在は。  もう一回繰り返しましょう、これは重要問題だから。アメリカ日本を理解している、核を持ち込むなんというのは大変なことだと。いままで核に対する持ち込みの疑惑はあったわけですから、現実にここにあったと、この事実認識はなかったにせよ、現に大統領の訪日についてもその問題大統領自身、身に感じているわけですからね、核に対する感情というものは。これは十二分に理解してるんだ、国民感情、いいですね。だからそれに基づいて事前協議で核を持ち込むという相談はなかろうと外務大臣判断している、これもいいですね。ただし、協定上、条約上は窓口は閉ざされてない、あるんだから、これに対してもノーとは言えないと、外務大臣立場としては。だけれど、もしあった場合だって、総理は高度の政治姿勢でノーと言ってる、あたりまえだ、外務大臣はこれに従う、そうなれば、もうノーということしかないんじゃないですか。それを私に判断しろなんてそんなことできません。外務大臣が、御自分でいまおっしゃったことをまとめて、それに基づいて外務大臣の答弁を要求しているんです。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような御理解で結構だと思います。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 何だ、そのような御理解で結構だと言うなら、早くきのうの衆議院外務委員会でその結論出さなきゃ、いまの社会党の先生のときにその結論出さなきゃ、早く。それじゃ、結論としては、事前協議についてイエスはない、ノーだけだ、こういうことじゃないですか。
  129. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もう一遍私が全部考えておりますことを申し上げますと、大変に長くなります。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、重複したことは必要ないですよ、長くなっちゃ困っちゃう、時間がないんだから。
  131. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどからの私の申し上げておりますことをよくお聞き取り願っておりましたので……。
  132. 黒柳明

    ○黒柳明君 おりましたよ。
  133. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 黒柳委員におかれましては……。その結果、ただいまのような御結論であるということについて私は別段異存を申し上げません。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一回聞きますよ。私は何も結論出したわけじゃない。外務大臣がおっしゃったその発言の中を、こう私なりにアレンジしましてね、正確なアレンジです、私の演出は一つもありません。それに対して、それならば従来どおりのノーということしか結論は出ないじゃないかと、異存がないということは、私のまとめたことに異存がないんじゃない、外務大臣がおっしゃったことを反復しただけですから、それを異存がないということは、事前協議制度についてはノーしかないんだと、従来どおり変わりないんだと、こういうことであると、異存がないんじゃなくて、そうだと、こう言ってください。異存がないと言うと、何か私がおっかぶせて、それが、いや仕方ない、やつはうるさいからこの場だけだと、こういうことじゃこれ困りますからね。そうじゃないとは思いますけども、どうなんですか。
  135. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いや決してそのような失礼な意味ではなく、結構でございます。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 結構でございます、あたりまえだなあ、これは。あたりまえなことが相当遠回りしました。結構、そのとおり、そうすると、その後の質問がこれはなくなっちゃうわけです。いいですよ、もう時間なんか何も、簡潔にした方がいいんですから。  それから、カンボジアの問題お聞きしますけど、これは条約局長になるんですか。外交のいままでの通例、こちらから承認した場合に相手国からの反応、これはどういうことがいままで通例になっていましたか。時間的な意味だとか、向こうからのアクションですけれどもね。
  137. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 一般論として申し上げますと、ある国がございまして、そこの政府が、政権が交代する。その交代するあり方としましては、いわば合法的な手段、手続によって交代する場合と、クーデターでありますとか、革命でありますとか、そういう通常の憲法その他の国内法上合法的な手続と目されないような仕組みで交代する場合等がございます。通常は、新しく承認するかしないかということが問題になりますのは、その後者の場合であろうかと思います。わが国との外交関係をその前において持っておりました場合において、新しくできました政府なり政権を承認するかどうかということは、通常はわが国の大使館がそこにあるわけでございます。あって、そういう状況、政治的な状況が出てまいりますので、その政権ないし政府と何らかの外交上の行為、たとえば口上書のやり取りがありますとか、外交上の話し合いをするとかということによってその政府を承認したという、いわば事実上の承認、国際法上は黙示の承認と言われておりますけれども、そういう手続に従って承認しておりますのが従来の通常の例でございます。今度のカンボジアの場合におきましては、たまたまその状況が出てまいりましたときにわが方の大使館は閉鎖されておりまして、館員も大使も含めまして全員カンボジアにはいなかったという状況でございます。したがって、そういうような手続、行為をとる場がなかったということでございます。そこで、政府といたしましては、十九日の閣議の議を経まして、政府としての承認の意思を決定したということで、その後、決定いたしました承認の意思を北京のわが大使館を通じまして先方の代表に口上書の形をもって通報させるということでございます。この承認効果というのは、日本政府が承認の意思を決定したということによって生ずるわけでございまして、これはいわば一方的な行為でございます。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから通例、そういう外交関係がなかったところにおいて、こちらが一方的にこちらの意思を相手政府に通告した場合に、通例向こうからの対するアクション、これはどういうものが考えられるのかと、こういうことなんですよ。要するに、いつごろカンボジアからアクションが来る可能性があるのか、国際通例上。
  139. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 国際法上の承認という観点から見ますと、日本政府が承認の意思を決定したということでもってそのこと事態は終わるわけでございます。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 だって、向こうからそれに対して正常化の意思がなければ、大使の交換もできないじゃないですか。いままで各国世界でもそういう例があった場合にですね、日本でなかったら。通例どういうアクションが来るもんですか、国際的に。
  141. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) 先ほど申しました口上書をもって向こうに承認の意思を通報したということは、いわば承認の必須の要件ではないわけでございまして、これはあってもなくてもよかったことだと思います。いま御質問がありましたその大使の交換云々、これはいわば外交関係を新しく開設する、設定するという問題だろうと思います。承認の問題と外交関係の設定ということとは別個の問題であろうと思いますので、外交関係の開設、大使の交換ということは、承認の問題とは関係ございません。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃその後、相手国から何か意思表示がありましたか。
  143. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) それについては現在まで先方より何の意思表示もないと承知しております。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 それに対してこちらは何か、北京の大使館を通じてなり、アプローチか何かをしてるんですか。
  145. 松永信雄

    政府委員(松永信雄君) まあ事実関係については私のほうからお答えすべき問題じゃないかもしれませんけれども、それはやはりいろいろなこれからの状況の推移を見て、どういうことを考えるかということであろうかと思います。
  146. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 新しい政府との外交関係設定につきまして、いま真剣にいろいろ検討いたしております。ただ、現在の段階でどういう方法を講ずるかということにつきましては、まだ成案を得ておりません。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、こちらから十九日に一方的に承認した以降については、まだ考え中であって、全くそれについてはアプローチしてない、フォローしてないと、こういうことですね。  これはやっぱりあれですか、ルートとしては北京の大使館を通じてやるということがまず考えられる第一ですか。
  148. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) その方法につきましても、いま検討中でございますので、ここで御披露をいたすわけにまだまいりませんが、いずれにいたしましても、外交関係をつくるということについては、先ほどの承認と違いまして、先方の新しい政府との間に何らかの合意がなければできないわけでございます。そういう関係で、どういうふうにして、どういうルートで合意を取りつけるかということについて真剣に検討しておるということでございます。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 シアヌークさんがどういう地位になるか、御自分では元首とか何とかおっしゃったというようなことは報道では伝えられております。まあ事実関係は、外務大臣おっしゃったように定かではないと思います。しかしどうなれ、いろいろなパイプというものこれは日本だって閉鎖的な国じゃないですから、いろんなことがあるかと思うんですけれども、考慮中ということは、やっぱり速やかにそういうものをつくって、それで何らかの外交関係をつくると、こういう意思があると、これは間違いないわけですね。
  150. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 新政府を承認した以上、わが方としては一日も早く外交関係をつくりたいという強い意思を持っております。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは、この前発言がありましたから、これはもう報道で、客観情勢は全くわかりませんけれども、一ヵ月後じゃなければ帰らないとか、数年間は外交関係はできないだろうとかといったのがあって、この事実関係は定かではないにせよ、やはり気になる発言には違いないわけです。ですから、そういうことを踏まえて、これはわが国がただ考慮する、あるいは一日も早くと、こういうことではなくて、具体的にやはりルートを通じて速やかなアプローチをしなければいけないんじゃないかと思いますが、局長、中国へも行かれて帰った後ですし、覇権問題だけのことではないと思います。当然当事者がそこにいたわけですから。そういう面で、すでに何らかの接触はもうしてきたんですか。
  152. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私が中国にいる間に行いましたのは、その承認の口上書を通報しただけでございまして、それ以外のことはいたしておりません。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、先ほどの日中平和友好条約のことですけれども、日本も中国側もこれは早期締結と原則論、これがお互いにどの線でどう妥協できるか、話し合いが決着つくか、これについて間違いないですか。局長も帰ってきたばっかりですから、両国とも早期締結、これを熱心に願っている。あるいは原則論は絶対に曲げない。私たちも、報道で伝えられている限りにおいては間違いなかろうという判断はするんですけれども、だけど最近、紀副総理やあるいは鄧副総理がいろいろ話していますね。それを見ますと、必ずしもそうじゃないような発言もしているわけです。ですから局長、もう中国側は完全に早期締結ということ、それから覇権についての条項の原則論、これについでは完全にもう外務大臣がおっしゃったとおり日本側も早期締結、原則論は譲らない、中国側も早期締結、原則論は譲らない、こういう感覚ですか、早期締結についてはそうですが、あるいは早期締結じゃないという話も伝わっていますね、必ずしもそうじゃなかろうと、中国側の話ですよ、どうですか、その点。
  154. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 日本も中国も、ともに一日も早くこの条約を締結したいということは当然でございまして、そのためにこそ昨年の暮れ以来日中間で話し合いを続けてきているわけでございます。問題は、いま申しましたその原則の問題、ある条項に関する原則の問題についての取り扱いでございまして、やはりこの点について非常にかたい態度を中国側も示しておりますし、また、わが方もこれに対する反対の意味でかたい立場を維持してきております。こういうことでございますので、この点についての解決が図られない限り、早期締結の希望はともかくといたしまして、その早期締結に至る過程が非常に簡単ではないというふうに私ども感じておりまして、早期締結の意思そのものは疑う余地は私はないと思っております。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 結局、早期締結非常にむずかしいという結論。  それともう一つ、どうなんですか、共同声明にもう覇権条項は盛られているんですし、ここでがたがたするならば、むしろ、何も日中平和友好条約を結ばなくたっていまの正常化が後退するわけじゃないし、まして友好関係はますます拡大する方向にあることは間違いないと、こういう感触も向こうの政府にはないですか、どうでしょう。
  156. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) あまり詳しく申し上げるわけにまいりませんが、いずれにいたしましても原則の問題についての立場中心でございまして、それをどう解決するかによって交渉が早くまとまるかどうかということになろうかと思います。この点は中国側もそうでございますし、また、わが方も同じような立場でございますので、見通しを、そういう現状から遠のいたというふうに申し上げるのは私は余り適当でないのではないかというふうに思います。やはりこの段階で、つまりあしたから北京では条文交渉始まるわけでございますし、実は正式な交渉そのものが初めて始まるということでございますので、いまの段階でその見通しを述べるよりは、この妥結のためにあらゆる知恵をしぼって交渉を促進するということ以外に申し上げることは適当でないというふうに私は思っております。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 その知恵というのは、具体的にはどういう知恵がありますか。先ほどもちょっと聞かれて返答がなかったんです。覇権という言葉を変えるとか、あるいは前文に入れるとか一本文に入れるとか、あるいは両国間の問題にするとか、そういうことも含めてだと思うんですけれども、具体的にはやはり日本としても何らかの知恵がすでにあるんじゃないですか。  それと、もう一回繰り返しますけれども、早期、これは両国意思はかたいと、あしたから中国で始まると、これも事実関係です。しかしながら原則は曲げないと、そうなれば早期はむずかしくなったと、これはもう言えるんじゃないですか。
  158. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 繰り返しになりますが、いまの段階で早期妥結がむずかしいという結論を出すのは私はまだ早いと思います。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 前のこと。あなたぼくが言うと半分きゃ答えないのだよ。いま二つ質問している。
  160. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 知恵をしぼるという言葉は、これは日本語の表現でございまして、その知恵がどういうものかと、ここに出せとおっしゃられても、私の方としてはそういうわけにはまいりませんで、あらゆる交渉妥結のための可能性を探究するというのが私たちの職務でございまして、これは知恵は常にしぼり出しておるわけでございます。その点はひとつぜひ御了解いただきたいと思います。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ私がいま言ったようなことも知恵の中に入っているわけですか。
  162. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私たちも、それこそいろいろな可能性を研究するという意味では、皆様方がお考えになるようなこともその一部にはあるかとも存じますけれども、ここでいずれにしましても具体的にどういう構想をいま抱けるかということは、まだまだ結論も出ておりませんし、これから交渉を正式に始めるわけでございますので、先方の出方も見た上でだんだんと詰めていきたいと思います。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 これ常識的にはそうだと思いますよ。だけれども、やはり客観的に国会の場に立っての発言となりますと、核防にしたって、平和友好条約にしたって、本国会、本国会と言いながら、本国会は連休明けでもう幾ばくもないわけです。ですから、やはり早期と言ったって、いまの段階、いまの段階って、いまさらのことじゃないわけです、この話は。もうずっと前からの話なんです。それでいまやっと緒についたかつかないかということ、だからいまの段階でと、こういうことになるんですけれども、国会での議論というのはいまさらのことじゃないんです。これは政府の方のいろんな知恵のしぼり方が遅かったかというふうなことで、あるいは姿勢というものが政府・与党の中でがたがたしててというようなことであって、私たちにすれば何もいまさらここで論じて、それでいまここで、まだまだあしたから始まるんだからというようなことじゃないんですよ。局長、それはおわかりでしょうね。もうあと国会だって五月二十五日まで幾ばくもないじゃないですか。連休明けで、どうなんですか。そこでもういまのところで早期と言ったって遅いぐらいですよ、いまは。本国会で批准を求めるならば。どうですか。
  164. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私ども、もちろんこの国会の会期が五月の末に終わるということはよく承知しております。そういうことを頭に描きながら交渉の促進を図ってまいりたいと考えております。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると外務大臣、いま早期という姿勢は絶対崩さない、当然そうだと思いますよ。ですけれども、もうここまでやはりきたということについては、それは日本側の責任ばかりじゃないと思います。当然いろんなことが、両国間の問題ですから、相手があることですから。しかし、もう会期だって幾ばくもないわけですし、延長はもう考えてないという発言もあったわけですし、ですからその点、いまの段階において早期ということを崩すのは、まだ早いというよりも遅いぐらいじゃないですか。早期実現ということは、ちょっともう早期という言葉は遅いんじゃないですか。いまから始まって、なるたけ早くということなら考えられると思うんですよ。ですけれども、本国会というのはもう終盤なんです。もう間もなく終わるわけですよ。そういうことを踏まえると、これはもう早期なんというものではなくて、遅れも遅れもいいところじゃないですか、いま現在。それで、まだ原則論で折り合わない。話は始めたってこれは非常にむずかしいですよ。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) なかなかむずかしいということはよく心得ておりますけれども、しかし、これからが実際努力を最も必要とする段階でありまして、早期と申し上げますのは、確かにいまから始めて早期であろうと――そうでございます。しかし、このいまは、きょう始まったわけではなくて、過去の蓄積の上にあるいまでございますから、その点はそういうものとして御理解をいただきたいと思います。  それから、早期にできても会期云々というお話もございましたけれども、私ども行政府としては、最善の努力を尽くしまして幸いにして妥結をいたしますならば、国会で御審議を仰ぎたいと存じておりますが、それについて国会がどのように御決定をなさいますか、この点は私どもが申しますことは出過ぎたことでございますので、私どもとしては最善を尽くしたいと思っております。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうこれは外務大臣、やっぱり陣頭指揮で、出先に任せないでやる必要があるんじゃないですか。そうなると、やっぱり向こうに行かれる必要も当然出てくるんじゃないですか。いかがでしょう。
  168. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題につきましては、とりあえず、東郷外務次官と陳楚駐日大使の間で、高島局長の訪中の結果を踏まえまして交渉をするということでありまして、今日からその交渉を始めたいと思っております。その結果、話が煮詰まってくる可能性が見えましたら、その段階では何らかの政治的な決断をしなければならないであろう、こんなふうにただいま思っておりまして、しばらくその話の煮詰まる可能性について、東郷・陳楚両氏の間で交渉をしてもらいたいと思っております。
  169. 黒柳明

    ○黒柳明君 それも結局二十五日までの一カ月ですから、それが煮詰まるのも相当、これこそ早期じゃなきゃだめなわけですな、外務大臣が動かれるのも。そうすると、煮詰まることを前提ですから、その煮詰めるのはその前でなきゃならない、こういうことですね。余裕ありませんね。ひとつがんばってくださいよ。以上。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 私、この間、予算委員会で、アメリカ核兵器の持ち込み、通過に関するきわめて濃厚な可能性があるんではないかという問題で、沖繩に駐留する三四五戦術空輸中隊の問題について質問をいたしました。この戦術空輸中隊が常規の  「作戦任務行動要綱」というものに基づいて、常に核兵器の輸送任務を受け持っておる。同時にまた、この中隊には核兵器を直接扱う将校並びに下士官がいるというリスト、さらにはフライトプランを示しまして、そのフライトプランの中にはクラシファイドミッション、つまり秘密任務が明記されている。その秘密任務に関しては、アメリカの「太平洋空軍教範五五-一三〇」、この「C130搭乗員作戦行動要領」によると、核輸送の任務を含むという問題を提起して質問をいたしたわけですが、それをお調べになった結果がどうであったか、回答をいただきたいと思います。
  171. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 立木委員から御提示のありました文書は、われわれとしてもしさいに研究いたしました。また、必要に応じましてアメリカ側にも照会いたしましたので、その点を取りまとめて御回答申し上げます。  まず、一九七四年八月十二日付の「第三七四戦術空輸航空団現地作戦行動要領」という文書によりますと、核兵器輸送は、西太平洋方面の輸送を担当しております第三七四戦術空輸航空団のあり得べき任務の一つであるということは認められます。しかしながら、この点につきましてアメリカ側の説明を求めましたところ、先方の説明によりますと、このような任務を遂行する能力があるということは、日本の領域内においてこういう任務が現実に行われていることを意味するものではないということ、また、アメリカ空軍の搭乗員及びその部隊は世界のあらゆる地域で勤務する可能性を有しているので、あり得べきすべての任務につき常に熟練していなければならないというふうな説明を得ております。したがいまして、この文書核兵器輸送の任務についての記述があるからといって、わが国核兵器が持ち込まれていると見るのは当たらないと考える次第でございます。  次に、一九七四年五月七日付のヘニングソン中佐発出の文書につきましてアメリカ側に照会いたしましたところ、アメリカ側の回答は次のとおりでございました。  まず第一に、立木委員より御提示のありました文書は、第三四五戦術空輸中隊所属の七名の要員に対して、新たにスペシャルウエポン関係の追加的な任務が課されたことを示しておりますが、スペシャルウエポンというのは保安上等の理由で特別の取り扱いを要すべき兵器を指すものである。第二に、アメリカ空軍の搭乗員及び部隊は、世界のあらゆる地域で勤務する可能性を有しているので、あり得べきすべての任務につき常に熟練していなければならないことになっている。したがいまして、ここに言うスペシャルウエポンは常に核兵器であるという指摘は当たらないと考える、こういうことであります。  次に、嘉手納基地内の「飛行計画書」、フライトプランによりますと、C130輸送機が昨年十月二十四日と本年の一月三日にクラシファイドミッションのため飛び立っておりますが、このクラシファイドミッションとは核兵器輸送を意味しているのではないかという御指摘がございましたが、アメリカ側の指摘によりますと、「クラシファイド」という用語は、目的、装備品、あるいは軍要員等、飛行のあらゆる面についても用いられるものでありまして、「クラシファイド」という用語があるからといって、それが直接核兵器とは関係がないというふうな回答でございます。  なお、関連質問で上田委員から、一九七二年二月十八日付「第三一二航空師団・嘉手納基地作戦行動計画五八二」には、ハイジャック対策についての記述がありまして、その中には、「核兵器を積んでいる場合」という対策も含まれております。これにつきましては、軍事空輸軍MAC所属の輸送機によって核兵器が嘉手納基地を中継として輸送されていることを示しているのではないかという御質問がございました。この点に関してもアメリカ側に問い合わせましたところ、米側の回答は次のとおりでございます。  この文書に、MAC所属航空機の指揮官が、核兵器が積載されている場合を含めハイジャック対策等についてブリーフィングを受けることになっていることが記されていることは事実でございます。この記述は、離発着しますMACの飛行機に給油、補給、整備等の支援を行うことを任務としております嘉手納基地所在の第六〇三軍事空輸支援中隊に対してMAC所属航空機指揮官がかかるブリーフィングを受けていることを明らかにするために作成されたものにすぎないものである。また、広範囲を飛行するMACの所属航空機がハイジャックされて嘉手納基地に途中給油等のため強制着陸せざるを得ないこともないとは言えないので、こういう場合を想定して本件のような情報が第六〇三軍事空輸支援中隊に送付されているものである。  以上のような回答を得た次第でございます。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 核兵器の輸送を任務とする中隊が存在しておるという事実をアメリカ軍が認めたわけです、実際はやってないと言われるわけですけれども。さらには、特殊将校という言葉が使われていますが、アメリカの参謀本部の資料によっても、この特殊という言葉は通常核というふうに読むことが正しいという資料もありますし、事実上行われておるフライトプランの内容でも、秘密任務の内容としては核兵器の輸送ということも当然想定されるわけです。こういう任務を持った、きわめて核の輸送を行う可能性がある、そういう中隊をこのまま駐留させておくという点については、政府としてはどのようにお考えでしょうか。
  173. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) いま御説明申し上げましたように、この空輸航空団の関係の部隊が沖繩におることは事実でございますが、そういう部隊があるからといって、核兵器か沖繩に現実に置かれるということには直ちに結びつかない。また、スペシャルウエポンというのは直ちに核兵器意味するものではない。また、いろんなブリーフィングを受けているということが、直ちに核兵器を積んでいることを意味するものではないとわれわれは考える次第でございまして、結局沖繩に核兵器が置かれているか否かという問題は、日米の信頼関係に基づいた事前協議の有無によって考えられるべきものだと思います。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 大臣にお尋ねしたいわけですが、仮に百歩譲って核兵器が入っていないとしても、核兵器を持ち込むときの必要な装備、あるいは核兵器を持ち込まれるときの必要な体制、そういうものが沖繩に存在してもそれは構わないという立場なのかどうなのか。入ってないと仮にしても、いつでも持ち込めるように装備も整えておくというふうなことは認められるのかどうか。
  175. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先ほどから申し上げておりますように、米空軍は世界に展開しておりますから、核兵器の取り扱いに関してそれぞれの要員が習熟している必要があるということは認めなければならないと存じます。また、そういうふうな能力を備えていることがある意味わが国に対する核の防衛、核抑止力になっているということも事実でございます。したがいまして、そういう訓練が行われておるということ、また、そういう体制がとられておるということと、それから核兵器が現実にわが国の領土内に置かれているということは別でございまして、われわれはその核兵器の持ち込みというものはあくまで事前協議の有無によって律せられるべきものであると考える次第でございますから、そういう訓練とか体制とかあるいは関連の部隊があるとか、その部隊がその部隊支援のための資材を備えておるということは、核兵器の持ち込みとは関連のない事項だと思います。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 まあ関連がないと言われましたけれども、これは先ほどの外相の答弁といろいろ関連してくるわけですが、つまり、いつでも持ち込める体制を日本に整えておくということは、先ほど言われた問題と関連してきわめて私は重大だと思うのです。最終的には三木総理の高度の政治判断に私も従うという外相のお話で、まあ核兵器を持ち込まれる場合の事前協議に関してイエスということもノーということも、それは制度上、法律上という注釈はつけられましたけれども、そういうことがあり得るとまあ解釈されるという、解釈を述べられたと思うのですが、これは私は非常にやはり重大な問題だと、先ほど来多くの委員の方から指摘がありましたけれども、重大な問題であって、こういうことについてはいままで解釈の問題としても大臣は公式の場で述べられたことがない、アメリカからお帰りになって述べられたということですから、アメリカに行かれて、この問題に関しては、核持ち込み、核通過の問題に関して何らかの話し合いがなされたのかどうか、いかがでしょう。
  177. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 全然そのような話し合いはなされておりません。私の申し上げますことは、安保条約第六条の実施に関する交換公文は公になっておりますものでございまして、恐らくどなたがごらんになりましてもこの交換公文の解釈というものは私の申し上げたことに間違いはないと以前から存じております。
  178. 立木洋

    ○立木洋君 どうも私にはそのように思われないわけですが、前回、当委員会で羽生委員質問なさって、事前協議の対象の問題に関しては、もう非常に長くなったと、期間がですね。その決められた話がずっと大分古くなった。さらに、今日の国民の感情から考えて核通過の問題についてもいろいろな疑念が出されておるから、まあアメリカの首脳陣と会ったときに話し合いをしてみるというふうな気持があるというお話が当委員会でもあったわけですし、今回向こうに行かれて、引き続き安保を堅持する、また、それを忠実に履行するということも確認されておられるわけですし、さらには、核抑止力を重視するという問題も確認されておられるわけですから、その長期堅持、忠実な履行、あるいは核抑止力の重視と言われる内容一体どういうものだったのか、お話しをいただきたいと思います。
  179. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解なるものが昭和三十五年のことでございますから、一度確認をしておく必要があるという国会における御審議を通じての御意向でございましたので、それは先般確認をいたしまして、これにつきましては御報告を申し上げました。この件はこれで一応決着をしておると考えておるわけでございます。  それで、先般ワシントンでございました、いわゆるわが国の安全についての確保の問題でございますけれども、これは雰囲気から申しまして、実はアメリカ自身がそのような危倶を、少なくともわが国あるいはNATO体制の中で持たれることに非常な実は危倶を先方が持っておりましたような状況でございますので、先般御報告申し上げましたような話し合いに達しますためには、さして困難はなかったわけでございます。その間に持ち込み等々の問題が議論をされたということも一切なく、むしろきわめて自然にこの安保条約の趣旨に基づいてあのような確認がなされた。もとよりわが国としてそれに際して新たな負担、義務を負うということは何らなかったわけでございます。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど田委員質問に対して、日米安保条約強化という問題に関連しまして新しい事実を盛り込んだことはないかと、ただ、日本の安保に関する一部の疑念を払拭する必要があったというふうに述べられたと思うのですが、この安保に関する一部の疑念と言われるのはどういう疑念でしようか。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 不安と申し上げることが正確であるかと存じますけれども、つまり私の理解をいたしておりますところでは、万一わが国が他国から攻撃を受けた場合、あるいはそれが核攻撃あるいは核攻撃の脅威を伴った場合、アメリカ側としてはあらゆる方法をもってわが国を防衛する意思であろうかどうであろうか、そういうことについての不安であったと私は理解をしております。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 その核攻撃を受けた場合の不安ですね。自民党の内部でもいろいろ御議論なさっておるようですけれども、有事だとか国家の危急存亡のときとかいうふうな、いろいろな表現があるようですけれども、こういう問題に関しては大臣はどのようにお考えになっていますか。どういう状態を想定されているわけですか。核攻撃を受けるというふうな場合、どういうところからの核攻撃なのか。あるいは、国家の危急存亡と言われるような場合には、どういう事態を想定されるのか。有事というのはどういうふうなことを想定されるのか。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一般的にわが国の安全が外部からの軍事的な脅威によって現実に明白かつ急迫とでも申しましょうか、国際法で申しますクリアーでありかつイミネントであるというような状況を申すべきかと存じます。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 では、その一部の疑念の中に、こういうことも私は新聞で見て、これが正確かどうかというのはわからないんですけれども、日米安保条約が、第十条によりますと、いつでも一方の側から破棄を通告して一年後にそれが消滅するという条項があるわけですが、こういう条項があるんではこれは不安定だ、もっと確固としたものにする必要があるというふうな議論も新聞紙上で見ることがあるわけですが、この長期堅持という考え方、長期という場合には時期的にはどういうふうなことを考ておられるのか、あるいはその問題に関して大臣自身がアメリカにおいでになったときに、より安保を確固としたものにするという立場に立ってこの時期的な問題についてはお話し合いにならなかったのかどうなのか、その点はいかがでしょうか。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) わが国といたしましては、この条約は確かにいま立木委員の言われました条項を含んでおりますけれども、政府はこの条約を終了させる意思を持っておりませんので、したがいまして、この規定、この条約そのものは事実上不特定の期間、永久と申し上げますと言葉が不正確でありますので、特定されない期間存続するものと、俗の言葉で申せば長く存続するものというふうに考えておりまして、そういう意味では期間がある条約というふうには考えておりません。私の理解いたしますところでは、米国政府も同様に考えておる、そのことに疑念を持っておりませんので、このことについての話し合いを一切いたしておりません。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 三木総理が八月の上旬ですか、アメリカにおいでになるというお話がありますけれども、この安保条約にまつわるいろいろな疑念の問題や、さらに強化をするという措置に関しては、アメリカ側の首脳陣とはどういうふうな話し合いをされる準備を外務省としては考えておられるんでしょうか。
  187. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま、まだ実は具体的な準備をいたしておりませんし、実はアメリカ側自身もそのような、協議に応じられるような現状ではないわけでございます、当面の問題に非常にかかずらわっておりますので。しかし、一般的に申しまして、歴代両国首脳の会談がございましたあとには大抵共同声明のようなものが発表され、その中で日米間の安全保障関係について述べられるのが常でございますので、そういうことがあろうかと存じておりますが、具体的に別段の準備をいたしておりません。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 大臣が衆議院の本会議がおありになるそうで、最後の質問一つだけさしていただきたいんですが、先ほど来何人かの方が質問されたわけですけれども、いまのインドシナ情勢をめぐって、日本の外交政策というのがきわめて遺憾な経過をたどってきたというふうに私たちは考えているわけですが、このインドシナの新しい情勢を踏まえて、外務大臣御自身が日本のいままでの外交政策を振り返ってみて、インドシナの新しい情勢から何を学び取られるのか、今後の外交政策の上ではどういうふうにインドシナの新しい情勢を考えて生かしていきたいというふうにお考えになっておられるのか、このインドシナ情勢からくみ取られておられる内容についての見解を賜りたいと思います。
  189. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 世界的な緊張緩和が進む中で、いわゆる西の陣営に従来あると考えられておりました諸国において、民族自決の運動が非常に強くかつ顕在化してきておるという認識を持っておりまして、したがって、このインドシナ戦争後における事態というものを私どもはそういう観点から新しく考えていかなければならないと思っております。ただ、これはアメリカにも申したことでございますけれども、少し情勢の推移を見ながら、早急にでなく、長い展望に立った考え方を確立していくべきであろうと考えております。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 この問題安保の問題、核の問題は非常に大切な問題なので、今後引き続いていろいろお尋ねしたい。  終わります。
  191. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 本件の質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十七分散会      ―――――・―――――