○国務
大臣(宮澤喜一君) まずカンボジアでございますが、すでにプノンペンから引き揚げをいたしました大使館も相当あるわけでございますけれ
ども、
わが国といたしましては、多少人員を削限はいたしつつございますが、現在なお大使が在任をいたしております。と申しますのは、
一つには在留邦人が無事に引き揚げるということを確認いたさなければならないからでもございますけれ
ども、
わが国を初めといたしまして、何ヵ国かのいわゆるASEANに属します国の大使が、しばしばカンボジア
政府の首脳から招かれまして、この事態をいかに打開すべきかについて
意見を徴せられておりまして、
わが国としてはASEANの国の大使と協力しつつ、ともかく大規模な流血の惨事を避けるということがこの際緊要なことであるということを、
意見を求められておりますので、カンボジア
政府に話をしておるわけでございます。事態は非常に微妙でございますけれ
ども、カンボジア
政府首脳部でも、やはりその点の重要性は認識を深めているようでございまして、
わが国としましては、昨年の国連決議の
趣旨にもかんがみまして、そのような努力を現に大使がまだ
継続しつつございます。事態がどのように展開をしてまいりますか、しかとはまだ申し上げる段階でございませんけれ
ども、しかし、そのような必要性をカンボジア
政府の現首脳部が認識しつつあるということは確かのように存じます。
それから、後の見通しを申し上げますことは、そういうようなこともございまして、不明な点もあり、また差し控えさしていただくことが入り用かと存じますけれ
ども、いずれにしましても、カンボジアの問題はカンボジア人の手によってカンボジア人の望む
政府ができていくという形で解決することがしかるべきことと思われますし、その
方向で続いて努力をいたしてまいりたいと存じております。
それから、ベトナムにつきましては、先般のあのようなチュー大統領の方針のよってきたるところは、実は必ずしも
わが国にもいまだに明快ではないようでございますけれ
ども、一応チュー大統領がサイゴン周辺、メコンデルタ、あるいは東部の一部の人口密集地帯を相手方からの攻撃から防衛するために実態的に戦線を縮小して重点化をしたというふうに
考える
見方が強いようでございます。そういう
見方は、したがいまして、今後とも北側の——北側と申しますとちょっと誤解があるかもしれません、サイゴンの相手側の攻勢が強まっていくというふうに、
背景としてはそういう判断があるように存じておりまして、そのような事態になりますと、パリ
協定そのものの実効が非常に疑わしくなるというような事態になってまいらざるを得ないかと存じます。そういたしますと、従来
わが国が
インドシナ半島、ことにベトナムを中心に基本としておりました物の
考え方が少なくとも挫折をするわけでありまして、今後どのような
立場に立ってこの問題に対処していくべきか、新しい
考え方を立てていかなければならないであろうと存じますけれ
ども、現在帰趨が余りにはっきりいたしませんために、まだそのような方針を確立するに至っておりませんで、事態を注視をしておるというようなのが実際のところでございます。