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1975-03-25 第75回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十五日(火曜日)    午後零時四十五分開会     —————————————    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      野坂 参三君     星野  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 秦野  章君                 戸叶  武君     委 員                 伊藤 五郎君                 大鷹 淑子君                 増原 恵吉君                 亘  四郎君                 田  英夫君                 羽生 三七君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        運輸省海運局次        長        浜田直太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省大臣官房        外務参事官    本野 盛幸君        外務省アメリカ        局外務参事官   深田  宏君        郵政省大臣官房        電気通信参事官  佐瀬健治郎君        郵政省電波監理        局法規課長    松沢 経人君        郵政省電波監理        局周波数課長   松元  守君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際電気通信条約及び関係議定書締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出) ○日本国中華人民共和国との間の海運協定の締  結について承認を求めるの件(内閣提出、衆議  院送付) ○国際情勢等に関する調査  (インドシナ情勢に関する件)  (日米安保条約事前協議についての口頭了解  に関する件)  (核兵器不拡散条約批准問題に関する件)  (べトナムに対する経済協力に関する件)     —————————————
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十四日野坂参三君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。     —————————————
  3. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、国際電気通信条約及び関係議定書締結について承認を求めるの件(本院先議)  日本国中華人民共和国との間の海運協定締結について承認を求めるの件(衆議院送付)  以上二件を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は御発言願います。
  4. 田英夫

    田英夫君 大臣がお見えになる前に、技術的な問題で二、三お伺いしたいと思います。  最初に、国際電気通信条約関係ですが、この条約自体大変膨大なもので、これを大体五年ごとに改めていくということになっているようですけれども政府としてはこれをむしろ固定化できる部分固定化をしていくという、いわゆる憲章化と言われているようですが、そういう方向考えておられるということですが、これはそういうふうに考えてよろしいんですか。
  5. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) いま仰せられたとおりの考え方でおりますし、また、会議においてそういう態度で対処いたしました。
  6. 田英夫

    田英夫君 前回のマラガ=トレモリノス会議、このときの日本政府側主張というのを簡単にひとつ御説明いただきたい。
  7. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) これは田委員指摘のとおり、この国際電気通信条約を今後とも条約かっこうで続けていくのか、あるいは言われたように憲章化する、言葉をかえて言いますと、基本的な規定のみを掲げた恒久的な憲章を制定しまして、それから頻繁な改正を受けやすい、特にいろいろな技術的な進歩に応じて改正することが必要になるような事項憲章とは別個の一般規則で決めるという考え方でこの会議に臨んだわけでございます。ところが、同時に、条約の形で存続したいという国もございまして、この間のいろいろな議論の応酬がございましたけれども、結局、審議のための時間が十分ないということから、今度の会議においては完全な憲章というかっこうで採択することは無理であるという判断が働きまして、この問題はさらに引き続きまして次回の全権委員会議でもう一回討議する。しかし、その憲章化を進める一歩のようなかっこう決議案が最後にできたわけでございます。  それは、この条約を第一部と第二部に分けまして、恒久的な性格を有する部分を第一部に入れまして、技術的な進展その他に即応して細目的な事項は第二部というところに全部集めまして、一部、二部というかっこう条約案ができたわけでございます。これは、将来われわれとしまして希望するような憲章に移行するという場合の便宜のための措置であると同時に、そのための第一歩であるというふうに考えております。  したがいまして、次回会議でどういう帰趨になるかわかりませんけれども、少なくとも今次会議の結果から見ますと、その方向に一歩進んだというふうに解してよろしいのではないかと思います。
  8. 田英夫

    田英夫君 常識的に考えますと、固定化できるところは憲章という形にした方がいいように思うんですけれども、にもかかわらず、これはやっぱり条約の方がいいという国、これは発展途上国に多いというふうに聞くんですが、そうなると、どういう国内事情があるのか、考えがあるのか、たとえば国会批准手続との関係というようなことなのか、そうでなくて、別に周波数割り当てというような問題で先進国優先主義だということで、それを固定化されると困るという考え方だとすれば、これは日本としては配慮しなくちゃいかぬというふうにも思えますし、そこの問題はどういうように把握しておられますか。
  9. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) 今度の会議におきます、つまり条約の形で存続したいという意見背景といたしましては、基本的な規定を含めまして、五年ごとにやはり全部レビューする必要があるんじゃなかろうかという考え方が、この条約存続論の主な背景であるというふうに了解していただきたいと思います。
  10. 田英夫

    田英夫君 私が心配するといいますか、注意しなくちゃいかぬと思うのは、先進国、どうしても電気通信条約というのは、歴史的に非常に古い、日本が参加したのは、明治の、しかも初期のころであるというふうな古い歴史があるわけですから、どうしてもヨーロッパ、そして先進国中心の形で進められてきた。そこに宇宙通信というような形まで含めて新しい通信の時代が加わってきているときに、周波数割り当てというような問題に絡んで、先進国優先という形にどうしてもなっているんじゃないだろうか。それに対して発展途上国が、最近あらゆる場面で起こっていることですけれども自分たちの不利なことにならないようにという主張をして、先進諸国との間に矛盾が出てくるといいますか、そういうことだとすれば、これはやはり、私の考えでは、日本発展途上国の側に立って配慮をすべきじゃないのか、日本先進国の側に立って既得権主張するというようなことになると非常にまずいんじゃないか、こういう心配を率直のところするわけです。その辺はどうでしょうか。
  11. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) 今度の会議におきます条約存続論、あるいは憲章制定論という二つ議論にそれぞれ賛意を表した国を一応仕分けして申し上げますと、憲章の形にすべきではなかろうかという考え方に立ちまして賛成しましたのは、日本あるいはオーストラリアインド、ソ連、それから中南米諸国がございます。他方、条約の形で存続するのが適当であるという意見主張しましたのが米英仏等主要先進国であります。したがいまして、形の上からだけで申しますと、日本はやはり開発途上国側利益を擁護するかっこうに回ったということがあるいは言えるかと思います。
  12. 田英夫

    田英夫君 それに関連して、やはり同じ考え方に立つのですが、第三章の三十三条に、周波数の数の確保は最小限にとどめるべきだということを第一項で決めていて、さらに、宇宙通信周波数帯使用に当たっても公平、能率的、経済的という原則を第二項で掲げているわけで、この辺のところには、やはり発展途上国主張がにじみ出てきているんじゃないだろうかと思います。一つの国、つまり先進国周波数の幅をたくさんとってしまうというようなことは好ましくない。世界地域別に分けて周波数割り当てているようですけれども、その中で、たとえばアジア地域では現実として日本が非常に多くの周波数をとっておるんじゃないか、この点はどうですか、現状は。
  13. 松沢経人

    説明員松沢経人君) ただいまの御質問お答え申し上げます。  条約の第三十三条第一項の規定は、モントルー条約の第四十六条の規定とほぼ同趣旨のものでございまして、無線周波数スペクトル合理的使用を図るための原則的規定といたしまして、連合員無線周波数スペクトル使用必要最小限度にとどめるよう努力すること、このために最新の技術をできる限り適用するよう努力することを定めたものであります。  同条第二項の規定は、宇宙通信のための周波数帯使用に関するもので、使用に当たっての原則的事項定めたものであります。最近宇宙技術進展とともに、この技術を利用する各種宇宙活動がますます盛んとなり、拡大される情勢にありますが、宇宙活動におきましては、周波数使用衛星そのものの確実な運行のためのみならず、その衛星の持つ通信放送気象観測資源探査等業務達成のため不可欠でありますが、いわゆる地上の無線通信業務を含めて、全体で使用できる無線周波数スペクトルには限りがございますために、いかにして宇宙通信業務用周波数確保し、これの有効かつ適切な利用を図るかが国際的な課題となっておるわけであります。また、最近各種宇宙通信業務対地静止衛星により行うことが多く、多数の衛星対地静止衛星軌道に位置することとなりますので、衛星による通信相互間における混信というものを回避するため、その衛星の位置を規制する必要が生じておるわけでございます。このような事情から、今回第二項の規定が追加されたというように考えられるわけでございます。  それで、この第二項の規定の何といいますか、具体的にこれがどういうふうに生かされているか、こういうことでございますけれども各国条約附属無線通信規則定め手続に従いまして、衛星通信系計画段階におきまして、使用予定周波数であるとか、衛星軌道等の情報を事前に公表し、国際的な調整を図っており、そのような調整手続を通じまして、いわゆる国際協調立場に立って、各国利益と申しますか、そういうものが確保されることが可能でありますので、日本にとりましても、日本利益というものの確保と申しますか、こういう点も特段影響はないのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  14. 田英夫

    田英夫君 これは外務省の方の関係と思いますが、いま私が御質問したアジア地域の中でのいまのお答え周波数割り当てというような問題で、アジア地域発展途上国から日本に対して、取り過ぎているじゃないかというような苦情が来ている事実はありませんか。
  15. 松元守

    説明員松元守君) 御説明を申し上げます。  現在の日本に第三地域近隣諸国から、日本周波数を取り過ぎているじゃないかというようなクレームは参っておりません。私のところに最近の資料がございませんので恐縮でございますが、やや古い資料でございますけれども、四十七年の八月現在、と申しますのは、外国の周波数事情というのはなかなか入ってまいりませんで、この当時の資料を見ますと、これは一つの例でございますけれども中波のラジオの放送、これの波の例で申し上げますと、日本が百六、それから中国が九十七、インドが百七、オーストラリアが百七、タイが百二、フイリピンが九十七、韓国が六十七というふうな統計数字が挙がっておりますので、日本はかなり多い方ではございますけれども、他の国に比べまして格段に多いというふうなことは申せないかと思います。
  16. 田英夫

    田英夫君 これは周波数といいますか、波によって、たとえばいまおっしゃった中波になると、これはかなりきちんとしないと混信しますからあれですが、極超短波というようなことになれば、これは問題にならないということで、いま中波を挙げられたんで、その点はいまの状況ならばいいと思いますけれども、いま挙げられたのは、ややアジアの中では、先進までいかなくても、発展途上国ということでもないように思うんで、そういう意味でもっとアジアの中の本当の意味発展途上国というあたりがどういう心境を持っているのか、この辺はつかんではおられませんか。
  17. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) 周波数の問題は、この条約の立て方から申しまして、主として主務官庁間の協議事項になっております。外務省に関する限りは、外交チャンネルを通じまして、アジア開発途上国からそういう趣旨の申し入れなり意見表明というものにはまだ接しておりません。
  18. 田英夫

    田英夫君 もう一つ、三十八条に、「国防機関設備」という条項があって、その第一項に、「陸軍、海軍及び空軍の軍用無線設備について、完全な自由を保有する。」という規定があるわけですが、日本の場合は自衛隊にこれが適用されておりますか。
  19. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) お答え申し上げます。  この条約規定は、わが国電波法及び自衛隊法によってカバーされているところでございまして、したがって、実体的に自衛隊に対してこの規定適用がないというふうな考え方をとっております。
  20. 田英夫

    田英夫君 そうすると、自衛隊使用する電波は、一般の通常の警察あるいは報道機関その他と同様に、郵政大臣の権限によって電波法割り当てられるという、その形になっているわけですか。
  21. 松元守

    説明員松元守君) 自衛隊無線局につきましては、自衛隊法の百十二条というのがございまして、移動いたします無線局、レーダーの無線局につきましては電波法適用が除外されている部分がございます。しかし、それ以外の無線局につきましては、すべて電波法適用されております。
  22. 田英夫

    田英夫君 在日米軍はどうなんでしょう。
  23. 松元守

    説明員松元守君) 在日米軍につきましては電波法に特例がございまして、それによりますと、電波法適用が排除されております。在日米軍につきましては、日本国アメリカ合衆国の相互協力及び安全保障条約の第六条に基づきますいわゆる地位協定定めによりまして、電波に関しましては規律されておるというようなことになっております。
  24. 田英夫

    田英夫君 そうすると、事実上は在日米軍に関しては三十八条の規定が、アメリカでは当然軍隊に使用されておるわけでしょうから、在日米軍についても日本でそれを使用してもこの三十八条という形になっていると、こう理解していいわけですか。
  25. 松元守

    説明員松元守君) いま御指摘の件につきましては、ただいま私御説明申し上げましたように、地位協定定めに従って米軍電波使用につきましては規律をされているわけでございますけれども、この協定に基づきまして、米側当方との間の当局者の間の取り決めというのがございまして、その取り決めの中には、在日米軍使用いたします周波数使用につきましてはできる限りこの条約規定を守るというふうなことになっておりますし、また有害な混信というものが考えられますので、したがいまして、電波施設につきましてこれを設置運用する場合には条約規定に従うというふうな合意がなされております。
  26. 田英夫

    田英夫君 結果的には三十八条と同じ状況になっていると思いますが、いま言われた混信の問題というようなことが、この条項がある以上は常にどこでも起こり得るわけでしょうが、これは外務省の問題でしょうが、沖繩VOAはそういう中ではどういう形になっているわけですか。返還協定の中に出てくるわけですね、第八条。
  27. 松元守

    説明員松元守君) VOA周波数につきまししては、これは返還協定に基づきましてその継続が認められておるものでございまして、その設置運用等につきましては、すべて米側責任を持っておりますので、米側がすべてについて責任を負うというような形になっております。
  28. 田英夫

    田英夫君 あれは中波ですか。
  29. 松元守

    説明員松元守君) VOAにつきましては、中波が一波ございます。そのほかは短波でございます。
  30. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、第八条はわかりますけれども、その周波数というのは、地位協定米軍が使っていると同じように、その周波数日本電波法の枠外で、向こう側が勝手にというか、自主的にというか、決めているのかどうか、周波数は一体どうやって決めているわけですか。
  31. 松元守

    説明員松元守君) 周波数使用につきましては、「ブォイス・オブ・アメリカ中継局の運営の継続に関する交換公文」というのがございますけれども、その中で、中波短波につきまして、中波につきましては周波数規定をされております。短波につきましては、これは短波季節ごと周波数を変えるということになっておりますので、その部分につきましては米側季節ごと当方に通告をしてまいっております。
  32. 田英夫

    田英夫君 これは私はそもそも第八条が入ったこと自体がおかしいと、当時、いわゆる沖繩国会主張をし、取り上げたところですけれども、同時に極東放送の問題も取り上げましたけれども、あの第八条には、これをやがて廃止するということが規定されておりますが、政府はその交渉を始める方針がありますか。
  33. 深田宏

    説明員深田宏君) 先生御案内のように、協定第八条に基づきます協議が昨年行われまして、この機会日本側といたしましては、協定による存続期間五年間をできれば経ることなく、遅くも五年以内にこのVOA撤去が実現するようにということを強く主張いたしまして、アメリカ側もこれに同意いたしております。その後、アメリカ側におきましては、必要な予算措置等につきまして政府当局の方で検討をいたしておるというふうに承知しておりますので、結論といたしましては、私ども返還協定規定どおり撤去が実現するものと期待しておる次第でございます。
  34. 田英夫

    田英夫君 そうすると、五年というのは規定ですが、五年以内と考えていいわけですか。
  35. 深田宏

    説明員深田宏君) 先生指摘のように、まさに五年ということでございますんで、五年きっかりということよりも、むしろ五年に満たないなるべく早い時期ということが私ども立場でございます。ただし、やはり相当の規模の施設でございますから、移転のためにはかなりの費用もかかります関係その他アメリカ側準備進行状況からいたしますと、早々のうち、近々のうちにというようなことはいささか期待しがたいかと存じております。しかしながら、当初の約束のように五年以内ということが守られるようにということで、私どもアメリカ側準備状況を見守っておる次第でございます。
  36. 田英夫

    田英夫君 この機会に伺っておきたいんですが、たしか四十五年だと思いますが、当時の小林郵政大臣が、日本のテレビ局は十年以内にすべてUHFに切りかえるということを国会でも発言をされているわけですけれども、すでに五年たつわけですが、UHF局は大体一県一つという形で固定化しているようですし、さらに既成のVHF局UHFに切りかわっていくという動きは全く見られない。五年たった現在もそういう気配はないわけで、そうなると、小林郵政大臣の言われたことはもう中止になったのか、あるいはまだこれからも生きているのか、大変これは政治的な問題で、郵政大臣でないとお答えにくいかもしれませんが、郵政当局としてはどういうふうに把握しておられますか。
  37. 松沢経人

    説明員松沢経人君) ただいまの御質問につきましては、大変恐縮でございますが、責任を持って発言できる立場にございませんので、御容赦いただきたいと思います。
  38. 田英夫

    田英夫君 これは別の機会にそれでは郵政大臣のお考えを伺いますが、きわめて政治的にもおかしな問題で、現実の問題としては一向に進んでいないことで、これは小林郵政大臣発言というのは現実の問題としては消滅しているんじゃないかと理解しています。  次に、これも技術的なことですが、ITU技術協力という面で日本が果たしている役割りですね。これは、発展途上国ITU技術協力ということを非常に重視していると思いますが、現実に行われている日本技術協力というのはどの程度あるのか。
  39. 佐瀬健治郎

    説明員佐瀬健治郎君) お答え申し上げます。  ITUのやっております技術協力、大きく分けまして二つになろうかと存じます。  一つは、国連のUNDP、開発基金からのお金を得まして、それに基づく援助、すなわちそのお金によって専門家発展途上国に派遣し、その発展援助する、指導する、あるいはそういうような国に電気通信関係開発センターのようなものを建ててあげて、それを通じてその国の発展に寄与すること、あるいはセミナー等を開催したり、あるいは調査団を派遣したりというようなことがそれに類します。  もう一つのは、主として先進国からの援助によりまして、ITU加盟先進国からの援助によりましてテクニカル・アシスタンス・イン・カインドと称しておりますが、それぞれの国が費用を出して、発展途上国からの研修生を受け入れたり、あるいは発展途上国に対して専門家を派遣したりというような仕事、あるいはまた、ITU機関であります電気通信関係の、あるいは無線通信関係諮問委員会を通じての援助等でございます。  そのいずれに対しても、日本は十分の貢献をしていると自負するものでございますが、たとえば専門家の派遣を一つの例にとりますと、日本は現在十九名の専門家世界各国発展途上国に派遣しております。これは数から申し上げますと、イギリス、フランス、ドイツ等に次いで第六番目の人数を派遣していることになります。あるいはまた、日本におけるセミナー開催状況等も隔年ぐらいに開催しておりまして、たとえば、日本が進んでおりますマイクロウエーブのセミナーを開催して、発展途上国からの聴講、参加を求めるというような形、いずれの面におきましても、われわれとしては十分のITU活動協力をしていると自負しております。
  40. 田英夫

    田英夫君 もう少し伺いたいことがありますが、時間がないのと、大臣がまだおいでにならないので、大臣に伺いたいところは後に残しまして、日中海運協定の問題に移りますが、——ちょうど大臣、来られましたので、おいでになってすぐですが、最初技術的なことで、世界じゅうの定期航路の船、つまり船会社の動かしている船については、運賃だとか配船数というようなものを取り決めたいわゆる海運同盟という形のものがあるわけですが、これはやはり先ほどからも電波の問題で申し上げたと同じように、先進国のいわば国際カルテルというふうな見方ができると思いますけれども中国はこれに対してどういう見方をしているのか、把握しておられるでしょうか。
  41. 浜田直太郎

    政府委員浜田直太郎君) お答えを申し上げます。  現在、わが国中国との間に就航いたしておりますいわゆる海運業者の間には、先生おっしゃいました定期船同盟というものが結成されておりません。しかしながら、中国がこの定期船同盟というものに対してどういう考え方を持っておるかということでございますが、私ども知る限りにおきましては、この定期船同盟といいますのは、いわゆる輸送秩序の安定を図るということから考えられました伝統的な制度でございますので、これに対して、基本的にこれに反対をするという態度ではないというように理解しております。まあ一つの証拠といたしましては、昨年四月にジュネーブにおきまして、いわゆるUNCTADの考え方を中心といたしますところの定期船同盟条約ができたわけでございますが、中国はこれに賛成票を投じておるわけでございます。したがって、私ども定期船同盟条約の今後の取り扱いにつきましては十分いろいろ議論をしなくてはならぬと思いますけれども、事中国に関する限り、基本的にこの同盟制度に反対するということではないと考えております。
  42. 田英夫

    田英夫君 もう一つ、いま海運協定ができたわけですけれども、運賃の問題については、日本中国で別建てになっているため違うわけですね。中国の方が安いということですから、これはまあ当然商売やっていれば安い方の船に運ばせるということになるわけで、偏りが出るんじゃないかと思いますが、これは一本化する方向なのか、あるいはこれは不可能なのか、それはどうでしょう。
  43. 浜田直太郎

    政府委員浜田直太郎君) 運賃率でありますとか、あるいは両国の積み取り比率でありますとか、あるいは配船数でありますとか、さような問題を今後両国の民間ベースでもって十分話し合いを行っていかなければならないと思います。先生指摘のように、現状両国の運賃の間に多少の格差があるように承知いたしております。しかしながら、海運秩序の安定ということから申しまして、両船の運賃が基本的には同一のベースになければならないと思いますので、私どもとしましては、十分今後その民間ベースの話し合いを見守りましていくわけでございますけれども、基本的には、いわゆる平等互恵の原則といいますか、あるいは相互理解と申しますか、さような精神にのっとって、まあ息長く、しんぼう強く交渉していけば、ある程度妥当な線が出てくるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  44. 田英夫

    田英夫君 外務大臣に伺いたいんですが、海運協定が結ばれたわけですが、次は漁業だという当然の常識でありますけれども、いますでに交渉は始まっているようですが、いわゆる中国側の軍事警戒区域あるいは共同規制措置について馬力規制、船の馬力で甲乙丙というのを海域を分けているようですけれども、こういう問題が障害になっているというふうに聞きますが、この点はいかがですか。
  45. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) アジア局長からお答えいたさせます。
  46. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) この三月一日から東京におきまして第二回の日中漁業交渉を行っておりまして、その交渉は第二回目でございますので、昨年六月における北京での交渉実績を踏まえてさらに双方の立場を深く理解するという努力をいたしております。田先生指摘のように、問題として私たち一番頭を痛めておりますのは、そういう資源の保存のための規制措置について双方の立場にかなり食い違いがございますし、その点は何としてでも、もう少しそういう食い違いを狭めまして打開を図っていくという努力をいま私ども一生懸命やっております。そういう状況でございますので、いまの段階でどういう点がどういうふうに問題かということを具体的にお示しはできませんけれども、とにかく双方がそういう立場をよく深く理解してきておりますので、打開はかなり困難はございましょうけれども、最終的には何とかそういう方向へ向かっていけるのではないかというふうに考えております。
  47. 田英夫

    田英夫君 交渉中にこういうことを伺うのはあれですが、締結の見通しということに関連をして、ちょうどいまジュネーブで海洋法会議が開かれているわけですが、軍事警戒区域というところは別にしても、漁業関係の問題について考えれば、その甲乙丙の馬力の規制の多分乙の部分ぐらいのところへこの二百海里がちょうど引かれてくるというふうに考えますが、この海洋法会議で二百海里経済水域ということが認められる問題と、この日中漁業交渉との問題が関連をするのかどうか、つまり中国が二百海里経済水域ということを実は待っているんじゃないかという受け取り方もできると思いますが、この点はどうですか。
  48. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) いま始まっております国連の海洋法会議でもって、いわゆる二百海里の経済水域という問題が国際的に問題になっているという点は、中国も十分認識しておるはずでございます。しかし、現在行われております日中漁業交渉において現実にそういうことを具体的に何ら提起しておりません。ただ、そういうことを考えておりますので、いま先生指摘のような日中間で二百海里の漁業に関する一つの経済水域というものを頭に置いた提案であることは事実でございましょう。しかし、それにもかかわらず、いま取り決めをしようとしておりますのは、中国の将来できるかもしれませんところの経済水域の範囲内での日本の操業についての取り決めでございますので、経済水域二百海里ということを主張して、その範囲内には日本の操業を認めないということでは全然なくて、むしろ逆に、その水域内でのいままでの実績に基づく日本の操業をどうして今後認めていくかということについての交渉でございます。
  49. 田英夫

    田英夫君 これは率直なところ軍事警戒区域の問題が大きいのか、漁業の問題が大きいのか、そういう区分けはあるいはないのか、この辺はどうですか。
  50. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) いわゆる渤海湾の入り口をふさいでおります軍事警戒ラインというのは確かに問題ではございますけれども、これが主要な問題であるというふうには私ども考えておりません。やはり何といっても日本の漁業がいままでと大体同じような規模において今後も操業をし続けることができるかどうかという点が重要な問題でございまして、現にいままでも軍事警戒ライン以内には日本の漁船は入っておらないわけでございますし、それは民間取り決めに基づいてでございますけれども、入っておらないわけでございまして、そういう点からいたしまして、私ども政府協定といたします場合のいろいろ法律上の問題がございます。しかし、法律上の問題は別にいたしまして、一番重要な問題というのはやはり現実に操業をいままでと同様の規模において継続することがいかにして可能かという点であろうかと思います。
  51. 田英夫

    田英夫君 時間がなくなりましたが、最後に、大臣に伺いたいんですが、三木総理がこの前中国の陳楚大使と会われて、日中平和友好条約は今国会で批准をしたいということを言われておりますし、私も党を代表して先日二木総理にお会いしたときに、同様のことを言われたわけですけれども、それをあずかる外務大臣として今国会批准ということを見通しておられるのかどうか、いかがでしょうか。
  52. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 私も総理大臣と同じような希望と意思を持ちまして、ただいま話し合いを事務次官と先方の大使とが何回か重ねておるわけでございますが、御承知のような一つの両国間の意見の合わない問題がございまして、それをめぐりましてかなり実はもう長い時間がたっております。したがいまして、いまだに条文の交換もいたしておらないというようなことでございます。私どもとしましては、時間の経過の中で、先方としても、わが国がその問題についてどうしてこのような考えをしておるかということを、恐らく先方も国内の各方面も打診され、その上で了解をされるのではないだろうかという希望を持っておりまして、その問題もう少し詰めてみたいと思っておるわけでございます。目途といたしましては、できる限りこの国会で御審議を願いたいと考えておりますことには私も総理大臣と同様でございます。
  53. 田英夫

    田英夫君 一つの問題がと言われた、つまり覇権の問題だと思いますが、これは表現を工夫することによって合意を見ようと考えておられるのか、あるいはもっと強い隔たりがあるのか、その辺の感触はお話しいただけませんか。
  54. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 中国側がこの問題を提起しております背景には、かなり具体的な一つ考え方があるのではないかというふうに推察されるわけでございますけれどもわが国は、中国とはもとよりでございますけれども、どの国とも友好関係を保っていかなければならないわが国の憲法であり、また実態でございますから、第三者にあらぬ疑惑を与えるというようなことは避けなければならないと考えておるわけでございますので、事柄は単純に表現の問題だけであるとは申しがたいというふうに思っております。
  55. 田英夫

    田英夫君 終わります。
  56. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 両件についての質疑は本日はこの程度といたします。     —————————————
  57. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  58. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、きょうは主として核防条約の問題を伺いたいと思いますが、それより前に、ごく簡単に当面する問題について一、二お伺いをいたします。  まず最初に、ベトナム及びカンボジアの最近の軍事情勢からしまして、ベトナム和平協定に基づく日本の対インドシナ政策に重大な影響を及ぼすことになると思いますが、政府は今日のインドシナ、特にカンボジアの事態をどう認識されておりますか。それとともに、これにより日本の対インドシナ政策にどのような変化が起こるのか、また起こらないのか、最初にまずこの一点をお伺いをいたします。
  59. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) まずカンボジアでございますが、すでにプノンペンから引き揚げをいたしました大使館も相当あるわけでございますけれどもわが国といたしましては、多少人員を削限はいたしつつございますが、現在なお大使が在任をいたしております。と申しますのは、一つには在留邦人が無事に引き揚げるということを確認いたさなければならないからでもございますけれどもわが国を初めといたしまして、何ヵ国かのいわゆるASEANに属します国の大使が、しばしばカンボジア政府の首脳から招かれまして、この事態をいかに打開すべきかについて意見を徴せられておりまして、わが国としてはASEANの国の大使と協力しつつ、ともかく大規模な流血の惨事を避けるということがこの際緊要なことであるということを、意見を求められておりますので、カンボジア政府に話をしておるわけでございます。事態は非常に微妙でございますけれども、カンボジア政府首脳部でも、やはりその点の重要性は認識を深めているようでございまして、わが国としましては、昨年の国連決議の趣旨にもかんがみまして、そのような努力を現に大使がまだ継続しつつございます。事態がどのように展開をしてまいりますか、しかとはまだ申し上げる段階でございませんけれども、しかし、そのような必要性をカンボジア政府の現首脳部が認識しつつあるということは確かのように存じます。  それから、後の見通しを申し上げますことは、そういうようなこともございまして、不明な点もあり、また差し控えさしていただくことが入り用かと存じますけれども、いずれにしましても、カンボジアの問題はカンボジア人の手によってカンボジア人の望む政府ができていくという形で解決することがしかるべきことと思われますし、その方向で続いて努力をいたしてまいりたいと存じております。  それから、ベトナムにつきましては、先般のあのようなチュー大統領の方針のよってきたるところは、実は必ずしもわが国にもいまだに明快ではないようでございますけれども、一応チュー大統領がサイゴン周辺、メコンデルタ、あるいは東部の一部の人口密集地帯を相手方からの攻撃から防衛するために実態的に戦線を縮小して重点化をしたというふうに考え見方が強いようでございます。そういう見方は、したがいまして、今後とも北側の——北側と申しますとちょっと誤解があるかもしれません、サイゴンの相手側の攻勢が強まっていくというふうに、背景としてはそういう判断があるように存じておりまして、そのような事態になりますと、パリ協定そのものの実効が非常に疑わしくなるというような事態になってまいらざるを得ないかと存じます。そういたしますと、従来わが国インドシナ半島、ことにベトナムを中心に基本としておりました物の考え方が少なくとも挫折をするわけでありまして、今後どのような立場に立ってこの問題に対処していくべきか、新しい考え方を立てていかなければならないであろうと存じますけれども、現在帰趨が余りにはっきりいたしませんために、まだそのような方針を確立するに至っておりませんで、事態を注視をしておるというようなのが実際のところでございます。
  60. 羽生三七

    ○羽生三七君 いま大臣お答えの中にもありましたが、カンボジアでは栗野大使がカンボジア政府側から和平工作についての意見を求められておる、こういう報道があるわけですね。それですから、大使自身が勝手に自分の判断で動くということはできないと思うんですが、外務省としては現地の大使に、もし和平工作について動くとすればどういうことをお考えになって話し合いをされておるのか、この点を伺います。
  61. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) いろいろ新聞では報道されておりますけれども、要は、カンボジアの現在の悲惨な状況を一日も早く終止させて、カンボジア人同士の話し合いによってカンボジアの統一を図ると、そういうためにどうすることが一番いいかという点につきましていろいろわが方としても考え、また、カンボジア政府自身がもちろんいろいろ考えているわけでございまして、そういうことで、カンボジア政府の方から、先ほど大臣がお話しになりましたとおり、いろいろ相談を持ちかけてきているのが現状でございます。日本の大使のみならず、特にこのASEAN——タイとかあるいはインドネシアの大使が現在もなお残留しておりますけれども、栗野大使とともにカンボジアの政府首脳からしばしば、最近に至っては特に頻繁に呼ばれまして、いろいろ意見を聞かれるという機会がございますので、こういう機会に、日本日本だけの代表としてではなくて、ASEAN諸国とともにいろいろ相談をした結果の意見を先方に披瀝しているというのが現状でございます。ただ、具体的にどういうようなことを話し合っているかという点につきましては、いろいろ機微な状況もございますので、差し控えさしていただきたいと思います。
  62. 羽生三七

    ○羽生三七君 こういう席で発言することを差し控えさしてくれという意味で、実際には何らかの接触をされて、日本側の、外務省側の意見も述べておるということですか。
  63. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) そのとおりでございます。
  64. 羽生三七

    ○羽生三七君 それではこういう席ではこれ以上申しません。  そこで大使館の閉鎖なんかはどういうことになるんですか。閉鎖することになるのか、もう少し様子を見るのか、その辺はどうですか。
  65. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 私どもの基本的な考え方は、プノンペン自体も非常な危険な状態にあるという前提の上で、しかも、なおかつ大使としてなすべき職務がいま申しましたとおり残っている限りは、たとえ若干の危険性があってもやはり残るのが大使の職務であろうということで現在のところまだ残っておりますけれども、しかし、それにもかかわらずだんだんとそういう大使としての職務を果たす余力、余地もなくなってくるという状況になりました段階では、邦人の引き揚げその他のすべての措置をとった上で、近い将来撤収するということも考えております。具体的にどういう方法で撤収するかということにつきましては、まだ明らかにし得る段階ではございませんけれども、そういうことを考えながら現地大使との間にいろいろ協議を続けております。
  66. 羽生三七

    ○羽生三七君 次に、このベトナム情勢と関連して、北ベトナムの大使館の相互開設の時期等に何らかの変更、影響があるのかどうか、既定方針どおりで進むのか、その辺はどういうことになりますか。戦局の変化でそういう基本方針に、そんなに大使館開設まで左右されることは私はないと思うんですが、その点はいかがですか。
  67. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これはベトナム民主共和国との外交関係設定は一昨年九月でございまして、自後一年数ヵ月にわたりましていろいろ日、北越間の諸問題について話し合ってきました結果、ごく最近に至って了解に達したということでございまして、その結果、四月の初めを目途としてハノイに日本大使間を設置するということまで大体合意ができたわけでございます。そういうことでございますので、この基本方針そのものはわれわれ変更することは毛頭考えておりません。ただ、いろいろベトナム全体をめぐっての客観情勢の変更によってタイミングが若干ずれることがあるかどうかという点は、まだこれは具体的にわかりませんけれども、方針そのものとしては、私どもは、このような情勢にもかかわらず変えるということは考えておりません。
  68. 羽生三七

    ○羽生三七君 このインドシナ、特にベトナムの場合ですが、戦局の進展いかんによっては、従来日本が行ってきたこのインドシナ地域における復興援助、これはどういうことになるのか、変化が起こらざるを得ないことにもなると思うんですが、その辺はどうですか。
  69. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 南越に対しましては、従来戦争の後、特に和平協定の後いろいろ難民の救済等に重点を置きまして、民生の安定その他戦後復興等のために必要とする物資の無償援助、あるいは有償援助等援助をやってきております。今回新しい事態の発展によりまして、特に最近五十万ないし百万人という新しい難民ができつつあるというようなこともありますので、これから行います南越に対してのいわゆる商品援助の内容につきましては、そういう新しい事態を考慮に入れざるを得ないというふうに私ども考えておりますが、現在の時点で、もう少し具体的な事態の発展を見た上で、また先方の要請も考慮に入れた上で、こういう点を新しい視野から再検討したいというふうに思っております。  それから北越につきましては、先ほどもお話ししましたとおり、一年数ヵ月にわたる交渉の結果、先方の言ういわゆる賠償問題ということを無償協力という形で持って帰ってきたわけでございますので、そういう観点から、現に東京に先方の経済使節団も参っておりますし、先方の要請をよく検討した上で、わが方の立場もよく説明した上で必要な無償協力の内容を詰めていきたいというふうに思っております。そういうことでございますので、一般的に現在の新しい事態の進展が、このような日本政府の方針そのものを根底から覆すということは私はないというふうに思っております。
  70. 羽生三七

    ○羽生三七君 このインドシナ情勢に関連をして、外相が渡米されるものと予想しての質問ですが、渡米される際に、アメリカ側の意向を確かめられるように新聞報道では聞いておりますが、そういう問題にもちろんお触れになると思いますが、しかしそれはいいとして、根本的にはやはり日本自身が自主的に判断すべき問題ではないかと思います。やはり民族自身が決定する、民族自決の精神を尊重して、それに基づいて日本自身が判断をすべき問題だと思いますが、もしアメリカおいでになって、この問題に触れられるという場合に、基本的な外相のお考えを承っておきたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 国会が事実上自然休会に入られることがございましたら、その期間を利用してということは考えておるわけでございますけれども、先方も非常に流動的な日程のようでございますので、果たしてその時期にアメリカの国務長官と会談ができますかどうか、いまのところちょっと定かでございません。もちろん会いましたならば、今後のインドシナ半島についてのアメリカ考え方を確かめておきたいとは思っておりますけれども、先ほども申し上げましたように、もし南越における事態がパリ協定考えましたところから根本的に違ってまいるといたしますと、今後わが国としてこの地域にいたします援助の性格というのは、一度は両者の経済再建というようなところまで考えていたわけでございますけれども、そういうことよりはむしろ当面の人道的な難民の救済、援助というようなことに勢い重点を向けざるを得ないのではないか。と同時に、いかなる場合にも、積極的にいわゆる戦力といったようなものにどちらに対しましても寄与をするというようなふうに見られます種類の援助というのはやはり避けていくべきであって、文字どおりベトナムであればベトナム、あるいはカンボジアであればカンボジア、その住民たちの意思によって和平ができるだけ早く到来する、その間それを妨げてはなりませんし、また生じますところの難民問題等については人道的な見地から対処をする、こういう考え方に立たざるを得ないのではないか、またそうあるべきではないかというふうに、これはアメリカ側の意思がどうでございましょうとも、わが国としては基本的にやはりそう考えるべきであると思っております。
  72. 羽生三七

    ○羽生三七君 核防条約で後からお伺いしたいので、この問題はあまり深くお尋ねする余裕を持ちませんが、もう一つ他の問題としてお伺いしたいことは、これはけさほどの当院予算委員会で質疑があった問題と関連すると思いますが、アメリカの国務省スポークスマンが、この日米間の事前協議の問題について見解を明らかにしております。たとえば、「日米安保条約第六条の事前協議規定に関する日米間の具体的な合意事項をまとめたと言われる「藤山・マッカーサー口頭了解」について「そのような口頭了解のいかなる記録も知らない」と語った。また「ジョンソン国務次官(当時)が七〇年一月の上院外交委分科委で表明した二つの事例以外のいかなる他の了解についても知らない」と述べた。」と言っております。また、「さらに同スポークスマンは一般論として、記録のない了解はない、と述べるとともに「記録がなければ(その内容を)知るすべがない」と指摘した。」と言われております。また続いて、日本政府がこれまでの国会答弁でその内容について説明してきた、これはしばしば私も予算委員会、外務委員会等で質問したことでありますが、たとえばタスクフォースとはどの程度か云々というような問題、こういうような問題についても、全く米国はそのような具体的な了解事項はないとも言っております。さらに、ジョンソン次官補の声明ですね、当時でありますが、それによると「われわれも日本政府も、すべての組み合わせを想定したあらゆる可能性を予想し、どちらかの政府が正式に事前協議を求めたいと考えるようなあらゆる状況について、正確な事前の了解に達しようとは試みなかった。」と、明確にこう述べております。でありますから、これは日本の私どもがお尋ねして、また政府が、外務省当局が、あるいは総理がお答えになった問題と全く食い違っておるのでありますが、しかしここで私は、時間の関係上、一々の事例についてこの問題はどうかというように詰めていく余裕を持ちませんので、全体としてこの米国務省のスポークスマンが共同通信記者に対して述べられた声明というものは正しいとお考えになるのか、間違いであるとお考えになるのか、これをまずお伺いいたしまます。
  73. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 安保条約第六条に基づく交換公文によりまして、ただいま羽生委員が御指摘のように、米軍の配置、装備、さらにわが国の基地から行う直接戦闘行動については事前協議に付するということがございまして、その配置、装備と申しましても、これをもう少し具体的に定義しなければならないではないかということで、昭和三十五年に御指摘の藤山・マッカーサー口頭了解というものが成立いたしまして、その後十数年、今日まで別段の支障も異議もなく両国間の安全保障関係が推移してまいったわけでございます。今年になりまして、衆議院の予算委員会におきまして、その了解自身をさらに確認をしておくべきではないかという御質問がございました。それに対しまして私から、従来支障なく運営されてまいったことではございますけれども、十五年の日子もたちましたし、その間アメリカ側とすれば、いろいろ技術的なあるいは戦術的な変化ということもあり得ることでございますので、当時の表現そのものが今日でもよろしいのか、実態は変わりがないといたしましても。そういうことも考えられましたから、それでは改めましてアメリカに照会をいたすことにいたしますということを申し上げました。その照会を実はいたしておりますところでございまして、まだアメリカ側からの回答には接しておりません。そういう段階で昨日のあのような報道がございました。私ども昨日の夕刻ごろあのような報道を知りましたので、私どもとして正式にアメリカの国務省にあの報道自身について照会をいたしました。国務省としてそれに対しまして、この問題について現在国務省の責任ある者が発言をするということはあり得ないという回答に接しております。もちろん責任のある報道機関の報道でございますので、それはそれなりのニュースソースを持っておられただろうということは考えられるわけでございますけれども、私どもとしては正式に国務省から、あの報道自身は現在責任ある国務省の者がああいうことを言えるはずはないということを回答を受け取っております。他方で、私どもの照会はそのまま現在米国政府内部で検討中でありまして、いずれ回答が参るものというふうに考えております。
  74. 羽生三七

    ○羽生三七君 多くは申し上げませんが、この中で私が一番重く見ておるのは、先ほどもちょっと読み上げましたが、「どちらかの政府が正式に事前協議を求めたいと考えるようなあらゆる状況について、正確な事前の了解に達しようとは試みなかった。」と、こうあります。ですから、私はいま水かけ論争みたいなことをしたくはありませんので先へ進みますが、こういう場合にやはり日米間ではっきりした話し合いをしておらぬということに大きな問題があると思うんです。この前私は外務大臣に、核問題に関連して要請をした問題がありますが、それは、日米間で核問題について一度十分話し合いをしてはどうかという要請をして、外相もそれはぜひやってみたいと、こういうお答えでありました。ですから私、この問題ですれ違いのような議論をするのでなしに、事前協議について本格的な話し合いを両国政府が試みたことがかつてなかったように言われておる、もちろん若干のことはありました。あるが、本質的な問題についてそういう了解を明確にしたことは、私はそう数多くはなかったと思います。この問題をアメリカと話し合われることは、私は外相にとっては非常に気の重い話だと思う。確かにこれは厄介な問題で、アメリカの核抑止力に依存をし安保条約を結んでおる日本として、いま問題になっておるような点をとことんまで突き詰めて話し合いをするということは非常に心の重いことではあろうと思いますが、しかし、だれかが一度はこれをやらなければ、日本国会でこの種の論議が際限なく続くと思うんですね。ですから一度は大臣が、いずれかの大臣がおやりにならなければならない問題だと思う。したがって、この前の私の質問に対して外相がそういう機会をぜひ持ちたいとお答えになっておったんですから、ぜひきょうの新聞に出ている問題も含めて、核問題等について根本的に一度アメリカと話し合いをして、その結果、日本の思うとおりにならなかったらならなかった時点で、改めて、そうすれば日本はどうするかということを考えるべきで、際限なしにあいまいにしておくということは私はどうかと思うので、この点は重ねて外相に、そういうことを日米間で話し合いをされる御意思があるかどうか、これをもう一度確認をしておきたいと思う。
  75. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 前段の問題につきましては、いわゆるサイミントン委員会における当時のジョンソン国務次官の証言との関連でございますが、委員会でいろいろな質問がございまして、それに対してジョンソン氏が答えていくという形で、記録が残っておりますために、確かに全部の問題を周到に答えているという形にはなっておりませんようで、ことに重点は核の持ち込みについての事前協議、あるいは直接戦闘行動についての事前協議に問題が集中しておったようでございます。したがって、あれを読んでまいりますと、ただいま羽生委員の言われましたような感じが残るわけでございますけれども、しかし私どもとしては、その論じられておる限りでは、藤山・マッカーサー口頭了解に矛盾をしたような部分はないというふうに考えております。  それから、後段に言われましたことは、先般も御指摘がございまして、私も実はそう考えております。そのような意思のありますことは、すでに、東京でございますけれども、先般先方にも伝えたような次第でございまして、今回、やがてこの問題についてのアメリカ側の態度表明、回答があろうと存じますので、それとの関連でも、ただいまおっしゃいましたようなことをやはりやっていく必要があろうというふうに思っております。
  76. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは、この種の問題はこの程度にしまして、核防条約に関連する問題を少しお尋ねをしたいと思います。  この五月、ジュネーブで開催される予定の核防条約の再検討会議日本が正式メンバーとして出席するためには、日本国会における批准はいつまでに完了することが必要なのかどうか。これは、逆算すればわかると思います。
  77. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) 核防条約に基づきます再検討会議に正式の参加国として入りますためには、当然、条約上、この条約の当事国にそれまでになっておらなければならないと思います。仮に、この手続国会で御承認を得まして、正式にこの条約の当事国となるという手続を踏みます場合には、この効力は日本の場合には批准書の寄託の日に効力を生ずるということになります。再検討会議は、いまの予定では五月五日からジュネーブで開かれることになりますので、少なくともその日までに批准書の寄託をすることが正式メンバーとしての会議に参加する必要条件になろうかと思います。
  78. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、五月五日前に、四日ですか、とにかく前日までに批准すればそれでよろしいということですか。
  79. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) いま御説明申し上げたこと、ちょっと舌足らずであったかと思いますけれども日本の国内手続が完了しまして、その批准書を寄託するという行為を五日までに行う、つまり批准書を寄託した日に効力を発生するということでございますので、それまでに寄託の行為をしなきゃならぬ。この寄託は、この条約にございますように、アメリカとイギリスとソ連のそれぞれの首府で、三ヵ所でやるということになっております。
  80. 羽生三七

    ○羽生三七君 そういうようにしていくためには、五月五日前に若干の余裕を見てやらねばならぬと思うんですが、国会にはいつまでに提出をされますか。
  81. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先般、一応予備交渉を終わりました保障措置協定が非常に大部のものでございますので、これを条約の御審議にはどうしても資料として提出を申し上げなければなりませんので、その条文化を実は急いでおりまして、一応三月中には終わろうという目途で仕事を急いでおるわけでございます。そういたしますと、その面での準備はほぼ整うわけでございますけれども、実は政府・与党の中でこれにつきまして何度か議論がございまして、恐らくもう一、二回は、相当基本問題についての意思統一のための議論が行われるようなことでございますので、事の性質上、十分議論は尽くしてもらいたいと考えておりますので、その結果をもう少し見さしていただかなければならないと思っております。ただ、与党の中の、これは恐らく各党におかれてもいろいろ御討議がおありと思いますけれども、与党の中の議論も大分問題点は集約をされてきておりまして、いつまでも時間を延ばしておくために議論をしようというような雰囲気ではございません。ある段階では大筋で何かの結論に達しなければならないのではないかという、多少時間的な目標も持って議論が進んでおるようでございますので、いつまでもいつまでも提出がおくれるというようなことは避けられるのではないかと考えております。
  82. 羽生三七

    ○羽生三七君 実際問題として、これは正式メンバー、締約国として再検討会議に臨むのに間に合うのかどうか、いまの御答弁承ってまことに確たるものがないように思うんですが、再検討会議までに批准が間に合わぬ場合にはオブザーバーとしての出席となるわけですが、その場合、この批准を完了して正式締結約国となった場合と、資格の上にどういう差があるのか、お伺いします。
  83. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) 再検討会議の開かれる前に行われました準備会議で一応決まりましたことは、正式の加盟国でない国について、特に、署名はしたけれども批准していない国の扱いにつきましては、本会議及び、二つ委員会ができる予定でございますが、その二つ委員会を含めまして、これに出席し、発言し、文書を提出する権利は大体認められる見通しでございますが、ただ、会議の決定に参加する資格は与えられておらない。したがいまして、通常オブザーバーという言葉を使われますけれども、普通のオブザーバーよりは会議に参加する中身はわりに濃いものであるというふうに考えられます。ただ、最終的な決定に参加することができないということが、恐らくこの会議主張するであろう核軍縮の問題なりあるいは原子力の平和利用の問題についての日本立場がどの程度反映できるか、この点若干心配なしとしないふうに考えております。
  84. 羽生三七

    ○羽生三七君 もし政府がこの核防条約の批准を本当に実現したいと考えるならば、再検討会議に正規の資格を持って出席できるぎりぎりの日を示して、それに間に合うように諸般の要件を完了するのが私は筋ではないかと思うんです。だから、核防条約について日本が何らかの提案をしようとする場合に、正規の資格を持つ場合とオブザーバーとでは私は相当な違いがあると思います。批准さえすれば後はどうでもよいというなら別でありますが、批准を通じて核拡散防止に何らかの寄与をしようというのであれば、正規の締約国にならない場合には批准の意義が私は非常に減殺されると思う。この再検討会議条約に盛り込むことを最も熱心に主張した日本が、その権利を有効に行使しようとしないということでは、私は政府の真意を疑いたくなる。これどうです。
  85. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、実はいまの三木内閣が発足いたしまして余り間を置きませんで、ウイーンでの保障措置協定の予備交渉を再開をいたしましたわけでございますが、その前かなり長い時間が実はたっております。したがいまして、予備交渉が再開されましてからは、まず内容も時間的にも恐らく一番望み得る最大限の努力を私どもいたしたと考えておりますし、したがって、その時点からの時間のロスというものはまず今日までほとんどなしに来たわけでございますから、再検討会議にこれでは間に合いそうもないではないかという御指摘がございますと、それはもっぱら政府側の方の事情によりましたわけで、国会がどれだけ早くお取り上げを願いましても、もうこの時点まで来ておるわけでございますので、これはまあ再検討会議に間に合わなかったといたしますと、もっぱらこれは政府の方の責任であったというふうに申し上げざるを得ません。  そこで私どもとしては、実はある時点から、もし再検討会議に間に合わないというようなことが仮にありましても、できるだけオブザーバーとして内容の濃い参画を会議にいたしたいという方に、そっちの方にも実は働きかけを強めてまいりまして、仮に締約国となりませんでも、最大限のわが国の参画の効果を上げたいと、そういうことを実は今日までいたしてまいりました。したがいまして、締約国として参画できないということになりますれば、その点はまことに残念なことでございますけれども、仮にそうであっても、それに最も近いような効果を上げるような資格、上げるような条件で参加をさせてもらいたいということを実は申し出ているようなわけでありまして、ほぼそれは認められそうなことになってまいりました。しかし、それでも締約国として参加できそうもないことは遺憾なことではないかと御指摘があれば、そのとおりでありまして、それは結局、保障措置協定のための予備交渉が過去においてもう少し早く始められるべきであったということに帰着をいたそうかと存じます。
  86. 羽生三七

    ○羽生三七君 御答弁から察すると、もう正規の締約国として参加することはむずかしいと、ほぼむずかしいと、そういうふうに考えざるを得ないんですが、一部には、政府条約の批准を求めて国会に提案はするが、しかし、自民党内の一部にある論議に配慮をして、提案はするけれども審議はそんなに進まなくてもいいと、審議未了を望んでいるわけじゃないでしょうが、実際には間に合わなくても一向差し支えないという、そういう立場のようにも言われておる筋があるんですよ、節が。私もいま御答弁承っておって、なるほどと、そういう説ももっともだと思わざるを得ないんですが、実際はどうですか。
  87. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま申し上げましたことがそのように響きましたら、それは私の真意ではなかったのでありまして、むしろいま各方面、ことに自民党内で十分にこの問題を議論をしてもらっておりますのは、確かにむずかしい問題でございますから、あらゆる点からの議論を尽くしてもらいまして、そうして一つのコンセンサスを得たいと、そのためには多少の時間がかかることもやむを得ないと考えておるからでございまして、その意味は、形の上だけ提案をするという意味ではなく、提案をいたしました以上は、少なくとも政府・与党は全力を挙げてこの成立を図るという考え方から、かなり党内で議論を詰めてもらっておるわけでございますので、御提案を申し上げましたならば、政府はもとよりでございますが、与党の立場といたしましても極力成立を図るという態度でありますことは、これは間違いがないとお考えくださいまして結構でございます。
  88. 羽生三七

    ○羽生三七君 ところで、この再検討会議に臨む政府の基本方針についてお伺いしたいんでありますが、言うまでもなく、この再検討会議は核防条約第八条三項の規定によって、この条約本来の目的を達成するためにその運用を検討する会議であるわけです。もともとこの規定は、核防条約が核保有国中心のわがままな運用によって、核大国の核軍縮がなおざりにされ、非核保有国の手だけが一方的に縛られる状況になるのを恐れた非核保有国の強い主張によって条約に盛り込まれたものでありますし、また、日本がこの規定を盛り込ませるために積極的な役割りを果たしたという経緯があるわけです。この核防条約の不備を是正して、その本来の目的に一層近づけるためには、五年に一度の来たるべき再検討会議を有効に、かつ積極的に活用することが、核防条約の当面する重要な課題であると思います。またそれとともに、この再検討会議わが国がどういう方針、いかなる提案を持って臨むかということが、いまこの問題について日本が当面する重要問題であることは、改めて言うまでもないと思います。  そこで外相にお伺いしたいことは、日本が正式締約国として、提案や表決の資格を持って参加する場合、場合によるとそれはオブザーバーということになるかもしれませんが、いずれにしても、提案権がオブザーバーにあるかどうかは疑問ではありますが、仮に提案や表決の資格を持って参加する場合、来たるべき核防条約の再検討会議に、いかなる具体的提案を持って臨もうというのか、何をしようというのか、もちろんこれは外務省としてある程度の準備はされておると思います。  というのは、与党の中に主としてあった核防条約に対する疑問というもの、一、二、三とありましたが、三の平和利用の保障措置についてはある程度の満足がいったというが、一と二の問題が残っておるわけです。だからそういう問題について具体的に再検討会議に、正規の締約国たる資格を持って臨むと臨まざるとにかかわらず、日本はこの核防条約の欠点を補完するためにいかなる基本的態度をもってこれに臨もうとしておるのか。これは技術的な問題ではなしに基本的な問題であります。これをお伺いしたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように三つの問題があるわけでございますが、保障措置協定につきましてはほぼ満足のできるものを私どもつくり上げた、準備会議におきまして合意に達したと考えておるわけでございますが、将来それとの関連ではやはり平和利用の問題があろうと存じます。ことに核爆発の平和利用と申しますか、そういう問題がございますので、これはすぐの問題ではございませんけれども、本当に平和的な利用のために核の力を使う、爆発力を使うということは将来やはりあり得ることでございますから、それについてはわれわれも当然何かの形で均てんをしなければならないという問題が第一の問題についてやはりあろうと思います。  それから第二の問題でございますが、世界的な核軍縮の推進、これにつきまして従来かなりの関係国の努力が行われておるとは見ておりますものの、まだまだ御承知のような程度でございますから、やはりこの点はさらに、たとえば核実験の全面的禁止といったような点に至りますまで、いたさなければならないことはたくさんございます。そういう点が議題になろうかと思います。  それから第三に、非核保有国の安全保障ということにつきまして、一九六八年の安保理事会決議等々ございまして、これはそれなりの意味を持っておるとは存じますが、さらに安全を確保するための具体的にどのような方法があるか、核保有国からどのような保障、確言をとるかといったような問題が第三に属する問題でありまして、これにつきましても、当然その時点までに具体的な考えをまとめてまいらなければなりません。もちろんこの問題は、ただこの再検討会議だけにおける問題ではございませんで、この会議に、この条約に加盟していない国もございますし、また他方で場合によりまして国連というような権威を何かの形で関係づけるというようなことも、考え方としては考え得る一つの方法でございます。でございますから、この再検討会議だけが唯一の場ではございませんけれども、少なくとも主要な場でございます。  その三つの問題にわたりまして提案をだんだんに固めてまいりたいと考えまして、ただいま主要の関係国に駐在しております大使から意見具申を求めておりまして、かなり今日までいろいろな意見がまとまってきております。それを考えながら、具体的な提案を固めてまいりたい。主要な問題としては、先ほど言われましたその三つの問題のおのおのについて発言をいたしたいと考えておるわけでございます。
  90. 羽生三七

    ○羽生三七君 それで、国連の場やジュネーブ軍縮委員会等で核問題の、完全な核軍縮を達成するために日本としての役割りを果たさなければならない問題は、これはまた後から申し上げますが、いま申し上げたことは、この再検討会議に臨む場合に限って言っておることで、いまのお話は各国と御相談をなさっておるようですが、   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕 日本自身としても提案すると考えてよろしゅうございますか。
  91. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、共同提案にいたす方が説得力があるというのが一般であろうかと思いますけれども、事柄によりましては、わが国が提案するといったような場合もあろうと思います。もう少し関係各国とよく相談をいたしたいと思っております。
  92. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほどもちょっと触れましたが、外相が渡米の際のことですが——これは渡米が確定したときのことです。一部には、核防条約の批准に関連をして日米安保の強化というか、日本の安全保障についての確約を取りつけることも外相の日米会談の中の主要な役割り一つだと伝えられておるんですが、核防条約に関連してそういうことはアメリカと話し合われることがあるんですか。
  93. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そういう意見を申される方も実はおられまして、それはそれなりに理解のできることでございますが、またこれは、やりようによりましては非常に反対の結果をいろんな意味で招くおそれもございますので、よほど慎重にやりませんと、かえって逆な結果になる場合もありそうな気がいたしておりますので、どのような方法にいたしますか、実はまだ私最終的に腹を固めておりません。もう少し考えてみたいと思っております。
  94. 羽生三七

    ○羽生三七君 それでは私注文をつけますが、核防条約批准に関連をして、与党の中に、日米安保について一層固い防衛約束を取りつけようという動きがある、そういう動きに対する配慮だと思うんです、仮に外相がおやりになるとすれば。まだ意見が固まっておらないとおっしゃいますが、仮に、もし意見を固めるような場合があればそういうことに対する配慮だと思うんです。ところが、私はそれは全くの筋違いだと思うんですね。というのは、これは改めて申し上げるまでもありませんが、先ほど申し上げましたとおり、政府が核防条約について問題点として挙げたものは、一が核軍縮の促進、二が非核保有国の安全保障、三が平和利用の場合の保障措置、この三点であります。この場合、非核保有国の安全保障とは、核防条約に関する限り、核兵器国が非核保有国に攻撃を行わないという保障をとるということが、そもそも核防条約に関連する非核保有国の安全保障という問題のわけですね。したがって、一国の防衛に関する一般的な安全保障問題と、核防条約に関連して言われる非核保有国の安全保障という問題とは、全く別個かつ異質のものです。これを混同するのは大きな間違いであるばかりでなしに、これは混同ではなしに問題のすりかえだと思うんですね。だからそういう意味でこの問題は私はきわめて重要だと思うので、与党内と話をさらに進められるのは結構でありますが、非核保有国の安全保障に関連して、一般的な防衛論という立場から日本の安全保障をさらにアメリカから取りつける、つまり核をもって日本を攻撃しないという問題でなしに、むしろ核をもってもっと日本を守ってくれという意味にとれるような、そういう安全保障論議は筋違いではないか、問題のすりかえではないか、こう思いますので、そういうことのないように、私はこれは外相まだ意見固まっておらぬと言われますから、固まる前に注文をつけておきたいと思います。いかがですか。
  95. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) いまわが国が核拡散防止条約を批准するということは、わが国の安全保障の立場から申しますと、日米安保条約というものを前提にいたしませんと非常に説明のしがたいものである、つまり安全保障条約がございますから、その上に立ってわれわれは安んじてこの核拡散防止条約を批准できるではないか、こういう議論には私は十分首肯すべきものがあるというふうに考えております。したがいまして、将来もし何かの形で日米安保条約というものがなくなるということを想定いたしましたのでは、この条約を批准するという安全保障上の立場はきわめて危ういものになるという議論には十分首肯すべきものがあると考えておりますので、したがいまして、この条約を批准することが日米安保体制をやはり確認しなければならないということにつながるということは、私は十分首肯し得る議論だというふうに考えております。そうではございますが、そうしてその議論、そういう考え方そのものは、わが国の安全は米国の持つ核の抑止力によって保たれておるというところまで私は論理が一貫しておると思います。そこまでは首肯し得る議論であると考えておりますので、現在の日米安保条約の体制、そのもとにおける両国間の安全保障関係がそのために現状で十分であるという見方と、それから何かやはりさらに念には念を入れておくことが少なくとも両者の理解を深める上で有効ではないかという議論と、そこから二つに分かれると思いますので、その辺のところをどう考えたらいいかというのが、私がいろいろ考えておるところでございます。やりようによりましては、仰せのように逆効果になるという場合が考えられますので、その辺のことは、羽生委員の御指摘の点も十分考えさしていただきたいと思います。
  96. 羽生三七

    ○羽生三七君 いまのお答えである程度わかったような気もするが、わからない点も大分あります。一般的な安全保障問題とは別に、核防条約に関連をして日本の安全保障に対するアメリカの一層の保障を取りつけようとすることは、具体的に一体どういうことを意味するのか。たとえば日米安保条約の永続化、これは条約改正しなければ永続化なんかできませんが、それは簡単じゃないけれども、何か日米安保条約を長く維持してもらいたいとか、日本側が一年の予告期間で廃棄する場合は別でありますが、アメリカ側としてはそういうことのないようにしてくれということか、あるいは核抑止政策について一層明確な言質を与えてもらおうということなのか、つまり、核防条約に関連して日本の安全保障にさらに一層のアメリカの約束を取りつけようということは具体的に何を求めようとするのか、どうもそこがはっきりしないので、もう一回その点をお伺いいたします。
  97. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは、そういう考え方が即ただいまの政府考え方であるという意味ではなく、ある意味で代弁をして御説明を申し上げるような点もございますけれども、つまり、わが国日米安保条約というものを持っておるからこそ非核保有という立場を貫けるのではないか。現在の世界情勢からいえば、やはりそういう根本的な保障の体制の上に立ってこれが可能であるという考え方であろうと思うのでありますが、しかし、他方でこの条約は最低ただいまから二十年ということですが、安保条約考えようによりましてこれは無期限な条約であるというふうに考えてもよろしいわけでございますから、私は安保条約それ自身をこの機会に実体的にどこかを改めるとか、あるいは運用について何かをするとかいう問題ではなかろうというふうに思っております。むしろ、おそらくそういう主張をされる方々のお気持ちの中には、わが国としてはともかくこれから二十年この条約によって非核保有国になることを国際的に誓約をする、誓約をするに際しては、その基盤になっているところの安全保障体制というものをいわゆる再確認というのでございましょうか、そうしておくことが特に必要ではないか、こういう御主張であるというふうに理解をしておりますわけで、したがって、それが具体的にどういうことをすることによって逆効果なしにそのような効果を生むことができるか、その辺を考えてまいりたいというふうに申し上げておるわけであります。
  98. 羽生三七

    ○羽生三七君 やはりこの批准に関連をして、非核三原則一つの持ち込ませずというのをはずせという動きも一部にあるようです。これは日本の国民大多数のコンセンサスを得ておる非核三原則、国是とも言うべきものですから、そんなことはできるとは思いませんが、そういう動きも一部にあることは事実ですね。非核二原則にしよう。しかもそれは核防条約の批准と関連して出ておる議論です。外相としてはそういうことは絶対あり得ざることだとお考えになっているかどうか、その点を改めてお伺いいたします。
  99. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、御承知のようにこの条約自身とは、いわゆる持ち込ませずという問題は関係のないことでございます。現にNATO地域におきまして、仮に西ドイツ等々がこの条約の締約国になりましても、核兵器が持ち込まれるということはあることでございますが、ただその管理が締約国、西ドイツなら西ドイツに移らないということでございまして、持ち込むこと自身はNATOなどではおそらく現にあるか、あるいはあり得ることでございますから、この条約とそれとは直接の関連はないというふうに第一に考えておりますし、第二に、この点につきましては、この国会でも総理大臣自身が非核三原則は厳守をすると言っておられますとおり、   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕 これが政府立場であることに変わりはございません。
  100. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題の核軍縮ですね、問題提起をした場合の第一ですが、これに関連をして非核保有国の安全保障という問題にこれはかかるわけです。そこで、核防条約批准の反対論の中には、この条約には既存の核兵器国であるフランスと中国が参加していないと、それを反対の理由にされておる方もあります。確かに中国は米ソ協調路線の所産であるこの条約への拒絶反応を簡単に引っ込めるとは思いませんが、しかし、今後実効ある核軍縮を推進していくためには、どうしても全核保有国を包含する形での仕組みをつくり上げなければならぬと思います。これは改めて指摘するまでもありませんが、中国は核実験のたびに、中国は決して先に核兵器を使用することはないと言明を繰り返しております。つまり、中国が相手側から核攻撃を受けたとき以外には核兵器を使わないというノー・ファースト・ユースの一方的な約束を行っていることでもありますし、特に一九六四年の初の核実験の際の政府声明で、核保有国が相互に核兵器を使用しないことを保障すること、二つには、特に核兵器を持っていない国に対しては核兵器を使用しないことについて各国首脳が協定に達すべきだと、こう提案をしております。これは中国であります。また一方、ソ連のコスイギン首相は、一九六六年の二月一日、ジュネーブの軍縮委員会にあてたメッセージで、ソ連は自国領土に核兵器を置いていない非核兵器国に対して核兵器の使用を禁止する条項を核防条約の中に含める用意がある、こう提案をしております。この問題について、私は去る一九七二年、河野議長とともに訪ソした際に、ポドゴルヌイ最高会議幹部会議長と非常な長時間話し合いをする機会を持ちました。その際、私は議長に、一九六六年ジュネーブ軍縮委員会あてのコスイギン首相のメッセージはなお生きているかどうか、こう質問しましたが、ポドゴルヌイ議長は、それはなお今日も生きていると明確な答えがあったわけであります。そこで、核兵器保有国のこれ以上の増加を阻止して、あるいは非核保有国の安全保障を強化して、あわせて中国も——フランスももちろんですが、共通の仕組みに入れる一つの方途として、少なくとも、非核保有国に対しては核攻撃を行ってはならないという国際的合意を取りつけることを真剣に考慮すべきであると思います。このことは、いま述べた中国及びソ連の主張の経緯から見て、全核保有国の一致が得られる可能性が最も強いと思います。  また、これに関連することでありますが、去る二月二十二日、自民党の中曽根幹事長は、広島での記者会見でこう言っております。核保有国が非核保有国に対し、核で脅迫したり使用したりしないという合意を成立させることが望ましい、こう語ったと言われております。もしこのことが、自民党の一部にある核防条約の批准をおくらせるための条件づくりなら別でありますが、そうでないとするならば、私はこの中曽根発言は非常に歓迎すべきことだと思うのです。日本は、このことを来たるべき再検討会議に提案すべきではないかと思いますが、この政府の姿勢はどうかをお聞きしたいのであります。  つまり大臣、もう一度繰り返しますと……
  101. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) いや、よくわかっております。御質問意味はよくわかっておりまして、非常にお答えがむずかしい問題だと思っておるのでございます。  再検討会議においてそのようなことを提案をする、これは確かに一つ考え方であると思っております。この場合、再検討会議には中国とフランスはいないということになるわけでございますから、そのおのおのに対してどのようなアプローチをするかという問題が残ってまいると思います。あるいはまた、むしろそれだけの核保有国の顔が合わさる場としては、安保理事会にはすべての国が入っておるということになりますが、一九六八年の安保理事会のあの決議があのようなふうにして成立をしたいきさつと今日と比べますと、当時中国は蒋介石氏によって代表されていたわけでございますので、中華人民共和国政府がこの問題についてどのような立場をとるだろうかという問題は、新しく別途に検討いたさなければならないということになると思います。したがいまして、一九六八年の決議が仮に不十分なものであってもあのように成立したということ、しかもあれ以上でもあれ以下でもなかったということは、かなりその間ぎりぎりの努力がなされたということであったとは思うのでございまして、それを逆に何かの形で壊すということがあってはならないであろう、そういうことも考えておかなければなりません。その間のことは、私どもなりによほど帰趨を見定めていたしませんと、かえって意外な結果になるかもしれないという点もございますので、御指摘のことは私もよくわかっておりますから、もう少し詰めて検討させていただきたいと思います。
  102. 羽生三七

    ○羽生三七君 この核拡散の傾向を阻止して、核軍縮を促進していくもう一つの方途は、非核地帯の設定だと思います。非核地帯条約の先例としては、これは御承知のようにラテンアメリカ非核地帯条約、いわゆるトラテロルコ条約がございます。まあ日本の周辺にこの種の条約ができればこんなけっこうなことはありませんが、しかし、日本を取り巻く情勢が非常にむずかしい中で、この種の地域的非核地帯設置の条約が簡単に取り決められるとは私は思っておりません。この種の取り決めが直ちに実現できるとは思いませんが、しかし、同条約の追加第二議定書のような方法は、日本の意思次第で実現が可能ではないかと思われます。この第二議定書は、核保有国に対してこの条約の義務を守ること、つまり、この条約の締約国に核兵器を持ち込まないこと並びにこの条約の締約国に対して核の使用または威嚇を行わないことを約束させておるわけであります。この条約には、ラテンアメリカの二十ヵ国が批准をしておりますし、また、核の保有国で第二議定書を批准している国はアメリカ、イギリス、フランス、中国の四ヵ国であります。この四カ国は、核を持ち込まないことを約束しているだけではなしに、核の不使用及び脅威を行わないことも約束しておるわけであります。さきにも申しましたように、複雑なアジア情勢でありますから、こういう地域取り決めが簡単にできるとは思いませんが、しかし、非核三原則を国是とする日本が、いまの第二議定書にあったような仕組みを日本単独ででも——私は再検討会議の場で直ちにのせられるというんじゃないんです。それはいま外相の言われたように非常にむずかしい問題があると思う。だから日本単独でも、全核保有国との間にそういう問題について話し合いをやったらどうかと。したがって、これは核防条約の批准、再検討会議の場だけの問題として言うんじゃなしに、あらゆる場合を活用して、二国間でそういう核の攻撃、脅威、おどかしを核を持たない日本には行わない。そういう点を、つまり日本が問題にした第二番目の非核保有国の安全保障の問題を実現するには、いま外相のおっしゃったように、再検討会議に持ち出してせっかくのものを壊してもしようがないとおっしゃいますが、そういう配慮もあるならば、二国間で一つずつ詰めて、一度や二度の話し合いでこんなものが実現できるとは思いませんが、しかし、四ヵ国がすでにこのラテンアメリカで批准をしておるんです。だから日本としても、これらの国々を初め、ソ連に対しても、一つ一つ二国間の話し合いをやっていったらどうかと、そういう努力が実は核防条約の欠点を補完するに非常に必要なことではないかと思いますので、早急に、再検討会議の議題でこれを直ちにやれとは言いませんが、そういう努力があってこそ初めて日本が問題にしておる一、二、三の、特に一、二の問題が完全になるのではないかと思いますので、外相の見解をお伺いします。
  103. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ラテンアメリカの非核地帯条約は、ただいま羽生委員が御指摘になりましたように、第二議定書にソ連が加盟をしていないということがありまして、実態的な発効はしていないという現状であります。ソ連とはかなり遠隔の地域であると思われますが、ソ連が第二議定書に調印をしないという状態でありますので、ソ連にもっと近接しておりますわが国の場合どのように考え得るであろうかという問題がすぐに出てまいるかと思います。羽生委員もあす、あさってのことではない、再検討会議でというようなせっかちなことを言っているのではないと言われますので、それはもうおっしゃっていらっしゃることはよくわかります。やはり究極的には何かそういうことが有効なことであろうと思われますけれどもわが国とソ連の間にはほかにいろいろむずかしい問題があり、先方がわが国に呼びかけておるたとえば日ソ友好善隣条約というようなもの、これはまあ領土問題を飛び越えようという意図ではないかと私ども考えておるわけでございますけれども、そのような提案にぶつかるというようなこともまた考え得ることでございます。その辺のところは、私長い目で見まして、ただいまのような各種の相対の、あるいは多国間による外交努力が当然必要であると思っておりますが、やはりそういう努力が奏功するような環境をつくってまいるということから始めなければならないのではないかというふうに考えております。
  104. 羽生三七

    ○羽生三七君 私がくどくも核防条約に関連していろんな問題を申し上げたのは、核防条約は批准さえすればいいというものではないので、日本の安全保障、特に核に関連して安全保障をどうしたら完璧なものにできるかという角度から、いろいろな問題点を挙げて考えてみたわけです。  そこで、次にはこういう問題が一つあるわけですが、この今日の世界情勢は、インドの例に見られるように、発電用原子炉の世界的拡散につれて、プルトニウムも世界的に拡散をしていくという、これは不可避の現象になっております。こうしたことから、平和的核爆発装置の製造能力もまた世界的に拡散をすることになるというのが今日の趨勢であります。平和的核爆発装置が事実上原爆と変わりのないものである以上、それはとりもなおさず核兵器の拡散につながることは、これはもう言うまでもありません。それで、現在核防条約に未署名の国の多くは、核防条約において平和的核爆発の利益まで核保有国が独占できる体制になっているのは容認できないと、こういうことで署名を拒否しておることは御承知のとおりであります。  そこで、今後平和的目的の核爆発装置という口実による核保有国の増大を防ぐために、既存の核兵器国を含めて一切の平和的核爆発は国際的管理運営によるもの以外は行わないという仕組みを創造することが必要だと思うんです。この点について日本はどういう立場をとろうとするのか。また、それが正しいとすればどのような役割りを果たそうとするのか。これについては、ジュネーブの軍縮委員会で日本代表の西堀大使が国際管理体制の必要性を訴えたというように先日聞いておりますが、再検討会議でも私はやはりこの問題は積極的に取り上げるべきだと思いますが、政府のお考えはいかがか、お伺いしたいと思います。
  105. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) いま言われましたとおり、平和的核爆発というものの利益が、非核兵器国がそういう利益を享受できるような状況になった場合には、当然核を持たない国であるだけに平和利用については積極的に協力を受けるべきであるという考え方は、まさにこの条約五条の根幹にあったわけでございます。ただ、技術的、科学的に平和目的とそれから実際の軍事目的の核爆発に区別ができない現状におきましては、この条約の体系からは非核兵器国は平和目的といえども核爆発してはならないというふうに縛られているわけでございます。ただ、将来の科学の進展に伴いましてそういう区別ができ、かつ、平和的目的にのみこの核爆発が使える状況を予想しまして、その利益を得られるための一つの仕組みといいますか、それをこの五条に予想したわけでございます。  他方、昨年五月にインドが平和目的ということで核爆発をいたしまして以後、核拡散の危険が心理的に非常に世界にびまんいたしましたので、それを受けまして、昨年の秋の国連総会におきまして、この核拡散の傾向を阻止するためにあらゆるフォーラムで国際的な努力を結集すべきであるという趣旨の決議が採択されたことは、御承知のとおりだと思います。そのあらゆる適当なフォーラムと申しますのは、軍縮委員会の場であり、あるいは国際原子力機関の場であるわけでございます。で、先ほど委員が仰せられましたように、軍縮会議の場で西堀代表が発言いたしましたのは、まさにこの平和目的の核爆発が利用できるまでの間はこれを国際的な管理体制のもとに置くべきだと、つまりこれを容易に、軽々に許すことによって核拡散の危険がインドの後さらに引き続いて起こるという危険を十分に認識した上の発言であったわけでございます。それで、現実にはいま行われておりますジュネーブの軍縮委員会の場で、特に平和核爆発についての軍事的インプリケーションはどうであるかという議論がいま進められております。他方、ウィーンの国際原子力機関の場におきましては、平和目的のための核爆発の利用のためにどういう仕組みをどういうかっこうでつくり上げるべきかという議論が、これまた並行して行われておるわけでございます。で、問題が複雑であり、また困難であるだけに、そう簡単に結論は出るとは思いませんけれども、確かにこの五条に予想されております利益を均てんさせるための努力というのは、先ほど申し上げましたようなフォーラムにおいて共同して行われつつあるということが現在の状況でございます。
  106. 羽生三七

    ○羽生三七君 これを再検討会議では問題にしませんか。
  107. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) 再検討会議は一応仮議題というのができておりますが、この五条の平和的な核爆発については、特に平和核爆発というかっこうの議題はのっておりません。ただ、これは仮議題でございますので、会議が始まりまして正式議題を採択するときに、あるいはその他の問題というのは必ず議題の上に最後にのりますので、あるいはそれに関連して討議するということは十分可能であると思います。ただ、いまの仮議題には平和核爆発という形ではまだのっておりません。
  108. 羽生三七

    ○羽生三七君 時間の関係もありますので、もう一、二の点で終わりたいと思いますが、その議題になくとも、日本が積極的に提案するということはできないんですか、議題に予定されておらなくても。
  109. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) はなはだ失礼いたしました。平和核爆発、第五条というところに載っておりますので、訂正さしていただきます。したがいまして、この議題に即しまして提案する権利は日本にもございます。
  110. 羽生三七

    ○羽生三七君 やる意思はあるかというのです。ジュネーブ軍縮委員会ではやっておるが、再検討会議でも同じ提案をする意思はあるかどうか。
  111. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) これは軍縮委員会あるいは国際原子力機関の場とは違いますけれども、この条約の中の一つの大きな規定でございますので、これに関連して同様な精神で提案するということはわれわれとしても十分検討してまいりたいと思います。
  112. 羽生三七

    ○羽生三七君 先ほど申し上げましたように、核防条約は批准さえすればよいというものではありませんし、また、この条約は核拡散を防止するための一つの手だてというにすぎません。それに必ずしも完全なものとは言えないと思います。だから核拡散防止の目的は、単に水平的拡散防止のみならず、垂直的な核拡散防止についても今後有効な対策を進めなければならぬことはこれは言うまでもありませんが、日本としてとるべき主要な道は何かということを考えてみたいと思うんです。世界最初の被爆国であるし、平和憲法を持ち、非核三原則を持っておる日本として、国際平和に寄与する道は一体何かということを考えた場合に、ただ条約を批准して、実際には核軍縮や非核保有国の安全保障がなおざりにされて、批准はするが実際には問題になっておる一や二の問題点の完全解決のために積極的な努力がなされないというようなことでは私はいけないと思うんです。つまり、条約を批准さえすればそれで役目は済んだということであってはならないと思う。したがって、日本の特殊性を生かす機会をこの条約批准ということで埋没さしてはならぬと思うんです。むしろ条約批准をするんなら、その条約の足りない点を補完するための努力を、単に再検討会議の場だけでなしに、国連あるいはジュネーブ軍縮委員会等、あるいは二国間の話し合い、あらゆる場面を通じて積極的に核拡散防止の努力を続けねばならぬと思うんです。ですから私、くどいようですが、批准さえすれば事足りるということでなしに、そういう努力が積極的に行われるかどうかという、この政府の姿勢というものを私は重く見ておるわけで、その点についての外相のお考えを承っておきたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに、わが国は政策として非核三原則を持っておるわけでございますから、この条約を批准することによってそこに新たに加わるものがあるのではなくて、むしろわが国条約を批准して国際的にこれを約束することによって、核軍縮、非核保有国の安全保障等々を世界に訴える説得力、自分がこの条約に加盟する立場から初めて生まれる説得力というもの、それを活用すべきであるというのが条約を批准することによる私は大きな意味合いであろうと思います。したがって、批准することそのことも大切でございますけれども、実はそれから後のわが国世界各国への働きかけ、努力というものがより大きな意味合いを持つ、そういうものであるべきであるという御指摘は私はそのとおり正しいと思います。
  114. 羽生三七

    ○羽生三七君 最後に。  これは本論から少しそれる、枝葉の問題かもしれませんが、先ごろ、今月の十一日ですか、日本原子力産業会議の年次大会でアメリカ代表が核ジャック防止の日米会議を呼びかけたと、こういうことが伝えられております。これはいま申し上げた——この前も申し上げましたが、プルトニウムが原子力発電の操作の過程で生成されるという、そういうことから、このプルトニウムの盗難といいますか、これを核ジャックと言えるかどうかわかりませんが、そういうことの危険防止をやる日米会議を開くように呼びかけて、日本政府もこの呼びかけに応じる方針を固めて、四月中に米国で第一回日米会議を開く方針だというように伝えられております。これは科学技術庁なりの関係かと思いますが、外務省には直接関係あるかどうかわかりませんけれども、これは私一つの、やはり技葉末節の問題とも必ずしも思えないので、外務省としてはこういう問題をどうお考えになっておるか、どこか関係の方がおいでになっておればそちらから伺いたいと思います。
  115. 鈴木文彦

    政府委員鈴木文彦君) いわゆる核ジャックと称せられます、核物質が盗用されまして、それが人体あるいは地域住民の健康に非常な害を与えるという意味の懸念は、最近原子力発電所の使用済み燃料がふえるに従いまして、その危険の増大ということことを一般的に、特にアメリカを中心にいたしまして認識されたわけでございます。わが国も相当の規模の施設を持っておりますので、やはりこの呼びかけに応じまして、わが国としてもわが国の国情に合った安全の方策をどうすべきかということを、実は前から科学技術庁を中心に研究はいたしておりましたけれども、国際的な協力によってさらにいい知恵を出し合うという考え方には積極的にわれわれも応ずるという考え方で、いま検討をいたしております。科学技術庁に新しく原子力安全局というのができますが、この安全局の任務の一つの大きな柱は、やはりこの核ジャックという最近の危険に対応する一つの体制を整えるということにあると聞いております。したがいまして、この点につきましては科技庁、それから外務省関係省協力しまして、これについて積極的に協力していきたいというふうに考えております。
  116. 羽生三七

    ○羽生三七君 終わります。
  117. 秦野章

    ○秦野章君 いま羽生さんから核ジャックという話が出ましたけれども、これは外務省の所管じゃないと思うんだけれども、日米の関係アメリカ側からそういう発言があったということは、非常に私は日本の国内のプルトニウムに対する安全保障というものが、私の聞いている範囲ではやはりかなり危険じゃないか。プルトニウムジャックの危険というものを、やっぱり相当これは警戒を要するというふうに思うんですよ。これひとつ、アメリカとの関係もさることながら、日本の国内の、これはアメリカから来たもんですけれども、ぜひ外務省の方からひとつプッシュしていただいてお願いしたいと思うんですよ。安全保障というのは、アメリカは非常にわれわれ聞いている範囲では日本よりはるかに安全保障は充実しているんですよ。日本はこの間局をつくったけれども、たとえば幹部を一人減らしているんですから、そういう体制なんで、局をつくったから安全保障体制ができたみたいな話なんですけれども、大体おかしいんですよ。アメリカのまねまではできないかもしれぬけれども、核なんというものは本当に安全保障さえ確実ならそう心配はないんですから、私はその点はいまのお話はたいへん同感なんで、ぜひひとつ外務省の方からプッシュしていただきたい、このことを冒頭にぜひお願いしたいと思います。  それから外務大臣の御所見を伺う前に、ちょっと政府委員の方で結構ですけれども、これは出先の外交官の機能というか任務というか、エコノミックアニマルなどというひんしゅくを買うような事態が海外であったときに、そしてまた、そのような事実があってそのような批判を受けるといったようなことを当該国政府なり当該国の情勢なりをごらんになっておって外交官が知ったときに、企業その他に対して適当なチェック、助言、そういうようなことをなさることは外交の機能というか責任というか、領域に属することでございますので、このことを最初に。
  118. 本野盛幸

    説明員(本野盛幸君) 在外におります大使の職務の中には、当然わが国全般の国益を図るという任務がございますので、これが、現地の企業によるいろんな行き過ぎとか問題がありましたときには、その在留する企業の代表に対して当然注意を喚起する、いろいろな形でございますけれども、そういうことはいたしております。
  119. 秦野章

    ○秦野章君 そういう事態があった場合に、たとえば情報をすぐ本省にも送ると、それで適当な通産に連絡することがあれば通産に連絡するというようなことでうまくいくというか、誘導するといいますか、それは当然のことですね。
  120. 本野盛幸

    説明員(本野盛幸君) 当然のことでございます。
  121. 秦野章

    ○秦野章君 それで、そういうことと関連するんですけれども、今度外務省が二百何名か増員をなされましたが、あの増員の中で、増員の仕方といいますか、これどういうふうにされるんですか、五十年度。
  122. 本野盛幸

    説明員(本野盛幸君) 増員二百十名という大きな枠の数字をいただきまして、その中で実は調整定員が五十名、一括削減が三十六名、他省からの出向十八名、他省からの振りかえ十八名、いわゆる外務省出身者だけの純増ということになりますと八十八名になるわけでございますけれども、それに対しましては、一般に新規採用がいま予定しておりますのは上級二十五名、中級四十六名、初級約八十名で、約百五十一名ぐらいそれで補てんするわけでございます。そのほかには、やはり民間のほうにも声をかけまして、これは外務省になるべく英知を集めるという意味で、広く呼びかけまして、報道関係の方にもそういうような人材がいれば来ていただきたいという方向でいま検討しておるところでございます。
  123. 秦野章

    ○秦野章君 いま全世界に展開している大使の数というのは何名ですか。
  124. 本野盛幸

    説明員(本野盛幸君) 現在定員では百一名でございます。それから実員で九十九名になっております。
  125. 秦野章

    ○秦野章君 この九十九名の大使は全部外務省の役人ですか。官僚ですか。
  126. 本野盛幸

    説明員(本野盛幸君) 現在はそういうことでございます。
  127. 秦野章

    ○秦野章君 そこで宮澤さんに御所見を承りたいのは、私は、この百名近くの外交の布陣が世界に展開されている。大学を出て外交官になってずっと外交官だという人たちを大事にするということは当然のこと、それは結構なことです、大事にするということは。しかし、仕事によるわけですけれども、外交のような仕事の中で、今日また非常に国際的に大変な事態を迎えて、今度の三木さんの国会の冒頭演説でも外交がトップで、資源外交その他非常に強調されていますね。さっきエコノミックアニマルのことをちょっと申し上げましたけれども、そういうものを克服して日本が本当の意味国際協調なり国際協力を実現していくということのためには、外交官一色、キャリアー色というより、少し民間の人材を登用なさるというようなことをお考えになったらいかがなものだろう。日本の歴史の中にもそういう時期もあったし、それが必ずしも成功した例ばかりでもないと思うんですけれども、外国の例を見ても、経済界にしても文化界にしても、あるいはジャーナリストにしても、やっぱり民間の達識の人材を登用されることによって、結局ねらいをどこに定めるか、この国はこういう問題が一番重大だと、それにふさわしい人材、これは外務省の、つまり霞ケ関の枠の中で適材適所ということは当然お考えになっておられることはわかるんですけれども外務省の枠の中の適材適所をちょっと広げて、たとえ何名でも今度民間からお採りになるということだけれども、下の方だけを民間から採るといっても、そういう上の方に窓があいてないといい人材も来ないんじゃないかという気がしないでもない。同時に、外交のベテランをまた経済界その他民間でもっともっと、活用と言ってはおかしいけれども、登用されるという余地もあるんじゃないか。言うならば、そういう官僚の世界と民間の世界との交流というものを促進するということが、やがてそれは外交の体質というものをやっぱりよくするんじゃないか。いま悪いというんじゃないけれども、もっともっと柔軟で強くて新鮮で活力のある外交の布陣というものを展開するというところにあるいは役立つんじゃないかというような感じもするわけでございます。  これは非常に困難な条件といいますか、実際問題としてはなかなかむずかしいということがあると思うんですけれども、私は今度の三木さんの演説見ても、それから特に宮澤さんが外務大臣になられて、いわば宮澤外交の一つの展開としてそういうようなことを実現される可能性、おやりになれば非常に成功の可能性が強いという感じも受けるんでございます。先進工業国になって、後進国時代とは違うんですから、そういう広がりを持つような人材登用に発想を宮澤さんがおやりになろうとすればできるんじゃなかろうか。いろいろな方面にお顔も広いし、人材を天下に広く求めて空気が一新するという感じもするんですが、そのことだけをきょうは外務大臣にひとつ御所見を伺いたい、こう思っているわけです。
  128. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点は、戦後も何回かそういう御指摘のように例もございました。非常にいわゆるメジャーアポイントメントというものを、民間の人材に御出馬を願った例も何度かございました。私自身としまして、やはりそういう人材がおられれば、そういう方々にもひとつお働きを願って、狭い意味で霞ケ関だけで、外交を自分たちだけでやるというようなことに伴いますいろいろな、無論メリットも多うございますけれども、デメリットもおのずからございます。また、これは一番外交に携わっておる当事者諸君が自分で痛切に感じておるところで、反省もしておるところでございますから、人材がおられましたらひとつ御出馬を願いたいというふうに考えておりますし、ことに先ほど参事官から申し上げましたように、この際、大使に限らずでございますけれども外務省外からいろいろ助けていただきませんと、これだけの増員をせっかくいたしたいと思いましても、人材を十分集められないような実情にも現実にございますから、こういうときに、やはり人材がおられれば大使にもなっていただいて助けていただきたい、お働きをいただきたいというのが私の本意でございます。
  129. 秦野章

    ○秦野章君 人材がおればというお話ですけれども、おらぬことはないと思うんですよ。だからおやりになるかどうか、積極的な姿勢を貫くかどうかという問題だと思うんで、私は役人をやってきましたけれども、やっぱり仕事によってはそんなにできにくいところもありますけれども、たとえば経済のさっき申し上げたような問題で、自信を持ってこれはいいとか悪いとかいう、法律権限で言うわけじゃないわけですよ、実際言って。あの人が言うんだからしようがないとか、そういう経済についても見識のある人を据えて、人が能力というものを、納得される能力に応じて、人がやっぱりやるんだということになると、これは非常に大事だという感じがしますので、これは御答弁要りませんけれども、ぜひいまおっしゃったような方向でお願いしたいと思います。終わります。
  130. 星野力

    星野力君 インドシナ情勢をめぐる問題についてば、羽生先生からも御質問があったかと思いますが、私も重ねてお聞きいたしたいと思います。  サイゴン政権が今月の中旬以来、特にこの中部高原や南ベトナムの北部の諸省を次々と放棄して戦線を縮小しておる。こうしたベトナムの最近の情勢をどういうふうにお考えになるか、重ねてのことかもしれませんが、大臣からお聞きしたいと思います。
  131. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほども一部申し上げたことでございますけれども、今度南ベトナム政府が、いわゆる戦線縮小とおぼしきことをやりましたことの真意が、十分に私どもにまだわかっておりませんが、恐らくは北からの大きな攻勢を予想し、しかも米国の国会における決議、議会における決議等も勘案しながら、有効に人口密集地を厚く守ろうと、北からの攻勢を予想してそういう対応をサイゴン政府がしたのではないかというふうに一応想像いたしておるわけでございます。そうであるといたしますと、北越側からの攻勢というものが続くというふうに南は判断しておるわけでありましょうし、その判断が正しいといたしますと、パリ協定で予測いたしました事態は、かなり新しいものになってしまうというふうに考えざるを得ないのではないか。私どもいままでパリ協定の遵守と実行によって何かの話し合いが南の内部でも行われ、やがては北ともというふうに考えておったその想定が、ちょっとこうなりますととりにくいことになってくるのではないか、非常にはっきりはいたしておりませんけれども、そういう事態ではなかろうかと、いま考えつつございます。
  132. 星野力

    星野力君 南ベトナムの情勢が今後どう発展するかは、これはにわかに予断できないと思うんでありますが、私たち見ますところ、これまでのところ解放軍の攻撃というものはそれほど大規模のものとは考えられないわけです。大臣はいま、もっぱらこれ北ベトナム側からの攻勢と、こういうふうに申されましたけれども、これは私は大臣として不注意な御発言じゃないかと思うのであります。
  133. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 委員長
  134. 星野力

    星野力君 あとでよろしゅうございます。
  135. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) いや、確かに、先ほど実は北と申し上げて、言葉を訂正しておったわけでございましたので、その意味で申しましたので、厳格に申しましたら私の表現は適当でありませんで、サイゴン側から見まして相手方と申しますか、このように御了解をお願いいたします。
  136. 星野力

    星野力君 私は、今度の解放軍の攻撃というのは、たとえば一九六八年のテト攻勢、ああいうものに比べてみますと、それほど大規模な激しいものだとは考えられないのですが、ただいろいろな情報、報道などによりますと、住民の蜂起とかゲリラの活動というものが相当活発なようにも考えられる。一つはサイゴンの軍隊の中に内部崩壊といいますか、自壊的な現象が起きてきておるのではないか。たとえば今月十一日ですか、中部高原のバンメトート、あそこの敗北などがきっかけとなって、なだれ現象を起こして、崩壊的な姿が出てきておる。これが今後どういうふうに発展していくのかはわかりませんけれども、そういうふうにも私見られるんではないかと思います。いま大臣は、新しいこういう情勢によって、ハリ協定の遵守実行がむずかしくなったということで、何かこれまで日本政府考えておられた基本的な立場に変化が生じつつあるかのような御発言でございましたが、その点、もう少し具体的に述べていただけませんですか。
  137. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) つまり、パリ協定が成立いたしました時点において、アメリカ側にいたしましても、あるいは今度はハノイと申し上げてよろしいと思いますが、その他の国にいたしましても、今後戦闘の再開を刺激するような、外側からのネットプラスになりますような軍事的な応援援助は差し控えるということを基本にいたしまして、そしていわゆるPRGも一人の当事者として、南越において平和裏に選挙等々の方法を通じて和解ができていく、こういうことが基本的なパリ協定考え方であったと思うのであります。そして、それがそういうふうに進展いたしますために、外部からの軍事的な支援というものがいっときとまったやに見えたわけでありますが、実態的には南越でその後昨年も相当たくさんの死者が出るような戦闘状態の継続がありまして、そうしてここに至りまして、私の見解では六八年あるいは七二年程度の規模の戦闘の激化が生まれそうである、どちらが先にということはいまあえて申し上げる必要のないことかもしれませんが、客観的に見てそういう状態が現出しそうである。でございますから、いわゆる平和的な話し合いによって、全体的な選挙などをも通じて和平が確立していく、その間でそれを監視するための委員会が十分に機能を果たす、監視委員会が機能を果たすというようなあそこに盛られました基本的な期待、プログラムというものがどうもこれで壊れるのではないか、少なくともしばらくの間はそういう方向に事は進みそうもないというふうに考えざるを得ないのではないか。これを申し上げるのは、あるいは少し早過ぎるのかもしれませんが、いまあえてどういうふうに見るのかと仰せられますので、そういうふうになる危険が大きいのではないかというふうに考えると申し上げたわけでございます。
  138. 星野力

    星野力君 大臣外務省のお考えでは、今度のようなこういう軍事情勢がなかったならば、当時者同士の話し合いが進んで、パリ協定の線に沿うところの解決が実現されるのではないか、こういうにお考えになっておったようにも受け取れるんですが、私はそういう御認識はどうかと思うんです。パリ協定の最も重要な内容であるところのサイゴン政権、それから南ベトナム共和臨事革命政府、それから第三勢力、こういう三者によるところの民族和解一致全国評議会ですか、これを充実して南ベトナムの平和を回復すると、パリ協定はここが肝心なところだったと思います。ところが、これまでのサイゴンないしアメリカの態度からは全くそれが不可能である。こう思うんです。私はパリ協定は、アメリカの軍隊が南ベトナムからいなくなったという一点を除いたら何一つ実行されてきてはおらなかった、こう言ってもいいんではないかと思うのでありますが、むしろ最近のベトナム情勢のもとで初めて話し合いの条件と言いますか、民族和解一致全国評議会の方向に向かって話し合いをする条件ができてきたんではないかと、こう思っておるわけです。  私、ここに幾つかの新聞の記事を持っておりますが、これは二十三日の朝日新聞の一面トップの記事がありますが、「外務省首脳は「今回の事態がパリ和平協定のワク組みの中のものか、それとも和平協定を死文化させるものか即断できない」と述べ、当惑しながら」云々と、こう書いてあります。私はこれを一概に死文化などというふうに断定——まあ大臣はなさらない、はっきり死文化というふうな意味ではなさっておらぬかもしれませんが、そう考えたら間違い、むしろここに迷っておられる方の前段の考え方の方が正しいんじゃないか。私をして言わしめれば、最近のベトナムの情勢によってパリ協定は死文化するのではなしに、むしろ息を吹き返してきた、息を吹き返しつつあるということではないかと思います。パリ協定を尊重するという日本政府として十分その点は考えていただきたいということが申し上げたい一点でございます。  ところで、三木総理は一月の参議院の本会議、私の質問に答えられて、一九七三年のアメリカ議会の決議があるから、アメリカが再びベトナムに軍事介入するようなことはあり得ないことだ、こういうふうに述べられたんですが、外務省としては現在もそういう認識に立っておられますか。
  139. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは地上軍をアメリカが再び投入するというようなことは、アメリカ議会の御承知のような動きから見まして、ちょっと考えられないことではないだろうか、私はそういうふうに考えておりますが……。
  140. 星野力

    星野力君 アメリカが地上部隊を再投入するというようなことはなかなかやらないかもしれないが、海空軍だけを投入しようと、こういう声がアメリカ政府部内にもあると言われております。最近の南ベトナムの情勢から、パリ協定が死文化したというような口実のもとで、海軍、空軍を再投入するということがもしあるとしますと、これは日本の国土が直接間接にそうした作戦の基地にされるということになります。日本の平和と安全にとってもこれは重大な問題でありますが、そういうことはあり得ないと、こういうふうにお考えになりますか。海空軍だけにしろこれを再投入する、陸上には上げないけれども、海と空から入ってくると、こういうことは考えられないか。私、三木総理に対しては、そういう危険があるからアメリカにそういうことをやってはいけないということを申し入れてくださいとお願いしたんですが、そういうことは考えられないから申し入れる必要がない、こういう御返事でしたが、外務大臣いかがですか。
  141. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この点につきましては、私は先ほど申し上げたように考えるものでございますけれども、事態の推移等々でアメリカがどのような新たな対処をするかということは、当然のことでありますけれども、私がかくかくと有権的に申すことはもちろん、予測することもそう簡単なことではございません。しかしその場合、それとわが国とのかかわり合いの問題でございますが、これは数年前にも何度か問題になったことでありますが、わが国の基地からの直接の戦闘行動というようなものは、これは当然のことながら事前協議の対象になるわけでありますし、また、わが国自身がその際わが国の平和と安全というものを主にそれに対処すればよろしいわけでございますので、そういう危険は、これはわが国独自の立場から対処をすることができるというふうに考えておるわけでございます。ですが、基本的な認識といたしまして、もう一度大規模な戦争にアメリカが巻き込まれるというようなことは、まあ議会が軍事行動を一般的に決議をもって否定的に決定をしたということから考えまして、そう簡単に起こり得る事態ではないのではないかと思いますけれども、しかし、これは他国のことで、何とも私が断定的に申し上げることができません。その際わが国としては、わが国の平和と安全ということを基本に、万一そのような事態が起こりましたらそれに対処をするということでございます。
  142. 星野力

    星野力君 三木総理は一月の末に、アメリカがベトナムに再び軍事介入するようなことは考えられもしないことであるということで、私の質問を一蹴されたわけでありますが、外務大臣は、二ヵ月まだたちませんけれども情勢の変化によってその点は、まあそう大規模な介入はあり得ないと思うけれども、あるともないともそれは断言できないと、こういうようなニュアンスの御発言に変わったと、こう思うんであります。私は、この外務大臣考え方のほうが正しいと思うんですよね。現にウエストモーランドのようなああいう指導的な立場にある人が、一九七二年にやったような作戦、ハイフォンの封鎖、B52による爆撃を再開しろと、こういう進言をしておる事態でありますから、再介入ということは、これは考えられないことではない、あり得ることなんです。だから私たち心配している。大臣は、これも重大な発言と思いますけれど、かりにそうなっても日本からの直接的な作戦行動は行われないんだと、日本の平和と安全には特段の心配はないんだと、こういう意味の御発言でございます。これじゃいけないと思うんですね。あのベトナム戦争が激しかった時代の、沖繩返還後もそういう事態があったわけであります。その当時のことを考えましても、これは日本の平和と安全に重大な関係があるわけです。それは直接の作戦行動、これは何度も論議されたことでありますけれども、そういう形式はとらなくても、日本の国土を基地にして作戦が行われたことは、これはだれの目にも明らかなことであります。そしていろいろな影響が起きてきた。そういうことにならぬようにということをわれわれ願っておるわけであります。だから私が一月に要請しましたように、アメリカがそういうことをやらないように日本政府日本外務省、外務大臣としてできるだけ努力していただきたい。外務大臣はおそらく四月には訪米されるんじゃないかと伝えられておりますし、いずれ三木総理もワシントンへ行かれるだろうと思いますが、そういう機会もありますし、ベトナムに再びアメリカが軍事行動を起こすというようなこと、まあ現在も間接的にはいろいろやっておりますが、直接介入するような、ああいうような事態が起きてはならないという立場に立ってひとつ話し合いはやってもらわなきゃいけない。こういうことを申し上げます。  新聞報道によりますと、外務省は四月一日からハノイに大使館を設置することでベトナム民主共和国政府と了解に達したと、これは今月六日でございましたか、了解されたということになっておりますが、そのとおりでございますか。
  143. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) そのとおりでございます。
  144. 星野力

    星野力君 いわゆる国交が両国の間に樹立された一昨年九月、それ以来大使館の相互設置ということは懸案であったと思いますが、この問題についてはベトナム民主共和国に対する戦争賠償、日本政府の側の表現では無償経済協力でございますか、それらの問題で両国政府間に正式に合意が成立した上で大使館の相互設置の運びになるものと一般に理解されてきたのでありますが、いわゆる賠償問題などで正式に合意が成立したんでありますか。
  145. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) ただいまの無償経済協力というのは、何も日本だけがそういう名前で言っているのではなくて、日、北越両方ともこの問題を無償経済協力として協議していくということで、過去一年数ヵ月にわたって話し合いをしてきたわけであります。その結果、合意に達しました内容は、全体の無償経済協力の規模については、まだ今後継続して話し合いを進めていくということが合意の内容でございまして、当面五十億円の規模の無償経済協力の内容を詰めて、これを日本からベトナム民主共和国に対する最初の無償経済協力として実施していくということが今回の合意の内容でございます。
  146. 星野力

    星野力君 まあこれは私、戦争賠償というような言葉を使いましたが、日本語で書けばこれは無償経済協力と、そうだろうと思います。この当面五十億円の協力の問題、これの合意が成立するといいますか、正式に取り決めができた上で大使館設置と、こういうことでございますか。
  147. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 本来そういう無償経済協力についての話と、大使館の相互設置とは関連のない問題でございまして、今回たまたま全体の話の一環として大使館の、特に日本大使館のハノイ設置が先方の同意を得たわけでございますが、無償経済協力の問題は、今後、いまもう現に東京に先方の代表団も来ておりますけれども、その代表団との間に話を詰めていくということでございまして、このことと大使館の設置は全く直接の関係ございません。したがいまして、その話がまとまらなくとも大使館を大体四月の初めをめどとして先方に設置するということは、いまの問題と関係なくできるわけでございます。
  148. 星野力

    星野力君 そうすると、日本大使館のハノイでの設置は予定どおり四月一日になりますか、四月初めになりますか、実現すると、こう理解してよろしいわけでございますね。
  149. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) そのとおりでございます。
  150. 星野力

    星野力君 大使館の相互設置とか経済協力の問題など、国交正常化をさらに促進する、推し進めるための折衝というものが、ラオスのビエンチャンで両国の出先機関によって行われておったということは、これまで外務省も明らかにされてきたことでありますし、私たちも承知しておるんでありますが、今度初めてベトナム民主共和国の政府代表——政府代表としては私初めてだろうと思いますが、日本を訪問しておるわけでありますが、それはこれまでの出先機関の折衝の上に立って政府間の正式の取り決めを完了すると、こういう性質の代表団であり、折衝でありますか。
  151. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど申しましたその五十億円の使途につきましての話し合いその他経済協力についての一般的な話し合い、そういうことでございます。
  152. 星野力

    星野力君 五十億円、まあ日本語で書けば無償経済協力でありますが、ベトナム側は、これは少なくとも国内では賠償というような言葉を使って表現しておるようでありますが、そういう性質のものであるとすると、この用途とかなんとかは日本側から条件がつく性質のものになるんですか、どうですか。
  153. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これはあくまでも無償経済協力として処理するわけでございますので、金額は別といたしまして、その内容については先方の要請に応じて当方がいろいろ検討し、これに対して日本側日本側考え方を述べた上で合意ができるという筋合いのものでございまして、この点については先方も了解しております。
  154. 星野力

    星野力君 そういうことは、別に条件とかなんとかというむずかしい問題じゃなしに了解のできる問題であると、こう理解していいんですか、いまの答弁は。
  155. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 一番大きい要件は、その無償経済協力の内容のものが軍事目的に使われないということが一番大きい要件でございまして、そういう点については先方もよく了解いたしております。
  156. 星野力

    星野力君 それならば、五十億円の使途とかということを言われましたけれども、これには問題ないわけだ。  ところで問題は、この取り決めはいつごろまでにできるんですか、そういう問題がないとしますと。
  157. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これは先方の要請する品目の提示を待って、その品目について、いま申しましたような観点からいろいろ検討し、その上で最終的な合意に達するわけでございまして、いま、いつ妥結するかということは、現在の段階では見通しを述べることはできません。
  158. 星野力

    星野力君 そうすると、この五十億円の、とりあえず無償経済協力の一部分としての五十億円については大筋については問題ない。その品目ということは日本から売る品目ですか。供与する品目ということだろうと思いますが、そうですか。それはあとでお答えくださればいいですが、その品目にわたって話を取り決めなければならぬので、それ相当の時日がかかると、こういう意味でございますか。
  159. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 日本政府が通常外国と一般的に行っております無償経済協力の方式と全く同じ手続に従ってやるわけでございまして、いまの例で申しますと、五十億円を使って日本のいろいろな品物を購入するということになろうかと思います。
  160. 星野力

    星野力君 いつごろまでかかるんですか、この折衝は。
  161. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 先ほど申しましたとおり、いま現に交渉中でございますので、これがいつまとまるということを申し上げることはちょっと過早かと思いますので差し控えさしていただきたいと思います。
  162. 星野力

    星野力君 お話聞いておりますと、大筋については問題がないように聞こえるのですね。あとは品目などについての事務的なといいますか、そういう話し合いに時間をかければよろしいように思いますが、そうすればそうむずかしい問題じゃない、これは話がつくんじゃないかと思いますが、そう理解していいんですか。
  163. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) これはあくまでも技術的な問題でございますので、政治的にむずかしいとかいうような性質のものではございません。
  164. 星野力

    星野力君 いろいろな新聞報道がありますね。ゆうべ外務省インドシナ政策について緊急会議を開いたとか——これはきょうの毎日新聞でございます。その他いろいろありますが、どうも私、日本政府がこの期に及んで何かぐずぐずしておると、そういう印象を受けるのでございます。私、二月にビエンチャンにも参りまして日本大使館の皆さんのお世話にもなりましたし、またハノイにも行って先方の話もいろいろ聞きましたが、両方とも日本とベトナム民主共和国の国交の正常化の促進については非常に明るい展望を——詳しい話ということじゃない、顔色その他でございます。言葉の端々が。そういうことでございましたが、何かここへ来てぐずぐずしておる。何か日本政府がこの期に及んで態度をあいまいにしておるのではないかという不可解を感ずるわけでありますが、日本政府、何かを待っているんではないか。端的に言えば、最近のベトナム情勢に対するアメリカの態度、アメリカの見解なり方針なりがどうなるかを懸念して態度を決めかねておるのではないか。そうならば、これは余りにも自主性のない態度だと思うのでありますが、いかがですか。大臣、そういうことありませんか。
  165. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これはもう先ほどから政府委員が申し上げておりますように、ビエンチャンで合意をいたしまして、そして先方が専門家を出してきたわけでございますから、われわれとしてはそういう合意のもとに行っていることでありまして、確かにベトナムの事態がその後かなり急変してきたということはこれはございますけれども、両方で合意をしたことでございますので、それ以外にわれわれは別に別途の考慮を払うことはない。そういうつもりはございません。
  166. 星野力

    星野力君 たびたび新聞報道を引き合いに出して申しわけないんですが、一つの新聞だけじゃないんですね。外務省は大使館の設置そのものも考え直さなければならぬかのごとき報道が行われておるんですよね。だから私、冒頭に大使館の問題をお聞きしたわけですけれども、何かそういう新聞報道が出るだけでも日本政府外務省というものが国際的な不信を買うようなことになりはしないかと思うんです。インドシナの問題、ことにベトナムとの今後の国交の問題というのは非常に重大な問題です。つまらないところでそういう国際的な不信を買うようなことになってはいけないと思うので念を押してお聞きするのでありますけれども、大使館は近いうちに相互に設置する、また無償経済協力の問題も、これもそう遠くない近いうちに、言うなれば一週間か十日のうちには解決すると、こう理解してよろしいかどうか。
  167. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 大使館の設置につきましては、わが方のハノイ設置については大体四月の初めということで合意ができておりますが、先方の東京に大使館を設置する問題については、まだ具体的な申し入れはございません。  それから、いまの無償経済協力の問題につきましては、これはあくまでも技術的な問題として関係各省いろいろ関係するところがございますので、そういうところといま協議しながら先方と話を詰めておりますので、これはそう遠からずまとまるものというふうに思っております。
  168. 星野力

    星野力君 端的にお聞きしますが、いまベトナムから政府の代表団来ておりますね。これはその取り決めを完了して帰るんですか。
  169. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 目的は日本と北ベトナムとの間に無償経済協力五十億円の問題について話をして、その結論をなるべくここにいる間につけるということが目的でございますので、そういうふうになることを双方とも希望をしておりますけれども、これはあくまでも技術上の問題としまして、よく詰めた上でないとわかりませんので、いま確実に合意が成立するという約束をこの段階で申し上げることはちょっといたしかねます。
  170. 星野力

    星野力君 重ねてお聞きしますが、もう時間幾らもありませんから、ひとつつき合っていただきたいんですが、障害は一体どこにあるんです。
  171. 高島益郎

    政府委員(高島益郎君) 再三申しましておるとおり、あくまでも通常の無償経済協力の案件と同じように、関係各省で協議しながら話を進めているわけでございまして、どこに障害があるか、そういう障害があっていま何か話が停滞しているような御印象なんですけれども、そういうことではございません。
  172. 星野力

    星野力君 時間があと一分ぐらいしかございませんが、最後に大臣にお聞きしたいんです。  カンボジアの大使館、栗野大使がんばっておりますですね。カンボジア情勢に対して日本政府としてはどう対処しようと考えておられるのか。いろいろこれも伝えられるところがありますが、何かあそこで大きな役割りをやろうと、こういうお考えがあるのかですね。それについて果たして成算を持って何かあそこに踏みとどまってやっておられるのかということと、私はカンボジアの問題これはカンボジアの国民同士に任せるがいいことで、日本が下手な手出しをしてはいけないじゃないか、こういう考えに立ってお聞きするわけなんですが、どういうふうに対処しようとなさろうとしておるのか。
  173. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) わが国としましては、昨年のこの問題についての国連決議も、実はわが国が非常に努力をいたしましてでき上がりました決議でありまして、カンボジアの問題はカンボジア人が解決をするという趣旨でございますから、それがその国連決議のとおり実現いたしますように、そして流血の惨事が避けられますようにということをわが国としては基本の方針として願っておるわけですが、栗野大使の場合、何もしゃしゃり出ましてそういう役割りを買いましたわけではありませんで、カンボジア政府の首脳から、文字どおり連日連夜ASEANの大使たち、ことにタイ、インドネシア等でございますが、呼ばれましていろいろ意見を求められておる。求められるにつきましてこちらから意見を申し述べておるということでございまして、その中でも栗野大使はまあいわば専任大使のように、わが国のそういう意味での国力も事実上反映しているということもあろうかと思いますけれども、まあいわばそういう形でASEAN大使とともに先方の招きに応じてこちらの考えを申しておる。そのために、また在留人もまだ少し、十名程度大使館員を含めましておりますので、そういう人たちが無事に帰るのを見届けなければなりませんが、それとともに、いまのようなことで求められていろいろアドバイスをしておる。願っておりますことは、無用な流血が避けられて、そうして文字どおりカンボジア人がカンボジア人自身でこの問題を解決するというための方策はどうあるべきかというようなことを、求めに応じて進言をしておる。そういう大切な役割りをいたしておりますので、だんだん一身に危険が迫ってきておりますから、私ども心配はいたしておりますが、少なくともそのようにカンボジア人のために流血を避ける役に立つのならば、まあ最後の瞬間まで働きたいという本人の考えでもございます。私ども、外交的な役割りがもうこれ以上余り残らぬということを見きわめれば、できるだけ早く撤収をした方がいいのではないかと心配をいたしておるわけでございます。いまそういう役割りをまだいたしております。
  174. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 本件の質疑は、本日はこの程度といたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十五分散会