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参考人(
稲垣武臣君) 私
どもが今次の五次提案を出すまでに、四十一年の一月に、ちょうど東海の
原子力発電所が大体発電の態勢に入りましたときに第一次提言ということでやっておりまして、四十一年の九月に二次提言、四十四年の三月に三次提言、四十七年の三月に四次提言ということで、それぞれその都度提言いたしておるわけでありますが、残念ながらそれらの提言につきましては、主として
体制の問題
研究の問題、それからそれらの問題について今日あることを予想して提言したものが日の目を見ていないわけでございます。今回の第五次提言はその四つの提言の今日的な集約と将来にわたっての
原子力行政並びに
原子力開発に対する
体制の整備を重点にしまして提言をした
ようなわけであります。
私
どもの
考え方は、基本的にはエネルギーショックから改めて
日本のエネルギー政策あるいはエネルギーの
あり方について見直されまして、
原子力が将来いわゆるエネルギーの多様化の
一つの中核として位置づけられるんではないか。また、位置づけなければならないという
考え方で今後積極的に
原子力発電の
開発をやっていこうという基本的な
考え方であります。ところが、残念なことに
原子力発電につきましては「
むつ」問題から
国民の
皆さんの中で
原子力発電に対する
一つの、いま
先生がおっしゃった
ように、安全、
環境、公害という
ようなものに対する
理解が不十分、あるいは
説明不足、あるいはそれに対する
責任体制という
ようなことから遠のいてしまっているんではないか、こういうことが非常に心配の一番大きな問題だと、こういうことと同時に、現在行われております、また建設されております
軽水炉というものは、設備の利用率を見ますと、非常に当初期待されたより利用率が悪くなってきているということから、それらの問題に対するひとつ実用炉、商業炉としての改良の余地もございましょうし、それからいまなお問題になっております燃料サイクル、廃棄物処理という
ようなトータルでもってものを、いわゆる商業炉としての位置づけを明確にしないといけないんではないか。
それからもう
一つ、私
どもの方で労働者の、いわゆる働いております人間のいわゆる被曝量でありますけれ
ども、これはアメリカのWASHI一三一一というデータが出ておりまして、これは出力と経年に従って被曝量が非常に増加していっているということが発表されました。その発表に基づきまして、私
どもの方でもそれぞれ長年運転いたしております
原子炉について
調査をいたしますと、大体同じ傾向になってきているということから、それらに対してどういう対策を進めるのかということについても、今後いわゆる
研究、あるいは運転の
やり方、定期
検査の
やり方等全般について見直さなければならぬのではないか。ただここで
皆さん方に誤解のない
ように申し上げておきますけれ
ども、これは一人一人の被曝量がふえているということではないわけでございます。これは労働組合と会社の間で非常に厳格な
協定がありまして、一人一人の被曝量がふえているということじゃなくて、全体の被曝量がふえるということはそれだけ人が非常に数が多くいるということを意味しているのであって、一人一人に放射線の被曝量がふえているということではございません。同時にそのことが対外的にいわゆる第三者に直接的な問題になるんではございませんので、その安全面については働いている労働者が一番よく知っているわけでありますので、その点がともすると誤解されますのでひとつここで明確にしておきたいと思います。
次に、
原子力行政につきましてでございますけれ
ども、いま私が申し上げました
ように、
国民の
合意というのは遠のいている一番大きな原因というのは、
原子力の
安全性に対してだれが
責任を持つのかということが一番大きな遠のいていった理由でないかと思うわけであります。そうなりますと、現在の
原子力委員会というものの
あり方が果たして妥当であるのかないのか、国際的に見ましてもいろいろ問題がございますので、したがって、私
どもの方としては現在の
原子力委員会を一応解散をいたしまして、
原子力規制
委員会というものをつくって安全に対する一貫した
責任を持つべきではなかろうか。その次に、それと同時に
原子力開発の調整
委員会というものを持ちまして、その二つの
委員会で推進と安全とこの二つに分けて
体制を整備していったらどうかというふうに提言いたしております。
次は、地方
行政との調整でございますけれ
ども、地方
行政というのが現在、私
どもの方からこれは勝手な見方になるかもしれませんが、国で行いました、あるいは国で
基準としてつくりましたいわゆるいろんな規制あるいは公害に対する
環境の
基準という
ようなものが地方自治体の中ではより一層厳しくされたりあるいはいろんなことがやられておりますけれ
ども、こういうものはひとつ国と地方
行政の間で統一して物事を処理するというふうにしていったらどうか。そうしないと、ある
地域においては大変な厳しい規制になっている、ある
地域においては若干緩んだ規制になっているという
ようなことではかえって
国民の
皆さん方から不信を招くのではないか。そういう意味合いで国としてよりしっかりとしたひとつ
基準というものをつくり上げる必要があるんではないかと思います。
次に、
開発と
研究体制についてでありますけれ
ども、現在
開発されております
軽水炉はいわゆるPとB型という二つが
電力会社が大体
開発、いま運転しておるわけですけれ
ども、これらについてはもう
先生方御
承知のとおりにいろんなトラブルが起きております。こういうトラブルについてひとつ
研究体制というものをより一層強化していかなきゃならぬのではないか。しかし、これはユーザーである
電力会社だけでやれるものでもございませんし、
メーカーだけに
責任を負わすというのも全く一方的でありますので、これは
電力、
メーカーあるいは国とも
ども一体となった
開発を行わなければならぬだろう。また、現在の
技術はほとんどアメリカに頼っているわけですけれ
ども、そういうアメリカに頼った
技術というものがいま
国民の間の中では不信の
一つの理由にもなっておりますので、やはり
自分たちの自主
開発というものにもつと重点を置いた
体制を整えなければ今後
原子力の
平和利用というのは行き詰ってしまうんではないかというふうに考えます。
その中で今度は放射線下の私
どもの労働対策でありますけれ
ども、これはいま申し上げました
ように、被曝量というのは個々に被曝量がふえているわけではなくトータルとしてふえているわけですが、これは
一つは機器の改良によって相当改善される部分がございますし、定期
検査の仕方によりまして改善されるところもございます。そういうものを総合的にわれわれは今後考えて、ひとつ労使の間で十分話し合って機器の
開発、定期点検の
やり方あるいは今後の運転の
やり方等について対処していきたいと思いますが、ただ、国の方からやはり積極的に対策をとっていただかなければならぬことは
——私
どもの従業員の間では被曝管理というのは非常に厳格に行われておりますけれ
ども、実は発電所内で働いている下請業者の
皆さん方の方では私
どもの
ような厳格な管理が非常にしづらい。労働力が非常に流動性を持っておりすすので、Aというところの発電所でどれだけ被曝量があったのか、あるいはBという発電所でどれだけ被曝量があったのか、そういうふうなことについては非常に管理がしづらいわけであります。そういう管理につきましては、ひとつ国の方でも一元的な健康の管理
体制というものを確立していただかなければならぬと思います。
それから同時に、
原子力の従業員の災害補償制度が、これは足を切ったとか手をどうしたとかというふうな直接的なものでないものが将来出るかもしれませんので、それらについてひとつもう少し国としての災害補償というものを考えていただかなければ困るのではないかと思います。
こういうふうに諸対策を進めましても、なお
地域住民、
国民の
皆さん方に対しての
一つの
合意というものが非常に大切でありますので、国でひとつ
——仮称でございますけれ
ども、エネルギー
開発国民会議という
ようなものをつくっていただきまして、エネルギー
開発に対するナショナルコンセンサスというものを取りつける
ようにしたらどうか。国がこういうエネルギー対策を持っております、それに対して、諮問
機関で各界の代表がいろんな
意見を述べて、それをお互いにひとつ建設的に積み上げて、そしてやっていくというふうにしたらどうか。
それからもう
一つは、安全に対する思想といいますか、哲学といいますか、そういうものをきっちりとして、安全に対する
責任体制——再々申し上げますけれ
ども、これはひとつはっきりとしてもらわなけりゃ困るんではないか。
それから次には、公聴会の
あり方なんですが、公聴会というものが、どうもこのごろ聞きおく程度で、もう
一つお互いの対話がないというのが大きな欠点ではないか。それには公聴会の現在の
あり方というものをやはり再
検討をしてみる必要があるのではないか。中央におきましての公聴会というのは、むしろいま私が申し上げました安全というものを中心に公聴会を開いて、それぞれ対話形式で安全に対する確認をする。それから、
地域における公聴会は、むしろ
地域住民の
皆さん方の
考え方、その
原子力発電所を建設することによっての
地域の
開発との
関連という
ようなことについてもっとひざを突き合わした話し合いができる
ような公聴会をつくったらどうか。そういう公聴会を二段構えでやることが大切じゃないかと思います。
それから、
地域社会の助成につきましては、原電の三法ができたわけでありますけれ
ども、しかしこれだけでは私は
国民の生活というものは安定できないと思います……