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説明員(
天坂昌司君) それでは
資料の十七ページから御
説明をさせていただきたいと思います。
十七ページは、現在
国鉄の
経営状態が
破局に瀕しているということは、ただいまの御
説明であったわけでございますが、どういう
推移をたどってこういう
状態に立ち至ったかということを表にまとめたものでございます。活字が小さくてはなはだ恐縮でございますが、上の方の大きい表が
経営損益の
状況の
推移を示したものでございまして、下の細長いものが
長期債務の
残高、それから
工事経費、
工事をした
実績を書いたものでございます。
それで上の大きい表の一番
左側を
ごらんいただきますというと、
収入と
支出、それと一番下に
繰越損益、その
一つ上に純
損益という形で書いておるわけでございます。通常言われますように、下から二番目の表で
ごらんいただきますように、
昭和三十八年までは
黒字でございました。三十九年に三百億という
赤字を出して以来ずっと
赤字が続いておるわけでございます。ただし三十九
年度、四十
年度はそれ以前からの
繰越利益がございましたので、四十
年度までは六十五億の
繰越利益を計上いたしておったわけでございますから、この点につきましても、四十一
年度からは△になって今日に続いております。先ほど
総裁からの
あいさつにございましたように、五十
年度では二兆九千八百十五億という、これは
予算で見た上での
数字でございますが、そういう
累積の
赤字を抱えておるわけでございます。
そのすぐ下に細長い表で五十
年度の
債務残高といたしまして、六兆六千六百五億という
数字が挙がっておるわけでございますが、
借金としてはこういう大きなものになっておるわけでございます。
それから
収支の
状態はさようでございますが、四十六
年度の欄を
ごらんいただきたいと思いますが、
収支差で四百十五億の赤を出しております。
つまり償却前ですでに
赤字に転じましたのが四十六年でございまして、この四十六
年度から以降ずっとこの点につきましても
赤字を続けております。この
赤字分につきましては
借入金——借金で賄っておりますし、それがまた
利子を生むというああいう姿になっておるわけでございます。
それから先ほど御
説明がございました
政府からの
助成金の
受け入れといたしまして、
損益で見ますと、四十三
年度の
収入の欄の下の方に
助成金受け入れ五十四億というのがございまして、それ以後年を追ってふえてきておるわけでございます。
以上が十七ページを概観していただいた表でございますが、十八ページは
運輸収入と
営業費、これは
人件費と
物件費その他含まれておるわけでございますが、三十七
年度から五十
年度までとっております。各年次に
左側の白い棒が
収入をあらわしておりまして、
右側の斜線あるいは点線のものが
営業費をあらわしております。
三十七
年度では、その下の表を
ごらんいただきますように、
運輸収入に占める
人件費の
割合は四九%でございました。それが逐年ふえてまいりまして、四十九
年度では
収入の九一%が
人件費でございます。五十
年度はこれは
予算でございますので、形としては八三%というふうに下がっておりますが、今次の
ベースアップの
改定を含めればこのパーセンテージは上がっていくわけでございます。
収入をもってしては
人件費も賄えなくなる
状態が近い将来に参るだろうと言われるのは、こういう
趨勢に基づいた判断でございます。
それから十九ページは、これは
国鉄は二万
キロの
営業キロで
全国に
交通の
ネット網を張っておりますが、すべての線が一様に
経営状態が同じであるということではございませんで、それを
線別に分けてみた表でございます。左の区分に従いまして
ごらんいただきますと、まず
新幹線と
在来線と分けてみました。
新幹線は
線数は一でございまして七百三十二
キロ、
収支の
係数は一番
右側の欄で
ごらんいただきますように、これは四十八
年度でございますが、四六という
収支係数でございます。
その下の
在来線をまた幾つかに分けてみますと、
在来線の中で
収支係数が一〇〇以下の線、
つまり黒字を出しております線は二線でございます。
キロ数で百・八
キロ、これが
収支係数七一でございます。その他の
線区は全部
収支係数が一〇〇を超えております。ただし一〇〇を超えておりましても
作業費を賄える、直接費的なものを賄える
線区は十一線で二千八百九十二
キロございます。
営業係数は一一二でございます。それから
作業費は賄えませんが
人件費の分だけは出てくる、
人件費は賄えるというものが二十一線で四千
キロでございます。あとの二百二十線、一万四千
キロ、
つまり四分の三の
線区は
人件費すら賄えないという姿に相なっております。ただし
人件費すら賄えない
線区は
キロとしては長いわけでございますが、
真ん中辺に
収入という欄がございます。これを
ごらんいただきますと、ここから出てきます
収入は千六百八億ということになっておりますが、その
一つ上、
人件費は賄える路線、あるいはそのもう
一つ上、
作業費は賄える線、この辺の
収入の力が非常に強い。それぞれ四千三百億、三千百億というぐあいに強い
収入力を持っておるという性格を持ったものでございます。まあ以上のように分析してみますと、御
説明したような結果に相なります。
それから二十ページを
ごらんいただきますと、これはもっぱらその
線区が
赤字であったか
黒字であったかによって分けたものでございます。三十六
年度、これは一番
左側の欄でございますが、三十六
年度の一番下を
ごらんいただきますように、五百六十五億の黒を出しておりました。これは全体として黒でございましたけれども、その上で
ごらんいただきますように、
黒字線は三十一線でございまして、
営業キロとしましては五千
キロ、
つまり全体の線路の中で四分の一分黒であったことによって、残りの四分の三の
線区を賄ってなおかつ
余りがあったという形でございます。その後
輸送の
状況が変わっておりますから、現在ただいまでもそのとおりだというふうには必ずしも考えられませんが、三十六年の
状態ではこういう姿でございます。その後
黒字線につきましては、年を追って、この表で
ごらんになりますように減ってきておりまして、
赤字線を当然抱えていけない、
赤字線の
赤字を賄っていけないという姿に相なっておるわけでございます。これも
趨勢を示したものでございます。
それから二十一ページは、その辺のところを絵にかいたものでございまして、左の丸い絵を
ごらんいただきますと、
幹線系線区としまして
仕事の量が九二%、それから
地方交通線としまして七%と載っておるわけでございます。これはそれぞれの
線区の素質から見まして、私どもの
会計で
幹線系線区、
地方交通線区と、それぞれ一万
キロと一万一千
キロに分けておりますが、
幹線系線区と称せられます一万
キロの
線区で
仕事の九二%を果たしております。残る一万一千
キロで
仕事の量は七%でございます。
それで
真ん中の棒の
グラフでございますが、それぞれ
仕事量がこれだけ違うところから出てきます
赤字は
地方交通線は二千百二十一億、
幹線系は二千二百八十九億と、ほぼ同じぐらいの
赤字が出ておるわけでございます。その間の
人トンキロ当たりの
損失額、一番
右側の
数字を
ごらんいただきますと、
幹線系線区では
人トンキロ当たり、
つまりお客様を一人一
キロ当たり、
貨物ならば一トンを一
キロ運ぶごとに
国鉄は九十二銭の
赤字を出しております。したがいまして、この
年度につきましては一
キロ当たり九十二銭運賃のレベルが高ければ、この
真ん中にございます二千二百八十九億の
赤字は消えたであろうということでございます。それに比較しまして、上の
地方交通線は一
人トンキロ当たり十円七十一銭の損をしているわけでございます。
その間の事情はさらに次の二十二ページの
グラフを
ごらんいただきたいと思います。ただいま申しました
幹線系の
損益の
推移をあらわしたものが上の斜めになっておる表でございます。これは
年度によりまして
赤字を出したり
黒字を出したりいたしておるわけでございます。四十七
年度のところに点線で書いてあるわけでございますが、これは四十七
年度の法案が廃案になりまして運賃の
改定が実現できなかったわけでございますが、もしできておればということで入れた点線でございます。これで
ごらんいただきますように、適時に適当な水準の運賃レベルを与えられておりさえすれば、
幹線系につきましては
収支相償ってまいるという傾向が出ております。
それに対しまして、下の横に長い絵は、これは
地方交通線の
赤字額の
推移を示したものでございまして、運賃の
改定があっても
赤字幅がふえているという性格を持ったものでございます。
それから次の二十三ページは、
国鉄の
仕事——
輸送いたしておるわけでございますが、その量はどういうふうに変わっておるかということを
ごらんいただくものでございまして、
旅客の
推移をあらわしたものでございます。
合計が一番左の表でございまして、表で
ごらんいただきますように、年を追ってふえてきております。定期につきましては、四十年代に入りまして多少変化がございました。これを普通
旅客と定期
旅客に分けたものが
真ん中、それから定期が
右側になっておりますが、総じて急行と申しますか、速い列車を乗客は好む傾向が強くなってきておりまして、それに伴いまして急行、それから
新幹線が非常にふえてきておるという
状況でございます。
それから二十四ページ、これは
貨物でございまして、物資別にとってみました。この十年来トータルといたしましては横ばいでまいったわけでございますが、品目別に見ますと多少の消長がございまして、
真ん中が減少したものでございます。木材、石炭、それから魚、鉱石といったものが減りまして、
右側で
ごらんいただきますように、二次産品というべき紙、化学肥料、石油、自動車、それから品目ではございませんがコンテナはふえておるという形でございます。
それから二十五ページは、いままでは
線区の区分をしてみた分析でございますが、私どもそのほかに客貨別に分けて分析いたしております。これは非常にむずかしい分け方でございまして、外国の
鉄道にも例がございませんが、
国鉄なりに
一つの仮定を置きまして分けてみますとこういう姿になるわけでございます。四十六
年度、四十七
年度と並べております。いずれ四十八
年度につきましても出てくる
予定になっておりますが、四十六
年度につきましては、
旅客は十億の
黒字でございました。しかし
在来線は千七十八億の赤、それを
新幹線の千八十八億で補っております。
貨物は二千百五十三億の
赤字を出しております。これが四十七
年度には
旅客も
赤字に転じております。なお、この分け方につきましてはいろいろ論議のあるところでございますし、もう少し他の機会に御
説明申し上げる折があるかと思います。
それから二十六ページは、戦後、
国鉄運賃の
改定の経緯を書いたものでございます。御
説明は省略いたしますが、
ごらんいただきたいと思います。
それから二十七ページは、物価との関係を表にしたものでございます。戦前、一般に安定した時期と言われております
昭和十一年を起点にとったものでございます。起点の取り方につきましては、いろいろな見方があるわけでございますが、十一年をとってみますと、
国鉄の
旅客で見ますと三百二十七倍、
貨物が二百九十五倍ということで、他のものはそれぞれ大きな上がりをいたしております比較を
ごらんいただきたいということでございます。
それから二十八ページ、二十九ページは諸外国の料金制度、これは一九七二年の現在の制度で並べてございます。これも特別には御
説明いたしませんが、運賃決定方式といたしましては、諸外国とも法律によるところはございません。特に二十九ページで
ごらんいただきますように、イギリスの
貨物運賃につきましては、これはもっぱら
国鉄が自由に決定しておるという
状況でございます。
それから三十ページは
国鉄の職員数、それから
仕事の関係をあらわしたものでございます。上から二番目の線が
仕事の量をあらわしておるものでございまして、
昭和二十四年の当時は千八億人トン
キロの
仕事量でございましたが、四十八
年度では二千七百一億人トン
キロで二倍半を超えまして、二・七倍の
仕事をいたしておりますが、下の
グラフで
ごらんいただきますように、職員数といたしましては、四十九万一千人おったものが現在では四十三万三千人というふうに減っております。それで先ほどの
仕事の量をこの人数で割ってみたものが一番上のものでございまして、仮にこういう計算をしてみますと、二十四年には一人
当たり二十万五千
キロの
仕事をこなしておったものが六十二・四万
キロということで、三倍になっておりますということを
ごらんいただくものでございます。
それから最後に三十一ページでございますが、
国鉄につきましては、やはり職員の問題が
一つの大きな問題でございまして、
左側は
国鉄職員の年齢構成、それから勤続年数でございます。年齢構成で
ごらんいただきますように、年長者の数が非常に多いわけでございます。この
グラフで
ごらんいただきますように、四十歳以上の者が六〇%を占めております。それから右の勤続年数で
ごらんいただきましても、二十五年以上の者が非常に多いわけでございます。多いと申しましても、これは遊んでおるわけでございませんで、皆
仕事についておるわけでございますので、この人数のふくらみが
国鉄を去る折にはどういう対策が必要であるかということは、これは単
年度ではできませんので、今後数年をかけながら解決していかなければならない大きな問題でございます。
それから
右側が、しからば
国鉄職員の給与はどういう
状態になっておるかということを他の産業と比べて
グラフに書いてみました。これは平均給与を白い棒で並べてあります。これは単純に額を比較したものでございますが、表の下に「平均勤続」とか「平均年齢」とかいう欄がございますが、
ごらんいただきますと、勤続年数では二十一・六年でございまして、他と比べてはるかに長い勤続年数、それから平均年齢では四十・三歳になっております。これも他と比べて非常に高年齢になっておるわけでございまして、この辺の要素を加味しまして、ラスパイレスによって平均給与を
国鉄を基準に見ますと、他の産業はいずれもはるかに高い
状態にあります。相対的には
国鉄職員の給与は決して高くはないということでございます。
以上でこの表につきましての御
説明を終わらせていただきます。