○国務
大臣(木村睦男君) いま世界の海運は、御
承知のように、完全な自由競争に立っておるわけでございます。その自由競争の上に立って産油国からの油も運ばれるという実態であるわけでございます。自由競争の海運事業というものを前提にして
考えますときに、また産油国から油を、輸送、流通
経費も含めてできるだけ安く買うというこの
関係から言いましても、輸送費はできるだけ安い方がいいということは申すまでもないことでございます。そういうことから言いますというと、やはり産油国から日本への油の輸送というものは、シンガポール・
マラッカ海峡を経由することが一番最短
距離にもなりますので、経済性はそれが有利であるということも当然のことであるわけでございます。
それと同時に、ただいま海運
局長が申しましたように、シンガポール・
マラッカ海峡を囲む三国のいろんな現実の利害
関係というものもあるわけでございますので、それらいろんなことを勘案してみます場合に、日本の海運だけシンガポール・
マラッカ海峡を通っちゃいけないというふうなことに仮になったと、そういう措置をとったと、こういたしますというと、勢い回るところはロンボク海峡なり、あるいはもっと迂回ということになると思います。そうすると、日本で消費する油の価格はそれだけ上がってくるということも言えるわけでございます。そうすると、油を買う方にいたしますれば、できるだけ安い油ということになりますというと、海運自由という
関係から、あるいは外国船に運ばして、自国船でない外国船に運ばしてシンガポール海峡を通せば安くなるというふうなことも起こってくる。
いろんなことを
考えてみますというと、なかなかこれ、日本だけの
考え方でもって物事を律しておるというと、かえってマイナスの面が出てくる場合もあると思います。しかし、すでにたびたび事故を起こしておりますあの狭隘な
マラッカ海峡でございますから、これに対しては、日本政府といたしましてはもちろんでございますけれ
ども、安全輸送の自衛上、海運会社そのものも十分に配慮しなければならないと思っております。現在でも四十万トン以上の船はたしかロンボク海峡を回るようにという
指導をいたしまして、大体それを守っておるやに私は聞いております。まあそういうふうな状況下にございますので、いたずらに経済性であるとか、あるいはもうけるためにのみという観点に立ってこれを
指導し、行政をやるということはもちろん避けなければなりませんけれ
ども、やはり基本的には、海運の自由という、その世界海運の自由という原則の上に立って
考えませんと、当局が所期した効果が、とった措置によって効果があらわれない場合もある、非常にその辺がむずかしいところであるわけでございます。
しかし、いずれにいたしましても、狭隘な水路を通って、そうして事故勃発の可能性のあるところを危険を冒してやらすということは、これは極力避けなければならないことでございますので、われわれといたしましては、ちょうど
マラッカ海峡の水路調査の結果も出まして、これからあすこを通る場合には安全輸送の、かなり安全輸送ができるような措置を今後講じていくことができますし、また一方、ロンボク海峡につきましても、五月から九月を目途にわが国とインドネシアとの協力のもとに水路測量もやっておりまして、実はこの海峡も必ずしもいま安全であるとも
考えられません。したがって、ロンボク海峡につきましても、水路測量の結果を待ちまして、やはり政府といたしまして、あるいは海運会社といたしましても、安全輸送が結局自分の利益に帰することでございますので、そういう観点に立って最も確実に、安全に航行でき、しかも自由競争下における世界海運の現状に適合した政策をとって行政
指導をやっていかなければならない、まあかように
考えておるような次第でございます。