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政府委員(高橋寿夫君) その点につきまして若干の御説明が要るわけでございます。
この答申、私、当時部局におりませんでしたけれども、関係の部局におりまして、この答申を横から参画をいたしておりましたのですが、この答申ができました雰囲気といいますか基調といいますかは、タクシーというものは先ほども御説明申し上げましたように大衆の足ではあるんだけれども、日常茶飯のミニマム的なものではないんだから、これはもう従来のような、バスに対する私たちの、事細かな、かゆいところに手が届くような行政介入というのをやめて自由にしてはどうかという基調が非常に強いわけであります。はっきり書いてございませんけれども、この答申をお出しになった
委員の方々の個人的な意見の中には、タクシー免許制をやめるべきじゃないかという意見の方もおったわけでございます。そういったことで、この答申はタクシーに対して自由化ということを言っております。ただ、その自由化という
意味が、私どものこの答申を受けた立場での理解では、この自由化というのは、自由営業ということであってはならないというふうに
考えたわけであります。その点がこの答申をお書きになった方々の気持ちの中と、私たちこれを受けとめました行政当局の立場に若干の違いがございます。
私たち行政当局は、タクシーというものは自由化してはいけないと思っております。と申しますのは、自由化に二つ
意味がございまして、この答申で言っておられる主な部分は、いわゆる供給の自由化ということでございます。必ずしも自由営業ということでは言っていないわけでございます。まず供給の自由化でございますけれども、従来、
運輸省の戦後のタクシー行政、この答申が出るころまでのタクシー行政は、御
承知のように大都市におきまするタクシー需要とタクシーの供給との間に適正なバランスが確保されていることが事業秩序を維持するゆえんである、こういう
考え方から
道路運送
協議会というのをつくりまして利用者、それから事業者、それから第三者というふうな三者構成で、年ごとにあるべきタクシーの数を決めまして、その数の中で免許をし、増車をしてきたわけであります。
ところが、どういたしましても秩序を維持するというふうな
考え方に立ちますと、勢い供給力をぎりぎりぐらいに設定しておくということになりがちでございます。そこで結果的には、その都市にかなり需要があるのに、タクシーの供給力がぎりぎりないしはちょっと低目ぐらいに押えられてきたきらいがあった。そのために、各所でタクシーの乗車拒否
問題等が起こりました。そこでこの答申は、そういった事態を改善するために、大都市においてはタクシーの供給力の設定をしない方がよろしい。つまり東京とか大阪とか大都市には一体何万台タクシーがあったらいいのかということはわからないはずじゃないか。むしろ需要があればふやし、需要がなくなれば減らすという、いわゆるマーケットメカニズムに任せた自由参入、自由脱退、これがいいんだという
考え方からこの答申はタクシーにつきましては供給力設定をしない、いわゆる供給自由化にすべきであるという
意味で自由化の方向を出しております。このことは私たちも大変正しい
指摘であると思いまして、その後大都市におきましては供給力設定をいたしませんで、需要がある限り申請があるわけだから、申請がありまするならば、それに対しまして資格要件だけの審査をいたしまして、増車あるいは新免を出しております。
そこでこの二番目の自由化の問題で、いま資格要件と申し上げましたけれども、いかに供給力自由であると申しましても、やはりタクシーというものは大事なお客さんを乗っけまして走る交通機関である。したがって、いいかげんな業者がいいかげんな車を使ってやられたのではかなわないというところから、タクシーという事業に参入すべき資格、これは従来どおり免許要件で縛るべきである。事業計画が適正であることとか、あるいは
車両あるいは運転者の
基準等につきましてはきちんとしたものであるべきであるということで、自由化というものを私どもは供給の自由化というふうにとらえまして、免許制というものは従来どおり、いわゆる資格要件を確保するという
意味での免許制は維持するということでやってきております。
そこでいま
先生の御
指摘の、
車両の運転責任と保有責任の分離の問題でございますけれども、この答申は、私申し上げましたように、このタクシーの供給力自由化だけではなくして、もう一歩進んで免許要件なんかもなくなして、いわゆる自由営業的にしたらどうかという雰囲気の方がおりまして、そういった方向で書いておるもんですから、そういう方向の延長線上として、いま御
指摘のような
車両の運用とそれから保有の責任を分けるという御提言があったわけでございます。しかしながら、私ども行政当局といたしましては、それについてはかなり問題がある。したがって答申を受けたのですから
検討はしなきゃならないものの、この運転責任と保有責任の分離については相当慎重に対処すべきであるということで、当分の間これはたな上げという形で、今日現在のところそういったことに分けて処理をする
考え方を持っておりません。