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1975-01-17 第75回国会 参議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年一月十七日(金曜日)    午後二時十四分開会     —————————————    委員異動  十二月二十八日     辞任         補欠選任      森中 守義君     戸田 菊雄君     目黒朝次郎君     前川  旦君  一月十七日     辞任         補欠選任      杉山善太郎君     森中 守義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         宮崎 正義君     理 事                 黒住 忠行君                 瀬谷 英行君                 三木 忠雄君     委 員                 江藤  智君                 岡本  悟君                 佐藤 信二君                 宮崎 正雄君                 青木 薪次君                 戸田 菊雄君                 前川  旦君                 森中 守義君                 岩間 正男君                 和田 春生君    国務大臣        運 輸 大 臣  木村 睦男君    政府委員        環境庁水質保全        局長       大場 敏彦君        資源エネルギー        庁石油部長    左近友三郎君        運輸省海運局長  薗村 泰彦君        運輸省船舶局長  内田  守君        運輸省港湾局長  竹内 良夫君        運輸省自動車局        長        高橋 寿夫君        海上保安庁長官  寺井 久美君        高等海難審判庁        長官       愛澤 新五君    事務局側        常任委員会専門        員        池部 幸雄君    説明員        警察庁交通局交        通指導課長    森  郷己君        外務大臣官房審        議官       杉原 真一君        外務省アジア局        次長       中江 要介君        運輸大臣官房審        議官       中村 四郎君        運輸省船員局労        働基準課長    松尾 道彦君        運輸省船員局船        舶職員課長    星  忠行君        海上保安庁水路        部参事官     庄司大太郎君    参考人        太平洋海運株式        会社専務取締役  佐野  稔君        太平洋海運株式        会社海務部長   菊田 清平君        全日本海員組合        組織局主任    多筥 良三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (長野青木湖におけるバス転落事故に関する  件)  (マラッカ海峡における祥和丸座礁事故に関す  る件)     —————————————
  2. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十二月二十八日、森中守義君及び目黒朝次郎君が委員辞任され、その補欠として戸田菊雄君及び前川旦君が選任されました。  また、本日、杉山善太郎君が委員辞任され、その補欠として森中守義君が選任されました。     —————————————
  3. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 次に、委員異動に伴い、理事に欠員が生じておりますので、この際、その補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事瀬谷英行君を指名いたします。     —————————————
  5. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  運輸事情等に関する調査のうち、マラッカ海峡における祥和丸座礁事故に関する件について、本日、参考人として、太平洋海運株式会社専務取締役佐野稔君、同じく海務部長菊田清平君、全日本海員組合組織局主任多筥良三君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) それでは運輸事情等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 青木薪次

    青木薪次君 青木であります。  本年の一月一日の午前十一時二十分ごろ、長野大町市に起こった、いわゆる青木湖転落事故の概況について、ひとつ説明をしていただきたいと思います。
  9. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 御説明申し上げます。  発生の日時は、昭和五十年一月一日午前十一時二十分ごろでございます。発生の場所は、長野大町大字木崎であります。事故にあいました自動車定員三十八名、所有者は株式会社平和島でございます。  若干、この事故の起こりました背後関係その他について御説明を申し上げますと、この車は平和島という会社所有でございますけれども、この事故の起きました直接の原因となりましたスキー場の経営は平和島観光というこのさらに子会社でございます。これは本社が長野大町市にございまして、資本金八千万円でございます。スキーリフト業ホテル業飲食業などを経営いたしております。従業員は臨時まで入れまして百人余りの会社でございます。  事故概要は、すでに新聞等におきまして何べんも報道されておりますので詳細は避けたいと思いますけれども、国鉄の大糸線簗場駅から青木湖スキー場、ここに行きますスキー客を乗せました定員三十八名のバス転落をいたしまして死傷者を出したという事故でございます。  なお事故が起こったあとの諸般の調査等につきましては、地元警察がやっておりまして、私どものところへはその後の詳細は入っておりませんけれども運輸省立場といたしましては、新聞等に報ぜられている事実関係、あるいは私どもが把握いたしました事実関係等に基づきまして善後措置を講じたいと思います。
  10. 青木薪次

    青木薪次君 事故原因についていろいろな話がいまされているわけでありますが、事故原因道路状況が悪い、あるいはまた運転技術が拙劣であるというようなことがいろいろ言われているわけでありますが、運輸省として事故原因についてはどうお考えになっておりますか。
  11. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 事故原因につきましては、交通事故でございますので、現在、警察庁が中心になって調査をしておられますので、私どもはいずれが原因であるかということを断定することはできないわけでございますので、いま先生の御質問に対しまして公式のお答えをいたしますことほお許しいただきたいと思います。
  12. 青木薪次

    青木薪次君 警察庁はどうお考えになっておられますか。
  13. 森郷己

    説明員森郷己君) 今回の転落事故原因につきましては、いろいろなことが考えられるわけでございますが、直接的にはやはり運転者運転が十分でなかったというふうに考えられるということでございます。  ただ状況的には、現場状況から判断いたしますと、ちょうど現場付近道路の幅員がかなり狭くて、しかも上り勾配で、大体六度から七度ぐらいの上り勾配であった。かつ、ちょうど現場に当たりました部分、このところが非常に鋭角で、鋭角といいますか、半径二十メートルくらいのカーブで、しかも直角に近い状況で曲がっておる、こういったようなことで、やはり運転の操作を誤って三十三メートル下の青木湖転落をした、こんなふうに考えられるわけでございます。
  14. 青木薪次

    青木薪次君 建設省にも聞きたいわけでありますが、建設省はきょうは見えないんですな。  無償自動車運送事業としての届け出を義務づけた通達について説明してもらいたいと思います。
  15. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 御説明申し上げます。  この種の自動車扱いでございますけれども、たとえば旅館送迎バスとか、その種のものがたくさんでございます。従来、私ども扱いといたしましては、旅館に泊まることになっているお客さんを駅から迎えて旅館届ける、いわゆるお迎えのバスでありますけれども、こういったものは旅館お客さんないしはお客さんになることがはっきり予約されている人のための車であるというところから、旅館宿泊サービス一つ付帯事業といたしまして旅館業の仕事の中に入っているんだというふうに考えまして、いわゆる旅館自家用自動車である、自家用バスであるというふうに考えまして、従来は、いわゆる自動車運送事業としての取り扱いをしてこなかったわけでございます。  ところがこの一月の一日に起きました青木湖事故につきましていろいろ調べてまいりますと、たとえば、このスキー場には、先ほども御説明申し上げましたように平和島観光という会社が経営しておるスキーリフトがございます。それからまたスキー客を泊めるためのブルーレイクホテルというホテルもございます。百六名収容可能でありますけれども、そのブルーレイクホテルへ泊まるお客さんを簗場の駅から運んでいくんだということだけでございますれば、これは従来の自家用自動車の範疇に考えていいと思ったわけでありますけれども、いろいろ聞いてみますと、ブルーレイクホテルに宿泊する人だけではなくて、青木湖スキー場−近くにあるわけありますけれども青木湖スキー場に行くお客さんをやはり乗っけていく。そういたしますとホテル利用客以外にスキー場だけに行く人たちも相当運んでいるようだ。  それからまた駅をおりてみますと、通常路線バスほどの正確な表示かどうかは別といたしましても、やはり何時ごろに大体出るというふうな大まかなダイヤなんかも出されておるというところから考えますと、これは自家用バスということよりも、どちらかというと、利用するほうの側からいいますと通常路線バスのような感じで利用する場合が多いんじゃないだろうか。  そういたしますと、これを自家用バスということで整理することについては問題があるというふうに考えまして、いろいろ検討いたしましたところ、たまたまこれは料金を取っておりませんので一般の路線バスのようなことにはならないわけでありますけれども一、私ども道路運送法の中に「無償自動車運送事業」というのがございます。それに大体当てはまるんではないかというふうに考えたわけでございます。  そこで一月四日に、自動車局長名全国陸運局長通達を出しまして、路線を定めて反復継続して運行の用に供している場合、かつ、その施設会員証とかあるいは利用予約書などを持ってない者でも乗っけるというふうな場合には、旅客安全確保あるいは運行責任の所在を明らかにするというふうな意味で、道路運送法によりますところの無償自動車運送事業届け出をさせるようにしなさいという通達を出しました。  この対象は、スキースケート場海水浴場ヘルスセンターなど大量レジャー施設利用者を無料で運ぶ、いわゆるレジャー施設送迎用バスというふうなものを対象にしようという趣旨のものを出したわけでございます。
  16. 青木薪次

    青木薪次君 無償自動車といっても、これはなかなかやっぱり有償との判定がきわめて法律上むずかしいと思うんであります。これは自家用の限界、すなわち自家用営業用の接点にこれらが位置するというように見られるからであります。  ですから、これらの点について、いま局長からの説明もあったわけでありますが、たとえば、無償とした場合におきましても、旅館サービス料やあるいはまたホテル代等にそれが含まれているということになれば、これは有償だということが言えると思うんであります。  今回の通達は、路線を定めて反復継続して運行の用に供されているということがあげらいているわけでありますけれども、これに該当する場合といたしまして具体的事例を例示する必要があるんじゃないかというように実は考えられるわけであります。そうでなければ、事故が起きたから今回の通達が出されたというように、事故が起きてから、君はこの通達に該当していたんだとして罰を食らうということになりかねないと思うんでありまするけれども、それらの点についてどういうお考えでございますか。
  17. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 罪刑法定主義というふうなことからまいりましても、私ども事故の起こる前に無償自動車運送事業に該当するということで特に行政指針を明らかにしてないものにつきまして、事故が起こったあと行政方針を出して、それに該当するから違法であるということはできないと思います。  したがいまして今回の事故につきましては、無届け無償自動車運送事業という整理をするつもりはございません。今後のものにつきまして、このような方針によりまして処理をいたしたい、こう考えておるわけでございます。  そこで現在、いわゆるスキースケート場——冬でございますから海水浴等はございませんので、スキー場スケート場ヘルスセンター、こういったものにどのくらいこの種の車両が使われているかということについて調査をいたしております。それらの車の中で、先ほど申し上げましたような通達の要件に該当いたしまして無償自動車運送事業届け出を要する車がどのくらいあるかという点につきましては、いま調べておりますので、まだ正確につかめません。なるべく早くつかみまして指導をいたしたい。  これを無償自動車運送事業として整理することになりますと、当然、道路運送法のいろいろな規定がかかってまいりまして、たとえば運行管理者を置かなければいけないとか、あるいは運転者資格も、自家用バスでありますと第一種免許でいいんでありますけれども営業用になりますから当然二種免許が要るというふうなことも起こってまいりますので、免許等につきましては警察庁関係も出てまいりますので、よく現地同士で打ち合わせをしながら遺憾なきを期したい、こう考えております。
  18. 青木薪次

    青木薪次君 今回の通達が出されたことによりまして、一体、何がどういうように変わるのか、どういうように取り締まられるのかというような点について説明してもらいたいと思うんであります。  まず第一番に、道路運送法上は第四十五条の二に定める届け出義務違反として五万円以下の罰金ということが実はあるんであります。この点についての説明と、それから次に、道路交通法上は第二種免許が実は必要となってくるんであります。これは八十六条でありますが、これに違反した場合においては「六月以下の懲役又は五万円以下の罰金」、百十八条の一号ということになっております。まだほかに何かあるか、これらの点についてひとつ説明をお願いしたいと思います。
  19. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) まず道路運送法関係だけを申し上げますと、届け出が必要になる。そのほかに運行管理者という一定の資格を持った人を選任いたしまして、ハンドルを握っている運転手を監督するという立場の者を選任する必要が出てまいります。それから運転者につきましては、その資格を持った運転者を雇用しなければならない。これは当然道交法に関連が出てまいります。  その他、たとえば通常路線バスなんかでありますと、旅客がみだりに運転者に話しかけてはいけないというふうな、お客さんほのにうに対しても順守事項がきめられておりますけれども、そういったものも届け出事業になりますと適用になる。そういうことで、いわゆる自家用バスという形で気楽にと申しますか、運転をするというふうなことではなくて、やはり不特定多数の人も乗せるんだと、したがって料金こそ取らないけれども通常路線バスに近い一つ責任感緊張感とを持って運転をし、かつまた運転者を雇用している事業者側におきましても、そのような労務管理上等の配慮をしなきゃならないというようなことで、全体的に安全度が向上してくると思います。
  20. 青木薪次

    青木薪次君 警察庁にお尋ねしたいと思うんでありますが、今回のこの事故にかんがみまして運輸省と同様に通達を出されましたね、この通達内容概要について、ごく簡単に説明していただきたい。それから警察取り締まり方針についてお伺いいたしたいと思います。
  21. 森郷己

    説明員森郷己君) 今回の事故にかんがみまして、警察庁といたしましては、とりあえず事故のありました当日、「類似事案防止について」という通達を出しましたが、さらに一月八日付をもちまして「無償旅客自動車運送にかかる違反取り締まりについて」という交通局長通達を出しております。  この取り締まり概要でございますが、取り締まり重点といたしましては、スキー場海水浴場ヘルスセンター等レジャー施設等において、自家用自動車を用いて、無届けで、無償旅客自動車運送事業を経営している違反重点を置いて取り締まりをするように、具体的には、その取り締まり対象となるものについてあらかじめ関係機関の協力を求めて実態把握をし、その調査の結果に基づいて、交通事故防止対策上、行政措置を講ずる必要のあるものについては必要な指導を行なうとともに、内容によっては必要に応じて検挙をする、こういったような考え方でございます。  今回の取り締まり対象として具体的な違反の態様をあげてみますと、安全運転管理者選任義務違反がないかどうか、車両等運行を管理する者の義務違反がないかどうか——いずれも道交法関係でございます。それから無償旅客運送事業届け出義務違反がないかどうか、それから運行管理者選任義務等無償旅客自動車運送事業に関する違反がないかどうか、さらに整備管理者選任義務違反がないかどうか、こういったものにしぼりまして具体的な調査をし、必要に応じて検挙をする、こういったような通達を出しているわけでございます。
  22. 青木薪次

    青木薪次君 特に、この通達によって今後どのように処理されていくかということについては非常に重大な要素を実は私は含んでいると思うんであります。  たとえば先ほど説明のありました運行管理者関係等についても、ハンドルの経験を持っていない人——だれでもいいんですね、名前だけ責任者管理者ということを札でぶら下げておけば法的には違反がない。しかし車両整備上も、ありとあらゆる交通条件車両条件というようなものについて、これらの点について、ただ形式的に運行管理者選任しているというきらいがないではないと思うんであります。これらの点について、どういうように考えておられるか。  それから事後法禁止、特に不利益不遡及の原則、憲法第三十九条の前段にあるわけでありますが、こういう大原則に照らしてみれば、ずばりこのことに対する適用について抵抗を実は感ずるわけでありまするけれども事後法禁止というような規定等についてどのようにお考えになっておられるか、これらの点について説明していただきたいと思います。
  23. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 事後法の点につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、私ども立場としましては、やはり罪刑法定主義といった大原則もあることでございますので、こういった通達が出たあとで、それに該当する人に対して適用するということにいたしたいということで、警察庁にもそのお話を申し上げまして、警察庁もそうしようじゃないか、こうおっしゃっておられます。
  24. 青木薪次

    青木薪次君 大臣にお伺いしたいと思うんでありますが、被害者救済対策についてどういうようにお考えになっておられますか。
  25. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) この正月の元旦の日に、たいへん痛ましい自動車事故が起きまして、多数の人が犠牲になられたということにつきましては、心から哀悼の意を表する次第でございます。  この事件は、申すまでもなく、ただいま政府委員から説明を申し上げましたような事情のもとで起きた事故であるわけでございます。運輸省といたしましても、その後、直ちにこういった無償自家用としてやっておりますような事業主届け出のワクの中に入れまして、少しでも監督、指導がしやすいような方法をとったのでございますが、この事故によって犠牲になられた方への補償等でございますが、これは当然事故を起こしましたのが今回の場合はスキー場等を経営しておる、またホテルも経営しておる企業者でございますので、企業者がその事故責任を十分に痛感をして所定の補償をするように、われわれはこれを期待いたしておるわけでございます。それらの状況を見ながら、またその結果を見て運輸省として打つべき手がありますれば、また打ってやらなければいけないと思っておりますけれども、第一段階では当然事故を起こした責任者であるところの企業者補償をするという立場をとっておるわけでございます。
  26. 青木薪次

    青木薪次君 運輸大臣にお聞きしたいと思うのでありますが、飛騨川判決がございます。これは道路管理者責任というものが、いわゆる地元の市もそうでありますし、政府もそうでありまするけれども、きわめて私は重いものがあると考えているわけであります。今回の場合は、道路整備が非常に不十分であったということは、これは先ほど自動車局長説明によってもいろいろとうかがい知ることができると思うのでありますが、政府の民事上及び行政上の対処方針についてお聞きいたしたいと思います。
  27. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) この事故原因については、先ほど警察当局のほうからも御説明があったのでございますが、道路上に欠陥があったかどうか、この問題もあるいは出てくるかもしれませんですが、現在のところは、そういうふうなことは聞いていないわけでございます。もしもそういう点が事故原因であるとあるいは争われまして、それが事故原因であるというふうなことが認定になりますというと、やはり道路管理者として、これは建設省の所管にはなりますけれども政府としてそれ相当の責任を負うという立場には立つと思いますが、まだそれが明確になっておりませんので、それらについての結果は今後の問題になろうかと思います。
  28. 青木薪次

    青木薪次君 私は特に無償自動車等運行に使われているマイクロバス安定性に非常に問題があると実は思っているのであります。私どもよく散見するわけでありますが、定員を何倍も乗せて、しかも非常に安定度の低い、重心の高いマイクロバスが走っていることをよく見かけます。これらの点について、自動車局としては、この改良なり、あるいはまた今後の対策について何かお考えになっておられますかお聞きしたいと思います。
  29. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 私どもマイクロバスというものの定義は道路運送車両法上設けておりませんけれども一、一応、行政上の扱いといたしまして定員二十九人以下のも一のを通常マイクロバスと称しておるわけですけれども、これらにつきましては、まず構造上の安全性につきましては道路運送車両法に基づく保安基準によりまして型式承認あるいは車両検査対象にいたしておりますので、構造上の問題はないと思います。ただトップヘビーになりやすいそういう構造を持っておりますので、たとえば座席定員しか認めない、立って乗っちゃいけないというふうなことにしてあるわけでございます。したがいまして座席定員しか認められていないマイクロバスに立って乗るということは、これは定員違反でありますので、これにつきましては自家用マイクロバスの場合には当然道路交通法上の取り締まり対象にしていただくということになると思います。
  30. 青木薪次

    青木薪次君 この問題は将来の問題としてまた意見を出したいと思います。  次に、シンガポール海峡で座礁いたしました太平洋海運マンモスタンカーである祥和丸から流れた原油が今日たいへんな問題になっているわけでありすすが、この問題については、すでに現地の三国のうち特にインドネシア側としてはロンボク海峡を通れということを盛んに言っておったと思うのでありまするけれども、この点について運輸大臣はどういうようにお考えになっておられるか、お聞きしたいと思います。
  31. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 本年の一月六日に、太平洋海運祥和丸マラッカ海峡で座礁をいたしまして、約三千三百ですか、多量の油が流出いたしまして、あの関係三国にたいへんな迷惑をおかけいたしました。幸いに三国ともにその事後処理に非常に熱心に努力をしていただきまして、漏れました油も処理剤等を用いまして被害も最小限度にとめることができたような状態で、われわれとしてもほっといたしておるわけでございますが、なおまだいろいろな被害は残っておると思います。  なお座礁いたしました船も、十五日の日に、非常に慎重な方法で離礁努力をいたしました結果、うまく離礁ができまして、いま事故の地点から少し離れたところで海上においてあとの油の抜き取り作業をやっておるというような状況でございます。  で、この問題は、場所が三国共通の水路でございます。また事故を起こしました地点はインドネシアの領海の中だ、こういうふうにわれわれも心得ておるのでございますが、ともあれマラッカ海峡を通過するという問題につきましては三カ国共通の問題であるわけでございます。で、もともとあの海峡は非常に狭うございます。しかも今回の事故を起こしましたような危険な個所も相当あるわけでございます。そこを大型のタンカーが自由通航の形で通航いたしておったのでございましたので、事故があるかもしれない、起こり得るというふうなことは予想ができておったのでございますが、いずれの船も慎重に運航いたしまして、あまりいままでは事故がなかったわけでざいます。  今回の事故を契機といたしまして、あそこの海峡の自由通航の問題が将来どういうふうになりますか、実は前々から海洋法会議等であそこの問題は論議をされておる問題でございまが、ことに十二海里説あるいは三海里説等いろいろ領海問題につきましても議論のある場所でございます。したがいまして、まず私たちが考えますことは、あの地点のああいった事故でございますので、今後関係の三カ国がどういうふうにあのマラッカ海峡の通航問題について処理をされるかということは、われわれはまあ第三国でございますから、冷静にこれを見守っていかなければならないと思います。あるいはその間にいろいろと関係国から照会その他がありますれば、またいろいろとそれに対しては対処していかなければいけないと思いますが、われわれとしてはその様子を見守っていく。  なお一方、あそこで事故が起こりやすいということは、やはりあそこを通る船の企業の立場におきましても、事故の危険防止立場からやはりそれぞれ対処の方法も考えなければならない、また考えるべきである、かようにも思うわけでございます。  あの通航については、この三カ国の間にいろいろと今後外交上の問題もあり得るのではないか、かように考えておりますので、これ以上日本の立場として言及することはしばし見合わせまして、経過を見守っていきたい、かように思っておる次第でございます。
  32. 青木薪次

    青木薪次君 参考人の皆さん御苦労さまでございます。私は太平洋海運株式会社佐野専務さんと全日本海員組合組織局主任の多筥さんにお伺いしたいと思います。  私はかねてから、一九七二年の三月でしたか、インドネシア政府がロンボクを回ってくれということを盛んに主張していたことを記憶しているのであります。当時から日本と三国共同でマラッカ海峡を海洋調査するということになって、第四次調査がことしの三月で大体でき上がる、こういうやさきにおける事故であるだけに反響はきわめて大きいし、事の重大性は大きいと思うのであります。私はその意味で、もう今日段階では新聞に報ずるところによれば〇・二%のいわゆる損失だということがいわれておりますけれども、山地社長が現地での発言というものは、あくまでも二十万トン以上のものがこのマラッカ海峡を通るということを発言いたしまして現地でひんしゅくを買っておるということさえいわれているのであります。運輸大臣はこのことについて厳重に注意をしたようでありまするけれども、問題は、このロンボク回りが安全上どうしても必要だというように私ども考えておりますけれども、この問題について御両氏はどう考えておるか、端的にひとつ御説明願いたいと思います。
  33. 佐野稔

    参考人佐野稔君) このたびの事故につきましては、たいへん皆さまに御迷惑をおかけいたしまして申しわけなく思っております。  ただ、私ちょっと疑問なんでございますけれども、何かこういうような私を迷わせるような、何と申しますか、あとここに——海員組合さんがここにおって、ここに菊田さん、佐野と申しますようなことがございますので、どうも何か間違いじゃないんでございましょうか、—————————
  34. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) ちょっと速記をとめてください。   〔午後二時五十三分速記中止〕   〔午後三時四分速記開始〕
  35. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後三時五分休憩      —————・—————    午後三時三十五分開会
  36. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  菊田参考人
  37. 菊田清平

    参考人菊田清平君) まず、先ほど佐野参考人の発言につきまして、本人の健康上の理由により思い違いをいたしまして、まことに不穏当な発言をいたしましたことを深くおわび申し上げます。  ただいま佐野参考人と別れるときに、くれぐれもあやまっておいてほしいということだけを言い残して帰っております。  つきましては、佐野参考人がまずこの席でごあいさつとして申し上げるべきことばをかわって申し上げます。  このたびの祥和丸事故に関しましては、皆さま方に多大な御迷惑をおかけいたしました。まことに申しわけございません。何ぶんにもこのような席は初めてでございますのでよろしくお願いいたします、というごあいさつのことばをもって始めるということになっておったのでございます。ところが、先ほどのような状態になりまして、まことに申しわけございません。  つきましては、先ほど佐野参考人の発言につきましては、委員長におかれましてしかるべく御処置をお願いしたいと思います。
  38. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 菊田参考人のただいまのお話、了承いたしました。後刻速記録を調査いたしまして、不適当な点につきましては処置いたしたいと存じます。
  39. 青木薪次

    青木薪次君 理事会の結論でありますので、私も了承いたします。ただ山地社長の現地での発言、本日の佐野参考人の発言といい、私はやっぱり皆さん方がいわゆる海運事業をやられておることについてはそれ相当の御苦労はあるでしょう。しかしながら、国会なんて関係ないという態度は、これは絶対にいけないと思いますので、今後そういう立場で、ひとつ今後のこともありますので、出席していただきたいというようにお願いします。  それから特に、やっぱり国家、国民にわびるという姿勢というものは絶対必要なことですから、その点もひとつあらためて申し上げておきます。  国の税金なり、あるいはまたその他多大の経費をかけて、マラッカ海峡やあるいはまた将来の海運事業等について、やはりわれわれは、この問題について国民の犠牲によるものが相当ここにつぎ込まれているということを皆さんもよくひとつ考えて、今後の対処の基本的なひとつ気持ちの骨格としていただきたいというようにお願いいたしたいと思うのであります。  先ほどの私が申し上げました点について両参考人からあらためてひとつお聞きいたしたいと思うのでありますが、ロンボクを回る関係について私は安全性の問題から取り上げた。それから経費その他の関係等についてはいろいろあるだろうけれども、私は〇・二%という関係については、これはやっぱり安全航行という立場、現地での三国の立場というものを考慮して、そして若干の経費はかかってもこちらを回るべきだという立場に立っているけれども会社側の立場全日本海員組合立場というものについてごく簡潔に、ひとつ時間がありませんから説明願いたいと思います。
  40. 菊田清平

    参考人菊田清平君) ただいまのロンボクの通峡問題について、私どもはロンボク通峡ということになりますと、世間でいわれておりますように、二、三日間の遠航路である、確かにただいま申されましたように、安全性とのかね合いということも十分考えなくてはならないということは承知しております。本件につきましては船主協会あるいはマラッカ海峡協議会、こういったところで今後審議されていくものと思います。したがいまして、本件につきましても運輸省当局からもいろいろお世話いただいておると思いますので、その結論を待ちたいというふうに思っております。
  41. 多筥良三

    参考人(多筥良三君) ただいま青木委員の御質問は安全と経済性ということのように承りましたので、まず安全のほうから申し上げたいと思います。今回の事件を契機にしまして海員組合といたしましては、現在外航労務協会との間で、安全協議会というところで交渉を持ちまして、組合なりの要求を出して話し合っておるわけでございます。その内容は、喫水が十五メートル以上、重量トン数で十五万重量トン以上の船舶はマラッカ・シンガポール海峡を通航しないでほしい。通航しないということになりますと、現在、日本のタンカーは大型タンカーだけで約百二十二隻が中近東から油を運んでおるわけでございますが、これは大型船です。これらが全部制限にひっかかるわけです。そうしますと、当然日本の国民経済、国民生活に大きな影響があるということは、これはもちろんわれわれ十分に承知をしております。しかし、マラッカ海峡というものを通らなければ道がないのかということになりますと……
  42. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 暫時休憩いたします。    午後三時四十二分休憩      —————・—————    午後三時五十分開会
  43. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  多筥参考人
  44. 多筥良三

    参考人(多筥良三君) それでは、中断いたしましたので、もう一度初めから申し上げたいと思います。  今回の祥和丸事故をきっかけにいたしまして、マラッカ・シンガポール海峡の通航がきわめて危険だと、この問題につきましては、後刻機会を与えていただきますればまた説明いたしますけれども、海員組合といたしましては、絶対危険性があるという立場に立ちまして、喫水十五メートル以上、重量トン数で十五万トン以上の船舶については同海峡の通航を制限してほしいということで、外航労務協会、外航中小船主労務協会——これは私どもの交渉相手でございますけれども、二団体との間で安全協議会というものを持ちまして団体交渉を続けております。  そうしますと、先ほど申し上げましたように百二十二隻余りの日本の大型タンカーが通れなくなりますので、当然それをとめるわけにはいきません。そこで当然航路を変更するという問題になるわけですが、私ども労働組合としましては、どの航路を通れ、この航路は完全だから通れというような指示はできない立場にあります。ただ、いろいろな航路があるではないかという立場から、とにかくマラッカ・シンガポール海峡を通航するな、適当な新航路を選択せよという立場をとっております。ただそうは申しましても、具体的に経済性もある程度保証された航路ということになりますと、先ほど先生がおっしゃったようなロンボク海峡ということに必然的になっていくのではなかろうかと考えておるわけです。そういうことでもちろんロンボク海峡の名称も一あがっております。  この航路の安全性はどうかということになりますけれども、この航路は中近東−日本の航路の長さで見ますと片道五百五十海里、往復一千百海里、キロメートルで申しますと二千三十七キロメートルになります、これだけ航路が延びることになりますが、安全性の面では非常に適当しておる。たとえばロンボク海峡の一番狭いところで横幅が七海里以上あります、十三キロメートルです。それから巨大船の一番問題点となる水深ですけれども、これは百四十メートルが沿岸近くまで延びておるという状態です。  現に東京タンカーの日石丸、これは三十七万重量トンございますけれども、それともう一隻グロブテイツ・トウキヨウ号、これは四十七万トンございます。いずれも喫水が二十六メートル以上になっておるわけで、これはどんなに詭弁を弄しても物理的に絶対にマラッカ・シンガポール海峡を通れない船でございます。この船が現にロンボク海峡を通って日本にあるいは中近東に通航しておるわけでございます。  安全性はこれ以上申し上げる必要ないと思いますが、次に費用の面でございます。  費用の面につきましては、先ほど青木先生もおっしゃっておられた〇・二%、こういう数字を血主側はあげております。しかし私どものほうで詳細にまでは検討はしておりませんけれども、おおよそ常識としての計算をしますと、この型の船がマラッカ海峡を通航する場合には、これはどうしても潮の関係いわゆる満潮時で水深が一番深くなった状態を選ぶ。それからできるだけ昼間明るいうちに一番むずかしいところを通りたいということになりますので、満載をして中近東から帰ってきます場合に、スリランカの沖合いを通りましてインド洋に出たときすでにスピード調整を行ないます。そしてちょうどマラッカ・シンガポール海峡に差しかかるころにいま申し上げたような条件が整うということで調整をしておりますので、それを入れますとここでほぼ一日分が延長するわけでございます。したがって距離的には五百五十海里で十五ノット前後で三日かかると単純計算ではなりますけれども、実質的には二日間だけの延長ということになるわけです。  それから航海に要する諸経費となるもののうちで、一番目に見えて大きなものは燃料費だと思います。祥和丸クラスの船でございますと、一日に重油百六十六トン程度消費をするということが出ております。現在の燃料一トン当たりの価格が約一万円でございますから、一日当たり百六十万から七十万円ぐらい、これを船主さんのおっしゃるとおり三日といいますと四百八十万から五百十万程度。したがって一日短縮しますから、この数字からもさらに引かれるということになります。  それから、この〇・二%、約一千万円という数字でございますけれども、このコストの中には減価償却費や借り入れ金の利子、それからもろもろの店費とか、いろいろなものも入れて計算をしておりますので、実質に船だけで出す損害というものになりますと、船主側が出しております数字よりも相当減っていくのではないか、このように考えております。  以上、御質問の内容にお答えいたします。
  45. 青木薪次

    青木薪次君 はい、よくわかりました。  そこで私は運輸大臣にお伺いいたしたいと思うのでありますが、海上交通安全法の立場からいってみましても、船舶安全法の構造上の問題からいってみましてもやっぱり相当問題があると思います。  特に事故の通報体制ですね。朝の五時半に事故が起こって、そして運輸大臣の耳に入るのが夜になってしまった、こういうことでは海運日本としての面目に恥ずる点はないだろうかというように実は考えておるわけでございます。そういった点から、運輸大臣は、特に船主協会が検討するということを聞いておるわけでありますが、この中にはいろいろな点が含まれているようでありますが、いまの海上交通安全という立場から考えても、あるいはまた行政官庁としての責任者立場から考えてみても、これらの通報体制と、いま海員組合の多筥さんが言われたしたような点を考慮いたしまして、ロンボク回りにすべきではないかという日本の政府立場というもので船主協会を説得する意思があるかどうか、この点についてお聞きしたいと思います。
  46. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 通報が運輸省の耳に入ったのがおくれておったということは事実でございます。この点はさっそく船主協会あてにもこういった油の流出等重大な事故の場合には監督官庁である運輸省に直ちに連絡するようにという注意を喚起しておきました。これは今後ぜひ守ってもらわなければならないと思います。  それからマラッカ海峡を避けてロンボク海峡を通るという問題でございますが、これもいま参考人からもいろいろお話がございましたように、確かにあのマラッカ・シンガポール海峡は航行には非常に危険な点もたくさんあることは従来とも知っておるわけでございます。ただいままで慎重に通過をしてきたわけでございますが、ここを通ることを制限するという問題は実はいろいろな各国との関係がございまして、そこでこの問題を処理しなければ日本の船だけそういうふうにするというふうなこともいろいろ問題があるわけでございます。そこでやはり危険を身に受けるのはそれぞれの海運事業者でございますから、今回の事故にかんがみて、まず船主協会なりあるいは海運企業者の間で今後の安全航行のためにどうしたらいいか、ロンボクを回るのも一つの方法でありましょうし、自主的に十分考えるべきであるということも指導をいたしておるような次第でございます。  この海峡を絶対通っちゃいかぬとかいうふうなことになりますというと、関連する国々がいろいろございますし、そういう点もございますので、この点は将来の問題として慎重に処理をいたしたいと思っておりますが、この海峡が非常に航行上、ことに大型のタンカーにとっては危険であるということは十分承知の上で、今後慎重に対処いたしたい、かように思っております。
  47. 青木薪次

    青木薪次君 私は、森中委員あとでまたいろいろこまかに質問されますので、終わりますけれども、全体として石油事故が続いております。したがって、このような事故に対して、さらに海洋汚染の問題も含めて、いま政府がただ単に企業家たる船主協会やその他業界の考え方に全部まかせるという、あるいはその立場を見守るという、そういう消極的な態度でいいだろうかどうだろうかということを考えてまいりますと、これは絶対にいけないと思うのであります。ですから、各国の日本に対するひんしゅくがいま相当ある段階において、積極的なひとつ安全の立場に立ってものごとを考えていくという立場をとるべきだというように私は要望いたしまして、私の発言を終わります。
  48. 森中守義

    森中守義君 先ほど大臣から、事故発生の地点はインドネシアの領海内であるという、こういうお答えがありましたが、そのとおりに確認してよろしいですか。
  49. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) インドネシアの領海内と了解していいと思います。
  50. 森中守義

    森中守義君 事件の発生から今日に至るまで、政府の姿勢というのか、いま一歩私の感じとしては少しすっきりしないも一のがある。  つまり、どういうような意味合いでこの事件を受けとめておられるのか、端的な言い方をするならば、単なる海難事故というそういう受けとめ方で対応されようとするのかどうなのか、この辺はどうでしょうか。
  51. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いま森中先生からお話がございましたように、私どもは、六日の事故発生以来、あの海峡で事故を起こしておる船を諸外国に迷惑をかけないように、できるだけ早くその事故の処理をするということに熱心にやってまいりましたことは事実でございます。  ただ、その間やはり国際的な動きがいろいろございまして、何と申しましてもシンガポール・マラッカ海峡の通航制限の問題であるとか、ロンボク・マカッサル海峡を通るという問題であるとか、この両問題はすべて国際間の問題でありまして、まずはシンガポール・マラッカ海峡については関係三国がございますし、ロンボクのほうにつきましてはインドネシアが関係してございますけれども、さらに、それを通過する——日本は一番通過量の多い国でございますけれども、それ以外にも通過する諸外国がございます。また、この問題がそういった関係国の間の問題だけで片づくのか、IMCOと申します政府間の協議機関で取り上げられる問題であるのか、そういった問題の国際的な動きをよく見定めなければいかぬということで、そういった方面にも事故処理と同時に関心を払いつつ現在まできたというのが私ども立場でございます。
  52. 森中守義

    森中守義君 これはさっきちょっと申し上げましたように、ただ単に民事海難事故という、こういう問題からとらえると非常に私は失敗する。端的な言い方をすれば、やはりこれは石油政策、エネルギー政策、その延長としての海運政策であり航行政策と、こういう見方から受けとめませんと大ごとになると思うんですよ。しかしながら、いま海運局長も言われたように、いろいろ考えてはいるけれども、どういう姿勢で政府が対応するのが一番いいのか、多少の迷いも一あるように思う。しかし私は、やはり事柄が事柄ですから、もう少しやっぱり政府が積極的にこの問題の先取りをするような状態で対策を立てる必要があるんじゃないかというように思うんです。  先日の商工委員会でしたか、運輸大臣がお答えになったのかあるいは通産大臣かどちらかわかれませんけれども事故というものは偶然性が非常に強い、そういう要素が強いんだと、こういう空は答弁があったようですけれども、その辺に私はこの問題の取り組みに対する、受けとめ方に対する政府のあいまいさ、無責任さがあるというように思うんです。  これはなぜそんなことを言うかといえば、もちろんシンガポール、インドネシア、マレーシア、いずれも国際的に開発途上国といわれる、わが国はこの三国に対していろんな形での——援助ということばは私はあまり好きじゃないけれども、通例援助といわれておりますからあえて申し上げるが、援助をやっておる。そういう援助を与えているから、まあまあこのくらいのことは許されるんじゃなかろうかという安易さ、あるいは沿岸三カ国の中でシンガポールとマレーシアあるいはインドネシアは、それぞれその国の事情から、こういう問題、マラッカ海峡に対する見解が必ずしも同一ではない。だから三国一致した話がまとまることでないから、それを巧みに操縦して逃げ切るならば逃げ切れるんじゃないかという、こういう発想があるのではないかということを多少勘ぐりたくなる。なければ幸い。それが一つ。  ですから、この際、大臣、私ははっきり申し上げておきたいが、こういう途上国でなくて、たとえば超大国、強大国の領海、その周辺でこの種事件があった場合に、いま政府がとっているのと同じような姿勢で対応しますか、どうでしょうか。
  53. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 事故が起きました場所が開発途上国に関連した地域であろうとでなかろうと、そういうこととは全然関係なく、われわれはこの問題の処理に当たる覚悟でやっておるわけでございます。  事故が起きましたので、とりあえずはとにかくこの事故を一日も早く処理をして、事故防止をやらなけりゃいけないということに実は専念をしてまいっておったのでございますが、ただ今回の事故がどういう原因でなったかということは海難審判庁その他関係国の調査等でいずれははっきりすると思いますが、いろいろな原因はあろうかと思いますが、その中で、あそこは地域的に非常に狭くて、水深も浅くて危険であるということは事実でございます。しかし、交通の要衝であることも事実であるわけでございます。それで、あそこにつきましては、日本といたしましても、昭和四十四年から関係三国の理解と協力のもとに、水路の調査あるいは海図等協力を得て調査をいたしておりまして、その結論がこの三月には出るというそのやさきに今回の事故が起きたのでございまして、非常に遺憾に思うわけでございます。  そういう地点でございますので、そこに関係三国をはじめ、あそこを通る船の所有国等の問題もございますので、先ほどのお話しのような点につきましては、今後、その推移を見がらな善処をしていきたい、こう申し上げておるのでありまして、海運企業者のほうに対しては自主的に十分考えるようにという指導をしながら、放置をしておるわけでは決してないわけでございます。いわんや三国の利害がかりに錯綜をしておるからといって、その利害をうまくあやつってどうこうしようというふうなことは毛頭考えていないことを申し上げておきたいと思います。
  54. 森中守義

    森中守義君 やや外交問題に踏み込む内容ですからね、たいへんむずかしい問題とは思う。けれども、私は閣議の決定であったかどうかわかりませんが、一たん運輸大臣が現地においでになるという、こういう決定が一度行なわれたようですね、そのことが間もなくキャンセルになった。その背景は一体何なのか。  つまり私がさっき申し上げるように、単なる民事海難事故という処理でこの場を逃げ切ろうという政府の姿勢なのか、へたに現地に行って関係三カ国に頭を下げれば、あと政府が何もかにもかぶらなくちゃならぬ、将来問題に火をつけてまいることになるという、そういう配慮であるのかどうなのか。何とはなしに国民としては合点がいきませんよ。  まあこれは私ども日本国民の独特の感情かもわかりません、国際的に通用するかどうかそれはよくわからぬけれども、しかし在来、外交の一つのパターンとしても、特定の国が特定の国に、政府自身のものではなくても、その範疇にあるものが悪い影響を与えた場合には、きちんと特使等の名目で出かけていって相手の国に礼儀を済ましていたということは決してその例が少なくない。なぜ今度はそれをおやりになろうとしないんですか。  しかも、いままでは海の生命線、ペルシャ湾から東京まで四十日間、血の一摘、油を運ぶための生命線がマラッカ海峡だ、こういわれてまいった。これはある新聞の表現によれば、経済性を追求していく神話である、こういうようにいわれておる。もうその神話の時代が終わろうとしている、新しい体制が生まれようとするのに、これはやっぱり先々のことを考えれば考えるだけに、なるほど海運企業がしでかした事故であったにしても、いわば一つの政策の延長、その内容一つなんですから、ちゃんと国の代表が出ていくのがあたりまえじゃないですか。保安庁あるいは海運局の担当の課長かどなたか行かれたようですけれども、これは正式な国を代表する意思の表明にはならないでしょうね。どうして大臣は行かれなかったんですか、何でためらいがあるんですか、その辺の背景を少し詳しく聞かしてください。
  55. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 今回の事故は、いろいろ現地の情報等を事故発生直後の情報等も総合して見ますというと、現地におきましては、日本のタンカーが座礁して油が出た、たいへん油が広がってきた、これをいかにして防ぐか、事故を最小限度にとめるかということにもっぱら専念すべきである、非常に冷静に現地においてはこの事故を受けとめて善後処理をしておるという情報が入っておったのでございます。私もまさにそのとおりであろうと思うわけでございます。  したがって、われわれといたしましては、事故を起こした船会社が迷惑をかけておる、あるいは事故防止、油の処理に協力をしてやってもらっておる関係各国にいろいろと指導を受けながら事故処理に専念してもらって、そうして一刻も早く事故処理をやることが何より大切なことである、こういうふうに受けとめまして、事故が起きましたのが六日でございますが、八日の日に運輸省の外航課長と保安庁の関係官を現地に派遣をいたしまして、その実情を調べるとともに、お手伝いのできることがあったら何かないかということで現地の大使館等とも連絡をとるためにやったわけでございます。で、きょうの晩、帰ってくる予定でございますので、帰ってきまして、その後の様子、現地の模様等も十分に聞きました上で、今後の処理に当たりたいと思っております。  なお、たしか十日あるいは十一日であったかもしれませんが、太平洋海運の社長を急遽現地に行くようにということで社長も出かけてまいると同時に、マレーシアのほうから中和剤がないから何とかしてくれということでございましたので、それも会社のほうを指導いたしましてチャーター便で送るというふうなことはやっておるわけでございます。  なお運輸大臣が行くべきであったのになぜ行かなかったかという御質問でございますが、実は、最初から運輸大臣がすぐ現地に行くというふうな話はなかったのでございます。一部にそういうふうなうわさが出ておったにすぎなかったのでございまして、私自身行きますとも言っておりませんし、また総理や官房長官から行ってくれという要請もなかったのでございます。私は、やはりこういう事故事故の処理をできるだけ早く敏速に処理するためにあらゆる力を尽くすべきである、かように考えておったのでございます。
  56. 森中守義

    森中守義君 大臣のその現地に行かれるという話は新聞の誤報ということですか。それならそれでいいでしょう。  ただ新聞の誤報であるかどうかは別といたしまして、あなたが向こうに行かれてじゃまになることはないんですよ。むしろこれは企業の代表が伴ったからそれでいいということでもないと思う、国家間の問題ですからね。だからさっき私がちょっと言ったように、たとえばアメリカもしくはソビエト、そういう領海内でこういう問題が起きた場合にどうなるんだと、やはり今回と同じような措置になりますか。だから、その辺がへたな勘ぐりかわからないけれども、どうもやっぱり日本政府のこの問題に対する対応のしかたは合点がいかない。  あいさつを受けていやな顔をしたり、あいさつに来たからひとつ難題ふっかけようという、そういうものじゃないでしょう。なるほどしでかしたのは一つの企業の中の問題であるかわかりません、しかし、よその国のことですからね、行きたくないと言われるのをさあ行きなさいと言うわけにいきませんけれども、これはやっぱり国家間には礼儀というものがありますよ、そういう意味で私はきちんとすべきものはきちんとすべきじゃないのか。もちろん現地のほうでは閣僚が来ないとか、あるいはしかるべき政府の代表が来ないという、そういったような報道が出たようには見ておりません。けれども、やはり長年マラッカ海峡を最大の通航点として通っている日本の船、それがしでかした事故に対しては、当然政府としては何かの形で先方のほうに誠意を尽くすのがあたりまえじゃないのかと、こう思う。  外務省来ておりますか。——外務省どういうふうに考えるか。これはもうある意味では外務省のワクの中に入った問題なんだけども、ただ、企業代表をやった、出先には大使、公使がいるからそれにまかせ切っていいという、そういう姿勢ですか。
  57. 中江要介

    説明員(中江要介君) この事件が起きましたときに、外務省がどういう受けとめ方をしたかという点は、繰り返しいろいろの場面で述べられておりますように、この事件が、このマラッカ海峡シンガポール海峡の航行安全全体の問題がいま国際的に非常な関心を集めているときに起きただけに、その及ぼす影響は、一つ事故の問題に限らないで、航行安全全体の問題に関連するという観点から、この事件の推移についても事件以上の関心を持って見守ってきたわけでございます。で、当初、この事故が起きましたときに、その原因、あるいはその被害の状況その他について、まず客観的な事実を正確に集めるということに主力を注ぎまして、そして沿岸各国がどういうふうにこの事件を受けとめるか、先生がおっしゃいますように、これについて日本国政府自身の姿勢というものがどういうふうに反映するかということも見守りましたところ、先ほど運輸大臣からも御説明がございましたように、現地のとりあえずの被害が及ぶ可能性の最も強いシンガポール政府の反応といたしましては、何よりもまず油濁の防止に全力を尽くしたい、で、その事故原因だとか、あるいはその被害の状況というのは、それはやがて落ち着いてというか、時間が経過してから調べることになろうけれども、とりあえずいま一番ほしいことは油濁の防止であると、こういう感触が非常に強く伝わったものでございますので、政府といたしましては、運輸省、外務省その他関係省庁で協議いたしまして、まず打つべき手は油濁防止のために何がしてあげられるだろうか、また何をすべきであろうかというような観点から運輸省の係官及び会社関係者も現地に派遣いたしまして、現地大使館、現地の会社の事務所の人と協力をいたしまして油濁防止に全力をあげるということでございまして、そうして油濁防止の措置が着々ととられるようになりましてから、沿岸諸国がこの問題を契機として、この事故のみに限らない航行全般の問題についての関心を表明し始めたということで、これについては日本も誠意をもってこの海峡の航行の安全と、不幸にして損害が起きたときの補償の問題、そういうものに対応していこうと、こういう姿勢で臨んでおるわけでございまして、当初からまず沿岸諸国の利害というものについては慎重にこれを検討してきたと、こういうのが実情でございます。
  58. 森中守義

    森中守義君 まあ、やっぱり私の感じとはだいぶ違いますね。それは当然なことでしょう、汚染防止に全力を尽くすということはね。それと国家間の礼儀というのは別なもんです。そのくらいの配慮があってもよかったんじゃないかと思うんですよ。  そこで、そういったようなことがさて議論になるかどうかわからぬけれども、もし第三回の国際海洋法会議、ジュネーブでいよいよ再開という場合に、いま少し感触として、日本政府がいち早く今回の事件で運輸省もしくは外務省のしかるべき責任者が行っておればよかったという結果にならなければいいと思うけれども、必ずしもそういうことが影響を及ぼさないという保証はこれもないと思う。すでにもうインドネシアでは——たしかシンガポールはよっていたその内容が違うからまあ多少の相違点はあるにしても、沿岸三カ国の会合を開こうと、こういう三カ国会議の提唱をしているようですね。さて、どういうものがそこでまとまっていくのか。カラカスのあの大騒動、直ちにジュネーブにこれは移りますよ。だから私は、これから一つにはそういう国際海洋法会議に対する対策ないしは援護対策、同時に国内におけるこれからの対策、まあ大別すればこういうことで一応の政府の見解をこの際すみやかにまとめておく必要があると思う。議論しておりますか。何か運輸省では大臣通達が出されたようですね。で、この大臣通達と海運局長の依命通達をずっと見てみますと、いまさら何をこんなことを言わなきゃならぬのだろうか、こういう気がしてしようがないんですね。ちっとも変わったことじゃありません。しかしながら、ことさらに改めたものじゃないけれども、こういうことを言わねばならぬような状態ということは一体何を意味するか。やはり事故は起こるべくして起きた、偶然の発生ではない、まあそういったように私は思う。で、こういうものがもっと早くから出ておれば今度の事故は相当防がれたというような気も一するんですよ。どうですか、海運局長
  59. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先生御指摘のとおり、一月十日に日本船主協会に対して、率直に申し上げまして私どももいまさらながらという感じもいたしましたけれども、この種の事故の再発を防止する、事故の絶滅を期するということは、海上運送に与えられた仕事として当然守らなければならない責任であると思いますので、この通達を再び出すことにいたしました。  前段では、このタンカーの安全対策について、すでに私どもも、さかのぼって申しますと、四十二年に、巨大船の建造が進んでまいりましたことを契機に、巨大船の建造問題の検討会議というものを学識経験者に委嘱して、運輸省として特にその安全通航について検討いたしまして、その結果を四十三年の一月に船主協会に出して、それを基礎に十分安全対策を立てるようにということを指示してまいったところでございます。特にまた今回こういう事故がマラッカ・シンガポール海峡で起こりましたので、すでに御承知のとおり、四十四年以来、わが国の官民をあげて、と申しますのは、政府とかOTCAとか、まあOTCAは政府でございますけれども、それからマラッカ海峡協議会、そういった手で協力を関係諸国にいたしまして、先ほどもお話が出ましたとおり海図の製作、もちろんそれに先立つ精密な測量というものもやって、関係の三カ国がもちろんなさる仕事ですけれども、日本の国としてもできるだけお手伝いをして、ようやく海図が完全にでき上がるというのがこの春であったということでございますし、それ以外にも施設の改善について関係諸国に御協力を申し上げてきたという経緯でございますが、今回の事故を契機といたしまして、さきの通達の中では、さらに通航方法ですとか、操船方法についての安全を期するように検討をしろということを船主協会に通達をいたしました。もちろん先ほどのお話のように、関係諸国のこれに対する態度というものがまず始まりでございまして、それにいかに対応するかという問題でございますけれども、わがほうとしてもそれに即応できるようによく船主協会に命じて、日本として検討できること、また関係諸国にお願いすることもございましょうが、そういった点について検討をするということを通達した次第でございます。
  60. 森中守義

    森中守義君 大臣ね、私は、外務省も一緒ですが、国のやり方にいま少し先見の明があっていいような気がするんですよ。どういうことかと言いますと、マラッカ海峡については、いま海運局長言われるように国際協力という名のもとにいろんなことがやられている。それだけに重要な海峡であったということはそれはわかります。たとえば四十五年、第一次調査、以来ずっと四次調査まで進んでいるね。何だか一説では七日に航路調整の会議というものが運輸省で開かれて、そして四月には新しい内容を持った何かがきまる、こういうように聞いているんですが、これでかなり日本政府マラッカ海峡に力を入れる、それと官民合同という言い方が正しいのかどうかわかりませんが、マラッカ海峡協議会、こういうものができている。これで船舶振興会とか海事財団とか石連とかいろんなものが参加をしている。それで金を出し合って仕事をやっている。ところが問題は、昨年のカラカスに至る領海の問題等が、この問題とどういったように見られてこられたのか、この辺が全然私にはわからない。昨年のカラカスでは、十二海里にしようということは、日本も当時は三海里、三海里と言っていたのに、余儀なく三海里説を捨てて十二海里になっているんでしょう。水産庁来ていますか——そういうことだね。ちょっと待ってください。それでおそらくはジュネーブの会議では十二海里になるであろう。しかも沿岸三カ国の中のひとりシンガポールだけが三海里であって、マレーシアもインドネシアも十二海里、しかもインドネシアは経済水域を二百五十海里もつけよう、こう言う。一体そうなった場合にどうなります、これは。かなり規制を受けますよ。いままでのような状態にはいかない。  しかし、領海十二海里というのはもはや国際的な通説になり、その潮流に乗っているわけですからね。そうなると、三ヵ国によってどういう規制がはめられてくるのか予測できますか。しかも現実に三十八万トン、四十八万トンという船はロンボク回りになっている。ならば何もペルシャ湾と東京湾、四十日でなければならぬということは、いわば経済ベースできめられたことなんでしょう。どうしてそれがロンボク回りにならないのか。マラッカ海峡構造改善のためにかなりの金が入っている、しかも企業もこれに入れている。しかし、領海の問題はもう目の前に来ている。インドネシア、マレーシアは重なった領海になるという、こういったような状態ではないんですよ。ここに先を見た仕事なのかどうなのかと私は言っているわです。かなりこれは構造改善をやり始める前のようでしたけれども、軍事的な問題にまでこれが引用されたことがありますね。記憶にありますか。イギリスがシンガポールから撤退をする、ベトナムの戦争はだんだん激しくなる、マラッカ海峡空白だから、こういう船団護送のために海上自衛隊が新たな艦隊編成やろうという、こういう話まで出たことありますよ。非常にそういうような問題は危険きわまりない一つの発想だと思う。政府はこれを否定されたようですけれども、現実的にそういうことに推移しておりません。それ非常にけっこうだと思う。  けれども、一体ジュネーブにおける今度の国際海洋法会議というものが、五八年以来片がついていないのだから、まだまだ決着がつくのは相当先のことであろう。それならばいまのうちにうんとここに入れ込んでおけというやり方は、あまりりこうなやり方とは思えない。行くときにはマラッカを通る、油を積めばロンボクに回る、こういう一つ考えもあるようですけれども、もうこのあたりで二十三万トン以上のものは、すでに三十八万トン、四十八万トンをロンボクに回しているわけですから、そういったようなことをやったほうがいいんじゃないですか。インドネシア、マレーシア、数回にわたってそういうことを警告しているようです。シンガポールは、これはもう名うての政商ですから、そう簡単にいかないかもわからぬけれども、要するにもうこのあたりで多少国際情勢の先を見た航行のコースを変える時期に来ているのではないか。こまかい技術的なことは私はわかりません。けれども、とらえ方は、そういったようなとらえ方をも一うすべきじゃないですか、これは大臣にもう一回、青木君の質問の延長ですけれども、ロンボク回りということは、そういうことが当然背景になり、しかも将来の予見としてそういうものに検討を加える段階に来たということが問題だと思う。大臣、どうですか。
  61. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) カラカスでも問題になり、今後ともこの問題は海洋法会議で問題点であるということだけを考えてみましても、これが非常に重要な問題であると同時に、ここを通航するということが日本のみならず海運を持っておるところの関係各国でも非常に重要な問題であるということの認識がますます強くなるわけでございます。  そこで、いま森中委員が言われました、今後の問題についていろいろ御意見ございました。おそらくそういうふうな問題について、たとえば私のほうで船主協会に十分今後の問題について検討をするようにというふうなことを言っておりますので、そういった議論があの中でもいろいろやっておるのではないかと思います。で、いまここであの海峡を取り巻く三つの関係の国が、この事故に端を発したといいますか、あるいは従来ともかなり危険な水域であるということの認識には変わりはございませんと同時に、しかし重要な意義を持つ海峡でございますので、今度の事故について関係三国がいろいろと協議もすることと思います。そういう場合に、日本といたしまして、その三ヵ国のいろんな協議に、先ほどのお話ではございませんが、支障を与えるというか、あるいは要らざる考慮を促すというふうな結果になるような発言なり何なりをこの段階でするということは私は避けるべきであると思います。したがって、いま森中委員のおっしゃいましたいろんな議論、われわれも当然内部においてそういう問題も議論をすることと思いますけれども、今日の時点ではあの船が離礁はいたしましたものの、まだ海上に浮遊しておりまして、油の抜き取りをやっている。また流れた油の処理もほとんどこれ以上広がらないというところまでいっておりますが、まだ処理をしなければならないという段階でもございますので、今日の段階ではこの事故処理についてできる限りの協力をするということで、今後の問題としていまお話のような点は今後十分考えて検討をしていきたいと思っております。さっきも申し上げましたように、きょうの夕方には派遣いたしました係官も帰ってまいりますので、それらを含めまして現地の情勢、事情、あるいは係官が現地の日本の大使館ともいろいろ意見交換をしておることと思いますので、そういうものを十分聞きました上でひとつ今後の問題は処理していきたいと、かように考えております。
  62. 森中守義

    森中守義君 どうも議論がかみ合うようでかみ合いませんね。大臣、慎重であることはけっこうです、影響するところも一大きいでしょうからね。ただ私はやり方がいいとか悪いとかじゃない。むしろ中和剤のあっせんであるとか、打つべき手を敏捷に機敏にやられたという、そう意味ではたいへん事故それ自体をとらえた場合はいいと思う。いいというのは、その措置は適正であったと、こう思うんです。処理自体私は責めているんじゃない。しかしこの事故——マラッカ海峡発生する事故というのは偶然に起こるもんじゃないということなんです。さっき海員組合の多筥参考人からもお話があっていたように、また私どもで収集した資料でも四十年以来十年間に相当数の船底をこすったとか接触をしたとかいう、もう幾つもの事故があっています。おそらく、もし日本の近海であんなものがあれば海難審判庁を幾つつくっても足りないような状態だと思う。世論が承知しませんよ。そういったように、とにかく事故の多発地点、それは海が浅いから、狭いから、巨船の航行には適していないから、こういう一語に尽きると思うんです。ですから、事故の処理それ自体がいい悪いという議論ではなくして、これをひとつ契機に先々の見通しを立てようじゃないか、それが誠意であり政策だと私は言っているわけです。そのためには何も四十日間というものが不変の原則じゃないはずだ。四十日が四十二日になろうと四十三日になろうといいじゃないですか。これはやはり一つには乗り組んでいる皆さん方の人命の安全の問題もありますよ。関係各国に対するいろんな配慮も必要ですよ。しかも油は一定限られた期間のものだけじゃございません。  何か今度九十日の備蓄増強対策というものが新年度予算で組まれているようです。これなど考え合わせていきますと、もしいままでどおりにマラッカ海峡を通すということになればどういうことになりますか、ものすごい通航量になるんじゃないですか。もちろん私は備蓄九十日ということは、今回の水島問題等を含めて、そう安直に政府がお考えになるようにいこうとは思わない。けれども政府一つの計画を持とう——しさいは予算委員会等に譲るといたしますけれども、ああ簡単にいくものじゃない。けれどもマラッカ海峡というものに限定して考える場合に、九十日の備蓄を石油政策として増強しようということになれば、いままで以上にマラッカ海峡は繁雑になりますよ。しかも船はもっとでかくなるかわからぬ。このままの状態で推移していいかどうかということを実は大臣に問うているわけです。目下調べ中であるから、そこまでもの言うにはちょっと早過ぎるとか、影響するところが大きいということでは私は委員会としては通らない。私は政策を聞いているわけですから、いま少し国際会議における日本の対応のしかた、その見通し、マラッカ海峡の現状、こういうことを考えるならば、もっと大胆に一つの方向というものをきめたほうがいいんじゃないですか。  ちなみに、どうなんですか、九十日の備蓄増強によってどういったような計算になりますか。現在の私の試算では完全に一日に一・二、三往復ぐらいはふえるという計算になるようですけれども運輸省そういう計算しておりますか。これはひとつ大臣のいまお答えを求めて、にわかにそうかという答えになると思わないけれども、そういうようなことは大臣当然頭の中に入れ込んで答えてもらいたいと思いますね。それを最初に聞いて、あとに九十日の備蓄増強によってどのくらいマラッカ海峡の通航がふえるのか、それをひとつ答えてください。
  63. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 実はこちらへただいま参りまして、エネルギー庁の部長に、備蓄量が現在の備蓄から、何か現状では三十数カ日あるようですが、九十日にふえるということでどのくらい備蓄量がふえるのかというお話を伺いましたら、三千八百万キロリッターぐらいふえるのだということのようで、それを一度に備蓄をふやすということでなくて、五年間という御計画のようですから、五年間にいたしますと、そうたいした分量にはならないのじゃないかという計算を実はいたしたわけです。三千八百万キロリッターでございますので、三千三百万トンぐらいになるので、それを二十万トンタンカーで運びますと百六十五航海ふえるわけでございます。二十万トンデッドウエートのタンカーで三千三百万トンの油を運びますので、百六十五航海ふえますので、これ直ちにすぐこ……
  64. 森中守義

    森中守義君 三百航海になるのじゃないのか。
  65. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いいえ、百六十五航海でいいと思いますが、そこで直ちにいまこれだけの分量をふやすということはたいへんでございますけれども、五年間ということになりますと、年間で三十三航海になります。その程度であれば、現在実はマラッカの通航量というのが、TOVALOPという世界のタンカー会社が油濁防止のためにつくっている、自主的な協定でつくっておるところの機構がございますのですが、その資料によると、マラッカは四千三百隻年間通じ通っているという計算でございますので、それに対してはそうたいした分量でないと、五年間で運んでくるんだったらたいした分量じゃないんじゃないかという計算を実はここでしたんでございます。
  66. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 今回の事件を契機に将来の見通しを立てるべきである、森中委員の御意見に私は決してさからっておるわけではございません。今回の事故の処理が終わったらまたもとへ戻っていいんだというようなことで言っておるのではございません。ただ今回の事故を契機に将来の見通しをいかにするかということを立てる場合にも、やはり政府として具体的ないろいろな方策を打ち立てます場合には、関係三国に影響するところもいろいろございますので、そこで、いまの時点ではまず事故の処理をやって、そして今後のそういう見通しなり計画については、いろいろ先ほど申し上げたように、森中委員の御発言されたような問題点についても同じような議論を内でも外でもやっておるわけでございます。しかし見通しとして、きょうの時点で、将来はこうするんだということはまだ時期尚早である、こういう意味で申し上げておりますので、御了承いただけないかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。
  67. 森中守義

    森中守義君 それは運輸大臣一人でおやりになるわけじゃないから——。しかし、あれですね、このままでいいということにはこれはならない、少なくともマラッカ海峡につきましては。ロンボク回りにするのか、あるいは別途の方法を何か講ずるか、たとえばクラ地峡のパイプラインの計画を急ぐなどということを通産では計画している。だから、何か問題が出ますと、ぴょんぴょんとこういうものが出てくるんですね。全く場当たりでよ。何を政府考えているんだ。——このプランを聞く時間もございませんけれども、これなどは今回のマラッカ海峡の事件を契機に飛び出してきた。何か従前にこういうものがあったにはあったでしょう。それから通産省は取り急いでこういうものに検討着手したと、こう言う。さてこういうものが実現の可能性があるのかどうなのか。しかもこれは日本の国内の問題でありませんからね。しかも援助計画などというものも非常に大きな問題になっている今日ですから。で、そういうものを背景に据えながら、こういったものができるかどうか、重大な関心を私どもは払いますよ。けれども、要するに何か転機をつくるには、痛ましい不幸な事件、好ましくない事件というものが必ず一つのポイントになってくる。そういうことで政治や政策の展開というものがいいのかどうなのか。それを賢明かつ総明なる木村運輸大臣の時代に政策の先取りをやってくれと、こう言っているわけですから、これは検討してくださいよ。このままでいいということはありません。  現実的に、ロンボク回りにするならする、こういったようなお考えなどはできるだけ早目にまとめてもらいたい。しかも具体的にその内容を、時間がなくなりますので問うておきますが、さっきちょっと申し上げた国際資料整理会議というもの、これは保安庁ですか。これはマラッカ海峡の四次に至る調査結果を整理集約して一つの方向を出すものある、こういうように私は聞いておった。たまたま今回の事件が発生をした。これが一つの起爆剤になるという可能性もあるだろうけれども、かたがた四次にわたる調査結果というものは今回の事件で抜本的にもう一回見直すというのか、あるいは私がさっきから申し上げているように、もうロンボク回りにする、それならばこういうことはやや方向が変わってくるわけですね。で、そういう意味でこの国際資料整理会議、これは一体どういう議論をして、どういう結論になったのか、当初予定しておったように四月に方向づけがきちんと出せるということなのかどうなのか。しかもその中にロンボク回りと、あるいはから船はマラッカを、帰るときの積み荷はロンボクをと、こういったような航行分離方式などというものがこの中でとられるのかどうなのか、会議のひとつ内容を披露してもらいたい。
  68. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) ただいま森中先生から御質問になりました水路関係の会議でございますが、これはそういう先生御指摘のような性質の会議でございませんで、ただいまやっておりますのは四次の調査、つまり測量船が行きまして水深をはかっております、そのはかっておりますデータを三カ国が持ち集まりまして、それを海図の上に落とす作業をやっております。したがいまして、音響測深儀ではかりました水深をチャートの上に落としていく、こういう非常に技術的な作業でございまして、データ整理とわれわれは通常言っておりますが、データ整理が終わりました後に、この四カ国の共同測量ということになっておりますので、四カ国の水路の測量の責任者が集まりまして、最終的にこれで間違いないという確認をいたしました上で実際の地図をつくっていくという段取りになっております。で、現在まで四回の測量をやっておりますが、三次までの測量の過程において発見されました浅い場所あるいは岩礁等につきましては、そのつど水路通報等によりまして出しておりまして、部分的な修正を行なって現在使っております地図に載ってるおるという状況でございます。
  69. 森中守義

    森中守義君 大臣、最後に申し上げておきますが、何か保安庁で三上船長に対しまして交通往来危険罪で追及する、何かこういうことが保安庁の方針だということで、しかも法務省と検討の結果だということが新聞に報道されている。で、もちろん事故ですから、もうすべて不問に付するというということはこれはできないでしょう。けれども私は、いままでのこういう問題のずっと経緯を見ますと、もともと政府及び企業、まあいわばペアになった政策を進めてきておる、非常に無理を承知でマラッカ海峡を通してきた、綱渡りですよ。そういう無理なことをやらしておいて、ちょっとした不注意か何かのために事故発生した。あたかもすべての責任は船長あるいは乗り組み員というようにすりかえられちゃ困る。まず反省をすべきもの、政策の見直しをすべきもの、それは政府であり、企業です。船長はそういう特殊な罰則によって審理を受ける。これをいままで推進をしてきた、やらせてきた政府と企業はじゃだれがその責任をとるのか。私は今日の仕組みではそういう政策あるいは行政上の責任は国会で責任を問う以外にない。いまここで行政訴訟法をにわかに運用するということもできないでしょう。ですから、この際やっぱり法務省と保安庁が相談をして、往来危険罪で三上船長を喚問し、追及するという前に、政府並びに企業みずからがその責任を感じてもらいたい。広い太平洋、大西洋のどまん中で、公海で起きた事故じゃない。もともとが無理な所を通らしておりますよ。その船長の自主的な判断じゃない。ペルシャ湾と東京間を四十日で飛ばせといってやらした結果がこれなんです。その神話の終わりです、ひとつ神話の終わりにしてもらいたい。さっきから申し上げるように、四十日が四十三日かかったっていいじゃないですか。よその国に迷惑をかけたり痛ましい犠牲者を出してまで日本の経済性の追求は必要ありません。国内の公害も一緒です。企業優先という時代はもう過ぎたんです。ですから当然なこととして、こういう三上船長を危険罪で追及するというその前に、政府、企業みずからがえりを正し反省をしてもらいたい。当然、海難審判等に付されるということになるでありましょうが、問題は船長の責任であった、乗り組み員のやり方が悪いからデッドロックに乗り上げたんだということで、真相というものをすりかえてもらっちゃ困る。これだけはひとつお約束してもらいたいと思うです。どうですか、大臣
  70. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 保安庁と法務省とのやりとりのことは、私は存じておりませんが、いずれにいたしましても交通事故が起きました場合には、事故の直接の原因はどういう原因であったかということを正確に把握する必要はあると思います。  で、その結果、処罰するとかあるいは責任を追及するとかいう問題はその次のことでございまして、当面はあらゆる事故につきまして事故の第一原因、直接原因というものを明確にする義務があると思いますので、それは一生懸命にやらせます。その事故原因がはっきりしたあとをどうするかという、いわゆる処罰であるとかいう問題につきましては、いろんな背後事情なり情状等もあるでありましょうから、それはそのときに十分配慮をする必要があると思いますが、さしあたっては事故原因をまず明確にするということで今後の事故防止にも役立てなければなりませんし、それを第一目的としてこの事故原因の正確な把握をいたしたい、かように考えております。
  71. 森中守義

    森中守義君 外務省、ジュネーブに臨んでいくすでに腹がまえはできておりますか。つまり領海の十二海里ということは日本政府としては異論がありませんね。これが第一点。  それから運航行政に当たっている運輸省では、ロンボク回りということは正確に答えを出しておりませんけれども、いまの国際関係、ことにジュネーブを念頭に置く場合、インドネシアあるいはマレーシア及びシンガポール三国の出方等を見た場合に、行くときのから船はマラッカ、積み荷の場合にはロンボクという、こういったような措置をとるほうが外務省としては、国際社会に対する日本の出方としてはむしろ賢明ではないかという考え方は持ちませんか。領海と、その二つのことをちょっと最後にお尋ねして私の質問を終わります。
  72. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 第三次海洋法会議で領海十二海里が一般的な方向になっているということは御指摘のとおりでございまして、わが国といたしましても、そのようなラインで国際合意ができるならば十二海里を支持していいというような立場をとっております。海峡問題につきましては、領海が十二海里になるに伴いまして、世界でのおもな海峡百二十前後が領海の制度のもとに入ってしまうわけで、海峡の通航問題というのは今度の海洋法会議の成否を決するほどの非常に重要な問題になっているわけでございます。  この問題につきましては、インドネシア、マレーシア、スペイン、モロッコといった海峡沿岸国の側から始まりまして米ソに至ります諸国がいろいろの提案をいたしております。昨年夏のカラカスの会議では、参加国のうちの半数ばかりしか本件についての発言をいたしておりませんので、どの提案が大勢を占めると、あるいはそういうふうな傾向になっているかということは、いま申し上げることはできないわけなんでございますが、いずれの提案も内容に多少の違いありますが、船舶航行安全、それから汚染防止という点をうたい上げておることは、すべての提案に共通した特徴でございます。わが国といたしましては、今度の事件の結果、おそらく世界の人々がマンモスタンカーの海峡通航問題について非常に大きな関心を持つことになるだろうと思いますので、今度のジュネーブ会議に向けてわが国の立場を守りつつ、同時に沿岸国の利益にも十分な配慮が払われるような公正妥当な制度ができるように会議の内外で、あるいは公式、非公式の場で日本代表団として外交折衝を行なっていきたいと考えておる次第でございます。
  73. 森中守義

    森中守義君 結論はどうなんだ、結論は。
  74. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 具体的なマラッカ海峡、ロンボク海峡通航の問題につきましては、海洋法の一般制度の規定でございますので、海洋法の一般法の規定といたしましては、交通安全保持のために航路を指定することができる、また航路分離方式を沿岸国はとることができるという規定があるだけでございまして、そのもとで具体的にロンボクがいい、あるいはマラッカでもいいんだというような、そういうふうな問題については特に条約会議においては議論がなされることはないと予想いたします。
  75. 森中守義

    森中守義君 ちょっとね、あとの問題、少し私の説明が悪いのかもわからぬけれども、そういう意味でないんです。要するにジュネーブ会議が始まる、今回の新しい事件というものがいま言われるようにスペインやモロッコ、こういうところもかなり同調してくるであろうということが予測される。で、それであるならば、できるだけわが国の国益というもの、それは在来の主張ですね、そういうものを守っていくということであるとか、これから先いろいろな問題に対する国際社会の対応策として現実にマラッカ海峡を通過する場合、行きも戻りもでなくて、から船は通っていいだろう、それから帰るときにはロンボクを回ってきたほうがよくないのか、そういう現実的な航行分離の方式を採用していくほうがそういう国際会議なり国際社会に対していいのじゃないのか、その辺は外務省どうだと、こう聞いている。運輸省はまだその答えを持っていないと、こう言うから、外務省が外交という面から考えた場合はどうだろう、こう聞いているわけです。
  76. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 海洋法会議というものは……
  77. 森中守義

    森中守義君 条約の問題じゃないよ。
  78. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 立法会議に参加するのにどのような制度が望ましいかという立場で私たちものを考えておりますので、政策のほうはアジア局のほうに御答弁いただいたほうがいいかと思います。
  79. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま御質問の日本自身が行きはマラッカ海峡、帰りはロンボク海峡という航行分離方式をとることがこれからの国際趨勢に有利に働くのではないかと、各国の理解を得やすいのではないかという御質問だと思いますが、この点につきましては、先ほど木村運輸大臣も言われましたように、沿岸諸国の利害関係の持ち方というものがだんだんきめこまかくなっておおりまして、けさも新聞で報道がありましたように、リー・クアンユー・シンガポール首相とマレーシアのラザク首相が会談をいたしました。その結果どういうことが考えられているかといいますと、今度の三カ国外相会議を開くにいたしましても、その場合にはやはり航行安全施設を完備しようじゃないか、それから航行する船の喫水線の問題を議論しようじゃないか、こういうふうなことが議題ということになっている段階で、いまのところインドネシアは、先ほど先生、三ヵ国会議を提案したとおっしゃいましたが、あれはシンガポールにありますインドネシア大使館がそういう観測を出しただけで、マレーシア、シンガポールはまだ反応していないというふうなことで、まだ必ずしも沿岸諸国が、日本がそういう政策を自発的にとったからそれを必ずアプリシェイトするかという点については判断しがたい面があると、こういうふうに見ております。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最初に参考人にお聞きしたいと思います。  今回の事故先ほど参考人の御説明をお聞きいたしましたけれども、非常に大型船が通るには無理だったと、したがって海員組合としても船の大きさ、喫水線等については一定の規制を設けるべきではないかという結論を出していたというふうにお聞きをしたわけです。私はこれは当然のことだと思う。いわばこれは狭い路地裏に大きなダンプカーが走り抜けていたために、起こるべくして起こった事故なんです。それならばダンプカーはその狭い路地裏を走らずに、多少回り道をしても広い道路を通るべきだということになるのはあたりまえだと思うんですね。  そこで海員組合としては、これは実際にこの海峡を通っている人たちの命にも関係することであるし、また今回のような事故を起こせば関係国に多大な迷惑を及ぼし外交問題にもなるわけですから、一体海員組合自体としては、このマラッカ海峡問題を契機として、伝え聞くところによると、きょうもこの問題が議題となって会議が開かれておるというふうにもお聞きをいたしておりますけれども、どのような方針をおきめになろうとしているのか、またどのような要請を関係官庁になさろうとしておるのか、あるいはまたどのような注文を船会社、船主に対してなさろうとしておるのか、その点を端的にお伺いしたいと思います。
  81. 多筥良三

    参考人(多筥良三君) マラッカ海峡の通航に関する技術的な問題につきまして、いまの御質問にお答えする前にちょっと触れておきたいと思います。  いま先生がおっしゃいましたように、まあ路地裏をダンプカーが屋根をこすりながら走る、まさにそのとおりでございます。もっと具体的に申しますと、今度の事故のあった海域付近では、これはシンガポール沖合い一帯の地形を申し上げますと、東口の灯台、これはホースバーグという灯台がございます。これは日本側の入り口になるわけですが、ここからシンガポール沖合いまで約三十二海里ございますけれども、この灯台の入り口そのものはきわめて狭い。技術上の常識でございますけれども、船というのは自動車のようにくるくる回りません。ストップをかけてもすぐとまりません。もう相当走ってしまいます。そういう船に対してこの海域というのは非常に危険な状態になっております。それを過ぎますとしばらく余裕が出てくるわけですが、シンガポール沖に至って、バッファローロックのあるところから以西は非常な危険な水路になっております。そしてこのバッファローロックから西へ行く場合に北側をメーンチャンネル、南側をフィリップチャンネルというふうに言っておりますが、二つに水路が分かれております。これは自然条件でございまして南北五海里約九キロです。東西十海里、十八・五キロメートル、これの浅瀬、それから岩礁、島嶼等がありまして、それらに、自然条件によってこの水路が分かれておるわけです。そしてそれを過ぎますと、マラッカ海峡のいわゆる本通りに出るわけですが、ここにブラザーズ灯台というのがございまして、ここでまた合流をするわけです。  このバッファローロックとブラザーズ灯台の沖合いは合流点でございますので、これまた非常に危険であると、そうしてここについては一番狭いところは約三百五十メートルから四百メートルぐらいの可航幅しかない、そうして潮流も二ノットから三ノット、秒速に直しまして一メートルから一・五メートルの流れがございます。そこを月間平均、先ほど役所の方から御説明ありましたけれども、四千三百隻が一カ月間に通るわけです。そういうことから見て、いま先生のおっしゃいましたように、まさに路地裏をダンプカーどころではないありさまになっておることを申し上げておきたいと思います。  それからこの航路について、先ほどからマラッカ協議会ということも言われておりましたけれども、このマラッカ協議会が、これは四十三年から測量に入っておるわけです。そして四十三年当時非常に底触事故発生しておりましたので、このままだと二十万トン以上は通れないだろうと、そういうおそれがあるということで航路を整備するためにマラッカ協議会を通じて相手側と交渉し、そして測量あるいは航路標識の設置ということをやってきております。それが第四次精測ということで実は昨年暮れにやっと完了したわけです。本来安全ということをもっと重視してもらえるならば、測量が終わるまで十八万トン、二十万トンという船なんかは投入すべきではないのが常識だと私ども考えておるわけです。ところが、いよいよ底をこすっておる、はかりましょうということで四十三年度から五十年度まで七年間かかってやっと精測ができた、こういう全く冒際的なことをやってきておるわけでございます。  その上に昨年の四月十三日に光珠丸という船から保安庁の水路部に報告があったと思いますが、これは水路部のほうから無線告示によって各船舶あてに無線電報で公示をしております。これがバッファローロック付近の北西側で、しかもマラッカ協議会の推薦航路上で新たな浅所が発見されておる。これは十九・五メートルと二十・五メートルです。そしてこの中を巨大船が走る状況というものをちょっと触れておきますと、大体祥和丸クラス、これは二十三万七千トンですけれども、船の長さが約三百二十メートルございます。それから幅が五十二メートル以上、深さが二十六メートルです。そして満載状態になった場合の沈下部分、いわゆる喫水が十九・五メートルになります。これが従来の一万トンクラス、戦前は一万トンというと非常に大型な豪華船であったわけですが、これらの船でしたらそう問題はないわけですけれども、こういう大型になりますと操縦性能というものが非常に落ちてまいります。そして一たんかじを切り出すと、それをもとに戻す力というのは非常に強くかかりますので、なかなかもとへ戻らない、すぐ五、六百メートル突っ走ってしまうというあれを持っております。  それから、かといって徐行運転、いわゆる陸上交通でいうところのスピードを落とせということで船のスピードを落とされた場合にどうなるかと申しますと、今度はかじききがきわめて悪くなるわけです。ですから私はまだ今回の事故とは直接関係はないわけですけれども原因がわかっておりませんので関係ありませんけれども、おそらくあそこを通る船は多少のスピードはダウンをしておるだろうけれども、そうたいしたダウンをしておらぬのじゃないか、しておるとすれば、また新たな危険が発生する、そういうことが言えるわけです。また最近の高度の技術を取り入れた自動化船というのがございますけれども、これは機関部を無人化にして船橋、いわゆる運転室において自動制御して走る船でございますけれども、これが狭水道に入ったからといって、急にスピードをゆるめるという場合には非常に大きな手数がかかるわけです。そしてまた広いところを航走する場合、自動化に持っていくという場合に非常にまた時間が必要になってくる。そういうことで、いま申し上げたような状況から推して、そうスピードも落とさないで通り抜けるというケースも考えられないではないわけでございます。  それから、そういう状態でこういう浅いところを通りますと、船に沈下状況というのが起るわけでございます。船底と海底との間がきわめて間隔が狭くなりますので、そこを急激な勢いで水流が流れますと圧力が低下をしまして、停止状態で浮いておる状態から船そのものが沈下をする。しかもタンカーになりますと、非常に巨大なんで、そういう船型による影響だと思いますけれども、船首部が一・五メートルぐらいさらに沈下をする、こういうふうな現象が報告されておるわけです。  したがってマラッカ協議会の推薦航路というのは大体二十三万トンクラスで二十二メートルあればこれが航行可能だと、こういうふうないわゆる推薦航路、私ら職業的な立場から見まして、そういうふうに受け取られるわけですが、ならばいま申し上げました十九・五メートルの喫水で一・五メートルになりますと、二十一メートルです。ボットム・クリアランスといいますけれども、船底と海底がたった一メートルしかないわけです。もし一メートルの波浪、うねりがありましたら、下が岩でございますから、もう底触をするのはあたりまえの状態になってしまうわけです。そういう意味から、私どもは、少なくとも、いろいろ専門家の方たちはおっしゃっておられまずけれど、船が走るのは二メートルあればいい、三メートルまではいいと言うけれども、これはほんとうに港内における操船ですね、いよいよ港に着かなきゃいけないと、そういうときにタグボート、いわゆる引き船とか、そういうエスコートを十分にやれる海面ですね。ところが全くそういうところを二時間半も走るわけです。ですから全く常識にはずれたことであって、少なくとも先ほどの御質問でお答えしましたけれども、二十二メートル程度でしたらどうしてもやはり喫水が十五メートルと、七メートルぐらいは押えておきたい。  それから先ほど森中先生がおっしゃっておられましたように、からならいいのかということになりますと、巨大タンカーが空船で走る場合、その視界をさえぎる、いわゆる死角ができるといいますか、操船室から前方を見た場合に二マイルも三マイルも先が見えないわけですね。ですから、そうなるとそれは喫水の問題ではないけれども、操縦性能といわゆるそれに伴う航路のいわゆる狭隘さ、それからふくそうといいますか、混雑する航路の中でこれまた大量に投入した場合にはやっかいなしろものになってくると、そういう見地から十五万重量トン未満のものを通せと、それ以上のも一のは通すなと、こういう要求を掲げて先日から船主協会と団体交渉をしておるわけでございます。まあロンボクを通せとかそういうことについては、一つの例としてわれわれそれもあるではないかという主張なんで、いままで政府の方々もいろいろおっしゃっておられましたけれども、まあそれには私はあえて触れませんが、それはやってできないことはないはずです。  それから船長は航法上航路を選ぶ権限がございますので、海洋法がいま世界的に認められておりませんので、まだ成立しておりませんので、ロンボク海峡が国際海峡であれば船長がみずからの意思によってその航路を選べることになっておるわけです。これはもちろん領海で占められている場合は別でございますけれども、いまの場合にはこれは船長が会社からおしかりを受けることを覚悟すれば通れるわけです。ところが、そうなりますといままでの状態では首になってしまうわけですね、船長さんは。ですから私どもはそういうことを考えて、これはどうしてもわれわれがやらなきやならないということで、昨年暮れに私どものほうで組合の大会、一年に一回の定期大会を開いたわけですが、その中でも安全問題については、場合によっては年間いつでもストライキをもってでも戦うと、こういう姿勢でやるということを決議しております。  きょう開かれました全国評議会におきましてもあらためてそのことを確認をし、決議文を作成をいたしまして各関係先のほうにお送りする予定になっております。   〔委員長退席、理事黒住忠行君着席〕 その決議文もございますので読み上げます。    海上交通の安全確保と海の汚染防止の闘い    に関する決議   去る一月六日未明、シンガポール海峡バッファローロック西方付近で座礁、大量の積荷原油を流出させ、沿岸諸国に多大の不安を与えている超大型タンカー「祥和丸」の海難事故は、今やわが国だけの問題にとどまらず、国際的海難事故として広がりつつある。また、昨年末過密重化学コンビナートに臨接する東京湾入口において発生した大型LPGタンカー「第10雄洋丸」の衝突炎上事故は、港湾の防災対策の不備や海上交通安全法の欠陥につき、重大な問題を提起した。さらに、水島港の三菱石油タンクからの大量の重油流出事故は、わが国国民にとってかけがえのない瀬戸内海東部一円の環境を破壊し、広範囲にわたって死の海を広げつつある。   これら一連の事故は、その根底において全く原因一つにするものである。すなわち、安全性を無視し、ひたすら経済性のみを追及してきたわが国のエネルギー政策の欠陥であり、企業資本とゆ着した政治、行政の反国民的高度経済成長の論理にあることは明らかである。   とりわけ、今回の祥和丸事故は、直接の技術的原因は別として、船型を大型化し、安全を無視して大量輸送を追及してきた結果、マラッカ海峡における航路上の不備が派生し、よって発生した海難であることは、あまりにも明瞭である。   マラッカ・シンガポール海峡は、従来から南北物流の要衝であり、船舶の航行量は年々増加し、今や全くの過密状態にあるといえる。そしてこの海峡の航路実態は、最狭部で水深二〇メートル以上の航路幅は、四〇〇メートル以内に限定される箇所があったり、いたる処に浅所が散在し、航路内にも未知の浅所が多数あると推定されている。その上、同海峡の最狭部付近においては潮流が速く、航路の曲折とあいまって、極めて航行上危険な海域である。   このような難所に吃水が深く、操縦性能が悪いため、可航範囲が極端に制限される超大型船を通峡させているわけで、まさに、無謀といわざるを得ない実態である。過去においても、同海峡通行中の超大型船の船底接触事故あとを絶たず、今回の事故も、まさに起るべくして起きたものといえる。   かねてより、本組合は、船舶の安全対策として「丈夫で安全な船」を造り、「海上を安全に航行」できる状態を整備し、「公害や災害」をこさない環境づくりにあることを主張し、こうした諸対策を度外視して先行する船舶の大型化に強く反対の意を表してきた。   しかし、石油、鉄鉱、海運など関係業界は、「トン当りの建造費」を安くあげ、「大量輸送」による運賃コストの引下げ、人べらし「合理化」による乗組定員の削減で、人件費の軽減を計るといった経済性追及のみの政策を推進してきた。そして、一方においては、国民にインフレと独占価格を、われわれ船員には、厳しい労働強化を強要しつつ、通産行政、運輸行政を私物化し、船舶のとめどもない大型化に狂奔してきた。この間、本組合の再三にわたる警告にもかかわらず、関係業界は「技術革新・科学の進歩」は、歴史の流れ、社会の要求と豪語してきたのである。   そして、その結果は「ぼりばあ丸」、「かりふおるにあ丸」の沈没であり、「むつ」の欠陥であり、また、「第10雄洋丸」、「三菱石油タンク」事故、そして、今回の「祥和丸」ではなかったのか。   これら一連の高度経済成長政策の落し子たちによって、もたらされた損失と荒廃のつけは、いつも弱者たるわれわれ自身に、そして、子孫にまわってくることを直視しなければならない。現に、これらの海難についてみると、その真の原因は絶えず国家権力の手によって隠蔽され、その責任が追及され、苛責なき制裁を受けるのは、いつも現場の船長や乗組員といわざるを得ない。   三菱石油の流出油事故は、瀬戸内海を死に至らしめながら、なんら刑事責任は問われず、一方、「第10雄洋丸」の小川船長らは、如何なる措置がとられていただろうか。   すでに、「祥和丸」船長に対して刑事責任の追求の段取りが進められているという。真の加害者は罪にならず、被害者のみが罰せられるこの社会の仕組みに対し、われわれ船員は、激しいいきどおりを押えることができない。   今こそ、われわれは、安全を阻害してきたものは誰か、その根底にあるものは何かを直視しつつ、真の海上安全確立のため、可能とするあらゆる闘いを組織しなければならない。このため、第三十四回定期全国大会で確立した年間ストライキ権を背景として、すでに要求している「海上交通安全確保に関する要求」ならびに、今回の「マラッカ・シンガポール海峡通航制限要求」を当面貫徹すべき目標として、総力を挙げて闘う。  以上決議する。   昭和五〇年一月一七日           全日本海員組合           第一三八回全国評議会  以上でございます。
  82. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 そこで、時間の関係もありますから、最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、いままでの御答弁をお聞きしておりますと、どうも要領得ないわけです。この事故は起こるべくして起きた、じゃあこういう事故防止するためにどうしたらいいか。この航行を行なう場合の船の大きさを規制をするという問題が一つ。あるいはまたマラッカ海峡を通らないでロンボク海峡を迂回をする方法が一つ。いずれかの方法をとらなければ、またまたこの種の事故が起きないという保証はないわけです。一体どうしたらいいかということです。いままでの御答弁は、何か油の海を泳いでいるような要領を得ないような御答弁ばっかりです。それではもう事は済まないと思いますね。   〔理事黒住忠行君退席、委員長着席〕 一体大臣としてはどのようなお気持ち、いまの海員組合の決議というのは率直に私は耳をかさなければいけないと思うけれども、この海員組合のきめたことに対する大臣の見解はどうかということが一つ。  それからこれはもう一つ会社側にも聞きたかったわけでありますけれども会社側の参考人の態度は先ほどのとおりです。いままで事故が起きて、たとえば国鉄あるいは私鉄あるいは航空会社等の責任者参考人として出席をしていろいろと述べたことがあるけれども、今回のように取り乱した姿というものは見たことがない。責任者としてはたしてこの事故対策、今後の安全航行についてまかせられるのかどうかという問題が一つあります。まあちょっとこれは心もとないという感じを受けました。より以上に強力な行政指導というものが必要になるんじゃないかと思うのでありますが、その点についての大臣の見解はどうか。  以上の点をお伺いいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  83. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) いままでの御質問で私がお答えしましたとおりでございますが、要するに、事故の起きました場所は関係三カ国の利害それぞれ相錯綜する地点において起きた事故であるということに今回の事故としてはたいへんな特色があるわけでございます。この特色を頭に入れながらこの事故を契機として、将来どう見通しを立てるかという問題を考えなければいけないわけでございます。  そこで先ほど私が申し上げましたように、なかなか複雑デリケートな国際間の問題もあるわけでございますので、ことにここの水域を今後どういうふうに通航するか、またどういうふうに通航しちゃいけないかというふうな問題、すべてここをいわば管轄しておるかっこうの関係三カ国が今後どういうふうにその問題を取り扱われるかと。その水域で事故を起こしたのは日本の船であるわけでございまして、そういう立場から考えましても、いろいろわれわれとしては、内部においても、また海運会社の団体であります船主協会等においてもいろい議論をしておることは事実でございますけれども、いまこの時点で、それじゃこの事故にかんがみて今後こういう措置をとるというところまでいまの時点で言うことはいろいろ反響が多いので、それはいまは私たちの立場としては言えない。また思いつきのような結論を出して、早まったことを言ってもいけない。で、きょうは私のほうから派遣いたしております二人の係官も帰ってくることでありますし、現地の事情も、より一そう意向なり事情がはっきりこちらも認識できるわけでございます。そういうこともございますので、今後どう対処していくかということにつきましては、先ほど私が申し上げましたようなことでひとつ御理解をいただきたいと思います。  ただ今回の事故が、いずれにしても非常に平素から事故が起こりやすい危険な水域であるということは事実でございますので、これは今後の対処の方針としては十分考慮して今後の見通しを立てなければならないということはもうはっきりいたしておるわけでございます。  それから、いま参考人がいろいろ読まれました決議等を拝聴いたしまして、船員組合という立場からは私はもっともな点が非常にたくさんあると思っております。こういうことも今後の対処のしかたの中で十分配慮をいたしたいと思っております。  それから、先ほど会社側の参考人が非常に取り乱しておられたのでございますが、何せその、現在社長が向こうへ行っておりますし、専務が留守を引き受けて日夜不眠不休でいろいろ事後処理の手だてを講じておるのでございますので、かなり過労におちいっておられるんではないかと思いまして私は同情を禁じ得なかったのでございますけれども、そういうことで大事な事故の処理に粗漏があったり、あるいは手おくれになったり、そういうことがあってはいけませんので、こういう点は運輸省といたしましても十分注意もいたしますし、また手伝い得る点がございましたら手伝うように努力いたしまして、そういうことのないように十分注意をするつもりでおります。
  84. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それでは、マラッカ海峡の問題でなるべく重複は避けて質問したいと思いますが、特に今回のマラッカ海峡で起こった日本の一隻の座礁事故という問題が、わが国のエネルギー政策に私は将来における重大な問題を投じたのではないかという点を、私は私なりに感ずるわけです。あるいはまた、この問題が国際的にも非常に大きな反響を呼ぶ問題になってくるということを私は強く感ずるわけです。  こういう問題について、先ほど来からいろいろ議論をされておりますけれども関係各省の認識というものが、発表できない段階の問題がいろいろあるにしても、やはりもっと明確な態度で臨まなければならないのじゃないか。例をかりれば、民間ベースの問題で処理をしたいというようなこういう運輸省の態度、こういう問題は非常に問題ではないかということを私は強く感ずるわけです。  したがって、この問題に対していろいろ御意見も先ほどありましたけれども、特にエネルギー政策の運営に当たっている通産省、あるいはまた沿岸諸国の反応をどのように外務省が感じているかということについての意見を賜わりたいと思うんです。
  85. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 日本経済が今後正常な運営を遂げていくために必要なエネルギーを確保するということが通産省資源エネルギー庁の責務でございますが、その確保については、日本経済が非常に大規模なものになっております現在、しかも国際的なエネルギーの確保でいろいろな問題が起こっております現在、たいへんむずかしい問題だと考えております。ことにこのエネルギーの大宗を占めます石油につきましては主として産地が中東でございますので、中東から日本まで持ってくる輸送問題がまた非常に大きな問題であろうかと考えております。したがいまして、今回の事故はこのエネルギーの輸送について、われわれにとって十分反省をしなければならない問題を提起したものというふうに考えております。したがいまして、今後のこの問題の解決、あるいはこの問題を踏まえての今後のエネルギー資源の確保という点につきましては、運輸省、外務省その他関係各省と御相談をしながら、十分今回の事故を大いな反省の材料といたしまして、検討してまいりたいというふうに考えております。
  86. 中江要介

    説明員(中江要介君) この問題につきまして外交的には二つの側面があると、こういうふうに私どもは受けとめまして、一つの面は、今度の事故の事後処理というものについて、沿岸各国に日本の誠意のあるところを十分に示さなければならない、沿岸国の理解なしにはこの海峡の安全航行はないわけでございますので、この沿岸国との間に十分な相互理解があるためには、まずこの事故の処理——当面、最初の措置として、油濁の防止に始まりまして、事故原因調査その他について、現地の大使館はもとより、関係会社関係省庁とも協力いたしまして、日本側は誠意をもって事故の処理に当たるという姿勢を示すと、こういう点にまず注意をいたしたわけでございます。  もう一つの側面は、先ほど来御議論のございますこの海峡全体のこれからのあり方について、どういうふうに対処するかという問題でございますが、これは海洋法会議の世界じゅうの海峡制度の問題とも関連し、かっこのマラッカ海峡シンガポール海峡、あるいは場合によりロンボク・マカッサル海峡というような、日本にとってあらゆる面で非常に重要な地域の海峡の将来の航行の安全をどういうふうに確保するかという問題について沿岸国の考え方、感じ方というものをしさいに検討して誤りなきを期したいという点で、海峡航行制度の一般の問題として検討していく、この二面に留意しつつ対処してまいりたい、こういうことでございます。
  87. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 ちょっと外務省のほうはあとで海洋法とからんで質問しますが、その前に石油問題ですね。特に重大な反省をしなければならないという、こういう問題でございますけれども、まあ長期的に見てこれからますます石油……、ますますと言って、これ語弊かもしれませんけれども、経済成長はそれだけ伸びるわけはないと思いますけれども、やはり現時点から昭和五十五年あるいは昭和六十年を見通した場合にはやはり石油の輸入量というのがふえることはもう当然の理であり、したがって、そういう観点からいきますと、今回の一隻の事故かもしれませんけれども、やはり将来のエネルギー輸送の問題について、特に石油輸送の問題とからめて資源輸送の体系が変わるんじゃないかというような点も私は考える。現在の輸送体制ではマラッカ海峡、ロンボク海峡の論議はいろいろあるにしても、やはりエネルギー資源のこの輸送という問題に対して通産省はもっと考えなければならない。実際の実務は運輸省がやるにしても通産省として考えなければならない問題が含まれているのではないかと思うんですけれども、この点について伺います。
  88. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) いまお話がございましたように、将来を見通しますとエネルギーの節約に極力つとめる、ことにその中の、ほとんどを海外に依存しております石油の使用量を節約するといたしましても、日本経済がある程度の成長をしてまいりますためには、昭和五十五年度に四億キロリットルあるいは六十年度に五億キロリットル以上、そういうふうな石油が要るというふうな計算が昨年通産大臣の諮問機関でございます総合エネルギー調査会でも数字が出ております。これについてはまたいま再検討をいたしておりますが、現在の段階ではそういう数字が出ております。したがいまして、このような大量の石油を海外から、しかも主として中東から輸送するということについてはやはりいろいろむずかしい問題があろうかと思います。したがいまして、今後の輸送方式につきまして、あるいは一つの、これは全く現在まだ検討の段階でございますが、中間地に石油基地を設けて中継するというふうな案も検討案としては出ておりますが、そういうふうなこともいろいろ考えながらこの輸送を考えてまいりたいと思います。その過程におきまして、先ほど来いろいろ各先生からお話がありましたように、単純に経済性だけを考慮することができない、その輸送の安全性も十分考慮しなけりゃいけないという点は今回の事故からの反省でもございますので、そういう要素も織り込みながら全体として石油の輸入がスムーズに行なわれるような方策を考えてまいりたいというふうに考えております。
  89. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 いまエネルギーを日本の国に輸入している問題が、液化ガスですか、それと石油ですね、これがおもなエネルギーの輸入だと思うんです。これは将来液化ガス等も相当ふえてくると思うんです。これは昭和五十五年あるいは六十年の見通しですね、通産省はどのようにはじいているのか。これは経済成長が、私どもが知った資料では大体五・五%あるいは六%ぐらいの成長率に見合う石油あるいはエネルギー供給量しか確保できないというのが、昨年の産業構造審議会ですか——等の問題で出ていると思うんです。したがって、いまの輸送体系からしても、相当船を大型化するのか、あるいは船を相当ふやさなければならないのか、あるいはまた液化ガス等については海外船に全部たよっているという日本の造船上の問題があるのではないかと思うのです。こういう問題等を含めてどういうふうに考えているのかということをお聞きしたい。
  90. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 液化天然ガス、いわゆるLNGにつきましては、このエネルギーの性格がいわゆるクリーンエネルギーでございまして、公害対策上非常に有意義であるということからこの海外での開発輸入というものを極力はかっておりまして、現在の予測では、昭和四十七年にはわずか輸入量が百万トンのものでございますが、大体五十五年度では最低二千四百万トン、それから六十年度では最低三千六百万トンというものを確保してまいりたいということで現在計画をしてまいっておりまして、現在では総エネルギーに占めるLNGの比率は一%にも一満ちませんが、昭和六十年度では大体六、七%には持っていこうというふうに考えております。その輸送の問題につきましては、この専用のタンカーであるLNGタンカーが必要でございますが、これについては運輸省がいろいろ御計画を進めていただいておるというふうに思っております。
  91. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 そこで運輸省に聞きたいのですけれども一、実際に昭和五十五年あるいは六十年、これは来年からの経済社会発展計画等とのにらみも出てくると思います。しかしながら、いずれにしたっていま通産省の見通している最小限のこのエネルギー確保ということは必然的な問題だと思うのです。この問題についての輸入方法ですね、輸送上の問題あるいは先ほど言われた液化ガスの輸送の問題については、昭和六十年に三千六百万トン、海外に全部用船をしているという、こういう実態です。こういう問題に対する開発はどのように行なわれているのか、これを参考に聞いておきたい。
  92. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 石油全般につきましては、大体日本船の四〇%がタンカーでございますけれども、今後とも計画造船の方式で成長率に合わせて必要なタンカーの増強をはかっていきたいというのが私どもの計画でございます。これは先般、海造審の御答申も得て、ここ五年間ぐらいに千二百万ないし千三百万トンぐらいの計画造船と自己造船と合わせてでございますけれども、船舶をつくっていくということがどうしても必要である。その中にかなりのタンカーをつくっていくということを計画をしてございます。LNG船につきましては、先生御指摘のように、遺憾ながら現状では外国の用船に全部負っているというわけでございます。私どもも何とか日本でこのLNG船の建造ということをやっていきたいんで、検討は従来からも進めておるんでございますけれども、いままでのところ実はいまもお話がございましたように、一%程度のLNGの占めるシェアということでございまして、現実にどこのLNGの生産地が開発されて、それと輸送計画がどう結びつくかというのがあまり明確でなかったんですけれども、今後こういうふうに発展してまいりますと、何とか日本船でというのは、御指摘のとおり私どもの気持ちなんでございます。ただ、一ぱい実は現状では三百六十億から四百億円する、載貨容積十二万五千立方メートルの船が必要でございますので、こういった資本費の負担にはちょっと現状ではたえられないということでございまして、なかなか経済採算ベースに乗らないという悩みがございまして、その計画が行き悩んでおるというのが現状でございます。
  93. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この問題で運輸大臣の意見を聞いておきたいんですけれども、このLNGの輸送船については、将来ともやはり用船にたよると、外国船の用船にたよるという、こういう考え方で日本は進むのか。通産省の考え方でいくと、将来三千六百万トンの輸入をしなければならないという、エネルギー問題の根本的な輸送問題になってくるわけですね。これについての運輸省の対応は私の聞くところによるとだいぶおくれているような感じを受けるのです。まあ経済ベースもいろいろあると思いますけれども、これに対するやはりしっかりした見解を運輸省として持っていなければならないのではないかということを強く考えるわけですけれども、いかがですか。
  94. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) ただいま海運局長から御説明申し上げましたのが率直な現状でございます。何しろ船価が非常に高い船でございます。最近ようやく日本の海運も希望が見出せるような経営状態に一部なりつつありますが、まだ大半は過去の借金の支払いに追われておるというような状況下でございますので、将来の構造としては、御指摘のようなところまで用船でなしに日本船を建造してまかなわなければ、エネルギー資源のほとんどを外国に仰いでおるという現状でございますから、平和時はともかくといたしまして、日本をのけて輸送の途中においていろいろな紛争等がある場合も予想されるわけでございますから、そういうことを考えますというと、やはりできる限り日本船でまかないたい。こういうことは変わりはございませんが、なお将来に向かって十分そういうつもりで努力をしていく以外に、いまのところいま直ちにそこまでいけるという実情でないのでございます。非常に遺憾でございますけれども、今後の努力目標としては十分われわれも考えておるわけでございます。
  95. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 これは先取り的な政策の問題でありますけれども、やはり役所のなわ張り的な考え方じゃなしに、やはり日本の資源確保という問題からこういう問題は検討しなけりゃならない問題ではないかと思うのです。まあ、これは要望です。  で、実はいま海運局長からも答弁のあったように、やはり昭和六十年あるいは五十五年になりますと、相当輸入にたよらなけりゃならない。この石油の輸入の問題、特に輸送の大型化の問題ですね。やはりまあ大型のほうが確かにいいことはわかり切っている問題ですね、コストからいっても。いろんな問題点からいっても非常に利益等の問題は考えられるわけでありますけれども、しかしこれは港湾局長がいないからわかりませんけれども運輸大臣でもだれでもけっこうですが、通産省にしてみりゃCTSの建設が、やはり地域住民との問題でなかなか建設されないのは当然だと思うのです。あるいはまた国内の港湾施設を見ましても、その大型船が入ってこれるような日本の港は、これからは建設できないのではないかという点を強く考えるわけですね。こうなった場合に、石油輸送の大型化の問題と、それから輸送方法について、特に今回のマラッカ海峡とロンボク海峡との輸送経費の比較等もあわせて、やはり大型輸送という問題について、運輸省はどのような見解を持っているのかということを、将来を見通してお聞きしておきたいと思います。
  96. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 御承知のとおり日本のタンカーの船型は、いまから七、八年前までは八万トンぐらいがスタンダードでございまして、重量トンで申しますと十五万トンぐらいでございましたが、どんどんと大きくなりまして、もう現在では総トン十三万トン、重量トンで二十五万トンぐらいがあたりまえという、団大船としてはスタンダードということになってまいりました。その間大型化のメリットが出まして日本の海運の伸展に寄与してきて、それで安定的に石油を運んでくるのに非常に役に立ったということは事実でございます。  ただまた、経済性と同時に安全性ということからいろいろ取り上げられているのも御承知のとおりでございまして、あまりに一つのタンクを大きくすると、万一の事故のときにたいへんだというようなことで、タンクの大きさを制限するというような国際的な動きも出ているということも事実でございますので、そういった経済性と安全性の面から、どの程度までタンカーを大きくしていくかということは、十分検討しなきゃならぬ問題だと思います。現在御承知のとおり、一番大きな四十七万デッドウエートであるとかというタンカーは、鹿児島の喜入に基地をつくりまして、そこまで来てあとは二次輸送で、小さい船に載せかえて日本の基地へやってくるというようなことをやっておるので、これは将来、まあ東京湾などがふくそうするという観点からは、ある程度そういったところに基地をつくって二次輸送にたよらなきゃならぬということも、港湾事情として考えていかなきゃいかぬのじゃないかと思っております。そういうことで、将来の方向としては、やはり経済性と安全性と両方見ながら、船型の点を考えていかなきゃならぬ必要があると思っております。
  97. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 この大型輸送の安全性と経済性の問題これはいろいろ時間をかけて議論をしなけりゃならない問題であろうし、そこで私は、特に今回の事故問題について、きょうは海員組合の方が見えていらっしゃいますので、参考に伺いたいのですけれども、四十二年以降、相当この大型船が採用されるようになってきた。そうしますと、いままでの船を、今回の祥和丸の船長も、何航海かはマラッカ海峡を航海しておったわけです。しかし大型船は初めてだという、私はこれは誤りかどうかわかりません、聞いておるわけですね。こうなりますと、やはり大型船に対する船長の訓練というか、十万トンから二十万トン、二十五万トンとかいう、こういう形になった場合の船長に対する訓練とか、あるいは待遇というか、そういう問題についての船主側と船員組合との間の話し合いはどういうぐあいになっておるのか。この問題が第一点。  それから先ほど来も一問題になりましたけれども一、ペルシャ湾往復日数四十日の至上命令的な、船長がもう少しゆとりを持ちたいと思っても、実際四十日の航海日数で帰ってこなきゃならないという、こういう経済性の追求の問題、船主側のですね。こういう問題に対して船長はもうどうにもならないという、実際にもうそのとおり航行しなければならないという、今回、夜航行してはならないところを航行したといういろんな話も出ているわけでありますが、やはりこれは経済性の追求から出てきた問題ではないかと私は考えるわけです。したがってペルシャ湾から往復四十日という問題がはたして妥当なものなのかどうなのか。  それから第三点は人員の配置問題ですね。今回の祥和丸の実際の人員配置、これは適正であったのかどうか。それからピストンダイヤで、日本へ帰ってきてわずかの停泊ですぐに折り返ししなきゃならないという、こういう問題とこの操船事故とが実際にどういう関係になっているか、この問題だけではなしに、いろいろそういう問題が関係あるのではないかということを私は考えるんです。  それからもう一つは、マラッカ海峡は実際に、まあ十五万トンという組合の要望が出ておりますけれども、実際十五万トンあるいは喫水が何ぼですか、十九・五ですか、こういうぐらいがほんとうに妥当な線なのかどうか、こういう点についての見解をお伺いしておきたいと思います。
  98. 多筥良三

    参考人(多筥良三君) お答えいたします。  船長の超巨大船に乗り込むについての訓練の問題ですけれども、御承知のように船舶の運航に関しては、運輸大臣がおられますけれども運輸大臣の名で海技免状というものをもらっておるわけです。これは甲乙丙それぞれ分かれておりまして、外航船員につきましては、遠洋航路につきましてはすべて甲種船長の免状が必要になるわけです。従来、こういう技術の急激な発展ということの以前にこの海技免状制度というものが取りきめられておるわけです。その当時はほんとうにこんな二十万トン、三十万トン、四十万トンなんていう船は想像だにできずに、またそういうことを言えばマンガを言っておるのではないかということさえ言われた時代につくられた海技免状制というものをそのままとっているわけです。  ですから、もちろんこれらの人を養成する学校は商船大学が全国で二校ございます。それから商船高等専門学校が五校ございます。これで教育課程のカリキュラムというところで当然やられておるわけです。そういうことで行政的な海技免状というものがございますので、まあわれわれ組合のほうが船長についての教育訓練というものを特別に労使交渉事項として話し合ったということはございません。  それから二番目に四十日の航海。ペルシャ湾——内地を四十日で突っ走る、これが妥当かどうかという、これは技術面からいいますれば、それは船の性能そのものは非常にいいものですから、途中障害さえなければ四十日が三十日になってもそう問題はないわけです。当然私ども労働協約では内地における休養日の時間と入港から出港までの時間等も労働条件としてきめてきておりますので、船そのものの経済性については、スピードについては別に制限するような交渉は行なっておりません。ただ問題は、途中の航路とかそういうことで安全問題は論議しております。  それからその次の人員配置が適正かどうかという問題ですけれども、これらにつきましてもそれぞれ私どものほうの支部——直接会社の問題について話し合っております支部機関でそれぞれの船ごとに話し合いをしながら、いわゆる団体交渉で定員というものをきめてきておるわけです。何といいましても、だからそれが絶対に正しいのだということはわれわれも断言する自信はないわけです。と申しますのは、まあこういうふうに日進月歩で技術が変わってきておりますので、そのときに応じたその場その場での話し合い、研究ということをやっているということしか言えないんじゃないかと思います。  それから、ピストン航海による——いわゆるこれは先ほどの二番目の御質問に対するお答えと共通していると思いますけれども、これが操船上の事故につながらないかということなんですけれども、まあ間接的にはそれは絶対ないというふうには言えないと思います。ただ直接的にそれが、たとえばマラッカ海峡を通って起きた事故がそういうものに直接あるというふうには考えられないんではないかと思います。何といいましても私どもの見方としましては、マラッカ海峡そのものの航路条件といいますか、それが超巨大船に合わないというふうにとらまえておるわけでございます。  それから、マラッカ海峡を十五万トン、十五メートル以上の船は通すなという組合の主張は、そうすればそれ未満の船について保証できるのかどうか、安全が組合も保証できるのか、あるいは根拠があるのかという御質問でございますけれども、これは保証はいたしません。ただ祥和丸事故を起こし、その前にも昭和四十三年から四十九年の七月にかけてマラッカ海峡シンガポール海峡で九件の衝突事故が起きております。四隻の船が沈没をしまして、一隻が炎上しております。ですから、これらの船の中には小さいのもございます。一万一千トンぐらいの船もございます。と申しますのは、これは船舶が非常にふくそうしているということですね。単に足の問題とか、そういうことではなくして、これは、今後ますます交通量がふえてくれば、総量規制ということを、トン数とかそういうことでなくて、しなければいけない。で、私どもがここで出しました要求というのは、船主さん側にもはっきり申し上げているのですけれども、いますぐ打つべき手は何か、少なくともこういう事故が続発しているではないか、そうしてひとまずパーセンテージを下げておいて、その上で今後起こり得る問題は継続をして安全協議会で労使間で解決できる問題は進めていこう、なおかつ、労使間で解決できない問題については政府関係方面にお願いをしよう、こういう態度で臨んでおりますので、十五万トン、十五メートルの喫水未満になれば安全だ、絶対安全だということではございません。  以上、お答えいたします。
  99. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それで運輸大臣に伺いたいんですけれども、今度のこの事故原因等については、これは今後解明されると思うんです。しかし、いまこうやって話しをしている間にも、一昨日ですか、またタンカーが衝突しているわけですね。現在も、いま通っているわけです。こういう問題を考えるときに、やはり今後の事故防止対策として、緊急対策として何かなすべき問題点は何点かはあると思うんです。たとえば船体の強化に着手することであるとか、いろいろ具体的な対策——対沿岸国との外交上の問題もあるでしょう。しかし運輸省当局自体として、やはりこういう事態に対しての自主的な防止策というものは、緊急対策というものは講ぜられるのではないかと思うんです。この事故以来、具体的にどういうような問題を緊急対策として講じているのかどうか、この点について。
  100. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 海運の事故のみならず、事故全般に通ずる問題でございますが、先ほども、今度の事故にかんがみて、事故防止に徹底して取り組むように通達を出したことが毎度のことではないかという御指摘を受けましたけれども、やはり事故というものは交通事業におけるほんとうにやむを得ない悪ではないかというふうにすら私は思うわけでございます。したがって何回注意をしてもし足りないものであろうとすら思うわけでございまして、要するに事故が起きた場合には、事故を起こした原因者自体が非常な損害をこうむり非常な犠牲にあうわけでございますので、まずいやしくも交通事業に従事する者はみずから事故防止に細心の注意を払わなければならない。それにはそれぞれの交通機関によって細心の注意を払うべき要点というものはおのずからわかっておるわけでございますし、また運輸省としてもそれぞれの要点についてもはっきり示してきておるわけでございますので、私はまずその原点に返って、海運業者が、あるいは交通事業者が事故防止に一生懸命になって取り組む。ことに船を運航し車を動かすそういう最前線の責任者は特に注意をすべきであるというこの基本原則をほんとうに徹底して守ってほしいとこう思うわけでございます。  今回の事故も、起きた場所が非常に国際間の利害のふくそうするデリケートな地点でありますだけに、この事故を契機といたしまして、今後この地域についての事故をどういうふうにするかという問題は、あるいはいままで皆さんから御意見がございましたように、ここを通航をする船の大きさに一定の制限を設けるべきであるという御議論もございました。また、ここを通ることがもともと危険な水域であるから他の水域を使うようにしたらどうかといういろんな御提案がございます。もちろんわれわれもそういう点は十分検討をいたしておりますけれども、何せ本件のこの事故につきましては国際間の利害が非常に錯綜いたしておるところでございますので、いま事故を起こした、またこの水路をよく使っておる日本、特に政府が、ここをこの事故にかんがみてこれからどういたします、どういうふうにいたしますということについての政府の見解を表明するということは、まだその時宜を得ないのではないか。検討はいたしております。そういう意味で私は再々申し上げるように、いまここで今後の策をはっきり申し上げるべきではないとも考えております。  もう一つは、やはり早まって、あるいは思いつきでいろんな方法を言ってみましてもかえって危険も多いわけでございますので、今回の事故は、特に係官を二名も派遣しておりますから、それが帰ってきまして実情をもっと正確に詳しく聞くということも必要だと思っておりますので、しばしばお答えしたような状況で、現在は関係国のこの水路に対するどういうふうな対処のしかたをされるかということも見守りつつ、しばらく事態を見ていきたい、こういうことでございます。
  101. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 私はそういう対外的にはまだ発表できない問題がいろいろあると思うのです、検討段階の問題。しかし、たとえば船体の強化で、日本側で進んでこのタンカーの船底を二重底にするとか、いろんな船体の強化のための自主的な問題はできるんじゃないかということを私はしろうとなりに考えるわけです。あるいはバラストタンクの整備であるとか、こういうふうなことが一応いわれているわけですね。こういう問題をもう少し強化をするような方向は自主的に運輸省として指示ができない問題なのか。  もう一つは損害賠償の国際基金、こういう問題に対して強く提唱するような考え方はあるかどうか。それから、きょうの日本経済ですか、通常国会にこの賠償法を提出するという、法律案が提出されるというような話も出ておりますけれども、実際には具体的にもうでき上がって、どういう骨子のも一のか説明願いたいと思います。
  102. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いま三木先生、最後にお話ございました賠償の制度とそれから法律の関係でございますが、実は現在船が事故を起こした場合に、損害につきましては商法で、船舶を委付してその責任を免れることができるということに、いわゆる委付主義ということになっておりまして、世界がかなりもう金額で損害賠償をしようといういわゆる金額主義に移行しておりますのに、日本がおくれているという現状にございますので、これを商法を改正して、金額主義に移行するということを一つやりたいということ。これは法務省の問題でございまして、これ法務省で用意をしていただいておる現段階でございます。  それから金額主義になりましたら、一般船につきましての損害よりも、タンカーの他に与える損害のほうが大きいもんですから、一般船の場合に、たとえばトン当たり二万四千円という損害額でございましたら、タンカーの場合は四万八千円にする、倍にするというようなことが国際条約ででき上がっておりますので、それを国内立法化するということを私どもの手で通常国会にやらしていただきたいということを考えております。  それから、それに応じまして、その船側の賠償制度だけで足りない場合に、そのタンカーで利益を受けているところの石油会社の拠出によりまして、国際的な基金をつくって、そういった船側の損害の補償でまかなえない事故について、さらに補って補償制度を確立しようというのが国際基金として、これも条約でできておりますので、あわせて一本の法律にして今度の通常国会でお願いしたいという用意を、運輸省の手で進めております。それが本日の新聞に載った記事でございます。
  103. 内田守

    政府委員(内田守君) タンカーの構造の問題でございますけれども、いま問題になっておりますことは、事故のあったとき、衝突と座礁のときに、流出油を制限する、あるいは油が流出しないという見地からの問題だろうと思うんでございますけれども、御承知のように、数年前から、IMCOでタンカーの構造を、流出対策という面から検討が進められておりまして、わが国はこれには積極的に主導的な役割りを果たしてきておったわけでございまして、ようやくたしか四十六年でしたかにIMCOの総会で採択されまして、そしてタンクの容量の最大限度とか、あるいは事故あったときの流出限度とかいうようなものを規制された。  これは御承知の油による海水の汚濁の防止のための国際条約というのにすでに取り入れられております。で、条約そのものはまだ発効いたしておりませんけれども、わが国では自主的に新造船に実施しておるわけでございます。ただ先生御指摘のように、たとえば衝突のときに、あるいは座礁のときにという面から、いわゆる二重構造にするという問題は一応考えられるわけでございますが、これはこのIMCOの総会でも種々議論がありましたし、われわれも独自にいろいろ従来から検討しておるわけでございますけれども、経済的な問題は一応別にいたしましても、結局具体的に数字を申しますと、デッドウェートが六割弱くらいにしないと効果がない。そういうことがある意味ではいたずらに船型の大型化を誘発する、それからまた運航性能を低下させるとか、あるいはもし衝突なんかしたときに、片一方に水が入るとかえって転覆しやすいといういろんな技術的な問題がございまして、先ほど申しましたIMCOの総会においても、各国ともむしろそういうマイナスの考え方が支配的だったわけでございます。で、いま申しましたように、最小限に流出油を制限する条約がまだ発効しない段階でもございますし、むしろ技術的に見ても事故、そういう衝突とか座礁を未然に防止するとか、あるいは事故後の流出油対策というような面が、むしろ効果的であるというのが、われわれもそうですし、各国もそういうコンセンサスになっておるという実情でございます。
  104. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 それで今回の事故太平洋海運ですか、これ保険に入っている。しかし実際上事故の実態というものは、もう少しつまびらかにならなければわからないでしょうけれども、ここで保険に、いま国際基金の問題が今後法律になりますけど、この事故に関して保険で実際にまかない切れるかどうかということが一つの判断の問題になると思います。もしこれが保険でまかない切れない場合は政府補償するという形、あるいは政府が何か援助をするといういろんな対策考えられるのかどうかですね、こういう問題についてはどうですか。
  105. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 祥和丸につきましては、太平洋海運が損害賠償のための保険といたしまして、PI保険とそれからTOVALOPという保険と両方で三千万ドル、約九十億の付保をしておりますので、流出油の量だとか、いままで私どもが聞いております現地における影響を考えまして、それで足りるんじゃないかということを考えております。一般にこういう海難の場合には世界的にそういった保険機構がかなり発達しておる現状でございまして、それでお互いに損害を補償し合おうという制度は発達しておりますので、政府間の補償という問題は起こらないということでございます。いままでの事故の例から見ても、そういう問題は起こらなかった、また事故の賠償責任を全うするだけの付保額があったというのがいままでの例でございます。
  106. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 こういう事故の問題が、今回運輸大臣通達を出して報告しろということになって、再三の通達かもしれませんけれども、海上保安庁はこういう沿岸、日本の喜入は別にしまして、大型タンカーが、おそらく将来ともに、なかなか海上交通が非常にふくそうして、大型タンカーが入ってこれないような日本の港の状態じゃないかと思うんです。海上交通の状況じゃないかと思うんです。こういう問題に対する海上保安庁の考え方ですね、あるいは水島のように、今回のコンビナート地域における事故対策、何かこう非常に原始的な、ひしゃくでくみ出さなきゃならないような、それが一番いいという話も何か聞いているのですけれども、実際にそういう処理方法ですね、こういう問題についてのもっと積極的な開発というか、あるいは現段階においてはもっといい方法は考えられないのかどうかということですね、この点についての問題。  それからコンビナート地域における事故対策の主導権はどういうぐあいになっているのか。たとえば水島で起こった場合にも非常に対策はおそい。あるいはたとえば各港地域における事故対策連絡会議ですか、こういうものがどういう形ででき上がって指導するようになっておるのか、この点について伺いたい。
  107. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 二つの御質問でございますが、まず海上保安庁といたしましては、大型タンカーの事故対策といたしまして、特にこういう油が流出いたしますと付近の漁業にも被害を及ぼしますし、また火災になるという危険性がございます。そういうことの防止のために、まず高性能な化学消防船、あるいは巡視船艇に防止能力を付与いたしまして、こういったものを出動させて油の拡散の防止をはかるということになっておりますが、さらに警察、消防、地方公共団体、民間の関係者等を一体といたしまして、被害を最小限に食いとめますために、石油コンビナートのある場所、並びに東京湾のごとく、あるいは大阪湾のごとく、湾単位におのおの流出油災害防止対策協議会といったものを設けておりまして、ここを中心にいたしまして必要な資機材の備蓄あるいは防災訓練といったも一のを実施しております。  なお水島の場合にどうであったかと申しますと、四十六年に水島港港湾災害対策協議会というものを設けまして、さらに昨年八月にはこの協議会を包含いたしまして、水島地区に漁業関係者も含めた広域的な海上の大量流出油災害等に対処いたしますために、水島地区大量流出油災害対策協議会を設置をいたしまして体制の強化をはかっておったわけでございます。当然のことでございますが、この協議会を中心に事故の連絡、通報体制あるいは資機材の備蓄等を準備いたしまして、また昨年十月には一応大規模な訓練を実施しております。  で、御指摘のように効果的な対策がないのかということでございますが、まず私ども考えておりますのは油の流出がありましたときにはオイルフェンスを展張して拡散を防ぐ、それから油の回収船等を使いましてこの油を回収する、それから油の中和剤、処理剤等の散布によって油の拡散を処理していく、こういう三つの方法を考えております。ただ、いずれの方法にいたしましても、現在の状態ではあらゆる場合にこれが有効に働くという機材ではございません。ひしゃくですくうというのが非常に新聞等をにぎわしたわけでございますが、油が非常に固まってまいりました段階におきましてはひしゃくですくうというあの原始的な方法が一番効果的であるというふうに判断されております。いずれにいたしましても、世界的なこういう油に対する対応の現在のレベルでは確定的にこれさえあればいいんだという方法がございません。いろいろな方法を組み合わせて最も効果的な処理対策ができるようにということで、今後ともわれわれは技術的な研究を続けたいと思っておりますし、各国の情報も集めて現在検討しております。
  108. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 じゃ最後に外務省に伺いたいと思うんですけれども先ほど来からいろいろ論議されておりますけれども、三月のジュネーブの海洋法会議ですね、これに対して水産庁も、特に農林省ですね、あるいは運輸省の問題もあるし、このマラッカ海峡の問題、それ自体の問題海峡通航問題等も含めて外務省はどういうプロセスで国内の、特に運輸省あるいは農林省、関係機関等の煮詰めが具体的にできているのかどうか、これからやるのかどうか、いろいろなスケジュールがあると思いますけれども、具体的には、大筋はもう諸外国のいろいろな、カラカスの意見あるいは今回の事件等に対する各国の反応等見きわめていろいろ判断される問題かもしれませんけれども、日本の国としてこの海洋法会議に臨む具体的な腹がまえというか、これについてどういうスケジュールで検討されておるのか、これについての見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  109. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 三月から始まりますジュネーブ会議に向けまして、現在、関係各省庁集まって具体的な対策を検討中でございます。と同時に、今度の会議が必要になってきました世界的な海洋利用の条件の変化というものも関係各省庁それぞれ御認識いただいて、その上で日本のような世界一の海運国としての立場と、それから資源問題その他を背景にいたします発展途上国側の要請という両方の利益を妥当にバランスできるような制度をつくるべく、現在、関係省庁と話し合いを続けますと同時に、二国間あるいは多数国間の非公式の接触を現在行なっているのが現状でございます。具体的な問題についていかなる対処方針を持つかという点については、目下まだ検討中であるということで御了承いただきたいと存じます。
  110. 三木忠雄

    ○三木忠雄君 具体的に各省庁——これは農林、運輸ですか、どういう関係機関でいつごろまでに大体この結論を出すようにしているのか。これは非常に日本の食糧問題とも一関係が出てくるし、海洋法の問題——二百海里説のいろいろな問題が出てくるし、どういうふうな時点でいつごろまでにこの海洋法会議に臨む結論というものが出るのか、これについて伺って終わりたいと思います。
  111. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 直接関係のある役所の数が十三ございまして、間接のものを含めますとすべての省庁が関係あると思います。それらのそれぞれの利害を総合いたしまして二月の末までには具体的な対処方針をきめる必要があるだろう。それから三月の十七日から会議が始まりますから、それまでには政府の最高レベルでの御決断をいただくべき事項については御決定をいただいて、そして会議に臨むことに予定したしております。
  112. 岩間正男

    ○岩間正男君 最初にお願いしておきたいのですが、非常に時間が制限されております。端的に質問したいと思いますから端的にお答えを願いたい、こういうふうに思うわけでございます。  第一に、今度のマラッカの事故のいわば真の原因というか、一番大きな基本的な原因ですね、そういうものをどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。これは多筥さんにお伺いしたいと思うわけです。  先ほどの決議ですね、これが発表されました。私たち聞いていて非常に問題のありかが明らかになるわけですが、その中で高度経済成長政策の落とし子だと、今度の問題は。こういうふうにいわれておるわけです。それが現在の石油業、海運業、そしてその中心になって推進してきたこのような高度経済成長政策のいわばほんとうの花形、この花形産業が御承知のようにこのような重大な災害を同時にもたらしているわけなんですね。結局利潤追求のためには何でもやる、こういう体制から実際は大型化の問題も、あるいはまた労働者の、大型化に伴わないような非常なアンバランス、あるいはまた海峡を通るときに距離を非常に短縮する、あるいは日数を制限する、あるいはまたきょうの直接の課題になりませんけれども、日本の労働者の半分よりももっと安いような労働賃金を目当てとしたところの便宜置籍船というような問題に、これはみな集約されてきている、こういうふうに思うわけです。  こういう点から考えまして、こういう問題を明らかにして対決しなければ今度の問題というものはほんとうの意味では解決がつかないんじゃないか、そういうふうに思うわけなんですが、この点について御見解をお伺いいたしたいと思うのであります。
  113. 多筥良三

    参考人(多筥良三君) お答えいたします。  今回の祥和丸の真の原因は何かということでございますけれども、これはこういう事故になりますと、その事故を物理的に起こして直接原因ということにどうしても一縛られがちなんですけれども祥和丸に関しましてはまだ海難報告も出ておらないようですし、直接の物理的な原因についてはいま申し上げられる資料もありませんので省略いたしますけれども、いわゆるそのほかのわれわれが構成する社会的な要素によって引き起こされる原因、それから技術的に、直接その個々の事故による技術じゃなくて、全体が包含されています——マラッカ海峡を通る船全体を包含するいわゆるマラッカ海峡の自然条件、それに対する人為的に持ち込むところの船舶の形、そういうものについての原因はある程度申し上げられるんではないかと思います。  それの件につきましては、先ほど他の先生方からもいろいろ御質問がありまして、そのつど申し上げたと思いますけれども、何といってもマラッカ海峡における事故、今後も想定される事故というのはこの海峡に超大型船、超巨大船というものを入れている限りにおいては、私どもは第二次、第三次、第四次、第五次と必ず起こるというふうに考えております。といいますのは、その次の御質問ですが、高度経済成長政策ということは、だれもかれも銭のためなら日が暮れてもわからぬというふうな形に全員を、全国民をかり立ててきたわけでございます。それはあながちかり立てるほうばかりではなく、われわれも含めて、大いに反省しなきゃならぬ点でございますけれども、そういうものが、結局いままでそういう形に追い込まれながら文句も言えなかったということについての反省というふうに御理解をいただいてよろしいかと思います。  したがいまして、実は国の中から、私どもこの事故をきっかけにいたしまして、それぞれ組合員、関係者に集まっていただきまして、それぞれ会議あるいは懇談会を開いて、持ってきておりますけれども、その中で、現実にマラッカ海峡に船長として指揮をとっておられる人たちの中から、もうわれわれが学校で学んだ運航技術というものが、もう限界点にある、この海峡に関する限り。しかし、これについて会社がこの船を持っていけるかと言われた場合に、やはり最高学府を出、最高の免状をもらっている、いわゆる運輸大臣の裏づけをもらっております、ライセンスをもらっております立場としてはノーとは言えないわけですね、まあ先ほど申し上げましたように、船底と海底との、最もクリアランスが一メートルしかないですよ、注意して持っていけるかどうかといえば、何とかやりましょうということになるわけです。そうして実際やってみますと、これがオリンピック競技なら、四年間に一回出場して、うまくウルトラCをやればいいわけでございますけれども、船員は毎航海、毎航海、四十日ですと、ほぼ月に一回になるわけです、往復入りますから一回以上になりますね、そういうものを常にウルトラCでやっておらなきゃいかぬ、このままいきますと、自分自身が殺されるんではないか、かといって文句は言えない、ならば、だれか事故を起こしてくれやせぬだろうか、自分はいやだ、しかしだれか大事故を起こして、世界的な大ニュースになれば、政府も企業も、あるいは世界の世論も、国連も動くであろう、そういう率直な気持ちを申し述べております。したがって高度経済成長政策と同時に、それに技術革新というものをかけた実態ですね、その技術革新というものと相まって、こういう状態を展開をしているように考えます。  それから航海日数を制限するとか、その制限の中に一生懸命はめ込まれるとか、その点についてはどうかということでございますけれども、これは船というのは一もっとも一機械でございますから、機関をフルに回せば既定の回転数が出るわけです。これはもう自動記録機によってごまかせないようになっていますから、一生懸命回すわけですね、そうすると、自動的に四十日で来ちゃうわけです。ですから、その点では近代の機械文明、科学文明というものは、やはり人間が機械に使われておる、そうしてそれを存分に経済的に効果を生み出していく、そういうことになっておりますので、全く労働者個々が創意くふうをしてどうやるという余地がほとんどないわけでございます。だから、おっしゃるとおり、非常に追い詰められた状態にあるわけです。  それから便宜置籍船の問題でございますけれども、この点につきましては、すでに発表されておる内容もございますけれども、まあ私はこの専門家じゃないんで、詳しいことはわかりませんが、われわれ海員の立場から見ますれば、便宜置籍船という形ではなくて、ほんとうにわれわれが発展途上国に協力をするということになれば、政府政府の援助をし、あるいは海員教育の問題、それから民間レベルでの協力は、いわゆる対等の貿易あるいは用船にしても対等の用船契約というような形でもっていければ、われわれ海員組合としましては、そういう場合における現地、その国に対する指導という面についても、これは協力をすることにやぶさかでないわけでございます。しかし日本の船員には組合があって、賃金が毎年毎年上げさせられて困るから労働力の安い国から乗せろと、しかも一全部向こうへ船をやるのはいやだから、こっちから株式の形で資本を出して、そして国籍は向こうにして、そして向こうの安い賃金の船員を乗せて、もうけた利益は全部日本へ持ってきますよという形が、私は端的に申し上げて便宜置籍船じゃないかと思うわけです。そのこと自身が、そうして利益を吸い上げておきながら、われわれ船員という立場の労働の場を奪いつつ、しかも労働条件の向上にブレーキをかけている。あれらはあんなに安い賃金で働くではないかという形をとっております。したがって、こういう便宜置籍船というものに対する組合の態度としては、あらゆる場において、われわれの可能な手段においてこれからも阻止をしていこうというふうに考えております。  以上です。
  114. 岩間正男

    ○岩間正男君 いろいろお聞きしたいこともあるんですけれども、時間の関係から一問だけにしておきましょう。  それじゃあ運輸省にお伺いしますが、今回のこの事故は、これはもうわれわれは起こるべくして起こった当然の結果であるというふうに考えているわけで、これは皆さんも先ほどからの論議の中で出されていると思うのです。大型船の航行にとってマラッカ・シンガポール海峡がきわめて危険なところが多いと、従来からインドネシア政府も巨大タンカーの通航はロンボク・マカッサル海峡を通航せよと、こういうことをしばしば、これは警告的に指示をしているわけですね。この点について、これはもう運輸大臣もはっきり認められるだろうと思います。先ほども、いずれにしてもこの海峡は危険な地域であるということは確認されているようでありますが、そこで私は、こういう中でお聞きしたいのは、ここの通航船舶数ですね、これはどうなっているのか。  もう一つは、過去においてこの海峡でタンカー事故が起こったのか起こらないのか、これらの事情はどうなっているのか、この点についてお伺いしたいと思います。簡単にやってください。知り得た事実でいいですからね。
  115. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 通航船舶数は、先ほども一申し述べましたように、TOVALOPという機構で、一年間に四千三百隻ということでございます。
  116. 岩間正男

    ○岩間正男君 一年間ですか。
  117. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一年間に四千三百隻。  それから事故はいまちょっと資料をさがしておりますけれども、数年間にたしか二十五件ほど起こっておったと思いますけれども、いま資料をさがして、もっと詳しくお答えいたします。
  118. 岩間正男

    ○岩間正男君 一年間に四千なんですか、そんなものですか。
  119. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一年間に四千三百隻でございます。通過するタンカーの隻数でございます。
  120. 岩間正男

    ○岩間正男君 船舶数を聞いている、タンカーだけ聞いたんじゃわからないんです。  これはシンガポール政府昭和四十九年十月の調査がありましょう。一カ月間にこれは大体四千十二隻。そうすると、まあ年間にこれは五万隻になりますか。そのうちタンカーがいま話がありましたように、これはタンカーと鉱石専用船、これが千三百六十三隻、一カ月。それから三万トン以上の大型船は百七十一隻、こういう資料ですね。これはいいですか、この点。  それからもう一つ、これは事故はどうです、事故は。事故についてはどうなんです。資料でやってください。
  121. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) マラッカ海峡協議会等の資料によりますと、マラッカ・シンガポール海峡におけるおもな海難事故は、四十二年以来今回の五十鈴川丸の接触事故を含めて合計二十五件である。そのうち日本船関係が十件、衝突が四件、他船との接触が二件、船底接触が四件でございます。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、いままでこういう問題は政府側ではっきりつかんでおられましたか。船底接触だけ見ましても四回、これは海員組合さんのほうの調査でも一何回か出ておるわけですね。こういうものについて政府はこれをつかんでおったんでしょうか。そしてこれに対してどのような処置をとってきたんでしょうか。この点お伺いします。
  123. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先ほども御説明申し上げましたとおり、マラッカ海峡協議会等の資料によりまして調べた件数を先生のほうにも提出してございますが、それによりますと四十二年以来今回の五十鈴川丸まで二十五件ということになっております。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも少しとんちんかんな答弁になってしまったね。これは知っていたのかと聞いている。知っていたらこれに対してどういう処置をとってきたかと聞いているんだが、また同じことを繰り返していられるんですがね。  じゃあ具体的に聞きましょう。一九六七年の十二月に、十五万トンタンカーの東京丸、これが船底接触事故発生したですね。このときはどうしたんです。これに対して運輸省はどのような対策を行なってきたか、これは具体的にお聞きしたい。
  125. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いまお話のございました東京丸、十五万デッドウエートの船が、一九六七年四月に船底接触事故を起こしておるということは承知しております。これに対して海難審判その他の処置がどう行なわれたか、いまちょっと関係者がおりませんので私からお答えできません。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなた海運局長でしまう。だからこのタンカー事故というのは起こるべくして私たちは起こったって言っている中には、これに対する政府対策、このものがあると思うんですよ。ところがいま海運局長はこれをつかんでいないと。いままで船底接触というものはなかったように国民は理解してますよ。全然こういう問題についての実際はPRも何もない、実情はなるたけ隠されていく、船主のほうもなるたけこういう問題は隠してしまいたい、こういうかっこうできていたんじゃないかと、だから対策らしい対策はほとんどなかった。まあ巨大船運航に関する委員会などというのが昭和四十三年にできましたが、これは日本流のやり方です。何か委員会つくって、それでたな上げしようという方式です。こんなものは対策に入らないんだと、その実績は何もないんですよ。あったら報告書を出してもらいたい。何やったか、何もない。そうしてきているんですから、今日の事故というのは起こるべくして起こったんだということは、私は結論づけてもいいだろうと思うんです。  ほんとうにこういう点で政府自身の、ことに運輸省、ここで運輸省についてお聞きしますけれども、こういう海運の指導監督というようなもの、実際行政府の中で任に当たっているのはどこになりますか。私はよくわからないからお聞きしたい。どこです。これはだれでも答えられることでしょう。
  127. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 運輸省内では……
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 まず運輸省、当たっているんですか、当たっていないんですか。
  129. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 運輸省内では、船舶の航行安全について、船舶の構造その他の面を船舶安全法によって船舶局が監督をしております。それから乗り組み員の資格その他技術につきましては、船舶職員法、船員法で船員局が監督をしております。海運局は事故防止とそれから事故が一たん起こった場合の保険付保その他について船会社を監督しております。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 運輸大臣にお聞きします。技術的な担当は、これは組織令の中にあるんですか、そういうものについてはいま話をされたけれども、もっと全般的に日本の政府機関の中で海運、しかも世界第一になったこの海運を担当する部局というものは非常に重大な責任を持っているわけでしょう。それがはっきり、これは運輸省だということは言い切れますね。その運輸省のどこが担当するかと言ったら、これは海運局が当然担当するということになるわけでありましょう。ところが、この責に任じていたかどうか、ここのところが私は非常に今度の問題の中で明らかにされなければならない問題じゃないかと思うんですね。どうでしょうか、運輸大臣
  131. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 海運に関して監督責任があるのは運輸省でございますが、運輸省の部局の中で、ただいま海運局長が申し上げたように海運局だけが全部の責任を負っておるわけではないのでございまして、船員局あるいは船舶局さらに海上の保安等につきましては海上保安庁、事故が起こりました場合の事故の探求等につきましては海難審判庁と、そういうふうに部局が分かれて海運関係の監督行政をやっておるわけでございまして、それぞれの部局がその責任を全うすべく一生懸命やっておるのでございます。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 部局の事務的な担当はいまのようにわかりますが、しかし、だれが一体こういうものに対して政治責任を負うのかということになれば、それは運輸大臣ですな、運輸省全般でしょう。そう考えていいですね、どうですか。
  133. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) おっしゃるとおりでございます。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 この任務をほんとうにこれは果たしていたかいないかということ。そして、そこを担当する海運局、まあその他もございましょうけれども、主としてこれは海運局が一番その中心になるんだろうと思うわけですけれども、こういうところはいま言ったようにほとんど、これは接触事故というような重大な問題が起こっているのに対して、ほとんど何らなすところがなかったと、こういうことですね。これははっきりやっぱり確認しなければならぬ問題だと思います。  次にお聞きしたいのですが、海図の問題ですけれどもね、今回事故発生した場所について、海図は何年に一体これは完成したのですか。その調査のために何回かにわたって費用が支出されてきたんですが、その費用の額、そしてさらに第三次調査が終了した昭和四十八年一月ですか、以後において、今度の事故の起こった第三区のA地区、ここで水路通報、この水路通報に基づいて通航した船が浅瀬を発見する、ぶつかるとか岩礁が新たに発見されると全部これは通報されて、それが水路通報で報告されるわけですね。そして一般の航行に役立てるようにしているんだろうと思う。そういうも一のが何カ所ありますか。
  135. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 最後のところがちょっと……。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 水路通報に浅瀬や岩礁がみな通航者から報告されるわけでしょう。それが水路通報に出てそれを公布する。と、みんながそれによって今度は海図の足らないところを補てんしていくわけですね。それは何カ所ありましたか、いままでそういう水路通報でいわば補足されているところは。
  137. 庄司大太郎

    説明員(庄司大太郎君) 一番最後の件でございますが……
  138. 岩間正男

    ○岩間正男君 簡単にやってください。何カ所だかわかればいいんだから、何カ所だと言ってください。むだをやっている時間の余裕がないんだ、残念ながらね、時間がないんだから。
  139. 庄司大太郎

    説明員(庄司大太郎君) 浅所、暗岩等の水深に関する情報が約二十件ほどございます。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは資料としてもらえますね。資料としてこれはほしいんですね、この二十件。  それからこの海図です。今度の海図、一体三上さんはどの海図を使っておったかというのが一つの焦点になってくるわけですが、これはいまの段階でわかりませんか。それから最新の海図というのはいつなのか。それから海図のための調査費というのは幾らなのか。まだ御答弁なかったわけですが、幾らですか。
  141. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) まず現在船長がどの地図を使用しておったかということは確認されておりません。しかしながら、持っていたであろうと思われる地図は四十八年の六月に発行された地図を持っていたであろうというふうに推測されます。で、ちょっとふえんいたしますけれどもマラッカ海峡で海図に載っておらない浅い場所があるというような報告をかなり前から受けておりました。それに基づきまして、日本とマレーシア、シンガポール、インドネシア四カ国が協同いたしまして、四十四年から精密測量を開始したわけでございまして、現在まで出ております地図の中には、その精密測量の結果わかりましたそういう浅瀬あるいは岩礁等につきまして一々補足補正をいたしております。で、現在のところ三次調査の結果までが補正されております。終わりました四次調査の結果はまだ載っておりません。  で、費用につきましては、現在までのところ約七億円ぐらいであろうというふうに、昭和四十八年までに約七億円ということでございます。
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはいままで何次も調査しましたね、三次調査ですか。その全部でですか、全部で七億ですか。われわれ二十四億ぐらいかかっておるというふうに聞いておりますが、違いますか。
  143. 中村四郎

    説明員(中村四郎君) いま保安庁長官がお答えしました約七億円と申しましたのは、マラッカ海峡の水路測量のために昭和四十八年度までに費やした額を申し上げたわけでございます。
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 じゃあそれはもっと正確にあとで確かめてください。時間の関係から先に進みます。  この海図は、そうすると四十八年六月ですか、六月の分ですか。最新の海図がおそらく使われておったんだろうと、古いのじゃこれは役に立たぬわけですからね。大体いままで二、三の質問をしましたけれども、これでもこの事故発生したシンガポール・マラッカ海峡は、船舶通航がきわめてふくそうしている個所であると、しかも昭和四十六年から見ても、船底の接触、そのために油の流出事故、こういうものを含めて、これは海員組合さんの調査によりますと七回この事故発生しておると、こういうことです。で、先ほどの報告では四回となっていますが、この辺なんかも食い違いがあるわけですね。また昭和四十八年一月に第三次水路測定調査によって海図が新しくされた以後、新たに二十カ所ですか、浅瀬、岩礁等が発見されている。この事実から見ても大型船の通航にとって非常に危険な海峡であったということを具体的にこれは明らかにすることができるんです。こういう事実はいまは関係の方々から話があったようですが、これは運輸大臣、お認めになりますね。
  145. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) そういうふうな個所がありますので、従来シンガポール・マラッカ海峡は航行上はいろいろ問題があって、そのために水路の調査なり、あるいは海図をつくったりということで、事故のないようにそこが通れるための方法を講じておるわけでございます。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 さて海運の指導監督の問題、機構の問題、先ほど出したわけでありますが、これについては海運局、船舶局、それから船員局、さらに海上保安庁、海難審判庁、その他の運輸省内の機構について説明があったわけです。そうして統括的にこれはむろん運輸大臣が政治的な責任を負う。しかし、そうは言っても運輸大臣がしょっちゅうこれ、やれないでしょう。どこまでこのような問題を総合的に判断し、しかもこのような事故を未然に防ぐような総合的な対策というものが私は必要だというふうに考えるわけです。これは先ほどのいろいろな面から考えましても、船員の問題、大型化の問題、海峡通過の問題、それから便宜置籍船の問題、そういうものをあげましたけれども、そういうような問題を、これは部局は事務的にやるにしたって、これを総合して、そうして実際は海難を避ける、安全をほんとうに推進するんだと、安全をもし守るんなら、そこに重点的な力を入れなきゃならぬというふうに考えるわけです。  これは実際のところ、先ほどからの説明によるとないんだ。海運局というのがあるから、これは政治的に何やるかと——全然そういう何はほとんどされていない。みな技術屋になっておる。技術屋ではわからぬ。そうするとこれはたいへんなことだと思うんです。私は、だからこのような指導監督のそういう機構というものが、運輸省の機構の中でいままで完全に設けられていない。そうして世界一の海運国を誇っている。その辺は非常にアンバランスになっているのでしょうね。戦後とにかく油中心で、世界第一の海運国になってきた。しかし、これに対する指導監督体制というものは、非常にこれは伴わない。一方では総定員法が強化されておって、人員はどんどん削減されてきた、こういう事情があることも知っておりますよ。このようなアンバランスが一つの大きな問題を起こしている原因だというふうに、これは考えざるを得ない。  つまり、このような経済性を追求することだけはやっておったが、安全を確保するためのほんとうに具体的な組織はなかったということが、今度の事故を起こしている一つの大きな原因だというふうに私は考えなくちゃならぬと思っているのですが、この点について運輸大臣はどのような反省をお持ちになるか、そうしてこれについて今後どのような対策を強化しなければならないとお考えになるのか。先ほどお話がございました、だれか一人犠牲者が出なければ直らないのだ、もう航海に従事している船員の方たちはひやひやしている。命がけだ。しかし、これを言ったって、さっきのような、私はほんとうに直感したわけですけれども、あれ、どなられたら、もうふるえ上がっちゃうのじゃないかな、そういう体制の中に置かれている。そういう体制の中では、とてもそういう問題というものは、ほんとうに解決しない。どうしてもこれに対してはっきりした新しい即応の体制というものを、安全をほんとうに守るんだったら、これはなさねばならぬと思うのです。この点についての決意をお聞きしたいと思います。
  147. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 今回のシンガポールの沖合いの事故につきましては、あそこが非常に航行上いろんな問題を含んでおると、危険性もあるということではございますが、しかし、あそこを安全に運航をしておるのもたくさんあるわけでございますので、そういう危険な地帯で起こした事故は、直接事故原因はそれなりにあると思います。これは海難審判庁あるいは関係国の調査の結果を待ちまして事故の直接の原因ははっきりすると思います。  それから運輸省は各局ばらばらでなっちゃいないではないかという御意向でございますが、官庁の仕事というものはそれぞれ部局をきめて責任を持たして分担して仕事をさしておるわけでございますが、こういった交通事故等はその一つの部局だけで解決でき、一つの部局だけで処理できるようなものではございません。そういう数局にまたがる事故といったようなものにつきましては、その善後措置事故対策、そういったものはそれらを取りまとめます官房において連絡協議会などをつくりまして、あるいは事実上関係各局を集めまして、ここで調整をしながら対策を講ずるという仕組みになっておるのでございます。今後もできる限り横の連絡を十分とりながら、こういった場合の対策に遺漏なきを期したい、かように考えております。
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 大体官房長が中心になって連絡とかそういう対策協議会というものが各省に設けられておるのは、これは私も知ってますよ。しかし、それに対する政治的指導というものがなければ、そしてどこに重点を置いて、いま安全を守るためにどこで対決するのかという、そういう政治姿勢というものが必要なんで、これはもう運輸大臣の力量が問われているところなんです。だから今度の問題をほんとうに災いを転じて福にするのかどうか、一人犠牲者が出なければ絶対直らないもあだ、こういうような嘆きを船員にさしている海運行政に対してはっきり取り組む覚悟があるのかどうか。このことをいわばもっと端的に詰めるならお聞きしたい。いかがですか。これはあるかないかでいいですよ、時間ないですから。
  149. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 最終的な取りまとめの責任運輸大臣にあるわけでございますけれども、御指摘のように今回の事故を契機といたしまして事故の絶滅を期すべく懸命に努力を続ける決意を持っております。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 その決意を聞いたわけですけれども、三木さんの、これはいままでのしばしばの声明では、高度経済成長政策本位の政策から、今度は国民の福祉、そういうものを守る、国民本位の方向に変えるということをしばしば漏らされている。総論なんです。総論はそうだ。ところが各論はどうか。各論はかくのごとき祥和丸事故としてこれはいま起こっておるわけです。国際的にもたいへんな問題を起こしておる。そしてその被害は実際はこの船の乗務に携わるところの船員の人たちに及んでいる。そしてたいへんな事態がさらに全体に起こってきておるわけです。そういう点について、ほんとうに各論が伴っているかどうか、私は明らかにしてもらいたい。  そういうものの例として一、二お聞きしたいんですが、乗り組み員の安全の問題についてお聞きしたい。このような不安全な航行を余儀なくされている船員の問題について船員法第百六条、百七条、百八条に基づいて運輸省は船主に対して船員の労働条件が守られるように監督をするその義務を負っているはずだと思うんです。ところが、たとえば今度の問題でお聞きしてみますというとあそこのマラッカ海峡を通るときには二十四時間一昼夜、二十九人の乗り組み員が乗っておるけれども、その中で起きている人は三人しかいない。これは船長、それから航海士、通信士、この三人だけは起きている。三上さんは六十四歳ですか、もうベテラン、そしてマラッカ海峡を百回も一越えた。しかしベテランだけにたよるというのは非常に非科学的だ。当然これに対して船員の労働条件というやつが再検討されなければならぬですよ。二十四時間一体耐えることができるかどうか。そうして相当な御老齢にもなっていられる。そこのところを、もう百回の経験があるんだからいいだろう。そういうことで全部そこにこれは押しつけていく、こういうことでいいのかどうか。したがって当然これは船員局があるのでありますが、船員労務官は一体、祥和丸就航以来、このような点について労務監督をやっているのかどうか。監督指導を実際に船の中に入るようにしてやるべきだと思うのでありますが、これをやったことがございますか。事実をはっきりお知らせを願いたい。
  151. 松尾道彦

    説明員(松尾道彦君) 祥和丸に対する船員労務官による監督はいまだ実施しておりません。本船がわが国の港に入港後できるだけ早い機会におきまして、船員労務官による労務監査につきまして検討いたしたいと思っております。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、労務官は祥和丸の中に入ったことはないという事実が明らかになったんですね。そうすると、いまのようなのをどう思いますか。これは運輸大臣にお聞きします。二十四時間、六十四歳のベテランでありますけれども、三人しかいない。これがあなた、二十四万トンですか、重量トンにしたらその倍、五十万トンでしょう。その船の上でどうなんですか。三人でこれはやっている。こういうことがシンガポールを通るときの孤独な船員の立場なんです。こういうもうに対しての労働条件、労務管理というようなものについては何ら船員局が立ち入って調べたこともない、そのようなことでいいですか。外航船舶に対して労務官が実際現場に乗り込んでいって立ち入り検査をやれるような、そういう機構になっておりますか。
  153. 星忠行

    説明員(星忠行君) お答えいたします。  祥和丸事故発生時の乗り組みの状況につきましては、なお今後の詳細な調査に待たなければいけないと考えております。ただ一般的に申しまして、船舶職員の乗り組み体制は船舶職員法で規定されておりまして、祥和丸のような大型船の場合ですと、船長、一等航海士、二等航海士、三等航海士、少なくともその四人の職員が乗り組み、その各航海士は八時間といいますか、実際には八時間を昼と夜の四時間ずつに区切りまして、一日八時間で交代に当直に立つようになっております。また船長は狭水道を通航するときはみずから甲板上にあって指揮をとるということにされておりまして、正確な調査ではございませんが、一応聞いておるところによりますと、船長はみずから当時甲板上で指揮をしており、当時の当直航海士は一等航海士が入っており、それから甲板部員一名が当時見張りに立っておる。それから……
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 一般論でいいんですよ、時間の関係からね。
  155. 星忠行

    説明員(星忠行君) それから今後マラッカ海峡を航行する大型船の船長たるべき人が訓練として、いわば見習い船長としてさらに立っておった。それから機関部にもそれぞれ担当の当直がおったはずでございまして、そういう意味で法律違反があったということは聞いておりません。
  156. 岩間正男

    ○岩間正男君 調べないのだから、違反があるかないかわからないじゃないですか。立ち入り検査もしないでおいて、報告を求めて、船主から来るような報告でわかりますか。だから、それを立ち入って現実につかんで、ほんとうに指導して、労働者の安全を守ってやるんだという立場に立っていないことは明らかだ。これは祥和丸の事件で明らかになっている。ところが何も祥和丸だけじゃない。全部そうでしょう。こういうことですね、こんなことからも明らかなように、政府は外航船舶についてその航行安全の施策もほとんどしてない、しかも不安全航行を押しつけられている船員に対して船主への指導——船主に対してどうもこれはひどいじゃないか、労働条件どうだというような指導監督もしてない、全くなされていないんだ、野放しなんだ。この事実はもうけ第一主義の企業べったりの政府、そしてこのような事故を起こしているんです。だから私は企業、これは責任を負わなくちゃならないし、当然またこれを野放しにしている政府ははっきりその責任を明らかにしなければならぬと思うのですね。  そうして一たん事故を起こすとどうですか、操船ミスという理由で先ほどから問題になりました業務上過失往来危険罪などという、全くとってつけたような罪を働く者になすりつけて刑事責任を追及してきたのがいままでのやり方じゃないですか。これまでの国のこのようなやり方というものは、これで正しいのかどうか、働く者に対してこのようなきびしい態度で臨みながら企業側には全く甘い。たとえば十二月十八日の水島の三菱石油の油流出事件の責任なんかについては、企業の責任をどういうふうにこれは追及するんですか。まああそこに流れた油は一万二千キロリットル、あるいは三千キロリットルとも言っているが、この油の量さえ捕促されていないのがこの水島の今度の被害です。そうしてそれが海上に流れ出し、瀬戸内海、紀伊水道までも汚染した。そして瀬戸内海を死の海に化したばかりではなくて、漁民はもちろんノリ業者、観光業者、旅館業者、釣り具店、釣り船業者などの生活権までも奪ったあの三菱石油の社長こそ刑事責任を追及されてしかるべきではないか、犯罪じゃないですか。  ところがこういうものは放置されて、全然これは不問に付されておって、今度の祥和丸事故のようなこの真の原因、この問題については企業と政府側にあるのに対して、ほとんど刑事責任を追及しない、そして労働者だけに、働く者だけにその罪を負わせるというこういう体制の中で、どうして安全が守られますか。安全無視の海運行政の正体、まさに今度の事故を生んだ大きな原因だということを私は声を大にして言っていいと思うんです。どうお思いですか、やっぱり運輸大臣にお答えを願いたい。
  157. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 祥和丸の件でいろいろ御意見ではございますが、実はまだ事態は責任を追及して処罰するとか糾明するとかという事態ではないんでございます。まだ事故が完全に終息されておりませんので、もっぱらあの事故をどうやって収拾するかということに現地も専念しておりますので、その点はひとつ誤解のないように御理解いただきたいと思います。今後、どういう原因でああなったかということをこれからははっきりするべきものであるということを御理解いただきたいと思います。  それから三菱の水島の事故につきましては、実は運輸省側は海上に流れた油による海水汚濁を防ぐために回収するのが運輸省の役目でございますので一タンクのほうの責任等はいずれそれぞれのところで究明をいたし、原因をはっきりさしてそれぞれの処置はすることであろうと思っております。
  158. 岩間正男

    ○岩間正男君 三木さんは社会的公正と言いましたね。こんなの飾りもんで、私は全く労働者だけがこの責任を問われて、そして真の原因、このような犯罪的な責任を追及されるべき大企業とか、それからこれを等閑にしておる政府というものがはっきり責任を負おうとしない、こんなことをやっておれば何年たったってこの問題は解決しないと思います。  時間がなくなりましたので、次に造船の問題でお聞きしたいのですが、ジャカルタで十二日に太平洋海運社長山地三平氏が発言をしました。山地社長は、このたびの重大事故責任者でありながら、これに対して反省するどころか、二十六万トンまでは十分に通れると判断している、海運業は常に危険を伴うものだと述べて、今後も大型タンカーのマラッカ・シンガポール海峡の通航を平然と主張しているようなありさまです。これに対して、こういうことではたいへんなことになる、二十六万トンが今後通れるんだというような発言はこれはたいへんなことで、運輸省は警告を発せられたようですけれども、この警告というのはこれは現地を刺激しないように、こういう警告なんですね。  こういうことでなくて、これじゃ本質にならないんだ、この問題はどういうふうにお考えになりますか。先ほどの論議で二十万トン級が非常に大きな問題になって、十五万トン以上についていろいろな意見が、先ほど海運組合の方の意見もこれは出されている。そういう中で二十六万トンも通すんだというようなことになったらどういうことになりますか。あの警告というのは一応相手国を刺激しないように、あんまり失言するなということだったと思うんですが、そんなことじゃないと思うんです。本質はどうです。どんな一体方針でこれは臨みます、こういう発言に対して。
  159. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 現地の発言というのは、よくわからない点が正直に申しまして私どもございますが、従来どおり危険を無視してでも、これは従来どおりの船型で、またそれ以上のものでシンガポール・マラッカ海峡を走るんだというようなことがあると、一番大事な安全性を守るという心がまえが欠けておるという点で、われわれは不穏当な点があったら困るからということで注意をしたのでございます。
  160. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  161. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 速記を起こしてください。
  162. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はこの山地発言というものは単なる放言じゃない。この背景が重大だと。つまり大型タンカーの造船を進められているでしょう。年次計画でどんどん進んでいるんだ、現実に。二十六万トンをつくっているんだ。二十七万トンもつくっている。これを前にしてあそこで言った発言なんですね。  で、具体的にお聞きしますけれども祥和丸は第二十九次計画造船によって建造されたものだと思いますが、その建造費それから政府の資金ですね。資金導入の実態、こういうものについて、開銀融資、それから利子補給、この額についてちょっとお伺いします。
  163. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 祥和丸は計画造船によってつくった船でございます。それで……
  164. 岩間正男

    ○岩間正男君 額を言ってください。こっちも時間がないですから。
  165. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) これは日本郵船と共有の船でございますので、それぞれ五〇%ずつ財政融資と利子補給とを行なっております。で、太平洋海運に対する分としては開銀融資は二十三億八千万円、それから利子補給は二億一千万円ということになっております。
  166. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはまあ両方合わせればその倍になるわけでしょう。開銀融資は四十七億六千万円、利子補給は四億二千万円。これは郵船と共同だということですからね。だからこれはいまの太平洋のあれだけじゃないわけだ。  で、山地社長のこの発言というのは、さきにも申しましたように、現在建造計画中の二十六万トンのタンカーのマラッカ海峡の通航を見込んで危険を承知の上で言っておられるんだと思います。このような無暴な発言は、これまで政府が大型タンカー建造に対して特別の財政措置を含めた海運政策をとり、大企業本位の海運行政を背景とした発言以外の何ものでもないと思うのです。  そこでお聞きしますが、政府による計画造船はこれまで大型タンカー建造を重視してやってきたことは、もう高度経済成長政策の一つの重要な一環になるわけです。一九七三年調べの日本商船船舶統計によりますと、いわゆるタンカーの大型十船、すなわち日石丸三十七万トン。瀬田川丸二十七万トン。高崎丸二十七万トン。ジャパンコスモス二十七万トン。高倉山丸二十七万トン。志摩丸二十六万トン、綿江丸二十六万トン、幾洋丸二十六万トン、宗珠丸二十六万トン、赤間丸二十六万トン、この十船すべて昭和四十四年に始まった新海運六カ年対策に基づく計画造船によって建造されたものばかりです。このような大型タンカーの建造のために昭和四十四年からのタンカーに対する計画造船に対して、四十八年度までにどのくらいの額が開発銀行融資として行なわれ、政府の利子補給額はどのぐらいになっておりますか。これのトータルをお示しを願いたい。
  167. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 御承知のとおりわが国は資源がありませんで、原材料の輸入を他国から仰いでおります。そのうちで一番大事なものが原油と鉄鉱石、石炭等でございます。このための輸送を長期に安定するために、国のために計画造船で船をつくるということは必要なことでありまして、そのためにタンカーに対する融資がかなりな額にあがっているということは当然だと思うんでございます。先生お尋ねの四十四年度から四十八年度までの数字の総計で申しますと、油送船といたしましては、財政資金の額は二千百六十七億三千八百万円でございます。四十四年度以降のタンカーに対する利子補給は、四十四年度、四十五年度、四十六年度、四十七年度、四十八年度合計で補給金の契約総額が二百三億七千五百五万円でございます。
  168. 岩間正男

    ○岩間正男君 けたを違えているんじゃないですか。利子補給はそんなものですか。
  169. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  170. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 速記を起こして。
  171. 岩間正男

    ○岩間正男君 本年度の第三十次造船計画のタンカー建造について、現在建造中のものは何隻で、トン数にするとどのくらいになるのか、一隻ごとに。これは資料でいただいてもいいです。これは建造中のタンカーですね。それからその他申請中のもの。そういうものについてお示しを願いたい。  それから昭和五十年度の第三十一次造船計画で、タンカーの建造について、従来の大型化を進めるという考え方に変わりはないと思うのですが、これはそう確認してもよろしいでしょうか。時間がありませんから以上のことだけお答え願います。
  172. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 三十次というのは、ことし進行しておる計画造船でございますので、四十九年の十二月末までに開発銀行が融資決定した油送船七隻、融資決定額が三百二十二億六千万円、契約総船価が六百六十一億八千万円、その内容はわかりますけれども、これからきめるということはこれからの問題でございますので、それはわからないわけでございます。  それから、たしか三十一次船について、同じような大型の建造が進められるのかというお話でございましたと思いますが、おそらく現在と同様な傾向のタンカーの建造が三十一次も続けられると思っております。
  173. 和田春生

    ○和田春生君 だいぶん時間もおそくなっております。いままで各委員から質問のあったことと同じような問題についてはできるだけ重複を避けたいと思います。できるだけ答弁のほうも的確にお願いしたいと思います。  第一点については、これは先ほど岩間委員からの質問にも若干関連があるんですが、マラッカ・シンガポール海峡発生したこれまでの大型タンカーの海難事故、これは事件として大きく報道されたり、問題にならなかったものも含めてどれだけあったか、政府はどのように掌握をしているか、その内容についてお聞きしたいと思います。
  174. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 一九六八年から現在までにマラッカ海峡協議会の資料によりまして私ども調査したところによりますと二十五件でございます。
  175. 和田春生

    ○和田春生君 その二十五件は全部大型タンカーの事故ですか。
  176. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 全部の船の事故でございます。
  177. 和田春生

    ○和田春生君 そうすると、いまマラッカ海峡協議会の調べによればということですけれども、海難審判にかかるかかわらぬかは別として、海難事故が起きれば、保険等の関係もあって、海難報告が行なわれるわけですが、それらの船からの海難報告というものをどのように掌握して、どのように分析しておりますか。
  178. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 船員局がちょっとおりませんので、詳細はわかりかねます。
  179. 和田春生

    ○和田春生君 それはおかしいじゃないですか。私の質問事項はきのうちゃんと、こういうことを聞くと言って通知してあるんですから。マラッカ・シンガポール海峡発生した既応のタンカーの海難事故についての政府の掌握条項と、それにとった措置について聞くと言って、ちゃんと通知してあるんですよ。
  180. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 二十五件の事故内容につきましては、そのうち日本船関係が十件でございまして、それで事故内容は衝突が四件、それから接触が二件、船底の接触が四件——この接触と申しますのは、先ほど申しました二件は他船との接触でございますが、それで合計十件でございます。
  181. 和田春生

    ○和田春生君 もちろん外国船については日本の政府に報告の義務はありませんけれども、いろいろな対策を講ずるといっても、現実に起きた海難事故内容を、衝突であろうと、あるいは船底が接触をしたものであろうと、それをきちんと分析をしていく、そういうやはり基礎的、技術的なところから積み上げていかなくては、ほんとうの意味での対策、あるいは何万トン以上、喫水何メートル以上のものは通すべきであるか通すべきでないか、そういうことをきちんと詰めることができないんじゃないですか。ただ単に架空の机上の論議だけではぐあいが悪いと思うんです。そういう点にも政府としてのやはりこの問題に対する取り組みについてかなりの欠陥があった、私はこういうふうに考えざるを得ないわけです。その種の問題についてはまたあとであらためて運輸大臣にお伺いをいたします。  もう一つ、マラッカ・シンガポール海峡の水路情報というのは、もちろんチャートに載っていない浅瀬が見つかったとかいうこともありますけれども、たとえば灯台の灯が消えておったとか、そこにあるべき航路標識が流れてなかったとか、いろんなこともあるわけです。そういうような水路情報はどういうふうにして把握をし、またその通報体制というものは万全だったかどうか、このことについてお伺いしたいと思います。
  182. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 水路の状況に関します情報は、一般的に申しますと沿岸国が出します水路通報と、それから船舶からの通報によってもたらされる二種類ございます。マラッカ・シンガポール海峡におきます水路情報についても同様でございまして、情報の内容は主として暗礁などの浅い場所の発見、それから航路標識の事故、つまり点灯しておらないというような通報がございます。海上保安庁はこれらの情報に接した場合に、直ちに無線で航行警報を出しますとともに、毎週出しております水路通報によって船舶及び海事関係者に通報いたしております。また報道機関等にも資料を提供いたしまして、情報の敏速な周知をはかっているわけでございます。  なお付言いたしますと、マラッカ海峡の海図が逐次整備されておりますが、四十七年五月以降現在までに海上保安庁が行ないました通報件数は約百十件ございます。このうち暗礁等の水深に関するも一のが約二割、航路標識に関するものが約四割、沈船などの障害物関係が約三割、その他一割というふうになっております。
  183. 和田春生

    ○和田春生君 今度の祥和丸の事件に関して、バッファローロックのライトブイが消えておったという情報があるんですけれども、それはどのように掌握しておりますか。
  184. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) いまの御質問のような情報もわれわれの耳に実は入っております。しかし、まだ確かめるすべがございませんので、こういう問題もきょう係官が帰ってまいりますので、ある程度はっきりするんではないか、かように思うんです。
  185. 和田春生

    ○和田春生君 この情報の真偽いかんということは、今回の海難事故原因に、われわれの常識からいって、重大なかかわり合いを持っていると。単に消えとったというだけではなくて、そのことは無線によって関係船舶に通報されたという情報もあるわけです。それで、きょう係官が帰ってきてから聞くということですけれども、それを待つまでもなく現地にも在外機関があるはずです。どのように調査をして、いままで調べた内容においてはどういうことですか。
  186. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 事故当日の一月六日の時刻に当該ブイが点灯しておったかどうかという情報についてはまだ確認されておりません。ただシンガポールからの報告によりますと、シンガポールの海事局は四十九年の十二月十八日に当該ブイが消灯しているということを無線で航行警報を出しておるということを言っておりました。シンガポール当局がこの消灯をインドネシア当局に確認を求めたけれども返事は受けておらないというところまでわかっております。
  187. 和田春生

    ○和田春生君 その件について十二月十八日付でそういうような情報が出ている、もしキャッチしておれば通航船舶その他に確かめることもできるわけです。さらに、先ほど来言われているように、マラッカ・シンガポール海峡は日本船もずいぶんたくさん通過しているわけです。その時刻、その時点、またその期間に通航したと思われる船舶に照会をして確認する方法もとれるわけであります。何隻もの船が通ったけれども、確かについておったという報告があればそれはついておっただろう、消灯したけれども回復したということがわかる、確かに消えておったというような話があればわかるわけです。そういう調査の方法をとりましたか。
  188. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) このような、通常シンガポール当局からは、こういう事故がありますと文書で通知をしてまいっております。しかしながら、本件につきましては当庁はまだ文書による通知を受けておりません。したがいまして、当庁としてこの事実を確認するアクションはとっておりません。
  189. 和田春生

    ○和田春生君 これは非常に重要なポイントだと思うのですけれども、当時わからなかったとしてもそういう情報がすでに入っている。事故が起きてからでもその調べる手続をとるということは、その事故と国際的なこういう海峡における航行管理の点についてたいへん大事なことだと思うのです。その手を打っていないというのは怠慢じゃないでしょうか、これは運輸大臣にお伺いしたい。
  190. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) そういう情報は、ただいま保安庁長官も申し上げましたようにありましたし、私もそういう情報をちらっと聞いてはおりました。しかし何せ、起きた事故の始末をどうするかということを第一に置きまして、そのためのお手伝い等という意味で係官も派遣しておりましたので、いずれ、いまの御指摘の問題は確かに重要な問題だと思います、したがって、これは今回の事故原因をはっきりいたします段階で必ず問題になると思いますので、その時点で明確にされて、そしてそれが事故原因になったのではないかどうかという時点ではぜひはっきりしたいと思いますし、こちらもはっきりする方法をとりたいと思います。
  191. 和田春生

    ○和田春生君 いま大臣のそういうお話、また海上保安庁長官の答弁というものを通じて、ちょっと問題は別になりますけれども政府の量見をしかと確かめておきたいことがある。  それは先ほど来、やはり同僚委員からの質問の中に出ておったわけですけれども、海上保安庁は東京地検と協議の結果、今度の祥和丸海難に対して業務上の過失往来危険罪を適用して積極的に調べるという方針をきめたと書いてある。これは新聞でそういうふうに報道をされている。そういう事実があるのかどうか、その根拠は何か、そのことをお伺いしたい。
  192. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 本件は、まずインドネシアの領海内で発生したと考えられておりますので、第一次的にはインドネシアに裁判管轄権がございます。したがって日本側として第一次的な裁判管轄権はないわけでございますが、ただ本件は、わが国の刑法第百二十九条第二項の業務上過失艦船往来危険罪に当たると考えられます。で同法の第一条第二項の国内犯の規定によりまして刑法が適用されるというふうに考えられますので、わが国にも裁判管轄権があるというふうに考えております。  ただ適用するかどうかを決定した事実があるかという点につきましては、まだそういう事実はございません。ただ適用されるという、法律的には適用されるものだという解釈をしております。
  193. 和田春生

    ○和田春生君 そうなりますと、国会の委員会の席上ですから何々新聞、何々新聞という名前をあげることは遠慮いたしたいと思いますが、この新聞に出ている記事は誤報ですか。——何なら読み上げてもいい。「同庁は「祥和丸」座礁事故に関する適用法規、法解釈などについて七日、東京地検と協議した。これは保安庁です。「この結果「祥和丸」が何らかの過失によって船の往来の危険を生じさせたことは明白であり、刑法第一二九条二項(業務上過失往来危険罪)が適用出来る、との結論を得た。だが海洋汚染防止法に関しては、同法が海難による場合などを除外規定としていることから今回の事故には当てはまらないとの考え方をとった。」、これはある一つの新聞の報道です。いろいろ似たやつはあります。これは間違いですか、この報道は。
  194. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) ただいま申し上げましたように、刑法のこの百二十九条が適用されるかどうかにつきまして東京地検と打ち合わせたことは事実でございますから、その報道は間違っておりません。したがいまして、法解釈上これが適用され得るという解釈になっておるということを御説明申し上げます。
  195. 和田春生

    ○和田春生君 そうすると、刑事責任追及をやる、こういう結論を出したわけではなくて、適用しようと思えば適用できる、そういうことですか。
  196. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) これは、祥和丸関係者が帰国いたしました上で捜査をした結果を見なければ最終的な問題にはならないと思います。
  197. 和田春生

    ○和田春生君 それじゃ、日本の国内、領海外の公海上、あるいは従来の国際海峡等で起きた海難事故について、同じように刑法百二十九条第二項を適用した前例はありますか。
  198. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) そういう事実はございます。一九七四年の十月にマラッカ海峡で衝突した日興丸という船がございますが、この船について適用いたしております。
  199. 和田春生

    ○和田春生君 それはマラッカ海峡で衝突した事故一件だけですね。あとにありますか。航路外の暗礁に乗り上げたりして適用した事故ありますか。——時間の節約で私が申し上げますけれども、刑法による往来危険罪という形になれば、船の場合には航路標識をぶっこわしたとか、そのことによって往来をとめたとか、簡単に言えばそういうことに適用されるわけですね。で、今度の場合には航路からはずれて通れないバッファローロックにのし上げたわけです。航路標識をこわしたわけでもないんです。それに積極的に適用を検討したという根拠は何ですか。
  200. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) 二つの場合がございまして、実際に航路を閉塞して往来を阻害したという場合と、その船自身がこういうふうに座礁いたしました場合と、二つの場合がこの往来危険罪には含まれております。
  201. 和田春生

    ○和田春生君 この問題については、あとからまた機会があるときに徹底的に法解釈の問題でやりたいと思うんですが、関連して、海難審判庁の長官はお帰りになったようですけれども事故がインドネシアの領海であるかどうかということはあとからお伺いしますが、領海の中でかりにあっても、船籍の旗国主義によってわが国に海難審判の管轄権はあると、こういうふうに私どもは解釈いたしておりますが、そういうふうに見てよろしゅうございますね。これは運輸大臣
  202. 寺井久美

    政府委員(寺井久美君) ただいまの先生の御解釈、けっこうでございます。
  203. 和田春生

    ○和田春生君 そうなれば当然この事故についてどういう原因があったのか、なぜ起きたのかということについて海難審判が行なわれることになると思うんです。また行なわなければならないでしょう。それは乗り組み員の運航過失を追及するという意味ではなくて海難自体の原因の追及、これは非常に大切なことであります。となれば当然目先で起こったことではない。海上保安庁の係官が現認して事故現場をやっているわけでもない。しかも国際的に関連をしているというのならば、当然海難審判を先行さして海難審判の結果が明らかになってからその種のことは検討してしかるべきではないんでしょうか。第十雄洋丸のときにも船長が逮捕されました。あのときには多数の死人が不幸なことに発生をいたしておりまして、そして当事者の片方の責任者が全部なくなってしまった、できるだけ証拠は保全しなくてはならない、その他のことも考えて、あえて逮捕に踏み切った。検察側の立場としては、それなりの理由があると思うが、私どもはそれすらも非常に問題があると思う。何か海難が起きれば全部船員の責任にするというような昔の旧憲法時代の海員懲戒法の精神をそのまま生かしてやっているというようなことでは事故はなくならない。  しかし今度のことは雄洋丸の場合とはまた違う。いま私が言ったような状況なんです。なぜ海難審判というものを先行さして、ほんとうに事故原因というものを公判で突き詰めていく、二度とそういうことを起こさないように手を打つ、そういうことの関係で、もし明らかに過失責任ありとわかったときにどうするかということを検討してもいいことではないでしょうか。これは長官責任じゃない。海上保安庁も運輸大臣の所管のもとにある。そういうやはり運輸省責任というものが何でもかんでも運航している船員の上にふっかけてしまって、肝心の問題を見のがす一つの大きな原因になっているんではないか。私はそういう点でこの事故に対応する政府の姿勢、非常に根本的に問題があるように思うんです。運輸大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  204. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 実は私はきのうおそく郷里のほうから帰ってまいりまして、けさも朝忙しくて、実はまことに恥ずかしいんですが、朝新聞を見る時間がなかったわけなんです。それで、そのことを全然知りませんで、ここで初めてその話を聞いたものですから、事の真相をあらかじめ保安庁長官に聞くこともできなかったんですが、いま和田さんの御指摘のように、ああいう遠隔の地で、しかもインドネシアの領海内で起こった事故でございますので、まず管轄権のあるところのインドネシア政府でもって事故の追及その他を当然やられると思います。同時に、お話しのように日本の海難審判庁においても事故調査あるいは一切の処理を引き続いてやるということになると思います。  そこで保安庁が法務省と打ち合わせをしたという点は、おそらくいろんな前提条件があって、もしもこうこういう事故であったら何々罪が適用されるんではないかというふうな、今後海難審判庁が調べるときの、何といいますか予備知識的に一応意見の交換をして、こういう状況、条件であればこういう何々罪が適用されるのではないかということで、ああそうかということで意見の一致を見たんではないか、私はまあそういうふうにしか考えられないのでございますが、実はよく知らなかったものですから、その程度でひとつ御了承願います。
  205. 和田春生

    ○和田春生君 これはやはり大臣は一番最高の責任者ですから、よく知らなかったということでは済まないと思うんです。で、そういう点についてやはり運輸省としての態度というものをしっかりしてもらいたい。海難審判庁は独立した機関でございますから、別に運輸大臣の指揮命令のもとに動くというわけではございませんけれども、審判を申し立てる場合には理事官というものもおるわけです。むしろ、どういう形でこの海難事故については海難審判を進めていくかということが私は先に立つのがあたりまえ、乗り組み員の刑事責任の追及なんていうのは、ほんとうにまずいことがあったということがだれの目にも明らかになったときに考えればよろしいことで、一人の死人を出しているわけでもない、沿岸国には迷惑をかけたかわかりませんが、これは刑事事件の責任の追及ということとは次元の違う問題であると思うのです。  まして、先ほどの情報が私は真実であるかどうかはわかりませんけれども、バッファローロックのライトブイが消えておった、かりにそういうことが事実だったとするならば、これは単純な操船ミスではなくて、その航路標識の管理上に手落ちがあった、あるいはそういうものが、関係船舶への通達がちゃんと行なわれていなければ、そういう通達体制そのものにも事故原因があったのではないかという問題にまで波及していくわけです。したがって、もしそういうことがわかったときに、こういう記事が先行しておる、船長はじめ乗り組み員に対しては重大な侮辱、そうもなりかねない。慎重にそういう点については対処をしていただきたいということを本席においては強く求めておきたいと思います。
  206. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 和田委員の御指摘のとおりでございまして、この事故原因を解明しなければならないわけでございますが、いろいろ原因にはあろうかと思います。あるいは操縦者の過失もあるいはあるかもしれないし、あるいは情報として聞いております外的な原因もあったかもしれない、いろいろあると思います。したがいまして、保安庁が法務省と相談をしたあの記事のことでございますけれども、そういうことにはかかわりなく、事件の原因のはっきりした究明確定は私は責任をもってやるつもりでございますので御理解をいただきたいと思います。海難審判庁は審判庁としてやりますけれども運輸省といたしましてもそういう点は十分考えてやりたいと思っております。
  207. 和田春生

    ○和田春生君 それでは次の問題に移りたいと思うんですが、先ほど来の質疑の中でも、またいまも祥和丸が座礁したところはインドネシアの領海内である、こういうことが言われておりまして、国務大臣である運輸大臣もそのことをおっしゃっているわけです。どういう根拠に基づいてインドネシアの領海内であるという断定的な発言をされているんでしょうか。
  208. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 私の受けております報告では、十二海里説、三海里説いろいろございます。インドネシアは十二海里説をとっておるようでございます。したがって、この起きました地点はインドネシアのとっております十二海里の領海説に従いましても領海内の地点である。また三海里説をかりに仮定いたしましても、その三海里の内側にあるというふうな報告を受けておりますので、そこでインドネシアの領海内の地点だと、こういうふうに申し上げておるわけです。
  209. 和田春生

    ○和田春生君 その三海里説をとっても明らかにインドネシアの領海内だというのは間違いないですか。
  210. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私どもの調べましたところでは、あの辺は島がたくさんございまして、事故が起きました地点に最も近い島から測量いたしますと三海里の中に入っている、こういう報告を受けております。
  211. 和田春生

    ○和田春生君 事故が起きた地点に一番近い島から距離をとって三海里。それはすべて領海として認めていく。それは国際的に確立された解釈でしょうか。
  212. 中江要介

    説明員(中江要介君) 国際的に確立された領海の幅員といいますと、いろいろいま説は出ておりますけれども、最大公約数をとりますと、領土のいかなる部分であれ、そこから三海里以内は領海という点では最大公約数があるわけでございますので、本件の場合はどういう基準に照らしても間違いないものだと、こういうのが私どもの解釈でございます。
  213. 和田春生

    ○和田春生君 そうするとシンガポール側についてはいかがでしょうか。
  214. 中江要介

    説明員(中江要介君) シンガポールは御承知のように三海里説をとっておりましたので、最初この事故はシンガポール領海外の公海で起きた事故だということが誤り伝えられたわけでございますが、この地点はあとでよく調べてわかったことでございますが、シンガポールとインドネシアが非常に接近しているところで、すでに両国間で境界確定の線が引かれておりまして、その線からインドネシア側にこの地点があるわけでありますので、シンガポールが領海として主張している海域には属さないということは、これはシンガポールの立場に立ちましても明白なことであると、こういうふうに見ております。
  215. 和田春生

    ○和田春生君 私どもの承知しておることとはちょっと違うんですけれども、あのマラッカ・シンガポール海峡についてインドネシアとシンガポールが協定したのは領海をきめたのではなくて、あの海峡における両国のそれぞれの管轄権その他についての協定であって、領海そのものの境界とはみなしていないというふうに私どもは聞いているんですが、いかがですか。
  216. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私が申し上げましたその領海といいますか境界というのは管轄権の境界でございまして、その点では先生のおっしゃるとおりだと思いますが、それは領海に及ぼし得る管轄権というふうに考えたものですから、領海の境界線と申し上げたわけでございます。
  217. 和田春生

    ○和田春生君 この問題は、これからのいろいろな安全対策や国際海峡の通航権、さしあたっては三月から再び開かれる国連の海洋法会議に非常に関連があるわけだと思う。わが国も大体領海十二海里についてはその原則を認めていこうという態度になっている。そういうふうに承知をいたしております。その点については、私どももむしろ前々からそういうふうな考え方を持っているわけですから異論がないわけですが、しかし十二海里説になってくると国際海峡というものをどういうふうに見ていくかという解釈の問題がある。それから通航権の問題についても公海と公海を結ぶ沿岸国の領界内に入る海峡もあれば、あるいはそうでないものもありますし、無害航行といっても、いわゆる武器を搭載した軍艦その他を対象にする場合もあれば、最近では航行船舶の安全とか海洋汚染も含めていろんな問題が出てきている。この点については杉原審議官、いままでの長い会議にも参加をされて御存じのとおりだと思う。そういう問題をこれから取り上げていく場合に、やはり海洋国日本としては留保しなければならぬ条件もたくさんある。同時に古い時代のような公海自由の原則なんということはもう崩壊してしまっているわけですから、新しい体制に応ずる考え方はしなくてはいけないけれども、船なくしては生きていけないという日本の場合には、特にそういうような海峡通航の問題等についてはよほど慎重に扱わないといかぬ。先ほど来言われている安全対策からいけば、マラッカ・シンガポール海峡というものを避けてロンボク・マカッサル海峡を通れ、そのほうが安全でしょう——運航の技術的な面からいったらそのとおりである。  しかし新しい領海十二海里になれば、ロンボク海峡もまたインドネシアの領土の中に包まれてまいりますし、それに群島理論なんていうのが変に適用されますと、これまたのど元を押えられていることになっている。そういう中で、日本船のもちろん敵意を持たれない平和な輸送というような面において、日本のやはり国が生きていくために海峡通航権等については、領海の解釈ないしはいろんな問題で考えなくちゃならない面があります。またそういうバーゲニングという場合にも、わが国としてはいろんな点を考慮しなくちゃならぬ点がある。そういう点を一々ここで申し上げようとは思いませんけれども、そういうことを踏んまえているのに、あっさりあれはインドネシアの領海なんだと言ってしまうという、そういうことはいささか軽率を欠くんであって、いろいろ検討をすると、そういう態度もあって私はいいように思う。沿岸国に対して迷惑をかけたからどうこうしようという問題と直結して領海であるかないかということを考える必要はないと思うのです。この点について、これは杉原審議官にちょっとお伺いしたいと思うのです。
  218. 杉原真一

    説明員(杉原真一君) 今回の事件は、実は海峡の通航制度そのものでございまする航行の安全のために沿岸国がどのような権利行使を行なうことができるか、あるいは汚染防止のためにどのような措置をとれるかという点とは直接的な関係は実はございません海難事故でございます。したがいまして、先ほど来御答弁がございました領海の中における管轄権の問題として、一義的にお取り上げになっているのだと、このように私は理解いたしております。
  219. 和田春生

    ○和田春生君 だいぶおそくなりまして、あまり長くやっていると皆さんにも一恐縮でございます。きょうのところははしょっていきたいと思うんですが、先ほど来いろいろ対策その他についてお伺いしてみても、今度の問題は非常に関連するところが大きいんですね。ところが、どうも日本政府の腰が定まっていないというか、基本的な姿勢というものがはっきりしていない。それをきちんと私はして対処をする必要があるんではないかと思うんです。たとえば先ほど取り上げた海難という問題については、なぜそういうものが起きたかということについては、領海の内であろうと外であろうとかまわぬわけです。まず海難審判、そこでそれを明らかにしていく体制があるわけです。ほかの人はよけいなことを言う必要がない、はっきり言いますと。  それから海難救助や事故の事後処理、こういう面については第一義的に船主が背負う。日本の国内で海難が起きても同様でありますから、これは政府の助力、あるいは政府のいろんな介入がなければ船主だけではできない。そういう面については、沿岸国との関係考え政府はやらなくてはならぬところについてはきっちりやっていく。そしてさらに損害賠償の問題がいろいろ出ておりましたけれども、損害賠償については、先ほど来言われているように、太平洋海運祥和丸については保険に入っている。御承知のようにPI、これで補償される。これで足りない分についてはTOVALOPがある。同時にまたCRISTALもある。そういう補償措置がある。  同時に日本のPIは英国のブリタニヤに再保険をかけているんです。ですからこれは他のほうにも関係しますから、すでにブリタニヤは自分の主導権のもとに損害の拡大の防止と損害調査という面で現地に乗り込んでいる、御承知だろうと思うんですね。そういう点を考えれば、これは民事の賠償ですからあくまでそういう面にまかせる、私はそういう態度をとるのが日本の国としてあたりまえだと思うんです。その保険金が三千万ドルだから三千万ドルの範囲内におさまるだろうとかおさまらないだろうとか、よけいなことを言う必要がないんです。それでひとつ処理してもらう、どうしてもだめになったときにはそのときに政府が出ていけばよろしい。  同時にこの点については航行の安全対策がある。その安全対策は日本の国内でできることがある。たとえば日本船については何トン以上のタンカーはマラッカ海峡は通さないんだ、どこを回ってくれ、日本の船主と政府が合意をする、あるいは船主自体の自主的な規制においてとれるでしょう。しかし、あそこは国際水路で日本船だけではない、伝統的な海運国をはじめ各国が使っているわけです。日本の措置というものがどういうはね返りがいくかということを考えると、沿岸国だけを見ておったんでは海運国の日本として将来にいろんなひっかかりが出てくるわけです。そうなると、やはり国内でやれることと国際的な関連があるということとを分けて考えるということでなくちゃならない。そしてそれぞれに対してけじめをつけながら対応策をとっていくということが非常に必要であろうと思うんです。  そしてこの問題の処理いかんということは、今度の国連の海洋法会議の成否いかんということに、日本の国益と関連していろんな問題がありますから、大臣関係者がもの一つ言うにしても、きちんと打ち合わせておいて軽率なものを言わない、それがひっかけられて非常に苦しい立場に追い込まれるというようなことはしない。こういうふうに問題ごとに整理をしておく、担当者をきめてきっちりと対応をしていくということでないといけないと思うんですけれども、そういうことをちゃんと知った上で、言うべからざるときには沈黙を守っているというんならそれもよろしい。ここで言わなきゃいけないというときにものを言うというのはそれもよろしい。ところがそうじゃなくて、何だかざわざわやって事故に振り回されて、過剰反応を示して、あとになると何事に結びついていくかわからぬような発言がちょいちょいと出てくる。私はそういう政府の姿勢というものがたいへん残念でならないんです。  あの事故によって沿岸諸国にいろいろ御迷惑をかける、その点についてどう償おうかということは、そういう日本の態度がきちんとしている上に立っての国際関係、外交関係として処理すべきである、どうもそういう点がきょうの数時間にわたる質疑を通じても、またいろんな報道面を通じても、私はきっちりとしてないように思う。で、いまのままでいきますと、第二、第三の祥和丸事件が起こる可能性あり、こういうふうにも指摘されている、私もほうっておくと起こるように思います。海員組合の参考人も言われておりました、運航技術者の立場からいえばしごくもっともな意見、われわれもそういう点については懸念を持っている点がたくさんあるわけです。  そういう点に今回の処理というものがへたな前例になって、万が一起こしてはいけないけれども、起きたときにますます追いつめられていくという形になったんでは、これはもう船会社も乗り組み員も、国民生活も含めて、やはり日本の国家、国民の利益に反する、そういう点で私はどうもしっかりしてないように思う。内閣総理大臣にもお伺いしたいところですが、国務大臣として木村さんいらっしゃっているわけです。私の質問の最後の締めくくりとして、そういうことについてひとつしっかりやってもらいたい、反省も含めて量見をしかと承っておきたい、こういうふうに考えるわけです。
  220. 木村睦男

    国務大臣木村睦男君) 和田委員から質問を通じまして非常に貴重な御意見を拝聴いたしました、感謝をいたします。実は私も和田委員と全く同じ考え方に立って今回の事故の処理をいたし、またあやまちなきを期したいとかねがね考え続けておるところでございます。ことに事故が起こりました直後、現地のいろいろな情報をとってみますというと、現地ではああいう危険な水域でときどきいままでも事故が起こっておる。今度もこういう事故が起きた。起きた以上はいかに早く事故の処理をやるかということに一生懸命になっておるのにもかかわらず、事故を起こした国の日本を見ると、事故を起こしたとたんに、いや賠償金がどうの補償金がどうの、あるいはシンガポール海峡の航行問題がどうのこうの、あんまり先走っておるではないかという、いかにも批判的な空気が現地にあるというふうな情報も実は聞いておりました。私はそうであっちゃいけないと、こう思っております。したがって、いろいろな意見が、あるいはいろいろなことが巷間で言われておりますけれども、私はこういう事件は最も冷静に対処して、そして特に国際問題をはらむ問題でございますので、運輸省だけでなしに外務省とも十分連絡をとりながら、あくまでも冷静に善後処理をしていきたい、かように考えておるのでございます。  国会の答弁等を通じまして、いろいろ運輸省自体にも御指摘のような反省すべき点もあることも私も十分わかりましたので、この点は貴重な御意見として十分拝聴いたしまして、全く和田委員と同じような気持ちで冷静に処理をいたしたいと思っておりますので、今後ともいろいろ御指導いただきたい、かように思います。たいへんありがとうございました。
  221. 和田春生

    ○和田春生君 最後に一問。  この点は、外務省からもおいでになっておるようですから特にお願いをしておきたいんですけれども、いま運輸大臣がお答えになったような形で全体で対処しておればこういうことにならなかったと思われる一つが、シンガポールの現地紙から批判が出ておるわけです。日本の政府は、最初は非常に鋭敏に反応したけれどもあとからめんどうくさくなってきて民間に押しつけていると、そういう記事が現地紙に出ております。そういう点を考えますと、やはり、現地の在外機関も含めまして、いま運輸大臣からお話がございましたけれども、日本政府は初めはじっとしておったけれども大事なところでは出てきたと、そう言われるように、やはりきちんとしていただきたい。このことも特にお願いをいたしておきまして、これについては、御答弁はもしされるならけっこうでございます、あるいは、御答弁がなくてもよろしゅうございますけれども、外務省関係にも要望をしておいて私の質問を終わりたいと、こう思います。
  222. 中江要介

    説明員(中江要介君) 外務省は当初からただいま先生のおっしゃいましたような態度で一貫して対処してきたつもりでおりましたわけでございますけれども、報道機関との関係でさらに検討を要すべき点があったという点は、私どももシンガポール紙の指摘を待つまでもなく反省している点はございます。今後とも、いまおっしゃいましたような線で、運輸省とも協議を重ねて対処をしてまいりたい、こう思うわけでございます。
  223. 和田春生

    ○和田春生君 終わります。
  224. 宮崎正義

    委員長宮崎正義君) 本日はこの程度にいたします。  多筥参考人に申し上げます。本日は、お忙しいところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。  これにて散会いたします。    午後八時十三分散会