○
吉田分科員 過去の経緯はここで余り言おうとは思いませんけれ
ども、文部
大臣に申し上げたいのは、前、二つ問題にいたしました小郡市の二つの遺跡、それを、二つあるいは二層になっております遺跡について、新幹線の一レール、五十メートル移せば大半が残せる、そこでそういう具体案を出して、これは現地に調査をしております者が言い出してくれた方法でございますから、そこで取り上げた。そうしたら、これはそのときの清水という文化庁の次長ですが、国鉄本社と五十メートルずらすことについて申し入れをして協議中でございますと、あたかもずらすことが文化庁の申し入れによってできるような答弁がされました。ところが、いまの
お話のとおり、それもだめだ。側道だけ。
それから小郡の横隈山遺跡については、公有地の拡大の推進に関する
法律を適用して、公園地としての公有地、これを先買いするならば
地方債は認めてもよろしい、こういうように自治省にそのときに言わせた。だから、市の方に連絡をいたしましたけれ
ども、文化庁と県の
教育委員会が、全面買収をしたって裏づける金はありませんよ、県や市はそういう裏づけをいたしませんよと言うものだから、これも破壊してしまった。そして残っておるのはたった二つ。前方後円墳が
一つ、それから取り巻いておりました溝が一部残っているだけ。それを評して西
日本新聞は皮肉に、「お粗末な文化行政を象徴する典型的なシンボル」、あるいは、「保存面積を極限まで切り詰めたため、もはや前方後円墳とは言えなくなった。弱腰の文化財保護行政と開発行政の利益追求の結果生まれた奇形児」、こう言って新聞に書いている。これが
日本の文化財保護行政の
実態であります。
そこで私は、そのときに、施行者に調査費を出させる、小郡の横隈山遺跡については西鉄不動産に調査費を出させる、それから筑紫野市の新幹線操車場
設置に伴います門田遺跡あるいは中原古墳群等の調査費を国鉄に出させると言う。しかし、施行者に調査費を出させれば、早く調査を終わって施行ができるようにというように働くのは当然でしょう。ですから、そういうのは施行者に
負担させないで、国や県で出したらどうだ、こういうことを言ったのですけれ
ども、その後これをがんとして変えようとはいたしておりません。その結果が、次から次にかけがえのない文化財がなくなっていっている。
そこで、私は文部
大臣に申し上げることですけれ
ども、この間、中国の壁画展をごらんになりましたか。ごらんになったらおわかりだと思いますけれ
ども、あれは漢と唐だけだったと思いますけれ
ども、あれだけの古墳の壁画がほとんど完全に近い形で模写されて
日本に持ってこられた。いわば古い文化財の保護状態の中国における
実態があそこに出ているわけです。私は、西安の近くの、人間の最初の遺跡だと思われます半坡村を、一遍ですが見る機会が与えられました。そのときに、
日本の遺跡の保存状態は、登呂等についてどうだと聞きましたら、問題になりませんと
日本の文化
関係の人が言っておりました。
これは、野鳥をつかまえてきて鶏に仕上げる段階、あるいは野猪をつかまえてきて豚に飼育をする始まり、そこに人間の最初の文化がある。亡くなった子供をほうっておきますと野獣に食われるからかめをつくった。その素焼きのかめが人類の最初の文化財だと私は思うのですが、その遺跡が上屋をつくって完全に保存をされております。これは中国だけではありません。高松塚古墳と同じようなものが北朝鮮にもございます。それから北朝鮮の文化財保護の状態は新聞で見ました。あるいは韓国でさえというと失礼かもしれませんけれ
ども、慶州の保存状態等を九州の資料館で見ました。
日本が一番おくれておる。一番お粗末。そしてあえて言うならば、
地方の文化だから、あるいは先住民族が、先におりました人たちがつくった文化、あるいは伝わってきた文化、そういうことだからかとも思いますけれ
ども、ほとんどほったらかし。そして問題として取り上げても、その保存のために全力を上げるということがなされない。具体案を提示してまで、たとえば操車場を五十メートル移せば大半がとれるじゃないか、あるいは公有地の拡大の推進に関する
法律を適用されれば、公園地として買い上げたいというのだから、買い上げる
地方債は自治省は認めるというのだから、そういう具体的な方法まで指示して申し上げるのだけれ
ども、それを文化庁が推進にならぬ、あるいは県の
教育委員会、文化課が取り上げぬというのは大変悲しいことだと思います。
それで横隈山遺跡のことについては、昨年の臨時国会で質問ができなかったときに質問主意書を書きましたら、多少先ほど読み上げましたような皮肉を交えておったせいかもしれませんけれ
ども、木で鼻をくくったような答弁。私は、文化行政について、伝達をするなり、あるいは質問主意書なり、あるいはこうして質問しますのもそれに力を入れてもらいたい、少なくとも外国に負けないだけの文化財保護行政をやってもらいたいと思って申し上げるのですけれ
ども、どうも馬の耳に風といったような
実態でございます。
それで装飾古墳について
お尋ねをしてまいるのでありますが、ことしの予算にたくさんつけたという話。ところがそれは従来問題になっておりました明日香その他の土地の買い上げ費用を計上された。装飾古墳については、先ほど言われました装飾古墳保存
対策研究会調査報告が、四十七年まで続けられたと言いますが、四十七年か八年かにはできておる。それを公表はされてない。公表されてないで、そしてその成果が九州なり全国に散らばります装飾古墳の保存のためには役立たないで、皮肉にも高松塚古墳の壁画の保存のためには役立ったようです。これは参考にされたようです。しかし、装飾古墳の保存のためには何ら役立てられておりませんから、これも装飾古墳の白書をつくった榊君と私が参りまして、文化庁にせっかくでさておる調査報告は公にして、その装飾古墳保存のために役立ててもらいたい、印刷をしてもらいたい、こういうことを申し上げて、やっといま予算か計上されて印刷にかかるという段階なんです。こういう文化行政のお粗末さに対して、文化行政を担当しておられます文部
大臣として、私は
永井さんだから特にこの機会に申し上げるのですけれ
ども、どう
考えておられるか、文部
大臣の所信を承りたいと思う。