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横路分科員 これは決まっていないのは実はよかったと思っているのですよ。よかったというのはなぜかというと、この案を見てみると、国民に対してどういうサービスを行うかという視点が全く欠けているのですね、これは後で
指摘しますけれども。したがって、ぜひそのときにはそれを入れてもらいたいと思うのです。
実は質問の本論はこれからなのでありまして、実は北海道の小樽で、小林静江さんという方なんですが、妹さんが脊椎カリエスで長い間寝ておって亡くなられたのですね。それで病床で寝ている
子供たちに図書館というのは、特に北欧あたりですと、ホスピタルライブラリー、病院に図書館がきちんとあってそういうサービスが行き届いている。
日本の場合にはそういう点が非常におくれているわけですね。そこで
子供たちに配本して歩いて、これは全く私財をなげうってやっているわけです。その中から周辺のボランティアの青年も出てくる。それから訪問教師の人も、在宅の障害児の
ところを回るときに、本を持っていって貸し出すというような運動をやってきたわけです。だんだん地方の方からもそれを利用したいという声がある。初めのうちは、本を送りまして、返信用の切手なんかもつけて個人でやってきたわけですが、それもとうとう、最近の
状況では小包みも
相当高いものですから、そういう地方に個人がやるというのも限界が来ているということで運動を始めているわけですね。
どういう運動かといいますと、
一つは、図書館の方でそういう
要求があったときに、無料で寝たきりの障害者の人に、これは
子供ばかりじゃなくて大人にも、郵送するような
制度というものを
考えてもらえないか。あるいはもうひとつさらに進んで、図書館ばかりじゃなくて、こういう個人の運動をやっている人も、それを送る場合に、盲人の点字図書のような仕組み、
制度というものをつくってもらえないか、そういう運動が行われておりまして、実は去年文教委員会にも請願が出まして、これは採択になっているわけです。
そこで、国際的な関係をちょっと見てみますと、デンマーク、スウェーデンあたりはそういう公共図書館のホスピタルライブラリーに対するサービスというのが義務づけられていて、そのサービスに要する経常費について
国庫負担が、デンマークでは四五%、必要に応じてさらに三〇%ふえる。フィンランドでは九〇%までそれを
国庫補助として行っている。そういう
制度が図書館法に基づいて行われているわけです。
さらにユネスコの公共図書館宣言というのは、一九七二年に改定されていますが、その中では身体障害者に対する利用ということを明確にしていますね。そういう形に図書館というのはやっていかなければいけない。さらに公共図書館システムの最低基準、これは一九六五年に障害者に対するサービスというのが追加になっていますけれども、障害者に対するサービスというのを行っていかなければならないということになっているわけです。
さらにアメリカの場合は、これは法令八十九の五百二十二号というやつ、一九六六年から身体障害者に対するサービスが
制度化して、身体障害者が
家庭から図書館に電話で注文すると、図書、雑誌、新聞、レコードなど図書館のすべての資料を
家庭に配付し、用済みの資料を回収していく。料金は無料。それから盲人並びに身体障害者は図書館に行くのが困難だから、この部門の図書館の仕事は通信と電話、あるいは郵便で行われる。その場合、借りる人は住む地域に関係なく無料で郵便料を払う必要はないということに、一九六六年からですけれども、なっているわけです。
国内の場合は、いま行っているのは栃木の県立図書館と島根の県立図書館の二カ所でありまして、島根県立図書館の方は、
要求があれば本は送る、そのかわり郵便料は借りる方が
負担する。栃木県立図書館の方は、年間
予算わずか五万円ですけれども、無料で
要求に応ずる。やはり問題になるのは
予算的な問題なわけです。そのようにだんだん地域的に
要求というのが高まってきているわけです。
そこで、まず第一点お伺いしたいのは、先ほどの運営に関する基準ですが、いままでの基準案というものは
施設の物に
中心を置いた
考え方になっていますね。しかし、物だってたとえば障害者の人が車いすで利用するということになりますと、車いす用のスロープをつくるだけではなくて、たとえばカードをめくる箱を置いてある位置ですね。これは高いと手が届かないとか、具体的にやっている
ところでもそういう問題がたくさん出てきているわけですね。これは
相当きめ細かくやらないと、実は入れるようにだけしたけれども、中ではまた利用ができないという問題が
現実に起きてきているわけで、その基準を決めるときに、幸か不幸か二十五年ほったらかしにしておったわけですから、せっかく決めるならば、このユネスコの公共図書館宣言の
趣旨にのっとった原則というものを公共図書館の運営の基準として、ひとつ明確にぜひ入れてもらいたい。それを抜きにして、いままでのように、どれだけ本がなければならぬとか、スペースがどれだけだとかというようなことではなくて、その辺の原則をこの中にまず入れてもらいたい、その辺はいかがでしょう。