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1975-02-25 第75回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十五日(火曜日)     午後三時十四分開議  出席分科員    主査 前田 正男君       谷川 和穗君    湊  徹郎君       山本 幸雄君    阿部 助哉君       上原 康助君    角屋堅次郎君       久保 三郎君    楢崎弥之助君       米田 東吾君    田代 文久君    兼務 石野 久男君 兼務 瀬長亀次郎君    兼務 小川新一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         外務大臣官房会         計課長     梁井 新一君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済局次         長       野村  豊君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  分科員外出席者         防衛施設庁総務         部施設調査官  奥野 貞広君         防衛施設庁総務         部補償課長   鳥羽 浜雄君         沖繩開発庁総務         局総務課長   大濱 忠志君         農林大臣官房審         議官      二瓶  博君     ————————————— 分科員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   阿部 助哉君     角屋堅次郎君   楢崎弥之助君     米田 東吾君 同日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     上原 康助君   米田 東吾君     久保 三郎君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     阿部 助哉君   久保 三郎君     楢崎弥之助君 同日  第一分科員石野久男君、小川新一郎及び第四分  科員瀬長亀次郎君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算外務省所管      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十年度一般会計予算中、外務省所管議題とし、政府から説明を求めます。宮澤外務大臣
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  同予算の総額は、一千四百七十四億九千七十四万四千円でありまして、これを補正後の昭和四十九年度予算一千二百六十八億七千三百七十万六千円と比較いたしますと、二百六億一千七百三万八千円の増加となり、一六・二%の増加率を示しております。  また、前年度当初予算に対しましては、一八%の増加率と相なっております。  申し上げるまでもなく、最近の国際情勢がますます流動的な様相を強めつつある上、エネルギー、食糧等国民生活に直結する問題が大きな外交課題となりつつあること、また、これに対応して外務省の職務と責任が急激に増大しつつある実情にかんがみ、今後わが国国際地位にふさわしい役割りを果たしつつ、わが国のため望ましい国際環境の実現を目指し、開発途上国に対する経済協力充実強化し、流動する国際情勢に機動的に対処し得る外交実施体制を整備し、国際理解の促進、対日イメージ向上のための広報文化活動強化海外子女教育充実強化を中心とする在外邦人生活環境のための諸施策に重点的に配慮を加えた次第であります。  これをもちまして、外務省関係予算概要について説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれまして、会議録に掲載せられますよう御配慮をお願い申し上げます。
  4. 前田正男

    前田主査 この際、お諮りいたします。  ただいま外務大臣から申し出がありました、外務省所管関係予算の主要な事項につきましては、その詳細な説明は省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 前田正男

    前田主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  6. 前田正男

    前田主査 以上をもちまして、外務省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 前田正男

    前田主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間は、これを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、答弁はできるだけ簡潔明瞭にお願いをいたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  8. 角屋堅次郎

    角屋分科員 それでは、外務省関係分科会におきまして、私は、来月の十七日からジュネーブで開かれます第三次国連海洋法会議の第三会期の問題、あるいは三月早々から開始されます日ソ漁業交渉、さらには日中の漁業協定の取り決めの話し合い、さらには六月に予定されております国際捕鯨委員会におきます鯨関係問題等々を含めて、大臣見解をお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  私は、党の水産政策委員長という立場にございまして、第三次国連海洋法会議議題内容については、大臣承知のように、第一、第二、第三委員会それぞれ広範な問題を取り上げておるわけでございますが、主として漁業サイドにウエートを置きながら大臣の御見解を承りたい、こういうふうに思うわけでございます。  宮澤外務大臣は、三木内閣発足とともに外務大臣に就任されてから、日中の平和友好条約の問題を初め、日ソ懸案事項問題解決、あるいは私がこれから尋ねようとしますジュネーブにおきます第三次国連海洋法会議に対する取り組み、あるいは国会内においては核防条約批准問題等を含めて、なかなか多忙かつ重大な課題を持って今日御努力をされておるわけでございまして、立場は別として大変なことだろうというふうに拝察をいたすわけでございます。  ただ、三月十七日から開会をされます第三次国連海洋法会議というのは、昨年のカラカスにおきます会議経緯から見ましても、いわば大詰めに来たという感じがするわけであります。問題は、今度のジュネーブ会議で困難ないろいろな問題を含めて取りまとめを見せるか、あるいはさらに次の会合に持ち越すことになるかということは、これはこれからの政治判断の問題でございまして、定かにいたすわけにはまいりませんけれども、やはり日本といえども、百三十七カ国の参加の中で行われておりますこの重大な海洋法会議については、最大限お互い主張の歩み寄りによって取りまとめる。無協約状態にすることは、逆に日本立場から見てもマイナスであろうし、現にカラカス会議以降、まだ決定に至っていないにもかかわらず、関係各国における従来の海洋法体制と違った新しい動きというものが次々に出てきておるという情勢等も見ます場合に、日本日本基本的立場を堅持しながら、取りまとめのためにもやはり努力をしなければならぬというのがジュネーブ会議性格であろうかというふうに思うわけでございます。  そこで、大臣に冒頭にお伺いしたいのでございますが、この前のカラカス会議におきましては、大臣案内のとおり、当時の小木曽首席代表が昨年の七月十五日の時点日本代表として、第三次国連海洋法会議第二会期における一般演説を行って、この会議に臨む日本の全体的かつ総括的な方針演説で示しておるわけでございます。カラカス会議の全体の情勢も踏まえまして、今度のジュネーブ会議取りまとめ方向ということも頭に入れながら、どういうふうに日本としてこれに対処していくかという場合に、基本的には七月十五日に日本小木曽首席代表が示した方針を踏まえつつ、やはりその後の情勢の推移を見て、今日関係各省で御相談中に基本的な方針について変更があったのか、あるいはそれらの会議状況を踏まえて、もっと明確にすべき点については明確にしていくというふうな具体的な内容があるのかどうかというふうな点からまずお伺いをいたしたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三月からジュネーブで開かれます会議が、先ほど御指摘のように最終的なものになるか、あるいはさらに次の会議に持ち越すかということは、御指摘のように、ただいま予断を許さないわけでございますけれども、しかし、わが国といたしましては、角屋委員の言われましたように、せっかくここまで多数国が協議を続けていることでもありいたしますから、いわゆる無条約状態になるよりは、何かの取りまとめが最終的にできるという方向に向かって建設的な努力をいたすべきであろうと考えております。  ただ、その場合、何としてもわが国世界有数海洋国でもあり、漁業の問題もあり、安全保障の問題もあり、また海底資源の問題もございますので、どのようにして国益を損なわないように、あるいは国益主張しつつ、この会議を最終的な結論に導くかというところがいろいろ苦労のあるところでございます。  で、実は三月からの会議に臨みます政府態度を基本的に決めなければなりませんが、各省間でいまだにその作業が終了いたしておりません。終了いたしました段階におきまして、ある程度のことは御報告を申し上げなければなりませんけれども、ただいまそこまでの段階に実は至っておりません。  いずれにいたしましても、カラカス会議からにじみ出てまいりました一つの大きな流れというものの中で、それを踏まえながらジュネーブ会議も基本的には建設的な方向で進みますように、多少弾力性のある訓令を持たせて代表を出さなければならないと考えておりますけれども、その内容につきまして、ただいま、まことに恐縮でございますけれども、まだ申し上げる段階に至っておりません。
  10. 角屋堅次郎

    角屋分科員 基本的方針については、まだ各省間でいろいろ相談中であって、今日時点内容を申し上げる段階に至っていないという大臣の御答弁でございます。やはり第三次国連海洋法会議のこれからのジュネーブ会議相談の中で、たとえば漁業サイドから見ますと、例の経済水域、エコノミックゾーンというものを認めるかどうか、あるいはその内容をどうするかという各国意見等も含めて、これは非常に重要な問題になっている。これは経済水域漁業だけの問題ではない。他の問題にも関連しておりますけれども。  そこで、大臣承知のように、カラカス会議には百三十七カ国が出席をして、一般演説の中で百十五国が演説をやった。小木曽代表日本としてこの問題についての反対見解表明をやったわけでございますが、経済水域二百海里の問題について、端的に支持が七十七カ国、条件つき支持が十六カ国、前向きに検討するというのが八カ国と、これを含めて参加国全体の中で八八%賛成、こういうふうに一般に言っておるわけでございますが、それに対して態度保留が七カ国、態度不明六カ国、反対日本、こういう中身承知しておるわけでございます。  日本は従来、領海の外の公海については、公海自由の原則国際漁業を伸ばしていった。相当各国の海域において実績を持っておる。御承知漁獲量一千万トンのうちの四五%程度、四百五、六十万トンというものは相手国経済水域の中の漁獲ということになっておる。したがって、経済水域の取り扱いがどうなるかということは、わが国国際漁業関係から見ますと、壊滅的な影響を持ってくるような問題を持っておるわけでありまして、そういう点から見て、やはり当初のカラカス会議において、日本をエクセプトジャパンという形に批判しておる向きもありまするけれども、日本立場として経済水域二百海里の設定について反対をしたという点は、一つ国際場裏における日本立場を鮮明にするという点で、これを是認をする立場を私自身はとっておるわけであります。もちろんこの点については、外務省サイドと農林省、特に水産庁とのサイドでいろいろな議論があったというふうに聞いております。ここの点では小木曽代表は、「われわれは、領海の限度をはるかに越えた水域漁業資源に対する沿岸国排他的権利設定に対し、一貫して、反対態度を表明してきております。」こういうふうに一般演説の中で述べておるわけでありますが、個別の問題として大臣見解を聞きたいのでありますが、いま言ったような経済水域に対する各国見解状態大勢から見て、今度のジュネーブ会議においては、こういう世界大勢も踏まえながら、あくまでも反対態度でいくのではなしに、条件闘争等も含めてこの問題では弾力的に対処すべきであるというふうに大臣自身はお考えでございましょうか、この点についての大臣見解を承りたいと思います。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、いわゆる経済水域設定につきましては、多くの国がそれを必要であると考えたのがカラカス会議であったと思いますけれども、実はその内容につきましては、角屋委員もよく御承知のように、千差万別のおのおの別々の考えを持ちながら、経済水域というものについては、いわゆる総論的と申しますか、賛成だという国が多いというだけの状況でございますから、これから果たして具体的な内容について、各国合意がそこからすぐできるものであるかどうかについては、いろいろ問題があろうと私は思うのでございます。  わが国は、経済水域というものが一つ大勢になりつつあるということは存じておりますけれども、その内容が全くいわば固まっていないわけでございますから、わが国国益、まあ世界的な公平ということも大事でございますが、そういうことをにらみ合わせながら、一番わが国国益が損なわれない姿、しかも各国の間で公平の原則が満足されるような、そういう姿の内容のものに全体をリードすると申しますか、そういうことを頭に置きながら対処をいたしたい。非常に複雑なやりとりになりますし、ネゴシエーションになると思うのでございますが、そういう大勢であるということは知らないわけではない。しかし、内容のないものでございますので、それにどのような内容を与えるかということについて、わが国がまだまだいろんな主張をし、しかるべき結論に導く機会というものはたくさんにあるというふうに考えておるわけでございます。     〔主査退席山本幸雄主査代理着席
  12. 角屋堅次郎

    角屋分科員 私のジュネーブ会議に臨む基本方針というものの質問に対しまして、大臣はいま各省間でいろいろ相談中であると言われましたが、この点について、三月十七日の前のいかなる時点で大体基本方針がまとまるか、このめどについて簡潔にお答え願いたい。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまといたしましては、会議に臨みます一週間くらい前までには、ほぼ合意を得たいと考えております。
  14. 角屋堅次郎

    角屋分科員 第三次国連海洋法会議に関連する問題は、非常に広範な問題を含んでおりまして、海洋汚染防止その他航行の自由の問題等も含めて、質問すべきことは中身はたくさんあるわけでございますが、この問題については、基本的な構えということをお尋ねする程度にとどめまして、次に入ってまいりたいと思います。  次は日中の漁業協定交渉に関する問題でございますが、これは大臣承知のとおり、昨年の五月二十四日から六月二十日までの間、北京でいろいろ折衝が行われまして、一時休会という形になっておったのが三月早々から再開をされる。しかもこれについては、日中の民間協定で従来やられておったものを政府間協定で取り組みたい、こういうことで交渉が行われることに相なっておるわけでございます。この問題については、いよいよ交渉が行われることになりますと、前回行なわれました際には、双方考え方に相当の隔たりがあったわけでございまして、これはやはりお互いに煮詰めながら政府間協定に持っていかなければならぬ、しかも昨年はそういう状況でございましたので、従来の民間協定を一年間延長いたしまして、今年の六月二十二日まで民間協定が有効である、こういう形の中で交渉が進められると思います。  そこで、交渉内容に入りますと、もちろん共同規制措置の問題について、日本側では民間協定にある程度手直し程度でひとついきたい。ところが中国側の方では、発足早々から、資源状況等を見ながら直ちに厳しい規制を実施するという姿勢で、この規制措置の問題でもやはり双方対立があるというふうに思います。  それから特にこの機会にお尋ねしたい問題は、例の軍事警戒ライン、これは農林水産委員会水産法論議のときに、外務省からも来てもらって見解をお尋ねした経緯がございますけれども、いわゆる共同規制措置相談の問題と同時に、中国独特の軍事警戒ラインというものが民間協定の中では覚書を含めて従来存在しておったわけでございます。これは中国としては、主権的な権利として正当なものだという立場に立っておるんじゃないかというふうに判断をいたしますが、国際海洋法の全般的な常識からすれば、特定の国のこういうものを認められないというのが、国際法上もそうでありましょうし、日本の当然の立場だと私は思うわけでありますが、こういった軍事警戒ライン相手側の問題については、前回交渉ではどういう状態であったのか、あるいは今回交渉の場合にもこれが持ち出されてくるのかどうか、あるいは持ち出された場合の日本側態度としてはどういう態度で臨んでいくのか、こういう点についてお答えを願いたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初に前回交渉につきましてのことを政府委員から申し上げまして、次に私から申し上げたいと思います。
  16. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま先生指摘の、日中漁業協定交渉におきます中国側軍事警戒区域、それからさらに軍事航行禁止区域、三番目に軍事作戦区域、それぞれ入域条件が違うことによりまして、三つの区域を設けられております。この点につきましては、中国側立場は、いま先生指摘のとおりの立場でございまして、私どもといたしましては、そういうものを公海上に沿岸の国が勝手に、一方的に設定できるということは、国際法上認められないという立場で従来から一貫して中国側に対しております。  この区域性格その他につきましても、中国側から説明を求めておりますけれども、まだ十分な説明を聴取いたしておりません。今回、三月一日から交渉が始まりますけれども、その際は、もちろん、いまのこの問題につきまして、われわれ非常な関心を持っておりまして、何とかこの問題について中国側の十分な説明を聞いた上で、いま申しましたような、公海における航行の自由、公海における漁業の自由という立場から善処いたしたい、こういうふうに考えております。
  17. 角屋堅次郎

    角屋分科員 大臣にお伺いしたいのですが、日中平和友好条約を速急に取りまとめるという場合に、実務協定で残っておる問題として、いま私から取り上げております日中の漁業協定があるわけでございますが、いままでの折衝状態、あるいは中国側のこういう問題に対する態度というものから見て、日中漁業協定についても、今回の交渉をもって取りまとめができるものだという判断にお立ちでございましょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、先ほど政府委員からも申し上げました、いわゆる軍事警戒ラインといったような考え方を、中国が依然として同じ主張をいたすのであるか、あるいはその性格なり内容をどのようなものとして考えておるのかということを、交渉が始まりますと聴取をする必要があると思うのでございますが、一般論といたしまして、公海にそのようなものを置いて漁業の制限をするというようなことは認めがたいところでございますので、したがいまして、先方がそこをどのように、説明をしてくるのか、それを聞きませんと、こちらの対処を申し上げることができませんが、やはり一般論としてそういうものは認められないものであるというこちらの立場は、そうなりました場合には主張をいたさなければならないと思うのであります。その結果交渉が妥結しないことを私ども望んでいるわけではございません。さようではございませんけれども、現在ございます民間取りきめとの関連で、どちらがいわゆる優劣と申しますか、そのようなこともあるいは判断しなければならない場合があるかもしれないということも考えております。
  19. 角屋堅次郎

    角屋分科員 日中漁業協定につきましては、やはり日本中国との将来にわたります友好関係という立場から、国際的に認められないものについては、中国側に私は譲歩を求めなければならぬと思いますけれども、従来の三十年以来民間協定でまいりましたその問題について、政府間協定に正式に切りかえる、取りまとめるということでいろいろ御苦心、御努力を願いたいというふうに思うわけでございます。  次は日ソ漁業交渉の問題でありますが、これは御案内のとおり、東京で三月早々から日ソ漁業委員会が開かれる、さらにモスクワカニ・ツブ交渉が開かれる、こういうことで東京モスクワで始まるわけでございますけれども、私は、このサケ・マスとか、あるいはカニとか、あるいはニシンとかツブとか、こういう個々の内容の問題について、ここで、時間的な制約もございますから触れようとは思いません。この前に日本アメリカと昨年末にやったときでも、あるいは日ソ漁業交渉でも、あるいは日中の場合といえども、国連の第三次海洋法会議というものにおけるソ連の国の主張、あるいは全体的な大勢というもの、いわばそういうことを頭に描きながら本年の漁業交渉をどうするとかいう形で臨んでくるだろう、こういうふうに判断をするわけでございます。そうしますと、ソ連の場合で言えば、いわゆる第三次国連海洋法会議の中で出ておる問題の一つに、遡河性魚種の取り扱い問題といいますか、それはソ連だけではなしに、アメリカもそうでありますし、カナダ等もそうでありますが、日本見解対立のような形で、沿岸国排他的管轄権、あるいはそれに準ずる主張がなされてきておるわけでありますが、こういう問題も踏まえて、今度の日ソ漁業交渉というものに対してどういう姿勢で臨まれるか、この基本的な構えについて御答弁を願いたいと思います。
  20. 松永信雄

    松永(信)政府委員 近く東京及びモスクワで開かれます日ソ漁業交渉につきましては、ただいま先生から御指摘がございました問題についての交渉が行なわれるわけでございます。さらに、それにつけ加えてと申しますか、最近問題になっております近海漁業の問題についての話し合いも行われることになるだろうと考えております。  こういう二つの交渉に臨みますわが方の基本的な方針といたしましては、従来日ソ間で毎年交渉をしてまいりました方式に従いまして、従来の日本側立場をできる限り貫いてまいりたいというのが基本的な方針でございます。もちろん、その際、来るべき海洋法会議におきまして、漁業問題、特に遡河性魚種についての問題がいろいろ論議されるであろうということを想定いたしておりますし、またソ連考えも、今度の交渉を通じてさらに明らかになってくるであろうというふうに考えておりますけれども、ソ連といたしましても、ソ連漁業利益というものがございまして、海洋法会議においても、漁業国の従来の漁業利益はある程度考慮されなければならないという考え方も、ソ連考え方の中にはあるようでございます。その辺が具体的な問題についてどういうふうになってまいりますかは、これは交渉の過程を通じてだんだんと明らかになってくるだろうというふうに考えているわけでございます。
  21. 角屋堅次郎

    角屋分科員 あと五分ということで時間が参っておりますので、国際捕鯨の問題について……。  これは例の、一昨々年になりますか、国連主催のストックホルムにおける人間環境会議というところにおきますアメリカ提案採択等を契機にいたしまして、国際捕鯨の問題については、資源保護というふうな国際世論等もあって、非常に厳しい情勢に置かれておるわけであります。六月だったと思いますが、開かれます国際捕鯨委員会というものに臨む日本側態度について、この際ひとつ簡潔に御答弁を願いたいと思います。
  22. 野村豊

    ○野村政府委員 ただいま先生が御指摘になられますとおり、捕鯨をめぐりますところの国際環境は非常に厳しいものになっておるわけでございます。  御承知のとおり鯨資源というのは、わが国の食糧たん白資源といたしましてもきわめて重要でございます。そこで、わが国といたしましては、鯨類の資源につきましては、科学的な根拠に基づきましてその効果的な保存を図りながら、かつまた合理的に利用していくべきであるというふうな基本的な立場に立っておるわけでございます。そういった意味から、いろんな科学的な調査研究でございますとか、資源面、管理の面におきますところの協力とか、あるいはまた国際捕鯨委員会強化というふうなものに積極的に協力してまいっておるわけでございます。  しかしながら、いま先生がおっしゃいましたとおり、一九七二年のストックホルム会議を契機といたしまして、捕鯨をめぐりますところの環境が厳しくなっておるわけでございますけれども、わが国といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、科学的な根拠というものに立ちまして十分そういった論議を尽くされながら、合理的、科学的な検討が行われることによりましてこの捕鯨の問題が解決されるというふうに期待いたしておりまして、本年六月にまた次回の第二十七回の国際捕鯨委員会が開かれるわけでございますけれども、そういった立場で臨みたいというふうに考えております。
  23. 角屋堅次郎

    角屋分科員 最後に宮澤外務大臣に、国務大臣という立場においての御見解を承っておきたいと思うわけであります。  と申しますのは、先ほど来取り上げております国連の第三次海洋法会議ジュネーブ会議が三月十七日から開かれるわけでございますけれども、カラカス会議状態から見ましても、わが国水産、特に国際漁場の面では非常に大きな犠牲といいますか、そういうものが予想されるわけでありまして、それをどこまでに食いとめるかというのがジュネーブ会議における日本側努力でなければならぬ、こう思います。現に、すでにカラカス会議前後あるいはそれ以降から、アメリカにおいても、あるいはまた中南米においても、その他の国においても、そういう各国主張と関連をしたいろいろな新しい動きが出てきておりますし、またそれが日米の昨年末の交渉におけるアメリカの厳しい姿勢、独航船あるいは母船の大幅減船、それをめぐります出港間際の関係の乗組員のストライキ、あるいは日水とか日魯とか、海洋法会議の先行きを予測して、最近連日新聞に出ておりますような大幅解雇というふうな問題まで出てまいっておるわけであります。私は昨日、遠洋漁船関係の組合代表の人から切々たる訴えを、党として承ったわけでありますけれども、これらの情勢については多くを申し上げるまでもなく、大臣としても深刻に受けとめておられると思いますし、かつて石炭の政策転換という問題には、やはり相当な立法、財政措置等も講じて雇用の転換、安定を図ったという経緯がございます。あるいは大臣自身関係されました日米の繊維交渉に関連する打撃の問題についても、やはりそれ相当の手を加えたわけでございます。日本の自主的な主張にもかかわらず、国際的な大勢その他の取り決めによって、約七万近い乗組員に配置転換その他を求める、そういう情勢というものが来るのではないかというシビアな情勢考えますときに、そういった問題に対してもこれからどういうふうに対応するか。それらの人が安心して今日従事をし、将来の展望についても確たる見通しを持てるという施策を真剣に積極的に立てる段階に来ておる、こういうふうにも思うわけであります。これは外務大臣一人の問題でなくて、三木内閣全体として重要な問題の一つとしてそのことを真剣に考える必要がある、こう思うわけでありますが、国務大臣として、最後にそれらの問題に対するお考えを承っておきたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに海洋法会議結論いかんによりましては、経済水域との関係もありまして、わが国漁業は、遠洋漁業ばかりでなく、オホーツク海、日本海、黄海等、非常に広い部面に影響を受けるおそれがございます。したがいまして、わが国は、会議におきましては、遠洋漁業国あるいは内陸国、地理的に不利な国等々、世界各国に利害が公平に分配をせられるように、そういう秩序でなければならないという主張をいたすつもりでございますし、また、事と次第によりましては、二国間の協議を通じて遠洋漁業の保護を図るということも入り用かと存じます。  したがいまして、政府は最善の努力を尽くすことは申し上げるまでもございませんが、それにいたしましても、歴史上初めてのこのような制度の設定でございますので、わが国漁業一般がいろいろな影響を受けるであろうということは想像するにかたくありません。したがいまして、政府としてただいまからそういう方向を見定めながら、それに漁業界が対処できるように、またなかなか対処できない場合には、政府としてそれに対してどのような措置をとるべきかというようなことも考えていかなければならない問題であろう、かように考えております。
  25. 角屋堅次郎

    角屋分科員 以上で終わります。
  26. 山本幸雄

    山本幸雄主査代理 これにて角屋堅次郎君の質疑は終わりました。  次に、石野久男君。
  27. 石野久男

    石野分科員 アジアの平和外交にとって現在最も関心を持たれている点は、日中平和友好条約、あるいはまた日韓大陸だな協定、朝鮮の自主的平和統一の問題、日ソ間における北方領土問題とソ連が提唱しているアジア集団安全保障会議などがあります。非常に複合しているこれらの問題の間に処して、日本の外交をアジアにおいてどのように取り組んでいくか、これはきわめてむずかしい問題のように思われます。そこで私は、これらの諸問題について外務大臣として、たとえば日中平和友好条約とアジア集団安全保障会議というソ連考え方の問題の取り組みだとか、あるいは日韓大陸だな問題との関係、そういうものをどういうふうにこなしていくかということについて、一応概括的な所見をひとつ承りたいと思います。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の憲法、その他わが国をめぐります国際情勢から考えましても、世界が平和であること、ことにわが国の周辺であるアジアが平和であることが、わが国の最大の国益にかなうというふうに考えております。したがいまして、基本に何を考えるかと言えば、アジアの各国とできるだけ平和な関係を維持し、発展し、その中でわが国の安全を全うしていく、それが基本の考えでございます。
  29. 石野久男

    石野分科員 問題が多岐にわたっておりますし、短い時間で全部に触れられることは非常にむずかしいことだと思いますが、本日の新聞報道によりますと、韓国の南副総理が来日して、そして副総理あるいは外務大臣にそれぞれお会いしているようであります。新聞報道によりますと、やはり日韓閣僚会議の開催は今国会終了時できるだけ早い時期にというようなことも報ぜられておりますが、韓国の側の要望、あるいはそれに対応して副総理並びに外務大臣がそれに対処した事情をお聞かせいただけるならば、この際ひとつお聞かせ願いたい。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国の副総理と私、昨日お会いをいたしまして、私との間のその関連についての会話につきましては、御報告を申し上げることができます。  韓国側のお立場は、日韓の経済協力関係、一九七四年分が決まっておりませんので、できるだけこれを実務者の間で早い機会に検討して、メリットのあるものを決めてほしい、こういう点が第一点でございます。  第二点は、いわゆる日韓閣僚会議というものは、もうすでにそのような具体的案件を議論をする場ではないということは韓国側もよく承知をしておるので、それを開くとすれば、やはりこの一、二年ぎくしゃくいたしました両国の関係が、いまや未来に向かって本当に開かれていく、そういう象徴的なものとして開きたいという韓国の副総理のお話でありまして、それははからずも私の考えておりますことと全く一致をいたしております。したがいまして、時期といたしましては、そういうような環境が熟してくる時期に開くことがいいのではなかろうかと思っております。  南副総理と福田副総理との間にどのようなお話がありましたか、実は私伺っておりませんので、御報告申し上げることができませんが、私との間ではそういう話でございました。
  31. 石野久男

    石野分科員 その環境が熟してくる時期という、これはなかなかわかったようなわからないようなことなんですが、外務大臣が大体予想されているそういう時期というのは、どういうような情勢のときなんですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば先般二学生が釈放になったというようなことは、両国の友好関係のために結構なことであったと考えておりますものの、いわゆる金大中事件につきましてのわが警察当局の捜査と韓国側の調査との関連は、実はもう一つすっきりといたさないものを残しております。そういうようなことについても、できるならばもう少しすっきりさせたいという気持ちを私としては持っておりまして、したがいまして、少しまだ時期が熟していないという判断をただいま現在はいたしておるわけでございます。
  33. 石野久男

    石野分科員 そうしますと、金大中事件に関連して金東雲の問題がわが国の側としてはあるわけですね。この問題については、国民感情としてもいま大臣が言われるように問題を残しておるわけでございます。そういう問題について、外務省としてはその問題の解明について積極的に何らかの働きかけをするという御意思はございますか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは実は昨年八月に一応打ち切りになりました韓国の調査結果というものは、わが国の捜査の結果と照合して必ずしもわれわれの納得のいくものではないということは、従来機会あるごとに申し入れをいたしておるわけでございます。韓国側からそれについて私どもの納得のできる返事が今日現在ないわけでございますけれども、さりとて、話の決着をそれでさせるわけにもいかないというようなのが現状でございまして、それらのことにつきましても、引き続いて、韓国側にさらにわが国の捜査当局がもう少し納得のいくような説明をしてもらいたいと要請をしていきたいと考えております。
  35. 石野久男

    石野分科員 この問題はやはり一応めどをつけ、解決しなくちゃならない問題でありまするので、その努力はしていただきたいと思います。  また、きょうの新聞の報道によりますと、日韓大陸だな協定の問題について、外務大臣は今国会における最優先案件として取り組むつもりである、こういうふうに話された、こういうふうに伝えられておりますが、私は、この日韓大陸だな協定を批准する問題と日中平和友好条約締結に当たっての関連の問題、特にこれは一九七二年九月に行われた日中の共同声明の前文において、領土問題は一応たな上げするというような趣旨に基づいての平和友好関係を樹立すべきであり、また樹立することが可能であるというふうに言っている。こういう中国日本との話し合いの問題、それとの関連でこの日韓大陸だな協定の批准という問題は微妙なものを持っているのではないだろうかというように私は思うのですが、大臣は、そういう問題について、日中の平和友好条約を結ぶ上にこの大陸だな協定の問題は差し支えはないとお考えになっておられるか、また、それに対応してどういうようにあんばいしていこうとしておられるか、その間のお考えをひとつ聞かしていただきたい。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、日韓大陸だな協定は政府としては優先順位をもって国会に御審議をお願いしたいということは、私、韓国の副総理にお伝えしました。御指摘のとおりであります。この点と日中平和友好条約との関係でございますが、私どもの考えております限り、この大陸だな協定の締結につきましては、いわゆる共同開発区域が、どのように考えましても中国国際法上の権利を損なうことがないところまで、かなり争点を避けまして、余裕のある地域の線の引き方をしておるというふうに考えておりますので、したがいまして、もし中国側から何かそれについて御主張があれば、いつでもお話し合いをいたしましょうということは、中国側にも伝えてございます。また、聞くところによりますと、韓国自身もあえて中華人民共和国と呼びかけまして、韓国にもその用意があるということをかつて発表したようでございます。したがいまして、この問題と日中平和友好条約とは、日中平和友好条約が領土等の問題を取り扱うものでないと私どもは考えておりますので、直接の関係はないであろう。しかし、他方、この大陸だな協定につきまして、中国からもしそのような御疑念があれば、いつでもわれわれは話し合いに応ずるというつもりでございます。
  37. 石野久男

    石野分科員 直接関係はないだろいうというふうに考えておられるようですが、私はこの共同声明の第三項で「日本政府は、この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こういうふうにはっきりと話し合いをしている。それでこの点から、領土問題等について、共同声明では一応たな上げというような線が出てきていると私は思っているのですよ。したがって、やはりそういうような中国側の積極的に平和友好条約への道を開こうとする態度に対して、この日韓大陸だな問題というのは、何か中国を逆なでするような形になりはせぬだろうかという心配を、実は私ども政治家としての立場で感じるわけです。したがって、何遍かそういう問題は話し合いをしているということでありますが、最近におきまして、その問題について、政府としては何か中国側との間にサウンドを得ておるのであるかどうか、そしてその上に立って大臣はそういうふうにおっしゃられるのかどうかということ、その点をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど話し合いをしていると私が申し上げましたとしたら、そう申したつもりではありませんで、何どきでも話し合いをいたす用意はございますということを申し上げたつもりでございます。  なお、最近のことにつきまして、政府委員から御報告いたします。
  39. 高島益郎

    高島政府委員 昨年一月末に日韓大陸だな協定を署名するに当たりまして、中国側に対し、十分な内容説明その他をいたしました。その後本年に入りましてから、特に中国側の方から、本件について何らの申し出はございません。
  40. 石野久男

    石野分科員 私は、領土問題は、日中平和友好条約の中では、なるべくそれには触れないでいきましょうという話し合いで来ていると思うのですね、共同声明のなにからいたしまして。そういうようなことであることは私たちも理解しておりますが、しかし、日韓大陸だな協定の批准という問題になってまいりますと、おのずからやはり中華人民共和国との間における領土の問題、あるいは大陸だなを通ずる領土あるいは境界というような問題が課題にならざるを得ないだろうというように私は思いますし、それからまた、先にもちょっと申しました朝鮮の自主的、平和的統一という側面からいたしますと、北の朝鮮民主主義人民共和国の側でもこの問題に無関心ではあり得ないだろう、こういうように私は思います。したがって、この問題の処理に当たって、日韓の間におけるところの大陸だな協定というものが二国間協定という形で簡単に済まされるような情勢にあるとは考えにくいんじゃないか、こういうように私は思うのです。政府は、そういう問題については、問題なく処理できるというようにお考えであるかどうか。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず中国との関連でございますが、中国が非常に大きな長い大陸だなを仮に主張をするということでありますと、それは争点が生じてくるかもしれないと思いますけれども、常識的に考えまして、わが国としましては、いわゆる中間線よりもかなりマージンをとってこの区域を定めておるつもりでございますから、いわゆるリーズナブルな立場お互いが立つ限り、中国権利を害しているというようなことは、私どもはこの大陸だなの取り決めはしていないつもりでございます。政府委員が申し上げましたように、中国側にもそのことは説明をいたしてございます。  それから北鮮の問題でございますが、これはいずれの日にかは南北が統合をするということを両者とも希望しておるわけでございましょうと思いますが、ただいまのところ残念ながらそういうことに至っていない。この協定の目的としております地域が、南側、韓国の延長線上の海にあるということから考えまして、またわが国が北鮮そのものを政府として承認していないということからも考えまして、韓国とこういう約束をいたしたわけでございます。  そこで、将来仮にどういう形かで南北問の統一ができたということになりますと、それは恐らく平和的な方法でできるのであろうと思いますが、韓国がわが国との間に結びましたこの条約は、そのまま新しい統一国家によって承継されるというふうに考えることが一応の筋道であろう。これは仮定の問題を申し上げておることではございますけれども、将来を展望いたしましても、さように考えて差し支えないのではないかと思っております。
  42. 石野久男

    石野分科員 この問題はいろいろと複雑に競合していると思いますが、ただ政府考え方としては、中華人民共和国の側から何がしかの問題提起がなければもうこのままで進めていくのだというふうに、きょうの御答弁では受け取ることができると思うのですが、大体そういうふうに受けとめておってよろしゅうございますか。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとしては、中国側権利等については十分考慮を払っておるつもりでございますので、そのような申し出を受けることはなくて済むのではないだろうか。またもしございますれば、十分説明のできる立場を私どもはとっておると考えております。
  44. 石野久男

    石野分科員 もう一度重ねて承りますが、政府の側から、この種の問題があるについて、いろいろな疑念が中国側にあるかないかは別としまして、国内においてこういう疑問が提起されておる。そういうことを前提として、将来、というよりすぐ近い将来に日中平和友好条約を締結しようという立場にもありまするので、その間この種の問題について、中国側に対して何がしかの本件に対する話し合いをするということ、そういうことは、外交儀礼上から言ってもお互いに非常に有効であり、また誠実さを示すものではないだろうかと私は思うのです。そういうことはいまおやりになるお考えはございませんですか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 外交的に申しますと、わが国のこの問題につきましての立場、それからこの条約の構想につきましては、すでに十分に中国説明をしてあるわけでございますので、したがいまして、重ねてその点について説明をするということはいかがなものであろうか。もとより中国からそれについて疑念なり疑問なりが出されましたときには、私どもいつなりとも説明をいたす用意はございますし、また説明できるわれわれの立場であるというふうに考えております。
  46. 石野久男

    石野分科員 ソ連のトロヤノフスキー駐日大使から、日本ソ連との間に友好親善条約のようなものを結びたい、そういう話し合いが先般来あったということは承っておりますが、この問題と北方領土の問題についての日ソ間の話し合いの問題、それからいま一つは、ソ連が提唱しておりますアジア集団安全保障会議の問題でございます。  これらの問題は、いずれにしましても、アジアにおけるところの諸国間の平和友好関係を結ぶ上に、必ずしも何の障害もなく進んでいくものではない。特にアジア集団安保の問題については、中国との関係が非常にむずかしい問題として浮かび上がってくるというふうに予測しております。政府はこの問題についてどのようにお考えになっていられるのか、ひとつ大臣の所見を聞かしていただきたい。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるアジア集団安保構想につきましては、過般私がモスクワに参りましたときにも、グロムイコ外務大臣からお話があったわけでございます。それに対しまして、私どもとしては、少なくともアジアの大国であるところの中国がこれについてどのような態度をとっておるのか、あるいは北鮮はどうであるかというような幾つかの質問をいたしました。グロムイコ外相自身中国がこの構想に必ずしも賛成をしている状態ではないということを言っておられました。そのように考えますと、非常に大切な一つ条件が現在の段階で欠けておると考えざるを得ませんので、現実の問題として考え得る段階ではないというふうに判断をいたしております。
  48. 石野久男

    石野分科員 アジア集団安保についての政府考え方よくわかりました。私は、日ソの間では何といっても、北方領土の問題、歯舞、色丹、この四島の問題については、日本の固有の領土としてやはり今度の第二次世界戦争後におけるところの平和的問題の処理の一つの大きな課題である、こういうふうに考えております。  そういう立場からも、アジアにおけるこの問題の処理の仕方というのはきわめて重大だと思っておりますし、また政府としては、この問題については、どんなことがあっても大胆にやはり所見をソ連側に対して開陳すべきだし、そういう意味での外交関係を整えていくべきであろう、こういうように思っております。政府のその考え方についてはかねてからおよそのところはわかっておりますが、なお執拗にいろいろな形でソ連の外交関係での働きかけがある事情にかんがみまして、私はこの問題については、やはり政府がその問題に対しての見解を明確にしておくことが大切だ、こう思うのです。そういう意味で、いま一度ひとつ外務大臣のこの問題についての見解を承っておきたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この四つの島がわが国の固有の領土であると仰せられまして、まさにそのとおりでございますが、その意味は、私どもの考えでは長い歴史上ずっとわが国の一部でありましたし、また、いかなる時点でも他国の領土であったことはない。一八五五年の日露の条約でもきわめて平和裏にそのことが確認されておるということが事実でございますので、したがいまして、これがソ連の領土であると考える理由はどう考えてもないわけでございます。この点はモスクワでも私ども当然のことながら主張し、説明をいたしまして、そのこと自身についての反論というものは聞かれなかったわけでございます。もちろん、それ以外のソ連の政策的な説明は幾らも聞きましたけれども、そういう事実そのものについての反論を聞いておりません。したがいまして、私どもは、この立場はどこで主張いたしましても誤りのないものである、かように考えておりまして、われわれとしては、忍耐強くこのことを主張していかなければならない、それが政府の基本的な態度でございます。
  50. 石野久男

    石野分科員 最後に一問だけお聞きしておきますが、わが国はいまスタグフレーションという状態のもとで国内の経済が非常に混迷しておりますし、そして、企業の側においても、労働の側においても問題の多いときです。政府は特に総需要抑制という立場に立って問題の処理をしてこられております。  昨日参りました韓国の南副総理は、昨年申し入れのあったいわゆる借款二億ドルについて強い要求をなさっているやに聞いております。この問題は、今日の日本の経済の情勢、特に総需要抑制という立場からいたしましても、われわれにとってきわめて重大な問題だと考えております。外務大臣は、この問題について、韓国との間に近いうちにある時期を見て閣僚会議を開くということも言っておりますが、この問題について、国内のこの情勢と見合って、この二億ドル借款という問題についてどういうふうに対処されるかという所見を、ひとつ承っておきたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のとおり、この問題は、現在では閣僚会議議題ということではなく、いわゆる両国の実務者間によって実務的に決めるということになっておりまして、私どもとしましては、できるだけ早くそのような実務者の会談を開きたいと考えております。  そのときに当たりまして、韓国側に希望のあります幾つかのプロジェクトのうちで、できるだけ韓国の人々の民生の安定と向上に直接に役に立つようなものをできるならば協力をしたいと、国内でただいま各省の協議をいたしておるわけでございますが、それができましたら、韓国側の実務者とも協議をいたしまして、その中から、一番ただいま申しましたような目的に沿うプロジェクトを選びたい、かように考えております。  全体二億ドルと申しますのは、全部のプロジェクトの実は総計でございますので、そのような額になりますかどうかは、必ずしもただいま明確でございません。私どもとして、日本の経済情勢考え、援助そのものの本来的な目的も考えました中で、双方が適当と認めるものを選んでまいりたい、こう思っております。
  52. 石野久男

    石野分科員 その件について、韓国の民生安定、あるいはまた国民生活を向上させるためにという、これは非常にいいことだと思いますけれども、それがたまたま韓国の軍備を増強するためであるとか、あるいはまた韓国が核装備をするための一つの手だてとしてとか、こういうようなことになってまいりますと、何のためにかということが問われなければならないと思います。もしそういうような事情が少しでも疑念が持たれ、あるいはまた、そういう事実が明らかであるというようなときには、この問題について、仮に民間の借款の内容であったとしても、政府としては、それに対して何らかのチェックをしたり何かする必要があるんじゃなかろうかと私は思いますけれども、政府は、そういう問題については、どういうふうにお考えになっておりますか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国と国との経済協力関係で申しますと、先ほど申し上げましたように、やはり韓国の人々の民生の安定、向上ということが、私どもとしては、一番経済協力の主たるねらいであるというふうに目的に言われておるように考えておりまして、韓国の主張主張としてさることながら、やはりわが国としてはそう考えるということは、実務者の会議におきましても明確にしておきたいと考えるわけでございます。  それから、全く純粋に民間の経済関係の中でただいまお話のようなことがございますと、これはいわば武器についてはもとよりでございますが、ただいまのような目的に直接に結びつくということでございますと、これはやはり、そういうものに政府金融をするということは適当なことでないというふうに政府としては考えております。
  54. 石野久男

    石野分科員 ありがとうございました。
  55. 山本幸雄

    山本幸雄主査代理 これにて石野久男君の質疑は終わりました。  次に、上原康助右。
  56. 上原康助

    上原分科員 私は、きょうは米軍基地への立ち入り調査権といいますか、立ち入り問題について、ぜひ外務大臣あるいは関係者のはっきりしたお答えをいただきたいと思うのです。  これは何も沖繩だけを私は申し上げているわけじゃありません。一般に、本土を含めて、いわゆる地位協定で言う施設及び区域に立ち入りをしたい、調査をしたいという場合にどういう手順を踏んでおられるのか、まず御説明をしていただきたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、わが国においてばかりでなく、ヨーロッパにおきましても、他国の軍隊に施設、区域の利用を認めました場合、当該国がその管理、警護などについての権限を持つということは、一般に国際的に常識であると思いますし、わが国の場合には、地位協定にそのことが定められております。したがいまして、そこへ入っていくということにつきましては、犯罪等の緊急の場合を除きますと、管理者の同意を得なければならないということが原則でございます。具体的な問題につきましては、政府委員からただいま御説明を申し上げます。
  58. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 国会議員等重要な方々がそういう米軍基地に立入視察をされます場合には、これは日米合同委員会で定められておる立ち入りに関する取り決めがございまして、それに基づいて処理をいたすことになっております。  そういうふうな場合には、普通立入視察を希望される二週間前に、わが方を通じましてアメリカ側に申し入れることになっております。
  59. 上原康助

    上原分科員 いま大臣の御答弁では、地位協定に基づいてということでしたが、地位協定に立入調査について何か触れているのですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の申しましたのは、施設、区域についての管理あるいは警護などの権限は当該軍隊の属する国にあるわけでございますので、したがいまして、立ち入るということになりますと、その同意を必要とする、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  61. 上原康助

    上原分科員 管理権については地位協定で確かに定められていますね。立ち入りをどうするかについては、地位協定には触れられていないと思うのですが、その点明確にしておいていただきたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的な管理権、警護権を持っておるという意味は、その同意がなければ立ち入りというものは認められないという意味が、管理権を持っているということの意味合いであろう、いうふうに考えるわけでございます。
  63. 上原康助

    上原分科員 そこで、いまアメリカ局長の御答弁で、日米合同委員会で取り決めを行っている。二週間前に相手方に申し入れをするということは、日米合同委員会でどういう取り決めがあるのか。二週間という期間を定めたのはどういう理由なのか。そこら辺についてぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  64. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 一般的に日米合同委員会合意内容に関しましては、先方との約束に基づきまして公表いたしかねるわけでございますが、その内容のポイントは、先ほど申し上げましたように、そういうふうな国会議員等重要な方々が基地の立入視察を希望される場合には、日本政府を通じてアメリカ側に申し入れる、その場合に二週間の予告を要するということになっております。  なぜ二週間が必要なんだというお話でございますが、これに関しましては、米軍はそれぞれの部隊の目的を持って基地を使用しておるわけでございますから、その米軍の活動に支障がないということをそれぞれの基地に照会して確認をし、さらに今度先生方がおいでいただきます場合には、視察の際に必要とするアメリカ側の要員を配置しておく必要もあるということもありまして、先方としては、最小限度二週間の予告は欲しいということを申しておるわけでございます。
  65. 上原康助

    上原分科員 日米合同委員会合意をした事項については明らかにできない、政府は一貫してそういう態度をとってきておられるわけですね。これも非常に問題なんですよ。しかし、そのことをここで議論しても時間がたちますので、たしか、日本人の在日合衆国施設及び区域訪問に関する方針、これは米側の方針なのか、日米で合意をしたことなのかわかりませんが、そういうのがあるのですか。
  66. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 そういう方針なるものは、私たちとしては聞いておりません。
  67. 上原康助

    上原分科員 では、日米合同委員会合意をしたという合意事項、それは正式にはどういうふうに外務省は呼んでおられるのですか。
  68. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、そういう合同委員会合意に基づいて私が申し上げたような方針が、日本政府としての取り扱いが確定されておる次第でございます。
  69. 上原康助

    上原分科員 それは文書の合意事項ですか、口頭了解事項ですか。
  70. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 合同委員会合意事項としては、もちろん合意の文書はございます。しかし、その内容に関しましては、先方との約束もあり、公表いたしかねる次第でございます。
  71. 上原康助

    上原分科員 これは委員長にも要求したいのですが、米軍の基地を提供しておるのはわが国なんですよ。しかし、一切秘密、機密事項ということで、この種の問題さえも明らかにしないということは合点ができません。資料として提出していただくようぜひ取り計らっていただきたいし、それに対して外務大臣見解を私は求めたいのです。本当に軍事上、戦略上の機密に属することなら、まあ百歩譲って常識的に機密ということもあるでしょう。しかし、わが方が提供している米軍の施設、区域に立ち入りをどういう手順でやって、どういう条件アメリカ側から付せられているかということを国民が知らないということは、これは納得のいかない話なんです。外務大臣のこれに対しての御所見を賜っておきたいと思います。そしてどういう合意をしておるのか、その内容もぜひ明らかにするよう、同時に資料として提出を求めておきたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に申し上げましたように、立入権というものがわが国わが国民に与えられておるということではございません。そうではありませんで、立入調査をする、あるいは視察をするということは、管理権を持っております者の同意を得てということでございます。したがいまして、当然にそのような権利わが国民に与えられておるというわけではございません。  次に、日米合同委員会のいろいろな合議事項一般的に公表しないということは、これは私はそれなりに理由のあることであろうと思います。  第三に、二週間という定めがいわば非常に理不尽なものであるか、そうでないかということになりますと、先ほど政府委員がいろいろ申し上げましたような理由から、二週間前に知らせてほしいということは管理者としてはもっともな話であろうというふうに存じます。
  73. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、管理権を持っている米側が拒否した場合は一切立ち入りはできないということですか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは厳格に申しますと、何か現行犯がどうとかという規定が一つあると思いますけれども、そういう極端な場合は除きまして、一般にさようでございます。
  75. 上原康助

    上原分科員 一切立ち入りできない。そうしますと国政調査権というのも基地には及ばない。治外法権ですか、基地は。
  76. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 米軍が基地を管理し警護している以上、その基地への立ち入りはある程度の制約を受けるということは、やむを得ない次第でございます。しかしながら、その米軍基地が治外法権であるということは当たらないと思います。観念的に言えば日本の法令が適用されるわけでございます。ただ米軍自体は、国際法上の問題として不可侵権を持っておりますから、その限りにおいて米軍が立ち入りを否定するということは、一般国際法から見ても認められる事項であろうと思います。
  77. 上原康助

    上原分科員 ここで法律論争したってあれですが、一般的に国内法を適用するということであれば、当然国政調査権なんというのは及ぶべきなんですよ、常識的に考えて。ある程度の制約があるということは理解をいたしますよ。しかし、最近の外務省姿勢考えてみた場合に、私も何回か——ここで一々細かい資料は出しませんが、これまで二週間前に、基地を調査をしたいということで、わざわざ外務省まで行って、目的、日程を提出いたしますよ。しかし、その都度相手の都合が悪いとかなんとかで拒否されている。こういう状態なんですね。国会議員その他重要な方々がという説明でしたが、その他重要な方々というのはどういうことなんですか。たとえば、もっと具体的に言いますと、国会議員だけが立ち入りできるのか、地方公共団体の議員の場合はどうなのか、そこも明確にしておいていただきたいと思います。  いま一つ、通常の場合二週間の期間というのがある。しからば緊急事態の場合は、皆さんはどういうふうに日米間で合意しているのですか。何か事件が基地内で起きたとか、刑事事件ばかりじゃなくて、基地内でもろもろの公害や事故が起きる。その場合に、緊急事態で立ち入りをしようとしたって、二週間の手続があります、外務省を通してこい。いま死にかけている肉親に早目に会いたいというのに、初七日も三七日も、焼香も済ましてから行くようなものじゃないですか。そういう場合はどう取り扱うのか、そこもぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。
  78. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 県会議員とかそういう方方の場合には、これは地方のレベルの問題となりまして、その地方の当局と軍の管理者との間の話し合いで決められるものでございまして、私たちの外務省を通じて取り扱いはいたしておりません。     〔山本幸雄主査代理退席、湊主査代理着席〕 ただ、国会議員の方々の場合には、大変重要な地位におられる方でありますので、米軍側としても取り扱いに粗漏があってはいけないということもあり、必ず外務省を通じて、中央でやってくれということになっておりまして、その場合に二週間の予告を欲しいということを申しておるわけでございます。  それから、緊急の場合ということをおっしゃいますが、もちろん現行犯を追っかけて行く場合に、その現行犯が基地内に逃げ込んだというふうな場合にはあり得ると思います。しかしながら、一般的な形での緊急事態というのは、私たちとしてはちょっと想定いたしかねるわけでございますけれども、向こう側としては、国会議員の場合にはとにかく二週間ルールは守ってほしいというとを申しておるわけでございます。
  79. 上原康助

    上原分科員 刑事事件のことを言っているのじゃないですよ。それは日米間でまた取り決めがあるでしょう。そのくらいのことは私だって知っていますよ。しかし、あなたは一般的なことは想定できないと言いますが、たとえば基地内で爆発事故ももちろんありますよ。そのほかに労基法違反の問題があったとかいろいろなことが起きた場合に、二週間という枠をはめられているということでは、これは調査ができないのです。  特に沖繩県からしますと、全体の二〇%余りもあって、基地の中に沖繩があるような状態ですよ。日常茶飯事のようにいろいろなことが起きておって、二週間の申し入れをしなさいと言ったら、調査も何もできないじゃないですか。  念を押しておきますが、日米合同委員会では、緊急事態の場合については、何ら話し合いはないのですか。あくまで二週間という枠でしかあなた方は合意はしていないのですか。その点は、後日のこともありますので、ここではっきりさしておいていただきたいと思うのです。
  80. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 合同委員会合意といたしましては、そういう緊急事態に関する取り決めはいたしておりません。非常に地方的な問題として処理するを要する場合には、そういう地方当局とその地域にある米軍との間で話し合って、緊急の場合には処理することはあり得ると思いますが、これは政府としては関与をいたしておらない次第でございます。
  81. 上原康助

    上原分科員 ではもう一度念を押しておきますが、地方議会の議員の方々が基地を調査をしたい、立ち入りをしたいという場合は、外務省とは関係ない、現地の担当者と話し合って決めるべきことだ、そういうことですか。現地の代表と話し合って決めるという場合は、どこが窓口ですか。
  82. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 たとえば、沖繩県であります場合には、県当局が現地のそれぞれの基地と話し合って決められる。その場合については、外務省としてはタッチいたしておりません。
  83. 上原康助

    上原分科員 では具体的例をお尋ねしたいと思うのです。これもおかしな話なんですよ。沖繩の県議会の方からどういう申し入れが今日まであったか御存じですか。
  84. 銅崎富司

    銅崎政府委員 本年の二月三日に沖繩県議会議長から、那覇防衛施設局長に、米軍基地関係特別委員会の委員長以下各党十一名、事務局員四名、計十五名でございますが、同委員会が閉会中に継続審査に付されている陳情につきまして、二月に招集される定例会において処理するために米軍基地を調査したいということで、基地内への立ち入り方の申請が参りました。その米軍基地は、嘉手納弾薬庫地区、泡瀬通信施設、嘉手納飛行場ということであります。  早速、施設局では、現地米軍に本件立ち入りを申し入れましたが、これにつきまして現地米軍レベルでは、本件立入許可についての権限がないということですので、先ほどから外務省の方から御説明ありますように、私どもその点について早速外務省の方に御照会を申し上げて、それで外務省の方から、本件立ち入りは現地段階で処理されたいということを言われましたので、再度現地米軍と調整をしまして、現地軍では本件立入要請書を提出するようにとの意向を示しましたので、二月二十四日、局から県議会と連絡の上、米軍の指定する日に立ち入ることとしまして、現地米軍に立ち入り方を要請いたした次第でございます。
  85. 上原康助

    上原分科員 いま局長の御答弁と施設部長の答弁が違うのですよ。重ねて念を押しておきますが、地方議会が基地調査を申し入れる場合は、県当局を通してやるわけですね。外務省は関知しないのですね。では、今日まで施設庁を窓口にしておったのはどういうわけですか。
  86. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 私の答弁が若干足りなかったと存じますが、要するにそういう地方レベルの問題については、外務省としてはタッチしておらないわけでございますが、その申し入れるところは、県の当局であるか、あるいはそれぞれの地方の防衛施設局であるか、そういうふうな場合がございまして、先ほど県当局とだけ申し上げましたのは、説明が不十分でございました。
  87. 上原康助

    上原分科員 要するに、基地に立ち入り調査をする場合は、外務省と日米間の了解を得なければできないということでしょう。実際今日まだそういうことになっているのです。  そこで、この経過を見てみますと、施設局に申し込んだら、外交ルートを通して米軍と交渉中なので、申し込んだ期間にはできません、という回答を施設庁はやっておるわけですね。施設庁は外務省を通して交渉をやったわけでしょう、県議会の代表が立ち入り調査をさしてくれということに対して。結論から言うと、なるべく立ち入りをさせないという、何か予防線を皆さんの方で張っているのが最近の実態じゃないですか。そこが問題なんだ。改めてこの件を明らかにしておいていただきたいと思います。  それと、県議会が基地に立入調査をしたい。しかも皆さんが言うように、二週間前に正式なルートを通してやろうとしているわけですね。調査場所も目的も基地の指定もやったのです。これに対して、県議会が基地の立入調査をするのは私的行為とは、一体何ですか。しかも、防衛施設局から県議会事務局に連絡のあったことによると、防衛施設庁と外務省が打ち合わせした統一見解だというふうに言っているのです。統一見解ですか。ここも明らかにしておいていただきたいと思うのです。一体、県議会の代表は、目の前にある基地の中でいろいろな公害や問題が起きている、そういうことに対して立入調査ができないのですか。それを県当局がやりなさいと言ったって、県当局が行って窓口になってやっても、アメリカは聞きませんよ。明らかに外交ルートを通していっている。また皆さんも今日まで、外交ルートを通して基地への立入調査はできると言っている。全く責任の回避じゃないですか。  ここで、国会議員や県会議員、地方公共団体が基地に立入調査をする場合に、どういう手順を踏まねばいかないのか、もう少し整理をして明確にしておいていただきたいと思うのです。国政調査権の問題もありますよ、これは。憲法でもちゃんと六十二条で決められておる。国会法でもそれはある。治外法権でないということであるならば、幾らかの制約はあったにしても、もう少し便宜供与を図るというのが本来あるべき日本外務省だと思うのですよ。これに対して明確な答弁をいただきたいと思います。
  88. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、国会議員の方々の場合には、重要な方々でございますから、これは外務省を通じて中央で米軍に申し入れるわけでございます。しかしながら、米軍基地への立入視察に関しましては、それが唯一の方法というわけではございません。地方での問題に関しましては、その地方限りで、県当局あるいはその地方の防衛施設局を通じて米軍に申し入れることもあるわけでございまして、現在お話が出ております問題に関しましても、ちょっと誤解であったかと思いますが、一回東京にも話が参りましたけれども、やはりそれがもとへ戻りまして、沖繩で現在立ち入りの話が県議会と現地米軍との問で進んでおると承知いたしております。
  89. 上原康助

    上原分科員 外務大臣にお答えいただきたいのですが、地方公共団体が基地の立入調査をしたいという場合に、いま局長答弁によると、地方の県を窓口にしてやれと言う。しかし、アメリカ側はそれを知っていますか、そのルートについて。これまでは、少なくとも私たちが理解をする限りにおいては、いま外務省の出先は沖繩にないものですから、すべて施設局を通してやっている。だから、もしきょうの答弁で、地方公共団体の議員や市会議員、そういうものを含めて、県が立入調査の窓口であると言うならば、もう一遍皆さんがそれを整理しなさいよ。そのことをアメリカ側にはっきり言ってやってもらいたい。これに対してどういうあれをやるかが一つ。  もう一つは、国会議員の場合にしても、地方公共団体にしても、二週間という枠はあったにしても、なるべく二週間ということにとらわれずに、それ以前に立入調査ができる便宜供与を図るということ、これもぜひここで明確にしておいていただきたい。  さらに刑事事件だけではなくして、緊急の問題についてはもっと直ちに立入調査もできるようにする。私はそれは無制限でやれと言っているのではない。常識としてわかるようなことが今後できないと合点いきません。  さらに、合同委員会における合意事項についても、もっと明らかにしてもらいたい。  この四点について大臣の明確な答弁を求めておきます。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般論といたしまして、二週間という期限を設けましたことは、先ほども申し上げましたように、理由のあることである。先方の施設、区域の使用ということがございましょうし、また、視察をされる場合の先方のそれについての要員の配置、受け入れ体制というものもあろうかと思います。それは、ですから理由のあることと私は思いますが、緊急というものをどのように考えますか、ちょっと抽象的にしか私の頭に浮かびませんが、何か基地の中に起こったことが基地の外に好ましからざる影響を及ぼすというようなことが抽象的には考え得るかと思います。そういう場合には、理由を付しまして、なるべく早く認めてもらいたいと申しますことは、私どもやぶさかでございません。  それから地方との関連につきましては、政府委員から申し上げます。
  91. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほども申し上げましたように、地方におけるそういう基地の立入視察の問題に関しましては、それぞれ地方の実情もございましょうが、外務省として、一般的な規則といいますか、基準というのを設けておるわけでございませんで、それは各地で適当にやっていただくということになっておる次第でございます。
  92. 銅崎富司

    銅崎政府委員 施設庁といたしましては、沖繩におきまして、やはりいろいろと軍との交渉その他がありまして、そういう立ち入りにつきまして、施設局から申請を申し入れた方が何かにつけて便利なこともあろうかと思いますが、私ども、申請があればそれを米軍の方に申し入れるという労をとりたいと考えております。  それから、先ほど、県議会議員の基地内立ち入りが私的であると言った一人の職員がおるというお話でございますが、私ども直ちに調べましたところ、そういうことを言っていないということでございますので、明らかにしておきます。
  93. 上原康助

    上原分科員 時間ですからきょうはこれを保留いたしますが、さらに防衛施設庁が管理をして建設をしている基地への立ち入りなんかもできない、そんなばかなことはありませんので、この問題はいずれ別の機会にまたもっと深めていきたいと思います。
  94. 湊徹郎

    ○湊主査代理 これにて上原康助君の質疑は終わりました。  次に、米田東吾君。
  95. 米田東吾

    米田分科員 私は宮澤大臣に、主として韓国政策、朝鮮政策、この観点にしぼりまして若干の質問をいたします。  まず大臣にお聞きいたしますが、宮澤外交について、陰の声は椎名外交じゃないか、と言っている。また国民もマスコミも、そういう評価をしておるようであります。大変失礼な質問でありますけれども、私はまずそのことからひとつ大臣見解をお聞きしておきたい、こう思います。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま私どもの自由民主党の内閣でございますが、これについて考えますと、私どもの持っておる政治哲学あるいは世界観から言いまして、人によってそんなに外交政策が変わるというものではないであろうと思っておりますので、別に宮澤外交というような大げさなものが存在するとは私思っておりません。
  97. 米田東吾

    米田分科員 外務大臣はあなたですから、しかもあなたは、自民党の数多い政治家の中でも進歩的であり、一口で言えばニューライトと言われておりますけれども、そういう意識の強い方でございますし、非常に評価をされていらっしゃる外務大臣であります。私は、当然宮澤外交というものが三木内閣の中で成果を上げていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますし、また国民はそれを期待していると私は思います。にもかかわらず、どうも期待に反するようでありまして、逆に椎名外交だ、こういうような評価が出ておるわけでありますから、私はこれに対して、大臣を激励する意味で、ひとつ大臣のはっきりとしたこの批判に対する見解をお聞きしたわけなんです。もう一遍ひとつお願いします。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、たとえば韓国との関連などについての御指摘であろうかと思いますが、私が、ただいまのわが国の外交の局面で感じておりますことは、理由はともあれ、いかにも日韓関係というものが、お互いの思いからこの一、二年ぎくしゃくしたものになってまいっておりました。このことは好ましくないことであって、やはりわが国としては、どこの国ともできるだけ友好にする、誤解があればそれを除いていくということが、いかなる場合にも外交の目的でございます。ことに、いまの段階におきまして、韓国との間にそのようなことがあるということは残念なことでございますので、誤解を取り除いて解消をいたしていきたい。確かに私としてはそのことにかなりの力を注いでおります。しかし、これは私でございませんでも、この段階で外交の局に立ちました者であれば、多くの人が同じように考えることではないであろうか。そういう意味で、私は何々という名前がつくような大それたことを考えておりませんと申し上げましたので、やはりいまの局面がたまたま日韓間でそういう不幸なことになっておる、それを解決しなければならないという局面に、回り合わせに私が現在立っておる、このように思っておるわけでございます。
  99. 米田東吾

    米田分科員 これ以上申し上げません。ひとつ国民の、しかもわれわれ野党の期待もありますので、こたえていただきたい。  それから、具体的なことでございますが、三木内閣が誕生いたしましたときに、自民党副総裁の椎名さんが「三木政権の門出に望む」という一文を寄せておられます。これは毎日新聞の記事のように私は承知しております。この中に「日本もつい鼻先にある韓国の政策について、うっかり“デタントぼけ”(緊張緩和ぼけ)していたのではないだろうか、」こういうふうに指摘をされておるわけであります。緊張緩和ぼけという、これは当時は木村外務大臣でございましたが、痛烈な批判をされているわけでありますが、いまの宮澤外務大臣としては、この緊張緩和ぼけを認められますか、どうですか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かつての熱い戦争が冷たい戦争にかわり、さらにそれが雪解けと申しますか、いわゆるデタントに向かってまいりましたことは、まことに慶賀すべきことでございますし、早くそれが真に文字どおりの心の通い合う平和になることが望ましいのでございますが、それはやはり歴史で申せば大きな時の流れでございます。かなり時間がかかるということは覚悟をしておかなければならないわけでございます。  したがいまして、そのようなことを常に私どもは念頭に置き、そのテンポを早めたいと思いつつ、現実は私どもの願っておるようには早くは進まないということも事実であろうと思うのでございます。したがって、ただいま御指摘の言説は、理想は確かにそのように持たねばならぬ、その努力をしなければならないが、現実はなかなか思ったようには早くは進まない、足元も見ねばならないという意味の指摘であろうというふうに私は解釈をいたします。
  101. 米田東吾

    米田分科員 あわせてお聞きしたいのでありますが、木村前外務大臣は、就任以来、国会で相当ずばりずばり物をおっしゃっておられます。それは国民の側から見ますと非常に評価すべき発言が出ておったようであります。これよりいまの宮澤外交は後退しているのかどうか、私はここでひとつはっきり聞かせてもらいたいと思いまして申し上げたいのでありますが、一つは昨年の九月五日、衆議院の外務委員会でわが党の土井代議士の質問に答えられまして、日韓基本条約の第三条の解釈に触れられております。ここで外務省条約局長はこの第三条の解釈についてこういうふうに言っております。「第三条でいっておりますこれこれの朝鮮にある唯一の合法的な政府というところでは、南を実効的に支配し管轄している政府であるという認識を明らかにしているわけでございます。」要するに日韓基本条約に言う「朝鮮」というものの解釈は、南の、ここでは韓国だとはっきり申し上げていいと思いますが、韓国の政府、すなわち朝鮮を言っているんだということを言っているわけであります。これを受けまして木村国務大臣も、「私もそのような認識をしております。」と明確に答えておられます。宮澤大臣はこれを認められますか。どうでしょうか。
  102. 松永信雄

    松永(信)政府委員 若干法律的な側面がございますので申し上げますが、いま御指摘されました日韓基本条約第三条について、私がそのときに解釈を申し上げたわけでございます。そのことは、そのときの私の御説明にもございますとおりに、この日韓基本条約は朝鮮半島の北の部分については触れていない、白紙であるということを御説明申し上げたわけでございます。その内容といたしまして、韓国の実効的な管轄権ないしは支配の及んでいる地域というものが、第三条に書いてありますように、国連決議を引用しまして、そこで「明らかに示されているとおりの」云々という書き方をしている。その国連決議を見ますと、そのことがはっきりと明示されているということを御説明申し上げたわけでございます。
  103. 米田東吾

    米田分科員 それは議事録にはっきり出ていますからわかっております。大臣はどのような御見解でしょうか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員の申し上げたことで明白であると思いますが、御承知のように三条には、「国際連合総会決議第百九十五号(III)に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府である」と書いてございまして、国連決議第百九十五号はそれを具体的に述べておるわけでございます。
  105. 米田東吾

    米田分科員 そうしますと、ただいまの条約局長答弁大臣は受けられまして、そのとおりである、この解釈については局長答弁どおりであるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 すなわち「臨時委員会が観察し、及び協議することができたところの、全朝鮮の人民の大多数が支配している朝鮮のその部分に対し、有効な支配と管轄権を及ぼしている合法的な政府」でございます。
  107. 米田東吾

    米田分科員 私もそのことをそのとおり理解をいたします。  ただ、申し上げておきますが、いままで政府当局はこの日韓条約の解釈をめぐりまして、「朝鮮」ということの解釈というものは、朝鮮半島全体を指しておられたように私は理解をいたしておるわけであります。日韓条約の審議を通しましても、そのことはしばしば繰り返されておるわけであります。この局長説明で今回新しく出たものではない、こういうことでありますけれども、私は、これは明確に日韓条約というものを理解する基本的な問題だと思いますので、いまお聞きをしたわけでございます。  次にもう一つ聞いておきたいと思うのです。  四十九年八月十九日に参議院の決算委員会で、佐藤・ニクソン共同声明の韓国条項に触れられました。要するに韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるというこの部分であります。当時の木村外務大臣は、当時の情勢からして、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるという理解——そのときの韓国ということは確かにいまの韓国、南朝鮮でありますけれども、を指しておるけれども、今日の発展した新しい段階におけるこの解釈というものは、朝鮮半島全体の安全が日本の安全にとって緊要である、このように理解すべきであるという答弁を明確にされておるわけであります。これについて宮澤外務大臣はそのとおり認められますか。どうでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 韓国の安全がわが国の安全にとって緊要であるという基本認識は、一九六九年の声明の当時と現在と変わっておるわけではございません。しかし、その背景となりました朝鮮半島の情勢というものが、一九六〇年以降現在に至りますとかなりの変化があったというふうに考えるべきかと思います。
  109. 米田東吾

    米田分科員 したがって、この韓国ということは、朝鮮半島全体の安全というふうに理解をすべきである、これは当時の木村外務大臣の明確なおっしゃり方でありますけれども、これについてあなたもお認めになりましょうか。ここに議事録があります。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 失礼いたしました。ちょっと御質問の意味をしっかりとらえかねたものでございますから……。  韓国の安全ということは朝鮮半島全体の安定ということと不可欠に存じますし、また、国連軍がおりますこともやはり朝鮮半島の安定ということに関係があろう、こういうふうに考えます。
  111. 米田東吾

    米田分科員 言葉は非常に大事でございますので……。木村大臣は明快に言っておられますよ、当時の議事録によりますと。「その後における南北朝鮮の対話の進行、あるいは朝鮮半島における現在の状態から考えてみますと、むしろ朝鮮半島における全体の安定と平和ということが目下私ども政府にとりまして、日本にとりましては緊要なことである、こういうふうに解釈をしております。」これは参議院の決算委員会の議事録でありますが、こういうふうに明確であります。これを、言葉のあやでなしに、大臣もお認めになりましょうかと、こういうことをお聞きしておるわけであります。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和二十五年、朝鮮半島に大動乱がございまして以来、長い間そのような大きな戦乱状態がないことは確かでございます。そうして一度は南北間に対話の道が開かれたという時代もございました。最近では、しかしまたそれがやや局地的に、少しずつ——ごく局地的でございますけれども、小さな紛争が起こっておるようでございます。私どもはそういうふうに認識しておりますが、ただ、かつてのような、あの大動乱からもうすでに二十年余りたっておりまして、当時のような情勢でないということは申し上げてよろしいのかと思います。
  113. 米田東吾

    米田分科員 時間が気になりますので、次に、もう一つ、これも大臣の外交姿勢を私どもが理解する上で重要でございますので、お聞きをいたします。  四十九年八月二十九日の参議院の外務委員会でわが党の田英夫議員からの、要するに朝鮮半島における緊張の問題で、北からの脅威はないという見解大臣が示されました。私、議事録も持っておりますが、大臣の意図するところは、もともと脅威があるかどうかは韓国が判断すべきだけれども、客観的に見れば私は北からの脅威はないと思う、こういうふうに答弁をされておるわけであります。その後若干の補足がございましたけれども、言われている趣旨は今日まで変わっておらないと私、理解しております。このことについては、今日の宮澤外務大臣はどのように理解をされますか。これについて、いまなおこのとおり認めていらっしゃいますか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 脅威という言葉になりますと、やはり主観的にどう考えるかということにならざるを得ないと思います。韓国自身はかつては、北と対話の道を開こうと実はいろいろに努力をしたけれども、どうも現在までのところその努力は成功せずに、局地的にではあるけれどもいろいろな紛争が起こっておるということは、現に昨日も韓国の副総理が私に言っておられますので、韓国としては、やはりそのような心配した状態であるというふうに判断をしておるものと、私はそういうふうに受け取っております。
  115. 米田東吾

    米田分科員 ちょっとはっきりわからぬのでございますが、当時の木村外務大臣答弁よりいまの宮澤大臣答弁は大分後退しているように思うのでありますけれども、そういうことでございますか。はっきりお聞きします。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米田分科員が先ほどおっしゃいましたように、当時の木村外務大臣自身も、これは南の方が判断すべき問題であるということを言われまして、しかし恐らく、先ほど私が申しましたような、いまから過去の二十年間の大きな趨勢として見れば、事態はかつてのような騒乱状態ではない、そういう判断をつけ加えられたものと私は思うのでございますが、非常に厳密に申しますならば、脅威ということはやはり当事者同士の主観と申しますか、感ずるところがどうであるかということになるのではなかろうかと思います。
  117. 米田東吾

    米田分科員 したがって大臣としての見解は示されない、こういうことだと思うのであります。そういうことでございますか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 脅威という事柄の本質上、それはやはり当事者が判断されるべきものではないかと思います。
  119. 米田東吾

    米田分科員 あなたの前任者の木村大臣は、外務大臣として国会で明快に、脅威はないだろうという答弁をされておるわけであります。これは、あなたから判断いたしますと、越権だと思われますか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 木村大臣答弁も、実はその前に、先ほど御指摘になり、また申し上げましたような長い前提を置いて言っておられますので、木村さんがお考えになっておられましたこと、私の思っておりますこと、そんなに径庭があろうとは考えておりません。
  121. 米田東吾

    米田分科員 もう一つ大臣、聞かしていただきたいのでございますが、七二年の例の南北平和統一に関する共同声明が出まして、当時国会で、田中総理は、日本政府としても歓迎するという答弁をなさっておられます。大平外務大臣も当時の国会答弁では、やはり同趣旨の答弁をされております。木村前外務大臣は、やはり四十九年の八月二十九日の参議院の外務委員会で、わが党の田英夫議員の質問に答えられまして、こういうふうにおっしゃっておられるわけであります。南北共同声明、これに対する質問に対しまして、「南北朝鮮の自主的統一かつ平和的統一ということは、これはもう朝鮮民族の悲願であると思います。これを南北共同声明の第一項にありますように、外勢によって、外からの力によって実現するのでなしに、自主的にそれを実現したい、これもまた当然朝鮮民族の悲願であろうと思います。したがいまして、私どもといたしましては「単に日本のみならず、アジア、極東に関係のあるもろもろの国がそれについてそれの立場、内政干渉にわたらざるように配慮をしながら国際的調整の場でそういうことをお助けする」ことが望ましい、こういうふうに答弁されておるわけであります。当時の田中総理は歓迎すると言われましたし、歴代の外務大臣は、大平さんは歓迎する、木村さんは、これを支持してアジアの関係諸国がこの実現にそれぞれ努力をすべきじゃないか、こういう答弁をされておるわけであります。宮澤大臣は、この南北の朝鮮の平和的、自主的統一について、どのような見解をお持ちでございましょうか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平和的に自主的に統一されるということが、南北両者の願いであり希望であるということがはっきりいたしておりますので、もとよりそれが促進されることが望ましいと私は考えておりますし、また、その方向に逆行するような動きというものは、できるだけやはり差し控えるべきであろう。事実問題として、なかなかそのような統一はすぐには実現をしないのであるかもしれません。でありますから、そういう現実は現実として存じておりますけれども、両者がそのように希望しておられますならば、それがはなはだしく阻害されるというような行動は、私どもとしてやはり慎まなければならないのではないかと思っております。
  123. 米田東吾

    米田分科員 日本と韓国の関係は、これは外交関係があるわけでありますし、経済的、軍事的、政治的に非常に緊密な状態がある。むしろ日本の主権あるいは日本の外交というものが問われておるような情勢にあるわけでありますが、朝鮮民主主義人民共和国との関係を見ますと、まことにこれは隔たりがございまして、ほとんど政府の敵視政策、これは変わっておらないという状態であります。  そこで私は、時間がありませんから大臣に端的にお聞きしたいと思うのでありますけれども、いま朝鮮民主主義人民共和国との関係におきまして、漸次、皆さんの努力で好ましい方向に向いていることについて私は認めたいと思いますけれども、人事の交流等については、いま一番問題になっておりますのは、政治レベルの交流がまだ開かれておらない。日本の政治家はどんどん朝鮮に行きますけれども、在日朝鮮人の皆さんと朝鮮の皆さんが日本に入国する場合のチェックが、政治家というもの、政治レベルというものがまだ解除されておらない、こういう状態であります。大臣はこのことについて御理解なさっておられると思うのでありますけれども、もう戦後三十年、しかも朝鮮の国際的地位は高まっておる。国連の中でももう八十数カ国の朝鮮民主主義人民共和国に対する承認国が出てきておる。国連にもオブザーバーとして入ってきておる。国連機構の中にも朝鮮はどんどん発言権を持ってきておる。また、在日六十万の朝鮮の皆さんの人道的な面からいきましても、これだけ自分の祖国が国際的に大きな地位を高め、そうして政治、経済ともに発展をしておるのに、政治レベルだというその判断が出てまいりますと、訪問して再入国ができないという状態、これは私は非常に大きな問題じゃないかと思うのでありますが、これは大臣、もうそろそろ政治レベルの交流ができるように判断すべきじゃないかと思いますが、大臣見解はいかがでございますか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、北鮮との人的交流は年とともに厚くなってまいりまして、私どもそれは喜ばしいことだと考えております。政治家であるからということだけで交流は絶対に相ならぬというふうには私ども考えておりませんので、ただ考えますことは、政治家でございますれば、当然のことながら政治目的を非常に鮮明に持っておる、これはどこの政治家でも同じことでございます。それで、仮定の問題といたしまして、そのような政治目的が、たとえば韓国の特定政権を転覆させるというようなことでございましたら、これは冒頭に申し上げました、南北が本当に仲よくなって統一に向かおうではないかという、私どもが賛同しております目的を損なうことになりますから、そのようなことは、やはり私どものそういう目的に沿わないと判断せざるを得ない場合がございますと思います。それはただ、政治家である、あるいは政治家が一般に持っておるような政治の理念を話すというようなことが不適当だというのではございませんで、ただいまのような行く先々、両者が仲よく手を握り、そうして最後には統一に向かおうという、そういう目的に害になるような政治行動、政治発言というものは、したがって、私どもから見て好ましいことではない、このように考えておるわけでございます。
  125. 米田東吾

    米田分科員 非常に重要な御発言だと思うのでありますが、そうしますと、問題になるのは、政治目的、政治行動なんだ、政治一般という面でのこのチェックはない、こういうことを大臣はおっしゃったのじゃないかと思うのであります。しかも、その政治目的、政治行動というものは、日本が仲よくしておる韓国の方を転覆するとか、政治的な何かの作用を考えておるような、そういうものについては認めることができない、こういう御見解のようでございますが、確認してよろしゅうございますか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは厳密に申しますと、出入国管理令の適用の問題であると思いますので、本来ならば、法務大臣が有権的にお答えになるべきことでございますけれども、私どもがケース・バイ・ケースと申し上げております主たることの意味は、つまり、韓国にとって非常に好ましくない政治行動あるいは政治言説があるというようなことがあらかじめ非常にはっきりしておりますと、それは両国が末長く、やがては一緒になろうというような、仲よくしていこうというようなことに、これは客観的に見て支障があるわけでございましょうから、そのようなことは好ましくないのではないか。政府がケース・バイ・ケースと言っておりますときの判断一つの基準は、私はそういうところにあるのであろうと考えておるわけでございますが、実は、この点は、厳格に申しますと、法務大臣が有権的にお答えになるべき問題であろうかと思います。
  127. 米田東吾

    米田分科員 実は、法務大臣も来ていただくつもりでございましたが、入管局長においでいただいております。あとで入管局長からもお答えいただくつもりでありますが、しかし私は、より優先してこれは基本的には外交の問題だと思うのです。したがって、大臣を煩わしておるわけであります。  もう時間がありませんからやめたいと思いますが、ただ、大臣がおっしゃったように、政治目的あるいは政治行動が問題だということは、これは単に朝鮮民主主義人民共和国だけじゃないんじゃないですか。これは承認国であろうとどうであろうと、こういうものはやはりチェックされるだろう。アメリカだって、日本に入国するに、そういうものを持った人を認めるなんていうことは恐らくないだろうと思うのです。いままで朝鮮民主主義人民共和国の政治レベルについてのチェックがありましたのは、未承認国なんだから、外交関係がないんだから、したがって、政治家と言われるそういう範疇の者はだめなんだ、認められないんだ、こういうことであったように思うのです。政治目的とか政治行動というものとは次元を変えて、ただ政策的に判断されたように思いますが、いまの大臣の御答弁で、むしろ中身が問題だということになりましたので、非常に私は一つの前進だろうと思います。これを基準にしてケース・バイ・ケースで判断されるということであれば、不満は残りますけれども、私は、そういう方向で積み重ねていくべきじゃないか、こういうふうに思いますので、時間がありませんが、そのように大臣に申し上げておきたいと思います。  なお、入管局長、いまの問題につきまして、法務省の入管行政としてはどのようにお考えになっておられますか。政治レベルの交流についてでございます。見解を聞かしていただきたい。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その前に一言補足をさしていただきたいと思うのでございますが、国によりましては、公然と政府をつぶすべきだとか倒すべきだとかいう言説が行われ、それが民主主義の中で至極平穏に処理されていくという国もたくさんございます。ただ韓国の場合には、ただいまのようなことについて、当然のことながら、非常に敏感に政府並びに国民が反応するということは事実でございますから、そのようなことを知りつつそういう事態を起こすということは、本当に南北が将来一緒になっていく上では余りプラスにならない、障害になるということがあるのではないか、そういうことを私どもとしてはやはり考えておかなければならない、このような意味合いでございます。
  129. 影井梅夫

    ○影井政府委員 北朝鮮からの政治家の入国につきまして、一般的、抽象的に申し上げるのは非常にむずかしいと思います。結局ケース・バイ・ケースで処理していかなければならない。その場合に、これも抽象的な一つの基準と申しますか、柱になる事項といたしましては、ただいま外務大臣から御答弁のありました、入国目的が何であるかということが一つの大きな要素であろうかと思います。そのほかに、入国を希望しておりますその人の地位というものも、大きな一つの要素であろうかと思います。さらにまた、そのときどきの国際情勢というもの、これもまたもう一つの大きな要素であろうかと思いますが、こういった事項を総合勘案いたしまして審査してまいるというのが私どもの方針でございます。
  130. 米田東吾

    米田分科員 もうこれで終わりますが、いまの答弁ですと、いままでと全然変わっておりませんね。私は、冒頭申し上げたように、今日の情勢では、もうその姿勢を漸次変えていかなければならぬじゃないか。口先で朝鮮の平和的、自主的統一を支持しますとか歓迎しますと言ったって、片方の朝鮮民主主義人民共和国の敵視政策を変えないということは、もう国際的な今日の進展の状態にも合わないし、日本の利益にもならないじゃないかということを申し上げたわけであります。これは時間がありませんから、いずれまた委員会の方でよくお聞きをしたいと思います。  以上で終わります。
  131. 湊徹郎

    ○湊主査代理 これにて米田東吾君の質疑は終わりました。  次に、瀬長亀次郎君。
  132. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私、きょう農林省関係にも質問しようと思っておりましたが、外務省関係だけで時間がなくなると思いますので、外務省関係のほかはお帰りになっていいと思います。外務省だけは残ってもらいたいと思います。  最初に、私、嘉手納米空軍基地内における核災害の問題、さらに核模擬爆弾の投下訓練の問題と、最後にOTHレーダー、この三つについて御質問申し上げます。     〔湊主査代理退席、谷川主査代理着席〕  最初に大臣にお聞きしたいのは、去年の十二月二十四日、参議院外務委員会で立木議員が、嘉手納基地第三五五作戦計画書、基地災害対策というアメリカ軍の内部文書、これを示しまして大臣にお見せしたが、見たことがない。で、答弁は、こういうことだろうという想定のもとに主観的に述べられておりますが、最後にこの立木議員が調査してほしいということで、大臣はこう述べております。「たいへん短い期限をおつけいただかなければ、調べました結果を申し上げます。」という答弁。そこで、きょうでちょうど二カ月になります。調査の結果、いわゆる災害対策はどういうふうになっているのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  133. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この件に関しましては、早速アメリカ側に照会いたしました。そのアメリカ側の回答は次のとおりでございます。  先方が言っておりますのは、「日常の防衛準備及び訓練の一部として、全ての主要な米軍基地は、仮定に基づく可能性に対応するため及び右に関連した訓練のため上級司令部の一般的指令に基づきつつ、各基地の地理的状況を考慮に入れて、災害対策計画を作成することを要求されており、嘉手納基地の「災害対策書」はかかるものの一環として作成されたものである。」次に「かかる災害対策計画を準備することは、主要な米軍基地の日常業務の一環であり、任務部隊の戦術的乃至戦略的任務には関係がない」、こういう趣旨の回答があった次第でございます。
  134. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それでは、三五五作戦計画書、この立木議員が示したのは事実であったということですね。
  135. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この嘉手納米空軍基地災害対策書、お示しのありました第三五五作戦計画書については、そういうものが存在することはアメリカ側も認めております。
  136. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 それでいいと思います。内部文書をはっきりもうアメリカも確認したということは、外務省も認められた。  そこで、これは大臣に答えてもらいたいと思うのですが、政府委員山崎アメリカ局長は、「核兵器がなければ核兵器事故はない、それは論理的にはそのとおり三ございます。」と答えている。これは、いまの核兵器事故とも関連して、もう詰めて端的に答えてほしいということに対する答弁です。「それは核兵器がなければ核兵器事故はない、それは論理的にはそのとおりでございます。」宮澤外務大臣もそのとおりお考えと思いますが、いかがでしょう。この十六ページの下から二段目ですが、はっきりあなたは言っている。論理的にはそのとおりだ、さあ実際は今度はどうなるかという問題だ。——いや、あなたに聞いておるのじゃない、大臣に。そういうことを局長は言っておるが、大臣も否定されますか。それとも、そのとおりだろうな——ただそれだけですよ、いや、そのとおりでございますと。どうですか、大臣、何か異論がありますか。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府委員がどのようなコンテクストでお答え申し上げましたか、私つまびらかではありませんが、論理的にはそうだということを申し上げたのかと思います。しかし、先刻お話しになりました立木委員のそのお尋ねにつきましての調査は、先ほど政府委員からも申し上げましたように、米軍といたしましては、いろいろな場合に備えていろいろな訓練をする、それは必ずしもその土地ばかりのことではなかろうと思いますので、世界的にそういう体制をとっておる。移動することもございましょうしということもあろうかと思います。
  138. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 あなたは余計な説明をされるからどうも時間がたつのですが、私が言いましたのは、政府委員山崎敏夫君、はっきり言えば「そういう原因がないところに結果は起こらないわけでございまして、それは核兵器がなければ核兵器事故はない、それは論理的にはそのとおりでございます。」これですよ。そのとおり大臣お認めになりますなというだけの話なんです。そうでございますならそうでございますでいいのですよ。どうですか、余計なことは言わないで。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそれだけの限り、そうであろうと思います。
  140. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 もういいですよ。災害対策計画書、これは本物であった。別に共産党が作成したものではなくて内部文書、これは認められた。  そこで、恐ろしいことには、この資料はここにありますが、多分アメリカ局長は持っておられると思うのです。これはいわゆる「カデナ・ファルコン」これは嘉手納米空軍基地の公式機関紙なんです。この機関紙の七二年八月二十五日付、すなわち復帰後ですね。これに次のようなことが書かれている。これは後でごらんになってください。「演習に現実味くわわる」、これが見出しなんです。これはブロークンアロー、すなわち、核兵器事故の一番最悪なやつがブロークンアローなんですね。これを想定しています。「こんどのブロークン・アロー(折れた矢)演習では、二千フィートの圏内への立ち入りについて、保安パトロール兵の警告に気がつかない者が少数いるだろう。また警告が出されたさい、その地域から避難するのを怠る者もいるだろう。これらの者は“疑似被爆者”とされ、この訓練に現実味を与えることになろう。疑似被爆者は、“被爆”の“汚染除去と診断”のための処置をされる。これには四時間ないし六時間かかる。第八二四戦闘支援グループの作戦・訓練責任者フィリップ・E・アンダーソン中佐によれば、着衣を“汚染除去”中の“被爆者”には毛布が支給される。ブロークン・アロー演習の経過の総括は、“被爆者”たちが自由にされるのを待っているあいだにおこなわれる。この演習中、二千フィート圏のぐるりには保安パトロール兵が、第一にその地域からの避難を助けるために、第二にそこへの立ち入りを防止するために配置される。白い煙がブロークン・アロー演習の現場を示すために用いられる。」白い煙がそこだと書いてある。今度は「赤い煙は高性能火薬」——核ですよ。「高性能火薬の爆発を示し、何人もこの圏内へ立ち入るべきでないことを意味する。」こういうのがこの「カデナ・ファルコン」機関紙に書かれております。  これを見る場合に、攻撃に対する防御ではなくて、いわゆる核訓練と関連しまして、嘉手納基地に核兵器があるという疑いをいよいよ強める。これは抜きがたい疑問になるのです。あなた方は、核はないとか、あるいは非核三原則で事前協議はないとか、アメリカを信頼するのでとか、アメリカは何とも言っていないから核はないとか、三つのないで非核三原則説明しておりますが、こういった問題の恐ろしさ、この安全の問題を大臣はどうお考えになるのですか。現実にあなたは、嘉手納米空軍基地が出したあの核兵器の災害、しかもこのブロークンアロー、この災害については、三種類あることもまたこれに説明されているのですね。  ブロークンアロー、一番大事な大変なやつなんですね。これは、核兵器の核爆発、核兵器の非核爆発、核兵器、核弾頭、核構成部分、あるいは他の放射性物質の喪失もしくは破損などですね。さらに次のはベントスピア、曲がったやり、これは核兵器の事故が起こった場合にこの部隊では修理できない、専門の部隊へ持っていかなければいかぬというのと、その次がダルソード、鈍った剣、この三種類のうち、きわめて危険なやつがブロークンアロー、この演習をアンダーソン中佐のもとでやる。これが嘉手納基地の「ファルコン」という機関紙に書かれている。これが具体的にあらわれたのが、いまあなた方が認めたあの三五五ですよ。大臣どうお考えですか。
  141. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど政府委員が米軍の回答について御紹介いたしましたように、米軍といたしましては、いろいろな場合を想定しておる、いろいろな演習をするということのようでございますけれども、確かに部隊として移動をすることもあり得ることでございますし、また転勤をいたすということもあるであろうと思います。したがいまして、常時このような訓練をしておるということは、わが国以外のところにおきましては、核兵器がある場所がたくさんあるわけでございますから、米軍として訓練をすることはあるであろう。そのこと自身がもとよりわが国に核兵器があるということにはつながらないというふうに私は思っております。
  142. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私は、核兵器があるかないか——あるのだと断定をしていないのですよ。こういうふうな、核兵器がなければやれないような訓練が、しかもブロークンアローという大変な核兵器爆発ということがちゃんと書いてある。いわゆる高性能火薬の爆発は赤だ、そして事故が起こったのは白だ。これは外務大臣、あなた自身も、ひょっとしたらあるのじゃないのかな、日本人であれば。もちろん日本人でしょう。私は、この核の疑惑なるものは、こういったものがだんだん日本国民の心の中に、疑惑じゃなしに、これはあるぞと。しかもアメリカが言っているのです。この場合はこうする、非難場所も嘉手納の小学校を使うことまで書いてあるのですよ。どうです大臣、もう少しはっきり言ったら。あるかないかを私は聞いているのじやないのです。疑惑がどんどん高まってきて、もうこれは大変なことになる。嘉手納のアメリカの基地におる、これは約四万と言われています。こういったような人々が訓練され、いざというときにこうするのだ。沖繩にたくさんいますが、日本国民もいる。われわれそんな国にしてもいいのかということにまでなるが、それは別として、とにかく疑惑がだんだん濃くなるということは、これではっきりするのじゃないですか。大臣、どうですか。
  143. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもと異なりまして、米軍自身は、いわばこの世界的な現況からかんがみますと、核兵器というものと常に共存をしておるというような気持ちであろうと思います。わが国の場合には核兵器がないわけでございますから、そういう問題はございませんけれども、一般世界のその他の地域においては、核と切り離しては米軍というものは考えられない。また世界各国のかなり多くの軍隊がさようでございますから、そういう意味でそういうための訓練をしているということは、先ほどの米軍の回答にもございますように、別段私は怪しむに足りないのではなかろうか。そのこと自身から、ひょっとしたらわが国にもあるかと思わぬかというところまでおっしゃいましたが、私はその間に論理的な連関はないというふうに、やはり考えます。
  144. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私この前嘉手納に行きましたが、ひどい目に遭ったのですよ。これは外務大臣、後でちょっと話しますが、第一八戦術戦闘航空団さらに第四〇〇弾薬整備部隊、そこまで行ったのです。私の言っておるのは、そこら辺でこの訓練が行われているというのです。しかもこれはパターンとして一般的なものじゃないのですよ。嘉手納基地の特殊な任務、すなわち核装備をしておる第一八戦術戦闘航空団、この配下にいろいろな部隊があります。四〇〇弾薬整備部隊もそうである。核問題については、いまアメリカがこういったことが起こったらこうするという演習を、内部文書でやっているということが確認されたわけなのですよ。普通の日本国民であるならば、これはあるかもしらぬぞと疑わしいのですよ。宮澤外務大臣が、そんなことは疑わしくないと——疑いたくないのでしょうな。いわゆる主観として疑いたくないのであって、実は客観的に疑わしいのがあるのですよ。そういう意味で、外務大臣嘉手納基地にいらしたことがありますか。ないでしょう。
  145. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 嘉手納基地に参ったことはございません。つまり平たい言葉で申しますと、私の思いますことは、わが国以外の世界あちこちにはもう核というものはずいぶんあるわけでございますから、米軍の部隊がいつかのときにそこに移動していく、あるいは個々の人が転勤をするときに、しばらく日本におったので核のことは忘れてしまったといったのでは、これはよそへ行ったときに使いものにならぬというのが現在の世界大勢でございましょうから、そういう意味では訓練をすることはあり得ることだろう。わが国にないというのは明らかで、その間の論理的な連関はないというふうに、私は思いたいのではなくて、思っております。
  146. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 十日に嘉手納基地に入ったのですが、私たちを案内した将校はデスペインという中佐でした。この人が核事故の問題についてこう言っている。核事故の発生を想定し、これに対する対策を具体的に指示した。嘉手納基地第三五五作戦計画書、いまあなた方がお認めになった災害対策計画書に関連して、米軍側は嘉手納基地において核兵器事故にも対応できる態勢をとっておる事実を確認しました。このデスペインという中佐は報道局長です。向こうの中佐すらもう認めておるのだ。私は時間がありませんので、三木さんはクリーンとか公平とか対等の立場に立ってやられるのだろうが、とにかく非常に不安なんです。あなた方は不安でないかもしれぬが、こっちは不安でたまらない。そして疑惑がどんどん起こってくる。この疑惑は、そんな心配ありませんということを具体的に説況してもらわぬと困ったことになるということなんですね。これを言っておきまして、前に進みます。  核訓練の問題です。核訓練につきましては、第一八戦術戦闘航空団が沖繩で、伊江島射爆場だけではなく出砂島、これは離島の渡名喜村から約四キロぐらい離れた無人島なんですが、ここでも行っておる。この事実は認めるかというわれわれの質問に対して、初めて認めました。これにつきまして、この前の三十一日の衆議院予算委員会で不破議員の質問に対しまして、このような訓練というのは国民感情からいっても好ましくない、だから「私どもとしては、日本人の国民感情はこうでございますから、なるべくそういうことはやはりやめてほしいということは、今後とも先方に要請をし続ける考えでございます。」ということを宮澤外務大臣は言われましたね。ところでアメリカは、引き続き続けるのだということを日本政府に通告して了解を得ているといったような新聞発表がありましたが、これは事実ですか。
  147. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点は何回か御答弁申し上げたわけでございますけれども、在日米軍が安保条約の目的達成のために多種多様な訓練を行うということは当然のことでございまして、そういう訓練の一環として核模擬爆弾の投下訓練というものもかつて伊江島でやったこともあるわけでございます。この点に関しましては、外務省といたしましても、アメリカに対して、国民の核兵器に対する特殊感情にかんがみて適当なことを考えてもらいたいということを申したわけでございますが、これに対しまして、向こう側としましては、こういう訓練は海外に配置されておる米軍部隊によって通常実施されておる訓練計画の一環であって、米軍の全般的な即応体制を確保するための重要な要素であるということを説明いたしまして、しかし、日本国民の国民感情を考慮に入れて、訓練に当たっては安全対策上十分な留意を払ってこれを実施する、さらに米軍の任務の遂行上必要最小限度にとどめるようにするということを申してまいったわけでございまして、その点については、われわれとしても了解しておるわけでございます。
  148. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 大臣、いわゆる核訓練の実態、われわれは沖繩国会から現在まで、伊江島で行われておる核模擬爆弾BDU8とかBDU12ということをいろいろ言って、これはやめろと言ったのですが、一月三十一日の予算委員会の不破議員の質問の中で、そういったBDU8とかBDU12だけではなくて、アメリカの戦術核兵器というようなのは実に進んでいる、ミニチュア核兵器があるということをこれに述べましたが、このミニチュア核兵器というのは、SUU−21というのですか。これはいわゆるディスペンサー、核専門の投射器、いま私、持っておりますけれども、この中に、こういったミニチュア爆弾を六個装てんできるということですね。私、現物を持ってきたのですが、御参考のために見てください。これは例のMK106、これが組み合わせしますが、このディスペンサーの中に六つ入れられている。だからこのディスペンサーを一個積んでおれば、一回に六個の核模擬爆弾のミニチュアが投下できるということ。二個のディスペンサーを飛行機で持っておれば、これを十二個落とすことができる。こういった訓練が実に何回も行われている。最小限どころではないのですね。  一体、外務大臣、国民感情と言われましたね。そのとおりだと思うのですよ。それは認めましょう。こういったことに対して、もう少し対等な立場、対等の精神、そういった意味でアメリカにこのような演習はやめてくれぬかということをむしろ強く要請されるお気持ちはございませんか。どうなんです。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたような理由から、アメリカ軍としては、やはり常時こういう演習をしておくという必要を感じておるものであろうと私は想像をいたします。そうではございますけれども、また、わが国の国民感情もございますから、できるならばそれはやめてもらいたいというのが本意ではございますけれども、向こうのそういう立場も理解ができないわけではございません。したがって、もう必要の最小限度にいたしますと先方が申せば、それも理解をしてやらなければならないというふうに思っております。
  150. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 時間が参りましたので、OTHレーダーについてちょっとお伺いしたいのです。  OTHレーダーは所沢、千歳、沖繩の泡瀬にある。それをアメリカは撤去するということを新聞に発表しておりますが、この通告は外務省にあったかどうか。あったなら、何月に撤去すると言ったのか。さらに跡地の利用の問題。これは、自衛隊にまたやるんではなくて、ちゃんと国民が利用できるような体制をとってほしい、私そう思いますが、この点について御答弁をお願いしたいのです。
  151. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 このOTHの廃止に関しましては、政府といたしましては、まだアメリカ側から正式の通報は受けておりません。ただ、二月十二日に発表されましたシュレジンジャー国防長官の国防報告によりますと、このOTH関係の送信及び受信施設は、すべて一九七五年米会計年度中に、つまりことしの六月末までに逐次廃止される、フェードアウトするというふうなことが書かれております。これは公表された文書の中にそういうふうに書かれておるわけでございます。  したがいまして、われわれといたしましては、それではわが国のこのOTH関係施設がどうなるのかということにつきまして、早速アメリカ側に問い合わせておるわけでございます。まだその点について回答は受けておりません。  それから跡地の利用ということでございますが、OTHのそういう施設は廃止されると思いますが、それはその通信設備そのものが撤去せられるかどうかということもわかりませんし、またこれが米軍の中でさらにほかに転用を考えておるかということ、その他にもわかっておりませんので、この点については、われわれとしては何とも申し上げかねる次第でございます。
  152. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 最後に私は大臣に。このOTHは、私たちの理解では、安保条約にすら違反する存在なんです。それを一日も早く撤去させるように、撤去の跡地は、国民が生活を守るために利用できるような方向で跡地利用をさせるよう努力してほしいことを要望して、質問を終わります。
  153. 谷川和穗

    ○谷川主査代理 これにて、瀬長亀次郎君の質疑は終わりました。  次に、久保三郎君。
  154. 久保三郎

    久保(三)分科員 私は、時間の関係もございますので、二つほどお伺いする予定ですが、最初に国際協力事業団に関連しての質問であります。  まず第一に外務大臣にお伺いしたいのでありますが、国際協力という理念というか、そういうものはどんなふうに受けとめて施策を推進しておるのか、あるいは今後されるのか。大変初歩的なことで恐縮でありますが、この経済協力というか、国際協力というのは、考えようによっては、まだいろいろな考えが錯綜しているのではないか。あるいはもう一つは、政府にその理念があるにしても、国民的なコンセンサスというか合意が十分にできているとは、われわれどうも思えない節があるし、それから国際協力事業団の仕事。去年、事業団ができましたが、この仕事の内容は従来に引き続いてでありますから、そういうものの仕事というか、計画を見ておりますと、もっとも発足してことし二年目ということでありますからなにでありますが、どうも十分ではないように思うので、冒頭、大変初歩的な話でありますが、この理念についてお伺いしたいと思う。
  155. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の憲法の精神から考えまして、世界のすべての人々がこの世に生まれて、貧困あるいは疾病等々に悩まされずに人間としての人生を享受するということが、われわれの人道主義的な国としての願いであるというふうに考えます。国際協力の基本理念はまずそこにあると存じますが、第二に、多少国益という、幾らか利己的、と申すのは適当でございませんが、国益というような観点から見ましても、世界が平和であることがわが国国益に最も大切である。平和が破れる場合には、しばしば飢餓、貧困等に基づく不満がいろいろな形で爆発をし、あるいは利用されて平和が破れることが多いわけでございますので、したがいまして、わが国のできます限りそのような紛争の原因を除去していく、そういう二つの理念が国際協力の基本であろうと考えます。  確かに、久保委員が御指摘になりましたように、わが国も今日の経済的な地位に立ちますまでの間に、いわばわが国の貿易なり投資なりを伸ばしたいという、そのような見地と国際協力というものが事実上結びついてきた場合が非常に多うございます。それも確かに国際協力ではございますけれども、先ほど御指摘のように、わが国の経済力もここまで参りましたので、冒頭に申し上げましたような理念、もう少し純粋な理念というものに立ち返ってこの問題を考えなければならない。しかし、従来のそのような経緯がございますために、まだ十分にそこまでなり切っていないというのが今日の現状ではないだろうかというふうに思っております。
  156. 久保三郎

    久保(三)分科員 お話大体わかりますが、そこで、冒頭お述べになりました国際平和、憲法を土台にしてというお話でありまして、まさにそのとおりだと思うのでありますが、平和の問題はいろんな解釈もございましょうし、これを維持していくのにはいろんな手段もあると思うのであります。究極するところ、やはり人間の世界でありますから、お互い人間同士が理解し合うということが一番だろうと思います。そういう問題からいくならば、この国際経済協力というか、そういうものに限定して考えていく場合に一番効果のあるものは何だろうということになると、これはいまやっておる技術協力、それも海外からの、特に発展途上の国々からのが多いのでありますが、そういう国々からの人たちを日本の国に招いて日本の国情を知ってもらう、あるいは国民を知ってもらうと同時に日本の技術を習得して持ち帰っていただく、そういう仕事が冒頭お述べになった理念から見た経済協力では一番だろうと私は思うのであります。  いままでやりました資金なりあるいは物資の提供というか、そういうものの経済協力は、ともすれば、いままでの日本の経済発展のてこと言っては語弊がありますが、そういうふうに見た面もあるし、また意識的にそういう方向でやった面なきにしもあらず。はなはだしいのは、当該国との間に政治や経済の腐敗まで巻き起こすといううわささえあるわけですね。そういうものを考えますれば、いま申し上げたように、技術協力というのを重点的に進める必要がありはしないか。ところが、経済協力全体の総額から見れば、技術協力というのは大変比重が低いのですね。これについてどういう考えでおられるか。  しかもこの技術協力は、これから限られた時間でありますが、私は内原の研修センターの近くに住んでいるものでありますから、よく知っております。そういう実態を見まして、たくさんの仕事をやっていかねばならぬのにもかかわらず、全体的に技術協力の比重が軽くなっているということは、どうも納得がいかないので、五十年度予算を見ましても、やはり十分でないというふうに思うので、この辺についての認識の仕方について、大臣からお答えいただきたい。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、相手国から人を受け入れまして日本で学問をしてもらう留学生のような場合、あるいはさらに進んで、わが国の持っております技術を習得して帰ってもらうというようなことは、最も基本的な、しかも純度の高い協力であろうと思います。  そのことにつきまして考えますことは、わが国は明治以来よそからものを習得することには非常に熱心でありまして、そのための方法、そのための体制もずいぶん整っておりますけれども、いわば今度は相手の人にものを教える、高ぶった意味でなく習って帰ってもらうというような施設、体制ははなはだ整っておりません。ごく最近そういう立場になったせいがあろうと思いますけれども、はなはだそういうことについては実は整っておりませんで、したがいまして、真心でやりましても、言葉の関係もございましょうけれども、結果は必ずしも満足にいっていない。時によりますと、わが国で研修をした人、留学をした人が、かえって国に帰りましては日本を批判する勢力になったりすることすらございます。これはやはり基本的にわが国が、かつてのものを習得する立場から、場合によってはものをお教えしなければならぬという立場になりつつ、それに対する心構え、体制が不十分であるということに起因しておると思います。したがいまして、改善の余地はきわめて多いというふうに基本的に考えております。
  158. 久保三郎

    久保(三)分科員 大体中身についてもおわかりかと思うのでありますが、われわれの側から見ると、事業団は直接やっているものもありますので、多少気にかけていると思うのでありますが、本家本元の外務省はどうもそれほどじゃないのだというふうな気持ちもあるわけなんでありまして、二、三の問題点申し上げて御所見を伺いたいのであります。  研修のための人たちを受け入れるコースとしては、百三十五のコースがあるわけです。そこで、事業団が直轄でこれを研修していく施設というか、そういう体制のものは、内原の農業技術研修センター、それから沿岸漁業の三崎の国際研修センター、この二つだけなんですね。内原では大体四コースくらいかと思うのでありますが、これはあります。そのあとは、ほかのものは、御承知のように、政府各省庁の機関あるいは民間、あるいは地方自治体の方にもあるかもしれませんが、そういうところに委託するわけなんですね。結局、さっき冒頭お話がありました理念がどうも正しく——正しくというと語弊がありますが、十分に理解されていないので、研修センターでおやりになることは自分の仕事としてやっておりますから、理念の履き違えや不足は余りないと思う。ただし、その他の受け入れ体制というのは、どうもはっきりしないのではないか。結局、外務省以外のところで受け入れるとすれば、片手間、本業以外であるということでどうしても身が入らぬのではないか。だから、百三十五コース全体について、やはりきちんとした体制を整える必要がまず一つはあると思うのですね。体制ができていない。ただ、いままでの惰性と言ってはなんですが、いままでのやり方に応じて、自動車の機械ですか、それじゃトヨタにでも行ってもらいましょうかということで恐らくやっているのだろう。そういうことではいろんな問題が出る。  それからもう一つは、直轄でやっている、たとえば内原。私は内原だけしか知りません。三崎はわかりません。大体同じようじゃないかと思うのでありますが、これも施設はまことにお粗末なんですね。敷地は大体借地を入れて四ヘクタールぐらい。四コースでありまして、稲作あるいは土地改良、野菜その他あるのですね。たとえば稲作の実習、これはミニたんぼなんです。ミニたんぼというのもおかしいかもしれませんが、まあ模型にちょっと毛の生えたものなんですね。だから向こうからおいでになった研修生の諸君は、われわれの国の農業高等学校に劣るというような評をする者もいるわけです。そういうところで研修をして情熱がわくものかどうかというのは、疑問があると思うのですね。そういうところでやっている。  それからもう一つは、しかるべき人がみんな研修生として来るわけです。向こうの政府のしかるべき地位にある者、指導層にある者。最高の指導層ではありませんけれども、技術を指導する層が来るわけですから、これは一般の農業従事者ではないのです。こちらで言うならば、農林省の出先の役人あるいは普及員というか、そういう人が来るのでしょう。そうだとするならば、やはり生活のやり方も違うわけでありますし、しかも日本が受け入れるのでありますから、受け入れるのには、それに応じたところの生活施設というか、そういうものが必要だと思うのですが、宿舎のごときは大変老朽しているわけです。これは説明の要はなくて、外務省も知っておられると思うのです。まことにお粗末至極。いまどき、この辺にもないような雨漏りのするような宿舎に迎え入れるというのでありますから、問題があるわけですね。結局、受け入れ先は直轄でも、施設は非常に不備であります。あるいはそれ以外の委託する場所は、理念が十分に理解されない面があって、これは片手間でやられる面が間々ありはしないかという心配が出てくるわけです。そうなると、大臣、先ほどお話がありましたように、日本に招いてかえって日本に対していい感じを抱かないまま帰国していくと、反日感情を植えつけるための技術協力という逆な面が出るわけです。これでは残念ながらだめだ。これをもう少し力を入れて直す工夫をするのには、先ほど申し上げたように、法制的にも、必要ならばそういうものの体制も築く必要がある。それから施設の整備拡充は当然だと思うのです。  それからもう一つは、言葉が違うわけですね。日本語というわけにはまいりませんから。それで結局これは英語を仲介してやっているのだろうと思いますが、その通訳も入れなければならぬ。そういう不便さがあって十分に研修の効果が上がらぬ面がある。だから、研修をする受け入れ側のそういう要員の確保も十分にしなければならぬのでありますが、その体制はない。そういう要員の養成と確保も二番目には必要だとだれもが思っている。そういう計画は全然ないようであります。これも早急にやる必要がある。  それからもう一つは、アフターケアの問題なんです。せっかく習って向こうへ行った。ところが、そのまま糸の切れた形になってしまったのでは、せっかく来る者も迎え入れる者も、いろいろな努力の結果、一つの成果を持って帰りながら、これが中途で切れてしまう。こういうものについてのいわゆるアフターケアの制度が全然確立していない。だからやりっ放し、やられっ放しということですね。これは改善する要がありはしないか。  それからもう一つ、アフターケアの一つとして、必要な機材は供与することになっていますね。ところが、機材供与事業を見ますと、これまた少ない。少ない上に事業費が繰り越しになっているのです。じゃ十分に行っているかというと、行ってないのです。約束と反するじゃないか、日本の国へ来て習って、その習った技術に必要な機械器具はある程度供与しますというのが約束のようであります。ところがそれがいかない。予算が繰り越しになって使わぬというのですね。これはいろいろな事情があるようです。しかし、その事情をいまわざわざ繰り返し述べる必要はないでしょう。そういう点を改善していくべきだと私は思うのであります。  その点について、もう中身はおわかりだと思うのです。これは年次計画を立てるなり何なり、事業団自身考えてはおられると思うのでありますが、やはり外務省として、事業団もせっかくできたのでありますから、単に移住協会と海外技術協力事業団と一緒にして、その事業を一本にしてやるのだということではなくて、もう少し魂を入れた計画を整備する必要があると思うのですが、結論としていかようにお考えですか。
  159. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 いま先生が御指摘のいろいろな問題点、若干事実を補足し、いま改善についてわれわれが考えております点だけ簡単に御説明申し上げます。  それぞれの業務について研修と宿舎とを兼ねている研修センターは、ただいまのところ、先生指摘のとおり、内原の農業研修センターと神奈川県の横須賀の長井にあります水産の研修センター、二つでございますけれども、そのほか一般の各種の業務に研修に来ていただく方のために、東京、大阪、名古屋、兵庫にそれぞれのセンターがございまして、そこに宿泊していただくと同時に、一般的な研修も行うことをやっておるわけでございます。  先生指摘のとおり、内原の研修センターはこの中で一番古い建物でございますので、確かに設備を改善するべきところがあるということは、私ども気づいておりますが、いま来年度の予算におきましては、東京に第二の宿舎としてのセンター、これは本当に宿舎が足りなくなりましたので、このセンターの予算を計上して国会の御承認を求めておる次第でございますので、この第二の東京のセンターが整備いたしました後には、内原のセンター内部の改善をやりたいと考えているわけでございます。  それから次に、要員の育成の問題でございます。これは従来からいろいろ考えておりましたけれども、なかなか実行がむずかしかったわけでございますが、国際協力事業団ができました暁に、新しい法律の業務といたしまして、専門家の育成、外国に行く専門家ばかりでなく、日本の中で研修員を指導する専門家の育成のための予算を五十年度にやや大幅に要求いたしておりますので、来年度からこの事業を始めたいと考えているわけでございます。  それからアフターケアの点につきましても、確かに重要な問題でございますので、従来から各地を巡回して、研修生の方が国に帰ってどんな問題点があるかどうかというような点をいろいろ聞いてまいりまして、いろいろな追加的な機材が必要である場合にはその機材、あるいは本などの資料を送るとかいうようなことをやっておりますが、この点につきましても、先生のおっしゃるとおり、さらにこの事業を活発にしていって、アフターケアを完全にするような配慮をいたしたいと考えておるわけでございます。  それから最後に、機材供与がいろいろおくれているではないかという御指摘がございました。先生も御事情を御存じのようでございますので、詳しく説明いたしませんが、それぞれ専門家は専門のいろいろなスペシフィケーションを持ちました機材を要求してまいりますので、その専門家の個個の要求に応じた機材を注文に応じてつくるとか、あるいは場合によっては入札をするとかいうことで、実際に送ることがおくれているケースが間々あるわけでございます。しかし、これもさらに改善すべき余地がございますので、こういう点で、われわれとして事務の簡素化を図って、機材供与が早く行われるようにいたしたいと考えております。
  160. 久保三郎

    久保(三)分科員 局長からお話がありましたが、結論としては、いろいろお考えになっておると思うのですが、私は、やはり体制をもう少しきちんとお立てになった方がいいのではないかというふうに思うのです。それは百三十五コースもあるんですから、これは大変な仕事だと思うのです。  そこで、逐次おやりになることだと思うのですが、やはり三カ年計画とか、五カ年計画というのは少し長いのですが、そういうもので一応やっていただいた方がいい、こういうふうに思うので、これは改めて事業団と外務省で御相談いただいた方がよさそうに思うのですが、大体問題点は局長も十分おわかりのことだと思うから、これ以上申し上げません。  そこで、内原の研修センターの設備ですが、これは、いまある現場で設備を拡充するわけにはまいりません、はっきり申し上げて狭い場所でありますから。ですから、研修をやりながら改築というか、直していくというのは非常にむずかしいと思うのです。  そこで、農林省もおいででありますから、この近くに農林省の施設で農業技術研修館というのがあるのです。非常に近い距離のところにあるのです。農林省は、これから申し上げるについては、余りいい返事はしないと思うのでありますが、これはやはり大きな目で考えてもらいたい。この農業技術研修館というのは、言うならば、最初は大型の機械を入れて後継者を養成しよう、そういうような考えもあったようでありますが、もう一つは、農業改良普及員、こういうものの養成というか、再教育というか、研修ですね、こういうもののためにつくられたと思うのですが、率直に言って、これだけの敷地で、これだけの施設で、十分に機能しているとは思わないのであります。思わないと言ったら大変失礼でありますが、どうも施設の方がばかでかくてという意味です。それはどのくらいあるか言うと、四十ヘクタールあるのです。先ほど申し上げた事業団の研修センターは四ヘクタール、四ヘクタールの方は、大体どのくらい収容して四コースやっているのかというと、これは御承知のように、四コースで大体四十名ないし五十名くらい入っている。片方の農林省の方の技術研修館の方は、四十ヘクタールで大体二十五人くらいが単位です。  そういうことでありまして、私は率直に言って、時間もありませんから簡単に結論だけ申し上げたいのですが、この研修館の敷地を等半に分けて、半分は事業団の研修センターに使わせたらどうか。農林省の方の技術研修館の方にあるいわゆる機械、器具、こういうものは、いまでも多少研修センターの研修生が実習に使っているようでありますから、同じ農業でありますから、しかも地元のわれわれからすれば、広大な面積を——広大と言ったら失礼でありますが、われわれの方から見れば広大なものです。そういうところに二十五名ぐらいで四十町歩も占有されていたのではどうもという気持ちがある。片方は大体五十名くらい入れておくのにたった四町歩、ずいぶんつり合いがとれないなという感じですよ。  そこで、これは外務省にも考えてもらいたいのですが、農林省に特に考えてもらいたいのは、研修センターの改築は、まず第一に、土地を技術研修館の中に求めて、共同でやっていくようにぜひ考えてもらいたい。外務大臣も、折がありましたら農林大臣ともお話しをいただいたらどうかというふうに思うのでありますが、農林省からせっかくおいででありますから審議官、御感想をひとつ。
  161. 二瓶博

    ○二瓶説明員 農業技術研修館は、ただいま先生がおっしゃいましたように、農業機械化の研修、それから普及職員の研修、これをやっている機関でございます。  それで、先生からお話ございましたように、全体の面積は四十二ヘクタールほどございます。もちろんこれは、全部圃場じゃございませんで、圃場といたしましては、水田が三ヘクタール、それから畑が二十二ヘクタール程度ほどございます。そこで現在、年間にいたしまして大体千三百名ないし千四百名程度の研修をやっております。もちろんこれは、機械の方と普及職員の研修と両方でございますが、その程度の研修をやっております。  ところで最近、特に機械の方の面につきましては、非常に大型化してきておる、あるいは高能率化してきているというようなこともございまして、実習的な研修というものがますますその必要性を高めてまいっております。そういうことで研修生の方も非常にふえておるという状況でございますので、この圃場を半分はセンターの方にというお話もございますが、これを割愛するというようなことにつきましては、非常に困難かと思います。  なお、この機械研修の方につきましては、稲作機械化コースというのを、この研修館の方で依頼を受けておるわけでございまして、研修館の機械研修の研修計画の一環に織り込みまして、例年十名程度でございますけれども、研修を実施しておるというのが現在の状況でございます。今後とも研修生の受け入れという面につきましては、本来業務に支障のない範囲で十分協力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  162. 久保三郎

    久保(三)分科員 おおよそあなたの答弁はそんなことだろうと実は予想していたわけです。わざわざ来てもらったのは、みんなに聞いてもらって、こういう答弁があったということを認識してもらうつもりだった、大変失礼だが。あなたは現場は知っていらっしゃるか知れないが、あなたの計算でいくと四十名だ。四十名は入ってないですよ。三十五名です。それで四十二町歩もどうして必要があるのか。そして使いもしない機械がたくさんあるんですよ。この部屋いっぱいに広がるようなコンバインを持っている。日本の農業でどこでやるのか。北海道以外にどこにもこんなコンバインを使うところはありませんよ、これははっきり言って。  私はあの施設について要らぬとは言いませんよ。普及員の大学というか、そういうものにつくるんなら私も賛成だ。しかし、いまのままではどうにもならぬということだ。片方は困って、片方はそんな大きな——これは、あなたの方の計画がどういうふうになっているか知りませんけれども、少なくともこの際は、あなたの方のやっていることも日本の国のため、内原の国際技術研修センターもわが国の目的のためだ。同じなんだ。しかも農業という問題を追求していくのだから、あなたら自身で何も狭い考えですることはないのであって、これはむしろ胸襟を開いて、それじゃひとつ一緒にやりましょうというくらいでなければ、あなた、日本の農業も世界から評価されることはないですよ。それは国の利益から言っても、そんな考え方ではいけない。もっともあなたは、ここで、いやあなたのおっしゃるとおりでありますから、本省へ帰りまして大臣とも相談しましょうと答弁したらば、これは審議官としては、農林省に行って多少批判されるでしょう。それではいけない。  外務大臣、お聞きのとおりであります。これは経済協力局長もお聞きのとおりであります。これはそういう近い場所にある。私、この問行ったら、筑波へ行きたいと言うのです。筑波へ行っても、これから土地なんか新しく取得できませんよ。学園都市が十何年たってできないんだから。周りの農民は土地は一つも手放さぬと言うのです。そういうところでありますから、是非そういうことでお考えをいただきたい。審議官、ひとつ帰ってからよく農林大臣にもお話しいただいて、御協力をいただいて、振興のためにお願いしたい。  以上です。
  163. 谷川和穗

    ○谷川主査代理 これにて久保三郎君の質疑は終わりました。  次に、小川新一郎君。
  164. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 最初に、私は確認の意味からお尋ねいたしますが、非常に時間が短いので、簡単明瞭にお答えいただきたいと思います。  日本国内の施設及び区域を米軍に供与する場合は、どのような機関で決定いたしますか。簡単で結構です。
  165. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは地位協定に基づいて設けられました合同委員会合意に基づいて提供されます。
  166. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 日米合同委員会で決定した提供区域以外の場所を米軍が使用することができますか。
  167. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 米軍に提供すべき施設、区域は、すべて合同委員会による合意を要するわけでございますから、そういうふうにして提供された施設、区域以外のものを米軍が使用することはできません。
  168. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 提供区域以外の区域アメリカ軍が使用した例がございます。すなわち、昭和四十九年十二月二十三日十七時ごろ、岩国沖合い二十一キロの柱島群島にある無人島の手島で、アメリカ海兵隊航空救難ヘリコプターによる救助訓練が行われました。その際、地上からの合図のため使用した発煙筒が異常発火したため山林火災となり、約三ヘクタールの山林を焼失し、ここで初めて手島が米軍による訓練を行っていたことが判明しましたが、政府はこの事実関係をお認めになりますか。
  169. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 そういう事実があったことは承知しております。
  170. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 日米合同委員会で決定した施設及び区域以外で米軍は訓練できないはずでありますことは、いまお認めになりましたが、手島はいつ日米合同委員会で米軍に使用を許したのか、明らかにしていただきたいと思います。
  171. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 手島をそういう施設、区域として提供したことはございません。
  172. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 日米合同委員会で決定してない場所を米軍が無断で使用するということは、安保条約及び地位協定違反と思いますが、どうでございましょうか。
  173. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは安保条約の規定に反することであると思います。
  174. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 現地の調査によれば、手島ばかりでなく、付近の石子、保高、中子、竿、毘沙門の五つの小島でも、五、六年前より訓練を行っていると聞いておりますが、事実ですか。
  175. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 われわれとしては、そういう事実は承知しておりません。
  176. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そういたしますと、ここに昭和五十年一月十六日、岩国市議会臨時本会議の議事録がございます。これは公明党の野上実議員が質問をいたしておりますが、その中で、朝田俊輔君という市長でございますが、米軍の救助訓練について報告をいたしておりますので読み上げますと、「アメリカ海兵隊岩国航空基地所属の航空救難ヘリコプターによる救難訓練が、提供区域外の無人島で実施されていたことが、米軍の過失による火災発生により判明いたしたのであります。市では直ちに訓練の中止を申し入れるとともに、今後かかる訓練を指定区域外で絶対に行なわないよう強く要請をいたしました。ここで、本事件の経過及びその対策について概要」云々とございますが、飛ばします。そこで「調査によりますとかかる訓練は数年前からたびたび実施していたようでございますが、同島は岩国市区域内といえども市街地から南東約二十一キロの海上にある孤島であるため、事件発生まで訓練が行なわれているということを市としましては全く知らなかったのが事実でございます。そこで、市といたしましてはかかる訓練が提供区域以外においてなされていることを重視し、さっそく次の点について岩国防衛事務所長へ抗議するとともに問い合わせを行ないましたところ、それぞれ回答を得たのであります。まず質問の第一として、」これは私どもの議員が質問していることに答えているのですが、「米軍ヘリコプターによる救難訓練が提供区域以外の場所でなし得るかどうかという質問に対しましては、これはできないという回答であり、質問第二として、一時的に使用する場合にどのような取りきめがあるかという問いに対しまして、一時的使用の場合は地位協定第二条第4項(b)により、日米合同委員会の承認が必要であるとのことであります。質問の第三といたしまして、このたびの訓練をすることについて米軍は事前承認の手続きをどのようにしていたかということに対して、米軍は何の手続きもしていないということでございます。質問の第四といたしまして、手島等を使用して施設、区域以外で人命救助の訓練をいままでどのぐらい行なっていたかという質問に対しまして、事務所長が米軍にただしましたところ、何年ごろから始まったかは明確でないが、現司令官が着任したときにはすでに行なっていたので、数年前からということでございます。」それから飛びまして「十二月二十六日文書で、アメリカ海兵隊岩国航空基地のE・S・マーフィ司令官に対し、手島での火災発生は米軍の過失によるものであり、たいへん遺憾に思う。与えた損害の適正補償は当然のことであるが、今後指定場所以外では絶対にかかる行為はしないようにとの趣旨の申し入れを行ないましたところ、翌二十七日司令官から、たいへん迷惑をかけたことを深くわびるとともにさっそく不祥事再発防止の措置を行なった旨の陳謝の文書を受け取ったのであります。」云々とあります。  このことについて、外務省はどのように対策を講じましたか。
  177. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 われわれも、この事件を知りまして、大変驚いたわけでございまして、昨年の十二月二十八日、私、アメリカ局長は、在京米国大使館のシュースミス公使を招致いたしまして申し入れを行いました。そのときに、私としましては、米軍の施設、区域外であるこの手島において、岩国基地所属の海兵隊ヘリコプターが従来から訓練を実施していたこと、また今般、その島において訓練の結果、不祥事、火事を発生せしめたことについて深く遺憾の意を表明しまして、日米安保条約の規定から見て、このような訓練は認められない、したがって今後一切、このような訓練は行わないように申し入れた次第であります。  これに対しまして、シュースミス公使は、このような訓練が従来から行われてきたこと、また今回のような不祥事が発生したことに関して深甚なる遺憾の意を表明しました。さらに今後、このような訓練を一切行わないように必要かつ適切な措置をとることを保障することを確言いたしました。その後、米大使館を通じ、米軍は在日米軍に対して必要な指令を発したと承知しております。
  178. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 大臣、お尋ねいたしますが、日米安保条約第六条という、地位協定に関してのこれは重大な国と国との条約でございます。ましてこの日米安保条約につきましては、この安保条約をめぐって議論が二つに分かれていることも大臣、御承知のことと思います。そういう日本アメリカの相互の安全保障並びに極東の安全に関与するいわば重大な国と国との条約でございます。しかも、日米合同委員会で日米相互が合意に達しない限り、施設、区域の施設及び訓練区域等というものを無断で米軍が使用するわけにはまいらないことは、ただいまのアメリカ局長の御答弁でも、またこれは条文から言っても明快であります。しかるに数年間も、手島並びに私が申し上げましたような五つの小島において条約違反を行なっておった。これは重大な国と国との背信行為である。しかも、わが党があらゆる機会を通して、核問題並びに日米安保条約についての種々の条約の甘さについて、米軍の違法行為やその他について追及しておりましたが、このような事実が今回判明し、しかもアメリカ公使を通じて抗議をしたと申されますが、これは重大な国と国との問題でございます。これについてはどのようにお考えになり、さらにどのような対策をとられるお考えでございますか。
  179. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたように、まことに遺憾な事件であると申し上げるよりほかはございません。  これに対しまして、米国政府が正式に深甚なる遺憾の意を表明し、今後かかる訓練は一切行わないよう必要かつ適切な措置をとることを保証する旨確約をいたしましたので、まことにこの出来事は遺憾でございますけれども、陳謝並びに今後に対するそのような確約を得ましたので、一応これをもって外交上の措置としては終結をしたものと考えてよろしいかと思っております。
  180. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 私は、大臣に申し上げるのでございますが、確かにそういう事実をお認めになった。しかも局長を通してアメリカ大使に抗議を申された。しかしこの問題は、重大な国家の問題でございますので、正式なるアメリカの陳謝文、こういうものはもちろん取りつけてあると思いますが、それはいただいてきていると思いますが、それを当委員会にお示しいただけませんか。
  181. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外交上のこの種案件に関しましては、口頭で申し入れ、口頭で陳謝の意を表するということは、しばしばあることでございまして、そういう陳謝文は受け取っておりませんけれども、口頭でのこのやりとりは公式のものでございます。
  182. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 アメリカ態度というものを、皆さんは、まあ日米安保条約の中で御信頼をいただいておりますが、この事件が発生して、アメリカ防衛の現地の責任者、アメリカ海兵隊のE・S・マーフィ司令官に対して、手島での火災発生問題を追及した翌日に、この会議録によりますと、「それから第四点の出火の翌日にヘリコプターでの着地訓練をしておったということにつきまして、翌日、消防本部からも職員を派遣いたしまして、現地調査をする段階であった」ということで、実は次の日にも訓練を続けているということがこの議事録に載っているわけです。  アメリカの現地側に対して、このように防衛施設庁を通し、また現地の司令官を通し、厳重に日米安保条約第六条の地位協定違反であるということを抗議しているその翌日も訓練を行っているようなアメリカ態度というものは、これは重大なる日本政府に対する挑戦であり冒涜じゃないですか。しかも、一片の口頭の約束というもの、確かに国家間の条約の大事な問題でございますから、私は確信いたしますが、少なくとも指摘を受けた次の日にも訓練を行っているという事実が、岩国の昭和五十年一月十六日の臨時市議会の本会議会議録に載っているのです。  こういう事実を踏まえた上で私は質問しているわけでございますから、少なくともこの問題については、重大な日米安保条約第六条違反として、大臣みずからアメリカに対して厳重な抗議を行ってしかるべきである。しかも翌日までやっているということ、これらを踏まえて、実はこの問題について、軽々にただ単なる局長の御抗議、これも結構でございますが、それ以上に重大に事を構えねば——数年間も、わからなければそのままにして、しかも、そこで火事を発生させ、そして被害を出さしめ、しかも、いまだにその損害さえも支払ってないという、こういうアメリカ態度に対して、大臣、いかがお考えでございますか。
  183. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一国を代表して深甚なる遺憾の意を表明し、今後の適切な措置を確約したということは、たとえ口頭ではありましても、きわめて重大なことであります。私は、これはきわめて重い措置を私どもとしてもとり、米側としてもとったものと考えております。もとより、このような確約をいたしました後に、しかも、その趣旨が下部まで徹底いたしました後に、再度そのようなことが行われておるといたしますと、これは重大なことでございますけれども、さようなことではなく、この約束は今日まで守られておるように存じますので、私どもとしては、事態にかんがみて非常に重い措置をとったというふうに考えております。
  184. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 過去にこういう安保条約第六条違反、地位協定違反、米軍の日米合同委員会に定められた施設、区域、訓練区域以外に手島のような事件が、この二十数年間の日本アメリカとの条約期間中にございましたですか。
  185. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 実は、この事件が起こりまして、われわれも過去においてこういうことがあったのかということを記録その他で調べてみたのでありますが、われわれが調査いたしました限りにおいては、このような事件は全くなかったようでございます。
  186. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そういたしますと、本件が最初であり、また、この次こういう問題があるかないかという問題で、私は、その調査が不確実だということは、いまの手島以外に五つの島で行われたということの確認、その行為がまだしていないんじゃないですか。
  187. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その五つの島においても同様の訓練が行われているということは、実はただいま初めて承知いたしましたわけでございまして、そういうことは万々ないと思いますが、具体的な事実をお示しいただけるならば調査いたします。
  188. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 名前まで私ははっきり申し上げましたですね。いいかげんな島の名前を言っているのではございません。手島ばかりでなく、付近の石子、保高、中子、竿、毘沙門、この五つの小島でも五、六年前より訓練を行っておることが、この議事録で認められております。  そういたしますと、この岩国市臨時市議会の本会議会議録というもので私は判断するが、少なくとも公式の地方自治体の本会議の席上で議論された問題でございますが、その問題についてまだ御確認がないというならば、速やかに御確認をいただき、改めてこの五つの島を含めて、再度、大臣、抗議をしていただく。また重要な国家間の問題でございますから、たった一つというのと五つというのと、しかも、それが数年間持続して行われてきたということ、こういう問題についても、私は改めてまた抗議をせねばならぬ、こう思っておりますが、いかがでございましょうか。
  189. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私に土地の事情がしっかり把握できませんのでございますけれども、このいまお挙げになりました幾つかの地名、島の名でございますか、これが、この手島と相関連した一つの案件でございますならば、これは本件の陳謝の意並びに確約をもって足りると考えます。しかし、それが全く別の案件であって、しかも、この約束、陳謝の後に行われておるといたしますと、これは全く別個な話になりますので、その辺、いずれかによって私どもの態度を決めたいと思います。
  190. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そういたしますと、アメリカ側は、この問題については重大な反省をしているのですか。それに対しては、二度とこういう問題を繰り返さないという保証が取りつけられるのですか。しかも、その反省に対する真心、成果というものが出ているのですか。
  191. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほど政府委員から御報告申し上げましたアメリカ側の回答によりましても、私は明らかであると思います。したがいまして、もしこの事件の後に、この事件についてのアメリカ側の下部への示達が徹底いたしました後に、また別個の案件が起こったといたしますと、これは同様に重大な問題でございますが、この事件と関連して起こった出来事、いわば一件の出来事であって、そうしてこの確約とともにそれが終わったということでございましたら、それは本件に含まれるものであろうというふうに考えます。
  192. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 重ねてお尋ねいたしますが、アメリカ側は、この日本政府の抗議に対して重大な反省をし、重大な国家間の条約に違反したという行為について、事実の上ではどのように示されたかという一例を申し上げますと、この島の損害の問題にさえもまだ回答はしていないではないですか。これが一つ。  第二点は、それは確かに、あなた方は条約によって定めると思いますが、この重大な問題について一体アメリカはどういう態度を示してきたかということを、この補償の問題でまずお尋ねしたいと思います。
  193. 鳥羽浜雄

    ○鳥羽説明員 お答えいたします。  本件につきましては、公務中の事故と判断されますので、民事特別法に基づいて措置いたしたいと考えております。  現在の処理状況を御説明申し上げますと、関係被害者二十一名の方々から損害補償額約二百六十一万円の補償申請が出されておりまして、出されましたのは二月十八日でございますが、ただいま呉の防衛施設局において内容を審査中でございます。
  194. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 第何条に該当して補償するというのですか。
  195. 鳥羽浜雄

    ○鳥羽説明員 地位協定上は十八条第五項でございます。
  196. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 地位協定第十八条第五項というのは、日米安全保障条約の第六条の日米合同委員会お互い合意に達した中においての損害じゃないですか。無断で米軍が一方的に違法を犯し、条約を踏みにじり、日本政府から厳重な抗議を受けておりながら、何で日本政府がその何%かを持つような条文に乗らなければならないのですか。そういう態度が私にはわからぬということが一つです。そんなことで国民の税金を使うわけにはまいりませんね。
  197. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 地位協定の十八条五項には、公務執行中の合衆国軍隊の作為もしくは不作為、または合衆国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為もしくは事故で、日本国内においてでございますが、日本政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権は、日本国が次の規定に従って処理すると書いてございまして、米軍が公務執行中に日本の国内のいかなる場所におきましても、日本政府以外の第三者、民間の方々に損害を与えた場合には、この十八条の第五項の規定に従って補償が行われるわけでございます。
  198. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 大臣、これは明らかに日米間の重大な国と国との取り決め、条約を、アメリカ軍が数年間犯したわけですね。これに対して日本政府は、いままでかつてこういう事件がなかった、初めてアメリカ政府に、アメリカ局長みずからアメリカ公使を通して厳重に抗議を申したということですね。これは日米安保条約の歴史始まって以来の出来事じゃないですか。そういう重大な米国の一方的な違法行為に対して、日本政府は何%かやっぱり肩がわりをするんですか。それとも全額米軍が支払うのですか。
  199. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この点に関しましては、地位協定の五項のeの1という規定がございまして、アメリカ政府だけが責任を有する場合には、アメリカが七五%、日本側が二五%負担をいたします。
  200. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 そんなばかな話はないじゃないですか。それは片っ方で条約の違法を犯しておきながら——違法を犯さなければ起きない問題じゃないですか。大体違法を犯すこと自体が日本国がなめられた。その問題に対して、本来だったら一国の代表である総理大臣が、日米安保条約の問題について、これこれこういう事件を起こしたとアメリカの大統領に当然文句を言ってしかるべきじゃないですか。しかし、いま外務大臣のお話を承れば、これは重大な問題であるという御認識のもとに、あなたが外務省の、また日本政府代表として、アメリカ政府に対して抗議を申し込んだと聞いているわけです。そうでしょう、そうですね、違いますか局長。本当にあなた言ったんですか。
  201. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年の十二月二十八日に、私はアメリカの公使に対して明確に遺憾の意を表して、向こうもその点については、今後こういうことがないように厳重に注意するということを申したわけでございます。それから費用の補償の手続は日本側が行うわけでございます。この点は先ほど御答弁がありましたように、防衛施設庁が現在すでに処理をしておられるわけでございますが、その点について二五%をなぜ日本側が負担しなければならないのかというお話でございますけれども、これは、この安保条約及び地位協定の精神からいたしまして、米軍は日本の防衛に寄与するためにわが国に駐留しているということでございますので、その彼らが公務中の行為によって生ぜしめました損害に関しましては、やはり安保条約の運用との関連において生じたものと考えるべきであろうということ。それからさらに、先例といたしましても、ヨーロッパのNATO諸国においても同じような方式がとられておるということをも参照いたしまして、この二五%条項は、われわれとしては妥当なものと考えておる次第でございます。
  202. 小川新一郎

    ○小川(新)分科員 条約に違反しておきながら、国を代表して厳重に抗議を申し込んで——日米安保条約第六条なんて、それじゃ地位協定なんて要らないじゃないですか。そうして今度、その損害を受けたのを日本側がわれわれの税金で払ってやる、NATOだってそんな例じゃないんでしょう。  私は、いま時間が来ましたからこれでやめますけれども、この問題は、大臣、非常に大きな問題です。国際間の問題でございますので、政府姿勢の大事な問題でもございますので、総括質問のときに改めて総理大臣にお尋ねするわけでございますが、ひとつ委員長にお取り計らいをいただきたいと思います。  以上をもって、時間が参りましたのでこれでやめておきますが、まことに遺憾な態度であることを指摘しておきます。
  203. 谷川和穗

    ○谷川主査代理 小川君に申し上げます。  ただいまの小川君の最後の御発言につきましては、主査並びに副主査の方々の御報告にもゆだねたいと思っております。御了解いただきたいと存じます。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最後の小川委員の御指摘について一言申し上げておきますが、つまり問題は二つあるわけでございます。日米両国間において条約の違反が起こったということと、その結果、私人の財産に、日本人の財産に損害が生じたというこの二つでございます。  そこで、日米両国間の問題は、先ほど申し上げましたような形で、重い遺憾の意並びに今後の確約ということで済んでおるというふうに私は考えます。他の問題として、個人、日本人の私人に損害が生じた、それをどのように補償するかということがあるわけでございますが、二つの問題は私は別個に考えるべきである。すなわち、個人の財産に損害が生じません場合でも、日米両国間のこの条約をめぐるいわば違反ということはあり得るわけでございますから、それについての措置は、先ほど申しましたような形で済んでおる。二つは分けて考えるべきかと思っております。
  205. 谷川和穗

    ○谷川主査代理 これにて小川新一郎君の質疑は終わりました。  次に、楢崎弥之助君。
  206. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 きょうは、主として議論をなるべく避けて、時間がございませんから、政府側のお考えを聞くという立場から質問をいたしたいと存じます。  まず第一番目は、現在交渉進行中の日中平和友好条約草案と関係をする部分についてお伺いをするわけですが、安保条約第六条、極東の範囲についての政府の統一見解はこうなっておりますね。「両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である。かかる区域は大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる。」こういう統一見解がございますが日中共同声明を経た今日では、少なくともこの一番最後に申し上げた「韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれる。」というここは、当然今度の情勢で省かれる、そう理解してよろしゅうございますね。
  207. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 台湾というふうに読みかえて御理解をいただきたいと思います。
  208. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると韓国及び台湾もこれに含まれる、そうなるのですか。
  209. 松永信雄

    松永(信)政府委員 日米安保条約上の極東の観念と申しますか、それの解釈上は御指摘のとおりでございます。
  210. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 御指摘のとおりということは、私が指摘した「中華民国の支配下にある地域も含まれる。」というこのくだりは削除、これから削られなくてはいけないという私の指摘のとおりでございますね。
  211. 松永信雄

    松永(信)政府委員 そこにあります「中華民国の支配下にある地域」という表現は、現在は台湾地域と読みかえるということでございます。
  212. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そういうことになっているわけですね。  そこで、そうしたら今度は観点を変えてみましょうか。  愛知委員がこの安保国会で質問されたくだり、共産主義国の領土や共産主義が継続的に支配しているような地域は、この条約の極東には入らないと思うがどうか。これに対して、入らないというのが適当である、こうなっていますね。したがって、今日の日中共同声明後は、いわゆる共産主義国ここで具体的に言えば中国の領土台湾は、そういう認識でいくならばこの極東の範囲に入らない、こう論理的になるわけですが、どうなんですか。
  213. 松永信雄

    松永(信)政府委員 台湾につきましては、日中共同声明におきまして、中華人民共和国政府がとっております台湾についての立場、これを日本政府は理解し尊重するということを述べておりますが、現在の政府立場も、その日中共同声明に掲げられております立場に尽きていると考えます。他方において、事実の問題といたしまして、台湾には中華人民共和国政府の実効的な支配が及んでいないという事実があるわけでございます。
  214. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、安保条約上は依然としてその関係は従来どおり生きておるということになるわけですね、事実関係として六条に関する限りは。
  215. 松永信雄

    松永(信)政府委員 安保条約上の解釈の問題といたしましてはそのとおりでございます。
  216. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこで、大変問題が複雑と申しますか、深刻になるわけです。そうすると、いま交渉中の日中平和友好条約における台湾の取り扱いはどういう形になるのでしょうか。全然触れないということで進んでおるのですか。どうなっておるのでしょうか。
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 交渉がまだ半ばにも至っておりませんので、そのことにつきまして、内容につきまして詳しく申し上げることはお許しをいただきたいと思いますけれども、私どもは、この条約は、いわゆる領土問題あるいは請求権といったような、しばしば一般の平和条約にございますような、そういう問題を取り扱う条約ではないという考え方のもとに交渉に臨んでおります。
  218. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると日本側立場としては、この台湾の地位の問題には全然触れないでいこうという態度でございますか。
  219. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、日中国交正常化に伴います共同宣言、これは、もとより遵守をいたすという態度をはっきりさせておりますので、そのことをはっきりさせておるという基礎の上に立ちまして、条約交渉をいたしておるわけでございます。
  220. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 非常に外交交渉のデリケートなところですから、私、その辺の限界をわきまえながらお伺いをしておることは理解していただきたいと思います。  そうすると、普通で言えば平和友好条約というのは、やはり領土は特に重要ですから、確定をするということも条約の及ぶ範囲として重大であろう、しかし、その辺は共同声明の認識で割り切っていく、したがって、表現的にもそのような表現になるであろう、あるいは共同声明を踏まえてというようなことで、文章的に言えばそういう形になるのでありましょうか。
  221. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとしては、そのような方式で処理をいたしたいということを考えております。
  222. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 中国側のこの問題に対する感触はどのようでありますか。
  223. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点になりますと、相手国立場に迷惑をかけてはならぬという配慮を楢崎委員もなさっておられます。私どもも同じような立場でございますが、私どもとしては、われわれの立場を先方が理解をしてくれることを期待いたしております。
  224. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この問題はそれぐらいにしておきましょう。  と同時に、日中共同声明あるいは米中共同声明の中にある覇権反対の問題でありますが、この問題は、やはり共同声明、たとえば日中共同声明を基礎とするような形で、その問題も台湾問題と同じように処理されることになるのでありましょうか。
  225. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、中国側は、ただいままで私の得ました感触は、今後に向かって中国の政策として非常に大事な問題であるがゆえに、もう少しはっきりしたと申しますか、いわば条約文的な処理をしたいというように聞いておるのでございますけれども、わが国といたしましては、事柄の性質上、それは適当ではないのではないかということを考えております。
  226. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 しかし共同声明の中には、言葉として出てきておるのじゃないですか。共同声明ではいいけれども、条約上は不適当だというお考えでございますか。
  227. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も先方の立場を、ここで十分に代表して申し上げられるような立場にはないわけでございますけれども、恐らくは共同声明によって事実として客観的に成就した部分のものと、今後に向かって方針を宣明したいと考えておるものとを区別したいという考え方があるのではなかろうか。これは先方の立場代表して説明する立場に私はございませんので、推察でございますけれども、そういうことでもあろうかと思っております。
  228. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこで、大体この種の交渉にタイムリミットを設けるのは、私は適当ではないと思います。それをわきまえながら、大体の草案成立、双方の了解による案文の作成とかそういうものの完了の見通しというものは、いま日本政府としては大体どの辺に置かれておりますか。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま一、二の、両国の意見が一致しておりません懸案について、お互いに検討をしているところでございます。そのほかの問題につきましては、ただいままでの感触では、ひどく意見の違いはないのではなかろうかと、これも想像を出ませんけれども、そういう感触を持っております。ただ最終的には、条文を書いてみるということになりませんと、もう一つそこははっきりいたしませんが、まだその段階まで至っておりません。しかし、もし懸案について、わが方の主張に先方も同調されるということでございましたら、非常に順調に進みますと、あるいは当会期の国会に御提出ができるかもしれない。しかし、それはできないかもしれません。私ども、そういうふうに期限を設けますと、交渉が十分に行われず、意を尽くさないということもございますので、期限は設けておりませんが、あるいは万事順調に進みました場合に、この国会で御審議をいただくことがあるかもしれない、そういうことがあり得るかもしれない。それは間に合わないかもしれない。その辺のところを、しかとただいま見定める段階になっておりません。
  230. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 大臣としては、できるだけこの国会に間に合わしたいという願望で進められておる、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  231. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもの考えが万事通ってまいるといたしますと、このようなことは早いほうがいいという気持ちは持っております。
  232. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この問題については、最後に一つだけ聞いておきますが、大体双方まだ了解点に達しない二、三の問題ですか、一、二の問題という表現がありましたが、やはりその中に、覇権問題と台湾問題は入っておるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  233. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたことから、賢明な楢崎委員でいらっしゃいますので、御推察を仰ぎたいと思います。
  234. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私の推察と現実が合っているかどうかわかりませんが、ではその問題は、そこでとめておきますが、私は、いま冒頭言ったように、お考えを聞きたいのであって、すっといったからこれは了解したのだと思われたのでは困りますので、その点はもう一ぺん念を押しておきます。安保条約における台湾の問題等についても、大いに意見がありますので。  それから次に、核防条約についてお伺いをしたいと思います。私は昨年暮れ、この核防条約について質問主意書を国会法に基づいて出したわけです。これに対する答弁書を見ますと、大体その批准の条件というのは、あの文章で見る限りは、原子力平和利用の分野における他の締約国との実質的平等性の確保という一点にしぼられておるというふうに、あの答弁書で見れば思えるのです。  ところが、その実質的平等性の確保の見通しは大体ついたが、新聞によりますと、今日なお与党の方がまとまっていない。聞くところによれば、椎名副総裁あるいは中曽根幹事長等々、この原子力平和利用の問題のほかに外交上の諸懸案がまだ解明されていない、たとえば核軍縮の問題あるいは非核国への安全保障の問題が言われておるようであります。その中で具体的に出てきておるのは、たとえば中曽根幹事長の米、ソ、中によるわが国への核脅迫とか、あるいは核使用等が行われないという保障が何らかの形でできないものかというようなことも具体的に出てきておりますね。そういう意見に対して、外務大臣はどういう見解を持っておられますか。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 楢崎議員の御質問に対する答弁書では、確かに政府は、まず平和利用の分野における実質的平等性の確保のため云々、準備が整い次第云々と申しておるわけでございますが、この点はほぼ条件が満足されたと考えております。  ところで、この条約に政府が署名をいたしましたときに、ただいま御指摘の他の二つの問題、非核保有国の安全、それから核軍縮の進展ということを、この平和的利用平等性の問題と一緒に政府声明をいたしておりまして、政府としましては、他の二つの問題についても、まことに十分とは申しがたいが、しかし、いずれにしても長い年月の問題として考えねばならないので、まずまず情勢はいい方に進んでいる、こういうふうに政府としては判断をいたしているわけでございます。しかし、必ずしもそうではないという意見もございまして、それがただいま御指摘のような、いわゆる非核保有国の安全についてのさらに進んだ保障なり確認、あるいは全体的な核軍縮の進行についての不満等々の意見がございますことは、御指摘のとおりでございます。しかし、政府といたしましては、三つの条件が全部が全部満足とは申しませんものの、まずまず成就される方向に進んでおる、ことに平等性の問題についてはまず満足すべきだというふうな判断をいたしております。
  236. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そこでたとえば、いまの国際情勢における核軍縮の進展の度合いとか、あるいは非核保有国への若干の保障についての動きは、これまで条約的に見てもありますが、そういうことのほかに、新しく何か保障的な、あるいは確認的なことが欲しいと与党の方は言っているわけでしょう。そしてその一例として、米、中、ソによる核脅迫とか核使用は行わないという保障が得られないかという具体的な問題も提起されておる。そういうものについては今後の課題として、とりあえずは、いまの進展している国際情勢の既成のいろんな成果で二つの問題は説得できると外務大臣はお考えですか。それとも、中曽根さんの出されておるような具体的なものをしなければ、与党の中は説得できないという御判断でございますか。
  237. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 保障措置協定の条文整理等に、少なくともまだ一月に近い日子を必要といたしますので、その間に各方面にございますような批判あるいはサゼスチョンについては、私どもとしても、最善の努力をいたしてみたいとは考えております。が同時に、それが成就をすれば、まことに結構なことであると思うのでございますが、仮りにそうでありませんでも、政府判断といたしましては、ただいままでの残りの二つの条件について、まずまず現在の状況を、非常に満足ではありませんけれども、好転しつつあると判断してよろしいのではないかというのが政府考えでございます。
  238. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、たとえば中曽根さんが提起したような具体的問題は、これは核防条約とは別個に考えてみてもよろしゅうございますが、そういう保障措置を取りつけることが可能だとお考えですか。あるいはむずかしいとお考えですか。
  239. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少なくとも有力な一つの示唆でございますので、私どもとしては、その可能性は探求をいたさなければならないと思っております。
  240. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは、この核防条約批准への努力の一環としてそれをなさるのですか。一応切り離してなさるのですか。というのは、先ほど来言っておるとおり、いままでの国際情勢の成果で、とりあえずは核軍縮あるいは保障の問題をそれで説得をして、そして具体的な保障の問題については、並行してやっていくというようなお考えなんですか。
  241. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府としては、ただいままでの二つの条件、不満足ではあるけれども、いい方に向かっていると判断をいたしておりますので、したがって、国会の御審議をこの条約について仰ぎたいと思っておりますけれども、幸い、たまたま一カ月近い日子もございますので、先ほどのような示唆が実現をすれば、これは結構なことでございますから、その間の時間にそのような可能性をやはり探求をしてみることがよかろうと思っております。
  242. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっと事務的な点に触れてみたいと思うのですが、いわゆる再検討会議が五月に開かれる、そこで批准をしなければ、これに正式に参加できない。しかも、この再検討会議は、実は日本が非常に強く主張してNPTに入れたわけでしょう。それなのに、その会議に正式に出席できないような状態にもしなるとすれば、これは国際世論の点からも非難を浴びやしないか、そういうふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
  243. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いま御指摘のとおり、確かに核拡散防止条約ができます過程におきまして、保有国である日本も含めまして、条約の内容ができるだけバランスのとれた、つまり核兵器国と非核兵器国との間をバランスのとれたものにするための幾つかの努力をいたしましたが、その一環として再検討会議というアイデアが結実いたしたわけでございます。この再検討会議がこの五月から開かれる予定になっておりますが、その会議日本が入れるか入れないか。この条約上の規定から申しますと、この条約の当事国が再検討会議に入るというかっこうになっておりますが、これに入れるか入れないかという議論は、この二月に終わりました三回の準備会議でいろいろ議論されているようでございます。  その内容は、日本はこの予備会議のメンバーでございませんので正確にはわかりませんけれども、ただ情報として伝えられるところによりますと、正式のメンバーでない国であっても、たとえば日本のように非核兵器国で、かっこの核拡散防止に非常に重要な貢献をなすであろうというような国については、正式なメンバーでなくても、何らかのかっこうで日本立場を述べる機会を与えたらどうかというような意見があるように聞いております。最終的にはどういうかっこうになるかわかりませんけれども、日本が再検討会議、あるいはこの条項を入れる努力というものが、間接的ながらこういう予備会議において反映されておるというふうに考えております。
  244. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私が言っている質問の趣旨は、オブザーバー的に出るとか、そういうことじゃないんですよ。そういうことで済みますかと言っているのです。日本等が主張して再検討会議をわざわざ条約に入れておいて、日本は批准もできないで再検討会議に正式に出られない。正式のことを言っているんですよ。それで国際世論の上において済みますか。それを聞いているのです。だから私は議論したくない。さっきからあなたのような答弁をすると時間を食ってしようがありませんからね。端的に答えていただきたいのです。いや国際世論は大したことはないのだということなら、それで聞きおきますけれども。  そこで、IAEAとの間の保障措置協定締結ですね。これの予備交渉の再開は一体いつからか、これなんです。それが一つと、その予備交渉再開で条件がもし確認されなければ批准の運びにならない、こういうことになるのですか、その二つをお伺いしておきます。
  245. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 今回のウィーンにおきます予備交渉は、二月の初めから約一週間程度行われまして、その結果、一応交渉の目的を達したという結果を得られたわけでございます。それからこの予備交渉は、政府声明にあります第三点が果たして満たされるかどうかという確認のための予備交渉でございまして、これが確認ができたということを一応事務的なかっこうで完了いたしまして、あとは国内的に政府声明のほかの点も考慮した上で関係方面の了解を得て、条約の本体の批准を求めるという手順になっているわけでございます。
  246. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 この予備交渉はもう再開する余地はないのですか。それを聞いているんですよ。
  247. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 この条約本体につきましての合意が、国民的なコンセンサスができまして、国会に正式に批准の承認の手続を進めるという段階になりましたときに、この予備交渉を本交渉に切りかえまして、この条約に基づく保障措置協定を完結するという手続になろうかと思います。
  248. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 では予備交渉の再開というのは必要ないわけですか。そうですか。
  249. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 必要ございません。
  250. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 わかりました。  そこで与党の中には、フリーハンド論が依然としてあるやに聞いております。これは、せんだっての一般質問の中で明確にしたとおり、緊急時も含めて非核三原則を不変の国是とするという三木総理の答弁からいけば、フリーハンド論などというのは全くナンセンスであるわけでしょう。どうですか。
  251. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府は、フリーハンド論というのをとっておりませんので……(楢崎分科員「与党の中の意見です」と呼ぶ)そういう方々の御意見を伺っておりますと、政府がそういう国策をとっておること自身について異存があるわけではないが、そのことを国際的な条約上の義務とすることが果たしていかがであろうか、ことに今後二十年にも及ぶものであるしというような御議論のように私は承っております。
  252. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 だから、非核三原則という不変の国是が一方にあるのですから、その二十年もいかがであろうかというのは、言葉をかえれば非核三原則を不変の国是とすることはいかがであろうかということと一緒じゃないですか。どうですか。
  253. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それに私がお答えするのは、非常にむずかしいのでございまして、私は、そういうことを考えておりませんから……(楢崎分科員「与党の人の考えを……」と呼ぶ)代弁してみろとおっしゃるのであれば、そういう国の基本政策であることについては異議はないとしても、そのことを国際条約によって約束をする必要があるかどうかというような御議論のように承るわけでございます。
  254. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 それは、また大変でございましてね、大方そうであろうと思っておったんですよ。だから、国会決議で非核三原則はしたと称されておりますけれども、われわれは、ああいうちょっとわけのわからないような決議には参加していない。実は問題はやはりそこにあるんですよ。  それでは承っておりますが、北朝鮮というとあれでございますが、朝鮮民主主義人民共和国及び韓国は、このNPTに対してどういう態度をとっておるのですか。
  255. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 北朝鮮については、何ら情報を持ち合わせておりません。それから韓国につきましては、韓国はNPTには署名いたしておりますけれども、まだ批准いたしておりません。このNPTに対してどういう態度を持っているかについては、何ら情報を持ち合わせておりません。
  256. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 NPTの十条に脱退条項がございますね。「この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは」脱退できるわけでしょうが、この脱退条項を真剣に考えなければならないという事態、たとえば韓国で核武装化が行われるといったような情勢のときは、この脱退条項と関連をしてわが国としては問題が起こる。どうでしょうか。
  257. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 条約上の文言は、いま先生指摘のように、「自国の至高の利益を危うくしていると認めるときは」というふうになっておるわけでございます。したがいまして、その判断は当該国がするわけでございます。いま御設問のような事態の場合に、日本の至高の利益が危うくされているかどうかということは、その時点において判断すべき問題だと思います。
  258. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ということは、そういう事態が起こったときには、やはりこの脱退条項と関連をしていろいろと検討がなされる問題だというふうに考えておっていいわけですね。
  259. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 その時点で、この脱退条項の予想する事態に該当するかどうかということを、日本が自主的な判断においてするということになろうと思います。
  260. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 椎名副総裁は、こんなことをおっしゃっていますね。核防条約について、核エネルギーの平和利用研究に、いまのところの説明では支障があるように思える。椎名副総裁に聞いてみないとわかりませんけれども、核エネルギーの平和利用というのは、核爆発の平和利用のことも含めていらっしゃるんでしょうかね。その辺は、椎名さんのお考えでなくても結構ですが、核爆発の平和利用、極端なことを言えば、かつて国会で問題になりましたとおり、マレーシアの運河を開くために核爆発を利用するのだ、そういうことも含めてこれは問題になるんでしょうか。
  261. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あの方は大変に難解な表現をされるお方でございますので、どのような真意で言われましたか、ちょっと私わかりかねますし、また、そう言われましたのかどうかも私は確認いたしておりません。ただ、平和利用の点では、ただいま受けております査察がかなりきついものでございますから、普通に考えますと、今回の保障措置協定によります査察は、わが国にとってはるかに自主的なものでございますし、機密の漏洩も防げるということで、その点では、条約に加盟した方が平和利用には貢献するところが多いと私は考えておるのでございますけれども、ただいまの発言が果たしてどのようなものであるか、私、不確かでございます。
  262. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっと私の言い回しがわかりにくかったと思うのですが、たとえば核爆発を平和利用するということは、この条約ではいいわけでしょう。
  263. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 この条約では平和目的の核爆発も禁止されております。ただ将来、科学的な進歩によりまして、平和的な核爆発と軍事用の核爆発との区別が十分にできるような事態においては、非核兵器国の平和利用のために、その利益を及ぼすということを予想しまして第五条という規定がございます。ただし、この平和的な応用が実際のものになるためには、この五条にはいろいろな条件がついておりますが、いずれにしても、将来の問題としてこういうものがあり得るであろう、そのための研究を進めるという規定がこの条文に載っておるわけでございます。
  264. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 時間の関係がありますからそれぐらいにしておきます。  次に、沖繩復帰前の沖繩における商行為、商取引、それに米軍あるいは米民政府、琉球政府が絡んだ場合に、その補償問題はどうなるのか、一つのケースを出して政府のお考えをただしてみたいと思うのです。  すでに外務省の方にも、要求書が行っておると思うのですが、石田豊太郎氏の件につきまして、外務省としてはどのような検討をなさっておりますか。
  265. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この件につきましては、石田豊太郎氏から何回かにわたり陳情を受けておりまして、われわれとしても、その処理方針を決めるための基礎となる事実関係の把握に努めてまいったわけでございますが、石田氏が昭和二十六年ないし二十八年ごろにこうむったと主張しておられます損害の発生にかかわる琉球政府当局等の記録が、すでに廃棄されておるというような事情もございまして、その事実をつまびらかにすることが非常に困難な状況にありますために、われわれとしても、この陳情はいつも詳しく聞いておるわけでございますけれども、ちょっと処理をしかねておるのが現状でございます。
  266. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 しかねておるままでは困るのでありまして、それは今後も事実関係をさらに調査していくということでありますか。
  267. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省といたしましては、国内に手足を持っておりませんので、この事実についてこれ以上調査することは困難でございます。  なお、この問題に関しては、沖繩開発庁の方からも、若干の事実を把握しておられると承知いたしますので、御答弁をお願いしたいと思います。
  268. 大濱忠志

    ○大濱説明員 お答えします。  石田氏から政府に陳情がありましたのは、昭和四十五年になってからでございます。事件からすでに十七、八年を経過していたわけでございますけれども、政府としても、この真相を究明するためにあらゆる努力をしたつもりでございます。その結果、復帰前におきまして、すでに琉球政府の行政主席から当時の沖繩・北方対策庁の沖繩事務局長あてに、関係書類のほとんどが保存期間をすでに経過しておる、そのためにもう廃棄されている、したがって、これを裏づける証明が得られないという正式の回答を得ているわけでございます。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私は、この問題だけに焦点を当てているんじゃないのです。これは普遍的にある問題として一事例を挙げているわけであります。  そこで、その事実関係については、これは個人的な問題になりましょうけれども、いろいろ証明がされておるわけです、その当事者によって。たとえば当時の奄美地区復帰立法院副議長、あるいは奄美地区復帰琉球政府副主席ですか、琉球政府商工局長あるいは琉球政府の工務交通局長、琉球政府経済局長等々の事実関係についての証言があっているわけでしょう。  そこで問題は、占領中の出来事ですから、単なる商取引ならこれはいろいろな問題あるかもしれないけれども、米軍が絡み、あるいは米民政府の圧力その他理不尽な横やりによって大きな損害を日本人に与えた場合に、一体どうなるのかという一般的な問題として聞いておるわけです。この種の問題がほかにもある。  そこでこれは、事実関係はわからないからで済むことなのか、あるいはこういう当時の関係者の書類がないのならば、公的な立場にあった人の関係者の証言があれば、それで事実関係はおおむねこうだという認定のもとにどうすべきかというふうに処置を考えるべきではなかろうか。つまりこれは、いわゆる放棄請求権の国内処理の問題と関係してくるから、それを私は聞いておるわけですが、どうでしょうか。
  270. 大濱忠志

    ○大濱説明員 この問題につきましても、先ほど申し上げましたように、このケースはいわば商取引上の危険負担に関連する問題と思われますし、その当時の資料も廃棄されている。また、当時の沖繩の現地のくず鉄業者とのトラブルもございまして、その絡み合いで石田産業がこれらの業者を相手取って裁判をしておりますが、この訴訟においても敗訴している事件等も考え合わせますと、事実関係は現段階においては非常に解明が困難であるということでございます。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 私が申し上げているのは、そういう裁判自体が、ああいう占領下で米軍の手落ちと申しますか、われわれから考えれば、非常に強圧的な措置によったトラブルを、そういう状態の中で公正な裁判が行われ得るか。もし訴訟問題をあなたが言われれば、この問題すべてが訴訟になっているわけじゃない。だから、それは大した反論のあれにはならない。したがって、やはりこれは、事実関係を明白にすることがまず第一番でしょう、あらゆる可能な手段を通じて。  それで、もしこれが事実であった場合には——それを仮定して今度は言いましょうか。事実関係がこのとおりであるとするならば、どういう救済措置が考えられるのですか。
  272. 大濱忠志

    ○大濱説明員 いわゆるこの問題ということになりますと、対米請求権という問題もあるいは起こるかもわかりませんが、このいわゆる対米請求権の処理問題ということにつきましては、いま先生のおっしゃる問題になりますが、現在政府といたしましては、防衛施設庁が一応担当して調査しております。したがいまして、この事案につきましては、その結果に基づきまして各省庁でまた協議検討するということになろうかと思います。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 では防衛施設庁の方にお伺いしますが、いわゆる放棄請求権の国内処理という観点からこれは一体どのようになるのでしょうか。その点をお伺いしておきたいと思います。
  274. 奥野貞広

    ○奥野説明員 沖繩のいわゆる対米請求権につきましては、当面、沖繩開発庁の協力……
  275. 谷川和穗

    ○谷川主査代理 御発言中ですが、少し大きな声でお願いします。
  276. 奥野貞広

    ○奥野説明員 協力のもとに、防衛施設庁が調査を行うことになっております。昭和四十八年度以降、実態の把握に努めてきたところでございますが、四十九年七月下旬に沖繩県の沖繩返還協定放棄請求権等補償推進協議会から補償要請が提出され、また沖繩県漁連からも補償要請が提出されております。現在これについて事案の概況調査を実施中でございます。この調査結果をまちまして、今後の処理方針について関係省庁と協議を進めるべく現在準備中でございます。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 ちょっとわからなかったのですが、本件についてそうなんですか。
  278. 奥野貞広

    ○奥野説明員 いや、放棄請求権全般についてでございます。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 一般的なほかのことを聞いておるのじゃないのです。
  280. 奥野貞広

    ○奥野説明員 本件につきましては、陳情の趣旨を伺いましたところ、復帰前の米国施政権下当時起こった営業上の問題とも考えられますので、部内で話し合っているところでございますが、取り扱いが大変困難な面がございますので、関係機関ともよく話し合ってまいりたいと考えております。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 そうすると、この放棄請求権の補償請求の中にこれを入れ得るかどうかについてのまだ判断が出てない、こういうことでございますか。
  282. 奥野貞広

    ○奥野説明員 先ほど申し上げましたように、取り扱いが大変困難な営業上の問題も絡んでおり、困難なものもありますので、やはり関係機関とよくお話し合いいたしまして、それで調査の必要があるということならば進めていきたいと考えております。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 調査の必要があるかどうかということをいまからやるのですか。いろいろいままで調査したけれども、書類等が紛失してなかなか真相がつかみがたいといういままでの答弁だったのですが、もうすでに調査は取りかかっておるわけでしょう。それを、いまから調査の必要があるかどうかというのは、どういうことなんでしょうかね。
  284. 奥野貞広

    ○奥野説明員 この件につきましては、私の方に御陳情いただいたのが大分後になった関係もございまして、陳情の趣旨を伺ってその内容を伺っているということでございまして、内容を伺ったところでは、営業上の問題とも考えられるということでございます。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 沖繩県の渉外部基地渉外課長の方からは、沖繩返還協定放棄請求等補償推進協議会の設定する十三項目に該当しがたいものと思われますので、貴殿独自の算定方法により算出していただきとうございます。という返事が来ているわけです。だから、やはり十三項目そのものには該当しがたいが、とにかく出してくださいということなんでしょう、これは。それで検討するということでしょう。それはどうですか。
  286. 奥野貞広

    ○奥野説明員 関係省庁と話し合いまして、いまお話がありましたように、県の方から要請がありましたので、事実関係を調べるということに入ることも必要かと考えております。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 もうこれで終わりますけれども、ずるずるずるずる行かれたのでは、該当者も困りますから、それでは早急に、どうするかという措置の検討を急いでいただきたいと思います。そしてその検討の状況をその都度私の方へ御報告いただきたいのですが、どうでしょうか。
  288. 奥野貞広

    ○奥野説明員 本件の調査は、一次分が昨年提出されまして、約四万八千円をやっております。第二次分は六月に県から出ることになっておりますが、石田氏の件はそれに含まれると聞いておりますので、調査はそのあとになります。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎分科員 じゃ、その報告を待っておりますから、よろしくお願いしたいと思います。これで終わります。
  290. 谷川和穗

    ○谷川主査代理 これにて楢崎弥之助君の質疑は終わりました。  次回は、明二十六日午前十時より開会し、引き続き外務省所管を審査し、午後は文部省所管について審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十分散会