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1975-02-28 第75回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十八日(金曜日)     午前十時三分開議  出席分科員    主査 正示啓次郎君       植木庚子郎君    大野 市郎君       倉成  正君    塩川正十郎君       安宅 常彦君    井上 普方君       太田 一夫君    河上 民雄君       兒玉 末男君    楯 兼次郎君       中村 重光君    芳賀  貢君       庄司 幸助君    中川利三郎君       安里積千代君    小宮 武喜君    兼務 阿部 昭吾君 兼務 石野 久男君    兼務 川俣健二郎君 兼務 小林  進君    兼務 安井 吉典君 兼務 瀬野栄次郎君    兼務 高橋  繁君 兼務 広沢 直樹君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林大臣官房審         議官      今村 宣夫君         農林大臣官房予         算課長     渡邉 文雄君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省構造改善         局次長     杉田 栄司君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      森  整治君         農林水産技術会         議事務局長   小山 義夫君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君  分科員外出席者         環境庁水質保全         局土壌農薬課長 遠藤  茂君         国土庁長官官房         災害対策室長  杉岡  浩君         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         大蔵省主計局主         計官      宮下 創平君         国税庁直税部所         得税課長    田口 和已君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 三浦 大助君         農林省農林経済         局統計情報部長 吉岡  裕君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    安田 佳三君         資源エネルギー         庁長官官房海洋         開発室長    志賀  学君         会計検査院事務         総局第四局長  桜木 拳一君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   安宅 常彦君     河上 民雄君   楯 兼次郎君     吉田 法晴君   中川利三郎君     正森 成二君   安里積千代君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   河上 民雄君     中村 重光君   吉田 法晴君     斉藤 正男君   正森 成二君     庄司 幸助君   小沢 貞孝君     小宮 武喜君 同日  辞任         補欠選任   斉藤 正男君     兒玉 末男君   中村 重光君     太田 一夫君   庄司 幸助君     東中 光雄君   小宮 武喜君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   太田 一夫君     井上 普方君   兒玉 末男君     芳賀  貢君   東中 光雄君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     安宅 常彦君   芳賀  貢君     楯 兼次郎君   栗田  翠君     中川利三郎君 同日  第一分科員石野久男君、広沢直樹君、第二分科  員小林進君、瀬野栄次郎君、第三分科員川俣健  二郎君、安井吉典君、第五分科員阿部昭吾君及  び高橋繁君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算中経済企画庁、農林  省及び通商産業省所管  昭和五十年度特別会計予算農林省及び通商産  業省所管      ――――◇―――――
  2. 正示啓次郎

    ○正示主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和五十年度一般会計予算及び昭和五十年度特別会計予算中、農林省所管を議題とし、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上分科員 近く海洋法会議が再びジュネーブで開催されまして、わが国漁業あるいは海底資源開発などにつきまして、非常に重大な世界国際秩序の枠組みができる時期でございます。そのときに当たりまして、いまの多くの議論は、われわれの既得権が奪われるのじゃないかというような論調が強いわけです。この際どうしたらいいかということは非常に問題がありますけれども、もっと積極的に、われわれが今後どうやって生きていくべきかという、そういう発想が必要ではないかというふうに考えておるのでございます。そういうような見地から二、三質問さしていただきたいと思います。  まず、海洋法会議の問題から触れていきたいと思います。  先日、宮澤外務大臣は、領海十二海里を決断すべきときが来たというような意味発言外務委員会でされているわけでございますけれども、農林大臣におかれましても同じような見解でおられるかどうか、そのことをまず伺いたい。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、わが国漁業現状からいたしまして、今日の領海三海里は十二海里に一日も早くすべきである、こういう積極的な考えを持っておるわけでございますが、この領海十二海里を宣言するに当たりましても、今日までわが国世界の国際的な合意を求めて、その中で十二海里を決めていくという発言をしばしばしてきておるわけでございまして、そういうふうな面から、三月十八日から行われる海洋法会議の結果を待って十二海里宣言というものは行われるべきであろう、こういうふうに思うわけでございます。
  5. 河上民雄

    河上分科員 従来、海洋法会議はしばしば議論が紛糾しまして、その結果、結論を得ず、もう一度集まろうというような形で今日まで来ているわけです。だから、先の話だろうということであったのが、だんだん煮詰まってきて、今度で大体決まるのじゃないかということになってはおりますが、もし決まらない場合、日本政府としては、具体的ないま問題が起きておりますけれども、そういうことも踏まえて、十二海里を主張する国にみずから独自に宣言をした方がいいというふうにお考えになっておられますか、それとも、さらに次の国際会議を待つべきだと思っておられますか。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回のジュネーブ会議において、経済水域二百海里問題がどういう形で決まるのか、あるいは決まらない場合もあり得るわけでございますが、私としては、この会議でどういう形において決着がついたとしても、領海十二海里についてはこの会議を通じ、またこの会議の結果どういう結論になったとしても、わが国領海十二海里宣言は行うべきである、そういうふうに思います。
  7. 河上民雄

    河上分科員 いま非常にはっきり農林大臣から御意向が示されましたが、それでは、領海十二海里を認める場合、従来三海里説を固執してきたわけですから、メリット、デメリットいろいろあろうと思うのですけれども、十二海里を認めるときに、わが国として今回の国際会議主張するような条件、こういう条件が認められたらこの十二海里を認めるとか、あるいは十二海里を認めるについてはこういう条件を入れたいというようなことが当然あろうと思うのです。発展途上国は、御承知のとおり二百海里の経済水域設定を望んでおりますし、アメリカソ連のような軍事力の優越した国は、国際海峡における自由通航というものをどうしてもこの際入れる、それをいわば前提条件にしているというようなところがあるわけですが、日本政府としてはどういう、まあこれを引きかえにと言いますか、言葉は適当でないかもしれませんけれども、どういう条件を今回主張されるおつもりか、その点を伺いたいと思います。
  8. 杉原真一

    杉原説明員 実は、領海の幅員というのは、新しい海洋法でつくられようとしておる包括的な合意の基本であり、出発点であるわけでございます。領海十二海里に発展途上国が二百海里の経済水域をくっつけていると同じように、領海十二海里に先進海運国海峡通過権というものをくっつけておる。それからさらに、領海の幅あるいは経済水域の二百海里、そういったものに、実は海洋汚染防止沿岸国権限ゾーンの問題もくっついているわけです。そういう幅の外側に参りますと、深海海底開発問題、これも日本の将来の鉱物資源の重要なソースとして慎重に考えなければならない問題です。ですから、海洋法で処理されますほとんどすべての問題が十二海里に絡んでいるという意味で、先ほど来大臣がおっしゃいましたように、海洋法会議で包括的な合意ができれば、あるいは合意の成立に努力して、その合意を基礎として十二海里を決定するというのが基本的な立場であろうかと考える次第でございます。
  9. 河上民雄

    河上分科員 そういたしますと、この十二海里を主張する前提としてこういうことだけは認めてほしいということはあまり用意せずに、会議の空気を見ながらわが国主張を織り込んでいく、こういうようなことでございますか、それともやはりこれだけは入れないといかぬというようなところがおありですか、どうですか。
  10. 杉原真一

    杉原説明員 先ほど申し上げましたいろんな問題の中で、どれが一番大事かというふうな観点から整理いたしてみますと、もちろん漁業の問題、わが国漁業、特に遠洋漁業の実績が維持されるような公正妥当な経済水域と申しますか、沿岸国の新しい管轄権制度というものができ上がるということ。それから領海が十二海里になりますと、従来の自由に開放されておりました国際海峡の通過問題がどういうふうな影響を受けるか。海運というのもわが国にとって生存をかけた重要問題でございます。もししいて順番をつけるとすれば、海運漁業権利が十分守られるような条約ができ上がるということが前提条件になろうかと考えます。
  11. 河上民雄

    河上分科員 いまの問題で、今度新たに十二海里に拡大した場合に国際海峡になります日本周囲海峡における米ソの軍艦の通航の問題など、当然大きな問題でございますけれども、それは外務委員会でいつも論議しておることでございますので、きょうは一応おきまして、今度農林大臣は二百海里という経済ゾーン、エコノミックゾーンにつきましては、むしろこれは積極的に受け入れていくというお考えでございますか。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれとしては、カラカス会議におきましても経済水域二百海里には反対した立場をとっておるわけでございまして、今日においても基本的にはその態度は変わっておりません。しかし、カラカス会議における情勢から見ますと、世界大勢はやはり経済水域二百海里という方向に動いておるわけでございまして、この世界大勢を無視していくということはなかなか困難な情勢になっておる、こういうふうに私は判断をいたしておりますので、今度のジュネーブ会議の中におきましては、そうした世界情勢を十分踏まえながら対処していかなければならない。  ただ問題は、経済水域を二百海里に決めるといっても、その中身の問題がいろいろと複雑でございますし、沿岸国立場もそれぞれ違っておるわけでございますから、そういう各国の意向がどういうふうに会議の中へ反映するか、どういうふうに出てくるかというものを十分見きわめながら、しかし世界大勢というものにはその認識の上に立って対処していきたいというのが基本的な考え方でございます。
  13. 河上民雄

    河上分科員 いま大臣も言われましたように、これが世界大勢とすれば、その中で日本は生きていかなければならぬということになろうと思うのでありますけれども、いたずらに三海里説、あるいは経済水域設定反対ということでがんばっていって、結果的に最悪の事態を迎えるというおそれもあるわけでございますから、なかなかわれわれのとるべき態度というのはむずかしいとは思うのですけれども、ただここで言えることは、そういう大勢の中には、魚がだんだん少なくなって、専門家の話によりますと十五年後にはもう魚というものは貴重品になるのじゃないかというような説もあるわけです。そういうような認識をお持ちになっておられるかどうか。また、そういう場合に日本としてはどういうふうにいったらよいか、そういう長期的な対策をいま考えておられるかどうか。たとえば現在、世界で魚が七千万トンぐらいですか、これ以上なかなかふえないのじゃないかと思うのです、むしろだんだん減っていくのじゃないかと思うのですが、そういう状況の中で日本はどうしていったらいいか。これはきょうあすの問題ではなく、五年、十年先の話でございますけれども、やはりいまからやらなければ間に合わないわけですから、そういう点、どういう方針でいかれるおつもりでしょうか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後経済水域設定されるということになりますれば、わが国がこの二百海里以内で漁獲している漁獲高は四百五十万トン程度あるわけでございますが、やはり、わが国のいままでの漁獲につきましても、相当な制約を受けるということは覚悟しなければならないのじゃないかと思うわけであります。世界全体としては、やはり水産資源というのはそう上向いていくというふうには考えられないわけでございます。  そういうふうな厳しい世界的な規制の中にあって、わが国が今日まで漁獲しております一千万トンあるいは一千百万トンという漁獲高を維持していくことはなかなか困難な面もあるわけでございますが、まず第一には、やはり経済水域二百海里が設定される中にあって、わが国漁業管轄権と言いますか、今日までの漁獲を今後できるだけ維持していくということに対して、積極的な外交努力を通じてこれを図っていかなければならぬ。そのためには、たとえば日ソ間におきまして、日ソ漁業交渉において十分わが国立場ソ連側にも理解してもらって、わが国漁獲高が今後とも維持できるように努力していく。あるいは日米日加等においてもそういうことになっていくわけでございます。また沿岸諸国その他の開発途上国諸国との間の漁業協力も進めながら、わが国漁業資源の確保を図っていくということが大事なことであろうと思うわけでありますが、同時にまた、世界の海の中において、まだまだ開発ができる新しい漁場というものもあるのではないか。そういうことで新資源開発していくという努力も今後していくわけでありますし、同時にまた、いままでは深海の魚というものをとっておらないわけでありますが、深海においても相当魚が生息をしている、これを漁獲できるのではないかということで、今回も予算措置をとって開発に乗り出すわけでございます。そうした遠洋関係に対する努力とともに、やはり沿岸におきまして、まだまだ沿岸漁業振興を図って私たちは相当漁獲をふやしていくことができるのじゃないか。これから努力をすれば大体百万トンぐらいの漁獲高はふやすことができると私たち判断をしております。そういうことから、沿岸漁業振興のための万般の施策を講じまして、わが国動物性たん白資源一千万トン以上というものを、今後とも何とか確保していくための努力を続けていきたいということでございます。
  15. 河上民雄

    河上分科員 外交努力によって魚区の問題などで漁獲量を確保する、従来ずっとやってきたことですけれども、だんだんそれ自体一つの限界に来ている。将来性が余りない、そんなところに今日の問題があるわけで、そういう点で少し学者技術者の方で言われております魚の増養殖の問題ですね。これも単に瀬戸内海のような内海で養殖をやるというようなことではなくて、ああいう場合は恐らくえさを与えなければいかぬので、結構金がかかるのじゃないかと思いますけれども、そういうことだけでなく、もっと海全体で増養殖ができないだろうかという議論が非常に強いわけですか、農林省ではこういうような問題についてどういうふうに考えておられるか。  伺いますと、日本ソ連だけで、二つ合わせますと世界漁獲量の四分の一を占めている。いまその日ソ間で、民間学者日ソ共同研究増養殖に関してすでに始めているわけですけれども、何か、そういうような少し大胆な発想の転換というものを考えるべき時期に来ているのじゃないかと思うのです。そういうことのために、少し予算措置ぐらいをされる必要もあるのじゃないかと思うのでございますけれども、農林省はいかがお考えでいらっしゃいますか。
  16. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、今後の漁業というものは、単にとる漁業からいわゆるつくる漁業にしていかなければならない。この問題につきましては、日ソ間におきましても同様でございまして、従来養殖に関する知恵の交換、あるいは専門家交流等を通じまして、いろいろソ連と話しているわけでございます。  それから昭和三十六年にサケ・マスについて共同増殖をやろうじゃないかという話が出まして、今日まで専門家の間で話をしておりますけれども、なかなか進んでいないわけでございます。と申しますのは、考え方の違いが一つございまして、日本の場合には専門家で話し合って、下から積み上げていってこれだけの金が必要だということで、財政当局に要求する。ソ連の方は、一体日本が幾ら出すのか言ってくれ、それが先だというようなことで、今日までかみ合わなかった面もあるわけでございます。しかし、今後の北洋資源のことを考えますと、そうも言っておられませんので、わが方はかなり前向きにこの問題に取り組みたいと思って、現在ソ連側意向を打診しているところであります。その関係で、五十年度は一応調査費のような予算でございますが、そういった予算も要求しております。
  17. 河上民雄

    河上分科員 最後にまた海洋関係予算について、総額をひとつ伺いたいと思いますけれども、海底資源はやはり海洋時代一つの大きな問題だと思うのでありますが、マンガンなど非常に深い海底にたくさん埋蔵されているということで、マンガン採掘ということが将来大きな課題になろうと思うのですが、これについて二つ考え方がある。つまり、技術のある国がどんどん先にやってしまうというのと、それからもう一つは、国連のような国際機関を通じて、そこの委託でそれぞれの国がやるというシステムにする。そうしないと、いまのところアメリカが大体すぐれているようでして、海底石油採掘でも、実際に深いところへ行けば行くほど、アメリカ資本技術が必要だというようなことになってきて、実際には海の鉱区などもどんどんアメリカメジャーかなわ張りをしていっているような状況です。そういうのに対しまして、いま技術のない国々としては、国連のような機関を通じてそれをやるべきだという主張があるわけですけれども、日本政府は一体どちらをおとりになるおつもりか、その点どのようにお考えになっておられますか。
  18. 杉原真一

    杉原説明員 深海底マンガンノジュールの開発方式につきましては、昨年のカラカス会議の初めまでは、いま河上先生指摘になりましたように先進諸国、これはわずか六、七カ国でございますが、技術資本を持っている国、これが国際機関からは単にライセンスを出せばいいのだ、われわれ先進国企業がこれを掘るのだというような、ライセンス制というものを言っておったわけでございます。ところが会議を開いた直後に、深海海底人類共同財産であるという一九七〇年の国連総会決議の趣旨から申しまして、そういう商売のために人類共同財産は存在するのではないという意見が圧倒的に強いということが判明いたしまして、やはり国際海底機関がもう少し直接的に生産そのものに関与するような方式、と申しても本当に掘る技術資本を持っているのは先進国であることは間違いないわけで、したがいまして現在のところ、先進諸国も、どうやって円満にその点の両者の主張ないし必要性を満たすことができるかということで、国際海底機関が直接的な開発権を持つということもやむを得ない、しかしながら、先進国企業はその国際機関との間に妥当な契約関係と申しますか、簡単に言えば、民間で申します合弁形式でございますが、こういうものを結びまして開発をする。ただ、その開発に対しては国際機関が相当な規制を加える。それから、販売利益のかなりの部分については、もちろん国際機関に完納させるというような制度でいくより仕方がないだろう。現在のところの問題点は、その契約関係の具体的な条件、内容をいかにすればいいかということに焦点が集まっているのが現状でございます。
  19. 河上民雄

    河上分科員 そろそろ国会でも問題になるかもしれませんが、日韓大陸だなの問題などを考えてみますと、表向きは韓国と言っていますけれども実際にはアメリカメジャー資本が、ここはおれの分、ここはおれの分とみんな仕分けしてしまっているのが実情ですね。しかもこれは五十年という長期の契約なわけです。そうなりますと、いまこんなことをやっておりましても、先にどんどん決まっていってしまうというような状況もございます。そこで、日本近海では一体海底資源可能性というものは全くないのかどうか。石油はほとんどとれないということになっておりますけれども、これはある意味では夢みたいな話かもしれませんが、たとえば中国東北地方、かつての満州国があったころ、何とかして石油がないかと一生懸命探したけれども結局なかった。今後永久に出ないという結論を満鉄調査部が出したけれども、実際には新中国になってから、いまや大慶油田だけでも二千万トンぐらい出る。当時日本が欲しかった石油は四百万トンぐらいだと言われておるのですね。そういうことを考えますと、日本近海では海底資源は出ないのだということになっているようですけれども、本当はもっとこれの探索に――まあ金かかかるからやらぬ、だれかがやったら、そこへ有能な商社マンがおっ取り刀で駆けつけて行って分け前をもらってくるというやり方で、果たしていいのかどうかという時代が来ていると私は思うのです。  そういう意味で、もう時間がございませんので二つだけ伺って私は質問を終わりますけれども、日本近海海底資源可能性というものについて政府はどのように考えておるか、また事実どういう状況であるか。それから、そういうことに伴う海洋開発予算がどのくらい総額で組まれておるのか、それについてまたあとで私資料をいただくことにいたしまして、一応総額だけをきょうお答えいただきたいと思うのでございます。
  20. 志賀学

    志賀説明員 お答えいたします。  日本周辺海域地下資源可能性でございますけれども、河上先生指摘のように、石油あるいは天然ガス供給源といたしまして、日本周辺大陸だなが最もその安定した供給源で、そういう意味で私どもはその探鉱開発に力を尽くしておるわけでございまして、状況を申し上げますと、昭和四十五年から水深二百メートルまでの大陸だなにつきまして物理探査を国が行っております。それから四十九年から五十一年にかけまして大陸海溝、大体水深二千メートルくらいのところでございますけれども、そういった海溝について物理探査をやるということで予算も要求しております。  で、どのくらい石油天然ガスがあるかという点については必ずしも明確ではございません。ただ、天然ガス石油が賦存する可能性のある、いわゆる堆積盆地と申しますけれども、それの面積で申しますと、日本の陸地にございますのが約五万平方キロメートル、それに対しまして水深二百メートルまでの、いわゆる大陸だなにある堆積盆地の面積が大体十六万平方キロメートルくらいでありまして、したがって、陸域に比べて三倍くらいの規模になろうと思います。その中にどのくらいあるかというのはむずかしい問題でございますが……。
  21. 河上民雄

    河上分科員 ちょっと、時間が余りありませんので、また後で詳しく伺いますから、実際に可能性があるのかどうか。
  22. 志賀学

    志賀説明員 それは可能性はあるという前提であります。  それから予算でございますけれども、いまの関係だけを申し上げますと、主としてこれは財投が多いわけでございますけれども、周辺大陸だなの探鉱投融資といたしまして、石油開発公団の予算といたしまして、四十九年度計画では約二十億でございます。それから開発段階になりますと開銀から融資をいたしますけれども、それの関係が四十九年度で二十六億でございます。それから基礎調査、先ほど申し上げました物理探査予算でございますけれども、これが四十九年度で約五億五千万であります。  以上でございます。
  23. 河上民雄

    河上分科員 時間が参りましたのでもう終わりますけれども、いまの額を見ましても非常に少ないのです。これは水産の海洋開発とちょっと違うかもしれませんけれども、水産も全部合わせても恐らく三百億くらいにしかならぬのじゃないかと思うのです。沖繩海洋博にどのくらい金を使っているか、私ちょっといま詳しい数字を持っておりませんが、恐らく二千億くらいを使うんじゃないかと思うのですけれども、沖繩海洋博を無意味だとは申しませんけれども、それと比較して余りにも少ない額であって、いまや海洋時代だとかなんとかいろいろ言われますけれども、その基礎的な海洋開発に余りにも投資が少ない。やはりだれかが発見したら、そこへおっ取り刀で乗り込もうという姿勢がまだまだ消えてないんじゃないか、私はそんなふうに憂えますので、今後これはぜひ基本的に改めていただきたい、そのことだけ要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  24. 正示啓次郎

    ○正示主査 これにて河上民雄君の質疑は終了いたしました。  次に、中村重光君。
  25. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣にお伺いします。  世界的な食糧不足で、国内の食糧の自給度を高めるという方針は審議会の答申等を通じて、一応大臣意向等もしばしば表明されておるので、考え方はわかるわけでありますけれども、ところが農業用地の造成たとえば干拓であるとかあるいは開墾であるとか、そうした積極面においての計画は必ずしも明確ではないわけですが、その点に対する御方針はいかがですか。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま農政審議会の中間報告は受けておるわけですが、最終的な答申を待って農林省としての基本方針、長期的な視点に立った基本方針を打ち出していくわけでございます。農用地の造成につきましては、現在、土地改良計画が十年計画として進んでおるわけでございます。これは四十八年から五十七年までの間に七十万ヘクタールの農用地を造成するということになっておるわけであります。現在われわれが考えておる長期計画としては、六十年までの間に八十六万ヘクタールの農用地を造成をしたい、こういうことで試算を立てておるわけでございます。しかし現実問題としては、今日の土地改良十カ年計画にいたしましても、総需要抑制という中におきまして進度が非常におくれておることは事実でございます。これを取り返していくことはなかなか骨が折れるとは思いますが、やはり自給力を高めるという見地から、私どもは何としても昭和六十年までの間には八十六万ヘクタールの農用地は造成をしたい、こういうように考えておるわけでございます。
  27. 中村重光

    中村(重)分科員 その農業用地の、お答えになりましたような数字を達成をするために開墾と開拓、その両面で、いずれが適切だ、また現実性があるというようにお考えになっていらっしゃいますか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま農林省で調査をした結果は、わが国におきまして造成可能な面積としては百五十万ヘクタールぐらいあるというふうに考えて、その中の八十六万ヘクタールを六十年度までに開拓したいということでありますが、いろいろと立地条件その他違うわけでございますけれども、開墾が中心になっていく、こういうふうに私は思っておるわけでございます。
  29. 中村重光

    中村(重)分科員 局長からお答えいただいて結構ですが、長崎県の南部総合開発計画、これはもう打ち切りになったのだろうというように漁民もあるいは関係住民も考えておりまして、ほっとしたというような人たちも相当多かったわけです。ところが、また五十年度八千万円の予算を計上しておられるわけですが、これの実施の見込み、見通しといいますか、その点については確信がおありですか。
  30. 大山一生

    ○大山政府委員 長崎南部の総合開発事業の見通しということでございます。過去におきまして漁業補償の難航から一度中止し、そうしてその後また構想を新たにいたしまして、全体設計まで行ったわけでございますが、最近の総需要抑制ということもあり、漁業交渉がまだ完全には解決し切れないというような事態のもとで、昨年来、全体設計を実施しているわけでございます。  この可能性の問題でございますが、県当局並びに地元の意向といたしましては、これをぜひ実現したい、こういうふうな意向であると了解しているわけでございます。われわれといたしましては、過去の経緯からいたしましても、漁業交渉の将来という問題がすべての前提になると思いますけれども、その問題につきましては県当局等も十分意識して、県としては近い将来、漁業交渉に入るよう準備を進めていくというふうに理解しているわけでございます。
  31. 中村重光

    中村(重)分科員 いまお答えになりましたことで私は感じるのですが、一応水質の調査であるとか、それから農業、いわゆる灌漑用水の必要量であるとか、それに基づく効果の問題であるとか、その他、長い期間にわたりましたから調査はもう完了しているのではないかというように思うのですが、この五十年度の八千万円の予算の中身はどういうことになっているわけですか。
  32. 大山一生

    ○大山政府委員 五十年度の八千万の予算が通りましたときの計画といたしましては、なお事業計画で検討すべきこともございます。そのほかに、水質調査それから環境アセスメント等を実施する、こういうようなことで、八千万ということをめどにして五十年度予算を実行したいというふうに考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)分科員 大蔵省としては、この五十年度の予算の査定に当たって、八千万円を計上したという点について、必要性において考えられた点はどういうことなんですか。
  34. 宮下創平

    ○宮下説明員 お答え申し上げます。  長崎南部地域総合開発計画というものは、御承知のように、当初長崎干拓としてスタートして、干拓を主たる目的とした事業であったわけでございますけれども、ただいまお話のありましたような漁業交渉の難航その他がございまして、遅延いたしまして、その後、ちょうど米の生産過剰というような背景がございましたものですから、開田を主たる目的とした干拓事業はいかがなものかということで、干拓を含めた、多良岳、島原半島を中心といたしました背後地を含めた事業として計画されまして、現在は名前も長崎南部地域開発事業ということに相なって、農林省の方で御検討いただいておるわけでございます。  私どもとしましては、ただいまお話がありましたように、今後の開発事業の重要性にかんがみまして、干拓オンリーよりもそういう後背地を含めた事業としてやった方が、投資効率その他もよろしゅうございますし、地元の灌漑事業等に対する同意率等もかなり高いという説明を受けておりまして、その必要性を認めまして、この計画の予算を計上したわけでございます。
  35. 中村重光

    中村(重)分科員 先ほど大山局長は、漁業交渉というものもまとまるのではないかというような期待を持っているというお答えであったわけですが、確かに動向は若干変化しているというように私は思っております。しかし、依然として絶対反対という漁民も相当ある。いいじゃないかというような、漁業の将来性から考えましてこれを認めるというような考え方の漁民も相当あることは事実です。しかし、必ずしも漁業交渉がまとまるということもまだ言えないのじゃないか。それはいろいろあるわけです、まとまりにくいという点については。その中でもやはり漁業補償の額の問題というのも大きな障害という形になっているということです。  漁業者の面はただいま申し上げましたようなことですが、関係住民の中でもあるいは地方自治体の中でも、やはり問題点がないとは言えないのですよ。地元負担が大変大きいじゃないか、それから関係住民としましては、多目的になっている関係上、工場敷地としても利用されることになるのじゃないか、だとすると公害企業を誘致される危険性があるという不安感等も多々あるわけなんですが、それらの点に対して、局長としては、これはまとまるというように確信をお持ちかどうかという点が一点であります。それから、従来まとまらなければ強行することはないということを言ってきたわけですが、その方針に変わりはないかどうか、その点いかがですか。
  36. 大山一生

    ○大山政府委員 漁業交渉の現在までの経緯、これは長崎県がいろいろと内面工作的にやっておられる、こういうことでございますが、われわれの聞いております範囲では、強硬な反対の漁協の数は逐次減っている、こういうふうな話で、若干の漁協はまだ反対の旗をおろしていない、こういう話も聞いているわけでございます。その辺の問題につきましては、県がいずれ具体的な行動をとる時期があると思いますので、その経緯を見てみたいと思っております。  それから公害企業との関連の問題がございますけれども、この点につきましては、知事の言葉をもってするならば、公害企業は誘致するつもりはない、公害のないような企業を県有地においては考えたいという御意向のようでございます。  いずれにいたしましても、われわれといたしましては県の漁業交渉についての動きというものについては、今後とも見守ってまいりたいというふうに思っております。確信ありや否やというお話でございますけれども、何分にも大村空港との関連というようなこともありますようで、その辺はむしろ県の問題でございますので、県のこの問題についての動きを見てまいりたい、いまの段階で確信ありや否やということはちょっと私としては申し上げかねるという事態でございます。  そこで、強行することがあるかということでございますけれども、この種の問題につきましては円満な解決があること、いままでの経緯から言いましても漁業交渉という問題がこの問題のすべてを支配してきたわけでございますので、今後すぐに、漁業交渉がまとまらぬでもやるというような考え方、強行してまでやるという考え方は持っておりません。
  37. 中村重光

    中村(重)分科員 多目的南部総合開発計画というようなことは取りやめ、むしろ当初の方針に戻られる必要があるのではないか。全面干拓をやるということ、それは大臣からもいまお答えになりましたように、世界的な食糧不足、それから特に穀物の自給度を高めていかなければならない、そういった点から農業用地の拡大という方針があるわけですが、当初この計画についてはそうした計画であったわけです。ところが、なかなか漁業交渉がまとまらないということで、それじゃひとつというので、いま大蔵省からもお答えのありましたように、背後地に対する灌漑用水の供給といったような点から多目的に変えてきた。ところが、申し上げたようないろんな不安というものもあり、疑問もあるということです。また、漁業補償というものも、いまこの計画でいきますと百三十億程度しか国としては漁業補償に回す金はないのじゃないか。それでは漁民は納得しない。県も負担能力はない。ところが、全面干拓ということになってまいりますと、これは国の財政ということも無限のものじゃございませんから、やはり問題点はあるとはいいながら、漁業補償という点もまとまりやすい、ことに補償額の問題等からそういう可能性もあるのではないかといったような点等等を考えてみますと、私は、全面干拓というようなことに変更される必要があるだろう、プロジェクトそのものの見直し、その必要性を感じるわけですが、その点いかがでしょう。それは農林省からも大蔵省からもお答えをいただきます。
  38. 大山一生

    ○大山政府委員 長崎県は、特に諫早から長崎市、それから島原半島、それから北の方に行って多良岳周辺、いずれにいたしましても水に非常に不足しているという事実があるわけでございます。それと平たんな土地がないという問題に対する悩みもあるわけでございます。全面干拓するということは、逆に言いますと、それら背後地に対する農業用水等の必要量を満たすためにまた別の施策を必要とする、こういうこともございますので、やはり背後の水という問題も含めた水資源開発ということが、長崎にとっては一番大事なことの一つではないだろうか、こういうふうに思うわけでございます。  それから、いま漁業補償の問題、百三十億という問題にお触れになったわけでございますけれども、御存じのように、干拓というものは現在青天になっておるわけでございます。したがいまして、干拓の場合七五%の補助金があるわけでございますけれども、残がいわば土地代といいますか、そういうかっこうで農民負担になってくる。こういう点から言いますならば、やはり農地として可能な価格の範囲内におさめなければならないということとの関連からいたしますと、百三十億という一応のめどが出てきているわけでございます。したがって、全面干拓ならば幾らでも出せる、そして幾ら出してもいいんだ、こういうことにはなりませんで、その結果は、結局農民負担といいますかそれにはね返ってくる問題でございますので、やはり農民負担の限界ということも考慮しながら、漁業交渉に干拓として出し得る限界というものを考えなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。
  39. 宮下創平

    ○宮下説明員 いま局長からもお話がありましたように、補償費の問題は、これは私の感じでは、全面干拓であろうと背後地を含めた開発事業であろうとも、その補償の実態に即してなさるべきものでございますので、それは全面干拓であれば補償費が多く出るというような一般論はいかがなものかと思われます。  また、当事業は、先ほどもちょっとお答え申し上げましたように、稲作中心の干拓事業ということでございましたけれども、現在は背後地を含めて、総合的な長崎の大規模総合開発事業として行われておるわけでございまして、これは地元の意向をかなりくんだものとして県当局の方は計画されておると聞いておりますし、また、経済効果、投資効果の点から申しましても、そういった方が非常に効率的であるというふうに判断もされますので、これは大きな事業でございますけれども、基本的な方向としては大きな変化はないものと私は考えております。  しかし、いろいろ御事情もあるようでございますし、補償も難航しておりますので、なお計画の細部その他について、農林省の方でも検討されると思いますので、それらを踏まえて、今後事業が一日も早く完成されるように財政措置をとってまいりたいと思っております。
  40. 中村重光

    中村(重)分科員 漁業補償というものは、それは無限じゃないということは私もわかる。それから主計官がお答えになりましたように、全面干拓ということになれば、これはまた漁業補償というものが幾らでも出るんだという考え方も持っていない。しかし、県単事業というものも計画の中にはあるわけです。そうすると、県の負担能力というものはあるわけです。その点、国の方が全面干拓ということになれば、全面的な国営事業というような形になってまいりますから、やはりどうしても解決しやすいという面があることだけは否定できないであろうというように私は思います。  それと、公害企業というものは、おっしゃるようにこれは誘致してはならないし、知事もはっきり誘致いたしません、こう県議会等でも言明をいたしておるところでございます。しかし住民の不安があるということもこれまた事実であるわけであります。また、学校敷地であるとか住宅敷地という形になってまいりますと、相当膨大な実施予算になってまいります。どうしてもその敷地を利用するものが負担をしなければならないということになってくると、相当高価な土地代になっていくのではないか、これは採算の面でいかがであろうか。また、学校等の敷地としては余りにも負担が大き過ぎるということになるのではないか。したがって、現在の土地の値上がり等々の中においてどの程度の計画予算が要るとお考えになっていらっしゃるのか、計画予算はどの程度になっているのかという点と、それから一番わかりやすいのは、坪当たりの単価が大体どの程度になるとお考えになっておられるのかということを伺いたいと思います。  なお、時間の関係がございますから申し上げますが、私はこの背後地の灌漑という面について、灌漑用水を使用するという場合、その効果に対して疑問を持っているということが一つであります。  もう一つは、農民にこの灌漑用水を使いなさいと言って強制するわけにはまいらない。そうすると、もう必要ありませんと言って使わないところの農民が相当出てくるということです、これは恐らく組合組織になっていくでありましょうから。そうなりますと、使う農民だけで負担をするということになって、これは負担過重であるということになってまいりまして、その計画そのものが採算がとれないというような結果が出てくるのではないかというようにも思います。  いろいろな面に私は疑問を感じているわけでして、先ほど大山局長の答弁ではございますけれども、私、どうしても全面干拓――当初そういう方針があったわけだから、私どもも、漁民の納得づくで農地の拡大をやることならばよろしいではないかという賛成の方向を党の方でも打ち出したという経過も実はあるわけですが、多目的になってまいりますとやはり不安がありますから、必ずしもこれに賛成しがたいというような面も一つあるわけなんです。  いろいろな点をお尋ねいたしましたが、お答えをいただきたいと思います。
  41. 大山一生

    ○大山政府委員 事業費につきまして、大体どれぐらいかかるかというお話でございますが、四十七年ベースで大体八百五十億ぐらいの金が要るであろうというふうに思っております。そのベースでもって現在考えております三千五百程度の農地をつくる、こういたしました場合には、大体反当百万程度になるであろう。反当百万程度の中で補助率が七五%でございます。ただ、そのほかに圃場整備等が必要になってまいります。その経費がさらにプラスされる、こういうふうなことに相なろうかと思っております。  いずれにいたしましても土地利用計画につきましては、これから要するに漁業交渉のめどとの関係が先決するわけでございますけれども、それのめどが明確になった段階におきまして、県、市町村の意見を尊重しながら慎重に対処してまいりたいというふうに思うわけでございます。
  42. 中村重光

    中村(重)分科員 どうですか、大臣。大変長い期間にわたった問題でして、いまの計画のとおり進めるか、あるいは当初の方針に戻って、全面干拓にいくかという点についてはなかなかむずかしい問題点であるということはわかりますけれども、この点に対していろいろまだ問題が出てまいりますから、そう簡単に話はまとまらないと私は思います。大臣としてどういう方針で対処しようとお考えになるか、伺っておきたいと思います。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ここで方針を明らかにせよと言われても、なかなか明快にお答えをすることもできませんが、やはりこれは地元、県、市町村の強い要望によって始めようということできているわけですが、いま御指摘がございましたように漁業補償等の問題をめぐりまして難航しているということであるわけです。やはりこうした利用計画をどういうふうに持っていくかということにつきましては、県とか市町村の意向も十分尊重しながら慎重に対処していきたい、こういうこと以外、現在のところは、さあこれを計画をすぐ変えろといってもむずかしい面もあるわけでございます。しかし、地元の協力がなければこういう事業はできませんから、やはり地元の皆さん方の協力が得られるような形については十分に慎重に検討する必要はある、こういうように思います。
  44. 中村重光

    中村(重)分科員 局長、いま大臣の、地元の納得の得られるように検討してみるという答弁の幅の中には、いまの計画をできるだけ説得していこうとする考え方もありましょうし、私が申し上げたような全面干拓であると補償費の増ということも考えられるとすれば、その面に対する納得もしやすいであろう、あるいは公害企業が誘致されるのではないかということの関係住民の不安も解消されるであろう。いろいろな点から、やはり検討していかなければならないのじゃないかというようなことにもつながってくるというように私は思いますが、担当局長とされて、もういまの計画でできないのだったらやめるというようなことになるのか、あるいは当初に戻って、そういう全面干拓等についても、それで話がまとまるのであるならば考え直してみるといったような余裕といいますか、そういう考え方でもあるかどうか、その点いかがですか。
  45. 大山一生

    ○大山政府委員 これを実行に移しますに当たりましては、やはり利用計画という問題について地元と十分に話がついていなければいかぬわけでございますので、地元で納得するようなかっこうのものでなければならぬだろうと思っております。  問題点は、背後地において非常に水が、農業用水も含めて不足しているということは、やはり一つ考慮しなければならぬ問題であり、それから営農計画との関連において、いかなる値段の農民負担であるならば、農業として今後ともやっていけるであろうかというめどとの関連もございます。そういう問題を、先ほどもちょっと申し上げましたが、漁業交渉のめどがつきました段階において検討してまいりたいというふうに考えるわけでございます。大臣が、いまの段階、先ほど申されましたこともそういうことであろうというふうに理解するわけでございます。
  46. 中村重光

    中村(重)分科員 じゃ、時間がありますので、ほかの問題を一、二点お尋ねをして終わりたいと思います。  水産庁と流通局長にお尋ねをするわけですが、私は魚市の複数化というのは中央市場である場合は問題があるというふうに思うのですけれども、さればとて、いまの魚市のあり方あるいは流通機構のあり方という点から非常に問題点を感じるわけです。私は具体的なこととして申し上げなければなりませんから、長崎の実例を引いて申し上げるのですけれども、魚市で冷蔵庫であるとかあるいは冷凍倉庫なんかを持っている、ところがこれは仲買がほとんど利用しているというようなことに実はなっているわけでして、これは価格操作というようなものを仲買がやっているということにもつながっていくのじゃないか。生産漁民は全く価格形成に関与することはできない。このことを考えてまいりますと、これは安い生産漁民の仕切り価格、そして今度は消費者には非常に高い魚を供給していくということになってくる。これは何としても避けていく必要があるのではないか。そこで漁連にも魚市の経営にタッチさせる、そして冷凍倉庫であるとかあるいは漁業のそうした倉庫等も魚市が経営をしていく、そして価格調整をやらせるということにしたならばいいのではないかというように考えるわけですが、それらの点に対してはどうお考えになるかという点が一点であります。  もう一つは、余りにも流通機構が複雑になり過ぎていると思います。九段階からあるいは十段階ぐらいになっているように思うのです。これはなぜにもう少し流通機構を改めるというようになさらないのかという点であります。明治百年、魚の関係の流通機構はどう変わったというようにお考えになっているか。ほとんど変わっていないじゃないか。九つぐらいの段階になっているわけですからね。これを改めるような御意思があるのかどうか、それらの点に対してお答えをいただきたいと思います。
  47. 森整治

    ○森(整)政府委員 第一点の問題でございますが、全般的に言いますと、産地市場の場合には漁連が開設者になっているのがほとんどでございます。ただ、消費地市場的な要素を兼ねております長崎でございますとか博多でございますとか、そういうところでは、別に会社組織をつくってやっておる例も間々見られる、そういうのが現状でございます。  そこで、先生指摘のような問題につきましては、むしろ卸売会社あるいは漁連がそういう市場の開設をするというよりも、漁連みたいなものに冷蔵庫を持たせまして、むしろ産地での出荷の商業流通に対します対抗力を育てていくというのが従来の水産庁の方針でございました。そういうふうに指導していったらいいのではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。そこを複数にしますと、やはりいろいろ産地市場間の競争というものがございます。従来から消費地市場につきましては公取の指導もございまして、新たに開設する市場につきましては最近は複数制をとっております。ただ産地市場につきましては従来から単数制がほとんどでございます。それは市場間の競争、こういう問題があろうかと思います。したがいまして、現在の運営上いろいろ問題があるといたしますればなお調査をいたしますが、過去からのいろいろ経緯等もございましょう、そういうものをいま直ちに漁連に置きかえるということは非常に実際上困難ではないだろうか。したがいまして、むしろ漁連の力を育てるということで、やはり冷蔵庫等を、長崎の例で言いますと、何か新港の御計画もあるようでございます。そういう際に、そういう面の強化を図っていくというのが一番適切な方法ではなかろうかというふうにいまのところ考えております。
  48. 中村重光

    中村(重)分科員 それじゃこれで終わります。漁連が長崎の場合開設者になっていない。だから、漁連が、お答えになったような開設者ということになってくると、ある意味においては生産漁民がタッチするということにもつながってくるわけですから、全国的にそういうことであれば、やはりそういう方向で指導される必要がある。  流通機構の問題にいたしましても、漁船から漁協、魚市場、大仲買、荷受け、仲卸、それから消費地に行きますと消費地の荷受け、卸、仲買、小売、消費者、こういう段階なんですね。明治百年ほとんど変わっていないのです。そんなばかげたことがあってはならないというように思いますから、抜本的にこれらの点はひとつ改革をするということをお考えにならなければいけないのじゃないか。この点に対しては、大臣から後でお答えをいただきたい。  それから農民年金は御承知のとおり、四十六年からでしたが実施されましたが、漁民年金というものもお考えにならなければならないのじゃないか。しかし私どもは、国民年金をもっと強化をしていくというようなことで、業種別みたいな年金制度というものを必ずしも歓迎するものではありません。しかし、置かれておる現状から考えてみますと、そしてまた漁民の果たしておるところの役割りということから考えて、いま若い者にとっては魅力のない職場になっているわけですから、魅力のある職場にするという面からも、やはりもっと手厚い保護が加えられなければいけないのではないかというように思います。いま直ちにそういうことができないとすると、長崎県には社団法人長崎県漁民年金貯金共済会というのが実は実施されておりまして、加入をいたしまして四十五年目になりますと、積立金が百六十二万円、利息が千二百十五万円つきまして、それから県あるいは漁連、漁協、漁信連等が二億五千万円出資をいたしまして共済制度ができているのですが、これが八十三万五千円、総額は千四百六十万五千円受け取ることができる。積立元金は百六十二万円ですけれども、四十五年たちますと千四百六十万五千円などという金額に実はなるわけですね。ですからこれは県もそういうことで助成をしておるわけですが、こういう制度には積極的に国がやはり助成をしていく、出資でもするというぐらいの構えが必要であろうと私は思いますが、それらの点に対するお考え方をひとつお聞かせをいただきたい。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 水産物を含めました生鮮食料品の流通のシステムでございますが、これは地方市場、中央市場を通じて行われておるということでございますけれども、この間にありましていま御指摘のような問題もあるわけで、わが国の長い歴史的な過程を経て流通形態ができておるわけでございますけれども、やはり合理化をしていくところは積極的に合理化をしていかなければならぬとも考えておるわけでございます。最近では、生産者が流通分野へ直接参加していくということで、産地直結取引など市場外流通等も育成いたしておるわけでございますが、この流通問題はやはり私は洗い直していく必要があるということで、これはひとついま検討を進めておるわけでございます。  それから、いまお話がございました年金制度漁業者を対象としてつくるべきじゃないかという御質問でございますが、現在漁業者の人数といいますか、従事者の人口五十万。その中で、年金制度をつくった場合は二十万ぐらいが対象になるのじゃないかと考えておるわけでありますけれども、現在は船員保険、厚生年金制度、あるいは漁業従事者の家族については国民年金制度というようなものでやっておるわけであります。それを漁業者だけに限った年金制度――農民年金というのはありますが、農業者年金と同じようにやるということは、その経営の面から見ましてもなかなか困難な面があるのじゃないかというふうに考えておるわけで、今日の段階では現在の諸制度をひとつ活用して、漁業従事者の福祉の向上を図っていくという方向に立っておるわけでございます。  それから長崎の特殊な例につきましてはちょっと私存じておりませんが、水産庁長官から答弁させます。
  50. 内村良英

    内村政府委員 長崎県で行われております漁民年金貯金制度は全国初めての試みでございまして、漁業者の老後保障という観点から私は高く評価さるべきものであるとは思います。しかしながら、たとえば農民年金の場合には、経営移譲というような農業の特殊性の問題と結びついて農民年金制度ができておりますし、そういったあのやり方を見ますと、必ずしも制度自体が、漁業の特殊性に根差したものではないというふうに考えられる面もあるわけでございます。それからさらに、こういった制度について助成をするということになりますと、やはり制度自体がもっと広く全国的に行われているという必要もございますので、現在の段階で、あれに国が助成するということはちょっとむずかしいのではないかというふうに考えております。
  51. 正示啓次郎

    ○正示主査 これにて中村重光君の質疑は終了いたしました。  次に、太田一夫君。
  52. 太田一夫

    太田分科員 私は主としてカドミウム汚染米の問題に焦点を置きましてお尋ねをいたします。  最初に農林大臣にお尋ねいたしますが、カドミウムに汚染された米というのは、現在、県別の在庫量は統計に出て明らかになっておりますね。それは一・〇PPm以上のものと〇・四から一・〇PPm未満のものとに分けてありまして、四十八年度産米までの分といたしまして、合計して五万七千四百三十一トンあるということになっておる。四十九年産米の分がもしわかればお知らせをいただきたいと思いますが、その中で、昨年同じ農林分科会におきまして倉石大臣にお尋ねをいたしまして、四十七年度のときの〇・四PPm以上の両者のカドミ汚染米の在庫量というのは二万七千トン少々ということが明らかになっておったわけであります。そうすると大ざっぱにいって倍になっておるわけでありまして、これはなかなか減らない。逆に非常にふえているところがあるわけです。  たとえば宮城県におきましては、四十八年度末の汚染米在庫量というのは四十七年末に比べて約五倍になっております。東京におきましては十倍になっております。問題の富山でも二・五倍、石川県においては三倍になっております。愛知が五倍、三重県が突如として出てきておりますが、二百七十七トン。それから大阪が三倍。和歌山三百四十七トンがあらわれてきておりまして、島根に至りましては百四十倍というようなぐあいに、これは非常に少なかったのがかなり多く出てきております。こういうような統計を見ましてもカドミウムの汚染米というのは相当重大な問題じゃなかろうかと思うのでありますが、こういうカドミウム汚染米を何とか減らす、絶滅をするという対策は、本年度農林省は一体何をお考えになっていらっしゃるか、この点についてお尋ねをいたします。
  53. 松元威雄

    ○松元政府委員 御案内のように、カドミウムによる土壌の汚染を防止するというために法律がございまして、それに基づきまして、昭和四十六年度からカドミウムに係る土壌、農作物等の細密調査を実施したわけでございます。それに基づきまして、一定の手続を経まして農用地の土壌汚染対策地域の指定をいたしまして、指定した地域につきましては今度は計画を立てる、計画を立てましたら、それに基づいて土地改良工事を実施して汚染米をなくするということをやっているわけでございます。  そこで、ただいまの数量の中には一・〇以上と〇・四、両方あったようでございますが、この法律の対象としている農用地の土壌汚染の基準は一PPm以上でございまして、現在までに一PPmを超える玄米が発見されました地域数は全国で五十七地域ございます。そこで五十七地域につきまして、さらに先ほど申し上げました対策地域を指定するということで、現在までに指定をいたしましたのが二十地域でございます。そのうち、さらに計画を立てまして現在事業を実施しておるのが七地域でございます。基本的にはこういった公害防止の土地改良事業によりまして、カドミウムをなくするということで対策を講じておる次第でございます。
  54. 太田一夫

    太田分科員 いまの局長の答弁をお聞きになって、大臣どう思われましたか。細密調査をしたり指定地域をつくったりするというのです。一番大事な結論は、二十四ですか……。
  55. 松元威雄

    ○松元政府委員 現在指定された地域は二十地域でございます。
  56. 太田一夫

    太田分科員 日本全国の中で二十地域なんという、針の先で突いたようなわずかなところしか指定されておらないということが現実に合わぬことは、だれしもが知るところなんです。土壌汚染防止法は、農林省が主となって細密調査をするとか、あるいは指定をするとか、対策を講ずるのじゃなくて、県知事に委任してあるのでしょう。だから県が調べて、県がこれはこうだからと言ってこなければ、指定にも何にもならぬじゃありませんか。農林省としてはおやりになっておらないということとは違うでしょうか、大臣
  57. 松元威雄

    ○松元政府委員 この法律は農林省と環境庁、両者が所管いたしておりまして、一定の体系がございまして、その中で農林省は概況調査を実施する、さらに今度は細密調査を実施する。もちろん細密調査の実際の実施体は県でございますが、それはいまの農林省、環境庁の体系のもとに実施しておるわけでございまして、そうやって危ないところが見つかりましたら調査をする、そして絡まったら指定をする、さらに事業を実施する、こういう段取りになっておるわけでございます。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ですから、いま御指摘がありましたように、やはり疑いのあるものについては知事が認定をする、こういうことで、それに基づいてチェックをするという形になっているわけです。
  59. 太田一夫

    太田分科員 そういうことですね。ですから知事に寄りかかり、県の活動に中心を置いて、それに付随して農林行政、カドミ汚染の対策というのがその中から出てくる。その中から米が買い上げられたり買い上げられなかったり、配給されたりされなかったりしておるわけですから、そういう点においては県中心のカドミ汚染調査だというふうに言わざるを得ない。  そこで具体的にちょっと。その体制を私はいかぬと言っているのですが、法律はそうなっておるのですからそのことをとやかく言いませんが、農林省は、米というものに対してもっと積極的に、無害なる米を国民に食わせるということでなくてはならぬと私は思う。  食糧庁長官にお尋ねいたしますが、一・〇PPm以上の米は買い上げをしない、〇・四から一・〇未満のものは買い上げはするけれども配給はしない。これは行政的な措置によって一・〇未満、〇・四以上のものは配給されなくなっておるのでありますが、法律では一・〇以下のものは食用に供してもよろしいということになっておるのですね。それを、食品衛生は厚生省の関係なんだから知ったことじゃない、農林省はできるだけその基準が緩やかであることを望むというような考え方を持っておられるのでありましょうか。昨年、そのことについて私はずいぶんくどくお尋ねしたのですが、これはいまの食糧庁長官の三善さんの御答弁をちょっと援用しておきますと、昨年こういうことをおっしゃったのですね。私どもとしましては、土壌汚染防止法によります細密調査あるいは県独自で細密調査の結果、知事が一PPm以上と認定した地域の米につきましては、政府は買い入れをいたしておりません、それから〇・四以上、一PPm未満と認定された地域の米につきましては、買い入れを行っておりますが、配給はいたしておりません、これが原則でございますとお答えになっておる。私は、これは農林省食糧庁としての態度としては少し腑に落ちない。聞きたいことは、原則だということは、食品衛生法にいう一・〇PPm未満のものは食用に供してもよろしいという基準は少し危いと思って、農林省、食糧庁が一つの行政的措置によってその基準をきつくしておる、こういうことだと受け取ってよろしいのでしょうか。
  60. 三善信二

    ○三善政府委員 この問題は、先生御承知のように経緯がございまして、もともと原則としては、食品衛生法上で一PPm以上のカドミウム含有米は輸送も加工も、それから食用にも供してはならないということで、これは買い上げておりません。ただ一PPm以内〇・四PPm以上の米は、おっしゃるように食糧庁は買い上げておりますが、現段階で配給は一応ストップをしているというのが現状でございます。その〇・四から一PPm未満のものについて、どうやってそういうことをしたかということを、ちょっと経緯を話させていただきたいと思います。  実は、カドミウムの問題が出てまいりましたのは、たしか四十三年から四十四年にかけてでございます。そこで厚生省が要観察地域というのをつくりまして、その要観察地域のカドミウムについて調査を始めたわけでございます。そのときに厚生省は、この要観察地域というのは〇・四以上を要観察地域としたわけですが、別に食用に供してはならないとか、危険とかいう意味じゃございませんということで、はっきり厚生省はそのとき言っておるわけでございます。ただ私ども配給の責任を持っておる食糧庁としましては、その当時、たとえば京都あるいは先生の県の愛知県、大阪等の諸県で、私ども全国の米の操作をやっておるわけでございますが、富山の米を愛知県に持って行きましたら、愛知県の県庁で、それは困る、卸売業者も、それは有害でないということはわかっているけれども、どうも国民感情が承知しないというようなことがございましたので、実は厚生省が一PPm以上は有害であるとかいうことを決める前に、配給しても受け取らないという事態が生じましたので、それじゃ受け取らないのを配給しても困る、たまたま非常に過剰米もございますし、相当在庫も潤沢にあったような時期でございますので、そういう意味で、〇・四から一PPm未満の米については、食用に供されますから買い上げの対象には当然します、ただそういう国民感情の問題がございましたから、一応配給の方には回さないようにしているというのが現状でございます。
  61. 太田一夫

    太田分科員 そうなんですね。それはよくわかる。その方針は私は非常にいいと思って昨年聞いていたんです。一・〇以下のものならば、これは食用にしなさい、食用にしなさいといって配給に回されておったら大変だと実は思いましたから、〇・四以上のものは配給には回さないとおっしゃったので、それはいいじゃないか。ところが、きょうは厚生省の方は食品衛生課長も来ていらっしゃるが、一・〇をもって無害と有害の境の基準に置いていらっしゃる。私は厚生省というのはもう少し厳しいものかと思ったら非常に緩やかであって、これこそ国民感情に合わない。一・〇以下が無害だなんということ、そんなことに賛成する科学者は一体どれだけあるか。こんな緩やかな基準ではだめだと言っている。それを一向に変えようとしない。再検討すべきだと私は思います。  さらにカドミ含有米の在庫のことに関連して、これも大臣にお答えいただきたいのですが、あなたの方は、独自にカドミ汚染米であるかどうかを調べる装置を予算要求して配付されておりますね。四十八年度五カ所、昨年度が四カ所、四、五カ所ずつ原子吸光装置というものをそれぞれの県の食糧事務所に配属されていらっしゃる。私が承っておるところを見ますと、宮城県、群馬県、富山県、兵庫県、福岡県等に配属されておるようですが、いまはどこに配属されておるでしょうか。ことしは何装置買いまして、そうしてどこに配属される予定であるか、わかりますか。
  62. 三善信二

    ○三善政府委員 原子吸光分光光度計と、ややこしい名前でございますが、原子吸光装置を四十八年度につきましては、いま先生おっしゃいましたように宮城、群馬、富山、兵庫、福岡、この五カ所に配置をいたしました。四十九年度におきましては四カ所くらいを予定しておりましたが、昨年実は黒斑病と言いますか、カメムシの被害とか焼け米、そういうものが実は例年になく二十九万九千トン全国的に発生しまして、その被害を私ども食糧庁としましては検査して、すぐ買い入れるか買い入れないかということを決めていくわけでございます。そういうことでカメムシの被害を検査するために必要な機械に、途中で急遽緊急に必要がございましたので振りかえまして、たとえばパーラーという携帯用の精米機、それを検査員に持たせる、あるいは多少大型の精米機を食糧事務所に据えつける。それから搗精度、白度、そういうのを計測する機械を備えつけるということで、カメムシとかそういう焼け米の発生地域に、急遽そちらの方の機械を緊急用として実は振りかえたわけでございます。五十年度は、実は計画としまして四台を一応予算要求をいたしておりまして、今後そういうカドミウムの、食糧庁が在庫している数量の多いような県に配置をしていきたいというふうに考えております。
  63. 太田一夫

    太田分科員 昨年の分は四カ所がついに買われないままにこれが見送られてしまった、残念だと思いますね。カドミウムというのはイタイイタイ病のもとなんでしょう。しかもこれは蓄積されますと、非常にひどい状態になってから発病するものです。その間、一説によると三十年かかるというのですね。三十年の蓄積によって骨がばらばらになってしまう、骨のカルシウムとそれからカドミウムとが入れかわってしまう、こういうことが言われておりますから、これは米等によって体内に蓄積されないようによほど気をつけませんと、日本国民の健康を守るなんということは私はできないと思う。  そのカドミの発生源というのは、御承知のようにセメント工場のあるところもあれば、鉱山のあるところもある、あるいはまたメッキ工場があるとか亜鉛工場があるとか、あるいは写真機のレンズをつくっておるところがあるとか、多種多様なところから出ておるわけであります。特に近代の工場におきましては、メッキなんというのは多分に普遍化して、各地の過疎地域にまでメッキ工場があるわけですから、よほどたくさんの原子吸光装置が配置されてしかるべきだと私は思う。農林省がおやりにならない理由は、県にあるからいいということでございましょうか。
  64. 三善信二

    ○三善政府委員 この原子吸光装置はそもそも何のために使うかということでございますが、これは私どもとしましては、大きさからいってこの机ぐらいの大きさがございますし、食糧事務所に備えまして試験研究の用に備えた。何の試験研究にするかと申しますと、たとえば具体的にある県が細密調査あるいは県独自の調査地域を指定いたします。その指定しましたところの米で一PPm以上は買わない、〇・四から一PPm未満の米は食糧庁は買うということでございますから、そこの〇・四から一PPm未満の米は食糧庁は現在買って保管をしているわけでございます。配給に回していないわけでございますが、ストックしているその米をもう少し細かく分析してみたい。それで県の調査結果と私どもが分析した結果と非常に違いがあるというようなことであれば、また県の方に御意見も申し上げたいというようなことで、県の調査の補完的な意味を兼ねて実は装置したいということで、全県の事務所にこれを装置してどうこうしようということは考えておりません。やはりカドミウム米といいますか、〇・四から一PPm未満の米を在庫している食糧事務所、その在庫数量の多いところを中心に、今後そういう試験装置、調査装置として備えつけたいというふうに考えておるわけでございます。     〔主査退席、塩川主査代理着席〕
  65. 太田一夫

    太田分科員 カドミウム論というのはまだ発生してから十年になるかならぬかのことでありますから、データそのものが不足しておると私は思うのです。どうもやはり食糧庁も農林省も県というものに寄りかかっておるわけでありますが、そこで、カドミの許容基準というのが一番きついのは水道法による許容限度ですね、これは〇・〇一PPm、それから水質汚濁防止法によって公共用水の場合も〇・〇一PPmとなっております。その次に工場排水でも〇・一です。ところが食品衛生法上の白米になると〇・九と、これは非常に上がってくるわけです。しかも玄米の場合一・〇です。こういう基準のばらつきというのは、それぞれ水であるとか玄米であるとか、それから白米、それは用途も違うでしょうし、それが体内に蓄積される過程も違うと思いますけれども、このところの連絡と言ってはなにですが、総合調整の何か科学的、医学的なもっとしっかりしたものが要るんじゃないかという気がします。私は素人ですから、私の考え方は、ただこの中で一番緩やかである米の許容基準というのはもっともっと厳しく規制して、カドミウム含有量を減らすべきだ、濃度の少ないもの以外は食用にしてはいかぬということにすべきだと思うのですよ。この〇・四PPm以上のものは食用に供しておらないというところから一・〇というのがある程度厳しくされておりますから、現在の配給の方針というのは私もうなずけるが、さらに農林省自身としてもカドミの基準を改めてみる、考え直してみるということと同時に、カドミ米、汚染米であるかどうかということを調べるのを自分の方が自主的、積極的にやるべきだと思うのですよ。そのために五カ所ばかりの原子吸光装置じゃ間に合わない。ことし四台やっても、九台でしょう。ことしまた何か天災が起きてそちらの方に予算が回されたということになれば、これは大変だ。  そこで環境庁にお尋ねしますが、各県の方には、そういう土壌が非常に汚染されるといういろいろな地方の実情に照らしてそういう調査をあなたの方がなさると同時に、県の方も原子吸光装置は持っておるという前提のもとに、この土地の汚染度の調査などやっていらっしゃるでしょう、どうですか。
  66. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 現在カドミウムの汚染の検査につきましては、先ほども申し上げましたように、都道府県知事の責任において実施をいたしております。したがって、カドミウム汚染が非常に多いところについては原子吸光装置は備えられておるという現状でございます。
  67. 太田一夫

    太田分科員 厚生省にお尋ねいたしますが、食品衛生法上の一・〇基準というのは、さらに厳しくその基準を引き上げるべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  68. 三浦大助

    ○三浦説明員 四十五年の十月に定めました米の一PPmという基準につきましては、とれ自体がかなりの安全率を持った基準でございまして、その後国立の衛生試験所におきましてずっと継続的にこのカドミウムの慢性毒性の試験を続けてきておりますけれども、現在までのところ、これを引き下げるべきだという研究結果が出ておりません。したがって、いまのところこれを変えるようなことは厚生省としては考えておりません。
  69. 太田一夫

    太田分科員 これは環境庁の方にお尋ねした方がいいと思いますが、環境庁の調べによりますと、その汚染地域というのはふえているのですか、減っているのですか。
  70. 遠藤茂

    ○遠藤説明員 私どもの調査でございますが、カドミウム汚染と申しますのは、過去に水、大気によって排出されたカドミウムが土壌に蓄積をすることによって、それが米に出てくるというふうに考えておりまして、毎年調査によって若干発見をされているという状況でございます。現在まで戸約一万ヘクタールずつ、四十六年以降大体実施いたしておりますが、その結果、先ほど農林省からお答えがありましたように、二十地域については一PPm以上またそのおそれがあるということで指定をしていくということでございます。ふえるということではなく、むしろ発見されるというふうにお考えいただいた方がいいと思います。
  71. 太田一夫

    太田分科員 だから農林大臣、ひとつ米という点から考えていただきたいと思う。野菜もありますよ。空から降るカドミウムの汚染、これがあって、白菜等の野菜類にすごく濃度の高いのが発見されるそうでありますが、これは別のときにお尋ねすることにして、いまの話では少しずつふえている。調べていけば環境庁でもふえる。これは徹底的に調べておるわけじゃないですね。あなたの方の米も、メッキ工場のある水系なら、その水系のところからは、これは危ないじゃないかというような予定のもとに、何か吸光装置があればその米を抜き出して調べるということはできると思うのですが、非常に少ないので、県の方が何とか検査して報告してこなければ乗り出さないということでは、私は非常に消極的だと思うのですね。カドミウム汚染米を国民の口に入れないという前提のもとに、あなたの方はもう少し積極的に乗り出されるべきじゃなかろうかと思いますが、いかがですか。
  72. 三善信二

    ○三善政府委員 先ほどの問題で先生非常に御理解いただいているのでありがたいのですけれども、〇・四PPmから一PPm未満の米というのは、これは食用には供せるし、有害でも何でもないということは御理解いただいている、こう思っております。最近、知事さんなんかから、食用に供せられるからそういうのを少し配給してもいいじゃないかというような御意見もありますし、私どもは現在はそれは配給しておりませんが、将来そういうことも研究してみなければいかぬのかなというような感じもいたしております。  それから、食糧庁は米を検査するときに、カドミウムの検査もすべての米にしてはどうかという御意見かと思いますが、やはり汚染されたたんぼ、そこから生産される米がカドミウムを含有しているわけでございますから、もともとその地域、たんぼ、それを限定するのが主体でございまして、すべての米が汚染されているかどうかを疑って、まず検査しなければ買い入れないというようなことではございませんし、むしろ私どもは、そういういまのやり方で汚染されている地域、そこの地域を重点的に考えて、そこからとれる米一PPm以上は買わない、〇・四から一PPm未満のものは買うというような現在の措置が一番適当ではなかろうかというふうに考えております。
  73. 太田一夫

    太田分科員 行政官としてあなたのお答えはいいです。ただ、政治家として大臣の所見を聞きたいのです。そういう県の調査に寄りかかり、その土地が、たんぼ、田が汚染されているとわかったときに、その米は買わないということはあたりまえのことですよ。  さらに、その発生源が近くにある水系のたんぼというのは汚染されていると見ねばならない。だから、そこの米は大丈夫かといってその米自体を調べるのは、かつて南太平洋から持ってきたマグロを、魚市場において放射能のあるなしを調べたと一緒であって、疑わしいときは徹底的に調べるのが本当じゃありませんか。そのために原子吸光装置というのは配置されるのでしょう。その辺について一言おっしゃってください。
  74. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま食糧庁長官が申し述べましたように、農林省としても、一PPm以下なら食用に供してもいいということですが、しかし国民感情というものも十分考えまして、これを配給しないという方針で、これはこれなりに国民に十分理解もされておると思うわけです。知事が一PPm以上と認定した地域のは買い入れ対象から除外する、こういうことになっておりますが、これはやはり知事も地域住民のことを十分考えて、そういう立場から認定するわけでございますから、これを農林省が全部やるということにつきましては私はちょっとどうかと思うのです。農林省としても、いま積極的な立場でこういうふうに〇・四PPmまでは配給から除外しているわけですし、現在のところは、疑いのあるもの、知事が認定した地域で生産された米については買い入れから外しているわけですから、それで、全部の米を対象にするということまではやる必要はないのじゃないか、私はそういうふうに思っておるわけでございます。
  75. 太田一夫

    太田分科員 時間がなくなりましたからこれで終わりますが、それは大臣、要望しておきますよ。全部調べろと私は言っているわけじゃないのです。わかっていると言うんですよ。神通川の流域などは汚染米がだんだんふえていって減ってこないんです。わかっているのです、それは。岐阜県から始まってこなければならぬのですよ、神岡鉱山ならば。その疑わしい地域の米については県が何とも言っていないから君たちは安心して食べなさいなんて、そんな無責任なことを言っておる食糧庁、政府はないと思うのです。そこのところを私は言っておるのでありまして、さらに一層御検討賜りたく要望いたしておきます。
  76. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて太田一夫君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬野栄次郎君。
  77. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 阿蘇群発地震対策並びに大規模林業圏開発事業等について、農林大臣並びに国土庁に質問いたします。  阿蘇群発地震対策をまずお尋ねいたします。熊本県阿蘇地域を襲った阿蘇群発地震は一月二十二日発生以来、多数の重軽傷者を出し、また家屋の倒壊、破損、農地、道路の破壊及びがけ崩れ等により、二月十八日現在で、十二町村関係しておりますが、被害総額八億五千万円に上っておりまして、現在は小康状態にあるとはいえ、一月二十二日から約四週間にわたって発生した地震の回数も、一月二十三日震度五を筆頭に七十数回に及んでおるわけでございます。  地震回数の遠のきとともに、住民も一応落ちつきを取り戻したところでございますけれども、いつ再び発生するかわからない恐怖がございますし、前に発生した地震で外輪山の山腹の地割れによる崩壊など、二次災害に対する住民の不安がさらに残っておるところでございます。  私も地震が発生した直後、一月二十四日から三日間にわたって現地をつまびらかに調査をしてまいりました。その調査の結果に基づいて、一月三十日、政府に対し地震対策の申し入れを行ってまいったところでございます。被害額等の関係で激甚災害法の適用は困難ということでございますけれども、県も地元町村も政府に対して各種要望を行っておることは御承知のとおりでございます。  まず、国土庁にお伺いしたいのでございますが、阿蘇群発地震に対する対応措置についてどう対策を進めておられるか、その点総括的に冒頭にお答えをいただきたいと思うのです。
  78. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  一月二十二日に阿蘇群発地震がございまして、ただいま先生がおっしゃいましたように七十七回ぐらいの有感地震が起こっておるわけでございます。これに対しまして、関係省庁と打ち合わせをいたしまして、たとえば農林省等におきましても直ちに関係係官を現地に派遣され、あるいはさらに建設省その他関係省庁も派遣をしておるわけでございます。また必要なところにおきましては、自衛隊等の出動を要請いたしましてその必要な災害復旧の手続を進める。さらに現在関係省庁におきましては査定を急ぎまして、必要な災害復旧を万全にするということで、二度と災害が起こらないように、災害復旧あるいは緊急治山事業等々を進めるということにいたしておるわけでございます。
  79. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 さらに国土庁にお伺いいたしますけれども、宅地及び家屋の復旧に対する補助の問題でありますけれども、被害の内訳を見ますと、道路など公共土木関係が二億八千六百万円でトップを占めておりますが、住宅、石がきなどの個人災害が二億一千九百万円にも上っております。災害地は二次災害のおそれがあって、早急な宅地、家屋の復旧が必要でございまして、現在では何らかの個人災害の救済がないのか、これが一番地元での強い熱望とされているところでございます。また、これが一番困った問題になっております。このことについて、先ほど申しましたように、一月三十日に私は政府に申し入れた際に、官房長官の方から直ちに厚生省にもいろいろ指示がございまして、厚生省の方とも早速その後打ち合わせをいたしましたが、個人災害救済のために世帯更生資金二千万円を来年度予算からいろいろお考えいただくということで、半壊三十万円、全壊五十万円ということでいろいろ決定をいただきまして、今後対処していただくということになっておるわけですけれども、これだけではどうにもならない。そこで、災害を受けた場合には融資制度がいろいろあるわけですけれども、なかなか基準が厳しいので、融資もなかなか乗らないという問題がございます。そういったことから、こういったものに対する融資を緩和して貸し付けるということを検討するなど、何らかのできる限りの措置をしてもらいたいと思うのですが、その辺どう検討したらいいか、あわせてお答えいただきたいと思います。
  80. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  個人災害の救済制度につきましては、先生方の御努力によりまして、昭和四十八年でございますか、災害援護資金あるいは弔慰金、こういった法律ができまして、個人災害救済制度の端緒がついたわけでございますけれども、こういった個人災害救済制度を今後さらに拡充するということもございますが、さらに現在の住宅融資、これはただいま先生のおっしゃいましたように、ああいった阿蘇の地震等につきましても、地元では住宅金融公庫を中心にいたしまして住宅相談室を開いております。そういった指導といいますか、御相談に十分応じながら住宅融資に努めています。  ただ、住宅融資につきましても、現在、限度額、貸付条件等いろいろと条件があるわけでございますが、われわれといたしましても、これからの災害対策というのは個人災害の救済、これが中心になってこようかと思います。したがいまして、そういった面につきましても関係省庁と十分協議いたしまして、そういった個人災害の救済が行き渡るように検討してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  81. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 昨日、災害対策特別委員会の小委員会でいろいろこういった問題を検討されたやに聞いておるのですが、そのときのこの問題に対する意見等はどう出ましたか。
  82. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  昨日は、災害対策特別委員会の基本問題に関する小委員会の第一回といいますか、今国会における問題点の整理ということで、小委員会におきましては、今後災害に対処いたしまして災害救助、これのあり方、それから個人災害の住宅の融資のあり方、こういったものを詰めていこうということで、関係各省とこれからそれについて検討して、そういった制度をさらに充実していこうというようなことにだんだんなろうかと思います。
  83. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 この問題は多年の問題でございまして、昨日も小委員会でいろいろ検討されたということでございますので、今後もあり得ることでありますし、また最近新聞でも川崎の地震問題等がいろいろ報道されておりますが、地震国日本としても今後例が起きてくることは予想されますから、ぜひひとつ前向きに検討をさらにお願いしたい、かように思っております。  次は農林省にお伺いしますけれども、公共用の農林関係施設が今回の地震で一億四千三百万円、また個人の農林、畜産、林業関係も一億二千二百万円に被害が及んでおります。  そこで、今回の災害による被災農業者に対して、自作農維持資金が早急に貸し付けられるよう資金枠の確保をしていただきたいと思うのでありますけれども、この点どういうふうに検討されておるか、お伺いしたいのであります。
  84. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 今回の地震によります被害に対しましての自作農資金の融資でございますが、県からの需要要望額が四千五百万円ございましたので、私の方としましては、これを全額賄いますように、二十五日付をもちまして交付いたしたわけでございます。
  85. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 さらに、農地復旧の十アール当たりの限度額の問題でありますけれども、今回の災害は谷合いとか急傾斜地帯に被害が多く出ております関係から、復旧面積に比べて工事費が多額となっております。そこで、十アールの限度額を超える場合が多いわけでございますが、これについてはどういうふうにお考えいただいておりますか、お答えいただきたい。
  86. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 農地の災害復旧事業につきましては、災害復旧効果の面を考慮をいたしまして、一戸当たりの国庫補助基準額を定めておるわけでございます。この基準額は、毎年災害復旧事業の事業費単価の動向を参酌いたしまして引き上げてきておるところでございまして、従来の農地復旧の例を見ますと、全国的には大体ほぼこの範囲内にありますので、特にこの限度額をどうこうする必要は現在のところないのではないかというふうに考えておるわけであります。  ただ、御指摘の棚田のような、地形的条件が悪いために限度額を超える場合というのがもしございますれば、それは被害状況等を十分調査をいたしまして、現地に対応いたしましたような適切な工法を検討いたしまして、そして限度額の範囲内において処理ができるように指導してまいりたいというふうに考えております。
  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 次に、農林水産施設の災害復旧についてでございますけれども、国庫補助対象外である小災害に対する助成措置をどうしてもお考えいただきたいと思うのですが、その点はどういうふうに農林省はお考えでございますか。
  88. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 従来の農林水産業施設の災害復旧につきましては、私たちといたしまして十分よく実態を調査をして、できるだけこれを補助によってカバーをするように努めてまいっておるところでありまして、今回の地震につきましても大体それによってカバーをできると思っておりますが、農業用施設及び林道の災害復旧事業で、一カ所の工事費が三万円以上十万円未満というふうなものにつきましては、現在起債の対象とされておるわけでありまして、その充当率は大体査定事業費の六五%程度カバーをいたしておるわけでございます。したがいまして、私たちとしましては、そういう補助事業の適正な実施と同時に、起債問題もあわせまして適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  89. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 農林大臣に、時間の関係ではしょって、特に地元で要望している問題等をお伺いしたいわけですけれども、阿蘇の群発地震については大臣も十分御承知のとおりであろうかと思います。阿蘇は昨年来、阿蘇の火山灰のヨナによる農作物の被害、さらには圃場整備に酸土が発生したために水田の稲作ができないという問題も起きましたし、いろいろ問題がここのところ重なって起きております。大臣も、一度ぜひ阿蘇を国会終了後機会を見て視察をしていただきたいと思っておりますが、たまたま開発公団がいよいよ大規模畜産の育成のための開発も進められるところでございまして、ぜひひとつ視察をしていただくと同時に、いま申し上げた群発地震による被害等が小康状態と言いながらも、今後まだ続く可能性があるわけでございます。そういったことで、いわゆる二重にも三重にも打撃を受けて、地元は大変苦境に立たされております。そういった意味から、大臣もひとつ十分施策と対策を講じていただきたい、かように思うわけです。ただいまのいろいろ質問の内容を聞いていただいて、大臣の所見をお伺いしたい。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 阿蘇火山一帯におきまして噴火が続いておりまして、そのために農林関係におきまして、非常な被害が出ておるということでございます。  これに対しましては、いま今村審議官からも、これが対策につきましてはきめ細かく行っておるという答弁もいたしたわけでございますが、私といたしましても、今後も続発する可能性もあるわけでございますから、そういう点も十分踏まえて対策を強化していきたいとも思いますし、また場合によっては、私あるいはまた農林省の幹部を派遣をいたしまして、十分な調査等もいたしたいと思います。
  91. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 さらに尋ねてまいりますが、次は、活動火山周辺地域における避難施設等の整備等に関する法律に基づく問題でございますけれども、熊本県では、今回の阿蘇地震、また従来からの阿蘇におけるいろいろなヨナによる被害等にかんがみまして、阿蘇郡の一の宮町、阿蘇町、白水村の二町一村を避難施設緊急整備地域として考えておるところでございます。また、同法の地域指定が決まると、その周辺町村が営農事業の指定地域を受けられるということになっておりますが、その営農施設整備地域として、一の宮、阿蘇、産山、波野、高森、白水、久木野、長陽、西原の三町六村を考えておるわけでございます。よって、同法によりまして、二月十七日、県防災会議を経まして、二月十八日と思いましたが、県知事から再度、総理大臣あてに指定を申請しておるところでありますが、すでに中央防災会議及び関係知事の意見を聞いて、避難施設緊急整備地域を指定することになっております。国土庁において、すでにこのめどを立てておられるわけですが、総理大臣の指定の見通しはいつになりますか、お答えをいただきたいと思います。
  92. 杉岡浩

    ○杉岡説明員 お答えいたします。  ただいまの避難施設の緊急整備地域でございますが、この指定につきましては、現在、官房も手続を進めておりまして、三月一日付で告示されるということになろうかと思います。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 次は、農林省にお伺いしますけれども、問題は、ただいま申し上げました同法の内容でありますけれども、法律の内容には肝心の被災農民に対する補償、助成等の措置が明記されていないということで、今後、さらに地域の実情に応じた改正をぜひしていただきたいということが地元の強い熱望でございます。  そこで、三月一日に総理から指定をされるということでございますが、地域指定を前提にした県の防災営農計画を見てみますと、過般、四十九年十一月十二日でしたか、大山構造改善局長に私、農林水産委員会でこのことを取り上げて質問した際に、大体そういう方向で前向きに対処するという御答弁をいただきましたが、その内容としては、防災面では、避難ごう五基の建設とか、警報器等の設置、ヘリポートの建設などいろいろ挙げられておりますけれども、営農面では、まず水源開発事業、それから畑地灌漑事業、降灰対策桑園施設整備事業、降灰地域土壌酸土矯正事業、それに野菜降灰防止栽培促進事業、用排水施設整備事業、さらには緊急飼料生産確保対策事業、この七つが挙げられておるところでございます。これについて、事業費、予算面についても、農林省では相当前向きにいろいろ御検討いただいておることは承知しておりますけれども、どういうふうに御検討いただいているか、その内容について御説明いただきたいと思います。
  94. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 降灰の対策につきましては、国土庁で避難施設の緊急整備地域の指定が行われますれば、農林省といたしまして、県からの防災営農施設整備計画を十分に検討いたしまして、対象の地域を指定をいたしますと同時に、所要の事業を実施するように取り運んでおるところでございます。したがいまして、大体、阿蘇関係の対象地域といたしましては、施設整備計画に基づきまして、現在、お話しのありましたような九町村を地域として予定をいたしておるわけでございます。  事業の種類といたしましては、いろいろございますけれども、非公共につきましては、五十年度予算におきましては、これを桜島と合わせまして別掲をいたすことにいたしております。従来は、既存の事業の中において優先採択という方針でございましたけれども、これでは十分手が行き届きませんので、別掲をして予算を計上することにいたしおるわけであります。  非公共の事業の中身を申し上げますと、一つは、降灰地域の土壌等の矯正事業の補助、これはいろいろ石灰等の共同購入に対する補助でございますが、それと、降灰防止あるいは降灰除去の施設を整備するということ、これは被覆栽培の施設でありますとか、あるいは灌水施設でありますとか、洗浄施設、貯蔵施設等の設置に対して補助をいたしたい。それからまた、灰に耐えますような作物を導入する。これは熊本には余りございませんけれども、鹿児島ではそういうふうな灰に強い作物を導入をいたすというふうな、それの導入に対する補助をいたすことにいたしております。  大体従来は、補助率三分の一程度でございましたけれども、今後は、一般非公共の事業につきましては、補助率を二分の一に引き上げまして対処をいたしてまいりたい。そこで、県とも相談をいたしまして、県の要望のほぼ全体的な要望を満たしますように、私たちとしては整備計画を組み立てていきたいというふうに考えております。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 県の要望の線で今後計画を立てていきたいということでございますので、ぜひひとつ地元の窮状を察知していただいて、農林大臣においてもそのような施策をしていただきますように、重ねてお願いをしておきます。  時間がございませんので、最後に大規模林業圏の開発事業で数点お伺いをいたしたいと思います。  政府の新全国総合開発の構想に沿って、全国のうち七つの森林地域を対象として、林業を中心とした地域開発を目指す総合的な森林開発としての大規模林業圏開発事業を行うことになっておりますが、すでに北上山地、中国山地、四国西南山地の三地域は、先発として四十八年度事業を開始しておるところであります。四十九年度に後発として最上・会津山地、飛越山地、祖母・椎葉・五木山地、日高・大雪・阿寒・北見山地というのが挙げられておりまして、事業開始となったわけでありますが、この中で、九州の祖母・椎葉・五木山地の地区については、御承知のように、特に熊本県における九州中央山地国定公園の指定区域内との競合から、四十九年度着工は見送られておるわけでございます。  当初のルート案で行くと、二カ所がたしかダブるというようなこともあったり、地元の自然保護その他の問題等の関係もございまして、地元の県もこの一年苦慮を重ねてきたところでございますが、私の承知しているところでは、このほど熊本県側においても新ルートがほぼ決定したやに聞いております。そうなりますと、政府も五十年度予算で、着工を含めいろいろ予算考えておられると思いますけれども、特に、どこでも同じでありますけれども、祖母・椎葉・五木山地、九州の脊梁山脈でございまして、得がたい高山植物または森林があるわけでございます。そういったことから、今後地元のいろいろな要請等もあることでございますので、自然との調和を図りながら慎重に進めていただきたい、かように思うわけでありますが、いずれにしても、適正林分を保持して今後資源を培養していくという面からいきますと、熊本県側が考えております新ルート等を林野庁もよく検討していただいて、これが県の方との打ち合わせが済んだならば認可をし、さらに着工していただくということになろうかと思いますけれども、その辺どういうふうな経過になっておるか、また見通しであるか、当局のお考えをお伺いしたいと思います。
  96. 松形祐堯

    松形政府委員 ただいま、大規模林業圏の全国構想なり、あるいは特に九州地区におきますいろいろな調査なり、あるいは設計等につきましてもお話がございました。私ども、現在、四十八年度からその七地域の先発というようなことを含めまして工事に着工いたしておりますけれども、林道開設に当たりましては、特に自然保護に十分留意して行うということはもう当然でございます。特に予算等もありまして、自然保護の調査とかあるいは保全工法、そういうものを行いまして、しかも地域住民の意向というものを十分尊重して自然保護に万全を期しているのでございます。  ただいま御指摘ございました熊本県内の大規模林道につきましては、当初予定されておりますルートが国定公園の中の非常に貴重なところを通っているというようなこともございまして、私ども、県あるいは国有林等も大分入っております関係から、営林局等も動員いたしまして、現地を調査し、あるいは地質等のこともございますので、それらを含めまして慎重な検討を続けてまいっておったわけでございますが、いろいろ問題もさらにあるということもございまして、地元を含めてさらにいま検討を続けているところでございます。なるべく自然保護を中心に、あるいは地域住民の意向等も参酌しながら、私ども十分な手続を踏んで、五十年度は何とかしたい、こういうふうなことを考えておるところでございます。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 五十年度は何とかしたいという林野庁長官の御答弁でございましたが、五十年度着工といいましても、ちょうど一年のおくれがあるわけです。今後、この祖母・椎葉・五木山地の大規模林業圏としてもいろいろ計画されているのに、広域林道ネットワークの整備の中で、大規模林道と中核林道が考えられておりますし、さらには、大規模計画造林、森林関連産業の整備、森林レクリエーションエリアの整備、こうした地域開発を目標として各種整備が予定されておるところでございます。自然との調和を図りながら十分慎重にやっていくということでございますが、当然地元のコンセンサスを得るためにもそのようにしていただきたいと思います。いずれにしても、今後この地域に対する当局の事業推進はどういうふうに予定としては考えておられるか。また、大規模林業圏開発事業の今後の予算等についての見通しとをどういうふうに考えて進めていかれるのか、その辺の構想についてこの機会に承っておきたいと思います。
  98. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 大規模林業圏開発事業につきましては、林野率がきわめて高く、低利用の広葉樹林が大面積に存在する地域を対象といたしまして、農畜産業等、他産業との調整であるとかあるいは自然保護、国土保全との調和を図りつつ、いま御指摘がありましたような林道ネットワークの整備あるいは造林の推進等、林業を中心とした地域開発を推進しようというものでございます。  地域開発の先導的役割りを担う幹線林道網の整備につきましては、大規模林道として昭和四十八年度に開設に着手いたしました。引き続いてその拡充を図っておるところでございまして、これと関連して、広域基幹林道事業その他の林道事業を推進することにより、当該地域の林道網の整備を図ることといたしております。  また、これらの林道の整備と相まって、計画的に造林を進めるとともに、森林レクリエーションエリアの整備等を図ることも考えておるわけでございます。このために、昭和五十年度より、森林地域総合基盤整備調査を実施しておりまして、具体的な開発の進め方などを検討してまいりたいと考えております。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間も参りましたので、以上で終わります。
  100. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて瀬野栄次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、安井吉典君の質疑に入ります。安井吉典君。
  101. 安井吉典

    安井分科員 あすから三月ですが、三月には原料乳の支持価格や畜産物価格安定法の価格が決まるし、さらにまた海の方では日中漁業交渉が始まる、日ソ漁業交渉も始まる、それから問題の海洋法会議が始まる。まさに陸と海と双方のたん白質のシーズンが三月から始まる、こういうことではないかと思うのですが、たん白質、プロテインという言葉は食い物の王様という語源によるんだそうですけれども、それくらい大事なたん白質、そのたん白質について、国民食糧の中で現在の段階ではどういうふうな摂取が行われているか、動物並びに植物性のたん白質についての摂取のありよう。それから、海洋法会議のあり方によって、水産資源としてのたん白源にあるいは重大な変動が起きるかもしれない。それからまた畜産たん白についても、今度の価格のありようが、これまた一つの大きな方向づけになるかもしれないし、えさの問題、これもいろいろ重大な要素になる。そういう中で、これから先の国民食糧におけるたん白質のとり方は、植物とそれから家畜のたん白質と、もう一つ水産たん白と、こうあるのですが、その中でどういうふうな方向で満たしていくのか。つまり、現状と将来に向けての見通しを農林省としてたん白質についてどうとっておられるのか、まずその点から伺いたいと思います。
  102. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 数字にわたりますのでお答え申し上げますが、四十七年度におきますたん白質の摂取量並びにその構成比等を見てまいりますと、総たん白摂取量は七八・六グラムでございまして、動物質が三三・八グラム、うち畜産物が十六・五グラム、約四八・八%でございまして、魚介類からの摂取量が一七・三グラムで五一・二%、動物性たん白質のうちの約半分が魚介類からとることになっておりまして、また植物たん白質は四四・八グラム、構成比としては、うち穀物の比率が五六・五%という関係に相なっております。  今後の見通しについてでございますが、しばしば御論議を願っております農林省昭和六十年の見通しにおきましては、総たん白摂取最八三三グラムと見通しておりまして、うち動物質が四〇・四グラムでございます。植物質が四十二・九グラム、なお動物質のうちの畜産物と魚介類の比率は、畜産物は十九・八グラムで四九%、魚介類が二十・六グラムでございまして、五一%ということに相なっております。
  103. 安井吉典

    安井分科員 いまのお話のうちの動物性たん白質の問題が三月の問題になるわけですが、この中で海洋法会議のあり方がどう影響をするのかという、その見通しをこの六十年度目標の中に織り込んでおられるのか、どう織り込んでおられるのか、その点伺います。
  104. 内村良英

    内村政府委員 先生御案内のように、海洋法会議の帰結につきましては、特に二百海里の経済水域設定ということがカラカス会議大勢になりつつありますけれども、その場合の沿岸国の管轄権がどうなるのかということにつきましては非常に意見が分かれているわけでございます。一番極端な議論は、領海と同じように排他的な管轄権を持つ、そうなりますと、わが国漁業は非常に影響がございます。それから実績を認めるとかあるいは未利用資源はとらせるとかというようなことになってまいりますと、影響が大分違ってまいります。したがいまして、先般の需給見通しの作業では、従来の傾向で伸ばしまして、海洋法会議の影響というのは全然まだわかりませんので、勘案しておりません。
  105. 安井吉典

    安井分科員 わかりました。いまの姿の引き伸ばしの中で構想されているわけですから、結果がとんでもないような方向に出れば、これは大変なことになるということではないかと思います。  家畜のたん白質の関係での重大な焦点は、今度の畜産物の審議会がいつ開かれてどう決まるのかということになるわけですが、きょうは主に水産の方についてのお尋ねにしたいと思いますけれども、この前、決算委員会でお尋ねをしておりますので、きょうは深く入った論議はするつもりはありませんけれども、審議会の時期はいつごろになって、いつごろまでに最終的な結論にするのか、その点だけひとつ伺っておきます。
  106. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま畜産物価格安定法の改正法案を御審議いただいておりますので、それの進捗状況を見ながら、最終的に日程を決めていただきたいというように考えておりますが、現在の事務当局の腹案と言いますか、見通しといたしましては、例年どおり三月の中旬に、畜産振興審議会の総会を開催していただきまして、下旬にかけまして飼料部会、食肉部会、酪農部会を順次開催していただきまして、三月末近くに御答申をいただく。政府の決定といたしましては、三月の末に行うというのが適当ではないかという腹案は持っております。最終的には審議状況、審議の進捗を見て決めていただきたいと思っております。
  107. 安井吉典

    安井分科員 この前いろいろ論議をしたわけですけれども、農民側の要求価格というようなものも決定を見ているようでありますので、ひとつ十分そういうものを考慮の中に入れて、六十年度のたん白が畜産の面でも十分に確保できるように、ひとつそれを目標に渇いての価格決定を進めていただくべきではないか。たとえばこの前も申し上げましたように、乳牛は減っていくし、したがって乳量も減っているという、こういう状況を引き伸ばしていったのでは、これは大変なわけです。その点大臣にひとつ伺っておきます。
  108. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま畜産局長から答弁いたしましたように、三月の末にはいよいよ加工原料乳の保証価格も決めなければならぬわけでございますが、この価格決定に当たりましては、もちろん各方面からの要請もいろいろとあるわけでございまして、そういう点も踏まえていかなければならぬわけでございますが、同時に、価格決定に当たりまして、今日までとってまいりましたような、加工原料乳の主要な生産地域における生乳の再生産を確保するということを旨として、生産状況あるいは需給状況その他の経済事情等も十分考慮いたしまして、さらに畜産審議会の意見も聞きまして、適正に決定していきたい、こういうふうに考えます。
  109. 安井吉典

    安井分科員 水産たん白の方は現状を引き伸ばしたような形でいいのだけれども、畜産の方はいまのままでは困るので、これをカーブを上げていかなければいけないという状況にある点をお含みの上、いまの大臣の御答弁で一応御決意がございましたけれども、御努力を願いたいと思います。  そこで、きょう午後、例のソ連漁船の日本近海における操業での被害の問題について漁民大会も開かれることになっているようでありますが、この問題について外務大臣が、ソ連の操業は国家機関の一部になる公社の操業であるという点からいって、損害賠償の請求も可能ではないか、つまり民間ベースでの操業ではないという点に着目しての発言だと思います。それからまた、見舞金のようなものを選るということについては農林大臣もしばしば言明されているようでありますが、損害賠償と見舞金とは、これは一応別々なものでありますけれども、その二つのものについての農林大臣としてのお考えはどうなのか、それを伺います。
  110. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題は非常に深刻になってきておるわけでございまして、一日も早く解決していくということが大事であります。同時にまた、漁民に対する何らかの救済措置も講じていかなければならぬわけでございまして、この三月に入りましたら水産庁長官ソ連に派遣をいたしまして、紛争防止あるいは紛争処理についての協定を結ぶ考えでございます。ソ連側としてもこれに応ずるということでございますので、協定が結ばれるその際にも、やはり損害の補償につきましては、法律的に言えばやはり民事上の問題でございますから、国がかわってソ連に対して要求をするということになると思いますが、今日までももちろん要求はいたしておるわけでございます。しかし、これに対して何ら回答がないということでございますが、今回の交渉を通じてこの問題も何とかひとつ具体化をしなければならぬ、こういうふうに思っております。協定の中にもそういう点も盛り込めるように努力もしていかねばならぬ、こういうふうに思うわけでございます。  同時に、漁民に対する被害の救済措置でございますが、これはもちろん私だけの判断でできるわけではございませんが、私としては、しばしば発言をしておりますように、やはり何らかの救済措置は講ずるべきであるという強い決意を持っておるわけでございまして、実態の調査がまだ終わっておりません、まだいまでも被害が起こっておるわけでございますから、被害の実態調査を行って、その上に立って、具体的な救済の措置については、財政当局を初めとして、政府部内において煮詰めて、そうして漁民の声にこたえていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  111. 安井吉典

    安井分科員 初めにおっしゃった水産庁長官ソ連に送っての交渉でありますが、三月三日から日ソサケ・マス交渉が始まるのと関連づけをされるのかどうか、向こうへ行ってのお話、それとサケ・マス交渉との関係をどうするのか。あるいはサケ・マス交渉の中に含めてと言うと語弊があるかもしれませんが、そういう中でも話が出てくるのではないかとも思うのでありますが、その二つをどう関連づけるのかという点について伺います。
  112. 内村良英

    内村政府委員 先生御案内のように、日ソ漁業委員会の仕事は、条約区域の漁業資源の保存措置についての話し合いをするという性格でございまして、そこではサケ・マス、特にサケ・マスのクォータ、あるいはニシンの問題等、漁業資源の保全の問題が論ぜられるわけでございます。そこで、操業協定の方は日ソ間の漁業の操業の協定の話でございますので、これは別でございます。したがいまして、他国の例を見ましても、アメリカソ連と操業協定を持っております。資源の保存に関する交渉も年に一回あるいは二年に一回やっておりますけれども、それと別に操業協定をやっております。したがいまして、別個にやるべきものだと思っております。  そこで、三月三日から日ソ漁業委員会の会議が東京で始まりますけれども、現在、場所は決まっておりません。あるいは向こうのソ連の代表団の中に専門家も大分おりますので、あるいはソ連側が東京でやろうと言うかもしれませんけれども、それはあくまで日ソ漁業委員会の別の会議として行われるべきものと私どもは考えております。
  113. 安井吉典

    安井分科員 全く別なものであることはもう当然なんですけれども、外交交渉というものは思わない來雑物がいろいろ入ってくるものですよね。ですからそういう場合の扱いということはやはり十分考えて対応していく必要があるのではないかと思います。そしてまた、しつこくソ連側日本近海で操業をずうっと続けているというこの事実は、逆に本来の、従来から続いている日ソ漁業交渉に対する一つの牽制であったり、もちろん海洋法会議への布石であったり、そういうことになりがちだと思いますので、そういういろいろなケースを考慮に入れながら交渉に臨んでいただくということが大切ではないかと思います。  そこで、いわゆる新海洋法体制というようなものができた場合において、沿岸漁業を含めた、日本にもその新しい二百海里のエコノミックエリアというものができるわけですから、その中においていまよりもずっと漁獲量を上げていく、資源をふやしていく、そういう仕事が一つ大事だし、それからまた外国の経済水域の問題についても、いわゆる発展途上国経済水域への対応と、それから北太平洋のような、アメリカソ連、カナダといったような、むしろ日本と競争状況にあるようなずっと進んだ漁業国の経済水域の場合と、これは対応の仕方が違ってくるわけでありますが、そういうふうな点について、政府の今日までの段階における検討はどういうふうに進んでおられるのか、それを伺います。
  114. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにいまお話がございましたように、今日の厳しい漁業を取り巻く情勢に対処いたしまして、これからの水産政策をどういうふうに打ち立てていくかということは非常に大事なことであろうと思うわけでございます。  いまお話がありましたように、まず経済水域がどういう形で決められていくかということにつきましては、ジュネーブ会議におきましても、わが国の国益の立場に立って、わが国の今日までの漁獲が維持できるように、漁業管轄権等の問題についても大いに努力をしていかなければならぬわけでございます。この経済水域二百海里がどういうふうな形で決まるかということは、まだ予測は非常に困難でございます。これは沿岸国がそれぞれ考え方が違っておりますので非常に困難でございますが、私たちとしては、今日までの日本漁業権というのは維持できるように努力していかなければならぬ。しかし、これが決まった場合においては、いま経済水域二百海里の中で四百五十万トンくらいとっているわけでありますが、これに対しては何らかの形で制約を受けるわけでございますので、そうした決まった段階においては、開発途上国に対する経済協力、あるいは漁業協力といったアプローチの問題もこれから起こってくると思いますし、ソ連あるいはアメリカ、カナダといった先進的な漁業国との間のこれからの二国間交渉、あるいは多国間交渉というものを外交活動を通じて強力に推進して、わが国漁獲の維持を図っていかなければならぬわけでございます。  さらに、一番初めにお話がありましたような、いずれにしても制約を受けるわけでございますから、そういう中にあって沿岸漁業、沖合い漁業というものをさらに一層振興していかなければ、わが国の動物性たん白の確保というのは困難になるわけであります。私たちとしては、これからやはり漁業を伸ばせるのは沿岸、沖合いであろうと思うわけでございます。それには、これからの水産政策としての最重点を置かなければならぬ船津漁業、沖合い漁業等につきましても、今日まで栽培漁業等も大分根を張ってきたわけでございますが、さらに栽培漁業振興――沖合いにおいても栽培漁業ができるという見通しもだんだん出てきておりますから、そういう沖合いにおける栽培漁業等もこれからひとつ推進をしていく、あるいはまた、沿岸における漁場整備等も大いに図っていくということによって、沿岸漁獲高を少なくとも十年間くらいの間には百万トン近くは伸ばしたい、そういう基本的な考え方のもとに立って漁業政策を推進していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  115. 安井吉典

    安井分科員 領海十二海里については、最近私どものところにも、沿岸の町村議会が意見書という形で十二海里を早くやってくれというような決議を出してきております。それから、各政党も大体そういう方向で進みつつあると思うのでありますが、これを宣言するという、まあ政府として決めたわけじゃありませんけれども、これを宣言をして国際的に実効を持ち得る具体的な手続ですね、それはどういうことになるわけですか。
  116. 内村良英

    内村政府委員 これは外務省の所管の問題でございますので、正確には外務省から御答弁すべきことではないかと思います。私ども現在、どういうことでやるのかということは問い合わせをしておりますけれども、法律でやるのかあるいは一方的に宣言するのか、どういうことでやるのか、まだ正確な返答は外務省から得ておりません。
  117. 安井吉典

    安井分科員 じゃこれは外務省の方に聞きます。  外務省はとにかくとして、農林省としてはもう十二海里やむを得ないというのか、むしろ進んでそうやった方がいいというのか、そういう方向に来ているわけなんですね。
  118. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、もう十二海里はやらなければならないという立場で積極的に推進をしていくという考えでございます。ただ、十二海里の宣言をする場合に、いろいろ手続もあるわけでありますし、わが国としても国際的な合意を得て十二海里を実現していくというふうに、今日までもしばしばそういう態度をとってまいっておるわけですから、三月のジュネーブ会議においてこの問題を検討し、そういう中で決めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。これは農林省だけでできるわけではありませんけれども、私は時期としては当然やらなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。
  119. 安井吉典

    安井分科員 もう時間がわずかですが、いま始まる日中漁業交渉、それからサケ・マス交渉、それぞれについて、最初に申し上げましたように、これから始まる海洋法会議がどうなるかということをバックにしながらの交渉ということで、したがって、とりわけ日ソ漁業交渉も、百日交渉と言われている今日までの状況から言っても、大分むずかしい場面もいろいろ出てくるのではないかという予想ができるわけでありますが、日ソ漁業交渉、日中もありますが、二つまとめて、それぞれお尋ねをする時間が十分ありませんので、日ソ交渉、それについてのことしの農林省側としての御方針、それをひとつこの際伺います。
  120. 内村良英

    内村政府委員 まずサケ・マスの交渉でございますが、ことしは豊漁年に当たるわけでございます。したがいまして、農林省といたしましては、豊漁年としてのしかるべきクォータはぜひ維持したいというふうに考えております。それ以外に、かねてソ連側からしばしば言われておりますいわゆるB区域へソ連監視船が入ってくるという問題、これなども、取り締まり問題として大きな問題になるかと思いますけれども、わが国漁業の利益を守るために、万全の努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。その他ニシン等につきましても、かなり厳しい線を向こうは出してくるのではないかと思っております。
  121. 安井吉典

    安井分科員 日中交渉も、日中の友好平和条約への一つの道筋に当たる大事な交渉に、今度もなるわけでありますが、当然そういうことを踏まえて、お話し合いが進むことになろうと思うのです。しかしまた、あの地域における日本の漁民の権益というのも大事ですが、その点についてはどうですか。
  122. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日中漁業交渉の方も三月一日から始まるわけでございますが、平和友好条約も締結をされようという情勢になっておりますし、日中の航空協定、海運協定という実務協定もすでに締結されたということでございますから、私たちとしても、この際、何とかひとつこれは妥結にこぎつけたい、そういう努力をしてまいりたいと思うわけでございますが、今日まで三十数回にわたって交渉をして、お互いに話が結論に達しなかったという、なかなかむずかしい漁業の共同規制の問題等もあるわけでございますし、この辺のところは、問題はなかなか厳しくはなると思います。しかし、私としては何とか妥結にこぎつけたい、そういう方針で臨んでいきたいと思っております。
  123. 安井吉典

    安井分科員 もう時間ですから、これで終わりたいと思いますが、今日の国際情勢の中で、中国ソ連とに大きな立場の違いがある、その中国ソ連と同時に当面話し合いを進めようという、その先頭に立つ農林大臣も、これは大変だと思います。それだけにやりがいのある仕事でもないかと思うのですが、ひとつ成果を十分上げていただきたいということだけお願いを申し上げて、終わります。
  124. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて安井吉典君の質疑は終了いたしました。  次に、小宮武喜君の質疑に入ります。小宮武喜君。
  125. 小宮武喜

    小宮分科員 最初に、私は日本遠洋旋網漁業組合の除名問題について質問します。  昨年十月四日、日本旋網漁業生産調整組合が行う生産調整事業の実施をめぐって、生産調整組合を脱退した組合員を、別法人である日本遠洋旋網漁業協同組合が、去る二月十八日付をもって除名するという事件が発生しております。その除名理由を見ますと、日本旋網漁業生産調整組合の調整規程に違反して操業を行い過怠金を課せられたことが、日本遠洋旋網漁業協同組合の定款第十五条に定める、信用を著しく失わせるような行動をしたものと判断して除名する、こういうふうになっております。なお御参考に申し上げますと、この組合員は、生産調整組合を脱退しても、旋網漁業協同組合は脱退しておりません。  そこで、この協同組合設立を認可し、組合の民主化を推進する指導、監督の立場にある農林大臣に若干質問します。  まず、生産調整組合と漁業協同組合との関係でございますが、日本旋網漁業生産調整組合は、漁業生産調整組合法に基づく法人であり、片や日本遠洋旋網漁業協同組合は、水産業協同組合法に基づく法人であります。したがって、目的を異にする別個の法人であり、また別個の人格を持つものであることは、もう疑う余地のないところでありますが、この点について大臣の見解を求めたい。
  126. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本遠旋漁協は、組合員である昭徳水産株式会社と富栄海連有限会社に対して、両社が長期間にわたり日本旋網漁業生産調整組合の調整規程に違反して過怠金を課せられた点が、同漁協の定款第十五条に定める、信用を著しく失わせるような行為をしたものに該当するとして、御承知のごとく、去る二月十五日の総会において、出席者全員の賛成によりまして除名を決議し、二月十八日両社に通告したわけであります。  遠旋の定款の該当規定は、水産業協同組合法第二十七条第二項第三号の規定に基づき、組合が自主的に決めたものでありますが、その趣旨は、法令、法令に基づく行政処分等の違反が行われた場合はもとより、これらに準ずるような行為によって組合の信用を著しく失墜させることなどにより組合の運営に混乱を来し、ひいては組合員の漁業生産活動の秩序を乱したりすることを防止するためのものであるわけであります。  本件の場合には、遠旋の組合員はすべて生産調整組合の組合員であり、調整組合ができるまでは、遠旋が申し合わせ事項として、自主的に生産調整を行ってきた経緯等から見て、遠旋と調整組合とは表裏一体の関係にあるわけでございます。したがって、遠旋の組合員が調整組合の調整規程に違反し過怠金を課せられたという事実は、遠旋の定款の除名規定に該当するものではないかと解釈をする相応の理由はある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  127. 小宮武喜

    小宮分科員 それは大臣、理由のこじつけですよ。明らかに生産調整組合法と水産業協同組合法は別なんだから、その別々の組合法に基づいて設立された法人ですよ。それはなるほど、旋網漁業協同組合の組合員が生産調整組合の一員であることは間違いないです。しかし、法的に言えば、あくまでこれは別個の人格体でしょう。大臣、そういうようなことを言うならば、生産調整組合の人が借金をした場合に、それなら旋網の方がその金を請求できるかどうか。皆さん方非常にこじつけておるのですよ。そこに私は、行政府の一員として、やはり法律を忠実に施行する皆さん方が、そういうように法律をこじつけて、このことを認めようとする問題は、これは非常に法律の番人として――この漁業組合法においても、組合の民主化というのが大きな柱なんです。それをこの問題ではこじつけて、そういうように理解しようとするところに、私は農林省の大きな問題があると思う。大臣、いま、そういうように解釈できるとか、いろいろなことを言っておるけれども、生産調整組合の除名適用の理由を見てみますと、ここにありますけれども、これは生産調整組合の規程に違反して過怠金を課せられたから、今度は漁業協同組合の定款を適用して除名するというようになる。これはあくまで別個の人格体でしょう。幾ら表裏一体という言葉を使っても、法律上は別なんです。紛らわしい言葉を使いますけれども、法律は別個なんです。それをそういうような、たとえかりに生産調整組合の規程に違反をしたとしても、今度は別個の漁業協同組合の定款にそれをこじつけて除名することは、あたかも大臣がそれを当然であるかのようなことを言っておるのは、私は大臣としてもってのほかだと思う。だから私は、この問題は違法性の疑いが濃厚だ、はっきり言えばこれは違法だと、ここまで指摘をしたいのです。重ねてひとつ大臣の所見をお聞きしたい。
  128. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 法律問題でございまして、私もなかなか的確な答弁ができないかもしれませんけれども、いま私が申し上げましたような理由で、生産調整組合の調整規程に違反し過怠金を課せられたという事実は、遠旋の定款の除名規定に該当するものと解する相当の理由があると考えるということにつきましては、いまの調整組合、漁業組合が表裏一体であるというふうな関係から見ましても、これは該当相応の理由があるのではないか、こういうふうに判断をし、解釈をしておるわけであります。
  129. 小宮武喜

    小宮分科員 それでは大臣は、今度の除名は違法性はないということを言っておるわけですか。表裏一体、表裏一体と、紛らわしい言葉を使いますけれども、あくまで法律は別なんですよ。そうしますと、著しく信用を失わしめるような行為をしたとか言っているけれども、これは遠洋旋網漁業協同組合定款を見ても、はっきり三項挙げられておるわけですね。これは御存じでしょう。ただ、一項、二項、三項には全然該当しません。大臣知らぬなら、読み上げてみましょうか。知らぬでもって、そのような答弁をするとはもってのほかですよ。四項も、前段には適用しない。ただ、その他信用を著しく失わしめるような行為だとなっているわけです。大臣はそんな、定款も知らずに、そういうような答弁をするとはもってのほかですよ。  それで、そういうように、除名問題について、いままで先例があるかどうかということです。漁業協同組合内において、こういうような除名という――これは事人権問題で、事が重大性を帯びておるのですよ。除名という先例は、私の調べた範囲でも、恐らく一つもありませんよ。それでは、漁業協同組合の定款の中でいろいろ挙げられておりますけれども、かりに、著しく信用を失わしめる行為というのはどういうようなことを指すのか、具体的に説明してください。  この定款の十五条には、四項あって、一項は「この組合の施設を一年間全く利用しないとき。」二番目が「出資の払込み、賦課金の納入その他この組合に対する義務の履行を怠ったとき。」三項は「この組合の事業を妨げる行為をしたとき。」四項は「法令、法令に基づいてする行政庁の処分又はこの場合の定款もしくは規約に違反し、その他組合の信用を著しく失わせるような行為をしたとき。」、だから、この除名理由は、四項の後半を適用しておる。これは除名理由にはっきりしておるわけですから。除名理由を読んでみましょうか。「日本旋網漁業生産調整組合の調整規程に違反して操業を行い、過怠金を課せられた点は、本組合の定款第十五条に定める「信用を著しく失わせるような行為をした」ものに該当するものと判断され、貴社を本組合から除名をすることが満場一致をもって決定されました。」、長官もむずむずしておるようだから、それじゃそういうふうな先例があるかということと、この遠洋旋網漁業協同組合における、信用を著しく失わしめる行為というのは、具体的にどういうものがありますか。具体的に説明してください。
  130. 内村良英

    内村政府委員 まず最初に、漁協の定款で「組合の信用を著しく失わせるような行為をしたとき」というのはどのような場合かということでございますので、想定される具体的事例といたしましては、次のようなケースがあるわけでございます。第一は、漁業法、水産資源保護法等の法令等に違反した行為をし、またその処分がきまっていない場合、二は、詐欺恐喝罪、これは刑法の罪でございますが、すれすれの類似行為をした場合、それから第三といたしまして、当該漁協またはその組合員の大部分が加入している他の団体、これは漁業信用基金協会とか、漁業共済組合あるいは生産調整組合も入るわけでございますが、その内部規程に違反し、そのことが当該漁協または組合員が行う漁業の秩序を害する行為である場合、したがいまして、今回の場合には、この第三の場合に該当するのではないかというふうに判断しておるわけでございます。  そこで、先例があるかということでございますが、除名の先例はございます。
  131. 小宮武喜

    小宮分科員 長官、あなたが言われることは、日本遠洋旋網漁業協同組合の定款の一、二、三、四の前段の以外のことで除名する場合には、それが適用されるわけです。それが日本生産調整組合の問題をこちらに持ってきて、それでこちらの法律で、こちらの定款を適用して除名しようとするところに大きな問題がある。問題は、これはあらゆる農業団体にしても労働組合団体にしても、除名ということは非常に重大な問題ですよ。そんな重大な問題を、ただ信用を著しく失わしめる行為をやったということに無理にこじつけて、こういうふうな問題をやろうとするのは、法律を守る立場から、皆さん方はもってのほかだと思う。われわれは立法府として、皆さん方はいつも、満場一致できまったとか、四十八対何できまったとか言っておるけれども、それは一つの申請をする資格要件の問題であって、私たちはやはり立法府の人間として、そのつくられた法律を行政府は忠実に守っておるかどうか、またその監督指導下にある団体が、その法令、法規に違反していないかどうかを、皆さん方が十分指導監督しておるかということを、われわれは監視する立場にある。今回の場合は、明らかにもう疑う余地がないと思う。この除名の問題は、大臣は知っておられましたか。長官から報告を受けておられましたか。
  132. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん報告は受けておりましたし、水産庁としても慎重に検討をし、さらに法制局等とも打ち合わせた結果、水産庁長官から、除名については相当の理由があるという報告を受けましたので、これを了承した次第でございます。
  133. 小宮武喜

    小宮分科員 それは、遠洋旋網漁業協同組合から水産庁には報告が届いて、水産庁はそれを十分承知の上でやった、それを了解したということですか。  私はこの問題は、衆議院の法制局も、内閣の法制局も呼んで、いろいろ聞いたけれども、これはよほど水産庁が事前に打ち合わせをやっておったのか、水産庁に聞いてくださいということで、衆議院の法制局は、私たちは議員立法のお手伝いをするだけでございますからと言って逃げる。内閣法制局は、水産庁が一番詳しいから聞いてください。何を言うかと、ぼくはやかましく言ったのですが、まあそういうことで、この問題については、皆さん方のやられたことは、もう法律に基づいてどうこうじゃなくて、私はこの問題に対する感情以外にないと思う。しかも、農林大臣もそれに同調しておるということを言わざるを得ない。  しかしながら、水産業協同組合法の百二十二条に、報告徴収が規定されておりますね。この除名処分が法令に違反する不法、不当であるならば、法第百二十二条を適用して速やかに――行政庁として、定款を守っているかどうかを知るために必要な報告を、日本遠洋旋網漁業協同組合から徴すべきであると、百二十二条には報告徴収の規定がなされておりますけれども、この除名処分という重大事にかんがみて、もうすでに報告を受けておるから、農林大臣として、この問題についてはそういうことは必要ないというふうに考えられますか。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、最終的に水産庁の報告に同意したわけでございますが、水産庁は、法令違反であるかどうかということについては、行政官庁として、非常に慎重に検討をした結果であることはもちろんでありますし、その手続についても万全を期して、その結果こういうふうな判断になったものである、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  135. 小宮武喜

    小宮分科員 この問題はまた次にやりますから。  次は、日本旋網漁業生産調整組合の生産調整事業をめぐって紛争しておる問題について、農林大臣の姿勢をひとつ質問したいと思うのです。  安倍農林大臣は、二月七日付水海第五一三号をもって、「大中型まき網漁業の認可に制限または条件を付することについて」という通達を出し、去る十四日に、福岡市で聴聞会を開催しております。  その内容は、三月一日から作業艇の使用禁止、運搬船の隻数を一統につき三隻以内にするということであります。  しかし、日本旋網生産調整組合は、現在、調整規程の実施中でありまして、この調整規程は昨年十月四日付で、当時の倉石農林大臣が、組合からの調整規程の一部変更の申請に基づいて、公正取引委員会と慎重に協議をして、認可されたものです。この調整規程は、昨年の十月三日からことしの四月三日までの期間でありますが、現在この調整事業は約五カ月間実施されて、あと一カ月を残すのみになっておるわけです。こういった生産調整事業の目的について、私はこの農林大臣の認可に対してはかなり反対をしてきました。本来、こういうような作業艇の禁止、運搬船の制限というものを、調整規程でやるのが妥当かどうかということを主張して、反対してまいりましたけれども、それは今回は別として、現在実施中の生産調整規程と同じ内容のものを、今度は農林大臣は、漁業法に基づいて制限ないしは条件を付することを実施したわけです。としますと、昨年の倉石農林大臣から安倍農林大臣にかわれば、前回倉石農林大臣が認可したこの調整規程が現在実施中にもかかわらず、安倍農林大臣は一カ月間ダブって、こういうふうな認可をすることが妥当かどうかということです。大臣はどなたにかわられようと、行政の継承の責任があるわけでしょう。それを、倉石農林大臣が認可して、四月三日まで実施中のところを――まあ四月三日を終えて、また大臣が新しく今回のようなものを出すならば、それはそれとして理解できるとしても、まだ実施中のものをなぜしたのか、大臣いかがですか。
  136. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回、東海黄海を操業区域とする大中型まき網漁業の許可につきまして、新たに制限、条件を付することとしたのは、最近アジ類資源の水準が極度に低下をいたしまして不漁になっておることに対処して、その資源保護によって、貴重なアジ資源の今後における安定供給を確保することを目的としたものであります。  一方、日本旋網漁業生産調整組合が実施している生産調整は、サバの多獲による魚価の低落を防ぎ、漁業経営の安定を意図したものであり、今回とることとなった制限措置とは本質的に別個のものである、こういうふうに考えておるわけでございまして、当海域におけるアジ資源の実情から見て、産卵盛期前に保護する必要があるため、漁獲努力の制限を内容とした措置を、三月一日から実施することに踏み切ったものでありまして、制限を付するに当たってとるべき法的手続を経て実施するものであるので、これは関係漁民の納得は十分得られておるものと考えておるわけでございます。
  137. 小宮武喜

    小宮分科員 大臣のそういうような認可理由は、私も知っておりますよ。制限または条件を付する理由として、東海黄海において大中型まき網漁業漁獲対象としているマアジ、マルアジについて、近年における漁獲量の推移及び資源に関する調査の結果から見て、資源の再生産を維持していく上で好ましくない状態になっておる、こう言っておる。しかし大臣、大中型まき網、あぐり網によるアジ類の漁獲量は、好ましい状態であるとは私も考えておりません。それは四十七年の年報によっても明らかになっておるわけです。読み上げてもいいですよ。しかしながら、かかる状態は、昨年の十月、調整規程を認可したときの時点と同じです。同じ時点のこの資料に基づいて調整規程の認可をしながら、まだ実施中にもかかわらず、突如としてこういう強権が発動された真意がどうしてもわからぬ。だからもっと納得のいく説明をしてください。――長官はだめだめ。それを認可した責任は大臣だから……。
  138. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 具体的な説明につきましては、水産庁長官から答弁させます。
  139. 内村良英

    内村政府委員 ただいま大臣から御答弁がございましたように、アジとサバとは全然違うわけでございまして、アジの資源が非常に減ってきたということで措置をとったわけでございます。そうすると、なぜ急に三月一日にとったのか、去年の十月ごろから統計その他を見ればわかっていたじゃないかということでございますが、御案内のように、三月、四月はアジの産卵の盛期でございます。したがいまして、産卵盛期前に措置をとらなければならないほど緊急性があるということでございます。
  140. 小宮武喜

    小宮分科員 冗談じゃないです。去年の農林水産委員会で、十月三日から四月三日までの認可をしたときは、私が質問して、倉石農林大臣は、十月から盛漁期に入りますから、認可をしましたと、こう言っているわけです。しかし私は、そのことより、少なくとも倉石前農林大臣が認可したものを、後になられた大臣がまたさらに否定するかのような、同じ内容のものを、さらに今度は漁業法によって制限、条件をつけることについての問題をお聞きしておるわけです。したがって、これは農林大臣、そんなことはあなた十分承知の上でしょう。  長官、あなたはだめだめ。大臣、この組合の設立を認可した責任者であり、あなたが、たとえば幾ら大臣にいろいろ進言したとしても、最終の認可の決定権は大臣にあるのだから、その認可した責任において、大臣の答弁を願いたい。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 倉石大臣の場合はサバについての制限をしたわけでありまして、私の場合はアジでありますから、その辺は違いますし、まあ、私は水産庁を全面的に信頼して、水産庁を……(小宮分科員「水産庁はあなたじゃないの」と呼ぶ)いや、もちろん大臣として、水産庁がやってきたことに対しましては全面的に信頼をしておるということは、この際はっきり申し上げておきます。
  142. 小宮武喜

    小宮分科員 これはなかなかかみ合わぬですが、私はまだ次の機会にゆっくりやりたいと思います。  私は時間も非常に守る方ですから、それではもう一つ質問しておきますけれども、実施期日の三月一日からというのも、それも二月十四日に聴聞会を開いて、三月一日から実施するというのは、たとえばその船の安全性の問題、この問題はまた別途やりますけれども、やはり船の削減をしなければいかぬわけです。そうしますと、そこの従業員をどう配置するか。生産調整組合法の第十八条に、従業員に対する配慮ということがはっきりうたわれてあるわけです。それを突如として、何をあわてて、二月の二十四日に福岡市で聴聞会を開いて、三月一日から実施するということをしなければならぬのか。これは農林大臣は、水産問題については一番精通しておられる方ですからね。わかり過ぎておりながら、こんなことをするというところに、農林大臣の何かがありはせぬかと、いずればらしてもいいですが、私は思っておるのだが、それは別として、十分そういうような期間を与え、あるいはこれは中央漁業調整審議会もあります。これは一部的なものだと、皆さんに逃げられるかもしれませんが、しかしこういうようなことをやる場合は、やはりこういうような調整審議会を開いて、十分慎重を期するという態度が必要であり、また、これは従業員を解雇するわけですから、そういうような者に対して配慮する期間も全然与えずに、三月一日から実施するという、その強硬な姿勢がどうも納得できぬ。大臣、いかがですか。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は水産問題も勉強してまいりましたけれども、しかしこの問題につきましては、農林大臣として、あくまでも公正な立場で対処したつもりでございますし、それからこの手続につきましても、別に強行したとかなんとかいうことは全然ない、いままでの慣例等に従って、十分手続を踏んでやった、こういうふうに理解しております。
  144. 小宮武喜

    小宮分科員 それじゃ、もう最後に一つだけ。  漁業許可の一斉更新制度との関係ですが、これは指定漁業の許可の有効期間を五年として、また「同一の指定漁業については同一の期日に満了するようにしなければならない。」ということが、漁業法第六十条に明記されておるのです。しかるに許可の有効期間中に――現在の許可は昭和五十二年までですが、今回のような措置を強行することは、許可制度の運用上特別なケースである。その問題、非常に疑義があるところですが、こういうような漁業許可制度との関連においては、どういうふうに説明するのか、大臣、最後にひとつお答え願って、次のいろんな問題は、次回の農林水産委員会で、またげたを預けてやりますから……。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 指定漁業につきましては、漁業法第六十三条が同法第三十四条を準用しているのは、許可期間の途中において、漁業調整その他公益上必要がある場合に、制限または条件を付すことを予期したものであります。実際にも、許可期間中に制限または条件を付した例は少なくない、こういうふうに考えるわけであります。
  146. 小宮武喜

    小宮分科員 これで質問を終わります。
  147. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて小宮武喜君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十五分開議
  148. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  正示主査が所用のため出席できませんので、その指名により、私が主査の職務を行います。  農林省所管について質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広沢直樹君。
  149. 広沢直樹

    広沢分科員 私は、まず大きく言いますと二点について、農林大臣並びに当局にお伺いしておきたいと思います。  まず第一点は、昨年の十二月十八日に事故を起こしました、いわゆる三菱石油水島製油所における重油流出に伴う事故の問題についてであります。この事故によりまして、岡山県、そして香川県、徳島県、兵庫県のみならず、また紀伊水道一円に、広範囲に重油が流出して、それぞれ大きな被害をもたらしておるわけであります。この問題につきましては、農林大臣も現地に参られておりましたし、つぶさにその実態というものを掌握されて、その後の対策に取り組んでおられたやに承っておりますが、こういったものは、物的の被害の問題だけではなくて、精神的打撃というものも、これは非常に大きいものがあるわけであります。特にこういう沿岸漁業の問題につきましては、こういった地域には、御存じのように、赤潮の問題がございまして、特に水産庁が推奨しておりました養殖漁業、こういったものも壊滅的な打撃を受けて、裁判になっている問題もございます。それに加えて今回、こういうような事故を起こしているわけであります。この地域には、御存じのように、瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定されて、環境保全に努めているわけでありますけれども、こういった事故が起きるということによって、幾らそういうふうな環境の保全というものが論じられたとしても、今回の事故によって、皆無に等しいというように、結果的にはなってきているわけであります。  こういった面から、この沿岸漁民の不安というものは、この事故の問題が一応処理されたとしても、地域的には、産業開発の地域でありますし、沿岸漁業との関係においては、将来ともに不安を持っているわけでありますが、こういった面をまずどのように考えていくのか。沿岸においては、地域開発ということでどんどんこういったような企業が進出してくる、そうして、よもやと思われたこういった不測の事故が起きてくる、こういうようなことを考えてまいりますと、もはやこういった地域の沿岸漁業というものは将来安心してできない、こういう問題があろうかと思います。仮にこれが十分な補償がなされたとしても、それは、補償というのは結果的に当面を補ったにすぎないのでありまして、将来にわたっては何ら解決されていないわけであります。そういった面について、最も事故によって被害を受ける漁業の所管庁であります農林大臣の所見を、まず伺っておきたいわけであります。
  150. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 昨年の暮れに、水島コンビナートの油流出事故が起こりまして、瀬戸内海の沿岸漁民に甚大な被害を与えたわけであります。  私も、昨年の暮れに現場を視察いたしまして、その惨状に驚くとともに、漁業者の皆さま方からの悲痛な声を聞いたわけでございます。その後、補償の点につきましては、三菱石油との間に補償交渉も進んでおりまして、すでに相当な補償金も支払われており、さらに、操業につきましても、実は心配をしておったわけでございますが、一部を除いて、大体ほとんど操業が再開されておるというわけでございます。しかし、いま御指摘がございましたように、沿岸漁業者に与えた心理的影響、今後の不安というものは非常に大きいものがあるわけでございます。こういうふうな事故が二度、三度というふうに起こってくれば、瀬戸内海の漁業はもう壊滅するというふうになるわけでございまして、そういうことから、政府全体としても、こうした事故防止、防災対策につきましても、いままでの対策等につきましても十分でなかったという点について反省もいたしまして、現在これが防災のための総合対策を樹立するための努力を続けておりまして、また、法律案として国会にも出す予定になっておるわけでありますが、私、農林大臣としても、こうした事故が二度と再び起こらないような防災対策というものをまず確立をしていく、これはもう農林省だけの問題ではないわけでありますが、これを確立していくということに力を尽くしていかなければならぬことは当然であると思います。  同時にまた、この瀬戸内海における漁業の重要性、今日の世界的な漁業資源の厳しさから見まして、日本全体では沿岸漁業の中で四分の一の漁獲量を上げているのが瀬戸内海でございますから、瀬戸内海の漁業というものに対しては、大変な期待を私たちは持っておるわけでありますから、今後はこうした防災対策を強化するとともに、瀬戸内海の沿岸漁業者の皆様方に、さらに自信を持って働いていただけるような漁場の造成、あるいは栽培漁業の充実といったものにつきましては、ひとつ積極的に取り組んで、施策を強化してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  151. 広沢直樹

    広沢分科員 農林大臣としては、その事情を掌握されて、今後の対策に万全を期していくということでありますが、こういった事故を振り返ってみまして、いろいろな問題が今回指摘されたわけであります。  そこで、各関係市町村においては、国に対する要望書を出しております。私にも、徳島県の町村会の方から、今回の事故を反省しながら、こういうような対策を講じてほしいという要望書が来ておりますので、現地の声としてそれを聞きながら、この対策をどう立てていかれるのか、ひとつ具体的に伺っておきたいと思うのであります。  まず当面の問題でありますが、今回の事故で、一つ大きな反省をしなければならないことは、このそれぞれの事故の範囲が広域に及んだということもありまして、多様性を持っておったということ。ですから、行政府の各所管もいろいろな面に分かれておった。そういう関係で一元的な施策がとれなかったというところから、非常に手おくれになってきたのではないか。  そこで、当面の処置としても、そしてまた今後の恒久的な処置としても、当然いま私が指摘申し上げましたように、あの地帯は確かに産業開発でどんどん進んでおりますし、そしていま大臣もおっしゃったように、四分の一にも達するほどの相当重要な漁場でもあるわけでありますから、それに対しては、常時こういう体制、一元化された防災体制といいますか、いわゆる地方公共団体あるいは企業すべてを含めた、そういう対策本部というものを常設しておく必要があるのではないか。  大体これは、防災対策一般について申しましても、災害が起きるたびに、それぞれの府県におきましては、災害対策本部というのができるわけであります。しかしこういった場合は、そういう災害が起こってから対策本部を急遽立てるので、あるいは起こる直前に予報、警報が出てあわてて立てるというようなことでありますから、未然に防げる事故並びに災害というものも、結局はおくれてしまうという結果になるわけであります。  今回の事故についても、これは端的にそのことを物語っていると思うのです。事故が起きた後においても、それぞれの対策本部ができましたけれども、国の総合的な対策を立てる部門の方が非常におくれてきた、こういうことを言われておるわけでありますが、その点について、地域としては今後の問題もありますし、将来の不安も解消する意味から、常時そういうような体制をとって万全を期していっていただきたいという要望があるわけでありますけれども、その点についてはいかがお考えでありましょうか。
  152. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この防災のための総合対策を立てるということにつきましては、政府部内におきましても、水島事故の反省の上に立って、これを進めておるわけであります。現在自治省を中心にいたしまして、関係各省協議をいたしておりまして、これが対策の樹立を急いでおるわけであります。  その対策の中におきましても、いまお話のございましたように、事故があったときには直ちに即応できるような体制をつくり上げていくということも一つの課題になっておりますので、私たちとしても、そういう対策が一日も早く立てられまして、そして事故に直ちに対応できるようにならなければいけない。いままでのやり方が、どちらかと言いますと、行政の縦割り的な関係の中において、即応体制がとれなかったということも、一つの反省点でございますから、そういう点は関係各省で十分協議して、万全を期していかなければならぬ、こういうふうに思います。
  153. 広沢直樹

    広沢分科員 もちろん、いま大臣のおっしゃるように、農林省だけの所管ではございませんで、各省庁との連携は必要だと思いますが、特に将来においても、一応こういう事態があるということは、全然事故が皆無であるということも言い切れないと思うわけです。ですから、備えあれば憂えなし、したがって、十分なるそういう一元化された対策が直ちに打てるような施策というものを、十分に前もって講じておく必要がある。被害を受けるのはやはり漁民であります。漁業であります。ですから、そういう意味におきまして、最も被害を受けていく、そういうものを救済していかなければならない立場にある農林省としては、各省庁と連携をとって、こういう対策を、監視体制というか、協議体制というか、そういうものを常設しておく必要がある、こういうふうに考えますので、その点を強く主張しておきたいと思います。  その次に、今度は、漁業関係被害者等の救済措置の問題でありますけれども、これにつきましても、本会議でも、三木総理、またそれぞれの所管におきましても、この責任についてはいわゆる企業側にあるから、企業が全面的にその被害の救済に当たるようにということを当局も指導するということは明言されております。これは当然のことでありますが、その状況はいまどういうふうになっておるのか、簡単に説明してください。
  154. 内村良英

    内村政府委員 三菱石油からの漁業補償の内払い金の状況でございますが、現在までに五十四億、さらにそれに十億プラスいたしまして、六十四億内払いが行われております。  岡山県は、県漁連は、五十四億のうちの岡山県の配分につきまして、二月十七日に単協に支払いを行っております。それから児島地区の漁協は配分について現在協議中でございます。香川と徳島県はかなり慎重な態度をとっておりまして、日本海事検定協会の調査結果を待って、個々の漁協に配分をしたいということで、漁連が現在持っております。そうなると、被害を受けた漁業者が困るのではないかということでございますが、いわゆるつなぎにつきましては、清掃防除の経費が三菱石油から払われておりますので、それでつないでいるということでございます。兵庫県は、二月八日にすでに単協に支払いを終わっております。  なお、五十億以外に、二月二十日に四県の漁連に対しまして十億支払いがあったわけでございますが、これはまだ、各関係四県に配分されずに、香川の漁連が窓口となってこれを保管しておる、こういう状況になっております。
  155. 広沢直樹

    広沢分科員 いま第一次内払い、あるいは第二次内払いの合計の話だったと思うのですが、そこで、この内払いというのは、大体被害総額がどこまでだということは、まだよくわかっていないのだろうと思うのですね。そこで、いま問題になっておりますのは、当面のその被害と、それから、将来起こると予想される第二次とか第三次ですね、そういう被害、こういった問題につきましても、当然これは問題を起こした側に責任があるわけですから、支払わなければならないと思うのですが、その点については、当局はどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  156. 内村良英

    内村政府委員 現在いろいろ海底状況等について調査中でございます。それから、いわゆる後遺症が出てまいりまして、明らかに三菱石油の流出事故による後遺症というような場合には、当然三菱石油に対して請求すべきものというふうに考えております。
  157. 広沢直樹

    広沢分科員 そういうことになりますと、いま三菱石油と各漁連は、直接交渉をいたしております。それについて、企業側も積極的に応ずるということも言明をいたしておりますが、そこで政府は、企業の方に、全面的にきちっと完全補償しなさい、その指導だけではならないと思うのですね。一つには、やはり国の責任があります。その中で、漁業関係者が受けた被害はそういうふうに当然補償されるでありましょうが、当面している問題として、いわゆる金融の措置の問題だとか  あの赤潮対策のときも問題になりましたけれども、相当借り入れを起こしてやっている。ですから、そういうような災害が起こってまいりますと、その返済にも非常に困る、利払いにも窮するというようなことで、大変な問題が起こってくるわけであります。そういった面は当然国が具体的にめんどうを見て、生計が立つ、いわゆるこの漁業が完全にもとに復してできるまでは、全面的にめんどうを見てあげなければならない。所管であります農林省において、それは当然考えなければならぬことであろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  158. 内村良英

    内村政府委員 その点につきましては、事故が起こりました直後において、国として、そういう措置をとらなければならないのじゃないかというふうに考えたわけでございますが、漁連と三菱石油との話し合いの結果、いわゆる内払い金がかなり早く出たということもございまして、しかも、個々の漁業者につきましては、いままで出た清掃防除費が十日ごとに入っておるということで、そう資金繰りに困っておるというような状況ではない、というふうな報告を受けております。  なお、本当に困ったようなケースにつきましては、もちろん国としてしかるべき対策をとらなければなりませんけれども、現在、関係県からは、その点につきましての要望は余り聞いておらないところでございます。
  159. 広沢直樹

    広沢分科員 今後、二次災害とか三次の問題だとか、いろいろ出てまいりますので、そういった総合的な見地から、いま直ちに要望があるなしにかかわらず、当然国として、できるだけの対策は、今後も要望があり次第それに応じていく、こういうふうに理解してよろしいわけですね。  それでは、時間がありませんので、もう一つの問題、いわゆるミカン対策の問題について伺いたいと思います。  ミカンの問題につきましては、昨年のいまごろといいますか、ちょうど一年前に相当予想された――温州ミカンでありますけれども、数量がオーバーしていくのではないか。そこで、四十三年の大暴落がありましたし、それから四十七年、四十八年と非常に価格が不安定であったという関係もあって、さらに予想を上回る生産が見込まれるということで、その危機対策ということが盛んに叫ばれたわけであります。最近の状況を見ますと、そういう心配したことが、具体的な結果として出てきたのではなかろうかと思うのですが、現在どういうふうになっているか、簡単に説明していただきたいことと、それから、このことは、今後の計画を見ておりますし、あるいは現実の状況から考えましても、やはり相当数量今後も増加していくということが考えられる。当面問題になったのは、その急激に増加することと需要とがマッチしないという問題、そこに需給のバランスが崩れるから価格が不安定になるということで、その被害を生産農家が受ける、こういうことになっているわけですね。もちろん、安いミカンが市場に出回るということについては、決して反対でありません。消費者にとっては、これ以上のことはありませんけれども、しかしながら需給のバランスが崩れているということは、明らかに、いずれかのときにはまた暴騰するということもあって、需給が非常に安定していないということは、物価面から言っても好ましいことではありません。そういう面から、今後の計画といいますか、そういう点をひとつ簡単に説明願いたいと思います。
  160. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、前段の御質問の、現状はどうかということでございますが、御指摘のように、昨年のいまごろにおきまして、四十九年産は、面積の増加あるいは収量の増加、さらに表年でございますから、ほっておきますると四百万トン程度の生産になるのではないかというふうに予想をされたわけでございます。そういたしますと、ただいまお話しの四十七年をも上回る生産量ということで、価格の大暴落が懸念されたわけでございます。したがいまして、これに対処するために、生産者及び生産者団体が自主的に摘果をやろう。摘果によって一つは品質をよくする、あわせて生産をコントロールするということでございまして、自主的に摘果運動をする。それに対しまして国も助成をいたしまして、摘果を行ったわけでございます。かたがた、作柄が当初予想ほどはよくなかったということもございまして、生産量は、当初は四百万トンになるのじゃないかというふうに想定されておったのが、十二月現在の統計情報部の発表によりますと、三百四十二万トンということでございまして、四十八年産とほぼ等しい、四十七年よりは減少しているということでございまして、その結果品質がよくなったこともございまして、価格はかなり好調でございまして、四十七年は六十円ちょっと、四十八年は八十円ちょっとでございましたが――これは卸売市場の価格でございますが、それに対しまして百円ないしそれより強含みという事態でございまして、いわば当面の危機は乗り切ったというふうに思われるわけでございます。しかし、御案内のように、これはこういった摘果という、生産者にとりましては大変な努力と申しますか、つらい思いをして、辛うじて乗り切ったのでございまして、このままに推移しますれば、もちろん需要も今後伸ばさなければなりませんが、やはり何としても、これは供給過剰になると見込まれるわけでございます。したがいまして、何としても需給バランスをとるために、一時的な摘果だけの手段ではございませんで、もっと広範な施策をとる必要があるということでございまして、そのため、今後の生産動向を見まして、一つには新植の抑制をする、さらに改植も推進する、さらに、基金を設置いたしまして、生産から出荷、流通、加工にわたりまする総合的な対策を講じていくということを基本方針といたしまして、五十年度予算にその柱を打ち立てているわけであります。
  161. 広沢直樹

    広沢分科員 そこで、農林省の計画を見ますと、果樹農業振興基本方針、四十七年の三月に公表されているものによりますと、これは四十七年を初めとして五十六年までの見通しが出ておりますが、これによりますと、ミカンの場合は四百二十三万八千トンですか、そういうふうな生産目標になっております。それからまた、五十年一月の農産物の需要と生産の長期見通し(案)によりますと、これは四十七年を初めとしておりますが、六十年度には四百五十三万八千トン、四十七年から比べると約百万トンふえる。ちょうど四十九年というのは、その間に急激に生産が上昇してきているわけでありますけれども、この五十六年にせよ、六十年にせよ、これだけ相当な、四百五十万トンにふえていくということに対する需給の見通しというものははっきり立っているのかどうか。今日、四十九年にあれだけ大きな危機感を持ったということは、そのバランスがとれていないというところに問題があったから、ああいうことになってきたんじゃなかろうかと思うのですね。それと統計がちょっと違っているわけです。ですから、その点をひとつ御説明いただきたいということであります。  時間がありませんので、まとめて申し上げますけれども、生産農家にしてみれば、需給の見通しの安定していないということは、非常に心配であるわけなんですね。一生懸命生産に励んでも、結果的にはああいうような、減産しなければならぬというようなことになってまいりますと、増産されていくということ自体、農家の方々の努力でそうなっていくわけですから、それを今度はみずから締めていかなければ安定できないんだということになると、そこに大きな不安があります。その点の見通しを明確にしていかなければならないので、その点の説明をいただきたいということ。  それからもう一つは、今回大体三百四十万トンくらいに一応削減されてきて、危機は突破したじゃないか、こうおっしゃっておりますが、今度は、全国にいわゆる果汁の工場があります。これらの生食、いわゆる生で食べるものは、伸びがそう急激にふえるわけはありません。したがって、加工していくということに力を入れていかなければならぬはずですね。ですから、そういう面から考えていきますと、いま方々でやっておりますが、たとえば徳島県の場合にも、昨年新しく工場を産地に新設して、生産から加工まで、こういう一貫した近代的な農業の形態、理想的な形をとろうとしたのでありますが、現実にはいま相当原料が不足をして困っているという状況があります。これに対して具体的な対策はどうあるべきか。  私は、農業の基本的なあり方というのは、ただつくるだけではなくて、つくって第一次加工していくまでを、今後は農業の範疇で考えていかなければ、生産費の問題等もありますし、所得の保障という問題もございますから、やはりそういうことは必要ではないかと思うのです。そういう一つのいいあらわれとして出てきている問題が、こういう状況の中で早速行き詰まってしまう。将来が不安でしようがないというような片手落ちの施策では、どうにもならないわけであります。その点、時間いっぱいでありますので、ひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
  162. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず第一点の、需給見通しを的確にせいということ、私もまことにごもっともと存ずるわけでございます。  そこで、その場合、現在ございます果樹農業振興基本方針によりますミカンの五十六年の生産目標は四百十九万トンということでございますが、昨今の生産動向からしますと、このまま推移しますれば、これを上回るという見通しがあるわけでございます。それからもう一つは、需要の見通しを今後どう見るかということでございますが、この場合、需要はいまの基本方針では四百十万トンから四百二十万トン強でございますが、六十年はもう少しふえるのじゃなかろうか。特にその場合ふえますのは、生食用は大体もはや人口増程度であろう、主として加工品、特にジュースを中心に伸びるのじゃなかろうかという想定をいたしまして、実はいま農政審議会で審議中の六十年の需給見通しにおきましては、ジュースを原料換算百万トンと見込みまして、全体の総需要を四百五十万トンというふうに見込んでおるわけでございまして、現在の情勢から、生食用及び加工用を合わせまして、この需要がまず的確な見通しであろうと私どもは思っておるわけでございます。  そうしますと、もう一つの問題は、その需要に合わせて生産の方を調整していく、供給過剰がないようにする、ということが必要でございます。そこでこれも、先ほどのように、放任すればすぐに生産が需要を上回るということでございますから、本年は辛うじて摘果で切り抜けたわけでございますけれども、基本的には、やはりもとの植栽の方からもっと調整しなければならぬということでございまして、そこで先ほどもちょっと触れましたが、新植の抑制と同時に、改植を進めていく、中長期のバランスをとるということが重要であろう。何と申しましても、永年作物でございますから、植栽の面から検討しなければならぬ。そのために、実は来年度予算におきましても、改植等の促進のための助成費、さらにそれから、改植農家は実がなるまでの期間所得がないわけでございますから、それに対するいわば経常資金の利子補給というようなことも組み込みまして、改植を計画的に進めていこう。その場合には、需要のある品種及び優良なる品種に切りかえる、そういった根っこの方から調整をとっていく。さらに年々の分につきましては、出荷調整とかいうことで、需給バランスをとるように考えているわけでございます。  そういたしまして、もう一つは、それに関連いたします加工の問題でございまして、御指摘のように、今後は生食用とあわせて加工を安定的に伸ばしていかなければならぬわけでございまして、加工の比率は、ジュース、かん詰め、合わせまして、六十年には約三割というふうに見ておるわけでございます。そういたしますと、加工業に対して安定的に原料は供給されることが必要でございます。そのために、現在でも加工原材料の価格安定事業をやっておるわけでございまして、一定の契約に基づいて出荷するものに対しましては、いわば市価と基準価格の差額を補給するという仕組みがあるわけでございますが、実は本年の場合には、生食用の価格が想定よりもよかったということもございますし、かたがた、ジュースの需要が昨今若干不振という面もございました。そういう両面ございまして、当初計画よりは実は下回っておるわけでございますが、これはやはり両面から、加工原料用も安定していく。農家にとりましては、単に生食用に出せばプラスというだけではございませんで、両者あわせて考えていく。そういたしまして、加工工場にも原料を安定的に供給する。両々相まっていかなければならぬということでございまして、ことしの経験も踏まえまして、さらにこの制度が適確に運用されるように、今後進めてまいりたいというふうに考えております。
  163. 広沢直樹

    広沢分科員 時間が過ぎたのですが、いまお伺いした一つは、加工工場の問題について、現実的にはそういうそごを来して、最近非常に心配されておるわけです。そういう生産、加工という一つの過程におけるいろいろな問題が出ておるわけなんですが、それに対して、何か具体的な施策がないわけですか。
  164. 松元威雄

    ○松元政府委員 実は本年の場合、かなり悩みがあるわけでございます。と申しますことは、生産農家にしますと、生食用が有利である。ところが、そう言ってせっかく契約したものを、勝手に生食用に流したのじゃ加工工場は成り立たない。しかも加工工場のほとんどは農協系、生産者がみずから出資した工場でございます。したがいまして、そこのところを、いわば農協系統はコントロールして、両者がマッチするようにしていかなければならぬというわけでございます。  そこで、この制度の運営について、本年具体的にどう調整してまいるか、契約との関係もございますので、なかなかむずかしい問題がございますが、要はもっと計画的に、本来経済連あるいは園芸連、それと単協、そこらの問題でございますから、生食用の出荷と加工用の出荷の調整をぴちっとしてもらわなければいかぬわけでございまして、ことしの場合は当初見込みより減りましたけれども、施設能力に辛うじて追いつく程度ということで、経営はかなり苦しいと思いますが、しかし来年を考えますと、両者が安定的に伸びるようにしなければならぬということで、出荷調整をより適確にやっていくように指導もしてまいりたいと思います。
  165. 広沢直樹

    広沢分科員 時間ですので、終わります。
  166. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて広沢直樹君の質疑は終了いたしました。  次に、庄司幸助君の質疑に入ります。庄司幸助君。
  167. 庄司幸助

    庄司分科員 私は、農地の拡大の問題、特に農地利用の高度化の問題についてお伺いしたいと思います。時間があれば、あとパイロットの問題で、若干御質問したいと思います。  いま、食糧の自給率の向上の問題は国民的な課題でもあり、また世界的な課題にもなっておるわけですね。それと関連して、農民の生産意欲が最近とみに低下してきておるという大問題もあるわけです。これはいずれも農政のかなめになる問題でありますから、そのため農地の拡大と言った場合、量の面と質の面と、二つ側面があると私は思うのです。一つは、山間部とか里山の開発とか、こういった絶対面の拡大の問題があると思うのです。もう一つは、平場地帯における質の高度化といいますか、同一農地の高度利用の問題があると思うのです。  それで、まず第一番目に御紹介したいのは、これは私の地元の新聞に載った県の当初予算の農政面の紹介なんです。「来年度の県農政の柱は〃ロマンとメルヘン〃」「〃牧歌農業〃目指す」こういう表題ですね。その内容ですが、「県の計画はまず「生産と生活の調和」。農業労働力は農業内で完全燃焼させようというもの。」これはいままでも大問題になっている問題ですね。内容としては「空き地、遊休地を利用して自家用野菜やミソの原料の大豆を生産する。」とか「庭先には鶏を飼い卵をとる。」とか、それから「水田の裏作を進め、畑の輪作体系も整備して利用度を高める。」さらには比較的ひまな冬季間の対策として、地織りとか竹細工とかワラ細工の問題を述べています。一方、資源再利用として、裏山の雑木林なんかに家畜を放牧して、それで土地の有機化も図っていく。それから「畜産団地と耕種農家、養鶏場と果樹団地を直結させ、フン尿とワラでたい肥を生産して田畑にまく。」あるいは老人のために一頭ないし二頭の牛なんかを与えて、河原で遊牧させて、ひなたぼっこもかねてもらう、こういった構想なんですね。  それで、私はこの県の農政の姿を見て、いままでの農政から発想の転換が、県段階で始まったんじゃないかと思って評価しているわけですよ。それはなぜかと言いますと、いままでの県の農政の柱というのは、これは膨大な「宮城県長期総合計画――新しいふるさとづくり」というのがあるんです。ふるさと、このごろ政府でも言い始めているわけですが、その中身を見ますと、こういうふうに書いてある。「本県農業の作目構成は、依然として米作に偏し、経営は零細で、このような体質の弱さが、周年就労」-年がら年じゅう労働者になって働け、まあ働くという問題ですね、「周年就労や大型機械の導入を遅らせ、農業の近代化と自立経営を困難にしている。」こういう叙述があるわけです。これが柱になっているんですね、ずっと見てみますと。そういう中で、いわゆる高生産性農業確立の目標として、農業就業者数、二十四万四千人が、六十年には十万ぽっきりに減らしてしまう。減らしてしまうと言うと語弊がありますが、減ってしまう。十四万四千人の農民が切り捨てられるかっこうになるんですね。切り捨てというのも、あなた方、抵抗があるでしょうけれども……。それから農家戸数も七千七百戸減る、こういうのが発想だったのですね。そうして農業労働力の流動の円滑化ということで、職業訓練所なんかをたくさんつくって、豊富低廉な労働力を提供する、こういうくだりがこの前の段階の計画にはあったわけです。こういった発想が、いわゆる新全総に基づいて書かれたわけですから、それがだんだん転換してきた。ですから、その点でなぜ転換したのかということになると、大体この構想自体、維持できなくなったのですね。出かせぎをやらせようと思えば、出かせぎ先がこのごろの景気の停滞でどんどんつぶれて、首切りが起こってくる。あるいは農村工場をせっかく導入してみたけれども、これがまた大量のレイオフやら首切りやら、中には倒産する工場がどんどん出ているわけですね。これは御存じのとおりです。その点で、こういった発想の転換が行われたのだろうと思うのです。これはしかし、私は、過ちを改むるにはばかることなかれという観点からいけば、支持できる内容だし、農民もまたこれを歓迎していると思うのです。  ところがこの予算の面を見ますと、新聞にこう書いてあります。「計画は結構だが」いわゆる無機型農業、これを有機型農業にしていくのだという構想ですから結構ずくめだが、有機型農業の予算はたったの五千五百万円だ、立案時点の五分の一にばっさり削られた。老人の牛飼いもたった四十頭に削られた、一人二頭持てば二十人分なんです。最後の方で「せっかく育てようと決心したメルヘンだ。手間と肥料を十分かけてほしかった。」と、こう皮肉たっぷりに結んであるのですね。これは私は非常に残念だと思うのですよ。  私は、何も自民党の県知事だからといって、いいことをやるのには私も支持するわけですから、私の選挙公約もそのとおりですから。その点で、この構想――農林大臣、私、恐らく農林省もこういう構想を持っておられるだろうと思うのです。だから県知事もこういう構想を立てる、その構想について、いわゆる三木農政と今度は言われるわけですから、担当する安倍農林大臣、どう考えていらっしゃるのか。支持して、政策化して、予算もつけて、これをどんどん進めるのかどうか、その辺、大臣から簡単に御所信を承りたいと思います。
  168. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、やはりいままでの高度成長下における農業から、低成長下といいますか、安定成長下における農業ということに、大きく日本の経済路線も転換していくわけで、そういう中にあって、農政も確かに客観的に転換の時期に来ておる、こういうふうに思うわけでありますし、いま御指摘のような発想の転換ということも、これからやっていく必要がある、こういうふうに考えるわけであります。  そういう点で、いまお話がございました県の農政のあり方につきましては、私は非常に結構なことではないかと思うわけでありますし、わが国全体の農業も、そういうふうな一つ発想の転換的な立場に立って、路線を引いていくということは必要なことではないだろうか。農林省予算としても、十分ではございませんけれども、無機型の農業から有機型の農業をやはり指向するための予算措置もとっていくわけでありますし、いま畜産の話が出て、老人に余暇を利用して牛を飼育させるということにつきましても、今回新しい試みとして、農林省予算では二千頭ということで、そういう予算をつけたわけでございますし、裏作の活用等も大いに行って、農業の生産と農家の生活の調和も図っていく。いろいろといまおっしゃられたような構想につきましては、農林省としても、施策の中にも取り入れておりますし、今後とも、いままでとは違った、農村の農家の方々がやはり農村に定着していく、そうしてまた、生産意欲が高まっていく、そのための、これからの農業施策というものを展開していきたいものだ、私もそういうふうに思います。
  169. 庄司幸助

    庄司分科員 私はせっかくいい芽が出てきたと思うのですね。この芽にやはり十分水をかけ肥料をかけて、ひとつ大木に育ててもらいたい。そういう観点から、きょうは時間がございませんから、いろいろな問題はあるわけですが、しかしきょうは裏作の問題で、集中的に御質問したいと思うのです。  一つは、裏作の技術の問題があるわけです。たとえば、いわゆる麦の裏作をやる場合、これはやはり北限がいまの技術ではあるだろうと思うのです。しかし、米の歴史を見てもわかるように、米の北限がどんどん上昇して、もう北海道までつくれるようになった。だから私は、技術と科学の英知を集めれば、裏作の技術だって北限がどんどん上昇するだろうと思うのです。あるいは北は北なりの裏作のあり方、これがやれると思うのです。その点で、裏作の技術の研究開発、これは農林省でおやりになっているだろうと思うのですが、その点やっていらっしゃるのかどうか。それから、宮城県あるいは青森あたりまで含めて、麦とか牧草とか、そういったものの裏作がやれる確信を農林省はお持ちになったかどうか、その辺まず簡単にひとつお伺いしておきます。
  170. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 土地の高度利用という面からいたしましても、やはり裏作を活用していくということが今後の農政の大きな柱であるわけでありまして、麦につきましても、裏作可能な面積は、現在でも百万ヘクタールあるということでありますが、しかし、実際に裏作が行われているのは二十四、五万ヘクタールということでございますから、この裏作をさらに活用することによって、わが国の食糧の自給力の向上にこたえていくことができるんじゃないか、こう思うわけですが、いまおっしゃいましたような、裏作をやる場合の技術の問題がやはり大きくあると思います。たとえば、作期をどういうふうにしていくかというのは、まず非常に大きな問題でございまして、現在農林省でこの点につきましても研究をいたしておるわけでございます。この点については、局長からも答弁させます。
  171. 小山義夫

    ○小山(義)政府委員 研究面の問題を簡単に申し上げたいと思います。  項目、大きくは大体三つございまして、一つは、麦をどこまでわせ化できるかということで、麦の極わせ品種の育成をいまやっております。現在最も普及をしております農林六一号に比べて、五日ないし七日熟期を早くする品種ができております。しかし、これは主として西の方に向く品種でございますので、いま御質問がありました東北南部等につきましては、なかなか小麦が入りにくくて、むしろ大麦を主体に考えなければいけないという問題がございます。それから、麦だけでは問題が解決いたしませんので、水稲を遅く植えるという工夫が必要でございます。それで、いま稚苗の移植が非常に普及をしておりますけれども、研究面では、中苗、さらには進んで、でき得れば成苗の移植の技術の確立を目指しております。なおもう一つ問題がございますのは、そういう二つの研究を進めて技術が確立をいたしましても、特に東北等非常に裏作導入の条件のむずかしいところでは、毎年夏には稲をつくり冬には麦をつくるということでは、なかなかむずかしい地域がございますので、二年三作といったような形で麦の導入をやっていくというふうな工夫もさらに必要であるということで、そういう二年三作なりあるいは五年三作というふうなことで、いま技術体系、作付体系の確立を目指しておるというわけでございます。
  172. 庄司幸助

    庄司分科員 実は東北大の農学研究所で若干の研究をやっているわけです。農民もこれと協力してやっている個所もあるわけです。そこでは、たとえば牧草ならイタリアンライグラスですね、これで大体平均は反当五トンから六トンくらいですが、それが八トンくらいまでとれているところもある。あるいはまた、大麦についても、ハヤチネムギであるとかリクゼンムギ、これもやはりいま反当七俵くらい実績は出ている。そういう点で、これはその土地に見合った裏作の作目ですね。それと米の品種の問題もありますが、これはあとで伺います。この辺の研究を、ぜひひとつ農林大臣予算もたっぷりとって、人もたっぷり配置して、おやりいただきたいと要請しておきます。  それから次は、裏作を進めるに当たっての援助の問題ですね。麦をつくれば麦の奨励金が、小麦で二千円とか大麦で千八百円とかついていますが、これをもう少し範囲を拡大していく問題、やはり価格体系の問題がどうしても裏作の条件一つになりますから、そういった価格の問題とあわせて、土地の改善をやらなくちゃならないのですね。暗渠であるとか明渠であるとか、たんぼを干さなければならないわけですから、こういった問題に対するやはり助成の問題ですね。この二つをあわせて、いわゆる裏作奨励体系といいますか、あるいは裏作奨励金と、金の面では言ってもいいのですが、その辺ぜひ実現していただきたいと思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか。
  173. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 裏作につきまして、基盤整備に対する助成あるいは価格、所得についての助成、そういったものを含めて、総合的な奨励制度というものをつくったらどうかという御意見でございますが、私も確かにこれは一つの御意見であろうと思うわけでございます。しかし現在、農政の立場から見ますと、作物によりまして、国民生活あるいは農業生産に占めるウエートも異なっておりますし、また増産の必要度や優先度に、奨励金の場合につきましては、大きな差異もあるわけでございます。経営ごとの経営条件、立地条件に当然のことながら差異もあるわけでございますから、そういうふうなことをいろいろと勘案をいたしますと、画一的に、総合的な奨励制度をつくるということにつきましては、私としては現在、農政を進めていく上におきましては、いろいろと難点があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  174. 庄司幸助

    庄司分科員 私も画一的では困ると思うのです。しかし、やはり総合的なものはつくらなくちゃならないだろうと思うのですよ。これは時間もありませんから、ここで論争いたしませんが、ぜひ裏作、せっかく土地の高度利用、これは大臣も目指していらっしゃるわけですから、これが進むような予算措置、それから助成措置、それから技術開発、これをぜひ進めていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 裏作の奨励について、総合的に、基盤整備、土地改良あるいは奨励金制度、そういうものを含めた総合的な対策を進めていくということについては、私も全く賛成でございます。それをやらなければ、裏作の拡大はできないものだと私も思います。
  176. 庄司幸助

    庄司分科員 これは五十年度予算の運用と、それから五十一年度の予算設定にあたって、ぜひ考えていただきたい、これは強く要望しておきます。  それから、次の問題は、裏作に当たって、西の方は比較的温度も高いですから問題はないにしても、北の方になりますと、どうしても米の成育期の問題もありますから、品種の問題が当然絡んでくるわけですね。実験的にやられておりますところを見ても、せいぜい大麦で五日ないし七日の短縮、これはできるのじゃないかという話もあるのですが、しかし私どもの宮城県の場合、自主流通米制度が入り、それから生産調整の問題もありました。それから銘柄米の問題もあるのですね。それでササニシキが圧倒的に全県下に普及した。ところがササニシキという品種は、確かに味はいいのですが、これは冷温に非常に弱いのですね。昨年でも、やはり冷害のためにいもちが大量発生して、それで大体二割見当の減産になっているわけですね。その点で、わせ種のフジ系統であるとか、あるいはトヨニシキであるとかレイメイとか、これは確かに実験的につくれるのです。つくっているのです。ところが、それでは農民が承知しないわけですよ。どうしてもやはりササ系統の、ササニシキの二号みたいなもので、冷温に強い、しかも味のいい品種の改良、これをひとつつくっていただきたいというのが、農民の非常に関心のある問題なんです。その点で、品種の改良の問題、これをどう研究なすって、またどのように研究をお進めになるのか、その辺をひとつお示し願いたいと思うのです。
  177. 小山義夫

    ○小山(義)政府委員 東北の南部に裏作を入れます場合には、確かに表作の稲の品種が非常に問題になることは、御指摘のとおりでございまして、ササニシキはなかてでございますけれども、なかての中では、どちらかといえば、おくての方に近い品種でありますので、どうしてもわせの品種をつくらなければいけないということを私どもも考えておりまして、国の東北農業試験場のほか、国が指定試験として委託をしております宮城県の古川農試、この両々相まって、現在品種改良を進めております。  そこで、いまの段階では、かなり有望な系統が幾つか出ておりまして、それは品質はササニシキに劣らなくて、収量はむしろササニシキよりも若干いいぐらいで、いもちについてはササニシキよりも強いというふうなことをねらいとしておりまして、おおよそその辺の条件を満たす系統が幾つか出ております。で、一番早い系統を品種として指定できる段階は、もうあと一、二年、来年か再来年には、その中の一番早いものが品種の指定ができる。以下、その後一、二年ごとに新しい品種が生み出せようかという段階になっております。
  178. 庄司幸助

    庄司分科員 それじゃ、それはぜひ全力投球して、早めていただきたいと思うのですよ。植物のことですから、機械をつくるのと違いまして、時間もかかるとは思いますが、ぜひお願いいたします。  それから次は、無機化から有機化の問題で、堆肥の問題ですね。これは若干予算がついて、家畜のふん尿とわらの活用で、堆肥づくりの援助をなすっているようですが、これは青森県なんかでもやっているようですね。これの予算はいま何ぼか、私はわかりませんが、これはひとつ大幅にふやしていただきたい。農林省も、地力の低下を相当憂慮されておられるわけですね。それで、これは県段階でしょうが、ポスターまでつくって、堆肥づくりの奨励をやっているわけです。ところが、この堆肥づくりというのは、いまの出かせぎ型の農業を進めてきたわけですから、これじゃ堆肥をつくる暇がないんですね。堆肥つくっているより、かせいだほうがいい、こういう悪循環が重なって、どんどん農地の地力の低下をやっているわけですね。ですから、いま言ったような堆肥づくりの援助をもっと強化してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  179. 松元威雄

    ○松元政府委員 地力の維持、培養のためには、有機質肥料を投下することが重要であるというのは、まさに御指摘のとおりでございます。これは本来、以前でございますれば、農家の方々がみずからやっておられたわけでございますが、最近は、労力が減るということ、それから経営が単一化してまいったという点から、有機質肥料の投下がかなり減少をいたしております。そこで近年、堆肥のかわりに稲わらの施用も進めてまいったわけでございますが、両者合わせましても、たとえば三十年ごろに比べますと六割程度に減っているわけでございます。これは水田の場合には、直ちに収量が減るわけではございませんが、長期的には地力の低下が心配されますし、特に畑地の場合には、有機質肥料の投下は必要であるわけでございます。  そこで、本来農家の方々にやっていただくのが本筋でございますが、そうは申しましても、労力が減っているという現実がございますから、そこでポイントは、一つは個々の農家の労力ではなくて、集団的にやるということ、それから何とか簡単な機械がないだろうかということ、それからもう一つは、経営も単一化しておりますから、畜産農家と稲作農家とを結びつけるという組織化、こういったことが大事ではなかろうかと思うわけでございます。そのために、従来からもいろいろなモデル的事業をやってまいったわけでございますが、特に本年度は、たとえば水田につきましては、四十九年度から始めました事業に、水田に簡単な機械をつくって集団的に堆厩肥を投下する事業がございましたが、この奨励事業を五十年度は大幅にふやす。また、畑地につきましても、各種のモデル事業の助成を組むことにいたしておりまして、これらを通じまして、その普及を進めてまいりたいと思うわけでございます。さらに、かたがた土づくり運動というものを展開いたしまして、奨励的なモデル事業とこういった運動とをあわせまして、堆厩肥の増投が行われるように、さらに施策の充実を図ってまいりたいというふうに思っております。
  180. 庄司幸助

    庄司分科員 時間もありませんから、あと二問、まとめて質問いたします。  いまの問題と絡んで、農家の資金面の問題ですね。これはこの間の決算委員会で、大臣にも御質問申し上げたわけですが、農協の資金の運用の問題というのは確かにあると思うのですね。農協でも困っている問題だろうと思うのですが、大企業にどんどん使わせるよりは、同じような保証があるならば、やはり農家のそういった面に活用するのが大事だろうと思うのですね。いま農家は、担保を目いっぱいに農協から借りているわけでしょう。借りているし、また保証人も、もうこれ以上つけようがない。それから農協からいっても、あそこに貸したいんだけれども貸しようがないという矛盾もあるだろうと思うのですね。その点で、農協資金の運用に当たって、国なり県なりが保証をして、それでこういった、いわゆる裏作の導入とかあるいは土地の拡大とか、そういう方向にやはり使わしていく。それからもう一つは、利子の関係があるわけですね。大企業に大量に運用させれば農協としては効率的だろうが、その利子補給の問題も、私は大事だろうと思うのですよ。この間、大臣も御答弁の中で、農協法の趣旨に従って活用するのが順当だとおっしゃっていますから、その辺をあわせて、総合的にひとつ考えていただきたい。  それからもう一つの問題は、これは簡単な問題ですが、実はパイロット事業の問題ですね。国営パイロットあるいは県営パイロットで相当おやりになっていますが、県営パイロットで、若干趣旨と違うような形が生まれている場合もあるのですね。  これは宮城県の宮城町にある白木の県営開拓です。六十四ヘクタールほどやったわけですが、せっかく国費の補助をつけ、市町村の助成もありながら、水田が活用されない。十四ヘクタールの水田予定地があって、しかも二千七百万円かけてため池までつくったのですね。ところがこれが活用されていない。一方、クリは植えてもクマに食われる、枯れてしまう、こういう問題もある。で、苦し紛れにキャベツをつくってみたのですが、これが十二万円収穫があって三十八万円経費がかかった。これは労賃抜きです。労賃を入れると九十四万ぐらい見なくちゃならない。こういう状態で、農民はどうしたらいいか。ここを売っちゃって借金を返せば、これは簡単なんだが、それじゃ農地拡大の趣旨にも合わない。非常に苦慮しているわけですね。地元の自治体も苦慮している。だから、こういった問題は、特殊な地帯ですが、やはり水田を認めてあげる、主幹作目ですからね。そうやって、あと余裕でいろいろなものをやってみるというのが、やはりパイロットの大事な点じゃないかと思うのです。  それから、借金のたな上げ……。
  181. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 庄司君にちょっと申し上げますが、質疑時間が大分経過しておりまして、あとの質疑者に影響いたしますので、簡単にお願いいたします。
  182. 庄司幸助

    庄司分科員 はい、済みません。それじゃこれで終わりますが、このたな上げの問題ですね、あるいは利子補給なり、これをひとつ県と協議して考えていただきたい。この点、御質問を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 初めの農協資金の問題についてお答えいたしますが、これは元来、農家から集めた金でございますから、まず農業及び農家のために役立たせるのが系統金融本来の使命でございますことは当然のことでありますが、最近いろいろな問題もございまして、この点につきましては、私たちとしても、農協等に対しましても指導をいたして、姿勢を正していただきたい面があれば正していただきたい、こういうふうに考えてやっておるわけです。いま農林省としても、農協資金の活用については、農業近代化資金助成法によりまして、国やあるいは都道府県が利子補給を行って、そして農業者等が必要とする低利長期資金を農業へ還元する、こういうふうな措置も講じておることは御存じのとおりでありますし、あるいは農業信用保証保険法の制定によりまして、農業信用基金協会あるいはまた農業信用保険協会等も設置いたしまして、これに対して国が助成をいたしまして、いわば農業者の信用力の補完を行う、こういうことにも努めておるわけでございますが、さらに農協資金がやはり農民のために活用されるように、これはいろいろとやはり今後とも考えていく必要はあるのじゃないか、こういうふうに思います。
  184. 大山一生

    ○大山政府委員 具体的な話でございますので、私の方で答弁させていただきますけれども、白木地区、これは四十五年着工いたしたわけでございますけれども、クリと野菜を基幹作目ということでやっているわけでございます。御指摘のように、クリはクマ等の被害があり、また翌年、野菜は干ばつの被害があった。そういうことで、どうも所期の営農成績を上げていないようでございます。そこで、必要な営農指導の強化については、さらに県、町等を指導してまいりたいというふうに考えるわけでございますが、当面、未償還額がある、こういう問題でございますが、この点につきましては、公庫資金というものにつきまして、個々の事情によって、融資機関と協議して、償還の期間の延長なり貸付条件の緩和等の措置がございますので、この点はひとつそちらの道を開く。そのために必要があれば、私の方で県の方も指導してまいりたいというふうに思うわけでございます。  なお、米を開拓地にというお話があったわけでございますけれども、米の過剰生産の基調というものはまだ続いている、こういう段階においては、直ちに変更はできないというふうに考えているわけでございますけれども、五十一年以降の米の需給事情でありますとか、あるいは稲作転換の取り扱い、こういうものとの関連において検討すべきものだろうというふうに考えているわけでございます。
  185. 庄司幸助

    庄司分科員 終わります。
  186. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて庄司幸助君の質疑は終了いたしました。  続いて、川俣健二郎君の質疑に入ります。川俣健二郎君。
  187. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 時間は三十分ですから、端的に申し上げますが、食品公害というのをこの辺で一遍ただしておかないと……。社会労働委員会でいろいろやっておりますが、農林大臣にもぜひ、農林省と非常に関連しておる問題を、例示的に問いただしておきたいと思うのです。そして聞いてもらいたいし、これからやってもらいたい。  というのは、食品公害というのは、環境汚染、いわゆる不純物が付着して体内に入る。したがって、これは環境を清浄化するしかない。もう一つは、もう一つの方がこれからの問題ですが、そのまま煮たり焼いたり程度で食べる物であればいいのに、加工するというか、いじくり回して、加工過程において不純物が非常に入る。こういうので、食品公害というのは、食品衛生法で非常にうるさく言おうとしておるわけです。石油たん白の問題も、この国会に出るようですが、問題は、土から出てくる物が体内に入る。その過程において、加工という段階で非常に入る。もう一つ、加工すればどうしてもコストが高くなりますから、したがって、加工賃をもうける人の立場からすると、どうしても加工したがる。これは実は非常に皮肉な言い方だが。ところが食べる方から言うと、加工賃を負担して食わなければならぬ、飲まなければならぬ。それから一方、ここは農林省ですが、つくる方から言わせると、やはり最終的な消費価格というのはある程度うるさく言われておりますから、当然そのしわ寄せがつくる方に――加工して体内に入れるものについては、どうしても消費者は法外に高くつくし、生産者はどうしてもその分を一部負担せいということで、それの一つの具体的な例が牛乳であります。  そこで、いまから三年前に食品衛生法の大改正の際に、いろいろと牛乳という問題をめぐった末、私の方から、牛乳という定義をつけようじゃないか。牛乳とは、牛の乳房からしぼり取って殺菌処理したものだけを牛乳と称する――これは小学校の教科書にあえて書かなくても、何でこんなに大人が国会でこういう定義づけをしなければならぬだろうか、こう思われるだろうが、牛乳とは、牛の乳房から搾取したものを殺菌処理したものを牛乳と称する、この定義が通らなかった。なぜかと言うと、機械からつくる牛乳もあると言う、こういう世の中になった。ほとんどいまの一千万の都民は、乳牛からしぼり取ったままの牛乳は飲めない、こういうことだった。そこでいろいろと検討したら、やむを得なく加工乳を飲むのか、それとも加工乳の方が品質がいいと見るのか、こういう論争に発展した。そこへたまたま農協牛乳というのが東京都に入ってきた。東京都の奥さん方は、これは本当のうまい牛乳だ、こうなった。そこで公正取引委員会が待ったをかけた。そのマークを使っちゃいけないということで、待ったをかけた。そこで、時の農林省は一体、加工乳としぼり取ったままの牛乳と、どちらがいいんだ。そこでいわく、農林省は、加工したものは脂もたっぷりあるし、ミネラル、ビタミンAも入っておるし、お勧め品である、品質は上だ、こういうお答えが出た。そこで紛糾しちゃって、三回目にやっと、やはり必要悪である。本当は東北、北海道でつくっておる牛乳を東京都民に飲ませたいのだが、夏は腐るというので、やむを得ないで加工して飲ましておるのだ、こういうことで終わった。ところが決議をされた。どうしても運びの関係で本当の牛乳を飲ましてもらうことができないのか。東京都民はこのように飲みたがるし、農民も、変に加工するよりはこのままで飲んでもらいたいと言う。そういう論議の中から、決議は、ひとつそれじゃこうしましょう、農林省、厚生省、通産省が加わって、いまから三年後に、乳というのは生乳で持ってくるか濃縮乳で持ってくるか、生乳七割、濃縮乳三割ということでやろう、そういう決議がなされた。  私は、そういうストーリーを質問の前にしゃべったが、このストーリーは大体間違いなくそういう決議がなされたかということと、それから、その決議をなされた三年後の実施日はいつになっておるかということを、農林大臣の前で、その当時を御存じの方おりましたら、農林省でも、どうぞ教えていただきたいのですが。
  188. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま御指摘ございましたように、食品衛生法の一部を改正する法律案に対する衆議院社会労働委員会の決議が四十七年の六月十六日に行われております。三年後を目途ということになりますと、本年の六月十六日ということになると思います。
  189. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そうしますと、これはいろいろと論議がありました。一年でいいのか、二年でいいのか、三年でいいのか、五年もかかるのか。三年でやりますということを時の農林省の担当局長が言われて、その方向で検討され、めどはどうか。もう半年もないわけです。
  190. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 決議の趣旨に従いまして、農林省といたしましてはできるだけ市乳化を促進するということのために、主産地から大都市周辺地域への長距離輸送を行うための施設に対する援助、あるいは濃縮乳の製造工場に対します出資等によります助成、あるいは生産者団体によります広域的な需給調整に対します助成等をこれまでも行い、また五十年度予算におきましてもそのような線をさらに強化をして援助をするということによりまして、できるだけ御趣旨の線に沿った方向に進めておるわけでございます。農林省といたしましては、種々議論は経過的にはございましたけれども、飲用牛乳は極力生乳で賄うのが基本である、それが酪農振興を図るという観点から大事であるという観点で考えておるわけでございます。  それで、お尋ねの、六月半ばで三年の期限が来るわけでございますが、それまでにできるのかという趣旨のお尋ねかと思いますが、最近の加工乳の実績をちょっと申し上げてみますと、四十六年の御決議をいただいたころには、加工乳の中に入れますバター、脱粉等に水を入れて還元をしております還元乳が、四十六年では二十五万五千トンぐらいございましたが、四十九年は十五万三千トンということで、減る方向には来ておりますけれども、現状におきましてはなお、季節的、地域的な需給のアンバランスということからいたしますと、六月の半ばまでに決議の御趣旨のように、濃縮乳三割ものは別にいたしまして、一〇〇%いわゆる加工乳をなくするということができるかどうか問題があるわけでございますが、昨年の末以来、関係専門家の方にお集まりいただきまして、どのようにして決議の趣旨に沿って加工乳をなくし、そのために市乳化を促進する手だては何であろうかということにつきまして研究会を設けまして、現在鋭意研究をいたしております。六月の期限までに中間的にでも御答申をいただきまして、処置をしてまいりたいというふうに考えております。
  191. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 それでは、食品衛生法の乳等省令の方を手直す準備にかかってもいいんだろうか。六月十六日でしたかな。それから、三年前に決議されたのが年末の十二月に検討に入ったというのはどういう意味
  192. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほど申し上げましたように、農林省としては努力をしてまいっておりますけれども、当初考えましたようなテンポで市乳化を促進するというところまでは行っておりません。これは種々原因があると思いますけれども、中継輸送の技術の問題あるいは工場の配置の問題、生産者団体によります広域的な需給調整が必ずしも十分に進まないという点、あるいは、さかのぼりますと現在の価格体系の問題等にまで、技術的な問題のほかに経済的な問題にまでつながる問題がございまして、当初考えておりましたようなスピードで進まないという点がございますので、私、率直に申し上げまして、六月に御趣旨の点を一〇〇%達成するというのは非常に困難だと思います。十二月以来鋭意研究を進めておりますので、その結論を待ちまして、できるだけ早く決議の趣旨が達成されるように今後とも施策を強化してまいりたいというふうに考えております。
  193. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 三年後の六月をめどに鋭意をやると言っていながら、見通しはなかなか困難であるということのめどをつけて、十二月にその検討に入ったというのはどういう意味なんだろうかと言うのだ。決議されたのは三年前なわけだ。三年前からどういうような手だてをしてきて、大体のめどはいつごろつけてきたのか。十二月と言うが、まだ二、三カ月前だ。三年前だから、決議は。その辺なんだ、わからないのは。
  194. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、農林省といたしましては、飲用牛乳は極力生乳で賄うということが基本である、それが酪農振興上必要であるということで、学校給食用の牛乳供給事業を拡大する、これは生乳のみで実施をする、あるいは生乳の長距離輸送を促進するためのいろいろな施設に対する助成、あるいは生産者団体によります需給調整に対する助成等をやってきておるわけでございます。またその成果は、先ほど数字でお答えいたしましたように上がりつつあるとは思いますけれども、当初目途といたしましたところにまでは残念ながら達しておらないわけでございます。  したがいまして、われわれといたしましては、努力の実績も振り返りながら、なお足らざる点等、専門家の広い御意見も伺いながら、できるだけ早急に決議の線に達するようにさらに政府の施策を強化したいということで、昨年の末から研究会を持ったわけでございますが、研究会を持つ時期が遅いではないかという御指摘は、あるいはそのとおりかとも思いますが、おくればせながらできるだけ早急に結論を出していただいて、実現をしたいと思います。
  195. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣、聞いておっても、あるいは遅いではないかという意見もあるがと言うけれども、端的に考えたらそうでしょう。三年前から、これは大変なことだよ、だけども何年欲しいんだと言ったら、三年待ってくれと。じゃ三年待てばいいのかと言うと、大丈夫ですと、こういうことなんです。  それじゃ厚生省にちょっと聞くのですけれども、往々にして、加工しても品質は変わらないし、運送も余り手間取らないから、むしろその方がいいのではないかという考え方が一部横行しているやに思われる。これは、厚生省は食品衛生法から、加工乳と牛乳を比較して、どういうふうにそこをぴしっと締めてかかっているのかな。どうです。まさかぐらついているんじゃないだろうね。
  196. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 加工乳がいいのか牛乳がいいのか、その判断は非常に広範囲の基準で判断せざるを得ないと思いますが、厚生省の立場といたしまして衛生面からのみこれを判断いたしますと、先ほど先生指摘のように、加工という行為が加わることによって、その段階において不純物の入る可能性が増すという点を御指摘になったわけでございますが、そういう点から考えますと、できるだけ加工しないで供給する方が、衛生面から考えた場合にはより好ましいという考えで従来からもやっておるところでございます。
  197. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 一方、加工屋から言わせると、黙って軒先から買ってきて飲ませるより、加工賃で暮らしておる会社から言わせれば、加工した方がいいわけだ。企業としては当然そういう意欲を示す。そこで、ただそれだけではなくて、加工すると高くつく。加工というものが中に加わると、飲む方は高く負担しなければならない、売る方は安くたたかれる。ところで牛乳の場合は、軒下から買っていく場合に、酪農家から買っていく場合に、加工向けで買っていくというのと飲用向けに買っていくというのと、一体どのぐらい値段が違うんだろうか、メーカーが買っていく場合。
  198. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 現在、地域によりまして必ずしも一律ではございませんけれども、いわゆる飲用乳の場合、全国的に平均的なところを見ますと、これはキログラム当たりでございますが、九十八円十銭。加工原料乳、バター、脱粉等に向けられますものは、保証価格が現在七十円二銭、基準取引価格は五十三円四十一銭になっております。メーカー側が払いますのは基準取引価格でございます。
  199. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣はかなり農林行政には明るいとは思うが、牛乳一つ取り上げましても、酪農家から買っていく場合、これはバターや何かをつくるぞ、加工原料として買いますぞと言われれば、弱い農民はキロ五十三円しか手取りが取れない。それから、これは飲ませるものだよと言って買っていけば、同じ牛乳が九十八円になる。そこで、いま酪農家というのは、飼料の高騰ばかりじゃなく、軒並みに遠方地は倒れておる。なぜだろう。遠隔地が倒れておるということは、遠隔地の方はどうしても加工向けで買われる。九十八円のものを五十三円でしか売れない。そこで政府は、差額の十六円六十一銭ですか、メーカーに補助しておる。これはちょっといまのこの世において暴論かもしらぬが、外すという方向で検討したらどうか。政府予算でその総額は今度何ぼになっています。
  200. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 約二百二十億になっています。
  201. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そうでしょう。そうしますと、この二百二十億というものを使って、生産者も飲む方も泣かないような手だてはないんだろうか。ぼくはあると思う。どうです。これ、検討したことありますか。生産構造を変えない限りはいかぬと思いますよ。畜産局長が三年前の決議を体して鋭意努力しておりますと、私は十二月から始めたとは皮肉らないけれども、局内で検討しておったかもしらぬからね。だけれども、世に、ほかのいろいろの関係者に相談したのは十二月からだ。十二月からいま二月の末。十二月から二月の末の三カ月足らずの検討で、もう見通しちょっと暗くなったでは、これは国会の決議が泣きますよ。そうでしょう。一方、メーカーの方は、五十三円で買えるというこのシステムがなくなったら大変だというのでしがみつきますよ。当然だ。一方私は、酪農牛乳というものを一、二回直送さして飲んでみたけれども、これは確かにうまい。いま東京都の一部の団体が方々に産地直結という方法をやっているわけだ。だけれども、酪農全体では販売網がない。しかも、牛乳を売っている店のおばさんは加工乳を売った方がマージンが高く取れるという、きめの細かいところまで手が届いておる。加工メーカーは九十八円のものを五十三円で買えるのだ。そうなると私は法外なあつれきがあると思う。したがって私は、生産構造を変えなければ、本当の牛乳を東京都民が飲むまでにはかなりかかると思う。いまいろいろな努力をして、足を使い、それからトラックを使い、なれない手つきで商売のようなことをして、消費者が生産地直結の牛乳を飲んでおる。これだったら何か農林省が要らない、厚生省も要らないような気がする。だから私は、生産構造のところまでメスを入れていかなければならぬのだろうと思う。二百二十億、どうだろうか。これは局長、どうです。  それからもう一つ、今度牛乳が上がることによって、したがってこの差の補助金も上がっていくわけですか。
  202. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 まだ計算をするだけのデータが集まっておりませんので、この三月に決めるべき価格についてどうだということをはっきり申し上げるわけにはまいらないわけでございますが、御承知のように、不足払いの額といいますのは、生産者の再生産確保を図れるような水準である保証乳価と、それからメーカーが加工原料乳に対して支払い可能な乳代、基準取引価格と言いますが、その差額を支払うことにいたしておりますので、再生産確保の水準が幾らかということと、メーカーがどの程度の代金を加工原料乳に対して支払い可能であるかということ、これは乳製品の価格をどの程度の目標に押さえるかということと、それから製造経費がどの程度かかるかということとも関連いたしますので、現在どの程度上がるのか、不足払い額が当然上がるのかどうかという点については、まだはっきり申し上げるわけにはまいらないと思います。
  203. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 元値が上がるから差額が一応常識的に上がると思う。これは当然上がると思う。  そこで、私の時間がないから一々質疑応答しませんが、酪農者の頭数がここ急激に減っていっている。もうつぶれていっているのだから。私らの地域ではつぶれていっておるというのだから。それは東京近傍の酪農家よりも遠隔地に行くほどつぶれていっている。それから一頭当たりの搾乳量が減っていっている。それは何から見るかというと、酪農家の自家消費を見ればわかる。子牛に飲ませるやつ、自家消費が昭和四十五年は十七万トン、それから四十六年が十六万トン、四十七年十五万トン、四十八年十三万トン、こういうようにどんどん減ってきている。これを見逃さないでいるだろうな。畜産局長、これはどうですか。これをどういうところで食いとめるか。どうも九十八円とさっき言った五十三円のところにマジックがあるのではないか。どうです。
  204. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 わが国の酪農の場合、都市周辺から発達したわけでございますけれども、最近は労力の問題、地価の問題、その他生産費が都市周辺で非常に割り高だとか、あるいは他産業への転出が多いということもございまして、御指摘のように全国的に飼養農家が減り、頭数も最近横ばいになっておりますが、全体を見ますと、生産量におきましては、やはり都市周辺の減り方がむしろ大きくて、遠隔地、北海道とか九州とかあるいは東北の北部とかいうところは、むしろふえる傾向を依然として続けておる。全体といたしますと頭打ちになってきているという点、非常に問題を持っておると思います。
  205. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そこで、大臣に最後に質問する前に、もう一遍局長に聞きますけれども、やはりもっと素直に――メーカーは五十三円のものを買おうか九十八円のものを買おうかということのあつれきと対抗したのではとても、食品衛生法もつぶされるよ、厚生省がどれくらいがんばってくるか知らぬけれども。昔は、加工牛乳はお勧め品でありますということを時の農林省は堂々と言ったくらいだ。いまはそうじゃない。やはり必要悪だ、本当の牛乳を飲ました方がいいということが厚生省の局長の口から出るようになった。出るようになったけれども、加工屋さんから五十三円と九十八円というもので押しかけられて大変なんだ。したがって、そういうものとの対決の場じゃなくて――農協牛乳というのはどうせ販売網はないのだから、売れと言ったって無理だよ、メーカーの方がずっと持っているのだから。したがって、補助金をなくしても、メーカーがどちらでも買うという方向で検討するのも加えなければならぬ。  そこで、私はもう一つ局長に言います。その委員会なるものは十二月から何回開いたか知りませんが、何回開いたか。そしてこれから何回開こうとしているのですか。一週間に一遍ぐらいやっていますか。どうですか。六月ですよ。六月となると厚生省にも連絡しなければならないでしょう。それから酪農組合にも連絡しなければならないでしょう。メーカーの方にも了承を得なければならないでしょう。一体間に合うのですか。
  206. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 十二月末から全体の総会を一回、専門委員会を二回開催をしております。これから六月までの間は、四月になりましたならば早早に開きまして、従来以上にテンポを早めて、回数も重ねて、早急に中間的な結論でも出していただきたいというふうに思っております。
  207. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そんなのだめだよ。全体会議が一回、専門委員会が二回、それで見通し暗し、こんな結論というのがあるかね。そんなのはだめですよ。冗談じゃないよ。食品衛生法はどう思います。局長、どう思います。あなたの方だって準備があるでしょう。作業を進めなければならないでしょう。乳等省令も直さなければならないでしょう。厚生省の局長、どう思います。
  208. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 やはり、われわれの方の乳等省令の基準を直すためには、ある程度の時間をかしてほしいとは思いますが、農林省の方からの連絡あり次第、できるだけ早くこの処理をいたしたいと思います。
  209. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣、どうですか。こういうような論議を聞いていてどうですか。非常に大きな問題を含んでいるでしょう。食品公害と言うけれども、加工屋さんのあつれき、それから加工することによって物は痛むのだということ、それから加工されればつくる農民の方も容易でないのだということ、この悪循環、牛乳がいい例ですよ。大臣、どうですか。これはぜひひとつ検討してください。
  210. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにわれわれが牛乳を飲む場合においても生乳を飲みたいわけでございますし、現在農林省としても酪農振興という立場から、生乳を飲む、生産をするということに主力を置きかえていろいろと努力をしておるようでございます。しかし、先ほどからのお話を聞いておりましても、どうも加工乳から生乳に移行する努力についても問題は確かにあると思いますが、せっかく国会で決議されておるわけですから、これはやはり決議を尊重する立場において、また同時にこれからの牛乳政策のあり方としても、私はやはりこれはその方向へ進むべきものであろうと思います。しかし、これをやる場合においても、なかなかむずかしい問題もいろいろあるようでございますが、私もひとつ奨励をいたしまして、このおくればせながら発足しておる委員会を早速結論に持っていけるように指導をして、何とか決議の方向が実現できるようにひとつ努力をしてみたいと思います。
  211. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 終わります。
  212. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて川俣健二郎君の質疑は終了いたしました。  続いて、高橋繁君の質疑に入ります。
  213. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 たびたびの質問がなされていると思いますし、きょう午前中にも質問があって大臣もお答えをいたしたようでありますが、若干質問を続けたいと思います。  実はソ連漁船の問題ですが、午前中の質問で大臣の答弁をテレビで聞いたわけですが、海洋法会議の結果にとらわれず、会議後の早い時期に領海三海里を十二海里に改正したい、こういうことなんですけれども、海洋法会議が三月から行われて大体五月ですか、終了する時期が。問題は銭州沖に来てどんどんとられているのですね。漁民にとっては差し迫った問題であるわけです。そういう時期的な問題で、なぜ会議後の早い時期に改正するということを考えているのか。時期の問題でお聞きしたいわけです。何か理由があってそうなのか、その点……。
  214. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はしばしばお答えをいたしておりますが、領海十二海里はぜひとも実現をしたいと思っております。これは今日の日本漁業情勢から見ましても、もう世界的に見ましても、三海里はだんだん少なくなっておりますし、もう十二海里を実現をしたい。ただ問題は、三月に海洋法会議が行われる。わが国としてもこれまで、領海を決める場合は国際的な合意に基づいて決めるべきだということを主張してきたたてまえがあるわけで、そういうことで、海洋法会議の中においては、この十二海里の問題を一応わが国として合意を得るように努力をしていかなければならぬのですが、この海洋法会議自体が果たしてここでまとまるのか、あるいは、海洋法会議経済水域二百海里が中心議題でしょうが、これがまとまるのか、あるいは、沿岸各国それぞれ利害が違っておりますからまとまらないということもあり得ると思うわけですから、そういう点も踏まえて、海洋法会議結論がどういうふうに出るか出ないかということにとらわれないで、海洋法会議の終わった後の早い時期に十二海里を何とか決めていきたい。これはソ連の漁船の問題だけでないのですけれども、ソ連の漁船の操業を見ましても、大体いま盛んにやっておりますが、いつも、毎年の例によりますと大体三月十五、六日までで引き揚げて、また秋にはやってくる、こういう繰り返しでございますので、そういうことも一つの要素として、やはり海洋法会議の直後にはこれを決めなきゃならない、そういうふうに思うわけであります。
  215. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 国際法上の合意を得たいということでそういう時期的な問題が出たと思いますが、問題は、先ほど申し上げましたように、すでに銭州沖でばんばんとられておる。昨年よりも大規模なものでとられているということになると、漁民にとっては最大の問題、しかもきょうは漁民大会が行われている。きのうも、新聞でごらんのように、政務次官たちが集まってこの対策についていろいろな問題点を挙げておりますが、差し迫った問題として、ソ連に対してこういう無謀操業というものについて強力な申し入れなり――例年やってきているんだけれども、もっと強力な申し入れというものについて農林省として考えているのか。どの辺をお考えになっているか、もう一度お聞きをしたい。
  216. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはもちろん農林省としてもやっておりますし、外務省としてもやっておるわけでありますが、私も実は二十一日にソ連の大使と会いまして、このソ連の漁船によるところの操業につきまして、強く抗議といいますか、善処を要求いたしました。また、水産庁長官を実は二月の末、二十二日ごろに派遣しようということでソ連とも折衝しておったわけでありますが、ソ連側がなかなかそれを受け入れる体制といいますか、日程が合わないというふうなことで延びておりますが、三月の早々には水産庁長官を派遣いたしまして、そしてソ連に対して今日までの経緯について抗議をいたすとともに、日ソ間にこの問題についての協定を結ばせよう、こういうふうに考えておるわけであります。外務省は外務省として、在外公館等を通じまして、強力にソ連側に抗議を申し込んでおることも聞いておるわけであります。
  217. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 強力な申し入れをしていただきたい、こう思うわけですが、大変な問題であります。結果を見なきゃわかりませんが、いま銭州沖で大規模なとり方でやっているわけです。実際ソ連船が去った後、サバつりの問題は――ここは最大の漁場ですからね。行ってみたらもうおらなかったということになると、これは漁民にとっては最大の問題になるし、日本の食糧資源という問題からも非常に問題が起きる。そうしたときに、そうした漁民に対する具体的な農林省考え方、措置というものは考えておりますか。
  218. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま政府としてやっておりますことは、漁業の被害を受けた補償について、ソ連側に対して要求をいたしております。実は、いままでもやっておるわけでありますが、これに対しての回答はないわけです。今回も漁業の補償については要求をいたしておるわけでございまして、今回の協定を結ぶ段階に当たって、私たちもこの補償についての何らかの措置が行われるように、協定内にこれを盛り込むように努力をしたいと思うわけでございます。しかし、いままではソ連態度は非常にかたいというわけでありますが、一方において、いま御指摘がございましたように、水産に従事しておられる方々も非常に被害を受けておられる。これをこのまま放置しておくわけにはもちろんまいらないわけでございまして、私もそういう立場に立って、何とかこの救済の方法はないだろうかということでいろいろと考えておるわけでございますし、また相談もいたしておりますが、私は漁民の被害についてはやはり何らかの救済措置を講じなきゃならぬ、こういう考え方を強く持っておるわけでございます。救済をするにいたしましても、損害の実態というものをつかんでおかなきゃならぬわけでございます。また、現実に被害が起こっておるわけですから、この被害の実態を一日も早く調査をして、その結果に基づいて早急にこの被害救済措置は講じたい、こういうふうに考えるわけであります。
  219. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 もう一度念を押したいのですけれども、ソ連に対して補償の交渉をする、それがはかばかしくいかない場合には、政府としてそうした救済の措置を考えるということで理解してよろしいですか。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が言っておりますのは、ソ連に対して補償の要求をすることは当然でございますから、これは漁民にかわって国が、いわば民事上の問題ですけれども、補償要求はしていかなければならぬわけであります。これはこれとしてやっていくわけですが、一方において同時に、被害の救済措置というものは国として何とか考えなければならぬじゃないか、こういうことでありまして、補償要求と被害救済というものはうらはらの関係ではないわけで、補償要求は補償要求として、同時に国としての被害の救済措置を考える、こういうことでございます。補償にかわって救済措置をやるというわけではございません。
  221. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 いまの漁業の最大の問題でありますから、ひとつ格段の決意と努力をお願いいたします。  次に、栽培漁業センターについてでございますが、政府が五十年度において新規四カ所、栽培漁業センターの設置を予算上決定をしておるようでございます。ところが、この栽培漁業センターについて、自治体として大変な財政負担になって、実際は、設置をしたいと要望はしたけれどもお返ししたい、本年は見合わせたいという、自治体の財政的問題からそういう問題が起きているわけでございますが、この栽培漁業センターについては画期的なことでありますし、日本の食糧資源の確保、漁業振興あるいは沿岸漁業振興という面からいっても大変すばらしい事業であると私は思います。したがって、この栽培漁業センターを地方自治体に任せないで――海の流れというものは県でとまっているわけじゃありませんし、日本全国を取り巻く海の流れというものもありますし、あるいはその流れに沿って魚の種類も違うし、いろいろ歴史的な県の漁業組合というものもありますので一様にはいかないと思うのですけれども、栽培漁業センターを国で全国に何カ所か設置をすべきである。地方自治体に任せるべきではない、私はこういう考えに立つわけですが、この栽培漁業センターの今後の考え方についてお聞きいたしたいと思います。
  222. 内村良英

    内村政府委員 栽培センターにつきまして国がやるか県がやるかという問題でございます。この点につきましては、たしか二年前に非常に議論がございまして、そこで各県の方が、地先の魚等もあるし、今後県営でやりたいという希望が非常に強かったわけでございます。したがいまして、四十八年度から県営ということで事業を進めることになっております。そこで先ほど、県の財政事情にかんがみてなかなかむずかしいというお話がございましたが、五十年度におきましてはこの事業規模を拡大するような予算措置予算に計上しております。
  223. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 二年前は県でそういう要望が強かったのだろうと思うのですが、地方の自治体の財源の問題で、要望したけれども実際問題として本年度は見合わしたいというのが出てきておるわけでしょう。それならそれで、もし県の意向をくんで進めるならば、いまの補助基準である四分の三を五分の四にするとかいう措置を考えなければ、せっかく栽培漁業センターをつくって沿岸漁業振興しようという政府の施策というものが、とんざするというおそれがあるわけですね。その辺の問題、どうなのですか。これでこのままにしていくのか、あるいは国がもう一度考え直して、国全体の方針としてやるべきじゃないか。どうなのですか。
  224. 内村良英

    内村政府委員 確かに、ただいま先生から御指摘がございましたように、五十年度につきましては、実は五県から希望があったわけでございます。それがいま一県取りやめたいということで四県になっておるわけでございますが、各県の希望は県営でやりたいということを言っておりますので、ただいまのところ、私どもといたしましては県営で事業を進めたい。事業規模等につきましては、今後一層努力をいたしまして、増額するようにしたいと思っております。
  225. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 県営でやりたいと言うのですけれども、県がやる漁業センターの中身の問題です。何を一体漁業栽培するかという問題、その辺の問題についてはやはり国全体を考えて、たとえば静岡県がやるとしたらエビをやるとかアワビをやるとか、あるいはどこそこの県はタイをやるとかハマチをやるとかということにしなければ、国全体の漁業というものは振興しないと私は思うのですよ。この辺の関連性というものは今後持っていくのか、まるきり県に任してしまうのか、この辺、どうお考えになりますか。
  226. 内村良英

    内村政府委員 栽培漁業でどういう魚種を栽培していくかということにつきましては、やはりある程度の調整をとってやりませんと非常にダブる面もございます。それから、ある県の栽培センターでつくったものがほかの県の漁民にとられるというような問題もございます。そういうようなことを考えて調整をとっていかなければならないわけでございまして、私の方の瀬戸内海の栽培センター等を中心といたしまして専門家を集めまして、そういう問題については調整をとっていかなければならぬと思いますけれども、事業の主体については、県の要望が非常に強いものでございますから県営でやっていきたい、こう思っておるわけでございます。
  227. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 それはそれでいいと思うのですが、いまの地方財政からいって大変でありますから、その辺の補助金の率を改定をいたしていただきたい。それと同時に、せっかく栽培センターをつくっても、初めてのことでありますから、もちろん都道府県では水産試験場があってやっていますけれども、技術者の問題が今後大きな問題になると私は思う。せっかくできた。できたけれども、それを育成していくところの技術者の養成がまだできていないと思うのですね。技術者の養成と相まってこの栽培センターができていかないと、せっかくの政府の方針というものが追いついていかない。この辺、技術者の養成の問題、どうお考えになりますか。
  228. 内村良英

    内村政府委員 ただいま先生の御指摘があったような問題があるわけでございます。そこで各県でも、たとえば私どもの方の瀬戸内海の栽培センターに人を送りまして研修を受けるとか、そういうことをいろいろやっております。そこで、最近ではかなりこういった栽培センターの事業に従事し得る職員の人たちがふえているというふうな感じを持っております。
  229. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 言葉の上ではそういうふうにお答えする以外にないと思うのですが、実際はなかなかできていないと私は思う。そこで、そうした技術者を養成するとともに、栽培漁業センターというものを今後国でも幾つかのブロックに分けてやるべきだ。海洋法会議で二百海里とかいろいろな問題が決まりますと、ますます重要になってくる問題であると思うし、そのことを私はきょう提唱しておきますので、お願いいたしたいと思います。  次の問題は、漁船の海難事故の問題です。この海難事故は最近大変多くなってきておりますが、その中でも漁船の事故というものは全体の海難事故の中で五〇%近くを占めているわけです。これは農林省だけで防げる問題ではないので、運輸省との関連もありますが、海難事故の中で五〇%を占めるそうした漁船の事故防止ということについて、農林省のとられている対策があればお聞きをいたしたい。
  230. 内村良英

    内村政府委員 漁船の海難事故防止は、漁業経営の安定を図るためには基本的な事項でございます。そこで水産庁といたしましては、海上保安庁の実施する海難事故防止対策に協力いたしておるほか、次のような考え方で独自の海難事故防止対策を実施しております。  まず第一に、海難事故を防止するためにはまず安全な漁船であることが必要でございます。これは申し上げるまでもないことでございますが、このため、漁船の船型研究の中において、漁船の転覆事故防止に特に意を用いた研究を継続的に実施するほか、昭和四十七年に小型漁船安全基準を決めまして、この周知徹底を図り、安全な漁船を整備するというようなことで指導しております。  次に、海難事故を防止するためには、漁船の点検、保守、漁船の運航に万全を期する必要がございますが、このため、ただいま申し上げました小型漁船安全基準により都道府県漁業者を指導するほか、都道府県の開催する漁船乗組員技術研修会の経費及び漁船保険組合に駐在する機関検診技術員の設置の助成を行っております。  さらに、海難事故防止は漁業者団体における自主的な活動も重要でございますので、漁船保険中央会において、国からの交付金の運用益の一部をもちまして、漁船の事故防止用施設の設置等を内容とする海難防止助成事業、事故防止用の短波番組の提供及び海難救出出勤手当の助成を内容とする海難防止対策事業の実施を指導しているところでございます。
  231. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 それはよくわかるのですよ。ところが、四十二年から四十八年まで、統計から見る事故というものはちっとも減っていない。五〇%台をずっといっているわけですよ。それが本当に効果があるならば減るはずですが、もちろん船の数も多くなっていますから一概にこの統計資料から見て判断するということもどうかと思うのですけれども、減っていないということを考えると、いままでとってきた農林省考えた施策が余り効果をあらわしていないということになるわけで、その辺の問題をさらに検討して、海難事故がどういう原因で起きているか、その原因をつかまない限り対策は出てこないのです。だから、きょうはここで論議する時間もありませんので、ひとつさらに検討していただきたいと思うわけです。  それから、大臣が見えましたので、漁業法の問題です。これは昭和二十四年に制定をされたものでありますが、ここ二十余年間の漁業の進歩というものは天地の開きがあるわけです。漁船の問題にしても漁具の問題にしても技術の問題にしても、かなりの開きがあるわけです。いまの漁業法というものは、一部改正もあったかもしれませんが、昭和二十四年当時と基本的には変わっていないということになると、漁業法そのものについて改正する時期に来ていると私は思うのです。今後、特に海洋法会議で何らか制定されるようになれば、そこでこの漁業法全体を洗い直して検討する意思があるかどうか。
  232. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御指摘のとおり、まさに漁業は大きな変化を遂げ、さらにまた今後重大な局面に入ろうという段階にあるわけでございますが、そうした情勢にかんがみまして、漁業の諸法規を含む関係制度の基本的な見直しは当然必要になってきていると思うわけでございます。農林省としてもそういう立場から水産庁に漁業制度研究会を設けておりまして、五十年度中には、漁業法の改正を含めて、諸制度、諸法規に対する見直しについての結論を出したい、こういうふうに思っております。
  233. 高橋繁

    高橋(繁)分科員 最後に一つだけ質問したいと思います。これはちょっと水を離れて、具体的にはいずれかの機会にまた質問したいと思いますが、緊急の問題でありますので。  最近、物価高で農薬が非常に高騰を示しておる。特にミカン業者とか、そうした果実の業者が大変困っているわけです。切実な問題です。そこで問題は、ひとつ今後の指導をよくしてもらいたいと思うのですが、農協のあっせんの農薬を使う。ところが、昔農家が出資をしてつくった農薬会社があるわけです、これは地方にもあると思うのですけれども、そこが農協とタイアップして、農薬をやる。ところが民間の農薬会社の方が安いのです、実際問題として。そういうような歴史的な問題もありますが、それとあわせて、そうした農協の指導なり、あるいは農薬の農家に対する今後の影響というものは大変大きいので、その辺の農薬の今後の考え方についてお答えを願いたい。
  234. 松元威雄

    ○松元政府委員 農薬の価格は、従来は比較的安定していたわけでございますが、例の石油ショック以来、原材料が非常に上がりまして、その結果、四十九農薬年度の価格、これが約二二%上がりましたし、さらに五十農薬年度の価格につきまして、昨年の十二月に一七%程度上昇いたしたわけでございますが、これは何と申しましても原材料が非常に上がりましたのが原因でございます。これは御案内のように、全農がメーカーと交渉している価格が基準になっておりますので、その際、役所といたしましては強い行政指導をいたしまして、当初要求より大幅に低いところで決めさせまして、値上がり要因の確定したもの以外は認めないという非常に強力な行政指導をしたわけでございまして、確かに農薬が農業経営上非常に重大でございますから、今後も価格の安定につきまして、全農もよく指導し、いやしくも便乗値上げがないように厳重に監視、指導してまいりたいと思っておるわけであります。  お話の、農家が出資してつくりました会社ということでございましたが、全農が出資した会社のお話か、あるいは地方にもいろいろございますが、そこか、私もちょっと実態がよくわかりませんが、仮にいわば農家ないし農協系統が出資している会社のものが一般より価格が高いということ――普通ならば、商品でございますから、同一成分なら価格が違うとは思えないのでございますが、もしもそうだったらこれはおかしな話でございますから、十分調査をいたしまして、必要な対策を講じなければならぬと思っております。
  235. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて高橋繁君の質疑は終了いたしました。  引き続いて、兒玉末男君の質疑に入ります。兒玉末男君。
  236. 兒玉末男

    兒玉分科員 最初に林野庁長官農林大臣に、林野行政に関する問題と、さらに日本の当面する重要な政治課題と言える食糧問題に関連してお伺いをしたいと存じます。  まず、林野庁長官にお伺いをしたいわけでございますが、現在の林野行政の中におきまして最大の焦点であり、問題は、やはりチェーンソーに関連する職業病として認定をされている振動病の問題に関連しての点であろうかと存じます。そういう点から、時間の関係で一括して御質問したいと存じます。  まず第一点は、チェーンソーの使用時間の規制を強化することによって、振動病のこれ以上の発生を抑えることができるかどうか、その対策についてお伺いしたい。  第二点は、予防対策の一環としまして休息時間の改定をなすべきであると考えます。たとえば、現行の午前、午後を通じての十五分、これをやはり、午後二時間につき十五分程度に改善をすること、同時にまた、冬期間等は特にこの時間をさらに短縮をして、一時間に十五分、こういうふうな休憩時間の改定の必要があるのじゃないか。  三点は、国の責任において振動のいわゆる許容基準というものを決めまして、そして製造販売、輸入関係についても、基準に適合しないものについては禁止もしくは輸入制限、こういうふうな積極的な施策をとるべきだと思いますが、これは通産省当局も御答弁願いたい。  四点は、現在木材の需給関係というもの、あるいは国内における需給体制との関係について、素材生産の確保ということはきわめて重要な問題かと存じます。そういたしますならば、現在国有林関係に二千名を超える認定者がおるわけでございますが、これの治療関係を含めて――いまここにも資料をいただいておりますけれども、年間相当数の治療患者がおるわけであります。このような認定者の後補充を行い、また時間規制に伴うところの要員の補充ということがきわめて大事であろうかと私は思いますが、この点についてどのような対策をお考えなのか。  さらに、先般九州並びに四国の調査に参りましたが、この中で指摘をされていることは、現在の賃金の出来高払い制を日給制にぜひしてもらいたい。  同時にまた、労働者側としましても生産の確保ということについては十分な意欲を持っていることをわれわれは理解しております。とするならば、このような、もしこの症状が悪化しますと廃人同様になるという基本的な人権にも関する問題であり、林野庁はあらゆる困難を克服して対処すべきである、こういうように理解をするものでありますが、長官の御見解を承りたい。  もう一点は、これは地元に関連する問題でございますが、最近シイタケの需要が非常に増大しております。ところが昨年から現地で、このシイタケを生やす原木が一種の病気に冒されまして相当減少しております。そういう点から、このような災害防止上の対策あるいは原木の確保ということがきわめて重要な課題であることは長官も十分御承知のことだと存じます。  以上五点について、長官並びに農林大臣としましても、この振動病というものは単に国有林だけじゃなくして、民間林業労働者にとっても現在大きな政治問題に発展しようとしておりますので、この際、林野行政の最大の課題としての基本的な対策について、それぞれの御見解を承りたいと存じます。
  237. 松形祐堯

    松形政府委員 第一点の時間規制でございますが、私ども、振動障害の発生を防止するということが中心でございまして、そのために御承知のような時間規制の実施をいたしまして、さらに機械の改良とかあるいは休憩施設の改善等に努めながら、総合的に対処してきているのが実態でございます。特に五十年には、私ども林業試験場等でせっかく研究いたしておりましたロータリーエンジンつきのチェーンソーもある程度成果を見せるというところまで参っておりますので、それらの導入も積極的に図っていくということを考えているのでございます。  なお、チェーンソーの操作時間でございますけれども、現在の時間規制のもとで、たとえば、あるいは御承知かと思いますが、ツリーフェラーというようなことで、ブルドーザーの先にはさみで伐倒する機械がございます。そういうものとか、あるいは自動玉切り装置とか、そのような無振動の機械を導入するとか、あるいは人工林等につきましては手のこでやるとかいうようなことも導入をいたしますと同時に、造林と生産というものを組み合わしていくというようなこと等を積極的に取り入れることによりまして、一人の時間二時間というようなことをもっと短く運営できるように、そして山全体としての鋸断時間というものを少なくするように、私どもも努力してまいりたいと思っているわけでございます。  なお、二番目の休息時間でございますが、私どもの国有林野事業に勤務いたしております職員の休息時間につきましては、一般職の国家公務員の勤務条件その他の事情を勘案いたしまして定めておるところでございます。特に振動障害の予防対策といたしましては、ただいま申し上げましたようないろんな措置をとって重点的に施策いたしておるわけでございますが、特にチェーンソー使用者については体操を一日四回やるとかいうようなこと等を加えましてそのような対策をとっておりますが、なお、御承知のような作業の実態でございまして、チェーンソーを使いまして伐倒、玉切りとかいうような操作のほかに、集材というような仕事がございます。そういうのにいろんな手持ち時間ということ等もございますので、特にいま休息時間を御指摘のような二時間に十五分にしたらどうだとかいうようなことは、現在改定する考えは持っていないというところでございます。  次に三番目に、許容基準をつくって、そして輸入から製造、販売を禁止したらどうだというようなことでございますが、チェーンソーの振動現象につきましては、国立の林業試験場で先ほど申し上げましたように積極的に研究を進めておりまして、小型あるいは軽量化、あるいは振動が最も小さいと言われておりますロータリーエジンンつきのチェーンソーの開発、そういうことをやっておりますし、また使用に関する安全対策といたしましても、昨年でございますけれども、チェーンソーの中で二十一機種につきまして、その振動の状態あるいは振動の特に起こる方向等を含めまして、それを公表いたしました。その測定結果の第一報ということで公表いたしたわけでございます。それにつきましては、県を通じまして民間にもこれを徹底し努力いたしているところでございます。ただ、振動の測定方法ということにつきましては、現在のところ国際的に統一された基準がございません。それにまた、振動と振動障害発症という関係につきましては、医学的になお解明すべき点もございます。そのようなことから、許容基準の作成とか、あるいは基準を超えたものの製造、輸入、販売の禁止ということにつきましては、今後関係省庁とも十分協議いたしまして、さらに慎重に検討してまいりたいと思っております。  次に、素材生産の確保のために、認定者が出たらこれの補充を行うべきではないかということでございます。御承知のように、素材生産は非常に大事な仕事でございます。先ほど来申し上げておりますように、振動障害対策としてはそれぞれの対策をとっているわけでございますが、振動障害の認定者が大変多発いたしまして、チェーンソーを操作する要員に不足が生ずる場合には、職種間とかあるいは地域間の流動化によって対処してまいりたいと考えておりますけれども、職種間とか地域間の流動化を可能な限り行いましても、また作業仕組みの改善等の処置を努めても、なおかつ要員に不足を来しまして対応し得ない場合には、認定者の発生状況とかあるいは治癒するとか、あるいは症状が安定するというようなことで新しく職場にまた復帰するというような動向等も総合的に判断いたしました上で、事業の運営にとって必要最小限の要員については、新規補充についても考慮してまいりたいと考えておるところでございます。  なお、四番目の出来高制でございますが、出来高給ということで問題があるのではないかということでございます。私ども、この山林労働について、昔から日本に定着し、あるいは世界先進国におきましてもほとんどのものがこの出来高給を、あるいは能率給と申しますか、そういう形で導入いたしております。定着しているような感じがいたしておりますが、この林業労働の特質と申しまして、広い地域に人が分散いたしまして、一人一人監督するというようなこともできない、自律性によって運営されているというような仕事でございまして、そういう特質から見て、労働に対する賃金支払いの公平性という意味からもふさわしい支払い形態ではないか、かように考えております。しかし、時間規制との関連におきまして、機械使用の総時間だけでございませんで、操作時間まで細かく規制されておりまして、それなりに実施しているところでございます。したがって、この出来高給のとっている全体的な給与総額と申しますか、そういうものにつきましては、完全な出来高という、作業だけでなくて、固定給プラス能率というようなことで、作業が部分出来高というようなかっこうに現在運営されておりまして、固定部分というものが次第にふえつつございます。出来高の部分が少なくなる、そういうことで運営してまいりたいと思っております。  次に、シイタケのことでございますが、実は宮崎県、大分県、熊本県、これが日本の生産量のほとんど半分近くを生産いたしております。そういう中の宮崎県におきまして、大変な降雨量とか高温によりましてヒポクレア族菌というようなことで、四十種くらいあるそうでございますが、その中の種類でございますが、発生いたしまして、シイタケ原木に非常な被害が出ております。これは私どももそれぞれ試験場なりあるいは県も動員いたしまして調査したのでありますけれども、湿気が多くて風通しが悪いところのほだ木の伏せ込み場所の管理が不十分である、あるいは雑草等で非常に湿気が高くなっているというような地帯に発生しているようでございます。  その被害防止対策といたしましても、被害木の処理あるいは今後の指導等を含めて現在懸命にこれの努力をいたしているところでございます。特に御指摘ございました原木確保対策でございますが、原木の伐採は適期がございまして、十月から十二月ごろというのが一般的になっておりまして、いま直ちにすべての原木購入資金が必要であるということではないと思いますけれども、被害を受けられました一部の方々から資金の融資希望等が出ております。したがって私ども、農林漁業金融公庫の資金とかあるいは系統資金等をあっせんいたしておりますけれども、さらに宮崎県におきましては、原木購入をいたします場合、そのような緊急処置でございますので利子補給を行っておるということもございますし、さらにそういうことで県外からも入れなければならないというようなこともございます。そうすると、県外から入れる方はどうしても高くつくというようなことで、その差額につきましても一部助成するというようなことをとっております。  さらに、長期的な原木確保対策でございますけれども、中央、地方を含めまして、シイタケ原木需給調整協議会というのを昭和四十年代の中ごろから設けておりまして、クヌギあるいはナラが非常に不足ぎみである、したがってこれを植林して原木対策を長期的に考えるべきだということで、そのような協議会を設けてやっております。特に五十年度でございますけれども、新規の予算といたしまして、現在御審議いただいております特用林産物生産流通改善対策事業、一億何がしの国費でそういう特産樹種の主産地形成的な事業が新しく認められておりますので、これによりましてナラ、クヌギ等の造林をいたしますと同時に、各県でも、特に南九州三県等につきましては造林の補助金を出しますと同時に、県は県なりにそれにかさ上げをいたしまして、一層このクヌギ、ナラ等の造林をいたしまして原木が自給できるような体制、こういうことに各県とも努力いたしておりますし、私どもも今後一層これを推進してまいりたい、このように考えているところでございます。
  238. 安田佳三

    ○安田説明員 ただいま御質問の第三点の、チェーンソーの基準に達してないものにつきまして、製造、輸入の禁止をすべきであるという点でございますが、チェーンソーの振動を軽減させるために、通産省といたしましては委員会を設けまして、関係省庁、学識経験者、ユーザー、メーカー等の意見を聞きまして、機械開発に当たっての目標基準を策定いたしました。  内容としましては、周波数五百ヘルツ以下の範囲で三十以下というような基準を設けたわけでございます。通産省といたしましては、早急にこの目標に到達するように、メーカーに対しまして技術開発を鋭意督促いたしているところでございます。また、チェーンソーに代替する機器につきましても研究開発を促進している段階でございます。  それからまた、この基準につきましては、基準というふうに言っておりますが、現在のところ振動の測定方法に関する国際的に統一された基準がございませんので、この基準自体が、いわば当面急を要するために定められました一応の目標としての性格を有する基準でございます。このような点から、現時点におきまして、この目標基準に達しないものの製造、輸入を禁止するということは適当ではないのではないだろうかというふうに考えている次第でございます。しかしながら、以上のような研究開発を推進いたしまして、また輸入業者の指導を強力に行いましても、なおかつ安全に問題があるような場合におきましては、先生指摘の方法を含めまして、関係省庁とも十分協議しながら対策につきまして慎重に検討してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  239. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 振動病対策は、山で働かれる方々にとりましても、また林業振興という見地から見ましても、まことに重大であると思います。国有林労働者に対する振動障害の予防、治療対策については、時間規制を初めといたしまして、ロータリーチェーンソーその他、振動障害を起こさないような機械の開発改良、健康診断の充実等の措置を行う。また、公務災害認定者に対しては、温泉療法等機能回復訓練等の所要の治療を実施するほか、国家公務員災害補償法及び労使間の協約によりまして、休業特別給与等の支給を行っておるところであります。これらの疾病の予防、治療対策については、医学的にも究明すべき点が多いわけでありますが、さらに専門医の意見も聞き、また関係省庁との連絡調整を図りながら、予防及び治療に必要な措置を今後とも積極的に講じてまいりたいと思っております。
  240. 兒玉末男

    兒玉分科員 長官の答弁で私は決して満足するものではございません。というのは、林野庁からいただきました資料によりますと、たとえば四十九年十二月三十一日現在で、認定者の入院あるいは実施中を含めて七百四十八名おります。しかも、平均治療日数は九十二日間ですから、一年間に約七万四千日、それだけ実際の人口は減っているわけです。そういう点から考えますならば、やはり物事の本質を十分掘り下げて、労使間の問題は別として、機会あるごとに国会でも問題点を明らかにしながら、いままで労働省関係、厚生省関係あるいはいま大臣が言われたような文部省当局にも私は追及してまいっておりますが、ひとつその気持ちで、これらの問題は全般的な林野行政の大きなかなめとして今後真剣に取り組んでいただくことを要望し、残された問題は次の機会に譲りたいと存じます。  それでは、林野庁関係はこれだけにしまして、農林省関係として大臣並びに関係局長にお伺いします。  大臣すでに御承知のとおり、農林省の農政審議会の需給部会は、六十年を目途に穀類の生産目標を二千万トン、こういうふうに発表されております。昨年十一月、ローマで開かれました食糧会議でも百余カ国の国々が参加して、その中で特に申し合わせたことは、「先進国、途上国を問わず、少なくとも爆発的な人口増に対しては食糧増産に最大の努力を払い、備蓄量六千万トン、また各国は食糧需給の情報を交換する」こういう画期的な申し合わせがなされておりますが、現実にアメリカを含めソ連中国など、このような農業生産国を通じましても、これから日本が外国の食糧に依存する度合いというものはだんだん減少の状態にあります。そういうことを踏まえながら、今回の二千万トンの六十年目標ということは総体的には七五%と言われております。これからの食糧増産の過程として、この審議会の内容は、大体米は現状維持、小麦は現在の五%を九%に、大麦、裸麦は生産量二・七倍、大豆は三・四倍、それから食糧用大豆は大体自給度を六〇%に高める。なおミカン等は約二〇%増、牛肉は七〇%増、ブロイラーは四〇%増、なお鶏卵関係、豚六七%増、こういうような目標が出されております。しかしながら現実には、この高度経済成長で主要な農地が少なくとも約七十五万町歩減り、農耕面積は五百八十五万町歩。この審議会の内容によりますと、少なくとも新たに八十五万町歩の農耕地をつくらなければこの目標達成は困難だということです。  そこで、私は現実の問題として、まず構造改善局長にお伺いしたい。現在、そういう立場から各地方において国営なり県営なりあるいは団体営の圃場整備が行われておりますけれども、いま現地の農民が一番不安であるのは、償還の期限が短いこと、あるいは負担金が高いこと、こういうことが指摘されまして、負担の軽減と償還期限の延長あるいは金利の軽減、こういうことが解決されない限りは、いま申し上げましたような六十年度における二千万トンの全体的な食糧等の確保ということは不可能だと考えますが、まず基盤整備、構造改善に関する基本的な姿勢について局長の見解を承りたい。  次に、私は畜産局長にお伺いしたいことは、たとえばここ二、三年のいわゆる飼料の高騰ということは、もう畜産農家には耐えがたい苦痛であります。しかも、先ほど申し上げましたような畜産関係の生産量を高めるための最大のポイントは、結局粗飼料一千万トン、濃厚飼料二千万トンの確保がなければ、畜産関係のこのような増産は不可能というふうに考えるが、この増産といわゆる飼料等に対するところのこのような価格政策はどう考えるのか。同時に、畜産物の価格安定ということがきわめて重要な段階じゃないかと考えますが、これに対する御所見を承りたい。  さらに、今日の農畜産物の流通過程というものはきわめて複雑であります。しかも、中央卸売市場におけるところの、そういう公設市場というものがなかなか思うように機能を発揮できない。しかも、地方自治体等の財政の圧迫を通じまして、現在の民間の市場が合流し、新たな機能を発揮し、合理化を推進しようとしても、自治体の積極的な理解と協力がない。ここに今日の流通改革の大きなネックがあると思うのでございますが、これからの市場改革については、当然民間の市場関係についても、やはり国からある程度の助成策をとりながら改善していかなければ、流通の改革、市場の整備は不可能と考えるが、これに対する見解はどうなのか。  以上、構造改善、畜産、さらに流通関係の三点を中心にして各局長の見解、さらに、農林大臣考えているいわゆる自給率七五%確保の前提となるこの三つを総合した点について大臣の基本的な見解を求めまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  241. 大山一生

    ○大山政府委員 基盤整備事業の重要性にかんがみまして、極力農民負担が事業の推進に支障のないようにということで、たとえば四十九年で申し上げますならば、国営灌排の償還期間の延長を初めとしまして、各種の採択基準の緩和をいたしております。また五十年度、ことしのお願い申し上げている予算におきましても、補助残等を中心といたしまして、補助残等の融資率一〇〇%の範囲を広げるというようなことを行い、また、採択基準の緩和、それから公害防除等の補助率のアップ、こういうような各種の施策を逐次講じているような次第でございます。農民負担が過重にならないようにしたいということで常々、今後とも進めてまいりたいと思っているわけでございますけれども、土地改良区につきまして四十八年度調査をした結果で見ますと、一般賦課金も合わせて、特別事業賦課金も入れて千七百七十七円、こういう数字が出ておりまして、四十四年に対して一五〇%というような状態でございます。いずれにいたしましても、今後農民負担の軽減には極力努めてまいりたいと思っております。
  242. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 畜産関係のお尋ねの第一の飼料対策でございますが、粗飼料につきましては、農用地開発公団を中心といたします草地造成を引き続き推進いたしますほか、特に今後は既耕地におきます飼料作物の増産を重点に考えていきたいということで、五十年度予算にも緊急粗飼料増産総合対策事業約三十二億をお願いしておるわけでございます。  なお、流通市場につきましては、価格が最近不安定でございますので、極端な変動といいますか、値上がりを抑えるために、従来の民間にございました配合飼料価格安定基金の上に特別基金、俗称親基金と言っておりますが、を設けまして、これに対して、異常補てんをする場合の財源の資金の半分を国が出資するというような仕組みを本年の二月から実施をいたしておりまして、これによりまして極端な変動を防止したいと思っております。  畜産物の価格安定につきましては、加工原料乳と豚肉につきましては従来の制度がございますので、これの適正な運用を図りますとともに、新たに牛肉の価格安定制度を実施いたしますために、現在畜安法の改正法案を御審議いただいておるところでございます。  さらに、卵価につきましても、最近非常に不安定でございますので、民間の補てん基金に対します財源を新たに二分の一、国がするというようなことによりまして強化をしておるところでございます。
  243. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘の市場の問題なんでございますが、卸売市場の問題につきましては、われわれ可能な限り公設でやってまいりたいという指導をしております。そのための助成補助金なり起債枠、これを確保してまいりたい。そこで御指摘の、民間の市場に対して助成はできないだろうかという御趣旨だと思いますが、これにつきましては、私企業でございますので、これに直接助成するというのは、いまのところ私ども非常に困難なのではないだろうかというふうに考えております。しかし、やはり先生指摘のような問題がございますので、生鮮食料品の市場のそういう民間市場に対しましての整備につきまして、融資制度の拡充といいますか、たとえば融資率でございますとか、そういうものをできるだけふやすということで私ども努力をしていったらどうだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  244. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最近における国際的な食糧事情の変化等から見まして、将来にわたって国民食糧を安定的に確保していくというために、国内の生産体制を整備し、わが国農業の自給力を高めることが農政の最大の基本であると思うわけであります。特にこの際、高度成長のもとでわが国の農業の体質が脆弱化したことは否めないわけでありまして、その中にあって、農業の体質を強化して、潜在的なエネルギーを高めることは必要であろうと思うわけであります。  今後の農政の推進に当たりまし、現在農政審議会で御審議をいただいております農産物需給の長期見通し及び今後の食糧政策のあり方の審議結果を見まして、その上に立って、長期的視点に立った総合的な食糧政策を打ち立てていきたい、こういうふうに考えるわけでございますが、その政策を打ち立てていく場合におきましても、やはり第一には、農業の生産基盤の計画的な整備と農用地の確保、さらに裏作の振興等によるところの土地利用の高度化、また、現在国会でも御審議いただいておりますが、農振法の改正によりますいわゆる農地の利用増進制度の導入、あるいはまた集団的な生産組織の育成、さらに制度金融の強化であるとか、あるいは相続税制度の改善等によるところの、農業の生産の中核となるところの担い手を育成をしていくことであろうと思うわけでございます。さらに、最近の物価、賃金の動向等に即応した価格政策を強化していくということも大事なことじゃないかと思うわけでございます。また自立経営対策の充実等も必要でございますが、こうした各般の施策を総合的に強力に実施していくことによって、国内の自給力を高めて、われわれの目標とする六十年の生産目標を達成しなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  245. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて兒玉末男君の質疑は終了いたしました。  次いで、井上普方君の質疑に入ります。井上普方君。
  246. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、いま兒玉委員からいろいろ質問がありましたので、それに続いたことになると思いますが、農産物の自給率が非常に低下しておる、カロリー計算では何%とか言われております。それで、この間、おたくの方の農林省の出しておる資料を見ますというと、農地面積の換算率でいきますと三五%だというのです。それは日本では集約農業で非常に生産性が高うございますので、そういうような数字も出ておる。  そこで問題は、困ったことに農地が足らぬという問題が起こってきておる。なぜ足らぬようになったかというと、これは御承知のように、結局農地の転用が非常に多かった。無秩序に行われて、都市もそれに従ってスプロール化していった。ここに原因があった。その一番のもとは何だと言いますと、農地法がしり抜けになっておる。たとえて言いますならば、宅建業者、不動産業者が農地売買禁止の仮処分というやつで全部押さえていった。後で名前を変えていって、実は農地を壊滅さしていったという事実があります。ここに農政当局の非常な手落ちがあったのではなかろうか、抜け穴があったのではなかろうか、私はそういう気がするのであります。  一例を申しましょう。関係者が実はこの建物の中におりますのでまことに言いにくいんだけれども、言わざるを得ないようになるから言いますが、千葉県に大綱白里町というところがございます。あれを私が調べてみますと、どういうことをやっておるかと言いますと、国が灌漑用水を新しくつくるし、圃場をつくっておるところ、その土地大体百二、三十町歩を土建業者が買い占めておる。どうやってやっているんだと思って謄本をとってみますと、全部農地売買禁止の仮契約。全部押さえている。ここら辺は都市計画法にいう白地地域ですから、都市計画法になりますと全部がっぽりとやろうという悪だくみを発見いたしまして、これは国会で追及しましてある程度制限することができましたが、すべてこういう方法で優良農地、農林省が優良農地と認めておるところでも、ともかくどんどんと蚕食せられていったところに原因があったのではなかろうかと思うのであります。  一方、土地がどんどん上がりましたので、農民も、実を言うと土地を売りさえすれば何とかいけるわというので、生産意欲というものもこれまた低下したと思うのであります。一方、政府はどんなことをやったかといえば、これはもう御承知のとおり、私はもう詳しくは申しませんが、遊休農地なんといって、草ぼうぼうにさして銭をやるなんという、ともかくばかげた政策をいままでとってきた。農民の労働意欲というものは、生産意欲というものは確かに減退してきておる、私はこう思うのであります。  このときに当たって、転換する農政を担当せられようとする安倍さんの御苦労やさぞかしと私は思う。したがって、安倍農政、一体これからどうするのか。特に農地の拡大について、あなたはむずかしい言葉をおっしゃるけれども、そんなもの読んだってだめですよ。農業生産基盤の拡大なんと言ったってだめなんで、農地を一体どうやって多くするのだ、この点をひとつ伺いたいのです。
  247. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、いま井上さんが指摘されましたように、高度成長経済の中におきまして農地が壊廃をしてきたことは争えない事実でありますし、これがまた農村の生産力の低下につながっておるということもあるわけでございます。しかし、私たちは、こういう今日までの高度成長経済から安定成長へ経済の路線が移っていくわけでありますし、また国際的には食糧が逼迫という基調が今後続いていくのではないか、こういうふうなことを考えるにつけても、やはり国内の自給力を高めていくということが農政の大きな課題であろうと思うわけであります。それには、いまおっしゃいますように、いかにしてその農地を確保し、あるいは造成をしていくかということであろうと思うのです。  現在新土地改良十カ年計画が行われておるわけですが、これによれば、五十七年までの間に七十万ヘクタールをつくるということになっておるわけです。しかし同時に、われわれがいま農政審議会に対して諮問をお願いしておる計画、これは新土地改良計画を延ばした計画ですが、昭和六十年までに八十六万ヘクタールをつくる。全体で百五十万ヘクタールぐらいの農用地造成の可能な面積が国内にある、そのうちの八十六万ヘクタールをつくろうということで考えてこれからやるわけでございます。しかし、いまの抑制予算の中におきましてはなかなか、現在の新土地改良十カ年計画の進捗度も、四十七年から出発しておりますが、おくれておることは事実であります。したがって、食糧の自給力を高めるという上からいけば、何としてもこの計画を軌道に乗せて、六十年までには八十六万ヘクタールぐらいは何とかしてつくらないと、われわれが目標とするところの自給力を高めていく、総合自給率を七五%に持っていくという計画が到達できないわけですから、これはぜひともひとつやらなければならぬ。  同時にまた、農地が無計画に壊廃されるということにつきましては、やはりこれは農地法の厳正な適用を今後は責任を持って行わなければならぬわけでございますし、さらに、今回農振法の改正等もお願いしておりますが、農地の高度利用ということも行っていくと同時に、農振法の改正で農用地においては開発規制も行われるようになるわけでございますから、そういうこととも相まつとともに、井上さんなんかがつくられた国土計画法ですか、これにおいてもそうした規制等が行われるわけでございますから、そういうこと等とも相まって農地の確保といいますか、農地の転用等に対する規制を強化して農地が壊廃されることを防いでいく。一方においては造成し、一方においては壊廃を防いで優良農地を残す、確保するということをあわせてやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  248. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、この政府の方針が再三にわたってふらふらふらふらしてきた、ここに私は農民の信用というものが非常に少なくなっておると思うのです。  私は、日本の農業というのがいままでずっと、一体どうしてこういうように明治以来拡大してきたかというようなことを考えてみる機会がありました。ひとつそれを申し上げますと、品種改良であるとかあるいはまた農業に開発せられた技術というのは一番早く導入されます。医学におきましては、開発せられた技術あるいは薬品というものは一般に普及するのはやはり時間がかかるのです。ところが日本の農業については、これはもう直ちに技術開発が普及していったという歴史が日本の農業を育ててきた。その一つの大きい原因は何だと言うと、政府に対する農民の信頼が非常に強かったということ、お役人が言うことであったならば間違いはないというので、品種改良というようなのにも大きく踏み込んでいったのが、私は日本の農業が明治以来非常に進歩してきた理由じゃなかったかと思うのです。  しかしそれはおいて、ところがこれが、その大もとである政府の方針というものが、米をつくれと言ってみたりつくるなと言うてみたり、あるいは今度増産してみい、しなければならぬと言うし、あるいは農地をつくらなければならぬと言う。今度また百五十万ヘクタールつくるのだと言う。これについて私は、農民の信頼はなかなか回復しがたいものがあるのじゃなかろうか、このように思うのです。これはせっかく御努力を願いたいと思います。いままでの政府の、農林省のやり方というものが実はふらついた、そこに私は大きな原因がある。現にそうでしょう。農林省の機構だっていままで大きく変えてしまったでしょうが、局の名称まで。そこに大きな原因があったのじゃなかろうか。これからなかなかむずかしい局面に会いますよと私は申し上げたいのであります。一方におきましては国民の住環境を改善しなければならない。ために宅地造成を大幅にやって国民の期待に沿わなければならない。しかし限られたところでございます。私は、農業振興につきまして非常にむずかしい面があると思うのであります。したがいまして、先ほども申しましたように、農民の生産意欲というものが都市近郊におきましてはいま落ちておる、これは否めない事実だろうと思います。これをいかにしてともかく回復するかということが最大の重点でなければならぬのじゃないかと私は思うのです。どうでございましょう、大臣
  249. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全くそのとおりであろうと思います。やはり都市近郊農家につきましては、資産的保有といいますか、そういう傾向が非常に強い。生産をするよりは土地の値上がりを待つ、そのために保有しておくというふうな傾向が強い。また同時に農業政策の問題もあるわけですけれども、高度成長の中においてはそういう傾向が強かったということが事実であろうと私は思います。
  250. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、これは高度成長政策に全部罪をかぶせるのは間違いですよ。高度成長政策という中では、農業に対して、安い外国の製品を買えばいいという考え方、物を買えばいいじゃないかという考え方が作用したからこうなったので、私は高度成長政策というものが農業にまで及んできたとは思わないのです。ここらあたりにいままでの政策の大きな矛盾があったのじゃなかろうかと私は思います。  そこで、農地法をそれじゃどういうように直すのかという問題が私はあると思う。大網白里に行ってごらなさい。あの広大な農地を全部買い占められたのですよ。これはお役人、知っておるでしょう、大分国会でも問題になりましたから。
  251. 大山一生

    ○大山政府委員 先生の仰せられるのは、農地法のたてまえと仮登記との関係であろうと思っております。農地法はたてまえといたしまして、権利の設定、移転という段階でチェックする、こういうことになっておるわけでございまして、したがいまして、単に契約を結ぶという段階は農地法違反ではありません。ただ、実質的に代金が支払われて引き渡しされてしまうというような、事実上支配権が移ったと同じような状態になりました場合には、当然農地法違反の問題が出てまいる、こういうことでございます。  大網白里の場合にやはり一番大きな問題は、あそこの農用地開発事業といいますか、土地改良事業をやっておるところを早く農用地区域にしたい、したがって農振地域を早くつくりたいという農民側の要望と、それから、線路沿いに市街化区域をつくって、いわば市街として活用したいという一方の意見と、この二つの交錯したところがあそこにあったと思っております。仮登記が百何十ヘクタールにおいて行われたことは確かでございますけれども、支配権が移るには至ってなかった、こういう段階でございまして、私の方から言いますと農振地域を早く決めなければならぬ、こういうふうな問題から、三十ヘクタールだったと思いますけれども、市街化区域に指定されるであろうというところを除いて、農振地域、そして農用地区域に編入した、こういうわけでございます。そこで農地法との関係でございますけれども、農用地区域内に入りますと、これは農振法によりまして原則として転用はできない、こういうことになっております。しかし、農用地区域外のところといえども農地法が適用になるわけでございますので、仮に農振白地であっても、これは転用申請が出てまいりました場合には仮登記の有無に関係なく判断いたす、こういうことに相なるわけでございます。
  252. 井上普方

    井上(普)分科員 えらいむずかしいことをおっしゃいましたけれども、大臣も恐らくわからぬと思う。あなた、いまの仰せ、理解できましたか。私は理解できないと思うのです。  この農地法の現状では、大臣、こういうことなんです。ある土建屋さんが百数十町歩にわたって買い占めた。それは全部売買禁止仮処分というので、農地法の抜け穴を通って買い占めた。国会で問題になって、あわててこれはなにしなければいかぬということで、建設省と農林省とが話し合った結果いまのようなことになったんです。しかしその内容はどうなのかと言うと、決していま局長がおっしゃったようなもんじゃないので、農民は売り渡ししておったのです、事実金を受け取っておるのだから。それに農協も関与しておりました。地元の農協も関与しておった。そして片方では国の灌排事業がどんどん進んでおる。片方においては圃場育成の予算もどんどんついてきておる。現についておるところですよ。それがそういうような状況になって、優良農地がつぶされつつあったということであります。しかし、問題になったから何とか抑えることができましたけれども、問題がなかったらほおかぶりで行くでしょう。  したがって、それは権利設定とか、その議論は私もしました。国土利用法の制定の際に特にこの農地転用の問題について論議しまして、あれでは規制区域においては仮契約なんというのはできないような方法にしてあります。しかしながらいずれにいたしましても、これはまた景気の回復に伴いましてああいうようなケースが起こってくるんじゃなかろうかと私らには思われるのであります。農地法を改正するというのは大事業でありましょうけれども、そこらあたり、農地を確保するという面から一度、大臣、検討してみる必要があるんじゃなかろうかと思いますが、いかがでございますか。
  253. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、現在の農地法におきまして農地の転用の規制につきましてこれを厳正に行っていけば、いまの農地法で十分農地の確保ができるというふうに考えますし、現在また国会に農振法の改正をお願いをしておりますが、その農振法の改正の中で農用地域については開発規制の条項が入っておりますから、それとあわせて農地の確保というものは十分できる、こういうふうに思っております。
  254. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、あなた、農地法でできると思っておるところに大きな穴があるのですよ。それはあなたが部下を御信頼になって、そのメモを見ておっしゃるのはもっともだけれども、実際は違うのです。実際はできてないから私は申し上げるのです。私もそれぞれの実態を土地確保のために調べてみましたが、農地法だけでは実際できてないのです。この問題につきましては、大変時間がございませんのでまた機会を改めてもう少しやることにしてこの程度にいたしますけれども、ともかく農地確保、むずかしい言葉で言えば基盤整備ですか、基盤整備の拡大とかへったくれとかむずかしいこと言っていますけれども、要は、ともかく農業用地を拡大する、確保するというところに問題がある。これと、この都市化が進む中における宅地の供給、この接点を見出すのに非常にむずかしい面があると思います。特に大臣に対しまして強くこの点は要望しておきたいと私は思うのであります。いま農民は政府に対する信頼を失っておる。これを前提にして政策を立てられんことを強く私は要求いたしたいと思うのであります。  もう時間もございませんので続きまして伺いますが、実は農道とか林道とかいうものの管理者が明確じゃない。これは管理者、だれか決めていますか。だれになっていますか。
  255. 大山一生

    ○大山政府委員 農道の場合で申し上げますと、農道ができ上がりましたときに、管理は、土地改良区がやっておる場合、市町村がやっている場合、それぞれその農道の立地条件に合わせて、市町村なり土地改良区が管理いたしておるわけでございます。
  256. 井上普方

    井上(普)分科員 ここらあたり、大臣、農道の管理は土地改良区がやっている、林道におきましても林道組合がやっておるという場合が非常に多いのです。ところが、基幹農道でございましたら、もうすでに普通道路、一般道路と何ら変わらない。ですからここで事故が非常に起こるのです。交通安全施設は一体だれがつくるのです。交通安全施設は一体どなたがつくるのかと言うのです。
  257. 大山一生

    ○大山政府委員 農道には県営、団体営、いろいろあるわけでございますけれども、その事業主体がつくるわけでございます。
  258. 井上普方

    井上(普)分科員 交通安全施設はできておると思いますか、ほかの一般道路と変わらぬだけの。基幹道路だけについて言いましょう。できておると思いますか、あなた、実態は。
  259. 大山一生

    ○大山政府委員 農道をつくります場合には、一応その設計基準といたしまして道路構造令に準拠して行うことにいたしておりますし、そして安全施設というようなものをつくるようにしているわけでございます。ただ、昔は安全施設を必ずしもつくっていない例があるわけでございますけれども、それは安全施設という事業を行っているわけでございます。
  260. 井上普方

    井上(普)分科員 その予算はどこから出ているのですか。
  261. 大山一生

    ○大山政府委員 五十年度予算から安全施設予算がついております。それから事業の方は事業費の中でやるわけでございます。
  262. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、どうお考えになります。できていないのですよ。お役人は、いま局長が話し合いながらやらなければならないほど道路管理という面がおろそかになっているのです。そのために交通安全施設というのが非常におくれておるのであります。おくれておると言うより皆無に等しいのです、いまあるところは。しかもそれは一般道路と同じように、農免道路ですので広うございます。しかも町村は財政難からいたしまして、農免道路を盛んにつくってくれという陳情がございましょう。そしてそれが町村の基幹道路としてつくられる。ここに安全施設というものはほとんどない。ガードレールも少ない。それは橋のところにはちょこっとありますが、ほとんどないに等しいのですよ。  管理者をあなたは言うたけれども、土地改良区に管理させたところで、交通安全施設の金が出てくるところはありゃしないじゃありませんか。おっしゃることに矛盾がありましょう。それで、この基幹道路ができたら、ともかく役所のセクショナリズムはひどいもので、わしらのところは農道でつくったのだから、おまえ、県道、市町村道に移すなよというようなことを平気で言うのだ。でありますので、農免道路でつくっても、それを市町村道あるいは県道に編入するおおらかな気持ちをひとつ農林省は持っていただきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  263. 大山一生

    ○大山政府委員 きょうデータを持ってまいりませんでしたけれども、市町村への移管が一番多いウエートを占めております。それで、なおちょっと釈明させていただきますけれども、農村地帯におきましては本来的には余りガードレールを必要としないところにつくっているわけでございます。ところがその後、都市が勝手に出てまいりまして、それで非常に農道にもガードレールを必要とする事態が出てくる、それで後を追っかけていく、こういう事態があることをひとつ御了承いただきたいと思います。
  264. 井上普方

    井上(普)分科員 それは言いわけのための言いわけなんで、道路というものは、広い直っすぐなものがつくられたら自動車が走るのはあたりまえ、自転車、バイクが走るのはあたりまえです。これを初めから農免道路だからというので、トラクターが走るぐらいの速度のつもりでつくられたのじゃ困るので、だから私は言うのです。先ほど来言うように、おおらかな気持ちで、市町村道、県道に快くお出しなさいということを私は申し上げておる。  私はもう一つ、都市用水と農業排水との問題について質問します。都市周辺に、いわゆる生活用、いままで農業用水だったのですね、ところが農業がなくなってもやはり農業用水として残っておる。これが蚊の発生源になったり何かして放置されておるというところが非常に多いので、これの処分を早くしなければならぬと思うのです。これは大臣、どういうような姿勢で取り組まれますか、お伺いしたいのですが……。
  265. 大山一生

    ○大山政府委員 いわば市街化してまいりまして、受益者がほとんどいなくなってきた、そういうような排水路、これはある程度あると思っております。それらのところにおきましては、大体、実態といたしましては都市下水等の機能をあわせて果たしておるというようなかっこうからいたしまして、地方公共団体の管理下に置かれているのが普通の姿というふうに私たちは理解いたしております。したがいまして、都市化地域におきまして管理が放棄されっ放しになっておる水路は少ないというふうに理解いたしております。
  266. 井上普方

    井上(普)分科員 そうおっしゃられると、ちょっと物を申さなければならぬようになる。これは灌漑排水路である。あるけれども、これがいまもう都市用水の姿になっているときに、都市用水の方に、建設省の方に移管させてくれぬかと言っていったら、なかなか農林省は手放そうとしないのであります。私はそれを経験しているのだ。どこだと言えば申しますよ。あなた方はおおらかな気持ちかもしれぬ。しかし、あなたの部下の、県の何というのですか、耕地課長か、あんなのが、自分の仕事が少なくなるのでこいつをがんばって、いや、わしの方であくまでも持ちたいのだということを申すのです。局長は首を振っておりますが、私は経験したのだから。土地改良区にともかくこれを持たせえと言う。実際の面はもう灌排路が都市用水になっておるのに、これをやらぬ。セクショナリズムの最大なものが農林省のように思われて仕方がないのであります。住民もあるいは組合も、これはもう何も用事がなくなるじゃないか、ひとつ県の方へ移管してくれと言っても、いやと言ってがんばるのがあなた方の部下ですよ。こういう点がいま出てきている、私が事実体験したのだから。ここらはおおらかな気持ちで、本当に実態に即したような措置をとらなければならないように都市化が進みつつある。片方におきましては全然要らなくなった排水路もそのまま残置されておる、こういう実態があるのです。大臣、この点についてはあなたのお考えをひとつ聞きたいのと、もう一つは、全国にこういうのが幾らあるか、お調べになったことがありますか。あればあるで、後ほど資料を出していただきたいと思うのです。
  267. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほど申し上げました排水路といいますか、用排水路あるいは用水路、これでいわば機能がなくなったようなものの大半は、先ほど申し上げましたように都市下水というようなものになっておりまして、したがって管理が市町村なりに移っております。したがって、農林省といたしましてはその種の数字はつかんでおりません。それから、恐らく先生が経験されたと言われるところにおきましては、現在協議中であるようでございます。
  268. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 各省の立場もありますし、確かにセクショナリズムという点も私はあると思います。ですから、事実上その利用の目的というのが大きく変更されるというふうな実態的な変化があった場合は、やはりこれはその実態に即して、さらにまた地域住民の意向を体して、そういう変更とかなんとかいうことはなされてしかるべきものじゃないか、私はそういうふうに思います。
  269. 井上普方

    井上(普)分科員 時間が参りましたので……。  大臣のおっしゃるとおりでやっていただけば私は結構なんです。それが下まで通じていない。私が経験した例を言いますけれども、これはもう去年から二級河川に編入されているんですよ。中小河川に編入されているんですよ。ところが、依然としておたくの出先機関がまだ協議中なんということを本省に言う。そこに、自分らの仕事が少なくなることを恐れるといいますか、セクショナリズム、そういうものがあるんじゃなかろうかと思います。大臣はえらいおおらかな人だと私は承っておるので、どうぞセクショナリズムというようなことを考えずに、大所高所に立って物事を考えていっていただきたいことを強く私は要求したいと思います。  先ほど要求しました資料につきましては、また個人的にでも送っていただいて結構でございます。  終わります。
  270. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  続いて、安里積千代君の質疑に入ります。安里積千代君。
  271. 安里積千代

    ○安里分科員 くつろいだ気持ちでお聞きしたいと思いますので、皆さんも、そのような気持ちでお答え願い、また御意見を承らせていただきたいと思います。  櫻内農林大臣時代昭和四十八年の二月だったと思いますが、総括質問で、私は、学者専門家指摘するところによると、数年後には世界に食糧危機が来る、多くのものを外国に依存している日本としては、そのことを考えて農政に当たらなければならないという趣旨のことを述べました。もっとも、そのことは沖繩の糖業に関係をしてでございまして、砂糖そのものは食糧と同一視することはできないかもしれませんけれども、同様に欠くことのできないものであり、しかもその大半を外国から輸入しておる。どのような状況で輸入が制限され、あるいはまた、価格の変動を来すかもしれない。だから政府が国民に対する甘味資源を供給する責任から、その自給度を高めて、ある程度のものは国内生産をもって充てなければならない。そのためには、キビ作農民が喜んで働けるような値段で買い上げなければならない、という趣旨に関連して述べたものでございました。その後、今日におきましても、世界的な食糧危機の問題が論議されるようになっております。そうなりますと、私は、農林当局の国政の場におきまする大変大きな責任があり、それだけ政治の上にも脚光を浴びておるものだ、こう思うわけであります。沖繩が復帰いたしまして、長い間、日本の農政から外にあったわけでございますけれども、日本の農政の中に入りました。沖繩が結局、日本本土の一番最西南端にあり、諸外国とも近い。そしてまた、海洋に囲まれた亜熱帯地域である、こういう特性と申しますか、自然的条件、これが先ほど申しました日本の農政の中において生かされて位置づけられて、この地理的条件が活用されるということが私は望ましいものであり、またそうなければならない、このように考えておるわけでございますが、私のそのような考え方に対しまして、大臣の御意見をまず承りたいと思います。
  272. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、いまの御意見には全く賛成でございまして、やはり沖繩の亜熱帯地帯という特性を生かした農業の振興を図っていくということが、今日われわれに課せられた使命ではないかと思っておるわけでございます。沖繩の農業につきましては、私どもも、現在の段階におきましては、本土と生産基盤等においてもずいぶんおくれておるというふうに承知いたしておるわけでございます。これからの沖繩農業を振興する上におきましては、そのおくれを取り戻すための生産基盤等の充実につきまして、これは特別に対策を行っていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。  さらにまた、サトウキビあるいはパイナップルというのが沖繩の特産でございますが、こうした特産品をさらに奨励し、これに対する生産対策を強化していくとともに、また、畜産だとか野菜、たばこ、養蚕、果樹等、振興計画に基づいて、作目の多様化を図ろうといたしております。そういう面もこれから充実していかなければならぬし、水産につきましても、やはり天然の魚礁に囲まれており、海水も汚染されておらない、こういうふうな実態から、その振興についても、これからの施策を充実することによって、さらに一層の沿岸漁業振興を図ることはできるのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  273. 安里積千代

    ○安里分科員 大臣のおっしゃったこと、そのとおりであります。  そこで、いろいろな点において格差があり、おくれておる。これはいろいろ歴史的な条件と申しますか、理由もあるわけでございますが、特に戦争による破壊、引き続いて二十七年間アメリカの軍事基地中心であり、膨大な基地の中で軍事優先、そして基地経済というものの中に生きてまいったのであります。私はずっと終戦以来沖繩にありまして、沖繩の中におきまする政治に携わったわけでありますが、基地経済、あの当時のアメリカの指導、結局金は基地によって得よう、必要なものはその金で買え、こういう立場でありました。これはちょうど日本全体を小さくしたようなものだと思いますが、日本でも、もちろん戦後の疲弊から立ち上がりまするために、高度成長という言葉であらわされまするけれども、資源のない日本が工業立国、いろんな意味におきまして経済的に伸びていった。だから金さえ得れば、ほかの食糧あるいは必要なものは外国から入れればいい、こういうことが概括的に言えたかと思います。それが沖繩の場合においては、基地経済、基地収入によって、外国から物を買う、食糧も買う。こういうたてまえからいたしまして、第一次産業の振興ということに対する配慮というものが、非常に足りなかった。戦争の荒廃の上に、そのような二十七年間の基地経済の中に生きておったために、いろいろな意味において、おろそかにされたということが言えると私は思うわけであります。  そこで、復帰して、政府としてもその点を考えられたのでございましょう。沖繩の振興開発ということが強く叫ばれましたし、その一環として、あるいは復帰を記念するといって、海洋博も催されることになりました。これは一面、沖繩振興開発の起爆剤だ、こういう言葉をもっても言われておるわけであります。ところが現実に当たりまして、それが果たして沖繩の振興開発の起爆剤になるかどうかという点におきましては、多くの疑問が残されております。なるほどああいう行事がなければできないような、大変りっぱな道路がいま完成しつつあります。そのかわり沖繩の自然環境というものの破壊もおびただしゅうございます。手っ取り早い経済振興ということで、工業誘致の考えもありまするけれども、また大資本による土地の買い占め、農耕地の買い占め、こういうようなことも行われてくる。そうして狭い地域に莫大な資金が投ぜられる関係から、需要と供給のアンバランスもありましょう、本土以上に物価の上昇を来たした。そうなりますと、農村の収益では太刀打ちのできない、農村を離れていく人々も出てくる。そうして土地が荒廃するというような実情も生まれております。ということになりますと、沖繩振興開発計画というその一環として、あるいはその起爆剤としてなされるところの海洋博も、農業、水産業といったような第一次産業の立場からしまするならば、現在のところは、マイナスの点が非常に多い、私はこう思っております。  そこで問題は、じゃあ後はどうするかということが、私の一番心配する点であります。半年の間、相当の期間でございます。今年一年、来年の一月十八日まで海洋博が行われる。その間、多くの人々の去来もございましょう。あるいは海洋博によって注がれたいろいろな資金によって潤っている点もございましょう。けれども、これが済んだ後、その経済的打撃というのが一体どれだけ県民に襲うてくるかという点を、私は非常に心配するのであります。多くのホテルができた、工事に多くの労働者が従事した、海洋博で落ちた金、それで済んだ後、これは反動的に大きな影響が来るのじゃないか、こう思っております。少なくとも政治に携わる者といたしましては、現在の目の前のことの考えでなくして、将来を考えなければならない、こう思うわけです。常に先見の明と将来に対する展望の上に、施策も打ち立てられるべきものだと私は考えております。いまにして、これに対する、その終わった後のことを考え対策を講じなければ大変なことになる、こういう心配を私は持っております。  そこで、私はこう考えております。よく海洋博などというもので、観光あるいはレジャー的に、沖繩の立場考えやすうございますが、観光事業、レジャー施設などを否定するわけではございませんけれども、本当の振興発展、繁栄ということは、そのような遊びやあるいは自然を見るということだけから得るものじゃなくして、場合によっては、それは怠け者を養成することになりかねません。本当に土に足のついた、がっちりした基礎を組まなければならぬ。その場合に、私は、先ほど申し上げましたように、沖繩の地理的条件、特性を生かすところの、特に農業面、水産面、これに対しまする政府考えがしっかりしておりまするならば、私は、心配要らぬ、極端に言いますならばそのように考えたいと思います。海洋博に数千億の金が注がれた。もしその後を受けて、いまいろいろな意味においておくれておる、沖繩の農業基盤整備その他必要な生産に、政府の財政投融資が注がれてきまするならば、私は、憂うることなしと、このようにも言いたいわけであります。そういう立場から、私は今後の、あるいは今後と申しましても、もうことしから始めなければなりません、いま始めなければなりません、あるいはおくれておるかもしれぬと思っておりまするけれども、少なくとも今後の沖繩に対します農業、水産、農林、その他の事業に対しまする積極的、建設的な施策が樹立されていなければならない、私はこのように考えておるわけであります。大臣のこれに対するお考えを承りたい。
  274. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖繩の海洋博後における、いわゆる沖繩経済の均衡ある発展を図っていくためにも、農業の振興を進めるということは非常に大事なことで、まさにおっしゃるとおりであろうと私は思うわけでございます。沖繩につきましては、いまもお話しになりましたように、戦後のいろいろな占領等の問題から、経営規模が本土と比べまして非常に零細でもあるわけですし、生産基盤の充実につきましても非常におくれをとっております。まだ本土と比べますと、機械についても立ちおくれもあるわけであります。また技術等も低いわけでございます。そうした本土農業と比べて、いろいろな面で立ちおくれていると言ってもいいんじゃないかと思うわけでございます。そういう点をわれわれとしては十分に認識して、その上に立った機械化農業の基礎条件を整備するための基盤整備事業であるとか、あるいは経営規模の拡大、生産の組織化を図るための農業構造改善事業であるとか、農業の機械化、特にサトウキビ収穫過程の合理化を促進するための機械の開発、改良普及といった問題、品種の改良、病害虫の防除等いろいろの施策を、この際こそ、やはり集中的に講ずるという基本的な姿勢で対処していかなければならないことは当然だ、私はこういうふうに考えておりますし、私もそういう考え方のもとに、昭和五十年度においても、いろいろとそういう立場に立った予算も組んでおりますが、今後とも、さらにひとつ力を注いでまいりたいと考えております。
  275. 安里積千代

    ○安里分科員 私は、先ほど沖繩の地理的条件、亜熱帯地域、海洋に囲まれた立地的条件のよさということを取り上げたわけでございますが、逆に、それゆえに大変マイナスな点が、沖繩の現状としてあるわけです。いろいろなおくれ、これは決して政府自体を責めるというものじゃなくして、沖繩自体にも大きな責任がある、現地にも大きな責任があるわけでございますが、自然的特性、よさというものと逆に、これを妨げるところの非常なマイナスの点が、欠点が多く存在すると私は思うのです。問題は、振興を図りまするためには、そのマイナスの点、そのまずい点、その欠陥というものをまず認識し、これに対する道を講じなければならないと思うのです。  そこで、これは局長さん方で結構でございますので、沖繩農業の現状をごらんになって、水産業もごらんになって、何か欠けているんだ、この点が非常にまずいんだ――これは率直にですよ、決して甘い言葉じゃなくして、率直に、こういう点がなっておらぬのだ、こういう点が沖繩の現状として劣っているんだ、これを率直に御指摘願いたいと思います。
  276. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 ただいまの先生のお話に対するお答えは、先ほどの大臣のお答えに尽きておると思うのでございますが、繰り返させていただきますと、御案内のとおり、水源その他の水資源に乏しくて、土地基盤整備が非常におくれておる、あるいは技術水準が非常に低い、それから機械化がおくれておる、それから生産条件ができておるにかかわらず、果物、野菜等に対する特殊病害虫が多いというようなこと等、それぞれ生産条件においていろいろな問題点がございまして、これらについての克服というものについては、本土並み等でなくて、一段の施策を要する点が多々あるということでございます。     〔塩川主査代理退席、植木主査代理着席〕  なお、先生のお話にもございましたように、基地経済から続いてさらに海洋博等の建設工事、そういうようなものが労賃の上昇等をもたらして、農業面への定着よりも他産業面への流出、あるいは農業部門における生産性の向上をカバーするところにエネルギーが参らず、極端に価格政策等に傾斜するというような面が見受けられたんじゃないかというように思います。
  277. 安里積千代

    ○安里分科員 おっしゃることに決して間違いはないと思います。私は、もちろんいまおっしゃったことに関係するわけでございまするけれども、農業というものは、自然に非常に左右せられるわけでございます。一番マイナスの点は、水資源に乏しいという問題ももちろんあると思います。雨量は非常に多いのでありまするけれども、季節的に非常にむらがありまするし、保水力も非常に弱い、河川も少ない。したがいまして、農業基盤整備のために、農業用水への配慮というものの必要が大きくなってくると思います。  もう一つには、もちろんいまいろんな施設面をおっしゃったのでありますけれども、沖繩の農地の整備というものがなされておらぬ、私はこう考えております。農耕地の整備――私は、基本的にいまの機械化の問題、これは後の問題でありましょうが、本当に機械化するためには、前提として、農地の改良から行わなければならぬし、交換分合もあわせてしなければ、機械だけ持ってきたって使い道はない、こういうことになりましょうし、病害虫の問題もおっしゃるとおりでありましょう。  もう一つ、私は、最大に劣っているのは土壌じゃないか、こう思っております。土壌の改良ということが根本的に考えられなければいけないんじゃないか。酸性土壌が主体であると思いまするけれども、この改良ということは、いろいろ連作をしまするために、あるいはまた、耕作が非常に単純化しておるために、ますます土地の力が低下しつつある。こういう非常に大きな欠陥があろうと思いまするし、それに暴風雨、台風という自然の災害もあるということになるかと思います。  そこで、まず、御指摘なさいました水の問題についてお考えを、また具体的な施策をお聞きしたい、こう思うのです。単に沖繩の水と申しますけれども、河川の多いのは、あるいは水の多いところは、沖繩本島では北部であり、中部、南部には少ないのであります。まず利用できる河川と言えば、八重山群島であるか、こう考えております。宮古にはございません。宮古におきましては、地下水の問題が指摘をされておったようなわけでございます。沖繩でも、地域によって農業用水の問題というものが考えられてくるわけでございますが、具体的に、農業基盤整備のための農業用水の確保、利用、このために政府筋はどのようにお考えなさっていらっしゃるか。本年度の予算にも頭を出しておるようでございまするけれども、それらを含めまして、お聞きしたいと思います。
  278. 大山一生

    ○大山政府委員 沖繩の場合に、サンゴ礁が非常に多いわけでございます。そしてまた流域が非常に狭い、こういうことから、いわば水資源開発をする場合のダム適地が非常に少ないという問題があると思っております。そこで本島北部でありますとか、あるいは石垣島、こういうところにつきましては、主として、その中でも数少ないダム適地はございますので、それは開発してまいりたいというふうに考えております。これとともに、本島北部には中小河川約二十七河川ございますので、これは戦前から流水調査をやっております。その小さな川の流水調査の中から、新たな水を生み出していく、こういう方向を一つ考えねばならぬであろう、こういうふうに考えておるわけでございます。そして石垣島につきましては、すでに本年度から宮良川にダムを二つつくりまして、全計着工をことしじゅうにいたしたいというふうに考えております。土地改良事業で行いますので、農民の同意が必要でございます。農民の同意がとれ次第それを実行したい、こういうふうに考えておる次第でございます。そのほかに名蔵川、これもいま直轄調査をいたしております。そのほかに八重山群島と申しますか、そこについての水調査もいたしておるわけであります。  なお、先生指摘の宮古でございますけれども、一部には淡水湖の可能性を持っておりますので、その淡水湖の可能性を追求いたしますとともに、淡水湖の不可能なところにつきましては、いわば地下水を利用するという方法、端的に言うならば、現在無効放流しております地下水を、要するに壁をつくりまして、いわば貯留をする地下ダムに似たようなかっこう、これも一つの方法であろうということでございます。この問題は地盤沈下との関係等もございますので、十分に慎重に対処しなければならぬと思いますけれども、宮古の場合には、淡水湖ないしは地下水の活用、こういうかっこうで対処いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  279. 安里積千代

    ○安里分科員 宮良川地区の灌漑排水は本年度から着工、名蔵川地区の灌漑排水の事業の地区計画の調査が、ことしから調査でございますか、進められておる。それから宮古地区におきまする淡水湖、これは現地を知っておりまする私の知る範囲内では、多分与那覇湾じゃないか、こう思うわけですが、あそこに流れ込む水がなくて、地下の水で淡水化できるような可能性があるのかどうか、それは若干疑わしいものでございます。  それからこれは同じく八重山地区でございますけれども、西表はほんとうに水の豊富なところでございます。だが多くの人が去って、そうして琉球政府時代でも、開拓するということで相当人も行きましたけれども、現在島を去る人々も非常に多いと言われております。アメリカの統治下にあるときにも、西表開発ということで、日本政府からも調査をされたことがございます。私は、あのときにどういう方向で一体開発するかという関係者の問いに、その当時食糧生産の地域として開発しろということを述べたことがありまして、奇異の念に打たれたようでございましたけれども、住民が少なくなりつつある、観光開発だ何だかんだということを言われまするけれども、そのような意味における、農業生産のためにもっと計画的に力を入れれば、無尽の宝庫だというくらいな気持ちがするわけでございます。西表のそういう面の施設につきましては、お考えはないのであるかどうか。  それから、沖繩本島の北部のお話もございましたけれども、北部の河川というものは、大部分は、上水道、飲料用水、工業用水に若干行っていましょうけれども、農業用水にはほとんど使われていないんじゃないか、またその余裕はないじゃないか。また中部、南部については何らお触れになりませんでしたけれども、与那覇湾の淡水化と同様に、南部におきましても、そのような場所があると私は思うのです。ですから、自然の雨に頼っておるこの原始的な農業を、水を利用する施設に資金さえ投じますれば、私は困らないだけのものが十分充足し得るものがあると考えます。ですから、農業用水の問題につきましては、積極的にひとつ取り組んでいただきたい、こう思います。  糖業の問題につきましても、私は、いまのような状況では、大変後進性を免れ得ないと考えております。これは沖繩における農民自身も考えなければなりませんけれども、しかし、農民自身の手でできることとできない点があります。自然の雨を利用しておるような糖業では、とても反当収量をふやすことはできないと思います。反当六トンや七トンの収量ではどうにもならぬ、少なくとも十トン以上の生産を上げなければならぬ。しかし、いまのような灌漑排水の何の施設もないようなことでは、どうにもできないと思います。この糖業の振興につきましても、灌漑排水の施設が必要でございますとともに、触れておられぬようでございますけれども、私は深耕作というものがさっぱりなされていない欠陥もあろうと思っております。また何年も連続して株出しするというような状況も改めなければなりません。しかし、こういう状況も、機械化するにあたりましても、これだけの施設をするにあたりましても、政府のする施策と相まって、農民自身の手でどうにもできない問題があります。糖業の振興につきましては、そういった政府自体の基盤整備のために、もっともっと力を入れていただきたい、こう思います。糖業問題に対しまする何か御意見がありましたら、承りたいと思います。
  280. 大山一生

    ○大山政府委員 沖繩におきます基幹的な作物がサトウキビでございます。サトウキビのいわば生産力の増強、そして営農労力の節減、これはまことに緊急の要務だと思っております。そのためには何としましても圃場整備といいますか、これがまず行われなければならない、こういうことでございます。それでわれわれといたしましては、基盤整備につきましては畑灌、それから農道といったような、いわば畑総と称するものでございますけれども、これを極力推進したいと思います。ただ、沖繩の技術水準等のこともございますので、それだけではなかなか早期効果の発現というのは出てまいりません。そこで、場合によっては農道なり農地保全といったような単独事業もあわせ実施するというかっこうで、畑地の振興措置を講じてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  281. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいまは糖業の振興につきまして、土地改良、基盤の面からの施策を申し述べたわけでございますが、もう一つあわせまして重要な問題は、いわば省力化という問題があるわけでございまして、特にサトウキビの場合には、収穫労働に非常な時間を要するわけでございます。そこで従来から収穫機械の導入、特に沖繩の条件に適応いたしました中小型の収穫機械、これを開発して導入するということをやってまいりましたが、それをさらに一段と進める。それからまた一番問題は、脱葉作業でございますから、そのために集中脱葉実験事業を実施しておりまして、こういうのを普及してまいりたい。そのほか優良種苗の問題がございます。これらの施策は従来からやってまいりましたが、さらにこれを進めると同時に、特にやはり濃密指導をすればもう少し収量を上げ得るのではないか。ただいま先生から指摘がございましたが、まだまだ収量を上げる余地はある。したがいまして、五十年度から新しくサトウキビの単位面積当たりの収量の増大を図るために、濃密指導地区を設置するというような事業も組んだわけでございますが、これらの施策をさらに進めまして省力化、収量増加等に努力してまいりたいと考えております。     〔植木主査代理退席、塩川主査代理着席〕
  282. 安里積千代

    ○安里分科員 沖繩で現在普及しているのはCO三一〇号ですね。これは導入されて二十年以上、それ以上になると思いますので、もう品種本来の特性というものがずいぶん退化していると思うのです。ですから品種の改良というようなことも積極的に推進しなければならぬと思うのです。これは大分大きなことを言うようでございますけれども、ほんとうに政府が沖繩の糖業の振興ということをお考えになりますならば、品種の改良もあわせまして、糖業の試験場と申しますか、こういったものを積極的に考えてしかるべきでないかと思うのです。私は戦前台湾におりまして、台湾の糖業試験場にもおりましたけれども、そういう点に政府自身が大変力を入れておったのです。これは品種改良その他糖業に関します試験研究をする機関というものが――これは農事試験場だけの片手間ではできる問題ではないと思うのです。ですから、糖業試験場を設けて取っ組むだけの熱意を示していただきたい、私はこう思います。  それから、あまり問題にせぬようでございますけれども、深耕作――私も戦前台湾におったわけでございますけれども、当時の台湾総督府が、糖業振興のためには農地を深く耕す策をとりました。これは本島の農民にとりましてはある程度強制的であって、やり方は度が過ぎたと思いますけれども、しかし本当に振興させるためには深く掘って耕さなければいかぬ、こういう点がさっぱりなされておりませんし、ハワイの畑を見ましたときに、サトウキビが枯れておりました。何で枯れておるかというと、ストライキをやったために枯れておるということでございました。ストライキでサトウキビが枯れるのはおかしいと思いましたら、水道職員のストライキでありました。つまり畑の中にもちゃんと水を引いておる。これがストライキのために水が来なかったから、サトウキビは枯れておる。こういうことを考えますと、灌漑排水の施設もなく、ただ自然の雨を利用する、そうして表土だけで、根の深く入らないサトウキビをつくる。しかも耕作がもう非常に粗放化している、こういう状況では本当の振興は図れないと私は思います。これは農民自身、地元自身も考えなければなりませんけれども、ぜひ政府のてこ入れと申しますか、積極的な指導をお願いしたい、こう思います。  パインにつきましては、きのう同僚議員からお話がありましたので、私は触れませんが、ただ一つ、販売流通機構の中に非常に多く隘路があるんじゃないか。もう一つは、生産過程におきましても、非常にたくさんの人を要しておりますが、もっとあれは省略できる道があります。この過程においても考えなければならない点がありますけれども、沖繩製品を消化して後、外国からの輸入量等云々というお話もありますけれども、商売人が扱うのですから、利益のある方にどうしても早く走ってしまう、幾らかコスト高の製品を扱うように、商社というものを法で義務づけるわけにはいきませんし、そこにやはり商売人も責任と申しますか道義と申しますか、国内製品を、しかもこれは沖繩の復帰後における農民の大変大きな基幹産業であるとするならば、これを育成する点において、製品を取り扱うところの商社も協力するという連帯的な気持ちと申しますか、道義的な気持ちと申しますか、そういったものを、行政指導だけで足りますならば望ましいことでございますけれども、そこまで農林省にお世話を願うということはあるいは無理かもしれませんけれども、そういったことも政府で配慮の上で、生産が完全に消化されるように御配慮願いたいと思います。  そのほか、沖繩におきまして、地理的条件を生かすために有望視されておる、こういった農業が望ましいしまた適種であるとお考えになっておる部門がありましたら、御指摘願いたいと思います。
  283. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 各般の問題についての御指摘があったわけでございますが、豊富な草資源に恵まれております沖繩においては、肉用牛を中心とした畜産の関係振興があるかと思うわけでございますので、畜産局長から申し上げます。
  284. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま官房長からお答えしましたように、沖繩県におきます畜産は基幹部門の一つをなしておると思います。生産額で見ましても、農業総生産額の三十数%を占めておりまして、これは全国で見まして畜産は二五、六%でございますから、沖繩県の場合、全国に比べまして畜産のウエートが高いということでございますが、その基盤といたしましては、恵まれた自然条件、山林原野の野草資源が豊富であるというようなこと、あるいはただいまお話が出ましたようなサトウキビの梢頭部であるとかあるいはバガス、パインかす等の基幹作物の副産物が豊富で、家畜飼料に不可欠な粗飼料が得られるという点等から、今後沖繩農業の振興を図ります場合、重要な部門として考えていきたいというふうに考えております。  畜産の中でも、特に豚と肉牛の比重が大きいわけでございますが、今後、先ほど言いましたような草資源を活用するという面からいたしますと、肉牛の生産振興を図るのは非常に有望ではないか。肉牛につきましては、牛肉資源が、長い目で見ますと、世界的にもかなり不足でございますので、わが国といたしましても、長期的に見まして国内生産に力を入れていきたいというふうに考えておりますので、そういう点からいたしましても、有望な部門ではないかというふうに考えております。  ただ現状におきましては、沖繩の畜産全体を見まして、飼料の生産の面あるいは飼養技術の面それから家畜の資質、能力の面あるいは衛生面あるいは流通面等で、本土に比べますとまだ若干格差があるという面が見られますので、われわれといたしましては、そのような特殊な事情を踏まえまして、沖繩県の畜産振興を図るために、本土とは別にいろいろな対策をやっておるわけでございます。たとえば肉牛の場合でいきますと、本土の優良な種畜を特別に導入し、あるいは肥育の素牛も本土のものを入れていくということによって、沖繩の肉牛の資質を改良していくとか、あるいはまた、衛生対策の面でかなりおくれている面があると思いますので、衛生指導に特別な援助をする、あるいは人工授精等も本土に比べますとかなりおくれが見られますので、これらに対しましても特別な予算を計上するというような点、さらに野草だけではなくして、牧草資源の造成を図っていくことももちろん必要でございます。復帰後、やはり本土に比べますとかなり開発のテンポがおくれているように思いますので、できるだけ早く追いつき得るように、予算措置の上で特別な配慮も行っていくというようなことをやって、沖繩畜産の振興に資したいと考えております。
  285. 安里積千代

    ○安里分科員 ほかにどういうものが考えられておりましょうか。と申しますのは、糖業だ、パインだという単一的な農業経営、これは決して健全なる農業の振興には当たらぬと思うのです。もっと農業経営も多様化し、そしてやらなければいけない問題が私はあると思うのです。ここに改革を必要とするものがあるし、振興しなければならぬ問題があると思う。農林省としては、数年前から沖繩に関する養蚕に対して大変力を入れていらっしゃるはずですが、その面に対する方は、きょうはいらっしゃいませんか。
  286. 松元威雄

    ○松元政府委員 実は、養蚕を申し上げなかったのは、現段階ではまだ量として非常に少なかったものでございますから、あえて申し上げなかったわけでございます。現状では……(安里分科員「将来性があるかないかです」と呼ぶ)現状では、まだ戸数も面積も非常に少のうございますが、条件から見ますと、気象条件、風土は養蚕に適しております。したがって、養蚕振興は期待できるわけでございます。  そこで、沖繩の養蚕振興を図りますために、本土復帰後直ちに蚕業技術指導所を一カ所設置しまして、それから蚕業改良指導員四名を設置して、蚕業改良普及組織も整備いたしまして、養蚕導入意欲の強い宮古島、多良間島、石垣島などの地域に、四十七年度から三カ年計画で桑園管理施設、稚蚕共同飼育施設、乾繭施設等を事業内容といたします対策事業を実施して、生産性の高い養蚕団地を育成するということにいたしておりまして、現状ではまだそう多くございませんが、今後大いに伸ばす適種だと思っておりますから、施策を進めてまいりたいと思います。
  287. 安里積千代

    ○安里分科員 私がこういうことを申し上げるのは、皆さん方が試験的と申しますか、指導しておられるところの宮古も、私は見てまいりました。私などが小さいときに、私は離島の育ちでございますけれども、子供のときには、戦前ずっと養蚕をやっておったのです。戦前、沖繩那覇にも工場までもありました。戦前でさえも、今日のような進んだ桑園じゃなくして、自然に生えておる桑を利用しながらの養蚕でございましたけれども、小さいときに経験したところから考えますならば、適しておる地域ではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、皆さん方の専門的な立場から見て、もしこれが――沖繩の、ことに離島あたりにおいては大変いい仕事だと思うのです。これをなお拡大し、伸ばしていくお考えがあるかどうかを実はお聞きしたがったし、あえて小さいとおっしゃいますので、心配をして――これは小さく、試験的にやって、余り将来見込みがないならやめてしまえというようなお考えであるのか、それともこれをやはり伸ばしていくべきだというお考えなのか。  それと、あわせて心配なのは、せっかく産業が興りましても、原糸が外国から入ってくる。終戦後は絹織物が斜陽産業などと言われておったのですけれども、そういう時代が来るということになりますと、指導してつくらせましても、つくった後にまたこの処理ができないとなりますと、農民は大変迷惑をするわけでございますので、そういうものに対する見通しもあわせて奨励しなければ、これは農民をだましたことになるし、その打撃は非常に大きくなると思います。そのような日本全体の産業として、養蚕業としての立場からお考えになって、沖繩においてこれを育成するということが望ましいものであるかどうか、御意見を承りたいと思います。
  288. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のとおり、気象条件が適しておりますから、現在の面積は小そうございますけれども、過去漸次伸びているわけでございます。ただ、沖繩の場合でございますと、現在収繭量が少ないものでございますから、沖繩に製糸工場がございません。したがって、本土にやってくるわけでございますから、そういう面も考えなければならないということがございますが、いずれにいたしましても、条件からは適したものでございますから、今後伸ばしていくことは適当であろうという考え方でございます。  その場合に、ただいま輸入の問題にお触れはなったわけでございますが、実は、この生糸の輸入、さらに絹織物の輸入等の問題、これは本上も含めた全般問題であるわけでございます。そこで、実は生糸につきましては、これはすでに自由化になっておりまして、それからもちろん織物は自由化になっておるわけでございまして、生糸につきましては、従来は日本は輸出国でございましたが、四十年以降だんだん輸入がふえてまいりました。ただし、その場合に、従来は需要の伸びに見合って入ってまいりましたから、需給のバランスはとれていた。最近は需要は停滞する、片や輸入はほっとけばふえる時代でございますから、強力な輸入調整措置を講じたわけでございまして、それによって生糸価格の安定を図ってきたわけでございますから、その一環といたしまして、需給調整措置を強力に講ずるということでございますから、その中で、条件に適合して伸びていくということを期待いたしております。
  289. 安里積千代

    ○安里分科員 皆さんで余り関心がなかったかもしらぬと思いますが、私が指摘しました大事な土壌の改良という問題、これは沖繩に対する、国全体として、この予算にどのように反映しておるかわかりませんけれども、少なくとも沖繩に関する限り、この面の調査ということが考えられておりますか。
  290. 松元威雄

    ○松元政府委員 土壌問題、まことにこれは重要でございまして、沖繩の土壌は本来、有効態燐酸が欠乏しております酸性土壌、それから重粘質土壌で、水はけの悪い土壌などの不良土壌が広く分布いたしておるわけでございます。また、本土に比べまして高温多雨でございますから、有機物の分解後、流失や土壌養分の流失が起こりやすいわけでございます。したがって、この土壌改良問題は非常に大きな問題でございまして、そこで、従来からこれらの不良土壌に対する土壌改良対策の事業等をいたしておりまして、一つは、調査といたしまして、従来国庫補助職員を設置しまして、診断事業をやっておるわけでございます。さらに、それだけでは不十分でございますから、五十年度から新たに地力保全基本調査、これは実は本土では前からやっておったわけでございますが、これを新たに実施するということにしまして、まず土壌改良の基礎調査をいたしたいと思っております。それから同時に、先ほどお触れになりましたが、土壌改良の振興が必要だということがございました。したがいまして、その面で、今度は土壌改良対策といたしまして、機械をサトウキビあるいはパイナップルの事業の中に仕組んでございまして、それを活用して振興するというふうにしておりまして、土壌調査を五十年度からいたすわけでございまして、それでいわば基礎データを得まして、それと見合わせまして、適正な診断と必要な土壌改良機械の導入を進めてまいりたいと思います。
  291. 安里積千代

    ○安里分科員 先ほど畜産の面のお話もございました。本土でも沖繩でも同様でございますが、畜産に必要な飼料問題がずいぶんと畜産の振興のためには論議されておるわけでございますが、私お聞きしたいのは、沖繩の立地条件として、飼料作物というものを拡大し、奨励する道がないか、こういうことが考えられますが、そういう点に対する御配慮というものが考えられたことがあるかどうか、飼料作物も普及することですし。
  292. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 沖繩の飼料作物といいますか、人工草地の造成というようなことにつきましては、公共事業といたしまして草地の開発をやっておるわけでございますが、特に八重山群島等非常に豊富な草資源がございますので、それを優良草地に造成をしていく、それによりまして、生産性を上げていくということは非常に望ましいことだというふうに考えまして、今年度におきましても、前年度よりはかなり草地関係予算をふやしておるわけでございます。  なお、沖繩の特殊な粗飼料対策といたしましては、先ほど申し上げました基幹農作物でありますサトウキビの梢頭部の利用だとか、あるいはバガス――これにつきましては、なおいろいろコストの問題あるいは本土へ運ぶ場合の輸送費の問題等でまだ解決を要する面もございますけれども、それだとか、あるいはパインのかすとか、そういうものも、飼料作物といいますか、牧草とあわせて、粗飼料として今後活用を拡大していく必要があるのではないかというふうに考えております。
  293. 安里積千代

    ○安里分科員 砂糖製造の過程において出ますバガスの利用という問題につきまして、専門的に考えられたことはありませんか。これが飼料化されるとかなんとかいう話も聞きますが、またこれは相当の害になる成分というものを除かなければならないということも承っておりますが、バガスの利用ということが、飼料作物とあわせて考えられたことはございませんか。
  294. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほど申しましたように、沖繩の特殊な粗飼料資源として活用の余地は大いにあると思いますが、やはりコストの面で燃料と競合するという点で、もう少しえさとして利用する場合のコストを引き下げる必要があるというふうに聞いておりますし、さらに県内の需要だけではなしに、本土へも移出をするということになりますと、輸送費をもう少し節減するような方法を検討すべきであるというように聞いておりますので、なお研究によって解決しなければならない余地があるというふうに聞いております。
  295. 安里積千代

    ○安里分科員 私はバガスをそのまま飼料ということは申し上げておりません。あれはそのまま飼料にはなりません。あれを食べさせたような場合には悪い結果になるということも聞かされております。しかし、その有害になる部分というものを除く方法というものがある。これを除けば大変ないい飼料になるだろう、現に台湾あたりではそれの製造もされておるということを承っておるわけです。ですから、あらゆる資材というものが有効に、単に糖業の収量を多くするというだけではなくして、これをさらに活用する道というのが幾らもあろうと思います。二、三の点だけを挙げておきましたけれども、畜産にしろ養蚕にしろあるいは畜産の飼料作物にしろ、あるいはまた、ラッキョウにしろニンニクにしろ、余り目立ちませんけれども、こういった国民の生活に必要な、しかも農民を豊かにするところの道というものが、私は残されておると思います。もちろん農林当局におきましては、大きいところにしか目が届かぬかもしれませんけれども、沖繩自身の地理的条件を生かしまするために、沖繩自身がやらなければならぬことでございますけれども、積極的に、皆さんの持ちまする経験と知識、そして政府の持ちまする財政的な大きなバックアップ、これをすることによりまして、いろいろなおくれておる点、そしてまた自然のマイナスの点、これを補うことによって振興さしていただきたい。ただし、その場合において、政府がいかにやきもきいたしましても、農民自身のこれに協力する意欲というものが伴わなければならないと私は考えております。政府にそのような熱意を示していただきますならば、必ずや現地におきましても意欲を燃やしてこれに取り組むであろうことを信じて疑いません。特殊な事情下にあり、しかもおくれた地域であり、長い間日本政府の農政の及ばなかった点を、この際ひとつ十分に生かし、ことに先ほど申しましたように、海洋博後におきまする非常に大きな経済的な打撃を考えまするときに、いまでも苦しんでおりまする農民でありまするので、これを生かす道を、政府としてひとつ十分配慮していただきたいことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  296. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて安里積千代君の質疑は終了いたしました。  引き続いて、阿部昭吾君の質疑に入ります。阿部昭吾君。
  297. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 農林大臣、総括質問のときに引き続きまして、霞ケ浦高浜入り干拓の問題についてお尋ねをしたいのであります。  大臣、私は山形県出身で、何で茨城県の霞ケ浦の問題をばかみたいになって一生懸命やるのだと、御疑問かと思うのでありますが、霞ケ浦には鹿島開発というのが行われた。ここの開発の企業のメーンになっていっておりますのは住友でございます。私の郷里の酒田開発というのも住友が中心である。そこで、農工両全と言われた鹿島開発が、住友を中心としてどのように行われておるのかということに深い関心を持って、この七、八年間、鹿島の地域、霞ケ浦の周辺に、実は大変な関心を持ってきたわけであります。  そこで、去年の予算委員会のときに、霞ケ浦干拓事業というのが円滑にいっておらない。原因は何であるかということになりますと、漁業補償がでたらめで、そこで漁業権というものが完全に消滅をしておらない。だから農林省の方も、その事業の推進がなかなかできない、こういう状況にある。そこで、漁業補償がどのような状況に進んでおるかということを、会計検査院において調査をして報告をしてほしいということを、去年の予算委員会の際に要求をしておったのであります。ところが、会計検査院の方からはこの報告はございません。聞きますると、この漁業補償に関するいろいろな関係資料その他が、検察当局によっていま押さえられておる。したがって、会計検査院の調査がなかなか進まない、こういう状況にあるのであります。  そこで、大臣、霞ケ浦干拓事業というもの、これはわが方としていま非常に問題にしておりますのは、恐らく三月四日段階で、予算が参議院に行く段階になるのだと思うのですが、その際には、予算の修正の一つ問題点に私どもしておるわけであります。そこでこの前、大臣は、せっかく進めてまいった事業でもありますし、関係の地元の皆さんの御協力を得られるような努力をしてやっていきたい、したがって、この予算は今回はあそこにはつけないなんということにはしないでがんばるのだ、こういう意味の御答弁がございました。それは農林省の最高責任者たる農林大臣の気持ちも私はよくわかりますので、その御答弁、わからぬわけじゃない。しかし問題は、この漁業権というのが消滅しておらないわけであります。問題は十数億の補償金を支払ったのでありますが、この補償というのがどうもはっきりしていない、これがこの事業をなかなか進み切れない大きなネックになっておるのであります。  そこで私、お尋ねをいたしたいのは、昭和三十七年に閣議決定をされた公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱、これを各省庁が、いままではばらばらに行ってきた。したがって、この損失補償の仕方を統一しなければならない、こういう観点で、閣議要綱にならって、各省ごとに省令がつくられ、そして農林省は三十八年三月に農地局長の通達を出しておるわけであります。この通達による要綱、こういうのを見ますると、一つは、財産権の保障を基礎とするわけでありますから、この中では個別払いの原則というものを明示しておるのであります。ところが、霞ケ浦のこの漁業権の保障については、漁業権それ自体は包括的に漁業協同組合が持っておる、こういう認識で、個別の支払いというものをしないのじゃなくて、農林省はそこまでは立ち入らない、したがって漁業協同組合にまとめて金を払った、だから漁業権は消滅をしたのだ、こういう非常に荒っぽい言い方をされておるのであります。これは補償要綱の、この個別払いの原則をうたっておるものとも異なるし、私の調査によりますと、秋田県の、私の隣の県でありますが、八郎潟の干拓が行われた。この干拓の場合は、二カ年にわたって実態調査を非常に正確に行っておるのであります。そして組合員一人一人の漁業補償というものの配分の額まで実は明らかにして、一千百数十名に及ぶ組合員であったと思うのでありますが、その皆さんから納得がなかなか得られない。したがって、これに対してさらに後で、あの当時の金で七千万程度の補償増額を実はやって、やっとまとめたという経過があるのであります。この八郎潟の場合の漁業補償の、農林省のこの非常にきめ細かに慎重にやったやり方と比べますと、いまの霞ケ浦高浜入りの漁業補償のやり方は、三十八年に農林省が定めたこの補償要綱に照らしてみても、個別払いという原則をちっとも貫こうとしておらない。漁業協同組合にまとめてやったからいいじゃないか。そうすると、漁業協同組合が今度個別にやった補償の内容というのは、まるきりでたらめで、いまいろいろな争いが起こっている。したがって、この補償がどのようにやられたか、会計検査院の方に、私どもが見るとずいぶんルーズなことも行われておるから、調査をしなさい、報告を求めたい、こう言いましたところ、いまそっちの方は検察庁が入って書類をみんな持っていって、なかなかその補償の中身を、どのようにいっておるか、会計検査院が調査することも困難だ、こういう状況にあるのであります。したがって、私は、この漁業権というものをもっと正確に扱っていかないといけないということになるのであります。  いろいろ、時間の関係で多くを申し上げることができません。きょう結論が出ないとすれば、私は農林水産委員会にさらに出張っていって、そこでやらなきゃならぬ、こう思っておるのでありますけれども、問題は、最終的には土地収用法以外にないのじゃないか、個人の権利をやるわけでありますから。私はそういう気がするのでありますが、これは大山局長、どうでしょう。最終的には土地収用法以外にないのじゃないか。
  298. 大山一生

    ○大山政府委員 公共用地の取得に関します損失補償基準要綱、これは確かに個別払いというのを原則にいたしておるわけでございます。ただ、その中にも、各人別に見積もることが困難な場合はこの限りでない、こういうふうなただし書きがあるわけでございます。  そこで、高浜入り干拓の場合では、同一水域におきまして、多数の権利関係がふくそうしておりまして、権利別、個人別に見積もることがきわめて困難である、こういうことから、ただし書きを適用した、こういうわけでございます。普通のところでございますと、大体漁協を通じての出荷というのが、たとえば八郎潟の場合でありますとか河北潟なんかの場合にも、大体そういうかっこうになっておりますので、非常に把握しやすい。ところが、この高浜入りの場合におきましては、非常にその辺の関係がはっきりしない、こういうことから、ただし書きを適用したわけでございます。  あの後、終局的にというお話がございましたけれども、われわれといたしましては、まだ三十人程度の御同意を得ていないというのはまことに残念でございますので、この方々については、公権をもってやるというのでなくて、今後とも話し合いを続けてまいりたいという基本的精神で対処したい、というふうに思っておるわけでございます。
  299. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 局長、事態はさらにまた変わっていっておるのです。三十何名の皆さん以外に、一遍補償をもらった皆さんが、後でだんだん問題が明らかになってきたら、基準もでたらめな補償をやられておったということが明らかになったために、いま漁協に対して、監査請求であるとか、補償のあれは、あれで納得できない、非常にいいかげんなことがやられておるというので、問題になっていることを御存じでしょう。したがって、漁業協同組合は、いま総会を開くことができないのです。漁業協同組合が、いまこの補償問題を中心にして、もっと明らかにせいという、すでに補償を受けておった組合員からも問題が起こされて、総会を持つことさえも困難な状況にあるということも、これは御存じだろうと思うのですよ。
  300. 大山一生

    ○大山政府委員 漁協が総会を持ち得ない状態にあることは事実でございます。かつて理事会を開いておるときに暴力ざたもあったというようなことから、非常にシュリンクしたという問題もございます。いずれにいたしましても、総会は開かれない状態のままで、現在に至っておるわけでございます。
  301. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 開かれないのは、いま局長、現地では、私も大きらいな暴力学生や何かは、何もそういう動きをこの一年有余、平穏かつ無事、公然と何もされずに事態は推移しておるのですよ。いま暴力学生や何か、あの辺にいますか。おらないでしょう。いまは非常に平穏なんです。したがって、漁協が総会を開いて、そうしてこういう疑問を提起しておる漁民に対して問題を明らかにすることは、決して不可能でない、非常に平穏な、公然な、無事な、そういう状況にあるのですよ。しかし、これは開かれない。なぜか。たとえば何とかという真珠会社、ここに書いてありますけれども、ほとんど実体のいいかげんなところに、莫大な補償がいったりしておるのです。そのことがだんだん明らかになったために、当初は三十何名の皆さんがこの事業に疑問を差しはさんで、おかしいと言い出した。いまやこの事業を、おかしい、補償のあり方がおかしいと言って問題にしておる組合員の方が圧倒的多数になりつつある。私のところにも、いろいろな皆さんが来るのですよ。いままで私は賛成したのです、補償をちょっぴりもらっておるのです、判こを押したのです、しかしだんだん明らかになってみると、とてもこれではいけないというので、私ども総会を早く開け開けと言っておるのですが、総会も全然開かれない、こういう言い方になってきておるのですね。したがって、八郎潟のときは、とにかく農林省が慎重に、千何百人の組合員に対して二年余も調査をやって、そして補償の問題にしても、個別に、どの程度の補償がだれに、どのような漁業権に対してどのような補償をやるかということもちゃんとやって、あの八郎潟というものはやったものなんです。いまのはそれと違うのですよ。だから、総会も開けない。補償がどのようになっておるか、明らかにしてもらいたい、国費で補償をやったのですから、会計検査院に調べてもらいたいと言ったら、検察庁に書類を持っていかれて調査もできません、こういう報告なのであります。  そこで、これは一体どうするのかということですね。これは進まぬのですよ。したがって、これは小林理事おいででございますが、わが方としては、おととしも去年も、農林省の出先の人件費だけは使ったけれども、事業費は一文も執行できずにおるわけですね。今年も予算にこれを計上しておるわけです。これは、使ったところで人件費だけで、事業は全然進まぬのですよ。したがって、この予算は、今回は、大臣、私は決して意地悪いことを言おうと思っていないのですよ、私は物わかりのいい方なんです。そういう面で見ると、局長は、これは前任者のずっと十年も前からの続きの問題で、いまごろいやなことになっちゃっているというのが、正直言って、局長の実感だろうと思うのです。したがって私は、やっぱりこの問題は一遍もとへ戻して、特に鹿島開発というのは水を大変たくさん必要とする事業なんです。したがって、この水資源、これは鹿島開発のみならず、首都圏にとっても、いまの水資源公団などの計画から言っても、利根川水系、霞ケ浦、北浦の水資源というのは重要な位置づけにある。したがって、その水がめを狭めていくなんということは、私は恐らくこの高浜入り干拓なんというのは、考え方としては三十年初頭ごろに、あのあたりいけそうだというので生まれてきたものだろうと思うのですよ。情勢はどんどん変わっておるのです。しかも、むしろあの鹿島周辺の、あるいは筑波周辺の農村の皆さんのお話を聞いてみますと、霞ケ浦を狭くするというのじゃなくて、いまのままの霞ケ浦の水資源を守りながら、周辺の農業に対してもっとあの水利をいろいろやったならば、もっともっと生産性の高い農業というものをやることができるのだという意見を持っておる人が圧倒的に多数あるのです。私はそういう意味では、これは大山局長の責任とは言わない。これは十何年も前から続いてきておる問題なんです。このあたりで、いまこの時代と逆行しておるやり方は――確かに、十何億の漁業補償をやったのをどうするのかという問題はあるでしょう。あるでしょうが、どうせこの事業は進まぬのです。やっぱり何というか、意地にならずに、合理的にどういう解決をするのかということに踏み出すべき段階だ、私はそう思うのです。どうでしょう。これは農林大臣です。局長は、前任者のけちをつけなければならぬので、それはなかなかできない。したがって、これは農林大臣がやはり大英断でやらなければできない問題だと思うのです。
  302. 大山一生

    ○大山政府委員 先生指摘の、人件費だけじゃないかというこの問題だけ、この間来、ちょっと気になりますので、申し上げさせていただきたいと思いますけれども、四十九年度予算成立後、実施計画をつくりまして、その承認された額が三億であったわけでございます。それで、四十九年度のその後の予算執行の上におきまして、四千八百万円を流用いたしております。それで四十九年の実施予算といたしましては、四十八年度の繰り越し等を入れまして約二億七千万、こういう予算で、四十九年度の予算に対処しているわけでございますが、事業といたしましては、汚濁防止工事、それから、あそこにあります船舶及び機械器具費、それから測量試験費、こういうことで大体一億八百万のほかに、いわゆる人件費六千五百万、一億七千三百万を使っております。施工基地の一部工事費でありますとか、例の漁業補償金の部分とか、こういったことで九千万は五十年に送る、こういうことになっております。  それで五十年度の考え方、これは先生におしかりを受けるかもしれませんけれども、私たちといたしましては、予算が決まりましたならば、五十年度の実施計画をつくるわけでございますので、そのときには、高浜入りにつきましては大体二億二千万をめどにいたしまして、繰り越しの九千万ともどもで来年度に対処したい、こういうふうに考えるわけでございます。  それから総合開発計画の関係で、霞ケ浦のいわゆる水がめ化というのは、利根川総合開発計画の一環でございまして、その中で高浜入りについてはたしか一・九九トンを見込んだかっこうで、もうすでに計画されているわけでございます。
  303. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もこの問題につきましていろいろと御質問も受け、内容等も聞いてみまして、確かにこれはむずかしい問題だなと思います。解決が非常に困難になっておるということは、率直に認めざるを得ないと思うわけでございますが、しかし、初めの事業着手までに至る経過等を聞いてみましても、地元の方々の強い要請もあり、農林省としても、農用地を造成するというふうな見地から着手し、また、いま漁業補償の問題もありましたが、漁業補償についても、今日はいろいろな事態が起こっておるようですが、あの時点におきましては、一応手続を踏んでやったということも聞いておるわけでございまして、今日も、国民食糧確保という面から、われわれは農用地造成を計画を立ててやっておるわけですが、そういう点から考えても、あれは野菜団地としては非常に有望な団地じゃないか、そういうことで、せっかくここまで来ておるわけですから、何とかひとつ地元の皆さんの御協力を得るための努力を、今後続けていかなければならぬというふうに考えておるわけでありまして、情勢も十分見ながら対処をしていきたい、こういうふうに思います。
  304. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 大臣、はっきり申し上げておきますが、調査とか計画とか、そんなものは机上プランで、農林省には頭のいい連中がいっぱいいるのですから、幾らでもできるわけです。しかし、もうずいぶん時間がたちましたね。現実の干拓事業は進まぬのです。したがって、もし五十年度の後半段階に至ってもなおかつ進まぬ場合、責任はだれが負いますか。私は責任論はきらいですよ。情勢が変わっておるのです。大山局長の責任じゃないです。もう十何年もがたがたやって、やり方を間違ったために――だって、漁業権の補償をどうやったか、その中身を検察庁に持っていかれるようなでたらめなことになっておるから、この問題は進むわけにいかぬのですよ、率直に言って。これは局長の責任じゃない。前々からの指導その他がうまくなかったから、いまここへみんなしわが寄っちゃっておるんです。これを、こだわってやったところで、国費のむだ遣いになるだけで、事業はちっとも進まぬのです。進まなかった場合は、私もこれほど言っておるのですから、責任の所在は明らかにしてもらいますよ。漁業補償の問題は、いま検察庁へ持っていかれているんです。  それじゃ、このことはお約束できますか。漁業補償の実態。会計検査院では、できないと言うのです。やろうと思ったら書類をみんな検察庁で持っていっているからできない、こう言っているんですが、農林省はできるはずです。それもできないでは、漁業権というものを消滅させ得ずして、どうして――あそこでたくさんの種類の魚をとっているんですよ。この皆さんの湖をばたばた埋めていって、野菜づくりをするなんて――私は野菜づくり反対なんです、大臣。いま農家では、流通がうまくないために、ホウレンソウでも何でも、畑で腐らしておる野菜がたくさんあるんです。したがって、霞ケ浦を埋め立ててまで野菜をつくる前に、流通対策をどうするかということの方が先ですよ。ぼくはそう思っております。したがって、野菜もつくってなんていう、そんなあれは、私は聞きません。私は決してそんな責任論とかなんとかじゃないのですが、しかし、これ以上事は進まぬのに、こだわるというのなら、五十年度の終盤段階に入ってちっとも進まぬというときは、われわれは責任の所在を明らかにしてもらわなきゃならぬのだが、大臣、この点はどうですか。
  305. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、とにかくこの問題は、非常に困難ではありますけれども、地元の皆さんの協力を得るように全力を挙げて努力をする、これ以外には、私も言いようがないわけですけれども、農林省として、ひとつ力を尽くしてやっていきたいと思います。
  306. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 それじゃこのことだけお願いしておきますが、局長、いいですね。漁業権を持って漁業をやっておった末端の皆さんに対して、漁協の漁業補償が、どういう状態でどういう払い方をしたかという報告を、会計検査院で困難だと言うなら、あなたの方ではぜひ出してもらいたい。これが一つ。第二は、霞ケ浦総合開発計画との関係があります。この関係でいままで、三十八年の常陸川の逆水門の設置以降、霞ケ浦のたとえばワカサギがだめになった、何がだめになったということで、ずいぶん漁業がおかしくなりました。この皆さんに漁業補償が払われておるのです。この漁業補償が、年度別にだれにどの金額払われたかという、この報告書もぜひ出してもらいたい。これはいいですね。
  307. 大山一生

    ○大山政府委員 あの逆水門の問題は建設省の事業でございまして、農林省の方でございませんので、建設省の方と相談してみたいと思います。
  308. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 わかりました。
  309. 大山一生

    ○大山政府委員 それから前段の組合別、個人別という問題につきましては、前々から申し上げておりますように、配分については漁連が一切その責任を持って行うという体制のもとで実施されましたので、もし現段階においてつかむといたしますならば、その帳簿がなければならぬわけでございます。で、帳簿の問題につきましては、例の先般の告発に伴いまして、検察庁の方に行っているわけでございますので、それが送付を待って、調べられる範囲のことは調べたいと思います。ただ、いまの段階では、その書類があちらに行っておりますので、私の方でいますぐにというわけにはちょっとまいらぬということを、お許し願いたいと思います。
  310. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 私はあなたの方の中のことをずいぶん調べているのです。ちゃんとみんなわかっておるのです。わかっておるのですが、なかなかよう言わぬのです。まあそれはいいです。しかし、これはぜひ出してもらいたい。  そこで、この事業は絶対に進みません。進めたらえらいことになります。進まなかった場合の責任は、はっきりとってもらわなければなりません。これだけを申し上げておきます。わが方としては、この問題は五十年度予算予算修正の項目の一つにする、こういう考え方でおりますことを申し上げます。  あと、四十九年分農業所得税がべらぼうなんです。大平財政というのは、農民に本当に苛斂誅求です。したがって、いま農業所得税問題で少しやりたかったのでありますが、時間がございません。端的に申し上げますと、米作地帯の農業課税のやり方は、実際は税務署で外形標準というものを決めて、標準で税金を取るのですよ。この標準が、大体三〇%に近い所得金額の増になっております。米価は確かに三十何%上がった。しかし、生産資材その他がべらぼうに上がったでしょう。この上がりがありますから、私ども、三十何%上がっても、農家所得の方は実はちっともふえておらぬという認識なのに、課税所得で三〇%近い上がりになっておるのです。こういう外形標準を、大平蔵相の大蔵省はどんどんとっておるのです。これは農家経済に重大な影響がある。したがって、これは私、他の委員会でまたやりますけれども、農林省の方でも、農家経済をちゃんとしていかなければならぬという責任をお持ちのはずだと思いますので、大蔵省とひとつぜひ協議を持たれて、善処をしてもらわなければならぬ。このことだけを希望申し上げまして、私の質問を終わります。
  311. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて阿部昭吾君の質疑は終了いたしました。  引き続いて、小林進君の質疑に入ります。小林進君。
  312. 小林進

    小林(進)分科員 農林大臣、あなたに質問しようと思って一年がかりで問題を用意すると、あなたの部下が来られて、先生、うちの大臣にはひとつお手やわらかに、何の問題でございますか、と言うから、この問題だ、と言うと、さあ、先生、三十分の分科会ではちょっとどうでしょうか、私の方で説明しましょうか、こういうことで、あなたはなかなかいい部下を持たれましたな。どうもそういうことで撹乱されて、私の用意した問題が、次から次へとだんだんずれていきまして、私も、心ならずも、用意した問題を出さないことにしちゃったのです。改めて後日ほかの委員会でゆっくり申し上げることにしまして、あなたの忠実な部下諸君に免じて、きょうはほんの三十分、当たりさわりのないことでやりたいと思うのです。  第一問は、転作奨励金の問題であります。四十九年度は百三十五万トン、今度五十年度は百万トンに縮小された。そうすると残三十五万トンは、いままで奨励金をもらった諸君は一体どうなるのか。この調整をどうされるのか、ちょっと教えていただきたい。
  313. 松元威雄

    ○松元政府委員 転作奨励金は、年々転作したものに応じて払うわけでございます。その年に転作した、それについて払う、こういう形態でございます。したがいまして、去年は百三十五万トン、ことしは百万トンでございますが、これはそれぞれの年の生産と需要、その差額、それに在庫積み増し数量を調整して決めた数字でございますから、単純に比較するわけではございませんで、農家にとりましては、当年転作すれば奨励金が出る、こういう仕組みでございます。
  314. 小林進

    小林(進)分科員 それじゃ、継続して二年、三年と転作料をおやりにならないわけだね。一回だけですか。
  315. 松元威雄

    ○松元政府委員 その農家が四十六年に転作すれば転作奨励金が出る、続いてまた転作すればまた出る。したがいまして、続いて転作しておりますれば、結果的にずっと出るわけでございます。
  316. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、去年もらった人も、ことしもらえると思っているわな、同じくずっと転作を継続しているのだから。それがことしになって打ち切られるのじゃないかという心配がある。
  317. 松元威雄

    ○松元政府委員 それは転作を続けておれば出るわけでございます。転作をやめて米に戻れば出ない、ということでございます。
  318. 小林進

    小林(進)分科員 そうすると、去年までは百三十五万トン転作したわけだ。ことしもそのまま転作したら――やめればいい。あなたが言うように百二十五万トン転作した人が、百万トン転作すればその予算はそのままきっちりおさまるけれども、やめないで、やはりことしも同じくやることになったら、どこかでこれははみ出るんじゃないの、三十五万トンもらえない人が。
  319. 松元威雄

    ○松元政府委員 それはおっしゃるとおり、もしも農家の方々が、これは全国ベースでございますから、結果的に百三十五万トンやれば、もちろん予算ははみ出すわけでございます。ただし、ことしの場合重大な問題は、米の需給事情にかんがみまして、米の生産の方もぴしゃりと目標どおりやる、同時に転作もぴしゃりと目標どおりやる、もちろん多少の振れは別でございますが。ざっくばらんに申しまして、過去におきましては、いわば休耕も含めまして、米をやめることがベターであるという気持がございました。しかしいまはそうではございませんで、ちょうど米の需要もにらみ合わせて、転作も見まして、両者がそれぞれ目標に見合って適正に行われるというふうに指導いたしておりますから、この百万トンが、多少の振れは別にいたしまして、ふえるというふうには考えていないわけでございます。
  320. 小林進

    小林(進)分科員 そこまで行きますと、あるいはもう実際の場面で、ぶつかった場で解決する以外にないと思いますが、わが郷里なんかも、この点は非常に心配しています。イチゴをつくった、ナシ畑にした、去年までやってよく成長したけれども、ことしはもう奨励金を打ち切られるのじゃないかという心配が若干ありますから、ちょっとこれは念のために聞いておきました。それは現地においてそういうことがなければ、それで結構です。  次は、いまおっしゃる減反をして休耕をした諸君、これがまた一つあるんだ。これは転作じゃないんだ。山の陰の雑草の生い立ったたんぼで、余り転作に向かないたんぼで、休耕させておいたけれども、やはり祖先伝来のたんぼだし、また国も増産体制に変わったようだから、ことしからこれをひとつ昔の美田に復活したい。一体その復活の条件はどうなるの。
  321. 松元威雄

    ○松元政府委員 復活状況でございますか。ちょっと聞き取りにくかったので、申しわけございません。
  322. 小林進

    小林(進)分科員 その費用だよ。
  323. 松元威雄

    ○松元政府委員 それはこうでございます。従来、休耕に対しまして休耕奨励金を支払っていたわけでございます。したがって、農家はそれをもっていろいろな対応をいたしたわけでございます。私ども、休耕の農地が一体どういう事情かという調査をいたしましたら、もちろん地域でかなりばらつきはございますが、まあ七割程度のものは、大体通常の管理状況でございまして、三割は悪いのがございます。したがいまして、それぞれの農家の方々が対応していたわけでございます。  そこで、おっしゃるとおり、四十九年度から休耕は打ち切りになりました。そこで従来の休耕田はどうなったかということ、これもいろいろ調べておるわけでございますが、なかなか的確なデータはないわけでございます。従来の休耕田は約二十七万ヘクタールございまして、その過半は稲作を中心とする生産に復帰したというふうに見られるわけでございますが、かなりの部分は、現状はそのまま放置されている実態にございます。
  324. 小林進

    小林(進)分科員 君は頭がいいだろうけれども、何かしゃべっていることはちょっと舌回りが悪くて、どうも三分の一くらいわからない。ひとつ発音を正しくやってくれ。  それで、いま言うように、三割でもいい、二割でもいい、ともかく投げっぱなしにしているたんぼがあるんだよ。それをやはり復活したいという意向があるんだよ、あるところは。君は大半と言うが、大半はそれでいいだろうけれども、大半でない少数のやつも、何とか復活したい。それは休耕に対する休耕料といいますか、奨励金はもらったけれども、しかし昔のたんぼに復活するにはなかなか大変だと言うんだ、二年も三年もかかるからね。そのために政府は特別の補助金ぐらい見てくれてもいいじゃないか、昔のたんぼにするのは大変な苦労だという声が大分出ている。それをどう考えていらっしゃるか。どうせそんな雑草の生えているたんぼは、いまも言うように、少数で役に立たないんだから、経済的にもペイしないんだからそれをおやめなさいということは言えないんだ、なかなか私ども末端の生産農民に言われると。まあそれをお役人に聞いてやるから、そう言ったんだ。農林省けちん坊だから何とかごまかすだろうけれども、ごまかされないように聞いてやるわいと言ったんだけれども、どうですか。
  325. 松元威雄

    ○松元政府委員 若干早口で申しわけございませんですが、先生のいまの問題に対しまして、私二つ、三つ論点があると存じております。  一つは、休耕につきましては、くどくなるようでございますが、三万円の休耕奨励金を払いまして、それによって農家の方はいろいろな対応をなさったわけでございます。その中で良好に管理をして、そのまますんなり復帰できるというのもございまして、結果的には過半は復帰いたしておるわけでございます。そういたしますと、農家の対応ということが一つございます。もう一つは、これを復旧するにつきまして、米をつくるにつきまして助成ということは、一方では、いまだ米は基本的には過剰基調にございますから、依然として稲作転換を進めているわけでございます。その関連がございまして、米に戻るにつきまして直ちに助成するということは、これまた問題がございます。そういたしますと、要は国土資源の有効利用という見地から一体これをどう扱うか、そういうスタンドポイントが出てくるのだろうと思うわけでございますが、前に申しました過去の三万円の休耕補償の関係における農家の対応の問題が一つ、もう一つは、現在も米が依然として過剰基調の問題、両面から見て、直ちに復旧に対して助成措置をということは、これは非常にむずかしい問題かと存ずるわけでございます。  それからもう一つは、ちょっと先生もお触れになりましたが、どういう地帯が休耕が多いかということ、これはなかなかいろんな事情がございます。私どもいろんな調査で推計をしてみますと、谷津田でございますとかあるいは都市近郊の転用待ちというのもございます。したがいまして、そのまま放任されるにつきましてはやはりいろんな地域の条件、経営条件もあるわけでございます。そういう条件を十分見きわめませんと次の対策も出ないわけでございまして、といって私ども、国土資源の有効利用の見地からこれをそのままずっと永久に放置していいとは思いませんものですから、しかしそれにはまず実態を十分把握する必要があるということで、五十年度予算でこれらの不作付の実態調査の予算を計上いたしまして、まず実態を把握いたしたいということに考えております。
  326. 小林進

    小林(進)分科員 それが君、勝手なんだよ。経済事情だとかあるいは社会環境とかあるいは経済的にペイするかどうかということは、それはお役所の考えなんですよ。農民にとっては、確かに休耕するときには一番悪いところ、だから谷津の方を一つ言っても、やめるときにはペイしないような一番悪いたんぼを休むのですよ。休むのだが、今度はこういう増産体制がぐっと来ると、あなたは国の立場から、まだ米が余っているから、そんな質の悪いたんぼは復活してもらっちゃ困るじゃないけれども、経済的にもペイしないじゃないか、国もありがたくない、だから国の立場では調査中、研究中だという答えだけれども、個々の農家にしたら全く立場は違う。それはペイしようとペイしまいと自分の愛したたんぼなんだ。やはり自分が田を愛し、牛を愛し、馬を愛するがごとく、ペイしないたんぼでも復活して、山の端陰のたんぼでもやはり米をつくりたいというように、経済観念を離れた愛情があるのですよ。そういう農民の声に対してあなたはどうこたえるかと私は言っているのだ。あなたは国の立場から、そんなものは経済的に合わないからやめちまいなさいなんて、休ませたいと思うときは休ませて、復活になったらそんな冷酷なことを言っちゃ、これはたまりませんよ。あなた、だてに頭がはげたわけじゃないのだろうけれども、それはちょっとやはり農民の立場考えて物を答えてくれよ。そういうことなんです。
  327. 松元威雄

    ○松元政府委員 ちょっと私の答弁の仕方がまずかったら申しわけないのですが、私は、経営事情が悪いからやめてしまえという意味で言ったわけではございません。  まず、先ほど私は論点を二つ申し上げました。一つは、くどくて恐縮でございますが、過去において休耕補償が出たわけでございまして、その中にいろいろな対応があるわけでございまして、現にそれを有効に活用されて管理をした、その結果すんなり戻ったというものもございまして、過半は戻っているわけでございます。したがいまして、いわば農家のいろんなバランス問題と申しますか、そういたしますと、そのままやりっ放した農家の方は一体どうしたかという問題、これもあるわけでございます。したがって、三万円の活用と絡みまして、直ちに全面的に国で助成するということはいかがかという論点があろうと思います。もう一つは、いま申したとおり、何と申しましても米は過剰基調にございます。したがいまして、米に戻るのにそのまま直接助成するということは、私はやっぱりむずかしいと思うわけでございます。したがって、たとえば転作に活用するにつきましては実は五十年予算におきまして、こういった不作付というものを含めまして転作をするということにつきましては、例の稲作転換促進事業もございますから、これも活用する、その中に一部休耕田の復旧費用も見込んでおりますが、こういうかっこうで転作に活用するにつきましてはこれはまだ対策を打つことはできるわけでございまして、その予算も組んでおるのでございます。しかし、そのまま直接的にストレートに米への復旧費の助成は現状では非常にむずかしいという問題を申し上げ、もう一つ、私は調査と申し上げましたが、いろんな実態がございますから、それを十分に把握いたしまして、国土資源の有効利用という見地からどうするかということをあわせて検討しなければならないというふうに申し上げたわけでございます。
  328. 小林進

    小林(進)分科員 私はその答弁は了承できません。個々の農民は、米が余ったから休耕してくれと政府に言われたから、政府の言うとおり素直に休みましょう、しかし、他にこれを活用するとか他に経済的に転作をするとかというような地域じゃない、やっぱり米以外につくれぬから、私は素直に休ませておきました、しかし、また世界的に食糧は不足だから、私はまた昔の米のたんぼにしたいという、それが農民の声なんだ。それをあなたの方は、休ませるときには休ませたけれども、さて米に復活するときになったら、いまも言うように、米は余っております。他に事情もあります、転作なら考えるけれども、再びもとの米に返るならどうもこの際すっきりした返事はできませんということは、休ませられた農民の立場からはとてもあなたの答えじゃ了承できないです。できません。できませんが、時間がありませんから、これはひとつ農林大臣、ネックにしておきましょう。田が休ませられて、今度米をつくりたいというときに、おまえのたんぼはだめだからもうそれは野となれ山となれ、おれは構わないなんという、そういうことは政治じゃないです。やっぱりそれは官僚です。それは政治じゃなくて行政ベースとわれわれは申し上げる。それはだめです。それはひとつネックにしておきましょう。  次に、食糧庁長官も見えられたようだから食糧庁長官にちょっとお伺いしますけれども、自主流通米は大体四十九年度はどれくらいの比率ですか。一般の基準米と自主流通米の、総枠の中における比率は。パーセンテージでよろしゅうございますけれどもね。
  329. 三善信二

    ○三善政府委員 四十九年で申し上げますと、自主流通米を大体二百四十万トン予定いたしまして、現実には二百四十万トンを多少上回っている予定です。それから政府が買います米は大体六百二十万トンということで、大体これは予定どおり集荷が行われている予定でございます。
  330. 小林進

    小林(進)分科員 この自主流通米に、これは二百四十万トンちょっとふえたと言うのですが、四十九年度の予算でどれだけ政府は補助しましたか。政府米の方はいいです。自主流通米の方だけ。
  331. 三善信二

    ○三善政府委員 自主流通米につきましては、四十九年産米でございますが、主食用とそれから酒米、モチ米ございますが、全部入れまして一千六十一億でございます。
  332. 小林進

    小林(進)分科員 一千六十一億円ぐらい自主流通米に国民の税金をかぶせて、そしてうまい米ということでお売りになっていらっしゃるのですが、その自主流通米の価格――基準米は幾らですか、千七百円かな、指導米でも何でもいい、それと、自主流通米はどんなぐあいでいま動いておりますか。ちょっと価格の点をお教え願いたい。
  333. 三善信二

    ○三善政府委員 標準価格米のことだと思いますが、これは大体全国おおむね二千百円です。昨年十月上げましたので、昨年十月に五百円上げて二千百円でございます。それから自主流通米、これは先生御承知のように上米と中米ということで私ども大体分けておりますが、上米が主として自主流通米で、上米につきましては大体現在の価格で申し上げますと三千九十円でございます。昨年上げます前は大体、自主流通米二千五百円くらいから二千六百円くらいしておりました。それから中米の価格は現在大体二千五百円程度でございます。
  334. 小林進

    小林(進)分科員 やっぱり去年の暮れにお上げになりましてから、いままで自主流通米を買っていられた方もこの米価の値上げに耐えかねた、これからひとつ、あなたいま何とおっしゃいましたか、基準米とおっしゃいましたか標準米とおっしゃいましたか、それにかえなくちゃいかぬ、ついては基準米をいま少しうまいものにするよう政府も力を入れてくれというふうな声も大分出ましたが、その後の自主流通米の動きや基準米の動きに、行政から見た変化はございませんか、どうですか。顕著な変化はありませんか。
  335. 三善信二

    ○三善政府委員 標準価格米につきましてはまあ大体従来程度で、地方によりましては標準価格米がもっと欲しいというところもございます。自主流通米は、これもそう変化はないと思っていいのじゃなかろうかと思います。
  336. 小林進

    小林(進)分科員 この米価が上がってから、最近は、箱に入れたり何か包装をきれいにしたりして三千五百円だの四千円だのあるいは五千円だというふうな、そういうばかな値段はなくなったようでございますが、前年はそういう自主流通米の天井知らずの異常な価格もあったものでありますから、私は皆さん方に強く要望いたしまして、自主流通米の天井をひとつ決めてくれということを要望したわけであります。そのときには各府県別に天井を決めますという約束をされたのでありますけれども、その後報告を受けていませんけれども、その作業は一体どうなっているのか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  337. 三善信二

    ○三善政府委員 あれはたしか一昨年の十二月でございますか、先生からもそういう御指摘を受けました。そのときに自主流通米の一部につきまして非常に高い値段、ちょうど十キロ当たり三千円ぐらいのがどこかで出たということで大分おしかりを受けましたけれども、その後私ども、上米、中米につきましては価格指導と申しますか、それを都道府県を通じて、都道府県知事の実情に応じた指導をいたしてきているわけでございます。昨年二月、米価審議会の懇談会を開きまして、そういう指導をやりたいということで御了承を得て、それから都道府県とも再三打ち合わせをいたしまして、都道府県別に――やはり都道府県の実情というのがそれぞれございますから、全国一律というわけにはこれはまいりません。そういうことで指導いたしてきておりまして、昨年十月、消費者米価を改定いたしましたときも、中米につきましては大体五百五十円程度におさめなさい、あるいは上米につきましても七百円、また極端に値上がりしたササニシキとか新潟のコシヒカリとか、そういった特殊の銘柄品については七百三十円ぐらいで抑えたらどうかということで指導いたしております。その結果、先ほどもちょっと申し上げましたように、地域ごとには、県ごとには多少開きはございますけれども、全国的に見ましてその指導は、私どもから言わしていただければ、非常に円滑にいっているのではなかろうかと思います。
  338. 小林進

    小林(進)分科員 最近は余り自主流通米の恐ろしい価格というような投書や非難も参りませんから、おっしゃるようにある程度落ちついているのかもしれません。大体お役人の言うことは全部信用するわけにいきませんけれども、まあ半分ぐらいはひとつそういうことにしておいて、顕著な悪例でも出るまではあなたの言葉を一応信用することにしておきましょう。それについて今後もひとつ指導を進めていただいて、私ども結論を言えば、農林大臣、自主流通米制度は反対なんです。やはり標準米というか基準米というか、そこら辺でおさめてもらって、こういう物価高の世の中だから、やはり食管制度というものがある限りは、その中で平等においしい米をみんなが食べられるというふうな制度へ返してもらいたいというのが熱望ですけれども、時間もありませんから、その熱意を持っていることだけ、農林大臣に深めておいていただきたい。  次にお伺いしたいことは、五十年度の生産者米価に対して農林大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。これはもう雨が降ろうとあらしが吹こうと、田植えが済んだころを期していわゆる生産者米価闘争というものは、これはわが日本にはもう避けることのできない例年の例、通例です。ことしは特に労農春闘と称して、春闘と言えば労働組合を主体にして行われるというのが例でございましたけれども、ことしは農民団体、農民組合も労働組合に合致いたしまして、労農団体一緒になって生産者米価を引き上げる激しい闘争を組むということで、いま深く静かに全国的に潜行いたしております。これは必ず爆発する重大問題でありますから、もちろん農林大臣としてはこれに備えて着々として準備態勢を整えられていると思いますけれども、ひとつこれについて御所見を承っておきたいと思うわけであります。
  339. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 五十年度の生産者米価につきましては、食管法の規定に基づきまして、生産費、物価の動向等も総合的に考慮して、これは米価審議会に諮問をいたしまして、その結果、適正に決めていかなければならないと思います。
  340. 小林進

    小林(進)分科員 米価審議会に諮問される。ちょっと、時間もありませんから、四十九年度は四十八年度に比較して米価は何%引き上げましたですか。
  341. 三善信二

    ○三善政府委員 米価としては三二・二%でございます。
  342. 小林進

    小林(進)分科員 年間三二%以上も前年度よりか引き上げたわけですから、今年度はこれは農林大臣としてはすべてに優先して取り組まなければならぬ一番大きな問題です。総需要抑制計画、あるいは物価問題を一けた台に抑えるとか、そういう中に、この米価が仮に、やはり前年度の前例を踏んで三二%も上がるということになれば、政府のいま出している当初予算なんというものはがらがらと根本から崩れてしまうほどの重大問題です。それに対して、米価審議会に任してなんという、それは安倍さん、実に甘っちょろい答弁であって、それでは米価審議会に諮問するときに、原案として一体何%ぐらいを前年度より引き上げるという計画でおやりになるか。まさかフリーで、以下よろしくという白紙のままで米価審議会にお任せするわけにいかないでしょう。これは農林大臣としては重大な問題ですから、腹を決めて回答をしていただきたいと思います。
  343. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、いまおっしゃるような物価の動向、生産費等も、まだこれはもちろん資料も集まっておりませんが、これも十分考慮して、これは米価審議会の議を経るということになっておりますから、米価審議会の議を経た後において政府が責任を持って決める、こういうことになるわけでございまして、米価は、一応法律でこの米価審議会の議を経ることになっておりますので、政府としてその議を経た後に責任を持って決めたいと思います。
  344. 小林進

    小林(進)分科員 これも時間がありませんから、残念ながら追い詰めませんけれども、事の重要性にかんがみ、農林大臣、あなたの在職中の一番大きな問題ですから、これは本当に真剣に考えていただきたいと思います。  なおあわせて、今年度の当初農林省予算の中に、五十年度生産者米価に対してどういう予算の組み方をしていますか。
  345. 三善信二

    ○三善政府委員 生産者米価につきましては、五十年度予算は、これは毎年そうでございますけれども、七月なら七月決まりまして後、補正というようなかっこうで現在までやっているわけでございます。もちろんその際に、また消費者米価とも関連いたすわけでございますから、そういうことで予算的な措置としては昨年の米価を一応とって、上がれば上がったでその補正予算、あるいは消費者米価の上げというようなことで措置しているわけでございます。
  346. 小林進

    小林(進)分科員 農林大臣、昨年の米価をそのままことしの予算の中に上げておる。その予算書は、あなたの政党とあなたの政党の所属員は、衆参両院を通じて全部賛成されているわけでございますね。これはどうですか。賛成されているわけでございましょう、政府予算案ですから。
  347. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろんそうでございます。
  348. 小林進

    小林(進)分科員 それではことしはそうすると、この米価決定のときには、自分たちの政党と自分たち政府がつくった米に関する予算でございますから、よもや、自民党に所属する議員諸君が米価闘争本部などをつくって、はち巻きしたりして、そうして先陣に立って政府を恫喝したりおどかしたり、政府の中のパーティーが政府に米価闘争を仕かけるような、そういうことはことしはないと見てよろしゅうございますな、これは。農林大臣、私は世の中に不思議なのはこれ一つなんですよ。政府に使用され、政府に使われている、あるいは政府の統一下にある労働組合の諸君が春闘と称して政府その他に要求するのはいいが、政府のパーティーに所属し、政府予算を認め、政府予算に賛成し、政府とともに歩むべき自民党の代議士諸君が、そういう方々が、米価になると政府の反対側に立って、勇ましくラッパを吹き散らしながら、農民を後ろに控えながら、米価闘争と称して政府に肉迫しているあの戦いの仕方は、世の中にこれほど大きな矛盾はないと思うのでありますが、農林大臣、どうお考えでありますか。ああいうことをまだことしもやることを農林大臣として一体承認されるのかどうか、あなたはその矛盾をお考えにならないのかどうか、それが一つです。  それから、時間が来ましたから、これはまあちょっと別個の問題でありますけれども、実は農林大臣、農業団体に関係する者だけの、中央の関係する者の中で農業政策研究会というものがあるのですよ。これは全中だとか全農だとか全共連などの、農協の中央機関の常務クラスの諸君が集まって構成メンバーをつくり上げて、会員は二十五名くらいですが、こういう名称を御存じになるかどうか。まあ御存じにならなくとも、その名簿と、この団体は一体何をやるのか、そういうことを、これはいまおわかりにならなければ文書でひとつ御提出方お願いいたしたいと思います。以上二つ
  349. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 米価につきましては、これはやはり政府が責任を持って決めるわけでございますが、その決める段階になりまして、やはり与党としてのいろいろと意見が出るのはこれはやむを得ないと思います。しかしその段階において、円満な調整を行いながら政府の責任において決めるということじゃないかと思いますが、いろいろのいままで起こっているようなそうした大騒ぎはしないで、何とかして政府の責任において決めたい、こういう気持ちはもちろん持っております。  それからいまの問題、ちょっと経済局長から……。
  350. 岡安誠

    ○岡安政府委員 いまお話しの農業政策研究会、まあ政治団体として届け出があるようでございますが、私ども直接の監督団体ではございません。しかし、せっかくの御質問でございますので、もしわかりますれば、特定の人に聞きまして、これはもう監督下にはございませんけれども、わかりましたら御連絡をいたしたい、かように思います。
  351. 小林進

    小林(進)分科員 では、委員長に協力いたしまして、これで質問を終わります。
  352. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて小林進君の質疑は終了いたしました。  続いて、芳賀貢君の質疑に入ります。芳賀貢君。
  353. 芳賀貢

    芳賀分科員 この際農林大臣にお尋ねする問題、二点でありますが、第一は、農畜産物の価格制度の総合的な検討と運用の問題について、第二点は、五十年度の予算の中で土地改良事業の圃場整備事業について一部通年施行に対する助成措置が講ぜられておるわけでありますから、これの今後に及ぶ運用の方針と、二点に分けてお尋ねいたします。  まず、価格制度問題点については、第一に価格決定の時期の問題です。たとえば、各局別の所管の法律といたしますと、食糧庁の場合には食管法ですね。それから食品流通局の場合には農産物価格安定法並びに砂糖価格安定法の規定もありますし、それから農産園芸局の場合は繭糸価格安定法と大豆なたね交付金法、それから畜産局の場合にはだだいま農林委員会で審議中の畜産物価格安定法と、それから加工原料乳の補給金法、こういうものが農林省における農畜産物の価格制度ということになるわけですが、まず価格決定の時期の問題について、これが非常に不統一になっているわけです。最近のようにインフレが高進する中において、価格決定の時期によって生産者に与える利益、不利益というものが生ずるわけでありますから、この点について農林大臣においてどのような検討を行うかという点であります。
  354. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘がございましたように、主要農産物につきましてはそれぞれ価格の算定方式がございますし、また価格決定の時期等もいろいろと異なっておることは事実でございますが、この価格決定の時期を統一するということにつきましては、やはり決定をするに当たり最新のデータを用いて算定をされるということでありますので、従来の算定の連続性を保ちながら、賃金、物価等の動向も適正に反映するという意味合いから見まして、行政価格を一律に決めるということはなかなか困難ではないだろうか、こういうふうに思っております。
  355. 芳賀貢

    芳賀分科員 そこで、たとえば食管法の場合は、食管法の本法規定には価格決定の時期というものは明確な根拠がないわけです。しかし、食管法の三条ないし四条の規定を受けて、政令において毎年生産者米価並びに消費者米価を決めるということが書いてあって、いつ決めるということは食管法にはないんで、これは政府から見れば都合のいい点だと思うわけです。それ以外の法律はほとんど、政令事項で決定、告示の時期というものが明示されておるわけでして、だからその点をどうするか。たとえば、これは森局長の所管ですが、砂糖価格安定法の対象である北海道の砂糖原料のてん菜、それから甘蔗糖の原料のサトウキビ。てん菜の場合は毎年四月十日までに決定して告示をする。サトウキビの場合は毎年十一月二十日までに決定して告示をする。ところがこの両作物は、てん菜の場合には大体収穫時期が十月ですね。サトウキビの場合には十一月ないし十二月ということになるわけです。すると、同じ法律が取り扱っておりながら一方は収穫半年前に告示をする。一方は収穫直近の時期に決めるということになるので、この決定時期の算定の要素等についても、物価や労働賃金の事情にしてもあるいはパリティの事情にしても、この決定の時限によって相当相違が出るわけです。ですから、同一の法律内における価格決定の時期等については、これはやはり政令事項になるわけですから、適正に整備する必要は当然あると思うわけですね。具体的な事例として糖安法を挙げたわけですが、この点、どうお考えですか。
  356. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生指摘の問題、そのとおりでございまして、てん菜の場合には、かつてのてん菜生産振興臨時措置法でございます。その当時からそういうしきたりになっておるわけでございます。このことは、てん菜があの当時から非常に伸びてまいっておりまして、輪作体系の中に新たにてん菜を相当面積入れていくという、そういう奨励措置といたしまして、播種前に価格を決めた方がよかろう、こういう判断に基づいて定められたものというふうに理解をしております。その後、現在までこれを踏襲してきておるわけでございます。そういう事情でございまして、サトウキビにつきましては当初から収穫期に決める、先生指摘のような取り扱いになっておるわけでございます。
  357. 芳賀貢

    芳賀分科員 そういうことであるので、それをどう考えておるのか、検討して不審に思わぬか、このままでいいと思うのか。政令事項だから法律改正の要がないわけですからね。これ、適切に改定する必要があると考ているか。――私の言ったことを繰り返しても時間のむだになるんですね。
  358. 森整治

    ○森(整)政府委員 昨年のてん菜の価格決定等の経過から見まして、何と申しますか、非常に価格の変動が激しい時代に、かえって先に決めた方がマイナスになるという面がございます。そこで、その問題につきまして、法制的に収穫期に定めることができるかどうか、実は法制局といろいろ打ち合わせをいたしております。ただいまのところまだ結論を見ておりませんけれども、実際の問題としますとやはり収穫期に――制度全体として変えるかは別にいたしまして、当面は収穫期に定めるという考え方も相当実際に現実に合っているのではないだろうかという観点から、ただいまいろいろ検討をいたしておる次第でございます。
  359. 芳賀貢

    芳賀分科員 実態はそういうことですがね。大臣、生産者である農民全体の意向というのは、米にしても、あらゆる農産物にしても、耕作開始前に早期に決定して明らかにすべきである。それを生産者が判断をして、そうして的確な営農計画を立てて、十分な再生産に取り組むというような意向が非常に強いわけです。米のような単作地帯の場合は、それを判断の資料にしてその選択する余地はないですけれどもね。ただ、いまのような経済事情の中においては、余り早期に決めることが生産者に対して果たして利益を与えることができるか。これは与えることはできるのですよ。しかし、いままでの自民党政府の行政努力においてはそれを与えることができないという結果だけを繰り返しておるのですからね。そこに不信感が生ずるのですよ、どうしても。だから、政府と農民の信頼性というものが十分に確立されれば、たとえば収穫直近に最も適正な価格を決めて、それによって再生産を持続してもらうということが、いまのような物価がどんどん上昇する時代においては、農民にとっての利益不利益という点から見れば、むしろ適当な措置であるというふうにも考えられるわけだけれども、ぬぐい去ることのできない農民の現政府に対する不信感というものは、直近時の方が有利ですと言っても、そうだということにならぬと思うのですね。この点はやはり、安倍農林大臣の言われる攻めの農政というものが全国の農民に信頼された暁においては、時期の問題等についても十分な解決ができると思いますけれども、しかし、同じ法律の対象である作物について、一方は半年前、一方は直近というような不合理というものは、これはやはり調整、是正するべきではないかと考えるわけですが、その点は大臣どうですか。
  360. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、いま芳賀先生が御指摘されたような農民の要請、要望があるということも聞いておるわけでございまして、まあそういう考え方も確かにあるのじゃないかと思うわけでございますが、現在の時点におきましては、これまで制度の沿革等も歴史の中においてあったわけでございますし、やはりいまその算定方式が、先ほど御指摘がありましたように農産物ごとによっていろいろとこう違っているわけでございますし、価格の決定をする場合においてはやはり最新のデータに基づいてやるということ、さらに賃金、物価の動向を十分勘案してやるということからいきますと、いずれの方法がいいのかという御議論もあるとは思うのですが、現在の時点におきましては、最新のそういうデータあるいは物価、賃金を価格に反映させるという上においては、これを統一することは非常に困難な問題じゃないか、そういうふうに思っておるわけでございます。
  361. 芳賀貢

    芳賀分科員 次にお尋ねしたいのは、ただいま指摘しました各価格制度の法律の中で、価格改定条項というのがあるわけですね。大豆なたね交付金法にはそれがこの法律の性格上ありませんが、それ以外は、食管法初め全部、年度内に政府が決定した価格を改定することができるという、価格改定条項というのがみんな明確になっておるわけです。ただ、表現については、たとえば食管法の政令の場合には「経済事情の変動が著しい場合においては、これを改定することができる。」他の法律の場合は「物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において特に必要があるときは、改定することができる。」繭糸価格の場合には「改定」ではなくて「変更」ということになっていますが、しかし中身はこれ全部同じです。せっかく法律に改定条項というものが規定されておるわけですから、問題は、どういう経済変動、たとえば物価事情がどれだけ変動した場合、あるいは労働賃金とか生産事情というものは経済事情の変化という範疇の中でどういうような変動が生じた場合にこの各法律にある改定条項というものを発動するかという、いわゆる発動基準というものが全然できてないんですよ。これは十二月二十四日の臨時国会の農林委員会において、私から安倍農林大臣に対して、あのときは保証乳価の改定に関してただしたわけでありますが、その後相当の時日も経過しておるわけですから、この各法律に規定されておるこの改定条項というものを一体どういう場合に発動するか。これはどういう場合でも発動しないという規定でないですから、必要あれば発動できるということになっておるわけですから、発動する場合はどういうような条件が生じた場合においては発動しますということでなければ、行政府としてはこれは責任を全うすることができないと思うのですよ。これ、一人一人の長官、局長からお聞きする必要はないのです。これは農林省として、大臣あるいは官房長、隣に座ったから、これはいずれからでもいいですよ。これは農林省として、法律を所管しておるその責任省として、この際明確にしてもらいたい。
  362. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、いま年度内改定につきましては芳賀先生のおっしゃるように、「物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において」特に必要があると認めるときは行政価格を改定することができると決められておるわけですから、年度内においてそういう事態が起こったときは改定をしなければならないということに、法律上はなるんじゃないかと思うわけです。その確固たる基準ということですが、私は、物価の事情であるとか、当該農産物の生産者の経営の事情であるとか、あるいは需給事情、決定時における行政価格の算定方式等を総合的に考慮して、やはりそのときどきにおいて総合的な判断でやるべきじゃないか、そういうふうに思っておるわけでございます。
  363. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  原則としては、ただいま申し上げたとおりでございまして、これはいままで発動したことがございませんので、具体的なケースに即して基準ということについては申しかねるわけでございます。また、その価格政策と申しますか、価格指示の仕組みが農産物によって違っております。したがいまして算定方式も違っております。したがって、具体的な例を申し上げさしていただいて失礼でございますが、豚価というのは安定価格の中に置いております。下限価格を、下がった場合にあれをします。したがって実勢が非常に高い、ただしえさ代その他が上がって基準価格等改定をするという議論が一方に起きましても、実勢の市場価格が高いので農家の手取りは保障されておるというような場合とか、いろいろそれぞれの農畜産物にとりましての事情がございますので、これはきわめて抽象的過ぎるというお叱りがございましょうが、それぞれのケースに即してやるべきかどうかということを、現時点では決めざるを得ないのではないかというふうに思っております。
  364. 芳賀貢

    芳賀分科員 それはいいのですよ。事情に即して決めるのはいいが、どういう場合に発動するのか。絶対いかなる場合にもこの改定条項を発動しませんということは言えないでしょう。立法府がこういう規制をつくったわけだから、あなた方にこの運用を任しておるわけだから、それを、いかなることがあっても発動しませんというわけにはいかぬでしょう。どういう場合に、それじゃ発動するか、その点が不明でしょう。だから、法律ごとによって、担当の局長の解釈とか方針がてんでばらばらなわけですね。中には児戯に類するような解釈をする者もあるからね。立法の趣旨に反するような解釈で、発動すべき場合に発動しないで終わるということも、当然あるわけです。原則というのは、必要な場合には発動するのかしないのかという点はどうですか。
  365. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、やはり必要があれば発動するということが、法律のたてまえじゃないだろうかと思います。
  366. 芳賀貢

    芳賀分科員 それはわかりました。じゃ発動する場合、どういう条件が具備された場合、一応発動する場合の条件とか、的確に言えば、発動基準ですね、これはやはり法律ごとに幾分違うとしても、政府が法律に基づいて行政的に決めて告示した価格ですから、決めた以上の価格というものに対しては、法律の内容がいささか違っても、その価格に対しての改定状況というものは与えられておるわけですから、やはり統一的な発動の基準というものはある必要があると思う。  たとえば「物価その他の経済事情」ということが書いてある場合、まず物価の変動がどの程度著しい場合において、第一に発動の条件になるか。その次の「経済事情」の中には、労働賃金であるとかあるいは生産のための諸般の経費とか、いろいろなものが有機的に含まれているけれども、そういう全体を含めての経済変動という場合においては、どういうような変化に対応して発動するか、このぐらいのことはできないことはないですよ。われわれ国会議員ですから農林省の問題だけやっているわけにいかぬですよ。国政全般にわたって取り組んでおるが、皆さんの場合には、まず農林省の役人でしょう。その中で、官房長とか食糧庁長官とか、分担しておるわけだから、自分の抱えておる法律というのはそうたくさんはないわけですよ。一年じゅうそれに当たっておるわけですからね。立法府がつくって任した法律の改定条項をどうするかということを、十年たっても二十年たっても放置しておるというのはおかしいじゃないですか。だからこの際、安倍さんの攻めの農政時代に、各局長においては、自分の抱えておる法律の改定条項に対しては、どういう発動基準というものを整備しているのだと――いまここで出せと言うのじゃないですよ。それに取り組んで、速やかな時期に決める、その点はどうですか。
  367. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 その点につきましては、それぞれの法律の担当局長もあるわけでございますし、これは詰めさして、ひとつ研究させてみたいと思います。
  368. 芳賀貢

    芳賀分科員 では官房長、大臣はそう言っているんだが、あなたは官房長だから、仲間の取り締まりみたいなものですよ。宿屋の番頭みたいなものだ。あなたは法律を抱えていないが、これは責任を持ってやるのですか。よその局長や長官を鞭撻して、けつをたたいてやらすとか、率先してやる局長は大いに称賛するとか、どうですか。
  369. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 ただいま大臣も、本問題については先生の御指摘もございまして、長い年月の問題で、目下ペンディングになっておるというようなお話もございますので、不肖事務当局といたしましても、それぞれ所管の制度の法律に即しまして、研究を進めていきたいと考えます。
  370. 芳賀貢

    芳賀分科員 次に大事な点は、価格決定の際に用いるところの生産費ですね。これは農林省が調査した生産費というものが、価格決定上の重要な要素になっておるわけでありまして、この中で、生産費の中に占める農家の自家労働の賃金評価の問題について、これは私としては、昔、農林省の統計調査部に久我さんという部長がおったでしょう、そのころから十五年以上、毎年毎年の論争点になっておるわけですが、ようやく昨年の七十二国会の三月七日の当予算委員会分科会、これは農林分科会ではないけれども、保利行政管理庁長官が出席して、その際、政府の統計関係の責任者、つまり総理府の統計局長、行政管理庁の統計主幹、労働者の統計調査部の担当、それから農林省の吉岡統計情報部長、政府部内の統計業務担当の皆さんに集まってもらって、そこで統一的に、特に政府として農家の自家労働の賃金評価の方式というものを――従来の臨時日雇い労賃を、農業経営に当たる者あるいは家族従事者の労働に当てはめるのは不当であるということは、議論の余地のないところなんです。これをどのように適切に変更するか、改善するかという点について、時の保利行政管理庁長官は、その点を十分政府部内において統一した方針を立てて、特に農林省と協力して、適正なものに改善する努力をしますということになっておるわけです。その後、吉岡部長を中心として鋭意努力をされておるということについては、私も承知しておるわけですが、もう大体その結果が出てしかるべき時期だと思うわけであります。もう三月からは、それぞれ農産物の価格決定の時期に入るので、この点について、もうここまで来ましたとか、こうなりましたとか、ことしからこれを適用しますとかいう点について、これは大臣でも、吉岡部長からでもいいです。
  371. 吉岡裕

    ○吉岡説明員 先生御承知のように、農業臨時雇い賃金によって、農畜産物の生産費調査におきます自家労働の評価を従来行ってきておるわけでございますが、これが最近の農村の労働市場の非常に急激な変化によりまして、それを使って評価をすることが問題ではないかという点が出てまいりました。私どもとしましても、従来、先生からもいろいろ御指摘をいただいておりましたが、統計調査の立場でいろいろな角度から検討をしてまいりました。昨年来、研究会等を開きまして学識経験者の意見も聞き、また現地の調査などもいろいろいたしまして、一応の私どもの検討案を内部的には固めまして、なおいろんな角度からの検討を現在続けてきておるわけでございます。この実際の実竹に当たりましては、行政管理庁に対しまして、指定統計になっておるものでございますから、承認を受けるための手続を経なければならない。また実際に調査をいたすための出先機関の体制の整備、関係機関への協力の要請等がいろいろございまして、こういう体制を全部そろえまして、一つの新しい評価の考え方に基づく調査をいたすということになりますと、やはり五十年、本年の半ば以降ということにならざるを得ないのではないか、そういう時期に始まります調査から、そういう新しい方式を適用してまいるということになろうかと考えておりますが、目下のところ、なおそういうあらゆる角度からの検討を続けているところでございます。
  372. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 自家労働を評価する現行の評価について検討を加えるということで、いま統計調査部長から説明をいたしましたように、統計調査部で鋭意詰めておりますが、私としても、行政管理庁の了承を受けて、できるだけ早い機会に結論を得た上で、実行に移したいと思います。
  373. 芳賀貢

    芳賀分科員 大体質問時間がこれで来たわけですが、冒頭にお話ししたとおり、このほかに土地改良事業、圃場整備事業の通年施行の今後の継続の問題ですね。去年、ことしは、稲作転換奨励金という名目で十アール三万円の助成をしていますけれども、ことしで生産調整が終わるということになれば、今度は来年からの通年施行については、当然公共事業である農業基盤整備、土地改良事業、圃場整備事業の通年施行分に対して、去年、ことし相当これは効果を上げておるわけですからして、そういう今度はまともな取り組みの上に立って、ぜひこの生まれた制度というものを持続すべきでないかという点ですが、これは率直な御意見を聞かしてもらいたい。
  374. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 五十一年度以降の通年施行の具体的措置につきましては、稲作転換対策の進め方をいま検討しておるわけでございますが、十分考慮して、検討してまいりたいと思います。
  375. 芳賀貢

    芳賀分科員 ちょっと、局長の答弁……。
  376. 大山一生

    ○大山政府委員 いま大臣が言われたとおりでございます。五十年までは稲作転換の一環ということで実施してきたわけでございます。したがって、稲転という意味におきまして五十年度限りで終わり、こういうことでございます。五十一年以降の通年施行の進め方の問題に関しましては、これはやはり稲作転換対策全体の今後の進めぐあいとの関連もございます。十分に慎重に検討してまいりたいと思っているわけであります。
  377. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて芳賀貢君の質疑は終了いたしました。  引き続いて、石野久男君の質疑に入ります。石野久男君。
  378. 石野久男

    石野分科員 大臣にお尋ねしますが、第一分科会でも質問したのですけれども、また本委員会のときにも質問しましたが、水産の問題で、特に海洋法の問題がやかましく論じられるし、あるいは領海の問題がやかましく論じられてくると、近海漁業に相当重点を置かなくてはいけなくなる。こういう観点から、この日本列島周辺の海底が大変に荒らされているという実情にかんがみて、この海底を全面的に調査をする。そのために、少なくとも十年ぐらいに及ぶところの長期にわたってのプロジェクトをつくって、その調査に基づいて、自然保護の立場から、海底を復活させる必要性があるのじゃないかということを私はお聞きしました。環境庁長官も、その点には同感だ、政府でも、その点について、あるいは農林大臣、また国土庁長官等とも話し合いをして、積極的にそういう方向を打ち出すように努力するという御答弁をいただいておりますが、農林大臣のそういう点についての所見を、ひとつこの際聞かしておいていただきたいと思います。
  379. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 近年都市生活の廃棄物あるいは産業廃棄物等の継続的な堆積によりまして、沿岸漁場が相当汚染をされておりまして、漁業の操業にも支障を来すということなど、国内の漁場によっては、効用の低下がずいぶん進行している面があることは事実でございます。このために農林省としては、四十六年度以降、都道府県に助成をいたしまして、漁場堆積物除去事業を実施しておるところでございまして、また四十九年に成立いたしました沿岸漁場整備開発法に基づく沿岸漁場整備開発事業の中に、海底清掃事業を含め、今後計画的に実施をしていくことといたしておるわけでございます。  なお、前回の予算委員会においても御質問がございましたが、大陸だなの清掃作業等についても、環境庁長官も積極的な発言をいたしましたが、そういう必要があれば、われわれもともに検討をして、これは進める時期が来れば進めなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  380. 石野久男

    石野分科員 これはひとつぜひ、食糧事情が非常に問題になってきているときでありますだけに、たん白質の非常に大きな部分を海産物から得ておるという事情もあるから、それに見合って、この対策は積極的に進めてもらいたい、このように思います。  時間もございませんので、私は農業改良普及に関連する問題が一つありますので、この点お聞きしたいと思うのです。  最初に聞きますが、農業改良普及という仕事は、法に定められてあるような方向で進められるべきことだろうと思うのですが、この改良普及によって、農家に迷惑をかけるようなことをする指導はしないのだろうと思いますが、どんなふうでございましょうか。
  381. 松元威雄

    ○松元政府委員 もとより農家に迷惑をかけるようなことをする指導はもちろんございません。もちろん普及員は、これは誠心誠意自分の技術を尽くしてやるわけでございます。もちろん人間でございますから、技術のミスはないとは申しませんけれども、誠心誠意やっているつもりでございます。
  382. 石野久男

    石野分科員 実は茨城の方で、茨城県に農業普及の仕事として行ったことの中で、一つ問題が出ておるのです。それは、茨城県に大子町というのがありますが、そこに左貫茶というのがあります。そしてこの左貫茶というのは徳川中期のころから、いろいろその地区での銘柄として非常に世間で評価されてきたところです。その左貫に山下園という商標でございますが、鈴木という製茶工場がございます。この製茶工場に農業普及所からいろいろとやはり御指導をいただいておりまして、昨年の新茶の出回る前のころに倉庫、いわゆる低温貯蔵の倉庫をつくるということで指導を行いました。その倉庫をつくったのに新茶を入れ、あるいはまた二番茶を入れるというようなことをしましたが、それが不幸なことにえらいにおいを出しまして、お茶が全部だめになっちゃったという事情がある。ただそのお茶が全部だめになったということだけならいいのですが、農業普及員が指導するに当たって、全部おれの方に任せろというようなことで指導なさったのです。で、倉庫をつくる過程で、実は倉庫の中に、いまここにお持ちしましたが、こういう建材を使いました。この建材は何というか、この建材を使う段階で大変なにおいがするものだから、こういうものじゃちょっと困るのじゃないかということを言ったんだそうですか、指導員はほかでもやっているんだからいいじゃないか、いいんだということで、これで倉庫をつくらしたわけです。これは大臣もひとつにおいをなにしてください。そのにおいが全部お茶についてしまったのです。ここにそのお茶を持ってきておりますが、お茶がまたにおいをなにしていますから、ひとつ皆さんでなにしてください。  そういうことで、その茶ににおいがついてきたものですから、鈴木さんの方ではこれはちょっとおかしいというわけで申し出をしたのです。ところが、それは大丈夫だからということで、したんだが、どうしてもにおいがあるので、それで異常を訴えた。訴えたが、それならばビニールでも張れということで、倉庫へ全部ビニールを張らしたのです。そこで二番茶もまた入れた。ところが、やはりどうしてもにおいがつくものだから、鈴木さんのところではそれを全部出して、そうして一部分をまた再加工しまして、最初のうちはいいと言うから、一部分はまたお得意さんの方へもお茶を出していたわけですね。そういうふうにしてお茶は出した。しかしどうもおかしいということでいる間に、出したお茶が全部また販売先から苦情が出てくるというような事情になりました。結局昨年度のお茶は、倉庫に入れたものは全部だめになっちゃった。  そういう事情がありまするので、その件について何遍か普及員の方に問題の実態を訴えて、対処の仕方なり何かをしましたのですが、普及員の方方は最初のうちはいいということを言っていたわけです。しかし、事実上お茶が売れなくなってしまう。こんなものを売ったら、かえってよくなくなって、自分の信用を落とすということでございまするので、お茶を全部とめちゃったわけです。  ここに一つ、これは販売店じゃないのです、お茶を買った人からこういうふうに一部を封筒に入れて苦情を言ってきている。これは栃木県の矢板の方の佐藤病院。病院がこのお茶を買って使っておったのです。それでこういうふうに言ってきておる。「御社製品のお茶を院長が旅行の際おみやげに買い求めましたところ、価格に反し、においがあってお茶としてはとてもいただけませんのでどうぞ試飲して何らかの回答をお願いいたします。」こういうような形で病院から鈴木さんのところへ返品かたがた苦情が来た。そういう手紙はもうたくさん来ておるわけですよ。一部分ここに持ってきておりますが、この方、古くからやっておられるから、福岡市の方からも来ておるわけですよ。各地からこういうふうにして、これは県内だとか、他県の方からもたくさんこういう苦情が来まして、結局鈴木さんと取引しておるお得意さんは全部お取引ができなくなってしまった。のみならず、あるいは鈴木さんの方では売ったお茶に対して取りかえをしなくちゃいけませんから、自分のお茶がないので、静岡からお茶を買ってくる、ほかからお茶を買って持っていって取りかえてくる、こういうようなことを盛んにいまやっているけれども、まだ全部収拾がついていない、こういう実情です。  そうしてそういう結果として、もう収入は一つもなくなってしまう。しかもこの方はもう古い、この鈴木さんのところは本家から分家になりまして、もうかれこれ百年になるそうです。七、八十年の年月がたっています。ずっとお茶をやってきているわけです。鈴木さんは大体一町二反歩くらいのお茶をやっております。その上にコンニャクを少しやっている。自分の菜園さえも持っていない。もっぱらお茶とコンニャクで農家経営をやってきているのですが、それがこのような形で全然無収入というような状態の事態を続けてきた。この間、いわゆる普及所の方々にそういう事情の訴えをして、昨年の暮れまでに何がしかの手当てができるかと思ったら、それもできない。そういうことから、鈴木さんのところではもうたまりかねて、本年になりましてから実は内容証明で事実確認の書面も出しているわけです。それでも何のお答えもないというような事情で、実は私のところへそういうお話が来ました。  そこで私は、この分科会でこういうことを聞きたいという意味をもって分科会に質問の提起をしたわけです。皆さんの方からどういう内容だろうかということのお話があったので、茨城県で、お茶の問題だと言っただけなんですが、それからこの三日間ほどは大変なんですよ。今度は鈴木さんのところへ、その話は何とかここでとめてくれというわけで、親類から全部鈴木さんのところへ矢の電話で、あるいはまたお兄さんを使ったりいろいろなことをして、そんなことをするのじゃない、もうそんなことをしたらおまえ大変なことになっちゃうぞというようなことで、たとえば奥さんがおるというと、そこへ電話で、日の丸相手に争ったって勝てやせぬのだから、やめておけと、こういう話。あるいはそんなことを問題にしても五年や十年かかるのだから、もうそんなことはやめておけ、大それたことをすると後のたたりがこわいぞ、あるいはまた、そんなことをしたら税金の問題にもひっかかってくるぞというようなおどかし、いろいろなことで、むしろどっちがいいのだか何だかわからないというような事情なんです。  そこで、私はこの際農林省に、これはもう理屈じゃないのです。事実がこういうことですから  …。だから、ここでお聞きしたいのは、この鈴木さんのところは、この三年来関東でお茶の品評会があって、関東大会ではこの方は四十七年、四十八年、二年間入賞して三等くらいの賞をもらっているところなんです。去年は何とかして二等くらいにしようと思いまして、一生懸命につくったお茶を真っ先にその倉庫へ入れておるわけですよ。ところが、これはもう全然だめだから出品も何もできません。そういう事情で、ある程度の銘柄としてのなにを持っておるお茶屋さんなんですが、もう全面的にお得意さんもなくなってしまった。そうして、この方はある程度、山も二十町歩くらい持っておりまするし、いまも申しましたように百姓をやらなくても、それだけでやれるくらいに商売もやってきているものですから、この金繰りはそう不自由はしていなかったわけです。田舎の人ですから、銀行は余り使わないで、自分の手持ち金でやりくりしてきた方なんです。それから、お客さんに対しても一、二年の売掛金があっても余りやかましく言わないでやってきた。ところが、今度はこの一、二年の売掛金が全部取れないのです。集金に行くと、何を言うのだ、あんな臭いお茶など売らしておいて、いまごろ集金もくそもあるか、おれのところの信用がた落ちだからそんなもの払えない、こういう調子になってしまったから、本当にお手上げというような状態なんですよ。そういうような実情であるにもかかわらず、いま言ったように親方日の丸を相手にしてもだめだとかなんとかということで、何とかこういう問題を大きな課題にしないようにしようというようなことをなさっておる。それで本人も非常に困っている。そこで、この際、農林省に、改良事務に関しての問題でこういう事情が出たということに対して、どのように皆さんは対処されるかということについて私はひとつお聞きしたい。
  383. 松元威雄

    ○松元政府委員 先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、もちろん改良普及事業は農業技術を向上させ、農業経営によかれと思ってやっておるわけでございます。ただいま先生の方から、結果としてこういうにおいのあるお茶が出た、その原因として冷凍倉庫の断熱材でございますか、それのお示しがあったわけでございます。  そこで問題は、その場合、普及員の方の普及指導に手落ちがなかったかどうかということが問題になろうかと思うわけでございます。もちろんこれは誠心誠意、農業者の立場に立ってやったつもりでございますが、もしも技術的ミスをしたならばこれは適当でないわけでございまして、もちろんその場合には、今後一層普及の適正を指示しなければならぬわけでございますが、私は、実はただいま先生の結果としてのにおいのついたお茶は現物を拝見しましたし、断熱材を見たわけでございますが、実は事案につきまして、普及員としても一生懸命やったつもりだろうと思うわけでございます。十分話を聞いていないわけでございまして、ひとつ、まず現地から十分事情を聞いて対応していかなければならぬ。ただし、普及員といたしますれば、普及指導の過ちなきを期するようなことは当然でございまして、恐らくやったんだろうと思うわけでございます。その場合に、お話が出ましたけれども、一体どういう普及指導の仕方をしてあるのであろうか。本来の普及事業と申しますのは、農業者の自主的活動を助長するために、いろいろ教育的事業と申しますか、そういう意味合いを持ちまして普及員が農業者と相談をいたしましてやるのが普通でございまして、もちろん命令ではございませんし、相手の意向も無視して押しつけるということもないはずでございますが、お互いに普及員がこれはいいよと言って勧め、向こうもよかろうと思って受け取ったというのが普通でございますが、もしもその普及指導にまずいことがあれば、われわれも反省しなければなりません。そういうことで、私も具体的証左につきまして結果を拝聴いたしましたが、さらに普及員からよく内容を聞きまして、今後過ちなきを期したいということをまず第一に考える次第でございます。
  384. 石野久男

    石野分科員 実情を調べるということは大切なことですから、調べていただきたいと思うのです。ただ、実情を調べるも調べないもない。こういうふうに現実にお客さんのところから、こういうような事情で――大体結果としての事情は御否定はなされないだろうと思うのです。私も、実は普及負が故意にこういうことをやったとは思っていません。もうやはり善意でやったのだと思いますが、ただ建築する過程で、建築中にも少しにおいがあるものだから、これはおかしいのじゃないかと言ったのだけれども、大丈夫だ、狭山でもこれをやっている、千葉でも使っているのだから心配要らない、こういう調子でやっちゃったらしいのですから、そういうような事情があって、普及員さんとしては建材に自信を持っておられたのだろうと思うのです。しかし、結果としてはこういうような事情になってしまいました。そのためにこの鈴木茶園というのは、率直に言ってお茶は全部売れなかったわけですよ。全部売れなかった物に対してやはり何とかしてやらないと本人はどうにもなりません。それから倉庫はもう使えません、いまでもにおいがするのですから。そういうところへ茶を入れたんじゃ、お茶は全然銘柄としては成り立たなくなっちゃいます。そういうことがありますので、まず、こういうようなものに対しての指導の責任をとらなくちゃいけないだろう。どういうとり方をするかは別として、指導の責任をとる必要がある。それからまた、そういうことによって出てきたところの損害が別にあります。たとえば茶の取りかえをするとかなんとかというようなところにかかった損害もありますし、それからそれに伴って、今度は信用が全然なくなってしまって、お客さんがなくなっているという問題があるわけですよ。  そういうようなことがありますので、それらのものはいまここで細かくは言えませんけれども、一応調べていただいて、これらのものに対する弁償の責任をどうしてもとってもらわなければいけないと思うのですよ。そうしませんと、率直に言いますとこのお茶園はつぶれてしまいます。だから、この補償責任の問題について、内容はどうなるかわかりませんけれども、やはり政府としては、少なくとも農林省としては、それについて責任をとってもらう必要がある、こういうふうに私は思いますが、いかがですか。
  385. 松元威雄

    ○松元政府委員 私、先ほど申し上げましたが、結果としてのにおいのついたお茶、これは現に事実でございます。原因が断熱材、これも事実でございます。  問題は、その場合の普及員の普及指導の仕方の問題だろうと思うわけでございます。ただいま先生が責任とおっしゃったわけでございますが、これは理屈を申して恐縮でございますが、普及員が悪意を持ったら別でございますが、誠心誠意やったということでございまして、その普及指導が著しくまずかったというならば問題はあろうかと思います。その場合、いわば法的に責任があるかどうかの問題は残りますが、良心上はやはり責任を負う。しかしながら、その場合、これに対して第一義的には県の職員でございますから県、さらに全体の基本的問題は、もちろん農林省で指導したわけでございますから、農林省という問題はございますけれども、まず第一に何としましてもその実態を把握しなければならないわけでございます。結果は私もわかりました。その場合、普及員がどういう普及指導の仕方をしたかということでございまして、もしも普及員の普及した誤りが通常の度合いを越えて非常にひどかったということになりますれば、それに対して対応を考えなければならない。私どもとしましても、まずその内容を――私もやはり普及員が誠心誠意やっておるということを信頼いたしておりますから、ここで普及員のやり方につきましてもちろん反省もいたしますが、同時に普及事業の士気を阻喪さしてもいけないわけでございまして、まず十分事実を明らかにいたしまして、それに対しまして必要な措置をとりたいと思います。
  386. 石野久男

    石野分科員 農林行政の上から、農業改良普及員の士気を阻喪さしてはいけないということは、私どもは皆さんの立場考えることは当然だと思うのですが、しかし、そのことによってその指導を受けた方が非常に大きな損害を現実に受けている。あなた方が目の前で見られるような実情になっておるし、しかも七、八十年にわたって築き上げてきたところのお茶園としての商域を全部つぶしてしまっているわけですよ。そこまでいっておるのに、農業改良普及員のやり方がどうだったこうだったというだけで問題を処理されては困ると思うのですよ。しかも、これは倉庫の中のにおいでそうなったのですからね。しかもその倉庫は、全部ここにある内容証明の中にも書いておりますけれども、茨城県大子地区農業改良普及所の〇〇技官は、名前はあえて言いませんが、「まことに結構な考えだ、設備について一切を当方に依頼するなら責任を持って指導すると確約された」こういう形で指導したわけですよ。そうして倉庫をつくったわけですからね。また細かいことは調べられればわかります。したがって、この建材そのものを納入した会社にも責任は当然あるのだと私は思います。会社のお名前もいろいろ影響すると思いますから私は言いませんが、そういうような事情で結果的にはこういう欠陥が出た。しかもお茶園をやることができなくなってくるのですよ。現にお茶畑はありますよ。だけれども、今度はお客さんがなくなっているのですからね。ちょっとやそっとじゃいきません。  しかも、最近になって、私がこの質問をするということになってからこの二、三日来、一緒にみんな謝りに行ってやるから、もう石野先生にそんなことを言わせないでくれというようなことを盛んに言っているのだ。しかし、本人や技官や所長さんが一緒に行ったからといって、お客さん戻ってきませんよ。そうでしょう。そんなことで追っつくくらいなら、何で昨年のうちに対策をとらなかったかということになってきます。去年の新茶が出たのは五月かそこいらですからね。それから一年間。しかもことしになって新しい茶の用意をせなければならぬというときに、もう困り果てて来ているわけなんですから。だから、これはどうしても出た損害だけは、どういう形で責任をとられるかわかりませんけれども、指導の結果――悪意な指導でないことはよくわかりますよ。しかし結果的にこう出たものを、政府が、それはおれは知らぬということにはならないと思うのです。ただ、指導の仕方の問題をどういうふうにするかということについては、省内の問題でございましょうから、それはそちらで処理していただいて結構です。ぜひひとつこの責任をとっていただく必要があると思う。これは大臣どうです。こんな責任を放置してはいけないと思うのですが、どうですか。
  387. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私もいま初めて聞いたわけでございますが、まずやはり農林省としても実情を十分に掌握することが第一であろうと思いますけれども、しかし、具体的に提示されたものから、問題は確かにあるんじゃないか。普及員としては善意でやったことであったとしても、こういう結果が出たということになるならば、これはやはり農林省としても何らかの適当な措置は講じなければならぬ。もちろん普及員に対する指導監督の問題とは別にして、やはり何らかの方策は講じなければならぬ、そのように思います。
  388. 石野久男

    石野分科員 これはぜひひとつそういうことについて対処していただきたいと思います。  それからいま一つお願いしたいことは、そういう問題で、たとえば賠償、弁償の処置が早急にとれれば、これはよろしいのですけれども、そうじゃないと、これはことしの仕事ができないのです。結局今度は、まずかま刈り茶を仕入れをしなければいけません。そして、新茶の仕入れ、二番茶の仕入れということになってきまして、普通ですと、この鈴木さんの家で言いますと、いまごろは三千万から四千万ぐらいの用意をしてかかるんだそうです、これだけの仕事をやっていくために。それがいま全然パアですから、ないのですよ、率直に言いますと。だから、そういう問題について、私は、やはりこれは資金の融資のことをどうしても考えてやっていただきたいと思うのです。  それで資金融資の問題につきまして、実はこういうことがありましたので、農林省の方がおいでになって、金を借りるのには農協なんかがいいんじゃないかというようなお話でございましたけれども、しかし、利率のことやなんかいろいろ考えると、やはり農林漁業金融公庫あたりの金を長期にわたって貸すようにしていただいて、それで一方の問題が解決をして、それで入れかえればまた別でございますから、なるべく利子の安いものを貸し付けしてやっていただく必要があると思います。ここでは何も本人がもうけるとかもうけないという問題じゃなくて、仕事をするために必要な資金だけはどうしても皆さんの方であっせんをしてやるという責任だけはとってもらいたいと思うのです。そういうことについて、農林省は具体的にひとつ指導をしていただくようにお願いしたいのですが、いかがでございますか。
  389. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり実情を調査いたしまして、農林省側といいますか、普及員においても責任があるということならば、これはもちろんいまの融資のお話等につきましても、十分考慮しなければならぬ、こういうふうに思います。
  390. 石野久男

    石野分科員 時間が余りございませんから、私はお願いしておきますが、とにかく事実をよく調査してください。  ただ、事実を調査するに当たりまして、農家の方々というのは、やはり依然としてまだ、古い言葉では官尊民卑というような、こういう考え方がありまして、お上の方が来るというと非常にこわいのですよ、実を言うと。そして何か言葉を言おうとしても、半分ぐらいでもう物をよう言わなくなってしまう。それを言おうとすると、今度は親類を使って、おまえそんなことをやったらだめだぞということで、この人なんかは、あるところから兄さんのところに行って、兄さんのところから、もうおまえやめろ、そんなことをやったってだめだぞとしつこく言われているわけです。また、ほかの親類やおじさんを使っては、ああ言われこう言われ、何とかそういうことをしないようにというような工作が行われる。だから、実情調査に当たって、そういう工作を絶対にしないようにしてほしい。これはひとつこの際はっきりと確約してもらいたいのです。本人たちは田舎の人で、非常にこわいのです、実を言うと、お上の人が来られるのが……。だから、そこのところはひとつはっきりしていただきたい。私なども、こういう事実がございますから、そういうときにはお話も聞かしていただきたいと思っておりますし、技官の方々が悪意でやったんじゃないので、善意でやったんだけれども、こういう結果が出たということによって、一定の責任をとるということは気の毒でございますけれども、ことさらにその人を悪意でやったものとして私は見ておりませんから、それはそういう改良普及員の方に対して、善良な配慮を皆さんがしてやってくださることをお願いしますけれども、しかし一方において、お茶屋を営んでいるところの山下園、鈴木製茶工場というものは行き詰まっておりまするから、ただいま申し上げました調査をしていただいて、弁償の問題を責任をとっていただくことと、いま一つは、融資の問題についてひとつ配慮していただくように、このことをひとつ農林大臣にお願いしておきますが、よろしゅうございますね。
  391. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどからもお答えいたしましたように、十分調査をいたしまして、その結果に基づきまして配慮していきたいと思います。
  392. 石野久男

    石野分科員 ありがとうございました。
  393. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 これにて石野久男君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、本分科会所属の経済企画庁所管、農林省所管及び通商産業省所管に対する質疑は全部終了いたしました。     ―――――――――――――
  394. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 この際、お諮りいたします。  昭和五十年度一般会計予算中、経済企画庁所管、農林省所管及び通商産業省所管、並びに昭和五十年度特別会計予算中、農林省所管及び通商産業省所管に対する討論採決は、先例によりまして、予算委員会に譲ることといたしたいと存じます。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  395. 塩川正十郎

    ○塩川主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  これにて本分科会の議事は全部終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の特段なる御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができましたことを、ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時五十六分散会