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1975-02-26 第75回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十六日(水曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 野田 卯一君      三ツ林弥太郎君    大出  俊君       山中 吾郎君    湯山  勇君       浦井  洋君    平田 藤吉君    兼務 阿部 昭吾君 兼務 井上 普方君    兼務 上原 康助君 兼務 兒玉 末男君    兼務 安井 吉典君 兼務 田中美智子君    兼務 野間 友一君 兼務 近江巳記夫君    兼務 鬼木 勝利君 兼務 受田 新吉君    兼務 永末 英一君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 田中 正巳君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         大蔵大臣官房会         計課長     野崎 元治君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         厚生大臣官房長 石野 清治君         厚生大臣官房会         計課長     松田  正君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省環境衛生         局長      石丸 隆治君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省薬務局長 宮嶋  剛君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      上村  一君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         厚生省援護局長 八木 哲夫君         社会保険庁医療         保険部長    山高 章夫君         社会保険庁年金         保険部長    河野 義男君         農林大臣官房経         理課長     降旗 正安君  分科員外出席者         総理府恩給局次         長       大屋敷行雄君         大蔵省主計局主         計官      梅澤 節男君         文部省大学局医         学教育課長   齋藤 諦淳君         文部省社会教育         局青少年教育課         長       川崎  繁君         林野庁職員部福         利厚生課長   滑川 常男君         郵政大臣官房秘         書課長     林  乙也君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 赤松 良子君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     宮尾  盤君     ————————————— 分科員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     山中 吾郎君   林  百郎君     荒木  宏君 同日  辞任         補欠選任   山中 吾郎君     大出  俊君   荒木  宏君     栗田  翠君 同日  辞任         補欠選任   大出  俊君     多賀谷真稔君   栗田  翠君     米原  昶君 同日  辞任         補欠選任   米原  昶君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   浦井  洋君     平田 藤吉君 同日  辞任         補欠選任   平田 藤吉君     林  百郎君 同日  第一分科員安井吉典君、田中美智子君、近江巳  記夫君、第四分科員上原康助君、兒玉末男君、  野間友一君、受田新吉君、永末英一君、第五分  科員阿部昭吾君、井上普方君及び鬼木勝利君が  本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算厚生省所管  昭和五十年度特別会計予算厚生省所管      ————◇—————
  2. 野田卯一

    野田主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和五十年度一般会計予算及び昭和五十年度特別会計予算中、厚生省所管を議題とし、前回に引き続き質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部昭吾君。
  3. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 戦争で傷ついた方に対して現在恩給法によって年金支給が行われておる。この支給のあり方について、私は非常な疑問を感ずるのであります。  それは、戦没者については、いわば遺族の資格というか、それが確認されますと、この制度が始まった段階にさかのぼって給付が行われる。しかし、傷痍軍人あるいは軍属というかこういう皆さんについては、申請主義という立場で、その申請された要件が全部内容を整えておって、そして政府の方で決定をされた段階から給付が行われるのであります。  そういたしますと、どういう状況が起こっているかといいますと、戦争による障害でありますから、いまから三十年前のことであります。この戦争による負傷者に対してこの制度が始まったのは二十八年ごろではないかと私は思うのでありますが、事実は戦争による負傷であるということが明らかであっても、その当時の事実を証明するものがなかなか整わぬ場合が非常に多いのであります。  整わぬ場合に、市町村当局あるいは県の窓口などといろいろ該当者は協議を持つわけでありますが、その場合に、戦争による負傷であったかどうかということを確認するいろいろな内容が整備されていなければならない。したがって、その場合に、それを証明するようなものがしっかりない場合は、当時の負傷した状況に、それを確認することのできる現認者と称する者を何名か出して、その皆さん確認がなければいけない。そうすると、この制度が始まった当時、ちょうど一年ぐらいおくれて町村合併等が行われて、現認者と目される人が、該当者から見ました場合、どこにいるのかということがなかなか確認ができない。十年も二十年もたってやっとその現認者が見つかりました、したがって、確かに戦争によってこの場所で負傷したことは間違いありません、こういう証明が出てきますね。出てきましたので、初めて市町村当局なり県当局は、内容が整ったとして、政府の方に申請をするのであります。政府の方も内容的に整っておってよろしいというので、そこから年金支給が始まっていくのであります。  そういたしますと、事実は確かに戦争負傷しておったことは明らかだ、しかし、その手続内容が整わなかったという理由で、申請主義の名において、本人が当然年金を受けるべき権利というものが制限をされてきた、こういうことになるのであります。これは著しい不合理ではないかというふうに私は思うのであります。  戦争負傷したということは、これは厳然たる事実なんであります。しかし、あの戦争というのは、何せ大変な激しい困難な中で戦闘行為があって、しかも戦は負けたのでありますから、どこでどういうふうに負傷したのかということの確認方法が非常にむずかしい。何か軍人とか軍属手帳というのがあるのでありますが、それにちゃんと記載があれば問題がないのですよ。ずいぶん逃げ回ってやっと祖国にたどりついたという皆さんは、そんなものは持っておらぬ。それじゃどうすればいいんだといったら、現認者を見つけてこい。現認者を探すのに十年も二十年もかかった。やっと見つかった。そうすると、申請主義でありますから、現認者が見つかって、手続は確かに完成いたしました、よろしい、これで決定ですという段階までの権利は、実は認められないのであります。  そこで伺いたいのは、申請主義というのは法律上の規定でしょうか、あるいは行政上の規定でしょうか。
  4. 大屋敷行雄

    大屋敷説明員 申請主義というものは、結局年金権利者であるべき方が請求されるということをたてまえとしておるわけでございまして、その意味申請主義というお言葉をお使いになったと思いますが、結局、いま御質問の点は、扶助料あるいはその他普通恩給もございますが、そういうものと傷病恩給給与の初月が違うじゃないかということだろうと思います。それで、恩給法では年金支給し得る原因給与事由と申しておりますが、この給与事由の生じた翌月から年金支給するという規定になっております。  それで、先ほど扶助料の場合は、死亡という事実、これはもうはっきりしておりますから、しかも戦争死亡されたという場合の資料というものはほとんど不要でございます。しかも死亡という確定された事実に基づいて恩給支給するわけでございますから、その死亡給付原因になるわけでございます。したがいまして、その翌月から扶助料が行く。ところが、傷病恩給の場合は、結局これは法律の上では、やはり原則としましては、本人は生きておりますから、退職当時から支給されるというのが原則でございます。と言いますのは、在職中公務によって負傷、疾病にかかりまして、それで傷病恩給支給される程度に達しまして退職しますと、退職の翌月から行くわけです。それからもう一段階は、退職後五年以内に症状が固まる、いわゆる傷病程度恩給支給すべき程度になる、そういう場合には、やはりその固まった、いわゆる程度に達したときから支給するということになっております。  いま御質問の点は、退職後十年、二十年、いまの状態ですと三十年ぐらいになりますが、そういう長期間の間に症状が変移しまして、それで傷病恩給を給する程度になる。たとえば傷病年金増加恩給を給する程度になる。(阿部(昭)分科員「違う、そんなことを聞いているんじゃない」と呼ぶ)いや、それはそういう場合でございます。そういう場合には、結局法律の上では、恩給審査会公務かどうかをかけるわけでございます。恩給審査会議決によって公務と認められた場合には、その議決の翌月から支給する、こういうことになっております。これは軍人、文官を通じての原則であります。  ところが軍人の場合は、先ほども御指摘のございましたように、都道府県から厚生省、それから恩給局に来るわけでございまして、非常に手数がかかりますので、その最後取り扱い特例を設けまして、都道府県にいわゆる請求書類が達したときをもって給与の初月にする、こういうことにしておるわけでございます。ですから、申請主義申請主義と申しますが、結局その最後段階特例として軍人の方には優遇措置をしておる、こう考えております。
  5. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 そういたしますと、公務による負傷であったのかどうかということが確認できるかできないかで、申請をやらすかやらさぬかということを、市町村段階でも、都道府県段階でも、あなたの場合はどうも、軍属手帳の中にもちゃんと記載がない、部隊みんな負け戦散り散りばらばらになっておるんですから、どうにもならぬわけですよ。その場合には当時の状況確認できる現認者をそろえて来なさい、こうなるわけですね。そうでしょう。現認者を捜すのが大変なんですよ。捜すまではだめ、こういうことでお預けを食っている。やっと見つかりました、当時のあれも全部わかりましたということで書類が整いました、申請です、こうなってきた。そうすると、戦争負傷したという事実は厳然たる事実、それを証明する手段がなかなか整わないということで、年金を受けるべき権利というものを制約されてきたんですね。これはどうなるんでしょう。
  6. 大屋敷行雄

    大屋敷説明員 傷病恩給でございますから、やはり公務によって受傷したということを何か証明していただかなければならぬわけでございます。それともう一つは、症状がいつ傷病恩給を給すべき状態に達したかということもこれはぜひ必要なんでございます。そうしませんと、恩給支給されるか否か決定できませんから。それで先ほど申し上げました一番最後取り扱い、つまり恩給審査会の議に付するというのは、そういうことではなしに、結局十年、二十年、あるいは三十年の長い間にその症状がどういう状況に、仮に公務受傷と現在の症状因果関係があるか、そういう医学的な判断が必要でございますので、そういう制度を設けておるわけでございます。  ただ、先ほどのいわゆる受傷の事実証明なり現認証明につきましては、私どもの方としましても厚生省さんにお願いいたしまして、各都道府県に、不備でもいいから請求書——不備といいますか、そういう現認証明書を得られない場合は、後でも結構でございますから、できるだけ請求書を受け付けて後で補整する、そういうような態度指導しておるつもりでございますが、各県におきましては、あるいは返戻して、実際具体的にちょっと私知りませんが、御指摘のような事態が出ておるのかもしれませんが、たてまえとしましては、全部そろわなければ請求できないという態度でやっておるわけではございません。
  7. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 田中大臣、これは私、どう考えても不合理だと思うんです。症状が固まったのはいつかというのです、いまのお話で。とにかく十九年か二十年に負傷しておるんです、部隊散り散りばらばら負け戦で、惨たんたる中で。ところが、部隊散り散りばらばらですから、したがってその確認ができない。やっと当時の状況を、一緒にその戦闘行為におった皆さんが見つかって確認できました。確認できるまで三十年もかかって——もっとも、この制度が始まったのはあれは二十八年ですか、七年ですか、そうすると、その間ずうっと確認されなくてやっと確認されました。市町村当局相談したら、いや、あなたの場合手帳もないし、果たしてそれが戦場負傷したのかどうかということがはっきりしないから、それがちゃんとならなければだめですということで、政府の方へ上がってこない。そうするとその人は、負傷したのは十九年か二十年のころですから、この制度が始まったとき、本来症状はみな固まっているんですよ。固まっちゃってびっこになってしまっているんです。それは間違いない事実なんです。その場合確認される手段というものが、部隊もみなめちゃくちゃですからなかなかはっきりしない。そこで現認者を捜すのに惨たんたる苦労をして、やっと見つかりました。しかし、年金支給については、つい最近の審査会決定されたその段階以降ですということになると、その方は、戦争の傷跡のために三十年間大変に苦労してきたわけです。そうすると憲法で言う法のもとに平等だ、こういうあれなんかとも関係さして考えてみると、どうも申請主義と称するこれは、憲法の精神とも違うんじゃないか、もとるのではないか、こういうように私は思うんですよ。厚生大臣、私の言うこと無理でしょうか。
  8. 八木哲夫

    八木政府委員 厚生省の方は、前の陸海軍省から引き続きました軍人関係恩給申達関係事務をやっておりますし、都道府県指導もやっておるわけでございます。それから恩給法ではございませんけれども援護法障害年金も大体恩給法と同じような思想で運用しておるわけでございます。  第一点の申請主義の問題は、これは先ほど恩給局の方からもお答えございましたように、これは公務扶助料なり私どもの方の遺族年金にしましても、障害年金にしましても、あるいはほかの制度を通じましての年金関係は、すべて御本人からの請求を待つというのがたてまえでございまして、職権でやるという趣旨のものではないわけでございます。  それから、先生から御指摘ございました申請主義の結果、事実上御本人権利を制約することがあるんではないかという点でございますけれども、まず当時の陸海軍省なりあるいは終戦末期、直後の混乱状態は別といたしまして、あるいは内地等はそういうことはなかったと思いますけれども、大体復員の際に戦傷等ございました際、あるいは入院しておった場合、これはもう必ずそういう傷病恩給をやるような手続をとるような指導を、復員時に当時の陸海軍省なりあるいは戦後でございましても引き続きました第一、第二復員省で、入院しておられた方につきましてはやっておるわけでございます。現実問題としましてなかなか出てこないというのは、戦後新たに発病された問題とか戦後重くなられたというような問題が多いのではないかと思われますし、それから混乱期で十分な状態復員ができなかったというような場合が多いと思います。  そこで、いずれにいたしましても市町村、それから都道府県を通じましての請求が出てまいるわけでございますけれども、私ども県等に対する指導といたしましては、完全な書類が整わないというために請求書が受け付けられないということで、そのためにどんどん時期がたってしまって時効が完成してしまう。その時効のために請求できないということになっては申しわけないというようなことで、全く請求書一枚だけということで請求を出されました例というのはないわけでございまして、ある程度資料を出されておりますし、それから役所側の方におきましても、都道府県等におきまして必要な書類等もございますので、そういうような面でできるだけ不備なものでも補強ししていただくということにしております。  それから、恩給法なりあるいは援護法の考え方も同様でございますけれども、当初の傷病につきましての傷病恩給なりあるいは援護法障害年金、これは法律適用のときに現実に事由の生じた時期にさかのぼりまして当然そのときから支給されるわけでございます。先生の御指摘事後重症で、当初は一定の症状に達しておらなかった。したがって、その後重くなられたという方につきましては、その時点からしか権利は裁定できないわけでございますが、当初からの方という場合には、これは事後重症ではございませんから、当初からそういう容態であったという場合には、そういうような法適用の時期から当然適用になるという問題だと思います。
  9. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 あなたの方で勝手に解釈をしてはいかぬのです。事後に重くなったのではなくて、足をぱんとやられて現在びっこになっているんですよ。それは戦後間もなくびっこを引いて帰ってきたのですから、そのままびっこなんです。したがって、その当時から私は負傷したんですと言っても、おまえは果たして軍属として戦争負傷したのかどうかということがはっきりしないじゃないか、しない、というので、市町村役場とも県の社会課ともずいぶんやったけれども、どうもあなたの場合は肝心のことがないというのでだめだったのです。しかし、一番ひっかかっておった、戦争公務負傷したことに間違いないということが、現認者とかいろいろなものでやっとはっきりして、受理されて、つい最近から年金給付を受けるようになった。けれどもこの人は、昭和十九年に戦地で大混乱のときに負傷して、戦争が終わって、しばらく過ぎてびっこを引いて帰ってきて、いまもびっこそのままなんです。横っ腹をやられたのならばあとでもっと悪くなっていくとかいろいろなことがあるでしょうけれどもひざの下ですからね。それで、どうもおかしいじゃないか、負傷したのは十九年です。これは間違いない。しかし、それが公務戦争による負傷であったかどうかということを確認するのに、なかなかそろわなかったわけです。やっとそろった。そのことができなかったためにいままで手続市町村役場でもしてくれない。県でも取り合わない。しかし、いろいろ努力をした結果わかったということになって、つい最近、政府の方ではこれを確認して年金支給をされておるのです。いまのは歴然たる負傷です。あとからよくなったとか悪くなったとかということじゃなくて、その人は足をやられてびっこ引いて帰ってきて、そのままずっと同じびっこなんです。したがって、当時お医者さんが診察をした書類などはずっと以前のものもあるわけです。けれども公務による負傷であるかどうか確認されないというので、ずるずるになって、もっと以前からそれが公務による負傷であったということさえ確認されれば、申請もちゃんと受理されて、うまく年金を受ける権利というものが当然認められておったであろうものが、認められぬままで二十年も来た。これは不合理じゃないかと思うのですよ。大臣、私の言うこと無理ですか。大臣ならわかると思うのです。
  10. 田中正巳

    田中国務大臣 私も国会議員ですから、この種のケースをいろいろ扱ったことがございまして、いろいろわかるような気がいたします。  そこで、制度はいま援護局長が申したとおりでございまして、その節に症状の固まった方についてはその節から支給されるということだそうでございます。私も国会議員ですから扱ったのですが、問題は事後重症の場合、これは症状がだんだんと悪くなっていくものですから、その時点をつかまえて、その時点からということになっておりますが、阿部さん、どうでしょうか、何か具体的なケースをお持ちのようでございますから、私どものところへそれを御相談くださった方が早いんじゃないかというふうに思います。抽象論で一問一答やっておりますとなかなか解決いたしませんので、プリンシプルは大体おわかりだろうと思いますから、具体的なケースについて別途御相談をいたしたいというふうに思っております。あなたのおっしゃるとおりだとするならば、何かちょっとおかしな気がするわけでございます。
  11. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 ぼくは援護局お話はわかるのです。けれども総理府のほうの次長の御見解はどうもすんなりしないのですよ。症状が固まったときというのですが、症状は、横っ腹をやられたんじゃなくて、ひざの下の方をやられていますから、歴然として同じびっこをずっと続けておるのですよ。よくも悪くもならないのです。しかし問題は、なぜやられなかったかということになると、確認されなかった、確認する方法がそろっていないというのでずっとおくらされて、やっと最近、このケースは私の知っておる範囲でも幾つかあるのですよ。現認者を探すというのでものすごくみんな苦労しているのです。軍隊がちりぢりばらばらのときに手帳なんか書くやつはいないのですから。これはいままで恩給局の方、援護局方等へも二、三の県でいろいろ持ち込んだ例がありますが、申請主義です、したがって、いままで整わずして申請されておらぬとすれば、その前にさかのぼることはあり得ないのです。申請主義というきわめてかたいかたい原則を持っておるのです。こう言うのです。それならばその申請主義というのは法律行為なのか、あるいは行政上の行為なのか、ということを冒頭伺ったのはそこにあるわけです。そこはどうですか。
  12. 大屋敷行雄

    大屋敷説明員 先ほどもちょっと申しましたように、傷病恩給ばかりではなく、すべての年金請求はやはり本人請求を待って裁定庁なりが裁定するわけでございます。そういう意味では申請主義はその本人法律行為だと思います。
  13. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 わかりました。そこで、法律行為だとしても、いまのように法律行為をとる条件、内容がそろってないというので、市町村役場あるいは県の当局にも抑えられてきたわけですね。私は戦場でけがしたんですとただ幾ら言ったってだめです。そして、二十何年かかってやっとわかりましたという場合、申請というのはどの時点からとみなすべきか。本人役場相談に行った段階申請行為をした時期とみなすべきなのか。それはどうでしょうか。
  14. 大屋敷行雄

    大屋敷説明員 全く法律規定から申し上げますと、結局そういう場合に、個人の年金請求一つ法律行為でございますから、そのやり方を恩給の場合は恩給給与規則という政令で書いてあるわけでございます。政令で、傷病恩給の場合はどういう請求書類を出すかということを一々列挙してございます。たとえば、恩給請求書のほかに診断書、あるいは症状経過書、あるいは事実もしくは現認証明書、そういうものを整えまして、まず第一に都道府県に提出しなさい、こういうぐあいになっておりますので、厳密に申し上げますと、その規則で書いてございます書類本人が整えられて都道府県窓口に提出されたそのときに請求行為があった、このように解釈しております。
  15. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 そうすると、そうやって行ったけれども、あなたの場合は該当の条件が整っていません、だめですと言って退けられてきたという場合はどうなるわけですか。
  16. 大屋敷行雄

    大屋敷説明員 それはもう全く規則で書いてあることでございまして、私ども先ほど申し上げましたように、恩給請求書なり診断書、これは傷病恩給に不可欠の書類でございますから、これがない場合には受け付けるわけにはいかないと思います。  ただ、現認証明書なり事実証明書、これは正確に言えば、その当時軍が発行した証明書がある方はそれをつけていただくわけでございますが、それもほとんど不可能に近いことでございますから、結局同僚とか上官、そういう方の現認なり事実を証明した書類をつければよろしいということに私ども取り扱っております。  なお、それを必ずつけなければいけないというのではなしに、先ほど申し上げましたように、後で補正してもいいわけでございますから、厚生省さんともども私の方は都道府県に対して指導してまいりたいと思うわけでございます。
  17. 阿部昭吾

    阿部(昭)分科員 時間がございません。具体的な問題は後で、幾つかそういう不合理だと私自身が感じておる問題がございますので、これは援護局長さんの方、恩給局長さんの方に対して私はお出しをしたいと思います。  しかし、どうも何と言うか、いま次長さんおっしゃるようなぐあいに、市町村役場なり県の社会課なりはそううまくは対応しておりませんね。そのために本人権利が制限されたままになっておるという事例がたくさんあるのです。憲法上、法のもとに平等に受けるべき権利が損われておるものについては、その運営についてはぜひ弾力的にやってもらいたいということを希望して、具体的な問題はまた改めて個別に出すということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  18. 野田卯一

    野田主査 これにて阿部昭吾君の質疑は終了いたしました。  次に、受田新吉君。
  19. 受田新吉

    ○受田分科員 田中厚生大臣、将来のとうとい経験と信念で、ひとつしっかり厚生行政の長官として御健闘を祈ります。  さて、三十分の枠内で大事な問題点を数点指摘して、政府の所信をただし、私の要望をここで宣言さしてもらいたいと思います。  私たちの人生にはいろいろと不幸な立場で、そのとうとい人生に大きなハンディを受けている人がたくさんあるわけであります。その中には、生まれながらにして身体の故障を持っている者、あるいは途中で故障を受けた者、心身のさわやかな生活のできない不幸な人、これらの方々は余りにも痛々しい人生をいま歩んでいるわけです。同じ人間と生まれて、この不幸を補ってあげる、そこに政治の原則があり、われわれ政治家の置かれている使命があると思います。この不幸を埋めてむしろつりができるような温かい愛の政治を私は厚生省は握っている、そのお役所であることを信じております。  そこで、特に第一点として心身障害者対策についてお尋ねをいたします。  昭和五十四年には、こうした不幸な星のもとで苦労しておられる可憐なる子供たちに義務教育が完成することになっております。遅きに失しました。されどこれをわれわれ、遅くともこれから少し過剰なサービスぐらいをして、この子供たちに幸せを与えたい。いま養護学校が漸次完備しつつありまして、五十四年に義務教育が完成されるわけですが、ここで指摘したいことは、義務教育を終えて後に社会へ出たそうした心身障害の青年たちに、どういう施策を講ずるかということです。養護学校で学んでいる間は、心身障害者、精薄者を含むこれらの皆さんは、一応学校の教育の中でやさしい先生たちによって支えられております。しかし、一たび義務教育課程を終え、社会へ出てくると、おうちで苦労をしなければならない。いろいろと施策を講じて重症度の皆さんには特別の施設も設けてあるのですけれども、その数はりょうりょうたるものである。特に心身障害者の中で重い症度の皆さんたちに対する対策は、私はこの際思い切った手を打たなければならないと思うのです。いかがでしょうか。  心身障害者にはいろいろの立場の人がある、目が悪い、足が悪い、耳が聞こえない、いろいろ事情が複雑でありますが、家庭へ帰って後に、お宅で重い症度の心身障害者を抱えた家庭は非常に不幸です。この子が後へ残って不幸を見るよりは、この子を殺して私は死んでいきたいと、親が子供を締め殺して自殺する家庭が相次いでおる。これは国の施策によって救われる問題だと思うのです。重い症度の子供がおる、よろしい、国がめんどう見てあげましょう、あなたはどうぞ余生を健やかにと、その身障の子供を抱えた御両親に安心していただけるように——私ははっきり申し上げますが、私の郷里の近くに、もう成人に達した重症度の障害者を抱えてついに思い余ったお父さんが、その子を締め殺して首をくくって死んだ事件が私のごく近くにあるのです。私はその家庭をよく知っているだけに、児童委員とか民生委員とかに相談していく道も、私もよく気をつけておりました。しかし、私の気をつけていた以上に世間は厳しかった。その子の兄弟たちはそれぞれりっぱに社会生活をしているのですが、やはりそうした子供は敬遠しておるのです。同じ兄弟でも敬遠する、こういうときに、どうでしょう。政府として重症度の成人に達した子供は、そうした特別の身体障害者の療護施設その他いろいろな施設が政府にありますから、それを充実して、そういう対象になる人々を全部収容する能力を持つ施設を設ける、あるいはその中から職業訓練等で、これは労働省の仕事ですが、何かその人に仕事の道が開かれるように最善の努力をして不幸な人を全員救う、成人に達した後の身障者に対する全面的な援護対策というものを、厚生大臣、御採択に相なって、強硬にこれを実施されるべきではないかと思います。御答弁を仰ぎたいです。
  20. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま御指摘がございました、成人に達した重度の肢体不自由者、あるいは重度の精神薄弱者の方々に対する福祉の施策でございますが、ただいまお示しいただきましたように、重度のきわめて重い人々に対しては、療護施設がございます。ただ、これは全国でまだ十一カ所、収容人員八百名程度でございまして、これまた不十分でございます。政府といたしましては、社会福祉施設整備計画の中で、特別養護老人ホーム、重度の療護施設の充実強化を最大の目標の一つにし、また都道府県等にもお願いをしているわけでございます。  なお、それ以外の施策といたしまして、機能回復訓練なりあるいは職業訓練等を込めた重度の授産施設、更生施設、こういったものをやはり充実してまいらなければならないというように考えておる次第でございます。
  21. 受田新吉

    ○受田分科員 充実しなければならないことはわかっているのです。しかし、それがいまのような人員のうちで、障害度の高い人員を吸収するのには余りにも少数だ。いまのような百単位とか干単位とかいう施設がずらっとあるわけです。全国百三十万の中で三十五万というくらいの重度の皆さんの数字をこなすのには余りにも施設が少ない。いまの授産施設などでももっと大きくして、この世に生まれてよかった、不幸な星であったが、私は精いっぱい国の応援を得て幸せであったと、みんなに喜んでいただけるような思い切った施設が要ると思うのです。それを私はいま指摘しているわけです。
  22. 翁久次郎

    ○翁政府委員 まことに御指摘のとおりでございまして、ただいま百三十一万のいわゆる不自由者の中で、重度のきわめて重い方々は大体七万程度と想定されております。その中で在宅の方を除いて施設収容というものを考えた場合に、先ほど申し上げましたように、いわゆる社会福祉施設整備の長期計画の中の最重点事項として、この施設整備を行ってまいりたいというように考えているわけでございます。
  23. 受田新吉

    ○受田分科員 これは精薄の皆さんも同様なのでございますが、精薄の重度の皆さんでも八万を超えている数字がある。これは重度、中度というのを含めれば三十万とかそれ以上になってくるわけですが、私たちはこの精薄の皆さんも一緒に考える。更生施設なども含めて当面この八万の重度の皆さんを救う精薄施設についても、これはいま政府がいろいろと施策を講じておられる、ちょうど身体障害者とよく似通ったような形の対策が講ぜられているのですが、この面につきましても、そうした更生施設、授産施設等について、八万人を超える重度と称せられる皆さんに対する対策をどういうふうにお講じになるのか。
  24. 上村一

    ○上村政府委員 重度の精薄の中で一番多いのが、身体障害者とダブりました重症心身障害者でございます。これにつきましては、五十年度中に、入所を要する人たちが全部入れるだけのベッドは整備する予定でございます。  それから、大人の精神薄弱の重いものでございますが、御案内のように、子供の精神薄弱児対策に比べまして、十数年おくれて大人の精薄対策がスタートした関係もございまして、スタートした当初は八カ所くらいしか施設がなかったわけでありますけれども、逐次重点的に国庫補助を導入いたしましたので、四十四年から四十八年までの間に定員を約一万人以上ふやしてまいったわけでございますが、今後も超重点的に重度の精薄者の更生施設なり授産施設の整備に進んでまいりたいというふうに考えております。
  25. 受田新吉

    ○受田分科員 私は、これは府県に助成して施策を講じさせるような、地方任せということも一つ方法、同時に、国が直接国立のそうした施設を設ける、高崎にある国立コロニーのようなものを全国に幾つもつくって、国が直接めんどう見ましょう、そういう施設を大いにふやす必要があると思うのです。秩父学園などの人数を見ましても百二十人、高崎の施設を見ても五百五十人、ほんに一握りしか国直接の手でできていない。国立をどんどん各地に適切につくって、国家が直接あなた方のお手伝いをしましょう。地方に任せておくと、熱心な県と熱心でない県が出る、そういうところに非常に不幸な府県ができてくるわけです。社会福祉法人としてスタートするか、あるいは地方立としてスタートするしかない。助成ができないということを考えると、やはりそれはそれとして、今度は国立の施設を大いに増設するという方針をお立てになってはどうですか。
  26. 上村一

    ○上村政府委員 先ほど申し上げましたように、ダブルハンディキャップのある重症心身障害者につきましては、国立療養所に付置する施設に重点を置いて、数でも六割くらいを占めているわけでございます。  それから、コロニーのお話が出ましたけれども、国立のコロニーを高崎でスタートさせまして以来、各県でこれに類する施設の整備にいま入っておりまして、直ちに国立のコロニーをつくることについては、ちょっと踏み切るわけにはまいりませんけれども、国立コロニーというのが刺激になって、各県に大きなコロニーが整備されてまいっております。
  27. 受田新吉

    ○受田分科員 非常に逃避的でありまして、刺激になっているなどと言うが、刺激があるならどんどん国立をつくればいいんです。国立の施設ができれば地方が刺激を受けるという例示がいまあったわけです。この例示だけでも、国立を幾つも増設する、直ちにはやらない——大臣、これはいま刺激を受けて地方が大いにふるい立っておるということですが、国立はいま二つしかないのです。これをひとつ増設するという方向をお立てになって、地方よ国立に学べ、身障者は心身両方とも国家が力になろう、あなたの不幸は国家が片棒を担ぎましょう、一緒に苦しんであげましょうという、お互い国民がみんなで苦しみ合ってあげて、苦しみをともにし、その人の幸せを、心身障害ではあったが私は幸福であったと、せめて人生を去るときに喜んでいただけるような施設が要ると思うのです。大臣、せっかくの機会です。国立が二つしかない。これを増設して——いま局長ははっきり、国立の刺激を受けて地方が奮発しているのだとおっしゃる。完全に空席がないほど満杯になっておるというような状態でなくして、むしろ空席ができるくらいのゆとりを持った施設を設けるべきだと思うのです。
  28. 田中正巳

    田中国務大臣 御趣旨は私は全く御同感でございます。私も実は長い間この種の問題についていろいろと心を痛め、及ばずながら努力をしてまいりました。そこで、私が従来いろいろと努力してきたのは、一番重いいわゆるダブル重症心身障害児について非常に努力をしてまいりました。これはどうやらまあまあというところまできましたが、重度の精薄者あるいは障害者については、まだ十分とは言えないわけでございまして、今後できる限りそういったようなことについての対策を拡充強化をいたしまして、本人のためにも、また親御さんの御心情を察するときに、私はまことにどうも察するに余りあるものというふうに思うものですから、そういう方向にいきたいと思っております。  なお、国立の問題でございますが、私、率直に申し上げた方がいいんじゃないかと思いますが、一つは、地方における独特なニードをくみ上げるということで、地方それぞれがそういったようなことに対応してやるということが必要だというテーゼもあろうと思います。いま一つ困るのは、受田先生、率直に申し上げると定員の問題なんでございます。これについて、それは総定員法を何とかすればいいじゃないか、こういうことをおっしゃればそれまででございますが、そういったような現実的な問題もございまして、なかなか国立ということについて余り大きくやれないという実情もあることを正直に申し上げた方がよろしいのではないかと思います。
  29. 受田新吉

    ○受田分科員 総定員法の関係がある。しかし、この問題は、国家国民の中に不幸で泣いておる人がおる、それを守るために人間がふえるということについては、ほかの官庁などのバランスもありますけれども、これは私は党派を超えた結論が出ると思います。厚生省がリーダーシップを発揮されて、ここにこれだけのものをやりたい、たとえば学校の先生、大学の先生は毎年ふえていく。国立学校の職員定数はどんどんふえておる。それと同じように、厚生省関係の職員はどんどんふえる。教育と福祉を大事にするという意味で、どの党だってこれに頭をひねくるようなとぼけた党はおらぬと思うのです。みんな賛成しますよ。御遠慮なく、勇敢にひとつ立案をしていただきたいです。
  30. 田中正巳

    田中国務大臣 私、余り率直に総定員法の話を申し上げましたが、そればかりではないと私も思っているわけでありまして、この種のものについては、やはり地方なりあるいは福祉法人なりでやる場合のメリットというのも実は考えられるわけでありまして、別に、それだからといって国がどうのこうのと言うわけではございませんで、そういう意味で私は、国は指導型のものを分担するというのがいいのではないかと思います。地方がどうしてもやらないという場合には国の方で考えなければなりませんし、地方がそういうことをやれないような助成措置であるとかなんとかいうことになったら、それはそちらの助成措置でやればいいことでございまして、すべてを国においてやるということについては、この種の施設では必ずしも国が全部やればよろしいというものでもございませんので、国は指導型あるいは模範的なもの、こういったようなものをつくって、地方と国とが両々相まってこういう施設を今後拡充強化していくという方向に持っていきたいというふうに思います。
  31. 受田新吉

    ○受田分科員 これはあわせて今度は精神障害者の問題があるのです、この精神障害者の数が、これまた百三十万を超えるという数に達しておるのです。これも不幸です。健全な体を持ちながら、いろいろな関係で精神障害を受けた皆さん、それがただ気違いとして処理される問題でなくして、その原因を十分究明して、その人に新しい希望を与えて、社会復帰できるところまで引き上げてあげる、こういう配慮が要るわけですが、世に精神病院に入院している患者は、あれは気違いであるからというので適当にごまかされるという不安などがあって、社会的にも非常に不安が漂うておる。凶暴性のある患者が強制収容される、こういうようなときに、そうした措置入院というような問題等も含めて、何かそういうことができるだけ軽減されるような手はないか。いま国立病院、療養所でそうした患者の収容の道が幾つも開かれておりますけれども、そこへ相談を持ちかけていくという相談室のようなものが国立病院にない。国立療養所にない。そして、そうした不幸な精神の障害から脱却して社会復帰をしておるような、社会に奉仕したい、健全な体を持っている、知性も高い、知能も高い、健康な体でもある、ただ精神の障害を受けているという人のために、せっかく全国に二百幾つかあるあの国立病院に、せめて社会復帰のための施設を設ける、相談室を設ける。そういうものの全然設けられていない現状の中に、ここへ勇敢に施策を転進せしめる必要がないか。いかがでしょう。
  32. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生の御提案の国立病院、療養所に精神衛生対策の強化ということでございますが、わが国の精神医療は、入院医療の段階が低下傾向に入りまして、外来医療が増加傾向に入っておりまして、これは一つの進展であろうと思います。精神医療は早期にきわめて短期間の外来医療等で治癒し得る段階に至っておりますので、私もかねて国立病院課長時代から、国立病院は少なくても、ベッドのない施設であっても精神科の外来だけは設けなさい、しかも定員で、医師が少ないので、定員で確保できない場合は大学等から非常勤で来てもらって、日にちを決めた外来でもいいからまず手をつけなさいという指導をしてまいりました。それ以来若干国立病院にも増加してまいっております。  国立療養所の方は、もともと結核療養所としてございましたけれども、結核の減少に伴いまして、当時千五百の国立の精神ベッドを、ただいま四千五百床くらいに結核から転換して国立の療養所を精神療養所に切りかえております。これは社会復帰のための施策あるいは長期的になった患者の社会復帰のための作業療法その他の充実ということを方針にいたしておるわけでございます。
  33. 受田新吉

    ○受田分科員 外来の患者が来て、そこで指導を受けて、なるべく早く社会に復帰できるようにやるという、このことも非常に大事なことである。と同時に、病院と療養所で、結核ということであっても精神も含めてもいいわけですよ。それで、そこへひとつ精神患者の社会復帰の施設を設けていく。これはいま施設がないでしょう。どこの国立病院にもないのです。その施設に踏み切るということは、私非常に大事なことだと思うのです。それだけでも精神患者たちに希望がわくわけだし、父兄が安心するわけです。いかがでしょう。
  34. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 わが国の精神科の医師の専門家が、実は一時は希望者がふえましたが、非常に足踏みいたしておりまして、いろいろな調査の結果も、案外わが国の精神科の専門医は少ない、これが一つのネックでございます。先生のおっしゃる国立療養所は、これは計画的につくったものじゃございません。昔、軍の療養所だったものを引き継いでやっておるということでございますが、やはり地域の医療の上で今後は精神医療というものが重要であるということは御指摘のとおりでございますので、そういう職員の確保の見通し等も考えまして、御趣旨の方向でわれわれは地域的に結核にかわる精神への重要性に対応する、こういうことには努力していきたい、こういうふうに思っております。
  35. 受田新吉

    ○受田分科員 精神医療にひとつ大きな力を入れるように、そうした社会復帰の施設等もあわせて考えていきたいということですか。
  36. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 そのとおりでございます。
  37. 受田新吉

    ○受田分科員 そういう方向でひとつ善処していただきたい。  私、もう一つこの機会に医務局長さんにお尋ねしたいのですが、医者の大学を出て医学士として卒業した。しかし、医師の国家試験に合格しない。ことし合格しない者が五百名を超えているという数字が出ております。こういう人たちは、社会的に大変もったいない、何回でも受けられると言いながら、ついにこのような試験を受けることで生涯を費やしてもしようがないわけです。医師不足の折から、国家試験に落ちた五百名を超えるこの人たちを救済するためにも、この人たちに、医師の国家試験には合格しないが、これに準じたような何かの制度を考えていく道はないか、そういうことで実態を調べて、国家試験を通らなくても道が開ける方法を考える、こういう配慮が必要だ。昭和六十年には人口十万につき百五十人の医師を考えたいという段階で、こういう人物経済から言って国家試験に落ちた医学士をどう救済するかの実態調査、追跡調査というものに踏み切る御用意はありませんか。
  38. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 実はこの問題は、医学士であるということで先生御存じのように臨床はできませんが、基礎医学には従事することは可能であります。しかし、先生のおっしゃる趣旨は、全く医師としての資格の取れないケースが今後出てくるであろう。医師国家試験は厳正適正にやるということは今後ますます必要でございますので、確かに先生がおっしゃるような数字が、最近の秋の国家試験でも出てまいっております。現在、医学士である場合、臨床検査技師の国家試験を受験する資格が法律的に与えられております。それから衛生検査技師は免許資格が与えられております。歯科の場合は、歯科技工士の受験資格等がございます。このように全然ないわけではございませんが、先生のおっしゃる趣旨は、もう少し積極的な道を何か開拓しろ、こういう御趣旨であろうと思うのでございますが、大体よその国は、国家試験の受験回数というものをある程度制限いたしておりますが、わが国においては、これは本人の努力によって、受験回数の制限というものはいたしておりませんけれども、これは審議会等では話題になって、検討すべき事項と私は思っておるわけでございます。そのような問題の経緯ともにらみ合わせまして、これらの問題に対処してみたい、こういうふうに考えております。
  39. 受田新吉

    ○受田分科員 これは、その国家試験に落ちた医者の学校を出た者に対する対策について、いままで余り問題にされていないようであった。国会でも余り論議されていない。しかし私は、この問題は非常に大事なことで、医師の不足の状態においてこれをどう生かすか、いまその一面の御見解も承ったのですが、試験に合格せざる皆さんに対する基本的な調査、基礎医学は一応できておるがとおっしゃるけれども、それらをあわせてひとつ十分検討を願いたい。大臣、よろしゅうございますね。  それではもう一つ最後に。大臣も御存じの医業類似行為に対して、中央審議会が昨年末に答申を出して、これは十年間かかったが、われわれの分野ではない 考えてみると、専門家によってこれを研究すべきであるというので、今後研究班を設けて、厚生省はその答申に基づいて調査研究に当たることになっておる。「可及的速かに」という答申の趣旨もあるのですが、戦後大変不幸な状態で、例の占領軍の命令でその業務を停止されたという不幸な人々です。これは社会的不公正と言ってもいいのです。あんまその他は認められたが、医業類似行為者はストップさせられた。社会的不公正の原因は占領政策にあったとも言えるわけです。そういう中で十分検討して、玉石を分けて、そうしてこれは十分無害有効なものであるということであるならば、これを継続させて、子孫にずっと続けさせるという必要があるというので、国会の意思もそういうところで四十九年の末までに要望したのですが、答申がはなはだあいまいなことになってしまった。これらの人々に対する対策は、この研究班によってという問題がありますが、可及的速やかに答えを出して、その社会的不公正の犠牲になった人々をどう救済するかをひとつお答えを願いたいのです。
  40. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生指摘のように、研究班を設置してスタートをいたすわけでございますが、これについては、厚生省の責任におきまして、技術的にもまた識見ともにすぐれた関係者を任命いたしておりまして、厳正な検討を加えていただくということを期待しておるわけでございます。  結論につきましては、われわれとしても、先生がおっしゃるように可及的速やかにという気持ちは持っておりますが、実際的な問題といたしましては、研究班の先生方については、一年でやれということは非常に無理だということで検討していただいております。私は、なるべく早く結論を出していただくように努力をいたしますけれども、その結果にまちまして、もちろんいままでのあんま等の場合の盲人等の配慮というような問題も含めまして、政府として責任ある結論を出したい、こういうふうに考えております。
  41. 受田新吉

    ○受田分科員 大臣、この問題は非常に長期にわたって懸案であった、それの関係業者は老齢に達しておる。その老齢を克服してその速やかな結論を待っておるわけです。大臣として、歴代——神田厚生大臣、再度にわたる再任並びに齋藤前厚生大臣は、これに非常に熱意を入れておられたわけですが、なお答えが出ていない。田中大臣もまたこの問題としっかり取り組んでいただきたいと思います。御答弁をいただければ終わりにします。
  42. 田中正巳

    田中国務大臣 この問題、私も閣僚になる前は受田先生と一緒にやってきましたものですから、非常に関心を持っております。答申が残念ながらあのようなものになって何だという気がいたしたわけでございますが、その後、実は私としても、この研究班の人選等についても非常に意をとめまして、その決裁のときなどにも、いろいろといま医務局長が申したような点について念を押しております。私も非常に関心をとめ、何とかひとつできるだけ早い機会に結論を得たいというふうに非常に努力もし、また注目もいたしております。
  43. 受田新吉

    ○受田分科員 終わります。
  44. 野田卯一

    野田主査 これにて受田新吉君の質疑は終了いたしました。  次に、湯山勇君。
  45. 湯山勇

    ○湯山分科員 私は、一時間厚生省関係質問をさせていただくことになっております。いま受田分科員から御質問のありました点にも質問がございますから、ちょうど関連したような形になりますので、その問題からまずお尋ねいたしたいと思います。  あんま等中央審議会の答申が十二月の十九日でございますか出された。いまそれに対して大臣は、はなはだ不満な答申であったというような御答弁でございましたが、大臣としては、あの答申にどういうふうな御期待を持っておられて、どういう点がいまおっしゃったようにはなはだどうも物足りないというようにお感じなのか、まずそれから伺いたいと思います。
  46. 田中正巳

    田中国務大臣 もともと医業類似行為につきましては、やはり物が物だけに厳密に有効無害であるというふうに判定をしたものでなければいけないということでございます。長い期間をかけてそういったようなことについての振り分けができるものというふうに期待をいたしておったわけでございますが、残念ながら何らの結論を見ないでこちらへボールを投げ返してきたというような答申であったように、私、記憶をいたしております。これではもうちょっと早い機会に、それならそれらしくボールを投げ返していただければまた対処のしようもあったのにという感じがいたしました。そういうわけで、今後は医学的な見地から科学的根拠に基づいて取捨選択をするというようなことについて鋭意詰めていかなければならぬというふうに思っております。いつまでもぶらぶらさせておくことは私はよくないと思っております。
  47. 湯山勇

    ○湯山分科員 いまの御答弁はそれでよくわかりましたが、そういう答申がずいぶん長い間かかったにもかかわらず、いまのような状態であった。この原因はどこにあると大臣はお考えでございましょうか。
  48. 田中正巳

    田中国務大臣 医業類似行為と一言に申しましても、いろいろな態様のものが実はあるようでございます。そこで、これらのものについていろいろな角度から検討をいたさなければならないと思いますが、種別が非常に多い、そして、医学的な、科学的な検討というものが非常にむずかしい、そういったようなことがございます。したがって、議論が甲論乙駁をして暗礁に乗り上げたということだろうと私は思っております。
  49. 湯山勇

    ○湯山分科員 そうすると、そういう条件は、新しい研究班ができても別に条件が変わったということではないのではないかというように私は感じますが、そうするとまた同じような轍を踏むのじゃないだろうかということも考えられないことはない。この点はどのようにお考えでございますか。
  50. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点は、われわれといたしましては、確かに先生おっしゃるように、背景が非常に複雑である、大臣からもお答えのように、内容も多岐にわたる、こういうようなことでございますけれども、いままで一時研究班等による御検討の時期もございましたが、今回は、政府のわれわれの責任におきまして、この研究の結果を踏まえて、建議形式ではなく、諮問していくという形をとりたいと思います。もちろん研究結果の内容を予測することはできませんから、先生の御質問にはそのままお答えするわけには現段階ではいかぬわけでございますけれども、われわれの判断といたしましては、今回の措置というものは、従来にない一つの踏み込み方でございますので、その結果を待って、われわれの責任で諮問し、成案を得たいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 湯山勇

    ○湯山分科員 それでは、厚生省としては、諮問する場合は大体どういう方向、方針をもって諮問される御計画でしょうか。
  52. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先生のお尋ねに期待するお答えは、結果的にはやはりいろいろ結論は出るだろうと思いますけれども、いずれにしても、現段階においては、この研究の結果を踏まえてというお答え以外にはございませんので、予測したりあるいは行政の方針をいまから固めておいたりという形のものをとるべき性格のものではないというふうに思っておるわけでございますが、いろいろ従来のいきさつにかんがみまして、あんま、マッサージ等の関係法律等もございますので、盲人等への配慮ということは、検討の一つの大事な配慮すべき項目としてわれわれは意識してこの処理に当たりたいというふうに思っております。
  53. 湯山勇

    ○湯山分科員 実は私も、昭和三十五年か六年でしたか、古井厚生大臣のときにこの問題を取り上げまして、社労委員会でお尋ねしたことがあります。そのときの経緯から申しますと、医業類似行為というものは速やかに整理をしなければならない。それに対応して、視力障害者に対する措置も、いまの御答弁と同じようにやらなければならない。特に従来のあんま等だけではなくて、新しい視力障害者の職場あるいは職域というものを積極的に開拓する。たとえば電話の交換だとか、そのほかいろいろ考えているということでございました。ですからこれは、問題は二つありまして、いまおっしゃった療術の問題をどうしていくかという問題が一つあると思います。同時に、それによって影響を受ける視力障害者への配慮、この二つの面がありまして、一つは、先ほど御答弁になりました、今度の研究班は純粋に科学的にやっていくのだ。純粋に科学的にやっていくということの背後には、視力障害者に対する配慮というような、そういう社会的な配慮というものがなされるのかどうかということについては、若干疑問もないではないので、その点はもう少し具体的に御答弁いただければ願いたいと思います。
  54. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 専門的な調査でございますので、そういう意味で厳正で科学的な調査をお願いしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、政府がこれを受けて、一つの判断を加えて諮問の形をとりますので、この点については行政上の配慮が加わる。調査研究はあくまで科学的、技術的な面を踏まえた調査をしていただく。これを受けた行政が、もろもろの判断をした上で内容を固めていくということでございます。
  55. 湯山勇

    ○湯山分科員 その調査の中には、晴眼者のいわゆる三療関係への進出の状態というようなこと、あるいはサウナなどがたくさんできておりますが、これは無免許だと思いますけれども、そういうのが視力障害者の職場をやはり圧迫している。それだけではなくて、ずいぶん喜ばれている老人医療の無料化、これなどはまことにいい政治ですけれども、日の当たるところがあれば必ず陰ができるので、老人医療が無料になったためにすぐお医者さんにかかるというようなことから、従来あんまにかかっていた人がかからなくなるというようなことで、これさえも実は視力障害者にとってはマイナスになってあらわれている、こういうことも科学的に調査をして、それらを配慮した諮問をなさる、あるいは案をつくるというような意味に解していいんですか。そうじゃなくて、この研究班というのは、一体、類似行為でなされているたとえばカイロプラクティックというようなものが独立して成り立つものなのかどうか、それはあんまの範疇には入らないものかとか、あるいは電気光線療法というものが、一体これは専門の医師でなければやれないものか、あるいはもっとレベルの低い療術として成り立つものかとか、そういった面だけなのか。この点の科学的というのはどういう範囲を指すのか。どうお考えでしょうか。
  56. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 例示を挙げられた御質問でございますので、現段階における私の判断をそのままお答えに一々挙げるわけにはまいらないと思いますが、先ほど先生が科学的というお言葉を使い、社会的背景というお言葉を使われておりますけれども、要は、焦点をしぼっていけば、国民医療のためにこの問題をどう判断するかということになるのでございます。それで、その場合、行政が判断をするのに、先ほど来サウナとかいろいろ例を引かれたいわゆる盲人のあんまマッサージの職域擁護的な立場からの御意見については、先ほどお答えいたしましたように、行政として少なくとも条文になってその配慮が求められておりますので、われわれとしては、行政上これをかなり強い判断の材料に使って判断するということは当然だと思っておるわけでございます。
  57. 湯山勇

    ○湯山分科員 現在、視力障害者の職場というものがだんだん圧迫されてきておることについては、それをお認めになっておられるでしょうか。
  58. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 実は、十九条でしたか、その擁護のため「当分の間、」ということになっておりますこれの解釈といたしましては、社会的に盲人の方のいろいろの職場が開拓される、あるいは社会保障の面から充実されるというようなときを考えて「当分の間、」としたんだという解釈の通知があるわけでございます。そういう点で十分社会の変動というものが、たとえば先ほど例に引かれた老人医療の無料化によって病院、診療所に行くためにかえってあんまマッサージの希望者が減った、これはちょうど薬屋さんが老人医療の無料化によって保健薬等を購入する方が減ってきたという声を聞くのと同様、一つの社会の変動に伴ういろいろのしわ寄せといいますか、そういうような変動というものはあり得ると思うのでございます。この点につきましては、先ほどお答えいたしましたように、社会における盲人の方々の全体の立場というものを十分配慮した上で考えていくというふうにいたしたいと思っておるわけでございます。
  59. 湯山勇

    ○湯山分科員 この結論を出すに当たって、そういう非常に密接な関係にある視力障害者の意見をお聞きになる御用意がございますか。
  60. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この点は、視力障害者の方の御意見という限定した立場を聞くというわけじゃなくて、中央の審議会にこれをお諮りすることになっておりますので、この間を通じまして当然そのような関係者の代表等もおられますので、これらの御意見が十分反映できるものと思っております。
  61. 湯山勇

    ○湯山分科員 アウトラインはよくわかりました。私が懸念いたしておりますことは、この問題については、かなり政治的な動きもあります。これは否定できないと思います。したがって、先ほどおっしゃったように、厳正にしかも客観的に、しかもいまの視力障害者等の生活を圧迫しない、むしろその人たちも一層希望の持てるような方向でぜひ進めていただきたいと思いますが、この点については、大臣からひとつ、基本的な問題ですから、御答弁をいただきたいと思います。
  62. 田中正巳

    田中国務大臣 基本的には湯山先生のおっしゃるとおりだろうと思います。したがいまして、現在は医学的、科学的見地でこれは振り分けをいたしておりますが、これが制度化をする場合には、当然いま言う視力障害者等の生活問題等々も踏まえてこれを制度化していくというようなことを、各段階でとっていかなければならないというふうに思っております。
  63. 湯山勇

    ○湯山分科員 もう一つこの問題でお尋ねいたしますが、盲人の職域の拡大ということはなかなかむずかしいのじゃないかというように感じます。これで何か新しくお考えになっている分野がおありでしょうかどうでしょうか、その点。それから的確に将来こういうことという御計画があればそれもあわせて御答弁願いたいと思います。——じゃ、あとで電話ででも聞いていただいて、どなたかからでも御答弁願います。  それでは次の問題ですが、次は自治省もお見えいただいておりますので、母子相談員の問題をまずお尋ねいたしたいと思います。母子相談員の身分、給与その他が非常にまちまちになっておりまして、実は驚いたわけです。仕事の内容は御存じですけれども、母子家庭のお世話をするということで、貸付金の実態調査あるいはそれの相談手続、それから償還の指導というようなことで、これは若い人ではできないというようなことから、かなり年配の人がたくさんこの仕事に当たっておりますし、また、これは世間への奉仕というような意味もあって、喜んでやっていただいておるというようなことでしたが、しかしこれも二十年もたちまして、今日インフレ・物価高の中で、ただ気持ちだけは変わらないけれども生活に困っている人もたくさんあります。そういうことを受けて、その身分、取り扱い、まちまちですから、自治省としては、この母子相談員の身分を一体どう位置づけしておるか。厚生省の方ではこれをどう位置づけしておるか。両方から承りたいと思います。
  64. 上村一

    ○上村政府委員 母子相談員の身分をどう考えるかということでございますが、御案内のように、現在非常勤の者と、四十年の改正で常勤の者とに分かれたわけでございます。そうして非常勤の者につきましては、いまお話しになりましたように、主として貸し付け的な仕事のお手伝いをする、それから常勤の母子相談員につきましては、家庭紛争なり子供の養育なりあるいは結婚等、生活便宜上のいろいろな御相談をするというふうに、常勤はやや専門的、非常勤の方はアマチュア的と申しますか、そういうふうに分かれたわけでございます。  そして、その処遇でございますが、全国で約千名ばかりの母子相談員がおりまして、そのうち約四分の一くらいが常勤でございます。これらの経費につきましては地方交付税に算定されておる。御案内のように、標準地方公共団体では常勤の母子相談員が四名、非常勤の母子相談員が十四名、計十八名が計算されておりまして、常勤の相談員については地方公務員並み、また非常勤の母子相談員につきましては、月額四万八千五百円ということになっておるわけでございます。母子家庭は、最近いろいろ複雑な問題を持っておりますので、母子相談員の仕事がいろいろあるわけでございます。私どもとしては、今後ともこういった母子相談員の方々の処遇の改善に努めてまいりたい、こう思っております。
  65. 宮尾盤

    ○宮尾説明員 先生御承知のように、母子福祉法というのがございまして、そこでは母子相談員は原則として非常勤ということになっておりまして、特に相当な知識経験を有する者で政令に定める職員についてはこれを常勤とする、こういうことが規定をされておるわけでございます。したがいまして、自治省といたしまして、この問題は厚生行政に関する問題でございますので、私どもとして考えを申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。
  66. 湯山勇

    ○湯山分科員 この点、厚生省と自治省の間に若干考え方の違いがあるのじゃないかということを一つ指摘したいのです。と申しますのは、改正が四十年でしたか、いまのように常勤ということが認められたということですが、私の手元に四十九年の資料があります。これによると、常勤を置いてない府県が相当多いんです。そうすると、いま局長が御答弁なさった、大体たてまえとして常勤四名、非常勤十四名ですか、こういう枠は全然入れられていない。  それから、いま自治省の御答弁は、たてまえは非常勤だということでした。そうすると、そちらの方が強く働いて、厚生省の方のたてまえというのは、部分的には入れられておりますけれども、無視されているという実情じゃないかというように判断せざるを得ないのですが、この点いかがでしょうか。
  67. 上村一

    ○上村政府委員 いま御指摘になりましたように、五十六の都道府県、指定都市の中で十九県に常勤がいるわけでございます。それで母子相談員を常勤にするか非常勤にするかということについては、交付税の算定の基礎にある問題と、具体的に自治体でどういうふうな張りつけをされるかという問題とは必ずしもぴったり一致しない。常勤の職員につきましては、社会福祉主事とか児童福祉司の資格のあるというふうな条件を課しておりますので、そういう専門的な訓練を経た職員が得られないところでは、どうしても常勤の職員は置きがたい事情があるのだろうというふうに考えているわけでございます。
  68. 湯山勇

    ○湯山分科員 大変残念ですけれども、いまの御答弁はいただけない。四十年に改正になってもう十年でしょう。十年たって一人も常勤がいないところが、いまの政令都市、県合わせて五十六、置いてあるところが十九ですから、三分の一しか行われていない。これでは正しい厚生行政が進んでいるということにはならないと思うのですが、大臣、率直にお聞きになっての御感想を述べていただきたいと思います。
  69. 上村一

    ○上村政府委員 常勤を必ず置けとまではなかなか私どもも言いがたい。と申しますのは、こういった社会福祉関係の専門職種というのが、福祉事務所に社会福祉主事があり、児童相談所に児童福祉司等がおるわけでございまして、したがってそこは、私ども気持ちとしては、そういった専門の職員がなるべく多くのところにあればいいというふうに思いますけれども、必ず置かなければならないとまでは、ことに交付税によって賄われる人件費でございますので、言いづらい点があるというふうにもう一度御説明申し上げます。
  70. 湯山勇

    ○湯山分科員 自治省の方は、財政計画の積算の場合、常勤何名、非常勤何名というふうに計算して措置しておりますか。そういうことは全然考えないでやっておりますか。
  71. 宮尾盤

    ○宮尾説明員 母子相談員の交付税上の措置の関係でございますけれども、交付税の積算の基礎といたしましては、相談員の全国的な常勤、非常勤の数というような実態を踏まえた上で措置をいたしておる、こういう姿になっております。
  72. 湯山勇

    ○湯山分科員 数はどうなっておるかというのは、お手元に資料ございませんか。
  73. 上村一

    ○上村政府委員 標準地方公共団体で、先ほど申し上げましたように、常勤の母子相談員が四名、非常勤の母子相談員が十四名、計十八名でございます。先ほど申し上げましたように、現在おります母子相談員が約千名で、その二四%が常勤でございますから、交付税の算定基礎にある常勤母子相談員と非常勤母子相談員の割合というのは、実態を反映しているものだというふうに考えます。
  74. 湯山勇

    ○湯山分科員 いまのように二四%という数も少ないと思うのですが、十年たってまだこういう状態だということに一つ問題がありますのと、今度は非常勤の人です。勤務の実態は、本当に非常勤のような勤務をしておりますか。これはどう把握しておられますか。
  75. 上村一

    ○上村政府委員 私ども把握しております限りでは、勤務日数、週五日ぐらいである。これに類似した相談員の制度がほかにございますが、それに比べますと勤務時間は長いようでございます。
  76. 湯山勇

    ○湯山分科員 週五日としても、週休二日制というのはもうやれということなんで、国会も今度の国会が終われば週休二日に何かなるようです。ですから、五日間勤務しているというのは、それはもう常勤とみなしていい。それから、五日じゃなくて週六日勤務というのも相当あります。それから、一週間の拘束三十三・五時間あるいは三十三時間というようなのがあります。まさにもうこれは勤務形態はほとんど常勤であるというのは、私の資料は松山ですけれども、二人で三千世帯を担当している。したがって、とにかく六日間、朝から晩まで、もうひっきりなしだということです。勤務の態様というものは、当初のように、週のうち三日でいいとか、あるいは四日間、あるいは一日置きとかそんなんじゃなくて、ほとんど五日ないし六日やっている。これがこの非常勤の実態ではないでしょうか。むしろそういう人の方が多いというのが実態じゃないでしょうか。
  77. 上村一

    ○上村政府委員 いまお話しになりましたように、愛媛県の母子相談員が非常勤という形で週六日という事実も承知しておるわけでございますが、と申しますか、常勤と非常勤、法律上も資格を分けておるというふうなこともございまして、勤務の実態が常勤化しておるからといって、これを直ちに常勤の職員にするというのは、なかなかむずかしい点がいろいろあると思います。
  78. 湯山勇

    ○湯山分科員 勤務の状態は非常勤であっても常勤のようになっている、そういうのがあるけれども、それを直ちに常勤にするということは困難だ、こういう御答弁ですが、これは勤務の実態がそうであって、それから先ほどの御答弁のように、五十六のうちで十九しか常勤が置かれていないということであれば、先ほどの御説明で、標準で言えば四名は常勤が置ける。そうであれば枠もなくはない。実態に合わせて自治省は財政計画をやる、こういうことですから、実態が常勤である者を常勤に移すということは不可能ではないんでしょう。
  79. 上村一

    ○上村政府委員 これはそれぞれの自治体の問題になるわけでございますが、御案内のように、現在の非常勤の人々というのは年齢も相当高齢化しておるという事情もございまして、自治体にとってもなかなかむずかしいのではないかというふうに、これは推察いたしております。
  80. 湯山勇

    ○湯山分科員 むずかしいというよりも、別な方面からの指導は、やらないようになされている。それから、高齢者もありますけれども、高齢者ばかりでなく若い人もあります。二十一年というのもあれば、まだ三年、五年というのもありまして、それは一概に高齢というようなことで片づけるわけにはいくまいと思いますので、ここで二つ問題ができてきたわけです。  一つは、常勤が置けるところで置いていない。勤務の実態が常勤であっても、非常勤のままで置かれている。そういうのがある。  それから第三番目に給与です。非常勤の場合、給与単価は幾らになっておりますか。
  81. 上村一

    ○上村政府委員 交付税の算定の基礎では、昭和五十年度月額四万八千五百円というふうに聞いております。
  82. 湯山勇

    ○湯山分科員 四万八千五百円で、現在、四十九年は。
  83. 上村一

    ○上村政府委員 三万六千円でございます。
  84. 湯山勇

    ○湯山分科員 非常勤の手当、交付税の算定基礎においては三万六千円。三万六千円を含めて三万六千円以下というのがどのくらいありますか、率にして。率でも何でもいいです、比較できる数。
  85. 上村一

    ○上村政府委員 私ども、個々の県ごとの母子相談員の給与が非常勤の場合に現在幾らになっておるか、ことに四万八千五百円以下のものがどのくらいあるかという点につきましては把握いたしておりません。ただ、私ども、交付税の算定の基礎には四万八千五百円入っているんだから、少なくともこれは確保してもらいたいというふうなことは、機会あるごとに県の担当課のほうには指導しておるわけでございます。
  86. 湯山勇

    ○湯山分科員 逆じゃないですか。逆になっているんです、実は。これは四十九年の四月の資料です、全国の。これで見まして、四十九年の四月ですから、おそらくこれは四十八年か、あるいは四十九年と仮にしましても、いまおっしゃった三万六千円以下というのは、福島、山形、山梨、高知の非常勤、それだけです。つまり、その他の団体は全部この三万六千円を上回っております。いまのは、三万六千円を含めてそれ以下が、いま申し上げただけしかない。あとは全部それを上回っておるんです。多いところは、一般職で常勤で一般職給与適用のところは問題ありません。そうじゃなくて、非常勤であって月手当が多いのは、七万二千円、東京です。それから愛知県は六万円。それから地方の方に参りましても、鹿児島は四万六千円、鳥取の五万三千円、広島の五万五千円というように、みんな上回って出しているんです。なるべくこの基準に近づけいじゃなくて——近づけいと言ったら、皆下げなければならない、そういう状態なんです。これは一体どういうわけなんでしょう。
  87. 上村一

    ○上村政府委員 どうも舌足らずで恐縮でございますが、何と申しますか、最低ここまで確保されておるから、それを下回ってはならないというふうな指導をするというふうに申し上げたわけでございます。どうも舌足らずで恐縮でございます。
  88. 湯山勇

    ○湯山分科員 そうでないと、高いのを下げいというふうに聞こえて、これじゃ大変だと思わざるを得なかったわけです。実は、そういう状態なんです。そういう関係ですから、勤務の実態が常動的になっておりますから、そこで国の方でめどとして、交付税の基準に決めたのよりもみんな上回っている、こういう状態です。だから、これはほとんど毎日のように出ておるんですから、四万八千五百円という月手当、これも低きに失すると言わざるを得ないのですが、局長の御見解はいかがですか。
  89. 上村一

    ○上村政府委員 私も高い額とは考えておりません。したがいまして、その引き上げにつきまして自治省の方にもお願いし、それから、いまもお話出ましたように、五十年度の場合、三万六千円から四万八千五百円になり、活動旅費についても、八千円から一万円に上がるという措置が講ぜられたわけでございますが、さらに明後年度以降、引き上げに努力をしてまいりたいと考えております。
  90. 湯山勇

    ○湯山分科員 自治省の方はそういうことについて御意見お述べになれますか、と言ったら失礼ですが、むずかしいと思いますから、ひとつぜひお伝え願いたいと思うのです。実情は、いま申し上げましたように、もうほとんど三万六千円以下というのは四十九年度でもありません。全部上回っている。ですから、この算定の単価が安過ぎる。この単価を決める基準が何かありますか。単価決定の基準。
  91. 宮尾盤

    ○宮尾説明員 母子相談員に類した仕事をやっておられる方といたしまして、家庭相談員とかあるいは婦人相談員というのがあるわけでございますが、家庭相談員あるいは婦人相談員につきましては、国の方の補助制度もございます。現在といいますか、昭和五十年度の予算では、家庭相談員、婦人相談員について四万八千五百円という額を基準にいたしまして、その二分の一を補助する、こういう仕組みがございますので、これと同じところでこの母子相談員についても交付税上算定算入をしていく、こういう仕組みをとっているわけでございます。
  92. 湯山勇

    ○湯山分科員 勤務の実態に合わせると、いまの家庭相談員、婦人相談員と母子相談員とは必ずしも同じような勤務じゃないですから、それが同じというのもちょっと矛盾があると思うのですが、何か高校卒の初任給の前年度を基準にする、大体それに合わせるというような指導があるんでしょうか。
  93. 上村一

    ○上村政府委員 いや、そういうことはございません。
  94. 湯山勇

    ○湯山分科員 これは相談員の人に聞いてみますと、そういう基準がなくても、実際は大体それに合っておるというので、その資料を方々のをもらって見ますと、大体高校卒の公務員の初任給の前年度を持ってきている。ほとんどぴったり合っているのです。ですから、それから考えても、いま相当年配の方がほとんど常勤のような形でやっている。それが去年の高校卒の初任給と大体つり合うようなことになっている。これではやはり低過ぎるということを言わざるを得ないのですが、大臣、御感想はいかがでしょう。
  95. 田中正巳

    田中国務大臣 私も実は母子相談員の方にいろいろお目にかかっておるのですが、いま先生お述べのようなことを私も聞いております。ところが、またよく中へ踏み込んで調べてみますると、どうも地方地方でかなり実態が違っているということも私承知をいたしておりまして、この問題をある程度統一をしないと思い切った措置ができないのではなかろうかな、こういうふうに実は思っておったわけでございますが、いずれにいたしましても、母子福祉事業の充実強化のために、今後母子相談制度の強化を図っていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  96. 湯山勇

    ○湯山分科員 ごく少数は三日勤務というのもあります。それは家庭の事情等でできないというのもありますから、それはそれでよくわかります。  ただ、全般的には、大臣がお聞きになられておるように、ほとんど常勤の態様をなしているということです。これは全国母子相談員連絡協議会というのがありまして、きちっと資料をつくっていますから、局長よくごらんいただいて、実態に合うようにぜひやってもらいたい。  それから、社会保険です。これの適用のないのがあります。これは御存じでしょうか。
  97. 上村一

    ○上村政府委員 いまお話しになりました資料、私どももいただいておりますし、拝見しております。  それから、社会保険につきましては、交付税の中でも社会保険料が算定されておるわけでございますし、昭和三十五年にも、その勤務形態によって地方職員共済組合員にもなれるというふうな趣旨の通達等も出しておるわけでございます。
  98. 湯山勇

    ○湯山分科員 こういうのは直接指導なされば、ごく数も少ないと思いますので、できるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  99. 上村一

    ○上村政府委員 個別的にはその母子相談員の勤務条件によってくると思うわけでございます。したがって、共済組合に入る人、健康保険に入る人、あるいは地域保険に入る人ということに分かれてくるのは、個別的な母子相談員の勤務形態によって違ってこざるを得ないというふうに考えます。
  100. 湯山勇

    ○湯山分科員 ないのは、一つの例は、月十八日勤務、一日八時間、これが適用がないのです。だから、これだと日雇いでも適用になるはずですね。
  101. 上村一

    ○上村政府委員 日雇健保の場合、いま保険局長から教えていただいたのですけれども、二カ月を通じて二十八日以上働けば日雇いになるわけでございますが、結局どういう形の保険がいいのか。場合によると、その人は国保という形をとっておられる場合もあるかもわからないと思うのです。したがって、全然社会保険の適用がないというのはあるはずがないと思います。
  102. 湯山勇

    ○湯山分科員 ちょっと私の質問も足りませんでしたが、とにかく国保だけなんです。それは月二十日勤務で、ないのが山形、それからいま申し上げました長野、あとはどうなんでしょう、そういう例があります。これはひとつぜひ御指導願いたいと思います。  いま申し上げましたようにかなり年数もたっておりまして、これは愛媛県の例で申しますと、勤務年数が二十年を超える者が二人とか、十年を超える者が九名とか、相当多くてもうこれは定着しておるような状態ですから、いまの常勤化の問題、給与の問題それから保険適用の問題、それらを含めてぜひこの際身分の安定と、それから生活も安定させなければなりませんから、そのためにひとつ御検討願いたいと思いますが、この問題について締めくくりの御答弁を大臣にお願いいたしたいと思います。
  103. 田中正巳

    田中国務大臣 母子相談員の実態の把握をもう少し正確にいたしまして、できる限り善処をいたしたいというふうに思います。
  104. 湯山勇

    ○湯山分科員 社会局長お見えになったそうですから、先ほど、視力障害者の新たな職域を開拓するということは、もう十数年来の懸案になっておったと思います。どういう職域の開拓ができたのか、今後また新たにどういう方面を開拓しようとしておられるのか、これをひとつお伺いいたしたいと思います。
  105. 翁久次郎

    ○翁政府委員 盲人の新しい職域の開拓につきましては、ただいまお示しのとおり、いま現に開拓しつつありますものが、カナタイプ、それから電話交換手、こういった職域でございまして、さらにアメリカ等で最近新しく開拓されつつありますのが、コンピューター要員でございます。厚生省といたしましては、来年度の新規事業といたしまして点字図書館等に委託をいたしまして、この新職業の開拓に必要な経費を組んでございます。  なお、カナタイプの指導員の養成については、新たに若干の金額を予算で実現をいたしたい、こういうように考えております。
  106. 湯山勇

    ○湯山分科員 なかなかむずかしいと思いますけれども、ぜひひとつ御尽力を願いたいと思います。  それでは次へ移りまして、これは国保の擬制適用の問題でございます。  国保の擬制適用が二重課税じゃないかということも言われておりますし、この制度については、該当者はいずれも割り切れない気持ちといいますか、何かこの制度はおかしいじゃないかという気持ちを持っておることは否めないと思います。それで、昨年局長お話し申し上げて、その御努力によって改善された面もありますけれども、また今日の経済情勢その他で新たな条件も出てまいっておりますので、これは大きい立場から解決していかなければならない問題ではないかというふうに考えますのでお尋ねするわけですが、現在国保の擬制適用者は何世帯ぐらいあるのでしょうか。
  107. 北川力夫

    ○北川政府委員 四十九年四月現在の擬制世帯主は五十五万人、擬制世帯に属する被保険者は八十三万人であります。
  108. 湯山勇

    ○湯山分科員 その擬制適用されている条件、それは一口に言えば言えますけれども、そうじゃなくて、少し具体的に、たとえば出かせぎの家庭とか共かせぎ、パートで働いておるとか、あるいは普通保険適用から除外されている零細企業とかいろいろあるだろうと思うのですが、その実態はおわかりでしょうか。
  109. 北川力夫

    ○北川政府委員 私ども努めていまおっしゃいましたような例を調査もし、把握もしておるわけでございますが、大体いま先生おっしゃったような例が主なものではないだろうかと思っております。  それで、これも先生御承知でございますけれども、確実にその種のもので所得が把握できますのは、たとえば競輪、競馬とか、そういったところはかなり把握ができると思いますけれども、ちょっと旅館に手伝いに行くとかいったようなたぐいのものにつきましては、かなりバラエティーがございますので、一〇〇%的確に把握できているかどうか、その辺私も十分な自信がないような実情であります。
  110. 湯山勇

    ○湯山分科員 一つの職場で、大体対象は女の人ですが、何通りも国保の負担の仕方に違いがある。ある人は健康保険の扶養者ということで全然国保の負担をしていない。ある人は擬制世帯主になって国保税を納めている。ある人は本当の擬制じゃなくて、本来の母子家庭の世帯主で国保税をちゃんと納めている。こんなふうに三通りくらいあります。それからもっと、局長のおっしゃったように、把握できにくい職場では、安定所等を通していったのは把握されておって納めておりますけれども、つかめていないのは全然納めていないということになると四通りくらいできている。これはどうもはなはだ不都合じゃないかという、感じだけじゃなくて実際に不都合だと思うのですが、いかがでしょうか。
  111. 北川力夫

    ○北川政府委員 先ほどの実情把握についてちょっと補足してお答えだけ申し上げておきます。  それは東京都下の某市の実情を見てみますと、職業関係では農業、それから営業主、それから五人未満事業所の使用人あるいは店員、美理容業、一般の職人あるいは自由業、アルバイト、パートその他、こういったものがわれわれが調査いたしました範囲で把握いたしました具体的な実例であります。  それから、いまのお尋ねでございますけれども、結局こういった問題が出てまいりますのは、先生も御承知のとおり、被用者保険のサイドで被扶養者の認定問題というのがあると思います。これは被用者保険一般を通じまして、結局は生計関係で主として被保険者によって生計を維持しておるということで統一化されているわけでございますけれども、やはりその保険の実情でございますとか、あるいは地域の事情によってそこにはかなり多様性がございますために、結局はその保険者サイドで被扶養者の認定が受けられないというケースが片方ではあるわけであります。そういったことで、こういう方々は国民健康保険の被保険者になる。そのために世帯主が保険税なり保険料を納めます場合に、その本人所得の一部が見込まれる、こういうことになるわけでございますが、これは先生冒頭おっしゃいましたように、いわゆる二重課税論ということはないと思うのです。思うのですが、しかしながら、こういう問題が発生いたします実情といたしましては、いま申し上げましたような保険者の側から見た財政的な見地からどういうような運用をしておるかということと、それから国保の方といたしましては、本人所得について、所得割りにつきましても資産割りにつきましても、できる限りの減額をはかるような措置を講じておりますが、こういう措置をどこまでやっていくかということとの兼ね合いだろうと思います。特に後段の問題につきましては、これは国民健康保険の財政にも至大の影響を及ぼす問題でございますので、そういうところを彼此考えますと、被用者保険の運用上の問題——運用上の問題の中には当然財政的な問題も入ってまいります。それからまた、国保の側でのいわゆる擬制世帯主についての税あるいは保険料の減額の問題、こういう問題をどこまでどういうふうに調和のとれたかっこうでやっていくか、そういうところがこの問題の焦点でございまして、そこをどうするか、実は非常に慎重な配慮をしなければならないと思っているような実情なのでございます。  そういうわけで、問題の所在はかなりはっきりいたしておりますが、長年こういった問題はございまして、社会の変動とともにこういう問題が非常に顕在化したり、あるいはまた、多少ともそうでなかったりいたしますので、今後この問題についての解決、善処ということにつきましては、なお十分な検討をしていかなければならぬというふうに考えておりますのが率直な現状であります。
  112. 湯山勇

    ○湯山分科員 実は、時間がございませんので、都合によればまた予算委員会の方でお尋ねすることにいたしたいと思いますが、あと一分ばかりで申し上げますと、非常に矛盾が多くで、同じ職場でそういう状態ということだけじゃなくて、たとえば——実態じゃないのですが、たとえば、東急へ御主人が勤めておれば納めなくていい、西武へ勤めている方の奥さんは納めなければならないというふうなことがあるのです。というのは、組合管掌の保険で扶養家族の認定をしてもらえば納めなくていい、認定を受けなければ国保税を納めなければならない、こういう矛盾もありますし、それから擬制世帯主になって、従来は家族給付であれは五割であったのが、一昨年から七割になりました。そこで擬制世帯主になれば七割給付が受けられる。幾らかメリットがあった。今度は納めきりで何のメリットもないのです。これは、考え方によれば条件の切り下げということにもなるし、結局この問題は、国の国保並びに健保に対する財政をどう確立するか、それをもっと強めなければなかなか解決しない問題で、局長も御苦労なさったけれども、まだまだ大きい問題これを整理すれば百億もあればできるんじゃないかと思うのです。これぐらいを国が本当に出すか出さないかということにかかっているというように思いますので、大臣もひとつぜひお考え願いますし、改めてお尋ねをするかもしれませんので、お尋ねできればなお詳しくお尋ねするし、できなければまた局長なり何なり、大臣にも直接御説明に参りたいと思いますので、御了解願いたいと思います。  以上で終わります。
  113. 野田卯一

    野田主査 これにて湯山勇君の質疑は終了いたしました。  次に、田中美智子君。
  114. 田中美智子

    田中(美)分科員 まず、人事院にお伺いしたいのですけれども昭和四十年に看護婦さんのニッパチを中心にした問題で人事院判定が出ておりますけれども、その後どのようになっておりますか、どのように指導をしていらっしゃるか、どのような効果が上がっているのか、上がっていないのか、簡潔にお願いします。
  115. 中村博

    ○中村(博)政府委員 四十年に判定を出しました後、私どもの方といたしましても大変関心を持ちまして、実地調査もいたしまするし、それから厚生省当局に対していろいろ御努力を願いたい旨を申し上げておるのでございます。その結果、私どもといたしましては、厚生省の御努力によって相当程度の改善を見ておる、かように考えておるわけでございます。
  116. 田中美智子

    田中(美)分科員 人事院は非常に改善しているというふうに言われていましたけれども厚生省ではどういうふうにお考えになっていますでしょうか。
  117. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 厚生省は国立病院、療養所を持っておりますが、人事院判定は、わが国全体の県立病院初め、各方面に影響を与えて、いわゆる勤務条件の改善ということでこれは大変望ましい、必要によって必要な対策はやらなければならぬわけでございまして、県立病院等の公立を例にとりますと、七七%ぐらいが二人夜勤の単位ですね、この日数の問題は別にからみますけれども。それから、私の直轄の国立ではただいま五五%ということでございまして、七七と五五を考えますと、国立としては必ずしも十分でないというふうに思っております。
  118. 田中美智子

    田中(美)分科員 人事院の判定は非常にいいものだと私は思いますけれども、その後の効果というものは、人事院は非常によくいっていると言い、また厚生省の方では必ずしもそうではないと言っているわけですね。私から見ますと、はなはだよくいっていないということが言えると思います。たとえば、人事院の判定が出ましたころの夜勤の回数ですけれども、九・一日だったわけです。これは国立病院です。それが四十九年度の調査では九・六日という形で、むしろ夜勤がふえている。これは平均ですので、多い人に至っては二十日間の夜勤があるというような、まさに超人的な夜勤になっているわけですね。こういうことが非常に医療の低下、医療の荒廃、そして看護婦さんが足らない足らないという言葉として出てくるわけですけれども、こういう状態というのは決してよくなっているというふうには私としては思えません。  それから、いま二人夜勤の問題で、確かに二人夜勤の問題は数字からすればわずかな改善ということは言えるかもわかりません。しかし、いまなお二人夜勤というのは、病院と療養所を合わせましても四三・七%、約四四%近くがまだ一人夜勤をしているというわけです。これは私は一刻も猶予できない問題ではないかというふうに思うわけです。  これはほんの一例でございますけれども、一人夜勤のときに暴漢や痴漢に襲われた事件というものが、御存じだと思いますけれども種々出ているわけです。これは国立の中部病院の話ですけれども、昨年の五月に、看護婦さんが一人で夜勤しているときに、出刃包丁で襲われるという事件があったわけです。酒を飲んで夜中に患者さんに面会に来た。これを静止するとその看護婦さんがやられた。そのときに一人であるがために連絡することができないわけですね。そんなことや、また、これも昨年の八月に国立療養所の東名古屋病院ですけれども、一人夜勤の看護婦さんが部屋に監禁されて患者さんに殴る、けるの暴行を受けるというような、療養所の電気を消して、もう時間だからおやすみなさいということを言ったというだけの問題でこういう事件が起きているわけです。挙げていきますと切りがありませんが、国立療養所に外来者がやってきて、夜勤中の一人の看護婦さんをステンレスの包丁で顔に傷をつけたという晴嵐荘の問題、これも御存じだと思います。それから、国立の千葉病院、これも一人夜勤中に、準夜勤の看護婦さんが精神病の患者さんに暴行を受けるというようなこと、この千葉病院ではしばしばこういうことが起きている。痴漢、暴漢に、一人で年の若い看護婦さんがしばしば襲われているという事件が起きているわけです。それにもかかわらず、人事院勧告が出てから十年たっております。去年、おととしの話ではなくて十年たっているにもかかわらず、こういうふうな事件がしばしば起きている。これについては、一体厚生省は今後どういうふうにしていこうとしていらっしゃるのか。また、人事院は簡単に判定を出したけれども、非常に改善しているというふうにいとも簡単に言われますけれども、こういうことを御存じの上でそのような発言をしていらっしゃるのでしょうか、お聞きしたいと思います。
  119. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 確かに、事件として一人おられる看護単位のところで起こっておることは、一人であるということによる作用というものは私は否定できません。しかしながら、このような事件全体の実態を見ますと、これは病院全体の管理の問題ともつながりますし、そういう観点から、もちろん防犯体制的な考え方もこれは導入しなければなりません。しかしながら、一人夜勤というものがいいとは限っておりませんが、ただ判定の中では、一人夜勤を実施している看護単位であっても、必ずしも二人以上の夜勤者を配置しなければならないものとは認められない。一人夜勤で足りると考えられる看護単位については、突発事態に備える措置等が必要であるというのが人事院判定の中身でございます。医療の面からは、今後だんだん重症患者がふえていくということを予測しますと、われわれとしては、病院の看護単位というものは少なくとも二人が夜間、深夜特におることは望ましいことだと思うのでございますが、それが充足できるような社会条件、いわゆる看護婦の確保その他ができるまでの間は、やはりこの不測の事態に備える対策というものもあわせて考慮しなければならぬ。あるいは呼び鈴の設備などがないところには、そういう金を投ずればやれることはやっていくというようなことで、防犯体制も整えなければならないと思いますが、基本的には二人でいることが望ましいということが私の考え方でございます。
  120. 中村博

    ○中村(博)政府委員 まず第一点は、大変改善されておるというふうに人事院は言っていると先生おっしゃいましたけれども、私はもう完全だということは申し上げていないのでございまして、逐次改善されておるという趣旨で申し上げたのでございます。  それから第二の問題は、いま厚生省当局から御説明ございましたように、すぐれて運営管理の問題に帰着するのではないかと思いますが、ただ私どもの判定ではやはりいろいろな施設の充実ということをうたってございます。したがいまして、そのような観点になおより一層の努力をしていただけましたならば、あるいはそういう事故も防げることになるのではないか、かように考えている次第でございます。
  121. 田中美智子

    田中(美)分科員 非常に簡単に、改善というふうに言われますけれども、どこまで来たら改善で、どこまでは改善がなされていないというのかむずかしいと思います。簡単に改善というふうな言葉を使ってもらっては——昭和四十年からもう十年たっておりますから、十年たってこれだけしかできないということは、やはりまだ改善の緒についていないというふうに言う方が正しくはないかと私は思うわけです。  田中大臣にお聞きしたいわけですけれども、これは昭和四十四年六月十日の参議院の社会労働委員会で決議がなされているわけです。これは(1)から(5)までありますけれども、特に夜勤について人事院判定を速かに実行を図るというようなこと、それから、以上のことについて両三年をめどとしてその改善を図るという決議が出ているわけですね。四十四年に出ているわけですから、三年の間ということは、四十七年までの間に改善を図るという決議が出ているわけです。これに対して当時の厚生大臣の齋藤昇さんは、次のようなことを言っていらっしゃいます。大臣、よく聞いていただきたいと思うのです。大臣がかわるたびに、前のことは知らぬというのでは困るのです。同じ自民党の大臣なんですから、先輩の言われたことというのはよくお聞きになって、それを受け継いでいただきたいと思うわけですけれども、このように言っております。「ただいま満場一致をもって、かような決議をいただきましたことは、厚生省といたしまして、むしろふだんの勉強の足りなかったという反省をいたさざるを得ないわけでございます。たびたび申し上げておりますように、厚生省といたしましても、この問題は、まことに緊急にして大事な問題だと考えておりますので、この決議の御趣旨を最大限度に実現をいたすよう努力をいたしたいと、かように存じます。たいへん決議に対して感謝を申し上げます。」こういうふうに厚生大臣が言っていられるわけですね。そうしていながら、三年たちましても、まだいまのように約半数の国立病院で、民間は別としましても、国立の病院で、国が管理しているところで、半分くらいしか二人夜勤がなされていない。それからニッパチと言われる八日夜勤というのが守られていない。ひどいのになれば十五日も二十日もという、まさに人権侵害のような夜勤の回数があるというふうな状態があるわけです。これに対して大臣は、今後どのようにしていかなければならないと思っていらっしゃるか、御意見を聞かしていただきたいと思います。田中大臣、お願いいたします。
  122. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 大臣の御意見があろうと思いますが、四十四年のお答えの後、四十五、四十六、四十七年この目標が一応五〇%というところは、先生のおっしゃるように、これがいい悪いの問題は別といたしまして、改善の目標をとりあえずこの三年間で五〇%二人夜勤ということで、非常勤職員も含めまして三年間に二千三百六十七名の増員。これは当時の国家公務員の定員法の中で、一応私は当時の関係者の努力であろうと思うのでございます。  したがって、その後の四十八、四十九というのは、実は難病対策が出てまいりまして、これとの兼ね合いで、難病病棟というものはこれはもうニッパチ体制に持っていくということで定員が認められましたので、その対策を一応軌道に乗せることで努力してまいりまして、五十年の予算については、私はやはりこのような国立のニッパチ体制というものは、さらに改善しなければならぬということで格段の努力をいたしまして、五十年に多少の基盤ができたわけでございます。これは決して二次計画とか三次計画とかという呼び名でなく、その都度私は努力してこの夜勤体制というものの確立、改善を図っていきたいということで、五十年に、難病対策もありながら、なおかつ夜勤体制というものの項目の中でやはり定員を認めていただく方向を踏み出したわけでございます。
  123. 田中正巳

    田中国務大臣 ニッパチ体制、ことに普通夜勤につきましては、私どももできるだけ進めなければならぬというふうに思っておりまして、率直に申しまして、今年度、いま御審議願っている予算の編成過程でも、非常に努力をし、異常な熱意をもってやったわけでございますが、御案内のとおり、一遍に解決するというわけにいかないのはまことに残念でございますが、今後この問題のできるだけ速やかな解決のために努力をさらに重ねていかなければならないというふうに思っております。
  124. 田中美智子

    田中(美)分科員 言葉だけは一応そのとおりに聞いておきたいと思いますが、ただ努力努力と言いましても、十年前に人事院判定が出たときに、もはや非常に医療の荒廃が来ていたからこそ人事院判定が出ているわけですね。そして、その後にまた参議院の社労で決議をし、これに対して大臣が、全力を挙げると言って三年たって、それがもういまから四年くらい前の話ですね。そして、その後、現状というものは、定員法があろうと何しようが、こういうものは人間のつくったものです、現状に即して政治というものはやっていかないといけないのだというふうに思うわけですけれども、そういう点で難病などについての多少の御努力というものは認めるにしても、それとはこれは別の問題だというふうに思うわけです。難病にかかったからこちらができなかったということにはならないと思うのですね。こうした看護婦さんの労働条件が非常に危険にさらされているし、健康も非常に破壊されてきている、一刻も猶予できないというところで、早急にこの解決方に大臣に特に力を入れていただきたいというふうに思うわけです。  いままで、看護婦全体の増員ということでなくて、夜勤を制限するための増員という計算を出しておりますね。これはいままでどのようなことをしていらしたでしょうか。
  125. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 いまの御質問の趣旨、ちょっと大臣と話しておりまして、失礼いたしました。
  126. 田中美智子

    田中(美)分科員 夜勤制限のための看護婦さんの増員です。これは第一次計画、二次計画というふうに出していると伺いましたが……。
  127. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほどお答えしましたのは、四十五年、六年、七年、三年かかって二千三百名余の改善をして、これをニッパチ体制の改善として努力してまいりましたということでございます。五十年以降については、先ほど、二次計画というような何年ということではないのだ、これはどうしても時間はかかります、看護婦の需給関係、その他定員法の関係、そのほか看護婦以外の職種の増員も考える、あるいは重症心身施設の看護婦を含めた増員もございます。そういうことで五十一年以降も引き続きこの問題に対する努力はしたい。ただ夜勤勤務体制という項目として若干の定員の増が認められたことを基盤にいたしまして努力いたしたい、こうお答えしたわけでございます。
  128. 田中美智子

    田中(美)分科員 その若干の認められたというのは何名くらいですか。
  129. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 今回の増員は、病院、療養所、難病対策も含めまして、六百三十一でございます。看護体制の強化だけでは四百二十八。トータルで六百三十一でございますが、そのうち賃金職員が約半分入っております。これは過去三年のときもほぼ半分近い賃金職員で予算化したわけでございます。
  130. 田中美智子

    田中(美)分科員 なぜ賃金職員でなければだめなんですか。賃金職員といいますのは大変に待遇がひどいわけですよ。いま定員内の職員と賃金職員の差というので数字を聞いてまいりましたけれども、これで見ましても収入が年間約半分ですね。定員職員の看護婦さんが年間約二百三万円、同じ仕事をしている賃金職員が年間百二十九万円、こういう安い賃金になっているのはなぜなんでしょう。
  131. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 五十年度の賃金職員の単価が二千九百十円だと思いましたが、これは一つの国の財政上の判断からのかなり統一された判断での給与でございますが、私は実行の上で担当の課に検討を命じまして、それぞれの病院、療養所の実情に応じ、また勤務者の実態に応じまして、予算は予算、実行は実行ということで、できるだけ賃金を増額する努力をいたしまして、それぞれ話し合いに応じて地域の看護婦さんなりあるいは看護助手の形なりで勤務してくださる方の条件に合って対応しているわけでございまして、ただいま賃金職員もそれぞれの条件で病院、療養所の運営に寄与していただいておるというわけであります。
  132. 田中美智子

    田中(美)分科員 先ほど看護婦さんが足らないというので、これが充足できるまであらゆる努力をするというふうに言われるわけですけれども、同じ仕事をしていながら半分の賃金、同じ職場で働いてですよ。それで人間が長くそこで働く気持ちになるかということですよ。こういうことは、看護婦さんの離職対策とかそれから潜在看護婦さんの発掘など、言葉はきれいごとを言いますけれども、離職対策はやめろということですよ。雇っても、同じ看護婦さんでさえニッパチ体制ができていないので非常に大変なのに、まして賃金職員の看護婦さんというのはその半分の賃金で働くわけですから、どうしてそこで定着しますか。そういう形でいけばいつまでいってもこれは充足されないということを見込んで仕事をしているというふうにしか言えないと思いますけれども、この賃金職員というものをなくす、これを全部定職員にするということがなぜできないのか、もう一度原点に立って考えていただきたいと思うのです。いろいろ四囲の状況から四囲の状況からといいましても、これは全部人間のつくったことですから、天変地変が来て賃金看護婦でなければしようがないんだということではないわけです。人間がつくっておることですから、人間の心の持ち方により、予算の組みかえによりこれは可能なことなわけです。なぜ毎年毎年こうして賃金職員を採るのかということです。そこをもう一度お聞きしたいと思います。
  133. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 私は、給与の上で正規の職員と賃金職員とが半分であるか三分の二であるかという議論は、基本的には、私は、非常に非常勤的な賃金職員というものを本定の職員に近づけるあるいはそれに匹敵するような給与に改善することは、これは無理だと思います。ただ、先生指摘の定員に振りかえたらどうかという問題については、これは本人の希望が、どうしてもその場所でできたら定員で勤務したいということであれば、欠員が生じたときにはその方を優先して定員に切りかえる。ただ、先生は、予算上賃金職員というものを初めから置くのはおかしいという御議論でございますけれども、私はこれはいまの社会に対応した、むしろそういう賃金である時間帯を勤務するという看護婦さんの態様というものは、その地域の病院として必要な面もありはしないかというふうに思うわけでございまして、その御質問の趣旨はわかりますけれども、私は、賃金職員というものの活用こそ、いまの看護婦確保対策の一環としてはある程度やむを得ないし、またある程度合理性があるというふうに思うのです。ただ、その本人が定員になりたいのがいつまでも定員にできないという点については、確かに希望と合わない点はお気の毒ですが、われわれは、欠員があれば、その施設としては当然その方をその定員の振りかえの方に優先して入っていただく、こういう努力はいたしております。
  134. 田中美智子

    田中(美)分科員 考え方は、欠員があれば、こうおっしゃるわけですね。ということは、欠員がないことを前提にして話をしていれば、これはもういつまでたったって増員というのはあり得ないことですね。賃金職員以外にはあり得ないことですよ。この増員を、定員をふやすということを考えない限りは、お気の毒ですということで済まされていいかということです。人間として生まれて、働くということは一番大きな喜びなわけです。その働く場所が、同じ仕事をしていながら半分の賃金で、それでお気の毒ですという形で済まされてしまうのでは、これはどうしようもないことだというふうに思うのです。そして医療の荒廃はますます進み、患者さんからの不満やいろんなものは非常に矛盾がたくさん出ているわけです。ですから、定員をふやすという方向に持っていかない限りは、これは私はある程度の合理性などというものではなくて、やはり根本的な解決の道に行かないというふうに思います。その点でぜひ定員をふやし、賃金職員というものを、こうした人よりも半分の賃金で働くような労働者をつくるということ自体が私は基本的に誤っているように思います。  次に、こういう中にいま週休制の問題なども出てくると思いますけれども、こういうものが出てきたときに、いまのニッパチ体制というものは、一遍に後戻りするどころか、もっとひどい体制になるということを十分にお考えいただいて、増員というものを徹底的に図っていただかなければ、いまの日本の医療の荒廃というのは救えないのではないかと思います。  次に、潜在看護婦を掘り出すのだということをしきりに言っていらっしゃるし、離職対策のためにいろいろと御努力をすると言っているわけですけれども、一体潜在看護婦というのはどういうふうにしたら出てくるのか。免許状を持った看護婦さんが、約半数近くというものが実際には看護婦という職業にはついていない。養成も非常に大事なことですけれども、せっかく養成した看護婦さんが実際に看護婦の仕事をしていただけないということは、国としても非常に社会資源がもったいないことだと思いますが、これについてはどのようにお考えになりますか。
  135. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 御指摘のように、潜在看護婦の方々がそれだけの身分、資格をお持ちでございますので、これをわが国の現状の看護婦不足の状態に対しては非常な努力を払ってお話し合いの上就職していただくように持っていく、これは勤務場所は官民を問わず努力しなければなりません。そこで、ナースバンクの設置という予算措置をいたしまして、ただいま実態調査が第一次的に終わりました。これで把握した看護婦数は約四万でございます。ということは、はがき形式だったと思いますけれども、回答を寄せてくださった方が約四万。これは都道府県に委託費としとしてやっております。都道府県の努力の仕方、その他把握の仕方にもあるいはいろいろの工夫の仕方にも差があるようでございますが、一般的にはそのようなことで、これから第二次は、その中から就職希望ありという方と、それではどういう場所とどういう条件ならという細かい調査をまとめつつございます。いずれ新聞等を通じて公表できると思いますけれども、いずれにいたしましても、そのような潜在看護婦の活用ということは、これは相当の努力をしてもやる価値のある仕事であるというふうにわれわれ思っておりますので、都道府県関係でございますから、直接ではございませんけれども、最大の努力をしていきたいと思っております。
  136. 田中美智子

    田中(美)分科員 いま潜在看護婦の問題で、愛知県の衛生部の医務課で調査した結果が出ているわけです。これをいただいてきたわけですけれども、これは約四千人を調査したわけです。これを見てみますと、いま働いてないけれども働きたいという人が七四・五%も出ているわけなんです。ですから、看護婦さんがいないいない、こう言われますけれども、働きたいと言っている看護婦さんが圧倒的に多いということは、これは愛知県一つだけの調査ですけれども、これだけ、約七五%が働きたいと言っているわけです。その中で、どういう条件が満たされれば働けるのか。働きたいけれども実際に働けない。たとえば二十日間も夜勤があって、どうして家庭生活が持てますか。二十日間、夜妻が家にいないということは、皆さんたちは皆、夫ですから、皆さんの奥さんは帰れば必ずいらっしゃるんでしょうけれども、二十日家にいないということが常時であったら大変なことだと思います。二十日でないにしても、十日にしても大変なことだと思うわけです。ですから、働ける条件というものをつくらない限りは、幾らはがきを出して、働く意思あるかあるか、ありますと言ったって、条件が合わない。幾ら話し合いしても、夜勤が十日も十五日もあるというようなことではできないわけですね。これを見まして、この中で一番の問題というのは、やはり保育所の問題。育児の心配がなければ働きたいというのが圧倒的に多いということ、その次は、家が近くにあったらいい、病院の近くに住宅があればいいということ、これがその次に非常に大きくなっているわけです。こういうことさえ解決すれば、働く看護婦さんというのは相当の数出てくると思います。  いまナースバンクも国がやり出してまだ日が浅いのでこれからというお話でしたけれども、茨城県でナースバンクがもう全国で初めてやられています。ここへ電話をかけて飯塚きよさんという所長さんに伺ったわけですけれども、この所長さんの話が全く愛知県の調査と同じことを言っているわけなんです。保育所だとか夜勤の回数だとか、それから夜勤のときの送り迎えというものができるなら、夜中の一人歩きなどせずにちゃんと家に帰ることができるなら、そうすれば働く看護婦さんは幾らでもいるということを一年以上の経験の所長さんが言っているわけです。これはこの調査と全く偶然の一致のように一致しているわけですね。  そういうことで、いま看護婦さんを何とかしてその条件に合うようにしてもらうために、まず車送りの問題賃金職員というのを片づけるということ。これは夜中の十二時ごろに帰ったり、十二時ごろに出勤したりするわけですね。このときの車代というものが全部個人持ちになっているわけです。一体これはどういうふうにお考えになりますか。もう電車もバスもない。そうすればタクシーに乗る以外にないわけですね。このタクシー代というものがいまは非常に高くなっております。このタクシーに乗って帰るということが全部自費で出さなければならないわけですね。夜勤があって大変な上に、夜勤するたびにそのタクシー代というものがみんな個人持ちになるわけです。こんなことはどこの職場にだってないですよ。実費を払うということは当然です。実費だけでいいということではないにしても、かかったものは、自分が個人で使ったんじゃないので、職場のために使った金です。それを自分持ちになっているというようなことは、これは金額の大小にかかわらず考えられないことだと思うのですけれども、これは大臣、一体どうお考えになりますか。
  137. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 結論を先に申しますと、病院の夜勤という、女性の方の家に帰れる条件が整っているところである、いわゆるタクシーのあるところ、私はそういうところに基本的に車送りというものを何らかの形で検討していきたい、続けてこれを実現の方向で検討したいと思っているのが結論でございます。  ただ、現状においてはそれぞれの施設の条件、かなりいなかのところにもございます。そういうことで、当面は十二時半、一時の勤務が終わった後の、仮眠して朝お帰りになるまでの環境条件などが劣悪であることもよくございませんので、当面はそういう対策をやっております。  細かく言いますと、車送りの予算化の問題にはいろいろ、必ずしも一律にいかぬ。ともかくいま十二時半勤務で終わる人全部に対応しなければいかぬかどうかという問題もあります。タクシーが困難な地域もあり、タクシーのある地域もあり、いろいろでございます。それから場合によっては御主人が迎えに来る。細かく言えばそのガソリン代まで出すべきだ、こういう理屈もあるわけです。したがって、いろいろのそういう実態を踏まえながらわれわれはこれにどう対応するか、結論は私が先ほど申し上げましたように、できるだけ早く実現するように努力いたしたい、こう思っております。
  138. 田中美智子

    田中(美)分科員 厚生省はそのための実現を努力したいというふうに言っていらっしゃるわけですけれども、ことしも概算予算の中には組まれていたように思うわけですけれども——大蔵省に質問したいと思います。大蔵省は、この車賃というものが自費になっていることは妥当だとお考えになって予算を削っていらっしゃるのでしょうか。
  139. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 御質問のタクシーの問題でございますけれども、タクシーの問題一つ取り上げると申しますよりは、先ほど来議員が御指摘になっておりますように、夜勤体制の中の看護婦の職務全体をどういうふうに考えるかという角度で御説明申し上げた方がよろしいかと思います。  それで、まず御案内のとおり四十九年度、本年度でございますけれども、看護婦の方々、これは夜勤の問題も当然含められるわけでございますけれども、勤務条件の改善という見地から、まず給与の大幅な引き上げが行われる。(田中(美)分科員「車のことを聞いているのです」と呼ぶ)いや、これは関連の話としてちょっとお聞き願いたいのですが、四二%近い引き上げが行われている。これは一般職の公務員と比べますと相当な処遇改善である。五十年度の問題につきましては、そういう経済負担の問題といたしましては御案内のとおり夜勤手当をこれも大幅に、四割アップをいたしております。それから先ほど来賃金職員の問題とタクシーの問題との関連で先生の御指摘があったわけでございますけれども、賃金職員の問題も、先ほどはしなくもナースバンクの関連で先生指摘になりましたように、やはり潜在看護婦をなるべく病院に近づけるという意味では、普通の勤務態様と申しますか、そういうお子さん持ち、御主人持ちの看護婦さんでございますと、むしろ夜勤よりも日中のパート、それはまさに先ほど指摘になりました賃金職員でもって対応していく、そういう予算構成の考え方があるわけでございます。この賃金職員の単価につきましても、各看護婦団体の御意見それから厚生省とも周到に検討いたしまして、これも四割に近い予算単価を上げておるわけでございます。  そこで最後に、いま問題になっておりますタクシーの問題でございますけれども、私ども承知しております限りでは、現在においても予算の執行上の問題として、たとえば夜間急患が出た場合に病院の方から看護婦さんを急に呼び出すというような場合は、もちろん予算の執行上の話として、これは公務の問題でございますから、タクシーの手当て等をしておるというふうに聞いておりますけれども、ただ、通勤の態様といたしまして継続的にタクシーを利用できるというふうな予算措置、これは手当てになりますのかあるいは借り上げ代の話になるのか、いろいろ問題があるわけでございますけれども、通勤手当というのは給与の問題もございまして、必ずしもその点すっきりして割り切れる段階ではないということでございまして、五十年度におきましては、先ほど医務局長からお話もございましたように、もちろん夜勤体制の処遇改善という見地から、たとえば仮眠室の環境改善をやるということで予算の処置を講じたわけでございまして、引き続き、給与の問題等が私は基本になると思うわけでございますけれども、このタクシーの問題をどういうふうに考えるかというのは、五十一年度以降の問題としてもう少し厚生省と議論を詰めまして検討してまいりたい、そういうことでございます。
  140. 田中美智子

    田中(美)分科員 いま大幅に夜勤四割上げたとかというふうに言われますけれども、四割、大幅といったって四百円ですよね。ですから、実際にはいまこのタクシーの問題というのは非常に夜勤の看護婦さんたちの大きな問題になっています。一般に皆さんたちが海外に出張するというときに、海外の出張の飛行機代も船代もこれはみんな自分持ちなんという話はないはずですよ、仕事に行くのに。ですから、いま大蔵省はこれから十分詰めて相談するとおっしゃいますので、これは早急に解決していただきたいわけですけれども、どう考えたって勤務のために使った金ですからね。これがバスがあるのにタクシーに乗ったからタクシー代をくれと言っているのとは違うわけですからね。これは普通の勤務の出張のときと同じことだと思うわけです。  いま全国で「看護婦のオヤジの会」というのがあちこちにできてきているわけです。夫の会ですね。これはいままでですとやめろという形で夫が妻の足を引っ張ったわけです。しかし、看護婦というとうとい仕事をしていくのに夫も協力しようじゃないかという形で協力してきたわけだけれども、それはもう限界に来ているということで、こんなことが書いてあるわけですね。結局、「夜寝かかった頃また起き出し、ガンガンする頭で妻を送り迎えしている。当局のしりぬぐいをその夫たちがやっているのだ。つまり、病院側は〃看護婦の夫にも勤務命令をだしている〃という見方ができる。従って病院側は、その夫にも手当てを支払うべきだと思うがどうだろう。」というようなことを彼らは言っているわけですね。これは一理あることだというふうに思うのです。こういう力に支えられて看護婦さんが働いている。それでいまこのおやじたちは、「「タクシー代未払い病院」のリストを作り、重点地区を設け、その地域で大々的に住民に訴えようと思う。私たち夫は、病院の被雇用者でないので、不当労働行為をされることもないし、賃金差別をされる心配もない。私たちは、患者や住民に「あなたの通院している病院は、こんなひどいことをしている」」ということを訴えていこうということで、あちこちの県にこの「オヤジの会」というのがいまできかかっております。これは私は当然の要求だというふうに思うのですね。  そういう意味で、五十一年度、このタクシーの車送り、こういうものを一つずつ解決しなければ、賃金を大幅に引き上げるとかやれなんだとかと言ったって、大幅と言ったって四割というのは夜勤の四百円ですね。  そういう中で、いまここの愛知県の衛生部医務課の調査を見ましても、やはり車送りというものをしてくれれば看護婦になってもいい、ナースバンクでもこういうことは出ているわけです。ですから、こういうことから一つ一つ解決していっていただきたい。実際の潜在看護婦を引き出す努力というのはそこにあるんだと思います。こういうことをしないでおいて、ただ働く意思があるかないか数ばかり調べていたって、これは解決できないと思うのですね。五十一年度はぜひこの車送りという予算を早急に組んでいただきたい。これをお願いして看護婦の質問を終わりたいと思いますが、大臣、この車送りのことについて一言お願いしたいと思います。
  141. 田中正巳

    田中国務大臣 実は車送りとかタクシー代の予算要求をあきらめるときに、私も実は非常にのどに突っかかったということは事実であります。ところが、いろいろ聞いてみますとどうも予算要求の詰めが、理論武装が少し甘かったんじゃないかというふうなことを聞きまして、やむを得ないかなと言って、残念ながらおりたわけですが、いろいろ事情を聞きますと大変必要なことである、もっともなことだと思いますので、これからひとつどういう態様でこれを支弁するのがいいのか、もうちょっと詰めてみたいと思っておりまして、その方向に努力をいたしたい、こう思っております。
  142. 田中美智子

    田中(美)分科員 大臣、ぜひお願いいたします。人間であるならばそこで抵抗を感じられるのはあたりまえであると思いますので、ぜひ大蔵省と十分な話し合いをもちまして組んでいただきたいと思います。  次に、産前産後の休暇の延長について質問したいと思います。  いまこれは私が得々といろいろと言わなくても、非常にたくさんのデータも出ておりますし、ILOの勧告にも出ております。日本の産前産後の休暇が非常に少ないということがいま大きな社会問題になっているということは厚生省も婦人少年局も十分おわかりのことだと思います。いま労働時間が長いところ、産前の休暇が短いところですね、産前休暇が短い。労基法では最低六週間に産前はなっておりますね。結局いままでは産後が六週間で非常に少ないというので、産前を縮める人が非常に多かったわけですね。そしてその分を産後に持ってくるというふうな操作をして何とか産後を長くしようというふうなことをしてきたわけですけれども、そういうことの弊害というのが、二千五百グラム以下の低体重児の赤ちゃんの数が非常にふえているということで、産前の休暇は非常に大切だということがいろいろ医者によって言われてきているわけです。労働省の調査によりましても、実際妊娠して業務を軽減してもらった者は二四・七%しかいないということで、現状ではなかなか妊娠したからといって軽作業に移っていないわけですね。ですからやはり産前休暇というものがなければ実際には非常に小さい子供が生まれる。特に妊娠五カ月を一〇〇としますと、九カ月日の疲労度というのは二二〇というふうに言われているわけです。二倍以上疲労がひどいわけです。ですから非常に健康でどこにも異常がないという人でもむくみがあったり貧血があったり足の静脈がはれたりというふうに体力がぎりぎりのところにきているわけですね。こういうことで、日本の妊産婦の死亡率というのはWHOの調査の中でも四十五カ国近くの中で最高になっているということを見ましても、やはり産前の休暇が非常に短い。これが大きな影響を与えているというふうに思うわけです。それで、産前の休暇をぜひ延ばしていただきたいということが一つです。  時間がありませんので、その次には産後ですね。産後の休暇、これは産婦人科の大村清さんやまた森山豊先生どもお話ししているわけですけれども、六週間では母体が完全にもとには戻っていない。いろいろケースが出ておりますけれども、ある教員が六週間で職場に戻った。そうしますと、仕事中に三、四回お乳が張って、結局乳腺炎を起こして十二日目にダウンしてしまった。もう一つケースとしては、七週目から出た。これはいろいろ年休などを合わせまして六週に足している、七週にしたわけですね。それで出た。これもやはり二十日目でダウンしてしまった。これは臨床の医者がケースを新聞に出していたものです。それからもう一人の事務員はやはり母乳で育てていたけれども、七週間目に出た。仕事に出たら結局十日間でまたダウンして倒れてしまった。この七週間目というのが一番疲労がひどいときではないか。この事務員さんは、二人目の子供のときには無理に休みまして十一週目から出てみたところが、そのときには非常に疲労が少なかったということを言っているわけですね。こういう事例を非常に出しまして、何としても産後八週間というものは動いてはならないのではないかということを私が聞きました産婦人科の医者ですね、この朝日新聞に出ておりました大村先生にしても森山豊先生にしても、それから新医協の長橋千代先生だとか、こういう先生に伺いましたら、一貫して、これはどう考えても八週間までというものは産婦が動くこと自体が問題ではないかと言っているわけです。ですから八週間が適当だということではありませんが、その間は動かせないのではないかというふうに言うのが医者の統一見解ではないかと思います。  それで、いま母乳の問題が出ておりますけれども厚生省でも母乳を勧めている。人工栄養というものは子供の死亡率も非常に高い。母乳でいけば死亡率が四分の一になるんだということが、小児科学会などの栄養委員会でこういうものが報告されているわけですね。それで、厚生省も母乳のバンクなどをつくろうということを言われているわけですね。三カ月母乳をやるといいますと大体十二週かかるわけです。これが大体六週、七週で職場に戻った人というのはもう期せずしてというよりもすべて、一〇〇%近くは働くことによって全部母乳がとまっているわけです。こういうふうなことを考えまして、どうしてもこの産前産後の休暇の延長というものを考えなければならない時期に来ているのではないか。労基法六十五条——労基法というのはもともと昭和二十二年につくられたものです。二十二年というともう大体三十年近くたっているわけです。都市の構成も非常に変わってきておりますし、働く婦人の六〇%近くが既婚者であるという、こういう変化もありますし、都市構成によって通勤に非常に長い時間がかかっているわけです。こういうことが、婦人の体、特に妊娠中の婦人の体に及ぼす影響というものは三十年前とははかり知れないほどの大きな状態が出てきているわけです。これをいまなお二十二年の労基法に沿って最低六週間というような形でやっている。事実上、これはあちこちでもはや労働協約や何かの中で改善をかち取っている職場もふえておりますけれども、国としてやはりこれをやっていくことは緊急な問題ではないかというふうに私は思います。  それで、ことしは国際婦人年です。ただ婦人を大切にしよう、婦人の差別をなくそうというふうなキャンペーンをするだけでなくて、やはり何を最もしなければならないか、何を具体的に改善しなければならないかということを政府もきっちと決めていただきたい。そのために何をすべきかということを検討していただきたいというふうに思うわけです。  その中で、私自身が検討しましたのは、何よりもまず先により多くの婦人、そして父親にも大きく関係してくることですし、日本の将来に大きく影響するこのお産の問題について、産前産後の休暇を大幅に延長するというこの問題をことしの大きな課題にし、即刻これをやっていただきたい。そうしなければ世界に対しても恥ずかしいのではないか。イギリスのような国でも産前八週間、産後十二週間、二カ月、三カ月という休暇をとっているわけです。こうした改善がいま世界各国でなされているときに、日本が三十年前の法律で、そしてlLOの九十五号勧告、それよりも低い線に押さえられたままになっているということは、世界に向かって日本の恥ではないかというふうに私は思います。その点について、政府、それから大臣、そして婦人少年局、労働省、どういうお考えを持っていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
  143. 赤松良子

    ○赤松説明員 先生の御指摘のとおり、基準法が制定されましてから長い期間がたっている。そして、その間婦人の労働の態様その他非常に大きな変化が起こっているということはおっしゃるとおりでございます。  そこで、労働省といたしましては、その間に起こったもろもろの変化と現在の法律、労働基準法その他の法令との間のギャップというものも生じているのではないか、こういう認識に立ちまして、労働基準法研究会を設けまして労働大臣がそのための検討をお願いしたことも御承知のとおりでございます。  かなりこの研究が進んでまいりまして、昨年の十月に医学的、専門的立場から見た女子の特質という専門家の報告がまとまりまして、これを労働基準法第二小委員会、つまり労働基準法研究会の中で特に女子労働者、母性保護等を取り扱う委員会に対しまして提出されました。これを受けた委員会がその専門的な研究に基づいて現在の法律との関係をつぶさに検討をする、このような段階に入っておりますので、御報告させていただきます。
  144. 田中美智子

    田中(美)分科員 それはつぶさに検討すると言うのですけれども、その検討の結果どうなるか。いま言っておりますのは、検討してどうする、いつどういうふうになるかという見通しがもう出てもいいときではないかと思います。その点をお聞かせ願いたいわけです。
  145. 赤松良子

    ○赤松説明員 この研究会ができましてからかなり年数がたっておりますが、最初、安全衛生等の検討がなされておりまして、第二小委員会が女子労働者について特に専門的な報告を受けて検討を始めましたのは昨年の十二月からでございまして、それ以来鋭意検討を進めておりますが、ただいまのところ、いつまでにというような段階には達しておりませんので、御希望のようなことを申し上げることは私といたしまして現在できかねる状態でございます。
  146. 田中美智子

    田中(美)分科員 厚生大臣、お願いいたします。
  147. 田中正巳

    田中国務大臣 いまの問題は労働法制の問題でございまして、したがいまして労働大臣の所管事項でございます。しかし国民の健康と生命を所掌する厚生省としても重要な関心を持たざるを得ないわけでございますので、こうした問題についての具体的な所見をまとめ、そして労働省当局に対し協力をいたしていきたいと思います。労働省でも研究会を設け、そしてまた医学的見地からも検討しておるということでございますが、私も労働大臣にこうした問題の緊急なことを伝えて、よく協議をいたしたいと思います。
  148. 田中美智子

    田中(美)分科員 戦後もう三十年たっていますし、その中でこの問題が非常に重要になってきているだけでなく、弊害が出ているわけですね。それがいまなおまだ検討中ということでは困るわけです。大臣としては、小さい赤ちゃんができる、それから弱い赤ちゃんが産まれる、妊産婦の死亡率が世界で最高ということは……
  149. 田中正巳

    田中国務大臣 最高ではない。
  150. 田中美智子

    田中(美)分科員 最高ですよ。WHOのあれでは最高になっていますからね。
  151. 上村一

    ○上村政府委員 先進国中最高。
  152. 田中美智子

    田中(美)分科員 そうです、WHOの統計のできる国。私は日本は先進国と思っておりますので、厚生省だけ見ておりますと、先進国でないんじゃないかというふうに——先進国の中で、それも四十五カ国ぐらいですよ、統計のとれる国、そこで妊産婦の死亡がいまなお最高だということは、これはもう産前産後の休暇がないということが大きく影響している。この汚名をことし取っ払うために厚生大臣が、所管はどちらであろうと、厚生省は国民の健康に関係するわけですからね、労働省は努力するのは当然のことですけれども厚生大臣がただ傍観しているのではなくて、ただ意見書を上げるのではなくて、いついつまでにこれをこうしなさいと言うくらいの権限を、婦人の健康に対してそれぐらいの権限を持っていただいていいんじゃないですか。ただ何となくいつまでも検討中でございます。検討中でございます。見直します、見直しますと三十年見直してきて、ここまで大きな弊害が出てきているにもかかわらず、そして世界に恥をさらしているにもかかわらず、これがまだ検討中ではだめだというふうに思うわけです。何とか田中大臣のお力でことしじゅうにこれをやるというふうな努力をしていただきたいと思いますが、大臣、お答え願いたいと思います。
  153. 田中正巳

    田中国務大臣 ですから私は、国民の健康と生命を所掌する厚生省としては、重大な関心を持って、これをいかがすべきかということについて労働大臣とよく協議をいたすということでございます。所掌が労働省の所管の法律でございますので、私がここでもっていつ幾日にどうというようなことは私はいかがかと思われるものですからさようなことを申したわけで、決して消極的な態度であるということではございません。
  154. 田中美智子

    田中(美)分科員 婦人少年局としても、もう少し強い姿勢で臨んでいただきたいと思います。ただ婦人少年局だけが、婦人が一応まともなところに置かれているということですので、もう少し力を尽くして、この妊産婦が先進国中後進国でないようにするためにも、世界の恥をあれするためにも、ぜひこれはことしの国際婦人年に向けて大臣に強く要請し、ただ検討するということでなくて、何月何日までにこれをやるのだということぐらいの強い要請をしていただきたいというふうに思います。最後にもう一度、どのように努力していただけるか伺いたいと思います。
  155. 赤松良子

    ○赤松説明員 先生の御指摘の点を大臣にも伝えることにいたしたいと思います。
  156. 田中美智子

    田中(美)分科員 婦人少年局は婦人を代表しているのですから、ただ伝えますということではなくて、何かもうちょっとしゃんとしたふうに、強くやっていただきたいと思います。あっちに遠慮しこっちに遠慮するような行き方を婦人がしておったら解決できやしませんよ。みんな女の体がくたくたになってしまいますよ。子供を抱えた母ほど美しいものはないと過去からずっと言われて来ているのに、いま子供を抱えた母は本当にくたびれ果てているのですから、そういう点でもう少し、ただ申し伝えますではなくて、大臣をゆさぶってでも、政府をゆさぶってでもやるのだというふうな形でやっていただきたいと思います。  質問を終わります。
  157. 野田卯一

    野田主査 これにて田中美智子君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  158. 野田卯一

    野田主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  159. 兒玉末男

    兒玉分科員 私は、林野行政に関連する中で、特に最近非常に問題となっております振動病に関する問題を中心に二、三点厚生省当局の御見解を承りたい。  まず最初に、先般九州と四国の振動病の状態の調査に参ったわけでございますが、その中で、まず第一点、現状認識として私は林野庁の当局にお伺いしたいわけでありますが、これは何といいましても国有林関係の当面の最大の課題であろうかと私は考えるわけであります。時間の関係でまとめて御質問しますので、よろしくお願いいたします。  第一点は、国有林における振動障害の発生状況。二点は、振動病に対するところの予防対策。三点は、四十四年に組合との間においてチェーンソー等の時間規制の協定を実施しているわけでございますが、規制後のその後の状態、たとえば完全実施だとかあるいは半分程度だとか、作業個所によって規制の実施状況等に相違があるやに聞いておりますが、この点についてどういうふうな追跡を行っているのか、現況について。それからその次の点は、振動病の認定者については、やはり最も効果的と言われる温泉療養等の措置を全員に対して行うべきだと考えるが、どうか。また、先般私たちは大分県の湯布院厚生年金病院に参りまして、現状をつぶさに聞き、また、後でそれぞれお配りしますが、「湯布院厚生年金病院における実際の問題点と治療の状態」という資料もいただいております。これは厚生当局並びにそれぞれの担当でも十分御検討いただける貴重な資料だと思います。このような状態が現在民間、国有を問わず日本の四つの国土に点在している状況から推して、このような湯布院状態の施設というものをこの際やはり厚生省指導のもとに拡大し、そして強化すべきだと思うが、どうか。それから、現在の湯布院方式におけるような施設を、林野庁としてはブロック単位にやはり新設を検討すべきではないか、このような点についてまず林野庁当局の見解を承り、これに関連いたしまして厚生省並びに文部省等にもお聞きしたいと思います。
  160. 滑川常男

    ○滑川説明員 御説明申し上げます。  まず、林野庁におきますと申しますか、国有林野事業におきます振動障害の発生状況でございますが、四十年度以降四十九年度九月現在で認定者が約二千二百ございます。さらに、訴え者は約四千名というふうになっております。  そこで、これらに対する予防措置等でございますが、まず第一には、振動機械の使用時間の規制をいたしております。これは一日二時間、一週五日、一月四十時間という規制をいたしておるわけでございます。  さらに、いま申し上げましたのは予防対策の主たるものでございますが、そのほか予防対策といたしまして、防振効果のすぐれた機械の開発あるいは代替機械の開発等に努力をいたしておるところでございます。  さらに、お尋ねの四十四年に労働組合との間に協約を締結いたしました後の追跡調査等についてどうなっておるかという点でございますが、これは四十四年度以降新たにチェーンソーを使用している者とそれから振動障害の発生との関係と申しますか、そういうことにつきましての調査につきましては、五カ年計画で労働科学研究所に委託研究を委嘱をしておるところでございます。近く報告が出されることになっておりますので、その報告の結果に基づきまして対応をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それから、振動病の認定者に対して温泉治療を実施せよということにつきましては、ただいままでにと申しますか、今年度末までに約一千名の入院治療を行う予定でおりまして、残余の約一千二百名につきましては、五十年度中に完了するという段取りをただいま立てておるところでございます。  それから、御指摘の九州の湯布院病院のような施設を全国にブロック単位くらいにつくるべきだということにつきましては、実は四十九年度に九州地区に一カ所施設を予定をいたしております。さらに、五十年度につきましても、東北の青森に一カ所を予定しておりますが、今後ともそういう面について努力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。さらに関係各省庁等にもお願いを申し上げまして、ベッド数の確保ということについて、今後とも御協力を願いながら推進をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  それからもう一つは、湯布院で行われている治療方式のようなものを一つのパターンとして実施する考えはないかということでございますが、これにつきましては、ただいま林野庁の中に林業労働障害対策研究委員会という委員会を、労働側の協力も得ながら組織をつくっております。そこでの御助言等を得た後に、関係方面等の御意見等も賜りながら、今後の問題として検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  161. 兒玉末男

    兒玉分科員 ただいまの林野庁のお返事を聞いたわけでございますが、私は特にこの際厚生省にお聞きしたいわけでございますが、先般の九州における実態調査の結果によりますと、特に全国の認定者の調査資料によりましても、いま林野庁が申し上げたような報告によりましても、とにかく全体の治療者の中でよく効いたというのが一四・四%、効かないというのが六三・一%、副作用が出てきたというのが一二・二%、これはやはり振動病に対するところの医学的な対応をする療養の仕方に問題があろうかと私は思うわけでございますが、これは何といいましても医学的な立場から十分検討を加え、しかも湯布院の場合におきましては、後で——ここに貴重な資料がございますけれども、この湯布院が、いま林野庁当局も認めたように、全国のモデル的な厚生年金病院としての真価が発揮をされております。しかも、その経緯というものは、いわゆる全林野の組合が四十七年に顧問の一団をソビエトに派遣しまして、モスクワで実際に治療している状況等を研究し、さらにまた四十八年には、第一回の振動病に関するゼミナールがモスクワで開かれている。このような幾多の貴重な経験なり、あるいは物理療法なり温泉療法等の可能性等を検討して今日に至っているというここに資料がございます。これを後でお上げしますので、これに対応するように、やはり全国的なブロックにあるいは現在林野庁が委託している、あるいは現実に治療を受けている全国の公立病院あるいは法人組織の病院等数あるわけでございますけれども、実行なさっているのは湯布院だけという点から、厚生省としてはこれにどういうふうに対応するお考えなのか、お伺いしたいと思う。
  162. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいまの湯布院の資料を後ほど見せていただきたいと思いますが、結論を先に申しますと、林野庁の方でもこの内容を検討され、相当専門家を入れて御検討のようでございますので、われわれといたしましても、国民医療の立場からその御意見等を承りまして、医療機関の地域的な対応の仕方等を検討してまいりたいと思います。  直接厚生省は国立病院、療養所を持っておりますが、戦時中の陸軍病院の中には温泉病院というのがございまして、これが北海道から九州までただいま十六カ所ございますが、ここで林野庁の委託を受けました患者の収容が相当数あるわけでございます。先ほど千人一応温泉治療が済んだというお話でございますから、われわれの国立のベッド以外に熱海その他の公的病院等も恐らくお使いになっての入院数であろうと思うのでございまして、直接治療施設としては国立のほかにも必要な対応するものがあろうというふうに思うのでございます。  治療法の問題は、われわれも厚生省の医療研究助成金で四十一年以来、若干間を置いた面もございますが、四十一年、二年あるいは四十六年、七年というように研究費で御検討願い、なお五十年度は国立の温泉病院の研究班ができておりまして、ここでもこの振動病の問題を取り扱って研究していただくように、その中でいま御指摘の湯布院の資料というものを国立サイドの温泉病院のドクターがどういうふうに受け取り、考え、そして共同研究的に進める必要があるかというようなことは、それぞれ医療の中身でございますから、専門家の意見等も聞きまして、私も推進いたしたいというふうに思っておる次第でございます。
  163. 兒玉末男

    兒玉分科員 重ねて厚生省にお伺いしたいわけでございますけれども、やはりいま国立関係のこのような施設のベッド数の拡大という、なかなか予算の面もあろうと思いますけれども、これは大蔵省にも後で見解を聞きますけれども、現在職業病と言われる振動病は、先般労働者の通達によりまして全国の実態調査ということがなされておるわけです。これにつきましても、昨年が五千四百三十一名を対象として検診を行っております。また本年度、四十九年度は六千名の対象でございますが、これは指定個所が非常にふえたために、県単位の人数というものは、宮崎県の場合は前が三百三だったのが本年は二百名、こういうことで、しかもいま林野庁も非常に苦労されているわけでございますけれども、こういう特殊な病状について的確なる診断ができないという現状にあるわけです。とするならば、特に医療行政を担当する厚生省としては、このような振動病という特殊な診断体制が十分できるような、そういう体制を考えるべきだと思うのですが、この点は、特にお医者さんの養成は文部省の関連でもございますので、厚生省並びに文部省の大学局としてどういうふうに対応するお考えなのか。少なくとも今日のこのような職業病と言われる振動病等は、これはもう全国的な課題として取り上げるべき筋であると思いますが、それの見解について厚生省並びに文部省に承りたい。
  164. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 診断基準という先生のお言葉がございまして、われわれもこの診断というものに、特に予後の判定も含めてむずかしさがある病気であるということはわかっております。先ほど先生が例に引かれたソ連などでも、やはり病気の形というものを一型、二型、三型、四型とかというふうに、度合いによって分けているような文献的な内容も知っているわけでございますけれども、いずれにいたしましても、専門家の研究、医師としての研修を積んでそのような判断ができる医師を持つことが必要だということになりますので、少なくともわれわれの関係では、国立病院の温泉病院関係で経験を積んだ者にその見解をまとめてもらい、一般的に、窓口として林野関係とかそういう方の多い地域の国立病院にその内容を流し、必要によっては共同研究をさせまして、一般的にこの振動病に対する医師としての診断能力の向上ということに努力していきたいというふうに感じております。
  165. 齋藤諦淳

    ○齋藤説明員 国立大学におきましては、衛生学なり公衆衛生学を必ず各大学に置くようになっております。産業衛生等についても、最近はこの講座で教育なりあるいは研究が取り入れられていくようになってきております。ただ、それにいたしましても、これは戦後の社会的な事情もございまして、衛生学、公衆衛生学、こういう分野に分かれております。こういう固定した分野ではなしに、もう少し講座の置き方を弾力化して、時宜に応じた教育研究内容ができるように変えるべきではないか、こういう意見が最近非常に強くなっております。これに対応いたしまして、いわゆる文部省に置かれる大学設置審議会におきまして、医学教育の関係の基準を目下検討中でございます。その中で、基礎医学とか臨床医学等のほかに社会医学に関する講座、こういうものも置くようにしてはどうか、こういうサゼスチョンが寄せられております。現在これは中間報告で出されておりますが、いずれ諸般の意見を聞きながら最終の建議をいただきまして、新しい医学の設置基準を設けることになろう。その際に、既存の旧来の学問分野をできるだけ社会的な要請に応じて新しくするということもぜひ必要ではなかろうか、こう考えておる次第でございます。  なお、別途、国立大学関係では、温泉関係を持っておる病院が六カ所ございます。みな本院の分院になっておりますけれども、六カ所ございます。林野庁の方から非常に御熱心にこの問題について文部省にも申し入れがございました。私どもとしても、あっせんをいたしまして、次回の温泉病院長会議にはぜひこの問題を取り上げてくれるように私の方でアレンジいたしまして、次回にはぜひ林野庁からも必要であるならば担当官をその会議に派遣していただいても構わない、こういうような段取りにしておるわけでございます。そういうようなことで、次第に国立大学においてもこういう問題に対応できるように、文部省としても指導助言いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  166. 兒玉末男

    兒玉分科員 林野庁と大蔵省にお聞きをしたいわけでございますが、林野庁は、いま文部省側の提起されましたように、せっかくの好意ある体制で研究体制を強めろということでありますから、ひとつ積極的に取り組んでいただきたい。  同時に、現在林野庁で、全国の委託病院なりあるいは指定の病院でどの程度の認定者が治療しているか、その状況についてひとつ資料として出していただきたい、そう思います。  それから大蔵省には、先般の宮崎県のこの調査の際、二次検診で、民間のこういう振動病関係の調査の結果、約五割近くが所見が認められ、三百三名のうち七十四名が完全に認定される。ところが残念ながら、労働基準局の説明では、こういうふうな二次検診を行う設備がない、そのための予算がない、しかも加えて、去年三百名やったのが、ことし二百名というのはどういうことなのか、これは調査をする場所がふえたために予算上の面でできない、こういうことを言っているわけですよ。この重大な問題について、大蔵省は今後一体どういう措置を講じようとするのか。  また林野庁としても、施設の拡張を考えておられるようでございますけれども、これからの振動病認定着の発生の予想というのは特に九州管内が多いということは、熊本大学の医学部なりあるいは久留米大学の医学部等に十年以上この関係の研究をしているお医者さんがおられますが、そういう関係から、特に熊本局管内の場合は認定者が比較的多い、林野庁全体の三〇%を超えております。ですから、先ほど医務局長も言われましたが、全国的にこのような振動に関するお医者さんの意識と、技術的な対応がふえるならば、まだまだ民間を含め相当数のこういう認定者がふえる。そういたしますならば、やはり事前の予防対策あるいは治療対策に万全を期するためには何といっても予算的な裏づけである。それにはどうしても大蔵省当局の理解と協力がなければ、せっかくの厚生省なり林野庁の対策も実を結ぶことができないと考えるわけでございますが、大蔵省当局の見解を承りたい。
  167. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 職業病として白ろう病の問題これは長年にわたる問題でございますけれども、健康診断の問題につきましては、労働保険特別会計の労災勘定でもって所要の予算は計上されておるところでございます。  それで、ただいま宮崎県で予算が不足しているから二次検診ができないのだというお話を初めてお伺いしたわけでございますけれども、これは予算の実行の問題でございますので、事情についてはまた労働省の方から私じかに聞いてみたいと思いますけれども、実は白ろう病の健康診断の予算を特別に計上いたしましたのは、実は四十九年度から初めて計上したわけでございます。ただ実行は、職業病関係の健康診断経費というのは非常に多額の予算計上を従来から行っておりまして、白ろう病につきましては四十八年度から実行しておると私記憶しております。したがって、先生いま御指摘のありましたのは、恐らく四十九年度の実行の話かと思いますが、実行配分の問題として、私は、予算が不足しているから二次健康診断できないという事態は絶対ないと思っております。  五十年度につきましても所要の経費を計上しておりますから、その宮崎県の問題につきましては、後ほど労働省に実際問題を聞きたいと思いますけれども、私ども予算の面でこの種の予防の問題とか健康管理問題を制約しておるということは毛頭ございませんで、特に労働保険特別会計というのは事業主の保険料でもって経理しておる会でございますので、そういう面での財政面からの制約ということはあり得ない、こういうふうに私は考えております。
  168. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは主計官、この前現地で宮崎の労働基準局長が、なぜできないのかという質問に対して、これはこの前当分科会でやりまして、とにかくそういう機械とかいうものがないからできません、予算幾らかかるのかと言ったら、二百万円前後だ。ところが久留米大学の高松教授は七十万円もあればそれは十分だ。一県でもこういう実情でありますから、ましてや今度の対象は六千名です。そういう点を考えるならば、恐らくそういう事情は労働省にお聞きしたら、明確な答弁しているわけでございますので、ひとつ十分御検討いただきたい。  時間がありませんので、もう一件、これは別な角度からお聞きし、そしてまた最後厚生大臣の御見解を承っておきたいと思います。  昭和四十七年の十二月二十八日だったと思いますが、朝日新聞が全国的に取り上げました母乳の中に占めるPCB、許容限度を超えて、母体あるいは子供に非常に重大な問題が提起されておる。これは汚染の問題を含めてでございますが、これらに対しまして、最近また一昨日でしたか、テレビでも、現在の朝日新聞の「複合汚染」という小説に関連しまして、こういう人工ミルクなりあるいは母乳等に関連する解説的な放送がなされました。これからの幼児の問題については決して黙過できない問題だ。でありますので、当時の新聞報道でも許容基準については相当厳しい論議が展開されたということがはっきり記録されておりますが、これに対してはどういうふうな対応策をとっておるのか、この点を含めて担当局長、並びに厚生大臣には、先ほどの林野庁を中心とする振動病に関連する対応策について大臣の見解を最後に承って、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 上村一

    ○上村政府委員 いまお話しございましたように、昭和四十七年に大阪でPCBの濃厚な汚染がありましてから、四十七年、四十八年、四十九年と、産婦なり乳児を対象にいたしまして健康調査、それから母乳の中のPCBの濃度の調査をしたわけでございます。その結果によりますと、お母さんのお乳の中のPCBの濃度というものは年々低下の傾向を示しておりますし、それから産婦なり乳児の健康状態につきましても、いままでの調査では健康被害が認められなかったわけでございます。PCBによるお母さんのお乳の汚染というのは、PCBの生産が停止されましたり、あるいは私どもの方から妊産婦に対して保健指導を相当きつくやってまいりましたので、相当減ってきたというふうに考えるわけでございますけれども、今後、いろいろな化学物質による食品汚染の影響等もございますので、来年度におきましても引き続いて母乳汚染の疫学の調査をするつもりでございます。
  170. 田中正巳

    田中国務大臣 振動病、白ろう病の件につきましては、いまそれぞれの官庁からいろいろ答弁がございましたが、関係省庁とよく連絡協力をいたしまして、その予防、診断、治療等についてさらに施策を充実していきたいというふうに思っております。  また、ただいまの母乳のPCBの件でございますが、最近徐々に減少してまいったというふうに聞いておりますが、なおこれは環境保全あるいは公害等々の問題とからんでおるわけであります。母親が摂取する食物から母乳にPCBが出てくるということだろうと思いますので、そうしたことをめぐりまして、原因を断つことによって母乳のPCBの含有量というものをできるだけ少なくするようにいたしたいというふうに思っております。
  171. 兒玉末男

    兒玉分科員 時間が参りましたので要望しておきます。  児童局長の御答弁なり大臣の御答弁でも、一般の国民大衆はなるほどそうですかというようにはなかなか簡単に理解ができない。ですから、厚生省として、最も権威ある機関でありますから、家庭の主婦は一体いずれの道を選ぶべきかということについて大変迷っておると思いますので、この際、そういうことについても十分に適切なる明快な行政指導を行われるように、またPRしていただきまして、安心して子供が産めるような医療行政なりそういう点の指導を強く要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  172. 野田卯一

    野田主査 これにて兒玉末男君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  173. 上原康助

    上原分科員 私は、ごく限られた時間でございますので、主に沖繩の医療、社会福祉等の問題についてお尋ねをしたいと思います。  これまでもこの分科会、あるいはそのほかの委員会でもたびたび医療行政なり福祉問題を取り上げてきたのですが、特に長年アメリカの施政権下にあって、沖繩の医療問題あるいは社会福祉の面というのは、本土の全国平均あるいは類似県等々とも比較してきわめておくれをとっている、一部においてはまだ五割にも満たない、平均しても五、六割程度の水準にしか達していないということで、復帰後その格差の是正をしていくということで、少なくとも早急に本土水準に引き上げていくという面で、厚生省初め関係省庁においてこれまで御努力をいただいてきているわけですが、しかし、反面、まだまだ格差の是正ということは、開く一方の面もありますし、なかなか埋まっていないというのが現実かと思うのです。  そこで具体的に後ほどお尋ねしたいのですが、この一般的に言われている医療面の格差あるいは福祉面の格差というものは、厚生省としてはどういう方針あるいは施策によって埋めていかれようとしているのか、本土並みの水準に引き上げるための考え方なりをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  174. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医療面から私はお答えいたしますが、沖繩の医療面の格差は、医師、病床数等の数字の上にあらわれた点は、先生指摘のように二分の一、場合によっては三分の一という実態でございます。復帰後の医療問題の中で、国民健康保険等の普及を見ることによりまして医療供給と患者の需要とのアンバランスが生じておることが一つの強い特徴でございまして、これがまた端的にあらわれたのが救急医療の問題でございます。この点につきましては県当局とも相談し、御希望もございまして、ただいま救急センターの建設を急いでおるわけでございますが、そのほか中部病院等もこれに対応する、あるいは文部省系統にも定員の増あるいは救急部門の強化等をいたしまして、そのほか医師会等の協力もあり、当時よりは若干落ちついた状態になってきておりますけれども、今後にまだ問題を残しております。直接の国立機関も、復帰と同時に国立に戻ったハンセン氏病の療養所あるいは県立であった精神と結核を国立に移しましたが、特に新たな対策といたしましては、付近にございます結核療養所を宜野湾市に移しまして、これに一般病床を加えて国立の新たな療養所を設置したい、将来重症心身等の対策もここでいたしたいということでございまして、国といたしましてはできる範囲の対応の仕方をしているわけでございます。また、基本的にはやはり医師の確保には沖繩の医学部設置問題というものがございまして、文部省がこれに対応いたしております。このような人材の確保あるいは施設の整備というようなことは、若干やはり手順と時間を要する問題でございますが、その間の不足については医療援助等の形をとりまして対応いたしたいと考えておるわけでございまして、県当局の御要望にはできるだけ応じ、また、御要望の問題点が必ずしも県でうまく整理できていない点は積極的にわれわれも助言いたしまして対応いたしていきたい、こういうふうに考えております。
  175. 上原康助

    上原分科員 そこで、もちろん医師の確保とか医療に従事する人材の養成確保というものは、そう簡単にいかない点はいまお答えのとおりだと思います。しかし反面、施設の面においても相当おくれをとっていることはこれまた否定できない事実でございまして、具体的に数字を挙げてもう一度申し上げておきますと、医師の面にしましても沖繩県は全国平均の五三・七人しかいない。全国平均が一一六・七。歯科医師の場合ですとわずか一四%程度しか達していない。看護婦にしましてもあるいは保健婦等においても、三割ないし四割程度だ。助産婦の場合は、わりあいほかの方と比較してもそんなに差はないというような状態になっているということ、これも一朝一夕にはできないにしましても、復帰時点と今日においても、そう充足されたという点はないわけなんですね。さらに施設の面においても、特に養護施設とかあるいは精神薄弱児施設など、母子寮においては皆無の状態なんですね。こういうことを具体的に予算措置を伴って着実に、施設の充実化ということとあわせて医療従事者の人材確保ということをやらないと、なかなか表に言われているような、本土並みの水準に引き上げていくのだということが空念仏に終わらないとも限らないと思うのです。  そこでそういった実態に合わせた政策の立て方、あるいは予算措置というものがもう軌道に乗ってもいい段階ではないかという感じを持つわけです。そういう面で厚生大臣も社会的不公正を是正するということで相当熱意を入れておられるようですが、全国的な面で、ややもすると格差の問題というのがますます埋没をしていくのじゃないかという懸念を持たざるを得ないわけですね。したがってそういった面の実態というものを十分御理解いただいて、ぜひやっていただきたいということを要求しますし、それに対して大臣の御所見なりがあれば承っておきたいと思うのです。
  176. 田中正巳

    田中国務大臣 沖繩における厚生行政、ないしはまた医療、社会福祉等々がかなり本土よりおくれをとっているということは私どもも知っているわけでありまして、私自身も非常に心配しております。医師、ベッド、すべてが——医師がたしか三分の一、ベッドが二分の一というふうなことを聞いておりますが、こうした面についてはできるだけ早く本土と同じ水準に持っていかなければならぬと思いますが、どうも長い間日本の施政権を離れておったものですから、なかなか一朝一夕にいかぬと思いますが、何とかひとつ詰めて、できるだけテンポを早くするようにしなければいかぬという私も使命感を持っておるわけでございまして、過日予算委員会でも話しましたが、私非常に心配しておるものですから、予算委員会の手がすいたら私は沖繩へ行って、この目でひとつその問題をよく見たり聞いたりしまして施策をやりたいというふうに思っております。
  177. 上原康助

    上原分科員 ぜひ現地も十分御視察なされて、特に県民の生命に係る問題でありますし、生活環境において最も充実をさせければいけない厚生医療行政ですから、いま大臣は予算の審議のめどがついたら現地にも行かれるという前向きの御答弁ですから、私たちもまたその熱意を評価しながら前向きに対応していきたいと思いますので、御尽力をお願いしたいと思うのです。  そこでそういう状況下の中で、今年七月から、御案内のように、国家行事ということで海洋博が開催される運びになっているわけですね。救急医療の問題なり、日常の県民生活との関係においても、非常に医療機関というものが少ない。そういう局地的な環境に、さらに、一般的に言われておりますように、三百から四百ないしは五百万の観光客が半カ年の間に行く。そうしますと、当然救急医療も必要になってきますし、また、それなりにいろいろな問題が起きて、医療機関にかからなければいかぬという事態が来ると思うのです。  これについては、もちろん開発庁なり県当局なりと連係をとっておられると思うのですが、この海洋博期間の医療体制というものを、厚生省としてはどうやろうとしておられるのか。特に医師の確保の問題、看護婦の問題その他、それに対応していくだけの臨時的な施設といいますか、それもやらなければいかない問題もあると思うのですが、これをいまのままの状態でやられると、それだけ県民生活にしわ寄せがいくということに結果的にはなるわけですが、いまの段階において、このことも政府で十分詰めた方針を出していただいて、ただでさえ麻痺状態にある医療機関が、これ以上県民の日常生活にしわ寄せを来さない、それも当然やらなければいかない問題だと思うのです。これに対してはどういう対策をおとりになろうとしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  178. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 海洋博期間中の医療対策は、われわれも、県当局相談して、いろいろの計画に対応しなければなりませんが、先生指摘のように、いわゆる人口がふえるわけでございますから、それに対応する医療という考え方が非常に重要になってまいります。  海洋博の会場は、これは協会が診療所二カ所と救護所を五カ所程度設置いたします。協会がこれに対する医師の確保を図り、看護婦もすでに募集しておりまして、お断りするほど応募者があると聞いておりますので、ほぼ看護婦は確保できると思います。  それから、それは協会がやる分野でございますが、沖繩県全体に、その期間の間、医療体制を強化する必要がある。これについて、先ほどお答えした、従来の一般的な医療援助の通年的な予算のほかに、この六カ月の期間、医師、看護婦を派遣する予算を別枠で約七千万確保いたしております。  医療機関等につきましても、それに間に合うような対応の仕方で設備を急いでいるのもございますが、たとえば国立の宜野湾は、病院まではまだ持っていけませんので、海洋博の期間は、外来患者ぐらいは宜野湾でも必要に応じては取り扱おうということで工事を急がせておりまして、一部、宜野湾でも診療所的開業をいたしたいというふうにして、あらゆる角度からできるだけの努力をして、沖繩海洋博期間中の沖繩医療対策という観点で、県の方とも相談の上、進めておるわけでございます。
  179. 上原康助

    上原分科員 幾らかの予算措置もやって、十分対策を講じつつあるんだというお答えですが、具体的に言いますと、では、その期間、医師はどのくらい確保せねばいかないのか、あるいは看護婦についてはどうなるのか、どういう施設に——いま、宜野湾ということもありますが、後でこれもお尋ねしたいのですが、工事の進捗状況は、当初の計画よりもかなりおくれているわけですね。これも、いまの状況下でやむを得なかった面もあると思うのですが、しかしおっしゃるように、外来の救急患者を、いま宜野湾につくりつつある国立病院に収容できるかどうかも、確たるめどはまだついていないという状態です。そういう状況下で日にちがどんどん迫っていった場合は、私はもう少しこういう対策についても積極的にやっていかないと、ただでさえ海洋博に対しては拒否反応がありますし、いろいろな抵抗があるという状態、ましてや夏休みとか、そういう状況下において、県民の医療行政の面、医療機関の活用というものが、従来以上に渋滞なりいろいろな問題が出たという場合は、ますます混乱を来さないとも限らないわけですね。そこいらは、協会の方に任せっきりじゃなくして、厚生省の方として、より積極的な対策、対応策というもの、医療従事者の人材の確保というものを進めぬといかない問題だと私は思うのです。  したがって、このことは、いまのお答えだけではちょっと漠然としているわけですが、そこいらは具体的にはまだ計画は持っていらっしゃらないということですか。
  180. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 予算を詰める際に、県の御意見をよく聞きまして、これは開発庁も絡んでおりますけれども、聞きまして、中部病院はどういう系統のお医者を何名ぐらい欲しい、あるいは宮古、八重山方面でも観光その他で人口がふえる。したがって、あそこの離島の県立病院も若干強化しなければならぬ。そういうものを積み上げ、それに対応する看護婦を積算してございまして、基本的には県の考え方を十分しんしゃくした上で決めておりますので、細かい計画はやはり県の側でお立ていただき、診療科目等の医師の確保については、先生おっしゃるように、国立病院あるいは一部文部省系統の国立大学等から御協力いただいて、われわれも全面的に派遣に努めたいと思っているわけでございます。  宜野湾は確かに外来だけでもというのがせめてものわれわれの間に合わせたい気持ちでございますが、これは間に合うようにやりたいという気持ちで進めておるわけであります。
  181. 上原康助

    上原分科員 そうしますと、海洋博期間中の医療面においては支障は来さない、対策はできるというふうにお考えだというふうに受けとめていいですね。
  182. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 これは県の判断も加わっておりますので、ただ、私、現地をつい最近見まして、やはり救急問題を考えたりしたときに、名護病院と会場との間の道路の問題が、非常に海洋博全体の計画の中から、名護まではいいのですけれども、名護から向こうの海洋博会場までの道路の整備がうまくいってない点が、救急確保の上では——会場へ行く一般の車もあるわけですから、そういう細かい問題につきまして、ちょっと、われわれが初めから計画に参加したというよりも、その状態に応じた対応をしなければならぬというときに、非常に細かい面を言えば若干のそういう不安がある。あるいは海上輸送の問題も恐らくいろいろあろうと思います。こういうようなことも含めまして、名護病院でかなり受けとめられるような態勢を整えますけれども、その輸送の問題については、私、非常に細かいことですけれども、率直に言って若干の不安を持っているというようなことですが、一応は現地の県当局の判断で、医師、看護婦の確保のめど、現在持っておる上にプラスしてこれだけ欲しい、こういうことで予算はセットしたわけでございます。
  183. 上原康助

    上原分科員 きょうは時間がありませんから、細かいところまで触れられません。ですから、明日また運輸省あたりにこの輸送の問題については私もお尋ねしますが、いまおっしゃるように、確かに名護から本部まで詰まってしまうわけですね。道路網が整備されていない。したがって、名護の病院を中心にどういう態勢をとるのかということと、いま一つは、会場周辺にはどういう医療機関を設置してどういうふうにするのか、輸送については、場合によっては、陸上は詰まるわけですから、ヘリコプターのそれなりの対応策というものを考えなければいかないわけですね。そういう具体的な面まで政府の相互間でもう話し合いを詰めないといかないと思うのです。もちろんこれは県が主体にはなるかと思うのですが、しかし、政府とてそういうことについてはおろそかにできない問題ですから、そういうことをむしろ皆さんの方から具体的に私はお聞かせいただきたかったのですが、どうかそういうこともあるということを御念頭に入れてこの問題を善処をしていただきたいと思うわけです。  そこで、次にお尋ねしたいのは、最初に申し上げた施設の問題とも関連があるわけですが、重症心身障害児対策について相当おくれがあるわけです。たしか厚生省の計画では、四十九年から五十一年までに百五十八床を計画をして増設をしていくという計画だと思うのです。そういう施設の増設計画の中に沖繩の方も入っておるのかどうか、その点についてもちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  184. 上村一

    ○上村政府委員 私ども昨年の調査で約一万三千四百人の重症心身障害児を施設に入れる必要があるということで、今年度末までの施設整備量が約一万二千三百床でございますから、あと千百床つくれば一応五十年度中に必要な施設は整備できるというふうなことを考えておるわけでございます。その場合に、沖繩県も当然対象の中に考えておることは言うまでもないということでございます。
  185. 上原康助

    上原分科員 これも、現地の施設の状態ども十分勘案をしていただいて、ただ平均化するのでなくして、いろいろな要望があると思うのですが、やはりおくれている方を上げていくというのが一つ行政あるいは政治の要諦でないといかぬと思いますから、そこいらも特に御配慮いただきたいと思うのです。  いま一つは、これも特に弱い立場にある方々の問題ということで提起もしたいわけですが、御承知のように沖繩の場合は非常に老人人口が多いわけですね。六十五歳以上の人口というのが六万二千を超している。百歳以上にしても全国で一番多いというデータが出ているわけですが、しかしその反面、こういうお年寄りの方々のいわゆる保養の施設とか、あるいは老人ホームというような施設はほとんどないという状態なんです。したがって、聞くところによりますと、いわゆるいま厚生年金で計画をしている総合老人ホームというのが、これまた四十八年から五カ年計画で全国で二十カ所ですか、計画をしている。まだ新規にあと四カ所ぐらいの配分が未定のままになっているというふうに聞いておるわけですね。全国一長寿者が高い県であるならば、しかも施設が全然ない、当然総合老人ホームというものも沖繩にもつくって、そういったお年寄りの方々の保養や施設というものを考えていいと思うのですが、こういう御計画はいまのところ全然ないのですか。まああると思うのです。
  186. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 厚生年金の福祉施設の事業といたしまして、いま御指摘のような年金受給者の老人ホーム、それから働く人たちの文化、教養の施設あるいはスポーツの施設、そういった総合施設を整備する計画を進めておるわけでございます。現在一カ所完成しておりますが、調査中の地域もございますし、沖繩県につきましては今後の問題として検討してまいりたい、かように考えております。
  187. 上原康助

    上原分科員 まだ具体的にはやるかどうかということは考えておられませんか。
  188. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 現在具体的な計画は持っておりませんが、一応この施設の目的に照らしての適地あるいは利用人口、そういったものの頻度の高いものから逐次取り上げていきたい、かように考えておりますし、沖繩の事情は頭に置きまして今後の問題として検討したいと考えております。
  189. 上原康助

    上原分科員 一応対象にはなっているようですから、ひとつ忘れないで頭に入れておいていただきたいと思うのです。  それと、これは以前から私も取り上げてまいりましたが、混血児の対策の点なんですが、ようやく特別児童扶養手当の法案も改正してやるという方向は出てきているわけですが、この問題は私もこの分科会でも一、二回取り上げて、その後も厚生省関係者の方々とも話し合ってまいりましたが、今度の法律が改正されますと、完全に日本国籍を持たない児童たちについても児童手当の適用ができるということ、いま一つは国民健康保険も、これは法律改正でなくして市町村の条例制定をすることによってできるんだということですが、その面も県なり市町村厚生省の方から行政指導をして、あわせて解決を見るというふうに理解をしていいわけですね。
  190. 上村一

    ○上村政府委員 いま特別児童扶養手当とおっしゃいましたが、障害児を抱えた親に対する特別児童扶養手当も当然でございますが、一番問題になりましたのは生別母子、生き別れの母子の児童扶養手当の方でございまして、この児童扶養手当と特別児童扶養手当を含めまして、日本人である母親に養われておる日本人でない子供についても児童扶養手当なり特別児童扶養手当を支給する予算措置も講じましたし、いまお話しになりましたように、今国会にすでに法案を提出いたしました。
  191. 北川力夫

    ○北川政府委員 いまお尋ねの件でございますが、日本国籍を持たない方々に対する国保の適用はそれぞれの市町村の条例で措置をいたしております。  沖繩の場合には、私どもの承知いたしておりますのは、現在大体温血児が約三千人でございまして、そのうち日本の国籍を持っておる方々が二千四百人、残り六百人が他国籍であります。それで日本国籍を有する混血児はもう問題ございませんが、他国籍の場合につきましては、市町村の国保の条例で適用されるように推進中でございまして、現在沖繩の五十三の国保の保険者の中で外国人条例を準備中の向きが十五ないし二十あります。これがことしの四月一日を目途に実施予定中でございますが、これが実施されますと、結果的には実態上ほぼ一〇〇%この六百人の方々が適用になるということでございますので、お尋ねの趣旨はこれによって解消すると思います。
  192. 上原康助

    上原分科員 時間があと一、二分しかありませんので、最後に、これも前から取り上げていることなんですが、原爆被爆者の沖繩の関係です。もちろん被爆援護法との関係もありますので、きょう多くは触れませんが、せんだっての委員会でも、齋藤前厚生大臣が、非常にむずかしいことではあるのだが、今日までのそうした御苦労に対して何らかの方法がないだろうか、今後とも私は検討を続けてまいりたい、こういうふうに言っておられるわけですね。御承知のように沖繩の場合、援護法の九年の格差があるわけですよ。その問題について今後とも継続をしていただいて、何らかの形でその間の医療費の問題なり、関係者の要求に沿う形での解決策を今度も改めて要求をしておきたいと思うのです。これについてぜひ御答弁をいただいておきたいと思います。
  193. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 沖繩の被爆者に対しまして、ただいま御提案のございました特別な措置をさかのぼって実施することは現在の原爆関係二法のもとでは困難でございます。しかしながら、沖繩被爆者の特別な事情がございますので、従来から本土から専門医を派遣したりあるいは沖繩の患者さんを、旅費を持って、広島、長崎の原爆病院に入院していただいたりしておるわけでございますが、ただいま具体的に御提案のございました件につきましては、本年秋に沖繩については全被爆者全世帯について実態調査をいたしますので、その結果をよく拝見いたしたいと思います。
  194. 上原康助

    上原分科員 それでは、時間ですから……。
  195. 野田卯一

    野田主査 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、山中吾郎君。
  196. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私は酒の害、酒害対策について質問をいたします。  この問題については歴代の厚生大臣更迭ごとに質問をしておるので、この分科会で私が質問するとすればもうたいてい厚生省の担当官は、ああ酒害問題例の質問かと顔を見るとおわかりのはずでありますが、厚生大臣更迭ごとに——更迭ごとと考えてみますと毎年どうも厚生大臣がかわっているようでありますが、酒害問題について厚生当局も大蔵省の主計関係も徐々に理解を深めておるようであって、若干ずつ酒害対策予算が計上されておることを一応私はうれしく思っておるわけでありますが、なかなかこの対策が本格的に進められるところまでは行っていないと思っているわけであります。  そこでまずこの五十年度の酒害関係の計上された予算について局長の方からお聞きいたしたいと思います。
  197. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 アルコール中毒対策関係の予算は多岐にわたりますけれども、具体的にアルコール中毒対策としてはっきり計上されておりますのは思想普及関係の三百二万円、またアルコール中毒臨床医の研修、またアルコール中毒の社会復帰推進指導員の研修の予算、四百万円でございます。
  198. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 これも田中厚生大臣が新しく就任されたので、この機会にものの考え方だけを申し上げて理解を深めておいていただきたいと思いますが、国税としての酒税は年々七千億円以上である。今度の予算に酒税の改正案、また大幅値上げがありますが、一方に大蔵省の思想として、大蔵省発行の税に関するパンフレットの中には税というものは福祉社会の参加費用という定義を下しておる。そういう点から言いますと、酒を飲む者から七千億の税金を引き上げているのであるから、酒を飲むでアルコール中毒になった者に対してはむしろ国費で救済をしてやるくらいの予算は十分に計上すべきである。福祉社会の参加費用として税を定義するならば、目的税として還元をするという思想がなくてもそれくらいのことはすべきであると思いますけれども、いま当局からお話がありましたように、七千億の国税を吸収しながら、医者のアルコール中毒の診療研修、社会復帰研修について四百万、普及費について三百万、計七百万、私はこれをPPm程度の予算というのでありますが、これでは余りにも税行政の倫理というのかモラルはゼロ以下であると思うので、この辺は大蔵当局厚生省においても、国の財源の徴収のために七千億の酒税をとっておる立場から、せめて酒を飲み過ぎてアルコール中毒になり、精神病院に数回入院してはまた失敗をし、また入院しては失敗をし、妻子が悲惨の苦しみの中に家庭はまさに崩壊せんとする人々、しかも、酒はやめたいのだがしかし意志が弱くてまた繰り返す、こういう者に対する十分の予算を計上してやるべきではないのか。酒税七千億の千分の一で七億である。一万分の一で七千万である。十万分の一で七百万。七百万というのは酒税の十万分の一である。それくらいの予算を計上するのに大蔵省の主計官が最初にゼロにしてみたり何かして喜びを感じているというような、この現実の酒税と酒害対策政策との関係を見ますと、余りにもアンバランスである。ヨーロッパ水準から考えますとまことに酔っぱらい天国と言われておる日本にとって、これほどヒューマニズムのない悲しむべき予算状況はないと思うのであります。田中厚生大臣もその点は十分実態をつかみながら認識をされて、次の厚生大臣にも申し送りをしておいてもらいたい。これも主計官に毎年言っていることでありますが、ものの考え方を先に申し上げておきたいと思うのであります。  そこでいま報告を受けました臨床医等研修委託費ですが、項目としてはこういう委託費の四百万が計上されておる。そしてアル中の社会復帰推進指導員の研修については表面はゼロになっている。しかし使い方について両方使えるという意味でいま説明されたと思うのですが、それは間違いありませんか。
  199. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 間違いございません。
  200. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 念のために主計官の方からもお聞きしておきます。
  201. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいま御指摘の点は公衆衛生局長から御答弁申し上げたとおりでございます。
  202. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 主計官にお聞きしておきますが、いま私の申し上げた論理は当然の論理だと思うのですが、これを査定した主計官の感想をひとつお聞きしておきたい。
  203. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 山中議員の年来の御主張は、私ども先輩から年々引き継いでおりますので、十分承知しておるわけでございますが、ただ御案内のとおり、酒税は一般財源でございまするので、目的財源としてやるという考え方はとっておらないわけでございますけれども、ただアルコール中毒対策の経費は、ただいま御指摘になりました七百万、五十年度で申しますと治療再発防止研究費二百万程度を予定いたしておりますので計九百万ということに相なりますけれども、実は、これは啓蒙とかあるいは先ほどおっしゃいました研修等のいわば行政部費でございまして、いわゆる治療の問題とかそれから社会復帰等の問題精神衛生対策、これは総額五十年度八百五十四億円計上いたしておりますが、その中に入っておりまして、この部分からアルコール中毒対策の経費を抽出して区分経理するというやり方をとっておりませんので、五十年度で申し上げますと一兆円を超えます酒税収入が見込まれるわけですけれども、それに対しまして七百万というふうな受け取り方をされますと、ちょっと私どもは困るというふうに思います。いずれにいたしましても五十年度アルコール中毒対策については新規の事業等も考えておりますので、その点はひとつ御了解を願いたいと思います。
  204. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 主計官の言われたとおり、久里浜国立療養所にもアル中の病棟もあるから、それを予算に計上する、それでも大体二、三千万じゃないですかな、もっといっていましたかな。
  205. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 ただいま先生から久里浜の問題もございましたが、一応アルコール中毒の研修等の中核施設をつくるという方向で一億の整備費がまず入っておりますので、これを五十一年度もさらに充実して期待にこたえたいと思っております。
  206. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 まあ一億と見ても、いま一兆円と言いましたから、一兆円に対する一億だから……。目的税でないことはわかっておるんですよ。ただ、福祉社会に参加しようという定義を前提とした場合、酒を飲んで困っておる人を救うぐらいは十分さるべきだという思想は確認してもらいたい。役人は、自分が飲むものですから、気が引けて予算を計上しないのじゃないかとぼくは心配しているのだが、飲むのは結構ですから、いい酒を飲んで、人に迷惑をかけない、奥さんも悲しまないなら飲んで結構なんだが、体質的に、飲むとアル中になって、そうして別人のごとくになるという者は救済すべきである。このことは、どこの町村に行っても、四、五人おれば大変空気を悪化せしめる影響力が非常に深いものでありますから、その辺は何回でも、私が国会におる間は、厚生大臣の更迭ごとに申し上げているので、この機会にも認識を深めてもらいたいと思うのであります。  社会復帰推進資料にも使えるということでありますが、最近、だんだんとアルコールのきつい洋酒も入りまして、アル中ボーダーラインの者は非常にふえておる。精神病院に入る者はまあ二万足らずでありますけれども、潜在アル中は大体百万人いると言われておるわけであります。そこで、潜在アル中という定義は相当広くしなければなりませんが、夕方になるともう飲みたくなるというのを含んでですよ、これは大臣まで入るかもしれぬが。いずれにしても、各町村においてもみずから精神病院に入って卒業した者が、自分の体験から何とか救おうというので断酒修養会、社会復帰のためのグループをつくって、一市町村一断酒会というふうな運動が始まっておるわけであります。そういうときでありますから、社会復帰のための費用にわずかな四百万であっても、そういう要望があるときには、執行面において厚生省においては十分に考慮をしてもらいたい。これを要望しておきたいと思うのであります。  次に、先ほどちょっと触れましたが、国立療養所久里浜病院、あそこは日本のアルコール患者の中央病院という位置にだんだんなりつつあると思います。そこにアルコール研修センターといいますか、施設が設置されるべきであるというので、昨年も厚生大臣質問をして、その点については十分に検討するという回答を得ておりました。どうも今度の予算にはそれが出ていない。どういうふうになっているかをお聞きしたいと思う。
  207. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 先ほどもちょっとお答えいたしましたように、久里浜にアルコール中毒の病棟をつくり、あそこの河野先生が非常に熱心でございまして、われわれもかねがね日本のアルコールの医師の研修等の施設にしたいという希望を持っておりまして、河野先生もそれぞれ構想を持っておるわけでございます。五十年度予算に一億円の施設整備費が入りましたので、河野先生の御意見を十分聞きながら、従来の久里浜病院にプラスして、どのような機能をどういうふうにつくったらいいかということを十分検討した上で着手したいと思いますし、また、その運営等を含めましても、さらに五十一年度にも検討の上、予算要求して充実を図らなければならない。ただ建物だけでは無理であろうと思いますので、そのような点も十分専門家の御意見を聞きまして対応いたしたいと思っております。
  208. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 施設としてこれから進めることになっておりますか、もう一度……。
  209. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 施設として進めるということでございます。
  210. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 次に、昨年から厚生省でも努力をされまして、こういう精神病院から社会復帰をする者がまた繰り返すことを防止するために、先輩の卒業生が指導してグループをつくり、断酒修養会という言葉を使ったり断酒会という言葉を使うのですが、社会復帰収容施設と言っていいと思いますが、そういうものがあちらこちらにできております。しかし、それは、みずからの体験者で個人が寄付をしたり施設をつくったりして、個人の寄付で努力をしているのが多いわけであります。  これに対して国が補助をする道はないかというので、厚生省では自転車協会ですか、あそこにアルコール中毒患者の復帰の事業というのが、明示はなかったのでありますけれども、特につけ加えて、そこから補助できるように、規約も改正をして進められておるのを聞きまして非常に喜んでおるわけであります。武蔵野市にそういう施設を置くことについて協力するという約束のもとに、来年進めるようになっておりますが、それと同じ施設で和歌山に、由良町の白崎に和歌山断酒道場、言いかえればアルコール中毒社会復帰訓練指導の施設でありますけれども、この道場長の児玉正孝、この人も十回以上精神病院に入ってやがて卒業して、みんなのために生涯をささげるというので、この経営者になっておる人でありますが、私にこういう援助の手紙が来ております。これをちょっと読みますので、厚生省に協力を願いたい。   当道場は、昭和四十三年十月、和歌山市有本町中村化学株式会社中村弥次郎社長の私費を以って宅地造成を始め、昭和四十四年四月、建造物が完成致し、同年五月一日開場式を催した次第です。   此の間の総費用は約壱千六百萬円を要しましたが、これらは全て中村社長個人の奉仕によるものです。 この人はアル中から卒業した会社の社長なんです。   当道場は収容人員拾五名で、道場費は一名に付き一ケ月弐萬円と定めておりますので、年間収入は平均約参百拾萬円となっております。   支出は主として食糧費ですが、別に作業器具及び什器、備品並びに建造物の補修・補填・改造・新設等で年間平均約九拾萬円の赤字経営となっております。これらの赤字の補填は、約八割を中村社長個人が補助金として援助下され、残りの不足分は道場出身者の寄附金に依り現在迄は経営してまいりましたが、現今の如き物価高では年間壱百参拾萬円の赤字経営となるものと予測されます。   アル中者家族の要望に依り、収容人員数を貳拾五名に増員致したく計画致しております。   増員に伴い現在の借用地一、三五六坪を更に増して三、〇〇〇坪となせば、宅地造成費及び別棟寮の建設費は約貳千五百萬円を要するものと考えられます。 これはもっと多いんじゃないかと思います。   以上の如き現状であり、又、私としましても将来への希望は捨てません故、何分の御配慮を賜り度くと書いて援助の要望をいたしておるわけであります。これは全部自分がアル中から卒業した者が、罪滅ぼしではない、みんなに尽くすために会社の社長が寄付をして、土地を与え建物を建てて努力し、全国からそういう者が集まって、そして家庭に復帰をして、どれだけ家族や奥さん方がこれで救われているかわからない。国はこれに対して何らの手当てはされていないのであります。こういうものに対して、ぜひ厚生省においては施設、設備その他についての援助の手を差し伸べるべきではないか。国自身の補助というものがむずかしければ、先ほど言ったように、皆さんの管轄でなし得る団体を通じて援助をすべきだと思うのですが、いかがですか。
  211. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 先ほどお話がございましたように、日本自転車振興会等から、建物、設備について補助金をお出しすることは可能であると考えております。
  212. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 一般論としてはそうですか、こういう具体的な問題に対して具体的に努力されるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  213. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 申請がございますれば、当然できる限りの努力をさせていただきます。
  214. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 私が申さなくとも、簡明に要望をすればもうこれでたくさんでありますが、ひとつなお遺憾に思うことをつけ加えて御質問いたしたいと思うのでありますが、大蔵省、あるいは文部省の社会教育問題にも関連すると思うのですが、最近酒の自動販売機があちらこちらにある。しかし一方に未成年者飲酒禁止法という法律があります。これはほとんど守られておりません。日本の法律で、守っておるのが非常識に見えるのは未成年者飲酒禁止法と公職選挙法かもしれない。しかし、この未成年者飲酒禁止法という法律は厳然として存在をしておるのである。せめて未成年のときは酒から離しておかないと、大体十代から飲んでいる者がアル中になります。せめて二十歳までは酒の習慣をつけないでおけば、一生そんなにアル中になって家庭を崩壊するような者が出ないようになり、予防としては最善の道だと思うのです。一方にそういう法律があるにかかわらず、勝手にだれもいないところで金を入れれば酒が出てくる自動販売機を設置されておる。それほど酒の税金を集めたいのか、それほど倫理的な立場を伏せて財源を確保すべき必要があるのか、私は非常に奇異に感ずるのであります。これだけは私は撤廃すべきではないかと思いますので、これは国税庁ですから主計官は直接関係ないが、大蔵省の行政官であるので、大蔵省にまず御意見を聞きたい。
  215. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 ただいまの先生の御指摘でございますけれども、本日この場におきましては一つの御意見として承っておきます。
  216. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 御意見として承っておくという言い方は、大臣みたいな言い方をしておるが、もう少し価値観を出したらいいでしょう。もう一度聞きましょう。何かその言い方が不遜だね。
  217. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 山中議員の御指摘の点について意見を述べろということでございますが、それに対する大蔵省としての公的意見がいかが相なっているか、私は所管の関係で責任を持った公的な意見を述べる立場にございませんので、御了承願います。
  218. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 国税庁に伝えたらどうですか、予算分科会でぼくからこういう話があったと。しかし、未成年者飲酒禁止法という法律があるのですから、行政官はそれに応じて政策を立てなければいかぬのですから、未成年者飲酒禁止法を全く無視しているような自動販売機を置くことは、これはだれが見たってよろしくない。これは不適当であるから国税庁に伝えるという、それくらいのことはあなたは答えなければいかぬでしょう。国税庁を呼ばないのが悪いのですが、これは伝えてください。
  219. 梅澤節男

    ○梅澤説明員 未成年者飲酒禁止法と酒の自動販売機の関係について、本分科会山中議員から一つの御提案があったということにつきまして、国税庁関係部局に伝達いたします。
  220. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 それでは伝えてください。  最後大臣に、これはもう私の顔を見ると何を質問されるかわかっておるのですが、通常国会ごとに厚生大臣がかわるものですから、これが予算面においても断絶をしてくる傾向がある。田中厚生大臣にこの問題について、いま申し上げたことも含んで御意見を承って、少しでも国の厚生行政が発展するようにいたしたいと思うので、大臣の感想を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  221. 田中正巳

    田中国務大臣 私、長い間社会労働関係の仕事をしておりましたので、山中先生連年いろいろと御努力をなさっていたことはよく知っております。歴代厚生大臣もいろいろ先生の御注意によりまして徐々に政策を積み上げてきた。先生が最初におっしゃったときにはここまではいっていなかったわけでありますが、私も先生の御趣旨に沿うて努力を重ねてまいりたい、こう考えております。
  222. 山中吾郎

    山中(吾)分科員 終わります。
  223. 野田卯一

    野田主査 これにて山中吾郎君の質疑は終了いたしました。  次に、永末英一君。     〔主査退席、三ツ林主査代理着席〕
  224. 永末英一

    永末分科員 最近歯科医師が行っております診療で、差額徴収という名目で患者から料金を取っている問題がきわめて社会的問題としてにぎやかになっております。歯者医師というものは差額徴収の名前で正当を欠く費用を取っているのではないかと疑っている人もございますし、また大多数の歯科医は正当な診療行為をしておるのに、そういう一般的な雰囲気の中に置かれておることをきわめて苦々しく思っているのが実情だろうと思います。  まず第一に、厚生省厚生大臣とされましては、医療というのは医師と患者との相互信頼がなければ成り立たぬのでございまして、現在の保険診療というのはその支払い方がきわめて特異な形になっておりますが、さらに保険診療というものを片方に見つつ、いまのような差額徴収の問題が起こりますと、この医師と患者との間の相互信頼の環境というものがきわめて破壊される。いまのように問題が起きますとそういう傾きがあるのでございまして、厚生大臣とされましては全力を尽くして歯科医療というものについて医師と患者との間の相互信頼が回復せられるように私は努められるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
  225. 田中正巳

    田中国務大臣 先生おっしゃるとおり、全くそのとおりだと思います。
  226. 永末英一

    永末分科員 さて、いま大臣もおっしゃいましたように、そのためにはやはりいわゆる差額徴収あるいはそれが取られている差額診療の実態、性格というものを明らかにしておかねばならぬと思います。この点について厚生省の所見を伺っておきたいと思います。  第一に、厚生省は差額徴収というのを昭和三十年八月以来認め、昭和四十二年十一月にはこれを拡大して認めておると思いますが、そうですね。
  227. 北川力夫

    ○北川政府委員 そのとおりでございます。
  228. 永末英一

    永末分科員 それはどういうものについて認めておりますか。
  229. 北川力夫

    ○北川政府委員 現在認めておりますのは、ダミーの三歯以上のブリッジ、それから金合金及び白金加金を使用いたしました歯冠修復及び欠損補綴並びに金属床及び陶材を使用いたしました特殊な補綴、以上の範囲でございます。
  230. 永末英一

    永末分科員 要するに補綴に関連をする部面が大部分を占めているように私は思うわけでございますが、なぜこれを認めたんでしょうか。
  231. 北川力夫

    ○北川政府委員 これにはいろいろ、三十年までの経緯、また三十年にその範囲を拡大いたしました経緯等もございますが、要するに患者さんの方で、やはり歯科治療というものは一般医科と異なりまして相当特殊なものでございますので、そういった御希望の向きがあって、これに保険診療というものをベースにしてこたえていくということになりますと、やはりこの程度の範囲のものが行政当局といたしましても、また関係団体といたしましても合意できる線であったので、こういう現在のような仕組みをとったものと承知をいたしております。
  232. 永末英一

    永末分科員 いま国民皆保険と言われておりますが、保険診療というのは、いわゆる被保険者、患者にとりましてはただで治してもらえる、こういうことが頭にあるのですね。現実には何ぼか負担をしなくちゃならない制度でございますけれども、その中軸はただである。そのただであると思う患者が歯科医のところへ行って、そうしていま言われたような補綴というのは、主たる歯科疾患というのは補綴を要することが多いのでございますから、それが、たとえば金なりあるいは白金なりあるいはそれを使ったブリッジなりというようなものをやった場合に金を取られるということがきわめて大きな違和感を抱いておると思います。いまあなたは保険をベースにしてと言われましたが、一体この差額徴収を伴う診療、これを差額診療と言いますと、これは一体そのキャラクター、性格は自由診療なんですか、保険診療なんですか。
  233. 北川力夫

    ○北川政府委員 やはり差額の部分について申し上げれば、これはもう自由診療でございます。
  234. 永末英一

    永末分科員 差額の部分については自由診療という答えではちょっと私は不十分だと思う。患者が歯科医のところへ行く、そうして金合金によるたとえば冠をつくってもらおう、こういうことを患者から歯科医の方へ向けて要請があって、歯科医はそれにこたえて冠をつくろう、こういう場合に、その全体の行為は一体自由診療なのかどうか。たとえばそれを幾らでやろうという契約をしますね。そこを聞いているわけです。
  235. 北川力夫

    ○北川政府委員 ですから、こういうことだと思うのです。つまりいま申し上げましたような、また先生指摘になったようなそういったものにつきましては、その治療に要する慣行料金というものがあるのでございます。ですから、その慣行料金から、その治療に最も近似した診療行為の保険点数換算額というものを控除をいたしました残りがいわゆる患者の負担になる差額、そういうものになるわけでございます。
  236. 永末英一

    永末分科員 私が申し上げているのは、事の実態をまず見きわめていただきたいと思うわけであります。それは、患者がやってきて、たとえば金冠、金合金によるところの全部鋳造冠をつくってくれ、こう申したときに、よろしい、それでは一本たとえば三万円なら三万円いただきたい、これで契約が合意に達する。そうしてその治療が行われる。その支払い方については、患者が健康保険証を持っている場合には、その全部鋳造冠に関する、これは金パラジウムですよ、使われる材料は。その部分だけは点数に合わした金額を計算をして、それを差し引いた差額をもらう、こういういわば精算方法なんでしょう、健康保険証が使われるのは。もともと金合金によるところの全部鋳造冠をつくるというのは保険診療ではないのでしょう。いかがですか。
  237. 北川力夫

    ○北川政府委員 たしかおっしゃるとおり慣行料金でございますので、それは自由診療だと思います。
  238. 永末英一

    永末分科員 さて、祖国復帰前の沖繩では、療養費払い、すなわち患者が歯科医のところへ行きますと、まず金を払って、それから後で患者がその保険部分について点数によって計算をした費用をもらう、こういうことがありましたですね。ところがわが国では、価格の決定は行われるけれども、精算は先ほど私が申したように行われているので、歯科医は基金から保険部分を金をもらい、後の部分は患者からもらう、こうなっている。問題が起こっているのは、その患者からもらう部分ですね。そうですね。
  239. 北川力夫

    ○北川政府委員 そのとおりでございます。
  240. 永末英一

    永末分科員 一つの問題は、いま慣行料金という言葉が出ましたが、慣行料金がきわめてばらついているところに問題がある。したがって厚生省としましては、この慣行料金のばらつきをこのままいいとお考えかどうか。
  241. 北川力夫

    ○北川政府委員 慣行料金でございますので、やはり性格上地域差もございましょうし、また個々のお医者さんによって違っている面もあると思います。ただ、私ども一般的、常識的に考えまして、同じような条件にある歯科医師の方々の間で著しく違っておるというふうなことはやや正常ではないのじゃないかと思われるケースもあるわけでございます。現在所によっては、地域ごとに協定をされまして慣行料金というふうなものの標準をお決めになっているところもあるようでございますけれども、絶対的なことは申し上げかねますが、余り極端なばらつきが同じような条件のところにある、これはやはりちょっと常識上おかしいという感じを持っているような実情であります。
  242. 永末英一

    永末分科員 口の中、歯の問題というのは、それぞれ各人千差万別でございまして、これに対する治療もまた千差万別であろうかと思います。そしてことにいま取り上げている問題は、性格は自由診療だということになりますと、歯科医の過去の経験というものによってその診療の内容もまた千差万別になってくる。千差万別だということになると、そして患者と歯科医との契約によって値段が定まるということになりますと、相当な値幅ができようと思いますが、しかし全体的に見れば、やはりそれぞれの料金について、いまの社会情勢上、あるいは慣行と言えば社会慣行上ある程度の幅でおさまるのが私はやはりあたりまえではないかと思うのです。そのために、あなたはいま不正常な状態があるがと言われたけれども厚生省としてはどういう努力をしておるのですか。
  243. 北川力夫

    ○北川政府委員 何分にもいま先生の仰せのとおり自由診療についての慣行料金でございますので、自由診療の部門にまでは立ち入って幾らがいい、幾らならいいというふうなことまで十分なことをわれわれは申すことはいかがかと思います。  ただ、自由診療ではございますが、先ほども申し上げましたように保険診療に隣接した部分でございますから、そういう意味合いでそういった差額の取り扱いというものについては前年からも十分申し上げておりますとおり、十分納得づくで、また希望があった場合に限って、また十分その仕組みを理解してもらった上で行う。先生おっしゃるとおり、個々の患者さんについておよそ歯の状態はみんな違うわけでございますから、そういう要素はございますけれども、そういった現行のルールの中で十分な納得と理解、そういうものが徹底をするように、これが私どもの保険サイドからの指導と申しますかあるいはまた関係団体に対して協力を求めると申しますか、そういうことの一つの限界ではなかろうかと思います。
  244. 永末英一

    永末分科員 あなたは保険局長さんだから保険サイドばかりながめているけれども、そこで最初私が伺ったのは、根本的な性格は自由診療なのかどうか。あなた自身はいま自由診療と言われたじゃないか。問題は、それならば、そうだといたしましても、いまの社会の経済情勢上あるいは社会の習俗、慣行上リーズナブルな価格帯というものがあり得るはずだ。それがあなた自由価格だからタッチできないんだ。それは保険の方から見ていると自由診療はタッチできない、こうなりますけれども、厚生行政全体、そしてその中における歯科治療というものを位置づけた場合には、たとえば全部鋳造冠なら一歯これぐらいがいまの情勢から見て妥当だというような、そういう方針は厚生省として出ないんでしょうか。ブリッジならこれぐらいだと、出ないものなんですか、どうですか。
  245. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 医務局としての行政の立場から、慣行料金についての一般的に技術料、材料費、人件費等総合されたものであろうと思うのでございます。日本歯科医師会というのは厚生省が認可しました一つの団体でございますが、会員の組織率と申しますか、歯科医師の数からいくと八八%程度と承知いたしておりまして、一〇〇%ではないという問題が一面ございますし、保険医でない方が三、四百名おられるらしいのでございますが、そういう基本的には厚生省認可の団体でございまして、先ほど指摘がございましたように余り各地に、いわゆる自由料金でやっても標準的なものがないことはおかしいということは当然でございますので、歯科医師会等におかれましては、この点を各県ごとに標準値を定めるという方向でただいま努力していただいておるようでございますし、またわれわれ持っている資料でも、たとえば愛知県の歯科医師会の歯科診療報酬標準料金表というようなものも現実にございますし、また過去にわれわれの手にあるものといたしましては、歯科医師会の委員が作成しました標準報酬に対する指標と申しますか、技術指数というようなものの考え方も承っておりますので、歯科医師会としては基本的に、何か先生のおっしゃる標準価格的なものの方向で考え方は動いておるし、われわれ行政の面からは、歯科医師会に対してそういうものの設定が望ましいという方向で指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  246. 永末英一

    永末分科員 いま愛知県の例を申されましたが、近畿、北陸の歯科医師会も集まりまして、歯科診療報酬標準料金表というものを相談している。これはしかし歯科医ベースでの話ですね。しかし、いまあなたが言われたように、歯科医師としても変な疑いを受けるのはまことにこれは心外なことであろうと思いますから、そういう動きが出てくるのはあたりまえである。  さてそこで、標準料金というものが決まった場合に、厚生としてはどうされるんですか。
  247. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 決まった場合、団体がお決めになったものでございますので、それを会員としてお守りになっていただく。そして、著しい医師としての不道徳的なことのないように、社会から指弾を受けないようにというようなことは、当然私は歯科医師とし、また歯科医師会の会員であるという以上は、期待しておるわけでございますが、それで前段にやはり組織率を八八%、一〇〇%でないと申し上げました中に、歯科医師会員でない方もあるということは、こういうような物の考え方に、一〇〇%それでよいと言えるかどうかという問題がございますので、私は非常にこの組織率の問題には関心を持ってこの問題を見ておるわけでございますので、その点もお答えの中に入れたわけでございます。
  248. 永末英一

    永末分科員 歯科医師の免状を持っておって歯科医師会に入っていない人は、働けなくなった人もございますし、いろいろございますわね。それから、診療所に勤めてない人もあるわけであります。だから一般開業医の団体である歯科医師会に入る実績を持たぬ人は、これは入っていない。だから何も組織率だけがめどであると私は思いませんが、ただいまあなたのおっしゃったように、ほとんど大部分を包含している歯科医師会がそれぞれの地域でいまのような標準料金をつくれば、それは厚生省としては尊重されるわけですね。もう一度お答え願いたい。
  249. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 そのような団体がお決めになったものでございますので、私たちはその標準価格を尊重するというよりも、そういう物の考え方で歯科医療を進めることについて、従来われわれが希望していた線で決められていくということでございますので、これを尊重し、なおかつ、それに著しい違反のない対応の仕方が望ましいものとして今後も指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  250. 永末英一

    永末分科員 厚生省は、一般の開業医につきましてはいまのようなお答えが出たのでありますが、国立の病院とか公立の病院とか、ここも同じ歯科診療所を持っている病院がたくさんございます。ここも同様の問題があるわけであります。この国立や公立の病院の歯科診療におけるこの種の問題については、厚生省としてはもっとタッチできる問題ではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  251. 滝沢正

    ○滝沢政府委員 この問題は、公立等の問題については私実情を詰めておりません。しかし考え方としては、従来分娩料のような、ちょっと性格は違いますけれども、保険以外の自由診療の分娩料を、国立や公的のものはその地域の慣行料金を標準にして大体考えるというような考え方になっておるようでございます。今回文部省が出された国立大学の歯科診療の問題についても、やはり一定の料金を決めずに、それぞれの地域の事情を勘案して一つの考え方を持ち込んできてくれというような指導をなさっておるようでございます。それから国立病院にも、九十カ所ぐらいのうち六十カ所ぐらいが歯科診療を実施いたしておりますけれども、これは原則としてもう健康保険の歯科医療だけをいたしておるというのが実態でございます。
  252. 永末英一

    永末分科員 さて、いまのは自由診療の性格を持っておる治療の方から接近をしてみたのでありますけれども、金とか白金とかこういう材料を使う、そういう治療は保険にはどうして組み入れないのですか。
  253. 北川力夫

    ○北川政府委員 やはり保険でございますので、またこういうものを組み入れる場合にも、いわば制限なく組み入れるということになりますと、当然負担の問題というものが絡んでくると思います。でございますから、そこにはおのずから一定の、負担面からながめた限界があろうと思いますこと、それからまた、歯科診療の学問的なことは私も十分には承知いたしておりませんが、現在の保険でやっております分でも、通常必要な治療というものは保険診療で賄えるということでございますので、そういったところを考えまして、さっき先生が言われました四十二年のその範囲に現在は限定しているわけでございます。ただし、この問題はいろいろ問題がございますので、保険診療の領域における差額問題をどう扱うかということを現在中央社会保険医療協議会に諮問中でございますから、そういったところの審議の結果を待ちまして、いまのような問題も含めて全般的に検討させていただきたい、かように考えております。
  254. 永末英一

    永末分科員 その負担と申しましたけれども、患者の負担であるよりは財政の負担がこわいと、こういうことですか。
  255. 北川力夫

    ○北川政府委員 財政負担でございます。
  256. 永末英一

    永末分科員 やはり片一方に保険診療というものがあって、そうしていまのように同時に自由診療の性格のものが並存している、あるいは共存しているわけですね。そこで、出てくる価格の問題、料金の問題が問題になっているわけでありますが、財政上の問題だけであるのなら、それはやはり基本的に質のよい歯科治療が行われるように、保険により多く組み入れる努力をすべきじゃないか。それでなければ、なるほど被保険者は全部カバーできるようになっているから国民皆保険だ、自己負担率も全般的にだんだん減ってきておると言いますけれども、歯科診療の場合、歯が齲蝕をして欠損して、それに補綴を行おう、あるいはブリッジをやろうという一番症例の多いものについては自由診療だということになれば、大臣、これでは国民皆保険の実は上がりませんわね。たとえば、この保険では技術料の評価が低いという非難が歯科医師側からございますけれども、予防措置についても保険の中に点数化されていない。矯正はどういうつもりか知りませんが、矯正というのは事実あるわけでございますけれども、矯正は病気でないという観点かどうか知りませんが、歯科の保険診療が点数化されていない。小児歯科は新しい部面でございますけれども、治療と充てんだけは点数化されておりますが、義歯等については点数化されていない。そうしますと、そういう面について患者が求めた場合には、それは初めから自由診療だ。そうすると、保険診療の場合はただだけれども、自由診療の場合は金が取られる、こういう問題が起こるわけですね。だから先ほど大臣が、歯科医療の環境をよくするということが厚生行政の一番大きな問題点なんだということを御承認いただいたので私は結構だと思いますが、だとするならば、現在触れられていない、保険の点数外で扱っているものも徐々にこれを組み入れる努力をすべきだと思いますが、いかがでございますか。
  257. 北川力夫

    ○北川政府委員 現在までも実は努力をしてまいったわけでございます。したがって、その努力の結果が、三十年からいろいろ問題があって、先ほど申し上げました四十二年の現行の範囲まで拡大をしたわけでございます。しかし歯科診療も日進月歩の進歩をしているわけでございますから、いま先生おっしゃいましたように、絶えずそういった組み入れる努力、また技術の適正な評価、そういうものは当然怠ってはならぬと思います。その場合に、繰り返しになりますけれども、これに支払う側として、全体的に財政負担は相当大きなものになるわけでございますから、そういった面の合意、そのときの医学の進歩に対応した治療、それを賄う費用についての関係者の合意、こういうものがスムーズにでき上がるということがこの問題の根本的な解決ではないかと思います。そういう意味合いで、先ほども申し上げましたように、現在中医協に全部の問題を包括をして、差額問題についての意見を問うている段階でございますから、方向としては先生のおっしゃるような方向になる面もございましょうし、あるいはまた制度の組み方そのものについても検討を加えるというようなことがあるかもしれません。いずれにいたしましても、中医協の審議というものを通じて、そういったところの究明を十分にやってまいりたいと考えております。
  258. 永末英一

    永末分科員 補綴の場合でも、主として物をつくるのは技工士の仕事になってきている。そうすると、歯科医師のやるのは、言うならば技術を実施しておる、こういうことになるのでありますが、ただこの場合に歯科医師の技術というのは手でやる手技ではなくて、どこの診療所でも、衛生士がおりあるいは技工士はおる場合と外注の場合とがあり、助手もおり受付も必要ですね。いわば工場で言えば一つの経営体だ。経営体でございますから、経営をしていく費用というものはいわゆる技術料、こういうことになっているはずである。現在の保険の点数では再診料はございませんね。なぜ医師に認められて歯科医師に認められていないのか。あるいはいろいろなことで診断書が必要であるが、診断書を書いても保険診療では点数化されていない。あるいは相談を受けた場合には、その相談に答えても点数はない。やはりそういう点が、先ほど申し上げましたように、歯科医師の技術料というものを不当に軽視しておるかあるいは低く評価しておる、こう思わざるを得ない。御答弁願います。
  259. 北川力夫

    ○北川政府委員 技術料が、現在全く適正な評価でございまして、これ以上何も言うことはないということは私はないと思っております。そういう意味合いで、最近の診療報酬改定の際には、できるだけ歯科関係の技術評価というものも時宜に適したようにやっていくということでやってまいったつもりでございます。いまお話に出ました技工料関係につきましても、大体改定の際には歯科医師会等から、技工料も上がったことであるから全般的な見直しをするようにというような御希望もございますので、最近の診療報酬の改定に当たりましては、そういう点も加味してやっているつもりでございますが、なお今後とも十分に技術評価については留意をしてまいりたいと思います。
  260. 永末英一

    永末分科員 たとえば全部鋳造冠の場合に、でき上がって最後にひっつける、装着ですね。現在の点数によりますと十七点、百七十円であります。熟練した医師で、これは大臣二、三十分かかるわけですよ。二、三十分百七十円というのは、技術料がきわめて安いですね。ここ十数年の日本の医療費の中で、医に払われるものと歯科に払われるものとの比率は、歯科がだんだん下がってきておる。十数年前は全医療費の約一割三分ぐらいが歯科であったが、現在は一割を下がっておる。その中に、もっと評価されなければならない歯科医師の技術評価というものが低きに失しておることと、それから患者が求めている歯科治療に対して、これを自由診療だとしてほったらかしておることと、この辺に問題があろうと思う。厚生大臣としましては、やはり国民の健康、口腔衛生の完全化を図るためには、一つにはこの部分に流れる医療費のシェアを大きくしていくということが、その分だけやはりいい治療に恵まれるということになりますから、そういう努力を厚生大臣としてはしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  261. 田中正巳

    田中国務大臣 いまいろいろお話のありました歯科の差額徴収問題と称せられるものは、実はいろいろな問題があるわけでございまして、俗に言う差額徴収だけではございません。また差額徴収についても、慣行料金が高いとか安いとかいう問題以外に、患者の納得がないうちにこれをセットしてしまったというふうな問題もあり、あるいはまたそのほか差額徴収問題とはちょっと異質な問題がいろいろと論議をされているわけでありまして、歯科診療に伴ういろいろなひずみというものが社会的に論ぜられているものと思うのであります。  根本的に、一体社会保険における歯科給付のあり方というものがどの程度であり、どうすべきかということについては、世界じゅうでいろいろの問題があるようでありまして、私も先年この問題についてヨーロッパを歩いてみましたが、非常にまちまちでございまして、わが国においてはまだ比較的給付がいい方だというふうに私は見てまいりました。しかし、今日の国民の健康を守るという意味から、先生おっしゃるように、歯科医療における社会保険診療のカバレージというものはこれを高くしていかなければならぬと思いますし、技術料の評価についても、これをあるべき姿に直していかなければならぬというふうに思っておるわけであります。  しかし、いかんせん、私どもがいま一番悩んでいるのは、こうした健康保険をめぐる歯科医療のひずみというものをこの際何とかしなければ、社会的な世論も私どもを入れることができないというところに、現実の政治家としての悩みがあるわけでありまして、鶏が先か卵が先かという議論にも似ておるわけでございますが、ともかくえりを正していただきたい、その上でひとつ、問題はそういうところにも胚胎しているわけですから、そういう方向に進むべきものは進まなければいかぬというふうに、私はこの問題について思っているわけであります。
  262. 永末英一

    永末分科員 歯科がいま問題になっておりますのは、治療面において起こってきておるわけでございますが、しかし、歯科というのは予防すればまたそういうケースが少なくて済むわけでございまして、すでに厚生省が発表した資料でも、全国の保健所という予防行政に携わっているものの中で、八四・八%が歯科医師も歯科衛生士もいないというようなものがある。そういうもののしわ寄せがいまのところに押しかかってきているわけです。いまあなたがえりを正すべきものは正すとおっしゃったが、それは私に言わせれば、一歯科医師だけの問題ではなくて、歯科医師にそういう医療環境を与え、そういう料金のやりとりをするという状況を与えておる厚生行政の方に、えりを正す面をもう一遍見てほしい。そうでなければ、たとえば金合金にしましても白金にいたしましても、もしこれが合理的な価格で保険診療できておるというなら、こんなことは起こりませんよ。しかるにこれが起こっておるというのは、先ほど私が申し上げましたように財政上の問題でしょう。財政上の問題で患者も困らせ、そして歯科医師も困らせるということであるならば、それこそ政治の問題、この辺にもう一遍思いをこらして、新しい覚悟で保険行政をやっていただきたい。もう一度お答えを願います。
  263. 田中正巳

    田中国務大臣 差額徴収問題については、お説のような一面があります。しかし、今日歯科医療の問題についていろいろ社会的に問題になっているのは、単なる、いま申しておる金、白金、合金などの差額徴収問題だけでないわけでありまして、あれを全般をながめるときに、やはり問題はいろいろ多様にあるということを感じているわけであります。もちろん先生おっしゃるように、歯科医師の充足状況あるいは社会保険における歯科給付のあり方等手前どもの方でもいろいろ考えなければならぬ問題もあることは申すまでもございませんが、これは両々相まっていかなければならぬということでありまして、私どもとしては、厚生行政が立ちおくれているから、したがって、歯科の差額徴収問題が当然的に発生したものである、やむを得ないものであるという認識については、必ずしもさようにはとっておらないわけであります。
  264. 永末英一

    永末分科員 まだ議論いたしたいのでございますが、時間が切れましたので、以上で終わります。
  265. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて永末英一君の質疑は終了いたしました。  次に、野間友一君。
  266. 野間友一

    野間分科員 私は、生活保護の問題について若干の質問を申し上げたいと思います。  憲法二十五条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」こういう規定がございます。これを受けて生活保護法が制定されておるわけでありますが、いまの保護基準なりの実態を見てみますと、およそ健康で文化的な生活とは似ても似つかない生活を強いられておるというように私は認識せざるを得ないと思うのです。五十年度の予算の中で二三・五%のアップというのが打ち出されておりますけれども、いままでの手直しの中で実質的には一四・四%にとどまる。たとえこれのアップをしても大きな影響はない、こう私は言わざるを得ないと思うのですけれども、最初にこの点について厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
  267. 翁久次郎

    ○翁政府委員 生活保護基準につきましては、私ども一般の世帯の生活の実態、これにできるだけ被保護世帯を近づけるという努力を最高の目標にして年々その改善に努めてまいってきているわけでございます。ただいま御指摘のございました昭和五十年度におきます生活保護基準二三・五%のアップにつきましては、これは来年度におきます消費支出の動向を考慮いたしまして、これに対してさらに一般の生活に少しでも格差を縮小させるということを配慮いたしまして、二三・五%という数字を出したわけでございます。なお御承知のとおり、最近消費者物価指数も大変当初の予期に反しまして低くなってきつつございます。したがいまして、私どもがこいねがっております一般消費生活との格差というものはやはり相当縮まるも、の、したがいまして、被保護世帯にとって少しでもよくなるようにという努力は報われつつあるのではないか、かように考えております。
  268. 野間友一

    野間分科員 私がお伺いしたいのは、憲法との関係で、果たしていまの基準で健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるかどうか、こういう点についてお聞きしておるわけです。その点のお答えが不明確でありますけれども、たとえば、二級地における一人暮らしの六十五歳のおばあさん、この方が一体一食分どのくらいの費用が充てられているかということを試算したわけでありますけれども、現在では一類で一万一千二百三十円、これの中で食費の占める割合が八〇%というふうに理解しておりますけれども、それを九十食分で割りますと一食が九九・七円にしかならないわけであります。いま、たとえば院内の食堂でラーメン一杯食べましても百四十円かかるわけです。これは光熱費等々いろいろ問題はありますけれども、いずれにしても九九・七円、百円足らずの一食分ではとうていいま申し上げたような憲法上の暮らしができないということは当然だと思う。この六十五歳のおばあさん——明治、大正、昭和の三代にわたって大変苦労されたお年寄りでありますけれども、このお年寄りに対する報いがこれでは十分とは言えないのは当然だと思う。これに五十年度、来年度の予算でいまの率で多少アップしてもそう変わらないわけです。これは実質一四・四%のアップにしても、ラーメン一杯にも及ばないということにならざるを得ないと思うのです。この点についていかがですか。
  269. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御承知のとおり、生活保護の基準につきましては、その第八条で、性別、年齢別また地域別に決められておるわけでございます。またそれによりまして各年齢層、性別に基準を決めているわけでございます。またお示しの六十五歳の女性の場合には、確かに女性ということにおいて、栄養審議会の答申に基づきます食費の一日所要カロリー当たり等が一般の成年男子に比べて低いということはございますけれども、同時にその方々が総合的に生活をしていく場合に、ただいまお示しのような四十九年度を例にとった場合の九十何円何がし、それだけで必ずしも食費に充てるということでなくて、いまの生活保護費は、御承知のとおり必ずしも厳密に一類、二類というように区別しているわけではございませんので、生活の実態に即してある程度の融通性を持って使用もできるわけでございます。  それからもう一つ、これも御承知と思いますけれども、全国の一般の世帯、特に低い勤労世帯、これは御承知の五分位層というようなものをとった場合に、その低い層にいまの生活保護世帯が必ずしもそう開いているものではないという数字も片方に出ているわけでございまして、もちろん改善をしていく努力はしておりますけれども、それによって全く食べられない生活であるというふうには私ども理解していないのでございます。もちろん改善の努力はしてまいらなければならぬと思っております。
  270. 野間友一

    野間分科員 何とか息をしなければ命がないわけですから、やっています。しかしいま具体的な数字を挙げてお示しをしたいのですが、これではとうていいま申し上げたような生活ができない。いろいろ融通ということを言われますけれども、融通すればするだけほかのところにしわ寄せが行くわけですから、結局同じことであります。いろいろ私も調査したわけでありますけれども、たとえば買い物一つするにしても、お客さまが全然ないときをねらって安い物を買わなければならぬとか、あるいは衣類などは全く買う余裕がないから他人から古着をもらって着ているとか、あるいはふろにも毎日行きたいのだけれども、いまの保護基準では五日に一遍でしんぼうしておるとか、あるいは即席ラーメンを四日ばかり毎日食べたとか、いろいろなことを聞くわけですね。支給の四、五日前になりますとなくなる。みそ汁だけでとにかく命をつなぐという赤裸々な実態の声も私は聞いてきたわけであります。  ここに、古い保護費でつづった日記帳と称するものがあるわけですけれども、六十八歳のお年寄り夫婦の生活実態がここに刻まれておるわけです。ここで私ほんとうに胸に突き刺さる思いをしたのは、たとえばキクナを四十円で買ってきたとか、幾つかありますけれども、その中でくずパン、これは和歌山ではへたパンと言いますけれども、耳ですね。あれを三十円で買って食べたとか、そういうものが随所にあるわけです。ところが一方では、たとえば宝くじを一枚百円で買った、二枚二百円で買った、それからお寺参りにかまぼこ五百七十九円、これをお供えしたとかあるいはお花代四百五十円支出したとか、こういう記載があるわけです。これはほんとうに私胸に突き刺さったのです。一方ではくずパンを食べながら、一方では一つは神仏様に自分の命を預けていくという——ですからこの支出の中でも、いまのかまぼこ代とかあるいは花代が非常に高額になっているということ、一方ではほんとうに当たるか当たらないか、わずかの射幸、これに救いを求めて宝くじを買う、こういうほんとうにその日暮らしの、希望のない暮らしを多くの方々がやっておられるということですね。私はいま申し上げたような数件の調査あるいはこの日記帳を見るごとに、やはりいまの保護基準では、単に生きているということだけの、生活を維持するだけのものである、とうてい健康で文化的な生活とはほど遠い、こういうふうに言わざるを得ないと思うのです。私たちは、当面、即時この基準の五割アップ、それから三、四カ月ごとに物価スライドで見直すとか、あるいは賃金にスライドさせていく、そういうことを主張しておるわけですけれども、こういうことは一体不可能であるかどうか、これは一遍厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
  271. 翁久次郎

    ○翁政府委員 御意見はよく承知いたすわけでございますけれども、御承知のとおり、生活保護基準、過去にさかのぼって考えてみますと、もちろん昨年の相当な物価上昇に伴ういろいろな生活難はございましたけれども、やはり年々相当の基準改定を実施してまいっておるわけでございます。それからまた、昨年あるいは一昨年、物価がきわめて上昇いたした場合にはそれに相応の対応策もとり、また年末におきましては年末一時金等の措置もとって、適時適切な対応措置をとってまいってきておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、もちろん憲法二十五条に基づく最低生活の維持、このために全力を注いで、いろいろな角度から検討を加えてきておる次第でございまして、ただいまの生活保護のあり方全体から見て、格差の縮小という方向に一歩一歩近づきつつあるというように考えている次第でございます。
  272. 野間友一

    野間分科員 そういうお答え、私もそれしかできないと思うのですね。そうでなければ憲法違反になりますから。ですけれども、そういうことを踏まえた上で、実態はこうなんだという事実を私は申し上げているわけです。ですから、この基準については早急に大幅に底上げをするということを強く要求しておきたいと思います。  時間の関係で次に進みますが、級地格差の問題についてお伺いしたいと思います。五十年度それから五十一年度の二年間に四級地をなくしていく、全体として現在の格差二七%を是正する方針を立てておられるということを私も承知しておるわけでありますけれども、これは一体どのようなタイムスケジュールになっておるのかということと、その際二級地なり三級地の見直しも同時にやられるのかどうか、簡潔にひとつお答え願いたいと思います。
  273. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの御質問のとおりでございまして、今明年度二年にわたりまして、四級地を是正して三級地に切り上げるという方向で対処しでまいりたいと思います。なお、それ以外の級地の是正等につきましては、これに連動する分についてやはり検討を進めてまいりたいと考えております。
  274. 野間友一

    野間分科員 級地の問題について少しお伺いをするわけですけれども厚生省の方にいろいろ聞きますと、家計調査、消費支出の調査、こういうものとか、あるいは都市化のメルクマール、たとえばホワイトカラーの割合とか、あるいは高校の進学の問題とか、そういうような幾つかのものを基準にして一級、二級というふうに分けておられるというふうに聞いておるわけでありますけれども、どうなんでしょうかね、最近の環境の変化の急速な動きに対応して、即時手直しを順次進めていかなければならぬというのは、私はもう必至であろうと思うのですね。  そこでお伺いしたいのは、地域の生活水準に重点を置いてこの級地を決められる。これは法律的には厚生大臣の告示という形で出てくるわけでありますけれども、これは総理府統計局の統計数字その他を使ってやられるというふうに聞いておりますけれども、そのとおりですね。
  275. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいまの御質問、大体——大体と言っては失礼でございますけれども、御指摘の点等を中心にしながら級地の問題を決めていくということになっております。
  276. 野間友一

    野間分科員 家計消費の支出、これは統計を調べてみますと、特徴は、これは四十八年度の統計を持ってまいりましたけれども、これによりますと、六大工業地帯の周辺の県庁所在地ですね、この都市と、それから太平洋の沿岸地帯、ここらではもうほとんど差がなくなっておるというのが出ておると思うのです。これは具体的に京阪神地帯見てみますと、たとえば私の地元である和歌山と大阪ですね、これを比べてみますと、一世帯当たり月の消費支出の差額は四千円程度なわけですね。これは特に和歌山の場合考えてみますと、一つは大阪から一時間十分で通勤できるわけで、大阪市のベットタウンとして急速に進んできたということと同時に、北部臨海工業地帯として急速に都市化の傾向が出てきた。この両側面が私はあるんじゃないかと思うわけです。そこで、家計の消費支出等をこの統計で拾ってみても、いま申し上げたように、大阪とか神戸とか京都、これと周辺の都市、特にいま和歌山を挙げましたけれども、あるいは奈良、こういうところはほとんど差がない。こういうのが統計上出ておるわけであります。特に和歌山の場合には、消費者物価指数がいま全国一高い、こういう状況であります。こういう事実は承知だろうと思いますけれども、その点どうでしょうか。
  277. 翁久次郎

    ○翁政府委員 級地の問題につきましてただいまお示しがあったわけでございますけれども、われわれ級地を決めます場合に、確かに消費水準の動向、それから物価の指数というものもファクターでございますが、同時に、その地域における生活環境、それから先ほどお話しのございました就業率、この中には第一次産業あるいは第二次産業、こういったものの就業率、そういったものも総合的に見ながら決めてまいるわけでございます。確かにお示しのように、六大工業地帯を控えた都市周辺の物価が最近急速に上がっていることは承知しておりますけれども、全体として見た場合に、級地の問題をどうするかということについてはやはりある程度総合的に見ていかなければならないと思っております。一例を申し上げますと、たとえば東京に近接いたしております神奈川県の中央部、この辺はやはり非常に都市部には近いわけでございますけれども、級地、必ずしも一級、二級となっていない地域もあるわけでございまして、この辺は総合的に検討しながら各級地間の問題を決めていかなければならぬ。また、ちょっと恐縮でございますけれども……
  278. 野間友一

    野間分科員 いいです、もう時間ありませんので。  その中で、たとえば、いま全国一高い物価指数の上昇、こういうものも当然この級地の是正については一つのメルクマールになる。あるいはもう一つ、指数ではなくて実際に物価が高い。しかも、高い対象になる物価が、たとえばカラーテレビとかそういうものではなくて、実際に日常われわれが生活するのに必要なもの、こういうもので大都市に比べても高いというのが、この級地是正について、この是正をするための大きな基準になる、こういうふうに私は思うわけですけれども、そうですね。
  279. 翁久次郎

    ○翁政府委員 もちろん、そういった点は考慮の対象として考えなければならないと思います。
  280. 野間友一

    野間分科員 物価指数について少し数字を、これも総理府統計局の数字をずっと拾ったわけでありますけれども、たとえば四十六年ごろは和歌山市の物価指数はほぼ真ん中ごろにあったわけですね。その後ずっと、四十八年には三番目に高くなった。四十九年一月以降は全国一高い。これは指数で出ておりますね。同時に、それじゃ実際に物価はどうなのかということも拾ってみました。これは私、実態の調査もしましたし、また総理府統計局の小売物価統計調査報告、これをずっと拾ったわけですけれども、たとえばミカンでも、これは和歌山は産地ですけれども、大阪がキロ百六十円に対して和歌山は百九十円、それから豚肉、これは百二十二円に対して百二十三円、それからその他鶏肉とか鶏卵、油揚げ、納豆、しょうゆ、コロッケ、ネギあるいはサンマ、リンゴ、ホウレンソウ、こういうふうに本当に私たちが日常暮らすのに必要な、庶民のいわゆる食べ物、これが大阪に比べてはるかに高いというのが統計上も出ておるわけですね。つまり指数も高い、実際の物価も高い。ところが二級地である。これは奈良の場合も同じことが言えると思うのですね。ですから、いま申し上げたように、経済圏が大阪という大都市、この周辺にずっと広がっておる。和歌山もそのベッドタウンとしてずっと伸びておる。同時に独自の大都市圏を形成して、そしてその中での物価の動向はこういうふうになっている。これは当然こういうものの実態を踏まえた上で級数是正、これは国の方針ですから、こういうものをしなければならぬ。しかも、申し上げたように、この五十年度、五十一年度に見直される際に、こういうものをつぶさに実態調査して、是正の方向でひとつ検討をしなければならぬじゃないか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  281. 翁久次郎

    ○翁政府委員 私ども、級地につきましては毎年いろいろな角度からそれぞれ地域について調査もいたしております。またお示しのように、物価の各地域における上昇率というようなものについても当然ファクターとして考えておるわけでございます。ただ御承知のとおり、これは行政区域で地域を指定することになっておりますので、周辺地域との関連等も考慮していかなければならないということもあわせて調査いたしているわけでございます。
  282. 野間友一

    野間分科員 いま挙げた数字ですけれども、指数の問題ですね、それから具体的な物価の単価の問題。私は恣意的にその数字を挙げて言っているのではなくて、総理府の統計局から指摘しておるのですけれども、この事実はお認めになりますね。
  283. 翁久次郎

    ○翁政府委員 そのとおりです。
  284. 野間友一

    野間分科員 そうしますと、先ほどから申し上げておりますように、当然こういうものについてはこれは是正しなければならぬ、こう考えざるを得ないと思うのですね。ですから、これは単に和歌山だけで私は申し上げておるわけじゃなくて、六大工業地域の周辺、同じような問題が出てきていると思う。特にずっとこの統計を追ってみますと、和歌山とか奈良、これはいま特徴的に出ておるということですね。なおさら私は早急に是正しなければならぬ、こういうふうに思うのですね。具体的にどうです。
  285. 翁久次郎

    ○翁政府委員 先ほど来申し上げておりますように、級地の問題の具体的な是正等につきましては私どもまだ検討の途中でございます。いまここで申し上げるということは遠慮さしていただきたいと思います。
  286. 野間友一

    野間分科員 国は積極的に、いま最初に申し上げたように四級地を廃止する、そして格差を少なくすると同時に、級地の是正についても同時にやられるということ、これもあなたの方で答弁されたわけでありますけれども、そういう点からして、実際に具体的な一定の基準があり、その基準をつくるのに重要なメルクマール、これが急激に変化しているということもこれは事実。いま物価指数とかあるいは物価の動向についてお認めになったわけでありますけれども、そうであれば、なおさら具体的な実態を早急に調査して、その上で早急に是正するという国の方針からすれば、そういうような方針の中で、これは早急に是正の方向で検討し、そして見直すということなら、私は答弁があってしかるべきじゃないか、こう思いますけれども……。
  287. 翁久次郎

    ○翁政府委員 最初に申し上げましたように、来年度、当面私どもが実行いたそうと思っておりますのは、四級地の撤廃ということを二年計画でやってまいりたい。と申しますのは、最近四十七年、四十八年の間におきます総合的な消費の水準等からいたしまして、二七%の格差がすでに相当縮まっておる、大体三級地並みになりつつある、なっておるという事実が一方にあるわけでございます。そのことを一つの中心課題として、さらに申し上げましたように、それに伴う調整ということもしていかなければならないということで作業を進めてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  288. 野間友一

    野間分科員 いま申し上げたような実態をこれは早速調査して、そうして国の方針に従ってひとつ前向きに御検討いただくというふうに承ってよろしいのですか。
  289. 翁久次郎

    ○翁政府委員 もちろん総合的な調査をいたしまして、必要があれば、それぞれの級地について検討を進めてまいりたいと考えております。
  290. 野間友一

    野間分科員 これは和歌山でも奈良でもそうですけれども、和歌山は特に「生活と健康を守る会」というのがありまして、この中でこれが軸となって非常に運動を起こしまして、こういう実態を私ども全部指摘を受けたわけでありますけれども、それを受けて県も、恐らく厚生省も御存じだろうと思いますけれども、五十年度の予算の中に出ておるのは御承知だと思うのです。これは和歌山市を一級地にしろ、その他の町村を二級地とするように要望する、これは御存じですね。
  291. 翁久次郎

    ○翁政府委員 具体的な問題については私まだ承知いたしておりません。
  292. 野間友一

    野間分科員 これは出ておりますし、私はヒヤリングのときにそういうふうに申し上げたら、そのとおりだというように聞いておるわけでありますけれども、こういうふうに県も積極的に要望しておる。これも単に主観的にこうしろということだけじゃなくて、やっぱり客観的に、いま申し上げたように具体的な実態を踏まえた上での要求でありますから、これは早急にひとつぜひ是正していただきたい、こう思います。  同時に、これは周辺の級地の是正というか、手直しですね、これもやっぱり問題になろうかと思うのです。たとえば、同じ和歌山市に接地するところでも岩出という町がありますが、ここは三級。ところが、その隣で同じように接点にある貴志川という町がある、これは四級。こういう不公正がある。これは不当だと思うのですね。こういうものも含めてぜひ強力に——特に三木内閣も不公正の是正ということが一つの目玉になっておりますね。そういう点からしても、具体的にそういう実態、不公正な事実があるということからすれば、これは早急にやらなければ、単に口先だけではとうてい私たちは容認することができない、こういうふうになろうかと思う。厚生大臣、いかがでございますか。
  293. 田中正巳

    田中国務大臣 級地格差の縮小、級地指定の実態に合った見直し等は、客観的な基礎によりましてこれを実行いたす所存でございますが、ただいまのところ、どこをどうするということについて申し上げる段階に至っておりません。
  294. 野間友一

    野間分科員 いや、どこをどうするというようなことでなくて、いま申し上げたようなことを踏まえて、早急に実態を調べて是正するという方向で検討するのだという答弁をいただきたいと思います。
  295. 田中正巳

    田中国務大臣 いま申し上げたような方針によって日本国じゅうについてそのようなことについていろいろと検討をし、結論を出したいと思っております。
  296. 野間友一

    野間分科員 終わります。
  297. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて野間友一君の質疑は終了いたしました。  次に、近江巳記夫君。
  298. 近江巳記夫

    ○近江分科員 人間にとりまして水というものは最も大切なものであります。ましてや飲料水につきましては、直接人体に影響するものでありまして、一点のそういう汚れというものも許されるものではないと私は思うのです。日本の水というものは世界でも良質で、うまいという定評があるわけでございます。しかし現在では、自然破壊や工場廃液の流入などで海の水も川の水も非常に汚くなりつつあるわけであります。いまや自然の水の汚染だけにとどまらず、都会のビルの飲料水、つまりわれわれが直接口にする水も汚濁されつつあるという非常に危機に立たされておるわけであります。このことは、ビルの中で一日の大半を過ごすサラリーマンあるいは学校の寮生、病院で療養する人々にとっては、これはもうゆゆしき問題であろうかと思うわけであります。ビルの水の問題を衛生的環境の確保という観点で議員立法がなされたことは、所管大臣であります厚生大臣を初め、皆さん御承知のとおりでございます。  そこで、私は、この法律を踏まえた上で、わが党のスタッフの実態調査、東京都の調査及び各省の関係者の皆さんの御協力の結果に基づいて、その実態をここに申し上げてみたいと思うのであります。そこで、まず実態を挙げる前に、建築物における衛生的環境の確保に関する法律、いわゆるビル管理法に基づく水についての法規制の項目についてお伺いしたいと思います。
  299. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 ビルの中で使用いたします飲料水につきまして、いわゆるビル管法という法律で規制しております基準は、まず水質検査でございます。水質検査につきましては、水道法に規定いたしております水質に合致するということが条件になっておるわけでございますが、これは六カ月以内に必ず一度以上検査する、かように決まっておるわけでございます。さらに上水道以外のものを使用いたしておるビルにつきましては、その飲料水につきまして遊離残留塩素を七日ごとに一回、これは検査でございます。それから、さらに貯水槽の装置等につきましては、一年以内に一回以上掃除の義務を課している、かような基準になっております。
  300. 近江巳記夫

    ○近江分科員 この法律厚生省の所管でございまして、いわゆる所管大臣のおられる本家本元の厚生省の建物の水はどうかという問題でございますが、まず、私がいま挙げるものについて異論があるかどうか、お聞きしたいと思うのです。  それで、まず一つは、年二回の水質検査はしていない。地下受け水槽は年一回の清掃もしていない。地下受け水槽は沈渣物がたまり、全般的に衛生的配慮がない。この地下受け水槽というのは、つまり地下の水タンクです。地下受け水槽のマンホールのふたは雨水が流れ込む構造となっている。高置水槽については年一回も清掃していない。高置水槽というのは、御承知のように、屋上に上げたタンクでございます。槽内は非常に汚れている。  このような実態になっておるわけでございますが、その点についてそのとおりかどうか、お伺いしたいと思います。
  301. 松田正

    ○松田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  302. 近江巳記夫

    ○近江分科員 いま、御指摘のとおりでということをおっしゃったわけでございますが、私がこの問題を質問をするということを申し上げましたところ、先日の二十三日に清掃されたということを聞いておるわけでございますが、本家本元の厚生省がそういう実態でございます。  そこで、私は、ここにその実態に基づく写真を撮っておるわけでございます。たとえば、一番大きく伸ばしたこの写真でございますが、大臣、ここからでも見えると思います。これは屋上の写真です。非常に外観はきれいに塗っているわけです。ところがこの中はこんなですよ。こういう中から出てくる水をわれわれは飲んでいるわけですね。しかも、ひどいところは、中の塗装をやったけれども、こういうところを忘れているわけです。そして水を抜いていきますとこういうものが出てくる、どこということは言いませんけれども。すべて、こういうような驚くべき実態が明らかになっておるわけでございます。私たちの調査では、政府の官庁の実態というものは全部わかっておるわけであります。文部省、郵政省、大蔵省、農林省、外務省、人事院等々、みんなよくないわけでございますが、本家本元の厚生省さんが一番悪いわけですね。それで、非常にいま反省なさっておると思いますが、東京都が昨年の七月に調査をして以後、各省庁は、これはえらいこっちゃということでそれぞれ処置をおとりになっているわけですね。東京都が調べ、またわれわれが調べた直後、各省やっておるわけです。たとえば文部省であるとか農林省の合同庁舎等は清掃しているわけです。郵政省もやっているわけです。外務省、人事院等も四十九年でやっているわけですね。ところが本家本元の厚生省、あなたのところは、私がこの問題を質問したいということになって、数日前の二十三日にやっと腰を上げられた。私は、この問題につきましては非常に遺憾であり、非常に残念である、このように思うわけです。その点、所管大臣としてどのようにいま反省をなさっていますか。
  303. 田中正巳

    田中国務大臣 実はけさほどこの話を聞きました。紺屋の白ばかまというのはこれだろうというふうに思いまして、気がつかないととを御指摘いただいて、大変申し訳ないというふうに思っております。自分らが居住している役所でありますから、今後はひとつ厳重綿密にそういったような点について気をつけたいというふうに思っております。
  304. 近江巳記夫

    ○近江分科員 大臣がいま非常に反省なさった御答弁でございまして、私もそれ以上は言いたくはないと思うのですけれども、しかし個人の感情と、やはりこの機会に申し上げておかなければならない点もあるわけでございますので、さらに続けたいと思います。  東京都の四十九年七月の調査、つまり給水設備の管理、排水設備の管理、ネズミ、ゴキブリの防除、清掃状況等々の七項目の調査の結果がここにあります。その結果に基づいて各省の内容を見てまいりますと、私はその資料も全部ここに持っておりますが、まず厚生省は七項目全部ペケなんですね。不備だということになっておる。ということは、七点満点で全部ペケでございますから零点ということでございます。それからついでに申しますと、七点中、文部省は二点だけがどうにかということです。大蔵省も二点、農林省も二点、郵政省が二点、外務省が二点、人事院が三点。まあ七点満点で皆さん方の採点はこういう採点になっておるわけですね。農林省の別館の方は、七項目中、不良が六で不備が一。ですから、これも零点ということですね。だれがお考えになっても、これは半分以上の点がついておらぬわけでございますから、おしなべて政府の建物については全部いわゆる落第点である、こういうことになるんじゃないかと思うのです。大臣も非常にその点は反省されておられるわけでありますが、もう少し中身に入っていきたいと思います。  いまここで私が申し上げたのですが、きょうは各省庁の課長さんクラスがお見えになっておられると思いますので、いま私が申し上げたことについて間違いかどうか、簡単にイエスかノーをひとつ順次お答えいただきたいと思うのです。どなたでも結構ですから順番に……。
  305. 林乙也

    ○林説明員 郵政省の場合についてお答え申し上げます。  昨年七月十八日に、東京都衛生局ビル衛生検査班の方から、特に霞ヶ関にございます私どもの本省庁舎につきまして検査をいただき、指摘をいただいたわけでございます。ただいま先生の方からお話のございました給水管理等につきまして、幾つかの点、先生お話しのような御指摘がございました。その内容は、汚水槽、マンホール周囲のかさ上げの点、汚水槽の清掃の点、それから八階高架水槽通気孔の防虫網の件、それからグリストラップの管理の件でございます。これらの点につきまして御指摘をいただきまして、昨年中に、第一項のマンホールのかさ上げの点につきましては現在なお計画中でございますが、他の点につきましては改善の点についてすでに措置済みでございます。  以上でございます。
  306. 近江巳記夫

    ○近江分科員 あと時間の問題がありますので、私が言うた採点が合っているか、イエスかノーかだけあとの省庁の方はおっしゃってください。
  307. 野崎元治

    ○野崎政府委員 採点の点数のことはよくわかりませんけれども、大蔵省も東京都からいろいろと御指摘を受けております。
  308. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のとおりでございます。
  309. 降旗正安

    ○降旗政府委員 御指摘のとおりでございます。
  310. 近江巳記夫

    ○近江分科員 本当に代表的な省庁を挙げたわけでございますが、やはり私が申し上げたとおりの実態でございます。  そこで、私はちょっとデータをつくってきたわけでございますが、一番目に申し上げたいのは、厚生大臣のおひざ元である国立病院の実態でございます。ここで名前と所在地を申し上げることは、そのことが患者及び社会に与える不安、動揺を考えますと、私は名前を公表することは控えたいと思うのです。大臣、あなたにだけ後でお教えしておきたい、このように思っております。  この資料の方の二枚目でございますが、厚生省の某国立病院。屋上水槽など外観は腐っていたが最近塗り直している、槽内の壁面は腐食が激しい、パイプ、ステップなど使用鉄材は完全に腐っている、水槽壁の壁面、底面はバクテリアで固まっている。ヘドロのようになっているわけですね。病院内の末端じゃ口の水は、配管が腐食していることとあわせて、消毒力が著しく低下しております。聞いてみますと、予算がないからやりたくてもできない、こういうことでございます。こういう水を患者が飲み、またその水を使って手術しているわけですね。こういう中身でございます。  それから、郵政省関係のもう一つの病院の実態を挙げてみますと、内部の腐食が激しい、地下貯水槽は水をとめる時期がないので清掃はやったことがない、地下タンクは名状しがたい、表現しがたいほどひどい。名前を申し上げませんけれども、こういうような実態ですよ。清掃などはやったことがない。建物ができて以来やったことがないのですよ。そういう水を飲まされておるわけですね。  次に私は、文部省の所管の某有名大学学生寮、某技術関係の国立大学及び某市の市立小学校十八校の実態に触れたいと思いますが、これも影響するところが大きいので、名前は公表しません。あと大臣にだけは知らしておこうと思っています。それはここにも書いてありますが、某有名大学の学生寮は、バクテリアによる内部の腐食が激しい、消毒が不完全である、貯水槽の底にヘドロ化したかたまりがある。某技術関係の国立大学、水槽の中に他の配管が通ってはならないことになっておるのに下水管が水槽内を通っている、下水管も腐食している。下水管から汚水が流入しているというわけです。ですから、水道水と言いながら下水の割れ目から出ておる水もまざって飲んでいるわけです。某市の十八の小学校を調べましたところ、鉄板高水槽の内壁が違反塗料のアスファルト防水が塗られている、三カ月間子供たちは臭い臭いと言いながら臭い水を飲まされているわけです。これは、新しい建物だから仕方がないなどということを学校では言っているわけですが、違反のものを塗っているわけです。  こういうことを見ますと、いずれも青少年に対する国の姿勢として全く言語道断な実態であると思うのです。こういうことにつきまして、教育の姿勢として文部省当局はどのように反省しておられるか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  311. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のございました点については、まことに遺憾に存じております。今後そういう点について十分指導を徹底させるようにいたしたいと思います。
  312. 近江巳記夫

    ○近江分科員 人事院は来ておられるかどうかわかりませんが、人事院の場合はマンホールの上が駐車場になっているわけですね。だから洗車した水や油の入る危険が十分にあるわけです。外務省の場合はマンホールの位置が低いので散水した水が入り込むようになっている。こういうことでは全くけしからぬと思うのですね。  以上の厚生省、郵政省、文部省等の実態に関しての私の発言は非常に慎重にいたしました。なぜかと言いますと、それは社会的に与える影響が大きいのと、特に官庁においては、この種の問題提起をいたしますと、末端担当者をいじめる傾向があるわけです。そういうようなことにならないように心がけるとともに、この実態の根本的是正についての所信として、厚生大臣、国務大臣として三省を代表してひとつお伺いしたいと思うのです。
  313. 田中正巳

    田中国務大臣 先ほど来、わが厚生省の庁舎の管理についてもいろいろ御注意がございましたが、これはもう私の役所ですから厳重にやりたいと思っておりますが、各省庁のこの種のものにつきましても各省大臣にそれぞれ連絡をいたしまして、貴重な御指摘でございますので、それぞれ完全な管理が励行されるようにひとつお願いをいたしたいというふうに思っております。
  314. 近江巳記夫

    ○近江分科員 次に、民間のビル、マンション、ホテル、キャバレー、喫茶店等の雑居ビルの実態は、厚生省と同じくあるいはそれ以下で、全く話にならない実態であります。そこで、法適用の対象を一定規模に限定しているため、中小ビルは全くの野放しの状態となっておるわけでございます。  一例を申し上げますと、いまこの法改正によって五千平米以上ということになっておりますが、五千平米以下の建物についてこの調査をいたしているわけですね。そうしますと、百四の五千平米未満のビルを調査いたしましたところ、水質検査励行状況というものが九三・三%やっておりません。残留塩素の測定励行状況は一〇〇%やっておりません。それから受水槽管理状況は九二%が悪いわけであります。高架水槽管理状況は九一・八%がやっておりません。こういう状況であります。  それから法の適用の中に入っております五千平米から八千平米、それから八千平米以上、このように分けて見てまいりますと、まず、八千平米から五千平米の百五十の建物を見ましたところ、水質検査の励行状況が八二%やっておりません。残留塩素測定励行状況は七九・二%やっておりません。受水槽管理状況は六七・八%やっておりません。高架水槽管理状況は七三・三%やっておりません。給水配管管理状況は六・一%がやっておりません。それから八千平米以上になりますと、四百十七の対象ビルを見てまいりますと、水質検査励行状況が五四・三%やっておりません。残留塩素測定励行状況は五九・六%やっておりません。受水槽管理状況は五九・四%、高架水槽管理状況は六〇・一%がやってないわけですね。こういうような状況があるわけでございます。  そこで、厚生省以下官庁、民間の実態を見てまいりますと、まず改めるべきは厚生省自体の姿勢であることはもちろんでございます。が、私がいまこの実態の解明の中で明らかにしましたように、病院が政令ではずされているわけですね。こういう点は、病院については医療法があるとかいろんなことがあろうかと思いますが、しかし、現実は病院については全くの盲点になっているわけですね。こういう法的な運用の問題と同時に、施行令自体にも非常に大きな問題があろうかと思うのです。  そこで、今後こういう適用の拡大あるいは対象の問題、さらにこの法律自体がまだ徹底できてないわけですね。その点、今後都道府県等に対しましてどうやって総点検をするとか、周知徹底もしなければならぬわけでございますし、法改正も絡め、厚生省としてもこのままではまさか放置できる問題ではないと私は思うのですね。その点、どういう対策をお考えになっていらっしゃいますか。
  315. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 昭和四十五年にこの法律が議員立法で成立いたしたわけでございますが、この法律施行後、われわれといたしましては、建築物の衛生の確保につきましていろいろ努力をいたしておったわけでございますが、現状はただいま先生指摘のような状態になっておることを非常に遺憾に思っておるわけでございます。  それで今後どういうふうにするかという問題でございますが、一つには、やはり実態の把握が必要ではなかろうかと思うわけでございまして、われわれといたしまして従来から各都道府県からいろんな統計資料等を集めてはおりますけれども、さらに早急にその実態の把握に今後努めてまいりたいと思っております。  それから、法律の徹底でございますが、法施行後すでに五年を経過いたしておるわけでございまして、特にこの法律の徹底につきましては毎年全国の課長会議等でもこの話をいたしておるわけでございますが、さらに今後担当者会議等を通じましてこの法律の徹底に努力いたしてまいりたいと思います。  それから、次に、法律適用範囲の拡大の問題でございますが、この法律適用範囲の拡大につきましては三つの方法があろうかと思うわけです。ただいま先生指摘のように、一つはその適用のビルの大きさをさらに小さなビルまで適用していくという大きさの適用の問題と種類の拡大の問題、あるいはこの両者を組み合わした方法、この三つの方法でこの適用の範囲の拡大を図ってまいりたいと思うわけでございますが、やはり先生先ほど来御指摘のように、この法律が施行されましてもなかなかこれがうまく実行できないということは、やはりこのビルにおきます衛生管理技術者の確保が非常に困難を来している実情にあるわけでございまして、今後そういった管理技術者の養成の問題を含めまして、その養成の実態に応じながらさらにこの法律適用範囲の拡大に努力いたしたい、かように考えております。
  316. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そうしますと、実態把握ということは、全国の都道府県に通達を出し、とりあえず建物について総点検をなさるということですね。それが一つと、それからいま三つの適用拡大等の中身をおっしゃったわけですが、政令改正等をなさる、こういうことですね。その二点についてもう一度確認いたしたいと思います。
  317. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 実態の把握につきましては、ただいま先生指摘のような方法で努力いたしたいと思っております。  さらに、この政令の改正の問題は、先ほど申し上げましたように、管理技術者の養成とかみ合わせながら順次拡大の方向で検討いたしたいと思っております。
  318. 近江巳記夫

    ○近江分科員 そういういろいろな措置をおとりになる間におきましても、こういう汚濁された水を飲んでいるわけですね。ですから、これは一刻も早くやらなければならなぬわけでございます。この総点検はいつまでにやられるのですか、局長さんのつもりとしては。
  319. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 来年度早々に着手をいたしたいと思っております。
  320. 近江巳記夫

    ○近江分科員 来年度早々に着手するなんて、時期的に遅いですよ。厚生大臣も正直に、こういう実態をきょう朝聞いて驚いたということもおっしゃったわけですが、こういう実態をいままでお知りにならなかったこと自体が、大変な問題ですよ。こういう実態をこのまま放置しておくということは許せないことですよ。大臣にまたあとで聞きますけれども局長、もう一度答弁。
  321. 石丸隆治

    ○石丸政府委員 来年度といいましてもこの四月からでございますが、早急に担当者会議を開きましてその報告の仕方等を指示いたしまして、その集計をいたしたいと思っております。
  322. 近江巳記夫

    ○近江分科員 もう時間がありませんから、最後厚生大臣の前向きの決意をお伺いしまして、質問を終わりたいと思います。
  323. 田中正巳

    田中国務大臣 ビル管理については、今後厳重、緻密にやっていくように努力いたしたいと思っております。
  324. 近江巳記夫

    ○近江分科員 終わります。
  325. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて近江巳記夫君の質疑は終了いたしました。  次に、安井吉典君。
  326. 安井吉典

    安井分科員 初めに、老齢福祉年金の扱いについてちょっと伺いたいと思います。  七十歳現在、日本国民である者に対して支給されるという規定がある関係で、七十歳以後において日本人の国籍を取得した場合、これはもらえないのではないかということで相談を受けたわけでありますが、その扱いはどうなんですか。
  327. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 現在の国民年金法の仕組みでは、七十歳を超えて日本国籍を取得した、帰化されたような人は福祉年金をもらうことができない仕組に現行法ではなっております。
  328. 安井吉典

    安井分科員 私も年金法をずっと読んでみましても、第七十九条の二ですか、その規定等において、七十歳現在日本人でなければ支給ができない、こういうことですが、具体的な例として、外国人と結婚をしていた関係でずっと外国籍を取得してきた女の人が、死別をして、七十歳以上になって再び日本人になった、ところが年金請求したが支給できない。その実務を担当している市役所の職員からの問い合わせなんですけれども、私は、この問題については、同じ日本人である以上、七十歳を超えていれば、現実の日本人である以上は同じような扱いがなされなければ、それこそ憲法の基本的人権あるいは法のもとの平等という精神に反すると思うのです。これは立法時からもう少し問題にされなければならなかったと思うのですけれども、どうでしょう、もう少し何か方法はないですか。
  329. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 私も、最近第一線の要望として、そのような事例があった場合にそのような要望があるということを耳にいたしまして、実は今回年金関係の改正法案を御提案申し上げておりますけれども、その際に何とかできないものかということでいろいろ検討をいたしました。で、非常にむずかしい問題がございますのは、現在の老齢福祉年金は、昭和三十六年に拠出制年金が発足する際に、一定年齢以上になっておって拠出制年金の加入は期待できない、そういう方を対象としておりますから、すなわち昭和三十六年四月一日時点で五十歳を超える人が福祉年金の対象ということになるわけですけれども、いまの七十歳を超えて帰化されたような人に福祉年金を出すということでその問題を解決しようといたしますと、もともとこういう方はそれ以前は外国人であったわけですから、拠出制国民年金の加入ということ自体が全然これは問題にならないわけでございます。したがって、外国人について、昭和三十六年時点で何歳以上であるかということを支給要件といいますか、そういうことをかぶせること自体が、外国人ということであれば非常に無理があるのではないか。そういたしますと、結果的に、外国人で七十歳を過ぎて帰化したような場合は、その三十六年当時何歳であったかに関係なく、すべての人に老齢福祉年金を出すという方向の解決でないと、どうも立て方としておかしいのではないかという問題に実は突き当たります。そういたしますと、今度は逆に日本の国内の人の取り扱い——国内ではそういうことで現実に昭和三十六年時点、一定年齢以上というのが要件になっていますから、逆に今度は外国人との関係で日本人のバランスが崩れる。そういう要件を取っ払ってしまったらということになれば、これは解決するわけでございますけれども、しかし、いますべての七十歳以上の人に漏れなく老齢福祉年金を出すかどうかというのは国民年金の基本にかかわる問題でございますので、いろいろ案はないかと検討したのでございますけれども、結論としては、どうもそういう基本的問題にぶつからざるを得ないということで、今回の改正に織り込むことは見送った次第でございます。
  330. 安井吉典

    安井分科員 これはレアケースかもしれませんけれども、外国人と結婚その他で外国籍になっていた人、それが六十九歳のときに帰化しているわけです。そしてそれは日本人ですから、七十歳になったら資格ができて老齢福祉年金がもらえる。ところが、もう一人別な人が同じ形で、七十歳を超えた一カ月過ぎて帰化という手続がとられた。しかし七十歳で外国から日本国籍に戻るなんという人は、恐らく生活が苦しいのじゃないかと思います。そういう生活が苦しくてどうしようもなくて、同じ日本人でありながら初めのケースの方は老齢福祉年金をもらっていて、こちらの人はもらえないというのは、同じ日本人であるという、そういう事実に立って物を考えれば、私は何か非常な差別になっているような気がする。そういう点、もう少し立法段階においても真剣な検討が必要ではなかったかとも思うし、いまからでも遅くないから、その点についてはやはり法律の改正に踏み切るべきだと私は思うのですが、大臣どうですか。
  331. 曾根田郁夫

    ○曾根田政府委員 先生いま御指摘になりましたように、確かに六十九歳までに帰化しておれば、もちろん年齢要件はございますけれども、結果として福祉年金支給される。しかしこれは恐らくこの法律を制定した当時にそういう事態を真正面から予想してなかったと思うのです。しかし、実際運用面では六十九歳までにそういうことであれば支給される。それとのバランスを考えますと確かに問題ではございますけれども先ほど申し上げました基本的な問題もございますので、しばらく時間をかしていただきたいと思います。
  332. 田中正巳

    田中国務大臣 実態上は先生おっしゃるようにまことにお気の毒だと思います。しかし、年金法の物の考え方が、いま曽根田年金局長が話したとおりでございますので、いまの法律からは直ちに解けないのじゃないかというふうに思います。拠出制国民年金の補完的年金であるというふうな理論構成をとっているものですから、したがってかような人情の実態に沿わないような結果が法律的に出るのだろうと思いますが、この問題については、ひとつ法律の仕組み等々を何とかもう少し変えて、今後の問題として解決をするようにいろいろ努力をいたしたいと思うわけでございますが、法制上の問題をどう解きほぐすか、若干の時間がかかるのではなかろうかというふうに思います。
  333. 安井吉典

    安井分科員 その拠出年金制度との絡みということにこれは問題があると思いますよ。あるとは思いますけれども、さっき言ったように六十九歳で帰化したというそういうケースと比べて考えてみれば、ほとんど変わりないわけです、拠出年金との絡みというのは。つまり七十歳という人為的に引いたラインがこういう問題をつくっているわけですから、私はこれは立法論的にももう少し考える余地があると思う。まあ、きょうすぐ結論を出せと言ったって無理だと思いますから、ひとつ次の段階の宿題にしておきたいと思います。  老齢福祉年金の問題に触れた機会に、大臣一つ伺っておきたいわけであります。  社会党といたしましては、国民生活にとって緊急不可欠の最小限度の修正を要求するという形で、予算修正案を予算委員会の理事会等で相談をしているわけです。その中に、老齢福祉年金は八月より月二万円に引き上げ、約二千億円の予算要求という形での修正案を出しているのは御承知のとおりだと思います。ところで、この問題について、二月一日の総括質問における多賀谷委員に対する大臣の答弁は、二万円、三万円という問題について努力はするがむずかしいというふうなことで、書を左右にいたしました。同じ予算委員会の集中審議の段階で、二月二十二日、公明党の大橋委員の質問に対しては、一応さまざまな前提は置きながらも、五十一年度から福祉年金二万円を必ず実施したいと明確な御発言がありました。速記録に載っております。私は、党として八月から要求をしているわけでありますけれども、明年度からでもこれは前進だというふうに受けとめているわけでありますが、大臣のお考えをもう一度改めてお聞きしたいと思います。
  334. 田中正巳

    田中国務大臣 二月一日の多賀谷委員に対する答弁でございますが、あの節多賀谷氏から、軽費老人ホームに入れる程度のものを福年でいたしたらどうだ、こういうお話がございまして、できるだけさようにいたしたいというふうに申し上げて、その後、一体軽費老人ホームの費用は幾らであるかと言ったら、ただいま二万円というふうに政府委員から答弁がございました。しからば、これに対しもう少しプラスアルファをつけて、小遣い等で三万はどうかというのに対しまして、総理から三万では無理であるというふうな質疑応答がございました。二月二十二日の予算委員会において、大橋委員の福祉年金に関する御質問に対して私が答弁をいたしましたが、その際若干言葉が足りなかったように私は思って、反省をいたしております。大橋委員の質疑と私の答弁の過程を全体を通じてごらんになればわかっていただけると思いますが、あれは財政論を主眼にいたしまして、年金の財政論を主軸として理論が発展をいたしておったわけでございますので、したがいまして、私は当然財政の見直しをして、ということを踏まえておったわけでございます。福祉年金を全額一般会計に依存してそのようなことまで持っていくことは毛頭考えておらなかったわけであります。しかしながら、来年度に予定している年金制度の見直しの際、困難な問題でございますが、財源の調達方式にできるだけ工夫をこらして、新しい方式を見出すことによってその水準を実現をいたしたいという気持らを申し上げたわけでございまして、まあ率直に申しまして、多賀谷委員に申し上げたことと余り変わりはないということだというふうに私は自分で自覚をいたしているわけでございます。
  335. 安井吉典

    安井分科員 しかし、違いはないといっても、多賀谷委員に対する答えは非常にネガティブな形で出ているし、こちらの大橋委員に対するのは非常にポジティブな発言になっていて、ニュアンスもずいぶん違いますよ。何かくるくる大臣の御答弁が変わるような気がする。私は大橋委員に対するのが非常に前進的なもので、そういう方向でやりたいというお気持ちだというふうに言われますけれども、そういう前進的な考え方の方を私は支持したいわけですよ。大臣の個人的なお気持ちじゃなしに、やはり大臣としての御発言ですから、私はそう簡単に——この問題について一般に対してはっきり言われたことが、後退したというような印象をいまの御発言でみんなが受けるんじゃないかと思うのですが、もう少し伺います。
  336. 田中正巳

    田中国務大臣 水準については、私は後退をするとか否定をするという気持ちはございません。問題は、財政方式の切りかえ、見直しということを前提にしてさようなことをやりたいということを申し上げたつもりでございますが、あのパラグラフにはこの点についてのコメントがたまたまございませんものですから、誤解を生ずるおそれがあってはいけないということで、私あえて申し上げているわけでございます。年金の財政の仕組みを切りかえて、福祉年金に至るまで改善を加えていくということについては、もう前々からの国会で私答弁をいたしておるところでございまして、今日、厚生省においてはせっかくその作業を始めているところでございますので、そうした年金財政、年金の仕組み、制度というものを改善することによって、そのような水準を何とか確保いたしたいというのが私の真意であります。
  337. 安井吉典

    安井分科員 それでは、現実に、いつになったらその二万円年金ができるというふうにお考えですか。
  338. 田中正巳

    田中国務大臣 かねがね申しておりますように、昭和五十三年が年金の財政の再計算時でございますが、最近の様子にかんがみまして、五十一年に二年繰り上げて年金の財政の再計算をやる、その節に年金財政のあり方、仕組み等もある程度改善を加えたいということを前々から答弁しているわけでございますので、さような節に何とかいたしたいというのが私の気持ちであります。
  339. 安井吉典

    安井分科員 それじゃ、ぐあいによっては五十一年度でそういうことになり得るという可能性はあるわけですね。
  340. 田中正巳

    田中国務大臣 さようでございます。
  341. 安井吉典

    安井分科員 これはそういうふうな作業が進んだらということなんでしょう。進むそういう中でそういう可能性も出てくるかもしれない、こう言われるわけですね。  私が一番最初にこれを取り上げた問題じゃないものですから、関係の御発言をした人にもまたそれぞれ御意見があるかと思うのですけれども、きょうのところは、大臣の真意はいまの御発言のようなところだ、そういうふうに私なりに受けとめて、この問題は一応打ち切ります。ほかの方があるいはまたお取り上げになるかもしれませんから、その点ちょっと申し添えておきます。  もう一つきょう大臣に伺いたいのは、例の摂津訴訟と俗に言われる形で、保育所の国費補助のあり方について、これは摂津の市長というよりも全国の市町村長の気持ちを代弁するような形での問題提起ではなかったかと思うのですけれども、この問題について、齋藤元厚生大臣といろいろ摂津市長との話し合いも行われたというふうに聞くわけでありますが、新大臣になりましてからどういうふうに御処理されつつあるか、また処理するおつもりか、その辺を伺います。
  342. 上村一

    ○上村政府委員 摂津市から訴訟が提起になったのが四十八年八月でございます。それ以来今月の四日に八回目がございまして、それまで口頭弁論を続けたわけでございます。国としましては、摂津市が主張しております請求権は存在しないという観点で現在争っておるわけでございます。齋藤前々厚生大臣が昨年の秋に二回摂津市の井上市長と会談をしたわけでございます。そのときも大臣からは、訴訟で求められた過年度の補助金というのは、単年度処理をたてまえとする補助金の性格からして支払いはむずかしい、しかしながら、保育所行政というものは厚生省でも重点を置いて取り組みたいし、補助単価の充実にも三省合同調査をもとに配意したいというふうなお話があったわけでございます。いま御指摘になりましたように、その訴訟というのは超過負担問題と言われるものを代弁する形で提起されたという点にも一つ意味があるわけでございまして、私ども、自来保育所のいわゆる超過負担問題については鋭意解消に努めてまいったところでございます。四十九年度におきましても、補正で三者合同調査をもとに処理をいたしましたし、五十年度予算におきましても、保育所の単価の引き上げを図ることによりまして、地方自治体の超過負担の解消に努めておるところでございます。
  343. 安井吉典

    安井分科員 ことしの超過負担の解消について、特に保育所だけに限定してどういうふうに措置されたか、その措置によって原告である摂津市長は了解するような方向にあるのかどうか、その点どうですか。
  344. 上村一

    ○上村政府委員 五十年度は四十九年度補正で二七・六%引き上げました後に、さらに八・四%引き上げたわけでございます。それで、こういった今後における補助単価の引き上げということと、それから、その訴訟の対象になっておりますのは過去における、市長の言葉をかりれば市が超過して負担をした分ということになるわけでございまして、私どもがこの超過負担の解消に努力をしたから、過去の市が負担をしてそして民事訴訟で請求をしておる分をどうこうするかということは、どうも市長さんとその後お会いをしておりませんので推測もいたしかねるというふうな状況でございます。
  345. 安井吉典

    安井分科員 これは係争中の問題ですから、私もわきからよけいなことは言いませんけれども、超過負担の本質論に立って言えば、今日地方財政は非常に重大な危機に直面をしている、それは人件費が高いからだとかなんとかということで、地方財政悪者論が横行しているわけですが、しかし、その原因一つに超過負担の問題があることは紛れもない事実です。今度去年からことしにかけて引き上げをやったって、私は本当に現実の問題を解決できるような数字にはなっていないように思う。聞くところによると、どこの自治体でも不満たらたらです。問題点を理解して、昔はどんなものをつくっても五百万円ということにして、その二分の一補助すればそれで済むという、こんなでたらめなやり方はない、それが二分の一補助という形を形式だけでもおとりになったことは私は前進だと思う。その点は評価しますよ。評価しますけれども、しかしいまの政府がお決めになった単価というのは、現実の建設単価にはやはりほど遠い。そこで相変わらず超過負担だ、政府のやり方は不満だ、地方財政法違反だとこうなるわけです。  そこで、私は一つこういう提案をしたいわけであります。国が国立の保育園を毎年一つでもいい、東京でも大阪でもどこでもいいですよ、ひとつお建てになりなさい。敷地も買って、そしてこれが基準的だという建物をお建てなさい。そうすれば現実の基準というのはそこではっきり出てくると私は思う。そういうことで、超過負担だ、いやその単価は低い、安いという一つの議論ができるのではないか。これはおもしろいと思うのですが、どうですか、大臣
  346. 上村一

    ○上村政府委員 御案内のように、子供を保育所に入れる権限がございますのは市町村長でございますから、どうも保育所を建てる仕事というのは市町村に非常になじみのある仕事でございます。国が国として建てなければならない施設も多々あるわけでございます。したがいまして、国立の保育園を建てるという話はどうも納得いたしかねるわけでございますが、ただ私ども一つの標準設計のようなものをこしらえて、そしてそれに従って積み上げてみるというような検討をすることも必要ではないかというふうに思っております。
  347. 安井吉典

    安井分科員 保育園という名前でなくてもいいですよ。保育園と全く同じ規格を持った建物を一つお建てになってみる、私はそうすれば本当の単価というものを厚生省もわかるし、大蔵省もわかると思うのですよ。現実をごまかして、これだけかかるのをこれくらいにしておけば自治体も黙るだろう、そういうような形でいままで問題を処理してきたところにこういうトラブルが出てくるのです。これは保育所だけではないのです。私は建設省や農林省やその他全部含めて一般論として、保育所だけをきょうは悪者みたいにして言いますけれども、文教施設もそうです、そういう形で問題を処理する方法一つあるのではないかという問題提起ですが、超過負担をいかにして解消するかという重大な課題への解消策の一つとして検討していただきたいと思います。  そこで、福祉施設整備の長期計画は、私はインフレの中でなかなか十分に進んでいないのではないか、こういう中で完全に達成できたとすれば、これはもう非常に甘い計画であったのではないか、こう思うわけであります。いままでの実績が大体どんなことになっておるのか。これから新しい段階——経企庁も経済社会の基本計画の見直しをやるという段階ですからね、私は、福祉施設を増強していくための新しい計画をいまの段階できっちりお立てになるべきではないか。そのいままでの評価と、これからの方針について伺います。
  348. 翁久次郎

    ○翁政府委員 厚生省が四十五年に策定いたしまして、四十六年から五十年までに五カ年計画をもって整備しようといたしました社会福祉施設の整備計画でございますが、四十九年までに達成いたしました達成率は七五%でございます。その中で保育所が九六%、特別養護老人ホームが七三%、それ以外の施設が大体三割、三〇%から四〇%の段階になっております。いまお示しがございましたように、特に保育所については一応五十年度に近い数字が出ておりますけれども、なお非常に需要が多うございますし、また特別養護老人ホーム、寝たきり老人の施設につきましても、これは充足を図る必要がございます。そこで、五十二年までの間にぜひともこの特別養護老人ホーム、保育所、こういったような施設を重点的に整備計画をつくってまいりたい、かようにいま作業を進めておるところでございます。
  349. 安井吉典

    安井分科員 大臣、いまお話があったとおりでありますけれども大臣が御就任の間に、将来に向けてのきっちりした社会福祉施設全体の整備増強計画をしっかりとお立てになっていくという大臣一つの記念碑としてお残しになるという気持ちはありませんか、どうですか。
  350. 田中正巳

    田中国務大臣 実は前の計画も、私が与党におってかなり深く関与いたしたものでございます。たまたまこの際私厚生大臣を拝命しておるものですから、できるだけ精力的にこの問題を詰めて、りっぱな計画を立てたいというふうに思っていますが、いつまで私やっておるかよくわかりませんものですから、ここで私の任期中と申し上げるのもいかがかと思いますが、とにかくできるだけ努力をして、次のりっぱな計画を立てたい、こういうふうに思っております。その場合どういう施設にどのように重点を入れるかということは、前回のやったものと比較をいたしまして、私は多少考え方を変える必要があろうというふうなことを考えております。
  351. 安井吉典

    安井分科員 もう時間がなくなったようですけれども、整備計画ができるまで大臣をおやりなさいというわけにも、幾ら同郷の田中さんでも私はそう言うわけにもいきませんが、しかし少なくもとりあえず、いま大分いろいろお考え方があるらしいのですけれども、その着手をしてください。少なくも着手をする、それだけひとつお願いをしておきます。
  352. 田中正巳

    田中国務大臣 心得ました。
  353. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて安井吉典君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  354. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣に簡単にこれから質問をいたしたいと思います。  先日、私新聞を見ておりますと、この国会議場におきまして、陸軍を代表して黙れと言った黙れ事件の佐藤賢了さんが七十九歳で、碁を打ちながら大往生を遂げられたという話じ書いてありました。ああいう方でも大往生を遂げられるのだなと思って感心したのであります。また、これほどいい往生際はなかろうと思います。さらにはまた「恍惚の人」という有吉佐和子さんの書いた小説を読みましても、やはり碁を打ちながら息を引き取った方を書いてございます。あの「恍惚の人」の小説なんというものはまことに陰惨でございまして、読むのに、何といいますか、いやいやながら読んだだろうと思うのです。ただ一つの救いは、あれは碁を打ちながらことりと死んだ人が出てきたところで、ああ、この人は大往生したんだなということで、私は救いがあったと思うのです。  こういうようなことを考えますと、私どもは一体老人問題をどうすればいいのか、老人の医療体制をどうすればいいのか、ここに私どもは深刻に思いをいたさなければならないと思います。有吉さんもあの小説を書きながら結論が得られずに、迷いに迷って、一体老人の医療をどこですればいいのかということを悩みながら書いたのが、私どもはその行間にうかがえるのであります。核家族の発達した今日、老人が邪魔者扱いになっておるような態勢がある。その中で、老人医療というものは無料化の方向にさらにさらに強化しなければならないことは大臣も御同感だろうと思うのです。しかし、それじゃ一体いまのままでいいのか。いまの制度はこれを推し進めなければいけないけれども、施設が不足しておるんじゃなかろうかと私は感ずるのです。  このごろ病院へ参りますと、診察室、待合室にお年寄りがたくさん来られておる。まさに待合室がサロンのごとき状況を呈しております。あるいはお年寄りの中にはお弁当を持ってこられまして、そして待合室で病気についての話し合いもできるんでしょう、意気投合いたしまして、そこで何時間も昼弁当を召し上がりながら楽しげにお話ししておる老人患者を見るのでございます。こうなりますと、救急の人たちの医療の——このごろよく言われますが、待ち時間三時間で診察三分という一つ原因もここらにあるのじゃなかろうか。あるいはまた、病院のベッドのほとんどがお年寄りに占領せられまして、そして実際壮年の方々が病院に入院しようと思ってもベッドがあいてないというケースが多々あらわれておるのであります。そこで、このような病気の老人に対しまして一体どうすればいいか。国にはいかにも特別養護老人ホームというものもつくってございます。ございますが数が少ない。あるいはまた、それよりももう少し高級な、ちょうど若者が喫茶店で話し合えるようなものもひとつ考える必要があるんじゃなかろうか、このように私は感ずるのですが、大臣、どうでございましょう。
  355. 田中正巳

    田中国務大臣 いま先生が、老人医療をめぐって老人の福祉のあり方等々について多様な御所見、問題点を提起されました。私も常日ごろそういう点について心配もいたし、考慮もめぐらしているわけであります。  そこで、いままで老人医療を普通の医療機関で無料で授けるというようなところに踏み込んだのですが、あれがあれだけでいいのかどうかという問題が私どものところにも残っているわけであります。いいことではございますが、しかし、あれをそのままにしておくのではなく、あれ以上にいろいろな配慮をめぐらす必要があるんじゃないかというふうなことが世間でもいろいろ言われ、私もそう思うのであります。  そこで、御説のとおり、老人医療の無料化が始まって、老人によって病院のベッドが占められる、あるいは充足率が高いということを言っていますが、これはどうも調べによると地域的に違うようでありまして、土地土地によって状況は違うようであります。そこで、リハビリテーションとか社会福祉施設のあり方等についても再検討を加えていかにゃなるまいというふうに思っております。いま、老人が待合室をレクリエーションの場にしておるという話ですが、これは老人福祉センターというものが大体これに該当する施設だと思いますので、こうしたものを今後増設をいたしていくというのがこれにはこたえ得るだろうと思いますが、私は、現在の日本の社会福祉施設、ことに老人福祉施設のカテゴリー、これがこのままでいいのかどうかということについて常日ごろ実は考えているわけであります。先生も御承知のとおり、ヨーロッパの社会福祉施設には、私もよく研究いたしておりませんのですが、書物などを読みますると、ホスピテールという施設があるようであります。これは日本の特養にもう少し医療面を加味した施設だそうでございまして、したがって、これは北欧型だそうでございます。こういったようなものについての検討もいたし、特養よりは医療機関に近く、医療機関そのものではないというような、要するに特養と医療機関の間のようなものを考えにゃならぬような気がいたしますが、もう少し検討をいたしてみたい、もう少し老人の多様なニードにこたえるために一体どのような施策や施設が必要だろうか、検討課題だろうと私は思います。
  356. 井上普方

    井上(普)分科員 結局、私が先ほど申しましたように、老人によって占められるベッド数というのはあるいは地域的に違うとおっしゃられると、そうかもしれないと思うのです。しかしながら、お年寄りはたくさん病気を持っておりますから、それはやはりその必要に応じまして、と申しますよりは、年寄りを大切にするためには老人医療無料化を強力に推進しなければならぬと私らは思います。しかしながら、それに対する施設、まあ大臣もいま検討されるとおっしゃっておりますけれども、北欧のはもう少し違ったような形で私はあらわれておるように思います。スウェーデンあたりに行きますと、医療面をもう少し加味したと申しますよりは、グレードがあるようです。実際段階があるようです。特別養護老人ホーム施設と違った面がどうもあるようです。それも医者をたくさん置いておるところと、軽く置いておるところと二通りあるようです。これを拡充することはもちろん必要です。大臣もおっしゃるように必要だと私は思う。しかし、もう少し軽いもの、何分この老人ホームと言いますと、やはり過去の養老院のようなイメージが国民の間につきまとっておることは、これは事実であります。有吉佐和子さんもその点を書いておりました。だからこのごろの若い人たちの中には、端的に申しますと、もう歯にきぬ着せず申すと、お年寄りをこの老人ホームに入れるのではかっこう悪い、だから、病気を持っておるんだからひとつ入院さしておいてください、こういうケースが非常に多くなっておることも、これまた事実であります。しかし、そのお年寄りというものもやはり病気を持っておる。あの「恍惚の人」のような脳軟下症ではございませんけれども、そういうような方々がたくさんある。これに対する日本の社会の対応の仕方、これを真剣に私は考える必要があるんじゃないか、こう思うのです。ますます核家族が発達していく今日において、これは大臣、決していまの問題じゃないのです。われわれの問題なんですよ。この点をひとつお考え願いたいと思うのです。  と同時に、先ほども申しましたように、青年には喫茶店みたいな社交の場がある。ところがお年寄りには大臣おっしゃいましたけれども、各地に町立の老人福祉センターができていますが、実際問題とすれば余り利用されておりませんね。週に一遍ぐらい夜集まって、お花の先生、お茶の先生、踊りの先生集まって、それでここで民謡を習ったりやってはおりますけれども、あれじゃ常時行けるような施設というものが必要なように私は思う。実際の動きというのはそうなっているのです。老人会が借りて、そこで民謡の会をやってみたり、あるいは踊りの会をやってみたりというようなことに現在はなっておるようです。それも町に近い、部落に近いというところは土地が高いので、どういたしましても、中心から離れたところに行くので、なかなか行きにくいというような事例もたくさんあるようであります。したがいまして、もう少し簡便なものをつくる必要があるんじゃなかろうか、私はこう思うのです。いかがでございますか。
  357. 田中正巳

    田中国務大臣 先生いろいろお考えのようなことを私も実は考えておるわけでございます。老人福祉センターと申し上げましたが、先生ごらんになったのは老人クラブの実態じゃなかろうかと思うのですが、私の知っている老人福祉センターは、私の町などでは毎日のように満員でございまして、増設をしなきゃならぬということでございます。運営のいかんによるものだろうと思います。  それから、一つの示唆でありますが、私の管内で老人福祉センターというのは、あれは通って、あそこでいろいろと老人がお互いに交際をしたりつき合ったり、なぐさめ合ったりしているのですが、これに宿泊部門をつくって非常に成功した。これは単費事業でやっておりました。病人ではございませんが、農繁期等に、あるいは家庭の事情で、宿泊部門を持っているので成功した事例もございます。要は、今日老人福祉施設、これは福祉施設でないものを含めて四つのカテゴリーがあると思います。有料老人ホーム、これは福祉施設ではございませんが、これと軽費、養護、特別養護、この四つでございますが、こういう四つのカテゴリーで一体老人の多様なニードにこたえることができるだろうかどうか。いま一工夫必要じゃなかろうかということを私どもも考えておりまして、今後ひとつ綿密に検討をいたし、何とかそういう多様なニードに、要望にこたえるようなぴったり合ったものをつくり上げていかなければならない課題が出てきたものというふうに思っております。
  358. 井上普方

    井上(普)分科員 老人福祉センターは確かに行政当局の姿勢の問題だと思うのです。それは確かに大臣がおられる地方では成功しておるかもしれません。しかし私のくにでは、見ておりますとどうも成功していない。その一つの大きな原因がやはり人にあると思うのです。あるいは人件費の補助というのが少ないんじゃございませんか。そこらあたりに私は問題がある、裕福な町村であれば置けるけれども、そうでなければ置けないというところに問題があるのじゃなかろうかという気がしてならないのであります。ここらあたりは、これは私らのことだとしてひとつ十分にお考え願うと同時に、お考え中だと言いますけれども、やはり政治そのものは、考えればすぐに実行するということでなければならないと思います。現実を処理することでなければならぬと思うので、この点ひとつ、最大の努力を大臣にお願いいたしたいと存ずるのであります。  同時に、特に老人医療の施設の不足、これは先ほども申しましたように非常に深刻なものがあります。これは地域によって違うとおっしゃられますけれども、私らが見ますと、私も医者の端くれで友人がたくさんおりますので、ベッドを持って待合室へ行って五時間、六時間おるんだというようなケースを再三耳にいたします。これはやはり施設をつくらなければならない。そしてまた核家族に——まあ日本の社会は核家族になれるのが、まだ日が浅うございますので、それに順応するのにお年寄りもなかなかむずかしかろうと思う。しかしこれは私どもが早急に手をつけなければならない問題だと思うのです。したがいまして、これらの問題につきましてもひとつ大臣のせっかくの御努力をお願いいたしたいと存ずるのであります。  続いて私は、たくさんテーマを持っておるのですけれども、先日東京で、清瀬にあります結核研究所の病院へ実は見舞いに参ったのであります。結核研究所といいますと、これはいままでに非常に功績のあった、たしか財団法人だと思います。ところがその後病院は、まあ秩父宮さんが亡くなったのを記念にいたしまして病棟を建ててみたりいたしましたところですが、その病棟が非常に古くなってきておる。木造で傾きかけたような病棟です。それは、結核がなくなってきたのだからまことに結構な話だと言えばそれまでです。しかしながら、やはり老人結核、成人結核というのは依然としてたくさんある。あの病院に私は見舞いに行きましたところが、ビラがたくさん張ってある。何だと言いますと、赤字を土地の切り売りで逃れているのだ、こう言うんですな。結核研究所といえば、私らが勉強したころにはBCGの総本山のごとく、BCGによって日本の結核は少なくなったのだけれども、BCGの総本山のごとく結核研究所というのは日本の結核撲滅のために力を尽くしたところです。いま呼吸器関係全体の研究もやっておりますが、そこが赤字だからといって土地の切り売りをしながら維持経営をしなければならないというところに日本の医療の貧困さがあるのではなかろうかとつくづく考えさせられたのであります。これらの点について、何とかああいうような財団——全くの社会施設でありますが、これらに対する国の補助の道をひとつ講ずる必要があるのではなかろうか、このように思うのですが、当局の説明を聞きたいのです。
  359. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 結核予防会につきましては、四十八年度に厚生省指導いたしまして、再建整備五カ年計画というのをつくらしております。確かに御指摘のように昭和四十四年ぐらいから赤字が出まして、四十八年までに十二億の赤字が出ましたので、それはそれまでに土地を売りました金で埋めておるわけでございますが、そういった事態を注目いたしまして五カ年計画をつくらしたわけでございます。  その計画によりますと、本部は新館をつくりまして、そこで第一健康相談所の部門の機能を強化する、また上の方は貸しビルにいたしまして、収入を上げまして本部の歳入を賄う、また結核研究所はできるだけ国から全部補助金をもらう、付属の療養所、保生園の療養所、そのほかに三つの診療所がございますが、特に療養所については早急に建物を改築いたしまして、経営管理の合理化を図って黒字に転換をするという方針を立てたわけでございます。それに従いまして本年度は、たとえば結核研究所は約三分の二の補助率で一億四千五百万円の補助金でございましたが、いま御審議を願っております予算案では二億六千四百万円で、一応全部の費用を国が補助する形になっております。特に、問題の結研付属の療養所でございますが、これはやはり先ほどの五カ年計画に従って五十年度中に改築をしなければなりません。大きな療養所でございますから二年度にまたがると思いますが、この費用につきましては、現在、船舶振興会の方に約一億五千万円を五十年度分としてお願いをしておりますし、また五十一年度には第二年度分をお願いすることにいたしております。また医療金融公庫の方にも普通の限度額を超えて特別の融資をするようにお願いをしておるところでございまして、これについては大蔵省も特別な御協力を賜っておるところでございます。
  360. 井上普方

    井上(普)分科員 それで、実は私が参りましたのは九月ですから、もう五カ年計画が始まったところですね。結核研究所の付属病院では、あそこにべたべたと、ともかく土地を切り売りすることによっての赤字解消は許せないというのが書いてあるのです。事実、患者さんに話を私聞いてみますと、そのような事態である。五カ年計画で赤字を埋めるとおっしゃっていますが、去年の九月ですよ。まだやっているんですよ。御存じですか。そうしますと、その土地の切り売りもやはり五カ年計画の中に入っているのですか。
  361. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 たとえば清瀬の結核療養所の改築には二十億の金がかかると思います。ところが医療金融公庫だとかあるいは船舶振興会の坪数、単価でまいりますと十億分しか補助とか融資の対象になりません。りっぱな療養所をつくろうと思えばどうしてもあと十億要るわけでございます。そのためにはどうしても後ろの方の土地を売らなければなりません。またそのほか現にかなりの借金があるわけでございます。
  362. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、どうですか、土地の切り売りをしなければともかく新しい病棟が建たないというような状況。これは財団法人でしょうな。
  363. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そうでございます。
  364. 井上普方

    井上(普)分科員 財団法人でまじめな治療を行い、日本の結核撲滅のためには大きな功績のある研究所の付属病院、しかも現在なお活発にその第一線でやっておる病院、それが赤字だからといって、しかも大臣、これは日本では有数の呼吸器関係の研究所であり付属病院であるのです。ここがこのまま赤字が出るからといって、敷地の切り売りによって逃れようとするのは許されることでしょうか。これは国がもう少し、船舶振興会であるとかあるいはこんなところに頼まずに、国直接にやるべき、補助金を出す仕事じゃなかろうかと私は思います。大臣の御所見を承りたいのです。
  365. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 療養所の改築について国が補助金を出しますことについては、他の公的法人との兼ね合いがございましてできないわけでございます。また一般論といたしまして、こういった療養所の経営はやはり経営管理の合理化を図っていただく。その一環として建物の合理化を図る必要もございましょうが、内面的な合理化も図っていただく、また医療費も適正なものに毎年引き上げていただく、そういうもろもろの対策が相まって経営が好転してくるものと思われます。  また、昨年いらっしゃったときにそのような張り紙があったそうでございますが、当該療養所の改築は当初から五十年度以降ということになっておったわけでございまして、国の方もまた船舶等もいろいろ御援助をしておるわけでございますけれども、まだ敷地にはかなりの余裕がございます。したがって、若干の土地を売ることはやむを得ないと考えております。
  366. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、いまの答弁であなたは御満足なさいますか。敷地に若干の余裕があるからそれを売ってでも整備するのが本当だという考え方をあなたは肯定されますか。どうでございますか。
  367. 田中正巳

    田中国務大臣 私もあの施設の再建計画について説明を一応受けました。詳しくは存じておらないわけでありますが、国からのいろいろな助成をいたしますと同時に、再建整備の一環として今後の整備によって不要になった土地を売るということについて、国立等にもそういう例がございますのでやむを得ないものかな、こう思っておりますが、それによって実質的にあの施設の機能が損なわれるというふうには承っておらないわけであります。
  368. 井上普方

    井上(普)分科員 この付属研究所というのは敷地は広いほどいい、研究所というような公的なものは土地をたくさん持つ方がいいというのは、これはいままでの方針じゃございませんか。土地が余っておるから、いま研究にたちまち差し支えぬからということで土地の切り売りをしなければならないような運営を黙認する、この態度は一体国はどうであろうかと私は思うのです。それは土地はいかにも高く売れるでしょう。しかしそれによって将来悔いを残さないか。しかも結核予防会結核研究所というのは日本の結核の予防、治療に大なる功績を残したところであります。このような研究所が赤字が出ればもう土地を売っていいという国の考え方それ自体に、厚生省当局態度に対しまして私はふんまんやる方ないものを覚えるのであります。大臣の御所見を承りたい。
  369. 田中正巳

    田中国務大臣 先ほど申したとおりでございますが、一部病棟等に充てられておった土地を売るのでございますが、新しく建てられる建物は立体化をいたしますものですから、有効面積としては私は差し支えがあるものというふうには承っておらないわけでございます。したがって再建整備の一環としてある程度の土地を譲渡することについては、国が何にもしないで土地だけ売らせるというのじゃおしかりをこうむっても仕方がないと思いますが、国は応分のことをいろいろ努力をいたしているわけでございますので、その点については御理解を腸りたいと思います。
  370. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣、いま国は応分のことをしたとおっしゃいますが、応分のことってどんなことをしたのですか。おっしゃっていただきたい。
  371. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 先ほど申し上げましたように、結核研究所の経費をほぼ全額補助対象にいたしております。
  372. 井上普方

    井上(普)分科員 結核研究所の……。あたりまえでしょう、それは。いままで国は結核予防に対しまして——BCGは最初はほとんどここでつくらせておったのでしょう。これが開発研究したBCGによって今日の結核の撲滅が可能になったのでしょう。するのは当然じゃありませんか。またそれだけの功績のあったところなんだから、国が応分のことをしたと言うが、応分になっていないじゃないですか。その功績に対して認めるのであれば——認めないのですか。この日本の現状、こういうふうに若い者の結核がだんだんと滅っておるこの功績というのは、それはたくさんの功績者の中にもあるでしょう。しかしながら功績者の最大の一人として結核研究所が挙げられるのではなかろうかと私は思う。応分のことをしたと大きな顔をしておっしゃられると、私もしりをまくりたくなるのです。あの病院に対して、研究所に対して国がやっていないじゃないか。じゃ私は改めて委員会におきまして詳しいデータでひとつお相手申し上げましょう。私はきょうはあの研究所を見るに見かねまして申しておるのです。大臣、あなたが応分のことを国がしたとおっしゃるから、あなたの部下を全面的に御信頼になっておっしゃっておられると思う。でありますから、私はそれじゃひとつ結核研究所のこの病院の代表を連れてまいりましょう。大臣、御面会になっていただきますか。そしてあなたの部下の言うことと実態とが違っておれば、大臣は考え直す御決意がありますかどうか、この点を伺いたい。
  373. 田中正巳

    田中国務大臣 私は面会の御要望のある方については、時間の許す限りどなたにでもお目にかかります。
  374. 井上普方

    井上(普)分科員 そのときに、部下のおっしゃるのと違っておった場合、あなたは決心を変更なさらなければならないと思います。この点もひとつ私は強く要望しておきたいと思うのでございます。  いずれにいたしましても、このような財団法人の営利を目的としたものでない、しかも現在に対して非常に功績のあるもの、これに対しましては、国は手厚い保護を加えなければならないと思うのです。ともかく上からながめるのではなくて、国民に対してこの施設がこれだけの功績があったし、また将来もあるであろうということを考えて、役人仕事で、おまえこんなところはいかぬじゃないかというようなことで、土地が広過ぎるぞというようなことで、この土地を売りなさいというような指導をやることについては、私はちょっと問題があると思うのです。この点につきましては、私はいまの厚生省当局態度にはなはだしい不満を抱くものでございます。いずれ私も改めて常任委員会でこの問題につきまして質問いたします。  以上で終わります。
  375. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて井上普方君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  376. 大出俊

    大出分科員 厚生大臣に承る機会がこの国会ほかにございませんので、後々の質問の前提ということで、論点は少し多いのでありますが、ポイントだけきちっとお答えをいただきたいわけであります。なるべく要点を申し上げますので、時間がありませんから簡単な御答弁で結構でございます。  そこでまず最初に、救護施設あるいは養護老人ホーム、また特別養護老人ホーム等々施設がありますが、たとえば寮母さんのような方の定員の基準でございますけれども、私は結論を先に申し上げておきますが、この基準は変えなければならぬはずだというのが私の結論であります。  そこで、まずこの基準というのは、例を特別養護老人ホームにとっていただいても結構ですし、皆さんの方でそのほかをおとりいただいても構いませんが、この五十人という在寮者、基準でいきますと寮母さんが十人、こうなっていますね。その意味では五人に一人という勘定でございます。ところが、さて次に五十一人から六十人というところは十二名、こういう基準でございます。六十名ならば五人に一人でありますが、五十一人のところならば四・何がしに一人、こういうことになる。同様な意味で六十一人から七十人になりますと、これまた十四人でございますから、七十人なら五対一でございますが、その間はそうではない。この基準は一体どこで、いつ、いかなる理由で、またいかなるデータでお決めいただいたのか、まず承りたい。
  377. 翁久次郎

    ○翁政府委員 特別養護老人ホームを例にとって申し上げます。  四十一年に厚生省が厚生科学研究費をもちまして、救護施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム等に収容されておられる人の一人当たり所要の、たとえば介護であるとかあるいは給食であるとかあるいは便所の始末であるとか、こういったものを積み上げ計算をしました。その結果、五十人の定員規模である場合には、ただいまお示しのとおり、特別養護老人ホームの場合には五人に一人の寮母さんで大体お世話はできる、それからいまお示しがありましたように、その収容者が六十人以上七十名程度でありますと、いまの施設は御承知のとおり、一人一人個室に入っているわけではございませんので、そういった寮舎に節約部分ができてくるというようなことを総合勘案いたしまして、いまの五人に一人、あるいは規模によって十人に一人というようなものをつくった次第でございます。
  378. 大出俊

    大出分科員 この種の定数配置というのはなかなか科学的ではないものが多い。たとえば、保助看婦法等をめぐりまして私も長い質問をしたことがございますが、看護婦定数なんかも、あれは昭和二十八年にお決めになっておりますが、想定患者総数というのと、看護婦さんの、家庭に引っ込んでいる方もありますけれども、稼働し得る看護婦さんの数と両方出してきて、想定患者総数を割った。割ったら四対一になったというので四ベット一人になったというように、いまのお話、金の費目は確かに厚生科学研究費とついておりますけれども、だがどこまでそれが科学的なものかというと、私に言わせるとつかみである。  そこで、そのことを実証したいのですけれども、五十年度予算編成に当たって、特別養護老人ホームの寮母さんを何名ぐらいおふやしになったのかという点と、将来に向かってこれをどういうふうになさろうとしておるのかという点をお伺いいたします。
  379. 翁久次郎

    ○翁政府委員 ただいま申し上げましたのは、収容されております老人に対するいわゆるサービスの面で計算したものが五対一ということでございます。ところが、特に収容施設中心でございますけれども、手数のかかる老人を収容している施設等における職員の勤務条件、これはやはり最近非常に問題がございます。そこで、来年度以降における対応といたしまして、これらの施設における職員の夜勤体制を、いわゆる労働基準法に適合したものにしていくべきであろうという観点から、ことしにおきましては、特別養護老人ホームにつきましては全国で大体二百八十五名の寮母さん、養護老人ホームにおきましては六百七名だったと記憶いたしておりますが、救護施設におきましては六十六名、大体そういった数字で約千百名程度になると思いますが、大人の収容施設についてはそういう配慮で二年計画をもちまして、できるだけ労働条件の緩和を図る、勤務体制の改善を図るという趣旨でこの整備を図っていきたいと考えておるわけでございます。
  380. 大出俊

    大出分科員 全体としておおむね二カ年間で三倍にしたい、こういうお話ですか。
  381. 翁久次郎

    ○翁政府委員 大体いまお示しの数でございます。
  382. 大出俊

    大出分科員 いまの御答弁で、労働基準法に沿いたいというお話でしたね。二カ年間で三倍にしようというわけですね。そうでしょう。そうすると、これは私の足元にもたくさんございます。横浜でございますから、神奈川県でございますから。だが、夜勤体制というものを細かく当たっていきますと、基準法違反だらけなんです。あたりまえでしょう。在寮者の数だって二年間で急に変わるわけじゃない、部屋が決まっているのだから。二年間で三倍にしたいというのは、三倍要るわけでしょう。それを三分の一でやってきたわけです。しかし、そこに入っている方々をお世話しないわけにいかない、直接的な世話ですから。そうすると、夜勤体制の面で、今日は基準法違反と考えなければならぬものがずいぶんたくさんある。だからあなた方はそれをなくそうとおっしゃる。そうすると、大臣、今日これは基準法違反であってもやむを得ない、こういうことになりますか。
  383. 翁久次郎

    ○翁政府委員 最初にお断り申し上げておきたいのですけれども、増員の数についておおむね三倍ということを申し上げたわけでございまして、現在おられる収容施設の職員の数を三倍ということではございません。  それから、労働基準法の問題につきましては、確かにおっしゃるとおりの問題がございます。ただ、基準法違反として指摘されておりますのは、必ずしも全部の施設ではないのでございまして、ただいまの運営は、御承知のとおり最低基準で決めておりまして、それ以上の配置等によって基準法違反をしていないところも多数ございます。そういった意味において、われわれといたしましては、少なくとも夜勤体制を充実することによって、体制上労働基準の点で問題なからしめるということをこの二年の間にやってまいりたい、こういうふうに考えて措置しておる次第でございます。
  384. 大出俊

    大出分科員 私も何も全体を三倍と言っているわけじゃない、あなた方に詳しく聞いたのですから。私が電話をかけて予算折衝のときに承ったところが、これは非公式なことですから構いませんけれども、要領を得ないので、坂本さんという施設課の課長補佐の方に承った、あちらこちらでいろいろと夜勤体制の面で基準法違反という問題が起こっておりますので。このときにこの方は、三年計画でそういうものを何とかなくしたい、こうおっしゃるから、そうなるとその間は基準法違反があってもいいことになりますかと聞いたら、実は大変お困りになっておられました。私はへ理屈を言っているのじゃないのですよ。入っている方々のことを考えるから言うのです。私は陳情をいただいておりますが、どこの寮のどういう部屋で何という人が受け持ちでとまで言ってもいいのだけれども、そこまで言うと、あなた方は金を出す方、人を出す方ですからそこまで言わないのだが、選挙区なんですから、足元なんですから、ちょいちょいお伺いをするのですから、皆さんから現場で陳情を聞いている。これは私は非常に不親切だという気がするのです。こういう定数を決めておいて、この定数で運営したら、その方々が直接的に介護するのですから、いやでもおうでも違反にならざるを得ないのですよ。だからあなた方はふやそうとなさる。ごもっともで、ふやしていただかなければ困るわけです。だから、私はやはり基本となるべき定数というものを、これは名前は科学研究費をお使いになったに違いないのだけれども、この種の、たとえば労働科学研究所を使ったって、私も組合の出身ですから何遍も経験がありますけれども、なかなかむずかしいのだ。だから、おたくがおやりになったという、さっきお話しになった、そうでなくて、やはり第三者にやらせるとか、いろいろな方法があるわけですよ。大臣、いまにやにや笑っておられたけれども、私もこれは苦笑いなんですよ。こういう公の席で現行の法律規則の違反することがあるというようなことを言いたくないのだ。そのことはとやかく言わないので、だから結論として、この定数をもう一遍当たり直していただきたい、こう申し上げているのです。そうしてつかみのような感じで——皆さんの言っているのは積み上げ方式なんですね。積み上げ方式のような形で定数をふやすと言う。科学的な根拠を聞いたら、ないんだ。実情を当たって積み上げると言う。これは非常にむずかしいんですよ。皆さんが定数を出そうと思って当たるのじゃないのだから。そうでしょう、積み上げというやつは。そこらがありますから、根本的にこれは検討し直さなければいかぬのじゃないかと申し上げているのです。大臣、いかがでございますか。
  385. 田中正巳

    田中国務大臣 この問題については、私も従来からいろいろ心配もし、党におったときから努力をしてまいりました。ことに特養についてはいろいろとやってまいりましたが、なお、お説のとおりのような問題が残っていることは遺憾であります。そこで今年の予算期には非常に努力をしたつもりであります。  さっき、いみじくもおっしゃったのは、課長補佐の人が三年でと、こう言ったのを強引に直していただきまして、一年でやりたかったのですけれども、人手も端的に得られないなどという理由もございまして、二年ということでやったわけです。率直に言って余り気持ちはよくないのでございますが、ひとつ努力に免じて、しばらくの間お互いにがまんしたい、こう思っております。
  386. 大出俊

    大出分科員 わかった御答弁をいただきましたから。しかし、三年でということにいささか私もむかっとしておったわけでございましてね。この定数全体を見直しましたが、大変いろいろ無理がある。したがって、いまとりあえずやらなければならぬことは、直接的な要員の確保ですが、ここで夜勤体制その他に違反行為が出たなんてことがあってはいけないわけです。それだけ不親切になるわけですから、それは大臣のおっしゃるとおりおやりいただきたい。あわせて、これは特養のみに限らず他の分野につきましても定数を一遍お考えいただく必要がある。そして理詰めに予算折衝するならするというように乗せていただきたいという気がする、つかみでというんではなくて。そういう気がしますので、そこのところを承っておきたいと思います。
  387. 田中正巳

    田中国務大臣 とりあえず労基法違反の解消を今明年かけて私はやりますが、その後は科学的根拠に基づいた定数を策定し、これを予算化いたしたいというふうに思っております。
  388. 大出俊

    大出分科員 これはいまの世の中の重点施策なんですね。いわゆる谷間においでになる方ですから、ぜひひとつ積極的にお願いしたいわけでございます。時間がございませんのでよけいなことは言いません。  あわせて、陳情をいただきましたときに、これは全国救護施設協議会という団体名の方々でありましたけれども事務員の増員の問題なり、指導員の問題なり、特に栄養士の問題があり、調理員の問題もございました。これらおのおの御説明を承りますと一々ごもっともで、現場でやっている方ですから、ここがこういうことになります、ああいうことになります、これじゃ困りますという話ですから、本当ならこれは詰めたいのですけれども、時間がありません。  ここらも一遍ぜひ御検討をいただき、私も後ほど機会を得てまた御質問したいと思っておりますけれども、重点的に一つだけ承っておきたいのは、栄養士の配置の問題。これは八十一人以上は栄養士をお置きになることになっていますね。ところが、ここに栄養改善法という法律がある。これにもなかなか細かく書いてありますが、生活保護法には保護施設についていろいろな条件がありまして、省令の一条には「生活保護法第三十九条の規定による救護施設、更生施設、授産施設及び宿所提供施設の設備及び運営に関する最低基準は、この省令の定めるところによる。」と、こうなっている。問題はこの中の給食ですね。「第十三条 給食は、食品の種類及び調理方法について栄養並びに被収容者の身体的状況及び嗜好を考慮したものでなければならない。」「調理は、あらかじめ作成された献立に従つて行なわなければならない。」「調理及び配膳は、衛生的に行なわなければならない。」「食品の保存に当たつては、腐敗又は変質しないよう適当な措置を講じなければならない。」こういうふうに並んでおりまして、五番目に「栄養士を置かない救護施設にあつては、献立の内容、栄養価の算定及び調理の方法について栄養改善法第九条に規定する栄養指導員の指導を毎月一回以上受けなければならない。」ずっとございます。つまり栄養士がやるべき仕事、この面についての逐条がございまして、栄養指導員の指導を受けるといえども、質的な献立の作成、栄養価の算定、調理方法については一名の職員を配置しておかなければ給食業務はできないとか、たくさんある。いずれも栄養士にかかわる問題であります。  ところが、問題は、八十人以下のところについてはないということですね。この問題で、実はだいぶ切実な話を私聞いておるわけであります。なぜ置かないかという点をひとつ簡単にお答えいただきたい。
  389. 翁久次郎

    ○翁政府委員 確かに、お示しのように、できれば置くのが一番望ましいわけでございます。ただ、いろいろ従来のいきさつ等もございまして、従来は各施設間で、多人数おりながら栄養士が置けなかったところを重点的にできるだけ置くような配慮をして今日まで来ておるわけでございます。したがいまして、栄養改善法の最低の条件を満たすということでただいま配置をしておりますし、なお、八十人以下の施設につきましては、非常勤の形で置ける予算的な措置はとっておる次第でございます。
  390. 大出俊

    大出分科員 そこにまた矛盾があるのですね。大臣は昔からこちらの方を専門でやってこられておりますから、詳しいのはよく知っていますがね。  いまいみじくも御答弁にありましたが、この表によりますと括弧の中に人があるのですね。括弧というのは非常勤なんですね。では、その非常勤の栄養士さんをどう使っておるかというと、三百六十五日おるのですよ。非常勤で使っておるのです。ボーナスを払わぬ、つまり年末手当だとか夏期手当だとか期末手当だとかを払わぬという仕組みになっておるだけのことだ。そんな酷な人の使い方はない。そうでしょう。八十人以下でも置きたいといまおっしゃる。なお、非常勤でとおっしゃる。それはどういうふうに使っているかと言えば、その人は三百六十五日いるのですよ。この栄養士は非常勤でいる。どこが違うかと言えば、非常勤という身分であるがゆえに、各期の手当その他がもらえないという形の人がいるというわけです。大臣、そういうふざけた人の使い方はない。八十一人と八十人では一人しか違わないのですよ。八十一人に栄養士がいるならば、八十人にいなくていいということにはならぬのだからね。そうでしょう。そういう人の使い方を事厚生省が平気でやっておるというのは筋が通らぬ。大臣、いかがですか。
  391. 翁久次郎

    ○翁政府委員 おっしゃる趣旨はよくわかりますが、ただ、たとえば特別養護老人ホームの場合、できるだけ少人数の老人を収容するということで各地ともできておるわけでございます。したがいまして、いまの先生のごらんになった施設は、非常勤という名前で常勤の職員を置いておられるようでございますが、事実、保健所あるいは福祉事務所等に相談しながら栄養指導を受けておる施設もあるわけでございます。ただ、お示しのように、そういう栄養関係の職員の充実ということは必要でございますので、先ほど大臣もおっしゃいましたように、われわれの当面の問題の解決をしながらこういった問題についても対処してまいりたいと考えております。
  392. 大出俊

    大出分科員 大臣、八十人以下のところの方々がおいでになりまして、私のところはこういう実情なんだと言うわけですね。いま保健所の指導を受けるとおっしゃった。保健所にも指導員がおりますよ。だけれども、それを一々やっておられぬと言うわけです。やはりわかった方にいてもらわぬと、何かあったら、責任問題になりますね。だから非常勤で栄養士さんに来てもらっている。その方もわかった方だから三百六十五日おいでいただく。だがしかし、普通の常勤の職員と違うから、つらいと言うわけですよ。夏になって手当が出る時期になると、その方にはないわけですからね。しかし、一生懸命やってもらっているとなると、所長さんの立場からすれば見ておられぬのですよ。暮れになればなおのことそうだ。そういう矛盾は何とかしなければいけない。またそういう人の使い方は人道的な問題でもありますよ。だから、そこのところは、八十人以下であっても栄養士の置けるような、しかも常勤で置けるような体制を早急に確立する必要があると私は思う。それが一遍にできなければ、八十一人という基準を六十一人にするとか下げていきながらでもやはり解決を図る筋合いのものだ、こう思いますので、大臣いかがでございますか。質問の趣旨はおわかりになったとおっしゃる、ごもっともだとおっしゃるのだからいいんですけれども、いかがですか、大臣
  393. 田中正巳

    田中国務大臣 率直に言って、望ましい姿は、先生おっしゃる方向に行くのが望ましいというふうに思います。現実問題としてなかなか金の問題も絡みますものですから、全然入らないより非常勤でもやむを得ないかな、こういうような気持ちもございますし、勤務の実態に応じては本当に非常勤のところもあるようでございますので、常勤にしておって非常勤という身分で雇うことについては今後できるだけそういうものは解消していくようにいたさなければならぬと思います。
  394. 大出俊

    大出分科員 時間の関係もございますし、このほかにたくさん問題ございます。運営管理の面なんかでも、諸物価が上がっておりますから、ずいぶんいろいろな問題出てきております。暖房なんかでも建設のときにつくってしまうのもあれば、あとで機材を買っているところもありますから、いろいろここに問題があります。ただ、そこらのところをここでやっている時間がありません。特徴的なところ二つだけ取り上げましたが、これはぜひ前に進むように大臣御尽力いただきたいと思います。  次に、わずか十分ばかりになりましたが、論点だけ申し上げます。  まず一つは、大学病院等のお医者さんがいろいろな医療研究のために動物実験をおやりになっていますね。これは一体どこの所管になりますか。
  395. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 全般的な問題といたしましては厚生省の医務局でございますが、大学病院ということになりますと、文部省ということになろうと思います。
  396. 大出俊

    大出分科員 これは大学病院に限ったわけじゃないんで、民間の病院もございますし、医者というのは研究費がなければ成り立たぬわけでございます。実は私の兄貴も医者でございまして、滝沢さんと同じ学校でございます。  そこで、つまり動物実験、これは何か基準がございますか。たとえばこういう動物で実験をしたいという場合に届け出とか許可を求めるとか、あるいは事後報告をするとかございますか。
  397. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 特にないと存じております。
  398. 大出俊

    大出分科員 何もしないんですな、実は。だから国際的に大変日本は責められているわけですね。英国なんかの例を見ますと——私は動物の保護及び管理に関する法律の立案者でございますし、せっかくお通しをいただきましたが、だからといって申し上げるのではないのです。ここに英国王立動物愛護協会一九六四年年報がございます。この中などにもございますけれども、この国の動物愛護法というのは百年からになるのですけれども、この英国の動物愛護法の中に、これはドイツもそうでございます。同じ法体系なんでありますけれども、非常に厳しい取り決めがございまして、たとえば実験のために動物を手術をするというような場合に、みだりに手術を認めないのです。一々許可が要る制度になっていますね。牛とか馬だとか犬だとかネコだとかサルだとかいう人間に非常に近い動物を実験動物にすることを原則的に禁止している。代替動物がどうしてもない場合のみ、こうなっているんですね。その場合に、犬なら犬で動物実験をやった場合に、同じ実験である限り、報告が出ているわけですから、あとから許可を求めてくると許可しない。このときのデータで使えるはずだ、こうなるわけですね。つまり大変厳しいわけです。それでもなおかつその許可制度、報告制度というものが果たして有名無実になるのかならぬのかということで、英国内務省に実験動物委員会という委員会を設けておりまして、これはプロフェッサーが委員長で具体的に調べて四六時中監視をしている。そしてここが有名無実になっている、ここが違法であると言う。英国という国は動物に対する法律違反を犯しますと、びしびし罰金を取って禁錮。十五歳の少年だって、頭に来て犬を井戸にほうり込んで殺したら二年間の禁錮、途端に罰金、こういう国ですからね。ですから、やはりこれはそこまで考えなければならぬ時期に来ているという気がする。  ドイツなんかの場合もそうでございます。ドイツなんかでも、やはり、非常に詳しい取り決めがございます。ここにございますけれども、不必要な実験を避けるために、「動物の実験の結果は最高州官庁の規定する報告をしなければならない。企図された動物の実験は、その目的の申告が規定の官庁に時宜を得て報告されなければならない。その官庁は、同種の実験がすでに終了している場合には、次に許可を求めてきたその実験を禁止しなければならない。」ぴしっとしたこれは法律ですね。したがいまして、「高等動物あるいは人類に特別に関係のある動物、たとえば馬、犬、ネコ、サルのような動物についての実験は、他の諸動物についての実験によって企画した目的を達成できない場合にのみこれを遂行することを得る」と、許可制です。  ところが日本の場合には何にもないから、再起不能な動物をぶん投げ放しであっても——これは外国から来て調べた人もいて、英国なんかで大きな騒ぎになっておりますね。そこらのところを全く何にもなくていいのかどうかということです、これを承っておきたいですが、いかがでございますか。
  399. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 確かにイギリスとか西ドイツの制度は参考にしなければなりませんけれども、またわが国としてはわが国のいろいろな伝統や実情もございましょうから、その点は、その他の先進国の制度も勘案しながら検討すべきことではなかろうかと考えております。
  400. 大出俊

    大出分科員 いまの動物の保護及び管理に関する法律というのは、実験動物の問題に触れた法律なんですよ。いまの御答弁だと法律違反になりますよ。もう一ぺん答えてください。この国の実情ということは、ほうっておいていいという話ですかな。
  401. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そのような方向で努力すべきではないかと思うのでございますが、イギリス等のように非常に厳しい法律をつくることが果たしてどうであろうかということは、慎重に検討しなければならないのではないかと思います。
  402. 大出俊

    大出分科員 私は実はさっきまで、日本獣医師会の方々に講演を頼まれて、動物の保護及び管理に関する法律の説明をしてきたのですけれども、いまの答弁が出てくると、これは法律が現在存在するのですから——どうも私が立案して御協力いただいて通した法律ですから、私からは言いにくいのですけれども、だがそこまで考えてつくってあるわけでございまして、いまこれらの問題は保護審議会でいろいろ議論をしているわけであります。皆さんの側が、なくていい、この国の状況から見てという言い方は、状況が変わったわけですから、そこのところは改めていただかなければ困るので、大臣にこの点は、時間がありませんから大筋しか言っておりませんけれども、この辺のところをひとつ、どちらでも結構でございますが、将来のために、あすは農林大臣に承るつもりでおりますけれども、お答えおきをいただきたい。
  403. 田中正巳

    田中国務大臣 どうも率直に申しまして、いまにわかにお尋ねがございまして、私としては責任のある答弁ができませんが、よく勉強いたしたいと思います。
  404. 大出俊

    大出分科員 あと二分ぐらいしかございませんが、羅列的に二、三点申し上げますので、羅列的な御回答をいただけば結構ですが、保健所法施行令というのがございます。この第五条に、「保健所には、地方の実情に応じ、医師、薬剤師、保健婦、助産婦、看護婦、」——保助看婦法のいずれにも該当する三職種でございます——「診療エックス線技師、栄養士、統計技術者その他保健所の業務を行うために必要な職員を置かなければならない。」こうなっているのですが、これ獣医師が入ってないですね。狂犬病予防法は皆さんの所管で、犬、ネコ——ネコも旧来扱っている保健所もございます。八百三十二カ所の保健所ではネコも扱っている。獣医師がここになぜ入っていないのかという、これが一つの問題点。  次に、第四条、「保健所の所長は、医師であつて、左の各号の一に該当する技術吏員でなければならない。」こうなっていますが、絶対的に医師でなければならぬという理由は一体何かという点。保健所の業務の中から見て絶対的に医師でなければならぬという理屈はどこにあるのかという点。  それからもう一点、薬事法との関係。獣医師法の十七条というのがございます。獣医師の類似行為というものを禁止しているわけでありますが、これは薬事法四十九条との関係で、たとえばブロイラーを肥育している。ブロイラーというのは皆さん年間一人三羽お食べになっているから三億羽ある。大変なものです。これ、薬剤を投入して、動かさないで育てる、くちばしは切る、こういうようにやっているのですが、この薬事法四十九条との関係で、つまり薬剤を投入する場合の所管は、共管ではございましょうが、一体厚生省なのか、農林省なのか。そして、この法律を改正するとしたらどっちになるのか。三点承っておきたいと思います。  これで終わります。
  405. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、保健所法施行令第五条に獣医師が入っておりませんのは、保健所の補助職員の定数で多いものから八つの職種を具体的に挙げて、そのほかは「その他」でくくっておるわけでございます。しかしながら、獣医師さんは最近各保健所の主任技師だとか衛生課長、その他要職についたりしておりますので、これは将来の問題として検討いたしたいと思っております。  次に、同施行令第四条が保健所長を医師として定めておりますのは、保健所長は衛生行政の第一線の機関でございます保健所の長として、知事からほぼ大部分の権限を委任されまして、地域の保健衛生に関する全責任を持っております。このような観点から、各国においても保健所長は医師と定めておるものと思います。なお、参考のために申し上げますと、保健所の業務は、健康診断等のサービス業務と、それから食品衛生、環境衛生監視みたいな行政的な事務がございますけれども、そういった意味で保健所は一種の診療所の形になっておりますので、そのようなことになっておるものと考えております。  最後の薬事法と獣医師法の関係でございますが、これは薬務局長からお答えいたします。
  406. 宮嶋剛

    ○宮嶋政府委員 動物用の医薬品につきましては、所管は農林省でございます。また、薬事法の関係でございますが、先生もすでに御存じかと思いますけれども、薬事法は、一応は人の医薬品、人間に対する医薬品というものを本体にしまして、厚生大臣のもろもろの権限、規制というものを規定しておりますが、最後の方の条文で、動物に対する医薬品については所管大臣を農林大臣として人間と同じような規制をやる、こういうちょっと変わった規定になっております。そういうことで、薬事法につきましては、人間用の医薬品の規定とそれから動物用の医薬品の規定と、実はそれぞれ二つ全然別々のものが一つの薬事法という器の中に入っておるというかっこうでございます。言いますならば、結果的に農林省とわが方との共管の法律になっております。  それで、先生のおっしゃりたいことは、恐らく、動物用の医薬品に関する規制を強化したい、そういう法改正をする場合に一体どこが発議をし、どこが作業をするかということだと思いますが、それは農林省だろうと思います。
  407. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて大出俊君の質疑は終了いたしました。  次に、浦井洋君。
  408. 浦井洋

    浦井分科員 診療報酬支払基金の業務についてお尋ねをしたいのですが、これは大臣よく聞いておっていただきたいのですが、虎の門病院であるとかあるいは日赤医療センターにしても、済生会にしても、そういう大病院が、昨年来大病院財政危機問題連絡会というのを発足させて病院財政の窮状を許えておるわけなんです。この「社会保険旬報」の昨年の九月十一日号の資料を見てみましても、大病院が軒並みに赤字である。虎の門病院は、四十八年度四億五千万、四十八年度までの累計赤字が七億一千四百万、こういうようなかっこうで、赤字で非常に悩んでおられるわけなんです。この赤字である、経営が苦しいということは、中小病院であるとか、あるいは民間病院であるとか、あるいは診療所、こういうところもやはり同じようなかっこうで来ておるわけです。私も十分経験があるわけですけれども、無理をして市中銀行から金を借り入れたりあるいは院長なり経営者の個人財産を投入したりというようなことで何とか経営を支えていっておるというのが実情であるわけです。そうなってまいりますと、当然収入の大きな柱になる社会保険の診療報酬というものが、こういう時期であればあるほど、いままで以上に医療機関としては一日も早く支払われるということを要望しておるというのは当然だろうと思う。ここのところをひとつ大臣よく御認識をしておっていただきたい。  そこで具体的にお聞きをしたいのですけれども、保険局長、本年一月請求、ということは一月三十一日まで診療をした分については、何月の何日ごろに支払われるのかという点をちょっと聞いておきたいのです。
  409. 北川力夫

    ○北川政府委員 お尋ねの趣旨は一月診療月分の診療報酬だと思います。通常でまいりますと、これはもう先生御承知のとおりに、二月の十日に基金に出して、三月の二十一日には大体私的な医療機関は支払いが完了いたしまして、あとの公立病院等については多少ずれ込みましてその月の終わりごろまでには完了する、このように承知いたしております。
  410. 浦井洋

    浦井分科員 大臣、ここでよく認識しておっていただきたいのは、看護婦さんであるとかあるいはいろんな検査技師とかそういう方たちに人件費も払わなければならない。一月分。それから薬代も薬局に払わなければならない。一方ではそういうかっこうになるのですよね。ところが、いま保険局長言われたように、一月診療分が三月の二十一日にならぬと金になって返ってこない、こういうハンディが医療機関にはあるわけなんです。  そこで保険局長、その二カ月、一月分が二月の十日に提出して二カ月、一月三十一日の請求もいままでの診療分ですから、厳密に言うと二カ月と二十日間かかるわけなんですけれども、それだけおくれる理由と根拠というのは一体何ですか。
  411. 北川力夫

    ○北川政府委員 現在の診療報酬の審査、支払いは、御承知のとおり社会保険診療報酬支払基金でやっているわけであります。これは各都道府県に支部がございまして、全国で六千人くらいの職員がおるわけでございますけれども、実際の審査はそれぞれ審査委員会でおやりを願っている。しかし、四十八年度の例で見ましても、トータルでその件数が大体四億件近い。それから支払われた額が二兆円になんなんとしております。そういう状況でございますから、その数量的な面から見ましてもかなり審査には手間がかかる。しかも診療内容そのものも最近は非常に複雑になってまいっておりまするので、そういう問題とか、あるいはまた、公費医療の充実で社会保険と公費医療とが一緒に支払われるとか、いろいろな問題が重なってまいりましてこうなっていると思うのであります。  ただ、御了解願っておきたいことは、これまた先生も御承知だと思いますけれども、当該診療月分について翌々月払いということは、これはここのところ多年定着したものでございまして、決して最近になってそういう条件になったということではない、この点は御理解願えると思います。
  412. 浦井洋

    浦井分科員 多年定着したものだということなんですが、悪い慣習が定着しておるわけなんだ。  そこで大臣にお伺いしたいのですが、先ほど私言いましたように、一方では人件費、薬代はその月診療分をもうそのすぐ後で払わなければいかぬ。ところが、一方では、基金の方からは二カ月後に支払いが行われる。基金法の一条に、支払いというものは迅速適正でなければならぬ。果たしてこれで迅速適正、基金法の第一条にのっとっておるのかどうかという点、ひとつ大臣に——大臣ですよ。局長はいいですから、大臣に。
  413. 田中正巳

    田中国務大臣 支払いは適正迅速でなければならないという規定があるということでございまして、とにかく早く払わなければならない、こういうことだと思います。ごもっともですが、いまの社会保険診療の仕組みが、どうもこの程度のものがかかるということじゃないかと思うのでありまして、審査をいたす期間が要るということで、こういうふうにおくれるというのは、どうも現行の制度ではある程度やむを得ないものではなかろうかと思っております。
  414. 浦井洋

    浦井分科員 保険局長は多年定着したものだと言われているわけです。多年定着したから、いまもおくれても仕方がないんだということではいかぬですね。この点、大臣にもう一遍確認しておきます。
  415. 田中正巳

    田中国務大臣 決して定着したからこれでいいということではございますまい。しかし、あの仕組みというものは、翌月の五日に請求明細書を出して、そしてそれから審査に入る、こういうことでございますので、このような期日になるであろうということでございます。基本的には、やはりこの種のものは、私は、診療報酬というものが適性に支払われるということによって解決をする以外に方法がないのではなかろうか、早いに越したことはございませんが、いまの仕組みから見るとこういうことに相なるのではなかろうかと思います。
  416. 浦井洋

    浦井分科員 そうすると、基金法第一条の迅速というのは、大臣としては第二義的に考えておられるわけですか。
  417. 田中正巳

    田中国務大臣 これはできる限り迅速に払うということだろうと思いますが、その次に、やはり審査をいたせということを書いておりますから、実態上やむを得ずそういうかっこうになるものというふうに私は理解いたします。
  418. 浦井洋

    浦井分科員 基金の内部でも政府にいろいろ要望しているわけでしょう。一つ資料として、去年の九月三十日の基金の理事会でも、「医療費の支払に関する事項」という要望の中で、「基金法第一条に規定するごとく診療担当者に対する迅速適正な支払が基金の本来の使命であることにかんがみ、支払期日のできる限りの繰上げを行ないうるよう、」云々、そして、「支払資金の早期確保についても、さらに努力するものとするが、行政庁におかれても、資金の早期確保についての必要な方途を講ぜられたいこと。」、こういう要望が基金理事会の名前で政府に来ているわけなんです。  だから、私は政府に要望したいのですけれども、もっと迅速適正、この基金法の趣旨にのっとった支払いをするように基金を援助し、指導しなければならないと思うのです。大臣、どうですか。
  419. 北川力夫

    ○北川政府委員 昨年の九月に出ました基金の要望書は、ただいまおっしゃったとおりでございますが、それも含めまして非常に広範なものであります。昨年の要望書が出ました後、私どもも、支払いはなるべく早く繰り上げてやるということで努力をしておるわけでございまして、そういう線に沿って今後も努力をしてまいりたいと思っております。
  420. 浦井洋

    浦井分科員 それで、時間が三十分しかないので、基金の資金の問題についてちょっとお尋ねしたいのですが、基金法第十三条によりますと、「各保険者から、毎月、その保険者が過去三箇月において最高額の費用を要した月の診療報酬のおおむね一箇月半分に相当する金額の委託を受けること。」、こういうふうになっておる。それから、厚生省からいただいた資料を見ましても、各保険者と基金の間で毎年取り交わされておる契約書を見ても、一・五カ月分というふうになっておるわけなんです。だから、基金というのは、これは経費、人件費というのは別に出るわけですから、そういうふうに一・五カ月分入ってきたものは、基金は別に金貸しでもないし、金融業であるとかいろいろな商売をやっておるわけでもないのですから、少なくとも毎月、レセプト提出期限のその月ですね、一月三十一日分までの診療分であれば二月の十日くらいに、基金が受け付けをやったそのときに医療機関に対して八割くらいの概算払いはできるのではないか、普通の機関であればそういうことは可能だと思うのですけれども、その点はどうですか。
  421. 北川力夫

    ○北川政府委員 先ほど大臣からも申し上げましたけれども、基金の使命といたしまして、迅速適正な支払いということと同時に、審査という非常に重要な問題があるわけでございます。したがいまして、相当事務的な点検を要すると思いますけれども、審査なくして概算的に払うというふうなことがいいかどうか、これは基金の運営上の基本にもかかわる問題でございます。また、基金の性格から申しましても、適切公正な医療を確保しなければならぬということから申しましても、そのようなことができるかどうか、私は疑問に思う次第でございます。
  422. 浦井洋

    浦井分科員 資金のやりくりという点ではできるわけでしょう、いま私が言ったようなことで。
  423. 北川力夫

    ○北川政府委員 資金のやりくりと申しましても、これは先生も御承知かもしれませんけれども、創設以来、また最近のいろんな件数がなかなか増加をしておるというようなこと、医療費がふえておるというようなことから申しまして、保険者からの委託金というものも円滑を十分確保しているとは申せない状況でございますから、現状から申しますと、いわゆる資金のやりくりでもってそういうことができるかどうか、これまた相当疑問があるじゃないか。そういうことをやりますとどうなるか予測もつきませんけれども、要するに基金運営の基本にかかわる問題でございます。しかも、基金の性格と申しますのは、四者構成で運用しておりまするから、そういうところから考えて、そのようなことをやることについては相当慎重であらねばならぬし、また、現状としてそれだけ資金のやりくりをするだけのゆとりがあるかどうか、これは相当十分に考えなければならぬ問題だと思います。
  424. 浦井洋

    浦井分科員 一・五カ月各保険者から委託金があるわけでしょう。それがあって何でやれぬわけですか。
  425. 北川力夫

    ○北川政府委員 一・五カ月ということでございますけれども、現実は、三十六年でございましたか、それまでの非常に資金繰り上の困難、支障というふうなものがございまして、関係者が粒々辛苦をして合意をいたしました線、すなわち、委託金としては診療報酬の〇・五カ月分をやる、しかし、現実には各月ごとに一カ月相当分の資金の交付を受けることによりまして、合わせて一・五カ月というふうなことで実態上は取り扱われておるような状況でございます。したがって、資金のゆとりと申しますと、いま申し上げたような状況でございますから、純然たる委託金としては〇・五カ月、これに一カ月の交付を受けたものでやっておるわけでございますので、その範囲内ではそれだけのゆとりが出てくるか、非常に疑問に思う次第でございます。
  426. 浦井洋

    浦井分科員 合わせて一・五カ月というのは、新しい解釈が保険局長から出てきたわけなんですけれども、要するに、大臣、こういうことなんですね。基金法で一・五カ月を各保険者は委託しなければならぬというふうになっておるのに、昭和三十六年ですか七年ですか、〇・五カ月分の委託金を払えばよいということに覚書で勝手に変わっておるという事実があるわけですよ。ところが、基金法にしましてもあるいは各保険者との契約書を見てみましても、過去三カ月の最高の一・五カ月、こういうふうになっておるわけです。こういう矛盾したことを政府部内——しかも、もう一つ言いますと、今度は政府管掌の場合、初めから契約の中に、基金法で一・五カ月ときめられておるにもかかわらず、それをうたわずに、契約の中にはできるだけというようなことで、覚書で〇・五というふうなことにしておるわけです。いわば政府が音頭をとってこういうような基金法でちゃんと決められておることを実質上帳消しにしてしまっておるというのが、私、実態ではないか、これはもうペテンだと思うのです。だから私が言いたいのは、一・五カ月委託するという本来の法律やあるいは契約、こういうものをそのまま実行をして、そしてそれによって資金繰りをやって、経営的に困っておる医療機関にせめて八割ぐらいの概算払いをやれというふうに要求をしておるわけなんです。これは決して無理な要望ではないはずなんですが、大臣、どうですか。
  427. 北川力夫

    ○北川政府委員 一応経過だけ。いま先生のおっしゃいましたように、十三条第一項第一号というものは確かにそういう規定があるわけであります。この趣旨は、診療報酬の迅速適正な支払いという基金の目的の確実な履行を期するためということでありまして、そのために現実には、いま先生がおっしゃったような趣旨で経緯をたどって、診療報酬の〇・五カ月分相当額の資金の余裕を持っておくべきことを定めたものとこれは理解することができますし、同時に、現実の取り扱いにつきましても、関係者の非常な苦心の結果合意ができて、年度当初に〇・五カ月分の資金の交付を受けるとともに、各月ごとに一カ月相当分の資金の交付を受けることによって診療報酬の支払いが確保されておるということでございますから、この十三条の趣旨から申しますと、現実の取り扱いというものは、私どもはこれに反しておるものではないと思います。  と同時に、政府管掌が音頭をとっているというお話がございましたが、政府管掌はまた仕組みが違いますので、これは切り離してお考えをいただければ幸いでございます。
  428. 浦井洋

    浦井分科員 時間がないので、最後大臣にこの問題についてお尋ねしたいのですけれども、民間の医療機関、これは公立もそうでしょうけれども、非常に経営的に苦しんでおる。これは御存じだと思う。いろいろな原因があるだろうと思うのですけれども、資金的にはこういうところに苦しみの原因があるんだということをひとつ大臣御認識いただいて、これは私が言ったような趣旨で直ちに是正するという方向で前向きで努力されますか。どうですか。
  429. 田中正巳

    田中国務大臣 これは非常に技術的な細かい問題でございまして、大変大事な問題でもあるようでございますが、私としては、率直なところ余り深い検討をしておらないというふうに申し上げた方が正直だろうと思います。いろいろ検討をいたしてみますけれども、やはり先生がこれを一・五カ月を預託しろということについては、法律上の問題もありますが、具体的なメリットは一体何であろうかということをさっきからいろいろ聞いて探しているのですが、要は概算払いをできないかということじゃないかというふうに推察をいたしております。この概算払いにつきましては、基金の支払いに関するいろいろな条項あるいは支払いに関する諸法令との関係においてもっと詰めてみなければ、私はにわかには概算払いができるというふうに申し上げることは軽率だというふうに思いますので、少しく研究をさせていただきたいというふうに思います。
  430. 浦井洋

    浦井分科員 医療機関の側から見ると、出る方はその月に容赦なく出さざるを得ない。ところが政府を初めとして、基金を経てくる資金というのは二月以上おくれる。これは不公平ではないかというのが私の趣旨であります。だから概算払いしなさい。これはもう社会的不公正を是正するということをモットーにしておられる三木内閣の閣僚として、断固としてそういう不公正を是正するために努力していただきたい、私はこのように要望しておきたいと思います。  それからその次の問題ですが、今度は審査の問題審査の問題についての基本的な私、見解としては、保険局長、基金法の十四条の三に「審査のため必要があると認めるときは、」まず知事が承認をする。知事の承認のもとに診療担当者の出頭、説明を求め、報告させ、関係書類の提出を求めることができるとなっておる。さらにその後の十四条の四には、そういうことを保険医が正当な理由なく拒んだときには、また知事の承認を得て支払いの一時差しとめができる。これは条文はちょっと省略しましたけれども、こういうふうになっているわけなんです。そういうような基金法を受けて、審査委員会規程の中の第五条に、不正や不当の疑いがあって保険医療機関、保険医を呼び出す場合に、まずそれを知事に申請をして、知事の承認をとるということになっておる。そしてさらに具体的に不正や不当を発見したときには、保険医としては地方社会保険医療協議会、あるいは医療機関としては知事にその旨を通報する、こういうふうになっておるわけなんです。だからこれから解釈をしますと、審査委員会の審査というものは、なるほど一つは不正、不当の発見に努めるということになるわけですけれども、発見後の処置については、これは知事やあるいは地方医療協、こういうような行政の手にゆだねられる、このように解釈できるわけなんです。  だからこの審査委員会がみずから査定減点を行う根拠というのはどこにも、基金法を見ても、審査委員会規程を見てもどこにも見当たらない、そのように思うわけです。ところが実情は、保険局長やら厚生省当局はよく御承知のように全くむちゃくちゃな査定減点が行われておるわけなんです。私はここに証拠書類を持ってきておりますけれども、この十二月診療分が二十数万円減額された。医師として当然の治療行為を行っている。むしろ難治性の症病の治療に大変苦労されておるというふうなことがありありと見えるにもかかわらず、ばさっとやられておる。  大臣、これは話ははしょりますけれども、査定率が〇・〇〇何%というような非常に少ないというようなことを少なくとも厚生省当局は言われるかもわからないけれども、基金扱いで実額にして査定減点が毎月十億以上あるのですよ。こういう巨額な査定減点をやられる根源が一体どこにあるのか、根拠がどこにあるのかというふうに私は思わざるを得ないわけなんです。  さらにこんな例もある。これも兵庫県のあるお医者さんの請求についてでありますけれども、以前基金で、審査委員会で減点をされた。お医者さんが申し立てて、大学教授などに問い合わせた結果、そのお医者さんの請求は正当であるということで一たん復活をした。ところが今回そういうものを含めて改めて減点をしてきておる。そのためにそのお医者さんは、こんな非常識なやり方に抗議をして、そして保険医療機関の指定を返上するというような事態も生まれておる。こういう状況であるわけなんです。  そこで、私はまず保険局長にそういうような私の見解に対してどのように思われるかということを簡単に、もうごく簡単にお伺いしたい。
  431. 北川力夫

    ○北川政府委員 かなりの減点があるということでございますけれども、これは先生も長年いろいろ御承知のとおりなんでございまして、要するに請求内容で非常に誤りの多いのは、たとえば管掌違いとかあるいは計数の間違いとかそういったものがかなりあるわけです。それからまた異議の申し立てがありましても、原案どおりやるというものもございますし、いろいろケースがあるとぼくは思うのです。それから審査委員会の方もやはりその道の権威者が集まってやってもらっているわけでございますから、そういう意味から申しますと、多くのケース、最初申し上げましたように非常に多くのケースでございますから、中にはそういうケースがあるかもしれませんけれども、総体的に見れば私どもはこの審査は膨大な件数を非常に少ない人員で、しかし専門的な審査委員会で厳密な審査をしてやっておるわけでありますから、全体としては評価すべきものである、このように考えております。
  432. 浦井洋

    浦井分科員 そういう月並みな答弁ではだめなんです。  それで、時間が四分だということなんで、一つ二つ具体的な問題をお聞きしたいのです。  これは去年の予算委員会分科会でも、私この席でお尋ねをしたのですが、例の増減点通知書、去年私がここでやったために私のおります兵庫県では少し懇切丁寧になったわけなんです。ところが各県いまだにまちまちである。まあ少しましだというのは、厚生省当局によりますと大阪府と京都府と兵庫県ぐらいだろうというようなことであります。通知書というのは私ここにも持ってきておりますけれども、通知をされた本人が何の通知が来たのかということがはっきりわからなければ通知書としての値打ちがないわけです。そういうようなものにせめてすべきである。そして保険医の先生方が通知書をもらって、そしてここは私の診療が不適当だな、それで減点をしたんだな、それなら抗議をしよう、再審査を請求しようというようなことがわかるような内容のものでなければだめなんだ。これが去年北川局長関係者で合意をされておるというようなことを言っておりますけれども、当然そういう内容で合意をされておるはずだと私は理解しておるわけなんです。だからもっと基金にこういう増減点通知書を懇切丁寧に全国的に作成をするような指導厚生省はすべきである、これが第一点。  それから第二点は、これも去年要望をしたわけなんですけれども、再審査制度というものがやはりまだ確立をしておらない。そこで私の提案なんですけれども、原本が基金にあるうちに、その月のうちに、面接によるところの再審査処理日を設置する、こういうことをぜひやっていただきたい。それから再審査にお医者さんが出ていくというときに、査定に当たった審査委員が面接するための配慮をぜひやってほしい、こういう制度をひとつ厚生省指導によって確立をしていただきたい、このように私は要望をしたいわけです。この点の答弁を求めます。
  433. 北川力夫

    ○北川政府委員 この増減点通知の問題もいまおっしゃったような現状があろうかと思います。先ほども申し上げましたように膨大な件数を限られた人員で処理するということもございますけれども、多少都道府県によってはその辺では質量的に審査体制の相違がないとはいえないと思います。全体的には非常に十分でないということがあると思います。そういう点はわれわれは今後支払基金の方からも要望書が出ておりまするので、基金の運営の全体の問題として体制の整備に努めたい。その中の一環としていまのようなお話は今後どう処理するか検討してまいりたいと思います。  それからもう一つ申し上げておきたいことは、支払基金というものはどこまでも四者構成でございますから、四者構成の中で十分な関係者の合意というものがないと円滑な運営ができない。これはもう先生御承知のとおりであります。そういう点にも意を用いながら、こういう問題は今後の検討課題として処理をしてまいりたい、このように考えております。
  434. 浦井洋

    浦井分科員 第二点をもう一遍。
  435. 北川力夫

    ○北川政府委員 第二点の問題は非常に具体的な御提案でございますので、私どもも実際にこの審査に当たっております基金の現場と申しますか、支払基金と申しますか、そういうところと十分ひとつ相談、研究をいたしまして、そういう御提案がどの程度具体化できるものかどうか、四者構成ということからも考えて検討課題として今後検討を続けていくというように考える次第であります。
  436. 浦井洋

    浦井分科員 検討検討と言ってボクシングをやっているわけじゃないのですよ。一番初めの問題、事務量と人手の問題というようなことを言われたのですけれども、親切丁寧な増減点通知書をやっているのは京都、東京大阪。兵庫が何とかそれに仲間入りしておる。そういう膨大な機構のところほど親切丁寧にやっているわけなんですよ。だからそういう理由は余り反論の理由にならぬと思うのです。私このことを申し上げて質問を終わりたいと思います。
  437. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて浦井洋君の質疑は終了いたしました。  次に、鬼木勝利君。
  438. 鬼木勝利

    鬼木分科員 三木内閣の重要政策の一つとして社会的不公正ということが示されておるわけでございます。ことに今日のような異常な物価高、インフレの時代に当たって国民生活の格差は想像以上でございます。  ことに高齢者対策の中心である年金制度においても、この制度が発足してもうすでに十五年をけみしておる。ところがその間、多少のスライドはありましたが、タイムラグの点においてはきわめて不満であります。昨今の経済社会情勢のもとにおいて老齢年金の、一般年金も含めまして実質的価値は日々に下落しております。こうした老後の生活に対する不安をますます増長しておるときに、国民の声はほうはいとして福祉優先ということが叫ばれておる。そこで、私はなかんずく老齢福祉年金の問題それから医療無料化の問題について大臣にお尋ねしたい。  三木内閣の目玉政策といわれる福祉政策について、あなたは特に三木さんに見込まれて厚生大臣のポストにお座りになった。なるほど予算委員会等でのやりとりを聞きますと、あなたはずいぶん進歩したお考えをお持ちのようでございますが、田中前総理は、昨年の二月の衆議院の予算委員会で、五十年度から老齢福祉年金は一万円にするんだ——これは田中さんは高度成長、福祉は第二、第三ですよ。その田中さんですら昨年の二月に五十年度から一万円にするんだ。ところが福祉政策を表看板の目玉政策としておる三木内閣において、五十年度は一万二千円だ、かようにおっしゃっておりますが、これはどう考えてもおかしい。昨年から今日までに物価は四〇%から上がっておる。そうしますると、仮に田中さんが健在でいま総理の座にあるとしても、少なくとも田中さんは一年前に一万円にするんだと言っておる。高度成長政策をまず続けておる田中さんが今日健在であると仮定しても、おそらく田中さんは一万二千円、一万四千円にしていると思う。そうすると、これは田中さんということに考えても、四〇%の物価上昇を見ますと一万四千円でしかるべきです。そうすればこれは実質的には田中内閣よりも後退したということだ。大臣は、五十一年度は全部洗い直して見直してやるんだ、こういうふうにあなたはおっしゃっておる。そうすると五十年度の一万二千円ということはとりあえずのつなぎですか。そうして、先般わが党の大橋議員の質問に対して、五十一年度からは二万円にします、確約しますと、あなたは仰せになった。だったら、この二万円というのは一切を洗い直しての結果を二万円とあなたはお答えになったのか、その点をひとつ大臣にお尋ねしたい。
  439. 田中正巳

    田中国務大臣 確かに田中内閣は七千五百円、一万円というスケジュールを持っておりました。私、厚生大臣に就任をいたしましたのは十二月九日であります。その節に厚生省から財政当局に出されておった予算要求は一万円ということでございました。しかし、私はやはり一万円では少ないということを考えましたものですから、急遽追加要求をいたしまして、いろいろな経緯がございましたが、ともあれ一万二千円にしていただくことになったわけでございます。これにつきましては拠出年金との振り合いの問題もありますし、もちろん財源の問題もあるわけでございますが、いずれにいたしましても五千円から七千五百円というのは五割アップでありますが、最近の情勢にかんがみて七千五百円から一万円では前年のアップ率を下回るということもございますので、したがいまして、前年のアップ率以上のものを支給しなければならぬということで一万二千円という金額を実はお願いをし、それを実行することになったわけでありまして、いろいろな計算の仕方がございますが、私としては私なりにずいぶん苦労いたし、そして今日ここまでこぎつけたというふうに思っております。しかし、私はこのことをやって、もう一般会計による福祉年金の増額というものはこれ以上は多くを望めないということを感じます。したがいまして、この際、年金制度というものの洗い直し、年金財政方式というものを洗い直すということをやり、その中の一環として福祉年金というものもそういう中において洗い直しをいたしたい、そして今度は新しい方式のもとに増額を図りたいというのが私の今日の心境でございます。
  440. 鬼木勝利

    鬼木分科員 それで私はお尋ねしているのですね。これは先ほどからの保険局長の説明なんかを聞きましてもですが、現在の枠内においての操作をしようとするから財政的に突き当たったり、あるいは先ほど大臣の御説明で現行の制度においてはやむを得ないと思うと、こうおっしゃった、これは現在の枠内において操作しようとなさるから、先ほどおっしゃるように一方ならぬ苦労をしたとおっしゃっておる。それは大臣の御苦労は私よく知っております。あなたも熱心なことは知っておる。そうじゃなくして、三木さんの考え方は政治の転換をやるんだ、政治の流れを変えるんだ。ようございますか、いままでの高度経済から低経済に移して、福祉優先という、政治の流れを変えるんだ、政治を転換するんだと、従来の枠から上積みする政策じゃないんだということを言っておられる。だからその点において私はお尋ねした。非常に進歩的な考えを持っていらっしゃる大臣が、これは非常に苦労をした、よくわかります。従来のことでやったんじゃ未来永久にあなたは苦労なさるのですよ。ですから、私の言っているのは、ここで洗い直して、五十一年度から洗い直して政治を転換して、政治の流れを変えて、そして福祉行政をやるんだ、こういうあなたのお考えであろうと思うから、本年度は一万二千円ということはこれはつなぎであって、五十一年度からはもうすでにあなたは二万円ということを確約されましたけれども、これはまた社会の情勢、物価の上昇によってどういうふうに変わってくるかもわからぬ。また二万円ではわれわれは満足できない。軽費老人ホームなんかに入るのに一万五千円、二万円はそのまま要りますからね、これは御承知と思いますが……。だから、せめて皆さんの要望は軽費老人ホームに入れるぐらいの福祉年金はもらいたいというのが世論です。皆さんの声です。じゃあ、あとはどうするんだ。だから、二万円を確約するとあなたはおっしゃっておるけれども、じゃあ全部洗い直して転換をした政策で、あなたは二万円ということをおっしゃったのか、われわれはまだ不満です。その点をお尋ねしているんですよ。そんな現在の枠内でどうだこうだ、ああだこうだなんて、そんなことを聞いているんじゃない。
  441. 田中正巳

    田中国務大臣 いまおっしゃるとおりでございまして、私としては、ことしの一万二千円というのは、まさしく現行の枠内でもって操作をいたしたわけであります。したがって、これはあなたのおっしゃるように、今後のステップと申しますかスプリングボードというふうに考えておりますが、これ以上は私はもう財政方式を改めない限り大したことはできないというふうに認識をいたします。何しろ先生、十二月九日に私が厚生大臣になって、幾ら私でも二十日の間に財政方式を改めて、どうのこうのということはできるはずがないものでございますから、したがって、やむを得ず従来方式でもって無理をいたしたわけでございます。そういうわけでございますから、私としては本来なら五十三年にやる財政再計算時を五十一年に二年間繰り上げて、来年五十一年に財政再計算をやり、その中でもって今度は単なる再計算だけではなしに、年金制度の根本をできるだけ洗い直して、年金制度というものをこの際改めていこうということを決意し、このことについては国会でかねがね答弁をいたしていることでございまして、役所においてもそういったようなことについていろいろと今日作業をやっておるわけであります。したがって、私がこの間申し上げたことも、そういったような年金制度の洗い直しの上に立って金額を増額をいたしたいということを申し上げたわけでございまして、現行の方式では、もう先生も御良識がございますから、もうあれはやはりあのようなことじゃ大したことはできぬだろうというふうにお気づきになって、いると思いますが、私もこの点については同感でございますので、年金制度をこの際洗い直して、そして福祉年金というものについても何とかひとつ、いま以上の給付をいたしたいというのが私の心境でございます。決していまの制度のもとでもって、このままのかっこうでもって福祉年金を上げるというようなことについては考えておらないということであります。るる申し上げますが、いま先生のおっしゃるように年金制度の洗い直しの上に福祉年金も増額を図っていきたいというのが、私の真意でございます。
  442. 鬼木勝利

    鬼木分科員 あなたの御苦労に対しては大いに多といたします。しかも意欲を持って二年間繰り上げて五十一年度に全面的に洗い直しをするのだと、まことにあなたのお考えに対しては敬意を表します。私も大いに期待をいたします。何しろあなたは三木総理に見込まれたんだから、やはり三木総理の期待に沿うようにせっかくお骨折りをお願いしておきます。  そこで、私まだたくさんお聞きしたいことがあるんですけれども、老人は待ってくれないと同じように時間も切迫しましたので、その次に老人の医療問題についてちょっとお尋ねをしたいのですが、実は私の郷里の福岡ですが、老人の医療無料化の問題で、厚生省課長さんから各都道府県に通達が出ておるのですね。これは新聞に載っておるから取り上げたのですが、昨年の十二月三日に出されておるのですね。国民健康保険の問題ですが、そのときに老人の医療の無料化の問題について、通牒がここにあるのですが、差し控えよ、そういうことをやってはならないと。私この通牒に対してよく調査いたしましたところが、そういうことをやった「市町村に対しては、国庫負担金等の算定にあたり、適当な減額調整を行うことができるよう検討中である」これは一つのおどしですね、おどし文句です。  それで、私調査しましたところが、差し控えよというのは、各市町村において新たに老人の医療を無料化しようとするところを、してはならぬ、いままでやってるところを差しとめたわけではない、こういう答弁があった。それから交付金の減額も、決しておどしじゃない、これは警告であります、こういうことを言っておられた。末端の市町村においては非常に混乱を来すようなそういう通牒をよく検討なさったのかどうか。保険局長もここへ来ておられるが、あなた方よく御存じの上で再思三考した上で出したのであるかどうか、その点ひとつ簡単に説明してください。
  443. 北川力夫

    ○北川政府委員 ただいまお取り上げになりました通知は、来年度の予算を市町村で編成いたします際にどういうような構えでやるべきかということについて申したものでございます。  第一点といたしましては、現在の国保の財政が、これは先生も十分御承知のとおり、全般的には非常に窮迫な状況にある、そういう中で国の統一的な基準によらないで一般的な保険給付に上乗せをして単独の福祉医療というものをやっていかれるということになりますと、それの波及的な財政圧迫というものは非常に大きくなってくるわけでございます。それで、波及的な財政の増加、費用の増加についてはそれぞれまた国庫負担にも波及をしてくるわけでございます。  そういうことを考えますと、国保の被保険者の給付の均衡、受けます受益の均衡ということを全国的な見地から考えてみますと、結果的には相対的に財政的に余力のあるところがそういうことをやって、そうでないところはできない。非常に貴重な税金であります一兆円になんなんとする国庫負担を配付いたします場合に、実質的には公正を欠く、不公平になる、こういうおそれが多分に生じてまいりますので、われわれは予算編成に当たりまして、都道府県に対しまして、保険者たる市町村指導する場合には、そういったマクロの見地に立った財政の健全化と同時に、受益を受ける方々の公平ということを考えて事を取り扱ってほしい、こういう趣旨のことを申したわけでございまして、決しておどしでございますとか、あれこれ言う気持ちはさらさらございません。市町村国保が全国三千を超えるものが、それぞれ適正な運営をしていかれる、またそれに対して大きな国庫負担が公平に配分をされる、全体的に国保というものが公正な運営ができる、こういう見地から、そういうことを予算編成に先立って示したものでございまして、その辺のところは、われわれの真意のほどはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  444. 鬼木勝利

    鬼木分科員 あなた方の立場としてはそういう御回答をなさると思う。ところがこれを受けた方は、あなた方は警告だ、決しておどしじゃないとおっしゃるけれども、地方ではこれをおどしととっているんだ。ですから、これはもう釈迦に説法であなた方にどうだこうだと言うことはないけれども、老人福祉法の第四条に「国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する責務を有する。」責任があるのだ、こういうふうに福祉法で規定してある。責任があるということになれば、貧しいふところの中からでも工面をして市町村ではこれをやっているわけなんですよ。しかも三木内閣は福祉第一という政策でいこうとしている。それに忠実に市町村はこたえようとしておる。ですから、新聞の評論なんかでは、県や国がこれに追随する形をとっておる。国の後ろ向きの指導が波紋を投ずることになった。国や県が市町村の驥尾に付しておる。後からついていっている、このように批評しているじゃないですか。あなた方は何ぼそういうことを言われても——じゃ、私は申し上げますが、ただ差しとめて、先ほどもいろいろなやりとりのうちに、非常に親切の度が足らぬじゃないですか。ただ医療を新たに無料化するなんということは相ならぬ、言いっ放しでなくして、あなた方のそういうお考えに対しては、厚生大臣は非常に進歩的な考えを持っておられるので、五十一年度には全部見直し、洗い直しをする考えがあるから、しばらくお待ち願いたいとか、なぜ補足をしませんか。現実に問題として福岡県の県会で問題になっている。知事や係官がしどろもどろの答弁なんだ。おれたちが言ったことは間違いないのだ、おれたちが言ったことは何もそんなことは言ってない。受けている方はそうは受けていないでしょう。そんな不親切な行政指導なんというものはもってのほかだ。あなた方はただ枠内ばかりで考えているから、大臣はそうじゃない、洗い直すと言っているんだから、なぜ補足説明をやらないかと言う。大臣のお考えとあなた方の考え、違っているじゃないか。こんなりっぱな大臣をいただいておりながら、勇将のもとに弱卒ありじゃないか。何だ。君たちの言うのはそんないいかげんなことを言ったって承知せぬよ。そんな一片の字句の説明なんかしなくたって、字句の説明なんか、ぼくの方が詳しいよ。ぼくは文学部出身だ。そんないいかげんな答弁じゃだめです。大臣、ひとついかがです。
  445. 田中正巳

    田中国務大臣 この通牒、実は私も国会で二、三度質問を受けましたものですから、読んでみました。これは多少誤解が末端であるようでございます。そこでもう少し親切にこれは指導しなければならぬと思っていますが、基本的には、まず第一に、差し控えられたいというようなことを言っておりますが、ペナルティーをかけるというようなことを申しておるのは、適正な指導に従わないというのは、取るべき保険料を取らなんで金だけくれというのはだめだよ、まずこういうことを言っているわけです。それから、老人医療の無料化を年齢をやたら引き下げますと、実際問題として、地方の単独福祉事業は健全であり永続性のあるものなら私どもは地方自治という立場からあれこれ言わぬのですが、この場合は、根っこの国保というのを利用して自己負担をつまりまけるわけでございますから、国保の受診率と支出に大きな影響があるものですから、つい私どもの方も関心を持たざるを得ないということでありまして、したがって、御承知だと思うのですが、四割は要するに国庫負担金でございまして、これの方にも影響があるのですけれども、これは当分の間手をつけまい。四割についても、実は率直に言うとこっちはあおりは来るのですけれども、一応目をつぶりましょう。今度は調整交付金ですが、この中の普通調整交付金について、こういうことをやると受診率がふえて医療費がよけいになりますから、したがってあれは医療費と所得との見合いにおいて金を配分するものですから、やっているところとやっていないところでは非常なアンバランスを生ずるものですから、したがいまして、私どもとしては、おやりになったらば、そのようなことをやったためにふくれ上がった分はもとの金額に調整をして、やらなかったような制度のもとに仮定をした数字に調整をして普通調整交付金を払いますよという制度でございます。したがって、私どもとしては、公正の立場からある程度やむを得ないかなと、こう思っておるわけでございまして、どうもこれの受け取り方が、いろいろな方から承ってみますると、いささか誤解があるような気がいたしますので、この点については誤解のないようにさらに指導をいたしていきたいというふうに思っております。
  446. 鬼木勝利

    鬼木分科員 いや、そこでそれを私は言っているのです。皆さんの説明を聞くと、決してそういうことはありません、いや全然そういう考えはございませんと言われるけれども、受け取った方はそうじゃないのです。その証拠には、あちらこちらの新聞に出ているのですよ。ようございますか。高知県では、老人医療無料化だけでも年間約十億円がかかるが、当然実施すべきことであるからこれはこのまま続けますと、何ぼこんな通牒出しても続けますと言っている。それから、重い財政負担を伴うが、住民サービスのためにはやむを得ない、五十年度も前年度の水準から後退することはできないと、これは和歌山県が言っている。それから京都、みんな同じようなことを、財源がなくとも住民福祉の向上のためにはむしろ充実していく必要がある。  ですから、いまになって高福祉だ、福祉優先だと高々と三木さんが旗を掲げられた。あまた人のある中から特に選ばれた田中厚生大臣、そういうときになって、待て、とストップをかけた。これはむしろ逆に、田中総理のときにストップかけたというならうなずける。高度経済成長だから田中さんがとめたなと、これはうなずける。ところが、去年の十二月にすでにあなたが大臣に就任していらっしゃる。それで、いまから福祉第一で出発するぞと声高々と出発しようとしたときに、待てとストップする。だから、いま大臣がおっしゃったように、非常に誤解を招いて混乱を来している。その一つの事例が、わが福岡県会においてはこれは非常な問題になった。そういう誤解を招くような、問題を醸すような、そういうことは、大臣がおっしゃったからもうくどく申しませんけれども、親切が足らない。官僚的に、ただ上から通牒をばあっと出して、これでやれ、最もよろしくない。局長もここにおられるが、あなたがやったことは間違いだとは言いません。悲観することはいかぬよ、決してあなたのやったことが間違いだとは言わないけれども、親切が足らなかったじゃないかと、舌足らずじゃないかと、なぜ補足説明をしないか、こういうことを私は要望しておる。  時間がありませんので、その点ひとつ、もう少し行政指導は、都道府県でも市町村でも本当に納得するように、なるほど三木内閣になってこれは向きが変わったなというように皆が——いまは逆ですよ、三木内閣で福祉優先、大優先と言いながら、実は逆指導じゃないか、逆行じゃないか、とんでもないと、こういうふうな怒りの声があることを大臣に私は御参考までに申し上げたので、あなたの卓越した厚生行政に対しては私は期待いたしております。答弁があれば答弁してください。なければ、時間が参りましたので私はこれで質問を終わります。大変どうもありがとうございました。
  447. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて鬼木勝利君の質疑は終了いたしました。  次に、平田藤吉君。
  448. 平田藤吉

    平田分科員 私は、保育問題について質問いたします。  時間がありませんから、ひとつ簡潔に要点を……。私のほうも単刀直入に申し上げます。  御承知のように、保育所はどこでも容易じゃないです。公立も私立も容易じゃない時代になっています。狂乱物価をくぐって、物価値上がりっ放しの中で困難に遭遇しているわけです。前国会に私保連に結集をされる保育団体の皆さん方が、お母さん方が協力して署名を集められて、全国で七十数万人、埼玉の場合で見ますと八万人ばかり集められて請願されましたが、今日の保育所の困難を打開してもらいたいという趣旨の内容になっていて、この請願は国会で採択されております。当然政府としては、今後の施策にこれを生かされていくのだろうというふうに考えております。たとえば、私立の保育所の場合で見ますと、自分の財産を出しまして、そして国に協力をして、法律に基づいて積極的に協力をしているわけなのです。これは、やはり保育所の皆さんやお母さん方の願いは、自民党政府も三木内閣も積極的に受け入れてあげなければならないものだというふうに思うのです。  まず、保育所の中の一般生活費の問題についてお伺いしたいのです。  厚生省は保育日数を二十二日と見ているようです。しかし、実態はどこの保育園でも二十五日はやっているようです。ところで、二十二日と見て、一日にしてみれば、一般生活費は、三歳未満児で幾らに見ているのか、三歳以上児の子供で幾らに見ているのか、まずお聞かせいただきたい。
  449. 上村一

    ○上村政府委員 五十年度予算案におきましては、三歳未満児について月額四千四百六十六円、三歳以上児につきまして、二千二百二十二円でございます。
  450. 平田藤吉

    平田分科員 一日にすると幾らになりますか。
  451. 上村一

    ○上村政府委員 一日にいたしますと、これを二十二で割るわけでございますが、三歳以上児につきまして、一日に直しますと、百一円。それから三歳未満児につきまして、二百三円でございます。
  452. 平田藤吉

    平田分科員 このうち保育費が幾らか、それから給食費が幾らに見積もられているのか、お聞かせいただきたい。
  453. 上村一

    ○上村政府委員 月額で申し上げましょうか。
  454. 平田藤吉

    平田分科員 一日で。月額はややこしいから。
  455. 上村一

    ○上村政府委員 三歳以上児につきましては、いわゆる保育材料等、日常生活費と言われるものが二十七円でございます。それから、飲食物費が七十四円でございます。それから、三歳未満児について申し上げますと、日常生活諸費と言われるものが三十一円、飲食物費が百七十二円でございます。
  456. 平田藤吉

    平田分科員 最近、厚生省の方じゃ、こういう——前は、私も保育園の理事長をやっていたのですよ、そんなわけで、いや、光熱費が幾らで、事務費が幾らで、あれが幾らでというふうに細目にわたって積算基礎を出していたのですね。このごろ出さないようですな。これはどういうわけなのですか。
  457. 上村一

    ○上村政府委員 事務費、事業費につきまして、相当幅のある運用の仕方を認めておりますので、積算上もそういう細かいところまでは出していない、そういうことでございます。
  458. 平田藤吉

    平田分科員 じゃ、積算基礎は厚生省の方は持っているということでございますな。
  459. 上村一

    ○上村政府委員 特に持っておりません。前年度予算と比較しながら伸ばしていくという方式をとっております。
  460. 平田藤吉

    平田分科員 そんなことしておったら積算基礎は、だんだん、だんだんわからなくなるじゃないですか。これはやはり科学的じゃないね。それは突っくるみで、どんぶりで幾らということをだんだん、だんだん言っていって、そして、まあこれくらいなら何とかやれるだろうという計算にしかならないでしょう。だから、そこのところは改める必要があると思うのですね。私はそういうやり方が、やはりこれからの保育をしていく上でいろいろ狂いが出てくるだろうというように思うのですよ。そうすると、四十八年に積算基礎を出しておいて、それから積み上げていく、こういうかっこうになるわけでしょう。これじゃ、先行き不安でしようがないでしょう。  たとえば三歳未満児をずっと見てみますとこういうことになっているのです。給食費が、四十七年に百六円、四十八年に百十七円。あとは推定ですけれども、四十九年に百四十三円、そして五十年に百八十円なんですよ。それから保育費の方は、四十七年に十九円、四十八年二十一円、四十九年二十三円、五十年が二十七円、こういう計算になるのですね。最近の計算は当たらずとも遠からずだと思うのです。あなたの言うとおりに大体推定して比率を出していったんですから。  三歳以上児の場合は、給食費が、四十七年に四十六円、四十八年に五十一円、四十九年に六十三円、そして五十年に八十円。それから保育費が、十六円、十八円、二十円、二十五円、こういうふうになっていますよ。  これでやっていけると見ていらっしゃるのかどうか、まずお聞かせいただきたい。
  461. 上村一

    ○上村政府委員 保育所に入っております子供たちの処遇の改善でございますが、五十年度も他の社会福祉施設と同様に個人消費支出なり物価の動向を考えまして、二二%アップしておりますから、私は保育所における必要な一般生活費というものは確保できたというふうに考えております。
  462. 平田藤吉

    平田分科員 大変ですな、これは。  たとえばあなたが出したように、私のほうで一カ月間の経費を出してみたのですよ。そうしますとね、四十八年の実績、実際に保育園が支出している四十八年の実績で見ますと、A保育園で九十人定員で、四千百九十五円、国の基準では、これは五十年でいきますと、二千九百四十五円、その差千二百五十円。これ、実績の方は四十八年の実績なんです。国の方は五十年ですよ。B保育園、百二十名定員、四十八年実績で三千九百三十一円。それに対して国の五十年基準は三千三百四十一円。五百九十円の差が出てくる。それからC保育園、百五十人定員ですけれども、やはりこれは三千九百三十一円、三千三百四十一円、五百九十円の差が出ている。一人頭ですからね、一カ月の。ですからこれはなかなか容易ならぬ。しかも、四十八年実績ですから、その後狂乱物価を経ていますから、実績はもっと高くなっている。私の実績が十分とれないでこういう数字になっていますけれども、五十年の実績で言ったらもっとはるかに差ができるはずです。  これはなにですか、各保育所が金をかけ過ぎているということになりますかな。
  463. 上村一

    ○上村政府委員 その判断は、その具体的な事例に徴しない限り、ちょっといたしかねますが、ただ私ども措置費の中で、四十九年度、たとえば管理費についてゆとりがあれば事業費に回してよろしいとか、場合によると人件費が、きちんと基準どおりの人が張りつけになって基準どおりの給与水準が保たれておれば、事業費に回してよろしいとかいうふうな指導をしておりますので、措置費の中でまあそこは施設長の裁量でやっておられるのじゃないかというふうに考えます。
  464. 平田藤吉

    平田分科員 何をおっしゃるのですか、あなた。一般生活費で両方出しているのでしょう。その一般生活費の中でまとめて賄った平均を出してみるとこういうことになるのです。赤字が現に出ているのですよ。それなのにあなたの方は十分だとおっしゃる。しかもあなた、三歳以上の子供で給食費八十円ですよ。焼き芋一本買えますかな。給食費八十円ですよ。保育費二十五円ですよ。図画紙一枚じゃないですか。あと何にも買えないじゃないですか。何が十分なんです、あなた。それでも福祉優先の政策だとあなた方は言えるんですか。何が買えますか。答えてごらんなさいよ。
  465. 上村一

    ○上村政府委員 御案内のように、三歳以上児につきましては、おやつ、副食的なものの費用を見ておるわけでございまして、いま例に出されました、たとえば八十円ぐらいでは何が買えるかというふうなお話でございますが、飲食物費について、おやつ的なものは八十円で賄えるんじゃないかというふうに思います。  それから保育材料費等は、一人当たりに直しますと小さな額になるわけでございますけれども、それは日額でございますし、月額に直して、それが何人かの子供としてまとめて購入されるわけでございますから、私は、十分だとは申しませんけれども、必要なものは確保されているというふうに考えます。
  466. 平田藤吉

    平田分科員 牛乳一本幾らしていると思うのです、あなたは。
  467. 上村一

    ○上村政府委員 厚生省の売店ですと、大体一本四十五円でございます。
  468. 平田藤吉

    平田分科員 おやつに小さいせんべい一枚とビスケット一枚買ってあげればそれでおしまいなんですよ、給食を出していれば。しかも給食だって満足なものは出ないのですよ。父母負担は相当重くなるのですよ。これで何が福祉政策なんですよ。まずいですよ、そういう機械的な返事をしていたんでは。  言うまでもないことだけれども、児童福祉法の第二条では「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」というふうにしている。これで十分——せめて赤字が出ないようにしてくれというのが保育園の願いなんですよね。わずかなところで削って、そうしてこれで十分でございますなんと言ったって通らないと思う。私はこれは検討し直すべきと思うのだが、大臣どうですか。
  469. 田中正巳

    田中国務大臣 昨年と比較をいたしまして、ある程度アップをいたしまして、私は、決してこれでもうあり余るなんということは毛頭申しません、できるだけ今後努力をいたさなければいかぬ、こう思っております。
  470. 平田藤吉

    平田分科員 とにかく昔から三つ子の心百までと言われるのですね。保育園で育てる年代というのは、教育的な面から見ても、それから成長の面から見ても、心身ともにつくり上げていく上で基礎になるのですよ。ここのところを大事にしなければだめだと思うのです。いま大臣が改善したいということをおっしゃいましたが、私はそのとおりだと思うし、速やかに改善してもらいたいということを要望しておきます。  次に、保母定数の問題についてお伺いします。  私は、昭和四十八年の九月二十五日の地方行政委員会で、保母さんの定数を大胆に改めて、実情に沿うようにすべきだということを指摘いたしました。このときに松田児童家庭局企画課長が、中央児童福祉審議会で検討しており、改善のために最大の努力をするというふうに約束してくれたのです。大変りっぱなお約束だったんで大いに期待していたんですが、五十年度予算を要求するに当たって厚生省として保母定数の増員を何名ぐらい要求したのですか。
  471. 上村一

    ○上村政府委員 私どもの考え方としましては、五十年度の保育所の措置費の一番ポイントというのは、保母さん方の休憩時間が確保できるようにという観点から、六十人以下の施設につきまして常勤職員が一名置けるような予算要求をいたしております。
  472. 平田藤吉

    平田分科員 何名要求したのかと聞いているんです。
  473. 上村一

    ○上村政府委員 三十一人以上六十人以下の施設は約七千二百でございます。
  474. 平田藤吉

    平田分科員 七千二百名要求したんですね。
  475. 上村一

    ○上村政府委員 そのとおりでございます。
  476. 平田藤吉

    平田分科員 それを二千三百九十三人に切っちゃったんだけれども、これはどういう理由で切ったということになっておりますか、政府が切ったのは。
  477. 上村一

    ○上村政府委員 何と申しますか、でき上がりました予算は、二カ年を目途に、その六十人以下の施設については常勤職員一人を配置するということになったわけでございますが、いろいろ検討してまいりますと、一つは労働省の調査等から見ましても、この問題の端緒というのは、労働基準法の休憩時間の確保の問題であることは御案内のとおりだと思いますけれども、全部の施設、全部が全部労働基準法の休憩時間の規定に違反しているとは言えないという点もございますし、それからもう一つ大きな問題というのは、施設職員の需給関係から見まして、一遍に必要な職員を確保するということはそれほど簡単なことではないというふうな事情があってこういう結果になったものだというふうに考えております。
  478. 平田藤吉

    平田分科員 あなた方必要だから七千二百人要求したんでしょう。削られた、一体これでいいんですか。
  479. 上村一

    ○上村政府委員 五十年度の保育所の措置費全体といたしまして約一千六百億というのは、前年度予算に比べますと約五割ぐらいのアップになったわけでございます。そこで、いま申し上げたように六十人以下の施設については保母さんを一人常勤にする。それから六十一人以上の施設については非常勤の保母さんを従前からつけておりますものの時間数をふやすということで増員を図ることにしたわけでございまして、これによりまして従来よりも相当多くの職員が確保できる。したがって、保母さんの休憩時間というのは確保することが容易になるものであるというふうに考えております。
  480. 平田藤吉

    平田分科員 全国の私立保育園連盟初め保育四団体が要求しているのは、ゼロ歳児、現在六人に一人、それを三人に一人にしてください。当然だと思うのですね。もうゼロ歳児になりますと目が通りません。それから一歳から二歳児六人に一人を五人に一人にしてください。三歳児二十人に一人を十五人に一人にしてください。四歳児、五歳児三十人に一人を二十人に一人にしてください、こういうふうに言っているわけですね。ですから、それが一挙にできないにしても、その方向へ向かうのは当然だと思うのですよ。  ところが、いまあなたおっしゃったけれども、どうも合点がいかないんです。三十一人から六十人までの保育所で、四十九年度は非常勤保母一人一日六時間というふうに見ておるんですね。ですから、六時間分の基礎は四十九年度にできているんです。そして五十年度はこれを一日分にしたんです。つまり二時間ふやしたんですよ。私はこのふやした点は悪いとは言いませんよ。いいですよ。だけれども、そういうことなんだと、あなたは一人置くようにしましたなんと言うから、こっちもちゃんとしておかなければまずいと思うんで、二時間分ふやしたんですよ。そうでしょう。ですから、私はいまの保母さんの実情から考えたら、とても間に合わないというふうに言っているわけです。給与の面で見てもそうでしょう。時間給で見ますと四十九年が三百六十円、五十年は三百六十四円。時間給で見ますと幾らです。四十九年より五十年の方が一時間につき四円ふえましたよ。こういう状態なんですな。しかも保母さんたちはこう言っているんです。せめて労働基準法に沿った労働時間を保障してもらえないだろうか。先ほどもあなたが言われたように、そう言っています。せめて昼休み時間くらいは休憩させてもらえないだろうか。これは人間としてあたりまえの願いだと思うのです。厚生省や労働基準局からは、園長さんに対して労働基準法を守りなさい、これは法のとおりだから言うのがあたりまえですよ。ところがいまの保母さんの定数では守れないんですよ。どうしたら一体守れるのかお聞かせいただきたいと思うんです。あなた方の方では何かきっとそこのところをこうすればいいという名案があるんだろうと思うから。保母さんや園長さんにどういう指導をなさるおつもりか、お聞かせいただきたい。
  481. 上村一

    ○上村政府委員 労働省の調査で休憩関係の労働基準法違反として指摘されましたのが、時間数が足らないというのが約二七%ばかり対象施設の中で指摘されておるわけでございます。五十年度予算を組むときに考えましたのは、私ども六十人以下の施設に非常勤の保母をつけ始めましたのは四十六年度からでございまして、毎年時間をふやして先ほどお話しになりましたように四十九年度は六時間まできた。しかしこういった六十人以下の小さな規模の施設では、六時間で三人の保母さんがいるわけでございますから休憩時間はカバーし切れない。休憩時間のほうに早出、居残り等もあるわけでございますから。そこでいろいろ考えてみますと六時間、八時間というふうな問題じゃございませんで、やはり定員として一人張りつけることが保母さん方の休憩時間が確保できるゆえんであるというふうに考えたわけでございます。同時に労働省の調べなんか見ますと、休憩時間が自由に利用できない等々の指摘もあるものでございますし、私どもの方で施設長さんの方の指導も十分しないといけないんじゃないかというふうな御指摘を受けておるわけでございます。やはり使用者としての施設長さんにも、いろいろ私どもの方から御指導申し上げることが必要ではないかというふうに考えております。
  482. 平田藤吉

    平田分科員 絶対的には定数が守れないようになっているんですよ。だから、そこのところを考えてあげなければいけないんじゃないかというふうに言っているんです。これは保母さんが労働基準法を守れない状態にあるということは、子供を健やかに育てていく上でもやはり障害なんですよ。そういう意味で、私は検討すべきものがあるんじゃないかというふうに言っているわけです。昭和二十二年に児童福祉法が制定されて、それに基づいて二十三年保育所最低基準が決められたわけです。それ以来あまり変わってない。ここのところへ来てかなりの努力はなされた、それは認めますよ。そして労働基準法の方も二十二年に制定されてきているわけだけれども、かなりの努力はなされて、二十二年以来あなた何年たったと思うんですか。いまだにこの問題が解決されないのが現状であるということなんですね。  私も埼玉県の福祉施設四十四カ所調査しました。調査してみますと、これはいずれも労働基準法三十二条、三十四条、三十五条、三十七条、これは守れないようになっているんですよ。守れる状況だとはとても私が見ても考えられない。実はこれは埼玉だけじゃないんですね。あなたの方で出している白書によっても、全国的にそうだというふうに言っているんだ。あなた方はちゃんと調査してそう言っているんですからね。だとすれば、大急ぎで改善のために努力する必要があるじゃないかというふうにも思うんですが、どうですか。
  483. 上村一

    ○上村政府委員 いま御指摘になりましたように、昭和二十三年に最低基準を決めましたときには、二歳未満児と二歳以上児を分けまして、二歳未満児については十人につき一人以上とか、それから二歳以上児については三十人に一人以上ということであったのを、年々改善してまいりまして、現在のように三歳未満児六対一とか、それから三歳児二十対一になったわけでございます。  それで労働省の調べ、これは一昨年の半年間の調べでございますが、さっき申し上げましたように休憩時間の足らないものが二六%、ダブリもございますけれども、自由利用ができないのが三割あるというふうな点が一番大きな問題でございましたので、五十年度ではそういった事態の解消を図るために保母さんの増員を図ったということでございます。  それから、先ほど非常勤の保母さんの単価があまり上がってないようなお話をされたわけでございますが、当初当初で比べますと、一時間当たり四十九年度が二百七十円が、五十年度の予算では三百七十円になっているんじゃないかと思います。
  484. 平田藤吉

    平田分科員 いずれにしましても、保母さんの定数が不足し、しかも給与が低いという問題で、実際に私立保育所なんかは——公立の保育所ですと、地方自治体がかなり肩がわりしておるんですね。そして賄っておるんですよ。しかし私立保育所になると出場所がないんですよ。そんなわけで、私はやはり保母定数の問題と保母さんの給与の問題については、見直して改めていくべきだというふうに思うのですが、大臣どうですか。
  485. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のことについては、私も努力をしなければならぬというふうに思っております。そこでことしの増員については、ずいぶん私も実はこれはいかぬと思いまして努力をいたしました。しかし結局、二年計画ということに実はなってしまったわけでありまして、当初の査定は三年計画でございましたが、しかし三年の間こういうかっこうを続けておくことは私は許せないと思いましたものですから、強引にいろいろ努力をした結果二年にセットをいたしましたが、セットをした節に私もちょっと二年というのはどうかなという気持ちもいたしましたが、いかんせん、どうも金の問題と、いま一つは適確な人が得られるかどうかという実際上の問題もございましたから、そこでそういう形で手を打ったわけでございまして、今後とも努力をしなければならぬ。  給与につきましては、これまた例の六%アップについていろいろな経緯がございましたが、私も鬼のようになってがんばった結果まあ六まで行きましたが、これも決して満足はいたしておりませんので、今後とも努力をいたさなければならないというふうに思っています。  総じて言うならば、決して私は満足をいたしておりませんけれども、努力はいたしたということについては、多少の御理解を賜りたいということでございます。
  486. 平田藤吉

    平田分科員 大臣が努力されたということをおっしゃるんですから、かなり努力されたんだろうと思うんだけれども、最初厚生省が要求したのと比べるとえらいダウンしておるものですから、これはもう考えざるを得ないですよ。大臣は三木内閣の中では力がないのかなと思うくらいですよ。これは本当に今後大いに努力していただく必要があると思うのですが、最後に、さしあたって改善すべき問題は山積していると思うんです。とりあえず、やはり病休代替職員を配置する問題について配慮してもらうこと、それから三歳児になりますと、さっき申し上げたように基準が違うでしょう。ところが三歳になると途中でもって誕生日が来ますと、もう三歳以上の基準になってがたんと一般生活費が落とされるのです。これはやはり三歳の年代が終わるまで、次の三月末まで通年制にして見る必要があると思うのです。  この二点について大臣ひとつ……。
  487. 田中正巳

    田中国務大臣 病気代替についてはいろいろ努力をいたしましたが、今後さらに努力を重ねなければならぬということは事実でございます。今後努力をいたします。  それから三歳児通年制、これは私も前に三歳以降児について努力をして制度化をいたしたことが国会におったころにあったのですが、今回はこれを三歳児を通年制にしろということでございますが、途中で保母の定数が変わるという問題、現場では大変いろいろ混乱もし苦労もしておるようでございまして、これについては私は今年三歳児通年制を採用することにいたしたいというふうに思います。
  488. 平田藤吉

    平田分科員 大いにひとつ努力されることを要請して、私の質問を終わります。
  489. 三ツ林弥太郎

    ○三ツ林主査代理 これにて平田藤吉君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和五十年度一般会計予算及び昭和五十年度特別会計予算中、厚生省所管に対する質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前十時から開会し、自治省所管について審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十一分散会