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寺前分科員 きょう私は、国立
大学の演習林をどのように保護していくかという問題についてお聞きをしたいと思うのです。
いま、全国的には国立
大学の演習林というのは、東京
大学と北大が十万ヘクタールほど持っておって、これは一番大きいと思うのです。京都
大学と九州
大学が一万ヘクタールを持っておって、その他の
大学で一万ヘクタール。ですから、大部分が東京
大学と北大で持って、それに京大と九大が若干持っているというのが国立
大学の演習林の姿だと思います。
私の住んでいる京都に、京都
大学の演習林がございます。滋賀県と福井県と京都三府県にまたがるところ、京都からちょうど八十キロメートルほど離れたところに、昔の名前で知井村というところがありますが、そこに四千百八十ヘクタールにわたる京都
大学の演習林があります。芦生演習林、こう言います。
ところが、この演習林というのは、地元の皆さん方からの借地で、大正時代にお借りした演習林で、九十九年の期間お借りをする。
〔
主査退席、木野
主査代理着席〕
初めの四十年の間に造林を進めて、後から伐採をやって、その売ったお金は国と地元で分けようじゃありませんかという契約で進んできておりますから、いまでは、もう左十年過ぎたところの段階に来ているわけです。
ところが、この演習林が次々と皆伐されていくという事態で、いまではこれが半分ほど立木が切られていっている。さあそこで、各方面で話題になり始めております。
第一に、ここはもちろんのこと演習林ですから、京都
大学の農学部、そこの演習林として、こういう伐採の方法で演習林をどんどん切っていくというやり方でいいのか、こういう問題が
一つ出てきます。
それからまた、この地域は、京都でも残されたところの原生林の地域になってきているわけです。自然
環境保護の法律の
立場から言うと、千ヘクタール以上のところ、天然林があるところ、あるいはそこにある動植物の繁殖の状況、そういう要件で保護する対象にするということが法律の中にありますが、まさにそれに匹敵する地域として、これは非常に重要な内容を持っていると思うのです。天然杉、ブナの木、ミズナラを主とする温帯性天然林、原生林が保存されておって、林学上全国でも珍しいというふうに言われておるわけです。すでに一九三〇年から一九四一年時分、
岡本省吾という
先生が、ここに八百六十種余りの植物があるということを貴重なものとして
指摘しています。一九四一年に中井博士が、植物学を学ぶ者は一度は京都
大学の芦生演習林を見るべしと紹介をしておられるぐらいであります。それは動物の分野においても、カモシカ、シカ、キツネ、タヌキ、テン、ムササビ、イタチ、クマ、ツキノワグマ、ウサギ、サル、イノシシ、リス、ヤマネ、いろいろなものがいる。あるいは鳥類においてもコマドリ、サンコウチョウ、ヤマセミ、いろいろおります。
ですから、そういう
意味において、一九六八年に
日本生態学会関西支部が、芦生原生林の保存ということを勧告しておりますし、一九七〇年には国際生物学事業計画、陸上生物群集保護
研究班が、芦生を保護地域の候補地として選定するという動きまであるわけです。そして一九七四年、京都野生動物
研究会と京都植生
研究会が京都府の委託
調査を行いまして、芦生の貴重な動植物の保護をまた同じく勧告をいたしております。私はこういう
意味からも、この伐採が進んでいることに対して憂慮をするものです。
憂慮すべき第三の問題は、今度は治山治水の問題です。京都府の
日本海に面するところの
中心の河川は由良川という川であります。この由良川の一番の源流がここの山になっているわけです。そこで、原生林が半分も切られていくということになったならば、ここの保護は一体どうするのだ、これは治山治水の
関係からも大きな問題ではないか、私はこういう
立場から
質問をしてみたいと思うのです。
そこで、第一番目に直接の所管庁である
文部省、一体この京都
大学の演習林というものに対してどのように評価をするのか、私が提起している評価の問題というのは、取るに足らない評価だとおっしゃるのかどうか、これを聞きたいと思います。
第二番目に、伐採を行う場合に、あくまでも
大学の演習林である、したがって、伐採というのはやはり学術目的に沿うようにしなければいけないのじゃないだろうか。次々とこのように切っていくということについて、私は疑問を持つのだけれ
ども、伐採というものをどのように考えるのか。
第三番目に、もう半分近くを切って、残っている原生林は二千ヘクタール余りです。ここに今度入っていくということになったら、奥地に向かってまた林道をつけなければならないから皆伐が行われていきます。みんな伐採するという問題が行われていきます。これ以上皆伐方式を引き続いて続けていくのか、原生林をもうこの程度でしっかり守らなければならないとおっしゃるのか、第三番目に、原生林をもうここで守るという
立場をとられるのかどうかということをお聞きしたいと思うのです。
第四番目に、このように皆伐方式というものを、もうこれ以上とってはならないのではないだろうか。いままで切ってきたところの範囲内において、選ぶところの択伐で、若干の立木の処理というのはあると考えられても、もう限界として見なければならないのじゃないか。したがって、第四番目に、もう皆伐というのをおやめになったらどうだろうかという問題です。
第五番目に、地元との間に、これは九十九年の契約に基づいて行われたものであります。そのときの話によると、これはちゃんと造林をやって、四十年たったら切ってやっていきましょうという話でした。ところが、地元の皆さん方は、その点を十分果たしていないではないかと言う。したがって、いま造林が十分でないという事態の中にあって、
もともとあるところのこの木をどんどん切って、山分けといいますか、配分をやっている。年平均にすると一千万円前後のお金をここで分けてきているわけですが、四十九年あたりあるいは四十八年あたりは二千万円からのお金になっています。とすると、これはかなりの段階にありますから、したがって、そういう
意味においては、一方で伐採をやめるという事態がもしも行われるということになったら、契約との
関係において、従来渡しておったお金の分というのは、それじゃ一体どのように保護するのかという問題が、地元との
関係で生まれてくると思うのです。この地元との
関係の契約の状況については、どのようにそれではするつもりかという問題が出てきますけれ
ども、これに対する御
見解を聞きたい。
そして第六番目に、そういう事態の中から、関西電力があそこに
発電所をつくるという計画を数年前にいたしました。一時はどうぞおつくりくださいということもあったようですが、地元の中から反対の声も起こり、京都
大学の方でもそこをダムにすることはお断りだという
態度を示されたようであります。保護という問題が一方で出てくると、次には売ろうかという話も契約の更改をやったときにはまた出てくる問題じゃないか。また、現にそういう声も一部にあります。とすると、あの残されたところの数少ない、京都においてはただ
一つ、関西においても非常に珍しいあの自然原生林を、一体
文部省としてはそういうものに提供してよいと考えられるのかどうか。私はこの六点について、
文部省の
見解を最初に聞きたいと思うのです。