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1975-02-27 第75回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十七日(木曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主査 笹山茂太郎君       木野 晴夫君    櫻内 義雄君       石野 久男君    河上 民雄君       田中 武夫君    福岡 義登君       青柳 盛雄君    柴田 睦夫君       多田 光雄君    寺前  巖君       有島 重武君    近江巳記夫君       小濱 新次君    兼務 楯 兼次郎君 兼務 岡本 富夫君    兼務 瀬野栄次郎君 兼務 渡辺 武三君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       信澤  清君         環境庁長官官房         審議官     小幡 八郎君         環境庁企画調整         局長      城戸 謙次君         環境庁企画調整         局環境保健部長 橋本 道夫君         環境庁自然保護         局長      柳瀬 孝吉君         環境庁大気保全         局長      春日  斉君         環境庁水質保全         局長      大場 敏彦君         通商産業大臣官         房審議官    大薗 英夫君         資源エネルギー         庁石炭部長   高木 俊介君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         自治省行政局長 林  忠雄君         消防庁次長   森岡  敞君  分科員外出席者         警察庁交通局交         通規制課長   森  郷巳君         経済企画庁総合         計画局電源開発         官       伊藤 謙一君         国土庁計画・調         整局計画課長  小谷善四郎君         法務省民事局参         事官      古館 清吾君         外務省欧亜局外         務参事官    木内 昭胤君         文部省大学局技         術教育課長   瀧澤 博三君         林野庁林政部管         理課長     江上 幸夫君         水産庁研究開発         部漁場保全課長 山内 静夫君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    山中 正美君         建設省都市局都         市高速道路公団         監理官     上田 伯雄君         建設省都市局下         水道部長    久保  赳君         日本国有鉄道常         務理事     内田 隆滋君     ————————————— 分科員の異動 二月二十七日  辞任        補欠選任   田中 武夫君     福岡 義登君   青柳 盛雄君     多田 光雄君   近江巳記夫君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   多田 光雄君     津川 武一君   有島 重武君     林  孝矩君 同日  辞任         補欠選任   津川 武一君     紺野与次郎君 同日  辞任         補欠選任   福岡 義登君     田口 一男君   紺野与次郎君     柴田 睦夫君   林  孝矩君     坂口  力君 同日  辞任         補欠選任   田口 一男君     河上 民雄君   柴田 睦夫君     寺前  巖君 同日  辞任        補欠選任   河上 民雄君     田中 武夫君   寺前  巖君     青柳 盛雄君 同日  辞任        補欠選任   坂口  力君     小濱 新次君 同日  辞任        補欠選任   小濱 新次君     坂井 弘一君 同日  辞任        補欠選任   坂井 弘一君     坂口  力君 同日  辞任        補欠選任   坂口  力君     近江巳記夫君 同日  第二分科員瀬野栄次郎君、第四分科員楯次郎  君、第五分科員岡本富夫君及び渡辺武三君が本  分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十年度一般会計予算総理府所管環境  庁関係)      ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    笹山主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和五十年度一般会計予算中、総理府所管を議題とし、環境庁に関する事項について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楯兼次郎君。
  3. 楯兼次郎

    楯分科員 私は、きのう自民党の小坂さんがやられた、例の文芸春秋二月特別号に二十七ページにわたっての、いわゆる「イタイイタイ病は幻の公害病か」という記事を読みまして非常にショックを受けたわけであります。同じようなことの二番せんじを言うことになると思いますけれども、三十分だから、ひとつごしんぼうを願って聞いていただきたいと思います。  これはわれわれショックを受けたわけでありますが、相当長いというか、以前からの問題であるわけです。環境庁主管官庁として、当然長年にわたるこのイタイイタイ病に対する諸現象というか、経過について目を光らせておったというか、研究を積んでおられたと思うのです。われわれはショックを受けたのだが、環境庁としてはこの文芸春秋記事をごらんになって、あたりまえのことだというような心境であるかどうか。われわれは非常にびっくりしたんですが、まず、その心境からひとつお伺いしていきたいと思います。
  4. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 イタイイタイ病の問題につきましては、従来からいろいろの議論があり、しかも、研究班自体も非常にフリーな形で賛否両論の方を寄せてやっていた問題でございまして、いろいろな考え方が成り立ち得るということを、われわれ常々思っておりました。現在もその究明を続けております。  私といたしましては、あの文章を読んで、余りショックを受けたという感じもいたしておりません。
  5. 楯兼次郎

    楯分科員 四十七年に、長年の最後の締めくくりといいますか、名古屋高裁金沢支部でああいう判決があったわけですね。その原因カドミウムである。ところが、けさの新聞面を見ますと、何か幻の公害病かというこの記事を、いま答弁になった局長さんのように、われわれは承知をしておった、したがって、今後その因果関係についても研究をする。小沢長官の言葉で、新聞記事によると「原因洗い直し」こういうように、何かあたりまえのような、知っておるんだというのと、現実面におけるいままでの紛争の経過に対する環境庁態度と、われわれぴったりしないものがあるんですね。この点について、どうですか。
  6. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、新聞記事よく読まなかったのですが、ちょっといまここへ入る前に見ましたのですけれども、私、昨日洗い直しなんという表現を使ったことはないのです。ただ、厚生省見解が出ましたのは、あれを考えてみますと昭和四十三年五月でございましたが、当時の厚生省見解というものは、十数年来のいろいろな研究の結果を総合的にまとめた判断基礎にして、それにプラス患者救済、それからカドミ公害防止という観点の、この二つの目的を行政上加味して決断をした、こういうものだ、私は率直にそうだろうと思っておるわけでございまして、患者救済ということと公害防止ということを行政上の観点から考えまして、しかも当時、そのときまでの研究の結果をもとにして判断をしたものでございます。  ところが、腎障害から骨軟化に至る原因については、いろいろやはり学説が分かれておりまして、目下そういう点について、十分この総合研究班検討をいたしております。したがって、その研究班の統一的な何か考え方が整理されて出た場合には——これは学問争いになりますと、真理は一つだと言っても、なかなかぴしゃっと出てくるかどうか、私どもも、私どもが決めるわけではありませんのでわかりませんけれども、しかし、まあまあ統一的な見解が、今後一年ぐらいすれば大体整理されてくるだろうから、そうなった場合に、その結果を踏まえて、私がひとつまた、あるいは行政上の方針を決めなければいかぬのではないだろうか、こういう考え方で申し上げたわけでございます。
  7. 楯兼次郎

    楯分科員 それでは、これは三十分ですから、重複するかもわかりませんが、私はこれを一読して、大体私の疑問で三つグループに分けてみたのです。  簡単に申し上げますると、第一に疑惑に感じたのは、三十年から四十年までは大体カドミ中毒説というのが主流であった。しかし、四十四年ごろから栄養障害を、つまりビタミンD欠乏症といいますかが重視をされ出した。それから、これまでのカドミウム分析信頼度に疑問が出されており、分析操作法実験経過に疑義があるというようなことが盛んに中に強調されておるわけですね。したがって、いま私が申し上げました経過について、環境庁承知をしておったのかどうかという点を、まずお聞きしたい。
  8. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま、先生三つにお分けになった考え方に即して、簡単にお答え申し上げたいと思います。  三十年から四十年の時点と申しますのは、これは奇病としての究明が行われていた時点でございまして、最初にカドミウム説にいろいろの観点から着目したのが萩野博士でございます。三十八年から四十年までに、金沢大学研究班研究いたしまして、その研究成果を四十二年に発表いたしまして、イタイイタイ病原因についてはカドミウムかんでおる、カドミウムが全くかんでないという人は少数であり、またカドミウムだけであるという人も少数であるが、カドミウムはかなりの要因としてかんでおるということを踏まえて、四十三年の厚生省見解ができたと思います。  そこで、第二段の先生の仰せの四十四年以降は、カドミウムプラスアルファだという御指摘ポイントは、厚生省見解の立っております基礎と申しますのは、カドミウムだけでイタイイタイ病が起こったものではないが、カドミウムかんでおるということを言っておるわけでございます。病気の順番としては、腎がやられ、それから骨がやられる。しかし、その人々は、みんな長くカドミウムにさらされており、何度も分娩をして、またお年も更年期以降になっておられて、そういう問題の絡んだものであるということで、厚生省見解自体立場カドミウムプラスアルファ説で、カドミウムだけでもなければ、全然カドミウムかんでないという立場でもなかった。  そこで、腎の障害と骨の障害、あるいは腎から骨へという障害がどう起こるかということを、この現地の調査あるいは実験調査研究がいろいろ行われまして、四十四年度以降イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒総合研究班というのができまして、この表題にもありますように、イタイイタイ病及び慢性カドミウム中毒、そういう表題もとに進められてきました。その実験の中に、そこに一部おっしゃっておられますが、従来の実験として、ネズミカドミウムだけ与えても腎臓と骨の両方所見は起こらない、これは明らかであります。ネズミカドミウムを長期に与えて、そして栄養上の、カルシウムを低くしたり、たん白を低くしたり、そういう条件を与えると、腎臓病変と骨の病変とがあらわれる。そのときに、骨の病変の中に骨粗しょう症というものがあらわれる。ここまでは確かにあらわれます。ただ、骨軟化症があらわれるかという問題につきまして、骨軟化症が一部見られたという報告があり、また、この一年ほど前でございますが、そのネズミカドミウムを与え、食事の条件を悪くしてやってみると、腎臓病変骨軟化症病変両方をつくったという成績もある。それに対していろいろの御議論があるということでございまして、厚生省時代環境庁時代も、そのいろいろの論争の経緯はよく承知をいたしておりながらやっておるわけでございまして、先ほど私、申しましたが、幻の公害ということを受け取ったという意味で驚かなかったという意味ではございません。そんなことを言う人もあろうということでございまして、私どもはそう思っておりません。
  9. 楯兼次郎

    楯分科員 それでは、この記事の中にはこういうことが書いてある。「カドミウム説の最大の弱点は、他の汚染地区イタイイタイ病患者が発見されないことである。」これは恐らくきのうもこういう質問があったと思うのですが、これはきわめて重大でありますので、これをひとつ確認をしておきたい。  それからいま一つ水俣病と比較をして、こういうことが書いてありますね。「水俣病の主因をなすものは、ある種の有機水銀化合物であるとの答申が出たのは三十四年十一月である。この結論を出すまでには三年半、五つの教室から研究を始め、最後は十四の専門分野でチームをつくってやっとメチル水銀にたどりついた。カドミウムの場合はこうした研究経過がない。」こういうことがこれに書いてあるのですが、他の地区には絶対ないのかどうか。  それから、四大公害代表格水俣病と比較して、カドミウムの場合には非常に粗雑に扱われたというこの記事についてはどうですか。
  10. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず、第一段の問題でございますが、四十八年度までの研究成績から見ますと、この鑑別診断研究班にかかった者でイタイイタイ病と診断された者はございません。これは約四万を超える者をやっておりますが、ございません。ただ、その間に、三十八年から三十九年にかけて萩野博士小林教授対馬に行かれたときに診られたケースがございます。そのケースにつきましての報告がございまして、私は、それはイタイイタイ病だろうということを萩野博士が言っておられるということに対しまして、公文の照会をいたしまして、そしてそれを聞きましたが、残念ながら四十二年までの時点で亡くなっておられたので、その患者さんを診ることはできませんでしたが、これは恐らくイタイイタイ病ではなかっただろうかということを、否定し切れぬものでございます。  その後の四十九年、現在いたしております研究、これは研究過程でございますが、長崎から出てきました鑑別診断研究班グループの中の一部に、腎の障害骨軟化症障害を疑わしめるものがありまして、それはさらに骨の生検、骨の一部を取って検査をするということをして、最終的に判断をしようというのでペンディングになっているケースがございます。また、生野で問題がございまして、特にそのうちの一例に、イタイイタイ病ともきわめて酷似したケースカドミウム汚染地域の中に発見されまして、そのケースが、現在鑑別診断研究班の中にかかってきておりまして、病理解剖上は骨軟化症というのはまず見られなかったが、臨床経過から見ると骨軟化症があった、しかも腎の障害があったということ、これはどうも否定できないということで、このケースについても結論が持ち越されて、これはこの三月の総合研究班の結果をもとにしてまた検討してみようということで、生野対馬ペンディングケースが、いまあるということは事実でございます。  それから、第二番目の水俣病検討カドミウム検討ということでございますが、水俣病は確かに非常な調査研究をやられましたが、カドミウムにつきましても、決してそういいかげんな研究がやられたわけではございません。カドミウムにつきましては、初め昭和三十一年ごろ報告されて以来地元の特別の研究班ができまして、これはもっぱら栄養の問題を中心にして検討されましたが、栄養の問題もありますが、そのときは決着つかずに一度消えました。次にカドミウム説が出てまいりまして、カドミウム説の出された背景も、これは非常に論理的な背景からカドミウムの問題が浮かび上がってきたわけでございます。そのカドミウムの問題が起こってきまして、動物実験等萩野さんあるいは小林さん、吉岡さん等がおやりになっておられましたが、これはまだ非常に不完全なものでございました。それから三十八年から四十年にかけて、金沢大学医学部だけではなしに、その中には病理の方もおられ、あるいは内科の腎臓の方もおられ、整形外科もおられ、公衆衛生の方もおられ、理学部の方もおられて、総合研究の結果、先ほど私の申し上げた、この三十八年から四十年の厚生省文部省調査研究結論を取りまとめられて、カドミウムかんでおるということをお出しになって、それを発表されたのが四十二年の一月でございます。  一方、厚生省の方としましては、四十年以降調査研究費を持つことができましたので、カドミウムを出す鉱山の周辺に同じような問題があるかという調査をいたし始めましたところ、腎臓としては確かに同じような問題が対馬であるということを認め、その次に、金沢大学カドミウムが病因としてかんでおるという所見もとに、一体カドミウムはどこから来たのであるかということの研究班を組みまして、その結果、四十三年にこの見解を出す前に、自然界にごくわずかあるカドミウム以外には、神岡鉱山から出たもの以外には見当たらないということで、全体の本格的な研究は三十六年から四十三年までということでございます。金沢大学が組んだ総合研究班でございます。ですから、水俣病の場合と比べて、カドミウムはいたく粗い結論で、萩野博士が言っただけで決まったなどという事実は一切ございません。
  11. 楯兼次郎

    楯分科員 そうしますと、水俣病と比べてカドミウムイタイイタイ病研究といいますか、検討が、ずさんであったといいますか、そういうことはない、こういうことなんですね。  時間がたちますので次へ進みたいと思いますが、この記事を見ますと、こういうことが書いてある。判決が出て、それから何か医療費が急増をした。県の健保審査委員の一人はこういうことを言っておる。「みんながすっきりしないのは事実です。だが、みんながすっきりさせようとしないのも事実です」簡単に要約して言うと、こういう記事がある。それから、この共同研究者の一人であった方は、日本公害病第一号というような重大な病気に対して、「お互いに資料を出しあって、ほんとに患者の幸せになる方法は何かを真剣に考える気はないのか」それからまた、県の担当者を取材しているときに、「民心が落ちついたところを、もう一度ほじくらないでくださいよ」こういうような記事もある。それから最後に、これは相当の権威者だと思うのですが、大学教授が、「みんなが未熟なんです。我々学者も含めて、みんながもう少し謙虚になって、その代り何でもいえるという場をつくらなければ」と、こういうことを言っておるわけですね。何だかこの記事を見ると、本当にその表題のような、「幻の」という表題がぴったりするような内容のように書いてあるわけです。だから、私はいま、まあ門外漢であり、こういう面の知識はないのですから、どちらの立場に立ってどうこうということは言いませんが、これでは国民はこの問題について疑惑を持ちますね。したがって、環境庁として、その疑惑を氷解するだけの力量があるかどうか私は知りません。しかし、監督庁として、当然この記事に対する国民疑惑解明をしなければいかぬと思うのです。これをお読みになったと思うのですが、この記事に対する感想並びにこういう疑惑を、今後監督官庁としてどう解決をしていくのかという点をお聞きしたいと思います。
  12. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も、長い間衛生行政に携わった者でございますが、しかし、医学的な知識素人でございます。環境庁長官になりまして間もなくこの記事が出たわけでございます。私もよく読みました。したがって、素人の私から言いますと、この中に出ている、また楯先生がいま御指摘のような点について、私もそういう疑問があるのかなあという印象を受けたわけでございます。  ただ私は、問題は医学並びにその医学のいろいろな判断に基づく科学的な論拠というものをしっかりして、そしてこういう問題については対処しなければいけないというふうに考えますので、いま先生がおっしゃるように、たとえ一雑誌でありましょうとも、こういうような記事が出た以上は、この点について十分責任のある、私どもとしてはやはり科学的な解明を得て、その結論をもって答えるべきだ、私はこう思っております。  したがって、四十四年以来厚生省から引き継いで環境庁でも調査研究を進めておりますから、この総合研究班医学的な統一見解が出るまでは軽々に、まさにこの記事がいいとか悪いとか、間違っているとか正しいとか、そういう結論を私どもが出すべきではない。総合研究班医学的な、しかもそこの研究班の討議の場は本当に自由な場でなければいけないので、そういう環境づくりに私どもは気をつけまして、そしてその統一見解を出していただくことに、いまのところは専念する以外にはない。いろいろなことを言われる方がございますが、こういう学者を入れるのはおかしいじゃないかとかなんかいうような意見もございますけれども、やはり賛否両論立場からする医学者の方々が自由に討議できる場をつくって、そうしてその結論を得た上で私ども判断にしたい、私はかように考えております。
  13. 楯兼次郎

    楯分科員 時間も来ましたので、もう一つで終わりますが、いま環境庁長官の御答弁で、将来を推定して質問をするのですが、いま環境庁態度をずっと推し進めていきますと、四十七年の名古屋高裁金沢支部ですかの判決ですね、三権分立という立場上、その関係はどうなるのですか。私は、その結果はここで言いませんけれども、その関連はどういうふうに理解したらいいのか。
  14. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 裁判行政学問が束縛されないということは、非常なポイントでございまして、裁判の方では、あの時点までに与えられた学問的な知見を中心として、不確定要素はございますが、両者の権利の争いとして判断をすると、このような蓋然性で判断をしたということでございまして、裁判裁判としての判断があると思います。  ただ、裁判結論学問結論ではないということでございまして、裁判判決が出ると、それと違うようなことを言う学者に対して非常な圧力がかかるということは、これは学問の自由の侵害であるということでございまして、学者先生が言われますのは、行政裁判がやるということは、別に何も、それはそれで結構だ、しかしながら、その結論は、あくまでも学問的にそれまでわかったことでやっているだけのことであって、それによって学問が束縛されるのはけしからぬ、こういう議論でございます。そういうことでございますから、何らそれに対してわれわれは異議があるとか、そういうものではございません。
  15. 楯兼次郎

    楯分科員 どうもありがとうございました。
  16. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、多田光雄君。
  17. 多田光雄

    多田分科員 環境庁長官にちょっと申し上げたいのですが、去る二月二十四日の当予算委員会の第四分科会で、実は私は、北海道電力が計画しておりまして、昭和五十三年二月に運転開始する予定の苫小牧東部発電所の問題を取り上げて、窒素酸化物汚染の実態、さらに石炭だき脱硝プラント開発の見通し、こういうものについてお伺いしたわけです。  その中で、はっきりしたことは、石炭だき脱硝装置については、現在までのところ、試験運転をさせた実績も皆無であるということ、そしてまたそのことによって、石炭だき脱硝装置実用プラントの完成というのは技術的にまだめどが立ってないということ、これはこの間、河本通産大臣を初め出席した政府委員によって確認されているところなんです。  この中で言えることは、苫小牧東部石炭専焼火力石炭専門にたくと言いながら、国の環境基準を本当に守るという立場から言うならば、実は石炭をたけない石炭の火力となるということは、もう明らかだというように私、思うわけです。そしてまた北電に対して、合計二十七億のお金が出ることになるわけですが、これが本当に石炭対策になるのかどうなのかということについても、その立地問題を含めて実は通産大臣にお伺いして、検討してみたいというお話であったわけであります。  そこで、きょうは、さらに環境庁にこの問題について、なおお伺いしたいのです。  実は、地元苫小牧市の市議会で、道の立地点発表以来、これが大問題になっておるわけですが、特に二月二十日、それから同二十一日の市議会の公害対策特別委員会、それから総合開発特別委員会の連合審査が開かれた席上、この場で、同市の渡辺環境部長はこういうことを言っているのです。脱硝実用プラントは、計画どおり五十三年二月の火発運転開始までに完成させ、装置をつけることは可能であり、建設できる見通しがある、こういうことを述べておられるわけです。しかもその根拠を、道の環境部の従来の説明をよりどころにしているだけじゃなくて、こう言っているのです。道庁の見解は、環境庁判断も反映させているものだ、こういうことを公式の場で述べているわけです。  そこで伺いたいのですが、環境庁石炭だき火発脱硝実用プラントの完成が見込めるということを、道庁に言ったことがあるのかどうなのか、これをひとつ伺いたいと思うのです。簡単に答えてください。
  18. 春日斉

    ○春日政府委員 先生のおっしゃいますように、五十三年までに、結論として、完全な脱硝装置ができるかどうかの見通しについては、私どもは、確実にと申しておりません。
  19. 多田光雄

    多田分科員 ところが、地元では二百立米まで抑えることができるんだということを言って、道はこういう青いパンフレットをつくって、もっぱら脱硝可能だという宣伝を地方議会や住民に対して行っているわけなんです。  それではこの判断は、いまの局長答弁によりますと、道の勝手な判断だけで苫小牧にやったということになるわけですが、そうですか。
  20. 春日斉

    ○春日政府委員 脱硝技術の開発状況は、私どもも昨年から、主要なプラントメーカーを呼びましてヒヤリングを実施いたしておりました。ともかく、脱硝技術の中でも乾式法というものは比較的進んでおる、予想外に進んでおるということを認めておるわけでございまして、クリーンな排ガスの場合については、実用化の段階にすでに入りつつあると思うわけでございますが、石炭等の燃焼排ガスの場合は、御承知のとおりダストが含まれてまいりますので、非常に厄介な問題がまだ残っておるわけでございます。ただし、脱硝技術は最近かなりの進歩を示しておることも事実でございまして、種々の問題点も、今後は早急に解決されていくことも事実であろうと思います。  したがいまして、私どもは、そういったことから北海道庁が技術予測を行いまして、可能であろうと推定したわけであろうと思います。したがいまして、決してそれは根も葉もないというものではなくて、いままでの脱硝技術の推進の度合いからの技術予測の結果であろうと考えております。
  21. 多田光雄

    多田分科員 それはもう解決済みなんです、この間の質問で非常にむずかしいということが。私の聞いているのは、そういう指導をしたかどうかということを聞いているのです。もう一度伺いたい。
  22. 春日斉

    ○春日政府委員 五十三年の段階で、脱硝装置は確実にできるという指導はいたしたことはございません。
  23. 多田光雄

    多田分科員 そういうことはできるわけもない。そうすると、こういうことをやっているのは、道もしくは苫小牧市が希望的に可能だということでやっているんだろうというふうに私は考えざるを得ないわけです。  そこで、通産省に伺いたいと思うのですが、いまのように可能だとは言ってない。しかも非常にむずかしい。これは石炭の火発になるのです。その石炭をたけなければ、重油をたく以外にないのです。  そこでこれは、公益事業部長、石炭部長来ていますね。——まず公益事業部長に聞きたいのですが、道が昨年五月に立地点を苫東に決定し、そして発表するに当たっては、通産省の中でも公益事業部に、相談または内諾を当然求めたと思うけれども、そのとき、環境保全、公害防止立場からどういう指摘をされたのか、伺いたいと思います。これは公益事業部長にお願いします。
  24. 大永勇作

    ○大永政府委員 立地点の設定につきましては、道が関係市町村等と相談されまして、苫小牧東部に決定されたものでございまして、われわれとしては、その御連絡は受けておりますけれども、事前の相談は受けておりません。
  25. 多田光雄

    多田分科員 これは非常に奇怪なことなんです。時間がないので詳しく述べるわけにはいかないが、いままでの電源開発事業の計画を見ますと、毎年毎年大幅に発電所の建設がおくれている。たとえば四十八年度の計画の四四%、四十九年度の計画の一一二%。この大幅におくれている原因は、これが公害問題、住民のいろいろな反対運動、こういうものでおくれているのです。そういうものが決定的なものになっているのに、この世界最大と言われるコンビナートのど真ん中に石炭専焼火力発電所をつくるというときに、通産省の特に公益事業部が、その公害やその他の問題について十分検討されないで、立地点あるいはまた立地を認めるということは、一体どういうことなんでしょうか。
  26. 大永勇作

    ○大永政府委員 本件につきましては、まだ電調審その他にかかっておりませんが、電調審にかかります際には、事前に資料を集めまして環境アセスメントを行う、その段階で行うということになっているのでございます。
  27. 多田光雄

    多田分科員 それからもう一つ石炭部にちょっと伺いますが、石炭部は、石炭をぜひたかしたいという考えだろうと思うのですが、これは事前に、こういう環境問題を含めて石炭部に相談がありましたか。
  28. 高木俊介

    ○高木政府委員 石炭部といたしましては、将来のエネルギー源の多様化という点から、発電所をつくっていただくということには強力にお願いいたしておりますけれども、苫小牧の地点に設置するということにつきましては、何ら関知しているところではございません。また、この問題につきましては、道知事が中心になって、地域の選定に当たっておられるものというふうに考えております。
  29. 多田光雄

    多田分科員 まことに無責任な話なんですね。関知しないと言いながら、乏しい財政の中から、石炭特別会計から昨年度は五億九千万ですか、ことしは五億五千万、五年間で二十七億という巨費を、北海道電力にもう予算づけをして出そうとしているじゃありませんか。しかも、北海道開発庁の福田長官が、もし石炭がたけないなら重油に切りかえる、こういうことまで公害関係の閣僚会議で述べて、記者会見までやっているのです。一体どこで、だれがこの問題に責任を負うのか。万事がこの調子であるならば、これでは、電源開発で幾ら言ったって進みようがないのですよ。  そこで、通産省に伺いますが、どうですか。もう一度立地点を再検討してみるつもりはないか。私は、石炭火力をつくるなと言っているのじゃないのです。公害で人の健康を壊したり自然を破壊したりする、そういうおそれの最もある苫小牧、ここにわざわざ持ってくるのじゃなくて、もっと適切な場所を検討してみる。これはこの間河本通産大臣に申し上げましたけれども検討してみたいと言っていたが、その後公益事業部長としてどうですか。いずれ電調審にかかるという話も聞いておるが、これはどうですか。
  30. 大永勇作

    ○大永政府委員 先ほども答弁申し上げましたが、この立地点につきましては、道が関係市町村等と協議されまして苫小牧ということになったものと聞いておるわけでございまして、現在でも関係市町村と協議中であるというふうに伺っております。したがいまして、われわれといたしまして、この立地点をほかに移したらどうかというふうなことにつきまして、通産省としてはそういうことを考えておりません。
  31. 多田光雄

    多田分科員 いずれにしてもこの問題は、環境基準を無視して公害発生の元凶であるこれを、あのど真ん中につくるのか、それとも公害を忌避しようとすれば、石炭専焼を投げて重油に切りかえるか、このどっちかに追い込まれているのですよ。  そこで環境庁に、これは長官にお伺いしたいのですが、こういう石炭専焼の火力発電所をお認めになるような環境庁ではないと思いますけれども、長官、どうでしょうか。そういう御指導をなされましょうか。
  32. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもはエネルギーについて、そのものを、直接こうでなければいかぬ、ああでなければいかぬというような立場にございません。むしろ環境アセスメントを十分にやりまして、公害防止計画に沿った具体的な、われわれが考える環境基準を達成するような総量としての状況であれば、エネルギーの問題を、石炭はいかぬぞ、石油でなければいかぬぞと言う必要はないわけでございます。  問題は、先ほどお話しの脱硝技術の開発の問題が、五十三年までにめどがつくかどうかという問題だと思うのでございまして、この点は、私どもの所管ではありませんが、これは、ひとつ関係官庁にその技術の開発の状況等の検討をよく聞きまして、それで、それが五十三年までにめどがつくのかどうかという判断をすべきものだと考えております。私の方は、要するに大気汚染度をどの程度許容すべきかという点のアセスメントを十分にやるということが立場でございますから、その場合に、その目的を達成するものであれば、燃焼のためのエネルギーが、石炭であろうと重油であろうと、その問題についてとやかく言う立場ではございません。
  33. 多田光雄

    多田分科員 長官、長官のような発言ですから、私は五十一年規制があんなに後退すると思うんですよ。石炭であろうが重油であろうがという一般論じゃないんです。苫小牧に石炭火発が可能かどうかという環境上の問題なんです。しかも、脱硝装置昭和五十三年可能だと言うけれども、いま政府の出している工業技術の資料を見ても、あるいはこのメーカーの資料を見ても、試験運転すらまだ始まっていないんですよ。ガスや重油だきよりもはるかにはるかにむずかしい問題なんです。国際的にもないわけでございましょう。それを、あたかもあるかのように、重油でも石炭でもよろしい、こういう態度であっては、これは本当の環境庁の失地回復にはならない、私はそう思うんです。あなたも閣僚の一人なんです。環境保全というこの最大の問題から、この石炭火発についてはもっと考えてもらいたいという、チェックできる権限を持っておられるのです。あなたは、やめろと言って通産省の部下に言う権限はないでしょうけれども。私はそういう意味で、大変いまの発言は納得できません。  時間がありませんので、次に移りたいと思うんですが、そこで、これは環境庁長官にお伺いいたします。  北海道は、昨年八月から石炭専焼火力発電所、これは三十五万キロワットですが、これについて、地元周辺で住民に説明会を開いている。ところが、これら説明会には事業主体である北海道電力が一度も顔を出していないのです。まことに奇妙なことです。住民が受け取る一切のパンフレットは、このとおり北海道の名前です。企業が後ろに隠れて、むしろそれをチェックすべきこの地方自治体が、一番むずかしい環境影響評価、あるいは住民の説得の先頭に立たされているわけですよ。これは、事業主体である北海道電力の環境問題に対する責任をあいまいにするものだと私は思うんです。それからまた、本当の環境評価の基本原則をこれははずれた邪道だと私は思うんです。  たとえば、当の北海道電力が岩内の原子力発電所をつくろうという場合には、地元を差しおいて膨大な宣伝物を発行するし、地元住民をほかの原子力発電所に案内する。それから北海道の伊達火発でも先頭に立ってPRをやっていた。事この問題については、後に下がって道に全部どろをかぶせている。事故が起きたら一体だれが責任をとるんですか。しかも、これはここだけじゃないんですね。たとえば、これは関西電力の場合ですが、きちんとこういう評価の文書をつくって府に提出している。あたりまえのことなんです。こういう道や北海道電力のやり方について、長官どうお思いになりますか。
  34. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは、環境影響評価の結果を地元民に公開をして十分な説明を加えるとともに、住民意見の聴取を行って、その結果に基づいて必要な修正を加えるなどの措置を講ずることが、非常に大事だと考えております。  その際に、果たして設置をする企業側の人が出なければならないのかどうかということは、それは北海道なら北海道の側でいろいろな条件を勘案して決定をすることでございます。あそこは火力だけをつくるわけではありませんので、全体のそれぞれの企業の立地の結果、どういうような環境影響評価になるのかということがございますから、恐らく電力だけが出て説明をする、説明のときに立ち会うというようなことは、むしろいろんな意味で誤解を与えてはいかぬ、電力だけの承認を求めるような誤解を与えてはいかぬという配慮ではないかと思いますが、それは聞いてみなければわかりませんので、私自身が知らない問題を、ここでお答えをするわけにはいかないわけでございます。  要は、私どもは住民に公開して、そして住民の意見を聴取して、住民のその意見によって修正を加える必要があれば修正をいたす、そうしてそういう措置を講ずることが大事だということを指導しているわけでございます。
  35. 多田光雄

    多田分科員 経済企画庁に伺います。  この発電所建設に当たって、これほど全然住民の前に顔を出さないで、チラシ一枚出さない、アセスメント一つやらない、こういう事例は全国に一体あるでしょうか。あったら言ってください。これほど完全にやらないような企業が、あるかないか言ってくださいよ。
  36. 伊藤謙一

    ○伊藤説明員 お答え申し上げます。  私ども、いま問題になっております東苫小牧火力発電所につきまして、地元での対応状況、そういったものについて、いま十分情報を得ておりませんので、この点については、何ともお答えできない次第でございます。
  37. 多田光雄

    多田分科員 そんな企業はないんですよ。また、そういう実態もつかまないようだが、きょうはこの問題環境問題でやると言ってあるんだから、少し調べていらっしゃいよ。  それから大臣は、ほかの企業も全部つくから、総体として見なければならない。そうしたら一体、環境の阻害の元凶である企業が、あそこに今度は自動車とか鉄鋼だとかいろいろ計画される、それを一々道が全部やるのでしょうか。法的には、いろいろこの点については、いわば死角になるような点でもありますけれども、道がすべて請け負って企業の環境影響評価をやって、もしそれが間違っていて被害を受けたら、一体、道が政治的に責任を負うのですか。道が損害補償を出すのですか。こんなばからしいことを、裁判官の立場で企業のやり方をチェックしていかなければならない地方自治体が、北電のお先棒をかついで、そうして何から何まで、宣伝から住民の説得から事前評価までやってしまう、こういうやり方は間違っているし邪道だと私は思う。だからこそ、こういうやり方は、地方自治体が大企業の下請になってしまっているんだ。住民が強い抵抗をするのはあたりまえなんです。  そこで私は、長官にこれは要望を含めてですが、やっぱり北電はきちんと出るところへ出て住民を説得もする、あるいはみずから環境影響評価をつくって住民に責任を問う、そういうふうに行政指導が道に対してできないかどうか。この程度ぐらい環境庁できなければ、環境庁、いよいよこれまたほかの省と同じように、企業の利益を守る、そういう省になってしまったという誹謗を受けても、これは弁解の余地ないです。この程度のことは大臣どうですか。その程度のことをひとつ注意してくださいよ。
  38. 小沢辰男

    小沢国務大臣 企業がまず自分が計画をして、その計画したものがどういうような環境影響を与えるかという評価をしまして、その資料を道に出す。道がそれをよく検討して、公害防止計画に基づく環境影響評価の詳細のアセスメントをやりまして、道が評価の案をつくりましたら、それを環境庁が見て、まだ足りないところがあるじゃないか、あるいはこれはいいのかということをよく検討して、それででき上がるわけでございますから、したがって、住民に対して責任を負うのは、これは電力会社でもなければ、あるいは自動車会社でもないので、やっぱり公共団体の長としての道知事が住民に対して責任を持ち、それを監督し指導する環境庁の私が責任を持つことでございますから、どうも先生のおっしゃることは私にはよくわからぬのです。  電力会社も電力会社として前に出てきて、そしてよく説明したらいいじゃないかとおっしゃいますけれども、電力会社の環境影響評価そのものを私どもはうのみにもしていませんし、そこへ任してもいないわけでございますので、その点は、私が道庁に、おまえだけじゃない、電力会社も一緒に連れていって説明しろなんということを言う方がいいのかどうか、これは先生所見とちょっと私は違うのでございます。むしろ私どもは、たとえ企業がこうなってこうなりますから十分大丈夫でございますと言っても、それをうのみにしないで、十分われわれは公的な立場検討するのが、私どもの任務だと思っております。
  39. 多田光雄

    多田分科員 公的な立場で、科学的に厳密にもっとやってください。  ところが、ほかのところではみんな企業がやっているのですよ。このとおり全部企業がりっぱなものを都道府県に出して、都道府県がそれを、いわば裁判官の立場で、住民の利益を守る立場でいろいろチェックをして、そしてより完璧なものをつくって環境庁のいろいろなあれを受ける、そういう立場をとっているのが多いのです。なぜここだけがそうなのかということです。しかも、北電はほかのところではやっているのですよ。  私がもう一度お伺いしたいことは、本来は企業がやるべきですよ。もちろん、道としてもいろいろ検討する必要があると思う。役所に出すときにはそれなりにチェックしなければならない。ところが、北電がつくり上げて道に出したなんということは、そんなことは一言も聞いていない。道もそんなことは発表していませんよ。全く企業の出先になってこれをやっているのです。それでは、環境庁は企業に対して本当に環境責任を一体負わせられるのかどうなのか、そういう疑問を私は感ずるのです。
  40. 小沢辰男

    小沢国務大臣 第一義的には、進出企業が道庁なりわれわれの指導に基づいて、そういういま先生のおっしゃったような資料を出すということは、もう当然だと私は思うのですよ。これがなければ、道庁が、一体どの程度の装置をつけて、どういう燃料にして、それでどういう規模だからこれだけのあれが出る、それがこの地区にどういう環境影響を及ぼすかということを検討するわけでございますから、第一義的な企業が全然道庁に出していない、道庁は何もそういう資料がないのに、自分でいろいろ考えるということはないものだと私は思っております。  私どもは、直接企業からとるような立場にありませんけれども先生がいま、それは全然出ていないのだ、こうっしゃいますが、その点はよく調べてみないとわかりませんけれども、私どもは、いま環境庁として、企業の立場でいろいろな地区に、こういうものを許してくれぬか、こういうようなデータだと言いましても、それをうのみにするわけにいかないので、やはりわれわれとしては総量的に考えて、その企業だけのことでなくて、その地域全体の総量を考えながら環境を守るための態度をとっていかなければいかぬわけでございますので、どうも私は、私の立場で、道庁にそういう資料がないのに全然やみくもに、おまえの方だけで騒いでいるのはおかしいじゃないかというようなことを指導せいとおっしゃっても、それは、そういうような企業の第一義的な環境影響評価のいろいろ勉強の資料というものがあるのかないのか、そういう点は確かめてみないと、いまここでお答えはできません。
  41. 多田光雄

    多田分科員 それでは、いま確かめてみるとおっしゃいましたけれども、長官、ひとつこの辺の事実を、指導云々の問題もあるでしょうけれども、やはり環境を守るという上では企業責任というのは非常に重大です。それを公的な機関がチェックしていく。認めるとか認めないというのはそこなんですから。しかし、やはりアセスメントをつくり、みずから住民に対する責任から、まず第一に住民説得をやっていくということはいままでもやっているのだから、ここのかんぬきを外してしまうと、新たな法をつくってみても、私はやはり企業責任というものがあいまいになってしまう、こう思うのです。  それで、どうでしょうか。この実態を環境庁として、長官、北海道でどういう御指導をなされるかは別として、実態をひとつお調べになっていただけますか。お調べになって私ども報告してください。これをひとつお願いします。
  42. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国会の従来の御議論は、環境の問題については、それぞれ都道府県の権限にできるだけゆだねろというのが国会の御意思で、そのとおりいままでやってきたわけです。ですから、当然私は道庁に対して——いま企業の責任を全うしなければいかぬと言われますが、企業が公害を起こしたら、それこそ大変なことになるので、むしろ企業自身の非常な負担になる問題でございますから、企業がそんなことについていいかげんなことをするはずはないと思っております。そうでなければ、私どもが今度は認めないわけでございますから、環境アセスメントの結果でそんな勝手なことをやらせるわけにいきません。  しかし、いま先生から、道庁の権限の問題でございましょうけれども、そういう企業側の十分な資料が出ているのかどうか調査してみろと言うならば、早速道庁に問い合わせて、その点の不備があるのかないのか、それはひとつ私も調査をいたしてみます。
  43. 多田光雄

    多田分科員 時間が参りました。それじゃひとつ御調査願って、それをぜひ御報告を願いたい、こう思います。  実は、このあとに港湾問題についてもお伺いする予定でいましたけれども、きょうは局長も来ているのだと思いますが、大変失礼しました。時間がないので、また別な機会にしたいと思うのです。  三木総理は、昨年の暮れの参議院の予算委員会でも、公害アセスメントをきちんとしなければ、これから新規の開発を含めてさせない、こういうことも野党議員にきちんと答えているのですね。それから北海道の開発環境影響評価にしても、三回にわたって、これは欠陥があると述べて見直しさせると言っている。いまだに見直しさせたということも聞いていない。そういう中で着々と苫小牧東部の建設は既定事実として進んでいっている。総理大臣の言っていることはうそなのか、総理大臣の言うことを長官以下やれないのか、一体そういう日本の政府なのか、私は大変疑問に感ずるのです。  ですから、そういうことも含めて申し上げまして、最後にひとつぜひ長官、環境庁の失地回復の意味でも、いま言ったような問題についてはきちんとした態度をとっていただきたい。それから、先ほど言った調査をやっていただきたいことを重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。
  44. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、有島重武君。
  45. 有島重武

    有島分科員 私は、問題を二つにしぼりまして、主に東京都内の公害問題について御質問します。  一つは、去る二月十一日に東京都内で環状七号線の道路公害、これの被害者の総決起大会が行われました。そして翌日、二月十二日に決議書が総理府や環境庁及び関係当局に提出されたわけでございます。これについては環境庁長官もよく御存じであるはずですけれども、決議の内容が、自動車の排ガスの問題それから第二番目は振動の問題、三番目は騒音の問題、それから健康の問題それから五番は移転をすることについての問題それから六番は緑地帯などをつくって、さらに積極的に環境をよくしていきたいというようなこと等々の各点にわたっておるわけでございますけれども、いずれも、地方自治体の力の限度ではもうどうにもならない、その限度を超えるものであるというところに問題があるのではないかと、私もその話を聞いて思いました。環境庁長官に伺いたいのですけれども、環七の住民が本当に安心して生活できるようになるのは一体いつのことであるか、この大枠をまず先に伺っておきたい。
  46. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変むずかしい見通しを言えとおっしゃるわけでございますが、環七の問題は本当に頭の痛い問題でありまして、過般、先生がおいでになりましたとき、一緒においでになった住民会議の代表の方々の痛切な訴えも承りました。五十一年規制と、補完する意味における総合対策をできるだけ実施し、また、ただいま自動車騒音関係の規制の諮問をいたしておりますが、それが恐らく近くだんだん結論が出てくると思います。それに従って騒音の防止をするような対策もとっていきます。また、交通量の規制等によって、できるだけ現在のいろいろな公害を除去するような努力もあわせてやってみたい。また、道路の全面的な改修という問題、これは東京都の問題でございますけれども、都道でございますから、そういうような点も十分ひとつ都で検討してもらいまして、総合的に、あるいは緩衝地帯の設置については建設省とも十分相談をしなければなりませんし、そういうような対策をあわせ備えることによりまして、できるだけいまの弊害を除去していくように努力をしてみたい。  おおよそどれぐらいかと言われましても、なかなかいま私がお答えできないのはまことに残念でございますが、できるだけひとつあらゆる手段をとりまして、環七の自動車公害の問題を解決するように努力いたしたいと思います。
  47. 有島重武

    有島分科員 できるだけの努力をしてくださるということでございますけれども、まず第一番目の自動車排ガス規制の問題については、もう先日、国としての一つの答えが出てしまったので、世間ではこれは大幅後退であるということになっておりますし、これはそれ以上の努力を国としてできるかどうかという問題が一つあるのですけれども、環七に限って、そこだけ規制をすることができるかどうか。現実には、東京都としては中古車なんかに対して勧告ということをしているのですね。ところが、それに対して別に罰則ということは科することができない。そういうことで、一つの行き詰まりを見せているということもあるようですね。これが一つの問題。  それからあと、道路をつくりかえるということ、これはいま長官は都のほうの問題であろうと言われましたけれども、都の財源なんかでは、とてもとてもできないことではないか、そういうこともございますね。ですから、これを国の方でさらにもっと事情をよく聞いて、国の方からもある程度の手を差し伸べていくという姿勢を示していただかないことには、なるべく努力するということはいつもおっしゃるわけですけれども、では具体的にどう努力してくださるのかということを、住民も、または地方自治体の方でもそれを望んでいると思うのです。いま申し上げた排ガスの問題と道の問題これについていかがでございましょうか。
  48. 小沢辰男

    小沢国務大臣 排ガスの規制の問題は、あそこは非常にトラックの被害が多いということも聞いておりますので、これから私どもトラックに対する規制の強化というものをできるだけひとつ早急に専門委員会でさらに検討をしていただいて、乗用車のみならず、何とかトラックの排ガスの規制をさらに一層強化してまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、舗装問題は、昨日も議論が出たのですが、都道でございますから東京都がやらなければならない。いわば補修とか修繕とかいう問題は、管理者の責任でやらなければいかぬわけでございます。ただ、非常に膨大な金がかかるので、東京都だけではとてもできないじゃないかと言いますが、東京都の財政そのものをもう少し、できるだけ行政経費を切り詰めて、住民福祉のために使うだけの姿勢を示してもらった方がいいと思っておりますけれども、これらの点については、大改造、大修理ということになれば、あるいは舗装新設と同じような考え方で建設省に御配慮願わなければいかぬじゃないかというふうにも考えておるわけでございまして、ただ、要は東京都がやるかどうかでございます。相当の経費がかかりますから、住民福祉のためなら自分たちの行政経費を切り詰めてもやるだけの意欲を持ってもらわなければいかぬ問題でございますので、その辺のところは今後も総合対策の一環として、環七だけではなくて東京都全体の問題だと思いますけれども、よく指導もいたしてまいりたい、かように考えます。
  49. 有島重武

    有島分科員 いまのお話ですと、後段の道路の問題、これは意欲があれば応援する、そういうことでございますね。
  50. 小沢辰男

    小沢国務大臣 環境庁立場としては、ぜひ応援をしたい。しかし、東京都が本当に一千億の金を出してまでそういうことをやろうとする意欲を住民のために出してもらわなければだめなんです。いまの東京都の財政の現状で、果たしてそれができるかどうかという問題がありますが、それはまず、みずからの姿勢を正してもらわなければいかぬと思うのです。人件費が去年のベースアップまで払えないような現状で、一般金融機関から何百億も借りなければいかぬような現状で果たしてできるのか。都の財政のやり方自身ももう少し考えてもらって、本当に住民のためになるような方面にどんどん財政の運営を考えていただかなければいかぬ。この姿勢を直すことが、まず第一だと私は思います。
  51. 有島重武

    有島分科員 それはやや筋違いのお話なんだ。東京都ではいまいろいろな実験をやっているということは御承知だと思います。そして、そういうやろうという意欲はある。そしてこれは環七沿線の住民にかかわる問題でありまして、それで東京都の力ではどうにもならない。いまおっしゃったのは、全部これは東京都の責任に押しつけてしまって、それでもって、いまの住民の力を東京都に文句を言わせるという方向にだけ押しつけていらっしゃるわけだ。責任問題というのは、要するに行政ペースの問題なんですね。行政ペースの問題を大臣に向かってぼくは言おうとは思わない。これは何とか手を差し伸べてもらいたい、そういう切なる要求に対して、いまおっしゃったことは、まるで木で鼻をくくると申しますか、まことに環境庁長官らしからぬ言葉ではないかと私は残念に思うわけでございますけれども、意欲はある。そうしたら、今度は意欲はあるけれども財源がない。そのことについては話し合いを積極的にしてもらえないだろうかというようなことを私は言っているわけですよ。もう一遍お答えいただけませんか。
  52. 小沢辰男

    小沢国務大臣 当然、私の立場からしますと、こういう点について、東京都並びに建設省に、できるだけの配慮をするように、先生のおっしゃるようにもちろん積極的な態度をとってまいります。ただ、現状を申し上げただけでございまして、むやみに、何でも国の責任だというような態度でなくて、都道府県と国が一緒になって地域住民のためのいろいろな政策を遂行していかなければいかぬじゃないかという基本論を申し上げたわけでございます。
  53. 有島重武

    有島分科員 そこで、警察庁来ていらっしゃいますね。東京都だけじゃどうにもならない問題が一つある。それは、総合交通対策といいますか、これはどうにもならぬ問題だということになっておりますね。警視庁の方では「環七全線に安眠対策を」というお知らせを二月二十四日にお出しになったようであります。これも対策をいつやってくれるのかということは余り書いてないようだが、結論はどうなるのでしょうか。
  54. 森郷巳

    ○森説明員 環七についての騒音、振動などの交通公害を防止して沿道住民の安眠を図りたいという、いわゆる環七方式の交通規制につきましては、来たる三月三日から実施したいという考え方でございます。
  55. 有島重武

    有島分科員 どういうようなことをなさるのですか。
  56. 森郷巳

    ○森説明員 すでに御承知かと思いますが、四十八年三月から、環状七号線の一部におきまして、大型自動車を道路の中央寄りに寄せるという方式をとってまいりましたが、これまでに五路線について実施いたしております。今回は、同じように大型車、大型特殊車を道路の中央寄りに寄せて走らせるということでございまして、これまで環七につきましては二八・四キロの区間について実施いたしておりましたが、さらにつけ加えて十九・七キロ延長したい、さらに環状八号線にも同様の規制を実施したい。時間的に申し上げますと、従来は午前零時から午前五時までの五時間ということで実施いたしておりましたが、今回はさらに延長いたしまして、二十三時から翌朝の午前六時まで実施いたしたい、こういう考え方でございます。
  57. 有島重武

    有島分科員 環境庁長官、いまお話しがあったのだけれども、これは二つございまして、総合交通体系を考えていかなければもうどうにもならないということが一つあるわけですね。これは長期的な問題でしょう。それから、いま警察庁が言われましたのは交通総量の規制、これは当面の問題なんです。それも大型車を真ん中に寄せるということを言われましたけれども、これは大体どのくらいの効果があるか’それによって振動ないし騒音が大体どのくらい減るかということは、望み薄といいますか、余り頼りにならぬ問題である。それで総合交通体系そのものを考えていかないことには、抜本的な解決にはなりませんですね。  先ほどは、道路そのものを直していただくことについて、応援の余地があるというようなお話でございましたけれども、交通総量の問題は他の県との関係がある問題でございますので、これは国でもってかなり詰めて急いでやっていただかないことには、都の方ではどうにもならないということでございます。これを急いでやっていただきたいと思うのですけれども、いかがですか。
  58. 小沢辰男

    小沢国務大臣 排気ガス規制の問題に絡みまして、いま閣僚協をやっているわけでございますが、一番急ぐ問題として交通の総量規制の問題について、警察庁にはいち早く非常な御協力を願って、全体的に一割減らそうという対策をとっていただいたわけでございますが、一割ではなかなか目的を達成できませんから、今度私どもの方では騒音等について、特にトラックの騒音等について、いまの騒音を出すエネルギーの半分ぐらいにしたいということで、近くその規制をやりたいという考えを持っておるわけでございます。  また、物資の流通に非常に関連するので、ことにトラックの場合はそうでございますから、その辺のところはどうやって合理化をすべきか、これをひとつ通産省とも相談してみたいと思っておるわけでございます。閣僚協を設置していただいた目的もそこにあるわけでございますので、この国会でなかなか進めていく時間がなくて弱っておるわけでございますが、とにかく急いで全体の対策をとるように、あらゆる角度から検討してまいりたい、かように考えております。
  59. 有島重武

    有島分科員 閣僚協議会で総合交通体系を検討してくださるということになるわけですけれども、いまおっしゃったように、それははかがなかなかいかないんじやないか。しかしまた、これが解決しませんと抜本的なことは何もできないわけですね。それがおくれていく。しかし、住民は苦しんでおる。そうなりますと、やはり道の改修ということも、国全体の対策がおくれているその埋め合わせと言ってはおかしいけれども、相関連し合っているので、それは十分お考えいただきたい、そういうふうにお願いしておきます。  次の問題は、高速七号線の問題です。高速七号線の沿線に一つの団地がございまして、それが騒音で非常に悩んでおる。それに対して、道路公団の方では一メートルほどのへいのかさ上げをしてくれた。それにもかかわらず、高層でありますから、十四階まであるわけですが、四階ぐらいのところはいいのだけれども、それ以上のところはいささかも変わりがない。そういう状態でございますので、これもどうにかしてもらいたい。病人や老人や子供なんかはとてもいられない。それでもって部屋が次々にあいていくというような実態もあるということがございました。これについても幾つかの手を打たなければならないことがあるのですけれども環境庁の方から、道路公団にも建設当局にも強力にひとつプッシュしていただきたいという問題がございます。この問題は聞いていらっしゃいますでしょうか。
  60. 春日斉

    ○春日政府委員 環境庁といたしまして、問題の団地の住民の方々から御要望を受けておるわけでございまして、私どもはさっそくその要望の趣旨を首都高速道路公団に伝えまして適切な対策を考えるように申し、また、公団からいろいろ状況説明を聞いておるわけでございますが、さらに私どもは、住宅公団が首都高速道路公団と住民側の御要請を十分に聞きながら、いろいろな対策がまだまだあるわけでございますから、これを話し合いの上で早急に円満な解決を図るように期待いたしておるわけでございます。  要するに、七号線の高さが大島団地の五号棟でございましたか、六号棟でございましたか、たしか六階程度でございますから、それ以上につきましては、防音壁のかさ上げを少々いたしましても、なかなか効果がないのは先生の御指摘のとおりでございまして、それには二重窓とか、あるいは場合によればそこを使用しないで適切なところに両者の責任において移転していただくとか、いろいろな方法がまだ残されておるわけでございますので、その辺を私ども両公団に対しまして話を進め、勧告をいだしているところでございます。
  61. 有島重武

    有島分科員 これは幾らかさ上げをしても、いまの状態で二メートルにしたところで余り効果はないのではないか。本当にそのことをひとつ工夫していただくことが一つ。  それからもう一つは、この道の速度制限は六〇キロになっておると聞いております。しかし、実際には守られていない。それから、重量の制限も守られていない。これを守らせるために、公団の方も、それから警察の方も大分努力をしていられるようですけれども、聞くところによりますと、今度は軸重計というのを設けられて、重さを自動的にはかる、あるいはそれを写真で撮ってしまうということでもって、余りだび重なるようなことがあれば告発にまで持っていこうかというようなお話も聞いておるのですけれども、一厳重にそういったことを守らしていく方向に踏み切られるという御用意があるのかどうか、そのことを伺っておきたい。
  62. 上田伯雄

    ○上田説明員 大島団地の騒音の問題で先生幾つか御指摘がございましたですが、その中で、いま軸重計の設置に絡まる重量規制の問題の御指摘がございました。この軸重計の設置をいたしまして、車の軸重をはかりますと違反車両が判明します。これを写真に撮りますと、車のプレートのナンバー、それから運転手の顔から車の形までわかるようなことになっておりまして、こういうもので運転手やその雇い主、車のあれもわかりますから、警告を発する。しかしながら、それでもなおかつ何遍も何遍もやるというような人に対しては告発も辞さない。  また、その軸重計は、実は四十九年度で全部で五十六レーン分だけでき上がるわけで、カメラがまだそこまでは至っておりませんので、いま直ちにというわけにはまいらないのでございますが、軸重計だけで、当面はその都度その都度警告書を発する。カメラは、ことし四十九年度で十九レーン、大きい料金所のうち三つほど取りつけますので、これは五十年度から、数は少ないわけですが、作動を始めます。それによりまして、いま申し上げましたようなことで累犯は告発まで持っていきたいということで、警察庁の方と具体的なやり方について協議しつつございます。まだその設備が全部整っておりませんので、具体化は多少先になろうかと思っております。
  63. 有島重武

    有島分科員 ともかく総合的にいろいろなことを考えていただいて、実質的に住民を守っていただきたいということです。  一つだけ最後に提案をしておくのですけれども、それは、ちょっと唐突なお話になるかもしれませんが、ぼくは、公害一般に対して、植物には公害を吸収してしまう能力が非常に多いのではないかということを、ずいぶんいままでも考えてまいりましたし、それから実際にも進めてやってまいりました。それで、いま、ひとつ研究していただきたいのは、コケです。  緑は大概水平になりますので、面積が必要なわけですね。五メートル幅と言ったって大変なことになりますね。コケの方は壁に縦につくることができるわけなんです。それで、コンクリートのところでも、上に一本水道管を入れまして、いつでも壁の面が湿っているような状態にいたしますと、そこにコケが十分つきます。コケというのは小さいのですけれども、空気を浄化していく作用はずいぶんございますし、それから音を吸収する作用もずいぶんあるわけなんです。建物の壁、道路の壁ないしは地下のトンネル状態になっているところでも、螢光灯の光でもって十分呼吸を始めて空気の浄化をしていくという種類もございますし、これをひとつ研究していただきたい。学者の方にはずいぶんいろいろ伺いましたけれども学者の人たちはほとんど自分たちの研究費なんてなくて、それで自分のポケットマネーでもってコケの研究なんかやっているような状態でございますけれども、官庁から見れば微々たる予算であろうと思いますので、ぜひひとつ実験をやっていただきたい。お願いしておきます。
  64. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生は植物に非常に詳しく、また緑化運動に熱心な方でございますので、大変きょうはその点いいお話を聞きました。私の方で、そういう騒音公害に関連します騒音防止のための何か研究費があれば、至急、私、検討してみまして、御要望に沿えるような費目があれば、どれくらいの金額なのか私わかりませんが、ひとつ早急に検討してみます。検討した結果、また御連絡いたします。
  65. 有島重武

    有島分科員 お願いします。  終わります。
  66. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、福岡義登君。
  67. 福岡義登

    福岡分科員 私は、中国電力の福山発電所の建設問題について、環境庁見解をただしたいと思うのです。  長官も御存じかと思うのですが、福山市といえば、一工場当たりでは世界最大の生産力を持つ日本鋼管の福山製鉄所があるところであります。大変環境汚染されておるという状態なんですが、まず長官にこれをひとつ見てもらいたいと思いまして、松枯れの状況の写真を持ってきたのです。  それは、福山市と隣接をしております岡山県笠岡の周辺の写真であります。福山市の方の写真も撮っておるのですが、取り寄せるのが間に合いませんで、それしか持ってきてないのですが、ごらんいただきますように相当汚染をしておるわけであります。  ここに、福山市の教育委員会が調査しました小中学校の児童のぜんそくの状態についても、危険な状態にあるということを指摘しておるわけであります。また、光化学スモッグが非常に発生しておる。海水汚染の方も、本来、赤潮というのはプランクトンの異常発生によりまして夏場に発生するのです。ところが、去年の十二月に異常にプランクトンが発生いたしまして、冬場に赤潮が発生したという状態にまでなっておるわけであります。  そういう福山市に、今度、いま申し上げました中国電力が七十万キロワットの火力発電所を計画しておるわけであります。  簡単に経過を申し上げますと、昭和四十四年に計画をいたしまして、その後いろいろ計画変更などもありましたが、最終的に五十三年操業を目標にいたしまして、最大出力七十万キロワットという計画をしたわけであります。中国電力と広島県と福山市がいろいろ協議をいたしまして、硫黄酸化物の環境許容量を一時間当たり二千三百五十一ノルマル立米に決めたわけであります。ところが、岡山県側からクレームがつきまして、広島県側の二千三百五十一という容量だけでは問題がある。隣接しておる笠岡周辺に及ぼす影響も大きいからということで、一応この二千三百五十一ノルマル立米というのは白紙に返った形になっておるわけであります。そして、広島県と岡山県が今年十月を目標にシミュレーションをやろうじゃないか、こういうことになって、いま作業中であります。それから、一方、通産省の指導によりまして、中国電力は環境アセスメントを実施中であります。  いずれも作業の過程でございますから、その中身についてとやかく言うことはちょっとできませんが、ここで私が環境庁にただしたい点は、シミュレーションにいたしましても、あるいは環境アセスメントにいたしましても、その方法なり内容について相当問題があるように思う。  たとえば、シミュレーションで申し上げますと、データに非常に欠陥がある。といいますのは、その松枯れにいたしましても、あるいはぜんそくにいたしましても、瞬間的にとらえることは非常に困難である。若干の時間を経過して、その時間帯でずっと観測をするというか実験してみなければ、どういう影響が出るのか、あるいは許容量はどのぐらいまでいけるのか、そういうことが明らかにできないと思うのです。そういう意味で、いまのシミュレーション、あるいはアセスメントにしても、非常にデータの欠陥があるということが一つ言えると思います。あるいはまた、数学を非常に駆使いたしますので、問題が抽象化されてしまう。個々の具体的な問題が反映しないで、抽象化された形でシミュレーションの結果なりアセスメントの結果に出てくるという欠陥を持っておると思うわけであります。そういう問題点が非常にある。これは科学評論家の星野芳郎さん、あるいは東大の工学部助手の宇井純先生、こういう専門家がこれらの問題については強く指摘をされておるところであります。  そこで、環境庁は、シミュレーションなり環境アセスメントの方法とか内容について、一定の基準なり要綱というようなものを持たれるべきではないか、そして、行政指導に適切を期されるべきではないか、こう思うのですが、その点についてはいかがでございましょう。
  68. 春日斉

    ○春日政府委員 御指摘のとおりでございまして、福山、笠岡両地域の大気汚染の問題については、広域汚染でございまして、いわば福山、笠岡それぞれ単独で考えるべき問題ではなく、両者合わせて一本とした、いわゆる総量規制の考え方でいかざるを得ないわけでございまして、現在、広島、岡山両県が協力をしてアセスメントのためのシミュレーションをいたしておるわけでございます。その方式は、いわゆる電子計算機による予測計算、シミュレーションでございまして、これによって地域許容排出量を算定するための作業を進めておるわけでございます。  環境庁といたしましては、すでに大気汚染防止法の一部を改正いたしまして、硫黄酸化物の総量規制に突入いたしておるわけでございまして、そのための地域許容排出量の算定方式はまさにこのとおりここに適用されるわけでございますが、これにつきましては、私ども一定のやり方といったものをただいま示しておるところでございます。したがいまして、これは予測計算でございますので、確かに先生指摘のような不備の点は何と申しましても否めないわけでございます。幾つかの点はあろうかと思いますが、現在の技術におきましては、最高の水準でできるものと私は考えております。  このように、工場立地及びその許容排出量について、この結果、両県が具体的に検討されるわけでございます。したがいまして、当庁といたしましては、電源立地についてのアセスメント資料が提出された段階で、立地の適否を含めて慎重に検討させていただきたいと思います。
  69. 福岡義登

    福岡分科員 結論が出てから検討するということですが、私が申し上げておるのは、そういう方法も一つの方法でしょうが、非常に重要な問題、あるいは複雑な問題なので、環境庁としてはシミュレーションなりアセスメントについての最低の基準とか要綱というようなものを示して、最小限これだけの要件は満たさなければなりませんよ、それになおつけ加えまして精密を期するということは当然やらなければならぬけれども、最低の基準というものをもって行政指導するべきではないか、こういう点をお伺いしておるわけであります。
  70. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 具体的な問題でなしに、むしろ一般的な問題としてお答え申し上げますが、御指摘のように、私どもとしましては、環境アセスメントの一般の手法につきまして、ぜひ早く進めていきたいと思っておりまして、昨年一月から、中央公害対策審議会の防止計画部会の中に環境影響評価の小委員会を設けて検討を続けているわけでございます。六月には中間報告が出ておりまして、一応この場合は、大規模工業基地開発一つの事例としまして、アセスメントの場合の留意事項とか、比較すべき環境保全水準の考え方、こういうものを示しますとともに、いまおっしゃったような調査の項目とか、あるいは予測の手法とか、こういうことにつき言及しているわけでございます。  ただ、これをさらに具体化するために、そのための指針をつくる必要がございますから、現在そういう点を検討いたしておりますし、さらに、手法の開発に努力している段階でございます。したがって、そういうものができますれば、当然それを一つの指針としてまとめまして、あらかじめ、それにのっとっていろいろ環境影響評価ができるようにしていきたい、これが一つの私どもの願いでございますが、現在は、まだそこまではちょっといっていないというところでございます。
  71. 福岡義登

    福岡分科員 それでは、そういう方向で努力をされておるということでありますから、急いでいただきたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、先ほど申し上げましたように、福山市と広島県が相談をいたしまして、去年の十二月に、環境の許容量二千三百五十一ノルマル立米という数値を一応出したのですね。それは、その時点環境庁に出てきておるのかどうか。出てきておるとすれば、環境庁としては二千三百五十一という数値について、適当であるかどうか検討されておると思うのでありますが、その点、事実関係はどうなっておりますか。
  72. 春日斉

    ○春日政府委員 正式には出てきておりません。
  73. 福岡義登

    福岡分科員 非公式には出てきているのですか。
  74. 春日斉

    ○春日政府委員 正式にも、あるいは非公式にも来ておりません。
  75. 福岡義登

    福岡分科員 では、その点は、出ておらなければ検討されないのは、やむを得ぬと思います。  そこで、さっき言いましたように、広島県と岡山県は、ことしの十月を目標にしてシミュレーションをやっておる。恐らく中電も、影響調査、いわゆるアセスメントにつきましても、それに歩調を合わす計画ではないかと思うのですが、私どもが考えてみまして、十月までにというと、問題が白紙に返りましたのは去年の十二月ですから、約一年でございましょう。一年間で本当に、さっきお話がありましたように最高の技術を使ってとおっしゃるんだけれども、そう簡単に一年ぐらいで結論が出るとは思えないのですが、常識的にどうなんですか、一年もあれば十分なんですか。
  76. 春日斉

    ○春日政府委員 電算機によるシミュレーションと申しますものは、過去の観測データを総合いたしまして、それを電算機に入れて行うわけでございます。そして出てまいりました資料についての検討をするわけでございますから、各地におきますいままでの実績を見ておりますと、ほぼ一年で電算機によるシミュレーションの答えはほぼ出ようかと考えております。
  77. 福岡義登

    福岡分科員 千葉県が、何かの立地だりたと思うのですが、シミュレーションをやったデータを私、持っておるのですが、ここへ持ってきませんでした。部屋に置いておりますが、観測地点を十八持っているわけであります。今度この中電の福山火力発電所の場合は、観測地点が四つしかない。非常に観測地点が少ないじゃないかということを私ども関係者が指摘しておるのですが、まあなかったのですから、いまからやれば別ですけれども、非常に不足しておる。新たに観測地点をふやすというようなことをやれば、この十月にはとても結論は出ないというように思うのですが、その辺はまあ出てきてから検討されるとおっしゃるのですけれども、観測地点が非常に少ないじゃないかということが明らかになれば、もう一遍観測地点をふやしてやり直せという指導をされますか。
  78. 春日斉

    ○春日政府委員 結論が出てまいりまして、私どもそれを慎重に検討した結果、必要があればさらに実験を進めるように、そういったこともあり得ると思います。
  79. 福岡義登

    福岡分科員 その点、御配慮いただきますように強く要望しておきたいと思うのです。  そこで、シミュレーションあるいはアセスメントにいたしましても、公開されない。三つの原則を私どもは望みたいわけであります。一つは、公開すること、それから二つ目は、再チェックしなければならない。一たんやりましても、後で状況が変わる、あるいは予測しないことがあるかもしらぬというようなことで、再チェック制度をはっきりすべきではないか。もう一つは、住民参加ですね。公開、再チェック、住民参加というこの三原則はどうしても確立をしていただきたいのですが、それがいまはっきりしてない。できるだけ公表しないよう、使ったデータその他につきましても十分知らされない、あるいは再チェックされたということもあまり聞かない、住民参加はもちろんいままでその例を見ない。この三原則についてどうお考えになりますか。
  80. 小沢辰男

    小沢国務大臣 住民に公開をして住民の意見を問い、さらにそういう意味で住民参加をさせるということは、法的な規制はございませんけれども、私どもはやはり行政のあり方としてそれが望ましいと考えておりますので、そういう面での指導はいたしたい、かように考えます。  再チェックの問題は、私どもに出てきたときに、私どもが先ほど局長から答弁しましたような意味での審査を十分にやる、こういうことでなかろうかと思うのですが、その点は環境庁としては相当あらゆる角度から緻密にチェックをしていく、こういう考えでございます。
  81. 福岡義登

    福岡分科員 この福山の火力発電所の場合、いま住民参加の道は全然開かれてないですよ。  それから、再チェックという意味は、いま長官がお話しになりましたような意味で私は申し上げておるわけじゃないのです。一応上がってきまして環境庁がチェックされる、まあよかろう、こうなりまして、その後にもちろん県は県でもう一遍チェックしてみる、チェックの結果を環境庁に上げる、環境庁がまたそれをチェックされるというような、そういう意味のことを言っておるわけであります。  それと、さっき長官のお話で、公開の問題の答弁がなかったのですが、その点はどうお考えになっておるでしょう。
  82. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そういうチェックの意味でございましたら、見直しをさらにするということでございますので、それは現実に大規模の問題のときにはいたしております。また、やらなければいかぬ。  それから公開の問題は、これはいま法的な規制がございませんけれども、望ましいことですから、ぜひ行政指導でそういうことをやらすようにいたしたい、かように思います。
  83. 福岡義登

    福岡分科員 住民参加の問題は、さっき言いましたように、福山火力発電所の場合はその道が開かれてない。もちろん現地で県なりあるいは市に対しまして関係者から要望はすると思うのです、また、してきておると思うのですが、環境庁としても、そういう住民参加の道を、シミュレーションの過程で、あるいはアセスメントの過程でやるようにぜひ配慮していただきたいと思いますが、その点どうですか。
  84. 小沢辰男

    小沢国務大臣 シミュレーションの過程でとおっしゃいましたが、私ども、やはりシミュレーションの結果が出まして、その結果を公表し、住民の意見を求めるというやり方の方がいいのじゃないか、機械的にやっていく作業の中で参加と言いましても、なかなかあれだと思いますから、そういう意味で御理解をいただきたいと思うのです。
  85. 福岡義登

    福岡分科員 長官のおっしゃった方法でもいいと思うのですが、私、言いましたのは、いま一番問題になっておりますのは観測地点が非常に少ない、ふやすべきであるということを強く言うのだが、全然それが取り入れられていないというようなこともあったものですから、住民参加を作業の過程でと言ったのです。それは長官のおっしゃったように、出てきたときに、観測地点は幾つあるか、との程度の地点でいいかどうかということも判断されるわけですから、それはそれでいいとしまして、今後の善処を要望しておきたいと思うのであります。  そこで、話が核心に触れていくのですが、シミュレーションの結果がどう出るか、あるいは影響評価がどう出るか、それはやってみなければわかりませんが、先ほど松枯れの写真を見ていただきましたように、あるいはその他、ぜんそく、赤潮、光化学スモッグなどを申し上げましたように、福山地区というのは相当環境汚染されている。そういうところへ、火力発電所と言えば相当公害の発生源なんですね、そういうものを無理して押し込まぬでも、立地はもう少し別の角度から検討されてしかるべきじゃないかというように私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
  86. 小沢辰男

    小沢国務大臣 実はこの地区については防止計画が十分にできてないといううらみがあるわけでございますが、これは先生も御承知と思いますが、岡山県側と広島県側の争い等もちょっとありまして、そのためにシミュレーションの結果を待って防止計画をつくる、こういうことになっております。  そういう意味で、いま現実に、先生のお尋ねは、松枯れや、あるいは赤潮の発生、その他いろいろ公害がひどい地域じゃないか、そこにさらにまた大型の発電をプラスするということはいかがなものか、もっと別の立地も考えるべきじゃないかというお話でございましたのですが、結局私どもとしては、やはり総体的な総量として、環境汚染が現状においてどの程度であり、どういうふうに改善をしなければいけないか、改善する過程でいまのものが加わることが総量的にどういうような影響を持つかという点を十分検討してみないと、企業の立地そのものをいまから今日の時点でいいとか悪いとかと言うことは、私はちょっと先に行き過ぎているような感じがいたしますので、シミュレーションの結果を待ちまして、それから全体的にあの地区公害防止計画を早くつくらせまして、それで検討さしていただきたい。ただ、シミュレーションをやって環境影響評価を事前にやることが、即認めることにつながるわけではございませんので、その点はよくそうした評価の内容を検討した上でひとつ態度を決めさしていただきたいと思っているわけでございます。
  87. 福岡義登

    福岡分科員 満足する答弁ではないのですが、私、ここでそれをやりとりしましても結論は出ぬと思うので、慎重な配慮をひとつしていただきたい、こういうことを要求しておきたいと思うのです。  そこで、小沢長官、もう一つ別の角度から御見解を聞かしていただきたいと思うのですが、御承知のように、経済社会基本計画がいま見直し中でございまして、五十一年度を初年度とする計画をいま検討されているということが一つございますね。一方、資源問題あるいは環境問題などで、産業構造の転換を図っていかなければならぬということも、いろいろの場で議論をされておりますね。言うならば、これから日本の経済をどうやっていくのかという基本方針がいま検討されている段階だと考えていいと思うのですね。いままでの延長路線はもう歩めない、方向転換をせざるを得ない、その基本方向はいかにあるべきかということがいま議論されておる段階です。そういう段階で、この火力発電所日本鋼管の製鉄所の電力を現に中心に考えておるのだが、いま申し上げましたような諸問題の方向が決まってから、この火力発電所検討すべきではないかというように、私は別の角度から考えます。これは福山の中国電力火力発電所だけではなくて、全般的にそういう議論はできると思うのですね。そういうことについて長官としてはどう考えられるか、御見解を聞かしていただきたい。
  88. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃる内容を、私も政治家として、また国務大臣の一人としては頭に置いて、日本全体の環境保全の見地からいろいろと意見を具申しなければいかぬ問題でございますが、そのものずばり日本の新しい経済計画というものを、来年度から出発する計画についての面からお答えするとすれば、副総理兼経済企画庁長官の福田さんの方が適当じゃないかと思うのでございますが、ただ、その場合には、新しい地域の、たとえば例にとりますと大隅開発とか、そういうような問題が大きく検討の材料として浮かび上がってくる。  例を一つとればそういうことでございまして、この福山、笠岡地区については、あるいは現実の需要を賄うための企業計画のような、そういう性格も相当強い点でもございますので、私は、その全体計画が五十一年度から発足する日本の新しい総合開発計画、あるいは経済の発展計画というものと直接結びつくとは思いませんけれども、ただ、ことしの秋までに、年末までにシミュレーションの結果が出てまいりまして、私どもがいろいろ全体を考えますときには、そろそろその時期に経済の発展計画という長期計画の考え方も出てまいろうと思いますから、それらも当然頭に置いて、また環境影響事前評価の内容等も検討して決定をしていくべき問題だという意味においては、私は御意見のとおりだと思います。  それから、先ほど私、福山、笠岡地区について公害防止計画がないというふうに申し上げましたのは、備後地区全体の公害防止計画はあるのでございますけれども、ただ、この両地区についてのいわば目標の負荷量がまだ決定してない。したがって、十月に出てまいりますか十一月になりますか、シミュレーションの結果を待って目標負荷量については決定をしていく、こういう意味で申し上げたので、ちょっと言い足りなかったものですから、その点だけを補足さしていただきます。
  89. 福岡義登

    福岡分科員 時間が来ましたからこれで終わるのですが、最後に長官に申し上げたいと思いますのは、事柄が環境問題人体の生命に及ぶことでございますから、シミュレーションの結果が出てきましても慎重に検討していただいて、問題があれば勇敢にそれを指摘していただいて再検討させる、企業が考えておる建設計画にこだわらずに、住民の健康を守るという観点から、毅然としてこの問題を取り扱っていただきたいということを強く要望をいたしまして、終わりたいと思います。
  90. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、石野久男君。
  91. 石野久男

    ○石野分科員 私は、きょう、環境汚染の問題で、特に海域における環境汚染にしぼってお尋ねしたいと思うのです。  「昭和四十八年度公共用水域水質測定結果について」という環境庁からの調査報告が昨年十二月にございました。これによりますと、「海域については、全般的に不適合率は前年度より僅かに増加しており、CODは前年度同様A、B類型とも二〇%以上の値を示している。」こういうふうに書かれておりまして、そして「水質と環境基準」という側面では「海域については、環境基準を満足している水域は前年同様八〇%以上と高い割合を示しており、全般的に大きな水質の変動はみられない。しかし、東京湾、三河湾、三田尻湾、呉湾等内湾奥部の停滞性水域においては依然として水質の悪化がみられる。」こういうふうになっております。  私はきょうは、実際は水域のこういう側面よりも主として海底の問題についてお尋ねしたいのですけれども、特にここで示されておるように、CODの汚染負荷量の問題が海水にとっては非常に大きい問題だと思うのです。瀬戸内海の実情から言いますと、瀬戸内海全体のCOD汚染負荷量のうち八七%が工場排水によるものだと推定される、こういうふうに言われております。この工場排水に対する規制の問題については、いろいろと濃度規制というのもありますけれども、やはり全体的には総量規制に向かわないとだめだということは、もうだれが見てもわかっていることです。しかし、事実問題として総量規制というのはなかなかむずかしいのですが、環境庁としましては、これは通産省やいろいろ関係がありましょうけれども、この総量規制の方向をもっと具体的に成果あらしめるために、どのようにお考えなさっておられるか、この点を先にひとつ聞かしてください。
  92. 大場敏彦

    ○大場政府委員 おっしゃるように、現在水質汚濁防止法の規制の方法は濃度規制になっております。それはやはりできるだけ早く総量規制の方向へ向かうべきだということは、先生指摘のとおりでございます。ことに瀬戸内海あるいは伊勢湾、東京湾、そういった閉鎖性な水域、ないしは湖でございますが、琵琶湖だとか諏訪湖だとかあるいは霞ケ浦、そういった停滞性の水域につきましては、なおさら総量規制の導入を急ぐべきだ、こういうふうに思っております。  ただし、総量規制の導入を急ぐべき場合には、つぶさなければならない問題点がいろいろございまして、たとえば瀬戸内海を例にとりますと、瀬戸内海の中でどの程度の汚濁量に封じ込めるべきか、逆に言えば、ある一定の自浄能力があるわけですが、その自浄能力に抑えるためには、どの程度の汚濁量に抑えたらいいか、こういった問題があるわけであります。  それからさらに、その総量が決まりますと、各県別に割り振る。東京湾の例で言いますと、東京都全体としてこのくらいの汚濁量に抑える、神奈川ではこうだということになりますし、単に湾岸の県だけではありません、埼玉県ではどうだというように、上流県の関係も出てくるわけです。それからさらに、それを業種別に割り振り、それから最後の末端は企業別、工場別に割り振る、こういったことになりますので、そういった各業種別、企業別の原単位をつかまなければならない、こういった問題があるわけです。  それからもう一つは、現在の濃度規制ですと比較的捕捉の仕方は容易であります。要するに、排水口で水を取ってきて、それの濃度をはかればいいという形ができるわけですが、総量規制になりますと、ある工場で一昼夜なら一昼夜でどれだけの汚濁量を出したかということをきちっとつかまないと罰則を打てない。単に濃度と、それから過去一昼夜なら一昼夜に出した排水量を掛けただけでは、おまえは違反であるということは言えないわけでありまして、それをジョイントしてつかむというような技術開発が必要であります。そういった点のいろいろ解決すべき点があります。なかなか技術的に解決すべき点が多いわけでありますが、しかし冒頭に先生がおっしゃいましたように、いち早くそういった停滞性の水域につきましては総量規制の導入を図るべきだということで、われわれ言葉だけではなしに、日夜いま急いでいるという段階でございます。
  93. 石野久男

    ○石野分科員 総量規制をやるについては、技術開発の問題もありますし、また規制そのものにも問題がありますが、やはり基本的には工場排水をオープンシステムの形にするのではなくて、クローズドすることが非常に大事だろう、こう思うのです。そして、やはり循環的に用水から排水したものが、また今度はもう一度用水の形へ戻っていくような、そういう指導なり企業に対する義務づけというものがないと、恐らくその総量規制というものは成果を上げ得られないだろうというふうに思いますけれども環境庁は通産省等との話し合いあるいは自治省等との話し合いの中で、そういう問題を具体的にいま取り上げておられますか、どうなんでしょうか。このクローズドシステムに対する行政的な指導でございますが。
  94. 大場敏彦

    ○大場政府委員 クローズドシステムという御指摘がございましたが、まさにその方向で工場排水の問題は進むべきだろうと思います。ことに人間の健康に害のある物質、たとえば水銀だとかPCBというものにつきましては、絶対環境外には出してはいけないのだ、そういう厳しいたてまえで排水基準等も決めておりますし、また現に水銀の製造過程におきまして、隔膜法への転換という形で、クローズドシステムそのものではございませんけれども、有害物質は環境外に出さないのだという形で、現実に各省庁で具体的な業種につきまして御指導願っておるわけであります。  それからもう一つ、健康に直接害がなくても有機汚濁、環境を汚すそういった物質につきまして、現在排水規制を強化しておりますが、その行き着く先は、やはりこれも先生がおっしゃいましたようにクローズドシステム、外に出さないで、きれいな水を製造過程内でサイクリングさせながら使っていく、そういった方向であると思います。この問題につきましては、通産省あるいはその他の業種を抱えている各省におきまして、現実にそういった指導をしていただくということになって、各省でも御努力願っているところでございます。
  95. 石野久男

    ○石野分科員 ただいまのそのような行政指導なり何なりやろうとする場合、もっと法的に整備する必要があるのではないだろうか。その点についてはどのようにお考えになっておりますか。
  96. 大場敏彦

    ○大場政府委員 クローズドシステムへのできるだけ早期の移行というのは理想でございます。そういう方向で進むべきでありますが、一挙にそれにするのは、かなりまた技術的な面でも、あるいは社会経済的な面でも、なかなかまだ解決しなければならない課題があります。そういう意味で私は理想だと申し上げたわけであります。結局、クローズドシステムへ持っていくためにはいろいろな技術開発をしなければなりませんし、それからそういった技術開発に応じて排水規制を次第次第に強化していく、そういった形をやっていって、その行き着くところが結局はクローズドシステムになる、こういったことだろうと思うのです。一挙にクローズドシステムと言っても、それはいろいろむずかしい問題がありますので、じみちな排水規制の強化、できるだけ外界に汚染物質を出さなくなる、一年一年少なくしていく、そういったじみちな努力の延長でクローズドシステムを解決すべきだろうと思っております。
  97. 石野久男

    ○石野分科員 なかなか技術的な問題もあるし、社会的な諸関係もありますから、やりにくいということはわかりますけれども、たとえば水銀とか何かというようなものになりますと、そういうことは言っちゃおれないという実情があるわけでございまするから、ある特殊の物質に対しては、当然やはり法的規制をしなければならない。具体的に弊害がもう数多く出ているわけでございますから、一般的にむずかしいからということではなくて、一般的にはむずかしければ、特殊のものだけでもそういうふうにやるという着意がなければいけないのじゃないだろうか。その点、政府はどういうふうにいま作業しておるかどうかわかりませんけれども、早急にそういうような手だてをすべきでないかというふうに考えますが、この点については、長官、どうですか。
  98. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、先生の御意見まことにごもっともだと思うのです。ただ私どもは、水銀とかそういう健康に有害なものは絶対に出さないということで指導をしなければいけないわけでございますので、そういう面でいま規制をやっている、こういうことでございますから、絶対に出さないということを守るためには、手段としていまのクローズドシステムを採用するか、あるいはもう別の製造方法に切りかえるかということになってまいりますので、先生おっしゃるように、非常に特殊なものだけでもとりあえず法的な規制を考えていくべきじゃないかといいますけれども、まず、それを出さないということでやっておるものですから、つい、そちらのまだ法的な規制の問題にまでいってないわけでございまして、将来の問題としては全面的に——先ほど局長か言いましたように、技術開発の問題なりあるいは社会経済的な諸問題の解決をやり、一方においては企業に対して排出を非常に厳しくすることによってそういうところへ追い込んでいくということで、いまやっておるものですから、技術開発なり経済社会の諸問題の解決ということで、今日の現状ですぐ法的な規制までいけるかどうか、この点はなお、私どもは、理想でございますのであきらめないで検討は続けてまいりたいと思います。
  99. 石野久男

    ○石野分科員 大体公害というのは、人類が技術開発をしてきたことに伴って、自然に多くの損害を与えていくことから出てきているものだし、いま一つは、やはりわれわれが技術開発をすることの過程で、資本の側が経費の出し惜しみをすることから、こういうものを社会的損失として出してきているものだから、そういうものについてわれわれはやはり規制をしていくという態度でありませんと、人類全体がその被害を受けることになる。だから非常にむずかしいことであり、出さないように特にいま努力しているんだというその事情はよくわかりますけれども、しかし、それだけではとめられない実情も現にあるわけですから、やはりこれはできるだけ早く法的規制のようなもので、一部分のきわめて有害であるというものについては、その方向で対処すべきであると私は思うのです。それを放置しておきますと、いまも言うように資本の側が金を出し惜しみするから、そういうものは出てくるのだという、原因はわかっているんですから、だからそこのところをぴしっと押さえるためには、やはり法的規制の側面をこの際、真剣に政府も考えなければいけないし、われわれももちろんそれをやらなきゃなりませんけれども、まず、何よりもやはり政府が考えていくべきでないかというふうに私は思うので、もう一度ひとつ長官にお聞きしたい。
  100. 大場敏彦

    ○大場政府委員 一部のごく人体に有害な物質、まあ典型的なものは水銀だとかPCBでございますが、そういったものにつきましては、やはり出すべきではないという形で、そういうたてまえで環境基準、排水基準も決まっているわけです。だから逆に、そういったものを出すような企業は生産をやめてもらいたいということで、現実に環境庁は対処しているわけです。そういったものを出さない企業だけが、その範囲内で製造を続けることが許容される、こういったことだろうと思います。  それからその他、人体に直接害のない、CODとかBODとか、そういったものがございますが、いろいろ食品製造業その他から出てくる汚濁物質、こういったものにつきましては排水規制をできるだけ年々厳しくしていって、最後には先生のおっしゃるようなクローズドシステムに持っていくというのが一番具体的なプロセスではないか、かように考えているわけであります。
  101. 石野久男

    ○石野分科員 これはこれだけで論議をしておりますと時間がなくなりますが、私はなぜそういうことを言うかというと、やはり河川にしても海洋にしましても、これは単なる水という問題だけでは考えられないので、当面、資源の問題として、食糧資源の問題と非常に大きな関係を持っておる。いま現実に世界海洋法会議等を通じて領域がいろいろな形で変えられてくる、日本の水産業に及ぼす影響というものは非常に大きい世界的な政治事情があるという中で、海水が汚染、汚濁をするということによる食糧資源への影響というものは非常に大きい。それのみならず健康の上にも悪害が出てくる、こういうことがありまするので、いまの点については、これはやはり積極的に政府は対処すべきだ、こういうふうに思いまするので、長官、どうにもやりにくいからとか、こういうことをやっているからいいんだというような安易な立場じゃなく、やはり積極的にその態度をとってほしい。これは規制もいろいろありますけれども、もういろいろな個々の規制をやってもだめなので、クローズドシステムの体制を責任づけるということでないと、この弊害からわれわれは逃げ切ることはできない、こういうふうに考えますので、いま一度長官の所見を聞いておきたい。
  102. 小沢辰男

    小沢国務大臣 本当に人体に健康被害を与えるようなものは、もう絶対に出さないという方向でやっておりますし、その他いま先生がおっしゃったような、海洋あるいは水域を汚染して水産生物に対して起こるいろいろな問題については、先生のおっしゃるとおりのような観点から検討していかなければならない、かように考えます。これらの点については、先ほど言ったように技術開発の現状や、経済的、社会的な諸問題の側面からいろいろ考えて、いま直ちに法的な規制、クローズドシステムについてやれるのかどうか、こういう点もありますので、方向としては、そういう方向がもちろん結構だと思いますが、そういう意味で、私はいま慎重な答えをせざるを得ないわけでございますので、なおひとつ十分政府部内で検討さしていただきたいと思います。
  103. 石野久男

    ○石野分科員 水産資源が日本の食糧の上でいま非常に重大な課題として考えなくちゃならない事情にきております。動物性たん白質がいろいろな形でわれわれに摂取されておるのですけれども、きょうは水産庁おいでになっておると思いますが、現状の動物性たん白質の摂取の中で、水産の面がどのような比率で寄与しているか、そういう点をひとつ最近の実情から御説明いただきたい。
  104. 山内静夫

    ○山内説明員 動物性たん白質に占める水産動植物の割合は約五〇%強、こういうふうに現在報告されております。
  105. 石野久男

    ○石野分科員 世界海洋法会議で大陸だなの問題が問題になってくる、あるいは領海の規定によってまたいろいろな問題も出てまいります。そういうことを含めて、それらのものから日本の水産業がやはり一定の、予測する以上の打撃を受けるというふうに考えられますし、またそのことに対する対処の仕方を真剣に考えていかなければいかぬと思いますが、現状こういうような国際的な動きの中で憂えられる日本の水産業の実態というものについて、あらましの方向をひとつ説明してもらいたい。
  106. 山内静夫

    ○山内説明員 私、漁場保全課でございまして、全般的な水産行政、ここでお答えする立場にはございませんが、水産行政に携わる一員といたしまして、私の知っている限りのことを御答弁いたしたいと思います。  現在世界をめぐる漁業関係の規制というものは非常に厳しくなっておりまして、海洋法会議等のいろいろの話し合いの過程におきまして、二百海里を経済水域とする、こういうような話がいろいろ出ているわけでございます。こうなった場合におきまして、わが国の水産業の受けるダメージというものは非常に大きい、こう考えられておるわけでございます。今後の方向といたしましては、いろいろ国際会議におきまして各国と協調をとりながら、もしそう決まった場合におきましても、個別に各国との話し合いで、既存のわが国の漁業、現在操業しておる漁業につきましては、いろいろ話し合いのもとになるべく打撃を受けないような方向で対処していきたい、こう考えておるわけでございます。
  107. 石野久男

    ○石野分科員 対処するつもりでおるけれども、実際対処し切れるのだろうかどうかという問題があるわけです。その見通しはいかがでしょう。
  108. 山内静夫

    ○山内説明員 先ほど申しましたように私、正面切ってお答えできる立場にはございませんが、水産庁といたしましては全力をふるってそういう方向でいきたい、こう思っておるわけでございます。
  109. 石野久男

    ○石野分科員 全力をふるってやるつもりであっても、できないと困るのだし、できる見通しがあるなら構いませんけれども、できないのに全力をふるってというようなことだけ言われておっては困るのですからそこのところをはっきりしてもらわないと、話が進んでいかないのですよ。もうそれでいいというなら、私はこれから環境庁に聞くようなことを聞かなくてもいいのですから、そこをひとつ答弁できないならできるようにしてもらわなければ困る。ぼくは、このことについてはあらかじめ質問をいたしますということを言ってあるわけですから、だから……。
  110. 大場敏彦

    ○大場政府委員 私は前歴が水産庁におったことがありますので、かわって見通しの問題で申し上げますが、海洋法の問題それからあるいは先進国との間で、日ソ、日米加とかあるいは日中、そういった漁業交渉が相次いで今年も行われようとしております。また一方、後進国との間では、エコノミックゾーンというような話が出ておりまして、先生指摘のとおり、魚をめぐる国際環境というのはかなり厳しくなってきているということがあります。かつて自由な海を公海として利用しておった日本の漁業というものは、大きく転換せざるを得ないという接点に現にきております。いままでこれは過去のいろいろの歴史的な実績というものを、水産庁におきましても懸命に守るべく努力をなさっておられますが、いずれにしても、かなり多くの制約を受けざるを得ないという見通しを持たざるを得ないと思います。  そういう意味で、一方先ほど先生質問ありましたように、動物たん白の中で魚の占めるウエートが非常に多うございます。半分ぐらい占めておりますので、やはりそれは日本国民として食生活に欠くことができない、それを供給しなければならないという一方の課題がございます。その課題をどうやって解決するかということになるわけでありますが、これは、そういう遠洋漁業というものにおける歴史的実績というものをできるだけ確保する一方、同時に沿岸漁場における再開発といった点に力点をかなり大きく注いでいかざるを得ないのではないか、かように思うものでございます。
  111. 石野久男

    ○石野分科員 いま遠洋漁業での打撃は、それをゼロにするほどの自信は恐らくないだろうと思うのです。したがって、やはり近海漁業というようなもの、沿岸漁業というようなものを、もう一遍見直しをしなければならない段階にきているんだろう、私はそう推測いたします。そういう問題については水産庁の方も多分同感なんだろうと思うけれども、そこらのところはどうなんですか。
  112. 山内静夫

    ○山内説明員 同感でございます。
  113. 石野久男

    ○石野分科員 私はこれを突っ込んでもう少し聞きたいけれども、これはそれでおきます。  そこで、沿岸あるいは近海漁業というようなものに力を入れるということになりますと、先ほど言うように、内海においてもあるいは沿岸においても、水質汚染だとかいうのも一つありますが、私は先般もお尋ねしたことがありますけれども、やはり魚族が拡大再生産するためには産卵場が要るんだし、産卵場というものがなくなってしまえば、もう魚族は絶えざるを得ない。そういう意味で、産卵場を守り、育て、広げていくというようなことのために、日本列島近海の海底がいまどういうふうになっているかという問題が非常に重大だと思うのです。環境庁はその点について、先般私がお尋ねしたときはまだ十分の調査をしていないということを長官から御答弁はいただいておるのですが、私はこの際、水質の汚染、汚濁の調査も非常に大事ですが、水産資源を守るという意味から言いますと、海底をどのようにして自然保護をするか、この問題に真剣な取り組みをしなければいけないのじゃないだろうか。そういう調査は現在のところ余り行われていない、長官がこの前言われたとおりだと思います。そこで私は、この海底の実態が果たして自然が破壊されない状態にあるのか、自然状態は非常にゆがめられてしまっているというような実情なのか、それを早急に調べる必要があるのではないか、こういうふうに考えるのです。長官はその点についてどのようにお考えになり、またそれに対応してどういうふうになさろうとしておられるか、少し所見を承っておきます。
  114. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるとおりでございますから、私ども今度日本近海に五地点、五地区を選びまして、そこでわずかではございますが、八千二百万の新規予算がいま予算要求の中にあるわけでございまして、予算案が御承認いただければ五十年度で五つ、たしか太平洋岸三地点、日本海岸二地点、この調査で海底の底質まで含めまして調査を徹底的にやりたい、かように考えているわけです。その結果を待ちまして、いろいろな対策を講じていきたいと思っております。
  115. 石野久男

    ○石野分科員 私は、いまの調査費を出して五地点を選んでいるということは、順序を追わなければいけませんから、やはりいっときにはなかなかできないのだろうと思いますけれども、五地点ということだけでとまっちゃってはだめなんですよね。だから全体構想の中で、まず最初にそういう点に手をつけるという構想でなければ、この五地点は意味をなさないと私は思う。ところが予算を見ますると必ずしもそうじやない。だから私は、そういう点で全体に対する構想を何年間計画で調査をする、それによっての対策はどうするんだという一貫した方針が明示されることが必要だと思うわけなんです。それと同時に、調査の範囲はどの程度までやるのかということもありますが、そういう点についてひとつ説明をしてください。
  116. 大場敏彦

    ○大場政府委員 海底の汚染の問題、これはいろいろあろうかと思います。たとえば、先ほどから議論になっておりますPCBだとか水銀による海底の汚染もございます。これにつきましてはすでに四十七年、四十八年度におきまして、環境庁が各省庁の御協力を得まして一斉点検をいたしました。その結果、かなりの広範囲にわたって底質が水銀またはPCBで汚れているということが判明したわけであります。これに対しましては、すでに底質の除去基準、つまりかなり濃厚にPCBなり水銀を含んでいる底質はどけないと環境が浄化いたしませんから、どの程度のppmの水銀なりPCBを含んでいる場合には除去すべきだ、こういった基準を中公審等に諮りまして、それで設定済みでございます。その基準によりまして現在事業を実施中ということでございます。  たとえば水銀で申し上げますれば、全国で十一港湾につきまして除去しなければならない港湾が出てきているわけでありますが、それにつきましては、すでに三カ所は完了をしております。他のところも事業着手中あるいは計画中であります。それからPCBにつきましても、全国で五港湾四海域というところで除去しなければならないという結果が出てきておりますが、これにつきましてもすでに二ヵ所完了、あとは事業着手中でございます。これが一つございます。  それから、漁業等の関係でもう一つ問題になりますのは、これはごみだとかあるいはビニール、こういったものが瀬戸内海あるいは伊勢湾、そういったところでは、これは川から流れてくるものもあるようでございますが、かなり汚れている。そのために漁船に対する被害を生じ、あるいは産卵場等を荒廃さしてしまうという形で、漁業生産上大きな支障原因になっているということがありますので、これについての除去ということも必要でございます。これは主なところを、後ほど水産庁から御説明あろうかと存じますが、そういった主に汚染されているところを選びまして調査いたしまして、現実にその除去事業を地方公共団体を通じ、具体的には漁業組合を通じて清掃の事業を展開中でございます。それから、あと港湾内、それから一般の海湾等につきましても、たとえば建設省あるいは運輸省等におきまして海底の清掃浄化事業というものをそれぞれお願いしている、こういったことでございます。  それから、先ほど長官が大がかりな日本近海の海底の汚染状況を調査するために調査を開始すると申し上げましたが、これは来年度からでありますが、日本の近海を流れる主な潮流を五測線選びまして、それに測点としては全部で七十数測点があるわけですが、そういったものを定点として把握いたしまして、経年的につかんでいく。つかむ内容といたしましては、表層から底層の水質、それから底質の汚染状況がどうなっているかということを、いろいろ有機汚濁から有害物質から、すべての項目につきましてかなり広範囲にわたって調べて、タイムシリーズ的にその変化というものを調べていくということと、それによりまして汚染の実態というものを経年的に把握したい。それから、同時に汚染のメカニズムというものについてのフォローをしていきたい、かように考えているわけであります。
  117. 石野久男

    ○石野分科員 いまの件で水産庁の方で所見がありましたら、ひとつ聞かしていただきたい。
  118. 山内静夫

    ○山内説明員 わが国沿岸におきましての漁場の汚染状況でございますが、物理的なごみ等についての調査はございませんが、一般的な水質汚濁等が原因となって継続的に汚染されている漁場、こういう調査は四十八年度に行っております。その結果におきまして、海面では全国百三十六漁場が汚染されている、こういう都道府県からの報告が来ておるわけでございます。原因といたしましては、工場、事業場等の排水によるもの、あるいは都市排水によるもの及びこれら各種の複合汚染によるものが多いとされておるわけでございます。海域的に見ますと、東京湾であるとか伊勢湾あるいは瀬戸内海等の閉鎖的海域に多い、こういうような報告があるわけでございます。  水産庁といたしまして、漁場環境を維持、保全するために海底のごみ掃除関係の予算を組んでいるわけでございます。これは各県に対する補助金でございまして、四十九年度予算におきましては一億八百万、それから五十年度予算におきましては一億二千万、こういうぐあいの予算を計上いたしまして、ごみの掃除を行っておるわけでございます。ちなみに申し上げますと、四十九年度におきましては二十二県を対象として海底のごみ掃除を行っている、こういうことでございます。
  119. 石野久男

    ○石野分科員 一応の対策は立てておられるようですが、実は水産に熱心に取り組んでおられる学者諸君などの意見を聞きますと、漁場を確保するために日本列島周辺の海底の大掃除をしないことには、とてもじゃない、簡単にはそう考えるようにいい結果は出てこないよ、こういう意見があるわけです。いま若干の手だてはしていることはよくわかりますけれども、それではとても追いつかないじゃないか。先般も私申しましたけれども、水産大学の佐々木学長さんなんかの意見によりますと、十年間ぐらいの長期の計画で、ナショナルプロジェクトをつくることによって清掃作業を行わないと、とても漁場の安定確保というのはできないんじゃないかという意見さえ聞いておるのですが、こういう意見は少し行き過ぎた意見でしょうか、どうでしょうか。
  120. 大場敏彦

    ○大場政府委員 国際環境がなかなか厳しくなっている、そういう中で遠洋におけるわが国の実績を確保する必要があるということを申し上げましたが、その実績の確保の仕方の中で、やはり日本の近海の海が汚れてしまったから、よその国の近場に行ってとるということでは、これはなかなかその国は納得できない。やはり日本の近海も同時にきれいにしておくということでなければ、遠洋漁業というものの確保もできないだろうと私は思うわけであります。そういう意味で、先生のおっしゃったことはまことにごもっともだろうと思うわけであります。ですから、この際積極的に日本の沿岸、近海に対しての掃除といいますか、重要漁場について海底の浄化をしていくということと同時に、いろいろ投石とか積極的に漁業としての培養事業をしていく、そういったことは水産庁でも始められておりますが、今後強化していく必要は大いにあるのではないかと私は考えております。
  121. 石野久男

    ○石野分科員 だんだん追い詰められてきますと、いやでも応でも日本の漁労場が転換してくるわけですから、そうなればやはり漁法の転換ももちろんありましょうし、あるいは養殖漁業の確立ということも出てまいりましょう。けれども、何といってもそういうものをやる一番基盤となるところの海を確保しなければいけないということは言うまでもないことですから、そういう意味で若干の調査に入っているということでありますが、やはりこれをもっと大々的といいますか全般的に方策を打ち立てて、そして海域調査をやる。特に海底の産卵場の確保のための調査をやる。そして、その調査に基づいて対策としての清掃作業を行うということでなければいけないだろうと思うのです。いま各府県から皆さんの指導によって調査の出てきているのは本当に沿岸だけなんだろうと思います。特に港湾だけのことなんですね。しかし、港湾というところは漁場ではないのですよ。漁場はもっと外に出ていくのですから、そこの調査は行き届いていないと言わなければいけないのじゃないか、こういうふうに私は思います。そういう意味からも、私はやはり日本列島近海におけるところのそうした海底調査というようなものは、調査だけでなく、それに対する対策を立てるための方策というものは全般的な立場で打ち立てられなければいけない、こう考えるわけでして、そういう点についてひとつ長官の御所見を聞かしてもらいたい。
  122. 小沢辰男

    小沢国務大臣 当然水産庁と私ども連絡をとりまして、これからも、五十年度の調査だけでなくて、先生がおっしゃるような徹底的な調査を続けていかなければいかぬ、かように考えます。
  123. 石野久男

    ○石野分科員 これは単に考えますだけではいけないのだと私は思うのです。きょう水産庁からおいでになっている方では、なかなかやはり答弁がしにくいようでございますが、少なくともこの問題は一つのプロジェクトとして設定されなければならない範囲に属するだろう。ある一地域でだけ問題にしておったのではどうにも解決にならないわけですから、政府が全般として、大きなプロジェクトとして、太平洋岸から日本海の沿岸、それからそれぞれ北、南にわたってのそういう問題をやはり政策的に確立をする必要がある、私はそういうふうに思うのです。ことしの予算ではほんのわずかの部分の調査が出ているのだけれども、これは来年度必ずそういう体制での調査、方針を、あるいは政策的に出してもらわなければいけぬじゃないか。これは長官だけの答弁ではできないのかもしれません。総理あたりにしっかりとそういう方針を打ち出してもらう必要があるのかもしれませんが、そういう点についてやはり長官の決意のほどを、この際、聞かしてもらいたいと思います。
  124. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生がおっしゃることに二つあると思うのですが、一つは、私どもが来年度五測線、七十五測点についてやる調査、これだけでは不十分じゃないか、もっと計画的に海底を含めた海洋汚染状況の調査をしっかりやれという問題と、それから今度は、それに基づいて海底の浄化事業をやるという問題と、これを合わせてひとつ大々的にプロジェクトを考えて計画的に実施したらどうだ、こういう御意見だろうと思います。私はまさにその必要は十分認めます。またやらなければいかぬと思います。ただ環境庁の任務だけではございませんから、水産庁、農林大臣と十分相談しまして、また水産庁の重要漁場の確保、また沿岸漁業の振興の見直しという点からも必要なことでございますので、この点は私どもはできるだけ農林省をバックアップしまして、そういう御趣旨が通るようなふうにひとつ持っていきたい、かように考えます。
  125. 石野久男

    ○石野分科員 これは主査にお願いしたいのですけれども、実はいま環境庁長官は、自分の所管の範囲でしか答弁は当然できませんし、水産庁だけでありません。当然のこととして国土庁あたりとの関連も出てくるのだろうと思う。国土計画の中に出てくるものだと思います。だから、そういうような問題について、国土庁からきょうはおいでになっておりますが、その問題についての御答弁はしていただけるのだろうか。そういう問題についてあなたでできますか。できるのなら答弁をしていただきたいし、これは私は、きょうおいでになっている方ではなかなかむずかしいのだろうと思うのですが、そういう点も含めて、これは予算委員会の中で、一度、総括のときでも何でもいいのですが、総理あたりに所見を聞いておきたいのですよ。というのはなぜかというと、海洋法会議の問題から当然やはり水産問題が出てき、食糧資源の問題が出てくるのです。それに対して政府の方針がないままに海洋法会議の問題を進めるということは、これは私たちとしても、よしとはしない。どうしてもこのことは、そういうことを政府の所信として聞いておきたいと思いますので、後で理事会かどこらでも相談していただいて、質問の機会を与えてもらいたいと思います。
  126. 笹山茂太郎

    笹山主査 きょうの国土庁の説明員では、そうした大きな問題等についての答弁は、御満足のいくような答弁は、まあ責任のある答弁ということになりますか、できかねると思いますから、いずれその問題については、やはり責任のある答弁を求めるのが、これは委員の責任でもあり義務でもあるわけでございますから、ひとつよく相談して、ほかの方とも計らいまして善処したいと思います。
  127. 石野久男

    ○石野分科員 近海漁業の問題については、魚礁をどういうふうにして確保するかという問題も一つありますけれども、またもう一つ問題になりますのは、たとえば日本列島の近海で、もう十二海里と言っているのに五海里ぐらいのところで、非常に乱獲操業をしているというようなソ連の漁船団の問題なんかがある。その問題について昨日宮澤外務大臣は、第二分科会で、日本近海漁業協定をソ連との間で話し合いたいというような発言をなさっておられるようでございます。この問題について、きょう外務省に、どういうような真意であり内容なのかということをひとつお聞かせいただきたいということで来ていただいておりますが、御答弁いただけるのでしたら、ひとつ外相の真意などを聞かしていただきたい。
  128. 木内昭胤

    ○木内説明員 昨日の分科会で外務大臣から、ソ連との近海操業に関する取り決めの締結の準備を進めておるという御発言がございましたけれども、そのとおりでございます。先ほど先生指摘のとおり、最近のソ連の船団による日本近海における操業というもの、これは新聞報道を通じましても御承知のとおり、相当目に余るものがあるということでございまして、政府としましては、かねてから自粛方を要望してまいりましたけれども、それだけでは事が解決できないという見地から、日ソ間で取り決めを行い、かような事故が起こることを何とか未然に防ぐ措置を講ずるとともに、仮に不幸にしてこのような事故が発生した場合には、どういう場でこの紛争を処理するかといったような趣旨の内容を盛り込んだ取り決め案を政府部内で準備いたしております。これは状況がきわめて差し迫っておりますので、できれば、近くソ連にカニ、ツブの交渉で参る代表団にも託し、あるいはできれば三月中旬には水産庁長官の訪ソということも考えられております折から、そういう機会にもこの交渉の早期妥結を図りたい、かように考えております。
  129. 石野久男

    ○石野分科員 いまソ連漁船団と日本の漁船との間に起きているトラブル、そういう問題もひとつ解決の内容として、しなければならぬ問題でありますが、いま一つの問題としては、せっかくいま私どもが海底をされいにしよう、こう言っているときに、私ども茨城の方なんかで聞きますと、日本のトロールが網を引っ張っていきましたときに、ひっかかってくるのは、ほとんどソ連の船団が捨てていった空きかんだとかなんとか、そういうものがずいぶん多くひっかかってくる。こういうことになってまいりますると、単に漁船団と日本の漁業労働者との間のトラブルだけでなく、漁場そのものがやはりこういうやり方で荒らされてしまうということもあります。そういう問題について、外務省はやはり何らかの話し合いをするような予定もしているのであろうか、あるいは水産庁はそういうことを外務省に対して要請をしておるのかどうかという点について、ひとつ所見を聞かしていただきたい。
  130. 木内昭胤

    ○木内説明員 いまの先生の御指摘のような問題も、これは当然ソ連との話し合いの内容になると思います。
  131. 石野久男

    ○石野分科員 私は、水産資源というものが、日本の食糧の確保という観点から非常に大事な問題として、今後一層検討を加えなくちゃならぬ問題だと思いますだけに、わが国が日本列島近海の漁場を十分に確保、確立するというそういうたてまえから行わなければならぬ問題と、それからソ連だとかあるいはアメリカだとか、そういうような隣接する国々との間に起きるいろいろな問題点というものの解決は、日本の政府が真剣に取り組まなくてはならない喫緊の課題である、こういうように思います。  外務大臣がいまお話しのあったような内容を含めて、ソ連との間に交渉することを私たちは多といたしますが、ただ、やはりそれは言葉の上だけであってはなりませんので、具体的にそういう成果が出てくることが望ましいわけでございますから、そういう成果を確保しようといたしますと、ただ、だれかが行くからというようなことだけではいけないので、少なくとも今日的な課題として、今日の問題を何とかとめる、係争をなくするような処置をしなければいけませんが、そのことについては外務省はどういうようにお考えになっておられますか。協定を結ぶとかなんとかじゃなしに、現状についての対策。
  132. 木内昭胤

    ○木内説明員 ソ連船団による近海における操業の問題これに過度の行き過ぎがあるということが国内で非常に問題になっておりますが、取り決めの調印に至るまでの段階としまして、外務省あるいはわが方出先の在ソ大使館を通じましてソ連側に十分注意を喚起し、また漁民の損害補償についても、これを伝達するということで、具体的な例を説明しつつ先方の自粛を求めておる次第でございます。
  133. 石野久男

    ○石野分科員 私はこの際、外務省にいま一つ聞いておきたいのですが、ソ連は社会主義の国でございますし、資本主義の国のように私企業ではないはずです。そしてこの問題は、きのうきょうの問題ではない。もうここ二、三年来の問題です。ソ連が、そういう日本からの外交折衝による苦情などをたびたび受けていながら、なおかつ頻繁に行い、しかもその操業場というのがだんだん日本列島の近くへ近寄ってきている。その上に漁船団というものも非常に大きくなってきておるように思われます。これはどういうところに問題があるんだろうか。いわゆる漁獲高をただとるというだけでは、国際的にこんなに問題が起きておるにもかかわらず、このような行為が行われていることについて、どういうふうに外務省はソ連の出方というものを見ておられるか、それらの点について外務省の見方がどういうものであるかをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  134. 木内昭胤

    ○木内説明員 現実の問題としましては、遺憾ながら先生指摘のとおり船団の数も、したがって隻数も、特に昨年末からことし二月にかけて非常にふえておるということ、それからなるほど領海外でございますけれども、これの至近距離で操業が頻繁に行われておるということは、遺憾ながら認めざるを得ません。しかしながら同時に、ソ連側としても、日本側漁民の窮状というものをわが方から説明を受けまして、とにかくできるだけ自粛するということを繰り返しております。なるほど遺憾ながら結果的にはそこまでいってないのでございますけれども、先方としても仮に日本の小型漁船の操業が見られた場合には、少なくとも五百メートル以上離れて自粛しながら努力するからということを繰り返しておるわけでございまして、取り決めの調印ということに至るまでの間、ソ連側の善意に期待し、また、自粛を重ねて要望し続けるということではないかと思います。
  135. 石野久男

    ○石野分科員 日本の海外進出はエコノミックアニマルだということで、ひんしゅくを買っておりますが、社会主義国だといわれるソ連が、このようにがめついやり方をすることの真意がわからないのです。単に漁獲という問題だけなのかどうかということについて疑いを持たざるを得ないのです。これがたとえば軍事上の問題であるとか、あるいは何かそのためへの準備工作であるとか、そういうことであるとするならば、これは単なる水産資源の問題だとか漁獲の問題だとかというようなことの交渉では解決はしないのだろうと思います。外務省はそういう点については別段にその疑義を持つようなことはないのですかどうですか。
  136. 木内昭胤

    ○木内説明員 私どもとしては軍事上の理由というようなことは考えておりません。ただ、これは個人的な見解になるかもしれませんけれども、間近に海洋法会議を控えておりまして、そこで先ほど来先生からも御指摘のとおり、二百海里の経済水域という大きな問題、しかも日本の利害関係に重大な影響を及ぼす問題が控えておるわけでございます。この点についてはソ連とて同様でございまして、重ねて個人的な感じということで申し上げますけれども、海洋法会議で何らかの結論が出るまでの間に、ソ連側としては二百海里以内の日本近海において漁場についての既得権をとっておこうという考えもあるのではないかと推測することも可能じゃないかと思います。
  137. 石野久男

    ○石野分科員 時間がありませんが、最後に長官にいま一つお聞きしておきます。  国際的な諸関係からしましても、日本列島周辺は非常にむずかしい問題をたくさん含んでおりますし、抱え込んでおりますし、かてて加えて、いま私見とは言いながら、ソ連の漁船団の目に余る操業状態というものを目の前にして、私たちは水産国日本という形で、特に水産資源に負わなければならない食生活の側面も持っておりますから、漁場を確保し、水産資源を一層拡大再生産するという意味合いからも、政府のとる海洋政策あるいは漁場政策と申しますか、そういうものは非常に重大な意義を持っておると思います。先般来私が申し上げております国土の利用という側面から、今度国土庁ができたわけですけれども、国土庁がただ開発の側面だけをやっていて、そしてたれ流しだなんというようなことで、だんだん自然を破壊していく側面の復旧、開発という問題がおろそかになっておったのでは、国土開発意味もなくなってしまうと思うのです。きょうは国土庁からせっかくおいでになっていただきながら、この問題について御答弁はいただかなかったのですけれども、長官の方から、国土開発の側面において、先ほど申しました海底の調査、そしてまた海底の自然保護あるいは清掃作業、そういうような問題は国土利用という意味からもきわめて重大な課題だ。一方ではまた水産資源を確保する上からもきわめて重大だ。そういう意味で、先般来申し上げております大プロジェクトをひとつつくるという構想を打ち立てるように、閣議等においても発言をしてもらいたい。  私は予算委員会の中で、先ほど主査にもお願いしましたように、なお総理あたりにこの問題については意見も確かめたい、こう思っておりますけれども、長官の御努力をお願いしたいと思っております。御所見最後にお聞かせ願いたいと思います。
  138. 小沢辰男

    小沢国務大臣 基本的には私も同感でございますので、私として努力をしてみたいと考えます。
  139. 石野久男

    ○石野分科員 ありがとうございました。
  140. 笹山茂太郎

    笹山主査 この際、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後三時十四分開議
  141. 笹山茂太郎

    笹山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上民雄君。
  142. 河上民雄

    河上分科員 岡山県水島の三菱石油の石油タンクの流出事故に関連いたしまして、石油タンクの安全性というのが大変大きな国民の関心事になっておりますが、石油タンクの安全性について若干の御質問をいたしたいと思うのであります。  石油タンクの緊急点検を政府では通達で各自治体に指令したようでありますけれども、その点検の結果は新聞などで私ども一応存じておりますが、ごく簡単で結構でございますけれども、ひとまず、それをお伺いいたしたいと思います。
  143. 森岡敞

    ○森岡政府委員 水島事故に関連いたしまして、全国の石油タンクの緊急点検を一月に実施いたしました。中心にいたしましたのは、一万キロリッター以上の大規模タンク及び水島事故のありました高張力鋼を使用したタンクでございますが、しかし、それ以下のタンクにつきましても、あわせて点検するように指示いたしております。とりあえず先般発表いたしましたのは、一万トン以上の大規模のタンクにつきましての点検結果でございます。  簡単に申し上げますと、総数二千六百九十七でございますが、そのうちタンク本体あるいは付属物等に不良個所がございましたのが三十一でございます。ただ、その不良個所は側板あるいは屋根に若干油のにじみが出ているというふうなものがほとんどでございました。横浜に一部タンクの底板に亀裂が生じまして流出をしているものがございましたが、それ以外はそういう程度でございました。  それから、いま一つの問題は、地盤との関連で不等沈下の状況をかなり詳細に調査したわけでございますが、不等沈下の程度が特に著しいと認められますものが百九でございました。  そのほか、防油堤などにつきましても亀裂等の不良個所があるかないかを調べましたが、これが三百十八不良個所がございました。  なお、その他の配管とか弁でありますとか、そういう各種の施設についての不良個所が七十一、それから通気管とか消火設備等につきましても調べましたところが、不良のありますものが百三十七、おおむね以上のような結果でございます。
  144. 河上民雄

    河上分科員 いまの点検は、ことしの一月二十三日の消防庁の通達によるものでございますか。
  145. 森岡敞

    ○森岡政府委員 一斉緊急点検の通達は、昨年の十二月二十八日に出しまして、それから御指摘の一月二十三日には、点検の結果、不等沈下の程度が特に著しいものにつきましては油を抜き取って内部の開放検査を徹底的に行うように指示いたしました。
  146. 河上民雄

    河上分科員 いまお言葉の中にありましたけれども、不等沈下の著しいタンクについてというのは、大体どういう基準でやられたんですか。
  147. 森岡敞

    ○森岡政府委員 不等沈下の量なりあるいは程度が、どの程度タンクの底板なり溶接部分にストレスを与えて亀裂を生じたり、事故が生じたりする原因になるかということにつきましては、率直に申しましていろいろ議論がございます。しかし、これだけ国民の不安感が高まっておる時期でありますので、私どもといたしましては、タンクの直径に対しまして不等沈下量の割合が二百分の一以上のものを目安として開放検査をするように指示いたしております。ただ、二百分の一以下でありましても、タンクの周辺に沿いまして波打ちがあったりいたしますと、これはやはりまた問題がございますので、そういう点にもあわせて注意するように指示いたしております。
  148. 河上民雄

    河上分科員 そういたしますと、百九というのは新聞にも報道せられましたけれども、不等沈下の率が直径に対して二百分の一以上のものと大体理解してよいんだと思うのでありますけれども、先般の岡山の水島の流出事故を起こしましたタンクは、一体どのくらいの率でございましたか。
  149. 森岡敞

    ○森岡政府委員 残念ながら亀裂を生じ、それから基礎が流出いたしましたところから壊れておりますので、当該二百七十号タンクにつきまして、不等沈下の量なり程度をはかることはできません。
  150. 河上民雄

    河上分科員 そういたしますと、ちょっと私が聞きましたところによりますと、これは肝心の水島の場合は、二百分の一以下であったというふうに聞いておるのですけれども、その点はいかがでございますか。少なくともいまの御答弁では、これが二百分の一以上という著しきものという基準から言いまして、それ以上であったのか以下であったのか、はっきりしないような御答弁でございましたが、私どもが調べましたところによりますと、実はそれ以下であったというふうに聞いておるのでありますが、いかがでございますか。
  151. 森岡敞

    ○森岡政府委員 それは恐らく、四十八年にタンクを建設いたしておりますが、その建設段階で水を入れたりいたしまして、だんだん地盤を安定させてまいりますが、その建設過程における不等沈下の量がそうであったということではないかと考えます。私どもそういう話は聞いております。しかし亀裂が生じ、事故が生ずる直前におきまして、このタンクがどの程度の不等沈下があったかということについては現段階ではわからない、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  152. 河上民雄

    河上分科員 それでは二百分の一ということで一応調べさしているわけですけれども、それ以下なら絶対安全だという保証は、いま消防庁としては自信を持って言えるのかどうか。恐らく地方自治体では、消防庁の通達に従いまして不等沈下の著しいタンクについてはタンク内の石油類を排除し、内部について検査を行っていると思うのでありますけれども、じゃもう二百分の一以下なら安全だということで再びタンクに石油を入れていいのかどうか、その点について、消防庁としてはどれだけの自信がおありなのか。もしそれがないといたしますと、これは一応抜くことは抜きますけれども、またそれをもとへ戻していいのかどうかもわかりませんし、またいま土百分の一以下だから、一応安全な方へ入れたものも、今後これが安全なのかどうかも全く保証がないと思うのです。そういう点につきまして、消防庁はどういう自信があって二百分の一ということを基準に著しいものというふうにされたのか。とりあえず適当にそういう目安を設けたのか、その辺のことを伺いたい。
  153. 森岡敞

    ○森岡政府委員 最初に申し上げましたように、率直に申しまして、いろいろ議論がございます。石油会社によりますれば、あるいはその他の企業によりますれば、七十五分の一でいいんだ、こういう主張をされるところもございます。しかし私どもは、こういう状態のもとで一応の目安に基づいて、各市町村の消防当局が安全確保のための点検チェックをしなければならないというふうな観点に立ちまして、やはり一応の目安は示したいということで種々検討いたしました結果、どちらかと申しますと、かなり強目の基準ではないかというふうに思うわけでございますが、そういうことで指示したわけでございます。  なお先ほども、これも申し上げたことでございますが、二百分の一以下であれば、それじゃ絶対安全かと言いますと、円周に沿って不等沈下の状態が波を打っておるというふうな場合には、これはやはり注意しなければならないということが指摘されておりますので、その点も十分各消防機関に連絡をいたしております。  それから、これで一遍調査をして、それだけで安心とは私ども言えないと思いますので、引き続き定期的に不等沈下の状況なり、あるいはタンクの状況につきまして、かなり時間を詰めまして、定期的な点検をこれから続けてまいりたい、そういうふうに市町村当局を指導してまいりたい、かように思っております。  なお、油を抜きましたものにつきましては、磁粉探傷試験とかあるいはバキュームテストとかそういう非破壊検査を徹底的に行わせておりますが、これは若干時間がかかりますので、現在進行中でございます。その検査をした結果もし不良個所が出ますれば、それは当然是正をし、直す。また出ないものにつきましては、これはどういうふうな状況で新たに使用開始をするかという問題がございます。やはり一定の水を張って検査をするとかそういうふうな問題も含めまして、安全確保に遺憾のないような措置をとった上で油をさらに入れる、こういうふうに持っていくべきだと現在考えております。
  154. 河上民雄

    河上分科員 そういたしますと、先ほど来の御答弁では明らかですが、水島の場合は、あれだけ大きな被害を起こした水島の石油タンクについては不等沈下が原因であるというふうに推察しながらも、どの程度の率のときに事故が起きたのかということについては、もう何ら確かめていない、こういうことが一つ出てくると思うのです。  もう一つは、二百分の一以下ということを一応の目安に総点検をさせておるけれども、これで絶対安全であるということが果たして言えるのかどうか。地方自治体に対しまして二百分の一というものを安全基準の、あるいはこれ以上の危険の限界ということで、今後ともこれでやっていかれるのか。もしこれでやってみて、なおかつ岡山の水島の場合のような事故が起こった場合には、一体だれが責任を負うのか、そういう点についてはどうでございますか。
  155. 森岡敞

    ○森岡政府委員 現在流出のありましたいわゆる二百七十号タンクにつきまして、消防庁におきましては、学識者十五人をもって編成しました事故原因調査委員会を設けまして徹底的に調査をしていただいております。これはタンクの構造、材質から、あるいは溶接あるいはさらにいまの地盤、特に不等沈下の問題などを含めまして、あらゆる部門について詳細な検討をしていただいております。一応の結論を三月中に出していただきたい、かようにお願いしておるわけでございますが、それが出次第、それを踏まえてタンクの安全対策についてのさらに進んだ対策を考えていく。その場合に、いま御指摘の不等沈下についてのさらに突っ込んだ安全ラインと申しますか、危険ラインと申しますか、そういう点についても御指摘をいただくように現在お願いをしておるわけでございます。しかし、それを待てないということで、私どもは早急に一月中に点検をし、それに基づく対策を講じたというのが実態でございます。
  156. 河上民雄

    河上分科員 地方自治体では消防庁の中央の指示に基づいて一応の検査をやっているわけですけれども、さあやったはいいけれども、これで後どうしたらいいのかよくわからないし、安全基準というものについても、まだ確たる結論が出ないということで、非常に不安に思っているわけでございます。そういう意味で、いま三月中という学術経験者の一応の結論が出るのを待ってというお言葉がありましたけれども、それを一つの目安に地方自治体として仕事をしていい、こういうふうに判断してよろしいわけでございますね。  次に、いま岡山の水島の例から見まして、事故が起こったときの状態を確認できないほど——建設を許可した後、その後の状態、完成当時の状態がどの程度維持されているかということを必ずしもチェックしていなかったということがうかがわれるのでありますけれども、そういう点今後どういうふうにされますか。石油タンクの大きさに規制を加えることが、いまの消防法でできるのかどうか。建設許可はもちろんできると思いますし、また、完成時の検査もやっておられると思うのでありますけれども、その後の状態のチェックというものをいまの消防法で十分できるのかどうか、その点はいかがでございますか。
  157. 森岡敞

    ○森岡政府委員 建設をいたしました後の保安点検につきましては、まず企業に予防規定というものをつくらせ、それを市町村消防機関で認可をいたしまして、その予防規定で保安点検のシステム、やり方についても定めさせておるわけでございますが、率直に申しまして、この予防規定の定め方に、さらに強化をしなければならない面があると私どもは思います。  それからいま一つは、御指摘のように、消防機関の方で、メンテナンスなりあるいは保安管理につきまして、徹底的に保安点検を強化をする必要があると思います。これらは現在の消防法令によって可能でございますので、その内容を充実強化したい、かように考えております。  それから、タンクの大きさを制限するという問題につきましては、現在の消防法令では問題があると思います。と同時に、実質論といたしまして、いますでに十五万トンタンクというものまでも出ておりますが、仮にそこで決めますと、そこまではいいという話にも恐らくなるのでございましょう。その辺の大きさの制限というのが唯一の決め手なのか、あるいは、もちろん余り大きなものができることは、私どもは決して好ましいこととは考えておりませんが、大きさなり、あるいは地盤なり、そういうものとの関連をいろいろ考えて構造なり安全基準を決めるという方が妥当なのか、その辺のところをもう少し研究いたしたい、かように考えております。
  158. 河上民雄

    河上分科員 大臣、お聞きになっておわかりと思うのでありますけれども、経済性の追求という点から言えば、タンクは丸いわけですから、大きいのを一つつくった方が、同じ敷地内で小さいものを幾つもつくるよりは効率が高い、こういうことだと思うのですが、いわゆる石油タンカーの大きさを、日本の造船技術の粋を集めてだんだん大きくしていったことが、今日、マラッカ海峡の祥和丸の座礁事件の一つの遠因をなしていると思うのですけれども、それと同じようなことが、この石油タンクの大きさの場合にも言えるのじゃないかと思うのです。  いま消防庁では、それだけではなく、もっといろいろな要素を加えて判断すべきだという御答弁でしたけれども、しかしそれにしても、石油タンクの大きさがだんだん大きくなるという傾向のあるとき、これに対し消防法では、これを抑えることができない。そういたしますと、どこで石油タンクの大きさを規制したらよいと大臣はお考えになりますか。
  159. 森岡敞

    ○森岡政府委員 消防法できちっと何万トン以下でなければならないと決められないかと申しますと、これは私は絶対に決められないとは考えておりません。しかし、そういう決め方をすることが安全対策上いいのか、あるいは現実にあるタンクの容積なり何なりを考えまして、それぞれに応じた構造なり地盤なりの強化をやるのがいいのか、そこら辺の問題を総合的に考える必要があるのではないだろうか、かように申し上げたつもりでございます。
  160. 河上民雄

    河上分科員 大臣に技術的なことをお尋ねするのはどうかと思いますけれども、いまのような御答弁ですが、石油タンクの大きさというものに何らかの規制というものを加えることが、やはり環境保全の上から必要だとお考えになりませんか。
  161. 小沢辰男

    小沢国務大臣 タンクの一つの大きさを規制してみても、やはりその数が、同じところにたくさんあれば、一つのタンクの大きさそのものを規制する効果というものは、そういう意味においては非常に削減されてくるわけでございますし、問題は、やはり安全な構造、あるいは地盤なり、あるいは基礎なり、あるいはそういう構造設計の問題から見て、どの程度以上になりますと、そうした安全工学的な見地から十分な自信が持てなくなるというような、どこか限界点がやはり技術面においてはあるんじゃないかと思いますので、もっぱら安全性確保のための構造なり設計なりの技術的な点をよく探求いたしまして、その面からいま自治省が言われるように、一体大きさを制限した方がいいのか、それぞれ大きさに基づく安全性を第一義とした構造なり基礎なり、その他の設計というものを考えていく方がいいのか、その辺のところはよく技術的に検討を願って、そしてひとつ自治省の方でお決め願ったらどうかなと思います。  ただ余りどえらいタンクをつくるということは、常識的に考えても、いろいろな意味の安全性について、もしそれを防止していくということになると、いろいろな要素を相当加味していかなければいかぬものですから、余り大きいものは好ましくないというようなことは言えると思いますけれども、もっぱらやはり構造なり、あるいは基礎なり、そうした設計上の問題、安全性を確保する限界点がどこにあるのかという点を技術的によく検討しませんと、その辺のところは的確にお答えできないと思います。
  162. 河上民雄

    河上分科員 私は、いまの御答弁で、今後果たして安全性というものを、特に市民生活をする立場から言って、保障してもらえるのだろうかという不安をかえって深めるのでございます。というのは、ともかく油が必要だということになりますと、日本人の現在の生活というのは油と同居する生活になっているわけですね。そうなってまいりますと、たとえば地震とかそういうようなときにどうするかという問題も出てくるわけですね。  そういうことをいろいろ考えますと、まず私は、いま石油タンクの大きさと言ったんですけれども、いまの大臣の御答弁でも出てまいりますように、むしろその一定地区において備蓄している石油の総量規制のようなものを設けなければ、一朝大地震でもあった場合、危ないんじゃないかという感じがするわけです。石油タンクが大きいと、たまたま大きなタンクが漏れた場合には非常に多量のあれが出ますけれども一つ一つが小さいものであれば、一つがもしといった場合でも、たとえばいま防油堤がすでに亀裂を生じているとか、不良なものが発見されたということでありますけれども、防油堤の外にもう一つ防油壁のようなものをさらにつくって二重にするようなことでも考えれば、ある程度防げるかもしれませんね。しかし、日本は地震国でありますから、当然地震対策というものは考えられなければならないと思うのです。  そういうことを考えますと、一定地区における石油の量というものは、総量規制をやるということが必要になってくるんじゃないか。現在のところは、たまたま一つのタンクが破れた場合のケースでありまして、それでも瀬戸内海が全滅するような被害を引き起こしているわけですが、横浜とか東京あるいは大阪、神戸というような人口密集地帯に巨大な石油タンク群があるという状態が果たして健全であるかどうかという問題ももう一つあると思うのです。  そこで、石油の総量を規制するという考え方がないか、あるいはそれをとるべきではないか、またもう一つは、人口密集地帯に隣接して、そういう石油タンクを大量に置くというのが間違っているんじゃないか、私はそういうことを考えるのでありますけれども、大臣、この二つの点ですね、また事務当局にも後でお答えいただきますが、大臣としては、どういうふうにお考えになりますか。
  163. 小沢辰男

    小沢国務大臣 二点につきまして、先生のお考え、原則的には私もそのとおりだと思います。
  164. 河上民雄

    河上分科員 事務当局にも伺いますが、こういうようなことをどこで規制したらいいと思いますか。いまコンビナート法が問題になっておりまして、陸と海を一体にした防災対策というものが要求されているわけでございますけれども、これを担当する役所は消防庁あり、通産省あり、厚生省あり、いろいろあって、なかなかむずかしいのでありますけれども、いま言ったような問題はどこでだれが責任をもって処理するか、こういうことについていかがでございましょう。
  165. 森岡敞

    ○森岡政府委員 石油その他の危険物につきましての行政が政府各省でそれぞれ多岐に分かれておるということ、また地方公共団体におきましても、都道府県なり市町村で分かれておるということ、そういうことから、いま御指摘のような全体として総合的な防災の面から考えたコンビナートとかあるいはCTSとか、そういうもののあり方をどう見ていくのかということが欠けているのではないかという御指摘、ごもっともだと思います。また、先般の予算委員会でもそのような御指摘がございました。私ども現在、お話の中にありましたコンビナートの総合防災対策の確立のための立法問題を含めました検討を鋭意進めております。関係省庁の意見を取りまとめまして、ぜひ早く取りまとめるよう結論を得たいと思っておりますが、やはりいまお話がありましたような立地問題と申しますか、社会的、自然的条件を踏まえましたコンビナートのあり方、そういう問題を、やはりコンビナート立法と申しますか、そういうものの中で検討していくことをひとつ取り上げていいんじゃないか、かように考えております。  ただ、中身になりますと、これは立地条件、社会条件、自然条件、それぞれ違いますので、果たして一律の基準というものがぴしゃっと決められるのかどうか、その辺になりますと、なかなかむずかしい面もあろうと思います。私どもとしては、ぜひそういう観点から検討を進めてまいりたい、どこが担当するのが適当かということは、そういう体系をつくりました段階で決めたい、かように考えます。
  166. 河上民雄

    河上分科員 大臣、この際、そういう石油タンクの問題、安全性の基準を確立するとともに、総量規制的な考え方をここに導入していただかないといかぬと思うのでございます。  それから、もう一つ。伺うところによりますと、通産省も各自治体あるいは企業に通達を出して、石油タンクの問題について指示をしたということでございますが、主として管理体制が万全であるかどうかということを調べさしたというふうに伺っておりますが、一体管理体制というのはどういうふうにできているのか。いまの日本の企業で管理体制、これを管理する専門家というのは、恐らくほとんどいないんじゃないかと私は思うのでございます。たまたま、だれそれは管理者であるというふうに決めてあっても、実際にはその人たちは資格はない。したがって、ああいう非常の際に適切な処置がとれないということになってきておるのじゃないか。あるいは危険がだんだん迫っているのに対して見抜くことができぬという問題があろうかと思うのでございます。  そこで、消防庁に伺いますけれども、また通産省でも結構でございますが、管理者、そういう石油タンク及びそれに付属する設備の管理者に専門的な資格というものを必ずつけさせるという方針をとられたらどうか。また、消防署を定年でやめたような方なんかにも、かなりそういう専門家がおられると思いますけれども、そういうような人をこの際、急になかなか間に合いませんから、こういうところへ登用するという道も開いてはどうかというようなことを私は考えるのですけれども、その点いかがでございますか。もう時間が参りましたので、最後にその点をお答えいただきたいと思います。
  167. 森岡敞

    ○森岡政府委員 石油その他の消防法令で規制いたしております危険物につきましては、現在危険物取扱者というシステムがございまして、一定の資格を持った者でなければ製造所なり取扱所で取り扱えない、こういうことになっておりますが、危険物取扱者よりも——もちろんその人たちも充実していかなければなりませんが、その際、先生の御指摘のような方向も私は一つだと思いますけれども、さらにもう少し統括的な立場で、危険物取扱者を総括して責任を持って製造所なり貯蔵所の保安管理をやる、そういうシステムを早急につくりたいと考えております。
  168. 河上民雄

    河上分科員 それでは、時間が参りましたのでやめますけれども、安全基準を早く出していただくことと、管理体制というものをもう少し専門的に確立していただきたいということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、柴田睦夫君。
  170. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 川崎製鉄千葉工場の第六号炉建設計画に関連する環境問題についてお尋ねいたします。  四日市であるとか川崎、こういうところの大気汚染は全国的に有名ですけれども、実際は千葉市の汚染日本一だと言う人もおります。たとえば、千葉市は昭和四十七年の七月に、公害病認定制度を設けましたが、現在までの認定患者数は四百七十五名、死亡者は四十七年に一名、四十八年に六名、四十九年に九名と、年々増加をして、ことしもすでに死亡者が出るという痛ましい状況であります。一昨年の環境庁の発表によっても、硫黄酸化物汚染の全国ワースト十地点のうち千葉県が七地点を占め、そのうち千葉市が五地点を占める状況でありますし、四十八年度の調査においても、千葉市はあらゆる種類の大気汚染がきわめてひどい状況であります。  千葉市の発表によりますと、千葉市民はいま物価よりも、なお公害問題の改善に関する関心が一番高い、こういう結果さえ出ております。そして、この千葉市における大気汚染の元凶が川鉄の工場であるということは市民の常識になっております。  そういうところに、粗鋼生産量をいままでの六百五十万トンから八百五十万トンに引き上げるために第六号高炉の増設計画が出され、現在県や市が承認するかどうか、その段階に入って、きわめて緊迫した状態が生まれております。市民は大気汚染源の新たな出現に対して大きく批判の声を上げているという実情です。  一昨日の千葉県議会公害対策特別委員会で、県の環境部長は、議員の質問に対して関係当局と全部相談しているから大丈夫である、こういう答弁をしておりますが、環境庁はこの問題について相談を受けたのか、環境庁判断はどうであったか、この点からお伺いいたします。
  171. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 川鉄六号高炉の建設計画につきましては、私どもとしまして、相当長い経緯がございますから、経緯は一応了承いたしております。ただ、環境影響評価の具体的な内容についての説明は私ども受けておりません。  それから、県に対しまして私どもとしまして、若干相談に乗っていたかどうかという点につきましては、千葉臨海は御承知のように公害防止計画を去年の十二月に策定いたし、承認をいたしておるわけでございます。それで、特に私どもとしましては、企業を新増設するに当たりましては、いろいろな物質につきましてその基準を達成するための地区ごとの平均的な削減目標をまず決める。それから汚染物質の量が大きい企業につきましては、シミュレーション計算を行って、地区濃度に対しますその企業の汚染寄与割合を明らかにする。そしてその地区の平均削減目標は確保されるという条件に基づいて個別の許容排出量を設定し、これを協定等で担保していくというような慎重な手順を選ぶよう助言をしているところでございます。  以上でございます。
  172. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 そうすると、指導しているというところで、現在それで大丈夫だということにはなっていない、このように理解いたします。  それから、昭和五十年の二月十二日に川鉄から県に提出されております「第六溶鉱炉および同関連施設の建設に伴う環境整備対策について」という書面を見ますと、川鉄から出された窒素酸化物の削減目標数値が達成できない場合、部分的な操業停止などの歯どめを提示しております。しかし、この削減目標値が達成されれば、窒素酸化物環境基準を守れるという保証にはなりませんし、この点は硫黄酸化物もやはり同じです。環境基準が達成できない場合の処置を環境庁はどのように考えておられるのかお伺いします。
  173. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私どもとしましては、いま概括的に申し上げましたところに尽きるわけでございますが、防止計画でいろいろ汚染物質の削減の量を示しているわけでございます。それで、それに対しまして企業なりあるいは公共団体が、どういう措置なり施策を講ずるかということが概括的に述べられておりますが、具体的にどういうぐあいに担保していくかということにつきましては、原則的に公害防止協定によって担保されるというのが通常の方法でございます。千葉の例でも同じようなことでございまして、特に防止協定では、生産設備等が新増設される場合に、知事に対する事前協議の規定が盛り込まれているわけでございますので、その協議を受けております現在の状況におきまして、先ほど申しましたような手順に従って十分アセスメントをやって、いまおっしゃるような事態が生じないように持っていく、こういうぐあいに在ともは指導しているところでございます。
  174. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 生じないように持っていくという将来の目標なんですけれども、現状を見てみましても、硫黄酸化物についてはいろいろ言われておりますけれども窒素酸化物あるいは粉じん、こうしたものについては、現在では確実なデータがなくて、環境が改善されているかどうか、その事実を証明することができない、こういう現状であると思います。  ここに磁石と砂があるわけですけれども、この砂はこの磁石で採取したわけです。家の雨戸の桟にほこりがたまっている。そしてここに磁石を持っていきますと、ほこりの大部分がこうしてくっついてくるわけです。この砂が実は川鉄の工場から市内にまき散らされている鉄粉であります。川鉄はいままで過去に、赤い煙を出さないとか、あるいはグラファイト、コークス、石炭、粉じんなどをまき散らさないということをしばしば言明してまいりました。しかし、その約束は実際には守られていなくて、現状でもこういう状態です。県や市もこれを実行することができない。環境の改善、それから新たな公害拡大の防止に対して、環境庁は的確な指導をしなければならないし、そういう責任があると思うのですけれども、このような重大な状況になっている千葉市について、私は環境庁の方で現地調査をするということが必要であると思いますけれども、大臣には、そのお考えがあるかどうかお伺いします。
  175. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは、先ほど局長が説明したように、昨年の十二月、暮れに、千葉県との間のその地域における公害防止計画というものを慎重に検討しまして確定をいたしたわけでございまして、その防止計画に基づいて削減の目標というものを設定をさせて、そして、それぞれこの目標を担保するために、知事が個々の企業との防止協定というものを結んでいるわけでございまして、しかも事前に、知事にそれぞれの企業は協議をしなければならないようになっておりますから、しかも権限は、大体国会の御意思等もそうであったわけでございますが、とにかく地方の知事に任しておるわけでございますので、私どもが直接出かけてどうこうということは、いまのところ考えてはおりません。  ただ、公害健康被害補償法の地域指定を、あの辺はたしか昨年の秋ですか、やったばかりのところでございますので、そこで、そういう指定したばかりの地域だから、慎重にひとつよく、全体の総量から見て差し支えないかどうかということを十分に検討するようにという気持ちは、防止計画を承認するときに十分指導しておるところでございます。
  176. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 書面だけではなかなか現状がりかみにくい。そして環境庁の発表によっても、千葉市の大気汚染の問題が重大な問題になっている。そういうことから、特に、やはり現場を見るという態度が必要であるということで、このことを要望したいと思います。  それから、昭和四十六年三月の港湾審議会で六号高炉に関連する埋め立て問題が審議されましたけれども、このときは環境問題については、事実上審議の対象にならなかったという経過があります。それから昭和四十九年九月三十日の産業構造審議会では、川鉄の高炉はおおむね妥当だ、こう認めているわけですけれども、その直前の九月十三日発表の産業構造審議会の「わが国産業構造の方向」という文書では、東京湾などは、今後基幹資源型工業の新増設は原則として行わない、こうしております。第六号高炉は既設分のスクラップを含みますけれども、さきに言いましたように、、拡大増産計画であって、この原則に反するというごとになります。同じ審議会が、こうした矛盾した意見を出しているのは、これは結局、環境の面を考慮したかどうか、それぞれ目的があったと思いますけれども環境の面を考慮したかどうかによって、こういう相反する意見になったんだと考えますが、これらから見ましても、環境の上から真剣に検討すべき問題があると思うわけです。  ところで、川鉄側では第六号高炉の新設に対して焼却炉用の排ガス、脱硝装置を柱として、窒素酸化物とばいじんの総排出量を規制する、これが目玉だ、こう言っております。しかし、脱硝技術の評価が楽観的であれば、排出量の削減は実行することができません。いま脱硝技術の開発、この脱硝技術が果たして削減する能力があるものであるかどうか、ここが一番大きな焦点になってまいっております。脱硝技術につきまして、窒素酸化物やばいじんの削減を予定どおり行うことができる、そういう結論に達しているのかどうか、この点を環境庁と通産省の立地公害局の方にお伺いしたいと思います。
  177. 春日斉

    ○春日政府委員 排煙脱硝技術につきまして、現在多数のプラントメーカーが開発を行っておるわけでございまして、昨年の六月、私ども主要な十四社についてヒヤリングを実施いたしました結果では、脱硝装置の脱硝効率については、八〇から九〇%以上のすぐれた効率を目標にして開発が現在進められておりまして、実用プラントまたは実験プラントにおいて、所期の性能を上げておるようでございます。そういうわけでございますから、製鉄所におきましても、脱硝装置の設置が進めば、窒素酸化物の排出量をかなり削減することは可能であろうと考えております。  しかし、何と申しましても脱硝技術は、現在のところ硫黄酸化物を含まない排ガスの場合については、先ほど申しましたように八〇から九〇%の効率で実用化の段階にあると見られますけれども、重油や石炭の排ガスあるいは焼結炉排ガスといったような場合は、まだ問題があるようでございます。しかし、脱硝技術そのものは最近かなりな長足の進歩を見せておるようであります。急速にこの点は解決されていくものと考えております。
  178. 山中正美

    ○山中説明員 お答えいたします。  脱硝技術の一般論につきましては、いま春日局長がお答えになりましたので、先生質問の川鉄の件についてお答えいたしたいと思います。  川鉄で現在いろいろな脱硝技術の研究をやっておりますし、製鉄各社ともどもいろいろ独立してやっておりますが、特に川鉄の場合には、鉄鋼業全体で一つ研究組合を川鉄の千葉製鉄所の中につくりまして、その研究組合でいろいろ実験をやっております。これは日立造船のプラントでございますけれども、本件につきましては通産省も非常にバックアップいたしておりまして、いわゆる重要技術開発補助金を交付いたしております。  これも先生御存じだと思いますが、現状でございますけれども、御説のとおり製鉄所におきまして、いわゆる窒素の排出の多いのは焼結炉とコークス炉が中心でございまして、コークス炉の方につきましては、これは製鉄所によりまして、いろいろコークスをつくるわけですけれども、そのつくり方が若干違います。たまたま川鉄の千葉製鉄所におきましては、コークスをつくる場合の燃料といたしましてCOG、コークス炉ガスを使っております。このコークス炉ガスにつきましては一応脱硫をやりまして、それをコークスを結ぶ燃料に使っているという関係上、非常にクリーンなガスでございます。そのクリーンなガスにつきましての脱硝技術というのは相当進んでおりまして、現在完全にコマーシャルベースまではいきませんが、これも私どものいわゆる補助金を出しまして、住友化学の千葉で二十万立米までの試験が一応成功しておりまして、これを応用することになってくるので、この方はあまり問題ないのではないかと考えております。  それから、問題の焼結炉の脱硝でございますが、これは先ほど申し上げました研究組合でございますが、二百立米パーアワーの装置で大体三千時間実験をやりまして、先ほど春日局長からも御答弁のありました八〇ないし九〇%の脱硝率というのは一応維持できるんではないかということが出ております。現在五千立米パーアワーの実験装置をつくりまして、これで一月から実験を開始しておりますけれども、現在のところ一応スムーズに動いておる、そうしますと、いわゆる六号高炉が稼働する期間におきまして、実際は六号高炉を建設するに当たりましては、焼結炉は増設しないわけでございますけれども、それと関連なしに従来の焼結炉をされいにする、いわゆる前向きで全体のNC排出量を減らしていくということでございますので、現在既存の焼結炉につきましての脱硝装置をつくろう、それの実験を現在やっておりまして、これは早急に結論を出しまして、それによりまして大きい装置をつけていこう、こういうことを考えている次第でございます。  以上でございます。
  179. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 この川鉄のプラントですけれども、いままで実験したもの、開発中のもの、研究されているものは規模が小さいものであって、いま言われました五千立米というような大規模なものについては事情が違う、こういうことを私聞いておりますけれども、端的に言って、このような五千立米というような大規模のものについても適応できる開発をしているのかどうか、このことをお伺いします。
  180. 山中正美

    ○山中説明員 お答えいたします。  一般的にケミカルエンジニアリングという問題でございまして、これをどういうふうにデベロップしていくかということでございますが、通常は十倍ないし二十倍、二百立米から五千立米というものが普通でございますが、ただこれは一つのエンジニアリングの技術でございまして、必ず二十倍あるいは十倍のステップを踏んでいくのか、あるいは百倍以上のものができるのか、これは安全性から見ますと、一応十倍、十倍というのが一番の理想型だと思いますけれども、現在のエンジニアリングの技術というのは非常に進んでまいりまして、一挙に百倍という装置もないわけではございません。その辺の評価は今後一応五千立米の結果を見ましてから、いろいろ判断できるのではないか、そういう意味で、われわれとしては多分大丈夫であろうと思いますけれども、ここで完全に大丈夫だと断言はなかなかできないのではないか、このように考えております。
  181. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 そうしますと、結局大丈夫であろうという将来の予測が立つけれども、現在の段階においては、大丈夫とは言い切れない、こういう結論でよろしいですか。
  182. 山中正美

    ○山中説明員 結局フィージビリティーの問題だと思いますけれども、一〇〇%確実かとだめを押されますと、それは言いずらい。ただ、いわゆる信頼性から言えば相当の確度がある、こういうふうにお答えいたしたいと思います。
  183. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 それから、先ほど大臣が言われました問題ですけれども、川鉄工場の後背地は、これは環境汚染区域でありまして、昭和四十九年の十一月三十日に公害健康被害補償法に基づいて被害救済地域として指定されております。そういうところに粗鋼生産量を六百五十万トンから八百五十万トンに引き上げるという計画でありまして、この八百五十万トンというのも、これは平均の生産量であって最大生産量というわけではありません。フル操業をすることになりますと、一千万トン近い生産能力を持つことになると言われております。  この地域の指定のときだったと思いますが、以前環境庁の保健部長が、千葉市が補償法に基づく地域の指定を求め、一方では大気汚染源である高炉の増設を認めようとすることについて批判的な意見を述べられました。新聞によりますと、こういうのは虫がよ過ぎるというような言葉も書いてありましたが、私は、まさにそのとおりだと思うのですけれども、六号炉の増設に関しての見解をお伺いしたいと思います。
  184. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘ありましたのは、一年近く前の話ではなかったかと思いますが、公害健康被害補償法の問題につきまして、先ほど大臣のお答えのとおり、これは非常に重大な問題でございまして、公害健康被害補償法の発動を要しないような地域になるのが一番大事だということであります。そういう点で、ルーズなあるいは従来と同じような気持ちで開発をどんどんやっていくというような考え方ではもう絶対いけないということで、非常に厳しい注意を要するということを私は申したわけでございます。
  185. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 まさにそのとおり、非常に注意を要する問題であると思うのです。汚染区域として法律の適用を受ける範囲を広く指定を求めたい、そういう状況の中にあって、汚染発生源、しかもその汚染を防げる保証というものが確実視することができない状況のもとでその高炉の新設を認可するということになれば、これは住民も本当に納得できるような確実な防止計画が立ってそういうことができるべきであって、現在の段階においては、やはりどうしても矛盾していると思うわけです。  現実に、千葉市の一部が指定されておりますけれども、千葉市の公害患者というのは指定区域の中に限られているわけではない、そういう状況があります。ぜんそくなどの患者は、区域外の居住者の中にもたくさんあることが報告されておりますし、それから認定患者と類似の症状を訴える人々が区域外にも多数ある。診察した医者の方から、これは公害に基づくものであると考えざるを得ないというようなことも私聞いております。こういう事情ですから、地域指定の拡大を求めるということ、これが千葉市の人たちの気持ちになっております。  昭和四十九年十一月二十五日の中央公害対策審議会の答申の中に「大気の汚染の程度は現時点においては硫黄酸化物を指標として表さざるを得なかった。したがって、今後とも窒素酸化物及び浮遊粒子状物質と呼吸器症状有症率の関係を量的に検討した研究に関する資料等を集めて地域指定要件等の見直しを行う必要がある」こう言っております。千葉市においても、硫黄酸化物だけではなくて、窒素酸化物などのことを考えれば、そしてまた、現実にこの指定区域外からも公害病と思われる人たちがあらわれているということから見ました場合に、そういう点の見直しをやって、指定地域の拡大、その見直しをやるべきだと思いますが、この点についてのお考えをお伺いします。
  186. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生お話しの公害病患者とおっしゃいましたのは、市がたしか条例でやっておりまして、独自にこの広い地域をやっていて、そのときに認定された患者さんという意味というぐあいに私は解しております。  千葉の場合には、四十八年度の調査をいたしまして、地域の調査等もすべて県、市と十分打ち合わせをして地区の区分をやりまして、おのおのの地区につきまして汚染と有症率を調べまして、汚染につきましては、相当過去にまでさかのぼって調べましたところ、どう見てもいまの指定地域以外の場所はあの尺度にははまらない、いまの指定地域におきましても、有症率としては確かにはまってくるが、汚染としては昔にさかのぼって、しかも特定の季節等による非常に癖のある汚染というものをつかまえて考慮をするという以外には、これはなかなかはまってこなかった。  そのようなところでございまして、この硫黄酸化物を対象とした地域指定ということでは、いまのところ以上に広げるということはちょっと考えられないところでございますが、御指摘窒素酸化物の問題は、今後の問題でございまして、この点につきましては、窒素酸化物及び浮遊粉じん等の問題が中央公害対策審議会の中でも指摘されておりまして、特に窒素酸化物の問題は、私どもはこの二年以内ぐらいに地域指定のその判断条件になるようなものを何とか取りまとめたいとして、いま鋭意やっておるところでございます。これは新たな問題として残されておるわけでございます。
  187. 柴田睦夫

    柴田(睦)分科員 時間が参りましたが、いずれにしろこの千葉市の状況から考えてみますと、公害の問題も環境の問題も、単に自治体だけに任せるということでなくて、やはりこれは国のいろいろな面での重要な責任のある問題ですから、環境庁が本当に住民の健康を守るという立場から積極的な態度でこの状況を調査し、真剣な対策を講じるよう要望して終わります。
  188. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、瀬野栄次郎君。
  189. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 水俣病認定促進並びに水俣湾ヘドロ処理事業等について、環境庁長官並びに国土庁、運輸省、自治省当局にお尋ねをいたします。  水俣病の認定審査は、昨年四月、前期の第二次審査会委員が任期切れとなった後、第三次の新委員の確保で難航し、申請患者は二千七百七十九人にもふえているのに、現在まで一年近くもたつのに、未発足のままになっておることは御承知のとおりでございます。  この間、昨年夏には九州五大学などで集中検診を実施してまいりましたが、検診のあり方をめぐって患者の間から、ずさんであるとか患者切り捨てだとか、こう言って激しく批判があったことも御承知のとおりであります。  また第三次審査会も、昨年十一月ようやく初会合にこぎつけたものの、集中検診や審査会の委員構成に不満を持つ申請者の激しい抗議、反対に遭い流会となり、それ以来空白状態となっているわけでございます。  すなわち、四十九年三月二十八、二十九の両日、第二十一回県公害被害者認定審査会が、当時武内会長でございましたが、開かれまして、八十三人を審査し、うち新たに二十九人を認定しましたが、これが最後で、第二次審査会委員による最後審査、こういうふうになりました。その後約一年近いブランクになっているというわけでございます。  こうした事態を何とか打開しようというねらいで、二月七日、水俣病認定審査や検診のあり方をめぐって申請患者代表、これは九派あるけれども、この方たちと環境庁と県と初めての三者会談が現地水俣市で開かれたわけでございます。しかし、せっかくのこのような三者会談にもかかわらず、認定問題について何ら進展を見ず、事実上物別れに終わって今日に至っております。まことに残念なことでございます。そこで、環境庁長官に努力をしていただいておりますけれども、さらに次の点についてお尋ねするわけでございます。  現在、全国二十七府県で二千七百七十九人にも上る認定申請者がおるわけです。今後もこれはかなり増加をしていく傾向にあるわけでございまして、これらの認定申請者に対して再開のめどが立たないまま今日に至っておりますけれども、このような異常事態に対し、どう打開していこうとされるのか、患者は一日千秋の思いで待っておりますし、また事実だんだん老齢化してまいりまして気の毒な状態にございます。これは三木総理が環境庁長官時代からの問題でございまして、世界的にもずいぶん注目されておる問題でございます。小沢環境庁長官に期待するところ大でありますが、ひとつぜひとも早く審査会の再開をしていただき、患者を救っていただくようにしていただきたい、かように思うわけです。長官の御見解をまず承りたい。
  190. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変おくれておって私も心痛をいたしておるわけでございますが、橋本保健部長の再三にわたる努力で、現地において意思疎通がだんだん図られるようになってまいりました。恐らくあと来月いっぱいでそうした準備体制が完了していくのじゃないかと私は思っておりますが、患者さんの御理解も十分得まして、できるだけ早い機会に再開ができますように努力をいたしたい、かように考えております。
  191. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 環境庁長官はできるだけ早く再開するようにしたい、こうおっしゃるが、再開の打開の一つのめどとなるものは、いろいろありますけれども、さきに申しました三者会談でも見られたように、水俣病認定審査会を一日も早く再開してほしいという意見は七派の方たちの意見であり、これがまた多かったわけですが、反面県が人選した委員による審査会再開には反対という、すなわち委員の選定の仕方に厳しい批判と不信をぶつけられているのに二派、すなわち申請患者協議会と関西共闘連絡会の方たちがあられることも事実でございます。こうした申請者の間でも意見が対立しているわけでございまして、このことも十分長官御存じだと思います。  しかも、この第三次の審査会の一委員が欠員になっているということが当時から大変問題になってきておるわけです。そこで申請者の間からは、残りの一委員の人選についてはぜひとも精神神経科の医師を入れてほしい、こういったことがしきりと言われているわけです。欠員のままではけしからぬと、こういうことを叫んでおるわけです。これもまた十分環境庁長官も御存じだと思うのです。  そういった中で今日になっておりますけれども、この再開の打開のめどとしては精神神経科の医師をぜひ一名補充してやる、こういうことをすれば、こういった七派、二派の方、認定申請患者の方たちもおおむねその線で納得を得ることもできていくのじゃないか、また不信感を取り除くこともかなりできる、そしてやわらいでくる、そして今後審査再開の見通しも立ってくる、これはネックになっているものを打開する一つの大きなかぎである、かように思っておるのですが、その点どう理解しておられるか、またこの一人の委員について精神神経科の医師をぜひ入れるということで最大の努力を払っていただきたい、かように思うのですが、長官の重ねての御答弁をいただきたい。
  192. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 長官のお話の前に少し御説明をいたしておきたいと思います。  先生のお話で、前回のこの会議は物別れに終わって何ら進展がなかったというようなお話でございましたが、私どもはそのような認識はいたしておりません。  九派の中で絶対反対ということを表明しましたのは大阪共闘会議のメンバーの陳情書でございまして、絶対反対を表明した後に、審査委員はどなたがなっておられるかというような質問もあったのも事実でございます。これは審査会にどなたがなっておられるかはわからなくて絶対反対しておられるという、そういう状況にあったということが一つ。  それからもう一つは、申請患者協議会の方は激しい批判、不信をぶつけられましたが、次のような条件が満たされれば、それは再開をするということに積極的に反対はしないということでございまして、一つは次官通達の厳守、疫学の重視、またこの審査会を開いたときに、昨年の夏の検診をやった人で認定できない人は再度検診をする、審査会が現地に来て話し合うというような問題でございまして、この点について私がそういうことを申しましたところ、会長は、部長の意見に同じということを申したわけでございます。  そのほかの方は、確かに不信は一部にございますが、審査会のメンバーをかえられないということであるならば、一日も早く開いてほしい、そしてあと一名の人を精神神経科の人からぜひ入れてほしいというようなことでございまして、私どもはかなりの進展を見たものというように解してやっております。  また、いまの先生の仰せのとおりでございまして、あと一名の方を精神神経科の教室から入っていただくということで、知事さんが年末に大臣のところにお見えになりまして、環境庁も応援をしてほしいという御要望でございました。審査委員の任命はあくまでも知事の問題でございますので、私ども一切関与をいたしておりませんでしたが、知事さんからの御要望を受けて、私どもの課長も参り、私も参りまして、精神神経科の教授と長時間にわたってお話をし、あと一息というところまで来ておるところでございます。
  193. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そこで長官、いま答弁をいただきましたが、長官もこのことを十分御承知なんですけれども、あと一人の委員についての人選、これはできるだけの努力をして、ひとつ早く決めていただきたい。これがいろいろ不信を除き、また申請患者の心もやわらいでくる一つの大きな道である、こういうように思うわけです。全部が全部満足できなくても、こういったことから打開をして早く救ってもらいたいと思うのですが、長官のお考えをさらにお聞きしたい。
  194. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、その機会をできるだけ早く得る段取りにいたしたいと思っておりまして、また見通しも、必ずしも困難でないと思っておりますので、先ほど申し上げましたように、橋本君並びに課長の再三にわたる、いろいろな軌道に乗るための準備が着々と進んでおりますので、そう遠からないうちに、そういう問題もすべて準備が整っていくものと、かように考えております。  私も、先生のおっしゃるように精神神経科の先生が加わっていただくことを心から期待をし、念願をし、またその見通しも何とかいけるものだという期待を持ってこの問題の解決に努力をしたい、またしつつある、こういうことを申し上げておきます。
  195. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 環境庁長官、再度お尋ねしますけれども、その問題も努力していただくわけだが、努力だけではどうしようもないのですけれども、一名の委員を補充して、いつごろにはこの審査会を開くというような大体の目安をつけて努力しておられるか、その辺、ひとつお漏らしいただきたいと思う。
  196. 小沢辰男

    小沢国務大臣 せっかくのお尋ねですが、私がいつというめどをここで申し上げるまだ段階でございません。やはり患者さんの御理解を十分得ていきませんと、せっかく開きましても、本当に円満に審査会が動いていかない場合を考えますと、これはどうしても患者さんの御理解を十分得て進んでいかなければいけませんものですから、したがって私は、そうした時期になれば、ぜひ現地にもお邪魔をいたしまして、ひとつ皆様の御理解を得た上で、円満に新しい体制が整って発足できるようにいたしたい、かように考えておりまして、いま、いつごろかという御質問に端的にお答えできないのでありますが、もうできるだけ早くやりたいという念願でいっぱいであることだけ申し上げておきます。
  197. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 私も、このことは行政の怠慢であり、もう本当に声を大にして叫びたいわけですけれども、大人げないから遠慮しておりますが、本当にいら立たしい気持ちでいっぱいでございます。どうかひとつ県ともよく連絡をとりながら、一日も早く審査会が開けるように努力してもらわないと、患者はもう二千七百七十九人もおりますが、いまのままにしておくと何十年とかかりますからね。そのうちに年とってだんだん亡くなってきますし、本当に気の毒な状態ですから、最大の努力をして、ひとつ対処してもらいたい、このことを強く申し上げておきます。  そこで、昨年の暮れ、十二月二十三日、熊本県側は小沢環境庁長官を訪ねて、現行の公害被害者の認定制度は、水俣病に関する限り、制度本来の速やかに救済するという趣旨に反して、被害者救済のためには役立ってないということで、県の行政能力の限界を越える問題だといろいろ窮状を訴えておられます。  その中で二点ほどあるのですが、十分御承知と思いますが、一つには、国で専門医の養成を行い、国が責任を持って処理してほしいということと、二つには、汚染指定地域で一定の疫学条件に合致し、何らかの神経症状を訴える者については、検診、審査を省略して認定できるようにしてほしい、この二点を環境庁長官に申し入れをしておるわけでございます。  その際、小沢環境庁長官は、認定業務の促進については、事務当局から事情を聞き、抜本改正も含め前向きに対処するよう努力したい、こういうふうにおっしゃっておられますが、その後、十分事務当局からも事情を聞かれて、検討してこられたと思うが、まず、これに対してどう具体的に対処されるか、お答えいただきたい。
  198. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの先生のおっしゃいました県議会関係からの要望でございますが、これは疫学の条件に合致して何らかの症状があれば、検診、審査を省略して認定をするといいますことは、現在の救済特別措置法では、水俣病であるかどうかということの認定であるわけでございますし、公害健康被害補償法においてもそうでございますから、このような手続で、このようなことだけで認定するといいますのは、いまの二つの法律とは全く別個の問題になるということでございまして、これはいまの法律とは全く別個のものをつくれという御要望になり、いまの法律そのものはまた別にちゃんとしなければならない、こういうことになる理論でございます。  そういうことで、このようなことは、現在の水俣病の認定という立場からはできないということを県にはお話しもし、現地の九者の患者との会議のときにもこの議論が出ましたので、私どもは、県のあの要望は、いまの特別措置法及び補償法の認定とは全く性質の違うものである、別のものであるということを申しましたところ、患者さん方は、そのような全く別の認定のものでは自分たちがチッソと結んだ補償とのつながりは何らないので、そういうものは反対であるということを患者さんの口からもみなそろって申されたということを申し上げておきます。
  199. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 それからもう一つ、いまの国の責任で行うということについて……。
  200. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 国の責任でという御議論でございますが、これは国も熊本県と協力をいたしまして、九州の五つの大学の協力を求めたり、あるいはこの水俣病につきましての医学研究を進めるということで、鋭意この数年来努力をいたしておるところでございます。そういうことで、昨年の検診促進検討委員会も、熊本県と国とが連名で先生方にお願いをして進めてきたということでございますし、また、現在のこの問題の打開につきましても、私どもとしましては、国がそこまで関与するのは異常なまでに、部長も課長も課員も全部もう非常な頻度で現地に行き、非常なつるし上げに遭いながら、患者と話をしながら打開をしようとしておるという状況でございます。  しかしながら、この神経の関係のこの病気を診られるお医者さんの絶対数が限られておるということでございまして、すぐ養成をして患者さんを診る専門家がたくさんできるというものではございません。そういうことで、現在のこの検診をし得る専門家の能力には全く限りがあるという前提に立ちまして、そしてその検診をいかによく進めるかということを現在いろいろ努力をいたしておるところでございまして、このやり方につきましては、やはり医学を無視をしたやり方はできないわけでございます。そういうことで、医学先生方とも私どももいろいろ相談をしながら、現在準備を進めている最中でございます。
  201. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 検診、審査を省略して認定するという問題は、別の法律の問題だということの答弁がございましたが、このことについて、この県からの要請に対してただいまいろいろ答弁がございましたけれども、なるほど環境庁は、竹中保健業務課長がせんだって、現行法による水俣病救済には、こういったことではならないということで示したことを聞いておりますけれども、そこで私はお尋ねしたいのは、チッソの補償につながらなければ患者としても困るということは十分聞いております。  そこで、国か県がチッソから何らかの確認書を前もって取っておけば、検診、審査なしの認定ということでチッソのいわゆる補償につながる、こういうふうになる、かように思うのですけれども、その辺はどうですか。
  202. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 そのような両者の協約の中にまた新たな問題を、国としては関与することはできないというぐあいに考えます。
  203. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 それはまたこちらもいろいろ検討してみますけれども患者を救うためには、どうしても時日がかなりかかる、膨大な数でございますから、こういったことを十分長官においても検討してもらわなければ、申請者の期待にこたえることができない、かように思うわけでございます。  そこで、先ほど話がございました次官通達の問題でございますけれども環境庁でも昨年の暮れに衆議院公害環境特別委員会で、一月末までに疑わしきは認定するという次官通達を具体化されて新しい認定基準を示したい、こういうふうに言われてから相当時間がたっておりますけれども、その後かなり煮詰めておられるようにわれわれは仄聞しておりますが、これについて具体的にどうなっておるか、明かしていただきたいと思う。
  204. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 あの問題につきまして、一つは、どのような患者さんを認定するかという問題でございまして、次官通達のその指定し得ないというものはどういう条件であるかということであります。その条件は、私どもは従来、この認定された実績があるわけでございまして、それを線にしていろいろな整理をいまいたしておりますし、また先生方とも現在、個別の段階でございますがいろいろ相談をいたしまして、何とかいままでよりももう少し円滑にいくようにいたしたいということで努力しておるわけでございます。  また、もう一つの問題は、疫学的な条件という問題でございまして、汚染魚の摂取という問題につきまして、やはりどういうぐあいに疫学的な暴露の条件というものを、もう少し具体的に、非常に強い暴露とか、そういうものを何か整理できないかということで、この点につきましては、県当局と鋭意作業を進めておるところでございます。  そういうことで、やはり先ほど申しましたように、医学を全然無視したようなことは、これはできないことでございますので、医学先生方と現在までは個別の段階でいろいろ御相談をしながら努力しておるという段階でございます。
  205. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 われわれが聞いているところでは、この次官通達に対していろいろ検討しておられる。いま一部答弁がございましたが、条件を整備して、県の要望どおり無審査で認定するというふうなところまで、いろいろ煮詰めておられるというふうにも聞いておるわけで、長官もこの点を十分また検討していただきたいと思いますし、さらに、この問題と関連して、チッソに対する経済的な援助という問題、こういったことが今後問題になってくるわけですけれども、この辺もいろいろと検討されると思いますが、その経済的な問題についてはどうですか。
  206. 小沢辰男

    小沢国務大臣 瀬野先生前段の質問は、私はよく先生の意向がわかるのですよ。ところが、後段になってまいりますと、審査をやらないでひとつチッソから確認書をもらっておいて、もう疫学的要件だけでひとつ全部認定してやれ、患者救済じゃないか、こうおっしゃるのですが、これはちょっとやはり私はできません。瀬野さんのせっかくのあれですが、これはかえって患者さんも反対があるようでございまして、そういうことは、いまの公害健康被害補償法ではとうていできないわけでございます。  それから、ただいまのチッソの方の経済的能力の問題について、いろいろ疑念なり不安を持つというようなことでございましたが、この点も、チッソの方は、私も会いまして、あらゆる努力をして自分の責任を果たすと言っておられますので、現在のところは、私はその点について、そんなに御不安にならぬでいいのじゃないかというふうに考えます。  ただ、先生の御質問、ちょっといま最後の点が、チッソに関連する部分が明確につかめなかったのですが、何かそのほかに、チッソのいろいろな経済上の問題点についての御質疑であれば、それを承ってからお答えさしていただきます。
  207. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間の関係でちょっとはしょりましたけれども、御承知のように、患者に対する補償ということになると相当になります。またチッソは、御存じのように、五井の工場が爆発したあとのいろんな再建問題もありますし、水俣のチッソにしても、今後水俣のヘドロ処理というような問題が起きてきますと、相当な金がかかるわけです。  そこで、銀行から借りますとか、先般来三十九億の問題で、原因者負担の原則からいろいろ厳しい批判もあるわけですが、私、いま一つの方法として、やはりいずれヘドロ処理も起きてくるし、また患者の数も多いのですから、これらの方たちに補償するためには相当な金も要る、こういうことが考えられますので、いまオイルダラーの問題等あるわけですが、そういったことで各省庁ともいろいろ連携をとりながら、そういったことの借り入れをしてやるというようなことも検討したらどうか。その点、あわせてひとつお伺いしておきたいと思うのです。
  208. 小沢辰男

    小沢国務大臣 チッソに外国の融資をするというようなことは、ちょっと今日の現状では考えられないと私は思います。五井の工場の復旧資金については、開発銀行に融資の申請をしているということは聞いております。  私どもは、一番大事なことは、企業がそういう健康被害を与える有害物質を排出した責任をとっていくということが、たとえ会社にとって経済的に非常な無理があっても、それをあくまでもやらせる、すなわち、負担を原因者負担として遂行させるということが、公害を発生させないようにする非常に大きな担保なわけでございますから、そういう面から考えますと、チッソに対して、患者補償その他、あるいは例のヘドロ処理の問題等で大変だろう、それじゃまあ国が融資してやろうか、簡単にそう言うわけにいかないわけであります。そういう負担があればこそ公害防止の重大な担保になっているわけでございますから、軽々には私はそういうことには賛成しがたい。しかし、五井工場の場合は、同じ会社であっても、これとは完全なる別問題の範疇に属するいわゆる工場復旧の融資でございますから、それがもし通産なり大蔵なりの方で軌道に乗って融資が行われるということになれば、それだけの資金的な余裕が出てくるわけでございますから、結果的に、患者の補償に対する責任を果たす意味で楽になる、その結果、患者さんの救済を私どもは念願とする立場から見て、結果的にはいいことである、こういうふうに考えておるわけでございますので、この点は、十分御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  209. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 PPP原則で原因者負担ということは、われわれも百も承知でございます。ただ、今後チッソがいろいろなことをやっていく上に相当な金がかかるわけで、金がないのにこちらでは促進しても、結局、金がなくてできなければどうにもならぬということにもなるので、そういった大所高所からいろいろなことを考えて、やはり地元の要望にこたえていくというふうにしていただかなければ困るという意味で、長官の見解をこういう機会にお聞きしたいということでございますから、そういったこと、また十分御検討いただきたいと思います。  もう一点お伺いしたいのですが、水俣病治療研究センターの設置についてでございますけれども、三木長官が総理になられる前に現地においでになって約束されまして、当時、次の年には計上をし、またこれを促進するということを言われました。確かに一億五千七百万が実現してこの推進を図ることになってまいりましたけれども、今後これをどう具体化していかれるのか。なお、センターの医師は国が責任をもって選定していただきたいというのが県の強い要望でございますが、この点、どういうふうにお考えであるか、お答えをいただきたいと思います。
  210. 小沢辰男

    小沢国務大臣 三木総理が、かつて環境庁長官の時代にお約束をされまして、また患者さんも非常な期待を寄せている問題でございますので、この点は、私どもとして今年度ぜひ実現したいという観点から大蔵省にもお願いをし、大蔵省も非常な協力をしていただいておるわけでございます。今年度の予算は、大体土地の確保に要する費用と、それから設計とかその他の準備費用でございます。  このセンターの性格等については、患者さんの要望等も十分聞いてやらなければいけません。また立地についても、県なり患者さんのいろいろ御意向等も十分反映していかなければいみませんから、予算が通りましてこれが確実になりました場合に、私ども十分現地と相談をしてできるだけ促進をしていきたい、かように考えております。
  211. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  212. 笹山茂太郎

    笹山主査 次は、田中武夫君。
  213. 田中武夫

    田中(武)分科員 まず環境庁長官、入浜権という言葉を御承知でしょうか。また、その他の政府委員はいかがです。
  214. 小沢辰男

    小沢国務大臣 法律概念としての入浜権については、私はどうもよく承知いたしておりませんが、そのような御意見を拝見したことはございます。
  215. 田中武夫

    田中(武)分科員 長官は、法律用語としては知らないけれども、そういう意見のあることは聞いておる。  それでは、少しさかのぼって法律論から入らねばならないと思いますが、民法二百六十三条に入会権というのがございます。これは言うまでもなく「共有の性質を有する入会権」という見出しで、「共有ノ性質ヲ有スル入会権ニ付テハ各地方ノ慣習ニ従フ外本節ノ規定ヲ適用ス」すなわち所有権の規定なんです。そこで、これはもう説明の要はないと思うのだが、山林などで薪や干し草、あるいは竹、キノコ、まあこのごろマツタケが高いからマツタケは別だろうが、ワラビやツクシ等々を取ることですね、これが慣習的に行われてきている場合を指さしておるわけなんです。これは何も山林に限ったことではない。いわゆる海岸、海においても、海水浴とか貝取りとかあるいは魚釣り、散歩等々がやはり慣行的に行われてきた。その場合は、まさに民法二百六十三条の入会権と同様の物権が、あるいは所有権の章における共有の法理といいますか、条文が適用せられる、そういうことには間違いないと思いますが、これは法務省がいいですか、ひとつ自信のあるところから御答弁をいただきます。
  216. 古館清吾

    ○古館説明員 まず、民法二百六十三条の「共有の性質を有する入会権」といいますのは、どういうものを言うのかということでございますけれども、この入会権と申しますのは、これは二百六十三条と、二百九十四条の「共有の性質を有しない入会権」この二種類が民法に規定されておるようでございます。  入会権と申しますのは、ただいまもお話しのように、徳川時代からの慣行に基づきまして、一定の部落民が共同して、お話しのような山野等に入りまして、雑草を取ったりまぐさを取ったり、あるいは薪炭用の雑木を取るという慣行があったわけでございます。それを民法で保護しようとしたのが二百六十三条、二百九十四条の入会権の規定のようでございます。  二百六十三条と二百九十四条の違いは、当該山林原野等につきましてその共同体が、その部落が所有権を有している場合には、つまり原野の地番について所有権を有している場合には、二百六十三条の「共有の性質を有する入会権」というふうに言われ、また、その部落がその山林原野地番につきまして所有権を有しないという場合が、二百九十四条の「共有の性質を有しない入会権」と言われておるようでございます。そういうことになりますと、結局、入会権と言いますのは、その権利の帰属主体でございますけれども、そういった収益権の管理はまず部落、これが管理権を持つわけでございます。その管理権に基づきまして、部落民が共同して収益するというのが入会権の内容のようでございます。  そういたしますと、ただいまの御質問の趣旨でございます。海へ行って泳いだりあるいは海で魚を釣るということが、当然二百六十三条の入会権になるというふうに言えるかといいますと、私は、大変疑問があるように思われます。
  217. 田中武夫

    田中(武)分科員 共有の理論かあるいは準共有の場合かは別といたしまして、私は、何も浜に対して拒否する理由はないと思う。これは後ほど論議をいたします。  実は、この入浜権というのは、兵庫県の高砂市で住民運動として起こってきておるわけなんです。播磨の海岸は有名な白砂青松といいますか、白い砂青い松の名勝として、昔から謡曲の「高砂」でうたわれておるような相生の松、あるいは曾根の松等々の松の名所であります。ところが、最近海岸を埋め立てて多くの企業が進出をして、その様相は一変し、白砂青松の海岸には、進出してまいりました各工場の厚いコンクリートの岸壁が並んで、海水浴どころか、潮干狩りもあるいは散策等もできないような状態であります。しかし、数年前まではそういった海で泳ぎ、潮干狩りをし、そうしてその付近の人たちが楽しんだ場所なんです。ところが、今日それがいま言ったようなことで奪われておる。しかも、高砂市と言えばぴんと来るのは、おわかりのように、かのPCBのメッカ鐘淵化学を初めとする、いわゆる公害企業がたくさんある、こういうことで、環境保全の観点からも許されないことだと思うのです。  そこで、時間の関係で、法律的な議論はどこまでやれるかわかりませんが、そういう状態につきまして環境庁はどのように考えるか。現在、高砂市は人口七万六千三百、いわゆる中小部市でありますが、この中から、いわゆる特別なイデオロギーとかあるいは政党とは関係のない、公害を告発する高砂市民の会、こういう純粋な市民運動、住民運動としてこの運動が起こってきたという事実等々について、環境庁はどのように考えられますか、お伺いします。
  218. 小沢辰男

    小沢国務大臣 法律の専門家であります田中先生に対しまして、私どものような者が法律論争をするような大それた考えはありません。  ただ、権利あるいは法律論とは別に、政治姿勢として、そういうような方々の立場を考えながらいろいろ環境行政をやるというのが私の立場じゃないかと考えておりますので、そういう蔵本的な考え方だけを申し上げておきます。
  219. 田中武夫

    田中(武)分科員 この問題につきまして、この公害を告発する市民の会は、高砂市長初め各企業に対して、せめて散策というか、散歩道ぐらいはつくれ、こういう要求を掲げていま運動を起こしております。それに対して市長初め企業側は、海岸に出る道がない、あるいは利用者と工場の安全が保てない、あるいはもう少し時間をかしてもらいたい等々の理由で、明確な回答を避けております。お隣の加古川市長が最近になって、埋立地の近くに、失われた砂浜を造成してはどうかというような考え方を打ち出したということも伝えられておるわけでございますが、いずれにせよ、同じような環境にある兵庫県はもちろん、福岡、山口、広島、岡山、香川、いわゆる瀬戸内海岸あるいは千葉のコンビナートなどの地域住民の共感を呼んで、その輪は広がり、全国的にこの運動が盛り上がってくることは明らかであります。そういうことに対して環境、通産、法務、自治、それぞれの立場からどのように対処をしようとしておるのか、簡単にお伺いをいたします。御答弁ください。
  220. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も新聞を拝見しまして、公害を告発する会の皆さん方の要求に応じて、市長あるいは知事等が新しく、河口で離岸堤を設けておりますその内側に砂を埋めて、ひとつ砂浜を新たに回復しようじゃないかというような考え方を持っておられて、そういう点は、都会の町でもそうでありますが、緑を回復する運動とか、あるいはいま言ったような砂浜の復旧をやるように、いろいろ行政庁が考えているということは、私どもにとっては大変いいことだと思っております。  ただ、そのために特別に道路をつけて、そのコンビナートとの、災害の問題が起こらないようないろいろな配慮をしていただく必要はあろうかと思っておりますが、基本的にはそういう、いわば緑でいいますと植生度を回復してもらうなり、あるいは砂浜の回復をやるなりというような事業については、大変結構な話じゃないか、かように考えておるわけでございます。
  221. 大薗英夫

    ○大薗政府委員 お答えいたします。  この入浜権の問題につきましては、新聞紙上で拝見しておりまして、私どもまだ具体的に検討を申し上げておりませんので、確定的なことを申し上げられないのでございますが、通産省の立場といたしまして、工場が地域にある以上は、地域住民との融和を考えながらやっていくというふうなことは当然やるべきことでございまして、そのようなことで、私どもも、もし作業上差し支えがなければ、緑地でありますとかあるいは運動場、そういうものはなるべく一般に開放したらどうか、こういうふうな方針で対処をしております。いま申し上げましたような基本方針で、この問題は対処していきたいと思っております。
  222. 田中武夫

    田中(武)分科員 それでは、法務省に御答弁をいただくことになろうかと思いますが、この告発をする会の入浜権主張の根拠というか、その一説を読んでみます。「元来、海は万民のものであり、地域の住民は自由に海岸に出て、潮くみ、流木拾い、貝採り、釣魚、ノリ摘みなどを行ってきた。山でいえば入会権のようなもので、法律以前の人権、生活権だった。市民は憲法でいう、よい環境もとで生活できる権利の一部として、海岸を散策し、釣り、水泳ができることなどが保障されてよい。」こういったのが入会権にちなんで入浜権と言っているわけで、先ほど法務省の答弁の、いわゆる入会権即入浜権とはならないとしても、ここで言っておるように、私もそう思うのですが、これは基本的な天賦の人権である。一体海はどこのものだ、だれのものなのか、憲法で保障せられた生活権としてそういうことは保障すべきではないか、そのように思うのですが、その点について法務省の見解はいかがです。憲法を踏まえての答弁を願います。
  223. 古館清吾

    ○古館説明員 憲法は国の基本方針でございまして、その法律関係につきましては国民と国家との関係、地方公共団体と国家との法律関係についての基本原則だと思います。私どもは、私人間の法律関係についての法律でございます民法を所管している官庁でございますので、民法サイドから答弁させていただきたいと思います。  ただいまのお話にもございましたように、入浜権というものの性質、内容につきましてお話しになったわけでございますが、私も、入浜権という言葉は、きょう初めて承知したわけでございます。お話しのような内容でございますと、主張されている方自体も、権利以前の権利であるというふうにおっしゃっていることからも推測されますように、やはり私法上の権利としては非常に問題がある。入会権の一種と考えるにしましても、それは非常に問題があるということから、憲法上の基本的人権の考え方を前提にして御主張なさっているのだろうというふうに考えられるわけでございます。  先ほどもお話しいたしましたように、私ども民法サイドから申しますと、ただいまの入浜権といいますのは、その要件、効果、どういう場合にどういう内容の効果がだれとだれとの関係で認められるかということがよくわかりませんものですから、したがいまして、それが入会権の一種であって、そして法律上保護されるべき権利であるというような御見解には、にわかに賛成できないように考えられます。
  224. 田中武夫

    田中(武)分科員 したがって、先ほど来言っているように、この告発する会は、市長及び進出の、一々読み上げませんが、六企業に対しましてそういう要求を出しておるわけなんです。  そこで、先ほど申しましたが、七万六千三百人の高砂市の中で、この会が五百世帯を対象に、昨年夏、こういう環境によって市民の自然利用失費がどのくらいあったかということを調査した結果、プールを使用する、それが一千七百七十三万八千円、よその海水浴場へ出かける、本来ならそこで済むものをよそへ出かける、こういうことの失費が七千二百七十四万三千円、また釣りのためによそへ出かける、これが三千四百五十二万三千円、自然を求めて旅行に出たというのが三億九千五百三十万九千円、合計いたしまして五百世帯で五億二千三十一万三千円、そういう出費をしている。こういうことになりますと、これはやはり当然どこかが補償すべきである、また補償せられるべき性格を持つ出費である、こういうことが言えると思います。  もうあと十分ありませんので、ここで法務省との間に民法をめぐって、入会権と入浜権の関係等々は申しませんが、しかし、何も法務省は民法だけを管轄しておるのではありません。かりにそういうような埋め立て、これは実際は県がやるんでしょうが、埋め立てをした、そういうことで、国を相手に具体的な訴訟でも起こりかねないと思います。  あと五分というのが参りましたので、そこで改めてもう一度皆さん方に確認だけをしておきます。この入浜権の主張は、今後も幅広く、市民、住民運動として大きな輪となって広がっていくであろう。行政的に納得のいかない、解決のない場合は具体的な訴訟となって、あるいは訴訟まで発展することも考えられる。  そこで、まず環境庁は、環境保全ないし瀬戸内海環境保全臨時措置法等々を踏まえ、あるいは通産省は工場立地法等々を踏まえ、企業に対して、あるいは自治体に対して、自治省も来てもらっておると思うのですが、どのように指導するのか、こういう点を、自治省、ことに環境庁、通産省、そして法務省も含めて御答弁をいただきたいと思います。わずか三十分でございますので、この程度で私の質問答弁を聞いて終わります。だがしかし、何らかの機会を見て議論を詰めていく用意のあることだけを、法務省、宣言をいたしておきます。
  225. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変むずかしい問題でございまして、どう答えていいか、突然の御質問で私も迷っているわけでございますが、白砂青松の海岸があった、それがコンビナートといいますか、企業の進出によってつぶれた、そのためにレクリエーションの費用が非常にかさんだ。いま承りますと、一世帯百万円のレクリエーション費を使い得る所得というものは、相当のものだと私、非常に感心したわけでございますが、それが直ちに白砂青松の散策なり、そこで海水浴をやったものと結びついて、その支出というものが、それにどの程度どういうふうに結びつくか、これは私もどうも法律論はよくわからぬものですから検討しなければいけませんが、私ども環境庁としては、やはりそうした権利とか法律論とは別に、政治姿勢として、やはりその住民の方々ができるだけ砂浜を回復したい、あるいは散策のためのいろいろな環境を回復したいということにつきまして、できるだけの御援助を申し上げるという政治姿勢で臨むべきものでございますので、どうも財産被害というふうに見るのか、あるいはどういうふうに見たらいいのか、突然の問題で、よくまだ十分検討が進んでおりませんし、理解も行き届かぬ点が、これは各省それぞれ同じじゃないかと思いますが、そういう意味で、よくひとつ勉強さしていただきたい、こう思っているわけでございます。
  226. 大薗英夫

    ○大薗政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、地域の中に企業が溶け込みまして産業活動をやっていくということは当然なことであると思いますので、企業が地域の住民の方々と十分納得のいくような話し合いが行われるというふうなことを、通産省としても希望いたしております。
  227. 林忠雄

    ○林政府委員 美しい生活環境の保存を求めるという住民の御希望というのには、大変共感を覚えるわけでございます。  それで、それを達成しようと努力される市長あるいは市議会、それぞれの地方団体の当局も住民の代表でございますので、一〇〇%の努力をされるだろうことを期待し、事態の円満な解決を期待して、一つの自治活動の営みとして、自治省は見守りたいと存じております。
  228. 古館清吾

    ○古館説明員 先ほどお答えいたしましたように、いわゆる入浜権というのは、私は権利として認めることはできないというように考えておる次第でございます。したがいまして、市民が海水浴ができないと言ったからといいまして、当然権利侵害という問題も起こらないだろうと思います。そういうことから考えますと、それについての損害賠償責任というもの、問題になり得ないだろうというふうに考えます。
  229. 田中武夫

    田中(武)分科員 ちょっと一言だけ。日照権というのがいま問題になっておる。これも生活権として初めはあまり議論にならなかった。ところが、いまではこれが大きく問題になっておる。この入浜権についても、損害賠償の対象になるとかならぬとかいうちっぽけな民法の枠の中だけで考える、そういう——これは入浜権に対して入会権を出したから、そういう答弁であろうが、そういうことでなく、もっと広い立場から考えてもらいたい。  現在の民法、これは御承知のように、十八世紀時代のフランス民法を母法として考えられた、かたかなの明治時代の民法です。したがって、時代が変わり、あるいは憲法も変わった今日、もう少し事情変更の原則等を踏まえて、前向きな議論のできるような法務省になることを要望する。改めて法務委員会等で議論いたします。終わります。
  230. 笹山茂太郎

    笹山主査 次に、寺前巖君。
  231. 寺前巖

    寺前分科員 きょう私は、国立大学の演習林をどのように保護していくかという問題についてお聞きをしたいと思うのです。  いま、全国的には国立大学の演習林というのは、東京大学と北大が十万ヘクタールほど持っておって、これは一番大きいと思うのです。京都大学と九州大学が一万ヘクタールを持っておって、その他の大学で一万ヘクタール。ですから、大部分が東京大学と北大で持って、それに京大と九大が若干持っているというのが国立大学の演習林の姿だと思います。  私の住んでいる京都に、京都大学の演習林がございます。滋賀県と福井県と京都三府県にまたがるところ、京都からちょうど八十キロメートルほど離れたところに、昔の名前で知井村というところがありますが、そこに四千百八十ヘクタールにわたる京都大学の演習林があります。芦生演習林、こう言います。  ところが、この演習林というのは、地元の皆さん方からの借地で、大正時代にお借りした演習林で、九十九年の期間お借りをする。     〔主査退席、木野主査代理着席〕 初めの四十年の間に造林を進めて、後から伐採をやって、その売ったお金は国と地元で分けようじゃありませんかという契約で進んできておりますから、いまでは、もう左十年過ぎたところの段階に来ているわけです。  ところが、この演習林が次々と皆伐されていくという事態で、いまではこれが半分ほど立木が切られていっている。さあそこで、各方面で話題になり始めております。  第一に、ここはもちろんのこと演習林ですから、京都大学の農学部、そこの演習林として、こういう伐採の方法で演習林をどんどん切っていくというやり方でいいのか、こういう問題が一つ出てきます。  それからまた、この地域は、京都でも残されたところの原生林の地域になってきているわけです。自然環境保護の法律の立場から言うと、千ヘクタール以上のところ、天然林があるところ、あるいはそこにある動植物の繁殖の状況、そういう要件で保護する対象にするということが法律の中にありますが、まさにそれに匹敵する地域として、これは非常に重要な内容を持っていると思うのです。天然杉、ブナの木、ミズナラを主とする温帯性天然林、原生林が保存されておって、林学上全国でも珍しいというふうに言われておるわけです。すでに一九三〇年から一九四一年時分、岡本省吾という先生が、ここに八百六十種余りの植物があるということを貴重なものとして指摘しています。一九四一年に中井博士が、植物学を学ぶ者は一度は京都大学の芦生演習林を見るべしと紹介をしておられるぐらいであります。それは動物の分野においても、カモシカ、シカ、キツネ、タヌキ、テン、ムササビ、イタチ、クマ、ツキノワグマ、ウサギ、サル、イノシシ、リス、ヤマネ、いろいろなものがいる。あるいは鳥類においてもコマドリ、サンコウチョウ、ヤマセミ、いろいろおります。  ですから、そういう意味において、一九六八年に日本生態学会関西支部が、芦生原生林の保存ということを勧告しておりますし、一九七〇年には国際生物学事業計画、陸上生物群集保護研究班が、芦生を保護地域の候補地として選定するという動きまであるわけです。そして一九七四年、京都野生動物研究会と京都植生研究会が京都府の委託調査を行いまして、芦生の貴重な動植物の保護をまた同じく勧告をいたしております。私はこういう意味からも、この伐採が進んでいることに対して憂慮をするものです。  憂慮すべき第三の問題は、今度は治山治水の問題です。京都府の日本海に面するところの中心の河川は由良川という川であります。この由良川の一番の源流がここの山になっているわけです。そこで、原生林が半分も切られていくということになったならば、ここの保護は一体どうするのだ、これは治山治水の関係からも大きな問題ではないか、私はこういう立場から質問をしてみたいと思うのです。  そこで、第一番目に直接の所管庁である文部省、一体この京都大学の演習林というものに対してどのように評価をするのか、私が提起している評価の問題というのは、取るに足らない評価だとおっしゃるのかどうか、これを聞きたいと思います。  第二番目に、伐採を行う場合に、あくまでも大学の演習林である、したがって、伐採というのはやはり学術目的に沿うようにしなければいけないのじゃないだろうか。次々とこのように切っていくということについて、私は疑問を持つのだけれども、伐採というものをどのように考えるのか。  第三番目に、もう半分近くを切って、残っている原生林は二千ヘクタール余りです。ここに今度入っていくということになったら、奥地に向かってまた林道をつけなければならないから皆伐が行われていきます。みんな伐採するという問題が行われていきます。これ以上皆伐方式を引き続いて続けていくのか、原生林をもうこの程度でしっかり守らなければならないとおっしゃるのか、第三番目に、原生林をもうここで守るという立場をとられるのかどうかということをお聞きしたいと思うのです。  第四番目に、このように皆伐方式というものを、もうこれ以上とってはならないのではないだろうか。いままで切ってきたところの範囲内において、選ぶところの択伐で、若干の立木の処理というのはあると考えられても、もう限界として見なければならないのじゃないか。したがって、第四番目に、もう皆伐というのをおやめになったらどうだろうかという問題です。  第五番目に、地元との間に、これは九十九年の契約に基づいて行われたものであります。そのときの話によると、これはちゃんと造林をやって、四十年たったら切ってやっていきましょうという話でした。ところが、地元の皆さん方は、その点を十分果たしていないではないかと言う。したがって、いま造林が十分でないという事態の中にあって、もともとあるところのこの木をどんどん切って、山分けといいますか、配分をやっている。年平均にすると一千万円前後のお金をここで分けてきているわけですが、四十九年あたりあるいは四十八年あたりは二千万円からのお金になっています。とすると、これはかなりの段階にありますから、したがって、そういう意味においては、一方で伐採をやめるという事態がもしも行われるということになったら、契約との関係において、従来渡しておったお金の分というのは、それじゃ一体どのように保護するのかという問題が、地元との関係で生まれてくると思うのです。この地元との関係の契約の状況については、どのようにそれではするつもりかという問題が出てきますけれども、これに対する御見解を聞きたい。  そして第六番目に、そういう事態の中から、関西電力があそこに発電所をつくるという計画を数年前にいたしました。一時はどうぞおつくりくださいということもあったようですが、地元の中から反対の声も起こり、京都大学の方でもそこをダムにすることはお断りだという態度を示されたようであります。保護という問題が一方で出てくると、次には売ろうかという話も契約の更改をやったときにはまた出てくる問題じゃないか。また、現にそういう声も一部にあります。とすると、あの残されたところの数少ない、京都においてはただ一つ、関西においても非常に珍しいあの自然原生林を、一体文部省としてはそういうものに提供してよいと考えられるのかどうか。私はこの六点について、文部省見解を最初に聞きたいと思うのです。
  232. 瀧澤博三

    ○瀧澤説明員 お答えいたします。  演習林に対する評価というまず第一点の問題でございますが、御指摘のように、芦生の演習林はかなり面積も広大でございますし、単に林学関係の教育、研究の場というだけではなくて、自然環境の保全、あるいは治山治水、あるいは水源の涵養と申しますか、そういう公益的な面におきましても非常に重要な意味を持っていることは、御指摘のとおり、全くそのとおりであろうかと思います。  それから第二点の、従来の京都大学の演習林の伐採の問題でございますが、大学の方から事情を聴取いたしました範囲内でお答え申すことになりますが、私ども調査いたしましたところによりますと、御指摘のように、総面積の約半分に当たる二千三百ヘクタールほどについて伐採が行われております。これは、この演習林始まってから今日までの総面積でございますが、そのうち、いわゆる皆伐方式がとられたのはごく一部かと思います。約三百ヘクタール、二二%ほどであるというように理解しているわけでございます。したがいまして、大半はいわゆる択伐方式でございまして、自然的な再生が期待されている。それから皆伐方式の部分につきましても、その後、現在までのところ大部分について植林が行われているというように聞いているところでございまして、現状におきまして、治水上の問題等につきましても、大きな支障があるということはないのではないかというふうに理解しているわけでございます。  それから、これからの方針といたしまして、従来、何と申しますか、演習林の施業上、伐採期に来た面積が非常に多い年度、少ない年度というのがございまして、各年度によって非常に伐採面積の多い少ないがあるわけでございますが、これからの予定といたしましては、伐採面積はせいぜい十ヘクタールほどにいたしたいという大学の方の方針でもございます。それから、伐採の対象としない面積、これは従来五百ヘクタールほどというふうな方針であったわけでございますが、これからはそれを二千ヘクタールほどに拡大したいというようなことも言っているわけでございまして、自然の森林を守るという方針につきましては、大学もそういう方向に沿って今後やっていきたいというようなことを申しているわけでございます。  それから、第四番目の御指摘になりますか、その伐採の方式でございますが、先ほども申し上げたことの繰り返しになりますが、皆伐方式は今後はなるべくとりたくないということでございます。皆伐方式をとるか、それから択伐方式をとるか、これはかなり専門的な事柄でもございまして、一概に言えないかと思いますが、ごく常識的に考えまして、択伐方式の方がすぐれた方法であろうかと私どもも理解するわけでございまして、大学としても、これからの問題といたしましては、そういう方式でやってまいりたいということでございますので、この辺も御了承いただきたいと思っておるわけでございます。  それから、いわゆる分収契約の問題でございますが、従来も各年次によって伐採の面積がかなり開きがあるということで、地元の方に差し上げられる金額というものも、かなり多い年、少ない年というのがあるわけでございまして、四十六、七年ぐらいはかなりその辺の収入額も少なかったという実態もあったようでございます。これからの問題といたしまして、伐採の面積が非常に少なくなってくるということになりますと、分収による収入も、地元の地権者の方々といたしましても非常に少なくなるわけでございまして、この辺に問題の根本があろうかと思いますが、現在私ども聞きますところでは、いま地元地権者の方と、それから大学側とで、この辺の話もいろいろしているようでございます。私どもといたしましては、早急に地元の地権者の方々の御要望も入れて、十分に相談が行われるように希望するわけでございますが、その辺の結果を待ちまして、私ども文部省といたしましても十分また検討さしていただきたいと思っているわけでございます。  それから、発電所、ダムの建設の問題でございますが、かつて芦生演習林の地区内におきましてそういう計画があったということを聞いております。その際には、いろいろ問題もあり、取りやめになったようでございますが、その後の問題といたしまして、現在そういうお話は聞いておりません。大学当局の方におきましても、まだそういう話は聞いていないということでございます。もちろん演習林の立場からいたしまして、演習林の中にダムができるということは決して好ましいこととは考えておりません。これは具体的なそういう話がもし持ち上がった場合には、教育研究立場からもまた十分慎重に考えなければならない問題かと思っております。
  233. 寺前巖

    寺前分科員 昨年の二月二十日付で、地元の財産区の会長大牧覚太郎さんから大学の演習林の林長さんあてに意見書が出ているのですよ。その意見書の立場は、私がさっき言ったように、この芦生の演習林というのはきわめて重要な性格を持っているという三つ指摘をやはりやっているわけです。この立場観点に立つならば、四千二百ヘクタールのこの山林は、全国的にも非常に重要な問題だから、土地所有者として納得のいく代償を取得できるよう契約の更改を御高配願いたいという文書が出ておる。ところが、いまだに御返事はいただいていない。一年以上たっているのに、一体これをどうするつもりか。  いまの立場が明確になったら——あなたはここでおっしゃった、二千ヘクタールはもう対象にして保護したい、そういうことですね。間違いないですね。五百ヘクタールであったものを二千ヘクタールを対象にして保護したいというのですから、そうすると原生林はもうこれ以上切るという事態にはしないようにしていく、従来切ったところの分野の中から択伐方式をとっていくという話になると思う。私はそういう態度はいいと思う。  そうすると、そこで、次に起こってくる問題は、この契約問題というのをどうするのか。昔しっかり植林をしてくれなかったために、それがいま木を切ってやるというわけにいかなくなっているではないか。毎年いただいておったところの一千万円平均の、昭和三十七年以来切ってきたところのとれらの状況について、一体どういうふうにやってくれるのか、この問題で一年以上も放置されたままにある。私はいつまでもほうっておいたらいかぬと思う。これが出されて、四十九年また切っているのだから、お金のために。お金のために木を切ってしまわなければならない、そこに不幸の原因があるじゃありませんか。そうしたら、そこのところをどうするかという具体的積極策を私は文部省として積極的に出さなければいけないと思う。この点どういうふうに出されるつもりなのか。土地を買い上げてしまうと言ったのは、買い上げて、そうして責任を持って処理する、こういうことをやるというのだったら、やるとはっきり言わなかったら、私は進まないと思う。もう一度この点についてはっきりした態度を聞かしてもらいたい。
  234. 瀧澤博三

    ○瀧澤説明員 この分収契約につきましては、非常に古くからのいろいろ経緯のあるお話であろうかと思いまして、私ども、従来のいきさつ、いままでの経緯等につきまして、必ずしも十分のみ込んでいない点があろうかと思います。少なくとも法律上の契約の問題としては問題がないということかと思いますが、最近の事情の変化に応じまして考えなければならない点があるかないか、この辺につきましては、なお大学の方からも十分に事情を徴しまして、また慎重に検討させていただきたいと思っております。  いずれにいたしましても、四千ヘクタール以上という非常に広大な面積でございまして、これを買収等の問題も含めましてどうするかということについて、非常にむずかしい問題でございまして、いまにわかに私の立場として申し上げられることではございませんので、その辺御了承いただきたいと思います。
  235. 寺前巖

    寺前分科員 大学の中でも、一九七一年十一月二十四日、芦生演習林は買収するようにしたらどうかという、ちゃんと意見書も出ているのです。もうこれ以上見るに忍びないということをやはり指摘しているんですよ。七一年にこれが出されているのに、もう三年たっている、地元が出しているのは一年も前に出ている、それがいまだにこのような状態で伐採だけは続いている。こういうことで、大学を管理しておる人たちが一体自然のこの環境をどう見ておるのか、私はこのままやっていくことは重大な問題だと思いますよ。このままいつまでも放置することは私はできないと思う。文部省は責任を持って速やかにこの問題について解決するかどうか、これを最後にひとつ聞いておきたい。  次に、環境庁長官にお聞きしたいのですが、先ほどからお話を聞いていただいたとおり、同じ国の中の大学の演習林が、こんな扱いでもってもう事態は三年を過ぎてきている。切り出したのは三十七年、大変なせっかくのところを、原生林の半分をばっと切ってしまった。これはえらいことだと思うのです。いまも文部省の方はお説のとおりのようなことだと言って、その地域について評価してくれておる。そんなりっぱな地域なのです。私は環境庁としても、この問題について調査をしてもらう必要があると思いますよ。環境庁としてこれは一体どういうふうにやられるつもりなのか。  地元の人の中に、あるいは大学関係者の中にも、せっかく自然保護の法律ができた、指定地域はまだどこも発表されていないのだが、ここは指定地域にするのであろうかという声が出ています。だけれども、指定地域にしたら、そこでは切ってはならないということだけであったら、これは地元との歴史的な関係も解決しない。環境庁として、こういう問題に対してどういうふうにやったらいいのだろうか、自然環境を保護する立場から見て、環境庁としてここのところをどう取り扱ったらいいかということ、それからどういうふうに処理したらいいだろうか、経験なんかも含めて、示唆するにふさわしい内容があったら私はお聞きをしたい。すぐ御答弁を願いたいと思うのです。
  236. 小沢辰男

    小沢国務大臣 総じて、大学の演習林についての自然保護のあり方については、これはやはり従来文部省あるいは大学任せでございますので、これはそういう観点から十分検討をしなければならないと、私、いま問題提起を受けて感じたわけでございます。非常に貴重な自然林であるようでございますから。  ただ、問題は、地元の方が買い上げにもどうも余り賛成をしない、そうして一定の、つまり四十八年は千五百万収入があったが、四十九年は七百万に減ったというようなことで、そういうようなことでは当初の目的、契約の趣旨から見ても、この芦生演習林について権利を持っている方々が納得しない、なかなかめんどうな問題だと思います。  たとえば、それでは国定公園の一部買い上げをやっているような問題を将来拡大いたしまして、これはことしは国定公園の特別地域だけになっているわけでありますが、またさらに来年も地域的にそういう大事な自然林を保護するための買い上げ制度をつくるかと言いましても、地元がどうもそれについて、なかなかいまの現状ではうんと言わないということでございますから、と言って大事な、先生がおっしゃいましたような状況の、貴重な自然保護の対象地であるようでございます。したがって、文部省の方と私どもよく相談をいたしまして、どうしたら一番円満に解決がいくのか、そうして自然保護に値する地域だけは残していけるのか、こういう点を中心にしながら、文部大臣とも私、よく協議をして研究をしてみます。その結果で、どういう措置をとるか、いろいろ決定をしていきたいと思いますので、きょうのところはひとつこれぐらいにしておいていただきたいと思います。
  237. 寺前巖

    寺前分科員 大臣から積極的なお話がございましたから、いつまでも放置してひどい状態にならないように、積極的におやりくださることを私は最後に要望をしておきます。  ただ、いま大臣は、地元は買い上げに対して否定的な態度であるようなお話でしたが、そうじやないのです。国がお買い上げになるということになるならば、それはまたそれで相談はしましようという態度もあるのです。決して否定だけじゃないのです。契約の更改をやりたいということを提起しておられるのですから、その点については十分地元と積極的にお話しくださいまして、この三つの性格を持っている、非常に重要な役割りを果たすこの演習林を保護するために、ぜひとも積極的に考えていただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  238. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、小濱新次君。
  239. 小濱新次

    ○小濱分科員 小沢環境庁長官にまずお尋ねをしていきたいと思います。  神奈川県湘南海岸は、汚染が大変進んでおります。片瀬、江の島海岸ということで、新聞などでその状況が報道されているわけでございますが、その状況はどうなっているのか御存じであろうかという、そういうお尋ねをしてみたいと思うわけでございます。私も近くに住んで見ておるわけですが、非常に悪いわけです。このままではますます汚れた死の海になる、そういうおそれが十分あるわけでございます。  御存じのとおり、江の島周辺は、東洋のマイアミビーチと言われるほど、国民レジャーとして、夏の最盛期には一日百万人といわれる、全国でも有数な海水浴場であるわけです。遊泳場とも言われておりますが、この対策を早急にとらなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。夏になってからではもうどうにもなりませんが、いまのうちに何かその対策をと、心から念願をしておるわけでございますが、相模湾の汚染の状況と、環境庁の定める水質基準におさまっているのかどうか、その関係を示していただきたい、このように思います。
  240. 大場敏彦

    ○大場政府委員 片瀬の海岸、東海岸とそれから西浜とございますが、どちらかといいますれば、やはり東浜の方がよい状態でございます。東浜、西浜を通じまして不適という状態ではなくて、やはり一応海水浴場としては、大腸菌群数あるいはCOD、油分等の関係から適当である、こういう範疇には入っております。しかし、これは流入する主な河川、これは先生御存じのとおり境川あるいは引地川がございますが、それらの河川の汚濁はかなり深刻な状態になっております。  境川について申し上げますと、環境基準は川につきましては六ランクに分けているわけでありますけれども、その五番目、つまり悪い方から数えて二番目でありますが、そのDという環境基準になっているわけですが、それについても、四十八年度の水質の検査では、九一・七%の検体がアウトになっている、不適合になっている、こういった状態でございます。環境基準にはなかなかほとんどが適合していない、こういった状況でございます。  それから引地川、これもやはり環境基準としてはD類型、つまり悪い方から数えて二番目の類型に属するわけでありますが、これにつきましても約半数が適合していないというような状態で、この片瀬海岸に流入する主な河川の水質の状況は、かなり深刻であるというふうに率直に申し上げざるを得ないわけであります。したがいまして、それが片瀬の海岸にいろいろな大腸菌あるいはCOD等の影響を与えているということは、残念ながら事実でございます。
  241. 小濱新次

    ○小濱分科員 環境庁長官、お聞きのとおりであります。  そこで、もう一点建設省に伺っておきたいと思いますが、その対策を進めるために、市町村の行う公共下水道で果たして浄化が可能であろうかどうか。最大の原因はここにあると、こう見ているわけですが、この点についての久保下水道部長からのお答えをいただきたい、こう思います。
  242. 久保赳

    ○久保説明員 ただいま環境庁からもお話がございました、境川系統が環境基準に達していないというお話でございますが、その原因は相当多岐にわたるかと思いますが、この流域は主として都市排水が多いわけでございますから、下水道を完全に整備することによって環境基準の達成は可能である、かように考える次第であります。
  243. 小濱新次

    ○小濱分科員 さらにお尋ねしたいのですが、できるということでありますから、できるというなら、その裏づけをまず示していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  それで、私の方といたしましては、境川の流域関係の市町村は六市二町もございます。最近の地方財政の危機という、その原因は総需要抑制によるわけですが、公共事業が大幅におくれている現状から見まして、また、ここの公共下水道の場合はそれぞれの市町村の計画により進めるため、六市二町を貫く境川では、既定の水準を保つことは公共下水道では不可能ではないか、こういうふうにも見ているわけです。私の方としては、当然、これは海水浴場を守るためにも、一市町村の公共下水道の整備ではなくして、流域単位で行う流域下水道によらなければならない、こういうふうに考えているわけですが、この計画についてはどういうふうになっておられますか。地元でも大変いろいろと努力をしておるということを伺っておりますが、下水道部長からお答えをいただきたいと思います。
  244. 久保赳

    ○久保説明員 境川流域の下水道計画の問題でございますが、これにつきましては、冒頭に先生指摘のように、江の島海岸付近が海水浴場としても非常に重要な水域でございますし、その江の島海岸に対する流入負荷量がかなり境川が多いという判断から、昭和四十六年度に境川流域全体のいわゆる流域総合下水道計画の立案が適当と考えまして、神奈川県に調査費の補助を建設省としてはいたしております。  その調査の結果、神奈川県が関係市町村と協力した上、一応の調査の案が出たわけでございますが、関係者間で完全に意見の一致というところまで進みませんで、現在のところは関係者間の意見の一致を得るような努力を神奈川県がしておるというふうに聞いております。したがって、事業計画として事業を実施するという計画にはまだ至ってないわけでございます。  一方、その後神奈川県としては県全体の新しい総合計画を立案中でございますので、その県全体の新しい総合計画に境川流域の下水道計画を適合させる必要性が出てまいりましたので、それとの調整に時間がかかっておる、こういう現状でございます。  なお、建設省といたしましても、御説明しましたように、流域総合下水道計画の立案を県に指示をしている関係もあり、早期にこの計画がまとまることを待っておる、こういう状態でございます。
  245. 小濱新次

    ○小濱分科員 御存じのように、この計画は、横浜から落ち込んでいるところの柏尾川がございます。それであの密集地帯から柏尾川に流れ込んだ汚水が合流して境川と、こう言っているわけです。もう一本、引地川がその隣に通っているわけです。この三本をたどって見ると、延々六十二キロという長さになるわけで、源はこれは町田市になっています。そういう関係で六市二町というものがあるわけですけれども、相模川は流域下水道を建設中ですから、相模原市はそこへ落とす、町田の方では御存じのように鶴見川の上下に分けた処理場に落とす、こういうことですね。  そういうことですから、四市一町という形にいまなっているわけですけれども、この四市一町の汚水が境川、引地川から江の島に落ちている。これはどうしても流域下水道を建設しなければならないということですが、いろいろと陳情、請願をやってきた。また、県へも頼んだ。しかし、県からはいまのお話のような新しい総合計画が出てこない。出てこないものを、建設省本庁としてはどうにも扱いができないではないか、こういうことになるのであろうと思いますけれども、何とかこれを整備しなければ、いま申し上げたように江の島のあのきれいな海を保つことはできないという、そういう状態になっているわけです。  この国民レジャーと言われる、一日百万人と言われる江の島の海岸を守るためには、どうしても整備しなければならないというのが境川の流域下水道になるわけです。  いま長官お聞きのように、建設省としては、その新しい計画が出てくるのを待っているんだということなのですね。私に言わせれば、待っているんだというのじゃなくして、一言促進をしてもらいたい、こう思うわけですけれども、建設省のお立場もあるだろうと思いますから、それはあえて申し上げませんが、これはやはり環境庁長官の方に責任を転嫁するわけじゃありませんけれども、お願いせざるを得ないと思うんですね。  そういう点で、新しいきれいな海ということになれば、いまお話しのように、あの湘南一帯は調査費もつけた、調査もした、努力もしてもらった、その結果も出たということですが、その結果は遅々として進まないわけです。こういうことから、海水浴場という、国民の健康の保持、増進という立場からも、国は現在ある施設をまず最低守るということ、これが一つであります。そして、いまの計画をぜひとも進めてもらわなくちゃなりませんが、強力に推進をするという環境庁長官としての御計画なり御意思なり、これはどうしてもお伺いをしたいと思うわけですが、お聞かせを願いたいと思います。
  246. 小沢辰男

    小沢国務大臣 全国至るところの海水浴場をみんなきれいにしなければいかぬ責任があるわけでありますけれども、特にいまの片瀬、江の島海岸とか、あるいは湖水で言いますと琵琶湖とか、あるいは瀬戸内海とか、重点的に考えまして、そして重点的に生活排水の浄化をやるように推進をしていかなければいかぬじゃないだろうか。全部一遍にやれと言ったって、これは建設省も大変でございますから、そう思うのですが、建設省としては、久保部長のところでは、私どものように貴重な海岸の浄化だけでなくて、全国至るところの下水の整備をやっていかなければいかぬので、私どもが特定の地域だけ注文して、そこにだけ全部予算をつけろと言うわけにもなかなかいかぬと思いますので、これは私の方で何とかお手伝いをして、特定の、何か大事な環境汚染浄化をしなければいかぬようなところを特別に指定したところは、少し大蔵省にもお願いして、特別なそういう下水計画の上乗せをしてもらって協力をしていただくような道を考えなければいかぬかなと思ってはいます。  五カ年計画が達成できるように、ことしも相当大幅に下水の予算の伸びをしてもらったわけでございまして、私自身も予算の大臣折衝で、私が環境庁のことをさしおきまして、下水道の予算だけは、ぜひひとつ大蔵省やってくれということを、建設大臣の所管ではありますけれども環境庁としても大臣折衝の項目にした趣旨もそこにあったわけでございます。今後ともぜひ私も積極的に努力しまして、建設省ともよく打ち合わせをし、県のしりをたたいて、できるだけ早くやっていくように努力をいたしてみたいと考えます。
  247. 小濱新次

    ○小濱分科員 長官、いみじくもあなたはいま建設省の話をされましたね。それは、さきの建設大臣であったわけですね。下水道計画も当然あなたが手がけていただかなければならない問題、今度は環境庁の長官でありますから、これは親子の関係よりか兄弟の関係、最も身近な問題であるわけですね。それで、いま御答弁いただいたような内容では、ちょっと私も小沢長官に期待外れになってしまうわけです。そういう御答弁であってはならない。前建設大臣ですから、いまは環境庁長官、こういうことで、ぜひともこれはもう少し固い決意の前向きのそういう方向づけというものをしていただきたいですね。いまの答弁は、ちょっと何か答弁のための答弁のように私は残念ながら伺いました。(「腰抜けだ」と呼ぶ者あり)よけいなことを言うな。これは同志でありますから、どうかひとつ気になさらないようにしていただきたいと思います。  腰抜けなんて私は言いませんが、一遍現地を本当に見ていただきたいと思うほどにお願いを申し上げたいと思います。私も地元の藤沢に住んでいるわけですから、家族を連れてたまに行くのですけれども、どうにもなりません。この江の島にかかっている橋の下を波が参りますと、あの境川の汚水がそのままだあっと流れ落ちていくのが江の島の海岸なんですから。これはうねりが来れば、そのままざあっと流れ落ちていく。その中でみんな泳いでいるのです。中には口をあいて、その汚水を口から吐き出しながらみごとな水泳をやっている人もいるわけでしょう。これは政治家として、やはり政府の責任であろうと私どもは思うわけです。せひこれは心から期待を申し上げたいわけですが、いま一度御答弁をお願いしたいと思います。
  248. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いや、私、先ほどはあまり表現はあれだったかもしれませんが、いま先生のおっしゃるような気持ちで申し上げたつもりなんです。ひとつ一段と努力しますから。なお建設省にも協力を願いまして、私が先ほど言いましたのは、全国至るところそういう要望があるだろうけれども、特に本当に日本全体の中で大事な、しかも非常に多数の国民が利用しなければならないようなところを特定して、特に重点的に整備を早くやるというような考え方環境庁としては、ぜひひとつ建設省にお願いをしたい、これだけの決意を持って臨むつもりでございますから、ひとつ何分御了解を得たいと思います。
  249. 小濱新次

    ○小濱分科員 御存じのように、日本の心臓部と言われる東京湾では、すでに泳ぐことができなくなってしまいました。一部、横須賀の大津方面に海水浴場がありますが、あとは相模灘の方に出なければなりませんが、油壺はほとんど泳ぐことができませんような状況にあります。逗子、鎌倉と江の島だけでしょう。あと茅ヶ崎も、平塚、大磯、二宮、あの一帯は非常に危険地域になっております。そして、真鶴のあの先端と、それから湯河原の吉浜というところで少し泳げる程度。やはり首都圏の人たちが遊泳場を求めてということになれば、江の島へみんな行くわけですから、これはひとつ力を入れていただきたいと思います。  先ほど下水道部長から、その申請が出てくれば優先採択するという意味の御答弁がございましたね。したがって、そういうところまで来ているわけですから、言うならば、もう下水道部長は、はしを持っておいしいごちそうの出てくるのを待っている態勢になっている。一言そこで私は督促してもらいたいのだけれども、それができない状態にあるわけですから、これは環境庁長官が建設大臣ともひとつよく御相談願いまして、そしてひとつより御努力を心からお願いするわけでございますが、いま御答弁いただきましたけれども、その、よりというところで、もう一言御答弁をいただきたいと思います。
  250. 小沢辰男

    小沢国務大臣 本当にそういう御趣旨で努力をいたします。
  251. 小濱新次

    ○小濱分科員 大変ありがとうございました。  時間もありませんので、あともう一点お伺いをしていきたいと思います。これは小沢長官からお、答えをいただきたいと思いますが、社会教育と国民の余暇利用の推進について伺いたいと思います。  青少年旅行村、自然休養村、森林レクリエーションエリアなどの施設が推進されておりますが、自然公園内でこのような施設をつくることについて環境庁の考えはどうか、これは基本的な問題でありますから、大臣からお答えをちょうだいしたいと思います。
  252. 小沢辰男

    小沢国務大臣 自然公園をレクリエーションの場として国民に大いに利用していただくことは、大変結構なことでございます。しかし、自然環境の保全については十分ひとつ注意をしてやっていただきたい、また、そういう意味の指導は徹底していきたい、かように考えます。
  253. 小濱新次

    ○小濱分科員 住民の意思は尊重していただきたい、こう思いますが、そこで、神奈川県の箱根町では、大涌谷自然科学公園を町が積極的に推進いたしております。すでに自然科学館はオープンいたしております。その後の計画として、自然探究路や野鳥の森などの施設が予定されております。そこで、すでに町では、四十六年十二月九日に林野庁に国有林の借り受けについて陳情いたしておりますが、国有林貸し付けの許可がないために、計画がストップになっております。地元として大変憂慮しているわけでございますが、林野庁として、この問題についてどのような御見解を持っておられるのか、お尋ねをしていきたいと思います。
  254. 江上幸夫

    ○江上説明員 林野庁といたしましては、森林レクリエーションに対する国民の要望にこたえるために、国有林のうちの一定の地域をレクリエーションの森として定めまして、森林レクリエーションの場として提供しているわけでございます。箱根につきましては、台が岳国有林の第七十四林班、それから七十五林班、面積にいたしまして合計約百八ヘクタールになりますが、これをレクリエーションの森として定めております。それで、このレクリエーションの森をどのように利用し、管理していくかというような計画をつくるために、お話にございました自然科学公園の構想も含めまして、地元箱根町の意見も十分に聞いてまいりたいと考えており、近く地元と具体的な話し合いを行うということを考えております。  なお、この地域は御承知のとおり国立公園特別地域でございますので、具体的な使用許可というようなことになります場合には、自然公園法に基づきます許可等の手続が必要であるということにつきましては、申すまでもないかと思います。  以上でございます。
  255. 小濱新次

    ○小濱分科員 江上管理課長、いま一度御答弁いただきたいと思いますが、陳情書を提出いたしまして、もう三年になるわけです。地元といたしましては、御存じのとおりもういろいろ計画をどんどんと進めてきているわけです。近く地元と話し合いをということですが、三年もたってきておりますので、その近くというのは、どういう計画になるか、いつごろの予定であろうか、お答えいただきたいと思います。
  256. 江上幸夫

    ○江上説明員 お答え申し上げます。  確かに昭和四十六年十二月の九日と、それから十二月の十七日に、平塚営林署に陳情がございました。その後、鋭意検討してまいったわけでございますが、申し入れの地域は御承知のとおり国立公園でございますので、公園計画が立っていないと、こういう施設についてはつくれない、そういうこともございまして、いままでたったわけでございますが、今後、先ほど申しました話し合いというのは、ごく近くにやることになっております。一カ月以内にやることになっておりますので、それを踏まえまして、具体的なレクの森の管理経営方針書をつくりまして、その管理経営方針書の中の施設の設置計画に合うようなものでございましたら、私の方はこれの使用許可を出すという方向で検討しております。  以上でございます。
  257. 小濱新次

    ○小濱分科員 環境庁長官、いまのように、将来計画を少ない財源の中で自治体ではいろいろと苦労なさっておられるわけです。そういう実績が、いまの内容にあらわれておったわけでございますが、今日、社会教育、青少年教育の重要性が叫ばれております。これは当然、青少年の育成ということ、世代を担うそういう人たちの教育、指導、訓練ということは大事なことである、こういうふうに考えておりますが、一方において、週休三日制など、今日余暇利用の問題も当然起こってきているわけですね。最近の新聞紙上でも、これは公務員でも何とかということで、いろいろ話題をにぎわしておりますが、この森林休暇施設の需要というものは、ますます拡大されてくると思うわけでございます。  これらの事業は自治体の仕事となっておるわけですが、反面、国有地の制約が厳しいわけですね。自治体が事業を推進するにしても、大きな支障があるわけです。計画がなかなか進まないというところに問題があって、きょうはお尋ねをしているわけでございますが、自然保護という点もあると思いますが、今後の御方針をひとつ長官からお示しいただきたいと思います。
  258. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国有林の管理については、林野庁が管理の具体的な方法について地元とよく相談をしていこうという姿勢は、これはもっともだと思うのです。これは行政方針ですから、それをなるべく早くやって、その話がついたところで、私の方は異存がございませんので、ひとつ進めていただきたいと思っております。
  259. 小濱新次

    ○小濱分科員 ちょうど制約を受けた時間が参りましたのでこれで終わりますが、どうかひとつ、単なる地元の問題というのではなくして、国民レジャーという立場から、きょうは私どもがよく理解を持っている問題を提示して、大臣の一層の御努力をお願いしたわけでございます。ぜひとも今後これが推進に一役買っていただくように、心から強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  260. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、岡本富夫君。
  261. 岡本富夫

    岡本分科員 きょうはわずかな時間ですから、簡潔に、また、はっきりした答弁をいただきたいのですが、新幹線の騒音問題についてお聞きいたします。  この間、公害対策特別委員会で、三月中には騒音の基準を示すということが環境庁からありましたけれども、それでありますと、環境庁で、すでに騒音の問題について調査が行われておると思いますから、ひとつそれを先にお伺いしたいと思います。
  262. 小沢辰男

    小沢国務大臣 中公審の騒音振動部会で鋭意検討を進めております。恐らく近く結論が出てくるだろうと思っております。
  263. 岡本富夫

    岡本分科員 それを聞いているのじゃなくて、環境庁の方でこの騒音の状態について、要するに何ホンでどうだったという、その説明をしていただきたいと言うのです。
  264. 春日斉

    ○春日政府委員 各種の調査を行っており、それに基づきまして特殊騒音専門委員会でいろいろ検討されておるわけでございます。先生のお尋ねの調査はどういう調査であるか、それによりましてお答え申し上げます。
  265. 岡本富夫

    岡本分科員 たとえば住宅地、あるいは商業地域、こういうところで、住宅地では会話ができないとか電話が聞こえないとかいうのは大体何ホンであったか、住宅地、商業地域というように分けて、あなたの方で大体調査が終わっているわけですから、その生活障害の実態をひとつここで発表していただきたいということです。
  266. 春日斉

    ○春日政府委員 新幹線鉄道騒音に関するいわゆる住民の反応調査のお尋ねであろうと思いますが、これはすでに昭和四十七年七月に東北大学の工学部で行われた調査があり、同年十月に環境庁調査をいたしておるわけでございます。これらの調査の結果、住民の反応と、それから新幹線騒音のレベルというものの関係を見てみますと、特に東海道新幹線について見ますと、東北大学環境庁という全く異なった機関が全く異なった対象について行った調査ではございますが、両者の結果はきわめてよく一致をいたしております。  たとえば例を申し上げますと、調査いたしました住民の約三〇%が電話の妨害があると訴える程度は、環境庁で七十三ホン、東北大学では七十四ホンというふうに、きわめてよく一致いたしておりまして、総合的に心理的な影響あるいは社会的な影響というようなものは、三〇%の住民が反応を示すのは七十ないし七十五ホンぐらいであろうというようなデータが出ております。四〇%の場合、五〇%の場合、六〇%の場合、それぞれきわめてよく似た数値が出ておるわけでございます。
  267. 岡本富夫

    岡本分科員 そうしますと、大体七十から七十五ホン、こういうところが生活に支障を来すというように見てよいわけでございますね。
  268. 春日斉

    ○春日政府委員 私がただいま申し上げましたのは、一例として、住民の何%の場合は何ホンであるということを申し上げたわけでございまして、決してそういうふうに決めておるわけではございません。たとえば、五〇%の住民が反応を示すのは約七十九ホンであるとか、あるいは二〇%の場合は六十八ホンであるとか、それぞれによって住民の反応率というものは違っておる、しかも、これは東北大学調査でも、あるいは環境庁調査でもよく一致しておるという現実を申し上げたまででございます。
  269. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、いまの話を要約すると、生活にそういう支障が起こるのは大体七十から七十五ホン、七十ホン以上になりますと、そういう反応があるというように見てよいのかと聞いているのですが、いかがですか。
  270. 春日斉

    ○春日政府委員 その点はただいま騒音振動部会の方で御検討いただいておりまして、その判断につきましては、まだわれわれ結論をいただいていないわけでございます。
  271. 岡本富夫

    岡本分科員 これは振動部会あるいは中公審でそういった答申は別に出てくると思うのですよ。そうでなくして、私の言っているのは、環境庁で実際に調査した、まあ東北大学でもやっていますけれども、実際に調査したその数字というものによって、住民がどういう反応を起こしたか、先ほど聞くと大体七十三ホンから七十五ホン、これで二〇%の人が反応を起こしたというように、あなた答えているわけですからね。だから、大体そのくらいになれば生活障害があるのではないか、こういうようにとってよいかと聞いているのですが、いかがですか。
  272. 春日斉

    ○春日政府委員 二〇%の場合、三〇%の場合、あるいは五〇%の場合、どの辺で生活障害ありと全体で認めるかということがまさに中公審の部会で御検討されておるわけでございます。
  273. 岡本富夫

    岡本分科員 私は、その部会で検討して出てくるのは、大体安全基準というのはこのくらいだというのが出てくると思うのですよね。要するに環境庁が実際に実測して、いま大体七十三ホンから七十五ホン、これで二〇%の人が電話が聞こえないとか、あるいはまた会話が聞こえないというような反応を示したと、こういうことでしょう。そうならば、大体環境庁の実測でそういうことになったのだから、その点を明らかにすればいいわけでして、それを何かこう、中公審で、あるいは振動部会でその点はやってもらわなければならぬ——その点おかしいでしょう、そっちの言うのは。
  274. 春日斉

    ○春日政府委員 私が申し上げておりますのは、たとえばアンケート調査の特質といたしまして、あるいは英国におきます航空機騒音のやはりアンケート調査等を見ましても、比較的静かだと思われるような地域におきましても、五%ないし一〇%の住民は常に何らかの影響を受けている、感じているというデータが出てまいります。そういうようなことを参考にいたしながら、しからば何%ぐらいのところが生活妨害を受けるのかという判断が行われるべきでございまして、この点は先ほどから申し上げておりますように、中公審の方で御検討いただいた結論を待っておる次第でございます。
  275. 岡本富夫

    岡本分科員 どうもわからぬね。こんなことにばかり時間をとっちゃ困るのだけれどもね。あなたの方の環境庁調査で、生活障害を訴えたのは何ホンなんですか。それを何か飛行機の問題とか、あなたの答えは何か色がついているよ。もっとまじめに、誠実に、率直に答弁すべきじゃないですか。そんな色をつけずに、もう一遍はっきりした答弁をしてください。
  276. 春日斉

    ○春日政府委員 私が申しておりますのは、住民の何十%になれば、その地域の住民は生活障害ありと認めるかどうかという点でございます。これにつきましては、先ほどから申しておりますようにかなり論議の分かれるところでございまして、ただいま中公審の御討議のさなかでございますので、その点につきましては、私から明快にお答えする立場ではないわけでございます。
  277. 岡本富夫

    岡本分科員 どうも奥歯に物のはさまったような答弁ですが、一番最初御答弁いただいたのが、大体七十三から七十五ホンぐらいで生活障害を訴えるという答えが出ている。環境庁で実測の上でそういう答えが出ているんだということでありますから、あと私は、じゃ幾らにするんだというようなことはいま聞かないですよ、そんなやはなことは、ようわかっているんだから。えらい構えて、次にどうなるんだということを心配しなくてよろしい。  そこで、環境庁長官にお聞きしておきたいことは、少なくとも基準を決めるんですからね。しかも、環境庁が決めるということは、住民の皆さんの健康を守るという立場から決めるのだろうと思うんですよ。そうでなかっだら決める必要はないんですからね。国鉄できめられたらえらいことだ。ですから、少なくとも生活を擁護できるような基準を決めよう——これは中公審から出てきたものを全部うのみにしなくていいのです。これは答申ですからね。答申は全部尊重すると言ってしなかったのは、たくさんある。政治資金規正法なんか特にそうでしょう。都合の悪いのは全然答申を尊重しない場合がある。答申どおりやらないんですよ。ですから、これは答申どおりやらなくてもいいんです。答申より強くてもいいんです。そういうことで、少なくとも環境庁長官がこの新幹線の騒音の基準を決めるについては、住民の生活環境を破壊しないという立場で決めようと考えていらっしゃるのだろうと思うのですが、その点ひとつ明らかにしていただきたい。
  278. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、新幹線騒音の基準をいま審議願っておる中公審の専門部会——担当者の鈴木君はいまかわりましたけれども、着任以来、その状況をいろいろ聞いております。そこで、住民の健康を守る立場から、できるだけ厳しくひとつやってもらいたいという姿勢で指導いたしておりました。それが反映されるものとかたく信じております。
  279. 岡本富夫

    岡本分科員 反映しなかったら大変なことになりますわね。それは答申だけですからね。あとはまた、あなたの方で検討したらいいのだ。そういうことを考えますと、生活環境に影響しないということになってくると大体七十とか七十五とか、やや近い線が出てきたと私は思うのです。いま話があったように、七十三とか七十五で、もう生活環境が侵されるという環境庁の実測が出ている。実測でそういう調査が出ているわけですから、そうすると中公審は別として、環境庁長官はそういった生活に支障のないような厳しい環境基準を決めてもらいたい、こう希望しておるわけですからね。わりにいい線へきました。後で出てきたときに物すごい後退をしないようにひとつ要求しておきますよ。  そこでひとつ環境庁長官に。民法の七百九条「故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス」こういうのが不法行為の中にあるのですが、たとえ公共施設と言われる国鉄にしても、新幹線にしてもどこにしても、こういう故意または過失によって損害を与えた場合は、その損害賠償をする責任がある、こういうふうに読んでいいと私は思うのですが、長官はどういうように判断されますか。
  280. 小沢辰男

    小沢国務大臣 民法の規定の具体的な適用についての解釈上の問題は、環境庁長官が軽々に下すべきではないので、これは専門家の法務省の見解にまたなければいけないと思います。
  281. 岡本富夫

    岡本分科員 私は、一般論としまして、故意または過失により他人の権利を侵害したときは、その損害を賠償するのだ、これは法務省でなくとも、一般論として損害賠償の責任があるということは、これは常識論としてそうじやありませんか、いかがですか。
  282. 小沢辰男

    小沢国務大臣 民法のその規定の解釈をおっしゃっておるとすれば、故意または過失によって他人に損害を与えた場合は賠償の責めに任ずることは当然であります。しかし、騒音そのものにひっかけての御議論であるとすれば、私がそう軽々にお答えする立場にはない、こう申し上げているわけでございます。
  283. 岡本富夫

    岡本分科員 あなたは裁判官でないからあれでしょうけれども、軽々に答えられないと言ったって、これはあなた決まったことだ。だから国鉄としては、いろいろと損害の賠償をするために、いま手を打っているわけですよ。  そこで、国鉄にお聞きしますけれども、まず一つは三月十日の博多までの開通に伴いまして、夜間列車、これは運行しないというように聞いておるわけですけれども、この点についてひとつ確かめておきたいのです。
  284. 内田隆滋

    ○内田説明員 三月十日の時点におきましては、いわゆる夜行列車は運転しないことにしております。
  285. 岡本富夫

    岡本分科員 三月十日の時点においては夜行列車は運行しない、そういうごまかした答弁じゃなくて、私は三月十日以降のことを言っているわけです。なぜならば、山陽新幹線ができまして、あなたの方では西宮それから伊丹、尼崎、この市長と覚書も交わしておるわけです。まだそれが実行されてないのに夜間列車を通されたのではどうにもならない、こういうことです。この点の確約はいかがですか。
  286. 内田隆滋

    ○内田説明員 いま申したとおりでございまして、もう少し敷衍をいたしますと、先生の御指摘のとおり一部の場所におきまして、ただいま環境庁から示されているいわゆる暫定基準と称するものについて、まだ完全に実施ができていないというのは事実でございます。それらの環境を技術開発その他で改善を目下やっておるわけでございますが、そういうものが解決しない時点においては、夜行列車は運転しないというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  287. 岡本富夫

    岡本分科員 その点はひとつ確約をしておいてもらいたい。  そこで、いまのは暫定基準ですから、これが大体三月に正式な、今度は、いま環境庁長官が言明したように、周辺の住民の生活を守るというりっぱな基準が出てくるということでありますから、この三月のきちっとした基準、この間聞きますと三月いっぱいかかるらしいですが、それが満たされなければ、博多までの夜行列車はひとつ御遠慮願いたい。そうでないとやかましくておれませんよ。付近の住民に気の毒ですから、その点だけもう一遍確約してください。
  288. 内田隆滋

    ○内田説明員 この点につきましては、まだ環境庁からどういうような基準を示されるのか、現時点では明確になっておりませんので、明確な基準を示されてから検討をいたしたいと思います。
  289. 岡本富夫

    岡本分科員 そんなけしからぬことはありませんよ。内田さん、いまのような答弁じゃ話にならないですよ。環境庁からもしも厳しいものが出たら、それから検討する、検討する時分にはもう走っていますよ。だから少なくとも基準がきちんと決まったら——本当は夜行列車なんていうのは、最初はそういうことはなかったのですからね。付近の住民は寝られないですよ。もう一度その点について、やはり示された基準、これに合わない場合は夜行列車を通さない、もう一遍はっきりしておいてください。
  290. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ちょっとその前に。  厳しい基準を要請して人の健康を守る私の立場から、これはぜひひとつやっていただきたいと思っておりますが、問題はそれが出た、直ちにあしたからそれが適用できるか、これは技術の対応の問題も考えていかなければいけませんから、それを実施する期間というものは十分見てやらないといかぬだろうと思うのです。そうでないと基準の方で妥協してしまうことになりますから、それでは困るので、やはり先生専門家でいらっしゃいますからおわかりのように、私どもとしては国民の健康を守るために厳しい基準を設定する。それを受け入れる側では、その目標に向かって、あらゆる施策を講じて達成するようにするわけでございますから、それにはそれに応ずるいろいろな措置をとるまでの一定の期間というものがやはり必要であることだけは、原則的にこれは申し上げておきませんと、何か私の方がやったら、すぐあしたからできるようなことでありますと、それは国鉄のようなあらゆる努力をしても、技術的に見ても相当の困難がある対応でございます。ただ公共企業体で、私どもの国の機関の一環でございますから、良心的にそれをできるだけ国民のために実施する体制をとっていくわけでございますが、とにかく一応そういう現実のあることだけは御了解の上で議論をしていただきたい。
  291. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、達成期間の話が出ましたが、既設線と、それからこれからの分、要するにこれから運行するものと、それから既設の東海道新幹線がありますね、山陽新幹線の岡山までですか、こういうようにあるわけですね。達成期間についても、飛行場周辺みたいに十年を目途にして、それよりも早くなんて、そんなばかなことで決めてもらったらたまったものじゃないですよ。それから達成期間については、私きょういまここで詰めませんけれども、長官、そう言うならば、博多までの分は既設線というように考えてしまうのですか。いままだ既設じゃないですよ。既設ですけれどもまだ運行してないのですよ。岡山までは運行していますよ、岡山まで運行したものを今度博多まで運行するために夜行列車を通す、いま夜行列車通ってないのですよ。夜行列車通ってないということは、まだやってないということですから、達成期間というものは、きちんとそれだけの分が達成するまでは夜行列車を通してはいかぬ、この点はっきりしていただかなければいかぬと思うのです。この点について、内田さんから聞きましょう。
  292. 内田隆滋

    ○内田説明員 先生も御承知のように、現在の博多までの新幹線は、いわゆる暫定基準というものに基づきまして、できるだけその基準値を下回るようにつくってはおりますけれども、基本的な考え方は、暫定基準を基準としてつくっております。したがって、これは仮定のあれでございますが、どういうような新基準が出るのかまだわからないわけでございますが、これを新しい基準に移行さすということになりますと、東海道よりは確かに基準値は上でございますが、やはり相当の工期なり工事費等がかかり、容易なことではないというような気がいたしますので、やはり岡山までの新幹線と同じように取り扱っていただかないと、実際問題としては処置が不可能ではないかというふうに考えております。
  293. 岡本富夫

    岡本分科員 まだ博多まで通ってないわけです、岡山までは既設になってしまった。これから先夜行列車通されたんじゃどうにもならないというのか、いままでの岡山までの山陽新幹線の——特に私の方の覚書にもそういうことはなかったのですからね。これでなしくずしにつぶしてしまう、これはけしからぬと私は思うのですね。  与えられた時間が余りありませんから、そこでこれはひとつ警告をしておきます。また公害委員会で一遍出てきてもらって、要するに住民はどうなってもいい、そういう考え方、これはひとつ改めていただかなければいかぬ。  次にテレビ障害。テレビ障害については共聴アンテナをいま建設をして、維持管理をするために近所の組合をつくって管理さしている。その電気代とかいろいろなものは住民が出している。PPPの原則からいけば、これは国鉄が全部出さなければいけないのです。しかも、私最初に言いましたように、民法の七百九条では、故意または過失によって他人の権利を侵害したときは、それだけの損害を賠償する責任があるんじゃないですか。また周辺の立ち退き、移転希望、しかも家屋の修理、庭の陥没、いろいろなものはまだまだほったらかしている。これが国鉄でなくて個人や普通の企業がやったとしたら、これはみんな裁判にかかって、あるいはまた要求されていますよ。国鉄の場合は、もうこの点を見ても横暴なんです。この点についてどうするかということが一点。  それからもう一つ国鉄の横暴の例に、他人の土地を未買収のまま走っている、こういうことの報道もありますし、それをちょっと聞いてみたら、そうだということなんです。だから私がいま要求しているのは、テレビの障害をPPPの原則によって全部国鉄が負担すること、共聴アンテナもちゃんとすること、それから立ち退き問題あるいはまた家屋の壊れたものをちゃんとすること。これは損害賠償もちゃんとしなければならぬと思うのです。それから未買収の土地はどうするのか、この三点を聞きたい。  さらに、CTCそれからATCですか、これなんかも大丈夫だ、総点検済みだということで、この間総点検をやった後で事故を起こしているわけですよ。こういうのは技術を盲信した神風運行なんですね。もしも万一のことがあった場合、この周辺に住んでいる人が、いつどうなるかわからぬというので非常に心配をしているわけです。ですから、営利に目がくらんだところの綱渡り操業というのですか、この環境基準をきちんとするのと、環境基準に合わせるような騒音対策あるいは振動対策、これと同時に大事な問題だと私は思うんですよ。この点について最後に内田さんから聞いて、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  294. 内田隆滋

    ○内田説明員 まず第一点、テレビの維持管理の問題でございますが、これはやはり郵政省で検討しておられますので、国鉄だけではなくて、自衛隊の問題その他がございますので、基本的にはその決定に従うということでございます。ただ、いろいろ事情がございまして、その決定が出るまでは維持管理費につきましても国鉄で負担をするという原則を一応仮に立てましたので、その決めに基づきまして、維持管理費を沿線の共同アンテナについては暫定的にお支払いをしているというのが現状でございます。  それから、騒音、振動に伴う賠償がなおざりになっているのではないかという御指摘でございますが、この実害につきましては国鉄として誠意をもって実害補償をいたすというのが、過去の実例によりましてもやっておるところでございまして、現在までに約三百六十八世帯、約三千九百万円の実害補償をしております。ただ先生の御指摘でございます兵庫県につきましては、これらの補償がまだおくれております。五十年度には、精力的にそういうものを解決してまいりたいというふうに考えております。  それから最後にATC、CTCの問題で、事故を起こしましてまことに申しわけないわけでございますが、これは故障というよりは、この間のものは朝始発前にポイントの試し引きを中央でやるわけでございます。それを営業開始前には全部いわゆるキャンセルをいたしまして、新しい始動条件にしてやるという原則がございます。その原則を忘れて試し引きをしたままにして、その条件を消さないで運転を始めたという人為的なミスでございまして、今後はそういうようなことはないように、マニュアルその他を十分点検してまいりたいというふうに考えております。  それから、けさほど朝刊に載っておりました用地の未買収の問題でございますが、これは多数の人の共同の土地でございまして、なかなか一人一人の財産の配分が決まらないわけでございます。新幹線の工事を急ぎますので、一応工事をすることについては起工承諾を得ております。それで私どもとしては、できるだけ早くお支払いいたしたいわけでございますが、いろいろ国鉄に対する感情問題等もございまして、また共同で持っておる方々同士のいわゆる配分の問題が決まらないというようなこともございまして、いまのところお支払いができていないというのは事実でございますので、今後地主の方々と十分協議をし、また国鉄に非がございますれば、そういう点については改めて、できるだけ早く解決をしてまいりたいというふうに考えております。
  295. 岡本富夫

    岡本分科員 長官、こういうようなことです。先ほど聞かれたように、国鉄も相当横暴ですから、博多まで夜間列車を通して、いまの山陽新幹線の付近を騒がせないようにしてください。もう大変な問題が起こります。言うておきますから。これはひとつあなたの方からも注意をして、まだ実際に通っていないんですから、通すには夜間遅くも夜中に通さないというような、住民の健康を守る意味から、生活環境を守る意味から、ひとつ注意を願いたい。これを要求いたしまして、きょうはこれで終わります。
  296. 木野晴夫

    ○木野主査代理 次に、渡辺武三君。
  297. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 私は、主として大気汚染に関する問題と、都市の環境基準に関する問題について御質問を申し上げたいと存じます。  特にこの環境問題は、ややもすると感情的な観点からの論議が非常に多いわけでございまして、私は、環境を守るためには、もう少し冷静に技術的に科学的に追求をしていかないと、真の意味環境保全をするということにはつながらないんではないだろうか、こう考えておるわけでございます。もちろん大気そのものを少しでもきれいにしようとすること自身は、これはもう国民的な総意でございまして、その目標に向かって努力をしなければならないということは言うまでもないことでございます。  しかし、環境そのものをよくするということは、あるいは過去の環境を取り戻すということは、反面考えれば、ここまで発展をしてきた経済をどこまで犠牲にするかという問題と、相当大きな関係がやはりあるのではないか。すなわち、国民の皆様方は、環境はもちろんよくしてもらいたい。しかし、現在受けている国民の生活水準をダウンをさせてもらっては困る、こういう大前提があろうかと思います。その上に立って、環境をよりよくするためにいろいろな要望をしておられるのではないか、こう考えてまいりますと、環境の浄化はもちろん必要でございますが、そのために生活の水準を後戻りさせてはならぬ、こういうことであろうかと思います。  先日の二月二十四日の朝日新聞の夕刊を拝見いたしますと、東京の空も大変にきれいになってまいりまして、昭和二十五年以来、二十五年間で最高の透明度になった、こういうふうに報道をいたしておるわけでございます。気象庁の説明によりますと、昭和三十五年ごろから石炭を石油に切りかえた、あるいは石油もS分の少ないものに切りかえておる。さらには煙突に粉じん装置が整備された。そういうような総合的ないろいろな対策から、こういうふうに空がきれいになってきたんだ、こういうことを言っておられるわけでございますが、このように大気汚染対策が進んでおるということは大変に喜ばしいことであります。しかし反面、NOxについてはまだまだ対策が始まったばかりでございまして、今後の対策が期待をされておるわけでございますけれども、このNOx対策というものを今後一体どう対策をしていったらいいのか、あるいはどう対策をする計画があるのかという観点から御質問をしてまいりたいと存じます。  まず、基本的なことから伺いたいわけでございますが、先ごろ五十一年度の自動車の排気ガス規制が告示をされました。当初基準よりは緩和はされたものの、かなり厳しい規制が実施されることになっていますが、一体このNO2の人体に対する影響というものがどういうものであるのか、本当にはっきりしておるのかどうか。確かにNO2については、人体に毒性を示すということが古くから言われておるわけでございますけれども、いわゆる大気というレベルにおいて人体にどういう影響があるであろうか、こういうことにやや明確さを欠いておるのではないかと私思いますので、お聞かせを願いたい。さらにこれらをどういうふうに評価をしておられるのかということについて、まず御質問したいと思います。
  298. 春日斉

    ○春日政府委員 お答え申し上げます。  確かに窒素酸化物の人体影響の問題はむずかしい問題がございます。一つは人体実験ができないということが一番大きな問題でございます。しかしながら私どもは、まず動物実験で類推することができ、さらに人体に対しては疫学調査によってそれを補完することができようかと思います。動物実験の場合明らかなことは、たとえば〇・五ppmに四時間暴露すると、もうすでに肺に影響が出てまいります。それから数カ月いたしますと、気管支炎、肺気腫を起こしている。また十二カ月も暴露いたしますと、肺炎桿菌で感染させた死亡率が非常に高くなるとか、あるいは細菌を排除する機能が失われるとか、こういったものが出てまいります。さらにインフルエンザウイルスを感染させますと、肺炎が非常にひどくなってくる。あるいはまた問題は末梢気管支の上皮細胞に腺腫様の増殖が見られるというような重大な問題もわかってきております。  そこで、ではこの動物実験を直ちに人間に当てはめるかといえば、これは問題があるわけでございますから、先ほど申しましたように、疫学調査で補完するわけでございますが、この窒素酸化物NO2の疫学調査で一番有名なのは、アメリカのチャタヌーガというところで行われた実験でございまして、これはSO2やいわゆるダストの存在しない、窒素酸化物NO2と若干の硝酸塩があるところの住民が、どのくらいの濃度で障害を起こすかというような疫学調査でございます。それからわが国では、四十歳以上の成人の男子で行われたり、あるいは全国六カ所の三十歳以上の家庭の主婦の慢性気管支炎の有症率等から、いろいろNO2の人体影響を見ておるわけでございますが、これは一つは、何と申しましてもNO2だけが単独で高濃度汚染しているところは、日本ではきわめて少ない。まずないといっていいぐらい常にSO2なりダストなりと共存しておるわけでございますから、その相乗作用を計算していかなければいけないわけでございます。したがいまして、そういったことを踏まえ、しかも一般住民の中にはきわめてNO2に対して敏感な呼吸器系疾患あるいは循環器系の疾患を持った、いわゆる弱者がいらっしゃるわけですから、そういった方々に対する影響を考えますると、かなり大きな安全度、セーフティーマージンをかけて環境基準をつくる必要がある、そういうことで、わが国におきましては多年にわたりまして検討された結果、一日当たり〇・〇二ppmという環境基準ができたわけでございます。
  299. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 局長答弁をなるべく簡単にしていただかないと時間がなくなってしまいますものですから、よろしくお願いをしたいと思います。  いま局長自身も言っておられたように、アメリカのチャタヌーガが非常に綿密な人体影響調査をやって、アメリカの環境基準というものを設けた、日本もそのようにいろいろな調査を行ったのだという局長のお話でございますが、そうしますと、実はアメリカの調査日本調査数値とは相当な違いが出てきておったのかどうか。つまり、アメリカの環境基準というのは、わが国の約五倍ですね。わが国が〇・〇二ppm、アメリカが〇・一ppmでございますから、約五倍程度ではないか、こう思うわけでございまして、その辺は一体どういうことになっておるのでしょうか。
  300. 春日斉

    ○春日政府委員 先ほど申しましたように、疫学調査、動物実験の結果はほぼ大差はないわけでございますが、これは複合汚染に対する評価あるいは安全度のとり方、こういったものの考え方の違いから出てきておるものと考えております。
  301. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 これも先日の新聞報道でございますけれども環境庁は自動車沿道健康影響評価調査委員会ですか、これを設置をして、そして国道の沿線で自動車排気ガスによる健康影響調査を実施することを私、知ったわけでございますが、これはいわば米国がやっていたような調査に匹敵するものと見てよいのかどうか。さらに、この調査によってNOxによる人体影響というものがはっきりするのかどうか、お伺いしたいと思います。
  302. 春日斉

    ○春日政府委員 アメリカのチャタヌーガ・スタディーよりはさらにいい成績が出ることを期待いたしております。
  303. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 すでに環境庁が四十八年の五月に告示をされましたNO2の環境基準、一日平均〇・〇二ppmというこの数値は、五年以内に実施をする、あるいは地域によっては八年以内だ、こういう一応の目標値であろう、こう思うわけでございますが、これを国際的に比較をいたしますと、いまもちょっと申し上げましたように、大体米国の五倍厳しい状態になっておる、あるいは東独だとかソ連、チェコというような、こういう東欧諸国の基準と比べましても二倍ないし二・五倍という厳しさになっておるわけでございます。  そこで、この数値だけでは国民の皆様方になかなかよくわかりませんので、これを具体的にわれわれの生活の中に引き込んでみてどうであろうか。つまり八畳の間にわれわれが住んでおるといたしまして、そこで石油ストーブをたく。そうしますと、大体二十分ぐらいで室内のNOxの汚染というものが〇・三から〇・四ppm程度になるというデータがあるようでございますが、これはわが国が定めました環境基準の十倍ないし二十倍というような汚染度になってしまうわけでございます。本当に環境庁が定められたいわば〇・〇二ppm以下という環境基準が守られなければ健康に害があるとするならば、一体この石油ストーブというものは今後どう考えていったらいいのか。この辺についてはいかがでしょうか。
  304. 春日斉

    ○春日政府委員 確かに石油ストーブからはそのような窒素酸化物の高濃度汚染が、密閉した部屋においてはあり得ると思います。ただし、これは窓をあければたちまち下がってまいるわけでございます。しかしながら、いわゆる大気汚染の場合は、あけるべき窓がないわけでございます。そういった点が一つは違うわけでございます。私は、石油ストーブのたき方等についても、十分換気の点について、そういう意味からは注意しなければならないと思います。  それからもう一つ窒素酸化物環境基準と申しますのは、それを超えたから直ちに疾病を起こすというものではなくて、先ほど申しましたように、かなりの安全度をとってある問題でございます。いわゆる閾値とは違いまして、安全度を相当とったものが環境基準である、こういうふうにお考えいただければ御納得いただけるものと考えております。
  305. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 かなりの安全度というのは実は問題ですけれども、実際に石油ストーブをたいたら、いま定められておる環境基準の十倍ないし二十倍というような高濃度になってしまう。窓をあけて換気すればいい、こうおっしゃいますが、そう簡単に窓をあけたからといって、強制換気でもすれば別といたしまして、そう十倍も二十倍も高濃度になっているものが一挙にぐっと下がるわけではないし、また寒いから暖房しているわけですから、部屋が寒くなるまで窓をあけている人もいないでしょうし、その辺から考えますと、これはやはり相当な問題ではないであろうか。本来ならば、〇・〇二ppmというものがそれほど厳重に守られなければならない人体影響があるとするならば、当然やはり石油ストーブの使用については、これは私は相当わかりやすく国民の皆様方にPRをするなり、あるいは石油コンロの販売業者にそれをやらせなければいけないのではないか。片方では健康を守るためにということで非常に厳しい数値を設ける。ところが、現実われわれ人間の生活を見てみますと、実は大変な濃度になって平気で暮らしておる。こういう相矛盾をした問題があるんではないであろうか。そういうことがもし仮にあるとするならば、一体これはどうなんであろうか。外に出て大気汚染でけしからぬとおっしゃるけれども、自分の家の中で十倍も二十倍もするような濃度の中におって、一体どちらの影響を受けて健康を悪くしたか、それすらも実は疑わしくなってまいるわけでしょう。だとするならば、私は相当この点については考えてみなければならないし、まだまだ幾らでもほかに例があろうかと思います。  四畳半でたばこを吸えばどうかというような問題もあるでしょうし、実際にわれわれが日常行っている生活の中で、それに比較して一体どの程度にしようとしているのか、こういうふうに国民の皆様方にわかりやすい説明をしていくならば、これは国民の皆様方も大変納得されやすいのではないか。環境庁が〇・〇二の都市環境基準というものを設けたから、これは〇・〇二ppm以上になったら、とんでもない悪性なガスでも飛んできて、直ちに人体が危険にさらされる、こういうふうに一般の国民が理解をするのは私は至極当然だと思うのです。ところが、現実は本当にそうだろうか。われわれが日常生活している中で、その環境基準の十倍も二十倍もするような高濃度に汚染されている部屋の中におる、そのことは多くの国民の皆さん方は、実際には私は御存じないと思うのですよ。だから、この辺は環境政策としては、もう少し客観的なデータから見て、この環境基準というものの妥当性というものを一遍考えてみなければいけないのではないであろうか。  先ほど若干申し上げましたけれども、国際的に見ましても、日本というのは非常にきつい。しかも学説によれば、〇・〇二というのは自然界のレベルではないかとさえ言われておる。地球が太陽熱によって暖められることにより、あるいは雷等の発生によって自然に発生をしてくる汚染度というものがあるわけでございますが、その自然界汚染度そのものが、この数値に近いのではないかとさえ言われておる。仮にその学説が正しいとするならば〇・〇二というこの環境基準は、極端に言えば人間の活動をやめなければならぬというほど厳しい環境基準ではないであろうか。自然界環境基準が〇・〇二ppmぐらいあるだろうという学説が大きく間違っておるというなら別ですよ。仮にその学説が妥当性があるというふうに見るならば、ほぼ同じレベルで基準値を決めているわけですからね。  そうなれば、きょうはがらんとしておりますけれども、この第一委員会室満員になるときがあるわけですが、一体この部屋の中の環境度というのはどのくらいであろう。たばこをみんな吸っておる。〇・〇二ppmをはるかにオーバーしてしまっているのではないだろうか。だとすれば、会議そのものも禁止をしなければいかぬ。人間の活動を許さぬというような非常に厳しい環境基準ではないであろうか。だから、やはりわれわれ人間が生きていくためには産業活動も必要なんだし、経済活動も必要なんだから、そういう現在の国民水準を維持するための諸条件というものを考えながら、われわれは会議をすることも必要でしょう。そういう中で本当に客観性のあるような基準というものを設けていかなければならぬ。  基準値というものは厳しければ厳しいほどいい、数値が少なければ少ないほど国民寄りであり、数値が大きくなればなるほど企業寄りであるというような観念論だけでは、本当に環境を守ることができるだろうか。青空は取り戻したけれども環境はよくなったけれども、われわれの生活はわらじ履きでカンテラを提げて隣町まで歩かなければならぬというような時代に逆戻りをしてしまうのではないだろうかとさえ実際には思われるわけですよ。そういうふうに見ていきますと、実はこの〇・〇二ppmという環境基準をお決めになったそのこと自身が、大変私は疑問に思えるわけですが、いかがでございましょうか。
  306. 春日斉

    ○春日政府委員 環境基準の設定についての審議は、昭和四十五年の十月から四十七年の六月に専門委員会、さらに大気部会の小委員会が四十七年の七月から四十八年の四月にかけて、あらゆる専門家を動員いたしまして検討されたものでございます。これは現在尊重せざるを得ないわけでございます。ただ、先生の御指摘のように、環境基準と申しますものは、それを超えると直ちに生命に危険があるとか病気になるとか、そういうものではないのでございますが、ややともすると、そういう危険レベルであるというふうに受け取られがちなことは、私どもも十分に反省しなければならぬと考えております。
  307. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 私が、この都市のNO2の環境基準を問題にいたしておりますのは、これが基準になって、そして大気の浄化というものに派生をしていっているわけですね。いろいろ各都市が言ってきておられるのも、NO2のこの環境基準を達成するために、何年までに窒素酸化物を減らしてもらわなければ、これは達成できぬじゃないか、こういうことで非常に声を大にしておられる。ところが、実際に現実にいまのわれわれが生きている社会と見比べていきますと、本当にこれを達成するためには、いわゆる工業ももう半分ぐらいはやめてしまわなければいかぬというような厳しい環境基準ではないであろうか。環境は達成できたけれども、生活はカンテラを提げてという生活に逆戻りなんだ。そうだとすれば、私は国民の皆さん方首をかしげてしまわれると思うのですよ。そうなんだろうか。いま国民の皆さん方が受けておられる感じは、環境庁が告示をしている環境基準があるんだから、それを超すようなことは、やはりわれわれの命と健康が日々むしばまれてしまうだろう、だからそれを早く達成させなければいかぬということも、私はそこが起点になっていろいろ言われていると思うのです。だからこそ排気ガス公害の規制の問題についても、これを達成するために、何年までに何をやらなければ、われわれのあすからの命がむしばまれるではないか、こういう論議ばかりなんでしょう。だから、その辺がより明確にされないと、これは大変なことになってしまうのではないだろうか。その反面、先ほど申し上げましたように、自分の家庭ではこの環境基準の十倍も二十倍もするような高濃度な、いわば悪環境の中で生活をしていらっしゃる、そのこと自身は何も御存じないのです。これよりももっともっと悪い状態を環境庁は決めておるという理解の上に、私は国民の皆様方は立っておられると思うのですよ。国民の皆さん方が環境庁が決めている環境基準と自分の家の中の空気を比較してみたら、まだ十倍も二十倍も家の中の方が悪かったというようなことになりますと、これは実際には驚きだと思うのですよ。だから、その辺をこれからどうしていったらいいだろうか、私はひとつ長官にもしっかりお考えを願いたい。  そこで、時間がございませんから排気ガスの問題に入ってまいりたいと思いますけれども、まあいろいろ四十八年規制とか五十年規制とか五十一年規制、小刻みに規制が強化をされてきておるわけですね。新聞によりますと、何だか毎年後退をしておるような記事ばかりでございますけれども、実際には四十八年、五十年、五十一年というように、いわば一年置きなり隔年に基準の強化が実は図られて、そういういろいろな総合的な対策が実って、先ほど新聞を読みましたように、昭和二十五年以来の透明度を昨年度において東京の空は取り戻した、こういう新聞報道になっておるわけでございますが、少なくともそういうことで各面の努力がいま実りつつある。しかし、まだまだわれわれはそこで満足するわけではなくて、現在の生活水準というものを維持しながら、さらにアップをさせながら、よりよい生活環境を築いていくということは当然なことですから、当然やっていかなければならないことではございますが、しかし、いまの環境行政を見ておりますと、どうも何か感情論に押され、本当の根本的な対策を忘れておる——失礼でございますか、忘れておるとは言いませんけれども、根本的な対策はとれないような、いわばその場当たりの問題に翻弄されておるのではないのであろうか。  たとえば自動車の問題にいきましても、このように四十八年、五十年、五十一年というように規制を強化をしていくということは、メーカー側にとってみれば、確かにこれは大変なことだと思うのですね。それに対応していくためには、いろいろな努力が必要でしょう。せっかくつくったものを来年はまた変えなければいかぬ、こういう状態ですね。そういたしますと、それでもまだ本当は〇・〇二というようなこの厳しい環境基準を達成するにはほど遠いわけですから、まだまだこれから努力をしなければいかぬ。そうすることは、最終目標を達成するために段階的に努力をしていって、それが実を結ぶというものであるならばいいわけですけれども、現実はなかなかそうはうまくいかないわけです。国民の皆様方は、少しでもクリーンエンジンができれば、それをさらに排気ガスをろ過してやれば、さらにいいものができるじゃないか、こう単純にお考えの方が非常に多いわけでございますけれども、中途半端なクリーンエンジンをつくって触媒装置をつけたならば、あるいは還元触媒が働かなくて、実際には悪いエンジンに還元触媒をつけるよりも効率が悪くなってしまう、浄化できないというような問題もいろいろあるわけでございます。したがって、本来的な、最終的な、よりよい環境を得るためには、抜本的な研究なり技術開発というのが必要なんです。ところが、こういうふうに小刻みにやられてきますと、なかなかそちらに手が回らずに、その示された暫定基準を追うのにいっぱいになってきてしまう。これもいずれは限度があるでしょうから、ぶつかってしまうと思いますけれども、それだけで本当にいいだろうか。  アメリカあたりを例に引いて恐縮でございますけれども、アメリカあたりでは全米科学アカデミーとかいろいろの科学的な調査機関がございまして、それがあらゆる面からの調査検討を進めて、そして最終目標を定めながら、あるいは一方では航空宇宙局ですか、例のアポロなんかをつくった優秀なところ、ここがさらにさらに完全なものをつくる止めに、長期的な目標をもってこの技術開発のために取り組んでおられる、こういう方向があるわけでございますが、日本の場合は、何となくその場当たり的に進められてしまっておる。これで本当に根本的な問題が解決できるであろうか、こういう心配があるわけでございます。逆に、最終目標とする目標を達成するための本当に大切なことをおくらせてしまう結果になりはせぬだろうか、こういう心配があるわけでございますが、長官、いかがでしょうか。
  308. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは、先生のようなお考えも十分頭に置いて、相当の余裕期間を置いて決定をいたしたわけでございます。先生も国会に籍を置かれるのですからおわかりになると思いますが、これでもあらゆるところで後退だ、後退だというようなことばかり言われまして、私が、そうじやない、四十八年からわずか三年の間にとにかく四分の一に減らしていこうというこの努力、世界一厳しい規制をやったわけでございますからと、幾らそういうことを申しましても、世界一厳しい基準であるという記事を書いて、国民の理解を得ようとしてくださるところはどこにもない。やはり国民全体のいまの願望、そういうことを政治としては十分頭に置いてやっていかなければいかぬものですし、さりながら、環境行政をやることによって国民の生活向上をゼロにしてしまうことはできません。したがって、私は、国民の生産活動なり消費活動というものに、環境行政というものは適切な環境保全の見地からするコントロールをやるんだ、これを全く無視してしまうことはできないのだということで、いろいろ国民的な願望にこたえつつも、その点の苦心をいろいろな面で反映させておるわけでございますから、その点はひとつよく御理解をいただきたいと思うものでございます。  いまおっしゃったように、果たして三年間で三回も次から次へとそういう規制をやって、かえって本来の目的を失うのじゃないか。私ども総理の御指示もありますので、さらにこの技術専門委員会を拡充強化しまして、本当の意味で自由に、技術的な良心に基づいた御検討を、これから願おうといたしておるわけでございますから、先生のおっしゃることは、私も一つの卓見として十分頭に置いていきたいと考えております。
  309. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 小刻みな規制をやってはいかぬとは私は言っていないのです。現在の技術水準で最も厳しい規制を加えていくということについては、何も異論ははさんでおるわけではありません。しかし、それをやることによって根本的な問題がおくれてしまう可能性があるから、国としては根本的な問題にどう取り組んでいくかという別な意味の姿勢がなければいけないのではないか。そこでアメリカの航空宇宙局がどうしておるとか、いろいろ例を申し上げたわけですが、これは国家的見地に立って、長期な目標を置いて、抜本的な無公害車の開発というものに現実に取り組んでいるわけですよ。ところが日本環境行政というものは、ややもするとべからず式だけであって、あれをやってはいかぬ、これをやってはいかぬ、こうおっしゃっているだけであって、本当に最終目標である無公害車の開発という面には、一体どの程度国はやっているであろうか、こう考えていきますと非常に疑問が多い。確かにメーカーに対して補助金を出して開発しなさい、こう言っておられるけれども、これはなかなか私は大変なことだと思う。  それに、さらにいろいろな公害の面でも、資料というものがある学者グループからぽっと発表されてしまう、こちらのグループからぼっと発表される、これによって大変国民が惑わされてしまう。牛込柳町の鉛公害にしてしかり、石神井中学のアクロレインが入っているとか入っていないとかいう問題もしかり。後で調べてみると、どうもうやむやになってしまう。ところが、そのときに声を大にしてばっと発声をしてしまいますと、新聞がでかでかと書き上げる。それによって、ではどういうアクションがとられるか。何もとられてないわけでしょう、結局は。アメリカでは自動車の鉛公害そのものが大変疑問があるということで、この間、環境庁裁判に負けましたね。御存じですね。ある州では、本当に因果関係があるかどうかすら疑問だということで、裁判環境庁が負けているのですよ。そういう疑問点もある。最近ではまた文芸春秋の二月号ですか、「イタイイタイ病は幻の公害病か」というような疑問点も出されておる。したがって、そういう問題については本当に冷静に、技術的に科学的に追求を怠ってはいけないのだ、そういうことがやはり環境行政の基本になくてはいかぬ。そして国民の要望を満足させるために、いろいろな手を打っていかれるのも結構でございましょう。結構でございましょうが、基本的なものがないと大変なことになりますよ、こう申し上げておるのです。その辺の御決意を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  310. 小沢辰男

    小沢国務大臣 アメリカの制度をいろいろ言われますけれども、必ずしもアメリカの制度が、マスキー法成立の過程から見ても先生が賛成されるのかどうか、私はその辺のところは突き詰めて議論をしてみなければいかぬところだと思います。私どもは、日本においては何といっても自動車産業の中の技術の方が実際的に発達をしているという見地から、自動車関係専門的な知識を持つ人も入れて、いろいろ御審議を願ってきたわけでございます。ところが、御承知のとおり、自動車の専門メーカーの中でももう十分対応できるというところもたくさん出ているわけでございまして、しかも私どもの理想の旗として掲げましたマスキー法と同じような〇・二五の四十七年十月の方針をいろいろ検討していただきましたけれども、どうしてもいまの技術開発の状況ではできないだろうということになって、しからば暫定的な規制値というものをどうしたらいいんだということを真剣に御討議願ったわけでございますから、私どもは今日のこの結論について硬軟両方からいろいろな批判をいただきますけれども、やはり私どものこのとってきた態度、しかもそれに対応できる技術開発の現状から見て、相当期間の猶予期間を置いて今日のような態度をとったということは、これは私はもう本当に正しい行き方じゃなかったかと思うのでございまして、いろいろ技術の面で考え方をいま言われまして、鉛公害の問題一つとってみても、あるいは健康被害の問題をとってみても、いろいろな学者の意見がいろいろな角度から言われまして、いまの厚生省の四十三年五月の決定についても疑問点が出されております。技術なり科学なりというものはそういうものじゃないかと思うのです。やはりある一定のその時点における結論が、その後のいろいろな検討の結果、また変わってくるという見方も出てくるだろうと思うのです。私どもは自動車専門委員会の方々を信頼をして、さらに、しかし考えてみますと、今後技術開発の状況を絶えずチェックしていくというような面も大事なことでございますので、そういう点も含めて考えてみますと、さらにこの専門委員会の拡充強化を図って、ひとつこれらの専門的な御検討を科学的に技術的に願って、その結果をもとにしながら行政をやっていこう。少なくとも私どもの中公審全体のいままでの委員の人選なり、やり方については、私は、これが最善か万全か、いろいろな御批判もありましょうけれども、与えられた現実の対応の仕方としての行政は、まあまあこれが大体妥当な線できたのじゃないかと考えておるわけでございます。  なお、いろいろアメリカの例を引用されての、物事のもう少し科学的な考え方、詰め方ということについての御意見は、私も傾聴しておったわけでございます。
  311. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 長官、私の質問と全然変わったことをお答えになっているんですよ。ぼくは何も、環境庁がやっていることが一々悪いとかよいとか言ったわけじゃありませんよ。そういう国民の願望を取り上げて暫定基準をお設けになっていくことも結構でしょう。しかし、それだけではいけませんよ。環境行政というものは、もっと長期に見て、抜本的な問題を解決していくという方途を考えなければいかぬではないですか。そのために、たとえばアメリカが完全無公害車の開発のために宇宙航空局を使っていろいろやらしておるとか、そういうことがあるんですよ。日本もそういう面がおくれておるから、やはりあわせて考えていかなければならぬではないですか、そういう意味の長官の御決意を伺っただけなんですよ。いまおやりになっていることが、中公審の開き方が悪いとか、どうとかこうとか、そんなことは一言も言っているわけではありません。そういうことはそういうこととしていいけれども、しかし別の問題として、そういう抜本的な問題があるんですよ、これについてはやはりなおざりにしてはいけませんよ、こういうふうに言っているんですよ。それについての御決意を伺ったわけですよ。
  312. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そういう意味においては、それは当然だと思います。先生の御議論の内容はわかりませんが、抜本的な対策を立てなければいかぬですよと言われることは、それはそのとおりだと思います。ただ問題は、そこに至る道程でどういうやり方をするか、どういう技術的ないろいろな知識行政の中に反映させていくかというやり方については、現在のところ、やはり中公審なりそのもと専門委員会というものを活用していかなければいかぬという現実の姿を私は申し上げたわけでございますが、なお御意見を具体的に私また拝聴いたしまして、本当におっしゃるように、それだけではだめなんで、もっと本当に抜本的な、長期的な計画をつくっていかなければいかぬという御説については、まことに同感でございます。
  313. 渡辺武三

    渡辺(武)分科員 終わります。
  314. 木野晴夫

    ○木野主査代理 以上で、総理府所管環境庁に関する事項についての質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時、第一分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十六分散会