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1975-06-09 第75回国会 衆議院 予算委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月九日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 塩谷 一夫君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大野 市郎君       北澤 直吉君    倉成  正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    谷垣 專一君       塚原 俊郎君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       藤井 勝志君    保利  茂君       松浦周太郎君    森山 欽司君       安宅 常彦君    阿部 助哉君       勝間田清一君    多賀谷真稔君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       湯山  勇君    金子 満広君       紺野与次郎君    松本 善明君       有島 重武君    正木 良明君       小平  忠君    佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正己君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長 佐々木義武君         官)         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 山縣 習作君         総理府統計局長 川村 皓章君         防衛庁参事官  菅沼 照夫君         防衛庁参事官  平井 啓一君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       斎藤 一郎君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁人事教育         局長      今泉 正隆君         防衛庁衛生局長 萩島 武夫君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         農林省食品流通         局長      森  整治君         食糧庁長官   三善 信二君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業審議官 天谷 直弘君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         資源エネルギー         庁公益事業部長 大永 勇作君         労働省労政局長 道正 邦彦君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治大臣官房審         議官      山本 成美君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省財政局長 松浦  功君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   田代 文久君     不破 哲三君   中川利三郎君     松本 善明君   平田 藤吉君     津金 佑近君 同月七日  辞任         補欠選任   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同月十一日  辞任         補欠選任   正木 良明君     鈴切 康雄君 同日  辞任         補欠選任   鈴切 康雄君     正木 良明君同月十四日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     中村 梅吉君 同月十五日  辞任         補欠選任   大久保武雄君     二階堂 進君 同月十九日  辞任         補欠選任   松本 善明君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     松本 善明君 同月二十八日  辞任         補欠選任   安里積千代君     神田 大作君 同日  辞任         補欠選任   神田 大作君     安里積千代君 四月十五日  辞任         補欠選任   多賀谷真稔君     吉田 法晴君 同日  辞任         補欠選任   吉田 法晴君     多賀谷真稔君 同月十七日  辞任         補欠選任   安里積千代君     池田 禎治君 同月十八日  辞任         補欠選任   池田 禎治君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   安里積千代君     池田 禎治君 五月七日  辞任         補欠選任   池田 禎治君     安里積千代君 同月八日  辞任         補欠選任   安里積千代君     池田 禎治君 同日  辞任         補欠選任   池田 禎治君     安里積千代君 同月九日  辞任         補欠選任   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同月十三日  辞任         補欠選任   谷垣 專一君     宇野 宗佑君   藤井 勝志君     田中 榮一君   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同月十四日  辞任         補欠選任   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同月二十三日  辞任         補欠選任   安里積千代君     受田 新吉君 同日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     安里積千代君 同月二十七日  辞任         補欠選任   安里積千代君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     安里積千代君 同月二十八日  辞任         補欠選任   石野 久男君     竹村 幸雄君 同日  辞任         補欠選任   竹村 幸雄君     石野 久男君 同月二十九日  辞任         補欠選任   安里積千代君     和田 耕作君 同日  辞任         補欠選任   和田 耕作君     安里積千代君 六月三日  辞任         補欠選任   安里積千代君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   小沢 貞孝君     安里積千代君 同月五日  辞任         補欠選任   安里積千代君     玉置 一徳君 同日  辞任         補欠選任   玉置 一徳君     安里積千代君 同月六日  辞任         補欠選任   松本 善明君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     松本 善明君 同月九日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     谷垣 專一君   田中 榮一君     藤井 勝志君   中村 梅吉君     正示啓次郎君   二階堂 進君     大久保武雄君   松野 頼三君     塩谷 一夫君   岡田 春夫君     勝間田清一君   津金 佑近君     紺野与次郎君   不破 哲三君     金子 満広君   矢野 絢也君     有島 重武君   安里積千代君     佐々木良作君 同日  辞任         補欠選任   大久保武雄君     二階堂 進君   正示啓次郎君     中村 梅吉君   谷垣 專一君     宇野 宗佑君   藤井 勝志君     田中 榮一君   勝間田清一君     岡田 春夫君   有島 重武君     矢野 絢也君 同日  理事山村新治郎君三月四日理事辞任につき、そ  の補欠として塩谷一夫君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  前回の委員会以降、国際情勢財政経済その他各般に及ぶ情勢変化に伴い、各党理事から、これらの問題について緊急に委員会を開会し、政府の施策をただすべきとの要求があり、先般来の理事会において協議いたしました結果、本日から二日間開会することに決定いたしました。委員各位の御協力をお願いいたします。      ————◇—————
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  現在、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によって委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、塩谷一夫君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、国政調査承認要求に関するの件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する件について、議長に対し国政調査承認を求めることとし、その手続委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  7. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝間田清一君。
  8. 勝間田清一

    勝間田委員 社会党を代表いたしまして、経済財政、外交などにつきまして、三木内閣態度をひとつ御質問いたしたいと思うのであります。  まず、実は日本経済現状認識についての政府統一見解をひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。  政府はいま、物価安定か、あるいは経済回復か、非常な財政危機の中で混迷をいたしておるように見受けられてなりません。今回の〇・五%の公定歩合引き下げ態度にもあらわれておりまするし、また、やがて問題になるでありましょう第三次の景気浮揚政策につきましても、各省の態度にはきわめて混乱があるかに見受けられるのであります。したがって、この際にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、現時点日本経済はようやく不景気の底をついて、これからは徐々ではあるが上向きに向いていると見ているのであるかどうか。それとも、現状はなお深刻であって、この停滞は相当長期にわたるものと考えているのであるかどうか。  これと関連をいたしまして、卸売物価は確かに安定しているという点については異議がないと思うのでありますが、消費者物価につきましては、四月あるいは五月の異常な状況なども判断をいたしまして、今日、きわめて不安定かつ危険を擁する状況であろう。あるいはまた、政府の、いわゆる来年三月予定されている九・九%以内に物価を抑えていくという考え方がある。これは容易ならざるものであるという考え方に立っているのであるかどうか。そうでなくて、もう物価安定基調に入っているものと考えているのであるかどうか。こうした点についての統一見解というものが今日政府になくてはならぬと私は思うのでありますが、これに対する政府見解をひとつ福田総理お尋ねをいたしてみたいと思うのであります。
  9. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、景気につきましては大体底へ来た、こういうふうな見解でございます。ただ、その底から立ち上がる勢い、これが非常に微弱であります。そこで政府として何らかの景気対策を必要とするかどうか、そういう段階でございます。  それから、物価につきましては、卸売物価は非常に鎮静の傾向でございます。もうそう心配はない。ただ消費者物価につきましては、鎮静基調ではありまするけれども、今後注意を要しなければならぬ、こういうふうに考えておるのです。消費者物価につきましていろいろ見方があります。皆さんの間からも、どうも一けた台の見通しは、これは怪しいんじゃないか、そういうようなことも言われます。政府といたしましてはそうは考えない。物価全体につきまして、背景がことしは昨年に比べまして、これは比べものにならないくらいいい状態にある、私はそういうふうに見ておるのです。  一番問題は何だと言えば、賃金です。去年は三三%上がった。ことしは一三、四%でおさまりそうだ。これは大変な変化でございます。  それから外国から来る輸入物資、これは大体昨年は上がり続けたわけですが、ことしは頭打ちである、こういう状態です。  それから金利はどうだといいますと、昨年は上がり調子で来たわけです。ところが、ことしはこれを下げ調子に持っていく可能性を持っておる、こういう状態です。  公共料金でございますが、昨年は軒並みに公共料金の引き上げというものがあった。ことしは公共料金を厳にこれが抑制に努めるという方針で、限られた公共料金だけを上げる、こういうふうにしております。  そういうことを考えますと、環境は非常によろしい。ただ、不況が続きましたので、企業の収支が苦しい。そこでその脱出口製品値上げに持っていこう、こういう動きがある、これが私は一つ心配なんです。この点の調整ができますれば、私は、五十年度の物価問題、これはかなり見通しが明るい。私は企業協力を得まして、万難を排して一けた台の消費者物価目標、これを実現したい、こういうふうに考えております。
  10. 勝間田清一

    勝間田委員 景気は底をついた、しかし浮揚には実は相当の長期を要する状況であるという、いま福田総理の回答でありますが、そこで私は、政府景気回復政策についてひとつお尋ねをしたいと思うのであります。  政府も近く第三次景気回復政策を発表せられると実は聞いておるのでありますが、これらの政策がどのような構想で発表される予定であろうか、提案される予定であろうか。もとよりこの問題については、財政の需要を拡大をしていく方法ももちろん有力な方法でありましょう。住宅問題を取り上げていくあるいは公共事業を取り上げていくという課題もあるでありましょうし、中小企業金融という課題もあるに違いない、また貿易振興に対する金融政策といったような問題もあるに違いない、また第三次公定歩合引き下げという金利引き下げ政策もあるに違いない、いろいろの政策というものが考えられるのでありますけれども、現時点においてまた将来の展望をも含めて、どういう景気浮揚政策なり景気回復政策なりをとっていこうとしておるのか、この方針と内容を明らかにしていただきたい。福田総理お尋ねをいたしたいと思います。
  11. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま政府としては非常にむずかしい立場にあるのです。つまり物価、これを安定させなければならぬ、しかし過度の景気の落ち込みも避けなければならぬ、こういうことであります。私は、物価、これはどうしても安定させなければならぬ、しかもその中でも消費者物価、これの年度間一けた台の目標、これを何が何でも実現したい、こういうふうに考えております。その間におきまして、それと矛盾する性格を持った政策、つまり景気対策もまたとらなければならぬという実情であることは、ただいま申し上げたとおりです。  そこで、どういう景気対策をとるか。これは五月中のいろんな経済指標を点検いたしまして、どうも底には来たものの景気浮揚の力が微弱である、第三次景気対策をとる必要があるのじゃないかということを考えるようになってきたんですが、そういうことを考えた場合に、どういうことが考えられるか。とにかく一番すぐ考えられますのは、これは民間設備投資です。ところがこの民間設備投資は、今日これを期待し得る状態ではない。何となれば、あるいは公害対策公害設備投資、これが考えられます。またボトルネック産業に対する設備投資、これも考えられる。しかし一般的に申しますと、わが国の経済実情はいま操業率が非常に低下しているのです。七六%の操業率だ、こういうような状態です。ですから景気浮揚牽引力設備投資に求める、そのために何がしかの金融対策を行うということは、これは非常に考えにくい問題です。そうすると、設備投資はまず期待できない。しからば民間消費景気浮揚の力を求めることができるかというと、いま民間消費が非常に沈滞しているんです。これは何だ、こう言いますと、私は民間消費停滞の原因というものをつぶさに見詰めておりますが、さて物価というものはわりあいなだらかになってきておる。なだらかになってきておるものの、何としても高いという感じを持っておるわけです。事実そのとおり、高値安定です。そこでさあ買おうと思ったが、余り高いということで買いに出ない、こういうような状態がある。そういうことを考えると、にわかに民間消費購買力景気浮揚の力を求めるということは、非常にこれもまた困難である。  そうすると、残るのは何だと言いますと、財政それから輸出ということになる。輸出はどうだと言いますれば、これはまた世界がいま非常な停滞状態です。そういう状態下において多くを輸出に期待することはできない。そういたしますと、何といってもこれは財政ということになってくるんだろうと思う。ところが、その財政はどうだと言うと、四十九年度においては税収の欠陥を生ずるというような実情です。そこで財政に多くの負担を求めるということも非常に困難。しかしとにかく景気浮揚ということを考えると、財政以外にない。そうすると、その広い意味財政の、財政投融資を活用する。幸いに郵便貯金の伸びなんかは非常によろしいのですが、その辺で何らかの工夫はないかということを考えるべきだ。十六日に経済対策閣僚会議を開きまして具体策を検討いたしますが、どうもいまの段階で私が考えますと、やはり景気浮揚の力をつけるという方策といたしましては、これは財政投融資を中心とし、それに金利の問題だとかあるいはボトルネック産業の問題でありますとか、そういう金融補完的役割りを担当せしめるという形の対策以外には考えられない、こういう状態でございます。
  12. 勝間田清一

    勝間田委員 設備投資を活発にすることによって日本経済浮揚政策を図ることは不可能である、あるいはそれは間違いであるという考え方については私も全く同感でありまして、稼働率なり操業率なりが七六・何%という低い状況の中でいかに若干の金利を安くいたしましても、あるいはいかに設備投資を拡張しようといたしましても、だれも現在の経営者がその水を飲もうとはしないだろうと私は思う。そういう意味において、設備投資を導いていくというアイデアではなくて、やはり稼働率を高めていくという考え方、この考え方には私は賛成であります。しかしこの稼働率を高めていくという問題について、やはりもう一つの視点が必要ではないだろうか、私はそう思うのであります。それは福田総理先ほどお話しになりましたが、言うまでもございませんけれども、民間製品を下げなければならぬ。製品値上げを押さえなければ、今後の物価安定は期していくことができない。それならば、現在の物価安定の中の一番の主要な目標である製品値上げを押し上げているコスト高を吸収するという道は一体何だろうかということを考えてまいりますると、私は、そこにまた大きな問題が出てくるのではないだろうか。  最近の日本経済新聞社の調査を私、しばらく見ておりましたところが、これからの経済景気回復は何だろう、特にコスト高を吸収する道は何だろうかというときに、一番たくさん答えたのがいわゆる稼働率を高めていくことだ、これが三五%を占めているのであります。人件費材料高を抑えていかなければならぬ、吸収していかなければならぬと考えておる者が二九%であります。金利負担を軽減してもらわなければならぬと考えている者がわずか七%にすぎないのであります。この日本経済新聞の調査は現実の状況を端的に物語っているのではないだろうか。そういうことであるならば、私は一層今日の稼働率を高めていくという政策は、浮揚政策にも効果を持つものであると同時に、物価引き下げというか、それを抑え込むことに大きな効果を持つのではないだろうかというように思われるのでありまして、私はこの点について通産大臣にやはり見解を伺っておきたいと思います。今日の日本の産業、経済状況の中で、景気回復政策、コスト上昇を吸収する政策として何を一番考えねばならぬかというときに、この稼働率をどう考えているかということについて、ひとつ通産大臣の答えを聞きたいと私は思います。
  13. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど副総理がお答えになりましたように稼働率が七〇%をちょっと超えた程度でございまして、そのことがコストを非常に高くしておる大きな要因になっておるわけでございます。でありますから、やはり製品値上げを抑えようとすれば、コストの一番の押し上げの要因である稼働率をもう少し引き上げる、これはどうしても必要である、こういうことを考えまして、いま各省間でいろいろ打ち合わせをしておるところでございます。
  14. 勝間田清一

    勝間田委員 そこまでは意見が一致するといたしましょう。しかし、その稼働率を高めていくという点について、需要をどう喚起するかがさらに先行しなければなりません。すなわち、需要がないのに稼働率を高めていくという政策はとれないはずであります。いま福田総理は、財政需要をという事柄でありました。私はこの点も後ほどひとつあなたに御質問をいたしたいと思う。  しかし、私どもと一つ基本的に違う点は何であるか。一つの点は、国民総支出の五四%を占める大衆購買力というものをどう見ているかということでありまして、この大衆購買力というものを無視して、そして他の需要を考えてみたところで、現在の基本的な資本主義の矛盾というものは解決されるものではないということを私は指摘せざるを得ない。私はこの意味においてまず第一に指摘したいと思うのは、今日勤労階級が未曾有な失業、半失業の状態に陥っていることであります。これは労働大臣に私はお尋ねしたいと思うのでありますが、完全失業、あるいはたとえば東北、北海道等の出かせぎの失業状態、あるいは最近の有効求人の倍率の低下の状況ということを見まして、いかに雇用が低下しているかということを私は労働大臣にひとつお尋ねをしてみたいと思う。  同時に、私が一つお尋ねをしなければならぬと思うのは、これは労働大臣のみではございません。春闘における結果が、御案内のとおり一五%のガードライン以内に政府及び資本家は抑えました。これはどの程度になるかは、現在のストの状況にございまするから、最終集計はできていないに違いありません。しかし、私の見た一番新しい状況を見まするならば、これまた五百八社の日本経済新聞の調査であると私は思います、単純な平均から見まして一四・一、二%であります。組合員数を加重平均いたしまして見たものが一三・何%かに当たるのであります。このまことに少ない一三%という状況は、これは最近のこの三、四月の物価水準から見ましても、過去一年の年平均の物価上昇率から見ましても、著しく低いものであります。そういう状況の中で大衆購買力が急速度に減少をして、百貨店の売上高に見られるような消費減退を来しているのは当然だと私は思う。私は、三木内閣というものが労働者の賃金を抑えたことが資本主義の自己矛盾を来したのではないだろうか。言うならば、過剰生産恐慌をつくり出している一つの大きな条件の中に、大衆購買力と生産力とのふつり合いが今日生まれているのではないだろうか。ここを指摘することなくして財政需要云々を指摘してみても始まらぬのではないだろうか。雇用の問題にいたしましても、すべてのしわ寄せを労働者の首切りや合理化にしわ寄せをしておき、賃金を引き下げることに犠牲を置いていて景気回復ができるでしょうか。私はこの意味において労働大臣及び三木総理大臣にひとつ見解を聞かせてもらいたい。
  15. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 お答えいたします。  賃金は、労使の間に政府が介入しないことは、勝間田先生おわかりのとおりでございます。政府は、三月末消費者物価一四・二%、そのベルトを締めるのに懸命でございました。そして、それは国民の非常な御理解を得て達成したわけであります。このたびのあなたのおっしゃった賃金の水準というものは、私は、物価安定というものに対しながら、労使の間に、こういう大事なときでございますから、話し合いによってそういう結果が生まれたもの、こう思っているわけであります。  個人消費が五四・数%という話がありますが、こういうときば企業というものは本当に購買力を増すためにも工夫しなければならぬ。たとえばある家電のごときは、従来飾りつけの多いものを全部取っ払って二〇数%下げた。ところが、新聞を見まして、あるいはその会社の報告を聞きますと、最近それは一時帰休した者をまたもとへ戻したりしているのです。そういうことによって購買力の吸収、自由競争の原理というものを働かしているのではなかろうか、私はこう思います。  もう一つは、おっしゃるとおり私たちは人生の最大の不幸は失業だと思っておりますから、この失業雇用状況については注目しております。最近の模様を申し上げますと、四月は有効求人倍率が〇・七三で、一月以来ここずっと上がってきたというかっこうでございまして、いささか安心もしておりますが、といって、これは四月末で九十八万で一・九%の失業率でございます。よその国の例などを見ながら、いまから先の日本経済問題に対してこれが一番大事なことだというふうに考えて、政府部内において雇用の問題、経済問題、ただいま副総理のお答えしましたそういうものと、もろもろの調整を図っておるところであります。
  16. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 労働賃金に対して政府が介入するものではありませんが、しかし今回の春闘というものは、労使が国民経済的な見地に立って非常に冷静な妥結を見たものだと思う。なぜかと言えば、やはり賃金がコストプッシュの要因であることは否定できない。従来のように賃金が三〇何%も値上げをして、そういうことによって——賃金ばかりではありませんが、インフレが高進することによって最も打撃を受けるものは何か、勤労大衆であることは明らかである、実質的な所得は名目のいかんにかかわらず少ないですから。したがって、いまインフレを抑制するということが、今日の経済政策の中で最重点の政策であることはこれは誤りのないことでございます。したがっていま景気政策——政府物価安定を図りながら景気の動向に対しても細心の配慮をしなければならぬことは当然でありますから、これは二者択一というものではないけれども、やはりそのときそのときの経済情勢に応じて、どちらに重点を置きつつこの経済政策のかじ取りをしていくかということを決めなければならぬ。いまは物価安定ということに重点を置きながら、一方において景気対策というものもとっていくということでございますから、それはやはり賃上げというものと切り離して、景気対策、インフレ抑制ということは、一方において大きな経済政策の重点として今後も続けていかなければならぬ。また一方における景気対策景気対策として、今後の経済政策の中に取り入れていくべき性質のものである、こう考えておる次第でございます。
  17. 勝間田清一

    勝間田委員 どうも労働大臣も総理大臣も政治的な答弁が多いんで、もっと論理的に考えたらどうかと私は思うのです。  私は端的に数字でひとつ御質問をいたしたいと思うのですが、先ほど私は日本経済新聞の数字を一つ挙げました。現在のコスト高を抑えるのには何が一番効果がありますかという回答は、三五%が稼働率を上げることです、二九%が労賃及び材料費を下げることです、七%が金利を下げることです、いわゆる労務費の値上がりも材料費の値上がりも、七六・三%という未曾有に低い稼働率を高めることによって吸収できるというのが先ほどの合意ではないか、また事実、数字はそれを示しているではないか。賃金を上げることが物価を押し上げるんだという一般理論ではなくて、現在の日本状況から見て、余りにも稼働率が低いので固定費用の負担率が高いのだ、この固定費用の負担率の高さを克服するということが課題なのであって、賃金を抑えることが課題ではないのだ。これは政治的な見解ではなくて、私は論理的な見解だと思う。  もう一つ大事なことは何だ。これまた日本経済新聞の調査ではっきりわかると私は思う。今度は逆に、現在の景気回復するのにはどうしたらいいと思いますかということに、どういう回答をみんなが出したでしょうか。四八%、圧倒的多数が、すなわち他の費目に対して多数が、個人消費の引き上げを期待する以外に道はありません、これが今日の考えではないか、そうでしょう。個人消費の引き上げを期待する以外に現在の景気回復する道はありませんという議論と、片っ方には操業率です。賃金の値上げという問題をやっている者は二九%です。  この状況を正確に判断するならば、大衆購買力を正当に維持する賃金政策というものが皆さんの資本主義を守る最小限度の条件ではないか。これは論理的に明白ではありませんか。福田総理、あなたはかなり明確に物を言い切りますが、ひとつはっきりお話を願いたいと思います。
  18. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 やはり私は、インフレの被害はだれにいくかというと、第一は、弱い小さい立場の人に非常に直撃的にいくと思うのです。それからもう一つ、第二には勤労者にいくと思う。ところが、今回の賃金決定はどういう状態か、わが国の経済の流れの中でどういう状態か、こう言いますと、これはとにかく政府は九・九%、一けた台の消費者物価上昇ということを言っているのです。それに対して一三%になりますか一四%になりますか、まあわかりませんけれども、その辺に賃金決定は落ちつきそうだ、こういうことになりますと、実質賃金というものはそれだけ、差額だけ、四%がらみの上昇、こういうことになる。私はそういう状態の方が、賃金がよけいに上がってそうしてインフレを醸し出すという状態よりはよほどいいのだ、こういうふうに考えているのです。  私はいま日本経済のこの大混乱をどういうふうに見ておるかというと、これは大変な混乱である。もう一年、二年じゃ直らぬ、三年ぐらいかかるだろう、こういうふうに見ておるのです。その中で一番大きな問題は、やはり賃金と物価の悪循環の問題だ、こういうふうに見ておるわけであります。またこれを断ち切ることは勤労者のためでもある、こういうふうに見ておる。  ただ、三年間かかりますけれども、その第一年度はどうだというと、とにかく物価は一四%、そういうところでおさまった。賃金の方は一三、四%というところでおさまりそうだ。これは私は、そういうふうななだらかな形になったからといって、物価問題が三年かかるのがそれで一挙に解決したとは思わないのです。これはやはり第二年目という問題がある。というのは、賃金、物価がそういうふうな形でこの三月にはおさまりましたが、賃金がそういうなだらかな背景になったということはどういうことであるかといいますと、さあ物価がとにかく一五%以内、一四%程度でおさまった、それから政府は、五十年になりますれば一けた台におさめる、こういうことを言っておる、その物価に対する期待、また実績というものが非常に大きな背景となって、このなだらかな解決になったということを考えておるわけであります。そういうことを考えますと、これはよかったよかった、そういうふうには考えておりません。これは勤労者の、労働者のそういうなだらかな決定、醸し出した態度に対して、政府はもう非常に大きな責任をしょったというふうに考えておるのですよ。  そういうことを考えますと、やはり五十年における物価問題、これはもう本当に真剣に取り組んでいかなければならぬ、こういうふうなことでございますが、その過程において、おっしゃるとおり景気の問題がある。その景気の問題の対策として、いま勝間田さんは消費購買力を上げろ、そのためには賃金を上げろと言いますが、仮に賃金を上げたら一体どうなるかといいますと、これはもうコスト高となって物価にはね返ります。いまアンケート調査というお話がありますけれども、アンケート調査だって三九%の人がそう言っておるじゃありませんか。(「二九%」と呼ぶ者あり)二九ですか。それから理論的に見ましても、高度成長時代と、それから成長の高さが半分以下に下がる、こういうような状態と、賃金、物価の関係というものは本質的に変わってきております。そういうことを考えると、物価の問題から考えましても、高賃金政策によって景気浮揚するという考え方はとれない。同時に、仮に賃金を上げて一体どうなるか、これが景気にどういうふうな動きを示すかということを考えましても、いまは賃金を上げ購買力がつきましても、それが購買力として顕現化しないですよ。いま貯蓄性向というものは非常に高いのです。金があれば貯金に持っていきます。物は買い控えましょうという傾向が出ておるのです。つまり、私は先ほど申し上げましたが、高値に対する拒絶反応、これが非常に出てきておる。この点も考えなければなりませんが、とにかく賃金を上げてそうして景気浮揚を図りますという考え方、これはもう非常に危険な考え方。私は今度の賃金決定というのは大変な出来事だ、こういうふうに見ておるのです。このことが今度できなかったら、日本経済というものは前途お手上げだろう、私はこういうふうに思っておったのですが、とにかく労働者の御協力によって、なだらかな賃金決定ができた。三年もかかる、その足がかりがしっかりとつかめた、そういうふうに考えておりますので、まあせっかくのお話でございまするけれども、賃上げをいたしまして景気浮揚を図れ、この御議論には賛同いたしかねます。
  19. 勝間田清一

    勝間田委員 福田総理は巧妙に論理をすりかえました。稼働率を高めることが主要であるという主張をした。稼働率を高めることは有効需要を高めることであります。有効需要を高める最大の道は、財政需要を高めるか、貿易需要を高めるか、大衆需要を高めるか等々の方法しかございません。貿易は国際的に停滞している。そこで財政需要をやらざるを得ない。私はこれに決して反対ではございません。しかし、五四%のシェアを占めている大衆購買力というものを今日考えずして景気回復政策を考えるということは、これは不可能であります。アメリカが所得減税をやってあえて大衆購買力をふやして、そのためには赤字もあえてやって、そして景気回復政策をやったということは、大衆購買力の回復に重点を置いた正当の考え方だと私は思う。  そういう意味から、私が申し上げているのに二つある。春闘に対して一三・何%、余りにも低過ぎたではないか。もう一つは、財政当局に私は言いたいのであります。なぜ所得税の減税をやらないのか。これこそ大蔵大臣に申し上げたいと私は思うのでありますが、本年はわずかに平年度化に伴う千数百億円の減税にすぎませんでした。しかも、酒、たばこ等々のいま審議中の案が通りまするならば、これは帳消しになるわけであります。物価は十数%上がり、賃金は一三%程度に抑えられ、減税はなくてむしろ大衆負担はふえる、こういう状況に追い込んでおいて、五四%のシェアを占める大衆購買力がふえるという考え方は、これは間違いであります。  私は、もちろん、今後この後に問題になるのは、財政欠陥の問題は問題にいたしますけれども、政策論としてここにはっきりひとつお尋ねしたいと思うのは、景気政策の重要な視点として、日本は所得税の減税、これを考えるべきではないのか。あるいは五十年度の補正予算においてこれが不可能であるというならば、いま、税制調査会が間もなく第一回の初会合を開くと聞いておりますけれども、次の税体系の中で所得税の減税というものを大きな柱にした答申に期待することが非常に重要ではないかと私は思う。この意味において所得税減税に今日真剣に取り組んでみる考えはないかどうか。大平さんにひとつお尋ねをしたい。同時に、この問題は日本の将来にとってきわめて重要な問題でありますから、三木総理にもひとつ見解を承らしてもらいたい。
  20. 大平正芳

    ○大平国務大臣 景気回復との関連におきまして財政の役割りに言及に相なりました。輸出がふるわない、国民の消費もさえないという状況のもとに、また設備投資も大きく期待できない状況におきまして、財政政策で需要を喚起し操業度を高めてまいることを考えるべきでないかというお考えでございます。私も財政の事情が許す限り、お示しのような方向において財政の運営を図ってまいることが適切であると判断するものでございます。さればこそ、去年の四十九年度も大きな規模の補正予算を組ましていただいたわけでございまして、これは不幸にいたしまして多くの税収不足を結果いたしましたけれども、二兆円を超える歳出を実行いたして景気を支えてまいったわけでございます。それをベースにいたしまして五十年度予算が編成されたわけでございます。五十年度予算は、すでにそういう意味におきまして、歳入不足が見られるかもしれないという不安を含んだ予算であると一般に評価されておりますけれども、政府といたしましては、この予算は忠実に実行して景気を支えていかなければならぬという決意をいたしておるわけでございまして、勝間田さんがおっしゃるような方向に、大筋におきまして財政政策の運営は考えておるつもりでございます。  そこで、そういうことを御理解の上、それでは所得税というものについて、景気回復する上から申しまして減税を考えるべきではないかということについてのお尋ねでございます。ことしの所得税の減税でございますが、仰せのように、ことし御決定いただきました減税は、微調整でございましたことは御指摘のとおりでございます。しかし、去年御審議をいただきまして実行に移しましたいわゆる二兆円減税というものは、ことし平年度化いたしまして完成するものでございまして、ことしその効果が一般に四千五百億円見当に及ぶと試算されておりますことは御案内のとおりでございまして、あなたが御指摘のように、ことしは一般国民の税負担の軽減は微調整にとどまるという御指摘ではなくて、去年の減税効果がことし尾を引いておるということは御案内のとおりでございます。  しかし、それはともかくといたしまして、これから先、それではさらに所得税の大幅な減税というものを景気政策一つ、柱にすべきでないかという御意見でございますけれども、私はそれに対しましてただいまのところ消極的に考えております。その理由の一つは、勝間田さんが先ほど来御主張になっております大衆消費を喚起していくという政策でございます。今日、大衆消費がさえないというのは世界的な現象でございまして、ひとり日本ばかりではございません。いま御指摘のアメリカにおきましても、所得税の減税を中心に大幅な減税をやりまして、消費の喚起を期待いたしておる状況でございますけれども、なお状況を見ておりますと、耐久消費財にまでまだ需要は届いていないということでございまして、一般に大衆はいま非常に賢明であると申しますか、非常に憶病であると申しますか、これからの経済に処してみずからの消費をどういう水準で、どういう態様で維持していくべきかということにつきまして、世界的に非常に慎重でございます。これは減税をやったことによって、あるいは需要の喚起政策を他の方法によってやったことによって、その事態が改善されるかというと、私は必ずしもそう簡単に期待できない状況ではないかと思うのでございます。  一面、このことをもっと別な面から申しますと、今日まで高度成長時代にわれわれが享受してまいりました消費水準というものは、いわば大衆が自主的に選択して需要を喚起したものではなくて、言いかえればガルブレイス教授が言われておるようないわゆる依存効果に支えられた、メーカーが喚起した需要、そして消費金融によって支えられたいわば需要であって、一般の勤労者は月賦の支払いに追われるというようなことで支えられた生産の水準であり、消費の水準であった面が相当あったと思うのであります。そういうことに対していま全世界の消費者は賢明にも一つの反省をいたしておる段階ではないかというように判断されるのでございまして、単に所得税の減税を一部実行することによって、また再び需要がもとの軌道の上を走って喚起されると、簡単に私は期待できないのではないかと思われるのでございまして、これは私の見解でございまして、勝間田さんには勝間田さんの御見解があろうかと思いますけれども、お聞き取りをいただきたいと思います。  それから第二に、いまのわが国の所得税、これは常々お聞き取りいただいておりますように、税負担そのものが先進諸外国に比べて低いわけでございます。それからこの所得税税制そのものは相当念を入れて審議され、運営されておる税制でございまして、私はこれは軽々に余り変えるべきではないのではないか、よほど財政が楽になってまいりまして、あるいは展望が明るくなってまいりまして、税制があなたの言われるような方向で減税ができるということになることを私は期待いたしますけれども、いまの状況を見ておりますと、ここしばらくそういうことを期待することは、わが国の財政の展望に立ちますと非常にむずかしいのではないかと考えておりますので、国会を通じていま私が申し上げておりますことは、いまこのように経済が衰弱しておるときに、増税をしたいけれども、増税をするようなことは差し控えなければならぬと思っておる。一般的な増税は考えるべきでない。と言う意味は、一般的に減税ができるような、そういう楽な財政状況ではないわけでございます。酒、たばこの増税を取りやめるような、そういうなまやさしい財政状況でないということでございます。でございますので、私どもといたしましては、いまの税制の中で選択的に少しでも増収を確保できる道がないものかということをきめ細かく勉強しておるというのがいまの段階でございまして、一般的に所得税の減税を考えられるという客観的な展望をいま持つことはできない状況におりますことを、御理解をいただきたいと思うのであります。
  21. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 景気浮揚策として現段階財政の持つ役割りが中心にならざるを得ないという御指摘は、私もそのように思うわけです。  一方において、五四%のシェアを占める個人消費を高める意味において、所得税の大幅な減税を勝間田議員は主張されるわけですが、私はやはり一つの大きな経済の転換期で、国民生活のパターンも変わりつつあるのではないか、これは超高度経済長期における大量消費の時代からなるべく生活を簡素に切り変えていこうという、そういう生活態度変化というものもあるのではないか、貯蓄性向の動向などにもそういう点をわれわれは見ることができるわけでありますから、したがっていま昨年の大幅所得税の減税に引き続いて、財政的な事情も御承知のとおりですから、ここでまた所得税の減税をするということによって景気浮揚策を講ずるという道は賢明なのではないのではないか、むしろやはり景気浮揚策は、そういう方法でなくして、政府経済政策としていろいろ機動的に行っていくことが賢明なのではないか、こういう見解を持つものでございます。
  22. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、まことに三木内閣の本質を見たような感じがするのでありまして、貯蓄性向が非常に高いから何も減税する必要はないんだという議論もあり、消費が堅実になったから所得をふやせば消費はそんなにふえないだろうという議論もなされる。帰結するところ、低い賃金で高い所得税でという結論しか生まれてこない。大衆購買力を増大することによって総需要の安定基調をつくっていこうという基本的な考え方というものは、この中からは見ることができない。勤労階級のそういう条件の中で、やれ大型のプラントをつくったら景気がどうなるだろうとか、土木建築を起こしたらどうなるだろうとか、あるいは何々を公共事業でこうこうこうしたらこうなるだろうとか、四国へ橋をかけたらどうなるだろうとか、そういうことをやっていて日本の基本的な経済が立て直るはずはないのである。基本を間違って、そうしてその場限りの、しかもそれは独占限りの景気浮揚策をとっているというなら、資本主義の寿命を縮めるだけだ、私はそういうように思いますから、これ以上議論はいたしません。  ただ、財政需要の問題と、先ほどお話がありました財投の資金、郵便貯金の資金が未曾有にふえているので、これを有効に使いたいという考え方福田さんはお話しになりましたし、その限りにおいては私は賛成であります。その意味においていま熱心に取り上げられている住宅金融公庫の融資枠の拡大、また民間ローンの安定的な拡大、金利引き下げ、また住宅金融公庫の五・五%の金利をどうするかという問題、この問題について建設大臣はどう考えているのか、大平大蔵大臣はそれにどうこたえようとしているのか、両者から御説明を願いたい。
  23. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 民間住宅ローン、これはできるだけ拡大をしてもらいたいと思って努力をしておりますし、ローンの金利もできるだけ引き下げてもらう、これは公庫の金利との差額をできるだけ狭くしてもらいたい、こういうのでわれわれは要求をいたしております。  住宅金融公庫の金利の問題でありますが、これは五・五%堅持を私どもは主張いたしておりまして、これはぜひその方針を通してまいりたい、こういうのが私どもの希望であるし、要求でもございます。
  24. 大平正芳

    ○大平国務大臣 予算財政投融資計画も、年度間の一応の計画を持って進めておるわけでございます。御案内のように、四月、五月と二カ月を経過した状況でございますので、この計画の骨格をいま変える段階でないことは御案内のとおりでございます。ただ、いま御指摘の住宅政策でございますが、この一月繰り上げて融資を実行していただいたり、また先般受付をやりました春の募集が、予想を上回って多かったというような事情もございます。これを何とか生かしていこうといたしますならば、相当下半期のものを繰り上げて充当していかなければいけないんじゃないかといま考えておるわけでございまして、せっかく申し出がございましたものでまじめなものは、私といたしましては何とかこれを生かしていかなければならぬという考えのもとに、建設大臣と御相談をいたしておる状況でございます。  それから、第二の金利問題でございます。五分五厘の特利金融という制度、これは維持していきたいという建設省の御要求、もっともだと思うのであります。しかし御案内のように、これには五百二十何億かの利子補給が一般財政に末永くつきまとってまいることでございまして、財政にとりましても相当大きな負担であることは、勝間田さんも御案内のとおりでございます。私ども、これから住宅金融を量的にも質的にも拡大してまいらなければならぬということでございますならば、この特利金融に頼るものだけによって拡大を図るということは、財政的な制約を伴うものでありますことは御理解いただけると思うのでございまして、この制度はこの制度として維持いたしますけれども、この対象をどのように考えてまいるか、そして全体として住宅金融というものの拡充を図ってまいるには新たな工夫をどうすればいいかというような点につきましても、建設省との間でいろいろいまお話をいたしておる段階でございます。大蔵省といたしましても、住宅政策の推進につきましては及ぶ限りの御協力をしなければならないと、努力をいたしておるところでございます。
  25. 勝間田清一

    勝間田委員 どうも明確な答弁がないんでありますが、時間もなにでありますから次に移らしていただきますが、四十九年度の財政欠陥がもうわかったと私は思うのでありますが、何千億になりますか、大蔵大臣にひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  26. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四十九年度は一千億程度の剰余金を記録いたしまして会計を締めることができたのであります。ただ御質問は、税収の不足ということだろうと思うのでございまして、税収は七千六百八十六億円程度の不足になるものと考えております。
  27. 勝間田清一

    勝間田委員 ことしはまだ年度も早いことでありますので、明確にはなんでしょうが、よほど大幅なものと考えてよろしいのですか。
  28. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四十九年度の七千六百余億円の税収不足というようなものが、四十九年度特有のものがどの程度ありまして、五十年度に尾を引く性質のものがどのくらいあるかというようなことは、精細に検討しなければならぬと思うのであります。  それから第二に、五十年度の経済がどういう様相で推移していくか、政府がまた五十年度にどういう経済政策を実行してまいるかというようなことは、これからのことでございまして、これがどのように税収に響いてまいりますか、いまの段階では全く見当がつきかねるのでございます。  ただ、今日言えますことは、いままでの財政のように自然増収を期待できるというようなことは大変むずかしい。自然減収が起こりかねないということは十分覚悟の上、緊張した財政運営に当たらなければならないのではないかというように考えておることだけが、いま申し上げられることであろうと思います。
  29. 勝間田清一

    勝間田委員 結局問題は、恐らく八千億以上の財政投融資の増額になるのではないかと実は私ども予測いたしておりますが、それと、結局は公債政策というものが考えられていくのではないだろうか。  その場合に、きわめて重要な点が一つあると思う。一体、公債政策の限度は何だろうかという問題。もう一つは、今日の財政危機の中に立って、たとえば赤字財政なり建設公債なり幾つかの政策を行うにいたしましても、中期展望なくして今日の財政計画は一歩も立つことはできないだろうと私は思う。もし将来の展望なくして無責任な公債政策をとるということになるならば、これは悔いを永久に残すことになると私は思う。その意味において、大切なことは、五十一年度以降における日本財政はどうなるのかということを明確に描いた上でこの五十年度の危機に対処していくという心構えが要請されるのではないだろうか、こう実は思いますので、今日における財政危機の中で三木内閣は、特に大蔵大臣は、一体どういう計画で進めていかれようとするのであろうか、あなたの大綱をひとつ明らかにしてほしい。
  30. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一般に財政の体質が非常に良好でございまして、状況に応じて機動的に対応するだけの弾力性を体質上持っておるということでございますならば、あなたの言われる公債政策につきましても、景気が沈滞しておるときには思い切って公債を出しまして回復を図り、税収が多く期待できてまいりますならば公債の発行を遠慮してまいるというような工夫が可能なんでございます。ところが、御案内のように、日本財政というのは相当硬直化が進んでまいりまして、今日さように景気の消長に応じて財政の規模並びに内容を簡単に変えられるような体質にはなっていないわけでございます。言いかえれば、大変経済が苦しいときでも、また経済がよろしいときでも、財政の一定の規模はどうしても確保しなければならぬというような状況になっておるわけでございます。  したがって、そういう体質を前提として考えます場合に、私どもといたしましては、どうしても安易に公債政策に依存していくということは、財政インフレに道を譲ることになる危険性を持つと思うのでございまして、これについてはよほど警戒的でなければならぬと考えておるわけでございます。しかし、それでは公債を全然出さないでやっていけるかというと、なかなかそういう状況ではございませんで、極力公債の発行を少なくしていく、そしていざというときに公債をより多く発行できるような状況を、そういう余裕をいつも持っておりたいものと念願しておるわけでございます。  それから第二は、そういう状況で、それでは今後どういう展望かということでございますけれども、五十一年度以降政府といたしましては、もろもろの経済計画を五十一年度を起点といたしまして考えてみようということで、いま検討をいたしておるわけでございまするし、財政政策だけが先行して五十一年度以降の状況を展望するわけにもまいらぬと思うのでございまして、こういう経済計画の検討とあわせまして、いま中期あるいは長期にわたる財政の展望というものも可能な限りつかみ取りたいものと念願をいたしておる状況でございます。
  31. 勝間田清一

    勝間田委員 まことにわからない御議論であります。  私はそこで福田さんに一つお尋ねをしたいと思うのでありますが、あなたのテレビなり新聞なりを見ておりますと、よく、おれは安定成長に持っていくんだ、これは従来の福田さんの御議論のようであります。ある新聞を見ますと、やみくもに成長するなんということはもうだめだ、もうそういう時代は去った、安定成長だ、こう言われる。ところが、私はまだ一度もあなたの、安定成長というものはこのくらいの成長率で、そのときの財政規模は恐らくこの程度になるだろう、その程度のときに物価はこの程度に抑えられるだろう、貿易構造は大体この程度になるのだろう、その程度の国民の福祉はこのくらい約束されるだろうなんという、経済政治家なら当然言うべきことを少しも聞いたことがない。  かと思うと、あなたは他面において、おれはいまの政策から軟着陸をするんだ、軟着陸をするについても、月へ行くのかあるいは火星に行くのか、金星に行くのかわからぬが、目標をちっとも示さないで軟着陸はできないと私は思う。言葉はきれいであるが、内容がない。先ほど大平さんが財政だけが先行するわけにはいかぬと言われた。そのとおりだと私は思う。財政規模がどうなるか、そのときに福祉はどの程度約束できるのか、財政規模はどうなるのか、こういうことは日本経済のフレームワークができていなければできっこないのじゃないか。  だから、私はここであなたに聞きたいと思う。安定経済とは何ですか、この具体的な指標は何ですか、これをきょう聞かしてください。
  32. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私が言う安定成長とは、国際的また国内的に均衡のとれた成長、こういうことでございます。その中で一番問題になるのは成長の速度という問題ですが、高度成長期におきましては、申し上げるまでもございませんけれども、実質一一%内外という大成長を遂げたわけです。国際水準から言うと二倍を超え二倍半に近い速度の成長です。これからの日本経済を展望して見ますと、とてもそういうような高度の成長は期待できません。そういう成長でいったら一体どうなるのか。国内のことを考えてみましても、仮に一〇%成長とすれば、今日のこの富み栄えた日本経済の規模が十年間で二倍半になる、こういうことなんです。昭和六十年にわが日本経済が二倍半になったら一体どうなるか、一体なれるか。大体狭い日本国土においてそれだけの工場立地条件というものを整えるととはとうていできません。  そういうことを考えれば、まず中心になるのは鉄です。製鉄産業を二倍半の規模にできるか。石油の精製産業の規模を二倍半にできるか。そんな大工業基地を新たに模索する、とうていこれは不可能なことだ。あるいはいま、今日でさえ公害と言われる、公害のことを考えましたら、いまそんなことになったら、もう日本公害列島というようなことになりかねないです。  あるいは、そういう状態のもとにおきましては、大工業はどんどんまず中心になって進みます。しかし、農村だ中小企業だ、そういうこととのバランスということを考えましても、これはどうしたってそういう社会というものは安定しない。  あるいは物価のことを考えても一体どうだ、こういうことになる。そういう物価問題のむずかしさ。大工業がどんどん拡大される。そうすれば、賃金が上がっても大工業製品の価格は安定します。しかし、中小企業だ農村だは、大企業の賃金が上がりますれば、それは引き上げなければ労働力を吸収することはできない、維持することはできない。そうなれば、中小企業、農村といえども、これは賃金を上げなければならぬ。それは直ちに消費者物価にはね返るわけです。大企業物価は安定し得ましても、中小企業あるいは農山漁村の物価というものを安定させることはできない。物価がだんだんとむずかしくなる。  のみならず、非常に大事な問題は、いまでも日本は世界の資源を使い過ぎるという批判を受けているわけです。これが二倍半の規模の日本経済になったら一体どうなるか。これは、鉄鉱石だ、あるいは銅鉱石だ、いろいろな資源にいたしましても、あるいは石油にいたしましても、石油なんか相当の分量の原油を日本消費しなければならぬし、その他の重要資材につきましては、大半の輸出をわが日本が独占しなければならぬようなことになるのです。それを世界が一体許しますか。私は、世界情勢というものが非常に変わってきておる、あの石油ショックを契機といたしまして、世界の人の心というものが、資源が有限時代に入ったということに目覚めておると思うのです。そういう世界の背景の中で、わが日本がそれだけの資源を使いますという、そういう状態が世界から許されるはずがないのです。  私は、いまは非常に混乱期だ、この混乱を収拾しなければならぬけれども、その後におきましては、そういう状態を踏まえまして、国際社会におきましても均衡のとれた地位をわが日本経済は得なければならぬ。同時に、国内の諸施策が均衡のとれた形で前進する。物価問題公害問題あるいは立地問題、そういうものとの均衡もある、国内各界各層との均衡もある、そういうことを踏まえて前進する。  そういうことを考えますと、根本的にはやはり成長の速度というものをかなり抑えて、切りかえなければならぬだろう、こういうふうに私は思うわけであります。私は、その目標というものは、やはり国際社会の水準というものに目を大きくみはらなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。わが国はいまこのような立場にありまするけれども、しかし国際社会の中では社会資本が非常におくれている、そういうようなことを考えますと、国際社会の中におきましてもその先端を行くグループ、それと肩を並べるというような、その辺を目安にして前進しなければならぬ、こういうふうに私は思うのです。  そういうことを申し上げますと、まあ大体勝間田さんも、稲田がどんなことを考えているか御見当はつく、こういうふうに思いますが、いま何%なんという言い方を私は好まないのです。というのは、この巨大な日本経済をやっていくのに、その何%のところに乗らなければこれは間違っているじゃないかと言われるのです。そんなようなことはできるはずがない。私はこれからの日本経済というのは、何%ないし何%という多少幅の広い見解を持たなければならぬ。その幅の広さの地位というものをどこに置くかというと、先進諸国の中で大体先端を行くグループ、それに日本が肩を並べるという、その辺をにらんでいかなければならぬだろう。その見当は、先進諸国の先端グループは一体どんな程度の行き方をするであろう、こういうこと、これが一つの問題ですが、いま世界諸国は非常に混乱期です。世界諸国も、これから先どういう成長路線をたどるかということをいま検討しておる。その長期路線というものの展望というものがぼつぼつ出てくるだろう。わが国はそういう世界の動きを見詰めながら、大体ことしじゅうぐらいには、わが国の長期路線というものも決めていかなければならぬだろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  33. 勝間田清一

    勝間田委員 私は評論を聞いているような感じがしたのですが、政治をどうするか、経済政策をどうするかということについて、それで済むだろうか。それば雑誌ではそういうことがよく書いてありますけれども、一体それが何だろう、いまあなたの言われるものが何だろう。その何だろうということを私はいま求めているのではないだろうかと思う。  だからフランスでは、御存じのとおりエネルギーの危機の後でジスカールデスタンがその先頭に立って、フランスの経済について指標を定めた。まあ、初めは低目に抑えておったようだけれども、やはり五・二%の成長率でなければ福祉も約束できないし、また経済の運営もできないのだということで、そういう考え方を持った。アメリカでさえ今日、御存じのとおり予想外の高成長の六・五%でしたかをとって、設備投資主導型という、日本から見ればまことに不思議な一つ考え方をとっているが、それは雇用が中心である。その雇用を中心にしてアメリカ経済を立て直せばこうなるのだということの指標をやはり明確にしているわけであります。  一番要求され、一番必要になっている今日の状況の中で、たとえば財政危機で先ほど大平さんが言われたように、来年から、再来年からの財政がどうなるかというほどの危険な状態の中で、経済見通しがわからずして財政が組めるでしょうか。だから、公害がどうの、何がこうのという議論ではなくて、それを配慮してどこに選択を求めて、どこに目標を定めるかという経済課題がいま定められなければならぬのじゃないだろうか。それを三木内閣は怠っているのではないか。だから三木さん、あなたには諮問機関もあるでしょう、一体これからどうされていきますか。あなたは、盲で今日の経済危機を乗り切れるはずはないと私は思う。諸外国の例もそうだ。どうされますか、三木さん。
  34. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先のことをちっとも考えていない、こういうようなお話ですが、いま、とにかくあれだけの大混乱の中の収拾段階、これは世界じゅうそうだと思うのです。世界どの国だって、いまこの時点で先々どういうふうにやっていくんだなんといったはっきりした見当がつき得る国というものは、私はあるまいと思う。わが国もそうなんです。  それから、いまわれわれが当面している問題は、この収拾をどうするかという問題なんです。しかし、収拾したその先について、おぼろげながらも展望を持たないわけじゃないのです。先ほど申し上げたように、世界情勢が本当に変わってきてしまっている。その変わってきた中で日本の国は、これはもう本当に高度成長というあの時代を終わりとして、新しい安定成長という路線を求めなきゃならぬ、これはもうはっきり申し上げているとおりですよ。ただ、あなたが求めるのは、それは何%かというようなそんなような点でありますが、そんなことはいまここの時点で私どもはそう問題にしておりません。まあ、そういう問題は逐次詰めていかなくちゃならぬ。  とにかく来年の予算というのは、この暮れにはどうしたってやらなきゃならぬ。その暮れの時期までには、とにかく当面、中期的には日本はこのような経済路線を歩むのだという展望を明らかにしますが、いま、経済審議会にもそういう問題を諮らなきゃならぬ、そういう段階で、何%にしますなんというのは、政府としてはまだ申し上げられませんけれども、あなたが御心配されるようなことはない。先は何も見当をつけておらぬという状態じゃないんだ。もう高度成長から先ほど申し上げましたような内容の安定成長路線へ移るんだという点は、確固たる見通しを持ってやっておる。御安心願いたいと思います。
  35. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま福田総理が申したように(笑声)資源とか環境、労働の条件からして……(「福田総理ですか」と呼ぶ者あり)いや、それは福田総理と訂正いたします。(笑声)そういう指摘をされましたように、やはりもう超高度経済成長の条件はすべて失われた、再び返ってこない。これからはやはり安定成長の時代に入ってくる。適正な成長、世界並みな成長ということに入ってくるわけですから、これは大変なことなんですね。大変なことだ。企業についてもあるいは国民生活についても、もうすべての点で大きな転換期に対応していかなきゃならぬ。その軌道を混乱なしに修正していくためにわれわれは努力をしておる。たとえばインフレの問題でも、そういう転換期に起こった大きな現象でもあるわけですから。  そういうことで、これはわれわれが一遍にすぐにこれだけの大転換を一年間でできるというものではない。やはりある期間を置いて、そしてこれをできるだけ混乱のない軌道修正を行うためにあらゆる、企業も国民生活も財政も、その他の点でこれに適応する政策をとるべくわれわれが努力をしておるということであって、大きな目標を持ちつつ経済政策を用心深く行っているということでございます。
  36. 勝間田清一

    勝間田委員 時間もなんでありますが、外交についてひとつお尋ねをしたいと思うのであります。  御案内のとおりサイゴン、プノンペンの陥落後、世界、特にアジアの情勢はまことに激動に激動を続けておる状況でありまして、これを特徴的に申しまするならば、まずこういうことが言えるのではないだろうか。  第一は、東南アジアからの米軍の撤退である。これは歴史から見ればフランス軍隊の撤退、イギリス軍隊の撤退、それに続く東南アジアからのアメリカの撤退を意味するものでありまして、同時にこれはアメリカのSEATO体制の崩壊を意味するのではないだろうか。このことは同時にANZUSの体制にも大きな影響を及ぼしていることは御案内のとおりだと私は思うのであります。この意味においては、アジアに一つの大きな変化が起きていることはだれも否定することはできない。  もう一つの大きな特徴は、旧植民地国家の自由と独立と民族統一の勝利であるということが言えるし、第三世界の勢力が急速度に高まっていることを証明するのではないだろうか。  もう一つ大きな特徴として言い得ることは何であるかと言えば、これら第三の世界が一様に非同盟中立の外交方針をとり、従来敵視していた中国との間の友好と国交の回復を急速度に求めているというのが最近の状況ではないか。すでにマレーシアは、共同声明を中国との間に発表いたしました。タイは、御存じのとおり、アメリカの軍隊が来年の三月までに撤退をすると同時に、中国との国交回復が急速度に進められております。インドシナ三国はもちろんのこと、また最近は、フィリピンの大統領が中国を訪問して大きな歓迎を受けていることは、御案内のとおりであります。オーストラリアの外務大臣でさえ、北朝鮮、韓国、日本及び中国を訪問するという。公式訪問であります。  この第三世界の非同盟中立化への急速度な傾向と、中国との友好関係を回復していこうというこの大きな変化というものは、われわれのアジアにおいて見逃すことのできない大きな傾向ではないだろうか。こういう傾向を目の前にして、日本はどうなるのだろうかということを率直に感じているのが、今日の日本の国民の姿ではないだろうか。  特に日本の国民の今日の状況から見まするならば、安保条約を軸にして対米従属を続けていく日本の外交は、アジアにおいて一体これからどういう道をたどっていくことになるだろうか、どういう運命になっていくのだろうかということも考えていくでありましょうし、また、私たちがだれでもわかるように、いままでアジアにおける日本の役割りというものは何だったろう。現状維持で、アメリカの支配体制を守るために協力をしてきた。そのことは、同時に、平和と自由と独立と民族統一を要求するアジアの諸民族に対しては敵対関係をとってきた。  われわれが思い出すまでもなく、ベトナムに対する政府の一貫した政策、あるいは台湾にとり、韓国にとり、あるいはその他の国々にとってきた一貫した政策は、独立と自由と民族統一を要求する諸国家に対しては適対関係をとってきた。こういう関係がこれからも許されていくのであろうかということが、国民の率直な今日の疑点であろうかと私は思います。  したがって、私は、ここで国民にかわって、三木内閣に対して、この時点におけるポストベトナムの日本の外交のあり方をひとつ率直に質問をさせてもらいたい。だから、三木さんも、また外務大臣も、どうかひとつ国民に明確に答えてもらいたい。  まず、私は、ひとつお尋ねしたいと思いますけれども、アジアにおける今度のこの大きな変化の中で、日本の軍事基地の性格と地位が変わってきたのではないだろうか、また変わってくるのではないだろうか。  たとえば、アメリカの飛行機がタイからグアムに引き返すというのを、私たちはテレビで見ております。アメリカの基地は、前線から、アジア大陸からだんだん下がっていくな、そうすると、日本の基地はどういう役割りをこれから果たしていかされるのであろうかということを率直に感ずるのは、私だけではないと私は思う。  また、それだけではない。たとえば新聞を読んでいますと、シュレジンジャー国防長官は、五月一日の夜の記者会見、サイゴンが落ちた直後の記者会見において、前進防衛地域というものは日韓であって、この日韓に対しては私たちは戦略的に一体として見るという緊急談話を発表いたしております。国民から見れば、なるほど韓国と日本との一体化である、そして日本の基地の重要性であるという印象をシュレジンジャーの記者会見から率直に受けるのはあたりまえではないか。  また、キッシンジャー国務長官が、五月六日のテレビのインタビューで、韓国とフィリピンの防衛は日本の将来にとって大きくかかわっている課題であると、日本との一体論をここで述べているのであります。  また、シュレジンジャーはそれでも足らないで、五月十九日発売のUSワールド・レポートで、北朝鮮が南進すれば一挙に敵の心臓部をたたくつもりである、これは国防長官のUSワールド・レポートの彼の記事でございます。  アメリカの防衛線、これは防衛線というよりも、むしろ中国に対する封じ込めラインであったかと私は思うのでありますが、こういったアメリカ軍隊の撤退が、新しい日本のアメリカの軍事基地に対して、質的にも、地位の上からいっても大きな変化をもたらしつつあるのではないだろうか。日本の軍事基地の地位は変わるのではないだろうか。この率直な国民の疑惑に対して、三木総理及び外務大臣はひとつお答えを願いたい。
  37. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 確かに勝間田議員の御指摘のように、ベトナムを中心として大きな変化が起こっておるわけです。この変化というものが、二つの原則というものを改めて浮き彫りにした。  一つは、やはり最後に物を言うものはその民族の自主的な意思である。この意思を尊重する、すなわち、民族自決の原則というものを尊重せずして、平和も安定もないということである。  もう一つは、やはりその国民の生活の向上、安定というものが保障されなければ、また平和も安定もない。これに対して、その民族の自助的な努力も必要でありますが、また国際協力も必要である。こういうことが、このベトナム情勢を通じてわれわれは強く認識をせしめられることだと思うのです。  だから、今後のベトナム情勢の展開というものは、こういう原則に照らして物を見ることが必要である。日本も、また日本のこれからの東南アジア政策も、こういう原則の上に立って東南アジアの外交政策を進めていくべきである、こうベトナムの変化を受け取っておるものであります。  また、いろいろな変化が起こっておりますが、そのことが勝間田議員の指摘されるように、日米安保条約の基本的性格に影響があると私は思わない。したがって、そのことが——日米安保条約の運用を何ら改めていこうという考え方はないわけでございます。  また、朝鮮半島の問題については、これはもうだれの言をかりるまでもなく、日本の安全にとって、韓国並びに朝鮮半島の動向というものが大きな関連を持っておることは、否定できないわけでございます。そういう場合に、朝鮮半島というものに一体将来どういうことが起こるであろうかという懸念も国民が持っておることは事実でありましょうが、われわれがしなければならぬことは、そういう武力衝突のような事態が朝鮮半島に起こらない、朝鮮半島の平和と安定ということに対して外交努力を傾けることだと思うのですね。傾けることである。そして、朝鮮民族の悲願である南北の統一、平和的な統一、このためにわれわれが——これはだれが考えても、朝鮮民族というものは本来一体のものですよ。そういうことですから、だれもかれもが平和的に統一の日を悲願しておるのに違いない。現在、南北の話し合いが始まったけれども、停滞しておりますけれども、両国が接触、相互理解を通じて、そういう民族の悲願が達成できるような日をわれわれは望んでいる。そういう国際的な環境をつくることに日本も努力をしなければならぬということを考えておるわけでございます。
  38. 勝間田清一

    勝間田委員 私は、いまの総理の答弁に二つの問題が含まれていると思う。あなたは、民族の自決という問題と生活安定という問題が二大原則である——これは従来の南ベトナムにとってきた、あるいはタイその他にとってきた諸政策とは私は違うと思う。これは言うまでもなく、その原則を貫いていさえすれば、今日誤りを来さなかったのではないか。そういう意味において、これは従来の東南アジアに対する外交の大きな——それか真実に行われるなら、それは大きな修正を決意しなければならぬはずだ。  ということとあわせて考えねばならぬと思うことは、そのことは東南アジアだけではない。朝鮮半島をも含めたこの地域に対しても同じ考えであるということを確認することなくしては、それは私は違うと思う。朝鮮だけは別ですよ、これは隣国だからまた別ですよ、という考えでもしいくとするなら、これは私は重大だと思う。  民族自決、生活安定のこの立場を、朝鮮問題においてこれを重点、原則として考えていくのか、安保条約の考え方を重点として考えていくのか。日本には二つ以外には道はありません。安保の道を選ぶというなら、ベトナムの道を選ぶわけです。いまあなたの言うような民族自決の道を選ぶなら、安保の道は選べないはずであります。一体これは、安保の道ではなくて、民族自決の道を選んでいこうというのですか。その道をはっきりさしてください。
  39. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、勝間田議員とそういう点でいささか見解が違うのですが、最後に決めるものはその民族の意思である。その決める意思の中には、安全保障の問題も含んでおる。その国の安全を守るということに対して、その民族がその意思を決定する一つの当然の権利を持っておるわけでございますから、安保の道と民族自決の道とが別々のものだというふうには私はとらないわけであります。安全保障の問題も含めて、民族自決の中に当然に含まれるべきである、かように考えるものであります。
  40. 勝間田清一

    勝間田委員 それならば、もう少し掘り下げてひとつ議論をしたいと思うのでありますが、三木さんがそういうことでありますれば、あなたにひとつ考えていただきたいと私は思うのは、あなたも御記憶だと実は思うのでありますが、いまのあなたの話の中から、私は非常に印象強く思い浮かぶのであります。  それは、言うまでもございません、六九年、佐藤・ニクソンの間には、いわゆる韓国条項というものがございました。韓国の安全は日本の安全にとって緊要である、これは共同声明でございました。当時佐藤総理は、プレスセンターにおける新聞記者会見におきましては、韓国に重大な事態が発生したときには速やかに前向きで処置をするというまことに重大な発言をして、これは国会内において大きな批判を受けました。外務大臣は御存じだと思いますが、四月の訪問の際に、この韓国条項は確認をされたと聞いております。言うならば、韓国の安全は日本の安全にとって不可欠である、緊要である、この考え方はシュレジンジャーの考え方でもあり、キッシンジャーの考え方でもあり、かつてのダレスの考え方でもあることは言うまでもございません。これを私は安保の道と言うのであります。  ところが、私ども一時非常な期待を持ちましたのは、田中内閣における木村外相の演説であります。木村外相は、御案内のとおり、北の脅威はないということを言い切ったと同時に、韓国の安全はという言葉を、朝鮮半島の平和は日本の安全にとって緊要であるということに言い直しました。韓国の安全と日本の安全を結びつけるのか、朝鮮半島の平和を日本の安全に結びつけるのかということは、重大な変化であります。私は、それが、民族自決の精神を尊重するという考え方と、安保の道を選んでいくという考え方との大きな違いを同時にあらわしているものと思うのであります。  そこで、私は端的に申します。三木総理大臣は、韓国の安全を日本の安全に結びつけていくのか、朝鮮半島の平和を日本の平和に結びつけていくのか、今後の外交方針はいずれを選ぶのか。イエスかノーかを聞かしていただきたい。
  41. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 それは共同声明にあるないにかかわらず、韓国の平和と安全というのは、日本に関連ないとは言えませんよ。関連を持っている。また、私は韓国ばかりでないと思いますね。韓国並びに朝鮮半島の平和と安定は、やはり日本の安全に対して重要な関連を持っておる。私は、共同声明のあるなしではないのです。私自身がそう考える。共同声明があってもなくても、私はさように考えるものでございます。
  42. 勝間田清一

    勝間田委員 これは私は決して論理のもてあそびをいたしておりません。日本の外交の基本に関することであります。まことに三木さんの口先だけの答弁に、私は非常な失望を感じました。これはベトナム以後における日本の外交の基本を示すものではないだろうか。これに私は非常に重大な失望を感じました。  私は、これと同時に、あなたにひとつお尋ねをしたいと思うのは、これまた佐藤さんの言葉でございましたが、前向きで事前協議は処置をするということでありました。いままでは、サイゴンなりあるいはその他の地域に行くアメリカ軍の沖繩からの出撃は、いや途中でタイに寄る輸送軍隊なので、これは事前協議の対象にはなりませんというようなことで済まされてきた。しかし、いま国民が率直に思っていることは、今度朝鮮に何かが起これば、日本は直接の発進基地になるのではないだろうか、この疑いであります。言うならば、朝鮮の特に韓国に対する攻撃に対して、あるいは武力的衝突に対して、アメリカ軍が武力行使を行う場合に、日本は直接発進基地になるのではないか、これが今日、国民の疑惑ではないだろうか。これは三木さんどうでしょう、発進基地になるのでしょうか。
  43. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 御指摘になりました答弁を私はいたさなかったわけですが、佐藤総理の発進の場合の事前協議の場合について、いま勝間田議員の御指摘になったことは、適当でないということで、プレスクラブの演説ですが、この本会議において訂正をいたしております。  そこで、やはり問題になるのは、結局いま御指摘になったような事前協議の問題であります。事前協議の対象になるのは、核の持ち込みと、発進基地の問題、二つだと思います。この二つとも事前協議の対象になることは明らかですね。二つとも事前協議の対象にはなる。事前協議は、法律的に言えばノーもある、イエスもあるということでございますが、しかし、三木内閣の場合は、前者、核の持ち込みに対してはノーである、また発進基地については、そのときの情勢によって判断をする、こういうことでございます。
  44. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、要するに、核兵器の持ち込みは、いかなる場合といえども事前協議についてはノーと答える、これは三木内閣政策ですか、あるいは三木内閣以後における自民党の政策ですか、その点をお答え願いたい。
  45. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 非核三原則を持っておりますけれども、私がこの内閣の責任を持っておりますから、そういう場合においてもノーの態度をもって臨むということは、三木内閣方針でございます。
  46. 勝間田清一

    勝間田委員 もう一つ突っ込んでおきますが、あなたはいま総裁でありますけれども、自民党の今後における内閣においては、あるいは変更することがあるかもしれないという意味を含んでいるわけですか。
  47. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 非核三原則は核の持ち込みを認めないということでございますから、非核三原則というものを自民党は堅持していこうというのですから、三木内閣以外においても、この方針は変更ないものと考えております。
  48. 勝間田清一

    勝間田委員 場合によっては発進基地になるということを意味しているものと思うのですが、それでよろしゅうございますか。
  49. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 なるかならぬかは、その情勢によって判断をすると申しておるわけでございます。
  50. 勝間田清一

    勝間田委員 だから、情勢によっては発進基地になりますということでしょう。
  51. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 なる場合もあるし、ならぬ場合もあるということでございます。
  52. 勝間田清一

    勝間田委員 これはまことに日本の国民の将来にとって重大であります。その問題を考えていく場合に、先ほどあなたの言われた、民族自決と生活安定の点においてこれを第一義的に考えていくという考え方は、それは朝鮮半島全域に理解される課題ではないかと私は思います。しかし、後者の問題は、朝鮮の全人民の批判を最も強く受くべき日本の間違った、いわゆるベトナムの失敗を再び繰り返す外交だと私は思います。これが両立するなどと考えていくあなたの詭弁は許されないと思います。  私は、この意味において、三木内閣の二重性と申しましょうか、まことに矛盾した態度を今日ここで見たような感じがいたしてなりません。どうかひとつ、この意味において、今後もっと私ども国民の声、野党の声を真剣に慎重に聞いてほしいと私は思う。  それからもう一つお尋ねをしたいと思いますのは、日中平和友好条約の交渉が中断されているという有力な新聞報道があります。この新聞報道は一体正しいのか正しくないのか。私は、外交でもありますから、できるだけ可能な報告を今日求めたいと思うのです。外務大臣、経過を御説明いただきたい。
  53. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 新聞が正しいか正しくないかということは、そういうことはここで申しませんが、日中平和友好条約の締結交渉は、中断はあり得ないということでございます。  私は先般、勝間田議員も御承知のように、小川大使が北京から帰ってまいりまして、次の四原則を小川大使に示して、この四原則によって中国側と交渉をするようにということを指示いたしました。  その四原則とは、日中平和友好条約を速やかに締結して、日中永遠の友好関係の基礎を固めることは、三木内閣の重要な政策である。この方針にいささかの変わりもない。  もう一つは、日中共同声明は両国最高首脳間で合意された厳粛な約束であり、その重みを踏まえて交渉に当たるべきである。  したがって、共同声明にある平和諸原則は堅持されなければならない。後退は許されない。  もう一つ、小川大使は三木内閣のこの方針を体し、最善の努力をすること。交渉中断などあり得べきことではない。  この四つの原則を指示して、小川大使はこの原則によって早期締結のための努力を北京において続けているのが、現在の成り行きであります。まだ国会に御報告をするような段階ではないわけで、鋭意この妥結に向かって努力をするというのが現在の段階でございます。
  54. 勝間田清一

    勝間田委員 新聞によれば、中国側から、この際に中断した方が双方のために利益ではないだろうかという申し入れがあったというかに報道されておるのでありますが、それは事実であろうかどうか、ひとつ外務大臣にお尋ねしたい。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのような事実を承知いたしておりません。むしろ、いろいろに行われます非公式の接触等より判断いたしますと、中国側としても、問題の重要性にかんがみ、慎重に検討をしておるように存ぜられます。
  56. 勝間田清一

    勝間田委員 そうしますと、日中平和友好条約の締結については引き続いて交渉が続けられているという、それは双方の理解としてわれわれが理解してよろしいかどうか。
  57. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それで間違いがないと存じます。
  58. 勝間田清一

    勝間田委員 最後に、時間でもございますので、お尋ねをして、あわせて私どもの希望になるかもしれませんが、先ほどベトナム以後におけるアジアの情勢についての特徴を三つ挙げたのであります。  私がここで非常に大事だと思います事柄は、民族自決の精神という三木さんのお話がございましたけれども、独立と自由と民族の統一を求めるアジアの圧倒的な人たちの願いというものが、ここに歴史的な広さで大きく浮かび上がって実現しつつあるのでありますから、これとのしっかりした友好関係を回復するという態度なくしては、今後のアジア外交というものは進められるものではないだろうと私は思う。  もう一つの大切な事柄は、これらの諸国が、幸か不幸か、幸いだと私は思うのでありますが、いわゆる非同盟中立の外交をとっております。あらゆる国との友好関係を回復していきたいという考え方を持っておる。この考え方が圧倒的であると私は思う。そうならば、私どもは、いわばいままでの冷戦構造の中に支えられたいわゆる安保外交なんというものではなくて、新しい構想の上に立った日本の外交を進めていくべきではないだろうか。  もう一つ大事なことは、日本としては、武力においても経済的にも覇権を求めていくなどということではなくて、これらアジア諸民族とともに平和的に共存していくという、この体制というものをやはりつくり上げていくことが今後の道ではないだろうか。そういうことを考えてまいりますると、日本の外交は今日大きな転換点に立っているのであって、小手細工で事を済ましていこうという事態ではないのだ。これがもし三木内閣においてできないなら、これは三木内閣の限界だと私は思う。私は、その意味でなら三木内閣はやめるべきだと思う。  現在の経済政策もそうだ。現在の経済も、基本的な矛盾がここに集積しているのでありますから、これは重大な転換や、価値判断の大きな転化さえここに期待しなければならぬはずだというようにも私は思いますので、ここに、外交なり、日本経済なり、内政なりについては、文字どおり変えていかなければならぬのだ。それができないなら三木内閣はやめるべきだ。これが今日のぎりぎりのところじゃないでしょうか。  三木さん、多年の念願がかなって、あなたも総理大臣になられた。この時点で、一体どういう決意でお当たりになりますか、最後にひとつ私はあなたの意見を聞いて、私の質問を終わります。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 せっかくの勝間田議員のお話でございますが、外交も経済も行き詰まっておるとは私は思わないのです、三木内閣が。ますます、この難局に向かって、われわれは全力を傾けてこの方向を誤らないようにしたいと念願をするのみでございます。
  60. 勝間田清一

    勝間田委員 終わります。(拍手)
  61. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて勝間田君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  62. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、午前中の勝間田委員の質問の最終段階に出てまいりました新しいアジア情勢下における外交、防衛の問題をフォローしてまいりたい、このように思います。  その前に、緊急な課題であるし、予算と関連する問題として、FXに関する質問から入りたいと思います。  FX、次期戦闘機ですがこれはF104Jの後継機になるわけでしょうけれども、このFX選定のスケジュールは、第一次調査団がすでに欧米に派遣をされた。で、第二次の調査団を来年の六月ごろ派遣をし、五十二年度の予算の編成作業に入る来年の八月ごろまでに機種の選定をしたい。これが衆議院の内閣委員会においてせんだって防衛庁側から説明をされたスケジュールでありますが、間違いありませんか。
  64. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 次期戦闘機はF104J機の用途廃止が昭和五十五年ごろから本格的に始まる見通しでありますので、逐次これを更新するために必要になるものでございます。防衛庁は六月一日に七月二十一日までの予定で欧米六カ国に海外資料収集班を派遣いたしました。次期戦闘機の機種決定は、五十年度にこれらの資料収集、各種の分析作業等を行いまして、数機の候補機種を選定し、さらに五十一年度には、これらの候補機種について調査団を派遣して、さらに詳細な資料収集、費用対効果分析等を実施いたしまして、公正な決定をいたしたいと考えております。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国防会議議長としての三木総理は、この六月一日に派遣された調査団の承諾を求められましたか。
  66. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この問題は、まだ防衛庁の段階でいろいろと調査をいたす段階でございますので、まだ総理には申し上げておりません。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、防衛庁長官の権限で派遣をされたわけですか。
  68. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そのとおりでございます。
  69. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何に基づいてそういう権限を行使されましたか。
  70. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 次期戦闘機の問題につきましては、先ほど楢崎先生御指摘のように、先ごろの内閣委員会でございますかで御答弁申し上げておるとおりでございますが、この資料収集という段階におきましては、これは材料の収集でございますから、防衛庁長官の御判断によりまして、現状において海外にどういう戦闘機があるか、また可能性を持っているものがあるかというものを集めるわけでございまして、その段階においては、防衛庁長官が専決されることについていささかの疑義もないというふうに存じております。
  71. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、先ほど私の質問を肯定されたわけですが、五月二十七日衆議院内閣委員会の、これは自民党の加藤委員の質問ですよ。来年の八月に、つまり五十二年度の編成作業が始まるまでに機種の選定をしたい。どういう権限でそういう新機種の決定をなさるのですかと私は言っているのです。いいですか、三次防の中には、主要項目として「新戦闘機の整備に着手する」。三次防にはある。来年の八月段階はまだ四次防の最終段階です。四次防に次期戦闘機の機種決定という項目がありますか。どこにありますか。いいですか、四十七年の二月の予算委員会段階で、四十七年度の予算の中に、四次防の大綱も決定されない、主要項目も決定されない段階で、四次防に出てくるであろう新機種、すなわち中型輸送機C1、それから偵察機RF4E及び高等練習機丁2、これの予算が出ておった。これは四次防の先取りではないかということで、当時はあそこにおられます頼戸山委員予算委員長でありました。何時間そのために予算委員会が空白になりましたか。そしてやっと四次防の大綱をわれわれの指摘によっておくればせながら決めた。しかも主要項目は十月九日になってやっと決まったのですよ。そこで議長が、凍結しておったその新機種の予算執行について、凍結を解除した。それほどの時間をかけて予算委員会は問題にしたのですよ。五十二年度からの機種、これは五次防になるのかどうか知りませんが、次期防の機種であります。それをなぜ先取りするのですか。四次防では機種はこうなっておりますよ。いいですか、四次防の大綱では、まず偵察機、高等練習機、輸送機について新機種を採用する。戦闘機は主要項目の中に入ってない。だからどういう権限でそういうことをなさるのですかと聞いているのです。国防会議議長の三木総理からひとつ御答弁をいただきたい。あれほど時間をかけてわれわれはこれをやったんだ。一体どういう反省かあるのですか。——いや、総理の御見解を、国防会議の議長ですから。
  72. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま申し上げておりますように、私のところへはまだ上がってはきていないので、それまでの経過については、防衛庁の方から答えさすことにいたします。
  73. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 ただいま御指摘のとおり、三次防におきましては、新規の戦闘機、これは結果的にただいまのF4EJファントムになったわけでございますが、これの新機種の選定の上整備に着手するということをうたっております。これは三次防の期間中に整備に着手するということが現実に行われることが見通されましたので、三次防の大綱並びに主要項目の中にそれぞれうたわれておるわけでございます。四次防につきましては、この期間中にただいまの104にかわる新しい戦闘機の要撃機の整備が予定されておらなかったということで、したがって四次防には書かれておらないわけでございます。  そこで、ただいまのFXの問題になるわけでございますけれども、これは五十二年度以降の問題になります。したがいまして、ポスト四次防の総合的な計画を樹立する際の主要項目ということで出てくるわけでございまして、本年度この海外資料収集班を派遣をいたしましたのは、準備段階で、防衛庁限りにおきまして、海外にどういうものがあるかということを集めるための班でございまして、機種選定には直接つながるものではございません。  そこで、この前内閣委員会で申し上げましたように、来年の八月以降におきまして五十二年度の予算概算要求をいたしますまでにその方針を明らかにしたいという趣旨は、ポスト四次防が五十二年以降の問題でございますので、ポスト四次防の中において当然決定せらるべき問題である。国防会議において御決定をいただくということになるわけでございまして、その中において御決定をいただくということで、時期的には、そのポスト四次防決定と時期を同じくするという趣旨を申し上げておるわけでございまして、この新機種選定を防衛庁限りで決定をすると、こういう趣旨ではございません。
  74. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 FXの選定作業に入っておるんでしょう。FXの選定のために調査団を派遣したんじゃありませんか。そういうことが許されるかと言っておるのですよ。しかも四次防の最終段階で機種を決定する、四次防の中にどこにもないではないかと言っておるのです。もし新機種を決定するんだったら、どうして入れないんですか。そういうシビリアンコントロールの問題とも絡んで、あれほど問題になったでしょう、四十七年度に。一体、政府はどういう反省をしておるのですか。だめですよ。総理調査団を呼び返しなさいよ、FXの選定調査団を。五次防の先取りではないですか。しかも、ただで行っておるんじゃない、予算を使って行っておる。全く四次防のあの先取りと同じ感覚じゃないですか。四次防の先取りの場合、問題がいろいろあったけれども、当初、当時の佐藤総理は、いやこれは三次防の機種の交代機だからだということで言い逃れをしようとした。しかし、とうとうそれでは通らなくなって、あれほどの混乱を招いて、そして改めて国防会議を開き、衆議院の議長まで中に入って統一見解を出し、予算まで凍結したじゃないですか。いまのような局長の程度の答弁じゃ、これはだめですよ。三木総理、いいんですか、これで。四次防の大綱にも主要項目にもない、次期防にわたる戦闘機の新機種を勝手に決定する、そういうことができますか。この四次防の大綱あるいは主要項目から出てきますか。だめですよ。
  75. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 資料の収集のための調査を行っておるわけでございますことを御了承賜わりたいと思います。
  76. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 選定作業に入っておるのでしょう。そして来年八月決るんでしょう。そういう答弁をしておるじゃありませんか、五月二十七日の衆議院内閣委員会で。
  77. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 防衛庁の方でいまいろいろと検討をいたしておる、そのために材料を収集しておるという段階でございまして、先ほど防衛局長が申し上げますように、機種の選定というのはまだずっと先のことなんでございます。来年の八月ころは決めなければならないであろうと、こういう心積もりでおる……
  78. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはだめですよ。それを先取りというんです。それを次期防の先取りというんです。あれほど問題にしたじゃありませんか。だめですよ。そんな局長の答弁するような課題じゃない、これは。何回やりましたか、こういう問題を。
  79. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ポスト四次防で決めるわけでございまして、ポスト四次防の決める時期は八月ということで、そのためにいろいろ準備をして、あるいは調査団を派遣をいたしまして調査をさせておる、こういうことでございます。
  80. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、その選定作業をこの四次防期間中にやる権限はどこにありますかと言っているのです。何もないじゃないですか。三次防の場合は、新機種を採用すると主要項目の中にちゃんとうたっておるのですよ。そしてファントムになったんでしょう。四次防にはないんだ、それが。
  81. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 その機種選定は、先ほどから申し上げておりますように、ポスト四次防でお決めいただくということでございまして、私どもの方で勝手に決めるということではございません。タイミングが来年の八月以降ということでございますので、そのための資料収集を、現在の段階から私どもの方で事務的にやるということをお認めいただきたいということで、本年度の予算につきましては、海外の資料収集班の海外旅費、これをお認めをいただいておる、こういうことでございます。
  82. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりませんかね。五次防の中の新機種の問題を四次防で決めるなんて、あなたどこで決めたんだ。だれの指示でそういうことを決まったこととあなたは言うんですか。五次防の一環でしょう、それは。あなたは勝手に決めているんですか、そういうふうに。五次防で採用するんだ、それを四次防の最終年度で決めるんだ——いつ決まったんですか、そういう方針は。
  83. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 ポスト四次防でお決めをいただくということで、事務レベルで勝手に決められるということではございません。タイミングが来年の八月ということが当然予測されておりますので、そのためのリードタイムをとりまして、私どもが事務的に資料を集めるということをさしていただいておるわけでございます。
  84. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 違うんですよ。私が言っておるのは、あの四次防の先取りを四十七年度の予算でやったときに、どういう論議が行われましたか。何も決まってないのに何でそういうことをするのか、四次防の先取りをするのか、決まっていないことをなぜやるのだと、これをやったでしょう。同じじゃないですか、いまと。当然予想されるから準備に入ったなんて、そういうことはできませんよ。五次防は決まっていないんだ。要らないということになるかもしれぬじゃないですか。そうでしょう。あれほど時間をかけてやったんでしょう、四十七年度の予算審議で。
  85. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 ただいまのは、あくまでも海外資料を収集するという事務段階のお話でございまして、最終的に、ただいまおっしゃったように、機種選定を要らない、あるいはFXを要らないという御決定をいただくのでございますれば、それはそのときにお決めをいただくということで、私どもが事務的に資料を収集するということは絶対に必要なことでございます。
  86. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だめですよ。こんなことは予算委員会としては認められない。どうなるかもわからないものを先取りして、そして予算を使って調査団を派遣する、FX選定のために、だめですよ、そういうことは。きちっとしなくちゃだめです。何回やりましたか、そのために。  それはそうですよ、次期のFXを選定するかどうかわからないんでしょう。決まってないんですよ、総理。どうなんですか。めちゃくちゃですよ、これは。どうせFXが選定になるであろうという予測のもとにやりましたと、そういうことを許されますか。そのために国防会議というものがあるんですよ。それをやったんじゃないですか、四十七年度の予算審議で。そして、機種の選定は国防会議で決めてらっしゃいと、高等練習機T2にしても、中型輸送機C1にしても。
  87. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 筋は、繰り返し御説明しておりますように、最終の決定は来年の国防会議において御方針をはっきりお決めいただくということでございまして、私ども事務的なレベルにおいては、そのための資料はいまの段階から詰めまして、その国防会議の御諮問に対しまして十分答え得る準備をしておかなければならないということで、ただいまから御派遣をいただくということで、本年度の予算においてもお認めをいただいておるわけでございます。
  88. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 104Jの後継機は必要ないという結果になるかもしれないのですよ。だめですよ、こういうことじゃ。国防会議の議長としての総理の御見解をはっきり示してください。同じことです。四十七年度の予算審議の場合に出てきた問題と。
  89. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政府は、これは白紙であって、国防会議の機種の決定は議を経なければならぬ。そこまで来てないわけです。ただ、資料の収集のために防衛庁として派遣をしたということで、いよいよこれがそういうものを決めなければならぬ段階になってきたならば、それは国防会議においてノーと言うかもしれないし、それはやはり国防会議自身としての決定にゆだねらるべきものでございます。
  90. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、来年八月に機種を決めたいというんでしょう。これは五次防の内容ですよ。そうすると、五次防の大綱というのはそれ以前に決まるわけですね。議長に、しかとその点は確かめておきたいと思います。
  91. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいま防衛局長からも、総理からもお答え申し上げましたとおりでございまして、その来年のポスト四次防を決める段階で決めることになるわけでございます。
  92. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから何回も言っているでしょう。どうなるのかわからないのに、何で調査団を派遣するのかと言うんですよ。もし要らないことになれば、むだじゃありませんか、それは。そうでしょう、笑ったってだめですよ、何言っているんですか。四十七年度予算と一緒だ、これは。五次防は決まっていないんでしょうが。
  93. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 それであればこそ、調査団を派遣いたしまして、どういう飛行機があるかということを十分調査をする、材料を集める、そして国防会議にかけて御判断を仰ぐ、それをやらなければ決めようがないんじゃないかと思うのですよ。それからポスト四次防というものが始まるわけなのでございまして、そのときまでにはやはり材料をわれわれは収集しておくということが、防衛庁としての当然の責務であると私は考えておるわけでございます。
  94. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 つまり、あなたは五次防で予想されるものを先取りしているわけですよ。
  95. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そういたしまして、私どもは、ちゃんと今度の五十年度の予算においてその調査費をいただいておるわけでございますから、それに基づきまして調査をいたしておる、材料を収集しておる、こういうことでございます。
  96. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次期FXの機種決定の調査費が計上されておりますか。どういう項目で計上されておりますか。
  97. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  五十年度の防衛庁の予算の中で、防衛本庁の外国旅費が四億ほど計上されてございますか、その中で約八百万程度を、このFX調査団の旅費に充てるという内容になっております。
  98. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では、その文書を見せてください。
  99. 亘理彰

    ○亘理政府委員 国会に提出いたしました予定経費要求書あるいは各目明細等には、外国旅費の項目は内容が多岐にわたっておりますから、その一々の項目が記載されておるわけではございません。外国旅費の計上の内訳として、私どもと大蔵省との間で了解をいたしておる、こういうことでございます。
  100. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 結局、それはFX選定の調査費用としては項目として出ていない。だから、全然いわゆる国防会議の議を経ずして次期防の新しい戦闘機の機種を決定しようとしておる、その作業に入っておる、そう見なくちゃならぬのじゃないですか。  私はなぜこれを取り上げるかというと、後ほど問題にします日米の防衛分担の中でこれは出てくるんです、防衛構想の中で。それと非常に関連があるのです。PXLにも関係がある。あるいはDLHも関係が出てくる。だから、こういう点は国防会議議長としてきちっとされないと、五次防にわたるやつを先取りして機種選定作業に入るなんということは許されないことです。それがシビリアンコントロールじゃありませんか。特に国会におけるコントロールですよ。だから、そういう新機種の決定をするという場合には、来年の八月といえば四次防の最終段階ですから、その四次防の中でやるというふうに、きちんと大綱もしくは主要項目の中に入れておかなければいけませんよ。三次防は入っているんです。どうでしょうか。
  101. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ決定をするにしても、防衛庁として資料を集収して、どういう機種があるか、性能、経費等も資料を集収することが行き過ぎだとは思わない。そういう資料なども踏まえて、国防会議において——私が特に注意することは、こういう機種の決定に商社の介入を認めない、またこういう機種の決定について国民の疑惑を受けるようなことがあっては断じてならない、そういう見地から、国防会議においてはそういう資料なども踏まえて、厳正なこの問題に対する結論を下したいという、私は決心でございます。
  102. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 予算を抱えての当委員会の開催ではありませんから、この問題だけに多くを費やすことはできないけれども、後から出てくる日米防衛分担に対するコントロールの方からも、私はもう少し国防会議議長としては各般にわたって目を通してもらいたい。それでは、次期防は来年の八月前に明らかにされるということでございますから、その際にまた議論をいたしたいと思います。  そこで、午前中の勝間田委員の質問に関連をいたしまして、もう一遍私は念を押しておきたい。  総理は、私の二月十三日の当予算委員会における質問に対して、非核三原則は、平時、有事を通じての不変の国是であるということを明確にされた。実はその前に、ここに福田総理がおられますが、福田外務大臣も私の質問に答えて同じことをおっしゃっているわけですね。それも確認をしておきたいと思います。  そこで、先ほど、三木内閣としてはこれを堅持するという御答弁に対して、勝間田委員は再度、三木内閣に限らずその後の政府も拘束するのではないか。ところがそれに対して総理は、当然守られるべきであろうと思いますという程度の答弁でございましたが、私は、当然これは三木内閣限りの基本政策ではなくして、未来にわたって日本政府を拘束する重要な日本国としての基本政策である、このように思いますが、いかがでしょうか。
  103. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 自民党は非核三原則というものをやはり決定をしておりますし、国会においてもこれを遵守すべしという決議もございますし、三木内閣後といえども、この非核三原則は守られるべきものであると考えております。
  104. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 念のために。昨年十月十四日の衆議院外務委員会、わが党の土井委員の質問に対して、木村外相はこう答弁をされております。御紹介をいたしておきます。「国会で決議されたことは、私は国是であると思います。」「これは一内閣あるいは政府政策でなしに、」「国是としてこれが実現を見たと、こう考えております。」。まさにそのとおり答弁されておるわけです。これが国会決議の重みでありましょう。  そこで、この非核三原則というのは、何か条件つきの、あるいは前提つきの国是であるかどうか、あるいは完全に無条件な国是であるかどうか、これを確認をいたしておきたいと思います。
  105. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 条件はついておりません。無条件のものであります。
  106. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうあるべきであろうと思います。これは佐藤内閣の時代に、御案内のとおり核四政策というのを明らかにされた。つまり、日米安保条約によるアメリカの核の抑止力、二番目に核軍縮、三番目に核の平和利用、そして四番目に非核三原則。つまりアメリカの核の抑止力を前提として非核三原則というものが考えられておるというのが、当時の佐藤総理の答弁でありました。いま三木総理の御答弁では、そういう前提は全然ない、あるいは条件はないのだ。結構であります。それをひとつ堅持をしていただきたいと思います。  それで、結局、アメリカの核抑止力があろうとなかろうと、つまり、安保条約があろうとなかろうと、これは不変の国是である。もう一遍確認をいたしておきます。
  107. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 非核三原則が出てきた背景は、被爆国民としての悲願から出発をしてくるわけでございますから、したがって、この非核三原則は国民の支持を得ておるものである、これはやはり堅持していくべきものであるということでございます。
  108. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 核防条約批准問題に関して、与党の中ではいろんな意見があって、その中の意見の一つに、総理がそういう答弁を私に予算委員会でされた。それは核防条約の批准に当たって、核を持たない日本としての安全保障の観点から間違いではないか、つまり有事の際にはやはり核の持ち込みについてフリーハンドでおるべきではないかという有力な意見があったかに聞いておりますが、そういう意見に対する総理のお考えをはっきりさしていただきたい。
  109. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私の三原則というものは有事たるとを問わない、こういう考えでございます。
  110. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これで明確になったと思いますが、どうもその与党の意見が出てから、宮澤外務大臣のその後の答弁の中に、たてまえ論と政策論をわざわざ持ち出された。しかし、いまの三木総理の御答弁で、この点は明確になったと思います。  そこで、午前中の勝間田委員の、新しいアジア情勢下における日本の外交の行方についてさらにフォローしてみたいと思うわけでございます。それで、やはりこのポスト・インドシナの新しいアジア情勢下において三つのパターンに分かれてくる。一つは、当然インドシナ三国に見られる社会主義化の方向、二番目にASEAN諸国に見られるいわゆるアメリカ離れ、非同盟中立の方向、三番目に、アメリカ離れではなしに、むしろよりアメリカにコミットメントしていこうというこういう流れ、これが韓国でありましょう。そしてつい最近の日本の動き、特に宮澤外務大臣の訪米等、あるいは国会答弁等に見られる動きは、日本もむしろ、第三番目に指摘をしました、よりアメリカと密接にコミットメントをしていくという、つまり、日米間の軍事面はもちろんのこと、その他においても協力関係を緊密にしていこうという、この方向に日本は組み込まれていくのではないか。一体、この三つのパターンの中で、日本はどういう外交の姿勢をとろうとするのか、これを明確にしてもらいたい。
  111. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、日米間の相互協力関係はますます緊密にしていきたいと考えておるわけであります。この日米間の関係を軍事面からとらえる、余りにも軍事面に比重を置き過ぎた議論が私は多過ぎると思う。それは安保条約という面もありますよ。しかし、安保条約は、その条約の名前が日米の相互協力及び安全保障条約というので、もう少し日米間の包括的な総合的な協力関係を規定しておるわけで、現にエネルギー、食糧、飼料、資源を考えたときに、日米関係というものをもう断ち切っていいのだというようなことで日本の存立というものはない。私はそれくらいの深い関係を経済面などにおいて持っていると思う。したがって、日米間の関係というものはより緊密にして、相互の理解、相互の協力というものを深めていくということは日本の国益に合致する。したがって、だんだんとアメリカと離れていこうという政策はとらない。しかし、その日米関係というものが、むろん日本がアメリカに従属する立場というようなことは国民だれも承知しないし、われわれも考えてはいない。対等の関係において日米間の協力関係というものを緊密化していくことが、日本の国益に合致する、こう考えておるわけでございます。
  112. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、日本の立場としては、大きく分ければ、私が言った第三のパターンの方向をとっていくということになるわけでしょう。  それでは逆に聞きましょう。このインドシナの革命政府に対して、どういう態度を今後とっていかれますか。総理見解をお聞きしたいのです。
  113. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本は革命政府承認するという意思表示をしてあることは御承知のとおりでございます。いま実際の、正規の一つの大公使の交換というような形までは行っておりませんが、遠からず、やはり日本と革命政府との関係というものは正常化されていくものと期待をしておるわけでございます。したがって、われわれとしても、北ベトナムとの間にもすでに無償経済協力の実施段階に入っておる、南に対してもいろいろと今後の復興に対して、日本のできる範囲内において協力をしていきたい、こういう関係を維持していきたいと思っております。
  114. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次は外務大臣にお尋ねしたいのです。  私も、最近の新しいアジア情勢下における日本外交のあり方をめぐっての外務委員会の議事録をいろいろ読ませていただきました。で、いまのインドシナの革命政権に対する日本の認識あるいは姿勢、それとアメリカの認識は一致するであろうか。つまり共同の認識に立ち得るであろうか。その辺の見通しについてお伺いをいたします。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 けさほど勝間田委員の御質問に対して総理大臣がるるお答えになっておられましたが、すなわち、一つは民族自主自決ということであり、もう一つはその民族が自主自決して自分たちの生活水準の向上あるいは富と所得との分配の均衡化ということを求めるであろう、そのことについて日本政府は満腔の同情と支持を寄せるという趣旨の答弁を総理大臣がしておられるわけでありますが、その次の問題として、民族が自決してそのような目的を求める場合に、どういう思想、どういう方法をとるであろうかと申しますと、社会主義的な手法を志向する国もあると思いますし、あるいは自由主義的な方法を志向する国もあるかもしれない、それによって、その国の形体、思想あるいはイデオロギーと申しましてもよろしいかもしれません、異なってまいるわけでございますけれども、けさ総理が御答弁になりましたことから当然出てまいります帰結は、わが国としては、その国がどのような思想あるいは志向、形体をとろうと、それによって分け隔てをすることはないということが、けさの総理の御答弁から当然結論として出てまいるわけでございます。したがいまして、わが国は、南ベトナム革命政府が今後いかなる形体あるいは思想をとってまいりましょうとも、それが民族自決及び国民の民度の向上、富と所得の不均衡の是正に向かっていく限り、これと友好的な関係を持ち、できる限りの援助をしていきたい、こう考えるわけでございます。その点につきまして、ただいまのところ少なくとも、アメリカ政府方針とわが国の方針とは同一ではございません。アメリカとしてはこの際、それらの国に対して外交関係あるいは貿易関係等々を一応中断する形をとっております。これは私は、やがてアメリカもその点は再考する時期があるであろう、何分にも最近の問題の一つのショックというものがございますから、と考えてはおりますものの、いまの段階では少なくとも、わが国のやり方とアメリカのやり方とは異なるところがある、こう考えております。
  116. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、それらの日米の認識の相違が、今後のアジアの平和と安定の方向に対して、果たして日米間で共通の認識を持ち得るかどうか。これは三木総理が訪米をされるに対して当然問題になる一つの中心課題であろう。その点についてはどう思われますか。
  117. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 今日の歴史の流れを見れば、最終的に物を言うのはやはり民族の自主的な意思ですからね。これを何人も引きとめることはできない。これは大きな世界の潮流ですよ。したがって、アメリカもそういう線に沿うて、恐らくアジア外交というものをいま再検討しておるわけですから、そういう線に沿うた判断をされるものだと私も思っております。時期は別ですが。
  118. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、国会が終わって三木総理は訪米をされる。共同声明が当然用意をされるでありましょう。こういった点についての、つまり、アジアの今後の平和と安定の方向について、もし共通の認識を持っておれば、たとえば事前協議制度の取り扱いもたやすくなるかもしれない、三木内閣としては。しかし、もし共通の認識に立たないときには、やはり事前協議制度についていろいろ問題が出てこようと思います。  まず、共同声明を結ばれますか。それからお聞きをしたいと思います。
  119. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いままだ訪米の時期は、大体見当をつけておりますが、具体的なことはまだ具体的には決まっていないのですが、普通の場合であれば、両国の首脳者間の会談には共同コミュニケが発表されるというのが普通の例でありますから、そういうことになると思っております。
  120. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、共同声明を結ばれるということを前提にして考えるならば、勝間田委員が最後に問題にされた、いわゆる六九年共同声明の韓国条項であります。総理は、この共同声明、韓国条項と表裏一体の形で演説をされた佐藤元総理のブレスクラブにおける背景説明、つまり、韓国がもし攻撃されるようなことがあったら、事前協議制度を「前向きにかつすみやかに」、これは実は表裏一体ですが、このプレスクラブの演説を訂正された、総理の御説明によれば。しかし、このプレスクラブの演説を訂正されても、実はこのプレスクラブの「前向きにかつすみやかに」というくだりは、共同声明の韓国条項と表裏一体の関係でありますから、この方は一体どうなるのでありましょうか。つまり、この韓国条項のこの考え方三木総理は継承をされていくつもりなのかどうか、その辺を明確にしていただきたい。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘のプレスクラブにおける当時の佐藤総理大臣の発言は、その後、御承知のように、沖繩返還協定を審議いたしております衆議院の特別委員会において、佐藤総理自身から修正を加えておられまして、御承知かと存じますが、この点は「ことばが不足、不十分でありまして、どうも真意を誤解されがちでございますから、これはあらためて、事前協議については、国益に従って自主的に決定をいたします、イエスもありノーもある、」このような答弁をしておられます。したがいまして、この点は公にそのようにいわば修正を加えられたものと考えておりますが、他方、共同声明の字句そのものは残っておりまして、これにつきましての政府の立場は、今朝総理大臣から勝間田委員にお答えをされたとおりでございます。
  122. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、韓国条項のあのくだりは、三木総理も継承されるということになりますね。
  123. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは八月に訪米しますと、アジア情勢がいろいろな変化をしておるのですから、いろいろと相互の理解、相互の関心を持つ問題について話し合うということに非常に意義があると私は思っておるわけで、どういうふうなコミュニケになってどうだということを、いま会談もしない前に予測をすることは困難でございます。
  124. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしたら、勝間田委員の指摘に関連をいたしまして、いままでは事前協議というものも、ベトナム、インドシナ等々、日本からわりかし離れておりました。それで何とか政府側もいろいろと言い逃れをし、なるたけ事前協議事項にならないようにという解釈をとり続けてきた。しかし今日の情勢では、いわゆる朝鮮半島の問題と絡んでごまかしがきかなくなる。それに関して総理は午前中、韓国でもし攻撃、紛争が発生した場合に、ケース・バイ・ケースによってイエス、ノーを言う、そういう御答弁でありました。  二、三、例を挙げて聞いてみたい。もし韓国にいわゆる他国の攻撃が加えられる、米韓条約が発動されて米軍が出動するというような事態のときには、この事前協議制度でどのような取り扱いをされるか。
  125. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はこの韓国の情勢というものに対して、いま大きな武力衝突があるとは考えていないのですよ。これは北鮮にしても韓国にしても、その友邦諸国はいずれも戦争を希望しておるとは私は思わない。韓国自身もいまここで大きな武力衝突というものを考えているとは思われませんから。また日本としても、そういう有事の際というようなことを考えるのではなくして、日本が、共同声明にあるなしにかかわらず、韓国及び朝鮮半島の平和と安定ということは、日本の平和と安定に、これは共同声明にあるからそうだというのではなしに、だれが考えてもこれは重大な関連があることは明らかですから、何とかしてそういう事態を起こらさないように、もう日本は外交の努力を傾けなければいかぬ。有事の際にいま御指摘のいろいろな具体的な問題を設定してお答えすることは適当でない。私、実際そういうことは起こり得ないのではないか、こう思っておるわけでございますが、しかし、国際環境を通じてやはりそういう事態の起こらないような国際環境をつくることに対して、日本はその努力をしなければならぬ。だから、一々この場合はどうだ、あの場合はどうだという有事の場合を想定して、事前協議の場合にどうするのだということを、いまそういう仮定のものに一々お答えをすることは適当でない。事前協議の一般として言えることは、安保条約においてそういう事前協議の条項があるのですから、事前協議を要求したならばそれに応じなければならぬ。そのときには、リーガルにはイエスもありノーもあるけれども、日本はそのときの情勢によってイエスとも言うしノーとも言うと、こう一般的にお答えするよりほかにはないのでありまして、一々この場合具体的例でお答えするのはどうも適当でないと私は思うわけで、はなはだ楢崎さんには不本意でありましょうけれども、私はそういうふうに考えるわけでざいます。
  126. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外交と防衛はうらはらでありまして、防衛もいろいろな事態を想定して備えるのです。だから、具体的な事態をやはり想定してわれわれはどうなるのであろうかという心配、恐らく国民もそうじゃないでしょうか。あってはならないことだけれども、それは当然です。また、そういう事態が起こらないように努力することも当然だけれども、もしあった際にはどうなるのかというのが、私は国民の心配ではなかろうか。だから、そのうちの代表的な例として、いまの米韓条約発動のときの事態を聞いたわけ。佐藤元総理は答えられましたよ、イエスという場面が多いだろうと明確に答えられましたよ。それで聞いておるのです。しかしいまもう一遍それを聞いても、あなたは先ほどと同じような御答弁しかなさらないと思いますから、もう時間がありませんので、最後にもう一つ、当然その日米会談の議題になるのであろういわゆる日米防衛分担の問題であります。時間がなくなりましたから簡潔にひとつ御答弁をいただきたい。  坂田さんは、いわゆる日米防衛分担問題について、アメリカと有事の際の取り決めを明確にすべきだということを言い出されて、そしてそのことについて三木総理の了承も得られたようである。ところが先だっての内閣委員会では、いわゆるシーレーンとかシーフェースの防衛分担をしないで機能の防衛分担をやる。機能の防衛分担をやるといったって、じゃ一体どこでやるのですか。やはり海域というものがはっきりならないと、機能の分担をどこでやるんです。だから私は、あの参議院のわが党の上田君に対する答弁をあなたは訂正をされるのでしょうか。上田君にあなたはこう答えているのです。「わが国周辺海域の防衛の構想を立てる上で、米海軍第七艦隊による全般的制海を前提として日米間の作戦協力のための何らかの海域分担取り決めが必要であると防衛庁が考えて」おります。そして「防衛庁は、このため各幕、を含めてわが国周辺海域の防衛に関する日米協力について検討を進めてきた」、つまりユニホームの段階ではあるのです。しかしそれを公に責任者の段階で明確にしたい。「でき得れば、将来取り決めの形に至りたいと考えております。」という答弁でありました。衆議院の内閣委員会における最近の答弁はこれを訂正される。つまりシーレーンなりシーフェースの防衛分担はやらない、こういうことですか。
  127. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ちょっと申し上げておきますが、上田哲さんに対してお答えいたしました中で、その「海域分担」ということが速記録に残っておりますが、あの際には、実は「海域分担」ということを申しておりません。このことは上田委員も御了承になり、恐らく事務当局つまり参議院の事務当局においても了承されて、手続をとられたはずだと記憶をいたしております。  そのことをまず前段といたしまして、私といたしましては、日米安保条約がある、そして両方のいわゆる防衛責任者同士がまず話し合いをするということが必要である。その内容、形式等につきましては、いま事務当局に、どういう内容、問題点があるかを調査、検討を命じておるところでございますが、たとえば情報の交換であるとかあるいは補給の支援の問題であるとか……(楢崎委員「それは知っているんです」と呼ぶ)あなたは非常にお詳しいですから、一応そういうことでございます。
  128. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのその議事録は間違いであるなんというのは、これは訂正されたのですか、議事録は。それが一つ。  それから私は、たとえ今度の防衛責任者の話し合いでこの分担問題が公にならないでも、制服間で決めた分担は生きておるのですよ。むしろ、これを公にしたらまた国会もうるさいし、国民も疑惑を持つということで、制服のままの約束に伏せておいて、そして通り越そうとしておる、それが最近の坂田さんの変わり方だと私は思うのです。  そこで三木総理に最後のお伺いをいたしておきますが、今度アメリカに行かれてこの防衛分担問題か議題になると思いますか、日本の領域——領空、領海、領土——領域以外における日米の共同作戦というものは憲法違反ですね。間違いありませんね。
  129. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が訪米した場合に防衛分担についての御質問ですが、私はこういうふうに考えているのです。この問題は両当事者でいろいろと、いま御指摘のようにできないこともありますし、できること、できないこと、その枠組みをはっきりして、そして両当事者でよく話し合ったらどうだということを防衛庁長官に指示しておる段階でございまして、私が両首脳者会談で防衛分担というものを決めるという、そういう段階まで行ってない問題でございます。
  130. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理は私の質問に答えてないのだ。私は、日本の領域以外においては日米共同作戦をするということは憲法違反ですねと、もしそういうことを制服の中でやっておるとすれば、それは憲法違反事項を相談し合っている。公海上においてももちろん、公空においても共同作戦はできない。なぜならば、集団的な自衛権の発動になるからです。わが国は集団的な自衛権の発動はできない。憲法上できない。これは何回も国会で明確にしておる。したがって、いわゆる領域外における防衛分担、あるいはシーレーン、シーフェースあるいは空、これは領域外で共同作戦するということは憲法違反である。と同時に、もしこういうことを制服間でやっておるとすれば、それは当然私は事前協議制度を空洞化する。つまり事前協議なんというものは包括承認になる。そういう前提のもとにユニホームは防衛分担を話し合っているに違いないのです。だからそういう点の憲法上の歯どめ、あるいは安保条約第五条、共同作戦するのは領域に限るという、これを踏まえて話し合いをされないと、また政府がそういう話し合いをしておるとすれば、これは重大な憲法違反になるから、十分その点はチェックをして、しかるべきときに国会に報告をしていただきたい。制服がやっておるのをそのまま生かすというのですから。
  131. 丸山昂

    ○丸山(昂)政府委員 まず最初に、制服間でそういうことをやっておる事実はございません。  それから、領域、領空外に及ぶいわゆる公海、公空上に及び得るかどうかということは、これは態様によっていろいろ違いますが、いわゆる自衛のために必要であるというためには公海にも及び得るというのが、在来の国会の答弁になっております。
  132. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 自衛隊の行動じゃないのです。自衛隊の行動についてはそういう見解をいままで示した。共同作戦は違いましょう。いままで、自衛隊が公海まで出ることはあり得るという答弁はありましたよ。しかし領域外で日米共同作戦は態様によっては許されるなんという見解ですか。それは新しい見解です。われわれは絶対に了承できない。何回も安保特別委員会でやったのです。集団的な自衛権の発動じゃないですか。だからそんなふうにどんどんエスカレートしていくのです。これが新しいアジア情勢のもとにおける今後の日米のコミット、軍事面におけるコミットメントはそういう方向に進んでいく可能性があるから、私はそれを聞いておる。
  133. 吉國一郎

    吉國政府委員 自衛隊のみの行動範囲については、ただいま防衛局長から申し上げたとおりでございます。  それから日米の共同作戦の場合、これはどうなるかというお話でございますが、平時の護衛でございますとかいうような場合について、当然日本の領域外の公海において共同作戦として——平時と申しますか、一般に戦闘状態に入る前にそういうことができるということは考えられませんけれども、いざ戦闘状態に入った。日本国に対してある国の武力攻撃があって、それに対処するために、日本国に共同してアメリカ合衆国の軍隊も動き出したという場合においては、そういうことについて必ずしも日本の領空、領海に限らないではないか。その点はもう少し検討してみなければ一義的には言い切れないということは、昭和四十八年に内閣委員会において、政府側からお答え申し上げております。当然領海外においても共同作戦があり得るとまでは申しておりませんけれども、領海に限られるということにはならないということを申し上げております。
  134. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これでやめますが、いまの見解は重要な見解だと思うのですね。昭和三十五年のときの安保特別委員会における政府側の答弁を根本的に覆すことになる。集団的な自衛権の発動というのは憲法違反であると、何回も答弁している。  時間がないから、私はこの問題を残しておきますよ。しかし、新しい見解として、われわれは問題にしたい。  以上で終わります。
  135. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 阿部助哉君より関連質疑の申し出があります。楢崎君の持ち時間の範囲で、これを許します。阿部助哉君。
  136. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大蔵大臣は四月十五日、財政危機宣言ともいうべきこれを発表いたしました。五十年度予算が国会を通過したわずか十日ばかりたって、五十年度の歳入、税収面で欠落のおそれがある、こう強調しておられるわけですね。そうしてその対策として、公務員給与の問題であるとか米価の問題など、国民生活にきわめて影響の大きい歳出に枠をはめ、利用者負担がどうのこうのと、予算の本質にかかわる問題にあなたは言及しておられるわけであります。     〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕 このような問題は、本当ならば予算案の審議中に提示すべき問題であって、予算が通過するのを待ちかねたように、わずか十日ばかりたってこれを提示、PRをするということは、私は、国会無視である、憲法の主要な柱である財政民主主義の否定であると思うのでありますが、これは総理、どうお考えになります。
  137. 大平正芳

    ○大平国務大臣 四月二日に予算案が成立を見ましたわけでございます。その段階におきまして、四十九年度の税収の確定的な数字は、私の手元にまだ捕捉するに至っていなかったことは事実でございます。  阿部さんが御提言されておりますように、事がございますならば、国会に対しましてなるべく早く御報告を申し上げるということが、私ども行政府の責任であることばよく承知いたしております。しかし、予算成立までの段階におきまして、まだ確たる数字がつかみ切れていない段階におきまして、国会に申し上げることばできなかったわけでございます。四月半ばになりまして、ようやく確定的な数字をつかむことになってまいりましたので、その段階におきまして、四十九年度の税収を振り返りまして、財政運営上、当面注意すべきこと、そして今後長期にわたって考えなければならぬことを取りまとめて、閣議を通じて各閣僚の御協力をお願い申し上げ、あわせて大蔵委員会に御報告を申し上げ、大蔵委員会を通じて国民の理解と協力を求めた次第でございます。
  138. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それならお伺いしますけれども、数字が出てきたのでやった。本当ならば、そのおそれは予算審議の中でもう大体の見当がついておったはずなんです。だけれども、数字がなかったとあなたはおっしゃる。それで四月の半ばに数字が出たときにと、こうおっしゃるが、私、それならばお伺いしますが、どういうふうな税収欠落の予想なんです。源泉所得税について、法人税について、間接税について、五十年度の欠落の見込みを示してもらいたい。
  139. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいまのお尋ねは、五十年度の各税目別の税収不足の見込みについて御質問だと思いますが、その点につきましては、まだ年度が始まったばかりでございますので、その見通しは現在のところつけておりません。
  140. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 話が違うじゃないですか。あなたはこの危機宣言の中で、「(五十年度の財政執行)」について、これに述べておる。時間がないので余りこんなもの読みたくないのですけれども、「従来のように自然増収を期待することは困難であり、むしろ、自然減収が生ずる事態も考えておかなければなりません。」ということで、それに続いて今度はいろいろな執行上の問題として、公務員給与の問題であるとか、あるいは米価の問題であるとか、あるいはまた社会保険の費用負担のあり方を見直さなければいかぬとか、公共料金については利用者負担を考えなければいかぬとかいう具体的な問題まで、これはあれだけ日にちを費やしてやった予算の根幹に触れる問題を、あなたはここで述べておるわけです。それならば、それなりの五十年度の歳入欠落の見通しが立った上であなたが言っておるならまだわかるけれども、一体何のために言っておるのか私にはわからない。私はこれは予算委員会を軽視するものだ、こう思うのだけれども、三木総理、これはいかかです。——総理に私はお伺いいたしたい。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 予算委員会政府は軽視するものではございません。予算委員会の審議というものは、予算について中心的な委員会でございます。ただ、こういう経済の激動、激変期でありますから、なかなか歳入の見積もりというものを、いつもの正常なときとは違うわけでございますから、そういう点で、予算の審議の途中はまだそういう具体的な数字の把握はできなかったものと考えております。
  142. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 三木さんは議会の子だとかなんとかいうので、私はもう少しちゃんとした答弁をされると思った。私が本当に言いたいのは、財政民主主義を貫くために、三木内閣はこういうようなことをしない。もしあるならば、その前にもう見当はついておるはずなんです。もしこれを発表するなら、大平国務大臣はある程度数字が出てきたのでこうやったと言うけれども、それは四十九年度の欠落の問題を言っておるならいいのですが、明らかに一枚目は四十九年度の問題を書いておるけれども、二枚目からは五十年度の財政執行について書いておるわけですよ。これはあなたの文章です。こういうことを一体なぜやらなければいかぬのか。  私はもう一遍お伺いしたいけれども、いま事務当局は数字がない、こう言う。しかし、新聞等では、あるいは二兆円欠落するだとか、いろいろと五十年度の歳入欠落の問題を報道しておりますが、これは大蔵省が資料を提供し、大蔵省の見解ですか、どうです。
  143. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま事務当局からも申し上げましたように、年度が始まって二カ月しかたっておらないわけでございます。また、今後の経済がどのような状態において推移してまいりますか、それからまた、政府がこの事態に対してどういう政策を今後年度内にやってまいりますか、これはまだ未定でございまして、ことしの税収がこれによってどのように影響を受けてまいりますか、見当がっきかねるわけでございます。したがいまして、いまの段階で計数を申し上げる材料はないわけでございます。  いま新聞等で、ことしの税収不足は幾ら幾らになりそうだというようなことが間々散見されますけれども、われわれとして材料を提供した覚えもございませんし、そういう数字について、大蔵省として責任を持つわけにはまいりません。
  144. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 関知していない。しかし、関知していない、数字がないという割りには、大臣、その対策の方だけは、さっき申し上げたように、わりときちんとしておるんですよ。私はどうもその辺がわからない。やれ給与を抑えなければいかぬとか、公共料金は利用者負担にしなければいかぬとかという対策の方、特に国民大衆に負担をかける方については、まことに力点を入れた具体的なことを、あなたたちはおっしゃっておるんだな。これは私はどうも合点がいかぬのであります。皆さんの宣伝は、民主制度下、国民に対するサービスを削減して、負担を大きくするためのPRとして、こういうものをお出しになっておるんじゃないか。  三木総理、国民にとって、あなたがおっしゃった不公正の是正とか、こういうものは、私は、企業、特に大企業の利潤に財源を求めて、国民の負担を軽くする中で福祉を確保する、これが不公正是正の道である、こう思うのでありますが、いかがですか。
  145. 大平正芳

    ○大平国務大臣 国民の負担を求めることに急であるとの御指摘でございますが、財政当局といたしまして、四十九年度の末期に経験したような事態を踏まえた以上、財政の運営につきまして、ただいま警戒しなければならぬこと、中長期にわたって考えなければならぬことを、国民に申し上げて御理解と御協力を求めるのは、私は当然の態度だと思うのでございます。  国民と財政が対立するものではなくて、国民の幸せといい、福祉といい、やはり健全財政が基礎になければ実を結ばないものでありますことは、御案内のとおりでございまして、私どもといたしましては、あくまでも財政の健全性を堅持してまいることが、国民に対する厳しい責任にこたえるゆえんだと存じておりますことを、御理解賜りたいと思います。
  146. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は時間がないので、あなたにもう少し簡単明瞭に、要領よく答えてもらいたいのです。  私が言っておるのは、不公正是正ということは、やはりそれなりにこの対策を立てなければいかぬのですよ。国民なんという一般論じゃ、やってもらってもこれは解決をしないのです。国民の中で不公平ができておるのです。  しかし皆さんのお話を新聞で拝見をいたしますと、三木さん、福田総理は、五月二十七日、財界の機関での講演で、今後の経済政策の焦点は賃金の抑制である、こう語っておられる。大平大蔵大臣は四月十五日、この宣言で申し上げたように、間接税を増徴するとか、社会保険料、公共料金の引き上げを行うというようなことを言っておる。五月二十一日には高木大蔵次官は、慶応大学でのお話で、福祉予算は圧縮するという重大な発言をしておるわけであります。その上に、小松通産次官や宮崎経企庁次官は、赤字公債の発行を盛んにPRしておるのです。  これをまとめて申し上げると、三木内閣経済政策を動かす人たちの頭の中は、すべてインフレのもとで低福祉、高負担という考えの持ち主ばかりだ、こう見なければならぬのであります。これでは三木さんがおっしゃった不公正の是正などというものじゃない、不公正促進内閣だ、こう言わなければならぬ。  私は、この皆さんの、三木さんの配下であるところの経済政策を立案する首脳の見解に対して、三木さんはどうお考えになっておるのか、お答えを願いたい。
  147. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この内閣が、不公正を是正する、そういう意味から、インフレというのは一番不公正の標本的なものでありますから、この克服のために努力をしておることは御承知のとおりであります。その他税制の面においても、阿部議員はなかなかまだ手ぬるいと言われますけれども、いろいろと努力を傾けておることは事実であります。また、福祉の面においても、なかなか今年度においても福祉予算という七のが重点的に編成をされておることは御承知のとおりでございまして、いま阿部議員の御指摘になるような、ますます社会の不公正を拡大しておるというようには、私は考えていないわけであります。  ただ、阿部議員とテンポの差はあるでしょう。あるけれども、そういう方向に向かって政治が動いておるということは、疑いの余地はないと思っております。
  148. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたはいろいろおっしゃるけれども、あなたは一番大切なところ、国民生活の現実を見ておられないんじゃないですか。あなたの部下がつくられた資料は、ちゃんとそのことを言っておるのですよ。これは経済企画庁の所得分配研究委員会の中間報告、これをまつまでもなく、私は時間がないからいろいろと資料は挙げませんけれども、所得税減税はしない、物価は上がる、税金は重くなる、こういう中で、この委員会のときにも、低所得層の負担は重くなるということを指摘しておいたのでありますけれども、皆さんの役所で出した資料を見ても、こう言っておるのですね。低所得者層は実質収入は減少し、生活防衛のため著しく消費が切り詰められている、その中から税金が取られておる、低所得者層はインフレの高進で貯蓄ができなくなり、切り詰める傾向にある、その反面、高所得者層は貯蓄がふえ、また土地などの実物資産も高所得者層に集中している、こう発表しておるのですね。このあなたの部下のつくった資料すらも、あなたはこの現実を見ておられないんじゃないですか。  その上に申し上げるならば、これは日銀の発表する統計から私が調べたところですが、わが国の大企業は、この十年間で資産を三・五倍に太らしておるのです。ことにこの三年間で六〇%も超蓄積をしておるのです。しかも、不況だ不況だと言いながら、なお蓄積は進んでおるのです。これがわが国経済の実態なんですよ。不公正は拡大をしておるのです。この拡大をしておるという現実にあなたは目をつぶって、一生懸命やっておるのだからということだけでは通らないのじゃないか。この実態を踏まえて、私は三木さんに政策を立てろ、こう申し上げておるのであります。すなわち、超蓄積をした企業と資産が増加しておる人たちに税負担をさせるのか、それとも生活にあえぐ貧乏人の負担を強めようとするのか、そのどちらなのか、明確に答えてもらいたい。これが今日の日本の内政における最高の政治課題であり、これまた三木さんの約束、公約の不公正是正の道だと私は指摘をしたいところであります。三木さんの見解をもう一度ただしたい。
  149. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これからの日本経済運営の方向は、いろいろな財政の窮屈な中にあっても、国民生活の質的な充実あるいは福祉の増進、また環境の保全、こういうものをやはり推進していくということが政府の方向だと思います。それについて、こういう広い意味における福祉国家というものを建設していこうということであるならば、どうしたってその根底には社会連帯の精神がなければならぬ。したがって、これに対しての応分の負担というものも当然に覚悟しなければ、これはどういう形でやるかということは問題ですよ、その負担もまた公平に行われなければならぬことは当然でございますが、しかし、全然そういう負担というものを度外視して、そういうことを国家財政だけでやっていくということは、これはもうできないことであるのは明らかでございます。そういうふうなことに持っていくためには、いま言ったような社会的不公正の是正という面からもメスを入れていく必要があることは当然でございます。
  150. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、あなたがいま何をおっしゃったのかよくわからぬのですが、応分の負担だとかいろいろおっしゃるけれども、私は何もそんなことは否定していない。応分の負担をしろと私は主張しておる。大きな利益を上げたもの、裕福な人たち、実物資産が集中をしておるような人たちからはもっと税金を取りなさい、貧乏人に公共料金値上げするとか、これは一番大きな負担ですから、そういうことで貧乏人いじめをしたんでは、不公正はますます拡大をするんだからこれを直すべきだ、こう言っておるのです。応分の負担だとかあなたはいろいろなことをおっしゃるけれども、現実に、私が指摘したとおり、四十九年度から不公正は拡大しておる。だから、私はそれを直すべきだ、こう言うのであって、応分の負担がどうのこうのなんと言ったって、答弁に本当はならぬのですよ。いろいろ言われるけれども、これまで国会の審議の外で、やれ財政硬直だとか歳入欠落だとか、いろいろ世論操作のようなことを言う、そうして、いまにも何か国が破産するようなことを言っては国民をおどかすけれども、それは表面上の理由と実際のねらいがいつも違っておるのじゃないか、私はこう考えざるを得ないのです。  いま歳入欠落のおそれがあるというならば、三木さん、私がこれから申し上げることにはっきりお答えを願いたいのであります。  余裕のある高額所得層、ことにキャピタルゲインについて税金を強化する、超蓄積をしておる大企業から税金を取り立てる、そうすれば、あなたのおっしゃる公約、社会の不公正是正も実現をするのです。三木さん、あなたがムード的に、やれ高度成長から安定成長などと、こう言っておるけれども、実際は、私がいま言った政策の根本的な切りかえ、今日までは資本の蓄積のために税制、財政に総力を挙げてきたと言っても言い過ぎではないと私は思うのでありますが、それを根本的に切りかえなければ、言葉だけ安定成長と、こうおっしゃってみたって、それは何ら国民にとっては意味のないことだ。むしろ有害であると私は思うのであります。そこで私は、このうんともうけておる企業の問題について具体的にお伺いしますから、三木さん、ひとつこれも明快な御答弁をお願いしたいと思うのであります。  第一に、銀行の貸し倒れ引当金であります。この問題は、かねがね私は主張してきたところでありますが、四十八年下期で、都市銀行の貸し倒れ額はほとんど数字にあらわれていないのであります。三木総理、これをごらんになっていただけばよくわかります。銀行全部ですが、この太陽銀行のところをごらんになってください。たとえば太陽銀行の場合は、貸出金が三兆一千九百七十四億円、これに対して貸し倒れ額は千三百万円、ところが貸し倒れ引当金は四百三十億円で、前期に対する増加額は二十四億円あるのです。その比率は幾ら割ってみたってなかなか、〇・〇〇が続くけれども、数字が出てこないのですよ。貸出金額は大きい、貸し倒れ金なんというものはほとんどない、それにかかわらず四百三十億円もの貸し倒れ引当金を用意をしておるのです。金融機関の積立金は一兆一千億にも達しておるのです。そうしてこの金額は、資本金の総額に匹敵するぐらいこれは積み立てておるのです。しかもそれが不況のもとにおいて、不況だ不況だと言われる今日においても、この三月にもさらに積み増しをしておるのです。このような利益隠し、合法的な脱税の仕組みを直ちに改正すべきものだと私は考えるのですが、総理、いかがです。
  151. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは、貸し倒れ引当金が実績に比して過大でないかという御指摘があることはよく承知いたしておるわけでございます。したがって、金融機関につきましても、従来千分の十五でありましたものを、いま十にいたしておるわけでございますが、さらにこれをもっと詰めるべきでないかという方向で、検討をいたしておる最中でございます。
  152. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大平さん、あなた、検討しておると言うが、もう近々に税調が審議を始めるわけでしょう。まあこれは総理の諮問機関でございますから、総理、これに諮問をされる、検討するつもりなんですか、どうなんですか。
  153. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これについては、阿部議員も御指摘のように、いろいろな社会の批判もあることは事実です。毎年引き下げてはおりますけれども……(阿部(助)委員「毎年じゃないでしょう」と呼ぶ)四十八年、四十九年とやっているのですから。(阿部(助)委員「四十七年です」と呼ぶ)しかしこの問題は今後見直しをしていくつもりであります。この問題をひとつ取り上げて検討をいたしてみたいと思っております。
  154. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は当然これは手直しをしてしかるべきだと思います。  第二に、今期の決算は利益が減少しておる、こう新聞等で報道されております。しかし百八十三社のわが国の代表的な大企業、そこでは租税特別措置による利益隠しが六百三十億円も行われておる。たとえば目下値上げ問題で注目を集めておる新日鉄の場合は半年で百六十八億円の利益を上げた、まことに膨大なものであります。ところが前期に比べて利益が少なくなったと言っておるけれども、これにはからくりがあります。法人税の操作で百二十九億円の利益隠しがなされておる。実に公表利益の七七%を隠しているのです。引当金の増額と租税特別措置の停止をいますぐ行うべきであると私は思う。今日、皆さん財政硬直だとか金がないと言うけれども、このように大企業は引当金あるいは準備金、こういう形で内部留保をふやしておる。不況だ、中小企業の倒産だ、こういう中で大企業だけがこういうことをやっているということについては、ことしぐらいは停止する、それぐらいのことをやらないで、やれ公共料金値上げがどうだ、あるいは公務員の賃金がどうだとか、こうおっしゃったって、国民は納得しないと思うのです。ことしは積み増しを停止するというぐらいのことはお考えにならぬのですか。
  155. 大平正芳

    ○大平国務大臣 申し上げるまでもなく、決して大企業特有の控除制度を持っておるわけではございませんで、租税特別措置は大中小零細にかかわらず、特定の政策目的のため私どもが採択しておる制度でございまして、大企業だけに認めておる制度でないことはあらかじめお断りを申し上げておきたいと思います。  それから、商法や会計原則の上から申しまして、いろいろな引当金、準備金の計上が企業に認められておるわけでございまして、税法におきましてもできるだけそれを尊重すべきであることは私も当然と心得ております。しかしながら、いま阿部さんが御指摘のように、こういった準備金、引当金は、実績に比べてもっと詰める余地があるじゃないかということでございまして、従来もそういう方向で努力しておりますけれども、なお詰めるべきものはいま検討を急いでおるわけでございますので、いま御指摘のような点につきましてはなお検討を進めて、できるだけ早い機会に実効を上げる措置を講じたいものと考えております。
  156. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんは素人ごまかしみたいな形で、特別措置法やなんかは大企業でも中小企業でも適用するのだ、こうおっしゃっておるけれども、私は時間がないから数字を挙げませんけれども、こういう金額がどういうところによけいあるのか、たとえば十億円以上で何%というのは、数字を挙げろと言えば挙げますよ。これは実績主義ですから、大蔵大臣は百も承知の上で素人ごまかしをやるけれども、うんともうかる大きな企業でなければこれは積み増しができないのですよ。結局これは実績主義なんだから、そのくらいのことは私だって承知しております。大企業でなければ適用してはいかぬなんという法律はないですよ。みんなできるのですよ。理屈の上ではできるけれども、中小企業にはその恩恵が少ない。それは数字が実績を示しておるのです。それを言えば時間がかかるから私は言わないだけの話なんであって、あなた、ここでそういうごまかしの答弁をされちゃいかぬと私は思うのです。それはたてまえはそうなんです。しかし実際は大企業にこうなっておるということで、私は特に新日鉄を例に挙げてこれを言っておるのです。  このように高利潤を上げ、内部留保をいまでもさらに高めておる鉄鋼、こういうものがいま値上げの申請をしておるようでありますし、値上げを主張しているようでありますが、こういうときに、物価の安定をねらっておる皆さんは、そうして内部留保をさらに高めておるような鉄鋼に私は値上げを認めるべきではないと思うけれども、通産大臣、これはいかがです。
  157. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 鉄鋼業界の実情を申し上げますと、ことしの一月以降貿易関係が急速に悪くなりましたのと、それから内需の落ち込みによりまして、いま生産が半年前に比べまして約二割ばかり減っております。そういうことから企業の内容は非常に悪化しておるわけでございます。いまどうするか、鉄鋼業界内部におきましていろいろ検討しておるようでございまして、まだその結論は出ておりません。
  158. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 結論が出てはおらないけれども、あなたのこれからの方針はどうかと私は聞いておるのであって、結論が出ない、しようがないけれども、こういうようにいまでも積み増しを、内部留保を高めておる、こういうのがやれ原価を割ったとかいろいろなことを言うけれども、私は合点がいかぬのであります。  時間がないから、私は余り詳しく申し上げませんけれども、退職給与引当金一つとってみたって、これを積むことによって内部留保はふえる、これが原価に算定されていく、そうして退職者が出て払うときには価値のない金が払われていくという幾つかのメリットを持っているのです。しかも新日鉄なんという大会社で半分も一遍にやめるなんということは考えられない。倒産するなんということは考えられないのですよ。そういうところに退職給与引当金なんか  これは積み立てる額と実績を一遍でもあなた検討したことがあるのですか。そういうものが原価の中へ、また原価計算の中へ織り込まれていくでしょう。こういうことを考えれば、いま物価を安定しようと考えるならば、私は値上げなんというものはすべきじゃないと思う。私はこのことだけ申し上げて次に移ります。  第三には、所得税についてでありますが、まあいろいろ申し上げたいけれども、特に利子、配当であります。  四十七年度でも利子の支払い金額は五兆五千四百億、これに対して源泉徴収税額はわずかに三千九百億円で、これは約七%であります。四十八年度はさらに下がって、六兆二千億に対して五・五%にすぎない。これは所得税の最低の税率にも達しないのですね。私は金持ちにこんなにまで優遇する必要は何もないと思う。配当についても、これも大体似たり寄ったりであります。わずかに一四・九%にすぎない。これは大金持ち優遇の象徴的な税制であることは、いままでもいろいろと指摘のあったとおりであります。あなたが、財政硬直だ、歳入欠落だと、こうおっしゃるならば、まずこの歳入面に手を下すべきだと私は思うのだけれども、これはいかがですか。
  159. 大平正芳

    ○大平国務大臣 利子配当所得の課税につきましては、今国会におきまして御承認をいただきまして、源泉分離三〇%の課税で御承認をいただき、五年間の猶予をもちまして、総合課税に持っていく準備をしようということになっておりますことは、御案内のとおりでございます。三〇%と申しますと、ほぼ所得三千万円ぐらいの納税者に相当する負担水準でございますので、相当の課税であると思うのでございます。しかし、阿部さんの御指摘のように、これはやはり総合課税にしてまいることが本筋であることは、私も全く同感でございます。その点におきましては、たびたび本委員会でも御答弁申し上げておりまするように、利子配当の実態を精細に捕捉しなければならぬことはその第一前提でございまして、これを行政府として十分掌握いたしまして、その上で総合課税に踏み切りたいという方針のもとに努力をいたしておるのが、ただいま政府態度でございます。いただきました五年間の猶予の間に、そういった状況を整備してまいりますよう、最善の努力をいたすつもりでございます。
  160. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 鋭意努力をしておるとおっしゃる。あるいはまた、ことしの税制で何がしかの手直しをされたということはわかるのです。だけれども、あなたが、閣議決定をして、このように財政欠落、財政の危機宣言を発せられる、こういう事態であるだけに、ことし二五%から三〇%に直したなどということでは手ぬるいのじゃないか。あなたがこういう危機宣言みたいなものを発しない平年度であれば、まあ昨年度より五%のところを手直しをした、これから逐次直していくと言うなら、また私もある程度認めないわけじゃないのであります。しかし、あなたはこういう危機宣言をやって、それで冒頭に申し上げたように、どっちかといえば、収入の面には何も触れないで、こういういろいろな金持ち優遇の問題にあなたは触れないで、そうして貧乏人あるいは労働者に対して、公務員給与がどうであるとか、米価の問題がどうだとかあるいは公共料金は利用者負担にせなければいかぬとか、こういうことをあなたが言う。ほかのこの方々も社会保障を削らにゃいかぬなどということで、皆さんがそれだけ財政の危機を宣伝をされるだけに、それならば一体この金持ち優遇税制をなぜ一言ぐらい皆さんはおっしゃらないのか。私は、これは不可解でならぬのであります。だから私は、あなたがいま五%引き上げたじゃないか、こうおっしゃるけれども、それでは不十分だ。危機宣言を発するならば、まずこの辺にもっと抜本的な対策を立てなければいかぬのじゃないか。特に三木さんは不公正是正とおっしゃるけれども、現実は四十八年度から四十九年度にかけては、それまで以前よりはさらに格差が開いてきておる、貧富の差が開いてきておるということを、皆さんの役所がこれは資料を挙げて発表しておる。全く皆さんの看板と現実とが食い違っておるということを御指摘申し上げたわけでありまして、私はただこうやりましたと言うだけでは納得ができないのであります。私は余り税調というのは信用しないのだけれども、しかし皆さんの御意向が税調には強く反映をするわけであります。ことに税調はことしは例年になく夏休み前から早々に審議を発足するやに私は聞いておるわけであります。総理や大蔵大臣の御意向がこれに強く反映してきたのは、私の経験するところであります。したがって、私はこの予算委員会で、明確にこういう問題は検討をするという前向きの姿勢をとるべきだ、こういうことなのであります。いかがです。
  161. 大平正芳

    ○大平国務大臣 金持ち重課を回避しておるわけではないことは、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。利子配当所得の実態を捕捉した上で総合課税に踏み切りたい、その準備が熟しておりませんので、とりあえず源泉選択課税を強めていくことで御承認いただきたいというのがただいまの態度であるわけでございますが、仰せのような事態でもございますので、鋭意この準備を進めてまいるよう努力いたしたいと思います。  その他増収を可能な限り確保してまいらなければならぬことは仰せのとおりでございまして、税調に対しまして諮問申し上げて御検討いただくことは当然なことでございますけれども、御諮問申し上げなくて行政府だけで措置できることにつきましても、そのつど税調に御報告申し上げて、御了解を得て、実施すべきものは実施に移したいと存じておる次第でございます。
  162. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 一つお伺いしておきたいのでありますけれども、付加価値税は必ず物価にはね返ってくるという点で、私は付加価値税はやるべきでない、こう思うのですが、いかがですか。
  163. 大平正芳

    ○大平国務大臣 付加価値税というのは、税制改革、税制の全体に及ぶ大きな問題でございまして、私は、いまこういう問題を取り上げるべき段階ではないと思っておりまするし、またあなたのおっしゃるように、物価政策の上からも慎重に扱わなければならない税目であることは御指摘のとおりでございまして、いまこの創設につきまして税調の御審議を仰ぐというつもりは持っておりません。
  164. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 最後に、実質的な間接税である公共料金はこれは引き上げるべきでない、私はこう思うのであります。皆さんのこの調査局の文書を見ましても、所得の低い階層ほどこの公共料金の引き上げというものが大きく重圧になっておるということを指摘しておるのでありまして、私は公共料金の引き上げ、皆さんの中では利用者負担であるとかいろいろおっしゃっておるけれども、これは抑えるべきであると思うが、これは総理、いかがです。
  165. 大平正芳

    ○大平国務大臣 公共料金は、従来御説明申し上げておるとおり政府としては極力抑えてまいっておるわけでございまして、阿部さんも御承知のように、各物価ないし料金が上がりました段階におきましても、政府が管掌しておりまする公共物価公共料金につきましては、それよりはるかに低位に維持しておりますこと、御案内のとおりでございます。しかし、これといえども一つ物価でございますし、料金体系の中の一部でございますので、一般の物価高というものと独立にあるわけではございませんので、できる限り適正な原価形成を考えてしかるべきであって、安易に財政に依存すべきものでないという基本的な態度につきましては、政府部内で見解が分かれていないと私は確信をいたしておるわけでございます。したがって、今後も公共料金につきましては極力抑制の方針を堅持してまいることは当然でございますが、同時に、安易に財政に依存するという弊風も慎んでいただかなければならぬと心得ております。
  166. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もう時間がないようでありますから、最後に三木総理にお伺いしたいのでありますが、三木総理は政界の浄化を約束された。しかし田中金脈問題の処理にははなはだ不熱心だ、こう言わざるを得ないのであります。国民は依然として疑惑を持っております。釈然としないのであります。まさか三木内閣はこのままずるずるとほおかむりで済ませるつもりはないと思うけれども、私は総理方針をお伺いしたい。  きょうは時間がないので、私の質問を終わりますけれども、わが党は政治の信頼を取り戻すために、今後ともこの問題の解明のために追及することを申し上げ、私は総理のこの点に関する御見解をお伺いして、終わりたいと思います。
  167. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 政治の信頼を回復するためには、いろんな疑惑に対してはこれを解明する、国民の前に解明することが必要でございます。したがって、いわゆる田中金脈問題についても、国税庁の調査その他法規に照らして調査すべきものはいたしてきたわけでございます。また、政治家は単に法律に抵触しないというばかりでなくして、政治道義の問題もございますから、そういう点に触れては、田中総理が国民の前に公約しておる、国民の疑惑を解く、疑惑というよりも、国民の理解を深めたい、そのために自分はこの問題について調査を急いで、全貌を明らかにしたいというような発言があるわけでございますから、政治家の信用を回復するために、田中氏自身としてもこの約束は実行されると思いますから、あわせてこういう問題の解明を図り、国民の疑惑に答えるべきだと思っております。
  168. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 終わります。
  169. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。
  170. 金子満広

    金子(満)委員 私は、政府の外交姿勢、外交政策について、若干の問題で質問をしたいと思います。  御承知のように、四月三十日にサイゴンが解放されました。ベトナムが完全に解放された。そうして民族の自決という大きな、偉大な事業をベトナムの人民はかち取ったわけです。ところが、こうした中で考えられることは、歴代の自由民主党の政府は、長期にわたって、初めから、アメリカのベトナムに対する侵略戦争、これに協力をし加担をしてきた、アメリカの立場を支持してきたことは周知の事実であります。歴代の総理の中には、アメリカのああした行為に敬意を表するとまで言った総理もおるのでありますから、これは相当のものだと私は思うのです。  そこで、南ベトナム全土が解放された後の衆議院の外務委員会、五月七日でありますが、この外務委員会で宮澤外務大臣は、私の質問に答えて、アメリカの行為を次のように述べました。「アメリカが干渉したであろうということについては、これはやはり干渉をしたと考えるべきであろうと思います。」さらに「干渉したということは、これはやはり認めるべきであろう。」こういうように宮澤外務大臣は答弁されているわけですが、三木総理もこの見地、つまりアメリカがベトナムに干渉したということについてはお認めになると思います。その点いかがですか。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前に私からお答えを申し上げますが、午前中の勝間田委員に対する総理大臣の御答弁並びに午後の楢崎委員に対しまして私の申し上げたことに関連いたしまして、民族自決あるいは国民の民生の向上、富と所得の不均衡の是正ということを行うに当たっても、その方法論というものはやはり幾つかあるであろう。これをいわば全体主義国家的な方法で行うか、あるいは自由主義的な方法で行うか、いろいろの方法論があろうと存じますが、恐らく米国としては、そのような民族の望みを、米国の信ずるような方法、自由民主主義といわれるものでありますが、それで行うことが適当なのであろう、正しいと考えましたがゆえに、求めに応じてこの戦争に介入をした。他方で別の所信を持っている国々は、別の所信のもとに介入をしたと思われますが、そういう趣旨の意味で、私は干渉という言葉を使ったわけでございます。
  172. 金子満広

    金子(満)委員 非常にはっきりしていることでありますけれども、アメリカの行為が、いまは介入と言いましたけれども、前回は干渉した、それはいろいろの解釈はあっても、この事実だけは外務大臣もお認めになっておるし、キッシンジャー自身、介入したということを言っておるわけですから、その点は三木総理も同意見だと思いますが、念のために聞いておきたいと思います。
  173. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 南ベトナム政府の求めに応じてアメリカが介入したことは事実であります。
  174. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、介入したという見地を総理がとるようになったのはいつからですか。つまり、これまでの総理の中では、全部ではありません、人によっては、アメリカのあの行為に敬意を表するとまで言った総理がいるんですから。しかし、きょうは総理自身がアメリカが介入したということは認めるわけですね。いつからそういう見地になったか。いままで国会の答弁では、アメリカがたとえどういうようなことにあれ介入したということを総理自身が認めたのは、私はきょうが初めてだと思うのです。いつからそういうような見地にお立ちになったか、このことを伺いたいのです。
  175. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 南ベトナム政府の求めに応じてアメリカが兵力も送り、これは介入という言葉が——金子議員はそれにどういう伏線かあってお尋ねするのか、まあさらっと考えれば、これは介入とも言えるわけですから、私はあなたの伏線が何にあるか知りませんが、普通常識的に考えれば、それは介入とも言えると思うのです。別に伏線があれば別ですよ、これは。
  176. 金子満広

    金子(満)委員 こういうことは伏線でも何でもなくて、やった行為についての判断でありますから、それは介入であるということを宮澤外務大臣ももうすでに認めておったし、三木総理もいま認めたのであって、そういう点は私は非常に大事な一つの発言だと思うのです。そういうことになりますと、アメリカがこれまでベトナムでとってきた政策なり行動というものは正しかったかどうかということにもなります。介入ということは正しいのか正しくないのか。これは問わずとも答えははっきりしていると思うのです。介入を支持するとか介入は大変結構なことです、こういうことは言えないと思うのですが、これまで長い間政府がアメリカがベトナムにとってきた政策、行動を支持してきたことは誤りである、あるいは反省すべき点がある、いずれでも結構ですが、現在どのように考えていますか。
  177. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、政府としては、アメリカの介入は領土的野心であるとか植民地化というようなことでなかったことは明らかであって、いわゆる自由と民主主義による民族の自決というものをよしと考えたから介入したのであろうと考えております。そのことは成功するに至らなかったのであります。わが国としましては、アメリカのそのような意図そのものは、わが国が自由と民主主義を信ずる国でありますがゆえに、そのこと自身はわが国の価値判断には合致をしております。その範囲におきまして、わが国がこれに対してしばしば好意的な態度をとったことは確かでございますけれども、同時にまた、恐らくは米国側から見るならば、わが国のそのような支援体制は十分でなかったという批評を持っておるであろうと思います。しかし、わが国としては、わが国が信じ得る範囲においてこれに対して好意的な態度をとったことは成功するに至らなかったということだと思います。
  178. 金子満広

    金子(満)委員 五月七日の衆議院の外務委員会で宮澤外務大臣は、四月三十日の記者会見で、アメリカのベトナムに対してとった行為、あの意図には邪悪なものはなかったとか、あるいはまた、共産主義の隷属のもとに置かれることは不幸であるとかいう言葉は、今日南ベトナム全土が解放され、新しい政府が全南ベトナムを統治する事態になったから、今後はそういう言葉は繰り返さない、これは言われました。ですから、そのことを私はいま申し上げるつもりはありませんけれども、先ほどの前の委員の質問に対する答弁の中で、宮澤さんは、民族の自決、そしてこの問題は世界の潮流だ、総理の発言、こういう点についても共感されているわけです。私はそうだと思うのです。そうしますと、民族の自決が世界の潮流であるにもかかわらず、それに対して——私どもは侵略と見ておりますけれども、それはさておくとして、三木さんも宮澤さんも介入したと言うのですから、世界の潮流に逆らったことだけは間違いないと思うのです。その点はいかがですか。意図は別として。
  179. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、民族自決という意思は、私は恐らく南にも北にも共通したものであったと考えるわけでございます。これはディエンビエンフー以後のことを考えただけでわかることでございますが、同じ民族の自決を考えながら、片方はその方法として自由主義、民主主義の形態を考え、他方はまた別の形態を考える。同じく民族自決でありながら、その方法論を異にいたしましたがゆえに、南北の間で争いが起こったと考えております。それに対して、おのおのの方法論を信ずるいわゆる大国が、お互いに自分の方法論を正しいと考えていわば介入をした、私はそういうことであったと考えておりますので、あたかもアメリカの介入のみが民族自決の動きにいわば抵抗をした、それに対して立ち向かったというように見えるに至りましたのは、方法論をめぐる内戦についてその両者から介入があった、その片方についてそのような見方がされたのではないか、私はそういうふうに思っております。
  180. 金子満広

    金子(満)委員 それは全然違うんですね。つまり私が聞いているのは、民族の自決というのは世界の潮流である、だから南ベトナムの人民それからベトナム全体の人民が民族の自決ということで、その旗のもとに戦ってきたことは世界周知の事実です。それから、これは宮澤さんの言葉ですけれども、その国の国民がどのような政治形態をとろうが、それは全くその国の国民の自由な意思であって、他がとやかく言うべきでない、これもそのとおりだと思う。したがって、アメリカは武力で介入したことだけは間違いないのです。キッシンジャー自身もそう自分で認めておるのですから。その意図がどうあれこうあれ、とにかく武力介入したことは誤りである、これは向こう側も言っているわけです。それがベトナムやインドシナに、そこで生活をしている国民に多大の犠牲を与えたことも事実だ、こういう点だけははっきりしているので、まずこの点を一つ申し上げ、その次にカンボジアの問題です。  一九七〇年の三月にクーデターが起こりました。そうしてロン・ノル政権が生まれた。ところがこのロン・ノル政権の国連における地位の問題が大変大きな議論になりました。国際問題になりました。当然カンボジア王国民族連合政府、それが国連の代表として席を占めるべきである、その席は回復しなければならぬということを私ども考えました。またアジアの多くの国々がそういう見地をとりました。ところが、日本政府は、一貫してそれに反対をしてロン・ノル政権を支持してきた。ところがことしの四月、ロン・ノル政権は倒されました。そしてカンボジア全土に王国民族連合政府がその統治を徹底をさせたわけです。表現は悪いけれども、日本政府は非常にあわててすぐ承認をいたしました。ところが、相手側からけっちんを食ったわけです。現在その状態がどうなっているか、御説明願いたいと思うのです。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国は、北京にございますカンボジア政府の代表部に対して、承認の意思表示をいたしたわけでございます。しかしその後今日に至りますまで、これについてカンボジア側から反応がございません。私どもとしては、承認というものは一方的行為であると考えておりますものの、外交関係再開等についての反応はございませんで、恐らく現在プノンペンにおいて、わが国はもとよりでございますけれども、どの国の外交代表も存在をしていないのではないであろうか。現在プノンペンにおける情勢は、したがいまして外部にはほとんどわからないというのが事実のように考えられます。
  182. 金子満広

    金子(満)委員 外務大臣の現状認識は非常に不正確で、大体主観的に判断をしてこうなっている  であろうとか、そうなっていないはずであるとかいうことで申されては、これは非常に困ると思うのです。そういう中でただ一つ私は指摘できると思うのは、カンボジアに対する日本政府、その中での外務省の見通しが非常に甘いだけじゃなくて、見通しがほとんどなかったということすら言えると思うのです。あの国連における代表権の回復の問題のときの反対の態度にしろ、今度の承認の問題にしろ、こういう点では非常に見通しがないということだけは指摘できると思います。  それから、同じようなことはいろいろの問題であります。たとえば南朝鮮についてもそうです。一九五三年以来、南朝鮮には、国連軍という名前の軍隊が駐留をしている、これも御承知のとおりです。この国連軍を解体すべきであるという国連での議論は、数年間続いてまいりました。これに一貫して日本政府代表は反対をしてきた。国連軍の解体決議に反対をしてきた。ただ反対をしただけじゃありません。国際的な舞台で反対の先頭に立って、これは笑い話になるぐらい、世界の舞台で反対運動を進めてきたわけです。  さてそこで、ことしの秋の国連総会でありますが、これはいままで国会の答弁でも外務大臣やられておるのですが、ことしはもう解体されるであろうということは大方の見通しになっていますが、その点はどのようにいま考えていますか。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どものこの問題についての外交努力は、仮に国連軍が解体されましたときに、朝鮮戦争の和平の枠組み、法律的な枠組み及び事実上の枠組みが、国連軍を一方の当事者としてつくられておりますので、解体の場合そのような平和機構、平和を支えますフレームワークがなくなってしまうということは、今後の朝鮮半島に大きな影響がございますので、外交努力はむしろその後者の部分に集中をすべきであろうということを国会で申し上げておりまして、そのことをお聞き取りいただく側からは、今年はそうであれば、国連軍解体の総会決議が通る可能性が高いのであろうかというふうに御解釈になっておられるように思います。また事実そのような確率はかなり高いと考えるべきではないかと思います。
  184. 金子満広

    金子(満)委員 二、三の問題を指摘したわけですけれども、こういう点から考えても、政府のアジアに対する外交政策というのは、もうきのうまでのようなやり方では通らなくなってきている。ここで政府としては外交政策について、私は、大きな転換がいやであろうが応であろうが求められている、こういうことが言えると思います。  そこで、まず朝鮮の問題からお聞きしたいと思います。いま答弁されましたが、秋の国連総会では、南朝鮮の国連軍の解体ということは大体そうなるであろう、そういう見通しが立つということを言われました。そういう場合に、去年までは大いに反対の先頭に立ってきたのですが、ことしはどんな態度をとりますか。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は昨年も私どもの主たる関心は、仮にそうなった場合の朝鮮半島における平和維持のフレームワークをどうするかということにあったわけでございますけれども、今年はいよいよ総会においてそのような公算が高いと思われますので、私どもの外交努力としては、仮にそのようなことがあった場合にも、そのような枠組みをどのように維持して平和の機構を壊さないかということに外交努力の重点を置きたい、かように考えております。
  186. 金子満広

    金子(満)委員 たとえば反対するとか賛成するとか棄権するとかいう問題も含めて、後でお聞きしたいわけですけれども、そうなりますと、国際連合の軍隊の地位に関する協定、つまり国連軍地位協定も当然これはなくなると思いますが、どうなりますか。
  187. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 この問題は、国連軍の地位に関する協定がございまして、国連軍が日本から撤退しなければならない日についての定めを置いておりまして、その日をもってこの協定が終了するということになっております。
  188. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、国連軍が解体をされるということになりますと、南朝鮮からの九十日以内に撤退をしなければならぬということが二十四条で規定をされているわけです。そうなりますと、今度はこの条約というものはそのときから発効するわけですから、そうして同時にこの二十四条では、それが発効する以前において日本が交渉するなら、期日を早めて日本から撤退させることもできる、こういうようになっているのですが、九十日間そうした場合に待つつもりですか、どうですか。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの条約について政府委員からお答えを申し上げる前に一言申し上げさせていただきますが、今年の総会において、仮に金子委員が御指摘になりましたようなことが総意になるといたしましても、国連軍を創設いたしましたものが安保理事会でございますので、議は安保理事会において決定をされなければならないという問題が、御承知のように残っております。その場合安保理事会がこの問題をどのように処理するかということは、かなり複雑な要素があるのではないだろうか。ことにこの国連軍創設の決議が行われました当時、常任理事国でありました中国は台湾によって代表されておりました。そうしてむしろ北方からこの戦争に参加をいたしました軍隊は、いわば侵略者といったような扱いを受けたわけでございます。そのことの当否はただいま議論をいたしませんが。しかるに現在中国は、御承知のように北京政府によって正統に代表され、安保理事会に代表されておるわけでございますので、二十年前のそのような経緯にかんがみて、安保理事会がこの問題をどのように処理するかということには、なおいろいろ曲折がありそうに、実は私は感じております。それを前提にいたしまして、ただいまの問題につきまして、政府委員からお答えをいたします。
  190. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 国連軍の地位に関する協定第二十四条においては「朝鮮から撤退していなければならない日の後九十日以内に日本国から撤退しなければならない。」と書いてございますから、その九十日後ということでは必ずしもないわけでございます。この国連軍協定そのものは、日本から国際連合の軍隊が撤退した日に終了いたすということが二十五条に定められておりますから、その終了の日というものは、そのときの状況に応じまして関係国間で合意されるべき、日本からの国際連合の軍隊の撤退の日に終了するということになると存じます。
  191. 金子満広

    金子(満)委員 そうすると、九十日以前でもいいということになるわけでしょう。
  192. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 協定上は、合意されれば、九十日以内の、すなわちその以前の日でよろしいわけでございます。
  193. 金子満広

    金子(満)委員 それから宮澤外務大臣、さっき質問したのですが、国連総会で、国連軍の解体に対して、人はどうあろうと、日本政府としては反対するのか賛成するのか棄権するのか、その点はどうですか。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の外交努力の主点を後の問題に置きたいということは先ほど申し上げましたので、そのあたりからおくみ取りをいただきたいと考えますけれども、実はこの問題につきましては、かなり言葉は悪うございますけれども、戦術的な考慮も払っておきませんとなりませんと思います。つまり国連総会における、国連内部における各国のいろいろな思惑をどのようにして総意に盛り込むかということについて、わが国としてもわが国なりの努力をいたす必要がございますし、またただいまからその時点までの間に、関係各国に対しましても、わが国の考えておりますことを述べまして、いろいろな外交努力をいたさなければならないという問題がございます。したがいまして、ただいまの御質問に真っすぐお答え申し上げますことは、そういうことに多少差しさわりがございますので、控えさせていただきたいと思います。
  195. 金子満広

    金子(満)委員 世界の大勢は国連軍解体の方向に向かうであろうということを、外務大臣自身、見通しとして言っているわけですね。世界の大勢がそうなるのだから、世界の大勢を見るということは、その流れが私は正しい流れだと思うのです。それに逆らうようなことはとれないはずだと思うのですね。ですから、言えないなら言えないで、これはいたし方ないけれども、少なくともこの問題について、いまこういう方向で努力する、こういう点でもう一歩突っ込んで考えられないかどうか、その点をもう一度伺いたいと思うのです。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今年の八月ごろには、いわゆる非同盟諸国がリマにおいてこの問題につきまして会議をいたすであろうというふうに考えております。その帰趨も注意深く見る必要がございますが、ただいまの準備状況から申しますと、その段階でいわゆる国連総会におけるいわば票読みでございますが、かなりはっきりしてまいるのではないかと考えておりまして、私どもとしてはそういう事態を頭に置きながら、この問題の直接関係の当事国であります韓国あるいは米国等々に対して、わが国の考えておりますことを申し述べ、そうしてそのような事態にいかに対処するかということは、わが国の意見も申し述べ、そうして意見の調整等々をあらかじめしておく必要があるであろう、そういうような外交努力をしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  197. 金子満広

    金子(満)委員 こういうことは、よその国と相談しなくとも、自主外交なら自分で決められるのです。しかも世界の大勢はこうなっているというのですから、韓国に相談する必要もなし、アメリカに相談する必要もない。相談すればどういう答えが出てくるかは、もうはっきりしているのです。  そこで宮澤さん、本当に日本外交の自主性をここで確立するかどうかの一つのポイントにはなりますよ。ですから、この間の衆参両院の外務委員会その他で発言をされているのですが、その大勢に逆らうようなことはしないというのをあなたは答えているわけですよ。逆らうようなことをしないんだったら、ここで日本政府として、いま物を早く言った方が、これは世界の大勢、大いに結構だという答えを出すことにもなるわけですから、その点で、方法は賛成するか反対するか棄権するか、それしかないのです、よもや欠席はしないと思うので。その点をもう一度念を押して聞いておきたいと思います。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の立場を関係国に申し述べておりますのは、実は逆らうためではございませんで、先ほど申しましたように、朝鮮の停戦、平和取り決めの枠組みが一方の当事者を国連軍としておりますために、それが単純に解体されてしまいますと、朝鮮半島の平和を支えております法律的な枠組み、板門店等々において行われております会談の枠組み、あるいは現実に会談を行っておりますところのそのような仕組みというものが、単純になくなってしまうことになります。そうなれば、それは朝鮮半島の平和維持に決していい結果をもたらしませんので、その辺についてわが国の考えておりますことを実はやはり関係国に申しておく必要がある。外交努力の主点はそこに置かれておるわけでございます。
  199. 金子満広

    金子(満)委員 これは私はうんと重大だと思うのです。いいですか、国連軍が解体をされるということは、朝鮮から国連軍が撤退するということですよ。そうしたときに、その後をどうするかは朝鮮の人民自身が決めることだ。これはあなたが先ほども言ったように、南ベトナム、そしてまたカンボジアで、どこであれ、その国の政治形態がどうなろうが、それはその国の人民が決めることであって、他から干渉はできない。朝鮮半島そのものの中でどういう事態が起ころうが、日本がそうあっては困るからといっていろいろあれこれ言うことは、それ自身介入であり、干渉じゃないですか。私はいまの外務大臣の答弁というのは非常に重要な問題だと思うのです。朝鮮が何と言うかは朝鮮が決めるんだから。その点はどうですか。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、総会の決議即解体ということにはまいりませんで、安保理事会という問題が入りますことは申し上げたとおりでございます。ただいまの金子委員お尋ねでございますが、しかしそうはなかなか私はまいらないと思いますのは、昭和二十六年のあの大きな戦争が、ともかくこのような国連軍を一方の当事者とする停戦、平和の取り決めによって、今日まで支えられてきておるわけでございますから、近接しておりますわが国といたしましては、そのような平和の枠組みが全部なくなってしまってそれでいいんだというわけにはまいらないと思います。もとより、その後をどのようにいたしますかは、これは関係国間で、主としてそれが主体となって決めるべきことではございましょうけれども、国連の一員としてのわが国あるいは安保理事会の一員としてのわが国として、そのような法律上の枠組みが全部なくなってしまう、いわば法律的には和平という状態がなくなるかのごとき状態になるわけでございますから、それをそのままほうっておいていいというわけにはまいらない。もとより一番近い関係を有します南北両方の意思を無視して何かまた新しいことをするということはすべきでもありませんし、できることでもございませんでしょうが、さりとて、全くこれをこの枠組みがなくなったその状態のままで放置していいということには、これはわが国としてはまいらないというふうに思います。
  201. 金子満広

    金子(満)委員 いいですか、国連軍が解体をするというのは世界の流れ潮流になってきている。これはもう間違いないのです。解体をするのはなぜか。いる必要がないからだ。あっちこっちが侵略だどうだ、そういうようなことはもう言う必要がないし、そういう事態もない。だから解体をしろと言うのでしょう。いまの宮澤外務大臣のお話を聞くと、解体をされては困るという考え方が頭の中にあるんだと私は思うのです。私は、そうじゃなくて、解体をされることは既定の事実だ。安保理事会を何ぼ言ったって、それは大勢には勝てないのですよ。そんなところでしがみついていたら、みっともない姿が世界にさらけ出される話だけだ。そういう姿だけなんですよ。だから私は、ここで国連軍が解体をされれば、当然いま日本にすぐ直接関係のあるのは、国連軍に対する地位協定は失効する、効力を失う、こういうことはあたりまえなんですね。  それからもう一つは、今度は休戦協定がどうなるかということです。いいですか。休戦協定は、日本は判を押しているんじゃないのですよ。日本は何の権限も義務も持っていないのです。その休戦協定は三者の協定になっているでしょう。その三者の協定というものは、解体をされたら一方の当事者である国連軍の司令官は出ることができないのです、なくなるのですから。だとしたら、休戦協定そのものも効力を失う、失効するということになるでしょう。その点はどうですか。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますのはまさにその点でございまして、停戦協定がございまして、停戦協定の違反についてしょっちゅうともかく議論がございますけれども、これは停戦協定がございますからこそ、何とか話がおさまっておるわけであって、その停戦協定そのものがなくなってしまったということになりますれば、これはむずかしい問題が起こりかねない。わが国としてこうしたらよかろうという考えが全くないわけではございませんけれども、とにかく停戦協定というものがございませんと、国境で紛争が起こりました場合に、これを処理する方法がない、物差しがないということになっては、これはわが国としても無関心たり得ないと考えるわけでございます。
  203. 金子満広

    金子(満)委員 それこそ朝鮮人民自身に任せるべきであるというのが、これは大原則になるわけです。そこにいろいろのことをやっていくのは、これは後で質問いたしますけれども、六九年の韓国条項というものが作用するのですよ。  それはそれとして、もう一つ、いずれにしても国連軍が解体をするということは、これは時間的な問題で言えば、そう長い先のことでないことだけははっきりしていると思う。そういう中で、国連軍が解体をする、そうして休戦協定が実際の効果を失ってくるということになりますと、朝鮮に関する国連の決議がいっぱいあるわけですよ。たくさんあります。たとえば三十八度線突破決議と私どもは呼んでいるわけですけれども、そういう中で、たとえば「全朝鮮にわたって安定した状態を確保するためにすべての適当な措置をとること。」というのが国連加盟国全体に要請されているのです。これは朝鮮戦争が始まってからですね。これは毎回毎回追認をし、また新しいものを加えているわけです。そうしますと、先ほど外務大臣言われましたが、侵略というようなことというのも、ちゃんとこれは侵略という言葉で北を呼んでいるわけです。侵略でないからこそ解体をするわけですから、そうしたことが誤りだったということもはっきりするわけで、したがって、朝鮮問題に関して朝鮮民主主義人民共和国を侵略者、敵視した朝鮮条項というものも効力を失うと私は考えるのですが、その点はどうなりますか。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、解体に関します総会の決議がどのような趣旨のもとになされるかということに関係をいたすと私は思います。また、解体を実際に決定するといたしますれば、安保理事会がどのような理由のもとに、どのような経緯を経て決定するかにもよることであると思います。それはただいまお尋ねの答えというものは、それにかなりかかわると思いますけれども、大変大まかに申しまして、二十数年前にあった事態というものが、時の経過とともに、かれこれ議論をし紛糾をさせるということそのものが、もう余り意味がないのではないかという認識がやはり基本にありまして、こういう動きになるのであろうということは、これは申し上げることができると思います。ただ、非常に具体的にこの決議等々がどのような影響を受けるかということは、解体を議決いたしますところの総会決議、あるいは解体を具体化いたしますところの安保理事会の決定等々の理由、経緯等によって判断をいたさなければならないと思います。
  205. 金子満広

    金子(満)委員 いろいろそういう決議の内容にかかわるということも、確かにそうでしょう。端的にひとつお伺いしておきたいのですが、現在日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国が侵略者だというこの国連決議を、そのとおりだといま判断をして、そのように認識していますか。どうですか。
  206. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 厳密に法律的な意味合いにおいてはともかく、ただいまそういうことをあれこれ申しましても、余り政治的な意味は持ち得ないのではないかというふうに思っております。
  207. 金子満広

    金子(満)委員 外務大臣、それは本当に答弁を逃げているわけですが、たとえば国連の決議の中には、これは五〇年十二月一日でありますけれども、「朝鮮の救済及び復興」ということで、経済の問題についての誓約の決議がありますよ。この中では、「北鮮軍による侵略及び朝鮮における平和の回復に努めている国際連合に対する北鮮軍の戦闘行為による侵略が」云々と、こう書いてあるわけで、侵略という規定をしているのです。ところが、いま国際連合の総会では、国連軍の解体ということが国際的潮流になっている。こういう中で、非政治的とか政治的とかではなくて、現状をどう見ているかということを私は聞いているんです。ここに規定にあるように、侵略者であるとか、侵略軍であるとか、こういうことをいまでもあなたは考えているかどうかということなんです。いなければいない、いるならいる、どっちか答えてください。
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国連総会の幾つかの決議、あるいは安保理事会の決議が現実にございますので、わが国がそれについて、わが国は法律的に異存があると申しましたのでは、これはちょっと法律の問題としては言いづらいことでございますから、それで先ほどのようなお答えをいたしたわけでございます。
  209. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、侵略者であるとかないとかいうことは、いま答弁できないということですか。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 長い間の時間の経緯によりまして、国連軍の解体ということが総会でもかなりの多数を得るようになったという事実から見ますと、やはりそこは、時の流れによって問題がかなり変わって理解をされるに至ったのではないかというふうに思っております。
  211. 金子満広

    金子(満)委員 人が変わったんじゃなくて宮澤さんが、侵略者と、古い決議にどうあろうが何しようが、これはもう歴史の経過の中に残っている文書ですから、現状認識で、そういう侵略者であるとかないとかということについて答えられませんというなら、それはいいですよ。それはそれとして、侵略者であるという解釈もしているんだなという理解になりますよ。どうですか。これは今後のアジア外交を進める上では大事なことだと思うんです。その点で、決議にあるとかないとか、拘束されるとかされないとかということでなくて、現状をどう見るか、侵略者であるのかないのか、ここの点だけは答えられるでしょう。どうです。
  212. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これにつきましては、先ほどから何度も御指摘の休戦協定によって、その後二十何年、事態は平静化しておるわけでございますから、現在侵略という事実がある、行われているというようなふうには、これは考えることは事実に反すると私は思います。
  213. 金子満広

    金子(満)委員 条約局長にちょっとお尋ねしたいのですが、休戦協定が失効した場合に、次に来る問題として、三十八度線突破決議と言いましたが、国際連合に加盟している諸国は朝鮮全体に対して自由な行動がとれるということになっておったんですね。ところが休戦協定があるために、これにふたがされておったわけです。このふたがとれると、こっちが生きていれば何でもできることになってしまうんですね。この辺で、名前はいいですけれども、三十八度線突破決議と言うんですが、朝鮮の独立問題からずっと入ってきている第五回国連総会決議以後の決議というものは、その項に関しては消滅をする、効力を失う、こういうことになろうと思うのですが、どうですか。
  214. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 仮に国連軍が解体された場合に、休戦協定の法律的な効力が直ちに消滅するかどうか、これについては私は問題があると思います。すなわち、協定の締結当事者の一方が消滅した場合には、その協定は終了するというのが国際法上の原則でございますけれども、国際連合の軍隊の司令官というその地位がなくなったために、その締結された協定の効力そのものが直ちに効力を失うということではないであろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、もう一つ、仮定の問題といたしまして、協定が失効した場合、終了した場合に、いまの御質問の、三十八度線を突破して行動してもよろしいという国連の決議の効力がどうなるかという問題でございますけれども、これは御承知のごとく、三十八度線を越えて侵略が行われるということを想定して、その侵略を排除するために行動してもよろしいというのが国際連合の決議の根本であろうと私は思います。その侵略ということがなくなるわけでございますから、その線を越えて行動していいということにはならないと思うわけでございます。
  215. 金子満広

    金子(満)委員 その項はなくなるということでございましょう。
  216. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 実体的になくなると考えて差し支えないと思います。
  217. 金子満広

    金子(満)委員 それから、いろいろ質問しようと思ったのですが、朝鮮でもう一つ、前の委員の質問の中で外務大臣答えましたが、六九年の日米共同声明、そのときの元総理の佐藤さんのプレスクラブでの講演、この問題について沖繩国会のときに、佐藤総理自身から修正が加えられた、その修正は公になっている、こういうふうに言われました。ところが、この韓国条項とそれに基づく佐藤発言というのは、単に思いつきの演説ではないのですね。これは外務省の記録にもあるわけでありますけれども、佐藤総理が当時講演をしたその一番大事なところは、実は同じ日の佐藤総理の前に、ジョンソン国務次官補が次のように演説しているんですね。「総理は、もし韓国に対する武力攻撃が発生すれば日本の安全は重大な影響を受けるだろうと述べられるはずである。」つまり「はずである。」ということは、事前に了解し打ち合わせをしているということです。「続いて総理は」−一次からが話したことです。「「従って、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」とも述べる。」と書いてある。つまり、佐藤総理はそのように述べますよというのを、事前にジョンソン国務次官補が言っているわけです。ですから、国会の答弁で修正をしたと解釈をすると言うのだったら、その修正した内容というのをアメリカ政府の側に伝えてありますか。どうですか。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど申し上げました、佐藤、当時の総理大臣でございますが、その言明は幾つか例がございますようですが、はっきりしております一つ二つを申し上げますと、昭和四十六年の十一月、衆議院の沖繩返還協定特別委員会におきまして、一つは曽祢益議員に対し、一つ不破哲三議員に対してなされておるものでございます。したがって、これは公の席上におきまする総理大臣の言明でございますので、当然、米側においても知っておると考えるべきものと存じます。
  219. 金子満広

    金子(満)委員 佐藤元総理の発言というのが、そのもとは日本の国会の中における発言ではないのですね。これはアメリカとの共同声明で、韓国条項を双方が確認をした。その確認の内容についても、両者が打ち合わせをして演説をしておるわけです。その話の内容は全部一致しているのです。ですから、アメリカも、日本の国会で佐藤総理が当時言ったから知っているはずですということであっては、共同声明と同時に行った日米両側の講演の内容というものをどう解釈するのだ。アメリカ側も何とも言ってこないから、それで結構ですという立場をとっているだろうと考えるのか。この問題について、もう五年もたっているのですから、一度ぐらいお話しになったことがあるのかどうなのか、この点を伺いたいと思います。
  220. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今日におきます政府方針は、本件につきまして、今朝総理大臣が言明されましたところから明らかであると存じます。  なお、昭和四十六年当時における佐藤総理大臣のこのような衆議院における発言に対しまして、別段アメリカ側から特段の意思表示に接しておらない由でございます。
  221. 金子満広

    金子(満)委員 ついせんだってまでは、宮澤さんは答弁で、この韓国条項の現段階における確認について、するかしないかということについてはイエスともノーとも言えない、という意味の答弁をされているのです。いいですか。イエスともノーともいま言えないということは、その瞬間まで、アメリカとこの問題については話し合いは全然してないということを客観的に裏書きしておると私は思うのです。そうしますと、アメリカが了解しているとか知っているとか言うのは、これは詭弁になるのです。いいですか。  それは、いまの朝鮮の問題について、緊張が強化しているとか、また強化するであろうとか、いや、そうではなくて緩和の方向だとか、いろいろ議論はあります。議論はあるけれども、かつてそういうことが両首脳によって内容まで確認をされていて、そうして国会でそのように答弁をされたから、公に修正されたものと思うというのは、ここ二、三日の間の外務省の考え方なんです。残念だけれどもそうなんです。ですから、本当に修正したのだったら、アメリカにそれを通告したらどうです。共同声明なんですから、問題は。単に日本の国会で発言したことが、後になって間違ったから少し修正したというのとわけが違うのです。お互いに確認をしていることなんだから。国会で言ったからアメリカもそれで了解しているだろうとか、するだろうとかいうのは、これは外交としては、全然素人どころの話じゃなくて、日本の国民に責任を持つという見地から見たら、とんでもないことだと思うのです。この問題については、いま通告していないことははっきりしているのです。ですから、話し合ったこともないことも明白なんですから、アメリカ政府に対して、あの韓国条項については、私の方はあのときの解釈は間違っておったから、いまはこのように考えて修正をしたんだということを通告しなさい。それをやる意思があるかどうか、ここのところだけお伺いしたいと思います。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 金子委員がよく御承知のとおり、この部分は、共同声明におけるわが国の立場を修正したものではございません。プレスクラブにおける総理大臣の発言について後ほど修正があったということでございまして、別段、これについてアメリカ政府にこれを通告する必要は、私はなかろう。もとよりアメリカ政府は、公における議論でございますから、これを知っておるであろうということは、これは想像にかたくございませんけれども、ブレスクラブにおける総理大臣の演説の内容の一部を、二年たちまして修正したということにつきましては、政府間でこれを通告するといったような種類の問題ではないと存じます。
  223. 金子満広

    金子(満)委員 それでは外務大臣、共同声明の中にある韓国条項について、当時、佐藤総理がその解釈を自分で言ったのだ、だから共同声明そのものの修正ではない、そういう解釈ですね。ところが、佐藤総理が解釈したことは、先ほども申し上げたとおり、ジョンソン国務次官補が佐藤総理の前に演説をして、佐藤総理はこのように演説するはずでありますと、自分でそれを確認しているわけです。ですから、その内容も通じているので、もし修正でないということになると、これはジョンソン国務次官補というのは相当おめでたい人になるわけです。そうでしょう。だから、そういう点はそれじゃどうしますか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、総理大臣が演説の内容を事前に米側に通報され、それについて、米側の国務次官補でございますか、がブリーフィングをしたものと考えられます。また、事実そのとおり佐藤総理は演説をされたわけでございますが、そのことは、わが国の米側に対する約束、コミットメントといったような性格を持つものでないことは、これはもとよりだと思います。
  225. 金子満広

    金子(満)委員 これはジョンソン国務次官補は大変おめでたい結果になっているわけですね。事前に出したから、相手が肯定してそれを述べるはずですということで、これはみんな約束になっているのです。だから、そういうことで、いまの宮澤さんの解釈でいきますと、六九年の共同声明の立場は、これは変わらないということになるのです。だから、いろいろごたごた言うけれども、結局は、あのときの確認事項に基づいてやります、イエスもノーも言えないというのは宮澤さんの最初の発言で、その後修正をしたのであります、事実上言葉で、というのが出てきているけれども、それは修飾語であって、実際には、いま六九年のあの共同声明の線でいきますということを、これは言わざるを得ないし、外務省もそのように考えているだろう、私はこういうように思います。  そこで、これも外務大臣に、そういう上でお聞きするのですが、いま朝鮮は緊張強化の方向に向かっているのか、それとも別な方向に向かっているのか、その点の認識について伺いたいと思います。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 二十二年前の休戦協定以来、朝鮮半島の情勢はかなり緩和をしてまいりまして、  一九七二年には、いわゆる南北共同声明まで行ったわけでございます。しかし、その後、御承知のように一進一退がございました。最近における情勢は、米国のインドシナ半島からの撤退、あるいは北鮮の金日成主席の外国訪問等々の事実から、やはり一進一退と申しますか、必ずしも、かつてのように、南北共同声明が行われた当時のような、いわゆる和平気分の高い状態でないであろうということは想像にかたくございません。しかし、それを緊張と考えるかどうかということは、これは最終的にはやはり当事者側の主観的な判断の問題でございますので、そこまでは、私の判断は申し上げるのを差し控えるべきだと思います。
  227. 金子満広

    金子(満)委員 当事者の考えを聞いているのじゃなくて、日本政府考え方を聞いているわけですけれども。  そこで、坂田防衛庁長官、あなたにお聞きしたいのですが、五月三十一日にゲイラー・アメリカ太平洋軍司令官とお会いになった。このときに司令官の方は、東南アジア防衛に対する米国の約束は何ら変わらない、ベトナム後、朝鮮半島で緊張が高まることも述べているわけですね。高まることも考えられるということですからね。こういうことを言っているし、それからまた、南朝鮮、韓国の国土統一委員長は四月二十一日に、北朝鮮による南への侵略の脅威はもはや仮想的なものでも理論上のものでもなくなった、そのように強調しているわけですね。そしてそれは現実的で差し迫った脅威に見えるという警告をしている。こういう見地に同意できますか。
  228. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 朝鮮半島におきましては、韓国と北朝鮮が強力な軍隊を対峙させておる中で、現実に越境事件等の小規模な衝突が続発しておるということは承知をいたしております。しかし、一方におきまして、米国が韓国防衛の意思を明確にしておりますし、他方、北朝鮮がそれぞれ友好協力、相互援助条約を結んでおるソ、中両国が厳しい対立関係にあるという状況のもとでは、米、ソ、中三国はいずれもこの地域における急激な現状変更を望んでいないと考えられますので、韓国及び北朝鮮における限定的な武力紛争が生起する可能性は否定できないものの、大規模な武力紛争への発展は抑制されておるものと考えておる次第でございます。
  229. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、武力衝突が起こるということは否定できないけれども、それを抑える力もあるということ。そうすると、緊張が強化することもあるが、緩和することもある。これは実際上峰何か正確に言ったようだけれども、さっぱり要を得ない。これはあたりまえだと思うのですね、いずれかになるに決まっているのですから。しかし現状はどう認識しているか。これは、対応、つまりどういう外交を打ち出すかという、その基本にかかわることだ。それをあなたが、今度防衛分担という問題でもいろいろ考えていらっしゃるわけですけれども、そのこととも関連してくるわけですね。  先ほど、前の委員の質問で三木総理は、武力衝突があるとは考えない、こういうふうに言いました。そういう見方がかなりあることも事実ですよ。ところが防衛庁長官の方は、武力衝突が起こる可能性もあるようだけれども抑える力もあるようだ。宮澤さんも同じようなことを言うわけですね。それではどんな対応をするのですかというと、これは何もないわけです。ところが三木総理は、日本は有事のことなんか考えるんじゃなくて、そういう事態が起きないように外交的な努力を払うんですと言っているわけです。総理自身が外交的な努力を払うのだから、そうするとどんな態度で臨むのですか。これは外務大臣の方に伺いたい。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本的に申しまして、わが国が緊張を激化させるような態度に出ますことは極力慎しむべきであって、わが国で出し得る限りのことをいたしまして、緊張を緩和する努力をいたすべきだと思っております。
  231. 金子満広

    金子(満)委員 それは、日本から緊張を強化させたら、宮澤さん、これは大問題ですよ。私が言っているのはそうじゃなくて、いま朝鮮半島で緊張が強化する方向にあるかないかということを伺っているわけです。  それはそれとしておきますが、こういう中で、五月の三十日にシュレジンジャー国防長官は、ヨーロッパの戦略問題に触れて、必要な場合は核兵器を先制使用することもあり得ると言ったことは御存じだと思うのです。同じシュレジンジャーは五月一日のときには、われわれがアジアに核兵器を展開するもろもろの目的に現時点では変更を考えていない、これを言っているのです。それから二十六日には、ベトナム戦争から得た教訓の一つとして、相手の侵入に対抗しだらだらと戦争に巻き込まれるより、むしろ相手の戦力の心臓部をたたくということが必要である、この方向はたとえば朝鮮半島に適用される、こういうふうに言っているわけです。これは間違いですか。こういう見地を宮澤さんおとりになりますか。これは間違っていると思いますか。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御指摘の問題について、金子委員は誤解をなすっていらっしゃらないことは、ただいまの御言明でも明らかですが、多少世間に誤解がありますのは、その心臓部をたたく云々のときに、核兵器を用いることがあるということを国防長官が言ったというふうに信じられている向きがありまして、それはただいま御指摘のように、そのようなことは国防長官は言っておりません。そしてその最後の部分は、ベトナム戦争に非常に長いこと時間がかかって米国民の支持を失うに至った、あのような軍事作戦というのは今後やはりとるべきでないということを言いますために、先ほどのようなことを申したようでございます。  それで、忌憚なく私に批評せよとおっしゃいますならば、この場合、アメリカとしては、ともかくこの際、アメリカの韓国に対する防衛上の約束を北側が仮に疑い、その結果ある誤算をして不測の事態が起こってはいけないということを強調いたしたいために、そのようなことを申したようでございます。目的とするところはそういうところであると思いますけれども、だんだん時間もたってまいりまして、そのような一触即発的なベトナム、インドシナ撤退後の空気は緩和されてきておるわけでございますから、言わでものことを言わなくてもいいのではないかという、率直に申せば私はそういう感想を持っております。
  233. 金子満広

    金子(満)委員 核兵器の問題については、先ほど指摘したとおり、心臓部をたたくというのに核兵器をそのものずばり使うという表現を使っておりません。これは私も誤解はしていません。ただ、アジアにおける核兵器の問題については、つまりシュレジンジャー国防長官は、われわれがアジアに核兵器を展開するもろもろの目的に現時点では変更を考えていないと言っているのです。つまり、アジアに核兵器があることはもうだれでも知っているわけですから、それをどうするかということについては何も変更しません、そしてその後に、心臓部をたたく、朝鮮の緊張ですと、こうなっているわけですから、それは誤解ではなくて、そう見るのが順当だと思いますが、さて、そういう中で、シュレジンジャー国防長官のいま言ったことについては、要約して言えば、これは若干の行き過ぎがあったという表現になるのですか。実際よりオーバーに物を言っているというように大臣は考えているのですか。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 再度申し上げますように、金子委員も御同意のとおり、その際核兵器を使うということは言っていないわけでありますが、また現実に、そのようなときに核兵器を使うということになれば、これはもう世界の指弾を浴びることは明らかでございましょうと思います。その言明そのものにつきましては、北側に誤算を起こさせないように、不測の事態を招かぬようにという意図であったろうことは、発言の時期等々から考えますけれども、いまとなりまして、余りそのようなことは言わでものことであるというふうに、私は忌憚なく申せば、思っております。
  235. 金子満広

    金子(満)委員 とにかくそういう事態で、私は、朝鮮の問題というのが日本外交の上で大きな試練にいま立たされている、これだけは間違いないと思うのです。そして、あなた任せとか、人の顔を見ながら、右や左を見ながら態度を決めていこうということでは、自主的な日本外交の展開はできない、こういうことになります。特に、アメリカ側の意向を受けてその範囲でやるというようなことになるなら、これは重大な結果を招くということは、ベトナム問題にしろ、カンボジア問題にしろ、朝鮮問題にしろ、非常に明白だと思うのです。こういう点で、そのことを指摘しながら、次の問題に移りたいと思います。  日中平和友好条約の締結の問題です。このことについては、午前中も政府側から答弁がありましたから、細かいことば省略をいたしますが、いま早く調印できないでいる理由はどういう問題ですか。この点、外務大臣に伺いたいと思います。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 けさほど総理大臣から御説明がありましたように、わが国としては、かつて出されました日中国交正常化の共同声明から後退することなく、できるだけ早く平和友好条約を締結いたしたいという総理大臣自身の意思を先方に伝えておりまして、先方もそれについて恐らく慎重に検討しておることであろうと思います。両者の間に若干今日まで意見を異にしておった点がございます。これについては報道はいろいろになされておるわけでございますが、条約が交渉中でございますので、公の席で私からそれが何であるかと申しますことは、あるいは差しさわりがあろうかと思います。しかし、一般に報道されておりますことは、これは御承知のとおりであろうと思います。
  237. 金子満広

    金子(満)委員 何も言えないということになれば、あるいはまた、交渉中だからいま答弁するのが不適当だということになれば、これは質問は本当に全然成立しないのですよ。  それでは、私は方向を変えて、次のように問いただしたいと思うのです。とにかくマスコミでも、またわれわれがいろいろ想像してみても、覇権問題というのはいま非常に大きな問題になっていると思うのです。ですから、日中条約ということにかかわりなく、覇権問題、つまり覇権とか覇権行為とか覇権主義とか、その覇権ということについて、余り聞きなれない日本語であったわけですから、外務大臣はその内容をどのように考えているか。これは一般的に聞くのです。
  238. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点につきましては、何人も有権的な定義を下し得ないわけでございますけれども、一般に、一国、仮にこの場合、国と申し上げておきますが、国の場合でありますと、一国が自己の軍事的、政治的あるいはその他の優位を確立することによって他の国に圧迫を加えるような行為というふうに、一般的には考えられておるように存じます。しかし、これは使われたどの場合ということでまた意味合いが異なってくると思いますが、一般的な意味は何かとおっしゃれば、私はそのように考えております。
  239. 金子満広

    金子(満)委員 一般的にでなくて、私は宮澤外務大臣の見解を聞いておるのです。よろしいですか。いまのことを申し上げますと、ある国が軍事的、政治的な優位を保って他の国に圧迫を加える行為を覇権といいます、宮澤さんもこういう考えですかというのです。いいですね。——ではよろしければ……。  そこで、圧迫を加える行為というのは、どんな行為がありますか。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはどういう意味とおまえは思うかというお尋ねでございますから、そのような意味に一般的に理解をしておりますと申し上げるわけであって、そのような行為をどのように判定し、だれが判定するかということになりますと、それについて別段、私は定義がそこまでなされておるとは思いません。
  241. 金子満広

    金子(満)委員 他国に圧迫を加える行為ということは、これはもう国際法あるいはその他の幾つかの事例でもはっきりしているのですが、相手の国の意思に反して他の国の内政に干渉したり介入することも覇権ということになりますか。それからまた、軍事的な侵略を行うことはあたりまえですが、支配をするということ、抑圧をする、これはみんな覇権の内容になりますか。
  242. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 覇権という言葉は、主に中国が各国といろいろな条約あるいは声明等を出しますときに使われておるように存じますが、その場合における意味は、やはり圧迫を加える当事者が圧迫を加えるに足るだけの大国的な軍事力、政治力あるいは経済力等々を持っている場合に使われることが多いように存じます。
  243. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、一つお伺いしますが、一番最初の私の質問のときに、アメリカが——政府側の答弁はいろいろ内容はありますよ。ありますけれども、アメリカがベトナムに介入したということは認めたわけですよ。そうしますと、その限りではこれは、アメリカはベトナムに覇権を行使したということにならないですか。
  244. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは念のため申し上げますが、私がその言葉を使ってお答えを始めたわけではございませんので、その言葉によって一つ一つの事態を判断しろと言われましても、ちょっと私には判断をいたしかねます。
  245. 金子満広

    金子(満)委員 だって、これはおかしな話になるんですよ。だんだんつじつまが合わなくなってくるのです。いいですか。日中共同声明の線から後退してはならない、これは三木総理、宮澤外相、それから井出官房長官、これが五月の幾日ですか、相談をされて、四項目の指示をされた。これは午前中出ています。その中に、共同声明の諸原則は堅持されるべきで、後退は許されない。これは当然小川大使にも伝えてある。その方向で努力しなさいと言っている。ところが、その責任ある立場にいる宮澤外務大臣は、覇権というものについてはどういうものかわからないと言うのです。わからないものを努力しろ、努力しろ。言われる方はこんな迷惑なことはないと思うのです。言う以上、原則ということになっているのだから、それをどのように解釈しているか。ですから、交渉でどうだじゃないのですよ。覇権というものをどのようにあなたは認識し、解釈をしているかということを聞いているわけです。その点はどうです。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この言葉は、日中共同声明にも使われておりますので、それでおまえはどのように解釈するかと言われますので、私は先ほどのように解釈をしておりますと申し上げたのでございますけれども、非常に法律的な意味で厳密に定義をされたことのない言葉でございますから、たとえばインドシナ半島に起こった事態、これがそれに該当するかしないかというような御質問になりますと、一定した法律上の定義があるわけでございませんので、この言葉によって、その範疇に入るか入らないかを個々の事態について判断せよと言われますと、それは私にはよう判断しかねると申し上げておるわけでございます。
  247. 金子満広

    金子(満)委員 いいですか、定義したことはないと言うのだけれども、日中共同声明には入っているのです、定義しようがしまいが。入っていることは現実で、これに基づいてやりなさいという総理の言葉もあるわけです。後退できないというんだから。だから、定義したことはないじゃなくて、いま日本政府として、特に担当の外務大臣としてこれは人ごとじゃないのです。どこかのだれかがどうしてやろうということを言っているのじゃないのです。いまや動いているのだから。だから、私は覇権というものについてはこう解釈する——もし定義かないのだったら、日本政府は定義をつくったらいいじゃないですか、私はこう解釈しているというふうに。その点は宮澤さん、どうですか。
  248. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでございますがゆえに、冒頭に申しましたように、一般論といたしましては、一国が軍事、政治等々の力によって自己の優位を確立し、他国に圧迫を加えること、しかもその場合、力関係でございますから、覇権をふるうという批判を受ける国そのものは、それだけの力を持った大国ということに多くの場合用いられると思います、そう私は考えておりますと申し上げておるわけでございます。
  249. 金子満広

    金子(満)委員 いいですか、だんだんおかしくなってくるのですがね。覇権という問題について、少なくとも外務大臣は、片方では定義したことがないと言いながら、いまは軍事的、政治的な優位を確保し、他の国に圧迫を加える行為を覇権と言います、それは多くの場合大国でありますということを言われたわけです。多くの場合だから、例外はあるかもしれません。しかし、その大国ということになってくると、もう国の名前は挙げなくても、代名詞になるわけです。  そこで、この問題で、定義も原則もないまま、いろいろ議論だけはこう沸騰しているのですが、これは総理、覇権というものについて総理はどのように考えているか。あなたは指示をした最高責任者ですから、その点をお伺いしたいと思うのです。
  250. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日中共同声明というものも、あれによって国交が正常化されたわけですから、重みを持った文書であることは間違いない。その日中共同声明の第六の第一項に平和の諸原則が掲げられておる。平和五原則、それから紛争に対して武力不行使の国連の原則、覇権主義反対の原則、これはやはり平和諸原則として私はとらえておるわけで、ここで覇権とは何ぞや、何は何ぞやと言って定義を申し上げる考えはない。平和原則の一つであるそういうふうに解釈しております。
  251. 金子満広

    金子(満)委員 そこで、たとえば国連憲章の中でも平和という問題をうたってありますね。それからまた、いま三木総理は平和原則とおっしゃいました。これは平和五原則と解釈してもいいのですか。
  252. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 平和諸原則と言ったわけで、平和五原則もあれば、いま言ったような武力不行使の原則もあれば、覇権主義反対の原則もある。こういうものを私は平和諸原則、こう言っておる。
  253. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、覇権主議という場合に定義がない、原則がない。確かにそうだと私は思うのです。日本政府もこの点については定まった意見を持っていないと私は思うのです。その点は総理、どうですか。覇権ということについて、日本政府はその定義については定まった意見を持っていない、こう解釈してよろしいですか。
  254. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 日本政府は、覇権主義反対は平和原則の一つだと考えておるということです。
  255. 金子満広

    金子(満)委員 一般的に平和諸原則と言っても、内容はまちまちになるのです。宮澤さんは、これは自分の意見かどうか知りませんけれども、先ほど一応の見解は述べました。軍事的、政治的な優位を確保し、他の国に圧迫を加える行為であり、多くの場合それは大国である、これを言いました。三木さん、この立場に賛成ですか。
  256. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、平和諸原則とか武力不行使とか、覇権主義反対というのを、平和の一つのプリンシプルとしてとらえておるということで、これを一々私がここで解明して、こういう理由だということはここで私は申し上げなくても、平和の原則の一つである、覇権主義反対というものはそういうふうにとらえておる。
  257. 金子満広

    金子(満)委員 それでは答えにならないのです。それでは、私は端的にお伺いしますが、宮澤外務大臣が先ほどおっしゃったことについて、総理はこれは賛成ですか、反対ですか。
  258. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 賛成、反対——宮澤外務大臣は……。
  259. 金子満広

    金子(満)委員 もう一度言いますよ。いいですか。軍事的、政治的な優位を確保し、他の国に圧迫を加える行為を言う、多くの場合それば大国である、この見地に賛成かどうか。
  260. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、賛成、反対というよりも、総理大臣としては、覇権主義反対というものは今日における平和原則の一つである、こういうふうに解釈をしておるということでございます。
  261. 金子満広

    金子(満)委員 この問題は、私は、非常に大事な問題で、言葉のあやや、何かやりとりで済む問題ではない。これは日本の政治にとっても、アジアの平和にとっても非常に重大な内容を持っているものです。そしていまの総理の答弁と宮澤外務大臣の答弁が違うことははっきりしているのです。ですから、これは現に交渉も進み、国民の中でもいろいろの疑惑も持ち、いろいろの議論が交わされているのですから、私は、中国との交渉について、小川大使にこれを指示した当事者の中で意見が違うのだから、これは政府として、覇権というものについては、解釈なんですから、いいですか、われわれは、日本政府としてはこう考えておるという内容を明確にしないと、これはとんだことになると思うのですよ。宮澤外務大臣が何回も言ったことは暗記するぐらい私も覚えてしまいましたり。(「一般論として聞かれるから答えた」と呼ぶ者あり)一般論であったって、これが適用するのですから、一般論とか具体論とか、そういう問題じゃないのです。こういう点を政府として、覇権問題はこういうことだというのをひとつ出してもらいたいと思うのです。どうですか。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはこのように申し上げればいいのではないかと思います。  覇権という言葉は日中共同声明に使われております。この声明は両国間の将来を律する非常に大切な声明でございますが、声明そのものはそのような意味合いから、政治的な性格を持った声明でございます。その間に覇権という言葉がそういうコンテクストにおいて使われておりますことは、私は、総理大臣が先ほど言われましたそれで、解釈としては十分だと思います。他方で、しかし、この言葉が何かの意味で権利義務を定める、いわゆる法律等の形で使われましたときには、覇権とは何かということは、これは定義をしておきませんと世の中に理解がされない。そういう場合になりましたら、やはり政府は定義をいたす必要がございましょうと思います。ただいまのところ、そのような形でこの問題は問題になっておりませんので、総理大臣のお答えになりました高度の政治的な意味合いを持った言葉として、私は理解されてしかるべきものであると思います。(「余り高度過ぎて中身がないんだ」と呼ぶ者あり)
  263. 金子満広

    金子(満)委員 私が言おうと思ったら、林さんがいま不規則発言で言いましたけれども、それは本当に高度過ぎて、それこそ一般的、抽象的で、平和主義ですとか言っただけでは、これはだれ一人納得する人はいないと思うのです。外務大臣はその三木総理のいまの答弁に、先ほど自分で何回も繰り返した答弁をすっと預けてしまったかっこうになっているのです。しかし、言ったことは事実で、取り消してないのだから。もし取り消したとしても、それほど混乱する問題なんです、これは。よろしいですか。そういう中で、たとえば共同声明は将来を律するものだというのをいまおっしゃいました。そこで今度は、権利義務が生ずればそこで考えなくちゃならぬ。条約ということになったら、権利義務が生ずるのですか生じないのですか、どうですか。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 条約という場合に、条約の中で、過去に起こりました事実を叙述する部分がある場合がございます。この部分からは、厳密に言えば権利義務というものは生じないと考えられる場合があると思います。  他方で、条文においてかくかくすべし、かくかくすべからずと言いましたときには、権利義務が生ずる。その場合にこの言葉が使われた場合には、これはやはり定義をしておく必要があるであろう、こう考えておるわけであります。
  265. 金子満広

    金子(満)委員 ひとつこれは委員長にお願いをしたいのですが、この覇権問題については、いま私が質問した中でも、政府統一見解がないことは明らかですよ。そうして抽象的に物を言ったり、具体的に言ったと思うと、今度は矛盾が出てきて、だんだんみんな総理の言ったことに合わしていくのだけれども、総理の方は平和主義ですと言えば、その内容はと、これまたがたがたいろいろ解釈が違う。しかも、権利義務が生ずるという段階になれば定義をしなければならぬということも、これは主管大臣から言われているわけです。私はこの点については、覇権問題についての日本政府としての統一した見解を出してもらいたいし、これは国民がそのことを要求していると思うのです。そういう点で委員長政府要求してもらいたいと思うのです。
  266. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 その取り扱いは理事会で決めることといたします。御了承願います。
  267. 金子満広

    金子(満)委員 それでは次に質問します。この問題をもうちょっと進めていきたいと思うのです。いまこういう問題が提起をされています。先ほど宮澤外務大臣は、多くの場合大国である、こういうふうに言いました。そこで、いまアメリカとソビエトと二つの超大国の覇権主義に反対するということがあります。このことについて、これは宮澤さんでなくて、三木総理お尋ねしたいのですが、二つの超大国の覇権主義に反対するという、こうした立場に賛成ですか反対ですか。
  268. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が言っておるのは、覇権主義反対ということは、平和のいろいろな原則があるその中の一つである。だからどの国がどうだとか言って、相手を、大きい国がどうだ、小さい国がどうだ、そういうことではない。平和諸原則の一つのプリンシプルである、そういうことでわれわれは考えておるのだということで、いろいろ国をこれに当てはめて考えておる——私の考えておるのは平和原則のやはり一つの項目であるということですから、いろいろ具体的にどうこうということではないわけです。
  269. 金子満広

    金子(満)委員 総理、端的にこれも質問をいたしますが、私がお聞きしたのは、米ソ二つの超大国の覇権に、あるいは覇権主義に反対するということについて、総理は賛成なのか反対なのか、こういうふうに聞いているのです。
  270. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 やはり覇権主義というものは平和の原則に反する、これに反対、これだけのことでございます。
  271. 金子満広

    金子(満)委員 しつこいようだけれども、三木総理、米ソ二つの超大国という、その覇権主義ということにあなたは賛成なのか反対なのか、これを聞いているのです。
  272. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 どうしてそういうことを言う必要があるのでしょうか。平和の一つのプリンシプルとして覇権主義には反対である、こういうことです。
  273. 金子満広

    金子(満)委員 どうしてそういうことをと言っても、たとえば中国の側では、米ソ二つの超大国の覇権主義に反対するということは、初めて出たことじゃないのです。これはもう世界じゅう知っているのです。知っていてそういうものが出てくるから、私は総理としてこの問題について、一般的な覇権という点では、政府統一見解がないということははっきりしたのですから、そのために政府から出してもらうように委員長要求したわけですから。だから一般的な定義の問題は別として、今度は具体的になってくれば、中国の側で米ソ二つの超大国の覇権主義に反対するということが言われているのだから、そういうことについて賛成なのか反対なのか、あるいは同意できるのかできないのか。  ではまず、直接交渉の責任を持っているのですから、宮澤さん、どうです。
  274. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府はそのようなことを申したことがございません。中国政府が言っておられるのかもしれませんが、それにつきましては、政府がかれこれ申すべき筋合いではないと思います。
  275. 金子満広

    金子(満)委員 宮澤さん、いいですか、政府はこれまで言ったことはない。いいですね、言ったことはない。今後も言うつもりはないか、これを聞きたいと思うのです。
  276. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 共同声明におきまして、いかなる国も、総理が言われましたように、覇権主義とはそのような平和の原則に反するものでございますから、どの国がなさろうと、それは好ましいことではないということは、政府も思っております。
  277. 金子満広

    金子(満)委員 宮澤さん、政府としては、たとえば米ソ二つの大きな国が覇権主義を行使することに反対するのだということを言ったことがない。いずれの国だということを私は聞いているのじゃない。特定の国の名前を挙げるか、あるいは代名詞としてこういうものを政府は使ったことがいままでないと言うのでしょう、日本政府としては。だから今後も、いろいろの場合にそういう立場をとらないということを約束できるかできないか、こういうことを言っているのです。
  278. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、具体的な国の名前を挙げてそこの覇権主義に反対するかどうか、立場をとるかとらぬかということでございますから、われわれの外交方針といたしまして、特定の国を挙げてそれを批判するということは、私は、日本の外交としては適当なことではない。一般論として、平和の原則から申して、だれでもそういうことをするのは好ましくない。これは申しますけれども、どの国がどうということは申すべきでないので、申し上げないのであります。
  279. 金子満広

    金子(満)委員 それでは宮澤さん、こういうように解釈していいですか。日本の国は、覇権ということについては、平和の諸原則ということの中ですからそれは言うが、それ以外のことは、特定の国を挙げてやるようなことは妥当でないからやりませんということですか。
  280. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わが国の国益に沿う必要がある場合でありましたら別でございますが、私は、この場所においてそういうことを申し上げますことは国益に沿わないと思いますので、申し上げません。
  281. 金子満広

    金子(満)委員 三木総理、特定の国の名前を挙げるということは、総理の言われる平和の原則ということから見ても正しくない、だからそういうことはしないという意味に、宮澤外務大臣の答弁はとれるのですが、そういうことでよろしいですね。どうですか。
  282. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 繰り返し言っておるのは、それは平和原則の一つであるということですから、それ以上のことではないということであります。それ以上のことではない。あなたがいろいろと、よその国がこう言っておるからどうだ、そういうことに一々私はお答えをする必要はない。覇権主義反対ということは平和の諸原則の中の一つの原則である。それはわれわれとしてそういう意味に解釈をしておるわけでありまして、これがどの国に当てはまってどうということを、私はここで申し上げておるのではない。
  283. 金子満広

    金子(満)委員 三木総理総理の答弁も、私流に解釈すると、ある程度整理をされてきたと思うので、こういうように整理したいと思うのです。いいですか。覇権という内容については、政府としては統一見解はありませんけれども、それは平和の諸原則の一つとしてという、そのことはそれとしておいて、しかし特定の国をあれこれするということは言いません、こういうように申し上げていいですね。
  284. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 またどういう、金子さん……(金子(満)委員「私は別に底意があって言っているのじゃないのですよ」と呼ぶ)いや、どうもあなたの言われることは用心をしなければならない。だから、私の言うとおりに解釈してください。(笑声)やはりいろいろ平和の原則というものがあるのですね。平和の諸原則があるわけです。平和五原則もそうでしょう。その中の一つである、そういうように解釈している、こういうことです。それ以上、大国がどうのこうのというのは、あなたがつけ加えたので、私が言っておるのではないのです。そういうことで、それが私のこの覇権に対する考え方であるということです。
  285. 金子満広

    金子(満)委員 せっかく整理したら、また分解しちゃって……。よろしいですか、平和諸原則の中の一つである、これは三木さんおっしゃった、内容は別としてですよ。それは一つおっしゃった。それ以外ではありませんと言うのですが^私はそこをいま聞いているのじゃないのです。特定の国を挙げることがいいか悪いかということを聞いているのです。外務大臣は、そういうのを挙げるのは適当ではない、平和の立場から言って、というところまで来たわけです。だから三木さん、それは異論ないでしょうねと聞いたら、またもとの話をしてくるから、やたらにこんがらがってくるのです。そこのところですよ。特定の国を挙げて、どこどこの国が覇権主義を行使しているということは、平和の諸原則の立場から、日本として、あるいは政府としては申し上げません、こういうことですか。それでいいのでしょう。
  286. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 やはり答えなければならぬのですが、私が言っているのは、やはり一つの原則として言っているのです。原則ですから、それに金子議員がいろいろとつけ加えて解釈をされることは、私の趣旨に反する場合が起きてくる。私はただ、覇権主義反対というのは平和諸原則の、一つである、こういうふうに解釈している。それ以上、あなた自身がいろんな想像を加えてつけ加えないでください。私は原則として言っておるのですから。
  287. 金子満広

    金子(満)委員 私は少しも想像しているんじゃなくて、大きい国とか小さい国というのは、私が言ったんじゃないんですよ。外務大臣が多くの場合大きい国ですと何回も言うから、これはそのとおりです——私自身の解釈で言えば、大きい国だけがいつも覇権を行使するとは思いませんよ、いろいろな場合があるのですから。しかしそういうことを外務大臣がおっしゃったから。それは私が申し上げたとおりですよ。そこで、平和原則の一つであるということは、三木さんのお言葉として、それはそれなりに私はわかりますと言うんですよ。それはそれとしておいて、平和の原則だから、国の名前を挙げて、どこどこはこれに反対しているとか賛成しているとか、覇権を行使しているとかいうことは、日本政府としては言わない方がいいでしょうというのが宮澤さんなんですよ。だから、宮澤外務大臣を任命された三木総理だから、当然同じことになるだろうと私は言っているんですよ。そうすると、また何か平和原則の一つでありますということで、何か私が勘ぐって、裏があってペテンにかけるんじゃないかみたいな変な警戒心を持つとすれば、これは間違いであって、国の名前を挙げるか挙げないかということは必要であるから、私は聞いているんです。それには宮澤さんはもう答えたのですから、その点で総理の答弁をお願いしたい、こういうことなんです。
  288. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この場合、私の言っていることは、個々の国を頭に入れて言っておるのではないんです。平和の原則として言っておるだけのことでございます。
  289. 金子満広

    金子(満)委員 だから、どこの国も頭に置いていないんだから、頭に置いていなければ口にも出ないし文字にも出ません、これは日本政府の立場として、そういうことが言えます、こういうこと  になりますか。
  290. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろなそういうことをつけ加えないで、平和の原則の一つである、こう考えておるので、いろいろな特定の国を頭に入れて言っておるのではない、平和の原則の一つであるとして言ておるんだ、こういうことでございます。
  291. 金子満広

    金子(満)委員 総理、いろいろつけ加えずに、平和の原則の一つとして覇権ということを考えているんですというのが、いまの総理の答弁です。だから、いろいろつけ加えないということは、どこの国がどうとか、あれがこうしたとか、そういうこともつけ加えないということですか。
  292. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 一つの原則を言っているんですから、原則を言う場合に、この国はこれに反するとか、この国はどうだといって一々——原則なんですから、大きな普遍的な原則を言っておるのですから、この原則を言う場合に、国ごとによっていろいろ検討を加えて、そういうふうな形でこれを発言しておるものではないということでございます。     〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  293. 金子満広

    金子(満)委員 仮に平和原則の一つであるとしても、それを言う場合には、何か客観的な必然性というのがあるわけですね。もしないんだったら——これは三木さん、外務大臣答えているのですよ。もし意見が違うんなら、これも後で統一してもらわなければ困るんだけれども、二つの超大国の覇権主義に反対するということを、文章にしたり、あるいは三木総理がそういうことを考えて行動に移すかどうかということを、じゃ端的に聞きましょう。特定の国を挙げるということには、三木さん、原則を言っているんだから、その具体的なことは、何か言うか言わないかそこがはっきりしないのですが、具体的なことで国の名前を挙げたり、あれこれこうだということは、大も小もひっくるめて言いませんということですか。
  294. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 世界的な普遍的な原則を言っておるので、原則を言う場合に、いろいろ国の名前を挙げて言わなければならぬ必要は何もないと、私はこう考えます。
  295. 金子満広

    金子(満)委員 それでわかりました。特定の国の名前を挙げて言う必要はないということで、私が整理していいですか。特定の国を挙げてやる必要はないんだということになると、覇権ということだけは残るけれども、それは平和原則の一つであるということは残りますけれども、特定の国を挙げるということはしない、こういうことに整理し、理解してよろしいですか。——うなずいているから、いいと解釈をしますが、宮澤さんの答弁ではこのとおりになるのです。どうですか、三木さん。うなずいているからそうだし、私はそのように整理をして理解をしてよろしいですか。
  296. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 繰り返して言うようですけれども、これは一つの世界的な普遍的な原則を言っておるので、その原則を私が言っておる場合に、一々国の名前を挙げて、そうして考えてというものではないわけです。やはり世界に通用する原則を言っておるまでであるということです。(「一例を挙げて……」と呼ぶ者あり)
  297. 金子満広

    金子(満)委員 一例を挙げたい人がいるかどうか私は知りませんが、いまの三木総理は普遍的なことを言っておるのであって、特定のあれとかこれとか、この国とかあっちの国とか、でかいとか小さいとか、こういうことを言う必要がないということをさっきおっしゃったわけですから、そういうことですね。これは違うとかそうだとか、三木さん、それだけで結構ですよ。
  298. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 言う必要かない——言うのが悪いとかいいとかいうんでないのですよ。ただ原則を言っておるだけのことであるということです。
  299. 金子満広

    金子(満)委員 三木さん、私は別に絡んでいるわけじゃないので、いいとか悪いとかじゃなくて、そういうことをやらないんだということは三木さんもおっしゃっているのですから。そういうことだ、いいですね。  こんなことで時間がだんだん過ぎてしまって……。  それでは、これは外務大臣にお伺いしたいのですが、余り古い話は別として、この一年間、中国と新たに国交を樹立した国が四、五カ国あると思うのです。その国交樹立した国々のコミュニケとか、国交樹立の協定、条約の中に覇権という文字が入っているかいないか、これをお伺いしたいと思うのです。
  300. 高島益郎

    ○高島政府委員 最初に覇権反対の文字が出ましたのはいわゆる上海コミュニケ、米中共同声明でございまして、日本が第二番目でございます。その後マレーシアが中国と国交正常化した際に、日本の場合と幾らか表現が違いますけれども、一般的に覇権反対ということが出ております。それから、そのほかにも一、二あったように思いますけれども、一般的に国交正常化の際の共同コミュニケには、そういう例がマレーシアを初め幾らかございます。
  301. 金子満広

    金子(満)委員 そこでもう一つ伺いますが、去年の六月、マレーシアは中国と国交を樹立した。そのときコミュニケと国交樹立に関する協定と二つあります。この協定の中にあるかないか、これはありません。どうですか。
  302. 高島益郎

    ○高島政府委員 国交正常化の際のコミュニケでございまして、協定ではございません。
  303. 金子満広

    金子(満)委員 協定にはないでしょう。その他ニジェール、ブラジル、ガンビア、こういう国々がさらに国交樹立をしているのですが、こういう点について、あるかないかというのは、外務省としては当然調査をして知っているだろうと私は思うのですが、どうですか、宮澤さん。
  304. 高島益郎

    ○高島政府委員 いま手元に資料がありませんのでお答えできませんけれども、承知いたしております。しかし条約、協定には一切ございませんで、そういう共同声明の中に若干の例がある。そうたくさんはございません。マレーシアのほか一、二だったと思います。
  305. 金子満広

    金子(満)委員 それから、覇権問題というのが入らなければ条約にならないということはないと思うのですね、先ほどの例ではっきりしているのですから。そういうときに、今度は覇権という問題が出たときに、特に国の名前が出たときには、どこの国が覇権だとか、覇権を行使したとか、した場合にはどう対応するかとか、こういう問題が、条約であれば権利義務が生ずるわけですから、お互いにそっぽを向いているわけにはいかぬわけです。そこでこの覇権が入った場合の権利義務の問題について、外務大臣どう考えますか。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま交渉過程の日中間の問題についてお尋ねでございますと、これはまさしく交渉途次でございますので、それについてお答えを申し上げますことは適当でないと存じます。ただ、はっきり申し上げられますことは、権利義務というような関連でこの言葉が使われましたときには、誤解を生じませんように、言葉の定義ははっきりさせておかなければならないと思います。
  307. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、外務大臣、第三国に対する日本と中国との同盟、そういうような関係にはしないということですね。第三国の覇権に対して日中が、条約で言えば、その覇権主義に反対するために、両国間で随時協議するとかなんとかなるでしょう、権利義務が生じてくれば。どこの国が覇権を行使しているとか、していないとか、意見が違えば協議しなければならぬですよ。協議すれば、どんな態度でいきますか、おたくはこうです、うちはこれだけは分担しますとか、いろいろそれは話になりますよ。そういうような権利義務が生じないという状態はつくる、こういうように解釈しているのですか。
  308. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは交渉中の問題に触れるといけませんので、一般論として申し上げることをお許しいただきますが、第三国がある特定の行動に出たときに、わが国が他の国と共同してかくかくの行動をしよう、共同してかくかくのことをすまいというようなことを約束いたしますことは、いかなる国とも平和につき合っていきたいというわが国の基本的な外交政策からいたしましては、よほど慎重でなければならないと思います。
  309. 金子満広

    金子(満)委員 それでは次に、日本の安全と核問題について、これはけさから、いろいろ政府側から答弁がありますから、私は端的にお伺いしたいと思います。  非核三原則はどういう事態の中でも変更しない、これを守るという三木総理の答弁は、そのまま確認をいたします。そこで、今後の国会審議のいろいろな面で出てまいりますので伺っておきたいのですが、この四月に、核防条約を批准するということを目標にして、自由民主党の中から政府に対する要望書が六項目出た。これはもう新聞で  一般的に報道されているとおりです。その六項目の中の二項、つまり「日米安保体制の強化」(イ)、(ロ)とありまして、(ロ)ですね。日本への核兵器の持ち込みについて「事前協議の解釈、運用について、両国間で緊密な連携を保つこと。」こういうふうに言っておりますが、総理はどういう事態でも、核の問題についてはノーと答えます、非核三原則の立場でノーと答えます、こういうことだと確認してよろしいですか。
  310. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  311. 金子満広

    金子(満)委員 これは自由民主党の要望というものがここのところでははっきり拒否されているわけですから。それはそれとして、私は一つの大きな問題だと思います。  それから、非核三原則は何ら変わりがないということで、これは三木総理にお伺いしたいのですが、いろいろ話に出たり、物に書かれたりする点ですから、内容の真偽は別として、核防条約を批准するというときに、自由民主党の中で、有事の際の核持ち込み、それから寄港、一時通過、この点については三木総理がイエスの回答をした、うんと言ったからという話があります。ですから、私はそのことについて責任は持ちませんけれども、そういうようなことはないように理解してよろしいですか。つまり有事の際に核持ち込み、それから寄港とか一時通過とか、こういう問題についてもイエスと答えることはありません、核の場合には、すべて非核三原則でノーということで日本政府は対処していきます、こういうように理解してよろしいですか。
  312. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 非核三原則を日本政府は堅持するということでございます。そういうことでございます。
  313. 金子満広

    金子(満)委員 ですから、どのような事態になっても、有事の際の核持ち込みとか、核装備をした軍艦の日本の港への寄港とか、あるいは核装備した軍艦や航空機が日本の領海、領空を通過するから認めろとか、こういうものについても、つくらない、持たない、持ち込ませないという非核三原則の立場で対処して、ノーという回答、態度をとります、こういうことですね。
  314. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 繰り返し言っているように、非核三原則は堅持する。自民党の言うことについて私が何も拒否しているとか、そういうことじゃないですよ。その要望事項を読み上げて、核を持ち込め、こう言っているわけじゃないでしょう、自民党の中で。あなたはいま拒否した、こう言われたですが、自民党の要望事項拒否というわけではないわけです。だから、いかなる場合においても非核三原則は堅持するというのが、私のお答えでございます。
  315. 金子満広

    金子(満)委員 そこで、いかなる場合ということでよく問題になるのが有事のときなんですね。有事の場合のことがよく問題になります。だから、私はそこで申し上げているのは、非核三原則はいかなる場合でも政府としては守っていきます、こういう言明ですから、有事の際に核の持ち込みとかあるいは寄港とか一時通過とかいうものも、当然これは認めませんということになるわけですね。これはあたりまえのことだと思うのです。そのように解釈をして、総理、よろしいですね。
  316. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 有事たると否とを区別をしないということです。
  317. 金子満広

    金子(満)委員 それで非常にはっきりしました。  それでは、今度は領海の問題です。いま三海里だ、そして十二海里は世界の趨勢であるということは、これは周知の事実だと思うのです。十二海里になったとき、国際海峡、たとえば宗谷、津軽、こういうところに対しては、この非核三原則が適用されるかどうかという問題は、これまでも国会ではかなり議論してきているわけですが、これは外務大臣の方、どうですか。領海十二海里で国際海峡になった場合——対馬、宗谷、こういうところがそれに当たるわけですね。そのときに非核三原則の適用についてはどうしますか。
  318. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは海洋法会議において、ただいま御指摘の国際海峡と仰せられましたが、そのようなものがいかなるものとして定義されるかによって、それに従って決めなければならないと思います。
  319. 金子満広

    金子(満)委員 その結論の方は、そういうことは考えられるし、問題になるだろうと思うのです、賛否は別として。しかし、十二海里のとき国際海峡がそこに該当する。そういう場合に、自由通航、無害通航というときに、日本は周りじゅう海でありますし、海峡もいっぱいあるわけですから、そしていろいろの解釈はあっても、アジアの緊張という問題もあるわけですから、そういうときに、対馬海峡とか津軽海峡とか宗谷海峡を、領海内であるけれども通っていいか悪いかということは、日本の主権にかかわる問題ですから、非核三原則はそこに適用するということを当然やるべきだし、がんばるべきだと私は思うのです。そして、私は黙っているけれども、諸外国が、海洋法会議一つの結論が出たらそれに従いますと言ったら、これは全く自主性のない話になるのです。その点でどういう態度で臨むか、ここの点を聞きたいのです。
  320. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはすでに累次の海洋法会議の席上で議論をされておるところでございまして、わが国は、わが国の国益というものを主張してまいっておるわけでございます。しかし、最終的に国際海峡の性格をどのように規定するかということはまだ決定をいたしておりません。その間、わが国の国益を当然主張すべきは主張いたしております。
  321. 金子満広

    金子(満)委員 それではちょっと問題を変えますけれども、防衛分担のことについて、これは防衛庁長官にお伺いしたいのですが、有事の際の防衛の分担については、先般衆議院の内閣委員会で、三つの原則というか三つの目的というか、答弁になっています。そしてまた、これは地域分担でなくて機能分担だということも言われているわけです。いずれにしても、これは安保条約そのものを防衛分担ということで、解釈だけでなくて、今度は実際に進めるわけですから、そういう中で午前中も質問があったようですけれども、一体この防衛を分担したとき——いまは費用、予算の点はだれも言ってないのです。防衛分担金というようなものが考えられないとするとおかしなことになるのですが、いずれにしても、防衛費とかあるいは分担金とか、こういうものが現状より増額されることは、坂田長官の考え方からすれば出てくると思うのです。この点はどうですか。
  322. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 ただいまのところ、防衛分担金を著しく増額しろというような要求は出ておりません。
  323. 金子満広

    金子(満)委員 防衛分担金を増額しろという要求は出ていないというのは、アメリカ側のことだ。そうすると、防衛分担金というのはいまあるのですか。
  324. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 いまの答弁少し舌足らずでございまして、防衛分担に要する費用ということでございます。その著しい増額というものの要請というものはございません、ということを申し上げたわけでございます。
  325. 金子満広

    金子(満)委員 防衛を分担する場合、それは内容はいろいろあるし、私の考え方はありますけれども、とにかく、防衛を分担するとき、費用の問題というのが今後問題になり得ることはあると考えますか。
  326. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 これはいろいろ先方とお話をしてみなければわからないわけでございますが、しかし、日本独自の考えといたしまして、自衛のために必要な防衛力というものはやはり漸次努力をしなくてはならない。ただいまわれわれは四次防の四年目に入っておるわけでございますが、来年度で四次防が完成するわけですけれども、しかし、いつかこの委員会で申し上げましたように、まだ船については十分でございません。そういうような努力は日本みずからやらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  327. 金子満広

    金子(満)委員 そうしますと、防衛分担金ということが提起され、問題になれば、検討はするということにはなりますね。
  328. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 分担金については考えておりません。
  329. 金子満広

    金子(満)委員 では、時間が参りましたから、これで終わります。
  330. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次に、正木良明君。
  331. 正木良明

    正木委員 私は公明党を代表して御質問申し上げたいと思います。  午前中また午後に行われました質問の中で、当面の財政運営の問題ないしは今後の景気見通し等々、国民生活に非常に関係の深い問題がいま山積みされておるわけでございますが、そういう国民が一番大きな関心を持っている問題について、少し御質問申し上げたいと思います。  午前中の質問の中で、大蔵大臣の答弁がございましたが、少し重複するかもわかりませんが、また観点が違いますので、御答弁をいただきたいと思います。  四十九年度の歳入欠陥については、七千六百億ほど歳入欠陥が出た。その後特別な措置を講じてその補てんをいたしまして、約一千億ほど今度はまた剰余金が出たという結果がございますが、この点について、大蔵大臣からまず御報告いただきたいと思います。
  332. 大平正芳

    ○大平国務大臣 去年に比べまして、ことしの二月末の税収の実績はまだ良好であったわけでございます。しかしながら、去年の暮れの決算法人の収益状況、それから、やがて参ります三月十五日の確定申告がどのような状況になりますか、あるいは相当な歳入不足を生ずるのではないかという懸念があったわけでございます。それがどのくらいあるかということでございましたが、事務当局といたしましては、約八千億くらいの税収不足が生ずるのではないかということの報告がございました。そこで、一応それをベースにいたしまして、その対策を講じたわけでございます。このうち四千億円は、納税義務が三月に発生し、徴税が四月に行われるものを四十九年度分の歳入にするという措置によって、約四千億の税収を期待しよう、あとの四千億円は、歳出の不用分を援用いたしますことと、それから税外収入の増収にまとうということで、これを調達しよう、そして差し引き剰余金なしという計画を立てたわけでございます。ところが、実際やってみますと、四月徴税いたしました税目で、三月に納税義務が発生いたしておりましたものが四千三百余億あったわけでございまして、そこで約三百億円予定より多くの歳入があったわけでございます。また、不用に立つもの、それから税外収入に立つものというのが約三百億余り多く期待できたわけでございます。さらに八千億円くらいの税収不足があるのではないかと想一定して対策を立てたわけでございますけれども、実際は七千六百八十六億円ということに相なってまいりましたので、そこで約三百億円出てまいったわけでございまして、都合一千億円余りの剰余金が出るということで四十九年度の会計を締めることができそうになってまいったわけでございます。
  333. 正木良明

    正木委員 私は、いろいろの事情はあるものと思いますけれども、しかし、少なくともこの一カ月のうちにこれほど歳入の見積もりが変わってくる、見通しが結果的には悪かったというような状況というものは、これは、実際にこれを知った国民というのはキツネにつままれたみたいな気持ちになるわけですね。大きな歳入欠陥がある。それに対して特別措置を講じた。ところが今度はまた一千億剰余金が出た。これは国民の納税意識にも大きな影響がある、私はそのように思うわけでございます。そういう点で、実情としてはある意味からはわかります。ある意味からはわかりますが、ここで一つの問題点は、いまも大蔵大臣がおっしゃいましたように、三月度に、最近発生したものを四月に納入する分は、従来ならば翌年度の収入になるところを、今回は、要するに五十年度の四月分を四十九年度で収入するという、繰り上げの収入の手だてを講じたということですね。このことは国税収納金整理資金に関する法律施行令ということでおやりになったのだと思うけれども、しかしこれは政令に委任されている事項ではあるかもわかりませんけれども、実際問題として国会が議決をした昭和四十九年度の予算、これから比べますと、要するに当然五十年度の歳入にならなければならない分の一カ月分は、四十九年度に繰り上げられて収入されてしまった。こういうことは本来予算案を審議した国会にとっては重大な変更でございますから、要するに予算案というのは、一年間の経費の見積書なんですから、それは当然歳入と歳出がバランスのとれたものなんだから、その中から四月分を繰り上げてしまった。恐らく、それが今度五十一年度の、従来ならば四月分を、五十年度になるんだから同じことだというふうにお答えになるかわかりませんけれども、しかしそういう単純な意識でやりくりのできる性質のものではない。やはりこれは当然国会の議決ないしは法律事項にするというような考え方でなければ、本当の意味財政民主主義というものは確立されないのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、大蔵大臣の御見解をお願いします。
  334. 大平正芳

    ○大平国務大臣 七千七百億円近い税収の不足が出てまいりましたことは事実でございます。これに対しましてどのように対応するかということでございますが、申すまでもなく、一番正当な方法は増税をお願いするということでございましょうが、それはとっさに御審議をお願いするというものではなくて、税体系全体を税制調査会にも十分見直していただかなければいかぬわけでございますので、それが間に合う性質のものではないと思います。第二は、国会にお願いいたしまして赤字公債の発行を認めてもらうということでございますが、それとも、今度私どもが行政府限りで措置いたしましたような方法によって処置いたしますか、私としてずいぶん苦慮いたしたわけでございますが、この機会は、国会にお手数かけないで行政府で処理すべきものと判断いたしたわけでございます。  もっとも、それを遅滞なく国会に御報告を申し上げるばかりでなく、閣議を通じて政府部内にもいろいろ御相談申し上げるというようなことは十分とっておくべきでございますので、そういう措置はとらしていただいたわけでございますが、要するに、いろいろな方法がございますけれども、政府の判断といたしまして、ただいま申し上げましたような政令改正の方法によりましてでき得る道がございましたので、それによらしていただいたわけでございます。  いろいろな御批判があろうかと思いますけれども、今日の事態におきましてそれが一番適切であろうと、私自身が判断いたしたわけでございます。
  335. 正木良明

    正木委員 これは今後低成長経済になってまいりますと、昭和五十一年度あたりはよほど事前の準備をして相当シビアな計算のもとに予算は組み立てられるであろうと思いますけれども、五十年度は当然これの経過をそのまま踏まえて歳入欠陥が生じるであろうということがやかましく言われているわけですね。そういうことから考えますと、非常に安易な形で、国会の議決を経ずに予算をいじくり回すというような形、これはやはりおもしろくないと私は思います。たとえば科目の流用であるとかなんとか、非常に常識的に行政の権限内でやれるものはこれはいたし方ないといたしましても、少なくとも五十年度予算に計上されるべき四月分の税収を四十九年度に先取りしてしまう、先取りという言葉は適当でないかもわかりませんが、繰り上げてしまう、こういう措置は、いわゆる通常行われるような措置ではありませんから、これはやはり相当はっきりした態度で進んでいただきたいと思います。  これに余り時間を使えませんので、次に参りますが、そこで、いま私が少し触れましたけれども、五十年度の税収の不足ということが非常にやかましく言われているわけでございますが、政府は五十年度の税収不足というのは大体どれぐらいと予想しておられますか。
  336. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは年度が始まりまして二カ月しか経過いたしておりませんので、とても五十年度の税収がどのくらい期待できるかというようなことを、いま提出いたしておりまする歳入予算の答案以外に、自信を持って出す材料はございません。これからの内外の経済がどういう状況で推移してまいりますかということ、それからそれに対しまして政府がどういう政策を今後やるかやらないか、そういったことが非常に影響してまいるわけでございますので、これはこれからのことでございまして、十カ月これから残された年度を展望いたしまして、税収増を見積もりがえをやるというようなことを、いまとてもできる相談ではないと私は思います。  ただ、今日の段階で申し上げられますことば、従来のように自然増収が安易に期待できるような状況でないということは、まず言えそうでございまするし、四十九年度の予算、補正予算を含めての予算をベースにいたしまして、五十年度の予算の見積もりを立てたわけでございまするから、その土台の四十九年度の見積もりに大きな穴があいたわけでございまするから、五十年度の歳入にも不足が起こりかねない状態を内包いたしておるということは言えるわけでございます。けれども、そういうことが一般的に抽象的に申し上げられるだけでございまして、数字的にそれではどれだけの歳入になるであろうかというような見積もりをいま申し上げることはとてもできる相談ではないことを御了承をいただきたいと思います。
  337. 正木良明

    正木委員 大体マスコミ関係では、またそのほか経済専門家のいろいろの話では、一兆五千億から二兆ぐらいの歳入欠陥、いわゆる税収不足が出るのではないかというふうに言われておりますが、この点はどうですか。
  338. 大平正芳

    ○大平国務大臣 一つの仮定を置きまして試算を試みるということは、できない相談ではないと思うのであります。つまり七千六百八十六億の税収不足を生じた四十九年度のベースがそれだけへこんでおるわけでございますから、そもそもそれがない状態を発射台といたしまして、五十年度の歳入の見積もりを立てたわけでございますから、それだけを抽象いたしまして五十年度に延長してみますと、約九千億ぐらいの税収不足になるという仮定の計算はできると私は思います。  それから雇用所得が一%減るという場合は、五百億なら五百億所得税が減収になるとか、あるいは法人の収益が一%減る場合に、これが五百億円ぐらいの法人税の減収になるとかいう仮定の数字は出てまいりますから、仮に雇用所得が、春闘が低目に決まりそうでございますから、政府が見積もっておる一七・一%マイナス三%なら三%、四%なら四%というところに落ちついたとなれば、その三%ないし四%掛ける五百億とか六百億とかいう数字、そのぐらいの源泉所得税の減収は起こるだろうというような試算はできるわけです。そんなものを合わせますと、かれこれここの程度になるのじゃないかというような計算は一応可能だと私は思います。  しかし、これはあくまでも仮定の計算でございまして、実際の税収の見積もりというのはなかなかむずかしいことでございまして、国会にこれを申し上げるなんということになりますと、これは年度が相当押し詰まって補正予算を組む段階でも、なかなかできないわけでございますから、いま十ヵ月もの年度を残した段階で見当を言えと言いましても、これはとても私にはできる相談ではございませんことを御了承いただきたいと思います。
  339. 正木良明

    正木委員 大蔵大臣、仮に仮定の問題であるといたしましても、ある程度その確信を持たないというか、確かな見通しを持たない限り、今後福田総理が担当でおやりになるんでございましょうが、今後の景気浮揚策の問題等の政策立案ができないんではないかというふうな感じがいたしますね。ですから、先行き入ってくるのか入ってこないのかわからないということで、今後この五十年度、非常に差し迫った状態の中での新しい政策施行ということは不可能になってくる。金額は幾らになるかということ、これを聞くのも無理かもわかりませんが、そこで一つだけ確かめておきたいのは、そういう意味から言って、税収不足というような赤字が出ることはほぼ確実だということは言えないでしょうか。
  340. 大平正芳

    ○大平国務大臣 税収不足が起こりかねないというようなことが、抽象的にはいま一応考えられるわけです。しかしながら、いま正木さん御指摘のように、景気政策をやるにいたしましても、いま経済が非常に停滞いたしておるときに、予算の執行が税収不足のためにあるいは困難かもしれないというようなことでは、とても景気を支えてまいるというようなことは不可能でございますので、私は四月十五日の財政事情の説明におきましても申し上げてありますのは、四月二日に成立を見ました予算は税収にかかわりなく忠実に執行いたしますと、これは何としても執行するという決意を表明いたしたわけでございます。そうしないと、事業のもくろみは立ちませんし、停滞いたしました経済を支えることにならぬと思うわけでございますので、その点は各省庁にそのようにお約束をいたしておるわけでございます。ただ追加財政需要については極力慎重にお願いしたいということは、あわせてお願いしてあるわけでございます。したがって、歳入不足を生じかねない、いままでのように漫然自然増収が期待できるような状況ではないばかりか、歳入不足を生じかねない厳しい財政状況にある、けれども歳出は予定どおり執行しなければならぬ、という態度でいま終始いたしておるわけでございます。
  341. 正木良明

    正木委員 歳出のことはまた後ほどあれいたしますが、しかし大臣、少なくともあなたが先ほどおっしゃったように、四十九年度は事実上歳入欠陥が生じたわけです、税収不足が生じたわけです。そういうベースのままで昭和五十年度の予算を組んだのですから、生じかねないというような程度ではなくて、このまま推移すれば明らかに税収不足というものは生じてくるに違いないわけです。そういう前提を置かなければならないのじゃないかというふうに私は考えます。そういう点、その認識が、生じるかもしれないし生じないかもしれないというあやふやな態度で今後の財政運営をやっていくということになりますと、いま大臣が、私の質問ではなかったのですが、お答えになったように、歳出だけはどんどん支出していくという、ことになってまいりますと、これはもう明らかな歳入欠陥が生じてくることになりますから、こういう点では、要するに歳入欠陥に応じて、それに完全に見合ってという形で歳出の切り詰めはできないかもわかりませんけれども、少なくともその努力はしていかなければいかぬでしょう。そうでなければ、昭和四十九年度の欠陥の際にも、不用額の問題であるとかまた節約の問題であるとかいう工作が行われて、ある程度の補てんが行われてきたわけですから、当然五十年度が四十九年度のベースで組まれた予算であるとするならば、歳出の面もそう野方図なものであってはならないと私は思うのですね。もし歳出をそのとおりするというならば、当然起こってくるであろう歳入欠陥に対しては、何らかの補てん策を講じなければならぬということになりますね。ですから、大蔵大臣は非常に慎重で、かねないという言い方をなさいましたけれども、これから議論を進めていくに当たっては、当然予想される歳入欠陥は生じるであろう。その金額は幾らということをいま言えといったって無理なんですから、私はそれを要求しているわけではなくて、歳入欠陥は生じるであろう、赤字になるであろうという前提でなければ議論は進んでいかないだろうと思うのですがね。かねない、かねない、どうなるかわかりませんということじゃ、これからあなたと今後の問題について政策論議をしていく上においては、てんでお話にならなくなるのですが、そのために無理やり認めろという意味ではありませんけれども、理論的に言っても、先ほどあなたがおっしゃったように、の回復に伴いまして、そのようなボーナスあるいは超勤というようなものがどの程度伸びてくるか、それらによりましてかなり数字が変わってくるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  342. 正木良明

    正木委員 ちょっと、私が聞きたいのは、変わってくるかもしれないが、やはり積極的な努力をしないと、この計算の基礎となったパーセンテージまでは増加させることはできないだろうと思うが、そういうことをあなたもお考えになっていらっしゃいますか、ということです。
  343. 旦弘昌

    ○旦政府委員 積極的な努力と申しますと、給与所得を伸ばす努力でございましょうか。私どもといたしましては、民間の給与の実態といいますのは、これは動かせないのではないか。したがいまして、もし給与所得の伸びを図るといたしますれば、期待するといたしますれば、それは景気回復に伴う臨時給与の伸び等によって補い得るものだと思いますけれども、税制上同じ給与の伸びであるといたしますと、たとえば一一四%であるといたしますと、これに見合った税収しか図り得ないということであろうと思いますので、そこがわれわれ税務といたしましては限界ではなかろうか、かように考えております。
  344. 正木良明

    正木委員 これが実はこれから議論していく中心の課題にもなってくるだろうと思いますが、このままだと明らかに歳入、税収は欠陥が出るであろう。これは二つの例を挙げただけでも、歳入欠陥はあるという事実がはっきり見通しとして持てると私は思います。  そこで、大臣の説明によりますと、税収不足が、いわば私流の解釈をいたしますと、景気回復のおくれということが、非常に大きな災いをしているような感じがいたします。  そこで、これはむしろ副総理お尋ねしたいのですが、確かに物価の問題は非常に大変な問題でございまして、国民生活全体を脅かす問題でございますから、物価安定というのは最優先に考えていかなければならない問題であろうと私は思います。そこで、三木内閣がおとりになった物価安定のための総需要抑制政策、特に景気が去年からずっと落ち込み一方で、少なくとも四十九年度の実質的な経済成長率はマイナス成長、五十年度の実質成長率も恐らく、プラス四・三%と見込んでいるようでありますが、これは後ほど副総理にもまた別にお尋ねいたしますが、これは訂正をなさる検討をお命じになったとかということを漏れ聞いておりますけれども、いずれにしても景気回復が非常におくれている。この原因は、一つは春闘の賃金を一五%のガイドラインに抑え込むためにという、きわめて一点集中的な政策三木内閣としておとりになった。したがって、この一点集中主義というのは、ほかの方にいろいろな面でいびつなものを巻き起こしていくわけでありまして、これが一つは非常に極端な景気の冷え込みになり、こういう税収の面にも予想以上の欠陥が生じてきているとしか私は思えないわけなんですが、こういう点、副総理はどういうふうにお考えになっていますか。要するに、一五%のガイドラインに抑え込むための賃金抑制、それをやればどこかでひずみが起こってくる、そのためのひずみ是正の何らかの政策を同時並行的におとりになったかどうかということです。
  345. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国の経済は大変な事態に当面したわけです。これは私が先ほども申し上げたが、これは簡単には治らない。全治三カ年の治療を要するというくらいな深刻な打撃をこうむったわけです。それをとにかく粘り強く立て直らせなければいかぬ、そういう立場ですが、そのかなめは、何といっても物価、国際収支です。そこで、これを立て直すため総需要抑制政策をとった。国際収支は一昨年はとにかく百三十億ドルという赤字ですね。これが基礎収支におきましては四十九年度において四十三億ドル、また五十年度におきましてはまたそれが改善し得るという見通しが立った。また一方、物価はどうかというと、四十八年度におきましては、卸売物価は三七%というえらい暴騰をしたわけです。消費者物価は二七%だった。これが四十九年度におきましては、卸売物価は四・九%、また消費者物価が一四・二%、こういうことで、大変物価の方も鎮静基調になったのですが、さてこれから一体どういうことになるか。第一年度が経過しただけなんです。問題の一番の焦点は、私はそれを無理に抑え込むという、そういう考え方はとりませんけれども、これから日本経済が本当に立ち直るそのかなめはどこにあるかというと、これは賃金と物価の関係だ、これができなければ日本経済は本当に打つ手はない、こういう状態です、と私は判断したわけであります。しかし私は、労使双方の協力を得て、このむずかしい賃金、物価の問題に対しまして一つの大きな事績ができ上がった、こういうふうに見ておるのです。つまり、春闘は、むずかしいこのときに、とにかく一三、四%というなだらかな動きになってきた。これはなぜそういうふうになったかというと、やはり不況という問題もあるが、同時に過去一年間、四十九年度において卸売り物価はとにかく四・九%の上昇にとどまった。消費者物価の方は、これは一四・二%の上昇にとどまった。しかも、政府はさらに卸売り物価の安定に努力する。また、特に消費者物価につきましてはこれを一けた台に抑えるという目標を堅持してまいる、そのために万難を排してやっていく、こういう姿勢を出しておる。これが非常に大きな背景になっておる、こういうふうに思うのです。  そうしますと、私はこれからの経済運営を考えますと、物価、これをとにかく五十年度におきまして一けたにするということは、これはもう大変な問題だ。一山越えたのですが、この二山、これが、これからの日本の社会があるいは経済が右になるか左になるか、これを決める境目になる、こういうふうに考えておるわけであります。そういう全体を総合いたしまして見るときに、私は、世界がいまスタグフレーション、つまり不況とインフレで悩まされておるわけです。その中で、大筋におきましては、日本の動きというのはまあまあ順調にいっておる。世界では第二の奇跡だ、こういうふうに言っているくらいでありますが、まあとにかく大体順調にいっている、私はこういうふうに見ておるわけであります。  いま正木さんは歳入欠陥を論ぜられておりますが、私は、歳入欠陥の恐れがある、こういうふうに見ておりますけれども、それを埋めるというために、この非常に困難な三カ年の治療のコースを曲げる、こういうことは、私はできないと思うのです。そうじゃなくて、物価政策、これは進めなければならぬ。しかし、同時にその反面におきまして、景気の動きというものが非常に沈滞しておる。それは雇用の問題にも影響してくる。この問題に対しましても手は打たなければならぬかな、こういうふうに考えておるわけでありまして、一方において物価を安定させる、これは非常に大きな政府政策的責任であり、課題である。同時に、景気の動きに対しまして、これが冷え過ぎないように、またこれから徐々に回復過程に転ずるようにという施策を講じてまいりたい。そうして、経済見通しで言っておる、しり上がりに経済は明るくなってくる、こういう目標、これはぜひ実現をいたしたい。その反射的効果といたしまして税収の方もかなり改善をされる、それを期待しておる、こういうのが私の立場でございます。
  346. 正木良明

    正木委員 後ほど景気問題についてもっと詳しくやりたいと思っておりますが、ただ、せっかくお答えいただいたのだから申し上げておきますが、私申し上げているのは、要するに一五%以内のガイドラインに抑え込まれた、こう私は思っているのですが、そのことで政府は重大な責任が生じました。これはいま副総理が御指摘になったように、来年の年度末、前年比九・九%、一けたの消費者物価指数に抑えなければならぬということであります。したがって、そのことがもし実現しないとするならば、これは労働者、勤労者の反発というものは非常に大きいものがあるであろうというふうに考えられるわけですね。したがって、一応あなたの目標とするところの賃金の抑制、賃金と物価の関連、悪循環を断つという意味で、私はこの議論は全面的に正しいと思っておりませんけれども、それを議論すると切りがありませんから、そういう悪循環があるとして、その悪循環を断った、また断つために集中的にそのことをおやりになったということ、このことは一応成功したかもわかりません。成功したかもわかりませんが、同時にほかに手を打つべき施策というもの、言葉をかえて言うと、非常になだらかな形での景気浮揚という問題を完全に切り捨てて、そして景気の冷え込みということについて意識的に抑え込んでいったという、こうなってまいりますと、物価の上昇という問題に大きな責任が生じてくる。ところが、最近の趨勢は、だから人件費が、賃金がコストアップにつながらなくなってきたから、少なくとも従来のようなつながり方をするよりもうんと低くなったから、だから物価が安定するのだ、九・九%に少なくとも抑えられるのだという目算は、ほかに施策をしなかったから景気が冷え込み過ぎたために、どうしてもこのしわ寄せが中小企業や勤労者や、特に勤労者の中でも低収入者やまた福祉の該当者のところにしわ寄せがきた。そのためにはある意味での景気浮揚というものをどうしてもやらなければならなくなってくる。ところが、なだらかな形でそれができないから、非常に急激な形でこの景気浮揚というものを、私が考えているよりも急激な形でやらない限り、この景気の冷え込み過ぎた状態というものを回復できない。これがまた物価の上昇につながってくる。ということになると、今度は政府は一五%以内に賃金を抑えたけれども、その結果の責任というものについては持てなくなってくる。いわば非常に悪い言葉であるかもわかりませんが、一五%以内に抑えられた勤労者を裏切るような結果しか生まれてこないような気がしてしようがないわけです。この問題は、私は野党であるとか与党であるとかいう問題を別にして、本当に真剣に考えて、最もいい政策というものを今後とっていかない限り、いけないだろうと私は思いますね。  だから、私は要するに導入部として歳入欠陥の問題を取り上げましたけれども、歳入欠陥が生じるから、歳入欠陥を補てんするだめに景気回復しなさいと言っているのではないのです。それは歳出を縮めたらいいわけなんです。ところが、歳出を縮めるにしろ、午前中の話を聞いておりますと、財政的な措置としては、公共事業一本やりで景気回復をしなければならぬということでしょう。公共事業一本で景気回復をしていこうとすれば、歳出は削れないではないですか。そういう非常に矛盾した立場にいま政府が置かれておって、本当に物価の問題とそうして不況の問題というものをどういうふうに解決していくのかということを、非常に時間は短いけれども、この時間の中で、できるだけいい道を見つけていきたいというのが私の本旨なのです。これは了解していただきたいと思います。  そこで問題が変わります。またそういうことで、歳入欠陥の問題に戻りますけれども。  さっきも事務当局からのお話がありましたように、これはもう必然的な歳入欠陥が起こると私は思います。歳入欠陥が起こるというのは、これはちょっと気がつかなかったのですが、大蔵大臣、あなたは歳入欠陥が起こると参議院で言っていますね。五十年度の財源不足額は常識的に見て三兆円と、大平蔵相が参議院の大蔵委員会で答弁していますよ。かねないどころではないですよ。そこで歳入欠陥が生じるわけでありますから、この歳入不足の補てんをしなければなりません。その歳入欠陥の補てんをどのような形でやっていこうとなさっているかということを、この対策を大蔵大臣にまずお聞きしたいのです。
  347. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それより前に、参議院の答弁でございますけれども、それは、私はそういう覚えはないわけでございますけれども、何を根拠に言われているのかよくわかりませんが、もし……(正木委員「これは後で」と呼ぶ)後で明らかにしていただきたいと思います。  それから、歳入欠陥と申しますか、税の収入不足に対しましてとりました措置は、四十九年度につきましては、歳入はいま御指摘のように政令改正によりまして措置し、あわせて不用額を立てる、あるいは税外収入の増収を図ってこれを処置することによって始末をしたわけでございます。  五十年度につきましては、先ほどもたびたび申し上げましたように、これからのことでございまして、歳入欠陥が生ずるとも生じないともまだ申し上げられない段階でございまして、鋭意成立予算の忠実な施行に歳入歳出とも努めなければならぬと心がけております。
  348. 正木良明

    正木委員 よほどの画期的な景気対策をやって景気浮揚策をとらない限り、戻りませんよ。  副総理、先ほどの問題にちょっと戻りますが、この大蔵省の予算の基礎は、実質成長率が四・三%、名目成長率一九・五%というのを大体基礎にして、予算が組み立てられております。したがって歳入もそうです。  そこでお聞きしたいのですが、新聞によると、副総理は四・三%の成長はとても期しがたいから、それを訂正して、二、三%になるように思うけれども、それを再検討しろとかなんとか経企庁の事務当局に御指示なさった、これはどうなんですか、事実なんですか。
  349. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まだ年度が始まって二月経過したという段階で、経済見通しを変えるという、そういうところまで来ておりません。私は、この見通しを変える作業を開始せいというようなことは命じておりませんです。
  350. 正木良明

    正木委員 それじゃ大蔵大臣、これからの経済成長というのは低成長になるであろうということは、これはもう午前中の議論の中からも、総理もそのことをおっしゃいましたし、副総理もそのことをおっしゃった。そうすると、私が思いますのには、ここの場で、腹の中では歳入欠陥が生じるかもしれないと思っておっても、それを公言するわけにはいかぬということですから、それはあえて聞きませんけれども、もし仮に歳入欠陥が生じるというようなことになったら、どんな対策をお考えになっていらっしゃいますか。そういう資料というものは集めておかないと、楢崎さんじゃないけれども、資料を集めるの好きなんだから、そういう資料がないと、これからの問題に対処できないでしょう。
  351. 大平正芳

    ○大平国務大臣 まず第一に、いま成立いたしました予算の執行によって歳入欠陥が生ずることを、正木さんがおっしゃるように、まず心配しなければならぬばかりでなく、     〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕 この年度途中におきまして、従来でございますならば、新たな財政の追加需要というものが起こってまいるわけでございまして、ことしも起こらないという保証はないわけでございまして、麦価、米価の決定も間近に迫っておるわけでございまするし、夏の人事院の勧告の問題も予想されないわけじゃないわけでございますので、年度の途中におきましてまた災害が起こるかもしれないというような状況もいろいろあるわけでございまするので、ことしの追加財政需要は、やはり財政当局としては考えておかなければいかぬわけでございます。したがって、すでに成立をいたしました予算のバランスにおきまして、あなたが御心配なような事態も考えられないわけじゃない上に、そういった新たな財政需要というものも起こるかもしれない状況にあるわけでございまするので、問題はより一層深刻になってくると思うのでございます。  そこで第一、私どもとしてはこういう状況でございまするので、それではいまから前広に、税制調査会に対しまして一般的な増税をお願いして御検討を急いでいただくか、ということも一つ考え方であろうかと思うのであります。しかし私は、それはとるべきでないと考えております。そうでなくても、経済はこのように疲労いたしておるわけでございますので、一般的な増税を考える、お願いするというようなことは、政府として考えるべきでないと思うのでございまして、そこでけさほどからいろいろ阿部さんとの間にもやりとりがございましたように、現在の税制の中で増収の道がないかというような点を、もっときめ細かく私どもは検討してまいる必要があるのではないか。法人の準備金、引当金、そういう留保財源をもっと詰めることによって増収がどのぐらい期待できるかというようなことも、検討しなければならぬわけでございまして、そういった検討は急がせておるわけでございます。その他、税外収入におきましても、われわれが注意深く探求してまいりますならば、国民の理解を得て、税外収入の確保をできる道があるやもしれないわけでございますので、そういった点につきましても、いま検討をいたしておるわけでございます。  そういう中で、国会にお願いしなければ実行できないものと、それから行政府限りで措置ができるものとあるわけでございますので、行政府限りでできるものにつきましては、あるいは政府の判断でお願いする場合が、年度途中であり得ようかと思っておりますけれども、いまそういった点についての検討を急いでおるわけでございます。  それで、これから年度が進行してまいりまして、秋になり、いろいろな追加財政需要のめどもだんだんついてまいりまして、ことし税収の入りぐあいも見当がついてまいりますと、秋深くなりまして、この予算でやっていけるかどうか、補正予算をお願いすべきかどうか、するとすればどういうスケールのものを、どういう内容のものをお願いすべきかどうかということに問題はなってくるだろうと思うのでありまして、その際できるだけそういう措置を講じて、われわれは健全な財政の運営に当たらなければいかぬと思いますけれども、こいねがわくは、安易に赤字財政への道に道を譲るというようなことのないように、できるだけの措置を講じながら、健全財政は維持していかなければいかぬのじゃないかと考えておるわけでございますが、これから秋にかけまして鋭意努力をしてまいって、秋深くなりまして、まとめたところを国会に御報告をして、御相談をするということになろうかと思います。
  352. 正木良明

    正木委員 どうもこういう話を続けていきますと、奥歯に物のはさまったような言い方しか返ってこないようですから、前提として、歳入欠陥、歳入不足が起こったとして、これはあなたがなかなか認めたがらないけれども、起こったと仮定して、やるべき方法というのはそんなにたくさんないだろうと私は思うのです。一つはやはり歳出経費の節約ということがありましょう。それとやはり税収の確保をしていくということがありましょう。この税収の確保も、一つは当年度でやれる問題と当年度でやれない問題がありましょう。要するに、新しい税金をつくる、新税をつくるなんということになってくると、恐らくこれは五十年度にはもう間に合わないだろうと思う。これは新しい五十一年度の予算で考えなければならぬ問題だろうと思いますね。そのほかに、もう一つは、国債の発行ということが考えられますね。それと、いま大蔵大臣は税外収入というふうにおっしゃいましたけれども、もっとはっきり言えば公共料金値上げですよ。こういう形で、いわゆる財源が不足したときには、これを補てんしなければならないわけなんですね。  いま幾つかの問題を挙げましたね。挙げました中で、税外収入を確保する。税外収入とは公共料金値上げ。たとえば麦の売渡値段であるとか、そのほかの赤字解消。米も入るでしょう。そのほか、たばこ、酒。そのほかに、政府が管掌するところの公共料金値上げ、こういうもの。これは恐らくこの税外収入という意味の中にお含めになったのだと思いますが、この私が申し上げた四つのうちで、それじゃどれをおとりになるのですか。歳出予算の節約、これは限度があると思います。それから税収の確保、これは当年の場合でやろうとするには、租税特別措置の改正だとかなんとか、そういう行政の権限の中で、当年度、要するに五十年度としてやっていける形のもの。あと国債発行、公共料金で穴埋め。どうですか。
  353. 大平正芳

    ○大平国務大臣 第一の歳出の節減措置でございますけれども、これは例年お願いしておりますし、ことしも各省庁にお願いしなければならぬと考えております。じゃどういうことでお願いするかというと、行政費の節約でございます。旅費、庁費等の節約でございまして、数百億円のオーダーで毎年お願いしておることでございますし、ことしも、そういったことについては改めて各省庁に御相談して、お願いするつもりでございます。それから、それに関連いたしまして、財政硬直化にちなんで、大蔵省におきましても、内閣におきましても、こういった問題で、いま各調査会、審議会等で財政硬直化打開の方途を御諮問申し上げておるわけでございまして、これは相当時間がかかると思いますけれども、そういう審議の中で、今年度中に実行に移すべく中間の御報告がちょうだいできるものがございますならば、それも実行に移すべきものは移さなければならぬと考えております。  それから、第二の税の増収の問題でございます。それは私が申し上げましたように、いまの現行税制の枠内におきまして、増収の道がどの程度、どういう方法であり得るかという点は検討をいたしておるわけでございまして、これはことしはぜひお願いしたいものと考えております。  それから、国債発行の問題はちょっと後にしまして、第四番目の公共料金でございます。私は、こういう窮屈なときでございますから、収入確保の道として、積極的に公共料金を上げて収入を確保しようという意図は持っておりません。ただ、いま二つの問題があるわけでございまして、相当すでに財政に依存しておる公共料金、今後の料金決定におきまして財政に依存する傾向を持っておるもの、そういったものについては、できるだけ慎重に扱っていただいて、財政負担ができるだけミニマムなものであってほしいと念願しておるし、各方面の理解をそういうラインでお願いしていかなければならぬと考えております。  最後に、いろいろな手をやりました後なお足らない場合、公債の問題というものが考えられるわけでございますが、先ほど申しましたように、漫然赤字公債を発行するというようなことはいけないことでございますし、できるだけ公債に依存しないように努めてまいりたいと思いますが、それでもなお不足する場合、公債に依存せざるを得ないといたしましても、建設公債の原則、市場消化の原則というようなものは崩したくないといま考えておるわけでございます。
  354. 正木良明

    正木委員 公債発行では、公共事業費等、要するに俗に建設公債と言われるものですね。この公債対象経費は当初予算で三兆五百二十四億で、すでに二兆円出していますね。そうすると、あと一兆五百二十億円しか発行の余地はないわけなんですが、少なくともこの範囲ではおさめて、いわゆる俗に言う赤字公債には絶対しないというお考えですか。
  355. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そうありたいと考えております。
  356. 正木良明

    正木委員 そうでない場合も、赤字公債を発行する場合も、場合によってはあり得るかもしれないということですか。
  357. 大平正芳

    ○大平国務大臣 そういうようなことは万々避けたいと考えています。
  358. 正木良明

    正木委員 ですから、もう言外に一兆五百二十四億円の建設公債の残で足りない場合があるかもしれないと言うぐらいだから、あなた、さっきからああ言っているけれども、事実歳入欠陥があるということですね。  念のために伺っておきますが、私は、時と場合によっては公債必ずしも一〇〇%悪だとは思っておりません。思っておりませんが、少なくとも、いままでのような漫然とした、要するに自然増収がうんとあって、予算が非常に財政的にも余裕があるときに、まず借金である公債を返していくということをしないで、総花予算的に財源を配ってしまうというようなやり方は、これは絶対避けるべきだと私は思うのですね。特にこういう低成長の時代がこれから続いていこうとするときに、そういう公債を発行することはできるだけ避けなければいかぬが、万やむを得ない場合には公債を発行しても、しかし、少なくともその借金をまず返すということから努めていくというふうに方針を変えなければいかぬだろうと私は思うのです。そういう点、お考えを一応承っておきましょう。
  359. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、公債は、一つには公債費が現にもう一兆円を超えておるわけでございまして、利子が七千数百億円に上っておりまするし、これが肥大化してまいるということは、それだけ財政の硬直化を強めてまいる作用をいたすわけでございまして、極力、公債はそういう面からも遠慮していくべきだと思います。  しかし、私も正木さんと同様に、公債が絶対に悪いなんて考えていないわけでございまして、公債は、これを有効に活用できるならば、財政のために稗益するところは多いと思います。けれども、一たん公債に依存する癖がつきますと、なかなかこれは是正することは、言うはやすくして行うは非常にむずかしいわけでございますので、極力、公債発行という安易な手段に訴えることのないように、財政運営に注意してまいりたいと思うわけでございまして、万が一、公債に依存しなければならなくなりました場合も、建設公債の範囲内で、そしてその市場消化に無理がないようにやってまいらなければならぬことは当然の責任と思っております。
  360. 正木良明

    正木委員 そこで、五十年度は現行税制のある程度の是正を行って税収確保を図る、これはわかりましたが、恐らく五十一年度からは、そういう程度ではとても賄い切れなくて、新税を創設するという考え方が大蔵省内に相当強いのではないかというふうに私は察しておりますが、五十一年度から、たとえば売上税であるとか、付加価値税であるとか、そういう間接税に移行するという形で新税を創設するというお考えがあるか。これはもちろん実行するに当たっては、税制調査会等の問題がございますが、大蔵省の考え方としては、いまどういうふうにお考えになっていますか。
  361. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、一般的な増税なんて考えておりませんで、そういうことをすべき経済状況ではないと思うのでありまして、精いっぱい、選択的増収の道をどういう部面に求めるかという、きめの細かい領域で努力をしてみたいと考えております。
  362. 正木良明

    正木委員 そうすると、五十一年度以降も税制改正はないというふうな御答弁と受け取ってよろしいですか。
  363. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま考えていないということでございます。五十一年度の予算の編成をやってみまして、どういうことになりますかわかりませんけれども、私といたしましては、五十一年度の予算を、新税を起こすことによって財源を賄うというようなことはやりたくないと考えております。
  364. 正木良明

    正木委員 特に大蔵省内には、間接税に移行していこうという考え方が強いようですね。要するに、直接税中心主義でやると、好況、不況に非常に左右される不安定な税制であるから、安定的な税収を確保するためには、間接税に相当大きな部分を持たせるような形にしたいというような考え方があるようです。したがって、そのことを前もってお尋ねしたわけでありますが、少なくともいまのところ大蔵大臣はそういう考え方はない。しかし、五十一年度財源調達に当たって賄い切れないという場合には、そういう考え方を持ち得るかもしれない。その場合、これは先ほどの質問にもありまして、お答えになりましたが、付加価値税だとか売上税だとか、こういう形のものをやっていこうとする考え方がありますか。
  365. 大平正芳

    ○大平国務大臣 考え方といたしまして、わが国のように直接税に依存性が高い税制、これは七割以上が直接税収入によっている。先進諸国が五〇%内外というようなところでございますが、わが国は直接税が非常に高い。いま御指摘のように、直接税への依存率が余り高過ぎること自体問題があろうかと思いますので、間接税にもっと依存すべきでないかという純理論的な立場からの見解もございますし、また直接税というのは、大変納税者と国との間の緊張した関係を呼びやすいものでございます。徴税上も間接税の方が穏やかでいいではないかという議論も成り立つわけでございます。間接税を取り上げて検討すべきであるという議論は確かにあるわけでございます。しかし、これはあくまで理論上の問題でございまして、ことしすでに、わずかの酒税の引き上げとたばこの改定をお願いしても、これだけの問題が起こるわけでございますので、大きな間接税の依存に切りかえるなんということは、言うはやすくしてなかなか実行は困難なんでございまして、私はそういうことはなかなかいまむずかしいのではないかと考えておるので、理論的な検討はそれはいたして差し支えないと思いますけれども、実際問題として、来年度の予算編成に当たりまして、付加価値税を含めまして、間接税の大がかりな税を起こして収入を確保しようなんという考えは、実際的でないと考えております。
  366. 正木良明

    正木委員 そのとおり反対が強いだろうと思います。それはやはり最終負担が最終消費者になるという付加価値税の実態がございますし、それが物価上昇につながってくるであろうと思いますし、また、そのほかの間接税にいたしましても、やはり逆累進制という問題が大きな問題になってくるだろうと思います。私どもは、したがって反対するでありましょう。  そこで私は、この税制改正の場合にまず考えてほしいことは、そういうことではなくて、むしろ三木総理が持論となさっておる不公正の是正というやつをまず税制の面でやっていただきたいということです。  そこで、余り時間もありませんので詳しく申し上げられませんが、どうしてもやはり、こういう低成長になり不況からなかなか脱出できないというような状況になってまいりますと、この税金を払うということは大衆にとっては大変なことになってくるわけであります。そこで、やはり不公正の是正というのは、税制の面では各般多岐にわたっておりますけれども、特に、従来のインフレの時代に大きな蓄積をした、それに対して税金をかける。そういう意味で、ヨーロッパ諸国でもやっておるような、個人に富裕税をかけるという考え方ですね。たとえば、土地、貨幣、有価証券など、たとえば一億円以上持っている者に富裕税をかけるというような考え方、ないしは大企業の土地の評価というものがインフレのときに大変上がっておるわけなんですが、そういう土地の再評価税、これはかねてからわれわれは持論として政府要求していることでございますが、こういうものを、この財源不足の折から、税制改正に当たってはまず取り上げていくというようなお考えはないだろうかということです。
  367. 大平正芳

    ○大平国務大臣 富裕税というのは、税の体系から申しますと、所得税のいわば補完税でございます。一番大事なことは、所得税がりっぱに機能しておるということが税制上大事なことでございまして、それの不足なところをほかの補完税で補うということでございます。私は、わが国の所得税法というのはよくできておりまして、諸外国に比べまして累進性も相当高くできておるわけでございまして、そんなにお粗末なものではないと思っておるわけでございまして、これが十分機能しないということでございますならば、補完税の方にお願いしなければならぬことになろうと思いますけれども、いまやはり所得税で税収を上げてまいるという本格的な行き方で行くべきじゃないかと、第一に思っております。  それから第二に、富裕税を補完税として考えるにいたしましても、これはたびたび本院においても申し上げておるとおり、財産の捕捉が適確にまいらないと不公平になるわけでございまして、これは利子配当の総合課税でも申し上げておりますように、これを総合課税する場合にその所在が分明にならなければならぬことが大前提だと言っておりますように、富裕税が成功するかしないかも、やはりそれの捕捉度の成否、正確かどうかということにかかると思うのでございます。私は、ただいまのところ、日本の行政能力はまだそこまでいっていないと思うわけでございまして、そういう面から、富裕税に踏み切るという点につきましては、まだ消極的に考えております。これは金持ちを保護するというようなことでなくて、純税制的に考えまして、税務の実行面から考えましても、まだ富裕税に移るというところまで考えておりません。しかし、あなたが仰せのように、財政がいよいよ窮迫を告げてまいりまして、どうしてもそういうところまで限界収入を確保しなければならぬという状況になればいざ知らず、いま私どもといたしましては、その他の方法、いろいろじみちに努力してまいって、税収を確保する道はあるのではないかと考えております。
  368. 正木良明

    正木委員 私たちが考えておる不公正の是正、これはやはり税制改正においてはまず念頭に置いてやっていただきたいということですね。  そこで、話は変わりますけれども、総理景気回復といいますか、景気浮揚策では、公共事業中心で、公共事業の拡大と促進ということで財政的にはおやりになっていらっしゃいますね。こういう点で、総理としては、こういう公共事業の拡大と安定成長路線ということとの関連をどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  369. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま物価鎮静の方向にあることは事実ですね。何としても日本経済にとってインフレを抑制するということが最大の課題であるわけなんです。したがって、一方においては景気浮揚策を講ずるにしても、これはやはり何でも景気浮揚を講ずればいいというわけではないわけです。そこで予算の範囲内で一つ公共事業を中心にして財政面からすることが、今日の場合一番摩擦のない方法であろうということで、現在の段階では、景気浮揚策は財政面からやるということが妥当である、こういう考えで、今日まで第二次の不況対策、いずれまた六月中においてもいろいろこの問題について検討いたそうとしておるわけでございます。こういう面から景気浮揚を講じていきたいと考えております。
  370. 正木良明

    正木委員 副総理、先ほどもおっしゃいましたけれども、全治三カ年、いわば安定成長への調整期間が三年ぐらいかかるだろう。四十九、五十、五十一ですね。そういう状態の中で、公共事業を決して私は全面的に否定するものではありませんが、公共事業一本やりの形でやっていって果たして安定成長というものが成り立つのかどうか。要するに、いつまでもそういう公共事業下支え経済というか、そういう形の非常に貧弱な政策だけでいいのかどうかということなんですが、この点、どうお考えになりますか。
  371. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 景気が上昇する、これは結局、最終需要がふえてくる、こういうことに尽きるわけですね。最終需要は何だと言えば、国民の消費であり、設備投資であり、国家財政、地方財政、さらに輸出である。この四種類に尽きるわけであります。ところが、いま今日の時点とすると、国民の消費需要というもの、これは非常に沈滞しておりますが、なぜ沈滞しておるかと言うと、私の見るところでは、物価鎮静に向かいつつあるものの、どうも高い。高値安定、それに対する拒絶反応的な要素、これは非常に強い。それからもう一つの要素は、どうも世の中が大変変わりそうだ、それに対する生活順応、こういうことですね。そういうようなことで、国民消費の盛り上がりというものに景気誘導、景気浮揚の指導役を求めることはむずかしい。また消費停滞しているという中には非常にいい要素もあるのです。いい要素というのは、これは世の中が変わってきた、生活様式を変えなければならぬ、合理化しなければならぬ、こういう要素、これなんかは大事に育てなければならぬ要素でもあるわけです。それから次の設備投資ということになりますと、いま稼働率が各企業とも非常に低いようです。総平均すると七六%の稼働率だ、こういうような状態ですから、金融を緩めましても、一般的に申しまして、設備投資が起こる、こういうような状態ではない。もっとも公害投資でありますとか、特別の需要がある。それに対しましては、金融をつければそれは動き出す、そういうことは考えられます。それから輸出需要は一体どうかということになりますと、これは海外の環境、特にわが国の大きな市場である開発途上国、いま非常に経済困難の状態でありまして、そういうことを考えまするときに、なかなか輸出の前途というものにそう大きく期待することはできない。そうすると、やはり残るものは財政だ、こういうことなんです。財政の方は、プロパーの財政、固有の財政におきましては非常に財源難だ、こういう状態がある。そこで私は、プロパーの財政におきましても、いま予算公共事業におきましては七兆円だというような状態ですから、その繰り上げなんということが考えられますけれども、やはり主体は、力を持っておる財政投融資、ここに求めざるを得ないだろう、こういう見解です。しかし、ほかにこの支えになる要素はないかと言うと、金融におきましても、先ほど申し上げましたような設備投資、公害投資、なおボトルネック産業に対する融資、そういうことは考えられるわけでございますし、輸出につきましても輸出金融というようなことも考えられますが、いずれもこれは補完的で、やはり主力は財政需要、特にその中の財政投融資これに求めざるを得ないのじゃないか、そういうふうに考えておるのです。まあそういうこと以外に何か名案があるかというと、どうもそう名案もない。ただ、景気は私は底に大体来ておると見ているのです。とにかく在庫も一月、二月、三月、四月とずっと減っておる。また生産も三月、四月といって増加しつつある。それから出荷、そういう状態を見ても三月、四月、これはふえる状態にある。そういう影響を受けまして、雇用の状態も悪化は一応頭打ちの状態である。こういうような諸情勢を考えますと、何かちょっときっかけをつけると景気浮揚という事態に至るんではないか。速やかにそういう事態になるようにと言って、いまその方策をどうするか考えておるという最中でございます。
  372. 正木良明

    正木委員 おっしゃることはそれなりにわかるのです。ただ、そんなにうまくいくかどうかという問題なんですね。公共事業一本やりで、果たしてそういうことがうまくいくかどうか。不況を脱出しなければいけませんね。不況の脱出、そのためには景気浮揚策というのが必要ですね。景気浮揚していかなければなりませんね。そうじゃないと不況を克服できないわけですからね。その場合に政府が、いま副総理もお話しになったように、公共事業でやっていこうとされていますね。いま平均七六%の稼働率というものをある程度上げていくという方向になるでしょう、いわゆる景気浮揚という方向は。なぜかなれば、七六%ですから、これはかつてない不況時におけるところの稼働率だと私は思うのです。いままで不況だ不況だと言ったって、やはり八五%から九〇%台だったわけですからね。七六%なんというのは大変な不況、稼働率だと私は思うのです。したがって、金利を下げようとどうしようと、銀行の窓口規制を緩めようと、設備投資に金が回るなんということはとてものことじゃないが、まだまだ追っつかない。またそういうふうな現象は必ずしも好もしいものではないと私は思うのです。そうして片方、個人消費が、まあ総理は五四%とおっしゃったが、五一%くらいに落ち込んでいるらしいですけれども、大体五〇%を超える個人消費これは消費性向からいって、いま副総理もお話しになりましたように、買わなくなった。そうすると、個人消費稼働率の関係から言いますと、物を買わなくなったのに稼働率をどうして上げるのかということになってくる。そうすると企業が考えることは何かというと、要するに稼働率が二四%も減っているんだから、その減益を、利益の少なくなったのを製品値上げということでカバーしようとする。そうすると今度はまた売れなぐなってくる、高くなるから。こういう悪循環が起こりそうな気がするのです。そういう形でまいりますと、稼働率が上がらぬ、稼働率が上がらぬという中で、そういう縮小的な形で経済が進行していくということになると、けさの勝間田さんのときもここまで話が行きましたが、ここで重大なことはだれが犠牲になるかということなんです。これは中小零細企業であり、低収入者であり、福祉該当者なんです。こういう者の犠牲というものに目をつむったままで行かなければ、この問題はこのままでは進んでいかない、私はそう思いますね。  同時に、これは福田自治大臣もちょっと一緒に聞いておってほしいのですが、そういう、政府の非常な勢いで推進しようという公共事業が、この公共事業の主たる施行主体は地方自治体だということです。地方自治体は国から補助金をもらって、まあ超過負担の問題は別の問題としても、少なくとも地元で財源の継ぎ足しをしないと、その事業はできないわけです。そういう地元が負担しなければならないような財源というものを、いまのような地方財政の貧困さの中で、既定の事業さえ打ち切らなければならないように追い込められているような自治体の多い状態の中で、この公共事業が果たして推進できるのかどうかという問題がまたここに生まれてくるわけですね。こういうふうに考えてくると、私は政府をやっつけるというよりも、本当に心配なんです。こういう非常に矛盾をはらんだ中で、犠牲や摩擦をできるだけ少なくして、今後どういうふうに運営していったらいいのか。どうですか、副総理
  373. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ、いま大変な事態ですから、これは国民全体、各界各層、相当皆さんがその影響を受けていることは、これは私はそのとおりだと思うのです。これをどういうふうに打開するか、こう言うと、やはり一番基本は私はインフレをとめることだと思うのです。インフレになれば、これは勤労者も、あるいはいわゆる社会弱者と皆さんのおっしゃるそういう階層、これは一番困る。勤労者の立場を言いますれば、一三、四%の今度は賃金引き上げになりそうだ。しかし、消費者物価はとにかく一けた台だということになれば、実質賃金は上がるわけですからね。これが、物価がそれ以上上がっちゃったというなら、これは大変な事態ですよ。この物価安定ということは、勤労者、これには非常になくてはならぬ問題である。またいわゆる社会的弱者、こういう問題につきましては、これもやはり物価の安定ですよ。またそれで救い切れない面は国家が財政的にこれに対して援護をする、こういう対策。これは現にそういう対策をとりつつあるわけであります。そういうようなことで、諸悪の根源は何といってもこれはインフレです。インフレ対策が一番の福祉政策です。これをないがしろにして福祉政策なんというのは成り立たない。そういうふうに考えるので、それをどうして実現するか。しかも一方において、やはりある程度の景気政策もとらなければならぬ。その橋渡りを一体どういうふうにしていくかというところが非常にいまむずかしい問題でありまして、まあ一種の綱渡りみたいなことをいまやっている、これに成功しなければならぬ、こういうところなんで、いろいろ御献策があれば承りたいのです。私どももとにかく全知全能をしぼってやっておる。ひとつ御協力のほどをお願い申し上げます。
  374. 正木良明

    正木委員 副総理、私たちが要求しておったことは、景気浮揚策というものは非常になだらかな形でやらないと、物価の上昇につながってくるであろうということですね。これが先ほども申し上げましたように、まだそうでないとおっしゃるかわかりませんが、私たちの目から見ると、どうも春闘目当てにあの賃金を抑制するということにすべてを集中して、そういうなだらかな形での景気浮揚というのは、遅くとも去年の暮れぐらいからずっとやり始めなければならなかったのを、それをやっていなかった、ここに私は一つの問題があると思うのです。そうしていま春闘後、政府がお考えになっているような形で賃金の抑制ができた。したがってこの後景気浮揚だと言ったって、そう簡単には景気浮揚なんというものはするものじゃないわけです、いまここまで冷え込んでしまいますとね。それを公共事業一本でやっていこう。しかも第一次、第二次不況対策においては、公共事業の年間の六〇%ないしは六六%というものを上半期で契約してしまおうという急激なやり方でしょう。そうなってくると、これまた下半期で景気が失速するということを警告している銀行もございますけれども、それは別の問題として、そういう形で急激な公共事業の推進というのが片方にずっと出てきたときに、それを受ける余力が地方自治体にもないし、これを仮に起債で補てんしてやって、地元負担というものをカバーしてやったとしても、こういう急激な公共事業の出し方をすると、これは建築資材から何から値上がりするのはもう目に見えているわけですよね。  私が言いたいことは、こういう公共事業一本じゃなくて——確かに個人消費の性向というものは、いままでのように金さえあれば何でも買うというような状況でないかもわかりませんけれども、しかしそういう中で、最近の総理府の家計調査なんか見てまいりますと、第一分位層と第五分位層 第一分位層か低収入です、第五分位層が高収入の方でございますが、これで見ると、やはり第一分位層というものの消費能力というものはずっと落ちているのです。この落ちている理由というのは何かと言えば、一つは買わないようにしたからということがあるかもわかりませんが、買えない状態もあるということです。したがって、どうしてもやはりやらなければならないことは、こういうときには、当然やらなければならない本来の目的の政策と、それに景気浮揚策が乗っかるような政策というのが一番いいと私は思うのですよ。そういう意味から言うと、公共事業必ずしも捨てたものではなくて、ああいうでっかいプロジェクトの公共事業ではなくて、いま社会資本のおくれが非常にはなはだしい現在においては、学校だとか、公営住宅であるとか、保育所であるとか、福祉施設であるとか、下水道であるとかという、国民生活に全く密着したものにきわめて限定した形で、そうして公共事業をやっていく。そうすると、本来社会資本の不足を補うためにやらなければならない政策の上に、景気浮揚という形のものが乗っかる。  もう一つおくれているのは社会保障です。したがって、この際、たとえば老人年金なら老人年金一つを取り上げて、これをいまの財政の中で、いまの積立方式でやっていくのはなかなか困難でありますから、これを修正賦課方式というような形で年金をふやしていく。要するに、非常に下の部分に対して、下の層で生活が困難な状況の人たちにその金が回っていくという形で個人消費を興していくという、私はだれが考えても、この二通りのものをやらなければならないだろうと思うのです。片方のやつを完全に手を抜いてしまって、公共事業一本やりでやっていこうとするところに、私は大きな無理があるのじゃないかというふうに思うのですが、こういう点、副総理どうですかね、ぼくの考え方は。
  375. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 正木さんのお考え、ある程度理解できますよ。できますが、公共事業といいますと、どうも大規模プロジェクトみたいなことを頭に置いて言われておるような感じがするのです。そうじゃないのです。私どもが一番とにかくこの際やったらいいだろうというふうに考えておるのは住宅なんですが、これはまあ景気に対する波及効果が非常にまんべんなく行き渡るというメリットを持っておりまするし、またそれに関連して下水道だとか上水道だとか、いろいろそういう問題も起こってくる。まあそういう形で、住宅ばかりじゃありませんけれども、われわれの生活に密着した部面の公共事業、こういうようなことをまず考える必要があるだろう。そういうものを中心にして考える。しかし、おっしゃるような急激な景気上昇、こういうようなことにつながるようなことがあっては、これはまた物価問題上大問題でありますから、そういうことは考えません。やはり景気浮揚といたしましても、これはなだらかに、物価に悪影響を及ぼさざる限度においてやらなければならぬ。また住宅をやるにしても、木材の需給は一体どうなのだ、セメントの需給はどういうふうになっていくのだろう、いろいろな手当て、また対策、そういうものも考えながらやっていかなければならぬ。そういうものでありまして、まあ、やるにいたしましても慎重に注意深く、とにかく物価一けた台は、本年度内にはこれを実現をしなければならないということを旨といたしましてやっていきたい、かように考えます。     〔谷川委員長代理退席、湊委員長代理着     席〕  なお、福祉諸政策につきましては、予算の面におきましてもかなりのことを考えておる。また年金制度の大改革、これなんかとても時間がかかりまして、そう簡単にはできませんけれども、情勢変化がある、こういうようなことになれば、どうしても社会的に弱い立場の人の対策、これは考えなければならぬことである、さように考えます。
  376. 正木良明

    正木委員 その御答弁の中から二つ、もう一度お聞きしたいことがあります。  一つは住宅ですが、確かに副総理のおっしゃるように、住宅の経済的波及効果というのは一番大きい公共事業でしょう。だからこれをおやりになるということには決して反対ではありません。この場合、副総理がお考えになっているのは、要するに自力建設の住宅という方向をお考えになっているのか、それとも公営住宅という方向をお考えになっているのかということが一つです。  もう一つは、福祉の問題はこれは決断の問題でありまして、結局の話が、野党から四党共同提案で年金の改正法案というのはもう国会に出ておるのですよ。あれを、要するに総理以下皆さん方が「うん」と決断をさえずれば、そんなに大きな財政負担ではなくて、そういう下の層へずっと金が回っていくという仕組みになるのです。これもひとつぜひお考えいただきたいと思いますね。  この住宅問題をお答えいただいて、それに関連して続いて申し上げたいことがあります。
  377. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 住宅につきましては、まだそういう具体的な詰めはいたしておりません。これからその詰めに入るという段階ですが、一番考えられますのは個人住宅、これは非常に需要が多いわけでありまして、住宅金融公庫、これなんかは融資の発表をしますと即日満席になり、かつ収容し切れないと、こういうような状態でございますので、そういう方面なんかは考えられる問題だろうと、こういうふうに思います。  なお、公営住宅をどうするかとか、そういう問題は建設省で十分検討いたしまして、そういうものに着手するかしないか結論を出さなければならぬと、かように考えております。
  378. 正木良明

    正木委員 建設大臣、いまのことで……。景気浮揚策として、住宅が非常に経済的な波及効果が多いから、住宅をやりたいという副総理のお話で、それを自力建設でやるのか、公営住宅方式でやるのかということです。
  379. 仮谷忠男

    ○仮谷国務大臣 いまの景気浮揚策として一番私の方が力を入れているのは、やはり住宅金融公庫の貸付枠、これは御承知のように四月二十八日に受け付けをして、上期八万戸の予定が十三万戸一挙に来たということで、大変な期待があるわけです。これをぜひひとつ、これは上期で処置をして、さらにできれば下期で枠の拡大をしていきたいというのです。これは金利の問題等もありますけれども、私どもは、金利は据え置きにして枠を拡大するということで、大蔵省といま折衝をいたしておるわけであります。  公営住宅の面は、御承知のように各自治体がそれぞれ責任を持ってやっている問題でして、これは関連公共関係で、実は余り思わしく伸びていないわけでございます。特に東京都あたりは、御承知のとおり本年度は一万戸が、まだ建設省が配分も持っておりますけれども、まだそれをやるかやれぬか、きのうの新聞を見ますと、八千戸何かやることにしたということを聞いておりますけれども、特に大都市を中心にしたところの公営住宅の伸びが非常に悪いということ、これにはそれなりの事情がいろいろありますから、これに対しては私どもさらに新しい方策を考えなければならぬと思っております。  公団住宅は、これは予定どおり進めておりますが、公団住宅のあり方についてもいろいろと議論されておるところでありますから、第三期、五十一年度からは、むしろ公団住宅も賃貸住宅を重点にして考えていきたいといったようなことで進めておるわけでありまして、当面としては、予算の範囲内でできる限り早期発注をやって、できる限り伸ばしていこうというのが現在の状態でございます。
  380. 正木良明

    正木委員 地方自治体が困っていることは、要するに、その公団住宅にしろ公営住宅にしろ、建設することには決してやぶさかではないのだけれども、土地が非常に入手難であるということと、そういう大規模な団地がやってきたときの、その関連公共施設に対して、国が余り手当てをしていないということが一つの大きながんです。要するに、それだけ金を入れても、なかなか超過負担の問題等もあり、その投資の割合には住民税が上がってこないというような問題があったり、旧市内とその団地との大きな格差があったり、いろいろな問題があるわけです。したがって、副総理、簡単に住宅と言うけれども、なかなか簡単にはいかないわけです。そういう点は、私が申し上げているのは、そういう一つのものをやるのはそれだけでいいというのじゃなくて、そこに派生してくる周りの問題をすべて解決してやらないと、こういう状況の中で進んでいかないということなんですね。  それで、先ほども七兆というお話がありましたし、大変な公共事業が出てくると思うのですが、そういう公共事業を受けることのできるのは、特にもう大規模のプロジェクトはやらないんだという副総理のお話ですから、これは国民生活関連公共事業になるでありましょうから、国民生活関連公共事業ということになると、そのほとんどは地方自治体が事業主体にならなければならぬ。そうすると地元負担が要る。そういう負担に耐えられるかどうか。同時に、地元負担はどういう方途で調達を自治大臣として閣内でお考えになっていらっしゃいますか。
  381. 福田一

    福田(一)国務大臣 本年度に予定されております公共事業については、これはもうすでに地方財政計画で案ができておりますから、十分、たとえば税収がなくなったとかいろんな問題、収入減が起きても、その分についてはやはり私らは何としてもその収入を確保するように努力をしたいと思う。  ところが、いまあなたのお話しになっておりますことは、今度は新しい仕事をやった場合にどうなるかという御質問だと思うのでありますが、そのときはやはり当然公債、地方としては財投あるいは公債というようなものを国からめんどう見てもらわなければ、いまの地方公共団体として、何らかの財源を持ち出すというか、つくるということは困難だと思います。だから、国がそういうことをやります場合には、地方財政のそういう非常に困難な面もあわせて考えて計画をつくってもらうということを、われわれとしては、自治省としては主張しなければならない、こういうふうに思っております。
  382. 正木良明

    正木委員 総理、いまの問題、総括してお答えください。
  383. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 各大臣が申しておるように、公共事業といって、生活関連ということになれば、地方自治体というものが主体になるわけです。これに対しては、いま自治大臣も話しておりますように、いままでのところは財源の処置はできておるわけですが、今後地方財政というものもなかなか容易ならざるものがありますから、こういう点で、公共事業を消化していくためには、地方財政というものも頭に入れながら、それが消化できるような方法を講じていかなければ、それが景気政策の一環にはなり得ないわけですから、十分な注意を払わなければならぬと思っております。
  384. 正木良明

    正木委員 副総理、先ほどもちょっと触れましたけれども、九・九%の責任ですが、果たしてその九・九%、今年度末で抑える自信がおありになるかどうか。ざっと計算してみましても、私たちは断固反対いたしますけれども、仮に上がったとして、酒、たばこ、麦、私鉄、鉄鋼その他一般製品がメジロ押しで値上げを待っておりますね。これも財政問題から言うと、逆ざや現象をできるだけなくそうとすると、やはり消費者米価を上げざるを得ないでしょう。国鉄も赤字で、値上げを待っている。そういうふうに考えてくると、ざっと頭の中にいま浮かぶだけの問題をさらってみても、九・九%のうち三・五%食った後、あと十カ月、九・九%でおさまりますか。
  385. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 結論から言いますと、自信を持ってやっていきたい、こういうふうに考えています。ことしの物価、これは、環境は昨年と比べると、もう比べるべくもなく私はいいと、こういうふうに見ておるんです。いまも需給インフレじゃありません。コストプッシュ、これが物価を押し上げている。その最大の要因は、これは何といっても原材料でしょう。その次は人件費でしょう。その次は公共料金でしょう。それからその次は金利負担、こういうものです。  そういうことを一つ一つ点検いたしてみましても、原材料の浮動要因は、何といっても外国からの輸入価格であります。これは去年はずっと上がり続けたものが、ことしはとにかく大体頭打ちです。資源関係のもので微騰の勢いのあるもの、これは幾つかあります。ありますけれども、逆に農作物なんかはこの半年の間に半値あるいは半値以下というようなものが多いわけであります。そういう海外要因というものは非常にいいです。  それから第二の大きな要素、これは消費者物価には特に大きく影響しますが、賃金、去年は三二・九%だった。ことしは一三・四%だ。これなんか比較にならない大きな変化でございます。  その上、公共料金につきましては厳に抑制をする、こういう方針ですね。それでいまお話がありましたが、国鉄なんかいま考えておりません。また電信電話、これも差し迫った事情がありまするけれども、これを差し押さえる、こういうようなことをしておる。去年はどうだった、こう言えば、六月には電力料金が業務用は七割上がった、家庭用も三割上がった。ガス料金も同様に上がっておる。国鉄、私鉄あるいはバス、トラック、タクシー、これはずっと皆上がったわけです。米価のごときは三二%上がっておる。そういうようなことで、去年の一四%消費者物価上昇の中で、これは机の上の話でございまするけれども、押し上げる要因は公共料金だけで三%を超えるという状態だったんです。ことしは抑制政策をとった結果、ただいま申し上げたような状態で、郵便料金が上がる、これは〇・二%である。酒が上がる、〇・一%だ。それからたばこはちょっと大きいんですが、〇・六%だ。合わせても〇・九%です。あと米をどうするか、麦をどうするか、こういう問題がありますが、それはまあまあ考慮いたしましても、公共料金要素は昨年の大体半分以内だと見て差し支えない、私はこういうふうに思うのです。  金利はどうだ。一昨年の暮れ、公定歩合は二%引き上げになって、その影響は三ヵ月置き、六ヵ月置き、ずっと昨年影響し続けてきたわけでございまするが、ことしはとにかく二回にわたって公定歩合引き下げが行われる。なお今後といえどもその引き下げの余力を持っておる、こういう状態でありますので、これもいい。  私は、黒一点というか、非常に心配される一点があるんですが、それは企業の収益状態が悪化しておる。それで企業側で、すきあらば値上げをしたい、こういう動きになってきておる、この点なんです。この点について、これはどうしても備えるところがなければならぬ。これはいま価格は大体において自由料金でございまするから、これはやはり基本は企業側の自粛にこれを求める、こういうことだろうと思いますが、企業側も、ことしの物価問題というものは非常に大事な問題である。特に春闘においてなだらかな解決ができたということ、これは労働組合の理解だ、この理解の結果こういうことになったことについて、企業側もまた責任を持たなければならぬということを非常にいま徹底しております。  同時に、政府におきましては、すきあらば値を上げようという、そのすきを与えてはならぬというので、景気政策はとりますけれども、しかし総需要管理政策のこの姿勢は堅持してまいる、こういう考えです。それから、主要な物資につきましては、需給の状態また価格の状態、これは厳重に目を光らせまして行政指導をしてまいりたいと、こういうふうに考えておりますので、私は、いま申し上げました企業値上げの動き、この問題だけちゃんとできれば、これはもう一けたの目標は十分達成できる、こういうふうに考えて、ぜひともそういたしたい、かように考えております。
  386. 正木良明

    正木委員 すきあらば——ぼくはそのすきは、一つ公共料金にあると思いますよ。要するに、政府値上げするのに、どうしておれたちが値上げしちゃ悪いという考え方が歴然としてやはりあるのですよ。だから、すきは公共料金値上げにあるというような感じがします。  それと同時に、いま副総理も毅然としておっしゃいましたが、九・九%に絶対抑えてみせる、また同時に政府はその責任があるとおっしゃいましたが、いろいろと酒やたばこの値上げに対する物価上昇の寄与率もおっしゃいましたが、大体いつも低目に計算なさるので、これをいま議論してもしようがないのです。これからのことですから、議論してもしようがない。ただ、一点だけ確かめておきたいことは、要するに春闘をああいう状態にまでして大きな責任の生じた政府物価政策について、もし仮に昭和五十一年三月三十一日現在、前年比九・九%を上回るような消費者物価の上昇があったときにはどうなさるかということです。
  387. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 さようなことのないように、全力を尽くします。
  388. 正木良明

    正木委員 あったらどうしますか。
  389. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 あったときどうするかというような、そんなあやふやな及び腰では、この困難な物価政策はできません。万難を排してこれを実現をすると言うにとどめます。
  390. 正木良明

    正木委員 回しことを総理にお伺いします。
  391. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは容易ならぬものがあると思いますよ。しかし、やはり今年の春闘の状態などを見て、政府は重大な責任を持っている。ああいうふうに春闘がなだらかにいった背景の中には、政府物価政策に対する決意というものも大きく反映をしておるわけですから、政府は従来にも増して責任を勤労大衆にも負うておるわけですから、これは万難を排してこの目標達成のために、国民の協力も得なければならぬ。そして、達成をするために、物価政策というものに対しても誤りなきを期していきたい。もうこれを実現するということで、責任とかいうことまでに頭が——そういうふうなことまでどうするかということではなくして、これは実現をするために鋭意努力する、それ以外には政府はいま考えるいとまもないというのが現状でございます。
  392. 正木良明

    正木委員 私が心配しますのは、確かにそういう状況になりましたら、その徴候は年が明けてから出てくるというよりも、むしろこの秋ごろにもうすでに出てくるでしょう。そういうときに、政府の方は、きわめて労働側の良識ある態度によってなだらかな解決を見たなんて気楽なことを言っていますけれども、労働者側は、総資本と総労働の対決において総敗北したという意識が強いです。そういうときに、一応物価政策というものが三木内閣の手によって当初の約束どおり実現しないというような情勢になったときに、私は、この秋の、春闘にかわるべき秋闘というような問題が起こってくるのではないかという気がいたします。そういう状況というものは、やはりそれは労働者の怒りでありますし、これはやっぱり責任上それを受けなければならぬし、それを解決しなきゃなりません。私は、そういう事態になることを決して好ましいと思っておりません。したがって、そういう事態にならないようにしていただきたいために、厳しく申し上げたわけですから、その努力を懸命に続けていただきたいと思います。できないときは、できないときの責任追及はまた別なときにやりましょう。  それと同時に、総需要抑制政策を続けていく、ある意味では結構です。しかし、そういう形で高度成長から安定成長への転換期において非常な矛盾が生じてくるのは、私もわかりますけれども、インフレの時代でも、こういう不況、デフレの時代でも、いつも犠牲になるのはだれかということなんです。いま、インフレで犠牲になったのは中小企業やいわゆる社会的弱者だと副総理おっしゃいましたが、デフレの状態の中でも、やはりしわ寄せはそういう人たちのところへ、そういう企業のところへ来ていることは事実なんです。これははっきりと認識しておいていただきたいと思います。したがって、そういう摩擦やそういう犠牲をできるだけなくするという形で、今後の政策というものは進められていかなければならぬのです。もう時間がありませんから多くを申し上げませんけれども、それだけはどうかひとつ心に銘じて、これからの国民生活のためにがんばっていただきたいと思います。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、防衛庁長官いらっしゃいますか。この間、今後の防衛費についてはGNP一%以内に抑えるということを答弁なさいましたですね、そのことをちょっとおっしゃってください。
  393. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 わが国の防衛というものは、やはり外交、経済、民生安定という大きい安全保障という立場から、防衛力の漸増ということを考えていかなければならない。したがって、やはり民生の安定ということは非常に大事なことでございまして、著しく民生を圧迫するようなものであってはならない。また、外に向かいましては、他国に脅威を与えるというようなものであってもならないというような意味合いにおきまして、GNPの一%以内ということを申し上げた次第でございます。
  394. 正木良明

    正木委員 いまの防衛庁長官の答弁のように、GNP一%以内に防衛費を抑えるというお考えは、総理大臣も同様でありましょうか。
  395. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 現下の情勢からして、一応の目安としては、妥当な感じがいたします。
  396. 正木良明

    正木委員 一%前後じゃなくて、一%以内ですよ。よろしいですね。  時代は変わるとおもしろいもので、高度成長の最中に、一%じゃ多過ぎる、という、それは何とか一%以内にという田中総理大臣の答弁がございましたが、この防衛費というものはふやしていくと非常に大きな問題が残されてくるだろうと私は思うのです。  そこで、総理は八月訪米されますね。先ほどもちょっと問題になりましたが、日米防衛分担の問題で、シュレジンジャー国防長官が、日本の防衛はやはり日本がある程度責任を持たなければならぬということを記者会見で申しておりますが、これは日本に直接は、何%とは申しておりませんけれども、大体、彼の考えているのはGNPの三%ぐらい負担するというような状況のようにわれわれは考えられますけれども、八月訪米なさったときにこの問題が出たときに、少なくとも日本の防衛費は一%以内に抑えるんだということをアメリカに明言できますか。
  397. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 シュレジンジャー国防長官がGNPの三%を、自分みずからの国を守るための努力目標として考えるべきだと申しましたことは事実でございますが、それはあの文面を読みますと、一応ヨーロッパ諸国に対して言った言葉だと私は承知をいたしております。
  398. 正木良明

    正木委員 ですから、私が申し上げているのは、日本には直接そうは申しておりませんが、と言っているのです。だが、そういうふうに言われる、要求される様子というものがあるわけです、空気というものが。したがって、八月、向こうで首脳会談のときに、日本の防衛費を強化しろということで、一%を超えるというような案が出されたときに、それは一%を超えるような防衛費の負担はできぬということをはっきり言われるかどうかということです。
  399. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まだどういうことが話し合いをされるだろうということの予測はいたしておりませんが、いろいろな問題について率直に話し合ってみたいと思っておりますので、この場合にこう言う、あの場合にこう言うと、そういうふうなことをいまいろいろ準備しておるわけではないわけです。率直な話し合いを、いろいろな問題についてしたいということでございます。
  400. 正木良明

    正木委員 いや、私もわからないのです、それは。わからぬのですが、もしそういう話になったときに、いまここで答弁なさったように、GNPの一%以内に抑えるということを、アメリカ側にはっきり答えてもらいたいと私は思うのですが、それはどうですか。
  401. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 もしそういうこと——どういうことになりますか、これから実際のいろいろな打ち合わせもあることでしょうが、いまのところ、まあどういうことになるかということで、もしもこういう問題が出たらどうする、こういう問題が出たらどうする、こういうふうにはいまは考えてないわけですが、あらゆる問題について、日本の国情、国益を踏まえて、率直な話し合いをしたいということだけ、いま申し上げられるのは、そういうことでございます。
  402. 正木良明

    正木委員 そういうことは結構なことなんです。率直に話し合っていただきたいと思います。率直に話し合うということは、国会で、いわばいまお約束なさったことを、もし仮にそういう話が出たときには、実行していただきたいということです。よろしいでしょうか。
  403. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 まだ会談もしてないときに、ここで何を言う、かにを言うということは申し上げられませんが、とにかく私の考えておることを率直に述べたいということは、そういう考えでおります。
  404. 正木良明

    正木委員 何かちょっときょうは違いますね。同じことを何遍もさっきからおっしゃっているし、金子さんのときにも、まあよく頑張られたと、私は敬服をいたしておりましたが、はっきり申し上げて三木総理、私はあなたを助けるために言っているのですよ。恐らくそういう要求が出てきたときに、私はもうすでに日本の国会で一%以内でおさめなきゃならぬということを明言いたしましたから、御要求には応じるわけにまいりませんというふうに言えるように、私は計らってあげているのですよ。それでもなおかつだめですか。
  405. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ想定問答のようなものを用意して、ここでああ答える、ああ答えるというようなことは申し上げませんが、私は、私の考え方に基づいて、国会でいろいろ答弁しておるのですから、私の考え方を率直に述べたいということでございます。
  406. 正木良明

    正木委員 国会に約束したことをほごにするような総理じゃないということで、信頼しておきます。  防衛庁長官、先ほど楢崎委員から次期戦闘機の話がございましたね。これは念のためにお聞きしておきたいのですが、この間、六月八日付の毎日新聞で、三菱重工が独自に次の次、次々期の主力戦闘機、FX−Xと言うんだそうですが、これの採用を目指して新機種の開発に着手したということが報道されているのです。政府はこういう事実を承知しているのかどうかということです。まだ将来の問題にしろ、主力戦闘機の国産化の計画というのはお考えになっているのかどうかですね。
  407. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そのことは承知をいたしておりませんが、装備局長から念のためにお答えを申し上げます。
  408. 山口衛一

    ○山口政府委員 いまの御質問にお答えいたします。  八日の新聞を見ましたところ、具体的には新戦闘機の開発に着手したというふうに書いてありますが、私どもこれまで三菱重工の実情を知っておりますが、正式に言いますと、現在開発に着手したというような正式な事実はございません。(正木委員「ございますですか。」と呼ぶ)ございません。  それから、その中に「FXについて二十人の設計陣からなるプロジェクト・チーム」が組織されているという、この二十人のプロジェクトチームというのも現在ございません。それから「四十四年ごろから開発設計に取り組み」とありますが、これは特に四十四年という時期について私ども感じられるのは、F4の第一次契約の時期だと思いますが、まだその段階では、F4自体の試験、検査等がありまして、その時期にとてもこのような状態になったとは考えておりません。  それからもう一つの青写真ができているというふうに書いてもございましたが、これにつきまして、とてもまだ青写真段階ではないというふうに考えております。  ただし、この関係会社で、航空機の主力のメーカーでございますので、研究というような状態は、いろいろな面から続けておるというふうに聞いております。  以上でございます。
  409. 正木良明

    正木委員 まあ事実がないなら、これ以上の議論の余地はないわけですが、問題は、こういう戦闘機なんというものは、これはどこにでも買うところがあるというわけのものじゃないのです。これは防衛庁が買うよりほか道はないわけですよね。ところが、これだけの膨大な設備投資をして、そうしてどんどんつくり出すということになってまいりますと、先ほど申し上げたように、GNPの一%で抑えられている防衛費の中で、防衛庁が調達できる数量なんて知れたものでしょう。これはもう必然的に武器輸出につながってくるという心配があるわけですね。なければ結構なんです。なければ、そのことは結構なんですが、しかし、今後の産業構造の転換等の問題も考え合わせて、いまヨーロッパの諸国では武器輸出の競争が起こっているぐらい激しい売り込み合戦が行われておるわけでございますが、こういう形のことで、日本はやはり平和国家として、将来ともにこの武器を輸出するということは厳に戒めなければならぬと私は思うのですが、通産大臣、どうですか。
  410. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最近三カ年ばかり、外国に対する武器輸出はほとんどありません。
  411. 正木良明

    正木委員 いや、事実があるかということではなくて、今後の決意を聞いているのです。
  412. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そういうふうに実績はありませんが、この申請が仮に出た場合に、これをどう処理するかということでございますけれども、これは貿易管理令の運用によりまして善処することになっておりますが、大体三つばかりの原則をつくりまして、その原則に従って処理することになっております。  ただしかし、さっきから申し上げますように、過去三年間の例をとってみますと、ベルギーとの間に、小銃を二丁ばかり研究用に交換をしたという実績があるだけでございまして、全然輸出の事実はないのです。そういう実情だということを御理解賜りたいと思います。
  413. 正木良明

    正木委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、産業構造を転換しなければならぬ、これは福田総理の御持論でもあるわけですが、知識集約型産業、これは宿命的にそうならざるを得ないであろう。とすると、知識集約型産業というものはきわめて限定されてくるわけです。その中で近代科学の枠を集めた先端を行くものは何かというと、やはり兵器類です。特に日本の電子技術なんというのは非常にすばらしいものがありますから、これが兵器に使われるということは容易に想像ができることですね。  したがって、私が非常に必配するのは、先ほども総理は平和のための諸原則ということをおっしゃいましたが、その平和のための諸原則の中に、やはり日本は平和国家として武器を輸出する国家ではないのだということを、少なくとも基本方針の中にきちんと入れておかなければいかぬのじゃないかという感じがするわけです。  公明党はこのことについては非常に関心を持っておりまして、従来から何回も国会へ武器輸出禁止法という法律案を提出しているのですが、いまだになかなか日の目を見ないわけなんですけれども、それを成立させたいという気持ちと同時に、どうかひとつ通産大臣の決意として、今後も、一切武器輸出は、日本が平和国家であるということにおいて、行わないという確信のほどを承りたいと思います。
  414. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 武器輸出を一切やらぬということをここで言明するということは、これは言えないわけでありますけれども、ただ、運用の面といたしまして、非常にシビアな運用の基本原則を設けておりますし、かつまた、実績から言いましても、先ほど申し上げましたような実情でございまして、申請が出た場合には、これまで決めております原則に基づきまして、個々に処理をする、こういうことでございます。  ただしかし、一切禁止するということにつきましては、いまここで私が言明する限りではない、こう思います。
  415. 正木良明

    正木委員 通産大臣の立場としては、将来ともに武器輸出をしないということはここでは明言できないというのですが、総理、どうですか、平和の諸原則の一つだと思いますが。
  416. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど申し上げましたように、この武器輸出認可申請をしてまいりましたときには、貿易管理令の運用で処理するということを申し上げましたが、そのときの三原則ということを言いましたけれども、三原則といいますのは、共産圏には輸出しないとか、あるいは国連で輸出を禁止している国に対しては出さない、あるいはまた紛争当事国または紛争のおそれのある地域には輸出しない、こういうような三原則をつくりまして運用をしてきたわけでございます。  韓国に対しましては、これと別個の原則がありまして、別の形で韓国には出さない、こういうことになっております。
  417. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 武器の製造輸出に関する規制については、いま言った武器輸出の三原則もあって、制約を受けておることは事実でございます。  また製造した武器を輸出することを禁止するという規制はないわけですけれども、日本の平和国家であるという立場から考えて、武器を輸出産業に育成するということは好ましいことではないと私は考えておりますから、武器を大々的に輸出するような、そういう方針はとらないことにいたしたいと思っております。
  418. 正木良明

    正木委員 時間がありませんから、それで精いっぱいでしょう。  最後に総理にお伺いしますが、私は、今後の経済運営や物価対策について質問いたしましたが、この中で一つの大きな柱は独禁法だと思います。  それで、現在商工委員会でこの独占禁止法案を審議いたしておりますが、私はこの前の予算委員会で質問したときに、結論的に言って、修正に応じてもいい、必要があるならば修正に応じようということをお答えいただいたのですが、参議院では二十日間の審議が必要だということを言っているわけです。そうすると、どうしても今週中にこの独占禁止法案を衆議院で上げなければいけませんね。いまの情勢だと、野党の修正に応じるか、強行採決か、二つの道しか残されていないのですが、どうお考えですか。
  419. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 独禁法の改正法案というものは、これはぜひともこの国会で成立させたい。それは国民の側から言っても、やはり今後の日本の自由経済体制に一つのルールをつくって、そのことが直接にすぐに消費者と関連を持たないにしても、最終的に利益を受ける者は消費者であることは間違いない。なぜならば、自由競争の機能が完全に働くことは、独占とか寡占とかやみカルテルということを排除するわけでありますから、そういう点で国民の利益にも合致するわけでございますから、皆各党としていろいろな御意見はあると思いますけれども、しかしこの法案を不成立に終わらすということになれば、この成立を期待しておる国民の期待にも沿わないわけでございますから、国会において与野党が一致すれば、修正は常に可能でございます。やはり、この法案は国民の強い要請も背景にあるということに思いをいたして、もうわが党の言うことが一〇〇%通らないから反対するという、オール・オア・ナッシングではなしに、やはり満足といかないまでも、相当な前進があったならば、これを成立さすという見地に立って、野党の皆さんにも協力をしてもらいたい。それはいま正木議員が指摘されたように、日にちは少ないですよね。予算委員会も——これで私が言いましたね、予算委員会はまことに重要な国政審議でございますが、なかなか気が気でないのですね。そういうことでいろいろな制約を受けて、短い会期がまたいろいろな必要もあるわけでございますから、各党が少しでも前進さすということが議会政治のあり方である。どうかこういうことに徹して、御協力を切に願いたいと思うわけでございます。
  420. 正木良明

    正木委員 これで最後にしますから。  これは、総理、おっしゃることはよくわかります。わかりますが、それはもうそのままお返ししたいわけです。その御答弁をそのままお返ししたい。要するに、商工委員会において少しでも前進する修正に応じられることを私たちは念願し、そのことによって国民の期待にこたえていきたい、このように考えておるわけです。これはもう答弁要りません。  非常に長い時間、遅くまでありがとうございました。
  421. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十日、午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時五十二分散会