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1975-02-18 第75回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十八日(火曜日)    午前十時開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 小山 長規君 理事 竹下  登君    理事 谷川 和穗君 理事 湊  徹郎君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君       植木庚子郎君    大久保武雄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    倉成  正君       黒金 泰美君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       瀬戸山三男君    田中 龍夫君       谷垣 專一君    塚原 俊郎君       根本龍太郎君    野田 卯一君       前田 正男君    松浦周太郎君       森山 欽司君    阿部 昭吾君       阿部 助哉君    石野 久男君       岡田 春夫君    柴田 健治君       嶋崎  譲君    多賀谷真稔君       楢崎弥之助君    堀  昌雄君       村山 富市君    湯山  勇君       和田 貞夫君    青柳 盛雄君       田代 文久君    中川利三郎君       石田幸四郎君    瀬野栄次郎君       安里積千代君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         科学技術庁研究         調整局長    伊原 義徳君         法務省刑事局長 安原 美穂君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局次         長       野村  豊君         外務省条約局長 松永 信雄君         大蔵大臣官房審         議官      旦  弘昌君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         国税庁直税部長 横井 正美君         文部大臣官房会         計課長     宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         文部省大学局長 井内慶次郎君         文部省学術国際         局長      木田  宏君         文部省管理局長 今村 武俊君         厚生省公衆衛生         局長      佐分利輝彦君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      上村  一君         厚生省保険局長 北川 力夫君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         海上保安庁次長 隅  健三君         労働省労働基準         局安全衛生部長 中西 正雄君         労働省職業安定         局長      遠藤 政夫君         自治大臣官房審         議官      山下  稔君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     柴田 健治君   堀  昌雄君     嶋崎  譲君   野間 友一君     中川利三郎君   正木 良明君     瀬野栄次郎君   矢野 絢也君     石田幸四郎君 同日  辞任         補欠選任   柴田 健治君     和田 貞夫君   嶋崎  譲君     村山 富市君   石田幸四郎君     矢野 絢也君   瀬野栄次郎君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   村山 富市君     堀  昌雄君   和田 貞夫君     岡田 春夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十年度一般会計予算  昭和五十年度特別会計予算  昭和五十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和五十年度一般会計予算昭和五十年度特別会計予算及び昭和五十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行います。柴田健治君。
  3. 柴田健治

    柴田(健)委員 「農産物需要生産長期見通し」ということで農林省が出した今度の案の中を検討してみて、どうも理解のできないところもあるわけでありますが、まず私は、こういう見通しを出す場合に、政府としてどういう認識を持っているのかということがわれわれ十分理解できないという点からお尋ね申し上げたいと思うのです。     〔委員長退席湊委員長代理着席〕  いまの時点、そして五年先、十年先に、本当に食糧問題としてこの日本危機が来るのか、本当に食糧不足という問題を深刻に受けとめてこういう案を立ったのかどうかという点をまず農林大臣に聞きたいのですが、見解を述べていただきたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 「農産物需要生産長期見通し」につきましては、農政審議会需給部会におきまして御検討いただいておったわけでありまして、それに対して、農林省としての今後の農産物の推移を試算の形で提出をいたしました。それをもとに中間報告がなされておるわけでございますが、農林省としては、この数年来、世界食糧情勢変化をいたしまして、非常に豊富であった食糧供給がこの数年来不足がちになってきておる。これは、穀倉地帯における不作であるとか、あるいはまた、ソ連等大量買い付け等もあったわけでございますが、同時にまた、世界的に見れば、世界人口の今後の増加、さらにまた、世界における生活水準向上、それによるところの畜産物の消費の増加等考えますると、今後世界における食糧情勢というものは恒常的に不足をしていくのではないか、こういうふうな見地に立ちまして、わが国農政といたしましても、やはりまず第一には、国内における自給力を高めていくという体制をつくっていくということが第一義であると思います。  第二番目は、やはりこうした世界的な食糧の事情の変化の中にあって、今後やはり自給できない農産物については、安定的な輸入ができる、こういう体制をつくっていかなければならない。そういう意味におきまして、今後十年間という長期的な視点に立って農政を進めていかなければならない、そういうふうな考え農政審議会に諮問をいたし、そして中間報告を求めておるわけでございまして、さらに農政審議会としては、総会において御結論を出されて御答申があるものと考えておりますが、この御答申を受けて、われわれとしては、先ほどから申し上げましたように、世界食糧情勢、さらにわが国における農政上の変化を十分見きわめながら、今後の総合的な食糧政策を打ち出していきたいと考えておるわけでございます。
  5. 柴田健治

    柴田(健)委員 農林大臣の言い分を見ると、まだ受けとめ方というのが非常に十分でないという気がいたすわけです。もう少し食糧問題を真剣に受けとめるべきでなかろうか。国際的、国内的、そしてそれぞれの国の人口増というものを考えながら、まして日本人口増一・一%の伸び率、それらを含めて、国内日本列島が持っている宿命的要素というものをもろもろ考えた場合に、もっと食糧問題に対して危機感を持つべきではなかろうか。そういう危機感を持った上に、もっと具体的に自給率向上というものに英知を使うならば、こんな数字は出てこないという気がするわけですが、その認識の度合いというものが、われわれとは大きく食い違っておるという気持ちを私たちは持っているわけです。  そういう認識を新たにしてもらうという点をつけ加えて、まず、私たちが心配するのは、直接食糧というのではなくして、間接食糧と言われるこの畜産物飼料穀物なんですが、この飼料穀物に対して、いままでは国際分業論という形だった。いま安定的供給論に変わったけれども、中身は依然として国際分業論だということが言えると私は思う。そうしてこれから飼料穀物について安定的な供給ということが自信を持って言えるのかどうか、私たちはその点が非常に心配をいたしておるのでありまして、いままでの輸入あり方を見ておると、日本の場合は、やはり自由品目だという安易な考え方に立っている、そうして一つ商品だというお考え方。ところが世界の中で、アメリカのような食糧をたくさん持っている国というものは、もう戦略物資として位置づけておる。よその国では戦略物資という認識をして、ちゃんとそういうものを踏まえて、国際穀物市場における一つの支配というものを考えている。日本の場合はそういう認識がない、戦略物資として考えていない、依然として自由品目であり商品だという考え方、そこに食糧問題に対する危機感というものが生まれてこない。こういう考えを私は持っておるのですが、この点についての見解を聞きたい。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 飼料穀物につきましては、現在のわが国生産情勢生産状況から見ましても、国内においてこれを自給していくということは、現在も困難でありますし、将来とも非常にむずかしいと私たち考えておるわけでございます。したがって現在では、飼料穀物につきましては一千万トンばかり輸入をいたしておるわけでございますが、長期見通しによりまして、今後のわが国における畜産の安定的な増加ということを考えましても、やはり飼料穀物需要はふえてくるわけでございまして、一私たちとしては、十年間に現在の一千万トンが千八百万トン近くやはり輸入にまたなければならないだろうというふうに認識をいたしておるわけでございますが、現在、しかし世界飼料穀物貿易量は約五千万トンあるわけでございまして、その中の一千万トンを輸入しておるわけでありますから、貿易量から行きますと二割のシェアを占めておるわけでありますが、今後十年間に貿易量は、世界における飼料穀物増産等考えますと、いまの五千万トンが九千万トンぐらいにふえていくであろう。そうなりますと、一千八百万トン輸入をいたしますとしても、現在の輸入に占めるシェア二割というものは今後とも変わらない。このシェアを変えないでいくことが安定供給につながっていくことになるのだ。ですから、この貿易量の二割というシェアを今後とも維持しつつ、今後の国際協力関係によって輸入の安定を図っていくということが、いま私たちの根本的な考え方でございます。
  7. 柴田健治

    柴田(健)委員 安定的供給論というものは、われわれ善意に解釈する場合と、いろいろな予測というか、予想を立てて——たとえばアメリカ戦略物資として位置づけをしておる。日本アメリカとが、たとえば二国間協定という形の中で、どんな話し合いをして日本需要に見合う供給体制をつくっておっても、アメリカが国際的に持っておる任務、そして先進国としての彼らのプライドというものを考えたときに、インドだとかパキスタンだとかバングラデシュというような国々、またその他多くの開発途上国が、食糧問題で危機を迎えておる、餓死者を出しておるということが現実に起きた場合、また、いままで起きておる事実もあるが、そういうときに、国際的人道主義、または先進国としての責任、プライド、また一方では戦略物資的に取り扱うというこの戦略的な構想の中で、日本とどんな協定を結んでおっても、そういう国々をほっておいてまで日本約束した数量というものを供給してくれるかどうかという疑問がわれわれは起きるわけですよ。日本皆さん約束はしておるけれども、まあわれわれも国際的な食糧危機を救わなければならぬ、しばらくの間、日本に二、三ヶ月、半年でもしんぼうを願いたいと言うてアメリカが一方的に通告してきた場合、よその国はもうほっといてくれ、日本約束があるのだから約束どおりくれということを言えるかどうか、その点ひとつ農林大臣見解を聞いておきたい。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後は、いま柴田委員の御指摘のように、いろいろと国際的に食糧不足国々等が起こって、そういう問題が起こらないとも限らないと思うわけでございます。そういうことで、この食糧問題を世界的に取り上げて、これを真剣に考えなければならぬということで、昨年の十一月に、御存じのようにローマ食糧会議が持たれまして、備蓄問題、さらに食糧の増産問題さらにまた開発途上国に対する食糧の援助といった問題が大きく取り上げられて決議もされたわけでございますし、私たちといたしましても、今後とも、備蓄といった問題につきましては、この国際機構を確立をしていくということに対しまして、積極的に協力をしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございますが、現在のアメリカその他の主要の生産国わが国との貿易関係から見ましても、そうした備蓄問題を進めるとともに、今後の安定的な輸入のためには、中長期にわたるところの国際的な二国間の取り決めであるとか、あるいは多国間の取り決めを強力に推し進めてすることによって、今後ともわが国における輸入量シェアを維持していくことができれば、安定供給ということはできるものであろう、こういうふうに私は判断をいたしておるわけでございます。
  9. 柴田健治

    柴田(健)委員 農林大臣とわれわれはちょっと認識が違うのは、いま日本の総食糧需要率、そして将来需要伸び率人口増というものを考えた場合に、国際的な食糧の問題の認識というものがどうもかみ合わないという気がするわけで、その認識の違いというものが今度のこの見通し数字として出てきた。もっと本気考えたならば、自給率見通しというものがもっと形の変わったものとして出てくるだろう。ただ数字を合わせるために、こういう逆算方式かどうか知らないけれども出してきておる。それに伴う五十年度の施策の中でもどうも安易な考えがあるという気持ちがしますから、この点、十分認識を新たにしてもらいたいという気持ちです。  それから、いままでの輸入方式は、たまたま昨年のローマ国際食糧会議に倉石さんが出席されて、いろいろ備蓄問題その他を言われましたけれども、私たちは、この需要供給と両方の国の備蓄考え方が違うと思うのですよ。それがあくまでも安定的供給論という言葉にこだわって、供給する側に備蓄本気でやらせるという考え方は大きな誤りがある。需要の国が備蓄を真剣に考えなければならぬということが、今後の国際食糧認識によって大きく変わる点だと私は思うのです。だから私は、とにかくこれからはいままでのような輸入の仕方というものは、飼料穀物国際市場において、商社中心にして輸入があってきた、商業活動中心輸入というものをやってきた、これが今後いいのか悪いのか。たとえば先ほど農林大臣が言うたように、多国間協定になるか、二国間協定になるのか、需要供給とをそれぞれの国家レベルという形でやっていくのがいいのか、あくまで商社基軸にして国際市場において取引をやって供給を図っていくのがいいのか、その点の考え方はどうですか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私はやはり、飼料穀物輸入市場でございますから、今後とも、先ほどから申し上げましたような大枠につきましては、中長期にわたるところの国家間の取り決めというものは必要であろうというふうに思うわけでございますが、現在あるいは今後とも、この自由市場間におけるところの穀物輸入につきましては、現在のあり方を根本的に変えていく必要はないのではないか。今後、現在の形の中において、両国間あるいは多国間の協力関係を推進しながら取り決めを結んでいけば、その中において安定的な輸入というものを確保できるのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  11. 柴田健治

    柴田(健)委員 それでは、いままでどおり商社基軸にして、ただ政府がこの協定だけ結んで、後は国際市場商業活動中心にする商社まかせにする、そういう従前どおり考え方でやっていかれる、こういうことなんですね。それなら、国内生産体制輸入計画というもの、そういうものが常に不安定な要素を持ってくることは間違いない。それでは、安定的供給論という、そういう上に立って日本国民に安心して供給するということの基盤が常に不安定だ。不安定であるけれども、もうやむを得ない、そういう方針であるのだ、こういうことなんですね。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり根本的には、飼料穀物の今後というものは、非常に安定的なものとも言えない。やはり不安定な中に、価格も相当高い水準の中で、全体的に食糧が恒常的に不足しているという状況ですから、価格もある程度高位不安定という形にならざるを得ないと思うわけでございますが、そういう中にあって、今日まで輸入を順調に確保してまいったわけでございますし、今後は、そうした多国間、国家間の協定を締結すると同時に、日本輸入するシェアというものが、全体の貿易量の中において二割を超える、いままで以上に大きくなるということがない限りにおいては、私は、この飼料穀物輸入については安定を確保することができるのではないか、そういうふうに考えておるわけでございます。しかし、いろいろと問題点があれば、これを改善していくことは当然であると思いますので、輸入体制等についても、改善する点があれば、私たちはこれを積極的に取り組んで改善していきたい、こういうふうに思うわけであります。
  13. 柴田健治

    柴田(健)委員 国内自給率を高めるという、そういう体制であなたは日本の農民には訴える。ところが家畜農家の方は、これだけ大幅に依然として海外依存という形でこの飼料穀物輸入されたんでは常に不安定だという考え方で、国内自給率を高めてくれ、こういう強い要望がある。それにこたえようとすると、やはり輸入というものをどういう形で安定させるか、これが基本にならないと、国内自給率を高める体制というものは常に不安定になってくる。私たちはあくまでも、この国内生産体制輸入体制をどうコントロールして、国の管理体制をどう強化するか、もうこの辺で国の管理体制を導入する方向で考えるべきではなかろうか、こういう気がするのですが、どうでしょうか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後のことを思いますれば、確かに不安定な要素があるわけでございますから、輸入体制等についていろいろと問題点は、これは真剣にわれわれとしても再検討して改善をしていかなければならぬと思いますし、また、その管理あり方等についても、改めるべきところは改めて、やはり輸入の安定が確保されるということについて、国民皆さん安心感を持たれるような、そうした体制をつくり上げるとしうことは必要であろうと思うわけでございまして、そういう点については、私たちとしても積極的にひとつ改善すべきところは改善をしていきたい、こういうふうに思うわけであります。
  15. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうもいままでの取引の状態を見ると、たとえばことしの九月までの輸入数量契約してある。数量契約してあるけれども、価格はいまだに決まってない。この現状をわれわれが踏まえたときに、常に価格変動によって日本畜産農家がどれだけ苦しんだか、どれだけそういうものについて振り回されたか、もうこの一、二年の間に苦い経験を踏んでおるわけですよ。だから、輸入数量だけ確保したらいいんだ、価格はどうなってもいいんだという、そういう考え方自体が私は大きな誤りがある。数量契約と同時に価格も、ことしの九月まではこの価格で入れるんだ、これが安定的供給ということになるんじゃないですか。価格は別だ、数量だけは約束しますでは、価格はいつ変動、高騰するやらわからない。その都度日本家畜農家は右往左往しなければならぬ、こういうところに問題があると私は思うので、なぜ価格は決定できないのか。依然として輸入政策基軸商社本位飼料穀物国際市場において自由にやりなさいよという、そういう手放しの道を片一方でやらして、片一方では国内自給率を高めて安定して供給しますと言いながらも、問題は価格の問題なんです。この点の認識はどうですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにおっしゃいますように、一年間の契約はいたしておりますか、数量についてでありまして、価格については決まってないわけでございますが、これはやはり国際的な自由商品ということで、いろいろと売る方の国の作況等変化によりまして市場における価格が違ってくる。これを受けてわが国としても値段を決めなければならぬということにあるわけでございまして、砂糖につきましては、御存じのように、オーストラリアとの間に最近長期契約を結びまして、これについては価格もこの中に盛り込むことができたわけでありますが、しかし、その他飼料穀物については、現在国際的な自由品目である、こういうことで、やはり長期的に価格を決めるということは、相手の国の需要等もありますし、これはいまのところでは非常に困難であるわけでございますが、しかし、不作等が起こって異常な価格上昇等が起こった場合は、やはりこれは国内的な措置として、畜産農家に対して大きな負担がかからないように、国内的な価格対策として取り上げていかなければならぬと思うわけでございまして、そういう点で、昨年の臨時国会におきまして成立いたしました親基金制度等も十分活用して、そうした価格が異常に高騰した場合については、畜産農家の方に御迷惑がかからないように措置する国内対策としての手だては一応できておるわけでございます。
  17. 柴田健治

    柴田(健)委員 そこに農林大臣、われわれと認識が違うのは、やはりあなたは依然として商品であり自由品目であるからという考え方がある。それからもう戦略物資であるという考えがない。依然として同じ考えである。相手の国は主要農産物はもう戦略物資として位置づけてある。そこに、国内でどんなに、生産体制をやります、自給率を高めますと言ったって、日本の農民は信用しない、国民も信用しない。もう政府は何を言うているんだと言われる。あっちを向いてはこういう論法、こっちを向いてはこういう論法だという二重人格性、そういう農政だということになる。だから、たとえば中核農家を育成する、その都度その都度、奨励金農政、補助金農政ということにつながる。依然として日本の農業の安定というものが生まれてこない。その点の認識は大いに変えてもらいたいと思う。いかがですか。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはやはり飼料穀物については、大半を外国に今後とも依存せざるを得ないわけでございますし、その場合におきまして、これらの飼料穀物を安定輸入するとしても、飼料穀物自体が国際的な自由な商品でございまして、相手の国の事情によりまして価格が決まってくるという不安定な要素は、これはもう今後とも飼料穀物については続くし、また続かざるを得ない。これを変えて、長期協定の中に価格まで取り決めていくということは、現在の段階、あるいは将来を考えても、これは私は非常にむずかしい問題ではないだろうか、こういうふうに思うわけでございまして、そういう点で、国内にあってこうした高い飼料穀物を買わなければならぬような事態にあっては、これが畜産農家に与える影響をいかにして少なくするかということは、われわれ国内対策の問題として取り上げていかざるを得ない、いくべきではないか。ですから私は、やはり飼料穀物については、いま柴田委員の御指摘のように、中長期的な契約を結ぶとしても、その中に価格までも決めるということは現在の国際情勢の中では不可能である、そういうふうな前提に立って国内対策を強化していくことが大切であろうというふうに考えるわけでございます。
  19. 柴田健治

    柴田(健)委員 私は不可能ではないと思う。たとえば二国間協定でも多国間協定でも、協定を結んだ国同士は、両国の農民の経済安定を図るとする、そういう考え方が合意されるものなら、両国間で、国連で積立金を設置して、両国の農民が安心してこの価格が調整でき、両国間の準備金、積立金、補償金というか、そういうものを常時持って、その年その年の豊作、不作があっても、いろいろな調整金、準備金を持っておれば補てんはできる。それから常に価格は年間を通じて安定して供給できるような体制をつくるべきだ、私はそういう気がするのですが、そういう道は考えられませんか。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの御指摘のように、現在の国際的な食糧会議の中で、備蓄制度であるとかその他の食糧供給等についての国際的な取り決めが、あるいは国際的な機構が整備されて、そして安定的に食糧を確保するといいますか、その価格問題にまで立ち入って国際的な合意というものがなされる、こういうことになればということですが、私はこれは不可能とは言えない。ですから、私たちとしてももちろんそれは望むところでございますので、今後の食糧会議等におきましては、そういう点も含めてひとつ十分研究をして、積極的に審議に参加をしていきたい、こういうふうに思うわけであります。
  21. 柴田健治

    柴田(健)委員 いずれ細かいことについては別の委員会でやりますが、まず、近ごろ特に奨励金の問題がふえてきた。特に安倍農政になってから、とにかく備蓄問題もこのごろ論議されてくる。それから中核農家育成の問題も出てきておる。一方では奨励金農政、奨励金制度がふえてきた。安倍農政は奨励金農政だ、こういう声が出てきた。この奨励金制度というものは、いい面と悪い面があると私は思う。この奨励金を出さなければならぬという発想、その根底に流れておるものは何か。何が理由か。どういう発想でこういう政策をとろうとするのか。今後もこれをとり続けていこうとするのか。まずこれは予算を組む大蔵大臣から見解を聞きたい。
  22. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは農政ばかりじゃございませんで、特定の政策目的を達するために予算的に特別な措置を講じようとするものでございまして、その政策目的の是非、あるいはその奨励金の多寡等についていろいろな評価がございましょうけれども、従来から長らく踏襲してきた政策手段として、現在もまだ踏襲しておる政策手段でございます。もっともこれにつきましては、この成果を吟味いたしまして、細かいもの、あるいは実効の上がらぬもの、そういう点については鋭意整理をいたしておりますけれども、根幹に一おきましては、これを維持してまいろうという姿勢は変えておりません。
  23. 柴田健治

    柴田(健)委員 それなら、この奨励金というのは、農産物価格政策としてとっておるのか、営農の政策としてとっておるのか、どっちですか。大蔵大臣、もっとはっきりしてください。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 奨励金につきましては、やはり現在の農業を取り巻くいろいろな困難性の中にあって、農家における経営の安定、さらに自給力を高めなければならないという農産物自給力向上、こういうふうな立場から奨励金を交付すべきである、こういう判断のもとに奨励金を交付いたしておるわけでございます。
  25. 柴田健治

    柴田(健)委員 価格政策でやっておる、農産物価格が安いからそれを補完をする、補強するという形で出しておるのか。あなたが言う営農、全体の食糧自給率を高める増産対策だ、一つの営農政策だ、本当は国策としてやっておる、政府の方針としてやるのだというのか。それだから、営農政策か価格政策か、どちらかということを明確に答えてもらえばいいのです。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この奨励金というのは、いわば価格の上積みではないと私は思うわけでございまして、やはり生産増強のための誘導策として農家の経営安定、増産を図る、こういう立場に立ってとられる政策であるわけでございますが、もちろんこれは農家の立場からすれば、価格の上積み、そういうふうにとられる。そういう両面はあると思いますが、政策としては、われわれとしては、生産の増強、さらに経営の安定、こういうたてまえからこの奨励金を出しておるわけでございます。
  27. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうもあいまいなんですね。それで、私たち農民の声とすれば、われわれ何も奨励金を出してくれとは言うてない。これは明らかに国の政策としてやっておるのだ。価格の問題なら、もう少しこの価格問題で論議を深めて、そして奨励金を出すなら出すということにしてもらわないと非常にあいまいだ。われわれ農民にとっては何か割り切れない、わけのわからない金だという意見が出てくる。  それから、政策としてやるのなら、政策として明確に打ち出して、それに対して国の政策に従ってください——従うというのはおかしいですけれども、協力してください、そのためには奨励金については、他の企業と同じように、日本の他の重化学産業を伸ばすためにあらゆる税の減免措置をやっていると同じように、農林大臣、非課税にしたらどうですか。そうすれば政策だということが生きてくる、価格政策じゃありませんということが。非課税にしたらどうですか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 よく奨励金について非課税の問題が取り上げられるわけでございますが、御存じのように、稲作転換の奨励金につきましては特別措置がとられておるわけでございますが、これはいわば農家に米作からの転換をこちらの方がお願いをするということで御協力を願うわけでありまして、いわば補償的な意味におきましてこれは特別措置がとられておるわけでございますが、奨励金につきましては、先ほどから申し上げまするように、農家の経営を安定させ、さらに自給力を高めるという立場にあって生産の増強を図るというたてまえから他の奨励金を出しておるわけでございまして、私たち農林省の立場でお答えをするのはどうかと思うわけでございますが、非課税の対象として奨励金を取り上げるのは適当ではないのではないか、米とは違うのではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。しかし、この点につきましては、今後とも、大蔵委員会におきまして、米の特別措置が決まった際における御決定等もあったようでございますので、十分ひとつ検討は加えていきたいと思うわけでございますが、米の奨励金と他の奨励金とは意味が違う、こういうふうに私たち考えておるわけでございます。
  29. 柴田健治

    柴田(健)委員 農林大臣日本農政というのはネコの目ぐらい変わって、農林大臣がかわるたびにくらくら変わる。一貫性がない。筋も何も通らない。米の生産調整には奨励金を出して、ほかの大豆や麦や飼料には——減産させるのも増産させるのも生産調整には間違いない。どちらでも生産調整なんですよ。国策としてやっているのに、同じような考え方にならないと、農民のほうは、思いつきばかりやっている、こういう受けとめ方をしてだれも信用しない。そこに政治不信というものが出てくる。どうして政治不信を起こさないようにするか、これが政治家の任務ですよ。そういうことを一つ考えないところに日本農政が発展しない。今後検討してもらうし、時間がないからこの問題についてはいずれ後の機会で論戦をしたいと思うのです。  次に、中核農家育成と後継者の問題なんですが、たとえば、私は岡山県ですが、中四国農政局の管内で、昨年、農業高校を卒業したのが五千五百人くらいおる。中四国で九県あるのですが、九県で五千五百人の農業高校卒業生で、農村に残ったのがたった百人ですよ。今度の需給見通しの中には六十歳未満が基幹労働力として位置づけされておる。公務員は五十五歳。大体定年制はないのですけれども、基準はある。けれども農民だけが、六十歳までが基幹労働力として位置づけをされて、そして所得は低い。農村ではいま、三十二、三歳の若い人は、身体障害者だと言われて悲観しておる。なぜかと言ったら、嫁さんが来てくれない。嫁が来ない男は身体障害者と位置づけされる。そういう悲惨な状態に経営を追い込んで、それは、気象条件だとか、小規模であるとか、いや立地条件が悪いとか、いや生産基盤が弱いとか、いろいろなことであなたたちは逃げるけれども、それを農民はどうして克服していこうかというので、鋭意努力を長い歴史の中で積み重ねておるのです。その苦衷も察せずに、ただ思いつき農政をやる。たとえば畜産農家の意見を求めてごらんなさい。国の農政に対する不満であり、不安であり、見通しがないというのが、百軒のうち五十軒はそういう意見を出してくる。そういう形の中で、何が中核農家育成か、後継者育成か。どういう認識をしておるのか、この点を聞かしていただきたいと思います。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、これからの農業、農政というものを考える場合において、やはり後継者を育成していくということが一番大切なことであるというふうに私たちは基本的に考えておるわけでございまして、そのためには、農業をもっと魅力のある産業に持っていかなければならぬわけでございますし、後継者が将来に対して自信と誇りを持って農業に従事できる、そういうふうな近代農業にしていくということが大事であろうと考えるわけで、そういう立場に立って、今後とも、農業についての生産基盤の充実を初めとするところの各政策の強化、さらにまた、税制あるいは金融面についての農業に対する特別措置等、もろもろの対策を強化していく。さらにまた農村の環境を整備して、そして農業のこれからの後継者の住みやすい環境づくりをしていくということも必要だろうと思うわけであります。農業後継者の問題については、そうした全体的な農業の生産対策その他価格対策を初めとする政策とともに、後継者育成資金といった制度もございますし、その他、農業技術の研修のための後継者に対するいろいろな具体策も予算の中に盛っておるわけでございますし、いま私たちとしても後継者の問題は非常に大事でございますから、今後ともいろいろの面にわたって、後継者が育っていくような環境づくりを農政の大きな柱として取り組んでやっていきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  31. 柴田健治

    柴田(健)委員 ぜひこの認識を改めてもらいたいと思うのです。あなたたちもたまにはレストランやホテルへ行かれるだろうと思うが、ああいうところでわれわれが抵抗や矛盾を感じることは、いい若い者が盆とふきんを持って立っておる、農村へ行ったら腰が曲がるような六十歳を越した人が一生懸命どろんこになって働いておる。こんな労働力の分配の現状というものを見て、あなたらが矛盾を感じないのはおかしい。レストランの盆を持って立っておるのは四十歳を越してでもいいんです。もっと若い人が使命感を持って、本当に物をつくり出すというような意欲をどう持たしていくかということを考えないと、あなたたちは本当のりっぱな政治家とは言えない。まあそれはいいです。  次に、外務大臣と農林大臣にあわせてお尋ねしたいのですが、昨年ベネズエラのカラカスで第三回の海洋法会議が開かれて、それがいま中途休会されて、今度ジュネーブで三月十七日から五月十日まで再開されるわけです。御承知のように、領海十二海里経済水域二百海里というものは、もう日本が公海の自由論をどんなに打ってもどうにもならない大勢だ、そういうわれわれは認識をしておるのですが、これらについて両大臣の見解をまず聞きたい。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 カラカスにおきまして、御指摘のような経済水域についての議論が盛んにございまして、確かに、国の数から申しますと経済水域二百海里という主張はいわば大勢になりつつあるわけでございますけれども、しかし実は、その内容がどうあるべきかということについては、いまのところ千差万別の各国の立場のようでございます。したがいまして、今後わが国がこの問題に対処する方針といたしましては、内容が千差万別でございますだけに、わが国の、ことに遠洋漁業等の立場を強く主張すべき、あるいはできるチャンスもいろいろにございますので、そういうことをやはり考えつつ日本の立場を決めていかなければならないというふうに、ただいまとしては考えております。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま外務大臣からお話がございましたように、二百海里の経済水域というものは世界の大勢になっておる、こういうふうに思います。したがって、わが国としても漁業の将来というものを考えるときに、深刻にこの問題をとらえて、そして今後の会議見通し等につきましては、いまお話がありましたように、それぞれの沿岸諸国の考え方等にも差異があるわけでございますから、そういう中にあって、今日までわが国が確保してきた水産資源をいかにして確保していけるかということにつきましては、今後とも外交折衝等を通じまして、具体的に確保できる方向に全力を尽くしていかなければならぬ、私はそういうふうに思っておるわけでございます。
  34. 柴田健治

    柴田(健)委員 この問題は、ほかの穀物と比べて比重も非常に高いわけですね。たとえば牛乳、乳製品で約一千万トン、魚介類全部で一千万トン両方で二千万トンほどをいま日本は食うているのですが、その中で今度の領海十二海里、経済水域二百海里説で、それぞれの国々で多少違うでありましょうけれども、それが実現したなら約五百万トンの魚が重大な影響を受ける。動物たん白の資源のもう半ば、どちらかというと大変な狂いが来るわけですが、要するに四分の一狂うということになれば大変なことになるわけです。それだけに、ただ日本政府のやり方を見ると場当たり主義が多いですから、われわれはその点を心配して、四分の一の動物たん白資源が狂うてくるとするならば、もうこの辺で思い切った処置をとらなければならぬだろう。そういう対応策をしなければならぬ。どうしてその対策を講じるかということを真剣に考えなければならぬと私は思う。ただ外交の場で日本の意見を言う、そしてまた、それぞれの国々と個別に話し合いをして、入漁料を払うて漁獲をさしてもらうか、合弁会社をつくって共同漁獲をやるか、いろいろ方法はあると思いますけれども、それはやはりコストの問題になってくる。よその国とやるとやはり価格問題が大きな影響を持ってくる。そうすると常に不安定な要素が出てくる。安定的供給にはならない。だから、やはり日本もこの辺で、日本の近海で魚介類の動物たん白資源をどう開発していくかということを考えなければならぬ。私はそう思うので、この際、思い切って日本の水産業界をこの時点でどう再編成させるか。この点の考え方それぞれについては、外務省には、いま海洋法本部が多少おぼろげながらあるようですけれども、そんな機構でなしに、政府として思い切った海洋法対策本部を設置すべきだと私は思うのですが、どうですか、両大臣。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお話がございましたように、経済水域二百海里、その中においてわが国が漁獲しておる漁獲高は大体四百五十万トン、そのうちの三百万トンは北洋でございます。したがって、今後この二百海里がどういうふうな形で決まっていくのか、漁業の管轄権の問題あるいは二百海里の決め方のいろいろのあり方の問題規制の問題等、今後討議を待たなければならぬ問題があるわけでございますが、少なくとも四百五十万トンに及ぶわが国が今日まで漁獲した漁獲高に影響があることは考えなければならぬわけでございます。  したがって、まず第一には、やはり今後の経済水域が二百海里に決まる、そういう中にあって、この四百五十万トンの漁獲高をいかにして守ることができるかということにつきまして、わが国としても主張すべきことは主張して、この資源が今後とも確保できるように、操業ができるように努力をしていくのは当然でございますが、しかし、まあ厳しい事態であることは事実でございますから、やはり今後の厳しくなる情勢も十分踏まえて、それ以外にやはり資源の確保というものに努力をしていかなければならぬわけでございます。現在、農林省としても、新しい漁場の開発であるとか、あるいはいままで漁獲しておりませんでした深海の漁場の開発といった問題につきましても、予算措置をとって取り組んでおるわけでございますし、同時に、沿岸につきましては、沿岸漁場の整備あるいは漁港の整備、さらに栽培漁場を推進するといったいろいろの施策を強力に講じまして、沿岸の漁獲高を今後は大いに増加をしていくということに対して、今後とも水産政策全体についてひとつ真剣に取り組んでいかなければならぬわけでございます。  同時に、こうした非常に困難な厳しい状態の中にあって、いま海洋法対策本部といったようなものをつくれという御指摘がございますが、私も、こういうふうな事態になってき、また今後の厳しい状態も予測される今日におきましては、何らかそういうふうな形のものをやはり積極的につくっていくといいますか、研究をしていく、検討していく、そういう段階に来ておるのではないか、そういうふうに思っております。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 海洋法会議の帰結はわが国の国益に非常に大きな影響を与えるように考えられますので、外務省に海洋法本部を設けておりますけれども、なお、だんだん結論を出す時期も近づいてまいりましたので、ただいまお示しのことを含めまして、関係各省庁緊密に連絡する方法をさらに考えてまいりたいと思っております。
  37. 柴田健治

    柴田(健)委員 農林大臣、対策本部をぜひ設置して早急に取り組んでもらいたい。われわれはそれを念願しながら申し上げたのですが、それにあわせて、水産業界の再編成というものはぜひやらなければならぬだろうという認識を私は持っておる。この点の見解と、それからもう一つは、七万人余りおられる乗組員をどう日本の動物たん白資源の開発に配置転換をしていくか、そういう役割りをどうしてもらうかということについて、乗組員の対策というか、そういうものについては、たとえば炭鉱を離職したときに離職者の皆さんに特別立法措置をつくったのですが、そういうものがつくれるのかどうか。乗組員に対する救済措置と言っては失礼なんですが、そういう形で新しい開発に熱意を燃やしてもらうような配置転換ができるように、国の施策の中でひとつ立法措置でもしてやるという、そういう構想があるかないか、この二つの点。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 水産業界の再編成の問題のお話がございましたが、今後の国際的な漁業を取り巻く情勢が厳しくなるということにつきましては、水産業界も十分認識をしておられるわけでございまして、そういう中にあって自主的にいろいろな動きが出ておることも聞いておるわけでございます。捕鯨につきましてはすでに行き詰まっておるということで、各水産会社がそれぞれ単独で捕鯨事業を進めるということはもう不可能である、こういうふうなことに立って、捕鯨関係につきましては、すでに再編成が軌道に乗っておるという状態でございますが、全体の問題につきましては、今後の水産情勢を見きわめながら、各業界それぞれ自主的に判断をされて、その中にあって政府も十分協力をしながら、水産業界が安定ができるような形に何とかこれは持っていかなければならぬと思うわけでございます。  そうした中にあって、乗組員の皆様方にいろいろ今後における不安もあることでありましょうし、今後、乗組員の整理といったふうな問題が起こったときは、これはやはり今日まで、わが国のたん白資源を確保するために、非常に長い間にわたりまして御努力をいただいたわけでございますから、こうした皆様方が今後とも安定できるような形に、政府としても十分これは配慮し、対策を講じなければならぬ、これはもう当然なことであると思うわけでございます。
  39. 柴田健治

    柴田(健)委員 今度、領海十二海里説なり経済水域二百海里説をとって、日本は今後近海の海上、海中、海底、全体の思い切った開発計画をしなければならぬ、こう思うのですが、それにあわせて、やはり日本は近隣国とのいろいろな問題がある。たとえば北方領土の問題がある。それから朝鮮海峡には竹島の問題がある。沖繩の南方には尖閣列島がある。これらについて、それぞれの地域の大陸だな開発ということで、いろいろいま物議がある。そういう点で、日本の領海、経済水域の中で、われわれ一億一千万の人口がどんどんふえる中で、動物のたん白資源をどう確保し拡大していく政策をとるかということを考えたならば、私たちはそういう問題を避けて通るわけにはいかないような気がするのです。北方領土の問題は、日ソの関係で今日までのいろいろな歴史がある。ところが竹島の問題については十分論議されてない。過去の日韓条約の問題に関連して竹島の問題が論議された議事録を読んでみても、漁業問題に関連をする領土問題については十分論議されてない。それから竹島は日本の固有の領土だとわれわれは思っている。尖閣列島もそうだが、日本は独立国として、法治国家として今日竹島にどういう統治権を施行しておるのか。尖閣列島にしてもそうだが、この点について外務大臣の見解を聞いておきたい。
  40. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、北方領土につきましては、わが国の領土であるということを当然考えておりますので、御指摘のように、これについては立場がはっきりいたしております。  竹島でございますが、御承知のように、本件につきましては韓国との間に交換公文がございまして、両国の外交ルートを通じて解決しよう、もしもそれができませんときには仲裁調停にというようなことになっております。そういう両国の外交上の話し合いの機会をつかむべく私ども考えておりますけれども、残念ながらしかるべき機会にまだぶつかっておりません。そこでわが国としては、これはわが国の領土であるという口上書を、わが国の立場をはっきりさせます意味でその都度先方に送っておりまして、最近におきましては、昨年もそのようなことをいたしております。しかし、少なくとも韓国の海上警備員のようなものが数人竹島におるというのが、残念なことでありますが、現実のようでございます。  尖閣列島につきましては、私どもは現実にわが国の有効な施政権下にあるというふうに考えております。
  41. 柴田健治

    柴田(健)委員 尖閣列島はいずれ日中平和条約の問題に関連してくるわけですが、この点はぜひ明確にしてもらわないと、日本はあらゆる海域から締め出しを食う。そういう形の中で、これから日本食糧をどう確保するかということは重大な問題ですし、同時にまた、総合的な資源開発という面から見ても、あの尖閣列島の取り扱い、海域の境界線を明確にすることが必要だと思う。  竹島についてもまことに残念です。日本は独立国と言いながら、日本の固有の領土に何も統治権が施行できないというような形で、一方では日韓漁業協定というようなことでどんどん進んでおるけれども、領土問題に関して何もしないで避けて通っておるということは、独立国としていいのか悪いのか、もう少し明確にしてもらわないと、今後の漁業問題について、沿岸漁業開発とどんなに農林大臣が気張ってみたところで、あれがもう一つのネックになってどうにもならぬということになる。これはぜひ期限を切って、いつまでにこの竹島問題は解決する、そういう目標を示してもらいたい。外務大臣どうですか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように長い経緯のある問題でございますが、私どもとしましては、私どもの主張を口上書によってその都度韓国に伝えまして、できるだけ早い機会に外交上の解決を図りたいと考えておりますけれども、もしそれが最終的に不可能であるというようなことになれば、交換公文にございますような仲裁調停という手続に頼らざるを得ないかもしれません。しかし、やはり外交上の努力で解決をいたしたいと考えます。
  43. 柴田健治

    柴田(健)委員 それでは、交換公文によって平和的に外交ルートで折衝するが、見通しが立たないということになったら国際司法裁判所にかける、こういうことなんですな。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 交換公文上さようになっておりますが、私どもとしては、できるならばやはり外交上の努力で先方の理解を求めるということの方に、ただいまとしては主力を注ぎたいと思っております。
  45. 柴田健治

    柴田(健)委員 まことにあいまいで、どうも煮え切らない。そんな姿勢でどこが独立国なんですか。この問題はいずれ改めて論争するとして、時間がないから次に進みます。  先ほど農林大臣は、遠洋、沖合い、沿岸——内水面は言わなんだのですが、この三つの区域の中で沿岸の漁業振興に最大の努力をすると言われた。そして新しい漁場開発、既存の漁場の整備ということを言われますけれども、現実はそれができない。なぜならば、瀬戸内海一つ取り上げてみても、政府は、あの水島の三菱の石油事件が、いまだに公害か災害かわからないという態度ですよ。聞くところによれば公害ですという。公害ならばなぜ自衛隊や消防団を出したのか。そんな法律は日本にありゃしない。もちはだんごというやり方、そういう法治国家がどこにあるかという気がするわけです。われわれは末端でつるし上げを食う。何で公害に消防団を出動させなければならぬのか。たとえば、都道府県の地方防災会議を開いて、直ちに防災計画の中で油の流出についてはやりなさいと盛んに文書を出して通達するけれども、地方防災会議というものは何が基本で生まれたのか。国の災害対策基本法というものがあって、災害対策基本法の第何条に、地方防災計画をつくりなさい、そして任務はこうしなさいと、こうなておる。災害でもないのに地方だけには、災害対策会議でしっかりやりなさい、国じゃ知らぬ、公害だ、そんなでたらめなことを一方でやりながら、何で瀬戸内海の沿岸漁業の振興ができるか。時間がありませんから、この問題についてはまた別の機会に大いにやりたいと思います。  そこで、運輸大臣と通産大臣に聞きたいのですが、運輸大臣は十分理解されておると思うのですよ。あの水島港の港湾整備計画では、昭和二十八年からやって、水深十六メートル、十万トンを入れるというのが基準になっておる。まだ十万トンから上の大きな船を入れる構想にはなってない。それを船舶局では、二十五次、二十七次の計画造船の中で、二十万トン、二十五万トンの船をつくらして——同じ運輸省の中ですよ。片一方は港湾局で片一方は船舶局だ。それで片一方では、海上保安庁のあの地元の港長というのが、水島港に巨大な船を入れるか入れぬかという許可権限を持っている。なぜこんなことが起きるのか。この間の油の流出のときに、港長は何にもしない。片一方は災害だ公害だと言って騒いで、実人員十万人近くがこの処理に当たった。それだけの大事件を起こしておきながら、港長は大きな船をただの一週間も航行禁止させなかった。自由に入れて、オイルフェンスをみんなぶち切ってしまった。そんな運輸省なら、運輸省は何をするところだ。港湾局は十万トン以上入れてない。片一方の船舶局は二十万トン、二十五万トンの船をつくらしている。こういうことは、運輸大臣、いいと思われるのか。  それから通産大臣、あなたは、日本列島のどういう認識のもとに、ああいう石油コンビナートの構造なり保安基準をきめたか。よその国と違って、三十倍といわれる人口密度を持っている日本、沿岸は御承知のように魚をとって食わなければならぬという食糧供給基地である。そして災害の多い日本列島である。地震も多い。そういう中でパイルを打って何万トンのタンクを備えるだけの基準ですよ。日本列島のすべてもろもろのものを認識して、ああいう石油コンビナートの増設をやったのか、どうか。  それからもう一つは、水島を見てもそうです。タンクとタンクの距離をあんな基準でいいと思われるのかという気がするわけです。そしてまだ増設計画がある。三菱の水島製油所、日本鉱業の水島製油所のいまの能力を見て、何ぼでも増設を許可をしていくというやり方。いま、三菱の水島製油所は二十七万バレル、日本鉱業の水島製油所は二十三万バレル、もうこれ以上は、港へ原油を入れる、そしてできた製品を移出する能力が限界に来ているのですよ。まだ工場を増設しようとする。運輸大臣と通産大臣の両方、いまの質問にお答え願いたい。
  46. 木村睦男

    ○木村国務大臣 世界的に非常に激烈な海運競争の場にありまして、だんだん船舶のトン数がふえて、二十万トンあるいは二十万トン以上の船で競争をやっておる、まあそういう傾向でございます。わが国といたしましても、計画造船で、十万トン以上のタンカー、あるいはその他の船舶をつくっておるわけでございます。そこで、そういう大きな船と港湾との関係でございますが、いまお話しのように水島港の岸壁は十万トンの船を標準にできておるわけでございます。そこへ二十万トンの船が入っておるのでございますが、一つの船が油なり荷物なりを満載をいたしまして、直ちにそのままで水島に入ろうとすれば、これはできないわけでございます。で、大抵の船は、たとえば川崎でございますとか、あるいは沖繩の金武湾等に寄りまして、そこで荷物をおろしまして、喫水も水島港に入れるだけの喫水になってから入っておるというふうにしておりますので、水島港における航路の幅、水深その他に反するような入り方はしておりません。これは船会社の方も、自分のところで十万トン以上の大きな船をつくります場合には、どういうところで使用するかということも考えながら、やはりそれが船の運営上の経済性にもなるものですから、そういう点も考慮いたし、それが使用する港湾の規則に違反せずに使えるような運営方法を図っておるということでございます。  それから、水島のあの事故のときの話がございましたけれども、御承知のように、あそこの水島港の切り込み港湾に面したところでタンクの油が流れたわけでございます。海上保安庁がこの通報を受けましたのが、実は事故が起きてから一時間近くもたってからでございます。それから出かけて、まず切り込み港湾の人口のところにオイルフェンスを敷いたのでございますけれども、あの港湾内に約二百トンぐらいの船が七、八隻おりまして、大半は岸壁につないであったのですが、一隻だけがいかりをおろしておりまして、もしもあそこが火の海になったら、その船の乗組員の生命の問題にもなりますので、その船だけは、オイルフェンスを張りますのに約二時間ぐらいかかりますが、その間に出させた、こういうふうな措置はとっております。そのほかは、オイルフェンスを破ってまであそこの港内におります船が出たという事実は別にないようでございます。  そういうふうなことで、万全を期してやっておったのでございますが、風向きその他でだんだん外へ漏れていったということは非常に遺憾でございましたが、船とオイルフェンスとの関係につきましては、できるだけオイルフェンスの効果が上がるように配意をしてまいったというのが実情でございます。
  47. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最近、コンビナートでいろいろな事故が続いて起こっておりますことは、私どももまことに遺憾に存じております。そこで、先般、この予算委員会におきまして、江田先生からこの問題についての御質問がございまして、それに応じまして、総理から当日、コンビナートを中心とする防災体制の強化、このために自治省が中心になってどうすべきかということについて至急検討するように、こういう御指示がございまして、いま自治省が中心になりまして、関係各省からいろいろな意見、資料を集めまして、目下対策を立案中でございます。いずれコンビナートの防災対策のための強化された一本の法律ができるのではないかと私は思いますが、それまでは、実は本日の閣議におきましても、私からコンビナート防災のための関係閣僚会議というものを至急設置してもらいたい、こういうことを提案をしたわけでございます。  御案内と思いますけれども、日本のコンビナート、石油化学工業というものは、昭和三十年代の後半からでき始めまして、わずか十年余りの間に、アメリカに次ぐ世界で一、二を争う一大コンビナートができ上がったわけでございまして、その間、法律の方がそれにおくれてできてきたということのために大変混乱をしております。それでは困りますので、いま申し上げましたような対策を目下懸命に立案をしておるところでございます。
  48. 柴田健治

    柴田(健)委員 通産大臣に、水島のあの石油コンビナートは、これ以上増設申請があっても認めないという気持ちがあるのですか。まだ認めようとするのですか。
  49. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その問題につきましては、まだ最終の結論を出しておりません。
  50. 柴田健治

    柴田(健)委員 いずれまたこの問題は論議したいと思うのですが、時間がございませんから、運輸大臣にもう一つお尋ねしておきたいのです。  運輸省がこの油駆除について中和剤の認定基準を定め、六十品目ほどそれぞれの業者が出しておるのですが、そういう運輸省が認定した中和剤で第二次公害が起きた場合は、運輸省はこの責任を持たれますな。
  51. 木村睦男

    ○木村国務大臣 中和剤の問題につきましては、先般の事故のときに、切り込み港湾内等、あの辺で当初使用をいたしました。しかし、その後、これが漁業その他魚に影響があってはいけないというふうな意見が地元からも出ましたので、その地方の漁業関係の承諾がない限りは中和剤を使っておりません。  中和剤につきましては、一ころより大分改善はされてきておるのでございますけれども、公権的にこの中和剤なら絶対に大丈夫であるということの保証がまだできておりません。ただ、実績からいろいろ調べてみますと、かなり毒性は減っておるということでございますので、使用の際には、あくまでも地方漁民の人たちの承諾がなければ使用しないという方向で指導してまいっております。
  52. 柴田健治

    柴田(健)委員 時間がございませんから、次に、文部大臣も見えたのですから、文部大臣と科学技術庁の長官にお尋ねしたいのですが、何としても、先ほど申し上げたように、海洋法会議から起きてくるいろいろな問題そして日本の近海をどうこれからの開発をするかということが重要な行政、政治の課題だと思うのです。日本の場合は海洋行政の機構というものが十分でない。この点については、政府も思い切って今度考えてもらわなければならぬのですが、まず海洋行政機構の確立に対して、科学技術庁の長官としてどういう考えを持っておられるのか。  それから文部大臣に、海洋学というものにもつと重点を置いてもらいたい。そしていま予算も、あっちの省に幾ら、こっちの省に幾らということで、大体二百九十億くらいしかないのですが、それを各大学に委託をしていく委託研究、委託調査、この委託というのはいい面と悪い面がある。それは全面的に悪いとは言わない。それぞれの大学に研究してもらって調査報告を受けるということは大切なことではあるけれども、それオンリーではいけない。それから行政機構の中でやはり海洋学というものを推進していく必要がある。そのためには文部省で総合海洋大学をこしらえたらどうかという問題点が一点。それからもう一つは、太平洋国際海洋研究所というようなものをつくったらどうかというのが第二点。それから、県立の水産高等学校があるのですが、これを順次国立の海洋専門学校へ昇格をさしていくという考えがあってほしい。この三つを、文部大臣に簡単に考え方を聞かしていただきたいことと、それから科学技術庁長官にも、ちょっと海洋行政機構の確立という立場から、今後の海洋エネルギー開発計画とか、それから海洋管理体制の強化、海洋産業の振興という立場から——宇宙開発も大事かもしらぬ。これは文部省も関係があるのですが、どう考えてもわれわれは空から食糧はとれないのです。今度は陸地、海というものがわれわれが生きていく一つの資源の確保の拠点にならなければならぬ。これは昔も今も変わりない。宇宙開発はこの辺でいいかげんにしてというわけにはまいりますまいが、もうこの辺で海や陸に力を方向転換すべきだ、こういう気がしますので、時間がございませんが、両大臣にお答え願いたい。
  53. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、海洋の開発に限らず、海洋というものを解明いたしまして研究をしていくということは、わが国にとって非常に重要なことと思います。  ところで、それを総合海洋大学というふうにしてはどうかという御提案でございますが、大学をつくるときの考え方というのは、二つの考え方があると思うのです。一つは、いまのお話のような、海洋もそうでございますが、あるいは環境というようなこと、あるいは都市というようなこと、いわば問題があるわけです。その問題を中心に大学をつくり上げるということになりますと、たとえば都市問題大学とかあるいは環境大学というものもできることになるわけです。  他方、従来の学問分野から申しますと、たとえば海洋の研究ということですと、地質学あるいは生物学、土木学、それから建築学、それから先ほどからお話がございましたように、国際関係あるいは国際法、こういうふうなものも全部関連してくるわけです。そうすると、従来発展してきた学問分野というものと切れてしまいますというと、かえってそういう研究が強まらないという面もあるかと思うのです。  そこで、いまわれわれがとっている考え方はどうであるかというと、御指摘のように、海洋の研究というものを非常に強めなければならないという点について全く同感でありますが、その進め方につきましては、従来の大学というようなものの中に、いろいろ海洋関係の研究が先ほどの学問分野との関連でできてきているわけです。しかし、やはりそれだけにこだわりませんで、御指摘の方向で、たとえば東京と神戸の商船大学に大学院を新設いたしました。これは昭和四十九年度。それから愛媛大学の工学部に海洋工学科をつくりました。また五十年度には琉球大学の理工学部に海洋学科を新設いたします。東京水産大学、鹿児島大学の水産学部を改組いたします。こういうふうな形で、いろいろな研究内容に応じて、方々の大学、研究所、国立試験研究機関、こういうものを総合的に関連させながら進めていく。だから、一気に総合海洋大学ということでなくて、従来の研究が進んでおりますものを総合的に関連させながら、その学問というものが発展していく方向が望ましいんではないかという形で、もし必要があれば政府委員の方から、どういうところでどれだけ予算をふやしたかということも御報告申し上げますが、進めているわけでございます。  次に、太平洋国際海洋研究所というものをつくってはどうかというお言葉がございましたが、これは最近わが国で開かれました国連大学の理事会で、結局、国連大学が何を取り上げていくかということが決定されまして、三つの項目がきまったわけでございます。一つが資源の問題です。それから次が食糧でございます。それから第三番目に開発の問題です。これにもわが国は相当の投資をいたしておりまして、そしてわが国にこの九月から本部を——いま小さなものでございますが、大きくいたしまして、そしてそこでもって、いまの三つの問題というものに、わが国だけでなくて世界の諸国が研究の上で協力するということになりますから、そういう形で御趣旨を生かしていくということが一つあるわけです。しかし、実はそのほかに、海洋に関する国際協力研究というのが、いままでも相当たくさんございますので、そういうものも推進しながら、国際的に海洋の研究を進めていくべきじゃないかという御趣旨を生かしていかなければならない、かように考えております。  それから三番目に御指摘になりました、水産高校を高等専門学校に格上げしてはどうかという御指摘でございますが、これももちろん十分に考えなければならないことでございますけれども、現状、水産高等学校というのが幾つあるかと申しますと五十ございます。これは昭和四十九年五月一日現在の調べでございますが、これで見ますと、水産高等学校の卒業生の約九割が卒業と同時に就職いたしております。そして約一割がいわゆる専攻科というものに進んでいるわけであります。そういたしますと、職場の需要というものに応じまして、中堅的技術者として水産高等学校がいま相当生きているわけでございますから、そういう状況の中では、やはり水産関係の指導的な技術者は大学の水産学部で養成するけれども、いまの水産高等学校は相当活用されているわけでありますから、さしあたってはこれを強化していくということが私どもの考えている点でございます。御指摘の点は、さらにその先で考えなければならない、そういうやり方でお考えを生かしていくというふうに進めるのがよかろうかと、かように考えている次第でございます。
  54. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 簡単にお答え申し上げます。  現状は、御存じのように、内閣に海洋開発審議会を設けまして、非常に各省にわたる広範な問題でございますから、この審議会で今後の進め方等を研究しております。一昨年十月に答申が出まして、大変いい答申でございまして、この線に沿うて今後の行政を進めるべきでなかろうかと考えております。  と同時に、お話のように、海洋科学技術問題が何といっても海洋開発の根底になることは、御承知のとおりでありまして、十メーター一気圧というので、御承知のように、もう気圧問題が海洋開発のこれからの一番中心問題になってまいりますので、そういう点を中心にいたしまして、今後の技術的な開発、推進をどうしたらよろしいか、そういった点がございますから、各省で技術的な連絡会議をつくりまして、ただいま推し進めておる最中でございます。  それからもう一つ、具体的には海洋科学技術センターをつくりまして、特殊な技術、特に潜水技術等の実験をただいま推し進めている最中でございます。その現体制のままでよろしいか、十分かという御質問でございますけれども、私も十分とは思いません。さらばといって、それではどういう機構にするかと申しますと、これは大変むずかしい問題でございまして、私もアメリカに参りまして、一体アメリカではどうしているんだと言っていろいろアメリカの議会方面の人たちにも聞いてみたので、ございますけれども、これはアメリカでも非常にむずかしいので、いまのような、各省の連絡を密にして総合的にむだのないように進める行き方しかないんじゃないかというお話でござ  いました。当分はいまの体制を強化しつつ行く方が万全じゃなかろうかと私は思います。  それから海洋エネルギーの問題の質問がございましたが、まさしくこれは非常にでかい問題でございまして、ただいま、波力発電、小さいブイ等に使う発電は現実に行われておりますが、あるいは海水の揚水発電とか、あるいは潮力発電とか、温度差の発電とか、いろいろ海水そのもののエネルギーを利用する方法もございますけれども、しかし根本は、やはり海底油田、大陸だなの油をどうするか。あるいは遠い将来の問題でございますけれども、核融合の燃料になります重水素、あるいは三重水素、あるいは水素発電に使う水素そのものをどうするかとか、こういう将来のエネルギーは、大陽エネルギーと同時に水の中にあるわけでございまして、こういう問題を目指して今後とも研究を進めていかなければならないと思っておる次第でございます。
  55. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 これにて柴田君の質疑は終了いたしました。  次に、嶋崎譲君。
  56. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本日は、対話と協調、社会的不公正の是正などの諸政策の基調を掲げて登場した三木内閣が、それらの政策を具体化する目玉とも言うべき永井文部大臣を任命されたこと、その永井文部大臣の文教政策の特徴に関連して質問をさしていただきます。  最初に、二月三日に毎日新聞に報道されました山崎政務次官の発言と、三木内閣並びに永井文相の姿勢とに関連して、そういう問題から始めたいと思います。  毎日新聞の二月三日の報道によりますと、山崎文部政務次官は、日教組という教師の専門的な団体をつかまえて、「羊の皮をかぶったオオカミ」、こう規定をされました。そして次のような発言に基づく報道が行われております。この集会は福岡市の中央区の大濠高校で開かれた教育正常化福岡県民大会という大会ですが、「文相代理として出席した山崎平八郎文部政務次官は、「日教組は羊の皮をかぶったオオカミ。永井文相を安易に利用させるな」」、ここまでかぎ括弧ですから、こういう発言があったということです。「とあいさつした。山崎次官は、大会委員長のあいさつをうけて「日教組が文相を利用してかかろうとしているのは事実だ。しかし、現実にはその履歴とは違うということは就任以来起きたことでわかる」」、これはあとで質問します。そして「十二月十四日、日教組が文相に面会を要求してきたが、政務次官らが阻止した」。二番目「同二十七日、日教組など六団体が文相に表敬訪問したさいも日教組の面会時間を延長させないため面会順序を五番目にした」。三番目「一月末、岡山市で開いた全国教研集会の招待状を文相に送ってきたがメッセージも拒否した」ということを述べて、「三点を挙げ「羊の皮をかぶったオオカミ(日教組)には(文相を)そう安易に利用させない」と述べた」と報道されております。  そこで最初にお伺いしますが、井出官房長官にお尋ねします。官房長官は首相の代理としてきょうはお呼びしたわけですが、三木内閣の人事に深く関係しておられた立場から、総理の意をくんで答えていただきたいと思います。総理が永井文相を起用された理念、どういう意味で天野文相以来二十数年、新しく民間から永井文部大臣を起用されたのか。その理念といまの政務次官の発言とは矛盾していると思いますが、その点について御意見を聞かしていただきたい。
  57. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 お答えをいたします。  総理の意をくんでという御発言でありましたが、これは私が余り大それたお答えをするわけにもいきかねるのでありまして、私が仄聞するといいますか、総理が口に出されたこと等から判断いたしますと、永井文相を起用される際にも、教育は大変大事であって、父母が子供に大きな期待をかけておる。しかもこれからの若い世代というものは、二十一世紀に向かって新しい人づくりをしなければならぬのではないか。こういう際に、教育が荒廃しておるというふうに伝えられるのであるが、少なくとも教育は、静かな環境において国家百年の大計として行われなければならぬのである。そういう観点から見ましたときに、永井さんのような国際的にも非常に視野の広い方がこういう衝に当たっていただくことが大変適切であろう、こういう判断に基づいておられたことと思うのでございます。そしてまた、いま具体的な山崎政務次官の発言についてお問いがあったのでございますが、これは私実態をつまびらかにいたしておりませんので、新聞紙上にそれが掲げられておったということは聞いておりますが、報道に若干舌足らずといいますか、前後の脈絡等が省略されて報道されておるようなことも実は聞いたのでございまして、この辺は嶋崎さん、文部大臣とのやりとりもございましょうから、それを伺っておりまして、またもし必要があれば後ほど申し上げたい、かように思います。
  58. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの官房長官の発言にもありましたように、三木総理は、教育というものを政争の場から静かな環境に移す、そういう教育に関する基本理念。また同時に総理は、就任に当たりましてのもろもろの談話の中で、教育というものを非常に重視しているということを発言されたことから、永井文部大臣を起用されたということになるわけでございますね。  そうしますと、きょうは総理の出席要求はしたんですけれども、一般質問はだめだということで、後でまた詰めてそういう機会をつくっていただくように努力したいと思いますけれども、静かな場に教育というものをしよう、こう考えておられる三木内閣の教育に対する理念からして、政務次官か「羊の皮をかぶったオオカミ」——教師の集団でございます。現場にいらっしゃる先生方を私たちが見て、一人一人の先生が仮に教員組合という組織に組織されているにしても、その先生方の集団が羊の皮をかぶったオオカミというようなことを、事もあろうに政務次官という要職にある人が発言しているということは、三木内閣の教育を政争の場から外して静かな場に持っていこうという理念からしたら、これは明らかにおかしいと私は思いますが、官房長官、いかがですか。
  59. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先ほども申し上げましたように、いまおっしゃるその言葉自体といたしましては適切を欠いておると思いますが、その場の情景を伝え聞いたところによりますと、何か少し前後にまだ言葉が加わっておったというふうなことを耳にいたすのでございまして、この辺はもう少し実態を把握いたしませんと、いまにわかにかれこれ申し上げるのは差し控えたいと思います。
  60. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いま官房長官の発言にありましたように、穏当ではないという意味に御理解をされているわけですね。その点だけ確認して、次に永井文部大臣にお聞きします。  大臣は、今日までいろいろな発言の中で、日教組という教育の団体はもろもろの教育の団体の中の一つの団体であるということを発言されてこられました。そういう立場から見ると、教員の集団である日教組、教育長会議、その他大学、私学等々のもろもろの団体があるが、その中で小中学校の先生方の団体が「羊の皮をかぶったオオカミ」というこの規定、日教組をそういうふうに大臣お考えになりますか。
  61. 永井道雄

    ○永井国務大臣 嶋崎先生の非常に大事な御質問に、私としてお答えさせていただきたいと思います。  私が大臣になりまして一番初めに質問をいただきましたのは石橋書記長であったように記憶しておりますが、そのときに、わが国は国際的にも平和を実現しようとしている国でございますから、そこで、そういう国で国の中に敵というものがあるはずはないと私は申しました。しかし、敵というものがございますとすれば、これは私の中にある、虚名、権力あるいは集団への過度の依存というものを求める気持ち、かようなものが敵であるかもしれない、これにはぜひ打ちかちたいものだと申し上げたわけでございます。したがいまして、その最初に申し上げた私の気持ちは今日も毫も変わるものではございません。  そこで、ただいまのような御指摘がございますと——もちろん御指摘がございます前に、そういう表現を読みますと少し心配になりましたから、そこで、山崎政務次官が東京にお帰りになりまして、お目にかかってお話をしますと、これはその会議に御出席になっていろいろ皆さんの御発言もあったようですが、そういう中で山崎政務次官も、対話と協調というものを進めていく上で私が仕事をしていくということについて御説明になった、そして自分もその考えに全く賛成であるということが言いたかったことの真意である、という御説明を受けたわけです。それで、そういう御説明を受けて、私はやはり、文部省といたしまして全体的な協力のもとに進めていきたいものは、初めに申し上げた私の発言どおり、集団への過度の依存を求める気持ちに打ちかちまして、そして教育の問題というものは、ときどきさざ波もございましょうけれども、静かに話してゆっくりとお互いの対話の中で、学んでいく者、あるいは教える者、そういう者にお役に立ちます文政をぜひつくりたいというのが私の気持ちでございますし、これは就任から今日ただいままで、いささかも変わるものではございません。山崎政務次官もさようなお心持ちでおられるということを知りまして、安心いたしている次第でございます。
  62. 嶋崎譲

    嶋崎委員 対話と協調という文部大臣の文教政策の基調を理解されて協力するとおっしゃっている政務次官が、教師の集団をつかまえて「羊の皮をかぶったオオカミ」と言っているのですよ。けんかを売っているんじゃありませんか。これは対話と協調ですか。どう見たって対話と協調じゃありませんね。したがって、帰られたときに文部大臣がお聞きになったにせよ、この発言について大臣はどうお考えですか。文部大臣代理として出席しているのですよ。いかがですか。
  63. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私は、先ほど申し上げたとおり、要するにわが国で教育を考えていく上でどこにも敵は設けないという考えでございますから、いまの趣旨というものはそれに基づいているというふうに申し上げ、また省内でもその考えで進めていくということに全く変わりはないのでございます。
  64. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いや、文部大臣の考えはわかりますよ。大臣は日教組は敵視しないとたびたび発言されておられるし、教師集団として今後話し合いをする。現に話し合いにも応じてこられている。だが、大臣はその考え方でしょうが、文部大臣の下にいる、要職である山崎政務次官がそういう発言をされているのに対して、大臣がもし、その発言を取り消せとか、そういう考え方だったら、私の文政とは意見が違いはしませんかということを言わなければ、山崎政務次官の路線、その上に乗せられた文部大臣ということになるじゃありませんか。そういう意味で、ああいう発言、つまり日教組という教師の集団を「羊の皮をかぶったオオカミ」と規定するような考え方は正しくないというふうに大臣はお考えなんじゃありませんか。その点だけ明らかにしていただきたい。
  65. 永井道雄

    ○永井国務大臣 御答弁申し上げます。  私は一般に人間の集団というものを余り動物になぞらえて話すようなことはしない立場です。それでそのように山崎さんにお話ししました。山崎さんも、本当に対話と協調で行きましょうと言うのでございますから、山崎さんも、お帰りになって話をして、私の考えに十分賛成してやっておられるというふうに思います。
  66. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それならば、いまの大臣の発言からすれば、山崎政務次官の発言は不穏当であるということを意味しますから、発言の取り消し、ないしはその他のどういう処置をおとりになるつもりですか。
  67. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私は、いま申し上げたような形で山崎さんとすでにお話をし、またきょう嶋崎さんが質問していただきましたから、そこで一体どういう立場であるかということも申し上げましたので、こういうふうな姿で着々と進んでいきたい、かように思っております。いかがでしょうか。
  68. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大変歯切れが悪いですね、日ごろの大臣にしては。ですから山崎政務次官の発言は、永井文政の政策の基調からして違うんだということについては、いままで説明されたニュアンスで私も理解できます。だとすれば、三木内閣の目玉である永井文部大臣の打ち出した対話と協調、特に、日教組を教師集団と見てそれと対話をするという考え方とは矛盾しているから、その発言については何らかの処置をおとりになるんですかと聞いているんですから、処置をおとりになるという返事をいただければいいんです。
  69. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私のそれに対する措置というのは、先ほどから申し上げているように、私が文部大臣なんです。そして私の考えは人間の集団は人間の集団という考えでございます。それに省内の方々の一致した御協力、御理解を得ている。そしてそれについていまのような御疑念を生ずる、そういう報道がありました。したがいまして、それについて十分話し合った結果、私は私の考えで進めていきたい、そしてそれについて御理解があるか、ある、そういう措置をしたつもりでございます。
  70. 小林進

    ○小林(進)委員 議事進行について。  これは大変重大問題だと思います。文部大臣は教育の最高責任者であれば、政務次官はナンバーツー、その次です。教育行政を預かっている者の最高責任者のその次です。そこにいられる仲にかかわらず——文部大臣は先ほどから、日教組を敵としない、どこにも敵を求めない、静かな教育の環境づくりをやりたい、人間の集団を動物にたとえるようなことはやらない、こういうふうに明確に言われた。ところが、あなたと並立をするナンバーツーのその政務次官が、しかもあなたの代理で出た。あなたの代理で出て公開の席上で「日教組は羊の皮をかぶったオオカミ」であると言っている。動物にたとえているんです。日教組を敵にしている。これくらい対立する明確な文教行政はないと私は思うのであります。これをそのままにしておいて、あなたはあなたの道を行くと言われたところで、とても教育の場におる者がこれを信頼することができないのみならず、国民も納得はいかない。そういう意味において、これはもはや文部大臣や政務次官の問題ではなくして、私は三木内閣全般の問題だと思います。三木総理大臣が明確にこの問題にひとつ所見を発表していただいて、そして間違ったならば間違ったものを、世人が納得する形であるいは処断するなり、政務次官をやめさせるなり、あるいは公明に国民が納得するようその言葉を取り消すなり、そういう形をとることを約束をしていただかなければ、私どもはこの予算委員会でこれ以上審議を進めていくわけにはまいりません。  この点は明確にしてもらわなければ、これは日本の教育の根幹にかかわる重大問題でありまするから、私も社会党の理事として、この舞台を預かっている責任者として、嶋崎委員にこれ以上の質問をずるずると進めさせるわけにはまいらない。もし井出官房長官が、総理大臣を代理して、責任ある、いまの私の議事進行に対する発言に明確な回答を与えられるならば、またその場において私は考え直すつもりでございますから、御発言をいただきたいと思います。
  71. 井出一太郎

    ○井出国務大臣 先ほども申し上げましたように、新聞の字面にあらわれたそのごとくであるならばと、私はそういう前提で申し上げたつもりでございまして、実態はもう少しよく調べてみなければわかりませんが、文部大臣も基本方針についてはお答えをしておるとおりでございますから、こういう点は、私の聞いているところでは、山崎政務次官は何か引例をしながら話したんだというふうなことを聞いたのであります。したがいまして、そういう点はよく実態を調べまして、その上、もしこれは注意すべき事柄であるならば、そういう配慮を文部大臣の方からしていただく、こういうことで御了解を得たいと思っております。
  72. 小林進

    ○小林(進)委員 いま官房長官は、実態を調べてとか、あるいは前後の言葉の中の一つのとぎれた言葉であるというふうな発言がありましたが、きょう、こういう文部政務次官の異常な発言に対しては質問をするという通告はしてあるのですから、ちゃんと政府の側に、こういう重大問題にこたえる、本当に誠意をもって報いる余地があれば、その政務次官の発言の全貌ぐらいは、ちゃんと資料をもってわれわれに配付をしながら、前後はこういうことになっているのだ、それだから了解を得たいという、そういう誠意ある態度があるならばいいですけれども、資料も出さない何もしないで、そして、どうも前後の言葉の埋め合わせではそうでもなさそうだ、なおかつ、これからまた実態を調査し、その調査の上に文部大臣をして善処せしめようなどということは、これは大変巧妙な言葉だけの操りものであります。私どもは、そういうふうな言葉だけでこの重大問題を逃れようとする官房長官の御説明には、とうてい満足をするわけにはいきませんし、先ほどから文部大臣の御答弁を聞いていても、これは結論が出ません。いかに教育を愛し、静かなる環境を愛し、人間を動物にたとえないという、この文部大臣自身の教育方針と哲学は、われわれは理解することができる。しかし、事あなたのそばにいる、セカンドでありツーであるその問題に対して、何をするという発言がないのであります。そういうことで私は、この舞台の幕を引くわけにはまいりません。これは、総理大臣がここへ来て、いま同僚諸君が、あるいは政務次官を呼んではということもありますが、私は、その政務次官こそむしろ羊の皮をかぶったオオカミではないかと思うのであります。了承できません。
  73. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまのをもう締めくくる意味で、予算委員会の最後にやる総括質問の中で、総理と文部大臣を置いた上で詰めさしていただきます。それで取り計らうように理事会で取り計らっていただきたいと思います。
  74. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 ただいまの嶋崎君の質問に関連する問題については、その取り扱いを理事会で相談することにいたします。
  75. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、文部大臣にお尋ねしますが、日教組が昨年の暮れから幾たびか大臣との会見を申し入れてまいりました。一度お会いになりました。その後の回答は時間切れでどんどん引き延ばされております。十四日の回答によりますと、今月下旬、来月の中旬とか非常にあいまいな回答でしかありません。政務次官のいまの発言があるだけに、文部大臣はもっと積極的に、日教組の申し入れに対して直ちに答える用意があるかどうか。これについていかがですか。
  76. 永井道雄

    ○永井国務大臣 お答えいたします。  私はできるだけ早くお答えする気持ちがございます。それで、いま今月の終わりとか来月ということになりましたのは、国会の審議がございますでしょう。ですから、なかなか前日に翌日の予定がわからなかったりしまして、私もちょっとふなれなところがあるものですから、そういうことを御連絡申し上げた。しかしやはり、そういうことがありましても大事ですから、できれば今月中には、こう思っております。
  77. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大臣、お忙しいようですけれども、けさ、きのうかテレビを見ておりましたら、「奥さんごいっしょに」という番組には、金曜日にはお出になるそうですから、そういう時間があるならば、国会の方が重要ですから、そのくらいの時間はとれるはずですから、今週ないしは来週、今月以内に会うということをここで確約させていただいて、次の質問に移ります。
  78. 永井道雄

    ○永井国務大臣 「奥さんごいっしょに」というのはひどくのんきなようでございますが、実は「奥さんごいっしょに」は高校問題についての番組でございます。それはできるだけ来週中にと思っております。
  79. 嶋崎譲

    嶋崎委員 では二番目の問題に入ります。  二番目の問題は、昨年の十月四日に文部省初中局長名で出された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十八条の市町村教育委員会の内申がない場合の都道府県教育委員会の任命権の行使について」、いわゆる一〇・四通達であります。この一〇・四通達と、これに基づく二月五日並びに二月十日に福岡県教委の懲戒処分という事態が起きておりますが、これをめぐる問題について質問させていただきます。  この通達をめぐって、衆議院並びに参議院、両院の文教委員会で今日まで討議されてきた経過について、文部大臣は知っておられますか。
  80. 永井道雄

    ○永井国務大臣 お伺いいたしますが、今日までというのは、私の就任以後の……。
  81. 嶋崎譲

    嶋崎委員 はい、就任してから——。やはり前にさかのぼらぬと……。
  82. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ある程度存じております。全部議事録を細かく読んだわけではありませんが。
  83. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、参議院の場合は、すでにお調べのとおり、昨年の十二月二十四日の委員会におきまして、委員長が次のような委員会の締めくくりをしております。  内藤委員長はこう委員会で発言しております。「この際、御報告いたします。地教行法第三十八条第一項の解釈についての通達は、地方教育行政制度の根幹にかかわる問題であるので、本件については今後引き続き当委員会において審議を行なうものとする、なお、委員長としては、この間、本件に関し各県において混乱の起きないよう最善の努力をいたします。」こう参議院の委員会で結論を出しております。  衆議院では、木島文教委員の質問に奥野文部大臣が答え、そうして、この問題は教育行政の根幹にかかわるので、この問題の取り扱いについては、理事会で取り扱いを審議するというままになって、今日までげたを預かっております。  このように、立法府における二つのこの通達に対する態度を前提にいたしまして、本来混乱を起こさせないと国会で申し合わせをしているにもかかわらず、十月四日にこの通達が発動されて、二月四日と五日と十日に懲戒処分が行われているという事態について大臣はどうお考えですか。
  84. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私の理解しておりますところでは、この問題につきまして国会でいろいろ論議がありまして、昨年の暮れですかも論議があったのですけれども、しかしながら、結論を得ていないというふうに了解しております。ところが他方、通達というものがすでに発せられているわけですね。発せられている通達をどうするかという問題は、都道府県教育委員会の判断にゆだねられているわけです。私の考えでは、これはもちろん、そもそもストライキあるいは処分、そういうふうなことが全くなくなっていくようにする、そういうことは非常に望ましいと思いますが、他方、そういうふうな通達が発せられている経緯というものについても多少勉強いたしました。そうすると、これは実際は、この通達というものに基づく内申抜きの処分ということはないのが望ましい。しかしながら、諸般の事情によってこれに基づく処分が行われることになったのは、非常に残念であるけれどもやむを得ない措置であった、かように私は考えております。  ただ、私がこれから進めていきたいことは、こういう通達というもの、あるいはそれ以上に処分、ストライキというふうな問題が生じないように進めていかなければいけない。具体的に何かということになると思いますが、これは先生方の待遇がずっと長い間悪かったわけですが、この点につきましては、奥野前々文部大臣のころから非常に御苦労があって、私自身も、就任いたしまして、給与の改善を行う、そして先生方に幾らかでも安心していただいて仕事ができるように、これは心がけてきたつもりのことでございます。しかしながら、人はパンのみにて生きるものにあらずと申しますけれども、特に先生方の場合そうでございまして、給与だけもらって生きがいがある教育ということはないわけです。  そこで、教育の問題について、先ほど日教組とも話し合うかというお話がございましたが、教育の問題については、どんどん日教組の方も、またそうでない方も含めて、われわれと話し合って、そして本当に生きがいがある教育というものを進めていく、それが、私が具体的に考え、また進めようとしていることであります。
  85. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大変歯切れの悪い回答ですが、この衆参両院の文教委員会での論点を私流に整理すれば次のようだと思います。この地教行法三十八条一項の法意と解釈は、私たちは次のとおり主張してまいりました。憲法九十二条に定める地方自治の本旨に従い地方自治法が制定され、教育に関する事務は、同法二条三項により地方公共団体の事務とされ、義務教育諸学校に勤務する教職員の身分は市町村に属することとされた。したがって、地教行法の制定されるまでは、市町村立学校に勤務する教職員の人事権者は市町村教育委員会に属していた。その後、昭和三十一年六月三十日法律第百六十二号として地教行法が制定された結果、同法三十七条一項の規定により、市町村立学校に勤務する県費負担の教職員に対する市町村委員会の人事権の中で、服務監督権を除いた任命権を県教育委員会に属さしめた。この規定により、県教育委員会はいわゆる機関委任事務として県費負担教職員の任命権を行使することになったのです。  以上のとおり、県費負担教職員の任命権は市町村教育委員会に固有のものとして属するところであるので、その権限は尊重されねばならない。また、県費負担教職員は、市町村立学校に勤務し、市町村委員会の管理下にその職務上の命令に服するものであるから、その任命権は、直接服務監督権を行使している、管理機関である市町村委員会の主体的な意思を十分に尊重して行使されるべきものである。この二つの点に基づいて、地教行法三十八条一項の市町村委員会の内申権が規定されたと解せられる。したがって県教育委員会は、内申なくして県費負担教職員に対する任命権を行使できないのです。  このことについて、今日までの学説、並びに昭和四十九年十月四日のいまのいわゆる一〇・四通達が発せられるまでの有権解釈は、すべて内申のない任命権の行使は違法であると解されていたところであります。  したがって問題は、これからは文部省側の主張でございます。しかるに都道府県教育委員会は、市町村教育委員会に対し内申を求め、最大限の努力を払ったにもかかわらず、市町村教育委員会が内申をしないような異常な事態の場合には、次の理由により、市町村教育委員会の内申がなくても任命権を行使することができると解される、こう述べております。しかし、右の一〇・四通達は、明らかに従前の文部省見解を改め、地教行法三十八条一項の市町村委員会の内申権を否定するものであって、地教行法の解釈の限界をはるかに逸脱して、新たに立法するに等しい著しい違法性を持っていると判断をいたします。そういう意味で私たちは、この通達は立法府と行政府という立場からするならば、当然立法府において十分なる審議が行なわれなくして一〇.四通達を出すことはできない、こう判断をしたのが今日までの論争の焦点でございます。  これに関連して、朝日新聞の四十九年十月九日の論説があります。文部大臣はかつて朝日新聞の論説委員でございましたから、新聞社の論説は新聞社の共同責任でございます。したがいまして、永井さんがお書きになったかどうかは別として、ここに書かれている主張は次のように述べております。第一番目に、この通達については「文部省の言い分が事実にそっているか、また新しい法律を必要とするかを、まず国会で論じるべきである。そのために、行政権と立法権がわけられている」というのであります。少なくとも朝日のこの論説の第一点の趣旨は、これは立法府の問題で、法律事項なのであって省令事項ではないということを明らかにしていることであります。同時に、民主主義という観点からして、地方自治という観点から市町村委が設置されておって、それは地方自治が中央の行政権をチェックするためだということを第二に理由として述べられ、第三番目は、永井文部大臣が大変主張されておられる、「スト問題よりも、日教組を登録団体とし、団体交渉権をみとめて文部省と話しあう条件をつくることが、先行すべきではないか。」通達で処理すべき問題ではなくて、話し合いで処理すべきことであるということが述べられ、そして最後に、今日の日本の深刻な教育問題の解決の障害は「文部省と日教組の政治的対立の激化にある」と断定されておられます。そしてこの問題通達に対しては慎重な処理をせよという論説がかつて発表されております。  この当時、文部大臣が民間人として、この論説委員の一委員としてこれに共同責任を持たれていた立場と、今日の立場は違っているのか違っていないのか、これをまず明らかにしていただきたい。
  86. 永井道雄

    ○永井国務大臣 お答え申し上げます。  いまの朝日新聞の社説ですが、これはもう一回よく読まないといけませんけれども、私は根本的な考え方というのは基本において通っていると思います。と言いますのは、これは嶋崎先生がよく御存じで、ある意味では私よりよく御存じなんですけれども、非常に長い期間にわたりまして教育をめぐる政争があったと思うのです。その政争がありましたために、いろいろな混乱というものが生じて、実際に教育の問題というものを共通に論じて共通に解決していくということがない。これは第三点ですね。そこで、その方を先行させるということが何より大事である、社説はそう書いておりますけれども、私もいまもそう思っております。そこで、先ほどから申し上げましたように、それは対話と協調という形でも表現されますが、教育を政争の場から外す、それを具体的に進めていくことがきわめて必要であるという点において変化はございません。  問題は、それじゃ論説委員と行政者とは同じですかということになるのだと思います。それは私は、若干違いがあるし、その違いというものは重要だと思います。いまの基本的な考え方は一貫しているのですが、行政権者はやはりわが国の文教の全体について責任を持っておりますから、そこで、私一人が仕事をするというのでなく、やはり全体の方々の理解と御協力を得てお仕事を進めていけますように、陽光がさしますと氷が解けるということがございますが、そういう気持ちで進んでいかなければいけないし、また、さような責任を持っていると私は理解いたしております。その点につきまして、論説を書く立場、これはジャーナリズムの立場でございますが、古くから木鐸と申しますが、そういう木鐸的な立場と若干の違いがあるということは申し上げておくべきだと思います。
  87. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで二点お伺いします。  一つは、いままでの経過で明らかなように、立法府の、特に文教委員会で、これは法律事項であって省令事項ではない、もし通達をお出しになるなら異常な事態に対処する新たな法の体系をつくり直して出てこいというのが、大まかな議論の争点のポイントであります。そうしますと、そういう立法府で結論の出てない問題について、通達がすでに出ていたためにこれが現実には発動されたのです。しかも参議院では、そういう事態を起こさないように努力しようではないかということを立法府の委員会で申し合わせております。にもかかわらず現地の教育長が、東京に出てくると言いながらとうとう出てこないで、次から次とこの通達を発動した。こういう事態がまさに、おっしゃる文部省と日教組の対立の構造じゃございませんか。だとすれば、立法府でこういう申し合わせがあるときに、行政府が法律事項の権限を逸脱してそういうことをやろうとするような行動が、大臣就任以来明らかにあったわけですから、それに対してどう処置されたか、これが第一点。  そして今日行われた事態について、立法府が軽視された事態が進行しつつ、現地にまた教育の混乱が起きます。これについて責任をどうするのか、これが二番目。教育は地方分権であるにもかかわらず文部省の通達によって混乱が起きているのですから、そういう意味でこの教育の混乱をどういうふうに収拾するのか。  三番目に、この通達を撤回するのか。もしくは通達について凍結をするのか。その三番目の施策、これについて意見を聞きたい。
  88. 永井道雄

    ○永井国務大臣 いま三つございましたが、私は現在、通達それ自体をいじるという考えはございません。それよりも、一番初め申し上げましたように、この通達に依存しないで済む状況をつくるという方を非常に進めたい考えでございます。そこで、それをめぐって国会でどんどんこういう問題について御審議を願う。で、われわれは行政府の立場でございますから、その御審議というものに十分耳を傾けて、そしてわれわれの今後の活動というものを考慮していかなければいけない、かように考えております。
  89. 嶋崎譲

    嶋崎委員 回答になっていませんね。三つ質問したのです。第一は、立法府で審議中の問題について一〇・四通達で行政府が独走したという、立法府と行政府との関連において事態が起きているという問題について大臣はどう考えるのか、これが一点です。  二番目は、大臣が就任して以降、そういう事態を起こさないようにしようと参議院の委員会で申し合わせているにもかかわらず発動された、そのために現場に混乱が起きている。政争の具から一番静かな場に移さなければならぬという総理の主張を受けた文教政策としては、現実に争点に、渦の中に大臣そのものが入っているのです。だから、それに対して、どういう行政的な立場からの指導がいままであったのですか、責任問題が残りはしませんかというのが第二点。  第三番目は、この通達について、通達はそのままにしておいて話し合いでいくとおっしゃるが、通達が残っていたらこれが全国に波及するのです。だから、一時凍結をするとか、そういう措置についての考えがあるのかどうか、これが三番目です。  その一つ一つについて、意見が平行線ならば平行線でいいです。しかし、考え方だけは具体的に三つ、私の質問に答えていただきたい。
  90. 永井道雄

    ○永井国務大臣 お答え申し上げます。  第一の、立法府ではまだ結論を得ない先に通達が出る。これは私は一番望ましい形は、立法府でもって結論を得て、そして行政権が発動されるという形が望ましいと思います。わが国において立法というものは重要な立場にありますから、これは当然だと思います。  それから二番目ですね。何もしなかったかという問題なんですけれども、実は私自身、先ほどお母さんの話もありましたけれども、しかし、そういうマスコミだけではなくて、やはり都道府県の方々にも、でき得る限り、現在の制度の中でも、最終的にそういう処分というふうな姿にいかない、そして問題が解決できるという事態もつくっていかなければいけないということを申し上げております。これは繰り返し申し上げてきております。ですから、いままで何もしなかったということではなくて、そういう方向で建設していくという立場をとっております。  ですから、第三の凍結するかどうかということについては、先ほど御答弁申し上げた、さしあたってこれをいじる考えはないということです。
  91. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いじれないけれども発動するのは見ているのですか。どっちですか。たとえば他県に波及するような事態が起きた場合は見ているのですか。それとも行政指導としては、当面こういう福岡のような不幸な事態が起きないようにするために最大限の努力をし一措置をするという態度なんでしょうか。これは撤回しろと言うのは無理ですよね。教育委員会もいやでしょうし、文部省もいやでしょうね。だから本当は撤回すべきだという要求はしますが、できぬでしょう。しかし、それならば、いまのこの段階を今後エスカレートしないように話し合いに持っていくためには、凍結しなければだめです。だから、いま凍結するということは、個人の問題ではなくて、機構全体の責任者ではあっても、大臣の権限でできないでしょう。ですから、いずれ文教委員会でさらに詰めて議論いたしますが、しかし、その措置について最小限の判断を聞かしていただきたい。
  92. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私の最小限の判断というものをお求めになっているのですが、最小限の判断は、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、この通達というものは全く万やむを得ざるとき使われるものであって、そういうものを使わない状況というものをつくっていくようにしたい、こういう考えでございます。
  93. 嶋崎譲

    嶋崎委員 この問題については、文教委員会でさらに論争を詰めさせていただきます。時間があと七分ぐらいですので、たくさん各論を持っていますけれども、あと一問だけ……。  三木内閣は、社会的不公正を是正する、そういう考え方を打ち出されて、それを文教行政の上で言うならば、大臣がたびたび発言されておられますように、今日の日本の格差是正というのは教育の根本だということは、私はそのとおりだと思います。  そこで一つだけお聞きします。現在、国立大学と私立大学の問題に関連して、この格差は私は三つあると思います。一つは設置者に基づく格差です。つまり国立大学と私立大学。もう一つは、日本の社会の動態、都市と農村という不均衡に伴うところの格差であります。第三番目は、能力という問題をどう理解するかに伴ってあらわれる格差であります。これは進学の体制もそうでありますし、同時にまた、今日あるような特殊学級に集中的にあらわれるような問題でございます。  大ざっぱにこの三つを見て個別の質問は文教委員会に譲らしていただきますが、第一の問題に関連して一つだけお聞きしますが、ことしの文教予算を見ましても、非常におかしなことに、国立大学の教官については研究旅費という項目があります。私立大学の私学助成にはなぜ研究旅費という項目がないのですか。大臣、これについてどう考えますか。
  94. 永井道雄

    ○永井国務大臣 私立大学に対する補助金、これは本年度御承知のように相当上がりました。いま旅費の問題を御指摘になったわけですけれども、旅費の問題は、確かに御指摘のように、まだ考えられていないわけです。これは逐次私立大学というものについての助成を強化していかなければいけない。ことしは五〇%を超えておりますけれども、そこまで実現した、さらに検討課題として残っている、かように申し上げておきます。
  95. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大臣も、私と同じように、長い間大学の研究者だったのですから、おわかりだと思いますが、大学の研究者が研究していくときに非常に重要なのは、講座の研究や学生経費、それから施設の費用もさることながら、大学の研究者たちが研究のために動く旅費というものは、研究条件に欠くことのできないものです。ところが、私学助成にはその項目がないということは、私学というものの果たしている今日の役割り、高等教育の八割の負担をし、役割りを果たしているにもかかわらず、私立大学の教官の研究というものを文部当局や国が真剣に考えてないことの集中的なあらわれだと私は思います。  そういう意味で、直ちにつけられるかどうかは別としても、少なくとも私学助成というものについて、私学の先生方の研究の条件を是正するという意味では、研究旅費という項目を設けることと、それについての助成の措置をとること、これについてはお約束願いたいと思います。
  96. 永井道雄

    ○永井国務大臣 これは、先ほど申し上げたように、重要な研究課題でございますから、私は大学の先生方、これは国立、公立、私立を問わず研究条件が必ずしもよくないということを十分に承知しておりますし、特にいまの旅費の問題というものは十分に検討しなければならないことと思っておりますので、本年度はともかく五十数%ふやすことができましたけれども、それで私学助成問題というものが解決しているわけではないということを強く思っておりますから、引き続きこれは検討していきたいと思っております。
  97. 嶋崎譲

    嶋崎委員 質問の通告は各論の目玉を幾つかつくっておきました。しかし時間が参りました。諸問題はすべて文教委員会や予算の分科会で質問できるテーマでございますので、諸大臣、大変御足労願いましたが、質問の時間の関係で失礼さしていただきたいと思います。  これで終わります。
  98. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 和田貞夫君から関連質疑の申し入れがあります。嶋崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。和田貞夫君。
  99. 和田貞夫

    和田(貞)委員 社会的な不公正の最たるものに被差別部落住民の問題があるわけでございますが、今日ややもいたしますと、いわゆる解放行政につきまして、国、地方を通じての予算が占めるウェートが非常に高い、あるいは自治体におけるこの種の財源というものが非常にウエートが高いというような発言をされる方もあるわけでございますが、御案内のとおり、同和対策事業特別措置法が施行されてからことしで七年目を迎えることになるわけでございまして、すでに前期五ヵ年計画を終わったわけでございますので、過去の前期五ヵ年計画を見直しながら、特別措置法による総合十ヵ年計画の完成を目指して後期五ヵ年計画を進めなければならない、その二年度が昭和五十年度に入るわけでございますが、五十年度の同和関係予算を見てまいりますと、三百八十億六千五百万円、一般枠を含めまして八百二十三億五百万円でありまして、この五十年度分を含めて七年間に総事業費が二千五百八十一億七千七百万円にすぎないのでございます。以降三ヵ年間で果たして十ヵ年計画の同和対策事業の完成が行われるというように思っておられるのかどうかということについて、まず、大蔵大臣並びに総務長官の方からひとつお答え願いたいと思います。
  100. 植木光教

    植木国務大臣 お答えいたします。  ただいま仰せのとおり、七年目を迎えたわけでございますが、いま挙げられました数字の二千五百八十一億七千七百万円と申しますのは、物的施設だけではございませんで、その他奨学費等も含んでいるわけでございます。  仰せのとおり、特別措置法及び長期計画を基本といたしまして、国民的な課題に取り組んでいるわけでございますが、御承知のとおり、同和対策事業といいますのは、きわめて流動的な社会的、経済的情勢の中で機動的に対処していかなければならないという面もございます。したがいまして、固定的な計画を策定することは必ずしも適当ではない面もございます。人権擁護活動、就職促進運動、同和教育、同和地区産業対策、いろいろ数量でははかられないものもあるわけでございます。  いま仰せられましたように、今後、私どもといたしましては、この十ヵ年計画に基づいて、物的施設関係といたしましては四千七百三十三億円というものを昭和四十六年六月の調査に基づいて算出をしているのでございまして、国庫補助の増額、あるいは補助対象の拡大、あるいは単価の引き上げ等もずっと行ってきているところでございまして、五十年度には、同和地区の実態をさらに把握をいたしますために、全国同和地区調査の実施をいたしていくことになっておりますので、その結果を見まして、さらにこの当初計画いたしました十ヵ年計画の完遂のために努力をいたしたい、こう考えているのでございます。
  101. 和田貞夫

    和田(貞)委員 それでは、この同和対策関係事業の占める予算のウエートというのは高いのか低いのか、あるいはこれでいいのか、その点はどうですか。
  102. 植木光教

    植木国務大臣 同対審の答申に基づきまして特別措置法がつくられ、また長期計画を運用してまいっているのでございまして、先ほど申し上げましたように、この部落差別を解消いたしますことは、憲法に保障されました人権にかかわる国民的、国家的課題でございますから、現在までいろいろな施策をとってまいりましたものは、決して高いとは申せないと思うのでございます。
  103. 和田貞夫

    和田(貞)委員 高くないというようにいま言われたわけでございますが、五十年度にさらにこの実態把握のために実態調査をやるということは結構でありますが、この実態調査をやられる場合に、単に行政機関の意見だけを聞くのじゃなくて、同対審答申の中にも触れておりますように、それぞれの地区の特異性、特殊性というものをこの計画策定の中に取り入れていかなければならないわけでございますので、この計画策定に当たる実態調査を、せっかく四十六年度にやられた実態調査を見直して、あと三ヵ年に向けてやられるということであれば、そのようなお考えをもって実態調査をやられ計画に盛り込む、こういう考え方に立ってもらえるかどうか。
  104. 植木光教

    植木国務大臣 実態調査をいたしまして実情把握をいたしまして、御承知の同和対策協議会の御意見を聞き、また地方自治体の意見等も十分聴取をいたしまして、計画を推進してまいりたいと存じております。
  105. 和田貞夫

    和田(貞)委員 同対審答申の精神に基づいて、それぞれの地区の運動体と十分協調をしながら実態調査なり計画策定に当たっていただきたい、このことをお願い申し上げておきたいと思うわけでございます。  さらに、自治体における同和対策事業の予算に占める比率というものが非常に高い、多過ぎる、こういう意見が出てくるわけでございまして、これは当然特別措置法に基づく予算措置が講ぜられておるわけでありますが、たとえば本会議におきましても過日津金議員が大阪の例を挙げまして、和泉市については二八・四%、あるいは富田林については二四・六%、泉佐野については三五・九%、泉南市については四九・七%というような比率を挙げて、いかにも同和関係予算が非常に大きなウエートを占めておる、こういうように発言しておるわけでありますが、その答弁に立ちました自治大臣は、最終的には決して高くない、こういう答弁をされておったと思いますが、この数字、本来は四十八年度の当初予算の数字を挙げてこの比率を話しておるわけです。しかしながら、四十八年度のそれぞれの市の決算額を見てまいりますと、当初予算よりもさらに下がっておる。しかも大事なことは、この同和事業につきましては、特別措置法に基づきましてその財源は三分の二までが国庫補助である。残りの三分の一については、さらにその八〇%は起債をもって充てておる。さらに、同和事業を進めるについて、同和事業から得る地方自治体に対する収入、これらの特定財源を加えると、実質的に市町村がこの同和事業に持ち出しておる財源負担額というものは五%ないし七%にすぎないわけなんです。こういうような実態を、少なくとも自治省としては把握されておる以上は——把握されておらないのはおかしいことであって、把握されておると思いますが、そういうことであれば、そういう発言が出たり、さも今日の自治体の赤字状態、財政難というものは、あるいは人件費が多過ぎるというようなことを言うてみたり、あるいは片方では同和関係の予算が非常にウエートを占めておるんだというような印象を与えるような発言があった場合には、自治省はやはり、そうではないんだ、いま申し上げましたように、実質的に市町村の持ち出し財源というものは五%ないし七%程度なんだという、具体的な数字を示して御答弁をいただくように、私は大臣としては心得てほしかった。そのことによって初めて正しい数字の上に立って国民に理解されることになるわけでございますので、いま私が申し上げましたような考え方に徹して今後ひとつ対処してもらえるかどうか、こういうことにつきまして、自治大臣の方からひとつ御答弁願いたいと思います。
  106. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  いま和田さんからいろいろ、同和問題についての地方自治体の計上いたし、また実施いたしました予算の内容について、数字的な御説明をいただいておるのですが、この数字の問題というのはいろいろ見方で違ってくる面がございます。でありますから、私たちとしては、どちらの方がどうというようなことをここでお答えすることは差し控えさしていただきたいと思いますけれども、しかしいずれにしても、自治体がその独自の議会自体の決議で単独事業をやっておるというようなことは、これは当然認めなければいけないというたてまえを貫いてまいりたいと思います。ただし、そういう場合でも、その仕事のやり方が、公正な普通だれが見てもおかしくないというような姿でやっていただければ結構だと思っております。
  107. 和田貞夫

    和田(貞)委員 大臣、いま私が申し上げたのせっかく同対審答申がなされて、それに基づく措置法ができて、この十ヵ年で、いま総務長官が決意を述べられたように、何とか過去を見直して、五十年が過ぎればあと三ヵ年しかないんだから、できるだけ実態調査の上に立って十ヵ年計画が完成するようにやろう、こういう強い決意を持っておられるわけですね。  ところが、いま私が申し上げておりますのは、さも自治体における同和関係予算の占めるウエートが非常に高い、だから一般的な福祉予算というものはそれによって削られていくのだ、縮小されておるのだ、圧縮されておるのだというような印象が国民皆さんに持たれるということになりますと、これはせっかくの特別措置法の精神を生かした、国民の課題としての、国の責務としての、行政の責務としての同和対策事業というのが、行われることが阻まれるようなことになりはしないか、こういう危惧を私は持つものであります。  それらの点については、やはり、いま申し上げましたように、当然同和事業を自治体に進めてもらうために国のほうで法に基づいて三分の二まで国庫補助等をやっておるし、さらに起債を認めておるわけですから、自治体が実際的に持ち出しておる財源というものは、先ほど申し上げましたように、大体五%ないし七%程度にすぎないわけなんですから、そうでないのだということを啓蒙してもらうことによって、今日、社会的に逆差別が非常に起こっておるわけですが、そういう誤った国民的な見地というものをば理解をしてもらうことにもなるわけですから、そういうようなことを私はお願い申し上げておるわけでございまして、いまの答弁では、私の質問に対する答弁にはなっておらないわけでありますから、特別措置法に基づく同和行政を進める上においてその点が必要じゃないかということをお聞きしているわけです。
  108. 福田一

    福田(一)国務大臣 同対審の方針に基づいて国ができるだけ予算をつけて、そして十ヵ年計画を実行していくということについては、私は何ら異議はございません。それに基づいて仕事がされておるということならば、これはもう当然なことだと私は思っております。  しかし、後段の、そういうことと今度はまた別に、単独事業や何かがよけいになって、そして比率が上がるというようなことになったときにどう考えるかということになりますと、やはりほどほどということが必要になるのじゃないか、こう考えておるわけであります。
  109. 和田貞夫

    和田(貞)委員 私はむしろ、単独事業というのは、これは政府の方からの補助対象事業になっておらないわけですが、同対審答申の精神に基づいて同和事業を進めるとするならば、先ほど総務長官もそのことをお認めになったように、やはりこれぞれの地区の特殊性というものをば生かしていく。この地域については保育所を重点に施行する必要がある、この地域についてはその他の施設が必要であるという特殊性があるわけです。だからその特殊性を生かしていこうと思うならば、国がお認めにならなければ、当該市町村が単独事業を限られた十ヵ年計画の中で何とか自治体も積極的にやろうという熱意があるわけですから、やらざるを得ないということになるわけでございますので、むしろ積極的に単独事業につきましてもこの補助の対象にしていく、特別措置法に基づく対象事業に認めていくということの方が、政府として前向きに立った同和行政を進める態度ではなかろうかと思うのです。  さらに、私はつけ加えて言うならば、一般行政にも波及しておるわけでありますが、この同和事業につきましても、実額よりもはるかに下回って各省の予算の単価がきわめて低いために、同和事業としての持ち出し財源が市町村に押しつけられておる、こういう向きもあるわけですから、同和事業だけじゃなくて、一般行政について超過負担解消のために、ひとつ大蔵省としては努力してもらう、こういう考え方にも立ってもらわないといけないわけなんです。  これらの点については、ひとつ今後積極的に考えてもらいたいと思いますが、改めて御答弁をお願いしたいと思います。
  110. 福田一

    福田(一)国務大臣 地域の特殊性に応じて自治行政をやっていかねばいかぬということには、私、賛成でございます。したがって、同和の問題についても、こちらは学校が少ないとか、保育所が少ないとか、それなら保育所をよけいやる。あるいは、国の方から認められておったのではとうてい間に合わないからやるのだというようなことについて、地方自治体が独自の見解を打ち出すことに、私は反対はいたしません。それは自治体の当然やるべきことである。しかし、それにもやはり財源の問題とかいろんな制約もありますから、一般のほかの問題もありますし、そこの均衡をほどほどにやっていただきたい、こういうことを私は申し上げております。
  111. 植木光教

    植木国務大臣 対象事業の枠の拡大につきましては、年々努力をいたしておりまして、五十年度ベースでいきますと四十八事業が対象になるのでございます。いま自治大臣から御答弁がございましたように、地方の実情に沿いました事業を、それぞれの地方自治団体で地域住民の理解と協力を得ながらやっていくとともに、国といたしましては補助対象を広げていくという努力を積み重ねてまいりたいと存じております。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間もありませんので、いまのその総務長官の答弁で結構でございますが、ひとつ自治大臣も大蔵大臣の方も、むしろ、自治体がやるのであればそれは十分おやりなさい、こういうようなことで手放されることによって、やはり自治体の一般財源が少しでも同和行政に持ち出される、こういうことになるわけですから、同和行政を進める、こういう政府の積極的な前向きの姿勢の上からも、いま総務長官が言われましたように、地区の特殊性に基づく単独事業につきましては、ひとつ極力対象事業になるように自治省としても努力いただきたいと思いますし、大蔵大臣としても、ひとつ積極的に前向きになって、そのような観点に立って今後の予算措置について御努力いただきたい、こういうように思うのですが、ひとつ簡単に御答弁を願います。
  113. 大平正芳

    ○大平国務大臣 同対審の御答申、実態に即して考えろという趣旨であろうと承知いたしておるわけでございまして、予算の編成もまた、そういうラインに沿いまして着実に進めて、財政の許す限り考えていくべきものと存じております。  それから、先ほど超過負担の問題がございましたけれども、これは同和事業ばかりでなく、ほかのものと同じように、教育施設あるいは社会福祉施設等につきまして実態調査を進めまして、それをベースにいたしまして逐次改善の措置を講じておるわけでございまして、今後も進めてまいるつもりでございます。
  114. 和田貞夫

    和田(貞)委員 もうあと三年しかないわけですから、しつこいようでございますが、大蔵大臣の方も、五十一年以降の予算措置について、ひとつ関係各省の意見を十分聞き入れるように要望しておきたいと思うのです。  そこで、同和行政を進めるについての政府あるいは行政側の基本的な態度についてでございますが、先ほども申し上げましたように、同和対策審議会の答申、あるいは同和対策事業特別措置法の精神に基づいて積極的に推進していかなければならない、これが行政側としての基本的な態度であろうと思うわけですが、その点については総務長官どうですか。
  115. 植木光教

    植木国務大臣 同和対策事業は、先ほど来申し上げておりますように、それぞれの地域の実情に即して行われるべきものでございます。同対審の答申にございますように、地区住民の自発的意思に基づく自主的運動と緊密な調和を保ちながら総合的な計画性をもって施策を展開していくべきだ、こういう趣旨でございます。この趣旨に沿いまして、それぞれの地域の実情に応じた施策が地方自治団体によって推進せられるように、私どもは大いに指導をしてまいりたいと存じております。
  116. 和田貞夫

    和田(貞)委員 誤解をされる面があるわけですが、いわゆる窓口一本化といわれておる点についてです。いま総務長官が言われた御答弁というものは、私はそのままに受け取りたいと思う。同和行政を進めることによって、かえって部落住民を堕落させたり、あるいは部落住民を惨めな思いにさせていく、こういうことであっては、同和行政の効果というものがないわけであります。  家を建てた、保育所をつくった、学校をよくしたというようなことだけで同和行政ができ上がったということじゃないわけで、それらの事業を進める中で、いま総務長官が言われましたように、やはり部落住民が自覚をしていくようにしむけていく、あるいはその自覚を高めるとともに、差別が現存しておるわけでありますから、その差別に打ちかつための自覚した部落住民をつくり上げていく、このことが伴わなければならないわけです。そのためには、同和事業を進めるについては、やはり部落住民に対して、なぜこの学校ができたか、なぜこの学校をよくする必要性があったか、なぜ一般地区よりもいい保育所をつくらなければならないという必要性があるのかということの啓発啓蒙活動を、部落の同和教育とは別に、部落住民の自覚を高める手段として行政は考えていく必要があるわけです。  そのためには、いま総務長官も、同和行政を実施するに当たって地区住民の自主的な運動と協調していかなければならないということを言われておるわけですが、そのそれぞれの地区の自主的な運動体を代表するものというのは、長い間、五十年以上にわたって、水平社以来今日まで部落大衆とともに解放運動を進めてきた部落解放同盟以外にない、私はこういうように思うわけでございますので、いま総務長官が言われた自主的な運動と協調するということは、具体的に言うならば、同対審答申にもその評価として明らかにされておるわけでございますが、部落解放同盟と協議をしてこの同和行政を進めていく、これが同和行政を進めるについての基本原則であろう、こういう基本原則を立てる必要がありはしないか、私はこういうように考えるわけでございますが、その点についてのお答えをお願いしたいと思います。
  117. 植木光教

    植木国務大臣 地区の実情を最も把握をいたしておりますのは地方自治団体でございます。地方自治団体が地方自治の精神にのっとりまして、地方住民の理解と協力を得ながら事業を推進してまいっていただきたいということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  この際、自主的な運動体がどの団体であるかということを総理府が判断をいたしますのは差し控えさしていただきまして、事実上、同和対策事業を実施する地方自治団体がそれぞれ自主的に判断をしていっていただきたい、このように考えているのでございます。
  118. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間がありませんので、そう長く言えませんが、先ほど総務長官が御答弁の中に触れられておりましたように、やはりこの同対審答申というのを尊重しなければならない。地方自治法によるところの行政というのは、これは一般的な行政であって、住民の受ける権利、行政の持つべき態度、これは当然な話ですよ。しかしながら、今日における心理的な差別、実体的な差別というものが現存するということを内閣の同和対策審議会が認めて答申をしておるわけです。その答申の中に明らかに、地区の自主的な運動体というのは、やはり水平社以来今日まで培ってきた部落解放同盟の働きというもの、運動というものを高く評価しておるわけです。その部落解放同盟というのがやはり地区の自主的な運動体の主になるのじゃないかということをこの同対審答申に書かれた、しかも政府が認めたその内容を私は確認するためにこの際お答えを願っておるわけでありますから、ここに書かれておること、これがだめだというのであれば別ですが、この精神を生かし、この精神に基づいて同和事業を進めていくということであれば、何もちゅうちょすることなく私の質問にお答え願いたいと思うのです。(発言する者あり)
  119. 植木光教

    植木国務大臣 仰せのとおり、先ほど来、私、何度も申し上げておりますように、同対審の答申の精神にのっとりまして事業を推進してまいります。  ただいまお話ございました部落解放同盟につきましては、部落差別解消のために長年にわたって運動を展開してこられた団体であると私どもは承知をいたしているのでございます。
  120. 和田貞夫

    和田(貞)委員 時間が参りましたので質問を打ち切りたいと思いますが、最後にお言葉がありましたように、そう控え目に言うてもらわなくても、私は正々堂々と言うてもらいたい。同対審答申政府が認めて、その答申に基づいて特別措置法という法律ができたわけでありまして、先ほどからやじが飛んでおりますが、この答申が出たときに、特別措置法が出たときに、何やら連というようなものはなく、部落解放同盟しかなかったわけです。その部落解放同盟の運動を高く評価されて特別措置法をつくり、そしてその特別措置法に基づいて同和行政を進めておるわけであります。  体を張ってやっているそれぞれの地区の自主的な運動体、即部落解放同盟と緊密な連絡を保ちながら実態調査を行い、あと残された三ヵ年間、前向きになって予算措置も講ぜられて、この十ヵ年総合計画を完全に達成できるように政府の熱意ある御努力をさらに要望いたしまして、私の質問を、終わりたいと思います。(拍手)
  121. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて嶋崎君の質問は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後二時十三分開議
  122. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山富市君。
  123. 村山富市

    村山(富)委員 私は、まず、福祉の担当大臣である厚生大臣に、これから社会保障政策や福祉政策に取り組んでいく意欲について聞いておきたいのです。  御存じのように、わが国の社会保障水準は国際的に比較してみた場合に、西欧諸国が大体国民所得の一五%から二〇%を社会保障給付に回しておりますが、わが国の場合には、残念ながら依然として六%程度を低迷しておる。先般の参議院本会議におけるわが党の質問に対して、三木総理は、五十一年度から実施のできる長期計画を策定するという意味の答弁をいたしておりますが、少なくともこれからつくられる長期計画の目標は、大体一五%以上ぐらいに目標を置いてやるべきではないかというふうに思うのですが、その長期計画に対する取り組みについて、大臣の考え方を聞いておきたいと思うのです。
  124. 田中正巳

    田中国務大臣 お答えいたします。  お説のとおり、昭和五十一年度から社会保障の長期計画を策定するつもりであります。これについて、ただいま村山先生、国民所得に対し一五%という社会保障費を計上するようにというお話でございますが、今日のところ作業が始まったばかりでございまして、その数字を確定的に申し上げる段階ではございません。  なお、ヨーロッパのこれらの国と日本とは社会保障をめぐる客観情勢が若干違うようでございます。たとえば人口の老齢化の移行水準が、日本の場合とあの種の国の場合では倍程度も違うということもございますし、また児童手当等をめぐる客観情勢も違いますので、直ちにヨーロッパの水準というものとわが国と同じ数字にすることについては、いろいろと問題があろうかと思いますが、社会保障水準向上することについては、私としても同感でございますので、できるだけのところに持っていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  125. 村山富市

    村山(富)委員 これから社会保障水準を引き上げていく長期計画の見通しを、やはりある程度大臣として考えておいて、その目標に向かって積極的に取り組んでいく、こういう姿勢が必要だと思うのですね。これは、三木内閣が成立しましてから、私は、本会議における質疑応答やら、あるいは委員会等における大臣の答弁あたりを聞いておりまして、なるほど国民が言うのは無理はないなと思うのですよ。いまどう言っていますか。三木内閣は花は咲いても実はならぬ山吹内閣じゃないか、こう言っていますね。言葉だけでなくて、やはり現実の問題として実行に移していくという実を見せていかないと、国民は裏切られると私は思うのです。そういう意味で、これから二、三の問題について質問をしたいと思うのです。  第一番に、この五十年度予算で新設されました介護手当の問題ですね。これはなるほど、在宅で身障者を抱えておる人たちは困っているから、それに対して幾らかの介護手当をやろうということで、発想は大変いいと思いますし、私も一応評価はしたいと思います。しかし、月四千円という額については、これはほんのちょっぴり実を見せただけであって、食える実にはなっておらないと思うのです。いま仮に、共かせぎをしておる家庭で身障者を抱えておる、介護をしてもらう人を雇わなければならぬ、その場合に幾ら賃金を払っておりますか。四千円という額は二ヵ月にも足らない額ですよ。この程度の額では、私は介護手当を支給するとは言い切れないと思うのです。そういう意味で額が非常に少ない。同時に、支給をされる範囲も限定されておりますが、私は、政府考えておる三十万人弱の人たちではなくて、もっと多くの困っておる人があるのだから、そういう支給範囲の拡大も考えるべきではないか。同時に、せっかく差し上げるのなら、十月からなんて言わぬで、四月からなぜできないのですか。  そういう問題について、私は、もう予算として計上しておるからというのではなくて、やはり改めるところは改めるという立場に立って、予算の修正なり、あるいは年度内に是正をするというぐらいの思欲は示してもらいたいと思うのです。どうですか。
  126. 田中正巳

    田中国務大臣 このたび創設いたすことに国会にお願いをしております重度障害者福祉手当につきましては、いろいろと先生のような御注文、御批判のあることも存じ上げております。  まず第一に金額でございますが、これについてはいろいろの議論がございますが、従来からございました福祉手当につきまして、これを範囲を拡大して、従来三千円だったものを四千円支給することになりましたので、まず最初といたしまして、この程度のものからいきたいというふうに思っているわけであります。  範囲につきましては、これは私も実はいろいろ苦労をいたしました。身障一級と二級を全部カバーするということになりますると、これはもう障害年金と全く同じになるわけでございまして、そうなれば、これは障害年金とどう区別をしてよろしいかという観念の整理も実はあったわけでございます。これは私、就任早々の短い期間でいろいろ考えたものでございますから、非常に苦心をいたしました。障害一級だけでございますと不十分である、そうすると介護を必要とする者は一体どの程度だろうかというわけで、一級だけではなしに二級の一部を取り込んだということでございまして、かなり苦心をいたしましたが、今後もいろいろ問題が出てくるだろうと思いますが、その節に考えたいというふうに思っております。  それからいま一つの、四月から実施をせよということでございますが、これは申請主義によっておりますものですから、国会の法案の通過、そして申請ということを考えてみますると、果たして四月から支給ができるかどうか、私は無理だろうと思いますので、ことしは十月から実施をするということでございまして、四月からきっちり実施することは、行政の面から言ってもなかなか困難だろうと思われる次第であります。  以上のとおりでございます。
  127. 村山富市

    村山(富)委員 新設することであるから、準備にいろいろな段取りが要ることも私は承知しておりますよ。しかし、これは遡及して支給する方法もあるわけですから、やろうと思えばできるわけですよ。そんなことは私は理由にならぬと思う。ひとつ意欲を持って予算の修正なり年度内の是正なりするような決意を持ってもらいたいと思うのです。  次に、これは労働大臣にお尋ねしますが、労働省は、四十七年九月と四十九年四月に、社会福祉施設の職場に対する監督指導をやって、指導結果の概要を出しておりますが、具体的にそういう社会福祉施設の職場の中でどういう労働基準法違反があったのか、その内容について簡単に御報告をいただきたいと思います。     〔委員長退席湊委員長代理着席
  128. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 社会福祉施設における労働者の労働条件については、労働時間、休憩、休日等に、遵法水準から見て非常に縁遠いものがありますので、きめ細かい監督指導をしてまいったところであります。具体的な数字その他については、政府委員から答弁させます。
  129. 中西正雄

    ○中西政府委員 お答え申し上げます。  社会福祉施設につきましては、毎年全国一斉に監督を実施しておりまして、現在、昭和四十八年四月から九月までの半年間に実施いたしました状況が整理されております。  その結果によりますと、この半年間に監督を実施しました事業場の数は一千二百四十三でございます。これは、私どもが見ておりまして問題のありそうな施設を選定して監督したのでございますが、この一千二百四十三の施設を監督した結果発見されました違反のうちで最も多いのは、女子の時間外労働の問題でございまして、一日に法定九時間を超えて時間外労働が行われておる事業場の数が五百六十三件、四五%に上っております。さらに、残業時間については、法定の一日二時間という制限がございます。それを超えて労働をさせているというものが百五十九件、十二・七%でございます。次に違反率の高いのは休憩に関する違反でございまして、休憩時間につきましては、労働時間が六時間を超える場合には四十五分の休憩時間を与えなければならないということになっておりますが、その休憩時間の不足が百四十五事業場で、全体の一一・六%でございます。それから休日労働関係では百三件、八・三%。主な違反状況は以上のとおりでございます。
  130. 村山富市

    村山(富)委員 相当違反件数があるわけですが、今後、こうした社会福祉施設の職場における労働基準法違反の一掃について、労働省としてはどういう改善指導をするつもりですか。
  131. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ただいまお答えしたような状況でもあります。しかしながら、その確保につきましては、国と地方の公共団体の財政的援助と深い関係がありますので、厚生省等の行政機関に対して配慮を要望しながら、昨年九月には厚生省等に対して文書をもってその改善方を要望申し上げ、また厚生省は、本年度予算においてそれに手当てをされたというふうに聞いております。
  132. 村山富市

    村山(富)委員 いまちょっと違反案件について報告がありましたけれども、その報告の中で、四十八年の八月に滋賀県の第二びわこ学園を滋賀県の労働基準局がやったときに、こういう内容のものが挙がっております。「十八歳以上の女子看護職員に体重三十キログラムを超える障害児の取り扱い、入浴、世話等を行わせていること」というのがあるのですが、これも労働基準法に違反しますね。
  133. 中西正雄

    ○中西政府委員 三十キロ以上の取り扱いにつきましては、これは違反になります。
  134. 村山富市

    村山(富)委員 いま労働省から、指導監督をした結果について、労働基準法違反の案件についての御報告がありましたが、この労働基準法の違反事件に対して、厚生省はどういう受けとめをしておりますか。
  135. 田中正巳

    田中国務大臣 御指摘のような事情がございましたので、これを解消いたすべく、一つには人員の増を図らなければなりませんものですから、人員の増について予算要求を起こしました。いま一つの方法としては、おっしゃるように施設の機械化等も図らにゃならぬということで、この方についても努力をいたしておるわけでございます。  そこで、人員の増でございますが、これを解消するためにはおおよそ一万五千名の増員が必要であるというふうに言われておるわけでございます。実は単年度でこれを解消いたしたいと思っておりましたが、実際問題としては、資格者の確保等にも若干の問題がございますので、いろいろと財政当局と折衝をいたしまして、これは二年計画で完全に解消をいたすということにいたしまして、本年度六千名の人員増を認めていただいたわけでありまして、あと、五十一年度には九千名の増員をしていただくことによってこの問題を解消いたしたいというふうに思っておりますし、またこのことについて、二ヵ年をもって解消するということについては財政当局と了解がついておりますものですから、ことし一年で解消できないことは残念でございますが、五十年、五十一年の両手をもってこの問題の完全解消を図る決意で努力をいたしておる次第でございます。
  136. 村山富市

    村山(富)委員 厚生省は、いま申し上げましたような基準法違反を一掃するために、大蔵省に増員要求をしたのは一万九千九百二十三名と聞いておるわけです。一万九千九百二十三名の増員ができれば、大体基準法の違反事項の一掃ができるのではないか、こういう要求をしておるわけですね。この要求については、私はある程度科学的な根拠があると思うのです。いま大臣の答弁を聞きますと、本年度は、正確に申し上げますと五千四百五十七名ですね。そして来年度は九千名ですか。そうしますと一万五千名足らずになるわけです。当初厚生省が要求をした一万九千九百二十三名と一万五千名では相当の開きがあるわけですね。この開きは一掃できるのかということが一つと、もう一つは、本年度五千四百五十七名ということは、当初厚生省が要求した数からすると三分の一にも満たないわけですよ。果たして本年度労働基準法違反の一掃ができるのか、どうですか。
  137. 田中正巳

    田中国務大臣 お答えいたします。  一万五千名内外の者と一万九千数百名の差は、実はこちらで賃金で雇っている者を定員化いたしたいという要請が入っておったわけでございますが、これについては、なお賃金でやっていこうということで四千名の差ができまして、一万五千名あるならば一応基準法のルールは守れるということで、一万五千名でセットをいたしました。  次に、最初の要求から見るとかなり下回ったではないかということでございますが、これについては、率直に申しますると、私はこの問題についてかなり意欲を燃やして予算折衝に臨みました。当初は三年計画でこれをやろうということでございましたが、私は、三年もこの問題をほうっておくわけにはいかぬということで、実は強引に二年ということでセットをいたしたわけでございます。しかし、どうも、単年度でこれを解消できなかったということは、先ほど申したとおりまことに残念ですが、反面、資格者をそのように短時日のうちに得られるかどうかという問題もございましたので、二年計画ということになったわけであります。
  138. 村山富市

    村山(富)委員 これはよく考えてもらわないと、仮に労働者の立場に立った場合に、就業規則の違反があったら罰せられますよ。いいですか。私の知っている例でも、出勤が八分おくれたばかりに賃金を削られているんですよ。労働者はそれくらい厳しく一方的にやられるわけですよ。逆に、使う方の側からすれば、人員増もできない、このままいけば労働基準法違反もしなければならぬということを承知の上で労働基準法違反をされるんでしょう。そんなことが現実問題として許されますか。労働基準法がある、守らなければならぬ、それを政府が措置をすればある程度一掃できるわけですよ。その措置をせずに、基準法違反があってもそれはしようがないといって目をつぶるつもりですか。これは労働大臣、どうですか。
  139. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 そういうこともありますから、私の方は常に厚生省と話し合って、この充実のためにお願いしているわけであります。
  140. 村山富市

    村山(富)委員 そんなありきたりの答弁でなくて、現実に厚生大臣も、本年度の予算措置では基準法違反の一掃はできないと言っているんじゃないですか。もう目に見えて違反は起こるのですよ。仕方がない、やむを得ないといって目をつぶるのですか。
  141. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 ですから、先ほど御報告申し上げたような実例等々を引きまして、厚生省の方に実情を報告しながら、その充実をお願い申し上げ、厚生省はその努力をし、また私の方でもそ御加勢を申し上げる、こういうふうな段階を踏んでいることを御理解いただきたいと思います。
  142. 村山富市

    村山(富)委員 さっき私は重量規制の問題について若干言いましたけれども、いま、特に重障児の施設なんかについては、三十キロを超す子供はたくさんおりますよ。そこに女子の介護員が働いているわけですよ。それは機械化、省力化といったって限界がありますから、やはりふろに入れるときには抱えて入れなければいかぬわけですよ。基準局は、これは違反だと言っているわけです。それじゃ、子供がおって廊下にはみ出して倒れたとする。三十キロあるのだから抱えるわけにいかぬといって女の介護員がじっと見ておりますか。やはり抱きかかえるじゃないですか。これは違反ですよ。そんな問題がたくさんあるわけですよ。そして本年度は五千四百五十七名しかとれなかったから、もう基準法違反が起こることはやむを得ません、こう言っているんです。どう改善をするつもりですか。どう改善をさせるつもりですか。     〔湊委員長代理退席、小山(長)委員長代理着席〕
  143. 中西正雄

    ○中西政府委員 三十キロ以上の幼児の介護等につきましては、持ち上げる必要があるときには特に二人以上でやるように行政指導をしております。  それからまた、入浴等につきましては、今後の問題でございますけれども、できるだけ機械設備を使うということで、人力によらないで入浴でき  るように改善していくように努めることにいたしております。
  144. 村山富市

    村山(富)委員 これは物ならいいんですよ。人間でしょうが。機械といったって限度があるんですよ。二人で抱えるといったって、二人の介護職員がいなければ一人で抱える以外にないじゃないですか、あなた。ですから、厚生省は違反を承知の上で働いてもらうということですから、そのことはひとつ十分承知をしておいてください。  私はこのままではやはり済まないと思うのです。なぜかと申しますと、現実に、保育所でも、あるいは重障施設でも、次から次に腰痛症が起こっているのですよ。職員は倒れる、残った人間には重荷がかかっていく、倒れるということの繰り返しですよ、いま現実は。そうすると、これはどうにも子供のお守りもできませんから、したがってやむを得ず、国がしてくれなければ地方自治体に求めていくというので、地方自治体に要求していくんですよ。地方自治体は現実に見せつけられますから、やむを得ぬというので増員をするでしょう。これは必ず地方自治体の超過負担にはね返っていくのです。そして地方財政を圧迫していくのです。いま現実はそういうからくりになっているんです。こういう問題について、これは自治大臣、どう思いますか。
  145. 福田一

    福田(一)国務大臣 お答えをいたします。  実はそういうような問題が起きましたときには、自治体としてはやむを得ず支出をいたしておると思うのでありますが、超過負担になっておることは事実でございます。で、この種のものは今後どうしても国で超過負担を解消してもらうように、ひとつ努力をいたしたいと思います。
  146. 村山富市

    村山(富)委員 まあ、それぞれの大臣がそれぞれの立場から適当な答弁をしていますけれども、そんなことでは解消しないのですよ。どれくらい苦んでいますか。ここに写真もありますよ。こう言っていますよ。これは三木総理に出した手紙ですよ。「拝啓三木総理様」看護婦の腰痛症を救ってください、「看護婦残酷物語」と言って直訴しているわけですよ。この内容には、介護職員がばたばた倒れていく様子が書いてありますよ。この写真見てくださいよ、大きな子供を抱きかかえてふろに入っているじゃないですか。これが現実の職場ですよ。どこに福祉があるんですか。しかも職員が苦労しているだけじゃないですよ、そこに収容されている子供がどんな生活をしているか知っていますか。  ちょっと紹介しますと、これは東京の島田療育園ですけれども、一日の生活の時間帯を見ますと、朝六時に起床するんです。六時半にはもう朝食をとるんです。朝食時間に一時間から一時間半かかっています。そして昼食が十一時です。夕食は十五時三十分ですよ。夕食は三時半ですよ。そしてもう七時には全部就寝させられるわけですよ。人間らしい扱いを受けていないじゃないですか。これはやはり人が足らぬからです。しかも一週間に二回しかふろに入れてませんよ。夏でも同じです。おしっこをたれる子供もあるし、ふんをたれる子供もあるわけですよ。手が届かないのです。しかも危険防止と称して、抑制帯といってくくりつけるひもがあるんです。目が届かなくて危ない子供は、抑制帯を使って柱にくくりつけてあるんですよ。こういう扱いを子供は受けているんですよ。しかも朝食なんか見てごらんなさいよ、もうほとんどがおじやです。どうしておじやですかと聞いたら、普通のみそ汁なんかつけると時間がかかるというんです。おじやならもう一ぜんで済むわけですから、簡単に食事がとれるというんでおじやにしていますと言う。入れている親がこれを見たらどう思いますか。  ですからいまの福祉施設は、入っている職員が非常に犠牲的な苦労をして勤務についておる。しかも収容されている児童は人間らしい扱いをされておらない。こういう実態をもう少しまともに見てもらいたいと私は思うのです。これは厚生省も、先ほど来答弁がありましたように、数字は若干の問題があるけれども、しかし何とか基準法違反は解消したいと思って精力的にやったことについては評価をしますよ。しかし残念ながら大蔵省から削られたのだ。  大蔵大臣、いま申し上げた職場の実態をあなたは知っていますか。国が決めている法律を違反さしてまで仕事をさしているんじゃないですか。しかも、本年度つけた予算では違反は起こりますということを認めているんですよ。私はこの際、そういう福祉施設の実態を御認識願った立場で大蔵大臣の見解も聞いておきたいと思うのです。
  147. 大平正芳

    ○大平国務大臣 福祉予算につきましては、厚生省とよく打ち合わせまして、厚生省の要求のラインを財政の許す限り実現いたす方向で今日まで努力をしてまいったわけでございます。その結果、御案内のように、その他の費目に比べまして画期的な躍進を見ておると思うのでございます。しかし、しさいにわたって内容を検討いたしますと、御指摘のようなことが間々見られることは大変残念でございまして、この上とも検討を続けまして、極力充実を図ってまいりたいと思います。
  148. 村山富市

    村山(富)委員 いずれにしても、現実に労働基準法違反案件が社会福祉施設の職場の中からは消えない、起こっているんだ、これが回り回って地方財政に対して圧迫をする、超過負担になっていくというような状況にあるんだということは十分御認識をいただいて、ひとつ是正方を強く要望しておきます。  次に、三木内閣の一つの看板である、社会的不公正を是正する、こういう立場から、私は国民健康保険の問題について若干お尋ねしてみたいと思うのです。  いまの医療保険制度を見ますと、一つは健康保険、これは組合健保も政府管掌の健保も同じですが、あるいは公務員関係の共済保険等々を見ましても、本人は十割、家族は七割、こうなっておるわけです。ところが、国民健康保険だけは世帯主も家族も七割給付ですね。     〔小山(長)委員長代理退席、湊委員長代理着席〕  これはそれぞれ歴史的経緯があると思いますけれども、しかしその保険を構成している集団の内容、たとえば所得の平均を見ますと、組合健保の場合を一〇〇として国保の場合には七四・四%というのが大体の所得の水準ですね。この所得が低いということは、仮に世帯主が病気になって入院でもした場合には、家計に与える影響というのはきわめて大きいわけですね。これは否定できないと思うのです。  それから年齢構成を見ますと、大体国保の場合には四十八・九歳、組合健保の場合が三十四歳ですから、国保のほうが大体十五歳くらい年齢構成も高いわけです。年齢が高くなれば高くなるほど罹患率が高くなるということも、これは医療統計がよく示しておるところですね。しかも若いときには組合健保に入っておるのですよ。そして高齢になってやめて、罹患率が高くなってから給付の悪い国民健康保険に入るのです。こういう矛盾も一つあります。同時に、健保の本人も、あるいは国民健康保険に入っておる世帯主も、日本経済成長のために社会的な労働力の負担をしておることについては変わりがない。しかもこれは家計の中心ですから、もし世帯主が倒れた場合の家族の生活に与える影響は非常に大きい。これも同じであるというようなことを考えた場合に、健保や共済は本人十割給付で、国民健康保険だけは七割給付というのはいかにも不合理だし、社会的不公正ではないか。せめて十割給付に改善をするなり均衡化するための努力は考えてもいいのではないかと思いますが、その点についての大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  149. 田中正巳

    田中国務大臣 健康保険各制度の間の格差、これは確かに先生御指摘のとおり一つの問題であります。しかし、これがかくなるようになったにはそれぞれの理由がございます。  第一に、国民健康保険の被保険者は大体自営業者、農漁民でございまして、これにつきましては、雇い主、つまり雇用者の負担というものがないというのが一つの特色でございまして、したがって、保険料を本人からかなり支弁していただきますけれども、財政力が脆弱であるという問題が一つあろうと思います。そこで、従来はこれについては五割給付でございましたが、世帯主を七割に上げ、そしてまた家族を七割に上げるというふうに、逐次これの改善をしてまいったところでございます。今日これを全部健保の本人並みに十割給付にすることについては、私は言うべくしてそう簡単なものではないというふうに思っておるわけですが、逐次これについて検討を加えていきたいと思っております。  本来、この種の保険というものは、同一負担、同一給付というものが望ましいのですが、同一負担ができないところに実は問題があろうと思うのであります。また、お説のとおり、国保の場合、年齢構成も所得も、政府管掌はもちろんですが、組合管掌から見ると劣弱であるということも、これはもう御承知のとおりであります。そこで、現在一番問題なのは、各種の共済あるいは政管健保、あるいは組合管掌健保に入っておった者が、老齢化してすべてが国保の中に入り込んでしまうということについては、公正の確保という観点から見て私は問題だと思うのであります。老人の場合は受診率も高いのでございますから、したがって、こういうものを国保の被保険者の中でめんどう見ろということは、私はやはり公正を欠くというふうに思いますので、したがって老齢者につきましては、国保の中で処置をするということではなしに、これを別建てにしていったならばよろしいのではないかというふうに考えて、目下厚生省においてこの作業をいたしておるところでありまして、この老人を別建てにするということによって、国保の場合ある程度の財政のひずみも是正されると思いますし、かてて加えて、老人独特の給付もできるものではなかろうかと思いますので、せめてもそのようなことをやらなければいけないと思っておりまして、就任直後ですか、そういうことについて事務当局に検討を命じているところでございます。全くすべての医療保険を同一給付にするということについては、これは私はここでいろいろ言っても食言になると思いますので、相当きっちりしたことを言っておかなければならぬと思いますから私は言いますが、同一給付にできるということについては、軽々に申さない方が私は正直な答弁だと思います。
  150. 村山富市

    村山(富)委員 そう力んで言う必要はないんで、もっと気楽な気持ちで答えなさいよ、あなた。  さっき言いましたように、若くて働いている間は被用者保険ですよ。若い間は罹患率も少ないわけですよ。そして組合健保に入っている。退職後、年をとってから国民健康保険に入ると給付は七割、これは不合理じゃないですか、どう考えたって。そうでしょう。ですから、私はそれぞれ歴史的な経緯も承知していますから、いまここで何もかも一緒にしなさいと言うことのできぬことは承知していますよ。しかし、だれが考えてもこれは不合理だと思われる点については、できるだけ均衡を保つように是正をしていくのがあなたの仕事じゃないですか。当然のことじゃないですか。しかもやはり社会保険の性格から考えて、最も困っている層を全体で救済していくというのがこの基本的な精神じゃないですか。そうしますと、何といったって国民健康保険が一番体質的には弱いですよ。その弱い層を社会的、全体的にやはり救済していくという基本的な精神から考えた場合に、これは私はやはり是正する必要があるのではないかと思うのです。ですから、余りかた苦しく考えぬで、どう考えたって、自分が考えてもこれはやはり不合理だ、不合理な点については是正しますというくらいの答弁はしたってあたりまえじゃないですか。どうですか。
  151. 田中正巳

    田中国務大臣 精神については全く同じでございます。ただ現実の問題として、これを直ちに受け合いがたいという客観情勢を申し述べたわけであります。さればこそ私は、国民健康保険に各種の保険や共済から吹きだまりのように老人が入ってくるということについて、これを何とかしなければならないという作業をしているということを申し上げたわけであります。  なお、老人医療については、いわゆる退職者医療の問題と絡めて考えていくということが一つの課題であろうというふうに思っております。
  152. 村山富市

    村山(富)委員 これで余り時間をとると時間がなくなるので、ひとつそれは冗談じゃなくて真剣に考えて、だれが考えても不合理だと思われる点については、やはり是正する努力はしてもらいたいと思うのです。  それからもう一つは医療機関ですね。医療機関に受診をする場合、健保やら共済は全国共通ですよ。保険医のところには、どこに行ったって診療が受けられるわけです。ところが国民健康保険だけは、申し出をした機関でなければ受けられないわけですね。ですから、私が厚生省から報告を聞きますと、医科の場合に、全国に七万五千九百九医療機関がある。そのうち一部、他県の取り扱い、たとえば隣県だけ取り扱いますとか、そういう医療機関が五千百十一ある。自分の県だけの被保険者を扱いますというのが七千六百七十九あるわけですよ。ですから、その県の医療機関にほかの県の人が行ったって、これは保険は通用しないわけですよ。それから歯科の場合が全国で三万三千二百七十一ある。その中で一部他県の取り扱いをするのが二千三百九十一、自分の県だけを扱うというのが三千二百八十八です。これも私はやはり不合理だと思うのです。  もう一つ特に不合理と思うのは、国立の大学の付属病院。これは調べてみますと、分院等も含めまして国立の大学付属病院が全国に四十九あるそうですね。その中で、一部他県だけを取り扱いますというのが二十八、全国共通して扱いますというのが八つしかないのですよ。最近は非常に難病なんかが多くなって、ぜひひとつ大学病院で診てもらいたい、こういう国民的な要望が強まっています。ある意味では大学病院に信頼があるのでしょう。そして国民が期待している大学病院は、国民健康保険は使えませんというのでは、これはやはり不合理ではないか。健康保険やら共済保険はどこでも使える、国民健康保険だけは契約した医療機関だけしか使えないというのでは余りにも片手落ちではないかと思うのです。これは法律の改正が必要なら法律の改正もして、これくらいは健保も共済も国保も同じだという扱いにしてもらえるようにすべきではないかと思いますが、その点はどうですか。
  153. 田中正巳

    田中国務大臣 御指摘のとおり、国民健康保険については医療機関の申し出主義によってやっているわけであります。御指摘のような傾向があるわけであります。ことにわれわれのような生活をしている者が一番影響を受けるわけでありまして、私自身の家族なんかも、選挙区の国保の被保険者証を持っていますが、東京では医療を受けることがなかなか困難であるというようなことがあります。傾向論といたしましては、大病院あるいは大学病院等のように、非常に患者が多い、事務量が多いというところが、これについて申し出をしないという傾向があるようでございます。これらについては、厚生省で従来から、何とか他県のものについてもこれを受けるようにという勧奨をいたしておりますが、しかし勧奨には限度があろうと思われますものですから、したがって、各都道府県の国民健康保険連合会が中央に決済機関を設けて、お互いに手形の交換のようなことをやるというのが一番望ましい制度であろうというふうに思いますので、いま事務当局でこのような機構というものを打ち立てるべく鋭意努力中でございますので、これについては若干の日にちをかしていただきたい。そしてそのような方向で全国通用するように持っていきたい。重要な課題だと思っております。
  154. 村山富市

    村山(富)委員 これは恐らく大学病院側に言わせれば、事務手続が繁雑だとか、人が足らぬとか、いろいろ理由があると思いますから、文部大臣がおれば文部大臣にお聞きしたいと思いましたけれども、これはいずれまた文部大臣に聞くことにいたしまして、次に入ります。ぜひひとつ、国保もどこの医療機関に行っても診療が受けられるような措置を早急にしてもらいたいということを、強く要望しておきます。  次に、国保財政はだんだんやはり厳しくなってきております。毎年その医療費の引き上げもやっておりますね。たとえば保険料を見ますと、四十八年に二〇%、四十九年度に三〇%以上の引き上げをそれぞれやっております。しかも一般会計からの繰り入れを見ますと、四十六年に百八十億一千九百万円の一般会計の繰り入れをしているわけです。これは自治大臣もよく聞いてもらいたいと思うのですが、四十七年には二百四十三億九百万円、四十八年には三百十一億四千百万円、四十九年には四百二十一億五千二百万円と、累年多くなっているわけであります。恐らく五十年度はもっと多くなるのではないか。しかも、五十年度はまた保険料を上げなければできないのではないかというような状態に追い込まれておりますが、これだけ一般会計の繰り入れを必要とするのは、もちろん医療費の引き上げ等が大変大きな理由になっておると思いますけれども、しかし国が負担をすべき事務費をやはり全額見ておらない。超過負担があるわけです。私はこういう超過負担が地方財政を相当圧迫していると思うのです。このことは当然指摘をしておかなければならぬと思うのですが、こういう状態にあってそれぞれ苦労しておるけれども、四十八年度の実質収支で赤字が幾らあるかと申しますと、二百三十八市町村が赤字を出しておりますが、恐らく五十年度はもっとふえるのではないかと思うのです。  こうした市町村の国民健康保険財政の窮迫に対して、政府は、本年度、臨時調整交付金を六百五十億円計上しております。しかしこれはあくまでも臨時的な応急措置ですね。こういう状態というのはずっと続いていくわけです。私は、国保財政というものが国民的な期待にこたえる要素が大変大きいわけですから、したがって、額はどのようになろうとも、もっと安定して国保財政が運営できるような措置というものを講ずべきであると思いますが、その考え方を聞きたいと思うのです。
  155. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおり、国民健康保険財政に対しましては、各地方公共団体は一般会計から負担をしておるわけでありまして、四十九年度は四百二十二億ということでございます。  これについて内容を分析してみますと、いろいろなものがあるようであります。保険料負担の肩がわりをしているもの、あるいは地方単独の公費負担の問題あるいは人件費が国の基準より上回っているもの等々、いろいろあるようでございますが、人件費につきましては、厚生、自治、大蔵の三省の共同調査の結果によりまして、二ヵ年間でこれを解消するように策定をいたしました。今年その初年度の予算が計上されているところであります。それから、いま臨調でこれをカバーしておりますが、しかし、今後はやはり国保財政の立て直しということを基本的に考えなければならぬということだろうと思いますので、先ごろ申した老人医療の別建て制、退職者医療の制度等々のことも、こういったような基本的な国保財政の立て直しという一面も実はあるわけでありまして、そうしたことをめぐりまして、今後、国保財政の健全化を図っていきたいというふうに思っております。
  156. 村山富市

    村山(富)委員 もう一つ、これは大変不合理ではないかと思われるのは、一つの県内で隣同士の町村でもって保険料が違うのです。これはもちろん診療費なんかの関係もあると思いますから、医療機関の多いところはそれだけ診てもらう機会も多いわけですから、したがって医療費がふくらむというので、支出が多くなるから負担も大きくなるということがあると思いますけれども、これは、ある県内のそれぞれの医療機関の数と保険税の額を比較してみますと、たとえばある町では、医師が人口千人当たり〇・六一、歯科医師が〇・一五、それに対して保険税は一万一千三百三十二円。ところがある町については、同じ人口程度の町ですが、千人当たり医師が〇・七一、歯科医師が〇・二七、大体同数ぐらいであるし、むしろあとで申し上げた町の方が多いわけです。にもかかわらず保険税は約半分以下の五千八百九十円。これだけの違いがあるわけです、同じ県内の町村で。これもやはり不合理ではないかと私は思うのです。こういう不合理を是正するために、ある意味では財政調整交付金というのがあるというふうに思うのですけれども、それがあってなおかつこういう不合理がある。とするならば、せめて県下の町村ぐらいは負担の率は同じだという程度のものにする必要があるというように私は思うし、特に過疎や僻地がどんどん生まれてくる、そして僻地医療対策や無医地区に対するこれからの対策を考えていかなければならぬという場合に、そういう規模の小さな財政力の弱い町村では、大変大きな負担になっていくんではないかということが想定されるのですが、そういう問題等も含めて、この際、そうした問題に対する厚生大臣の見解を聞いておきたいと思うわけです。
  157. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおり、各保険者の間には相当に保険料の高低があることは事実であります。これは主として受益の差によるものというふうに説明をされているわけでございますが、しかし、これを解消するということについて財政調整交付金等々でやっているわけでございますが、なお十分なところにはいかないということであろうと思います。  そこで、いまおっしゃったように、せめて同一県内におる者については同一の保険料負担にしたらどうだろうかという御説でありますが、私は一つ考え方だろうと思います。私の方も調査いたしてみますと、余りにも小さい保険者というのが実はあるわけでありまして、驚いたことに九十一人という保険者が離島等にはあるそうであります。これが一体保険というような仕組みになじむものかどうかということは、私も就任以来大変心配をいたしておるわけでありまして、一つの方法として、国保においても府県単位の保険者ということがどうであろうかと思っておりますが、これについてはメリットとデメリットが相当いろいろとありますので、これについてどういう方向に落ちつけるかについていませっかく考慮中でございますが、先生御指摘の保険者をもう少し広範囲にするということは、一つの解決の方法として重要な示唆に富んだ御指摘だというふうに心得ております。
  158. 村山富市

    村山(富)委員 せっかく文部大臣が見えましたから、ちょっと先ほどの質問に対して聞いておきたいのですが、文部大臣、国民健康保険の医療をやってくれる医療機関は、国保の場合には申し出をしなければ扱いをしないのです。大学病院の場合、特に国立の大学病院の付属の場合は、その扱いをする病院が非常に少ないわけです。先ほど申し上げましたが、全国に八つしかないのです、全国で共通して扱う病院は。これは最近の難病なんかの問題を考えた場合に、研究機関である大学病院で診てもらいたい、こういう要望が強いのです。だけれども国保は使えない、こういう矛盾があるわけです。先ほど厚生大臣は、これは考えてみるとやっぱり不合理だから、何とか全国適用できるような方向を考えていきたい、こういう答弁があったのですけれども、しかし、大学病院側にすれば、研究に支障があるとか、あるいは人手が足らぬとか、いろいろな理由があるのじゃないかと思いますから、その点に対する文部大臣の見解も聞いておきたいと思うのです。
  159. 永井道雄

    ○永井国務大臣 ただいまの問題につきましては、御指摘のように、全国の患者さんを国民保険を通して診るという学校は非常に限られておりますが、確かに、国民健康保険だけではなくてほかの制度も、進んで地域医療というものを充実しなければならない、そういう段階にございますから、いまの状況ではやはり足りない。そういたしますと、いま御指摘がございましたように、人手の問題もあり、あるいは事務機構の問題もあるかと思いますが、こういうものの目標は、非常に広い地域に国立大学の医療というものが利用されて、そういう意味で地域医療の精神に沿って進んでいきますように、でき得る限り前向きに問題の解決を進めていくというふうに考えております。
  160. 村山富市

    村山(富)委員 これはひとつ双方で、ぜひそうなるように御尽力をいただきたいと思います。  それから国保に関連をして一つお尋ねをしておきたいと思うのですが、五十年の二月七日付で厚生省の保険局長から都道府県知事あてに、あるいは国民健康保険課長から都道府県の保険課長あてに出した文書がありますが、その文書の中にこういう文言があるわけです。これは「五十年度国民健康保険予算の編成について」、こういう内容の文書ですが、その中に、「国民健康保険主管部局の原案段階で」——予算編成をする原案段階で、「全市町村について都道府県に必ず内議させ、所要の措置について十分指導を行われたいこと。この場合、必要な措置をとることを拒み、または措置が不十分な市町村に対しては、国庫負担金等の算定にあたり、適当な減額調整を行うことができるよう検討中であるから、その旨留意のうえ指導の徹底を期せられたいこと。」こういう内容が一つあります。いま一つは、「市町村等が独自に国民健康保険の給付に上乗せして各種の公費負担医療制度を実施することは、その影響が多大であること、並びに国民健康保険の財政見通しに極めて厳しいものがある現在適当でないから原則として差控えるよう指導されたいこと。」こういう内容のものがあるわけです。これは今度は、その文書をもらった各県の民生部長なり担当の部長が、各保険者に対して同じような文書を流し、県によっては担当者を集めて協議をして趣旨の徹底をするというような念の入った指導をいたしておりますが、いままで申し上げましたように、保険財政が窮迫をして厳しい要求のあることは、十分承知をいたしております。したがって、そういう財政的な見地からすれば、ある意味では理解できないことはありませんけれども、しかし、こういう文書を出すということについては、いまの時代にどうなのか。これは三木内閣も、厚生大臣もさっきから何回も言っておりますように、挙げて福祉の充実強化を図っていこう。言うならば、福祉は一枚看板にしておる。国民的にも福祉というものはある程度意識的に定着しつつある時期ですよ。しかも国民的には、たとえば老齢医療の無料化についても、七十歳じゃなくてもっと年齢を下げてもらいたい、できれば乳幼児も無料にしてもらいたい、こういう要望が強いのです。そういう要望にこたえて福祉を充実していこうと図っておる市町村に対して、差し控えられたい、こういう文書を出すことについては、明らかにこれは福祉の逆行じゃないですか、政策的には。どうですか、その点は。
  161. 田中正巳

    田中国務大臣 御指摘の通牒、内簡につきましては、いろいろな文言があるわけですが、一つは適当な「措置が不十分な市町村に対しては」云々というところでございますが、これは主として、保険料を取るべき姿をとらないものについて法七十一条によって減額するかもしれないぞ、という警告を発したものでございまして、これについては法七十一条に根拠がございますが、今日まで七十一条を発動したことはございませんので、まあ十分留意をしてくれ、取るべき保険料を十分取らないで、あれこれ医療費の過小見積もりあるいは国庫負担の過大見積もり等をされては困るということでありまして、国保財政の健全化をねらったものであります。  次に単独措置についてでございますが、私どもは、社会保障、社会福祉につきましては、これが根っこから地方自治体が自分の財政力に応じてこれを向上することについては何ら異議をはさむものではございませんが、国保につきましては、問題が国保財政に影響なしとはせないわけでございまして、したがって、これについてはひとつ十分注意をしていただきたい。まあ、わかりやすく言えば、根っこの七割の方に受診率の影響が出てくるわけでございますので、したがって、極端に言いますれば、四割の国庫負担金についてもいろいろと減額補正をしたらどうかという議論もございますが、この方はやっておらないわけであります。  例の普通調整交付金につきましては、片や医療費片や所得との対比において普通調整交付金の算定をいたすものですから、したがって、単独の事業によるところの老人医療の年齢引き下げ等をやられますると、医療費がその分だけアップをしてまいります。そうすると、普通調整交付金の配分について各保険者の間にひずみが出てくるわけであります。そのようなことをやった町村には非常に同じ升の中の普調がよけいにいって、ほかのところがかえって減らされるという傾向もありますので、これは、そういったような年齢引き下げ等をやらない状態に、つまり調整をして引き戻して、そうして計算をするという趣旨でございますので、私は、同じ一つの計算の中に立った普通調整交付金を公正に配分するという見地、つまり公正を確保するという見地からは、とりあえずこうしたことをやらなければ、かえって不公正が再年産、拡大するものではなかろうかというふうに思われるわけでございまして、決して減額するわけては——減額というか、悪いということではございませんで、そのように医療費がふくれ上がったのを基礎にして普調が入ってくるということではなしに、その分か入ってこないということを御覚悟の上でこのようなことをやっていただきたいということを念のため申し上げた趣旨でございます。
  162. 村山富市

    村山(富)委員 大臣が事務担当者が答弁するような答弁をしなさんなよ。あなたはさっきから、福祉は充実強化すると熱意を示したじゃないですか。本当に困っている層が救われていくのなら、それは金の問題ではなくて国の政策としてやるべきことじゃないですか。  しかも、ことしの四月には統一地方選挙がありますよ。どこの市町村の候補者の公約の中にもいまこれは入っていますよ。入っているということは、国民的な要望と期待が強いから入っているんじゃないですか。しかもそのことは福祉の充実強化と向上につながるんじゃないですか。それを差し控えられたいといったような形で抑えていくことについては、これは明らかに福祉向上に逆行するんじゃないですか。それを大臣が、事務局がするような答弁と同じようなことを繰り返されたんじゃ、福祉大臣の資格はないですよ、あなた。
  163. 田中正巳

    田中国務大臣 私は福祉の向上については、これを一生懸命やるつもりであります。しかし、普通調整交付金についてアンバランスを生じ、これをやっていない町村がそれのために減らされるということになったのではかわいそうだ、こういうことでございまして、公平の確保の見地から考えていることでありまして、決して事務当局の答弁を私がうのみにして申し上げているわけではございません。
  164. 村山富市

    村山(富)委員 たとえば国は七十歳以上に対して老人の公費負担をしている。そうすると、仮にある市町村が六十八歳にした、あるいは六十五歳にしたという場合に、国か措置をしているのは七十歳の基準でしているんでしょう。あとはそれぞれの市町村独自の裁量でやっていることですよ。そうでしょう。それに対してとやかく言うことはないじゃないですか、あなた。それが一つ。いいですか。  それと、これは自治大臣に聞きたいのですが、さっき申し上げましたように、最近、地方選挙を見ますと、どこの首長の候補者もやはりこの福祉の問題は掲げて、公約に入れていますよ。公約をして当選をすれば、公約を守っていかなければならぬですよ。それはやはり、それだけ住民要求が強いのですよ、こういう問題については。だから政策に掲げるんですよ。いままでの自民党内閣みたいに、公約はべったり張るけれども何にも実行せぬというわけには、地方自治体はいかぬのですよ。  これは考えようによっては、明らかに自治権の侵害になるんじゃないですか。そうでしょう。せっかく住民要求にこたえてやろうとしていることに対して、まかりならぬ、差し控えなさいと言ってブレーキをかけるわけですから。これは単なる指導だけにはとどまりませんよ。自治大臣の見解を聞きたいのです。
  165. 福田一

    福田(一)国務大臣 健保の問題について厚生大臣がお答えしたことについては、私は同意見を持っておりますが、ただいまの御質問でありますところの、福祉を今後実現していかなければならない、そういう公約を掲げていく候補者が多いということは、いかに福祉に対する国民の要望が強いかということを端的に示すものであるから、これは今後そういうことを抑えるような措置はとってはいけないんじゃないか、こういう御質問だと思うのでありますが、私、この国保の第四条の精神等々から見ますというと、一応は厚生大臣の言うことを認めないわけにはまいりませんが、しかし、今後の問題として、もっと福祉の問題を重視して、そうしてこれが解決に努力をする。特に老人福祉、老人の問題については、これは国としてもう一遍見直していかなければならぬということについて、私も重大な関心を持っておるわけでございます。
  166. 村山富市

    村山(富)委員 これは今後またそれぞれの委員会で問題になると思いますが、ひとつ十分御検討いただいて、少なくとも福祉に逆行するようなことにならないように、措置は十分考えてもらいたいというふうに思います。  次に、最近特に問題になっております歯科の差額徴収問題について、若干お尋ねをしたいと思うのであります。  これは最近新聞紙上等もにぎわしておりますし、同時に苦情等もたくさん出ておりますが、特に、去る一月二十一日、中医協に歯科差額徴収問題の専門部会というのがありますが、その専門部会に、歯科領域における差額徴収に関する苦情相談状況という報告を厚生省がいたしております。これは一昨々日の各社の新聞に報道されておりますが、この報告によりますと、昨年五月から十月までに寄せられた苦情、相談等の件数が千百五十六件。この苦情は各県の保険課やあるいは各県の歯科医師会等に持ち込まれた数を集約したものであるというふうに言われておりますが、おそらくこの千百五十六件というものは表に出ただけの話であって、表に出ない件数はもっと何十倍もあるのではないかというふうに私には思われるわけです。  しかも、この厚生省が報告をした報告だけを見ましても、その中で、保険ではだめです、こう言われて断られた件数は、いろいろな内容の要素を総合してみますと、四五%を超えるのではないか。しかも、金額が高い、領収書がもらえなかったというようなものを合わせますと二四・八%ありますね。これは事例は、もうたくさん新聞なんかに報道されておりますから申し上げませんけれども、私がおととい電話がかかったのを聞きますと、こう言うのです。これは大阪の人です。子供が虫歯になったので、ある歯科に行った。そうしたら七千五百円取られたというのです。それで子供を連れて帰ったら、その御主人が会社に請求する関係があるから領収書をもらってきなさい、こう言ったというのです。それでその歯科に領収書をもらいに行ったわけです。そうしたら三千円引かれて四千五百円で済んだというのです。これはもう二日前にあった事例ですよ。こういう事例が数多くあるわけですね。保険があって保険が使えない。保険ではだめです、こう言われるケースが多いんじゃないかと思うのです。これは、歯科に行って窓口に保険証を出して、あなたどこが悪いのですか、前歯です、ああそれは保険は使えませんよと言われれば、ああそうですかといって保険は引き下げて金を払うだけの話です。あるいは、これは保険でも治りますけれども、保険ではいい歯ができませんよ、こう言われて、いや、いい歯ができぬでもいいから保険を使ってやってくださいという患者はないです。私はこういう事例はたくさんあると思うのですよ。ここに挙がっておるだけでもたくさんありますけれども。しかもいま何十万と取られる事例が多いのですよ。しかも大体国民の九〇%は歯の治療を受けなければならぬような状況になるというように言われておりますから、これは大変な問題ですね。こういう事態に対して、一体、厚生省はいままでどういう対応策をとってこられたのかということについてお尋ねします。
  167. 田中正巳

    田中国務大臣 御指摘の歯科の差額徴収、これも態様はいろいろあるようでございます。例の金合金あるいは白金合金等が保険の給付の外であるものですから、これは自由料金を取るのですが、これを法外に本人が納得しないのに取るというようなケースもあるようですし、それから、保険の給付ができるものを、保険の給付ができないと言って徴収をしたというようなものもあるし、いろいろなものがあります。それから、子供の診療をいやがるといったようなことがいろいろあるようですが、だんだんと実は激しくなってまいったようでございまして、そこで世間の指弾も浴び、それから中医協等でも問題になったわけであります。  そこで第一に、このようなことはよくないことであるということを周知徹底させるために、各都道府県等を通じまして、それぞれに対して注意を促し啓蒙もいたしたわけでございますし、それからこれについては、広報紙、テレビ、ラジオ等を通じて、そういったようなことは保険の給付としては間違ったやり方であるということを周知徹底させましたし、また歯科医の窓口に対しましては、いろいろとそういうことを患者に周知徹底させるような広告も出させておったわけでございますが、なお十分にそれの傾向がやまなかったことについては遺憾であります。  そこで、こういったような注意にもかかわらずそのようなことを続けておった者については、指導監査をいたしまして、また、はなはだしい者については保険医の指定登録を取り消した事案も実はあるわけでありまして、今後とも、そういうことについては厳しくこれをひとつやって、このような傾向の絶滅を期するようにいたさなければならないと思っているやさきでございます。
  168. 村山富市

    村山(富)委員 いまお話がありましたけれども、保険医の取り消しをして処分をしたのは何件で、どういう内容ですか。
  169. 田中正巳

    田中国務大臣 保険医の指定取り消し件数は三件でありますし、指導件数が八十二件であります。
  170. 村山富市

    村山(富)委員 保険医の取り消しをした三件の内容は、どういう内容ですか。
  171. 田中正巳

    田中国務大臣 細かい事実でございますから、政府委員から答弁をいたさせます。
  172. 北川力夫

    ○北川政府委員 お答えいたします。  指導監査をいたしまして、取り消しをいたしました事例は、静岡で二件、それから秋田で一件でございます。  静岡の件は、歯の欠損に金属冠を装着いたしまして四万四千円徴収いたしましたので、これを返還させることにしたものであります。それからまた、欠損に継続歯を装着して、患者に何ら説明なしに、患者から五万円を徴収いたしましたので、これを返還させることにした、こういうケースであります。  それから静岡のもう一件でありますが、これもやはり被保険者証を提出して虫歯の治療を受けましたけれども、帰るときに受付で、幼児は保険がきかないと言われまして、千四百円を徴収されましたので、返還をさせました。  それからもう一つは、前歯について、色の変化がなくて長持ちがするといって、ポーセレンを装着して十六万五千円徴収されたものであります。これも、前歯の保険請求分一万一千九百十円を患者に返還させるというふうにいたしました。さらに、複合レジン充てんを行って一万四千円徴収いたしましたので、これも返還させております。  それから秋田の件でございますが、これもサンプラ冠を装着して五千円を徴収いたしましたので、返還をさせた例、それから有床義歯を装着して、患者に何ら説明がなく、患者から五万六千円を徴収いたしましたので、返還をさせました。  大体こういうケースでございまして、これがいま大臣が申し上げました、五月から十月までの間に実態調査をいたしました結果出てまいりました、指定取り消しに該当したものでございます。
  173. 村山富市

    村山(富)委員 それが保険医の取り消しをした三件の内容ですね。そうすると、それと類似した事例は幾らでも出ているじゃないですか。それと類似した事例は幾らでも出ていますね。これはあなたの方が各県の保険課から集めた内容を見ましても、それと類似した事案はたくさんありますよ。私は何も処分をしなさいと言っているわけじゃないのですよ。こういうふうに混乱している事態をどう解決するつもりなのか、それが問題なんですよ、一番。なるほど厚生省も「歯科領域における差額徴収について」四十九年三月二十九日付ですね。それから四十九年五月七日付で同じような文書を出しておりますね。この文書を一読しますと、なるほどいいことが書いてありますよ。たとえば、必ず本人の了解を得なさいとか、求めがあったら領収書を出しなさいとか、そしてよく患者と話し合いをしなさいと書いてありますけれども、現実に歯科に行ってみて、二時間待って三分診療と言われるくらいに、いっぱいお客さんが待っているところで、一々話ができますか。できぬでしょうが。できると思っていないと思うのですよ、窓口でそんなことは。そしてさっき言ったようなポスターも出してもらいたいと書いてありますね。ところが、おたくの調査によると、ポスターを実際に掲示している医院は六四%しかないのじゃないですか。あとはポスターも出していないのですね。ですから、言うならばこの通達は実行されていないわけですよ。また実行不可能な内容も、この中には、私も現実問題としてあると思うのですよ。しかも一昨日の新聞を見ますと、歯科医師会会長自身がこう言っているじゃないですか。「しかし、歯科予防に全く無策で、どこまで保険診療できるか、被保険者教育を一切やらない厚生省が、どんなに歯科医師を苦しめているかも理解してほしい。」こう言っているじゃないですか。ですから、言うならば通達は出しっ放しで、やっとこれだけやかましくなって、各保険課に連絡をとって、どんな苦情が来ているか、どんな相談が来ているかといって、件数を集めただけじゃないですか、どうですか。
  174. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおり、これについてはかねがねいろいろと御指摘があり、中医協でも問題になりましたものですから、いろいろ対策を立ててやっておるわけですが、周知徹底にいま一段の努力を払わねばならぬという点は、ごもっともだと思いますので、今後さらにその点については進めてまいりたいと思っております。  なお、社会保険における歯科診療の給付のあり方についても、検討をいたすべき面が若干あるというふうに考えておりますので、そのサイドからの検討もいたしてみたいというふうに思っております。
  175. 村山富市

    村山(富)委員 私は、これはもっと本質を掘り下げてみますと、いろいろ問題があると思いますよ。やはり良心的な、と言っては失礼だけれども、まともにいまの保険制度の中で診療行為をやっていこう、こう言っておるお医者さんもあると思いますよ。しかしこういう風潮がずっと出てまいりますと、ばからしくなりますね。だんだんやはり累を及ぼしていくわけですね。だから私は、ある意味では、良心的なお医者さんは苦労しておると思いますよ。だからお医者さんも困っているわけですよ。同時に、患者も被害者になっているんです。この事態に対して、こういう文書、こういう通達を出しただけで、何らの対応策も講じていないというところに、私は若干の問題があると思う。これは本当に問題があったのなら、直ちにそこに調査に行って、指導監査すればいいじゃないですか。ポスターを張ってなければ、なぜ張らぬのですかと、やかましく言えばいいじゃないですか。私はこれはやはり——もう歯科医師会長が言っているでしょう。厚生省が何もしていないと、こう言っているじゃないですか、歯科医師会長が。これは新聞の談話ですよ、名前入りの。  そこで私はやはり考えるのですけれども、一つは、どんな通達を出す——それは通達を出すことも必要ですよ、指導を徹底するのも必要ですよ。だけれども、やはり被保険者がわからなければ意味がないと思うのですよ。ですから、こういうポスターだけではなくて、たとえば窓口に掲示をして、被保険者がわかるように、これこれについては保険が通用しますよ、これこれについては保険が通用しません、したがって差額が取られます、その問題についてわからなければ相談をしてくださいとかいったような、被保険者が理解できるようなものを、やはり掲示することが必要ではないか。それは歯科医師と話し合いをしなさい、こう言っても、先ほど来言っておりますように、実際には窓口ではそんな折衝をするひまがないんですよ。一方はもう歯が痛い、何とかしてもらいたいと思っているし、患者さんは待っているし、歯科医はもう患者に追いまくられて、全く一人一人あわてて診療しながら順番を消化していく、こういうかっこうですから、そんな話し合いなんかできる場はないんですよ。ですから、せめて待ち合い時間に被保険者がさっと見て、ある程度理解できるようなものを出せれば、出す必要があるのではないか。それが一つ。  それから、確かにいまの診療報酬の体系から見ますと、これはよく売薬医療と言われるように、それは薬を売ってもうかる分がたくさんあるのですよ。歯科医の場合には投薬をしませんから、したがって技術料の評価が非常に低い。こういった批判もあって、まともに保険診療をしておったのでは、いま歯科はできない、こういうお医者さんの言い分もやはりあるのじゃないかと思うのです。しかし、そうだからといって、野放しに差額がどんどん徴収されていく、こういう状態は、そのまま放置されてはいかぬというところに問題があるのではないかと思うのです。ですから、先ほど申し上げましたように、とりあえず被保険者に十分判別ができるように、理解できるような周知をする必要がやはりあるのではないかということが一つ。  それから、もし保険診療だけでは無理があるという問題があるなら、是正をすることも必要であろう、やはりこういう方向で積極的に取り組んでいって、いまの事態を解消するという努力をする必要があるのではないかと思うのですが、その点どうでしょう。
  176. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおりだろうと思います。したがいまして、歯科医師の待合室には、このようなポスターを張らせることにしておりますけれども、なお不十分な点があろうと思います。  それから、歯科医と患者との間に、こういった料金についての話し合いができないということは、私はないと思うのでありまして、現実には差額徴収をやらなければならぬのが制度の上にあるわけでありますので、そういう場合には正しく話し合いをして、患者と歯科医師との間で理解と納得の上に、この制度を実施しなければならないのですが、これを黙ってやるということに問題があろうと思われるわけなんです。事実、従来自由診療の場合には患者が相当多かったのですが、これについてはすべて歯科医師と患者との間の話し合いでもって料金を策定しておったのを私は知っているわけでありますから、決して患者が多いからといって、話し合いができないということは、私はないというふうに思います。  第三の点については、さっき私が申し上げたとおり、社会保険における歯科の給付についてのあり方については、今後検討していきたいというふうに思っております。
  177. 村山富市

    村山(富)委員 そういう答弁だけでは私は納得できないのです。それは、通達に書いてありますように、必ず被保険者に断ってやりなさい、そしてよく説明して納得をとらなければいけませんよ、納得したら文書にも残しなさい、というようなことまで書いてあるでしょう。ところが、こういう事態がどうして起こったと思いますか。起こった原因については、それはさっき言いましたように、保険診療の単価に問題がある、点数に問題があるということがあるかもしれませんよ。ですから、保険診療だけやったのでは、とてもじゃないが歯科医はできないといったような不満が、歯科医の側にあるかもしれませんよ。私はやはり基本的には、患者に対して歯科医の絶対数が足りないということだと思うのですよ。需給関係のアンバランスですよ。そういう問題もあるわけです。したがって、それが前提になっているとすれば、いま大臣が答弁したように、窓口で話ができぬことはないなどと言うたって、それは現実としては無理ですよ。それは保険局長、どう思いますか。現場を知らぬのじゃないですか。
  178. 田中正巳

    田中国務大臣 これは厳重にやるつもりでございますが、歯科医師と患者との間で話し合いができないなどということは絶対ないわけでございまして、現実にまじめな医者はやっているわけであります。率直に言うと、実は私は歯医者のせがれでございまして、おやじのやっていたことをよく知っているわけでございまして、そのようなことはやればできるわけでございます。したがって、この点について、脱保険などということを唱道いたしまして、そして脱保険の思想からこれが蔓延したというのが一つの原因だろうと思いますが、これについては社会問題化しておりますので、ひとつ十分留意をいたしまして、このような傾向の絶滅を期したいというふうに思っております。
  179. 村山富市

    村山(富)委員 それは、田中厚生大臣が育ったお家はりっぱだったかもしれないと思うのです。だけれども、現実にこれだけ問題が出ていることは否定できない事実でしょう。それを、やりたいという決意だけを聞いてみたって、解決にならぬですよ。ですから、具体的にどうするつもりですか、こういう質問をしておるわけですから、それに答えてくださいよ。
  180. 田中正巳

    田中国務大臣 ですから、患者については、歯科における社会保険診療の範囲というものをよくわかるように、まず説明書をそれぞれの待合室に掲示するということ、歯科医師が患者と話し合いをすることを励行させるということ、そしていま一つは、社会保険診療における歯科の給付のあり方について再検討するということ、こういつたようなことをやるということが、私は根本解決の手法であるというふうに思うわけでありまして、こういつたようなことを綿密に着実に実行させる以外に、この問題の解決の方法はないということだろうと思うのであります。
  181. 村山富市

    村山(富)委員 何ですか、待合室に説明書をつけるわけですか。出させるわけですか。これはいまもやっているわけですか。
  182. 北川力夫

    ○北川政府委員 大臣からもるる申し上げましたが、この歯科診療の差額問題は、一昨年あたりから特にいろいろ御批判がございました。そういう意味合いで、昨年二月改定の際の一昨年末の中医協、それから昨年十月改定の際の八月から九月にかけての中医協、その場におきましても、非常に問題点として指摘をされたわけでございます。そういうところから、私どもは先ほどから申し上げております、また御指摘がございました通知を出しまして、医療機関でも十分なPRをする、それからまた、事業所等を通じまして、被保険者側に対しましても、できるだけ事柄を正確に周知させるように、努力を実際するつもりでございます。  ただ、御指摘のとおり、こちらから行っておりますポスターが、そのままの形で全部の歯科医療機関に一〇〇%配付をされ、また掲示をされているかと申しますと、現状は残念ながらそこまでいっていないかもしれません。しかし、これは行政指導として今後も引き続いて努力をするわけでございますし、また、そういった運営上の問題は、制度的な問題も含めまして、現在中医協に対しまして諮問をいたしておる状況でございますから、行政指導上も、またこの問題を専門的に審議いたします中医協あるいは専門団体等の協力も得まして、問題を一歩一歩前進させてまいりたい、このような気持ちでやっておりますので、決して御指摘のように漫然としているわけではございません。その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  183. 村山富市

    村山(富)委員 それなりに努力はしていると思いますけれども、その努力ではまだまだ問題が解消しないというところに問題があるわけですから、なおかつ工夫をしてやる必要がある。そのためには、私がさっきから言っていますように、これはやはり患者が知らなければだめだと言うのですよ。患者が自分で判断ができる。それでなければ、向こうからされたとおりになるじゃないですか。ですから、お医者さんにも考えてもらわなければならね。同時に、被保険者、患者自体も理解をしてもらう必要がある。理解をしていないために、無用の摩擦があるかもしれませんし、誇張して宣伝される部分があるかもしれませんよ。ですから、その点を周知徹底させることが第一番に必要である。  それから、さっきから言っておりますように、歯科医師の立場に立った場合に、いまの診療報酬ではやはり無理があるということであって、要求があるならばその要求も聞いて、言い分は言い分として、是正できる点は是正してあげるという努力をしていかなければ、この問題の解消にならぬと思うのですよ。ところが、そういう段取りでおったのではないかと思うのだけれども、中医協で総引き揚げをした。ですから、いま話し合いをする場もないでしょう。こういう問題に対しては、大臣、いまどういう努力をしておるわけですか。
  184. 田中正巳

    田中国務大臣 今日、中医協の委員の辞職願を出しておりますが、私のところでお預かりしておりまして、今後説得をいたしまして、できるだけ早くこれを撤回していただくようにいたす以外に方法がございません。  なお、本問題についての解消策については、先ほど来お互いにるるお話をしておりますが、やり方については全く同じでありますので、これをひとつ綿密に、精力的にやっていくという方向で進めたいと思っております。
  185. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間もございませんから、最後に申し上げますが、これはおたくの方で委員会に報告された内容よりも、もっとたくさんありますよ。もっとありますよ。これはほんの氷山の一角にすぎませんよ。しかも、金額も相当莫大に取られたところもありますよ。私は事実を知っていますよ。こういう事態ですから、いつまでもこのまま放任しておくという——放任といい表現はちょっと適切でないかもしれませんけれども、事態は放置できない。保険があって、毎月保険料を払っておって、当然保険で見てもらえるものが、窓口で保険じゃだめですよと言われれば、ああそうですかと言って、患者は引き下がる以外にいまないのですよ。そうでしょう。ですか、そういう関係を十分御認識になって、被保険者に対する周知方も徹底をする、そして被保険者も医者も、双方で是正をしていく努力をするような基盤というものをつくっていかない限りは、この問題は解消しないと思います。それが私は行政のやるべき仕事ではないかと思いますし、この問題は厚生省に責任があるわけですから、責任を持って十分徹底して指導して、一日も早くこういう問題が解消するように努力するように、心から御期待申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)
  186. 湊徹郎

    ○湊委員長代理 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  次に、中川利三郎君。——農林大臣、時間を励行するようにお願いをいたします。  中川利三郎君。
  187. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 きょうは農業問題、とりわけ農業近代化の中核的な役割りを果たしております農業機械についてお聞きするのでありますが、前段、いま問題になっているのは、一つ自給率の拡大であり、それに伴う農地の拡大であり、さらには価格保証、こういう問題があるわけでありますが、しかし、幾らどのような施策をやりましても、農用資材、とりわけ農業機械が非常に高かった、こういうことでは何にもならないわけですね。国がこういう重要な近代化、機械化を位置づけていながら、そういう問題がいま発生しておるわけでありますが、一方では大メーカー、主要メーカーが大変なもうけを上げているということも言われているわけですね。そういう中で、農民がいかに悲惨な状態、体の面でも経済面でも大変な状態に置かれておるかという生々しい実態について、私はこれからいろいろお聞きしたいのでありますが、まず、農業機械の安全性の問題からお聞きしたいと思うわけですね。  委員長のお許しをいただきまして、さしあたってまず、質問に入る前に、私は写真をひとつ御提示したいと思いますので、お許しをいただきたいと思うのであります。  それで、農業機械における事故の痛ましさというものはどれだけひどいものであるかということを、参考のためにお見せするわけでありますが、実は私は、これをお見せすることに少しちゅうちょしたわけであります。なぜかと言うと、余りにも生々しいからでありますが、しかし、そういう実態を知っていただくためには、どうしても皆さんに見てもらわなければならない。これは、ちょうどコンバインの脱穀の部分に手をはさまれて、ここからべろっともがれたという、そういう事例でありますけれども、こういうことであります。これが農機具、機械の悲惨な傷害の事例でございます。  それで、私はまず最初に厚生大臣にお伺いしたいのでありますが、たとえば、農林省ではかねがね、農業機械の安全性の問題について、これは非常に重大だ、こういうことを言うておりますが、私がいまここで御紹介したのは、昨年の、四十九年十月三日午後二時三十分に、秋田県平鹿郡雄物川町の四十八歳の農夫のものであります。こういう農業機械による事故調査、これは主に厚生省が農村医学会なんかに委託して検討さしていると思うわけでありますが、そういう立場から、今日の農業機械災害に対して、厚生省はいろいろとお医者さんの意見やら勧告やらを聞いているだろうと思うのです。それであなたの立場から、こういう災害調査に対して、どのような御要望やら、どのような認識、期待を持っているものか、この点をまずひとつお聞きしたいと思うのです。
  188. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおり、最近農村における機械の導入によって、農民の健康に及ぼす影響というものがあれこれ出てきたわけでありまして、御指摘のとおりのような外科傷害等もあるものでございますから、したがって、昭和四十六年から、厚生省では日本農村医学会に委託をして、この研究をやってもらっているわけでありまして、今後ともこれを続けていくつもりであります。  なお、この安全教育につきましては、厚生連、農協等を通じて、それぞれやっていくつもりでございますが、さらに通産省、農林省に対して、この安全性を高めるように、今後さらに要請を続けていかなければならないというふうに思っておるわけであります。
  189. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 たとえば、農村医学会の厚生省委託の調査の中でも、これは個々の農民の操作上のいろいろな問題よりも、根本は農業機械の構造を直せ、このことが先決だということが書かれていると思いますが、いかがでございますか。
  190. 田中正巳

    田中国務大臣 お説のとおりであります。
  191. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今度は副総理にお聞きしたいと思います。  あなたはかねがね、いまはどうか知りませんけれども、前は、何よりもだれよりも農民を愛す、なんというようなりっぱな言葉を言いましたけれども、農業機械の分野におきましては、いまは、かまやすきで耕した、そういう時代と違いまして、非常にこれが一般化して、しかもどんどんこういう事故がふえておる。しかも、先ほど厚生大臣がおっしゃったように、構造上の問題がかねがね指摘されておった。こういうことに対して、農民をだれよりも愛すとおっしゃった福田さんの御見解を、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  192. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 わが国におきましては、申し上げるまでもございませんけれども、消費者保護基本法という法律があります。その第七条において、消費者の生命、身体、財産、これを保護しなければならない、こういうことになっており、これに基づく消費者保護会議におきましても、昨年の秋、何よりも大事なことは消費者の生命、財産を守ることである、こういう決定になっておるのでありまして、その対象は広範でございますが、御指摘の農業機械、こういう問題もあるわけでございます。いま経済企画庁におきましては、この決定に即しまして、全国に百三十二の消費者センターというものがあるわけでありますが、そのセンターを活用いたしまして、そういうケースにつきましては、これを早期に発見する、そしてそれに対しまして適正な保護措置を講ずるということで、鋭意努力をしておるわけでありまして、この上ともそういう不幸な事態が起こらないように、鋭意最善を尽くしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  193. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま写真でお見せしましたが、あのような大変な事故というのは、たとえばこれはトラクターのカタログでありますが、トラクターというのは、前の方へずっと進んで稲を刈っていくわけですね。同時にここで脱穀していって、そして最後のところでカッターでわらを刈り取って下へ投げていく、こういう作業が一緒にやられるわけですね。ところが、これがいろいろな分野に分かれておりますから、なかなか順調に進んで行かないわけですね。この最後のところに、脱穀の部分に稲が詰まって、それを引っ張らなければいけない、そういう場合にどうしても手がはさまれやすい、こういう状況の中で、あれは起こされた傷害であります。けれども、そのほかにも、たとえばちょっとした気象の変化で、刈り取りから稲わらを落とすまでの工程がアンバランスになっていますから、構造上いろいろな点が前々から指摘されていたわけですね。こういうことにつきまして、構造に問題があるということは、農村医学会の報告をまつまでもなく、いろいろ指摘されておって、しかもやられる部位、どこでけがするかというところが、農業機械というのはほとんど決まっているのです。  そういう状況でありますので、農林大臣にお聞きするわけでありますが、本人の操作ミスとかなんとかいうこともあるでしょうけれども、構造上のミスも十分あるのではなかろうか、この点について、農林大臣はどうお考えかということをお聞きしたいと思います。
  194. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 最近、農業において機械化が進むに伴いまして、機械によるところの事故がいろいろと起こっておるわけでございまして、農林省としても、正確に事故の内容を把握するために、四十九年度に調査をいたしておりまして、現在調査結果を取りまとめておるわけでございますが、機械の性能あるいは操作上のいろいろと問題点があると思うわけでございまして、四十九年度にその調査の結果を取りまとめておりまして、この結果に基づいて、われわれとしては、今後ともこの事故防止に対して万全の措置を講じていかなければならないと考えております。
  195. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、農林大臣は、構造上の欠陥があるということをお認めになるのですね。
  196. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 具体的に、現在その結果を取りまとめておる段階でございます。事故の具体的な実態というものを正確に把握しておりませんので、具体的な結果が出まして、判断をしていくべきものであると思うわけでございます。
  197. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 冗談じゃありませんよ、あなた。農林省が出されておる昭和四十五年六月五日の農林次官通達、ここに「農作業安全基準および農業機械安全装備基準の制定について」というものがあります。その前段に、あなたの方ではどうおっしゃっておるかというと、「農業機械による事故は、高性能な農業機械の運転および取扱いに関する農業者の知識および技能の未熟または農業機械の構造、装備等の面での安全性についての配慮の不備等によるものがあり、」こう書いておるのですよ。もうその当時から、皆さんは、構造上、装備上完全に問題があるということを御認識になっておるでしょう。だから、たとえば何ぼかは操作上のミスがあるかもわからぬけれども、構造上の問題もあったのじゃないか、そのことをなぜお認めになれないのですか。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘がございましたように、やはり程度の問題としては、構造上にも問題はあるかとも思うわけでございます。農林省として、型式検査を依頼によって行っておるわけでございまして、この型式検査に合格した機械が農民の選択によって選ばれるように、指導方法等は強化をいたしておるわけでございますが、こうした問題も含めて、私たちとしても、今後とも十分に資料を集めて、これに対して検討し、そして対策を講じていかなければならぬと思います。
  199. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたはこれから集めてとか言うが、資料を集めるなんという問題じゃないでしょう。毎年毎年どんどん機械事故は、後で申し上げますが、ふえているでしょう。これから資料を集めてどうするという問題じゃないわけですね。同時に、あなたは、程度の差こそあれ、構造上のそういう欠陥があるかもしれない、これは構造上の欠陥をお認めになったのですね。程度の差はあるかもしれないけれども、構造上の欠陥があるということを、あなたはお認めになっているわけですね。
  200. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、型式検査を行うことになっておりますので、そういう検査に合格した機械が使われるように、指導あるいは広報等を行いまして、農民に検査品をお使いいただくようなことに努力をいたしておるわけでございます。
  201. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そんなことを聞いているのじゃないですよ。現に何百人と、どんどんああいう事故が出ているのです。これは本人にすれば、あなたの言うことを逆に聞けば、全部本人の不注意なのかということを聞いているのです。本人の操作上の誤りでああいうけがが出ておるのかということを聞いているのです。そうじゃなしに、皆さんのところでは、昭和四十五年に、すでに構造上問題があると言っているから、いままでいろいろと起こっている事故について、そういう部分の構造上からくるものも相当ある、ということをお認めにならないかということを聞いているのです。あなたがお認めにならなければ、全部農民の方々が悪い、機械は全部よくて農民が悪いということになりますよ。いいですか、あなた。
  202. 松元威雄

    ○松元政府委員 若干補足して御説明申し上げます。  ただいま申し上げましたのは、やはり問題は二つ、両面あろうと思うわけでございます。一つは、使用する農業者の知識、技能上の問題と、それからまた機械の構造、装備上のいわば配慮の不備と申しますか、両面あろうかと思うわけでございます。なぜそうくどく申したかと申しますと、注意すれば防げるという場合であっても、なかなかつい不注意になりがちだという場合、それをより完全にするためには、装備を高めるということもあるわけでございます。つまり通常の知識とか通常の操作技術あるいは通常の注意力を持った場合に対応し得る場合と、しかしとかくつい抜かりがちになる点もございます。その場合に、それをカバーするためには装備の面をもっと改良しなければならぬ。それをよりベターに安全を高めるという趣旨でございまして、それを、先ほど大臣はあのように表現したというわけでございます。
  203. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほどの大臣の答弁は、やはり何と言っても欠陥があるということをお認めになったことだ。これは当然ですよ。農民が全部が全部皆悪いのじゃなくて、どなたかおっしゃったけれども、両面あるのですね。操作の問題もあるでしょう。あるいはそういう構造上の欠陥からくるあれもあるでしょう。しかも構造上にこれこれの欠陥があるぞ、問題だということは、昭和四十五年段階ですでに農林省自体がお認めになっていらっしゃる。先ほど農林大臣は、安全なんだ、検査はどうだと言うけれども、その後あなたの方で、農機具の検査として正規に取り上げたのは、昭和四十九年。そうでしょう。  そこで、法務省の刑事局長が来ておるようでありますのでお伺いするわけでありますが、つまり、構造上に問題があると政府からも指摘されて、いまあの方も言ったように、事故は当然予見可能性といいますか、そういうことが見通される。その際には、一般的には当然刑事責任の対象になるものと思われるけれども、この点はどうかということを一つお聞きしたいと同時に、もう一つは、構造上の欠陥があれば、たとえほかのミスが——何ぼかあるかもわかりません、操作上の問題。あったといたしましても、事故の条件としての因果関係というものが、構造上の欠陥の方が相当するものとして立証されるというか、欠陥そのものの方が条件に見合うものだ、こういうふうに理解されると思いますが、いかがでありますか。
  204. 安原美穂

    ○安原政府委員 事は犯罪の成否という問題でございますので、具体的な事情をつまびらかにしないで申し上げることはどうかと思いますが、一般論といたしましては、いま御指摘のように、機械の構造上の欠陥が事故発生の原因であるということが認められる場合におきましては、いわゆる業務上過失犯というものが成立する場合があり得るということは言えると思いますし、もう一つお尋ねの構造上の欠陥だけが原因ではないが、操作ミスも加わって事故が発生したという場合におきましても、構造上の欠陥が原因の要素をなしておるとすれば、これまた業務上過失犯の成立する場合があり得るということを申し上げたいと思います。
  205. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 政府皆さん方に申し上げたいと思うわけですが、いまそういう状態ですね。しかし実態はほとんどが農民の泣き寝入りというか、本来こういうことからすると、政府国家賠償責任を問われてもおかしくないと私は思うのです。そういう性質のものであるわけでありますが、それはともかくといたしまして、構造上の欠陥を若干でも認めていらっしゃる、こういうことであれば、ほかのミスが何ぼかあったにいたしましてもそれを排除していくというか、農民に安全な農機具を供給するために、メーカーに対して、そういう災害に対する応分の災害補償の責任を負わせるべきだと私は思うのです。この点はいかがでございましょうか。
  206. 松元威雄

    ○松元政府委員 ただいまの御質問に対する答弁でございませんが、その前提といたしまして、私の答弁が若干誤解を招いてはいかぬと思って、もう一つ申し上げるわけでございますが、私申し上げましたのは、農業者の知識、操作技術上の問題それから機械の構造、装備上の問題、両面あると申し上げました。しかも両者相関連していると申し上げましたのは、通常の知識、通常の操作技術であれば事故は起こらない、しかし、とかく不注意になる場合があり得る、その場合でもより安全性を高めるために、より構造もよくしなければならぬし、より装備もよくしなければならぬという趣旨を申し上げたわけでございまして、いわば構造上の欠陥といった趣旨ではなかったわけでございます。現にあの通達も、構造、装備上の配慮の不備という言葉が使ってあるわけでございまして、よりベターなものにする、安全性を高めるという趣旨で、少しでもよくしなければならぬという趣旨で申し上げたわけでございまして、また安全性にいろいろな要因があるわけでございます。たとえばブレーキが全然役に立たぬ、こういうのは重大な欠陥でございます。しかしブレーキはちゃんとしているけれども、たとえば突出部があった、それに覆いがかかっていなかった、こういうものもございます。それらを少しでも安全性を高める、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  207. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたはまさかメーカーの代弁人じゃないだろうと思う。国民の税金をもらっておるお役人だと思いますが、あなたからそういう答弁を聞くということは残念だ。そうすると、あなたの答弁を裏返しに言えば、それは農民が通常の知識を持ち合わせない、全部農民が悪いんだということだ。そうであれば事故が起こるはずがない、というのがあなたの前提なんです。そういう中で、いまこれだけの事故が起こっているんじゃないか、このことで聞いているのですよ。何ですか、あなた。——いや、あなたなんか出る必要ない。私はメーカーべったりのようなそういう答弁を聞くためにここに立っておるのではなくて、いまどんどん起こっておる事故がいかに悲惨なものか。しかも毎日たくさん発生しておるという現実を踏まえて、この問題については、あなたの言う当然事故が起こり得るものでなかったということはあとでやりますけれども、農民に対しては、構造上も安全なものを供給していくということがおたくの前提にならなければなりませんし、そういう事故が全くあなたはないという前提に立っておるけれども、それなら、ともかく現実に先ほど指摘されるようなことの中では、そういうことは成り立たないと思うのだ。  せっかくここに副総理もおりますので、お聞きしたいと思うのでありますが、構造上の欠陥に対しては、メーカーにも当然応分の責任を負わせることが必要であるのじゃなかろうか、こう思うのですが、あなたの御見解はいかがでございましょうか。
  208. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 法律的な問題をこうと一口で申し上げるのは、なかなかむずかしい問題かと思いますが、結局先ほど刑事局長がお答えしたとおりのことかと思います。つまり故意か過失、それが傷害問題にまつわるということになれば、そこで損害問題は起こり得るわけでありまして、そういうことの起こらないように善処するということ、これが農林省の責任である、そういうふうに考えております。
  209. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いろいろな学者も、そのことでたくさん指摘をするし、一々言うまでもないことでありますが、当然のことだと思うのですね。そういう点について、問題は、根本的には検査体制ですね。国が農業機械の構造のいろいろな検査をします。ところが先ほど松元園芸局長ですか、とんでもないことを言うたわけですが、いま農民が十分な知識を修得しておれば事故は起こりようがないなんということを言いましたが、それは農民の今日の状態を知らない者の言うことなんですね。農業機械の普及状況だけから言いましても、昔みたいに特別な大農が持っておるというのではなくて、動力耕運機、農業用トラクターを四十九年で見ますと、農家戸数に対して七四%持っておる。百戸の農家の中で七十四戸持っておるということなんです。これはまず大変なことなんですね。しかも農業をだれが支えておるかということは、たとえば四十九年では婦人化率、つまり女の方々がどれだけ支えておるかというと、六二・四%、これが女子の人ですね、奥さん方、お母さん方によって支えられているということなんですね。お年寄りの老齢化率によって見ますと、これは六十歳以上のお年寄りが、しかも基幹的農業の支えとして、そこのうちの大黒柱でがんばっているのが二一%あるのですよ。百戸のうち二十一戸がそうなっているということ。この現実に目を通すならば、あなたのような返事はできないはずだと私は思うのですね。  同時に、いまの農業機械の構造、性能、これはどういうふうになっているかと言えば、あなたも御存じのように、弁慶の七つ道具というんだ。運転席のところにレバーだとか刈り取り部だとか、走行部、脱穀部、搭載エンジン、こういろいろ分かれておりまして、あの運転席のところだけでも、このカタログによって見ましても、ハンドルの左と右のクラッチレバーがあるでしょう、脱穀クラッチレバーがあるでしょう、主クラッチレバーがあるでしょう、刈り取りクラッチレバーがあるでしょう、副変速レバーがあるでしょう、供給深さレバーがあるのでしょう、主変速レバーがあるでしょう、刈り取り昇降レバーがあるでしょう、これだけ、ここの一ヵ所にかたまっているのですよ。こういう複雑な、しかもあなた方は高性能機械だということで、どんどん鐘や太鼓ではやし立てている。こういう状況が一方にある。しかもこれは特殊なオペレーターがやるのじゃなくて、いまはほとんど大衆化されて、女の人もやらなければいけない、子供もやらなければならない。肝心の大黒柱のお父っちゃんは、この農業機械の借金を払うために出かせぎに行っているのが現実の姿なんですよ。そうするならば、だれがやっても故障が起きないような、安心な構造の機械を農民に渡すということが、当然に行政の立場でなければならないと私は思う。それが、まことにけしからぬ、ああいう答弁ですね。  しかも、農業機械による事故がどれだけふえているかといっても、事故発生件数、これはどこが出したのかというと、四十七年度厚生省委託研究報告書というやつだ。日本農村医学会が一九七三年にまとめたものです。これを見ますと、農業機械による事故発生件数は年々ふえている。私は、時間がないから、あなた方に詳しく言ったってしょうがないから言いませんけれども、特徴は、手を食われたり、骨折したり、それから死亡する例が非常に多いということですね。それから女性が非常に傷ついてくる傾向が多くなっているということですね。こういう状況を目の当たりにするならば、一つは、昔と違って非常に一般化しているし、複雑化している。おまけに老齢化、婦人化という中では、安全こそ最大の重大な柱でないか。そのための、たとえば検査にしても、一層国が厳しくやるべきだと思うのですね。そういう点について、まず国がどうしたかという前に、私は、政府の厳しい自己批判というか、それをお聞きしたいと思うわけであります。まずこの点について、安全こそ第一義的な課題としてやるべきでないか、いまの農村の実態に見合ったいろんなかっこうで機械を出すべきじゃないか、こういう考え方に対して、副総理の御見解農林大臣の御見解を伺いたいと思います。
  210. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 お話を承っておりまして、農業機械災害というものが非常に多いということを改めて痛感いたしますが、こういう災害が起こらないようにする、これが第一だろう、こういうふうに思うのです。その起こった場合に一体どうするか、こういう問題ですが、これは労働災害、そういう問題その他の措置が考えられると思いますが、何よりも大事なことは、そういう災害が起こらないような措置をする、こういうことだろうと思います。これは農林省が所管庁でありますので、十分注意してまいりたい、かように考えます。
  211. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業機械に対するところの安全性を確保していくということは、農林行政を担当するわれわれとしては今後とも大いに力を尽くしていかなければならぬ問題であろうと思うわけでございまして、農業機械化研究所等におきましても、安全性の確保のためのいろいろの調査研究もいたしておるわけでございますが、私たちとしても、農業機械の安全基準といったようなものを策定いたしまして、と同時にまた、農民の皆さんが農業機械を使用される場合において、研修その他で十分技術を会得されるように、国も県もいろいろとそういう予算等もつけて、努力もいたしておりますが、さらにそういう機会を増大いたしまして、そして安心して使っていただけるような機械をつくる、これに対する指導を徹底的に行うということに対しては、最大の努力を払いたいと思います。
  212. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林省は、先ほど来もいろいろ話がありましたが、四十九年、あのとき構造上の安全基準を決定した、こういうことであります。政府が責任を持って構造上の安全を検査基準にしたというのは去年からなんです。政府がかねてここにも問題があるぞと指摘したのは、昭和四十五年、次官通達です。その間も、たくさんの事故、災害が発生しているわけですね。当然もっと早く手を打つべきであった。遅きに失したなんということよりも、私はそれまでの政府の怠慢を厳しく指摘したいと思うわけであります。その一つの例証として挙げますならば——挙げる前に、まずそういう前段を踏まえて、本当に行政指導を、基準ができるまでに、あなた方おやりになってきたのかどうか。四十九年のそうした正式の基準ができるまで、行政指導で誠心誠意皆さんおやりになってきたのかどうか、この点を改めてお聞きしたいと思うのです。
  213. 松元威雄

    ○松元政府委員 まず、先ほど農業機械の検査の話が出たわけでございますが、農業機械化の促進を図りますために、需要者が機械を購入するに際して選定を容易ならしめる、こういう趣旨で、農業機械化促進法に基づきまして、昭和二十八年度から農機具の型式検査を行ってきているわけでございます。これがまず第一点。  その場合は、主として性能面から一定の基準を設けて、検査を実施してまいりました。それに対しまして、近年お話のとおり高性能の農業機械が非常に普及してまいりました。したがいまして、機械による事故がふえているということがございます。先ほども申し上げたわけでございますが、事故の増加の原因といたしまして、農業者の運転及び取り扱いに関する知識、操作上の問題、あるいはまた農業機械、の構造、装備上の配慮の不備の問題こうあるわけでございます。したがいまして、安全性をより高めなければならぬという趣旨で、四十五年度から、御指摘のような農業機械の構造装備等についての基準といたしまして、農業機械安全装備基準を策定いたしまして、機械メーカーに対しまして、これを今後の農業機械の製造の指標とするようにということで指導してまいったわけでございます。これはもちろん望ましい姿でございます。したがって、なかなか一挙に実現することはむずかしいということでございますものですから、まず基準を策定して、徐々に指導してまいったわけでございます。  それに対しまして、検査の方は、御指摘のとおり、従来の型式検査、これは主として農業機械の特性がございまして、たとえばスピードが遅いという特性もございますから、普通の操作をいたします場合には危険も少ないという実態がございます。したがいまして、この検査の中で、安全性に関する事項も従来も含まれておりました。たとえばブレーキがちゃんときくこととかいうことも含まれておりましたが、何と申しましても主として性能面にウエートがあったことは事実でございます。したがって、性能面を中心に検査を行ってきたわけでございますが、近年、御指摘のように安全性に対する関心が高まってまいりました。したがいまして、より直接的に、型式検査に安全性に関する基準を盛り込むということが必要になりましたから、四十九年に次官通達を改正して、基準に盛り込んだ次第でございます。
  214. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、安全問題がかねてから指摘されていたけれども、行政指導の中でごまかしてきたというか、そうした人間の命が大事だという観点が非常に薄い。とにかく性能がよければいい、大型でなければならないというかっこうで、追い込んできたということをいま言ったものだと私は理解しているわけです。  あなたがおっしゃった、いま農業機械のためには、行政指導として、農業機械安全装備の基準を四十五年度から設けてきたじゃないか、農民のためには農作業安全基準を設けてきたじゃないか、その中身がどういうものだかということですね。ここにそれがありますよ。何を書いてあるか。農民には、機械を使う人々に対しては、あれこれお説教をたれているのです。たとえば妊娠中の女性の方は乗るなとか、これは悪いと言っているのじゃないですよ。お説教だ。子供は乗るなとか、それは悪いと言っているわけじゃないですがね。とにかくあれこれとお説教をたれている。しかし機械をつくるメーカーに対しては何とおっしゃっているか。機械をつくるメーカーに対して、農業機械安全装備基準の中に、政府はどのようなことをうたっているのかということです。私読みます。  「農業機械施設製造業者に対して統一的な指針を示すものとして、関係行政機関、大学、試験研究機関、研修機関、農業機械施設関係団体等の学識経験者の協力を得て定めたものであって、これに適合しない機械等に対し生産又は使用を制限するというものではない。」不合格であっても、まずいものであっても、つまりいま骨の入っておらないしり抜けだらけの安全基準でさえも、このとおりでさえも、皆さん方の方は適合しない機械等に対し生産または使用を制限するものではない、この態度は何ですか。こういうことで、これでメーカーべったりでないと言えますか、農民の命を大事にしていると言えますか、副総理どうですか。
  215. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 農林省では、農業機械器具につきましては十分調べまして、そして身体の安全、こういうものにつきましては、これをできる限りそういうものがないように務めなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、その通牒のことは私は存じません。
  216. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農林大臣お答えください。人ごとじゃないのだから。
  217. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま副総理も答弁をいたしましたが、型式検査に合格をした場合において、いわばJASのような検定でございますが、合格をしたものを農民の皆さんに選択をして使っていただきたいというふうなことで、指導をいたしておるわけでございますが、検査に合格しないからといってこれをつくってはいけない、こういうところまでは指導はいたしていないわけでございますが、しかし農林省としては、検査に合格した機械について、農民がこれを選定していただくことを極力指導いたしておるわけでございます。
  218. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が聞いたのは、政府のこういう姿勢に対して——農林省の、片方には説教をたれ、片方には適合しない機械であっても決して構わない。そうするとメーカーにとってはこれほどありがたいことはないでしょう。これに便乗して、どれだけひどい機械が売られたかということは、おのずから理解できるでしょう、あなたは。これに対して政府の、農林大臣がお感じになっている政治責任について、私はものを聞いているのだし、それにお答えいただきたいと思うのですよ。
  219. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは構造上の不備とかなんとかいう問題ではないわけでございます。政府としては、検査に合格したものを使ってほしいということを要望し、そうした指導、広報等もやっておるわけでございますけれども、しかしそれ以外のものを使ってはいけないということにはなっておりませんので、これはもう農民の選択にゆだねておるわけでございますが、しかし検査に合格したものを使ってほしいというのが、われわれの基本的な考え方でございます。
  220. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 全然あなたはこれに対する見解一つも言わないね。おたくはこういうものを出しているのだ。それだけではありません。もう一つ言いましょう。このまたあとの方に、またとんでもないでたらめなことを書いてあるのだな。たとえば「作動部の接触防護装置」つまり作動部、動くところの接触防護装置をつけろ、こういうことの中で、ただし書きというのがあるのです。「ただし、取り扱い上ある程度の不注意があっても接触するおそれがない場合は、この限りではない。」こう書いてある。あたりまえのように見えますけれども、なぜわざわざこんなことを書くのか。メーカーに、そんなものをつけなくてもいいよということを教えているようなものじゃないですか。一方、農民にはあれこれお説教をたれて、そうして実際の事故に対しては、おまえの操作上の未熟だということで、全部農民に負担させて、それが現実の姿だということを私は申し上げているわけですね。しかも、これに対して、あなたは実際、いまの法律だか何だか知りませんけれども、決して検査を受けなかったからといって、売られないものではない。つまり不合格でも売ることはできるんだ、そういうことをおっしゃっているのでしょう。あるいは検査を受けなくたって、何も関係なく売っていけるんだということを言っていらっしゃるのでしょう。それ自体が私は大きい問題じゃないかと思います。この点どうですか。
  221. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 検査に合格したものを農民に選択していただきたい、こういうことで、広報あるいはまた農民の皆さんに御指導も申し上げておるわけでございますが、検査に合格しないからといって、これが構造上の不備といったようなものにつながれば大変なことでございますが、そういうことではないわけでございますので、これについては、選択の自由に任しておるわけでございます。
  222. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた、いま大変なことを言ったよ。何も検査しないものを、構造上の不備は絶対ないということをなぜ断言できるのですか。検査もしていないものに対して、構造上の欠陥は一つもないんだ、だから安全だと、どういう根拠であなたそういうことが言えるの。あなたは農民の農林大臣でしょう。農林大臣の口からそういうことを聞くとは、日本の農民はもう泣くよ。
  223. 松元威雄

    ○松元政府委員 若干補足して申し上げます。  まず第一の安全装備基準でございますが、これは確かに、こういう基準にすることが望ましいわけでございます。したがいまして、そういう指導基準を策定して、指導いたしているわけでございます。ただ、これは言葉の性質上、強制ではございませんから、合致しなかったからといって、生産を制限はできないということを言っただけでございまして、もちろんそうなら望ましいわけでございます。そこで、その中に、ただいま御引用になりました、たとえば防護のためのカバ一の問題もございます。これも四十九年度からは、検査基準に入れて励行さすようにしたわけでございます。ただ、この型式検査というのは、本来が農家の選択を容易ならしめるという、いわば奨励検査でございますものでございますから、合格しなかったから売ってはいかぬということはできぬわけでございますから、行政指導をもちまして、少しでも合格したものを使うように、その基準の中に、また安全を高めるように、というふうにしてまいったわけでございます。
  224. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、その中で全然末検査のもの、あるいは不合格品でも売られているということなんだね。そうすると、事故のあったとき、だれが責任を負うのですか。
  225. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のように、検査を受けないものあるいは不合格でも、売られ得るわけでございます。ただしその場合に、それが構造上の欠陥で事故を起こした場合には、これは民法上の問題はございますから、それによって処理されるわけでございまして、一般的に申しますと、農機具というのは、特にスピードが速くないとか、そういった事情もございますものですから、一般的な危険はそれほど多くないわけでございます。しかしながら、もし使って、構造が全くなっておらぬで、その結果事故を起こすといった場合は、これは民法上の責任は生じます。
  226. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いずれにいたしましても、全然検査に合格しないもの、つまり不合格品あるいは未検査品、こういうものが堂々と市中を出回っているということですね、農林大臣
  227. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 検査を受けていない機械等も出回っておることは事実でございます。
  228. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そこで私お伺いするのは、四十九年に政府が法第十条によりまして、この検査基準を正式に取り上げましたわけですが、これは法十条に照らしてみますと、いままでの概念に構造上の安全基準が新しく入ったわけですから、重要な変更だと思うのですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  229. 松元威雄

    ○松元政府委員 御指摘のように、四十九年度から、検査基準の中に安全に関する事項を追加いたしました。その中身は、一つは危険を及ぼすおそれのある部分の防護措置、カバーの取りつけ、こういうもの、もう一つは誤操作防止のための措置、これはコックの切りかえ表示等でございます。こういうものでございます。したがいまして、構造に関する重要な変更ではございません。もちろん検査基準が変更されますれば、すでに合格したものも変更後の検査基準に適合することが望ましい、これは当然でございます。したがいまして、そういった場合には、引き続いて同じ型式のものをつくるというのに対しましては、形状変更あるいは再受検等によりまして、変更後の検査基準に適合するように指導いたしているわけでございます。そうしてまた、通例でございますと、一つの型式をそう長く続けることはございませんから、次の機会には受検をして、それに適合するようにするというふうになるわけでございます。したがいまして、これは法的に申しますと、機械化促進法の十条の規定によって「合格証票を附することができる期間を限定する」、こういった措置に当るということではございませんので、行政指導で対応することが適当であるというように考えております。
  230. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いままでは、構造上の安全の問題は、ほとんど、政府によっても正式に検査基準の中に取り入れなかった。今度初めて、去年これを取り入れた。これは従来の検査の中に新しい、一番最大の問題が加わったものだと思うから、検査基準そのものの重要な変更だということ、これはだれが考えてもあたりまえだけれども、いまあなたが、これは何も変更に当たらないんだ、こういうことを言うことは、これは人命尊重だとか安全優先だとかという三木内閣の姿勢そのものが改めて問われることになるかと思うのだが、どうですか、副総理。
  231. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまお話しの基準についての通牒というのを見てみましたが、これはどうも一般の行政指導であるので、そのことを明らかにするために、こういう文言を特につけ加えたのじゃないか、そういうふうに思いますが、農林省としては、事前にとにかく検査をして、検査の結果を周知徹底さして、こういう不幸な事態が起こらないようにする、そのために最大の努力をするということが妥当である、こういうふうに考えます。
  232. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 このような安全基準を当然入れたんだ。先ほど太鼓判たたいて、おれたちはちゃんとやっているという証明が、法的なものとして何ら裏づけのないものだ、ただ単に行政措置の関連しかないんだ、重要な変更ではない、これが政府の正体というと言い過ぎかもわかりませんが、本質だということは、そうすると、はっきりしたわけですね。農林大臣、いかがですか。
  233. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四十九年に、安全に関する事項を追加いたしたわけでございますが、これは防護措置、まあカバーの取りつけ及び誤操作防止のための措置にかかわるものでありまして、先ほどからお話がございましたように、重要な構造上の変更ではないと思うわけでございます。
  234. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それでは、先ほど来私がいろいろ申し上げてきた農民の災害、農業機械による災害、これは結果的結論から言えば、全部農民が悪いんだ、どんな機械を預けられても、もうそれは農民が不運だ。  現に大メーカーがどんどん宣伝する農業機械、たとえばここに、私のもとに、春風さんなんというのがあります。テレビでもやっていますね。これはクボタの春風さん。これも第一回の去年の検査では不合格でしたね。第二回目にやりと合格しましたけれども、不合格品であったことに違いはない。それから、たとえばヤンマーの伊吹、こういうすごい、すてきな「育苗方法を選ばず、苗つくり高能率四条植え」というのがある。これは不合格品。こうして現に売られている。どれだけ売られているかということですね。参考までに申し上げますと、未検査、検査をしないもの、不合格品を含んで、いま市中に出回っている不合格の農機具の出荷状況を調べてみますと、コンバインが四十年−四十六年の間に十三万八千三百七十台出ている。バインダーは、昭和四十年から四十四年の間に五十六万二千八百六十三台出ています。田植え機は、これは最近の三種の神器の花形と言われていますが、すでに検査前に、同じ年月の間に八十二万六千九百四十八台出ています。ほとんどこれが不合格品、末検査品ですよ。こういうものがこれだけ出回り、その中にいろいろな傷害、災害が起こっているという事実を前にして、あなた方は、安全基準なんというものは大したことない、行政指導で、とにかくそこだけ直せばいいなんというような通り一遍のあれで、今後事故が起きない、起こるものは全部農民が悪いのだということになるとなったら、これは大変問題だと思いますけれども、農林大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  235. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省としては、先ほどから何度も申し上げますように、やはり型式検査に合格した農業機械を使っていただくようにお願いをいたしておるわけでございますが、しかし今後農作業等におきまする安全を確保していくためには、やはり農業機械化研究所等においても研究調査もいたしておりますが、万全の対策を講じて、安全性を確保するように、できるだけの努力をしなければならないと思うわけでございます。
  236. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いままでの話を聞きますと、つまり、とんでもない機械をつかませられても、これは農民の不運だ。しかも、その中で、けがしても自分持ちで治さなければいかぬ。しかも、こうなった原因については、かねて政府も指摘していながら、それを放置してきたということも明らかになったね。だからこそ、この際ひとつ思い切って抜本的な法令改正をやりて、もっと構造の安全というものを位置づけていくとか、人間の命が大事だという点で最大優先的に機械の改良を図っていくとか、そういうことをおやりになる気持ちがないということは、もうはっきりしたわけでありますが、残念ですね。  ところで、今度あなた方は、四十九年に安全基準をつくったと言っているわけですが、そうすると、あとこれからの分は、皆安全なんですか、ちょっとお伺いします。
  237. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちは、農業機械の安全性ということにつきましては十分配慮いたしまして、先ほどから申し上げましたようないろいろな措置を講じておるわけでございます。今後とも、この点につきましては十分ひとつ対策を強化していきたいと考えておるわけでございます。
  238. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私がお聞きしたのは、あなた方、安全基準は、四十九年から、まあ法律の中には入れないけれども、われわれはそれを十分自信持ってやるのだということを、さっきからおっしゃっているわけですから、そうすると、この安全基準で、重要な変更、法律の変更も行わずにおやりになるとするならば、いまのそういう安全基準の中で、そうした災害、事故は防げるかどうかということですね。農民の安全が完全に守られるかということを当然私としては聞かなければならない。この点についてはっきり答えてください、そのことで言ったわけです。
  239. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 四十九年度の措置は、構造上の変更ではない、こういうふうな立場に立ってああいう措置をいたしたわけでございます。
  240. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 問題は、構造上の安全が問われて、いろんな問題になってきているのですよ。しかし、あなたは、いまのお答えでありますと、構造上の安全ではなくて、何か別の安全のことを言っていますね。これは大変なことですね。そういう程度ですか。そうすると、大臣、お聞きしますが、あなたのそのような考え方、あさはかな考え方と言えばしかられますけれども、言い過ぎでありますが、その中で、農民の安全、作業する方々の安全が、今度は安全基準ができたから守られるかどうかということで、一言お答えいただきたいと思います。
  241. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 より安全性が確保されると考えております。
  242. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、そうなりますと、現行法ではメーカーは検査を受けることは決して強制されてはいないわけです。何でも売っていいわけですね。また、不合格品や未検査品が出回ることも勝手ほうだいであるのですね。そこで、今度新しい安全基準ができて、検査を受けたものは絶対大丈夫かと言えば、不合格品は出さないのかと言えば、それもはっきりしない、こういうことになりますと、一体これはだれのための政治というか、農業機械の意味そのものが改めて問われると思うのですね。その点について、安全基準を法律にして農民を守るべきだということを、私は申し上げたいわけでありますが、これに対して農林大臣から、そうかそうでないか、はっきりおっしゃっていただきたいと思います。一言で結構です。
  243. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後やはり農作業の安全性を確保するために、農業機械の安全性をより強化していくためのいろいろの施策を強化していくことは当然であろうと考えます。
  244. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 先ほどあなたは、今度のいわゆる検査品ですね、これは安全基準ができたから、ある程度の安全は守られるであろうという意味の発言をしましたね。そうすると、未検査品、検査を受けない物ですね、こういうものは一体どうなるのかということは、このような災害、事故がたくさん発生している状況の中で、ほったらかしておいていいのかどうかということが当然問題になると思うのですね。したがって、そうした検査を受けて、そこで該当して、合格不合格が決まるものはあるでしょう。不合格のものは当然おたくで何ほか直させるようにするわけですね。そうすると、残った何万台、何十万台というものが野放しでいいのかという問題ですね。これはいかがでしょうか、農林大臣
  245. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私たちとしては、検査に合格した製品を農民の皆さんが選択して使っていただくように、これは対策をより強化していき、不合格品やあるいはまた検査を受けない機械が使われないように、今後とも努力をしていかなければならぬと思うわけであります。
  246. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 農民は、大メーカーがテレビでどんどんはやす、カタログでどんどんはやす、当然にこれが不合格だとか、これが合格品だとかいうことは、そういう疑いはだれも持っていない。もうすべて、ああいうふうに宣伝しているものは、みんな合格してりっぱなものだと思っていらっしゃるのです。恐らく大臣なんかも、きょう初めてこういうことがおわかりになったと思うのですね。そうでしょう、福田さん。そうすると、あなたたちが不合格品は買わないようにせよと言ったって、不合格品をあなた方は発表したことがありますか。発表したことがあるかないかだけで結構ですから。
  247. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府委員から答弁させます。
  248. 松元威雄

    ○松元政府委員 合格したものは発表いたします。
  249. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 不合格品も発表しないで、不合格品は買わないようにせよと言ったって、実際出回っているんじゃないか、このことを言っているんですよ。  そこで、こういう大変な状態の中で安全を守るためには、新型など新しくつくって販売しようとする農機具は、必ず安全検査を受けるように、それに該当させるように政府はすべきではないかということが、私の言いたいことなわけであります。この点はどうですか、大臣。
  250. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今後とも、われわれとしても、検査を受けるように努力をしていきたいと思うわけであります。
  251. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま大臣は、たとえば新型など新しく生産した場合は、未検査品がないように、できるだけそういう新しく販売する農機具は安全検査を受ける、少なくとも安全検査だけは受ける、こういうものにしたいということをおっしゃったように私は聞いたわけですが、ちょっと、それを御確認させていただきます。
  252. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 行政指導をいたしまして、安全検査を受けるように指導していきたいと思います。
  253. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 こういうものが現実に野放しにされて、いろんな問題が起こっておる。それに対して、いま大臣は行政指導でなるべく検査を受けるようにさせる、こういうことでありますが、これは、この場をどうするかというための御答弁であっては、私はそれを疑うようなことはありませんけれども、やはりこれを一瞬も放置できない、そういう前提の中で、あなたの方でひとつ前向きに本当に検討するのかどうか、どういう意気込みで、どういう時期くらいまでにこの点を考えるのかということぐらいを、ひとつお話しいただければありがたいと思うのです。
  254. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ここで申し上げました以上は、私は、これから行政指導は直ちに強化していくように、農林当局を指導いたします。
  255. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私が言うたのは、重ねて念を押すわけでありますが、普通の検査を受けたもの以外の、そういう放置されてきた機械の安全について、政府はひとつ責任を持って行政指導を強化して、前向きに検討する、やるんだ、こういうふうに理解してよろしいですね。  福田さん、いいですね。
  256. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一般的に考えて、どうも農民の身体に危険がある、こういうような農機具が流通しているということは、これはもう大変な問題だと思います。でありますから、そういうことのないように、政府としては善処いたします。
  257. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 命にかかわるような問題が現にあれば、やはり制度を改正するとか、見直すとか、あるいは補償するとか、そういうかっこうで、農民が安心して使える機械を出していく、これが本当の政治の姿勢でなければならない、こういうことを私はいままでるる聞いたわけであります。  そこでさらにお聞きしたいことは、現在検査を受ける基準といいますか、農業機械化促進法の第七条に、農機具の検査というのがございますが、「農林大臣は、毎年度、当該年度において型式検査を行なう農機具の種類を定めて公示しなければならない。」、こういう条項がございます。そこでお聞きしたいのは、「毎年度、当該年度において型式検査を行なう農機具の種類を定め」る、定める選定基準というものがあるわけですね。なければ、これはでたらめに検査しているということになるわけですから、こういう選定基準は、農業機械化審議会ですか、そこでいろいろ農林大臣と相談してつくることになっていますが、明文化されたそういう規定がございますかどうか、お聞きしたいと思います。
  258. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府委員から答弁させます。
  259. 松元威雄

    ○松元政府委員 もし取り違えたら恐縮でございますが、ただいまの御質問の趣旨は、農林大臣が機種を、型式検査を行う農機具の種類を定めるときは、機械化審議会の意見を聞かなければならないと法定されているかということであろうと思いますが、法十四条に「意見を聞かなければならない。」と規定してございます。
  260. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 機械化審議会の意見を聞かなければならないということは、私はわかっています。お聞きしたいのは、この農機具の種類を定めるための選定基準が、機械化審議会にしろ皆さんの方にしろ、明文化されたものがおありかどうかということを聞いているのです。あるならある、ないならないで結構でございます。
  261. 松元威雄

    ○松元政府委員 選定基準として明文化したものはございません。いわば機械の普及度合いとか、あるいは検査をするについてのいわば技術的なこちらの検査の能力とかいうことを総合判断して決めるわけであります。     〔湊委員長代理退席、委員長着席〕
  262. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうしますと、そういう重大な検査がほとんど恣意的に、ああ今度はあれやろうか、これやろうかという程度のものとして、明文化されていない。重大な選定基準がそうだということが明らかになったわけでありますが、私はこれは大変重要な問題だと思います。  ところで、もう一つ突っ込んでお聞きするわけでありますが、この農業機械化審議会の最も中枢的な役割りを果たしているものは、その中に検査部会という部会がございます。そこの部会で決まったことは、まあその審議会の決まったことになる、これくらいの権限を持っておるわけでありますが、この中に日農工の、つまり農機具のメーカーの代表さんが入っていらっしゃる。名前を申しますと、久保田農機の副社長の宮地さんですね。今回入っているけれども、いままで検査部会にメーカー代表というのは入ったことがない。わざわざいまの検査部会にお入りになっていらしゃる。これでは、検査基準をさっと明文化してやるなんということはますます遠い話だと私は思うのですけれども、このことを大臣は御存じかどうか、お聞きします。
  263. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まあ審議会でございますから、学識経験者を初めといたしまして、それぞれの専門的な立場の人が入っておられると思うわけであります。
  264. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 それぞれの専門雲立場の人が入っていることはわかりましたが、メーカーの代表が入っていらっしゃるということは、この前の五十一年規制問題と絡みましても、性質は違いますけれども、やっぱりおかしいですね。検査部会で検査を担当する。だからこの選定基準もないということではなくて、選定基準は一方はない、しかし、そういう部会には、いままで入ったことのないメーカーの代表も入っていらっしゃる。こういうことの中で、ずっとそういう不合格品も検査しないものも、やられてきているのじゃないかという気がするし、あなたは今後改良する、よくすると言いますけれども、そこら辺にも大きい問題があるのではないかと思うのです。  そこで、お聞きしたいことは、明文化されたそういうものがない、選定基準がございませんならば、それをつくったらどうか。しかもそれをつくる際には、いま構造安全の問題が出されましたけれども、未検査品のそういうものを含めてやるぞということで、新しくおつくりになる御意思があるかないか、ということをお聞きしたいと思います。
  265. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 検査の基準を明確にしろ、明文化しろという御指摘でございますが、これは今後とも、農業機械の安全性を確保するという意味におきまして、明文化することも十分考慮しなければならない、こういうふうに思うわけであります。
  266. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今後は明文化することを考慮するという御返答ではございましたが、私はそれは大変前向きな御答弁だと思います。同時に、どうせそういうものをおつくりになるのだったら、先ほどあなたは、行政指導をなさるということをおっしゃったわけですから、未検査品についても安全の検査を受けるように、この際、そういうものを含めまして、検査を受けるように、これは行政指導でできるわけですから、どうせならば、一緒にそうしてやったらいかがだろうかということをお聞きしたわけでございますが、後段の方はいかがでございましょうか。
  267. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今後とも、検査を受けるように、各メーカーに対しましては十分行政指導をするつもりでございます。
  268. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、いま私質問したことを、やるということですか。
  269. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 行政指導をしていく、ということでございます。
  270. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 その未検査品そのものも含めて、この際、検査の対象にしてやるということですね。
  271. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 未検査品につきましても、極力検査を受けるように、行政指導をいたします。
  272. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 わかりました。  それで、これは根本的な問題でありますが、やはりいまの機械化促進法のあれが、依頼検査である。つまり検査を受けても受けなくてもいいんだ。確かにこの法が制定された当時の二十八年段階では、どうしても機械の生産力を高める、機械化をやらなければならない、そのころ機械の水準も低かったわけですね、そういう点で、どうしてもメーカーにどんどんたくさんの機械をつくっていただくために、依頼検査にしたということは、私はわかります。ただ、今日の段階では、やはりもう依頼検査ということでなくて、どういう機種も、あるいはバインダーであれ、コンバインであれ、田植え機であれ、根本的には強制検査といいますか、すべての機種が検査の対象にされるように、そのためにはどうしてもこの法がネックになっているわけです。法律が依頼検査ですから。ここを改正しなければならないではないか、私は何ぼ考えても、ここにひっかかるわけであります。そういう点について、これは大事なことでありますので、農林大臣からお聞きしたいと思うわけであります。
  273. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 機種の検定基準、これを明らかにするということは、もう申し上げたとおりでありますし、それから未検査の農機具等につきましても、検査を受けるように、行政指導をしていくということでございます。しかし、強制的にこれをやらせるということにつきましては、現在の段階においてはむずかしいわけでございまして、私たちは、行政指導によってこれらの問題を処理していける、こういうふうに考えておるわけでございます。
  274. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 現行法の依頼方式、これがやはり今日の実態には見合わない。たとえば同じ農業資材でございましても、肥料や農薬は、これは流通の段階まで、危険なものは売っちゃいけないということになっていますね。同じ動く機械でございましても、自動車を見ますと、実際は売ってはいけないということになっていないけれども、そういう不合格品は車検を受けられないから、売られないということになりますね。農機具だけ、なぜここが野放しされているのか。かつての時代といま違うのでありまして、もうこれだけの台数が普及して、しかも使う者がおじいちゃんであったり、お母さんであったり、そういう状態になっている中で、そういう未検査品、不合格品も含めて、そういうものをどんどん出回らせている。しかも、たんぼというものは、御承知のように、トラクターを使っても何を使っても、普通の表の道路を通るわけにいかないわけですね。ほとんど圃場整備されていないところがたくさんあります。でこぼこであります。ですから、もっと高度な技術なり、そういうものが必要なわけでありますけれども、そういう点で、事故が起こる可能性もまた大きいわけですね。そういう点は、いまの法を改正しないことには、どうしてもこういう問題がなくならないと思うのです。そういう根本の問題について、政府は、かつての時代はともかくとして、いま現状にそぐわないということは全く明らかだと思うのですけれども、まず明らかかどうか、あなたの御見解をひとつお聞きしたいと思うのです。
  275. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農機具につきましては、よく御承知のとおり、やはりスピードが非常に遅いわけでありますし、操作上もそう困難性を伴わないというふうなことで、いままでの行政を行ってきたわけでございますが、御案内のように、操作の上においても相当高度な技術を要するというふうな農機具等もできてきておる今日でございますので、そういう点は十分、私たちも現実認識をいたしまして、その上に立って、これからの対策を講じていきたいと思います。
  276. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 だから、私はいまここで、すぐ改めろ、イエスかノーかということを聞いているのじゃなくて、少なくとも現時点から見るならば、これは現状に見合わないじゃないか。したがって、この問題については、やはりまともに検討に値するものかどうかということで、農林大臣のお言葉というか御見解をどうしても聞いておかなければ、事全農民の命にかかわる問題でもございますし、それにつながることでございますので、お聞きしているわけでございます。つまり、このままの法律で、行政指導でこれができるのかどうか。現実のいままでの実態、傷害の例、こういうものの中で、あなたはまだそう強気でいるのか。それとも、どうしてもこれはやはりそういう時期に来ている、検討しなければならないと思うのか。いまここで断言して、やるとかやらないということを言えということを、私は言っているわけじゃないのでありまして、その点についていま一度あなたの御見解を聞かしていただきたいと思う。
  277. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農林省といたしましても、今日まで農業機械の安全を確保するためにいろいろと施策を講じてきておるわけでございますが、先ほどから申し上げましたし、また御指摘もありましたように、農業機械におけるところのいろいろの事故が今後多発するというふうな情勢にあるということならば、これはいままでの対策というものを総ざらいをいたしまして、その上に立って考えていかなければならぬと思います。
  278. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、そういう立場に立って、農林大臣はおやりになるのか、ならないのか、この点を確認したいと思います。
  279. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もし何らかの法的措置を考えなければならないというふうなことになれば、もちろんこれは当然それに取り組んでいくべきことであろうと思うわけでございます。
  280. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今度の決算ですね、期末の決算を拝見いたしますと、農機具のメーカーの、一般のメーカーという意味じゃございませんが、主要なメーカーですね、いずれも大変な利潤を上げていらっしゃるわけであります。他人がもうけることにわれわれはとやかく口をはさむ気持ちは少しもございませんが、ただ非常に異常だということである。異常なもうけだ。この農機具の問題について申しますと、昨年、私は国会でもいろいろ取り上げた経緯がございますが、あのときでさえも、これはカルテルによるやみ価格協定での値段だ、これはや承り異常でないか、こういうことで追及した経緯もあるわけであります。  その具体例を、私は頭の中にありますから申し上げますと、たとえば久保田さんも、売上高の伸びよりも前年比で経常利益の伸びが非常に大きくなっていらっしゃる。特に著しいのは、皆さん御承知のとおり井関さんでございますが、これはもうパーセントにいたしますと千二百何%という驚くべき、前期に比べての大もうけといいいますか、ぼろもうけといいますか、私は去年以来そういうことを追及してきたわけでありますから、やはりこういう異常、しかもカルテルの審決といいますか、審議中といいますか、そういう中で、堂々とその後も値上げしてきたわけですね。こういうものの寄与する部分というのは、私は大変大きいものと思うわけでありますが、いやしくもカルテルのそういうときは、法律的にはともあれ、道義的にはやはり、価格そのものが正常であったかどうかを問われて、いまもそれが争われているときでありますから、道義的にも行政的にも、政府はそれをやはり許可すべきではない、こういうふうに考えるわけであります。この点について、これはどなたになるかわかりませんが、公取の委員長さん来ていらっしゃいますので、公取の委員長さん、お足が不自由で大変恐縮でございますが、ひとつ御見解をお聞かせいただきたい。  同時に、せっかくあなたがお立ちになるので恐縮ですから、もう一つつけ加えて申しておきますと、やはりそうした異常な、まさにだれが見ても異常なもうけだ。しかも、昨年の国会でやはりそういう点で問題にされたわけでありますから、あの当時私は、こうなれば原価を公開しなければならないじゃないか。その際、通産省のお役人さんが、あくまでもひどいということであれば、われわれは原価に立ち入って検討しなければならないが、今回の値上げはもう万やむを得ないものだ、この値上げをやらなければ会社がつぶれるんだ。これは速記録がここにありますけれども、時間の関係上省略しますが、こういう言い方で、その結果としてああいうものが起こされているわけでありますね。そこで、やはりいろいろいま、独禁法によるところの原価公開、値下げ命令の問題が問題にされておりますが、今度独禁法改正になりますと、この原価公開という問題、これを抜きにしては本当の、そのことが不可欠の要件だというふうに私は考えるわけでありますが、公取の委員長さんの御見解をお伺いしたいということと、さらに、そういう経緯の中で、通産大臣の御所見もいただければ大変結構だと思うのであります。
  281. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ちょっとその前に。  農業資材、機械等が農村における生産活動に及ぼす影響等も非常に重大でございますので、農林省としても、こうした農業機械の価格が適正であることにつきまして重大な関心を持っておりまして、実は昨年の農機具の値上がりにつきまして、業界から十三%以上の値上げの要求があったわけでございますが、農林省としては、全農を行政指導いたしまして、必要やむを得ざる値上げ分ということで、五%に抑えたわけでございまして、今後とも、農林省としても、全農が大半扱っておるわけでありますので、全農を指導いたしまして、価格の安定には努めてまいりたいと思うわけでございます。
  282. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 農機具は、四十八年の十二月、それから四十九年の二月、主としてこの二回にわたりまして、値上げカルテルでございますが、カルテルを行いました、田植え機を除く主要機械について。これは御存じだと思いますが……。それについては、二回分を合わせますと大体三一%ぐらいになる。それから田植え機については、これは二月から値上げしたのですが、二二%から二四%上がっております。これについて、こちらが当然証拠に基づき勧告いたしましたが、それに応ぜず、審判を請求しまして、ただいまもその審判を行っている最中でございますが、たまたま九月に、どういうわけかさらに田植え機については五、六%の値上げの申請をして、それが認可されるということがございました。そのほかに、今年の一月になって、そのほかのトラクター、バインダー等についてはやはり三ないし五%の値上げが行われております。こういう事態について、私ははなはだ好ましくないと思いますけれども、どうもそのこと自体について、私どもではいかんともしがたい。  利益の状況を見ますと、久保田鉄工は、たとえば農業機械専門じゃありません。ほかに鋳鉄管のような業務もございますが、そちらの方は不振ですが、農業機械がいいので、決算は最近の決算時においてはかなり増収、増益になっております。それから先ほど御指摘になった会社についても、井関農機についても相当な増益になっている。前が悪かったということもありますが、かなり目立って増収、増益になっているという点に、私らも非常に疑問を感じるのですが、そういうことに対して、現行法上はいかんともしがたい。いまおっしゃられた原価公表ではなくて、課徴金の問題とか、それから原状回復命令というものをもって対処をするという以外にはないわけでございますから、そういうことを改正案の中に盛り込んでいただきたいと、こう申し上げている段階でございまして、いまは、どうもこれは好ましくないとしか申し上げられない。値上げが行われて、その結果、相当増収、増益になっている、そういう点はやはり若干の批判の対象になるのじゃないかと思います。
  283. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 農機具の価格につきましては、昨年の九月までは、事前に了承するという制度でございまして、自来監視制度ということに変わっておりますが、利益がある程度ふえておりますのは、生産が四十七年に比べまして四十九年は三倍になっておる、こういうこと等もございますし、それから、何しろ三、四年前が非常に悪い状態が続いておりまして、中には会社更生法の適用になった会社もありますし、全部無配になった、もう利益がほとんどゼロになった、こういう会社が相当多かったということでございまして、いま御指摘になりました会社なども、ちょっと調べてみますると、決算で収入が大体七百億で、利益が十九億である。前が非常に少ないものですから、ふえた倍率にすると何百倍かになりますけれども、絶対額としては、さほど大きな金額ではない。ただしかし、量産をすれば当然値段が下がるわけでございますから、今後は十分注意をしなければならぬ、こういうふうに思います。
  284. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 時間も参ったようでありますが、先ほど農林大臣は、ことしになって五%しか上げていない——一月一日、上げましたね。これは三木内閣になってから上がったわけですね。何といいますか、メーカーが自分で放てきしてきた、ほっぽらかしてきた安全の責任を——いままでは、人件費が上がったとか、石油が上がったとか、部品が上がったとかであったが、今度の一月一日の値上げの理由は、安全のために値上げするということが最大の口実になっていますね。つまり本来自分たちが安全をやらなければいけないのに、今回は安全を値上げの理由に持ってきたということは、まことに本末転倒なことだというふうに私ら考えているわけです。  きょうは、ほんの序論でございまして、これらについては、いずれこれからいろいろ詰めたいと思うわけでありますが、時間も参ったようでありますから、最後に一言、言わしていただきますと、一般国民はもちろん農民の方々さえも、現在市中で売られておる農機具というものは全部合格品でりっぱなものだと頭から思っているのですね。ところが実際は、不合格品はおろか検査さえ受けていない機械が堂々と出回って一おる、こういうこともきょうは明らかになったわけであります。一方で農民は価格の高騰に悩まされるばかりでなくて、悲惨きわまる死亡や傷害事故を受けて、命と健康にかかわる問題として発展してきているということです。そしてその根幹として、いま政府から二、三の前向きの発言をいただきましたが、依然かたくなな問題もございましだとおり、機械化促進法のしり抜けの問題やら検査制度やら、あるいはメーカーサイドの通達や審議会の内容なども一応明らかにされたことだと思うのです。今後こういうものを皆さん方が前向きにどのように検討し、改善していくかということにつきましては、私たちも十分監視すると同時に、ひとつ私たちも全国の農民の方々と手を組んで、強く皆さんに申し迫ってまいりたい、運動を進めてまいりたい、このように考えているわけであります。  以上申し上げまして、本日の質問をこれで終わります。(拍手)
  285. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  286. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  来る二十日に出頭を求める参考人は、中央公害対策審議会会長和達清夫君、同委員高田ユリ君、元中央公害対策審議会自動車公害専門委員家本潔君、日本自動車工業会会長豊田英二君、同専務理事中村俊夫君、同技術部長青木道一君、東京都公害研究所所長柴田徳衛君、横浜市公害局長助川信彦君、石油連盟会長中島順之助君、電気事業連合会会長加藤乙三郎君、同原子力開発対策会議委員長田中直治郎君、全国中小企業団体総連合会会長上野金太郎君、全国下請企業団体連合会会長中村元治君、西陣撚糸株式会社社長太田吉郎君、株式会社ユニチカ社長小寺新六郎君、経済団体連合会会長土光敏夫君、同産業政策委員会中小企業部会長石塚庸三君、朝日新聞編集委員岡並木君といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次回は、明十九日午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十九分散会