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国務大臣(
坂田道太君)
上原君に
お答えを申し上げます。
憲法第九条は、
主権国として持つ固有の
自衛権までも否定しておるものではございません。したがいまして、この
自衛権の行使を裏づける
必要最小限度内の
防衛力の
保持は、同条の禁止するところではございません。
自衛隊はまさにその
限度内の
防衛力でありますから、
違憲ではないというのが、従来からの
政府の
見解でございますし、
長沼第一
審判決が出たことによって、これを直ちに改める
考えはございません。
もちろん、
下級審の
判決として、
自衛隊違憲という
裁判所の判断が下されたという事実は認識しておりますが、しかし、国政の
責任を負う
立場にございます
政府といたしましては、
防衛力の
整備は、
わが国の平和と安全を維持し、その存立を全うするためにゆるがせにできない事柄であることにかんがみ、これについての従来からの
方針を変更する
考えはございません。
アジアの新
情勢に対応していく
防衛構想及び
防衛政策を、どのように再検討するかという
お尋ねでございます。
アジアをめぐる
情勢につきましては、最近の
インドシナ情勢の急激な変動が
周辺地域にどのような
影響を与えることになるか、その推移を十分見きわめる必要があると
考えておりますが、当面、
わが国については、差し迫った具体的な
軍事的脅威が顕在化する
可能性は少ないと判断いたしております。
基本的には、四次防策定時と変わりないものと
考えます。
また、国内的には、経済、財政
事情の変化等、
防衛問題をめぐる環境は厳しさを加えております。
わが国の
防衛力はあくまでも自衛のためであって、紛争を抑止することが第一義であることに変わりはございませんが、このような
状況を踏まえて、種々の角度から
防衛力のあり方について見直すことは必要であると
考えております。
このため、さきに事務当局に対しまして、
ポスト四次防の
防衛庁案の作成に着手するよう私から指
示したのでございますが、その作業開始に当たりまして、当面必要な作業
方針にとどめ、以後、逐次、何回かに分けて行うことといたし、これらの見直し作業は、
防衛を
考える会等、広く識者の意見を聞くとともに、適当な機会に国防
会議に諮りたいと
考えており、さらに、今後の
防衛問題については、広く
国民の理解を求め、コンセンサスを得る必要があるため、計画策定の各過程において、適宜
防衛庁の
考え方を
国民に問いかけながら、
内容を固めていく方法をとりたいと
考えております。
ポスト四次防の問題についてでございます。
ポスト四次防において
整備すべき
防衛力については、今後の検討を経まして決定する問題でございまして、現段階では申し上げられませんが、いずれにいたしましても、質的な向上に重点が置かれまして、大幅な
増強は困難なものと
考えております。
また、
防衛力整備計画の方式といたしましては、固定方式、
ローリング方式等について種々の角度から検討を進めておりますが、最終的にどのような方式をとるかは、今後の検討をまって決定したいと
考えております。
四次防の達成は断念したのか、断念した場合、どのような
装備を断念するのか、明確に示せという
お尋ねでございます。
わが国は、国力、国情に応じ、自衛のために必要な
限度において効率的な
防衛力を漸進的に
整備することとし、四次防もその一環として策定したものでございますから、四次防の最終年度である五十一年度におきましては、四次防の総仕上げを図り、その目標達成に努めるべき年でございます。しかしながら、四次防の進捗
状況は、四十八年度以降における経済財政
事情の大幅な変動により相当のおくれが認められ、また、最近の諸
情勢を考慮いたしますと、五十一年度においてこのおくれを完全に回復することは困難な
状況と判断されます。
したがいまして、五十一年度の業務計画作成に当たりましては、このような現実を踏まえて、推進すべき事業の優先度を定めて、実質的な
防衛力の
整備に努めるよう、すでに陸
海空各幕僚長等に指
示したところでございますが、具体的にどの
装備を断念することとなるかにつきましては、現在検討中でございます。まだ申し上げる段階ではございません。
四次防及び
ポスト四次防の想定する
軍事的脅威はいかんということでございます。
四次防は、周辺海域の
防衛能力、
海上交通の安全確保
能力及び重要地域防空
能力の
強化並びに各種の機動力の
増強を重視しつつ、
装備品の更新、近代化を図ること等として策定されたものでございます。特定の
軍事的脅威を想定しているものではございません。
なお、
ポスト四次防は、現在
防衛庁におきまして検討中でございますが、四次防と同様、特定の
軍事的脅威を想定して策定するようなことは
考えておりません。
軍事的脅威は全く予測できないにもかかわらず、
防衛力の
増強や
増員を図らなければならない
理由いかんという御
質問でございます。
今日の国際
情勢は複雑かつ流動的でございますが、緊張緩和を基調にして推移しつつあることにおいては変わりはございません。当面、
わが国に対して差し迫った具体的な軍事的な
脅威が顕在化する
可能性は少ないというふうに
考えております。
しかし、現在の国際社会における安定化への
努力は、集団安全
保障体制を背景とし、軍事力の均衡の上に立って進められておるものでございますし、また、
防衛力の建設には長期間を要しますので、そのときどきの
情勢のいかんにかかわらず、万一の
事態に備えて、平素から計画的にその
整備に努める必要があると
考えておる次第でございます。
四次防及び
ポスト四次防が達成されると
政府は言うが、
わが国の平和と
独立を確保するに足る
防衛体制が確立できると思うのか、
見解いかんということでございます。
わが国は、国防の
基本方針にのっとりまして、国力、国情に応じ、
自衛力のため必要な
限度において、効率的な
防衛力を漸進的に
整備することとしております。四次防はその一環として策定されたものでございますが、四十八年度以降の経済財政
事情の大幅な変動のため、その完全達成は困難な
状況となっております。
また、諸外国における
装備の質的向上等を考慮すれば、たとえば、早期警戒機能の不備、
航空基地、レーダーサイト等の抗たん性の不足、機動展開
能力の不足等、
わが国の
防衛力については、なお
整備すべきことがあると
考えております。
ポスト四次防の作成に当たりましては、これらの現状を十分認識した上で、各種の機能について
欠陥のない
防衛力の
整備に配慮してまいりたいと
考えておりますが、広く
国民のコンセンサスを得られるようなものを固めたいと、種々検討いたしている段階でございますので、御指摘の点については何とも申し上げられないわけでございます。
防衛上の
資料は、国家の安全と利益に深くかかわっておりますものが多うございます。公開することが適当でないものもございますが、
防衛に関する
国民的コンセンサスを得るためには、いろいろな
資料を広く
国民に公開する必要があると
考えております。
国会審議上必要なものは、従来からできる限り提出をしてまいっておるところでございますが、今後もこの
方針に変わりはございません。
自衛隊は、
国会、
内閣及び隊務を統括する文民たる私の指示する
基本方針に従ってその
任務を全うするよう十分に管理されております。
装備の選定等の重要問題につきまして、
自衛官が独断で決定できるようにはなっておりません。
シビリアンコントロールは十分徹底いたしておると
考えております。(
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