○林百郎君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表して、
公職選挙法の一部を
改正する
法律案並びに
政治資金規正法の一部を
改正する
法律案に関して、総理大臣並びに関係大臣に質問をいたします。
まず第一に、総理にただしたいことは、民主主義の基本であり、憲法で明確に保障されている言論、出版、その他一切の表現の自由に対する三木
内閣の態度、及び
国民主権と議会制民主主義に対する三木
内閣の
政治姿勢そのものについてであります。
昨年十二月二十五日、本院で採択された
選挙の明正に関する
決議では、「そもそも
選挙は議会制民主
政治の基盤であり、正々堂々たる
政策論争を展開して
国民の審判を受けるべきもの」と述べております。
また、総理、あなたは、総理に就任される直前の昨年九月、中央公論誌上で「言論の自由、思想の自由、
政治活動の自由、表現の自由などの基本的人権は、絶対に確保すべきものである」と明言されております。
しかるに、今回三木
内閣が
提出した
公職選挙法の一部
改正案は、第一に、
選挙期間中は、
選挙に関する報道、評論を
掲載した
確認団体の機関紙及び一般紙に至るまで
無料配布を
禁止し、自由な出版表現活動に不当きわまる
規制を加えるものであります。
第二に、
政党、
政治団体の
機関紙誌の号外に至っては、有料、
無料を問わず、配布を全面的に
禁止するという、かつて見ない言論、表現の自由に対する全面
規制が盛り込まれているのであります。これは明らかに民主主義と憲法に対する驚くべき挑戦であります。また、これがさきの
全会一致の
国会決議に明確に反するものであり、さらに総理自身のかつての主張とも相反する無責任きわまりないものであることは明らかであります。(
拍手)
この点について、総理の責任ある答弁を求めるものであります。
次は、
国民の知る権利に対する保障の問題であります。
日本国憲法にも明らかなように、
選挙は議会制民主主義の根幹であります。また、
選挙に際しては、主権者である
国民がその権利を行使する上で、何物にも拘束されない自由な選択が保障されるべきであります。
国民は、
選挙期間中こそ、
選挙の争点、
政党や
候補者の実績と、その
政策並びに理念などを知る権利があります。これは何人も奪うことのできない、
国民の固有の権利であります。また、
政党は不特定多数の広範な有権者に対して、その
政策、主張を十分に知らせる当然の責務を持っていることは、多言を要しません。
しかるに
政府案は、
選挙期間中、
国民が
政党と
候補者を選択するのに最も必要な
政党の
政策や主張を知る権利を著しく
制限しております。また、
政党がこれらのことを
国民へ知らせる責務を奪い去ろうとしておるのであります。これはどの先進国にもその例を見ない、民主主義への重大な侵害であると考えられますが、総理は一体どう考えておられるか、その見解をお知らせ願いたい。
総理、さらに重大な問題は、今回の
規制の対象が、一般紙誌にまで広げられておる。たとえば朝日、毎日、読売などの新聞から、
労働組合、民主
団体の
機関紙誌、業界紙誌、ローカル紙誌、各種の週刊誌までが、
選挙に関する報道、評論をしている以上、
無料配布による宣伝や拡張行為を含めて、一切の
無料配布が
禁止されることであります。したがって、
選挙中読者の拡張や
無料配布を続けるには、
選挙の報道、評論を一切やめざるを得ないのであります。これは、かつての治安維持法や新聞紙法、出版法によって発売
禁止、削除などのファッショ的な言論弾圧が行われた戦前の暗黒
政治への道に通ずるものと言わざるを得ないのであります。
以上の点について、総理の責任ある見解を求めるものであります。
総理は、去る三月十二日、
参議院の予算
委員会で、わが党の内藤
議員に、ビラの洪水が
規制の根拠だと答えていますが、これは一部の現象を意図的にとらえて、言論の自由という根本的な
国民の権利を否定するのに利用しようとする、まさに暴論と言わざるを得ません。
たとえば、重大な
規制を受ける各新聞社も、このたびの法案に対して、この非を次のように指摘しております。
四月五日には、読売新聞の社説は、
政党の
機関紙誌が
選挙時に啓発宣伝に努めるのは当然であり、紙爆弾の是非は有権者が判断する、
政党がみずからの手で首を絞めるような愚は避けた方がよいと主張しております。
また、四月八日には、毎日の社説は、公正な
選挙のためにはもっと運動を自由化し、開放的にする必要がある。自民党などは紙爆弾、
ビラ公害と誇張し過ぎる。むしろ陰湿な形で行われている銭爆弾、銭公害の方にこそ徹底的にメスを入れるべきだ、こう指摘しております。すなわち、自民党による買収、供応、金権、企業ぐるみ
選挙こそが問題であることを明らかにしているのであります。(
拍手)
このように、事は言論、表現、結社の自由に関する憲法の諸原則、
国民主権と議会制民主主義の原則に対する許しがたい挑戦であると断ぜざるを得ないが、どうか。総理の明快な答弁を求めるものであります。
このことと関連して指摘しておきたいことは、
国民の厳しい指弾を受けた企業ぐるみ
選挙が、今回の一斉地方
選挙でも、大企業を中心に、大
規模に行われている問題であります。わが党がさきに明らかにしたように、事もあろうに、自民党の中曽根幹事長は、三月三十一日、日経連の緊急会員懇談会に出席し、企業ぐるみ
選挙を要請しているのであります。
わが党は、かかる不法な企業ぐるみ
選挙に対し、三木総理に直ちに厳正な
措置をとることを申し入れましたが、清潔な
政治を主張するあなたが、企業ぐるみ
選挙によって
国民固有の権利である自由な選択に不当な抑圧を加えることについて、いかなる責任をとられるのか。
規制すべきでない言論をあえて
規制し、直ちに
規制すべき企業ぐるみ
選挙は野放しにする、かかる事態について、総理の責任ある答弁を求めるのであります。(
拍手)
次に、
政治資金規正法の一部を
改正する
法律案について質問いたします。
今日、
国民の厳しい批判を浴びている金権腐敗
政治の根源が、自民党を初めとする一部政界と大企業、財界との癒着にあることは、だれの目にも明らかなところであります。現に、三木総理自身、さきに挙げた中央公論の九月号で「企業から多額の献金を受けた
候補者は企業の代弁者となり易い。
労働組合にかかえられた
候補者もまた組合の代弁者となる。」「金権を代表するかのごとくみられる現在の自民党の体質では、インフレにとり組む姿勢が疑われる。」と述べているのであります。
ところが、今回
政府から
提出された
政治資金規正法の
改正案は、
国民の強い要求に反して、企業、
労働組合など
団体献金を存続させることによって、金権腐敗
政治の根源を温存させるものとなっているのであります。
政府は限度額を設けたことによって、企業献金に節度を設けたものと言っておられるが、その
内容はどうか。
改正案によれば、派閥献金も含めれば、最高一億五千万円にも達するようなきわめて高い限度額を設け、その限度額までは
政治献金の拡大を合法化するものであり、これこそ
政治資金の
規制どころか、むしろ企業献金拡大法とも言うべき悪法であります。
それは、さらにわが党の調査によっても、全国の株式上場
会社千六百六十社について、限度額いっぱいの献金を集めると、実に二百九十億円、非上場
会社も含めて集めれば、その額は実に五百億円を超えるという事実によっても端的に示されているのであります。
さらに本法案によると、ある企業の
政治献金限度額が守られたとしても、その企業が業界
団体や任意
団体をつくれば、それらの
団体を通じて、
政治献金を幾らでも上積みできるという抜け道さえちゃんと準備されているのであります。
このような企業献金をますます拡大奨励する法案の、どこをもって一体節度が守られているというのか、明確に答弁されたい。
また、これは自治大臣にもお尋ねしたいのですが、
政党に対する献金は、一万円を超えれば、
寄付した者の
氏名、住所、職業等の
報告義務があるのに、派閥や
後援団体については、百万円までは非公開でできると区別されておりますが、これは一体いかなる
理由によるのか、総理並びに関係大臣の明確な答弁を求めるものであります。
総理、あなたはこの法の
改正によって、自民党のこれまでの深い金権腐敗の
政治体質が一体解決できると、本気で考えているのですか、率直かつ明確な答弁を求めます。
日本共産党は、創立以来一貫して財界や大企業からの献金をびた一文もらったことのないただ一つの
政党であります。
総理は、わが党がかねてから主張しておる、
政治献金の最も正しいあり方として、企業、労組など、一切の
団体の
政治献金を
禁止し、
寄付は
個人に限るという主張を直ちに受け入れるべきであると考えるが、その用意があるかどうか、明確な答弁を求める次第であります。(
拍手)
さらに、これも総理と自治大臣お二人にお聞きしますが、ここで特に指摘しておきたいことは、今回の
政治資金規正法の附則
改正についてであります。
これによりますと、労組や民主
団体など、いままで
選挙中でも
一定の
政治活動が保障されていた
団体にさえ、「
政治団体」を「
政治活動を行う
団体」と言いかえることによって、大幅にその活動が
規制される危険があるということであります。このような危険な
改正は、断じて許すことができないところであります。総理並びに関係大臣、自治大臣の答弁を求めます。
最後に、私は、三木総理が就任当初強調されていた対話と協調の
精神という姿勢が、今回の二法案に一体どのように具現されているのか、お尋ねしたいのであります。
言うまでもなく、
選挙法の
改正は、代議制民主主義の基礎にかかわり、院の構成に重大な影響を与えるという面から見て、慎重に論議され、かつ、各党の合意を得て実行されるべき性質の問題であります。これは三木総理自身、三月十二日の
参議院予算
委員会で、「自民党一党だけの考えではいけない、
選挙運動というものに対しては、一方だけで押し切るということはルールとしての公正を欠きますから、各党でこれを話し合う」と答弁されたことを見ても明らかであります。ところが、
政府・自民党は、本院の
公職選挙法改正小
委員会で各党の合意を得た
衆議院定数是正案の実行を、
参議院全国区制の
改正と一括でなければ行わないなどと、こういう勝手なワンパッケージ論で引き延ばしてまいりました。そして、全国区制問題が自民党自身の内部矛盾でまとまらなくなると、今度は、小
委員会では全く論議もされず、
議題にもなってない
政党機関紙、一般紙誌の
規制を、突如として、一括にして、しかも一方的に
提出するという態度に出てこられたのであります。これこそ、議会の意思を無視するものであります。
総理、これが一体あなたの言う対話と協調の真の姿なのですか。しかも、あなたは、自分の当初の公約に反して、最近行われた一斉地方
選挙中においても、かつて前例を見ない、各
政党の機関紙に対する警視庁の警告なるものを行って、
政党の活動に重大な干渉を加える一方、あなた自身が批判していた田中
内閣さえ手をつけられなかった機関紙、一般紙誌の
規制を強行しようとしておるのであります。一体、これらの姿勢のどこに対話と協調の
精神というものがあるのですか。総理の公約なるものは、全くの見せかけにすぎなかったと言わざるを得ないのであります。(
拍手)
一体、三木総理は、みずからの公約に対してどのような責任ある態度を感じておるのか、とろうとするのか、明確な答弁を要求するものであります。
日本共産党・
革新共同は、今回の公選法、
政治資金規正法の
改正二法案の真のねらいが、一方では正々堂々たる
政策論争を通じて
国民の審判を受けるという、本来の
選挙戦の正道を極度に
規制しながら、他方では、利益の誘導や買収、供応、強制など、旧態依然たる金権
選挙、企業ぐるみ、官庁ぐるみ
選挙など、本来厳しく
規制すべき
選挙腐敗の道を温存して、こうして、まさに党利党略的な
選挙制度の改悪の上に、自民党支配の長期化をねらうものと断ぜざるを得ないのであります。
現に、椎名自民党副総裁が、四月十五日、
内外情勢調査会の会合で言明した小
選挙区制導入の策動とあわせて考えるならば、事態はいよいよ重大であります。この点について、総理の責任ある答弁を求めるものであります。
わが党は、三木公約と称して、憲法に明確に違反する
政党機関紙、一般紙誌に対する
規制を持ち出すことは、断じて許すわけにはいきません。いま
国民が切実に求めていることは、すでに各党で合意をしておる
衆議院の
定数是正を、まず直ちに実行することであります。また、
政治資金の
規制については、企業、労組献金などを厳重に
禁止して、金権腐敗
政治の根を完全に断ち切ることであります。
このことを強く私は三木総理に要求して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣三木武夫君
登壇〕