○犬井
説明員 お答え申し上げます。
先ほど申し上げましたように、今度の
法律で定められます
責任限度額は、鋼船で物損の場合トン当たり二万四千円、
人損の場合七万四千円ということでありまして、この最低
限度は三百トンで計算いたしますから、物損の場合に七百二十万円、それから
人損がある場合には二千二百三十万円というような数字になります。この数字を先ほど申し上げました過去の
損害賠償額の実例と比べますと、まあ妥当な
金額ではないかというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
そしてさらに、四十九年の四月から九月までにPIが扱った
損害賠償の事案につきまして調べました結果から見ましてもこのことが裏づけられるわけでございます。四十九年の四月から九月までにPIから支払われた
事故件数というのは国内で四百九件ございますが、このうち
責任限度額を超えているものは六件でございます。そのうち五件はいずれも
限度額との比較において一二〇%以内でございまして、いわば本格的に超えているのは物損について一件あるというだけでございます。このことから見て、われわれとしては今度の
法律に定められます
責任限度額は妥当なものであるというふうに考えてはおりますけれ
ども、しかし先生がおっしゃるように問題点がないわけではない、あるのだというふうに思っております。
その
一つは、
旅客船にたくさんの人が乗っていて、それに他の船がぶつかって
旅客船が沈んだ、そのために多くの旅客が死傷したという場合でございます。この点につきましてはやはり非常に問題があるということでございましたので、
条約には書いてないことでございますが、国内法で手当てをいたしまして、国内
旅客船の旅客の死傷
事故に基づく債権についてはこれが
制限できないのだということを
法律の中にうたってございます。これは
条約との抵触ということがなしに、国内問題でございますからできるのだという
判断からこういう手当てを講じたわけでございます。
一方、御指摘になりました関釜フェリーでございます。これは
外航旅客船でございますので、
条約との
関係で残念ながらその
責任を無
制限にするというわけにはまいらなかったわけでございます。しかし、現在のところ
外航旅客船というのは、御指摘のあった関釜フェリーが
定期航路としては唯一のものでございます。したがいましてこの点につきましては、この前も御
説明申し上げましたけれ
ども、行政指導として運送約款の中に合理的な
責任限度額を書き込ませる予定でございます。そしてこれを届け出させて、そしてこの
責任限度額を前提にした船客傷害に対する
保険というものを掛けさせることによって、一たん
事故が起きた場合の手当てに万全を期したいというふうに考えておるわけでございます。